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特表2024-534222向きに応じた等化機能を備えたポータブルスピーカ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】向きに応じた等化機能を備えたポータブルスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514052
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022039125
(87)【国際公開番号】W WO2023033968
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】17/465,813
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.AirPlay
3.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カイル・ブライアン・マクニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ナビン・サーガル・シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・スティーヴン・ダニエルソン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ラーセン
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・コヴァルチク
(72)【発明者】
【氏名】メイア・メヒティンガー
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA50
5D220AB01
(57)【要約】
様々な態様は、ポータブルスピーカ及びそのようなスピーカを制御する方法を含む。特定の実装形態では、ポータブルラウドスピーカは、少なくとも2つの別個の等化プロファイルに従って、かつ少なくとも2つの別個の物理的向きでオーディオ出力を制御するように構成されたコントローラを含み、コントローラは、別個の物理的向きのうちの2つの間でのポータブルラウドスピーカの物理的向きにおける変化を検出することに応答して、別個の等化プロファイルのうちの2つの間で切り替えるように構成されており、2つの別個の等化プロファイルの間の切り替えは、a)ヒステリシス係数によって修正されるか、又はb)予め定義されたパターンに従って平滑化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブルラウドスピーカであって、
少なくとも2つの別個の等化プロファイルに従って、かつ少なくとも2つの別個の物理的向きでオーディオ出力を制御するように構成されたコントローラを備え、
前記コントローラが、ヒステリシス係数によって修正される、前記別個の物理的向きのうちの2つの間での前記ポータブルラウドスピーカの物理的向きにおける変化を検出することに応答して、前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間で切り替えるように構成されている、ポータブルラウドスピーカ。
【請求項2】
前記オーディオ出力を提供するために前記コントローラに連結されたトランスデューサと、
前記ポータブルラウドスピーカの前記物理的向きを示すために前記コントローラに連結された少なくとも1つの向きセンサと、
を更に備える、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項3】
前記ヒステリシス係数が、前記物理的向きにおける検出された変化と、前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間の前記切り替えとの間の時間遅延を含む、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項4】
前記時間遅延が、少なくとも100ミリ秒(ms)である、請求項3に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項5】
前記ポータブルラウドスピーカが、2つの別個の等化プロファイルに従って、3つの別個の物理的向きで前記オーディオ出力を提供するように構成されている、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項6】
前記コントローラが、予め定義されたパターンに従って、前記別個の等化プロファイル間の遷移を平滑化するように構成されている、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項7】
前記コントローラが、前記別個の等化プロファイル間の前記切り替えのユーザへのインジケータを提供するように更に構成されている、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項8】
前記等化プロファイルのうちの少なくとも1つが、前記ポータブルラウドスピーカがラウドスピーカのステレオペア又はラウドスピーカのステレオグルーピング内にある間、オーディオを出力するために構成されたペアリングプロファイルを含む、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項9】
前記ペアリングプロファイルが、前記コントローラに、前記ポータブルラウドスピーカと、前記ステレオペア又は前記ステレオグルーピング内の少なくとも1つの追加のラウドスピーカとのスペクトルマッチングを実施させる、請求項8に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項10】
前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間の前記切り替えが、ユーザによる前記オーディオ出力の知覚可能な放射パターンにおける変化を生成する、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項11】
前記コントローラが、前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間の前記切り替えに基づいて、オーディオ出力制限を調整するように更に構成されている、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項12】
前記ポータブルラウドスピーカが、単一のトランスデューサを有する、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項13】
前記コントローラが、前記等化プロファイルが前記物理的向きにおける検出された変化に応答して変化しないように、ユーザコマンドに応答して前記等化プロファイルをロックするように構成されている、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項14】
