(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】向上した視覚性能を有するレンズ要素
(51)【国際特許分類】
G02C 7/02 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G02C7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515670
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022077626
(87)【国際公開番号】W WO2023057475
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ジローデ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド・リオ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
(72)【発明者】
【氏名】サミー・アムラウイ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・フェルミジエ
(57)【要約】
装用者によって装用され、且つ装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供するように意図されるレンズ要素が提案される。レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折の進行を鈍化させるために、装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造を含む。レンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者によって装用され、且つ前記装用者の眼の異常屈折を矯正するために、前記装用者の処方に基づいて屈折力を提供するように意図されるレンズ要素であって、
- 前記装用者の前記眼の前記異常屈折の進行を鈍化させるために、前記装用者の前記眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造を含み、
- 前記レンズ要素の変調伝達関数は、前記レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について前記光学微細構造を通して測定される場合、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上、好ましくは0.10以上である、レンズ要素。
【請求項2】
前記装用者の前記眼の前記異常屈折を矯正するために、前記装用者の前記処方に基づいて前記屈折力を提供するように構成される屈折領域を更に含む、請求項1に記載のレンズ要素。
【請求項3】
前記光学微細構造は、前記装用者の前記眼の前記異常屈折を矯正するために、前記装用者の前記処方に基づいて前記屈折力を提供する追加の光学機能を有する、請求項1に記載のレンズ要素。
【請求項4】
前記変調伝達関数は、前記レンズ要素の前記光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について前記光学微細構造を通して測定される場合、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15以上、好ましくは0.25以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のレンズ要素。
【請求項5】
前記変調伝達関数は、例えば、中心視について、前記レンズ要素の前記光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について前記光学微細構造を通して測定される場合、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上、好ましくは0.10以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のレンズ要素。
【請求項6】
前記変調伝達関数は、例えば、中心視について、前記レンズ要素の前記光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について前記光学微細構造を通して測定される場合、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.70以上、好ましくは0.85以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のレンズ要素。
【請求項7】
前記変調伝達関数は、例えば、中心視について、水平変調伝達関数又は垂直変調伝達関数、好ましくは水平変調伝達関数である、請求項1~6のいずれか一項に記載のレンズ要素。
【請求項8】
前記光学微細構造は、前記レンズ要素の物体側表面及び/若しくは眼球側表面上並びに/又は前記物体側表面と前記眼球側表面との間に配設される、請求項1~7のいずれか一項に記載のレンズ要素。
【請求項9】
前記物体側表面及び/又は前記眼球側表面上にコーティングを含む、請求項8に記載のレンズ要素。
【請求項10】
前記光学微細構造は、例えば、マイクロレンズ等の複数の光学要素を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のレンズ要素。
【請求項11】
前記複数の光学要素は、例えば、グリッド、ハニカム又は同心リング等の網目構造内に位置決めされる、請求項10に記載のレンズ要素。
【請求項12】
前記レンズ要素の前記変調伝達関数は、例えば、中心視について、前記レンズ要素の表面を通して測定され、前記光学微細構造は、前記表面の20%以上、好ましくは40%以上を被覆する、請求項1~11のいずれか一項に記載のレンズ要素。
【請求項13】
前記レンズ要素の前記変調伝達関数は、例えば、周辺視について、前記レンズ要素の前記光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について測定される場合、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.8以下、好ましくは0.7以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載のレンズ要素。
【請求項14】
前記変調伝達関数は、例えば、周辺視について、前記レンズ要素の前記光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について測定される場合、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載のレンズ要素。
【請求項15】
装用者の眼の異常屈折を矯正するために、前記装用者の処方に基づいて屈折力を提供し、且つ前記装用者の前記眼の異常屈折の進行を鈍化させるために前記装用者によって装用されるように意図されるレンズ要素を特定するためのコンピュータ実装方法であって、前記レンズ要素は、前記装用者の前記眼の前記異常屈折の前記進行を鈍化させるために、前記装用者の前記眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造を含み、前記コンピュータ実装方法は、
- 前記装用者の処方を提供するステップ、
- 変調伝達関数が、前記レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について前記光学微細構造を通して測定される場合、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上、好ましくは0.10以上であるように前記光学微細構造を特定するステップ、
を含む、コンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用レンズの分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、装用者の視覚性能を維持しながら、異常屈折の進行を抑制するか又は鈍化させるために装用者によって装用されるように意図されるレンズ要素に関する。
【背景技術】
【0003】
異常屈折の進行を抑制するか又は鈍化させるための幾つかの解決策が存在する。
【0004】
国際公開第2012/034265号パンフレットは、屈折異常を矯正するための少なくとも1つの屈折力矯正ゾーンと、近視の眼の成長を抑制するために、網膜の少なくとも一部の前に少なくとも1つの非均質な焦点ぼけ像を投影するための少なくとも1つの焦点ぼけゾーンとを含む同心環状マルチゾーン屈折レンズを提供することにより、近視の進行を遅らせるための第1の解決策を開示しており、矯正ゾーンと焦点ぼけゾーンとは、交互に配置され、レンズは、円形の第1の矯正ゾーンである中央ゾーンを有する。
【0005】
米国特許出願公開第2017/0131567号明細書は、第1の補正領域と、眼の網膜以外の位置に像の焦点を合わせるように構成される、レンズの中心部分の近傍における複数の独立した島状領域とを含む眼鏡レンズを提供することにより、近視の進行を抑制する第2の解決策を開示している。
【0006】
国際公開第2019/1666653号パンフレットは、中央処方部分と、非球面光学機能を有する複数の光学要素とを含むレンズ要素を提供することにより、眼の異常屈折の進行を鈍化させる第3の解決策を開示している。
【0007】
国際公開第2019/152438号パンフレットは、クリアアパーチャを囲む散乱領域を含む眼用レンズを提供することにより、眼長障害を治療するための第4の解決策を開示している。
【0008】
これらの解決策の全ては、異常屈折の進行を鈍化させるために、周辺視野内の光学微細構造によって囲まれる透明な中央ゾーンを含む。透明な中央ゾーンは、自由光学要素であり、視覚性能に対する影響を示さない。しかしながら、周辺視野内の光学微細構造は、レンズ要素の視覚性能に影響を及ぼす。
【0009】
最近の制御された臨床試験は、レンズ要素が装用者(通常、子供)によって1日あたり十分な時間にわたって装用された場合、異常屈折の進行を鈍化させる周辺光学微細構造の利点の証拠を提供した(Bao,Yang,Huang,Li,Pan,Ding,Lim,Zheng,Spiegel,Drobe,Lu,Chen.One-year myopia control efficacy of spectacle lenses with aspherical lenslets.British Journal of Ophthalmology,2021,0,1-6)。通常の直視状態では、周辺部に光学微細構造を有する眼鏡レンズを使用する子供は、透明な中央ゾーンを覗き込むことになり、視覚性能に対する影響がない。しかしながら、眼の動き及び考えられる眼鏡フレームの位置シフトにより、視軸が光学微細構造を通過する可能性がある。そのような場合、視覚性能の低下は、装用時間に悪影響を及ぼし、従ってレンズの利点を制限する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、レンズ要素の視覚性能を維持しながら、装用者の異常屈折の進行を抑制するか又は鈍化させるための周辺光学微細構造を含むレンズ要素を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、これに関連するものである。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、装用者によって装用され、且つ装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供するように意図されるレンズ要素であって、装用者の眼の異常屈折の進行を鈍化させるために、装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造を含み、レンズ要素の変調伝達関数は、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上、好ましくは0.10以上である、レンズ要素が提供される。そのような瞳孔の位置は、標準的な装用状態において15°の注視方向に対応し得る。
