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特表2024-534155オーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための方法及びオーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】オーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための方法及びオーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512999
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022072823
(87)【国際公開番号】W WO2023025619
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】17/459,678
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597038301
【氏名又は名称】ゼンハイザー・エレクトロニック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Sennheiser electronic GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】チェカ,ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】カレス,ヨハネス ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ブーハー,ロレンツ
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA02
5D220AB08
5D220BA01
(57)【要約】
測定されたラウドネスが第1の目標ラウドネス以上である場合、利得係数はゼロである。そうでなければ、ノイズレベル表示信号が中間ノイズレベル以上のノイズレベルを示す場合、利得係数は、測定されたラウドネスと、現在の目標ラウドネスとの間の差であり、最大利得に対して制限される。最大利得は絶対最大利得であり、現在の目標ラウドネスは、中間ノイズレベルに等しいノイズレベルに関する第2の目標ラウドネスと、最大ノイズレベルに等しいノイズレベルに関する第1の目標ラウドネスとの間で、ノイズレベル表示信号に従って線形に補間される。そうでなければ、ノイズレベル表示信号が中間ノイズレベルより小さいノイズレベルを示す場合、利得は、ノイズレベルに従って、中間ノイズレベルに関して定義された利得とゼロとの間で線形に補間される。さらに、再生されるオーディオ信号に利得係数が適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物内で再生されるオーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための方法であって、上記方法は、
- 自動ラウドネス測定器が、デジタルオーディオブロックのシーケンスを含む到来するオーディオ信号のラウドネスを測定することと、
- 上記乗物内のノイズレベルを示すノイズレベル表示信号を受信することと、
- プロセッサが、上記到来するオーディオ信号の測定されたラウドネスと、上記ノイズレベル表示信号とに基づいて、利得係数を計算することとを含み、
上記測定されたラウドネスが、予め定義された第1の目標ラウドネス(TLamS)以上である場合、上記利得係数はゼロであり、
そうでなければ、上記ノイズレベル表示信号が、予め定義された中間ノイズレベル以上のノイズレベルを示す場合、上記利得係数は、上記測定されたラウドネスと、現在の目標ラウドネスとの間の差であり、最大利得に対して制限され、上記最大利得は、定義された絶対最大利得であり、上記現在の目標ラウドネスは、上記中間ノイズレベルに等しいノイズレベルに関する予め定義された第2の目標ラウドネス(TLaiS)と、予め定義された最大ノイズレベルに等しいノイズレベルに関する上記予め定義された第1の目標ラウドネス(TLamS)との間で、上記ノイズレベル表示信号に従って線形に補間され、
そうでなければ、上記ノイズレベル表示信号が上記中間ノイズレベルより小さいノイズレベルを示す場合、上記利得は、上記ノイズレベルに従って、上記中間ノイズレベルに関して定義された利得とゼロとの間で線形に補間され、
上記方法は、
- 上記再生されるオーディオ信号に利得係数を適用することを含む、
方法。
【請求項2】
上記ノイズレベルを示す情報は、上記乗物の速度を示す信号から取得される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記ノイズレベルを示す情報は、上記乗物内の1つ又は複数のマイクロホンから取得される、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
上記ラウドネス測定は、無音しきい値より大きいラウドネスを有する一定個数のオーディオブロックに基づき、
上記無音しきい値より小さいラウドネスを有するオーディオブロックは、上記ラウドネス測定器の内部状態を変更せず、
到来するオーディオブロックのラウドネスが上記無音しきい値より大きくなるまで、上記ラウドネス測定器は、その最新のラウドネス測定値を保持する、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
上記計算された利得係数は第1の利得係数であり、
上記第1の利得係数は第2の利得係数に加算され、上記第1及び第2の利得係数はともに、再生されるオーディオ信号のラウドネスを決定する、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
上記利得係数は、ユーザ制御可能なボリュームから独立である、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
上記利得係数は、ユーザ制御可能なボリュームに連結される、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