前記コントローラが、
前記ポータブルラウドスピーカの前記物理的向きを修正するようにユーザに促すことと、
第1のモードにおいて、前記物理的向きにおける変化を検出することに応答して、前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間の前記切り替えを有効にすることと、
第2のモードにおいて、前記物理的向きにおける変化を検出することに応答して、前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間の前記切り替えを無効にすることと、によってデモンストレーションモードを開始するように構成されており、
その結果、前記オーディオ出力の放射パターンが、前記第1のモードと前記第2のモードとの間で十分に異なって、前記ユーザに知覚可能である、請求項1に記載のポータブルラウドスピーカ。
【請求項15】
少なくとも2つの別個の物理的向きにおいて、少なくとも2つの別個の等化プロファイルを用いて動作するように構成されたポータブルラウドスピーカにおけるオーディオ出力を制御する方法であって、
前記ポータブルラウドスピーカの前記物理的向きにおける変化を検出することと、
ヒステリシス係数によって修正される、前記ポータブルラウドスピーカの前記物理的向きにおける変化を検出することに応答して、前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間で切り替えることと、を含む、方法。
【請求項16】
前記ヒステリシス係数が、前記物理的向きにおける検出された変化と前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間の前記切り替えとの間の時間遅延を含み、前記時間遅延が、少なくとも100ミリ秒(ms)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
予め定義されたパターンに従って、前記別個の等化プロファイル間の遷移を平滑化することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間の前記切り替えが、ユーザによる前記オーディオ出力の知覚可能な放射パターンにおける変化を生成する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ポータブルラウドスピーカであって、
少なくとも2つの別個の等化プロファイルに従って、かつ少なくとも2つの別個の物理的向きでオーディオ出力を制御するように構成されたコントローラを備え、
前記コントローラが、前記別個の物理的向きのうちの2つの間での前記ポータブルラウドスピーカの物理的向きにおける変化を検出することに応答して、前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間で切り替えるように構成されており、
前記2つの別個の等化プロファイル間の前記切り替えが、
a)ヒステリシス係数によって修正される、又は
b)予め定義されたパターンに従って平滑化される、のいずれかである、ポータブルラウドスピーカ。
【請求項20】
前記別個の等化プロファイルのうちの2つの間の前記切り替えが、ユーザによる前記オーディオ出力の知覚可能な放射パターンにおける変化を生成する、請求項19に記載のポータブルラウドスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年9月2日付けで出願された米国特許出願第17/465,813号の優先権を主張し、その全体が、参照によって組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、ポータブルスピーカにおけるオーディオ出力を制御することに関する。より具体的には、本開示は、ラウドスピーカにおける物理的向きに従って、ポータブルラウドスピーカにおけるオーディオ出力を制御するための手法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポータブルラウドスピーカは、旅行中など、異なる環境に位置している間、ユーザがオーディオを聴くための柔軟性を提供する。あるポータブルラウドスピーカは、オーディオ出力を提供するために特定の向きに配置されるように構成され、例えば、基部上に置かれ、及び/又は支持脚若しくは他の構造上に立つように構成される。しかしながら、多くの従来のポータブルラウドスピーカは、異なる向きに配置されている間、所望のオーディオ出力を提供するように適応可能ではない。
【発明の概要】
【0004】
下記で言及される全ての実施例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
様々な態様は、ポータブルラウドスピーカと、ポータブルラウドスピーカにおけるオーディオ出力を制御するための手法とを含む。特定の態様では、ポータブルラウドスピーカは、少なくとも2つの別個の等化プロファイルに従って、かつ少なくとも2つの別個の物理的向きでオーディオ出力を制御するように構成されたコントローラを含む。等化プロファイルは、物理的向きのうちの2つの間でのポータブルラウドスピーカの物理的向きにおける変化を検出することに応答して切り替えられ得、切り替えは、a)ヒステリシス係数によって修正されるか、又はb)予め定義されたパターンに従って平滑化されるかのいずれかであり得る。
【0006】
いくつかの特定の態様では、ポータブルラウドスピーカは、少なくとも2つの別個の等化プロファイルに従って、かつ少なくとも2つの別個の物理的向きでオーディオ出力を制御するように構成されたコントローラを含み、コントローラは、ヒステリシス係数によって修正される、別個の物理的向きのうちの2つの間でのポータブルラウドスピーカの物理的向きにおける変化を検出することに応答して、別個の等化プロファイルのうちの2つの間で切り替えるように構成されている。
【0007】
追加の特定の態様では、少なくとも2つの別個の物理的向きにおいて、少なくとも2つの別個の等化プロファイルを用いて動作するように構成されたポータブルラウドスピーカにおけるオーディオ出力を制御する方法は、ポータブルラウドスピーカの物理的向きにおける変化を検出することと、ヒステリシス係数によって修正される、ポータブルラウドスピーカの物理的向きにおける変化を検出することに応答して、別個の等化プロファイルのうちの2つの間で切り替えることとを含む。
【0008】
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0009】
場合によっては、別個の等化プロファイルは、少なくとも3つの等化プロファイルを含む。
【0010】
特定の態様では、ラウドスピーカは、オーディオ出力を提供するためにコントローラに連結されたトランスデューサと、ポータブルラウドスピーカの物理的向きを示すためにコントローラに連結された少なくとも1つの向きセンサとを更に含む。
【0011】
