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特表2024-534191ブルトン型チロシンキナーゼのPET画像化に有用な化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ブルトン型チロシンキナーゼのPET画像化に有用な化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20240910BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240910BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61P25/00
A61K31/4725
A61K51/04 200
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513422
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022075556
(87)【国際公開番号】W WO2023034732
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/238,255
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ドネリー,デイビッド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アレントフ,アルバン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス,マイケル アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ボナコーシ,サミュエル ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワターソン,スコット ハンター
(72)【発明者】
【氏名】ティノ,ジョゼフ エイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC01
4C076DD37
4C076FF11
4C076GG41
4C076GG42
4C076GG43
4C085HH03
4C085JJ02
4C085KB56
4C085LL05
4C085LL07
4C085LL11
4C085LL13
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC30
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086ZA02
4C086ZC78
(57)【要約】
式(Ib)の化合物を開示する。式(Ib)の化合物は、哺乳動物にてブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の陽電子放出断層撮影(PET)の画像化に有用である。また、化合物をブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の標識化剤または診断用画像化剤として用いる方法、および化合物(Ib)を製造する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性標識された式(Ib):
【化1】
で示される化合物。
【請求項2】
式(Ia)の化合物および/または式(Ib)の化合物
【化2】
を含む組成物であって、式(Ia)の化合物と式(Ib)の化合物とのモル数に基づき、式(Ib)の化合物を10~100モル%で含む、組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の放射性標識された式(Ib)の化合物;および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
5~25ミリキュリーの式(Ib)の化合物および医薬的に許容される担体を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
医薬的に許容される担体がセイライン溶液である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
エタノールをさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
BTK発現が知られている哺乳動物の組織をインビボにて画像化する方法であって、
(a)請求項1に記載の放射性標識された式(Ib)の化合物を哺乳動物種に投与する工程;および
(b)その放射性標識された化合物のインビボでの分布を陽電子放出断層撮影(PET)スキャンニングで画像化する工程
を含む、方法。
【請求項8】
哺乳動物種における多発性硬化症の存在を診断する方法であって、
(a)多発性硬化症の存在と関連付けられるBTKに結合する、請求項1に記載の放射性標識された式(Ib)の化合物を、その診断を必要とする哺乳動物種に投与する工程;および
(b)哺乳動物種の少なくとも一部の放射性画像を得、放射性標識された化合物の存在または不存在を検出する工程を含み;
ここで、バックグラウンドより上の放射性標識された化合物の存在および位置が疾患の存在または不存在を示す、診断方法。
【請求項9】
哺乳動物種の脳における多発性硬化症の病変の存在を診断する方法であって、
(a)多発性硬化症の病変と関連付けられるBTKに結合する、請求項1に記載の放射性標識された式(Ib)の化合物を、その診断を必要とする哺乳動物種に投与する工程;および
(b)哺乳動物種の脳の少なくとも一部の放射性画像を得、放射性標識された化合物の存在または不存在を検出する工程を含み;
ここで、バックグラウンドより上の放射性標識された化合物の存在および位置が多発性硬化症の病変の存在または不存在を示す、診断方法。
【請求項10】
哺乳動物組織においてBTKの結合部位を占有する非放射性標識の化合物の親和性を測定するための該化合物のスクリーニング方法であって:
(a)請求項1に記載の放射性標識された式(Ib)の化合物を哺乳動物種に投与する工程;
(b)陽電子放出断層撮影(PET)によって既知のBTK発現の組織をインビボにて画像化し、放射性標識された化合物のベースラインとなる取り込み量を測定する工程;
(c)非放射性標識された化合物を哺乳動物種に投与する工程;
(d)第2の用量の放射性標識された化合物を哺乳動物種に投与する工程;
(e)BTKを発現する組織にて放射性標識された化合物の分布をインビボにて画像化する工程;
(f)BTKを発現する組織内のベースラインでのPETスキャンデータからのシグナルを、BTK受容体を発現する組織内に非放射性標識された化合物を投与した後に取得したPETスキャンデータと比較する工程
を含む、方法。
【請求項11】
BTK阻害剤を用いて治療されている哺乳動物患者の治療をモニター観察する方法であって、
(a)請求項1に記載の放射性標識された式(Ib)の化合物を患者に投与する工程;
(b)患者にてBTKを発現する組織の画像を陽電子放出断層撮影(PET)によって得る工程;および
(c)放射性標識された化合物がBTKの結合部位をどの程度占有するかを検出する工程
を含む、方法。
【請求項12】
(a)BTKを含有する組織を、請求項1に記載の放射性標識された式(Ib)の化合物と接触させる工程;および
(b)その放射性標識された化合物を陽電子放出断層撮影(PET)の画像化を用いて検出する工程
を含む、組織を画像化する方法。
【請求項13】
哺乳動物種における多発性硬化症の存在を診断する方法であって、
(a)多発性硬化症の存在と関連付けられるBTKに結合する、請求項1に記載の放射性標識された式(Ib)の化合物を、その診断を必要とする哺乳動物種に投与する工程;および
(b)哺乳動物種の少なくとも一部の放射性画像を得、放射性標識された化合物の存在または不存在を検出する工程
を含み;ここで、放射性標識された化合物の存在およびバックグラウンドより上に位置することが疾患の存在または不存在を示す、診断方法。
【請求項14】
式(Ib):
【化3】
で示される化合物を製造する方法であって、
(a)[11C]COおよび臭化ビニルマグネシウムを反応させ、構造式(II):
【化4】
で示される[11C]-アクリル酸を得る工程;および
(b)該[11C]-アクリル酸および(R)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-4-(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-1H-インドール-7-カルボキシアミドを反応させ、式(Ib)の化合物を得る工程
を含む、方法。
【請求項15】
式(Ib):
【化5】
で示される化合物を製造する方法であって、
(a)[11C]COおよびヨウ化ビニルを(R)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-4-(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-1H-インドール-7-カルボキシアミドの存在下にて反応させて式(Ib)の化合物を得る工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月30日付け出願の米国仮特許出願番号63/238,255号の利益を主張するものであって、その内容を本明細書に取り込むものとする。
発明の分野
本発明は、一般に、放射線標識されたブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)化合物に、ならびに哺乳動物でのBTKの標識化および診断画像化におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放出断層撮影(PET)は、生きている対象の生物学的プロセスについての機能的情報を提供し得る、非侵襲的画像化技術である。インビボでの分子事象を画像化してモニター観察する能力は、生体内での生化学的および生理学的プロセスを洞察するのに有用である。このことは、順次、疾患を治療し、疾患を早期に検出し、および新薬を設計するための新しい解決方法の開発に不可欠である。PETは、陽電子を放出する放射性同位体で標識された分子の設計および合成に依存する。これらの分子は放射性トレーサーまたは放射性リガンドとして知られる。PET画像化の場合、最も一般的に使用される陽電子を放出する(PET)放射性核種は、18F、11C、15Oおよび13Nであり、それらはすべてサイクロトロンで産生され、半減期が、各々、110、20、2および10分間である。陽電子放出放射性核種で放射性標識された後に、これらのPET放射性リガンドは、哺乳動物に、典型的には、静脈内(i.v.)注射によって投与される。体内に入ると、放射性リガンドは崩壊して陽電子を放出し、それは電子と結合するまでのわずかな距離を移動する。次に消滅事象として知られる事象が起こり、その各々が、511keVのエネルギーを有する同軸上にある2つのフォトンを生成する。放射性リガンドから放出されるガンマ線の検出能を有するPET画像化スキャナーを用いると、平坦および断層画像から、放射性トレーサーの分布が時間の関数として明らかになる。PET放射性リガンドは、ヒト受容体についてのターゲットエンゲージメントおよび用量依存性受容体占有率に関連する有用なインビボでの情報を提供する。
