(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む金属有機構造体(MOF)ガラス複合体
(51)【国際特許分類】
C07F 1/00 20060101AFI20240910BHJP
C01G 21/16 20060101ALI20240910BHJP
C07F 19/00 20060101ALI20240910BHJP
C07F 7/24 20060101ALI20240910BHJP
C07F 15/06 20060101ALI20240910BHJP
C07F 3/06 20060101ALI20240910BHJP
C09K 11/08 20060101ALN20240910BHJP
C09K 11/66 20060101ALN20240910BHJP
C09K 11/02 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C07F1/00 E
C01G21/16
C07F19/00
C07F7/24
C07F15/06
C07F3/06
C09K11/08 B
C09K11/66
C09K11/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513814
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 AU2022051057
(87)【国際公開番号】W WO2023028644
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503319102
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ クィーンズランド
(71)【出願人】
【識別番号】516378426
【氏名又は名称】ザ、チャンセラー、マスターズ、アンド、スカラーズ、オブ、ザ、ユニバーシティー、オブ、ケンブリッジ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ジンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ヴィキ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リャンジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,トーマス・ディー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ペン
【テーマコード(参考)】
4H001
4H048
4H049
4H050
【Fターム(参考)】
4H001CF02
4H001XA01
4H001XA06
4H001XA07
4H001XA17
4H001XA35
4H001XA50
4H001XA53
4H001XA55
4H001XA82
4H048AA01
4H048AB92
4H048VA32
4H048VA51
4H048VA67
4H048VB10
4H049VN04
4H049VP09
4H049VP11
4H049VU29
4H049VW01
4H049VW02
4H050AA01
4H050AB92
(57)【要約】
本出願は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む有機金属構造体(MOF)ガラス複合体、およびそれを作製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む、有機金属構造体(MOF)ガラス複合体。
【請求項2】
前記MOFが、ゼオライト様イミダゾレート構造体(ZIF)である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記ZIFが、混合配位子ZIFである、請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
前記ZIFが、混合配位子ハロゲン化ZIFである、請求項2または3に記載の複合体。
【請求項5】
前記MOFが、ZIF-4、ZIF-62、ZIF-76、ZIF-UC-2、ZIF-UC-3、ZIF-UC-4、ZIF-UC-5、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、ハロゲン化鉛ペロブスカイト、ハロゲン化スズペロブスカイト、ハロゲン化ゲルマニウムペロブスカイト、およびハロゲン化銀-ビスマスダブルペロブスカイトのうちの1つまたは複数である、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項7】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、混合ハロゲン化の金属ハロゲン化物ペロブスカイトである、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、α-相金属ハロゲン化物ペロブスカイト、β-相金属ハロゲン化物ペロブスカイト、およびγ-相金属ハロゲン化物ペロブスカイトのうちの1つまたは複数を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項9】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、ハロゲン化鉛ペロブスカイトである、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、CsPbI
3、CsPbBr
3、CsPbCl
2Br、CsPbCl
1.5Br
1.5、MAPbI
3、MAPbBr
3、FAPbI
3、(C
4H
9NH
3)
2PbBr
4、CsPbCl
2Br、CsPbCl
1.5Br
1.5、CsPbClBr
2、CsPbCl
0.75Br
2.25、CsPbCl
0.5Br
2.5、CsPbBr
2.5I
0.5、CsPbBr
2.25I
0.75、CsPbBr
2I、CsPbBr
1.5I
1.5、CsPbBrI
2、CsPbBr
4
4-、(MAPbI
3)
0.95(FAPbI
3)
0.05、MASnI
3、FASnI
3、およびMASnIBr
2のうちの1つまたは複数であり、ここで、MAはメチルアンモニウムであり、FAはホルムアミジニウムである、請求項1から9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項11】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、α-相CsPbI
3ペロブスカイト、β-相CsPbI
3ペロブスカイト、およびγ-相CsPbI
3ペロブスカイトのうちの1つまたは複数を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項12】
前記MOFガラス複合体の総重量に対して、少なくとも約1重量%の金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項13】
前記MOFガラス複合体の総重量に対して、約25重量%の金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項14】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含むMOFガラス複合体を作製する方法であって、
前駆体ブレンド物を得るために、MOFおよび前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトをブレンドするステップと、
前記MOFが液化して前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトをコーティングするように、前駆体ブレンド物を焼結するステップと、
液化した前記MOFをガラス化して前記MOFガラス複合体を形成するように、焼結した前駆体ブレンド物をクエンチするステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記ブレンドするステップにおける前記MOFが、結晶性MOFおよびMOFガラスのうちの少なくとも1つである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ブレンドするステップにおける前記MOFが、ゼオライトイミダゾレート構造体(ZIF)である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記ZIFが、請求項3から5のいずれか一項において定められるZIFである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、請求項6から11のいずれか一項において定められる金属ハロゲン化物ペロブスカイトである、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記前駆体ブレンド物が、少なくとも1重量%の金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記前駆体ブレンド物が、約25重量%の金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記前駆体ブレンド物が、少なくとも150℃の焼結温度で焼結される、請求項14から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
焼結された前記前駆体ブレンド物が、少なくとも20℃/分のクエンチ速度でクエンチされる、請求項14から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
クエンチが、極低温クエンチである、請求項14から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記極低温クエンチが、焼結された前記前駆体ブレンド物を液体アルゴン中に浸漬することを含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に複合材料に関し、特に金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、その魅力的な光電子特性により、光起電技術、発光ダイオード、放射線検出、および温度計の用途で大きな注目を集めている。この点において、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、調整可能なバンドギャップ、長い電荷キャリア寿命、および狭帯域で明るいフォトルミネッセンス(PL)を示す。これらの特性により、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、従来の二元II-VI、III-V、およびIV-VI半導体よりも、光電子デバイスの活性材料として使用するのに魅力的なものとなっている。
【0003】
それにもかかわらず、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの実用化には大きな障壁がある。それは主に、(i)湿気、熱、光、酸素、および極性溶媒にさらされると容易に分解する、(ii)有毒な重金属イオンが溶出する、(iii)深いトラップ電子準位が高濃度に存在する、(iv)結晶構造に多形性が内在する、といった金属ハロゲン化物ペロブスカイトの性質に関連している。
【0004】
前述の制限の悪影響を最小限に抑える試みとして、金属ハロゲン化物ペロブスカイト粒子コアの周囲に有機配位子の保護シェルを形成することに基づく安定化方策が報告されている。しかしながら、不動態化シェルの提供は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトコアの光電子的完全性を維持するのに役立つが、安定化は短命であり、製造は複雑であり、加工性は制限される。
【0005】
代替方策としては、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを不動態化基板上に固定化した複合材料の作製がある。しかし、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの固有のイオン性は、複合体作製に適していない。例えば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの凝集/分解、選択されたマトリックスとの弱い界面結合による複合体の機械的安定性の低下、高度に集中した電子欠陥(トラップ状態)の形成など、複合材料内で重大な機能不良が発生する可能性がある。
【0006】
したがって、先行技術の限界に対処できる金属ハロゲン化物ペロブスカイト系材料を開発する余地がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bennettら、Nature Reviews Materials、3、431-440(2018)
【非特許文献2】Bennettら、Accounts of Chemical Research、47、1555-1562(2014)