場合によっては、向きセンサは、単一のセンサである。ある追加の場合では、2つ以上のセンサが、向きを示すために使用される。例示的なセンサは、慣性測定ユニット(inertial measurement unit、IMU)、加速度計、又は光学センサのうちの1つ以上を含む。
【0012】
いくつかの実装形態では、ヒステリシス係数は、物理的向きにおける検出された変化と、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えとの間の時間遅延を含む。
【0013】
特定の場合、時間遅延は、少なくとも100ミリ秒(ms)である。いくつかの実施例では、時間遅延は、少なくとも110ms、120ms、130ms、140ms、150ms、160ms、170ms、180ms、190ms又は200msである。
【0014】
ある態様では、ポータブルラウドスピーカは、2つの別個の等化プロファイルに従って、3つの別個の物理的向きでオーディオ出力を提供するように構成される。
【0015】
いくつかの実装形態では、コントローラは、予め定義されたパターンに従って、別個の等化プロファイル間の遷移を平滑化するように構成される。特定の場合、遷移は、指数クロスフェード関数又は線形クロスフェード関数を使用して平滑化される。特定の実施例では、クロスフェード持続時間は、約5ms~約35msであり、より特定の実施例では、約20ms+/-5ms~10msである。
【0016】
特定の態様では、コントローラは、別個の等化プロファイル間の切り替えのユーザへのインジケータを提供するように更に構成される。いくつかの実施例では、インジケータは、オーディオをダッキングすること、スピーカに視覚インジケータを提供すること(例えば、点灯変化及び/又は振動などの触覚インジケータ)、及び/又は接続されたデバイス(例えば、スマートデバイス)又はコントローラなどのインターフェースインジケータのうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
場合によっては、等化プロファイルのうちの少なくとも1つは、ポータブルラウドスピーカがラウドスピーカのステレオペア又はラウドスピーカのステレオグルーピングにある間、オーディオを出力するために構成されたペアリングプロファイルを含む。
【0018】
特定の態様では、ペアリングプロファイルは、コントローラに、ポータブルラウドスピーカと、ステレオペア又はステレオグルーピング内の少なくとも1つの追加のラウドスピーカとのスペクトルマッチングを実施させる。追加の特定の態様では、ペアリングプロファイルは、コントローラに、ポータブルラウドスピーカと、マスタスピーカ/ワーカスピーカグルーピング内などのステレオグルーピング内の少なくとも1つの追加のラウドスピーカとのスペクトルマッチングを実施させる。
【0019】
いくつかの実装形態では、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えは、ユーザによるオーディオ出力の知覚可能な放射パターンにおける変化を生成する。
【0020】
特定の態様では、コントローラは、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えに基づいて、オーディオ出力制限を調整するように更に構成される。場合によっては、オーディオ出力制限は、別個のリミッタを選択すること、1つ以上のリミッタを調整すること、又はローパスリミッタに対してハイパスリミッタを増加させるなど、セット内の少なくとも1つのリミッタを調整することによって調整することができる。
【0021】
いくつかの実装形態では、ポータブルラウドスピーカは、単一のトランスデューサを有する。
【0022】
場合によっては、コントローラは、等化プロファイルが物理的向きにおける検出された変化に応答して変化しないように、ユーザコマンドに応答して等化プロファイルをロックするように構成される。
【0023】
いくつかの態様では、コントローラは、ポータブルラウドスピーカの物理的向きを修正するようにユーザに促すことと、第1のモードにおいて、物理的向きにおける変化を検出することに応答して、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えを有効にすることと、第2のモードにおいて、物理的向きにおける変化を検出することに応答して、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えを無効にすることと、によってデモンストレーションモードを開始するように構成されており、その結果、オーディオ出力の放射パターンは、第1のモードと第2のモードとの間で十分に異なって、ユーザに知覚可能である。
【0024】
特定の実施例では、ユーザプロンプトは、ユーザインターフェース(user interface、UI)プロンプト、例えば、接続されたスマートデバイス、ポータブルラウドスピーカインターフェース、又は接続されたコントローラインターフェースのうちの1つ以上を介したプロンプトを含むことができる。
【0025】
本概要の項に記載される特徴を含む、本開示に記載される2つ以上の特徴は、本明細書に具体的に記載されていない実装形態を形成するために組み合わされ得る。
【0026】
1つ以上の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明において記載される。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】様々な実装形態による、ラウドスピーカを例解する環境の概略図である。
図2】様々な実装形態による、第1の向きにおける図1のラウドスピーカの概略斜視図である。
図3】様々な実装形態による、第2の向きにおける図2のラウドスピーカの斜視図である。
図4】様々な実装形態による、第3の向きにおける図2及び図3のラウドスピーカの斜視図である。
図5】様々な実装形態による、ラウドスピーカの上面図である。
図6】様々な実装形態による、図5のラウドスピーカの底面図である。
図7】様々な実装形態による、等化プロファイルとスピーカの向きとの間の関係を例解するマッピング図である。
【0028】
様々な実装形態の図面は、必ずしも縮尺どおりではないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様のみを示すことを意図するものであり、したがって、発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。図面において、同様の番号付けは、図面間の同様の要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書で述べるように、本開示の様々な態様は、概して、ポータブルラウドスピーカ及び関連する制御方法に関する。より具体的には、本開示の態様は、ラウドスピーカの向きに基づいてポータブルラウドスピーカにおけるオーディオ出力を制御することに関する。
【0030】