【0013】
有利には、以下に詳述するように、例えば中心視について、変調伝達関数の値の範囲は、レンズ要素の視覚性能が読書活動中に保存されることを確実にする。
【0014】
他の実施形態によれば、提案するレンズ要素は、以下の追加の特徴の少なくとも1つも含み得る。
- レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供するように構成される屈折領域を更に含む。
- 光学微細構造は、装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供する追加の光学機能を有する。
- 変調伝達関数は、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15以上、好ましくは0.25以上である。
- 変調伝達関数は、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上、好ましくは0.10以上である。
- 変調伝達関数は、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.70以上、好ましくは0.85以上である。
- 変調伝達関数は、例えば、中心視について、水平変調伝達関数又は垂直変調伝達関数、好ましくは水平変調伝達関数である。
- 光学微細構造は、レンズ要素の物体側表面及び/若しくは眼球側表面上並びに/又は物体側表面と眼球側表面との間に配設される。
- レンズ要素は、物体側表面及び/又は眼球側表面上にコーティングを含む。
- 光学微細構造は、例えば、マイクロレンズ等の複数の光学要素を含む。
- 複数の光学要素は、例えば、グリッド、ハニカム又は同心リング等の網目構造内に位置決めされる。
- レンズ要素の変調伝達関数は、例えば、中心視について、レンズ要素の表面を通して測定され、光学微細構造は、前記表面の20%以上、好ましくは40%以上を被覆する。
【0015】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素の変調伝達関数は、例えば、周辺視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.8以下、好ましくは0.7以下である。
【0016】
有利には、以下に詳述するように、変調伝達関数の下限値は、例えば、低周波数(3~7サイクル/度)における周辺視について、異常屈折進行の効率的な鈍化を確実にする。
【0017】
他の実施形態によれば、提案するレンズ要素は、以下の追加の特徴の少なくとも1つも含み得る。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、3サイクル/度の空間周波数において0.8以下、好ましくは0.7以下である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、4サイクル/度の空間周波数において0.7以下、好ましくは0.55以下である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、7サイクル/度の空間周波数において0.4以下、好ましくは0.3以下である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15以上である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10サイクル/度の空間周波数において0.3以上である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、20サイクル/度の空間周波数において0.15以上である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、水平変調伝達関数又は垂直変調伝達関数、好ましくは水平変調伝達関数である。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素の変調伝達関数は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.8以下、好ましくは0.7以下である。
【0019】
有利には、以下に詳述するように、変調伝達関数の下限値は、例えば、低周波数(3~7サイクル/度)における周辺視について、異常屈折進行の効率的な鈍化を確実にする。
【0020】
他の実施形態によれば、提案するレンズ要素は、以下の追加の特徴の少なくとも1つも含み得る。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合、3サイクル/度の空間周波数において0.8以下、好ましくは0.7以下である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合、4サイクル/度の空間周波数において0.7以下、好ましくは0.55以下である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合、7サイクル/度の空間周波数において0.4以下、好ましくは0.3以下である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15以上である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合、10サイクル/度の空間周波数において0.3以上である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合、20サイクル/度の空間周波数において0.15以上である。
- 変調伝達関数は、例えば、周辺視について、水平変調伝達関数又は垂直変調伝達関数、好ましくは水平変調伝達関数である。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供し、且つ装用者の前記眼の異常屈折の進行を鈍化させるために装用者によって装用されるように意図されるレンズ要素を特定するためのコンピュータ実装方法であって、レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折の進行を鈍化させるために、装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造を含み、方法は、
- 装用者の処方を提供するステップと、
- 変調伝達関数が、例えば、周辺視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上、好ましくは0.10以上であるように光学微細構造を特定するステップと
を含む。
【0022】
本発明の第3の態様によれば、プログラムがコンピュータによって実行されると、本発明の第2の態様による方法を実装するための命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0023】
コンピュータによって実行されると、本発明の第2の態様による方法を実装するための命令を格納する、コンピュータによって読み取り可能な非一時的記憶媒体も提供される。
【0024】
本発明は、添付の図面を参照して、単なる例として与えられる以下の説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】20/20の視力を有する眼が、5分の弧の角度に対する文字を識別する視力をどのように有するかを示す。Eの各バー及びバー間の空間は、1分の弧の角度に対するものである。
【
図4】4mmの瞳孔及び15°の下方注視について、レンズ要素の、例えば中心視についての水平変調伝達関数を表す図である。
【
図5】注視が15°下方である場合の幾つかのレンズ要素に対するVSOTF結果を示す図である。
【
図6】眼及びレンズ要素の光学システムを概略的に示す図である。
【
図7】眼及びレンズ要素の光学システムを概略的に示す図である。
【
図8】0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について、レンズ要素の、例えば、周辺視についての水平変調伝達関数を表す図である。
【
図9】L1及びL3レンズ要素を用いる学童の経時的な軸方向の伸びを、単焦点レンズを用いる学童と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、周辺光学微細構造を含むレンズ要素を装用する子供が読書活動中に光学微細構造を通して見ることが多いことを確認した。本発明の目的は、従って、読書活動における視覚性能を維持することにある。
【0027】
読書時、視覚システムは、テキストからある範囲の異なる空間周波数を取得し、これらの空間周波数は、次いで、読者が見ているものを読者が理解することを可能にする後続の言語分析のための基礎を提供する。空間周波数の内容と読解流暢性との間の関係に関する研究は、低(即ち3サイクル/度以下)及び中~高空間周波数(即ち10~15サイクル/度以上)の両方が、正確な性能を確実にするために用いられることを示した。低い空間周波数は、読者が線及び単語の全体的な形状を見て、全体的な構造を識別して眼の動き及びサッケードを組織化することを可能にする。低い空間周波数は、細かい詳細に関する情報を提供することができない。中~高空間周波数は、読者が、単語及び文の意味にアクセスするために用いられる個々の文字の正確な形態及び位置等の単語の細部を見ることを可能にする。
【0028】
多くの著者は、文字及び単語を識別するための最適な空間的内容を研究した。これらの研究において、刺激の空間的内容は、通常、「サイクル/度」の代わりに「サイクル/文字」で表される。文献によれば、単語の読み取り及び文字の識別は、それらの空間的内容が2サイクル/文字未満に低下しない場合に最適であり、良好に保存される - Ginsburg(Specifying relevant spatial information for image evaluation and display design:an explanation of how we see certain objects.Proceedings of the Society of Information Display,1980,21,219-227)、Parish and Sperling(Object spatial frequencies,retinal spatial frequencies,noise and the efficiency of letter discrimination.Vision Research,1991,31,1399-1415),Legge and colleagues(Psychophysics of reading:I.Normal vision.Vision Research,1985,25,239-252),Solomon and Pelli(The visual filter mediating letter identification.Nature,1994,369,395-397)を参照されたい。