【非特許文献3】Houら、「Halogenated Metal-Organic Framework Glasses and Liquids」、Journal of the American Chemical Society 2020、142、3880-3890)
【非特許文献4】Bennettら「Melt-Quenched Glasses of Metal-Organic Frameworks」,Journal of the American Chemical Society 138,3484-3492(2016)
【発明の概要】
【0008】
本発明は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む金属有機構造体(MOF)ガラス複合体を提供する。
【0009】
「MOFガラス」とは、MOFが固体非晶質MOF(本明細書では「aMOF」ともいう)であることを意味する。したがって、使用されるMOFガラス、および複合体の一部を形成するMOFガラスは、非晶質MOFに伴う熱誘起の固液体転移を示す。
【0010】
MOFガラスが「複合体」であるということは、MOFガラスが金属ハロゲン化物ペロブスカイトと組み合わされて存在することを意味する。例えば、本発明のMOFガラス複合体は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト粒子をその中に分散させた固体非晶質MOFマトリックスの形態であり得る。
【0011】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトをMOFガラスとの複合体の形態で提供することは、有益な点として、(i)湿気、熱、光、および極性溶媒に長期間曝露された際の金属ハロゲン化物ペロブスカイトの分解、(ii)有毒な重金属イオンの溶出、(iii)深いトラップ電子準位の形成、および(iv)光学的に不活性な結晶相への金属ハロゲン化物ペロブスカイトの多形転移のうちの1つまたは複数を防止するかまたは少なくとも有意に抑制することが、見出されている。
【0012】
驚くべきことに、結晶性MOFなどの他の支持体と比較して、MOFガラスは、金属ハロゲン化ペロブスカイトの化学的、光電子的、熱的、形態学的安定化のために優れていることが判明した。さらにMOFガラスは、その結晶性MOFに比べて、分子および形態学的柔軟性が著しく高く、巨視的デバイスにとって好適である。その結果、非晶質MOFでは、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面欠陥をより効果的に不動態化することができる。
【0013】
例えば、結晶性MOFとは対照的に、MOFガラスは剛直な構造的制約に妨げられることがなく、ペロブスカイトの形態学的特徴に沿って容易に変形できる。その結果、金属ハロゲン化ペロブスカイトの表面不動態化が、より効率的になる。また、MOFガラスと金属ハロゲン化物ペロブスカイトとの間の界面相互作用がより強く、より拡張されるため、複合体の機械的安定性が著しく向上する。
【0014】
したがって、本発明はまた、金属ハロゲン化物ペロブスカイトが封入されたMOFガラスマトリックス、を含むMOFガラス複合体に関するものと理解され得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記MOFガラスは、ゼオライト様イミダゾレート構造体(ZIF)ガラスである。それらの実施形態において、MOFガラス複合体の非晶質要素は、固体非晶質ZIF(本明細書において「aZIF」とも呼ばれる)である。aZIFは、その化学的安定性により、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを水や有機溶媒から効果的に保護し、得られるガラス複合体の機械的安定性や熱的安定性を確保することができる。さらに、aZIFは加工性が高いため、ZIF-ペロブスカイトガラス複合体の大規模生産のための、理想的な候補となる。
【0016】
aZIFと金属ハロゲン化物ペロブスカイトと間の特異的な界面相互作用は、準安定かつ光学的に活性な多形ペロブスカイト相を安定化できるだけでなく、ペロブスカイトのルイス酸および塩基表面欠陥の両方を不動態化し、このようなヘテロ構造内での電子移動を可能にする。非晶質ZIFと金属ハロゲン化物ペロブスカイトとの間の界面相互作用は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面における配位不足の金属またはハロゲン化物サイトおよび負に帯電した金属ハロゲン化物アンチサイトを有益に不動態化することも観察されている。
【0017】
本明細書に記載のMOFガラスは、その構造的柔軟性により、さまざまな金属ハロゲン化物ペロブスカイトに対する効果的な不動態化支持体であることが見出されている。したがって、本発明の複合体は、ハロゲン化鉛ペロブスカイト、ハロゲン化スズペロブスカイト、ハロゲン化ゲルマニウムペロブスカイト、およびダブルペロブスカイト(ハロゲン化銀-ビスマスダブルペロブスカイトなど)のうちの1つまたは複数である金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含み得る。いくつかの実施形態において、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、CsPbI3、CsPbBr3、CsPbCl2Br、CsPbCl1.5Br1.5、MAPbI3、MAPbBr3、FAPbI3、(C4H9NH3)2PbBr4、CsPbCl2Br、CsPbCl1.5Br1.5、CsPbClBr2、CsPbCl0.75Br2.25、CsPbCl0.5Br2.5、CsPbBr2.5I0.5、CsPbBr2.25I0.75、CsPbBr2I、CsPbBr1.5I1.5、CsPbBrI2、CsPbBr4
4-、(MAPbI3)0.95(FAPbI3)0.05、および2Dペロブスカイトのうちの1つまたは複数から選択され、ここで、MAはメチルアンモニウム、FAはホルムアミジニウムである。
【0018】
本発明はまた、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含むMOFガラス複合体を作製する方法を提供し、当該方法は、(a)前駆体ブレンド物を得るために、MOFおよび金属ハロゲン化物ペロブスカイトをブレンドするステップと、(b)MOFが液化して前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトをコーティングするように前駆体ブレンド物を焼結するステップと、(c)液化した前記MOFをガラス化して前記MOFガラス複合体を形成するように、焼結した前記前駆体ブレンド物をクエンチするステップと、を含む。
【0019】
提案された方法のステップを組み合わせると、ゲストペロブスカイトを効果的に不動態化できる非晶質MOFの形成が促進される。前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの周囲に液化MOFを形成するように前駆体ブレンド物を焼結することによって、前記MOFは前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトを包埋する。焼結された前記ブレンド物がクエンチされると、液化MOFはガラス化し、非晶形で固化して、MOFガラス複合体の最終構造体が得られる。
【0020】
MOFの焼結とそれに続くガラス化を促進することにより、提案される方法は、結晶性MOF内にペロブスカイトを封入しようとする手順の固有の限界を、克服する。ガラス化されたMOFは、対応する結晶性MOFの剛直な微細構造を有していないので、MOF内に封入され得る金属ハロゲン化物ペロブスカイトの範囲および形態を制限する構造的制約はない。したがって、本発明の方法により、有益なことに、多種多様なMOFを広範囲の金属ハロゲン化物ペロブスカイトと組み合わせることができるようになる。
【0021】
焼結ステップおよびクエンチステップによってMOFガラスが形成される場合、前駆体ブレンド物において使用されるMOFは、結晶性MOF、MOFガラス、またはその両方であってもよい。いくつかの実施形態において、前駆体ブレンド物中のMOFは、結晶性MOFおよびMOFガラスのうちの少なくとも1つを含む。例えば、前記前駆体ブレンド物は、結晶性MOF粒子およびMOFガラス粒子のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、前駆体ブレンド物は、本質的にMOFガラス粒子を含む。
【0022】
有益なことに、焼結とクエンチを組み合わせることで、得られるMOFガラス複合体中の金属ハロゲン化物ペロブスカイトのバルク結晶欠陥を効果的に低減することもできる。このことは、提案される方法で使用されるペロブスカイトで観察される著しい結晶化度の向上に反映されている。この点に関して、より高いクエンチ速度は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造における欠陥密度を低くすることができることが観察されている。焼結とクエンチを組み合わせることで、ガラス化したMOFガラス内で、金属ハロゲン化物ペロブスカイト(これは本質的に準安定である)の光学活性結晶相にアクセスし、安定化させることも可能になった。
【0023】
いくつかの実施形態では、前駆体ブレンド物は少なくとも100℃まで焼結される。この焼結温度は、効果的なMOF液化、および結晶性MOFがブレンドステップで使用される場合の非晶質化、を実現するために特に有益であることが証明されている。有益なことに、提案される焼結温度により、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの光学的に活性な結晶相にアクセスすることも可能になる。
【0024】
いくつかの実施形態では、焼結された前記前駆体ブレンド物は、少なくとも20℃/分のクエンチ速度でクエンチされる。これらの条件は、得られるMOFガラス複合体中の金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造中の欠陥密度を最小化するために、特に有益であり得る。
【0025】
ガラス化されたMOFガラスは、外部の摂動や劣化から金属ハロゲン化物ペロブスカイトホストを保護するために、効果的で潜在的に微多孔性の物理的バリアをもたらし得る強固なホストを表す。その結果、本発明のMOFガラス複合体は、例えばオプトエレクトロニクス、触媒、センシング、およびデータ暗号化における用途に対する金属ハロゲン化物ペロブスカイト系材料の大規模な実用化に向けた一歩前進をもたらす。前記ガラス化されたMOFガラスは、その構造的および化学的安定性により、有機溶媒(例えば、非極性、極性プロトン性、極性非プロトン性)、熱、水、および機械的ストレスへの曝露から、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトを効果的に保護することができる。
【0026】
本発明のさらなる態様および/または実施形態について、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】純粋な化合物として、または(CsPbI
3)(a
gZIF-62)複合体中のゲスト相として提供される場合のCsPbI
3の結晶相転移と、対応する転移温度の概略図を示す。
【
図2】350℃まで焼結温度を上昇させて焼結した(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75複合体について室温で測定したex-situ粉末X線回折(XRD)を示す。PbI
2およびδ-CsPbI
3に属するいくつかの重ならないピークが、強調表示されている。
【
図3】150℃から350℃まで焼結温度を上昇させて焼結した(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75複合体のPL発光スペクトルを、焼結前に測定した対応する(CsPbI
3)(a
gZIF-62)(25/75)前駆体ブレンド物の拡大PL発光スペクトル(400~600nmの波長領域を中心とする左側のピーク)と比較して、示している。
【
図4】200℃から350℃までの異なる焼結温度で作製した(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75ガラス複合体の紫外可視(UV-vis)吸収スペクトルを、150℃まで焼結した対応する(CsPbI
3)(a
gZIF-62)(25/75)前駆体ブレンド物と比較して示す。
【
図5】(A)環状暗視野-走査型透過電子顕微鏡(ADF-STEM)および(B)走査型電子回折-走査型透過電子顕微鏡(SED-STEM)マッピングによって検出された、(C)対応するCsPbI
3結晶相分類で可視化された、(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75サンプルガラス複合体についてのCsPbI
3のγ-およびδ-結晶相の相分布を示す。
【
