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特表2024-534293スタック熱回収のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】スタック熱回収のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 11/00 20060101AFI20240912BHJP
   D21C 11/12 20060101ALI20240912BHJP
   F23G 7/08 20060101ALI20240912BHJP
   F23J 15/06 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
D21C11/00 C
D21C11/12
F23G7/08 A
F23J15/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542909
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 CA2022050158
(87)【国際公開番号】W WO2023147644
(87)【国際公開日】2023-08-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523267379
【氏名又は名称】アルバータ パシフィック フォレスト インダストリーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】ALBERTA PACIFIC FOREST INDUSTRIES INC.
【住所又は居所原語表記】2500 Stantec Tower 10220 - 103 Avenue NW Edmonton, Alberta T5J 0K4 Canada
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】タンジダル, ダーシー
(72)【発明者】
【氏名】藤代 大祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴見 竜一
【テーマコード(参考)】
3K070
3K078
4L055
【Fターム(参考)】
3K070DA04
3K070DA37
3K070DA48
3K070DA49
3K070DA64
3K078AA06
3K078BA17
3K078FA04
4L055BC01
4L055CK00
4L055FA30
(57)【要約】
紙・パルプ工場の回収ボイラによって生成される排ガスから熱を回収するためのシステム及び方法が提示され、本回収ボイラは排ガススタックを有する。排ガスは、排ガススタックから引かれ、第1及び第2の凝縮熱交換器を通過してから別のスタックを通って出る。第1の熱交換器は、ボイラ給水を加熱するために使用され、第2の熱交換器は、紙・パルプ工場で使用するためのプロセス熱水を生成するために使用される。以前は、ボイラ給水を加熱するため、及びプロセス熱水の生成するために使用されていた蒸気を、ここでは、紙・パルプ工場の操業のために使用することができる電力、又は、電力系統に送電するための電力を生成するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙・パルプ工場の回収ボイラシステムとともに使用するための熱回収システムであって、前記回収ボイラシステムには排ガススタックが動作可能に結合されている、熱回収システムにおいて、
a)前記排ガススタックから排ガスを引き出すように構成された第1のファンと、
b)前記第1のファンに動作可能に結合され、前記引かれた排ガスを受け入れて通過させるように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器と、
c)前記少なくとも第1の熱交換器に動作可能に結合され、前記引かれた排ガスを、前記少なくとも1つの第1の熱交換器を通過した後に受け入れて通過させるように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器と、
d)前記少なくとも1つの第2の熱交換器に動作可能に結合され、前記引かれた排ガスを、前記少なくとも1つの第2の熱交換器を通過した後に受け入れるように構成された第2の排ガススタックと、
を備える熱回収システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器が、ボイラ給水を加熱するように構成された、請求項1に記載の熱回収システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器が、動作可能に連続的に結合された2つ以上のボイラ給水熱交換器を備える、請求項2に記載の熱回収システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の熱交換器が、前記紙・パルプ工場で使用するためのプロセス熱水を加熱するように構成された、請求項1~3のいずれか1つに記載の熱回収システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の熱交換器が、動作可能に連続的に結合された2つ以上のプロセス熱水熱交換器を備える、請求項4に記載の熱回収システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器が、前記少なくとも1つの第2の熱交換器の上方に配置され、前記引かれた排ガスが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器を通るように下方に向けられた、請求項1~5のいずれか1つに記載の熱回収システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすように構成された洗浄システムであって、前記沈殿物及び前記凝縮物は、前記引かれた排ガスが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過するときに、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に形成されるものである、洗浄システムをさらに備える、請求項1~6のいずれか1つに記載の熱回収システム。
【請求項8】
前記洗浄システムが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に配置された少なくとも1つのスプレーノズルを備え、前記少なくとも1つのスプレーノズルが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を洗浄するように構成された、請求項7に記載の熱回収システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方が凝縮熱交換器を備える、請求項1~6のいずれか1つに記載の熱回収システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方の下方に配置された凝縮物収集器であって、前記凝縮物は、前記引かれた排ガスが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過するときに、前記引かれた排ガス中の水蒸気が、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に凝縮することによって生成されるものである、凝縮物収集器をさらに備える、請求項9に記載の熱回収システム。
