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特表2024-534195基板上に炭素を堆積させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】基板上に炭素を堆積させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/22 20060101AFI20240910BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C23C14/22 B
C23C14/34 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024513440
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 FR2022051631
(87)【国際公開番号】W WO2023031551
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】2109116
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506126266
【氏名又は名称】イドロメカニーク・エ・フロットマン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリー-アリックス・ルロワ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・ウジエ
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029BA34
4K029CA05
4K029CA08
4K029CA13
4K029DC02
4K029DC34
4K029DC39
4K029DE02
4K029JA02
(57)【要約】
本発明は、イオンアシストカソードスパッタリングによって、ターゲットから金属基板上に炭素系材料を堆積させるための方法に関する。本発明によれば、基板に向けられたイオンの流れと基板に向けられた中性炭素原子の流れとの比は、1.7から3.5の間に調整され、-35Vから-100Vの間のバイアス電圧が基板に印加される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードスパッタリングによって、ターゲットから金属基板(S)上に炭素系材料(M)をイオンアシストで堆積するための方法であって、前記基板(S)に向けられたイオンの流れ(φi)と前記基板(S)に向けられた中性炭素原子の流れ(φn)との比が、1.7から3.5の間に調整され、-35Vから-100Vの間のバイアス電圧が前記基板(S)に印加されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
ガス状の前記イオンの流れ(φi)と前記中性炭素原子の流れ(φn)との比が、2から3.1の間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板(S)上に堆積される前記材料(M)が、20nm以上、好ましくは20nmから500nmの間、より好ましくは50nmから250nmの間、更により好ましくは80nmから150nmの間、及びより好ましくは80nmから120nmの間の厚さを有する、薄層と呼ばれる層を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板(S)が、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、又はニッケル系合金、クロム系合金、及び鉄系合金を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記イオンの流れが、マグネトロンカソードによって生成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記イオンの流れが、前記マグネトロンカソードに補完的なシステムによって、好ましくはマイクロ波プラズマによって、生成されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板(S)が、設備内でマグネトロンカソードスパッタリングステーションの前を、次いで、プラズマ(P)生成ステーションの前を、好ましくは環状でスクロールすることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板(S)が、10μmから1000μmの間の厚さのプレートであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板(S)上に、前記基板(S)と前記炭素系材料(M)との間に前記炭素系材料(M)と接触して配置されることが意図される炭素系副層(SC)を堆積させる前工程を含むこと、及び、前記基板(S)に向けられた前記イオンの流れ(φi)と前記基板に向けられた前記中性炭素原子の流れ(φn)との比が、1未満、好ましくは0.5未満の値に調整され、前記イオンの流れはゼロではないことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記炭素系副層(SC)の厚さが、2から40nmの間、好ましくは10nmから30nmの間であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板(S)上、前記基板(S)と前記炭素系材料(M)との間に前記基板(S)と接触して配置されることが意図される金属副層(SC)を堆積させる前工程であって、前記金属副層(SC)の材料が、以下の材料:クロム、チタン、ジルコニウム、タンタル、又はそれらの合金、並びにそれらの窒化物及び炭化物のうちの1又は複数の中から選ばれる、前工程を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属副層(SC)の厚さが、5から100nmの間、好ましくは20nmから40nmの間であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バイアス電圧が、-50Vから-75Vの間であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
炭素系材料(M)を含む層で覆われた金属基板(S)を含むモノポーラプレート又はバイポーラプレートを製造するための方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の堆積方法の実施によって、マグネトロンカソードスパッタリングによって、ターゲットから前記金属基板(S)上に前記炭素系材料(M)を堆積させる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の、イオンアシストカソードスパッタリングによってターゲットから金属基板(S)上に炭素系材料(M)を堆積させるための方法によって得ることができ、炭素系材料(M)層で被覆された前記金属基板(S)を含む外表面を有する部品であって、前記炭素系材料(M)層が、前記炭素系材料(M)層内の炭素原子の数に対する酸素原子の数として算出される1%at未満の酸素を含む、部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空表面処理の、特に、気相において基板上に炭素を物理的に堆積させる技術的分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、燃料電池及び蓄電池等の電気化学システム、特に、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)に関する。
【0003】
これらの電気化学システムの動作は、酸性又は塩基性の環境、カソードへの酸化、温度が60から160℃までであることが可能であること、及びハロゲン化物の任意選択の存在を包含する。この環境は、電極とも呼ばれるインターコネクトプレート、インターコネクタ、又はバイポーラプレート若しくはモノポーラプレート等の、前記システムの素子の腐食を助長する。
