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特表2024-534192永久磁石ダイバータを有する高エネルギプラズマ発生器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】永久磁石ダイバータを有する高エネルギプラズマ発生器
(51)【国際特許分類】
   G21B 1/13 20060101AFI20240910BHJP
   H05H 1/10 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G21B1/13
H05H1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513425
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022039709
(87)【国際公開番号】W WO2023033993
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】17/461,366
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023641
【氏名又は名称】ウイスコンシン アラムナイ リサーチ ファウンデーシヨン
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】フォレスト,ケーリー,ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ピッゾ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ,オリバー
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA21
2G084FF27
2G084FF28
(57)【要約】
核融合用高エネルギプラズマをサポートするシステムのためのダイバータが、永久磁石をプラズマ封じ込めボリュームに近接させて設置することが可能なことにより、従来の極低温磁気システムで使用されてきた磁場強度よりはるかに弱い磁場強度を発生させる永久磁石を使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギプラズマを発生させる装置であって、
核融合エネルギを持つプラズマイオンを封じ込めボリューム内でサイクロン保持するための封じ込め磁束線を発生させる封じ込め磁場磁石構造と、
前記封じ込めボリュームの周辺部にあるプラズマイオンが前記封じ込めボリュームの外側の抽出ボリューム内へ逃げることを可能にする、ゼロ磁場のX点を発生させるための、前記封じ込めボリュームに近接する、永久磁石のダイバータ磁石構造と、
を含む装置。
【請求項2】
前記封じ込めボリュームを取り巻いて、中性子エネルギの一次吸収を行う中性子吸収構造を更に含み、前記永久磁石構造は、前記中性子吸収構造と前記封じ込めボリュームとの間にある、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記中性子吸収構造は、前記中性子吸収構造を通して高エネルギ中性子を受け取り、別の元素に元素変換するための元素を閉じ込める反応ボリュームと、前記反応ボリュームから中性子を受け取って電力を発生させる発電機の少なくとも一部分と、のうちの少なくとも一方を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記封じ込めボリュームを取り巻いて、循環冷却液を受ける冷却チャネルを備える熱吸収構造を更に含み、前記永久磁石構造は、前記熱吸収構造と前記封じ込めボリュームとの間にある、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
永久磁石と熱的連通している冷却液流導管と、冷却液流ポンプと、冷却液を再循環させて前記永久磁石構造から熱を抽出する冷却液冷却器と、を備える冷却液流システムを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ダイバータ磁石構造は、前記封じ込め磁束線と逆向きの磁束線を前記封じ込めボリューム内に発生させる、永久磁石材料の第1のフープを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ダイバータ磁石構造は、第2及び第3のフープを更に含むハルバッハ配列を備えており、前記第2及び第3のフープはともに、前記第1のフープの側面に位置して、互いに逆極性の磁気分極を有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
