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特表2024-534231CK2媒介リン酸化を阻害する線状ペプチド及びそれを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】CK2媒介リン酸化を阻害する線状ペプチド及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240910BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240910BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240910BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240910BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240910BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240910BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20240910BHJP
   C07K 14/16 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C07K7/06
A61K38/08 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/42
C07K19/00
C07K14/00
C07K7/08
C07K14/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514574
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 CU2022050007
(87)【国際公開番号】W WO2023280330
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2021-0058
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】304012895
【氏名又は名称】セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マスフォロール ゴンザレス、ヨルダンカ
(72)【発明者】
【氏名】ガライ ペレス、ヒルダ、エリサ
(72)【発明者】
【氏名】レジェス アコスタ、オズワルド
(72)【発明者】
【氏名】ペレラ ネグリン、ヤセル
(72)【発明者】
【氏名】カバレロ メネンデス、エヴェリン
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス レぺス、ルイス、ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ベサーダ ペレス、ウラジミール、アルマンド
(72)【発明者】
【氏名】ペレア ロドリゲス、シルビオ、エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】ギレン ニエト、ジェラルド、エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ブランコ、ソニア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB21
4C076CC27
4C076EE41N
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA23
4C084CA59
4C084DC32
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045BA17
4H045BA40
4H045CA05
4H045DA55
4H045EA20
(57)【要約】
配列番号45、配列番号49、配列番号50及び配列番号57~配列番号62として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、酵素カゼインキナーゼ2(CK2)によって媒介されるリン酸化を阻害する線状ペプチド、ならびに前記ペプチド及び細胞内透過性ペプチドを含むポリペプチド。これらの線状ペプチド又はポリペプチドの少なくとも1つと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。本発明はまた、薬物の製造のための前記ペプチド又はポリペプチドの使用、及び前記薬物が投与される固形又は液状腫瘍を治療する方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号45、配列番号49、配列番号50及び配列番号57~配列番号62として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を特徴とする、酵素カゼインキナーゼ2(CK2)によって媒介されるリン酸化を阻害する線状ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の酵素カゼインキナーゼ2(CK2)によって媒介されるリン酸化を阻害する線状ペプチドと、細胞内透過性ペプチドとを含むポリペプチド。
【請求項3】
細胞内透過性ペプチドが、ヒト免疫不全ウイルスのTat1タンパク質由来のペプチドである、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
細胞内透過性ペプチドが、配列番号65又は配列番号66として特定されるアミノ酸配列を有する、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号35、配列番号47、配列番号48及び配列番号51~配列番号56として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載のカゼインキナーゼ2(CK2)媒介リン酸化を阻害する少なくとも1つの線状ペプチド又は請求項2~5のいずれかに記載のポリペプチドと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項7】
全身、腫瘍内、経口、又は粘膜経路による投与のために製剤化される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
固形又は液状腫瘍の治療に有用である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬を製造するための、請求項1に記載のカゼインキナーゼ2(CK2)によって媒介されるリン酸化を阻害する線状ペプチド、又は請求項2~5のいずれかに記載のポリペプチドの使用。