【0003】
多発性硬化症は、中枢神経系の慢性で炎症性の脱髄性および神経変性疾患である。多発性硬化症は、数種の神経学的徴候が再発するか、または蓄積するかのいずれかによって特徴付けられ、病理学的には単核細胞の浸潤した領域、不完全な再髄鞘化を伴う脱髄化、ならびに脳および脊髄を通した軸索喪失によって特徴付けられる。B細胞、T細胞および骨髄系細胞の活性と相互作用とが、多発性硬化症の免疫病理学的特徴に関連付けられる。活性化されたB細胞は抗原提示およびサイトカイン産生を通してエフェクター機能を発揮し得る。マクロファージおよびミクログリアは多発性硬化症で豊富に存在し、組織損傷に寄与し、組織修復を害する。ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)は、種々のB細胞受容体および骨髄系細胞を介してシグナルを伝達する、キナーゼのチロシンタンパク質キナーゼファミリーのメンバーである。最近では、BTKの阻害剤が多発性硬化症の可能性のある治療剤として研究されている(Nature Biotechnology Vol. 39(1), 3-5 (2021))。
【0004】
米国特許第9,802,915号B2は、多発性硬化症などのBTK依存性またはBTK介在性症状または疾患を治療するのに用いるためのBTKの阻害剤として有用な化合物を開示する。
BTKに対して高い親和性を有する特異的なPET放射性リガンドを支援型画像化技法と組み合わせて用いることで、ヒトの脳、またはこの標的を発現する脾臓、腎臓、肝臓または心臓などの他の臓器での、BTK阻害剤のターゲットエンゲージメントと、その用量/占有関係との両方を臨床的に評価する、方法が提供される。
【0005】
短命の放射性核種を含有するPET化合物の製造には、放射性核種標識の放射性崩壊を通しての喪失を最小とするために、PET化合物を合成し、精製し、医薬剤形に製剤化され、短期間の間に患者に投与されることを必要とする。製造時間は利用される放射性核種の物理的半減期のおよそ2~3倍であることが望ましい。PET化合物の製造時間が長くなるほど、患者に投与する前の放射性核種標識の喪失が増加するに至り、PET化合物をより高用量で使用する必要性をもたらし得る。
【0006】
PET分子の選択は、ある程度は、短命なPET放射性核種を合成プロセスの最終段階でPET分子中のある位置に組み込む能力によって決定される。PET放射性核種をサイクロトロンにて製造した後、PET放射性核種を含有する放射性分子を単離し、ついで最小限の時間を必要とする最小数の合成工程でPET分子の前駆体に速やかに組み込む。PET放射性核種を合成の最終段階で組み込むことで、合成化学者は合成の初期段階にて非放射性材料を取り扱うこともでき、最終の合成段階まで放射性材料の取り扱いを制限できる。放射性材料を取り扱うための特別な装置、および保護操作を用いることも最終合成段階まで必要とされない。
【0007】
炭素-11の半減期は20分である。炭素-11で標識するには、放射性トレーサーの収量を最大とするために、迅速かつ効率的な方法が必要である(Langstromら、Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals 2007, 50: 794-810; Dahlら、Clin Transl Imaging (2017) 5:275-289)。
ブルトン型チロシンキナーゼのPET画像化に有用な放射性標識の化合物に対する要求が残っている。
さらには、利用される放射性核種の物理的半減期の3倍または3倍以下の時間枠内で合成され、精製され、製剤化されて患者に投与され得る、ブルトン型チロシンキナーゼのPET画像化に有用な放射性標識の化合物に対する要求がある。
【0008】
さらにその上、BTKに対して高い親和性のある、PET画像化に有用な放射性標識の化合物に対する要求がある。
なおさらにその上、脳でのブルトン型チロシンキナーゼのPET画像化のために、脳-血液関門を通過する能力を有するBTKに対して高い親和性のある、放射性標識の化合物に対する要求が依然として残っている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、インビトロおよびインビボの両方での探索かつ診断の画像化用途に、ならびに放射性標識されている、標識されていないBTK阻害剤を用いる競合研究に、11C放射性標識されたBTK阻害剤の化合物を提供することで上記した要求を満たすものである。
本発明者らは、ブルトン型チロシンキナーゼをPET画像化するのに有用な11C放射性標識されたBTK阻害剤の化合物を見出した。
本発明者らは、利用される放射性核種の物理的半減期の3倍または3倍以下の時間枠内で合成され、精製され、製剤化されて患者に投与され得る、ブルトン型チロシンキナーゼのPET画像化に有用な11C放射性標識されたBTK阻害剤の化合物を見出した。
【0010】
本発明者らは、ブルトン型チロシンキナーゼのPET画像化に有用であって、BTKに対して高い親和性を有する、11C放射性標識されたBTK阻害剤の化合物を見出した。
本発明者らは、ブルトン型チロシンキナーゼのPET画像化に有用であって、脳内にてブルトン型チロシンキナーゼのPET画像化のために脳-血液関門を通過する能力を有する、11C放射性標識されたBTK阻害剤の化合物を見出した。
【0011】
本発明はまた、11C放射性標識されたBTK阻害剤の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
本発明はまた、11C放射性標識されたBTK阻害剤の化合物を用いて哺乳動物の組織にてBTK発現を画像化する方法を提供する。
本発明はまた、11C放射性標識されたBTK阻害剤の化合物を製造する方法を提供する。
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、本開示を読み続けるにつれて、拡大された形態で示されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】方法Aを用いた、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの精製の代表的なセミ分取性HPLCクロマトグラムを示す。[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドは、HPLCに注入した8.5~9.5分後に単離された。
図2】分析用逆相HPLCを用いた、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドと、(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミド、非放射性対照の標体との共同注入を示す。このHPLC分析方法を用いてピークは0.1分以内に共溶出した。
図3】方法Aを用いた、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの精製の代表的なセミ分取性HPLCクロマトグラムを示す。[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドは、HPLCに注入した9~10.5分後に単離された。
図4】EAE誘発の2匹のマウスでのマウス脳のEAE病変領域内のリガンドの保持を示す、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドのPETシグナルの標準取り込み値(SUV)を示す。左側棒はリガンドを投与した50分後のマウス脳の病変領域内でのSUV値を示す。右側棒は同一動物にてリガンドを投与した50分後のマウス脳の病変領域内での追跡SUV値を示す。これらの追跡画像はPETリガンドの2回目の投与から24時間後に取得された。各セットの棒は個々のマウスから由来のデータを示す。
図5】[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの脳内蓄積を示す代表的なPET画像(PETリガンドを投与した20~50分後からのSUV)を示す。(A)WTマウスのベースライン;(B)EAE誘発マウスでのベースライン。サークルは各動物での脳領域を示し、コントラスト割合は、病変領域にて測定されたSUVを、脳の病変領域外の領域でのSUVと比較して計算され、この割合は4.7:1であった。
図6】EAE誘発のマウスの脳におけるPET画像の定量化より由来の代表的な棒グラフを示す。目的とする2つの領域、すなわち、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの脳内蓄積(PETリガンドを投与した50分後からのSUV)を示す、病変領域と、病変部以外の脳の領域をこの研究にて定義した。左側棒は脳内の病変領域を示す。次の棒は投与パネル(5または0.5mg/kgのいずれかのBTK阻害剤)の間での病変領域を示す。右側棒はベースラインでの病変領域以外のマウス脳内の代表的なROIを示す。棒はBTK阻害剤を投与する間の病変領域以外のマウス脳内の代表的なROIを示す。
図7】ベースラインでの健康なNHPにおける[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの代表的なアカゲザル画像およびTACを示す。円領域はPETスキャン画像内のNHPの脳領域を示す。
【0013】
本開示は、部分的には、放射性標識されたブルトン型チロシンキナーゼ(以下、「BTK」という)阻害剤が、哺乳動物種の組織にて、BTKおよび/またはBTK発現および/またはBTK受容体を占有する化合物の親和性を検出および/または定量化および/または画像化するのに有用であるとの評価に基づく。放射性標識されたBTK阻害剤は、それが哺乳動物種に投与されると、BTKでビルドアップするか、またはBTKを占有し、画像化技術を通して検出でき、それによって、BTKの組織中での存在について、化合物のBTKを占有することの親和性について、およびBTK阻害剤の臨床評価と用量選択について、価値のある診断マーカーを提供することを見出した。加えて、本明細書にて開示される放射性標識のBTK阻害剤は、非標識の薬物と、放射性標識の薬物との間で受容体への結合について競合させることで、インビボでの非標識のBTK阻害剤とBTKとの相互作用を研究するためのリサーチツールとして使用され得る。このような研究は、BTK受容体の占有率と、非標識のBTK阻害剤の用量との関係を測定するのに、ならびに種々の用量の非標識のBTK阻害剤による結合部位の占有期間を研究するのに有用である。
【0014】
