(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】組換えHCMVベクター及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/869 20060101AFI20240910BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240910BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240910BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240910BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20240910BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240910BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240910BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240910BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240910BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/245 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/04 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/015 20060101ALI20240910BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240910BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/49 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240910BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240910BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C12N15/869 Z
A61P31/18 ZNA
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/22
A61P31/20
A61P31/14
A61P31/04
A61P31/06
A61P31/00
A61K39/245
A61K39/29
A61K39/04
A61K39/12
A61K39/015
A61P33/06
A61K39/00 H
A61K35/76
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K39/21
C12N15/49
C12N15/12
C12N5/0783
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513410
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 US2022075670
(87)【国際公開番号】W WO2023034801
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268130
【氏名又は名称】ヴィア・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Vir Biotechnology, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】アービン,アン エム
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス,ジャネット エル
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】バージン,ハーバート ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AA95X
4B065AA95Y
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4C084AA13
4C084NA13
4C084ZB091
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4C084ZB382
4C085AA03
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4C085CC01
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4C085EE01
4C087AA01
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4C087BC83
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4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZB38
(57)【要約】
本開示は、異種抗原及びそれを含む免疫原性組成物を送達するためのヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ベクターに関する。
【選択図】
図6E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TR3骨格及び異種抗原をコードする核酸配列を含む組換えHCMVベクターであって、
(a)(i)前記ベクターが、UL18、UL78、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)前記ベクターが、UL82又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)前記異種抗原が、UL78の全部又は一部分を置き換え、かつUL78プロモーターに作動可能に連結されているか、
(b)(i)前記ベクターが、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)前記ベクターが、UL18又はそのオーソログをコードする核酸配列、及びUL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)前記異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつUL82プロモーターに作動可能に連結されているか、あるいは、
(c)(i)前記ベクターが、UL18、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)前記ベクターが、UL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)前記異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつ前記UL82プロモーターに作動可能に連結されている、組換えHCMVベクター。
【請求項2】
(i)前記ベクターが、UL18、UL78、UL128、UL130、UL146、又はUL147を発現せず、
(ii)前記ベクターが、UL82又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)前記異種抗原が、UL78の全部又は一部分を置き換え、かつ前記UL78プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項3】
(i)前記ベクターが、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)前記ベクターが、UL18又はそのオーソログをコードする核酸配列、及びUL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)前記異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつ前記UL82プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項4】
(i)前記ベクターが、UL18、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)前記ベクターが、UL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)前記異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつ前記UL82プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項5】
前記ベクターが、UL18、UL78、UL82、UL128、UL130、UL146、又はUL147をコードする核酸配列における1つ以上の変異の存在からもたらされる、UL18タンパク質、UL78タンパク質、UL82タンパク質、UL128タンパク質、UL130タンパク質、UL146タンパク質、又はUL147タンパク質のうちの1つ以上を発現しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項6】
前記UL18、UL78、UL82、UL128、UL130、UL146、又はUL147をコードする核酸配列における前記変異が、点変異、フレームシフト変異、切断変異、又はウイルスタンパク質をコードする前記核酸配列の全ての欠失である、請求項5に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項7】
前記ベクターが、マイクロRNA(miRNA)認識エレメント(MRE)をコードする核酸配列を更に含み、前記MREが、内皮細胞において発現されるmiRNAの標的部位を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項8】
前記ベクターが、MREをコードする核酸配列を更に含み、前記MREが、骨髄細胞において発現されるmiRNAの標的部位を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項9】
前記異種抗原が、病原体特異的抗原、腫瘍抗原、組織特異的抗原、又は宿主自己抗原である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項10】
病原体が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、Plasmodium寄生生物、又はMycobacterium tuberculosisである、請求項9に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項11】
前記病原体特異的抗原が、HIV抗原を含む、請求項9に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項12】
前記HIV抗原が、HIV Gag、HIV Nef、及びHIV Pol、若しくは免疫原性断片又はそれらの組み合わせを含むか、又はそれらからなる融合タンパク質である、請求項11に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項13】
前記HIV抗原が、配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合タンパク質である、請求項12に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項14】
前記HIV抗原が、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む融合タンパク質である、請求項12に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項15】
前記HIV抗原が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる融合タンパク質である、請求項12に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項16】
前記HIV抗原が、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合タンパク質である、請求項12に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項17】
前記HIV抗原が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む融合タンパク質である、請求項12に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項18】
前記HIV抗原が、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる融合タンパク質である、請求項12に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項19】
前記腫瘍抗原が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、結腸がん、腎細胞がん(RCC)、又は生殖細胞腫瘍に関連する、請求項9に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項20】
前記宿主自己抗原が、T細胞受容体(TCR)の可変領域に由来する抗原又はB細胞受容体の可変領域に由来する抗原である、請求項9に記載の組換えHCMVベクター。
【請求項21】
配列番号7に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項22】
配列番号7に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項23】
配列番号7に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【請求項24】
配列番号9に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項25】
配列番号9に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項26】
配列番号9に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【請求項27】
配列番号5に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項28】
配列番号5に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項29】
配列番号5に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【請求項30】
配列番号6に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項31】
配列番号6に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項32】
配列番号6に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【請求項33】
配列番号8に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項34】
配列番号8に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【請求項35】
配列番号8に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクターと、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項37】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクターと、薬学的に許容される担体と、を含む、免疫原性組成物。
【請求項38】
対象において免疫応答を生成する方法であって、前記対象に、請求項1~37のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター又は組成物を投与することを含む、方法。
【請求項39】
前記免疫応答が、前記少なくとも1つの異種抗原に対するものである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
対象における免疫応答の生成における使用のための薬剤の製造における、請求項1~37のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター又は組成物の使用。
【請求項41】
対象における免疫応答の生成における使用のための、請求項1~37のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター又は組成物。
【請求項42】
対象における疾患を治療する方法であって、請求項1~37のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター又は組成物を投与することを含む、方法。
【請求項43】
対象におけるHIVを治療する方法であって、配列番号7に記載の核酸配列、又は配列番号7に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項44】
対象におけるHIVを治療する方法であって、配列番号9に記載の核酸配列、又は配列番号9に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項45】
対象におけるHIVを治療する方法であって、配列番号5に記載の核酸配列、又は配列番号5に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項46】
対象におけるHIVを治療する方法であって、配列番号6に記載の核酸配列、又は配列番号6に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項47】
対象におけるHIVを治療する方法であって、配列番号8に記載の核酸配列、又は配列番号8に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項48】
対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、請求項1~37のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター又は組成物の使用。
【請求項49】
対象におけるHIVの治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号7に記載の核酸配列又は配列番号7に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【請求項50】
対象におけるHIVの治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号9に記載の核酸配列又は配列番号9に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【請求項51】
対象におけるHIVの治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号5に記載の核酸配列又は配列番号5に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【請求項52】
対象におけるHIVの治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号6に記載の核酸配列又は配列番号6に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【請求項53】
対象におけるHIVの治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号8に記載の核酸配列又は配列番号8に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【請求項54】
対象における疾患の治療における使用のための、請求項1~37のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクター又は組成物。
【請求項55】
対象における疾患の治療における使用のための、配列番号7に記載の核酸配列又は配列番号7に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【請求項56】
対象における疾患の治療における使用のための、配列番号9に記載の核酸配列又は配列番号9に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【請求項57】
対象における疾患の治療における使用のための、配列番号5に記載の核酸配列又は配列番号5に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【請求項58】
対象における疾患の治療における使用のための、配列番号6に記載の核酸配列又は配列番号6に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【請求項59】
対象における疾患の治療における使用のための、配列番号8に記載の核酸配列又は配列番号8に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【請求項60】
前記対象が、HCMVに対して血清陽性である、請求項38~59のいずれか一項に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項61】
前記対象が、HCMVに対して血清陰性である、請求項38~59のいずれか一項に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項62】
前記組換えHCMVが、少なくとも1×10
3病巣形成単位(ffu)の量で投与される、請求項38~59のいずれか一項に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項63】
前記組換えHCMVが、約5×10
4ffuの量で投与される、請求項62に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項64】
前記組換えHCMVが、約5×10
5ffuの量で投与される、請求項62に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項65】
前記組換えHCMVが、約5×10
6ffuの量で投与される、請求項62に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項66】
前記組換えHCMVが、約1×10
3ffuの量で投与される、請求項62に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項67】
前記組換えHCMVが、約3×10
4ffuの量で投与される、請求項62に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項68】
前記組換えHCMVが、約1×10
6ffuの量で投与される、請求項62に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項69】
前記組換えHCMVベクターが、前記少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発するのに有効な量で投与される、請求項38~68のいずれか一項に記載の製造における方法使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項70】
前記異種抗原が、HIV抗原であるか又はHIV抗原を含み、前記疾患が、HIV感染症である、請求項38~69のいずれか一項に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項71】
前記疾患が、病原性感染症、腫瘍若しくはがん、又は自己免疫疾患である、請求項38~69のいずれか一項に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項72】
前記組換えHCMVベクターによって誘発された前記CD8+T細胞のうちの少なくとも10%が、MHC-E又はそのオーソログによって拘束される、請求項60~71のいずれか一項に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項73】
前記組換えHCMVベクターによって誘発された前記CD8+T細胞のうちの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%が、MHC-E又はそのオーソログによって拘束される、請求項69~72のいずれか一項に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項74】
前記組換えHCMVベクターによって誘発された前記CD8+T細胞のうちの少なくとも10%が、MHC-II又はそのオーソログによって拘束される、請求項69~73のいずれか一項に記載の製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項75】
前記組換えHCMVベクターによって誘発された前記CD8+T細胞のうちの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも75%が、MHC-II又はそのオーソログによって拘束される、請求項69~74のいずれか一項に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項76】
前記組換えHCMVベクターによって誘発された前記CD8+T細胞のうちの10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、又は50%未満が、MHCクラスIa又はそのオーソログによって拘束される、請求項69~75のいずれか一項に記載の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【請求項77】
MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法であって、前記方法が、
(a)MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞のセットを生成するのに有効な量で、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクターを第1の対象に投与することと、
(b)前記CD8+T細胞のセットから第1のCD8+TCRを特定することであって、前記第1のCD8+TCRが、MHC-E/ペプチド複合体を認識する、特定することと、
(c)第2の対象から1つ以上のCD8+T細胞を単離することと、
(d)前記第2の対象から単離された前記1つ以上のCD8+T細胞を発現ベクターでトランスフェクトすることであって、前記発現ベクターが、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列と、前記第2のCD8+TCRをコードする前記核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターと、を含み、前記第2のCD8+TCRが、前記第1のCD8+TCRのCDR3α及びCDR3βを含み、それによって、MHC-E/ペプチド複合体を認識する1つ以上のCD8+T細胞を生成する、トランスフェクトすることと、を含む、方法。
【請求項78】
MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法であって、前記方法が、
(a)CD8+T細胞のセットから第1のCD8+TCRを特定することであって、前記CD8+T細胞のセットが、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクターを投与された第1の対象から単離され、前記第1のCD8+TCRが、MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識する、特定することと、
(b)第2の対象から1つ以上のCD8+T細胞を単離することと、
(c)前記第2の対象から単離された前記1つ以上のCD8+T細胞を発現ベクターでトランスフェクトすることであって、前記発現ベクターが、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列と、前記第2のCD8+TCRをコードする前記核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターと、を含み、前記第2のCD8+TCRが、前記第1のCD8+TCRのCDR3α及びCDR3βを含み、それによって、MHC-E/ペプチド複合体を認識する1つ以上のTCRトランスジェニックCD8+T細胞を生成する、トランスフェクトすることと、を含む、方法。
【請求項79】
前記第1のCD8+TCRが、DNA又はRNA配列決定によって特定される、請求項77又は78に記載の方法。
【請求項80】
前記第2のCD8+TCRをコードする前記核酸配列が、前記第1のCD8+TCRをコードする核酸配列と同一である、請求項77~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記第1の対象が、ヒトである、請求項77~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記第1の対象が、HCMVに対して血清陽性である、請求項77~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記第1の対象が、HCMVに対して血清陰性である、請求項77~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記第2の対象が、ヒトである、請求項77~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
請求項77~84のいずれか一項に記載の方法によって生成されるCD8+T細胞。
【請求項86】
対象における疾患を治療する方法であって、前記方法が、請求項85に記載のCD8+T細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項87】
対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、請求項85に記載のCD8+T細胞の使用。
【請求項88】
対象における疾患の治療における使用のための、請求項85に記載のCD8+T細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する声明
本出願に関連する配列表は、ハードコピーの代わりにXML形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含有するXMLファイルの名称は、930485_438WO_SequenceListing.xmlである。XMLファイルは、1,189,916バイトであり、2022年8月25日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0002】