図6】(E)統合CL強度のカソードルミネッセンス-走査型透過電子顕微鏡(CL-STEM)マッピング(スケールバーは70nm)、(F)各STEMプローブ位置で取得したCLスペクトル、および(E)の全領域のCLスペクトルの合計を示す。
【
図7】焼結後にクエンチした場合の実施形態MOFガラス複合体の微細構造の変化を示しており、特に(A)350℃までの焼結後にクエンチした場合の(CsPbI
3)(a
gZIF-62)(25/75)前駆体ブレンド物について測定した温度分解in situ粉末XRD(参考としてα-CsPbI
3(Pm-3m)のブラッグピークhklを示す)であり、(B)粉末XRDから計算されたα-CsPbI
3結晶の対応する平均サイズの変化を示す。
【
図8】(D)アルゴン雰囲気下で25℃から300℃まで(20℃/分で)最初に加熱したときの粉末混合物の温度分解2次微分in situ THz-FIRスペクトル、(E)混合粉末(CsPbI
3)(a
gZIF-62)(25/75)および(CsPbI3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75を示す(プロット中、記号*はスピニングサイドバンド、†はCsIの弱いシグナルを示す)。
【
図9】(CsPbX
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75ガラス複合体の正規化フォトルミネッセンス(PL)発光スペクトルであり、Xは異なるハロゲン化物または混合ハロゲン化物であり、挿入リストにおける上から下は左から右の発光スペクトルに対応している。
【
図10】(C)溶媒にさらす前のMOFガラス複合体のPL強度と比較した、異なる種類の溶媒中で約20時間超音波処理した(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75ガラス複合体のPLピーク強度を示し、(D)Milli-Q水に浸す前のガラス複合体のPL強度に対する、Milli-Q水に浸した(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75ガラス複合体のPL強度の時間変化を示す。
【
図11】(F)325℃まで焼結したa
gZIF-62および(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75の273KにおけるCO
2吸着等温線を示し、ここで、吸着および脱着のデータポイントをそれぞれ、塗りつぶされた記号(closed symbols)および白抜きの記号(open symbols)で示す。
【
図12】(G)光触媒材料として使用されるMOFガラス複合体の1つの実施形態の模式図を示し、(H)(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75ガラス複合体サンプルに対して純粋なa
gZIF-62を用いた、誘導結合プラズマ-発光分光分析(ICP-OES)による光析出試験後に測定されたAg
+/Zn
+濃度比(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、金属有機構造体(MOF)ガラス複合体を提供する。
【0029】
当該技術分野で知られているように、MOFは、多官能性有機配位子によって配位された金属イオン(例えば金属イオンまたは金属酸化物)を含む金属クラスターによって形成されるハイブリッド配位構造体である。その結果、高度に多孔質であり得る一次元構造体、二次元構造体、または三次元構造体が形成される。
【0030】
従来、MOFの分野では、金属クラスターが多官能性有機配位子によって配位されて高度に秩序化された結晶構造およびモチーフを形成し超高表面積を示す材料が得られる結晶性MOFが、主流であった。対照的に、「MOFガラス」であることによって、MOFは固体非晶質MOF(本明細書では「aMOF」とも呼ぶ)である。
【0031】
固体非晶質MOF(「aMOF」とも呼ばれる)は、結晶性MOFの基本的な構成要素と結合性を保持しているが、長距離の周期秩序はない。aMOFでは、金属クラスターと多官能性有機配位子が、検出可能な空間秩序を有さない構造体を形成している。原子が非周期的に配列しているため、aMOFはX線回折パターンを生成するが、その回折パターンは、結晶に典型的な鋭いブラッグ回折ピークを示さず、代わりに拡散散乱による幅広い「こぶ(humps)」が支配的である。その結果、aMOF同士は、XRD回折測定ではほとんど区別がつかない。
【0032】
aMOF内に無機ドメインと有機ドメインの両方が存在することで、多孔性、相転移挙動、親和性、機械的剛性/延性、および光学性など、本発明のMOFガラス複合体の物理化学的特性を調整するための様々な機会が得られる。
【0033】
本発明で使用するのに適した非晶質MOFは、その熱分解点未満の加熱時に可逆的な固液転移を示し、これは例えば非晶質シリカで観察される転移に類似している。aMOFにおける熱誘起の固液転移は、金属-配位子配位結合の少なくとも部分的な切断によって介在されるが、それにもかかわらず、液相中の無機構成単位および有機構成単位の完全性は維持される。巨視的には、aMOFが示す固液転移は、MOFが熱分解に達する前の、柔らかく流動性のある液体状の状態への転移に関連している。
【0034】
本発明での使用に適したaMOFの構造体の一部を形成する金属イオンの例としては、Zn2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Pd4+、Pd2+、Pt4+、Pt2+、Cu2+、Cu+、Na+、Fe3+、Fe2+、Os2+、Ir2+、Ag+、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明での使用に適したaMOFの構造体の一部を形成する多官能性有機配位子の例としては、イミダゾレート、2-メチルイミダゾレート、2-ニトロイミダゾレート、5-クロロベンズイミダゾレート、4-メチル-5-ニトロイミダゾレート、イミダゾレート-2-カルボキシアルデヒド、イミダゾール-4,5-ジカルボキシレート、ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート、1,3,5-トリス(4’-カルボキシフェニル)ベンゼン、2,4,6-トリス(4-ピリジル)トリアジン)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
本発明で使用するのに適した非晶質MOFのさらなる例、および対応する合成方法には、Bennettら、Nature Reviews Materials、3、431-440(2018)、およびBennettら、Accounts of Chemical Research、47、1555-1562(2014)に記載されているものが含まれる。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記MOFは、混合成分MOF(「混合配位子」MOFとしても知られる)である。混合成分MOFは、複数の種類の有機配位子および/または金属を特徴とする構造を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記aMOFは、非晶質ゼオライト様イミダゾレート構造体(aZIF)である。構造的見地から、非晶質ZIFは、イミダゾレートベースの配位子によって結合される四面体の一価、二価または三価の遷移金属イオンから構成される非結晶性の三次元構造である。したがって、本発明で使用する非晶質ZIFには、前記構造を有し、分解温度未満で熱誘起の可逆的な固液転移を示すことができるものが含まれる。
【0039】
本発明での使用に適したZIFの例としては、四面体Zn2+またはCo2+がイミダゾレートベースの架橋単位によって配位された非晶質構造体を有するものが挙げられる。例えば、本発明での使用に適した非晶質ZIFには、四面体Zn2+またはCo2+が、イミダゾレート(「Im」、C3H3N2
-)、2-メチルイミダゾレート(「mIm」、C4H5N3
-)、2-ニトロイミダゾレート(「nIm」、C3H2N3O2
-)、ベンズイミダゾレート(「bIm」、C7H5N2
-)、5-クロロベンズイミダゾレート(「cbIm」、C7H4N2Cl-)、5-メチルベンズイミダゾレート(「5-mbIm」、C8H7N2
-)、4-メチル-5-ニトロイミダゾレート(「mnIm」、C4H4N3O2
-)、イミダゾレート-2-カルボキシアルデヒド(「ICA」、C4H3N2O-)、またはイミダゾール-4,5-ジカルボキシレート(「ImDC」、C5HN2O4
-)などの架橋単位によって配位されるものが含まれる。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記非晶質ZIFは、aZIF-1、aZIF-3、aZIF-4、aCo-ZIF-4、aZIF-8、aZIF-62、aZIF-76、aZIF-69、aZIF-UC-2、aZIF-UC-3、aZIF-UC-4、aZIF-UC-5、およびそれらの組み合わせとして当該技術分野で公知のものから、選択される。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記aZIFは、aZIF-4である。このaZIFは、292℃付近で可逆的な固液転移を示し、加工性が高い。構造的には、aZIF-4は、対応する結晶形とは異なり、非晶質SiO2と同様の連続的なランダムネットワークトポロジーを形成する4つのイミダゾレート配位子に配位したZn2+中心を、特徴とする。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記aZIFは、aZIF-62である。構造的に、aZIF-62は、ベンズイミダゾレート配位子(「bIm」、C7H5N2
-)によって配位されたZn2+中心によって特徴付けられ、Zn(Im)1.75(bIm)0.25構造体を形成する。aZIF-4と同様に、aZIF-62は可逆的な固液転移温度(約430℃)が本質的に低いため、非常に加工しやすい。さらに、aZIF-62は、得られる液体が約550℃で分解する前に安定である大きな温度範囲を示す。aZIF-62の使用はまた、aZIF-62の結晶化に対する極めて高い安定性により有益であり、このことはその液相の高い粘度に起因する。これらの特性により、ZIF-62は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの効果的な表面不動態化および保護を実現するために、本発明の複合体において特に有用である。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記aZIFは、混合配位子aZIFである。混合配位子aZIFでは、前記金属中心は、少なくとも2つの異なる種類の多官能性有機配位子によって配位される。混合配位子aZIFの使用は、特に有益である。前記有機配位子の性質と相対量を変更することにより、MOFガラス複合体の溶液-液体転移温度を調整することが可能となる。本発明での使用に適した混合配位子aZIFの例としては、所定のaZIFの従来の配位子の一部をハロゲン化配位子などの官能化配位子で置換することによって得られるものが、挙げられる。前記ハロゲン化配位子は、ベンズイミダゾレート由来の配位子であってもよい。ベンズイミダゾレート由来の配位子は、5-クロロベンズイミダゾレート(「5-ClbIm」、C7H4N2Cl-)、5-クロロ-2-メチルベンズイミダゾレート(「5-Cl-2-mbIm」)、C8H6N2Cl-)、5-フルオロベンズイミダゾレート(「5-FbIm」、C7H4N2F-)、および6-クロロ-5-フルオロベンズイミダゾレート(「6-Cl-5-FbIm」、C7H3N2ClF-)から選択され得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記aZIFは、aZIF-62ベースの混合配位子aZIFであり、aZIF-62中のベンズイミダゾレート配位子の一部が、ベンズイミダゾレート由来の配位子、例えば、5-クロロベンズイミダゾレート(「5-ClbIm」、C7H4N2Cl-)、5-クロロ-2-メチルベンズイミダゾレート(「5-Cl-2-mbIm」、C8H6N2Cl-)、5-フルオロベンズイミダゾレート(「5-FbIm」、C7H4N2F-)、および6-クロロ-5-フルオロベンズイミダゾレート(「6-Cl-5-FbIm」、C7H3N2ClF-)から選択されるものである。このような混合配位子aZIFおよび対応する合成方法の例は、Houら、「Halogenated Metal-Organic Framework Glasses and Liquids」、Journal of the American Chemical Society 2020、142、3880-3890)に記載されており、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0045】
本発明の複合体は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む。
【0046】
「ペロブスカイト」という用語は、当該技術分野における一般的な意味に従って本明細書で使用され、特にペロブスカイト材料(CaTiO3)とは対照的に、特定の金属ハロゲン化物の「ペロブスカイト結晶構造体」を指す。