臨床用ツールとして、放射性標識されたBTK阻害剤を用い、BTK阻害剤の臨床的に効果的な用量を定める手助けとすることができる。動物実験では、放射性標識されたBTK阻害剤を用い、臨床開発用に選択される可能性のある薬物候補の間で選択するのに有用である情報を得ることができる。放射性標識されたBTK阻害剤はまた、ヒトおよび動物の生きた肺組織、および腎臓、心臓、肝臓および皮膚などの他の組織にて、および組織サンプルにてBTKの局所分布および濃度を研究するのに使用され得る。それらを用いて疾患またはBTK濃度の薬理学的に関連する変化を研究することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
WO 2016/065226は、実施例95において、ラセミ混合物としての非PET標識の化合物、4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-IH-インドール-7-カルボキシアミドを、そして実施例153および154において2つの個々のエナンチオマーを開示している。実施例154は非PET標識の(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドであり、本明細書では「化合物(Ia)」と称される。化合物(Ia)は、構造式:
【化1】
で示される。WO 2016/065226は、実施例154では、BTK IC50阻害値が0.10nMであると開示している。
【0016】
本発明の第1の態様は、構造式:
【化2】
で示される式(Ib)の化合物を提供する。
【0017】
式(Ib)の化合物は11C放射性標識されたBTK阻害剤の化合物であり、本明細書にて「化合物(Ib)」とも称される。化合物(Ib)の化学名は[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドである。
【0018】
本発明の第2の態様は、式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
本発明の第3の態様は、式(Ib)の化合物を画像化、スクリーニング、および/またはモニタリングに用いる方法を提供する。
本発明の第4の態様は、式(Ib)の化合物を製造する方法を提供する。
【0019】
本明細書で用いる場合、「化合物(I)」なる語は、化合物(Ia)と化合物(Ib)との混合物をいう。化合物(I)には、0モル%の化合物(Ia)と100モル%の化合物(Ib)とを有する混合物から、100モル%の化合物(Ia)と0モル%の化合物(Ib)とを有する混合物まで含まれる。例えば、化合物(I)には、1モル%の化合物(Ia)と99モル%の化合物(Ib);5モル%の化合物(Ia)と95モル%の化合物(Ib);10モル%の化合物(Ia)と90モル%の化合物(Ib);20モル%の化合物(Ia)と80モル%の化合物(Ib);30モル%の化合物(Ia)と70モル%の化合物(Ib);40モル%の化合物(Ia)と60モル%の化合物(Ib);50モル%の化合物(Ia)と50モル%の化合物(Ib);70モル%の化合物(Ia)と30モル%の化合物(Ib);80モル%の化合物(Ia)と20モル%の化合物(Ib);90モル%の化合物(Ia)と10モル%の化合物(Ib);95モル%の化合物(Ia)と5モル%の化合物(Ib);および100モル%の化合物(Ia)と0モル%の化合物(Ib)とを有する混合物が含まれる。
【0020】
本明細書で用いる場合、「化合物(I)のモル活性」なる語は、化合物(I)1モル当たりの放射能の測定値をいう。モル活性の適切な単位には、ギガベクレル/モル(GBq/モル)が含まれる。
本明細書で用いる場合、「化合物(I)の比活性」なる語は、化合物(I)1グラム当たりの放射能の測定値をいう。比活性の適切な単位には、ギガベクレル/ミリグラム(GBq/mg)が含まれる。
【0021】
医薬組成物
本発明の第2の態様は、式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供することである。適切な医薬的に許容される担体の例として、セイライン滅菌溶液、エタノール、およびアスコルビン酸ナトリウムが挙げられる。
1の実施態様は、式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物であって、ここで式(Ib)の化合物の投与量が、0.2μg~100μgの範囲にある、医薬組成物を提供する。この実施態様には、式(Ib)の化合物を含む医薬組成物であって、ここでその投与量が0.5μg~90μgの範囲にある、医薬組成物が含まれる。この実施態様には、式(Ib)の化合物を含む医薬組成物であって、ここでその投与量が1μg~75μgの範囲にある、医薬組成物も含まれる。
【0022】
1の実施態様は、5~25ミリキュリーの式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
1の実施態様は、5~22ミリキュリーの式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
1の実施態様は、5~20ミリキュリーの式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
1の実施態様は、7~20ミリキュリーの式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
1の実施態様は、10~20ミリキュリーの式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
1の実施態様は、7~15ミリキュリーの式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
1の実施態様は、10~15ミリキュリーの式(Ib)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0023】
1の実施態様は、0.2μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、0.2μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
1の実施態様は、0.5μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、0.5μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
1の実施態様は、1μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、1μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
【0024】
1の実施態様は、2μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、2μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
1の実施態様は、5μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、5μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
1の実施態様は、10μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、10μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
【0025】
1の実施態様は、15μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、15μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
1の実施態様は、20μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、20μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
1の実施態様は、30μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、30μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
【0026】
1の実施態様は、40μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、40μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
1の実施態様は、50μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。この実施態様には、50μg~100μgの化合物(Ib)と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
【0027】
本発明の1の実施態様によれば、医薬用および診断用組成物が提供される。かかる医薬用または診断用組成物は、式(Ib)の化合物と、そのための医薬的に許容される担体とを含む。1の実施態様において、式(Ib)の化合物は、医薬用および診断用組成物において、各々、治療的に効果的な量で存在する。
【0028】
使用方法
本開示は、部分的には、放射性標識されたブルトン型チロシンキナーゼ(以下、「BTK」という)阻害剤が、哺乳動物種の組織にて、BTKおよび/またはBTK発現および/またはBTK受容体を占有する化合物の親和性を検出および/または定量化および/または画像化するのに有用であるとの評価に基づく。放射性標識されたBTK阻害剤は、それが哺乳動物種に投与されると、BTKでビルドアップするか、またはBTKを占有し、画像化技術を通して検出でき、それによって、BTKの組織中での存在について、化合物のBTKを占有することの親和性について、およびBTK阻害剤の臨床評価と用量選択について、価値のある診断マーカーを提供することを見出した。加えて、本明細書にて開示される放射性標識のBTK阻害剤は、非標識の薬物と、放射性標識の薬物との間で受容体への結合について競合させることで、インビボでの非標識のBTK阻害剤とBTKとの相互作用を研究するためのリサーチツールとして使用され得る。この種の研究は、BTK受容体の占有率と、非標識のBTK阻害剤の用量との関係を測定するのに、ならびに種々の用量の非標識のBTK阻害剤による結合部位の占有期間を研究するのに有用である。
【0029】
臨床用ツールとして、放射性標識されたBTK阻害剤である、式(Ib)の化合物を用い、BTK阻害剤の臨床的に効果的な用量を定める手助けとすることができる。動物実験では、放射性標識されたBTK阻害剤を用い、臨床開発用に選択される可能性のある薬物候補の間で選択するのに有用である情報を得ることができる。放射性標識されたBTK阻害剤はまた、ヒトおよび動物の生きた脳組織、肺組織、および腎臓、心臓、肝臓および皮膚などの他の組織にて、および組織サンプルにてBTKの局所分布および濃度を研究するのに使用され得る。それらを用いて疾患またはBTK濃度の薬理学的に関連する変化を研究することができる。
【0030】
1の実施態様は、BTK発現が知られている哺乳動物組織をインビボにて画像化する方法であって、以下の工程:
