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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】凝集体分離方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20240910BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C07K16/00
C07K1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513839
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 AU2022051067
(87)【国際公開番号】W WO2023028654
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】2021902839
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522003486
【氏名又は名称】テリックス ファーマシューティカルズ (イノベーションズ) ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スターリット、オリヴァー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ウィートクロフト、マイケル ポール
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
(57)【要約】
本開示は、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去する方法を提供する。前記方法は、前記組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む1つ以上のろ過ステップを前記組成物に対して行って、前記タンパク質が前記膜を通過することを実質的に可能としながらも前記凝集体の少なくとも一部を前記膜に選択的に吸着させることを含む。凝集体除去のための好ましいタンパク質組成物は、キレートリガンドに結合された抗体を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去する方法であって、
前記組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む1つ以上のろ過ステップを前記組成物に対して行って、前記タンパク質が前記膜を通過することを実質的に可能としながらも前記凝集体の少なくとも一部を前記膜に選択的に吸着させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記タンパク質は、結合した(conjugated)化学部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合した化学部分がキレートリガンドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記キレートリガンドが、デフェロキサミン(DFO)及び1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質がタンパク質標的指向剤(protein targeting agent)を含む、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質は抗体を含む、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質は、ギレンツキシマブ又はHuJ591を含む、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記酢酸セルロース膜は、約0.015m~約0.6mのサイズを有する、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記酢酸セルロース膜は、平均直径が約0.2μm~約0.8μmである孔を含む、請求項1~8のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
各ろ過ステップにおける前記液体は、独立に、約4.0~約8.0のpHを有する、請求項1~9のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
各ろ過ステップにおける前記液体キャリアは、独立に、水溶液である、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
各ろ過ステップにおける前記液体キャリアは、独立に、緩衝溶液である、請求項1~11のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ろ過ステップの各々は、独立に、前記組成物中の凝集体含有量を酢酸セルロース膜のサイズに対して約0.02mg/cm~約0.15mg/cm減少させる、請求項1~12のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ろ過ステップの各々は、独立に、前記組成物中の凝集体含有量を前記組成物中のタンパク質種の総タンパク質含有量に対して約10%以下に減少させる、請求項1~13のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
粒子状物又はバイオバーデンの除去のためではない、請求項1~14のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物は、望まれない凝集体が形成されてしまう、タンパク質結合体を調製するためのプロセスから得られる、請求項1~15のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のうちいずれか1項に記載の方法によって得ることができる又は得られた、タンパク質。
【請求項18】
タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去するため;及び/又は、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を選択的に吸着させるための、酢酸セルロース膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物からタンパク質凝集体を選択的に除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願への相互参照
本願は、オーストラリア仮出願番号2021902839(2021年9月1日出願)からの優先権を主張し、該仮出願の内容はその全体が本開示中に参照により取り込まれる。
【0003】
タンパク質凝集は、タンパク質をその天然の環境の外で扱う際に生じる一般的な問題である。凝集は、取り扱いステップの間、又はタンパク質試料の保存の際に起こりうる。典型的には、凝集体は非凝集タンパク質と同じ機能は有しておらず、したがって、凝集は、タンパク質試料のロスにつながる経路の1つを表している。
【0004】
凝集が問題であるタンパク質の1つのクラスは、タンパク質結合体(protein conjugates)である。例えば、キレートリガンドとのタンパク質結合体は持続的な興味を集めており、これは例えば、治療剤、診断剤又は治療診断(theranostic)剤としてのその使用の可能性のためである。
【0005】
キレート剤は典型的には多座であり、好ましくは治療又は診断能力を有する核種に選択的である。
【0006】
タンパク質結合体の調製の際、特に商業スケールでの調製の際に生じる1つの問題は、種々の調製ステップのために必要とされる比較的厳しい合成条件のために凝集体が形成されることである。タンパク質凝集体は固体凝集体又は可溶性凝集体である。
【0007】
凝集を軽減させる戦略としては、凝集体形成を減少させるように結合体の調製手法を適合させる、またはタンパク質結合体から凝集したタンパク質を分離するように精製手法を適合させることが挙げられる。
【0008】
したがって、キレートリガンドとのタンパク質結合体を含め、タンパク質を調製するための少なくとも代替となるプロセスであって、低い凝集体レベルで有意義な収率で所望のタンパク質を提供することができるプロセスを提供することについての継続的なニーズが存在する。
【0009】
明細書中における先行技術への言及は、いかなる法域においてもその先行技術が技術常識の一部を形成することを認めた若しくは示唆したものではなく、また、その先行技術が当業者によって理解されているものと合理的に予測され、関連性があると認識され、及び/若しくは他の先行技術と結びつけられるものであると認めた若しくは示唆したものではない。
【発明の概要】
【0010】
1つの態様においては、本発明は、液体キャリア中にタンパク質及び前記タンパク質の凝集体を含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去する方法を提供する。この方法は、前記組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む1つ以上(one or more)のろ過ステップを前記組成物に対して行って、前記タンパク質が前記膜を通過することを実質的に可能としながらも前記凝集体を前記膜に選択的に吸着させることを含む。
【0011】
本願はまた、タンパク質を精製する方法も提供する。この方法は、液体キャリア中にタンパク質及び前記タンパク質の凝集体を含む組成物に対して、該組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む1つ以上(one or more)のろ過ステップを行って、前記タンパク質が前記膜を通過することを実質的に可能としながらも前記凝集体を前記膜に選択的に吸着させることを含む。
【0012】
本発明はまた、本開示に記載された方法によって得ることが可能な、又は得られたタンパク質も提供し、また、本開示に記載された方法によって得ることが可能な、又は得られたタンパク質を含む組成物も提供する。
【0013】
選択された定義
【0014】
用語「アルキル」は、飽和の直鎖炭化水素基及び飽和の分岐鎖炭化水素基を含むことが意図されている。いくつかの実施形態では、アルキル基は1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、5~21個、9~21個、又は11~21個の炭素原子を有し、例えば、11個、13個、15個、17個、又は19個の炭素原子を有する。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、及びn-オクチルが挙げられるがこれらに限定されない。分岐鎖アルキル基の例としては、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、イソペンチル、及び2,2-ジメチルプロピルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0015】
用語「ハロ」は、クロロ(-Cl)基、ブロモ(-Br)基、フルオロ(-F)基、及びヨード(-I)基を含むことが意図されている。いくつかの実施形態では、ハロは、クロロ、ブロモ、及びフルオロから選択されてもよく、好ましくはフルオロである。
【0016】
本開示で用いられる場合、用語「治療診断」(theranostic)は、化合物/材料が診断と共に治療にも用いることが可能である能力を指す。用語「治療診断薬」(theranostic reagent)は、患者の疾患又は病状(condition)の検出、診断及び/又は治療の両方に適している任意の試薬に関係する。治療診断化合物/治療診断材料の目的は、別個である診断剤と治療剤との間に存在しうる、生体内分布及び選択性における望ましくない差異を解消することである。
【0017】
本開示で用いられる場合、用語「及び/又は」は「及び」、「又は」、又は両方を意味する。
【0018】
名詞の後の語「(s)」は、単数形及び複数形、又はその両方を想定する。
【0019】
本開示で用いられる場合、文脈がそうではないことを必要とする場合を除き、用語「含む」(comprise)並びに「comprising」、「comprises」、及び「comprised」など、その派生形は、さらなる添加物、成分、整数又はステップを除外することを意図しない。
【0020】
本開示に開示された数字の範囲(例えば、1~10)についての言及は、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2,3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)への言及をも含み、また、その範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2~8、1.5~5.5、3.1~4.7)への言及をも含み、並びに、したがって、本開示に明示的に開示された全ての範囲のサブ範囲もこれにより明示的に開示されていることとなることが意図されている。これらは、具体的に意図された内容のほんの例に過ぎず、同様にして、列挙された下限値と上限値との間の数値の全ての可能な組み合わせが、本出願中で明示的に記載されたものとみなされる。
【0021】
本発明の種々の特徴が、特定の値、又は値の範囲を参照して記載される。これらの値は、種々の適切な測定技術の結果に関するものであることが意図され、したがって、何であれ特定の測定技術に内在する誤差範囲を含むと解釈されるべきである。本開示において言及された値のうちいくつかは、少なくとも部分的にはこの可変性のために「約」によって表される。用語「約」は、値を記載するのに用いられる場合、その値の±10%以内、±5%以内、±1%以内、又は±0.1%以内の量を意味してもよい。
【0022】
本発明のさらなる態様及び先行する段落に記載された態様のさらなる実施形態は、例として与えられる以下の記載から、また添付の図面を参照して、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】タンジェンシャルフローろ過(TFF)前条件での種々の酢酸セルロースフィルターサイズの推定結合能(estimated binding capacity)を表すグラフである。
【0024】
図2】TFF後条件での種々の酢酸セルロースフィルターサイズの推定結合能を表すグラフである。
【0025】
図3】TFF前酢酸セルロースろ過ステップ及びTFF後酢酸セルロースろ過ステップを含む4つの適正製造規範(GMP)ギレンツキシマブ-N-スクシニル-デフェロキサミン(desferrioxamine)結合体(GmAb-DFO)プロセスバッチのためのインプロセスサイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、タンパク質と前記タンパク質の凝集体とを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去する方法に関する。この方法は、液体キャリア中にタンパク質及び前記タンパク質の凝集体を含む組成物に対して、該組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む、1つ以上(one or more)のろ過ステップを行うことを含む。
【0027】
本発明者らは、酢酸セルロース膜(酢酸セルロースフィルターとも称される)が典型的には滅菌及びタンパク質溶液から粒子状物及びバイオバーデンを除去するために用いられるものであるが、タンパク質と前記タンパク質の凝集体とを含む液体混合物から凝集体を効率的に除去することもできることを、驚くべきことに見いだした。
【0028】
この膜は酢酸セルロースを含む。理論に拘束されるものではないが、本開示に記載されたプロセスは、凝集サイズに基づいたろ過ではなく、凝集体と膜の酢酸セルロースとの相互作用を含むのではないかと考えられる。この相互作用は、同様の孔径ではあるが異なる材料からなる膜がタンパク質から凝集体を除去することができないのに対して、酢酸セルロースフィルターは、単量体タンパク質をも含む組成物からタンパク質凝集体を選択的に除去できたという驚くべき結果に寄与している可能性がある。凝集体と酢酸セルロースとの相互作用は、少なくとも主には、タンパク質凝集体の酢酸セルロースへの吸着であると考えられる。したがって、酢酸セルロース膜が、タンパク質は膜通過させながらも凝集体の少なくとも一部を該膜に選択的に吸着することにより、前記プロセスはタンパク質と凝集体とを含む組成物から凝集体を除去しうる。
【0029】
本開示には、タンパク質と前記タンパク質の凝集体とを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去する方法も記載される。この方法は、液体キャリア中にタンパク質及び前記タンパク質の凝集体を含む組成物に対して、該組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む1つ以上(one or more)のろ過ステップを行って、それによって前記組成物から前記凝集体の少なくとも一部を除去することを含む。