サイトメガロウイルス(CMV)ベースのワクチンベクターは、伝統的に自然免疫を回避し、反復又は慢性感染を引き起こすことができる病原体に対してさえも、送達された抗原に対する強い免疫応答をもたらすことが見出されている。例えば、サル免疫不全ウイルス(SIV)抗原をコードするように修飾されたアカゲザルサイトメガロウイルス(RhCMV)の68-1株は、SIVチャレンジに対する長期的な防御に関連している(Hansen,SG et al.,Immune clearance of highly pathogenic SIV infection.Nature 502,100-104(2013)、Hansen,SG et al.,Profound early control of highly pathogenic SIV by an effector memory T-cell vaccine.Nature 473,523-527(2011)、Hansen,SG et al.,Effector memory T cell responses are associated with protection of rhesus monkeys from mucosal simian immunodeficiency virus challenge.Nat Med.15,293-299(2009))。CMVベクターを用いたその後の研究は、異なる免疫応答が、CMV骨格の特定の遺伝的構成要素に応じて誘発され得ることを明らかにした(Frueh,K et al.,CD8+ T cell programming by cytomegalovirus vectors: applications in prophylactic and therapeutic vaccination.Curr Opin Immunol.47,52-56(2017)、Hansen,SG et al.Cytomegalovirus vectors violate CD8+T cell epitope recognition paradigms.Science 340,1237874(2013))。
【0003】
アカゲザルサイトメガロウイルス(RhCMV)の68-1は、従来のMHC-Iの代わりに、MHC-II及びMHC-Eによって提示されるペプチドを認識するCD8+T細胞を誘発することが示されている。この効果は、カニクイザルCMV(CyCMV)においても観察されており、HCMV UL128、UL130、UL146、及びUL147のRhCMV及びCyCMVホモログの欠失が、MHC-E拘束CD8+T細胞の誘導を可能にすることを実証している(国際出願公開第2016/130693A1号、同第2018/075591A1号)。更に、これらのベクターは、MHC-II拘束CD8+T細胞を誘発する。MHC-II拘束CD8+T細胞の誘導は、これらのベクターの必須ウイルス遺伝子への内皮細胞特異的マイクロRNA(miR)126の標的化部位の挿入によって排除され、MHC-E拘束CD8+T細胞を専ら誘発する「MHC-Eのみ(MHC-E only)」ベクターをもたらす(国際出願公開第2018/075591A1号)。対照的に、68-1 RhCMVへの骨髄細胞特異的miR142-3pの挿入は、MHC-E拘束CD8+T細胞の誘導が妨げられ、MHC-IIによって専ら拘束されるCD8+T細胞を誘発するベクターをもたらすことが示されている(国際出願公開第2017/087921A1号)。UL40ホモログRh67の欠失はまた、MHC-E拘束CD8+T細胞の誘導を防止し、「MHC-IIのみベクター」をもたらすことも示されている(国際出願公開第2016/130693A1号)。したがって、特定の遺伝子欠失を有するようにCMVベクターをデザインすることによって、CMVを使用して抗原を送達し、それらの抗原に対する免疫応答を「プログラム」することができる。
【0004】
世界保健機関によると、2019年時点で世界で3,800万人がヒト免疫不全ウイルス(HIV)を有して生活しており、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)の結果として約69万人が死亡すると推定されている。現時点で、HIVを予防又は治療するために利用可能なワクチンは存在しない。更に、HIV/AIDSの治療において大幅な進歩がなされているが、既存の治療は潜伏しているウイルスリザーバ-を除去しないため、HIVを有して生活している人々は、依然として生涯療法を必要とする(Erikkson,S et al.Comparative Analysis of Measures of Viral Reservoirs in HIV-1 Eradication Studies.PLoS Pathog 9,e1003174(2013)を参照されたい)。したがって、HIVのための効果的な予防又は治療用ワクチンが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態では、本開示は、TR3骨格及び異種抗原をコードする核酸配列を含む組換えHCMVベクターであって、
(a)(i)ベクターが、UL18、UL78、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)ベクターが、UL82又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)異種抗原が、UL78の全部又は一部分を置き換え、かつUL78プロモーターに作動可能に連結されているか、
(b)(i)ベクターが、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)ベクターが、UL18又はそのオーソログをコードする核酸配列、及びUL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつUL82プロモーターに作動可能に連結されているか、あるいは、
(c)(i)ベクターが、UL18、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)ベクターが、UL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつUL82プロモーターに作動可能に連結されている、組換えHCMVベクターを提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、異種抗原は、HIV抗原、例えば、HIV Gag、HIV Nef、及びHIV Pol、若しくはそれらの免疫原性断片、又はそれらの組み合わせを含む融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、異種抗原は、配列番号3又は配列番号4に記載のアミノ酸配列であるか、又はそれを含む。
【0007】
いくつかの更なる実施形態では、本開示は、配列番号7に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号7に記載の核酸配列を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。
【0008】
いくつかの更なる実施形態では、本開示は、配列番号9に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号9に記載の核酸配列を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。
【0009】
本開示はまた、いくつかの実施形態で、配列番号5に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号5に記載の核酸配列を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号6に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号6に記載の核酸配列を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号8に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号8に記載の核酸配列を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価におけるコホート用量漸増を示す。コホート1は、ワクチン又はプラセボに4:2で無作為化された6人の対象からなる。コホート2は、ワクチン又はプラセボに6:2で無作為化された8人の対象からなる。コホート3は、ワクチン又はプラセボに10:2で無作為化された12人の対象からなる。初期開始用量は、1×10
3病巣形成単位(ffu)である。その後のコホートにおける用量は、8週間にわたる安全性データに基づいて、最大1×10
6ffuまで約30倍の増分で段階的に増加される。対象は、57日目に第2の皮下用量を受ける。第2の用量は、第1の用量の間に受けた同じ産物の投与量レベルである。
【
図2A】HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価において使用される評価スケジュール(SoA)を示す。
【
図2B】HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価において使用される評価スケジュール(SoA)を示す。
【
図2C】HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価において使用される評価スケジュール(SoA)を示す。
【
図2D】HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価において使用される評価スケジュール(SoA)を示す。
【
図2E】HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価において使用される評価スケジュール(SoA)を示す。
【
図2F】HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価において使用される評価スケジュール(SoA)を示す。
【
図3】HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価において使用される実験室評価のリストを示す。
【
図4】HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価における有害事象(AE)の重症度のグレード付けを示す。
【
図5】ベクター2又はベクター3のいずれかを受けるCMV血清陽性(「CMV(+)」)及びCMV血清陰性(「CMV(-)」)の対象の用量スケジュールを示す。CMV血清陰性の対象は、5×10
4ffuの用量で開始するベクター2又はベクター3の漸増用量を受け、8週間にわたる安全性データに基づいて、より高い用量レベル(5×10
5ffu又は5×10
6ffu)への段階的な進行が開始される。CMV血清陽性の対象は、5×10
4ffu、5×10
5ffu、又は5×10
6ffuの用量でベクター2又はベクター3のいずれかを受け、3つのコホート全てが同時に投与される。
【
図6A】CMVベクター骨格のベクター構築の開発を示す。
図6Aは、ガンシクロビルに対する耐性を付与する変異型UL97遺伝子に加えて、BACカセットが挿入されたHCMV TRのUS(固有の短い)領域を示す。
図6Bは、US1とUS7との間のE.coliにおける増殖に必要なBACカセットの挿入を示し、それによって、US2-US6を欠失させる。
図6Cは、HCMV株AD169、GFP、及びLoxP部位からのUS2-US7の挿入、並びにTRからのUS7の結果的な欠失を示す。
図6Dは、SV40初期プロモーターの制御下での、ガンシクロビル感受性を回復させるためのAD169 UL97によるTR UL97の置き換え、GFP遺伝子の除去、及びBACカセットへのCreリコンビナーゼの付加を示す。
図6Eは、ウイルスの再構成時のBACカセットの切除を示し、US7とUS8との間に位置する単一の34-bpのLoxP部位をウイルスゲノムにおける唯一の残りの非ウイルス配列として残している。
【
図6B】CMVベクター骨格のベクター構築の開発を示す。
図6Aは、ガンシクロビルに対する耐性を付与する変異型UL97遺伝子に加えて、BACカセットが挿入されたHCMV TRのUS(固有の短い)領域を示す。
図6Bは、US1とUS7との間のE.coliにおける増殖に必要なBACカセットの挿入を示し、それによって、US2-US6を欠失させる。
図6Cは、HCMV株AD169、GFP、及びLoxP部位からのUS2-US7の挿入、並びにTRからのUS7の結果的な欠失を示す。
図6Dは、SV40初期プロモーターの制御下での、ガンシクロビル感受性を回復させるためのAD169 UL97によるTR UL97の置き換え、GFP遺伝子の除去、及びBACカセットへのCreリコンビナーゼの付加を示す。
図6Eは、ウイルスの再構成時のBACカセットの切除を示し、US7とUS8との間に位置する単一の34-bpのLoxP部位をウイルスゲノムにおける唯一の残りの非ウイルス配列として残している。
【
図6C】CMVベクター骨格のベクター構築の開発を示す。
図6Aは、ガンシクロビルに対する耐性を付与する変異型UL97遺伝子に加えて、BACカセットが挿入されたHCMV TRのUS(固有の短い)領域を示す。
図6Bは、US1とUS7との間のE.coliにおける増殖に必要なBACカセットの挿入を示し、それによって、US2-US6を欠失させる。
図6Cは、HCMV株AD169、GFP、及びLoxP部位からのUS2-US7の挿入、並びにTRからのUS7の結果的な欠失を示す。
図6Dは、SV40初期プロモーターの制御下での、ガンシクロビル感受性を回復させるためのAD169 UL97によるTR UL97の置き換え、GFP遺伝子の除去、及びBACカセットへのCreリコンビナーゼの付加を示す。
図6Eは、ウイルスの再構成時のBACカセットの切除を示し、US7とUS8との間に位置する単一の34-bpのLoxP部位をウイルスゲノムにおける唯一の残りの非ウイルス配列として残している。
【
図6D】CMVベクター骨格のベクター構築の開発を示す。
図6Aは、ガンシクロビルに対する耐性を付与する変異型UL97遺伝子に加えて、BACカセットが挿入されたHCMV TRのUS(固有の短い)領域を示す。
図6Bは、US1とUS7との間のE.coliにおける増殖に必要なBACカセットの挿入を示し、それによって、US2-US6を欠失させる。
図6Cは、HCMV株AD169、GFP、及びLoxP部位からのUS2-US7の挿入、並びにTRからのUS7の結果的な欠失を示す。
図6Dは、SV40初期プロモーターの制御下での、ガンシクロビル感受性を回復させるためのAD169 UL97によるTR UL97の置き換え、GFP遺伝子の除去、及びBACカセットへのCreリコンビナーゼの付加を示す。
図6Eは、ウイルスの再構成時のBACカセットの切除を示し、US7とUS8との間に位置する単一の34-bpのLoxP部位をウイルスゲノムにおける唯一の残りの非ウイルス配列として残している。
【
図6E】CMVベクター骨格のベクター構築の開発を示す。
図6Aは、ガンシクロビルに対する耐性を付与する変異型UL97遺伝子に加えて、BACカセットが挿入されたHCMV TRのUS(固有の短い)領域を示す。
図6Bは、US1とUS7との間のE.coliにおける増殖に必要なBACカセットの挿入を示し、それによって、US2-US6を欠失させる。
図6Cは、HCMV株AD169、GFP、及びLoxP部位からのUS2-US7の挿入、並びにTRからのUS7の結果的な欠失を示す。
図6Dは、SV40初期プロモーターの制御下での、ガンシクロビル感受性を回復させるためのAD169 UL97によるTR UL97の置き換え、GFP遺伝子の除去、及びBACカセットへのCreリコンビナーゼの付加を示す。
図6Eは、ウイルスの再構成時のBACカセットの切除を示し、US7とUS8との間に位置する単一の34-bpのLoxP部位をウイルスゲノムにおける唯一の残りの非ウイルス配列として残している。
【
図7】ベクター2及びベクター3のマスターウイルスシード及び臨床試験材料を生成するための製造プロセスを示す。
【
図8】2~8℃での72時間にわたる2つのバイオプロセッシングバッグ型、CX5-14 Labtainer(商標)PE(ポリエチレン)及びFlexboy(登録商標)EVA(エチレン酢酸ビニル)における保持時間の比較を示す。
【
図9】累積保持時間試験後の力価を示す。ヒスチジントレハロース(HT)緩衝液中に製剤化された代表的な中間バルクを、2~8℃で16時間、一晩(「O/N」)、容量の30%まで充填されたFlexboy(登録商標)EVAバッグ中に保持した(「#2」と標識された)。一晩保持の後、中間バルクを室温(RT)で72時間保持し(「#3」~「#5」と標識された)、その後、それをバイアルに0.7mLで充填し、RTで更に48時間保持して、RT保持の最悪の場合のシナリオを模倣した(「#6」及び「#7」と標識された)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語集
以下のセクションは、CMVベクター、及び関連する医薬組成物、並びに抗HIV免疫応答などの免疫応答を誘導する方法、及び疾患(例えば、HIV)を治療又は予防する方法の詳細な説明を提供する。本開示をより詳細に説明する前に、本明細書で使用される特定の用語の定義を提供することは、その定義を理解することに役立ち得る。追加の定義は、本開示全体を通して記載されている。
【0014】
文脈が別途必要としている場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」という文言並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのその変形は、開放的、包括的な意味で、すなわち、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。「~からなる」とは、本明細書に開示される他の成分の微量要素及び実質的な方法工程を超えるものを除外することを意味し、アミノ酸又は核酸配列の場合、それぞれ、追加のアミノ酸又はヌクレオチドを除外することを意味するものとする。「から本質的になる」という用語は、特許請求の範囲を、特定の材料若しくは工程、又は特許請求された発明の基本的な特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。例えば、本明細書に定義される構成要素から本質的になる組成物は、単離及び精製方法からの微量汚染物質、並びに薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝食塩水、防腐剤などを除外しない。同様に、タンパク質が、タンパク質の長さの最大20%に寄与し、かつ、タンパク質の活性に実質的に影響を与えない(例えば、タンパク質の活性を50%以下変化させる)追加のアミノ酸を含む場合、タンパク質は、本質的に特定のアミノ酸配列からなる。移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0015】
本発明の記載において、「約」という用語は、別途指示されない限り、示される範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0016】
本明細書で使用される「a」及び「an」という用語は、明記されない限り、列挙される構成要素のうちの「1つ以上」を含むと理解されるべきである。選択肢(例えば、「又は」)の使用は、選択肢のうちの1つ、両方、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきであり、「及び/又は」と同義に使用され得る。本明細書で使用される場合、「含む(include)」及び「有する」という用語は、同義に使用され、その用語及び変形は、非限定的なものとして解釈されることが意図される。
【0017】
「実質的に」という文言は、「完全に」を除外するものではない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、「実質的に」という文言は、本明細書で提供される定義から省略されてもよい。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語、並びにこれらの用語の変形は、例えば、等配性のペプチドの場合など、正常なペプチド結合、又は修飾されたペプチド結合によって互いに結合された少なくとも2つのアミノ酸を含む分子、特に、融合タンパク質を含むペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質をそれぞれ指す。例えば、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、遺伝コードによって定義される20個のアミノ酸から選択されるアミノ酸で構成されてもよく、通常のペプチド結合によって互いに連結されてもよい(「古典的な」ポリペプチド)。ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、L-アミノ酸及び/又はD-アミノ酸から構成され得る。特に、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語にはまた、そのペプチドが天然の親ペプチドの生物学的作用(複数可)を模倣又は拮抗することができる、非ペプチド構造エレメントを含有するペプチド類似体として定義される「ペプチド模倣物」も含まれる。ペプチド模倣物は、酵素的に切断しやすいペプチド結合などの古典的なペプチド特性を欠いている。具体的には、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、これらのアミノ酸に加えて、遺伝コードによって定義される20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含み得るか、又は遺伝コードによって定義される20個のアミノ酸以外のアミノ酸で構成され得る。具体的には、本開示の文脈におけるペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、翻訳後成熟プロセスなどの自然プロセスによって、又は当業者に周知の化学プロセスによって修飾されたアミノ酸から等しく構成され得る。そのような修飾は、文献に十分に詳述されている。これらの修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸鎖、又はカルボキシ末端若しくはアミノ末端でさえも、ポリペプチドにおける任意の場所に現れ得る。具体的には、ペプチド又はポリペプチドは、ユビキチン化後に分岐され得るか、又は分岐の有無にかかわらず環状であり得る。この種類の修飾は、当業者に周知の天然又は合成の翻訳後プロセスの結果であり得る。本開示の文脈における「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「タンパク質」という用語には、特に、修飾されたペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質も含まれる。例えば、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、ヌクレオチド若しくはヌクレオチド誘導体の共有結合固定、脂質若しくは脂質誘導体の共有結合固定、ホスファチジルイノシトールの共有結合固定、共有結合若しくは非共有結合の架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、ペグ化を含むグリコシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセス、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セネロイル化、硫酸化、アルギニル化などのアミノ酸付加、又はユビキチン化が含まれ得る。そのような修飾は、文献に十分に詳述されている(Proteins Structure and Molecular Properties,2nd Ed.,T.E.Creighton,New York(1993)、Post-translational Covalent Modifications of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York(1983)、Seifter,et al.,Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors,Meth.Enzymol.182:626-46(1990)、及びRattan,et al.,Protein Synthesis: Post-translational Modifications and Aging,Ann NY Acad Sci 663:48-62(1992))。したがって、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語には、例えば、リポペプチド、リポタンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質などが含まれる。
【0019】
タンパク質の「オーソログ」は、典型的には、アラインメントアルゴリズム、例えば、デフォルトパラメータに設定されたALIGNプログラム(バージョン2.0)を使用して、特定のタンパク質のアミノ酸配列との完全長アラインメントにわたって計数された75%超の配列同一性を有することによって特徴付けられる。参照配列と更に大きな類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価したときに、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性などの増加した同一性パーセンテージを示す。更に、配列同一性は、本開示のペプチドの特定のドメインの完全長にわたって比較することができる。
【0020】
「相同な」又は「ホモログ」という用語は、宿主細胞、種、若しくは株に見られるか、又はそれに由来する分子若しくは活性を指す。例えば、異種又は外因性の分子又はその分子をコードする遺伝子は、それぞれ、天然の宿主若しくは宿主細胞の分子又はその分子をコードする遺伝子と相同であり得るが、変化された構造、配列、発現レベル又はそれらの組み合わせを有し得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「(ポリ)ペプチド」は、上で説明されたように、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸単量体の一本鎖を含む。本明細書で使用される場合、「タンパク質」は、1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の(ポリ)ペプチド、すなわち、上で説明されたように、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸単量体の1つ以上の鎖を含む。特定の実施形態では、本開示によるタンパク質は、1、2、3、又は4個のポリペプチドを含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA/RNAハイブリッド、又は合成核酸を含むがこれらに限定されないDNA分子及びRNA分子を含むことが意図されている。核酸は、一本鎖、又は部分的若しくは完全に二本鎖(二重鎖)であり得る。二重鎖核酸は、ホモ二重鎖又はヘテロ二重鎖であり得る。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「コード配列」という用語は、タンパク質産物のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド分子を指すよう意図されている。コード配列の境界は、概して、通常、ATG開始コドンで始まるオープンリーディングフレームによって決定される。
【0024】
本明細書で使用される「発現」という用語は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、分泌などを含む、ポリペプチドの産生に関与する任意の工程を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「配列バリアント」という用語は、参照配列と比較して1つ以上の変化を有する任意の配列を指し、参照配列は、配列表に列挙される配列、すなわち、配列番号1~配列番号9のうちのいずれかである。したがって、「配列バリアント」という用語は、ヌクレオチド配列バリアント及びアミノ酸配列バリアントを含む。ヌクレオチド配列の文脈における配列バリアントについて、参照配列は、ヌクレオチド配列でもあるが、アミノ酸配列の文脈における配列バリアントについて、参照配列は、アミノ酸配列でもある。本明細書で使用される「配列バリアント」は、参照配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。配列同一性は、別途指定されない限り、通常、参照配列の完全長(すなわち、本出願に記載されている配列)に関して計算される。本明細書で言及されるような同一性パーセンテージは、例えば、NCBI(the National Center for Biotechnology Information;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)[Blosum62マトリックス、ギャップオープンペナルティ=1 1及びギャップ拡張ペナルティ=1]によって指定された既定パラメータを使用するBLASTなどの、当該技術分野で既知の様々なアラインメント方法を使用して決定され得る。核酸(ヌクレオチド)配列の文脈における「配列バリアント」は、参照配列におけるヌクレオチドのうちの1つ以上が欠失若しくは置換されているか、又は1つ以上のヌクレオチドが参照ヌクレオチド配列の配列に挿入されている、変化された配列を有する。ヌクレオチドは、本明細書では、標準的な1文字の指定(A、C、G、又はT)によって言及される。遺伝コードの縮重に起因して、ヌクレオチド配列の「配列バリアント」は、それぞれの参照アミノ酸配列、すなわち、アミノ酸「配列バリアント」の変化をもたらし得るか否かのいずれかであり得る。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列バリアントは、アミノ酸配列バリアントをもたらさないバリアントである(すなわち、サイレント変異)。しかしながら、「非サイレント」変異をもたらすヌクレオチド配列バリアント、特に、参照アミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をもたらす、そのようなヌクレオチド配列バリアントもまた、その範囲内にある。アミノ酸配列の文脈における「配列バリアント」は、参照アミノ酸配列と比較して、アミノ酸のうちの1つ以上が、欠失、置換、又は挿入される変化された配列を有する。変化の結果、そのような配列バリアントは、参照アミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する。例えば、参照配列の100アミノ酸当たり、10個以下の変化、すなわち、欠失、挿入、又は置換の任意の組み合わせを有するバリアント配列は、参照配列と「少なくとも90%同一」である。
【0026】
非保存的アミノ酸置換を有することは、可能であるが、ある特定の実施形態では、置換は、保存的アミノ酸置換であり、置換されたアミノ酸は、参照配列における対応するアミノ酸と同様の構造又は化学的特性を有する。例えば、保存的アミノ酸置換には、1つの脂肪族又は疎水性アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンの別のアミノ酸での置換、1つのヒドロキシル含有アミノ酸、例えば、セリン及びスレオニンの別のアミノ酸での置換、1つの酸性残基、例えば、グルタミン酸又はアスパラギン酸の別のアミノ酸での置換、1つのアミド含有残基、例えば、アスパラギン及びグルタミンの別のアミノ酸での置き換え、1つの芳香族残基、例えば、フェニルアラニン及びチロシンの別のアミノ酸での置き換え、1つの塩基性残基、例えば、リジン、アルギニン、及びヒスチジンの別のアミノ酸での置き換え、1つの小アミノ酸、例えば、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン、及びグリシンの別のアミノ酸での置き換えが含まれる。