【請求項10】
医薬が、固形又は液状腫瘍の治療に使用される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
治療有効量の請求項6に記載の医薬組成物を投与することを含む、それを必要とする個体における固形又は液状腫瘍の治療方法。
【請求項12】
固形腫瘍が、肺、子宮頸部、喉頭、膵臓又は膀胱のものである、請求項11に記載の治療方法。
【請求項13】
液状腫瘍が、慢性リンパ性白血病、T型急性リンパ芽球性白血病、又は急性骨髄性白血病である、請求項11に記載の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子薬理学及びヒト医学の分野に関する。特に、本発明は、基質上のホスホアクセプター部位との直接相互作用を介して、酵素カゼインキナーゼ2(CK2)によって媒介されるリン酸化事象を阻害する線状ペプチドを得ることに関する。それらの生物学的活性によって、本発明のペプチド及びポリペプチドは、固形腫瘍及び他の起源の異なるタイプの治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
CK2は、細胞増殖の増加に関与するセリン/トレオニン酵素であり、その細胞内局在は、基本的に悪性転換の過程中の核である(Tawfic S.,et al.,2001、Histol.Histopathol.16:573-582)。したがって、この酵素は、魅力的な治療標的となる。(Duncan J.S.,et al.,2008,Biochim.Biophys.Acta,1784:33-47)。
【0003】
CK2酵素媒介リン酸化事象は、4,5,6,7-テトラブロモベンゾトリアゾール(TBB)(Pagano M.A.,et al.,2004,J.Med.Chem.,47:6239-6247)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Slaton J.W.,et al.,2004,Mol.Cancer Res.2:712-720)及び酵素の触媒サブユニットと調節サブユニットとの間の相互作用を遮断するペプチド(Laudet B.,et al.,2007,Biochem.J.,408:363-373)に由来する化学化合物を使用することによって、実験腫瘍学において操作されている。化学化合物CX-4945は、酵素CK2の2つの触媒サブユニットを阻害し(Siddiqui-Jain A.,et al.,2010,Cancer Res.70:10288-10298)、インビトロでの強力な細胞増殖阻害剤であり、5.5μMの平均最大阻害濃度(IC50)を有する。このCK2酵素阻害剤のみがヒトで十分に評価され、第I相臨床試験で好ましい薬物動態及び安全性パラメータが記録された(Lim J.K.C.,et al.,2010,Cancer Res.70:2763-2766)。このCK2酵素阻害剤のみがヒトで十分に評価され、第I相臨床試験で好ましい薬物動態及び安全性パラメータが記録された。(特許請求WO03/054002;Perea S.E.,et al.,2004,Cancer Res.,64:7127-7129)。
【0004】
CIGB-300ペプチドは、基質上のCK2ホスホアクセプター部位と相互作用する環状ペプチドと、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のTat1タンパク質由来の「細胞内浸透」ペプチドとを含むキメラ分子であり、細胞内でのその内在化を確保する。CIGB-300は、固形腫瘍の様々な系統、例えば肺、子宮頸部、喉頭(Perera Y.,et al.,2014,Mol Clin Oncol,2(6):935-944)、ならびに液状腫瘍、例えば慢性リンパ性白血病(Martins L.,et al.,2013,Oncotarget,5(1):258-263)及びT型急性リンパ芽球性白血病(Perera Y.,et al.,2020,Cancers,12,1377)において、インビトロ及びインビボで抗増殖特性及びアポトーシス促進特性を示している。さらに、このペプチドは、第I/II相臨床試験で検証された臨床的利益の徴候を示した(Perea S.,et al.,2011,Mol Cell Biochem.,356(1-2):45-50)(Sarduy M.,et al.,2015,Br.J.Cancer,112:1636-1643)。
【0005】
しかしながら、CIGB-300は、25アミノ酸のペプチドであり、その配列中にメチオニン及び分子内ジスルフィド結合を含有する。これらは、分子内の化学的不安定性の原因であり、液体又は凍結乾燥製剤及び安定性研究のいずれにおいても、製品開発のより高い段階での不一致の原因となり得る。(Frokjaer S.et al.,2000,Pharmaceutical formulation development of peptides and proteins.Taylor&Francis)。このペプチドに存在する主な不純物は、メチオニンの酸化、及び分子間ジスルフィド結合の形成による凝集体(二量体及び三量体)の形成に起因する。(Garay H.,et al.,2018,J Pept Sci.24(6):e3081).一方、システインを含有するペプチドの合成プロセスは、より厄介であり、(Albericio F.,et al.,2000,Fmoc solid phase peptide synthesis.A Practical Approach.Oxford University Press Inc,New York.Chapter 4,77-114)、分子内ジスルフィド結合の形成は、製造プロセスに追加の工程を導入し、製造コストを増加させる。したがって、線状ペプチドタイプであり、よりサイズ及び構造的複雑性が減少した、合成がより単純かつ安価である、CK2酵素によって媒介されるリン酸化の阻害剤を、種々の腫瘍に対する治療の開発のために得ることは依然として興味深い。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、CK2媒介リン酸化を阻害し、配列番号45、配列番号49、配列番号50、及び配列番号57~配列番号62として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する線状ペプチドを提供することによって、上記の問題を解決する。これらの配列を以下に示す:
【表1】
【0007】
これらのペプチドは、それらが線状であり、サイズがより小さく、化学的により安定であるという点でCIGB-300とは異なる。それらは、それらの配列中にメチオニン又はシステインを有さず、それは利点である。加えて、生産的な観点から、獲得はより実現可能である。
