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特表2024-534173睡眠時無呼吸を治療するための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】睡眠時無呼吸を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240910BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20240910BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240910BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/216
A61P11/04
A61K31/138
A61K45/06
A61K31/5375
A61K31/496
A61K31/437
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513202
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 US2022041990
(87)【国際公開番号】W WO2023034265
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/239,064
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520282649
【氏名又は名称】アプニメッド,インコーポレイテッド(デラウェア)
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,デービッド,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】タラント-モンテムッロ,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】ファーカス,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ローレンス,ジー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA23
4C084MA32
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZC41
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA32
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB22
4C206DB43
4C206FA10
4C206FA21
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA43
4C206MA52
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
下顎前進装置(MAD)療法と組み合わせてノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)を投与することによって咽頭気道閉塞(例えば睡眠時無呼吸)を治療する方法が本明細書で説明される。この治療はムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)及び/または催眠剤の投与を更に含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象を治療する方法であって、下顎前進装置(MAD)療法と組み合わせて、有効量のノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)を、これを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記NRIは、ノルエピネフリン選択的再取り込み阻害剤(NSRI)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NSRIは、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エジボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミン、及びビロキサジン、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記NRIは、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール(ciclazindol)、デシプラミン、デスベンラファキシン、デクスメチルフェニデート(dexmethilphenidate)、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン(protryptyline)、ラダファキシン(radafaxine)、タペンタドール(tapentadol)、テニロキサジン(teniloxazine)、及びベンラファキシン、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害剤(NNRI)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記NRIはレボキセチンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記NRIはアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
有効量のムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)を投与することを更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記MRAは、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記MRAは、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジシクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾレート、メチキセン、メトスコポラミン、オキシフェンシクリミン、オキシフェノニウム、プロシクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、及びトリヘキシフェニジル、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記MRAは、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記MRAは、(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩が、約20~約150mgの用量で投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩が、約25~約100mgの用量で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩が、約1~約15mgの用量で投与される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩が、約2mg~約10mgの用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩が、約0.5~約10mgの用量で投与される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項17】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩が、約2mg~約6mgの用量で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
有効量の催眠剤を投与することを更に含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記催眠剤は、トラゾドンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記催眠剤は、ゾルピデムまたはその薬学的に許容される塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記NRI、MRA、及び/または催眠剤が単一の組成物中で投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記単一の組成物が、経口投与形態である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記経口投与形態が、シロップ、丸薬、錠剤、トローチ、カプセル、またはパッチである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記単一の組成物が、即時放出配合物中にある、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、約20~約150mgの用量で投与され、前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩であり、約1~約15mgの用量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、約25~約100mgの用量で投与され、前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩であり、約2~約10mgの用量で投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