【0029】
これらのサイクル/文字を空間周波数(即ち視距離に関連する)に変換して、本発明者らは、12ポイントの文字フォントサイズによる近方視におけるテキスト読み取りが10~15サイクル/度の範囲における空間周波数処理を伴うと推定している。単語及びラインの空間識別に関わる最低周波数は、0.5~3サイクル/度の範囲である。
【0030】
加えて、子供が遠方視においてボードを見て、文字及び数字を識別しなければならない場合、視力は、最大値に近く、即ち20/20に近くなければならない。20/20の視力は、観察者が、文字の各要素が6メートルの距離Dにおいて1’の角度α
2を描く状態で、5’の視角α
1の下で見られる文字を識別することができる場合に得られる(
図1を参照されたい)。2サイクル/文字が効率的な文字識別に十分であることを考慮すると、視力の20/20の視力表は、20~25サイクル/度の範囲における刺激を表す。
【0031】
その結果、本発明者らは、周辺光学微細構造を有するレンズ要素を装用する子供の視覚性能が、読書活動に関与する空間周波数、即ち0.5~3サイクル/度、10~15サイクル/度及び20~25サイクル/度の範囲において光学品質が維持される場合に保持されると特定した。
【0032】
上記で特定された空間周波数の範囲におけるレンズ要素の光学品質を定量化するため、本発明者らは、近視の進行を鈍化させるように構成される以下の2つのレンズ要素の、例えば中心視についての変調伝達関数を測定した。当業者に周知のように、変調伝達関数は、特にレンズ要素の光学品質を定量化するために用いられる。
【0033】
変調伝達関数は、
- レンズ要素の3D表面を測定するステップと、
- レンズ要素に垂直に到達する光ビームの光路差の2D表現を特定するステップと、
- レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口にわたって点像分布関数を特定するステップと、
- フーリエ変換演算によって前記瞳にわたる変調伝達関数を特定するステップと
によって特定され得る。
【0034】
第1のレンズ要素(L1と称する)を
図2に示す。L1は、非球面マイクロレンズを有する同心リング構成を有する光学微細構造1を含む。非球面マイクロレンズ(直径1.12mm)の寸法形状は、近視制御としての役割を果たす、任意のレンズ偏心において網膜の前方1.1~1.9mmの範囲に非焦点光の量を生成するように計算されている。L1は、透明中央領域2と周辺領域3とを含む屈折領域を更に含む。
【0035】
第2のレンズ要素(L2と称する)を
図3に示す。L2は、球面マイクロレンズのハニカム構成を有する光学微細構造1を含む。マイクロレンズ(直径1.03mm)は、相対的な正の度数(+3.50D)によって網膜の前方の平面に近視性焦点ぼけを生じさせる。
【0036】
L1及びL2の両方について、マイクロレンズのない表面は、距離補正を提供し、マイクロレンズの2つの構成は、レンズ要素の総表面積の約40%である、マイクロレンズの類似密度を提供した。
【0037】
本発明者らは、L1及びL2の両方について変調伝達関数の測定を行った。例えば、中心視について、水平変調伝達関数を
図4に示す。
【0038】
本発明者らは、光学的伝達関数(VSOTFとして公知)に基づく視覚ストレールレシオの測定も実施した。VSOTFは、良好な画質測定ツールとして当業者に公知である(Marsack,Thibos,Applegate,Metrics of optical quality derived from wave aberrations predict visual performance,Journal of Vision,2004,4,8)。VSOTF計算は、当業者に公知であり、VSOTFは、神経コントラスト感度関数によって重み付けされた光学的伝達関数の積分と、回折限界システムのための同じ積分との比である(Young,Love,Smithson,Accounting for the phase,spatial frequency and orientation demand of the task improves metrics based on the visual Strehl ratio,Vision Research,2013,90,57~67)。
図5は、L1、L2及び単焦点レンズのためのVSOTFの結果を示す。この結果から明らかなように、L1は、L2よりもはるかに高いVSOTFを示す。従って、本発明者らは、L2の変調伝達関数の値は、対象となる空間周波数の範囲の下限とみなすことができると考えた。
【0039】
上記を考慮して、本発明者らは、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合の、例えば中心視についての変調伝達関数のための値の以下の下限を特定した。
・10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07、及び/又は
・10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15、及び/又は
・20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07、及び/又は
・0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.70。
【0040】
第1の態様によれば、本発明は、装用者によって装用され、且つ装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供するように意図されるレンズ要素に関する。
【0041】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、装用者の眼の前方において装用されるように意図される眼鏡レンズ要素である。本発明の意味では、眼鏡レンズは、縁なし眼鏡レンズ又は眼鏡フレームに適合するように縁取りされる眼鏡レンズであり得る。幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、装用者の眼に装用されるように意図されるコンタクトレンズ要素である。
【0042】
レンズ要素は、装用者の眼の、例えば近視の異常屈折の進行を鈍化させるために、装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造を含む。本発明の意味では、「合焦」とは、例えば、装用者の眼の調節がない標準的な装用条件において、1.5m以上、例えば4m以上の距離にある物点に対して、焦点面内の点に縮小することができる円形断面を有する焦点スポットを生成することとして理解されるべきである。
【0043】
有利には、光学要素のかかる光学機能は、周辺視において装用者の眼の網膜の変形を低減し、レンズ要素を装用する人の眼の異常屈折の進行を鈍化させることを可能にする。
【0044】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折、例えば近視の進行を鈍化させるために、例えば装用者の眼の調節がない標準的な装用条件において、1.5m以上、例えば4m以上の距離にある物点に対して、装用者の眼の網膜以外に像を合焦させる光学機能を有する光学微細構造を含む。
【0045】
レンズ要素の変調伝達関数は、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上である。これは、変調伝達関数が10~25サイクル/度の全範囲にわたって0.07以上であることを意味する。
図4に示すように、レンズ要素L2の変調伝達関数は、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07未満に低下しない。本発明者らは、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL2のための水平変調伝達関数のより低い値が0.07であると測定した。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、レンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55又は0.60以上である。
図4に示すように、レンズ要素L1の変調伝達関数は、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.10未満に低下しない。本発明者らは、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL1のための水平変調伝達関数のより低い値が10であると測定した。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の平均変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.20以上、好ましくは0.22である。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.70以下である。
【0046】
幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、レンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15以上である。
図4に示すように、レンズ要素L2の変調伝達関数は、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15未満に低下しない。本発明者らは、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL2のための水平変調伝達関数のより低い値が0.15であると測定した。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、レンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60又は0.65以上である。
図4に示すように、レンズ要素L1の変調伝達関数は、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.25未満に低下しない。本発明者らは、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL1のための水平変調伝達関数のより低い値が0.28であると測定した。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の平均変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.28以上、好ましくは0.30である。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.90以下である。
【0047】
幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、レンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上である。
