(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-19
(54)【発明の名称】連続式反応システム、シュウ酸マンガン鉄前駆体、リン酸マンガン鉄リチウム、及び製造方法と二次電池
(51)【国際特許分類】
C07C 55/07 20060101AFI20240911BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20240911BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240911BHJP
C07F 13/00 20060101ALI20240911BHJP
C07F 15/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C07C55/07 CSP
C01B25/45 Z
H01M4/58
C07F13/00 A
C07F15/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503986
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 CN2022106086
(87)【国際公開番号】W WO2024011625
(87)【国際公開日】2024-01-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】劉少軍
(72)【発明者】
【氏名】▲ヂァン▼文▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】張欣欣
(72)【発明者】
【氏名】欧陽楚英
(72)【発明者】
【氏名】李清政
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
5H050
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB91
4H006AC47
4H006BD84
4H006BS70
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB91
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本願は連続式反応システム、シュウ酸マンガン鉄前駆体、リン酸マンガン鉄リチウム、及び製造方法と二次電池を提供する。本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法は連続式製造方法であり、それにより生産効率を向上させ、製造プロセスを簡略化し、且つ粒径が小さく、粒度分布が狭く、元素分布が均一で、結晶化度が高く、形状が規則的で、バッチ生産の安定性及び一致性が高いシュウ酸マンガン鉄前駆体を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するための連続式反応システムであって、
第1材料溶解釜と、第2材料溶解釜と、第1反応釜と、第2反応釜と、材料貯蔵釜と、超音波反応装置と、を含み、
第1材料溶解釜はシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩溶液を収容することに用いられ、第2材料溶解釜はシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な沈殿剤溶液を収容することに用いられ、
第1反応釜は第1供給口及び第1オーバーフロー口を有し、第1反応釜の第1供給口は2本の管路を介してそれぞれ第1材料溶解釜の第1排出口及び第2材料溶解釜の第2排出口と連通し、それにより第1反応釜は金属塩溶液及び沈殿剤溶液を収容し且つそれを混合した後に反応させて第1反応液を生成し、
第2反応釜は第2供給口及び第2オーバーフロー口を有し、第2反応釜の第2供給口は管路を介して第1反応釜の第1オーバーフロー口と連通し、それにより第2反応釜は第1反応釜からの第1反応液を収容し且つそれを継続して反応させて第2反応液を生成し、
材料貯蔵釜は第3供給口、第4供給口、第3排出口及び第3オーバーフロー口を含み、材料貯蔵釜の第3供給口は管路を介して第2反応釜の第2オーバーフロー口と連通し、それにより材料貯蔵釜は第2反応釜からの第2反応液を収容し且つそれを継続して反応させて第3反応液を生成し、材料貯蔵釜の第3排出口、第4供給口は循環管路及び循環ポンプを介して超音波反応装置と循環連通し、それにより材料貯蔵釜内の第3反応液は超音波キャビテーションの作用で微細化され、
第3反応液の液面が材料貯蔵釜の第3オーバーフロー口より高い場合、第3反応液は材料貯蔵釜の第3オーバーフロー口を経由して流出する、連続式反応システム。
【請求項2】
第1計量ポンプ及び第2計量ポンプをさらに含み、第1計量ポンプの両端はそれぞれ管路を経て第1材料溶解釜の第1排出口及び第1反応釜の第1供給口と連通し、それにより金属塩溶液の流速を調節し、第2計量ポンプの両端はそれぞれ管路を経て第2材料溶解釜の第2排出口及び第1反応釜の第1供給口と連通し、それにより沈殿剤溶液の流速を調節する、請求項1に記載の連続式反応システム。
【請求項3】
超音波反応装置の外側に設置される冷却水循環管路をさらに含む、請求項1又は2に記載の連続式反応システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の連続式反応システムを介してシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造する製造方法であって、
少なくとも、
シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩溶液を第1反応釜に加え、シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な沈殿剤溶液を第2材料溶解釜に加えるステップS1と、
第1材料溶解釜中の金属塩溶液及び第2材料溶解釜中の沈殿剤溶液を、異なる管路を介してそれぞれ第1反応釜に輸送し、それを混合した後に反応させて第1反応液を生成し、第1反応液の液面が第1反応釜のオーバーフロー口より高い場合、第1反応液は自動的に第2反応釜に輸送され、その後に反応を継続させて第2反応液を生成し、第2反応液の液面が第2反応釜のオーバーフロー口より高い場合、第2反応液は自動的に材料貯蔵釜に輸送され、反応を継続させて第3反応液を生成し、同時に第3反応液は循環管路及び循環ポンプを介して超音波反応装置にポンピングされ、且つ超音波反応装置の超音波キャビテーションの作用で第3反応液中の結晶粒は微細化された後に材料貯蔵釜に再びポンピングされ、第3反応液の液面が材料貯蔵釜のオーバーフロー口より高い場合、第3反応液は材料貯蔵釜のオーバーフロー口を介して自動的に流出し、反応過程において、第1材料溶解釜、第2材料溶解釜、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜はいずれも保護ガス雰囲気下にあり且つ各釜はいずれも撹拌状態が保持されるステップS2と、
材料貯蔵釜のオーバーフロー口から得られる第3反応液を遠心分離し、洗浄し、乾燥させることで、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得るステップS3と、を含む、シュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法。
【請求項5】
第1材料溶解釜にさらに錯化剤が加えられ、好ましくは、前記錯化剤はアミノカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩及び有機ホスホン酸塩のうちの一つ又は複数を含み、さらに好ましくは、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムのうちの1つ又は複数を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
第1反応釜の反応温度は第2反応釜の反応温度よりも低く、材料貯蔵釜の反応温度は第2反応釜の反応温度よりも低い、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
第1反応釜の反応温度は20℃~30℃であり、及び/又は、
第2反応釜の反応温度は40℃~90℃であり、好ましくは40℃~60℃であり、及び/又は、
材料貯蔵釜の反応温度は20℃~30℃である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属塩溶液の流速は0.5L/min~6L/minであり、好ましくは2L/min~6L/minであり、及び/又は、
前記沈殿剤溶液の流速は0.5L/min~6L/minであり、好ましくは2L/min~6L/minであり、及び/又は、
前記金属塩溶液と前記沈殿剤溶液の流速は同じである、請求項4~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における第1反応釜での滞留時間は10min~2hであり、好ましくは10min~30minであり、及び/又は、
シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における第2反応釜での滞留時間は10min~10hであり、好ましくは30min~6h、より好ましくは30min~90minであり、及び/又は、
シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における材料貯蔵釜での滞留時間は10min~10hであり、好ましくは30min~6h、より好ましくは30min~90minである、請求項4~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
第1反応釜の容積は第2反応釜の容積以下であり、好ましくは、第1反応釜の容積と第2反応釜の容積との比は1:(1~5)であり、より好ましくは1:3であり、及び/又は、
第1反応釜の容積は材料貯蔵釜の容積以下であり、好ましくは、第1反応釜の容積と材料貯蔵釜の容積との比は1:(1~5)であり、より好ましくは1:3であり、及び/又は、
第2反応釜の容積と材料貯蔵釜の容積は同じである、請求項4~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
超音波反応装置の周波数は15KHz~60KHzであり、好ましくは30KHz~60KHzである、請求項4~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩は水溶性二価鉄塩、水溶性二価マンガン塩及び好ましくは水溶性ドーピング元素Mの二価塩を含み、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含み、
好ましくは、前記水溶性二価鉄塩は塩化第一鉄、臭化第一鉄、硝酸第一鉄、硫酸第一鉄、酢酸第一鉄、フルオロケイ酸第一鉄、過塩素酸第一鉄のうちの1つ又は複数を含み、
好ましくは、前記水溶性二価マンガン塩は塩化第一マンガン、臭化第一マンガン、硝酸第一マンガン、硫酸第一マンガン、酢酸第一マンガン、過塩素酸第一マンガンのうちの1つ又は複数を含み、
好ましくは、前記水溶性ドーピング元素Mの二価塩はドーピング元素Mの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩のうちの1つ又は複数を含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記沈殿剤はシュウ酸、水溶性シュウ酸塩のうちの1つ又は複数を含み、好ましくは、前記水溶性シュウ酸塩はシュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム及びシュウ酸アンモニウムのうちの1つ又は複数を含む、請求項4~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記金属塩溶液の濃度は0.5mol/L~2mol/Lであり、好ましくは0.5mol/L~1mol/Lであり、及び/又は、