【請求項11】
前記収集された凝縮物の少なくとも一部を使用して、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすように構成された洗浄システムであって、前記沈殿物及び前記凝縮物は、前記引かれた排ガスが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過するときに、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に形成されるものである、洗浄システムをさらに備える、請求項10に記載の熱回収システム。
【請求項12】
前記洗浄システムが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に配置された少なくとも1つのスプレーノズルを備え、前記洗浄システムが、前記少なくとも1つのスプレーノズルを通して前記収集された凝縮物を送るように構成された第1のポンプを備え、それによって、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を洗浄するように構成された、請求項11に記載の熱回収システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方が、ステンレス鋼及びチタンのうちの一方又は両方から構成された、請求項1~12のいずれか1つに記載の熱回収システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方がSAF2205(商標)ステンレス鋼から構成された、請求項13に記載の熱回収システム。
【請求項15】
紙・パルプ工場の回収ボイラシステムから熱を回収するための方法であって、前記回収ボイラシステムには排ガススタックが動作可能に結合されている、方法において、
a)前記排ガススタックから排ガスを引き出すステップと、
b)前記引かれた排ガスを用いてボイラ給水を加熱するステップと、
c)次いで、前記引かれた排ガスを用いてプロセス熱水を加熱するステップと、
d)次いで、前記引かれた排ガスを大気に出すステップと
を含む方法。
【請求項16】
少なくとも1つの第1の熱交換器を用いて前記ボイラ給水を加熱するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器が、動作可能に連続的に結合された2つ以上のボイラ給水熱交換器を備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの第2の熱交換器を用いて前記プロセス熱水を加熱するステップをさらに含む、請求項14~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第2の熱交換器が、動作可能に連続的に結合された2つ以上のプロセス熱水熱交換器を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすステップであって、前記引かれた排ガスが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過した後に、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に前記沈殿物及び前記凝縮物が形成されている、ステップをさらに含む、請求項15~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を洗浄するための少なくとも1つのスプレーノズルをさらに使用する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器を順次洗浄するステップをさらに含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記引かれた排ガスが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過するときに、前記引かれた排ガス中の水蒸気が、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に凝縮することによって生成された凝縮物を収集するステップをさらに含む、請求項15~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
前記収集された凝縮物の少なくとも一部を用いて、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物を洗い落とすステップであって、前記沈殿物及び前記凝縮物は、前記引かれた排ガスが、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過した後に、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に形成されたものである、ステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つのスプレーノズルを通して前記収集された凝縮物の前記少なくとも一部をポンプで送って、前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を洗浄するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの第1の熱交換器及び前記少なくとも1つの第2の熱交換器を順次洗浄するステップをさらに含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項27】
紙・パルプ工場の回収ボイラシステムとともに使用するための熱回収システムであって、前記回収ボイラには排ガススタックが動作可能に結合されている、熱回収システムにおいて、
a)前記排ガススタックから排ガスを引き出すための手段と、
b)前記引かれた排ガスを用いてボイラ給水を加熱するための手段と、
c)前記引かれた排ガスを用いてプロセス熱水を加熱するための手段と、
d)前記引かれた排ガスを大気に出すための手段と、
を備える熱回収システム。
【請求項28】
ボイラ給水を加熱するための前記手段及びプロセス熱水を加熱するための前記手段のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすための手段であって、前記沈殿物及び前記凝縮物は、前記引かれた排ガスが、ボイラ給水を加熱するための前記手段及びプロセス熱水を加熱するための前記手段のうちの一方又は両方を通過した後に、ボイラ給水を加熱するための前記手段及びプロセス熱水を加熱するための前記手段のうちの一方又は両方に形成されたものである、手段をさらに備える、請求項27に記載の熱回収システム。
【請求項29】
前記引かれた排ガス中の水蒸気によって生成された凝縮物を収集するための手段をさらに含む、請求項27に記載の熱回収システム。
【請求項30】