【0047】
したがって、本明細書の目的上、「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」という表現は、CaTiO3と同じ結晶構造を有し、一般的な化学量論AMX3(3D構造ペロブスカイト)またはA2MX4(2D構造または層状ペロブスカイト)を有する任意の結晶材料を包含すると理解され、Aは1価のカチオンであり、Mは2価のIVA族金属カチオンであり、Xはハロゲン化物アニオンである。Aは無機カチオン(Cs+、もしくはSn+など)または有機カチオン(CH3NH3
+、C4H9NH3
+、もしくはC6H5-C2H4NH2
+など)であってもよく、MはPb2+、Sn2+、またはGe2+などの2価のIVA族金属カチオンであってもよく、Xはハロゲン化物アニオンであってもよい。前記ハロゲンアニオンは、ハロゲン元素のアニオン(例えば、F-、Cl-、Br-、もしくはI-)または混合ハロゲン化物アニオンであってもよく、この場合、上記式中の成分X3またはX4は、適切な比率に従う2つ以上のハロゲン元素の組み合わせ(例えば、Cl2Br3-、Cl1.5Br1.5
3-、ClBr2
3-、Cl0.75Br2.25
3-、Cl0.5Br2.5
3-、Br2.5I0.5
3-、Br2.25I0.75
3-、Br2I3-、Br1.5I1.5
3-、BrI2
3-、またはBr4
4-)から生じる。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、ハロゲン化鉛ペロブスカイト(LHP)である。この場合、Mは鉛(Pb)である。ハロゲン化鉛ペロブスカイトは、太陽電池、光起電技術、レーザー、発光ダイオード(LED)、水分解、およびレーザー冷却など、多くの潜在的な用途があるために、特に魅力的である。本発明で使用するのに適したLHPの例としては、CsPbI3、CsPbBr3、CsPbCl2Br、CsPbCl1.5Br1.5、MAPbI3(MA=メチルアンモニウム)、MAPbBr3、FAPbI3(FA=ホルムアミジニウム)、(C4H9NH3)2PbBr4、CsPbCl2Br、CsPbCl1.5Br1.5、CsPbClBr2、CsPbCl0.75Br2.25、CsPbCl0.5Br2.5、CsPbBr2.5I0.5、CsPbBr2.25I0.75、CsPbBr2I、CsPbBr1.5I1.5、CsPbBrI2、CsPbBr4
4-のうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、ハロゲン化スズペロブスカイトである。この場合、Mはスズ(Sn)である。ハロゲン化スズペロブスカイトの好適な例には、ハロゲン化鉛ペロブスカイトに関して本明細書に列挙したものに相当するものが含まれ、ここで、PbがSnで置換されている。Pbの代わりにSnを使用することで、毒性が低減され、廃棄が容易になるという明確な利点がある。本発明で使用するハロゲン化スズペロブスカイトの好適な例としては、メチルアンモニウムヨウ化スズ(CH3NH3SnI3、またはMASnI3)、ホルムアミジニウムスズ三ヨウ化物(formamidinium tin triiodide)(CH(NH2)2SnI3、またはFASnI3)、およびCH3NH3SnIBr2(MASnIBr2)が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、異なるカチオンAを有する金属ハロゲン化物ペロブスカイトの組み合わせから得られる複合金属ハロゲン化物ペロブスカイトである。このような好適な金属ハロゲン化物ペロブスカイトの例としては、(MAPbI3)0.95(FAPbI3)0.05が挙げられる。
【0051】
当業者であれば分かるように、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは加熱されると容易に多形転移を起こす。温度が上昇すると、光不活性で商業的利用に無関係な結晶相(六方晶または擬六方晶δ-相、「黄色」相とも呼ばれる)から、光活性で商業的利用に関連する相(すなわち、α-相、β-相および/またはγ-相、「黒色」相とも呼ばれる)に遷移する。「黒色」相は、熱アニーリングによって達成できるが、本質的に準安定であり、材料を室温に戻すと(特に湿気にさらされると)、より熱力学的に安定な黄色相に容易に転移する傾向がある。
【0052】
非晶質MOFの安定化効果により、本発明の複合体中の金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、その光活性立方晶または擬立方晶黒色相(すなわち、特定の金属ハロゲン化物ペロブスカイトに応じていずれかが利用可能である場合、α-相、β-相および/またはγ-相)のいずれかで、室温で安定化され得る。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態において、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、α-相金属ハロゲン化物ペロブスカイト、β-相金属ハロゲン化物ペロブスカイトおよびγ-相金属ハロゲン化物ペロブスカイトのうちの1つまたは複数を含む。例えば、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、α-相CsPbI3ペロブスカイト、β-相CsPbI3ペロブスカイト、およびγ-相CsPbI3ペロブスカイト、またはFAPbI3ペロブスカイトの同様の結晶相混合物のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0054】
本発明のMOFガラス複合体は、固体の非晶質MOFと金属ハロゲン化物ペロブスカイトとの組み合わせである。機能的には、前記非晶質MOFと前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトとの間の界面相互作用は、前記ペロブスカイトの準安定相を効果的に安定化させ、ペロブスカイト表面欠陥を不動態化して光学活性状態に維持することができる。その結果、前記MOFガラス複合体中の前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、前記非晶質MOFがない場合よりも光学活性が著しく高くなる。
【0055】
したがって、形態学的観点から、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、前記非晶質MOFによる表面不動態化をもたらす任意の形態で提供され得る。
【0056】
例えば、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、粒子形態で存在し得る。そのような場合、前記MOFガラス複合体は、分散媒体として機能する非晶質MOF全体に分散した金属ハロゲン化物ペロブスカイト粒子の固体分布として、可視化され得る。そのような分散の一例を
図5(a)~5(c)に示す。
【0057】
したがって、本発明は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト粒子が分散されたMOFガラスマトリックス、を含むMOFガラス複合体を提供するものであるとも言える。
【0058】
表面不動態化が実現される限り、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイト粒子の形状およびサイズに特に制限はない。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、約2.5nm~約1μm、約5nm~約750nm、約5nm~約500nm、約5nm~約250nm、約5nm~約150nm、約5nm~約100nm、約5nm~約50nm、約5nm~約25nm、約5nm~約10nmの主要寸法を有する粒子として、提供される。いくつかの実施形態において、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、約2.5nm~約50nmの主要寸法を有する粒子として提供される。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、200nm~約1μmの横方向寸法を有し、1nm~50nmの範囲の厚さを有する二次元構造体として提供される。
【0061】
前記MOFガラス複合体は、表面不動態化が実現される限り、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトを、特に限定されない量で含み得る。例えば、前記MOFガラス複合体は、MOFガラス複合体の総重量に対して、少なくとも約1重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%の量の金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記MOFガラス複合体は、前記MOFガラス複合体の総重量に対して、約1重量%~約75重量%、約5重量%~約50重量%、約15重量%~約50重量%、約25重量%~約50重量%の量の金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記MOFガラス複合体は、前記MOFガラス複合体の総重量に対して、約25重量%の量の金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む。
【0064】
本発明はまた、MOFガラス複合体を製造する方法を提供する。前記MOFガラス複合体は、本明細書に記載される種類のMOFガラス複合体であり得る。
【0065】
この方法は、前駆体ブレンド物を得るためにMOFおよび金属ハロゲン化物ペロブスカイトをブレンドするステップ、を含む。
【0066】
このステップにおいて使用する前記MOFの性質は、前記MOFが、(i)前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトとブレンド可能であり、(ii)その分解温度未満で固液転移を示す、ものであれば、特に限定されない。したがって、(i)および(ii)が満たされていれば、前記MOFは、結晶質MOFであっても、あるいは非晶質MOFであってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記MOFは、非晶質MOFおよび結晶質MOFのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、前記MOFは、非晶質MOFである。当業者であれば、非晶質MOFをもたらすための利用可能な手順を、認識しているであろう。例えば、非晶質MOFは、結晶性MOFの非晶質化によってもたらされ得、これは、結晶構造体に対する、高圧、熱処理、または機械的粉砕(例えばボールミル粉砕)の適用によって、実現され得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の方法において使用されるMOFは、本明細書に記載される種類のMOFである。
【0069】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトが前記MOFとブレンドできる限り、本発明の方法での使用に適した前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの性質および形態に、特に制限はない。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、本明細書に記載される種類の金属ハロゲン化物ペロブスカイトである。
【0071】
典型的には、合成されたままのMOFおよび金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、粒状固体として、すなわち、サイズがnm~mmスケールで変化し得る離散固体粒子の集塊として、室温で存在する。従って、MOFと金属ハロゲン化物ペロブスカイトとのブレンドは、固体ブレンド手順の文脈で理解されるであろう。
【0072】
MOFおよび金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、当業者に公知の任意の手段によってブレンドされ得る。本発明の目的のために、ブレンドには、拡散ブレンド、対流ブレンド、およびせん断ブレンドが含まれ得る。従って、いくつかの実施形態において、MOFおよび金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、特定の形態で提供され、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、パドルブレンダー、プラウ(plow)ブレンダー、スクリューブレンダー、およびドラムブレンダーのうちの1つまたは複数の手段によってブレンドされる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ブレンドは、高エネルギーブレンドである。例えば、高エネルギーブレンドは、ボールミル粉砕によって実現され得る。有益には、ボールミル粉砕により、同時に粉砕とブレンドを行うことが可能になり、MOFおよび金属ハロゲン化物ペロブスカイトが微粒子として存在する高度に均質な前駆体ブレンド物が、得られる。当業者であれば、本発明の目的のためにMOFおよび金属ハロゲン化物ペロブスカイトのボールミル粉砕を実行するための適切な操作条件を、容易に特定することができるであろう。
