IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システムの特許一覧

<>
  • 特表-モノクローナル抗体乾燥粉末 図1
  • 特表-モノクローナル抗体乾燥粉末 図2
  • 特表-モノクローナル抗体乾燥粉末 図3
  • 特表-モノクローナル抗体乾燥粉末 図4
  • 特表-モノクローナル抗体乾燥粉末 図5
  • 特表-モノクローナル抗体乾燥粉末 図6
  • 特表-モノクローナル抗体乾燥粉末 図7
  • 特表-モノクローナル抗体乾燥粉末 図8
  • 特表-モノクローナル抗体乾燥粉末 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】モノクローナル抗体乾燥粉末
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240910BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240910BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K9/19
A61K9/72
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513359
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022075663
(87)【国際公開番号】W WO2023034795
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/238,595
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.プルロニック
3.PLURONIC
4.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ツイ ジョンロン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ ロバート オー. ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】シュイ ハイユエ
(72)【発明者】
【氏名】ハフナゲル ステファニー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ローラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC50
4C076DD26Z
4C076DD38
4C076DD43Z
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE16
4C076FF04
4C076FF61
4C076GG07
4C085AA13
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG10
(57)【要約】
生物学的に活性な抗体またはその抗体断片を含む、乾燥粉末組成物が本明細書において提供される。いくつかの局面において、本開示は、前記組成物を製造する方法、および医療用散粉器/噴霧器/吸入器を通して、前記組成物を肺投与において使用するかまたは前記組成物を組織表面に適用する方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、
各薬物粒子が
(A) 抗体または抗体断片;
(B) 糖または糖アルコール; および
(C) アミノ酸
を含み、前記薬学的組成物が乾燥粉末として製剤化されている、前記薬学的組成物。
【請求項2】
複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、
各薬物粒子が
(A) 抗体または抗体断片;
(B) 糖または糖アルコール; および
(C) 粘膜付着性重合体
を含み、前記薬学的組成物が乾燥粉末として製剤化されている、前記薬学的組成物。
【請求項3】
複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、
各薬物粒子が
(A) 抗体または抗体断片;
(B) 糖または糖アルコール; および
(C) 重合体
を含み、前記薬学的組成物が乾燥粉末として製剤化されている、前記薬学的組成物。
【請求項4】
前記乾燥粉末が肺への投与のために製剤化されている、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記肺への投与が経口吸入による投与である、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
局所投与が、前記薬学的組成物を表面に噴霧することを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記表面が、鼻粘膜表面、口腔粘膜表面、腫瘍組織の表面、膣粘膜表面、皮膚、胸膜腔、または手術部位である、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記乾燥粉末が液体中に再構成される、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記液体が水または生理食塩水である、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記液体が、静脈内注射としての使用、皮下注射としての使用、噴霧化における使用、または鼻腔内への噴霧における使用のために製剤化されている、請求項8または請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項11】
緩衝液をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記緩衝液がリン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液である、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記緩衝液がリン酸緩衝生理食塩水である、請求項11または請求項12記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記糖が二糖類である、請求項1~13のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記二糖類がラクトース、トレハロース、またはスクロースである、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記糖がラクトースである、請求項1~15のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記糖がトレハロースである、請求項1~15のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項18】
アミノ酸をさらに含む、請求項2~17のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記アミノ酸が正準(canonical)アミノ酸である、請求項1~18のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記アミノ酸が非極性アミノ酸である、請求項18または請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記アミノ酸がロイシンである、請求項18~20のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項22】
抗体断片を含む、請求項1~21のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記抗体断片がナノボディまたはFab'である、請求項22記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~21のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記抗体がIgG抗体である、請求項1~24のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記抗体がPD-1に結合する、請求項1~25のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記抗体が抗PD-1抗体である、請求項1~26のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記抗体がCTL4AまたはPD-L1に結合する、請求項1~25のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記抗体が抗CTL4A抗体または抗PD-L1抗体である、請求項1~25および28のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記抗体がTNF-αに結合する、請求項1~25のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記抗体が抗TNF-α抗体である、請求項1~25および30のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項32】
アミノ酸を含まない、請求項2~31のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項33】
約1:6~約9:1の前記糖対前記アミノ酸の重量比率を含む、請求項1~31のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記重量比率が、前記糖対前記アミノ酸 約1:2~約8:1である、請求項33記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記重量比率が約3:2~約3:1である、請求項34記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記重量比率が約3:2である、請求項34または請求項35記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記重量比率が約3:1である、請求項34または請求項35記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記組成物中の糖の量に対する、前記抗体約0.1%~約80%の重量比率を含む、請求項1~37のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記重量比率が前記抗体約0.25%~約2.5%である、請求項38記載の薬学的組成物。
【請求項40】
前記重量比率が前記抗体約0.33%~約1.5%である、請求項38または請求項39記載の薬学的組成物。
【請求項41】
前記重量比率が前記抗体約0.5%である、請求項38~40のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項42】
前記重量比率が前記抗体約1.0%である、請求項38~40のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項43】
賦形剤を含む、請求項1~42のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記賦形剤が、薬学的に許容される重合体である、請求項43記載の薬学的組成物。
【請求項45】
前記賦形剤が、キトサン、アルギネート、ジェラン、デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルピロリジン、またはセルロースである、請求項43または請求項44記載の薬学的組成物。
【請求項46】
前記賦形剤がポリビニルピロリドンである、請求項43~45のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項47】
前記賦形剤が、約10,000ダルトン~約80,000ダルトンの分子量を有するポリビニルピロリドンである、請求項43~46のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項48】
前記分子量が約40,000ダルトンである、請求項47記載の薬学的組成物。
【請求項49】
前記薬物粒子が約0.5 μm~約25.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、請求項1~48のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項50】
前記MMADが約1.0 μm~約4.0 μmである、請求項1~49のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項51】
前記MMADが約1.25 μm~約3.5 μmである、請求項1~50のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記MMADが約1.5 μm~約3.25 μmである、請求項1~51のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項53】
前記MMADが約1.5 μm~約2.5 μmである、請求項1~52のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項54】
前記薬物粒子が約1.0~約5.0の幾何標準偏差(GSD)を有する、請求項1~53のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項55】
前記GSDが約1.25~約4.0である、請求項54記載の薬学的組成物。
【請求項56】
前記GSDが約1.5~約3.5である、請求項54または請求項55記載の薬学的組成物。
【請求項57】
前記GSDが約1.75~約3.0である、請求項54~56のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項58】
乾燥粉末吸入器における使用のためにカプセル中に製剤化されている、請求項1~57のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項59】
吸入器中に製剤化されている、請求項1~57のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項60】
吸入器中に製剤化された場合の前記薬学的組成物が、回収用量の割合として20%超の微粉末画分を有する、請求項1~59のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項61】
前記回収用量の割合としての前記微粉末画分が40%超である、請求項60記載の薬学的組成物。
【請求項62】
前記回収用量の割合としての前記微粉末画分が45%超である、請求項60または請求項61記載の薬学的組成物。
【請求項63】
吸入器中に製剤化された場合の前記薬学的組成物が、回収用量の割合が約35%~約100%である微粉末画分を有する、請求項1~62のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項64】
前記回収用量の割合としての前記微粉末画分が約40%~約99%である、請求項63記載の薬学的組成物。
【請求項65】
乾燥粉末吸入器からの回収用量の割合としての前記微粉末画分が、約45%~約98%である、請求項63または請求項64記載の薬学的組成物。
【請求項66】
吸入器中に製剤化された場合の前記薬学的組成物が、吸入器を用いた送達用量の割合として50%超の微粉末画分を有する、請求項1~65のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項67】
前記送達用量の割合としての前記微粉末画分が55%超である、請求項66記載の薬学的組成物。
【請求項68】
前記送達用量の割合としての前記微粉末画分が70%超である、請求項66または請求項67記載の薬学的組成物。
【請求項69】
吸入器中に製剤化された場合の前記薬学的組成物が、送達用量の割合が約50%~約100%である微粉末画分を有する、請求項1~68のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項70】
前記送達用量の割合としての前記微粉末画分が約55%~約99%である、請求項69記載の薬学的組成物。
【請求項71】
前記送達用量の割合としての前記微粉末画分が約70%~約98%である、請求項69または請求項70記載の薬学的組成物。
【請求項72】
前記抗体がその未処理活性の少なくとも10%を保持する、請求項1~71のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項73】
前記抗体がその未処理活性の少なくとも50%を保持する、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項74】
前記抗体がその未処理活性の少なくとも80%を保持する、請求項73記載の薬学的組成物。
【請求項75】
前記薬学的組成物中の前記抗体の少なくとも50%が、ある期間にわたる貯蔵温度での貯蔵後に単量体の形態をとる、請求項1~74のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項76】
少なくとも75%の、単量体の形態の前記抗体を含む、請求項1~75のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項77】
少なくとも80%の、単量体の形態の前記抗体を含む、請求項1~76のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項78】
前記貯蔵温度が室温である、請求項75~77のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項79】
前記貯蔵温度が約-180℃~約20℃である、請求項75~77のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項80】
前記貯蔵温度が約-120℃~約10℃である、請求項79記載の薬学的組成物。
【請求項81】
前記貯蔵温度が約-80℃~約5℃である、請求項80記載の薬学的組成物。
【請求項82】
前記貯蔵温度が約10℃~約50℃である、請求項75~77のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項83】
前記貯蔵温度が約15℃~約45℃である、請求項82記載の薬学的組成物。
【請求項84】
前記貯蔵温度が約20℃~約40℃である、請求項83記載の薬学的組成物。
【請求項85】
水に溶解されている、請求項1~84のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項86】
前記水が生理食塩水である、請求項85記載の薬学的組成物。
【請求項87】
前記水がリン酸緩衝生理食塩水またはヒスチジン水性緩衝液である、請求項85または請求項86記載の薬学的組成物。
【請求項88】
以下の段階を含む、請求項1~87のいずれか一項記載の薬学的組成物を調製する方法:
(A) 薬学的混合物を得るために、
(1) 抗体または抗体断片;
(2) 糖または糖アルコール; および
(3) アミノ酸
を溶媒に溶解する段階;
(B) 凍結された薬学的混合物を得るために、前記薬学的混合物を0℃未満の表面温度の表面に適用する段階; ならびに
(C) 前記凍結された薬学的混合物を回収しかつ前記凍結された薬学的混合物を乾燥して薬学的組成物を得る段階。
【請求項89】
以下の段階を含む、請求項1~87のいずれか一項記載の薬学的組成物を調製する方法:
(A) 薬学的混合物を得るために、
(1) 抗体または抗体断片;
(2) 糖または糖アルコール; および
(3) 粘膜付着性重合体
を溶媒に溶解する段階;
(B) 凍結された薬学的混合物を得るために、前記薬学的混合物を0℃未満の表面温度の表面に適用する段階; ならびに
(C) 前記凍結された薬学的混合物を回収しかつ前記凍結された薬学的混合物を乾燥して薬学的組成物を得る段階。
【請求項90】
以下の段階を含む、請求項1~87のいずれか一項記載の薬学的組成物を調製する方法:
(A) 薬学的混合物を得るために、
(1) 抗体または抗体断片;
(2) 糖または糖アルコール; および
(3) 薬学的に許容される重合体
を溶媒に溶解する段階;
(B) 凍結された薬学的混合物を得るために、前記薬学的混合物を0℃未満の表面温度の表面に適用する段階; ならびに
(C) 前記凍結された薬学的混合物を回収しかつ前記凍結された薬学的混合物を乾燥して薬学的組成物を得る段階。
【請求項91】
前記溶媒が水である、請求項88~90のいずれか一項記載の方法。
【請求項92】
前記溶媒が生理食塩水である、請求項88または請求項91記載の方法。
【請求項93】
前記溶媒がリン酸緩衝生理食塩水である、請求項88~92のいずれか一項記載の方法。
【請求項94】
溶解する段階がアミノ酸をさらに含む、請求項88~93のいずれか一項記載の方法。
【請求項95】
前記アミノ酸が正準アミノ酸である、請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記アミノ酸が非極性アミノ酸である、請求項94または請求項95記載の方法。
【請求項97】
前記アミノ酸がロイシンである、請求項94~96のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
前記抗体または抗体断片、糖または糖アルコール、およびアミノ酸が、溶解温度で溶解される、請求項94~97のいずれか一項記載の方法。
【請求項99】
前記溶解温度が約-10℃~約40℃である、請求項98記載の方法。
【請求項100】
前記溶解温度が約-5℃~約25℃である、請求項98または請求項99記載の方法。
【請求項101】
前記溶解温度が約0℃~約10℃である、請求項98~100のいずれか一項記載の方法。
【請求項102】
前記薬学的混合物が透明になるまで混和される、請求項88~101のいずれか一項記載の方法。
【請求項103】
前記薬学的混合物が、約0.05% w/v~約5% w/vの前記抗体および糖の固形分を含む、請求項88~102のいずれか一項記載の方法。
【請求項104】
前記固形分が、約0.1% w/v~約2.5% w/vの前記抗体および糖である、請求項103記載の方法。
【請求項105】
前記固形分が、約0.15% w/v~約1.5% w/vの前記抗体および糖である、請求項104記載の方法。
【請求項106】
前記固形分が、約0.2% w/v~約0.6% w/vの前記抗体および糖である、請求項105記載の方法。
【請求項107】
前記固形分が、約0.5% w/v~約1.25% w/vの前記抗体および糖である、請求項106記載の方法。
【請求項108】
前記薬学的混合物が、約0.5 mL/分~約5 mL/分の供給速度で適用される、請求項88~107のいずれか一項記載の方法。
【請求項109】
