IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上海屹▲リ▼新能源科技有限公司の特許一覧

特表2024-534226電気化学モデルに基づく固体リチウム電池の状態推定方法およびシステム
<>
  • 特表-電気化学モデルに基づく固体リチウム電池の状態推定方法およびシステム 図1
  • 特表-電気化学モデルに基づく固体リチウム電池の状態推定方法およびシステム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電気化学モデルに基づく固体リチウム電池の状態推定方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20240910BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20240910BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240910BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240910BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240910BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/378
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/392
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514359
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 CN2022113367
(87)【国際公開番号】W WO2023030024
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111022903.6
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】524080210
【氏名又は名称】上海屹▲リ▼新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100135194
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 智雄
(72)【発明者】
【氏名】張希
(72)【発明者】
【氏名】劉承皓
(72)【発明者】
【氏名】郭邦軍
(72)【発明者】
【氏名】朱▲チュウ▼
(72)【発明者】
【氏名】範国棟
【テーマコード(参考)】
2G216
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216CB11
(57)【要約】
電気化学モデルに基づく固体リチウム電池の状態推定方法およびシステムであって、方法には、動力固体リチウム電池の電気化学モデルを構築するモデル構築ステップと、シミュレーションを通じて電気化学モデルを実行可能なコードに変換して、電池管理システムにインポートして、動力固体リチウム電池状態を推定するコード生成ステップを含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力固体リチウム電池の電気化学モデルを構築するモデル構築ステップと、
シミュレーションを通じて前記電気化学モデルを実行可能なコードに変換して、電池管理システムにインポートして、動力固体リチウム電池状態を推定するコード生成ステップを含むことを特徴とする電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定方法。
【請求項2】
前記モデル構築ステップには、定置型リチウムイオン電池の出力電圧と入力電流との間の伝達関数を確立することを含む前記電気化学モデルを構築することが含まれることを特徴とする請求項1に記載の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定方法。
【請求項3】
前記モデル構築ステップには、前記動力固体リチウム電池の内部電気化学反応制御方程式を変換して解き、電池端子電圧から電圧への伝達関数を確立し、次に、伝達関数の減次によって、電気化学パラメータに基づく有理伝達関数が得られることが含まれることを特徴とする請求項2に記載の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定方法。