(a)放射性標識された式(Ib)の化合物を哺乳動物種に投与する工程;および
(b)陽電子放出断層撮影(PET)のスキャンニングによって、放射性標識された化合物の分布をインビボにて画像化する工程
を含む、方法を提供する。この実施態様には、既知のBTK発現の生きた哺乳動物の脳組織をインビボにて画像化する方法が含まれる。加えて、この実施態様には、既知のBTK発現の生きたヒト脳組織をインビボにて画像化する方法が含まれる。
【0031】
もう一つ別の実施態様において、本発明は、非放射性標識の化合物の哺乳動物組織においてBTKの結合部位を占有する親和性を測定するための該化合物のスクリーニング方法であって、以下の工程:
(a)放射性標識された式(Ib)の化合物を哺乳動物種に投与する工程;
(b)陽電子放出断層撮影(PET)によってBTK発現が知られている組織をインビボにて画像化し、放射性標識された化合物のベースラインとなる取り込み量を測定する工程;
(c)非放射性標識された化合物を哺乳動物種に投与する工程;
(d)第2の用量の放射性標識された式(Ib)の化合物を哺乳動物種に投与する工程;
(e)BTKを発現する組織にて放射性標識された式(Ib)の化合物の分布をインビボにて画像化する工程;
(f)BTKを発現する組織内のベースラインでのPETスキャンデータからのシグナルを、BTK受容体を発現する組織内に非放射性標識された化合物を投与した後に取得したPETスキャンデータと比較する工程
を含む、方法を提供する。この実施態様には、非放射性標識された化合物の哺乳動物組織中のBTKの結合部位を占有する親和性を測定するための該化合物のスクリーニング方法であって、ここでその哺乳動物組織がヒト組織である、方法が含まれる。この実施態様には、非放射性標識された化合物の哺乳動物組織中のBTKの結合部位を占有する親和性を測定するための該化合物のスクリーニング方法であって、ここでその哺乳動物組織がヒト脳組織である、方法が含まれる。
【0032】
もう一つ別の実施態様において、本発明は、BTK阻害剤を用いて治療されている哺乳動物患者の治療をモニター観察する方法であって、
(a)放射性標識された式(Ib)の化合物を患者に投与する工程;
(b)患者にてBTKを発現する組織の画像を陽電子放出断層撮影(PET)によって得る工程;および
(c)放射性標識された化合物がBTKの結合部位をどの程度占有するかを検出する工程
を含む、方法を提供する。
【0033】
もう一つ別の実施態様において、本発明は、BTK阻害剤を用いて治療されている哺乳動物患者の治療をモニター観察する方法であって、
(a)放射性標識された式(Ib)の化合物を患者に投与する工程;
(b)患者にてBTKを発現する脳組織の画像を陽電子放出断層撮影(PET)によって得る工程;および
(c)放射性標識された化合物がBTKの結合部位をどの程度占有するかを検出する工程
を含む、方法を提供する。
【0034】
もう一つ別の実施態様において、本発明は、BTKを含有する組織を放射性標識された式(Ib)の化合物と接触させる工程、およびその放射性標識された化合物を陽電子放出断層撮影(PET)の画像化を用いて検出する工程を含む、組織を画像化する方法を提供する。かかる方法では、放射性標識された化合物はインビトロまたはインビボのいずれかで検出され得る。
【0035】
もう一つ別の実施態様において、本発明は、哺乳動物種における多発性硬化症の存在を診断する方法であって、
(a)多発性硬化症の存在と関連付けられるBTKに結合する、放射性標識された式(Ib)の化合物を、その診断を必要とする哺乳動物種に投与する工程;および
(b)哺乳動物種の少なくとも一部の放射性画像を得、放射性標識された化合物の存在または不存在を検出する工程を含み;ここで、放射性標識された化合物の存在およびバックグラウンドより上に位置することが疾患の存在または不存在を示す、診断方法を提供する。
【0036】
もう一つ別の実施態様において、本発明は、哺乳動物種における多発性硬化症の存在を診断する方法であって、
(a)多発性硬化症の存在と関連付けられるBTKに結合する、放射性標識された式(Ib)の化合物を、その診断を必要とする哺乳動物種に投与する工程;および
(b)哺乳動物種の脳組織のPETスキャンまたはオートラジオグラムを得、放射性標識された化合物の存在または不存在を検出する工程を含み;ここで、放射性標識された化合物の存在およびバックグラウンドより上に位置することが疾患の存在または不存在を示す、診断方法を提供する。
【0037】
もう一つ別の実施態様において、本発明は、哺乳動物種における、多発性硬化症の存在を診断する方法であって、
(a)多発性硬化症の存在と関連付けられるBTKに結合する、放射性標識された式(Ib)の化合物を、その診断を必要とする哺乳動物種に投与する工程;
(b)哺乳動物種での放射性標識された化合物の放射性放出を検出する工程;
(c)哺乳動物種での放射性標識された化合物の放射性放出を標準値と比較する工程;および
(d)標準値と比較した場合に哺乳動物種について検出された放射性放出の間に何らかの有意な偏差を見つけ、その偏差を多発性硬化症に起因させる工程
を含む、方法を提供する。この実施態様には、工程(b)における哺乳動物種での放射性標識された化合物の放射性放出が哺乳動物種の脳組織で検出される、多発性硬化症の存在を診断する方法が含まれる。
【0038】
もう一つ別の実施態様において、本発明は、哺乳動物種における罹患細胞または組織を定量する方法であって、
(a)罹患した細胞または組織内に位置づけられるBTKに結合する、放射性標識された式(Ib)の化合物を、その罹患した細胞または組織を有する哺乳動物種に投与する工程;および
(b)罹患した細胞または組織において放射性標識された化合物の放射性放出を検出する工程であって、ここで罹患した細胞または組織における放射性放出のレベルおよび分布が、該罹患した細胞または組織の定量的尺度である、工程
を含む、方法を提供する。この実施態様には、哺乳動物種における罹患した細胞または組織を定量する方法であって、ここで該罹患した細胞または組織が罹患した脳細胞または脳組織である、方法が含まれる。
【0039】
式(Ib)の化合物は、BTK親和性を有する陽電子放出分子として有用である、放射性標識されたBTK阻害剤である。本明細書にて使用される「放射性標識されたBTK阻害剤」なる語は式(Ib)の化合物をいう。
【0040】
もう一つ別の実施態様において、本開示は、放射性標識されたBTK阻害剤、すなわち式(Ib)の化合物、およびそのための医薬的に許容担体を含む、BTKを画像化するための診断用組成物を提供する。さらにもう一つ別の実施態様において、本開示は、放射性標識されたBTK阻害剤、すなわち式(Ib)の化合物、およびそのための医薬的に許容担体を含む、医薬組成物を提供する。さらにもう一つ別の実施態様において、本開示は、既知のBTK発現の哺乳動物の組織をオートラジオグラフィーに付す方法であって、放射性標識されたBTK阻害剤を哺乳動物種に投与し、陽電子放出断層撮影によって組織の画像を得、組織における放射性標識された化合物を検出して、BTK阻害剤のターゲットエンゲージメントおよび該組織のBTK阻害剤の受容体占有率を測定する、方法を提供する。
【0041】
放射性標識されたBTK阻害剤は、適切な放射性核種で標識されている場合、診断用画像化、基礎研究、および放射線療法の用途を含む、インビトロおよび/またはインビボでの様々な画像化の用途に有用である可能性がある。可能性のある診断用画像化および放射線療法の用途の具体例には、BTKの位置、BTKの相対活性および/または量;BTK阻害剤のラジオイムノアッセイ;およびオートラジオグラフィーを測定し、哺乳動物あるいはその器官または組織サンプル中でのBTKの分布を決定することが含まれる。
【0042】
特に、本発明の放射性標識されたBTK阻害剤は、生きているヒトおよび実験動物の脳、脾臓、および他の器官におけるBTKの陽電子放出断層撮影(PET)による画像化に有用である。この放射性標識されたBTK阻害剤は、キナーゼ結合部位への結合について、非標識のBTK阻害剤と、BTKとのインビボにおける相互作用を研究するためのリサーチツールとして使用されてもよい。この型の研究は、BTKの占有率と、非標識のBTK阻害剤の用量との関係を決定するのに有用であり、ならびに種々の用量の非標識のBTK阻害剤による受容体の遮断期間を研究するのにも有用である。臨床ツールとして、放射性標識されたBTK阻害剤は、BTK阻害剤の臨床的に効果的な用量を決定する手助けに使用されてもよい。動物実験にて、放射性標識されたBTK阻害剤を用い、臨床開発用に選択される可能性のある薬物候補の間で選択するのに有用である情報を得ることができる。放射性標識されたBTK阻害剤はまた、ヒトの脳、脾臓、および生きている実験動物の他の器官における、ならびに健康な、およびがんなどの罹患した組織を含む、組織サンプルにおけるBTKの局所分布および濃度を研究するのに使用されてもよい。放射性標識されたBTK阻害剤を用いて、疾患またはBTK濃度の薬理学的に関連する変化を研究することもできる。
【0043】
例えば、本開示の放射性標識のBTK阻害剤などの陽電子放出断層撮影(PET)トレーサーは、現在利用可能なPET技術で使用されて以下の情報:候補となるBTK阻害剤による受容体占有のレベルと、患者での臨床的有効性との関連性;長期にわたる臨床実験を開始する前のBTK阻害剤の臨床試験のための用量選択;構造的なBTK阻害剤との比較効能;臨床標的をBTK阻害剤で治療する間のBTK阻害剤のインビボでのトランスポーターの親和性および密度に対する影響の調査;多発性硬化症およびがんの効果的および非効果的な治療を行う間のBTKの密度および分布における変化を得ることができる。
【0044】
本開示の放射性標識のBTK阻害剤は、BTKに関連する種々の障害に関して診断的な画像化のためにBTKを画像化するにおいて有用性がある。
【0045】
本開示の化合物を探索用または診断用画像化剤として用いる場合、放射性標識の化合物は、標準的な製薬慣行に従って、医薬組成物にて、単独か、または好ましくは、医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて、所望により、アルムなどの既知のアジュバントと組み合わせるかのいずれかで、医薬組成物の形態にて哺乳動物、好ましくはヒトに投与され得る。かかる組成物は、経口的に、または静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸および局所的な投与経路を含め、非経口的に投与され得る。好ましくは、投与は静脈内投与である。BTK PET放射性リガンドは短命な陽電子放出核種で標識された放射性トレーサーであり、かくして、一般には、その合成から1時間以内に静脈内注射で投与される。このことは関与する放出核種の半減期が短いため不可欠である。本開示の放射性標識のBTK PET放射性リガンドがヒト対象に投与される場合、画像化に必要とされる量は、放射性核種からの放出量に従って一般に変化する投与量で、通常は処方する医師によって決定されるであろう。しかしながら、大抵の場合、効果的な量は、約1~20mCiの範囲の放出を生成するのに十分な化合物の量である。1の例示としての適用では、対象の体重に応じて変化し、哺乳動物に注入される全放射能の0.5~20mCiの量で投与が行われる。上限は、げっ歯類またはヒト以外の霊長類のいずれかにて、放射性標識の分子を線量測定に付すことによって設定される。
