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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ペロブスカイト太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20240910BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240910BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20240910BHJP
   H10K 30/82 20230101ALI20240910BHJP
   H10K 30/85 20230101ALI20240910BHJP
   H10K 30/30 20230101ALI20240910BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/86
H10K30/82
H10K30/85
H10K30/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514377
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022074613
(87)【国際公開番号】W WO2023031456
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21461582.5
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519262973
【氏名又は名称】サウル エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォシチョフスキー、コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】バブ、ヴィヴェク
(72)【発明者】
【氏名】フエンテス ピネダ、ロシンダ
(72)【発明者】
【氏名】イヴァノフスカ、ターニャ
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251FA02
5F251FA07
5F251XA32
5F251XA53
5F251XA54
5F251XA55
5F251XA56
(57)【要約】
複数の層のスタックを備えるペロブスカイト太陽電池であって、前記複数の層は、前面電極層15、ペロブスカイト材料を含む光活性層13、および複数のオープンスルー細孔111を含む多孔質炭素材料を含む背面電極層11、という順序で配置されている、ペロブスカイト太陽電池。前記太陽電池は、前記背面電極層11の前記多孔質炭素材料の前記複数のオープンスルー細孔111のうちの少なくともいくつかを充填する電荷輸送材料12をさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層のスタックを備えるペロブスカイト太陽電池、ここで、前記複数の層は、前面電極層、ペロブスカイト材料を含む光活性層、および、複数のオープンスルー細孔を含む多孔質炭素材料を含む背面電極層、という順序で配置されており、ここで、前記ペロブスカイト太陽電池は、前記光活性層および前記背面電極層の間の電荷を輸送するように構成された電荷輸送材料をさらに備え、
前記電荷輸送材料は、前記背面電極層の前記多孔質炭素材料の前記複数のオープンスルー細孔のうちの少なくともいくつかを充填しており、かつ、前記光活性層の前記ペロブスカイト材料とのバルクヘテロ接合、および、前記複数のオープンスルー細孔内の前記背面電極層の前記多孔質炭素材料との界面を形成している、
ペロブスカイト太陽電池。
【請求項2】
前記背面電極層は、正孔を収集するように構成されており、前記電荷輸送材料は、正孔を前記光活性層から吸引して前記背面電極層へ輸送するように構成された正孔輸送材料(HTM)を含む、請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項3】
前記正孔輸送材料は、CuSCN、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)、CuO、CuI、PTAAおよびPEDOT:PSSから成る群から選択される材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項4】
前記正孔輸送材料はさらに、少なくとも1つのパッシベーション化合物と混合されている、請求項2に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項5】
前記前面電極層は、ITO、IZO、FTOおよび/またはAZOから成る群から選択される、電子を収集するように構成された材料からできている、請求項2に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項6】
前記複数の層のスタックは、前記光活性層および前記前面電極層の間の電子輸送層をさらに有する、請求項5に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項7】
前記電子輸送層は、SnO、TiO、ZnOおよびPCBMから成る群から選択される材料を含む、請求項6に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項8】
前記背面電極層の前記多孔質炭素材料は、ブルナウアー-エメット-テラー(N-BET)吸着法により測定される、10から400m/gまでの範囲内の比表面積(SSA)値を有する、請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項9】
前記背面電極層は、全体が前記多孔質炭素材料からできている、請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項10】
前記多孔質炭素材料は、粒子サイズが2~9μmのグラファイトフレークを含む、請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項11】
前記光活性層は、実質的に全体が、ABX式のペロブスカイトから成る群から選択されるペロブスカイト材料からできており、
ここで、
Aは、アルキルアンモニウムカチオン、または、セシウムカチオンなどの金属カチオンであり、
Bは、Pb、Sn、または、PbおよびSnの混合物であり、
Xは、I、BrまたはClまたはそれらの混合物から成る群から選択されるハロゲン化物アニオンである、
請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のペロブスカイト太陽電池を準備する方法であって、
前面電極層を設ける段階、
ペロブスカイト材料を含む光活性層を前記前面電極層上に形成する段階、
複数のオープンスルー細孔を含む多孔質炭素材料を含む背面電極層を前記光活性層上に直接形成する段階、
電荷輸送材料および溶媒系を含む変性溶液で前記多孔質炭素材料の前記複数のオープンスルー細孔を充填する段階、および
前記変性溶液から前記溶媒系を蒸発させる段階
を備える、方法。
【請求項13】