【請求項4】
前記モデル構築ステップには、電力用固体リチウム電池の各部で表現される偏微分制御方程式をモデル化し、解き、簡略化することで、前記電気化学モデルが得られることが含まれることを特徴とする請求項1に記載の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定方法。
【請求項5】
前記電気化学モデルは数学的デカップリングとモデルの離散化を経てモデルコードを生成し、そのモデルコードは電池管理システムに取り込まれて電力固定型リチウム電池の状態を推定し、前記電力固体リチウム電池の状態には、電池の充電状態、電池の劣化状態、電池の電力状態及び電池の温度が含まれることを特徴とする請求項1に記載の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定方法。
【請求項6】
動力固体リチウム電池の電気化学モデルを構築するモデル構築モジュールと、
シミュレーションを通じて前記電気化学モデルを実行可能なコードに変換して、電池管理システムにインポートして、動力固体リチウム電池状態を推定するコード生成モジュールを含み、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定方法に基づくことを特徴とする電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定システム。
【請求項7】
前記モデル構築モジュールには、定置型リチウムイオン電池の出力電圧と入力電流との間の伝達関数を確立することを含む前記電気化学モデルを構築することが含まれることを特徴とする請求項6に記載の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定システム。
【請求項8】
前記モデル構築モジュールには、前記動力固体リチウム電池の内部電気化学反応制御方程式を変換して解き、電池端子電圧から電圧への伝達関数を確立し、次に、伝達関数の減次によって、電気化学パラメータに基づく有理伝達関数が得られることが含まれることを特徴とする請求項7に記載の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定システム。
【請求項9】
前記モデル構築モジュールには、電力用固体リチウム電池の各部で表現される偏微分制御方程式をモデル化し、解き、簡略化することで、前記電気化学モデルが得られることが含まれることを特徴とする請求項6に記載の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定システム。
【請求項10】
前記電気化学モデルは数学的デカップリングとモデルの離散化を経てモデルコードを生成し、そのモデルコードは電池管理システムに取り込まれて電力固定型リチウム電池の状態を推定し、前記電力固体リチウム電池の状態には、電池の充電状態、電池の劣化状態、電池の電力状態及び電池の温度が含まれることを特徴とする請求項6に記載の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池状態推定の技術分野に関し、特に、電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体リチウムイオン電池は、次世代電気自動車の電力エネルギーシステムとなる可能性が非常に高いため、現在の研究は実車応用と大規模量産に近づいている。しかし、従来の実車電池管理システムでは、等価回路モデルを使用して電池状態を推定及び管理することに基づいており、固体電池の高エネルギー密度及び高出力密度の利点を十分に活用できない。したがって、動力固体電池の有効性を最大限に発揮するには、固体電池内部の実際の電気化学原理に基づいた新しい電気化学モデル管理方法を設計する必要がありる。
【0003】
また、電気自動車用電池の研究開発が現在の研究のホットスポットとなっているが、BMSの多様な機能のうち、固体電池の充電状態(SOC)と電池の劣化状態(SOH)を正確に推定することは、依然として、早急に解決する必要がある重要な技術的問題である。
【0004】