図4に示すように、レンズ要素L2の変調伝達関数は、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07未満に低下しない。本発明者らは、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL2のための水平変調伝達関数のより低い値が0.07であると測定した。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、レンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55又は0.60以上である。
図4に示すように、レンズ要素L1の変調伝達関数は、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.10未満に低下しない。本発明者らは、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL1のための水平変調伝達関数のより低い値が0.10であると測定した。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の平均変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.13以上、好ましくは0.15である。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.72以下である。
【0048】
幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、レンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.70以上である。
図4に示すように、レンズ要素L1及びL2の変調伝達関数は、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.85未満に低下しない。本発明者らは、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL2のための水平変調伝達関数のより低い値が0.85であると測定した。本発明者らは、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL1のための水平変調伝達関数のより低い値が0.70であることも測定した。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、レンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.75、0.80、0.85又は0.90以上である。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の平均変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.82以上、好ましくは0.85である。幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の変調伝達関数は、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.95以下である。
【0049】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、標準的な装用条件において装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供するように意図される。幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折の進行を鈍化させるために、標準的な装用条件において装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造を含む。幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折の進行を鈍化させるために、標準的な装用条件において装用者の眼の網膜以外に像を合焦させる光学機能を有する光学微細構造を含む。
【0050】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、標準的な装用条件において装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供するように構成される屈折領域を更に含む。幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は、標準的な装用条件において装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供する追加の光学機能を有する。
【0051】
標準的装用状態とは、装用者の眼に関してレンズ要素の位置として理解されるべきであり、例えば、装用時前傾角、角膜からレンズまでの距離、瞳孔角膜距離、眼球回旋点(ERC)から瞳孔までの距離、ERCからレンズまでの距離及びラップ角度によって定義される。
【0052】
角膜からレンズまでの距離は、角膜とレンズの背面との間の第1眼位(通常、水平にとられる)における眼の視軸に沿った距離であり、例えば12mmに等しい。
【0053】
瞳孔-角膜距離は、瞳孔と角膜間の眼の視軸に沿った距離であり、通常、2mmに等しい。
【0054】
ERCから瞳孔までの距離は、眼の視軸に沿った回旋点(ERC)と角膜との間の距離であり、例えば11.5mmに等しい。
【0055】
ERCからレンズまでの距離は、眼のERCとレンズの背面との間の第1眼位(通常、水平方向にとられる)における眼の視軸に沿った距離であり、例えば25.5mmに等しい。
【0056】
装用時前傾角は、レンズの背面と第1眼位(通常、水平方向にとられる)における眼の視軸との交線における、レンズの背面に対する法線と、第1眼位における眼の視軸との間の垂直面内の角度であり、例えば8°に等しい。
【0057】
巻き角は、レンズの背面と第1眼位(通常、水平方向にとられる)における眼の視軸との交線における、レンズの背面に対する法線と、第1眼位における眼の視軸との間の水平面内の角度であり、例えば0°に等しい。
【0058】
標準的な装用者条件の一例は、12mmの角膜からレンズまでの距離、2mmの瞳孔から角膜までの距離、11.5mmのERCから瞳孔までの距離、25.5mmのERCからレンズまでの距離、8°の装用時前傾角及び0°の巻き角によって定義され得る。
【0059】
図6及び
図7は、眼及びレンズ要素の光学系の概略図であり、従って本明細書で用いられる定義を示す。より正確には、
図6は、注視方向を定義するために使用されるパラメータα、βを示す、そのようなシステムの斜視図を表す。
図7は、パラメータβが0に等しい場合、装用者の頭部の前後軸に平行であり、眼球回旋点を通過する垂直面における図である。
【0060】
眼球回旋点は、Q’とラベル付けされている。
図7に一点鎖線で示す軸Q’F’は、眼球回旋点を通過して装用者の前方に延在する水平軸であり、即ち主要注視ビューに対応する軸Q’F’である。この軸は、眼鏡士によってフレーム内にレンズを位置決めすることを可能にするように、レンズ上に存在するフィッティングクロスと呼ばれる点でレンズ要素Lの表面を切断する。レンズの裏面と軸Q’F’との交点がOである。Oは、背面に位置する場合、フィッティングクロスであり得る。中心Q’及び半径q’の頂点球は、水平軸の一点においてレンズの後面に接している。例として、半径q’の値25.5mmは通常の値に対応し、レンズを装用した場合に満足のいく結果を提供する。
【0061】
図7の実線によって表される所与の注視方向は、Q’を中心として回転する眼の位置及び頂点球の点Jに対応する。角度βは、軸Q’F’と、軸Q’F’を含む水平面上への直線Q’Jの投影との間で形成される角度であり、この角度は、
図6のスキームに現れる。角度αは、軸Q’Jと、軸Q’F’を含む水平面上への直線Q’Jの投影との間で形成される角度であり、この角度は
図6及び
図7のスキームに現れている。所与の注視ビューは、従って、頂点球の点J又はペア(α、β)に対応する。下向き注視角度の値が正方向に大きいほど注視は下向きになり、値が負方向に大きいほど注視は上向きになる。
【0062】
所与の注視方向において、所与の物体距離に位置する、物体空間内の点Mの画像が、最小距離JSと最大距離JTに対応する2つの点、SとTとの間に形成され、これらの距離は、矢状方向及び接線方向の局所焦点距離となる。無限遠の物体空間内の点の像は点F’に形成される。距離Dは、レンズの背平面及び前平面に対応する。
【0063】
エルゴラマは、物点の通常の距離を各注視方向に関連付ける関数である。通常、主注視方向に続く遠方視において、物点は無限遠にある。近方視において、鼻側に向かう絶対値が35°程度の角度α及び5°程度の角度βに基本的に対応する注視方向に従って、物体との距離は25~50cm程度である。エルゴラマの可能な定義に関する更なる詳細については、米国特許第6,318,859号明細書を参照されたい。この文献は、エルゴラマ、その定義及びそのモデリング方法を記述している。本発明の方法の場合、複数の点が無限遠にあっても又はなくてもよい。エルゴラマは、装用者の屈折異常又は装用者の加入度数の関数であり得る。
【0064】
これらの要素を用いて、各注視方向における装用者の屈折力及び非点収差を規定することが可能である。注視方向(α、β)に対して、エルゴラマにより与えられる物体との距離における物点Mを加味する。物体近接度ProxOは、物体空間内の対応する光線上の点Mに対して、以下の通り、点Mと頂点球の点Jとの間の距離MJの逆数として定義される。
ProxO=1/MJ
【0065】
これにより、エルゴラマの特定のために用いられる頂点球の全ての点に対して薄レンズ近似内の物体近接度を計算することが可能になる。実際のレンズに対して、物体近接度は、対応する光線上の物点とレンズの前面との間の距離の逆数とみなすことができる。
【0066】
同一注視方向(α、β)に対して、所与の物体近接度を有する点Mの像は、それぞれが最小及び最大焦点距離(矢状方向及び接線方向の焦点距離となる)に対応する2つの点、SとTとの間に形成される。量ProxIは点Mの像近接度と呼ばれ、以下の通りである。
ProxI=1/2(1/JT+1/JS)
【0067】
従って、薄型レンズの場合と同様に、所与の注視方向及び所与の物体近接度、即ち対応する光線上の物体空間の一点に対して、像近接度及び物体近接度の和としての屈折力Puiを規定することができる。
Pui=ProxO+ProxI
【0068】
同じ表記法により、非点収差Astは、全ての注視方向及び所与の物体近接度に対して以下の通り定義される。
Ast=|1/JT-1/JS|
【0069】
上の規定は、レンズ要素により生じる光線ビームの非点収差に対応する。上の規定が、主注視方向において、非点収差の古典的値を与えることに留意されたい。通常、軸と呼ばれる非点収差角度が角度γである。角度γは、眼に紐付けられたフレーム{Q’,xm,ym,zm}内で測定される。これは、平面{Q’,zm,ym}内での方向zmとの関連で用いられる表記法に応じて、像S又はTiが形成される角度に対応する。
【0070】
従って、装用条件におけるレンズの屈折力及び非点収差の可能な規定は、B.Bourdoncleらによる論文“Ray tracing through progressive ophthalmic lenses”,1990 International Lens Design Conference,D.T.Moore ed.,Proc.Soc.Photo.Opt.Instrum.Eng.で説明されているように計算できる。