【0074】
本発明の方法はまた、前記MOFが液化するように前駆体ブレンド物を焼結すること、を含む。
【0075】
MOFは「液化」するので、焼結は、前記MOFが固液転移する温度範囲内で、かつMOFの分解温度未満で前記前駆体ブレンド物を加熱することを含むと理解される。所定のMOFについて、当業者は、例えば特定のMOFについて文献で入手可能な固液転移温度に基づいて、利用可能な焼結温度の適切な範囲を特定することができるであろう。
【0076】
当業者は、適切な焼結温度を考案する際に、追加的な検討を行うことができる。本明細書で説明したように、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは加熱すると容易に多形転移を起こす。温度が上昇すると、光不活性で商業的利用に無関係な相(六方晶δ-相、「黄色」相とも呼ばれる)から、光活性で商業的利用に関連する相(すなわち、α-相、β-相および/またはγ-相、「黒色」相とも呼ばれる)に転移する。したがって、所与の金属ハロゲン化物ペロブスカイトについて、ペロブスカイトが光学的に活性なα-相、β-相および/またはγ-相のいずれかに変換するように、前記焼結温度はまた、調整され得る。
【0077】
加えて、当業者は、前記焼結温度が前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶子サイズに影響する可能性があることにも、留意し得る。一般に、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶子サイズは、焼結温度が高いほど大きくなることが観察されている。金属ハロゲン化物ペロブスカイトの光電子特性も結晶子サイズに依存するため、焼結温度を選択して金属ハロゲン化物ペロブスカイトの電子バンドギャップを調整することができる。例えば、より高い焼結温度は、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトのPL極大の赤方偏移を引き起こすことが観察されている。所与の金属ハロゲン化物ペロブスカイトについて、当業者であれば、特定の電子バンドギャップ値を生成することを目的とした特定の焼結温度を決定することができるであろう。
【0078】
MOFおよび金属ハロゲン化物ペロブスカイトの構造に対する焼成温度の効果に関して本明細書でなされた考察は、MOFおよび金属ハロゲン化物ペロブスカイトの適切な組み合わせを特定するための指針を提供することができる。例えば、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの目標結晶相および/または結晶子サイズは、焼結温度の範囲を規定し得る。従って、好適なMOFは、焼結温度の範囲に重なる温度ウィンドウ内で固液転移を示すものであろう。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記前駆体ブレンド物は、少なくとも約100℃の焼結温度まで焼結される。例えば、前記前駆体ブレンド物は、少なくとも約125℃、少なくとも約150℃、少なくとも約175℃、少なくとも約200℃、少なくとも約225℃、少なくとも約250℃、少なくとも約275℃、少なくとも約300℃、少なくとも約325℃、少なくとも約350℃、少なくとも約375℃、少なくとも約400℃、少なくとも約425℃、または少なくとも約450℃の焼結温度まで焼結され得る。いくつかの実施形態において、前記前駆体ブレンド物は、約150℃~約500℃、例えば約150℃~350℃の焼結温度まで焼結される。
【0080】
MOFが液化すると、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトがコーティングされる。これにより、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの周囲に連続的なMOF-ペロブスカイト界面が形成され、効果的な表面不動態化と安定化が実現する。前記MOFは液状であるため、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトをコーティングして、界面での広範かつ密接な結合を促進することができる。その結果、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面不動態化は、結晶性MOFを含む従来提案されている基材を使用することによって実現できるものよりも、効果的である。
【0081】
本発明の方法はまた、液化MOFをガラス化してMOFガラス複合体を形成するように、焼結された前記前駆体ブレンド物をクエンチすることも、必要とする。
【0082】
本明細書で使用する場合、「クエンチ」という用語は、液化MOFのガラス化を確実にするのに十分な速度でのクエンチを意味すると理解される。この文脈において、「ガラス化(vitrify)」という用語および「ガラス化(vitrification)」などの対応する用語は、クエンチによって促進される液体から固体への転移により、液相に特徴的な分子無秩序が固化して固体の非晶質ガラス相になるプロセスを示す。これは、冷却によって促進される液体から固体への転移が結晶化をもたらすプロセスとは対極のプロセスとして理解されるであろう。
【0083】
当業者であれば、液体MOFを固体非晶質MOFに固化させるのに有効な最小クエンチ速度を容易に決定できるであろう。クエンチによって液体MOFのガラス化が促進される限り、前記クエンチ速度は特に限定されない。
【0084】
前記クエンチ速度は、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面不動態化を最大化するように調整され得る。この点に関して、より高いクエンチ速度は、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトにおけるより低い電子トラップ状態密度と相関することが観察されている。この相関関係は、例えば、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトのフォトルミネッセンス特性を調整するために使用され得る。その点で、クエンチ速度が高ければ、前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトの量子収量が高くなり、励起子寿命が長くなる。
【0085】
例えば、本発明の方法において、前記焼結前駆体ブレンド物は、少なくとも20℃/分のクエンチ速度でクエンチされ得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、前記焼結前駆体ブレンド物は、少なくとも約50℃/分、少なくとも約100℃/分、少なくとも約250℃/分、少なくとも約500℃/分、または少なくとも約1,000℃/分のクエンチ速度でクエンチされ得る。
【0087】
クエンチによって液体MOFがガラス化される限り、クエンチをどのように行うかについても特に限定はない。例えば、クエンチは、極低温(Cryogenic)クエンチであってもよい。当業者であれば分かるように、極低温クエンチは、焼結された前記前駆体ブレンド物を液体アルゴン、ヘリウム、または窒素などの極低温液体の液浴に浸漬することを含む。極低温クエンチは、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの電子トラップ状態の密度を最小限に抑えるのに特に効果的であることが証明されている。
【0088】
本発明によるMOFガラス複合体は、MOFと金属ハロゲン化物ペロブスカイトという2つの関連する機能性材料ファミリーの間の最適なスポット(sweet spot)を提供し、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの実用化および開発におけるいくつかの重要な障害に対処する。本明細書で開示するMOFガラス複合体は、無機マトリックスの堅牢性と高分子基材の加工性を兼ね備えており、液相での反応性により、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面欠陥を容易に不動態化することができる。
【0089】
実用的な注目点として、本発明のMOFガラス複合体は、広い色域を有する明るい励起子発光を示すことができ、アグレッシブな外部条件にさらされた場合に、顕著な化学的安定性、形態学的安定性、および機械的安定性を示すことができる。例えば、本発明のMOFガラス複合体は、水中で10,000時間超にわたって安定なフォトルミネッセンスを顕著に示すことができる。
【0090】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトが多分散粒子の形態で提供される場合、前記MOFガラス複合体は、改善された全光散乱およびアウトカップリング効率を示し、これは、液晶ディスプレイにおけるダウンコンバート層などの用途に有用である。
【0091】
さらに、MOFガラス複合体を製造する提案されたメカノケミカル法は、本質的に単純で柔軟性がある。この方法はまた、化学量論的で、安価で、適度に純粋な前駆体から、最小限の溶媒消費でMOFガラス複合体を調製することができる。その結果、提案された方法は、大量生産に向けて容易に拡張可能である。
【0092】
本発明の具体的な実施形態および態様を、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0093】
実施例1:ガラスの前駆体としてのZIFとペロブスカイトの合成
化学薬品はすべてSigma Aldrichから購入し、特に明記しない限りさらに精製せずに使用した。塩化セシウム(CsCl、99.9%)、臭化セシウム(CsBr、99.9%)、ヨウ化セシウム(CsI、99.9%)、塩化鉛(II)(PbCl2、99.999%)、臭化鉛(II)(PbBr2、99.999%)、ヨウ化鉛(II)(PbI2、99%)は、無機ハロゲン化鉛ペロブスカイトの作製に使用した。ハイブリッドペロブスカイトの作製には、ヨウ化ホルムアミジニウム(Formamidinium iodine)(FAI、99% Greatcell Solar Materials Pty Ltd)を用いた。酸化亜鉛(ZnO、ナノパウダー100nm未満)、酢酸亜鉛(Zn(OAc)2、99.99%)、硝酸コバルト(II)六水和物(Co(NO3)2-6H2O、98%)、イミダゾール(Im、99%超)およびベンズイミダゾール(bIm、98%)を、ZnおよびCo ZIF合成に使用した。溶媒には、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、99.8%超)、ジメチルスルホキシド(DMSO、99.7%超)、ジエチルエーテル(99.7%超)、トルエン(無水、99.8%)、クロロホルム(99.5%超)、およびエタノール(99.5%超)を用いた。銀の光析出にはAgNO3(99.0%超)を用いた。ガスはすべて、Coregas Pty Ltdから提供された。
【0094】
ZIF-62結晶粉末
ZIF-62[Zn(Im)1.95(bIm)0.05]の製造のために、162.8mg(2.00mmol)のZnO、265.6mg(3.90mmol)のイミダゾール、および11.8mg(0.10mmol)のベンズイミダゾールを、ボールミル粉砕ジャーに加えた。次いで、150μLのDMFおよび15mg(0.19mmol)のNH4NO3を、16gの酸化ジルコニウムボールとともに加えた。ボールミル粉砕は遊星ボールミル粉砕機を用いて600RPMで1時間行った。他のIm:bIm化学量論比を有するZIF結晶を、対応する量の配位子を用いて作製した。作製したZIF-62結晶を、メタノールで短時間リンスし、さらに使用する前に80℃のオーブンで24時間乾燥させた。
【0095】
Co-ZIF-62結晶粉末
硝酸コバルト六水和物(1.15g、3.95mmol)およびイミダゾール(891mg、13.09mmol)を、90mLのDMFに1時間撹拌して溶解した(2)。次いで、12mg(0.10mmol)のベンズイミダゾールを溶液に加え、130℃で72時間加熱した。生成物を室温まで冷却し、遠心分離により結晶を収集した。DMF中での洗浄-再分散サイクルを3サイクル実施し、未反応の配位子をすべて除去した。次いで、サンプルを150℃のオーブンで一晩乾燥させた。後続のボールミル混合プロセスでの非晶質化を最小限に抑えるために、完全な脱溶媒は行わなかった。
【0096】
無機ハロゲン化鉛ペロブスカイト
CsPbCl3、CsPbBr3、CsPbI3および混合イオンペロブスカイトは、無溶媒のメカノケミカルプロセスによって作製された。例えば、CsPbI3の合成では、CsI(144.17mg)およびPbI2(255.83mg)の化学量論的混合物合計400mgを、16gの酸化ジルコニウムボールとともにボールミル粉砕ジャーに加えた。ボールミル粉砕は遊星ボールミル粉砕機を用いて600RPMで1時間行った。次いで、固体サンプルをジャーから回収し、さらなる試験を行う前に周囲条件下で保管した。他のすべての無機ペロブスカイトは同様の手順で調製され、化学量論的前駆体の総量は400mgであった。
