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特表2024-534338気管内チューブを介した音響干渉法による振り子流検出
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  • 特表-気管内チューブを介した音響干渉法による振り子流検出 図1
  • 特表-気管内チューブを介した音響干渉法による振り子流検出 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】気管内チューブを介した音響干渉法による振り子流検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20240912BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61B5/08
A61M16/00 370Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515081
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022076143
(87)【国際公開番号】W WO2023046706
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/248,678
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ウィムケル ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】サブジンスキ ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】コーレル トマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス コルネリス ペトルス
(72)【発明者】
【氏名】ブイッザ ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ハールツセン ヤコブ ロヘル
(72)【発明者】
【氏名】ポルキー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】プリオリ リタ
(72)【発明者】
【氏名】ウィーベルネイト ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィンテル ステファン
(72)【発明者】
【氏名】デリモア キラン ハミルトン ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SV05
4C038SX07
4C038SX11
(57)【要約】
呼吸モニタリング装置は、人工呼吸器から機械的換気療法を受けている患者の吸気相及び呼気相中に誘発される、前記患者の気道内に音響的に結合されているオーディオ信号を分析し、前記患者の気道の共振周波数を決定し、患者の肺内の振り子流の存在を決定するために、吸気相と呼気相との間における共振周波数のシフトを判定し、振り子流が存在する指示を出力するように構成される電子コントローラを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工呼吸器から機械的換気療法を受けている患者の吸気相及び呼気相中に誘発される、前記患者の気道内に音響的に結合されているオーディオ信号を分析して、前記患者の気道の共振周波数を決定し、
前記患者の肺内の振り子流の存在を決定するために、前記吸気相と前記呼気相との間における共振周波数のシフトを判定し、並びに
前記振り子流の存在の指示を出力する
ように構成される電子コントローラを有する呼吸モニタリング装置。
【請求項2】
前記電子コントローラは、前記吸気相と呼気相との間における前記共振周波数の相互相関又は交差エントロピーを測定することによって、前記吸気相と呼気相との間における共振周波数の前記シフトを判定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電子コントローラは、振り子流の存在を検出及び定量化するために、訓練された人工ニューラルネットワーク(ANN)を実装することによって、前記吸気相と呼気相との間における共振周波数の前記シフトを判定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電子コントローラは、前記オーディオ信号を分析した結果が不明瞭又は非定型であるとき、前記人工呼吸器のセットアップを検証するためのフィードバックをユーザに提供するようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、表示装置をさらに有し、
前記電子コントローラは、前記振り子流の存在の指示を前記表示装置上に表示することによって、前記振り子流の存在の指示を出力するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、スピーカをさらに有し、