【0008】
配列番号45、配列番号49、配列番号50及び配列番号57~配列番号62として特定される線状ペプチドが、ヒトパピローマウイルス(HPV)-16(LNDSSEEEDEI)のE7基質上のCK2酵素のホスホアクセプター部位と相互作用する能力、及びこのがんタンパク質のCK2媒介リン酸化を阻害する能力のために選択された。本発明の例に見られるように、これらの線状ペプチドは、ペプチドCIGB-300と同様の様式でE7タンパク質のCK2媒介リン酸化を阻害することができる。
【0009】
内因性CK2基質に対する細胞内作用を達成するために、本発明のペプチドは、とりわけ、HIVのTat1タンパク質(Schwarze S.R.,et al.,2000,Trends Pharmacol,21:45-48)、la proteina VP22 del Virus Herpes Simples(Lindgreen M.,et al.,2000,Trends Pharmacol Sci,21:99-103)、Penetratin及びTransportan(Gariepy J.,et al.,2001,Trends Biotech 19:21-28)などのタンパク質に属する「細胞内透過」のペプチドと化学的にコンジュゲートすることができる。
【0010】
したがって、本発明はまた、配列番号45、配列番号49、配列番号50、及び配列番号57~配列番号62として特定される配列から選択されるアミノ酸配列を有する線状ペプチドと、1つの細胞透過性ペプチドとを含むポリペプチドを提供する。
【0011】
本発明の一実施形態では、これらのポリペプチド中の細胞内透過性ペプチドは、HIVのTat1タンパク質由来のペプチドである。その一実施形態では、細胞内透過性ペプチドは、配列番号65、配列番号66いずれかとして特定されるアミノ酸配列を有する。
【0012】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号35、配列番号47、配列番号48及び配列番号51~配列番号56として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。これらの配列を以下に示す:
【表2】
【0013】
これらのポリペプチドのほとんどは、様々ながん細胞株(肺、膀胱、喉頭、膵臓、及び白血病)においてIC50が低いため、ペプチドCIGB-300よりも活性である。ポリペプチドは、がん細胞の増殖に対して用量依存的効果をもたらすことができた。さらに、配列番号35として特定されるポリペプチドは、これらの細胞株においてCIGB-300と同様のIC50値を示す。しかしながら、それは、よりサイズが小さく、より化学的に安定した線状アミノ酸配列を有しており、治療用製品の開発を促進する生産的利点を有するので、優れていると考えられる。
【0014】
本発明に記載されるペプチドの特定のために、1600万を超える種々のペプチド配列を含む、タイプ「1ビーズ1化合物(one-bead-one-compound)」による線状ペプチドのコンビナトリアルライブラリーを合成し、ビオチンで修飾されたE7がんタンパク質の28~38領域を含む合成ペプチドを用いてスクリーニングを行った。質量分析を用いて、スクリーニングに陽性であった9つのビーズに含まれるペプチドの配列を指定した。配列番号1~配列番号9と特定されたペプチドを化学合成し、それらがHPV-16のE7がんタンパク質におけるCK2媒介リン酸化を阻害できることを確認した。内在性CK2基質に対する細胞内作用を達成するために、9つのペプチドを含むポリペプチドを設計及び合成し、HIV Tat1タンパク質に対応する細胞内透過ペプチドをN末端に付加した(GRKKRRQRRRPPQ、配列番号65として特定)。次に、NCI-H125株(非小細胞肺がん)の細胞増殖に対するこれら9つのポリペプチドの効果を評価した。評価した濃度の範囲では、いずれのポリペプチドもCIGB-300と同様の阻害値に達しなかった。それらのうち、配列番号18~配列番号20として特定される3つのみが、試験した最高濃度で20%~30%の細胞増殖を阻害したので、それらの配列を修飾して、それらの生物学的活性を改善した。
【0015】
配列番号18~配列番号20として特定されたポリペプチドの生物学的活性に対するTrp取り込みの影響を評価するために、Trpポジショナルスキャニングライブラリーを設計及び入手した。次に、Trpライブラリーで生成された24個のポリペプチド(配列番号21~配列番号44として特定される)のNCI-H125細胞株における抗増殖効果。24個のポリペプチドのうち、配列番号21、配列番号25、配列番号27、配列番号32、配列番号35及び配列番号43として特定された6個は、評価された最高濃度でペプチドCIGB-300と同様の細胞増殖阻害率を示した。NCI-H125及びAsPC-1(膵臓腺がん)細胞株において得られた、配列番号35として特定されるポリペプチド及びCIGB-300のIC50値は同等である。特に、配列番号35として特定されるポリペプチドは、より小さいサイズの線状配列であり、化学的により安定であり、生産上の利点を有するので、CIGB-300よりも優れていると考えられる。
【0016】
本発明において配列番号47及び配列番号48として特定される、CIGB-300ペプチドよりも活性な他の2つの線状ポリペプチドは、配列番号35として特定されるポリペプチドの3つの位置に第2のTrp残基を導入した試験の結果である。配列番号47及び配列番号48として特定されるポリペプチドは、膵臓がん(AsPC-1、PanC-1)及び急性骨髄性白血病(OCI-AML3)細胞株における細胞増殖を阻害する能力において、ペプチドCIGB-300よりも強力であり、使用した肺がん細胞株(NCI-H125)ではCIGB-300と同様であることが示された。
【0017】
配列番号47及び配列番号48として特定される配列に非天然アミノ酸を酵素分解を受けやすい部位に導入した結果、配列番号51~配列番号56として特定される、CIGB-300よりも活性な6個の新しい線状ポリペプチドが得られた。NCI-H125、Hep2C(喉頭がん)細胞株及び2つの膀胱がん株(MGH-U3及びMGH-U4)で抗増殖アッセイを行った。NCI-H125、Hep2C、MGH-U3及びMGH-U4細胞株で得られた配列番号51~配列番号56として特定されたペプチドのIC50値は、CIGB-300で得られたものよりも低く、それらがより強力であることを示している。膀胱がん系統(MGH-U3及びMGH-U4)の場合、CIGB-300と比較してIC50値が一桁低いことは非常に魅力的であり、なぜなら、それはわずかに調査されたニッチであり、分解されず、健康に大きな影響を与えるからである。非天然アミノ酸の導入を行って、プロテアーゼに対する安定性を高めた。驚くべきことに、CK2媒介リン酸化を阻害するこれらのポリペプチドの能力を増強することも可能であった。