乗物内で再生されるオーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための方法であって、上記方法は、
- 自動ラウドネス測定器が、デジタルオーディオブロックのシーケンスを含む到来するオーディオ信号のラウドネスを測定することを含み、
無音しきい値より小さいラウドネスレベルを有するデジタルオーディオブロックが検出され、上記ラウドネス測定においてスキップされ、
上記測定は、上記無音しきい値より大きいラウドネスを有するデジタルオーディオブロックに基づき、
上記方法は、
- 上記乗物が移動する速度を示す速度表示信号を受信することと、
- プロセッサが、上記測定されたラウドネスと、上記速度表示信号とに基づいて、利得係数を計算することとを含み、
上記測定されたラウドネスが、予め定義された第1の目標ラウドネス(TLamS)以上である場合、上記利得係数はゼロであり、
そうでなければ、上記速度表示信号が、定義された中間速度以上の速度を示す場合、上記利得係数は、上記測定されたラウドネスと、現在の目標ラウドネスとの間の差であり、最大利得に対して制限され、上記最大利得は、定義された絶対最大利得であり、上記現在の目標ラウドネスは、上記中間速度に等しい速度に関する予め定義された第2の目標ラウドネス(TLaiS)と、予め定義された最大速度に等しい速度に関する上記予め定義された第1の目標ラウドネス(TLamS)との間で、上記速度表示信号に従って線形に補間され、
そうでなければ、上記最大利得は、上記絶対最大利得及びゼロの間で、上記速度に従って線形に補間され、現在の最大利得が取得され、上記利得は、上記測定されたラウドネスが、上記絶対最大利得を減算した上記第2の目標ラウドネス(TLaiS)より小さい場合、上記現在の最大利得に等しく、又は、上記現在の最大利得とゼロとの間で、上記測定されたラウドネスに従って線形に補間することで取得され、
上記方法は、
- 上記再生されるオーディオ信号に利得係数を適用することを含む、
方法。
【請求項9】
上記ラウドネス測定は、上記無音しきい値より大きいラウドネスを有する一定個数のオーディオブロックに基づく、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
上記計算された利得係数は第1の利得係数であり、
上記第1の利得係数は第2の利得係数に加算され、上記第1及び第2の利得係数はともに、再生されるオーディオ信号のラウドネスを決定する、
請求項8記載の方法。
【請求項11】
上記利得係数は、ユーザ制御可能なボリュームから独立である、
請求項8記載の方法。
【請求項12】
上記利得係数は、ユーザ制御可能なボリュームに連結される、
請求項8記載の方法。
【請求項13】
乗物内で再生されるオーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための装置であって、上記装置は、
- デジタルオーディオブロックのシーケンスを含む到来するオーディオ信号のラウドネスを測定するように適応化された自動ラウドネス測定器と、
- 上記乗物内のノイズレベルを示すノイズレベル表示信号を受信するように適応化された入力回路と、
- 上記測定されたラウドネス及び上記ノイズレベル表示信号に基づいて利得係数を計算するように適応化された少なくとも1つのプロセッサとを備え、
上記測定されたラウドネスが、予め定義された第1の目標ラウドネス(TLamS)以上である場合、上記利得係数はゼロであり、
そうでなければ、上記ノイズレベル表示信号が、予め定義された中間ノイズレベル以上のノイズレベルを示す場合、上記利得係数は、上記測定されたラウドネスと、現在の目標ラウドネスとの間の差であり、最大利得に対して制限され、上記最大利得は、定義された絶対最大利得であり、上記現在の目標ラウドネスは、上記中間ノイズレベルに等しいノイズレベルに関する予め定義された第2の目標ラウドネス(TLaiS)と、予め定義された最大ノイズレベルに等しいノイズレベルに関する上記予め定義された第1の目標ラウドネス(TLamS)との間で、上記ノイズレベル表示信号に従って線形に補間され、
そうでなければ、上記ノイズレベル表示信号が上記中間ノイズレベルより小さいノイズレベルを示す場合、上記利得は、上記ノイズレベルに従って、上記中間ノイズレベルに関して定義された利得とゼロとの間で線形に補間され、
上記装置は、
- 上記再生されるオーディオ信号に利得係数を適用するように適応化された増幅器を備える、
装置。
【請求項14】
上記ノイズレベルを示す情報は、上記乗物の速度を示す信号から取得される、
請求項13記載の装置。
【請求項15】
上記ノイズレベルを示す情報は、上記乗物内の1つ又は複数のマイクロホンから取得される、
請求項13記載の装置。
【請求項16】
上記ラウドネス測定は、無音しきい値より大きいラウドネスを有する一定個数のオーディオブロックに基づき、
上記無音しきい値より小さいラウドネスを有するオーディオブロックは、上記ラウドネス測定器の内部状態を変更せず、
到来するオーディオブロックのラウドネスが上記無音しきい値より大きくなるまで、上記ラウドネス測定器は、その最新のラウドネス測定値を保持する、
請求項13記載の装置。
【請求項17】
上記計算された利得係数は第1の利得係数であり、
上記第1の利得係数は第2の利得係数に加算され、上記第1及び第2の利得係数はともに、再生されるオーディオ信号のラウドネスを決定する、
請求項13記載の装置。
【請求項18】
上記利得係数は、ユーザ制御可能なボリュームから独立である、
請求項13記載の装置。
【請求項19】
上記利得係数は、ユーザ制御可能なボリュームに連結される、
請求項13記載の装置。
【請求項20】
乗物内で再生されるオーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための装置であって、上記装置は、
- デジタルオーディオブロックのシーケンスを含む到来するオーディオ信号のラウドネスを測定するように適応化された自動ラウドネス測定器を備え、
無音しきい値より小さいラウドネスレベルを有するデジタルオーディオブロックが検出され、上記ラウドネス測定においてスキップされ、
上記測定は、上記無音しきい値より大きいラウドネスを有するデジタルオーディオブロックに基づき、
上記装置は、
- 上記乗物が移動する速度を示す速度表示信号を受信するように適応化された入力回路と、