前記電子コントローラは、前記振り子流の存在の指示を前記スピーカを介して出力するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記機械的換気療法は、気管内チューブ(ETT)によって送出され、
前記装置は、気管内に配されていない前記気管内チューブの一部に取り付けられるオーディオトランスデューサをさらに含み、
前記オーディオトランスデューサは、前記気管内チューブと音響的に結合される前記オーディオ信号を生成するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記気管内チューブと音響的に結合され、前記オーディオ信号を受信するように構成されるマイクロフォンをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記電子コントローラは、前記オーディオ信号を分析して、100Hz~5kHzの範囲内の前記オーディオ信号の前記共振周波数を決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記オーディオ信号は、チャープ信号を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
患者に機械的換気療法を送出するように構成される人工呼吸器、及び
請求項1に記載の呼吸モニタリング装置
を有する、呼吸療法装置。
【請求項12】
前記呼吸モニタリング装置の少なくとも1つの前記電子コントローラは、前記振り子流の存在の指示に応答し、前記人工呼吸器を制御して、前記患者に送出される前記機械的換気療法の1つ以上のパラメタを調整するようにさらに構成される、請求項11に記載の呼吸療法装置。
【請求項13】
電子コントローラを用いて、
人工呼吸器から機械的換気療法を受けている患者の吸気相及び呼気相中に誘発される、前記患者の気道内に音響的に結合されているオーディオ信号を分析して、前記患者の気道の共振周波数を決定するステップ、
前記患者の肺内の振り子流の存在を決定するために、前記吸気相と前記呼気相との間における前記共振周波数のシフトを判定するステップ、及び
前記振り子流の存在の指示を出力するステップ
を有する、呼吸モニタリング方法。
【請求項14】
前記吸気相と呼気相との間における共振周波数のシフトを判定するステップは、前記吸気相と呼気相との間における前記共振周波数の相互相関又は交差エントロピーを測定するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記吸気相と呼気相との間における共振周波数のシフトを判定するステップは、前記振り子流の存在を検出及び定量化するために、訓練された人工ニューラルネットワーク(ANN)を実装するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国特許法第119条の下、2021年9月27日に出願された米国仮特許出願第米国仮出願第63/248,678号の優先権を主張し、その内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。以下のことは、一般に、呼吸療法技術、気管挿管技術、気道音響モニタリング技術、振り子流(ペンデルフト(pendelluft))検出技術及び関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の機械的換気(MV)は、典型的には、気管挿管として知られる処理において、患者の気管内に気管内チューブ(ETT)の留置を必要とする。ETTの先端の所望する位置は、気管分岐部(carina)(すなわち、気管が左右の主気管支に分岐する位置)の約5.0cm(±2.0cm)上である。気管挿管は、通常、麻酔専門医又は他の有資格の医療専門家によって行われ、一般的な順序では、気道を確保するために頭部を後方に移動させ、喉頭鏡を使用して、食道に誤留置することなく、声帯と気管との間にETTを適切に留置にする。
【0003】
機械的換気が必要とされる一般的な状況には、集中治療室(ICU)症例及び大手術中が含まれる。そのような患者は、特に患者の状態が肺関連疾患(例えば、Covid-19)又は外傷である場合、ICUに送られる前に胸郭の画像(すなわち、コンピュータトモグラフィ(CT)画像)をしばしば取得する。
【0004】
補助MVと関連付けられる人工呼吸器誘発肺損傷(VILI)を引き起こし得る状態の例は、“振り子流”の発生である。振り子流は、例えば、人工呼吸器の1回換気量(TV)の最小の変化を伴う、リクルートメントが多い換気肺(ND)領域又は“より速い”肺領域から、リクルートメントが少ない非換気肺(D)領域又は“より遅い”肺領域へのガスの移動を含む、肺内での振動性のガスの動きとして定義される(例えば、Enokidani et al. Effects of ventilatory settings on pendelluft phenomenon during mechanical ventilation. Resp Care 2021;66(1):1-10参照)。振り子流は、換気肺(D)領域における過膨張及び非換気肺(ND)領域における虚脱が原因で、肺の過伸展(overstretching)、虚脱再開通(tidal recruitment)及び炎症を引き起こすことがある。振り子流は、人工呼吸器のVTが変化することなく発生するので、MV中の通常のモニタリングを介してその存在を認識することは、臨床医にとって困難である。振り子流の早期検出は、患者の安全及びより良好な臨床転帰を確実にするために治療及び/又は換気計画が調整され得るように重要である。