前記沈殿剤溶液の濃度は0.5mol/L~2mol/Lであり、好ましくは0.5mol/L~1mol/Lであり、及び/又は、
前記金属塩と前記沈殿剤とのモル比は1:1~1:5である、請求項4~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
第1材料溶解釜の撹拌速度は300r/min~600r/minであり、及び/又は、
第2材料溶解釜の撹拌速度は300r/min~600r/minであり、及び/又は、
第1反応釜の撹拌速度は300r/min~600r/minであり、及び/又は、
第2反応釜の撹拌速度は300r/min~600r/minであり、及び/又は、
材料貯蔵釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである、請求項4~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記保護ガスは窒素ガス、不活性ガス又はその組み合わせを含む、請求項4~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項4~16のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体であって、
化学式Fe
xMn
yM
1-x-yC
2O
4・2H
2Oを有し、0<x<1であり、好ましくは、0.2≦x≦0.5で、0<y<1であり、好ましくは、0.5≦y≦0.8で、0≦1-x-y<1であり、好ましくは、0<1-x-y≦0.05であり、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含み、且つ前記シュウ酸マンガン鉄前駆体は電気的に中性である、シュウ酸マンガン鉄前駆体。
【請求項18】
体積基準粒度分布Dv90及びDv50は1<Dv90/Dv50≦2を満たし、好ましくは、1.3≦Dv90/Dv50≦1.7であり、及び/又は、
体積基準粒度分布Dv50は200nm~600nmであり、好ましくは230nm~510nmであり、及び/又は、
体積基準粒度分布Dv90は260nm~800nmであり、好ましくは320nm~730nmである、請求項17に記載のシュウ酸マンガン鉄前駆体。
【請求項19】
リン酸マンガン鉄リチウムを製造するための製造方法であって、
少なくとも、
請求項4~16のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体又は請求項17~18のいずれか一項に記載のシュウ酸マンガン鉄前駆体とリチウム源、リン源、選択可能なドーピング元素N源、選択可能なドーピング元素Q源及び選択可能なドーピング元素R源とを予め設定された割合で均一に混合して混合原料を得て、Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの1つ又は複数を含み、Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの1つ又は複数を含むステップS10と、
ステップS10で得られた混合原料を焼結処理することで、リン酸マンガン鉄リチウムを得て、前記リン酸マンガン鉄リチウムは化学式Li
aN
bFe
xMn
yM
1-x-yP
1-mQ
mO
4-nR
nを有し、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含み、Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの1つ又は複数を含み、Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの1つ又は複数を含み、0.9≦a≦1.1で、0≦b≦0.1であり、好ましくは、0<b≦0.05で、0<x<1であり、好ましくは、0.2≦x≦0.5で、0<y<1であり、好ましくは、0.5≦y≦0.8で、0≦1-x-y<1であり、好ましくは、0<1-x-y≦0.05で、0≦m≦0.1であり、好ましくは、0<m≦0.05で、0≦n≦0.1であり、好ましくは、0<n≦0.05であり、且つ前記リン酸マンガン鉄リチウムは電気的に中性であるステップS20と、を含む、リン酸マンガン鉄リチウムの製造方法。
【請求項20】
ステップS10において、前記混合原料にさらに炭素源が加えられる、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の製造方法で製造されたリン酸マンガン鉄リチウム。
【請求項22】
請求項19又は20に記載の製造方法で製造されたリン酸マンガン鉄リチウムを含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池技術分野に属し、具体的には連続式反応システム、シュウ酸マンガン鉄前駆体、リン酸マンガン鉄リチウム、及び製造方法と二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は水力、火力、風力及び太陽光発電所等のエネルギー貯蔵電源システム、さらには電動工具、電動自転車、電動オートバイ、電気自動車、軍事装備、航空宇宙等の複数の分野に広く応用されている。二次電池の応用及び普及に伴い、その安全性能にますます注目が集まっている。リン酸マンガン鉄リチウムは容量が大きく、安全性能が高く、原材料の供給源が豊富であるなどの利点から、現在最も注目されている正極活物質の一つである。シュウ酸マンガン鉄はリン酸マンガン鉄リチウムを製造するための重要な原料の一つであり、その性能の良否がリン酸マンガン鉄リチウム及び二次電池の性能に与える影響は極めて重要である。しかしながら、現在、シュウ酸マンガン鉄は間欠式の製造方法を用いることで得られることから、製造効率が低く、工程が煩雑で、製造プロセスを制御しにくく、製品品質の変動が大きく、バッチ生産の安定性及び一致性が劣るなどの問題が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本願の目的は、シュウ酸マンガン鉄前駆体の製造効率を向上させ、シュウ酸マンガン鉄前駆体の製造プロセスを簡略化し、且つ粒径が小さく、粒度分布が狭く、元素分布が均一で、結晶化度が高く、形状が規則的で、バッチ生産の安定性及び一致性が高いシュウ酸マンガン鉄前駆体を得ることを目的とした、連続式反応システム、シュウ酸マンガン鉄前駆体、リン酸マンガン鉄リチウム、及び製造方法と二次電池を提供することである。
【0004】
本願の第1態様によれば、シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するための連続式反応システムを提供し、該連続式反応システムは、第1材料溶解釜と、第2材料溶解釜と、第1反応釜と、第2反応釜と、材料貯蔵釜と、超音波反応装置と、を含み、第1材料溶解釜はシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩溶液を収容することに用いられ、第2材料溶解釜はシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な沈殿剤溶液を収容することに用いられ、第1反応釜は第1供給口及び第1オーバーフロー口を有し、第1反応釜の第1供給口は2本の管路を介してそれぞれ第1材料溶解釜の第1排出口及び第2材料溶解釜の第2排出口と連通し、それにより第1反応釜は金属塩溶液及び沈殿剤溶液を収容し且つそれを混合した後に反応させて第1反応液を生成し、第2反応釜は第2供給口及び第2オーバーフロー口を有し、第2反応釜の第2供給口は管路を介して第1反応釜の第1オーバーフロー口と連通し、それにより第2反応釜は第1反応釜からの第1反応液を収容し且つそれを継続して反応させて第2反応液を生成し、材料貯蔵釜は第3供給口、第4供給口、第3排出口及び第3オーバーフロー口を含み、材料貯蔵釜の第3供給口は管路を介して第2反応釜の第2オーバーフロー口と連通し、それにより材料貯蔵釜は第2反応釜からの第2反応液を収容し且つそれを継続して反応させて第3反応液を生成し、材料貯蔵釜の第3排出口、第4供給口は循環管路及び循環ポンプを介して超音波反応装置と循環連通し、それにより材料貯蔵釜内の第3反応液は超音波キャビテーションの作用で微細化され、第3反応液の液面が材料貯蔵釜の第3オーバーフロー口より高い場合、第3反応液は材料貯蔵釜の第3オーバーフロー口を経由して流出する。
【0005】
本願の任意の実施形態において、前記連続式反応システムは第1計量ポンプ及び第2計量ポンプをさらに含み、第1計量ポンプの両端はそれぞれ管路を経て第1材料溶解釜の第1排出口及び第1反応釜の第1供給口と連通し、それにより金属塩溶液の流速を調節し、第2計量ポンプの両端はそれぞれ管路を経て第2材料溶解釜の第2排出口及び第1反応釜の第1供給口と連通し、それにより沈殿剤溶液の流速を調節する。
【0006】
本願の任意の実施形態において、前記連続式反応システムは超音波反応装置の外側に設置される冷却水循環管路をさらに含む。
【0007】
本願の第2態様によれば、本願の第1態様の連続式反応システムを介してシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造する製造方法を提供し、少なくとも、シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩溶液を第1反応釜に加え、シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な沈殿剤溶液を第2材料溶解釜に加えるステップS1と、第1材料溶解釜中の金属塩溶液及び第2材料溶解釜中の沈殿剤溶液を、異なる管路を介してそれぞれ第1反応釜に輸送し、それを混合した後に反応させて第1反応液を生成し、第1反応液の液面が第1反応釜のオーバーフロー口より高い場合、第1反応液は自動的に第2反応釜に輸送され、その後に反応を継続させて第2反応液を生成し、第2反応液の液面が第2反応釜のオーバーフロー口より高い場合、第2反応液は自動的に材料貯蔵釜に輸送され、反応を継続させて第3反応液を生成し、同時に第3反応液は循環管路及び循環ポンプを介して超音波反応装置にポンピングされ、且つ超音波反応装置の超音波キャビテーションの作用で第3反応液中の結晶粒は微細化された後に材料貯蔵釜に再びポンピングされ、第3反応液の液面が材料貯蔵釜のオーバーフロー口より高い場合、第3反応液は材料貯蔵釜のオーバーフロー口を介して自動的に流出し、反応過程において、第1材料溶解釜、第2材料溶解釜、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜はいずれも保護ガス雰囲気下にあり且つ各釜はいずれも撹拌状態が保持されるステップS2と、材料貯蔵釜のオーバーフロー口から得られる第3反応液を遠心分離し、洗浄し、乾燥させることで、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得るステップS3と、を含む。
【0008】
本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法は連続式製造方法であり、製造効率が高く、エネルギー効率が高く、プロセスがシンプルで、操作しやすく人件費が低いなどの利点を有し、特に大規模工業生産に適する。本願が提供する製造方法で得られるシュウ酸マンガン鉄前駆体は、粒径が小さく、粒度分布が狭く、元素分布が均一で、結晶化度が高く、形状が規則的で、バッチ生産の安定性及び一致性が高いという利点を有し、それを原料として採用し固相焼結法によりリン酸マンガン鉄リチウムを製造する場合、リチウム元素と複数の金属元素との均一な混合を実現することができ、これによりリチウムイオンは拡散速度がより速く、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体中により吸蔵されやすく、製造されたリン酸マンガン鉄リチウムに優れた電気的、化学的特性を付与することができる。本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法はさらに、生産における良好な柔軟性を有し、同時に結晶の成長速度を制御して結晶粒のサイズ及び形状を調節することができ、これにより異なる生産要件を満たして、異なる粒径のリン酸マンガン鉄リチウムを製造することができる。