前記収集された凝縮物を用いて、ボイラ給水を加熱するための前記手段及びプロセス熱水を加熱するための前記手段のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすための手段であって、前記沈殿物及び前記凝縮物は、前記引かれた排ガスが、ボイラ給水を加熱するための前記手段及びプロセス熱水を加熱するための前記手段のうちの一方又は両方を通過した後に、ボイラ給水を加熱するための前記手段及びプロセス熱水を加熱するための前記手段のうちの一方又は両方に形成されたものである、手段をさらに備える、請求項29に記載の熱回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙・パルプ工場で使用される回収ボイラから生成される排ガスから熱を回収する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
化学パルプの製造では、蒸解薬品を使用した蒸解によって、化学パルプの原料からリグニン及び他の有機非セルロース材料を分離することができる。化学的蒸解に使用された蒸解液すなわち廃液は回収される。化学パルプから機械的に分離される廃液(「黒液」とも呼ばれる)は、その中に含まれ、化学パルプから分離される炭素質及び他の有機可燃材料によって高い燃焼値を有する。廃液はまた、無機化学物質を含み、これは化学的蒸解において反応しない。廃液から熱及び化学物質を回収するために、いくつかの異なる方法が開発されている。
【0003】
クラフトパルプ製造時に得られる黒液は、回収ボイラで燃焼される。黒液に含まれる有機材料及び炭素質材料が燃えると、黒液中の無機成分が化学物質に変換され、それは再生利用され、蒸解工程でさらに活用することができる。
【0004】
高温の排ガスは、黒液の燃焼で生成され、回収ボイラ内の様々な熱交換器と接触する。排ガスは、熱交換器内を流れる水又は蒸気、又は水と蒸気の混合物に熱を伝え、熱交換器は同時に排ガス自体を冷却する。通常、排ガスは灰分を多く含む。灰の主要部分は硫酸ナトリウムであり、次に大きな部分は、通常、炭酸ナトリウムである。灰は他の成分も含む。排ガス中に取り込まれた灰は、主に気化した形態で炉の中にあり、主に、炉の下流のボイラ部分で微細な粉塵又は溶融液滴への変換が始まる。灰溶融物に含まれる塩類は、比較的低い温度でさえ、粘着性のある粒子となり得る。溶融した粘着性のある粒子は、伝熱面に容易に付着し、さらにはそれを腐食させる。粘着性のある灰の堆積は、排ガスダクトを詰まらせる危険性を引き起こし、ボイラの加熱面の腐食及び摩耗も引き起こした。したがって、紙・パルプ工場の回収ボイラは、当業者によく知られているように、排ガススタックを通って大気に放出される高温の排ガスを生成し得る。
【0005】
しかしながら、回収ボイラの排ガスは、酸、特に酸腐食を引き起こすことが知られている硫酸蒸気を排ガス中に含む。その結果、典型的には乾式熱交換器が使用され(ここでは、温度は硫酸露点より高い)、これは、パルプ製紙工業で使用されるときには、常識的又は標準的なタイプの熱交換器であると考えられている。加えて、排ガス微粒子は塩化物を含み、これは、通常のステンレス鋼の応力割れ腐食を引き起こすことが知られている。
【0006】
熱交換器に使用される代表的な材料は炭素鋼であり、これは、安価な材料で熱交換効率がよいためである。炭素鋼はまた、酸腐食の心配を避けるために、乾式熱交換器の構造に使用され得る。いくつかの場合、(日本の工場の大部分で使用されているように)チタンを使用することができ、また、ケーシング及びダクトを316ステンレス鋼又は炭素鋼から作ることができる。しかしながら、チタンは非常に高価で、熱交換効率が低く、加工が難しい。これが、歴史的に、紙・パルプ製紙が、酸の凝縮によって引き起こされる腐食の問題を避けるために乾式熱交換器だけを使用してきた、又は熱交換器を全く使用しなかった理由である。
【0007】
図1を参照すると、従来技術の回収ボイラシステムが示されている。回収ボイラ100の排ガスは、エコノマイザ104を通過し、次いでダクト106を通って集塵器ユニット108に入る。次いで、ファンユニット110が、集塵器ユニット108から排ガスを引き込み、排ガスを、排ガスダクト112を通して、回収ボイラスタック102を経て大気に出るように導く。図示の例では、排ガスは、一対の集塵器ユニット108及びファンユニット110への並行な経路を通るように分割されるが、排ガスは、当業者によく知られているように、これらのユニットの単一の経路を通って、又は複数の経路を通って導くことができる。回収ボイラスタック102は、典型的には、炭素鋼で構成される。
【0008】
排ガスは、顕熱及び潜熱を含み、顕熱及び潜熱を使用してボイラ給水を加熱し、工場の操業で使用されるプロセス熱水を生成することができる。これは、排ガスを凝縮熱交換器に通すことによって達成することができるが、そうすることで凝縮が起こり、その酸凝縮が熱交換器内に腐食を引き起こすことにより、熱交換器を排ガスダクト112に配置することが妨げられる。
【0009】
したがって、熱交換器及び回収ボイラスタックの両方に腐食を引き起こすことなく、凝縮熱交換器で排ガス中の熱を取り出すことができるシステム及び方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
紙・パルプ工場の回収ボイラによって生成される排ガスから熱を回収するためのシステム及び方法が提示される。いくつかの実施形態では、回収ボイラによって生成される排ガスは、回収ボイラスタックから転向(diverted)され、また引かれ、排ガス中の顕熱及び潜熱のうちの一方又は両方を取り出して、紙・パルプ工場で使用される回収ボイラ及び他のボイラに使用されるボイラ給水を加熱するため、及び、工場の操業で使用するためのプロセス熱水を生成するために使用することができる1つ又は2つ以上の凝縮熱交換器を通過することができる。そのようにする際、以前は、ボイラ給水を加熱するため、及びプロセス熱水を生成するために使用していた低圧蒸気を、発電機に結合された蒸気タービンを用いて発電するために使用することができる。熱交換器を通過した後、熱を失った排ガスは、次いで、新たなスタックを経て大気に放出することができる。新たな熱交換器及び新たなスタックはステンレス鋼から作られ、酸及び塩化物を含む排ガス中の物質が熱交換器に凝縮し沈殿することによる酸腐食及び応力割れ腐食を防ぐことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、熱交換器は、第1の交換器が第2の熱交換器の上方に配置されるように構成することができ、それによって、排ガスをダクトを通して2つの熱交換器を下向きに通して導くことができる可変周波数駆動(「VFD:variable frequency drive」)電動ファンを用いて、排ガスを回収ボイラスタックから引くことができる。排ガスは、熱交換器を通過した後、ダクトを通って、大気中に放出するための新たなスタックに流れることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、排ガスが熱交換器を通って流れるときに、熱交換器に形成する凝縮物は下方に落ちて、凝縮物収集器に収集され、収集された凝縮物(典型的には水)は、配管で送られて、工場の操業に使用するために保持タンク又は液体だめに貯蔵することができる、又は、当業者によく知られている態様で処分することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、熱交換器に蓄積し得る沈殿物及び凝縮物を洗い落とすために洗浄システムを設けることができる。回収ボイラからの排ガスは、煤及び無機物などの粒子を含み得る。排ガスが熱交換器を通過すると、煤及び無機物が熱交換器上に堆積又は沈殿し、熱交換器の熱伝達効率を低下させ得る、沈殿物が蓄積した層を形成し得る。この沈殿物層は、定期的に熱交換器から取り除く必要がある。熱交換器から沈殿物及び凝縮物を洗い落とすために、洗浄システムを使用することができる。いくつかの実施形態では、洗浄システムは、熱交換器が最適な効率で動作することができるように、水又は収集された排ガス凝縮物などの加圧流体を熱交換器に向けて、沈殿物を粉砕し、凝縮物とともに洗い落とすように使用することができるスプレーノズルを熱交換器に配置することができる。洗浄システムは、必要に応じて、所定の期間の間に所定の時間に作動して、沈殿物及び凝縮物を洗い落とすように構成することができる。