【0030】
なお、本発明は、粒子状物及びバイオバーデンを除去するためという、酢酸セルロース膜の従来からの用途とは別個のものとして、複合タンパク質試料から凝集体を除去することができるという酢酸セルロース膜の能力に関することを理解されたい。したがって、いくつかの実施形態では、本開示に記載された方法及びプロセスは、粒子状物及び/又はバイオバーデンの除去のためではない。
【0031】
酢酸セルロース膜は、任意の適切なサイズであってよい。いくつかの実施形態では、酢酸セルロース膜は、約0.015m~約0.60mのサイズ(ろ過面積とも称される)、例えば約0.015m、約0.03m、約0.05m、約0.10m、約0.15m、約0.20m、約0.25m、0.30m、約0.35m、約0.40m、約0.45m、約0.50m、約0.55m、又は約0.6mのサイズを有する。いくつかの実施形態では、前記サイズは、これらの値~任意の他の値のうちの任意のサイズ、例えば、約0.015m~約0.1mのサイズ又は約0.03m~約0.10mのサイズであってもよい。いくつかの実施形態では、酢酸セルロース膜は、0.05mのサイズを有する。本開示に記載される酢酸セルロース膜は、典型的には、タンパク質試料からバイオバーデン及び粒子状物を除去するために従来から用いられているものよりも大きなサイズを有することを理解されたい。
【0032】
酢酸セルロース膜は、任意の適切な形態で与えられてよい。例を挙げると、酢酸セルロース膜は、遠心フィルタ、シリンジフィルタ、又はカプセルフィルタの形態であってもよく、これらはいずれもプロセス(グラム)スケールに適したものであってよい。
【0033】
酢酸セルロース膜は、フロースルー(連続的)法又はプロセスにおける使用に適していてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上のろ過ステップの各々が独立にフロースルーモードで行われる。実施例に示されるように、これは、有利にも、大規模なタンパク質製造プロセスにおいて本開示に記載の酢酸セルロース膜を用いることを可能とし得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、酢酸セルロース膜は、酢酸セルロースナノ粒子を含まない又は実質的に非含有である。Bee et al (Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol 98, No 9, 3218-3238)は、タンパク質凝集体が酢酸セルロースナノ粒子への親和性を示すことを先に報告している。有利には、実施例に示すように、酢酸セルロースナノ粒子よりも比較上より小さな相対的表面積を有しながらも、本開示に記載の酢酸セルロース膜は、凝集体の含有量を許容可能な品質レベルまで減少させることが可能である。
【0035】
酢酸セルロース膜は任意の適切なサイズの孔を含んでもよい。いくつかの実施形態では、酢酸セルロース膜は、平均直径(孔サイズとも呼ばれる)が約0.2μm~約0.8μm、例えば、約0.2μm、約0.25μm、約0.3μm、約0.35、約0.4μm、約0.45μm、約5.0μm、約5.5μm、約6.0μm、約6.5μm、約7.0μm、約7.5μm、又は約8.0μmである孔を含む。いくつかの実施形態では、前記平均直径は、これらの値から任意の他の値までの任意の平均直径、例えば0.2μm~約0.45μmであってもよい。いくつかの実施形態では、酢酸セルロース膜は、平均直径が約0.2μmである孔を含む。
【0036】
各ろ過ステップにおける液体キャリア(液体混合物とも呼ばれる)は、独立に、約4.0~約8.0のpH、例えば約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1.約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、又は約8.0のpHを有していてもよい。いくつかの実施形態では、前記pHはこれらの値から任意の他の値までの任意のpH、例えば約4.4~約7.4のpH又は約4.4~約5.9のpHであってもよい。有利には、クロマトグラフィー樹脂などタンパク質凝集体を除去するために典型的に用いられる他の技術とは対照的に、本開示に記載の酢酸セルロース膜の使用は、様々なpH条件において凝集体の除去を可能にしうる。
【0037】
前記組成物は、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む。前記組成物は、液体キャリア中のタンパク質及び凝集体の溶液であってもよいし、または前記組成物は液体キャリア中のタンパク質及び/又は凝集体の懸濁物又は乳化物であってもよい。いくつかの実施形態では、タンパク質は液体キャリアを用いた溶液状態にあり、凝集体は該液体キャリア中に懸濁状態にある。典型的には、前記組成物は、液体キャリア中におけるタンパク質及び凝集体の均一な混合物である。前記組成物は、酢酸セルロース膜を通過させられることが可能な任意の形態であってよく、典型的には液体組成物である。
【0038】
各ろ過ステップにおける液体キャリアは、独立に、水溶液であってよく、例えば、塩化ナトリウム溶液又は緩衝溶液である。いくつかの実施形態では、液体キャリアは緩衝溶液を含む。タンパク質と適合する(compatible)任意の適切な緩衝溶液を用いてよく、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES-NaOH)、リン酸水素二ナトリウム、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS-KOH)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(Tris-HCl)及びN-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)が挙げられる。いくつかの実施形態では、緩衝溶液はPBSである。有利には、(例えば、特定の緩衝条件を必要とするクロマトグラフィー樹脂など)タンパク質凝集体を除去するために典型的に用いられる他の技術とは対照的に、本開示に記載の酢酸セルロース膜の使用は、様々なpH条件において凝集体の除去を可能にしうる。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上のろ過ステップは、2つ以上のろ過ステップ、例えば2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の数のろ過ステップを含む。ろ過ステップの数は、例えば出発組成物中の凝集体の量及び/又は酢酸セルロース膜のサイズに応じて適切に選択されてよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上のろ過ステップは2つのろ過ステップを含む。したがって、いくつかの実施形態では、前記1つ以上のろ過ステップは、
前記組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む第1のろ過ステップ;及び
前記組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む第2のろ過ステップ
を含む。
【0041】
言い方を変えれば、いくつかの実施形態では、前記方法は、
液体中にタンパク質及び前記タンパク質の凝集体を含む組成物を準備すること;
前記組成物を酢酸セルロース膜に通して、酢酸セルロース膜を通す前の前記組成物に比べて、凝集体に対してタンパク質が富化された第1のろ液を与えることを含む第1のろ過ステップを、前記組成物に対して行うこと;及び
第1のろ液を酢酸セルロース膜に通して、第1のろ液に比べて、凝集体に対してタンパク質がさらに富化された第2のろ液を与えることを含む第2のろ過ステップを、第1のろ液に対して行うこと
を含む。
【0042】
第1のろ液のpHは、第1のろ過ステップの前の前記組成物のpHとは異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、第1のろ液は、約5.6~約5.9のpHを有する。いくつかの実施形態では、前記方法は、第2のろ過ステップの前に、第1のろ液のpHを調製することをさらに含む。
【0043】
なお、本開示に記載の方法は、当業界で知られた、望まれない凝集体を形成する可能性を有している任意のタンパク質(典型的には単量体)に適用してもよい。本開示で用いる場合、用語「凝集体」は、タンパク質の高分子量(HMW)凝集体、典型的には二量体よりも大きいマルチマー、を含むと理解されるものとする。凝集体は、微粒子(particulates)を形成する不溶性凝集体であってよく、自らが形成された溶液中で凝集体が沈殿してもよく、または凝集体は可溶性凝集体であってもよい。
【0044】
本開示に用いる場合、用語「タンパク質」は、タンパク質結合体(protein conjugates)、例えば、他の(非タンパク質)化学部分が連結、典型的には共有結合によって連結されたタンパク質、をも包含すると理解されるものとする。したがって、いくつかの実施形態では、タンパク質はタンパク質結合体である。言い方を変えれば、いくつかの実施形態では、タンパク質は結合した(conjugated)化学部分、例えばタンパク質に連結した(非タンパク質)化学部分を含む。この化学部分(補欠分子族(prosthetic group)とも呼ばれる)は、当業界で知られた任意の適切な化学部分であってよい。いくつかの実施形態では、前記化学部分はキレート部分であってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、タンパク質及び結合した化学部分は、共有結合によって直接連結されている。いくつかの実施形態では、タンパク質及び結合した化学部分は、連結基によって連結されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、連結基は二官能性リンカーである。二官能性リンカーは、化学部分とタンパク質とを共有結合的に連結することができる任意の二ラジカル種であってよい。適切な二官能性リンカーとしては、ブロモアセチル、チオール類、スクシンイミドエステル(例えばスクシニル)、テトラフルオロフェニル(TFP)エステル、マレイミド、アミノ酸(天然アミノ酸及び非天然アミノ酸を含む)、ニコチンアミド、ニコチンアミド誘導体、又は当業界で知られた任意のアミン又はチオール改変化学反応(any amine or thiol- modifying chemistry)の使用が挙げられる。いくつかの実施形態では、二官能性リンカーはスクシニルである。
【0047】
いくつかの実施形態では、二官能性リンカーは、結合した化学部分とタンパク質との間に2~10原子の最長直線経路を規定する原子の鎖を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、二官能性リンカーは、-O-、-NR-、-S-、-C(O)-、-C(O)O-、C(O)NR-、-OC(O)-、-NRC(O)-、-OC(O)O-、-NRC(O)O-、-OC(O)NR-、-NRC(O)NR-から選択される1つ又は複数の基を任意に(optionally)間に挟んだC1~10アルキル又はハロC1~10アルキルであってもよく、ここでRはH及びC1~4アルキルから選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、タンパク質(又は結合した化学部分)は、キレートリガンド、つまりタンパク質に連結したキレートリガンド、を含む。キレートリガンドは、当業界で知られた、金属イオンをキレートすることができる任意の適切なキレーターであってよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、キレートリガンドは放射性核種をキレートすることが可能である。適切なキレートリガンドの例としては、TMT(6,6’’-ビス[N,N’’,N’’’-テトラ(カルボキシメチル)アミノメチル)-4’-(3-アミノ-4-メトキシフェニル)-2,2’:6’,2’’-テルピリジン)、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸、テトラキセタンとしても知られる)、TCMC(DOTAのテトラ-一級アミド)、DO3A(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリス(酢酸)-10-(2-チオエチル)アセトアミド)、CB-DO2A(4,10-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザビシクロ[5.5.2]テトラデカン)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-三酢酸)、Diamsar(3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン)、DTPA(ペンテト酸又はジエチレントリアミン五酢酸)、CHX-A”-DTPA([(R)-2-アミノ-3-(4-イソチオシアナトフェニル)プロピル]-トランス-(S,S)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン-五酢酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸)、Te2A(4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン)、HBED(N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸)、DFO(デフェロキサミン)、及びそれらのアナログ又は誘導体、例えば、DFO及びDFOsq(DFO-スクアラミド)、HYNIC(6-ヒドラジノニコチンアミド)、及びHOPO(3,4,3-(LI-1,2-HOPO)、若しくは本開示に記載されるようなその他のリガンド、又はそれらの誘導体が挙げられる。適切な誘導としては、分子の非配位部分への修飾が挙げられ、また、カルボキシル基の代わりにアミドの存在などの官能基相互変換が挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、キレートリガンドはDFO又はそのアナログである。DFO及びそのアナログ(DFO、DFOsq、DFONCS、DFOsq、及びDFONCSなど)は、治療上、診断上、及び/又は治療診断上の能力を有する所望の核種に対する選択的キレートリガンドである。特には、DFO及びそのアナログは、89Zrに対する選択的キレーターである。89Zrは、半減期が3.3日に及ぶベータプラス放射体(av)(0.396MeV)である。89Zrは、陽電子放出断層撮影(PET)画像取得における潜在的な用途を有しており、タンパク質結合体(例えば、本発明の方法によって作製されたタンパク質結合体)に含まれた場合には、抗体の血中半減期(circulation half-life)に合致する3.3日という伸びた89Zrの半減期のために、免疫学的PET(イムノ-PET)画像取得において特に興味深い。イムノ-PET画像取得において、適切な抗体に結合させられた放射性核種複合体を用いることによって、腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原の発現に基づいて腫瘍が画像取得される。
【0052】
いくつかの実施形態では、キレートリガンドは放射性核種をキレートする。放射性核種は好ましくは治療上又は診断上の能力を有する放射性核種である。適切な同位体の例としては、アクチニウム-225(225Ac)、アスタチン-211(211At)、ビスマス-212及びビスマス-213(212Bi、213Bi)、銅-64及び銅-67(64Cu、67Cu)、ガリウム-67及びガリウム-68(67Ga及び68Ga)、インジウム-111(111In)、ヨウ素-123、-124、-125又は-131(123I、124I、125I、131I)(123I),鉛-212(212Pb)、ルテチウム-177(177Lu)、ラジウム-223(223Ra)、サマリウム-153(153Sm)、スカンジウム-44及びスカンジウム-47(44Sc、47Sc)、ストロンチウム-90(90Sr)、テクネチウム-99(99mTc)、イットリウム-86及びイットリウム-90(86Y、90Y)、ジルコニウム-89(89Zr)が挙げられる。
【0053】
特に興味深いタンパク質結合体の1つのクラスは、投与後にタンパク質部分が前記結合体を対象内に局在化させることができ、それによって、画像取得、例えばPET、SPECT又はその他の適切な画像取得技術による画像取得を助けることができるタンパク質結合体である。したがって、いくつかの実施形態では、前記タンパク質はタンパク質標的指向剤(protein targeting agent)を含むか、タンパク質標的指向剤である。
【0054】
本開示において用いられる場合、「タンパク質標的指向剤」とは、
1.(遊離形態でも、放射性核種等の核種にキレートしている場合でも)結合対象のキレート基との安定な結合(conjugation)、