CN104899439Aの中国の発明特許文献では、リチウムイオン電池の単一粒子モデルを確立するステップ1)と、3パラメータ放物線法を使用して、リチウムイオン電池の単一粒子モデルの固相拡散方程式を簡略化するステップ2)と、細菌コロニー採餌最適化アルゴリズムを使用して、リチウムイオン電池単粒子モデルの未知のパラメータを特定するステップ3)と、リチウムイオン単粒子モデルの正極開路電圧式を当てはめるステップ4)を含む液体リチウムイオン電池の機構モデリング方法を開示している。当該文献では、3パラメータパラボラ法を使用して、リチウムイオン電池の単一粒子モデルの構造を単純化し、細菌コロニー採餌最適化アルゴリズムは、リチウムイオン電池単粒子モデルの未知のパラメータを識別するために使用され、識別速度が速く、全体的な最適解が得られ、当該文献は、リチウムイオン電池状態の推定、寿命予測、及び特性分析に対する理論的なサポートを提供した。これらの正確な状態の推定は、正確な電池モデルに基づいている必要があり、これまでの研究モデルの多くは多孔質電極モデルを使用していましたが、固体電池と電解質には明らかな界面があり、反応は界面でのみ発生するため、それを記述するには新しいモデルが必要である。
【0005】
上記の既存の技術を考慮して、発明者は、等価回路モデルの推定と電池状態の管理を使用する従来の実車の電池管理システムは、固体電池の高エネルギー密度と高出力密度の長所を十分に引き出すことが難しく、電池の実際の作動状態を正確に表現することが難しいと考えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠陥を考慮して、本発明の目的は、電気化学モデルに基づいた固体リチウム電池状態推定方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供される電気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定方法は、
動力固体リチウム電池の電気化学モデルを構築するモデル構築ステップと、
シミュレーションを通じて前記電気化学モデルを実行可能なコードに変換して、電池管理システムにインポートして、動力固体リチウム電池状態を推定するコード生成ステップを含む。
【0008】
さらに、前記モデル構築ステップには、定置型リチウムイオン電池の出力電圧と入力電流との間の伝達関数を確立することを含む前記電気化学モデルを構築することが含まれる。
【0009】
さらに、前記モデル構築ステップには、前記動力固体リチウム電池の内部電気化学反応制御方程式を変換して解き、電池端子電圧から電圧への伝達関数を確立し、次に、伝達関数の減次によって、電気化学パラメータに基づく有理伝達関数が得られることが含まれる。
【0010】
さらに、前記モデル構築ステップには、電力用固体リチウム電池の各部で表現される偏微分制御方程式をモデル化し、解き、簡略化することで、前記電気化学モデルが得られることが含まれる。
【0011】
さらに、前記電気化学モデルは数学的デカップリングとモデルの離散化を経てモデルコードを生成し、そのモデルコードは電池管理システムに取り込まれて電力固定型リチウム電池の状態を推定し、前記電力固体リチウム電池の状態には、電池の充電状態、電池の劣化状態、電池の電力状態及び電池の温度が含まれる。
【0012】
本発明によって提供される気化学モデルに基づく固体リチウム電池状態推定システムは、
動力固体リチウム電池の電気化学モデルを構築するモデル構築モジュールと、
シミュレーションを通じて前記電気化学モデルを実行可能なコードに変換して、電池管理システムにインポートして、動力固体リチウム電池状態を推定するコード生成モジュールを含む。
【0013】
さらに、前記モデル構築モジュールには、定置型リチウムイオン電池の出力電圧と入力電流との間の伝達関数を確立することを含む前記電気化学モデルを構築することが含まれる。
【0014】
さらに、前記モデル構築モジュールには、前記動力固体リチウム電池の内部電気化学反応制御方程式を変換して解き、電池端子電圧から電圧への伝達関数を確立し、次に、伝達関数の減次によって、電気化学パラメータに基づく有理伝達関数が得られることが含まれる。
【0015】
さらに、前記モデル構築モジュールには、電力用固体リチウム電池の各部で表現される偏微分制御方程式をモデル化し、解き、簡略化することで、前記電気化学モデルが得られることが含まれる。
【0016】
さらに、前記電気化学モデルは数学的デカップリングとモデルの離散化を経てモデルコードを生成し、そのモデルコードは電池管理システムに取り込まれて電力固定型リチウム電池の状態を推定し、前記電力固体リチウム電池の状態には、電池の充電状態、電池の劣化状態、電池の電力状態及び電池の温度が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の図面を参照して非限定的な実施例の詳細な説明を読むことによって、より明らかになるであろう。