【0046】
臨床で患者に対してPET画像化研究を行う場合には、以下の例示としての操作が利用されてもよい。患者は実験当日のしばらく前に非標識のBTK阻害剤で前治療処理されており、少なくとも12時間は絶食であるが、水は自由に摂取とする。20Gの2インチ静脈カテーテルを、放射性トレーサーを投与するために、対側性尺骨静脈に挿入する。放射性トレーサーの投与は、血中のBTK阻害剤の濃度が最大(Tmax)または最小(Tmin)になる時間に合わせて時間を決めることが多い。
【0047】
患者をPETカメラ内に位置させ、化合物(Ib)などの放射性標識のBTK阻害剤のトレーサー線量(<20mCi)を静脈内カテーテルを介して投与する。血漿中の[11C]化合物(Ib)の未代謝PETトレーサーの割合を分析して定量化するために、PETスキャンを通して適切な時間間隔で動脈または静脈血のいずれかを採取する。画像を120分間まで取得する。放射性トレーサーの注射の10分以内と、画像化セッションの最後に、1mLの血液サンプルを得、PETトレーサーの前に投与されている可能性のある任意のBTK阻害剤の血漿中濃度を決定する。
【0048】
断層撮影画像を画像再構築を通して得る。放射性トレーサーの分布を測定するために、関心のある領域(ROI)を、脳、脾臓、腫瘍、肺、肝臓、心臓、腎臓、皮膚または他の臓器および組織を含むが、これらに限定されない、再構築の画像上に描写する。これらの領域での経時的な放射性トレーサーの取り込みを用いて、いずれの介入もなく得られるか、または試験した種々の用量パラダイムでの非標識のBTK阻害剤の存在下で得られる時間活性曲線(TAC)を作成する。データは単位体積に付き単位時間当たりの放射活性(μCi/cc/mCi注入線量)として表される。TACデータを当該分野にて周知の種々の方法を用いて加工処理し、目的とする領域内で占有されていないBTKの密度と比例関係にある、結合電位(BP)または分布の体積(V)などの定量パラメータを得る。次にBTK阻害剤の阻害を、BTKまたはBTK阻害剤の種々の用量パラダイムでの存在下における平衡分析によって、BPまたはVの変化に基づき、投薬されていない状態でのBPまたはVと比べて算定する。阻害曲線は上記のデータをBTK阻害剤の線量(濃度)に対してプロットすることによって作成される。次にBTK阻害剤の阻害は、Emax、TmaxまたはTminで遮断薬によって達成され得るPET放射性リガンドのVまたはBPの最大減少量、およびBTK阻害剤の種々の用量パラダイムでの存在下におけるその分布の非特異的体積(VND)およびBPの変化に基づき、投薬されていない状態でのBPまたはVと比べて算定される。ID50値は用量-速度/阻害曲線を曲線適合させることによって得られる。
【0049】
本開示は、さらには、BTKの画像化を必要とする哺乳動物にてBTKを診断用に画像化する方法であって、放射性標識のBTK阻害剤を医薬用担体または賦形剤と組み合わせる工程を含む、方法に関する。
【0050】
式(IB)の化合物の製造方法
1の実施態様は、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを製造する方法であって、
(a)[11C]COおよび臭化ビニルマグネシウムを反応させ、構造式(II):
【化3】
で示される[11C]-アクリル酸を得る工程;および
(b)該[11C]-アクリル酸および(R)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-4-(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-1H-インドール-7-カルボキシアミドを反応させ、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを得る工程
を含む、方法を提供する。
【0051】
スキーム1-方法A
【化4】
【0052】
方法A:一般条件:a)THF中、5℃、5分間;[11C]COの流速 5-6mL/分;次に25℃に加熱、2分間;DMF中2%TFA、25℃、1分間;b)2,6-ルチジン、HBTU、DMF、25℃、8分間
【0053】
1の実施態様は、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを製造する方法であって、[11C]COおよびヨウ化ビニルを、(R)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-4-(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-1H-インドール-7-カルボキシアミドの存在下にて臭化ビニルマグネシウムと反応させ、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを得る工程を含む、方法を提供する。
【0054】
スキーム2-方法B
【化5】
【0055】
方法B:一般条件:a)N XantPhos、ヨウ化ビニル、Pd(dba)、THF、ステンレススチールループ中25℃、5分間
【0056】
本発明は、その精神または本質的属性から逸脱することなく、他の具体的な形態で具現化されてもよい。本発明は、本明細書に記載の発明の態様および/または実施態様のあらゆる組み合わせを包含する。本発明のありとあらゆる実施態様は、任意の他の実施態様と組み合わさってさらなる実施態様を記載してもよいと理解される。また、実施態様の個々の各要素は、任意の実施態様からのありとあらゆる要素と組み合わさってさらなる実施態様を記載することを意味することも理解すべきである。
【0057】
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読むことで、当業者であればより容易に理解され得る。明瞭とする理由から、別個の実施態様の文脈で上記および下記される、本発明の特定の特徴は、単一の実施態様を形成するのに組み合わせることもできることを理解すべきである。反対に、簡潔とする理由から、単一の実施態様の文脈で記載される、本発明の様々な特徴も、そのサブコンビネーションを形成するように組み合わせることができる。本明細書にて例示としてまたは好ましいものと特定される実施態様は、例示を意図するものであり、限定を意図しない。
【0058】
特記されない限り、明細書および特許請求の範囲を含む、本願にて使用される以下の用語は、以下に示される定義を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲にて使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上にて、明らかにそうでないと指示されない限り、複数の対象も包含することに留意しなければならない。
【0059】
特記されない限り、質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技法および薬理学の従来の技法が利用される。さらには、「包含している」なる語、ならびに「包含する」および「包含した」などの他の形態の使用は限定的ではない。本明細書で使用されるセクションの見出しは組織化の目的のためだけであり、記載される内容を制限するものと解釈すべきではない。
【0060】
本明細書で使用される場合、製剤、組成物または成分に関して「許容される」なる語は、治療される対象の一般的な健康に対して持続的な有害作用を及ぼさないことを意味する。
本明細書で使用される場合、「調節する」なる語は、例示としてに過ぎないが、標的の活性を強化すること、標的の活性を阻害すること、標的の活性を制限すること、または標的の活性を拡大することを含む、標的の活性を改変するように直接的または間接的のいずれかで標的と相互作用することを意味する。
【0061】
特記されない限り、原子価の満足しない原子はいずれも、原子価を満足するのに十分な水素原子を有すると仮定する。
本明細書に示される定義は、出典明示により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および/または特許出願公開公報のいずれかにて示される定義に優先する。
【0062】
「医薬的に許容される」なる語は、本明細書にて、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題、あるいは合併症もなく、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスクの割合に見合った、それらの化合物、材料、組成物および/または剤形をいうのに利用される。
式(Ib)の化合物は非晶質の固体または結晶の固体として提供され得る。凍結乾燥を利用して式(Ib)の化合物を固体として提供することができる。
【0063】
式(Ib)の化合物の溶媒和物(例えば、水和物)も本発明の範囲内にあるとさらに理解されるべきである。「溶媒和物」なる語は、式(Ib)の化合物と、有機または無機のいずれかの1または複数の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合には水素結合が含まれる。ある場合には、溶媒和物は、例えば、1または複数の溶媒分子が結晶固体の結晶格子に組み込まれている場合に、単離能を有するであろう。「溶媒和物」は液相と単離可能な溶媒和物の両方を包含する。例示としての溶媒和物は、水和物、エタノール和物、メタノール和物、イソプロパノール和物、アセトニトリル溶媒和物、および酢酸エチル溶媒和物を包含する。溶媒和の方法は当該分野にて知られている。
【0064】
種々の形態のプロドラッグが当該分野にて周知であり、Rautio, J.ら、Nature Review Drug Discovery, 17, 559-587(2018)に記載されている。
【0065】
加えて、式(Ib)の化合物は、その製造した後に、単離され、精製され、99重量%以上の量の(実質的に純粋な)式(Ib)の化合物を含有する化合物を得ることができ、ついでそれを本明細書に記載されるように使用するか、または製剤化する。かかる式(Ib)の「実質的に純粋な」化合物も、本発明の一部として本明細書にて企図される。
【0066】
本明細書にて使用される場合の「治療する」、「治療している」および「治療」なる語は、疾患に付随する徴候、合併症、症状または生化学的指標を逆転させ、緩和し、改善し、阻害し、または減速させるか、あるいはその進行、発症、重症化または再発を防止する目的で対象に対して行われる任意の型の介入またはプロセスを、あるいは該対象に活性剤を投与することをいう。対照的に、「予防」または「防止」は、疾患の発症を防止するのに疾患に罹患していない対象に投与することをいう。「治療する」、「治療している」および「治療」は予防または防止を包含しない。
【0067】
