(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ヒト肝キメリズムと組合せたAAVRノックアウトマウス並びにその使用方法及び作製方法
(51)【国際特許分類】
A01K 67/0271 20240101AFI20240910BHJP
A01K 67/0276 20240101ALI20240910BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
A01K67/0271
A01K67/0276 ZNA
C12Q1/70
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537307
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 US2022075633
(87)【国際公開番号】W WO2023034775
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524074895
【氏名又は名称】アバクローム,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】マリア デ ラス メルセデス バルシ ディエゲス
(72)【発明者】
【氏名】フランシス ピーター パンコウィッツ
(72)【発明者】
【氏名】カール-ディミター ビッシグ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR72
4B063QR77
4B063QR79
(57)【要約】
本開示は、ヒト肝細胞を含む、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は機能障害を伴う、免疫不全又は免疫障害のキメラ非ヒト動物、このヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物の調製方法、並びにアデノ随伴ウイルス(AAV)の形質導入効率を評価し、及びヒト肝細胞におけるAAV形質導入の阻害/修飾の機序を決定するために、このヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を利用する方法を提供する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物であって、ここでこのキメラ非ヒト動物が:
a)非ヒト動物の肝臓においてヒトキメリズムを確立するヒト肝細胞の再構築を可能にする、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏又は機能障害;並びに
b)非ヒト動物アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠乏又は機能障害を生じるAAVRの欠失又は変異:を含む、キメラ非ヒト動物。
【請求項2】
前記キメラ非ヒト動物が、IL-2Rg
-/-/Rag2
-/-キメラ非ヒト動物であり、及び
ここでこのキメラ非ヒト動物が、非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるAAVRの欠失又は変異を含む、ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物。
【請求項3】
前記キメラ非ヒト動物が更に、Fah
-/-を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載のキメラ非ヒト動物。
【請求項4】
前記キメラ非ヒト動物が、IL-2Rg
-/-/Rag2
-/-/Fah
-/-非ヒト動物である、請求項1に記載のキメラ非ヒト動物。
【請求項5】
前記ヒト肝細胞が、キメラ非ヒト動物の肝臓内の全ての肝細胞の:
i)少なくとも5%;
ii)少なくとも10%;
iii)少なくとも20%;
iii)少なくとも30%;
iv)少なくとも40%;
v)少なくとも50%;
vi)少なくとも70%;
vii)少なくとも80%;
viii)少なくとも90%;
ix)少なくとも95%;又は
x)少なくとも99%、を占める、請求項1~4のいずれか一項に記載のキメラ非ヒト動物。
【請求項6】
ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法であって、この方法が:
(a)非ヒト動物において、欠乏又は機能障害されたT-、B-及び/又はNK細胞を提供する工程であって、これが、非ヒト動物の肝臓におけるヒトキメリズムを確立するようヒト肝細胞の再構築を可能にし、ここでこの非ヒト動物が、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含む工程;並びに
(b)ヒト肝細胞をこの非ヒト動物へ移植する工程:を含む、方法。
【請求項7】
ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法であって、この方法が:
(a)IL-2Rg
-/-/Rag2
-/-非ヒト動物を提供する工程であって、ここでこの非ヒト動物が、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む工程;及び
(b)ヒト肝細胞をこの非ヒト動物へ移植する工程:を含む、方法。
【請求項8】
前記非ヒト動物が更に、Fah
-/-を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キメラ非ヒト動物が、IL-2Rg
-/-/Rag2
-/-/Fah
-/-非ヒト動物である、請求項7~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒト肝細胞が、キメラ非ヒト動物の肝臓内の全ての肝細胞の:
i)少なくとも5%;
ii)少なくとも10%;
iii)少なくとも20%;
iii)少なくとも30%;
iv)少なくとも40%;
v)少なくとも50%;
vi)少なくとも70%;
vii)少なくとも80%;
viii)少なくとも90%;
ix)少なくとも95%;又は
x)少なくとも97%、を占める、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ヒト肝細胞におけるAAVベクターの形質導入効率を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)請求項1~5のいずれか一項に記載のキメラ非ヒト動物を提供する工程;
(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを感染させる工程;及び
(c)ヒト及びAAVR KO非ヒト動物の肝細胞(非ヒト動物肝細胞)へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む、方法。
【請求項12】
(dc)において、ヒト肝細胞又は非ヒト動物肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルが:
(i)非ヒト動物における、各々、AAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率、もしくはAAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率;又は
(ii)非ヒト動物における、各々、ヒト肝細胞もしくは非ヒト動物肝細胞に形質導入されたAAVベクターの総量の百分率:として測定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が更に:
(d)(i)AAVベクターの総量の予め決定された百分率未満が、非ヒト動物肝細胞へ形質導入される場合;
(ii)AAVベクターの総量の少なくとも予め決定された百分率が、ヒト肝細胞へ形質導入される場合;
(iii)AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率が、既定値未満である場合;及び/又は
(iv)AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率が、既定値よりも大きい場合、
に、ヒト肝細胞を形質導入する効率的なものとしてAAVベクターを選択する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ヒト肝細胞における2種以上の同一でないAAVベクター(複数可)の形質導入効率を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)請求項1~5のいずれか一項に記載の2匹以上のキメラAAVR KO非ヒト動物を提供する工程;
(b)工程(a)の非ヒト動物の各々に、所定量の2種以上の同一でないAAVベクターを感染させる工程であって、ここで1匹の非ヒト動物は、1種のAAVベクターにより感染する工程;
(c)工程(b)の2匹以上の非ヒト動物の各々におけるヒト肝細胞及びAAVR KO非ヒト動物肝細胞(非ヒト動物肝細胞)への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程、を含む、方法。
【請求項15】
前記方法が更に:
(d)工程(c)において決定された非ヒト肝細胞への2種以上のAAVベクターの各々の形質導入のレベルを比較する工程;及び/又は
(e)工程(c)において決定されたヒト肝細胞への2種以上のAAVベクターの各々の形質導入のレベルを比較する工程、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が更に:
(f)(i)AAVベクターの総量の予め決定された百分率未満が、非ヒト動物肝細胞へ形質導入される場合;
(ii)AAVベクターの総量の少なくとも予め決定された百分率が、ヒト肝細胞へ形質導入される場合;
(iii)AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率が、既定値未満である場合;及び/又は
(iv)AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率が、既定値よりも大きい場合、
に、ヒト肝細胞を形質導入する効率的なものとして1又は複数のAAVベクター(複数可)を選択する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前述の(i)において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の予め決定された百分率が:
(1)≦90%;
(2)≦80%;
(3)≦70%;
(4)≦50%;
(5)≦20%;
(6)≦10%;及び
(7)≦5%、のいずれか1つである、請求項13又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前述の(ii)において、ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の予め決定された百分率が:
(1)≧99%;
(2)≧95%;
(3)≧90%;
(4)≧80%;
(5)≧70%;
(6)≧50%;
(7)≧20%;及び
(8)≧10%、のいずれか1つである、請求項13又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前述の(iii)において、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率の既定値が:
(1)≦50%;
(2)≦40%;
(3)≦30%;
(4)≦20%;
(5)≦10%;及び
(6)≦5%、のいずれか1つである、請求項13又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前述の(iv)において、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率の既定値が:
(1)≧10%;
(2)≧20%;
(3)≧30%;
(4)≧50%;
(5)≧70%;
(6)≧80%;及び
(7)≧90%、のいずれか1つである、請求項13又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記AAVベクターが、検出可能なマーカーを発現する、請求項11~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記検出可能なマーカーが、蛍光タンパク質、酵素、又はペプチドである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記AAVベクターが、ベクターのゲノム内に独自の核酸配列を含み、ここでこの独自の核酸配列は、検出可能な又はバーコードRNA配列へ転写することができる、請求項11~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)請求項1~5のいずれか一項に記載のキメラ非ヒト動物を提供する工程;
(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、少なくとも初回感染させる工程;
(c)このAAVベクターの、AAVR KO非ヒト動物のヒト肝細胞への形質導入のレベルを決定する工程、を含む、方法。
【請求項25】
前記方法が:
(d)この非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、2回目感染させる工程;及び
(e)このAAVベクターの、AAVR KO非ヒト動物のヒト肝細胞への形質導入のレベルを決定する工程、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が更に:
(f)初回及び2回目の感染の間の、このAAVベクターの、ヒト肝細胞への形質導入のレベルを比較する工程:を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記AAVベクターの量が、1×10
1~1×10
15ウイルスゲノム/非ヒト動物である、請求項24~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前述の初回及び2回目の感染におけるAAVベクターの量が、同じである、請求項24~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前述の初回及び2回目の感染におけるAAVベクターの量が、異なる、請求項24~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ヒト肝細胞におけるAAVベクターのアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)A群及びB群の2群へ分けられた2匹以上の非ヒト動物を提供する工程であって、各群は、1又は複数の非ヒト動物を含み、ここでA群は、野生型ヒト肝細胞が移植され、及びB群は、非機能性ヒトAAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含むヒト肝細胞(Hu AAVR KOヒト肝細胞)が移植される工程であって;
ここで、これら2匹以上の非ヒト動物は更に、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏又は機能障害、IL-2Rg
-/-/Rag2
-/-/、及び/又はFah
-/-を含む工程;
(b)工程(a)の各群の1又は複数の感染した非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;
(c)A群及びB群の非ヒト動物のヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程であって、
ここで、A群における形質導入のレベルは、AAVベクターの、AAVR依存型形質導入効率の指標であり、及びB群における形質導入のレベルは、AAVベクターのAAVR非依存型形質導入効率の指標である工程、を含む、方法。
【請求項31】
ヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法であって、この方法が:
(a)非ヒト動物の2群であるA群及びB群を提供する工程であって、ここでA群は、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及びNK細胞の1又は複数を含み、並びにB群は、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及びNK細胞の1つを含み;
ここで、欠乏又は機能障害されたT-、B-及びNK細胞の1又は複数は、非ヒト動物の肝臓においてヒトキメリズムを確立するヒト肝細胞の再構築を可能にする工程;
(b)ヒト肝細胞を、工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ移植する工程;
(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに
(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト肝細胞及び非ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程、を含む、方法。
【請求項32】
ヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)非ヒト動物の2群であるA群及びB群を提供する工程であって、ここでA群が、1又は複数のIL-2Rg
-/-/Rag2
-/-非ヒト動物を含み、並びにB群が、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む、1又は複数のIL-2Rg
-/-/Rag2
-/-の非ヒト動物を含む工程;
(b)工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ、ヒト肝細胞を移植する工程;
(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに
(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト肝細胞及び非ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程、を含む、方法。
【請求項33】
前記非ヒト動物が更に、Fah
-/-を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前述の方法が更に:
(e)A群とB群の間で非ヒト動物のヒト肝細胞及び非ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを比較する工程であって;
(i)ここで、A群の非ヒト肝細胞及びヒト肝細胞へのAAVの形質導入のレベルの間の差異は、ヒト肝細胞へのAAVベクターの取込みのAAVR依存型及び非依存型の両方の修飾及び/又は阻害の指標であり;
(ii)ここで、B群の非ヒト肝細胞及びヒト肝細胞へのAAVの形質導入のレベルの間の差異は、ヒト肝細胞へのAAVベクターの取込みのAAVR非依存型の両方の修飾及び/又は阻害の指標であり;並びに
(iii)ここで、B群及びA群におけるヒト肝細胞へのAAVの形質導入のレベルの間の差異は、ヒト肝細胞へのAAVベクターの取込みのAAVR依存型の修飾及び/又は阻害の指標である、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも2種のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物であって、ここでこのキメラ非ヒト動物が更に:
a)非ヒト動物においてヒトキメリズムを確立するよう1又は複数のヒト組織の再構築を可能にする、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏又は機能障害;並びに
b)非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異、を含む、キメラ非ヒト動物。
【請求項36】
1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物であって:
ここでこのキメラ非ヒト動物が、IL-2Rg
-/-/Rag2
-/-キメラ非ヒト動物であり、及び
ここでこのキメラ非ヒト動物が更に、非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるAAVRの欠失又は変異を含む、キメラ非ヒト動物。
【請求項37】
前記キメラ非ヒト動物が、IL-2Rg
-/-/Rag2
-/-/Fah
-/-非ヒト動物である、請求項35又は36に記載のキメラ非ヒト動物。
【請求項38】
1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法であって、この方法が:
(a)非ヒト動物においてヒトキメリズムを確立するヒト組織の再構築を可能にする、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及び/又はNK細胞を提供する工程であって、ここでこの非ヒト動物は、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含む工程;並びに
(b)1又は複数のヒト組織を、この非ヒト動物へ移植する工程、を含む、方法。
【請求項39】
1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法であって、この方法が:
(a)IL-2Rg
-/-/Rag2
-/-非ヒト動物を提供する工程であって、ここでこの非ヒト動物が、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む工程;及び
(b)ヒト組織を、この非ヒト動物へ移植する工程、を含む、方法。
【請求項40】
前記非ヒト動物が更に、Fah
-/-を含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
1又は複数のヒト組織におけるAAVベクターの形質導入効率を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)請求項35~37のいずれか一項に記載の非ヒト動物を提供する工程;
(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを感染させる工程;及び
(c)AAVR KO非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程、を含む方法。
【請求項42】
少なくとも2種の、1又は複数のヒト組織における、2種以上の同一でないAAVベクター(複数可)の形質導入効率を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)請求項35~37のいずれか一項に記載の2匹以上のAAVR KO非ヒト動物を提供する工程;
(b)工程(a)の非ヒト動物の各々に、所定量の2種以上の同一でないAAVベクターを感染させる工程であって、ここで各非ヒト動物が、1種のAAVベクターにより感染する工程;