【0071】
変調伝達関数は、レンズ要素の光学品質を定量化するために広く用いられてきた。変調伝達関数は、当業者に公知の任意の方法によって特定することができる。幾つかの実施形態によれば、変調伝達関数を計算するために、瞳面内の複素振幅が評価され、次いで、高速フーリエ変換を用いて、点広がり関数が計算され、最後に例えば中心視についての変調伝達関数が計算される(G.Voelz.Computational fourier optics:a MATLAB tutorial.SPIE Press Bellingham,WA,2011)。幾つかの実施形態によれば、変調伝達関数は、1つの中心波長(λ=550nm)を用いて計算された。例えば、中心視について、変調伝達関数は、4mmの瞳開口、15°下方の注視方向(α=-15°、β=0°)に対して様々な空間周波数で計算された。
【0072】
より詳細には、15°下方の注視方向(α=-15°、β=0°)に対して、光線は、眼球回旋点(ERC)から物体空間に伝播される。物点ProxOが、次いで、注視方向を近接性に関連付けるエルゴラマを用いて計算される。目標装用者度数がPuiであると仮定すると、像平面は、ERC瞳孔軸に沿って計算される、頂点球面からの近接度ProxIm=Pui-ProxOに位置決めされるべきである。
【0073】
物体近接度ProxO及び像近接度ProxIが定義されると、点広がり関数及び変調伝達関数を任意の光学系に関して計算することができる。例えば、
- 光線のビームは、瞳の規則的なサンプリングを実行するように、物点から眼の入射瞳に伝播される。光路長は、このステップ中に記憶されるべきである。
- 光路長は、瞳関数を計算するために用いられる。
- 点広がり関数を得るために、回折積分が瞳関数に適用される。
- 変調伝達関数は、フーリエ変換を用いて点広がり関数から計算される。
【0074】
幾つかの実施形態によれば、例えば中心視について、測定された変調伝達関数は、水平変調伝達関数又は垂直変調伝達関数、好ましくは水平変調伝達関数である。本発明者らは、水平変調伝達関数又は垂直変調伝達関数の少なくとも1つが、読書活動中に文字及び単語の適切な識別を可能にするように、特許請求される範囲内にあるべきであることを特定した。
【0075】
用語「水平」とは、ここでは、TABO慣例に従う装用者に対する水平を指す。同様に、用語「垂直」とは、ここでは、TABO慣例に従う装用者に対する垂直を指す。
【0076】
本発明によれば、例えば中心視について、レンズ要素の変調伝達関数は、光学微細構造を通して測定される。「光学微細構造を通して」とは、例えば、中心視について、レンズ要素の変調伝達関数がレンズ要素の表面を通して測定されることを意味し、光学微細構造は、前記表面の20%以上、好ましくは40%以上を被覆する。
【0077】
眼の異常屈折の進行を効率的に抑制するか又は鈍化させることを確実にするために、本発明者らは、近視の進行を鈍化させるように構成される2つのレンズ要素:第1のレンズ要素L1(上記で詳述)及び第3のレンズ要素L3の、例えば周辺視についての変調伝達関数を測定した。
【0078】
L3は、非球面マイクロレンズを有する同心リング構成を有する光学微細構造1を含む。非球面マイクロレンズ(直径1.12mm)の寸法形状は、近視制御としての役割を果たす、任意のレンズ偏心において網膜の前方1.0~1.3mmの範囲に非焦点光の量を生成するように計算されている。L3は、透明中央領域と周辺領域とを含む屈折領域を更に含む。L1及びL3の両方について、マイクロレンズのない表面は、距離補正を提供し、マイクロレンズの2つの構成は、レンズ要素の総表面積の約40%である、マイクロレンズの類似密度を提供した。
【0079】
本発明者らは、L1及びL3の両方について変調伝達関数の測定を行った。例えば、周辺視について、変調伝達関数を
図8に表す。
【0080】
図9は、24ヶ月間にわたる軸方向の伸びを鈍化させることにおける、単焦点レンズと比較したL1及びL3レンズ要素の効果を示す。結果から明らかなように、L1は、L3よりも高い近視抑制効果を示す。従って、本発明者らは、L3の、周辺に対する変調伝達関数の値を限界とみなすことができると考えた。
【0081】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素の変調伝達関数は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.8以下である。
【0082】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素の変調伝達関数は、例えば、周辺視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.8以下である。
【0083】
図8に示すように、レンズ要素L3の変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.80を超えない。本発明者らは、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL3のための水平変調伝達関数のより高い値が0.80であると測定した。幾つかの実施形態によれば、レンズ要素の変調伝達関数は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35又は0.3以下である。
図8に示すように、レンズ要素L1の変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.7を超えない。本発明者らは、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL1のための水平変調伝達関数のより高い値が0.70であると測定した。
【0084】
幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の平均変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.53以下、好ましくは0.51である。
【0085】
幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.30以上、好ましくは0.35である。
【0086】
幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、3サイクル/度の空間周波数において0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35又は0.3以下である。
【0087】
幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、4サイクル/度の空間周波数において0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25又は0.2以下である。
【0088】
幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、7サイクル/度の空間周波数において0.4、0.35、0.3、0.25又は0.2以下である。
【0089】
幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15以上である。
【0090】
図8に示すように、レンズ要素L3の変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口対して測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.17未満に低下しない。本発明者らは、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL3のための水平変調伝達関数のより低い値が0.17であると測定した。幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、レンズ要素の変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.17、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65又は0.70以上である。本発明者らは、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるL1のための水平変調伝達関数のより低い値が0.17であると測定した。幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の平均変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.23以上、好ましくは0.25である。幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたるレンズ要素の変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、0.85以下、好ましくは0.80である。
【0091】
幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10サイクル/度の空間周波数において0.3、0.35、0.40、0.45又は0.50以上である。
【0092】
幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、変調伝達関数は、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、20サイクル/度の空間周波数において0.15、0.20、0.25、0.30、0.35又は0.40以上である。
【0093】
幾つかの実施形態によれば、例えば周辺視について、測定された変調伝達関数は、水平変調伝達関数又は垂直変調伝達関数、好ましくは水平変調伝達関数である。
【0094】
本開示の一態様によれば、例えば周辺視について、変調伝達関数は、4mmの瞳開口、0°の注視方向(α=0°、β=0°)及び15°下方の光線方向(α’=15°、β’=0°)に対して様々な空間周波数で計算された。ここで、パラメータα’及びβ’は、
図6で定義された角度に対応するが、注視方向ではなく光線方向に対するものである。より詳細には、0°下方の注視方向(α=-0°、β=0°)に対して、光線(α’=-15°,β=0°)は、眼球回旋点(ERC)から物体空間に伝播される。物点ProxOが、次いで、注視方向(ここでは光線方向に置き換えられる)を近接性に関連付けるエルゴラマを用いて計算される。目標装用者度数がPuiであると仮定すると、像平面は、ERC瞳孔軸に沿って計算される、頂点球面からの近接度ProxIm=Pui-ProxOに位置決めされるべきである。
【0095】
物体近接度ProxO及び像近接度ProxIが定義されると、点広がり関数及び変調伝達関数を任意の光学系に関して計算することができる。例えば、
- 光線のビームは、瞳の規則的なサンプリングを実行するように、物点から眼の入射瞳に伝播される。光路長は、このステップ中に記憶されるべきである。
- 光路長は、瞳関数を計算するために用いられる。
- 点広がり関数を得るために、回折積分が瞳関数に適用される。