「治療的に効果的な量」は、ヘリオス(Helios)タンパク質のレベルを減少させ、ヘリオスの活性レベルを減少させ、および/または細胞でのヘリオスの発現レベルを阻害するのに効果的であるか、またはウイルス感染およびがんなどの増殖性障害を治療または防止するのに効果的である、本発明の化合物の単独での量、または特許請求の範囲の化合物を組み合わせた量、本発明の化合物を他の活性な成分と組み合わせた量を包含するものとする。
【0068】
本明細書にて使用される場合、「細胞」なる語は、インビボ、エクスビボまたはインビトロにある細胞をいうものとする。いくつかの実施態様にて、エクスビボ細胞は哺乳動物などの生物から摘出された組織サンプルの一部とすることができる。いくつかの実施態様において、インビトロ細胞は細胞培養中の細胞とすることができる。いくつかの実施態様において、インビボ細胞は哺乳動物などの生物にて生存している細胞である。
【0069】
「患者」なる語は、治療的または予防的治療のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物の対象を包含する。
「対象」なる語は任意のヒトまたはヒト以外の動物を包含する。例えば、本明細書にて開示される方法および組成物を用いてがんの対象を治療することができる。ヒト以外の動物には、すべての脊椎動物、例えば、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等を含む哺乳動物および非哺乳動物が含まれる。1の実施態様にて、対象はヒト対象である。
【0070】
本明細書にて使用される場合の「医薬的に許容される担体」なる語は、身体の1の臓器または部分から、身体のもう一つ別の臓器または部分に、目的とする化合物を運搬または輸送するのに関与する、液状または固形状の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、マグネシウムタルク、ステアリン酸カルシウムまたは亜鉛、またはステアリン酸)または溶媒カプセル化材料などの医薬的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、投与様式および剤形の特性に応じて、希釈剤、保存剤、充填剤、流動調節剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、沈殿防止剤、甘未剤、香味剤、香料、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤および分散剤などの、すなわち、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを含め、製剤の他の成分と適合性があり、患者に対して有害でないという意味で「許容される」でなければならない。
【0071】
「医薬組成物」なる語は、本発明の化合物を、少なくとも一つの付加的な医薬的に許容される担体と組み合わせて含む組成物を意味する。
【0072】
有用性
式(I)の化合物は、クローン病、潰瘍性大腸炎、喘息、アトピー性皮膚炎、グレーブス病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、多発性硬化症、シェーグレン症候群、アルツハイマー病およびパーキンソン病の治療に有用である。
1の実施態様において、本発明は、ブルトン型チロシンキナーゼの活性に付随する複数の疾患または障害の治療および/または予防にて同時に、別個に、または逐次に使用するための式(I)の化合物および付加的な治療剤の組み合わせ製剤を提供する。組み合わせ製剤を用いてブルトン型チロシンキナーゼを阻害し得る。
【0073】
医薬組成物
本発明はまた、1または複数の医薬的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と一緒に処方され、所望により1または複数の上記される治療剤と一緒に処方されてもよい、治療的に効果的な量の式(Ib)の化合物を含む、医薬組成物を提供する。
【0074】
式(Ib)の化合物は、医薬的に許容され、かつ適切な任意の注射可能な形態を介して静脈内に、皮下に、および/または筋肉内に投与され得る。注射可能形態の例示として、限定されないが、例えば、水、リンガー液、および塩化ナトリウム等張溶液などの許容されるビヒクルおよび溶媒を含む、例えば、滅菌水溶液;滅菌水中油型マイクロエマルジョン;および水性または油性懸濁液が挙げられる。
【0075】
非経口投与用の製剤は、水性または非水性の等張滅菌注射液または懸濁液の形態であってもよい。これらの溶液または懸濁液は、経口投与用の製剤における使用に言及された1または複数の担体または希釈剤を用いて、あるいは他の適切な分散剤または湿潤剤および沈殿防止剤を用いることで製造されてもよい。化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、トラガカントガム、および/または種々の緩衝液に溶解し得る。他のアジュバントおよび投与様式は製薬分野にて十分かつ広く知られている。活性成分はまた、セイライン、デキストロースまたは水を含む適切な担体と、またはシクロデキストリン(すなわち、カプチソール)、共溶媒可溶化剤(すなわち、プロピレングリコール)またはミセル可溶化剤(すなわち、ツィーン80)との組成物として注射により投与されている。
【0076】
滅菌注射製剤はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中溶液のように、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であってもよい。利用され得る許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー液、および塩化ナトリウム等張液がある。加えて、滅菌固定油は、通常、溶媒または懸濁媒体として利用される。この目的のためには、合成モノまたはジグリセリドを含め、いずれのブランドの固定油を利用してもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の製造にて使用されるのがわかる。
【0077】
医薬的に許容される担体は当業者の十分な視野の範囲内にある多数の因子に従って処方される。これらには、限定されないが、処方される活性剤の型および特性;薬剤含有の組成物が投与されるはずの対象;組成物の意図する投与経路;および治療される治療適応症が含まれる。医薬的に許容される担体には、水性と非水性の両方の液体媒体、ならびに種々の固体および半固体剤形が含まれる。かかる担体には、活性剤に加えて多くの異なる成分および添加剤が含まれ、このような付加的な成分は、例えば、活性剤の安定化、結合剤等の当業者に周知の様々な理由で製剤中に配合され得る。適切な医薬的に許容される担体、およびその選択に関与する因子の記載は、例えば、Allen,L.V.Jr.ら、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (2巻), 第22版 (2012), Pharmaceutical Pressなどの種々の容易に入手可能な供給源にて見られる。
【0078】
本発明の医薬組成物は、式(Ib)の少なくとも1の化合物を含み、所望により任意の医薬的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルから選択される付加的な剤を含んでもよい。本発明の代替となる組成物は、本明細書にて記載される式(Ib)の化合物またはそのプロドラッグと、医薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルとを含む。
【0079】
選択される投与量レベルは、利用される式(Ib)の特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、利用される特定の化合物の排泄または代謝の速度、吸収の速度および程度、治療期間、他の薬物、利用される特定の化合物と組み合わせて使用される化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態および以前の病歴、ならびに医学の分野にて周知の同様の要因を含む、種々の要因に依存するであろう。
【0080】
上記の他の治療剤は、式(Ib)の化合物と組み合わせて利用される場合、例えば、the Physicians’ Desk Reference(PDR)にて示されるそれらの量で、さもなければ当業者によって決定される量で使用され得る。本発明の方法では、かかる他の治療剤は、本発明の化合物の投与の前に、と同時に、の後に投与されてもよい。
【0081】
略語の一覧
【表1】
【表2】
【0082】
実施例
HPLC条件:
方法A:GE FXCPro HPLCおよびGE FXCPro gamma ram radio-HPLC検出器で以下の方法を用いる:カラム:Luna C18(2)、9.6x250mm、5μm粒子;移動相:アイソクラティック:水性0.1%トリフルオロ酢酸中51%アセトニトリル;流速:4.2mL/分;検出:UV(240nm)
【0083】
方法B:アジレント(Agilent)1100シリーズ HPLCおよびLab logic gamma ram radio-HPLC検出器で以下の方法を用いる:カラム:Luna C18(2)、250x4.6mm、3μm粒子 分析用HPLCカラム;移動相A:0.1%水性TFA、移動相B:アセトニトリル中0.1%TFA、勾配方法:5%Bの溶液から出発し、15分間におよぶ線状勾配で85%Bまで上昇させることからなる;流速:1.00mL/分;検出:UV(254nm)
【0084】
方法C:アジレント1100シリーズ HPLCおよびLab logic gamma ram radio-HPLC検出器で以下の方法を用いる:カラム:Luna C18(2)、250x4.6mm、3μm粒子 分析用HPLCカラム;移動相アイソクラティック:水性0.1%トリフルオロ酢酸中51%アセトニトリル;流速:1.00mL/分;検出:UV(254nm)
【0085】
化合物(IB)の合成
(R)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-4-(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-1H-インドール-7-カルボキシアミドは、WO 2016/065226の中間体106について開示されたプロセスに従って製造され得る。
【0086】
実施例1
プロセスAによる[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの製造