壁を更に含み、前記壁は、前記封じ込めボリュームを抽出ボリュームから隔てており、前記封じ込め磁束線と垂直に交差する平面に沿って、前記X点の周囲を中心とする開口を備えており、前記壁は、前記平面から遠ざかる方向に前記開口から延びている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記封じ込め磁場磁石構造は、イオン転回点を発生させる、前記封じ込めボリュームの対向する第1及び第2の端部で収束する、軸方向に延びる磁束線を発生させるミラー封じ込め磁場を発生させ、前記ダイバータ磁石構造は、前記第1及び第2の端部の間の中心位置に向けて設置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の端部の間の中心位置に関して対称に配置された複数のダイバータ磁石構造を更に含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記封じ込め磁場磁石構造は、イオン転回点を発生させる、前記封じ込めボリュームの対向する第1及び第2の端部で収束する、軸方向に延びる磁束線を発生させるミラー封じ込め磁場を発生させ、前記ダイバータ磁石構造は、核融合エネルギを持つプラズマイオンのために、前記転回点の外側の対応する第1及び第2の端部に設置された第1及び第2のダイバータ磁石構造を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記封じ込め磁場磁石構造は、トロイダル封じ込めボリュームを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
逃げるプラズマイオンを受けて、前記逃げるプラズマイオンを前記封じ込めボリュームの外側の、壁で囲まれたチャンバの中へ偏向させる面を引き起こすターゲットを前記抽出ボリューム内に更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記永久磁石と前記封じ込めボリュームとの間に配置された永久磁石遮蔽層を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
更に、前記永久磁石は、1Tを超える磁化を有するレアアース合金である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
更に、前記永久磁石は窒化鉄磁石である、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究又は開発に関する陳述
本発明は、米国エネルギ省によって授与されたDE-AR0001258の下に、政府支援を受けてなされたものである。米国政府は本発明における一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2021年8月30日に出願された米国特許非仮出願第17/461,366号の利益を主張するものである。
【0003】
本発明は、核融合を促進すること及び/又は中性子源を提供することが可能な高エネルギプラズマを発生させる装置に関し、特に、低エネルギイオンを除去するために磁気閉じ込めとリミッタ又はダイバータとを用いるシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
高温プラズマは、磁気閉じ込めシステムによって、物理的な容器から離して閉じ込めることが可能であり、それによって、容器へのダメージ及び起こりうるプラズマ消光を防ぐことが可能である。そのような閉じ込めシステムが多数存在し、それには磁気ミラーシステム及びトロイダルシステム(例えばトカマク型)が含まれる。磁気ミラーシステムでは、磁束線が収束する、チャンバの2つの端部の間をチャンバに沿って軸方向磁場が延びる。この軸方向磁場内を動くプラズマイオンは、局所的なサイクロトロン周波数で磁束線に沿ってらせん運動し、らせん運動しているイオンに作用している磁力の軸方向成分によってチャンバ端部で「反射」する。この反射させる磁力は、磁束線の収束と、これに伴って増大する磁気誘導された力とによって、その収束から離れる方向に引き起こされる。イオンが反射する点(転回点)は、一般に、イオンのエネルギが高いほど早くなる。
【0005】
核融合は、磁気閉じ込めシステムにおいて、十分に高いエネルギ及び密度でプラズマを発生させることによって促進可能である。(1000万度超の)高温の閉じ込められたプラズマと真空容器の材料壁との間の境界面が、容器の壁を保護しながらも高温プラズマが冷えないようにするために重要である。そのようなプラズマの中では、高速エネルギイオンは、磁場線の周囲の狭い軌道に閉じ込められているが、磁場の方向に動くのは自由である。プラズマ境界は、リミッタとして知られる場所で材料壁と交差する磁場線によって画定される。通常、このリミッタは、耐熱性の金属材料又はグラファイト材料で作られた、耐熱性能及び耐粒子束性能を有する面であり、それらの材料は、非常に高い融点と高い仕事関数とにより材料の腐食を抑制する。磁気ミラーシステムでは、リミッタ材料は、ミラーコイルの両端の近くに配置されて、真空容器及び磁石をプラズマボンバードから保護するように動作することが可能である。この種のリミッタは、プラズマに直接接触していて、衝突後のイオンの除去(ポンプアウト)を効果的に可能にすることができず、衝突率が高くなったときに高Zリミッタ材料がスパッタリングされてプラズマ封じ込めボリューム内に戻るリスクが生じかねない。そしてこのような過程がフィードバックされて、中央の高温プラズマが冷却され、核融合出力が減少する。