、約20~約50mgの用量で投与され、前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩であり、約2~約10mgの用量で投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、約50~約100mgの用量で投与され、前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩であり、約2~約10mgの用量で投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記単一の組成物が、制御放出配合物中にある、請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、約20~約150mgの用量で投与され、前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩であり、約0.5~約10mgの用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、約25~約100mgの用量で投与され、前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩であり、約1~約5mgの用量で投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、約20~約50mgの用量で投与され、前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩であり、約2~約6mgの用量で投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、約50~約100mgの用量で投与され、前記MRAがオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩であり、約2~約6mgの用量で投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記単一の組成物が、薬学的に許容されるキャリアを更に含む、請求項21~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記単一の組成物が、前記下顎前進装置(MAD)療法の開始前に投与される、請求項21~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記単一の組成物が、前記下顎前進装置(MAD)療法と同時に投与される、請求項21~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、睡眠時無呼吸である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、いびきである、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、単純いびきである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象は、意識が完全ではない状態である、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記意識が完全ではない状態は、睡眠である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)、及び下顎前進装置(MAD)。
【請求項44】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、催眠剤、及び下顎前進装置(MAD)。
【請求項45】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、(a)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)及び薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物と、(b)下顎前進装置(MAD)と、を含む療法的組み合わせ。
【請求項46】
前記医薬組成物中に、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)及び/または催眠剤を更に含む、請求項45に記載の療法的組み合わせ。
【請求項47】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩、及び下顎前進装置(MAD)。
【請求項48】
睡眠時無呼吸の治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩、及び下顎前進装置(MAD)。
【請求項49】
いびきの治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩、及び下顎前進装置(MAD)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月31日に出願された米国仮特許出願第63/239,064号の優先権及び利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、下顎前進装置(MAD)療法と組み合わせてノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)を投与することによって咽頭気道閉塞(pharyngeal airway collapse)(例えば睡眠時無呼吸)を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠中の咽頭気道閉塞によって引き起こされる一般的な障害である。OSAは、重大な健康上の問題を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様は、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象を治療する方法を提供し、方法は、下顎前進装置(MAD)療法と組み合わせて、有効量のノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)を、これを必要とする対象に投与することを含む。
【0005】
本発明のこの態様の実施形態は、以下の任意選択的な機能のうち1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、NRIは、ノルエピネフリン選択的再取り込み阻害剤(NSRI)である。いくつかの実施形態では、NSRIは、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エジボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミン、及びビロキサジン、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、NRIは、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール(ciclazindol)、デシプラミン、デスベンラファキシン、デクスメチルフェニデート(dexmethilphenidate)、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン(protryptyline)、ラダファキシン(radafaxine)、タペンタドール(tapentadol)、テニロキサジン(teniloxazine)、及びベンラファキシン、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害剤(NNRI)である。いくつかの実施形態では、NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩及びレボキセチンまたはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、NRIは、レボキセチンまたはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、方法は、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)を対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、MRAは、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MRAは、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジシクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾレート、メチキセン、メトスコポラミン、オキシフェンシクリミン、オキシフェノニウム、プロシクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、及びトリヘキシフェニジル、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MRAはオキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、MRAは(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、方法は、対象に催眠剤を投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、催眠剤は、トラゾドン、ゾルピデム、エスゾピクロン、ベンゾジアゼピン、ガバペンチン、チアガビン、及びザイレムからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、催眠剤はトラゾドンである。いくつかの実施形態では、催眠剤はゾルピデムである。