- 上記測定されたラウドネス及び上記速度表示信号に基づいて利得係数を計算するように適応化された少なくとも1つのプロセッサとを備え、
上記測定されたラウドネスが、予め定義された第1の目標ラウドネス(TLamS)以上である場合、上記利得係数はゼロであり、
そうでなければ、上記速度表示信号が、定義された中間速度以上の速度を示す場合、上記利得係数は、上記測定されたラウドネスと、現在の目標ラウドネスとの間の差であり、最大利得に対して制限され、上記最大利得は、定義された絶対最大利得であり、上記現在の目標ラウドネスは、上記中間速度に等しい速度に関する予め定義された第2の目標ラウドネス(TLaiS)と、予め定義された最大速度に等しい速度に関する上記予め定義された第1の目標ラウドネス(TLamS)との間で、上記速度表示信号に従って線形に補間され、
そうでなければ、上記速度表示信号が上記中間速度より低い速度を示す場合、上記最大利得は、上記絶対最大利得及びゼロの間で、上記速度に従って線形に補間され、現在の最大利得が取得され、上記利得は、上記測定されたラウドネスが、上記絶対最大利得を減算した上記第2の目標ラウドネス(TLaiS)より小さい場合、上記現在の最大利得に等しく、又は、上記現在の最大利得とゼロとの間で、上記測定されたラウドネスに従って線形に補間することで取得され、
上記装置は、
- 上記再生されるオーディオ信号に利得係数を適用するように適応化された増幅器を備える、
装置。
【請求項21】
上記ラウドネス測定は、上記無音しきい値より大きいラウドネスを有する一定個数のオーディオブロックに基づく、
請求項20記載の装置。
【請求項22】
上記計算された利得係数は第1の利得係数であり、
上記第1の利得係数は第2の利得係数に加算され、上記第1及び第2の利得係数はともに、再生されるオーディオ信号のラウドネスを決定する、
請求項20記載の装置。
【請求項23】
上記利得係数は、ユーザ制御可能なボリュームから独立である、
請求項20記載の装置。
【請求項24】
上記利得係数は、ユーザ制御可能なボリュームに連結される、
請求項20記載の装置。
【請求項25】
コンピュータにおいて実行されたとき、上記コンピュータに請求項1記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能な命令を格納した、コンピュータ可読の非一時的な記憶媒体。
【請求項26】
コンピュータにおいて実行されたとき、上記コンピュータに請求項8記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能な命令を格納した、コンピュータ可読の非一時的な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための方法に関する。本発明はまた、オーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための装置に関する。特に、本発明は、自動車のような乗物内において再生されるオーディオ信号のラウドネスを制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物は、最近、音楽又は他の音声、例えばオーディオブックを聴取するための一般的な環境である。しかしながら、移動している乗物は、速度依存のノイズを発生し、それは、聴取者の聴取する楽しみに干渉する可能性がある。従って、多くの自動車は、音声のために、非常に簡単な速度依存のボリュームスケーリングを使用し、すなわち、速度が高くなるほど、より大きな音が再生される。その理由は、速度が車内のノイズレベルの代わりとして使用されるからである。様々なより洗練されたソリューション、例えば、移動している自動車内で再生される音声のラウドネスを制御するための回路が知られている。通常、そのような回路は、例えば、車内のマイクロホンによって検出される周囲のノイズレベルに従って、再生される音楽の利得を適応化する。
【0003】
自動車を運転しながら音楽を聴取する場合、道路のノイズが部分的に音楽をマスクし、それにより、車内の聴取体験を劣化させる可能性がある。音楽が周囲の運転ノイズによってマスクされるか否かは、ある程度、ラウドネス比によって決定される。
【0004】
ラウドネス比=音楽ラウドネス/ノイズラウドネス
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の解決方法は、音楽のラウドネスを調整して比較的に一定のラウドネス比を保持しようとすることで、ノイズのラウドネスの変化を考慮する。しかしながら、音楽のラウドネス自体が変化する場合、ラウドネス比もまた変化する可能性がある。例えば、音楽の静かなセクションは、大きなセクションがそうでなくても、ノイズによってすっかり覆われる可能性がある。この問題は、クラシック音楽において、その広いダイナミックレンジに起因して特に影響する。車内ノイズの問題に対する現在の解決方法は、この課題を考慮しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、移動している乗物において、再生される音声のラウドネスを制御するために、速度又は周囲のノイズレベルだけでなく、音声自体のダイナミクスも考慮されるべきであるという事実の認識に基づく。特に、本発明は、音楽のダイナミックレンジの速度依存の低減を提供する、音楽の静かなセクションに対して、大きな音のセクションに比べて、より大きな補償利得が適用される。このことは、周囲のノイズによる音楽のマスキングを低減し、それにより、道路のノイズが存在する状態でもなお、音楽のさらに静かなセクションが聴き取られるであろう。
【0007】
原則として、一実施形態における本発明は、乗物内で再生されるオーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための方法に関し、到来するオーディオ信号のラウドネスが測定され、例えば、速度表示信号、又は、1つ又は複数のマイクロホンからの信号のような、周囲ノイズレベル表示信号が受信され、測定されたラウドネス及びノイズレベル表示信号の両方に基づいて利得係数が計算される。利得係数を計算するために、中間速度又はノイズレベルと、対応する利得曲線とが定義され、2つの異なる補間が使用される。速度又はノイズレベルが中間レベル以下である場合、1つの補間が使用され、速度又はノイズレベルが中間レベル以上である場合、他方が使用される。利得係数は連続関数に従って計算され、2つの補間の間に不連続は存在せず、このことは、速度及び/又はノイズレベルが連続的に変化する限り、利得係数の突然の変化が生じないという利点を有する。