【0018】
本発明はまた、配列番号45、配列番号49、配列番号50及び配列番号57~配列番号62として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの線状ペプチド、又は配列番号35、配列番号47、配列番号48及び配列番号51~配列番号56として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明の医薬組成物の一部を形成することができる賦形剤は、当業者に公知である。本発明の一実施形態では、医薬組成物は、全身、腫瘍内、経口、又は粘膜経路による投与のために製剤化される。本発明の一実施形態では、医薬組成物は、それを必要とする個体における固形又は液状腫瘍の治療に有用である。
【0020】
本発明の目的は、配列番号45、配列番号49、配列番号50及び配列番号57~配列番号62として特定される配列からなる群から選択される配列を有する線状ペプチド、又は配列番号35、配列番号47、配列番号48及び配列番号51~配列番号56として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの、薬物を製造するための使用である。
【0021】
本発明の一実施形態では、前記医薬は、固形又は液状腫瘍の治療に使用される。
【0022】
別の態様において、本発明は、必要とする個体における固形又は液状腫瘍を治療する方法を開示し、方法は、治療有効量の、配列番号45、配列番号49、配列番号50及び配列番号57~配列番号62として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの線状ペプチド、又は配列番号35、配列番号47、配列番号48及び配列番号51~配列番号56として特定される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む医薬組成物を投与することを含む。本発明の一実施形態では、治療される固形腫瘍は、肺、子宮頸部、喉頭、膵臓、又は膀胱の腫瘍である。本発明の別の実施形態では、治療される液状腫瘍は、慢性リンパ性白血病、T型急性リンパ芽球性白血病、又は急性骨髄性白血病である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】HPV-16E7がんタンパク質のCK2媒介リン酸化に対する、配列番号1~配列番号9の合成ペプチドの効果。CK2酵素のホスホアクセプター部位と相互作用しない2つのペプチド(配列番号10及び配列番号11として特定される)。毎分カウント(cpm)をY軸にプロットする。
図2】配列番号12~配列番号20として特定される9つのポリペプチドの、NCI-H125細胞株における細胞増殖の阻害率(%I)。ペプチドCIGB-300及びTatをアッセイの陽性対照(ポジティブコントロール)及び陰性対照(ネガティブコントロール)としてそれぞれ使用した。20%以上の細胞増殖の阻害率を示すポリペプチドを選択した。
図3】NCI-H125細胞株におけるポリペプチドF11P19、F11P20及びF11P21(配列番号18~配列番号20)の用量-効果曲線。アッセイの陽性対照として使用したCIGB-300ペプチドの用量-効果曲線を含める。% I:細胞増殖の阻害率C:濃度
図4】配列番号18~配列番号20として特定される配列から、電荷でのTrp残基の位置掃引(positional sweep)により(配列番号21~配列番号44)生成されたポリペプチドについての、NCI-H125細胞株における細胞増殖の阻害率(% I)。A.2つの濃度での、配列番号21~配列番号44として特定されるポリペプチドによって達成される阻害率。配列番号18~配列番号20として特定される前駆体ペプチド及び陽性対照としてのCIGB-300。破線の囲みは、200μMで60%超の細胞増殖阻害を示した6つのポリペプチド及びCIGB-300を概説している。B.最も活性な6つのポリペプチドの、12.5μM~200μMの様々な濃度によって達成される阻害率。
図5】NCI-H125細胞株におけるポリペプチドA14P27(配列番号21)、A14P31(配列番号25)、A14P33(配列番号27)、A14P43(配列番号32)、A14P46(配列番号35)、A14P59(配列番号43)の用量-効果曲線。対照ペプチドとして使用したCIGB-300ペプチドの用量-効果曲線を含める。% I:細胞増殖の阻害率C:濃度
図6】AsPC-1細胞株におけるポリペプチドA14P46(配列番号35)及びCIGB-300ペプチドの用量-効果曲線。% I:細胞増殖の阻害率。C:濃度
図7】NCI-H125細胞株におけるポリペプチドA15P35、A15P36及びA15P37(配列番号46~配列番号48)の用量-効果曲線。前駆体ポリペプチドA14P46(配列番号35)、及び対照として使用したCIGB-300ペプチドが含まれる用量-効果曲線。% I:細胞増殖の阻害率。C:濃度
図8】NCI-H125細胞株におけるポリペプチドE17P01、E17P02及びE17P03(配列番号51~配列番号53)の用量-効果曲線。前駆体ポリペプチドA15P36の用量-効果曲線が含まれる。(配列番号47)及び対照として使用したCIGB-300。% I:細胞増殖の阻害率。C:濃度
図9】NCI-H125細胞株におけるポリペプチドD17P78、D17P79及びD17P80(配列番号54~配列番号56)の用量-効果曲線。前駆体ポリペプチドA15P37(配列番号48)、及び対照として使用したCIGB-300が含まれる用量-効果曲線。% I:細胞増殖の阻害率。C:濃度
図10】胸腺欠損マウスに移植したヒト膀胱腫瘍モデルにおける、CK2リン酸化のポリペプチド阻害剤E17P01(配列番号51)の抗腫瘍効果。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0024】
例1.HPV-16のE7タンパク質中のCK2酵素のホスホアクセプター部位と相互作用する線状ペプチドの選択。