【0005】
しかしながら、現在、振り子流の存在を確認するための広く受け入れられている標準検査はない。最も一般的に報告される診断手法は、電気インピーダンストモグラフィ(EIT)に依存しているが(例えば、Coppadoro A. et al. Occurrence of pendelluft under pressure support ventilation in failed a sprotaining trial: an observational study. Ann Intensive Care (2020) 10 :39; Sang L. et al. Qualitative and quantitative assessment of pendelluft: a simple method based on electrical impedance tomography. Ann Transl Med 2020;8(19):1216参照)、他のイメージング技術も時々使用される。肺の病理学的変化は、コンピュータトモグラフィ(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、肺超音波及び陽電子放出断層撮影(PET)によって観察することができる。CT及びMRIは、局所時定数に関する間接的な情報を提供できるのに対し、PETは、振り子流を計算するのに使用されるトレーサー窒素-13(tracer nitrogen-13)のクリアランスを捕捉するのに使用されることができる(例えば、Musch G、Venegas JG. Positron emission tomography imaging of regional pulmonary perfusion and ventilation. Proc AM Thorac Soc. 2005;2(6):522-509参照)。しかしながら、超音波を除くこれらの非EITベースの手法は全て、ベッドサイドでのリアルタイム、半連続的な振り子流の診断には不適切である。
【0006】
“Coppadoro A. et al“によって説明される、振り子流を検出するためのEITベースの手法の1つの実例は、全体的及び局所的なEITのトレース、並びに人工呼吸器の波形を分析し、2つの異なる時間期間、つまり呼気から吸気への移行点(T)の前後の時間期間において、全体的な信号と比較して、局所的なEIT信号の位相シフトが存在しているかどうかを決定することである。Tの前は、肺はまだ呼気中であり、気管の空気流は外向きである。呼気中に膨張する関心領域(ROI)は、収縮している他のROIからガスを得なければならず、これが振り子現象を示す。反対に、Tの後は、気管の空気流は内向きであり、遅れて収縮しているROIが失ったガスは、膨張している他のROIから得られなければならず、これも振り子現象を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
振り子流を検出するために、EITベースの手法がしばしば使用されているが、これら手法は、依然として幾つかの欠点及び制限を持つ。多くの手法は、異なるROIからのインピーダンス-時間曲線を比較することに依存し、これは、時間がかかり、ROIの分割によっては、振り子流を見逃す可能性がある。別の欠点は、多くのEITベースの技術が、正常な呼吸の中断を必要とするか、又は定性的な測定のみを提供するだけであり、これらが臨床的意思決定を導くには不十分である。さらに別の欠点は、さらなる器具及びセンサを患者に取り付ける必要があることである。
【0008】
以下のことは、これらの問題及び他の問題を克服するための特定の改良を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、呼吸モニタリング装置は、人工呼吸器から機械的換気療法を受けている患者の吸気相及び呼気相中に誘発される、前記患者の気道内に音響的に結合されているオーディオ信号を分析して、患者の気道の共振周波数を決定し、患者の肺内の振り子流の存在を決定するために、吸気相と呼気相との間における共鳴周波数のシフトを判定し、並びに前記振り子流の存在の指示(indication)を出力するように構成される電子コントローラを含む。
【0010】
別の態様において、呼吸モニタリング方法は、電子コントローラを用いて、人工呼吸器から機械的換気療法を受けている患者の吸気相及び呼気相中に誘発される、前記患者の気道内に音響的に結合されているオーディオ信号を分析して、患者の気道の共振周波数を決定するステップ、患者の肺内の振り子流の存在を決定するために、吸気相と呼気相との間における共振周波数のシフトを判定するステップ、並びに前記振り子流の存在の指示を出力するステップを含む。
【0011】
1つの利点は、MV療法を受けている患者における振り子流の存在を検出することにある。
【0012】
