(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】タンク内の優勢な圧力を算出するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01L 11/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G01L11/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513274
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2022072569
(87)【国際公開番号】W WO2023036554
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102021209978.5
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ソニー
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC59
2F055DD19
2F055EE39
2F055FF49
2F055GG49
(57)【要約】
タンク内の優勢なタンク圧力を算出するための方法(20)において、タンクを閉鎖する電磁弁の電磁コイルに所定の電圧(10)を印加し(21)、前記電磁弁の開放(12)を特徴付ける電流(11)の復帰(13)が記録されるまで、前記電磁コイルを通って流れる前記電流(11)を測定し(22)、前記タンク圧力を、前記復帰(13)中に測定された前記電流(11)を用いて算出する(23)、ことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の優勢なタンク圧力を算出するための方法(20)において、
-タンクを閉鎖する電磁弁の電磁コイルに所定の電圧(10)を印加し(21)、
-前記電磁弁の開放(12)を特徴付ける電流(11)の復帰(13)が記録されるまで、前記電磁コイルを通って流れる前記電流(11)を測定し(22)、
-前記タンク圧力を、前記復帰(13)中に測定された前記電流(11)を用いて算出する(23)、
ことを特徴とする、タンク内の優勢なタンク圧力を算出するための方法(20)。
【請求項2】
-前記電磁弁をバルブスプリングによって付勢し、
-さらに前記算出(23)を、前記バルブスプリングによって加えられた、構造的に制限されたばね力を用いて行う、
ことを特徴とする、請求項1記載の方法(20)。
【請求項3】
-前記ばね力を前記電磁弁の弁体に作用させ、
-前記復帰(13)を、前記弁体のストローク運動時に行う、
ことを特徴とする、請求項2記載の方法(20)。
【請求項4】
-前記電磁弁によって前記タンクを圧力管に接続し、
-前記圧力管内の優勢なライン圧力を測定し、
-前記算出(23)を、まず前記タンクと前記圧力管との間の圧力差を算出し、次いでこの圧力差と前記ライン圧力とから前記タンク圧力を算出することによって行う、
ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法(20)。
【請求項5】
-前記圧力管を、別の電磁弁によって別のタンクに接続し、
-前記方法(20)を前記タンクのそれぞれにおいて相次いで実施する、
ことを特徴とする、請求項4記載の方法(20)。
【請求項6】
-前記タンクを少なくとも部分的に燃料で満たし、
-算出された前記タンク圧力から、前記それぞれのタンク内の燃料の充填レベルを推測する、
ことを特徴とする、請求項5記載の方法(20)。
【請求項7】
-前記燃料を用いて自動車を駆動し、
-自動車の始動時に前記タンクの前記電磁弁の開放(12)を、それぞれ算出されたタンク圧力に依存する連続で行う、
ことを特徴とする、請求項6記載の方法(20)。
【請求項8】
コンピュータプログラムにおいて、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法(20)を実行するために設計されている、コンピュータプログラム。
【請求項9】
機械読み取り可能な記憶媒体において、前記記憶媒体に請求項8記載のコンピュータプログラムが記憶されている、機械読み取り可能な記憶媒体。
【請求項10】
装置(30)において、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法(20)を実行するために設計されている装置(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内の優勢な圧力を算出するための方法に関する。本発明はさらに、対応する装置、対応するコンピュータプログラム並びに対応する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による水素駆動式の車両では、例えば炭素繊維補強されたプラスチックより成る、800barまでのタンク圧力に耐える圧力タンクが使用されている。その結果得られた蓄圧器密度により、この種類の車両に500kmより長い走行距離が与えられる。
【0003】