いくつかの実施形態では、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩が、約20~約150mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩が、約25~約100mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩が、約1~約15mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩が、約2mg~約10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩が、約0.5~約10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンまたは薬学的に許容される塩が、約1mg~約5mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、NRI、MRA、及び/または催眠剤が単一の組成物中で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は経口投与形態である。いくつかの実施形態では、経口投与形態はシロップ、丸薬、錠剤、トローチ、カプセル、またはパッチである。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、即時放出配合物中にある。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、即時放出配合物中にあり、NRIは約20~約150mgの用量で投与され、MRAは約1~約15mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、即時放出配合物中にあり、NRIは約25~約100mgの用量で投与され、MRAは約2~約10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、即時放出配合物中にあり、NRIは約20~約50mgの用量で投与され、MRAは約2~約10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、即時放出配合物中にあり、NRIは約40~約80mgの用量で投与され、MRAは約2~約10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、制御放出配合物中にある。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、制御放出配合物中にあり、NRIは約20~約150mgの用量で投与され、MRAは約0.5~約10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、制御放出配合物中にあり、NRIは約25~約100mgの用量で投与され、MRAは約2~約6mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、制御放出配合物中にあり、NRIは約20~約50mgの用量で投与され、MRAは約2~約6mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、制御放出配合物中にあり、NRIは約40~約80mgの用量で投与され、MRAは約2~約6mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、薬学的に許容されるキャリアを更に含む。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、下顎前進装置(MAD)療法の開始前に投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物は、下顎前進装置(MAD)療法と同時に投与される。いくつかの実施形態では、咽頭気道閉塞に関連する状態は睡眠時無呼吸である。いくつかの実施形態では、咽頭気道閉塞に関連する状態は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である。いくつかの実施形態では、咽頭気道閉塞に関連する状態はいびきである。いくつかの実施形態では、咽頭気道閉塞に関連する状態は単純いびきである。いくつかの実施形態では、対象は意識が完全ではない状態にある。いくつかの実施形態では、意識が完全ではない状態は睡眠である。
【0006】
本発明の別の態様は、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、及び下顎前進装置(MAD)を提供する。いくつかの実施形態は、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)及び/または催眠剤を更に含む。
【0007】
本発明の別の態様は、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、(a)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)及び薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物と、(b)下顎前進装置(MAD)と、を含む療法的組み合わせを提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)及び/または催眠剤を更に含む。
【0008】
本発明の別の態様は、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、オキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩、及び下顎前進装置(MAD)を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、催眠剤(例えば、トラゾドンもしくはゾルピデムまたはその薬学的に許容される塩)、及び下顎前進装置(MAD)を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、睡眠時無呼吸の治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、オキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩、及び下顎前進装置(MAD)を提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、いびきの治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、オキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩、及び下顎前進装置(MAD)を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、睡眠時無呼吸の治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、催眠剤(例えば、トラゾドンもしくはゾルピデムまたはその薬学的に許容される塩)、及び下顎前進装置(MAD)を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、いびきの治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、催眠剤(例えば、トラゾドンもしくはゾルピデムまたはその薬学的に許容される塩)、及び下顎前進装置(MAD)を提供する。
【0014】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有している。本発明で使用される方法及び材料が本明細書に記載されているが、当該技術分野で知られている他の適切な方法及び材料も使用することができる。材料、方法、及び実施例は、説明的であり、限定的であることを意図したものではない。本明細書で言及されるすべての出版物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及びその他の参照は、それらの全体が参照によって組み込まれる。矛盾がある場合は、本明細書(定義を含む)が優先される。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【0016】
以下の図は、例示的であり、本発明の請求される範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】閉塞性無呼吸のグラフィック図解である。最上部のチャネルは、睡眠時の脳波(EEG)パターンを示す。次のチャネルは、空気流を表す。次の3つのチャネルは、肋骨と腹部の動き及び食道圧の変化による換気努力を示し、これらはすべて閉塞した上気道に対する呼吸努力を反映している。最後のチャネルは、オキシヘモグロビン飽和度を示す。
図2】本明細書に記載のMandADO研究設計の概要である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ヒトでは、咽頭気道領域には骨や軟骨の支持がなく、筋肉によって開かれている。これらの筋肉が睡眠中に弛緩すると、咽頭が閉塞する可能性があり、空気の流れが止まる。図1に示すように、閉塞を克服しようとする試みとして食道圧の変化が増加することに見られるように、換気努力が続き増加する。肋骨と腹部の動きは、閉塞した気道に対して収縮する横隔膜の結果として逆方向であり、それによって腹壁が外側に膨らみ、胸壁が内側に凹む。
【0019】