(c)工程(b)の2匹以上の非ヒト動物の各々における少なくとも1種のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程、を含む、方法。
【請求項43】
全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)請求項35~37のいずれか一項に記載の非ヒト動物を提供する工程;
(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、少なくとも初回感染させる工程;
(c)AAVR KO非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程、を含む、方法。
【請求項44】
1又は複数のヒト組織におけるAAVベクターのアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)2群であるA群及びB群へ分けられた非ヒト動物を提供する工程であって、各群が、1又は複数の非ヒト動物を含み、ここでA群は、野生型ヒト組織が移植され、並びにB群は、非機能性ヒトAAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含むヒト組織が移植され、
ここで、この2匹以上の非ヒト動物が更に、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏又は機能障害、IL-2Rg
-/-/Rag2
-/-/、及び/又はFah
-/-を含む、工程;
(b)工程(a)の各群の1又は複数の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;
(c)A群及びB群の非ヒト動物の1又は複数のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程であって、
ここで、A群における形質導入のレベルは、AAVベクターの、AAVR依存型の形質導入効率の指標であり、及びB群における形質導入のレベルは、AAVベクターのAAVR非依存型の形質導入効率の指標である、方法。
【請求項45】
ヒト組織へのAAVベクター形質導入のアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)非ヒト動物の群であるA群及びB群を提供する工程であって、ここでA群が、非ヒト動物において欠乏又は機能障害された1又は複数のT-、B-及びNK細胞を含み、及びB群が、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及びNK細胞の1つを含み、
ここで、欠乏又は機能障害された1又は複数のT-、B-及びNK細胞は、非ヒト動物におけるヒトキメリズムを確立するようヒト組織の再構築を可能にする工程;
(b)工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ、1又は複数のヒト組織を移植する工程;
(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに
(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程、を含む、方法。
【請求項46】
1又は複数のヒト組織へのAAVベクター形質導入のアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法であって、ここでこの方法が:
(a)非ヒト動物の2群であるA群及びB群を提供する工程であって、ここでA群が、1又は複数のIL-2Rg
-/-/Rag2
-/-非ヒト動物を含み、並びにB群が、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む、1又は複数のIL-2Rg
-/-/Rag2
-/-非ヒト動物を含む工程;
(b)工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ、1又は複数のヒト組織を移植する工程;
(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに
(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程、を含む、方法。
【請求項47】
前記非ヒト動物が更に、Fah
-/-を含む、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月30日に出願された、米国特許仮出願第63/238,386号の優先権及び恩恵を主張するものであり、その内容は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
配列表の参照としての組込み
本出願に関連した配列表XMLは、XMLファイル形式で電子的に提供され、並びに本明細書に引用により組込まれている。配列表XMLを含むXMLファイルの名称は、AVCR-003_001WO_ST26”である。このXMLファイルは、サイズが35,504バイトであり、2022年8月24日に作製され、且つ米国特許商標庁(USPTO)パテントセンターを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、遺伝子治療のため、及びヒト疾患モデル作製のための、ウイルス送達物質として使用される。キメラヒト化マウスモデルは、AAVベクター血清型及びそれらのバリアントの形質導入効率を決定するために、研究者により使用されているが、ほとんどのAAV血清型は、好ましくはマウス肝細胞をヒト肝細胞よりも形質導入するので、有用性が限定される。本開示は、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)ノックアウトヒト肝臓キメラ非ヒト動物モデル、及びAAV形質導入効率を評価するためにこれを使用する方法を提供することにより、当該技術分野におけるこれらの必要性を解決する。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本開示は、ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を提供し、ここでこのキメラ非ヒト動物は、a)非ヒト動物の肝臓においてヒトキメリズム(chimerism)を確立するヒト肝細胞の再構築(re-populating)を可能にする、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏又は機能障害;並びに、b)非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異、を含む。
【0005】
本開示は、ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を提供し、ここでこのキメラ非ヒト動物は、IL-2Rg-/-/Rag2-/-キメラ非ヒト動物であり、並びにここでこのキメラ非ヒト動物は、非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるAAVRの欠失又は変異を含む。一部の実施態様において、このキメラ非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。一部の実施態様において、このキメラ非ヒト動物は、導入遺伝子を含まない。一部の実施態様において、この導入遺伝子は、抗生物質耐性カセットである。
【0006】
本開示はまた、ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)非ヒト動物の肝臓においてヒトキメリズムを確立するヒト肝細胞の再構築を可能にする、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏又は機能障害であり、ここでこの非ヒト動物は、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含む工程;並びに、(b)ヒト肝細胞を非ヒト動物へ移植する工程:を含む。本開示のヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法の一部の実施態様において、工程(b)は更に、選択圧を適用することを含む。
【0007】
本開示はまた、ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)IL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を提供する工程であって、ここでこの非ヒト動物は、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む工程;並びに、(b)ヒト肝細胞をこの非ヒト動物へ移植する工程:を含む。この開示の方法の一部の実施態様において、この非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。本開示のヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法の一部の実施態様において、工程(b)は更に、選択圧を適用することを含む。
【0008】
本開示の方法の一部の実施態様において、このキメラ非ヒト動物は、導入遺伝子を含まない。この開示の方法の一部の実施態様において、この導入遺伝子は、抗生物質耐性カセットである。本開示はまた、本明細書に開示された方法により作製された、キメラ非ヒト動物も提供する。
【0009】
前述の選択圧の適用は、本開示のヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法の工程(b)の非ヒト動物へ、ニチシノン(NTBC)を提供しないことを含むことができる。ある態様において、この調製方法は、本明細書において開示された方法の工程(b)後の、選択圧の除去を含む。選択圧の除去は、本明細書において開示された方法の工程(c)後の、キメラ非ヒト動物へニチシノン(NTBC)を提供することを含むことができる。
【0010】
本開示はまた、ヒト肝細胞におけるAAVベクターの形質導入効率を決定する方法を提供し、ここでこの方法は:(a)本開示の方法のいずれか1つにより調製されたキメラ非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量の(an amount of)AAVベクターを感染させる工程;並びに、(c)このヒト肝細胞及びAAVR KO非ヒト動物の肝細胞(非ヒト動物肝細胞)へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。本開示の方法の一部の実施態様において、工程(c)において、ヒト肝細胞又は非ヒト動物肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルは:(i)非ヒト動物における、各々、AAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率、もしくはAAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率;又は、(ii)非ヒト動物における、各々、AAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞もしくは非ヒト動物肝細胞の総量の百分率:として測定される。
【0011】
本開示の方法の一部の実施態様において、本方法は更に:(d)(i)AAVベクターの総量の予め決定された百分率未満が、非ヒト動物肝細胞へ形質導入される場合;(ii)AAVベクターの総量の少なくとも予め決定された百分率が、ヒト肝細胞へ形質導入される場合;(iii)AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率が、既定値未満である場合;及び/又は、(iv)AAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率が、既定値よりも大きい場合:に、ヒト肝細胞を形質導入する効率的なものとしてこのAAVベクターを選択する工程を含む。
【0012】
本開示はまた、ヒト肝細胞における2種以上の同一でないAAVベクター(複数可)の形質導入効率を決定する方法を提供し、ここでこの方法は:(a)本開示の方法のいずれか1つにより作製された2匹以上のキメラAAVR KO非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(b)の非ヒト動物の各々に、所定量の2種以上の同一でないAAVベクターを感染させ、ここで1匹の非ヒト動物は、1種のAAVベクターにより感染される工程;並びに、(c)工程(a)の2匹以上の非ヒト動物の各々におけるヒト肝細胞及びAAVR KO非ヒト動物の肝細胞(非ヒト動物肝細胞)への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。この開示の方法の一部の実施態様において、この方法は更に:(d)工程(c)において決定された非ヒト肝細胞への2種以上のAAVベクターの各々の形質導入のレベルを比較する工程;及び/又は、(e)工程(c)において決定されたヒト肝細胞への2種以上のAAVベクターの各々の形質導入のレベルを比較する工程:を含む。本開示の方法の一部の実施態様において、この方法は:(f)(i)AAVベクターの総量の予め決定された百分率未満が、非ヒト動物肝細胞へ形質導入される場合;(ii)AAVベクターの総量の少なくとも予め決定された百分率が、ヒト肝細胞へ形質導入される場合;(iii)AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率が、既定値未満である場合;及び/又は、(iv)AAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率が、既定値よりも大きい場合:に、ヒト肝細胞を形質導入する効率的なものとして1又は複数のAAVベクター(複数可)を選択する工程を含む。
【0013】
本開示はまた、全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)本開示の方法のいずれかにより調製されたキメラ非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、少なくとも初回感染させる工程;並びに、(c)このAAVベクターの、AAVR KO非ヒト動物のヒト肝細胞への形質導入のレベルを決定する工程:を含む。本開示の方法の一部の実施態様において、この方法は:(d)この非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、2回目感染させる工程;(e)工程(d)の感染した非ヒト動物を、所定時間維持する工程;並びに、(g)このAAVベクターの、AAVR KO非ヒト動物のヒト肝細胞への形質導入のレベルを決定する工程:を含む。本開示の方法の一部の実施態様において、この方法は更に:(i)初回及び2回目の感染の間の、このAAVベクターの、ヒト肝細胞への形質導入のレベルを比較する工程:を含む。
【0014】
本開示はまた、ヒト肝細胞におけるAAVベクターのアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)A群及びB群の2群へ分けられた本開示の方法のいずれか1つにより調製された2匹以上の非ヒト動物を提供し、各群は、1又は複数の非ヒト動物を含み、ここでA群は、野生型ヒト肝細胞を受け取り、並びにB群は、非機能性ヒトAAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含むヒト肝細胞(Hu AAVR KOヒト肝細胞)を受け取る工程;(b)工程(a)の各群の1又は複数の感染した非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに、(c)A群及びB群の非ヒト動物のヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程であって、ここで、AAVベクターの、A群における形質導入のレベルは、AAVR依存型形質導入効率の指標であり、並びにB群における形質導入のレベルは、AAVR非依存型形質導入効率の指標である工程:を含む。
【0015】
本開示はまた、ヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入の、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法も提供し、この方法は:(a)非ヒト動物の2群A群及びB群を提供し、ここでA群は、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及びNK細胞の1又は複数を含み、並びにB群は、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及びNK細胞の1を含み、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含み、ここで、欠乏又は機能障害されたT-、B-及びNK細胞の1又は複数は、非ヒト動物の肝臓においてヒトキメリズムを確立するヒト肝細胞の再構築を可能にする工程;(b)ヒト肝細胞を、工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ移植する工程;(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに、(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト肝細胞及び非ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。本開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、工程(b)は更に、選択圧を適用することを含む。
【0016】
本開示はまた、ヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)非ヒト動物の2群、A群及びB群を提供する工程であって、ここでA群は、1又は複数のIL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を含み、並びにB群は、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む、1又は複数のIL-2Rg-/-/Rag2-/-の非ヒト動物を含む工程;(b)工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ、ヒト肝細胞を移植する工程;(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに、(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト肝細胞及び非ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。この開示の方法の一部の実施態様において、非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。本開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、工程(b)は更に、選択圧を適用することを含む。本開示の方法の一部の実施態様において、選択圧の適用は、工程(b)の非ヒト動物へニチシノン(NTBC)を適用しないことを含む。本開示の方法の一部の実施態様において、この方法は更に、工程(b)の後に選択圧を除去することを含む。
【0017】
本開示の方法の一部の実施態様において、この方法は更に:(e)A群とB群の間で非ヒト動物のヒト肝細胞及び非ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを比較する工程であって、(i)ここで、A群の非ヒト肝細胞及びヒト肝細胞へのAAVの形質導入のレベルの間の差異は、ヒト肝細胞へのAAVベクターの取込みのAAVR依存型及び非依存型の両方の修飾及び/又は阻害の指標であり;(ii)ここで、B群の非ヒト肝細胞及びヒト肝細胞へのAAVの形質導入のレベルの間の差異は、ヒト肝細胞へのAAVベクターの取込みのAAVR非依存型の両方の修飾及び/又は阻害の指標であり;並びに、(iii)ここで、B群及びA群におけるヒト肝細胞へのAAVの形質導入のレベルの間の差異は、ヒト肝細胞へのAAVベクターの取込みのAAVR依存型の修飾及び/又は阻害の指標である工程;を含む。
【0018】
別の態様において、少なくとも2種のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物が、本明細書において提供され、ここでこのキメラ非ヒト動物は更に:(a)非ヒト動物においてヒトキメリズムを確立する1又は複数のヒト組織の再構築を可能にする、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏又は機能障害;並びに、(b)非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異:を含む。別の態様において、1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物が、本明細書において提供され、ここでこのキメラ非ヒト動物は、IL-2Rg-/-/Rag2-/-キメラ非ヒト動物であり、並びに、ここで、このキメラ非ヒト動物は更に、非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるAAVRの欠失又は変異を含む。一部の実施態様において、このキメラ非ヒト動物は、IL-2Rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-非ヒト動物である。
【0019】
別の態様において、1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)非ヒト動物においてヒトキメリズムを確立するヒト組織の再構築を可能にする、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及び/又はNK細胞を提供する工程であって、ここでこの非ヒト動物は、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含む工程;並びに、(b)1又は複数のヒト組織を、この非ヒト動物へ移植する工程:を含む。別の態様において、1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法が、本明細書において提供され、この方法は、(a)IL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を提供する工程であって、ここでこの非ヒト動物は、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む工程;並びに、(b)ヒト組織を、この非ヒト動物へ移植する工程:を含む。一部の実施態様において、この非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。