【0004】
特に、バイポーラプレートは、これらのシステムの耐久性に関して極めて重要なコンポーネントであり、厚さが約100μmの金属シートから構成されている。それらは、表面での良好な電気伝導を保持するために、及び電池の攻撃的な媒質における金属シートの腐食を回避するために、被覆によって保護されていなければならない。
【0005】
腐食性媒質中を含む、金属材料製のバイポーラプレートの表面伝導は一般に、基板の最表面上に炭素系又は金系の機能性層を堆積させることによって得られる。基板上に副層を先に堆積させることにより、機能性層の付着を向上させ、スタックの良好な機械的耐性を確実にすることができる。
【0006】
一般に、層と基板との付着、及び、亀裂による又は層間剥離による損傷の不在によって表される機能性層の機械的強度は、重要なパラメーターである。
【0007】
特に、この層のバリア機能は劣化してはならず、基板から来る金属カチオンの電池の媒質中での放出を、低量であっても阻止するために、機能性層は、電気化学システムの動作継続時間にわたって媒質(例えば、O、H、ハロゲン化物)中に存在する反応性種に対して密封性を保って酸化から金属基板を保護しなければならない。
【0008】
電気自動車の電源を使用する場合、電池は、許容される性能を保持しながら、約10000時間の著しい実用寿命を有しなければならない。そのような継続時間が長い使用の間、試薬の枯渇、又は電池の局所的な乾燥若しくはフラッディング等の偶発現象が起こりうる。これらの偶発現象は、温度の、電位の、又は電流密度の局所的及び過渡的な増大にいたりうる。加えて、偶発現象から独立して、電気化学システムを起動する及び停止する、主に過渡的システムの状態は、電極での過電位にいたりうる。
【0009】
これらの局所的及び一般に一時的な電気機械的システムの状態の変動は、内部で、欠落、亀裂、穴、列間の空間等の欠陥が、特に機能性層とのガルバニックカップリングによって、基板の急速な劣化を引き起こしうる機能性層をいっそう促す。
【0010】
更に、電池の膜がフルオロポリマー製である場合、それは、ステンレス鋼基板の点食によって、一緒に腐食を促進するFイオンを解放しうる。次いで、これは、電池全体の急速且つ壊滅的な不具合にいたりうる。
【0011】
上述の機械的強度及び電気伝導の目標を満たすことによって、そのような不具合から電池を保護するために、堆積中に追加のエネルギーの入力を続けることによって、特に炭素系の機能性層を堆積させることが先行技術から公知である。
【0012】
文献国際公開第2020/019693号は、堆積中、特に、堆積された層を高密度にするために、基板が高温、即ち、400から500℃の間に順に加熱される、炭素系機能性層の堆積を説明している。これらの高温は、処理後のスタック中に著しい残留応力を引き起こしうる。これは、被覆の付着に、及び特に、堆積後にプレートの形成が行われる場合その耐変形性に、損傷を与えうる。
【0013】
他の堆積方法があるが、以下の不利な点を有する。
- アーク蒸着技術は、層中にドロップレットの形態で成長欠陥を引き起こし、これは、著しい動作継続時間にわたる堆積の耐性に損傷を与え、これは、層が厚い(即ち約100nm以上)となおさらである。
- フィルタードアーク堆積又は高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HIPIMS)技術は、遅い堆積速度を包含する。
- アンバランス構成マグネトロンスパッタリング堆積技術、任意選択で閉磁界は、多数の部品の工業的規模での効率的な生産のために使用することが困難でありうる。
- イオンビームボンバードメント強化堆積は、イオンビームが部品の表面積全体を走査しなければならないため、部品の広い表面に効果的にボンバード処理することを可能にしない。したがって、流密度は不十分であり、工業的操業生産性に必要な著しい堆積速度と適合しない。
【0014】
先行技術において説明される方法は、非常に具体的には電気自動車に関して、収率と関連付けられる性能が、そのようなシステムの長い実用寿命にわたって十分に高いままである、電気化学システムを得ることを可能にしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2020/019693号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、上述の先行技術の不利点を克服することである。
【0017】
本発明は、特に、良好な電気伝導を有しながら、基板の良好なカバレッジを確実にし、欠陥をほとんど有しない、したがって、機械的脆弱性をほとんど有しない炭素材料層を形成することを可能にする、基板上に炭素を含む材料を堆積させるための方法を提供することを目的とする。
【0018】
本発明はまた、方法が得ることを目的とする、説明される堆積された層の向上した特性を考慮して、実施するのに効率的且つ安価である方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的のために、カソードスパッタリングによって、ターゲットから金属基板上に炭素系材料をイオンアシストで堆積する方法が開発されてきた。
【0020】
本発明によれば、基板に向けられたイオンの流れと基板に向けられた中性炭素原子の流れとの比は、1.7から3.5の間に調整され、-35Vから-100Vの間のバイアス電圧が基板に印加される。
【0021】
一方で、1.7から3.5の間の、イオンの流れと中性炭素原子の流れとの比の調整、及び他方で、-35ボルトから-100ボルトの間の基板のバイアス電圧の調整は、イオンアシストのイオンのエネルギーを35eVから100eV(エレクトロンボルト)の間に調整することになり、基板の良好なカバレッジを確実にする良好な付着を有しながら、公知の方法による堆積された層についての欠陥をほとんど有しない炭素系層を得ることを可能にする。この、特に亀裂又は層間剥離した部位の、層内での欠陥の低減は、高密度層を得ることによって表され、高密度層は、下にある基板を最適に保護し、したがって、電気化学的媒質の汚染のリスクを回避し、電気化学システムの実用寿命を向上させる。
【0022】
イオンの流れと中性炭素原子の流れとの比及び基板のバイアス電圧の特定の値のこの組合せは、良好な電気伝導及び固有の耐腐食性を更に有する炭素系層をもたらす。
【0023】
これらの最適化された特性は、非常に具体的には、特に電池内の、金属基板を含むモノポーラプレート又はバイポーラプレートを製造する範囲において(これも本発明の目的である)不可欠である。
【0024】
上述の特性に対して、及び結果として後者に対して更に、本発明の方法によって得られ、炭素系材料の層で被覆された金属基板を含む外表面を有する部品は、炭素系材料層が、1%at未満の酸素を含むことを主に特徴とする。この酸素割合は、炭素系材料の層内の酸素原子の数の、炭素原子の数に対する比である。上述の物等の本発明の方法によって得ることができるそのような部品は、本発明の別の目的を構成する。
【0025】
1%at未満の酸素であるこの酸素比は、酸素による炭素系層の汚染が少ないことを表す。この比は、本発明の特徴を示している。実際、本発明の正しい実施は、この比を得ることを可能にし、それによって、酸素が残留真空から、又は常に多孔質である炭素ターゲット(多孔率はターゲットの体積の10%に達しうる)から来ることができるため、これまでの炭素系堆積における酸素の処理という再発する困難を回避することを可能にする。
【0026】
炭素系材料層は好ましくは、パルスに対して、連続マグネトロンスパッタリングによって堆積されることが明記される。
【0027】
イオンアシストは、成長材料層に向けられたイオンの分量によって、及びこれらのイオンのエネルギーによって、特徴付けられることが想起される。イオンの流れは、基板に向けられ、後者のバイアスは、イオンの流れを加速する。イオンと基板とのこれらの相互作用は、基板の近傍において生じる。
【0028】
成長層に衝突するイオンは、マグネトロンカソードから(例えば、アンバランスマグネトロンカソードスパッタリングの場合)、補完的なプラズマ源が存在する場合、マグネトロンカソード及び前記補完的なプラズマ源から、来る。