【0009】
本願の任意の実施形態において、第1材料溶解釜にさらに錯化剤が加えられ、好ましくは、前記錯化剤はアミノカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩及び有機ホスホン酸塩のうちの一つ又は複数を含み、さらに好ましくは、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムのうちの1つ又は複数を含む。これにより、純度が高く(例えば、純度≧99.7%)、金属元素が均一に分布したシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子を得ることができ、且つ得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子中の各金属元素のモル比と原料中の各金属元素のモル比との差が小さく、金属元素含有量の正確な制御を実現することができる。
【0010】
本願の任意の実施形態において、第1反応釜の反応温度は第2反応釜の反応温度よりも低く、材料貯蔵釜の反応温度は第2反応釜の反応温度よりも低い。これにより、得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体の粒径を調節できるだけでなく、粒度分布が狭く、元素分布が均一で、結晶化度が高く、形状が規則的なシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子を得ることに役立つ。
【0011】
本願の任意の実施形態において、第1反応釜の反応温度は20℃~30℃である。
【0012】
本願の任意の実施形態において、第2反応釜の反応温度は40℃~90℃であり、好ましくは40℃~60℃である。
【0013】
本願の任意の実施形態において、材料貯蔵釜の反応温度は20℃~30℃である。
【0014】
本願の任意の実施形態において、前記金属塩溶液の流速は0.5L/min~6L/minであり、好ましくは2L/min~6L/minである。
【0015】
本願の任意の実施形態において、前記沈殿剤溶液の流速は0.5L/min~6L/minであり、好ましくは2L/min~6L/minである。
【0016】
本願の任意の実施形態において、前記金属塩溶液と前記沈殿剤溶液の流速は同じであり、これにより得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子の一致性の向上に役立つ。
【0017】
本願の任意の実施形態において、シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における在第1反応釜での滞留時間は10min~2hであり、好ましくは10min~30minである。
【0018】
本願の任意の実施形態において、シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における第2反応釜内での滞留時間は10min~10hであり、好ましくは30min~6hであり、より好ましくは30min~90minである。
【0019】
本願の任意の実施形態において、シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における材料貯蔵釜での滞留時間は10min~10hであり、好ましくは30min~6hであり、より好ましくは30min~90minである。
【0020】
本願の任意の実施形態において、第1反応釜の容積は第2反応釜の容積以下であり、好ましくは、第1反応釜の容積と第2反応釜の容積との比は1:(1~5)であり、より好ましくは1:3である。これにより、得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子がより高い結晶化度を有することに役立つ。
【0021】
本願の任意の実施形態において、第1反応釜の容積は材料貯蔵釜の容積以下であり、好ましくは、第1反応釜の容積と材料貯蔵釜の容積との比は1:(1~5)であり、より好ましくは1:3である。これにより、得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子はより小さな粒径を有することができる。
【0022】
本願の任意の実施形態において、第2反応釜の容積と材料貯蔵釜の容積は同じである。
【0023】
本願の任意の実施形態において、超音波反応装置の周波数は15KHz~60KHzであり、好ましくは30KHz~60KHzである。これによりナノオーダーのシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造することに有利である。
【0024】
本願の任意の実施形態において、前記シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩は水溶性二価鉄塩、水溶性二価マンガン塩及び好ましくは水溶性ドーピング元素Mの二価塩を含み、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含む。
【0025】
本願の任意の実施形態において、好ましくは、前記水溶性二価鉄塩は塩化第一鉄、臭化第一鉄、硝酸第一鉄、硫酸第一鉄、酢酸第一鉄、フルオロケイ酸第一鉄、過塩素酸第一鉄のうちの1つ又は複数を含む。
【0026】
本願の任意の実施形態において、好ましくは、前記水溶性二価マンガン塩は塩化第一マンガン、臭化第一マンガン、硝酸第一マンガン、硫酸第一マンガン、酢酸第一マンガン、過塩素酸第一マンガンのうちの1つ又は複数を含む。
【0027】
本願の任意の実施形態において、好ましくは、前記水溶性ドーピング元素Mの二価塩はドーピング元素Mの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩のうちの1つ又は複数を含む。
【0028】
本願の任意の実施形態において、前記沈殿剤はシュウ酸、水溶性シュウ酸塩のうちの1つ又は複数を含み、好ましくは、前記水溶性シュウ酸塩はシュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム及びシュウ酸アンモニウムのうちの1つ又は複数を含む。
【0029】
本願の任意の実施形態において、前記金属塩溶液の濃度は0.5mol/L~2mol/Lであり、好ましくは0.5mol/L~1mol/Lである。
【0030】
本願の任意の実施形態において、前記沈殿剤溶液の濃度は0.5mol/L~2mol/Lであり、好ましくは0.5mol/L~1mol/Lである。
【0031】
本願の任意の実施形態において、前記金属塩と前記沈殿剤とのモル比は1:1~1:5である。
【0032】
本願の任意の実施形態において、第1材料溶解釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。
【0033】
本願の任意の実施形態において、第2材料溶解釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。
【0034】
本願の任意の実施形態において、第1反応釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。
【0035】
本願の任意の実施形態において、第2反応釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。
【0036】
本願の任意の実施形態において、材料貯蔵釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。
【0037】
本願の任意の実施形態において、前記保護ガスは窒素ガス、不活性ガス又はその組み合わせを含む。
【0038】
本願の第3態様によれば、本願の第2態様の製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体を提供し、化学式FexMnyM1-x-yC2O4・2H2Oを有し、0<x<1であり、好ましくは、0.2≦x≦0.5で、0<y<1であり、好ましくは、0.5≦y≦0.8で、0≦1-x-y<1であり、好ましくは、0<1-x-y≦0.05であり、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含み、且つ前記シュウ酸マンガン鉄前駆体は電気的に中性である。
【0039】
本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体は粒径が小さく、粒度分布が狭く、元素分布が均一で、結晶化度が高く、形状が規則的であるという利点を有する。
【0040】
本願の任意の実施形態において、前記シュウ酸マンガン鉄前駆体の体積基準粒度分布Dv90及びDv50は、1<Dv90/Dv50≦2を満たし、好ましくは、1.3≦Dv90/Dv50≦1.7である。
【0041】
本願の任意の実施形態において、前記シュウ酸マンガン鉄前駆体の体積基準粒度分布Dv50は200nm~600nmであり、好ましくは230nm~510nmである。
【0042】
本願の任意の実施形態において、前記シュウ酸マンガン鉄前駆体の体積基準粒度分布Dv90は260nm~800nmであり、好ましくは320nm~730nmである。
【0043】
本願の第4態様によれば、リン酸マンガン鉄リチウムを製造するための製造方法を提供し、少なくとも、本願の第2態様の製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体又は本願の第3態様のシュウ酸マンガン鉄前駆体とリチウム源、リン源、選択可能なドーピング元素N源、選択可能なドーピング元素Q源及び選択可能なドーピング元素R源とを予め設定された割合で均一に混合して混合原料を得て、Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの1つ又は複数を含み、Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの1つ又は複数を含むステップS10と、ステップS10で得られた混合原料を焼結処理することで、リン酸マンガン鉄リチウムを得て、前記リン酸マンガン鉄リチウムは化学式LiaNbFexMnyM1-x-yP1-mQmO4-nRnを有し、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含み、Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの1つ又は複数を含み、Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの1つ又は複数を含み、0.9≦a≦1.1で、0≦b≦0.1であり、好ましくは、0<b≦0.05で、0<x<1であり、好ましくは、0.2≦x≦0.5で、0<y<1であり、好ましくは、0.5≦y≦0.8で、0≦1-x-y<1であり、好ましくは、0<1-x-y≦0.05で、0≦m≦0.1であり、好ましくは、0<m≦0.05で、0≦n≦0.1であり、好ましくは、0<n≦0.05であり、且つ前記リン酸マンガン鉄リチウムは電気的に中性であるステップS20と、を含む。
【0044】
本願の上記製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウムはリチウム元素と複数の金属元素との均一な混合を実現することができ、これによりリチウムイオンは拡散速度がより速く、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体中により吸蔵されやすく、製造されたリン酸マンガン鉄リチウムに優れた電気的、化学的特性を付与することができる。