呼吸をしようとする努力の増加は、脳波により視覚化(図1参照)可能である睡眠からの覚醒につながり、気道の開放及び正常な呼吸の再開をもたらす。無呼吸中の空気流の欠如は、オキシヘモグロビン飽和度の低下(図1参照)によって示される低酸素症をも引き起こす。重症度は、一般的に無呼吸-低呼吸指数(AHI)を使用して測定され、これは睡眠1時間あたりの無呼吸(呼吸停止が少なくとも10秒続く)及び低呼吸(空気流及び酸素飽和度の低下)の平均回数の合計である(Ruehland,WR.et al.,The new AASM criteria for scoring hypopneas:Impact on the apnea hypopnea index.SLEEP 2009;32(2):150-157)。
【0020】
図1は、閉塞性無呼吸のグラフィック図解である。最上部のチャネルは、睡眠時の脳波(EEG)パターンを示す。次のチャネルは、空気流を表す。次の3つのチャネルは、肋骨と腹部の動き及び食道圧の変化による換気努力を示し、これらはすべて閉塞した上気道に対する呼吸努力を反映する。最後のチャネルは、オキシヘモグロビン飽和度を示す。
【0021】
厳密なOSAの定義が用いられる場合(1時間あたりのAHIが15件以上、または昼間の眠気と共に1時間あたりのAHIが5件以上)、推定有病率は男性で約15%、女性で約5%である。アメリカ合衆国では、約3,000万人がOSAを有し、そのうち約600万人が診断されている。アメリカ合衆国におけるOSAの有病率は、高齢化及び肥満率の増加により増加していると考えられる。OSAは、高血圧、糖尿病、心血管疾患、自動車事故、職場での事故、及び疲労/生産性の喪失などの主要な併存疾患及び経済的損害と関連している。(Young,T.et al.,WMJ 2009;108:246;Peppard,PE.et al.,Am J Epidemiol 2013;177:1006.)。
【0022】
現在の主要な治療法は、持続的気道陽圧法(CPAP)である。CPAPはほぼすべての患者に有効であり、診断された患者の約85%にCPAPが処方されるが、コンプライアンスは低い。患者はCPAPを不快であり、しばしば耐え難いと感じる。少なくとも30%の患者(最大80%)が定期的に非遵守であり、そのため治療されない(Weaver,TE.Proc Am Thorac Soc.2008 Feb 15;5(2):173-178)。成功率の様々な他の治療法としては、口腔内装置(10%)及び手術(5%)が挙げられるが、いずれも母集団全体にわたって効果的である可能性は低い。
【0023】
睡眠中のヒトの咽頭筋を活性化する薬剤を探索する試みは、思わしくないものであった。セロトニン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ薬、及び鎮静剤などの薬剤はすべて、ヒトで試験され、OSAの重症度を減少させる効果がないことが示された。例えば、Hudgel,DA.et al.,Chest.1991 Aug;100(2):416-21;Brownell LG.et al.,N Engl J Med 1982,307:1037-1042;Sangal RB.et al.,Sleep Med.2008 Jul;9(5):506-10.Epub 2007 Sep 27;Marshall,NS.et al.Sleep 2008 Jun;31(6):824-31;Eckert,DJ.et al.,Clin Sci(Lond).2011 Jun;120(12);505-14;Taranto-Montemurro,L.et al.,Sleep 2017 Feb 1;40(2):ZSW047を参照されたい。
【0024】
最近の研究では、就寝時刻前に投与されるアトモキセチンとオキシブチニンとの組み合わせ(「ato-oxy」と呼ばれる)が、様々な重症度を有する患者におけるOSAを低減することが示されている。一晩投与されたato-oxyの組み合わせは、閉塞事象の回数を低減し、終夜の酸素飽和度の低下を改善し、OSAを有する任意抽出の患者の群におけるオトガイ舌筋の活性を増強した。概念実証試験で収集されたデータは、全身投与された特定の神経伝達物質プロファイルを有する薬物を使用してOSAを改善または無効にすることが可能であったことを示した。Taranto-Montemurro,L.et al.,The Combination of Atomoxetine and Oxybutynin Greatly Reduces Obstructive Sleep Apnea Severity.A Randomized,Placebo-controlled,Double-Blind Crossover Trial.Am J Respir Crit Care Med 2019 May 15;199(10):1267-1276を参照されたい。
【0025】
睡眠時無呼吸などの咽頭気道閉塞に関連する状態を治療するための更なる療法に対する必要性が依然として存在する。
【0026】
治療方法
本明細書で説明される方法は、睡眠中の咽頭気道の筋肉の閉塞に関連する障害の治療を含む。いくつかの実施形態では、障害は、睡眠時無呼吸(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA))またはいびき(例えば単純いびき)である。一般に、方法は、こうした治療を必要とする、またはこうした治療が必要であると判定された対象に、下顎前進装置(MAD)療法と組み合わせて、治療有効量のノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療は、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)及び/または催眠剤を投与することを更に含む。特定の実施形態では、方法は、こうした治療を必要とする、またはこうした治療が必要であると判定された対象に、下顎前進装置(MAD)療法と組み合わせて、治療有効量の(i)アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、及び(ii)オキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。特定の実施形態では、方法は、こうした治療を必要とする、またはこうした治療が必要であると判定された対象に、下顎前進装置(MAD)療法と組み合わせて、治療有効量の(i)アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、及び(ii)催眠剤(例えば、トラゾドンもしくはゾルピデムまたはその薬学的に許容される塩)を投与することを含む。
【0027】
これに関連して使用するとき、「治療する」とは、咽頭気道閉塞に関連する障害の少なくとも1つの症状を改善することを意味する。しばしば、睡眠中の咽頭気道閉塞はいびき及び/または呼吸の中断(無呼吸または低呼吸)、睡眠からの覚醒、及び酸素化の低下(低酸素血症)を引き起こす。したがって、治療はいびき、無呼吸/低呼吸、睡眠の断片化、及び低酸素血症の減少をもたらすことができる。本明細書で説明される化合物の治療有効量をOSAを有する対象に投与することで、AHIの減少が得られることがある。OSA疾患及び症状の測定は、例えば、ポリソムノグラフィ(PSG)によって行うことができる。
【0028】
一般的に、化合物の「有効量」とは、例えば、咽頭気道閉塞に関連する状態を治療するために、例えば、睡眠時無呼吸またはいびきを治療するために所望の生物学的反応を引き起こすのに十分な量を指す。本技術分野の通常の技術者は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態学、治療される疾患、投与方法、及び対象の年齢、体重、健康状態、及び状態などの要因によって、本発明の化合物の有効量が変化することがあることを理解するであろう。有効量は、治療及び予防的治療を含む。
【0029】
有効量は、1回または複数回の投与、適用、または投与量で投与することができる。NRI、MRA、及び/または催眠剤は、1日に1回以上から1週間に1回以上まで投与することができる。これには、1日おきに1回投与することも含まれる。いくつかの実施形態では、NRI、MRA、及び/または催眠剤が毎日投与される。いくつかの実施形態では、NRI、MRA、及び/または催眠剤は、就寝時間前、例えば、就寝時間直前または就寝時間の15~60分前に毎日投与される。いくつかの実施形態では、NRI、MRA、及び/または催眠剤は、対象にMADを取り付ける前、例えば、MADを取り付ける直前またはMADを取り付ける15~60分前に毎日投与される。いくつかの実施形態では、NRI、MRA、及び/または催眠剤は、対象に既に取り付けられたMADと同時に毎日投与される。いくつかの実施形態では、NRI、MRA、及び/または催眠剤が単一の組成物として投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与される。当業者は、疾患または障害の重症度、過去の治療、対象の全体的健康及び/または年齢、ならびに他の存在する疾患などを含むがこれに限定されない特定の要因が、対象を効果的に治療するために必要な投与量及びタイミングに影響を与え得ることを理解するであろう。更に、本明細書で説明される治療化合物の治療有効量を用いた対象の治療は、単一の治療または一連の治療を含むことができる。
【0030】
本明細書で使用されるように、特に指定がない限り、化合物の「治療有効量」とは、疾患、障害、または状態の治療において治療効果を提供するのに十分な量であり、または、疾患、障害、または状態に関連する1つ以上の症状の発生を遅らせるか、最小限に抑えるのに十分な量である。化合物の治療有効量は、単独または他の療法と併用して、疾患、障害、または状態の治療において治療効果を提供する治療剤の量を意味する。「治療有効量」という用語は、全体的な治療を改善し、疾患または状態の原因または症状を減少または回避し、または他の治療剤の治療効果を向上させる量を含み得る。
【0031】