【0006】
これらの問題にある程度対処するためにダイバータを使用することも知られており、ダイバータは、プラズマ封じ込めボリュームの外側に、低エネルギイオンを捕捉して排出するための別ボリュームを提供する。ダイバータは、磁気コイルを使用して、封じ込めボリュームの磁場線を別のダイバータボリューム内にローカルに迂回させることにより、封じ込めボリュームの周辺部近くでらせん運動している低エネルギプラズマイオンのための出口チャネルを形成する。イオンは、出口チャネルを通り抜けた後、閉じ込めボリュームから区画された抽出ボリュームにおいてダイバータターゲットと衝突する。そこでイオンは中和されて、適切な真空ポンプによって排出されることが可能である。ダイバータは、低エネルギイオンの除去を管理することに加えて、プラズマの電磁流体力学的安定性を向上させることも可能であり、これは、場合によっては、拘束場を弱めて、電子の流れが沿いうる円形チャネルを生成して、アジマス電場勾配の不安定化を無くすことによって行われる。
【0007】
核融合に十分なエネルギを有するプラズマは高い拘束場強度を必要とするため、必要なバッキング磁場を発生させるために、ダイバータにおいて極低温超伝導電磁石が使用される。極低温電磁石の高磁場強度は又、磁石が、プラズマ封じ込めボリュームの高温から離れて、中性子を遮蔽又は吸収する構造の外側にあることを可能にする。そのような極低温電磁コイルは、それらの製造材料に関しても、関連して必要な極低温ハンドリング機械及び電気制御回路に関しても、本質的に高価である。実際には、超伝導電磁コイルは、プラズマ封じ込めボリュームにあらかじめ巻かれている必要があり、そのために組み立て及び交換が難しくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者等は、極低温電磁石の問題の多くを回避する永久磁石でダイバータを製造できることを明らかにした。永久磁石は、概して磁場強度が極低温コイルで得られる磁場強度より格段に低いものの、中性子吸収材料内で高温プラズマに近づけて設置できるため、磁場強度が低いことの不利点の幾らかが相殺され、更にはプラズマ封じ込めボリューム自体の真空中に設置することが可能である。そのような永久磁石構造の実効的な磁場強度は、磁気封じ込め磁場のバッキングにおいては、ハルバッハ配列設計によって磁束をフォーカスさせることにより増強可能である。結果として、構造のコストが下がり、構造の組み立て及び交換が格段に容易になる。
【0010】
一実施形態では、本発明は、核融合エネルギを持つプラズマイオンを封じ込めボリューム内でサイクロン保持するための封じ込め磁束線を発生させる封じ込め磁場磁石構造を有する、高エネルギプラズマを発生させる装置を提供する。封じ込めボリュームに近接する、永久磁石のダイバータ磁石構造が、封じ込めボリュームの周辺部にあるプラズマイオンが封じ込めボリュームの外側の抽出ボリューム内へ逃げることを可能にする、ゼロ磁場のX点を発生させる。
【0011】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴として、極低温電磁石コイルをダイバータで使用することの費用及び製造上の課題がなくなる。
【0012】
本装置は更に、封じ込めボリュームを取り巻いて、中性子エネルギの一次吸収を行う中性子吸収構造を含んでよく、永久磁石構造は、中性子吸収構造と封じ込めボリュームとの間に設置されてよい。代替又は追加として、永久磁石構造は、循環冷却液を受けて、中性子が誘発した熱を除去するための冷却チャネルを有する熱遮蔽物の中に設置されてよい。
【0013】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴として、永久磁石構造をプラズマのかなり近くまで動かし、適切な材料バッフル構造を取り付けて中性粒子ポンピングを可能にすることにより、永久磁石構造の磁場が弱いことが補償される。
【0014】
本出願は更に、永久磁石と熱的連通している冷却液流導管と、冷却液流ポンプと、冷却液を再循環させて永久磁石構造から熱を抽出する冷却液冷却器と、を備える冷却液流システムを含んでよい。
【0015】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴として、永久磁石構造が能動的に冷却されて、プラズマへの近接が可能になる。
【0016】