前記供給速度が約1 mL/分~約3 mL/分である、請求項108記載の方法。
【請求項110】
前記供給速度が約2 mL/分である、請求項109記載の方法。
【請求項111】
前記薬学的混合物が約50ミリ秒~約5秒間、前記表面に曝露される、請求項88~110のいずれか一項記載の方法。
【請求項112】
適用する段階が、前記薬学的混合物の液滴を噴霧または滴下することを含む、請求項88~111のいずれか一項記載の方法。
【請求項113】
前記表面温度が約-180℃~約0℃であり、前記液滴の直径が約2~5ミリメートルであり、かつ前記液滴が前記表面から約2 cm~10 cmの距離から滴下される、請求項112記載の方法。
【請求項114】
前記液滴と表面との間に少なくとも約30℃の温度差を有する前記表面と、前記液滴を接触させる段階をさらに含む、請求項111~112のいずれか一項記載の方法。
【請求項115】
前記液滴の凍結速度が約10 K/秒~約103 K/秒である、請求項114記載の方法。
【請求項116】
前記凍結された薬学的混合物から前記溶媒を除去して、乾燥薬学的混合物を形成させる段階をさらに含む、請求項111~115のいずれか一項記載の方法。
【請求項117】
前記溶媒の除去が凍結乾燥を含む、請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記薬学的混合物がノズルを用いて適用される、請求項88~116のいずれか一項記載の方法。
【請求項119】
前記ノズルが注射針である、請求項118記載の方法。
【請求項120】
直径約0.1 mm~約10 mmの液滴サイズをもたらす、請求項88~119のいずれか一項記載の方法。
【請求項121】
前記液滴サイズが約0.25 mm~約5 mmである、請求項120記載の方法。
【請求項122】
前記液滴サイズが約0.5 mm~約2.5 mmである、請求項121記載の方法。
【請求項123】
前記薬学的混合物が約2 cm~約50 cmの高さから適用される、請求項88~122のいずれか一項記載の方法。
【請求項124】
前記高さが約5 cm~約20 cmである、請求項123記載の方法。
【請求項125】
前記高さが約10 cmである、請求項124記載の方法。
【請求項126】
前記表面温度が約-190℃~0℃である、請求項88~125のいずれか一項記載の方法。
【請求項127】
前記表面温度が約-25℃~約-125℃である、請求項126記載の方法。
【請求項128】
前記表面温度が約-100℃である、請求項127記載の方法。
【請求項129】
前記表面が回転表面である、請求項88~128のいずれか一項記載の方法。
【請求項130】
前記表面が約5 rpm~約500 rpmの速度で回転している、請求項129記載の方法。
【請求項131】
前記表面が約100 rpm~約400 rpmの速度で回転している、請求項130記載の方法。
【請求項132】
前記表面が約150 rpmの速度で回転している、請求項131記載の方法。
【請求項133】
凍結された前記薬学的組成物が凍結乾燥によって乾燥される、請求項88~132のいずれか一項記載の方法。
【請求項134】
凍結された前記薬学的組成物が第1の減圧で乾燥される、請求項133記載の方法。
【請求項135】
前記第1の減圧が約10 mTorr~500 mTorrである、請求項134記載の方法。
【請求項136】
前記第1の減圧が約50 mTorr~約250 mTorrである、請求項135記載の方法。
【請求項137】
前記第1の減圧が約100 mTorrである、請求項136記載の方法。
【請求項138】
凍結された前記薬学的組成物が第1の低減温度で乾燥される、請求項133~137のいずれか一項記載の方法。
【請求項139】
前記第1の低減温度が約0℃~-100℃である、請求項138記載の方法。
【請求項140】
前記第1の低減温度が約-20℃~約-60℃である、請求項139記載の方法。
【請求項141】
前記第1の低減温度が約-40℃である、請求項140記載の方法。
【請求項142】
凍結された前記薬学的組成物が、約3時間~約36時間の一次乾燥期間にわたって乾燥される、請求項133~141のいずれか一項記載の方法。
【請求項143】
前記一次乾燥期間が約6時間~約24時間である、請求項142記載の方法。
【請求項144】
前記一次乾燥期間が約20時間である、請求項143記載の方法。
【請求項145】
凍結された前記薬学的組成物が、二次乾燥期間、乾燥される、請求項133~144のいずれか一項記載の方法。
【請求項146】
凍結された前記薬学的組成物が、第2の減圧で二次乾燥時間、乾燥される、請求項145記載の方法。
【請求項147】
前記二次乾燥時間が、約10 mTorr~500 mTorrである減圧におけるものである、請求項146記載の方法。
【請求項148】
前記二次乾燥時間が、約50 mTorr~約250 mTorrである減圧におけるものである、請求項147記載の方法。
【請求項149】
前記二次乾燥時間が、約100 mTorrである減圧におけるものである、請求項148記載の方法。
【請求項150】
凍結された前記薬学的組成物が、第2の温度で二次乾燥時間にわたって乾燥される、請求項146~149のいずれか一項記載の方法。
【請求項151】
前記第2の温度が約0℃~30℃である、請求項150記載の方法。
【請求項152】
前記第2の温度が約10℃~約30℃である、請求項151記載の方法。
【請求項153】
前記第2の温度が約25℃である、請求項152記載の方法。
【請求項154】
凍結された前記薬学的組成物が、約3時間~約36時間の第2の期間にわたる第2の時間にわたって乾燥される、請求項146~153のいずれか一項記載の方法。
【請求項155】
前記第2の期間が約6時間~約24時間である、請求項154記載の方法。
【請求項156】
前記第2の期間が約20時間である、請求項155記載の方法。
【請求項157】
前記温度が、ランピング期間にわたって前記第1の低減温度から前記第2の温度に変更される、請求項133~156のいずれか一項記載の方法。
【請求項158】
前記ランピング期間が約3時間~約36時間である、請求項157記載の方法。
【請求項159】
前記ランピング期間が約6時間~約24時間である、請求項158記載の方法。
【請求項160】
前記ランピング期間が約20時間である、請求項159記載の方法。
【請求項161】
前記薬学的組成物が10%未満の含水率を有する、請求項88~160のいずれか一項記載の方法。
【請求項162】
前記含水率が7.5%未満である、請求項161記載の方法。
【請求項163】
前記含水率が5%未満である、請求項161または請求項162記載の方法。
【請求項164】
請求項88~163のいずれか一項記載の方法を用いて調製された、薬学的組成物。
【請求項165】
複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、
各薬物粒子が
(A) 抗PD1抗体;
(B) トレハロース; および
(C) ロイシン
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、3:1のトレハロース対ロイシンの重量比率を含み、1重量%のトレハロースおよびロイシンを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物。
【請求項166】
複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、
各薬物粒子が
(A) 抗TNF-α抗体;
(B) トレハロース; および
(C) ロイシン
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、3:1のトレハロース対ロイシンの重量比率を含み、1重量%のトレハロースおよびロイシンを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物。
【請求項167】
複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、
各薬物粒子が
(A) 抗CTL4A抗体;
(B) ラクトース; および
(C) ロイシン
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、3:2のラクトース対ロイシンの重量比率を含み、1重量%のラクトースおよびロイシンを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物。
【請求項168】
複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、
各薬物粒子が
(A) IgG抗体;
(B) ラクトース; および
(C) ロイシン
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、3:2のラクトース対ロイシンの重量比率を含み、1重量%のラクトースおよびロイシンを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物。
【請求項169】
複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、
各薬物粒子が
(A) 抗PD1抗体; および
(B) スクロース
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、5重量%のスクロースを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物。
【請求項170】
その必要のある患者における疾患または障害を処置する方法であって、
請求項1~87および165~169のいずれか一項記載の薬学的組成物の治療的有効量を前記患者に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項171】
その必要のある患者における疾患または障害の処置に用いるための、請求項1~87および165~169のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項172】
疾患または障害の処置のための医薬の製造における、請求項1~87および165~169のいずれか一項記載の薬学的組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年8月30日付で出願された米国特許仮出願第63/238,595号の優先権の恩典を主張するものであり、この内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1. 分野
本開示は全体として、薬学的製剤、生物製剤、およびそれらの製造の分野に関する。より具体的には、本開示は、モノクローナル抗体(mAb)を含む乾燥粉末組成物、ならびに前記粉末組成物の使用の方法、および、例えば薄膜凍結による、前記粉末組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の説明
今日、ほとんどのタンパク質生物学的製剤は、その製造が比較的容易であることもあり、液体または凍結液体として貯蔵される。しかしながら、凝集、変性、脱アミド化、酸化、加水分解などを含めて、安定性に乏しいため、液体貯蔵は最適ではない(Bhambhani and Blue, 2010)。これは、生産コストが高く、構造および安定性が複雑なモノクローナル抗体(mAb)などの、大きなタンパク質の場合に特に問題になる。抗体は多くの場合、静脈内(IV)溶液またはプレフィルド注射器に入った高濃度の液体として提供されるが、その安定性が限られているため、低温で輸送および貯蔵しなければならない。適切な安定剤なしに高温または低温に曝露されると、タンパク質の不安定性および分解を悪化させる可能性がある。推奨された温度で貯蔵されていても、mAbは偶発的な凍結/融解(例えば、不均一に冷却された冷蔵庫内)を経験し、変性および凝集を引き起こす可能性がある(Li et al., 2019)。mAbおよび他のタンパク質を乾燥粉末として製剤化することで、この不安定性および低温流通体系への依存という問題に対処する助けになりうる。乾燥粉末は、潜在的に有利な薬理学的臨床効果を伴う複数の経路を介して再構成または直接投与(例えば、乾燥粉末吸入器(DPI)を用いて)することができる。
【0004】
mAbおよび他のタンパク質を乾燥粉末として製剤化することで、この問題に対処する助けになりうる。粉末は複数の経路に投与する前に再構成することができる。例えば、キイトルーダ(ペムブロリズマブ; 抗PD-1)は当初、再構成およびIV投与用の粉末として承認された(Merck, 2014)。IV投与のための再構成に加えて、粉末は、乾燥粉末吸入器(DPI)を用いて肺に直接送達することも、または鼻腔乾燥粉末噴霧器のような乾燥粉末を鼻腔に送達できる装置を用いて鼻腔に直接送達することもできる。呼吸器を適応症とする抗体は数多く市販されており、肺がんは最も一般的な適応症である(Liang et al., 2020)。オマリズマブ(抗IgE)は肺送達による喘息の処置のために臨床で研究されているが、液体として製剤化されており、現在は皮下(subQ)注射のみが承認されている。通常、E25 (抗IgE mAb)は注射によって送達されるが、喘息患者のアレルゲン誘発性気管支けいれんの処置のためにエアロゾル化された(Fahy et al., 1999)。IV E25とは対照的に、エアロゾル化E25は忍容性が良好であったが、症状の制御には効果がなかった。吸入によって送達された場合、E25は患者の気管支肺胞洗浄液(BAL)および血清中に検出された。しかしながら、E25血清濃度は、IV投与で達成される濃度の1%未満であった(Fahy et al., 1999; Boulat et al., 1997)。それゆえ、有効性の欠如は、肺のIgEが中和されても、血液からのIgEのプールが肺に再分布しうるため、E25の全身的なIgE中和が低いためである可能性が高かった(Fahy et al., 1999)。喘息の処置におけるE25の有効性には全身吸収が必要であったが、抗体の全身吸収が低いため、肺の局所治療に利用できる可能性がある。
【0005】
セツキシマブおよびインフリキシマブは、肺送達に関する前臨床評価を受けている。セツキシマブは液体としても製剤化され、インフリキシマブは噴霧乾燥(SD)により粉末として製剤化された(Faghihi et al., 2019)。SD、ならびに、従来の棚式凍結乾燥(棚式FD)、噴霧凍結乾燥(SFD)、および液体への噴霧凍結(SFL)などの低温技法は、粉末を製剤化するために採用されている技法である。残念なことに、それらの技法によって生産された粉末は一般に、不十分なエアロゾル性能および/または活性の低減に悩まされる(Engstrom et al., 2008)。
【0006】
したがって、改善されたエアロゾル性能および活性を有する抗体の粉末製剤を生産するための方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
概要
いくつかの態様において、本開示は、抗体またはその断片を含む、薬学的組成物ならびに組成物を使用および調製する方法を提供する。これらの組成物は、1つまたは複数の改善されたエアロゾル特性を示す乾燥粉末として薬学的組成物を調製するために、薄膜凍結法を用いて調製されうる。
【0008】
いくつかの局面において、本開示は、複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、各薬物粒子が
(A) 抗体または抗体断片;
(B) 糖または糖アルコール; および
(C) アミノ酸
を含み、前記薬学的組成物が乾燥粉末として製剤化されている、前記薬学的組成物を提供する。
【0009】
他の局面において、本開示は、複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、各薬物粒子が
(A) 抗体または抗体断片;
(B) 糖または糖アルコール; および
(C) 粘膜付着性重合体
を含み、前記薬学的組成物が乾燥粉末として製剤化されている、前記薬学的組成物を提供する。
【0010】
さらに別の局面において、本開示は、複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、各薬物粒子が
(A) 抗体または抗体断片;
(B) 糖または糖アルコール; および
(C) 重合体
を含み、前記薬学的組成物が乾燥粉末として製剤化されている、前記薬学的組成物を提供する。
【0011】
いくつかの態様において、乾燥粉末は、例えば経口吸入による、肺への投与のために製剤化される。他の態様において、薬学的組成物は、局所投与のために製剤化され、鼻粘膜表面、口腔粘膜表面、腫瘍組織の表面、膣粘膜表面、皮膚、胸膜腔、または手術部位などの表面に薬学的組成物を噴霧することからなる。いくつかの態様において、乾燥粉末は、水または生理食塩水などの液体中に再構成される。いくつかの態様において、液体は静脈内注射としての使用、皮下注射としての使用、噴霧化における使用、または鼻腔内への噴霧における使用のために製剤化される。
【0012】
いくつかの態様において、薬学的組成物は緩衝液をさらに含む。いくつかの態様において、緩衝液はリン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液である。いくつかの態様において、緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水である。いくつかの態様において、糖または糖アルコールはラクトース、トレハロース、もしくはスクロース、またはマンニトールなどの二糖類である。いくつかの態様において、糖はラクトースである。他の態様において、糖はトレハロースである。いくつかの態様において、薬学的組成物はアミノ酸をさらに含む。いくつかの態様において、アミノ酸は非極性アミノ酸などの正準(canonical)アミノ酸である。いくつかの態様において、アミノ酸はロイシンである。
【0013】
いくつかの態様において、薬学的組成物はナノボディまたは抗原結合断片(Fab')などの抗体断片を含む。他の態様において、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG抗体である。他の態様において、抗体は抗PD-1抗体など、PD-1に結合する。他の態様において、抗体は抗CTL4A抗体または抗PD-L1抗体など、CTL4AまたはPD-L1に結合する。他の態様において、抗体は抗TNF-α抗体など、TNF-αに結合する。
【0014】
いくつかの態様において、薬学的組成物は約1:6~約9:1の糖対アミノ酸の重量比率を含む。いくつかの態様において、重量比率は糖対アミノ酸 約1:2~約8:1である。いくつかの態様において、重量比率は約3:2~約3:1である。いくつかの態様において、重量比率は約3:2である。他の態様において、重量比率は約3:1である。他の態様において、薬学的組成物はアミノ酸を含まない。
【0015】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、糖に対する、抗体約0.1%~約80%の重量比率を含む。いくつかの態様において、重量比率は抗体約0.25%~約2.5%である。いくつかの態様において、重量比率は抗体約0.33%~約1.5%である。いくつかの態様において、重量比率は抗体約0.5%である。他の態様において、重量比率は抗体約1.0%である。
【0016】
いくつかの態様において、薬学的組成物は賦形剤を含む。いくつかの態様において、賦形剤は薬学的に許容される重合体である。いくつかの態様において、賦形剤は、キトサン、アルギネート、ジェラン、デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルピロリジン、またはセルロースである。いくつかの態様において、賦形剤は、約10,000ダルトン~約80,000ダルトンの分子量を有するポリビニルピロリドンなどのポリビニルピロリドンである。いくつかの態様において、分子量は約40,000ダルトンである。
【0017】
いくつかの態様において、組成物は、約0.5 μm~約25.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する粒子を含む。いくつかの態様において、MMADは約1.0 μm~約4.0 μmである。いくつかの態様において、MMADは約1.25 μm~約3.5 μmである。いくつかの態様において、MMADは約1.5 μm~約3.25 μmである。いくつかの態様において、MMADは約1.5 μm~約2.5 μmである。
【0018】
いくつかの態様において、粒子は約1.0~約5.0の幾何標準偏差(GSD)を有する。いくつかの態様において、GSDは約1.25~約4.0である。いくつかの態様において、GSDは約1.5~約3.5である。いくつかの態様において、GSDは約1.75~約3.0である。
【0019】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、乾燥粉末吸入器における使用のためにカプセル中に製剤化される。いくつかの態様において、薬学的組成物は吸入器中に製剤化される。いくつかの態様において、吸入器中に製剤化された場合の薬学的組成物は、回収用量の割合として20%超の微粉末画分を有する。いくつかの態様において、回収用量の割合としての微粉末画分が40%超である。いくつかの態様において、回収用量の割合としての微粉末画分が45%超である。
【0020】
いくつかの態様において、吸入器中に製剤化された場合の薬学的組成物は、回収用量の割合が約35%~約100%である微粉末画分を有する。いくつかの態様において、回収用量の割合としての微粉末画分は、約40%~約99%である。いくつかの態様において、乾燥粉末吸入器からの回収用量の割合としての微粉末画分は、約45%~約98%である。
【0021】
いくつかの態様において、吸入器中に製剤化された場合の薬学的組成物は、吸入器を用いた送達用量の割合として50%超の微粉末画分を有する。いくつかの態様において、送達用量の割合としての微粉末画分が55%超である。いくつかの態様において、送達用量の割合としての微粉末画分が70%超である。
【0022】
いくつかの態様において、吸入器中に製剤化された場合の薬学的組成物は、送達用量の割合が約50%~約100%である微粉末画分を有する。いくつかの態様において、送達用量の割合としての微粉末画分は、約55%~約99%である。いくつかの態様において、送達用量の割合としての微粉末画分は、約70%~約98%である。
【0023】
いくつかの態様において、抗体はその未処理活性の少なくとも10%を保持する。いくつかの態様において、抗体はその未処理活性の少なくとも50%を保持する。いくつかの態様において、抗体はその未処理活性の少なくとも80%を保持する。
【0024】
いくつかの態様において、薬学的組成物中の抗体の少なくとも50%は、ある期間にわたる貯蔵温度での貯蔵後に単量体の形態をとる。いくつかの態様において、薬学的組成物は、少なくとも75%の、単量体の形態の抗体を含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は、少なくとも80%の、単量体の形態の抗体を含む。いくつかの態様において、貯蔵温度は室温である。いくつかの態様において、貯蔵温度は約-180℃~約20℃である。いくつかの態様において、貯蔵温度は約-120℃~約10℃である。いくつかの態様において、貯蔵温度は約-80℃~約5℃である。いくつかの態様において、貯蔵温度は約10℃~約50℃である。いくつかの態様において、貯蔵温度は約15℃~約45℃である。いくつかの態様において、貯蔵温度は約20℃~約40℃である。