【0027】
アミノ酸配列挿入には、1つの残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端の融合、並びに単一若しくは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、アミノ酸配列のN末端又はC末端へのレポーター分子又は酵素への融合が挙げられる。
【0028】
別段明記されない限り、配列バリアントの変化は、それぞれの参照配列の機能性、例えば、本場合では、本明細書に開示される抗原又はベクターの機能性を消失させない。そのような機能性を消失させることなく、どのヌクレオチド及びアミノ酸残基が、それぞれ、置換、挿入、又は欠失され得るかを決定する際のガイダンスは、当該技術分野で周知のコンピュータプログラムを使用することによって見出され得る。
【0029】
本開示のヌクレオチド配列は、コドン最適化され得、例えば、コドンは、ヒト細胞での使用のために最適化され得る。例えば、任意のウイルス又は細菌配列がそのように変化され得る。HIV及び他のレンチウイルスを含む多くのウイルスは、多数の希少コドンを使用しており、Andre,S et al.(Increased Immune Response Elicited by DNA Vaccination with a Synthetic gp120 Sequence with Optimized Codon Usage.J Virol.72,1497-1503(1998))に記載のように、これらのコドンを変化させて所望の対象において一般的に使用されるコドンに対応させることによって、抗原の発現の増強が達成される場合がある。
【0030】
本明細書で使用される場合、指定された核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質「に由来する」核酸配列又はアミノ酸配列は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の起源を指す。いくつかの実施形態では、特定の配列に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、それが由来するその配列又はその一部分に本質的に同一であるアミノ酸配列を有し、それによって「本質的に同一」には、上で定義される配列バリアントが含まれる。ある特定の実施形態では、特定のペプチド又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、特定のペプチド又はタンパク質における対応するドメインに由来する。それによって、「対応する」は、特に、同じ機能性を指す。例えば、「細胞外ドメイン」は、(別のタンパク質の)別の「細胞外ドメイン」に対応するか、又は「膜貫通ドメイン」は、(別のタンパク質の)別の「膜貫通ドメイン」に対応する。したがって、ペプチド、タンパク質、及び核酸の「対応する」部分は、当業者には識別可能である。同様に、他の配列「に由来する」配列は、通常、その配列においてその起源を有するものとして当業者には特定可能である。
【0031】
いくつかの実施形態では、別の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、(それが由来する)出発核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質と同一であり得る。しかしながら、別の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列はまた、(それが由来する)出発核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に対して1つ以上の変異を有し得、特に、別の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、(それが由来する)出発核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の上記の機能的配列バリアントであり得る。例えば、ペプチド/タンパク質において、1つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換され得るか、又は1つ以上のアミノ酸残基の挿入若しくは欠失が生じ得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「変異」という用語は、参照配列、例えば、対応するゲノム配列と比較した核酸配列及び/又はアミノ酸配列における変化に関する。変異は、例えば、ゲノム配列と比較して、例えば、(天然に生じる)体細胞変異、自然発生変異、例えば、酵素、化学物質、若しくは放射線によって誘導される誘導変異、又は部位指向性変異誘発(核酸配列及び/又はアミノ酸配列において特異的かつ意図的な変化を行うための分子生物学的方法)によって得られる変異であり得る。したがって、「変異」又は「変異させること」という用語は、例えば、核酸配列又はアミノ酸配列において、物理的に変異を行うことも含むと理解される必要がある。変異は、1つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失、及び挿入、並びにいくつかの連続したヌクレオチド又はアミノ酸の逆位を含む。コード配列変異のいくつかの種類には、点変異(個々のヌクレオチド又はアミノ酸の差異)、サイレント変異(アミノ酸変化をもたらさないヌクレオチドの差異)、欠失(1つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸を失う差異、最大で遺伝子のコード配列全体の欠失を含む)、フレームシフト変異(3によって割ることができない多くのヌクレオチドの欠失がアミノ酸配列の変化をもたらす差異)が含まれる。アミノ酸の差異をもたらす変異は、アミノ酸置換変異とも呼ばれ得る。アミノ酸置換変異は、アミノ酸配列中の特定の位置における野生型に対するアミノ酸変化によって説明され得る。アミノ酸配列における変異を達成するために、変異は、(組換え)変異型ポリペプチドを発現するために、当該アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に導入され得る。変異は、例えば、1つのアミノ酸をコードする核酸分子のコドンを変化させ、例えば、部位指向性変異誘発し、異なるアミノ酸をコードするコドンをもたらすことによって、又は配列バリアントを合成することによって、例えば、ポリペプチドをコードする核酸分子のヌクレオチド配列を知り、核酸分子の1つ以上のヌクレオチドを変異させる必要なしに、ポリペプチドのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の合成をデザインすることによって、達成され得る。
【0033】
「組換え」という用語は、本明細書で使用される場合(例えば、組換えタンパク質、組換え核酸、組換え抗体など)、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離され、天然に生じない任意の分子(タンパク質、核酸、抗体など)を指す。核酸又はポリペプチドに関して、「組換え」は、天然に生じない配列を有するものか、又はそうでなければ2つ以上の分離された配列のセグメントの人工的な組み合わせによって作製された配列、例えば、異種抗原を含むCMVベクターを有するものを指す。この人工的な組み合わせは、多くの場合、化学合成によって達成され、又はより一般的には、単離された核酸セグメントの人工的な操作、例えば、遺伝子工学技術によって達成される。組換えポリペプチドは、ポリペプチドの天然供給源ではない宿主生物に転写される組換え核酸(例えば、異種抗原を含むCMVベクターを形成するポリペプチドをコードする核酸)を含む組換え核酸を使用して作製されたポリペプチドも指し得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、特定の配列の核酸分子が組み込まれ、次いで、宿主細胞に導入され、それによって形質転換された宿主細胞を産生し得る担体を指す。ベクターは、宿主細胞においてその複製を可能にする核酸配列、例えば、複製起点を含み得る。ベクターはまた、1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子、及び核酸発現を指示するプロモーターエレメントを含む当該技術分野で既知の他の遺伝子エレメントを含み得る。ベクターは、CMVベクターなどのウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターは、野生型ウイルス又は複製欠損ウイルスを含む減弱ウイルスから構築され得る。
【0035】
「作動可能に連結された」という用語を本明細書で使用される場合、第1の核酸配列が第2の核酸配列に影響を及ぼすような様式で配置されるときに、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に連結される。作動可能に連結されたDNA配列は、連続であり得、又は離れて作動し得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、核酸の転写を指示する多くの核酸制御配列のうちのいずれかを指し得る。典型的には、真核生物プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合などの転写の開始部位近くに必要な核酸配列、TATAエレメント、又は1つ以上の転写因子によって認識される任意の他の特異的DNA配列が含まれる。プロモーターによる発現は、エンハンサー又はリプレッサーエレメントによって更に調節され得る。プロモーターの多数の例が利用可能であり、当業者に周知である。特定のポリペプチドをコードする核酸配列と作動可能に連結されたプロモーターを含む核酸は、発現ベクターと称され得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、全てのそのような指定には、子孫が含まれる。したがって、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」という文言は、移入の数に関係なく、それが由来する初代対象細胞及び培養物を含む。また、全ての子孫は、故意又は不注意の変異により、DNAの内容において正確に同一ではない場合があることを理解されたい。元の形質転換された細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能又は生物学的活性を有するバリアント子孫が含まれる。別個の指定が意図される場合、文脈から明らかであろう。
【0038】
本明細書で使用される場合、「マイクロRNA」という用語は、遺伝子発現の制御に関与する生体分子の主要なクラスを指す。例えば、ヒトの心臓、肝臓、又は脳において、miRNAは、組織の特定又は細胞系列の決定において役割を果たす。更に、miRNAは、早期発達、細胞増殖、及び細胞死、並びにアポトーシス及び脂肪代謝を含む様々なプロセスに影響を与える。多数のmiRNA遺伝子、多様な発現パターン、及び潜在的なmiRNA標的が豊富であることは、miRNAが遺伝的多様性の重要な供給源であり得ることを示唆している。成熟miRNAは、典型的には、miRNAに相補的な配列を含むmRNAの発現を調節する8~25ヌクレオチドの非コードRNAである。これらの小さなRNA分子は、mRNAの安定性及び/又は翻訳を調節することによって遺伝子発現を制御することが既知である。例えば、miRNAは、標的mRNAの3’UTRに結合し、翻訳を抑制する。miRNAはまた、標的mRNAに結合し、RNAi経路を介して遺伝子サイレンシングを媒介し得る。miRNAはまた、クロマチン凝縮を引き起こすことによって遺伝子発現を調節し得る。
【0039】
miRNAは、mRNA転写産物上のどこかでmiRNAと直接塩基対を形成してmiRNAと相互作用する任意の配列として定義されるmiRNA認識エレメント(MRE)に結合することによって、1つ以上の特異的mRNA分子の翻訳をサイレンシングする。MREは、多くの場合、mRNAの3’非翻訳領域(UTR)に存在するが、MREは、コード配列又は5’UTRにも存在し得る。MREは、必ずしもmiRNAに対して完全な相補体ではなく、通常、miRNAに対して相補性であるいくつかの塩基のみしか有さず、多くの場合、それらの相補性の塩基内に1つ以上のミスマッチを含む。MREは、MREが作動可能に連結されている遺伝子(インビボでの増殖に必須であるか又はそれを増強するCMV遺伝子など)の翻訳がRISCなどのmiRNAサイレンシング機序によって抑制されるように、miRNAによって十分に結合可能な任意の配列であり得る。
【0040】
本明細書で使用される「ワクチン」という用語は、典型的には、少なくとも1つの抗原又は免疫原を提供する予防的又は治療的材料であると理解される。抗原又は免疫原は、ワクチン接種に好適な任意の材料に由来し得る。例えば、抗原又は免疫原は、細菌又はウイルス粒子などの病原体、又は腫瘍若しくはがん性組織に由来し得る。抗原又は免疫原は、身体の適応免疫系を刺激して、適応免疫応答を提供する。特に、「抗原」又は「免疫原」は、典型的には、免疫系(例えば、適応免疫系)によって認識され得、例えば、適応免疫応答の一部分としての抗体及び/又は抗原特異的T細胞の形成によって、抗原特異的免疫応答を誘発することができる物質を指す。典型的には、抗原は、MHCによってT細胞に提示され得るペプチド又はタンパク質であり得るか、又はそれらを含み得る。ワクチンは、予防的又は治療的に使用することができる。したがって、ワクチンは、疾患(腫瘍若しくは病的感染症など)を発症する可能性を低減するか、又は疾患若しくは状態の症状の重症度を低減するか、又は疾患若しくは状態(腫瘍若しくは病的感染症など)の進行を制限するか、又は疾患若しくは状態(腫瘍など)の再発を制限するために使用することができる。特定の実施形態では、ワクチンは、HIV抗原などの異種抗原を発現する複製欠損CMVを含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「抗原」又は「免疫原」という用語は、対象における免疫応答を誘導することができる物質、典型的にはタンパク質を指すために互換的に使用される。この用語はまた、対象に投与したときに(対象に、直接投与するか、又はタンパク質をコードするヌクレオチド配列若しくはベクターを投与することによって)、タンパク質がタンパク質に対して指向される体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘発することができるという意味で、免疫学的に活性であるタンパク質を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「異種抗原」という用語は、CMVに由来しない任意のタンパク質又はその断片を指す。異種抗原は、病原体特異的抗原、腫瘍ウイルス抗原、腫瘍抗原、宿主自己抗原、又は任意の他の抗原であり得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「抗原特異的T細胞」とは、特定の抗原を認識するCD8+又はCD4+リンパ球を指す。一般に、抗原特異的T細胞は、MHC分子によって提示される特定の抗原に特異的に結合するが、同じMHCによって提示される他の抗原には特異的に結合しない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「免疫原性ペプチド」とは、ペプチドがMHC分子に結合して、細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)応答又は免疫原性ペプチドが由来する抗原に対するB細胞応答(例えば、抗体産生)を誘導するような対立遺伝子特異的モチーフ又はN末端反復などの他の配列を含むペプチドを指す。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、配列モチーフ、又はニューラルネット若しくは多項式決定などの当該技術分野で既知の他の方法を使用して特定される。典型的には、特定の親和性で結合する高い可能性を与えるスコアを有し、かつ、免疫原性であるペプチドを選択するためのペプチドの「結合閾値」を決定するために、アルゴリズムが使用される。アルゴリズムは、特定の位置での特定のアミノ酸のMHC結合に対する効果、特定の位置での特定のアミノ酸の抗体結合に対する効果、又はモチーフ含有ペプチド中の特定の置換の結合に対する効果のいずれかに基づく。免疫原性ペプチドの関連内で、「保存された残基」は、ランダム分布によって予想されるよりも有意に高い頻度で、ペプチド中の特定の位置に現れる残基である。いくつかの実施形態では、保存された残基は、MHC構造が免疫原性ペプチドとの接触点を提供し得る残基である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、任意の有効な経路により、有効量の外因性抗原を含むCMVベクターを含む組成物などの薬剤を対象に付与又は投与することを意味する。例示的な投与経路には、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、及び静脈内)、経口、舌下、直腸、経皮、経鼻、膣、及び吸入経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される場合、使用される「薬学的に許容される担体」は、従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,19th Edition,1995は、本明細書に開示される組成物の薬学的送達に好適な組成物及び製剤を記載している。一般に、担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩溶液、緩衝液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的及び生理学的に許容される流体を含む、注射可能な流体を含む。固体組成物(散剤、丸剤、錠剤、又はカプセル形態など)のために、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、防腐剤、及びpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートを含み得る。
【0047】
用量は、多くの場合、体重に関連して表される。したがって、[g、mg、又は他の単位]/kg(又はg、mgなど)として表される用量は、通常、「体重」という用語が明示的に言及されていなくても、「kg(又はg、mgなど)体重当たり」の[g、mg、又は他の単位]を指す。
【0048】
用量は、細胞叢上のウイルスの複製を示す細胞障害性の効果の領域(病巣)が計数される病巣形成アッセイによって決定される、ml当たりの病巣形成単位(ffu)として表され得る。
【0049】
本明細書で使用される「疾患」という用語は、概して、「障害」及び「状態」(医学的状態として)という用語と同義であることが意図され、互換的に使用され、つまり、全てが、正常な機能を損なうヒト及び動物の身体、又はその部分のうちの1つの異常な状態を反映しており、典型的には、特徴的な徴候及び症状によって明らかにされ、ヒト又は動物の生活の期間又は質の低減を引き起こす。
【0050】
抗原
HIV融合抗原
HIV抗原を含む融合タンパク質及びそれをコードする核酸が、本明細書に開示される。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示は、HIV Gag、HIV Nef、及びHIV Pol又はそれらの部分のうちの1つ以上を含む融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号3に記載のアミノ酸配列のアミノ酸2~912を含む。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号4に記載のアミノ酸配列のアミノ酸2~911を含む。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号3に記載のアミノ酸配列のアミノ酸2~912からなる。いくつかの実施形態では、融合抗原は、配列番号4に記載のアミノ酸配列のアミノ酸2~911からなる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示は、上記の融合タンパク質をコードする核酸分子、例えば、配列番号1又は配列番号2に記載の核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸分子は、配列番号1に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸分子は、配列番号2に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号1に記載の配列を含む、核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号2に記載の配列を含む、核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号1に記載の配列からなる核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号2に記載の配列からなる核酸分子を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示は、上記の融合タンパク質をコードするベクターを提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号1又は配列番号2に記載の核酸配列を含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、融合タンパク質をコードするベクターを提供し、融合タンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、融合タンパク質をコードするベクターを提供し、融合タンパク質は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、融合タンパク質をコードするベクターを提供し、融合タンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、本開示は、融合タンパク質をコードするベクターを提供し、融合タンパク質は、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる。
【0054】
ベクターは、当該技術分野で既知の任意の発現ベクターであり得る。抗原が発現されるためには、融合タンパク質のタンパク質コード配列は、タンパク質の転写及び翻訳を指示する調節配列又は核酸制御配列に「作動可能に連結」されている必要がある。コード配列及び核酸制御配列又はプロモーターは、それらが、コード配列の発現又は転写及び/又は翻訳を核酸制御配列の影響又は制御下に置くような様式で共有結合されている場合、「作動可能に連結されている」と言われる。「核酸制御配列」は、核酸エレメントに作動可能に結合された核酸配列又はコード配列の発現を指示する、プロモーター、エンハンサー、IRES、イントロン、及び本明細書に記載の他のエレメントなどであるがこれらに限定されない任意の核酸エレメントであり得る。「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼIIの開始部位の周りでクラスター化され、かつ、本開示のタンパク質コード配列に作動可能に連結された場合にコードタンパク質の発現をもたらす、転写制御モジュールの群を指す。本開示の異種抗原及び融合タンパク質の発現は、限定されないが、テトラサイクリンなどの抗生物質、エクジソンなどのホルモン、又は重金属などのいくつかの特定の外部刺激に曝露されたときにのみ転写を開始する構成的プロモーター又は誘導性プロモーターの制御下にあり得る。プロモーターはまた、特定の細胞型、組織、又は臓器に特異的であり得る。多くの好適なプロモーター及びエンハンサーが当該技術分野で既知であり、任意のそのような好適なプロモーター又はエンハンサーが、本開示の導入遺伝子の発現のために使用され得る。例えば、好適なプロモーター及び/又はエンハンサーは、真核生物プロモーターデータベース(EPDB)から選択され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードするベクターは、プラスミド、細菌ベクター、又はウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、ポックスウイルス、アデノウイルス、風疹、センダイウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、又はアデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードするベクターは、CMVベクター、例えば、RhCMV又はHCMVベクターである。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードするベクターは、TR3骨格を含む組換えHCMVベクターである。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象においてHIVに対する免疫応答を生成するか、又はHIVを予防若しくは治療する方法であって、上記の融合タンパク質をコードするベクターを投与することを含む、方法を提供する。
【0057】
本開示はまた、上記の融合タンパク質に基づくRNA又はタンパク質を含むワクチン、及び対象におけるHIVに対する免疫応答を生成するか、又はHIVを予防若しくは治療する方法におけるそれらの使用を提供する。
【0058】
他の抗原
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるHCMVベクターによってコードされる異種抗原は、病原体特異的抗原、腫瘍抗原、腫瘍特異的抗原、又は宿主自己抗原である。
【0059】
病原体特異的抗原は、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、Plasmodium寄生生物、Clostridium tetani、又はMycobacterium tuberculosisに由来し得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、病原体特異的抗原は、HIV Env、HIV Tat、HIV Rev、HIV Vif、HIV Vpu、HIV Gag、HIV Nef、又はHIV Polを含む。いくつかの実施形態では、病原体特異的抗原は、HIV Env、HIV Tat、HIV Rev、HIV Vif、HIV Vpu、HIV Gag、HIV Nef、及びHIV Polのうちの2つ以上を含む融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、病原体特異的抗原は、HIV Gag、HIV Nef、又はHIV Pol抗原を含む。例えば、抗原は、国際出願公開第2016/054654A1号に記載されている任意のHIV抗原配列又はその融合体であり得、これは、HIV抗原に関連するその教示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
いくつかの実施形態では、病原体特異的抗原は、Mycobacterium tuberculosis抗原を含む。いくつかの実施形態では、病原体特異的抗原は、2つ以上のMycobacterium tuberculosis抗原を含む融合タンパク質を含む。例えば、抗原は、国際出願公開第2017/223146A1号に記載されている任意の抗原又はその融合体であり得、これは、Mycobacterium tuberculosis抗原に関連するその教示のために参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、病原体特異的抗原は、Ag85A-Ag85B-Rv3407、Rv1733-Rv2626c、RpfA-RpfC-RpfD、Ag85B-ESAT6、又はAg85A-ESAT6-Rv3407-Rv2626c-RpfA-RpfDである。
【0062】
腫瘍抗原は、腫瘍細胞に比較的限定され、免疫応答を誘導する任意のタンパク質であり得る。しかしながら、多くの腫瘍抗原は、宿主(自己)タンパク質であり、したがって、典型的には、宿主免疫系によって抗原性とみなされない。腫瘍抗原はまた、がん細胞によって異常発現され得る。腫瘍抗原はまた、がん細胞で発現される生殖細胞系列/精巣抗原、成人組織で発現されない細胞系統分化抗原、又はがん細胞で過剰発現される抗原であり得る。腫瘍抗原には、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、ウィルムス腫瘍抑制タンパク質(WT1)、メソテリン(MSLN)、Her-2(HER2)、HPV16株のヒトパピローマウイルス抗原E6、HPV16株のヒトパピローマウイルス抗原E7、HPV18株のヒトパピローマウイルス抗原E6、HPV18株のヒトパピローマウイルス抗原E7、HPV16及びHPV18由来のヒトパピローマウイルスE6及びE7の融合タンパク質、ムチン1(MUC1)、LMP2、上皮増殖因子受容体(EGFR)、p53、ニューヨーク食道1(NY-ESO-1)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、GD2、がん胎児性抗原(CEA)、黒色腫抗原a/T細胞により認識される黒色腫抗原1(MelanA/MART1)、Ras、gp100、プロテイナーゼ3(PR1)、Bcr-abl、Survivin、前立腺特異的抗原(PSA)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、EphA2、ML-IAP、アルファフェトタンパク質(AFP)、EpCAM、ERG、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体(AR)、サイクリンB1、MYCN、RhoC、チロシン関連タンパク質2(TRP-2)、GD3、フコシルGM1、PSCA、sLe(a)、CYP1B1、PLCA1、GM3、BORIS、Tn、GloboH、Etsバリアント遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子ETS(ETV6-AML)、NY-BR-1、RGS5、扁平上皮抗原拒絶腫瘍又は3(SART3)、STn、炭酸脱水素酵素IX、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、B7H3、レグマイン、Tie2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、TAG-72、9D7、EphA3、テロメラーゼ、SAP-1、BAGEファミリー、CAGEファミリー、GAGEファミリー、MAGEファミリー、SAGEファミリー、XAGEファミリー、優先的に発現される黒色腫の抗原(PRAME)、メラノコルチン1受容体(MC1R)、β-カテニン、BRCA1/2、CDK4、慢性骨髄性白血病66(CML66)、並びにTGF-βが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、宿主自己抗原には、前立腺酸性ホスファターゼ、ウィルムス腫瘍抑制タンパク質、メソテリン、又はHer-2が含まれる。