特許文献1によれば、加圧水素リザーブタンクを開閉するための特別な用途を有する電磁式のシャットオフバルブ(shut-off valve)が開示されている。1実施例によれば、この弁は2つの弁シールエレメントを有しており、この場合、一方の弁シールエレメントの一方側は弁の高圧側に位置していて、これに対向する、他方の弁シールエレメントの側は弁の高圧側に位置している。したがって、2つの弁シールエレメントに加えられる圧力は補正されるので、高圧に抗して弁を開放するために僅かな力を必要とするだけである。
【0004】
さらに、いわゆる直接制御式の電磁弁が公知であって、この電磁弁の駆動力は、ニードル状のバルブピストンの形態のシールエレメントに直接に作用する。電磁石がスイッチオフされると、圧縮ばねがバルブピストンを弁座に押し付けることによって、弁を閉鎖維持する。弁を通って流れる媒体の流れ方向は規定通りに、弁の閉鎖時に弁のインレットとアウトレットとの間に発生する圧力差がバルブピストンを追加的に弁座に押し付けるように規定されている。弁を開放するために、ピストンは、電磁石式の駆動だけによって弁座から持ち上げられなければならない。つまり、駆動は圧縮ばねに抗しておよびバルブピストンに印加される差圧に抗して作業しなければならない。このような形式の弁を開放するために最小限必要な電磁石の駆動力は、特にばね力、弁座の大きさおよび閉鎖した弁における最大の差圧に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第102006027712号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、独立請求項に記載した、タンク内の優勢な圧力を算出するための方法、対応する装置、対応するコンピュータプログラム並びに対応する記憶媒体を提供する。
【0007】
提案された方法は、移動利用時の圧縮ガスタンク容器内、例えば水素タンクシステム内に一般的な形式でシャットオフバルブが使用される、という知識に基づいている。この弁は停止状態で閉鎖していて、それによってタンク容器をシールする。運転中に弁は開放し、それによって駆動システムに燃料を供給するためにガスを取り出すことができる。
【0008】
このような種類のシャットオフバルブは、例えば上記構造形式の磁気制御式の調整弁として構成され得る。停止状態で弁は閉鎖されていて、この場合、ばねが前述のように弁体を弁座に押し付け、それによってタンク容器をシールする。弁を運転中に開放させるために、磁気コイルに電圧が印加される。これによって生ぜしめられた磁力は、閉鎖方向に働くばね並びに圧縮力を克服し、それによって弁を開放する。
【0009】
本発明による方法はさらに、タンク容器の状態をコントロール若しくは監視するためにタンク容器のガス温度およびガス圧を測定するための要求を考慮している。しかしながら、複数のタンク容器を有する従来のタンクシステムでは、すべての容器に圧力センサが備えられていないことが時々ある。むしろ、高圧管路内の圧力を測定する唯一の高圧センサだけが高圧管路内に取り付けられている。すべてのタンク容器のタンク弁が開放されている運転中に、高圧管路内で測定された圧力から、タンク容器内の圧力が算出されるかまたはこの圧力が少なくとも推定され得る。しかしながら、タンク弁が開放される前、例えば車両の始動時に、圧力センサなしのタンク容器内の圧力は不明である。このことは、始動時に個別のタンク容器内で種々異なる圧力が優勢である場合に、特に不都合である。このような状況では、タンク容器と高圧管路との間の大きい圧力差に基づいて、多くのタンク弁が遅れて開放されることになり、これが車両の始動を全体的に遅らせることになり得る。
【0010】
これに対して、以下に記載した方法は、車両の始動時に、タンク弁がまだ閉鎖されている間、個別のタンク容器内の圧力を知ることでタンク弁を所定の連続で開放し、それによってタンクシステムを支障なく運転することができる。
【0011】
従属請求項に記載した手段によって、独立請求項に記載された基本的な考えの好適な実施態様および改良が可能である。それぞれのタンク容器内の燃料の精確な充填レベルを算出するために、始動時に、個別のタンク容器内の圧力を圧力センサなしで知ることも可能である。
【0012】
別の態様によれば、磁気制御式のシャットオフバルブとして構成されたタンク弁が開放される前に、圧力センサが取り付けられていないタンク容器内の圧力を算出するためのソフトウエア機能を提供するようになっていてよい。この機能は、タンクシステムの支障のない開放並びに始動時のタンクシステムの充填レベルの算出を可能にするために、タンク容器内に圧力センサを部分的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】電磁コイルを流れる電流の、電磁弁の開放を特徴付ける復帰を示す図である。
【
図2】第1実施例による方法のフローチャートである。
【
図3】第2実施例によるコントロールユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例が図面に示されていて、以下の説明に詳しく記載されている。
【0015】
図1は、電磁コイルを流れる電流(11)の、シャットオフ電磁弁の開放(12)を特徴付ける復帰(13)を図示する。シャットオフバルブの閉じられた状態で、弁体を弁座に押し付けるばね力および圧縮力が優勢となる。電磁コイルに電圧(10)が印加されると、磁力が生ぜしめられる。磁力が、ばね力および圧縮力を克服すると直ちに、弁は開放し始める。
