(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】調節RNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた遺伝子転写の調節
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240910BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240910BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20240910BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20240910BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20240910BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240910BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7105
A61K31/7125
A61K31/712
A61K31/7115
A61P3/00
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513894
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022075934
(87)【国際公開番号】W WO2023034983
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520051908
【氏名又は名称】キャンプ4 セラピューティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】セーガル アルフィカ
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ ブライアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スミス シンシア エム.
(72)【発明者】
【氏名】バムクロット デイビッド エイ.
(72)【発明者】
【氏名】カラベラ ジャスティン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ガンボア マリオ エステバン コントレラス
(72)【発明者】
【氏名】ケルカー ラチャナ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ユン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ユーティン
(72)【発明者】
【氏名】ロイ サブハディープ
(72)【発明者】
【氏名】オーケルベリ ブリン ニコール-ヨシコ
(72)【発明者】
【氏名】パイ ルトゥジャ スダカー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086NA14
4C086ZC21
(57)【要約】
プロモーター関連RNA及びエンハンサーRNAなどの調節RNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を用いてOTC遺伝子転写を調節する方法が本明細書に記載される。これらの方法は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)の発現を増大させるのに有用であり、それによって、異常な遺伝子発現に関連する疾患を治療する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)の調節RNAの少なくとも8個の連続するヌクレオチドに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であって、前記調節RNAは、配列番号1~4または1077からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する、前記アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記regRNAの3’末端から200ヌクレオチド以下である前記regRNA中の配列に相補的である、請求項1に記載のASO。
【請求項3】
前記regRNAの5’末端から200ヌクレオチド以下である前記regRNA中の配列に相補的である、請求項1に記載のASO。
【請求項4】
前記regRNAがポリアデニル化RNAではない、請求項1~3のいずれか1項に記載のASO。
【請求項5】
前記ASOが前記regRNAのRNAse H媒介性分解を誘導しない、請求項1~3のいずれか1項に記載のASO。
【請求項6】
前記調節RNAが、配列番号1のヌクレオチド配列を有し、前記ASOが、配列番号6~14、18~35、39、41、75、76、77、78、87~124または143~892からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1、2、4または5のいずれか1項に記載のASO。
【請求項7】
前記調節RNAが、配列番号2のヌクレオチド配列を有し、前記ASOが、配列番号15~17、36~38、64~74、125~142、または893~1029のヌクレオチド配列を含む、請求項1、2、4、または5のいずれか1項に記載のASO。
【請求項8】
前記調節RNAが、配列番号2のヌクレオチド配列を有し、前記ASOが、配列番号17のヌクレオチド配列を含む、請求項1、または3~5のいずれか1項に記載のASO。
【請求項9】
前記ASOが、50、40、30、または25ヌクレオチド長以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のASO。
【請求項10】
前記ASOが、1つ以上の化学修飾を含むRNAポリヌクレオチドを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のASO。
【請求項11】
前記ASOの5’末端の少なくとも3、4、または5個のヌクレオチド、及び3’末端の少なくとも3、4、または5個のヌクレオチドが、1つ以上の化学修飾を有するリボヌクレオチドを含む、請求項10に記載のASO。
【請求項12】
前記1つ以上の化学修飾が、2’-O-C1~4アルキル、例えば、2’-O-メチル(2’-OMe)、2’-デオキシ(2’-H)、2’-O-C1~3アルキル-O-C1~3アルキル、例えば、2’-メトキシエチル(「2’-MOE」)、2’-フルオロ(「2’-F」)、2’-アミノ(「2’-NH2」)、2’-アラビノシル(「2’-アラビノ」)ヌクレオチド、2’-F-アラビノシル(「2’-F-アラビノ」)ヌクレオチド、2’-ロックド核酸(「LNA」)ヌクレオチド、2’-アミド架橋核酸(AmNA)、2’-アンロックド核酸(「ULNA」)ヌクレオチド、L型の糖(「L-糖」)、4’-チオリボシルヌクレオチド、拘束エチル(cET)、2’-フルオロ-アラビノ(FANA)、またはチオモルホリノのうち1つ以上を含むヌクレオチド糖修飾を含む、請求項10または11に記載のASO。
【請求項13】
前記1つ以上の化学修飾が、ホスホロチオエート(「PS」または(P(S)))、ホスホロアミデート(P(NR1R2)、例えば、ジメチルアミノホスホロアミデート(P(N(CH3)2))、ホスホノカルボキシレート(P(CH2)nCOOR)、例えば、ホスホノアセテート「PACE」(P(CH2COO-))、チオホスホノカルボキシレート((S)P(CH2)nCOOR)、例えば、チオホスホノアセテート「thioPACE」((S)P(CH2COO-))、アルキルホスホネート(P(C1~3アルキル)、例えば、メチルホスホネート-P(CH3)、ボラノホスホネート(P(BH3))、またはホスホロジチオエート(P(S)2)のうちの1つ以上を含むヌクレオチド間結合修飾を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載のASO。
【請求項14】
前記1つ以上の化学修飾が、2-チオウラシル(「2-チオU」)、2-チオシトシン(「2-チオC」)、4-チオウラシル(「4-チオU」)、6-チオグアニン(「6-チオG」)、2-アミノアデニン(「2-アミノA」)、2-アミノプリン、シュードウラシル、ヒポキサンチン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-メチルシトシン(「5-メチルC」)、5-メチルウラシル(「5-メチルU」)、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-エチニルシトシン、5-エチニルウラシル、5-アリルウラシル(「5-アリルU」)、5-アリルシトシン(「5-アリルC」)、5-アミノアリルウラシル(「5-アミノアリルU」)、5-アミノアリル-シトシン(「5-アミノアリルC」)、脱塩基ヌクレオチド、Z塩基、P塩基、非構造核酸(「UNA」)、イソグアニン(「isoG」)、イソシトシン(「isoC」)グリセロール核酸(GNA)、グリセロール核酸(GNA)、またはチオホスホルアミデートモルホリノ(TMO)のうちの1つ以上を含む核酸塩基修飾を含む、請求項10~13のいずれか1項に記載のASO。
【請求項15】
前記1つ以上の化学修飾が、2’-O-メトキシエチル、シチジン上の5-メチル、ロックド核酸(LNA)、ホスホジエステル(PO)ヌクレオチド間結合、またはホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合を含む、請求項10~14のいずれか1項に記載のASO。
【請求項16】
配列番号18~39または67~74のヌクレオチド配列を含む、請求項10~15のいずれか1項に記載のASO。
【請求項17】
非修飾DNAの10個以上の連続するヌクレオチドを含まない、請求項10~15のいずれか1項に記載のASO。
【請求項18】
デオキシリボヌクレオチドを含まない、請求項17に記載のASO。
【請求項19】
非修飾リボヌクレオチドを含まない、請求項10~18のいずれか1項に記載のASO。
【請求項20】
前記ASOの長さが5×n+5ヌクレオチド(nは3以上の整数)であり、5×m位のヌクレオチドが、LNAによって修飾されたリボヌクレオチドであり(mは1~nの整数)、残りの位置のヌクレオチドが、2’-O-メトキシエチルによって修飾されたリボヌクレオチドである、請求項10~19のいずれか1項に記載のASO。
【請求項21】
GalNAc部分、任意選択でGalNAc3部分をさらに含む、請求項20に記載のASO。
【請求項22】
配列番号142のヌクレオチド配列を含む、請求項20または21に記載のASO。
【請求項23】
前記ASOの長さが3×n+2ヌクレオチド(nは6以上の整数)であり、3×m位の前記ヌクレオチドが、LNAによって修飾されたリボヌクレオチドであり(mは1~nの整数)、残りの位置のヌクレオチドが、2’-O-メトキシエチルによって修飾されたリボヌクレオチドである、請求項10~19のいずれか1項に記載のASO。
【請求項24】
配列番号21のヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載のASO。
【請求項25】
GalNAc部分、任意選択でGalNAc3部分をさらに含む、請求項23または24に記載のASO。
【請求項26】
配列番号122のヌクレオチド配列を含む、請求項25に記載のASO。
【請求項27】
前記ASOの各リボヌクレオチドが2’-O-メトキシエチルにより修飾される、請求項10~19のいずれか1項に記載のASO。
【請求項28】
配列番号25のヌクレオチド配列を含む、請求項27に記載のASO。
【請求項29】
前記ASOの各ヌクレオチドが2’-O-メトキシエチルにより修飾されるリボヌクレオチドである、請求項10~19のいずれか1項に記載のASO。
【請求項30】
配列番号36のヌクレオチド配列を含む、請求項29に記載のASO。
【請求項31】
5’末端及び3’末端の各々において修飾リボヌクレオチドの少なくとも3つのヌクレオチドが隣接する非修飾DNAの10個以上の連続するヌクレオチドを含む、請求項10~15のいずれか1項に記載のASO。
【請求項32】
配列番号18のヌクレオチド配列を含む、請求項31に記載のASO。
【請求項33】
前記ASO中の各シチジンが5-メチルによって修飾される、請求項10~32のいずれか1項に記載のASO。
【請求項34】
前記regRNAがeRNAである、請求項1~33のいずれか1項に記載のASO。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか1項に記載のASO、及び薬学的に許容される担体または賦形剤担体を含む、医薬組成物。
【請求項36】
ヒト細胞におけるOTCの転写を増大させる方法であって、細胞を請求項1~34のいずれか1項に記載のASOまたは請求項35に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項37】
前記細胞が肝細胞である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ASOが、前記細胞中の前記調節RNAの量を増大させる、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記ASOが、前記細胞中の前記調節RNAの安定性を増大させる、請求項36~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
尿素サイクル異常症の処置方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~34のいずれか1項に記載のASOまたは請求項35に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
前記ASOが前記対象の細胞における前記調節RNAの量を増大させる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ASOが、前記対象の細胞内の前記調節RNAの安定性を増大させる、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が肝細胞である、請求項41または42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月3日出願の米国仮出願第63/240,838号及び2021年12月22日出願の米国仮出願第63/292,792号の利益を主張するものであり、これらの各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願には、EFS-Webを介して提出され、その全体が参照により本明細書に援用される配列表が含まれる。20XX年、XX月に作成された該ASCIIコピーは、XXXXXUS_sequencelisting.txtと称され、サイズがX,XXX,XXXバイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、プロモーター関連RNA及びエンハンサーRNAなどのOTC調節RNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を用いて、OTC遺伝子転写をアップレギュレートまたはダウンレギュレートする方法に関する。
【背景技術】
【0004】
転写因子は、プロモーター及びエンハンサーDNAエレメント中の特定の配列に結合して、遺伝子転写を調節する。活性プロモーター及びエンハンサーエレメントはそれ自体が転写され、プロモーター関連RNA(paRNA)及びエンハンサーRNA(eRNA)などの非コード調節RNA(regRNA)を生成することが最近報告された(Sartorelli及びLauberth,Nat.Struct. Mol.Biol.(2020)27,521-28(非特許文献1)を参照されたい)。コードRNAとは異なり、regRNAは双方向に転写される。ヌクレオソームリモデリング(Mousavi et al.,Mol.Cell(2013)51(5):606-17(非特許文献2)を参照されたい)、エンハンサー-プロモーターループの調節(Lai et al.,Nature(2013)494(7438):497-501(非特許文献3)を参照されたい)、及び転写調節因子との直接相互作用(Sigova et al.,Science(2015)350,978-81(非特許文献4)を参照されたい)を含む、regRNAの機能のための様々なモデルが提案されている。
【0005】
遺伝子発現は、一般に、創薬不可能な生物学的過程(undrugable biological process)として公知である。遺伝子転写及びregRNAの生物学を理解することに対する努力に関わらず、臨床的に適切な遺伝子発現を調節する方法は限定される。異常な遺伝子発現に関連する疾患を治療するための新規かつ有用な方法の必要性が残っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sartorelli及びLauberth,Nat.Struct. Mol.Biol.(2020)27,521-28
【非特許文献2】Mousavi et al.,Mol.Cell(2013)51(5):606-17
【非特許文献3】Lai et al.,Nature(2013)494(7438):497-501
【非特許文献4】Sigova et al.,Science(2015)350,978-81
【発明の概要】
【0007】
本発明は、プロモーター関連RNA及びエンハンサーRNAのような調節RNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ならびに遺伝子発現を調節するためにこれらのASOを用いる方法を提供する。これらの方法は、遺伝子産物のレベルを調節するために、例えば、疾患を引き起こす遺伝子(例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC))の発現レベルを調節し、それによって、異常な遺伝子発現に関連する疾患(例えば、尿素サイクル異常)を処置するために有用である。
【0008】
1つの態様において、本明細書に提供されるのは、ヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)の調節RNAの少なくとも8個の連続するヌクレオチドに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、この調節RNAは、配列番号1~4または1077からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、ASOは、regRNAの3’末端から200ヌクレオチド以下であるregRNA中の配列に相補的である。
【0010】
いくつかの実施形態では、ASOは、regRNAの5’末端から200ヌクレオチド以下であるregRNA中の配列に相補的である。
【0011】
いくつかの実施形態では、regRNAはポリアデニル化RNAではない。
【0012】
いくつかの実施形態では、ASOは、regRNAのRNAse H媒介性分解を誘導しない。
【0013】
いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号1のヌクレオチド配列を有し、ASOは、配列番号6~14、18~35、39、41、75、76、77、78、87~124または143~892からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号2のヌクレオチド配列を有し、ASOは、配列番号15~17、36~38、64~74、125~142、または893~1029のヌクレオチド配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号2のヌクレオチド配列を有し、ASOは、配列番号17のヌクレオチド配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、ASOは、長さが50、40、30、または25ヌクレオチド以下である。
【0017】
いくつかの実施形態では、ASOは、1つ以上の化学修飾を含むRNAポリヌクレオチドを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、ASOの5’末端の少なくとも3、4、または5個のヌクレオチド、及び3’末端の少なくとも3、4、または5個のヌクレオチドは、1つ以上の化学修飾を有するリボヌクレオチドを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化学修飾は、2’-O-C1~4アルキル、例えば、2’-O-メチル(2’-OMe)、2’-デオキシ(2’-H)、2’-O-C1~3アルキル-O-C1~3アルキル、例えば、2’-メトキシエチル(「2’-MOE」)、2’-フルオロ(「2’-F」)、2’-アミノ(「2’-NH2」)、2’-アラビノシル(「2’-アラビノ」)ヌクレオチド、2’-F-アラビノシル(「2’-F-アラビノ」)ヌクレオチド、2’-ロックド核酸(「LNA」)ヌクレオチド、2’-アミド架橋核酸(AmNA)、2’-アンロックド核酸(「ULNA」)ヌクレオチド、L型の糖(「L-糖」)、4’-チオリボシルヌクレオチド、拘束エチル(cET)、2’-フルオロ-アラビノ(FANA)、またはチオモルホリノのうち1つ以上を含むヌクレオチド糖修飾を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化学修飾は、ホスホロチオエート(「PS」または(P(S)))、ホスホロアミデート(P(NR1R2)、例えばジメチルアミノホスホロアミデート(P(N(CH3)2))、ホスホノカルボキシレート(P(CH2)nCOOR)、例えば、ホスホノアセテート「PACE」(P(CH2COO-))、チオホスホノカルボキシレート((S)P(CH2)nCOOR)、例えば、チオホスホノアセテート「thioPACE」((S)P(CH2COO-))、アルキルホスホネート(P(C1~3アルキル)、例えば、メチルホスホネート-P(CH3)、ボラノホスホネート(P(BH3))、またはホスホロジチオエート(P(S)2)のうちの1つ以上を含むヌクレオチド間修飾を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化学修飾は、2-チオウラシル(「2-チオU」)、2-チオシトシン(「2-チオC」)、4-チオウラシル(「4-チオU」)、6-チオグアニン(「6-チオG」)、2-アミノアデニン(「2-アミノA」)、2-アミノプリン、シュードウラシル、ヒポキサンチン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-メチルシトシン(「5-メチルC」)、5-メチルウラシル(「5-メチルU」)、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-エチニルシトシン、5-エチニルウラシル、5-アリルウラシル(「5-アリルU」)、5-アリルシトシン(「5-アリルC」)、5-アミノアリルウラシル(「5-アミノアリルU」)、5-アミノアリル-シトシン(「5-アミノアリルC」)、脱塩基ヌクレオチド、Z塩基、P塩基、非構造核酸(「UNA」)、イソグアニン(「isoG」)、イソシトシン(「isoC」)グリセロール核酸(GNA)、グリセロール核酸(GNA)、またはチオホスホルアミデートモルホリノ(TMO)のうちの1つ以上を含む核酸塩基修飾を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化学修飾は、2’-O-メトキシエチル、シチジン上の5-メチル、ロックド核酸(LNA)、ホスホジエステル(PO)ヌクレオチド間結合、またはホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化学修飾は、2’-O-メトキシエチル、シチジン上の5-メチル、ロックド核酸(LNA)、ホスホジエステル(PO)ヌクレオチド間結合、またはホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号18~39または67~74のヌクレオチド配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、ASOは、非修飾DNAの10個以上の連続するヌクレオチドを含まない。
【0026】
いくつかの実施形態では、ASOは、デオキシリボヌクレオチドを含まない。
【0027】
いくつかの実施形態では、ASOは、非修飾リボヌクレオチドを含まない。
【0028】
いくつかの実施形態では、ASOの長さは、5×n+5ヌクレオチド(nは3以上の整数)であり、5×m位のヌクレオチドは、LNAによって修飾されたリボヌクレオチドであり(mは1~nの整数)、残りの位置のヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチルによって修飾されたリボヌクレオチドである。
【0029】
いくつかの実施形態では、ASOは、GalNAc部分をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号142のヌクレオチド配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、ASOの長さは、3×n+2ヌクレオチド(nは6以上の整数)であり、3×m位のヌクレオチドは、LNAによって修飾されたリボヌクレオチドであり(mは1~nの整数)、残りの位置のヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチルによって修飾されたリボヌクレオチドである。
【0032】
いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号21のヌクレオチド配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、ASOは、GalNAc部分をさらに含む。
【0034】
ASOが配列番号122のヌクレオチド配列を含む、請求項22に記載のASO。
【0035】
いくつかの実施形態では、ASOの各リボヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチルによって修飾される。
【0036】
いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号25のヌクレオチド配列を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、ASOの各ヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチルによって修飾されるリボヌクレオチドである。
【0038】
いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号36のヌクレオチド配列を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、ASOは、5’末端及び3’末端の各々において修飾リボヌクレオチドの少なくとも3つのヌクレオチドが隣接する非修飾DNAの10個以上の連続するヌクレオチドを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号18のヌクレオチド配列を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、ASO中の各シチジンは、5-メチルにより修飾される。
【0042】
いくつかの実施形態では、regRNAはeRNAである。
【0043】
一態様では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のASo、及び薬学的に許容される担体または賦形剤担体を含む、医薬組成物である。
【0044】
一態様において、ヒト細胞におけるOTCの転写を増大させる方法であって、細胞を本明細書に記載のASOまたは本明細書に記載の医薬組成物と接触させることを含む方法が、本明細書に提供される。
【0045】
いくつかの実施形態では、細胞は肝細胞である。
【0046】
いくつかの実施形態では、ASOは、細胞内の調節RNAの量を増大させる。
【0047】
いくつかの実施形態では、ASOは、細胞内の調節RNAの安定性を増大させる。
【0048】
一態様において、尿素サイクル異常を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書に記載のASOまたは本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0049】
いくつかの実施形態では、ASOは、対象の細胞内の調節RNAの量を増大させる。
【0050】
いくつかの実施形態では、ASOは、対象の細胞内の調節RNAの安定性を増大させる。
【0051】
いくつかの実施形態では、細胞は肝細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】染色体上の遺伝子のeRNA、paRNA、mRNA、及び天然アンチセンス転写物(NAT)の例示的な概略図を示す。eRNA、paRNA、及びNATは、すべて非コードRNAである。eRNAは、遺伝子のエンハンサーから二方向に転写される。paRNAは、遺伝子のプロモーターから、mRNAと同じであるが、アンチセンス方向に転写される。NATは、それ自体の下流プロモーターからアンチセンス方向に転写され、その結果、転写物は、mRNAと少なくとも部分的に重複する。一般に、eRNA及びpaRNAは遺伝子発現をアップレギュレートし、NATは遺伝子発現を下方制御する。
【0053】
【
図2】A~Dは、示されたASOによる処理が用量依存的にOTCのmRNAアップレギュレーションをもたらすことを示す。Aは、hOTC-ASOe1-11による処理後のOTCのmRNAを示す。Bは、hOTC-ASOe1-8による処理後のOTCのmRNAを示す。Cは、hOTC-ASOe2-1による処理後のOTCのmRNAを示す。Dは、hOTC-ASOe1-1による処理後のOTCのmRNAを示す。
【0054】
【
図3A】OTCのmRNAが、ASO hOTC-ASOe1-10及びhOTC-ASOe1-2cによる処理後にOTC欠損ドナー由来の細胞において増大したことを示す。
【
図3B】ASO hOTC-ASOe1-10及びhOTC-ASOe1-2cによる処理後にOTC欠損ドナー由来の細胞において尿素生成が増大したことを示す。
【
図3C】ASO hOTC-ASOe1-2aによる処理後にWT細胞においてOTCのmRNAが増大したことを示す。
【
図3D】ASO hOTC-ASOe1-2aによる処理後にWT細胞において尿素生成が増大したことを示す。
【0055】
【
図4】示されたマウスASOが、野生型マウス由来の初代マウス肝臓細胞においてOTCのmRNAレベルを増大させたことを示す。一元配置ANOVA*:p0.05-0.005;**:p<0.005。
【0056】
【
図5】示されたマウスASOが、spf
ash初代マウス肝臓細胞におけるOTCのmRNAレベルを増大させたことを示す。一元配置ANOVA**:p<0.005。
【0057】
【
図6】Aは、IFNyによる処理後、Serping1のアップレギュレーションを示す。Bは、JAK阻害剤トファシチニブによる処理後のSerping1のダウンレギュレーションを示す。
【0058】
【
図7】IFNy誘導後の、Serping1のmRNAとタンパク質分泌との相関を示す。
【0059】
【
図8】IFNyで処理した、マウス肝臓におけるSerping1のmRNA及びregRNAの誘導を示す。
【0060】
【
図9】Aは、IFNyによる処置後の経時的研究における、マウス肝細胞におけるSerping1のmRNA及びregRNAレベルを示す。Bは、IFNyによる処理後の、経時的研究におけるマウス肝細胞におけるSerping1のmRNA及びregRNAのレベルを示す。
【0061】
【
図10】IFNgまたはPBS(対照)による処理後のSerping1エンハンサー2のRNA及びプロモーター2のRNAレベルを示す。
【0062】
【
図11】
図11Aは、Serping1染色体近傍の概略図を示す。
図11Bは、示されたASOによる処理後のSerping1、Irf1、Ube216、及びNTC-3_SのmRNAレベルを示す。
【0063】
【
図12】示されたASOによる処理後のSerping1のmRNAレベルを示す。
【0064】
【
図13】示されたASOによる処理の24、48及び72時間後のSerping1のmRNAレベルを示す。
【0065】
【
図14】Aは、インビボのマウス研究のタイムラインの図を示す。Bは、ASO-2による処理後にインビボで増大したSerping1のmRNA発現を示す。
【0066】
【
図15】Aは、IFNy+示されたASOのSerping1のmRNA発現に対する相加効果を、未処理細胞に対して正規化して示す。Bは、IFNy+示されたASOのSerping1のmRNA発現に対する相加効果を、未処理細胞に対して正規化して示す。
【0067】
【
図16】JAK1阻害剤トファシチニブまたはJAK1阻害剤トファシチニブ+ASO-2処理後のSerping1のmRNA発現を、未処理細胞に対して正規化して示す。
【0068】
【
図17】JAK1阻害剤トファシチニブを使用するSerping1ノックダウン系における示されたASO処理が、Serping1のmRNA発現を増大させたことを示す。
【0069】
【
図18A】化学修飾を有する種々のヒトOTC ASOの概略図を示す。薄い灰色は、2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)修飾を示す。濃い灰色は、ロックド核酸(LNA)修飾を示す。線括弧は、ホスホジエステル(PO)結合を示す。*Cは、シチジン上の5-メチルを示す。^は、FANAヌクレオシドを示す。この図に示される特定の化学修飾を有するヌクレオチド配列に、固有の配列識別子を割り当てる。
【
図18B】化学修飾を有する種々のヒトOTC ASOの概略図を示す。薄い灰色は、2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)修飾を示す。濃い灰色は、ロックド核酸(LNA)修飾を示す。線括弧は、ホスホジエステル(PO)結合を示す。*Cは、シチジン上の5-メチルを示す。^は、FANAヌクレオシドを示す。この図に示される特定の化学修飾を有するヌクレオチド配列に、固有の配列識別子を割り当てる。
【
図18C】化学修飾を有する、様々なマウスOTC ASOの概略図を示す。薄い灰色は、2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)修飾を示す。*Cは、シチジン上の5-メチルを示す。この図に示される特定の化学修飾を有するヌクレオチド配列に、固有の配列識別子を割り当てる。
【0070】
【
図19】化学修飾を有する種々のSerping1 ASOの概略図を示す。薄い灰色は、2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)修飾を示す。*Cは、シチジン上の5-メチルを示す。固有の配列識別子が、この図に示される特定の化学修飾を有するヌクレオチド配列に割り当てられる。
【0071】
【
図20】Aは、示されたASOによる処理が、用量依存的様式でヒトOTCのmRNAアップレギュレーションをもたらすことを示す。Bは、示されたASOによる処理が用量依存的にOTCのmRNAアップレギュレーションをもたらすことを示す。
【0072】
【
図21】示されたASOによる処理が、用量依存的様式でヒトOTCのmRNAアップレギュレーションをもたらすことを示す。
【0073】
【
図22】示されたASOによる処理が、用量依存的様式でヒトOTCのmRNAアップレギュレーションをもたらすことを示す。
【0074】
【
図23】hOTC-ASOe1-1aが、PBMCによるIL6、TNFa、IFNa、またはIFNbサイトカイン放出を誘導しなかったことを示す。
【0075】
【
図24A】示されたASOによる処理が、用量依存的様式でマウスOTCのmRNAアップレギュレーションをもたらすことを示す。
【
図24B】Otc regRNA標的化ASO CO-4474がOtc
defマウスにおいてマウスOTCのmRNAを増大させなかったことを示す。
【
図24C】CO-4474がアンモニアをWTレベルまで減少させたことを示す。
【0076】
【
図25】Aは、hOTC-ASOe1-10による処理後のOTC遺伝子発現のアップレギュレーションを示す。Bは、ヒトhg38ゲノムに対するペアエンド配列決定ChIP-seqライブラリーのアラインメント及びピークを示す。Cは、hOTC-ASOe1-10による処理後にOTCエンハンサー、OTCプロモーター、及び対照領域(GAPDH、RPGR、TSPAN7)における差次的ピークが同定されたことを示す。
【0077】
【
図26】OTCプロモーター、及びエンハンサー及び隣接するRPGRプロモーターにおけるアクセス可能なクロマチン領域を示す(囲まれた領域で示す)。
【0078】
【
図27】Aは、ASO処理後の経時的なOTCエンハンサーから転写されたマイナス鎖regRNA(RR1)の相対発現レベルを示す。Bは、ASO処理後の経時的な、OTCエンハンサーから転写されたプラス鎖regRNA(RR2)の相対発現レベルを示す。Cは、hOTC-ASOe1-10処理後の経時的なOTCのmRNA効果を示す。Dは、hOTC-ASOe1-10処理後のH3K27ac ChIP-qPCRの結果を示す。Eは、OTC ASOに対する転写及びクロマチン応答の時間的モデルを提供する。
【0079】
【
図28】Aは、NTC ASOと比較した、hOTC-ASOe1-10による処理後の示された負の調節因子に対する結合の相対的損失を示す。Bは、RNase処理後の肝細胞において、HDAC5及びNCOR1の結合がOTCエンハンサーで減少しないことを示す。
【0080】
【
図29】Aは、siHDAC5またはsiNCOR1による処理が、標的mRNAレベルの少なくとも50%の低下をもたらすことを示す。Bは、HDAC5またはNCOR1ノックダウンのsiRNAノックダウンが、肝細胞におけるOTCのmRNA発現の増大を導くことを示す。Cは、未処理の肝細胞、ならびにsiHDAC5またはsiNCOR1で処理した肝細胞における、hOTC-ASOe1-10で処理した後のOTCのmRNAの倍率変化を示す。
【0081】
【
図30】OTC regRNA標的化ASOで処理した後のOTC遺伝子発現のモデルを提供する。
【0082】
【
図31】示したASOで処理した後の、NHPにおけるアンモニア及び尿素レベルを示す。
【0083】
【
図32】ヒト化マウスモデルにおいて示されたASOで処理した後の相対的なOTC、NAGS、CPS1、ASS1、ASL、またはARG1のmRNA発現を示す。
【0084】
【
図33】ヒト化マウスにおけるCO-5318及びCO-5319処理が、経時的にアンモニアの減少及び尿素の対応する増大を示したことを示す。
【0085】
【
図34】Aは、ASO CO-3265、CO-3279、CO-2043、及びCO-2051が、Serping1のmRNA発現を用量依存的に増大させたことを示す。Bは、ASO CO-2043、CO-2051、CO-3265、CO-3419、CO-4069、及びCO-3279が、C1NH+/-肝細胞におけるSerping1遺伝子発現を用量依存的に増大させたことを示す。
【0086】
【
図35】示されたASOが、マウスにおいて、Serping1のmRNAを増大させたことを示す。
【0087】
【
図36】CO-2051が、CINH+/-マウスの耳及び結腸の両方における色素溢出の量を減少させたことを示す。
【0088】
【
図37】Aは、CO-2051が、WTマウスにおいてSerping1タンパク質発現を増大させたことを示す。Bは、CO-2051がC1NH+/-マウスにおいてSerping1タンパク質発現を増大させたことを示す。Cは、CO-2051-GalNAcが、C1NH+/-マウスにおいてSerping1タンパク質発現を増大させたことを示す。Dは、CO-2051-GalNAcによる処理後の色素溢出の定量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
詳細な説明
本発明は、プロモーター関連RNA及びエンハンサーRNAのような調節RNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ならびに遺伝子発現を調節するためにこれらのASOを用いる方法を提供する。これらの方法は、遺伝子産物のレベルを調節するために、例えば、疾患を引き起こす遺伝子(例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC))の発現レベルを調節し、それによって、異常な遺伝子発現に関連する疾患(例えば、尿素周期疾患)を処置するために有用である。
【0090】
本出願に記載される多重特異的結合タンパク質の様々な態様を、以下の節に記載する。
【0091】
定義
本出願の理解を促進するために、多数の用語及び語句を下記に定義する。
【0092】
本明細書で使用されるとき、用語「ある、1つの(a:不定冠詞)」及び「ある、1つの(an:不定冠詞)」は、「1つ以上」を意味し、文脈が不適切でない限り複数を含む。
【0093】
本明細書で使用される場合、「オルニチントランスカルバミラーゼ」または「OTC」という用語は、UniProtアクセッション番号P00480のタンパク質ならびに関連するアイソフォーム及びオルソログを指す。
【0094】
本明細書で使用される場合、「調節RNA」及び「regRNA」という用語は、遺伝子の調節エレメントから転写された非コードRNA(例えば、タンパク質コード遺伝子)であって、この遺伝子が非コードRNA自体ではない非コードRNAを指して互換的に使用される。例示的な調節エレメントとしては、限定するものではないが、プロモーター、エンハンサー、及びスーパーエンハンサーが挙げられる。プロモーターからアンチセンス方向に転写された非コードRNAは、「プロモーターRNA」または「paRNA」とも呼ばれる。センス方向またはアンチセンス方向のいずれかで、エンハンサーまたはスーパーエンハンサーから転写された非コードRNAはまた、「エンハンサーRNA」または「eRNA」とも呼ばれる。遺伝子の転写物の少なくとも一部と相補的な天然のアンチセンス転写物(NAT)は、本明細書で使用される調節RNAではないことが理解される。
【0095】
本明細書で使用される場合、「新生RNA」という用語は、依然として転写されているか、またはRNAポリメラーゼによって転写されたばかりであり、転写されたDNAに繋がれたままであるRNAを指す。転写されるDNAから解離したRNAは、「非係留RNA(untethered RNA)」とも呼ばれる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または「ASO」という用語は、適切な条件下で標的核酸とハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチド、またはそのような一本鎖オリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートを指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、regRNAの安定性は、regRNAの分解速度と逆相関する。ASOがregRNAの安定性を増大させる場合、regRNAの分解速度を低下させる。ASOがregRNAの安定性を低減させる場合、regRNAの分解速度を増大させる。regRNAの分解速度は、新しいregRNAの合成をブロックし、既存のregRNAの半減期を評価することによって測定され得る。
【0098】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書に記載の方法及び組成物によって治療される生物体を指す。そのような生物体としては、好ましくは、限定するものではないが、哺乳動物(例えば、げっ歯類、霊長類、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が挙げられ、及びさらに好ましくは、ヒトが挙げられる。
【0099】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、本出願の化合物)の量を指す。有効量は、1回以上の投与、適用、または投薬において投与されてもよく、特定の処方または投与経路に限定する意図はない。本明細書で使用されるとき、「治療する」と言う用語は、病態、疾患、障害などの改善をもたらす、例えば、低下、低減、調節、改良、もしくは排除などの任意の効果、またはそれらの症状の改良を含む。
【0100】
本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」という用語は、活性薬剤と、その組成物をインビボまたはエキソビボにおける診断的または治療的使用に本質的に好適にさせる不活性または活性な担体との組み合わせを指す。
【0101】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、標準的な薬学的担体、例えば、リン酸緩衝食塩水、水、エマルション(例えば、水中油型または油中水型のエマルション)、及び種々のタイプの湿潤剤のいずれかを指す。また、組成物は、安定剤及び防腐剤を含んでもよい。担体、安定化剤及びアジュバントの例に関しては、例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ. Co.,Easton,PA(1975)を参照されたい。
【0102】
この説明を通して、組成物が特定の構成要素を有する、含む、もしくは備えると説明されるか、またはプロセス及び方法が特定のステップを有する、含む、もしくは備えると説明される場合、それに加えて、記載される構成要素から本質的になるか、もしくはそれからなる本出願に記載の組成物が存在すること、ならびに記載されるプロセスステップから本質的になるか、もしくはそれからなる本出願によるプロセス及び方法が存在することが企図される。
【0103】
一般事項として、パーセンテージを特定する組成物は、特に明記しない限り、重量基準である。さらに、可変要素が定義を伴わない場合、その可変要素の以前の定義が優先する。
【0104】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
本明細書に開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、標的遺伝子の調節エレメントから転写されたregRNAとハイブリダイズする。eRNA及びpaRNAの両方が、遺伝子発現を促進またはアップレギュレーションするregRNAであることが理解される(
図1)。特定の実施形態では、標的regRNAは、eRNAである。特定の実施形態では、標的regRNAは、paRNAである。特定の実施形態では、標的regRNAは、ポリアデニル化RNAではない。eRNAは、当技術分野で公知の方法、例えば、配列決定(ATAC-seq)を用いたトランスポザーゼ-アクセッシブルクロマチンのアッセイ、グローバルランオンシーケンシング、精密ランオンシーケンシング、キャップ分析遺伝子発現、及びヒストン修飾分析(例えば、Sartorelli & Lauberth,Nat.Struct Mol.Biol.(2020)27:521-28;PCT出願公開番号WO2013/177248を参照されたい)を用いて同定され得る。paRNAは、アンチセンス方向の標的遺伝子のプロモーターから転写されたRNAである(センス方向の転写物は、標的遺伝子のmRNAである)。それらは、それらの特定の位置及び向きを考慮して、類似の方法によって同定され得る。ヒトOTCにおいて、eRNAは、同じエンハンサー領域から転写することが特定されている。マウスSERPING1において、paRNAは、SERPING1プロモーターから転写されるが、Serping1のmRNAとは反対方向に転写されることが特定されている。例示的なregRNAのヌクレオチド配列を、以下の表1に示す。これらのregRNAのいずれも、本明細書に開示されるASOの標的regRNAとして企図される。
【0105】
【0106】
本発明は、標的regRNAの量または安定性を増大させ、それによって標的遺伝子の発現を増大させるASOを記載する。これは、eRNAを阻害するように設計された先に記載されたASOとは異なる(例えば、PCT出願番号WO2013/177248及びPCT出願公開番号WO2017/075406を参照されたい)。理論に拘束されることを望むものではないが、regRNAをアップレギュレートするASOの能力は、regRNAにおける標的配列の選択及び/またはASOの化学修飾に起因すると仮定される。
【0107】
いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号1のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号2のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号3のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号4のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号5のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号1073のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号1074のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号1075のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号1076のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号1077のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、調節RNAは、配列番号1078のヌクレオチド配列を有する。
【0108】
ASOの配列
本明細書に開示されるように、OTC標的regRNAの5’または3’末端により近い配列に結合するASOは、regRNAをアップレギュレートする可能性がより高い。理論に拘束されることを望むものではないが、このようなASOは、OTC regRNAの末端部分にハイブリダイズし、regRNAの機能的領域をブロックすることなく、5’→3’及び/または3’→5’RNA分解を防止または遅延させると仮定される。特定の実施形態では、本明細書に開示されるASOは、標的regRNAの5’または3’末端から300、250、200、150、100、50、40、30、20、または10ヌクレオチド以下である標的regRNA中の配列に相補的である。特定の実施形態では、本明細書に開示されるASOは、標的regRNAの5’末端から300、250、200、150、100、50、40、30、20、または10ヌクレオチド以下である標的regRNA中の配列に相補的である(すなわち、ASOと二本鎖を形成するregRNA配列の最も5’側のヌクレオチドは、標的regRNAの5’末端から300、250、200、150、100、50、40、30、20、または10ヌクレオチド以下である)。特定の実施形態では、本明細書に開示されるASOは、標的regRNAの3’末端から300、250、200、150、100、50、40、30、20、または10ヌクレオチド以下である標的regRNA中の配列に相補的である(すなわち、ASOと二本鎖を形成するregRNA配列の最も3’側のヌクレオチドは、標的regRNAの3’末端から300、250、200、150、100、50、40、30、20、または10ヌクレオチド以下である)。
【0109】
特定の実施形態では、ASOは、8、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチド長以下である。特定の実施形態では、ASOは、少なくとも8、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、ASOは、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチド長である。
【0110】
特定の実施形態では、ASOは、それ自体の内部または互いの間に形成される安定な二次構造を欠くように設計され、それによって、標的regRNAとハイブリダイズする準備ができた一本鎖形態のASOの量を増大させる。二次構造を予測する方法は、当該技術分野で公知である(例えば、Seetin and Mathews,Methods Mol.Biol.(2012)905:99-122;Zhao et al.,PLoS Comput. Biol.(2021)17(8):e1009291)及びwebベースのプログラム(例えば、RNAfold)は、公開ユーザーに利用可能である。
【0111】
例えば、ASOは、ヒトOTC eRNAまたはマウスSERPING1 paRNAを標的とするように設計されている。これらのASOのヌクレオチド配列を以下の表2に示す。
【0112】
【0113】
表3及び4は、hOTC-ASOe1-1及びhOTC-ASOe2-2の追加の化学修飾を提供する。
【0114】
【0115】
【0116】
hOTC-ASOe1-1(配列番号6)は、ヒトOTC eRNA-1Aの3’末端から離れた配列1ヌクレオチドに相補的である。配列番号6と少なくとも部分的に重複する、配列番号7~14は、ヒトOTC eRNA-1Aの3’末端に近い配列にも相補的である。hOTC-ASOe2-1(配列番号15)は、ヒトOTC eRNA-2Aの3’末端から9ヌクレオチド離れた配列及びヒトOTC eRNA-2Bの3’末端から87ヌクレオチド離れた配列に相補的である。配列番号16と部分的に重複する、配列番号17は、ヒトOTC eRNA-2A及びヒトOTC eRNA-2Bの3’末端に近接する配列にも相補的である。hOTC-ASOe2-2(配列番号16)は、ヒトOTC eRNA-2Aの5’末端から57ヌクレオチド離れた配列に相補的である。