【0063】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、がんに由来する。がんには、以下が含まれるが、これらに限定されない:急性リンパ芽球性白血病;急性骨髄性白血病;副腎皮質がん;AIDS関連がん;AIDS関連リンパ腫;肛門がん;虫垂がん;星状細胞腫、小児小脳又は大脳;基底細胞がん;胆管がん、肝外;膀胱がん;骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫;脳腫瘍;脳腫瘍、小脳星状細胞腫;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫;脳腫瘍、上衣腫;脳腫瘍、髄芽腫;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉腫瘍;脳腫瘍、視覚経路及び視床下部神経膠腫;乳がん;気管支腺腫/カルチノイド;バーキットリンパ腫;カルチノイド腫瘍、小児;カルチノイド腫瘍、消化管;原発不明のがん腫;中枢神経系リンパ腫、原発性;小脳星状細胞腫、小児;大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;子宮頸がん;小児がん;慢性リンパ性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性障害;結腸がん;皮膚T細胞リンパ腫;線維形成性小円形細胞腫瘍;子宮内膜がん;上衣腫;食道がん;腫瘍のユーイングファミリーにおけるユーイング肉腫;頭蓋外胚細胞腫瘍、小児;性腺外生殖細胞腫瘍;肝外胆管がん;眼がん、眼内黒色腫;眼がん、網膜芽細胞腫;胆嚢がん;胃(Gastric)(胃(Stomach))がん;消化管カルチノイド腫瘍;消化管間質腫瘍(GIST);胚細胞腫瘍:頭蓋外、性腺外、又は卵巣;妊娠性絨毛腫瘍;脳幹の神経膠腫;神経膠腫、小児大脳星状細胞腫;神経膠腫、小児視覚経路及び視床下部;胃カルチノイド;有毛細胞白血病;頭頸部がん;心臓がん;肝細胞(肝臓)がん;ホジキンリンパ腫;下咽頭がん;視床下部及び視覚経路神経膠腫、小児;眼内黒色腫;膵島細胞がん(膵臓内分泌);カポジ肉腫;腎臓がん(腎細胞がん);喉頭がん;白血病;白血病、急性リンパ芽球性(急性リンパ性白血病とも称される);白血病、急性骨髄球性(急性骨髄性白血病とも称される);白血病、慢性リンパ性(慢性リンパ性白血病とも称される);白血病、慢性骨髄性(慢性骨髄性白血病とも称される);白血病、有毛細胞;口唇及び口腔がん;肝臓がん(原発性);肺がん、非小細胞;肺がん、小細胞;リンパ腫;リンパ腫、AIDS関連;リンパ腫、バーキット;リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン;リンパ腫、非ホジキン(ホジキンを除く全てのリンパ腫の古い分類);リンパ腫、原発性中枢神経系;Marcus Whittle、致命的疾患;マクログロブリン血症、Waldenstrim;骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫;髄芽腫、小児;黒色腫;黒色腫、眼内(眼);メルケル細胞がん;中皮腫、成人悪性;中皮腫、小児;原発不明の転移性扁平上皮頸部がん;口腔がん;多発性内分泌腫瘍症候群、小児;多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍;菌状息肉症;骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、成人急性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性(骨髄のがん);骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔及び副鼻腔がん;上咽頭がん;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺がん;口腔がん;中咽頭がん;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;卵巣がん;卵巣上皮がん(表面上皮間質腫瘍);卵巣胚芽細胞腫瘍;卵巣低悪性潜在性腫瘍;膵臓がん;膵臓がん、膵島細胞;副鼻腔及び鼻腔がん;副甲状腺がん;陰茎がん;咽頭がん;褐色細胞腫;松果体星状細胞腫;松果体胚腫;松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉腫瘍、小児;下垂体腺腫;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;原発性中枢神経系リンパ腫;前立腺がん;直腸がん;腎細胞がん(腎臓がん);腎盂及び尿管、移行上皮がん;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺がん;肉腫、腫瘍のユーイングファミリー;肉腫、カポジ;肉腫、軟部組織;肉腫、子宮;セザリー症候群;皮膚がん(非黒色腫);皮膚がん(黒色腫));皮膚がん、メルケル細胞;小細胞肺がん;小腸がん;軟部組織肉腫;扁平上皮細胞がん-皮膚がん(非黒色腫)を参照;原発不明の扁平上皮頸部がん、転移性;胃がん;テント上原始神経外胚葉腫瘍、小児;T細胞リンパ腫、皮膚(菌状息肉症及びセザリー症候群);精巣がん;咽喉がん;胸腺腫、小児;胸腺腫及び胸腺がん腫;甲状腺がん;甲状腺がん、小児;腎盂及び尿管の移行上皮がん;絨毛性腫瘍、妊娠性;未知の原発部位、成人のがん;未知の原発部位、小児のがん;尿管及び腎盂、移行上皮がん;尿道がん;子宮体がん、子宮内膜;子宮肉腫;膣がん;視覚経路及び視床下部神経膠腫、小児;外陰がん;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;並びにウィルムス腫瘍(腎臓がん)。
【0064】
いくつかの実施形態では、宿主自己抗原は、T細胞受容体(TCR)の可変領域に由来し、又はB細胞受容体の可変領域に由来する抗原である。
【0065】
いくつかの実施形態では、抗原は、ワクチン又は免疫学的組成物における使用に好適なものであり得(例えば、Stedman’s Medical Dictionary(第24版、1982年、例えば、ワクチンの定義(ワクチン製剤で使用される抗原のリストについて)、それらの抗原から目的のそのような抗原又はエピトープが、使用され得る。当業者は、ペプチド又はポリペプチドのアミノ酸及び対応するDNA配列の知識、並びに特定のアミノ酸の性質(例えば、サイズ、電荷など)及びコドン辞書から、抗原及びそのコードDNAを選択し得る。
【0066】
抗原のTエピトープを決定する1つの方法は、エピトープマッピングを含む。腫瘍抗原の重複ペプチドは、オリゴペプチド合成によって生成される。次いで、個々のペプチドが、T細胞活性化を誘導する能力について試験される。このアプローチは、MHC分子と複合体化された短い直鎖状ペプチドをT細胞が認識するため、T細胞エピトープのマッピングに特に有用である。
【0067】
CMVベクター
異種抗原をコードする核酸配列を含む組換えCMVベクターが本明細書に開示される。
【0068】
いくつかの実施形態では、組換えCMVベクターは、HCMV TR3であるか、又はそれに由来する。本明細書で言及される場合、「HCMV TR3」又は「TR3」は、Caposio,P et al.(Characterization of a live attenuated HCMV-based vaccine platform.Scientific Reports 9,19236(2019))に記載されているように、臨床分離株HCMV TRに由来するHCMV TR3ベクター骨格を指す。
【0069】
本明細書に記載される場合、組換えCMVベクターは、1つ以上のCMV遺伝子の存在又は非存在によって特徴付けられ得る。CMVベクターはまた、1つ以上のCMV遺伝子によってコードされる1つ以上のタンパク質の存在又は非存在によって特徴付けられ得る。CMV遺伝子によってコードされるタンパク質は、CMV遺伝子をコードする核酸配列における変異の存在により、非存在であり得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、CMV遺伝子のオーソログ又はホモログを含み得る。CMV遺伝子の例としては、UL82、UL128、UL130、UL146、UL147、UL18、及びUL78が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
ヒトサイトメガロウイルスUL82遺伝子は、ウイルス粒子の外皮ドメインに局在されるタンパク質であるpp71をコードする。例えば、CMV TR株のUL82遺伝子は、GenBankアクセッション番号KF021605.1の118811~120490である。
【0071】
pp71は、ウイルス遺伝子転写のDaxx抑制の阻害、STINGの負の調節、及び細胞抗ウイルス応答の回避を含む1つ以上の機能を果たし得る(Kalejta RF,et al.Expanding the Known Functional Repertoire of the Human Cytomegalovirus pp71 Protein.Front Cell Infect Microbiol.2020 Mar 12;10:95)。UL82遺伝子座での外来遺伝子の挿入によるUL82の欠失又はUL82の破壊は、pp71タンパク質の非存在をもたらし、その結果、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、及び星状細胞における複製を低減する(Caposio P et al.,Characterization of a live-attenuated HCMV-based vaccine platform.Sci Rep.2019 Dec 17;9(1):19236)。UL82の欠失又は破壊の効果は、細胞キナーゼ阻害剤によって可逆的である。アカゲザルサイトメガロウイルス(RhCMV)遺伝子RhCMV110は、ヒトCMV UL82と相同である(Hansen SG,et al.Complete sequence and genomic analysis of rhesus cytomegalovirus.J Virol.2003 Jun;77(12):6620-36)。
【0072】
ヒトサイトメガロウイルス遺伝子UL128及びUL130は、ウイルスエンベロープの構成要素をコードする(Patrone,M et al.Human cytomegalovirus UL130 protein promotes endothelial cell infection through a producer cell modification of the virion.J Virol.79(13):8361-73(2005)、Ryckman,BJ et al.Characterization of the human cytomegalovirus gH/gL/UL128-131 complex that mediates entry into epithelial and endothelial cells.J Virol.82(1):60-70(2008)、Wang,D et al.Human cytomegalovirus virion protein complex required for epithelial and endothelial cell tropism.Proc Natl Acad Sci U S A.102(50):18153-8(2005))。例えば、CMV TR株のUL128遺伝子は、GenBankアクセッション番号KF021605.1の176206~176964であり、CMV TR株のUL130遺伝子は、GenBankアクセッション番号KF021605.1の177004~177648である。
【0073】
ヒトサイトメガロウイルス遺伝子UL146及びUL147は、それぞれ、CXCケモカインvCXC-1及びvCXC-2をコードする(Penfold,ME et al.Cytomegalovirus encodes a potent alpha chemokine.Proc Natl Acad Sci U S A.96(17):9839-44(1999))。例えば、CMV TR株のUL146遺伝子は、GenBankアクセッション番号KF021605.1の180954~181307であり、CMV TR株のUL147遺伝子は、GenBankアクセッション番号KF021605.1の180410~180889である。
【0074】
ヒトサイトメガロウイルスUL18遺伝子は、β2-ミクログロブリンと会合し、内因性ペプチドに結合し得るI型膜糖タンパク質をコードする(Park,B et al.Human cytomegalovirus inhibits tapasin-dependent peptide loading and optimization of the MHC class I peptide cargo for immune evasion.Immunity.20(1):71-85(2004)、Browne,H et al.A complex between the MHC class I homologue encoded by human cytomegalovirus and beta 2 microglobulin.Nature.347(6295):770-2(1990)、Fahnestock,ML et al.The MHC class I homolog encoded by human cytomegalovirus binds endogenous peptides.Immunity.3(5):583-90(1995))。例えば、CMV TR株のUL18遺伝子は、GenBankアクセッション番号KF021605.1の24005~25111である。
【0075】
ヒトサイトメガロウイルスUL78遺伝子は、推定上のGタンパク質共役受容体をコードし(Chee,MS et al.Analysis of the protein-coding content of the sequence of human cytomegalovirus strain AD169.Curr Top Microbiol Immunol.1154:125-69(1990))、ウイルス複製にも役割を有し得る(Michel,D et al.The human cytomegalovirus UL78 gene is highly conserved among clinical isolates,but is dispensable for replication in fibroblasts and a renal artery organ-culture system.J Gen Virol.86(Pt 2):297-306(2005))。例えば、CMV TR株のUL78遺伝子は、GenBankアクセッション番号KF021605.1の114247~115542である。
【0076】
いくつかの実施形態では、組換えCMVベクター(例えば、TR3骨格を含む組換えHCMVベクター)は、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログをコードする核酸配列における変異の存在により、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現しない。いくつかの実施形態では、CMVベクターはまた、UL18、UL78、若しくはUL82、又はそれらのオーソログをコードする核酸配列における変異の存在により、UL18、UL78、及びUL82、並びにそれらのオーソログのうちの1つ以上が欠損している。いくつかの実施形態では、CMVベクターはまた、US11又はそのオーソログをコードする核酸配列における変異の存在により、US11及びそのオーソログが欠損している。前述の実施形態では、1つ以上の変異は、活性タンパク質の発現の欠如をもたらす任意の変異であり得る。そのような変異には、例えば、点変異、フレームシフト変異、タンパク質をコードする配列の全て未満の欠失(切断変異)、又はタンパク質をコードする核酸配列の全ての欠失が含まれる。いくつかの実施形態では、組換えCMVベクター(例えば、TR3骨格を含む組換えHCMVベクター)は、UL40及びUS28、又はそれらのオーソログも発現する。
【0077】
いくつかの実施形態では、組換えCMVベクター(例えば、TR3骨格を含む組換えHCMVベクター)は、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログをコードする核酸配列における変異の存在により、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現しない。いくつかの実施形態では、組換えCMVベクターはまた、UL18をコードする核酸配列における変異の存在により、UL18が欠損している。
【0078】
いくつかの実施形態では、組換えCMVベクター(例えば、TR3骨格を含む組換えHCMVベクター)は、UL78、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログをコードする核酸配列における変異の存在により、UL78、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現しない。いくつかの実施形態では、組換えCMVベクターはまた、UL18をコードする核酸配列における変異の存在により、UL18が欠損している。
【0079】
いくつかの実施形態では、組換えCMVベクター(例えば、TR3骨格を含む組換えHCMVベクター)は、UL78、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログをコードする核酸配列における変異の存在により、UL78、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現しない。
【0080】
ワクチンのために望ましい特性を有するHCMVベクターを製造するための課題は、ベクターが、多くの場合、ウイルス複製又は増殖が低減するようにデザインされることである。例えば、いくつかの生減弱HCMV-HIVワクチンベクターは、HCMV遺伝子UL82(外皮タンパク質pp71をコードする)の欠失によって成長が欠損するように操作され、より低いウイルス収率をもたらす。pp71は、この外皮タンパク質が、細胞Daxx機能を抑制する核に転座され、したがって、複製サイクルを誘発するCMV前初期(IE)遺伝子発現を可能にするため、野生型HCMV感染にとって重要である。いくつかの製造プロセスは、HCMV pp71の機能のうちの1つを模倣する、Daxxを標的とするsiRNAでのMRC-5細胞の一過性トランスフェクションを使用する機能的相補性に依存する。別のアプローチは、宿主細胞が必須ウイルス遺伝子を発現することを可能にするために、pp71をコードするmRNAのトランスフェクションを使用することである。必須ウイルス遺伝子を発現させるためのmRNAのトランスフェクションは、細胞周期刺激、効率的なビリオンパッケージング、及びウイルス安定性など、感染プロセスを強化する可能性が高い遺伝子の全ての機能を提供することが可能であり得る。更に、感染の後半に存在するタンパク質は、子孫ウイルスにパッケージングされる可能性を有し、これは、より効率的な第1のラウンドの感染及び持続的な感染の確立によって、ワクチンの必要な用量を低下させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、組換えCMVウイルスベクターを産生する方法であって、(a)pp71タンパク質をコードするmRNAを細胞に導入することと、(b)細胞を組換えCMVで感染させることと、(c)細胞をインキュベーションすることと、(d)組換えCMVウイルスベクターを収集することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、pp71タンパク質をコードする核酸は、トランスフェクションを使用して細胞に送達される。いくつかの実施形態において、細胞は、MRC-5細胞である。いくつかの実施形態では、組換えCMVは、本明細書に記載の組換えHCMV(例えば、TR3骨格に由来する組換えHCMVベクター)である。いくつかの実施形態では、組換えCMV及び組換えCMVウイルスベクターは、本明細書に記載のヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原などの異種病原体特異的抗原をコードする核酸を含む。そのような方法によって作製されるCMVウイルスベクターもまた、本開示の範囲内である。
【0081】
いくつかの実施形態では、組換えCMVベクター(例えば、TR3骨格を含む組換えHCMVベクター)は、マイクロRNA(miRNA)認識エレメント(MRE)をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HCMVベクターは、内皮細胞において発現されるマイクロRNAの標的部位を含有するMREをコードする核酸配列を含む。内皮細胞において発現されるmiRNAの例は、miR126、miR-126-3p、miR-130a、miR-210、miR-221/222、miR-378、miR-296、及びmiR-328である。いくつかの実施形態では、HCMVベクターは、UL18、UL128、UL130、UL146、及びUL147(及び任意選択的にUL82)を欠如し、UL40及びUS28を発現し、MREは、内皮細胞で発現されるマイクロRNAの標的部位を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、組換えCMVベクター(例えば、TR3骨格を含む組換えHCMVベクター)は、骨髄細胞において発現されるマイクロRNAの標的部位を含有するMREをコードする核酸配列を含む。骨髄細胞において発現されるmiRNAの例は、miR-142-3p、miR-223、miR-27a、miR-652、miR-155、miR-146a、miR-132、miR-21、miR-124、及びmiR-125である。
【0083】
本明細書に開示される組換えCMVベクターに含まれ得るMREは、内皮細胞によって発現されるmiRNAの存在下で発現をサイレンシングする任意のmiRNA認識エレメント、又は骨髄細胞によって発現されるmiRNAの存在下で発現をサイレンシングする任意のmiRNA認識エレメントであり得る。そのようなMREは、miRNAの正確な相補体であり得る。あるいは、他の配列を所与のmiRNAのためのMREとして使用し得る。例えば、MREは、公的に利用可能なデータベースを使用して配列から予測され得る。一例では、miRNAは、ウェブサイトmicroRNA.org(www.microrna.org)で検索され得る。次いで、miRNAのmRNA標的のリストが列挙される。そのページの列挙された各標的について、「アラインメントの詳細」にアクセスし、推定MREにアクセスし得る。当業者は、文献から、マクロファージなどの骨髄細胞で発現されるmiRNAの存在下でサイレンシングを誘導すると予測される妥当な、推定の、又は変異したMRE配列を選択し得る。一例には、上記の参照のウェブサイトが含まれる。次いで、当業者は、レポーター遺伝子(蛍光タンパク質、酵素、又は他のレポーター遺伝子など)が、構成的に活性なプロモーター又は細胞特異的プロモーターなどのプロモーターによって駆動される発現を有する、発現構築物を取得し得る。次いで、MRE配列を発現構築物に導入し得る。発現構築物を適切な細胞にトランスフェクトし、細胞を関心のあるmiRNAでトランスフェクトし得る。レポーター遺伝子の発現の欠如は、MREがmiRNAの存在下で遺伝子発現をサイレンシングしていることを示す。
【0084】
いくつかの実施形態では、CMVベクターは、任意のMREをコードしない核酸配列を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCMVベクターは、宿主から宿主への拡散を妨げ、それによって、ウイルスが、免疫不全の対象又はCMV感染の結果として合併症に直面し得る他の対象に感染できなくし得る変異を含有する。本明細書に記載のCMVベクターはまた、免疫優性及び非免疫優性エピトープの提示並びに非典型的なMHC拘束をもたらす変異を含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCMVベクターにおける変異は、以前にCMVに感染した対象を再感染させるベクターの能力に影響を及ぼさない。そのようなCMV変異は、例えば、米国特許出願公開第2013/0136768A1号、同第2013/0142823A1号、同第2014/0141038A1号、及び国際出願公開第2014/138209A1号に記載され、これらの変異は参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
いくつかの実施形態では、異種抗原は、上記の病原体特異的抗原、腫瘍抗原、腫瘍特異的抗原、又は宿主自己抗原であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号7に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号7に記載の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号7に記載の核酸配列からなる。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号9に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号9に記載の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号9に記載の核酸配列からなる。
【0089】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号5に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号5に記載の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号5に記載の核酸配列からなる。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号6に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号6に記載の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号6に記載の核酸配列からなる。
【0091】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号8に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号8に記載の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、配列番号8に記載の核酸配列からなる。
【0092】
本明細書に開示されるCMVベクターは、異種抗原をコードする配列を含むDNAをCMVゲノムの必須又は非必須領域に挿入することによって調製され得る。いくつかの実施形態では、異種抗原は、UL78又はUL82の全部又は一部分を置き換える。いくつかの実施形態では、異種抗原は、UL78の全部又は一部分を置き換え、UL78プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、異種抗原は、UL82の全部又は一部分を置き換え、UL82プロモーターに作動可能に連結されている。方法は、CMVゲノムから1つ以上の領域を欠失させることを更に含み得る。この方法は、インビボでの組換えを含み得る。したがって、方法は、CMVゲノムの部分と相同なDNA配列に隣接する異種DNAを含むドナーDNAの存在下で、細胞適合培地中で細胞をCMV DNAでトランスフェクトし、それによって、異種DNAをCMVのゲノムに導入することと、任意選択で、次いでインビボ組換えによって修飾されたCMVを回収することと、を含み得る。方法は、CMV DNAを切断して切断型CMV DNAを得ることと、異種DNAを切断型CMV DNAに連結してハイブリッドCMV-異種DNAを得ることと、細胞をハイブリッドCMV-異種DNAでトランスフェクトすることと、任意選択で、次いで異種DNAの存在によって修飾されたCMVを回収することと、を含み得る。インビボ組換えが含まれるため、方法はまた、CMVに対して外来性であるポリペプチドをコードする、CMV中に天然では存在しないドナーDNAを含むプラスミドを提供し、ドナーDNAは、さもなくばCMVゲノムの必須又は非必須領域と共直鎖状である(co-linear)CMV DNAのセグメント内にあり、したがって、CMVの必須又は非必須領域由来のDNAがドナーDNAに隣接している。異種DNAは、そのDNAの安定的な組み込み及び所望する場合にはその発現を生じさせる任意の配向で組換えCMVを生成するように、CMVに挿入され得る。
【0093】
組換えCMVベクターにおける異種抗原をコードするDNAはまた、プロモーターを含み得る。プロモーターは、内因性サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、ヒトCMV(HCMV)、アカゲザルマカクCMV(RhCMV)、マウス、又は他のCMVプロモーターを含む、ヘルペスウイルスなどの任意の供給源に由来し得る。プロモーターはまた、EF1αプロモーターなどの非ウイルスプロモーターであり得る。プロモーターは、ウイルスによって提供されるトランス活性化タンパク質でトランス活性化された領域と、切断型転写活性プロモーターが由来する完全長プロモーターの最小プロモーター領域と、を含む、切断型転写活性プロモーターであり得る。プロモーターは、最小限のプロモーター及び上流の調節配列に対応するDNA配列の結合からなり得る。最小限のプロモーターは、CAP部位及びATAボックス(転写の非調節レベルである、転写の基本レベルのための最小配列)からなり、「上流の調節配列」は、上流のエレメント(複数可)及びエンハンサー配列(複数可)からなる。更に、「切断型の(truncated)」という用語は、完全長プロモーターが完全には存在しないこと、すなわち、完全長プロモーターのある部分が除去されていることを示す。切断型プロモーターは、MCMV又はHCMV、例えばHCMV-IE又はMCMV-IEなどのヘルペスウイルスに由来し得る。塩基対に基づいて、完全長プロモーターから最大40%、更には最大90%のサイズ縮小があり得る。プロモーターはまた、修飾された非ウイルスプロモーターであり得る。HCMVプロモーターに関して、米国特許第5,168,062号及び同第5,385,839号を参照されたい。細胞からの発現のためにプラスミドDNAで細胞をトランスフェクトすることに関しては、Felgner,JH et al.が参照される(Enhanced gene delivery and mechanism studies with a novel series of cationic lipid formulations.J Biol.Chem.269,2550-2561(1994))。様々な感染症に対するワクチン接種の簡単かつ効果的な方法としてのプラスミドDNAの直接注射に関しては、Ulmer,JB et al.が参照される(Heterologous protection against influenza by injection of DNA encoding a viral protein.Science 259,1745-1749(1993))。したがって、ベクターDNAの直接注射によってベクターを使用し得ることは本開示の範囲内である。切断型転写活性プロモーターを含む組換えウイルス又はプラスミドに挿入され得る発現カセットもまた開示される。発現カセットは、機能的な切断型ポリアデニル化シグナル、例えば、切断されているがなおも機能的であるSV40ポリアデニル化シグナルを更に含み得る。切断型ポリアデニル化シグナルは、CMVなどの組換えウイルスの挿入サイズ制限の問題に対処する。発現カセットはまた、異種DNAが挿入されるウイルス又はシステムに関連して、異種DNAを含み得、DNAは本明細書に記載の異種DNAであり得る。
【0094】
異種抗原をコードする配列を含むDNAがそれ自体、発現を駆動するためのプロモーターをCMVベクター中に含み得るか、又はDNAが、抗原のコードDNAに限定され得ることに留意されたい。この構築物は、プロモーターに作動可能に連結され、それによって発現されるように、内因性CMVプロモーターに対する配向で配置され得る。更に、抗原をコードするDNAの複数コピー、又は強力若しくは早期プロモーター若しくは早期及び後期プロモーターの使用、又はそれらの任意の組み合わせは、発現を増幅又は増加させるために行われ得る。したがって、抗原をコードするDNAは、CMV内因性プロモーターに関して好適に配置され得るか、又はそれらのプロモーターは、抗原をコードするDNAとともに別の位置に挿入されるように転座され得る。1つ超の抗原をコードする核酸が、CMVベクターにパッケージングされ得る。
【0095】
医薬組成物