ダイバータ磁石構造は、封じ込め磁束線と逆向きの磁束線を封じ込めボリューム内に発生させる、永久磁石材料の第1のフープを備えてよい。
【0017】
従って、特徴として、その中を電流が流れる超伝導材料のフープによって得られる磁束線に匹敵する磁束線を発生させる永久磁石構造が作成される。
【0018】
ダイバータ磁石構造は更に、第2及び第3のフープを更に含むハルバッハ配列を備えており、第2及び第3のフープはともに、第1のフープの側面に位置して、互いに逆極性であって第1のフープに垂直な磁気分極を有する。
【0019】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴として、極低温電磁石に比べるとかなり弱い永久磁石の磁場強度を適応させるために、X点近くの永久磁石の磁場強度が大幅に増強される。
【0020】
本装置は更に壁を含んでよく、この壁は、封じ込めボリュームを抽出ボリュームから隔てており、封じ込め磁束線と垂直に交差する平面に沿って、X点の周囲を中心とする開口を備えており、この壁は、平面から遠ざかる方向に開口から延びている。
【0021】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴として、抽出ボリューム壁の幾何学的形状が散乱を妨げる傾向があることにより、抽出ボリューム内の抽出された低エネルギイオンから発生する中性粒子の捕捉が促進される。
【0022】
この点において、本装置は、逃げるプラズマイオンを受けて、逃げるプラズマイオンを封じ込めボリュームの外側の、壁で囲まれたチャンバの中へ偏向させる面を引き起こすターゲットを抽出ボリューム内に含んでよい。これはダイバータバッフル構造と呼ばれる。
【0023】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴として、ターゲット面の向き、及びバッフルによる適切な封鎖により、プラズマ封じ込めボリュームに入る後方散乱が低減される。
【0024】
本装置は更に、永久磁石と封じ込めボリュームとの間に配置された永久磁石遮蔽層を含んでよい。
【0025】
これらの特定の目的及び利点は、特許請求の範囲に収まる幾つかの実施形態にのみ当てはまりうるものである為、本発明の範囲を規定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】永久磁石ダイバータを有する磁気ミラー封じ込めシステムを実施している、本発明の一実施形態の分解斜視図である。
図2】組み立てられた図1の磁気ミラーシステムの立面断面図であり、磁場線の発生とダイバータ付近のX点とを示している図である。
図3】ダイバータの永久磁石構造の詳細な立面断面図であり、ミラーシステムによって与えられる封じ込め磁場を迂回する磁場の発生を示している図である。
図4図3と同様の図であり、封じ込め磁場とバッキング磁場とが組み合わさってX点が生成された結果としての磁場線と、逃げるプラズマイオンの軌道とを示している図である。
図5図2を簡略化した図であり、ダイバータの別の配置(中央マウント構成)を示す図である。
図6図5によく似た図であり、高エネルギイオンの転回点を過ぎたところでのダイバータの配置を示す図である。
図7】3つの部分からなるプラズマチャンバ設計において中性子発生チャンバの周囲に設置可能な中性子吸収構造を示す図である。
図8】本発明の、トロイダルプラズマ封じ込めシステムへの応用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで図1及び2を参照すると、本発明の一実施形態における高エネルギプラズマシステム10が、圧力容器12を有する磁気ミラー封じ込めシステムの形態であってよく、圧力容器12は、(例えば、ステンレス鋼等のシールされた円筒シェルの形態であり)軸14に沿って延びていて、重水素又は三重水素等の反応ガスを受ける。
【0028】
圧力容器12の両端部に第1及び第2のリング磁石16a及び16bが配置されており、これらは軸14に沿って離されて、その間に封じ込めボリューム18を画定している。磁石16は、ヘルムホルツペアとして動作して、(図示のように)軸14に沿って左から右に通過する封じ込め磁場線20を発生させて、それらの間に軸方向B磁場を確立する。軸方向B磁場は、核融合を促進するのに十分なエネルギを有するプラズマを封じ込めるのに十分になり、典型的には、磁石16a及び16bでは15T超であり、封じ込めボリューム18の中央付近では0.3Tまで低下する磁場を発生させる。例えば、磁石16aと磁石16bとの間の封じ込めボリューム18は、長さが2mであって、ミラー比が約20(典型的には3超)であってよい。
【0029】
一実施形態では、磁石16は、軸14と同軸であって、当該技術分野において知られているタイプの制御可能な外部DC電源19から電力を供給される極低温電磁コイルであってよいが、本発明は、この役割で永久磁石が使用されうることを想定している。