【0020】
別の態様において、1又は複数のヒト組織におけるAAVベクターの形質導入効率を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)本明細書記載の非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを感染させる工程;並びに、(c)AAVR KO非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。
【0021】
別の態様において、少なくとも2種の1又は複数のヒト組織における、2種以上の同一でないAAVベクター(複数可)の形質導入効率を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)本明細書記載の2匹以上のAAVR KO非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物の各々に、所定量の2種以上の同一でないAAVベクターを感染させる工程であって、ここで各非ヒト動物は、1種のAAVベクターにより感染される工程;(c)工程(b)の2匹以上の非ヒト動物の各々における少なくとも1つのヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。
【0022】
別の態様において、全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)本明細書記載の非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、少なくとも初回感染させる工程;(c)AAVR KO非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。
【0023】
別の態様において、1又は複数のヒト組織におけるAAVベクターのアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)2群、A群及びB群へ分けられた非ヒト動物を提供する工程であって、各群は、1又は複数の非ヒト動物を含み、ここでA群は、野生型ヒト組織が移植され、並びにB群は、非機能性ヒトAAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含むヒト組織が移植され、ここで、この2匹以上の非ヒト動物は更に、欠乏又は機能障害されたT-、B-及び/又はNK細胞、IL-2Rg-/-/Rag2-/-/、及び/又はFah-/-を含む、工程;(b)工程(a)の各群の1又は複数の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに、(c)A群及びB群の非ヒト動物の1又は複数のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程であって、ここで、A群における形質導入のレベルは、AAVベクターの、AAVR依存型の形質導入効率の指標であり、並びにB群における形質導入のレベルは、AAVR非依存型の形質導入効率の指標である。
【0024】
別の態様において、ヒト組織へのAAVベクター形質導入のアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)非ヒト動物の群、A群及びB群を提供する工程であって、ここでA群は、非ヒト動物において欠乏又は機能障害された1又は複数のT-、B-及びNK細胞を含み、並びにB群は、非ヒト動物において欠乏又は機能障害された1のT-、B-及びNK細胞を含み、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含み、ここで欠乏又は機能障害された1又は複数のT-、B-及びNK細胞は、非ヒト動物におけるヒトキメリズムを確立するヒト組織の再構築を可能にする工程;(b)工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ、1又は複数のヒト組織を移植する工程;(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに、(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。
【0025】
別の態様において、1又は複数のヒト組織へのAAVベクター形質導入のアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)非ヒト動物の2群、A群及びB群を提供する工程であって、ここでA群は、1又は複数のIL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を含み、並びにB群は、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む、1又は複数のIL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を含む工程;(b)工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ、1又は複数のヒト組織を移植する工程;(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに、(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。一部の実施態様において、この非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。
【0026】
本明細書を通じて、語句「含んでいる」又はその変形、例えば「含む」もしくは「含んでいる」などは、言及された要素、整数もしくは工程、又は複数の要素、複数の整数、もしくは複数の工程の群の包含を暗示しているが、任意の他の要素、整数もしくは工程、又は複数の要素、複数の整数もしくは複数の工程の群を排除しないことは理解されるであろう。
【0027】
約とは、言及された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内として理解され得る。文脈からそうでないことが明らかでない限りは、本明細書に提供される全ての数値は、用語「約」により修飾される。
【0028】
本開示は、その詳細な説明と結びつけて説明されるが、先の説明は、本開示の範囲を例示するが限定しないことが意図され、これは、添付された請求項の範囲により規定される。別の態様、利点、及び修飾は、以下の請求項の範囲内である。
【0029】
本明細書において言及された特許文献及び科学文献は、当業者により入手可能である知識を確立する。本明細書に列挙された全ての米国特許及び公開もしくは未公開の米国特許出願は、引用により組み込まれている。本明細書に引用された全ての公開された外国特許及び特許出願は、引用により本明細書中に組み込まれている。本明細書に列挙された寄託番号により指定されたGenbank及びNCBI提出は、引用により本明細書中に組み込まれている。本明細書に列挙された全ての他の公開された参考文献、文書、原稿及び科学論文は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面の簡単な説明
特許又は出願ファイルは、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴うこの特許又は特許出願の公開のコピーは、請求時に必要な料金を支払い、特許庁により提供されるであろう。
【0031】
上記の及び更なる特徴は、添付図面と結びつけて考慮される場合、以下の詳細な説明から、より明確に理解されるであろう。
【0032】
【
図1】
図1A-1Bは、AAVRのCRISPR-KO株の作製を描いている。
図1Aは、エキソン(エキソン1(E1)からエキソン6(E6))を描くボックスによる、AAVR遺伝子の概略図である。
図1Bは、イントロンのプライマーを使用する、ホモ接合型及びヘテロ接合型AAVR KOマウスの作製を示す、PCR増幅のゲル電気泳動写真を描いている。ゲル電気泳動のゲルにおける、作製されたホモ接合型及びヘテロ接合型の動物に由来する野生型バンド(2.3kbp)及びノックアウトバンド(0.2kbp)が、示されている。
【0033】
【
図2】
図2A-2Bは、TIRFA(導入遺伝子フリーIl2rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-/AAVR-/-)KOマウスに関する、ジェノタイピングスキーム及びプローブ/プライマーを描いている。
図2Aは、Taqmanプローブを使用する、半-定量的PCRの概略図である。
図2Bは、半-定量的PCRにおいて使用したプライマー配列及びレポーターを描いている。
【0034】
【
図3】
図3は、異なるAAV血清型による、ヒト肝臓キメラマウスの形質導入を描いている。x-軸は、指定されたような、FRG(Fah
-/-/Rag2
-/-/Il2rg
-/-)ヒト肝臓キメラマウスを形質導入するために使用される、キャプシド(血清型/バリアント)、プロモーター型及び検出可能な/レポーター遺伝子に関する、AAVベクターの同一性を描いている。y-軸は、FRGヒト肝臓キメラマウスのヒトキメラ肝臓における、ヒト肝細胞(白色バー)及びマウス肝細胞(黒色バー)の形質導入率を描いている。各バーに示されたデータは、各キメラマウス肝臓の画像の5-11セットの平均±SEMである。
図3は、Bissig-Choisat B.らの文献(Nature communications, 2015)から部分的に適応されているデータを描いている。
【0035】
【
図4】
図4A-4Fは、Bissig-Choisat Bの文献(Nature communications 2015)から適応されている、AAV8及びAAV9による、ヒト肝臓キメラFRGマウスの形質導入を描いている。
図4A-4Cは、AAV8が形質導入されたFRGマウスの肝細胞の形質導入を示す。
図4D-4Fは、AAV9が形質導入されたFRGマウスの肝細胞の形質導入を示す。形質導入されたマウス肝細胞は、矢印により示され、及び形質導入されたヒト肝細胞は、矢尻により示されている。
図4B及び4Fは、各々、
図4A及び4D中の白色四角によりマークされている拡大された標本である(スケールバーは50∞m)である。
【0036】
【
図5】
図5A-5Lは、AAV9による、AAVRノックアウトヒト肝臓キメラTIRFA(導入遺伝子フリーIl2rg
-/-/Rag2
-/-/Fah
-/-/AAVR
-/-)マウスの形質導入を描いている。
図5A-5Fは、AAVRのホモ接合型欠失を伴うヒト肝臓キメラマウス(TIRFA/AAVR
-/-)における、AAV9による、肝細胞の形質導入を示している、2つ組実験からの代表的免疫蛍光染色パネルを描いている。
図5G-5Lは、AAVRヘテロ接合型欠失を伴うヒト肝臓キメラTIRFAマウス(TIRFA/AAVR
+/-)における、AAV9による、肝細胞の形質導入を示している、2つ組実験を描いている。
図5A、5D、5G及び5Jは、AAVベクター形質導入の染色(dTomato)を示すパネルを描いている。
図5B、5E、5H及び5Kは、ヒト肝細胞FAHの染色(ヒトLDHA)を示すパネルを描いている。
図5C、5F、5I及び5Lは、AAVベクター形質導入及びヒト肝細胞に関する染色の重ね合わせを描いている。
【0037】
【
図6】
図6A及び6Bは、ヒト化されたTIRF及びTIRFAマウスにおける、AAV8の形質導入を描いている。ヒト化されたTIRF(導入遺伝子フリーIl2rg
-/-//Rag2
-/-/Fah
-/-/Aavr
+/+)(
図6A)及びヒト化されたTIRFA(導入遺伝子フリーIl2rg
-/-//Rag2
-/-/Fah
-/-/Aavr
-/-)(
図6B)のマウスに、td-Tomato発現カセットを保有するAAV8のマウス1匹につき1×10
12個GCを注入した。マウスは、72時間後に安楽死させ、肝臓を収集し、同時-局在化を示すために、ヒトマーカーLDH(明灰色)及びウイルス導入遺伝子td-Tomato(黒色)を染色した。
【0038】
【
図7】
図7A及び7Bは、ヒト化されたTIRF及びTIRFAマウスにおける、AAV9の形質導入を描いている。ヒト化されたTIRF(導入遺伝子フリーIl2rg
-/-//Rag2
-/-/Fah
-/-/Aavr
+/+)(
図7A)及びヒト化されたTIRFA(導入遺伝子フリーIl2rg
-/-//Rag2
-/-/Fah
-/-/Aavr
-/-)(
図7B)のマウスに、1匹のtd-Tomato発現カセットを保有するAAV9のマウスにつき1×10
12個GCを注入した。マウスは、72時間後に安楽死させ、肝臓を収集し、同時-局在化を示すために、ヒトマーカーLDH(明灰色)及びウイルス導入遺伝子td-Tomato(黒色)を染色した。
【0039】
【
図8】
図8A及び8Bは、ヒト化されたTIRFAマウスにおけるヒト肝細胞のAAV形質導入効率の定量を描いている。ヒト化されたTIRFマウス(導入遺伝子フリーIl2rg
-/-//Rag2
-/-/Fah
-/-/Aavr
+/+)及びヒト化されたTIRFAマウス(導入遺伝子フリーIl2rg
-/-//Rag2
-/-/Fah
-/-/Aavr
-/-)に、1匹のtd-Tomato発現カセットを保有するAAV8(
図8A)又はAAV9(
図8B)のマウスにつき1×10
12個GCを注入した。マウスは、72時間後に安楽死させ、肝臓を収集し、ヒトマーカーLDH及びウイルス導入遺伝子(td-Tomato)を染色した。例えばTIRF及びTIRFAマウスにおけるヒト肝細胞のAAV形質導入など、td-Tomato及びLDHの同時局在化の定量が描かれている。各々3-5の肝臓切片を伴う3匹のマウスを、この定量に使用した。
【0040】
【
図9】
図9は、実施例5に記載されたテラトーマアッセイの実験設定を示す概略である。
【0041】
【
図10】
図10は、新たに収集された肝臓及びテラトーマの蛍光を描いている。ヒト化されたTIRFAマウス及びヒト化されないTIRFAマウスに、誘導多能性幹(iPS)細胞~1×10
7個を、皮下注入し、並びにテラトーマの発生後(注入後~3ヶ月)、1匹のGFPの発現カセットを保有するAAV9のマウスにつき1×10
12個GCを、静脈内に注入した。AAV注入後72時間で、マウスを安楽死させた。肝臓及びテラトーマを、低波長ランプに露光させ、組織の蛍光を明らかにした。留意点・TIRFAマウスの肝臓の斑状の蛍光は、ヒト肝臓領域に由来している。
【0042】
【
図11】
図11は、ヒト肝臓を伴わないTIRFAマウスのテラトーマにおけるヒト細胞のAAV9形質導入効率を描いている。TIRFAマウスに、誘導多能性幹(iPS)細胞~1×10
7個を、皮下注入し、並びにテラトーマの発生後(注入後~3ヶ月)、1匹のGFPの発現カセットを保有するAAV9のマウスにつき1×10
12個GCを、静脈内に注入した。AAV注入後72時間で、マウスを安楽死させ、H&E染色(11A)及びGFP免疫染色(11B)により、テラトーマを分析した。テラトーマにおいて異なるヒト組織の示差的形質導入効率を示す、テラトーマの連続切片が、示されている。
【0043】
【
図12】
図12は、ヒト肝臓を伴わないTIRFAマウスのテラトーマにおけるヒト小腸細胞のAAV9形質導入効率を描いている。テラトーマは、
図11に示されたものと同じであるが、ここで示されたのは、例えば、AAV9-GFPにより形質導入されたテラトーマ中の小腸組織などの、内胚葉組織の選別である。
【0044】
【
図13】
図13は、ヒト肝臓を伴わないTIRFAマウスのテラトーマにおけるヒト中胚葉のAAV9形質導入効率を描いている。テラトーマは、
図11に示されたものと同じであるが、ここで示されたのは、AAV9-GFPにより形質導入された、中胚葉組織の選別である。
【0045】
【
図14】
図14A-14Dは、ヒト肝臓を伴うTIRFAマウスのヒトテラトーマのAAV9形質導入効率を描いている。ヒト肝臓TIRFAマウスに、誘導多能性幹(iPS)細胞~10E7個を、皮下注入し、並びにテラトーマの発生後(注入後~3ヶ月)、1匹のGFPの発現カセットを保有するAAV9のマウスにつき1×10
12個GCを、静脈内に注入した。AAV注入後72時間で、マウスを安楽死させ、H&E染色(14A及び14C)及びGFP免疫染色(14B及び14D)により分析した。ヒトテラトーマ組織の示差的形質導入効率を示す、テラトーマの連続切片が、示されている。矢印(14C及び14D)は、形質導入されない平滑筋組織を示し、及び矢尻(14C及び14D)は、形質導入された腺構造を示す。14A中の四角は、14Cにおけるテラトーマの拡大した領域であり、並びに14B中の四角は、14Dにおける拡大した領域である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
本開示は、ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物であって、ここでこのキメラ非ヒト動物が:a)非ヒト動物の肝臓においてヒトキメリズムを確立するヒト肝細胞の再構築を可能にする、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏又は機能障害;並びに、b)非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異:を含む、キメラ非ヒト動物を提供する。
【0047】
本開示は、ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物であって、ここでこのキメラ非ヒト動物が、IL-2Rg-/-/Rag2-/-キメラ非ヒト動物であり、並びにここでこのキメラ非ヒト動物は、非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるAAVRの欠失又は変異を含む、キメラ非ヒト動物を提供する。一部の実施態様において、このキメラ非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。
【0048】
本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このキメラ非ヒト動物は、IL-2rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-非ヒト動物である。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物の肝臓内の全ての肝細胞の少なくとも5%;少なくとも10%;少なくとも20%;少なくとも30%;少なくとも40%;少なくとも50%;少なくとも70%;少なくとも80%;少なくとも90%;少なくとも95%又は少なくとも99%を占めるヒト肝細胞は、ヒト肝細胞である。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、ヒト肝細胞は、このキメラ非ヒト動物の肝臓内の全ての肝細胞の少なくとも70%(例えば、70%、80%、90%、95%、又は97%)を占める。
【0049】
本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、AAVベクターによる感染時に、非ヒトキメラ動物の内在性肝細胞の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満又は5%未満は、AAVベクターにより形質導入される。
【0050】
本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、AAVベクターによる感染時に、ヒト肝細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%は、AAVベクターにより形質導入される。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、AAVベクターによる感染時に、ヒト肝細胞の少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%)は、AAVベクターにより形質導入される。
【0051】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、パルボウイルスファミリーの一員であり、4.7キロベース(kb)~6kbの1本鎖線状DNAゲノムを持つ、小型の包膜を持たない正二十面体ウイルスである。AAVの生活環は、感染後、AAVゲノムが宿主ゲノムへ組込まれる潜伏期、並びに、アデノウイルス又は単純ヘルペスウイルスのいずれかに感染した後に、組込まれたAAVゲノムが、逐次レスキューされ、複製され、及び感染性ウイルスへパッケージングされる感染相を含む。非病原性であり、非分裂細胞を含む感染力の広い宿主範囲、並びに組込みの特性は、AAVを魅力的な送達ビヒクルとしている。
【0052】
本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVは、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11のいずれか1種である。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVは、AAV血清型8である。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVは、AAV血清型9である。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVは、対象の肝臓を特異的に感染するか又は遺伝子導入する、AAV血清型である。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVは、肝細胞を特異的に感染するか又は遺伝子導入する、AAV血清型である。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVは、2種以上のAAV血清型のハイブリッドである。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVは、6.2、2、rh64R1、rh10、8、9及びAAV9-PHP.Bのいずれか1つから選択されたバリアントである。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVベクターは、検出可能な分子をコードしている。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、この検出可能な分子は、蛍光タンパク質、酵素、又はペプチドである。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、この検出可能な分子は、GFP、RFP、YFP、CFP、dTomato、mCherry又はLacZ(β-ガラクトシダーゼ)である。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVベクターは、誘導型プロモーター又は構成型プロモーターを含む。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVベクターは、組織特異的プロモーターを含む。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、誘導型プロモーターは、テトラサイクリン-誘導型プロモーター又はCMVプロモーターである。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、このAAVベクターは、1又は複数の異種タンパク質をコードしている。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、この1又は複数の異種タンパク質は、免疫原性タンパク質又はペプチド、治療的タンパク質、制御性タンパク質又はマーカー/検出可能なタンパク質のいずれか1つから選択することができる。