図中の共通にラベル付けされた構成要素は、例示目的のために実質的に同等の構成要素であるとみなされ、それらの構成要素の重複する説明は、明確化のために省略する。様々な実装形態に従って記載した数値範囲及び値は、そのような範囲及び値の単なる例であり、これらの実装形態を限定することを意図するものではない。場合によっては、「約」という用語は、値を修正するために使用され、これらの場合、測定誤差など、その値の+/-誤差のマージンを指すことができる。
【0031】
本明細書で開示される態様及び実装形態は、多種多様のスピーカシステム、又はラウドスピーカに適用可能であり得る。いくつかの実装形態では、スマートスピーカ又はハンドヘルドスピーカシステムなどのポータブルラウドスピーカが開示される。ラウドスピーカのある実施例は、「ポータブル」ラウドスピーカとして説明され、すなわち、これらのラウドスピーカは、電力貯蔵デバイス(例えば、バッテリ)並びに外部電源のための接続(例えば、交流(alternating current、AC)電源などの外部電源との接続)を有する。すなわち、ポータブルラウドスピーカは、有線電力接続を含み、貯蔵された(例えば、バッテリ)電力を使用して機能することもできる。加えて、「スマート」能力を有するポータブルラウドスピーカ(例えば、ポータブルスマートラウドスピーカ)は、ローカルネットワーク接続性(例えば、無線フィデリティ、又はWi-Fiネットワークへの)、並びに直接デバイス接続性(例えば、Bluetooth(BT)通信プロトコル、又はAirplay通信プロトコルを介した)を有することができる。オーディオを音響的に出力する目的を主に果たすラウドスピーカの具体的な実装形態は、ある程度の詳細が提示されているが、そのような特定の実装形態の提示は、実施例の提供を通じて理解を容易にすることを意図するものであり、開示の範囲又は特許請求の範囲のいずれかを限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0032】
本明細書で説明する様々な場合において、ポータブルラウドスピーカは、マイクロフォンのセットを含み、マイクロフォンのセットは、特定の実装形態では、少なくとも1つのファーフィールドマイクロフォンを含む。それらの実装形態のうちのいくつかでは、ポータブルラウドスピーカは、複数のファーフィールドマイクロフォンを含むマイクロフォンのセットを含む。ファーフィールドマイクロフォンは、例えば、いくつかの市販の仮想パーソナルアシスタント(virtual personal assistant、VPA)システムのうちのいずれかを使用して、VPA機能を有効にすることができる。
【0033】
様々な特定の実装形態は、ポータブルラウドスピーカと、ポータブルラウドスピーカにおけるオーディオ出力を制御する関連する方法とを含む。様々な実装形態では、ポータブルラウドスピーカ(又は単にスピーカ)は、ポータブルラウドスピーカの物理的向きにおける検出された変化に基づいて、少なくとも2つの別個の等化プロファイル間で切り替わるように構成される。例えば、場合によっては、スピーカは、2つ以上の物理的向きの間でのスピーカの物理的向きにおける変化を検出することに応答して、少なくとも2つの別個の等化プロファイルの間でオーディオ出力を切り替えるように構成される。場合によっては、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えは、ヒステリシス係数によって修正される。追加の場合では、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えは、予め定義されたパターンに従って平滑化される。いずれの場合も、スピーカは、デバイスの向きに基づいてオーディオ出力の等化を調整するように構成される。これらの構成は、等化プロファイルを現在のデバイスの向きにより密接に整合させることによって、ユーザ体験を改善する。
【0034】
図1は、様々な実装形態による、ポータブルラウドスピーカ20(例えば、スマートデバイス能力を有する又は有さない)を含む例示的な物理環境10を示す。示されるように、ラウドスピーカ20は、環境10に音響出力を提供するための音響トランスデューサ30を含むことができる。トランスデューサ30は、環境10へのオーディオ出力のための低周波(low frequency、LF)ドライバ(又はウーファ)及び/又は高周波(high frequency、HF)ドライバ(又はツィータ)などの1つ以上の従来のトランスデューサを含むことができることを理解されたい。特定の実装形態では、ラウドスピーカ20は、環境10にオーディオ出力を提供するための単一のトランスデューサ30を有する。
【0035】
ある実装形態では、任意選択として破線で示されるように、ラウドスピーカ20はまた、マイクロフォン40のセットを含むことができる。いくつかの実装形態では、マイクロフォン40は、複数のマイクロフォンを含むマイクロフォンアレイを含む。特定の実施例では、マイクロフォン40は、少なくとも1つのファーフィールドマイクロフォンを含む。特定の場合、ファーフィールドマイクロフォンは、ユーザから少なくとも1メートル(又は1~2波長)の距離にある音響信号、特に人間の音声信号を検出及び処理するように構成される。これらの場合、マイクロフォン40は、1人以上のユーザ(1人の例示的なユーザ50が示されている)からの音声信号など、環境10からの音響信号を受信するように構成される。マイクロフォン40はまた、ラウドスピーカ20の検出可能な範囲内の周囲音響信号を検出するように構成され得る。
【0036】
ラウドスピーカ20は、環境10内及び/又はネットワーク(例えば、無線ネットワーク)内の1つ以上の他のデバイスと通信するための通信モジュール60を更に含むことができる。場合によっては、通信モジュール60は、環境10内の他のデバイスと通信するための無線送受信機を含むことができる。他の場合には、通信モジュール60は、任意の従来の有線接続及び/又は追加の通信プロトコルを使用して他のデバイスと通信することができる。場合によっては、通信プロトコルは、ローカルエリア無線ネットワーク通信プロトコル(例えば、無線ローカルエリアネットワーク(wireless local area network、WLAN)を使用する無線フィデリティ(wireless fidelity、Wi-Fi)プロトコル)、IEEE 802.11b/g若しくは802.11acなどの通信プロトコル、セルラーネットワークベースのプロトコル(例えば、第3、第4、若しくは第5世代(3G、4G、5Gセルラーネットワーク)、又は、Bluetooth、BLE Bluetooth、ZigBee(メッシュLAN)、Airplay(及びそのバリエーション)、Chromecast(及びそのバリエーション)、Z-wave(サブGHzメッシュネットワーク)、6LoWPAN(軽量IPプロトコル)、LTEプロトコル、RFID、超音波オーディオプロトコル、等などの複数のモノのインターネット(internet-of-things、IoT)プロトコルのうちの1つを含むことができる。追加の場合において、通信モジュール60は、ラウドスピーカ20が、仮想パーソナルアシスタント(VPA)及び/又は等化プロファイルを管理するためのアプリケーションを実行するクラウドベースのサーバなどのリモートサーバと通信することを有効にすることができる。様々な特定の実装形態では、ラウドスピーカ20内に別個に収容された構成要素は、1つ以上の従来の無線送受信機を使用して通信するように構成される。ある実装形態では、本明細書で述べるように、通信モジュール60は、ローカルエリア無線ネットワーク通信プロトコル(例えば、Wi-Fi通信プロトコル)及び少なくとも1つの追加の通信プロトコル(例えば、直接デバイス通信プロトコル)の両方を介して他のデバイス及び/又はネットワークと通信するように構成される。追加の通信プロトコルは、例えば、Bluetooth又はAirplayを含むことができる。