CK2酵素のホスホアクセプター部位と相互作用する生物活性線状ペプチドを特定するために、1600万を超える種々のペプチド配列を含む、「1ビーズ1化合物(one-bead-one-compound)」のタイプによりBCP-1と命名された合成線状ペプチドのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングした。このライブラリーは、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)配列分析(Masforrol Y.,et al.,2012,ACS Combinatorial Science,14(3):145-9)に適合するように設計された。スクリーニングは、HPV-16(配列番号63として特定されるLNDSSEEEDEI)のE7基質中にCK2酵素のホスホアクセプター部位を含有する、BIOTと呼ばれるビオチン化合成ペプチドを用いて行った。ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼコンジュゲートを認識分子として使用し、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸p-トルイジン塩(BCIP)を成長用基質として使用した。青色は、BCP-1ライブラリーにおけるTentaGel樹脂の明るい淡黄色と比較して、BIOTペプチドによって認識される生物活性配列を含有するビーズの視覚的識別を容易にする。BIOTペプチドは、Fmoc/tBu化学を用いて4-メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂上で合成した(Field GB and Noble RL.Int.J.Peptide Protein Res.1990;35(3):161-214)。これを逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって精製し、その同一性をESI-MSによって確認した。それは95%を超える純度で得られ、ESI-MS分析により、その分子量(MM)が1574.6Daであることが確認された。
【0025】
BCP-1ライブラリーを、真空濾過システム及び機械的撹拌を備えたポリプロピレン反応器に入れた。これを精製水及び生理食塩水リン酸緩衝液(PBS)pH7.4で洗浄し、PBS pH7.4中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間ブロックした。溶媒及び試薬を真空濾過によって除去した。ライブラリーを、PBS pH7.4中1% BSA中150μg/mLのBIOTペプチド溶液80mLと共に4℃で16時間インキュベートした。これをTween-PBS(T-PBS)pH7.4で洗浄し、PBS pH7.4中の1% BSAの溶液中でストレプトアビジン-アルカリホスファターゼコンジュゲート(0.4μg/mL)とインキュベートした。2時間後、これをT-PBS pH7.4で洗浄し、基質溶液中のBCIP(0.5mg/mL)と共に30分間インキュベートした。青色が現れたら、濾過及びPBS pH7.4での十分な洗浄によって反応を停止させた。
【0026】
陽性ビーズを、接眼レンズを用いて目視検査によって残りから分離し、フリットを備えた反応器に移し、再生した。続いて、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼコンジュゲート及びBCIPによる非特異的認識を排除する試験を行った。スクリーニングは、より高いストリンジェンシーの条件下で実施して、より高い親和性の配列を選択し、陽性ビーズの数を減少させ、このため、BIOTペプチドの濃度は120μg/mLまで減少した。上記の手順に従って、陽性ビーズを再生し、nanoESI-MS/MSによって配列を特定した(Masforrol Y.,et al,2012,ACS Combinatorial Science,14(3):145-9)。
【0027】
150μg/mLのペプチドBIOTによる初期スクリーニングの結果、56個の陽性ビーズを選択した。より低い濃度のBIOT(120μg/mL)を用いた2回目のスクリーニングの後、最初のスクリーニングでの陽性ビーズのうち、これらのペプチドのCK2ホスホアクセプター部位への親和性がより大きいことを証明する、残りのものよりも強い青色着色を示した9個の陽性ビーズを選択した。9個の陽性ビーズから得られたnanoESI-MS/MSスペクトルを、BCP-1データベースを検索するためにMascotプログラムを使用して、手動デノボシーケンシング及び自動シーケンシングによって並行して分析した。表1は、特定された9つのペプチドの配列を示す(配列番号1~配列番号9)。各ペプチドに割り当てられた配列の分析から、手動での特定と自動シーケンシングとの間にm/zシグナルの割り当ての完全な対応関係が得られ、これにより、各ケースでのペプチド配列の正確な特定が可能になった。
【表3】
【0028】
表1に示す9つのペプチドのアミノ酸組成に類似性が認められた。これは、塩基性アミノ酸(K,R)の優位性及び疎水性アミノ酸(L、A、V、F、Y)の存在を特徴とする。
【0029】
nanoESI-MS/MSによって特定された9個の配列がE7タンパク質中のCK2酵素のホスホアクセプター部位と相互作用することを補強するために、Fmoc/tBu化学を用いてペプチドをTentagel樹脂上で直接合成した(Field G.B.et al.,1990,Int.J.Peptide Protein Res.,35(3):161-214)。120μg/mLの濃度のBIOTペプチドを用いて、樹脂に結合したペプチドに対して酵素反応を行った。ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼコンジュゲートを認識分子として使用し、BCIPを成長のための基質として使用した。樹脂に結合した符号化されたペプチド(P1~P9)15mgを含有する9つの反応器を、機械的に撹拌しながら真空濾過システムに入れた。樹脂に結合された、E7タンパク質上のCK2ホスホアクセプター部位と相互作用しない2つの対照ペプチド(配列番号10として特定されるP10及び配列番号11として特定されるP11)を使用した。各反応器について500μLの作業体積でBCP-1ライブラリースクリーニングアッセイを再現するように手順を調整した。結果は、樹脂(P1~P9)に結合された9個のペプチドが酵素アッセイ後に強い青色を発生させることを示し、9個の特定された線状ペプチドの、基質E7モデル中のCK2酵素のホスホアクセプター部位と相互作用する能力を証明している。対照的に、樹脂結合対照ペプチド(P10及びP11)は青色呈色を発生させなかった。
【0030】
例2.配列番号1~配列番号9として特定されたペプチドの、HPV-16 E7がんタンパク質のCK2媒介リン酸化に対する効果。
ペプチドは、Fmoc/tBu化学を用いてMBHA樹脂上で合成した(Field GB and Noble RL.Int.J.Peptide Protein Res.1990;35(3):161-214)。ペプチドをRP-HPLCによって精製し、それらの同一性をESI-MSによって確認した。合成のために、それらをF11P04~F11P12と命名し、それらのアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号9として特定された配列に対応する。表2に見られるように、全てが95%を超える純度で得られ、ESI-MS分析によりその同一性が確認された。
【表4】
【0031】