【0025】
いくつかの態様において、薬学的組成物は生理食塩水などの溶液に溶解されている。いくつかの態様において、溶液はリン酸緩衝生理食塩水である。
【0026】
さらに別の局面において、本開示は、以下の段階を含む、本明細書において記述される薬学的組成物を調製する方法を提供する:
(A) 薬学的混合物を得るために、
(1) 抗体または抗体断片;
(2) 糖または糖アルコール; および
(3) アミノ酸
を溶媒に溶解する段階;
(B) 凍結された薬学的混合物を得るために、薬学的混合物を0℃未満の表面温度の表面に適用する段階; ならびに
(C) 凍結された薬学的混合物を回収しかつ凍結された薬学的混合物を乾燥して薬学的組成物を得る段階。
【0027】
さらに別の局面において、本開示は、以下の段階を含む、本明細書において記述される薬学的組成物を調製する方法を提供する:
(A) 薬学的混合物を得るために、
(1) 抗体または抗体断片;
(2) 糖または糖アルコール; および
(3) 粘膜付着性重合体
を溶媒に溶解する段階;
(B) 凍結された薬学的混合物を得るために、薬学的混合物を0℃未満の表面温度の表面に適用する段階; ならびに
(C) 凍結された薬学的混合物を回収しかつ凍結された薬学的混合物を乾燥して薬学的組成物を得る段階。
【0028】
さらに別の局面において、本開示は、以下の段階を含む、本明細書において記述される薬学的組成物を調製する方法を提供する:
(A) 薬学的混合物を得るために、
(1) 抗体または抗体断片;
(2) 糖または糖アルコール; および
(3) 薬学的に許容される重合体
を溶媒に溶解する段階;
(B) 凍結された薬学的混合物を得るために、薬学的混合物を0℃未満の表面温度の表面に適用する段階; ならびに
(C) 凍結された薬学的混合物を回収しかつ凍結された薬学的混合物を乾燥して薬学的組成物を得る段階。
【0029】
いくつかの態様において、溶媒は水である。いくつかの態様において、溶媒は生理食塩水である。いくつかの態様において、溶媒はリン酸緩衝生理食塩水である。いくつかの態様において、溶解する段階はアミノ酸をさらに含む。いくつかの態様において、アミノ酸は正準アミノ酸である。いくつかの態様において、アミノ酸はロイシンなどの非極性アミノ酸である。
【0030】
いくつかの態様において、抗体または抗体断片、糖または糖アルコール、およびアミノ酸は、溶解温度で溶解される。いくつかの態様において、溶解温度は約-10℃~約40℃である。いくつかの態様において、溶解温度は約-5℃~約25℃である。いくつかの態様において、溶解温度は約0℃~約10℃である。
【0031】
いくつかの態様において、薬学的混合物は透明になるまで混和される。いくつかの態様において、薬学的混合物は約0.05% w/v~約5% w/vの抗体および糖の固形分を含む。いくつかの態様において、固形分は約0.1% w/v~約2.5% w/vの抗体および糖である。いくつかの態様において、固形分は約1% w/v~約3% w/vの抗体および糖である。いくつかの態様において、固形分は約0.15% w/v~約1.5% w/vの抗体および糖である。いくつかの態様において、固形分は約0.2% w/v~約0.6% w/vの抗体および糖である。いくつかの態様において、固形分は約0.5% w/v~約1.25% w/vの抗体および糖である。
【0032】
いくつかの態様において、薬学的混合物は、約0.5 mL/分~約5 mL/分の供給速度で適用される。いくつかの態様において、供給速度は約1 mL/分~約3 mL/分である。いくつかの態様において、供給速度は約2 mL/分である。いくつかの態様において、薬学的混合物は約50ミリ秒~約5秒間、表面に曝露され、凍結される。いくつかの態様において、適用することは、薬学的混合物の液滴を噴霧または滴下することを含む。いくつかの態様において、表面温度は約-180℃~約0℃であり、液滴の直径は約2~5ミリメートルであり、かつ液滴は表面から約2 cm~10 cmの距離から滴下される。
【0033】
いくつかの態様において、本方法は、液滴と表面との間に少なくとも約30℃の温度差を有する表面と、液滴を接触させる段階をさらに含む。いくつかの態様において、液滴の凍結速度は約10 K/秒~約103 K/秒である。
【0034】
いくつかの態様において、本方法は、凍結された薬学的混合物から溶媒を除去して、乾燥薬学的混合物を形成させる段階をさらに含む。いくつかの態様において、溶媒の除去は凍結乾燥を含む。いくつかの態様において、薬学的混合物は注射針などのノズルを用いて適用される。いくつかの態様において、本方法は、直径約0.1 mm~約10 mmの液滴サイズをもたらす。いくつかの態様において、液滴サイズは約0.25 mm~約5 mmである。いくつかの態様において、液滴サイズは約0.5 mm~約2.5 mmである。
【0035】
いくつかの態様において、薬学的混合物は約2 cm~約50 cmの高さから適用される。いくつかの態様において、高さは約5 cm~約20 cm、例えば約10 cmである。いくつかの態様において、表面温度は約-190℃~0℃である。いくつかの態様において、表面温度は約-25℃~約-125℃、例えば約-100℃である。いくつかの態様において、表面は回転表面である。いくつかの態様において、表面は約5 rpm~約500 rpmの速度で回転している。いくつかの態様において、表面は約100 rpm~約400 rpmの速度で、例えば約150 rpmの速度で回転している。
【0036】
いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は凍結乾燥によって乾燥される。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は第1の減圧で乾燥される。いくつかの態様において、第1の減圧は約10 mTorr~500 mTorrである。いくつかの態様において、第1の減圧は約50 mTorr~約250 mTorr、例えば約100 mTorrである。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は第1の低減温度で乾燥される。いくつかの態様において、第1の低減温度は約0℃~-100℃である。いくつかの態様において、第1の低減温度は約-20℃~約-60℃、例えば約-40℃である。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は約3時間~約36時間の一次乾燥期間にわたって乾燥される。いくつかの態様において、一次乾燥期間は約6時間~約24時間、例えば約20時間である。
【0037】
いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は二次乾燥期間、乾燥される。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は第2の減圧で二次乾燥時間、乾燥される。いくつかの態様において、二次乾燥時間は、約10 mTorr~500 mTorrである減圧におけるものである。いくつかの態様において、二次乾燥時間は、約50 mTorr~約250 mTorr、例えば約100 mTorrである減圧におけるものである。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は、第2の低減温度で二次乾燥時間にわたって乾燥される。いくつかの態様において、第2の低減温度は約0℃~30℃である。いくつかの態様において、第2の低減温度は約10℃~約30℃、例えば約25℃である。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は、約3時間~約36時間の第2の期間にわたる第2の時間にわたって乾燥される。いくつかの態様において、第2の期間は約6時間~約24時間、例えば約20時間である。いくつかの態様において、温度はランピング期間にわたって第1の低減温度から第2の低減温度に変更される。いくつかの態様において、ランピング期間は約3時間~約36時間である。いくつかの態様において、ランピング期間は約6時間~約24時間、例えば約20時間である。
【0038】
いくつかの態様において、薬学的組成物は7.5%未満などの10%未満の含水率を有する。いくつかの態様において、含水率は5%未満である。
【0039】
別の局面において、本開示は、本明細書において記述される方法を用いて調製された薬学的組成物を提供する。
【0040】
さらに別の局面において、本開示は、複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、各薬物粒子が
(A) 抗PD1抗体;
(B) トレハロース; および
(C) ロイシン
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、3:1のトレハロース対ロイシンの重量比率を含み、1重量%のトレハロースおよびロイシンを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物を提供する。
【0041】
さらに別の局面において、本開示は、複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、各薬物粒子が
(A) 抗TNF-α抗体;
(B) トレハロース; および
(C) ロイシン
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、3:1のトレハロース対ロイシンの重量比率を含み、1重量%のトレハロースおよびロイシンを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物を提供する。
【0042】
さらに別の局面において、本開示は、複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、各薬物粒子が
(A) 抗CTL4A抗体;
(B) ラクトース; および
(C) ロイシン
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、3:2のラクトース対ロイシンの重量比率を含み、1重量%のラクトースおよびロイシンを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物を提供する。
【0043】
さらに別の局面において、本開示は、複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、各薬物粒子が
(A) IgG抗体;
(B) ラクトース; および
(C) ロイシン
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、3:2のラクトース対ロイシンの重量比率を含み、1重量%のラクトースおよびロイシンを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物を提供する。
【0044】
さらに別の局面において、本開示は、複数の薬物粒子を含む薬学的組成物であって、各薬物粒子が
(A) 抗PD1抗体; および
(B) スクロース
を含み、前記薬学的組成物が、肺への投与のために製剤化されており、5重量%のスクロースを含み、かつ約1.0 μm~約4.0 μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する、前記薬学的組成物を提供する。
【0045】
さらに別の局面において、本開示は、その必要のある患者における疾患または障害を処置する方法であって、本明細書において記述される薬学的組成物の治療的有効量を患者に投与する段階を含む、前記方法を提供する。
【0046】
さらに別の局面において、本開示は、その必要のある患者における疾患または障害の処置に用いるための、本明細書において記述される薬学的組成物を提供する。
【0047】
さらに別の局面において、本開示は、疾患または障害の処置のための医薬の製造における、本明細書において記述される薬学的組成物の使用を提供する。
【0048】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明のある特定の態様を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解すべきである。というのは、本発明の趣旨および範囲内のさまざまな変更および改変がこの詳細な説明から当業者には明らかになるからである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
以下の図面は本明細書の一部分を形成し、本開示のある特定の局面をさらに実証するために含められる。本明細書において提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することにより、本開示はより良好に理解されうる。
図1図1A~1Cは、mAb粉末製剤のエアロゾル性能特性を示す。IgG2aまたは抗PD-1 mAbを、PBS中のラクトース/ロイシン60:40で製剤化し、TFFDまたは棚式FDを用いて処理した。(A~B) 抗PD1-1-LL-PBS棚式FD粉末(棚式FD)と比較した、抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末(TFFD)のエアロゾル性能特性。(C) IgG2a-1-LL-PBS TFFD粉末と比較した抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末のエアロゾル性能特性。Bにおいて、データは平均±S.D.である。
図2図2A~2Cは、抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末の特徴を示す。(A) SEMで調べた粉末の形態。バーは1 μmである。(B) 粉末X線回折(XRPD)スペクトル。(C) 変調示差走査熱量測定(mDSC)データ。
図3図3A~3Eは、液体または抗PD1-LL-PBS TFFD粉末における抗PD-1 mAbの安定性を示す。サンプルを6週間または10週間貯蔵し、(A~B) SDS-PAGEまたは(C) SECを用いて分析する直前に貯蔵条件から取り出した。SDS-PAGEの場合はサンプルをろ過せず、SECの場合はサンプルを0.45 μm PESフィルタで事前ろ過した。(D) PVP K40を含む抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末のmDSC。(E) カールフィッシャー滴定を用いて測定した、4℃、室温(RT)または40℃での6週間または10週間の貯蔵後の抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末中の(相対)含水率(は時間0からの差を示す)。CおよびEの場合、データは平均±SDであり、は有意を示し、n.s.は有意でないことを示す。
図4図4Aおよび4Bは、TFFDの前およびTFFDに供され最初の液体体積で再構成された後の、液体中の抗PD-1 mAbの抗原(PD-1)結合能を示す。(A) タンパク質含量に対して正規化されたELISAデータおよび(B) SDS-PAGEに基づくタンパク質喪失の定量化(はそれぞれの液体サンプル(TFFD前)との差を示す。データは平均±SDであり、n.s.は有意でないことを示す。
図5図5A~5Eは、タンパク質喪失の飽和性の評価を示す。(A) TFFD前の液体サンプルと比較した、賦形剤としてラクトース/ロイシン60:40を用い高含量の抗PD-1 mAb (2.6、6.6または13.2%, w/w)で調製されたTFFD粉末から再構成された抗PD-1 mAbのSDS-PAGE。(B) AからのSDS-PAGE上のバンド強度の定量化。(C) 賦形剤としてラクトース/ロイシン60:40を用い高含量の抗PD-1 mAbで調製されたTFFD粉末から再構成された抗PD-1 mAbにおける単量体含量。(D) 異なる容量で賦形剤としてラクトース/ロイシン60:40を含むPBS溶液中にて抗PD-1 mAb (1% w/w)で調製されたTFFD粉末から再構成された抗PD-1 mAbのSDS-PAGE。(E) DからのSDS-PAGE上のバンド強度の定量化。B、CおよびEにおいて、データは平均(BおよびCについては±SD)であり、は有意を示す。
図6図6A~6Fは、TFFD後のmAb回収に対する賦形剤の影響を示す。(A) PBS中で賦形剤としてスクロースのみを用いて調製された抗PD-1 mAb TFFD粉末には目に見える凝集体がない。(B) 異なる組成(ラクトース/ロイシン, 60:40、トレハロース/ロイシン(TL), 75:25またはスクロース(S)単独)の3つの粉末から再構成された抗PD-1 mAbを比較するSDS-PAGE。(C) BにおけるSDS-PAGEからのタンパク質の定量化(TFFD前の各液体サンプルと比較して、は有意を示し、n.s.は有意でないことを示す)。(D) SECによって決定された、トレハロース/ロイシン(75:25) (TL)またはスクロースのみ(S)で調製された抗PD-1 mAb TFFD粉末中の単量体のパーセント。(E) 賦形剤としてスクロースのみで調製された抗PD-1 mAb TFFD粉末から再構成された抗PD-1 mAbのPD-1結合活性を示すELISAデータ。データはタンパク質含量に対して正規化された。(F) 賦形剤としてスクロースのみで調製された抗PD-1 mAb TFFD粉末のエアロゾル特性。C~Fにおいて、データは平均±SD (n = 3)である。
図7】抗PD1-1-M TFFD粉末のエアロゾル特性を示す。データは平均± S.D. (n = 3)である。
図8図8A~8Cは、PBS中のトレハロース/ロイシン 75:25を用いた TFFD により調製された抗 TNF-α mAb乾燥粉末の特徴を示す。(A) TFFDに供される前後の抗TNF-α mAbを示すSDS-PAGE。(B) AにおけるSDS-PAGEゲルからのタンパク質の定量化。(C) TFFDに供される前後の抗TNF-α mAb単量体のパーセント。
図9図9A~9Dは、Novatech(登録商標) Talcair(商標)粉末ブロワーを用いた抗PD-1 1% (w/w) TFF粉末のエアロゾル化を示す。組成は、(図9Aおよび9B)ラクトース/ロイシン60:40 1% (w/v)ならびに(図9Cおよび9D)スクロース5% (w/v)であった。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
いくつかの態様において、本開示は、薄膜凍結(TFF)を用いて調製された乾燥粉末としての抗体および抗体断片を提供し、得られた粉末の特徴を本明細書において調べる。いくつかの態様において、本開示は、薄膜凍結を用いてこれらの乾燥粉末を作製する方法を提供する。これらのおよびさらなる詳細は、本明細書において提供される。
【0051】
I. 薬学的組成物
本開示は、薄膜凍結(TFF)を用いて調製される生物学的に活性な抗体の組成物を提供する。TFFプロセスは、肺送達のための良好なエアロゾル性能を有する乾燥粉末を操作するために、製薬産業に新たに適応された低温技術である。以前、薄膜凍結(TFF)を適用して、リゾチームおよび乳糖脱水素酵素(LDH)などのタンパク質の乾燥粉末を、その酵素活性を保持しながら調製することに成功したが、粉末のエアロゾル特性は不明であった。
【0052】
肺がんは、肺投与が研究されている抗体では最も一般的な疾患である。少数クラスのmAbが肺がんの処置のためにFDAにより承認されている: 抗上皮増殖因子受容体(抗EGFR)、抗血管内皮増殖因子受容体2 (抗VEGFR2)、抗血管内皮増殖因子A (抗VEGF-A)、および抗プログラム細胞死タンパク質1 (抗PD-1)。Guilleminaultらは、同所性肺腫瘍を有するマウスの肺へのエアロゾル化を介した抗EGFR mAbであるセツキシマブの送達を探求した。溶液中のセツキシマブのエアロゾル化により、2時間の時点でIV注射と比較してセツキシマブの肺腫瘍分布が4倍高くなった。さらに、エアロゾル化されたセツキシマブは、生理食塩水と比較して平均腫瘍体積を37%減少させることができ(p<0.05; Guilleminault et al., 2014)、肺送達後もmAbがその機能性を保持していることが示された。同様の研究および結果がMaillet et al., 2011によってもたらされた。Herveらは、抗VEGF mAbであるG6-31をエアロゾル化によってマウスに投与した。エアロゾル送達によるG6-31の血漿Cmaxは、IV送達のそれの約1/100であり、生体利用可能な画分は5.1%と推定された。それゆえ、G6-31は肺の局所腫瘍の処置には使用できるが、全身転移および他の悪性腫瘍の処置には使用できない可能性が高い。抗PD-1 mAbは、免疫系を刺激して抗腫瘍特異的な免疫応答を開始するという点で独特である。残念ながら、それらはその使用を制限する免疫関連有害事象(irAE)に関連しており、局所送達によりその有効性を維持しながらその忍容性を改善することができる。
【0053】
肺がんに加えて、肺経路を介した投与から恩恵を受ける可能性のある他の適応症がある。抗腫瘍壊死因子α(抗TNFα)剤は、特発性肺線維症(Raghu et al., 2008)および肺サルコイドーシス(Baughman et al., 2006; Rossman et al., 2006; Sweiss et al., 2014; Utz et al., 2003)の処置のために臨床で試験されているが、一貫性のない有効性と再発のために、結果は有望ではなかった(Karampitsakos et al., 2019)。現在までに肺病を処置するために抗TNFα mAbは承認されていない。抗TNFα Fab断片を胸膜内に送達し、ウサギにおいてタルクによる胸膜癒着術が軽減された(Cheng et al., 2000)。胸膜内経路を介した抗体粉末の送達は、潜在的な用途である。
【0054】
本明細書において提供されるのは、超急速凍結(URF)プロセスによって作製できる生物学的に活性なモノクローナル抗体(mAb)の乾燥粉末製剤である。得られる乾燥粉末製剤は、いくつかの明確な利点を有する。例えば、薄膜凍結は超急速凍結プロセス(すなわち、100~1000 K/秒)であり、核生成速度と小さな氷結晶の形成を促進することにより、粒度分布を維持することができる。生物学的に活性なモノクローナル抗体は、極低温で冷却された表面に滴下されて、例えば50ミリ秒~5秒以内に凍結薄膜を形成する。曝露は、前記生物学的に活性なモノクローナル抗体の液滴を噴霧または滴下することを含んでよい。凍結表面温度は約-180℃~約0℃であってよく、液滴の直径は約2~5ミリメートルであり、かつ液滴は凍結表面から約2 cm~10 cmの距離から滴下される。本方法は、液滴と凍結表面との間に少なくとも約30℃の温度差を有する凍結表面と、液滴を接触させる段階を含んでよい。前記液滴の凍結速度は10 K/秒~103 K/秒であってよい。本方法は、薄膜から溶媒を除去して、乾燥組成物を形成させる段階をさらに含んでよい。例えば、前記溶媒の除去は凍結乾燥/昇華を含む。他の高速凍結法を採用してもよい。より遅い凍結速度を有する技術(例えば、従来の棚式凍結乾燥)は、相分離および大きな氷結晶をもたらし、したがってタンパク質の損傷(例えば、変性および/または凝集)をもたらす。URFの使用により、mAbが過度の分解から保護され、成分が製剤化後も実質的な生物学的活性を保持するように、組成物を安定化できることが示された。