11C]COは、高性能[11C]CO標的およびGE PETトレースサイクロトロンを用い、窒素(N60純度等級)および1%酸素の混合気体を使用して核反応14N(P,α)11Cで生成された。[11C]CO気体を定常流のヘリウムガスを用いて外界温度でモレキュラーシーブカラムに移した。標的とするデリバリーを終えると、カラムを350℃で加熱し、ヘリウムガスを7mL/分の速度で流すことによって、[11C]COガスをモレキュラーシーブカラムから放出した。[11C]COを、臭化ビニルマグネシウム(80μL、0.056ミリモル)およびテトラヒドロフラン(THF)(320μL)を含有するバイアル中にて5℃で捕獲した。[11C]COの移動を終えると、反応混合物を25℃への加温に供し、2分間にわたって攪拌した。ジメチルホルムアミド(DMF)(250μL)中2%トリフルオロ酢酸(TFA)を含有する中間バイアルに反応混合物を移した。この溶液を外界温度で1分間にわたって攪拌した。さらなる200μLのDMFおよび50mLの2,6-ルチジンをこのバイアルに移した。反応混合物を攪拌した。次に、この溶液の全容量を100μLの2,6-ルチジンを含有する新たな中間バイアルに移した。移動を終えた後、DMF(200μL)中の2-(1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルイソウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(V)(5mg、0.013ミリモル)(HBTU)を添加した。反応混合物を外界温度で1分間にわたって攪拌させた。次に、DMF(200μL)に溶かした(R)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-4-(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-1H-インドール-7-カルボキシアミド(4mg、0.012ミリモル)の溶液および2,6-ルチジン(50μL)を反応混合物に添加した。該反応混合物を外界温度でさらに9.5分間にわたって攪拌した。ついで、500μLのDMFを反応混合物に加え、8mLの脱イオン水サンプルを含有する新たな中間バイアルにすべてのサンプルを移した。このサンプルをC18(360mg)固相抽出(SPE)カートリッジにロードした。このカートリッジをアセトニトリル(5mL)で、つづいて注射用滅菌水(10mL)で合成の前に予め活性化させた。すべてのサンプルをロードした後、SPEをアセトニトリル(1.4mL)で溶出し、脱イオン水中0.1%TFA(0.6mL)含有のサンプルに入れた。ルナC18(2)、5ミクロン、9.6x250mmの高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムに反応混合物をロードし、HPLCの方法Aの精製方法を用いて精製した。[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドをクロマトグラムの9.5と10.5のマークの間で単離し、図1に示されるように、サンプルを2mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム水溶液(55mL)を含有する希釈フラスコにて集めた。溶液をHLBライト(30mg)SPEカートリッジに移した。カートリッジをエタノール(5mL)で、つづいて滅菌水(10mL)で合成の前に予め活性化させた。移した後、カートリッジをエタノール(0.7mL)で溶出して注射用滅菌セイライン(4mL)を含有する滅菌製品のバイアルに入れた。28mCi(1.04GBq)の[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを単離し、図2に示されるように、非放射性漂体と共注入した化学的同一性、放射化学的純度および化学的純度、モル活性について逆相HPLCを介して分析した。単離の生成物は非放射性の対照となる漂体と一緒に共溶出した。サンプルは放射化学的に純度が99.9%であり、化学的に純度が97%であり、モル活性が1mCi/ナノモル(38MBq/ナノモル)であった。分析用逆相HPLCを用い、構造的同一性、放射化学的純度および化学的純度をHPLCの方法Bを使用して測定した。この方法を用いて、[11C]-(R)-4-(2-(アクリロイル-1)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの保持時間は12.03分であった。モル活性を6点標準曲線(分析HPLCピーク面積(Y)vs.標準濃度(X:ナノモルの単位)を用いて測定した。逆相HPLCの方法Cを用いて適合した直線式を測定した。
【0087】
このプロセスの全体としての合成時間は40分間であり、生成物は3.7%の崩壊修正収率で単離された。
【0088】
実施例2
方法Bによる[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの製造
11C]COは、高性能[11C]CO標的およびGE PETトレースサイクロトロンを用い、窒素(N60純度等級)および1%酸素の混合気体を使用して核反応14N(P,α)11Cで生成された。[11C]CO気体を定常流のヘリウムガスを用いて外界温度でモレキュラーシーブカラムに移した。標的とするデリバリーを終えると、カラムを350℃で加熱し、ヘリウムガスを55mL/分の速度で流すことによって、[11C]COガスをモレキュラーシーブカラムから放出させ、モリブデンを含有する石英管にデリバリーされた。[11C]COをモリブデン粉末(粒径350ミクロン、純度99.9%)で捕獲した後、850℃の炉を用いて[11C]COに還元した。[11C]COは、液体窒素の温度(-160℃)で100mgのシリカゲル(230-400メッシュ、60Å)を含有するステンレス鋼トラップを通して55mL/分の流速で処理ユニットからデリバリーされた。[11C]COをシリカゲルのトラップ内に捕獲した後、2分間にわたって液体窒素のトラップを取り外すことでトラップをゆっくりと外界温度までの加温に供した。ヘリウムガスを5mL/分で用い、以下の溶液を含有する5mLのHPLCステンレス鋼ループに[11C]COを移した。第1に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(2.7mg、4.70マイクロモル)を200μLのTHFに溶かし、この溶液をn-キサントホス97%(2.7mg、4.90マイクロモル)のサンプルに加え、該サンプルを外界温度で1分間にわたってかき混ぜて固体を溶解させた。この溶液に、ヨウ化ビニル(95%、5g、3μL、0.041ミリモル)を添加し、得られた溶液をさらに1分間にわたってかき混ぜ、前駆体の材料が適切に確実に混合されるようにした。この溶液に、(R)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-4-(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-1H-インドール-7-カルボキシアミド(1.7mg、5.04マイクロモル)を加え、粗混合物を30秒間かき混ぜた。[11C]COがホットセルにデリバリーされる前に、この溶液をステンレス鋼HPLCループに加えた。ヘリウムガスを5mL/分で用いて[11C]COをシリカトラップから移し、その移動時間はおよそ20秒間であった。密封した2mLのステンレス鋼HPLCループ内にて外界温度で5分間にわたって反応が生じた。粗反応混合物をルナC18(2)、5ミクロン、9.6x250mmのセミ分取性HPLCカラムにロードし、以下のHPLC精製方法Aを用いて精製した。[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドをクロマトグラムの9.5と10.5のマークの間で単離し、図3に示されるように、このサンプルを2mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム水溶液(55mL)を含有する希釈フラスコにて集めた。この溶液をHLBライト(30mg)SPEカートリッジに移した。このカートリッジをエタノール(5mL)で、つづいて滅菌水(10mL)で合成の前に予め活性化させた。移した後、カートリッジをエタノール(0.7mL)で溶出して注射用滅菌セイライン(4mL)を含有する滅菌製品のバイアルに入れた。130mCi(1.04GBq)の[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを単離し、以下の方法:非放射性漂体と共注入した化学的同一性、放射化学的純度および化学的純度、モル活性を用いて逆相HPLCを介して分析した。単離の生成物は非放射性の対照となる漂体と一緒に共溶出した。サンプルは放射化学的に純度が99.9%であり、化学的に純度が97%であり、モル活性が13mCi/ナノモル(481MBq/ナノモル)であった。分析用逆相HPLCの方法Bを用い、構造的同一性、放射化学的純度および化学的純度を測定した。この方法を用いて、[11C]-(R)-4-(2-(アクリロイル-1)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの保持時間は12.03分であった。モル活性を6点標準曲線(分析HPLCピーク面積(Y)vs.標準濃度(X:ナノモルの単位)を用いて測定した。逆相HPLCの方法Cを用いて適合した直線式を測定した。
【0089】
合成および精製時間は、サイクロトロンの照射を終了してから、およそ33分間であり、生成物は42.3%の崩壊修正収率で単離された。
【0090】
11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドは、診断用画像化、基礎研究、および放射線療法の用途を含め、種々のインビトロおよび/またはインビボでの画像化の用途にて使用され得る。可能性のある診断用画像化および放射線療法の用途の具体的な例として、BTK陽性組織の位置、相対活性を測定すること、および/または定量化すること、BTK陽性組織のラジオイムノアッセイ、および哺乳動物またはその臓器または組織サンプル中のBTK陽性組織の分布を測定するためのオートラジオグラフィーが挙げられる。特に、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドは、ヒトまたは実験動物の脾臓、脳、心臓、腎臓、肝臓、および皮膚ならびに他の器官内にてBTK陽性組織を陽電子放出断層撮影(PET)の画像化に有用である。[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを用いるPET画像化を使用して以下の情報:医薬品中にてBTK阻害剤の候補による組織占有のレベルと、患者における臨床効果との間の関係;長期の臨床研究を開始する前のBTK阻害剤の治療医薬品の臨床研究での用量の選択;構造的に新規なBTK阻害剤の治療医薬品の比較した効力;BTK阻害剤の治療医薬品を用いて臨床的に標的を治療する間のインビボでのトランスポータ親和性および密度に対するBTK阻害剤の治療医薬品の影響の調査;効果的な治療および無効な治療を行う間のBTK陽性組織の密度および分布の変化を得ることができる。
【0091】