【0029】
したがって、イオンの流れは、例えば、アルゴンイオン、及び任意選択でターゲットから来るイオン等の、プラズマが生成されているガス状混合物からのイオンを含む。イオンの性質のいかんを問わず、それらは成長層に衝突し、これは、それを高密度にすることを可能にする。
【0030】
イオンアシストは、カソードスパッタリングと必ずしも同時ではない。それらは、
- スパッタリングによって、基板が、炭素系材料の第1の分量を受け取る、
- 次いで、イオンアシストが実施されて堆積される材料を高密度にする
ように、交互に動作することができる。
【0031】
したがって、基板は、炭素源の前、次いでイオン源の前を繰り返し通過する。
【0032】
この交互は、カソードスパッタリング法に従って、及び堆積方法を実施する設備の設計に従って、選ばれる。実践では、スパッタリング及びイオンアシストシステムは、連続的に動作することができ、一方で被覆されることになる部品は、前記システムの前を次々にスクロールする。明らかに、イオンアシストが実施される場合、関連付けられるイオンの流れは常にゼロより大きい、即ち、イオンの流れはゼロではなく、そうでない場合、イオンアシストはその役割を果たすことができないと考えられる。
【0033】
中性炭素原子の流れは、ターゲットから基板に方向付けられる。それは、堆積されることになる材料層を構成し、ターゲットから来る炭素原子を主に含む。
【0034】
イオンの流れ及び中性炭素原子の流れの値は、測定から算出される時空間平均である。実際、実践では、覆われることになる基板は設備中で移動可能であり、一方でマグネトロンカソード及びプラズマ源は固定されていることが理解される。基板は、所定の時点での位置付けに従って、同じ分量のイオン及び炭素原子を受け取らない。
【0035】
基板のバイアス電圧、又はより簡潔に基板のバイアスは、基板と方法を実施する装置の土台との間に印加される電位差であると定義される。このバイアスは、連続的又はパルスとすることができる。後者の場合、バイアス電圧は、基板に印加される電圧の平均値である。バイアス電流は、バイアスをかけられた基板上で測定された(平均)強さである。
【0036】
イオンの(運動)エネルギーは、基板の周りの電界における加速によってそれらに与えられる。それは、バイアス電圧に関係付けられ、基板とプラズマとの間の電位差の絶対値に、粒子の又は考察される種の電荷を乗ずることによって算出される。一般に、土台に対するプラズマの電位は、土台と部品との間の電位差の前では重要でないと考えられる。これは、eVで単電荷イオンのエネルギーは、ボルトでのバイアス生成器によって送達される電圧に対応すると考えることになる。
【0037】
方法の実施を、特に、大きさを測定すること又は評価することにおいて簡潔にするために、以下の特長が個別に又はそれらの技術的に可能な組合せに従って採用されうる。
- イオンの流れは、基板のバイアス電流から決定され、中性炭素原子の流れは、金属基板上の材料の堆積速度から決定される、
- (単電荷の)イオンの流れは、平均バイアス電流密度を得るためにバイアス電流をプラズマに曝露される基板の表面で割ることによって、次いで、前記バイアス電流密度を素電荷で割ることによって決定することができる、
- 中性炭素原子の流れは、金属基板上の材料の堆積速度に材料の密度を乗ずることによって、次いで、材料のモル質量で割ることによって、次いで、得られた結果にアボガドロ定数を乗ずることによって決定される。
【0038】
堆積される炭素系層の特性を、特に機械的強度、電気伝導、及び耐腐食性に関して、更に向上するために、ガス状のイオンの流れと中性炭素原子の流れとの比は好ましくは、2から3.1の間である。
【0039】
これらの場合において、好ましくは、及び方法を最適化する目的で、バイアス電圧は-50Vから-75Vの間から選ばれる。
【0040】
尚もこの場合、又好ましくは、方法を最適化する理由で、制御された雰囲気下、チャンバー中での堆積も行うことができ、その作動圧力は、1×10-6バールから4×10-6バールの間、好ましくは2.0×10-6バールから2.6×10-6バールの間である。
【0041】
動作事象又は動作パラメーターの局所的変異の場合に基板の保護が十分となるために、特に、電気化学システムを動作させるための過渡的又は偶発的なシステムに過電位が関係付けられる場合に、基板上に堆積される材料は、20nm以上、好ましくは20nmから500nmの間、より好ましくは50nmから250nmの間、更により好ましくは80nmから150nmの間、より好ましくは80nmから120nmの間の厚さを有する、薄層と呼ばれる層を形成する。
【0042】
燃料電池の分野に適合される特定の実施形態において、基板は、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、又はニッケル系合金、クロム系合金、及び鉄系合金を含み、好ましくはインコネル(登録商標)である。
【0043】
好ましくは、基板は、10μmから1000μmの間の厚さのプレートである。
【0044】
第1の実施形態において、イオンの流れ(イオンアシストの)は、例えば、方法がアンバランスマグネトロンカソードスパッタリングからなる場合、マグネトロンカソードによって生成される。
【0045】
第2の実施形態において、イオンの流れは、マグネトロンカソードに補完的なシステムによって、好ましくはマイクロ波プラズマによって、生成される。
【0046】
装置の生産性及び合理化を目的として、又、任意選択で、基板は、設備内でマグネトロンカソードスパッタリングステーションの前を、次いで、プラズマ生成ステーションの前を、好ましくは環状でスクロールする。
【0047】
基板上に堆積される炭素系材料の付着を向上するために、及び起こりうる酸化から基板を保護するために、方法は、基板上に、基板と炭素系材料との間に前記基板と接触して配置されることが意図される金属副層を堆積させる前工程であって、金属副層の材料が、以下の材料:クロム、チタン、ジルコニウム、タンタル、又はそれらの合金、並びにそれらの窒化物及び炭化物、好ましくは、チタン又はタンタル又はそれらの合金(チタン及び/又はタンタルを含む合金)、並びにそれらの窒化物及び炭化物のうちの1又は複数の中から選ばれる、前工程を含むことができる。
【0048】
金属副層を堆積させる工程の継続時間と、それが与える付着の向上との好都合な妥協を有するために、その厚さは5nmから100nmの間、好ましくは20nmから40nmの間である。
【0049】
基板上に堆積される炭素系材料の付着を向上するために、及び耐腐食性を向上するために、方法は、基板上に、上述の基板と炭素系材料との間に配置されることが意図される炭素系副層を堆積させる前工程であって、前記副層が前記炭素系材料と接触している、前工程を含むことができる。
【0050】
炭素系副層は好ましくは、上を覆う炭素系材料の層と同じ材料から構成される。副層の材料として炭素を選ぶことは、マグネトロン内でただ1つのスパッタリングターゲットのみを使用することを可能にし、したがって、これは方法の実施を簡潔にすることを可能にする。
【0051】
炭素系副層の堆積を行うために、基板に向けられたイオンの流れと基板に向けられた中性炭素原子の流れとの比は、1未満、好ましくは0.5未満の値に調整され、イオンの流れはゼロではない。基板に印加されるバイアス電圧は、-35Vから-100V、好ましくは-50Vから-75Vの間である。
【0052】
炭素系副層を堆積させる工程の継続時間と、それが与える付着の向上との好都合な妥協を有するために、その厚さは2nmから40nmの間、好ましくは10nmから30nmの間である。
【0053】
上述の特長に従う、マグネトロンカソードスパッタリングによるターゲットから金属基板上への炭素系材料の工程を含む方法の実施は、したがって、例えば、高い表面電気伝導レベルを経時的に維持しながら、バイポーラプレートの腐食に対して耐久性のある保護を確実にすることによって、前記炭素系材料を含む層によって覆われた前記金属基板を含むモノポーラプレート又はバイポーラプレートの機能化を可能にする。
【0054】