本明細書に開示される組換えCMVベクターは、ベクター及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含有する医薬組成物(例えば、免疫原性又はワクチン組成物)において使用され得る。組換えCMVウイルス又はベクター(又はその発現産物)を含有する免疫原性又はワクチン組成物は、(局所又は全身的に)免疫応答を誘発する。応答は、保護用であってもよいが、保護用である必要はない。換言すれば、免疫原性又はワクチン組成物は、局所又は全身の防御又は治療応答を誘発する。
【0096】
そのような医薬組成物は、医薬分野において当業者に周知の標準的な技術に従って調製され得る。そのような組成物は、特定の患者の種(breed)又は種(species)、年齢、性別、体重、及び状態、並びに投与経路などの要因を考慮して、医学分野の当業者に周知の投与量で及び技術により投与され得る。組成物は、単独で投与され得るか、あるいは他のCMVベクターとともに、又は他の免疫、抗原、もしくワクチン、又は治療組成物とともに、同時に又は順次投与され得る。そのような他の組成物は、精製された天然抗原若しくはエピトープ、又は組換えCMV若しくは別のベクター系による発現からの抗原若しくはエピトープを含み得る。
【0097】
本明細書に開示される医薬組成物は、当該技術分野で既知の任意の投与手順で使用されるように製剤化され得る。そのような医薬組成物は、非経口経路(皮内、腹腔内、筋肉内、皮下、静脈内、又はその他)を介し得る。投与はまた、経口、鼻、生殖器などの粘膜経路を介し得る。
【0098】
組成物の例には、オリフィス、例えば、経口、鼻、肛門、生殖器、例えば、膣などの投与のための液体調製物、例えば、懸濁液、シロップ剤、又はエリキシル剤、並びに非経口、皮下、腹腔内、皮内、筋肉内、又は静脈内投与(例えば、注射可能な投与)のための調製物、例えば、滅菌懸濁液又は乳剤が含まれる。そのような組成物において、組換え体は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、トレハロースなどの好適な担体、希釈剤、又は賦形剤との混合物中にあってもよい。
【0099】
本明細書に開示される医薬組成物は、典型的には、所望の応答を誘発するために、アジュバント及びある量のCMVベクター又は発現産物を含み得る。ヒト用途では、ミョウバン(リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム)が典型的なアジュバントである。サポニン及びその精製成分であるQuil A、完全フロイントアジュバント、並びに研究及び獣医学的用途で使用される他のアジュバントは、ヒトワクチンにおけるそれらの潜在的な使用を制限する毒性を有する。Goodman-Snitkoff,G.et al.(Role of intrastructural/intermolecular help in immunization with peptide-phospholipid complexes.J Immunol.147,410-415 (1991))によって記載されているものなど、ムラミルジペプチド、モノホスホリル脂質A、リン脂質コンジュゲートなどの化学的に定義された調製物、Miller,MD et al.(Vaccination of rhesus monkeys with synthetic peptide in a fusogenic proteoliposome elicits simian immunodeficiency virus-specific CD8+ cytotoxic T lymphocytes.J Exp.Med.176:1739-1744(1992))によって記載されるようなプロテオリポソーム内のタンパク質のカプセル化、及びノバソーム(Novasome)脂質小胞などの脂質小胞中のタンパク質のカプセル化(Micro Vescular Systems,Inc.、Nashua,N.H.)もまた、使用され得る。
【0100】
組成物は、非経口(例えば、筋肉内、皮内、又は皮下)投与又はオリフィスでの投与、例えば、舌下(例えば、経口)、胃内、口腔内、肛門内、膣内などを含む粘膜の投与による免疫化のために、単一の剤形でパッケージングされ得る。有効な投与量及び投与経路は、組成物の性質、発現産物の性質、組換えCMVが直接使用される場合の発現レベル、並びに対象の種(breed)又は種(species)、年齢、性別、体重、状態、及び性質などの既知の因子、並びにLD50及び既知で過度の実験を必要としない他のスクリーニング手順によって決定される。発現される生成物の投与量は、数マイクログラム~数百マイクログラム、例えば、5~500μgの範囲であり得る。CMVベクターは、これらの投与量レベルの発現を達成するために、任意の好適な量で投与され得る。非限定的な例では、CMVベクターは、少なくとも102pfuの量で投与され得、したがって、CMVベクターは、少なくともこの量で投与されるか、又は約102pfu~約107pfuの範囲で投与され得る。非限定的な例では、CMVベクターは、少なくとも1×103病巣形成単位(ffu)の量で投与され得、したがって、CMVベクターは、少なくともこの量、又は約1×103~約1×107ffuの範囲で投与され得る。非限定的な例では、CMVベクターは、約1×103ffu、約3×104ffu、約5×104ffu、約5×105ffu、約1×106ffu、約5×106ffu、又は約1×107ffuの量で投与され得る。非限定的な例では、CMVベクターは、1用量、少なくとも1用量、2用量、又は少なくとも2用量で投与され得る。非限定的な例として、CMVベクターは、2用量で投与され得る。初回用量は、「プライム」用量と称され得、任意の後続用量は、「ブースト」用量(dose)又は「ブースト」用量(doses)と称され得る。非限定的な例として、「ブースト」用量は、「プライム」用量の投与後約84日、又は12週間で投与され得る。他の好適な担体又は希釈剤は、防腐剤を含む又は含まない、水又は緩衝生理食塩水であり得る。CMVベクターは、投与時に再懸濁のために凍結乾燥されるか、又は溶液中にあり得る。非限定的な例では、懸濁されたCMVベクターは、1ml未満、約1ml、約2ml、又は1ml超の体積を有する注射剤として投与され得る。非限定的な例では、CMVベクターは、皮下に、任意に三角筋領域に投与され得る。
【0101】
治療方法及び他の使用
本明細書に開示される抗原及び組換えCMVベクターは、組換えCMVウイルス又はベクターと、薬学的に許容される担体又は希釈剤と、を含む組成物を対象に投与することを含む、対象において免疫学的又は免疫応答を誘導する方法において使用され得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト哺乳動物の両方を含むカテゴリーである、生きている多細胞脊椎動物を指す。対象は、HIVに感染され得る任意の哺乳動物、例えば、霊長類(ヒト、非ヒト霊長類、例えば、サル又はチンパンジーなど)を含む哺乳動物などの動物、又はHBV-AAVマウスモデル(例えば、Yang,DY et al.A mouse model for HBV immunotolerance and immunotherapy.Cell and Mol Immunol 11,71-78(2014)を参照されたい)若しくはHBV 1.3xfsトランスジェニックマウスモデル(Guidotti,LG et al.High-level hepatitis B virus replication in transgenic mice.J.Virol.69,6158-6169(1995))などの病原性感染症の許容される臨床モデルとみなされる動物であり得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0104】
いくつかの実施形態では、対象は、HCMV感染症に関する血清学的状態を有する。本明細書で使用される場合、「血清陽性」という用語は、特定の抗原に以前に曝露され、したがって、目的の抗原に対する検出可能な血清抗体価を有する対象又は免疫系を指す。「HCMVに対して血清陽性」という語句は、以前にHCMV抗原に曝露されたことがある対象又は免疫系を指す。血清陽性の対象又は免疫系は、特定の抗原への過去の曝露を示す血清中の抗体又は他の免疫マーカーの存在によって区別され得る。本明細書で使用される場合、「血清陰性」という用語は、特定の抗原に以前に曝露されておらず、したがって、目的の抗原に対する検出可能な血清抗体価の非存在を有する対象又は免疫系を指す。「HCMVに対して血清陰性」という語句は、以前にHCMV抗原に曝露されていない対象又は免疫系を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、疾患又は病的状態の徴候又は症状を改善する介入を指す。本明細書で使用される場合、疾患、病的状態又は症状に関する「治療(treatment)」、「治療する(treat)」、及び「治療する(treating)」という用語はまた、治療の任意の観察可能な有益な効果を指す。有益な効果は、例えば、罹患しやすい対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、いくつか又は全ての疾患臨床症状の重症度の低減、疾患の進行の遅延、疾患の再発数の低減、対象の全体的な健康又は福祉の改善、又は特定の疾患に特異的な当該技術分野で周知の他のパラメータによって証明付けされ得る。予防的治療は、病状を発症するリスクを低下させる目的で、疾患の徴候を示さない、又は初期徴候のみを示す対象に施される治療である。療法的治療(therapeutic treatment)は、疾患の徴候及び症状が発現した後に対象に施される治療である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「予防すること」又は「予防」は、疾患、障害、又は状態を発症させないか、あるいは、そのような疾患、障害、若しくは状態に関連する徴候若しくは症状の発症の低減(例えば、臨床的に関連する量)、又は徴候若しくは症状の発現の遅延の表示(例えば、数日、数週間、数か月、又は数年)を指す。予防は、1用量超の投与を必要とし得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、状態若しくは疾患の徴候若しくは症状を低減若しくは排除するか、又は抗原に対する免疫応答を誘導するなどの所望の応答を生成するのに十分な量である、異種抗原を含むCMVベクターなどの薬剤の量を指す。いくつかの例では、「有効量」は、障害又は疾患のいずれかの1つ以上の症状及び/又は根本的な原因を治療する(予防を含む)ものである。有効量は、感染症又はがんに関連する1つ以上の徴候又は症状などの特定の疾患又は状態の1つ以上の徴候又は症状が発症することを防止する量を含む、治療有効量であり得る。
【0108】
本開示のCMVベクターは、例えば、MHC-E、MHC-II、又はMHC-I(又はそれらのホモログ又はオーソログ)によって拘束されるCD8+T細胞応答のパーセンテージが高いことによって特徴付けられる免疫応答を含む、CD8+T細胞/免疫応答を含む免疫原応答を生成することを目的とする場合、インビボで投与され得る。例えば、いくつかの例では、アカゲザルなどの実験動物において、RhCMVを使用した免疫原性組成物及びワクチンの前臨床試験のために、本開示のCMVベクターを使用することが所望され得る。他の例では、臨床試験などのヒト対象において、HCMVを使用する免疫原性組成物の実際の臨床使用のために、本開示のCMVベクターを使用することが望ましい。
【0109】
そのようなインビボ用途のために、本開示のCMVベクターは、薬学的に許容される担体を更に含む免疫原性組成物又は医薬組成物の構成要素として投与され得る。いくつかの実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、異種抗原に対する免疫応答を刺激するのに有用であり、予防又は治療用ワクチンの1つ以上の構成要素として使用され得る。本開示の核酸及びベクターは、遺伝子ワクチン、すなわち、本開示の抗原をコードする核酸をヒトなどの対象に送達し、それによって、次いで抗原が対象において発現され、免疫応答を誘発するためのワクチンを提供するために特に有用である。
【0110】
免疫化スケジュール(又はレジメン)は、動物(ヒトを含む)について周知であり、特定の対象及び免疫原性組成物について容易に決定され得る。したがって、免疫原は、対象に1回以上投与されてもよい。好ましくは、免疫原性組成物の別々の投与間における設定時間間隔が存在する。この間隔は、対象ごとで異なるが、典型的には、10日~数週間の範囲であり、多くの場合、2、4、6、8、又は12週間である。ヒトの場合、間隔は、典型的には2~6週間である。本開示の特に有利な実施形態では、間隔は、より長く、有利には、約10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、20週間、22週間、24週間、26週間、28週間、30週間、32週間、34週間、36週間、38週間、40週間、42週間、44週間、46週間、48週間、50週間、52週間、54週間、56週間、58週間、60週間、62週間、64週間、66週間、68週間、又は70週間である。免疫化レジームは、典型的には、免疫原性組成物の1~6回の投与を有するが、1回、2回、又は4回と少なくてもよい。免疫応答を誘導する方法はまた、免疫原とともにアジュバントを投与することを含んでもよい。いくつかの場合では、毎年、年2回、又は他の長い間隔(5~10年)のブースター免疫化により、初期の免疫化プロトコルが補完されてもよい。本発明方法はまた、様々なプライム-ブーストレジメンを含む。これらの方法では、1つ以上のプライミング免疫化の後に、1つ以上のブースト免疫化が行われる。実際の免疫原性組成物は、各免疫化について同じでも又は異なっていてもよく、免疫原性組成物(例えば、タンパク質又は発現ベクターを含む)の種類、経路、及び免疫原の製剤も変動してもよい。例えば、発現ベクターがプライミング及びブースト工程に使用される場合、それは同じ又は異なる種類(例えば、DNA又は細菌又はウイルス発現ベクター)のいずれかであってもよい。1つの有用なプライムブーストレジメンは、4週間離れた2つのプライミング免疫化、続いて最後のプライミング免疫化後の4週間目及び8週目における2つのブースティング免疫化を提供する。プライミング及びブースティングレジメンを提供するために、本開示のDNA、細菌、及びウイルス発現ベクターを使用して包含されるいくつかの並び替え及び組み合わせがあることも当業者に容易に明らかである必要がある。異なる病原体に由来する異なる抗原を発現しながら、CMVベクターを繰り返し使用し得る。
【0111】
したがって、本開示は、いくつかの実施形態では、対象において免疫応答を生成する方法であって、前述の組換えHCMVベクターのうちのいずれか、又はそれを含む組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、免疫応答は、ベクターによって送達される少なくとも1つの異種抗原に対するものである。いくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターは、少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発するのに有効な量で投与される。
【0112】
また、対象における免疫応答の生成における使用のための薬剤の製造における、前述の組換えHCMVベクター又はそれを含む組成物のうちのいずれかの使用も、本開示の範囲内である。本開示はまた、対象における免疫応答の生成における使用のための組換えHCMVベクター及び関連組成物を提供する。
【0113】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象において疾患を予防する方法であって、少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発するのに有効な量で、本明細書に開示される組換えHCMVベクター又は組成物を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、対象における疾患の予防における使用のための薬剤の製造における、本明細書に開示される組換えHCMVベクター又は組成物の使用のためのものを提供する。本開示はまた、対象における疾患の予防における使用のための組換えHCMVベクター及び関連組成物を提供する。
【0114】
更なる実施形態では、本開示は、対象において疾患を予防する方法、又は本明細書に開示される組換えHCMVベクター若しくは組成物を、以下となるのに有効な量で投与することを含むことを提供する:(i)少なくとも1つのHIV抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発する、(ii)任意の好適な検査(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))による検出限界未満に、検出可能なHIV負荷を低減させることを含む、ウイルス血症及び/又は検出可能なHIV負荷を低減させる、(iii)原発性HIV感染が急速に中止されるような、HIV複製及び/又は変異を含有する、並びに(iv)生涯にわたる抗ウイルス治療(ART)が必要とされないような持続的な感染及び疾患を回避する。いくつかの実施形態では、本開示は、対象における疾患の予防における使用のための薬剤の製造における、本明細書に開示される組換えHCMVベクター又は組成物の使用のためのものを提供する。本開示はまた、対象における疾患の予防における使用のための組換えHCMVベクター及び関連組成物を提供する。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における疾患を治療する方法、又は本明細書に開示される組換えHCMVベクター若しくは組成物を、少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発するのに有効な量で投与することを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、本明細書に開示される組換えHCMVベクター又は組成物の使用のためのものを提供する。本開示はまた、対象における疾患の治療における使用のための組換えHCMVベクター及び関連組成物を提供する。
【0116】
更なる実施形態では、本開示は、対象における疾患を治療する方法、又は本明細書に開示される組換えHCMVベクター若しくは組成物を、以下となるのに有効な量で投与することを含むことを提供する:(i)HIV感染を有する対象を治療する、(ii)少なくとも1つのHIV抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発する、(iii)任意の好適な検査(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))による検出限界未満に、検出可能なHIV負荷を低減させることを含む、ウイルス血症及び/又は検出可能なHIV負荷を低減させる、(iv)原発性HIV感染が急速に中止されるような、HIV複製及び/又は変異を含有する、並びに(v)生涯にわたる抗ウイルス治療(ART)が必要とされないような持続的な感染及び疾患を回避する。いくつかの実施形態では、本開示は、対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、本明細書に開示される組換えHCMVベクター又は組成物の使用のためのものを提供する。本開示はまた、対象における疾患の治療における使用のための組換えHCMVベクター及び関連組成物を提供する。
【0117】
いくつかの実施形態では、「持続した」HIV感染症は、(1)血液1ミリリットル当たり少なくとも10,000のHIVコピーの検出、又は(2)3週間以上連続した血液試料中のHIVの検出を指し得る。
【0118】
前述の方法、使用、又は使用のための組成物のいくつかの実施形態では、異種抗原は、HIV抗原であるか、又はそれを含み、疾患は、HIV感染症である。
【0119】
前述の方法、使用、又は使用のための組成物のいくつかの実施形態では、異種抗原は、病原体特異的抗原、腫瘍抗原、腫瘍特異的抗原、又は宿主自己抗原であり、疾患は、病原性感染症、腫瘍若しくはがん、又は自己免疫疾患である。
【0120】
前述の方法、使用、又は使用のための組成物のいくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞のうちの少なくとも10%は、MHC-E又はそのオーソログによって拘束される。いくつかの更なる実施形態では、組換えHCMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞のうちの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%は、MHC-E又はそのオーソログによって拘束される。
【0121】
前述の方法、使用、又は使用のための組成物のいくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞のうちの少なくとも10%は、MHC-II又はそのオーソログによって拘束される。いくつかの更なる実施形態では、組換えHCMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞のうちの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも75%は、MHC-II又はそのオーソログによって拘束される。
【0122】
前述の方法、使用、又は使用のための組成物のいくつかの実施形態では、組換えHCMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞のうちの10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、又は50%未満は、MHCクラスIa又はそのオーソログによって拘束される。
【0123】
いくつかの更なる態様では、本開示は、本明細書に開示される組換えCMVベクターを投与することによって、MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、
(a)MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞のセットを生成するのに有効な量で、本明細書に開示される組換えHCMVベクターを第1の対象に投与することと、
(b)CD8+T細胞のセットから第1のCD8+TCRを特定することであって、第1のCD8+TCRが、MHC-E/ペプチド複合体を認識する、特定することと、
(c)第2の対象から1つ以上のCD8+T細胞を単離することと、
(d)第2の対象から単離された1つ以上のCD8+T細胞を発現ベクターでトランスフェクトすることであって、発現ベクターが、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列と、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターと、を含み、第2のCD8+TCRが、第1のCD8+TCRのCDR3α及びCDR3βを含み、それによって、MHC-E/ペプチド複合体を認識する1つ以上のCD8+T細胞を生成する、トランスフェクトすることと、を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、第1の対象は、HCMVに対して血清陽性である。いくつかの実施形態では、第1の対象は、HCMVに対して血清陰性である。
【0125】
いくつかの実施形態では、本開示は、MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法であって、方法が
(a)CD8+T細胞のセットから第1のCD8+TCRを特定することであって、CD8+T細胞のセットが、請求項1~26のいずれか一項に記載の組換えHCMVベクターを投与された第1の対象から単離され、第1のCD8+TCRが、MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識する、特定することと、
(b)第2の対象から1つ以上のCD8+T細胞を単離することと、
(c)第2の対象から単離された1つ以上のCD8+T細胞を発現ベクターでトランスフェクトすることであって、発現ベクターが、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列と、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターと、を含み、第2のCD8+TCRが、第1のCD8+TCRのCDR3α及びCDR3βを含み、それによって、MHC-Eペプチド複合体を認識する1つ以上のTCRトランスジェニックCD8+T細胞を生成する、トランスフェクトすることと、を含む、方法を提供する。MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、第1のCD8+TCRは、DNA又はRNA配列決定によって特定される。いくつかの実施形態では、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列は、第1のCD8+TCRをコードする核酸配列と同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2の対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、第1の対象は、HCMVに対して血清陽性である。いくつかの実施形態では、第1の対象は、HCMVに対して血清陰性である。
【0126】
本開示はまた、前述の方法によって生成されたCD8+T細胞も提供する。いくつかの更なる実施形態では、CD8+T細胞は、対象における疾患を治療又は予防する方法において使用される。CD8+T細胞は、対象における疾患の治療又は予防における使用のための薬剤の製造における、なお更なる実施形態で使用され得る。
【0127】
例示的実施形態
いくつかの実施形態では、本開示は、以下を提供する:
1.TR3骨格及び異種抗原をコードする核酸配列を含む組換えHCMVベクターであって、
(a)(i)ベクターが、UL18、UL78、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)ベクターが、UL82又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)異種抗原が、UL78の全部又は一部分を置き換え、かつUL78プロモーターに作動可能に連結されているか、
(b)(i)ベクターが、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)ベクターが、UL18又はそのオーソログをコードする核酸配列、及びUL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつUL82プロモーターに作動可能に連結されているか、あるいは、
(c)(i)ベクターが、UL18、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)ベクターが、UL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつUL82プロモーターに作動可能に連結されている、組換えHCMVベクター。
【0128】
2.
(i)ベクターが、UL18、UL78、UL128、UL130、UL146、又はUL147を発現せず、
(ii)ベクターが、UL82又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)異種抗原が、UL78の全部又は一部分を置き換え、かつUL78プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態1の組換えHCMVベクター。
【0129】
3.
(i)ベクターが、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)ベクターが、UL18又はそのオーソログをコードする核酸配列、及びUL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつUL82プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態1の組換えHCMVベクター。
【0130】
4.
(i)ベクターが、UL18、UL82、UL128、UL130、UL146、若しくはUL147、又はそれらのオーソログを発現せず、
(ii)ベクターが、UL78又はそのオーソログをコードする核酸配列を含み、
(iii)異種抗原が、UL82の全部又は一部分を置き換え、かつUL82プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態1の組換えHCMVベクター。
【0131】
5.ベクターが、UL18、UL78、UL82、UL128、UL130、UL146、又はUL147をコードする核酸配列における1つ以上の変異の存在からもたらされる、UL18タンパク質、UL78タンパク質、UL82タンパク質、UL128タンパク質、UL130タンパク質、UL146タンパク質、又はUL147タンパク質のうちの1つ以上を発現しない、実施形態1~4のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター。
【0132】
6.UL18、UL78、UL82、UL128、UL130、UL146、又はUL147をコードする核酸配列における変異が、点変異、フレームシフト変異、切断変異、又はウイルスタンパク質をコードする核酸配列の全ての欠失である、実施形態5の組換えHCMVベクター。
【0133】
7.ベクターが、マイクロRNA(miRNA)認識エレメント(MRE)をコードする核酸配列を更に含み、MREが、内皮細胞において発現されるmiRNAの標的部位を含有する、実施形態1~6のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター。
【0134】
8.ベクターが、MREをコードする核酸配列を更に含み、MREが、骨髄細胞において発現されるmiRNAの標的部位を含有する、実施形態1~7のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター。
【0135】
9.異種抗原が、病原体特異的抗原、腫瘍抗原、組織特異的抗原、又は宿主自己抗原である、実施形態1~8のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター。
【0136】
10.病原体が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、Plasmodium寄生生物、又はMycobacterium tuberculosisである、実施形態9の組換えHCMVベクター。
【0137】
11.病原体特異的抗原が、HIV抗原を含む、実施形態9の組換えHCMVベクター。
【0138】
12.HIV抗原が、HIV Gag、HIV Nef、及びHIV Pol、若しくはそれらの免疫原性断片又はそれらの組み合わせを含むか、又はそれらからなる融合タンパク質である、実施形態11の組換えHCMVベクター。
【0139】
13.HIV抗原が、配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合タンパク質である、実施形態12の組換えHCMVベクター。
【0140】
14.HIV抗原が、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む融合タンパク質である、実施形態12の組換えHCMVベクター。
【0141】
15.HIV抗原が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる融合タンパク質である、実施形態12の組換えHCMVベクター。
【0142】
16.HIV抗原が、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合タンパク質である、実施形態12の組換えHCMVベクター。
【0143】
17.HIV抗原が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む融合タンパク質である、実施形態12の組換えHCMVベクター。
【0144】
