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特表2024-534285レーダネットワークにおける角度曖昧性を解決する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-19
(54)【発明の名称】レーダネットワークにおける角度曖昧性を解決する方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/46 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
G01S13/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515868
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022073701
(87)【国際公開番号】W WO2023041305
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021210143.7
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(71)【出願人】
【識別番号】595007530
【氏名又は名称】ロバート ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Robert Bosch GmbH
【住所又は居所原語表記】Postfach 30 02 20 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】コレペル、 ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ラップ、 フィリップ フェルディナンド
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC11
5J070AE09
5J070AE20
5J070AF03
5J070AK07
5J070AK22
5J070BB30
5J070BD01
(57)【要約】
本発明は、空間的インコヒーレントなレーダネットワーク(2)における角度曖昧性を解決する方法に関する。本発明によれば、周囲の領域が複数のレーダセンサ(2.1~2.n)によってスキャンされる。各レーダセンサ(2.1~2.n)に対して、個別に、かつ他の各レーダセンサ(2.1~2.n)とは独立に、検出された物体のトラック(T1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x)が状態空間において生成される。異なるレーダセンサ(2.1~2.n)のトラック(T1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x)は、トラックが同一の物体から生じる妥当性があるという条件で互いに割り当てられる。角度曖昧性を解決するために、互いに割り当てられたトラック(T1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x)が異なるバリアントに対して融合され、それぞれの妥当性測定値が各バリアントに割り当てられ、最も妥当性の高いバリアントが角度曖昧性を解決するために選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的インコヒーレントなレーダネットワーク(2)における角度曖昧性を解決する方法において、
周囲の領域が複数のレーダセンサ(2.1~2.n)によってスキャンされること、
各レーダセンサ(2.1~2.n)に対して、個別にかつ他の各レーダセンサ(2.1~2.n)とは独立して、検出された物体のトラック(T1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x)が状態空間において生成されること、
異なるレーダセンサ(2.1~2.n)のトラック(T1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x)は、前記トラックが同一の物体から生じる妥当性があるという条件で互いに割り当てられること、
前記角度曖昧性を解決するために、互いに割り当てられたトラック(T1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x)が異なるバリアントに対して融合されること、
それぞれの妥当性測定値が各バリアントに割り当てられること、及び
最も妥当性の高いバリアントが前記角度曖昧性を解決するために選択されること
を特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間的インコヒーレントなレーダネットワークにおける角度曖昧性を解決する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動化された、特に高度に自動化された又は自律的な動作中に、レーダセンサは、静止物体及び移動物体からの後方散乱を検出することにより、周囲空間のモデルを生成する。しかしながら、角度曖昧性によって、信号の入力方向、ひいては検出された物体の位置を明確に決定することが困難になり得る。