したがって、本発明はまた、炭素系材料を含む層によって覆われた金属基板を含むモノポーラプレート又はバイポーラプレートを製造するための方法に関する。この方法は、上述の堆積方法に従って、マグネトロンカソードスパッタリングによって、ターゲットから前記金属基板上に前記炭素系材料を堆積させる工程を含む。
【0055】
本発明は、上述のもの等の、イオンアシストカソードスパッタリングによって、ターゲットから金属基板上に炭素系材料を堆積させるための方法によって得ることができる部品に更に関する。前記部品は、炭素系材料の層で被覆された前記金属基板を含む外表面を有する。炭素系材料層は、炭素系材料層内の炭素原子の数に対する酸素原子の数として算出される1%at未満の酸素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明による方法の実施のための設備の上面図としての概略図である。
図2】本発明による方法の実施のための別の設備の上面図としての概略図である。
図3】数連の試験中に得られた、基板上に堆積された炭素系材料層の腐食電流密度を、それらの堆積中のイオンの流れと中性炭素原子の流れとの比に従って例示するグラフである。
図4】本発明によらない堆積で被覆された基板の腐食試験後の剥離を例示する顕微鏡写真である。
図5】数連の試験中に得られた、イオンの流れと中性炭素原子の流れとの比に従って、ステンレス鋼基板上に堆積される炭素系材料層に関して行われた、塩素化環境におけるサイクリックボルタンメトリーのグラフである。
図6図5のグラフの詳細な図である。
図7】数連の試験中に得られた、イオンの流れと中性炭素原子の流れとの比、及び腐食の電流密度に従って、基板上に堆積される100nm炭素系材料層の界面接触抵抗を例示するグラフである。
図8】本発明の方法に従って処理された基板を電子走査することによる電子顕微鏡法において作製された切片の観察記録である。
図9】数連の試験中に得られた、経時的に、基板上に堆積される炭素系材料層の腐食電流密度の進展を例示するグラフである。
図10】イオンの流れと中性炭素原子の流れとの比に従って基板上に堆積された、いくつかの試験中に得られた炭素系材料層の酸素含有量(核反応分析「NRA」によって測定される)を例示するグラフである。
図11】モノポーラプレートの写真である。
図12】そのようなプレートの切片の部分的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
表面処理の分野において、いくつかの種類の技術があり、それぞれが、その利点及びその不利点を有する。部品を処理する範囲において、特に、燃料電池のためのモノポーラプレート又はバイポーラプレートにおいて、出願人は、公知の堆積方法を最適化することを追求してきた。
【0058】
イオンアシストマグネトロンカソードスパッタリング堆積の公知で工業化可能な技術に基づいて、出願人は、基板(S)上に層を形成し、及び特に、機械的強度、耐腐食性、付着、及び電気伝導の良好な特性を有する炭素系材料(M)の堆積を得ることを目的とする、種々の一連の試験及び解釈を行った。
【0059】
図1及び図2を参照すると、方法の好ましい実施形態を実施するために使用される設備(1)は、ポンプシステム(20)、従来の(バランス又はアンバランス)マグネトロンスパッタリング源(30)、ガス状のイオンプラズマ(P)を生成する補完的なプラズマ源(40)、及び処理されることになる基板(S)が取り付けられる基板担体(50)を備える二次真空チャンバー(10)を含む。
【0060】
ポンプシステム(20)は、チャンバー(10)中に二次真空、即ち、10-8mbarから10-3mbarの間の桁の圧力を得ることを可能にする。ポンプシステム(20)又は別の独立したシステムは、真空チャンバー(10)にガス(希ガス)を導入することが可能である。ガスはイオン化されることが意図され、これは好ましくはアルゴンである。
【0061】
マグネトロンスパッタリング源(30)は、連続的に供給される従来のマグネトロン(30)である。この実施形態において、流れのイオン(φi)は、マグネトロンカソード(30)に補完的なプラズマ源(40)によって生成される。プラズマ源(40)は、任意の好適な種類のものであるが、プラズマ(P)は好ましくは、マイクロ波によって生成される。
【0062】
他の実施形態において、特にマグネトロンがアンバランスである場合、流れのイオン(φi)は、マグネトロンカソード(30)によって生成される。アンバランスマグネトロンは、アンバランス磁気構造を有し、これは、カソードのプラズマによって生成されるイオンの一部を部品に送ることを可能にする。
【0063】
したがって、プラズマ源(40)は、任意選択であり、その存在は、実施されるマグネトロンスパッタリングの種類に、及び十分なイオンの流れ(φi)を生成するのに利用可能なイオンの分量に、依存する。
【0064】
いずれの場合でも、いくつかのマグネトロンカソード(30)を加えて、基板(S)上に材料(M)をより迅速に堆積させることが可能であり、その場合、各カソードは、それ自体の生成器によって供給される。
【0065】
プラズマのガス状のイオンを加速し、このようにして基板担体(50)の方向にイオンの流れ(φi)を作り出すために、基板担体(50)はバイアスされる、即ち、負電圧又は電位差がその端子において印加される。部品をバイアスすることから生じる電界が、約1mm~3mmの短距離にわたって延在するため、ガス状のイオンのこの加速は、基板(S)の付近において生じる。
【0066】
考察されるスパッタリングモードのいかんを問わず、マグネトロンの材料(M)ターゲットをスパッタリングし、基板(S)上に堆積を形成する原子を放出するために、イオンは、マグネトロンの材料(M)ターゲットへと引き付けられる。これらのイオンは、本発明において出願人が関心を持っているものではない。実際、これらは、イオンアシストを定義し、堆積された層の品質のために重要である、材料(M)堆積が成長する基板(S)へと引き付けられるイオンである。本願の範囲において、イオンは、ガス状種、好ましくはアルゴン等から構成される。
【0067】
これらのイオンの役割は、基板上の成長による材料(M)堆積物に衝突して、それを圧縮し、材料の原子と十分に安定な結合を形成しない種を除去することである。これは、成長材料(M)層の密度を増大し、前記成長材料(M)層中の酸素を除去することを可能にする。しかしながら、堆積を減速しない又は目下の堆積の品質を劣化させないために、基板(S)上に既に載置されている材料(M)をはじき出さないように、注意が必要である。
【0068】
一般に、マグネトロンカソード又はマイクロ波プラズマ型の補助プラズマ源から来るプラズマのイオンは、「遅い」。したがって、それらは、成長材料(M)層を圧縮する又はこの層から酸素を除去するための力を有しない。したがって、また上述に示されるように、被覆されることになる基板(S)に負電圧が印加され、これは、前記基板(S)に陽イオンを引き付け、加速する。バイアス電圧は、-35Vから-100Vの間、好ましくは-50Vから-75Vの間である。
【0069】
プラズマ(P)中で基板(S)をバイアスする場合、バイアス電圧は、基板(S)と設備(1)の土台との間に印加される。電位差は、基板(S)とプラズマ(P)との間で確立される。イオンが加速されるのは、基板(S)の表面の約1~3mmにわたるこの電位降下域においてである。
【0070】
イオンの運動エネルギーは、プラズマ(P)と基板(S)との間の電位差とほぼ同等である。ほとんどのプラズマにおいて、プラズマの電位は公知であるが、一般に、数ボルト、例えば、+5V~+10Vである。実践では、基板(S)に印加される電圧が、絶対値として数十ボルトに達する場合、プラズマ(P)の電位は、0Vとほぼ同等である。
【0071】
基板(S)の近傍において、加速相における衝突によってイオンが減速されないため、この近似値は、低圧において妥当である。
【0072】
これらのイオンの加速はそれらの電荷に対して、及び電位差に対して比例しており、バイアス電圧は、このバイアス電圧に電子の電荷を乗ずることによって、堆積中にイオンに与えられるエネルギーに同化される。実際、考察される技術的分野において、イオンは一般に、単電荷である。
【0073】