2.取り扱いの間に有害な凝集体を形成する、及び
3.投与後に対象内に局在化する(例えば、タンパク質標的指向剤は、1つ以上の器官、オルガネラ、細胞タイプ又は受容体タイプ内に局在化してもよい)
ことが可能な任意のタンパク質を指す。
【0055】
タンパク質標的指向剤は、特定の生物学的標的に結合することができる、あるいは特定の代謝活性を発現することができる、ポリペプチド、タンパク質(例えば、抗体及びその誘導体、例えばナノボディ、ダイアボディ、抗体フラグメント)であってもよい。
【0056】
適切な標的指向剤の非限定的な例としては、VEGF受容体へと標的指向する分子、ボンベシン又はGRP受容体へと標的指向する分子のアナログ、ソマトスタチン受容体へと標的指向する分子、RGDペプチド又はavp3及びavP5へと標的指向する分子、アネキシンV又はアポトーシスプロセスへと標的指向する分子、エストロゲン受容体へと標的指向する分子、プラークへと標的指向する生体分子、前立腺特異的膜抗原(PSMA)へと標的指向する分子、炭酸脱水酵素(例えば、炭酸脱水酵素IX;CAIX)へと標的指向する分子、が挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記タンパク質は、抗体又はその誘導体を含むか、抗体又はその誘導体であり、抗体又はその誘導体には、ナノボディ、ダイアボディ、抗体フラグメント、等々が含まれる。
【0058】
ある実施形態では、前記タンパク質は、炭酸脱水酵素IX(CAIX)に結合するための抗体又はその抗原結合フラグメントである。特に好ましい抗体はcG250であり、好ましくはギレンツキシマブ(INN)であり、これは本開示においてGmAbとも称される。別の特に好ましい実施形態は、ハイブリドーマ細胞株DSM ACC2526によって生産されるモノクローナル抗体G250である。抗体cG250は、元々はマウスのモノクローナル抗体mG250のIgG1カッパ軽鎖キメラ版である。抗体又はその抗原結合フラグメントは、ギレンツキシマブのヒト化形態であってもよい。特に好ましい実施形態では、CAIXに結合するための抗体は、その内容が参照によって本開示に取り込まれる国際公開2021/000017に記載されている抗体である。
【0059】
ある実施形態では、前記タンパク質は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合するための抗体又はその抗原結合フラグメント、例えばJ591又はhuJ591、である。抗体J591は、Liu et al., Cancer Res 1997; 57: 3629-34に記載されている。前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、(参照により本開示に取り込まれるUS2006/0088539の配列番号1、2、及び3に規定され、図1Aに表される)マウスJ591の重鎖可変領域;並びに(参照により本開示に取り込まれるUS2006/0088539の配列番号4、5、及び6にを参照でき、図1Bに表される)マウスJ591の軽鎖可変領域、由来の少なくとも1つ、2つ及び好ましくは3つのCDRを有していてもよい。前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、US2006/0088539に記載されたJ591抗体の重鎖可変及び軽鎖、又はその任意の改変形態、を有していてもよい。前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、US2006/0088539の図2A及び図2Bに記載された脱免疫原化された(deimmunised)J591抗体の重鎖可変及び軽鎖、又はその任意の改変形態を有するものであってもよい。特に好ましい実施形態では、PSMAに結合するための抗体は、その内容が参照により本開示に取り込まれるWO2021/000017に記載された抗体である。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記タンパク質は、CAIX又はPSMAへと標的指向することができる抗体又はその誘導体である。いくつかの実施形態では、前記タンパク質はギレンツキシマブ及びHuJ591から選択され、ここで前記タンパク質は、任意に(optionally)キレートリガンドに結合している。いくつかの実施形態では、前記タンパク質はギレンツキシマブ(GmAb)を含むか、ギレンツキシマブ(GmAb)である。GmAbは、CAIXに対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、前記タンパク質はHuJ591を含むか、HuJ591である。HuJ591は、PSMAのモノクローナル抗体である。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記タンパク質はポリペプチドを含む、又はポリペプチドである。該ポリペプチドは、最少で、約20以上、約25以上、又は約30以上のアミノ酸残基の配列を含んでいてもよい。前記ポリペプチドは、約35以下、約40以下、約45以下又は約50以下のアミノ酸残基を含んでいてもよい。前記ポリペプチドは、これらの最少値のうちの任意のものから任意の最大値までの任意のアミノ酸配列長、例えば約20~約50アミノ酸残基、を含んでいてもよい。ペプチドの凝集は、Zapadka KL, Becher FJ, Gomes dos Santos AL, Jackson SE. 2017 Factors affecting the physical stability (aggregation) of peptide therapeutics. Interface Focus 7: 20170030. http://dx.doi.org/10.1098/rsfs.2017.0030にレビューされており、これはその全体が参照により本開示に取り込まれる。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記タンパク質は、天然タンパク質(native protein)を含むか天然タンパク質であり、その由来源から単離されている。いくつかの実施形態では、前記タンパク質は合成又は半合成の残基を含む、または前記タンパク質自身が合成又は半合成のものである。前記タンパク質(あるいは、タンパク質結合体の場合、タンパク質部分)は、当業界で知られた任意の手段によって調製すればよく、例えば、所望のタンパク質を得るための、直接のアミノ酸合成、組み換え技術、及びフラグメントのライゲーションが挙げられる。
【0063】
いくつかの実施形態では、タンパク質及び凝集体を含む前記組成物は、その中で望まれない凝集体が形成されてしまう、タンパク質結合体(例えば、キレートリガンドがタンパク質に連結した結合体)を調製するためのプロセスから得られる。そのようなプロセスの一例が、実施例において、DFO-GmAb結合体の調製のために記載される。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、二量体タンパク質、つまりタンパク質の二量体をさらに含む。
【0065】
前記1つ以上のろ過ステップの前の、タンパク質を含む組成物(出発組成物とも称される)は、タンパク質濃度に対して、又は組成物中のタンパク質種(protein species)(例えば、タンパク質、凝集体、及び存在するならば二量体)の総含有量に対して、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約16%以上、約17%以上、約18%以上、約19%以上、約20%以上、約21%以上、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、約30%以上又はさらに高い濃度の凝集体を含んでいてもよい。タンパク質を含む前記組成物は、これらのパーセント値のうち任意の1つから任意の他のパーセント値までの、例えば約10%~約25%又は約11%~約19%の、凝集体を含んでいてもよい。タンパク質(又は総タンパク質種)に対する凝集体の濃度は、SEC-HPLC及び凝集体種(aggregate species)に帰属するピーク下面積を単量体タンパク質(及び、存在するならその他のタンパク質種)についてのピーク下面積と比べることによって決定してもよい。
【0066】
前記1つ以上のろ過ステップの前のタンパク質を含む組成物は、凝集体に対して、又は組成物中のタンパク質種(protein species)(例えば、タンパク質、凝集体、及び存在するならば二量体)の総含有量に対して、約74%以上、約75%以上、約76%以上、約77%以上、約78%以上、約79%以上、約80%以上、約81%以上、約82%以上、約83%以上、約84%以上、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上又はさらに高い濃度である濃度でタンパク質を含んでいてもよい。タンパク質は、これらのパーセント値のうち任意の1つから任意の他のパーセント値までの濃度で、例えば約80%~約90%の濃度で存在してもよい。タンパク質の濃度は、凝集体種の濃度と同様のやり方、例えば、SEC-HPLC及び関係するそれぞれのピークについてのピーク下面積を比べることによって、決定してもよい。
【0067】
前記1つ以上のろ過ステップの前のタンパク質を含む組成物はさらに二量体タンパク質を含んでいてもよい。典型的には、二量体は、二量体濃度として多くとも約15%以下、約12.5%以下、約10%以下、約8%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下又はさらに低い濃度で存在する。二量体は、これらのパーセント値のうち任意の1つから任意の他のパーセント値までの濃度で、例えば約2%~約12.5%又は約3%~約6%の濃度で存在してもよい。二量体の濃度は、凝集体種の濃度と同様のやり方、例えば、SEC-HPLC及び関係するそれぞれのピークについてのピーク下面積を比べることによって、決定してもよい。
【0068】
前記方法は、ろ過ステップのうち任意の1つ又は複数の前に、組成物に対してバッファー交換を行うステップをさらに含んでいてもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、ろ過ステップのうち任意の1つ又は複数の前に、組成物に対してバッファー交換を行うステップは行われない。有利には、クロマトグラフィー樹脂などタンパク質凝集体を除去するために典型的に用いられる他の技術とは対照的に、本開示に記載の酢酸セルロース膜の使用は、バッファー交換ステップを必要としない。
【0069】
いくつかの実施形態では、ろ過ステップのそれぞれは、独立に、タンパク質に対する、又は組成物中のタンパク質種(protein species)(例えば、タンパク質、凝集体、及び存在するならば二量体)の総含有量に対する凝集体の濃度として約25%以下、例えば約20%以下、約15%以下、約12.5%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.6%以下、約0.5%以下、約0.4%以下、約0.3%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.01%以下、約0.005%以下、約0.001%以下、約0.0005%以下、約0.0001%、又はさらに低い濃度へと組成物中の凝集体濃度を減少させる。凝集体濃度は、独立に、これらのパーセント値のうち任意の値からこれらのパーセント値のうちの任意の他の値まで、例えば約0.001%~約15%又は約0.1%~約5%、減少されてもよい。いくつかの実施形態では、ろ過ステップのそれぞれは、独立に、組成物中の凝集体濃度を約5%以下に減少させる。タンパク質(又は総タンパク質種)に対する凝集体の濃度は、SEC-HPLC及び凝集体種(aggregate species)に帰属するピーク下面積を単量体タンパク質(及び、存在するならその他のタンパク質種)についてのピーク下面積と比べることによって決定してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記方法は、出発溶液中に存在する凝集体の重量のうち約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約90重量%以上、約95重量%以上、又はさらに高い程度分、タンパク質の凝集体を減少させてもよい。前記方法は、これらのパーセント値のうち任意の1つから任意の他のパーセント値までの程度分、凝集体を減少させてもよく、例えば前記方法は、出発溶液から、出発溶液中に存在する凝集体の重量のうち、約5重量%~約95重量%分又は約10重量%~約40重量%分、凝集体を減少させてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、ろ過ステップのそれぞれは、独立に、酢酸セルロース膜のサイズに対して約0.02mg/cm~約0.15mg/cm分、例えば、約0.02mg/cm分、約0.03mg/cm分、約0.04mg/cm分、約0.05mg/cm分、約0.06mg/cm分、約0.07mg/cm分、約0.08mg/cm分、約0.09mg/cm分、約0.10mg/cm分、約0.11mg/cm分、約0.12mg/cm分、約0.13mg/cm分、約0.14mg/cm分、又は約0.15mg/cm分、組成物中の凝集体含有量を減少させる。凝集体含有量は、独立に、これらの値のうち任意の1つから任意の他の値までの程度で、例えば酢酸セルロース膜のサイズに対して約0.03mg/cm~約0.13mg/cm分又は約0.05mg/cm~約0.10mg/cm分、減少させられてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、ろ過ステップのそれぞれは、独立に、平均で、酢酸セルロース膜のサイズに対して約0.05mg/cm~約0.10mg/cm分、例えば、約0.05mg/cm分、0.06mg/cm分、0.07mg/cm分、0.08mg/cm分、0.09mg/cm分、又は0.10mg/cm分、組成物中の凝集体濃度を減少させる。凝集体含有量は、独立に、平均で、これらの値のうち任意の1つから任意の他の値までの程度で、例えば酢酸セルロース膜のサイズに対して約0.06mg/cm~約0.09mg/cm分、減少させられてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、酢酸セルロース膜は、約80%までの相対保持時間(RRT)における0.05mg凝集体/cm~約80%までのRRTにおける約0.10mg凝集体/cm、例えば約80%までのRRTにおける約0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg又は0.10mg凝集体/cm、の平均除去効率(平均結合能又は平均ろ過能とも称される)を有し、ここで、RRTは、単量体タンパク質に帰属するSEC-HPLCピークに対する値である(つまり、凝集体ピークは、単量体タンパク質ピークの近似保持時間(approximate retention time)の約80%までの近似保持時間を有する)。平均除去効率は、これらの値のうち任意の1つから任意の他の値までの値、例えば、約80%までの相対保持時間(RRT)における約0.06mg凝集体/cm~約80%までの相対保持時間(RRT)における約0.09mg凝集体/cm、であってもよい。RRTは、約80%までの任意の値であってよく、例えば、約80%、70%、60%、50%、40%、又はさらに低いRRTであってもよい。RRTは、これらの値のうち任意の1つから任意の他の値までの値、例えば、約40%~約80%、又は約60%~約80%、であってもよい。いくつかの実施形態では、RRTは約70%RRTである。なお、二量体タンパク質ピークは典型的には約85%のRRTを有する。
【0074】
他のある態様は、タンパク質を精製する方法を提供する。この方法は、
液体キャリア中にタンパク質及び前記タンパク質の凝集体を含む組成物に対して、該組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む1つ以上(one or more)のろ過ステップを行って、前記タンパク質が前記膜を通過するようにしながらも前記凝集体のうち少なくとも一部を前記膜に選択的に吸着させること
を含む。
【0075】
本開示においては、タンパク質を精製する方法も提供される。この方法は、
液体キャリア中にタンパク質及び前記タンパク質の凝集体を含む組成物に対して、該組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む1つ以上(one or more)のろ過ステップを行って、それによって前記凝集体の少なくとも一部を除去すること
を含む。
【0076】
本開示で用いられる場合、用語「精製する」は、方法を行う前の凝集体含有量と比べて、組成物中の凝集体含有量が減少させられることを意味するものと理解されるものとする。
【0077】
他のある態様は、本開示に記載の方法によって得ることができる、又は本開示に記載の方法によって得られたタンパク質(精製タンパク質とも称される)に関する。