【0037】
ラウドスピーカ20は、トランスデューサ30、マイクロフォン40、及び通信モジュール60に連結されたコントローラ70を更に含むことができる。本明細書で説明するように、コントローラ70は、等化プロファイルを含む1つ以上のオーディオ出力機能を制御するようにプログラムすることができる。コントローラ70は、本明細書に記載されるプロセスに従って、プログラム命令又はコードを実行するための従来のハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素を含むことができる。例えば、コントローラ70は、1つ以上のプロセッサ、メモリ、構成要素間の通信経路、及び/又はプログラムコードを実行するための1つ以上の論理エンジンを含むことができる。ある実施例では、コントローラ70は、マイクロコントローラ又はデジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)を有するプロセッサを含み、それにより、ファーフィールドマイクロフォンを含むマイクロフォン40からの音響信号が、アナログデジタル変換器によってデジタルフォーマットに変換される。
【0038】
コントローラ70は、任意の従来の無線及び/又は有線接続を介して、トランスデューサ30、マイクロフォン40及び/又は通信モジュール60と連結することができ、それは、コントローラ70が、それらの構成要素との間で信号を送受信し、それらの動作を制御することを可能にする。様々な実装形態では、コントローラ70、トランスデューサ30、マイクロフォン40、及び通信モジュール60は、スピーカハウジング80内に集合的に収容される。
【0039】
例えば、いくつかの実装形態では、コントローラ70の機能は、(例えば、モノのインターネット(IoT)デバイス及び接続を含むが、それらに限定されない、本明細書に説明される任意の無線又は有線通信機構を介して)ラウドスピーカ20と接続されるスマートデバイス90を使用して管理することができる。場合によっては、スマートデバイス90は、コントローラ70の機能を実行してラウドスピーカ20におけるオーディオ出力(例えば、等化プロファイル、オーディオ再生選択、音響設定、等)を管理するためのハードウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。特定の場合、スマートデバイス90は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、スマートグラス、スマートウォッチ又は他のウェアラブルスマートデバイス、ポータブルコンピューティングデバイス、等を含む。スマートデバイス90は、オーディオゲートウェイ、処理構成要素、及び環境10内の他のデバイスと通信するための1つ以上の無線送受信機を有することができる。例えば、無線送受信機は、ラウドスピーカ20、並びに通信範囲内の1つ以上の接続されたスマートデバイスと通信するために使用され得る。無線送受信機はまた、スマートデバイス90上で実行されているモバイルアプリケーションをホストするサーバ、例えば、等化(equalization、EQ)管理エンジン100と通信するために使用され得る。
【0040】
サーバは、クラウドベースのサーバ、ローカルサーバ、又は本明細書に説明される機能を実行することが可能なローカル及び分散コンピューティング構成要素の任意の組み合わせを含むことができる。様々な特定の実装形態では、サーバは、例えばスマートデバイス90上で動作する等化管理エンジン100をホストするように構成されたクラウドベースのサーバである。いくつかの実装形態によれば、等化管理エンジン100は、本明細書で説明する機能を有効にするために、ユーザのスマートデバイス90にダウンロードすることができる。
【0041】
様々な実装形態において、ラウドスピーカ20及び/又はスマートデバイス90に位置するセンサ110は、ラウドスピーカ20の物理的向きを示すためにコントローラ70に連結された少なくとも1つの向きセンサを含むことができる。特定の実装形態では、向きセンサは、ラウドスピーカ20に物理的に位置し、例えば、ラウドスピーカ20のハウジング80内に、ハウジング80上に、又はさもなければハウジング80に近接して位置する。ある実装形態では、向きセンサは、単一の向きセンサである。更なる実装形態では、向きセンサは、複数の向きセンサを含む。向きセンサは、慣性測定ユニット(IMU)、加速度計、及び/又は光学センサを含むことができる。本明細書で説明されるように、センサ110(例えば、向きセンサ)からの入力は、等化プロファイル間で切り替えるためのヒステリシス係数を計算することに寄与することができる。
【0042】
追加の実装形態では、センサ110は、ラウドスピーカ20に近接する環境10に関するデータを収集することができる。例えば、センサ110は、ユーザ50又は環境10内の別のユーザを識別するためのデータを取得するための視覚システム(例えば、光学追跡システム又はカメラ)を含むことができる。視覚システムはまた、ラウドスピーカ20に近接する動きを検出するために使用され得る。他の場合には、マイクロフォン40(センサ110に含まれてもよい)は、音響信号の形態で、ラウドスピーカ20に近接する周囲雑音(例えば、周囲SPL)を検出することができる。マイクロフォン40はまた、ユーザ50からの音声コマンドを示す音響信号を検出することができる。場合によっては、ラウドスピーカ20及び/又はスマートデバイス90における1つ以上の処理構成要素(例えば、中央処理ユニット、デジタル信号プロセッサ、など)は、センサ110からのデータを処理して、ユーザ特性及び/又は環境特性のインジケータを等化管理エンジン100に提供することができる。加えて、様々な実装形態では、等化管理エンジン100は、センサ110からの1つ以上の信号に関するデータ、並びにラウドスピーカ20及び/又はスマートデバイス90へのユーザ入力を処理するための論理を含む。
【0043】
ラウドスピーカ20はまた、電力コネクタ140に連結された電力貯蔵デバイス130を含むことができる。電力貯蔵デバイス130は、例えば、電力コネクタ140が外部電源(例えば、従来の電源コンセントなどの交流(AC)電源)と接続されていない間、ラウドスピーカ20の使用を可能にするオンボードバッテリを含む。バッテリは、ポータブル電子デバイスにおいて一般に使用される、任意の数の再充電可能又は単回使用バッテリを含むことができる。