18.HIV抗原が、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる融合タンパク質である、実施形態12の組換えHCMVベクター。
【0145】
19.腫瘍抗原が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、結腸がん、腎細胞がん(RCC)、又は生殖細胞腫瘍に関連する、実施形態9の組換えHCMVベクター。
【0146】
20.宿主自己抗原が、T細胞受容体(TCR)の可変領域に由来する抗原又はB細胞受容体の可変領域に由来する抗原である、実施形態9の組換えHCMVベクター。
【0147】
21.配列番号7に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0148】
22.配列番号7に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0149】
23.配列番号7に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【0150】
24.配列番号9に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0151】
25.配列番号9に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0152】
26.配列番号9に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【0153】
27.配列番号5に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0154】
28.配列番号5に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0155】
29.配列番号5に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【0156】
30.配列番号6に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0157】
31.配列番号6に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0158】
32.配列番号6に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【0159】
33.配列番号8に記載の核酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の同一性を有する核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0160】
34.配列番号8に記載の核酸配列を含む、組換えHCMVベクター。
【0161】
35.配列番号8に記載の核酸配列からなる、組換えHCMVベクター。
【0162】
36.実施形態1~35のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクターと、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0163】
37.薬学的に許容される担体が、ヒスチジントレハロース(HT)緩衝液である、実施形態36の医薬組成物。
【0164】
38.薬学的に許容される担体が、約20mMのL-ヒスチジン及び約10%(w/v)のトレハロースを含むヒスチジントレハロース(HT)緩衝液である、実施形態36又は37の医薬組成物。
【0165】
39.薬学的に許容される担体が、20mMのL-ヒスチジン及び10%(w/v)のトレハロースを含むヒスチジントレハロース(HT)緩衝液である、実施形態36~38のうちのいずれか1つの医薬組成物。
【0166】
40.薬学的に許容される担体が、20mMのL-ヒスチジン及び10%(w/v)のトレハロースを含むpH7.2を有するヒスチジントレハロース(HT)緩衝液である、実施形態36~39のうちのいずれか1つの医薬組成物。
【0167】
41.実施形態1~35のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクターと、薬学的に許容される担体と、を含む、免疫原性組成物。
【0168】
42.対象において免疫応答を生成する方法であって、対象に、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物を投与することを含む、方法。
【0169】
43.免疫応答が、少なくとも1つの異種抗原に対するものである、実施形態42の方法。
【0170】
44.対象における免疫応答の生成における使用のための薬剤の製造における、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物の使用。
【0171】
45.対象における免疫応答の生成における使用のための実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物。
【0172】
46.対象における疾患を治療又は予防する方法であって、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物を投与することを含む、方法。
【0173】
47.対象における疾患を治療する方法であって、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物を投与することを含む、方法。
【0174】
48.対象における疾患を治療する方法であって、配列番号7に記載の核酸配列、又は配列番号7に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0175】
49.対象における疾患を治療する方法であって、配列番号9に記載の核酸配列、又は配列番号9に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0176】
50.対象における疾患を治療する方法であって、配列番号5に記載の核酸配列、又は配列番号5に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0177】
51.対象における疾患を治療する方法であって、配列番号6に記載の核酸配列、又は配列番号6に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0178】
52.対象における疾患を治療する方法であって、配列番号8に記載の核酸配列、又は配列番号8に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0179】
53.対象における疾患を予防する方法であって、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物を投与することを含む、方法。
【0180】
54.対象における疾患を予防する方法であって、配列番号7に記載の核酸配列、又は配列番号7に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0181】
55.対象における疾患を予防する方法であって、配列番号9に記載の核酸配列、又は配列番号9に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0182】
56.対象における疾患を予防する方法であって、配列番号5に記載の核酸配列、又は配列番号5に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0183】
57.対象における疾患を予防する方法であって、配列番号6に記載の核酸配列、又は配列番号6に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0184】
58.対象における疾患を予防する方法であって、配列番号8に記載の核酸配列、又は配列番号8に記載の核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0185】
59.対象における疾患の治療又は予防における使用のための薬剤の製造における、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物の使用。
【0186】
60.対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物の使用。
【0187】
61.対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号7に記載の核酸配列又は配列番号7に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0188】
62.対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号9に記載の核酸配列又は配列番号9に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0189】
63.対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号5に記載の核酸配列又は配列番号5に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0190】
64.対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号6に記載の核酸配列又は配列番号6に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0191】
65.対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、配列番号8に記載の核酸配列又は配列番号8に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0192】
66.対象における疾患の予防における使用のための薬剤の製造における、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物の使用。
【0193】
67.対象における疾患の予防における配列番号7に記載の核酸配列又は配列番号7に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0194】
68.対象における疾患の予防における配列番号9に記載の核酸配列又は配列番号9に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0195】
69.対象における疾患の予防における配列番号5に記載の核酸配列又は配列番号5に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0196】
70.対象における疾患の予防における配列番号6に記載の核酸配列又は配列番号6に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0197】
71.対象における疾患の予防における配列番号8に記載の核酸配列又は配列番号8に記載の核酸配列を含む医薬組成物の使用。
【0198】
72.対象における疾患の治療又は予防における使用のための、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物。
【0199】
73.対象における疾患の治療における使用のための、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物。
【0200】
74.対象における疾患の治療における使用のための、配列番号7に記載の核酸配列又は配列番号7に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0201】
75.対象における疾患の治療における使用のための、配列番号9に記載の核酸配列又は配列番号9に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0202】
76.対象における疾患の治療における使用のための、配列番号5に記載の核酸配列又は配列番号5に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0203】
77.対象における疾患の治療における使用のための、配列番号6に記載の核酸配列又は配列番号6に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0204】
78.対象における疾患の治療における使用のための、配列番号8に記載の核酸配列又は配列番号8に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0205】
79.対象における疾患の予防における使用のための、実施形態1~41のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクター又は組成物。
【0206】
80.対象における疾患の予防における使用のための、配列番号7に記載の核酸配列又は配列番号7に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0207】
81.対象における疾患の予防における使用のための、配列番号9に記載の核酸配列又は配列番号9に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0208】
82.対象における疾患の予防における使用のための、配列番号5に記載の核酸配列又は配列番号5に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0209】
83.対象における疾患の予防における使用のための、配列番号6に記載の核酸配列又は配列番号6に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0210】
84.対象における疾患の予防における使用のための、配列番号8に記載の核酸配列又は配列番号8に記載の核酸配列を含む医薬組成物。
【0211】
85.対象が、HCMVに対して血清陽性である、実施形態42~84のうちのいずれか1つの方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0212】
86.対象が、HCMVに対して血清陰性である、実施形態42~84のうちのいずれか1つの方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0213】
87.組換えHCMVが、少なくとも1×103病巣形成単位(ffu)の量で投与される、実施形態42~86のうちのいずれか1つの方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0214】
88.組換えHCMVが、約5×104ffuの量で投与される、実施形態87の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0215】
89.組換えHCMVが、約5×105ffuの量で投与される、実施形態87の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0216】
90.組換えHCMVが、約5×106ffuの量で投与される、実施形態87の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0217】
91.組換えHCMVが、約1×103ffuの量で投与される、実施形態87の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0218】
92.組換えHCMVが、約3×104ffuの量で投与される、実施形態87の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0219】
93.組換えHCMVが、約1×106ffuの量で投与される、実施形態87の方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0220】
94.組換えHCMVベクターが、少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発するのに有効な量で投与される、実施形態42~93のうちのいずれか1つの製造における方法使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0221】
95.異種抗原が、HIV抗原であるか又はHIV抗原を含み、疾患が、HIV感染症である、実施形態42~94のうちのいずれか1つの方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0222】
96.疾患が、病原性感染症、腫瘍若しくはがん、又は自己免疫疾患である、実施形態42~94のうちのいずれか1つの方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0223】
97.組換えHCMVベクターによって誘発されたCD8+T細胞のうちの少なくとも10%が、MHC-E又はそのオーソログによって拘束される、実施形態63~96のうちのいずれか1つの方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0224】
98.組換えHCMVベクターによって誘発されたCD8+T細胞のうちの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%が、MHC-E又はそのオーソログによって拘束される、実施形態63~97のうちのいずれか1つの方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0225】
99.組換えHCMVベクターによって誘発されたCD8+T細胞のうちの少なくとも10%が、MHC-II又はそのオーソログによって拘束される、実施形態63~98のうちのいずれか1つの製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0226】
100.組換えHCMVベクターによって誘発されたCD8+T細胞のうちの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも75%が、MHC-II又はそのオーソログによって拘束される、実施形態63~99のうちのいずれか1つの方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0227】
101.組換えHCMVベクターによって誘発されたCD8+T細胞のうちの10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、又は50%未満が、MHCクラスIa又はそのオーソログによって拘束される、実施形態63~100のうちのいずれか1つの方法、製造における使用、又は使用のためのベクター若しくは組成物。
【0228】
102.MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法であって、方法が、
(a)MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞のセットを生成するのに有効な量で、実施形態1~35のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクターを第1の対象に投与することと、
(b)CD8+T細胞のセットから第1のCD8+TCRを特定することであって、第1のCD8+TCRが、MHC-E/ペプチド複合体を認識する、特定することと、
(c)第2の対象から1つ以上のCD8+T細胞を単離することと、
(d)第2の対象から単離された1つ以上のCD8+T細胞を発現ベクターでトランスフェクトすることであって、発現ベクターが、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列と、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターと、を含み、第2のCD8+TCRが、第1のCD8+TCRのCDR3α及びCDR3βを含み、それによって、MHC-E/ペプチド複合体を認識する1つ以上のCD8+T細胞を生成する、トランスフェクトすることと、を含む、方法。
【0229】
103.MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法であって、方法が、
(a)CD8+T細胞のセットから第1のCD8+TCRを特定することであって、CD8+T細胞のセットが、実施形態1~35のうちのいずれか1つの組換えHCMVベクターを投与された第1の対象から単離され、第1のCD8+TCRが、MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識する、特定することと、
(b)第2の対象から1つ以上のCD8+T細胞を単離することと、
(c)第2の対象から単離された1つ以上のCD8+T細胞を発現ベクターでトランスフェクトすることであって、発現ベクターが、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列と、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターと、を含み、第2のCD8+TCRが、第1のCD8+TCRのCDR3α及びCDR3βを含み、それによって、MHC-E/ペプチド複合体を認識する1つ以上のTCRトランスジェニックCD8+T細胞を生成する、トランスフェクトすることと、を含む、方法。
【0230】
104.第1のCD8+TCRが、DNA又はRNA配列決定によって特定される、実施形態102又は103の方法。
【0231】
105.第2のCD8+TCRをコードする核酸配列が、第1のCD8+TCRをコードする核酸配列と同一である、実施形態102~104のうちのいずれか1つの方法。
【0232】
106.第1の対象が、ヒトである、実施形態102~105のうちのいずれか1つの方法。
【0233】
107.第1の対象が、HCMVに対して血清陽性である、実施形態102~106のうちのいずれか1つの方法。
【0234】
108.第1の対象が、HCMVに対して血清陰性である、実施形態102~106のうちのいずれか1つの方法。
【0235】
109.第2の対象が、ヒトである、実施形態102~108のうちのいずれか1つの方法。
【0236】
110.実施形態102~109のうちのいずれか1つの方法によって生成されるCD8+T細胞。
【0237】
111.対象における疾患を治療又は予防する方法であって、方法が、実施形態110のCD8+T細胞を対象に投与することを含む、方法。
【0238】
112.対象における疾患を治療する方法であって、方法が、実施形態110のCD8+T細胞を対象に投与することを含む、方法。
【0239】
113.対象における疾患を予防する方法であって、方法が、実施形態110のCD8+T細胞を対象に投与することを含む、方法。
【0240】
114.対象における疾患の治療又は予防における使用のための薬剤の製造における、実施形態110のCD8+T細胞の使用。
【0241】
115.対象における疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、実施形態110のCD8+T細胞の使用。
【0242】
116.対象における疾患の予防における使用のための薬剤の製造における、実施形態110のCD8+T細胞の使用。
【0243】
117.対象における疾患の治療又は予防における使用のための、実施形態110のCD8+T細胞。
【0244】
118.対象における疾患の治療における使用のための、実施形態110のCD8+T細胞。
【0245】
119.対象における疾患の予防における使用のための、実施形態110のCD8+T細胞。
【実施例】
【0246】
実施例1:非ヒト霊長類における免疫原性実験
サイトメガロウイルス(CMV)に基づくワクチンベクターは、このウイルスの自然な能力を利用して、初期のHIV感染の潜在的な部位を含む、循環及び組織に存在するエフェクター分化T細胞を誘発及び維持する。例えば、サル免疫不全ウイルス(SIV)抗原挿入物をコードするアカゲザルCMV(RhCMV)ベクターは、(1)RhCMV免疫霊長類に重感染し、リンパ組織及び臓器組織の両方において高頻度でエフェクター分化SIV特異的CD4+及びCD8+T細胞を誘発し、(2)これらの応答を無期限に維持し、(3)高病原性SIVmac239株での感染の早期の厳格な制御及び最終的なクリアランスを明らかにし得る。HIV特異的CD8+T細胞の高頻度の誘導及び維持を刺激する予防的HIVワクチンを開発し、患者におけるHIV特異的T細胞の細胞傷害性T細胞脱出バリアント及びT細胞消耗特性の選択を回避するための広範なエピトープカバレッジを目的とする。ワクチンは、アカゲザル及び/又はカニクイザルで試験される。
【0247】
実施例2:HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価
HIVワクチンは、CMV血清陽性でHIVに感染していない18~50歳の健常成人ボランティアにおける、ヒト初回、第1a相、無作為化、複数部位、二重盲検、プラセボ対照試験において試験される。ワクチンは、HIV-1クレードA gag遺伝子を発現する、生減弱ヒトCMVベクター(ベクター1)である。
【0248】
年当たりの新規HIV感染者数は減少しているが、2017年だけで180万人の新規感染が生じ、依然として高く維持されており、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)による年間死亡率は、世界中で年当たり約90万人が死亡しており、依然として高く維持し続けている(UNAIDS/WHOデータ2018、https://www.unaids.org/sites/default/files/media_asset/unaids-data-2018_en.pdf)。以前の全てのHIV候補ワクチンが有効性を達成できなかったことは、防御が以前のワクチン戦略と質的に異なるワクチン誘発免疫を必要とする可能性があることを示唆している。理想的なHIVワクチンは、関連するHIV抗原を免疫系に送達するだけでなく、これらの抗原がまた、免疫系がこれらの抗原にどのように応答するかを制御する能力を有するベクターにおいて発現され、これは「抗原送達及び免疫プログラミング(ADIP)」と称されている概念である。
【0249】
CMVは、堅牢な免疫応答を誘発することが長い間知られており、主にエフェクターメモリー(TEM)表現型である高頻度ウイルス特異的T細胞の生涯にわたる維持によって特徴付けられ、これは、組織に輸送することができ、即時の抗ウイルスエフェクター応答を示すことができる。抗原特異的TEM細胞は、TCM細胞よりもより短い半減期を有するため、宿主中で抗原を持続的に提示し、これらの細胞の長期補充を提供し得るベクターが理想的である。サル免疫不全ウイルス(SIV)抗原をコードするRhCMVベースのワクチンが、高病原性SIVmac239への反復低用量粘膜曝露後の持続感染の確立からアカゲザル(RM)の約50%を防御することができたという報告で、2011年に防御的HIVワクチンを生成するという目標の大きな前進があった(Hansen SG et al.,Profound early control of highly pathogenic SIV by an effector memory T cell vaccine,Nature 2011;473(7348):523-7)。また、RhCMVが、高機能性CD4+及びCD8+メモリーT細胞の集団を誘発及び維持することができるという独自の品質を有したことも実証された。SIVチャレンジに対して防御を示した動物では、厳格な免疫学的制御は、感染の発症後非常に早期に達成され、大部分では、組織におけるSIVの検出のための長期フォローアップ及び感度の高い実験室方法の両方によって決定される完全なウイルスクリアランスをもたらした。Pickerらによる一連の報告は、曝露後のSIV感染を厳密に制御することができる広範かつ持続的な細胞応答を誘発するCMVベースのワクチンの可能性を裏付けた。その後の研究は、この結果の再現性を実証し、従来のMHC-Ia拘束CD8+T細胞とは対照的に、防御に関連する重要な免疫機序として、非従来的な拘束(MHC-E及びMHC-II)CD8+T細胞エフェクター応答の中心的な重要性を明らかにした(Hansen SG et al.,Cytomegalovirus vectors violate CD8+ T cell epitope recognition paradigms,Science 2013;340(6135):1237874、Marshall E et al,Enhancing Safety of cytomegalovirus-based vaccine vectors by engaging host intrinsic immunity,Science Translational Medicine 2019 Jul 17;11(501))。この免疫プログラミングの概念、CMVベクターの遺伝子操作が非従来的な拘束CD8+T細胞を優先的に誘導することができるということは、ワクチン開発における新しいパラダイムを表している。
【0250】
この試験では、ワクチンを使用して、RMにおける同様のRhCMVベクターに関連する免疫プログラミングをヒトにおいて再現され得るかどうかを決定する。これは、このHCMVベクターによって誘発される免疫応答が、RMにおけるSIVに対する防御に関連するものと同様の細胞免疫プロファイルに向かって歪んでいるかどうかを評価するために、持続的な抗原提示を提供するように特にデザインされているHIV gagをコードする抗原カセットを含有する。
【0251】
試験は、3コホート用量漸増として実施される。安全性審査委員会(SRC)は、臨床試験に参加する対象の安全性を保護することを主な目的として、試験全体を通して収集された利用可能な試験データに基づいて、安全性、反応原性、及び忍容性の定期的なレビューを実施する。SRCは、次のコホートにおいて用量開始前に安全性データレビューを実施する。
【0252】
目的
この試験の主な目的は、健常なCMV血清陽性の成人対象に皮下投与した場合の、プラセボと比較したワクチンの安全性、反応原性、及び忍容性を評価することである。第二の目的は、ワクチン由来HIV-1 Gagに対するT細胞及び抗体応答によって測定される、ワクチンの免疫原性を特徴付けることである。探索的な目的には、以下が含まれ得る:(1)ワクチン由来HIV GagのCD8+T細胞認識のためのMHC分子型、この認識を媒介するT細胞受容体レパートリー、ワクチンが誘発したCD8+T細胞がHIV感染細胞に応答する能力、並びに他のT細胞機能的及び表現型尺度の分析によって、ワクチンに対する免疫応答を更に特徴付けること、(2)ワクチンの投与によって付与される末梢全血における転写「シグネチャ」プロファイルを特定すること、(3)T細胞及びCMVに対する抗体応答によって測定されるワクチンの免疫原性を特徴付けること。
【0253】
エンドポイント
この試験の主要エンドポイント(複数可)は、治療中に発生したAE、SAE及びNOCDの発生率:局所部位又は全身的な反応原性事象の発生率、並びに臨床検査結果、CMVベクターウイルス血症、及びCMVベクター排出を含むがこれらに限定されない臨床評価である。この試験の副次エンドポイントは、細胞内サイトカイン染色及びフローサイトメトリーによって評価される、挿入物特異的CD4+及びCD8+T細胞応答の大きさ、機能、及び表現型プロファイルを評価すること、並びにHIV-1 Gag特異的抗体の血清学的力価を測定することである。この試験の探索的エンドポイントは、ワクチンに応答して生成されたHIV Gag特異的T細胞エピトープの幅の評価、ワクチンに応答して生成されたCD8+T細胞拘束の割り当て、ワクチンに応答してのHIV感染した標的細胞のT細胞媒介認識の機能的能力、TCRクローン型決定を介してワクチンによって生成されたHIV Gag特異的T細胞レパートリーの特徴付け、CMV特異的CD4+及びCD8+T細胞応答の大きさ及び表現型プロファイルの変化、CMV特異的抗体の血清学的力価の変化、並びにワクチンに応答してのHIVワクチン誘導血清陽性(VISP)を含み得る。