【0045】
本願の任意の実施形態において、ステップS10において、前記混合原料にさらに炭素源が加えられ、これにより炭素に被覆されたリン酸マンガン鉄リチウムを製造することができる。
【0046】
本願の第5態様によれば、本願の第4態様の製造方法で製造され、優れた電気的、化学的特性を有することができるリン酸マンガン鉄リチウムを提供する。
【0047】
本願の第6態様によれば、本願の第4態様の製造方法で製造されたリン酸マンガン鉄リチウムを含む二次電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本願の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するめに、以下に本願の実施例に必要な図面を簡単に説明する。理解すべきことは、以下に示された図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、図面に基づいて他の図面をさらに取得することができる。図面において、図面は実際の比率に従って描かれたものではない。
【
図1】シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するための連続式反応システムである。
【
図2】実施例1で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、
図2(a)の倍率は20000倍であり、
図2(b)の倍率は50000倍である。
【
図3】比較例3で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体の5000倍の倍率における走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4】実施例1で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体のX-線回折スペクトル(XRD)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本願の連続式反応システム、シュウ酸マンガン鉄前駆体、リン酸マンガン鉄リチウム、及び製造方法と二次電池の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、不必要な詳細な説明は省略する場合がある。例えば、周知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構造についての重複する説明は省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長にならないようにして、当業者の理解を容易にするためである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されたものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0050】
本願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形で定義され、所与の範囲は、1つの下限と1つの上限を選定することによって定義され、選定された下限及び上限は、特定の範囲の境界を定義するものである。このような方法で定義された範囲は、両端の値が含まれてもよく又は含まれていなくてもよく、且つ任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限を任意の上限と組み合わせて範囲を形成することができる。例えば、60~120及び80~110の範囲が特定のパラメータについて列挙されている場合、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2が列挙されており、及び最大範囲値3、4及び5が列挙されている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲がすべて企図されている。本願において、説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの省略表現を意味し、a及びbは両方とも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、「0~5」の間の全ての実数が本明細書に全て列挙されていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの省略表現にすぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、該パラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等であることを開示することに相当する。
【0051】
本願のすべての実施形態及び選択可能な実施形態は、特に明記しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができ、且つそのような技術的解決手段は、本願の開示に含まれると見なされるべきである。
【0052】
本願のすべての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、特に明記しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができ、且つそのような技術的解決手段は、本願の開示に含まれると見なされるべきである。
【0053】
本願の全てのステップは、特に説明しない限り、順に又はランダムに実施することができ、好ましくは順に実施する。例えば、前記方法がステップS1及びS2を含む場合、前記方法は、順に実施されるステップS1及びS2を含んでもよく、又は順に実施されるステップS2及びS1を含んでもよいことを示す。例えば、前記方法がステップS3をさらに含んでもよいという場合、ステップS3を任意の順序で前記方法に加えてもよいことを意味し、例えば、前記方法はステップS1、S2及びS3を含んでもよく、又はステップS1、S3及びS2を含んでもよく、又はステップS3、S1及びS2を含んでもよいなどを示す。
【0054】
本願で言及される「含む」及び「包含する」は、特に説明しない限り、開放形式及び閉鎖形式の両方を示す。例えば、前記「含む」及び「包含する」は、列挙されていない他の構成要素も含む又は包含してもよいことを示すことができ、又は列挙された構成要素のみを含む又は包含してもよいことを示すことができる。
【0055】
本願において、特に説明しない限り、「又は」という用語は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はA及びBの両方」を意味する。より具体的には、「A又はB」という条件は、Aが真(又は存在)であり、Bが偽(又は存在しない)であるか、Aが偽(又は存在しない)であり、Bが真(又は存在する)であるか、又はA及びBの両方が真(又は存在する)のいずれかによって満たされる。
【0056】
特に説明しない限り、本願において、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は異なる対象を区別するために用いられ、特定の順序又は主従関係を説明するために用いられるものではない。
【0057】
本願において、「複数個」、「複数」という用語は2つ又は2つ以上を意味する。
【0058】
本願の実施形態の第1態様は、シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するための連続式反応システムを提供する。
【0059】
図1に示すように、連続式反応システムは、第1材料溶解釜1と、第2材料溶解釜2と、第1反応釜3と、第2反応釜4と、材料貯蔵釜5と、超音波反応装置6と、を含み、第1材料溶解釜1はシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩溶液を収容することに用いられ、第2材料溶解釜2はシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な沈殿剤溶液を収容することに用いられ、第1反応釜3は第1供給口7及び第1オーバーフロー口8を有し、第1反応釜の第1供給口7は2本の管路を介してそれぞれ第1材料溶解釜の第1排出口9及び第2材料溶解釜の第2排出口10と連通し、それにより第1反応釜3は金属塩溶液及び沈殿剤溶液を収容し且つそれを混合した後に反応させて第1反応液を生成し、第2反応釜4は第2供給口11及び第2オーバーフロー口12を有し、第2反応釜の第2供給口11は管路を介して第1反応釜の第1オーバーフロー口8と連通し、それにより第2反応釜4は第1反応釜3からの第1反応液を収容し且つそれを継続して反応させて第2反応液を生成し、材料貯蔵釜5は第3供給口13、第4供給口14、第3排出口15及び第3オーバーフロー口16を含み、材料貯蔵釜の第3供給口13は管路を介して第2反応釜の第2オーバーフロー口12と連通し、それにより材料貯蔵釜5は第2反応釜4からの第2反応液を収容し且つそれを継続して反応させて第3反応液を生成し、材料貯蔵釜の第3排出口15、第4供給口14は循環管路及び循環ポンプ17を介して超音波反応装置6と循環連通し、それにより材料貯蔵釜5内の第3反応液は超音波キャビテーションの作用で微細化され、第3反応液の液面が材料貯蔵釜の第3オーバーフロー口16より高い場合、第3反応液は材料貯蔵釜の第3オーバーフロー口16を経由して流出する。
【0060】
いくつかの実施例において、前記連続式反応システムは第1計量ポンプ18及び第2計量ポンプ19をさらに含み、第1計量ポンプ18の両端はそれぞれ管路を経て第1材料溶解釜の第1排出口9及び第1反応釜の第1供給口7と連通し、それにより金属塩溶液の流速を調節し、第2計量ポンプ19の両端はそれぞれ管路を経て第2材料溶解釜の第2排出口10及び第1反応釜の第1供給口7と連通し、それにより沈殿剤溶液の流速を調節する。
【0061】
いくつかの実施例において、超音波反応装置6は超音波反応槽、超音波発生装置及び超音波変換装置を含む。本願において、超音波反応装置の動作原理は超音波発生装置を利用して高周波振動信号を発生し、さらに超音波変換装置を介して該信号を高周波の機械的振動に変換し、超音波反応釜の第3反応液中に連続的に伝播させ、それにより第3反応液中の結晶粒(すなわちシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子)を微細化することである。
【0062】
いくつかの実施例において、連続式反応システムは超音波反応装置6の外側に設置される冷却水循環管路20をさらに含む。超音波反応装置を使用する場合、エネルギーの一部が超音波反応装置の本体の温度上昇を促す可能性があり、冷却水循環管路を設置することで、超音波反応装置の本体の温度を下げて、装置を保護する目的を果たすことができる。
【0063】
いくつかの実施例において、第1材料溶解釜の第1排出口9と第1計量ポンプ18との間の管路にさらに第1遮断弁21が設置される。
【0064】
いくつかの実施例において、第1材料溶解釜の第1排出口9と第2計量ポンプ19との間の管路にさらに第2遮断弁22が設置される。
【0065】
いくつかの実施例において、第1反応釜の第1オーバーフロー口8と第2反応釜の第2供給口11との間の管路にさらに第3遮断弁23が設置される。
【0066】
いくつかの実施例において、第2反応釜の第2オーバーフロー口12と材料貯蔵釜の第3供給口13との間の管路にさらに第4遮断弁24が設置される。
【0067】
いくつかの実施例において、材料貯蔵釜の第3排出口15と循環ポンプ17との間の循環管路にさらに第5遮断弁25が設置される。
【0068】
シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造する時、第1遮断弁21、第2遮断弁22、第3遮断弁23、第4遮断弁24、第5遮断弁25はいずれも開いた状態を保持し、これにより連続的な材料供給及び連続的な排出を保証して、複数の釜を同時に反応させることができる。