【0044】
場合によっては、図2に示されるように、ラウドスピーカ20は、ラウドスピーカ20における機能の簡略化された制御を有効にするユーザインターフェースボタン160のセットを含むユーザインターフェース(UI)150を含む。特定の場合、インターフェースボタン160は、ラウドスピーカ20の電源をオン/オフするための電源ボタン160Aを含む。追加の場合には、インターフェースボタン160はまた、追加の通信プロトコル接続(例えば、BT又はAirplay)を制御するためのペアリングボタン160B、アクティブリスニングモードを制御するための仮想パーソナルアシスタント(VPA)ボタンのうちの少なくとも1つ、マイクロフォン40を有効及び/又は無効にするためのマイクロフォン制御ボタン、又は再生制御(例えば、タップによる再生の再生/一時停止、ダブルプレスによる再生トラックのスキップ、プレスアンドホールドによるリブート、など)を有効にするマルチファンクションボタン(multifunction button、MFB)のうちの少なくとも1つを含み、これらは単一のボタン160Cとして簡略化されて表されている。音量制御ボタン160D及び160Eも、図示されている。同様の又は別個のユーザインターフェース150(図示せず)も、例えば、等化管理エンジン100を介してスマートデバイス90上に提示され得ることが理解される。このユーザインターフェース150は、図2の物理的ユーザインターフェースに図示されるものと同じ機能(例えば、ボタン160)又は追加の機能を提供することができる。場合によっては、ラウドスピーカ20は、吊材165を含み、これは、突出部又はフックからのラウドスピーカ20の吊り下げを可能にするハンドル、フック、テザー、メッシュ部材、ケーブル、などを含むことができる。
【0045】
図2は、第1の向きにある、例えば、第1の側又は基部170上に置かれているラウドスピーカ20を図示する。図3は、第2の別個の向きにある、例えば、第2の側180上に置かれているラウドスピーカ20を図示する。ある実装形態では、ラウドスピーカ20は、第1の側(例えば、基部)170上、第2の側180上、及び/又は別個の側上に置くための1つ以上のスタンドを含むことができる。特定の場合、ラウドスピーカ20は、更に別の向き、例えば、図4に示すように吊るされた又は掛けられた向き(向き(iii))に位置付けされるように構成される。この場合、基部170及び第2の側180は、表面と接触しておらず、例えば、吊材165は、壁又は他の表面に結合されているフック又はタブなどの突出部190と係合される。図5及び図6は、ラウドスピーカ20の上面図及び底面図をそれぞれ図示し、追加の特徴を図示している。一例では、フロントグリル200及びリアグリル210も図示されており、リアグリルは特に図6で見ることができる。図6はまた、床、テーブルトップ、又は任意の水平若しくはほぼ水平な表面などの表面上にラウドスピーカ20の基部170を置くことを容易にするための隆起部、突出部、足、などを含むことができるスタンド220を図示する。同様のスタンド220が、ハウジングの他の部分に、例えば、第2の側180に沿って位置され得る。
【0046】
図7は、トランスデューサ30(図1)におけるオーディオ出力のための等化(EQ)プロファイルに対するラウドスピーカ20の向きの例示的なマッピングを図示するマッピングテーブル500を示す。図1図6を参照すると、等化管理エンジン100は、ラウドスピーカ20の向きに従って、ラウドスピーカ20から所望のオーディオ出力を提供するために等化プロファイルを管理する。特定の例示的な場合において、等化管理エンジン100は、少なくとも2つの別個の等化プロファイルに従って、かつ少なくとも2つの別個の物理的向きで、トランスデューサ30におけるオーディオ出力を制御するように構成される。図2図4に描示される実施例では、等化管理エンジン100は、少なくとも3つの向き(向き(i)、(ii)、及び(iii))における少なくとも3つ(3)の別個の等化(EQ)プロファイルに従って、トランスデューサ30におけるオーディオ出力を制御するように構成されている。図7の例示的なマッピングテーブルでは、向き(i)、(ii)、及び(iii)の各々は、別個のEQプロファイル:それぞれ、EQプロファイルI、EQプロファイルII、及びEQプロファイルIIIに関連付けられている。様々な実装形態では、複数の向きを同じEQプロファイルに関連付けることができる(例えば、第4の向き(向き(iv))は、EQプロファイルIIIに関連付けられており、又は向き(iii)は、EQプロファイルIIに関連付けられており、両方とも破線で図示されている)。
【0047】
特定の実施例では、等化管理エンジン100は、2つのEQプロファイル(例えば、EQプロファイルI及びEQプロファイルII)のみを有し、EQプロファイルのうちの第1のものは一次EQプロファイルであり、第2のものは二次EQプロファイルである。これらの例では、向きの大部分は一次EQプロファイルに関連付けられ、向きの少数は二次EQプロファイルに関連付けられる。更にもっと、場合によっては、ラウドスピーカ20は、2つ又は3つの実際的に有用な向きのみを有する。すなわち、ラウドスピーカ20は、2つ又は3つのEQプロファイルが等化管理エンジン100に利用可能であるように、2つ又は3つの位置(例えば、吊るされた向きを含めて又は除外して)のみに静止するように構成され得る。これらの場合、ラウドスピーカ20は、2つ又は3つの別個の向きのみでほぼ平坦な表面上に置かれるように形作ることができる。特定の実施例では、ラウドスピーカ20は、2つの別個の等化プロファイル(例えば、EQプロファイルI及びII)に従って、3つの別個の物理的向き(例えば、向き(i)~(iii))でオーディオ出力を提供するように構成される。
【0048】
等化プロファイルは、入力デジタルオーディオ信号をフィルタリングするデジタルフィルタとして実装することができる。これらのデジタルフィルタは、線形定数係数差分方程式によって完全に定義することができ、カスケード接続された二次セクションとして実装することができる。場合によっては、これらのデジタルフィルタは、各等化プロファイルに対して固定される。特定の実装形態では、デジタルフィルタは、所与のフィルタを他のフィルタから区別することができる、バイカッド(又は、双二次)係数によって定義されるバイカッドフィルタを含む。様々な例示的な実装形態では、第1の等化プロファイル(例えば、EQプロファイルI)は、少なくとも第1の向き(例えば、向き(i)、「フォワードファイアリング」向きとも呼ばれる)に関連付けられる。場合によっては、EQプロファイルIはまた、別の向き(例えば、向き(iii))に関連付けられる。これらの場合のあるものにおいて、EQプロファイルIは、[1 0 0 1 0 0]のバイカッド係数セットを有するパススルーバイカッドフィルタに関連付けられる。場合によっては、パススルーバイカッドフィルタは、入力信号に対して公称利得又は位相の影響しか及ぼさない。対照的に、第2の等化プロファイル(例えば、EQプロファイルII)は、別個の向き(例えば、向き(ii)、「アップファイアリング」向きとも呼ばれる)に関連付けることができる。これらの場合、EQプロファイルIIは、EQプロファイルIの係数セットとは(些細ではない様態で)異なるフィルタ係数セットを有する別個のフィルタを含むことができる。いずれの場合も、各EQプロファイルに従って適用されるデジタルフィルタは異なり、本明細書で説明されるような別個のオーディオ出力を提供する。