本明細書で使用される「対象」と「患者」という用語は、互換的に使用される。用語「対象」及び「患者」は、動物(例:鳥類(鶏、うずら、七面鳥など)、または哺乳類)を指し、特に「哺乳類」は、非霊長類(例:牛、豚、馬、羊、ウサギ、モルモット、ラット、猫、犬、及びマウス)及び霊長類(例:サル、チンパンジー、及びヒト)を含み、更に特にヒトを指す。一つの実施形態では、対象はヒト以外の動物であり、例えば家畜(例:馬、牛、豚、または羊)またはペット(例:犬、猫、モルモット、またはウサギ)である。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0032】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される」とは、動物、より具体的にはヒトにおける使用に対して、連邦政府もしくは州政府の監督機関、または米国以外の国の対応する機関によって承認されるか承認可能であること、あるいは米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0033】
「薬学的に許容される塩」には、「薬学的に許容される酸付加塩」及び「薬学的に許容される塩基付加塩」が含まれる。「薬学的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性を保持し、かつ生物学的にまたはその他の点で望ましくないものではない、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸、ならびに、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などのような有機酸と共に形成される塩を指す。
【0034】
「薬学的に許容される塩基付加塩」としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などのような無機塩基に由来するものが挙げられる。例示的な塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基から得られる塩としては、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、ならびに塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、及びカフェインである(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Berge,SM.et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977;66:1-19を参照されたい)。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「単位投与形態」とは、化合物が対象に投与される形態を指すように定義される。具体的には、単位投与形態は、例えば、丸薬、カプセル、または錠剤であることができる。いくつかの実施形態では、単位投与形態はカプセルである。いくつかの実施形態では、単位投与形態は錠剤である。
【0036】
本明細書で使用するとき、「固形投与形態」とは、固形の薬剤用量(複数可)、例えば、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、小袋、再構成可能な粉末、ドライパウダー吸入器、及びチュアブル剤を意味する。
【0037】
本明細書で開示される化合物については、単一の立体化学的異性体、及びエナンチオマー、ジアステレオマー、シス/トランス立体配座異性体、及び回転異性体、及びそれらのラセミ混合物及び非ラセミ混合物が、本発明の範囲内にある。特に指定がない限り、本明細書で開示される化合物のすべての互変異性型が本発明の範囲内にある。
【0038】
ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)、及び催眠剤
例示的なノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)としては、選択的NRI、例えば、アメダリン(UK-3540-1)、アトモキセチン(Strattera)、CP-39,332、ダレダリン(UK-3557-15)、エジボキセチン(LY-2216684)、エスレボキセチン、ロルタラミン(LM-1404)、ニソキセチン(LY-94,939)、レボキセチン(Edronax、Vestra)、タロプラム(Lu 3-010)、タルスプラム(Lu 5-005)、タンダミン(AY-23,946)、ビロキサジン(Vivalan)、ならびに非選択的NRI、例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デクスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン(GW-320,659)、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン(GW-353,162)、タペンタドール(Nucynta)、テニロキサジン(Lucelan、Metatone)、及びベンラファキシン、ならびにその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態では、NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、NRIは、レボキセチンまたはその薬学的に許容される塩である。
【0040】
アトモキセチンは、化学名(-)-N-メチル-3-フェニル-3-(o-トリルオキシ)-プロピルアミンを有する医薬物質、及びその医薬塩の一般名である。アトモキセチンは、X線回折により決定されるR(-)-異性体である。いくつかの実施形態では、アトモキセチンはアトモキセチン塩酸塩である場合がある。
【0041】
いくつかの実施形態では、方法は、約20mg~約150mgの用量のアトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩(または別のNRIの用量等価物)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は約25mg~約100mgである。いくつかの実施形態では、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は約40mg~約80mgである。いくつかの実施形態では、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は約20mg~約50mgである。いくつかの実施形態では、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の用量は約50mg~約100mgである。いくつかの実施形態では、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は約40mgである。いくつかの実施形態では、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は約80mgである。
【0042】
例示的なムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)としては、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩が挙げられ、これらはM2受容体に対して活性を有する。他の例示的な抗ムスカリン剤には、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジシクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾレート、メチキセン、メトスコポラミン、オキシフェンシクリミン、オキシフェノニウム、プロシクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、及びトリヘキシフェニジル、ならびにそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。
【0043】
いくつかの実施形態では、ムスカリン受容体アンタゴニストはオキシブチニンもしくは(R)-オキシブチニン、またはその薬学的に許容される塩である。本明細書で使用されるように、「(R)-オキシブチニン」とは、オキシブチニンの他の立体異性体を実質的に含まない(R)-オキシブチニン立体異性体を指す。いくつかの実施形態では、ムスカリン受容体アンタゴニストはフェソテロジンである。
【0044】
オキシブチニンは、化学名が4-ジエチルアミノ-2-ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレートまたは4-(ジエチルアミノ)ブタ-2-イニル2-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセテートの医薬物質、及びその薬学的に許容される塩の一般名である。様々な実施形態で、オキシブチニンはR-及びS-エナンチオマーのラセミ混合物、または単離されたエナンチオマー、例えばR-エナンチオマーであり得る。様々な実施形態で、オキシブチニンは、オキシブチニン塩化物または(R)-オキシブチニン塩化物であり得る。
【0045】
オキシブチニンもしくは(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩(または別のMRA)を投与することを含む方法では、オキシブチニンもしくは(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約0.5mg~約25mg(または別のMRAのその用量等価物)であり得、あるいは、いくつかの実施形態では、約2mg~約15mgであり得る。いくつかの実施形態では、オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約2.5mg~約10mg、例えば5mgである。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約0.5mg~約5mg、例えば2.5mgである。いくつかの実施形態では、オキシブチニンもしくは(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容される塩の用量は、約1mg~約5mgである。