別の利点は、MV療法中に患者に挿入されるETTを変更することなく、MV療法を受けている患者における振り子流の存在を検出することにある。
【0013】
別の利点は、追加の装置を患者に取り付けることなく、MV療法を受けている患者における振り子流の存在を検出することにある。
【0014】
別の利点は、MV療法を受けている患者における振り子流の存在を、スマートデバイス又は人工呼吸器のディスプレイの何れかに振り子流の指示を表示することによって検出することにあり、これにより、病院以外での状況にも適した低コストで携帯可能な解決策を可能にする。任意選択で、前記振り子流の指示は、スマートフォン上で実行する関連するアプリケーションプログラム(“アプリ”)によるプッシュ通知として、及び/又は人工呼吸器若しくは他の患者モニタリング機器のコントローラによって出される警告として提示されることができる。
【0015】
別の利点は、患者の気管に挿入されるETTに取り付けられるオーディオセンサを用いて、MV療法を受けている患者における振り子流の在を検出することにあり、オーディオセンサは、衛生基準に準拠するために使い捨てとすることができる。
【0016】
別の利点は、振り子流の存在を検出するために画像検査を実施するよりも低い技術的スキルを用いてMV療法を受けている患者における振り子流の存在を検出することにある。
【0017】
別の利点は、患者を電離放射線にさらすことを必要とせずに、MV療法を受けている患者における振り子流の存在を検出することにある。
【0018】
所与の実施形態は、上述した利点の何れも提供しないか、1つ、2つ、それ以上、若しくは全てを提供してもよく、及び/又は本開示を読んで理解すると当業者に明らかになる他の利点を提供してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示は、様々な構成要素及び構成要素の取り合わせ、並びに様々なステップ及びステップの取り合わせの形態をとることができる。図面は、好ましい実施形態を例示する目的のためだけのものであり、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1図1は、本開示による例示的な機械的換気システムを概略的に示す。
図2図2は、図1のシステムによって適切に行われる動作の例示的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
明細書において、特に文脈上はっきりと述べていない限り、複数あると述べていなくても、それらが複数あることを含む。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が“結合される”、“接続される”、又は“係合される”という表現は、連結している限り、これら部品が直接的に、又は間接的に、すなわち、1つ以上の中間部品又は構成要素を介して、結合される、動作する又は協働することを意味するものとする。本明細書に用いられる方向の言葉、例えば、限定するものではないが、頂部、底部、左側、右側、上部、下部、前方、後方及びそれらの派生語は、図面に示される要素の向きに関連し、本明細書に明確に記載されない限り、特許請求される発明の範囲を限定するものではない。“有する”又は“含む”という言葉は、本明細書に記載される及び/又は請求項に列挙される要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除しない。幾つかの手段から構成される装置において、これらの手段の幾つかは、ハードウェアの同一のアイテムによって具現化されてもよい。
【0021】
図1を参照すると、関連する患者Pに換気療法を施すための人工呼吸器2が示されている。図1に示されるように、人工呼吸器2は、患者Pに機械的換気を送達するために、患者呼吸回路5と接続可能な出口4を含む。患者呼吸回路5は、人工呼吸器のための典型的な構成要素、例えば、吸気ライン6、任意の呼気ライン7(人工呼吸器が単肢の患者回路を用いる場合、省略される)、ETTと接続するためのコネクタ又はポート8、及び例えば、ガス流量計、圧力センサ、呼気終末二酸化炭素(etCO)センサのような1つ以上の呼吸センサ(図示せず)を含む。人工呼吸器2は、ETTを介して患者を換気するために、プログラムされた圧力及び/又は流量で、空気、空気-酸素混合物又は他の呼吸可能なガス(図示せず)を出口4に送出するように設計される。人工呼吸器2は、コントローラ13(例えば、電子プロセッサ又はマイクロプロセッサ)、表示装置14(例えば、LCDディスプレイ、プラズマディスプレイ及び/又は陰極線管ディスプレイなど)、及びコントローラ13によって実行可能な命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体15も含む。非一時的なコンピュータ可読媒体15は、非限定的な例示として、磁気ディスク、RAID又は他の磁気記憶媒体;ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ、EEROM又は他の電子メモリ;光ディスク又は他の光記憶装置;又はそれらの様々な組み合わせなどの1つ以上を含み、例えば、ネットワーク記憶装置、内部ハードドライブ又はそれらの様々な組み合わせなどである。