図1】本発明の一実施例のフローチャートである。
図2】本発明の一実施例の電力固体リチウムイオン電池の電気化学モデルの内部電池構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。以下の実施例は、当業者が本発明をさらに理解するのに役立つが、本発明を何ら限定するものではない。当業者であれば、本発明の概念から逸脱することなく、いくつかの変更及び改良を行うことができることに留意されたい。これらは全て本発明の保護範囲に属する。
【0019】
本発明の実施例は、電気化学モデルに基づく固体リチウム電池の状態推定方法およびシステムを開示し、
図1図2に示すように、次のステップを含む:
モデル構築ステップ:動力固体リチウム電池の電気化学モデルを構築する。電気化学モデルの構築には、定置型リチウムイオン電池の出力電圧と入力電流との間の伝達関数を確立することが含まれる。動力固体リチウム電池の内部電気化学反応制御方程式を変換して解き、電池端子電圧から電圧への伝達関数を確立し、次に、伝達関数の減次によって、電気化学パラメータに基づく有理伝達関数が得られる。電気化学モデルは、電力用固体リチウム電池の各部で表現される偏微分制御方程式をモデル化し、解き、簡略化することによって得られる。モデルは電池内部の実際の構造や反応状態を正確に表現できる。
【0020】
電力電池の電気化学モデルは、リチウムイオン電池の出力電圧と入力電流との間の伝達関数の関係を確立する。電池の電気化学モデルの支配方程式はs領域で解かれ、電池システムの入力が電流I、出力が電圧Vであると仮定して、電池システムの伝達関数G(s)を次のように求めたい:
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、sからsとsからsは電池内部のs領域内の分割領域であり、aからaはs領域内における電池電圧の領域分割であり、bからbはs領域内における電池電流の領域分割であり、I(s)は入力電流のラプラス変換であり、V(s)は出力電圧のラプラス変換であり、nはパデ近似の分子部分の項の数を表し、mはパデ近似の分母部分の項の数を表す。
【0023】
電池システム中の各電圧成分の電流Iに対する伝達関数を求め、それらの伝達関数を加算することで、電池システムの出力電圧の入力電流に対する伝達関数、即ち、電池システムのインピーダンスモデルを求めることができる。モデル構築ステップには、次の内容が含まれる。(1)電池システムに関係する方程式は非線形の関係を示し、解法過程で得られる伝達関数は必ずしも有理多項式の形をしているとは限らないため、得られた伝達関数に対して一定の簡略化処理を実行し、パデ近似法を使用して、与えられた目標近似次数の条件下で、パデ近似法は、任意の関数を2組の有理多項式の比の形で近似的に表現する。
【0024】
(2)電池システムの出力電圧には電池正極と負極の開路電位が含まれ、その大きさは固相粒子の表面イオン濃度に関係する。
ここで、電池の正極と負極の開路電位は、電池の正極と負極の粒子表面のイオン濃度の関数であり、電位と正極・負極の表面のリチウムイオン濃度の間には1対1の対応関係がある。リチウムイオン電池の固相粒子表面のイオン濃度と電極内の最大イオン濃度の比は、通常、化学当量Θ=Cs,sur/Cs,maxとして定義される。ここで、Cs,surは表面リチウムイオン濃度であり、Cs,maxは最大リチウムイオン濃度である。
【0025】
(3)粒子表面のイオン濃度と電流の関係を確立することにより、電池システムにおける正極及び負極の開路電位と電流の関係を確立できる。固相電極におけるイオン濃度を支配する方程式と境界条件は、次のフィックの拡散第2法則によって説明される。
【0026】
【数2】
【0027】
は固相電極球状粒子中のリチウムイオンのイオン濃度であり、tはリチウムイオンの時間分布次元であり、xはリチウムイオンの空間分布次元であり、∂は可変セミコロンであり、C(x,t)は電極座標xのt時点における固相電極内のリチウムイオンのイオン濃度を表し、∂はtの変分を表し、∂はxの変分を表し、∂C(x,t)はC(x,t)の変分を表す。
方程式に対応する境界条件は次のとおりである。
【0028】
【数3】
【0029】