【0078】
他のある態様は、本開示に記載の方法によって得ることができる、又は本開示に記載の方法によって得られたタンパク質(又は精製タンパク質)を含む組成物を提供する。
【0079】
本開示に記載の方法によって得ることができる、又は本開示に記載の方法によって得られたタンパク質を含む組成物(最終組成物又は精製組成物とも称される)は、タンパク質濃度に対して、又は組成物中のタンパク質種(protein species)(例えば、タンパク質、凝集体、及び存在するならば二量体)の総含有量に対して、約20%以下の、約15%以下の、約12.5%以下の、約10%以下の、約9%以下の、約8%以下の、約7%以下の、約6%以下の、約5%以下の、約4%以下の、約3%以下の、約2%以下の、約1%1%以下の、約0.9%以下の、約0.8%以下の、約0.7%以下の、約0.6%以下の、約0.5%以下の、約0.4%以下の、約0.3%以下の、約0.2%以下の、約0.1%以下の、約0.05%以下の、約0.01%以下の、約0.005%以下の、約0.001%以下の、約0.0005%以下の、約0.0001%以下の、又はさらに低い濃度の凝集体を含んでいてもよい。前記タンパク質を含む組成物は、これらのパーセント値のうち任意のパーセント値から任意の他のパーセント値までの、例えば約0.01%~約5%の、凝集体を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記組成物は、約5%以下の凝集体含有量を含む。タンパク質(又は総タンパク質種)に対する凝集体の濃度は、SEC-HPLC及び凝集体種(aggregate species)に帰属するピーク下面積を単量体タンパク質(及び、存在するならその他のタンパク質種)についてのピーク下面積と比べることによって決定してもよい。
【0080】
本開示に記載の方法によって得ることができる、又は本開示に記載の方法によって得られたタンパク質を含む組成物は、凝集体濃度に対して、又は組成物中のタンパク質種(protein species)(例えば、タンパク質、凝集体、及び存在するならば二量体)の総含有量に対して、90%以上の濃度で、例えば、91%以上の、92%以上の、93%以上の、94%以上の、95%以上の、96%以上の、97%以上の、98%以上の、99%以上の、又は100%以上の濃度で、タンパク質を含んでいてもよい。タンパク質は、これらの濃度値のうち任意の値同士の間の濃度で、例えば、約90%~約100%又は約95%~約100%の濃度で、存在してもよい。タンパク質の濃度は、凝集体種の濃度と同様のやり方、例えば、SEC-HPLC及び関係するそれぞれのピークについてのピーク下面積を比べることによって、決定してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の方法によって得ることができる、又は本開示に記載の方法によって得られたタンパク質を含む組成物は、二量体タンパク質をさらに含んでいてもよい。典型的には、二量体は、約1.5%以下の、約1.4%以下の、約1.3%以下の、約1.2%以下の、1.1%以下の、約1%以下の、約0.9%以下の、約0.8%以下の又は約0.7%以下の濃度で存在する。二量体はこれらの濃度値のうち任意の値同士の間の濃度で、例えば、約0.7%~約1%の濃度で、存在してもよい。二量体の濃度は、凝集体種の濃度と同様のやり方、例えば、SEC-HPLC及び関係するそれぞれのピークについてのピーク下面積を比べることによって、決定してもよい。
【0082】
タンパク質を含む前記組成物は、典型的には、液体キャリアを含む。液体キャリアは、本開示に記載の任意の液体キャリアであってよい。いくつかの実施形態では、液体キャリアは水溶液であり、例えば塩化ナトリウム溶液又は緩衝溶液である。好ましい実施形態では、液体キャリアは、本開示に記載の緩衝溶液などの緩衝溶液を含む。
【0083】
他のある態様は、キレートリガンドがタンパク質に連結した結合体を調製するプロセスに関する。該プロセスは、
前記タンパク質の凝集体の形成を促す条件下で、前記タンパク質に連結した、金属と錯体形成したキレートリガンドを含む金属錯体化結合体(metal complexed conjugate)から前記金属を除去して、それによって前記キレートリガンドが前記タンパク質に連結した結合体の組成物であって、キレートされた金属イオン及び前記凝集体を実質的に含まない組成物を与えること;並びに、
前記組成物に対し、前記組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む1つ以上(one or more)のろ過ステップを行って、それによって、前記キレートリガンドが前記タンパク質に連結した結合体が前記膜を通過するようにしながらも、前記凝集体の少なくとも一部を前記膜上に選択的に吸着させる、及び/又は、それによって前記凝集体の少なくとも一部を前記組成物から除去すること、
を含む。
【0084】
前記タンパク質及びキレートリガンドは、本開示に記載されたタンパク質及びキレートリガンドのうちいずれであってもよい。
【0085】
1つの実施形態においては、前記プロセスは、デフェロキサミンキレートリガンドがタンパク質に連結した結合体を調製するプロセスであって、該プロセスは、
前記タンパク質の凝集体の形成を促す条件下で、前記タンパク質に連結した、鉄と錯体形成したデフェロキサミンキレートリガンドを含む鉄錯体化結合体(metal complexed conjugate)から鉄を除去して、それによって前記デフェロキサミンキレートリガンドが前記タンパク質に連結した結合体を含む組成物であって、キレートされた鉄及び前記凝集体を実質的に含まない組成物を与えること;並びに、
前記組成物に対し、前記組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む1つ以上(one or more)のろ過ステップを行って、それによって、前記デフェロキサミンキレートリガンドが前記タンパク質に連結した結合体は前記膜を通過するようにしながらも、前記凝集体の少なくとも一部を前記膜上に選択的に吸着させる、及び/又は、それによって前記凝集体の少なくとも一部を前記組成物から除去すること、
を含む。
【0086】
本開示に記載されるように、前記1つ以上のろ過ステップは、独立に、個々のろ過ステップの前の凝集体含有量と比べて凝集体含有量が減少した組成物を与える。いくつかの実施形態では、前記プロセスは、これらのろ過ステップのうちの2つ以上を含み、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の数のろ過ステップを含んでもよい。
【0087】
前記プロセスは、前記タンパク質に連結した、金属と錯体形成したキレートリガンドを含む金属錯体化結合体を形成するステップを含んでもよい。この形成するステップは、金属イオンと錯体形成したキレートリガンドをタンパク質とカップリングすることを含んでもよい。このステップは、当業界で知られた任意のコンジュゲーション技術によって行われてよい。金属イオンと錯体形成した前記キレートリガンドは、タンパク質に直接連結してもよく、あるいは、これらの部分は本開示に記載されるように、連結基を通して連結されていてもよい。
【0088】
前記プロセスは、前記組成物に対して限外ろ過及びダイアフィルトレーション(UFDF)を行う、例えばTFFシステムを用いて行う、ステップをさらに含んでもよい。これらの実施形態では、前記1つ以上のろ過ステップのそれぞれは、独立に、UFDFの前に、UFDFの後に、又は両方において(この場合、前記プロセスは、2つ、又は2つ以上の、ろ過ステップを含む)行われてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、前記1つ以上のろ過ステップのうち少なくとも1つは、前記組成物に対してUFDFを行う前に行われる。これに代えて、または追加で、いくつかの実施形態では、前記1つ以上のろ過ステップのうち少なくとも1つは、前記組成物に対してUFDFを行った後で行われる。好ましい実施形態では、前記プロセスは2つの(又は2つ以上の)ろ過ステップを含み、それらろ過ステップのうち少なくとも1つは前記組成物に対してUFDFを行う前に行われ、そして、前記1つ以上のろ過ステップのうち他の少なくとも1つは前記組成物に対してUFDFを行った後に行われる。
【0089】
したがって、いくつかの実施形態では、前記プロセスは、
前記タンパク質の凝集体の形成を促す条件下で、前記タンパク質に連結した、鉄と錯体形成したデフェロキサミンキレートリガンドを含む鉄錯体化結合体(metal complexed conjugate)から鉄を除去して、それによって前記デフェロキサミンキレートリガンドが前記タンパク質に連結した結合体を含む組成物であって、キレートされた鉄及び前記凝集体を実質的に含まない組成物を与えること;
前記組成物に対し、前記組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む第1のろ過ステップを行って、それによって、前記デフェロキサミンキレートリガンドが前記タンパク質に連結した結合体は前記膜を通過するようにしながらも、前記凝集体の少なくとも一部を前記膜上に選択的に吸着させる、及び/又は、それによって前記凝集体の少なくとも一部を前記組成物から除去すること;
前記組成物に対して限外ろ過及びダイアフィルトレーションを行うこと;並びに
前記組成物に対し、前記組成物を酢酸セルロース膜に通すことを含む第2のろ過ステップを行って、それによって、前記デフェロキサミンキレートリガンドが前記タンパク質に連結した結合体は前記膜を通過するようにしながらも、前記凝集体の少なくとも一部を前記膜上に選択的に吸着させる、及び/又は、それによって前記凝集体の少なくとも一部を前記組成物から除去すること
を含む。
【0090】
これらのプロセスにおいて、UFDFを受ける前記組成物は、第1のろ過ステップのろ液であり、第2のろ過ステップを受ける前記組成物は、UFDFのろ液である。
【0091】
デフェロキサミンキレートリガンドがタンパク質に連結した結合体は、バルク原薬(bulk drug substance)(BDS)として調製されてもよい。典型的には、BDSの調製における最終ステップ群は、滅菌グレードろ過、製剤化(formulation)及び充填(filling)を含む。好ましい実施形態では、前記1つ以上のろ過ステップは、最終の滅菌グレードろ過ステップより前に行われる。書き方を変えれば、好ましい実施形態では、前記1つ以上のろ過ステップは、前記プロセスにおける中間的な精製ステップである。
【0092】
他のある態様は、本開示に記載のプロセスによって得ることができる、又は本開示に記載のプロセスによって得られたキレートリガンドがタンパク質に連結した結合体(キレートリガンドがタンパク質に連結された精製結合体とも称される)に関する。
【0093】
他のある態様は、本開示に記載のプロセスによって得ることができる、又は本開示に記載のプロセスによって得られたキレートリガンドがタンパク質に連結した結合体(又はキレートリガンドがタンパク質に連結された精製結合体)を含む調合物に関する。
【0094】
本開示では、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去するための酢酸セルロース膜も提供される。
【0095】
本開示では、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去するのに用いるための酢酸セルロース膜もさらに提供される。
【0096】
本開示では、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去するのに用いられる場合の酢酸セルロース膜もさらに提供される。
【0097】
本開示では、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を除去するための酢酸セルロース膜の使用もさらに提供される。
【0098】
本開示では、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を選択的に吸着させるための酢酸セルロース膜も提供される。
【0099】
本開示では、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を選択的に吸着させるのに使用するための酢酸セルロース膜もさらに提供される。
【0100】
本開示では、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を選択的に吸着させるのに使用する場合の酢酸セルロース膜もさらに提供される。
【0101】
本開示では、タンパク質、前記タンパク質の凝集体、及び液体キャリアを含む組成物から前記タンパク質の凝集体を選択的に吸着させるための酢酸セルロース膜の使用もさらに提供される。
【0102】
これらの酢酸セルロース膜は、本開示に記載の酢酸セルロース膜の任意の1つ以上の特徴を有してもよい。
【0103】
これらの酢酸セルロース膜は、本開示に記載のプロセスの任意の態様又は実施形態のためのものであっても、そのような態様又は実施形態における使用のためのものであっても、及び/又はそのような態様又は実施形態のために使用される場合のものであってもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の酢酸セルロース膜は、フロースルー法又はフロースループロセスにおいて使用される。いくつかの実施形態では、前記酢酸セルロース膜は、組成物からの粒子状物及び/又はバイオバーデンの除去のために使用されるのではない。
【0105】
本発明は、以下の利点のうち1つ又は複数を与えてもよい:
・前記方法が、凝集体含有量を許容可能な品質レベルへと有利に減少させる。
・前記方法が、高い(>85%~95%)タンパク質単量体回収を有利にも可能とする。
・前記方法が、有利にもスケーラブルである。
・前記方法が、大規模(グラムスケール)な工業プロセスに適用しうる。
・前記方法が、自動化しうる。
【0106】
なお、この明細書に開示され規定された発明は、言及された又は文章若しくは図面から明らかである個々の特徴のうち2つ以上の代替的な組み合わせの全てに拡張することを理解されたい。これら異なる組み合わせの全てが、本発明の種々の代替的態様を構築する。
【実施例
【0107】
これから非限定的な例によって本発明をさらに説明する。なお、本発明の精神及び範囲から外れること無しに多くの改変をなし得ることが、本発明の分野の当業者に理解される。
【0108】
●実施例1 フィルター評価-小規模
【0109】
フィルター膜材料がHMW凝集体を試料からろ過することができるのかを評価するために、2つの異なるフィルタータイプを試験し、分析前に試料をろ過しなかった場合に得られた結果と比較した。種々異なるロットからのGmAb-DFO試料を試料:希釈剤が90%:10%となるように希釈した。最少250μLの各試料タイプを、各フィルター膜に通した。
【0110】
以下のフィルターを評価した。
酢酸セルロース膜によるフィルター、孔サイズは0.2μm(ミリポアシグマ;製品番号CLS8161-100EA)
ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)膜によるフィルター、孔サイズは0.2μm
【0111】
YarraSEC-300(3μm、290オングストローム、7.8×300mm)SEC-HPLCカラムを備えたAgilent1200シリーズHPLCシステムを用いたSEC-HPLCによって試料を評価した。データは、各タンパク質種の面積を検出された総面積と比較することによって分析した。
【0112】
結果を表1に与える。結果は、未ろ過試料及びPVDFフィルターでろ過した試料のどちらと比べても、酢酸セルロース膜を用いた試料のろ過は、ろ液中における高分子量凝集体種のパーセント(HMWの%)がより低く、単量体タンパク質のパーセントがより高かったことを示した。この結果は、酢酸セルロース膜の特異な化学的性質の結果、単量体タンパク質に対して凝集体の選択的な除去がなされたことを示唆している。これは、酢酸セルロースフィルターが、複合タンパク質試料からタンパク質凝集体を除去するのに有用であり得ることを示している。
【0113】
●表1.フィルター評価
【表1】
【0114】
比較のために、凝集体除去のために典型的に用いられるその他の技術も評価したが、これはつまり、クロマトグラフィー樹脂であるEshmuno HCX、トヨパールhexyl、トヨパールNH2-750F、POROS 50 HS及びCapto Adhere、Sartobind phenyl膜、並びに硫酸アンモニウム分画であった。表2は、技術及びそれらそれぞれのバッファーを示す。試料は、表示されたバッファーへと交換された。それぞれの樹脂にロードする前に、試料を280nmの吸収(A280)及びSEC-HPLCで分析した。それから、試料をそれぞれの予備平衡化させた樹脂又は膜にロードし、環境周囲温度でインキュベートした。これら樹脂及び膜を洗い、フロースルーを回収した。それからフロースルーをA280及びSEC-HPLCによって分析して、単量体回収の%及びHMW(高分子量)凝集体除去の%を決定した。
【0115】
●表2.凝集体除去のための他の技術の評価