【0117】
ハイブリダイゼーション及びΔG
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズする」または「ハイブリダイズする」という用語は、2つの核酸鎖(例えば、オリゴヌクレオチド及び標的核酸)が対向鎖上の塩基対の間に水素結合を形成し、それによって二重鎖を形成すると理解されるべきである。2つの核酸鎖の間の結合の親和性は、ハイブリダイゼーションの強度である。これは、オリゴヌクレオチドの半分が標的核酸と二重鎖を形成する温度として定義される融解温度(Tm)に関して記載される場合が多い。生理学的条件Tmでは、親和性に厳密に比例しない(Mergny and Lacroix,2003,Oligonucleotides13:515-537)。標準状態Gibbs自由エネルギーΔG°は、結合親和性のより正確な表現であり、ΔG°=-RTIn(Kd)による反応の解離定数(Kd)に関連する(式中、Rは気体定数であり、Tは絶対温度である)。従って、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の反応の非常に低いΔG°は、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の強いハイブリダイゼーションを反映する。ΔG°は、水溶液濃度が1M、pHが7、及び温度が37℃の場合の反応に伴う自由エネルギーである。オリゴヌクレオチドの標的核酸へのハイブリダイゼーションは自発的反応であり、自発的反応の場合、ΔG°はゼロより小さい。ΔG°は、実験的に、例えば、Hansen et al.,1965,Chem,Comm.36-38及びHoldgate et al.,2005,Drug Discov Todayに記載の等温滴定熱量測定法(ITC)法を用いて測定され得る。当業者には、市販の装置がΔG°測定のために入手可能であることは公知である。ΔG°は、Sugimoto et al.,1995,Biochemistry 34:11211-11216及びMcTigue et al.,2004,Biochemistry 43:5388-5405に記載の適切に誘導された熱力学的パラメータを用いる、SantaLucia,1998,Proc Natl Aced Sci USA 95:1460-1465に記載の最近傍モデルを用いて数値的に推定され得る。ハイブリダイゼーションによってその意図される核酸標的を調節する可能性を有するために、本発明のオリゴヌクレオチドは、10~30ヌクレオチド長であるオリゴヌクレオチドについて-10kcal/mol未満の推定ΔG°値で標的核酸にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーションの程度または強度は、標準状態Gibbs自由エネルギーΔG°によって測定される。オリゴヌクレオチドは、8~30ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドに対して、-15kcal/mol未満、例えば-20kcal/mol未満、例えば-25kcal/mol未満のような-10kcal/molの範囲より低い推定ΔG°値で標的核酸にハイブリダイズし得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、-10~-60kcal/mol、例えば、-12~-40kcal/mol、-15~-30kcal/mol、-16~-27kcal/mol、または-18~-25kcal/molの推定ΔG°値で標的核酸にハイブリダイズする。
【0118】
二重鎖領域
語句「二重鎖領域(duplex region)」とは、Watson-Crick塩基対形成、または相補的もしくは実質的に相補的であるポリヌクレオチド鎖の間の安定化された二重鎖を可能にする任意の他の様式のいずれかによって、互いに塩基対を形成する2つの相補的もしくは実質的に相補的なポリヌクレオチド中の領域を指す。例えば、21のヌクレオチド単位を有するポリヌクレオチド鎖は、「二本鎖領域」が19の塩基対であるように、まだ各鎖上の19の塩基のみが相補的または十分に相補的である別の21のヌクレオチド単位のポリヌクレオチドと塩基対を形成し得る。残りの塩基は、例えば、5’及び/または3’のオーバーハングとして存在し得る。さらに、二本鎖内で100%の相補性は必要ではなく、実質的な相補性が二本鎖内で許容可能である。実質的な相補性とは、70%以上の相補性を指す。例えば、19の塩基対から成る二本鎖でのミスマッチは94.7%の相補性をもたらし、十分に相補的な二本鎖領域を与える。二本鎖領域は、2つの別個のオリゴヌクレオチド鎖によって、ならびに二本鎖領域を含むヘアピン構造を形成し得る単一のオリゴヌクレオチド鎖によって形成され得る。
【0119】
dsRNAは、相補的であり、かつdsRNAが使用される条件下でハイブリダイズして二重鎖構造を形成する2つのRNA鎖を含む。dsRNAの一方の鎖(アンチセンス鎖)は、標的配列に対して実質的に相補的であり、一般に完全に相補的である相補性の領域を含む。標的配列は、eRNAまたはpaRNAなどのOTCまたはSerping1 regRNAの配列に由来し得る。もう一方の鎖(センス鎖)は、アンチセンス鎖に相補的な領域を含み、その結果、2つの鎖は、適切な条件下で組み合わされると、ハイブリダイズし、二重鎖構造を形成する。本明細書の他の箇所に記載されるように、及び当技術分野で公知であるように、dsRNAの相補配列は、別個のオリゴヌクレオチド上にあるのとは対照的に、単一の核酸分子の自己相補的領域として含まれてもよい。一般に、二重鎖構造は、15~50塩基対の長さ、例えば、15~50、15~49、15~48、15~47、15~46、15~45、15~44、15~43、15~42、15~41、15~40、15~39、15~38、15~37、15~36、15~35、15~34、15~33、15~32、15~31、15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~50、18~49、18~48、18~47、18~46、18~45、18~44、18~43、18~42、18~41、18~40、18~39、18~38、18~37、18~36、18~35、18~34、18~33、18~32、18~31、18~30、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~50、19~49、19~48、19~47、19~46、19~45、19~44、19~43、19~42、19~41、19~40、19~39、19~38、19~37、19~36、19~35、19~34、19~33、19~32、19~31、19~30、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~50、20~49、20~48、20~47、20~46、20~45、20~44、20~43、20~42、20~41、20~40、20~39、20~38、20~37、20~36、20~35、20~34、20~33、20~32、20~31、20~30、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~50、21~49、21~48、21~47、21~46、21~45、21~44、21~43、21~42、21~41、21~40、21~39、21~38、21~37、21~36、21~35、21~34、21~33、21~32、21~31、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、21~22、22~50、22~49、22~48、22~47、22~46、22~45、22~44、22~43、22~42、22~41、22~40、22~39、22~38、22~37、22~36、22~35、22~34、22~33、22~32、22~31、22~30、22~29、22~28、22~27、22~26、22~25、22~24、22~23、23~50、23~49、23~48、23~47、23~46、23~45、23~44、23~43、23~42、23~41、23~40、23~39、23~38、23~37、23~36、23~35、23~34、23~33、23~32、23~31、23~30、23~29、23~28、23~27、23~26、23~25、または23~24の間の塩基対の長さである。上記の範囲及び長さの中間の範囲及び長さもまた、本発明の一部であることが企図される。
【0120】
同様に、標的配列に相補性の領域は、15~50ヌクレオチドの長さ、例えば、15~50、15~49、15~48、15~47、15~46、15~45、15~44、15~43、15~42、15~41、15~40、15~39、15~38、15~37、15~36、15~35、15~34、15~33、15~32、15~31、15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~50、18~49、18~48、18~47、18~46、18~45、18~44、18~43、18~42、18~41、18~40、18~39、18~38、18~37、18~36、18~35、18~34、18~33、18~32、18~31、18~30、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~50、19~49、19~48、19~47、19~46、19~45、19~44、19~43、19~42、19~41、19~40、19~39、19~38、19~37、19~36、19~35、19~34、19~33、19~32、19~31、19~30、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~50、20~49、20~48、20~47、20~46、20~45、20~44、20~43、20~42、20~41、20~40、20~39、20~38、20~37、20~36、20~35、20~34、20~33、20~32、20~31、20~30、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~50、21~49、21~48、21~47、21~46、21~45、21~44、21~43、21~42、21~41、21~40、21~39、21~38、21~37、21~36、21~35、21~34、21~33、21~32、21~31、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、21~22、22~50、22~49、22~48、22~47、22~46、22~45、22~44、22~43、22~42、22~41、22~40、22~39、22~38、22~37、22~36、22~35、22~34、22~33、22~32、22~31、22~30、22~29、22~28、22~27、22~26、22~25、22~24、22~23、23~50、23~49、23~48、23~47、23~46、23~45、23~44、23~43、23~42、23~41、23~40、23~39、23~38、23~37、23~36、23~35、23~34、23~33、23~32、23~31、23~30、23~29、23~28、23~27、23~26、23~25、または23~24ヌクレオチドの間の長さであってもよい。上記の範囲及び長さの中間の範囲及び長さもまた、本発明の一部であることが企図される。
【0121】
ASOの化学修飾
特定の実施形態では、ASOはDNAのみからなるのではない。特定の実施形態では、ASOは、天然ヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド)に対して少なくとも1つの化学修飾を含む。種々の化学修飾が、本開示のASOに含まれ得る。修飾は、リボース基における1つ以上の修飾、リン酸基における1つ以上の修飾、核酸塩基における1つ以上の修飾、1つ以上の末端修飾、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、表2に示されるregRNAを標的とする例示的なASO配列は化学的に修飾される。例えば、hOTC-ASOe1-1は、
図18Aに示されるようなhOTC-ASOe1-1aからhOTC-ASOe1-1hのいずれか1つの修飾を含むように化学修飾され得る。そのような修飾は、限定するものではないが、2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)、ロックド核酸(LNA)、シチジン上の5-メチル、拘束エチル(cET)、ホスホロチオエート(PS)結合、及び/またはホスホジエステル(PO)結合、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。RNAの化学修飾は当技術分野で公知であり、例えば、PCT出願公開第WO2013/177248に記載されている。特定の実施形態では、ASO中の各シチジンは、5-メチルにより修飾される。
【0122】
本開示のASOと共に使用するための種々の化学修飾としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:3’-末端デオキシチミン(dT)ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、アンロックドヌクレオチド、高次構造制限ヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、2’-C-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-ヒドロキシル修飾ヌクレオチド、2’-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミデート、ヌクレオチドを含む非天然塩基、テトラヒドロピラン修飾ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5’-ホスフェートを含むヌクレオチド、及び5’-ホスフェート模倣体を含むヌクレオチド。
【0123】
特定の実施形態では、ASOは、1つ以上の核RNase(例えば、エキソソーム複合体またはRNaseH)に対して耐性であるように化学的に修飾されたRNAポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、全てのヌクレオチド塩基がASOにおいて修飾される。特定の実施形態では、化学修飾は、β-D-リボヌクレオシド、2’-修飾ヌクレオシド(例えば、2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)、2’-O-CH3、または2’-フルオロ-アラビノ(FANA))、二環式糖修飾ヌクレオシド(例えば、拘束エチルまたはロックド核酸(LNA)を有する)、及び/または1つ以上の修飾ヌクレオチド間結合(例えば、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合)を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、2’-MOE及びホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。特定の実施形態では、ASOの少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上の連続するヌクレオチドが2’-MOEによって修飾される。特定の実施形態では、ASOの各ヌクレオチドは2’-MOEにより修飾される。特定の実施形態では、ASOの少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上の連続するヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合である。特定の実施形態では、ASOの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合である。
【0124】
本開示のASOと共に使用され得るヌクレオチド間結合修飾としては、限定するものではないが、ホスホロチオエート「PS」(P(S))、ホスホロアミデート(P(NR1R2)、例えば、ジメチルアミノホスホロアミデート(P(N(CH3)2))、ホスホノカルボキシレート(P(CH2)nCOOR)、例えば、ホスホノアセテート「PACE」(P(CH2COO-))、チオホスホノカルボキシレート((S)P(CH2)nCOOR)、例えば、チオホスホノアセテート、「チオPACE」((S)P(CH2COO-))、アルキルホスホネート(P(C1~3アルキル)、例えば、メチルホスホン酸-P(CH3)、ボランホスホン酸(P(BH3))、及びホスホロジチオエート(P(S)2)が挙げられる。
【0125】
特定の実施形態では、ASOは、5’末端、3’末端、または両方に1つ以上の化学修飾を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、ポリヌクレオチドの一方または両方の末端における化学修飾(例えば、ポリリボヌクレオチド)は、ポリヌクレオチドを安定化し得る。特定の実施形態では、ASOは、ASOの5’末端の少なくとも1、2、3、4、または5ヌクレオチドに1つ以上の化学修飾を含む。特定の実施形態では、ASOは、ASOの3’末端の少なくとも1、2、3、4、または5ヌクレオチドに1つ以上の化学修飾を含む。特定の実施形態では、ASOは、ASOの5’末端の少なくとも1、2、3、4、または5ヌクレオチドに1つ以上の化学修飾を含み、ASOの3’末端の少なくとも1、2、3、4、または5ヌクレオチドに1つ以上の化学修飾を含む。
【0126】
化学構造はまた、書き込みにおいても記載され得る。そのような場合、「M」は、MOEを示す。「d」はDNAを示し、「L」はLNAを示し、「=」はホスホロチオエート(PS)結合を示し、「-」はホスホジエステル(PO)結合を示し;「5C」は5-メチルシトシンを示し、「ag」は、GalNAcを示し、「tg」は、Teg-GalNAcを示し、「^」はFANAを示す。
【0127】
曖昧さを回避するために、このLNAは、次式を有する:
式中、Bは特定の指定された塩基である。
【0128】
選択されたASOの例示的な書き込み記述は、表3及び表4に示され、対応する
図18D及び
図18Eを含み、修飾の視覚的表現を提供する。
【0129】
いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号6~14、18~35、39、41、75、76、77、78、87~124または143~892からなる群から選択される配列及び/または化学修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号15~17、36~38、64~74、125~142、または893~1029からなる群から選択される配列及び/または化学修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号87~124からなる群から選択される配列及び化学修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号125~142からなる群から選択される配列及び化学修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、配列番号1030~1072からなる群から選択される配列及び化学修飾を含む。
【0130】
高親和性修飾ヌクレオシド
高親和性修飾ヌクレオシドは、オリゴヌクレオチドに組み込まれると、例えば融解温度(Tm)によって測定される場合に、その相補的標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性を増強する修飾ヌクレオチドである。本発明の高親和性修飾ヌクレオシドは、好ましくは、1つの修飾ヌクレオシド当たり、+0.5~+12℃、例えば、+1.5~+10℃または+3~+8℃の融解温度の上昇をもたらす。多数の高親和性修飾ヌクレオシドが当該技術分野で公知であり、これには例えば、多数の2’置換ヌクレオシドならびにロックド核酸(LNA)が挙げられる(例えば、Freier & Altmann;Nucl.Acid Res.,1997,25,4429-4443及びUhlmann;Curr.Opinion in Drug Development,2000,3(2),293-213を参照されたい)(これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。
【0131】
糖修飾
本明細書に記載のASOは、修飾された糖部分、すなわち、DNA及びRNAに見られるリボース糖部分と比較した場合の糖部分の修飾を有する1つ以上のヌクレオシドを含み得る。リボース糖部分の修飾を有する多数のヌクレオシドが、主に、オリゴヌクレオチドの特定の特性、例えば、親和性及び/またはヌクレアーゼ耐性を改善することを目的として作製されている。そのような修飾としては、リボース環構造が、例えば、ヘキソース環(HNA)または二環式環(これは、典型的には、リボース環(LNA)上のC2とC4炭素との間に二半径架橋を有する)、または非連結リボース環(これは、典型的には、C2とC3炭素との間に結合を欠く)(例えば、UNA)での置換によって修飾される修飾が挙げられる。他の糖修飾ヌクレオシドとしては、例えば、ビシクロヘキソース核酸(WO2011/017521)または三環式核酸(WO2013/154798)が挙げられ、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。修飾ヌクレオシドは、糖部分が非糖部分で置き換えられているヌクレオシド、例えば、ペプチド核酸(PNA)またはモルホリノ核酸の場合も含む。
【0132】
糖修飾としては、リボース環上の置換基を水素以外の基、またはDNA及びRNAヌクレオシド中に天然に見出される2’-OH基に変更することによって行われる修飾も含む。置換基は、例えば、2’、3’、4’または5’位置に導入されてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、2’-O-メチル(2’OMe)部分、2’-O-メトキシエチル部分、二環式糖部分、PNA(例えば、糖リン酸骨格の代わりに反復単位としてアミド結合またはカルボニルメチレン結合によって連結された1つ以上のN-(2-アミノエチル)-グリシン単位を含むオリゴヌクレオチド)、ロックドヌクレオシド(LNA)(例えば、1つ以上のロックドリボースを含み、2’-デオキシヌクレオチドまたは2’OMeヌクレオチドの混合物であり得るオリゴヌクレオチド)、c-ET(例えば、1つ以上のcET糖を含むオリゴヌクレオチド)、cMOE(例えば、1つ以上のcMOE糖を含むオリゴヌクレオチド)、モルホリノオリゴマー(例えば、1つ以上のホスホロジアミデートモルホリオノオリゴマーを含む骨格を含むオリゴヌクレオチド)、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオシド(例えば、1つ以上の2’-フルオロ-β-D-アラビノヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチド)、tcDNA(例えば、1つ以上のtcDNA修飾糖を含むオリゴヌクレオチド)、拘束エチル2’-4’架橋核酸(cEt)、S-cEt、エチレン架橋核酸(ENA)(例えば、1つ以上のENA修飾糖を含むオリゴヌクレオチド)、ヘキシトール核酸(HNA)(例えば、1つ以上のHNA修飾糖を含むオリゴヌクレオチド)、または三環式類似体(tcDNA)(例えば、1つ以上のtcDNA修飾糖を含むオリゴヌクレオチド)のいずれか1つなどの修飾糖部分を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、2-チオウラシル(「2-チオU」)、2-チオシトシン(「2-チオC」)、4-チオウラシル(「4-チオU」)、6-チオグアニン(「6-チオG」)、2-アミノアデニン(「2-アミノA」)、2-アミノプリン、シュードウラシル、ヒポキサンチン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-メチルシトシン(「5-メチルC」)、5-メチルウラシル(「5-メチルU」)、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-エチニルシトシン、5-エチニルウラシル、5-アリルウラシル(「5-アリルU」)、5-アリルシトシン(「5-アリルC」)、5-アミノアリルウラシル(「5-アミノアリルU」)、5-アミノアリル-シトシン(「5-アミノアリルC」)、脱塩基ヌクレオチド、Z塩基、P塩基、非構造核酸(「UNA」)、イソグアニン(「isoG」)、及びイソシトシン(「isoC」)、グリセロール核酸(GNA)、チオモルホリノ(C4H9NS)またはチオホスホルアミデートモルホリノ(TMO)からなる群から選択される核酸塩基修飾を含む。グリセロール核酸(GNA)(グリコール核酸としても公知)の合成は、参照によって本明細書に援用される、Zhang et al,Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry 4.40.1-4.40.18,September 2010に記載されている。チオホスホロアミデート・モルホリノ・オリゴヌクレオチドの合成は、Langer et al,J.Am.Chem.Soc.2020,142,38,16240-16253に記載されている。
【0135】
2’糖修飾ヌクレオシド
2’糖修飾ヌクレオシドは、2’位にHまたは-OH以外の置換基を有するヌクレオシド(2’置換ヌクレオシド)であるか、またはリボース環中の2’炭素と第2炭素との間に架橋を形成し得る2’結合二環、例えばLNA(2’-4’二環架橋)ヌクレオシドを含む。
【0136】
理論に拘束されることを望むものではないが、2’修飾糖は、オリゴヌクレオチドに対する増強された結合親和性及び/または増大されたヌクレアーゼ耐性を提供し得る。2’置換修飾ヌクレオシドの例は、2’-O-アルキル-RNA、2’-O-メチル-RNA、2’-アルコキシ-RNA、2’-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2’-アミノ-DNA、2’-フルオロ-RNA、及び2’-F-ANAヌクレオシドである。さらなる例については、例えば、Freier & Altmann;Nucl.Acid Res.,1997,25,4429-4443及びUhlmann;Curr.Opinion in Drug Development,2000,3(2),293-213、ならびにDeleavey and Damha,Chemistry and Biology 2012,19,937(各々が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0137】
ロックド核酸ヌクレオシド(LNAヌクレオシド)