【0022】
図1は、気管内チューブ(ETT)16が挿管される患者Pを図示している(その下方部分が患者Pの内部にあるので、透視図で示される)。コネクタ又はポート8は、ETT16を介して患者Pに呼吸可能な空気を送出するために、ETT16と接続し、人工呼吸器2と動作可能に接続する。ETT16を介して人工呼吸器2によって提供される機械的換気は、例えば肺気腫或いは肺炎のような様々な種類の肺疾患、例えばCOVID-19感染症或いは重度インフルエンザのような呼吸に影響を及ぼすウイルス感染症又は細菌感染症、又は患者Pが酸素富化した呼吸可能ガスを受け取る心血管疾患などの様々な疾患に対して治療的である。
【0023】
図1は、既に挿管された患者Pを示す。すなわち、図1は、ETT16を患者に挿入するために気管挿管が行われた後の患者を示す。しかしながら、気管挿管を安全に行うために、麻酔医又は他の有資格の医療専門家は最初に、患者Pの評価を行い、ETT16のETTサイズを選択し、次いで、気管挿管の手順によって前記選択されたサイズのETTを患者Pに挿入する。
【0024】
図1を引き続き参照すると、振り子流モニタリング装置18が含まれ、この装置は、患者Pに振り子流が存在することの検出を支援するように構成される。振り子流モニタリング装置18は、例えばワークステーションコンピュータ(より一般的には、コンピュータ)、スマートデバイス(例えば、スマートフォン及びタブレットなど)、又は(例えば、サーバクラスタ若しくはクラウドコンピューティングリソースなどを形成するように相互接続される)サーバコンピュータ若しくは複数のサーバコンピュータのような電子処理装置を有することができる。幾つかの実施形態において、振り子流モニタリング装置は、例えばコントローラ13の追加のプログラムを有する、人工呼吸器2のコントローラ13と一体化されてもよい。幾つかの実施形態において、振り子流モニタリング装置は、例えば患者モニタの追加のプログラムを有する、多機能なベッドサイドの患者モニタと一体化されてもよい。振り子流モニタリング装置18は、典型的な構成要素、例えば電子コントローラ20(例えば、電子プロセッサ又はマイクロプロセッサ)、任意選択で少なくとも1つのユーザ入力装置22(例えば、マウス、キーボード、トラックボール及び/又はスマートデバイスのタッチスクリーン上での指のスワイプなど)、及び少なくとも1つの表示装置24(例えば、LCDディスプレイ、プラズマディスプレイ及び/又は陰極線管ディスプレイなど)及び/又は他の出力装置を含む。幾つかの実施形態において、表示装置24は、電子処理装置18とは別個の構成要素とすることができる。表示装置24は、2つ以上の表示装置を有してもよい。
【0025】
電子コントローラ20は、1つ以上の非一時的な記憶媒体26と動作可能に接続される。非一時的な記憶媒体26は、非限定的な例示として、磁気ディスク、RAID又は他の磁気記憶媒体;ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ、EEROM又は他の電子メモリ;光ディスク又は他の光記憶装置;又はそれらの様々な組み合わせなどの1つ以上を含み、例えば、ネットワーク記憶装置、振り子流モニタリング装置18の内部ハードドライブ又はそれらの様々な組み合わせなどである。本明細書における非一時的な媒体26に対する如何なる言及も、同じ又は異なる種類からなる単一の媒体又は複数の媒体を包含するものとして広く解釈されるべきであることを理解されたい。同様に、電子コントローラ20は、単一の電子プロセッサとして、又は2つ以上の電子プロセッサとして具体化されてもよい。非一時的な記憶媒体26は、少なくとも1つの電子コントローラ20によって実行可能な命令を記憶する。これら命令は、遠隔オペレータの表示装置24上に表示するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)28を生成するための命令を含む。電子処理装置18は、オーディオ信号を出力するためのスピーカ29も含む。
【0026】
図1の挿入図Aに示されるように、オーディオトランスデューサ30が患者Pの気管内に配されていないETT16の一部に取り付けられる。オーディオトランスデューサ30は、人工呼吸器2からMV療法を受けている患者Pの吸気相及び呼気相中に誘発される、ETT16と音響的に結合されるオーディオ信号31を生成するように構成される。幾つかの例において、オーディオトランスデューサ30は、スピーカ30を有する。加えて、マイクロフォン32は、ETT16と音響的に結合され、オーディオ信号31を受信するように構成される。例えば、スピーカ30及びマイクロフォン32は、ETT16にクリップ留めされ、人工呼吸器2の電子コントローラ13及び/又は電子処理装置18の電子コントローラ20と(例えば、有線接続によって又は例えばBluetooth(登録商標)接続のような無線接続によって)電子通信している(注、挿入図Aは、電子コントローラ13を図式的に示す)。肺の様々な局所的な部分が逆相(contra-phasic)運動で動く場合、共振周波数スペクトルの差(シフト)は減少する。挿入図Aは、オーディオ信号31も示し、患者Pの肺の様々な部分内の共振周波数36を概略的に示す。