【表2】
【0116】
結果を表2に与える。概して、種々の技術は高い単量体回収を低い凝集体除去と共に示した。いくつかの技術は、二量体タンパク質の顕著な増加も示した。硫酸アンモニウム分画は良好な結果を示したが、この技術は1M硫酸アンモニウムの添加を必要とし、このことは許容不能及びプロセスリスクとみなされうる。Sartobind phenyl膜は、良好な単量体回収及び高い凝集体除去を示したが、二量体が顕著に増加した。このクロマトグラフィー樹脂及びその他のクロマトグラフィー樹脂の他の欠点は、試料を「クロマトグラフィー」バッファー中へと置くために追加的なバッファー交換ステップが必要であることである。クロマトグラフィー樹脂は、HMW凝集体に結合して、それをタンパク質組成物から除去することが可能であるためには、これらの精密な条件を必要とする、つまり、作動時のバッファー条件のウインドウが狭く、バッファー交換ステップを必要とする。この追加的なステップは、プロセス時間を増大させ、そして材料ロス(より低い収率)を生じさせる。
【0117】
●実施例2.酢酸セルロースフィルター評価-大規模
【0118】
酢酸セルロースフィルター(酢酸セルロース0.2μmフィルターSartobran、Sartorius、Cat:11107--25------N)を、抗体とデフェロキサミン(DFO)との結合体、つまりギレンツキシマブ-N-スクシニルデフェロキサミン(GmAb-DFO)を調製するプロセス中に生成した凝集体を除去することについて評価した。GmAb-DFOを調製するための典型的なプロセスの一例は、以下のステップを含む:N-スクシニルデスフェラル:Fe(III)テトラフルオロフェニルエステル(TFP-N-sucDf-Fe、同義語:DFOTFP)を、抗体表面に露出したランダムなリシン残基のアミド化を通じてキメラギレンツキシマブ(GmAb)にコンジュゲートさせる。キレートされた鉄を、温和な温度(35℃)及びpH4.4で過剰量のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いたトランスキレート化によって除去した。未反応のリンカー及びその他の小分子をTFFで除去し、コンジュゲート済みGmAb-DFOを得た。これらの作業ステップは、高分子量凝集体種の形成を誘導した。
【0119】
●結合能試験(Binding capacity study)
【0120】
・試料調製
【0121】
表3は、試験のために調製した試料の概要を示す。0.2μm酢酸セルロースフィルターにロードする前、試料は清澄で、粒子状物は無かった。ロット番号1、ロット番号2、ロット番号3、ロット番号4の4つの異なる製造ロット由来のGmAb-DFO材料を評価した。各ロット由来の材料を解凍し、バッチ毎に別々にプールして合計4つの初期試料とし、各実験を行う前にポリエーテルスルホン(PES)膜(Acrodisc)によって0.2μmろ過した。ロット番号3とロット番号4の1:1混合物を調製し、均質化して、中間点試料を調製した。結合能試験のための選択したレベルを表3に表示する。
【0122】
●表3.試料調製