11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを試験してそのBTK PET放射性リガンドとしての特性を確認した。[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを、野生型マウス、およびPLP誘発の再発性/再燃性EAEマウスモデルのマウスの脳組織内でのその特異性およびBTKの標的化について試験した。EAE誘発の再発性/再燃性モデルは、プロテオリピドタンパク質(PLP)で免疫処理した、一連のスイス・ジム・ランバート(Swiss Jim Lambert)(SJL)を用いて誘導された。再発性/再燃性EAEマウスモデルを誘導するために、SJL/J雌マウス(ハーラン(Harlan)、9-11週齢/約20グラム)に、2mg/mLの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Ra(Difco, Detroit, MI)を含有する完全フロイントアジュバント(CFA)中の50μgのマウスPLP139-151を、背中の2部位(肩甲骨の間と、右腰の上)に注射した(0.1ml/部位)。2時間後、300ngの百日咳毒素を含有する100μLをマウスに腹腔内注射した。2日後、100μLの300ngの百日咳毒素の注射液を腹腔内に付加的に注射した。次にマウスをそのケージに戻し、実験期間中にわたって毎日モニター観察した。EAE誘発した後の40~45日目でPET画像を取得した。マウス(EAEまたはWT)をPET画像化システム(マイクロペット(MicroPET)(登録商標)、Siemens Preclinical Solutions、Knoxville、TN)のガントリー内の動物ホルダーに保持して固定した。スキャン領域は、マイクロペットシステムの軸方向の視野(FOV)7.6cmに収まるように、動物の鼻の後ろあたりから尾に向かってであった。放出PET画像の減衰補正を目的として57Co源を用いて10分間の透過スキャンを上記したFOVについて行い、つづいてPET研究で90分間の動的放出スキャンを行った。各動物で、尾静脈カテーテルを介して約232μCiの[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを注射した。ベースライン画像化実験のすぐ後に、EAEマウスに5mg/kgまたは0.5mg/kgのいずれかの経口用量を投与することでEAE動物における遮断実験を完了した。ベースライン実験の24時間後に、さらなる5mg/kgまたは0.5mg/kgの経口用量を同じEAEマウスに投与した。2回目の[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを投与した後に、同じ画像取得操作に従って、最初のスキャンから28時間後にオンドラッグPET画像を取得した。PET画像は、減衰補正および放射性同位体の崩壊補正を用いる最大事後確率(MAP)アルゴリズムで再構築された。各マウスの分析は、野生型およびEAEの両方のマウスの脳の各脳切片内で関心領域(ROI)を手で描いて行われた。WTマウスの脳内では1個のROIを描き、EAEマウスでは脳内に各々2個のROI(EAE病変と思しき領域と、バックグラウンド脳領域)を描いた。これらのROIに基づいて標準取り込み値を計算し、時間活性曲線(TAC)を作成して画像化時点の経過に伴うトレーサーの取り込みを測定した。この方法を用いて、試験/再試験のPET実験を、EAE誘発後の40~45日目にEAEマウスで行った。2匹のEAE動物が、ベースラインPET画像と、フォローアップベースライン画像化実験(PETリガンドの注射のみ)とを受けた。[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドについての取得データを表1にて要約する:
【0092】
表1:げっ歯動物における[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドのPET画像化についての取得データ
【表3】
【0093】
これらの実験の結果を図(4~6)に示す。図4に示されるように、これらの結果は、得られた両方のPET画像化スキャンにおいて、EAE病変領域内にて同様のPETリガンドの取り込みを示す。最初のベースラインスキャンでEAE病変内にて0.073SUVが測定され、その同じ病変領域がフォローアップベースラインスキャンで0.064SUVであると測定された。同様の結果が、もう一つ別のEAE動物にて見られ、ベースラインでEAE病変内にて0.126SUVが測定され、フォローアップベースラインスキャンで0.11SUVが測定された。これらの結果は、このPETリガンドのスキャンの間で13%のバラツキがあることを示し、それはPETリガンド画像化スキャンにて見られる典型的なバラツキの範囲内である。
【0094】
図4:リガンドが2匹のEAE誘発のマウスでのマウス脳のEAE病変の領域内に保持されることを示す、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドのPETシグナルの標準取り込み値(SUV)を示す。青色の棒グラフはリガンドを投与した50分後のマウス脳の病変領域内でのSUV値を示す。赤色の棒グラフは同じ動物でリガンドを投与した50分後のマウス脳の病変領域内でのフォローアップSUV値を示す。これらのフォローアップ画像はPETリガンドの2回目の投与の24時間後に取得された。棒グラフの各セットは個々のマウスからのデータを示す。
【0095】
図5はWTおよびEAEマウスでのPETリガンドの脳内蓄積の代表的なPET画像を示す。WTマウスでは、罹患していない状態でBTKの脳内発現は極めて低い。[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドのTACは、迅速に脳に浸透し、つづいて薬物がクリアーにされるにつれて迅速に洗い流されることを示す。図5はまた、このことと、放射性リガンドを投与した20~50分後の間で脳内にはバックグラウンドのレベルの[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドしか残っていないことも強調する。罹患していないマウスとは対照的に、EAEマウスのPET画像化実験は、薬物が脳から洗い流された後、炎症性病変が典型的にはこのEAE動物実験にて観察されるところの、延髄の側面に相当する領域にてリガンドが局所的に滞留することが明らかであることを示した。図5はまた、EAEマウスの脳内の病変領域内での[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの局所的滞留が、脳の外側の領域で0.03のSUVであるのと比べて、0.141のSUVを有することが測定され、その結果、コントラスト割合は4.7:1となった。この結果は、EAEマウスの脳内のこれらの病変領域がPET画像化を用いて可視化され得ることを示唆する。マウス脳のEAE病変におけるBTK阻害剤の薬物ターゲットエンゲージメント、およびBTK PETシグナルの用量依存的な置換を評価するために、EAE誘発の動物は[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドを用いてベースライン(PETリガンドのみ)スキャンを受けた。次に、第2の[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの投与、および逐次的PETスキャンを、BTK阻害剤の2つの用量(5mg/kgまたは0.5mg/kgのいずれか、各投与群につきn=3)を経口投与した後の同じ動物で得た。経口投与は28時間で行い、2回目のトレーサーを注射する4時間前に再度行った。図6はこれら2つの別個の用量パネルによるターゲットエンゲージメントの結果を示す。第1の用量パネルにおいて、動物をベースラインでスキャンし、これらのマウスの病変領域内で0.14の平均SUVが、そしてその領域外で0.039のSUVが示された。BTK阻害剤を5mg/kgで2回経口投与した後に、病変領域内での平均SUVが0.05にまで減少し、一方で疑わしい領域外の強度は大きく変化しないままであった。この用量パネルの平均置換%は疑わしい領域で89%であった。同様の実験を0.5mg/kgの用量パネルで行い、EAEマウスの病変領域内でSUVが0.09との結果を得た。0.5mg/kgの用量レベルで遮断した後、疑わしい領域での平均置換%は39%であった。これらの結果は、BTK阻害剤の用量依存的なターゲットエンゲージメントが、EAE誘発のマウスの脳領域内にて、この11C-標識のBTK PETリガンドを用いて測定され得ることを示唆する。
【0096】
図6:EAE誘発のマウスの脳におけるPET画像の定量化から由来の代表的な棒グラフを示す。この実験では、[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドの脳内蓄積(PETリガンドを投与した50分後のSUV)を示す、2つのROI、すなわち、病変領域および病変の外部領域を規定した。赤色の棒グラフは脳内の病変領域を示す。青色の棒グラフは投与パネル(5または0.5mg/kgのいずれかのBTK阻害剤)の病変領域を示す。緑色の棒グラフは、マウスの脳内で、ベースラインでの病変領域の外側の代表的なROIを示す。黄色の棒グラフは、マウスの脳内で、BTK阻害剤を投与している間の病変領域の外側の代表的なROIを示す。
【0097】
実施例5:BTK阻害剤の脳内浸透性を測定するための、アカゲザルを用いた[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドでのインビボでのPET画像化
【0098】
ヒト以外の霊長類をPET画像化システム(マイクロペット(登録商標)P4、Siemens Preclinical Solutions、Knoxville、TN)のガントリー内の拡張画像化ベッドに保持して固定した。スキャン領域は、7.6cmのマイクロペットシステムの軸方向のFOVに収まるように、頭蓋のほぼ上部から下部の頸部領域に広がるシングルベッドの位置であった。その後の放出画像の減衰補正を目的として57Co点源を用いて10分間の透過スキャンを取得した。約0.96mCiの[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドをIV注射し、60分間の動的PET画像を取得した。PET画像はフィルタードバックプロジェクション(FBP)または減衰補正を行うMAPアルゴリズムで再構築された。AMIDEソフトウェアパッケージを用いて、脳全体を包含するROIを手動でPET画像に描画した。体重(kg)および注入線量(mCi)で正規化された平均標準化取り込み値(SUV)を算定し、時間の関数としてプロットしてTACを得た。健康なアカゲザルにおけるこのベースライン画像化実験(PETリガンドのみ)は、ヒト以外の霊長類の脳内への脳内浸透性を確認した。図7に示されるように、このサルの脳全体を通して拡散性の取り込みが観察された。PETリガンドを注入した0~60分後の画像の要約(summed)がNHP内でこのことを証明している。健康なアカゲザルでは、WTマウスに示されるように、罹患していない状態ではBTKの脳内発現は非常に低い。[11C]-(R)-4-(2-アクリロイル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)-5-フルオロ-2,3-ジメチル-1H-インドール-7-カルボキシアミドのTACは迅速な脳内浸透を示し、つづいてリガンドがクリアーにされるにつれて洗い流されることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】