「LNAヌクレオシド」とは、前記ヌクレオシドのリボース糖環のC2’及びC4’を連結するビラジカル(「2’-4’架橋」とも呼ばれる)を含む2’-糖修飾ヌクレオシドであり、これはリボース環の高次構造を制限またはロックする。言い換えれば、ロックドヌクレオシドとは、4’-CH2-O-2’架橋を含む二環式糖部分を含むヌクレオシドである。この構造は、3’-エンド構造の高次構造でリボースを効果的に「ロック」する。オリゴヌクレオチドへのロックドヌクレオシドの付加は、血清中のオリゴヌクレオチドの安定性を高め、オフターゲット効果を減らすことが示されている(Grunweller,A.et al.,(2003)Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。これらのヌクレオシドは、架橋核酸または二環式核酸(BNA)とも呼ばれる場合もある。リボースの高次構造のロックは、LNAが相補的RNAまたはDNA分子に対するオリゴヌクレオチドに組み込まれる場合、ハイブリダイゼーションの親和性の増強(二重鎖安定化)と関連する。これは、オリゴヌクレオチド/補体二重鎖の融解温度を測定することによって慣用的に決定され得る。例示的なLNAヌクレオシドとしては、ベータ-D-オキシ-LNA、6’-メチル-ベータ-D-オキシ-LNA、例えば(S)-6’-メチル-ベータ-D-オキシ-LNA(ScET)及びENAが挙げられる。
【0138】
本発明のポリヌクレオチドでの使用のための二環式ヌクレオシドの例としては、限定するものではないが、4’リボシル環原子と2’リボシル環原子との間に架橋を含むヌクレオシドが挙げられる。特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチド剤は、4’から2’への架橋を含む1つ以上の二環式ヌクレオシドを含む。そのような4’から2’への架橋の二環式ヌクレオシドの例としては、限定するものではないが、4’-(CH2)-O-2’(LNA);4’-(CH2)-S-2’;4’-(CH2)2-O-2’(ENA);4’-CH(CH3)-O-2’(「拘束エチル」または「cEt」とも呼ばれる)及び4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(及びその類似体;例えば、米国特許第7,399,845号を参照されたい);4’-C(CH3)(CH3)-O-2’(及びその類似体;例えば、米国特許第8,278,283号を参照されたい);4’-CH2-N(OCH3)-2’(及びその類似体;例えば、米国特許第8,278,425号を参照されたい);4’-CH2-ON(CH3)2-2’(例えば、米国特許公開第2004/0171570号を参照されたい);4’-CH2-N(R)-O-2’〔式中、RはH、C1~C12アルキル、または保護基である〕(例えば、米国特許第7,427,672号を参照されたい);4’-CH2-C(H)(CH3)-2’(例えば、Chattopadhyaya et al.,J.Org.Chem.,2009,74,118-134を参照されたい);ならびに4’-CH2-C(=CH2)-2’(及びその類似体;例えば、米国特許第8,278,426号を参照されたい)が挙げられる。前述の各々の内容の全体が、本明細書に参照によって組み込まれる。
【0139】
ロックド核酸ヌクレオチドの調製を教示する追加の代表的な米国特許及び米国特許出願公開には、それぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,268,490号、同第6,525,191号、同第6,670,461号、同第6,770,748号、同第6,794,499号、同第6,998,484号、同第7,053,207号、同第7,034,133号、同第7,084,125号、同第7,399,845号、同第7,427,672号、同第7,569,686号、同第7,741,457号、同第8,022,193号、同第8,030,467号、同第8,278,425号、同第8,278,426号、同第8,278,283号、US2008/0039618、及びUS2009/0012281が含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
例えばα-L-リボフラノース及びβ-D-リボフラノース等の1つ以上の立体化学的糖配置を有する前述の任意の二環式ヌクレオシドを調製し得る(内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開WO99/14226を参照されたい)。
【0141】
本発明のオリゴヌクレオチドはまた、1つ以上の拘束エチルヌクレオシドを含むように改変され得る。本明細書で使用されるとき、「拘束エチルヌクレオシド」または「cEt」とは、4’-CH(CH3)-O-2’架橋を含む二環式糖部分を含むロックドヌクレオシドである。一実施形態では、拘束エチルヌクレオシドは、本明細書で「S-cEt」と呼ばれるS高次構造にある。
【0142】
本発明のオリゴヌクレオチドはまた、1つ以上の「高次構造的に制限されたヌクレオシド」(「CRN」)を含み得る。CRNとは、リボースのC2’とC4’炭素、またはリボースのC3と--C5’炭素を接続するリンカーを有するヌクレオシド類似体である。CRNはリボース環を安定した高次構造にロックし、mRNAへのハイブリダイゼーション親和性を高める。リンカーは、安定性及び親和性のために酸素を最適な位置に配置するのに十分な長さであり、リボース環パッカリングを少なくする。
【0143】
上述の特定のCRNの調製を教示する代表的な刊行物には、それぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0190383号、及びPCT刊行物WO2013/036868が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、UNA(アンロックドヌクレオシド)ヌクレオシドである1つ以上のモノマーを含む。UNAは、アンロックド非環式ヌクレオシドであり、糖の結合が除去され、アンロックド「糖」残基を形成する。一例では、UNAはまた、C1’-C4’間の結合(すなわち、C1’炭素とC4’炭素の間の共有炭素-酸素-炭素結合)が除去されているモノマーを包含する。別の例では、糖のC2’-C3’結合(すなわち、C2’炭素とC3’炭素の間の共有炭素-炭素結合)が除去されている(参照により本明細書に組み込まれる、Nuc. Acids Symp. Series,52,133-134(2008)、及びFluiter et al.,Mol.Biosyst.,2009,10,1039を参照されたい)。
【0145】
UNAの調製を教示する代表的な米国特許公開には、それぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,314,227号、ならびに米国特許出願公開2013/0096289号、同第2013/0011922号、及び同第2011/0313020号が含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
リボース分子はまた、シクロプロパン環で修飾されて、トリシクロデオキシ核酸(トリシクロDNA)を生成し得る。リボース部分は、別の糖、例えば、1,5-アンヒドロヘキシトールと置換してもよく、トレオースと置換してトレオースヌクレオシド(TNA)を生成してもよく、またはアラビノースと置換してアラビノヌクレオシドを生成してもよい。リボース分子は、非糖、例えば、シクロヘキセンと置き換えてシクロヘキセンヌクレオシドを生成してもよいし、またはグリコールで置き換えてグリコールヌクレオシドを生成してもよい。
【0147】
ヌクレオシド分子の末端に対する潜在的に安定化する修飾には、N-(アセチルアミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-NHAc)、N-(カプロイル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6)、N-(アセチル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-NHAc)、チミジン-2’-O-デオキシチミジン(エーテル)、N-(アミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-アミノ)、2-ドコサノイル-ウリジン-3”-リン酸、逆塩基dT(idT)などが含まれ得る。この修飾の開示は、PCT公開第WO2011/005861号に見出され得る。
【0148】
本発明のオリゴヌクレオチドの他の代替の化学組成は、オリゴヌクレオチドの5’ホスフェートまたは5’ホスフェート模倣体、例えば、5’末端ホスフェートまたはホスフェート模倣体が挙げられる。適切なホスフェート模倣体は、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2012/0157511号に開示されている。
【0149】
追加の非限定的な例示的なLNAヌクレオシドは、WO99/014226、WO00/66604、WO98/039352、WO2004/046160、WO00/047599、WO2007/134181、WO2010/077578、WO2010/036698、WO2007/090071、WO2009/006478、WO2011/156202、WO2008/154401、WO2009/067647、WO2008/150729、Morita et al.,Bioorganic & Med.Chem.Lett.12,73-76,Seth et al.J.Org.Chem.2010,Vol 75(5)pp.1569-81、Mitsuoka et al.,Nucleic Acids Research 2009,37(4),1225-1238、ならびにWan及びSeth,J.Medical Chemistry 2016,59,9645-9667(各々が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0150】
いくつかの実施形態では、ASOの長さは、5×n+5ヌクレオチド(nは3以上の整数)であり、5×m位のヌクレオチドはLNAによって修飾されたリボヌクレオチドであり(mは1~nの整数)、残りの位置のヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチルによって修飾されたリボヌクレオチドである。
【0151】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド糖修飾は、2’-O-C1~4アルキル、例えば、2’-O-メチル(2’-OMe)、2’-デオキシ(2’-H)、2’-O-C1~3アルキル-O-C1~3アルキル、例えば、2’-メトキシエチル(「2’-MOE」)、2’-フルオロ(「2’-F」)、2’-アミノ(「2’-NH2」)、2’-アラビノシル(「2’-アラビノ」)ヌクレオチド、2’-F-アラビノシル(「2’-F-アラビノ」)ヌクレオチド、2’-ロックド核酸(「LNA」)ヌクレオチド、2’-アミド架橋核酸(AmNA)、2’-アンロックド核酸(「ULNA」)ヌクレオチド、L型の糖(「L-糖」)、または4’-チオリボシルヌクレオチドである。
【0152】
ミックスマー(Mixmer)及びギャップマー(Gapmer)
ASOは、例えば、
図18A、
図18B、
図18C、または
図19のASOによって開示されるパターンで、ミックスマー及び/またはギャップマー構造を有し得る。
【0153】
特定の実施形態では、ASOはミックスマーである。本明細書で使用される場合、「ミックスマー」という用語は、オリゴヌクレオチド配列の少なくとも一部にわたってDNAモノマー及びヌクレオシド類似体モノマーの交互組成物を含むオリゴヌクレオチドを指す。特定の実施形態では、ASOは、ギャップマー構造に基づくミックスマーであり、ギャップ中にDNAヌクレオチドと2’-MOEヌクレオチドとの混合物を含んでおり、ウイング中にRNA配列が隣接している。ミックスマーは、親和性増強ヌクレオチド類似体の混合物を、例えば、非限定的な例において、2’-O-アルキル-RNAモノマー、2’-アミノ-DNAモノマー、2’-フルオロ-DNAモノマー、LNAモノマー、アラビノ核酸(ANA)モノマー、2’-フルオロ-ANAモノマー、HNAモノマー、INAモノマー、2’-MOE-RNA(2’-O-メトキシエチル-RNA)、2’フルオロ-DNA及びLNAを含むように設計され得る。いくつかの実施形態では、ミックスマーは、RNase Hを補充できない。いくつかの実施形態では、このミックスマーは、DNA及び/またはRNAと共に、1つのタイプの親和性増強ヌクレオチド類似体を含む。
【0154】
複数の異なる修飾は、ミックスマー内で間隔を空けて配置されてもよい。例えば、ASOは、複数のヌクレオチドにおいてLNA修飾を含んでもよく、残りのヌクレオチドの一部または全部において異なる修飾を含んでもよい。いくつかの実施形態では、任意の2つの隣接するLNA修飾ヌクレオチドは、少なくとも1、2、3、4、または5ヌクレオチドだけ分離される。ASO全体を通して、隣接するLNA修飾ヌクレオチド間の距離は、一定であってもよく(例えば、任意の2つの隣接するLNA修飾ヌクレオチドは、1、2、3、4、または5ヌクレオチドだけ分離される)、または可変であってもよい。いくつかの実施形態では、ASOの長さは、3×n、3×n-1、または3×n-2ヌクレオチド(nは6以上の整数)であり、(a)(i)位置3×m-2(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドである、(ii)位置3×m-1(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドであるか、または(iii)位置3×m(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドである;かつ(b)残りの位置のヌクレオチドは、第2の異なる修飾(例えば、2’-O-メトキシエチル)を含む。本明細書でhOTC-ASOe1-1dと呼ばれるASOは、このような構造を有する。いくつかの実施形態では、ASOの長さは、2×nまたは2×n-1ヌクレオチド(nは9以上の整数)であり、ここで(a)(i)位置2×m-1(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドであるか、または(ii)位置2×m(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドであり;かつ(b)残りの位置のヌクレオチドは、第2の異なる修飾(例えば、2’-O-メトキシエチル)を含む。本明細書でhOTC-ASOe1-1eと呼ばれるASOは、このような構造を有する。同様の修飾パターン、例えば、第1の修飾がまさしく4、5、またはそれ以上のヌクレオチドで繰り返されるパターンも企図される。いくつかの実施形態では、ASOの長さは、4×n、4×n-1、または4×n-2ヌクレオチド(nは6以上の整数)であり、(a)(i)位置4×m-2(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドであるか、(ii)位置4×m-1(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドであるか、または(iii)位置3×m(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドであり;かつ(b)残りの位置のヌクレオチドは、第2の異なる修飾(例えば、2’-O-メトキシエチル)を含む。いくつかの実施形態では、ASOの長さは、5×n、5×n-1、または5×n-2ヌクレオチド(nは6以上の整数)であり、(a)(i)位置5×m-2(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドであるか、(ii)位置5×m-1(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドであるか、または(iii)位置5×m(mは1~nの整数)のヌクレオチドは、第1の修飾(例えば、LNA)を含むリボヌクレオチドであり;かつ(b)残りの位置のヌクレオチドは、第2の異なる修飾(例えば、2’-O-メトキシエチル)を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、ASOは、ASOの5’または3’末端にGalNAcまたはTeg-GalNAc部分をさらに含む。
【0156】
特定の実施形態では、ASOは、RNA配列に隣接する、DNA配列(例えば、非修飾DNAの少なくとも8、9、10、11、12、13、14、または15の連続するヌクレオチドを有する)を含む。このような構造は「ギャップマー」として公知であり、内部DNA領域は「ギャップ」と呼ばれ、外部RNA領域は「ウィング」と呼ばれる(例えば、PCT出願公開第WO2013/177248を参照されたい)。ギャップマー(gapmer)は、核RNAse(例えば、RNase H)を動員することによって標的RNAの分解を促進することが公知である。驚くべきことに、本開示において、ギャップマーがregRNA(例えば、hOTC-ASOe1-1a)に結合すれば、同じ配列を有するが、異なる化学修飾を有するregRNA(例えば、hOTC-ASOe1-1d及びhOTC-ASOe1-1h)と同様、標的遺伝子発現を増大し得ることが発見されている。特定の実施形態では、ASOは、RNA配列に隣接するDNA配列を含み、RNAseまたはRNAse H媒介性分解を誘導しない。
【0157】
特定の実施形態では、ギャップマーは、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、またはそれ以上のヌクレオチド長である。特定の実施形態では、ギャップは、約7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上のヌクレオチド長である。特定の実施形態では、一方または両方のウィングは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のヌクレオチド長である。特定の実施形態では、一方または両方のウィングは、RNA修飾、例えば、β-D-リボヌクレオシド、2’-修飾ヌクレオシド(例えば、2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)、2’-O-CH3、または2’-フルオロ-アラビノ(FANA))、及び二環式糖修飾ヌクレオシド(例えば、拘束エチルまたはロックド核酸(LNA)を有する)を含む。特定の実施形態では、ギャップマー中の各リボヌクレオチドは2’-MOEによって修飾される。特定の実施形態では、ギャップマーは、1つ以上の修飾されたヌクレオチド間結合、例えば、ホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合を含む。特定の実施形態では、ギャップマー中の各2つの隣接するヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって連結される。
【0158】
特定の実施形態では、ASOは、非修飾DNAの7以上、8以上、9以上、10以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、または15以上の連続するヌクレオチドを含まない。いくつかの実施形態では、そのようなDNA配列は、修飾(例えば、2’-MOE修飾)リボヌクレオチドによって、2、3、4、5、またはそれ以上のヌクレオチド毎に破壊される。本明細書でhOTC-ASOe1-1fと呼ばれるASOは、このような構造を有する。いくつかの実施形態では、ASOは、リボヌクレオチドのみを含み、デオキシリボヌクレオチドは含まない。
【0159】
ミックスマー及びギャップマーの構造的特徴を組み合わせてもよい。特定の実施形態では、ASOは、ギャップで第2の修飾が第3の修飾(例えば、デオキシリボヌクレオチド)に変更されていることを除いて、本明細書に開示されるミックスマーの構造と同様の構造を有する(例えば、介在する修飾を有する構造)。本明細書においてhOTC-ASOe1-1c、hOTC-ASOe1-2b、hOTC-ASOe1-5a、及びhOTC-ASOe1-6aと呼ばれるASOは、このような構造を有する。特定の実施形態では、ASOは、ギャップにおいてヌクレオチドがミックスマーパターンで修飾されていることを除いて、本明細書に開示されるギャップマーの構造と同様の構造を有する。本明細書でhOTC-ASOe1-1bと呼ばれるASOは、このような構造を有する。
【0160】
特定の実施形態では、ASOは、リガンド部分、例えば、対象の組織または器官を特異的に標的とするリガンド部分をさらに含む。例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)は肝臓を特異的に標的とする。特定の実施形態では、リガンド部分は、GalNAcを含む。特定の実施形態では、リガンド部分は、3クラスターGalNAc部分(一般にGAlNAc3と示される)を含む。他のタイプのGalNAc部分は、GAlNAc1、GAlNAc2、またはGAlNAc4と表記される、1クラスター、2クラスター、または4クラスターのGAlNAcである。特定の実施形態では、リガンド部分は、GalNAc1、GALNAc2、GAlNAc3、またはGalNAc4を含む。
【0161】
医薬組成物
特定の実施形態では、本明細書に開示されるASOは、医薬組成物に存在し得る。医薬組成物は、種々の薬物送達システムにおける使用のために処方され得る。1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体もまた、適切な処方のために組成物に含まれてもよい。本開示における使用に適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.,1985に見出される。薬剤送達のための方法の簡潔な論評については、例えば、Langer(Science 249:1527-1533,1990)を参照されたい。
【0162】
核酸を送達するのに適した例示的な担体及び医薬製剤は、Darymanov and Reineke(2018)Front. Pharmacol.9:971;Barba et al.(2019)Pharmaceutics 11(8):360;Ni et al.(2019)Life(Basel)9(3):59に記載されている。ASOにコンジュゲートしたリガンド部分の存在は、リガンド部分によって標的とされる組織または器官への送達のための担体の必要性を回避し得ることが理解される。
【0163】
細胞、例えば、対象、例えば、ヒト対象、例えば、それを必要とする対象、例えば、OTC関連障害を有する対象内の細胞に対する本発明のオリゴヌクレオチドの送達は、多くの異なる方法で達成され得る。例えば、送達は、インビトロまたはインビボのいずれかで、本発明のオリゴヌクレオチドを細胞と接触させることによって行ってもよい。インビボ送達はまた、オリゴヌクレオチドを含む組成物を対象に投与することによって直接実施され得る。これらの代替については、以下でさらに考察される。
【0164】
一般に、核酸分子を送達する任意の方法(インビトロまたはインビボ)は、本発明のオリゴヌクレオチドと共に使用するように適合してもよい(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるAkhtar S.and Julian R L.,(1992)Trends Cell. Biol.2(5):139-144及びWO94/02595を参照されたい)。インビボ送達の場合、オリゴヌクレオチド分子を送達するために考慮すべき要因としては、例えば、送達される分子の生物学的安定性、非特異的効果の防止、及び標的組織における送達される分子の蓄積が挙げられる。オリゴヌクレオチドの非特異的効果は、局所投与によって、例えば、組織への直接注射もしくは移植によって、または調製物を局所投与することによって最小限に抑えてもよい。治療部位への局所投与は、薬剤の局所濃度を最大化し、さもなければ薬剤によって害される可能性があるか、または薬剤を分解する可能性がある全身組織への薬剤の曝露を制限し、そしてより低い総用量のオリゴヌクレオチド分子の投与を可能にする。
【0165】
疾患の治療のためにオリゴヌクレオチドを全身投与するために、オリゴヌクレオチドは、代替核酸塩基、代替糖部分、及び/または代替ヌクレオシド間結合を含んでもよいし、または代替的には薬物送達システムを使用して送達され;両方の方法とも、インビボでのエンド及びエキソヌクレアーゼによるオリゴヌクレオチドの急速な分解を防ぐように作用する。オリゴヌクレオチドまたは医薬担体の修飾はまた、オリゴヌクレオチド組成物の標的組織への標的化を可能にし、望ましくないオフターゲット効果を回避し得る。オリゴヌクレオチド分子は、コレステロールなどの親油性基への化学的コンジュゲーションによって修飾され、細胞への取り込みを促進し、分解を防ぎ得る。代替の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子、脂質ナノ粒子、ポリプレックスナノ粒子、リポプレックスナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達システムなどの薬物送達システムを使用して送達され得る。正に帯電したカチオン性送達システムは、オリゴヌクレオチド分子(負に帯電)の結合を促進し、また、負に帯電した細胞膜での相互作用をも増強して、細胞によるオリゴヌクレオチドの効率的な取り込みを可能にする。カチオン性脂質、デンドリマー、またはポリマーは、オリゴヌクレオチドに結合するか、またはオリゴヌクレオチドを包むベシクルまたはミセルを形成するように誘導され得る。ベシクルまたはミセルの形成は、全身投与された場合にオリゴヌクレオチドの分解をさらに防ぐ。一般に、当該技術分野で知られている核酸の送達の任意の方法は、本発明のオリゴヌクレオチドの送達に適応可能であり得る。カチオン性オリゴヌクレオチド複合体を作製及び投与するための方法は、当業者の能力の範囲内である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Sorensen,D R.,et al.(2003)J.Mol.Biol 327:761-766;Verma,U N.et al.,(2003)Clin.Cancer Res.9:1291-1300;Arnold,A S et al.,(2007)J.Hypertens.25:197-205を参照されたい)。オリゴヌクレオチドの全身送達に有用な薬物送達システムのいくつかの非限定的な例としては、DOTAP(Sorensen,D R.,et al(2003)、前出;Verma,U N.et al.,(2003)、前出)、オリゴフェクタミン、「固体核酸脂質粒子」(Zimmermann,T S.et al.,(2006)Nature 441:111-114)、カルジオリピン(Chien,P Y.et al.,(2005)Cancer Gene Ther.12:321-328;Pal,A.et al.,(2005)Int J.Oncol.26:1087-1091)、ポリエチレンイミン(Bonnet M E.et al.,(2008)Pharm.Res.Aug 16 Epub ahead of print;Aigner,A.(2006)J.Biomed. Biotechnol.71659)、Arg-Gly-Asp(RGD)ペプチド(Liu,S.(2006)Mol.Pharm.3:472-487)、及びポリアミドアミン(Tomalia,D A.et al.,(2007)Biochem. Soc.Trans.35:61-67;Yoo,H.et al.,(1999)Pharm.Res.16:1799-1804)が挙げられる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、全身投与のためにシクロデキストリンと複合体を形成する。オリゴヌクレオチド及びシクロデキストリンの投与方法及び医薬組成物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,427,605号に見出され得る。いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、ポリプレックスまたはリポプレックスナノ粒子によって送達される。オリゴヌクレオチド及びポリプレックスナノ粒子及びリポプレックスナノ粒子の投与方法及び医薬組成物は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2017/0121454号;同第2016/0369269号;同第2016/0279256号;同第2016/0251478号;同第2016/0230189号;同第2015/0335764号;同第2015/0307554号;同第2015/0174549号;同第2014/0342003号;同第2014/0135376号;及び同第2013/0317086号に見出し得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、追加の治療薬と組み合わせて投与され得る。追加の治療法の例には、キニジン及び/またはナトリウムチャネル遮断薬などの標準治療の抗てんかん薬が含まれる。さらに、本明細書に記載の化合物は、ケトン食療法などの推奨されるライフスタイルの変更と組み合わせて投与してもよい。