図1で例示される設備(1)において、基板担体(50)はキャリッジ型である、即ち、平行移動で及び交替で、材料(M)を受け取るためにマグネトロン(30)の前で、次いで、ガス状のイオンの衝撃が堆積された材料(M)層を圧縮するようにプラズマ源(40)の前の位置(S’)で、基板(S)を駆動するためのリニアアクチュエーターを含む。この場合において、設備は長さによって配される。
【0074】
図2で例示される設備(1)において、基板担体(50)は、自転型である、即ち、1又は複数の基板(S)が配されているプレート(51)を含み、このプレート(51)は回転(r1)状に駆動される。このようにして、各基板(S)は、代替的に、マグネトロンカソードスパッタリングステーションの前を、次いで、プラズマ生成ステーション(P)の前をスクロールする。
【0075】
正確な実施及び基板のサイズによれば、追加の回転が、プレートの回転(r1)に当然、重ねられうる。
【0076】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、いくつかのマグネトロンカソード(30)を、いくつかのプラズマ源(40)と交互に配することは有利である。このようにして、基板(S)の動きは連続的であり、これは、マグネトロンカソードスパッタリングステーションの前を、次いで、プラズマ生成ステーション(P)の前を交替でスクロールする。マグネトロンカソード(30)をプラズマ源(40)と交互に加えることは、設備(1)の生産性を増大することを可能にする。
【0077】
いずれの場合でも、基板担体(50)は、処理されることになる基板(S)に又は設備(1)の構造に従って、任意の好適な型とすることができ、垂直に若しくは水平に配すること、又は形状によって及び寸法によって適合することも可能である。
【0078】
基板(S)上に堆積された材料(M)層の性能を評価することが可能であるために、以下の測定が行われる。
【0079】
堆積された材料層の実用寿命は、腐食試験にかけることによって評価される。
【0080】
電気化学試験は、0.1ppmのフッ化物イオンを有する80℃の、3に等しいpHの酸性溶液(HSO)中で行われる。これらのパラメーターは、PEMFCの動作媒質を模擬するように、アメリカ合衆国DOE(エネルギー省)によって定義される。電位は、参照電極Ag/AgClに対して、試験されることになる材料が取り付けられる作動電極において+0.8Vに設定される。気泡を加えることは、燃料電池のカソード挙動を模擬することを可能にする。
【0081】
腐食電流は、材料(M)層を受け取った基板(S)を含む部品の劣化速度のイメージである。実際、腐食電流が大きいほど、部品はより酸化されるプロセスにある、即ち、材料(M)層は、その保護的な役割をあまり良く果たさない。実践では、0.8Vの電位下、24時間後の300nA/cm未満の腐食電流密度は、許容されると考えられる。
【0082】
被覆の表面伝導率は、その界面接触抵抗又は「ICR」の測定によって評価される。良好な表面伝導率を有する被覆は、低いICR、例えば10mΩ.cm未満を有する。
【0083】
ICR測定は、銅-炭素シートブロック(GDL-ガス拡散層)-基板上の堆積-ニッケル塗装(基板の背面)-銅ブロックから構成されるスタック上で行われ、そこでは1cmの表面積に関して100mAの電流が印加され、次いで、測定された電圧からアセンブリの抵抗が算出される。
【0084】
このスタックは、被覆されたバイポーラプレート/GDL接触の代表的なものである。重み付きレバーアームシステムによって、これに138N/cmの圧力が印加され、この圧力は、電気化学電池に、そのアセンブリ中に印加される圧力の代表的なものである。
【0085】
得られる抵抗Rは、(方程式1)
・Cu-Cuシステムの抵抗(Rオフセット)の
・銅炭素RCu/C界面接触抵抗を1回
・炭素RCフェルトの抵抗(ゼロ)を1回
・316L R316L鋼プレートレットの抵抗(ゼロ)の
・堆積の直線抵抗R堆積
・堆積と炭素との界面接触抵抗RC/堆積
・ニッケル銅RNi/Cu界面接触抵抗を1回
の総和である。
【0086】
[数1]
=Rオフセット+Rcu/c+Rc/堆積+R堆積+RNi/Cu (1)
【0087】
方程式(2)を用いて、ICRは決定される。
【0088】
[数2]
c/堆積+R堆積=RCI=R-Rオフセット-Rcu/c-RNi/cu (2)
【0089】
ICRは、腐食試験前又は後に測定することができ、その場合、後者は、処理された部品の加速されたエージングを模擬する。
【0090】
必要に応じて、堆積された層のモルフォロジーを観察するために、例えば、イオンビーム(集束イオンビーム-FIB)によって、試料の切片を作製することが可能である。例えばNRAによる、堆積された層の他の化学的特徴付け試験を行うことも可能である。
【0091】
NRA法の原理は、高エネルギー入射イオンの流れの核と静止したターゲットの原子との間の核反応調査に基づいている。試料は、入射粒子ビームに面する調査されることになる領域である、3×10-9バールである2E-6トルの真空下、分析チャンバー中に載置される。後者は、930keVに等しいエネルギーのイオン2H+の流れによって構成され、数mmの分析表面積に関して、ターゲット上に250nAの入射電流を形成する。16O(d,p)17O型の核反応から来る後方散乱粒子は、初期方向から150°で検出され、収集チェーンによる処理後、スペクトルを形成することになる。検出器は、10μm厚さのマイラーシートによってスクリーニングされる。アルミナ(O:720E15at/cm)の参照基準との比較は、所定の統合された総電荷に関して、各試料中に存在する酸素の分量を決定することを可能にする。材料の密度に従って、分析される材料の体積中に存在する炭素の分量がわかると、次いで、酸素の原子の分量と炭素の原子の分量との比が得られる。
【0092】
設備(1)内で、数連の試験が行われた。バイポーラプレートの被覆を模擬するために、使用される基板(S)は、2つの面が被覆されることが意図されるステンレス鋼試験片316Lである。
【0093】
基板(S)は、取り付け台に位置付けされ、清浄にされ、ブラストされて、その表面に存在しうる汚染物質及びほこりが除去される。次いで、真空の堆積設備(1)に導入される。
【0094】
チャンバー(10)中の圧力が5×10-9バール未満であるように、ポンプシステム(20)は始動され、チャンバー(10)は加熱されてその壁に吸着された水が除去される。
【0095】
被覆されることになる基板(S)の表面は加熱され、ボンバード処理されて、表面に吸着された水が除去され、表面に存在する酸化クロム層が剥離される。
【0096】
次いで、2.5×10-6バールのアルゴンの圧力があるように、ポンプシステム(20)はチャンバー(10)にアルゴンを導入する。
【0097】
グラファイト炭素ターゲットをスパッタリングするために、マグネトロンカソード(30)には、3.2kWの動力が動力供給され、設備(1)の土台に対して-55Vの電位がパルスモードで基板(S)に印加される。このようにして、基板(S)は、5分間被覆される。
【0098】
次いで、十分なイオンの流れ(φi)を生成するために、補助プラズマ源(40)は照光される。基板担体(50)上の電流密度が2.5A/mに達するように、プラズマ源(40)は500W(2.7の流れの比)の動力で維持される。残りの堆積は、25分の総継続時間にわたって、マグネトロンカソード(30)上のターゲット及びプラズマ源(40)によるイオンボンバードメントの交互スパッタリングを用いて、行われる。
【0099】
この第1の例を用いると、このようにして、100nmの炭素層が基板(S)の2つの面で得られる。次いで、チャンバー(10)はガス抜きされ、基板(S)は回収される。
【0100】
第1の一連の予備試験は、
- 多少厚く堆積された層を与える堆積継続時間、
- イオンアシストの動力、及び
- 基板(S)上の材料(M)層の耐性を向上させることを可能にする副層(SC)の有無
を変更することによって行われる。
【0101】
マグネトロンカソード(30)に適用される動力、したがって堆積速度は、一定に保たれる。試験の適合性は、ICRを測定することによって、及び堆積された層の耐腐食性によって評価される。