【0008】
他の実施形態では、本発明は、乗物内で再生されるオーディオ信号のラウドネスを自動的に制御するための装置に関する。本装置は、定義された時間期間にわたって到来するオーディオ信号のラウドネスを測定するように適応化された1つ又は複数のラウドネス測定器と、例えば速度表示信号のような、ノイズレベル表示信号を受信するように適応化された入力回路と、測定されたラウドネス及びノイズレベル表示信号に基づいて利得係数を計算するように適応化されたプロセッサとを備える。
【0009】
さらに他の実施形態では、本発明は、コンピュータにおいて実行されたとき、本願で説明する方法をコンピュータに実行させるコンピュータ実行可能な命令を格納した、コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】適応的レベル調整器の構成要素の原理図である。
図2】適応的レベル調整器のブロック図である。
図3】速度依存の利得係数計算のための例示的な利得曲線である。
図4】周囲のノイズレベルにそれぞれ依存する、様々なレベルの測定されたラウドネスに適用される利得係数に関する例示的な利得曲線である。
図5】ラウドネス測定器のブロック図である。
図6】利得計算のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の説明は、添付の図面を参照することで、よりよく理解されうる。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る、適応的な速度依存のレベル調整器の構成要素の原理図を示す。レベル調整器は、本願では、再生される音声信号に適用される利得を制御するために同信号のラウドネスを考慮する装置として理解される。速度依存のレベル調整器100は、乗物の現在の速度を示す信号を受信し、それは、再生される入力音声信号のための利得係数を決定するための少なくとも2つの入力のうちの1つとして、この信号を使用する。速度は、車内におけるラウドネスの代わりとして作用する。入力音声信号のラウドネスは、プログラム素材信号とも呼ばれ、少なくとも1つのラウドネス測定器131,132において測定され、利得係数を決定するための第2の入力として使用される。原則として、静的レベル調整器120は、プログラム素材の測定されたラウドネスに基づいて利得係数を計算し、それは利得関数に従う。静的レベル調整器120は、静的レベル調整器のいくつかのパラメータが外部世界の何らかの特性を有して変化するという点で、動的又は適応的なレベル調整器になる。この例では、静的レベル調整器の利得関数は、プログラム素材のダイナミクスほど急激に通常は変化しない、乗物の現在の速度に依存する。より詳しくは、現在の利得関数は、下記の3つの場合に概述されるように現在の速度に従って、3つの予め定義された利得関数のうちの1つに従うか、又は、3つの予め定義された利得関数のうちの2つの間で補間される。
【0013】
- 現在の速度がゼロである場合、第1の利得関数は使用される;
- 現在の速度が、中間速度とも呼ばれる、予め定義されたしきい値速度にある場合、第2の利得関数は使用される;
- 現在の速度が予め定義された最高速度以上にある場合、第3の利得関数は使用される;
- 現在の速度が、ゼロと、予め定義されたしきい値又は中間速度との間にある場合、第1及び第2の利得関数の間で補間される;
- 現在の速度が、しきい値又は中間速度と、定義された最高速度との間にある場合、第2及び第3の利得関数の間で補間される。
【0014】
より多くの情報が図3に関して下記に提供される。乗物の現在の速度がしきい値又は中間速度に一致する場合、利得計算が第2の利得関数に従うことに注意する。一実施形態では、詳細後述するように、2つ以上のラウドネス測定器131,132の組み合わせが使用される。より一般的には、乗物の現在の速度を示す速度及び信号に代えて、周囲のノイズを示すノイズレベル表示及びノイズレベル信号を使用することも可能である。
【0015】
図2は、適応的レベル調整器のより詳細なブロック図を示す。レベル調整器200はラウドネス測定器210を備え、それは、入力オーディオ信号205のラウドネスを測定しうる。例えば、一実施形態では、ラウドネスは、LKFS(Loudness, K-weighted, relative to Full Scale)又はLUFS(Loudness Units in Full Scale)で測定されてもよい。しかしながら、ラウドネスは、任意の適切な装置において測定されてもよい。例えば、一実施形態では、ラウドネスは、プロプライエタリな方法を用いて測定される。ラウドネス測定に関するさらなる詳細事項が、図5及び図6に関して下記に提供される。入力オーディオ信号のラウドネスは、周囲のノイズのラウドネスに依存する目標ラウドネスを満たすように適応化(すなわち増幅)される。適用される利得225は、入力オーディオ信号205のラウドネス及び周囲のノイズのラウドネスに依存して、時間にわたって変化する。適応的なレベル調整のために、利得計算モジュール220の回路が使用される。回路はソフトウェア的に構成されてもよい。利得計算モジュール220は、オーディオ信号205の測定されたラウドネスを表す少なくとも1つの値215と、周囲のノイズのラウドネスを表す少なくとも1つの値201とを受信する。周囲のノイズのラウドネスを表す値201は、例えば、乗物の現在の速度、乗物のエンジンの回転速度を示す信号、又は1つ又は複数のマイクロホンから信号であってもよい。より具体的には、利得計算モジュール220は、車内の周囲ノイズレベルに依存する静的レベル調整器のパラメータである、現在の目標ラウドネス及び現在の最大許容利得を決定してもよい。このことは、音声が周囲のノイズによってマスクされないように十分に増幅されるので、乗物内の聴取者が音声をより良好に聞き取ることができるという利点を有する。
【0016】