【0030】
当該技術分野において一般的に知られているように、高エネルギプラズマ22は、封じ込め磁場線20によって封じ込められて、圧力容器12の両端部の間で封じ込め磁場線20の周囲をらせん軌道を描いて回る。圧力容器12の両端部では、プラズマ22は、転回点24において、封じ込め磁場線20の収束に起因する力によって反射される。軸14に沿った転回点24の場所はプラズマエネルギに依存し、プラズマエネルギが低いほど、転回点24は圧力容器12の両端部に近くなる。本発明での使用に適する磁気ミラー封じ込めシステムの構造の詳細が、本出願の譲受人に譲渡されていて、参照によって本明細書に組み込まれている、2021年3月30日に出願された米国特許第10,966,310号に記載されている。
【0031】
一実施形態では、圧力容器12は、その両端部に、軸14の周囲に同軸配置された漏斗状リミッタ面25を提供する。これらのリミッタ面25は、磁場線に沿ってのプラズマ22の移動の限界を画定し、従って、封じ込められたプラズマ22の限界であるリミッタ磁束面27を確定する。リミッタ面25は、グラファイトやタングステン(W)等の低Z物質であってよい。
【0032】
高エネルギプラズマシステム10は永久磁石ダイバータ30を含み、これは、一実施形態では、圧力容器12の両端部の間の中程に、軸14と同軸で、圧力容器12の周辺部の内側に配置されたフープ状ダイバータ磁石構造32を有する。ダイバータ磁石構造32の外側表面と密に熱的連通する形で一連の冷却導管34が設置されており、冷却導管34は、例えば、ダイバータ磁石構造32の外側表面の周囲を円周方向に通るらせん状の配管の形態で、ダイバータ磁石構造32に取り付けられている。冷却導管34は、ポンプ35及び熱交換器37によって循環冷却液(例えば、水)を受けてよい。
【0033】
ダイバータ磁石構造32のフープ内にちょうど収まるのがダイバータターゲット36であり、ダイバータターゲット36は、例えば、三角形の断面を有しており、その頂点は、フープの二等分面39に沿って内側を向いており、その底辺は、ダイバータ磁石構造32のフープの内側表面と当接している。左右の抽出ボリューム壁40a及び40bが、ダイバータ磁石構造32を対称的に囲んで配置されており、半径方向の最も外側の部分が圧力容器12の内側表面に取り付けられており、内側に、互いに向かって延びることにより、それらの間に、二等分面39に沿って中央に位置するプラズマ出口開口42が画定されている。左右の抽出ボリューム壁40a及び40bは、一緒に、圧力容器12内の封じ込めボリューム18から分離された、部分的に囲まれた抽出ボリューム44を画定しており、(図4に示された)ポンプ56によって低エネルギプラズマイオンが抽出されて抽出ボリューム44に入ることが可能である。
【0034】
次に図3を参照すると、ダイバータ磁石構造32は、3つの構成要素フープ46a、46b、及び46cを組み合わせて作られており、各フープは直径及び壁断面がほぼ同じであり、フープ46a及び46cは、フープ46bの左側面及び右側面に取り付けられてそこに位置している。これらのフープのそれぞれは、レアアース永久磁石材料(例えば、ネオジウム(NdFeB)、サマリウムコバルト(SmCo)、又は窒化鉄(FeN))で作られてよく、磁化μM>1.0Tを与える。フープ46のそれぞれの分極は、結果として生じる磁場をフープの内側表面に向かう方向に集中させる傾向があるハルバッハ配列を形成するようになっている。この点において、例えば、最も左にあるフープ46aは、N極が半径方向外向きである(軸14に垂直な)半径方向分極を有してよく、中央にあるフープ46bは、(図示のように)N極が右向きである(軸14に平行な)軸方向分極を有してよく、最も右にあるフープ46cは、N極が半径方向内向きである半径方向分極を有してよい。結果としての相殺磁場線又はバッキング磁場線50は、封じ込めボリューム18内を右から左に、封じ込め磁場線20の反対方向に進む。
【0035】
次に図4も参照すると、バッキング磁場線50と封じ込め磁場線20とが組み合わさって、磁場ゼロのX点52が、ダイバータ磁石構造32の外壁より内側の、プラズマ出口開口42のほぼ中央の位置に発生する。このX点52(実際には軸14を取り巻くX点からなるリング)は、低エネルギプラズマ粒子54がボリューム44内へ逃げる経路を与える。大まかには、X点52を画定する同じ磁場相互作用によって、リミッタ磁束面27の内側にセパラトリックス磁束面60が画定される。これらの磁束面60と磁束面27との間の空間に「スクレイプオフ」領域が与えられ、スクレイプオフ領域内に軌道を有するプラズマ粒子54がボリューム44内に伝導される。通常、これらの粒子は、軸14を取り巻く軌道が大きいほどエネルギが低いため、ダイバータ30は低エネルギプラズマを選択的に除去する。上述のように、ダイバータ30は、プラズマ安定性を向上させることにも役立ちうる。
【0036】