【0055】
場合によっては、製剤は、さらなる安定化を提供するために、糖などの少なくとも1つの賦形剤を含む。さらに、態様の乾燥粉末は、多種多様な抗体含有組成物を含むことができる。さらに、態様の粉末は、例えば肺に、治療用物質を直接投与するために使用できることが実証されている。したがって、本発明の局面は、これまでに使用されてきた組成物および方法を超える顕著な利点を示す、新しい薬学的製剤、製剤方法および投与様式を提供する。
【0056】
場合によっては、本開示の組成物は、IgG抗体または抗TNF-α抗体などのmAbを含む。本明細書において詳述されるように粉末に加工されたmAbは、実質的な活性を保持できることが示されている。したがって、本明細書において提供される方法および組成物は、例えば貯蔵および/または輸送のために、mAbを安定化するために用いることができる。同様に、mAb含有粉末は、その必要のある患者に直接投与する(または投与前に再構成する)ことができる。
【0057】
A. モノクローナル抗体(mAb)および抗体断片
前記態様の方法および組成物は、生物学的に活性な抗体に関する。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリン、または標的抗原への特異的結合についてインタクトな抗体と競合できるその断片をいい、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、および二重特異性抗体を含む。「抗体」は、抗原結合タンパク質の一種である。インタクトな抗体は、一般に、少なくとも2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含むが、いくつかの例では、重鎖のみを含むことができるラクダ科動物において天然に存在する抗体など、より少ない鎖を含むことができる。抗体は、単一の供給源のみに由来してもよいし、または「キメラ」であってもよい、すなわち、以下にさらに記述されているように、抗体の異なる部分が2つの異なる抗体に由来してもよい。抗原結合タンパク質、抗体、または結合断片は、ハイブリドーマにおいて、組換えDNA技法により、またはインタクトな抗体の酵素もしくは化学分解により製造することができる。別のことが示されていない限り、「抗体」という用語は、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、変種、断片、およびムテインを含み、これらの例は以下に記述されている。さらには、明示的に除外されていない限り、抗体は、それぞれ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書において「抗体模倣物」といわれることがある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合物(本明細書において「抗体コンジュゲート」といわれることがある)、およびこれらの断片を含む。いくつかの態様において、当該用語はまた、ペプチボディを包含する。
【0058】
天然の抗体構造単位は、典型的には、四量体を含む。それぞれのそのような四量体は、典型的には、2つの同一のポリペプチド鎖の対から構成され、各対は1つの全長「軽」鎖(ある特定の態様において、約25 kDa)および1つの全長「重」鎖(ある特定の態様において、約50~70 kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、典型的には、約100~110個またはそれより多くのアミノ酸からなる可変領域を含み、これは典型的に抗原認識に関与する。各鎖のカルボキシ末端部分は、典型的には、エフェクタ機能に関与できる定常領域を画定する。ヒト軽鎖は、典型的には、κおよびλ軽鎖として分類される。重鎖は、典型的には、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のアイソタイプを画定する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むがこれらに限定されないいくつかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1およびIgM2を含むがこれらに限定されないサブクラスを有する。IgAは同様に、単量体の形態または二量体の形態のいずれかとしてのIgA1およびIgA2を含むがこれらに限定されないサブクラスにさらに分割される。全長軽鎖および重鎖内で、可変領域と定常領域は、典型的には約12個またはそれより多くのアミノ酸からなる「J」領域により連結され、重鎖は、約10個のさらなるアミノ酸からなる「D」領域も含む。例えば、Fundamental Immunology, Ch.7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y.(1989))を参照されたい(参照によりその全体が全ての目的のために組み入れられる)。各軽鎖/重鎖可変領域対は、典型的には、抗原結合部位を形成する。
【0059】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、典型的には、重鎖におけるアミノ末端のおおよそ120~130アミノ酸および軽鎖におけるアミノ末端の約100~110アミノ酸を含む、抗体の軽鎖および/または重鎖の一部分をいう。ある特定の態様において、異なる抗体の可変領域は、同じ種の抗体の間でさえもアミノ酸配列が大幅に異なる。抗体の可変領域は、典型的には、特定の抗体のその標的についての特異性を決定する。
【0060】
可変領域は、典型的には、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)が、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域により連結された、同じ一般構造を呈する。各対の2つの鎖のCDRは、典型的には、フレームワーク領域により位置合わせされ、特定のエピトープへの結合を可能とすることができる。軽鎖および重鎖可変領域の両方は、N末端からC末端に向かって、典型的には、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4のドメインを含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、典型的には、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、Chothia&Lesk, J. Mol. Biol, 196:901-917 (1987)またはChothia et al, Nature, 342:878-883 (1989)の定義にしたがって為される。
【0061】
ある特定の態様において、抗体重鎖は、抗体軽鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の態様において、抗体軽鎖は、抗体重鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の態様において、抗体の結合領域は、抗体軽鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の態様において、抗体の結合領域は、抗体重鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の態様において、個々の可変領域は、他の可変領域の非存在下で抗原に特異的に結合する。
【0062】
ある特定の態様において、CDRの確定的記述および抗体の結合部位を構成する残基の同定は、抗体の構造の解明および/または抗体-リガンド複合体の構造の解明により達成される。ある特定の態様において、それは、当業者に公知の種々の技法のいずれか、例えばX線結晶構造解析法により達成することができる。ある特定の態様において、さまざまな解析方法を用いてCDR領域を同定するかまたは概ね決定することができる。そのような方法の例としては、Kabatの定義、Chothiaの定義、AbMの定義、およびcontactの定義が挙げられるがこれらに限定されることはない。
【0063】
Kabatの定義は、抗体における残基を付番するための標準であり、典型的にはCDR領域を同定するために使用される。例えば、Johnson&Wu, Nucleic Acids Res., 28:214-8 (2000)を参照されたい。Chothiaの定義はKabatの定義と類似するが、Chothiaの定義は、ある特定の構造的ループ領域の位置を考慮に入れる。例えば、Chothia et al, J. Mol. Biol, 196:901-17 (1986); Chothia et al., Nature, 342:877-83 (1989)を参照されたい。AbMの定義は、抗体構造をモデル化するOxford Molecular Groupにより製造された統合された一連のコンピュータプログラムを使用する。例えば、Martin et al, Proc Natl Acad Sci (USA), 86:9268-9272 (1989); 「AbM(商標), A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies,」Oxford, UK; Oxford Molecular, Ltd.を参照されたい。AbMの定義は、Samudrala et al,「Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach,」in PROTEINS, Structure, Function and Genetics Suppl, 3:194-198 (1999)に記載されているように、ナレッジデータベースとアブイニシオ法との組み合わせを使用して一次配列から抗体の三次構造をモデル化する。contactの定義は、利用可能な複合体結晶構造の解析に基づく。例えば、MacCallum et al, J. Mol. Biol, 5:732-45 (1996)を参照されたい。
【0064】
慣習により、重鎖におけるCDR領域は典型的にはH1、H2、およびH3といわれ、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に順次付番される。軽鎖におけるCDR領域は典型的にはL1、L2、およびL3といわれ、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に順次付番される。
【0065】
「軽鎖」という用語は、全長軽鎖、および結合特異性を付与するのに充分な可変領域配列を有するその断片を含む。全長軽鎖は、可変領域ドメインVLと、定常領域ドメインCLとを含む。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。軽鎖は、κ鎖およびλ鎖を含む。
【0066】
「重鎖」という用語は、全長重鎖、および結合特異性を付与するのに充分な可変領域配列を有するその断片を含む。全長重鎖は、可変領域ドメインVHと、3つの定常領域ドメインCH1、CH2、およびCH3とを含む。VHドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、CHドメインはカルボキシル末端にあり、CH3がポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い。重鎖は、IgG (IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4サブタイプを含む)、IgA (IgA1およびIgA2サブタイプを含む)、IgM、およびIgEを含むいずれのアイソタイプであってもよい。
【0067】
二重特異性抗体または二機能性抗体は、典型的には、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の連結が挙げられるがこれらに限定されないさまざまな方法により製造されることができる。例えば、Songsivilai et al, Clin. Exp. Immunol, 79:315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol, 148:1547-1553 (1992)を参照されたい。
【0068】
「抗原」という用語は、適応免疫応答を誘導できる物質をいう。具体的には、抗原は、適応免疫応答の受容体の標的として働く物質である。典型的には、抗原は、それ自体では身体中の免疫応答を誘導できない抗原特異的受容体に結合する分子である。抗原は、通常、タンパク質および多糖であり、頻度はより低いが脂質のこともある。本明細書において用いられる場合、抗原としては、免疫原およびハプテンも挙げられる。
【0069】
「Fc」領域は、抗体のCH1およびCH2ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つまたはそれ以上のジスルフィド結合およびCH3ドメインの疎水性相互作用により一緒に保持される。
【0070】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方の可変領域を含むが、定常領域を欠いている。
【0071】
特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに「特異的に結合する」または「特異的な」抗体は、あらゆる他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、その特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する抗体である。
【0072】
同じエピトープについて競合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)の文脈において使用される場合の「競合する」という用語は、試験されている抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)が共通の抗原への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンドまたは参照抗体)の特異的結合を防止または阻害する(例えば、低減させる)アッセイにより決定される抗原結合タンパク質間の競合を意味する。ある抗原結合タンパク質が別の抗原結合タンパク質と競合するかどうかを決定するために多種類の競合結合アッセイを使用することができ、例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al., 1983, Methods in Enzymology 9:242-253を参照); 固相直接ビオチン-アビジンEIA (例えば、Kirkland et al., 1986, J. Immunol.137:3614-3619を参照)固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane, 1988, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Pressを参照); 1~125個の標識を使用する固相直接標識RIA (例えば、Morel et al, 1988, Molec. Immunol.25:7-15を参照); 固相直接ビオチン-アビジンEIA (例えば、Cheung, et al, 1990, Virology 176:546-552を参照); および直接標識RIA (Moldenhauer et al, 1990, Scand. J. Immunol.32:77-82)がある。典型的には、そのようなアッセイは、これらの非標識試験抗原結合タンパク質と標識参照抗原結合タンパク質のいずれかを有する、固体表面または細胞に結合した精製抗原の使用を伴う。競合阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することにより測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイにより同定される抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)としては、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質および立体障害が起こるように参照抗原結合タンパク質が結合するエピトープの充分に近位にある隣接するエピトープに結合する抗原結合タンパク質が挙げられる。競合結合を決定する方法に関する追加の詳細は、本明細書において実施例にて提供される。通常、競合抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、それは共通の抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的結合を少なくとも40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%、または75%もしくはそれ以上阻害する(例えば、低減させる)。いくつかの例では、結合は、少なくとも80~85%、85~90%、90~95%、95~97%、または97%もしくは以上阻害される。
【0073】
本明細書において用いられる「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原上の原子またはアミノ酸の特定の群をいう。エピトープは、直鎖状エピトープまたは立体配座エピトープのいずれであってもよい。直鎖状エピトープは、抗原のアミノ酸の連続的な配列により形成され、それらの一次構造に基づいて抗体と相互作用する。他方、立体配座エピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続部分から構成され、抗原の3D構造に基づいて抗体と相互作用する。一般に、エピトープは約5または6アミノ酸の長さである。2つの抗体は、抗原について競合結合を呈する場合、抗原内の同じエピトープに結合しうる。
【0074】
いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。さらなる態様において、抗体はIgG抗体である。いくつかの態様において、抗体はPD-1に結合する。いくつかの態様において、抗体は抗PD-1抗体である。いくつかの態様において、抗体はPD-L1に結合する。いくつかの態様において、抗体は抗PD-L1抗体である。いくつかの態様において、抗体はCTL4Aに結合する。いくつかの態様において、抗CTL4A抗体である。いくつかの態様において、抗体はTNF-αに結合する。いくつかの態様において、抗体は抗TNF-α抗体である。
【0075】
いくつかの局面において、本開示は、複数の薬物粒子を含む乾燥粉末を含む薬学的組成物であって、各薬物粒子が
(A) 抗体または抗体断片; および
(B) 糖または糖アルコール
を含む、前記薬学的組成物を提供する。
【0076】
いくつかの態様において、薬学的組成物は緩衝液をさらに含む。いくつかの態様において、緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水などの、リン酸緩衝液である。いくつかの態様において、糖はラクトース、トレハロース、またはスクロースなどの、二糖類である。いくつかの態様において、薬学的組成物はアミノ酸をさらに含む。いくつかの態様において、アミノ酸は正準アミノ酸である。いくつかの態様において、アミノ酸はロイシンなどの、非極性アミノ酸である。いくつかの態様において、薬学的組成物はナノボディまたはFab'などの、抗体断片を含む。いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG抗体である。いくつかの態様において、抗体はPD-1に結合する。いくつかの態様において、抗体は抗PD-1抗体である。いくつかの態様において、抗体はPD-L1に結合する。いくつかの態様において、抗体は抗PD-L1抗体である。いくつかの態様において、抗体はCTL4Aに結合する。いくつかの態様において、抗体は抗CTL4A抗体である。いくつかの態様において、抗体はTNF-αに結合する。いくつかの態様において、抗体は抗TNF-α抗体である。
【0077】
いくつかの態様において、薬学的組成物は約1:6から約9:1、約1:2から約8:1の糖対アミノ酸の重量比率、約3:2から約3:1、もしくは、約1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1から、約9:1の、またはその中で導出可能な任意の範囲の糖対アミノ酸の重量比率を含む。他の態様において、薬学的組成物はアミノ酸を含まない。いくつかの態様において、薬学的組成物は、全賦形剤に対する、約0.1%から約80%の抗体、約0.25%から約2.5%の抗体、約0.33%から約1.5%の抗体、もしくは、約0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%から、約80%の、またはその中で導出可能な任意の範囲の抗体の重量比率を含む。いくつかの態様において、抗体の重量比率は全賦形剤に対するものである。他の態様において、抗体の重量比率は組成物中の糖の量に対するものである。
【0078】
いくつかの態様において、薬物粒子は約0.5 μmから約10.0 μm、約1.0 μmから約4.0 μm、約1.25 μmから約3.5 μm、約1.5 μmから約3.25 μm、約1.5 μmから約2.5 μm、もしくは、約0.5 μm、0.75 μm、1.0 μm、1.25 μm、1.5 μm、1.75 μm、2.0 μm、2.25 μm、2.5 μm、2.75 μm、3.0 μm、3.25 μm、3.5 μm、4.0 μm、5.0 μm、6.0 μm、7.0 μm、8.0 μm、9.0 μmから、約10 μmの、またはその中で導出可能な任意の範囲の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する。いくつかの態様において、薬物粒子は約1.0から約5.0、約1.25から約4.0、約1.5から約3.5、約1.75から約3.0、もしくは、約1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、4.0から、約5.0の、またはその中で導出可能な任意の範囲の幾何標準偏差(GSD)を有する。