前記溶媒系の前記蒸発は、18から200℃までの温度範囲で実行され、蒸発させられる前記溶媒系は、DMF、DMSO、γブチロラクトン(GBL)、2-メチルピラジン、2-メトキシエタノール、NMP、DMAC、アセトニトリル、水、エタノール、イソプロパノール、トルエンおよびクロロベンゼンから成る群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のオープンスルー細孔を充填する段階は、CuSCN、PTTA、CuSCN、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、(P3HT)、CuOおよびCuI、PTAAおよびPEDOT:PSSから成る群から選択される電荷移動材料を含む前記変性溶液を用いて実行され、ここで、前記変性溶液内の前記電荷移動材料の総濃度は、0.1から100mg/mlまでの範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のオープンスルー細孔を充填する段階は、前記背面電極層の前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液を注ぎ込む段階、前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液をスプレーコーティングする段階、前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液をインクジェット印刷する段階および前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液をスロットダイコーティングする段階を備える方法により実現される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、屋内および屋外ソーラー構造体、ガラスベースの太陽電池モジュール、可撓性基板ベースの太陽電池モジュール等を含む光起電力(PV)用途向けのペロブスカイト太陽電池(PSC)に関する。
【背景技術】
【0002】
プレーナヘテロ接合配置のn-i-pまたはp-i-n構成式ペロブスカイト太陽電池(PSC)を有するソーラーデバイスが、市場で関心を集めている。これらのデバイスでは、個々の材料が、2つの電極(接点とも呼ばれる)、透明または半透明な前面電極(TFC)および典型的には不透明または半透明な背面電極を含む薄層(複数の膜)の形態で順に付着させられる。典型的には、背面電極は、金属、例えば金または銀からできている。PSCは、これら2つの電極の間に配置された、ペロブスカイトの光活性層を含む複数の層のスタックも備える。ペロブスカイトは、2つの電荷輸送層、正孔輸送層(HTL)および電子輸送層(ETL)で挟まれ得る光活性材料を構成する。しかしながら、ペロブスカイト材料の多結晶性質に起因して、ペロブスカイト層の結晶質(ペロブスカイト粒の向きの分布および粒サイズの分布)が、光活性膜のオプトエレクトロニクス特性、ひいては、デバイス全体の光起電力パラメータに影響を及ぼす。
【0003】
ヘテロ接合(HJ)PSCデバイスの性能の改善を目的とした既知の手法の1つが、電荷生成および電荷輸送経路形成を促進してバルク膜から所望の金属電極への効率的な電荷抽出を可能にする混合膜内のドナーおよびアクセプタ分子の間の(バルクの)密着を(プレーナ接触の代わりに)使用したバルクヘテロ接合(BHJ)を提供することである。バルクヘテロ接合では、ドナーおよびアクセプタ分子は、これにより、その界面において、ドナーアクセプタ電荷輸送錯体(CT)を形成する。これにより、統合ペロブスカイト/BHJベースの太陽電池の構造は、典型的には、向上した集光を示し得る。
【0004】
この特許文献から、PV用途に統合ペロブスカイト/BHJ太陽電池を使用する既知のアーキテクチャが存在する。
【0005】
中国特許公開第CN106654020号は、ペロブスカイト材料が電子ドナーとして配置されたバルクヘテロ接合(BHJ)を有するペロブスカイト太陽電池アーキテクチャを提示している。このバルクヘテロ接合は、結晶TiO、結晶SnO、結晶ZnO、フラーレン、フラーレン誘導体、ぺリレン、ナフタルイミド、チオフェン融合環に基づく有機高分子材料、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、結晶Fe、結晶ZnSnO、結晶CdSまたはCdSeナノ結晶から選択されるBHJのアクセプタ成分を使用したペロブスカイト薄膜の表面上に配置されている。ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、ペロブスカイト前駆体溶液およびペロブスカイト/電子アクセプタ材料分散液で基板(例えば、FTOガラス)をコーティングする段階、ヘテロ接合前駆体膜を形成する段階、および結晶体を導通させてバルクヘテロ接合を得る段階を含む。
【0006】
中国特許出願第CN108574050号は、ペロブスカイト/MoS BHJを伴うペロブスカイトソーラーアーキテクチャの準備のための方法を説明している。この方法は、ITOガラス上にPEDOT:PPS正孔輸送層を準備する段階;次に、その上にMoSバッファ層を形成する段階;その後、バッファ層上にペロブスカイトMoSヘテロ接合を準備する段階を備える。このように取得されるので、ペロブスカイトMoSヘテロ接合層には、PBCMの電子輸送層がコーティングされる。PBCMには、Bphenの正孔ブロッキング層、および最終的にはAg電極層がコーティングされる。
【0007】
ペロブスカイト太陽電池の既知の構造の中でもとりわけ炭素上部(背面)電極についての関心が高まっている。炭素は、電荷(例えば、正孔)の効率的な収集を実現する、(銀および金の電極と比較して)かなり低コストな電極材料を構成する。炭素電極は、典型的にはグラファイトフレークおよびカーボンブラック粉末を炭素供与成分として含む炭素ペーストから準備され得る。さらに、炭素は、安定的かつ防錆性の材料とみなされており、炭素PSC(C-PSC)は、周囲環境での良好な長期にわたる安定性を示す。
【0008】
しかしながら、n-i-pアーキテクチャPSC内の背面(上部)電極層として炭素を用いることに関連する欠点のうちの1つは、ペロブスカイト/炭素界面での不十分な接触にある。これは、電荷の非効果的な選択性、および、炭素/ペロブスカイト界面において生じる予期せぬ電子-正孔再結合につながる。この理由で、C-PSCデバイスは、デバイス効率が低くなってしまうことがある。この欠点に対処するために、電荷輸送層(HTL)、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)およびスピロOMeTAD、CuSCNまたは他の材料(例えばP3HT、PEDOT:PSS、PTAA、ポリTPDといったポリマーなど)が炭素電極およびペロブスカイト層の間に設けられることで電荷再結合の低減がもたらされ、これによりC-PSCデバイスの性能が向上する。
【0009】
Xin Wu他の科学出版物「CuSCNおよびカーボンナノチューブの無機界面により可能にされる効率的かつ安定的な炭素ベースのペロブスカイト太陽電池」J. Mater.Chem. A,2019, 7, 12236-12243 (DOI: 10.1039/c9ta02014d)は、図1に示される、HTMを含まないCuSCNベースのC-PSCを説明している。説明されている太陽電池は、以下のアーキテクチャ、すなわち、FTO/小型TiO/メソ多孔質TiO/ペロブスカイト/CuSCN/炭素電極を備える。この構成において、CuSCNは、界面における正孔輸送を促進し、電荷抽出効率を向上させ、ペロブスカイト/炭素接点におけるキャリア再結合の低減に寄与する。クラックおよびピンホールがない高密度で滑らかな連続したCuSCN膜を得るために、CuSCNの層は、スピンコーティング処理により、また、実質的に速い結晶化処理を実行することにより、FTO/TiO/ペロブスカイトの基板上に直接準備される。炭素電極は、既存のCuSCN層上に準備される。