は固相電極の球状粒子内のリチウムイオンの拡散係数であり、jLi(x,t)はt時点のxにおける正極と負極の電気化学反応速度であり、Lは電極の厚さであり、Fはファラデー定数であり、値は96487C/molである。
【0030】
(4)非定常偏微分方程式は、電流に対する固相電極イオン濃度の伝達関数の解析解を求めることによって得られ、偏微分方程式に対してラプラス(Laplace)変換を実行し、それをs領域内で解き、最後に、電気化学反応速度JLi(x,s)に対する固相電極粒子表面イオン濃度C(0,s)及びC(x=L,s)の伝達関数は次のように求められる。
最後に、電気化学反応速度JLi(x,s)に対する固相電極粒子表面イオン濃度C(0,s)及びC(x=L,s)の伝達関数は次のように求められる。
【0031】
【数4】
【0032】
式中、JLi(s)はJLi(x,s)のラプラス変換である。
【0033】
(5)リチウムイオン電池の正極及び負極と電解質の接触部分では、電気化学反応により一定の過電圧が発生し、当該反応プロセスは、Bulter-Volmer方程式(バトラー・ボルマー方程式)で説明できる。
【0034】
【数5】
【0035】
ここで、αとαはそれぞれアノードとカソードの伝達係数であり、その値は0.5である。η(x,t)は電極の過電圧であり、iは電極反応交換電流密度であり、Rは8.3143J/(mol・K)の理想気体定数であり、Tは熱力学温度である。
【0036】
(6)Bulter-Volmer方程式の右辺の指数関数をゼロ点で一次テイラー展開し、ラプラス変換を行うと次の関係が得られる。
【0037】
【数6】
【0038】
N(x,s)は電池の電気化学反応過電圧である。
【0039】
したがって、リチウムイオン電池の電気化学モデルにおけるラプラス変換後の過電圧から電気化学反応速度への伝達関数は次のように取得できる。
【0040】
【数7】
【0041】
(7)電気化学方程式における電解質電位制御式には、電解質電位のほか、電解質中のリチウムイオン濃度が含まれ、方程式の線形化に基づいて、簡略化された方程式は次のようになる。
【0042】
【数8】
【0043】
φ(x,t)は、電解質xにおけるt時点の電解質の電位差であり、c(x,t)は、電解質xにおけるt時点のリチウムイオンのイオン濃度であり、Ce,0は電極粒子の比表面積パラメータであり、kd effは電解質の有効イオン拡散伝導率を表す。x方向に数学的積分演算を実行すると、次の結果が得られる。
【0044】
【数9】
【0045】
式中、t+ 0は電解質速度を考慮した電解質中のリチウムイオンのイオン移動速度であり、∂φ(x,t)はφ(x,t)の変分を表し、∂C(x,t)はC(x,t)の変分を表し、ξは積分係数を表す。
【0046】
(8)x方向に別の数学的積分演算を実行することにより、電気化学モデルにおける電解質の電位差の式は次のように取得できる。
【0047】
【数10】
【0048】
式中、Lは電解質領域の長さであり、keffは電解質の有効導電率であり、I(t)は外部負荷電流であり、∂c(ξ,t)はc(ξ,t)の変分を表し、c(ξ,t)は電解質ξにおけるt時点のリチウムイオンのイオン濃度であり、∂ξはξの変分を表し、ξは積分係数を表す。
【0049】
電解質中のリチウムイオンは電池領域全体に分布しているため、電解質中のリチウムイオン種保存式は次のようである。
【0050】
【数11】
【0051】
e effは、電解質中のリチウムイオンの実効拡散係数である。
【0052】
(9)電気化学反応速度と電流の関係を組み合わせると、電解質の電位差から電流への伝達関数が得られる。
【0053】
【数12】
【0054】
ΔΦ(s)は電池内の電位の変化率であり、I(s)は電池電流のラプラス変換であり、Φ(L,s)は電池の内部電位であり、Aは極板面積であり、Lは電解質領域の長さであり、keffは電解質の実効導電率であり、ce,0は電解質の初期濃度であり、C(L,s)は、Lにおける電解質濃度のラプラス変換であり、∫p Li(s)と∫n Li(s)はそれぞれ正極と負極の反応速度である。
【0055】
電気化学モデルシステムは、双方向通信を通じて実際の車両の電池の充電状態(SOC)と電池の劣化状態(SOH)などを正確に推定し、充電制御を最適化できる。電気化学モデルを電池管理システムに組み込むと、電気自動車のライフサイクル全体にわたって、あらゆる気象条件下で正確なSOCとSOHの予測、特に、電池の劣化後(500回の充放電サイクル後)及び低温(-10℃以下)における電気自動車の動力電池システムの正確な推定が実現できる。
【0056】