- 変調伝達関数は、フーリエ変換を用いて点広がり関数から計算される。
【0096】
本発明によれば、例えば周辺視について、レンズ要素の変調伝達関数は、光学微細構造を通して測定される。「光学微細構造を通して」とは、例えば周辺視について、レンズ要素の変調伝達関数がレンズ要素の表面を通して測定されることを意味し、光学微細構造は、前記表面の20%以上、好ましくは40%以上を被覆する。
【0097】
例えば、
図2又は
図3に表すように、レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折の進行を鈍化させるために、標準的な装用条件において装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造1を含む。
【0098】
幾つかの実施形態によれば、光学微細構造1は、装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供する追加の光学機能を有する。
【0099】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供するように構成される屈折領域を更に含む。
図2又は
図3に示すように、屈折領域は、中央領域2及び周辺領域3を含む。屈折領域は、好ましくは、光学微細構造以外の領域として形成される。換言すれば、屈折領域は、光学微細構造により形成される領域に対する補完領域である。幾つかの実施形態によれば、レンズ要素の中央領域は、光学微細構造のいかなる部分も含まない。例えば、レンズ要素は、前記レンズ要素の光学中心に中心を有し、且つ光学微細構造のいかなる部分も含まない、直径が9mmに等しい空き領域を含み得る。レンズ要素の光学中心は、レンズのフィッティング点に対応し得る。代替として、光学微細構造は、レンズ要素の表面全体に配設され得る。幾つかの実施形態によれば、屈折領域は、特に例えば中心視について、装用者の処方に基づく第1の屈折力と異なる第2の屈折力を装用者に提供するように更に構成される。本発明の意味では、2つの屈折力間の差が0.5ジオプトリー以上である場合、2つの屈折力は、異なるとみなされる。
【0100】
用語「処方」は、例えば、眼の前方に位置決めされる眼鏡レンズ又は眼球上に位置決めされるコンタクトレンズによって眼の視覚障害を矯正するために眼科医又は検眼医によって特定される、屈折力、乱視、プリズム偏位の光学特性のセットを意味すると理解されるべきである。例えば、近視眼に対する処方は、遠見視力に対する軸との屈折力及び乱視の値を含む。
【0101】
図10に示すように、本発明によるレンズ要素Lは、物体側表面F1の曲率と異なる曲率を有する凹面として形成される眼球側表面F2に向かって凸状湾曲面として形成される物体側表面F1を含む。
【0102】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、物体側表面及び/又は眼球側表面上にコーティングを含む。前記実施形態によれば、変調伝達関数は、コーティングの有又は無に関わらず測定される。
【0103】
幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は、レンズ要素の物体側表面及び/若しくは眼球側表面上並びに/又は物体側表面と眼球側表面との間に配設される。
【0104】
幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は、波面の強度及び/若しくは曲率を修正し、且つ/又は光を偏向させる。
【0105】
幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は吸収性であり、0%~100%の範囲において、好ましくは20%~80%の範囲において、より好ましくは30%~70%の範囲において波面強度を吸収する。例えば、光学微細構造は、50%以上、例えば75%超、例えば85%超である500nmでの透過率を有する。幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は、局所的に、即ち光学微細構造と波面との間の交点で吸収する。
【0106】
幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は、波面曲率を-20ジオプトリー~+20ジオプトリーの範囲で、好ましくは-10ジオプトリー~+10ジオプトリーの範囲で、より好ましくは-5.5ジオプトリー~5.5ジオプトリーの範囲で修正する。幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は、波面曲率を局所的に、即ち光学微細構造と波面との間の交点で修正する。
【0107】
幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は、光を散乱させる。光は、+/-1°~+/-30°の範囲の角度で散乱され得る。幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は、光を局所的に、即ち光学微細構造と波面との間の交点で散乱させる。
【0108】
幾つかの実施形態によれば、光学微細構造の面積と前記レンズ要素の面積との間の比は、20%~70%、好ましくは30%~60%、より好ましくは40%~50%に含まれる。
【0109】
幾つかの実施形態によれば、光学微細構造は、例えば、マイクロレンズ等の複数の光学要素を含む。
【0110】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、少なくとも50%、少なくとも80%、好ましくは全てが、装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、少なくとも50%、少なくとも80%、好ましくは全てが、標準的な装用条件において装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、少なくとも50%、少なくとも80%、より好ましくは全てが、網膜以外の位置に、例えば周縁視のための像を合焦させる光学機能を有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、少なくとも50%、少なくとも80%、より好ましくは全てが、標準的な装用条件において網膜以外の位置に、例えば周辺視のための像を合焦させる光学機能を有する。
【0111】
本開示の好ましい実施形態によれば、光学要素の全てが、少なくとも、例えば周縁視について、各光学要素を通過する光線の平均焦点が装用者の網膜から等距離にあるように構成される。各光学要素の光学機能、特に光屈折機能は、特に周縁視において、装用者の眼の網膜から一定の距離に焦点画像を提供するように最適化され得る。かかる最適化は、レンズ要素上での位置に応じて各光学要素の光屈折機能を適合させることを必要とする。光学要素密度、即ち屈折力の量は、レンズ要素の領域に応じて調整され得る。通常、光学要素は、網膜の周辺形状に起因する周辺焦点ぼけを補償するように、近視抑制に対する光学要素の効果を高めるために、レンズ要素の周辺部に位置決めされ得る。
【0112】
本発明の好ましい実施形態によれば、光学要素は、独立している。本発明の意味では、独立画像を生成する場合、2つの光学要素は、独立しているとみなされる。具体的には、平行なビームにより「中心視で」照射された場合、各々の「独立した隣接光学要素」は、それに関連付けられたスポットを画像空間内の平面に形成する。
【0113】
幾つかの実施形態によれば、光学要素は、0.1μm~50μmの範囲の高さを有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素は、0.5μm~1.5mmの範囲の長さを有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素は、0.5μm~1.5mmの範囲の幅を有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素は、0.8mm~3.0mm、好ましくは1mm~2.0mm、より好ましくは1mm~1.2mmの範囲の直径を有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素は、0.8mm以上3.0mm以下、好ましくは1.0mm以上2.0mm未満の直径を有する円に内接可能な輪郭形状を有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素は、2~7ジオプトリーの範囲、好ましくは3.5~5.5ジオプトリーの範囲の相対的な正の屈折力により、網膜の前方の平面に近視性焦点ぼけを生じさせる。
【0114】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の面積の合計とレンズ要素の面積との間の比は、20%~70%、好ましくは30%~60%、より好ましくは40%~50%に含まれる。
【0115】
幾つかの実施形態によれば、複数の光学要素は、網目構造内に位置決めされる。網目構造は、例えば、グリッド、ハニカム又は同心リング等のランダムな網目構造又は構造的網目構造であり得る。幾つかの実施形態によれば、構造的網目構造は、正方形網目構造、六角形網目構造、三角形網目構造又は八角形網目構造である。
【0116】
幾つかの実施形態によれば、複数の光学要素は、一定のグリッドステップを有するグリッド内に位置決めされる。
【0117】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも一部は、連続している。本発明の意味では、レンズ要素の表面に位置する2つ光学要素が隣接するのは、2つの光学要素を連結する前記表面により支持される経路が存在する場合及び光学要素が位置する基面に前記経路に沿って到達しない場合である。少なくとも2つの光学要素が位置する表面が球面である場合、基面は、前記球面に対応する。換言すれば、球面上に位置する2つの光学要素が隣接するのは、前記球面により支持されていて光学要素を接続している経路が存在する場合、且つ前記経路に沿って球面に到達できない場合である。
【0118】
少なくとも2つの光学要素が位置する表面が非球面である場合、基面は、前記非球面表面に最も良く適合する局所球面に対応する。換言すれば、非球面表面上に位置する2つの光学要素が隣接するのは、前記非球面表面により支持されていて光学要素を接続している経路が存在する場合、且つ前記経路に沿って非球面表面に最も良く適合する球面に到達できない場合である。有利には、隣接する光学要素を有することは、レンズ要素の美観を向上させるのに役立ち、且つ製造がより容易である。
【0119】
幾つかの実施形態によれば、隣接する光学要素は独立している。
【0120】
幾つかの実施形態によれば、光学要素間の距離は、0(隣接する光学要素)から光学要素の長さ及び/又は幅の3倍までの範囲である。
【0121】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が非球形光学機能を有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全てが非球面光学機能を有する。
【0122】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全てが球面光学機能を有する。