【0102】
定量的測定を用いるために、及び方法のスケーリングが可能であるために、マグネトロン(30)のカソード及びイオンアシストの動力の大きさは、
- マグネトロン(30)のカソードの動力のための中性炭素原子の流れ(φn)によって、及び
- イオンアシストのためのイオンの流れ(φi)によって
表される。
【0103】
この場合において、基板によって受け取られる中性炭素原子の流れ(φn)は、cm/sで表され、炭素層の密度(2.1g・cm-3)が乗じられ、炭素のモル質量(12g/mol)で割られ、次いで、アボガドロ定数が乗じられ、これが、cm当たり及びs当たりの炭素原子の数を与える、考察される層の堆積速度から決定される。
【0104】
文献において入手可能な炭素密度データが、堆積された炭素に良好に対応することを確認するために、堆積された炭素の密度は、電子エネルギー損失分光法によって検証された。
【0105】
中性炭素原子の流れ(φn)の計算値は平均であり、堆積がマグネトロンカソード(30)の前を基板(S)が通過する間に形成されるのみという事実にもかかわらず、堆積の厚さを堆積継続時間で割ることによって、平均堆積速度が決定される。しかしながら、実際、堆積の総継続時間の間、被覆される基板(S)の表面全体が存在し、したがって、表面全体が、このようにして算出された中性炭素原子の流れ(φn)を常時受け取ったかのようである。
【0106】
イオンの流れ(φi)を算出することに関して、それは同様に進められ、Aでの総バイアス電流を、cmでのバイアスされた総表面積で割り、これは、基板(S)上の、A/cmでの平均電流密度を与える。それを素電荷で割ることによって、cm当たり及びs当たりのイオンの流れが得られる。
【0107】
プラズマ(P)はプラズマ源(40)に配置され、その近傍で基板(S)へのボンバードメントは生じるが、基板(S)によって回収される総電流は、表面の全部がたえず平均イオンボンバードメントを、したがって、平均電流密度を受け取る場合と同じである。
【0108】
イオンの流れ(φi)と基板(S)に向けられた中性炭素原子の流れ(φn)との比は、したがって、単位を有しない。
【0109】
得られた結果は、下記の表に示される。
【0110】
【表1】
【0111】
図3図10との関連で下記で詳細に説明されるもの等の、堆積された層の良好な耐腐食性の、良好な機械的強度の、低いICRの、及び低い酸素含有量の評価基準の確認によって性能が得られる。
【0112】
この表は、イオンの流れ(φi)と中性炭素原子の流れ(φn)との比は、不可欠のパラメーターであることを示す。この比に関係付けられる動力は、ゼロであってはならないことは明らかである。金属副層の存在、及び堆積された層の厚さは、前記堆積された層の機械的及び物理的特性を最適化するように調整することが可能であるパラメーターである。
【0113】
図3を参照すると、出願人は、以下のパラメーター
- 材料(M)層と基板(S)との間の金属副層(SC)の有無、
- 材料(M)層の厚さ、
- 基板に向けられたイオンの流れ(φi)と中性炭素原子の流れ(φn)との比
を変えることによって、数連の堆積試験を行った。
【0114】
得られた結果の中から第1の選択をするために、腐食電流密度が評価される。腐食電流密度は、堆積された層の耐腐食性を示すことが想起され、低い腐食電流は、試験媒質における良好な耐腐食性を示す。
【0115】
腐食電流密度は、電位+0.8V/ref(Ag/AgCl)での24時間定電位試験の終わりに測定される。
【0116】
図3の結果は、各連の点の分散を示す、しかしながら、腐食電流密度は、2.2から3.1の間の流れの比の範囲(φi)/(φn)に対して、最小値を通過する。したがって、良好な耐腐食性を得るための、この流れの比(φi)/(φn)の好ましい範囲があり、層の良好な耐腐食性を確実にするのに最小限のボンバードメントは必要であるが、過度に強いボンバードメントも、層の劣化及び腐食の大きい増大を引き起こすという点で、損傷を与える。これは、金属副層(SC)があらかじめ堆積されているか否かにかかわらず、異なる堆積される炭素層の厚さに関して妥当である。
【0117】
図4を参照すると、チタン副層を、次いで、過度に強い(4.4に等しい流れの比(φi)/(φn))イオンアシストのボンバードメントに供されることによって堆積された20nm厚さの炭素層を受け取った基板(S)上で、走査電子顕微鏡による観察が行われる。これらの観察は、0.8Vでの腐食試験後、被覆の欠落が試料の表面上に現われ、そこでは炭素層はもはや存在せず、色が明るい箇所ではチタン副層は剥離されていることを示す。チタン副層(SC)の存在にもかかわらず、20nm厚さの炭素系材料(M)層は、被覆された基板(S)が最適な特性を有するように十分ではなく、炭素系材料(M)層は、本発明によって定義される評価基準に従って堆積されることが必要であり、言い換えれば、流れの比(φi)/(φn)が好適である。
【0118】
覆いの、及び基板への堆積によって提供される保護の品質を評価する別の手段は、塩分媒質における腐食試験である。試料は、室温で3時間、海水と同様の35g/Lの塩化ナトリウム溶液に浸漬される。電位は、E0から最大+0.8Vまでのバランス電位で試料に印加され、次いで、電位は、1mV/sの走査速度で、E0に戻る前に-0.4Vに減少する(参照Ag/AgClに対して)。電流は、2サイクルの間測定される。
【0119】
図5及び図6は、塩分媒質において測定された腐食電流密度に関するボルタンメトリーグラフを例示する。試料は、室温で、35g/LのNaCl溶液(海水と同様)に浸漬される。次いで、試料に印加される電位は、-0.4Vから0.8Vの間(参照Ag/AgClに対して)を2回サイクルされ、電流は、測定される。
【0120】
試験された3つの試料は、100nm厚さの炭素系材料(M)層が堆積されている316Lの基板(S)であり、
- 第1の試料の堆積は、本発明に対応せず、0.3の流れの比(φi)/(φn)を有する、
- 第2の試料の堆積は、本発明に対応し、2.3の流れの比(φi)/(φn)を有する、
- 第3の試料の堆積は、本発明に対応せず、4.1の流れの比(φi)/(φn)を有する。
【0121】
図5において、
- 第1の試料は、中程度の腐食電流を有する、
- 本発明に対応する第2の試料は、非常に低い腐食電流を有する、
- 第3の試料は、電位が0.5Vを超える場合、急な電流の増大を有する
ことがわかる。これは、周知の現象であるNaCl媒質中のステンレス鋼の点食による腐食に対応する。試験からもたらされて、ステンレス鋼ホイルは、いくつかの点において貫通される。
【0122】
図5の詳細な図である図6において、
- 第1の試料は、電流の増大を有し、確かに限定されているが、ステンレス鋼の点食にも対応する、
- 本発明に対応する第2の試料は、アノード電流が1μA/cm未満であるため、非常に低い電流を有する
ことが観察される。
【0123】
したがって、過度に低い又は過度に高い流れの比(φi)/(φn)を用いて堆積される炭素層は、腐食から基板(S)を効果的に保護せず、一方で、本発明に対応する範囲の流れの比(φi)/(φn)を用いて堆積される炭素層は、基板(S)を最適に保護することが、推論されうる。
【0124】
特に、これらの耐腐食性試験は、過度にボンバード処理された炭素系材料(M)層は、基板(S)又は副層(SC)を効果的に保護せず、腐食性媒質において層中の局所的な欠陥(欠落)が現われることを示す。後に続く、腐食性媒質における副層(SC)の又は基板(S)の剥離は、それらの腐食、及びそれらが解放する金属カチオン溶液における少なくとも全体の塩析を引き起こす。電池において、これらは、膜電極アセンブリの、したがって、電池の耐久性に損傷を与える。
【0125】
耐腐食性に補完的に、被覆された基板(S)の表面伝導率に関心を持つことが適切である。実際、金属副層(SC)、次いで炭素層で被覆された基板(S)は、良好な耐腐食性を有することができ、これは、ある特定の場合に、炭素層の劣化の場合に副層(SC)の材料が不動態化することによって説明することができる。しかしながら、この不動態化した材料は、表面で十分に伝導性ではなく、これは、そのような堆積で機能化されたバイポーラプレートは偶発的な劣化から燃料電池を保護するが、この燃料電池の性能はより低くなる(著しいオーム損失に起因する低い収率)ことを意味する。