【0097】
示差走査熱量測定(DSC)により、予想される可逆的な「黄色」/「黒色」相転移が約325℃と250℃で確認された。エンタルピー変化は23.7J/gであった(
図1)。CsPbI
3の熱重量分析(TGA)トレースは、約460℃で分解するまで特徴がなかった(図示せず)。
【0098】
ハイブリッドハロゲン化鉛ペロブスカイト
FAPbI3も、メカノケミカルプロセスによって作製した。108.7mgのFAIおよび291.3mgのPbI2をボールミル粉砕ジャー内で混合し、これに200μLのヘキサンおよび12gの酸化ジルコニウムミリングボールを加えた。メカノケミカル反応は、Ar下、800RPMで15分間行った。次いで、固体サンプルを収集し、さらなる試験を行う前に周囲条件下で保管した。
【0099】
実施例2:MOFガラス複合体の作製
ZIFガラス複合体の作製には、ZIF-62結晶またはZIF-62非晶質ガラスのいずれかを使用した。ZIF結晶を、作製したまま使用し、ZIFガラス(agZIF-62)を、アルゴン(Ar)保護下で管状炉にて、ZIF-62結晶のそれぞれの融解温度で溶融した。典型的な手順では、50mgのCsPbI3ペロブスカイトを150mgのagZIF-62とボールミル粉砕により600RPMで1時間混合した。得られた混合物は、(CsPbI3)(agZIF-62)(25/75)と呼ばれ、ここで、25および75は各成分の質量パーセントである。
【0100】
次に、作製した混合物を管状炉に入れ、Ar流保護下で20℃/分の昇温速度で熱処理した。サンプルが所定の温度に達すると、管全体を直ちに炉から取り出し、特に断りのない限り、Ar保護下で極低温(液体窒素)でクエンチした。得られた複合材料は、例えば(CsPbI3)0.25(agZIF-62)0.75のように、(ペロブスカイト)X(agGlass)Yと呼ばれた。純粋なペロブスカイトサンプルも、ベンチマークとして同じボールミル粉砕と熱処理手順に供した。
【0101】
熱分解を最小限に抑えるため、CsPbI3はZIF-62結晶の代わりにZIF-62ガラス粉末(agZIF-62と表記)を用いて焼結した。agZIF-62では、固有のZIF液相にアクセスするには、結晶ZIF-62よりも低い温度が必要となる。さらに、液相焼結の際、混合粉末は通常、いずれかの構成化合物のTm/Tgよりも大幅に低い固相線温度を超える温度で、液固混合物を形成することが観察される。
【0102】
ボールミル粉砕を用いて、CsPbI3およびagZIF-62[Zn(Im)1.95(bIm)0.05](Tm約375.0℃、Tg約303.8℃)をホモジナイズし、得られた混合物を(CsPbI3)(agZIF-62)(X/Y)と呼ばれ、ここで、XおよびYは各成分の質量パーセントである。混合物を、20℃/分で異なる温度(最高350℃)まで焼結し、Ar下で極低温クエンチした。得られた複合体を、(CsPbI3)X(agZIF-62)Yと名付けた。
【0103】
実施例3:XRD特性評価
室温粉末XRD分析は、発散(Bragg-Brentano)形状のCu Kα放射を使用し、Bruker D8 Advance MKII回折計で収集した。2θの範囲は5~50°、ステップサイズは0.02°、ステップ速度は10sであった。温度分解in situ粉末XRDは、窒素環境のAnton Paar XRD900炉を備えたPANalytical X’Pert Pro MPDで実施した。発散(Bragg-Brentano)形状のCu Kα線を使用した。ランプ速度は20℃/分、2θ範囲は5~50°、ステップサイズは0.05°、ステップ速度は10sであった。
【0104】
ex-situ粉末X線回折(XRD)では、(CsPbI
3)(a
gZIF-62)(25/75)は、PbI
2およびδ-CsPbI
3からのBraggピークを示した(
図2)。より高温焼結で作製した(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75では、これらの特徴は徐々に減少した。出現したピークは準安定γ-CsPbI
3相に割り当てられ、これは350℃からのクエンチ後に同定された唯一の相であった(
図2)。TGAでは、焼結中の重量減少は無視できるレベルであった(図示せず)。焼結プロセスにおいて、エントラフィック応答(20.3J/g)は25重量%CSPBI
3の相転移よりも顕著であり、2相間の吸熱的相互作用の発生を示している。2回目のアップスキャンでは、a
gZIF-62と比較して(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75のより低いTg282.5℃が、確認された。
【0105】
Australian Synchrotronの(SAXS/WAXS)ビームラインでin-situシンクロトロンX線散乱データを収集した。検出器の較正は、Dectris PILATUS3 X 2Mのベヘン酸銀標準を用いて行った。散乱強度の正規化は、ビームストップに組み込まれたダイオードを用いて行った。散乱データは、波長1.12713Å(11.000keV)、q範囲0.002~0.2Å-1(検出器距離7600mm)および0.017~1.2Å-1(検出器距離700mm)で収集された。温度分解SAXSデータは、温度較正されたLinkam炉を用いて収集された。窒素流動環境下での昇温速度は20℃/分であった。
【0106】
データは、独自開発のScatterbrainパッケージを使用して1次元に縮小した。SAXSデータは、McSASソフトウェアパッケージを用いて最小モンテカルロ回帰でフィッティングした。
【0107】
実施例4:熱重量および熱量分析
熱重量分析(TGA)は、Mettler Toledo 1 STAReシステムを用いて実施した。サンプルをアルミナるつぼに入れ、窒素流(20mL/分)環境下で20℃/分の昇温速度で加熱した。
【0108】
分離したMettler Toledo示差走査熱量測定(DSC)1 STAReシステムを使用して、熱量特性を測定した。各測定において、約10mgのサンプルをアルミニウムるつぼに入れ、窒素流(20mL/分)環境下で加熱した。融解(Tm)、熱分解(Td)、および結晶相転移温度を測定するため、サンプルを20℃/分の昇温速度で目標温度まで加熱した。固液相転移温度(Tg)を測定するため、サンプルを20℃/分で融解温度超に加熱した後、10℃/分で40℃まで冷却し、2回目のアップスキャンでは10℃/分の速度で昇温した。
【0109】
実施例5:光学的特性評価
フォトルミネッセンス測定
フォトルミネッセンス(PL)および時間分解蛍光発光スペクトルを、Edinburgh Instrument FLSP-900蛍光分光光度計を用いて、室温で収集した。定常PLスペクトルは、単色化Xeランプ光源を用いて測定し、時間分解PL(TRPL)減衰は、375nmパルスダイオードレーザー励起光源を用いて測定した。
【0110】
光学特性については、a
gZIF-62からの幅広いPL発光は、CsPbI
3、すなわち(CsPbI
3)(a
gZIF-62)(25/75)と混合した後、光子の再吸収によりクエンチした。複合体は、150℃からのクエンチ後に狭い赤色PL発光を示し始め、(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75の中に準安定なδ-CSPBI
3が保存されていることが確認された。最も強いPLは275℃で得られ、(CsPbI
3)(a
gZIF-62)(25/75)の200倍を超える増加を示した(
図3)。焼結温度が高いほど、クエンチ後のPL極大はレッドシフトし、紫外-可視吸収スペクトルによるバンドギャップの減少と一致した(
図4)。(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75の絶対PL量子収率(QY)は、50%超に達し得る。
【0111】
焼結プロセスにより、γ-CsPbI3の欠陥密度が低下し、トラップ準位が浅くなり、均一性が向上した。このことは、PL半値全幅(FWHM)が徐々に減少し、光生成励起子の寿命が長くなったことから示唆される。さらに、275℃を超える温度でのPL強度の低下は、複合体内の界面相互作用の強化に起因することが示唆された。これは、ヘテロ接合における電荷分離を効果的に改善し、その結果、励起子の放射再結合を抑制する。
【0112】
一連の並行テストでは、より遅いクエンチ(20℃/分)で作製された(CsPbI3)0.25(agZIF-62)0.75複合体は、非常に類似した傾向を示した。しかし、PLQYが低く、励起子の寿命が短いことから、形成されるトラップ状態の量が増加していることが示唆された。したがって、この後続の試験では、極低温クエンチを適用した。
【0113】
紫外-可視吸収
agZIF-62、粉末混合物および複合体の紫外-可視吸収スペクトルは、JascoV-650紫外可視分光光度計を用いて測定した。
【0114】
実施例6:ミクロ相の構造と分布
走査型電子顕微鏡(SEM)
高分解能走査型電子顕微鏡(JEOL JSM-7100F)を用い、二次電子モードと後方散乱モード(加速電圧8.0kV)の両方で、表面形態と表面付近の原子密度情報を調べた。すべてのサンプルは、30℃で乾燥させた後、短時間のプラズマ表面洗浄を行った。撮像前に表面プラチナコーティングを施した。
【0115】
二次電子(SE)モードと後方散乱(BSE)モードでの走査型電子顕微鏡(SEM)により、複合体内に重原子ナノ粒子が均一に分布していることが確認された。この複合体は、agZIF-62の固液転移温度(約285℃)より低い温度からクエンチしても連続した表面を示し、液相焼結プロセスにおいて一般的な現象である液体形成温度の大幅な低下が示唆された。
【0116】
透過型電子顕微鏡(TEM)
SEDデータは、超高分解能ポールピース、冷陰極電界放出電子銃、およびプローブ形成光学系と画像形成光学系との両方に収差補正器を備えたJEOL ARM300CF(Diamond Light Source、英国)、を用いて、取得した。装置は200kVで作動した。プローブ形成光学系の収差補正器をオフにし、10μmのコンデンサー絞りを使用して、収束半角<1mrad、回折限界プローブ径約5nmのナノビーム構成を得た。プローブ電流はファラデーカップを使用して測定し、約3.5pAであり、露出時間はプローブ位置ごとに1msであった。ディスク状プローブを仮定した推定電子フルエンスは、約10e-Å-2であった。回折パターンは、512×512ピクセルのMerlin-Medipixハイブリッド計数型直接電子検出器(Quantum Detectors、英国)を用いて、すべてのプローブ位置で取得されたが、これらの実験では、直接ビームは単一の256×256象限の中心付近に配置された。環状暗視野STEM画像は、SED取得後に同じ領域から専用のADF検出器で取得した。X線エネルギー分散型分光法(EDS)マップも、SEDの取得に続いて、選択した同一領域から取得した。EDSマッピングでは、十分なX線カウントを生成するために、150μmのコンデンサー絞りを使用して大きなプローブ電流を得た。
【0117】
SEDデータは、pyxem-0.10.0で処理した。全データセットからアクティブ象限を切り出した。スキャンステップサイズと回折パターンのピクセルサイズの較正は、複合サンプルと同じ条件で取得したラテックス球(Ted Pella)を備えた500nmのゴールド回折格子レプリカを用いて行った。SEDデータは、オープンソースのPyXem Pythonライブラリを用いて処理され、回折パターンの不鮮明さの少ないバージョンから不鮮明なバージョンの回折パターンを差し引くガウス差分法を用いて、測定されたすべての回折パターンから回折ピークを検出した。EDSデータは、オープンソースのHyperSpy Pythonライブラリを使用して処理され、エネルギーウィンドウを積分して抽出された対象の各X線輝線のマップが作成された。クロスグレーティングデータは、試料後の光学系に起因する回折パターンの残留楕円歪みを決定するためにも使用された。
【0118】
電子線トモグラフィーと点回折実験は、「X-FEG」高輝度電子源とOneView(Gatan)CMOSカメラ(University of Leeds、英国)を取り付けたFEI Titan3 Themis(Thermo Fisher)を用いて取得した。装置は300kVで動作した。マイクロプローブモードで50μmのコンデンサー絞りを用い、推定収束半角約0.6mradのナノビーム構成を得た。プローブ電流は蛍光体スクリーン上で7pAと測定され、0.5秒の露光で回折パターンが取得された。一連の点回折パターンは、ADF STEM画像を取得した後、ビームをブランキングし、選択した点位置にビームを配置し、他のビーム照射を最小限にするために、ビームのブランキングを解除し、記録し、再度ブランキングすることによって取得した。点回折データ取得後に再度ADF-STEM画像を取得し、選択した点を登録するためのサンプル位置におけるドリフトを評価した。続いて、同じ光学配置で-70℃から+70℃まで1°刻みで傾斜シリーズを取得した。
【0119】