【0079】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、乾燥粉末吸入器における使用のためにカプセル中に製剤化される。いくつかの態様において、薬学的組成物は吸入器中に製剤化される。他の態様において、薬学的組成物は、粉末送風機または粉末噴霧器における使用のために製剤化される。いくつかの態様において、吸入器中に製剤化された場合の薬学的組成物は、回収用量の割合として20%超、40%超、45%超、約35%から約100%、約40%から約99%、約45%から約98%、もしくは、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%から、約100%の、またはその中で導出可能な任意の範囲の微粉末画分を有する。いくつかの態様において、吸入器中に製剤化された場合の薬学的組成物は、吸入器を用いた送達用量の割合として50%超、55%超、70%超、約50%から約100%、約55%から約99%、約70%から約98%、もしくは、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%から、約100%の、またはその中で導出可能な任意の範囲の微粉末画分を有する。いくつかの態様において、抗体はその未処理活性の少なくとも10%、その未処理活性の少なくとも50%、その未処理活性の少なくとも80%、もしくは、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%から、約100%の、またはその中で導出可能な任意の範囲を保持する。
【0080】
いくつかの態様において、薬学的組成物中の抗体の少なくとも50%は、ある期間にわたるある温度での貯蔵後に単量体の形態をとる。いくつかの態様において、薬学的組成物は、少なくとも75%の、単量体の形態の抗体、少なくとも80%の、単量体の形態の抗体、または、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%から、約100%の、もしくはその中で導出可能な任意の範囲、を含む。いくつかの態様において、温度は室温である。いくつかの態様において、温度は、約-180℃から約20℃、約-80℃から約10℃、約-10℃から約5℃、約10℃から約50℃、約15℃から約45℃、約20℃から約40℃、もしくは、約-180℃、-160℃、-140℃、-120℃、-100℃、-90℃、-80℃、-70℃、-60℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃から、約50℃の、またはその中で導出可能な任意の範囲である。いくつかの態様において、薬学的組成物は水に溶解されている。いくつかの態様において、水は生理食塩水である。いくつかの態様において、水はリン酸緩衝生理食塩水である。いくつかの態様において、水はクエン酸緩衝液である。
【0081】
B. 賦形剤
いくつかの局面において、本開示は、薬学的組成物中に製剤化された1つまたは複数の賦形剤を含む。薬学的組成物は、糖もしくは糖アルコールまたはアミノ酸などの1つまたは複数の賦形剤を含む。さらに、組成物は、薬学的に許容される重合体などの1つまたは複数のさらなる賦形剤をさらに含みうる。いくつかの態様において、糖対アミノ酸の重量比率は、約1:6から約9:1、約1:2から約8:1、または約3:2から約3:1である。いくつかの態様において、糖対アミノ酸の重量比率は、約1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1から、約9:1の、またはその中で導出可能な任意の範囲である。他の態様において、薬学的組成物はアミノ酸を含まない。薬学的組成物は、約20%から約99.9%、40%から約99.5%、または約80%から約99%のいずれか1つの賦形剤または賦形剤の群の量をさらに含みうる。薬学的組成物中の賦形剤の量は、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、82%、84%、85%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.4%、99.5%、99.6%、99.8%、もしくは99.9%、またはその中で導出可能な任意の範囲でありうる。
【0082】
i. 糖または糖アルコール
いくつかの局面において、本開示は、薬学的組成物中に製剤化された1つまたは複数の賦形剤を含む。いくつかの態様において、本明細書において用いられる賦形剤は、水溶性賦形剤である。これらの水溶性賦形剤は、スクロース、トレハロースもしくはラクトースなどの二糖類、フルクトース、グルコース、ガラクトースからなるラフィノースなどの三糖類、デンプンもしくはセルロースなどの多糖類、またはキシリトール、ソルビトールもしくはマンニトールなどの糖アルコールのような、糖または糖アルコールを含む。いくつかの態様において、これらの賦形剤は室温で固体である。糖アルコールのいくつかの非限定的な例としては、エリスリトール、スレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリトール、マルトテトライトール、またはポリグリシトールが挙げられる。他の局面において、ロイシン、トリロイシン、ヒスチジンなどを含めて、アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質のようなさらに大きな分子が、吸入送達を促進するために組み込まれる。
【0083】
ii. アミノ酸
いくつかの局面において、本開示は、1つまたは複数のアミノ酸、ペプチド、またはタンパク質を含む薬学的組成物を提供する。アミノ酸はグリシン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギンまたはグルタミンなどの正準アミノ酸の1つであってよい。アミノ酸は非天然アミノ酸、またはグリコシル化アミノ酸もしくはリン酸化アミノ酸などの修飾アミノ酸であってもよい。本明細書において用いられるアミノ酸は、複数のアミノ酸のポリペプチドの形態であってよく、または同じアミノ酸のポリペプチドであってよい。特に、2、3、4、5、6、8、10、15、20、または25アミノ酸残基のポリペプチドが用いられてよい。他の局面において、ロイシン、トリロイシン、ヒスチジンなどを含めて、アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質のようなさらに大きな分子が、吸入送達を促進するために組み込まれる。
【0084】
iii. 緩衝液
いくつかの局面において、本開示は、1つまたは複数の緩衝液を含む組成物を提供する。薬学的組成物において用いられうる緩衝液は、リン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液または酢酸緩衝液を含む。緩衝液は水溶液で用いられてよい。水溶液は、生理食塩水溶液などの1つまたは複数の塩をさらに含んでよい。緩衝液は微量の1つまたは複数の有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0085】
iv. 他の賦形剤
いくつかの局面において、本開示は、薬学的に許容される重合体をさらに含みうる組成物を提供する。いくつかの態様において、重合体は、薬学的製剤における使用が承認されており、実質的に分解することなく、特定の温度以上に上昇させた場合に軟化または柔軟性増加を起こすことが知られている。本組成物は、1つまたは複数の粘膜付着性重合体を含みうることも企図される。粘膜付着性重合体のいくつかの非限定的な例としては、レクチン、フィンブリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、カラヤガム(karya gum)、メチルセルロース、ポリ(エチレングリコール) (PEG)、レテン、ポリアクリレート、デンプン、キトサン、ジェランまたはトラガカントが挙げられる。
【0086】
本明細書において記述される組成物内では、単一の重合体、または複数の重合体の組み合わせが用いられうる。いくつかの態様において、本明細書において用いられる重合体は、セルロース系および非セルロース系の2つのクラスに分類されうる。これらのクラスは、それぞれの電荷によって、中性およびイオン化可能にさらに定義されうる。イオン化可能重合体は、生理学的に関連するpHで帯電した1つまたは複数の基によって官能化されている。中性非セルロース系重合体のいくつかの非限定的な例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、コポビドン、およびポロキサマーが挙げられる。このクラス内で、いくつかの態様においては、ピロリドン含有重合体が特に有用である。イオン化可能セルロース系重合体のいくつかの非限定的な例としては、酢酸フタル酸セルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートが挙げられる。最後に、中性セルロース系重合体のいくつかの非限定的な例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシメチルセルロースが挙げられる。
【0087】
使用されうるいくつかの特定の薬学的に許容される重合体は、例えば、Eudragit (商標) RS PO、Eudragit (商標) S100、Kollidon SR (ポリ(酢酸ビニル)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)共重合体)、Ethocel (商標) (エチルセルロース)、HPC (ヒドロキシプロピルセルロース)、酢酸酪酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン) (PVP)、ポリ(エチレングリコール) (PEG)、ポリ(エチレンオキシド) (PEO)、ポリ(ビニルアルコール) (PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステル共重合体、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースブチレート、カルボキシメチルセルロースプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネートエチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体(GA-MMA)、C-5または60 SH-50 (Shin-Etsu Chemical Corp.)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、セルロースアセテートトリメレテート(cellulose acetate trimelletate) (CAT)、ポリ(酢酸ビニル)フタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)共重合体(MA-EA)、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)共重合体(MA-MMA)、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)共重合体、ポリ(メタクリル酸-コ-メチルメタクリレート1:2)、ポリ(メタクリル酸-コ-メチルメタクリレート1:1)、ポリ(メチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート-コ-メタクリル酸7:3:1)、ポリ(ブチルメタクリレート-コ-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-コ-メチルメタクリレート1:2:1)、ポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート2:1)、ポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート2:1)、ポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート-コ-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド1:2:0.2)、ポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート-コ-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド1:2:0.1)、Eudragit L-30-D (商標) (MA-EA、1:1)、Eudragit L-100-55 (商標) (MA-EA、1:1)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-PEGグラフト共重合体、ポリビニルアルコール/アクリル酸/メチルメタクリレート共重合体、ポリアルキレンオキシド、Coateric (商標) (PVAP)、Aquateric (商標) (CAP)およびAQUACOAT (商標) (HPMCAS)、ポリカプロラクトン、デンプン、ペクチン、キトサンまたはキチンおよびそれらの共重合体および混合物、ならびに多糖、例えば、トラガント、アラビアガム、グアーガムおよびキサンタンガムを含む。
【0088】
いくつかの態様において、本明細書において記述される組成物は、ポビドン、コポビドン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニルおよびSOLUPLUS (登録商標) (BASFから市販されているポリビニルカプロラクタムポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体)から選択される薬学的に許容される重合体を含有する。特に、薬学的に許容される重合体は、ポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとの共重合体であってよい。特に、共重合体は、約3~5単位の酢酸ビニルに対して約5~7ビニルピロリドン単位、特に、6単位のビニルピロリドンおよび4単位の酢酸ビニルを含みうる。重合体の分子量の数平均は、約15,000~約20,000ダルトンであってよい。薬学的に許容される重合体は、25086-89-9のCAS番号を有するKollidan (登録商標) VA 64 (コポビドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニル)でありうる。
【0089】
いくつかの態様において、本明細書において用いられる賦形剤は、キトサン、アルギネート、ジェラン、デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルピロリジン、またはセルロースなどの、薬学的に許容される重合体である。いくつかの態様において、賦形剤はポリビニルピロリドンである。いくつかの態様において、賦形剤は、約10,000ダルトンから約80,000ダルトン、もしくは、約10,000ダルトン、20,000ダルトン、30,000ダルトン、40,000ダルトン、50,000ダルトン、60,000ダルトン、70,000ダルトンから、約80,000ダルトンの、またはその中で導出可能な任意の範囲の分子量を有するポリビニルピロリドンである。
【0090】
いくつかの局面において、薬学的組成物中の賦形剤の量は、約0.5%から約20% w/w、約1%から約10% w/w、約2%から約8% w/wまたは約2%から約5% w/wである。前駆体溶液中の賦形剤の量は、約0.5%、0.75%、1%、1.25%、1.5%、1.75%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、6%、7%、8%、9%から、約10% w/wの、またはその中で導出可能な任意の範囲を含む。
【0091】
II. 薄膜凍結法
ある特定の局面において、本開示は、薄膜凍結プロセスなどのURFプロセスを用いて調製されうる薬学的組成物を提供する。そのような方法は、米国特許出願第2010/0221343号およびWatts, et al., 2013に記述されており、これらの両方とも参照により本明細書に組み入れられる。場合によっては、前記方法では、最大10,000 K/秒、例えば、少なくとも1,000、2,000、5,000、または8,000 K/秒の超急速凍結速度を採用する。いくつかの態様において、これらの方法は、薬学的混合物を形成させるために、薬学的組成物の成分を溶媒に溶解する段階を含む。溶媒は水もしくは有機溶媒、または水および有機溶媒の混合物のどちらかでありうる。いくつかの態様において、溶媒は水である。いくつかの態様において、溶媒は生理食塩水である。いくつかの態様において、溶媒はリン酸緩衝生理食塩水である。他の態様において、溶媒はクエン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液またはコハク酸緩衝液である。
【0092】
いくつかの態様において、アミノ酸は薬学的混合物にさらに溶解される。いくつかの態様において、アミノ酸は正準アミノ酸である。いくつかの態様において、アミノ酸はロイシンなどの、非極性アミノ酸である。いくつかの態様において、抗体または抗体断片、糖または糖アルコール、およびアミノ酸は、溶解温度で溶解される。いくつかの態様において、溶解温度は約-10℃から約40℃、約-5℃から約25℃、約0℃から約10℃、もしくは、約-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃から、約40℃の、またはその中で導出可能な任意の範囲である。いくつかの態様において、薬学的混合物は透明になるまで混和される。
【0093】
いくつかの態様において、薬学的混合物は、抗体または抗体断片および糖または糖アルコールを含む水溶液である。いくつかの態様において、薬学的混合物は、約0.05% w/vから約5% w/v、約0.1% w/vから約2.5% w/v、約1.0% w/vから約3.0% w/v、約0.15% w/vから約1.5% w/v、約0.2% w/vから約0.6% w/v、もしくは約0.5% w/vから約1.25% w/vの抗体および糖、または約0.01 w/v、0.02 w/v、0.03 w/v、0.04 w/v、0.05 w/v、0.10 w/v、0.15 w/v、0.20 w/v、0.25 w/v、0.50 w/v、0.60 w/v、0.70 w/v、0.80 w/v、0.90 w/v、1.00 w/v、1.25 w/v、1.50 w/v、2.00 w/v、2.25 w/v、2.50 w/v、2.75 w/v、3.00 w/v、3.25 w/v、3.50 w/v、3.75 w/v、4.00 w/v、4.50 w/vから、約5.00 w/vの、あるいはその中で導出可能な任意の範囲の固形分を含みうる。
【0094】
この前駆体溶液は、薬学的混合物を凍結させる温度にある表面に付着されうる。いくつかの態様において、この温度は、周囲圧力での溶液の凍結点未満でありうる。他の態様において、減圧を表面に適用して、周囲圧力の凍結点未満の温度で溶液を凍結させてもよい。いくつかの態様において、表面温度は0℃未満である。表面は、移動コンベア型システム上で回転または移動し、したがって、前駆体溶液が表面上に均一に分布することを可能にしてもよい。あるいは、前駆体溶液は、均一な表面を作出するように表面に適用されてよい。
【0095】
前駆体溶液を表面に適用した後、溶媒を除去して薬学的組成物を得てもよい。減圧下もしくは高温下での蒸発、または凍結乾燥を含めて、溶媒を除去する任意の適切な方法を適用してもよい。いくつかの態様において、凍結乾燥は第1の減圧および/または第1の低減温度を含みうる。そのような第1の低減温度は、0℃から約-100℃、-20℃から約-60℃、もしくは、約0℃、-10℃、-20℃、-30℃、-40℃、-50℃、-60℃、-70℃、-80℃、-90℃から、約-100℃の、またはその中で導出可能な任意の範囲でありうる。さらに、溶媒は、約10 mTorrから500 mTorr、約50 mTorrから約250 mTorr、もしくは、約10 mTorr、20 mTorr、30 mTorr、40 mTorr、50 mTorr、100 mTorr、150 mTorr、200 mTorr、250 mTorr、300 mTorr、400 mTorrから、約500 mTorrの、またはその中で導出可能な任意の範囲の第1の減圧下で除去されてもよい。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は、約3時間から約36時間、約6時間から約24時間、もしくは、約3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間から、約36時間の、またはその中で導出可能な任意の範囲の一次乾燥期間にわたって乾燥される。
【0096】
いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は、二次乾燥期間中に乾燥される。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は、第2の減圧で二次乾燥時間乾燥される。いくつかの態様において、二次乾燥時間は、約10 mTorrから500 mTorr、約50 mTorrから約250 mTorr、もしくは約10 mTorrから500 mTorr、約50 mTorrから約250 mTorr、もしくは、約10 mTorr、20 mTorr、30 mTorr、40 mTorr、50 mTorr、100 mTorr、150 mTorr、200 mTorr、250 mTorr、300 mTorr、400 mTorrから、約500 mTorrの、またはその中で導出可能な任意の範囲である減圧におけるものである。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は、第2の低減温度で二次乾燥時間にわたって乾燥される。いくつかの態様において、第2の低減温度は約0℃から30℃、約10℃から約30℃、もしくは、約0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃から、約30℃の、またはその中で導出可能な任意の範囲である。いくつかの態様において、凍結された薬学的組成物は、約3時間から約36時間、約6時間から約24時間、もしくは、約3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間から、約36時間の、またはその中で導出可能な任意の範囲の第2の期間にわたって乾燥される。いくつかの態様において、温度はランピング期間にわたって第1の低減温度から第2の低減温度に変更される。いくつかの態様において、ランピング期間は、約3時間から約36時間、約6時間から約24時間、もしくは、約3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間から、約36時間、またはその中で導出可能な任意の範囲である。
【0097】
いくつかの態様において、薬学的組成物は10%未満、7.5%未満、もしくは5%未満、またはその中で導出可能な任意の範囲の含水率を有する。
【0098】
これらの方法を用いて調製された組成物などは、装置によって処理された際に組成物がさらに小さな粒子に容易に剪断されるような脆い性質を示しうる。これらの組成物は、高い表面積を有するとともに、組成物の改善された流動性を示す。そのような流動性は、例えば、Carr指数または他の同様の測定値によって測定されうる。特に、Carr指数は、粉末のかさ密度と粉末のタップ密度とを比較することによって測定されうる。そのような化合物は、好ましいCarr指数を示し、組成物を二次装置によって処理して粉末組成物をさらに処理した際に、粒子がさらに良好に剪断されて、さらに小さな粒子が得られうる。