【0254】
活性剤及び投与
ワクチンは、HIV-1クレードA gag遺伝子を発現する、生減弱ヒトCMVベクターである。組換えHCMVベクターは、臨床分離株TRに由来する(Smith IL et al.,High-level resistance of cytomegalovirus to ganciclovir is associated with alterations in both the UL97 and DNA polymerase genes.J Infect Dis.1997;176(1):69-77)。ベクターを作製するために、TRを、ガンシクロビル感受性及びMHC-I阻害活性を回復するように遺伝子修飾した。外皮タンパク質pp71をコードするUL82遺伝子をベクター内で欠失させ、HIV-IクレードA gag導入遺伝子をコードする抗原カセットで置き換えた(Keefer MC et al.A phase I double blind,placebo-controlled,randomized study of a multigenic HIV-1 adenovirus subtype 35 vector vaccine in healthy uninfected adults,PLoS ONE 2012;7(8):e41936)。ベクターは、UL82遺伝子の欠失及び宿主細胞向性を制御する五量体複合体成分UL128-130の欠失を含む複数の減弱戦略を組み込む。UL128-130及びUL146-147遺伝子の欠失は、宿主CD8+T細胞応答の特性に影響を与え得る。
【0255】
各単回使用バイアルは、TNS(50mMのTris、150mMのNaCl、10%のスクロース)製剤緩衝液中に0.5mLのベクターを含有する。各用量は、上腕の三角筋領域に1mLのSC注射として投与される。開始用量は、1×103病巣形成単位(ffu)である。プラセボに無作為化された対象は、SC注射を介して、1mLのTNS製剤緩衝液(ビヒクル)を受ける。各単回使用バイアルは、0.5mLのTNS製剤緩衝液を含有する。
【0256】
最大26人の対象が、皮下投与されるワクチンの3つの漸増用量コホートに登録される(以下の表1及び
図1を参照)。コホート1は、ワクチン又はプラセボに4:2で無作為化された6人の対象からなる。コホート2は、ワクチン又はプラセボに6:2で無作為化された8人の対象からなる。コホート3は、ワクチン又はプラセボに10:2で無作為化された12人の対象からなる。初期開始用量は、1×10
3病巣形成単位(ffu)である。後続のコホートにおける用量は、前臨床GLP毒性試験において安全性シグナルなしで十分に忍容される用量範囲である、最大1×10
6ffuまで約30倍増分で段階的に増加される。全ての対象は、評価スケジュール(SOA)に概説されているように、フォローアップ監視及び検査を受ける。対象は、57日目に第2の皮下用量を受ける。第2の用量は、第1の用量の間に受けた同じ産物の投与量レベルである。
【0257】
次のコホートへの進行は、最後の対象の8週目来院までの利用可能な安全性データ(有害事象、バイタルサイン、及び臨床検査結果を含む)、及び前の低用量レベル(複数可)の全ての以前に投与された対象がSRCによって評価及び承認された後にのみ生じる。8週間の間隔は、8週間後にワクチンの更なる免疫学的又は全身的効果が生じなかったことを実証した前の減弱CMVワクチン試験に基づいて選択された。
表1.各コホートの投与レジメン。
【表1】
【0258】
スクリーニング
スクリーニングは、1日目の来院前56日以下で実施され、書面による同意、適格性の決定、人口統計学及び病歴の収集、身体検査(バイタルサインを含む)、臨床検査、及び他の評価を含む。スクリーニング活動に関連する有害事象(AE)は、同意時以降に収集する必要があり、スクリーニング期間中に生じた任意の他の事象は、病歴として報告される必要がある。全ての重篤な有害事象(SAE)は、同意時以降に収集される必要がある。
【0259】
選択及び除外基準
各対象は、試験の登録に適格であるために、以下の選択基準の全てを満たす必要がある:(1)スクリーニング時に18~50歳の健康な男性、又は妊娠の可能性のない健康な女性。トランスジェンダーの個体は、ホルモン療法を受けている個体を除き、出生時に割り当てられた性別に基づいて、妊娠の可能性のない及び検査値の要件を満たしている場合に登録される場合がある、(2)CMV血清状態が陽性、(3)診療所スタッフによってHIV感染のリスクが低いと評価され、最後のプロトコル来院までHIV曝露のリスクが低いと一致した行動を維持することを約束した、(4)36週目又は試験終了までの性交中にコンドームを使用する意思がある、(5)HIV検査、リスク軽減カウンセリングを受け、及びHIV検査結果を受け取る意思がある、(6)試験中に血液、精子、又は他の組織を寄付することを控える意思がある、(7)現場治験責任医師の意見では、対象は概して病歴から判断して健常であり、身体検査、バイタルサイン、及び検査値からの有意な所見がない、(8)プロトコルの要件に従う意思があり、計画された試験期間中にフォローアップすることが可能である、(9)書面によるインフォームドコンセントを提供することができる。
【0260】
HIV感染の低いリスクは、スクリーニングの3年以内に注射薬物使用の個人歴がなく、試験の1年前以内に以下のいずれもないとみなされる:性感染症の個人歴、HIVに感染した個体との性行為、活発な注射薬物使用者との性行為、一貫性のないコンドームの使用、未知のパートナー(複数可)との保護されていない性的活動、及び商業的なセックスワークへの参加。
【0261】
この文書の目的について、女性は、恒久的に不妊でない限り、初潮後、閉経後になるまで妊娠の可能性(WOCBP)があるとみなされる。恒久避妊法としては、子宮摘出術、両側卵管切除術、両側卵巣摘出術が挙げられる。閉経後の状態は、代替の医学的原因なしに12か月間月経がないことと定義される。この文書の目的について、男性は、文書化された無精子症を伴う両側精巣摘出術によって恒久的に無精子でない限り、思春期後に生殖可能であるとみなされる。
【0262】
各対象は、試験の登録に適格であるために、以下の除外基準のうちのいずれも満たしてはならない:(1)6歳未満の子供がいる家庭に住んでいる、(2)6歳未満の子供に日常的な保育を提供している、(3)免疫不全の個体と密接に接触している、(4)試験中に妊婦又は妊娠を計画しているパートナーと密接に接触している、(5)免疫抑制患者又は妊婦と日常的に接触する医療従事者、(6)対象が免疫不全である、(7)対象が自己免疫障害を有している、(8)スクリーニング時のヒト免疫不全ウイルス(HIV)検査が陽性、(9)基底細胞がんの切除などの局所療法で解消した非侵襲性がんを除く、過去5年以内のがん又はがんの病歴、(10)スクリーニング時の臨床検査による現在活動性又は慢性のB型肝炎又はC型肝炎感染症、(11)過去3年間の任意の発作を伴う発作障害、(12)治験責任医師の意見でボランティアが試験への参加に好適でないとした任意の臨床的に重要な慢性病状、(13)対象が、正常値の上限(ULN)を1.2倍上回るアラニントランスアミナーゼ(ALT)、ULNを1.2倍上回るアスパラギン酸トランスアミナーゼ、ULNを1.1倍上回る直接又は総ビリルビン、ULNを1.1倍上回るアルカリホスファターゼ、LNを1.1倍上回るガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ、ULNを1.1倍上回るクレアチニン、出生時に女性性別が割り当てられた11.0g/dL以下のヘモグロビンレベル、出生時に男性性別を割り当てられた13.0g/dL以下のヘモグロビンレベル、ULNを20,000超上回るか又は正常下限(LLN)を下回る血小板、ULNを1,000細胞/mL3上回るか又はLLNを下回る白血球を有する、(14)治験責任医師が評価した静脈アクセス不良、(15)ワクチンに対する以前の重度の局所的又は全身性反応原性、(16)第1の投与の14日以内の任意の臨床的に重大な急性感染症又は急性呼吸器疾患、(17)第1の用量のIP前30日以内の(バル)アシクロビル、(バル)ガンシクロビル、レテルモビル、フォスカルネット、若しくは抗CMV活性を有する他の抗ウイルス剤の使用、及び/又は試験の16週目(又は第2の用量を受けた後の少なくとも8週目)までに病歴に基づいて予想される任意の使用、(18)第1の用量のIP前30日以内、及び/又は試験の16週目(又は第2の用量を受けた後の少なくとも8週目)までの任意の生減弱ワクチンの受領、(19)第1の用量のIP前30日以内の任意のmRNA含有コロナウイルスワクチンの受領、(20)第1の用量のIPの最初の14日以内の不活性化インフルエンザワクチン又は他の不活性化/サブユニットワクチンの受領、(21)過去14日以内のツベルクリン皮膚検査若しくは抗原注射でのアレルギー治療の受領、又は第1の用量のIP後14日以内の計画された受領、(22)過去6か月以内の輸血若しくは血液由来製剤の投与の受領、又は試験期間中に輸血又は血液製品の受領予定、(23)過去3か月以内のIPの別の臨床試験への任意の参加、又は試験中に参加予定(プラセボの受領は除外ではない)、(24)別の治験中のHIV又はCMVワクチン候補の受領、(25)上記で定義された任意の禁止された併用薬物の計画された使用、(26)プロトコルの遵守を妨げる過去又は現在の精神疾患、(27)プロトコルの遵守を妨げ、かつ/又は対象の安全性を損なうとの治験責任医師の意見での重大なアルコール又は薬物使用、(28)薬物スクリーニングの陽性(すなわち、コカイン、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、又はアンフェタミン)は、検査の陽性が処方された薬物によって説明され得ない限り、対象を除外する。
【0263】
以下の薬物及び/又は治療は、試験の36週目まで禁止されている:(1)コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、mTor阻害剤、IMDH阻害剤、又は免疫抑制生物学的製剤を含むが、これらに限定されない免疫抑制剤、(2)第1のIP用量前30日以内及び試験の第16週まで、又は第2のIP用量の受領後少なくとも8週間のバラシクロビル、バルガンシクロビル、レテルモビル、フォスカルネット、又は抗CMV活性を有する別の抗ウイルス剤の使用、(3)第1又は第2の用量のIPの14日以内の不活性化インフルエンザワクチン又は他の不活性化/サブユニットワクチンの受領、(4)第1の用量のIP前30日以内の任意のmRNA含有コロナウイルスワクチンの受領、(5)第1の用量のIP前30日以内及び試験の16週目まで、又は第2の用量の受領後少なくとも8週間以内の任意の生減弱ワクチンの受領、(6)過去14日以内のツベルクリン皮膚検査又は抗原注射でのアレルギー治療、又は第1若しくは第2の用量のIP後14日以内の計画された受領、(7)別の治験中HIV又はCMVワクチン候補の受領。
【0264】
アレルギー性鼻炎のためのコルチコステロイド鼻スプレー、注射部位とは無関係の軽度の皮膚炎のための局所コルチコステロイド、10日以下の療法期間で再発が予想されず、登録の少なくとも30日前に完了した非慢性疾患のために投与された経口/非経口コルチコステロイドは、許可されている。試験中に急性状態に対するコルチコステロイドの単回治療を検討する場合は、Virメディカルモニターとの相談が必要である。
【0265】
妊娠の可能性のある女性は試験に登録されない場合がある。閉経後の女性は参加を許可されている。妊娠の可能性のある女性パートナーを有する男性対象は、試験治療投与時から最後のフォローアップ来院まで、以下の避妊要件のうちの1つを満たすことに同意する必要がある:(1)男性用コンドーム及び無精子症を文書化した精管切除術、又は(2)男性用コンドームに加えて1つの追加の避妊方法のパートナーの使用。男性対象のパートナーがIP投与時から最後の用量の36週間後までに妊娠した場合、対象はこれを治験責任医師に報告するように指示される。治験責任医師は、妊娠の通知を受けてから24時間以内に、妊娠を治験委託者又は被指名人に報告しなければならない。男性対象のパートナーは、許容される場合、妊娠の結果まで、及び出生後最大1年間、追跡されることへの同意を提供するよう求められる。
【0266】
全ての対象は、試験中に血液、精子、又は他の組織を寄付することを禁止されている。試験の終了時に、試験の結果に基づいて寄付に関する臨床的ガイダンスが提供される。
【0267】
治療期間(1日目~57日目)
適格性、基準、病歴、及びスクリーニング検査の結果は、1日目にレビューされる。適格な対象は、1日目の治験品(IP)投与前48時間以内にワクチン又は整合するプラセボに無作為化される。対象は、57日目(8週目)に臨床検査施設に戻り、1日目に投与された同じIP及び用量の第2の用量を受ける。IP注射後、対象は、少なくとも30分間の観察の間、診療所に留まる。30分(許容範囲25~60分)で反応原性評価を実施する。反応原性評価には、バイタルサイン、注射部位の検査、及び局所反応の証拠の文書化が含まれる。対象には、各用量の受領後14日間、局所及び全身性反応原性の症状を毎日文書化するための記憶補助として使用するための日記カードが与えられる。
【0268】
投与後フォローアップ期間
対象は、バイタルサインによる身体検査、安全性及び免疫原性のための臨床検査、並びにAE及び併用薬物(複数可)のレビューを含むがこれらに限定されない、SoA(
図2A~2Fを参照されたい)に従って対面評価のために診療所に戻る。
【0269】
AE及び臨床検査異常を、成人及び小児の有害事象の重症度を分類するためのAIDS部門(DAIDS)表を使用して評価する。
【0270】
各コホートは、進行中のウイルスベクターの排出及びワクチン誘導性血清陽性(VISP)の存在を評価するために、各コホートの最後の対象が36週目の来院を完了した後に非盲検化される。試験の終了時に進行中のウイルスベクターの排出を示す参加者は、SoAに概説されているように評価され、追跡される。VISPを発症する参加者は評価され、追跡される。
【0271】
任意選択的な長期フォローアップ(LTFU)
参加者は、3年間のLTFUに参加する選択肢を有する。追加の同意を提供する参加者については、長期的な免疫原性及び一般的な健康状態を監視するために、試料収集のために毎年の診療所来院が行われる。試験のLTFU部分における継続的な参加の適格性は、ワクチンにコードされるHIV Gagタンパク質に対する検出可能な免疫応答を示す参加者に依存する場合がある。免疫原性評価の結果の転換時間を考慮すると、同意する参加者は、確認的な免疫原性結果が利用可能になる前にLTFU評価を開始する場合がある。LTFUへの継続的な参加の適格性は、免疫原性データの利用可能性及びその後の非盲検化の後に確認される。
【0272】
中止
IPを早期に中止する対象は、SoAに概説されているように安全性及び免疫原性について追跡され、ある特定の状況下では、白血球除去術を完了する前の任意の時点でIPを中止した対象を置き換える場合がある。対象が第2の用量後であるが、36週目の試験が完了する前に試験を中止した場合、早期終了(ET)来院が実施される。
【0273】
対象が、例えば、AEの結果として試験を中止した場合、治験責任医師によると、対象を試験に留め、安定化するまで必要な試験関連処置を実施し続けるために、あらゆる試みがなされる。これが可能でないか、又は対象若しくは治験責任医師に許容されない場合、対象を試験から離脱させてもよい。ET来院時に試験治療に関連している可能性がある、又はおそらく関連していると思われる異常な結果を示す評価は、異常が解消するか、ベースライン来院レベルに戻るか、又はその他の方法で説明されるまで、毎週、又は治験責任医師が適切であるとみなす頻度で繰り返される必要がある。
【0274】
対象が試験から離脱した場合、SoAに概説されているET評価及び/又は手順は、対象が試験を恒久的に中止して7日以内に実施される必要がある。
【0275】
停止基準
以下の基準のうちの1つ以上が満たされている場合、登録は停止される:(1)2人以上の対象が同じ治療関連グレード3以上の有害事象を経験した場合、1人の対象が治療関連SAEを経験した場合、1人の対象が、徴候、症状、検査所見、及び関連部位(複数可)におけるワクチンベクターの検出によって決定される、軽度の自己限定型単核球症様症候群以外のCMVベクターに起因することができる文書化された末端臓器疾患を経験した場合。
【0276】
停止基準を満たす場合、影響を受けるコホートの用量レベルでそれ以上のIPは投与されず、更なる用量漸増/進行は中断される。全てのコホートから入手可能な安全性データをレビューし、投与の継続に関する提言を提供するために、臨時の安全性審査委員会が開催される。
【0277】
ワクチンの1用量を受けた個々の対象は、以下の基準のうちのいずれかが満たされている場合、第2の用量を受けない:(1)臨床的に重大な状態の間隔的な発症。(2)任意のグレード3以上の治療関連有害事象及び/又はワクチンに関連する1型過敏症反応を経験した、(3)試験来院の指定された期間内に用量を受けることができない。
【0278】
評価及び試験手順
臨床評価に使用される評価スケジュール(SoA)を
図2A~
図2Fに示す。
図3は、使用される検査室評価の一覧を示し、
図4は、HCMVベースのHIVワクチンの臨床評価中の有害事象(AE)重症度のグレード付けを示す。
【0279】
病歴
スクリーニング中に全ての対象の完全な病歴が収集され、投与前及び試験全体を通して必要に応じて更新される。完全な病歴には、薬歴、病気及びアレルギー、発症日(複数可)、及び状態(複数可)が現在進行中であるかどうかに関する詳細が含まれる。
【0280】
探索的分析試料
血液試料は、HIV Gag及びCMVに対する免疫応答の特徴付け、VISPの誘導、及びワクチンに応答して誘発された末梢全血におけるトランスクリプトームシグネチャの特定を含むがこれらに限定されない探索的分析のために収集される。
【0281】
商用HIV診断試験及びVISP評価
スクリーニング時及び試験全体を通して、第4世代の商用診断検査を使用したHIV検査を実施する。スクリーニング時のHIV検査は、適格性を決定するために使用される。第4世代のHIV診断検査は、新たに獲得したHIV感染を評価するために、試験の間の複数の時点で使用される。第1の用量のIPの投与後の真のHIV感染の獲得は、有害事象として捕捉され、感染の確認時に対象に伝達される。VISPに起因するHIV検査の陽性は、有害事象として捕捉されない。
【0282】
更に、複数の市販検査様式を使用してVISPの包括的評価のために、36週目に血清試料を収集する。
【0283】
身体検査
スクリーニング、1日目、及び57日目来院で、完全な身体検査を実施する。これには、一般的な外観、頭頸部、胸部/呼吸器、心臓/心臓血管、消化器/肝臓/脾臓、四肢、皮膚、及び神経学的評価、並びに注射部位及び局所リンパ管の評価が含まれる。症状指向性身体検査は、評価スケジュール及び治験責任医師の裁量に従って、他の全ての来院に対して実施される。
【0284】
反応原性評価
反応原性評価試験は、SoAに従って現地来院時に完了する。発熱、悪寒、頭痛、疲労、倦怠感、吐き気、嘔吐、筋肉痛、及び関節痛などの反応原性の全身的徴候及び症状を評価するために、6週目に反応原性の電話訪問を実施する。反応原性の電話訪問中に全身的徴候及び症状を報告する対象は、AEを評価するために予定外の来院で診療所に来院し、完全な身体検査及び臨床検査を完了する。
【0285】
身長及び体重
身長及び体重を測定する。ボディマス指数は、身長及び体重から計算される。
【0286】
バイタルサイン
バイタルサインの測定には、血圧、脈拍数、体温、及び呼吸数が含まれる。バイタルサインは、対象が約10分間快適に休息した後に測定する必要がある。同じ来院に予定されている場合、身体検査及び血液試料収集の前にバイタルサインの評価を実施する必要がある。
【0287】
非妊娠可能性の確認
閉経後の状態の確認又は外科的不妊の文書化は、全ての女性対象について確認される必要がある。
【0288】
ウイルス血症及びウイルス排出評価
ウイルスベクター排出が36週目の非盲検化で示される場合、参加者は、2つの連続した陰性ウイルス検出アッセイが文書化されるまで、4週間ごと(+/-1週間)に監視され続ける。減少傾向が観察されたが検出の下限に達することがない場合、結果が少なくとも2つの連続した試料採取時点(4週間+/-1週間間隔)でプラトーに達したことを実証するまで監視を継続する必要があり、その時点で排出評価の中止は治験委託者の承認を得て考慮される場合がある。
【0289】
参加者の日記
対象は、IPの各用量後の反応に関連する症状の自己評価を行う。対象は、注射部位での局所的な徴候及び症状、並びに全身的な徴候及び症状の評価を記録する。
【0290】
白血球除去術
16週目から20週目の間に、全ての対象に対して白血球除去術を実施する。手順は、白血球を、探索的免疫学的解析のために採取される血液、特に、PBMCから分離する。
【0291】
予定外の来院
予定外の来院は、安全性評価のために必要に応じて、治験責任医師の裁量で許可される。
【0292】
有害事象及び重篤有害事象
有害事象とは、治験品を投与された臨床試験対象者における望ましくない医学的事象であり、必ずしも治療との因果関係を有する必要はない。したがって、AEは、治験品に関連するとみなされるかどうかにかかわらず、治験品の使用に一時的に関連する好ましくない及び/又は意図しない徴候、症状、又は疾患である場合がある。AEには、プロトコルで指定された手順、有効性の欠如、過剰摂取、薬物乱用/誤用の報告、又は職業上の曝露の結果として生じる治療前又は治療後の合併症も含まれる場合がある。性質又は重症度が変化する既存の状態もまた、AEとみなされる必要がある。
【0293】
AEには、以下が含まれない:(1)手術、内視鏡検査、抜歯、及び輸血などの医学的又は外科的処置、処置に至った状態は、有害事象である可能性があり、報告する必要がある、(2)スクリーニング来院前に存在又は検出された悪化していない既存の疾患、状態、又は検査異常、不測の医学的出来事が生じていない状況(例えば、選択的手術のための入院)、(3)臨床的後遺症のない治験品の過剰摂取、(4)同意書に署名する前の発症日があり、プロトコル関連の処置に関連していない任意の病状又は臨床的に重大な検査異常、(5)徴候又は症状に関連しない検査異常、並びに(6)医療処置。
【0294】
治験品の開始後、原因又は関係にかかわらず、全てのAE及び新規発症慢性疾患(NOCD)は、IPの第1の投与後36週間まで収集される。LTFU中、試験手順、NOCD、及びSAEに関連するAEのみが収集される。原因又は関係にかかわらず、対象が最初に試験に参加することに同意した後、及び試験期間中に生じる全てのSAEは、報告される必要がある。可能であれば、全てのAE、SAE、及びNOCDを、解消又は安定化するまで追跡する必要がある。
【0295】
重篤な有害事象(SAE)とは、以下をもたらす任意の事象である:(1)死亡、(2)生命を脅かす状態、(3)入院又は既存の入院の延長。入院を必要とするAEは、SAEとみなされるべきである。概して、入院は、対象が、外来患者の設定又は医師のオフィスで適切ではなかったであろう観察及び/又は治療のために病院又は救急病棟で拘留された(通常、少なくとも一晩の滞在を伴う)ことを意味する。「入院」が生じたか、又は必要であったかどうかについて疑問がある場合、AEは、SAEであるとみなされるべきである、(4)持続的又は重大な障害/不能、(5)ベクター1を受けた対象の子孫の先天性異常/先天性欠損、(6)適切な医学的判断に基づいて、対象を危険にさらす可能性があり、この定義に記載されている結果のうちの1つを予防するために医学的又は外科的介入を必要とする可能性がある場合、他の重要な事象はSAEとみなされる可能性がある。
【0296】
上記のように、関連するAE(徴候又は症状)を伴わない、及び/又は医療介入を必要としない検査異常は、それ自体は、AE又はSAEとして記録されない。しかしながら、医学的又は外科的介入を必要とする検査異常は、状況に応じて、AE又はSAEとして記録される必要がある。VISPに起因するHIV検査の陽性は、有害事象として捕捉されないが、第1の用量の投与後の真のHIV感染の獲得は、有害事象として捕捉される。AEの重症度は、DAIDS AEグレード付け表補正バージョン2.1(
図4を参照されたい)を使用してグレード付けされる必要がある。表に加えて、AEに関連する全ての死亡は、グレード5として分類される。
【0297】
実施例3:持続的ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の予防
2つのHCMVベースのHIVワクチン、ベクター2及びベクター3は、第1相アンブレラ試験において、安全性、反応原性、忍容性、及び免疫原性について評価される。ワクチンは、持続的ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の予防のために投与され得る。
【0298】
臨床的背景
病原体は、免疫系の重要な微妙な差異及び複雑さを強調する調整された免疫応答によって最も効果的に標的化される。臨床前試験は、アカゲザルサイトメガロウイルス(RhCMV)ベクター構築物に対する特定の遺伝子欠失及び/又は標的化された遺伝子組換えが、多くの場合、関連する感染因子によるインビボチャレンジに対する防御的病原体特異的免疫応答を指向するために必要であることを実証している。CMV修飾はまた、ウイルスが宿主免疫応答を破壊するために通常使用する細胞向性及び/又は拮抗機序を拘束することによってウイルス減弱をもたらし得る(表2を参照されたい)。ヒトにおける第1相試験は、任意のHCMV産物候補の初期安全性、排出プロファイル、及び臨床的に関連する免疫原性の決定を可能にする。
表2.HCMVベクター化ワクチンの主な遺伝子修飾の予測される効果
【表2】
【0299】
ヒトサイトメガロウイルスは、世界中の人々に感染するユビキタスウイルスである。有病率は50%~99%の範囲であり、国及び社会経済的地位によって変化し、資源の少ない国の人々及び社会経済的地位の低い人々はより高い有病率を有する(Pass RF.Cytomegalovirus.In: Knipe DM,et al.,eds.Fields Virology.4th ed.Philadelphia,PA: Lippincott Williams & Wilkins;2676-705(2001)、Staras SA,et al.,Seroprevalence of cytomegalovirus infection in the United States,1988-1994.Clin Infect Dis.43(9),1143-51(2006))。米国では、全ての個体の約50%が30歳までにCMV血清陽性であり、成人の間では、血清転換率は、1年当たり約2%である(Hyde TB,et al.,Cytomegalovirus seroconversion rates and risk factors:implications for congenital CMV.Rev Med Virol.20(5),311-26(2010)、Lamarre V,et al.,Seroconversion for cytomegalovirus infection in a cohort of pregnant women in Quebec,2010-2013.Epidemiol Infect.144(8),1701-9(2016))。CMVの原発感染は、自己限定的な単核球症様疾患を引き起こす可能性があるが、一般に無症候性である。より重篤な疾患が生じた場合、それは通常、遺伝的欠陥、医原性薬物又は後期AIDSを介して免疫抑制された個体の先天性感染及び原発性又は再発性感染で観察されるように、未熟な又は減少した免疫防御を有する個体に影響を及ぼす。全体的に、天然のCMVは、非常に低い毒性を示し、これはウイルス及びそのヒト宿主の数百万年の共進化後に感染を可能にするが、CMV疾患を制限する堅牢な宿主バリアに起因する。更に、共進化は、ヒト宿主においてのみ感染を引き起こすようにCMVを高度に種特異的にする。
【0300】
CMV血清陽性及び血清陰性の個体の両方におけるTowne及びTowne-Toledoキメラ株を用いた第1相試験は、UL82及びUL78遺伝子が無傷であり、かつ五量体成分、UL128又はUL130が破壊された場合、SAEを伴わない全体的な安全性を実証した。更に、より野生型株のCMVを使用したチャレンジ試験は、SAEを示さず、観察された全ての臨床症状及び検査異常は、軽度から中等度で、自己限定的であり、治療を必要としなかった。
【0301】
ヒト臨床試験におけるHCMVワクチンでの以前の経験は、過去45年間にわたって報告された妊婦及び免疫不全の個体におけるCMV疾患を予防するためのワクチンを開発するための努力に由来する。今日まで、生HCMVワクチンは、組織培養において広範囲に継代された減弱株(Neff BJ,et al.,Clinical and laboratory studies of live cytomegalovirus vaccine Ad-169.Proc Soc Exp Biol Med.160(1),32-7(1979)、Plotkin SA,et al.,Protective effects of Towne cytomegalovirus vaccine against low-passage cytomegalovirus administered as a challenge.J Infect Dis.159(5),860-5(1989)、Quinnan 1984)、減弱野生型株のキメラ(Heineman TC,et al.,A phase 1 study of 4 live,recombinant human cytomegalovirus Towne/Toledo chimeric vaccines.J Infect Dis.193(10),1350-60(2006)、Adler SP,et al.,A Phase 1 Study of 4 Live,Recombinant Human Cytomegalovirus Towne/Toledo Chimera Vaccines in Cytomegalovirus-Seronegative Men.J Infect Dis.214(9),1341-8(2016))及び複製欠損CMV(Adler SP,et al.,V160-001 Study Group.Phase 1 Clinical Trial of a Conditionally Replication-Defective Human Cytomegalovirus(CMV)Vaccine in CMV-Seronegative Subjects.J Infect Dis.220(3),411-419(2019))から構成されている。減弱Towneワクチン候補を評価するための初期の臨床有効性試験では、野生型CMVチャレンジの代理として低継代Toledo株も利用した。累積的に、これらの以前の臨床試験は、広範な減弱CMV株、並びにCMV血清陽性、CMV血清陰性(男性、女性、及び男児)、及び腎移植レシピエントを含む多様な集団にわたる安全性の広範な経験を提供する(Plotkin SA,et al.,Towne-vaccine-induced prevention of cytomegalovirus disease after renal transplants.Lancet.1(8376),528-30(1984))。ベクター1及びベクター2及びベクター3ワクチン候補と同様に、Towne株及びTowne-Toledoキメラは全て、ウイルスが上皮及び内皮細胞に侵入するために必要な、五量体複合体を構成する1つ以上の遺伝子において破壊を含有し、それによって、細胞の向性を拘束する(Adler SP,et al.,A Phase 1 Study of 4 Live,Recombinant Human Cytomegalovirus Towne/Toledo Chimera Vaccines in Cytomegalovirus-Seronegative Men.J Infect Dis.214(9),1341-8(2016)、Suarez,N.M.,et al.,Genomic analysis of chimeric human cytomegalovirus vaccine candidates derived from strains Towne and Toledo.Virus Genes 53,650-655(2017))。しかしながら、4つのTowne-Toledoキメラは、それらのプロモーターの一方又は他方がHIV抗原発現を駆動するために使用されるCMV骨格ベクターには存在しないUL82及びUL78遺伝子を保持した(表2及び表3を参照されたい)。CMV血清陽性及び血清陰性の個体の両方におけるTowne及びTowne-Toldeoキメラ株を評価する試験は、SAEが観察されず、軽度/中程度の臨床症状なしで、まれな、軽度から中程度の検査異常を伴う全体的な安全性を実証した。これらの試験は、UL82及びUL78遺伝子が無傷であり、五量体成分であるUL128又はUL130が破壊された場合に、HCMV減弱が観察されたことを示す。4つのキメラウイルスのいずれも、血液、尿、又は唾液から回収されなかった(Adler SP,et al.,A Phase 1 Study of 4 Live,Recombinant Human Cytomegalovirus Towne/Toledo Chimera Vaccines in Cytomegalovirus-Seronegative Men.J Infect Dis.214(9),1341-8(2016))。Toledoチャレンジ株は、使用されるチャレンジウイルスに存在しない追加の変異をもたらした可能性がある組織培養における更なる継代を経るまで、配列決定されなかった。血清陽性及び血清陰性のレシピエントに症候性感染症を引き起こしたが、SAEはなく、このより野生型のToledo株でのチャレンジに起因する全ての観察された臨床症状及び検査異常は、軽度から中等度で、自己限定的であり、治療を必要としなかった。まとめると、以前のHCMV候補ワクチン及びToledo株チャレンジからのこれらのデータは、ヒトワクチン試験におけるHCMVベクターの安全な使用を支持する。