【0010】
C-PCSにおいて、ペロブスカイト/炭素界面の特性は、電池の光起電力性能および効率に影響を及ぼす。上記特性から生じる性能損失は主に、界面におけるエネルギーレベルアライメント、および、典型的には炭素背面接点電極の層に含まれるペロブスカイト粒および大きいグラファイト粒子の間の機械的接触の連続性に依存する。
【0011】
これらのアーキテクチャにおいて、例えば、スピロOMeTAD、PTAAポリマー、P3HTポリマー等、p型電荷輸送材料(すなわち、p型半導体)の応用は、p型材料の実質的に高いコスト、制限された熱抵抗(そのようなp型半導体層上に堆積した炭素電極をアニーリングするのが難しい)、および、ペロブスカイト薄膜の上部にp型材料の均一な層を溶液ベースの堆積技術で準備する困難(ペロブスカイトに直交する溶媒の溶解性が制限される)を含む不都合を伴い得る。これらの欠点により、ペロブスカイトの表面上に均一かつ平坦な正孔輸送層(p型半導体)を堆積させることが難しくなってしまう。堆積したp型半導体層の均一性および平坦性が欠如していることにより、さらに、ペロブスカイト/炭素界面の特性に負の影響が及び得る。さらに、炭素電極が典型的には、数十ナノメートルからミクロンサイズまでの範囲内のグラファイトフレークから構成され、これにより実質的に高い粗さを炭素表面フィーチャが有するので、HTL/炭素界面における空隙/間隙の形成が生じ得る。したがって、炭素層は、ナノメートル粗さのプレーナHTL層との不十分な機械的接触を形成する。
【0012】
ペロブスカイト/炭素界面において電荷輸送効率が不十分であることに関連する欠点のうちのいくつかは、様々な特許公報において対処されてきた。
【0013】
中国特許出願第CN110752299号は、透明導電性酸化物ガラス基板、正孔ブロッキング層、メソ多孔質電子輸送層、ペロブスカイト光吸収層、ペロブスカイト-界面リンク層および炭素背面電極から成るC-PSCを説明している。ペロブスカイト-リンク層界面は、チオシアン酸銅または酸化ニッケルからできている。このアーキテクチャにおいて、炭素背面電極は、ペロブスカイト-界面リンク層が形成された後にのみ準備される。炭素電極層は、ペロブスカイト-界面リンク層上へ付着させられてその後に乾燥させられた炭素ペーストから作られている。
【0014】
さらに、中国特許出願第CN104465994号は、ペロブスカイトおよび炭素層の間の正孔輸送層(HTL)を有する炭素上部電極(C-PSC)を備えるペロブスカイト太陽電池を準備する方法を説明している。HTL層は、P3HTまたはスピロOMeTADからできており、形成されたペロブスカイト層上へ直接付着させられ、一方で、炭素層は、準備されたHTL層の表面上に付着させられた炭素ペーストから作られている。このペーストはその後、実質的に低い温度範囲(70から150度まで)で1~2分間にわたってアニーリングされる。
【0015】
ペロブスカイト太陽電池技術における別の課題は、非放射性の再結合損失をもたらす、光起電力デバイスを構築する材料における欠陥の制御である。ペロブスカイト太陽電池における再結合損失の大部分は、ペロブスカイト薄層(膜)の表面に存在する欠陥の密度がより高いことに主に起因して、電荷選択層、電子輸送層(ETL)および正孔輸送層(HTL)を有する界面において起きる。そのような欠陥は、ペロブスカイト(すなわち、半導体)の結晶格子における中断または不完全性に由来する。これらの欠陥は、結果的に光生成電荷キャリアの捕捉を担うバンドギャップ内の電子状態を誘発して非放射性再結合率を上げることにより、太陽電池性能を低減させ得る。これらのプロセスを抑制し、また、デバイスの安定性を改善すべく、ペロブスカイト表面は、パッシベーション/変性処理を受ける。ペロブスカイト材料のイオン特性に起因して、既知のパッシベーション戦略は、電子豊富(正に帯電した欠陥、例えば、低配位Pb2+の安定化)または電子欠損(負に帯電したサイト、例えば、Pbアンチサイト、低配位I)の基を含む外部材料とのイオンまたは配位相互作用を含む。さらに、電子特性を変えてペロブスカイト光活性層に基づくデバイスの性能を向上させるために、ペロブスカイト表面の分子ドーピングが用いられ得る。これにより、材料の作用機能を調整すること、および、ペロブスカイトおよび他の半導体、例えばp型半導体(少数キャリアの濃度が低減されている)の界面における電荷選択性を上げることが可能になる。
【0016】
上記公報から、以下のとおり、炭素上部電極(C-PSC)が設けられたペロブスカイト太陽電池のアーキテクチャは、C-PSCデバイス全体の性能を改善すべく、炭素/ペロブスカイト界面特性の最適化を目的とした絶え間ない開発を経て、電荷輸送および電荷抽出効率を促進している。
【発明の概要】
【0017】
したがって、C-PSCのアーキテクチャをさらに開発してペロブスカイトおよび電極層の間の電荷輸送の効率を改善することによりC-PSCの効率を上げることが望ましいであろう。
【0018】
1つの態様において、本発明は、複数の層のスタックを備えるペロブスカイト太陽電池、ここで、前記複数の層は、前面電極層、ペロブスカイト材料を含む光活性層、および、複数のオープンスルー細孔を含む多孔質炭素材料を含む背面電極層、という順序で配置されており、ここで、前記太陽電池は、前記光活性層および前記背面電極層の間の電荷を輸送するように構成された電荷輸送材料をさらに備え、前記電荷輸送材料は、前記背面電極層の前記多孔質炭素材料の前記複数のオープンスルー細孔のうちの少なくともいくつかを充填しており、かつ、前記光活性層の前記ペロブスカイト材料とのバルクヘテロ接合、および、前記オープンスルー細孔内の前記背面電極層の前記多孔質炭素材料との界面を形成している、ペロブスカイト太陽電池に関する。
【0019】
背面電極層のオープンスルー細孔内に配置され、かつ、ペロブスカイトバルクヘテロ接合と統合された電荷輸送材料は、この構成により、電荷輸送材料の既知の平坦な(層状の)配置と比較して炭素/電荷輸送材料界面の面積を増やすことが可能になるので、ペロブスカイト材料および炭素材料の間のより効率的な電荷輸送経路を提供する。本開示によれば、電荷輸送材料は、多孔質炭素材料のオープンスルー細孔を完全に充填することにより、オープンスルー細孔の壁の面積の全体と隣接する。さらに、ペロブスカイト/炭素界面において、電荷輸送材料は、光活性層および背面接触層の間の空隙を充填することにより、太陽電池の界面最適化を提供する。炭素材料の多孔度は、炭素材料が、好ましくは炭素フレークの形態の、好ましくは炭素粒子サイズが2から9μmまでである、実質的に大きい炭素粒子(すなわち、粒)から構成されていることに起因する。これにより、炭素粒子は、ペロブスカイト材料の粗さのみに対応できず、かつ、ペロブスカイト表面の凹凸を充填して接触面積の増加を提供することができない。これにより、炭素材料の炭素粒子は、光活性層のペロブスカイト材料と(ペロブスカイト材料の表面において)密着できない。これらの不都合は、本開示により克服されている。すなわち、本開示によれば、電荷輸送材料は、ペロブスカイト表面の粗さに対応し、炭素材料のオープンスルー細孔111を含む細孔を充填する。これにより、太陽電池効率の向上、より良い電子的および機械的接触ならびに複数の層の接着の向上が提供される。
【0020】
好ましくは、背面電極層は、正孔を収集するように構成されており、電荷輸送材料は、正孔を光活性層から吸引して背面電極層(11)へ輸送するように構成された正孔輸送材料(HTM)を含む。
【0021】