【0016】
この第1の弁体ストロークの時点は、
図1に示した図表において電流の強さ(11)のグラフの屈曲で分かる。この時点で、圧縮力は、ばね力と圧力と磁力の概要によって算出可能である。ばね力は設計値として基本的に知られており、磁力は、電磁コイルのパラメータおよび電流(11)から算出可能である。これによって、このような形式で算出された圧縮力および、高圧管路内で測定された圧力からタンク圧力を算出することができる。
【0017】
この作用関係を基にして、特に共通の圧力管によって接続された複数のタンクを有する、水素駆動式の自動車の始動が最適化され得る。これらのタンクは様々な容量の燃料で満たされていて、それぞれ電磁弁によって閉鎖されている。この使用例について、
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0018】
まず、各電磁弁の電磁コイルに所定の電圧(10-
図1)が印加され(プロセス21)、バルブスプリングによって加えられるばね力に抗して生ぜしめられた弁体のストローク運動を示唆し、かつ電磁弁の開放(12-
図1)を特徴付ける電流(11-
図1)の復帰(13)が記録されるまで、電磁コイルを通って流れる電流(11-
図1)が測定される(プロセス22)。また、共通の圧力管内で優勢なライン圧力が一度だけ、このために設けられた圧力センサによって測定される。
【0019】
一方では復帰(13-
図1)中に測定された、コイルを通る電流(11-
図1)を用いて、他方では構造的に制限されひいては概ね既知である、弁を付勢するばねのばね力を用いて、それぞれのタンクと圧力管との間の圧力差が算出され、この圧力差から直接的に、既知のライン圧力を考慮してタンク圧力を導き出すことができる(プロセス23)。このような形式で算出されたタンク圧力から、それぞれのタンク内の燃料の充填レベルが推定され得るか、または燃料電池若しくはモータに燃料を供給する目的で電磁弁の開放(12-
図1)を行う連続が規定され得る。
【0020】
この方法(20)は、例えばソフトウエアまたはハードウエアでまたはソフトウエアとハードウエアとから成る混合形で、例えば
図3の概略図に示されているように、コントロールユニット(30)で実行され得る。
【符号の説明】
【0021】
10 電圧
11 電流、電流の強さ
12 開放
13 復帰
20 方法
21 プロセス、印加
22 プロセス、測定
23 プロセス、算出
30 装置、コントロールユニット
【手続補正書】
【提出日】2024-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の優勢なタンク圧力を算出するための方法(20)において、
-タンクを閉鎖する電磁弁の電磁コイルに所定の電圧(10)を印加し(21)、
-前記電磁弁の開放(12)を特徴付ける電流(11)の復帰(13)が記録されるまで、前記電磁コイルを通って流れる前記電流(11)を測定し(22)、
-前記タンク圧力を、前記復帰(13)中に測定された前記電流(11)を用いて算出する(23)、
ことを特徴とする、タンク内の優勢なタンク圧力を算出するための方法(20)。
【請求項2】
-前記電磁弁をバルブスプリングによって付勢し、
-さらに前記算出(23)を、前記バルブスプリングによって加えられた、構造的に制限されたばね力を用いて行う、
ことを特徴とする、請求項1記載の方法(20)。
【請求項3】
-前記ばね力を前記電磁弁の弁体に作用させ、
-前記復帰(13)を、前記弁体のストローク運動時に行う、
ことを特徴とする、請求項2記載の方法(20)。
【請求項4】
-前記電磁弁によって前記タンクを圧力管に接続し、
-前記圧力管内の優勢なライン圧力を測定し、
-前記算出(23)を、まず前記タンクと前記圧力管との間の圧力差を算出し、次いでこの圧力差と前記ライン圧力とから前記タンク圧力を算出することによって行う、
ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法(20)。
【請求項5】
-前記圧力管を、別の電磁弁によって別のタンクに接続し、
-前記方法(20)を前記タンクのそれぞれにおいて相次いで実施する、
ことを特徴とする、請求項4記載の方法(20)。
【請求項6】
-前記タンクを少なくとも部分的に燃料で満たし、
-算出された前記タンク圧力から、前記それぞれのタンク内の燃料の充填レベルを推測する、
ことを特徴とする、請求項5記載の方法(20)。
【請求項7】
-前記燃料を用いて自動車を駆動し、
-自動車の始動時に前記タンクの前記電磁弁の開放(12)を、それぞれ算出されたタンク圧力に依存する連続で行う、
ことを特徴とする、請求項6記載の方法(20)。
【請求項8】
コンピュータプログラムにおいて、請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法(20)を実行するために設計されている、コンピュータプログラム。
【請求項9】
機械読み取り可能な記憶媒体において、前記記憶媒体に請求項8記載のコンピュータプログラムが記憶されている、機械読み取り可能な記憶媒体。
【請求項10】
装置(30)において、請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法(20)を実行するために設計されている装置(30)。
【国際調査報告】