利得計算モジュール220は、1つ又は複数の適切に構成されたプロセッサによって実装されてもよく、利得値225を増幅器230に提供し、それは、計算された利得値を入力オーディオ信号205に適用して、増幅された出力オーディオ信号235を取得する。出力オーディオ信号235は、オーディオ信号に対する速度依存の利得をオプションで実行しうる増幅器又は他の任意の従来のモジュール300に提供されてもよい。モジュール300はまた、自動車におけるノイズレベルに対して利得をスケーリングしてもよい。モジュール300及び/又は任意の後段のモジュールは、レベル調整器200が適用する第1の利得係数とは独立した第2の利得係数であって、第1及び第2の利得係数がともに再生されるオーディオ信号のラウドネスを決定するような第2の利得係数を適用してもよい。両方の利得係数は、この実施形態では、ユーザが手動で制御しうる後の利得段であるマスターボリュームからは独立している。他の実施形態では、しかしながら、利得係数はマスターボリュームに連結されてもよい。例えば、ユーザがより小さなボリュームレベルで聴取している場合、より強い効果(すなわち、より大きなレベル調整かつより小さなダイナミックレンジ)が適用され、その一方、ユーザがより大きなボリュームレベルで聴取している場合、より弱い効果(すなわち、より小さなレベル調整かつより大きなダイナミックレンジ)が適用されることが可能である。
【0017】
図3は、一実施形態における、速度依存の利得係数の計算のための例示的な利得曲線を示す。現在どの利得曲線が適用されるべきかは、乗物の速度に依存する。このように、各利得曲線は、静的レベル調整器の異なるパラメータ表示とみなされてもよい。水平軸は、入力信号205の測定されたラウドネスL 215をdBFS(decibels relative to full scale)で表し、その一方、垂直軸は、レベル調整器200によって適用される利得G 225を表す。すべての数値は、音楽の心地よい音像のために有利であることが実証されているが、それらは例示的であることに注意する。
【0018】
この例では-14dBFSに設定される、第1の目標ラウドネスTLaMS(「Target Loudness at Maximum Speed(最高速度における目標ラウドネス)」以上の測定されたラウドネスを有する非常に大きな入力信号の場合、追加の増幅は必要とされず、従って、適用される利得GはゼロdBに設定される。測定されるラウドネスとは独立に、乗物が移動していない場合、すなわち、速度がゼロである場合もまた常に、第1の利得曲線Gに示すように、適用される利得GはゼロdBに設定される。他の場合、すなわち、第1の目標ラウドネスTLaMSより小さいラウドネスを有する入力信号かつ非ゼロの乗物速度の場合、適用される利得Gは、測定されたラウドネス及び速度の両方に依存する。補間が実行されてもよく、補間のタイプは、現在の速度に依存し、かつ、予め定義された又は構成された最高速度に対するその関係と、予め定義された又は構成された中間速度に対するその関係とに依存する。中間速度はしきい値速度とも呼ばれる。
【0019】
現在の速度が、定義された最高速度に一致又は超過する場合、適用される利得は第3の利得曲線G100に従う。上述のように、測定されたラウドネスが第1の目標ラウドネスTLaMSより大きい場合、第3の利得曲線G100はゼロ利得セクションを含む。さらに、測定されたラウドネスが、最大許容利得Gmaxを減算した第1の目標ラウドネスTLaMS、すなわち、TLaMS-Gmaxより小さい場合、第3の利得曲線G100は、最大許容利得Gmaxのセクションを含む。ここで、TLaMSがdBFSで測定され、GmaxがdBで測定される場合であっても、この計算を実施可能であることに注意する。最後に、測定されたラウドネスが、その値より大きく、かつ、第1の目標ラウドネスTLaMSより小さい場合、利得曲線G100は(対数スケールで)リニアセクションを含む。測定されたラウドネスがこの範囲内にある場合、それは、第1の目標ラウドネスTLaMSに到達するように、適用された利得Gによって増幅される。
【0020】
ここで、利得計算のための定義された最高速度は、通常、自動車が到達しうる最高速度ではなく、例えば80km/h又は100km/hのように、大幅に低い可能性があることに注意する。この速度より高くなる場合、アルゴリズムのパラメータに対する変更は実施されない。定義された最高速度は、道路のノイズがかなり大きくなる速度である可能性があるが、運転者及び乗客が音声を楽しめるようにリラックスした運転もなお可能である。ある実施形態では、これは道路のタイプに依存し、これは、例えば、ナビゲーションシステムから得られたパラメータによって決定されてもよい。すなわち、自動車がハイウェー又は他の高速レーン上にあることをナビゲーションシステムが検出する場合、パラメータ(又は、少なくとも、利得計算のための定義された最高速度)は、自動車が小さな曲がりくねった道路上にある場合とは異なってもよい(例えば、より高くなってもよい)。
【0021】
現在の速度が、構成された中間速度又はしきい値速度に一致する場合、適用される利得は第2の利得曲線Gintに従う。一実施形態において、中間速度は、定義された最高速度に対して(例えば、その分数として)表される。図3に示す例では、中間速度は最高速度の50%である。概して、それは、最高速度の任意の範囲内、例えば40%~60%にあってもよい。中間速度は構成可能であり、原則として、異なる範囲が適切である可能性もある。
【0022】
第2の利得曲線Gintは、より低い測定されたラウドネスに向かってTLaMS-TLaISの大きさだけシフトされていることを除いて、第3の利得曲線G100に類似している。すなわち、測定されたラウドネスが第2の目標ラウドネスTLaIS(「Target Loudness at Intermediate Speed(中間速度における目標ラウドネス)」)より大きい場合、利得曲線Gintはゼロ利得セクションを含む。さらに、測定されたラウドネスが、最大許容利得Gmaxを減算した第2の目標ラウドネスTLaIS、すなわち、TLaIS-Gmaxより小さい場合、第2の利得曲線Gintは、最大許容利得Gmaxのセクションを含む。最後に、測定されたラウドネスが、その値より大きく、かつ、第2の目標ラウドネスTLaISより小さい場合、利得曲線Gintは(対数スケールで)リニアセクションを含む。測定されたラウドネスがこの範囲内にある場合、それは、第1の目標ラウドネスTLaISに到達するように、適用された利得Gによって増幅される。この例では、第2の目標ラウドネスTLaISは-20dBFSであり、最大許容利得は10dBであり、従って、最大許容利得Gmaxのセクションは、第2の利得曲線Gintに従って、-30dBFS以下の測定されたラウドネスに対して有効である。最大許容利得Gmaxのセクションと、及び第2の目標ラウドネスTLaISにおけるゼロの利得との間において、適用される利得Gは、現在の測定されたラウドネスと、第2の目標ラウドネスTLaISとの間の差に対応する。この範囲における利得曲線Gintは、実質的に、(対数尺度のデシベルで)リニアである。すなわち、測定されたラウドネスがこの範囲内にある場合、入力信号は、第2の目標ラウドネスTLaISに到達するように、適用された利得Gによって増幅される。