この構成において、BHJは、正孔のドナーとしてのペロブスカイト材料および正孔アクセプタとしてのHTMを含んでいることで、ペロブスカイト材料および炭素材料の間の接触面積の改善(それらの間の空隙の充填)、ペロブスカイト材料からの正孔抽出の改善、および界面における再結合の低減を提供する。この構成において、炭素材料は、理想的な正孔選択性を有していない金属として機能し(したがって、いくつかの少数キャリア(電子)が抽出され、再結合の増加につながり得る)、本開示による組み込まれたHTMは、正孔アクセプタとして機能することにより、ペロブスカイトからのより効率的な正孔吸引を提供する。
【0022】
好ましくは、前記正孔輸送材料は、CuSCN、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)、CuO、CuI、PTAAおよびPEDOT:PSSから成る群から選択される材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
上記材料は、これらの材料の各々が正孔選択的および正孔輸送層として効果的に機能することにより、ペロブスカイト材料からの効果的な正孔抽出およびこの層を通じた効率的な正孔輸送ならびに高い正孔移動度を提供できるので、太陽電池の開発された構成に特に適している。
【0024】
好ましくは、正孔輸送材料(HTL)はさらに、少なくとも1つのパッシベーション化合物と混合される。パッシベーション化合物は、好ましくは、アルキルアンモニウム塩およびフッ素化アルキルアンモニウムカチオン、電子供与部分(ルイス塩基、O、Nおよび/またはSなどの電子供与原子)を含む材料または電子吸引部分(例えば、ルイス酸)を含む材料から成る群から選択される。
【0025】
パッシベーション化合物の使用により、ペロブスカイト層の容積中および薄層の表面上に存在する捕捉状態のパッシベーションが提供される。特に、アルキルアンモニウム塩により、ペロブスカイト材料の未配位Pbサイトの充填、および、低次元ペロブスカイト材料;ルイス塩基、電子供与性材料(未配位Pbサイトの充填および正電荷の欠陥のパッシベーションを提供する、例えば、ピリジン、チオ尿素、チオフェン、尿素、アニリン、ベンジルアミン、チオアセトアミド、トリベンジルホスフィンオキシド、酢酸、1-ブタンチオール、メルカプト安息香酸といった、アミン、アミド、硫化物、カルボン酸、ホスホン酸など);さらに、ルイス酸、電子吸引性材料(負電荷を有する欠陥のパッシベーションを提供する、例えば、フラーレン、PCBM。ヨードペンタフルオロベンゼン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ))の形成が(低配位I、Pb-Iアンチサイトのパッシベーションのメカニズムで)提供され、これにより、負の電荷を有する欠陥のパッシベーションが提供される。上述のパッシベーション処理は、パッシベーション化合物(すなわち、ルイス酸および塩基、金属イオンまたはイオン結合)を通じた相乗的な欠陥パッシベーションにより実現され得る。
【0026】
好ましくは、前記前面電極層は、FTO、ITO、IZOおよびAZOから成る群から選択される、電子を収集するように構成された材料からできている。
【0027】
これにより、電池構造の適切な機能が提供される。
【0028】
好ましくは、前記複数の層のスタックは、前記光活性層および前記前面電極層の間の電子輸送層(ETL)をさらに有する。
【0029】
電子輸送層(ETL)が存在することにより、電子の選択性の向上および電荷再結合の低下が提供される。
【0030】
好ましくは、前記電子輸送層は、SnO、TiO、ZnOおよびPCBMから成る群から選択される材料を含む。
【0031】
電子輸送層として機能する上記材料は、電極材料へのETLの厚さを通じて電子の選択性の向上および効果的な電子輸送を提供することにより、再結合損失をさらに低減する。
【0032】
好ましくは、前記背面電極層の前記多孔質炭素材料は、ブルナウアー-エメット-テラー(N-BET)吸着法により測定される、10から400m/gまでの範囲内の比表面積(SSA)の値を有する。
【0033】
これにより、電荷移動材料を含む変性溶液での多孔質炭素材料の改善された浸潤、したがって、界面エリア内の、すなわち炭素材料および背面電極層の間の電荷移動材料のより規則的な分布が提供される。さらに、上述のSSA値の背面電極層11に含まれる炭素材料が、電荷移動材料を電池構造へ導入する処理の改善された制御を提供することで、ペロブスカイト材料における再結晶化の制御の向上につながり、これにより、ペロブスカイトの完全な溶解が防がれ、その結果、その中にBHJが生成される。
【0034】
好ましくは、背面電極層は、全体が多孔質炭素材料からできている。
【0035】
これにより、ペロブスカイトおよび炭素材料の間の炭素/電荷輸送材料界面の最適な面積が提供され、太陽電池の材料の改善された機械的接触、および形成されたBHJのより大きな面積が提供される。
【0036】
好ましくは、前記多孔質炭素材料は、粒子サイズが2~9μmのグラファイトフレークを含む。
【0037】
2μmよりも小さくないグラファイトフレークにより、変性溶液のより容易な浸透が可能になる;しかしながら、9μmよりも大きいグラファイトフレークは、フレーク間の接続性、および炭素電極層の全体的な電荷輸送特性に影響を及ぼし得る。
【0038】
好ましくは、前記光活性層は、ABX式の有機-無機ペロブスカイトから成る群から選択されるペロブスカイト材料からできており、ここで、Aは、アルキルアンモニウムカチオン、または、セシウムカチオンなどの金属カチオンであり、Bは、Pb、Sn、または、PbおよびSnの混合物であり、Xは、I、BrまたはClまたはそれらの混合物から成る群から選択されるハロゲン化物アニオンである。
【0039】
これらのペロブスカイト材料は、多孔質炭素材料を含む背面電極を有する電池アーキテクチャ内で実装された場合、より効果的な集光を提供し、これにより、フリーキャリアの生成につながり、キャリア拡散長が長いことに起因する電荷選択的接点への効果的なキャリア輸送が提供される。
【0040】
別の態様において、本発明は、ペロブスカイト太陽電池を準備する方法であって、前面電極層を設ける段階、ペロブスカイト材料を含む光活性層を前記前面電極層上に形成する段階、複数のオープンスルー細孔を含む多孔質炭素材料を含む背面電極層を前記光活性層上に直接形成する段階、電荷輸送材料および溶媒系を含む変性溶液で前記多孔質炭素材料の前記オープンスルー細孔を充填する段階、および前記変性溶液から前記溶媒系を蒸発させる段階を備える、方法に関する。
【0041】
開発された方法は、背面接点電極の多孔質炭素材料内の空隙の効率的な充填を提供する。したがって、より大きな面積の界面(炭素/電荷輸送材料)が実現され得る。開発された方法において、電荷輸送材料は、変性溶液の形態で、既に形成されている背面電極層上へ(上部から)直接付着させられる(注ぎ込まれる)。電荷輸送材料を含む変性溶液は、炭素内の細孔へ沈むことにより、オープンスルー細孔を通じて、光活性層のペロブスカイト材料に到達し得る。変性溶液の溶媒系は、ペロブスカイト粒の境界において(ペロブスカイト粒をある程度の深さまで貫通して)、ペロブスカイトを部分的に溶解させる。次に、溶媒系の蒸発の段階中、溶解されたペロブスカイト材料が再結晶化して、蒸発後に細孔内およびペロブスカイト材料の境界に残ったままの電荷輸送材料とのバルクヘテロ接合(BHJ)を形成する。
【0042】