【0046】
例示的な催眠剤としては、ベンゾジアゼピン系、例えばテマゼパム、ブロチゾラム、フルラゼパム、ニトラゼパム、及びトリアゾラム、シクロピロロン系催眠剤、例えばゾルピデム、ゾピクロン、及びエスゾピクロン、ガバペンチン、トラゾドン、ジフェンヒドラミン、スボレキサント、タシメルテオン、ラメルテオン、アゴメラチン、ドキセピン、ザレプロン、ドキシラミン、ナトリウムオキシベート、ならびにチアガビン、ならびにこれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態では、催眠剤は、トラゾドンまたはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、催眠剤は、ゾルピデムまたはその薬学的に許容される塩である。
【0048】
下顎前進装置(MAD)
下顎前進スプリント(MAS)または下顎再配置器具(MRA)を含む下顎前進装置(MAD)は、下顎を前方に突き出すことによって上気道の閉塞を防ぎ、ひいては顎及び舌の位置を変更する。ビデオ内視鏡及び磁気共鳴映像法(MRI)に基づく研究の両方が、これらの装置が主に口蓋帆咽頭(velopharynx)のレベルで気道の容積を増加させると判定した。気道空間は、主に横方向に拡大されるが、これは、咽頭と下顎枝との間の軟組織接続部上の牽引力に起因するものと考えられる。MADはまた、舌及び気道の他の筋肉の筋活動を増加させることによって、気道の強度及び剛性を改善する。
【0049】
MADの設計及び精巧度は大きく変化する。変数としては、調整性、カスタマイズの性質または程度、及び使用される材料が挙げられ、これらは相互排他的ではない。
【0050】
いくつかの実施形態では、MADは、ボイルアンドバイト(boil and bite)MAD、ワンピースカスタムMAD、またはツーピースカスタムMADである。
【0051】
いくつかの実施形態では、MADは、ボイルアンドバイトMADである。調整不可能な「ボイルアンドバイト」MADは、薬局及び種々のウェブサイトから入手可能である。これらは、熱水中に浸漬することにより温められると成形可能になる熱可塑性材料で構成される。使用者は、軟化した材料を噛むことによって自身の歯型を取り、次いで冷却に供する。
【0052】
いくつかの実施形態では、MADは、カスタムメイドMADである。カスタムメイドMADは、研究室内で歯科印象を用いて構築される。カスタムメイドMADは、ワンピースまたは調整可能なツーピース装置であり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、MADは、ワンピースカスタムMADである。上下の歯科用スプリントは、ワンピース装置(一体鋳造)中で融合される。これらの器具の大部分は特注の歯科用に製造された装置であるが、専門医の歯科インプット(dental input)を必要としない「準特注」のMADが存在する。
【0054】
いくつかの実施形態では、MADは、ツーピースのカスタムMADである。調整可能なツーピース装置は、別個の上部プレート及び下部プレートの形態で提供される。構築には、追加の専門的な顎咬合(jaw articulation)が必要であり、より高価である。連続的に漸増される(serially titrated)下顎突起は、最適な突起への段階的な適応を可能にすることによって治療の成功を増加させると考えられる。有効性及び耐性に従って突起を漸増する能力は、調節可能MAD(aMAD)の利点である。いわゆる固定MAD(fMAD)とaMADとを比較した既存の研究は、方法論の限界及び一貫性のない発見を有した。例えば、2つの装置を比較する1つの研究は、fMAD及びaMADに対して異なる突出を設定し、従って、本質的に、装置ではなく突出を比較する。したがって、本発明の方法で使用されるMADは、対象の必要性、及び身体/口/歯の構造に応じて変化し得る。
【0055】
医薬組成物
活性成分としてノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、及びムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)、及び/または催眠剤を含む医薬組成物も本明細書で提供される。活性成分は、単一の組成物に含まれてもよく、別々の組成物に含まれてもよい。特定の実施形態では、医薬組成物は、活性成分として(i)アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩及び(ii)オキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0056】
医薬組成物は、典型的には薬学的に許容されるキャリアを含む。本明細書で使用するとき、「薬学的に許容されるキャリア」という言葉は、医薬投与と互換性のある生理食塩水、溶媒、分散媒、希釈剤、充填剤、被覆剤、抗菌及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延剤などを含む。
【0057】
本発明で使用するための活性成分は、薬学的に許容される塩として提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、オキシブチニンはオキシブチニン塩化物である。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンは(R)-オキシブチニン塩化物である。いくつかの実施形態では、アトモキセチンはアトモキセチン塩酸塩である。
【0058】
医薬組成物は、通常、その意図された投与経路と適合するように配合される。投与経路の例としては、全身的な経口または経皮投与、及び、例えば錠剤またはスプレーを介した舌下投与が挙げられる。
【0059】
適切な医薬組成物を配合する方法は、当該技術分野で知られており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.,2005;及びthe books in the series Drugs and the Pharmaceutical Sciences:a Series of Textbooks and Monographs(Dekker,NY)を参照されたい。例えば、経口組成物は一般的に不活性な希釈剤または食用キャリアを含む。経口投与の目的で、活性化合物(複数可)は賦形剤と共に配合され、丸薬、錠剤、トローチ、またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形で使用され得る。経口組成物は、液体キャリアを使用して調製することもできる。いくつかの実施形態では、本発明による組成物は単位投与形態であることができる。いくつかの実施形態では、本発明による組成物は固形投与形態であり得、例えば、錠剤またはカプセルであり得る。
【0060】
薬理学的に適合する結合剤及び/または補助材料が組成物の一部として含まれていることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分または同様の性質を持つ化合物を含むことができる:結合剤としての微結晶セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチン;賦形剤としてのデンプンまたは乳糖;崩壊剤としてのアルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ;滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウムまたはステローツ;滑剤としてのコロイダル二酸化ケイ素;甘味剤としてのスクロースまたはサッカリン;または香料剤としてのペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバー。
【0061】
本明細書で説明される化合物の全身投与は、例えば、パッチ、ゲル、またはローションを皮膚に塗布することによって、経皮投与によっても行うことができる。経皮投与のためには、表皮障壁の浸透に適した浸透剤を配合物に使用することができる。このような浸透剤は一般的に当該技術分野で知られている。例えば、経皮投与のために、活性化合物は、技術分野で一般的に知られているように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに配合され得る。ゲル及び/またはローションは、個々の小袋または1日1回適用される定量ポンプを介して提供され得る。例えば、Cohn et al.,Ther Adv Urol.2016 Apr;8(2):83-90を参照されたい。
【0062】
一実施形態では、治療化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む制御放出配合物のような、治療化合物が体内から迅速に排除されるのを防ぐキャリアと共に調製される。生分解性で生体適合性のあるポリマーが使用されることができ、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸が含まれる。こうした配合物は、標準的な技術を使用して調製することもでき、例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することも可能である。リポソーム懸濁液も薬学的に許容されるキャリアとして使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されている方法に従って、当業者に既知の方法で調製することができる。
【0063】