【表3】
【0123】
・TFF前試料
【0124】
TFF前試料を作製するために、GmAb-DFO材料(ロット番号1及びロット番号2)をTFF前試料バッファーへとバッファー交換した。TFF前試料バッファーは、GmAb出発材料の代わりにpH7.1のPBSを用いてブランクコンジュゲーションランを行うことによって調製した。加熱ステップはバッファー組成に何ら影響を及ぼさないため、加熱ステップはTFF前試料バッファー作製には含ませなかった。PBSをpH9.6に調整し、それから溶液を3:1のモル比でリンカーと合わせ、室温でゆっくりと混合しながら30分間維持した。それから容器のpHを酸を用いてpH4.4にした。最後のステップとして、EDTA二ナトリウムを加え、そしてバッファーをインキュベートして、最終pHを7.0に調整した。
【0125】
この試料バッファー交換は、PD-10脱塩カラムを用いて行った。バッファー交換は、以下の標準的な手順を用いてなされた。溶出ステップのために、容器をカラムの下に配置して各試料を収集した。3.5mLのTFF前試料バッファーを用いて各試料の溶出を行い、収集した。
【0126】
・結合能実験手順
【0127】
表3の試料を、0.2μm酢酸セルロースフィルターを用いてろ過した。フロースルー材料の特性解析は、SEC-HPLC及びA280によって行った。各フロースルー材料から2つのアリコートを取った。第1のアリコートは特性解析のために2~8℃で保存し、第2のアリコートは-80℃のフリーザー中に24時間置き、それから-20℃のフリーザーに移してさらなる特性解析まで置いた。
【0128】
結合能実験の間、以下のプロトコールを実行した。試料調製の節に記載された手順にしたがってタンパク質溶液プールを調製した。対応する体積のロット番号1、ロット番号4、及びロット番号3/ロット番号4混合物を、Sartorious0.2μmフィルター(Cat:11107--25------N)に通し、ろ過されたタンパク質溶液をさらなる特性解析のために収集した。酢酸セルロースフィルターをpH7.1のPBSで予備湿潤化し、試料を通し、それからフィルターをpH7.1のPBS(エアパージ無しでシステム及びフィルター中に保持された体積である、システム-フィルターホールドアップ体積×1.5)でフラッシュして、未結合種の完全な回収を確実なものとした。
【0129】
●結合能試験結果
【0130】
・TFF前ろ過ステップ
【0131】
HMWの%及び二量体減少
【0132】
TFF前試料についてのフロースルー材料のSEC-HPLC及びA280による特性解析は表4に表示されている。70%RRTでのHMW及び二量体のパーセント減少は、SEC-HPLC HMW凝集体及び二量体のデータに対するパーセント減少として正規化した。表4において、負荷容量(loading capacity)はGmAb-DFO/mのmgから70%RRTにおけるHMWのmg/cmへと変換されているが、これは、これが酢酸セルロース膜と相互作用する主要な種であるからであり、ここで70%RRTは、HMW凝集体ピークが単量体ピークの近似保持時間の70%の近似保持時間(approximate retention time)を有することを意味している。
【0133】
●表4.TFF前試料についてのHMW及び二量体減少結果