【0014】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、紙・パルプ工場の回収ボイラシステムとともに使用するための熱回収システムを提供することができ、回収ボイラシステムには排ガススタックが動作可能に結合されており、本熱回収システムは、排ガススタックから排ガスを引き出すように構成された第1のファンと、第1のファンに動作可能に結合され、引かれた排ガスを受け入れて通過させるように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器と、少なくとも1つの第1の熱交換器に動作可能に結合され、引かれた排ガスを、少なくとも1つの第1の熱交換器を通過した後に受け入れて通過させるように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器と、少なくとも1つの第2の熱交換器に動作可能に結合され、引かれた排ガスを、少なくとも1つの第2の熱交換器を通過した後に受け入れるように構成された第2の排ガススタックとを備える。
【0015】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の熱交換器は、ボイラ給水を加熱するように構成することができる。
【0016】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の熱交換器は、動作可能に連続的に結合された2つ以上のボイラ給水熱交換器を備えることができる。
【0017】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の熱交換器は、紙・パルプ工場で使用するためのプロセス熱水を加熱するように構成することができる。
【0018】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の熱交換器は、動作可能に連続的に結合された2つ以上のプロセス熱水熱交換器を備えることができる。
【0019】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の熱交換器は、少なくとも1つの第2の熱交換器の上方に配置され、引かれた排ガスは、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器を通るように下方に向けることができる。
【0020】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本熱回収システムは、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすように構成された洗浄システムをさらに備えることができ、引かれた排ガスが、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過するときに、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に沈殿物及び前記凝縮物は形成される。
【0021】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、洗浄システムは、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に配置された少なくとも1つのスプレーノズルを備えることができ、少なくとも1つのスプレーノズルは、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を洗浄するように構成される。
【0022】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方は凝縮熱交換器を備えることができる。
【0023】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本熱回収システムは、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方の下方に配置された凝縮物収集器をさらに備えることができ、引かれた排ガスが、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過するときに、引かれた排ガス中の水蒸気が、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に凝縮することによって凝縮物は生成される。
【0024】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本熱回収システムは、収集された凝縮物の少なくとも一部を使用して、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすように構成された洗浄システムをさらに備えることができ、引かれた排ガスが、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過するときに、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に沈殿物及び凝縮物は形成される。
【0025】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本洗浄システムは、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に配置された少なくとも1つのスプレーノズルを備えることができ、本洗浄システムは、少なくとも1つのスプレーノズルを通して収集された凝縮物を送るように構成された第1のポンプを備え、それによって、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を洗浄する。
【0026】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方は、ステンレス鋼及びチタンのうちの一方又は両方から構成することができる。
【0027】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方はSAF2205(商標)ステンレス鋼から構成することができる。
【0028】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、紙・パルプ工場の回収ボイラシステムから熱を回収するための方法を提供することができ、回収ボイラシステムには排ガススタックが動作可能に結合されており、本方法は、排ガススタックから排ガスを引き出すステップと、引かれた排ガスを用いてボイラ給水を加熱するステップと、次いで、引かれた排ガスを用いてプロセス熱水を加熱するステップと、次いで、引かれた排ガスを大気に出すステップとを含む。