【0302】
HCMVベクター
HCMVワクチンベクター2及びベクター3は、導入遺伝子CMVベクター骨格を生成するように遺伝子修飾された臨床分離株TR-HCMVに由来する組換えHCMVベクターを含有する。CMVベクター骨格は、抗原送達及び免疫プログラミング(ADIP)の両方のための独自の能力を有するように操作されており、それによって、治療的及び/又は予防的徴候に関連する免疫原を送達するためのビヒクルとして作用する。ベクター2及びベクター3の異なる分子特性は、表3に記載されている。
表3:ベクター2及びベクター3の特性
【表3】
【0303】
試験デザイン
この第1相アンブレラ試験は、2つの候補、ベクター2及びベクター3が、参加者のCMV血清陽性及びCMV血清陰性コホートの両方において個別に評価される、盲検化、多重漸増用量試験である。第1相アンブレラ試験におけるベクター2及びベクター3の開始用量、用量範囲、及び用量レジメンは、ベクター2及びベクター3特異的非臨床試験、並びにCMV血清陽性参加者において評価されている別のHCMV HIVワクチンの進行中の第1相試験から収集された利用可能な臨床安全性及び免疫原性データに加えて、HCMVベクター化ワクチンプラットフォームから生成された既存の非臨床データによって支持される。
【0304】
剤形、投与経路、及び投与レジメン
ベクター2及びベクター3は、ヒスチジントレハロース(HT)緩衝液(20mMのLヒスチジン、10%w/vのトレハロース、pH7.2)中で、単回使用ガラスバイアル中で提供される。バイアルの内容物は、指定された量を送達するように希釈され、上腕の三角筋領域に1mL以下の皮下(SC)注射として投与されるように調製される。ワクチン投与レジメンは、2つの用量、プライム及びブースト用量からなる。
【0305】
試験集団
ベクター2及びベクター3を用いた試験は、CMV血清陽性の成人において実施され、参加者及び密接な接触への任意の潜在的なリスクを最小限に抑えるようにデザインされた主要な選択/除外基準を有する、男性及び妊娠可能性のない女性を含む。
【0306】
CMV血清陽性の個体に加えて、CMV血清陰性の個体におけるベクター2及びベクター3の安全性及び免疫原性を評価するための試験群を試験に含める。この試験に血清陰性の個体を含めることの目的の1つは、基礎となるCMV状態にかかわらず、全ての個体にわたって安全で免疫原性の両方である単回用量の選択を容易にすることである。全体的に、天然のCMVは、非常に低い毒性を示し、これはウイルス及びそのヒト宿主の数百万年の共進化後に感染を可能にするが、CMV疾患を制限する堅牢な宿主バリアに起因する。健常な個体における原発性CMV感染は、自己限定的な単核球症様疾患を引き起こす可能性があるが、大部分が無症候性である。以前のCMVワクチンは、男性、女性、男児、及び腎移植レシピエントを含むCMV血清陰性の参加者で安全に試験されている。CMV血清陰性における開始用量は、1×106ffu用量のベクター1より20倍少ない5×104ffuであり、以下に更に概説されるように、安全性監視にゲート付けされた用量漸増計画を組み込む。
【0307】
試験参加者登録の目標は、参加者及び密接な接触の安全性を確保すること、特に、厳格な試験適格性基準の組み込みを介して、高いリスク個体(妊婦及び免疫不全の個体)におけるCMV疾患の可能性を予防することである。適格性基準は、参加者の安全を確保すると同時に、リスクが低い場合の適格性基準を改善するために変更された。CMVの伝播は、感染した体液との直接接触、感染した血液/組織の受領、又は母親から胎児への垂直伝播を介して生じる。体液を介した直接伝播には、単に近接するだけでなく、親密な曝露によって定義される密接な接触が必要である。普遍的な予防措置を実施する医療従事者(HCW)は、標準的な患者の交流の下では、CMVを患者に伝番させるリスクをもたらさない。デイケア提供者は、子供からCMVを獲得するリスクが高いが、ケア中の子供に伝播リスクをもたらすことはない(Adler SP,Cytomegalovirus and Child Day Care.NEJM 321,1290-1296(1989))。デイケア環境での伝播のリスクは、子供→子供及び子供→提供者である。CMV伝播のウイルス学及び疫学を考慮すると、HCW及び保育提供者は、他者への伝播の追加のリスクをもたらさないため、HCMVワクチン試験の適格な参加者として含まれる。これを拡大すると、妊娠中の女性又は免疫不全の個体と「親密な接触」を有する参加者は、これらの状態が成人の間のCMV伝播を引き起こす可能性があるため、除外される。
【0308】
CMVは小児期に一般的に取得され、ほとんど無症状又はまれに軽度の感染症を引き起こす。出産及び母乳育児以外では、子供のCMVの取得は、特に保育園/就学前の環境で、他の幼児から最も一般的に生じる。1~5歳の子供におけるCMV IgGの血清有病率は、2011/2012年の20.7%から上がって2017/2018年には28.2%であった(Petersen MR,et al.,Changes in Cytomegalovirus Seroprevalance Among U.S.Children Aged 1-5 Years: The National Health and Nutrition Examination Surveys.Clin Infect Dis.72(9),e408-e411(2021))。成人と子供との間のCMV伝播は、理論的には、唾液の共有を促進する活動(例えば、口にキス、食器又は飲み物の共有、乳児のための食物の前咀嚼)を通じて起こり得る。しかしながら、この伝播様式は、子供における一次感染の重要な源であるとみなさず、むしろ子供から成人への伝播様式である可能性がある。子供は、生涯の早い段階でCMVに自然に曝露され、感染時に高いリスク群を表さないことを考慮すると、6歳未満の子供を試験に含める可能性がある。
【0309】
CMV血清陰性の参加者における用量漸増スキーマ
CMV血清陰性の参加者におけるベクター2及びベクター3の評価は、5×10
4ffuの用量で開始して、複数の漸増用量漸増に従う(
図5)。臨床試験に参加するボランティアの安全性を保護するために、SRCはSRC憲章に従って新しいコホートの投与を開始する前に安全性データレビューを実施する。より高い用量レベルへの段階的な進行は、直近のコホートの少なくとも最初の6人の参加者及び先行するより低い用量レベル(複数可)の全ての以前に投与された参加者からの8週間にわたる全ての利用可能な安全性データ(有害事象、バイタルサイン、臨床検査結果、及びCMVウイルス検出アッセイの結果を含む)がSRCによって評価された後に開始される。8週間の間隔は、CMV血清陰性の参加者を含む減弱HCMVワクチンの以前のワクチン試験、及びワクチンの新しい免疫学的及び全身的効果が8週間後に生じることが予想されないという事実に基づいて選択された(Adler SP,et al.,A Phase 1 Study of 4 Live,Recombinant Human Cytomegalovirus Towne/Toledo Chimera Vaccines in Cytomegalovirus-Seronegative Men.J Infect Dis.214(9),1341-8(2016)、Heineman TC,et al.,A phase 1 study of 4 live,recombinant human cytomegalovirus Towne/Toledo chimeric vaccines.J Infect Dis.193(10),1350-60(2006)、Quinnan GV Jr,et al.,Comparative virulence and immunogenicity of the Towne strain and a nonattenuated strain of cytomegalovirus.Ann Intern Med.101(4),478-83(1984))。CMV血清陰性の参加者からの必要な安全性データに加えて、SRCはまた、以下に記載されるように、拡大された範囲の用量(5×10
4ffu、5×10
5ffu、又は5×10
6ffu)のベクター2又はベクター3を受けたCMV血清陽性の参加者からの累積安全性データを有する(
図5)。CMV血清陽性の参加者は、CMV血清陰性の対象に最低開始用量が与えられた時点から同時に登録され、SRCが考慮すべき追加の安全性情報を提供する。安全性データのこのレビューに基づいて、次のコホートを開始するかどうかについての提言を行う。
【0310】
第2の用量(ブースト)に関して、現場治験責任医師は、各参加者のデータ記録をレビューし、個々の停止規則が満たされない場合、参加者は、84日目(12週目)に第2の皮下用量を受ける。第2の用量は、それらの第1の用量の間に受けた同じ産物及び投与量レベルである。
【0311】
SRCは、潜在的な安全性の問題、又は試験中止規則に達する事象において、継続的な試験の監督を提供する。コホート停止規則には、1)2人以上の参加者が同じ治療関連グレード3以上の有害事象を経験するか、2)任意の参加者が治療関連SAEを経験するか、又は3)任意の対象が、徴候、症状、検査所見、及び関連部位(複数可)におけるワクチンベクターの検出によって決定される、軽度の自己限定型単核球症様症候群以外のHCMVベクターに起因することができる文書化された末端臓器疾患を経験することを含む。ベクター2及びベクター3もまた、ガンシクロビルに対する感受性を保持する。
【0312】
CMV血清陽性の参加者において並行して用量を評価するための用量スキーマ
CMV血清陽性の参加者は、登録され、別々に無作為化されて、ベクター2又はベクター3を受け、5×10
4ffu、5×10
5ffu、又は5×10
6ffuの用量の安全性及び免疫原性が評価される(
図5)。3つの用量コホートは全て、CMV血清陽性の参加者において同時に開始される。この拡大された用量範囲の安全性データの利用可能性はまた、CMV血清陰性コホートの用量漸増も支持する。
【0313】
主要試験エンドポイント:安全性、反応原性、及び忍容性
2つのベクター2及びベクター3 HCMVワクチン候補の評価は、1)ワクチン反応原性、2)CMV疾患の徴候及び症状、並びに3)HCMVベクターのウイルス学的検出についての臨床監視を含む。ワクチンの反応原性の評価には、局所的及び全身的パラメータの両方が含まれ、対面の臨床評価及び参加者が報告した日記を介して実施される。可能性のあるCMV関連疾患の評価は、臨床検査、身体検査、及び症状指向レビューを介して実施される。まとめると、これらの評価は、試験参加者におけるCMV媒介性疾患の症候性及び無症候性の徴候/症状の両方の検出を可能にする。
【0314】
HCMV候補ベクターのうちのいずれかが排出する能力は、PCRベースのウイルス学的検出アッセイを介して評価される。参加者は、試験来院時にベクター排出を評価するための唾液及び尿検体、並びに循環中のウイルスを評価するための血液試料を提供する。PCRベースの試験は、野生型CMVとベクター2及びベクター3ワクチンベクターとの間の区別を可能にする。重要なことに、PCRアッセイによるHCMV核酸の検出は、無傷又は感染性ウイルスの存在を示すものではないが、しかしながら、それは、ベクター又は野生型CMVの排出について評価するための最も敏感で保守的なアプローチである。更に、HCMVベクター排出の能力は、伝播性又は接触における疾患を引き起こす能力に等しくない。ベクター伝播の評価は、重要なワクチンベクター排出が検出された場合、将来の試験で考慮される。
【0315】
副次エンドポイント及び探索的エンドポイント:免疫応答の特徴付け
天然免疫応答を回避する多くの病原体は、関連するHCMVベクターを用いたワクチン接種によって誘発されると予想される高頻度の抗原特異的T細胞によって制御されやすい可能性がある。外来抗原の発現にかかわらず、HCMVベクターは、HLA-E、HLAクラス1、又はHLAクラス2媒介性抗原提示を認識することができる、堅牢なエフェクター分化メモリーCD4+T細胞及びCD8+T細胞を生成する可能性を有する。免疫応答は、従来の生減弱ワクチン又はタンパク質/アジュバントワクチンでは観察されない幅広いエピトープをカバーするT細胞レパートリーを包含することが予想され、これらの抗原特異的T細胞は、循環及び組織の両方で維持されることが予想される(Hansen SG,et al.,A live-attenuated RhCMV/SIV vaccine shows long-term efficacy against heterologous SIV challenge.Sci Transl Med.11(501),eaaw2607(2019))。
【0316】
副次エンドポイントは、(Gag、Pol、及びNefからのエピトープを含有する)ワクチン由来のHIV-1M保存gag/nef/pol融合エピセンサス1に対するT細胞及び抗体応答によって測定される、ベクター2及びベクター3によって誘導される免疫応答を特徴付けることを目的とする。M保存gag/nef/pol融合エピセンサス1CD4及びCD8T細胞応答の大きさ、機能、及び表現型プロファイルを、細胞内サイトカイン染色(ICS)及びフローサイトメトリーによって評価する。M保存gag/nef/pol融合エピセンサス1エピトープ特異的結合抗体の血清学的力価も評価する。
【0317】
探索的エンドポイントは、生成される免疫応答の性質をより深く特徴付けることを意図しており、ワクチン摂取の任意の潜在的な免疫シグネチャを特定するために、T細胞エピトープの幅、HLAエピトープ制限、拡張された機能的及び表現型プロファイル、並びに末梢全血中のトランスクリプトームプロファイルの評価を含む。更に、CD4及びCD8T細胞の存在、分布、及び大きさを、粘膜生検及びリンパ節穿刺を介して評価して、抗原特異的T細胞が原発感染の部位及び末梢免疫組織での組織内でどのように往来して免疫応答を増幅するかを理解し得る。
【0318】
化学、製造、及び制御の背景
ベクター骨格
HCMV株TRは、そのゲノム組織が典型的な臨床分離株を表すため、ベクター骨格として選択された(Murphy E,et al.,Coding potential of laboratory and clinical strains of human cytomegalovirus.Proc Natl Acad Sci U S A.100(25),14976-81(2003))。HCMV TRゲノムを細菌人工染色体(BAC)にクローニングして、E.coliにおける修飾を可能にした(
図6A)。このプロセスの結果として、ゲノム領域US2-US6が欠失した(
図6B)(Murphy 2003)。BACクローニング中に欠失した領域を復元するために、HCMV株AD169からのUS2-US7遺伝子を、BACカセットに隣接するGFP及びLoxP部位の付加とともに、HCMV TR-BACに挿入した(
図6C)(Lauron EJ,et al.,Human cytomegalovirus infection of Langerhans-type dendritic cells does not require the presence of the gH/gL/UL128-131A complex and is blocked after nuclear deposition of viral genomes in immature cells.J Virology 88(1),403-16(2014))。HCMV TR株は、もともと後期AIDSを有する患者から単離され、キナーゼ遺伝子UL97における変異により当初はガンシクロビル耐性であったため(Smith IL,et al.,High-level resistance of cytomegalovirus to ganciclovir is associated with alterations in both the UL97 and DNA polymerase genes.J Infect Dis.176(1),69-77(1997))、ガンシクロビルの抗ウイルス効果に対する感受性は、変異したTR UL97をHCMV AD169由来の無傷のUL97に置き換えることによって回復した(
図6D)(Bradley AJ,et al.,High-throughput sequence analysis of variants of human cytomegalovirus strains Towne and AD169.J Gen Vir.90(10),2375-80(2009))。更に、GFP遺伝子を除去し、SV40初期プロモーターの制御下でCreリコンビナーゼをBACカセットに付加して、それを哺乳類細胞において自己切除するようにした(
図6D)(Caposio P,et al.,Characterization of a live-attenuated HCMV-based vaccine platform.Sci Rep 9,19236(2019))。得られるベクターは、CMVベクター骨格である(
図6E)。
【0319】
ベクター構築及び特徴付け
CMVベクター骨格BACは、最終的なHCMV-HIVワクチンベクター、ベクター2及びベクター3を生成するように修飾されている。修飾は、E.coli中のCMVベクター骨格BACの連続的な組換え工程によって達成された。ガラクトキナーゼ/カナマイシン(galK/Kan)組換えを使用した標準的BAC組換え(Warming S,et al.,Simple and highly efficient BAC recombineering using galK selection.Nucleic Acids Res.33(4),e36(2005))を実施して、欠失又は導入遺伝子置き換えのいずれかを導入した。最終的なBACベクターは、CMVベクター骨格と比較して意図された修飾を確認するために、次世代配列決定(NGS)によって配列決定された。
【0320】
細胞基質
ベクター2及びベクター3は、ヒト二倍体線維芽細胞株、MRC-5において製造される。MRC-5のワーキング細胞バンク(WCB)は、cGMPの下で製造され、国際調和評議会(ICH)/米国食品医薬品局のガイドラインに従って試験されている。組換えウイルスは、E.coli中のBACとしてクローニングされた組換えウイルスゲノムをトランスフェクトしたワーキング細胞バンク(WCB)細胞から救出される。
【0321】
ベクター2及びベクター3の製造
ベクター2/ベクター3医薬品は、各産物のマスターシードウイルス(MVS)を使用して製造され、研究シードストック(RSS)はMVSの出発材料である。RSS産生を開始するために、ベクターBAC DNAを、上記のBAC構築物の最終組換え工程中に生成されたグリセロールストックからE.coli中で増殖させる。BAC DNAを単離し、標準的な組換えDNAプロトコルを使用して、E.coliから精製する。最終的なRSS生成物の特徴付けには、定量、完全性についての制限消化、及び同一性についてのNGSが含まれる(表4を参照されたい)。
表4:RSS生成工程及び試験
【表4】
付録A.LA-IFA:後期抗原免疫蛍光アッセイ
【0322】
ベクター2及びベクター3のマスターウイルスシード(MVS)及び臨床試験材料(CTM)製造プロセスを
図7に示す。各MVSのための製造プロセス(すなわち、各産物に対応する)は、MVSがRSSで播種されることを除いて、CTM産生に利用されるプロセスと同一である。
【0323】
cGMP製造プロセスは、MVSを調製するためのWCB細胞におけるウイルスの再構成及び増殖からなる。MVSは、追加のWCB細胞を感染させることによって更に増殖され、各ワクチン産物のCTMを製造する。感染したWCB産生培養物から得られた収穫物を、精密濾過によって清澄化する。清澄化された収穫物を濃縮し、最終製剤緩衝液への二重ダイアフィルトレーションによって精製して、中間バルク(すなわち、充填/仕上げ前のバルク材料)を調製する。短期保持工程後、次いで、中間バルクを単回使用バイアルに充填して、医薬品(DP、CTMとも称される)を産生する。
【0324】
ベクター2及びベクター3のMVS及びCTM製造の場合、中間バルクは、バッグ(30%の体積対バッグサイズ比で充填される)に保持され、更なる処理の前に、2~8℃で最大16時間保存される。充填/仕上げバイアル化工程の前に、バルクバッグ(中間バルクを含有する)を、揺動による一定の混合を用いて2時間以上室温(RT)に戻し、次いで、完全に自動化された充填/仕上げセットアップを使用してバイアル化する。
【0325】
MVS及びCTMの両方を、0.7mL(抽出可能な)充填体積でバイアル化する。QC検査を含む総充填完了プロセスには、12時間未満かかると予想される。充填/仕上げの完了時に、バイアルは、-60℃以下で保存される。
【0326】
中間保持時間
ベクター2及びベクター3の製造について(第1相臨床試験を支持するために)、HT緩衝液(ヒスチジン及びトレハロース)が最終製剤として使用される。この製剤は、拡張された保持を支持するために、中間バルクに十分な安定性を提供する。したがって、意図されたGMP製造プロセス内に十分な柔軟性を提供するために、下流プロセス(DSP)と充填/仕上げとの間に保持工程を実施した。以前のHCMV製造プロセスに対する前述の改善を表5に要約する。
表5.下流プロセスの比較
【表5】
【0327】
保持時間試験
様々な保持条件(例えば、温度及び持続時間)下でのHCMV中間体バルクの安定性を支持する様々な試験がこれまでに実施されてきた。これらの試験は、試験特性を示す一次安定性として感染力価を利用し、以下で更に説明される。
【0328】
バイオプロセッシングバッグにおける保持時間
感染力価に対するバイオプロセッシングバッグにおける最大72時間の保持時間の効果を評価するために、試験を実施した。この試験では、CX5-14 Labtainer(商標)PE(ポリエチレン)及びFlexboy(登録商標)EVA(エチレン酢酸ビニル)の2つのバッグ型を使用し、複数の充填量及び持続時間で試験した。
【0329】
全てのバッグに、10%及び75%の体積対バッグサイズ比で代表的な中間バルクを充填し(GMP産生のための30%の充填を一括するため)、2~8℃で72時間の保持で平らに置いた後に試料採取した。試料を、後期抗原免疫蛍光アッセイ(LA IFA)によって感染力価について分析して、試験開始に対応するT=0力価に対する力価損失を決定した。
【0330】
図8に示されるように、結果は、ベクター2及びベクター3のMVS及びCTM製造に使用されるPE(CX5-14 Labteaner(商標))バッグと、EVA(Flexboy(登録商標))材料との間で同等であり、2~8℃で72時間の保持時間は、全ての条件にわたって感染力価において0.21ログの最大力価損失をもたらす。
【0331】
累積保持時間試験
中間バルクをバイオプロセッシングバッグに一晩保持し、次いで室温でバイアルに充填するGMP製造プロセスをシミュレーションするために、累積保持時間試験を実施した。HT緩衝液中に製剤化された代表的な中間バルクを、2~8℃で16時間、一晩(「O/N」)、容量の30%まで充填あれたFlexBoy(登録商標)バッグ中に保持した。一晩保持した後、中間バルクをRTで72時間保持し、その後、それをバイアルに0.7mLで充填し、RTで更に48時間保持して、RT保持の最悪の場合のシナリオを模倣した。
【0332】
図9に示すように、全ての条件では、0.2ログ未満の力価損失が維持されており、これはLA-IFAアッセイの変動性内にある。力価損失は、前のセクション(「バイオプロセッシングバッグの保持時間」)で提示された保持時間試験から得られた結果よりもわずかに低いが、全ての結果はT=0の0.5ログ内であり、したがって、現在のプロセス理解及び分析方法能力に基づいて分析的に有意であるとはみなされない。両方の保持時間試験の結果は、産物の力価がGMP産生の最大許容保持期間を超える「最悪の場合」の保持条件による影響を受けないことを示している。
【0333】
感染力価の分析に加えて、凍結前に、
図8に示す条件をpH及び視覚的外観について試験した。pH特性は、仕様内(pH7.2±0.5、最初の中間バルクpHは7.1であったことに留意)に維持され、全ての試料の内容物は、「透明から乳白色、白色粒子が存在する可能性がある」という基準を満たす外観で明確であった。全てのpH及び外観結果が表6に示され、表はまた、(
図8からの)力価結果を表形式で示す。
表6.累積保持時間試験における力価、pH、及び中間バルクの外観
【表6】
F/T:凍結/融解、NA:該当なし、O/N:一晩、RT:室温
1ベクター2及びベクター3の予想される高い力価並びにLA IFA法の分析的変動(すなわち、±0.2log)を考慮すると、0.5未満のログ損失は、製品品質に影響を与えたり、臨床用量調製にリスクをもたらしたりする可能性は低い。したがって、合格基準は適用されなかった。
【0334】
臨床試験材料中の低残存BAC DNA
「化学、製造、及び制御の背景」に概説されているように、ウイルスシードストックの産生は、E.coliで成長した細菌人工染色体(BAC)で始まり、それが精製され、次いで、ウイルス再構成のためにMRC-5細胞にトランスフェクトされる。このBACは、自己切除カセットに加えて、ベクター2/ベクター3ウイルスゲノム全体をコードする。このカセットは、真核生物プロモーターの制御下にあるCreリコンビナーゼ遺伝子に加えて、E.coliにおけるBACの維持のための遺伝子を含有する。MRC-5細胞におけるCreリコンビナーゼの発現は、ウイルスゲノムから2つのLoxP部位の間に位置するBACカセットを切除するために使用される(
図6A~6E)。Creリコンビナーゼによる自己切除が100%効率的ではないため、残存BAC DNAが存在し得る。
【0335】
低レベルの残存BAC DNAが、ベクター2/ベクター3 MVSにおいて検出されている。ベクター1のIND提出に記載されるように、BAC中のクロラムフェニコール遺伝子の小さな領域を検出するために、qPCRアッセイを使用して特徴付け試験を実施した。クロラムフェニコール遺伝子に対するこのqPCRアッセイを使用して、UL79ウイルス遺伝子に対するqPCRアッセイによって決定された総ウイルスゲノムの数に加えて、ベクター2/ベクター3に存在するBAC DNAのコピーを表7に示す。用量当たりのBAC DNAの量を推定するために、完全長BAC DNA(8,222bp)分子量を使用して、クロラムフェニコールqPCRアッセイからのコピー/mLを、残存完全長BAC DNAの最大量を反映するng/用量に変換した。
表7.残存BAC DNAの特徴付けデータ
【表7】
a)用量当たりのngは、医薬品中の1e+07FFU/mLの最終力価及び5e+06FFUの臨床用量に基づいて計算された。
【0336】
完全長BAC DNAが存在するかどうかを決定するために、5’(US7)及び3’(US8)領域の両方でウイルス/BAC接合部にわたって増幅された接合PCRプライマーを開発した(
図6A~6E)。試験された全ての材料は、陽性の接合PCR反応をもたらし、完全長BAC DNAがウイルスゲノムのいくつかのパーセンテージで存在することを示した。ウイルスゲノムに存在する完全長BACの実際のパーセンテージは不明であるが、最悪の場合のレベルは、表7に示されるように、極めて低い。
【0337】
残存BAC DNAデータは、残存宿主細胞DNAに関するFDA/WHOガイドライン(及び対応する制限)の文脈内で考慮され得る。このガイダンスに基づいて、宿主細胞DNAの量は10ng/用量未満であり、長さが200bp未満である必要がある。BAC DNA断片のサイズは、200bpよりもはるかに大きい場合があるが、ベクター2/ベクター3用量当たりのBAC DNAの推定量は、この限界を十分に下回る。発がん性、感染性、及び免疫原性の観点から残存BAC DNAからのリスクを評価するために、BAC DNA中の遺伝子を以下に要約する。
・クロラムフェニコール耐性遺伝子に加えて細菌遺伝子(sopA、sopB、sopC、repE、及びresD)が存在し、細菌プロモーターの制御下にある。これらの遺伝子は、製造中にE.coliにおいて産生されている間にBACを維持することを可能にする。
・その発現が2つのLoxP部位の間のBACカセットの自己切除を駆動し、HCMV遺伝子US7とUS8との間に単一のLoxP部位を残す、SV40プロモーターの制御下にあるCreリコンビナーゼ遺伝子。
【0338】
細菌プロモーターの制御下にある全ての遺伝子は、ヒト細胞において転写及び翻訳される能力を有さず、患者の安全性にリスクをもたらさない。Creリコンビナーゼ遺伝子は、SV40真核生物プロモーターを使用してヒト細胞において潜在的に発現され得、ベクターゲノムから残存LoxP部位の間のBAC DNAを除去し続ける。
【0339】
潜伏ウイルスからの発がん性DNA配列及び/又は潜在的に感染性のウイルスDNA配列を含有し得る宿主細胞DNAとは異なり、BAC DNAは、既知の発がん性遺伝子及び/又は感染性DNA配列を含有しない。免疫原性の観点から、BAC DNAは、遺伝子療法又はワクチン接種のためのタンパク質を発現するようにデザインされたプラスミドによって誘発されると予想される抗原特異的応答ではなく、固有の宿主細胞防御を誘発する可能性を有する。
【0340】
用量当たりの残存BAC DNAの低いレベル、及びBAC DNAの既知の特性に基づいて、この不純物は、参加する臨床試験対象に安全性リスクをもたらさない。
略語の一覧
【表8-1】
【表8-2】
【0341】
特定の実施形態が示し、説明してきたが、上記の様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わされ得、上記の様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わされ得ることは容易に理解されるであろう。
【0342】
2021年8月31日に出願された米国仮特許出願第63/239,298号及び2022年6月28日に出願された米国仮特許出願第63/356,386号を含む、本明細書で参照され、及び/又は出願データシートに記載されている全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許出版物は、別段明示的に記載されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。必要に応じて、様々な特許、出願、及び刊行物の概念を採用して、なお更なる実施形態を提供するために、実施形態の態様を修正することができる。
【0343】
上記の詳細な記載を考慮して、これら及び他の変更が実施形態に対して行われ得る。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、明細書及び特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲とともに、全ての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】