【0003】
US2019/0187268A1には、レーダ角度曖昧性を解決するための方法及び装置が開示されている。そこでは、物体の角度位置は、複数の振幅ピークを有する空間応答から決定されている。レーダ角度曖昧性を解決するために、周波数サブスペクトル又は多周波数サブスペクトルが選択され、これらは、物体の角度位置を決定するために、空間応答における振幅差又は位相差を強調し、広い視野にわたって応答の不規則な形態を分析する。これは、レーダシステムが検出し、かつレーダ角度曖昧性を解決するために使用することができる、明確な特徴を物体の角度位置に与える。アレイに配置されたレーダのアンテナ素子は、それらの間の距離が、物体を検出するために使用される反射レーダ信号の平均波長の1/2より大きい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、空間的インコヒーレントなレーダネットワークにおける角度曖昧性を解決するための新しいタイプの方法を提供することである。
【0005】
本発明は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって、この目的を達成する。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の目的である。
【0007】
本発明に係る空間的インコヒーレントなレーダネットワークにおける角度曖昧性を解決する方法において、複数のレーダセンサが周囲の領域を検出し、検出された物体のトラックが、各レーダセンサのための状態空間において、個別にかつ他の各レーダセンサとは独立して生成される。状態空間は、例えば、そこで角度曖昧性を解決する必要がないように構成される。さらに、異なるレーダセンサトラックは、トラックが同一の物体から生じる妥当性があるという条件で、互いに割り当てられる。互いに割り当てられたトラックは、角度曖昧性を解決するために、異なるバリアントに対して融合され、ここで、それぞれの妥当性の測定値が、各バリアントに割り当てられる。次いで、最も妥当性の高いバリアントが、角度曖昧性を解決するために選択される。
【0008】
本開示の方法を使用すると、レーダネットワーク内の複数のレーダセンサによって行われる妥当性チェックによって、物体位置の角度曖昧性を解決することができる。これにより、角度曖昧性のためにゴースト物体としても知られる誤って位置決めされる物体の数を減らすことが可能となり、レーダセンサによって生成される周囲モデルの大幅な改善につながる。それによって、車両の自動動作のためのシステムの文脈において、運転動作を大幅に改善することができる。例えば、特定の位置に実際には位置していない物体に対するブレーキ操作を回避することができる。
【0009】
現行の技術水準とは異なり、本開示の方法は、周波数サブスペクトルに基づいていないため、角度曖昧性自体の解決を制御しないレーダセンサと共に使用することもできる。
【0010】
本発明の例は、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】空間的インコヒーレントなレーダネットワークにおける角度曖昧性を解決するための装置の概略ブロック図である。
図2】レーダセンサによって検出されたトラックを、複数の仮説的派生デカルトトラックに変換した概略図であり、複数のセンサから仮説的派生デカルトトラック、及びその結果得られた最も妥当性の高い融合トラックの表現である。
図3】複数のレーダセンサのための概略的な事前アソシエーショングラフである。
図4図3に従ってアソシエーショングラフを精緻化する際に考慮される概略的なセグメンテーション配置である。
図5】レーダセンサによって検出された複数のトラックの平均から融合トラックを生成するためのデータ構造の概略図である。
図6】妥当性の低い融合トラックの概略図である。
図7】妥当性の高い融合トラックの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
全ての図面において同じ項目は同じ名称で識別される。
【0013】
図1は、複数のレーダセンサ2.1~2.nを有する空間的インコヒーレントなレーダネットワーク2における角度曖昧性を解決するための装置1の1つの可能な実施形態のブロック図を示す。
【0014】
車両用途のレーダセンサ2.1~2.nは、角度曖昧性の影響を受け得る。通常の測定の不確実性に加えて、このようなレーダセンサ2.1~2.nは、物体の信号の入射角を明確に検出することができない。言い換えれば、レーダセンサ2.1~2.nは、任意の角度φ,…,φN-1外側からの信号がそれらに到達していることのみを決定することができる。ここで、Nは曖昧性の総数である。レーダセンサ2.1~2.nを使用すると、照らされた視野又は内部標的トラッキングに基づいて、例えば、どの角度曖昧性が最も可能性が高いかを決定することができる。さらなる処理のために、レーダセンサ2.1~2.nは、この最も可能性の高い角度又は同様に可能な他の角度のみを出力してもよい。
【0015】