【0126】
図7のグラフを参照すると、出願人は、一連の100nm厚さの層の堆積試験に注目している。このグラフは、流れの比(φi)/(φn)に従って、
- 左側の目盛りを用いる腐食電流密度、
- 右側の目盛りを用いる、前記基板(S)の加速されたエージングを模擬する、基板(S)が腐食試験に供された後に得られたICR
を要約する。
【0127】
このグラフにおいて、金属副層を用いず且つ2.2から3.1の間の流れの比の範囲(φi)/(φn)を用いる100nmの炭素層堆積の場合、良好な耐腐食性が得られるだけでなく、加えて、値が常に10mΩ.cm未満であるため、良好なICRが得られることが観察される。ICRのみを測定することは、特定の流れの比を選ぶことを可能にしないが、ICRが低いことで、選択された流れの比の範囲(φi)/(φn)が燃料電池の特定の用途のために適切であることを確証する。
【0128】
常に、機能化された基板(S)を組み込む電気化学システムの実用寿命を向上させる目的で、より厳しい他の腐食試験が行われた。これらの試験において、継続時間は1時間に、電位は1.4V及び1.6V(ref(Ag/AgCl)に対して)にする。異なる厚さの炭素層を受け取っており、副層(SC)を含む又は含まない、異なる基板(S)において、これらの厳しい試験は行われた。
【0129】
これらの腐食条件下の炭素消費は、漸進的である:
- 20nm及び50nmの炭素層は完全に消費され、基板(S)又は金属副層(SC)は、基板(S)のほぼ表面全体にわたって剥離される、
- 100nm、160nm、又は300nmの層は、完全には消費されず、試験された表面は黒い外観を保ち、ある特定の炭素堆積の厚さは、表面上に常に存在し、これは、低いICRを有する被覆の良好な表面伝導特性を保持することを可能にする。
【0130】
したがって、十分に高い炭素厚さを堆積させて、電池の使用中に、即ち、動的な動作条件(電位のサイクルを伴なう)、又は電池を起動する及び停止するためのサイクル(これは、より大きいカソード電位、又は起動時にアノード媒質において二水素と接触する空気の存在にいたる)等とともに、生じうる偶発的な過電位に対する処理の良好な耐性を確実にすることは関心事である。
【0131】
当然ながら、炭素層の最大厚さは、必要な堆積継続時間に関係付けられる処理のコストによって限定される。
【0132】
次いで、出願人は、構造に、及び準拠する堆積の化学組成物に関心がある。
【0133】
図8を参照すると、以下のパラメーター
- 低イオンアシストマグネトロンスパッタリング、即ち、流れの比(φi)/(φn)がわずか0.3である、を行うことによって得られた炭素副層(SC)の基板(S)上の堆積、
- 本発明によるイオンアシストマグネトロンスパッタリング、即ち、流れの比(φi)/(φn)が2.5である、を行うことによって得られた高密度炭素層(M)の堆積
に従って得られた準拠する堆積が観察されうる。
【0134】
イオンビームによる切削を行うことを可能にするために、異なる形態である白金層(Pt)が、部品上に堆積されて切削中それを保護し、図8において見ることができるが、この層は方法の範囲に入らない。
【0135】
この試料について、
- 基板(S)と接触している炭素副層(SC)は、約17nmの厚さである、
- 副層(SC)上に堆積される高密度炭素層(M)は、約98nmの厚さである、
- したがって、堆積の総厚さは約115nmの厚さである。
【0136】
図9を参照すると、出願人は、本発明に対応する2.3の流れの比で堆積された100nmの炭素層を受け取った2つの試料に関して、0.8V(参照Ag/AgClに対して)での定電位試験において測定された腐食電流密度の24時間にわたる進展を比較した。第1の試料は、炭素副層をあらかじめ受け取っており(0.3の流れの比で堆積された)、第2の試料は、チタン副層をあらかじめ受け取っていた。
【0137】
継続時間が延長されたこの試験は、図3の試験と同様のエージング試験であり、本事例においては、より具体的には電流密度の進展が経時的に表されるという違いがある。
【0138】
- 炭素副層を有する第1の試料は、低い腐食電流を有し、それは特に経時的に減少する、
- 第2の試料は、わずかにより大きいが、特に、時間とともに増大する傾向がある腐食電流を有する
ことが観察される。この結果は、第2の試料の実用寿命は第1の試料のものより短くなることを示唆する。
【0139】
この試験は、更により長い実用寿命を得るために、炭素副層は金属副層であることが好ましいことを実証する。
【0140】
しかしながら、金属副層は、使用される基板の種類に従う利害関係があり得、
- 基板(S)がステンレス鋼製である場合、チタン製金属副層は、炭素系材料(M)層の劣化の場合、不動態化層を作り出すことを可能にし、不動態化層は、電気化学システムにおいて基板(S)のステンレス鋼が金属カチオンを放出することがないことを保証する、
- 基板(S)がチタン製である場合、同じくチタン製である金属副層は、次いで堆積される被覆の付着を向上させることを可能にしうる。
【0141】
したがって、特定の実施形態は、
- 基板(S)、
- 基板(S)上に堆積される第1の金属副層(SC)、
- 第1の金属副層(SC)上に堆積される第2の炭素系副層(SC)、
- 第2の炭素系副層(SC)上に堆積される炭素系材料(M)層
を含むことができる。
【0142】
図10を参照すると、次いで、流れの比(φi)/(φn)に従って基板上に堆積される材料(M)層の核反応分析(NRA)による化学的特徴付けが行われた。これらの特徴付けの利益は、堆積によって機能化されたプレートから、本発明によるパラメーターに従って堆積が行われたかどうかを知ることが可能であることである。堆積の酸素含有量を特徴付けするための、NRA以外の技法がある:
- 例えば、X線光電子分光分析(XPS)。この技法は、非常に低い分量の酸素の分量を決めるのに十分に厳密ではなく、結果は、イオンアブレーションによってバイアスされうる、
- 又は二次イオン質量分析(SIMS)、しかし、この技法は定量的ではない。
これらの理由のために、出願人は、炭素層中の酸素の分量を決めるための信頼できる定量的技法としてNRAを選択した。
【0143】
予想されるように、炭素系材料(M)層は、スパッタリングされるターゲットは炭素系であるため、炭素を主に含む。しかしながら、残留酸素割合は、流れの比(φi)/(φn)に従って変動する:
- イオンアシストボンバードメントが十分でない(1.7未満の比)場合、酸素は、成長堆積層から追い出されない。したがって、残留酸素含有量は、約1%at以上である。
- 流れの比(φi)/(φn)が増大する場合、酸素含有量は減少し、本発明に対応する流れの比の範囲内で最小値を通過するように思われる。
- 次いで、イオンアシストボンバードメントが過度に高い(3.5より大きい流れの比(φi)/(φn))場合、酸素含有量は再度増大することが観察される。これは、局所的欠陥の外観及び炭素-酸素結合によって、並びに/又は基板の局所的剥離(堆積の欠陥、又は基板の堆積の局所的層間剥離の傾向を引き起こす、過度にボンバード処理された堆積のより大きい制約)によって、説明することができる。後者の場合において、基板は不動態化され、酸素は不動態化層において見られる。
【0144】
したがって、本発明による機能化されたプレートは、機能性層内に1%at未満、好ましくは0.7%at未満の酸素含有量を含み、酸素含有量は、前記機能性層内の炭素原子の数に対する酸素原子の数として算出される。
【0145】
機能性層はまた、イオンアシストから来るアルゴンを含むことができる(又は、アルゴン以外のガスが使用される場合、別の希ガス)。
【0146】
図11は、機能性層の堆積に先立って成形されている、ガスを運ぶための及び水蒸気を排出するためのチャネルを区別することができる、機能化されていないモノポーラプレート(60)を例示する。
【0147】
図12は、そのようなバイポーラプレート(60)の切断面の部分的な表示を例示するダイアグラムである。このダイアグラムについて、基板の厚さ(Es)は、バイポーラプレート(60)の厚さ(Epb)より小さいことがわかる。実際、最終のプレート(60)の厚さは、これが成形される方法に依存する。