【0023】
中間速度又はしきい値速度は、パラメータ空間の2つの領域間のしきい値である。中間速度より低い場合、第1のタイプの補間Intが使用され、この場合、速度のリニア変化は、利得係数に対するリニア変化をもたらす。中間速度より高い場合、第2のタイプの補間Intが使用され、この場合、速度のリニア変化は、目標ラウドネスのリニア変化をもたらす。これらの両方は、適用される利得Gの変化をもたらす。
【0024】
速度が中間速度より高くかつ最高速度より小さく、入力オーディオ信号の測定されたラウドネスが所定範囲内にある場合、前述した第2のタイプの補間Intが使用される。第2のタイプの補間を用いる場合、第2の利得曲線Gint及び第3の利得曲線G100と同じ形状を有するが、それらの間において(図面では左右方向に)シフトされた利得曲線が取得される。特に、取得された利得曲線は、第2及び第3の利得曲線Gint、G100と同じ最大許容利得Gmaxを使用するが、第1の目標ラウドネスTLaMS及び第2の目標ラウドネスTLaISの間において補間される異なる目標ラウドネスTLaCS(「Target Loudness at a Current Speed(現在の速度における目標ラウドネス)」)を使用する。現在の速度における目標ラウドネスTLaCSに関する第2のタイプの補間Intは、例えば、次式に従って行われてもよい。
【0025】
TLaCS=TLaIS+(TLaMS-TLaIS)*((S-Sint)/(Smax-Sint)) (1)
【0026】
ここで、S、Sint、Smaxはそれぞれ、現在の速度、構成された中間速度、及び構成された最高速度である。入力オーディオ信号の測定されたラウドネスLが、TLaCS及びTLaCS-Gmaxの間の範囲にある場合、適用される利得は、測定されたラウドネスと、現在の速度における目標ラウドネスTLaCSとの間の差、すなわちG=TLaCS-Lである。ここで、TLaCSは、第2のタイプの補間Intに係る現在の速度Sに依存する。従って、レベル調整器は、この場合、現在の速度における目標ラウドネスTLaCSに対応する音声レベルを出力する。入力オーディオ信号の測定されたラウドネスLがTLaCS*Gmaxより小さい場合、適用される利得GはGmaxである。
【0027】
速度が中間速度より低い場合、前述した第1のタイプの補間Intはが使用される(少なくとも、測定されたラウドネスが第2の目標ラウドネスTLaiSより小さい)。第1のタイプの補間Intを用いる場合、第2の利得曲線Gintと同様の形状を有するが、(図面では垂直方向に)スケーリングされる利得曲線が取得される。すなわち、より小さな利得が入力信号に適用される。一実施形態では、利得スケーリング係数が第2の利得曲線Gintに適用され、この場合、速度のリニア変化は、利得スケーリング係数に対するリニア変化をもたらす。説明のため、図3において、定義された最高速度の12.5%、25%、及び37.5%の現在の速度に関する3つの利得曲線G12,5、G25、G37,5をそれぞれ示す。中間速度より低い任意の現在の速度における利得曲線は、利得スケーリング係数に従ってスケーリングされ(すなわち、最大許容利得Gmax及びゼロの間で補間され)、従って、最大利得Gmax及びゼロの間に位置する、速度依存の最大許容利得Gmax,Sを使用する。下記に例を提供する。第1のタイプの補間Intは、次式に従って、中間速度Sintより低い現在の速度S、すなわちS<Sintに関して、速度依存の最大利得を取得するために使用されてもよい。
【0028】
max,S=Gmax*S/Sint (2)
【0029】
例えば、(予め定義された最高速度の)25%の速度における最大可能利得Gmax,25は、図3では5dB(又はGmaxの50%)であり、その一方、37.5%の速度におけるGmax,37,5は7.5dBである。速度依存の最大可能利得Gmax,Sは、測定されたラウドネスのうちの所定範囲であって、最大可能利得Gmaxが第2の利得曲線Gintによって適用されるときと同じ範囲、すなわち、測定されたラウドネスがTLaIS-Gmaxより小さくなる範囲において適用される。従って、中間速度より低い所与の現在の速度に関して、利得はGmax,S及び0の間になる。
【0030】
図3に示す例において、速度が中間速度に等しく、かつ、測定されたラウドネスLが例えば-30dBFSである場合、第2の利得曲線Gintによれば、目標ラウドネスは-20dBFSであり、従って、10dBの利得が適用される。しかしながら、より低い速度、例えば、予め定義された又は構成された最高速度の12,5%と、同じ測定された-30dBFSのラウドネスとに関して、目標ラウドネスは、より低い速度に起因してより低くなる、すなわち、-27.5dBFSのみになり、従って、利得係数は0.25になり、2.5dBのみの利得が(対応する利得曲線G12,5に従って)適用される。このより低い速度における測定されたラウドネスLが、-30以上dBFSより大きく増大するとき、対応する適用される利得は、測定されたラウドネスLが第2の目標ラウドネスTLaISに等しくなり、すなわちL=TLaISになり、ゼロに達するまで連続的に減少する。
【0031】
現在の利得スケーリング係数及び現在の目標ラウドネスが、2つのラウドネス測定器を備える一実施形態においてどのように使用されるかに関するさらなる情報を、下記の図6の説明において提供する。
【0032】
優位点として、中間速度、最高速度、第1の目標ラウドネスTLaMS、第2の目標ラウドネスTLaIS、及び最大許容利得Gmaxのうちのいずれか又はすべては、レベル調整器を調節するためのパラメータとして使用可能である。