【0099】
1つの局面において、液体中の抗体および抗体断片を凍結表面に適用する段階; 液体を凍結表面上で分散させ凍結させることにより薄膜を形成させる段階を含む、抗体および抗体断片を乾燥粉末として調製するための方法が提供される。
【0100】
いくつかの態様において、適用する段階は、液体中の抗体および抗体断片の液滴を噴霧または滴下することを含む。複数の態様において、液滴の気液界面は500 cm-1面積/体積未満である。複数の態様において、液滴の気液界面は400 cm-1面積/体積未満である。複数の態様において、液滴の気液界面は300 cm-1面積/体積未満である。複数の態様において、液滴の気液界面は200 cm-1面積/体積未満である。複数の態様において、液滴の気液界面は100 cm-1面積/体積未満である。複数の態様において、液滴の気液界面は50 cm-1面積/体積未満である。複数の態様において、液滴の気液界面は10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、または500 cm-1面積/体積未満である。
【0101】
いくつかの態様において、本方法は、液体の凍結温度下(例えば、凍結温度下セ氏1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100度)の温度を有する凍結表面と液滴を接触させる段階をさらに含む。複数の態様において、本方法は、液滴と凍結表面との間に少なくとも30℃の温度差を有する凍結表面と、液滴を接触させる段階をさらに含む。複数の態様において、温度差は液滴と表面との間で少なくとも40℃である。複数の態様において、温度差は液滴と表面との間で少なくとも50℃である。複数の態様において、温度差は液滴と表面との間で少なくとも60℃である。複数の態様において、温度差は液滴と表面との間で少なくとも70℃である。複数の態様において、温度差は液滴と表面との間で少なくとも80℃である。複数の態様において、温度差は液滴と表面との間で少なくとも90℃である。複数の態様において、液滴と表面との間の温度差は、少なくともセ氏1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、180、または200度である。
【0102】
いくつかの態様において、薄膜は、約5 mm、約4 mm、約3 mm、約2 mm、約1 mm、3 mm未満、2 mm未満、1 mm未満、500マイクロメートル未満の厚さを有する。複数の態様において、抗体薄膜は400マイクロメートル未満の厚さを有する。複数の態様において、薄膜は300マイクロメートル未満の厚さを有する。複数の態様において、薄膜は200マイクロメートル未満の厚さを有する。複数の態様において、薄膜は100マイクロメートル未満の厚さを有する。複数の態様において、薄膜は50マイクロメートル未満の厚さを有する。複数の態様において、抗体薄膜は10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、または500マイクロメートル未満の厚さを有する。複数の態様において、薄膜は約500マイクロメートルの厚さを有する。複数の態様において、薄膜は約400マイクロメートルの厚さを有する。複数の態様において、薄膜は約300マイクロメートルの厚さを有する。複数の態様において、薄膜は約200マイクロメートルの厚さを有する。複数の態様において、薄膜は約100マイクロメートルの厚さを有する。複数の態様において、薄膜は約50マイクロメートルの厚さを有する。複数の態様において、薄膜は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、または500マイクロメートルの厚さを有する。
【0103】
複数の態様において、薄膜は約5~500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は25~400 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は25~300 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は25~200 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は25~100 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は100~500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は200~500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は300~500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は400~500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は100~400 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は200~300 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、または500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約25~約500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約25~約400 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約25~約300 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約25~約200 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約25~約100 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約100~約500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約200~約500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約300~約500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約400~約500 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約100~約400 cm-1の表面積対体積比を有する。複数の態様において、薄膜は約200~約300 cm-1の表面積対体積比を有する。
【0104】
複数の態様において、液滴の凍結速度は約10 K/秒~約105 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は約10 K/秒~約104 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は約10 K/秒~約103 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は約102 K/秒~約103 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は約50 K/秒~約5×102 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は10 K/秒~105 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は10 K/秒~104 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は10 K/秒~103 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は102 K/秒~103 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は50 K/秒~5×102 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、または1000 K/秒である。複数の態様において、液滴の凍結速度は50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、または1000 K/秒である。複数の態様において、液滴の各々は、凍結表面に接触することにより約50、75、100、125、150、175、200、250、500、1,000、または2,000ミリ秒未満で凍結する。複数の態様において、液滴の各々は、凍結表面に接触することにより50、75、100、125、150、175、200、250、500、1,000、または2,000ミリ秒未満で凍結する。
【0105】
複数の態様において、液滴はセ氏約2~約25度で、約0.1~約5 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏約20~約25度で、約2~約4 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏約2~約25度で、約1~約4 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏約2~約25度で、約2~約3 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏約2~約25度で、約1~約3 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏約2~約25度で、約1~約2 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏約2~約25度で、約3~約4 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏2~25度で、0.1~5 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏2~25度で、2~4 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏2~25度で、1~4 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏2~25度で、2~3 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏2~25度で、1~3 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴はセ氏2~25度で、1~2 mmの平均直径を有する。複数の態様において、液滴は2~25℃で、3~4 mmの平均直径を有する。
【0106】
複数の態様において、本方法は、薄膜から溶媒(例えば、水または液体)を除去して乾燥粉末を形成させる段階をさらに含む。
【0107】
複数の態様において、薄膜から溶媒(例えば、水または液体)を除去して乾燥粉末を形成させる段階を含む、抗体薄膜(例えば、本明細書において記述される方法を用いて作製された抗体薄膜を含む)から乾燥粉末を作製する方法が提供される。本明細書において記述される方法の複数の態様において、乾燥粉末は、局面、態様、実施例、表、図面または特許請求の範囲におけるものを含めて、本明細書において記述される乾燥粉末である。複数の態様において、抗体薄膜を作製する方法または乾燥粉末を作製する方法は、局面、態様、実施例、表、図面または特許請求の範囲におけるものを含めて、本明細書において記述される乾燥粉末を作製するために用いられる。
【0108】
複数の態様において、溶媒の除去は凍結乾燥を含む。複数の態様において、溶媒の除去はセ氏-20度またはそれ未満の温度での凍結乾燥を含む。複数の態様において、溶媒の除去はセ氏-25度またはそれ未満の温度での凍結乾燥を含む。複数の態様において、溶媒はセ氏-40度またはそれ未満の温度での凍結乾燥を含む。複数の態様において、溶媒の除去はセ氏-50度またはそれ未満の温度での凍結乾燥を含む。複数の態様において、溶媒の除去はセ氏約-20度またはそれ未満の温度での凍結乾燥を含む。複数の態様において、溶媒の除去はセ氏約-25度またはそれ未満の温度での凍結乾燥を含む。複数の態様において、溶媒はセ氏約-40度またはそれ未満の温度での凍結乾燥を含む。複数の態様において、溶媒の除去はセ氏約-50度またはそれ未満の温度での凍結乾燥を含む。一次乾燥は-20℃~-50℃で実施することができ、二次乾燥は4~25℃で実施することができる。
【0109】
複数の態様において、抗体粉末を形成させるために、まず水性抗体組成物を凍結して凍結抗体組成物を形成させ、次に凍結水を除去して抗体粉末を形成させる。凍結抗体組成物を形成させるために、急速凍結プロセスが用いられる。本明細書において用いられる、急速凍結プロセスは、約5000ミリ秒未満または約5000ミリ秒に等しい時間で液体の薄膜(約500マイクロメートル未満または2~4 mm)を凍結できるプロセスである。TFFプロセスでは、液滴は所与の高さから落下し、冷却された固体基板上に衝突、拡散かつ凍結する。通常、基材は250 °K未満、200 °K未満、または150 °K未満に冷却された金属ドラムである。衝撃により薄膜に変形した液滴は、約70 ms~3000 msの時間で凍結する。凍結した薄膜は、回転ドラム表面に沿って取り付けられたステンレス鋼ブレードによって基板から除去されうる。凍結した薄膜は、凍結状態を維持するために液体窒素中に回収される。薄膜凍結プロセスに関するさらなる詳細は、Engstromらによる論文「Formation of Stable Submicron Protein Particles by Thin Film Freezing」Pharmaceutical Research, Vol. 25, No. 6, June 2008, 1334-1346において見出すことができ、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0110】
本明細書において記述されるのは、抗体が500 cm-1未満の面積/体積、例えば25~500 cm-1 (例えば、50、100、150、200、250、300、400未満)の気液界面に曝されるように液体抗体の液滴を噴霧または滴下し、液滴を、液体抗体の凍結温度より低い温度を有する(例えば、液滴と表面との間に少なくとも30℃の温度差を有する)凍結表面と接触させることにより抗体薄膜または乾燥抗体を調製するための組成物および方法であり、ここで前記表面は液滴を、約5 mm未満、例えば約2~4 mm、約1 mm、約500マイクロメートル(例えば、450、400、350、300、250、200、150、100、または50マイクロメートル)の厚さを有する薄膜に凍結させる。複数の態様において、本方法は、凍結材料から液体(例えば、溶媒、水)を除去して乾燥抗体(例えば、粒子)を形成させるステップをさらに含みうる。複数の態様において、液滴は約50、75、100、125、150、175、200、250、500、1,000、2,000、または3000ミリ秒未満で表面と接触して凍結する。複数の態様において、液滴は50または150ミリ秒未満で表面と接触して凍結する。複数の態様において、液滴は室温で2~5 mmの直径を有する。複数の態様において、液滴は凍結表面上に厚さが50マイクロメートル~5 mm、例えば2~4 mmの薄膜を形成する。複数の態様において、液滴は50~250 K/秒の冷却速度を有する。複数の態様において、液体(例えば、溶媒または水)除去後の乾燥抗体の粒子は、少なくとも10、15、25、50、75、100、125、150、または200 m2/grの表面積(例えば、10、15、25、50、75、100、125、150、または200 m2/grの表面積)を有する。気液界面を最小化することで、界面に吸着しうるタンパク質の量を制限することにより、タンパク質の安定性を向上させることができる。
【0111】
複数の態様において、液滴は種々の様式および構成で冷表面または凍結表面に送達されうる。複数の態様において、液滴は並列に、直列に、中央、真ん中もしくは周縁に、またはプラテン、プラッタ、プレート、ローラー、コンベア表面に送達されてもよい。複数の態様において、凍結表面または冷表面は、液滴の凍結を可能にするローラー、ベルト、固体表面、円形、円筒形、円錐形、楕円形などであってもよい。連続プロセスでは、ベルト、プラテン、プレート、またはローラーが特に有用でありうる。複数の態様において、凍結した液滴は、凍結した液体抗体のビーズ、ひも、フィルム、またはラインを形成しうる。複数の態様において、有効成分は凍結乾燥プロセスの前に、スクレーパー、ワイヤー、超音波、または他の機械的分離器を用いて表面から除去される。いったん材料がベルト、プラテン、ローラーまたはプレートの表面から除去されると、表面は追加の材料を自由に受け入れることができる。
【0112】
複数の態様において、表面は、極低温度または液体抗体の凍結点未満の温度(例えば、液滴の温度より少なくとも30℃低い温度)に到達可能な極低温固体、極低温気体、極低温液体または熱伝達流体によって冷却される。複数の態様において、液体抗体は、糖、リン脂質、界面活性剤、高分子界面活性剤、ベシクル、共重合体およびホモ重合体および生重合体を含む重合体、分散助剤、ならびに血清アルブミンから選択される1つまたは複数の賦形剤をさらに含む。複数の態様において、抗体の凝集は、組成物中の全抗体タンパク質の10%未満である(例えば、不可逆的凝集) 。複数の態様において、液滴と表面との間の温度差は少なくとも30℃である。複数の態様において、本明細書において記述されるように凍結される液体抗体に含まれうる賦形剤または安定剤は、凍結保護物質、凍結保護剤、界面活性剤、充填剤、安定剤、重合体、プロテアーゼ阻害剤、抗酸化剤および吸収促進剤を含む。本明細書において記述される抗体に含まれうる賦形剤の具体的な非限定的例としては、以下が挙げられる: スクロース、トレハオロース、Span 80、Tween 80、Brij 35、Brij 98、プルロニック(Pluronic)、スクロエステル7、スクロエステル11、スクロエステル15、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、ラウレス-9、ラウレス-8、ラウリン酸、ビタミンE TPGS、Gelucire 50/13、Gelucire 53/10、ラブラフィル(Labrafil)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoyl phosphadityl choline)、グリコール酸およびその塩、デオキシコール酸およびその塩、フシジン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ラブラゾール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ならびにチロキサポール。
【0113】
III. 定義
特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と組み合わせて用いられる場合の「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語の使用は、「1つ」を意味しうるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。本明細書において用いられる場合、「別の」は、少なくとも第2のまたはそれ以上を意味しうる。
【0114】
本明細書において用いられる場合、「薬物」、「薬学的」、「治療用物質」、および「治療的に活性な作用物質」という用語は、ヒトまたは動物において治療的効果または薬理学的効果を引き起こし、疾患、障害、または他の状態を処置するために用いられる化合物を表すために互換的に用いられる。いくつかの態様において、これらの化合物は、生物への投与について規制上の承認を受けている。
【0115】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみをいうように明示的に示されない限り、または代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために用いられる。本明細書において用いられる場合、「別の」は、少なくとも第2のまたはそれ以上を意味しうる。
【0116】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの、有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの、含む(including)の任意の形態)または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの、含有する(containing)の任意の形態)という単語は、包括的または非制限的であり、さらなる、引用していない要素または方法の段階を除外しない。
【0117】
本明細書において用いられる場合、「有意な」という用語(および「有意に」などの有意の任意の形態)は2つの値間の統計的な差異を暗示するのではなく、単にパラメータの差異の重要性または範囲を暗示することを意味している。
【0118】
本出願を通じて、「約」という用語は、値がその値を決定するために採用された装置、方法の誤差の固有のばらつき、または研究対象または実験研究間に存在するばらつきを含むことを示すために用いられる。別の定義が適用されない限り、「約」という用語は示された値の±10%をいう。
【0119】
本明細書において用いられる場合、特定された成分に関連した「~を実質的に含まない」または「実質的に含まない」という用語は、特定された成分がいずれも意図的に組成物に配合されていないこと、および/または混入物としてまたは微量のみ存在することを意味するように本明細書において用いられる。全ての混入物、副生成物、および他の材料の合計量はその組成物中に2%未満の量で存在する。「~をより実質的に含まない」または「より実質的に含まない」という用語は組成物に含有される特定の成分が1%未満であることを表すために用いられる。「~を本質的に含まない」または「本質的に含まない」という用語は含有される特定の成分が0.5%未満ということである。
【0120】
本明細書において用いられる場合、「ナノ粒子」という用語は、その慣用的かつ通常の定義を有し、粒子内の個々の分子としてではなく、ユニット全体として挙動する離散粒子をいう。ナノ粒子は、約1~約10,000 nmのサイズを有することができ、超微細ナノ粒子は1 nm~100 nmのサイズを有し、微細粒子は100 nm~2,500 nmのサイズを有し、粗大粒子は2,500 nm~10,000 nmのサイズを有する。いくつかの態様において、本明細書において記述されるナノ凝集体は、複数のナノ粒子の組成物を含み、約10 nm~約100 μmのサイズを有しうる。
【0121】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるが、具体例に示す数値は可能な限り正確に報告している。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定およびパラメータで見られる標準偏差に必然的に起因する、ある程度の誤差を本来的に含んでいる。