【0123】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、光学要素の好ましくは50%超、より好ましくは80%超が非球面マイクロレンズである。本発明の意味では、非球面マイクロレンズは、その表面にわたって屈折力が連続的に変化する。非球面マイクロレンズは、0.1ジオプトリー~3ジオプトリーに含まれる非球面性を有し得る。非球面マイクロレンズの非球面性は、マイクロレンズの中心で測定される屈折力とマイクロレンズの周辺部で測定される屈折力との差に対応する。
【0124】
マイクロレンズの中心は、マイクロレンズの幾何学的中心を中心とし、0.1mm~0.5mmに含まれる、好ましくは2.0mmに等しい直径を有する球形領域によって画定され得る。マイクロレンズの周囲は、マイクロレンズの幾何学的中心を中心とし、0.5mm~0.7mmに含まれる内径と、0.70mm~0.80mmに含まれる外径とを有する環状ゾーンによって画定され得る。
【0125】
幾つかの実施形態によれば、非球面マイクロレンズは、それらの幾何学的中心において絶対値で2.0ジオプトリー~7ジオプトリーに含まれる屈折力を有し、それらの周辺部において絶対値で1.5ジオプトリー~6.0ジオプトリーに含まれる屈折力を有する。
【0126】
光学要素が配設されるレンズ要素の表面のコーティング前の非球面マイクロレンズの非球面性は、前記レンズ要素の光学中心からの半径方向距離に応じて変化し得る。
【0127】
加えて、光学要素が配設されるレンズ要素の表面のコーティング後の非球面マイクロレンズの非球面性は、前記レンズ要素の光学中心からの半径方向距離に応じて更に変化し得る。
【0128】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、2つの隣接する光学要素間で変化する屈折力及び連続する一次導関数を有する。幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも一部、例えば全部は、2つの隣接する光学要素間で一定の屈折力及び不連続な一次導関数を有する。
【0129】
光学要素は、非制限的な直接肉盛、金型成形、鋳造、射出成形、型押し、成膜又はフォトリソグラフィ等の異なる技術を用いて作成され得る。
【0130】
幾つかの実施形態によれば、複数の光学要素は、国際公開第2019/166659号パンフレットに詳述されているように位置決めされる。幾つかの実施形態によれば、複数の光学要素は、複数の同心リングに沿って位置決めされる。
【0131】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、隣接する光学要素の少なくとも2つの群に編成される少なくとも4つの光学要素を含む。
【0132】
幾つかの実施形態によれば、隣接する光学要素の各グループは、同じ中心を有する少なくとも2つの同心リングに編成され、隣接する光学要素の各グループの同心リングは、前記群の少なくとも1つの光学要素に接する最小円に対応する内径と、前記群の少なくとも1つの光学要素に接する最大円に対応する外径とによって画定される。
【0133】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の同心リングの少なくとも一部、例えば全部は、前記光学要素が配設されるレンズ要素の表面の光学中心に中心を有する。
【0134】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の同心リングは、9.0mm~60mmに含まれる直径を有する。幾つかの実施形態によれば、9mmより大きい内径及び57mmより小さい外径を有し、1mmより小さいレンズ要素の光学中心の距離に位置する幾何学的中心を有するレンズ要素の環状ゾーンを考慮すると、前記円形ゾーンの内側に位置する光学要素の部分の面積の合計と前記円形ゾーンの面積との間の比は、20%~70%、好ましくは30%~60%、より好ましくは40%~50%に含まれる。
【0135】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の2つの連続する同心リング間の距離は、2.0mm、3.0mm又は5.0mm以上であり、2つの連続する同心リング間の距離は、第1の同心リングの内径と第2の同心リングの外径との間の差によって定義され、第2の同心リングは、レンズ要素の周辺部により近い。有利には、光学要素の2つの連続する同心リング間に2.00mmより大きい距離を有することにより、光学要素のこれらのリング間でより大きい屈折領域を管理することが可能になり、従ってより良好な視力を提供する。
【0136】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、少なくとも2つの同心リング、好ましくは6つ以上、より好ましくは11以上の同心リングに配設される光学要素を含む。例えば、光学要素は、レンズの光学中心に中心を有する11の同心リングに配設され得る。マイクロレンズの屈折力及び/又は円柱度数は、同心リングに沿ったそれらの位置に応じて異なり得る。
【0137】
幾つかの実施形態によれば、光学要素は、レンズの少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数が前記断面の一点から前記断面の周縁部に向かって増加するように構成される。
【0138】
幾つかの実施形態によれば、光学要素は、レンズの少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の円柱度数が前記断面の一点から前記断面の周縁部に向かって増加するように構成される。
【0139】
幾つかの実施形態によれば、光学要素は、レンズの少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が前記断面の中心から前記断面の周縁部に向かって増加するように構成される。
【0140】
幾つかの実施形態によれば、屈折領域は、光学中心を含み、光学要素は、レンズの光学中心を通過する任意の断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が光学中心からレンズの周縁部に向かって増加するように構成される。
【0141】
幾つかの実施形態によれば、屈折領域は、遠方視基準点、近方視基準点及び遠方と近方視基準点を接合する経線を含み、光学要素は、標準装用条件下でレンズの任意の水平方向断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が前記水平方向断面と経線の交線からレンズの周縁部に向かって増加するように構成される。
【0142】
幾つかの実施形態によれば、前記断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数増加関数は、経線に沿って断面の位置に応じて異なる。
【0143】
幾つかの実施形態によれば、断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数増加関数は、非対称的である。
【0144】
幾つかの実施形態によれば、光学要素は、標準装用条件下で少なくとも1つの断面が水平方向断面であるように構成される。
【0145】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数は、前記断面の第1の点から前記断面の周縁部に向かって増加し、前記断面の第2の点から前記断面の周縁部に向かって減少し、第2の点は第1の点よりも前記断面の周縁部に近い。
【0146】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つの断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数増加関数はガウス関数である。
【0147】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つの断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数増加関数は二次関数である。
【0148】
幾つかの実施形態によれば、光学要素は、各光学要素を通過する光線の平均焦点が網膜から等距離にあるように構成される。
【0149】
幾つかの実施形態によれば、屈折領域は、複数の光学要素として形成される複数の領域以外の領域として形成される。
【0150】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素の光学中心から前記半径+5mm以上、且つ15mm以下、例えば10mm以下離れて位置する幾何学的中心を含む、半径2~4mmを有する全ての円形ゾーンに対して、前記円形ゾーン内に位置する光学要素の部分の面積の和と、前記円形ゾーンの面積との比は、20%~70%、好ましくは30%~60%、より好ましくは40%~50%に含まれる。
【0151】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つは、多焦点屈折マイクロレンズである。
【0152】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズは、円柱レンズ度を含む。
【0153】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズは、回転対称性の有無にかかわらず非球面表面を含む。
【0154】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つは、トーリック屈折マイクロレンズである。
【0155】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズは、トーリック面を含む。
【0156】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つは、複屈折材料から作成される。
【0157】
幾つかの実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つは、回折レンズである。
【0158】
幾つかの実施形態によると、少なくとも1つの回折レンズは、メタ表面構造を含む。
【0159】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つの光学要素は、人の眼の網膜の前方に焦線を作成するように構成される形状を有する。換言すれば、かかる光学要素は、光束があれば集束される全ての断面平面が人の眼の網膜の前に位置するように構成される。
【0160】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つの光学要素は、多焦点バイナリコンポーネントである。
【0161】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つの光学要素は、画素化レンズである。
【0162】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つの光学要素は、πフレネルレンズである。
【0163】
幾つかの実施形態によれば、光学機能の少なくとも一部、例えば全部は、高次光学収差を含む。
【0164】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、屈折領域を含む眼用レンズと、レンズ要素が装用される場合に眼用レンズに着脱自在に取り付けられるように適合される光学要素を含むクリップオンサングラスとを含む。
【0165】