多くの場合、最も可能性の高い角度測定値は、正しい物体の位置に対応する。このような場合、レーダ測定値の曖昧性を無視するトラッキング及び融合アルゴリズムは、良好な結果を提供する。レーダセンサ2.1~2.nが角度曖昧性を誤って解決する場合、このようなアルゴリズムは非常に誤った結果をもたらす可能性がある。特に、これらは、ゴースト物体、すなわち、実際には何もない位置にある物体を示す場合がある。レーダセンサ2.1~2.nが角度曖昧性を誤って解決する影響は長期間存在し得るため、これらのゴースト物体も長寿命であり得る。自動化された、特に高度に自動化された、又は自律的な車両の運転動作において、このようなゴースト物体は、例えば、理由もなく緊急ブレーキを引き起こす等、運転行動に大きな影響を与え得る。
【0016】
このようなゴースト物体の認識を防ぐために、レーダデータに基づいて物体を生成するための波長値を増やすことが可能である。しかしながら、これは、レーダセンサ2.1~2.nの信頼性、したがって有用性を低下させる結果となる。これにより、認識が遅れるか又は物体を見逃す等の追加の問題が生じる可能性もある。
【0017】
したがって、比較的低い周波数でしか出現しない場合でも、融合アルゴリズム及びトラッキングの角度曖昧性を無視するべきではない。トラックが生成されるとすぐに、それに対する追加の曖昧な測定更新が、それが以前の解決と一致するように解決されることを防ぐため、特に、いわゆるスポーン段階、すなわち、物体に対するトラックが初期化されるときの角度曖昧性が認識され、考慮される。さらに、突然レーダセンサ2.1~2.nの視野に入る道路上の歩行者の出現等、特にレーダセンサ2.1~2.nを備えた車両が歩行者から既に短距離にある場合に、緊急事態に対処できるようにするために、トラックの確実な初期化が必要である。緊急事態は、車両から短距離に位置する障害物、例えば、道路に落下した荷物等によっても発生する可能性があり、これらは、後方散乱特性のために、レーダセンサ2.1~2.n又は他のセンサによって短距離でしか認識できない。
【0018】
これらの問題を解決するために、空間的インコヒーレントなレーダネットワーク2における角度曖昧性を解決する方法が、装置1を使用して実装される。
【0019】
この方法は、物体スポーンを伴うレーダ測定における角度曖昧性を処理及び決定するように構成され、複数のレーダセンサ2.1~2.nの使用に依存し、これらによって、センサが配置された車両(以下、自車両と呼ぶ)の周囲の重複及び/又は隣接する検出領域又は視野を検出する。装置1の実装は、完全な「複数仮説トラッキングアルゴリズム(Multiple-Hypothesis Tracking Algorithm)」の使用を回避するという目標に基づいている。このアルゴリズムは、実装がより困難であり、計算量が非常に多い。
【0020】
レーダセンサ2.1~2.nは、周囲をスキャンし、ここで、センサトラッキングモジュール2.1.1~2.n.1は、レーダセンサ2.1~2.nによって検出されたデータから検出された物体のトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xを測定し、アソシエーションモジュール3に送信する。センサトラッキングモジュール2.1.1~2.n.1は、各レーダセンサ2.1~2.nに対して独立にトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xを生成しかつ管理する。トラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xは、測定量の状態空間、特に図2に詳細に示す検出及び/又はトラッキングされた物体からレーダセンサ2.1~2.nまでの距離、視線速度vrad、及び方向余弦uを使用する。方向余弦uは、各角度定義の入射角の余弦又は正弦を指定する。この特別な状態空間の使用により、入射角を指定する方向余弦uが予測ステップにおけるレーダセンサ2.1~2.nまでの距離r及び視線速度vradに影響しないので、センサトラッキングモジュール2.1.1~2.n.1は、角度曖昧性を解決する必要がない。
【0021】
さらに、トラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xは、マルチセンサトラッキングモジュールの調整サブモジュール4によってマルチセンサトラック群TG1~TGzに融合される。
【0022】
これらのマルチセンサトラック群TG1~TGzのそれぞれから、融合モジュール5によって融合トラックS1~Syが生成される。
【0023】
しかしながら、図2により詳細に示すように、検出されたセンサトラックT1を、派生した仮説デカルトトラックT1.1~T1.3に変換する際には、角度曖昧性を考慮する必要がある。
【0024】
この点に関して、図2の左部分は、検出されたセンサトラックT1を示しており、これは、例えば、式(1)により、図2の中央に示す複数の仮説的に派生したデカルトトラックT1.1~T1.3に変換される。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、utrは、曖昧性が解決されなかったセンサ座標におけるトラックsの方向余弦uである。nΔuは、曖昧性の可能な解決の間の距離であり、uは、n番目の可能な解決である。