【0167】
膜分子アセンブリの送達方法
本発明のオリゴヌクレオチドはまた、当該技術分野で公知のポリマー、生分解性微粒子、またはマイクロカプセル送達デバイスを含む様々な膜分子アセンブリ送達方法を使用して送達してもよい。例えば、コロイド分散系を、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド剤の標的化送達に使用してもよい。コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベース系が挙げられる。リポソームは、インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして有用な人工膜ベシクルである。0.2~4.0μmの範囲のサイズの大きな単層ベシクル(LUV)は、大きな高分子を含む水性緩衝液のかなりの割合をカプセル化し得ることが示されている。リポソームは、有効成分の作用部位への導入及び送達に有用である。リポソーム膜は生体膜と構造的に類似しているため、リポソームを組織に適用すると、リポソーム二重層は細胞膜の二重層と融合する。リポソームと細胞の融合が進むにつれて、オリゴヌクレオチドを含む内部の水性内容物が細胞に送達され、そこでオリゴヌクレオチドは標的RNAに特異的に結合し得る。場合によっては、リポソームはまた、例えば、オリゴヌクレオチドを特定の細胞型に誘導するために、特異的に標的化される。リポソームの組成は、通常、リン脂質の組み合わせであり、通常、ステロイド、特にコレステロールとの組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質もまた使用され得る。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、及び二価陽イオンの存在に依存する。
【0168】
オリゴヌクレオチドを含むリポソームは、様々な方法で調製され得る。一例では、リポソームの脂質成分を界面活性剤に溶解して、脂質成分とミセルを形成する。例えば、脂質成分は、両親媒性カチオン性脂質または脂質コンジュゲートであってもよい。界面活性剤は、高い臨界ミセル濃度を有し、非イオン性であってもよい。例示的な界面活性剤には、コレート、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコレート、及びラウロイルサルコシンが含まれる。次いで、オリゴヌクレオチド製剤が、脂質成分を含むミセルに添加される。脂質上のカチオン性基はオリゴヌクレオチドと相互作用し、オリゴヌクレオチドの周りで凝縮してリポソームを形成する。凝縮後、例えば透析によって界面活性剤を除去して、オリゴヌクレオチドのリポソーム製剤を得る。
【0169】
必要に応じて、凝縮反応中に、例えば、制御された添加により、凝縮を助ける担体化合物を添加してもよい。例えば、担体化合物は、核酸以外のポリマー(例えば、スペルミンまたはスペルミジン)であってもよい。凝縮を促進するようにpHを調整してもよい。
【0170】
送達ビヒクルの構造成分としてのポリヌクレオチド/カチオン性脂質複合体を組み込む安定したポリヌクレオチド送達ビヒクルを生成するための方法は、例えば、全内容が参照により本明細書に組み込まれるWO96/37194にさらに記載されている。リポソーム形成はまた、Feigner,P.L.et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:7413-7417;米国特許第4,897,355号;米国特許第5,171,678号;Bangham et al.,(1965)M.Mol.Biol.23:238;Olson et al.,(1979)Biochim. Biophys. Acta 557:9;Szoka et al.,(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.75:4194;Mayhew et al.,(1984)Biochim. Biophys. Acta 775:169;Kim et al.,(1983)Biochim. Biophys. Acta 728:339;及びFukunaga et al.,(1984)Endocrinol.115:757に記載される例示的な方法の1つ以上の態様を含み得る。送達ビヒクルとして使用するための適切なサイズの脂質凝集体を調製するために一般的に使用される技術には、超音波処理及び凍結融解プラス押し出しが含まれる(例えば、Mayer et al.,(1986)Biochim. Biophys. Acta 858:161.を参照されたい)。マイクロ流動化は、一貫して小さく(50~200nm)、比較的均一な凝集体が必要な場合に使用され得る(Mayhew et al.,(1984)Biochim. Biophys. Acta 775:169)。これらの方法は、オリゴヌクレオチド製剤をリポソームにパッケージングするのに容易に適合される。
【0171】
リポソームは大きく2つのクラスに分類される。カチオン性リポソームは、負に帯電した核酸分子と相互作用して安定した複合体を形成する正に帯電したリポソームである。正に帯電した核酸/リポソーム複合体は負に帯電した細胞表面に結合し、エンドソームに取り込まれる。エンドソーム内の酸性pHにより、リポソームは破裂し、その内容物を細胞質に放出する(Wang et al.(1987)Biochem. Biophys. Res.Commun.,147:980-985)。
【0172】
pH感受性または負に帯電したリポソームは、核酸と複合体を形成するのではなく、核酸を捕捉する。核酸と脂質の両方が同様に帯電しているため、複合体形成ではなく反発が発生する。それにもかかわらず、一部の核酸はこれらのリポソームの水性内部に閉じ込められる。pH感受性リポソームは、チミジンキナーゼ遺伝子をコードする核酸を培養中の細胞単層に送達するために使用されている。外因性遺伝子の発現が標的細胞で検出された(Zhou et al.(1992)Journal of Controlled Release,19:269-274)。
【0173】
リポソーム組成物の1つの主要なタイプには、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質が含まれる。中性リポソーム組成物は、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成され得る。アニオン性リポソーム組成物は、一般に、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成され、一方、アニオン性融合性リポソームは、主にジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、ホスファチジルコリン(PC)、例えば、大豆PC、及び卵PCから形成される。別のタイプは、リン脂質及び/またはホスファチジルコリン及び/またはコレステロールの混合物から形成される。
【0174】
インビトロ及びインビボで細胞にリポソームを導入する他の方法の例としては、米国特許第5,283,185号;米国特許第5,171,678号;WO94/00569;WO93/24640;WO91/16024;Feigner,(1994)J.Biol.Chem.269:2550;Nabel,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.90:11307;Nabel,(1992)Human Gene Ther.3:649;Gershon,(1993)Biochem.32:7143;及びStrauss,(1992)EMBO J.11:417が挙げられる。
【0175】
非イオン性リポソームシステム、特に非イオン性界面活性剤及びコレステロールを含むシステムもまた、皮膚への薬物の送達におけるそれらの有用性を判定するために調べられている。NOVASOME(商標)I(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)及びNOVASOME(商標)II(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を使用して、シクロスポリン-Aをマウスの皮膚の真皮に送達した。結果は、そのような非イオン性リポソームシステムが、皮膚の異なる層へのシクロスポリンAの沈着を促進するのに効果的であることを示した(Hu et al.,(1994)S.T.P.Pharma. Sci.,4(6):466)。
【0176】
リポソームはまた、立体的に安定化されたリポソームであり得、そのような特殊な脂質を欠くリポソームと比較して、循環寿命の延長をもたらす1つ以上の特殊な脂質を含む。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が、(A)モノシアロガングリオシドGM1などの1つ以上の糖脂質を含むか、または(B)1つ以上の親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)部分で誘導体化されているリポソームである。いかなる特定の理論に拘束されることをも望まないが、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG誘導体化脂質を含む立体的に安定化されたリポソームについて、これらの立体的に安定化されたリポソームの増強された循環半減期は、細網内皮系(RES)の細胞への取り込みの減少に由来すると当該技術分野では考えられている(Allen et al.,(1987)FEBS Letters,223:42;Wu et al.,(1993)Cancer Research,53:3765)。
【0177】
1つ以上の糖脂質を含む様々なリポソームが当該技術分野で知られている。Papahadjopoulos et al.(Ann.N.Y.Acad.Sci.,(1987),507:64)は、リポソームの血中半減期を改善するモノシアロガングリオシドGM1、ガラクトセレブロシド硫酸、及びホスファチジルイノシトールの能力を報告した。これらの発見は、Gabizon et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,(1988),85:6949)によって、詳しく解説された。両方ともAllenらに対する米国特許第4,837,028号及びWO88/04924は、(1)スフィンゴミエリン及び(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルを含むリポソームを開示している。米国特許第5,543,152号(Webbら)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示している。1,2-sn-ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、WO97/13499(Lim et al)に開示されている。
【0178】
一実施形態では、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームは、細胞膜に融合できるという利点がある。非カチオン性リポソームは、原形質膜と効率的に融合することはできないが、インビボでマクロファージに取り込まれ、オリゴヌクレオチドをマクロファージに送達するために使用され得る。
【0179】
リポソームのさらなる利点としては、天然リン脂質から得られるリポソームは生体適合性及び生分解性であること;リポソームは、広範囲の水溶性及び脂溶性薬物を組み込むことができること;リポソームは、内部区画にカプセル化されたオリゴヌクレオチドを代謝及び分解から保護することができること;が挙げられる(Rosoff,in“Pharmaceutical Dosage Forms,”Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,volume 1,p.245)。リポソーム製剤の調製における重要な考慮事項は、脂質の表面電荷、ベシクルのサイズ、及びリポソームの水量である。
【0180】
正に帯電した合成カチオン性脂質、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を使用して、核酸と自発的に相互作用する小さなリポソームを形成し、組織培養細胞の細胞膜の負に帯電した脂質と融合してオリゴヌクレオチドを送達できる脂質-核酸複合体を形成し得る(例えば、Feigner,P.L.et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:7413-7417、ならびにDOTMA及びそのDNAでの使用の説明については、米国特許第4,897,355号を参照されたい)。
【0181】
DOTMA類似体である1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)をリン脂質と組み合わせて使用すると、DNA複合体化ベシクルを形成できる。LIPOFECTIN(商標)、Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,Md.)は、負に帯電したポリヌクレオチドと自発的に相互作用して複合体を形成する正に帯電したDOTMAリポソームを含む生体組織培養細胞に高度にアニオン性の核酸を送達するための効果的な薬剤である。十分な正に帯電したリポソームが使用される場合、得られる複合体の正味の電荷も正になる。このようにして調製された正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自発的に付着し、原形質膜と融合し、機能性核酸を例えば組織培養細胞に効率的に送達する。別の市販のカチオン性脂質である1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3,3-(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)は、オレオイル部分がエーテル結合ではなくエステルによって連結されているという点でDOTMAとは異なる。
【0182】
他の報告されたカチオン性脂質化合物としては、例えば、二種類の脂質のいずれかにコンジュゲートされたカルボキシスペルミンを含む種々の部分にコンジュゲートされた化合物が挙げられ、例えば、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(TRANSFECTAM(商標),Promega,Madison,Wis.)、及びジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン5-カルボキシスペルミル-アミド(「DPPES」)(例えば、米国特許第5,171,678号を参照されたい)などの化合物を含む。
【0183】
別のカチオン性脂質コンジュゲートは、DOPEと組み合わせてリポソームに製剤化されたコレステロール(「DC-Chol」)による脂質の誘導体化を含む(Gao,X.and Huang,L.,(1991)Biochim. Biophys. Res.Commun.179:280を参照されたい)。ポリリジンをDOPEにコンジュゲートさせることによって作製されたリポポリリジンは、血清の存在下でのトランスフェクションに有効であることが報告されている(Zhou,X.et al.,(1991)Biochim. Biophys. Acta 1065:8)。ある特定の細胞株では、コンジュゲートされたカチオン性脂質を含むこれらのリポソームは、DOTMAを含む組成物よりも毒性が低く、より効率的なトランスフェクションを提供すると言われている。他の市販のカチオン性脂質製品としては、DMRIE及びDMRIE-HP(Vical,La Jolla,Calif.)及びリポフェクタミン(DOSPA)(Life Technology,Inc.,Gaithersburg,Md.)が挙げられる。オリゴヌクレオチドの送達に適した他のカチオン性脂質はWO98/39359及びWO96/37194に記載される。
【0184】
リポソーム製剤は局所投与に特に適しており、リポソームは他の製剤に比べていくつかの利点を示す。そのような利点としては、投与された薬物の高い全身吸収に関連する副作用の減少、所望の標的での投与された薬物の蓄積の増大、及びオリゴヌクレオチドを皮膚に投与する能力が挙げられる。いくつかの実施において、リポソームは、オリゴヌクレオチドを表皮細胞に送達するために、また、皮膚組織、例えば、皮膚へのオリゴヌクレオチドの浸透を増強するためにも使用される。例えば、リポソームは局所的に適用してもよい。リポソームとして製剤化された薬物の皮膚への局所送達が文書化されている(例えば、Weiner et al.,(1992)Journal of Drug Targeting,vol.2,405-410 and du Plessis et al.,(1992)Antiviral Research,18:259-265;Mannino,R.J.and Fould-Fogerite,S.,(1998)Biotechniques 6:682-690;Itani,T.et al.,(1987)Gene 56:267-276;Nicolau,C.et al.(1987)Meth.Enzymol.149:157-176;Straubinger,R.M.and Papahadjopoulos,D.(1983)Meth.Enzymol.101:512-527;Wang,C.Y.and Huang,L.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7851-7855を参照されたい)。
【0185】
非イオン性リポソームシステム、特に非イオン性界面活性剤及びコレステロールを含むシステムもまた、皮膚への薬物の送達におけるそれらの有用性を判定するために調べられている。NOVASOME I(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)及びNOVASOME II(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を使用して、薬物をマウスの皮膚の真皮に送達した。オリゴヌクレオチドを含むそのような製剤は、皮膚障害を治療するのに有用である。
【0186】
リポソームの標的化はまた、例えば、臓器特異性、細胞特異性、及びオルガネラ特異性に基づいて可能であり、当該技術分野で知られている。リポソーム標的化送達システムの場合、リポソーム二重層との安定した会合で標的化リガンドを維持するために、脂質基をリポソームの脂質二重層に組み込んでもよい。脂質鎖を標的リガンドに結合するために、様々な連結基を使用してもよい。追加の方法は当該技術分野で知られており、例えば、米国特許出願公開第20060058255号に記載されており、その連結基は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0187】
オリゴヌクレオチドを含むリポソームは、高度に変形可能にし得る。そのような変形能は、リポソームがリポソームの平均半径よりも小さい細孔を貫通することを可能にし得る。例えば、トランスファーソームはさらに別のタイプのリポソームであり、薬物送達ビヒクルの魅力的な候補である高度に変形可能な脂質凝集体である。トランスファーソームは、非常に変形しやすいため、液滴よりも小さい細孔を容易に貫通できる脂肪滴として描写され得る。トランスファーソームは、標準的なリポソーム組成物に通常は界面活性剤である表面エッジ活性化因子を加えることによって作ってもよい。オリゴヌクレオチドを含むトランスファーソームは、オリゴヌクレオチドを皮膚のケラチノサイトに送達するために、例えば、感染によって皮下に送達してもよい。無傷の哺乳動物の皮膚を通過するために、脂質ベシクルは、適切な経皮勾配の影響下で、それぞれが直径が50nm未満の一連の微細な細孔を通過しなければならない。さらに、脂質の特性に起因して、これらのトランスファーソームは、自己最適化(例えば皮膚において、細孔の形状に適応)、自己修復し得、断片化することなく、しばしば自己ローディングで標的に到達し得る場合が多い。トランスファーソームは、血清アルブミンを皮膚に送達するために使用されている。トランスファーソームを介した血清アルブミンの送達は、血清アルブミンを含む溶液の皮下注射と同じくらい効果的であることが示されている。
【0188】
本発明に適した他の製剤は、参照によの全体が本明細書に組み込まれるPCT公開第WO2009/088891号、WO2009/132131号、及びWO2008/042973号に記載されている。
【0189】
界面活性剤は、エマルション(マイクロエマルションを含む)及びリポソームなどの製剤に広く使用されている。天然と合成の両方の多くの異なるタイプの界面活性剤の特性を分類及びランク付けする最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)の使用によるものである。親水性基(「ヘッド」としても知られる)の性質は、製剤に使用されるさまざまな界面活性剤を分類するための最も有用な手段を提供する(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
【0190】
界面活性剤分子がイオン化されていない場合、それは非イオン性界面活性剤として分類される。非イオン性界面活性剤は、医薬品及び化粧品に幅広く使用されており、幅広いpH値で使用可能である。一般に、それらのHLB値は、それらの構造に応じて2~約18の範囲である。非イオン性界面活性剤には、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、及びエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが含まれる。非イオン性アルカノールアミド及びエーテル、例えば、脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、及びエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーもこのクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も人気のあるメンバーである。
【0191】
界面活性剤分子が水に溶解または分散したときに負電荷を帯びている場合、その界面活性剤はアニオン性として分類される。アニオン性界面活性剤としては、石鹸などのカルボキシレート、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、アルキルサルフェート及びエトキシル化アルキルサルフェートなどの硫酸のエステル、アルキルベンゼンスルホネートなどのスルホネート、アシルイセチオネート、アシルタウレート及びスルホスクシネート、及びホスフェートが挙げられる。アニオン性界面活性剤クラスの最も重要なメンバーは、硫酸アルキル及び石鹸である。
【0192】
界面活性剤分子が水に溶解または分散したときに正電荷を帯びている場合、その界面活性剤はカチオン性として分類される。カチオン性界面活性剤には、第四級アンモニウム塩及びエトキシル化アミンが含まれる。第四級アンモニウム塩は、このクラスで最も使用されているメンバーである。
【0193】
界面活性剤分子が正または負のいずれかの電荷を帯びる能力を持っている場合、界面活性剤は両性として分類される。両性界面活性剤には、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、及びホスファチドが含まれる。
【0194】
医薬品、製剤、及びエマルションにおける界面活性剤の使用は考察されている(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
【0195】
本発明の方法で使用するためのオリゴヌクレオチドはまた、ミセル製剤として提供され得る。ミセルは、両親媒性分子が、分子の全ての疎水性部分が内側に向けられ、親水性部分が周囲の水相と接触したままになるように球形構造に配置される特定のタイプの分子集合体である。環境が疎水性である場合、逆の配置が存在する。
【0196】
脂質ナノ粒子ベースの送達方法
本発明におけるオリゴヌクレオチドは、脂質製剤、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)、または他の核酸-脂質粒子に完全にカプセル化され得る。LNPは、静脈内(iv)注射後に循環寿命が延長され、遠位部位(例えば、投与部位から物理的に離れた部位)に蓄積するので、全身投与に有用である。LNPには、「pSPLP」が含まれ、これには、PCT公開第WO00/03683号に記載されているカプセル化された縮合剤-核酸複合体が含まれる。本発明の粒子は、典型的には、約50nm~約150nm、より典型的には約60nm~約130nm、より典型的には約70nm~約110nm、最も典型的には約70nm~約90nmの平均直径を有し、実質的に無毒である。さらに、核酸は、本発明の核酸-脂質粒子中に存在するとき、ヌクレアーゼによる分解に対して水溶液中で耐性がある。核酸-脂質粒子及びそれらの調製方法は、例えば、米国特許第5,976,567号;同第5,981,501号;同第6,534,484号;同第6,586,410号;同第6,815,432号;米国公開第2010/0324120号及びPCT公開第WO96/40964号に開示されている。
【0197】