医薬組成物は、本明細書に記載された方法での投与または使用に関する指示と共に、容器、パック、またはディスペンサー中に含まれ得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、咽頭気道閉塞に関連する状態の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、状態は、睡眠時無呼吸(例えば、OSA)またはいびき(例えば、単純いびき)である。特定の実施形態では、睡眠時無呼吸(例えば、OSA)またはいびき(例えば、単純いびき)の治療に使用するための、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩、及びカンナビジオールまたはその薬学的に許容される塩、ならびに任意選択的にオキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0065】
組み合わせ
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、及び下顎前進装置(MAD)も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、使用のための組み合わせは、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)を更に含む。いくつかの実施形態では、使用のための組み合わせは、催眠剤を更に含む。更に、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する対象の治療に使用するための、(a)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)及び薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物と、(b)下顎前進装置(MAD)と、を含む療法的組み合わせが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、使用のための組み合わせは、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)を更に含む。いくつかの実施形態では、使用のための組み合わせは、催眠剤を更に含む。組み合わせ及び療法的組み合わせの種々の実施形態は、本明細書に記載の組成物及び方法を含む、本明細書に提供される発明を実施するための形態から明らかになる。本発明の組み合わせの特定の実施形態では、NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容される塩であり、MRAは、オキシブチニン(例えば、(R)-オキシブチニン)またはその薬学的に許容される塩である。
【実施例
【0066】
本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない以下の実施例で更に説明される。
【0067】
実施例1.下顎前進装置に対して応答が最適以下であったOSA患者におけるAD036(アトモキセチン+オキシブチニン)+下顎前進装置対AD036のみの有効性及び安全性を評価するための無作為抽出、二重盲検、多回投与、2期クロスオーバー試験(MandADO)
【0068】
根拠
アトモキセチンとオキシブチニンとの組み合わせであるAD036は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療のために開発中の薬物の組み合わせである。AD036の主な作用機序は、咽頭筋の剛性及び応答性の増加であると考えられる。
【0069】
下顎前進装置(MAD)療法は、後口蓋(retropalatal)腔及び後舌腔を機械的に増加させることによってOSAを改善する。無呼吸低呼吸指数(AHI)によって測定されるMAD療法によるOSA重症度の改善は、典型的には約50%であるが、一部の患者では、改善はより少ない場合もあり、または、例えば、残存AHIの上昇、または日中の過剰な眠気(EDS)もしくはいびきが継続するとの主観的報告のため不適切であると考えられる場合もある。
【0070】
MandADO試験は、MADのみに対する不適切な応答を有する患者におけるAD036及びMADとの併用治療の、OSAに関する安全性及び有効性を評価するように設計される。
【0071】
閉塞性睡眠時無呼吸
National Commission on Sleep Disorders Researchは、主要な公衆衛生負担として睡眠障害を特定した。OSAは、これらの睡眠障害のうち最も一般的かつ深刻なものであり、米国内の約2000万人に影響を及ぼし、男性の約13%及び女性の6%が影響を受けている(1)。OSAは、睡眠中の咽頭気道の反復的な閉塞(collapse)または「閉塞(obstruction)」を特徴とし、低呼吸(すなわち、浅い呼吸)または無呼吸(すなわち、呼吸停止)の反復的発現として現れる。これらの低呼吸または無呼吸の発現は、睡眠からの覚醒、睡眠断片化、日中の過剰な眠気、及び/または神経心理的障害を引き起こし得る。
【0072】
研究は、多くの病原因子または形質が、OSAの発生に寄与することを示した(2~5)。最も重要な因子は、解剖学的に小さい閉塞性の上気道の存在、及び睡眠中の咽頭筋緊張または応答性の喪失である。
【0073】
長期のOSAは、死亡率の増加、ならびに多くの有害な心臓血管、神経認知、代謝、及び日中機能の結果に関連する(6-15)。
【0074】
満たされていない医学的ニーズ
OSAに対する最も一般的な治療は、現在では気道陽圧であり、典型的には、気道の開放を機械的に維持する装置によって提供される連続的気道陽圧(CPAP)である。CPAPの有効性は、装置が使用された場合は良好であることが多いが、多くの、おそらく大半の患者は、これらの装置が不快であるかまたは耐えられないと感じ、大半の推定は、CPAPを処方された患者のうち、使用したとしても、毎晩4時間超使用するのは50%未満であることを示す(16)。下顎前進装置はCPAPを代替するものであるが、患者は最適以下の治療応答を有し得る。現在の薬理学的療法は、OSAに由来する日中の過剰な眠気の治療に限定される。
【0075】
研究のエンドポイントを以下の表1に示す。
【表1】
【0076】
全体的な研究設計
図2は、研究設計の概要を提供する。
【0077】
MandADO試験は、MADのみに対して不適切な応答を有する患者における無作為化二重盲検プラセボ対照2期クロスオーバー試験である。歯科または顎顔面専門医によって提供された現行の特注MAD療法において残存AHIの増加EDSまたはいびきの主観的報告がある患者は、残存AHIの上昇の臨床的な疑いまたは証拠があればスクリーニングに適格である。参加者は、潜在的な試験適格性または除外性因子を決定するための最初の事前スクリーニングを受け、その後、適格のままであった患者に対してスクリーニング訪問1を行う。続いて、訪問1においてすべての非PSG登録基準を満たす参加者のみが、訪問2におけるスクリーニングPSGに適格である。スクリーニングPSGは、所定位置にあるMADを用いて実施される。患者は、MADを用いた残存AHI(4%)が>10であり、他のすべての登録基準が満たされる場合、研究に登録するのに適格である。
【0078】
登録された患者は、それぞれ1週間の以下の2つの試験治療のために無作為化される。
-期間1:40mgのアトモキセチン及び5mgのオキシブチニンからなる1~3日目のAD036の低用量の慣らし(run-in)期間、続いて80mgのアトモキセチン及び5mgのオキシブチニンからなる4~7日目のAD036の完全用量期間(すべての用量がオーバーカプセル化されている)と組み合わせての全夜の夜間MAD使用。
-期間2:2つの釣り合う用量のプラセボ(matching placebo)カプセルと組み合わせて、全夜で夜間に使用されるMAD。
【0079】
期間1の研究薬物は、患者の退院前に訪問2で分配される。研究薬物は2つの異なる錠剤からなり、その各々の1つは、毎夜、患者の通常の就寝時刻に摂取される。6日間(最大8日間)の自宅投薬の後で、患者は、訪問3において、分配された研究薬物の残りを持ってPSGのために戻り、消灯時間にその薬物供給物から投薬する。各PSG後の朝に症状アンケートが実施され、第2のクロスオーバー期間の研究薬物が分配される。患者は、1週間のウォッシュアウト期間後までは、第2の期間の研究薬物の摂取を開始しないように指示される。1週間のウォッシュアウト期間の終わりに、施設(site)がその患者に電話で連絡して第2のクロスオーバー期間の投薬を開始させる。期間1と同様に、6日間(最大8日間)の自宅投薬の後で、患者は、訪問4において、分配された研究薬物の残りを持ってPSGのために戻り、訪問4の研究薬物の投薬は、患者の期間2の供給物からのものである。
【0080】
有害事象及び併用薬情報を、各研究施設訪問時、及び訪問4から2週間後の研究終了(End-of-Study)通知中に収集する。患者との研究終了通知は、研究薬物投薬終了から2週間後に行われる。
【0081】
研究を中断する参加者の後任は置かない。この研究の後に続く後続の非盲検継続投薬(open-label extension)は計画されない。
【0082】
包含基準
1.OSAに対するMADの現在の使用。6ヶ月以内にMADを中断した患者は、MAD使用がV2の少なくとも2週間前に再開される場合は適格である
2.スクリーニング訪問時に年齢が25~65歳(両端を含む)である。
3.MADを使用してV2ベースラインで>10のAHI(4%)。
初期PSGでAHI(4%)が8~9である場合は繰り返してもよく、平均AHI(4%)が使用される
4.無呼吸のうち≦25%は、V2ベースラインPSGにおいて中枢型または混合型無呼吸である。
5.PSG前スクリーニング訪問時に18.5~40.0kg/mのBMI(両端を含む)
6.男性が出産可能な女性パートナー(複数可)と性的に活発である場合、参加者は、研究1日目から研究薬物の最終投与の1週間後まで、プロトコル指定の避妊法を実施することに同意しなければならない。
7.出産可能な女性(woman of childbearing potential、WOCBP)の場合、参加者は、研究1日目から研究薬物の最終投与の1週間後まで、プロトコル指定の避妊法を実施することに同意しなければならない(付録4:避妊指導及び妊娠情報の収集を参照されたい)。すべてのWOCBPは、スクリーニング時に実施される血清妊娠試験の陰性結果を有しなければならない。