【0053】
本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物は、霊長類、トリ、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ及びブタのいずれか1種であることができる。本開示のキメラ非ヒト動物の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物は、マウスである。
【0054】
本開示はまた、ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法であって、この方法が:(a)非ヒト動物の肝臓におけるヒトキメリズムを確立するヒト肝細胞の再構築を可能にする、欠乏又は機能障害されたT-、B-及び/又はNK細胞を非ヒト動物に提供し、ここでこの非ヒト動物は、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含む工程;並びに、(b)ヒト肝細胞を非ヒト動物へ移植する工程:を含む方法も提供する。本開示のヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する一部の実施態様において、工程(b)は更に、選択圧を適用することを含む。
【0055】
本開示はまた、ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法も提供し、この方法は:(a)IL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を提供する工程であって、ここでこの非ヒト動物は、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む工程;並びに(b)ヒト肝細胞を非ヒト動物へ移植する工程:を含む。この開示の方法の一部の実施態様において、非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。本開示のヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法の一部の実施態様において、工程(b)は更に、選択圧を適用することを含む。
【0056】
この開示の方法の一部の実施態様において、選択圧の適用は、工程(b)の非ヒト動物へ、ニチシノン(NTBC)を提供しないことを含む。この開示の方法の一部の実施態様において、本方法は更に、本明細書において開示された方法の工程(c)後に、選択圧を除去することを含む。選択圧の除去は、本明細書において開示された方法の工程(c)後に、キメラ非ヒト動物へニチシノン(NTBC)を提供することを含むことができる。この開示の方法の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物は、導入遺伝子を含まない。この開示の方法の一部の実施態様において、この導入遺伝子は、抗生物質耐性カセットである。本開示はまた、本明細書において開示された方法により作製されたキメラ非ヒト動物も提供する。
【0057】
この開示の調製方法の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物は、IL-2Rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-非ヒト動物である。この開示の調製方法の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物は、IL-2Rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-非ヒト動物であり、ここでこのキメラ非ヒト動物は、抗生物質選択遺伝子カセットを含まない。
【0058】
本開示の調製方法の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物の肝臓内の全ての肝細胞の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも97%は、ヒト肝細胞である。この開示の調製方法の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物の肝臓内の全ての肝細胞の少なくとも70%(例えば、70%、80%、90%、95%、又は97%)を占めるヒト肝細胞は、ヒト肝細胞である。
【0059】
この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVベクターによる感染後、非ヒトキメラ動物の内在性肝細胞の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満又は5%未満は、AAVベクターにより形質導入される。
【0060】
この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVベクターによる感染後、ヒト肝細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%は、AAVベクターにより形質導入される。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVベクターによる感染後、ヒト肝細胞の少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%)は、AAVベクターにより形質導入される。
【0061】
この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11のいずれか1つである。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型8である。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型9である。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVは、対象の肝臓を特異的に感染及び/又は形質導入するAAV血清型である。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVは、肝細胞を特異的に感染及び/又は形質導入するAAV血清型である。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVは、2種以上のAAV血清型のハイブリッドである。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVは、6.2、2、rh64R1、rh10、8、9及びAAV9-PHP.Bのいずれか1つから選択されるバリアントである。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、検出可能な分子をコードしている。この開示の調製方法の一部の実施態様において、この検出可能な分子は、蛍光タンパク質、酵素、又はペプチドである。この開示の調製方法の一部の実施態様において、この検出可能なマーカーは、GFP、RFP、YFP、CFP、dTomato、mCherry又はLacZ(β-ガラクトシダーゼ)である。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、誘導型プロモーター又は構成型プロモーターを含む。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、組織-特異的プロモーターを含む。この開示の調製方法の一部の実施態様において、誘導型プロモーターは、テトラサイクリン誘導型プロモーター又はCMVプロモーターである。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、1又は複数の異種タンパク質をコードしている。この開示の調製方法の一部の実施態様において、1又は複数の異種タンパク質は、免疫原性タンパク質又はペプチド、治療的タンパク質、制御性タンパク質又はマーカー/検出可能なタンパク質のいずれか1つから選択されることができる。この開示の調製方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、このベクターのゲノム内に独自の核酸配列を含み、ここでこの独自の核酸配列は、検出可能なRNA配列又はバーコードRNA配列へ転写され得る。AAVベクターの検出可能なRNA配列又はバーコードRNA配列は、本開示の方法において使用されるいずれか他のベクターの検出可能なRNA配列又はバーコードRNA配列とは異なる。このAAVベクターは、AAVベクターのゲノム内に任意の独自の核酸配列、又は当該技術分野において公知のAAVベクターの検出可能なRNA配列もしくはバーコードRNA配列を含むことができる(例えば、Adachi Kら、Molecular Therapy Volume 22, Supplement 1, May 2014;Adachi Kら、Nature Communications volume 5, Article number: 3075 (2014);Pekrun Kら、JCI Insight. 2019;4(22):e131610;US20190135871A1;及び、WO2020160508A1)。
【0062】
この開示の調製方法の一部の実施態様において、非ヒト動物のAAVRは、非ヒト動物AAVRのCRISPR/Cas9媒介欠失によるか、又は外因性物質によるノックダウン、又はCreリコンビナーゼもしくはCreトランスジェニック非ヒト動物をコードしているウイルスの初回投与量による、非ヒト動物AAVR遺伝子のフロックスされた(floxed)対立遺伝子により、欠失されることができる。この開示の調製方法の一部の実施態様において、非ヒト動物のAAVRは、AAVR mRNAを標的化する1又は複数のRNA干渉(RNAi)により、欠失されることができる。この開示の調製方法の一部の実施態様において、バリアントAAVRは、野生型AAVRのアミノ酸配列に対し1又は複数の改変されたアミノ酸を含むことができ、これは野生型AAVRに比べ、表面発現レベル又は細胞表面輸送の減少を生じる。この開示の調製方法の一部の実施態様において、バリアントAAVRは、野生型AAVRのアミノ酸配列に比べ、1又は複数の改変されたアミノ酸、及び/又はシグナル伝達ペプチド、1又は複数の多発性嚢胞腎-様(PKD)ドメイン、N末端での8個のシステイン(MANEC)ドメイン、膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ゾル性尾部によるモチーフの欠失を含む。
【0063】
この開示の調製方法の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物は、霊長類、トリ、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ及びブタのいずれか1つであることができる。この開示の調製方法の一部の実施態様において、キメラ非ヒト動物は、マウスである。
【0064】
本開示はまた、ヒト肝細胞におけるAAVベクターの形質導入効率を決定する方法を提供し、ここでこの方法は:(a)本開示の方法のいずれか1つにより調製されたキメラ非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを感染させる工程;(c)工程(b)の感染した非ヒト動物を、所定時間維持する工程;並びに、(d)AAVベクターの、ヒト肝細胞及びAAVR KO非ヒト動物の肝細胞(非ヒト動物肝細胞)への形質導入のレベルを決定する工程:を含む。
【0065】
本開示の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、工程(d)における、AAVベクターのヒト肝細胞又は非ヒト動物肝細胞への形質導入のレベルは:(i)非ヒト動物における、各々、AAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率もしくはAAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率;又は、(ii)非ヒト動物における、各々、ヒト肝細胞又は非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率:として測定される。
【0066】
本開示の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、方法は更に:(f)(i)AAVベクターの総量の予め決定された百分率未満が、非ヒト動物肝細胞へ形質導入される場合;(ii)AAVベクターの総量の少なくとも予め決定された百分率が、ヒト肝細胞へ形質導入される場合;(iii)AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率が、既定値未満である場合;及び/又は、(iv)AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞(human animal hepacytosys)の百分率が、既定値よりも大きい場合:に、ヒト肝細胞を形質導入する効率的なものとしてこのAAVベクターを選択する工程を含む。
【0067】
本開示はまた、ヒト肝細胞において、2種以上の同一でないAAVベクター(複数可)の形質導入効率を決定する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)本開示の方法のいずれか1つにより作製された2匹以上のキメラAAVR KO非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物の各々に、所定量の2種以上の同一でないAAVベクターを感染させる工程であって、ここで1匹の非ヒト動物は、1つのAAVベクターにより感染され、及び他方の動物は、他のAAVベクターにより感染される工程;(c)工程(b)の感染された非ヒト動物を、所定時間維持する工程;並びに、(d)工程(c)の2匹以上の非ヒト動物の各々において、ヒト肝細胞及びAAVR KO非ヒト動物肝細胞(非ヒト動物肝細胞)への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。この開示の方法の一部の実施態様において、本方法は更に、工程(b)後に選択圧を除去することを含む。この開示の方法の一部の実施態様において、本方法は更に:(e)工程(d)において決定された非ヒト肝細胞への2種以上のAAVベクターの各々の形質導入のレベルを比較する工程;及び/又は、(f)工程(d)において決定されたヒト肝細胞への2種以上のAAVベクターの各々の形質導入のレベルを比較する工程:を含む。この開示の方法の一部の実施態様において、本方法は更に:(g)(i)AAVベクターの総量の予め決定された百分率未満が、非ヒト動物肝細胞へ形質導入される場合;(ii)AAVベクターの総量の少なくとも予め決定された百分率が、ヒト肝細胞へ形質導入される場合;(iii)AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率が、既定値未満である場合;及び/又は、(iv)AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率が、既定値よりも大きい場合:に、ヒト肝細胞を形質導入する効率的なものとして1又は複数のAAVベクター(複数可)を選択する工程を含む。
【0068】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、(i)において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の予め決定された百分率は、≦100%、≦90%、≦80%、≦70%、≦50%、≦20%、≦10%、又は≦5%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、70%~90%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、50%~70%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、20%~50%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、10%~20%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、5%~10%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、0%~5%である。
【0069】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、(ii)において、ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の予め決定された百分率は、≧99%、≧95%、≧90%、≧80%、≧70%、≧50%、≧20%又は≧10%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、95%~100%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、90%~95%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、80%~90%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、70%~80%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、50%~70%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、20%~50%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、10%~20%である。
【0070】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、0%~5%であり、並びにヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、95%~100%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、5%~10%であり、並びにヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、90%~95%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、10%~20%であり、並びにヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、80%~90%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、20%~50%であり、並びにヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、50%~80%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、50%~70%であり、並びにヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、20%~50%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、70%~80%であり、並びにヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、10%~20%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、80%~90%であり、並びにヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、10%~20%である。
【0071】
非ヒト動物肝細胞及び非ヒト肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、本開示のキメラ非ヒト動物を感染させるのに使用される特異的AAV血清型によって決まる。一部の実施態様において、AAVベクターの非ヒト肝細胞への形質導入は、AAVRによってのみ媒介され得る。一部の実施態様において、AAVベクターの非ヒト肝細胞への形質導入は、AAVR以外の1又は複数の受容体(非AAVR受容体)によってのみ媒介され得る。一部の実施態様において、AAVベクターの非ヒト肝細胞への形質導入は、AAVR及びAAVR以外の1又は複数の受容体(非AAVR受容体)の両方により媒介され得る。
【0072】
非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、当該技術分野において公知の任意の方法により決定されることができ、これは、AAVベクターにより感染されたキメラ非ヒト動物の肝臓の収集、肝臓から単離された、ヒト肝細胞又は非ヒト肝細胞又は両方から回収されたAAVベクター量の決定、並びに回収されたAAVベクターの決定された量の、動物を感染させるために使用されたAAVベクターの総量に対する比の比較又は決定を含む。一部の態様において、肝臓から回収されたAAVベクターの決定された量、又は回収されたAAVベクターの決定された量のAAVベクター総量に対する比は、AAVで形質導入されたキメラ非ヒト動物の内在性細胞/非ヒト肝細胞の百分率と相関され得る。
【0073】
一部の実施態様において、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、非ヒト動物を形質導入するために使用された漸増量のAAVベクターに関して/対しての対照非ヒト動物において形質導入されたマウス細胞/肝細胞の総数の平均検出可能なシグナル強度又は形質導入されたマウス細胞/肝細胞の総数を、比較/プロットすることにより標準曲線を作製することにより決定することができる。本明細書記載の対照非ヒト動物は、野生型もしくはIL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物、又はIL-2Rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-非ヒト動物、又はアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失もしくは変異を伴わずに、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏もしくは機能障害を伴う非ヒト動物であることができる。本開示の方法のキメラ非ヒト動物の非ヒト動物肝細胞又はヒト肝細胞又は両方へ形質導入されたAAVベクターの総量の百分率は、本明細書記載の標準曲線を基に決定されることができる。一部の実施態様において、対照非ヒト動物を感染するのに使用されるAAVベクターの総量の全て又は少なくとも99%は、非ヒト動物肝細胞へ形質導入されると推定される。