カチオン性脂質の非限定的な例としては、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリール-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N--(I-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N--(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)またはその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z、12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニエテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イルエチルアザネジエジドデカン-2-オール(Tech G1)、またはそれらの混合物が挙げられる。カチオン性脂質は、例えば、粒子に存在する総脂質の約20モル%~約50モル%、または約40モル%を構成し得る。
【0198】
イオン化可能/非カチオン性脂質は、アニオン性脂質または中性脂質であってもよく、これには、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。非カチオン性脂質は、例えば、コレステロールが含まれている場合、粒子に存在する総脂質の約5モル%~約90モル%、約10モル%、または約60モル%であり得る。
【0199】
粒子の凝集を阻害するコンジュゲートした脂質は、例えば、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、またはそれらの混合物を含むがこれらに限定されないポリエチレングリコール(PEG)-脂質であり得る。PEG-DAAコンジュゲートは、例えば、PEGジラウリルオキシプロピル(C12)、PEGジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)であり得る。粒子の凝集を防ぐコンジュゲートした脂質は、例えば、粒子に存在する総脂質の0モル%~約20モル%、または約2モル%であり得る。
【0200】
いくつかの実施形態では、核酸-脂質粒子は、例えば、粒子に存在する総脂質の約10モル%~約60モル%、または約50モル%のコレステロールをさらに含む。
【0201】
ASOはまた、リピドイド(lipidoid)で送達され得る。リピドイドの合成は広範に記載されており、これらの化合物を含有する製剤は、修飾核酸分子またはASOの送達に特に適している(Mahon et al,Bioconjug Chem.2010 21:1448-1454;Schroeder et al,J Intern Med.2010 267:9-21;Akinc et al,Nat Biotechnol.2008:26:561-569;Love et al,Proc Natl Acad Sci U A.2010 107:1864-1869;Siegwart et al,Proc Natl Acad Sci U S A.2011 108:12996-3001(これらの全てはその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0202】
RNA送達のための脂質組成物は、WO2012170930A1、WO2013149141A1、及びWO2014152211A1に開示され、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0203】
治療への適用
本発明は、遺伝子発現の減少(例えば、OTC遺伝子発現を減少させた)に関連する疾患及び障害を治療する方法を提供する。この方法は、標的遺伝子(例えば、OTC)の調節エレメントから転写された調節RNAとハイブリダイズするASOまたはASOを含む医薬組成物を使用する。本明細書に記載のオリゴヌクレオチド組成物は、本発明の方法において有用であり、理論に束縛されないが、対象(例えば、哺乳動物、霊長類、またはヒト)の細胞において、OTCのレベル、状態及び/または活性を、例えば、OTCタンパク質タンパク質のレベルを増大することによって、調整する能力を通じて、それらの望ましい効果を発揮すると考えられている。
【0204】
本発明の一態様は、OTCに関連する障害(例えば、尿素サイクル異常症)を治療することを、それを必要とする対象において行う方法に関する。本発明の別の態様は、OTC関連障害を有すると特定された対象の細胞におけるOTCのレベルを増大させることを含む。さらに別の態様は、対象の細胞におけるOTCの発現を阻害する方法を含む。この方法は、細胞におけるOTCの発現を増大するのに有効な量で、細胞とオリゴヌクレオチドまたはASOとを接触させ、それにより、その細胞におけるOTCの発現を増大することを含み得る。
【0205】
上述の方法に基づいて、本発明のさらなる態様は、治療に使用するため、または医薬として使用するため、またはそれを必要とする対象におけるOTCまたは尿素サイクル関連障害の治療に使用するための、またはOTC関連障害を有すると特定された対象の細胞におけるOTCのレベルを増大させるのに使用するため、または対象の細胞におけるOTCの発現を増大するのに使用するための、本発明のオリゴヌクレオチド、またはそのようなオリゴヌクレオチドを含む組成物を含む。この使用は、細胞とオリゴヌクレオチドとを、その細胞におけるOTCの発現を増大するのに有効な量で接触させ、それにより、その細胞におけるOTCの発現を増大することを含む。本発明の方法に関して以下に記載する実施形態はまた、これらのさらなる態様にも適用可能である。
【0206】
細胞とオリゴヌクレオチドとの接触は、インビトロでおこなっても、エキソビボで行っても、またはインビボで行ってもよい。オリゴヌクレオチドとインビボで細胞を接触させることには、オリゴヌクレオチドを、対象内の、例えば、ヒト対象の細胞または細胞集団と接触させることが含まれる。インビトロ及びインビボの細胞を接触させる方法の組み合わせも可能である。上述したように、細胞への接触は直接的であっても、または間接的であってもよい。さらに、細胞との接触は、本明細書に記載されているかまたは当該技術分野で知られている任意のリガンドを含む標的化リガンドを介して達成され得る。いくつかの実施形態では、標的化リガンドは、炭水化物部分、例えば、GalNAc3リガンド、または目的の部位にオリゴヌクレオチドを導く他のリガンドである。細胞は肝臓細胞(例えば、幹細胞)であってもよい。
【0207】
本明細書に開示されるASOまたは医薬組成物の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内(intrathecal)、腔内(intracavitary)、カテーテルを通した灌流または直接病変注射によるものであってもよい。特定の実施形態では、ASOまたは医薬組成物は、全身投与される。特定の実施形態では、ASOまたは医薬組成物は、非経口経路によって投与される。例えば、特定の実施形態では、ASOまたは医薬組成物は、静脈内に(例えば、静脈内注入により)、例えば、プレフィルドバッグ(prefilled bag)、プレフィルドペン(prefilled pen)、またはプレフィルドシリンジを用いて投与される。他の実施形態では、ASOまたは医薬組成物は、標的遺伝子発現の増大が望ましい臓器または組織に局所的に投与される(例えば、肝臓)。
【0208】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが対象内の特定の部位に送達されるように、対象に投与される。このような標的化送達は、全身投与または局所投与のいずれかによって達成され得る。OTCの発現の増大は、対象内の特定の部位に由来する試料中のOTCのmRNAまたはOTCタンパク質のレベルまたはレベルの変化の測定を使用して評価され得る。特定の実施形態では、方法は、例えば、OTCの発現を減少させる薬剤で対象を治療した後の臨床的に関連する結果によって示されるように、OTCの発現の臨床的に関連する増大を含む。
【0209】
他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、血中高アンモニアレベルのような、OTC障害の1つ以上の症状の軽減(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の)をもたらすのに有効な量及び期間で投与される。
【0210】
OTC発現レベルの増大
OTCを標的とするASOを使用する、本明細書に開示される治療方法は、対象におけるOTC発現レベルを増大させるように設計する。OTC遺伝子の発現の増大は、OTC遺伝子の任意のレベルの増大、例えば、OTC遺伝子の発現の少なくとも部分的な増大を含む。増大は、対照レベルと比較して、これらの可変要素の1つ以上の絶対レベルまたは相対レベルの増大によって評価され得る。対照レベルは、当該技術分野で利用される対照レベル、例えば、投与前のベースラインレベル、または類似の対象、細胞から決定されるレベル、または、未処理または対照(例えば、緩衝液のみの対照または非活性薬剤の対照)で処理された試料である、任意のタイプの対照であり得る。特定の実施形態では、この方法は、例えば、OTCの発現を増大させる薬剤で対象を治療した後の臨床的に関連する結果によって示されるように、OTCの発現の臨床的に関連する増大を生じる。
【0211】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、投与前のベースラインのレベルに対して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%までOTC遺伝子発現を増大する。特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、OTC遺伝子発現を、投与前のベースラインのレベルと比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍増大させる。特定の実施形態では、対象はOTC発現の欠乏を有し、本明細書に開示される方法は、OTC発現レベルまたは活性を、同様の年齢及び性別の種の対象における平均OTC発現レベルまたは活性の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%に回復させる。
【0212】
OTC遺伝子の発現は、OTC遺伝子発現に関連する任意の可変要素のレベル、例えば、OTCのmRNAレベルまたはOTCのタンパク質レベルに基づいて評価され得る。OTCは、特定の哺乳動物(例えば、ヒト及びマウス)におけるX-染色体遺伝子であり、雌性対象は、X染色体不活性化のモザイクパターンを示すことが理解される。特定の実施形態では、本明細書におけるOTCの発現レベルまたは活性は、肝臓における平均発現レベルまたは活性を指す。
【0213】
特定の実施形態では、代替マーカーを使用して、OTC発現レベルの増大を検出してもよい。例えば、OTC発現を増大させる薬剤による許容可能な診断及びモニタリング基準によって示されるような、OTC関連障害の効果的な治療は、OTCの臨床的に関連する減少を示すと理解され得る。
【0214】
OTC遺伝子の発現の増大は、OTC遺伝子が転写され、処理するか、(例えば、細胞(複数可)を本発明のオリゴヌクレオチドと接触させることによって、または細胞が存在するかまたは存在した対象に本発明のオリゴヌクレオチドを投与することによって)処理される第1の細胞または細胞の群(このような細胞は、例えば、対象に由来する試料中に存在し得る)によって発現されるmRNAの量の増大によって明白になり得、その結果、OTC遺伝子の発現は、そのように処理されてないか、または処理されていない第1の細胞または細胞群(オリゴヌクレオチドで処理されていないか、目的の遺伝子を標的とするオリゴヌクレオチドによって処理されていない対照細胞(複数可))に対して実質的に同一の第2の細胞または細胞群と比較した場合、増大されている。
【0215】
他の実施形態では、OTC遺伝子の発現の増大は、OTC遺伝子発現に機能的に関連するパラメーター、例えば、OTCタンパク質発現またはOTC活性の増大に関して評価され得る。OTC増大は、発現構築物からの内因性または異種のいずれかで、OTCを発現する任意の細胞において、当該技術分野で公知の任意のアッセイによって決定され得る。
【0216】
OTCの発現の増大は、対照細胞または細胞の対照群と比較した、細胞または細胞群によって発現されるOTCタンパク質のレベル(例えば、対象に由来する試料で発現されるタンパク質のレベル)の増大によって明らかになり得る。OTC発現の増大はまた、対照細胞または対照細胞群と比較した、処理された細胞または細胞群におけるOTCのmRNAレベルの増大によって明らかにされ得る。
【0217】
OTC遺伝子の発現の増大を評価するために使用され得る対照細胞または細胞群としては、本発明のオリゴヌクレオチドとまだ接触されていない細胞または細胞群が挙げられる。例えば、対照細胞または細胞群は、オリゴヌクレオチドで対象を処理する前の、個々の対象(例えば、ヒトまたは動物の対象)に由来し得る。
【0218】
細胞または細胞群によって発現されるOTCのmRNAのレベルは、mRNA発現を評価するための当該技術分野で公知の任意の方法を使用して決定され得る。一実施形態では、試料中のOTCの発現レベルは、転写されたポリヌクレオチド、またはその一部、例えば、OTC遺伝子のmRNAを検出することによって決定される。RNAは、例えば、酸フェノール/グアニジンイソチオシアネート抽出(RNAzol B;Biogenesis)、RNEASYTM RNA調製キット(Qiagen)またはPAXgene(PreAnalytix,Switzerland)を使用することを含むRNA抽出技術を使用して細胞から抽出され得る。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する典型的なアッセイフォーマットには、核ランオンアッセイ、RT-PCR、RNase保護アッセイ、ノーザンブロッティング、インサイチュハイブリダイゼーション、及びマイクロアレイ分析が挙げられる。循環OTCのmRNAは、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるPCT公開WO2012/177906に記載されている方法を使用して検出され得る。いくつかの実施形態では、OTCの発現のレベルは、核酸プローブを使用して決定される。本明細書で使用されるとき、「プローブ」という用語は、特定のOTC配列に対して、例えば、mRNAまたはポリペプチドに対して、選択的に結合し得る任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成されてもよいし、または適切な生物学的調製物から誘導してもよい。プローブは、ラベルを付けるように特別に設計してもよい。プローブとして利用され得る分子の例としては、限定するものではないが、RNA、DNA、タンパク質、抗体、及び有機分子が挙げられる。
【0219】
単離されたmRNAは、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析、及びプローブアレイを含むがこれらに限定されないハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイで使用され得る。mRNAレベルを決定するための1つの方法は、単離されたmRNAを、OTCのmRNAにハイブリダイズし得る核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。一実施形態では、mRNAを、固体表面に固定し、例えば、単離されたmRNAをアガロースゲル上で泳動し、mRNAをゲルからニトロセルロースなどの膜に移すことによって、プローブと接触させる。代替の実施形態では、プローブ(複数可)は固体表面に固定化され、mRNAは、例えば、AFFYMETRIX遺伝子チップアレイにおいてプローブ(複数可)と接触される。当業者は、OTCのmRNAのレベルを決定する際に使用するために、公知のmRNA検出方法を容易に適合し得る。
【0220】
試料中のOTCの発現レベルを決定するための代替方法には、例えば試料中のmRNAの核酸増幅及び/または逆転写(cDNAを調製する)のプロセスであって、例えば、RT-PCR(Mullis,1987、米国特許第4,683,202号に記載されている実験的実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189-193)、自己持続性配列複製(Guatelli et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874-1878)、転写増幅システム(Kwoh et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173-1177)、Q-ベータレプリカーゼ(Lizardi et al.(1988)Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.,米国特許第5,854,033号)、または他の任意の核酸増幅法による、続いて当業者に周知の技術を使用する増幅された分子の検出によるプロセスが含まれる。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に少ない数で存在する場合、そのような分子の検出に特に役立つ。本発明の特定の態様において、OTCの発現のレベルは、定量的蛍光発生RT-PCR(すなわち、TAQMANTMシステム)またはDUAL-GLO(登録商標)ルシフェラーゼアッセイによって決定される。
【0221】
OTCのmRNAの発現レベルは、メンブレンブロット(ノーザン、サザン、ドットなどのハイブリダイゼーション分析で使用されるものなど)、またはマイクロウェル、試料チューブ、ゲル、ビーズ、もしくはファイバー(または結合した核酸を含む任意の固体担体)を使用してモニターされ得る。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,770,722号、同第5,874,219号、同第5,744,305号、同第5,677,195号、及び同第5,445,934号を参照されたい。OTC発現レベルの決定はまた、溶液中で核酸プローブを使用することも含み得る。
【0222】
いくつかの実施形態では、mRNA発現のレベルは、分岐DNA(bDNA)アッセイ、定量PCR(qPCR)、RT-qPCR、マルチプレックスqPCRまたはRT-qPCR、RNA-seq、またはマイクロアレイ分析を用いて評価される。このような方法はまた、OTC核酸の検出にも使用され得る。
【0223】
OTCタンパク質発現のレベルは、タンパク質レベルの測定のための当該技術分野で公知の任意の方法を使用して決定され得る。そのような方法としては、例えば、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィー、流体またはゲル沈降反応、吸収分光法、比色分析、分光光度分析、フローサイトメトリー、FACS、免疫拡散(シングルまたはダブル)、免疫電気泳動、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、電気化学発光アッセイ、Luminex、MSD、FISHなどが挙げられる。このようなアッセイはまた、OTCタンパク質の存在または複製を示すタンパク質の検出にも使用され得る。
【実施例】
【0224】
以下は、本発明を実行するための特定の実施形態の実施例である。これらの実施例は、例証目的で提示されているにすぎず、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に対する正確さを確保する努力がなされているが、当然いくつかの実験によるエラー及び偏差が許容されるはずである。
【0225】
本発明の実施は、別途指示のない限り、当業者の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA手法、及び薬理学の従来の方法を用いるであろう。そのような手法は、文献で完全に説明される。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook,et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0226】
実施例1:regRNA標的化ASOを用いたOTC発現の調節
2つのヒトOTC regRNA標的(RR1及びRR2)がヒトOTCについて特定された。RR1を標的とする69個のASO及びRR2を標的とする133個のASOを合成した。これらの202個の初期ASOを、OTCのmRNAの増大における有効性について、5μΜの初代ヒト肝細胞においてスクリーニングした。有効性を示したASOを、初代ヒト肝細胞及び初代ヒトドナー肝細胞における1.25μΜ、2.5μΜ及び5μΜでの用量依存性有効性についてさらに試験した。用量依存性有効性を示した陽性ASOを、regRNAヒット領域の周りのASOベースウォーキング及びタイリングのために選択した。最初のスクリーニングに基づいて、最初のASOヒットの周りのベースウォーキング及びタイリングのために、31個のRR1 ASO及び35個のRR2 ASOを選択した。これらの追加のASOを、用量依存性有効性についてさらに試験した。ASOは、選択されたASOの化学的修飾の化学的性質、タイプ、及び位置を変更することによって、化学的微調整(chemistry fine tuning)のために選択された。RR1を標的とする71個のASO及びRR2を標的とする67個のASOを特定した。
【0227】
マウスOTC regRNAについてこのプロセスを繰り返して、マウスOTC発現を変化させるASOを特定した。マウスOTCについて、4つのマウスOTC regRNA標的を特定した。regRNAを標的とする126個のASOを合成した。これらの126個の初期ASOを、OTCのmRNAの増大における有効性について、初代マウス肝細胞においてスクリーニングした。用量依存性有効性を示した陽性ASOを、regRNAヒット領域の周りのASOベースウォーキング及びタイリングのために選択した。最初のスクリーニングに基づいて、最初のASOヒットの周りのベースウォーキング及びタイリングのために、24個のASOを選択した。これらの追加のASOを、用量依存性有効性についてさらに試験した。選択されたASOの化学的修飾の化学的性質、タイプ、及び位置を変更することによって、化学的微調整(chemistry fine tuning)に関して4つのASOを選択した。
【0228】
ヒト及びマウスASOの選択及び化学修飾を、表2、3、4、ならびに
図18A、18B、18C、18D、及び18Eに示す。
【0229】
この実施例は、ヒトOTCのエンハンサーから転写されたeRNAを標的とするASOを用いて、ヒト肝細胞におけるOTC発現の調節を評価するように設計した。
【0230】
4人のドナー(HUM4178、HUM181511A、HUM190171、HUM181371)由来の肝細胞を、インビトロで培養した。細胞を増殖培地にプレートし、プレートの4~6時間後、最終濃度1.25μΜ、2.5μΜ、5μΜ、または10μΜのhOTC-ASOe1-1d、hOTC-ASOe1-1h、hOTC-ASOe2-1、またはhOTC-ASOe1-1aで処理した(ヒトOTC配列及び選択されたASOの化学修飾については、
図18A、18B、18D、及び18Eを参照し、マウスOTC配列及び選択されたASOの化学修飾については
図18Cを参照されたい)。処理の48時間後に細胞を回収し、RNA単離、cDNA合成及びQPCR分析のために処理した。OTC発現には、TaqmanプローブHs00166892_m1(OTC)60Xを用いた。OTCレベルを、B2M発現に対して正規化した。
【0231】
図2Aは、hOTC-ASOe1-11による処理後のOTCのmRNAを示す。
図2Bは、hOTC-ASOe1-8による処理後のOTCのmRNAを示す。
図2Cは、hOTC-ASOe2-1による処理後のOTCのmRNAを示す。
図2Dは、hOTC-ASOe1-1による処理後のOTCのmRNAを示す。各ASOによる処理は、各ドナーにおけるOTC発現の用量依存性増大をもたらした。従って、同じregRNAを標的とする4つの異なるRNAアクチュエータは、ヒトOTCのmRNA用量依存的物質を増大させた。
【0232】
OTC欠損ドナー由来の肝細胞を、インビトロで培養した。細胞を増殖培地にプレートし、プレート4時間後、最終濃度5uMのASO hOTC-ASOe1-10及びhOTC-ASOe1-2cで処理した。ランダム配列を含む非標的化対照(NTC)ASOを、陰性対照として使用した。上清を尿素生成分析のために回収し、細胞溶解物を処理後2日目にmRNAのために回収した。mRNA分析のために、taqmanプローブHs00166892_m1を、OTC発現のために使用した。OTCレベルを、B2M発現に対して正規化した。尿素生成については、回収した上清を、Urea Nitrogen(BUN)比色検出キット(Thermofisher、カタログ番号:EIABUN)により測定し、及びAlbumin ELISA(Bethyl、カタログ番号:E88-129)により正規化した。統計は、Prism(GraphPad)の一元配置ANOVAを用いて行った。
【0233】
尿素アッセイも、hOTC-ASOe1-2aを用いて野生型肝細胞において用量研究で繰り返した。細胞を増殖培地にプレートし、プレート後4時間、最終濃度1.25uM、2.5uM、5uM、及び10uMのASO hOTC-ASOe1-2aで処理した。ランダム配列を含む非標的化対照(non-targeting control)(NTC)ASOを、陰性対照として使用した。上清を尿素生成分析のために回収し、細胞溶解物を処理後6日目にmRNAのために回収した。試料を上記のように処理した。
【0234】
図3A及び
図3Bに示すように、両方のASOによる治療は、患者細胞における増大した自己発生を生じ(
図3B)、これは、OTCのmRNAアップレギュレーションと相関した(
図3A)。尿素生成アッセイにおける正常範囲は、アルブミン1mgあたり18~30ugの尿素である。1つのASOは、平均濃度を約13μgの尿素/アルブミン1mgまで増大させ、陰性対照試料として7μgの尿素/アルブミン1mgのほぼ2倍まで増大させ、ほぼ正常な尿素生成範囲内であった。加えて、hOTC-ASOe1-2aは、WT肝細胞においてOTCのmRNA(
図3C)及び尿素(
図3D)の用量依存的な増大を誘導した。
【0235】
regRNAの大部分には、ヒトゲノムとマウスゲノムとの間で保存されている大きな配列領域はない。概念のインビボ証明のために、マウスOtc領域の周囲のregRNAを同定し、これらのマウスregRNA(プロモーター及びエンハンサー)を標的とするASOを設計し、野生型(B6EiC3SnF1/J,[WT])初代マウス肝細胞及びOtc欠損ドナー(B6EiC3Sna/A-Otcspf-ash/J,[OTCD])初代マウス肝細胞の両方でスクリーニングした。
【0236】
初代肝細胞を、雄性マウスのマウス株B6EiC3SnF1/J(対照WT)及びOtc欠損ドナー(B6EiC3Sna/A-Otcspf-ash/J,カタログ:001811)(JAX lab)から単離した。spfashマウスは、バリアントc.386G>A、p.Arg129Hisを、スプライシングに影響を与える Otc遺伝子中に有し、spf/ash肝臓中のOTCのmRNAレベルの低下をもたらす(野性型対照の5~12%)。従って、雄性spfashマウスは、OTC活性が低い軽度の生化学的表現型を有する(野生型の5%~10%)。