【0069】
いくつかの実施例において、第1材料溶解釜1、第2材料溶解釜2、第1反応釜3、第2反応釜4及び材料貯蔵釜5にいずれも撹拌装置が設置される。
【0070】
いくつかの実施例において、必要に応じて各釜の温度を調整するために、第1材料溶解釜1、第2材料溶解釜2、第1反応釜3、第2反応釜4及び材料貯蔵釜5にさらに加熱装置が設置されてもよい。
【0071】
いくつかの実施例において、第1オーバーフロー口8は第1反応釜3の最上部に設置され、第2オーバーフロー口12は第2反応釜4の最上部に設置され、第3オーバーフロー口16は材料貯蔵釜5の最上部に設置される。
【0072】
本願実施形態の第2態様は、本願実施形態の第1態様の連続式反応システムを介してシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造する製造方法を提供し、少なくとも、シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩溶液を第1反応釜に加え、シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な沈殿剤溶液を第2材料溶解釜に加えるステップS1と、第1材料溶解釜中の金属塩溶液及び第2材料溶解釜中の沈殿剤溶液を、異なる管路を介してそれぞれ第1反応釜に輸送し、それを混合した後に反応させて第1反応液を生成し、第1反応液の液面が第1反応釜のオーバーフロー口より高い場合、第1反応液は自動的に第2反応釜に輸送され、その後に反応を継続させて第2反応液を生成し、第2反応液の液面が第2反応釜のオーバーフロー口より高い場合、第2反応液は自動的に材料貯蔵釜に輸送され、反応を継続させて第3反応液を生成し、同時に第3反応液は循環管路及び循環ポンプを介して超音波反応装置にポンピングされ、且つ超音波反応装置の超音波キャビテーションの作用で第3反応液中の結晶粒は微細化された後に材料貯蔵釜に再びポンピングされ、第3反応液の液面が材料貯蔵釜のオーバーフロー口より高い場合、第3反応液は材料貯蔵釜のオーバーフロー口を介して自動的に流出し、反応過程において、第1材料溶解釜、第2材料溶解釜、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜はいずれも保護ガス雰囲気下にあり且つ各釜はいずれも撹拌状態が保持されるステップS2と、材料貯蔵釜のオーバーフロー口から得られる第3反応液を遠心分離し、洗浄し、乾燥させることで、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得るステップS3と、を含む。
【0073】
従来のシュウ酸マンガン鉄リチウム前駆体を製造する反応システムは、その多くが単一反応釜又は複数の反応釜を並列接続した間欠式製造プロセスを採用しているため、製造効率が低いという欠点が存在し、且つ複数の反応釜を並列接続する方法で生産する場合、異なる反応釜の間で定時に切り替えを行う必要があり、製造プロセスが煩雑になり人件費が高いという欠点も存在する。
【0074】
本願は連続式反応システムを採用してシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造し、本願の連続式反応システムにおいて、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜は直列の連通方式を採用し、これにより連続的な材料供給及び連続的な排出を保証して、複数の釜を同時に反応させることができる。従って、本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法は、製造効率が高く、エネルギー効率が高く、プロセスがシンプルで、操作しやすく人件費が低いなどの利点を有し、特に大規模工業生産に適する。
【0075】
シュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法は一般的に共沈法である。沈殿の過程において、結晶核の成長速度が速く、得られる結晶のサイズや形状を制御することは困難であり、そのため従来の間欠式の製造方法で得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体は粒径が大きく(例えば、体積基準粒度分布Dv50が通常は10μm~40μm)、粒度分布が広く、元素分布が均一でないという欠点がある。そのため、従来の間欠式の製造方法で得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体を原料としてリン酸マンガン鉄リチウムを製造する場合、ボールミルを長時間行って粒径を小さくする必要があり、該過程は時間やエネルギーを消費し、且つリン酸マンガン鉄リチウムを製造する過程で混合材料の均一性を実現することも困難である。また、従来の間欠式の製造方法で得られたシュウ酸マンガン鉄リチウム前駆体には、製品品質の変動が大きく、バッチ生産の安定性及び一致性が劣るという欠点も存在する。
【0076】
本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法は連続式製造方法であり、連続式の製造過程で、各シュウ酸マンガン鉄前駆体粒子の成長過程における第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜での滞留時間は同じであり、且ついずれも同じ周波数での超音波キャビテーション作用を経るため、超音波キャビテーション作用による強力なせん断力の作用で、シュウ酸マンガン鉄前駆体の粒径の微細化を実現することができる。従って、従来の間欠式の製造方法で得られたシュウ酸マンガン鉄リチウム前駆体と比較して、本願が提供する製造方法で得られるシュウ酸マンガン鉄前駆体は、粒径が小さく、粒度分布が狭く、元素分布が均一で、結晶化度が高く、形状が規則的で、バッチ生産の安定性及び一致性が高いという利点を有し、それを原料として採用し固相焼結法によりリン酸マンガン鉄リチウムを製造する場合、リチウム元素と複数の金属元素との均一な混合を実現することができ、これによりリチウムイオンは拡散速度がより速く、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体中により吸蔵されやすく、製造されたリン酸マンガン鉄リチウムに優れた電気的、化学的特性を付与することができる。
【0077】
本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法において、金属塩溶液及び沈殿剤溶液の流速、シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における各釜での滞留時間、各釜の反応温度及び超音波反応装置の周波数等のパラメータはいずれも正確に調整することができ、従って本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法は生産における良好な柔軟性も有する。
【0078】
シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における各釜(第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜)での滞留時間は、金属塩溶液及び沈殿剤溶液の流速と負の相関関係を呈し、各釜の容積と正の相関関係を呈する。金属塩溶液及び沈殿剤溶液の流速が速い場合、シュウ酸マンガン鉄前駆体の各釜での滞留時間は短く、金属塩溶液及び沈殿剤溶液の流速が遅い場合、シュウ酸マンガン鉄前駆体の各釜での滞留時間は長い。各釜の容積が小さい場合、シュウ酸マンガン鉄前駆体の各釜での滞留時間は短く、各釜の容積が大きい場合、シュウ酸マンガン鉄前駆体の各釜での滞留時間は長い。従って、金属塩溶液及び沈殿剤溶液の流速、及び各釜の容積を調節することにより、シュウ酸マンガン鉄前駆体の粒径及び形状の調節を実現することができる。
【0079】
反応温度も、得られるシュウ酸マンガン鉄前駆体の粒径に影響を与えるため、各釜の反応温度を異なる範囲内に調節することにより、シュウ酸マンガン鉄前駆体の粒径及び形状の調節を実現することができる。
【0080】
超音波反応装置の周波数も、得られるシュウ酸マンガン鉄前駆体の粒径に影響を与えるため、超音波反応装置の周波数を調節することにより、異なる程度の粒子微細化効果を実現し、シュウ酸マンガン鉄前駆体の粒径の調節を実現することができる。
【0081】
従って、本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法は、結晶の成長速度を制御し、且つ結晶粒のサイズ及び形状を調節することができ、これにより異なる生産要件を満たして、異なる粒径のリン酸マンガン鉄リチウムを製造することができる。
【0082】
いくつかの実施例において、第1材料溶解釜にさらに錯化剤が加えられる。
【0083】
共沈法でシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造する場合、異なる金属イオンの沈殿速度には差があるため、均一な共沈を実現することはできず、同時に得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子中の各金属元素のモル比と原料中の各金属元素のモル比には大きな差があり、製品の性能及び一致性に影響を与える。本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法において、第1材料溶解釜にさらに錯化剤が加えられる。錯化剤は金属イオンを錯化し、遊離金属イオンを制御する目的を達成することができ、それにより金属イオンの沈殿転換効率を向上させ、反応液中における異なる金属イオンの沈殿速度の差を縮小して、均一な共沈を実現する。従って、第1材料溶解釜に錯化剤を加えた場合、本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法は、純度が高く(例えば、純度≧99.7%)、金属元素が均一に分布したシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子を得ることができ、且つ得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子中の各金属元素のモル比と原料中の各金属元素のモル比との差が小さく、金属元素含有量の正確な制御を実現することができる。
【0084】
好ましくは、前記錯化剤はアミノカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩及び有機ホスホン酸塩のうちの1つ又は複数を含む。より好ましくは、前記錯化剤はエチレンジアミンテトラメチレンリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムのうちの1つ又は複数を含む。
【0085】
好ましくは、前記錯化剤の質量濃度は、前記金属塩溶液の総質量に対して10wt%以下、より好ましくは1wt%~10wt%である。
【0086】
いくつかの実施例において、第1反応釜の反応温度は第2反応釜の反応温度よりも低く、材料貯蔵釜の反応温度は第2反応釜の反応温度よりも低い。
【0087】