【0027】
3つの仮説のそれぞれは、角度曖昧性を解決する可能性に対応する。
【0028】
図2の右側の部分では、複数のレーダセンサ2.1~2.nによって検出されたトラックについて、仮説的派生デカルトトラックT1.1~T1.3、T2.1~T2.3、T3.1~T.3.3、及び結果として得られる最も妥当性の高い融合トラックS1が示されている。
【0029】
派生デカルトトラックT1.1~T1.3は、座標x、yを持つ直交座標系、例えば、統合された運転状態フレーム(Integrated Driving State Frame)又はIDSとしても知られている統合された運転状態座標系に位置している。派生デカルトトラックT1.1~T1.3は、位置の観点からのみそこに存在する。
【0030】
角度曖昧性のために、複数の派生デカルトトラックT1.1~T1.3があり、ここで、これらのトラックT1.1~T1.3の数は、角度測定における曖昧性の数に対応している。各派生デカルトトラックT1.1~T1.3は、センサトラックT1からデカルトトラックT1.1~T1.3のように、複数の仮説のうちの1つのみに変換される。
【0031】
派生デカルトトラックT1.1~T1.3の1つのバリアントは、いわゆるタイムスタンプ調整されたデカルトトラックである。ここで、「タイムスタンプ調整」とは、このタイプのトラックについて、タイムスタンプがセンサトラッキングモジュール2.1.1~2.n.1に一致するように指定されるという事実を指す。
【0032】
例えば、センサトラックT1、T2は、これらのトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xを融合することができるように、同じタイムスタンプを持つタイムスタンプ調整されたデカルトトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xに変換される。次に、tは、インデックスpを持つトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xの更新時間であり、tは、共通の時間軸のタイムスタンプである。次に、tに対するトラックT1,T2の状態は、以下によって決定される。
【0033】
-トラックT1,T2を、状態~xp,k及び共分散行列~Pp,kを持つデカルトトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xに変換すること、
-共分散行列Pp,lを持つ状態xp,lを得るために、タイムスタンプtの状態の予測を含むこと。
【0034】
トラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xには、インジケータ変数~Dが含まれ、これは、トラッキング対象物体がタイムステップtで認識された場合に1になる。それ以外の場合は0になる。タイムスタンプ調整された派生デカルトトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xについて、タイムスタンプlに対して、対応する変数Dは、その前のタイムスタンプtの~Dの値に設定される。このようにして、トラッキング対象物体が以前の機会に認識されたかどうかの持続的な記録がある。
【0035】
例えば、融合トラックS1~Syは、タイムスタンプ調整された派生デカルトトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xの状態から加重平均として融合状態を計算することによって作成される。言い換えると、状態x及び共分散行列Pを持つタイムスタンプ調整された派生したトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xについて、融合トラック状態は式(2)になる。
【0036】
【数2】
【0037】
ここで、Pstは融合トラックS1~Syに寄与するトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xの数であり、式(3)は、時点lにおける融合トラックS1~Syの共分散行列である。
【0038】
【数3】
【0039】
図3は、事前アソシエーショングラフAGの例を示す。アソシエーショングラフAG上のノードはトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xであり、(重み付けされた)接続は事前アソシエーションを表す。図4は、アソシエーショングラフAGを改良する際に考慮されるセグメンテーション配置(a)~(d)の例を示す。セグメンテーション(a)は、事前アソシエーショングラフAGからの元の事前アソシエーションに対応する。セグメンテーション配置(b)、(c)、及び(d)では、事前アソシエーションの一方又は両方が除去される。
【0040】