【0237】
初代肝細胞を、0日目に1ウェルあたり20,000細胞で播種した。2日目に細胞を最終濃度5μMのマウスASOで処理した。細胞を2日間インキュベートし、処理後の2日目に溶解物をmRNA分析のために回収した。taqmanプローブMm01288053_m1を、マウスOTC発現に使用した。Ppia及びHprtを、遺伝子発現正規化のためのハウスキーパー遺伝子として使用した。統計は、Prism(GraphPad)の一元配置ANOVAを用いて行った。
【0238】
6種のASOのうち5種は、インビトロでWT肝細胞におけるOTCのmRNAを増大させた(一元配置ANOVA*:p0.05-0.005;**:p<0.005)(
図4)。6種のASOのうち4種は、インビトロでOTCD肝細胞におけるOTCのmRNAを増大させた(一元配置ANOVA*:p0.05-0.005;**:p<0.005)(
図5)。したがって、ASO標的化regRNAを使用して、罹患マウス肝臓細胞におけるOTC発現を増大してもよい。OTC欠損マウス細胞におけるASO媒介性OTCアップレギュレーションは、これらを疾患モデルにおいて試験することを可能にし、インビボ表現型読み出しをする。
【0239】
hOTC-ASOe1-1に追加の化学修飾を施した。修飾は、表3及び
図18Dに示される。新しいASOを、5uM、9uM、または10uM濃度で前に記載したように肝細胞において評価した。表5は、示されたASOについてのOTCのmRNAの倍率変化及び標準偏差を示す。
【0240】
【0241】
hOTC-ASOe2-2に追加の化学修飾を施した。修飾は、表4及び
図18Eに示される。新しいASOを、5uM、9uM、または10uM濃度で前に記載したように肝細胞において評価した。表6は、示されたASOについてのOTCのmRNAの倍率変化及び標準偏差を示す。
【0242】
【0243】
2つのASO、hOTC-ASOe1-1d及びhOTC-ASOe2-2eの用量応答も評価した。細胞を、上記のように各ASOの濃度を増大させながらインキュベートした。OCT mRNAを、qRT-PCRによって決定した。
【0244】
表7に示すように、hOTC-ASOe1-1dの量を増大させた肝細胞の処理は、OTCのmRNAの用量依存的な増大を生じた。
【0245】
【0246】
表8に示すように、hOTC-ASOe2-2eの量を増大させた肝細胞の処理は、OTCのmRNAの用量依存的な増大を生じた。
【0247】
【0248】
追加のASOを生成し、上記のように肝細胞で試験した。ASO配列、X染色体の開始及び終了位置、ならびにOTCのmRNAの倍率変化(FC)及び標準偏差(SD)を表9に示す。
【0249】
配列番号143-892標的ヒトOTC eRNA-1のASO(配列番号1)。全ての塩基は、2’-O-メトキシエチルであり、全てのシチジンは5-メチル(シチジン上の5-メチル)を有する。
【0250】
配列番号893~1029のASOは、ヒトOTC eRNA-2(配列番号2)を標的とする。ASOは、塩基6、11及び16にLNAを有する2’-O-メトキシエチルである。このようなASOは、5×n+5ヌクレオチド(nは3以上の整数)として記載されてもよく、ここで、5×m位のヌクレオチドは、LNAによって修飾されたリボヌクレオチド(mは1~nの整数)であり、残りの位置のヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチルによって修飾されたリボヌクレオチドであり、全てのシチジンは5-メチル(シチジン上の5-メチル)を有する。
【0251】
配列番号1030~1072のASOは、ヒトOTC paRNA-1のASO(配列番号1077)を標的とする。全ての塩基は、2’-O-メトキシエチルであり、全てのシチジンは5-メチル(シチジン上の5-メチル)を有する。
【0252】
【0253】
実施例2:paRNA-またはeRNa-標的化ASOを用いたSERPING1発現の調節
本実施例は、マウスSERPING1プロモーターから転写されたpaRNAを標的とするASOを用いて、マウス肝細胞におけるSERPING1発現の調節を評価するように設計した。
【0254】
選択したマウスSerping1 ASOの配列及び化学修飾については
図19を参照されたい。
【0255】
雌性C57Bl/6マウス(約6~7週齢)を、単回5mg/kgのIPの用量のIFNy(マウスあたり125μg)または陰性対照としてのPBSを用いて処置し、処置の30分後、1時間後、2時間後、6時間後、10時間後、及び24時間後に屠殺した。雄性C57Bl/6マウス(7週齢)を、15mg/kgのIP用量のトファシチニブで2回処置し(12時間離して)、処置の2時間後及び6時間後に屠殺した。両方の実験におけるマウス由来の肝臓を列挙した時点で回収し、RNA単離及びcDNA合成のために処理して相対的RNA測定を行った(Taqman qPCR(Mm00437835_m1))。
【0256】
Serping1のmRNAは、IFNyを用いて時間依存的にアップレギュレートしたところ、投与後24時間で最高の倍率変化(約3倍の誘導)が起こった(
図6A)。Serping1のmRNAは、Jak1阻害剤トファシチニブを用いて下方制御され、50%の減少が6時間で起こった(
図6B)。したがって、Serping1は、IFNy-Jak経路によって制御される可能性が高い。
【0257】
雌性C57Bl/6マウス(約6~7週齢)を、単回5mg/kgのIP用量のIFNg(マウス1匹あたり125ug)を用いて処置し、処置の24時間後、48時間後、及び72時間後に屠殺した。mRNA及びWestern Blotによるタンパク質分析のために、血清を回収した。使用したserping1抗体は、SERPING1(ab134918)に対するウサギのモノクローナル[EPR8015]であった。タンパク質レベルをトランスフェリンタンパク質(ウサギAbcam 82411)に対して正規化した。Serping1のmRNAを、ハウスキーピング遺伝子としてHmbsに対して正規化した。
【0258】
血清中のSerping1のmRNA及びタンパク質の持続的な増大は、24~48時間から観察された(
図7)。IFNg処理後の血清mRNAレベルを、表10に示す。
【0259】
【0260】
次に、雌性C57Bl/6マウス(約6~7週齢)を、単回5mg/kgのIPの用量のIFNy(マウスあたり125μg)または陰性対照としてPBSを用いて処置し、処置の6時間後及び24時間後に屠殺した。6時間及び24時間の時点由来の肝臓を、Qiagen Trizol法によって処理し、SYBRグリーンPCRによって測定した。PCRを用いて、Serping1のmRNA及びregRNA発現レベルを決定した。
【0261】
図8に示すように、regRNAレベルは、最初に増大し、その後、IFNgによる誘導後のmRNAの増大が続く。
【0262】
次に、凍結保存したマウス肝細胞(Lonza)をコラーゲンコーティングしたプレート上にプレートし、24時間付着させ、1000ng/ml IFNyで刺激し、処理後0.5時間、2時間、4時間、8時間、24時間、及び30時間で回収した。細胞を、Qiagen RLT緩衝液中で溶解し、Quick-RNA Zymoキットを用いて処理し、regRNA特異的プライマーを用いてSYBRグリーンqPCRによってmRNAを測定した。
【0263】
図9A及び
図9Bに示すように、IFNy刺激はSerping1のmRNAをアップレギュレートする前にSerping1 regRNAを増大させた。Serping1 regRNAレベルは2時間でピークに達したが、Serping1のmRNAは30時間でピークに達した。従って、IFNg処理は、マウス肝細胞におけるSerping1のmRNAの時間依存性増大をもたらす。
【0264】
雌性C57Bl/6マウス(約6~7週齢)を単回5mg/kgのIP用量のIFNg(マウス1匹あたり125ug)を用いて処置し、処置の6時間後、及び24時間後に回収した。6時間及び24時間の時点由来の肝臓粉末を、ATAC-seqについて処理した。エピゲノムデータは、2つのホットスポット、エンハンサー2及びプロモーター2を、標的化及びアップレギュレーションのための理想的な領域として示した(
図10)。
【0265】
次に、凍結保存したマウス肝細胞(Lonza)を、1日目(プレート24時間後)に自由取り込み法によって用量反応でパワー培地中の選択されたASO(mSerping1pa-ASO-1、mSerping1pa-ASO-2、及びmSerping1pa-ASO-3)で処理し、3日目に収集した。スクランブルASO(NTC-3S)を対照として用いた。細胞を、RLT Qiagen緩衝液中で溶解し、RNAeasy Plus 96 Kitによって処理し、mRNAをTaqman qPCRによって測定した。mSerping1pa-ASO-1は、mSerping1pa-ASO-2の最適化された配列である。
【0266】
Serping1のmRNAは、paRNAを標的とする選択されたASOを用いて用量依存的にアップレギュレートされ(
図11B)、一方、隣接する遺伝子Irf1及びUbel26はアップレギュレートされなかった。Serping1染色体近傍の概略図を
図11Aに示す。
【0267】
次に、リードASO配列の最適化されたバージョンを設計し、新たに単離されたマウス肝細胞において試験した。1日目(プレートした24時間後)に自由取り込み法によって用量反応でASOを用いてパワー培地中で細胞を処理し、3日目に収集した。スクランブルASO(NTC-3S)を、対照として用いた。mSERPING1-ASOpa-6は、Serping1を標的とするIONISマウス配列である(Bhattacharjee et al.,2013)。
【0268】
図12に示すように、Serping1を、regRNAを標的とするASOを用いて用量依存的にアップレギュレートした。ASOによる処理後のSerping1のmRNAの倍率変化を表11に示す。
【0269】
【0270】
より長い時間のアッセイも行った。新たに単離されたマウス肝細胞を、1日目(プレート24時間後)に自由取り込み法によってパワー培地中の10μΜの選択されたASO(mSerping1pa-ASO-2、mSerping1pa-ASO-3、mSerping1pa-ASO-4)で処理し、RNAプロセシングのために8時間、24時間、48時間、及び72時間で回収した。スクランブルASO(NTC-Scr3S)を対照として使用した。mRNAをNTCに対して正規化した。
【0271】
選択されたASOは、Serping1を24時間で約1.5~2×に増大させた(
図13)
【0272】
次に、インビボアッセイを行った。雄性C57/Bl6マウス(約8週)を、1日目及び4日目にSC注射を介してGalNAcにコンジュゲートされた選択されたASO(mSerping1 ASO-2 GalNAc)で処理し、6日目に回収した血清を回収した。PBS及びスクランブルASO NTCを対照として用いた。血清採血を用いて、ウエスタンブロットによってSerping1タンパク質を測定した。研究設計の概略図を
図14Aに示す。
【0273】
GalNAcにコンジュゲートされた2用量のASOの後、Serping1タンパク質レベルは、陰性対照と比較して約1.5倍に増大する(
図14B)。
【0274】
次に、Serping1のmRNA発現に対するIFNg+ASO処理の相加効果を評価した。凍結保存したマウス肝細胞を、2日目に自由取り込み法によって、パワー培地中の5μΜのmSerping1 ASO-2+100ng/mlのIFNgで処理した。細胞をmRNA分析のために4日目に回収した。未処置マウス及びスクランブルASO NTCを、対照として使用した。IFNgと組み合わせた5μΜのmSerping1 ASO-2は、負の対照と比較して最も高い倍率変化、約2.75倍を導く(
図15A)。
【0275】
併用療法のためのタイムコースアッセイも行った。新たに単離したマウス肝細胞を、1日目(プレート24時間後)に自由取り込み法によって、パワー培地中の、10μΜのmSerping1 ASO-2、mSerping1 ASO-3、またはmSerping1 ASO-4+1000ng/mlのIFNgで処理し、RNAプロセシングのために8時間、24時間、48時間、及び72時間で回収した。スクランブルASO NTC+IFNgを対照として使用した。
【0276】
より高い濃度のASOもまた、対照マウスよりもSerping1のmRNAの約3倍の増大をもたらした(
図15B)。
【0277】
次に、Serping1のmRNAに対するJak1阻害剤+ASOのレスキューされた効果を評価した。凍結保存したマウス肝細胞を、2日目に自由取り込み法によって、パワー培地中の5μΜのmSerping1 ASO-2+3μMのJak1阻害剤トファシチニブで処理した。細胞をmRNA分析のために4日目に回収した。
【0278】
Jak1阻害と組み合わせたmSerping1 ASO-2は、正常レベルへのSerping1のmRNAの回収をもたらした(
図16)。
【0279】
同様の救済実験を、1μΜ Jak1阻害剤トファシチニブを用いてSerping1ノックダウン(KD)系で行った。HAEでは、Serping1の健康なコピーが1つしかないため、この系はHAE疾患を模倣しており、したがって、絶対レベルはWT個体の50%である。
【0280】
新たに単離したマウス肝細胞を、1日目の自由取り込み法により、Jak1を1μMで含むパワー培地中の、10μΜ及び5μΜのmSerping1 ASO-2及びmSerping1 ASO-3を用いて処理した。細胞を、mRNA分析のために4日目に回収した。
【0281】
Jak1阻害剤は、HAE疾患と同様に、Serping1を正常発現の50%まで減少させた。選択されたASOによる処理後、Serping1レベルは1.5倍を超えて回復し、これはWTレベルに近かった(
図17)。
【0282】
追加のASOを、mSERPING1-ASOpa-1(CO-3149)、mSERPING1-ASOpa-2(CO-2043)、及びmSERPING1-ASOpa-3(CO-2051)の周りにタイル状に配置した。新たな配列を以下に示す:
【0283】
ASO類は、先に記載したように試験した。簡単に述べると、マウス肝細胞をプレートし、1日目にプレートから24時間後にASOで処理した。細胞を処理48時間後に収集した。
図34Aに示すように、ASO類のCO-3265、CO-3279、CO-2043、及びCO-2051は、Serping1のmRNA発現を用量依存的に増大させた。
【0284】
次に、選択したSerping1 ASO類を、C57BL/6Jマウス由来のC1NH+/-肝細胞において試験した。C1NH+/-肝細胞は、Serping1発現を欠いている。
図34Bに示すように、ASO類のCO-2043、CO-2051、CO-3265、CO-3419、CO-4069、及びCO-3279は、C1NH+/-肝細胞におけるSerping1遺伝子発現を用量依存的に増大させた。
【0285】
GAlNAc-ASOもC1NH欠損マウスで試験した。マウスから採血し、1日目及び3日目にASO CO-2051及びCO-3265を投与し、6日目に屠殺した。
図35に示すとおり、両方のASOとも、マウスでSerping1のmRNAを増大した。
【0286】
次に、血管透過性アッセイを行った。C57 Bl6マウスにASOを260mg/kg/週の用量で皮下注射した。エヴァン(Evan)ブルー処理は、参考文献J Clin Invest.2002;109(8):1057-1063に基づき、150mg/kgでIP注射し、6日及び8日に行った。色素の定量は、8日目に終了したマウスで行った。剖検時に、組織を乾燥させ、秤量して、1mLのホルムアミドに加えた。色素を組織から抽出し、OD 620nmで測定した。
図36に示すように、CO-2051は、CINH+/-マウスの耳及び結腸の両方における色素溢出の量を減少させた。
【0287】
CO-2051はまた、WT及びC1NH+/-マウスの両方においてSerping1のmRNAを増大させた。260mg/kgのASOでWTまたはC1NH+/-マウスを処置した。血液を回収し、一定負荷容量(例えば、1uLの血清)を用いたウエスタンブロットによるタンパク質測定のために1、3、5、及び7日目に血清に処理した。標準的な方法を用いて、Serping1及びトランスフェリンアバカム(abcam)抗体を添加した。LiCORスキャナを用いてそれぞれのバンドを画像化し、ImageStudio Analysisソフトウェアを用いて定量した。
図37A及び3Bに示すように、Serping1アップレギュレーションは、WT及び罹患マウスにおいて裸のASOで観察された。
【0288】
このアッセイを繰り返し、より低い用量のGalNAc-ASO CO-2051を用いて持続的なタンパク質のアップレギュレーションを観察した(15mg/kg)(
図37C及び37D)。
【0289】
実施例3:ヒトOTC regRNA標的化ASOのタイリング及び最適化
塩基ウォーキング及びhOTC-ASOe1-2a周囲の伸長によって作製された追加のASOを合成し、特徴付けた。加えて、ASOは、化学的修飾の化学、型、及び位置を変えることによって微調整した。合成され、さらに特徴付けられたASOは、ASO配列hOTC-ASOe1-1a、hOTC-ASOe1-3a、hOTC-ASOe1-4a、hOTC-ASOe1-1h、及びhOTC-ASOe1-1dであった。
【0290】
塩基ウォーキング及びhOTC-ASOe2-2a周囲の伸長によって作製された追加のASOも合成し、特徴付けた。加えて、ASOは、化学的修飾の化学、型、及び位置を変えることによって微調整した。合成され、さらに特徴付けられたASOは、ASO配列hOTC-ASO-e2-2a、hOTC-ASO-e2-2b、hOTC-ASO-e2-2c、hOTC-ASO-e2-2d、hOTC-ASO-e2-2e、hOTC-ASO-e2-4、hOTC-ASO-e2-5、hOTC-ASO-e2-6、及びhOTC-ASO-e2-7であった。ヒトOTC配列及び選択されたASOの化学修飾については、表2、3、4、ならびに
図18A、18B、18D、及び18Eを参照されたい。
【0291】
1人のドナー由来の肝細胞を、インビトロで培養した。細胞を増殖培地にプレートし、1μΜ、3μΜ、または9μΜのhOTC-ASO-e1-4a(
図20A、塩基ウォーキングASO)、または1.25μΜ、2.5μΜ、5μΜ、または10μΜのhOTC-ASOe1-1d、hOTC-ASOe1-1h、またはhOTC-ASOe1-1a(
図20B、微調整ASO)という最終濃度で、プレートの4~6時間後に処理した。
【0292】
1人のドナー由来の肝細胞を、インビトロで培養した。細胞を増殖培地にプレートし、プレート4~6時間後、最終濃度1μΜ、3μΜ、または9μΜのhOTC-ASO-e2-2a、hOTC-ASO-e2-2b、hOTC-ASO-e2-2c、hOTC-ASO-e2-2d、hOTC-ASO-e2-2e、hOTC-ASO-e2-4、hOTC-ASO-e2-5、hOTC-ASO-e2-6、及びhOTC-ASO-e2-7で処理した。
【0293】
処理の48時間後に細胞を回収し、RNA単離、cDNA合成及びQPCR分析のために処理した。OTC発現には、TaqmanプローブHs00166892_m1(OTC)60Xを用いた。OTCレベルを、B2M発現に対して正規化した。
【0294】
hOTC-ASOe1-2aの周囲の塩基ウォーキング及び伸長は、親配列hOTC-ASOe1-2aと比較して、効力の3倍の改善を導く(
図20A)。修飾のタイプ、化学的性質、及び位置を変更することによる追加の微調整によって、初代肝細胞におけるOTCのmRNAの用量依存的増大によって示されるように、親配列hOTC-ASOe1-2aと比較して増大した有効性がもたらされた(
図20B)。
【0295】
hOTC-ASOe2-2aに基づく修飾のタイプ、化学的性質、及び位置を変更することによる微調整によって、初代肝細胞におけるOTCのmRNAの用量依存的増大によって示されるように、親配列と比較して有効性の増大がもたらされた(
図21)。
【0296】
次に、選択されたASOを、OTC欠損ドナー細胞株において特徴付けた。OTC欠損ドナー由来の肝細胞を、インビトロで培養した。細胞を増殖培地にプレートし、プレートの4時間後、最終濃度1μΜ、3μΜ、及び9μΜのASO hOTC-ASOe1-10、hOTC-ASOe1-2a、hOTC-ASOe1-12、hOTC-ASOe1-11、及びhOTC-ASOe1-1aで処理した。ランダム配列を含む非標的化対照(non-targeting control)(NTC)ASOを、陰性対照(SRC3)として使用した。上清を尿素生成分析のために回収し、細胞溶解物を処理後2日目及び6日目にmRNAのために回収した。mRNA分析のために、taqmanプローブHs00166892_m1を、OTC発現のために使用した。OTCレベルを、B2M発現に対して正規化した。尿素生成については、回収した上清を、Urea Nitrogen(BUN)比色検出キット(Thermofisher、カタログ番号:EIABUN)により測定し、Albumin ELISA(Bethyl、カタログ番号:E88-129)によって正規化した。統計は、Prism(GraphPad)の一元配置ANOVAを用いて行った。
【0297】
図22に示すように、OTCのmRNAの用量依存性の増大が、2日目及び6日目に複数のASOによる治療後に観察された。
【0298】
次に、インビトロでPBMCアッセイを行って、ASO毒性を評価した。
【0299】
末梢血単核細胞(PBMC)を、新鮮なヒト全血(Research Blood Component LLCにより提供)から単離した。15mlの全血の容積を、15mlのPBS+2%FBSと混合し、15mlのFicollを含有するSepMate単離チューブ(STEMCELL Technologies)に添加し、800gで20分間遠心分離した。得られた最上層を除去し、残りの単核細胞層を、20mlのPBS+2%FBSで洗浄し、続いて300gで8分間遠心分離した。PBS+2%のFBSによる2回のさらなる洗浄を行った。3回目の洗浄の後、細胞ペレットを、赤血球溶解緩衝液(Abcam,ab204733)に10分間再懸濁し、続いて400gで5分間遠心分離した。次いで、ペレットを10mlのPBS+2%FBSに再懸濁し、120gで10分間遠心分離し、最後のPBMCペレットをRPMI 1640(Sigma Aldrich)に再懸濁した。単離したPBMCを、V底96ウェルプレートに1ウェル当たり10万細胞の密度で播種し、0.7μΜまたは1.4μΜのhOTC-ASOe1-1aまたはNTCで処理した。24時間後、プレートを1200rpmで5分間遠心分離し、上清をサイトカイン分析のために回収した。ヒトTNFα、IL6、IL1β、IFΝα及びIFΝβを、ダナ・ファーバーがん研究所(Dana Farber Cancer Institute)と協同して、Luminexプラットフォームを用いて定量した。
【0300】
図23に示すように、hOTC-ASOe1-1aによる細胞の処理は、PBMCによるサイトカイン放出を誘導しなかった。
【0301】
実施例4:マウスOTC regRNA標的化ASOのタイリング及び最適化
追加のマウスregRNAを標的とするマウスASOを作製し、試験した。合成され、特徴付けられたASOは、mOTC-ASOe-3、mOTC-ASOe-4、mOTC-ASOe-5、及びmOTC-ASOe-6であった。
【0302】
新たに合成されたマウスASOを、上記のようにマウス初代肝細胞において試験した。要するに、初代肝細胞を、0日目に1ウェルあたり20,000細胞で播種した。2日目に細胞を10、5、2.5、1.25または0.625μMのマウスASOで処理した。細胞を2日間インキュベートし、処理後の2日目に溶解物をmRNA分析のために回収した。taqmanプローブMm01288053_m1を、マウスOTC発現に使用した。Ppia及びHprtを、遺伝子発現正規化のためのハウスキーパー遺伝子として使用した。統計は、Prism(GraphPad)の一元配置ANOVAを用いて行った。
【0303】
図24Aに示すように、新たなマウスASOは、マウスOtc発現を用量依存的に増大させた。
【0304】
末端GalNAcを、mOTC-ASOe-3にコンジュゲートさせ、ASO CO-4474を得た。このASOを、OTC欠損マウス(OTCdef)においてアンモニウムチャレンジアッセイで試験した。簡単に述べると、10匹の雄性B6EiC3Sn a/A-Otcspf-ash/Jマウス(ホモ接合)及び10匹のC57 WTマウスを、1週間に1回アンモニウムを用いて4週間処置し、1、3、5、8、10、12、15及び17日目にASOを投与した。マウスに100mg/kg/週ASOまたは50mg/週ASOのいずれかを投与した。試料は、先に記載したように、OTCのmRNA定量のための研究の最後に回収した。
【0305】
図24Bに示すように、Otc regRNA標的化ASO CO-4474は、Otc
defマウスにおいてマウスOTCのmRNAを増大させなかった。さらに、Otc regRNA標的化ASO CO-4474は、他のマウスUCD遺伝子発現を変化させなかった。しかし、
図24Cに示すように、CO-4474は、アンモニアをWTレベルまで減少させた。従って、マウスOtc ASOは、Otc欠損表現型をレスキューできた。
【0306】
実施例5:regRNA標的化ASOは、エピゲノムH3K27アセチル化の増大をもたらす
次に、ASO処理後のヒト肝細胞における相対エンハンサー活性を評価した。
【0307】
単一ドナー(HUM181371、Lonza)由来の初代ヒト肝細胞を、インビトロで培養した。7.5×106個の細胞を、10cm2コラーゲンコーティングしたプレートを用いてプレート培地中にプレートし、プレートを15分毎に攪拌して、細胞密度がプレート全体にわたって均一であることを確実にした。プレート4時間後にプレーティング培地を増殖培地に変更し、6日間48時間毎に増殖培地を変更した。4日目の培地交換で、2μΜ ASOを増殖培地で希釈した。7.5×106個の肝細胞を、OTCエンハンサーから転写された(マイナス鎖)非コードRNA(regRNA)を標的とする非ターゲティング対照(NTC)ASOまたはhOTC-ASOe1-10のいずれかで処理した。肝細胞を、ASOで48時間処理し、11%ホルムアルデヒド(最終1%)を6日目に培養培地に添加することによって15分間架橋した。ホルムアルデヒドを、200mMグリシンの添加により5分間クエンチし、細胞を掻き取り、氷冷1×PBSで3回洗浄した。
【0308】
架橋の前に、RNA単離、cDNA合成(ランダムヘキサマー)及びqPCR分析(それぞれOTCmRNA及びPPIA TaqManプローブ#Hs00166892_m1及び#Hs04194521_s1)のために小さな周辺細胞掻き取りを回収して、NTC ASO処理と比較して、hOTC-ASOe1-10処理肝細胞におけるOTCmRNAアップレギュレーションを検証した。サイクル閾値(CT)値を、内因性対照遺伝子(すなわち、PPIA)CT値(=dCT)に対して正規化し、相対倍率変化を、NTC ASO dCT値からhOTC-ASOe1-10 dCTを差し引くことによって算出した(
図25A)。
【0309】