【0049】
特定の実施例では、プロファイル間の等化の変化(例えば、EQプロファイルI対EQプロファイルII)は、中域又は上部中域から高周波数帯域、例えば、約1kHz以上での等化の変化によって特徴付けられる。場合によっては、プロファイル間の等化の変化は、無響環境における指向性差の補償と、室内の放射電力差の補償とをほぼバランスさせる。いくつかの実施例では、等化変化(例えば、EQプロファイルIからEQプロファイルIIへの)は、シェルフに沿ってピークと谷とを伴う、例えば、10kHzの周りで約6デシベル(dB)程度の上昇する高周波シェルフによって特徴付けられる。
【0050】
等化プロファイルは、物理的向きのうちの2つの間のポータブルラウドスピーカの物理的向きにおける変化を検出することに応答して切り替えることができる。本明細書で述べるように、向きの変化は、(例えば、図1のセンサ110内の)1つ以上の向きセンサによって示すことができる。ある実施例では、向きの変化は、ラウドスピーカ20に搭載されたIMUからの信号によって示される。いくつかの実装形態では、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えは、ユーザ50によるオーディオ出力の知覚可能な放射パターンにおける変化を生成する。これは、ラウドスピーカ20の向きが等化プロファイル間の切り替え中に同じままであるときに、ユーザ50にとって特に明白であり得る。すなわち、所与の向きにおいて、ユーザ50は、等化プロファイルが切り替えられたときにラウドスピーカ20からのオーディオ出力の放射パターンの変化を知覚することができる。ある実装形態では、EQプロファイルは、向きの変化に応答して、等化管理エンジン100がEQプロファイル間で切り替えて、ユーザ50に対して放射パターンの知覚可能な変化を多くても最低限に提供するように、別個の向きでオーディオ出力のほぼ一貫した知覚可能な放射パターンを提供するように選択される。すなわち、等化管理エンジン100は、EQプロファイル間で切り替えて、別個のスピーカ向きにおけるオーディオ出力の所望の放射パターンを提供するように構成される。
【0051】
いくつかの実施例では、等化管理エンジン100は、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えに基づいて、オーディオ出力制限を調整するように更に構成される。場合によっては、オーディオ出力制限は、別個のリミッタを選択すること、1つ以上のリミッタを調整すること、又はローパスリミッタに対してハイパスリミッタを増加させるなど、セット内の少なくとも1つのリミッタを調整すること、によって調整することができる。
【0052】
本明細書で述べるように、特定の場合、EQプロファイル間の切り替えは、a)ヒステリシス係数によって修正されるか、又はb)予め定義されたパターンに従って平滑化されるかのいずれかであり得る。これらの手法は、例えば、ユーザがラウドスピーカ20を一時的に向きを変えるのみであるとき、及び/又はラウドスピーカ20を偶発的に向きを変えるとき、プロファイル間の意図しない切り替えを避けることができる。
【0053】
いくつかの実装形態では、ヒステリシス係数は、物理的向きにおける検出された変化と、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えとの間の時間遅延を含む。特定の場合、時間遅延は少なくとも100ミリ秒(ms)である。いくつかの実施例では、時間遅延は、少なくとも、110ms、120ms、130ms、140ms、150ms、160ms、170ms、180ms、190ms、又は200msである。特定の実装形態では、EQ管理エンジン100は、経時的なラウドスピーカ20の物理的向きにおける検出された変化に基づいて、ヒステリシス係数を更新するように構成された機械学習エンジンを含む。これらの場合、EQ管理エンジン100は、経時的なラウドスピーカ20の物理的向きにおける検出された変化に基づいて、ヒステリシス係数を更新するように機械学習エンジンを訓練する。例えば、EQ管理エンジン100は、閾値数の誤検知及び/又は向きの急速なスイッチバックを検出したことに応答して、時間遅延を増加させることができる。
【0054】
いくつかの実装形態では、EQ管理エンジン100は、予め定義されたパターンに従って、別個の等化プロファイル間の遷移を平滑化するように構成される。特定の場合、遷移は、指数クロスフェード関数又は線形クロスフェード関数を使用して平滑化される。特定の実施例では、クロスフェード持続時間は、約5ms~約35msであり、より特定の実施例では、約20ms+/-5ms~10msである。これらの場合、EQ管理エンジン100は、少なくとも1つのクロスフェード関数を使用して等化プロファイルの急激な変化を回避又は緩和することができる。
【0055】
ある実装形態では、EQ管理エンジン100は、オーディオ出力の品質におけるいかなる識別可能な損失(又は変化)もなしに、等化プロファイル間で効果的に切り替える。すなわち、設計通りに動作するとき、EQ管理エンジン100は、オーディオ出力における突然の目立つ切り替えなしに、複数の向きにわたって高品質のオーディオ出力を維持することができる。しかしながら、場合によっては、例えば、ユーザ50が、ラウドスピーカ20、特にEQ管理エンジン100の技術的利点を理解できるように、等化プロファイルの変化をユーザ50に警告することが望ましい場合がある。これらの場合のいくつかでは、EQ管理エンジン100は、EQプロファイル間(例えば、EQプロファイルIとEQプロファイルII(図5)との間)の切り替えのインジケータをユーザ50に提供するように構成される。いくつかの実施例では、インジケータは、ラウドスピーカ20においてオーディオ出力をダッキングすること、ラウドスピーカ20において視覚インジケータを提供すること(例えば、インターフェース150における点灯変化及び/又は振動などの触覚インジケータ)、及び/又は接続されたデバイス又はコントローラ(例えば、デバイス90)などのインターフェースインジケータのうちの少なくとも1つを含む。可聴インジケータ、視覚インジケータ及び/又は触覚インジケータなどの任意の他のインジケータが、追加の実装形態で使用され得る。
【0056】