マルチセンサトラッキングモジュールは、マルチセンサトラック群TG1~TGzを作成し、これに、おそらく同じ標的物体を示すレーダセンサ2.1~2.nによって検出されたトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xを割り当てる。これにより、トラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xは、1つのレーダセンサ2.1~2.nのみ、又は複数のレーダセンサ2.1~2.nからのトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xを含み得る。
【0041】
ここで、割り当ては以下の2つのステップで行われる。第1のステップでは、コスト行列及びいわゆるMunkresアルゴリズムを使用して、トラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xが、重複する検出範囲で隣接するレーダセンサ2.1.~2.n間に割り当てられる。コスト行列は、2つのトラックT1.1.~T1.m…Tn.1.~Tn.xが同じ標的物体から発生するという妥当性に基づく。この第1のステップでは、図3に示すように、ノードがトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x及び事前アソシエーションの(重み付けされた)接続を表すアソシエーショングラフAGが生成される。
【0042】
第2のステップでは、接続はアソシエーショングラフAGから除去される。このような除去の例示的な場合では、トラック「A」はトラック「B」と同じ標的物体から発生する妥当性があり、トラック「B」はトラック「C」と同じ標的物体から発生する妥当性があるが、トラック「A」、「B」、及び「C」が全て同じ標的物体を表すことは妥当ではない。このケースは直感に反するように見えるが、曖昧な角度測定によって発生し得る。
【0043】
複数のレーダセンサ2.1~2.nからのトラックT1.1.~T1.m…Tn.1.~Tn.xを持つマルチセンサトラック群TG1~TGzは、複数のレーダセンサ2.1~2.nによる融合トラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xの仮説を提供する。センサトラックT1,T2を派生デカルトトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xに変換することに関連する仮説の組み合わせにより、複数の仮説が存在する。例えば、2つのセンサトラックT1,T2から生成されたマルチセンサトラック群TG1~TGzの場合、各トラックT1,T2には派生デカルトトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xへの3つの仮説変換が含まれており、合計3x3=9の仮説融合トラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xが存在する。図5にこれを詳細に示す。
【0044】
マルチセンサトラック群モジュールは、複数のタイムスタンプ調整された派生デカルトトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x、特にセンサトラックT1,T2ごとに1つを使用して、融合トラックS1~Syを作成する。ここで、各融合トラックS1~Syはスケーリングされた妥当性値を有する。そこから、最も妥当性の高い融合トラックkSが選択される。
【0045】
例えば、最初のステップでは、トラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xを、事前に割り当てられたトラックとしてマルチセンサトラック群TG1~TGzに割り当てる。多くの場合、これらの事前アソシエーションは維持される。しかしながら、これらを使用することが論理的でない場合もある。事前アソシエーションからマルチセンサトラック群TG1~TGzを作成する目的には、ヒューリスティックなセグメンテーションアルゴリズムが含まれる。このアルゴリズムは、第1に、事前に割り当てられたトラックの全ての可能なセグメンテーション配置を見つける。これにより、事前アソシエーションされたトラックA、B、及びCを以下のように分配することができる。
【0046】
-マルチセンサトラック群{A、B}及び{C}、
-マルチセンサトラック群{A}、{B,C}、
-マルチセンサトラック群{A}、{B}、{C}又は
-結合されたマルチセンサトラック群{A、B、C}。
【0047】
次に、セグメンテーションアルゴリズムは、最も妥当性の高いセグメンテーション配置を選択するために、各セグメンテーション配置の妥当性を計算する。特定のセグメンテーション配置及びそのセグメンテーション配置のインデックスmを持つ各セグメントについて、セグメンテーションアルゴリズムは、融合トラックS1~Syを構築し、その妥当性Wmt,、長さLmt,m、及び平均妥当性~Wmt,m=Wmt,m/Lmt,mを決定する。次に、セグメンテーション配置の妥当性は、次の式(4)のように記述される。
【0048】
【数4】
【0049】
ここで、Mは、セグメンテーション配置内のセグメントの総数である。次に、最も妥当性の高いセグメンテーション配置が選択される。
【0050】
図6は、妥当性の低い融合トラックS1の概略図である。元の2つの派生デカルトトラックT1.1、T1.2は非常に低い一致度を有する。融合トラックS1は、派生デカルトトラックT1.1、T1.2と一致しないため、アルゴリズムは低い妥当性値を計算する。