本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法において、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜は直列の連通方式を採用し、且つ第1反応釜及び材料貯蔵釜の反応温度は第2反応釜の反応温度より低く設定され、これにより連続式反応システムにおけるそれぞれの釜に、異なる主要機能を付与することができる。第1反応釜は反応温度が低いため、第1反応釜において、金属塩溶液と沈殿剤溶液との予備混合及び迅速な予備核形成を実現することができ、低い反応温度は第1反応液中の結晶核の凝縮成長を抑制することもでき、これにより金属イオンとシュウ酸イオン((C2O4)2-)とを共沈させ、サイズが均一で、元素分布が均一な大量の結晶核を形成することができ、結晶核が第2反応釜においてより良好に成長し結晶化することに有利である。第2反応釜は反応温度が高いため、反応液が第1反応釜から第2反応釜に流入した後、高い反応温度は十分なエネルギーを供給して結晶核の成長と結晶化を促進することができ、且つ結晶核の凝縮成長を回避する前提で、形成された結晶の結晶化度の向上を実現することができる。材料貯蔵釜は反応温度が低いため、材料貯蔵釜において、結晶のさらなる結晶化及び成長を実現することができ、結晶の結晶化度、均一性及び一致性を向上させ、同時に、材料貯蔵釜は反応温度が低く、反応液の温度が高くなり過ぎることを防ぎ、超音波反応装置が過熱して超音波変換装置の耐用年数に影響することを回避する。また、材料貯蔵釜の反応温度は第2反応釜の反応温度よりも低く、これにより反応液が第2反応釜から材料貯蔵釜に流入した時、反応液を冷却する役割を果たす。
【0088】
従って、各釜の反応温度を調節することにより、得られるシュウ酸マンガン鉄前駆体の粒径を調節できるだけでなく、粒度分布が狭く、元素分布が均一で、結晶化度が高く、形状が規則なシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子を得ることに役立つ。
【0089】
いくつかの実施例において、好ましくは、第1反応釜の反応温度は20℃~30℃である。
【0090】
いくつかの実施例において、好ましくは、第2反応釜の反応温度は40℃~90℃であり、より好ましくは40℃~60℃である。
【0091】
いくつかの実施例において、好ましくは、材料貯蔵釜の反応温度は20℃~30℃である。
【0092】
いくつかの実施例において、前記金属塩溶液の流速(又は第1計量ポンプのポンプ速度)は0.5L/min~6L/minであり、好ましくは2L/min~6L/minである。
【0093】
いくつかの実施例において、前記沈殿剤溶液の流速(又は第2計量ポンプのポンプ速度)は0.5L/min~6L/minであり、好ましくは2L/min~6L/minである。
【0094】
いくつかの実施例において、前記金属塩溶液と前記沈殿剤溶液の流速は同じであり(すなわち第1計量ポンプと第2計量ポンプのポンプ速度は同じである)、これにより得られるシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子の一致性の向上に役立つ。
【0095】
いくつかの実施例において、シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における第1反応釜での滞留時間は10min~2hであり、好ましくは10min~30minである。
【0096】
いくつかの実施例において、シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における第2反応釜中での滞留時間は10min~10hであり、好ましくは30min~6h、より好ましくは30min~90minである。
【0097】
いくつかの実施例において、シュウ酸マンガン鉄前駆体の成長過程における材料貯蔵釜での滞留時間は10min~10hであり、好ましくは30min~6h、より好ましくは30min~90minである。
【0098】
いくつかの実施例において、第1反応釜の容積は第2反応釜の容積以下であり、これにより生成されるシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子の第2反応釜における滞留時間は長く、得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子がより高い結晶化度を有することに役立つ。好ましくは、第1反応釜の容積と第2反応釜の容積との比は1:(1~5)であり、より好ましくは1:3である。
【0099】
いくつかの実施例において、第1反応釜の容積は材料貯蔵釜の容積以下であり、これにより生成されるシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子の材料貯蔵釜における滞留時間は長く、得られたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子がより小さい粒径を有することに役立つ。好ましくは、第1反応釜の容積と材料貯蔵釜の容積との比は1:(1~5)であり、より好ましくは1:3である。
【0100】
いくつかの実施例において、好ましくは、第2反応釜の容積と材料貯蔵釜の容積は同じである。
【0101】
いくつかの実施例において、好ましくは、超音波反応装置の周波数は15KHz~60KHzであり、好ましくは30KHz~60KHzである。これによりナノオーダーのシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造することに有利である。
【0102】
いくつかの実施例において、前記シュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩は水溶性二価鉄塩、水溶性二価マンガン塩及び好ましくは水溶性ドーピング元素Mの二価塩を含み、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含む。
【0103】
前記水溶性二価鉄塩は、従来の水に溶解可能な各種の二価鉄イオン含有化合物であってもよく、好ましくは、前記水溶性二価鉄塩は塩化第一鉄、臭化第一鉄、硝酸第一鉄、硫酸第一鉄、酢酸第一鉄、フルオロケイ酸第一鉄、過塩素酸第一鉄のうちの1つ又は複数を含む。
【0104】
前記水溶性二価マンガン塩は、従来の水に溶解可能な各種の二価マンガンイオン含有化合物であってもよく、好ましくは、前記水溶性二価マンガン塩は塩化第一マンガン、臭化第一マンガン、硝酸第一マンガン、硫酸第一マンガン、酢酸第一マンガン、過塩素酸第一マンガンのうちの1つ又は複数を含む。
【0105】
前記水溶性ドーピング元素Mの二価塩は、従来の水に溶解可能な各種の二価Mイオン含有化合物であってもよく、好ましくは、前記水溶性ドーピング元素Mの二価塩はドーピング元素Mの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩のうちの1つ又は複数を含む。
【0106】
いくつかの実施例において、好ましくは、前記沈殿剤はシュウ酸、水溶性シュウ酸塩のうちの1つ又は複数を含む。好ましくは、前記水溶性シュウ酸塩はシュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム及びシュウ酸アンモニウムのうちの1つ又は複数を含む。
【0107】
いくつかの実施例において、前記金属塩溶液は金属塩水溶液であり、例えばシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造するために必要な金属塩と脱イオン水とを均一に混合することにより得られる。
【0108】
いくつかの実施例において、前記沈殿剤溶液は、沈殿剤水溶液であり、例えば沈殿剤と脱イオン水とを均一に混合することにより得られる。
【0109】
いくつかの実施例において、好ましくは、前記金属塩溶液の濃度は0.5mol/L~2mol/Lであり、より好ましくは0.5mol/L~1mol/Lである。
【0110】
いくつかの実施例において、好ましくは、前記沈殿剤溶液の濃度は0.5mol/L~2mol/Lであり、より好ましくは0.5mol/L~1mol/Lである。
【0111】
いくつかの実施例において、好ましくは、前記金属塩と前記沈殿剤とのモル比は1:1~1:5である。
【0112】
反応の過程において、第1材料溶解釜、第2材料溶解釜、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜はいずれも撹拌状態が保持される。いくつかの実施例において、好ましくは、第1材料溶解釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。いくつかの実施例において、好ましくは、第2材料溶解釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。いくつかの実施例において、好ましくは、第1反応釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。いくつかの実施例において、好ましくは、第2反応釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。いくつかの実施例において、好ましくは、材料貯蔵釜の撹拌速度は300r/min~600r/minである。
【0113】
反応の過程において、第1材料溶解釜、第2材料溶解釜、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜にいずれも保護ガスが導入される。いくつかの実施例において、前記保護ガスは窒素ガス、不活性ガス又はその組み合わせを含む。好ましくは、前記不活性ガスはヘリウムガス、アルゴンガス又はその組み合わせを含む。
【0114】
本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法において、特に明記しない限り、各原料はいずれも直接購入されたものであってもよい。
【0115】
本願実施形態の第3態様によれば、本願実施形態の第2態様の製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体を提供し、前記シュウ酸マンガン鉄前駆体は、化学式FexMnyM1-x-yC2O4・2H2Oを有し、0<x<1、0<y<1、0≦1-x-y<1であり、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含み、且つ前記シュウ酸マンガン鉄前駆体は電気的に中性である。
【0116】
本願が提供するシュウ酸マンガン鉄前駆体は本願実施形態の第2態様の製造方法で製造されるため、粒径が小さく、粒度分布が狭く、元素分布が均一で、結晶化度が高く、形状が規則的であるという利点を有する。
【0117】
いくつかの実施例において、前記シュウ酸マンガン鉄前駆体の体積基準粒度分布Dv90及びDv50は1<Dv90/Dv50≦2を満たし、好ましくは、1.3≦Dv90/Dv50≦1.7である。
【0118】
いくつかの実施例において、前記シュウ酸マンガン鉄前駆体の体積基準粒度分布Dv50は200nm~600nmであり、好ましくは230nm~510nmである。
【0119】
いくつかの実施例において、前記シュウ酸マンガン鉄前駆体の体積基準粒度分布Dv90は260nm~800nmであり、好ましくは320nm~730nmである。
【0120】
いくつかの実施例において、好ましくは、0.2≦x≦0.5である。
【0121】
いくつかの実施例において、好ましくは、0.5≦y≦0.8である。
【0122】
いくつかの実施例において、1-x-y=0であり、別の実施例において、0<1-x-y≦0.05である。
【0123】
本願実施形態の第4態様によれば、リン酸マンガン鉄リチウムの製造方法を提供し、少なくとも、本願実施形態の第2態様の製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体又は本願実施形態の第3態様のシュウ酸マンガン鉄前駆体とリチウム源、リン源、選択可能なドーピング元素N源、選択可能なドーピング元素Q源及び選択可能なドーピング元素R源とを予め設定された割合で均一に混合して混合原料を得て、Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの1つ又は複数を含み、Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの1つ又は複数を含むステップS10と、ステップS10で得られた混合原料を焼結処理することで、リン酸マンガン鉄リチウムを得て、前記リン酸マンガン鉄リチウムは化学式LiaNbFexMnyM1-x-yP1-mQmO4-nRnを有し、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含み、Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの1つ又は複数を含み、Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの1つ又は複数を含み、0.9≦a≦1.1で、0≦b≦0.1であり、好ましくは、0<b≦0.05で、0<x<1であり、好ましくは、0.2≦x≦0.5で、0<y<1であり、好ましくは、0.5≦y≦0.8で、0≦1-x-y<1であり、好ましくは、0<1-x-y≦0.05で、0≦m≦0.1であり、好ましくは、0<m≦0.05で、0≦n≦0.1であり、好ましくは、0<n≦0.05であり、且つ前記リン酸マンガン鉄リチウムは電気的に中性であるステップS20と、を含む。