幾つかの実施形態によれば、屈折領域は、装用者に、例えば中心視について、第1の屈折力と異なる第2の屈折力を提供するように更に構成される。
【0166】
幾つかの実施形態によれば、第1の屈折力と第2の屈折力との間の差は、0.5ジオプトリー以上である。
【0167】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つ、例えば少なくとも70%、例えば全ての光学要素は、光学レンズコントローラによって作動され得るアクティブ光学要素である。
【0168】
幾つかの実施形態によれば、アクティブ光学要素は、値が光学レンズコントローラによって制御される可変屈折率を有する材料を含む。
【0169】
幾つかの実施形態によれば、光学要素は、レンズ要素上では見えない。
【0170】
別の態様によれば、本発明は、装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供し、且つ装用者の前記眼の異常屈折の進行を鈍化させるために装用者によって装用されるように意図されるレンズ要素を特定するためのコンピュータ実装方法に関する。
【0171】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、装用者の眼の前方において装用されるように意図される眼鏡レンズ要素である。幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、装用者の眼に装用されるように意図されるコンタクトレンズ要素である。
【0172】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、標準的な装用条件において装用者の眼の異常屈折を矯正するために、装用者の処方に基づいて屈折力を提供するように意図される。
【0173】
レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折の進行を鈍化させるために、装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造を含む。
【0174】
幾つかの実施形態によれば、レンズ要素は、装用者の眼の異常屈折の進行を鈍化させるために、標準的な装用条件において装用者の眼の網膜上に像を合焦させない光学機能を有する光学微細構造を含む。
【0175】
本方法は、
- 装用者の処方を提供するステップ、
- 変調伝達関数が、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上であるように光学微細構造を特定するステップ
を含む。
【0176】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、装用者によるレンズ要素の装用条件を提供するステップを更に含む。
【0177】
幾つかの実施形態によれば、光学微細構造を特定するための方法は、
- 光学微細構造の初期パラメータを定義する第1のステップと、
- 装用者の処方を提供するようにレンズ要素のパラメータを特定する第2のステップと、
- 変調伝達関数が、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上であるように初期パラメータを最適化する第3のステップと
を含む。
【0178】
幾つかの実施形態によれば、第1のステップ中、光学微細構造の初期パラメータが定義される。かかる初期パラメータは、以下から選択され得る。
- 光学微細構造の大きさ、例えば光学要素の大きさ、
- 例えば、球形、非球形、半球円筒形、非球面、屈折又は回折光学要素等の光学微細構造の光学特性、
- 光学微細構造の面積とレンズ要素の面積との間の比、
- 網目構造内の光学要素の位置等の微細構造の位置。網目構造は、例えば、正方形網目構造、六角形網目構造、三角形網目構造、八角形網目構造、ハニカム又は同心リング等のランダムな網目構造又は構造的網目構造であり得る。
【0179】
幾つかの実施形態によれば、第2のステップ中、既知の屈折率を有するレンズ要素の材料、前面及び背面は、レンズ要素が装用者の処方を提供するように特定される。
【0180】
幾つかの実施形態によれば、前面は、球面、非球面又は累進面である。
【0181】
幾つかの実施形態によれば、背面は、球面、円筒面、非球面、アトリカル又は累進面である。
【0182】
幾つかの実施形態によれば、第3のステップ中、例えば中心視についての変調伝達関数が計算される。変調伝達関数が、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07以上ではない場合、初期パラメータは、例えば、中心視についての変調伝達関数が閾値を満たすまで反復的に修正される。
【0183】
幾つかの実施形態によれば、最適化手順は、光学微細構造が以下の基準の1つを更に順守するように制約付き最適化手順である。
【0184】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、10~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55又は0.60以上であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0185】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、10~15サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60又は0.65以上であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0186】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、20~25サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.07、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55又は0.60以上であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0187】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、中心視について、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、0.5~3サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.70、0.75、0.80、0.85、0.90以上であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0188】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、3~7サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35又は0.3以下であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0189】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、3サイクル/度の空間周波数において0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35又は0.3以下であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0190】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合、レンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、4サイクル/度の空間周波数において0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25又は0.2以下であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0191】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、7サイクル/度の空間周波数において0.4、0.35、0.3、0.25又は0.2以下であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0192】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、10~20サイクル/度に含まれる空間周波数の範囲にわたって0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65又は0.70以上であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0193】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、10サイクル/度の空間周波数において0.30、0.35、0.40、0.45又は0.50以上であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0194】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、例えば、周辺視について、0°の注視方向、15°の光線方向及び4mmの瞳開口について測定される場合又はレンズ要素の光学中心から6.6mmに中心がある4mmの瞳開口について光学微細構造を通して測定される場合、変調伝達関数が、20サイクル/度の空間周波数において0.15、0.20、0.25、0.30、0.3又は0.40以上であるように光学微細構造を特定するステップを更に含む。
【0195】
本説明では、「上」、「下」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」等の用語又は相対位置を示す他の単語を用いる場合がある。これらの用語は、レンズ要素の装用条件に関するものと理解されたい。
【0196】
本発明に関連して、用語「レンズ要素」とは、未カットレンズ又は特定の眼鏡フレームに嵌め込むようにエッジ加工された眼鏡光学レンズ又は眼用レンズを指し得る。
【0197】
様々な実施形態を説明及び図示してきたが、詳細な説明及び図面は、限定的であるとみなされるべきではなく、単に例示的及び例証的であるとみなされるべきである。実施形態に対する様々な修正形態は、特許請求の範囲によって定義されるような本開示の範囲から逸脱することなく、当業者によってなされ得る。請求項において、単語「含む」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数を除外しない。異なる特徴が互いに異なる従属請求項で説明されるという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせを有利に用いることができないことを示すものではない。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も本発明の適用範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0198】
1 光学微細構造
2 透明中央領域
3 周辺領域
L1、L2、L3 レンズ要素
【国際調査報告】