【0051】
図7は、妥当性の高い融合トラックS1の概略図である。ここで、元の2つの派生デカルトトラックT1.1、T1.2は高い一致度を有するため、融合トラックS1は派生デカルトトラックT1.1、T1.2とも一致し、アルゴリズムは高い妥当性値を計算する。
【0052】
妥当性は、タイムスタンプ調整された各派生デカルトトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xが、結果として得られる融合トラックS1~Syとどの程度一致するかに依存する。さらに、融合トラックS1~Sy及びセンサモデルに基づいて、関係するレーダセンサ2.1~2.nによってトラッキングされた標的物体が検出されるはずであった可能性が決定される。実際の認識又は非認識結果が認識可能性とよく一致する場合、融合トラックS1~Syの妥当性が高くなる。次に、複数の仮説トラックS1~Syの中から最も妥当性の高い融合トラックSが選択される。融合トラックS1~Syの様々な仮説及びそれらの妥当性ランキングを計算することにより、角度曖昧性を解決するという目標が達成される。
【0053】
例えば、融合トラックの妥当性は、以下のヒューリスティックプロセスを使用して決定される。
【0054】
-タイムスタンプ調整された派生デカルトトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xが時系列的に重複していない場合、融合トラックS1~Syの長さは0になる。この場合、妥当性はWmt=0に設定される。
【0055】
-それ以外の場合は、各派生デカルトトラックp及び各タイムスタンプlに対して重み変数が計算される。D=0(認識なし)のタイムスタンプに対して、重みw=1-P(x;v)が割り当てられ、ここで、vはレーダセンサ2.1~2.nのIDであり、それからトラックpが受信されており、PD(x;v)は、状態xの標的物体がIDvのレーダセンサ2.1~2.nによって認識される可能性である。Dp,l=1(標的が認識される)のタイムスタンプの場合、重みは式(5)に従って決定される。
【0056】
【数5】
【0057】
ここで、p(x;y,P)は、平均値y及び共分散行列Pを持つガウス確率密度関数である。また、κは設定可能なパラメータである。
【0058】
-標的物体がレーダセンサ2.1~2.nによってトラッキングされていない場合、すなわち、マルチセンサトラック群TG1~TGzにおけるレーダセンサ2.1~2.nからトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xが存在しない場合、全ての時間インデックスは見逃した認識の時間インデックスとして扱われ、重みはwp,l=1-PD(;vp)に設定される。したがって、pは見逃したトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xのインデックスであり、vはトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xを見逃したレーダセンサ2.1~2.nのインデックスである。これらの定義により、融合トラック妥当性を計算する際に、見逃したトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xを一貫して扱うことができる。
【0059】
-次に、融合トラックS1~Syの妥当性は式(6)のようになる。
【0060】
【数6】
【0061】
ここで、Lmtは融合トラックS1~Syの時間ステップ数であり、PSensorsはレーダセンサ2.1~2.nの数である。この値は、トラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x及び見逃したトラックT1.1~T1.m…Tn.1~Tn.xを組み合わせた数に対応する。
【0062】
前述のアルゴリズムは、主に連続トラッキングを目的としている。しかしながら、トラックの初期化に又は主要なトラッキングアルゴリズムのスポーン候補として使用される融合トラックS1~Syを受信するために、短い時間間隔で排他的にデータをトラッキングすることができる。この使用の限定により、妥当性の計算及びトラック融合を単純化することができる。言い換えると、センサトラックT1、T2が、トラックIDの変化による別の時間間隔ではなく、既定の時間間隔で同じ標的物体を表す状況は処理されない。
【符号の説明】
【0063】
1 装置
2 レーダネットワーク
2.1~2.n レーダセンサ
2.1.1~2.n.1 センサトラッキングモジュール
3 アソシエーションモジュール
4 割り当てサブモジュール
5 融合モジュール
(a)~(d) セグメンテーション配置
AG アソシエーショングラフ
r 除去
S1~Sy トラック
トラック
T1 センサトラック
T2 センサトラック
TG1~TGz マルチセンサトラック群
T1.1~T1.m…Tn.1~Tn.x トラック
u 方向余弦
rad 視線速度
x 座標
y 座標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】