【0029】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの第1の熱交換器を用いてボイラ給水を加熱するステップを含むことができる。
【0030】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の熱交換器は、動作可能に連続的に結合された2つ以上のボイラ給水熱交換器を備えることができる。
【0031】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの第2の熱交換器を用いてプロセス熱水を加熱するステップを含むことができる。
【0032】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の熱交換器は、動作可能に連続的に結合された2つ以上のプロセス熱水熱交換器を備えることができる。
【0033】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすステップをさらに含むことができ、引かれた排ガスが、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過した後に、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に沈殿物及び凝縮物は形成されている。
【0034】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を洗浄するための少なくとも1つのスプレーノズルを使用するステップをさらに含むことができる。
【0035】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器を順次洗浄するステップを含むことができる。
【0036】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本方法は、引かれた排ガスが、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過するときに、引かれた排ガス中の水蒸気が、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に凝縮することによって生成された凝縮物を収集するステップをさらに含むことができる。
【0037】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本方法は、収集された凝縮物の少なくとも一部を用いて、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物を洗い落とすステップを含むことができ、引かれた排ガスが、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を通過した後に、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方に沈殿物及び凝縮物は形成されている。
【0038】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのスプレーノズルを通して収集された凝縮物の少なくとも一部をポンプで送って、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器のうちの一方又は両方を洗浄するステップをさらに含むことができる。
【0039】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの第1の熱交換器及び少なくとも1つの第2の熱交換器を順次洗浄するステップを含むことができる。
【0040】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、紙・パルプ工場の回収ボイラシステムとともに使用するための熱回収システムを提供することができ、回収ボイラには排ガススタックが動作可能に結合されており、本熱回収システムは、排ガススタックから排ガスを引き出すための手段と、引かれた排ガスを用いてボイラ給水を加熱するための手段と、引かれた排ガスを用いてプロセス熱水を加熱するための手段と、引かれた排ガスを大気に出すための手段とを備える。
【0041】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本熱回収システムは、ボイラ給水を加熱するための手段及びプロセス熱水を加熱するための手段のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすための手段をさらに備えることができ、引かれた排ガスが、ボイラ給水を加熱するための手段及びプロセス熱水を加熱するための手段のうちの一方又は両方を通過した後に、ボイラ給水を加熱するための手段及びプロセス熱水を加熱するための手段のうちの一方又は両方に沈殿物及び凝縮物は形成されている。
【0042】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本熱回収システムは、引かれた排ガス中の水蒸気によって生成された凝縮物を収集するための手段をさらに含むことができる。
【0043】
大まかに言えば、いくつかの実施形態では、本熱回収システムは、収集された凝縮物を用いて、ボイラ給水を加熱するための手段及びプロセス熱水を加熱するための手段のうちの一方又は両方から、沈殿物及び凝縮物のうちの一方又は両方を洗い落とすための手段をさらに備えることができ、引かれた排ガスが、ボイラ給水を加熱するための手段及びプロセス熱水を加熱するための手段のうちの一方又は両方を通過した後に、ボイラ給水を加熱するための手段及びプロセス熱水を加熱するための手段のうちの一方又は両方に沈殿物及び凝縮物は形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】従来技術の紙・パルプ工場の回収ボイラシステムを示すブロック図である。
【0045】
図2】紙・パルプ工場の回収ボイラシステムからの排ガスから熱を回収するためのシステムの、簡略化された第1の実施形態を示すブロック図である。
【0046】
図3】紙・パルプ工場の回収ボイラシステムからの排ガスから熱を回収するためのシステムの、簡略化された第2の実施形態を示すブロック図である。
【0047】
図4】紙・パルプ工場の回収ボイラシステムからの排ガスから熱を回収するためのシステムの第3の実施形態を示すブロック図である。
【0048】
図5図4の熱回収システムのための熱交換器洗浄システムを示すブロック図である。
【0049】
図6】紙・パルプ工場の回収ボイラシステムからの排ガスから熱を回収するためのシステムの第4の実施形態を示すブロック図である。
【0050】
図7図6の熱回収システムのための熱交換器洗浄システムを示すブロック図である。
【0051】