【実施例
【0122】
IV. 実施例
本開示のよりよい理解を容易にするために、具体的な態様の以下の実施例が与えられている。当業者であれば、次の実施例に開示される技法は開示の実践において良好に機能することが本発明者によって見出された技法を示しており、したがってその実践のための好ましい形態を構成すると考えられうることを認識すべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示された具体的な態様に多くの変更を加えることができ、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を依然として得ることができることを認識すべきである。以下の実施例は開示の範囲全体を何ら限定するかまたは規定すると読まれるべきではない。
【0123】
実施例1 - モノクローナル抗体、抗PD-1、および抗TNF-αの肺送達のために所望のエアロゾル性能特性を有する安定した粉末を開発するための薄膜凍結の使用
A. 材料および方法
1. 材料
InVivoPlusラットIgG2aクローン2A3およびInVivoMAb抗マウスPD-1クローンRMP1-14モノクローナル抗体(mAb)はBioXCell (Lebanon, NH)から入手した。PBS中のSUPERBLOCK(商標)ブロッキング緩衝液、Immunlon 4 HBX 96ウェルプレートおよび2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBSA)はThermo Fischer (Waltham, MA)から入手した。Laemmli 2X緩衝液、Mini-PROTEAN(登録商標) TGX(商標) Precast Gels 4-20%およびBio-Safe Coomassie G-250はBio-Rad (Hercules, CA)から入手した。ヤギ抗ラットIgG-HRPはAbcam (Cambridge, UK)から入手し、組み換えマウスPD-1 his-タグタンパク質はR&D Systems (Minneapolis, MN)から入手した。グリシン、TRIZMA(登録商標)ベース、L-ロイシン、α-ラクトース一水和物、D-(+)-トレハロース二水和物、D-マンニトール、リン酸ナトリウム一塩基二水和物、二塩基性リン酸ナトリウム、0.05% TWEEN(登録商標) 20を有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS), pH 7.4、PBS、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)、炭酸水素ナトリウムおよび2-メルカプトエタノールはSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から入手した。DRISOLY(登録商標)無水メタノールはMettler Toledo (Columbus, OH)から入手し、21G×1注射針付きTB注射器はBD (Franklin Lakes, NJ)から入手した。アルミパウチはIMPAK (Los Angeles, CA)から入手し、シリカ乾燥剤はW.A. Hammond Drierite (Xenia, OH)から入手した。ガラス製血清バイアルおよびプラスチック製低結合性ポリプロピレン低温バイアルは、DWK Life Sciences (Millville, NJ)から入手した。Dry Powder INSUFFLATOR(商標) - Model DP-4はPENNCENTURY(商標) (Philadelphia, PA)から入手した。QUALI-V(登録商標)-I HPMCサイズ3カプセルはQUALICAPS(登録商標) (Whitsett, NC)から入手した。タンパク質ラダーはNew England BioLabs (Ipswich, MA)から入手した。
【0124】
2. 方法
棚式凍結乾燥および薄膜凍結。サンプルは、全成分を水またはPBSに溶解し、適切な比率にてエッペンドルフチューブ内で組み合わせ、氷上で冷却することによって調製された。受け取ったmAbは既にPBS (10 mM, pH 7.0)中にあったことに留意されたい。それゆえ、賦形剤を水に溶かしてからTFFの前にmAbと混合した場合でも、製剤はPBSを含有していたが、賦形剤もPBS (10 mM, pH 7.4)に溶かしてからmAbと混合した場合よりもわずかに低いレベルであった。TFFの場合、1 mLの注射器に21Gの注射針を用いて、-100℃の薄膜凍結装置の回転ドラム(150 RPM)に約10 cmの高さからサンプルを滴下した。凍結膜を液体窒素中に回収し、5 mLガラスまたはプラスチックバイアルに移し、これをゴム栓で半栓して凍結乾燥まで-80℃で貯蔵した。VirTis Advantageベンチトップトレイ凍結乾燥機を使用した(VirTis, Gardiner, NY)。一次乾燥は-40℃で1200分間行い、その後25℃まで1200分間かけて昇温した。二次乾燥は25℃で1200分間行った。圧力は100 mTorr以下で一定に保った。棚式凍結乾燥(棚式FD)の場合、棚式およびサンプルを凍結乾燥機内でRTから-40℃までゆっくりと冷却した。凍結乾燥の場合、一次乾燥は-40℃で保持して1200分間行い、その後25℃まで1200分間昇温した。二次乾燥は25℃で1200分間行った。圧力は100 mTorr以下で一定に保った。
【0125】
エアロゾル性能。乾燥粉末(2~3 mg)をHPMCサイズ3カプセル(VCaps(登録商標) Plus, Lonza, Morristown, NJ)に充填した。カプセルをPlastiape高抵抗RS00 DPIに入れ、次いでTween 20 (メタノール中1.5%, w/v)でコーティングしたパンを含むNext Generation Impactor (NGI, Copley Scientific, Nottingham, UK)装置に取り付け、吸入開始前にメタノールを蒸発させた。流速は60 L/分で、1回の作動につき4秒間、装置全体で4 kPaの圧力降下を与えた。各ステージは、4 mLの水で採取されたスロート(throat)を除き、2 mLの水で採取された。ロイシンを含む製剤の場合、TNBSAキットを用いて各ステージ中のロイシン含量を決定した。簡単に説明すると、サンプルを0.1 M炭酸水素ナトリウム, pH 8.5で希釈し、TNBSA 0.01%をメタノールで希釈し、37℃で50分間インキュベートした。吸光度はSynergy HTプレートリーダー(BioTek, Winooski, VT)を用いて335 nmで読み取った。ロイシンを欠く製剤の場合、1220 Infinity II HPLC (Agilent, Santa Clara, CA)にてXBridge Amide 3.5 μm, 4.6×150 mmカラム(Waters, Milford, MA)を用いて糖含量(例えば、スクロース)を測定した。移動相は水/アセトニトリル20:80から60:40、流速1.0 mL/分、6分間であった。注入量は15 μLで、カラム温度は30℃であった。1290 Infinity II ELSD (Agilent, Santa Clara, CA)を用いて、蒸発および噴霧温度60℃、ガス流速1.6 L/分で糖を検出した。Copley Inhaler Testing Data Analysis Software (v3.10) (CITDAS, Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて、空気動力学的中央粒子径(MMAD)、幾何相対標準偏差(geometric relative standard deviation; GSD)、回収用量および送達用量の微粒子割合(FPF)を含む、エアロゾル特性を計算した。回収用量のFPFは、回収された賦形剤の総量の割合としての、空気力学的直径5 μm未満で回収されたロイシンの総量として計算された一方で、送達用量のFPFは、アダプター、誘導ポート、ステージ1~7およびマイクロオリフィスコレクタ(Micro-Orifice Collector; MOC)に付着した賦形剤の総量の割合としての、空気力学的直径5 μm未満で回収されたロイシンの総量として計算された。本研究では、ほとんどのサンプルでタンパク質の負荷が低く、各ステージでサンプルを回収するのに必要な量が多いため、タンパク質アッセイの感度が低くNGIの各ステージでのタンパク質量の測定が困難であることから、エアロゾル性能を評価するために、mAbの代わりに賦形剤(ロイシンまたは糖/糖アルコール)を測定した。さらに、ロイシンはmAbよりも過剰に存在し、これらのアッセイを妨害する可能性がある。以前、タンパク質含量の高い製剤のエアロゾル性能を研究する際にも、mAbを直接測定し、その結果を、賦形剤を測定した場合と比較したが、同等の結果が得られた。
【0126】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)。サンプルはTFFDの前に開始量と等量の水で再構成した。次いで、サンプルの少量のアリコートを取り除き、SDS-PAGE用に保存し、サンプルの残りを、SEC用に0.45 μmポリエーテルスルホン(PES)フィルタを用いてろ過した。SECの場合、Agilent 300 Å, 2.7 μm, 4.6×150 mmカラムを1260 Infinityシステム(Agilent, Santa Clara, CA)にて用いた。移動相はpH 7の150 mMリン酸ナトリウム緩衝液で、流速は0.3 mL/分で、時間は10分で、波長は220 nmであった。ろ過されていないサンプルは、1×のLaemmli緩衝液およびβ-メルカプトエタノール10% (v/v)で調製し、95℃で5分間加熱した。次に、BioRad Tetraセルを用いて、サンプルをMini-PROTEAN(登録商標) TGX(商標)プレキャストゲル4~20%にロードした。泳動用緩衝液は25 mM Trizma、190 mMグリシン、およびmEq水中0.1%のSDSからなった。ゲルを100 Vで1時間泳動した。その後、ゲルをおよそ50 mLの蒸留水中で5分間洗浄した。洗浄を計4回繰り返し、水を除去した。その後、およそ50 mLのBio-Safe Coomassie G-250染色液を加え、ゲルを揺らしながら48時間染色させた。染色中時々(すなわち約3回)、ゲルを20秒間電子レンジで加熱して、染色を高めた。染色後、染色液を除去し、水を約1時間ごとに交換しながら、ゲルを蒸留水でおよそ5時間洗浄した。定量はImageJを用いて行った。
【0127】
変調示差走査熱量測定(mDSC)。mDSCは、冷蔵冷却システム(RCS40, TA Instruments, New Castle, DE)を装備したモデルQ20 (TA Instruments, New Castle, DE)示差走査熱量計を用いて行った。粉末(3~5 mg)を正確に秤量し、Tzeroアルミニウム密閉るつぼに装填し、DSC測定の直前に蓋に穴を開けた。サンプルはまず-40℃まで10℃/分の傾斜率で冷却し、その後-40℃から300℃まで5℃/分の速度で昇温した。乾燥窒素ガスの流速は50 mL/分であった。スキャンは変調周期60秒および変調振幅1℃で実施した。TA Instruments Trios v.5.1.1.46572ソフトウェアを用いて、データを分析した。
【0128】
粉末X線回折(XRPD)。一次単色放射線(primary monochromated radiation) (Cu K radiation source, λ = 1.54056 Å)を装備したRigaku Miniflex 600 II (Rigaku, Woodlands, TX)を用いて、XRPDを行った。サンプルをサンプルホルダにロードし、15 mAで40 kVの加速電圧、2θ範囲5~40°のステップサイズ0.02°、スキャン速度1°/分、および滞留時間2秒の動作条件の下、連続モードで分析した。
【0129】
走査型電子顕微鏡(SEM)。粒子形態は、テキサス大学オースティン校の細胞分子生物学研究所顕微鏡・イメージング施設にあるSEM (Zeiss Supra 40C SEM, Carl Zeiss, Heidenheim an der Brenz, Germany)を用いて調べた。少量のバルク粉末(すなわちTFF粉末のフレーク)を、両面カーボンテープを用いて標本スタブ上に付着させた。画像を取得する前に、スパッタを用いて全てのサンプルを15 mmの60/40 Pd/Ptでコーティングした。
【0130】
水分含量の測定。Mettler Toledo V20容積測定カールフィッシャー(KF)滴定装置(Columbus, OH)を使い、Aquastar (Darmstadt, Germany)のコンビメタノール(CombiMethanol)に希釈した粉末5~10 mgを用いて、グループごとに3つの独立したサンプルで各サンプルの水分含量を測定した。メタノールの水分含量も測定した。水分含量を式:
KF = [x(b-a) + y(c-b)]/(b-a)
を用いて計算した。式中、KF = カールフィッシャー測定値(% w/w)、x = サンプル中の水分含量(% w/w)、y = 無水メタノール中の水分含量(% w/w)、a = 空のバイアルの重量(mg)、b = 粉末を含むバイアルの重量(mg)、c = 粉末とメタノールを含むバイアルの重量(mg)である。
【0131】
安定性。凍結乾燥後、ただし凍結乾燥機から取り出す前に、サンプルを窒素でフラッシュし、ストッパのリキャップ機能を用いてバイアルにキャップをした。サンプルはシリカ乾燥剤を入れたアルミパウチに密封包装し、密封時に窒素ガスでパウチをフラッシュした。それらを指定された温度(すなわち4℃、室温または40℃)でデシケータ内に6週間または10週間貯蔵した。これらの時点で、SEC、SDS-PAGEおよびKFによる分析の直前にサンプルを貯蔵条件から取り出した。
【0132】
結合能。酵素免疫測定法(ELISA)を用いて、抗PD-1 mAbの結合能を測定した。組み換えマウスPD-1タンパク質をImmunlon 4 HBXプレート上に1 μg/mLの濃度でコーティングし、4℃で終夜インキュベートした。翌日、プレートをPBS + 0.05% Tween 20 (洗浄緩衝液)で4回洗浄し、製造業者の指示にしたがってSuperBlock(商標)緩衝液でブロッキングした。プレートを洗浄緩衝液で再度2~3回洗浄し、その後、約100 ng/mLの濃度にPBS中で希釈したサンプルを加え、室温で2時間振とうしながらインキュベートした。標準曲線を利用して、サンプル希釈の直線範囲を決定した。プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄し、その後、IgG-HRP 1:5000を加え、室温で1時間振とうした。プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、その後、TMBを5~15分間加えた。0.16 M硫酸で反応を停止し、Synergy HTプレートリーダーを用いて450 nmでプレートを読み取った。
【0133】
微小流動イメージング。Bot1オートサンプラを装えた微小流動イメージング(MFI5100, ProteinSimple, San Jose, CA)を用いて、抗PD-1 mAb乾燥粉末サンプルを、再構成時に、肉眼では見ることができない凝集体について特徴付けた。抗PD-1 mAb乾燥粉末を、10 mM, pH 7.4の最終PBS濃度に達するように水またはPBSを用いてオリジナルの容量に再構成した。必要に応じて、1 mLあたり0.1 mgの抗PD-1 mAbの最終濃度まで、サンプルをPBS (10 mM, pH7.4)でさらに希釈した。次に、抗PD-1 mAb溶液0.9 mLを96×1 mLウェルプレート(ProteinSimple, San Jose, CA)に移し入れた。各サンプル分析の前に、きれいなベースラインを提供し、各サンプル間の相互汚染を防ぐためにフラッシュ/洗浄サイクルを実施した。フラッシュ/洗浄サイクルは、6 mL/分の流速で0.9 mLの水(HPLC等級、マイクロメートル未満でろ過した(Submicron filtered)Safe-Cote(登録商標), Fisher)を5回流す一連のものである。その後、分析された最初のサンプルは1×PBSで、これにより300粒子以下の総粒子計数を確実にするためのベースライン操作が可能となった。サンプル分析法では、0.2 mLのパージで計0.9 mLのサンプル溶液を用いた。分析されたサンプル体積は流速0.17 mL/分で0.6 mLであった。各サンプルを1工学単位の分注率(すなわち、レベル1~6から選択)で3サイクル撹拌した。MFI View System Suite (MVSS)ソフトウェア(Protein Simple)を用いて、粒子の特性評価を自動化した。外生的粒子(例えば、ゴム破片、異物ちり粒子)は、「類似粒子の検索」機能を用いてデータから除去した。内生的粒子(例えば、空気マイクロバブル、シリコンオイル液滴)は、既述(Guo et al., 2021)のように、0.8未満のアスペクト比または0.8以上のアスペクト比かつ100以下の強度標準偏差(STD)を有する粒子のみを計数するフィルタを適用することによってデータから除去した。液体対照は、TFFDに供されなかったことを除いて同様に調製し、総凝集体計数は1240.6~3283.3計数/mLの範囲(平均±SD、2069.1±631.6)であった。
【0134】
統計分析。統計分析は、Tukeyの多重比較検定を伴う一元配置ANOVA検定、またはスチューデントのt検定で完了した。0.05以下のP値を有意と見なした。統計分析はGraphPad Prism (San Diego, CA)で実施した。
【0135】
B. 結果および考察
TFF mAb粉末のエアロゾル性能。現在FDAに承認されている全てのmAbはIgGに基づいているため、当初は非特異的マウスIgGがモデルmAbとして用いられた。初期の研究では、トレハロース/ロイシン(75:25 w/w)およびラクトース/ロイシン(60:40 w/w)が、所望のエアロゾル性能特性を有するタンパク質を製剤化するための最適な比率であることが特定された。0.5または1% (砂糖+ロイシンの重量に対するw/w)の薬物負荷でIgGの乾燥粉末を調製し、そのエアロゾル性能について評価した。トレハロース/ロイシンのmAb含量を0.5%から1%に増加させると、回収されるFPFが劇的に低減した(図1A~1C)。抗体含量が低いため、NGI内の分布を決定するための代用として賦形剤を測定した。TFFD粉末は、均一に混合された有効成分と賦形剤を含むことが以前に示されている(Sahakijpijarn et al., 2020b; Thakkar et al., 2018)。全ての製剤が良好なエアロゾル性能を示したが、トレハロース/ロイシン含有製剤のmAb含量を0.5%から1%に増加させると、回収されるFPFが大幅に低減した(表1)。しかしながら、1% mAb負荷のIgG2a乾燥粉末をラクトース/ロイシンで調製した場合、FPFおよび他の全てのエアロゾル特性は所望のレベルで保持された(表1)。
【0136】
TFF用の賦形剤を溶解するための溶媒として水かPBSかを使用することも検討した。水中で調製された製剤と比較して、PBS溶液中で調製された同じ製剤は、改善されたエアロゾル特性を示し(肺のより深くまで運ばれうることを示した)、一般にサンプル間のばらつきがより小さかった(図1A~1C)。DPIによる送達は患者間のばらつきが大きいため、呼吸送達において再現性は極めて重要である。エアロゾル性能およびラクトースが肺送達のための担体として現在FDAによって承認されている唯一の糖であるという事実のため、PBS製剤中のTFF 1%ラクトース/ロイシンIgG (IgG-1-LL-PBS)がさらなる研究のために選択された。潜在的な懸念の1つは、ラクトースが還元糖であり、mAbの化学的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるという事実であった。賦形剤を溶解するためにPBS溶液を使用することは、エアロゾルの性能にプラスの効果をもたらしたが、高濃度の塩、特にPBS中の塩は、凍結および乾燥中に生物製剤にマイナスの影響を及ぼす可能性があることが知られている(Pikal-Cleland and Carpenter, 2001; Sarciaux et al., 1999; Thorat and Suryanarayanan, 2019)。それゆえ、異なるmAbおよびmAb含量では、mAbの完全性をより良く保持するために、TFFDに供する前にmAb溶液中のPBSを避ける必要がありうる可能性がある。
【0137】
次にIgG-1-LL-PBSと同じ組成を用いて、抗PD-1 mAb乾燥粉末(抗PD1-1-LL-PBS)をTFFDまたは棚式FDによって調製し、それらのエアロゾル特性を評価した。図1A~Bに示されるように、TFFD粉末は、MMAD値がより小さく、FPF値がより大きく、同一組成を有するが棚式FDによって調製された乾燥粉末と比較して、有意に良好なエアロゾル性能を示した(図1B)。棚式FDは、表面積が比較的小さい粉末を生ずることが知られており、これがエアロゾル性能の低さの一因となっている可能性が高い(Engstrom et al., 2008)。これは大部分、棚式凍結の凍結速度が低いため、タンパク質粒子が凍結状態に達するまでに長い時間をかけて成長させるためである。逆に、TFFDでは凍結速度が速く、凍結状態に達するまでの時間が短くなり、粒子の成長を低くさせることに加え、液体流路が細くなり、核を持つ氷ドメインも多くなる。流路が細くなると、粒子の衝突が少なく粒子の成長が低くなり、肺送達に適したさらに小さな粒子が得られる(Hufnagel et al., 2022)。SDは粉末を生産するための別の一般的な技法であるが、製剤を熱に曝すため、mAbなどの生物製剤に損傷を与える可能性がある。SD処理から得られる粉末は高密度であるため、容易にエアロゾル化できないことが多い(Maa et al., 1999)。一方、TFFD粉末は多孔質で密度が低い傾向があり、高いFPFを有する易分散性粉末に相当する(Beinborn et al., 2012; Moon et al., 2019; Sahakijpijarn et al., 2020b; Watts et al., 2013)。IgG2aに代えて抗PD-1を用いても、得られた乾燥粉末のエアロゾル特性に有意な影響はなかったこと(抗PD1-1-LL-PBS 対 IgG-1-LL-PBS (図1B 対 表1および1C))から、TFFD技術は、異なるmAbのエアロゾル化可能な乾燥粉末を調製するために適用できることが示される。
【0138】
(表1)TFFDによって調製されたIgG粉末の組成およびエアロゾル性能特性。TL = トレハロースおよびロイシン; LL = ラクトースおよびロイシン。データは平均±S.D. (n = 3)である。
【0139】