【0148】
本発明による方法は、実際、基板(S)を機能化することを可能にする:
- 腐食試験の前だけでなく後も、低いICR値を提供することによって、
- 著しい継続時間及び高い電位にわたってさえ、腐食に対して良好な保護を提供することによって、
- 例えばドロップレット型の欠陥を有しないため、良好な構造的品質を有する堆積された層、
- 起こりうる、堆積された材料の付着又は拡散に関する、及びプレートの変形に関するリスクを除去する、高温を必要としない方法、
- シート、モノポーラ又はバイポーラプレート(任意選択で既に溶接された及び組み立てられた)等の、並びに種々のステンレス鋼系、チタン系、インコネル(登録商標)型系材料の合金、即ち、ニッケル、クロム、及び鉄系合金から構成される、種々の種類の部品に適合した方法。
【0149】
補完的なプラズマ源(40)を使用する場合、スパッタリング源から独立してイオンボンバードメントを調整し、したがって、任意選択でスタック内で、1つの処理から別の処理へボンバードメントを適合させることが可能である。
【0150】
その上、方法は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から離れることなく、与えられる例とは異なったように行うことができる。
【0151】
表されていない変形例において、イオンアシストからのプラズマ(P)は、マイクロ波によって生成されない。実際、大切であるのは、プラズマ源(40)によって消費される動力ではなく、基板(S)において利用可能なイオンの分量であり、ゆえに、出願人によって提案されるイオンの流れ(φi)の解釈である。したがって、他のイオン源を使用することができる。
【0152】
閉磁界アンバランスマグネトロンスパッタリングも可能である。これらの変形例は、望ましい流れの比の範囲にたどり着くために、マグネトロンの不均衡及びカソード間の磁力線のループ化を正しく調整することを必要としうる。
【0153】
更に、上に言及される異なる実施形態及び変形例の技術的特長は、全体として又はそれらの一部に関して、互いに組み合わされうる。例えば、1つのみの炭素系副層(SC)、1つのみの金属副層(SC)、又は炭素系副層(SC)及び金属副層(SC)を生産することは可能である。したがって、方法及び設備(1)は、コスト、機能性、及び性能の観点から適合させることができる。
【符号の説明】
【0154】
1 設備
10 チャンバー
20 ポンプシステム
30 マグネトロンカソード
30 マグネトロンスパッタリング源
30 マグネトロン
40 プラズマ源
50 基板担体
51 プレート
60 機能化されていないモノポーラプレート
60 バイポーラプレート
60 最終のプレート
Epb バイポーラプレートの厚さ
Es 基板の厚さ
M 材料
M 高密度炭素層
P プラズマ
r1 回転
S 基板
S’ プラズマ源の前の位置
SC 副層
φi イオンの流れ
φn 中性炭素原子の流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードスパッタリングによって、ターゲットから金属基板(S)上に炭素系材料(M)の外側層をイオンアシストで堆積するための方法であって、前記基板(S)に向けられたイオンの流れ(φi)と前記基板(S)に向けられた中性炭素原子の流れ(φn)との比が、1.7から3.5の間に調整され、-35Vから-100Vの間のバイアス電圧が前記基板(S)に印加されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
ガス状の前記イオンの流れ(φi)と前記中性炭素原子の流れ(φn)との比が、2から3.1の間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板(S)上に堆積される前記材料(M)が、20nm以上、好ましくは20nmから500nmの間、より好ましくは50nmから250nmの間、更により好ましくは80nmから150nmの間、及びより好ましくは80nmから120nmの間の厚さを有する、薄層と呼ばれる層を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板(S)が、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、又はニッケル系合金、クロム系合金、及び鉄系合金を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記イオンの流れが、マグネトロンカソードによって生成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記イオンの流れが、前記マグネトロンカソードに補完的なシステムによって、好ましくはマイクロ波プラズマによって、生成されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板(S)が、設備内でマグネトロンカソードスパッタリングステーションの前を、次いで、プラズマ(P)生成ステーションの前を、好ましくは環状でスクロールすることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板(S)が、10μmから1000μmの間の厚さのプレートであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板(S)上に、前記基板(S)と前記炭素系材料(M)の外側層との間に前記炭素系材料(M)と接触して配置されることが意図される炭素系副層(SC)を堆積させる前工程を含むこと、及び、前記基板(S)に向けられた前記イオンの流れ(φi)と前記基板に向けられた前記中性炭素原子の流れ(φn)との比が、1未満、好ましくは0.5未満の値に調整され、前記イオンの流れはゼロではないことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記炭素系副層(SC)の厚さが、2から40nmの間、好ましくは10nmから30nmの間であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板(S)上、前記基板(S)と前記炭素系材料(M)の外側層との間に前記基板(S)と接触して配置されることが意図される金属副層(SC)を堆積させる前工程であって、前記金属副層(SC)の材料が、以下の材料:クロム、チタン、ジルコニウム、タンタル、又はそれらの合金、並びにそれらの窒化物及び炭化物のうちの1又は複数の中から選ばれる、前工程を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属副層(SC)の厚さが、5から100nmの間、好ましくは20nmから40nmの間であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バイアス電圧が、-50Vから-75Vの間であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
炭素系材料(M)を含む外側層で覆われた金属基板(S)を含むモノポーラプレート又はバイポーラプレートを製造するための方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の堆積方法の実施によって、マグネトロンカソードスパッタリングによって、ターゲットから前記金属基板(S)上に前記炭素系材料(M)を堆積させる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の、炭素のターゲットのイオンアシストカソードスパッタリングによってターゲットから金属基板(S)上に炭素系材料(M)の外側層を堆積させるための方法によって得ることができ、炭素系材料(M)層で被覆された前記金属基板(S)を含む外表面を有する部品であって、前記炭素系材料(M)層が、前記炭素系材料(M)層内の炭素原子の数に対する酸素原子の数として算出される1%at未満の酸素を含む、部品。
【国際調査報告】