HPV-16 E7がんタンパク質のCK2媒介リン酸化に対するこれらのペプチドの効果を測定するためのアッセイは、インビトロリン酸化反応に基づいており、そこでは大腸菌で発現されたHPV-16のE7がんタンパク質が基質として使用された。このがんタンパク質を、グルタチオンS-トランスフェラーゼに対する融合タンパク質として得た。アッセイは、前述の手順に従って実施した。(Perea S.E.,et al.,2004,Cancer Res.,64:7127-7129)。結果は図1に示され、配列番号1~配列番号9として特定されたペプチドが、HPV-16のE7タンパク質のCK2媒介リン酸化を阻害することができることを示す。
【0032】
例3.非小細胞肺がん株NCI-H125における細胞増殖に対する、配列番号12~配列番号20として特定される合成ポリペプチドの効果。
内在性CK2基質に対する細胞内作用を達成するために、HIVのTat1タンパク質に対応する、配列番号1~配列番号9として特定された配列の細胞内透過ペプチドTatをN末端に付加した(GRKKRRQRRRPPQ)。ベータアラニン(βA)残基を、目的のペプチドとTatペプチドとの間のスペーサーとして導入した。ポリペプチドは、合成のためにF11P13~F11P21として符号化され、表3に示すように、配列番号12~配列番号20として特定された配列に対応する。ペプチドCIGB-300を配列番号64として特定し、Tatペプチドを配列番号65として特定した。ペプチドの合成、精製及び同一性分析を例2に示すように行った。表3に示されるように、それらの全てが95%を超える純度で得られ、ESI-MS分析によりそれらの同一性が確認された。
【表5】
【0033】
NCI-H125細胞株に対して、ポリペプチドF11P13~F11P21(配列番号12~配列番号20)の抗増殖活性の評価を行った。細胞株は、低濃度の評価中の薬物に対して高い感受性を示す(HU L.-Y.,et al,2018,European Review for Medical and Pharmacological Sciences,22:4551-4556)。CIGB-300ペプチドの抗増殖効果は、この株で広く特徴付けられており(Cirigliano S.M.,et al.,2017,Cancer Cell International,17,42)、したがって、これを陽性対照として選択した。Tatペプチドを陰性対照として使用した。ポリペプチドを25、50、100及び200μMの濃度で評価した。細胞増殖アッセイを、以前に説明された手順によって行った(Perera Y.,et al.,2012,J.Pept.Sci,18(4):215-23)。
【0034】
図2は、NCI-H125細胞における抗増殖アッセイからのデータを示す。各バーは、評価したポリペプチドの濃度(25、50、100及び200μM)で到達した細胞増殖阻害率(% I)の値に対応する。20%以上の細胞増殖阻害値を示したポリペプチドを、このパーセンテージ値がアッセイの変動係数の範囲内であるので選択した。ポリペプチドF11P19、F11P20及びF11P21のみが、200μMの濃度で20%~30%の細胞増殖を阻害した。対照として使用したペプチドCIGB-300では、達成された増殖阻害は50%のみであった。
【0035】
図3は、ペプチドCIGB-300と比較した、ポリペプチドF11P19、F11P20及びF11P21の用量-効果曲線を示す。ポリペプチドF11P19、F11P20、F11P21及びCIGB-300のIC50値は、それぞれ336μM、305μM、668μM及び64μMであった。ポリペプチドF11P19、F11P20、F11P21のIC50値は、CIGB-300について得られたIC50値からまだ遠いので、前記一次構造を最適化して、それらの生物学的活性を改善する必要がある。
【0036】
例4.電荷でのトリプトファンスキャンによる、配列番号18~配列番号20として特定された配列の最適化。
Trpアミノ酸を設計によりBCP-1ライブラリー合成から除外した(Masforrol Y.,et al、2012、ACS Combinatorial Science、14(3):145-9)。このために、Trpポジショナルスキャニングライブラリーを、配列番号18~配列番号20として特定される配列について設計し、そこで電荷のTrpの各アミノ酸残基への置換を時間通りに行った(表4)。これにより、カーゴ配列の各位置におけるTrpの寄与を調査することができた。
【0037】
Fmoc/tBu化学(Field GB y Noble RL.Int.J.Peptide Protein Res.1990;35(3):161-214)を使用してMBHA樹脂上でTrpポジショナルスキャニングライブラリーポリペプチドを合成し、RP-HPLC精製し、ESI-MSによって同一性を確認した。アミノ酸配列を示す表4に見られるように、それらは全て95%を超える純度で得られ、ESI-MS分析により、設計された分子との同一性が確認された。
【表6】
【0038】
Trpによる修飾が、E7タンパク質中のCK2酵素のホスホアクセプター部位と相互作用するポリペプチドの能力に影響を及ぼさないことを実証するために、例1に記載の手順に従った。樹脂に結合された24個のポリペプチドは、酵素アッセイ後に青色が強く現れ、モデルE7基質のCK2酵素のホスホアクセプター部位との相互作用が証明された。一方、Trpによる修飾が、CK2によるE7タンパク質のリン酸化に対するポリペプチドの効果に影響を及ぼさないことを実証するために、例2に記載の手順に従った。60~85%のリン酸化阻害値が得られたので、配列番号21~配列番号44として特定される24個のポリペプチドは、CK2によって媒介されるHPV-16のE7タンパク質のリン酸化を阻害する能力を維持した。CIGB-300は、リン酸化の87%の阻害を示した。
【0039】
Trpのポジショナルスキャニングによって生成された合成ポリペプチド(配列番号21~配列番号44)の、NCI-H125細胞株に対する抗増殖活性の評価を行った。試験は、前述の手順によって実施した。(Perera Y.,et al.,2012,J.Pept.Sci,18(4):215-23)。前駆体ポリペプチド(F11P19、F11P20、F11P21)及びペプチドCIGB-300を陽性対照として含めた。ポリペプチドを12.5、25、50、100及び200μMの濃度で評価した。図4Aは、100及び200μMのポリペプチド濃度での細胞増殖の阻害率の結果を示す。結果は、評価した24個のポリペプチドのうち6個(A14P27(配列番号21)、A14P31(配列番号25)、A14P33(配列番号27)、A14P43(配列番号32)、A14P46(配列番号35)、A14P59(配列番号43))が、ペプチドCIGB-300で見られる効果と同様に、200μMで60%を超える細胞増殖の阻害を示したことを示す。図4Bは、評価された濃度で、6個の選択されたポリペプチドについて得られた細胞増殖の阻害率の値を示す。図から分かるように、A14P46ポリペプチドは、CIGB-300の挙動と同様に、100及び200μMを超える濃度で細胞増殖の50%超を阻害する。より低い濃度では、A14P46ポリペプチドは、CIGB-300ペプチドの性能と比較して、より良好な用量-効果相関を示した。