NTC ASOまたはhOTC-ASOe1-10のいずれかで処理した架橋肝細胞試料に対して、H3K27acクロマチン免疫沈降、続いてハイスループットシークエンシング(ChIP-seq)を行った。細胞ペレットを、氷冷LB1(50mΜ Hepes-KOH、pH7.5、140mM NaCl、140 mM、1mM EDTA、pH8.0、10%グリセロール溶液、0.5%NP-40、0.25%Triton X-100)及び新鮮なプロテアーゼ阻害剤を用いて、4℃で10分間溶解し、続いてLB2(10mM Tris-HCL pH8.0、200mMのNaCl、1mMのEDTA、pH8.0、1mMのEGTA、pH8.0)及び新鮮なプロテアーゼ阻害剤を用いて4Cで10分間インキュベートした。核を1350 rcf、5分、4℃で遠心分離し、1mLの超音波処理緩衝液(50mM Hepes-KOH、pH7.5、140mMのNaCl、1mMのEDTA、pH8.0,1% Triton X-100、0.1%のNa-デオキシコール酸、0.1%SDS)+新鮮なプロテアーゼ阻害剤に再懸濁した。クロマチンを、Covaris focused ultrasonicator(一点集中型超音波照射装置)及び条件(10分の時間、充填レベル5、デューティサイクル5、ピーク入射パワー140、サイクル/バースト200)を用いて断片化した。断片化されたクロマチンを20,000rcf、5分、4℃で遠心分離して、上清をDNA低結合チューブに移した。50μLを、インプット用に保存した。5μgの抗H3K27ac(abcam#ab4729)を、ブロックした(0.5% BSA/1XPBS)プロテインAコンジュゲート磁気ビーズと共に前日プレインキュベートした。クロマチン及びビーズ-抗体結合複合体を、合わせて、4℃で回転しながら、一晩インキュベートした。翌日、結合したクロマチン-ビーズを、1mLの以下の緩衝液を用いて、それぞれ2X、5分、4℃で洗浄した:超音波処理緩衝液、洗浄緩衝液2(50mM Hepes-KOH pH7.5、350mMのNaCl、1mMのEDTA(pH8.0)、1%Triton X-100、0.2%Na-デオキシコール酸塩、0.1%SDS)、及び洗浄緩衝液3(20mMのTris-HCl(pH8.0)、1mMのEDTA(pH8.0)、250mMのLiCl、0.5%のNa-デオキシコール酸塩)。試料を、TE+0.2%Triton X-100で1X、続いてTEで2X洗浄した。クロマチンを溶出し、SDS溶出緩衝液中で65℃で一晩逆架橋した(50mM Tri-HCl pH8.0、10mM EDTA pH8.0、1%SDS)。ChIP試料を磁石上に置き、溶出した(逆架橋クロマチン(reverse crosslinked chromatin))を新しいチューブに移した。試料(ChIP及びインプット)を、RNase Aで37℃で30分間処理し、続いてプロテイナーゼK(20mg/mL)で55℃で90分間処理した。DNAは、600uLのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを各試料に添加することによって精製し、MaXtract高密度ゲル管(Qiagen#129056)を使用して、16,000rcf、5分、4℃で遠心分離した。上清を酢酸Na及びエタノールで-20℃で一晩沈殿させ、20,000rcf、4℃で遠心分離し、1mLの75%エタノールで洗浄し、25μLのヌクレアーゼを含まない水に溶出した。製造業者のガイドラインに従って、NEBNext DNAライブラリー準備キットを使用して、ハイスループットシークエンシングのためのライブラリー合成にchIP DNA及びインプットDNAを供した。各々2つの技術的複製からなる2つの生物学的複製(各ASO処理について4つの試料)を、このアッセイに供した。
【0310】
Novoseq SP(150bp)を用いて、ChIP-seqライブラリーをペアエンド配列決定し、Bowtie2を用いてヒトhg38ゲノムにアラインメントさせ、アラインメントファイルをSamTools及びMACS2を用いて呼び出されたピークを用いて処理した(
図25B)。OTCエンハンサー、OTCプロモーター及び対照領域(GAPDH、RPGR、TSPAN7)における示差的ピークを、正規化方法を通しかつDESeq2を用いて、hOTC-ASOe1-10とNTC ASO処理との間で同定した(
図25C)。
【0311】
図25Aは、処理の48時間後のNTC ASO及び未処理肝細胞と比較した場合の、hOTC-ASOe1-10によるOTCのmRNAのアップレギュレーションを示しており、ASO処理がOTCのmRNAのアップレギュレーションに成功したことを示している。これらの試料を、その後のH3K27ac ChIP-seq実験に使用した。
【0312】
図25Bは、OTCエンハンサー、OTCプロモーター及び隣接遺伝子RPGRに対するゲノム・ブラウザ・トラック画像を示す。エンハンサー及びプロモーター領域は、実験的hOTC-ASOe1-10及びNTC ASO処理肝細胞の両方においてヒストンH3K27アセチル化によって示され、OTCエンハンサーが培養ヒト肝細胞において活性である、ということを示す。
【0313】
図25Cは、非標的化ASO治療及び偽発見率(FDR)と比較した、hOTC-ASOe1-10治療についてのH3K27ac後成的マークの倍率変化(FC)定量化を示す。このデータによって、hOTC-ASOe1-10による48時間の処理が、非標的化ASO処理の場合と比較して、OTCエンハンサーにおけるヒストンアセチル化(FC, 1.72-1.93)を有意に増大させることが示される。GAPDH、隣接遺伝子、RPGR、及びTSPAN7プロモーターなどの負の対照領域は、有意な増大したH3K27ac沈着を示さない。理論に拘束されることを望むものではないが、この結果は、hOTC-ASOe1-10からの観察された後成的効果(H3K27acの増大)が、OTC遺伝子を調節すると予測される、標的領域(OTCエンハンサー)に特異的であることを示唆する。従って、理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載のASOは、OTCエンハンサーにおけるエピゲノムシグネチャーを改変することによってOTC遺伝子発現を調節する。
【0314】
実施例6:ASO処理は、OTCエンハンサーにおけるクロマチンの接近性を変化しない
次に、regRNAのhOTC-ASOe1-10結合は、ASOによって標的とされるエンハンサーにおけるクロマチンの接近性を直接的または間接的に増大させたことを評価した。
【0315】
単一ドナー(HUM181371、Lonza)由来の初代ヒト肝細胞を、インビトロで培養した。プレート4時間後にプレーティング培地を増殖培地に変更し、6日間48時間毎に増殖培地を変更した。5日目に、培地を交換し、2μΜのASOを増殖培地で希釈した。肝細胞を、非標的化ASOまたはhOTC-ASOe1-10のいずれかで24時間処理した。単培養における初代ヒト肝細胞に最適化されたATAC-seqを、Omni-ATACプロトコルを用いて行った。プレート上でのDNase処理に続いて、肝細胞を取り外し、磁気死細胞除去キット(Dead Cell Removal Kit)(Miltenyi #130-090-101)を用いて生細胞を濃縮した。1複製当たり約5万の生細胞を、Omni-ATACプロトコルに使用した。処理毎に3つの技術的複製を作成した。
【0316】
ATAC-seqライブラリーを、Novoseq SP(150bp)を用いて対末端配列決定し、ヒトゲノムhg38にアラインメントさせた。アラインメントした読み取りを、それに従って処理し、Corces et al.,2017に使用した方法に記載のMACS2パイプラインを使用して、アクセス可能なクロマチン領域を特定した。
【0317】
図26は、OTCプロモーター、及びエンハンサー及び隣接するRPGRプロモーターにおけるアクセス可能なクロマチン領域を示す(囲まれた領域で示す)。これらの結果は、hOTC-ASOe1-10がOTCエンハンサーまたはプロモーターにおけるクロマチンのアクセス性の変化を引き起こさないことを示しており、ASOが転写因子(活性化因子)結合の下流で作用することを示唆している。
【0318】
実施例7:regRNAに対するASO効果は、OTCmRNA転写バーストに先行する
次に、OTCmRNAの誘導によるASO処理の際のregRNA活性化の時間的応答、ならびにエンハンサーヒストン修飾「記憶」の活性化を評価した。
【0319】
単一ドナー(HUM181371、Lonza)由来の初代ヒト肝細胞を、インビトロで培養した。プレート4時間後にプレーティング培地を増殖培地に変更し、6日間48時間毎に増殖培地を変更した。4~5日目に、細胞を種々の時点で(
図27A~
図27Cに注記)、収集前に増殖培地中で希釈した5μΜのASOを用いて処理した。全てのウェルを、細胞溶解緩衝液を用いて同時に収集し、その後のRNA単離(MagMax MirVana,ThermoFisher)、cDNA合成(ランダム六量体)、結晶デジタルPCR(cdPCR;regRNA検出)及び定量-PCR(qPCR;mRNA検出)を行った。実験は、生物学的三連(biological triplicate)で行い、各々は技術三連を有する。
【0320】
cdPCRは、Stilla Technologiesのnaica(登録商標)Crystal Digital PCR(商標)システムを用いて行った。regRNAの濃度を、カスタムTaqManアッセイを用いて決定し、内因性対照HPRT1(TaqManアッセイ#4326321E、ThermoFisher)に対して正規化した。相対倍率変化を、それぞれの時点でNTC ASO処理細胞に対して正規化することによって算出した。
【0321】
OTCのmRNAに特異的なTaqManプローブ#Hs00166892_m1を用いて定量PCRを行い、それぞれの値を内因性対照PPIA(TaqMan内因性対照アッセイ#4326316E、Thermofisher)に対して正規化した。相対倍率変化を、それぞれの時点でNTC ASO処理細胞に対して正規化することによって算出した。技術的な三連を、各生物学的な三連について平均し、それらの値を棒グラフにプロットした(n=2生物学的)。各エラーバーは、標準偏差を表す。
【0322】
H3K27ac ChIP、続いてqPCRを、上記実施例5に記載のように、培養初代肝細胞に対して、5μΜ ASOを用いるという相違で行い、4日目または5日目のいずれかに処理し、6日目に収集した。ChIP-qPCR実験は、生物学的な一連および二連(それぞれ24時間及び48時間)で行った。qPCRは、OTCエンハンサーのゲノム領域を増幅するように設計されたSYBR及びプライマーを用いて行った。プロットされた値は、NTC ASO処理肝細胞に対して正規化されたhOTC-ASOe1-10処理肝細胞の相対倍率変化である。
【0323】
エンハンサー(regRNA)で生成されたeRNAは、双方向に転写され、エンハンサー活性は、転写されたeRNAの量と相関することが示されている。OTCエンハンサーから転写された両regRNAの相対発現レベルは、ASO処理後に経時的に得られた(
図27A及び
図27B)。
【0324】
図27Aは、ASO処理後の経時的な標的(マイナス鎖)regRNAの相対レベルを示す。効果は、処理後2時間という早い時点で測定され、効果サイズは8~16時間まで減少される。アップレギュレーションは18時間で再び観察され(赤い矢頭)、これらの遺伝子座が文献
6に以前に記載されているように転写バーストを受けることを示唆している。
【0325】
図27Bは、初期(1時間)及び後期(18時間)(赤矢頭)の二峰性のアップレギュレーションを有する非標的(プラス)鎖に対する同様の効果を示す。
【0326】
図27Cは、hOTC-ASOe1-10 ASO処理後の経時的なOTCのmRNA効果を示す。OTCのmRNAは12時間アップレギュレートされ、再び24/48時間後にアップレギュレートされる(矢頭)。この効果は、regRNA(マイナス及びプラス)で観察される類似の転写「バースト」現象を模倣する。予想通り、regRNAのアップレギュレーションは、OTCのmRNAアップレギュレーションに先行し、regRNA濃度の増大の効果が、OTCのmRNAレベルの増大をもたらすことを示している。
【0327】
H3K27ac ChIP-qPCR結果(
図27D)は、H3K27acが、hOTC-ASOe1-10 ASO処理の後(24時間)の後に沈着することを示し、RNAに対する効果がこのエンハンサーにおける後成的変化に先行することを示している。hOTC-ASOe1-10処理は、24~48時間のH3K27ac ChIPシグナルの増大をもたらす。理論に拘束されることを望むものではないが、これらの結果は、ヒストンH3上の残基K27のアセチル化が、初期regRNA/mRNA誘導後にエンハンサー活性を維持するために重要であり得ることを示唆する。OTC ASOに対する転写及びクロマチン応答の時間的モデルを、
図27Eに示す。
【0328】
実施例8:負の調節因子タンパク質結合は、ASO処理により低減される
次に、ヒト肝細胞におけるhOTC-ASOe1-10による処理後のOTCエンハンサーにおけるリプレッサータンパク質複合体相互作用の摂動を評価した。hOTC-ASOe1-10処理では、クロマチン到達性の有意な変化は観察されなかった(
図26)。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、任意の効果が、負の調節因子のような他のタンパク質の置換に起因し得ることを示した。
【0329】
候補の負の調節因子を、HepG2細胞から公的に入手可能なENCODE ChIP-seqデータを用いて選択した。簡単に述べると、HepG2細胞におけるENCODE転写因子(TF)データを、OTCエンハンサーにおけるTF占有についてフィルタリングし、さらなるフィルタリング基準により、負の制御機構に関連しない全てのTFを排除した。合計5つの負の調節因子タンパク質が、HepG2細胞(ARID1、BCL6、HDAC1、HDAC5及びNCOR1)においてOTCエンハンサーに結合することが見出された。SP1は、一般的な転写活性化に関与する転写因子であり、OTCエンハンサーに結合して見られ、対照として使用される。
【0330】
単一ドナー(HUM181371、Lonza)由来の初代ヒト肝細胞を、インビトロで培養した。7.5×106個の細胞を、10cm2コラーゲンコーティングしたプレートを用いてプレーティング培地中にプレートし、プレートを15分毎に攪拌して、細胞密度がプレート全体にわたって均一であることを確実にした。プレート4時間後にプレーティング培地を増殖培地に変更し、6日間48時間毎に増殖培地を変更した。5日目に、培地を交換し、5μΜのASOを増殖培地で希釈した。1.5×107個の肝細胞を、OTCエンハンサー(2x10cm2プレート)から転写された(マイナス鎖)非コードRNA(regRNA)を標的とするNTC ASOまたはhOTC-ASOe1-10のいずれかで処理した。肝細胞を、特定のASOで24時間処理し、11%ホルムアルデヒド(最終1%)を6日目に培養培地に添加することによって15分間架橋した。ホルムアルデヒドを、200mMグリシンの添加により5分間クエンチし、細胞を掻き取り、氷冷1×PBSで3×洗浄した。
【0331】
架橋の前に、小さな周辺細胞掻き取りを、RNA単離のために回収して、実施例1に記載のNTC ASO処理と比較して、hOTC-ASOe1-10処理肝細胞におけるOTCのmRNAのアップレギュレーションを確認した(
図1A)。
【0332】
肝細胞をASOで24時間処理し、続いてChIP qPCRを、各リプレッサーTF ChIP’dに対して生物学的三連で行った。
【0333】
ARID1、BCL6、HDAC1、HDAC5、NCOR1及びSP1に対する特異的抗体を用いて、実施例1(
図1B)に記載されるように、培養初代肝細胞に対して、各それぞれの負の調節因子に対するchIP及びその後のqPCRを行った(それぞれ、sc-32761X、PA527390、40967ACTMOTIF、40970ACTMOTIF、#A301145A、sc-17824X)。ChIP-qPCR実験を、生物学的三連法(biological triplies)で行った。qPCRは、OTCエンハンサーのゲノム領域を増幅するように設計されたSYBR及びプライマーを用いて、行った。プロットされた値は、NTC ASO処理肝細胞に対して正規化されたhOTC-ASOe1-10処理肝細胞の相対倍率変化である。
【0334】
図28A及び
図28Bにプロットされた値は、NTC ASO(n=3)と比較したhOTC-ASOe1-10の相対的な倍率変化であり、エラーバーは標準偏差を示す。
【0335】
rChIP-qPCRを行って、標的タンパク質-クロマチン相互作用に対するRNAの要件を評価した。アッセイは、標準的なChIPプロトコルを用い、クロマチン-タンパク質複合体の免疫精製後にRnase A処理ステップを加えて行った。
【0336】
図28Aは、示された負の調節因子に対する結合の相対的損失を示す。5つの負の調節因子のうち、HDAC5及びNCORのみが、NTC ASO処理と比較した場合に、hOTC-ASOe1-10で処理した肝細胞においてOTCエンハンサーでの減少した結合を示した。これによって、regRNAへのhOTC-ASOe1-10結合が、これらのregRNA及び関連するクロマチン(エンハンサー)が、HDAC5及びNCORを含むリプレッサー複合体と相互作用することを(直接または間接的に)阻害することが示唆される。
【0337】
図28Bによって、負の調節因子が、RNA分子がそれらの標的に結合することを必要としないことが示される。架橋クロマチンをRNaseで処理してRNAを分解する場合、HDAC5及びNCOR1の結合は、肝細胞(処理なし)中のOTCエンハンサーでは低減されない。この結果、regRNAがリプレッサータンパク質と相互作用せず、むしろ相互作用がOTCエンハンサーへのそれらの動員に必須ではないことは示唆されない。
【0338】
実施例9:リプレッサー複合体のノックダウンは、OTCのmRNAアップレギュレーションに対するASO処理の効果を低減する
次に、ASO処理で観察された効果を低減するOTCエンハンサーにおける結合リプレッサー複合体のノックダウンを評価した。
【0339】
単一ドナー(HUM181371,Lonza)由来の初代ヒト肝細胞を、48ウェルのコラーゲンコーティングした組織培養プレートを用いてインビトロで培養した。プレート4時間後にプレーティング培地を増殖培地に変更し、48時間毎に6日間増殖培地を変更した。3日目に、リポフェクタミンRNAiMax及び製造業者の推奨プロトコル(Thermofisher、13778150)を用いて、HDAC5、NCOR1(それぞれDharmacon M-003498-02-0005及びM-003518-01-0005)を標的とする10nM siRNAで細胞を18時間トランスフェクトした。培地を翌日(4日目)に交換し、5μΜ NTC ASOまたはhOTC-ASOe1-10のいずれかを増殖培地で希釈し、48時間培養し、肝細胞をRNA単離(MagMax MirVanaキット,ThermoFisher #A27828)、ランダムヘキサマーを用いたcDNA合成、及びOTCのmRNA(TaqManプローブ#Hs01094541_m1、Hs00608351_m1、Hs00166892_m1)に対するノックダウン効率及び効果を評価するためのqPCR分析のために収集した。ASO処理と組み合わせたノックダウン実験を、各々が3回の技術的複製(technical replicate)(1処理当たり)を伴う生物学的三連法で行った。グラフにプロットされた値は、各生物学的実験に対する技術的複製(technical replicate)の平均である(n=3)。
【0340】
各試料の相対CT値を内因性対照(PPIA)に対して正規化すること、及びsiRNA処理を行わない試料に基づいて倍率変化を算出することによって、HDAC5またはNCOR1 siRNA処理のノックダウン効率を決定した。
【0341】
hOTC-ASOe1-10活性に対するsiHDAC5またはsiNCOR1の効果を理解するために、全ての処理を、ノックダウンの交絡効果を減少させるためにそれぞれのsiRNA実験内でNTC ASOに対して正規化した。
【0342】
図29A~
図29Cにプロットされた値は、3つの生物学的複製実験由来の技術的三連(technical triplicate)の平均である。各エラーバーは、標準偏差を表す。P-値は、各生物学的複製の平均を用いて、不対スチューデントt検定で算出する(n=3)。
【0343】
siHDAC5またはsiNCOR1の処理は、未処理の肝細胞と比較して、
図29Aに示すように、標的mRNAレベルの少なくとも50%の低下をもたらした。
【0344】
図29Bは、OTCのmRNAに対するHDAC5またはNCOR1ノックダウンの効果を示す。これらの因子のいずれかについてのsiRNA処理は、肝細胞におけるOTCのmRNA発現の増大をもたらし、これらの複合体がOTCのmRNA抑制に関与することが実証される。OTCエンハンサーにおけるこの抑制機構の緩和は、基礎OTCレベルの限界増大を引き起こす。
【0345】
hOTC-ASOe1-10に対するノックダウンの効果を
図29Cに示す。hOTC-ASOe1-10は、OTCのmRNAを有意に(p値=0.0154)アップレギュレートした(FC=1.81、siRNA処理なし)。siHDAC5またはsiNCOR1で処理した肝細胞は、NTC ASOと比較して、hOTC-ASOe1-10を用いたOTCのmRNAの有意なアップレギュレーションを示した(それぞれ、FC=1.41及び1.28)。この実験によって、OTCのmRNAレベルが既にわずかに増大しているので、リプレッサー複合体タンパク質がノックダウンされた場合に、hOTC-ASOe1-10がOTCのmRNAに対して効果を有することが示される。
【0346】
理論に束縛されるものではないが、正常な恒常的細胞条件下では、OTCエンハンサー及び遺伝子体からそれぞれ転写されるregRNA及びmRNAのレベルは低い。HDAC5及びNCOR1のような負の調節因子は、エンハンサーに結合し、その低活性を調節する可能性が高く、ならびに転写活性化因子が遺伝子座をプライミングする(priming)ことが見出される。hOTC-ASOe1-10処理は、おそらくリプレッサー複合体結合の阻害を通じて、regRNAレベルの増大をもたらす。このOTCエンハンサーの活性化は、OTC遺伝子において正の転写応答を促進し、従って、OTCエンハンサー及びプロモーターにおいて転写バーストを生じる(
図30)。
【0347】
実施例10:非ヒト霊長類(Non-Human Primate)におけるASOの特徴付け
材料及び方法
15N-塩化アンモニウムを、ケンブリッジアイソトープ(Cambridge isotope)(Tewksbury,MA)から得た。
【0348】
NHPについてのアンモニア測定及び尿素生成
カニクイザル[NHP]におけるアンモニアチャレンジ及び尿素生成アッセイを、絶食状態、すなわち、一晩の食物離脱で、アンモニアチャレンジの前に行った。15N-塩化アンモニア溶液をNHPに皮下注射し、複数回の採血を0~120分間にわたって行い、直ちに血漿を遠心分離により得た。血漿のアリコートを、4℃でIDEXXに輸送して、アンモニア レベルを測定した。他のアリコートをスナップ凍結し、NovaBioAssay(Woburn,MA)に輸送して、15N-尿素/総尿素レベルを測定した。
【0349】
NHPのASO処理
雄性カニクイザル(2~4歳齢)に、1回の50mg/kg ASOを0日目に皮下注射し、2回目の用量を21日目に与えた。陰性対照としてPBS。
【0350】
結果
CO-5318(hOTC-ASOe1-1as)及びCO-5319(hOTC-ASOe2-2w)は、アンモニアを減少させ、NHPにおける尿素を増大させた(
図31)。従って、ASOは、NHPにおいて治療有効性を示す。
【0351】
実施例11:ヒト化マウスにおけるASOの特徴付け
材料及び方法
ヒト化Yecuris FRGマウス研究のためのアンモニア測定及び尿素生成
C57Bl/6バックグラウンドを有する雌性肝臓ヒト化Fah-/-Rag2-/-Il2rg-/-[FRG]マウスにおけるアンモニアチャレンジ及び尿素生成アッセイを、健常ヒト肝細胞で再増殖させ、絶食状態、すなわち、一晩の食物離脱で、アンモニアのチャレンジ前に行った。1、8、15、及び22日目(最終の収集後)に一晩の絶食後、腹腔内注射によって動物を15NH4Cl(15N-アンモニア)でチャレンジした。30分後、尿及び血液(血漿に処理された)を回収した。血漿のアリコートを4度でIDEXX(North Grafton,MA)に輸送して、アンモニアレベルを測定した。他のアリコートをスナップ凍結し、NovaBioAssay(Woburn,MA)に輸送して、15N-尿素/総尿素レベルを測定した。
【0352】
マウス研究のためのASO処理
8日目、12日目、15日目、及び19日目に、5ヶ月齢の雌性ヒト化Yecuris FRGマウスに50mg/kg/週のASOを皮下注射した。PBSを対照に用いた。
【0353】
Otcspf/ashマウス研究のためのアンモニア測定及び尿素生成
野生型C57BL/6J[WT]及びa/A-Otcspf-ash/J,[OTCD]の両方におけるアンモニアチャレンジ及び尿素生成アッセイを、絶食状態、すなわち、一晩の食物離脱でアンモニアチャレンジ前に実施した。15N-塩化アンモニア溶液を、WT及びOTOCDマウスに皮下注射し、塩化アンモニア注射の30分後に血液を採取し、直ちに血漿を遠心分離により得た。血漿のアリコートを、4度でIDEXXに輸送して、アンモニアレベルを測定した。他のアリコートをスナップ凍結し、NovaBioAssay(Woburn,MA) に輸送して、15N-尿素/総尿素レベルを測定した。
【0354】
マウス研究のためのASO処理
雄性C57BL/6J[WT]及びa/A-Otcspf-ash/J,[OTCD](6~7週齢)に、1、3、5、8、10、12、15、及び17日目に、50または100mg/kg/週のいずれかでASOを皮下注射した。陰性対照としてPBS。
【0355】
Taqmanプローブ(すべてThermofisher製)
【0356】
結果
NH4Clチャレンジをヒト化マウスに与えて、ASOの尿素生成に対する影響を測定した。
図32に示すように、CO-5318及びCO-5319の両方がOTC及びCPS1 mRNA発現を変化させる。しかし、
図33に示されるとおり、ヒト化マウスにおけるCO-5318及びCO-5319処理は、経時的にアンモニアの減少及び尿素の対応する増大を示した。二元配置ANOVA、*:P<0.05,**:P<0.01,***:P<0.001,****:P<0.0001。
【0357】
参照による組み込み
別段の記載がない限り、本明細書において参照される特許資料及び科学論文の各々のすべての開示は、あらゆる目的のために参照により援用される。
【0358】
等価物
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。したがって、前述の実施形態は、本明細書に説明される本発明を限定するものではなく、あらゆる点において例示的であると見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内に入るすべての変更は、その中に含まれることが意図される。
【国際調査報告】