【表4-1】

【表4-2】
【0134】
表4に示すように、70%RRTにおけるHMWの減少における差異が異なるバッチに由来する試料間で見られたが、これは主にフィード組成物における差異(つまり、試料組成、試料濃度、HMW凝集体含有量)によるものである。ロット番号1の試料についての70%RRTにおけるHMWの減少は、70%RRTにおける0.185mgから0.488mgの間のHMW/cmのローディング条件の場合、10.8%~17.6%であった。ロット番号2の材料については、70%RRTにおけるHMWのより高い減少が見られ、70%RRTにおける0.078mgから0.214mgの間のHMW/cmの負荷容量の場合、12.8%~30.6%であった。
【0135】
観察された差異にも関わらず、70%RRTにおいて同様の量のHMW/cmが膜にロードされた場合、70%RRTにおけるHMWの%の同程度の減少がロット番号1の試料及びロット番号2の試料の両方について見られた(つまり、70%RRT(ロット番号1)における0.185mgHMW/cm及び70%RRT(ロット番号2)における0.177mgHMW/cmについて70%RRTにおけるHMWの13%の減少が見られた)。
【0136】
70%RRTにおけるHMWの最高のパーセント減少は、ロット番号2の試料についての70%RRTにおける0.078mgHMW/cmの負荷容量で行われた実験で見られ、70%RRTにおける31%のHMW減少であった。
【0137】
試験した全ての条件を通じて、二量体含有量における顕著な差異は観察されなかった。ろ過前試料とろ過後試料との間で観察された二量体における差異は、酢酸セルロースフィルターによるHMW凝集体の除去によるこの種(species)のわずかな富化によるものでありうる。
【0138】
総体的回収及び単量体回収
【0139】
表5は、評価対象の各々のTFF前条件について得られた総体的回収及び単量体回収の概要を示す。単量体回収パーセントは、SEC-HPLC単量体読み値からの純度結果を用いて、ろ過前及びろ過後に得られた単量体のmg値に基づいて計算された。
【0140】
●表5.TFF前試料についての回収結果

【表5-1】

【表5-2】
【0141】
酢酸セルロースろ過について評価された各ローディング条件の間で、単量体回収の点での顕著な違いは見られなかった。回収パーセントは87.73%~94.45%であり、単量体回収%は90.15%~95.54%であった。評価対象のローディング条件の全てについて高い単量体回収が見られ、このことは単量体GmAb-DFOは顕著なレベルでは酢酸セルロース膜に結合しなかったことを示している。このことは、酢酸セルロース膜ろ過に付随するロスが、ベンチスケールのフィルターのシステムホールドアップ体積(エアパージ無しでシステム及びフィルター中に保持される体積)に関係しうることを示してい得る。
【0142】
結合能結果
【0143】
この試験で使用された酢酸セルロース膜の70%RRTにおけるHMWについての総結合能をバッチモードで測定し、評価されたフィード及びバッファー条件下での膜に結合した70%RRTにおけるHMWの最大量と称する。総結合能のサイズは、膜にロードされたフィード条件に伴って変動しうる。
【0144】
表6は、TFFろ過前条件についての酢酸セルロースフィルターについての結合能結果を表示する。
【0145】
●表6.TFF前試料についての結合能結果

【表6-1】

【表6-2】
【0146】
70%RRTにおけるHMWについて試験された負荷容量は、70%RRTにおいて0.078から0.488mgの間のHMW/cmであった。表6中のデータは、試験された異なるフィード材料間で幾分かのばらつき(variability)を示している。最も高い結合能はロット番号1の試料について見られ、70%RRTにおいておおよそ0.488mgのHMW/cmがロードされた場合に70%RRTで0.134mgHMW/cmの結合能であった。ロードされた70%RRTにおけるHMWの増加と共に、酢酸セルロースフィルターにロードされたロット番号1の試料及びロット番号2の試料の両方について結合能の増分が見られた。結合能データは、酢酸セルロース膜に結合した70%RRTにおける総HMWについての傾向を示し、これは70%RRTにおけるHMWの漸増と共に増加した。評価されたローディング条件は、膜飽和容量(membrane saturation capacity)までは到達しなかったことを示している。
【0147】
酢酸セルロース膜に結合した70%RRTにおけるHMWの平均mgを計算して、TFF前条件下でのHMW凝集体についての結合能を推定した。TFF前材料についての実験データからの平均結合能は、70%RRTにおいて0.0605mgのHMW/cmであった。この平均結合能を用いて、TFF前バッファー条件でのGMPバッチのフィルター要件を見積もった。図1は、種々の入手可能な酢酸セルロースフィルターサイズについての、線形性を想定して計算された平均結合能に基づく推定結合能を示したグラフである。なお、ラボスケールからプロセススケールへとスケールアップした場合の膜結合能に対して、いくつかの操作パラメータ(例えば、背圧、液流路、流速、フィードばらつき)が影響を与えうる。
【0148】
・TFF後ろ過ステップ
【0149】
HMWの%及び二量体の減少
【0150】
TFF後(つまり、製剤化バッファー;0.9%NaCl溶液)試料についてのフロースルー材料のSEC-HPLC及びA280による特性解析は表7に表示されている。二量体及び70%RRTにおけるHMWのパーセント減少は、SEC-HPLC HMW凝集体及び二量体のデータに対するパーセント減少として正規化した。負荷容量は、70%RRTにおけるHMWのmg/cmとして与えられている。
【0151】
●表7.TFF後試料についてのHMW及び二量体減少結果