【0074】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、(iii)における、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率の既定値は、≦50%、≦40%、≦30%、≦20%、≦10%又は≦5%である。
【0075】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-非ヒト動物肝細胞の百分率は、40%~50%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-非ヒト動物肝細胞の百分率は、30%~40%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-非ヒト動物肝細胞の百分率は、20%~30%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-非ヒト動物肝細胞の百分率は、10%~20%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-非ヒト動物肝細胞の百分率は、5%~10%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-非ヒト動物肝細胞の百分率は、0%~5%である。
【0076】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、(iv)における、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率の既定値は、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%又は≧90%である。
【0077】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-ヒト肝細胞の百分率は、90%~97%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-ヒト肝細胞の百分率は、80%~90%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-ヒト動物肝細胞の百分率は、70%~80%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-ヒト肝細胞の百分率は、50%~70%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-ヒト肝細胞の百分率は、20%~50%である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された-ヒト肝細胞の百分率は、10%~20%である。
【0078】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、40%~50%、30%~40%、20%~30%、10%~20%、5%~10%、又は0%~5%であることができ;並びに、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、又は90%~100%であることができる。
【0079】
AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞及び非ヒト肝細胞の百分率は、本開示のキメラ非ヒト動物を感染させるのに使用された特異的AAV血清型によって決まる。一部の実施態様において、AAVベクターのヒト又は非ヒト肝細胞への形質導入は、AAVRによってのみ媒介され得る。一部の実施態様において、AAVベクターのヒト又は非ヒト肝細胞への形質導入は、AAVR以外の1又は複数の受容体(非AAVR受容体)によってのみ媒介され得る。一部の実施態様において、AAVベクターのヒト又は非ヒト肝細胞への形質導入は、AAVR及びAAVR以外の1又は複数の受容体(非AAVR受容体)の両方により媒介され得る。AAVのヒト又は非ヒト肝細胞への形質導入は、AAVの特異的血清型又は血清型バリアントによって決まる、AAVR又は非AAVR受容体のいずれかにより媒介され得る。AAVのヒト又は非ヒト肝細胞への形質導入は、AAVの特異的キャプシドタンパク質によって決まる、AAVR又は非AAVR受容体のいずれかにより、媒介され得る。
【0080】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染におけるAAVベクターの量は、1×101~1×1015ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示の感染におけるAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染におけるAAVベクターの量は、1×102~1×1012ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染におけるAAVベクターの量は、1×104~1×1010ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染におけるAAVベクターの量は、1×106~1×108ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染におけるAAVベクターの量は、1×101~1×103ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染におけるAAVベクターの量は、1×102~1×105ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染におけるAAVベクターの量は、1×105~1×108ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染におけるAAVベクターの量は、1×108~1×1012ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染におけるAAVベクターの量は、1×1012~1×1015ウイルスゲノム/非ヒト動物である。
【0081】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも1日行われる。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも1週間行われる。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも2週間行われる。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも4週間行われる。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、1日~5日行われる。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、5日~10日行われる。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、10日~15日行われる。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、15日~20日行われる。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、20日~25日行われる。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、25日~30日行われる。
【0082】
この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11のいずれか1種である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型8である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型9である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、対象の肝臓を特異的に感染又は形質導入するAAV血清型である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、肝細胞を特異的に感染又は形質導入するAAV血清型である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、2種以上のAAV血清型のハイブリッドである。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、6.2、2、rh64R1、rh10、8、9及びAAV9-PHP.Bのいずれか1つから選択されたバリアントである。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、検出可能なマーカーをコードしている。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この検出可能なマーカーは、蛍光タンパク質、酵素、又はペプチドである。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この検出可能なマーカーは、GFP、RFP、YFP、CFP、dTomato、mCherry又はLacZ(β-ガラクトシダーゼ)である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、誘導型プロモーター又は構成型プロモーターを含む。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、組織特異的プロモーターを含む。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、誘導型プロモーターは、テトラサイクリン-誘導型プロモーター又はCMVプロモーターである。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、1又は複数の異種タンパク質をコードしている。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、1又は複数の異種タンパク質は、免疫原性タンパク質又はペプチド、治療的タンパク質、制御性タンパク質又はマーカー/検出可能なタンパク質のいずれか1つから選択されることができる。
【0083】
本開示はまた、全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)本開示の方法のいずれかにより調製されたキメラAAVR KO非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、少なくとも初回感染させる工程;(c)工程(b)の感染した非ヒト動物を、所定時間維持する工程;並びに、(d)このAAVベクターの、AAVR KO非ヒト動物のヒト肝細胞への形質導入のレベルを決定する工程:を含む。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、この方法は:(e)この非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、2回目感染させる工程;(f)工程(e)の感染した非ヒト動物を、所定時間維持する工程;並びに、(g)このAAVベクターの、AAVR KO非ヒト動物のヒト肝細胞への形質導入のレベルを決定する工程:を含む。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、この方法は更に:(i)このAAVベクターの、初回及び2回目の感染の間の、ヒト肝細胞への形質導入のレベルを比較する工程:を含む。
【0084】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び2回目の感染におけるAAVベクターの量は、同じである。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び2回目の感染におけるAAVベクターの量は、異なる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染におけるAAVベクターの量は、2回目感染におけるAAVベクターの量よりも高い。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染におけるAAVベクターの量は、2回目感染におけるAAVベクターの量よりも低い。
【0085】
本開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染におけるAAVベクターの量は、1×101~1×1015ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染におけるAAVベクターの量は、1×102~1×1012ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染におけるAAVベクターの量は、1×104~1×1010ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のAAVベクターの形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染におけるAAVベクターの量は、1×106~1×108ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染におけるAAVベクターの量は、1×101~1×103ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染におけるAAVベクターの量は、1×102~1×105ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染におけるAAVベクターの量は、1×105~1×108ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染におけるAAVベクターの量は、1×108~1×1012ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染におけるAAVベクターの量は、1×1012~1×1015ウイルスゲノム/非ヒト動物である。
【0086】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも1日行われる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも1週間行われる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも2週間行われる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも4週間行われる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、1日~5日行われる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、5日~10日行われる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、10日~15日行われる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、15日~20日行われる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、20日~25日行われる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、25日~30日行われる。
【0087】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、≦50%、≦40%、≦30%、≦20%、≦10%又は≦5%である。
【0088】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、40%~50%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、30%~40%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、20%~30%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、10%~20%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、5%~10%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、0%~5%である。
【0089】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、≦50%、≦40%、≦30%、≦20%、≦10%又は≦5%である。
【0090】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、40%~50%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、30%~40%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、20%~30%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、10%~20%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、5%~10%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、0%~5%である。
【0091】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%又は≧90%である。
【0092】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、90%~100%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、80%~90%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、70%~80%でる。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、50%~70%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、20%~50%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、10%~20%である。
【0093】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%又は≧90%である。
【0094】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、90%~100%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、80%~90%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、70%~80%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、50%~70%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、20%~50%である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、10%~20%である。
【0095】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、40%~50%、30%~40%、20%~30%、10%~20%、5%~10%、又は0%~5%であり;並びに、AAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、又は90%~100%である。
【0096】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後の、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、40%~50%、30%~40%、20%~30%、10%~20%、5%~10%、又は0%~5%であり;並びに、AAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、0%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、又は90%~100%である。
【0097】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、初回及び2回目の両方の感染後、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率よりも大きい。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率よりも大きく、並びに2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率と同じである。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率よりも大きく、並びに2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率未満である。
【0098】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率と同じであり、並びに2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率未満である。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率と同じであり、並びに2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率よりも大きい。