【0040】
図5は、ポリペプチドA14P27、A14P31、A14P33、A14P43、A14P46、A14P59及びCIGB-300の用量-効果曲線を示す。その部分に関して、表5は、これらの6つのポリペプチドのIC50値が、それらの前駆体ポリペプチドF11P19(336μM)、F11P20(305μM)及びF11P21(668μM)について得られたものよりも低いことを示す。A14P46ポリペプチド(72μM)のIC50は、CIGB-300参照ペプチド(64μM)のIC50に匹敵する。
【0041】
ペプチド配列Xに対して行った構造研究により、位置XでのDのWへの変更が生物学的活性を増強するために必須であると結論付けることができ(A14P46>>A14P33>A14P59)、ポリペプチドA14P46での応答が最高であった。さらに、位置X4>X5>X1も生物学的活性に関して顕著な結果を示すと結論付けられ、前記位置の置換における第2のアミノ酸Wの導入を示唆した。
【表7】
【0042】
ポリペプチドA14P46(配列番号35)の生物学的活性がそれらの電荷位置(RKRSRYWP)のみに起因することを実証するために、この例に記載の合成手順を使用して、Tat及びβA配列を含まない類似のペプチドを合成した。配列番号45として特定されたペプチドD14P165は、95%の純度で得られ、ESI-MSによる分析によって、そのMWが1146,7Daであることが実証された。リン酸化阻害アッセイを例2に記載のように実施し、85%の阻害が得られ、HPV-16 E7タンパク質のCK2媒介リン酸化を阻害するペプチドの能力を確認した。
【0043】
ポリペプチドA14P46がNCI-H125細胞株においてCIGB-300と同様の生物学的活性結果を示したことを考慮して、膵臓腺がん腫瘍系統(AsPC-1)におけるそのようなポリペプチドの挙動を、CIGB-300と比較して試験した。細胞増殖アッセイを、以前に説明された手順に従って行った(Perera Y.,et al.,2012,J.Pept.Sci,18(4):215-23)。図6に示されるように、両方の分子は、AsPC-1細胞の増殖に対して用量依存的な効果を生じさせることができる。A14P46での125μMのIC50値及びCIGB-300での102μMのIC50値が得られ、両方のペプチドがこの細胞株において同様の効力を有することを示している。
【0044】
ポリペプチドA14P46(配列番号35)は、NCI-H125及びAsPC-1細胞株における細胞増殖を阻害するその能力においてCIGB-300に匹敵することが示されるが(図5及び図6)、より小さいサイズの線状ポリペプチドであり、化学的により安定であり、その配列中にメチオニン又はシステインのいずれも含まず、それによって生産的な観点からより魅力的になるので、優れている。
【0045】
例5.配列中に第2のTrp残基を導入することによる、配列番号35として特定されるポリペプチドの最適化。
例4で得られた結果に基づいて、A14P46ポリペプチドの位置X、X及びXに別のTrp残基を導入し、生物活性に対するその影響を評価した。Fmoc/tBu化学(Field GB y Noble RL.Int.J.Peptide Protein Res.1990;35(3):161-214)を使用してMBHA樹脂上でポリペプチドを合成し、RP-HPLCによって精製し、ESI-MSによって同一性を確認した。表6に示されるように、3つのペプチドが95%を超える純度で得られ、ESI-MS分析により分子の同一性が確認された。
【表8】
【0046】
合成ポリペプチドA15P35、A15P36及びA15P37(配列番号46~配列番号48)の抗増殖活性の評価を、NCI-H125、AsPC-1、PanC-1(膵臓がん)及びOCI-AML3(急性骨髄性白血病-3)細胞株に対して行った。以前に記載された手順に従って試験を行った(Perera Y,et al.,2012,J.Pept.Sci,18(4):215-23)。図7は、NCI-H125細胞株における3つのポリペプチドの用量-効果曲線を、その前駆体A14P46及び対照ペプチドCIGB-300と比較して示す。ポリペプチドA15P35、A15P36及びA15P37は、NCI-H125細胞の増殖に対して用量依存的効果をもたらすことができた。AsPC-1、PanC-1及びOCI-AML3株では、3つのポリペプチドは用量反応パターンも示した。
【0047】
表7は、NCI-H125、AsPC-1、PanC-1及びOCI-AML3細胞株で得られたA15P35、A15P36及びA15P37ポリペプチドのIC50値を、それらの前駆体A14P46及び対照ペプチドCIGB-300と比較してまとめたものである。ポリペプチドA15P35のIC50値は、試験した4つの系統において、その前駆体A14P46及びCIGB-300について得られたものと同様であり、配列の位置X1におけるTrpの導入は無関係であることを示している。対照的に、ポリペプチドA15P36及びA15P37について得られたIC50値は、特に膵臓がん細胞株(AsPC-1、PanC-1)及び急性骨髄性白血病(OCI-AML3)において、ポリペプチドA14P46及びペプチドCIGB-300について得られたものよりも低かった。
【表9】
【0048】
A15P36ポリペプチド(配列番号47)及びA15P37(配列番号48)の生物学的活性が電荷RKRWRYWP及びRKRSWYWPのみに起因することを実証するために、この例に記載の合成手順を用いて、両ペプチドをTat又はβA配列なしで合成した。ペプチドD15P105(配列番号49)及びD15P106(配列番号50)が95%を超える純度で得られ、ESI-MS分析により、それぞれ1245.7Da及び1176.6Daの分子量が確認された。リン酸化アッセイを例2に記載のように実施し、87%及び82%のリン酸化阻害値がそれぞれ得られ、HPV-16 E7タンパク質のCK2媒介リン酸化を阻害する両方のペプチドの能力を確認した。
【0049】
この例の結果は、ポリペプチド配列A14P46(配列番号35)の位置X4及びX5における第2のTrpの導入が、ペプチドとホスホアクセプター部位との相互作用、したがってCK2によるリン酸化を阻害するその能力を支持することを示す。A15P36及びA15P37ポリペプチドは、膵臓がん(AsPC-1、PanC-1)及び急性骨髄性白血病(OCI-AML3)細胞株における細胞増殖を阻害するそれらの能力において、CIGB-300よりも強力であることが示されている。両方のポリペプチドは、メチオニン及びシステインなどの感受性残基を有しないので、より小さいサイズの化学的により安定な線状配列であるという、さらなる利点を有する。加えて、それらは生産的な観点からより魅力的である。