さらに、再結晶化してBHJを形成したペロブスカイトは、より均一なペロブスカイト粒サイズに起因するより高いオプトエレクトロニクス品質、よりコンパクトなモホロジー、および、再結晶化したペロブスカイト材料内のより少ない欠陥を提供し、これは、非放射性再結合の制限につながる。
【0043】
また、開発された方法は、ペロブスカイト、多孔質炭素および電荷輸送材料を含む隣接する材料の改善された接着および機械的接触を提供する。オープンスルー細孔を通じてペロブスカイト材料に到達した電荷輸送材料は、電荷輸送材料がその溶液(すなわち、薬物溶液)の形態で提供されるので、炭素/ペロブスカイト界面に存在する空隙を充填し得る。さらに、ペロブスカイト材料が炭素細孔の内部で再結晶化することが考えられる。このように、電荷輸送材料を含む変性溶液は、炭素材料のオープンスルー細孔との直接接続がない空隙のうちのいくつかにも到達することがあり、それらは、既に変性溶液が到達しているペロブスカイト材料のエリアと接続される。変性溶液の溶媒系が空隙を充填した後に蒸発し、電荷輸送材料が太陽電池のスタック内で捕捉されたままになるので、光活性層のペロブスカイト材料とのバルクヘテロ接合(BHJ)およびオープンスルー細孔内の背面電極層の多孔質炭素材料との界面の両方の形成がもたらされる。
【0044】
好ましくは、前記溶媒系の前記蒸発は、18から200℃までの温度で実行され、蒸発させられる前記溶媒系は、DMF、DMSO、γブチロラクトン(GBL)、2-メチルピラジン、2-メトキシエタノール、NMP、DMAC、アセトニトリル、水、エタノール、イソプロパノール、トルエンおよびクロロベンゼンから成る群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0045】
溶媒系の成分としてそのような溶媒を用いることにより、初期状態のペロブスカイト層が溶媒系の蒸発と共に比較的低い温度範囲で部分的に再結晶化され得るように、電荷輸送材料、および、パッシベーション化合物などの任意選択的な添加物(変性溶液中に含まれる場合)の必要とされる溶解、およびペロブスカイト材料の部分的な溶解が提供される。
【0046】
好ましくは、前記オープンスルー細孔を充填する段階は、CuSCN、PTTA、CuSCN、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、P3HT、CuOおよびCuI、PTAAおよびPEDOT:PSSから成る群から選択される電荷移動材料を含む前記変性溶液を用いて実行され、ここで、前記変性溶液内の前記電荷移動材料の総濃度は、0.1から100mg/mlまでの範囲である。
【0047】
そのような組成により、形成されたBHJの所望のパラメータが提供される。
【0048】
好ましくは、前記オープンスルー細孔を充填する段階は、前記背面電極層の前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液を注ぎ込む段階、前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液をスプレーコーティングする段階、前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液をインクジェット印刷する段階および前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液をスロットダイコーティングする段階を備える方法により実現される。
【0049】
そのような方法は、オープンスルー細孔の効率的な充填を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明の態様および特徴は、添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態を詳細に説明することにより明らかになる。
【0051】
図1】Xin Wu他の「CuSCNおよびカーボンナノチューブの無機界面により可能にされる効率的かつ安定的な炭素ベースのペロブスカイト太陽電池」J. Mater.Chem. A,2019, 7, 12236-12243 (DOI: 10.1039/c9ta02014d)の従来技術統合ペロブスカイト/BHJ太陽電池アーキテクチャを示す。
図2A】処理前のペロブスカイト太陽電池構造を示す。
図2B】処理後のペロブスカイト太陽電池構造をBHJの(拡大)概略図と共に示す。
図3A】本発明による方法により準備されたペロブスカイト/BHJ太陽電池の断面のSEM画像を示す。
図3B】本発明による方法により準備されたペロブスカイト/BHJ太陽電池のペロブスカイト-CuSCN混合ゾーンの上面視のSEM画像を示す。
図4】本発明による方法により準備されたペロブスカイト/BHJ太陽電池の、CuSCNがペロブスカイト材料に浸潤した断面のSEM画像を測定された層厚さと共に示す。
図5A】変性がないペロブスカイト/炭素電池アーキテクチャの断面SEM画像を示す(比較例)。
図5B】本開示による、CuSCNがペロブスカイト材料に浸潤したペロブスカイト/炭素電池アーキテクチャの断面SEM画像を示す。
図6】本開示による、変性なしの(比較)、および変性処理後のペロブスカイト太陽電池の電流密度-電圧特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
ここで、添付図面に例が示されている実施形態を参照する。添付図面を参照して、開発された太陽電池の態様および特徴を説明する。図面において、同様の参照番号は、同様の要素を示す。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で具現化されてよく、図示されている実施形態のみに限定されると解釈されるべきではない。むしろ、提示されている実施形態は、本開示が十分かつ完全なものになり、かつ、本発明の態様および特徴を当業者へ完全に伝えるような例として提供されている。実施形態において示される特徴の全てが必須であるわけではなく、保護範囲は、実際に示される実施形態によってではなく、特許請求の範囲において提供されている特徴によって定義されることが、理解されるものとする。
【0053】
図2Aは、処理前のペロブスカイト太陽電池構造を示す。図2Bおよび図3Aおよび図3Bは、本発明によるペロブスカイト太陽電池を示す。太陽電池は、ペロブスカイト材料を含む光活性層11を備え、好ましくは、光活性層は、全体がペロブスカイト材料からできていてよい。光活性層のペロブスカイト材料の非限定的な例は、3D、2Dおよび準2Dペロブスカイト、例えば、ABXという一般式の3Dペロブスカイト(Aは、メチルアンモニウム、ホルムアミジン、セシウム、またはそれらの混合物を示し、Bは、Pb、Sn、またはそれらの混合物を示し、Xは、ヨウ素、臭素、フッ素、またはそれらの混合物を示す);A'BXという一般式の2Dペロブスカイト(A'は、大アルキルアンモニウムカチオン(例えば、ブチルアンモニウム、フェネチルアンモニウムまたは4-フルオロフェネチルアンモニウム等)を示し、Bは、Pb、Sn、またはそれらの混合物を示し、Xは、ヨウ素、臭素、フッ素、またはそれらの混合物を示す);または、A'n-1Pb3n+1という一般式の準2Dペロブスカイト(A'は、例えば、ブチルアンモニウム、フェネチルアンモニウムまたは4-フルオロフェネチルアンモニウム等の大アルキルアンモニウムカチオンを示し、Aは、メチルアンモニウム、ホルムアミジン、セシウム、またはそれらの混合物を示し、Bは、Pb、Sn、またはそれらの混合物を示し、Xは、ヨウ素、臭素、フッ素、またはそれらの混合物を示す)とも呼ばれる2Dおよび3Dペロブスカイトの混合物、から成る群から選択される;上記式において、nは、典型的には、3~6に等しくてよい。