抗PD1-1-LL-PBS粉末の物理的特性の特性評価。抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末が所望のエアロゾル性能特性を示すことを確認した後、本発明者らは、この製剤の物理的特徴を調べた。SEMは、抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末が高度に多孔性であり、ナノ凝集体からなることを示した(図2A)が、これはTFFDを介して生産された他の乾燥粉末と一致する(Engstrom et al., 2008)。抗PD1-1-LL-PBS粉末の含水率は1.5±0.2%であった。XRPDにより、ラクトースが非晶質であるのに対し、ロイシンおよびPBSは結晶質であることが明らかにされた(図2B)。mDSCを用いて物理的特性を評価した場合、結晶性PBSの融点(MP)は見られなかった(図2C)。塩化ナトリウムおよびリン酸ナトリウムのMPは1000℃超であるため、範囲外であった可能性が高い(de Jager and Prinsloo, 2001)。PBSと組み合わせたロイシンのmDSCはロイシンのMPを示し、ロイシンの結晶状態が確認された。ロイシンのMPは約260℃であり、その通常の融点300℃より低下していた。ラクトースをPBSのみと組み合わせた場合、ラクトースの典型的なTgと同様のTgシグナルが128℃で見られた(Huppertz and Gazi, 2016; Roe and Labuza, 2005; Xu et al., 2021)。ラクトースのMPは192℃にも存在し、典型的なラクトースのMP 220℃より大幅に低かった(Wu et al., 2014)が、これは、TFFDによる粒子径の低減による融点降下による可能性があり、またTFFD粉末中のラクトースが部分的に結晶質でありうることを示した(Rosa et al., 2015)。ロイシンを添加してもラクトースのTgはまだ存在していたが、MPは140℃で観察された。抗PD-1 mAbの添加により、Tgは約51℃まで低減した(ある試験では39℃の値が観察された)。さらに、134℃および144℃に2つのMPが存在していた。GombasらおよびLopez-Pablosらによると、ラクトースサンプルにおいて観察された130~160℃の範囲の融解ピークは、ラクトース分子に化学的に結合している水の蒸発に関連している(Gombas et al., 2002; Lopez-Pablos et al., 2018)。
【0140】
賦形剤の結晶化は相分離を引き起こし、タンパク質の凝集を促進し、その安定化効果を制限しうることが知られている(Chen et al., 2021; Kamerzell et al., 2011; Piedmonte et al., 2007)。例えば、ロイシンとともに噴霧乾燥したウシ血清アルブミン(BSA)では、ロイシンは大部分が結晶状態にあり、タンパク質から相分離していることが示された。非晶質トレハロースとともに噴霧乾燥したBSAと比較して、結晶質ロイシン製剤には40℃で90日の貯蔵後、実質的により多くの単量体パーセントの喪失があった(Chen et al., 2021)。さらに、ロイシンとともに噴霧乾燥したBSAは、二次構造の変化とタンパク質立体構造の不均一性を示した(Chen et al., 2021)。本発明者らのラクトース/ロイシン製剤は結晶性のPBSとロイシンを含むが、ラクトースは非晶質であった。
【0141】
抗PD1-1-LL-PBSの安定性。抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末中の抗PD-1 mAbの安定性を試験するために、粉末を4℃、室温、または40℃で10週間貯蔵し、SDS-PAGEおよびSECを用いてmAbの完全性を評価した。対照として、液体中の抗PD-1 mAbの安定性も試験した。図3A~Dに示されるように、TFFD粉末中の抗PD-1 mAbは、室温および40℃で液体サンプル中よりも安定であった。しかしながら、40℃では、粉末はSDS-PAGE画像(図3A~B)の両バンドでわずかな上方シフトを示し、これはSECピークの左方シフトとしても見られた(示さず)。SECのデータから、室温または40℃で貯蔵した液体サンプルでは単量体のパーセントが低いことが明らかにされ(図3C)、喪失のほとんどが分解によるものであることが示された。しかしながら、40℃で貯蔵した乾燥粉末における単量体の喪失は、凝集によるものが多く(図3C)、SDS-PAGEおよびSECデータ(図3A~B)におけるタンパク質サイズの増大の一因となっている可能性がある。6週および10週の安定性データはいずれも、単量体量の同様の傾向を示し、貯蔵温度が上昇するにつれて単量体含量は減少した(図3C)。この単量体量の減少は、0時点と比較して室温および40℃の液体サンプルにおいて有意であった(6週および10週時の両方の温度でp < 0.05)。対照的に、TFFD粉末における単量体の喪失は40℃で貯蔵した場合にのみ見られ、液体サンプルよりも程度は小さかった(図3C)。全体として、乾燥粉末中の抗PD-1 mAbは、室温で10週の貯蔵後でも安定していたが、40℃では安定でなかったようである。
【0142】
しかしながら、抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末のTgは39~51℃であることが判明したため、40℃で貯蔵したTFFD粉末における抗PD-1 mAbの不安定性は予想外ではなかった(図2C)。今後は抗PD-1-LL-PBS TFFD粉末の熱安定性をさらに向上させるため、粉末のTgを高めるのに役立ちうるPVP K40などの重合体が用いられてもよい。例えば、5% (w/w)のPVP K40で調製された抗PD-1 mAb TFFD粉末(すなわち、抗PD1-1-LL-PBS-PVP)は、152℃のTgを示した(図3D)。FDA承認製品であるSymbicortはPVP K25を含んでおり、このクラスの重合体の臨床的関連性を実証している。乾燥粉末を40℃で貯蔵した場合に観察された不安定性をさらに理解するために、貯蔵後の乾燥粉末サンプルの含水率も測定した。データにより、抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末が40℃で6週および10週貯蔵後に水分収着を増したことが示された(図3E)。乾燥粉末を室温で貯蔵すると、10週の貯蔵後にのみ含水率が有意に増加した(図3E)。したがって、この吸湿性粉末では湿度制御および貯蔵条件が重要である。より低い湿度条件での乾燥粉末の取り扱い、および貯蔵中の吸湿を最小限に抑えるためのより最適な包装は、冷蔵または冷凍せずに乾燥粉末の長期貯蔵安定性を向上させるのに役立つと期待される。それにもかかわらず、図3のデータは、TFFD技術を適用して低温流通体系なしでのmAb貯蔵を可能にする可能性を示唆している。
【0143】
TFF後の抗PD-1 mAbの結合能。抗PD-1 mAbの結合能を、TFFDおよび再構成に供される前と後に測定した。抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末を、液体サンプルと同量の水(すなわち、TFFD前の液体と同じ)に再懸濁した。TFFDに供された後の抗PD-1 mAbの結合能は、TFFD前のものと統計学的な差はなかったが、TFFD後のばらつきは大きかった(図4A、ガラスバイアル)。ばらつきが大きいのは、部分的には、ガラスバイアルとmAbの相互作用による可能性がある。このことは、ガラスバイアルとプラスチックバイアルが同様のmAb回収率を有していたにもかかわらず、ガラスを異なる材料(すなわち、プラスチック)に変更すると、ばらつきは低減したが、抗PD-1 mAbの結合能が有意に低減したという観察結果によって裏付けられる(図4A~B)。それゆえ、プラスチックバイアルを用いたmAb結合能の喪失は、必ずしもTFFDプロセスに固有のものでも、タンパク質回収率の低さによるものでもない。
【0144】
TFFD中のタンパク質喪失に及ぼすmAb濃度の影響。TFFD後の完全なmAb回収は達成されなかったので(図4B)、本発明者らは、TFFD中のmAbの喪失の根底にある潜在的な理由を調べた。この喪失が、TFF機器のステンレス製ドラム表面、バイアルまたはプラスチック使い捨て用品などの、さまざまな表面へのmAbの吸着による可能性があるかどうかを試験するために、本発明者らは、他の成分の含量および濃度を維持しながら、mAb負荷を増加させた(すなわち、ラクトース/ロイシンに対するmAbを2.6%、6.6%、および13.2% (w/w)にした)抗PD-1 mAbを薄膜凍結乾燥した。図5A~Bに示されるように、溶液中のmAb濃度を増加させると、mAbの回収率が有意に改善した(およそ100%まで)ことから、mAbの喪失がTFFDプロセス中のmAbの表面吸着による可能性が高いこと、および吸着が飽和性であることが示された。6.6%および13.2%のmAbで調製された抗PD-1 mAb TFFD粉末中の単量体の割合は、その液体対応物と比較してわずかに減少したものの、それぞれ96.1%および96.4%のままであった(図5C)。タンパク質の喪失が溶液の総量を増やすことによって飽和されうるかどうかを試験するために、本発明者らは、抗PD-1 mAbをオリジナルの1% mAb負荷で薄膜凍結乾燥したが、より大きな容量(すなわち、0.25 対 2.5 mL)を用いた。図5D~Eに示されるように、TFFDのためにmAb溶液の体積を増やしても、タンパク質の喪失はわずかにしか低減せず、mAbの濃度を増やすほどの効果はなかった(図5B図5E)。これは理にかなっている。というのも、溶液の体積と溶液と接触する表面積の両方が増加するため、体積を増やすだけではTFF中にmAbが曝される表面積が飽和しないからである(すなわち、mAb溶液の体積が多いほど、バイアル壁、プラスチック、およびTFF機器と接触する液体の量が多くなる)。これはmAb濃度の増加とは対照的であり、この場合には、mAb溶液が曝される表面積は同じままである。この所見は、抗PD1-1-LL-PBSサンプルにおいて観察されたタンパク質の喪失は、TFFDプロセス中にmAbが表面に結合したことが主な原因であったことをさらに裏付けている。
【0145】
TFFD中のタンパク質喪失に及ぼす賦形剤の影響。上記の研究では抗PD-1 mAbを薄膜凍結乾燥する際の主な賦形剤として、ラクトースを主に選択した。ラクトースは呼吸器送達用にFDAに認可されており、優れたエアロゾル性能(ロイシンとの組み合わせで)を実証している。しかしながら、ラクトースは還元糖であり、タンパク質の不安定性に寄与することが知られているクラスであり(Andya et al., 1999; Li et al., 1996)、この糖がタンパク質の喪失に寄与した可能性があると考えられた。トレハロースおよびスクロースなどの他の賦形剤も、肺送達用に研究されているが、この経路についてFDAに認可された製品はまだない。ロイシンが粉末製剤に含まれたのは、以前の研究のデータから、ロイシンがTFFD粉末のエアロゾル性能の向上に役立つことが示されたからである(Sahakijpijarn et al., 2020a)。ロイシンは臨床試験中の吸入製品にも含まれている(Waterer et al., 2020)。ロイシンはTFFD中に結晶化し、結晶形態の分子は溶解性が低いことが知られており、これによりTFFD中およびmAbの再構成中に目に見える粒子および肉眼では見ることができない粒子が形成される可能性がある。実際、抗PD1-1-LL-PBS TFFD粉末を再構成する際、いくつかの目に見える粒子を見ることができた。それゆえ、i) TFFD mAb粉末を調製するために、ロイシンとともにまたはロイシンなしに、主要賦形剤としてトレハロースまたはスクロースを用いることの効果、およびii) TFFD後のmAb回収に及ぼすそれらの効果も試験した。ロイシンが含まれなかった場合、目に見える粒子は最小化または排除され(図6A)、したがってロイシンの低い溶解度(室温で水中におよそ25 g/L (Sahakijpijarn et al., 2020a))または結晶状態にある場合の溶解に起因する可能性がある。キイトルーダの添付文書には、「半透明から白色のタンパク質性粒子以外の余分な粒子状物質が観察された場合は、再構成したバイアルを廃棄すること」と記載されており、IV投与であっても目に見えるタンパク質粒子が許容されることを示唆している(Merck, 2014)。しかしながら、この再構成製剤はその後、製造中止となった。トレハロース/ロイシン75:25 (TL) 1% (w/v)およびロイシンを含まないスクロース5% (w/v) (S)も使用して、PBS中で抗PD-1 mAb 1% (w/w)を製剤化し(抗PD1-1-TL-PBSおよび抗PD1-1-S-PBS)、タンパク質の回収および単量体のパーセントを測定した。明らかに、賦形剤はmAb回収の程度に影響を与えた(図6B~C)。賦形剤としてのスクロースは液体サンプルと比べて、TFFDサンプルのタンパク質回収を実際に改善した。加えて、トレハロース/ロイシンは、ラクトース/ロイシンよりもタンパク質の回収が良好であった(図6B~C)。さらに、賦形剤としてのスクロースは、TFFD粉末中の単量体のパーセントを減少させなかったが、トレハロース/ロイシンは減少させた(図6D)。スクロース製剤における優れたタンパク質および単量体回収(図6B~D)のため、結合活性およびエアロゾル性能も測定した。スクロース製剤は、TFFDによる処理および再構成の前後で、同様の抗PD-1 mAb結合を維持した(図6E)。さらに、スクロース製剤は、ロイシンがなくても良好なエアロゾル性能を有していた(図6F)。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、0%のロイシンでは最良の回収率(図6B~C)となり、再構成時に目に見える凝集体もなく(図6A)、ロイシンがタンパク質の喪失に一部関与している可能性があると考えられる。それゆえ、今後の製剤化の取り組みは、得られる乾燥粉末が良好なエアロゾル性能特性を依然として持ちながら、タンパク質の喪失が最小限に抑えられるように、粉末中の適切なロイシン含量を特定することに重点を置くべきである。
【0146】
TFFD中の肉眼では見ることができないタンパク質凝集体形成に及ぼす賦形剤の影響。凝集は、患者の健康に有害でありうる免疫原性につながる可能性があるため、タンパク質の乾燥粉末製剤を調製する際に考慮すべき主要な事項である(Ratanji et al., 2014)。さらに、mAb濃度を増加させると、凍結乾燥中のその安定性を低減させうることが多いと知られている(Wang et al., 2007)。上述のように、特にラクトース/ロイシン製剤において、目に見える粒子がいくつか観察された。上述の全ての抗PD-1 mAb製剤と、賦形剤としてロイシンを含むまたは含まないマンニトールで調製された2つの新しい抗PD-1 mAb製剤も、MFIを用い肉眼では見ることができない凝集体について評価した。溶媒としてPBS (10 mM, pH7.4)で調製された製剤は、PBSなしで調製された製剤よりも優れたエアロゾル性能を有したが(表1)、MFIは全ての製剤にわたり、溶媒としてPBSで調製された製剤が、肉眼では見ることができない凝集体を有意に多く有することを示した(表2)。興味深いことに、mAb含量を増やしても(1%~13.2%)、肉眼では見ることができない凝集体の総数は有意に増加しなかった(表2)。凝集は空気/液体界面で起こることが知られている(Hufnagel et al., 2022)。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、この界面は飽和状態になり、タンパク質負荷を増やしても界面でのタンパク質量は増加しなかったと考えられる。それゆえ、肉眼では見ることができない凝集体数を増加させることなく、タンパク質の喪失を防ぐためにタンパク質の負荷を増加させることができる(図5) (表2)。最後に、マンニトールは、最も少ない量の肉眼では見ることができない凝集体を誘導する賦形剤であり(表2)、マンニトールを用いて調製したがロイシンを用いなかったTFFD粉末製剤において最も少ない凝集が観察された(表2)。図7のデータは、マンニトールを賦形剤として調製したTFFD粉末も良好なエアロゾル性能特性を示したことを示している。
【0147】
(表2)再構成後の抗PD1 mAb TFFD粉末中の肉眼では見ることができない凝集体。示されているのは、異なる組成(ラクトース/ロイシン(LL), 60:40; トレハロース/ロイシン(TL), 75:25; スクロース(S)単独; マンニトール/ロイシン(ML), 90:10; またはマンニトール(M)単独、PBS有りまたは無し)の抗PD1 mAb乾燥粉末中の肉眼では見ることができない凝集体を比較するMFI計数データである。PBS有りまたは無しで1% (w/w)の抗PD1 mAbで調製された粉末の場合、PBS有りで調製されたサンプルにおける総粒子数は、PBS無しで調製された各サンプルにおけるよりも有意に高かった(, p < 0.05, t検定)。異なる量の抗PD1 mAb (すなわち、1、6.6、または13.2%, w/w)で調製された粉末の場合、一元配置ANOVAにより、それらの間で総粒子数の差は明らかにされなかった(a p = 0.21)。n.s.は、抗PD1-1-MLと抗PD1-1-Mの総粒子数の間に有意差がないことを示す。データは平均±SD (n = 3)である。注記: 300 μm超の凝集体は検出されず、MFIでは2 μmより小さい粒子は計数されなかった。統計分析は総粒子数でのみ行われた。
【0148】
抗TNF-α mAbの薄膜凍結乾燥。最後に、抗TNF-α mAbもPBS中にトレハロース/ロイシン75:25により1% (w/w)で製剤化した(抗TNFα-1-TL-PBS)。興味深いことに、タンパク質の完全な回収があった(図8A~B)。抗PD-1 mAbをトレハロース/ロイシン75:25により1%で製剤化した場合、TFFD後、単量体含量は96.0から79.2%に減少した(図6C)。しかしながら、他の製剤パラメータは同じである一方で、mAbを抗TNF-α mAbに変更した場合、単量体の割合はTFFD後に減少しなかった(図8C)。それゆえ、予想されるように、mAbを溶解する液体の組成を含めて、各mAbの特徴は、TFFD中のタンパク質の回収および安定性に影響を与える可能性があり、各mAbは独自の製剤最適化を必要とする。
【0149】
抗PD1 mAbおよび抗TNF-α mAbの他に、TFFDは、MFI、SECおよび動的光散乱を用いて確認されたように顕著なタンパク質の凝集なしに30~40% (w/w)という高い賦形剤に対するタンパク質の比率で、AUG-3387 (Emig et al., 2021)を含め、他のmAbおよび抗体断片(Fab)、ならびにその他専売の臨床等級mAbおよびFabのエアロゾル化可能な乾燥粉末を調製するために成功裏に利用された。
【0150】
実施例2 - 医療用散粉器を用いた薄膜凍結乾燥モノクローナル抗体粉末のエアロゾル化
A. 方法
サンプルを1% (w/w) InVivoMAb抗マウスPD-1クローンRMP1-14モノクローナル抗体(BioXCell, Lebanon, NH)で調製した。固形分1% (w/v)のラクトース/ロイシン60:40またはスクロース5% (w/v)の2 つの異なる組成物を調製した。サンプルは、全ての成分をPBSに溶解し、適切な比率にてエッペンドルフチューブ内で組み合わせ、氷上で冷却することによって調製された。サンプルの総液量は2.5 mLであった。薄膜凍結(TFF)の場合、1 mLの注射器に21Gの注射針を用いて、-100℃のTFF装置の回転ドラム(150 rpm)に約10 cmの高さからサンプルを滴下した。凍結膜を液体窒素中に回収し、5 mL血清ガラスバイアル(DWK Life Sciences, Rockwood, TN)に移し、これをゴム栓で半栓して凍結乾燥まで-80℃で貯蔵した。VirTis Advantageベンチトップトレイ凍結乾燥機を使用した(VirTis, Gardiner, NY)。凍結乾燥では、一次乾燥を-40℃で保持し1200分間行い、その後25℃まで1200分間昇温した。二次乾燥は25℃で1200分間行った。圧力は100 mTorr以下で一定に保った。2.5 mLの液体量は約5 mLの粉末に変換され、バイアルに充填された。
【0151】
NOVATECH(登録商標) TALCAIR(商標)散粉器(Boston Medical Group, Shrewsbury, MA)を用いて、粉末をエアロゾル化した。散粉器は、タルク粉末を胸膜腔内に噴霧するためのFDA認可の装置である。医療用散粉器を用いて薄膜凍結乾燥mAb粉末を噴霧することの実行可能性を試験するために選択した。装置は黒いポスターボードから約5 cmの位置に保持され、写真1枚につき1回のバルブ作動が実行された。ポスターに粘着した粉末の写真は、エアロゾル化直後(すなわち約10秒後)に撮影した。
【0152】
B. 結果
ラクトース/ロイシンで調製された粉末は、スクロースで調製されたもの(図9C)と比較して、より密度の高いプルーム(図9A)を形成した。さらに、ラクトース/ロイシンで調製された粉末は、スクロースで調製された粉末(図9D)よりもポスター表面(図9B)上で実質的により目に見えるように分散していた。注目すべきことに、ラクトース/ロイシンで調製された粉末はほぼ全てバイアルから排出されたが、スクロースで調製された粉末は約2/3のみが排出され、残りの1/3はバイアルの上部に捕捉された。排出効率は、空気混入の前に粉末を調整することによって変更されうる。
【0153】
C. 考察
どちらの組成物も、タルク粉末を胸膜腔内に送達するためにFDAに認可されている装置であるNOVATECH(登録商標) TALCAIR(商標)散粉器からエアロゾル化することができた。ラクトース/ロイシン組成物は、ポスター上によく分散され、より容易にエアロゾル化された粉末をもたらしたが、スクロース製剤は分散され(すなわち、バイアルから排出され)にくく、ポスターに目に見えて付着していなかった。それゆえ、製剤の組成は、エアロゾルの性能および付着を決定する上で重要な役割を果たしている。全体として、このことは、TFF粉末が胸膜腔または巨視的および顕微鏡的に露出した組織表面に投与される可能性を実証し、一部の組成物がエアロゾル化時に近くの表面に粘着し、その部位に均一な分布を提供できることを示唆している。
【0154】
本明細書において開示および主張される組成物および方法の全ては、本開示を考慮すれば過度の実験なく作出および実行することができる。本開示の組成物および方法が好ましい態様に関して記述されたが、当業者には、本開示の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、本明細書において記述される方法、ならびに方法の段階または段階の順序において変形が適用されうることが明らかである。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連するある特定の作用物質が、本明細書において記述される作用物質の代わりに代用されても、同じまたは同様の結果が達成されることは明らかである。当業者には明らかなそのような同様の代用および変更は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨、範囲、および概念の範囲内であると見なされる。
【0155】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載されているものに対して例示的な手順または他の詳細な補足を提供する程度まで、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】