様々な実装形態が、単一のポータブルラウドスピーカ20を参照して説明されているが、場合によっては、等化プロファイルのうちの少なくとも1つは、ポータブルラウドスピーカ20がラウドスピーカのステレオペア又はラウドスピーカのステレオグルーピングにある間にオーディオを出力するために構成されたペアリングプロファイルを含む。特定の態様では、ペアリングプロファイルは、EQ管理エンジン100に、ラウドスピーカ20と、ステレオグルーピングのステレオペア内の少なくとも1つの追加ラウドスピーカとのスペクトルマッチングを実施させる。追加の特定の態様では、ペアリングプロファイルは、EQ管理エンジン100に、ラウドスピーカ20と、マスタスピーカ/ワーカスピーカグルーピング内などのステレオグルーピング内の少なくとも1つの追加ラウドスピーカとのスペクトルマッチングを実施させる。
【0057】
なお更なる実装形態では、EQ管理エンジン100は、等化プロファイルがラウドスピーカ20の物理的向きにおける検出された変化に応答して変化しないように、ユーザコマンドに応答して等化プロファイルをロックするように構成される。これらの場合、ユーザ50は、ラウドスピーカの向きにかかわらず等化プロファイルを維持することを望み得る。場合によっては、ユーザ50は、同じ等化プロファイルを用いて、別個の向きにおけるスピーカ20からの知覚されるオーディオ出力における差異を体験することを望み得る。
【0058】
なお更なる態様では、EQ管理エンジン100は、例えば、向きに基づくEQ調整の機能をデモンストレーションするために、デモンストレーションモードを開始するように構成される。場合によっては、EQ管理エンジン100は、以下によってデモンストレーションモードを開始する:
I)ラウドスピーカ20の物理的向きを修正するようにユーザ50に促すこと、
II(A):第1のモードにおいて、ラウドスピーカ20の物理的向きにおける変化を検出することに応答して、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えを有効にすること、
II(B):第2のモードにおいて、ラウドスピーカ20の物理的向きにおける変化を検出することに応答して、別個の等化プロファイルのうちの2つの間の切り替えを無効にすること。これらの例では、ラウドスピーカ20からのオーディオ出力の放射パターンは、ユーザ50が知覚できるように、第1のモードと第2のモードとの間で十分に異なる。すなわち、ユーザは、第1のモードと第2のモードとの間の可聴差を知覚する可能性が高く、そのため、様々な実装形態に従ってEQ管理エンジン100によって実施される向きに基づく等化切り替えの技術的利点を理解する可能性が高い。デモンストレーションモードの(I)に記載のプロンプトに関して、ユーザプロンプトは、ユーザインターフェース(UI)プロンプト、例えば、接続されたスマートデバイス(例えば、デバイス90)、ラウドスピーカインターフェース150、及び/又は接続されたコントローラインターフェース(例えば、ラウドスピーカ20に固有のコントローラ)のうちの1つ以上を介したプロンプトを含むことができる。
【0059】
本明細書で述べるように、等化管理エンジン100は、ラウドスピーカの向きにかかわらず、一貫して望ましいEQプロファイルにわたってオーディオ出力を提供するように構成されている。等化管理エンジン100は、例えば、EQプロファイル間の望ましくない及び/又は早すぎる切り替えを回避するために、ヒステリシス係数を用いてEQプロファイル間の切り替えを修正するか、又は平滑化係数を用いて切り替えを修正するように構成することができる。従来のスピーカシステムと比較すると、等化管理エンジン100の適応等化構成は、ユーザ体験を向上させる。様々な実装形態において、等化管理エンジン100は、ラウドスピーカ20の検出された向きに基づいて等化プロファイルを制御することの技術的効果を有する。
【0060】
本明細書に記載される機能性又はその部分、及びその様々な修正(以下「機能」)は、少なくとも部分的にコンピュータプログラム製品(例えば、1つ以上のデータ処理装置(例えば、プログラム可能プロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、及び/又はプログラム可能論理構成要素など)の動作による実行のための、又はその動作を制御するための、1つ以上の非一時的機械可読媒体などの情報担体において有形に具現化されたコンピュータプログラム)を介して実装され得る。
【0061】
コンピュータプログラムは、コンパイル型言語又はインタプリタ型言語を含む任意の形態のプログラム言語で書き得るが、それは、独立型プログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に好適なモジュール、構成要素、サブルーチン若しくは他のユニットとして含む任意の形態で配設され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、若しくは1つの設置先における複数のコンピュータ上で実行されるように配設され得るか、又は複数の設置先にわたって配信されて、ネットワークによって相互接続され得る。
【0062】
機能の全部又は一部を実装することと関連した動作は、較正プロセスの機能を実施するために1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラム可能なプロセッサによって、実施され得る。機能の全部又は一部は、特殊目的論理回路、例えば、FPGA及び/又はASIC(特定用途向け集積回路)として実装され得る。コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサとしては、例として、汎用マイクロプロセッサ及び特殊目的マイクロプロセッサの両方並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、読取り専用メモリ、又はランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令及びデータを受信することになる。コンピュータの構成要素は、命令を実行するためのプロセッサ並びに命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスを含む。
【0063】
様々な実装形態では、「連結された」と記載される電子構成要素は、これらの電子構成要素が互いにデータを通信することができるように、従来の有線及び/又は無線手段を介してリンクさせることができる。更に、所与の構成要素内の下位構成要素は、従来の経路を介してリンクされていると考えることができるが、必ずしも図示されない。
【0064】
本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態もまた、以下の特許請求の範囲内にある。本明細書に記載される異なる実装形態の要素は、上記に具体的に記載されていない他の実施形態を形成するために組み合わされ得る。要素は、本明細書に記載される構造の動作に悪影響を及ぼすことなく、本明細書に記載される構造から除かれ得る。更にまた、様々な別個の要素は、本明細書に記載される機能を実施するために、1つ以上の個々の要素へと組み合わされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】