【0050】
例6.非天然アミノ酸(D-及びL-N-メチルアミノ酸)を導入することによる、配列番号47及び配列番号48として特定されるポリペプチドの最適化。
ポリペプチドA15P36(配列番号47)及びA15P37(配列番号48)を体液中のエンドペプチダーゼの作用から保護するために、非天然アミノ酸を、トリプシン及びキモトリプシンによる分解をより受けやすい配列の部位に導入した。タンパク質分解に最も感受性の部位は、Expasyサイト(http://www.expasy.org)(Gasteiger E.,et al.,2003,Nucleic Acids Research.31(13):3784-3788)の助けを借りて予測した。D-ArgをTatのR8に組み込み、K16、R17及びY20の保護を、D-Lys、D-Arg及びNMe-Tyrをそれぞれ導入して評価した。各ポリペプチドのN末端をアセチル化してN-ペプチダーゼから保護した。ポリペプチドE17P01、E17P02及びE17P03(配列番号51~配列番号53)はA15P36の誘導体であり、ポリペプチドD17P78、D17P79及びD17P80(配列番号54~配列番号56)はA15P37の誘導体である。Fmoc/tBu化学を使用してMBHA樹脂上でポリペプチドを合成し、RP-HPLCによって精製し、ESI-MSによって同一性を確認した。表8に示されるように、全てが95%を超える純度で得られ、ESI-MS分析により分子の同一性が確認された。
【表10】
【0051】
非天然アミノ酸の導入が、E7タンパク質中のCK2酵素のホスホアクセプター部位と相互作用するポリペプチドの能力に影響を及ぼさないことを実証するために、例1に記載の手順に従った。樹脂に結合された6個のポリペプチドは、酵素アッセイ後に濃い青色が現れ、モデルE7基質のCK2酵素のホスホアクセプター部位との相互作用が証明された。一方、修飾が酵素CK2によるE7タンパク質でのリン酸化に対するペプチドの効果に影響を及ぼさないことを実証するために、例2に記載の手順に従った。配列番号51~配列番号56として特定されるポリペプチドE17P01~E17P03及びD17P78~D17P80は、HPV-16のE7タンパク質でのCK2媒介リン酸化を阻害する能力を維持し、83~90%のリン酸化阻害値が得られた。
【0052】
NCI-H125、Hep2C(喉頭がん)細胞株及び2つの膀胱がん株(MGH-U3及びMGH-U4)で抗増殖アッセイを行った。以前に記載された手順に従って試験を行った(Perera Y.,et al,2012,Pept.Sci,18(4):215-23)。
【0053】
図8及び9は、それぞれポリペプチドE17P01、E17P02及びE17P03(配列番号51~配列番号53)ならびにD17P78、D17P79及びD17P80(配列番号54~配列番号56)のNCI-H125細胞株における用量-効果曲線を示す。対照CIGB-300ペプチドならびに前駆体ポリペプチドA15P36及びA15P37をそれぞれ含めた。6つのポリペプチドは、NCI-H125の細胞株の増殖に対して用量依存的効果をもたらすことができた。Hep2C、MGH-U3及びMGH-U4細胞株では、6つ全てのポリペプチドは用量-応答パターンも示した。
【0054】
表9は、細胞株NCI-H125、Hep2C、MGH-U3及びMGH-U4で得られたポリペプチドE17P01、E17P02、E17P03、D17P78、D17P79及びD17P80(配列番号51~配列番号56)のIC50値を、それらの前駆体及び対照ペプチドCIGB-300と比較してまとめたものである。
【0055】
表9は、配列番号51~配列番号56として特定されたポリペプチドのIC50値が、NCI-H125、Hep2C、MGH-U3及びMGH-U4細胞株において、ペプチドCIGB-300で得られたものよりも低く、それらがそれらの抗増殖効果の点でより強力であることを示している。驚くべきことに、膀胱がん系統(MGH-U3及びMGH-U4)の場合、IC50値はCIGB-300と比較して一桁低く、非常に魅力的であり、なぜなら、それはわずかに調査されたニッチであり、分解されず、健康に大きな影響を与えるからである。プロテアーゼに対する安定性を高めるために、A15P36及びA15P37ポリペプチドへの修飾を導入した。しかしながら、驚くべきことに、CK2リン酸化を阻害する能力も増強された。
【表11】
【0056】
配列番号51~配列番号56として特定されたペプチドの生物学的活性がそれらの電荷のみに起因することを実証するために、この同じ例に記載の合成手順を使用して、Tat及びβA配列を含まないペプチドを合成した。ペプチドD17P81~D17P86(配列番号57~配列番号62)が95%を超える純度で得られ、ESI-MS分析により、設計されたもので得られた分子の同一性が確認された(表10)。
【表12】
【0057】
リン酸化アッセイを例2に記載のように実施し、83~90%のリン酸化阻害値が得られ、HPV-16 E7タンパク質のCK2媒介リン酸化を阻害するこれらのペプチドの能力を確認した。
【0058】
要約すると、配列番号51~配列番号56として特定されるポリペプチドは、細胞増殖を阻害する能力、特に膀胱がんの系統(MGH-U3及びMGH-U4)における阻害活性に関して、ペプチドCIGB-300よりも強力である。さらに、これらのペプチドは、線状であり、サイズがより小さく、化学的により安定であり、製造の観点から明白な利点をもたらす。
【0059】
例7.胸腺欠損マウスに移植したヒト膀胱腫瘍モデルにおける、CK2リン酸化のポリペプチド阻害剤の抗腫瘍効果。
これらの試験のために、6~8週齢の胸腺欠損雌BalbCマウスを使用した。膀胱細胞がん由来のMGH-U3細胞を使用した。このモデルにおける腫瘍移植のために、細胞を1000000細胞/ミリリットルの濃度でPBSに懸濁した。細胞懸濁液を動物の腹腔内に皮下接種した。E17P01ポリペプチド(配列番号51として特定される)又はCIGB-300の投与を、腫瘍細胞を接種した5日後に開始し、5日間連続して腹腔内投与し続けた。ポリペプチド及びペプチドをPBSに溶解した。投与量は20μgであり、1mg/kg体重に相当する。異なる時点で、ポリペプチドの抗腫瘍効果を評価するためのパラメータとして、腫瘍体積(mm)を測定した。図10に見られるように、E17P01ポリペプチドは、CIGB-300で観察されるものよりも大きい、腫瘍進行を阻害するその能力を示した。これらの結果は、実験動物に移植されたヒト腫瘍のモデルにおいて、配列番号51として特定されるポリペプチドの抗腫瘍効果を証明した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】