【0054】
さらに、ペロブスカイト太陽電池は、電荷収集に、より好ましくは電子収集に適した、様々な透明または半透明材料(例えば、ITO、IZO、FTOおよび/またはAZOからできている透明導電性電極(TCO))からできていてよい前面電極層15を備える。前面電極層15は、基板16、例えば、透明または半透明プラスチックホイル(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレン2,6-ナフタレート)、ETFE(ポリエチレン-コ-テトラフルオロエチレン)および/またはPI(ポリイミド)からできているもの)など、変形可能基板(例えば、可撓性のもの)上に;または、例えばガラスから作られている剛性の基板16上に堆積され得る。変形可能基板16の存在により、太陽電池の変形性が提供され得る。
【0055】
さらに、太陽電池は、複数のオープンスルー細孔を含む多孔質炭素材料を含む背面電極層11を備える。好ましくは、背面電極層11は、全体が多孔質炭素材料からできている。オープンスルー細孔の傍の多孔質炭素材料は、saccafe細孔および/または閉細孔をさらに含み得る。
【0056】
本明細書において用いられる「オープンスルー細孔」という表現は、両端において開いている外側表面と連通している細孔を指す;オープンスルー細孔は、スルー細孔(through pore)とも呼ばれる。
【0057】
本明細書において用いられる「閉細孔」という表現は、開放端がない細孔を指し、「saccafe細孔」という表現は、一端においてのみ開いている細孔を指す。saccafe細孔は、ブラインド細孔またはデッドエンド細孔とも呼ばれる。
【0058】
好ましくは、背面電極層11の炭素材料は、ブルナウアー-エメット-テラー(N-BET)吸着法により測定された10から400m/gまでの範囲内の比表面積(SSA)値を有する。上記範囲のSSA値は、電荷輸送材料12を含む変性溶液での炭素材料オープンスルー細孔の適切な充填を提供し、これにより、本明細書において説明される、ペロブスカイトおよび電荷輸送材料12の間のバルクヘテロ接合(BHJ)12aゾーンが得られる。
【0059】
本明細書において用いられる「比表面積」(SSA)という用語は、単位質量当たりの固体材料の総表面積として理解される。SSA値は、材料の粒子サイズならびに材料の構造および多孔度に依存する。SSA値は、ブルナウアー-エメット-テラー(N-BET)吸着法により測定され得る。
【0060】
好ましくは、背面電極層11は、全体が、10から400m/gまでの範囲内のSSA値の多孔質炭素材料からできている。背面電極層11は、好ましくは、5から15μmまでの、より好ましくは10から15μmまでの範囲内の厚さを有する。上述のSSA値、および背面電極層11の厚さは共に、電荷輸送材料12を含む変性溶液での背面電極層11の改善された浸潤を提供する。これにより、(背面電極層11の多孔質炭素材料を浸潤させる)電荷輸送材料12がペロブスカイト材料を含む光活性層13に到達して適切なペロブスカイト再結晶化をもたらすことで、バルクヘテロ接合(BHJ)12aゾーンの形成がもたらされ得る。このように、背面電極層11の多孔質炭素材料は、ペロブスカイト材料をある程度保護する。すなわち、背面電極層11の多孔質炭素の多孔度を通じた電荷輸送材料12の導入により、バルクヘテロ接合(BHJ)12a形成を制御するための手段が提供される。これは、多孔質炭素に浸潤する変性溶液の開発された組成に起因しており、このように、電荷輸送材料12は、ペロブスカイト材料に到達する。変性溶液の溶媒系は、電荷輸送材料を溶解させるべく(変性溶液における実質的に均一な濃度を提供すべく)、かつ、ペロブスカイト粒の境界における、したがって、光活性層13の界面におけるペロブスカイト材料の再結晶化処理に影響を及ぼすべく選択された成分を含む。溶媒系のためのそのような選択された成分は、ペロブスカイト材料全体を溶解させるわけではなく、炭素材料の多孔度(浸潤)を通じて、電荷移動材料12の間接的な移動を同時にもたらす。結果として、電荷移動材料12の最適量の分子がペロブスカイト材料に到達し、図2Bにおいて拡大四角形で概略的に示される改善されたパラメータのBHJ12aの形成につながる。
【0061】
好ましくは、背面電極層11の多孔質炭素材料は、0.1μmから100μmまでの粒子サイズ、より好ましくは2から9μmまでの粒子サイズを有する炭素粒子から作られ得る。炭素粒子は、様々な形状、例えば、より大きな細孔サイズ、および、多孔質炭素材料と電荷輸送材料との改善された浸潤を提供する2から9μmまでの粒子サイズの既知のグラファイトフレークなど、フレークの形態であってよい。さらに、2から9μmまでのサイズのグラファイト炭素粒子(フレーク)は、背面電極層11の多孔質炭素材料の形成のための主な原材料として、電極層11のより低いスクエア抵抗を提供でき、これは、ペロブスカイト太陽電池特性にとって有益である。ペロブスカイト太陽電池アーキテクチャでは、層11、13、15がスタックで配置され、このスタックにおいて、前面電極層11および背面電極層15の間に光活性層13が配置される。
【0062】
太陽電池は、光活性層13および背面電極層11の間の電荷を輸送するための電荷輸送材料12を備える。好ましくは、電荷輸送材料12は、正孔輸送材料、例えばp型材料またはp型半導体である。太陽電池に用いられ得る正孔輸送材料の非限定的な例は、CuSCN、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)、CuOおよびCuI、銅フタロシアニン(CuPc)、P3HT、PTAA、PEDOT:PSS、スピロOMeTADおよびポリTPDから成る群から選択される。任意選択的に、電荷輸送材料12は、例えばアルキルアンモニウム塩およびフッ素化アルキルアンモニウムカチオン、電子供与部分(ルイス塩基、O、Nおよび/またはSなどの電子供与原子)を含む材料または電子吸引部分(例えば、ルイス酸)を含む材料から成る群から選択されるパッシベーション化合物(ペロブスカイト材料をパッシベーションするための添加物)など、様々な化合物と混合され得る。
【0063】
電荷輸送材料12は、多孔質炭素材料の複数のオープンスルー細孔の少なくとも一部を充填し、ペロブスカイト材料とのバルクヘテロ接合12aおよび多孔質炭素材料との界面12bをオープンスルー細孔の壁に形成する。言い換えると、電荷輸送材料12が配置されることにより、光活性層13のペロブスカイト材料および背面電極層11の多孔質炭素材料の間の電荷を輸送するように構成された電荷輸送パッチ(すなわち、電気的に連続する領域)が、太陽電池構造内にBHJ12aおよび界面12bの全体にわたって形成される。
【0064】
上記アーキテクチャにより、BHJの形成において、ペロブスカイト材料の制御された再結晶化処理に起因して、ペロブスカイト/炭素界面におけるキャリア再結合の低減およびペロブスカイト層の質の改善が可能になる。また、これらの要因は、開発されたペロブスカイト太陽電池の改善された長期の安定性をもたらす。
【0065】
さらに、太陽電池は、正孔-電子再結合損失をさらに低減するための、前面電極層15および光活性層13の間の電子輸送層14を備え得る。電子輸送層14の材料の非限定的な例は、SnO、TiO、ZnOおよびPCBM、または電子の輸送が可能なPCBMとは異なるフラーレンから成る群から選択される。
【0066】
[準備方法]