点回折データも同様にpyxem-0.10.0を用いて処理した。462.9nm(2160ライン/mm)のゴールド交差格子レプリカからの回折は、点回折に使用される条件下で取得されたが、多結晶リングパターンを記録するためにビームをサンプル全体に手動でシフトさせながら、拡張カメラ取得(extended camera acquisition)を行った。STEMスキャンのステップサイズと回折パターンのピクセルサイズの較正、および楕円歪みの補正は、OneViewカメラの点回折実験用に挿入されたビームストップに合わせて、SEDで使用されたルーチンに従って行われた。回折パターンを再ビン化し、個々のCsPbI3結晶粒から結晶相を区別するために特徴的なd間隔を特定した。
【0120】
すべてのトモグラフィーデータは、HyperSpy Pythonライブラリで前処理された。ADF-STEMトモグラフィーでは、顕微鏡写真を傾斜シリーズデータスタックにアセンブルし、NumpyおよびSciKit-Image Pythonライブラリに実装されている相互相関法を用いて位置合わせを行った。傾斜軸は、SciKit-Image Pythonライブラリにおけるツールを用いてシフトと回転を調整した。プロジェクター用のASTRA Toolboxを使用してPythonで実装されたプライマルデュアルハイブリッド勾配(primal-dual hybrid gradient)(PDHG)アルゴリズムによる全変動(TV)正則化を用いて、再構成を行った。
【0121】
STEM-CL実験を、電子分光器と冷電界放出銃電子源を備えたLaboratoire de Physique des Solides(Universite Paris-Saclay、オルセー、フランス)の Nion Hermes200(「ChromaTEM」)電子顕微鏡を用いて、行った。この顕微鏡は、加速電圧100kV、ビーム収束半角約15mradで作動した。サンプルは、サンプルステージ用の液体窒素冷却システムを用いて約150Kまで冷却した。CLシグナルは、500nmでブレーズされた150溝/mmの回折格子を有する光学分光器を備えたAttolight Moench 4107 STEM-CLシステムを用いて収集した。ハイパースペクトル画像は、サンプルをスキャンしながら1ピクセルあたり1つのフルCLスペクトルを記録することによって得られた。典型的な滞留時間は1ピクセルあたり20msであった。分光計CCDのスペクトル分解能は0.33nm/ピクセルであった。
【0122】
TEMを適用して、(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75(300℃焼結)の微細構造をさらに調査した。環状暗視野(ADF)-STEM像は、2相間の良好な質量厚みコントラストを示し、その分布はエネルギー分散型X線分光法(STEM-EDS)に基づく予想元素分布とよく一致した(
図5(a))。結晶領域と非晶質領域は、各プローブ位置から記録された電子回折パターン内のブラッグ回折ディスクの数を合計することによって得られる走査型電子回折(SED)マッピングによって識別された。SEDマッピングは、各プローブ位置から記録された電子回折パターンのブラッグ回折ディスクの数を合計することによって得られた。結晶領域は、CsPbI
3相の分布に対応する(
図5(b))。
【0123】
SEDパターンの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)分類をさらに進めた結果、複合材料内の優勢なγ-CSPBI
3相が同定された。個々の結晶粒はほとんどが単結晶であったが、少数の結晶粒は分類において斑点とあいまいであり、おそらく界面における結晶構造の歪みか、異なる結晶粒の面外積層によるものであった(
図5(c))。(CsPbI
3)
0.25(agZIF-62)
0.75(275℃焼結)をさらに調べたところ、γ-CsPBI
3ピクセルの比率がわずかに低いものの、同様の挙動を示し、ex situXRDの結果とよく裏付けられた(
図2)。
【0124】
ADF-STEMトモグラフィーを適用して、(CsPbI3)0.25(agZIF-62)0.75(300℃焼結)の完全な大きな破片を再構成し、三次元結晶相分布を調べた。複合体の原子密度は、異なる色(CsPbI3は黄色、agZIF-62は紫色)でコード化された。液相焼結で作製された複合体には通常、空隙が含まれており、これは断面構造の再構成から観察することができる。その後のSEDデータにより、空隙付近の非ペロブスカイト型δ-CsPbI3と、充填密度の高い領域ではγ-CsPbI3とが、同定された。このことは、界面接触とCsPbI3相制御との間に相関関係があることを示している。
【0125】
カソードルミネッセンス(CL-STEM)では、孤立した粒(40nm未満)からの強く狭い発光が検出され、粒子間の発光波長のシフトはわずかであった(4nm未満)。CL強度の変動は、複合体表面からのCsPbI
3の深さに起因し得る(
図6(a)および
図6(b))。STEMでは大きな粒子が観察されたが、CsPbI
3の平均粒径は約30nmであり、焼結前に長時間ボールミル粉砕することによって、容易にさらに減少させることができる。
【0126】
SED相識別
X線回折分類のための畳み込みニューラルネットワークは、Bennettら「Melt-Quenched Glasses of Metal-Organic Frameworks」,Journal of the American Chemical Society 138,3484-3492(2016)から適応された。このネットワーク構造は、ピークの脱落やピーク強度の変化[A]に対して堅牢であることが示された。この特性は、各ピクセルの単一配向から回折が記録されるSEDデータの固有のものである。次いで、SEDデータ内のγ-CsPBI3とδ-CsPbI3とを区別するために必要なバイナリ分類問題のために、Kerasを使用してニューラルネットワークがTensorFlow(2.1.0)に実装された。ニューラルネットワークのトレーニングとテストのために、シミュレートされた2次元スポットパターンを生成し、pyxem0.11.0(17)で方位角積分(azimuthal integration)して1次元パターンに変換した。トレーニングデータは、方位角積分軸の回転を除いて、結晶方位全体にわたって均一にサンプリングすることによって生成された。テストデータは、実験合成物中に見られる未知のランダム方位をエミュレートし、方位をランダムにサンプリングすることによって生成した。トレーニングデータに対する方位のランダムサンプリングは、同等の結果をもたらした。トレーニング、テスト、実験データ間で一貫した強度範囲を確保するため、すべてのデータは最大強度を1に設定することでパターンごとに正規化された。実験パターンは、直接ビームを除外するために切り出され(cropped)、A*k-b型(kは散乱ベクトルの大きさ(Å-1)、Aおよびbはフィッティングパラメータ)のべき乗則をフィッティングすることによって拡散散乱強度を除去するために、バックグラウンドが差し引かれた。フィッティングは、ブラッグ回折スポットを示す散乱ベクトルのウィンドウの外側の低散乱角と高散乱角における拡散強度のテールを用いて行われ、Aパラメータは非負の値に拘束された。シミュレートされたパターンと実験データ間の逆空間キャリブレーションを一致させるために、まず、同じ実験条件で取得した多結晶ゴールドからのリングパターンをフィッティングしてキャリブレーションを決定し、次いで、実験データセットの最初のニューラルネットワーク分類後に特定されたγ-CSPBI3およびδ-CsPbI3のゾーン軸近傍パターンと、シミュレートされたパターンの画像レジストレーション(Matlab、MathWorks)を使用して、キャリブレーションをさらに精密化した。直接ビームはシミュレートされたスポットパターンに含まれず、一次元パターンは実験データと同じkの範囲に切り出された。
【0127】
トレーニングデータ数、隠れ層の深さ、フィルタサイズ、カーネルサイズ、ストライド、活性化関数、オプティマイザ、およびネットワークトレーニングで使用するエポック数のパフォーマンスへの影響を評価することにより、ニューラルネットワーク構造を電子回折データ用に最適化した。ネットワークのパフォーマンスは、シミュレートされたテストデータを用いた分類精度として評価され、ネットワーク性能のプラトーが観察されるまでパラメータが変更させた。最適化されたアプローチ(1000パターンをテストデータとした場合のネットワーク精度98%超)では、トレーニングデータとして1000のシミュレートパターン(各結晶相について500)、4つの一次元畳み込み層、4つの畳み込み層の各フィルタサイズ32(カーネルサイズとストライドの両方を(8,5,3,3)に設定)、Adamオプティマイザ、トレーニング用に100エポックを使用した。実験への適用では、結晶化度マップに閾値を適用することで、ブラッグ散乱を含むピクセルを分離した。次いで、パターンを分類し、ニューラルネットワークによって決定された確率的予測(0~1)を使用して、元のピクセル位置に位相マップを生成した。可視化の目的で、結晶分類から除外されたピクセルは、その位置で記録されたブラッグ散乱がないため、真空、炭素膜、またはagZIF-62に割り当てられたピクセルなど、明確な強度と色の値に設定された。
【0128】
ニューラルネットワークの分類は、各クラス内のすべてのピクセルからの正規化パターンを合計することで検証した。その結果、平均化されたパターンは、γ-CSPBI3相とδ-CsPbI3相との間の予想される差異(固有の散乱ベクトル)に対応した。高い信頼性を持って手動でインデックス付けできる高対称ゾーン軸付近の実験パターンをさらに検査したところ、分類結果がさらに裏付けられた。結晶位相マップにはいくつかのスペックルが観察され、これらの領域を調べると、これらはブラッグ散乱スポットがほとんどない結晶方位に対応することがわかり、本質的に曖昧な分類となった。SEDデータをピクセルごとに手動で検査すると、すべての結晶が単結晶回折パターンを示し、個々の結晶粒間で方位または位相に大きな変化は見られなかった。
【0129】
実施例7:焼結中の構造変化
(CsPbI
3)(a
gZIF-62)(25/75)の温度分解in situ粉末X線回折(XRD)を収集した(
図7(a))。約150℃から現れたピークはα-CSPBI
3(Pm-3m)の形成を示し、ピークは焼結温度が高くなるにつれて強まった。計算されたα-CsPbI
3結晶子サイズは、焼結温度が高いにつれて大きくなり(
図7(b))、STEMの結果(
図5および
図6)との良好な一致を示した。クエンチ段階(
図7(a))では、約35°(d=2.6Å)の回折ピークが約200℃から徐々に消失したことから、[PbI
6]
4-八面体の傾斜とγ-C
SPBI
3(Pbnm)の形成が示唆された。
【0130】
同様の温度依存的な結晶構造の進化が、放射光小角X線散乱(SAXS)のin situ測定(0.5~1.2A
-1)によって、観察された。特に、SAXS(0.002~0.5A
-1)により、複合体内の主な散乱相である小さなCsPbI
3(10nm未満)について、約160℃から徐々に粗大化することが明らかになった(
図7(c))。これに対して、純粋なa
gZIF-62またはCsPbI
3は、300℃に達するまではほとんど粗大化しなかった。さらに、175℃超で複合体の急速な緻密化が観察されたが、これは液相焼結中に固相温度を超える液体と固体の混合物が存在するためと考えられる。
【0131】
複合焼結中にCsPbI3の結晶構造転移と結晶粒の粗大化のカスケードが起こった。固相線温度を超える粘性の高い液体-固体混合物は、δ-CSPBI3の表面エネルギーを増加させ、溶媒変調されたCsPbI3量子ドットまたは配位子でキャップされたCsPbI3量子ドットの場合と同様に、α相への相転移を促進した。界面エネルギーの寄与がより大きい、小さな結晶粒は、より低い温度で相転移した。より嵩高い粒は、相転移エネルギー障壁を低減し、粘性液体との界面接触を密にするために、より高い温度を必要とした。液相の存在もCsPbI3結晶粒の拡散と凝集を可能にするが、拡散抵抗が大きいため、主に小粒子の場合に起こる。
【0132】
したがって、前記複合体は、焼結温度に依存したα相結晶子サイズプロファイルを示し、その後、量子閉じ込め効果により、クエンチ後のバンドギャップが調整可能であった。本発明者らは、界面接触を密にすることが位相制御に重要であると予想した。Zn(Im)1.55(bIm)0.45]agZIF-62では、おそらくより高い固有のTg(約309.3℃)およびより嵩高いbIm配位子による粘性のため、δ-CSPBI3およびPbI2が最終的な複合体内にかなり残存していた。
【0133】
実施例8:動的特性および界面結合
放射光テラヘルツ遠赤外(THz/Far-IR)吸収分光法
THz/Far-IR吸収スペクトルは、Australian SynchrotronのTHz/Far-IRビームラインで、Bruker IFS 125/HR Fourier Transform(FT)分光計を用いて収集した。ボロメータは信号対雑音比を改善するために液体ヘリウムで極低温条件下に保たれ、厚さ6μmのMultilayer Mylarビームスプリッターが使用された。
【0134】