【0099】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率未満であり、並びに2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率と同じである。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、初回感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率未満であり、並びに2回目感染後、AAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率よりも大きい。
【0100】
この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後のAAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、初回感染後よりも高い。この開示の全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法の一部の実施態様において、2回目感染後のAAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、初回感染後よりも高い。
【0101】
本開示はまた、ヒト肝細胞におけるAAVベクターのアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)A群及びB群の2群へ分けられた本開示の方法のいずれか1つにより調製された2匹以上のキメラ非ヒト動物を提供し、各群は、1又は複数の非ヒト動物を含み、ここでA群は、野生型ヒト肝細胞を受け取り、並びにB群は、非機能性ヒトAAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含むヒト肝細胞(Hu AAVR KOヒト肝細胞)を受け取る工程;(b)工程(a)の各群の1又は複数の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;(c)工程(b)の各群の1又は複数の非ヒト動物を所定時間維持する工程;並びに、(d)A群及びB群の1又は複数の非ヒト動物のヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程であって、ここで、AAVベクターの、A群における形質導入のレベルは、AAVR依存型形質導入効率の指標であり、並びにB群における形質導入のレベルは、AAVR非依存型形質導入効率の指標である工程:を含む。
【0102】
この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、工程(a)は更に、選択圧を適用することを含む。この開示の方法の一部の実施態様において、選択圧の適用は、工程(a)の非ヒト動物へニチシノン(NTBC)を提供しないことを含む。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この方法は更に、工程(b)の後に、選択圧を除去することを含む。一部の実施態様において、選択圧の除去は、本明細書において開示された方法の工程(b)の後に、キメラ非ヒト動物へNTBCを提供することを含むことができる。
【0103】
この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群及びB群における非ヒト動物のヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルは、各々、A群及びB群における、AAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率により決定される。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、≧0%、≧5%、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%又は≧90%である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、又は90%~100%である。
【0104】
この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、B群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、≧0%、≧5%、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%、又は≧90%である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、B群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、0%~5%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、又は90%~100%である。
【0105】
この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、B群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率よりも高く、これは、このAAV形質導入は、AAVR非依存型よりもよりAAVR依存型であることを指摘している。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、B群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率よりも低く、これは、このAAV形質導入は、AAVR依存型よりもよりAAVR非依存型であることを指摘している。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率は、B群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト動物肝細胞の百分率と同じであり、これは、このAAV形質導入は、AAVR非依存型と同等にAAVR依存型であることを指摘している。
【0106】
この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、≧5%、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%、又は≧90%であり、並びにB群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、0%~5%であり、これは、このAAV形質導入は、AAVR依存型であることを指摘している。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、0%~5%であり、並びにB群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、≧5%、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%、又は≧90%であり、これは、このAAV形質導入は、AAVR非依存型であることを指摘している。
【0107】
本開示の、各々A群及びB群における、ヒト肝細胞へのAAVベクターのAAVR依存型及びAAVR非依存型の形質導入は、AAVの血清型又はバリアントによって決まる。本開示の、各々A群及びB群における、ヒト肝細胞へのAAVベクターのAAVR依存型及びAAVR非依存型の形質導入は、AAVの特異的キャプシドタンパク質によって決まる。一部の実施態様において、ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入は、AAVRによってのみ媒介され得る。一部の実施態様において、ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入は、AAVR以外の1又は複数の受容体(非AAVR受容体)によってのみ媒介され得る。一部の実施態様において、ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入は、AAVR及びAAVR以外の1又は複数の受容体(非AAVR受容体)の両方により媒介され得る。
【0108】
この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群及びB群の非ヒト動物の数は、等しい。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、A群及びB群の非ヒト動物の数は、異なる。
【0109】
この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×101~1×1015ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×102~1×1012ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×104~1×1010ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×106~1×108ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×101~1×103ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×102~1×105ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×105~1×108ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×108~1×1012ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×1012~1×1015ウイルスゲノム/非ヒト動物である。
【0110】
この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも1日行われる。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも1週間行われる。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも2週間行われる。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも4週間行われる。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、1日~5日行われる。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、5日~10日行われる。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、10日~15日行われる。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、15日~20日行われる。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、20日~25日行われる。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、25日~30日行われる。
【0111】
この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11のいずれか1種である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型8である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型9である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、対象の肝臓を特異的に感染又は形質導入するAAV血清型である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、肝細胞を特異的に感染又は形質導入するAAV血清型である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、2種以上のAAV血清型のハイブリッドである。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、6.2、2、rh64R1、rh10、8、9及びAAV9-PHP.Bから選択されたバリアントである。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、検出可能なマーカーをコードしている。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この検出可能なマーカーは、蛍光タンパク質、酵素、又はペプチドである。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、この検出可能なマーカーは、GFP、RFP、YFP、CFP、dTomato、mCherry又はLacZ(β-ガラクトシダーゼ)である。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、誘導型プロモーター又は構成型プロモーターを含む。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、組織特異性プロモーターを含む。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、誘導型プロモーターは、テトラサイクリン-誘導型プロモーター又はCMVプロモーターである。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、1又は複数の異種タンパク質をコードしている。この開示のヒト肝細胞におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法の一部の実施態様において、1又は複数の異種タンパク質は、免疫原性タンパク質又はペプチド、治療的タンパク質、制御性タンパク質又はマーカー/検出可能なタンパク質から選択され得る。
【0112】
本開示はまた、ヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)非ヒト動物の2群A群及びB群を提供し、ここでA群は、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及びNK細胞の1又は複数を含み、並びにB群は、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含む、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及びNK細胞の1を含む工程;(b)ヒト肝細胞を、工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ移植する工程;(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;(d)工程(c)の各群の1又は複数の感染した非ヒト動物を、所定時間維持する工程;並びに、(e)A群及びB群の非ヒト動物のヒト肝細胞及び非ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。
【0113】
AAVベクター処理の「修飾」は、例えば、時期もしくは有効性もしくは形質導入の変化、及び/又はAAVベクターにより形質転換された細胞集団の種類の変化を含む。
【0114】
本開示はまた、ヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法も提供し、ここでこの方法は:(a)非ヒト動物の2群、A群及びB群を提供する工程であって、ここでA群は、1又は複数のIL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を含み、並びにB群は、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含む、1又は複数のIL-2Rg-/-/Rag2-/-の非ヒト動物を含む工程;(b)工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ、ヒト肝細胞を移植し、及び選択圧を適用する工程;(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;(d)工程(c)の各群の1又は複数の感染した非ヒト動物を、所定時間維持する工程;並びに、(e)A群及びB群の非ヒト動物のヒト肝細胞及び非ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。この開示の方法の一部の実施態様において、非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、工程(b)は更に、選択圧を適用することを含む。本開示の方法の一部の実施態様において、選択圧の適用は、工程(b)の非ヒト動物へニチシノン(NTBC)を提供しないことを含む。本開示の方法の一部の実施態様において、本方法は更に、工程(b)の後に、選択圧を除去することを含む。一部の実施態様において、選択圧の除去は、本明細書において開示された方法の工程(b)の後に、キメラ非ヒト動物へNTBCを提供することを含むことができる。
【0115】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この方法は更に:(f)A群とB群の間で非ヒト動物のヒト肝細胞及び非ヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルを比較する工程であって;(i)ここで、A群の非ヒト肝細胞及びヒト肝細胞へのAAVの形質導入のレベルの間の差異は、ヒト肝細胞へのAAVベクターの取込みのAAVR依存型及び非依存型の両方の修飾及び/又は阻害の指標であり;(ii)ここで、B群の非ヒト肝細胞及びヒト肝細胞へのAAVの形質導入のレベルの間の差異は、ヒト肝細胞へのAAVベクターの取込みのAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害の指標であり;並びに、(iii)ここで、B群及びA群におけるヒト肝細胞へのAAVの形質導入のレベルの間の差異は、ヒト肝細胞へのAAVベクターの取込みのAAVR依存型の修飾及び/又は阻害の指標である。
【0116】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、A群及びB群における非ヒト動物のヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入のレベルは、各々、A群及びB群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率により決定される。
【0117】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、≧0%、≧5%、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%、又は≧90%である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、0%~5%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、又は90%~100%である。
【0118】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、≧0%、≧5%、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%、又は≧90%である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、A群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、0%~5%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、又は90%~100%である。
【0119】
この開示の非ヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、B群におけるAAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、≧0%、≧5%、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%又は≧90%である。この開示の非ヒト動物肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、B群におけるAAVベクターにより形質導入された非ヒト動物肝細胞の百分率は、0%~5%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、又は90%~100%である。
【0120】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、B群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、≧0%、≧5%、≧10%、≧20%、≧30%、≧50%、≧70%、≧80%、又は≧90%である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、B群におけるAAVベクターにより形質導入されたヒト肝細胞の百分率は、0%~5%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、又は90%~100%である。
【0121】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、(i)におけるA群の非ヒト肝細胞及びヒト肝細胞へのAAV形質導入レベル間の差異、(ii)におけるB群の非ヒト肝細胞及びヒト肝細胞へのAAV形質導入レベル間の差異、並びにB群及びA群におけるヒト肝細胞へのAAV形質導入レベルの間の差異は、百分率差又は倍率変化として表す又は示すことができる。
【0122】
ヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害は、AAV血清型又はバリアントによって決まる。ヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害は、AAVベクターの特異的キャプシドタンパク質によって決まる。
【0123】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、A群及びB群における非ヒト動物の数は、同じである。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、A群及びB群の非ヒト動物の数は、異なる。