【表7-1】

【表7-2】
【0152】
異なるバッチに由来する試料の間で、70%RRTにおけるHMWの減少における差異が見られたが、これはフィード組成物における差異(つまり、試料組成、試料濃度、HMW凝集体含有量)によるものでありうる。ロット番号1の試料についての70%RRTにおけるHMWの減少は、70%RRTにおける0.224mg/cmから0.551mg/cmの間のHMWのローディングレートの場合、7.4%~23.4%であった。ロット番号4の材料については、70%RRTにおけるHMWのより高い減少が観察され、70%RRTにおける0.113mg/cmから0.296mg/cmの間のHMWのローディングレートの場合、27.8%~69.8%であった。ロット番号3/ロット番号4の1:1混合物試料については、70%RRTにおける0.204mgのHMW/cmが膜にロードされた場合に35%の減少が見られた。類似の量がロードされた場合に、70%RRTにおけるHMWの23%~35%の減少が見られた。70%RRTにおけるHMWの最高の減少は、ロット番号4の試料について70%RRTにおけるHMWのローディングレート0.113mg/cmでの実験で見られ、70%RRTにおけるHMWの70%の減少が生じた。
【0153】
試験した条件を通じて、二量体含有量における顕著な差異は観察されなかった。ろ過前試料とろ過後試料との間で観察された二量体における差異は、酢酸セルロースフィルターによるHMW凝集体の除去によるこの種(species)のわずかな富化によるものでありうる。
【0154】
・回収
【0155】
表8は、評価対象の各々のTFF後条件についての製品回収及び単量体回収の概要を示す。単量体回収は、SEC-HPLCデータからの純度値を用いて、ろ過前及びろ過後に得られた単量体のmg値に基づいて計算された。
【0156】
●表8.TFF後試料についての回収結果

【表8-1】

【表8-2】
【0157】
酢酸セルロースろ過について評価された各ローディング条件の間で、単量体回収の点での顕著な違いは見られなかった。総体的回収パーセントは87.81%~94.25%であった;総体的回収は、HMW凝集体含有試料ではHMW凝集体の除去のために、より低いと予想されうる。単量体回収は、94.15%~98.67%であった。評価対象のローディング条件及び材料の全てについて高い単量体回収が見られた。回収ロスは、酢酸セルロースフィルターを通したTFF後試料のためのベンチスケールのシステムホールドアップ体積(エアパージ無しでシステム及びフィルター中に保持される体積)のためであり得る。単量体の顕著なロスは見られず、このことは、単量体と酢酸セルロース膜との間に顕著な相互作用が無いことを示している。これらの結果に基づき、プロセススケールのための酢酸セルロースろ過ステップについてはフラッシュを相応に最適化することが有利であうる。
【0158】
・結合能の結果
【0159】
酢酸セルロース膜についての総HMW凝集体結合能をバッチモードで推定し、これを、評価されたフィード及びバッファー条件下での膜媒体に結合することが可能である70%RRTにおけるHMWの最大量と考えた。
【0160】
表9は、TFFろ過後条件についての酢酸セルロースフィルターについての結合能結果を表示する。
【0161】
●表9.TFF後試料についての結合能結果

【表9-1】

【表9-2】

【表9-3】
【0162】
HMW凝集体について見られた負荷容量は、70%RRTにおいて0.113mgから0.551mgの間のHMW/cmであった。表9におけるロット番号1の材料についてのデータは、この試料について試験した条件の下で70%RRTにおける0.085mgのHMW/cmのあたりでのフィルター飽和を示してい得る。しかし、ロット番号4の試料については、70%RRTにおいて0.121mgのHMW/cmというより高い結合能が見られた。このことは、膜の飽和点がフィードマテリアルに依存しうることを示してい得る。ロット番号4の試料について評価された負荷容量は、膜飽和容量(membrane saturation capacity)には達しなかったことを示している。
【0163】
膜に結合した70%RRTにおけるHMWの平均mgを計算して、先のGMP経験に基づいてプロセススケールで用いるのに適したフィルターサイズを推定するために、TFF後条件下についてのフィルターの結合能を推定した。TFF後材料についての実験データからの平均結合能は、70%RRTにおいて0.0849mgのHMW/cmであった。図2は、種々の入手可能な酢酸セルロースフィルターサイズについての、線形性を想定して計算された平均結合能に基づく推定結合能を示したグラフである。なお、ラボスケールからプロセススケールへとスケールアップした場合の膜結合能に対して、いくつかの操作パラメータ(例えば、背圧、液流路、流速、フィードばらつき)が影響を与えうる。
【0164】
●特性解析
【0165】
Nanodrop機器を用いてSEC-HPLC及びA280によって試料を特性解析した。各試料のアリコートを-80℃のフリーザー中に24時間置き、それから-20℃のフリーザーに移して必要ならさらなる特性解析まで置いた。
【0166】
・A280
【0167】
試料の濃度を280nmにおける吸収によって決定した。システム適合性測定を、ウシ血清アルブミン(BSA)標準を用いてNanodropで行った。システム適合性測定は、各ランの最初及び最後におけるBSA濃度が0.95~1.05mg/mLであるという受け入れ基準の全てを満たし、このことは、NanoDrop機器は適切に機能していることを確認するものである。NanodropをpH7.1のPBSバッファーを用いてブランク化した。GmAb-DFO試料の濃度を、消光係数(extinction coefficient)1.35(mg/mL)-1cm-1及び以下の等式(1)を用いて計算した。
【数1】

【0168】
表10は、A280によるタンパク質濃度の結果の概要を示す。
【0169】
表10.A280によるタンパク質濃度

【表10-1】

【表10-2】

【表10-3】
【0170】
・SEC-HPLC
【0171】
Yarra SEC-300(3μm、290オングストローム、7.8×300mm)SE-HPLCカラムを備えたAgilent1200シリーズHPLCシステムを用いて試料を分析した。各タンパク質種の面積を検出された総面積と比較することによってデータを解析した。単量体についての相対的保持時間、70%RRTにおけるHMW、HMW及び二量体における顕著な変動(variation)は見られなかった。
【0172】
●GMPプロセスにおけるフィルター評価
【0173】
酢酸セルロース0.2μmフィルター(Sartobran MidiCaps 0.05 m2, Sartorius)を用いたろ過ステップを、プロセススケールでのGmAb-DFOを調製するためのコンジュゲーション反応に、TFFステップの前及び後の両方において加えた。簡潔に述べると、出発材料であるギレンツキシマブ(GmAb;GmAb製品プール)の溶液をpH9.6に調整して、pH調整されたGmAbプールを与えた。TFP-N-sucDf-Feの溶液をアセトニトリル中に調製し、前記pH調製されたGmAbプールに加えた。反応系を周囲環境温度で30±2分間インキュベートして、コンジュゲート済み製品プールを与えた。このコンジュゲート済み製品プールをpH7.0に調整し、35℃に加温して、さらにpH4.4へと滴定して、低pHコンジュゲート済み製品プールを与えた。EDTA二ナトリウムを添加することによって、GmAb-N-sucDf-Feから鉄を除去した。反応系を35℃でインキュベートして、トランスキレートされた製品プールを与えた。トランスキレートされた製品プールを、0.05mSartobran酢酸セルロースフィルター(0.2μm)を用いてろ過して、ろ過済みトランスキレートプールを与えた。フィルターを0.9%NaClでフラッシュした。それから、ろ過済みトランスキレート製品プールに対して、0.9%NaClへと限外ろ過ダイアフィルトレーション(UFDF)プロセスを行い、UFDFコンジュゲーションプールを与えた。このUFDFコンジュゲーションプールを0.05mSartobran酢酸セルロースフィルター(0.2μm)を用いてろ過して、ろ過済みUFDFコンジュゲーションプールを与えた。フィルターを0.9%NaClでフラッシュして製品の完全な回収を確実とし、ろ過済みUFDFコンジュゲーションプールを得た。最終的なBDS材料を与えるために、最終バイオバーデン低減ステップとして、ろ過済みUFDFコンジュゲーションプールを、PVDF膜を有する0.01mミリパック20(0.2μm)フィルターに通した。バッチ番号1、バッチ番号2、バッチ番号3、バッチ番号4の4つのバッチを評価した。
【0174】
これらのバッチからのインプロセスSEC-HPLC結果を図3に表示し、表11にまとめる。これらのデータは、TFF前酢酸セルロースフィルターは、4つのバッチ全てを通して、HMW凝集体含有量を約15%から約4%へと減少させることが一貫して可能であったこと、一方、TFF後酢酸セルロースフィルターは、HMW凝集体「仕上げ」(HMW aggregate "polish")を与え、HMW含有量を約3%から約1%へと減少させたこと、を示している。解析した4つのバッチの全てにおいて、酢酸セルロースろ過戦略は、HMW凝集体レベルを満足いく規格内レベルに効果的に制御することができ、そして高い(>85%~95%)単量体回収を与えた。このことは、プロセススケールのコンジュゲーション反応の際に種々の条件の下で、酢酸セルロースフィルターがHMW凝集体を除去するのに有用であることを実証している。
【0175】
●表11.プロセススケールのGmAb-DFOバッチについてのインプロセスSEC-HPLCデータ

【表11-1】

【表11-2】
【0176】
●実施例3.HuJ591-DOAT-177Luの凝集体の除去
【0177】
HuJ591-DOTA材料のpHをpH4.0に調整しそして35℃で60分間インキュベートすることによって、凝集したHuJ591-DOTAの試料を作製した。
【0178】
凝集したHuJ591-DOTAの60μLを50μLの177Lu/HClに加えて、35℃で35分間インキュベートして、凝集した177Lu-DOTA-HuJ591を作製した。
【0179】
110μLの凝集した177Lu-DOTA-HuJ591を酢酸セルロース0.22μmフィルターに通した。
【0180】
ろ過前及びろ過後に、材料をA280(ナノドロップ)及びSEC-HPLCで分析した(表12を参照)。
●表12.酢酸セルロースろ過前及び後における177Lu-DOTA-HuJ591の分析の概要

【表12】
図1
図2
図3
【国際調査報告】