【0033】
図4は、図3の例の適用される利得係数を、ただし異なる観点から示す。図4の各図面は、様々なノイズレベルNL又は速度においてそれぞれ適用される利得係数に関する例示的な利得曲線を示す。ここで、それは測定されたラウドネスに依存し、図面に示すそれが使用される。言いかえると、図面は、入力信号の所与の測定されたラウドネスに関してそれぞれ、異なるノイズレベルNL(又は速度)に対して利得がどのように適応化されるかを示す。ノイズレベルNLは、予め定義された最大値のゼロ及び100%の間にある。それは、例えば、乗物の速度に対応してもよいが、それは他の物理量から影響を受けてもよい。再び、100%の予め定義された最大値は、必ずしも、物理的な最大値に対応しなくてもよく、発生しうるより高い値が、予め定義された最大値のように取り扱われる。図4a)に示す利得曲線は、-30dBFSの測定されたラウドネスを有する入力信号に関して使用される。この場合、適用される利得は、0%と、定義された中間値NLint(ここでは50%)との間のノイズレベルに関して、線形に増大され、より高いノイズレベルに関して、10dBの定義された最大値にとどまる。図4b)に示す利得曲線は、-27dBFSの測定されたラウドネスを有する、わずかに大きな入力信号に関して使用される。この場合、適用される利得は、0%及び75%の間のノイズレベルに関して、10dBの定義された最大値に達するまで線形に増大され、より高いノイズレベルに関して、定義された最大値にとどまる。図4b)における点は、図3の曲線が-27dBにおける垂直線によって切断される場所に対応する。図4c)に示す利得曲線は、-24dBFSの測定されたラウドネスを有する、さらに大きな入力信号に関して使用される。ここで、適用される利得は、ノイズレベルが中間値NLint(ここでは50%)より小さい限り、より低いレートで線形に増大され、そうでなければ、より高いレートになる。図4c)における点は、図3の曲線が-24dBにおける垂直線によって切断される場所に対応する。
【0034】
入力信号の測定されたラウドネスが第2の目標ラウドネスTLaIS、この例では-20dBに到達する場合、適用される利得は、図4d)に示すように、定義された中間値NLintより小さい任意のノイズレベルに関してゼロにとどまる。このことは、図3において、中間速度Gint以下の任意の速度に関する利得曲線が、第2の目標ラウドネスTLaISにおいてゼロであるという事実に対応する。より高いノイズレベルの場合のみ、適用される利得は増大される。同様に、図4e)は、-17dBFSの測定されたラウドネス、すなわち、第1の目標ラウドネスTLaMS及び第2の目標ラウドネスTLaISの間の測定されたラウドネスを有する入力信号に適用される利得を示す。この場合、ノイズレベルが高い場合、この例では、最大の定義されたノイズレベルの75%より高い場合のみ、入力信号は増幅される。同様に、-17dBFSよりさらに大きい入力信号の場合、適用される利得係数は、より高いノイズレベルになるまでゼロにとどまり、次いで、線形に増大される。測定されたラウドネスが第1の目標ラウドネスTLaMSに到達する場合、図4f)のように、適用される利得は、ノイズレベルから独立して、ゼロにとどまる。
【0035】
下記では、ラウドネス測定器131,132が入力信号のラウドネスをどのように測定しうるかについて、さらなる詳細事項を提供する。ラウドネス測定器はいかなる方法でも入力オーディオ信号を変更しないことに注意する。図5に示す実施形態では、入力信号の各チャネルy,yのパワーは、ITU_BS1770-3又はEBU R128放送標準に係るラウドネスを測定する既知の方法と同様に、二乗平均計算521,522によって決定され、次いで、総和530される。二乗平均和の前に、オプションで、K-フィルタ511,512を用いるK-重み付けが適用されてもよい。ラウドネス値を取得するために、パワーの総和は対数形式に変換540される。
【0036】
ITU_BS1770-3又はEBU R128標準に係る従来のラウドネス測定は、無音除外のための第1のゲート制御段と、背景音声に対して前景音声を優先するための第2のゲート制御段とを含む、ゲート制御を使用する。従来、到来するオーディオ信号のどの部分が報告されるラウドネス測定に寄与するかを決定するために、400ミリ秒の長さを有して重複するゲート制御ブロックが使用される。
【0037】
本発明は、一実施形態において、少なくともこれらのゲート制御ブロック又は段を使用しないという点で、従来の方法とは異なる。その結果、前景及び背景の音声には等しい優先度が与えられる。ゲート制御を省略することの利点は、例えば、直接音及び拡散反射の両方を含む音楽に関して示される。例えば、コンサートホールにおける弦楽四重奏曲の録音は、直接音及び拡散反射の両方を含む。拡散反射はより静かな傾向があるが、それらは、例えば自動車内における聴取者にとって、やむにやまれぬ空間感覚及び没入感を生み出すために重要である。ラウドネスを測定する従来の方法を用いる場合、拡散反射は測定から除外される可能性がある。より大きなラウドネスを有するオーディオブロックのみが考慮されるので、従来の測定は、高すぎる測定されたラウドネスをもたらす可能性がある。その結果、任意の補償利得もわずかにより小さくなり、これらの拡散要素は、ノイズフロアの下で失われる可能性がある。上述した改善されたソリューションを用いることで、これらのより静かな要素がラウドネス測定に含まれ、その結果、より小さな測定されたラウドネスをもたらし、従って、より大きな補償利得をもたらす。
【0038】
本発明において、無音はなお除外されるが、ただし、ゲート制御ブロックレベルにおいてではなく、オーディオブロックレベルにおいて除外される。所与のオーディオブロックは、それが無音を含んでいない場合、すなわち、そのラウドネスが、「無音のラウドネス」(Loudness of Silence:LoS)と呼ばれる予め定義されたしきい値より大きい場合にのみ、ラウドネス測定に寄与することが許容される。このしきい値は、例えば-70dBFSに設定されてもよい。オーディオブロックは、例えば512個のサンプルを含んでもよい。概して、ブロックサイズは重要ではない。オーディオブロックのラウドネスがLoSより大きい場合、このラウドネスは、経時的なラウドネスの追跡を支援するキューにプッシュされ、古いラウドネス値は、キューからポップされて廃棄される。このブロックのラウドネスがLoSより大きくない場合、それは直ちに廃棄され、キューはその以前の状態のままにされる。このことは、信号が再びLoSより大きくなるまで以前のラウドネス測定が使用されることを意味する。従って、ラウドネス測定は、LoS及び0dBFSの間における測定されたラウドネスをそれぞれ有する、一定個数のオーディオブロックに基づく。