当然のことながら、X点52はダイバータ磁石構造32に近接可能なので、ダイバータ磁石構造32の磁場強度が多少低くても適応可能である。このことは従来の極低温コイルと比較されたい。従来の極低温コイルは、封じ込めボリューム18(従って、X点52)から、より大きな間隔を置いて配置されなければならない。ダイバータ磁石構造32とX点52との接近は、ダイバータ磁石構造32が封じ込めボリューム18内に配置されてよいという事実によって可能になる。
【0037】
図3を再度参照すると、ダイバータ磁石構造32の高中性子曝露が非鉄中性子遮蔽62によって緩和可能であり、それによって、例えば、磁石構造32からの散乱が多くなる。
【0038】
次に図5を参照すると、当然のことながら、所与の圧力容器12に対して複数のダイバータ30が使用されてよい。一実施形態では、これらのダイバータは、封じ込め磁場線20の磁場強度が、軸14に沿って、圧力容器12の中央に向かって弱くなるという事実をうまく利用してよい。大まかには、このことによって、任意の数のダイバータ30が、圧力容器12及び磁石16の両端部の間で中心線70に関して対称に配置されることになる。
【0039】
次に図6を参照すると、永久ダイバータ磁石構造32の磁場強度が高いほど、ダイバータ30は、望ましい高エネルギプラズマの転回点24の外側で、圧力容器12の両端部に近づいて配置されてよく、それによって、半径方向分布及び軸方向分布の両方で選択された低エネルギプラズマが優先的に除去される。
【0040】
次に図7を参照すると、大まかには、圧力容器12は中性子吸収体72で囲まれてよく、中性子吸収体72は、周囲の設備及び人員を中性子から保護するか、又は実用的機能(例えば、エネルギ生成)を実施する。実用的機能の実施のためには、中性子吸収体72は、(例えば、タービンシステム76を駆動するために)導管74内の作動流体で受けられてよい。
【0041】
代替又は追加として、中性子は、材料の元素変換に使用されてよく、例えば、中性子吸収体72内の封じ込めボリューム80内でのそれに使用されてよい。例えば、封じ込めボリューム80は、高エネルギ中性子による元素変換のための水性物質で満たされてよく、そのような物質は、例えば、医療用アイソトープの前駆物質である99Mo(モリブデン99)、131I(ヨウ素131)、133Xe(キセノン133)、及び177Lu(ルテチウム177)であり、或いは、封じ込めボリューム80は、高エネルギ中性子による元素変換によって再活性化されている使用済み核燃料棒を保持するラックを支持してよい。代替として、核廃棄物は、中性子衝突によって長寿命アイソトープが短寿命フラグメントに物理的に分解されるように処理されてよく、これにより、廃棄物を商業的に保管又は廃棄することがより容易になる。
【0042】
図7を引き続き参照すると、幾つかの実施形態では、図2に示した高エネルギプラズマシステム10は、システムの一部として二重化されてよく、そこでは、2つの高エネルギプラズマシステム10a及び10bが、(上述のように)元素変換又は核融合パワー生成を目的として、より大規模の中性子発生ボリューム81において高エネルギプラズマイオンを捕捉する「プラグ」として働く。そのような設計は、例えば、タンデムミラー方式を利用してよく、これについては、例えば、参照によって本明細書に組み込まれている、G.ジモフ(G. Dimov)、V.ザカイダコフ(V. Zakaidakov)、及びM.キシネフスキ(M. Kishinevski)著、フィジカ プラズミ(Fiz. Plazmy)2、597(1976)、[ソヴィエト ジャーナル プラズマ(Sov. J. Plasma)]、フィジックス(Phys)2、326(1976)、並びにT.K.ファウラー(T.K. Fowler)及びB.G.ローガン(B.G. Logan)著、コメント オン プラズマ フィジックス アンド コントロールド フュージョン(Comments on Plasma Physics and Controlled Fusion)2、167(1977)に記載されている。
【0043】
より具体的には、そのようなタンデムミラー中性子発生器において、第1及び第2の高エネルギプラズマシステム10a及び10bが、軸14に沿って発生ボリューム81を挟んで対向配置されている。一般に、高エネルギプラズマシステム10は軸方向長さが2mのオーダーになるのに対し、発生ボリューム81は格段に大きく、例えば、50m以上のオーダーになる。
【0044】
高エネルギプラズマシステム10a及び10bの両方の磁石16は、軸方向に並べられて、共通軸14に沿って、磁場の同じ方向の分極を発生させる。従って、第1の高エネルギプラズマシステム10aの磁束線20は、ボリューム81を通り抜けて第2の高エネルギプラズマシステム10bに向かうことが可能である。ボリューム81内では、封じ込め磁場線20は、ボリューム81の周囲で軸14を円で囲んで軸方向に延びるソレノイドコイル83によってフォーカスされる。