測定には減衰全反射(ATR)を用いた。サンプルを、ダイヤモンド結晶窓の表面に取り付け、圧力を加えて位置を保持した。温度分解されたin situスペクトルを、ATR加熱ステージで収集し、サンプルをAr流下(約20mL/分)で保った。データ処理には、OPUS 8.0ソフトウェアの拡張ATR補正アルゴリズムとNumPyモジュールv1.15、およびPython v3.5を、スペクトルデータの補正とピークフィッティングに適用した。
【0135】
振動挙動のコンピューター計算
Gaussian 16を用いて標準的な計算化学計算を行った。分子種を用いて、材料系の主要な対象コンポーネントをモデル化した。これらの分子種には、本発明者らの以前の研究と同様に、3つのイミダゾールアニオンと1つのベンズイミダゾールアニオン誘導体とのZnの錯体が含まれる。さらに、3つのイミダゾールアニオンと1つのヨウ化物とのZnの類似錯体も調べた。これらの錯体はすべて全体の電荷がマイナス2であり、Zn(II)種に相当する。これらの分子モデルの形状は、ヨウ素を除くすべての元素について、B3-LYP法と6-31+G(d,p)基底関数セット(basis set)を用いて最適化され、ヨウ素についてはdef2-SVP基底セットが用いられた。調和振動周波数も同じ理論レベルで得られた。シミュレートされた赤外スペクトルは、各ピークを半値幅10cm-1のガウスバンドと仮定して行った。ヨウ化物錯体については、複数の立体配座がサンプリングされ、報告されたスペクトルは、これらのコンフォーマー(conformers)のスペクトルの平均に対応する。
【0136】
X線光電子分光法
サンプル表面の化学的性質は、Kratos Axis Ultra XPSを用い、モノAl Kα(1486.6eV)、150W(15kV、10mA)で検査した。この装置には、165mmの半球型電子エネルギー分析器が装備されていた。C1sのピーク位置は284.8eVに設定され、内部標準として使用された。
【0137】
ラマン分光法
ラマンスペクトルは、Renishawラマン顕微鏡と分光計を用いて測定した。すべてのサンプルは785nmのレーザー光で励起された。強い蛍光によって引き起こされるバックグラウンドノイズの影響を軽減するため、5サイクルのデータ収集を行った。
【0138】
固体NMR
固体NMR実験は、1.6mmHXY FastMASプローブと3.2mmHX CPMASプローブを用いて、600 MHz Varian NMRシステムで行った。3.2mmプローブを使用して、Zn[(Im)1.95(bIm)0.05]シリーズのサンプルを測定した。特に明記しない限り、サンプルのスピン周波数は20kHzであった。133CsのMAS NMRスペクトルは、1μsの短い励起パルスで測定された。スキャン数は1000~1500で、繰り返し遅延は60秒であった。207Pb MAS NMRスペクトルは、Hahnエコーパルスシーケンスで記録され、1回転周期のパルス間遅延が使用され、繰り返し遅延は1秒であった。
【0139】
1.6mmプローブでは、スピニング周波数は32kHz、π/2パルス長は2.2μs、スキャン数は226,000であった。3.2mmプローブでは、スピニング周波数は20kHz、π/2パルス長は2.9μs、スキャン数は100,000であった。1H-13C交差分極(CP)MAS実験は、2.6μsのπ/2パルスによるプロトン励起、4msのCPブロック、高出力XiXプロトンデカップリングによる信号取得から構成された。繰り返し遅延1秒で、合計約10,000~50,000スキャンを収集した。1H-15NのCP MAS実験では、CPブロック長は3ms、繰り返し遅延は0.5秒、スキャン数は450,000であった。13C、15N、133Cs、207Pbのラーモア周波数は、それぞれ150.72MHz、60.76MHz、78.62MHz、125.40MHzであった。対応するスペクトル軸は、それぞれテトラメチルシラン、ニトロメタン、硝酸セシウム、およびテトラメチル鉛のシグナルを基準にした。
【0140】
結果の考察
分子ルイス酸/塩基およびイミダゾリウムイオン化合物は、表面結合を形成することによって、LHP相の安定性を高め、表面欠陥を不動態化することができる。したがって、(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75内の界面相互作用を理解するために一連の研究を行った。温度分解放射光テラヘルツ(THz)FarIR振動分光法により、ZIFの動的特性とCsPbI
3フォノンモードを直接調べることができた。(CsPbI
3)
0.25(agZIF-62)
0.75内のZIFでは、2次微分スペクトルによりZn四面体の微細振動モードが明らかになった(
図8(a))。
【0141】
密度汎関数理論(DFT)によってZn(Im)2(bIm)I四面体のZn-N振動に割り当てられた約290cm-1のモードは、150℃から温度が高くなるにつれて強まり始めた(点線)。135cm-1に現れるピークも、DFTではZn-I伸縮振動と一致した。さらに、これらの出現した特徴は、冷却中および2回目の加熱サイクル中もほとんど変化しなかったことから、固相線温度(約150℃)を超えて、CsPbI3と液体ZIFとの間に界面結合が形成されたことが示唆された。
【0142】
界面結合はまた、CsPbI3固有のフォノンモード(Pb-I-Pb変角およびPb-I伸縮)を焼結中の約150℃から崩壊させ始め、純粋なCsPbI3のこのようなフォノンモードは、300℃の焼結後でも維持される。焼結による界面結合の形成の可能性は、ex situX線光電子分光法(XPS)およびラマン分光法でも確認され、すべての元素(XPSではCs、Pb、I、Zn、およびN)のピークシフトとイミダゾレート振動(ラマンでは約1170cm-1)のピークの広がりが示された。
【0143】
同位体特異的であるため、NMR分光法は粉末混合物および複合体を構成する異なる化学種についての選択的な洞察が得られる。複合体の13Cおよび15NNMRスペクトルは、粉末混合物の対応するスペクトルよりも広いシグナルを示し、ZIFガラスのさらなる無秩序を示した。
【0144】
agZIF-62の焼結条件と固液遷移温度は複合体の207PbNMRスペクトルにほとんど影響を及ぼさなかったが、133CsMAS NMRスペクトルはこれらの条件に大きく依存した。混合粉末のスペクトルは両方とも、δ-CsPbI3(260ppm)、CsI(290ppm)の狭いシグナルと、結晶性が低く欠陥の多いCsPbI3に属する0から約350ppmの低いブロードなシグナルを示す。複合体に関しては、幅広い寄与とCsIのピークは減少し、主要なシグナルはγ-CsPbI3に由来する。2つの複合体のδ-相/g-相の比率の違いは、焼結温度とagZIF-62のbIm含有量の前述の影響を一致させた。複合体におけるγ-CsPbI3ピークは160ppmと80ppmとの間に顕著なショルダーを示した。これは複合体のγ-CsPbI3粒子内に化学的環境が大きく分布していることを示唆しており、界面からの大きな影響がγ-CsPbI3粒子の内部に向かって伝播している可能性がある。
【0145】
agZIF-62、(CsPbI3)(agZIF-62)(25/75)、および(CsPbI3)0.25(agZIF-62)0.75サンプルのX線全散乱パターンを調べた。混合粉末の比較的弱いブラッグ回折ピークは複合体形成後に強まった。データ補正と構造因子S(Q)の逆フーリエ変換後にX線PDF、D(r)を抽出した。agZIF-62およびシミュレートされたγ-CsPbI3の短距離から長距離の振動は、複合体中でよく保存されていた。このことは、複合体内のバルク相に固有の構造が保持されていること、および化学環境の変化は主に界面領域で生じたことを示唆している。
【0146】
CsPbI3の擬立方晶相は、ブリルアンゾーンの中心にダブルウェルフォノンモードを有し、協調フォノン方式でδ-CsPbI3への相転移を促す。界面結合は、局所的なPb-I副格子フォノンモードと振動の調和性を乱すため、調和秩序-無秩序エントロピーを回避する。さらに、CsPbI3はイオン電荷が低く原子間距離が大きいため結晶格子エネルギーは低いが、界面結合によりはるかに高いエネルギーが期待できる。マトリックスによる物理的閉じ込め効果とともに、これらの態様が、原子配位の完全な再構築を妨げているので、γ相からδ相への相転移の強力な駆動力に対抗し、複合材料内で準安定なγ-CsPbI3を維持する。
【0147】
LHPは構造欠陥に対する耐性が高いが、形成エネルギーが低いため、ショットキー型Csサイト空孔およびハロゲン化物空孔がかなりの濃度で存在することが予想され、非放射性励起子再結合を引き起こす可能性がある。結晶性が向上することから示唆されるように、焼結はバルクの結晶欠陥を効果的に減少させることができる。界面相互作用は、CsPbI3表面の配位不足のPb/ハロゲン化物サイトおよび負に帯電したPb-ハロゲン化物アンチサイトをさらに不動態化することができる。
【0148】
ZIF-62液体は、ルイス塩基配位子(p-共役を有するイミダゾレートおよびベンズイミダゾレート)とルイス酸部位(配位不足のZnノード)の両方を特徴とし、CsPbI3におけるルイス酸と塩基の両方の欠陥を不動態化する。さらに、Zn-I相互作用は、ハロゲン化物のp-p反結合状態によって引き起こされる格子間欠陥を緩和する可能性がある。Znのs軌道準位が低いと、欠陥が浅くなり、ショックレーリードホール統計に従う正孔の脱トラップ率が促進される可能性がある。
【0149】
実施例9:ZIFガラス複合体
CsPbX3(X=Cl、Brおよび混合ハロゲン化物イオン)を用いて、液相焼結の多用途性を調べた。
【0150】
複合材料は、狭いPLピーク(FWHM:20.4~45.1nm、
図9)を有する広い色域を示した。CsPbCl
3、CsPbCl
2BrおよびCsPbCl
1.5Br
1.5複合体のショルダーピークの存在は、agZIF-62からの発光に起因すると考えられる。25重量%のCsPbX
3複合材料の絶対PL強度は、合成したまま、あるいは同一のボールミリング粉砕と275℃への焼結処理を行った後の、対応する純粋なCsPbX
3サンプルよりも少なくとも2桁高かった。純粋なCsPbX
3の幅広で非対称なPLピークは、ハロゲン化物イオンの偏析を示しており、これも複合体では抑制された。この複合体製造は、ハイブリッドLHPにも拡張でき、Coベースのa
gZIF-62は、FAPbI
3(FA:ホルムアミジニウム)の準安定黒色相を周囲条件で保持することができ、赤色から赤外領域でPL発光を示した。
【0151】
実施例10:実際の応用例
疎水性で機械的に堅牢なa
gZIF-62は、ペロブスカイトを十分に保護することができる。(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75のPLスペクトルは、好ましくない光誘起移動が抑制されるため、100サイクルの繰り返し測定中、ほぼ不変であった。複合体は、ポリプロピレンキャップがある程度の膨潤を示した場合でも、様々な非極性、極性プロトン性、極性非プロトン性有機溶媒中での長時間(約20時間)の超音波処理に耐えることができ(
図10(a))、複合体は10,000時間浸漬後でも水に対する耐化学性を示した(
図10(b))。
【0152】
穏やかな加熱も複合体にほとんど影響を与えなかった。Ar中で100℃、または大気中で80℃に加熱することを1000サイクル繰り返しても、光学特性が大きく損なわれることはなかった。加工可能で剛性の高い基板により、複合体をさまざまな巨視的構造に成形することが可能になった。したがって、CGCは安定したPL LEDの作製に有望であることを示した。
【0153】
a
gZIF-62(
図11)の微細性により、重量に対してPb
2+の10倍という高い吸着容量が可能になった。したがって、(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75ガラス複合体は、自己Pb隔離性を示し、10,000時間浸漬試験後の水相中のPb
2+濃度は、誘導結合プラズマ-発光分光分析(ICP-OES)による検出限界の0.5ppmを下回った。
【0154】
水中での安定性と安全性により、液体光触媒の大きな可能性が開かれる。実証として、(CsPbI
3)
0.25(a
gZIF-62)
0.75は、波長520nm超の可視光で励起すると、水中のAgイオンを効果的に還元できるが、純粋なガラスはこの低い励起エネルギーでは光活性を示さなかった(
図12(a)および
図12(b))。
【0155】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、「含む(comprise)」という用語、および「含む(comprises)」や「含んでいる(comprising)」などの変形は、記載された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外することを意味しないものと理解される。
【0156】
本明細書における先行公開物(またはそれに由来する情報)または公知の事項への言及は、その先行公開物(またはそれに由来する情報)または公知の事項が、本明細書が関係する同種の技術分野における共通の一般知識の一部を形成していることを認めるものではなく、またそれを示唆するものでもない。
【国際調査報告】