図8図4図7の熱回収システムのための制御システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本明細書において、「一実施形態」、「実施形態」、又は「複数の実施形態」への言及は、言及される1つ又は複数の特徴が本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書において、「一実施形態」、「実施形態」、又は「複数の実施形態」への別々の言及は、必ずしも同じ実施形態に言及しているわけではなく、互いに排他的であると述べられていない限り、及び/又は、本明細書から当業者にとっては容易に明らかである場合を除き、互いに排他的でもない。例えば、一実施形態で説明する特徴、構造、作用などは、他の実施形態にも含まれ得るが、必ずしも含まれなくてもよい。したがって、本技術は、本明細書で説明する実施形態を様々に組み合わせたもの、及び/又は、統合したものを含むことができる。
【0053】
図2及び図3を参照すると、スタック熱回収システム10の簡略化された実施形態が示されている。最も単純な構成では、いくつかの実施形態において、排ガスは、ファン14によって、回収ボイラスタック102からダクト12を経て引き出され、排ガスを、第1の熱交換器16を通し、次いで、第2の熱交換器18を通すように流し込むことができる。排ガスは、熱交換器16及び18を通過した後、第2のスタック20を通って大気に出ることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、第1の熱交換器16は、ステンレス鋼から構成することができ、排ガス中の顕熱を変換して、回収ボイラ100で使用するためのボイラ給水を加熱するために使用することができる。いくつかの実施形態では、第1の熱交換器16は、スウェーデン、ストックホルムのSandvik ABによって製造されるようなSAF2205(商標)ステンレス鋼から構成することができる。SAF2205(商標)ステンレス鋼は、塩化物を含む硫化水素の環境における応力腐食割れに対する高い耐性、及び一般的な腐食及び腐食疲労に対する高い耐性を有することが知られている。図1に示すように、従来技術システムにおいて、以前はボイラ給水を加熱するために使用されていた蒸気は、当業者によく知られているように、発電機(図示せず)に動作可能に結合された蒸気タービンにその蒸気を流すことによって発電するために使用することができる。代表的な例では、以前はボイラ給水を加熱するために使用されていた蒸気は、約2.7メガワットの電力を生成することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、第2の熱交換器18は、ステンレス鋼から構成することができ、排ガス中の顕熱及び潜熱を変換して、紙・パルプ工場での操業で使用するためのプロセス熱水を生成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、第2の熱交換器18は、スウェーデン、ストックホルムのSandvik ABによって製造されるようなSAF2205(商標)ステンレス鋼から構成することができる。図1に示すように、従来技術のシステムにおいて、以前はプロセス熱水を生成するために使用されていた蒸気は、当業者によく知られているように、次いで発電機(図示せず)に動作可能に結合された蒸気タービンにその蒸気を流すことによって発電するために使用することができる。代表的な例では、以前はプロセス熱水を生成するために使用されていた蒸気は、約6.0メガワットの電力を生成することができる。したがって、この熱回収システムを実施することにより、この場合、代表的な例では、従来技術のシステムで以前使用されていた蒸気を活用して、約8.7メガワットの電力を生成することができる。回収ボイラの大きさ、及びそれから発生する排ガスの量に応じて、生成される電力量を増減することができることは当業者であれば明らかであろう。
【0056】
図4及び図5を参照すると、スタック熱回収システム10の第3の実施形態が示されている。図4に例示する実施形態では、システム10は、VFD動作ファン14を用いて回収ボイラスタック102から排ガスを引き出すことができる。いくつかの実施形態では、システム10は、スタック102からファン14への流路を開閉して、システム10の運転及び保守手順を実行することができるように使用することができるダンパ入口ギロチンバルブ13を備えることができる。排ガスは、ファン14からダクト15を通ってスタック構造体17に流入することができ、熱交換器16及び18は、スタック構造体17内に鉛直構成で配置され、第1の熱交換器16は、第2の熱交換器18の上方に配置され、それにより、排ガスは、第1の熱交換器16の上部から第2の熱交換器18の下部を通って下方に流れる。そこから、排ガスは、ダクト19を通って流れ、第2のスタック20を経て大気50に出ることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、システム10は、図4及び図5に示すように、並列の鉛直構造体17に動作可能に構成された2組の熱交換器16及び18を備えることができる。複数の鉛直構造体17を有することは、システム10によって処理される排ガスの量を増大するために行うことができ、又はシステム10を実施する場所に熱交換器を輸送する物流に関する実用的な理由のために行うことができる。これはまた、一方の鉛直構造体17を保守又は修理のために停止させ、他方の鉛直構造体17を稼働させたままにすることができるという冗長性のためにも行うことができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、ボイラ給水は、配管22を経て第1の熱交換器16に入ることができる。加熱されるボイラ給水は、入口パイプ22aにポンプで送られて熱交換器入口16aに入ることができ、加熱されたボイラ給水は、熱交換器出口16bから出て、出口パイプ22bを経て回収ボイラ100にポンプで送ることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、プロセス熱水は、配管26を経て第2の熱交換器18に入ることができる。加熱されるプロセス熱水は、入口パイプ26aにポンプで送られて熱交換器入口18inに入ることができ、加熱されたプロセス熱水は、熱交換器出口18outから出て、紙・パルプ工場の操業に使用するために出口パイプ26bを経てポンプで送ることができる。
【0060】
図5に例示する実施形態では、システム10は、排ガスが熱交換器16及び18を通過する際に時間とともにそこに蓄積し得る沈殿物及び凝縮物を熱交換器16及び18から洗い落とすように構成することができる熱交換器洗浄システム30を備えることができる。いくつかの実施形態では、洗浄システム30は、熱交換器16及び18に形成され得る水又は排ガス凝縮物などの流体を保持するために使用することができる液体だめ34を備えることができる。排ガス凝縮物は、重力により、鉛直構造体17の下端に配置された凝縮物収集器32に蓄積することができる。次いで、排ガス凝縮物は、配管36を経て液体だめ34に導くことができる。いくつかの実施形態では、流体ポンプ40を使用して、液体だめ34から排ガス凝縮物を引き、それを、配管44を経て、熱交換器16及び18に配置されたスプレーノズル38a~38dを通して分注するようにポンプで送ることができる。バルブ45a~45dは、予め決められた洗浄シーケンス又は実施計画に従ってスプレーノズル38a~38dのうちの1つを選択的に動作させるように、必要に応じて開閉することができる。
【0061】