【0045】
熱プラズマイオンのサブセットが、均一に分散したピッチ角度を有しており、プラズマイオンからの動的遷移によってより高いエネルギまでブーストされており、このサブセットが、高エネルギプラズマシステム10から、反応ガス(例えば、重水素又は三重水素)を封じ込めているボリューム81の中に逃げることによって、核融合と、ボリューム81からの中性子64の放射と、を促進することが可能である。高エネルギプラズマシステム10の高い圧力が、高エネルギプラズマイオンがボリューム81から逃げるのをブロックすることにより、有効な核融合のための高密度が維持される。
【0046】
次に図8を参照すると、当然のことながら、本発明は、上述のようなミラー封じ込め容器に限定されず、トロイダル圧力容器82にも使用されてよく、そこでは、封じ込め磁場線20がトロイド内をリング状に通り、その周囲をプラズマ22がらせん状に通る。この実施形態では、開口42及び抽出ボリューム壁40a及び40bが円形であってよく、例えば、トロイダル且つ管状の圧力容器82の下部壁に沿って円形であってよい。従って、ダイバータ磁石構造32は、円形開口42をなぞるリングとなり、それに対応するリング状のダイバータターゲット36がダイバータ磁石構造32の上面上にある。この場合、迂回する磁場線50と逆向きになるのは、封じ込め磁場線20ではなく、プラズマ22の循環電荷によって引き起こされる円周方向磁場線88である。バッキング磁場線50は、前と同様に、開口42上の中央に位置する、X点52からなる対応するリングを発生させる。
【0047】
そのようなトロイダル設計では、多くの場合、プラズマ発生前にダイバータを不活性化することが必要であり、これは電磁コイル90を活性化することによって達成可能であり、電磁コイル90は、瞬間的に、磁石構造32の比較的低い磁場を相殺することだけを行うように動作し、それによって、超伝導コイルが不要になる。
【0048】
本出願は、米国特許出願第2019/0326029号、件名「医療用アイソトープを発生させる装置及び方法(Apparatus and Method for Generating Medical Isotopes)」及び米国特許出願第2013/0142296号、件名「医療用アイソトープを発生させる装置及び方法(Apparatus and method for generating medical isotopes)」の開示内容を組み込んでおり、これらは、上述の中性ビームを発生させるための中性子増倍材発生器及び他の構造詳細並びに機構の使用を含む、アイソトープ元素変換を管理するための更なる技術について述べている。
【0049】
本明細書では、特定の術語を参考用としてのみ使用しており、それらは限定的であることを意図していない。例えば、「上部(upper)」、「下部(lower)」、「上方(above)」、及び「下方(below)」等の語句は、参照している図面における方向を意味する。「前面(front)」、「後面(back)」、「背面(rear)」、「底面(bottom)」、及び「側面(side)」等の語句は、一貫しているが任意である基準系の中での構成要素の各部分の方位を示し、これらは、論じている構成要素について記述している本文及び関連付けられた図面を参照することにより、明確になる。そのような術語は、具体的に上述された語、それらの派生語、及び同義語を含んでよい。同様に、構造を参照する語句「第1の(first)」、「第2の(second)」、及び他のそのような、数字を使った語句は、文脈によって明確に指示されない限り、特定の並び又は順序を意味するものではない。
【0050】
本開示及び例示的実施形態の要素又は特徴を紹介する場合、冠詞の「a」、「an」、「the」、及び「前記(said)」は、そのような要素又は特徴が1つ以上あることを意味するものとする。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という語句は包含的であるものとし、具体的に述べられた要素又は特徴以外の更なる要素又は特徴があってよいことを意味する。更に当然のこととして、本明細書に記載の方法ステップ、プロセス、及び操作は、実施順序として具体的に特定されない限り、説明又は図示された特定の順序でそれらを実施することが必須であると解釈されるべきではない。やはり当然のこととして、追加又は代替のステップが用いられてよい。
【0051】
特に意図していることとして、本発明は、本明細書に含まれる実施形態及び例示に限定されるものではなく、特許請求項は、実施形態の一部、及び別々の実施形態の要素の組み合わせを含む、それらの実施形態の修正形態を、後述の特許請求の範囲に含まれるものとして包含するものと理解されるべきである。特許及び非特許公表文献を含む、本明細書に記載の公表文献は全て、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】