コード生成ステップ:シミュレーションを通じて電気化学モデルを実行可能なコードに変換して、電池管理システムにインポートして、動力固体リチウム電池状態を推定する。電気化学モデルは数学的デカップリングとモデルの離散化を経てモデルコードを生成し、そのモデルコードは電池管理システムに取り込まれて電力固定型リチウム電池の状態を推定し、電力固体リチウム電池の状態には、電池の充電状態、電池の劣化状態、電池の電力状態及び電池の温度が含まれる。電気化学モデルの処理には、数学的デカップリングとモデルの離散化が含まれる。
【0057】
コード生成ステップには、電池の電気化学モデルを実行可能なC言語コードに変換するステップを含み、簡略化された電池電気化学モデルはMATLAB(matrixとlaboratoryという単語の組み合わせで、マトリックス工場を意味する)のモジュールに組み込まれ、連続数学モデルは離散化されて、離散化されたモデルは次のコンパイル可能なCコードに変換できる。(1)まず、伝達関数タイプに基づく二次動力電池電気化学モデルは、制御システムの最小実装原理を採用して、MATLABのSimu linkで電気化学モデルにおける電池電圧V、電流I、温度Tおよび電池内部の各種パラメータを変換した後、Simu linkにおけるモデルの構築を実行し、(2)次に、MATLAB中の電池電気化学モデルに対してターゲットを絞った連続積分処理を実行して、アキュムレーターとゼロ次保持を採用しながら離散化処理を行って、電池管理システムのデータ処理に対する離散化要求を満たす。(3)最後に、MATLABで離散化した後の電池の電気化学モデルをコンパイルし、電池の外部特性パラメータである電圧、電流、インピーダンス及び温度と、電池の内部電気化学パラメータであるリチウムイオン濃度、電池開路電圧、電池経年変化特性量である固体電解質界面膜SEI、負極リチウム析出量などと数学的関係を確立し、それをコンパイルして、電池電気化学モデルの実行可能コードを取得する。Simu linkはビジュアルシミュレーションツールであり、ブロック図環境である。
【0058】
コード生成ステップにはさらに、電池電気化学モデルを変換処理し、そのモデルを実行可能なCコードへ変換させ、次にそのCコードを電気自動車CANoeで実行可能な16進言語へ変換するステップが含まれる。(1)電池の電気化学モデルのC言語コードをコンパイラでコンパイルし、車両コントローラの実行可能コードに変換する。(2)CANoe環境では、電池電気化学モデルコードを使用してコンパイラでプロジェクトを作成し、次に、電池電気化学モデルのC言語コードをプロジェクトのディレクトリにコピーし、コンパイラでモデルを含むプロジェクトをコンパイルする。(3)モデルを含むプロジェクトを正しい16進数のHexファイルにコンパイルし、CANoeソフトウェアなどを介して電気自動車電池管理システムのBMSコントローラにフラッシュして、実際の車両環境での電気化学モデルの動作を実現する。CANoeは、英語でのフルネームがCAN open environmentであり、バス開発環境である。HexはフルネームがIntel HEであり、ファイルは一行のIntel HEXファイル形式に準拠したテキストで構成されるASCIIテキストファイルである。
【0059】
コード生成ステップには、さらにモデルコードを車両電池管理システム(BMS)に取り込むステップも含み、そして、このモデルを使用して車両動力電池の充電状態(SOC)、電池の劣化状態(SOH)、電池の電力状態(SOP)及び電池の温度(T)などの主要なパラメータを正確に予測及び監視する。このうち、モデルコードは電池電気化学モデルから変換したものであり、採用された電池電気化学モデルは処理を簡略化し、離散的な実行可能コードモデルに変換したものであり、モデルが最終的な電池管理システムにインポートされた後、車両BMSのセンサー及び状態推定アルゴリズムと連携して、電気自動車電池の正確なSOC、SOH、及びSOP予測を行うことができる。
【0060】
また、電池の電気化学モデルは、車両電池管理システムにインポートできて、電池の充電状態、電池の劣化状態、電池の電力及び温度を効果的に制御でき、連携により、電池の有害な温度上昇と、電池の劣化を抑制できる。
【0061】
本発明は、動力固体リチウム電池の電気化学モデルを構築し、
電気化学モデルを構築して数学的変換し、それを電気化学パラメータで表現される等価回路モデルに変換し、前記等価回路モデルは、シミュレーションを通じて実行可能なコードに変換され、電池管理システムにインポートされて、動力固体リチウム電池の状態を推定する。本発明の適用範囲は広く、各種固体リチウム電池(無機酸化物系、硫化物系、ポリマー系等の固体リチウム電池の種類)に適用できる。