排ガスが熱交換器16及び18を通って下方に流れるとき、それに蓄積し得る沈殿物は、排ガスが熱交換器16に接触するときに最初に接触する領域であるので、また、圧力が降下するので、熱交換器16の上部の方により多く蓄積する傾向にあり得る。いくつかの実施形態では、洗浄シーケンスは、最初に水又は排ガス凝縮物などの流体を、スプレーノズル38aを通してポンプで送り込んで、熱交換器18の底部から、蓄積した重い凝縮物を最初に洗い落とし、それにより、再び熱交換器18を通る循環を可能にするようにし、次いで、スプレーノズル38d、次いで、スプレーノズル38c、次いで、スプレーノズル38bを通して、次いで、スプレーノズル38aをもう一度通して順次流体をスプレーすることを含むことができる。いくつかの実施形態では、洗浄シーケンスは、必要に応じて、又は、排ガスが回収ボイラ100から出るときに排ガス中に浮遊する煤及び無機物の量に応じて12~24時間若しくはそれより長い時間ごとなどの予め決められたタイムスケジュールで行うことができる。洗浄シーケンスが完了すると、ドレンバルブ43を開いて、配管44内の流体を液体だめ34に戻すことができる。
【0062】
図6及び図7を参照すると、スタック熱回収システム10の第4の実施形態が示されている。図6に例示する実施形態では、システム10は、VFD動作ファン14を用いて回収ボイラスタック102から排ガスを引き出すことができる。いくつかの実施形態では、システム10は、スタック102からファン14への流路を開閉して、システム10の運転及び保守手順を実行することができるように使用することができるダンパ入口ギロチンバルブ13を備えることができる。排ガスは、ファン14からダクト15を通ってスタック構造体17に流入することができ、熱交換器16及び18は、スタック構造体内に鉛直構成で配置され、第1の熱交換器16は、第2の熱交換器18の上方に配置され、それにより、排ガスは、第1の熱交換器16の上部から第2の熱交換器18の下部を通って下方に流れる。そこから、排ガスは、ダクト19を通って流れ、第2スタック20を経て大気50に出ることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、第1の熱交換器16は、耐腐食性材料から構成された凝縮熱交換器を備えることができる。いくつかの実施形態では、第1の熱交換器16は、ステンレス鋼、チタン、又は当業者によく知られているような他の耐腐食性材料から構成することができる。いくつかの実施形態では、第1の熱交換器16は、スウェーデン、ストックホルムのSandvik ABによって製造されるようなSAF2205(商標)ステンレス鋼から構成することができる。図6に例示した実施形態では、第2の熱交換器18は、18a、18b、及び18cと符号付けされた、動作可能に順次結合された3つの別々の熱交換器から構成することができる。いくつかの実施形態では、第2の熱交換器18は、耐腐食性の材料から構成された凝縮熱交換器を備えることができる。いくつかの実施形態では、第2の熱交換器18は、ステンレス鋼、チタン、又は当業者によく知られているような他の耐腐食性材料から構成することができる。いくつかの実施形態では、第2の熱交換器18は、スウェーデン、ストックホルムのSandvik ABによって製造されるようなSAF2205(商標)ステンレス鋼から構成することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、システム10は、図6及び図7に示すように、並列の鉛直構造体17に動作可能に構成された2組の熱交換器16及び18を備えることができる。複数の鉛直構造体17を有することは、システム10によって処理される排ガスの量を増大するために行うことができ、又はシステム10を実施する場所に熱交換器を輸送する物流に関する実用的な理由のために行うことができる。これはまた、一方の鉛直構造体17を保守又は修理のために停止させ、他方の鉛直構造体17を稼働させたままにすることができるという冗長性のためにも行うことができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、ボイラ給水は、配管22を経て第1の熱交換器16に入ることができる。加熱されるボイラ給水は、入口パイプ22aにポンプで送られて熱交換器入口16aに入ることができ、加熱されたボイラ給水は、熱交換器出口16bから出て、出口パイプ22bを経て回収ボイラ100にポンプで送ることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、プロセス熱水は、配管26を経て第2の熱交換器18に入ることができる。加熱されるプロセス熱水は、入口パイプ26aにポンプで送られて熱交換器18aの熱交換器入口18inに入ることができ、プロセス熱水は、熱交換器18aから18cを順次通って加熱され、次いで、熱交換器出口18outから出て、紙・パルプ工場の操業に使用するために出口パイプ26bを経てポンプで送ることができる。
【0067】
図7に例示する実施形態では、システム10は、排ガスが熱交換器16及び18a~18cを通過する際に時間とともにそこに蓄積し得る沈殿物及び凝縮物を熱交換器16及び18a~18cから洗い落とすように構成することができる熱交換器洗浄システム30を備えることができる。いくつかの実施形態では、洗浄システム30は、熱交換器16及び18a~18cに形成され得る水又は排ガス凝縮物などの流体を保持するために使用することができる液体だめ34を備えることができる。排ガス凝縮物は、重力により、鉛直構造体17の下端部に配置された凝縮物収集器32に蓄積することができる。次いで、排ガス凝縮物は、配管36を経て液体だめ34に導くことができる。いくつかの実施形態では、流体ポンプ40を使用して、液体だめ34から排ガス凝縮物を引き、それを、配管44を経て、熱交換器16及び18a~18cに配置されたスプレーノズル38a~38dを通して分注するようにポンプで送ることができる。バルブ45a~45dは、予め決められた洗浄シーケンス又は実施計画に従ってスプレーノズル38a~38dのうちの1つを選択的に動作させるように、必要に応じて開閉することができる。
【0068】
排ガスが熱交換器16及び18a~18cを通って下方に流れるとき、それに蓄積し得る沈殿物は、排ガスが熱交換器16に接触するときに最初に接触する領域であるので、また、圧力が降下するので、熱交換器16の上部の方により多く蓄積する傾向にあり得る。いくつかの実施形態では、洗浄シーケンスは、最初に水又は排ガス凝縮物などの流体を、スプレーノズル38aを通してポンプで送り込んで、熱交換器18aの底部から、蓄積した重い凝縮物を最初に洗い落とし、それにより、再び熱交換器18aを通る循環を可能にするようにし、次いで、スプレーノズル38d、次いで、スプレーノズル38c、次いで、スプレーノズル38bを通して、次いで、スプレーノズル38aをもう一度通して順次流体をスプレーして、熱交換器18a~18cの全てを循環させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、洗浄シーケンスは、必要に応じて、又は、排ガスが回収ボイラ100から出るときに排ガス中に浮遊する煤及び無機物の量に応じて12~24時間若しくはそれより長い時間ごとなどの予め決められたタイムスケジュールで行うことができる。洗浄シーケンスが完了すると、ドレンバルブ43を開いて、配管44内の流体を液体だめ34に戻すことができる。