【0039】
レベル調整を達成する補償利得を選択するための異なるアプローチが使用されてもよい。一実施形態では、ラウドネスは、一定の時間期間にわたって測定される。しかしながら、他の実施形態では、測定されたラウドネスは、2つの異なる予め定義された時間区間にわたって同時に取得されてもよい。図6は、期間に依存する、すなわち、長期ラウドネス(Long Term Loudness)LTL及び短期ラウドネス(Short Term Loudness)STLを同時に測定する、例示的な利得計算モジュール600のブロック図を示す。入力信号Sinのオーディオブロックが処理されるごとに、長期測定器(Long Term Measurer:LTM)630は、以前の長期測定区間にわたる長期ラウドネスLTLを報告し、短期測定器(Short Term Measurer:STM)620は、以前の短期測定区間にわたる短期ラウドネスSTLを報告する。利得曲線決定モジュール610は、前述したように、現在の速度に従って現在の利得曲線を決定する。オーディオ入力信号Sinは、異なるラウドネス測定ブロック620,630に提供され、ここで、長期ラウドネスLTL及び短期ラウドネスSTLが決定される。LTL及びSTLは、決定した現在の利得曲線とともに、利得決定モジュール640に提供される。
【0040】
長期需要利得(Long Term Requested Gain)LTRGは、まず、目標ラウドネス及び長期ラウドネスLTLの間の差を発見し、次いで、この差を最大許容利得Gmaxにクランプすることによって計算される。同様に、長期需要利得(Short Term Requested Gain)STRGは、目標ラウドネス及び短期ラウドネスSTLの間の差を発見し、この差を最大許容利得Gmaxにクランプすることによって計算される。両方の計算で同じ目標ラウドネスが使用され、それは、例えば図3に関して前述したように、自動車のノイズレベル又は速度に従って取得される。次いで、要求された利得LTRG及びSTRGは、適用される利得を計算する利得計算モジュール650に対して比較されてもよい。ここで、予め定義された(すなわち構成可能な)長期影響拡張(Long Term Influence Extension:LTIE)が使用されてもよく、これもまたデシベルdBで与えられる。LTIEは、STRGがLTRGより小さい場合であっても、適用される利得Gを決定する際にLTLが所定の役割を果たすことを可能にする。このことは、例えば、音楽が概して静かであるが(従って、小さなLTL及び大きなLTRGを有する)、短い期間において残りの期間よりも大きな音を含む(より大きなSTL及びより小さなSTRGをもたらす)場合に生じる可能性がある。適用される利得Gは、利得計算モジュール650によって下記のように取得されてもよい。
【0041】
(LTRG<STRG)の場合、(G=LTRGになるように)LTRGが適用される。
(STRG<LTRG)の場合、2つの場合が生じうる:
(STRG<LTRG-LTIE)の場合、(G=STRGになるように)STRGが適用される。
(LTRG-LTIE<STRG<LTRG)の場合、Gに関して補間が実行される。
【0042】
補間は、例えば、G=LTRG-(LTRG-STRG)/LTIEに従って、STRG及びLTRGの間の利得レベルを提供してもよい。この補間を用いる場合、LTRG及びSTRGの間の差がより大きくなると、適用される利得はSTRGにより近づき(すなわち、適用される利得がより小さくなる)、その一方差がより小さくなると、適用される利得はLTRGにより近づく(すなわち、適用される利得がより大きくなる)。LTRG-LTIE<STRG<LTRGの場合の補間は不連続をもたず、差LTRG-STRGがゼロに近づくとき、適用される利得GはLTRGに近づき、差がLTIEに近づくとき、適用される利得GはSTRGに近づく。LTIEは、ポンプ的挙動(pumpiness)の低減と、オーバーシュートの低減との間の良好なバランスを発見するために使用可能である。高いLTIE値(例えば6dBより高い)は、オーバーシュートを導入するリスクがあるものの、音楽のポンプ的挙動を低減し、その一方、低い又はゼロのLTIE値は、オーバーシュートを低減するが、いくぶんかのポンプ的挙動をもたらす可能性がある。
【0043】
すべての場合において、上述の比較から生成されたGは、最後のステップとして、例えば図3に関して上述したように、自動車のノイズレベル又は速度に従って利得スケーリング係数によってスケーリングされる。
【0044】
一例として、長期測定区間は10~20秒の範囲にあってもよく、短期測定区間は1~4秒の範囲にあってもよい。いずれかの時間区間にわたって測定されたラウドネスが、予め定義された無音しきい値(silence threshold)STより小さくなる場合、適用される利得は固定される、すなわち、(図3の左端部分のように)以前の値を保持し、いったん両方のラウドネス値が再び無音しきい値より大きくなったときにのみ変更可能になる。レベル調整器において構成された無音しきい値STが、前述した無音のラウドネスLoSとは別個であることに注意する。しかしながら、無音しきい値は、無音のラウドネスより小さく設定することはできない。
【0045】
代替の実施形態では、アルゴリズムは、短期ラウドネスSTL測定を無視するように構成されてもよく、ラウドネスは、構成された長期区間にわたってのみ測定される。この場合、短期ラウドネスSTL及び長期影響拡張LTIEは使用されず、無音しきい値は、長期ラウドネスLTLに対してのみ比較される。
【0046】
様々な異なる実施形態について説明したが、本願において明示的に言及されていなくても、異なる実施形態の特徴の組み合わせが可能であることは明らかである。そのような組み合わせは、本発明の範囲内であると考えられる。
図1
図2
図3
図4a)】
図4b)】
図4c)】
図4d)】
図4e)】
図4f)】
図5
図6
【国際調査報告】