【0124】
本願の上記製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウムはリチウム元素と複数の金属元素との均一な混合を実現することができ、これによりリチウムイオンは拡散速度がより速く、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体中により吸蔵されやすく、製造されたリン酸マンガン鉄リチウムに優れた電気的、化学的特性を付与することができる。
【0125】
いくつかの実施例において、前記リチウム源はリン酸マンガン鉄リチウムの正極活物質を製造することに用いられる当分野で既知のリチウム含有化合物であってもよく、例えば、前記リチウム源はLi2CO3、LiOH、Li3PO4及びLiH2PO4のうちの1つ又は複数を含む。
【0126】
いくつかの実施例において、前記リン源はリン酸マンガン鉄リチウムの正極活物質を製造することに用いられる本分野で既知のリン含有化合物であってもよく、例えば、前記リン源は(NH4)2HPO4、NH4H2PO4、(NH4)3PO4及びH3PO4のうちの1つ又は複数を含む。
【0127】
いくつかの実施例において、前記ドーピング元素N源はドーピング元素Nの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のうちの1つ又は複数を含む。
【0128】
いくつかの実施例において、前記ドーピング元素Q源はドーピング元素Qの硫酸塩、硼酸塩、硝酸塩及びケイ酸塩のうちの1つ又は複数を含み、
【0129】
いくつかの実施例において、前記ドーピング元素R源はドーピング元素Rの単体及びアンモニウム塩のうちの1つ又は複数を含む。
【0130】
上記各ドーピング元素源を選択することにより、上記各ドーピング元素の分布の均一性を向上させることができ、リン酸マンガン鉄リチウムの電気的、化学的特性を改善する。
【0131】
いくつかの実施例において、ステップS10において、前記混合原料にさらに炭素源が加えられてもよく、これにより炭素に被覆されたリン酸マンガン鉄リチウムを製造することができる。
【0132】
いくつかの実施例において、前記炭素源は有機炭素源、無機炭素源のうちの1つ又は複数を含み、好ましくはグルコース、スクロース、デンプン、フルクトース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、クエン酸のうちの1つ又は複数の組み合わせを含む。
【0133】
上記製造方法において、ドーピング元素N、Q、R源それぞれの添加量は目標ドーピング量に依存しており、リチウム源及びリン源の添加量はリン酸マンガン鉄リチウムの化学量論比に適合する。いくつかの実施例において、リチウム源の添加量はやや過剰であってもよく、例えばリチウム源の理論質量の100%~110%であってもよく、リチウム源の理論質量とは、リン酸マンガン鉄リチウムの化学量論比に基づいて計算されるリチウム源の質量である。
【0134】
上記製造方法において、特に明記しない限り、各原料はいずれも直接購入されたものであってもよい。
【0135】
本願実施形態の第5態様によれば、本願実施形態の第4態様の製造方法で製造されたリン酸マンガン鉄リチウムを提供する。
【0136】
前記リン酸マンガン鉄リチウムは化学式LiaNbFexMnyM1-x-yP1-mQmO4-nRnを有し、Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはCo、Mg、Zn、Ca、Ti、V、Ni、Crのうちの1つ又は複数を含み、Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの1つ又は複数を含み、Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの1つ又は複数を含み、0.9≦a≦1.1で、0≦b≦0.1であり、好ましくは、0<b≦0.05で、0<x<1であり、好ましくは、0.2≦x≦0.5で、0<y<1であり、好ましくは、0.5≦y≦0.8で、0≦1-x-y<1であり、好ましくは、0<1-x-y≦0.05で、0≦m≦0.1であり、好ましくは、0<m≦0.05で、0≦n≦0.1であり、好ましくは、0<n≦0.05であり、且つ前記リン酸マンガン鉄リチウムは電気的に中性である。
【0137】
いくつかの実施例において、前記リン酸マンガン鉄リチウムの表面に炭素が被覆され、これによりリン酸マンガン鉄リチウムの導電性を向上させることができる。
【0138】
本願実施形態の第6態様によれば、本願実施形態の第4態様の製造方法で製造されたリン酸マンガン鉄リチウムを含む二次電池を提供する。前記リン酸マンガン鉄リチウムは正極活物質として二次電池において応用することができ、且つ二次電池の電気的、化学的特性の向上に役立つ。
実施例
【0139】
以下の実施例は、本願に開示された内容をより具体的に記載しているが、本願に開示された内容の範囲内でなされる種々の修正及び変更は当業者にとって明らかであることから、これらの実施例は例示に過ぎない。特に明記しない限り、以下の実施例で報告される全ての部、パーセント、比はいずれも質量を基準とし、且つ実施例で使用される全ての試薬は市販されているか、又は従来の方法に従って合成されたものであり、処理することなく直接使用することができ、実施例で使用される機器はいずれも市販のものである。
実施例1
【0140】
図1に示す連続式反応システムを採用してシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造する。
【0141】
水溶性二価マンガン塩の塩化第一マンガン、水溶性二価鉄塩の塩化第一鉄、錯化剤のエチレンジアミンテトラメチレンリン酸ナトリウム及び脱イオン水を第1材料溶解釜に加え、濃度が1mol/Lの金属塩溶液を調製する。調製された金属塩溶液において、二価マンガンイオンと二価鉄イオンとのモル比は7:3であり、錯化剤の質量濃度は5wt%である。沈殿剤のシュウ酸アンモニウムと脱イオン水を第2材料溶解釜に加え、濃度が1mol/Lの沈殿剤溶液を調製する。
【0142】
図1に示すように、第1材料溶解釜、第2材料溶解釜、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜にいずれも窒素ガスを導入し、且つ反応過程における各釜の撹拌速度はいずれも400r/minである。第1反応釜及び材料貯蔵釜の反応温度をいずれも室温(25℃)に制御し、第2反応釜の反応温度を40℃に制御し、超音波反応装置の周波数は60KHzである。
【0143】
金属塩溶液と沈殿剤溶液は2本の液体供給管を介してそれぞれ第1材料溶解釜及び第2材料溶解釜から第1反応釜に絶えず搬送され、それを混合し且つ反応させて第1反応液を生成し、金属塩溶液と沈殿剤溶液の流速はいずれも6L/minである。
【0144】
10min反応させた後、第1反応液の液面が第1オーバーフロー口より高くなると、第1オーバーフロー口から第2反応釜に自動的に流出して反応を継続し且つ第2反応液を生成する。
【0145】
反応が30min継続した後、第2反応液の液面が第2オーバーフロー口より高くなると、第2オーバーフロー口から材料貯蔵釜に自動的に流出して反応を継続し且つ第3反応液を生成する。
【0146】
材料貯蔵釜内の第3反応液は、循環管路及び循環ポンプを介して超音波反応装置に絶えずポンピングされ且つ超音波反応装置の超音波キャビテーション作用で第3反応液中のシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子が微細化された後に、材料貯蔵釜に再びポンピングされる。
【0147】
反応が30min継続した後、第3反応液の液面が第3オーバーフロー口より高くなると、第3オーバーフロー口から自動的に流出する。
【0148】
得られた第3反応液を遠心分離機で複数回遠心分離し洗浄した後、乾燥器に移して120℃で6h乾燥させて、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得る。
実施例2
【0149】
図1に示す連続式反応システムを採用してシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造する。
【0150】
水溶性二価マンガン塩の硝酸第一マンガン、水溶性二価鉄塩の硝酸第一鉄、錯化剤のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム及び脱イオン水を第1材料溶解釜に加え、濃度が1mol/Lの金属塩溶液を調製する。調製された金属塩溶液において、二価マンガンイオンと二価鉄イオンとのモル比は7:3であり、錯化剤の質量濃度は3wt%である。沈殿剤のシュウ酸と脱イオン水を第2材料溶解釜に加え、濃度が1mol/Lの沈殿剤溶液を調製する。
【0151】
図1に示すように、第1材料溶解釜、第2材料溶解釜、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜にいずれも窒素ガスを導入し、且つ反応過程における各釜の撹拌速度はいずれも600r/minである。第1反応釜及び材料貯蔵釜の反応温度をいずれも室温(25℃)に制御し、第2反応釜の反応温度を60℃に制御し、超音波反応装置の周波数は30KHzである。
【0152】
金属塩溶液と沈殿剤溶液は2本の液体供給管を介してそれぞれ第1材料溶解釜及び第2材料溶解釜から第1反応釜に絶えず搬送され、それを混合し且つ反応させて第1反応液を生成し、金属塩溶液と沈殿剤溶液の流速はいずれも2L/minである。
【0153】
30min反応させた後、第1反応液の液面が第1オーバーフロー口より高くなると、第1オーバーフロー口から第2反応釜に自動的に流出して反応を継続し且つ第2反応液を生成する。
【0154】
反応が90min継続した後、第2反応液の液面が第2オーバーフロー口より高くなると、第2オーバーフロー口から材料貯蔵釜に自動的に流出して反応を継続し且つ第3反応液を生成する。
【0155】
材料貯蔵釜内の第3反応液は、循環管路及び循環ポンプを介して超音波反応装置に絶えずポンピングされ且つ超音波反応装置の超音波キャビテーション作用で第3反応液中のシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子が微細化された後に、材料貯蔵釜に再びポンピングされる。
【0156】
反応が90min継続した後、第3反応液の液面が第3オーバーフロー口より高くなると、第3オーバーフロー口から自動的に流出する。
【0157】
得られた第3反応液を遠心分離機で複数回遠心分離し洗浄した後、乾燥器に移して120℃で6h乾燥させて、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得る。
実施例3
【0158】
図1に示す連続式反応システムを採用してシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造する。
【0159】
水溶性二価マンガン塩の硫酸第一マンガン、水溶性二価鉄塩の硫酸第一鉄、錯化剤のグルコン酸ナトリウム及び脱イオン水を第1材料溶解釜に加え、濃度が0.5mol/Lの金属塩溶液を調製する。調製された金属塩溶液において、二価マンガンイオンと二価鉄イオンとのモル比は6:4であり、錯化剤の質量濃度は10wt%である。沈殿剤のシュウ酸と脱イオン水を第2材料溶解釜に加え、濃度が0.5mol/Lの沈殿剤溶液を調製する。