【0069】
図8を参照すると、システム10の運転を制御するための制御システム46の簡略化されブロック図が示されている。いくつかの実施形態では、制御システム46は、システム10のサブコンポーネントを制御するために構成されたプログラマブルロジックコントローラ(「PLC」:programmable logic controller)、汎用コンピュータ、マイクロコントローラ、及びマイクロプロセッサベースのコンピューティング装置のうちの1つ又は2つ以上から構成することができるコンピューティング制御装置48を備えることができる。いくつかの実施形態において、コンピューティング制御装置48は、ギロチンバルブ13、VFD動作ファン14、流体ポンプ40、ドレンバルブ43、及びノズル制御バルブ45a~45dのうちの1つ又は2つ以上に動作可能に結合することができる。いくつかの実施形態では、コンピューティング制御装置48を使用して、ギロチンバルブ13及びVFD動作ファン14の動作を制御して、システム10を流れる排ガスの量を調整及び制御することができる。いくつかの実施形態では、コンピューティング制御装置48を使用して、熱交換器16及び18の予め決められた洗浄シーケンスに従って、流体ポンプ40の動作及びスプレーノズルバルブ45a~45dの動作を通して、洗浄システム40を制御して、洗浄動作のための予め決められたタイムスケジュールで、又は、熱交換器16及び18に蓄積された沈殿物又は凝縮物の量に応じて、熱交換器16及び18から沈殿物又は凝縮物を除去することができる。いくつかの実施形態では、コンピューティング制御装置48を使用して、熱交換器16及び18の洗浄動作の後に、ドレンバルブ43を開いて配管44から排出することができる。
【0070】
本明細書に開示された実施形態に関連して説明された様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又は両方の組み合わせとして実行することができる。ハードウェアとソフトウェアのこの交換可能性を明確に説明するために、様々な例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、及びステップを、その機能に関して一般的に上記で説明した。そのような機能がハードウェアとして実行されるか、ソフトウェアとして実行されるかは、特定の用途及びシステム全体に課せられた設計上の制約に依存する。当業者は、それぞれの特定の用途に対して、様々な方法で、説明した機能を実行することができるが、そのような実行の決定は、本明細書で説明した実施形態の範囲からの逸脱を引き起こすものと解釈すべきではない。
【0071】
コンピュータソフトウェアで実行される実施形態は、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、又はそれらの任意の組合せで実行することができる。コードセグメント又は機械実行可能な命令は、手順、関数、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、ソフトウェアパッケージ、クラス、又は命令、データ構造、若しくはプログラムステートメントの任意の組合せを表すことができる。コードセグメントは、情報、データ、引数、パラメータ、又はメモリコンテンツを引き渡す、及び/又は、受け取ることによって、別のコードセグメント又はハードウェア回路に結合することができる。情報、引数、パラメータ、データなどは、メモリ共有、メッセージ引渡し、トークン引渡し、ネットワーク伝送など、任意の適切な手段によって、受け渡し、転送、又は送信することができる。
【0072】
これらのシステム及び方法を実行するために使用される実際のソフトウェアコード又は特殊な制御ハードウェアは、本明細書で説明する実施形態を限定するものではない。したがって、システム及び方法の動作及び挙動は、本明細書の説明に基づいてシステム及び方法を実行するようにソフトウェア及び制御ハードウェアを設計することができると理解される特定のソフトウェアコードを参照することなく説明した。
【0073】
ソフトウェアで実行されるとき、機能は、非一時的なコンピュータ読取り可能又はプロセッサ読取り可能な記憶媒体の1つ又は2つ以上の命令又はコードとして記憶することができる。本明細書に開示される方法又はアルゴリズムのステップは、プロセッサ実行可能なソフトウェアモジュールに具現化することができ、これはコンピュータ読取り可能又はプロセッサ読取り可能な記憶媒体に常駐することができる。非一時的なコンピュータ読取り可能媒体又はプロセッサ読取り可能媒体には、コンピュータ記憶媒体、及び1つの場所から別の場所へのコンピュータプログラムの転送を容易にする有形の記憶媒体の両方が含まれる。非一時的なプロセッサ読取り可能な記憶媒体は、コンピュータによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体とすることができる。限定ではなく例として、このような非一時的なプロセッサ読取り可能な媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM若しくは他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージ若しくは他の磁気ストレージデバイス、又は命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用することができ、コンピュータ若しくはプロセッサによってアクセスすることができる任意の他の有形の記憶媒体を含むことができる。本明細書で使用するとき、disk(ディスク)及びdisc(ディスク)は、コンパクトディスク(CD:compact disc)、レーザーディスク(laser disc)、光ディスク(optical disc)、デジタル多用途ディスク(DVD:digital versatile disc)、フロッピーディスク(floppy disk)、及びブルーレイディスク(Blue-ray disc)を含む。この場合、disk(ディスク)は通常、磁気的にデータを再生し、disc(ディスク)はレーザーを用いて光学的にデータを再生する。上記の組合せもまた、コンピュータ読取り可能な媒体の範囲に含まれるべきである。加えて、方法又はアルゴリズムの動作は、非一時的なプロセッサ読取り可能な媒体及び/又はコンピュータ読取り可能な媒体に、コード及び/又は命令の1つ又は任意の組合せ又は組として常駐し、これらの媒体は、コンピュータプログラム製品に組み込むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態が示され、説明されてきたが、これらの実施形態に対して、それらの範囲、意図、又は機能を変更することなく、又はそれらから逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることは、当業者には理解されるであろう。前述の明細書で使用された用語及び表現は、本明細書では説明の用語として使用されており、限定の用語として使用されておらず、このような用語及び表現の使用において、示され説明された特徴又はその一部の等価物を排除する意図はなく、本発明は、後述の特許請求の範囲によってのみ規定及び限定されることが認識される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】