【0124】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×101~1×1015ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×102~1×1012ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×104~1×1010ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×106~1×108ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×101~1×103ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×102~1×105ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×105~1×108ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×108~1×1012ウイルスゲノム/非ヒト動物である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この感染におけるAAVベクターの量は、1×1012~1×1015ウイルスゲノム/非ヒト動物である。
【0125】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも1日行われる。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも1週間行われる。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも2週間行われる。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、少なくとも4週間行われる。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、1日~5日行われる。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、5日~10日行われる。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、10日~15日行われる。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、15日~20日行われる。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、20日~25日行われる。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、感染した非ヒト動物の維持は、25日~30日行われる。
【0126】
この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11のいずれか1つである。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型8である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、AAV血清型9である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、対象の肝臓を特異的に感染又は形質導入するAAV血清型である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、肝細胞を特異的に感染又は形質導入するAAV血清型である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、2種以上のAAV血清型のハイブリッドである。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR依存型又はAAVR非依存型)の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVは、6.2、2、rh64R1、rh10、8、9及びAAV9-PHP.Bのいずれか1つから選択されたバリアントである。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、検出可能なマーカーをコードしている。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この検出可能なマーカーは、蛍光タンパク質、酵素、又はペプチドである。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、この検出可能なマーカーは、GFP、RFP、YFP、CFP、dTomato、mCherry、又はLacZ(β-ガラクトシダーゼ)である。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、誘導型プロモーター又は構成型プロモーターを含む。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、組織特異的プロモーターを含む。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、誘導型プロモーターは、テトラサイクリン-誘導型プロモーター又はCMVプロモーターである。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、AAVベクターは、1又は複数の異種タンパク質をコードしている。この開示のヒト肝細胞へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法の一部の実施態様において、1又は複数の異種タンパク質は、免疫原性タンパク質又はペプチド、治療的タンパク質、制御性タンパク質又はマーカー/検出可能なタンパク質であることができる。
【0127】
理論により結びつけられることを欲するものではないが、開示されたキメラ非ヒト又はヒト化された動物(例えばマウス)は、ヒト肝細胞の生理学的正確性を持つ非ヒト動物の実験上の扱いやすさを備えており、従ってヒト肝細胞へのAAVベクターの形質導入の有効性を決定するための全く異なる方法論による幅のある研究からの結果の変動を考慮に入れる。これらのマウスは、疾患の分子をベースにした機能試験について、及び実験的治療の前臨床試験について、有用であると考えられる。一部の実施態様において、本開示のキメラ非ヒト動物は、霊長類、トリ、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ及びブタのいずれか1つであることができる。
【0128】
別の態様において、1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物が、本明細書において提供され、ここでこのキメラ非ヒト動物は更に:(a)非ヒト動物においてヒトキメリズムを確立する1又は複数のヒト組織の再構築を可能にする、T-、B-及び/又はNK細胞の欠乏又は機能障害;並びに、(b)非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異:を含む。一部の実施態様において、このキメラ非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。一部の実施態様において、このキメラ非ヒト動物は、IL-2Rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-非ヒト動物である。また1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物も、本明細書において提供され、ここでこのキメラ非ヒト動物は、IL-2Rg-/-/Rag2-/-キメラ非ヒト動物であり、並びにここでこのキメラ非ヒト動物は更に、非ヒト動物AAVRの欠乏又は機能障害を生じるAAVRの欠失又は変異を含む。
【0129】
本明細書において提供される任意の非ヒト動物における1又は複数のヒト組織は、非ヒト動物への移植に適している任意の組織であってよい。一部の実施態様において、この1又は複数のヒト組織は、結合組織、上皮組織、筋肉組織(例えば、平滑筋組織、骨格筋組織、もしくは心筋組織)、又は神経組織である。一部の実施態様において、この組織は、初期神経、中胚葉、内胚葉、又は外胚葉組織である。一部の実施態様において、このヒト組織は、肝臓組織、腎臓組織、膵臓組織、小腸組織、脾臓組織、心臓組織、肺組織、皮膚組織、骨組織、眼組織、造血組織、リンパ組織、生殖組織、粘膜組織、又は胃組織である。
【0130】
この1又は複数のヒト組織は、任意の好適な手段により、非ヒト動物へ導入されてよい。例えば、非ヒト動物は、その後1又は複数のヒト組織へ分化する誘導多能性幹細胞が移植されてよい。一部の実施態様において、この1又は複数のヒト組織は、テラトーマ内に存在する。
【0131】
別の態様において、1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法が、本明細書において提供され、この方法は:(a)非ヒト動物においてヒトキメリズムを確立するヒト組織の再構築を可能にする、非ヒト動物において欠乏又は機能障害されたT-、B-及び/又はNK細胞を提供する工程であって、ここでこの非ヒト動物は、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるAAVRの欠失又は変異を含む工程;並びに、(b)1又は複数のヒト組織を、この非ヒト動物へ移植する工程:を含む。一部の実施態様において、この非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。一部の実施態様において、この非ヒト動物は、IL-2Rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-非ヒト動物である。
【0132】
同じく、1又は複数のヒト組織を含むキメラ非ヒト動物を調製する方法であって、ここでこの方法が:(a)IL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を提供する工程であって、ここでこの非ヒト動物が、非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む工程;並びに、(b)ヒト組織を、この非ヒト動物へ移植する工程:を含む方法も、本明細書に提供される。一部の実施態様において、この非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。
【0133】
別の態様において、1又は複数のヒト組織におけるAAVベクターの形質導入効率を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)本明細書記載の非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを感染させる工程;並びに、(c)AAVR KO非ヒト動物のヒト組織へのAAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。
【0134】
同じく、少なくとも2種の1又は複数のヒト組織における、2種以上の同一でないAAVベクター(複数可)の形質導入効率を決定する方法も、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)本明細書記載の2匹以上のAAVR KO非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物の各々に、所定量の2種以上の同一でないAAVベクターを感染させる工程であって、ここで各非ヒト動物は、1種のAAVベクターにより感染される工程;並びに、(c)工程(b)の2匹以上の非ヒト動物の各々における少なくとも1つのヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。一部の実施態様において、この方法は更に、(d)1又は複数のヒト組織への2種以上のAAVベクターの各々の形質導入のレベルを比較する工程を含む。一部の実施態様において、この方法は更に、(f)(i)AAVベクターの総量の予め決定された百分率未満が、非ヒト動物の非ヒト組織へ形質導入される場合;(ii)AAVベクターの総量の少なくとも予め決定された百分率が、1又は複数のヒト組織へ形質導入される場合;(iii)AAVベクターにより形質導入された非ヒト組織の百分率が、既定値未満である場合;及び/又は、(iv)AAVベクターにより形質導入されたヒト組織の百分率が、既定値よりも大きい場合:に、ヒト肝細胞を形質導入する効率的なものとして1又は複数のAAVベクター(複数可)を選択する工程を含む。
【0135】
本明細書において開示された方法の一部の実施態様において、このAAVベクターは、検出可能なマーカー、例えば蛍光タンパク質、酵素、又はペプチドを発現する。一部の実施態様において、AAVベクターは、このベクターのゲノムの独自の核酸配列を含み、ここでこの独自の核酸配列は、検出可能なRNA配列又はバーコードRNA配列へ転写することができる。
【0136】
同じく、全身性AAVベクター媒介型遺伝子治療の効率を決定する方法も、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)本明細書記載の非ヒト動物を提供する工程;(b)工程(a)の非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、少なくとも初回感染させる工程;並びに、(c)AAVR KO非ヒト動物の1又は複数のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。一部の実施態様において、この方法は更に:(d)この非ヒト動物に、所定量のAAVベクターを、2回目感染させる工程;並びに、(e)AAVR KO非ヒト動物の1又は複数のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。一部の実施態様において、この方法は更に:(f)初回及び2回目感染の間の、1又は複数のヒト組織へのAAVベクターの形質導入のレベルを比較する工程を含む。一部の実施態様において、初回及び/又は2回目感染のAAVベクターの量は、1×101~1×1015ウイルスゲノム/非ヒト動物である。一部の実施態様において、初回及び2回目感染のAAVベクターの量は、同じである。一部の実施態様において、初回及び2回目感染のAAVベクターの量は、異なる。
【0137】
別の態様において、1又は複数のヒト組織におけるAAVベクターのAAVR依存型又はAAVR非依存型の形質導入効率を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)2群、A群及びB群へ分けられた非ヒト動物を提供する工程であって、各群は、1又は複数の非ヒト動物を含み、ここでA群は、野生型ヒト組織が移植され、並びにB群は、非機能性ヒトAAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含むヒト組織が移植され、ここでこの2匹以上の非ヒト動物は更に、欠乏又は機能障害されたT-、B-及び/又はNK細胞、IL-2Rg-/-/Rag2-/-/、及び/又はFah-/-を含む、工程;(b)工程(a)の各群の1又は複数の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;(c)A群及びB群の非ヒト動物の1又は複数のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程であって、ここで、A群における形質導入のレベルは、AAVベクターのAAVR依存型の形質導入効率の指標であり、並びにB群における形質導入のレベルは、AAVR非依存型の形質導入効率の指標である工程:を含む。
【0138】
別の態様において、ヒト組織へのAAVベクター形質導入のアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)非ヒト動物の群、A群及びB群を提供する工程であって、ここでA群は、非ヒト動物において欠乏又は機能障害された1又は複数のT-、B-及びNK細胞を含み、並びにB群は、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む、非ヒト動物において欠乏又は機能障害された1のT-、B-及びNK細胞を含み、ここで、欠乏又は機能障害された1又は複数のT-、B-及びNK細胞は、非ヒト動物におけるヒトキメリズムを確立するヒト組織の再構築を可能にする工程;(b)工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ、1又は複数のヒト組織を移植する工程;(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに、(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。
【0139】
別の態様において、1又は複数のヒト組織へのAAVベクター形質導入のAAVR依存型又はAAVR非依存型の修飾及び/又は阻害を決定する方法が、本明細書において提供され、ここでこの方法は:(a)非ヒト動物の2群、A群及びB群を提供する工程であって、ここでA群は、1又は複数のIL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を含み、並びにB群は、更に非機能性非ヒト動物AAVRを生じるアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR)の欠失又は変異を含む、1又は複数のIL-2Rg-/-/Rag2-/-非ヒト動物を含む工程;(b)工程(a)の両群の1又は複数の非ヒト動物へ、1又は複数のヒト組織を移植する工程;(c)工程(b)の両群の非ヒト動物に、AAVベクターを感染させる工程;並びに、(d)A群及びB群の非ヒト動物のヒト組織への、AAVベクターの形質導入のレベルを決定する工程:を含む。一部の実施態様において、この非ヒト動物は更に、Fah-/-を含む。
【0140】
本開示において、「キメラ非ヒト動物」の例は、この非ヒト動物の一部を含む。用語「キメラ非ヒト動物の一部(複数可)」は、例えば、非ヒト動物-由来の組織、体液、細胞、及びそれらの破壊された生成物又はそれらからの抽出物を指す(それらの例は、特にこれらに限定されない)。そのような組織の例は、心臓、肺、腎臓、肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、小腸、筋肉、血管、脳、精巣、卵巣、子宮、胎盤、骨髄、甲状腺、胸腺、及び乳腺を含むが、これらに限定されるものではない。体液の例は、血液、リンパ液、及び尿を含むが、これらに限定されるものではない。用語「細胞」は、前述の組織又は体液中に含まれる細胞を指し、並びにそれらの例は、培養された細胞、それらの単離又は培養により得られる精細胞、卵子、及び受精卵を含む。培養した細胞の例は、初代培養細胞及び樹立された細胞株の細胞の両方を含む。キメラ非ヒト動物の一部の例はまた、発生段階(胚形成期)の組織、体液、及び細胞、並びにそれらの破壊された生成物もしくは抽出物も含む。加えて、本開示のマウス由来の細胞株は、公知の方法を用いて樹立され得る(Primary Culture Methods for Embryonic Cells (Shin Seikagaku Jikken Koza (New Biochemical Experimental Lecture Series), Vol. 18, pages 125-129, TOKYO KAGAKU DOZIN CO., LTD.、及びManuals for. Mouse Embryo Manipulation, pages 262-264, Kindai Shuppan))。
【0141】
本開示のキメラ非ヒト動物は、免疫不全キメラ非ヒト動物(例えばマウス)であることができる。本開示の免疫不全キメラ非ヒト動物は、ヒト肝細胞の移植のための宿主マウスとして使用されることができる。「免疫不全非ヒト動物」の例は、異なる動物起源由来の肝細胞(特にヒト肝細胞)に対して拒絶を示さない任意のキメラ非ヒト動物であってよく、並びにT-及びB-細胞株の欠損を示すSCID(重症複合型免疫不全)マウス、胸腺の遺伝子欠失のためにT細胞機能を喪失しているヌードマウス、及び公知の遺伝子標的化法によりRAG2遺伝子をノックアウトすることにより作製されたRAG2ノックアウトマウスを含むが、これらに限定されるものではない(Science, 244: 1288-1292, 1989)。
【0142】
更に本開示は、ヒト肝細胞を有するキメラ非ヒト動物を提供する。本開示のキメラ非ヒト動物は、免疫学的に欠損であることができる。本開示のキメラ非ヒト動物は、ヒト肝細胞を、本開示の免疫不全キメラ非ヒト動物へ移植することにより、調製することができる。
【0143】
移植に使用されるヒト肝細胞として、コラゲナーゼ灌流法などの従来型方法により正常なヒト肝臓組織から単離されたヒト肝細胞を、使用することができる。こうして分離された肝細胞はまた、凍結保存後にも使用することができる。或いは、キメラ非ヒト動物肝細胞がヒト肝細胞により置き換えられているキメラ非ヒト動物肝臓から、コラゲナーゼ灌流法などの技術により分離されたヒト肝細胞として定義される、キメラ非ヒト動物肝細胞は、新鮮な状態で使用することができ、並びに凍結保存されたキメラ非ヒト動物肝細胞も、解凍後利用される。
【0144】
そのようなヒト肝細胞は、本開示のキメラ非ヒト動物(例えばマウス)の脾臓を介して、肝臓へ移植されることができる。そのようなヒト肝細胞はまた、門脈を介して直接移植されることができる。移植されるべきヒト肝細胞の数は、約1~2,000,000個細胞の範囲であってよく、好ましくは約200,000~1,000,000個細胞の範囲である。本開示のキメラ非ヒト動物の性別は、特に限定されない。同じく、本開示のマウスの移植時の日齢も、特に限定されない。ヒト肝細胞が、若いキメラ非ヒト動物(早週齢)へ移植される場合、このキメラ非ヒト動物は成長するので、ヒト肝細胞はより活動的に増殖することができる。例えば、生後約0-~40-日-齢のマウス、特に生後約8-~40-日-齢のマウスが使用されるのが、好ましい。
【0145】
この移植されたヒト肝細胞は、キメラ非ヒト動物のキメラ肝臓内の全ての肝細胞の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%のヒトキメリズムの任意の百分率を占める。
【0146】
1又は複数の遺伝子欠失を含む非ヒト動物が、本明細書において説明される。概して、遺伝子の両アレル欠失は、「-/-」により示され、例えば「Fah-/-」である。
【0147】
本開示の例証的II2-rgタンパク質をコードしているヒトのヌクレオチド配列は、Genbank寄託番号:NM_000206.2からなるか又はこれを含む:
【化1】
【0148】
本開示の例証的II2-rgタンパク質の対応するヒトアミノ酸配列は、Genbank寄託番号:NP_000197.1からなるか又はこれを含む:
【化2】
【0149】
本開示の例証的II2-rgタンパク質をコードしているマウスのヌクレオチド配列は、Genbank寄託番号:NM_013563.4からなるか又はこれを含む:
【化3】
【0150】
本開示の例証的II2-rgタンパク質の対応するマウスアミノ酸配列は、Genbank寄託番号:NP_038591.1からなるか又はこれを含む:
【化4】
【0151】
本開示の例証的Rag2タンパク質をコードしているヒトのヌクレオチド配列は、Genbank寄託番号:NM_000536.3からなるか又はこれを含む:
【化5】
【0152】
本開示の例証的Rag2タンパク質の対応するヒトアミノ酸配列は、Genbank寄託番号:NP_000527.2からなるか又はこれを含む:
【化6】
【0153】
本開示の例証的Rag2タンパク質をコードしているマウスのヌクレオチド配列は、Genbank寄託番号:NM_009020.3からなるか又はこれを含む:
【化7-1】
【化7-2】
【0154】
本開示の例証的Rag2遺伝子の対応するマウスアミノ酸配列は、Genbank寄託番号:NP_033046.1からなるか又はこれを含む:
【化8】
【0155】
本開示の例証的Fahタンパク質をコードしているヒトのヌクレオチド配列は、Genbank寄託番号:NM_000137.2からなるか又はこれを含む:
【化9】
【0156】
本開示の例証的Fahタンパク質の対応するヒトアミノ酸配列は、Genbank寄託番号:NP_000128.1からなるか又はこれを含む:
【化10】
【0157】
本開示の例証的Fahタンパク質をコードしている対応するマウス核酸配列は、Genbank寄託番号:NM_010176.4からなるか又はこれを含む:
【化11】
【0158】
本開示の例証的Fahタンパク質をコードしている対応するマウスのアミノ酸配列は、Genbank寄託番号:NP_034306.2からなるか又はこれを含む:
【化12】
【0159】
本明細書に開示されたアデノ随伴ウイルス(AAV)受容体(AAVR)はまた、ディスレクシア-関連タンパク質、KIAA0319-様(KIAA0319L)タンパク質とも称され、これは、多発性嚢胞腎(PKD)ドメインとも称される、5つのIg-様ドメインをそのエクトドメイン内に伴う、推定I型膜貫通タンパク質である。Ig-様ドメインは、細胞-細胞接着を媒介し、且つポリオウイルス、麻疹ウイルス及びレオウイルスの受容体を含む、様々な良く特徴付けられたウイルス受容体に存在する(Pillay S.ら、Nature 2016;530:108-112)。AAVRのPKDは、20面体の3回軸(three-fold axis)に隣接するAAV2キャプシドのスパイク領域に直接結合することが示されている(Zhang R.ら、Nat Microbiol, 2019 Apr;4(4):675-682)。
【0160】
本開示の例証的AAVRのマウスアミノ酸配列は、Genbank寄託番号:Q8K135からなるか又はこれを含む:
【化13】
【0161】
本開示の例証的AAVRタンパク質のヒトアミノ酸配列は、Genbank寄託番号:NP_079150からなるか又はこれを含む:
【化14】
下記実施例は、特許請求された開示をより良く例示するために提供され、本開示の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。具体的材料が言及される程度に、これは単に例示を目的とし、本開示を限定することを意図しない。当業者は、発明の能力を行使することなく且つ本開示の範囲から逸脱することなく、同等の手段又は反応物を開発してよい。
【実施例】
【0162】
実施例
実施例1:Il2rg
-/-
/Rag2
-/-
/Fah
-/-
マウスモデルの作製
AAVベクターは、好ましくはマウス細胞を形質導入するので、遺伝子治療に関するAAVベクターの使用を試験し且つ評価するためにはヒト化されたキメラマウスモデルを使用する。マウスAAV受容体は、AAVベクター血清型の形質導入にとって重要である。マウスアデノ随伴ウイルス受容体ノックアウト(AAVR KO)遺伝子欠失を伴う、導入遺伝子フリーIl2rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-マウスモデルの作製、並びにAAVベクターの形質導入効率を決定するためのこれの使用を説明する試験が、ここで説明される。肝臓の遺伝子治療のための良好な臨床候補となり得る多くの可能性のあるAAV血清型が存在するが、肝臓内であっても形質導入効率は、依然重要な点であり続ける。ウイルスキャプシドに対する免疫応答は、注入されたAAVの投与量に正比例する(Nathwani ACら、N Engl J Med 2014;371:1994-2004.)。従って、免疫応答を低下するためにできるだけ少ないAAVであるが、効果的形質導入及び治療効果を得るのに十分なAAVを使用することは、重要である。本開示は、マウスのAAVR欠失の背景を持つヒト肝臓キメラマウス(AAVRノックアウトマウス)は、ヒトに対する遺伝子治療のバリデーション、例えばヒト状況における遺伝子治療ベクターのバリデーションにとって、より特異的且つ価値があることを示している。本開示のマウス組織の欠失されたAAV受容体を伴うヒト肝臓キメラマウスは、最も好適で且つ臨床的に翻訳可能なAAV遺伝子治療ベクターを同定し且つ形質導入効率を評価するために有用である。
【0163】
材料及び方法
CRISPR/Cas9媒介型エキソン欠失によるAAVR-KO株の作製
本明細書に開示されたAAVR KOノックアウトマウスの作製のためのsgRNAのデザイン及びクローニングは、当該技術分野において先に説明されたように行った(Johnson CGら、Curr Protoc Mol Biol 2020;130:e117)。マウスAAVR遺伝子のエキソン4及び5を、標的化した(
図1A)。ここに記載した試験に使用したsgRNA配列は、以下に提供している:
sgRNA Ex4 ACTTGCGGAGTACCAGATAC. AGG (配列番号:15)
sgRNA Ex5 CATTCTTAGGCAGGGTGATC. TGG (配列番号:16)。
【0164】
これらのsgRNA及びCas9は、各々、MEGAshortscript T7転写キット(Life tech, AM1354)及びmMessage mMachine T7ウルトラキット(life tech AM1345)を用い、インビトロにおいて転写した。1×PBS中の各sgRNAの15ng/μL及びCas9 mRNAの60ng/μLの混合物を、接合体の微量注入に使用した。Cas9及びsgRNAを、TIRF(導入遺伝子フリーIl2rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-)マウス由来のホモ接合型接合体へ注入した。
【0165】
19匹の創始マウスの仔(founder pup)を得、そのうちの4匹は誕生後に死亡した。全ての仔を、欠失についてスクリーニングした。生存した15匹のマウスのうちの7匹は、欠失についてヘテロ接合体であった。合計4の欠失を得、これらの一部は、2匹以上のマウスにおいて存在が共有され、並びにそれら全ては、連結部の後ろの未熟な停止コドンに繋がった。
【0166】
陽性動物を、TIRF株と2回戻し交配させ、あらゆる可能性のある目的外の変異を取り除いた。ヘテロ接合体F2マウスを、互いに交配させ、ホモ接合体仔を得た。ホモ接合型マウスは、サイズは正常であり、いかなる異常な表現型も示さなかったが、妊孕性に問題があるように見え、並びにホモ接合型コロニーは、確立できなかった。
【0167】
TIRFA株の遺伝子型決定
得られた全てのホモ接合型仔は、以下のプライマーを使用するPCRによりスクリーニングした:
AAVR_Ex4 For 5’ACAGTTGCCGGTTCCTTCAC 3’ (配列番号:17)
AAVR_In5 Rev 5’ CCACATGCACATCACAACCTC 3’ (配列番号:18)。
【0168】
野生型マウス及びノックアウトマウスについて予想されたPCRバンドは、各々、2.3Kb及び200bpであった(
図1B)。欠失されたアレルに対応するPCRバンドを、精製し、且つSanger sequencingへ送った。一旦連結部が規定されたならば、更なる子孫を、Transnetyx社で、Taqmanプローブを使用する半定量的PCRにより、遺伝子型決定した(
図2A-2B)。Taqmanプローブは、5’末端に共有結合されたフルオロフォア及び3’末端にクエンチャーを有する、1本鎖DNAプローブである。このクエンチャーは、フルオロフォアに近接近した際に、蛍光を吸収する。これらのプローブは、特異的プライマーを用い、Taqポリメラーゼにより増幅される、関心対象のゲノム領域に結合する。一旦これらの鎖が各増幅工程のために分離されると、プローブは、それが親和性を有する鎖に結合することができる。アニーリングされたプローブの分解が、次の増幅ラウンドにおいてTaqポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性により起こる。フルオロフォアが放出され、定量的PCRサーマルサイクラーは、放出された蛍光を検出し、これはこのサイクルを通じて蓄積する。
【0169】
ヒト肝細胞のTIRFA株への移植
ヒト凍結保存された肝細胞(Lonza)を、先に説明されたように、TIRFA株へ移植した(Bissig-Choisat Bら、Nature communications 2015;6:7339;Barzi Mら、Nature communications 2017;8:39)。簡単に述べると、腹腔を、中央腹部切開により開き、容積100μlのPBS中の3×106個ヒト肝細胞を、脾臓へ注入した。移植直後に、移植されたヒト肝細胞への選択圧を、以下の工程において飲料水から薬物NTBCを取り除くことにより適用した:この薬物を完全に中断する前に、コロニー維持投与量(100%=7.5mg/l)の25%を2日間、その後12%を2日間、及び最終的に6%を2日間(Bissig KDら、The Journal of clinical investigation 2010)。ヒトアルブミンレベルは、ヒト肝細胞の免疫染色により評価されるヒトキメリズムのレベルと相関するので、ヒトキメリズムの程度を決定するために、ヒトアルブミン(ELISA、Bethyl laboratories)を、マウス血液中で測定した(Bissig KDら、The Journal of clinical investigation 2010)。ヒトキメリズム>70%を伴うマウスのみ、AAV注入に使用した。
【0170】
AAV生成
トリプル-プラスミドトランスフェクションプロトコールを使用し、rAAVベクターを作製し(Shen Sら、J Biol Chem 2013;288:28814-28823);このトランスフェクション混合物は:(1)pXRヘルパープラスミド;(2)アデノウイルスヘルパープラスミドpXX6-80;及び、(3)AAV2 ITRに隣接したCMVプロモーターにより駆動された、dTomato:を含んだ。ベクター精製は、イオジキサノール勾配超遠心分離を用い、それに続けてZebaSpin脱塩カラム(40K MWCO;ThermoScientific, Waltham, MA, USA)により脱塩し、実行した。vg力価は、AAV2 ITRに選択的に結合するようにデザインされたプライマー(フォワード、50-AACATGCTACGCAGAGAGGGAGTGG-30(配列番号:19);リバース、50-CATGAGACAAGGAACCCCTAGTGATGGAG-30(配列番号:20))を使用する、qPCR(LightCycler 480; Roche Applied Sciences, Pleasanton, CA, USA)により得た。
【0171】
免疫染色は、ホルマリン-固定したパラフィン-埋植した肝臓上で行った。パラフィン切片(厚さ5μm)を、脱脂し、抗原検索を、クエン酸緩衝液(pH6.0)中で行った。免疫染色を、1%ロバ血清+0.2%Tritonによるブロック後に、hFAHに対するウサギ抗体(Sigma Aldrich)により行った。PBSで洗浄後、切片を、1%ロバ血清中の蛍光-標識した二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories)により30分間染色し、再度洗浄し、Vectashield plus DAPI(Vector Labs)に搭載した。
【0172】
実施例2:異なるAAV血清型によるヒト肝臓キメラマウスのヒト及びマウス肝細胞の形質導入効率
遺伝子治療に関するヒトへの動物試験からの結果の外挿は、問題が多いので、ヒト肝臓キメラマウス(ヒト化された肝臓を持つマウス)を、インビボにおいてヒト肝細胞のAAV形質導入効率を決定するために使用した(Bissig-Choisat Bら、Nature communications 2015;Lisowski Lら、Nature 2014)。組換えゲノムの取込み、核への送達、脱殻、第二鎖合成、並びに導入遺伝子の持続及び発現において、差が存在する可能性があり、これらは考慮されなければならない。従ってキメラヒト化肝臓マウスは、更にヒト肝細胞の形質導入効率に関して候補AAV血清型を評価するために、独自のインビボプラットフォームを提供し(Bissig-Choisat Bら、Nature communications 2015;Lisowski Lら、Nature 2014)、これらの制限の一部を克服している。ここに記載された試験において、FRG(Fah
-/-/Rag2
-/-/Il2rg
-/-)マウスは、異なるAAV血清型で形質導入された健常なヒト肝細胞が再構築された。各形質導入されたAAVベクターは、異なる発現カセットを発現した。これらの形質導入効率は、FAH又はヒト核染色、及び形質導入された細胞(LacZ又はGFPについて陽性)について免疫染色されたヒト細胞をカウントすることにより、FRGヒトキメラ肝臓マウスにおける、AAV形質導入されたヒト及びマウスの肝細胞の百分率に関して、評価した。ここに記載した試験の結果は、ヒト化マウスにおける形質導入効率についてバリデートされた多くのAAV血清型は、マウス肝細胞を、ヒト肝細胞よりもはるかに良く形質導入することを示している(
図3)。最も重要なことに、2種の臨床で使用される血清型であるAAV8及びAAV9も、マウス肝細胞をヒト肝細胞よりもはるかにより容易に形質導入するように見える(
図4B-4F)(Bissig-Choisat Bら、Nature communications 2015)。総AAV粒子より少ないものが、ヒト細胞への結合に利用可能であるので、マウス肝細胞のこの「スケルチ(squelching)」又は「シンク(sink)」効果は、ヒト肝細胞に関するAAVベクターの形質導入効率の評価に関して、ヒト肝臓キメラマウスシステムの価値を低下する。本試験は、ヒト肝細胞へのAAV形質導入効率に対する、マウス肝細胞のこの「スケルチ」又は「シンク」効果の機序、並びにこれを低下する方法を調べる。
【0173】
実施例3:TIRFAマウスモデルの作製
最近、AAV受容体(AAVR)が同定された(Pillay Sら、Nature 2016)。ここに記載した試験において、AAVRノックアウトヒト肝臓キメラマウスは、ヒト状況における遺伝子治療ベクターのバリデーションの良好なモデルであると仮定された。マウスAAVR遺伝子を、ここに説明された方法及び材料を使用し、TIRFマウスの接合体(導入遺伝子フリーIl2rg-/-/Rag2-/-/Fah-/-)(JHEP reference March 2021)においてCRISPR手法を使用し、欠失させた。ここに記載された方法を使用し作製されたこれらのTIRFAマウスは、生存可能であり、且つAAVR遺伝子KOについてヘテロ接合型又はホモ接合型である場合に、明らかな病理は持たなかった。ここに記載したホモ接合型TIRFAマウスを繁殖する初期の試みは、巧くいかず、ここに記載した試験を、ヘテロ接合型繁殖対からの仔を使用し行った。ここに記載したTIRF(A)マウス(AAVRについてホモ接合型、ヘテロ接合型及び野生型)を、先に説明されたようにヒト肝細胞によりヒト化した(Bissig-Choisat Bら、Nature communications 2015;Lisowski Lら、Nature 2014)。TIRFA動物のヒト化は、ここに記載した方法を使用し、ヒト特異的アルブミン試験を使用するマウス血液中のヒトアルブミンの測定により評価した。ヒトアルブミンは、1mg/mL~5mg/ml血清で検出され、これは高ヒト肝臓キメリズムに匹敵している(Bissig KDら、The Journal of clinical investigation 2010)。ここで明らかにされた結果は、本開示は、内在性AAVRが欠乏又は枯渇している、並びにマウスの肝臓においてヒトキメリズムを確立するヒト肝細胞の再構築を可能にする、免疫枯渇されたキメラマウスモデルを提供することを示している。
【0174】
実施例4:ヒト化されたTIRFA肝臓内のヒト肝細胞におけるAAV血清型の形質導入効率の評価
ここに記載された試験において、ヒト化されたTIRFA肝臓内のヒト肝細胞におけるAAV血清型の形質導入効率が、評価された。実施例2に説明されたように、ユビキタスプロモーター(ハイブリッドCMVエンハンサー/トリβ-アクチン(CBA))下のdTomatoの発現カセットを含む、AAV血清型9(AAV9)遺伝子治療ベクターを作製した。全てのマウスに、AAVRの存在する全てのマウス肝臓を形質導入する投与量である1×10
12vg/マウスを、尾静脈に注射した。注射後1ヶ月で、ヒト化マウスを、安楽死させ、肝臓を収集した。ここに記載した試験において、効率的ヒト化は、(FAHの免疫染色)により決定し、並びにAAV9によるヒト肝細胞の形質導入は、dTomato免疫染色により決定した(
図5C、5F、5I及び5L)。ここに記載した結果は、AAV9は、AAVRのホモ接合型欠失を伴うヒト化されたTIRFAマウスにおいて、ヒト細胞を効率的に形質導入し、及びマウス細胞ごくわずかのみを形質導入したのに対し、AAVRのヘテロ接合型欠失(AAVR
+/-)を伴うヒト化されたTIRFAマウスにおける形質導入された細胞の大半は、マウス肝細胞であり、両方共AAVR
+/+野生型である、ヒト化されたTIRF又はFRGと類似している(
図4D)ことを示している。
【0175】
先に言及された実施例において明らかにされた実験データを基に、キメラ非ヒト動物モデルにおけるAAVベクターによる形質導入に対するマウス肝細胞の「スケルチ」又は「シンク」効果は、低下又は阻害されることができ、並びにヒト肝細胞の形質導入は、非ヒト動物AAVRのノックアウトにより達成されることができる。ここで明らかにされた実施例は、ここで明らかにされたキメラ非ヒト動物モデルは、ヒト細胞へのAAV形質導入の生物学及び効率を決定するために使用することができることを示している。
【0176】
実施例5:TIRFAマウスにおけるヒトiPS細胞由来のテラトーマの作製
ほとんどのAAV血清型及び組換えキャプシドは、肝臓への高い指向性を有し、且つAAVを静脈内に注入した場合、大部分のAAVは、肝細胞を形質導入する。このことは、多くの肝臓-指向性遺伝子治療手法にとって有益であるが、一部は、筋肉又は脳のような他の臓器を標的化することが意図される。従って肝臓は、ごくわずかなAAVがこの標的組織を形質導入するための、スポンジとして作用することができる(スケルチ効果)。特異的キャプシドの指向性が、肝臓にとってのものよりも任意の所定の臓器にとってより高いかどうかを評価するために、ヒト化マウスは、同じマウスにおいて肝臓組織及び他のヒト組織を有することを必要としている。従ってキャプシドの指向性が、いわゆる筋肉よりも、肝臓についてはるかに高い場合には、この特異的キャプシドは、患者の筋肉の形質導入には適していない。ヒト肝臓TIRFAマウスにおいて二重又は多重の臓器システムを有するために、誘導多能性幹(iPS)細胞由来のテラトーマを作製した。テラトーマは、完全に分化され、3種の胚葉全て(内胚葉、外胚葉及び中胚葉)由来の機能性組織を有する。
【0177】
方法:
ヒトiPS細胞由来のテラトーマの作製
ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞を、標準iPS細胞培地(StemCells Technologiesから得たmTeSR)を用い、マトリゲル上で培養した。10cmディッシュ上で集密度が80%に到達した時点で、細胞を培地中のプレートから優しく剥がし(細胞スクレーパー)、細胞凝集塊を形成し、500gで5分間回転沈降させた。細胞凝集塊(~1×107個細胞)を、新鮮な培地50~100μl中に再浮遊させ、ヒト肝臓キメラ又はヒト化されないTIRFAマウスへ皮下注射した。
【0178】
キメラ肝臓及びテラトーマの免疫染色:
免疫染色は、ホルマリン-固定したパラフィン-埋植した肝臓について行った。パラフィン切片(厚さ5μm)を、脱脂し、抗原検索を、クエン酸緩衝液(pH6.0)中で行った。免疫染色を、1%ロバ血清によるか又は対応する試薬(免疫組織化学のための)によるブロック後に、肝臓切片については、hLDHに対するマウス抗体(Santa Cruz、1:100希釈)及びウサギ抗-RFP抗体(Rockland、1:100希釈)のいずれかと共に、又はテラトーマについては抗-GFP(Abcam、1:200希釈)と共に、インキュベーションした。PBSで洗浄後、これらの切片を、蛍光-標識した二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories) によるか又はImpressDuetからの対応する二次抗体のいずれかにより染色し、製造業者(Vector Labs)の指示に従い呈色した。
【0179】
ヒト化された肝臓マウス(ヒト肝臓キメラマウス)は、先に説明されたようにTIRFAマウスの肝臓を再構築することにより、作製された。高いヒト肝臓キメリズム(>20%ヒト組織)の作製後、ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞を、皮下注射した。注射後3~4ヶ月で、マウスは明確に視認できる皮下テラトーマを形成した。テラトーマの形成後1~3週間で、ユビキタスGFP発現カセットを保持するAAV9を、静脈内注射した。
【0180】
結果
図6A-8Bは、td-Tomato発現カセットを保持する、1×10
12GC/マウスでAAV8(
図6A、6B、8A及び8B)又はAAV9(
図7A、7B、8A、及び8B)が注射された、ヒト肝臓キメラTIRFAマウス、例えばヒト肝細胞が再構築されたTIRFAマウスを示す。マウスは、注射後72時間で安楽死させ、肝臓を収集し、同時-局在化を示すために、ヒトマーカーLDH(明灰色)及びウルス導入遺伝子td-Tomato(黒色)を染色した。これらの実験は、AAV8及びAAV9は、ヒト化されたTIRFAマウスにおいて専らヒト肝細胞を形質導入するのに対し、これらの遺伝子治療ベクターは、AAVRを欠失しているので、これらはマウスTIRFA肝細胞を形質導入しないことを明らかにしている。対照ヒト化マウス(AAVR発現しているTIRFマウス)は、ほとんどのマウス肝細胞及び極わずかなヒト肝細胞の形質導入を明らかにしている(
図6A-7B)。
【0181】
ヒト肝細胞の形質導入は、キメラマウスの肝臓において認められ、並びにテラトーマのヒト細胞の形質導入が認められた(
図10-14D)。注目すべきは、テラトーマにおける全てではないヒト細胞が、同等に良好に形質導入され、並びにテラトーマ、例えば異なるヒト組織において形質導入効率の有意差が存在したことである。
【配列表】
【国際調査報告】