【0062】
実車テストの結果では、本発明の電気化学モデルに基づく固体リチウム電池の状態推定及び構築方法は、基本電池モデルを固体電解質リチウムイオン電気化学モデルとして設置して、数学モデルの各パラメータに関する情報が含まれることを示している。電気化学モデルを数学的デカップリング処理及びモデルの離散化処理し、そしてモデルのコードを生成するが、主な目的は、数学的に処理された電気化学モデルを、MATLABなどのソフトウェアツールを通じて車両電池管理システムの実行可能コードに変換することであり、最後に、生成されたモデルCコードは、CANoeのHexなどのツールを介して実行するために車両BMSシステムにインポートされ、一方では、車両の電池管理システムの電池の充電状態、電池の劣化状態及び電池の電力状態の全てに対する正確な推定が改善され、他方では、有害な電池温度の変化や電池の劣化を排除及び抑制できるため、車両電池の全体的なパフォーマンスを向上する。
【0063】
本発明において、動力電池パラメータの予測に使用されるモデルは普遍的な適用性を有し、様々な電池システムで直接使用できる。例えば、リン酸鉄リチウム、三元リチウム電池及び固体リチウム電池を動力源として使用する電気自動車の電池管理システムは、電池の電気化学モデルの精度が高く、システムの動的応答が強力で、実車への幅広い適用可能性を備えている。
【0064】
図2に示すように、リチウムイオン電池内部の負極で起こる副反応機構は、主にリチウムイオンと電解質溶媒との一連の化学反応であるため、電池負極の副反応式と組み合わせて、電池の電気化学モデルを確立した。図中、yは極板面積の法線を方向とした固体電池の厚さの座標を表す。
【0065】
擬似二次元電気化学モデルにおける正極と負極の濃度、開ループ電圧プラットフォーム、電解質相電位及び反応過電位などのいくつかの主要な電気化学状態変数の数学的関係、及び最終的な出力端子電圧の特定の部分の構成を示し、また、電池内の各電気化学反応の相互作用を視覚的に表示することもできる。
【0066】
当業者は、本発明によって提供されるシステム及びその各種装置、モジュール、及びユニットを純粋なコンピュータ可読プログラムコードの形式で実装することに加えて、方法やステップを介して論理プログラミングして、本発明によって提供されるシステム及びその各種装置、モジュール及びユニットが論理ゲート、スイッチ、特定用途向け集積回路、プログラマブル論理コントローラ及び組み込みマイクロコントローラなどの形で同じ機能を実装できることを知っている。したがって、本発明によって提供されるシステム及びその各種装置、モジュール及びユニットは、ハードウェアコンポーネントとして考えられ、それに含まれる各種機能を実現する装置、モジュール、ユニットもハードウェアコンポーネント内の構造と見なすことができ、また、各種機能を実現する装置、モジュール、ユニットは、方法を実現するソフトウェアモジュール又は、ハードウェアコンポーネント内の構造と見なすこともできる。
【0067】
先行技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
1、本発明は、実際の動作状態を正確に表現でき、数学的処理とコード変換を通じてモデルを実際の車両応用環境に完全に適合できる。
【0068】
2、本発明の電池管理システムにおける電気化学モデルは電池を正確に表現できるため、電池の状態を正確に予測し、監視することができる。電池の状態は電池の電気化学パラメータを通じて効果的に表現され、電気化学モデルに互換性と適用性を持たせる。確立された電気化学モデルは減次、簡略化、離散化できるため、モデルを実行可能なコードに変換して実車への適用が簡単になる。
【0069】
3、本発明の電気化学モデルに基づく車両電源固体リチウム電池状態推定、構築方法は、実際の車両電池管理システムに適用でき、電気自動車の電池管理への応用の見通しがよく、等価回路モデルに基づく電池状態予測及び管理手法より格段に優れている。
【0070】
本発明の特定の実施例について上に説明した。本発明は、上述した特定の実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の要旨に影響を及ぼさない範囲内で種々の変更を加えることが可能である。本発明の実施例及び実施例の特徴は、矛盾することなく任意に組み合わせることができる。

図1
図2
【国際調査報告】