【0027】
さらに、本明細書に開示されるように、人工呼吸器2の非一時的なコンピュータ可読媒体15及び/又は電子処理装置18の非一時的な記憶媒体26は、振り子流検出方法又は処理100を実行するための、少なくとも1つの電子コントローラ20によって実行可能な命令を記憶する。
【0028】
図2を参照すると共に、引き続き図1も参照すると、振り子流検出方法100の例示的な実施形態がフローチャートとして概略的に示されている。本明細書に記載されるように、方法100は、人工呼吸器2の電子コントローラ13によって行われる。しかしながら、方法100は、電子処理装置18の電子コントローラ20によって適切に行われることもできる。例えば、方法100の間に生成される視覚メッセージが人工呼吸器2の表示装置14に表示される場合、同じメッセージが電子処理装置18の表示装置24に適切に表示されることができる。これらは単なる例である。
【0029】
方法100を開始するために、ETT16が患者Pの気管に挿入され、スピーカ30及びマイクロフォン32が、患者Pの気管に挿入されていないETT16の一部にクリップ留めされることができる。動作102において、オーディオ信号31を分析して、患者Pの気道の共振周波数36を決定する。オーディオ信号31は、人工呼吸器2からMV療法を受けている患者Pの吸気相及び呼気相中に誘発され、ETT16と音響的に結合されている。オーディオ信号31は、例えばチャープ信号とすることができ、共振周波数36は、例えば100Hz~5kHzの範囲とすることができる。別の例において、オーディオ信号31は、オーディオ信号31としてチャープインパルスを有し、インパルス応答は、共振周波数36を有する。
【0030】
動作104において、患者Pの肺内の振動性のガスの動きを示す振り子流の存在を決定するために、吸気相と呼気相との間における共振周波数36のシフトが判定される。共振周波数36は、(i)オーディオ信号31を運ぶ媒体としての対向する空気の動き、並びに患者Pの気管支の膨張及び拡張によって、吸気相と呼気相との間における変化を示すことができる(例えば、Thomas D. Varberg, Bradley W. Pearlman, Ian A. Wyse, Samuel P. Gleason, Dalir H. P. Kellett、及びKenneth L. Moffett、Acoustic Interferometry, Journal of Chemical Education 2017 94 (12), 1995-1998参照)。ガス流の局所的部分が反転し、対向する局所信号が重畳されるので、振り子流の存在は、吸気相と呼気相との間における共振周波数36のシフト(すなわち、差)を減少させる。一例において、シフト判定動作104は、吸気相と呼気相との間における共振周波数36の相互相関又は交差エントロピーを測定することを含む。別の例において、シフト判定動作104は、振り子流の存在を検出し、定量化するために、訓練された人工ニューラルネットワーク(ANN)38を人工呼吸器2の電子コントローラ13(又は電子処理装置18の電子コントローラ20)に実装することを含む。例えば、ANNを訓練するための訓練データは、共振周波数における如何なるシフトも判定するためにオーディオトランスデューサ30及びマイクロフォン32によってモニタリングされ、振り子流が発生した場合/発生したときにグラウンドトゥルース情報を提供するための電気インピーダンストモグラフィ(EIT)にも接続される基準患者から取得されることできる。
【0031】
幾つかの実施形態において、振り子流の振動が生じているかどうかに関するフィードバックが、(例えば、表示装置14を介して出力される視覚信号、又はスピーカ17を介して出力されるオーディオ信号を用いて)ユーザに提供される。
【0032】
動作106において、振り子流の存在の指示は、例えば、表示装置14又はスピーカ17に出力される。振り子流は、人工呼吸関連肺損傷(VILI)の可能性が増大している早期との指示又は初期のVILIであるとの指示とすることができるので、動作106は、任意選択で、警告又は緊急通知を看護師、呼吸器科医又は他の医療専門家に提供することができる。例えば、動作106は、看護師又は呼吸専門医などが所持するスマートフォン上で実行する関連するアプリケーションプログラム(“アプリ”)によるプッシュ通知として振り子流の指示を提示することを含んでもよいし、及び/又は人工呼吸器若しくは他の患者モニタリング機器のコントローラによって出される警告及び/又は看護師ステーションにおける警告として出されてもよい。任意の動作108において、電子コントローラ13は、振り子流の存在の指示に応答し、人工呼吸器2を制御して、患者に送出される機械的換気療法の1つ以上のパラメタを調整することができる。
【0033】
本開示は、好ましい実施形態を参照して説明されてきた。前述した詳細な説明を読み及び理解すると、他の者に修正及び変更が思い付く場合がある。例示的な実施形態は、これらの実施形態が添付の特許請求の範囲又はその等価物内にある限り、そのような修正及び変更の全てを含むものと解釈されることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】