【0160】
図1に示すように、第1材料溶解釜、第2材料溶解釜、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜にいずれも窒素ガスを導入し、且つ反応過程における各釜の撹拌速度はいずれも300r/minである。第1反応釜及び材料貯蔵釜の反応温度をいずれも室温(25℃)に制御し、第2反応釜の反応温度を50℃に制御し、超音波反応装置の周波数は50KHzである。
【0161】
金属塩溶液と沈殿剤溶液は2本の液体供給管を介してそれぞれ第1材料溶解釜及び第2材料溶解釜から第1反応釜に絶えず搬送され、それを混合し且つ反応させて第1反応液を生成し、金属塩溶液と沈殿剤溶液の流速はいずれも3L/minである。
【0162】
20min反応させた後、第1反応液の液面が第1オーバーフロー口より高くなると、第1オーバーフロー口から第2反応釜に自動的に流出して反応を継続し且つ第2反応液を生成する。
【0163】
反応が60min継続した後、第2反応液の液面が第2オーバーフロー口より高くなると、第2オーバーフロー口から材料貯蔵釜に自動的に流出して反応を継続し且つ第3反応液を生成する。
【0164】
材料貯蔵釜内の第3反応液は、循環管路及び循環ポンプを介して超音波反応装置に絶えずポンピングされ且つ超音波反応装置の超音波キャビテーション作用で第3反応液中のシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子が微細化された後に、材料貯蔵釜に再びポンピングされる。
【0165】
反応が60min継続した後、第3反応液の液面が第3オーバーフロー口より高くなると、第3オーバーフロー口から自動的に流出する。
【0166】
得られた第3反応液を遠心分離機で複数回遠心分離し洗浄した後、乾燥器に移して120℃で6h乾燥させて、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得る。
実施例4
【0167】
図1に示す連続式反応システムを採用してシュウ酸マンガン鉄前駆体を製造する。
【0168】
水溶性二価マンガン塩の酢酸第一マンガン、水溶性二価鉄塩の酢酸第一鉄、水溶性二価コバルト塩の酢酸第一コバルト、錯化剤のクエン酸ナトリウム及び脱イオン水を第1材料溶解釜に加え、濃度が1mol/Lの金属塩溶液を調製する。調製された金属塩溶液において、二価マンガンイオンと二価鉄イオンと二価コバルトイオンとのモル比は6.9:3:0.1であり、錯化剤の質量濃度は5wt%である。沈殿剤のシュウ酸アンモニウム、シュウ酸及び脱イオン水を第2材料溶解釜に加え、濃度が1mol/Lの沈殿剤溶液を調製し、シュウ酸アンモニウムとシュウ酸とのモル比は1:1である。
【0169】
図1に示すように、第1材料溶解釜、第2材料溶解釜、第1反応釜、第2反応釜及び材料貯蔵釜にいずれも窒素ガスを導入し、且つ反応過程における各釜の撹拌速度はいずれも400r/minである。第1反応釜及び材料貯蔵釜の反応温度をいずれも室温(25℃)に制御し、第2反応釜の反応温度を60℃に制御し、超音波反応装置の周波数は40KHzである。
【0170】
金属塩溶液と沈殿剤溶液は2本の液体供給管を介してそれぞれ第1材料溶解釜及び第2材料溶解釜から第1反応釜に絶えず搬送され、それを混合し且つ反応させて第1反応液を生成し、金属塩溶液と沈殿剤溶液の流速はいずれも4L/minである。
【0171】
15min反応させた後、第1反応液の液面が第1オーバーフロー口より高くなると、第1オーバーフロー口から第2反応釜に自動的に流出して反応を継続し且つ第2反応液を生成する。
【0172】
反応が45min継続した後、第2反応液の液面が第2オーバーフロー口より高くなると、第2オーバーフロー口から材料貯蔵釜に自動的に流出して反応を継続し且つ第3反応液を生成する。
【0173】
材料貯蔵釜内の第3反応液は、循環管路及び循環ポンプを介して超音波反応装置に絶えずポンピングされ且つ超音波反応装置の超音波キャビテーション作用で第3反応液中のシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子が微細化された後に、材料貯蔵釜に再びポンピングされる。
【0174】
反応が45min継続した後、第3反応液の液面が第3オーバーフロー口より高くなると、第3オーバーフロー口から自動的に流出する。
【0175】
得られた第3反応液を遠心分離機で複数回遠心分離し洗浄した後、乾燥器に移して120℃で6h乾燥させて、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得る。
実施例5
【0176】
シュウ酸マンガン鉄前駆体の製造方法は実施例1と同じであり、相違点は錯化剤を添加しないことである。
比較例1
【0177】
水溶性二価マンガン塩の塩化第一マンガン、水溶性二価鉄塩の塩化第一鉄及び脱イオン水を混合して、濃度が1mol/Lの金属塩溶液を調製する。調製された金属塩溶液において、二価マンガンイオンと二価鉄イオンとのモル比は7:3である。沈殿剤のシュウ酸及び脱イオン水を混合して、濃度が1mol/Lの沈殿剤溶液を調製する。
【0178】
金属塩溶液と沈殿剤溶液を反応釜に同時に注入し、急速撹拌を起動し、撹拌速度は400r/minであり、反応温度を60℃に制御し、反応時間は40minであり、反応終了後に室温まで自然冷却してペーストを得る。得られたペーストを反応釜底部の排出口から導出した後、遠心分離機で複数回遠心分離し洗浄した後、乾燥器に移して120℃で6h乾燥させて、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得る。
比較例2
【0179】
水溶性二価マンガン塩の塩化第一マンガン、水溶性二価鉄塩の塩化第一鉄、錯化剤のエチレンジアミンテトラメチレンリン酸ナトリウム及び脱イオン水を混合して、濃度が1mol/Lの金属塩溶液を調製する。調製された金属塩溶液において、二価マンガンイオンと二価鉄イオンとのモル比は7:3であり、錯化剤の質量濃度は5wt%である。沈殿剤のシュウ酸と脱イオン水を混合して、濃度が1mol/Lの沈殿剤溶液を調製する。
【0180】
金属塩溶液と沈殿剤溶液を反応釜に同時に注入し、急速撹拌を起動し、撹拌速度は400r/minであり、反応温度を60℃に制御し、反応時間は40minであり、反応終了後に室温まで自然冷却してペーストを得る。得られたペーストを反応釜底部の排出口から導出した後、遠心分離機で複数回遠心分離し洗浄した後、乾燥器に移して120℃で6h乾燥させて、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得る。
比較例3
【0181】
水溶性二価マンガン塩の塩化第一マンガン、水溶性二価鉄塩の塩化第一鉄及び脱イオン水を混合して、濃度が1mol/Lの金属塩溶液を調製する。調製された金属塩溶液において、二価マンガンイオンと二価鉄イオンとのモル比は7:3である。沈殿剤のシュウ酸及び脱イオン水を混合して、濃度が1mol/Lの沈殿剤溶液を調製する。
【0182】
金属塩溶液と沈殿剤溶液を反応釜に同時に注入し、急速撹拌を起動し、撹拌速度は400r/minであり、反応温度を60℃に制御し、反応時間は40minであり、反応終了後に室温まで自然冷却してペーストを得る。得られたペーストを反応釜底部の排出口から導出した後、超音波反応装置に導入して微細化処理を行い、30min反応させた後、遠心分離機で複数回遠心分離し洗浄し、乾燥器に移して120℃で6h乾燥させて、シュウ酸マンガン鉄前駆体を得る。
試験の部
(1)粒径測定
【0183】
Malvern Master Size3000型レーザ粒度分布装置を使用して上記製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体の体積基準粒度分布を測定した。Dv50、Dv90は、材料の累積体積分布パーセンテージが50%、90%に達した時の対応する粒径である。測定の依拠としてGB/T19077-2016を参照した。
(2)Mn/Feのモル比測定
【0184】
Plasma 3000型誘導結合プラズマ発光分析装置を使用し、ICP-OES法で上記製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体中のマンガン及び鉄元素の含有量を測定し、且つそのモル比を計算した。
【0185】
【0186】
図2は、実施例1で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、
図2(a)の倍率は20000倍であり、
図2(b)の倍率は50000倍である。
図3は、比較例3で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体の5000倍の倍率における走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図4は、実施例1で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体のX-線回折スペクトル(XRD)画像である。
【0187】
表1の測定結果及び
図2を総合すると分かるように、本願が提供する連続式製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体は粒径が小さく、粒度分布が狭く、元素分布が均一で、形状が規則的であるという利点を有する。
【0188】
表1の測定結果及び
図3を総合すると分かるように、従来の間欠式の製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体は粒径が大きく、粒度分布が広く且つ元素分布が均一ではない。
【0189】
図4からさらに分かるように、本願が提供する連続式製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体はさらに、純度が高く結晶化度が高いという利点を有する。
【0190】
実施例1と比較例2、実施例5と比較例1の測定結果を総合すると分かるように、本願が提供する連続式製造方法で製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子中のMn/Feのモル比と金属塩溶液中のMn/Feのモル比は差がより小さく、これによりマンガン元素と鉄元素含有量の正確な制御を実現することができる。
【0191】
実施例1と比較例2、実施例5と比較例1の測定結果を総合するとさらに分かるように、第1材料溶解釜に錯化剤を加えた場合、製造されたシュウ酸マンガン鉄前駆体粒子中のマンガン元素と鉄元素の含有量をさらに正確に制御することに役立つ。
【0192】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示に過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で、技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術的範囲に包含される。また、本願の主旨を逸脱しない範囲で、当業者が想到できる各種の修正を実施形態に追加したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も本願の範囲内に包含される。
【符号の説明】
【0193】
1 第1材料溶解釜
2 第2材料溶解釜
3 第1反応釜
4 第2反応釜
5 材料貯蔵釜
6 超音波反応装置
7 第1供給口
8 第1オーバーフロー口
9 第1排出口
10 第2排出口
11 第2供給口
12 第2オーバーフロー口
13 第3供給口
14 第4供給口
15 第3排出口
16 第3オーバーフロー口
17 循環ポンプ
18 第1計量ポンプ
19 第2計量ポンプ
20 冷却水循環管路
21 第1遮断弁
22 第2遮断弁
23 第3遮断弁
24 第4遮断弁
25 第5遮断弁
【国際調査報告】