本開示によるペロブスカイト太陽電池の準備の方法は、前面電極層15、多孔質炭素材料を含む背面電極層11およびそれらの間に配置されたペロブスカイト材料を含む光活性層13を備える太陽電池用の複数の層のスタックを準備する段階を備える。光活性層13は、オープンスルー細孔111がその開放端のうちの1つを介して光活性層13のペロブスカイト材料に到達するように、背面電極層11に直接隣接している。炭素材料のオープンスルー細孔111の他の開放端は、主に背面電極層11の反対表面上に露出していることにより、外部からアクセス可能である。10から400m/gまでの範囲内のSSAの多孔質炭素材料のエリアを含む背面電極層11は、様々な従来の方法により準備され得る。例えば、実質的に全体が多孔質炭素材料からできている背面電極層11は、炭素ペーストを光活性層13のペロブスカイト材料上へ付着させることにより準備され得る。用いられる炭素ペーストは、例えば、炭素供与成分としてグラファイトフレークを主に含むDN-CP01(登録商標)(スウェーデン、ストックホルムのDyenamo AB製)という炭素ペーストなど、市販されているものであってよい。任意選択的に、この炭素ペーストは、グラファイトフレーク(0.9g)(1200のメッシュサイズ)およびカーボンブラック(0.3g)などの炭素材料を2mlクロロベンゼン溶媒に溶解されたPMMA(0.25g)と混合することにより準備され得る。ポリマー接着剤(PMMA)は、炭素材料を共に接続するために用いられる。次に、機械的に混合された溶液が、ボールミルマシンを用いてミクロンサイズの粒子(5~10ミクロン)へと研磨される。この粉砕処理は、各々が1時間である3つの段階で実行され得る。
【0067】
炭素ペーストは、例えば、周囲雰囲気において、ペロブスカイト材料を含む光活性層11に、ドクターブレードで描き取られ、またはスクリーン印刷され得る。その後、炭素ペーストは、好ましくは5~30分間にわたって、80~120℃でのアニーリングを受け得る。そのような条件により、背面電極層11の多孔質炭素材料の適切なパラメータを得ることが可能になる。
【0068】
次に、得られた層(11、13、15)のスタックは、溶媒系を含む変性溶液および上記溶媒系で溶解させた電荷輸送材料で炭素材料のオープンスルー細孔111を充填することを伴う処理を受ける。変性溶液中の電荷輸送材料の濃度は、好ましくは、0.1から100mg/mlまで、より好ましくは0.5から20mg/mlまでの範囲にある。変性溶液の溶媒系は、単一の溶媒化合物、または、電荷輸送材料12を溶解させ、かつ、光活性層13のペロブスカイト材料を部分的に溶解させるように選択される2つまたは2つよりも多くの溶媒の混合物を構成し得る。変性溶液は、別の成分、例えば、ペロブスカイト材料のパッシベーションのために機能するパッシベーション化合物のうちの1つまたは複数をさらに含み得る。変性溶液中のパッシベーション化合物の濃度は、0.1mg/mlから20mg/mlまでの範囲にあり得る。
【0069】
以下の表1は、光活性層13のペロブスカイト材料に関する変性溶液の組成の例示的な実施形態を示す。
【0070】
[表1 光活性層のペロブスカイト材料に関する変性溶液の例示的な実施形態]
【表1】
変性溶液は、様々な非接触堆積技術、例えば、注ぎ込み、スプレーコーティングインクジェット印刷、またはスロットダイコーティングを用いて、背面電極層11の上面上へ付着させられ得る。オープンスルー細孔111を介して、電荷輸送材料12(例えば、正孔輸送材料)を含む変性溶液は、ペロブスカイト材料13に到達し、初期状態のペロブスカイト粒を部分的に溶解させ、多孔質炭素のオープンスルー細孔111を充填する。この操作は、周囲空気において実行され得る;不活性雰囲気は必要とされない。所望の容積の変性溶液の導入に続いて、溶媒系は、複数の層のスタックを1~10分間にわたって80~120℃で加熱することにより蒸発させられる。これらの条件下で、ペロブスカイトの再結晶化が生じ、所望のBJH-ペロブスカイト/電荷輸送材料が得られる。得られたBHJ12aゾーンの厚さは、付着させられる変性溶液の容積、変性溶液中の電荷移動材料(例えば、HTM)の濃度、用いられる溶媒系の特定の組成、および付着中の基板の温度によりトリガされる。これにより、ペロブスカイト材料に到達した変性溶液は、ペロブスカイトの再結晶化を誘発する。この再結晶化は、光活性層の質の改善、ならびに、ペロブスカイト材料構造内の不連続部および欠陥の除去を提供する。
【0071】
さらに、溶媒系の蒸発に起因して、電荷輸送材料、および他の不揮発性成分(変性溶液中に存在する場合)が、多孔質炭素材料の細孔内で「凝固」し、それらを充填する。多孔質炭素材料の細孔を充填する電荷輸送材料により、正孔抽出のためのペロブスカイト-炭素界面の選択性が上がり、再結合損失が低減する。これは、向上した質の連続的な電荷パッチを電荷輸送材料が形成することが原因である。これらのパッチは、ペロブスカイト/電荷輸送材料のBHJ12a、および、背面電極層の多孔質炭素材料のオープンスルー細孔111の壁に沿って配置された、炭素/電荷輸送材料の界面12bを伴う。したがって、これらの界面の面積が大幅に増え得る。
【0072】
必要性、および、(特定の配置の複数の太陽電池を備える)所望のデバイスアーキテクチャに応じて、層準備の後続の段階間で、パターニング(例えば、レーザパターニング)段階が実行され得る。
【0073】
複数の層のスタックは、このように得られ、別の処理、例えば封止を受け得る。
【0074】
開発されたペロブスカイト太陽電池構造は、屋外用途、屋内用途、ガラスベースのモジュール、可撓性基板ベースのモジュール等を含む様々な用途で実装される、太陽エネルギーを収集するための可撓性太陽電池デバイスなど、様々な太陽電池デバイスに組み込まれ得る。
【0075】
[実施例]
【0076】
以下のアーキテクチャから成る機能的可撓性ペロブスカイト光起電力デバイスが準備された。
【0077】
PET/透明導電性電極(IZO)/電子輸送材料(SnO)/ペロブスカイト(MAPbI)/多孔質炭素電極が、正孔輸送材料(CuSCN)を用いる後処理を受けた。
【0078】
MAPbIを有するアーキテクチャの代わりに、FAPbIを有する太陽電池が、類似の方式で実現され得る。
【0079】
電荷輸送材料であるCuSCN(正孔輸送用)を含む変性溶液が、1mlのDMF:IPA中にCuSCN(1mg)を溶解させる(1:1v/v)ことにより準備された。次に、この溶液が、スプレーコーティングを介して、デバイスの多孔質炭素層の上部にコーティングされた。溶媒系の即時の蒸発およびペロブスカイト材料の速い再結晶化を保証するために、デバイスが、コーティング中、5分間にわたって100℃で保持された。変性溶液(CuSCN/DMF:IPA)が、多孔質炭素層を貫通してペロブスカイトに到達し、初期状態のペロブスカイトを部分的に溶解させていた。DMF/IPAが蒸発すると、部分的に溶解したペロブスカイトが、CuSCNを用いて再結晶化された。太陽電池の最終的な構造が、溶解されていない(再結晶化された)ペロブスカイト層、再結晶化されたペロブスカイト/CuSCN(BHJ)領域から形成されたバルクヘテロ接合層、および炭素-CuSCN領域(CuSCNで充填されたオープンスルー細孔)をもたらした。得られた太陽電池構造の断面のSEM画像が、図3Aに示されており(倍率:70000倍)、ペロブスカイト-CuSCN混合ゾーン(炭素を通じて再結晶化されたペロブスカイトおよび組み込まれたCuSCN)を示す上面視のSEM画像が、図3Bに示されている(倍率:8000倍)。図4は、(上面の近くに)CuSCNが浸潤したペロブスカイトのSEM画像を、それぞれの層の測定された厚さと共に示す。
【0080】