8.出産不能な女性の場合、参加者は、閉経後である(別の医療的な原因なしに12ヶ月以上月経がない55歳以上の年齢として定義される)か、または恒久的に外科手術により不妊である(両側卵巣摘出術、両側卵管切除術、または子宮摘出術)かのいずれかでなければならない。
9.参加者は、この研究への参加に自発的に同意し、スクリーニング訪問手順のいずれかを実施する前に、施設内倫理委員会(Institutional Review Board、IRB)承認のインフォームドコンセントに署名する。
10.参加者は、研究の性質を理解できなければならず、いかなる質問にも回答する機会を有していなければならない。
【0083】
除外基準
以下の基準のいずれかに当てはまる場合、参加者は研究から除外される。
1.OSA以外の臨床的に有意な睡眠障害の病歴。
2.臨床的に有意な頭蓋顔面の形成異常。
3.制御のために2種類を超える薬剤を必要とする臨床的に有意な心疾患(例えば、律動障害、冠動脈疾患、または心不全症)または高血圧(併用薬剤は、この目的の場合は1つの薬剤と考えられる)。
4.てんかん/痙攣を含む臨床的に有意な神経障害。
5.精神疾患の分類と診断の手引第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-5、DSM-5)または国際疾病分類(International Classification of Disease)第10版に従う、統合失調症、統合失調性感情障害、または双極性障害の病歴。
6.スクリーニングから1年前以内の自殺未遂、または現在の自殺念慮の病歴。
7.スクリーニング訪問から24ヶ月前以内のDSM-Vで定義される薬物乱用または物質使用障害の病歴に関する医学的に未解明の陽性スクリーン。
8.過去30日間における医学的治療を必要とする有意な疾病または感染症。
9.治験責任医師によって決定された臨床的に有意な認知機能障害。
10.妊娠中または授乳中の女性。
11.体位変換装置(positional device)の使用は認められるが、V2の2週間前及び治験の過程中は一定に保たれるべきである。
12.CPAPの使用は、V2の少なくとも2週間前及び治験の過程中は中止されなければならない。
13.長期酸素療法の病歴。
14.禁止併用薬リストからの薬剤の使用。
15.治療開始から14日以内の、または治療と同時の、強力なシトクロムP450 3A4(CYP3A4)阻害剤、強力なシトクロムP450 2D6(CYP2D6)阻害剤、またはモノアミン酸化酵素阻害剤(MAOI)による治療。
16.投薬から30日前または5半減期前のいずれか長い方の内での別の治験薬の使用。
17.肝臓トランスアミナーゼ:正常上限(ULN)の>2倍、総ビリルビン:ULNの>1.5倍(ギルバート症候群が確認された場合を除く)、推定糸球体濾過量:<60ml/分。
18.PLM覚醒指数:>15
19.<5時間の典型的な睡眠時間。
20.ESS:>18
21.主な睡眠期間が日中となる夜間勤務または交代勤務の睡眠スケジュール。
22.職業ドライバー、または重機もしくは危険機器の操作者としての職業。
23.典型的に、1日あたり10本を超える紙巻きタバコもしくは2本を超える葉巻タバコの喫煙、または終夜のPSG訪問中に喫煙を控えることの不能。
24.指定された避妊法を用いる意思がないこと。
25.1週間あたり14標準単位超(男性)もしくは1週間あたり7標準単位超(女性)の定期的なアルコール消費の前歴、またはアルコールの消費を2単位/日(男性)、1日あたり1単位(女性)以下に制限し、就寝時刻の3時間以内もしくはPSGの夜に消費しない意思がないこと。
26.研究期間中にカフェイン含有飲料の摂取(例えば、コーヒー、コーラ、茶)をカフェイン400mg/日以下に制限し、就寝時刻の3時間以内に使用しない意思がないこと。
27.参加者に対して不当なリスクを提示する、または研究への参加を妨害するかもしくは研究の解釈を混乱させると治験責任医師が判断する任意の条件。
28.任意の理由で、アトモキセチン及び/またはドロナビノールの投与に適さない、または投薬スケジュールもしくは研究評価を理解するかもしくはこれに従うことが不能であるかもしくはその見込みがないと治験責任医師が考える候補者。
食事及び食餌制限
1.参加者は、研究薬物の1回目の投与の72時間前以内及び研究中、CYP酵素活性を調節することが分かっている任意の栄養素(例えば、グレープフルーツまたはグレープフルーツジュース、ポメロジュース、スターフルーツ、ザクロ、及びダイダイまたはモロ(ブラッド)オレンジ製品)の消費を控えるべきである。
2.研究中、食餌は概して安定しているべきであり、例えば、新規の食餌プログラムは開始するべきではない。
カフェイン、アルコール、及びタバコ
1.研究の外来部分の間、参加者は、男性で1日あたり2標準単位超、または女性で1単位/日超のアルコールを控え、就寝時刻の3時間前以内は消費するべきでない。アルコールは、PSGの夜は消費されるべきではない。
2.1日あたり合計400mgまでのカフェインを含有するカフェイン含有飲料の適度な消費は、研究期間中に許可され、就寝時刻の3時間前以内は消費しない。
【0084】
研究薬物
AD036またはプラセボを、MADと組み合わせて、各クロスオーバー期間に摂取する。AD036は、1つのオーバーカプセル化アトモキセチン(1~3日目は40mg、4~7日目は80mg)及び1つのオーバーカプセル化オキシブチニン5 mgからなる。表2は、投薬配合物及び投与経路を示す。
【表2】
【0085】
併用療法
以下に列挙する以下の薬剤との併用療法は禁止される。症状状態に対して必要に応じて典型的に使用される薬剤(例えば睡眠補助薬の時々の使用)の場合、薬剤は、最初の研究PSGの少なくとも1週間前及び研究期間中は使用されるべきではない。
【0086】
禁止薬剤としては、MAOIまたはモノアミン濃度に影響を及ぼす他の薬物(例えば、ラサギリン)が挙げられる(MAOIは、以下との併用が禁忌である:アトモキセチン、リチウム、カンナビノイド、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えば、パロキセチン)、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(例えば、デュロキセチン)、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(例えば、レボキセチン)、アルファ-1アンタゴニスト(例えば、タムスロシン)、三環系抗うつ剤(例えば、デシプラミン)、CYP2D6阻害剤、強力CYP3A4阻害剤(例えば、ケトコナゾール)、ベンゾジアゼピン及びその他の抗不安剤、オピオイド、鎮静剤及び鎮静催眠剤(非ベンゾジアゼピン系の「Z薬」(ゾルピデム、ザレプロン、エスゾピクロン)を含む)、筋弛緩剤、昇圧剤、臨床的に有意な心臓QT間隔延長効果を有する薬物、発作閾値を低下させることが分かっている薬物(例えば、クロロキン)、アンフェタミン、抗てんかん剤、制吐剤、モダフィニルもしくはアルモダフィニル、ベータアゴニスト(例えば、アルブテロール)、抗精神病剤、鎮静性抗ヒスタミン剤、偽エフェドリン、フェニレフリン、オキシメタゾリン、ニコチン代替製品、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症用の大半の薬物、または他の神経変性疾患用の薬物。
【0087】
抗高血圧剤(アンギオテンシン変換酵素(ACE)/アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB)阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、ヒドロクロロチアジドなど)、スタチン、プロトンポンプ阻害剤及びヒスタミンh受容体遮断薬、市販(OTC)の制酸薬、非鎮静性抗ヒスタミン剤(例えば、セチリジン、ロラタジン)、アセトアミノフェン、緩下剤、勃起不全薬物、吸入コルチコステロイド(例えば、フルチカゾン)、抗糖尿病薬、眼圧降下剤及びその他の眼科用剤(例えば、チモロール)、ホルモン療法(例えば、エストロゲン補充剤または抗エストロゲン剤)及びホルモン避妊薬、甲状腺治療薬、抗凝血剤、骨粗しょう症薬の薬物及び薬物クラスが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない、中枢神経系(CNS)、呼吸、または筋活動に対して実質的な効果を有さない薬剤は、概ね許可される。
【0088】
研究評価及び手順
研究手順及びそれらのタイミングを、以下の表3に示すSoA表に要約する。
【0089】
ポリソムノグラフィ
方法:標準的な一晩のPSG記録及びデータ解釈は、American Academy of Sleep Medicine(AASM)採点マニュアルに従って実施される。参加者は、標準的なPSG電極を取り付けられる。消灯時刻は、参加者の習慣的なスケジュールに従って確立され、PSG研究の夜全体にわたって一定に保たれる。参加者には8時間の就寝時間が与えられる。
【0090】
参加者は、研究の各夜において、夜の少なくとも1/3を仰臥位で、また夜の少なくとも1/3を側臥位で過ごすように積極的に促されるべきである。
【0091】
安全性評価
すべての安全性評価の計画された時点をSoA表3に示す。
【0092】
安全性のモニタリングは、アトモキセチン及びオキシブチニンならびにMADの確立された安全性プロファイルを指針とする。安全性評価は、身体検査、バイタルサインの測定、AE、SAE、及び妊娠のモニタリング及び記録、研究または治療中断の記録を含む。OSA及び睡眠パラメータ(例えば、睡眠時間及び睡眠段階)に対する影響も、PSGによってモニタリングされる。
【表3-1】
【表3-2】
【0093】
他の実施形態
本発明がその詳細な説明と共に説明されていることは理解されるが、前述の説明は、本発明の範囲を説明し、限定するものではなく、添付クレームの範囲で定義される。他の態様、利点、及び変更は、以下の請求項の範囲に含まれる。
図1
図2
【国際調査報告】