図5Aおよび図5Bは、本開示の別の実施形態を表し、図5Aは、CuSCN材料を用いた処理の前の電池構造のSEM画像を示しており、図5Bは、背面電極層の多孔質炭素材料を通じたCuSCN材料の浸潤の後の電池構造のSEM画像を示している。図5Bでは、BHJゾーン(CuSCNを含むペロブスカイト)がはっきりと見えており、一方、図5Aでは、BHJゾーンが見えていない。
【0081】
図6は、AM 1.5照射および測定下での変性処理なしの、および変性処理後のペロブスカイト太陽電池の電流密度-電圧特性を示す。処理なしのデバイスは、10.5%の効率を発揮した。しかしながら、DMF:IPAにおいてCuSCNを用いて準備された変性溶液での、本開示による処理の後には、デバイスの短絡電流密度(Jsc)および開放電圧(Voc)における大幅な改善が観察され得る。結果として、これにより、デバイス効率が13%へ上昇した。得られたPCE改善は、あらゆる表面欠陥を除去する、表面におけるペロブスカイトの再結晶化と、オープンスルー細孔に充填されたCuSCNを通じたより良い電荷抽出とに起因し得る。
(他の可能な項目)
(項目1)
複数の層のスタックを備えるペロブスカイト太陽電池、ここで、前記複数の層は、前面電極層(15)、ペロブスカイト材料を含む光活性層(13)、および、複数のオープンスルー細孔(111)を含む多孔質炭素材料を含む背面電極層(11)、という順序で配置されており、ここで、前記ペロブスカイト太陽電池は、前記光活性層(13)および前記背面電極層(11)の間の電荷を輸送するように構成された電荷輸送材料(12)をさらに備え、
前記電荷輸送材料(12)は、前記背面電極層(11)の前記多孔質炭素材料の前記複数のオープンスルー細孔(111)のうちの少なくともいくつかを充填しており、かつ、前記光活性層(13)の前記ペロブスカイト材料とのバルクヘテロ接合(12a)、および、前記複数のオープンスルー細孔(111)内の前記背面電極層(11)の前記多孔質炭素材料との界面(12b)を形成している、
ペロブスカイト太陽電池。
(項目2)
前記背面電極層(11)は、正孔を収集するように構成されており、前記電荷輸送材料(12)は、正孔を前記光活性層(13)から吸引して前記背面電極層(11)へ輸送するように構成された正孔輸送材料(HTM)を含む、項目1に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目3)
前記正孔輸送材料は、CuSCN、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)、CuO、CuI、PTAAおよびPEDOT:PSSから成る群から選択される材料のうちの少なくとも1つを含む、項目2に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目4)
前記正孔輸送材料はさらに、少なくとも1つのパッシベーション化合物と混合されている、項目2または3に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目5)
前記前面電極層(15)は、ITO、IZO、FTOおよび/またはAZOから成る群から選択される、電子を収集するように構成された材料からできている、項目2から4のいずれか一項に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目6)
前記複数の層のスタックは、前記光活性層(13)および前記前面電極層(15)の間の電子輸送層(14)をさらに有する、項目5に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目7)
前記電子輸送層(14)は、SnO、TiO、ZnOおよびPCBMから成る群から選択される材料を含む、項目6に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目8)
前記背面電極層(11)の前記多孔質炭素材料は、ブルナウアー-エメット-テラー(N-BET)吸着法により測定される、10から400m/gまでの範囲内の比表面積(SSA)値を有する、項目1から7のいずれか一項に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目9)
前記背面電極層(11)は、全体が前記多孔質炭素材料からできている、項目1から8のいずれか一項に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目10)
前記多孔質炭素材料は、粒子サイズが2~9μmのグラファイトフレークを含む、項目1から9のいずれか一項に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目11)
前記光活性層(13)は、実質的に全体が、ABX式のペロブスカイトから成る群から選択されるペロブスカイト材料からできており、
ここで、
Aは、アルキルアンモニウムカチオン、または、セシウムカチオンなどの金属カチオンであり、
Bは、Pb、Sn、または、PbおよびSnの混合物であり、
Xは、I、BrまたはClまたはそれらの混合物から成る群から選択されるハロゲン化物アニオンである、
項目1から10のいずれか一項に記載のペロブスカイト太陽電池。
(項目12)
項目1から11のいずれか一項に記載のペロブスカイト太陽電池を準備する方法であって、
前面電極層(15)を設ける段階、
ペロブスカイト材料を含む光活性層(13)を前記前面電極層(15)上に形成する段階、
複数のオープンスルー細孔(111)を含む多孔質炭素材料を含む背面電極層(11)を前記光活性層(13)上に直接形成する段階、
電荷輸送材料(12)および溶媒系を含む変性溶液で前記多孔質炭素材料の前記複数のオープンスルー細孔(111)を充填する段階、および
前記変性溶液から前記溶媒系を蒸発させる段階
を備える、方法。
(項目13)
前記溶媒系の前記蒸発は、18から200℃までの温度範囲で実行され、蒸発させられる前記溶媒系は、DMF、DMSO、γブチロラクトン(GBL)、2-メチルピラジン、2-メトキシエタノール、NMP、DMAC、アセトニトリル、水、エタノール、イソプロパノール、トルエンおよびクロロベンゼンから成る群から選択される少なくとも1つの成分を含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記複数のオープンスルー細孔を充填する段階は、CuSCN、PTTA、CuSCN、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、(P3HT)、CuOおよびCuI、PTAAおよびPEDOT:PSSから成る群から選択される電荷移動材料を含む前記変性溶液を用いて実行され、ここで、前記変性溶液内の前記電荷移動材料の総濃度は、0.1から100mg/mlまでの範囲である、項目12または13に記載の方法。
(項目15)
前記複数のオープンスルー細孔を充填する段階は、前記背面電極層の前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液を注ぎ込む段階、前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液をスプレーコーティングする段階、前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液をインクジェット印刷する段階および前記多孔質炭素材料上に前記変性溶液をスロットダイコーティングする段階を備える方法により実現される、項目12から14のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】