(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】多機能NBC防護コンバットブーツ
(51)【国際特許分類】
A43B 3/02 20060101AFI20240912BHJP
A43B 3/00 20220101ALI20240912BHJP
A43B 13/02 20220101ALI20240912BHJP
【FI】
A43B3/02
A43B3/00
A43B13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515332
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 IN2022050651
(87)【国際公開番号】W WO2023037378
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】202111040752
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518301604
【氏名又は名称】チェアマン・ディフェンス・リサーチ・アンド・ディベロップメント・オーガニゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ガルグ,プラバート
(72)【発明者】
【氏名】タカレ,ビカス バブラオ
(72)【発明者】
【氏名】モハマド,イムラン
(72)【発明者】
【氏名】ソンカル,アトゥル クマール
(72)【発明者】
【氏名】シン,ビレンドラ ビクラム
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,プシュペンドラ クマール
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,アルビンド クマール
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA07
4F050BA43
4F050HA01
4F050HA56
4F050HA59
4F050HA77
4F050HA79
4F050HA92
4F050JA30
4F050LA02
(57)【要約】
コンバットブーツのソール及びアッパーに多層構造を有し、有毒化学剤、特に化学兵器剤に対する防護機能を有する、ハイアンクルコンバットブーツ、特に多機能防護コンバットブーツが提供される。防護ブーツの多層アッパーには、ブーツの着用時に足から離れる外層と、ブーツに向かう内層とがあり、さらに、有毒化学剤、特に化学兵器剤を吸着する吸着材、特に活性炭球をベースとした吸着層が、ブーツのアッパーの外層と内層との間に配置されている。防護ブーツの多層構造ソールには、ブーツの着用時に足から離れるアウトソールと、ブーツ着用時に足の方に向かうインソックとがあり、さらに、戦闘中の鋭利な物体、例えば釘を踏み越えたときにソールを通って刺さることに耐え、有毒化学剤、特に化学兵器剤の浸透を防ぐ、多層アラミド布をベースとしたインソールが、ブーツのインソックとアウトソールとの間に配置されている。このようにして、有毒化学剤、特に化学兵器剤に対する効果的な防護と高度な快適さとが達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有毒化学剤、特に化学兵器剤に対する防護を提供するためのハイアンクル防護ブーツであって、前記防護ブーツは、
a)前記防護ブーツの着用者の足から最も遠い外層であって、有毒化学剤、特に化学兵器剤の浸透を防ぎ、遅延させるために、疎油性及び疎水性が与えられている、前記外層と、
b)前記防護ブーツの前記着用者の足に近位の内層と、
c)前記外層と前記内層との間にある吸着層であって、有毒化学剤、特に化学兵器剤を吸着するための吸着材を含む吸着面フィルタを有しており、前記吸着層の前記吸着材は、不織布ポリマ層のカバーと共に織物基材に接着され、活性炭球の形態の活性炭を有しており、前記吸着層の前記吸着材は、前記防護ブーツの着用時に前記着用者の前記足から離れる方向に向かう前記織物基材の一方側に適用される、前記吸着層と、
d)前記吸着層の機械的ストレスを低減し、快適性を提供するように構成されるスペーサ層であって、前記スペーサ層は、前記内層と前記吸着層との間に配置される、又は前記外層と前記吸着層との間に配置されており、前記スペーサ層は、不織布、発砲プラスチック、及び織物布からなる群から選択される材料を有する、前記スペーサ層と、
e)前記防護ブーツの前記着用者の前記足から遠位の耐滑性のアウターソールであって、前記アウターソールは、水、空気、及び有毒化学剤、特に化学兵器剤に対して不透過性である、前記アウターソールと、
f)前記アウターソールとインソールとの間にあり、前記防護ブーツのアッパーを前記アウターソールに接合するミッドソールと、
g)前記インソックと前記ミッドソールとの間にあり、アウトソールを刺す鋭利な物体の貫通に耐えるインソールと、
h)前記インソールの隣にあり、前記防護ブーツの着用者の前記足に近位のインソックと、
i)アイレットの場合に得られる空間を通って浸透し得る有毒化学剤、特に化学兵器剤の浸透を防ぐように企図されている、靴紐用耐錆フックと、
j)有毒化学、特に化学兵器剤が前記防護ブーツのベロとアッパーとの間の遷移領域を通って浸透することを防ぐように企図されている、ベロウズタンと、
k)前記防護ブーツの前記着用者の前記足の安全を提供し、前記防護ブーツの形状を保持するために、熱可塑性プラスチックを含む硬質プラスチックを有する、トウパフ及びカウンタスティフナと
を備えており、
l)請求項1に記載の防護ブーツにおいて、前記防護ブーツのアッパーは、自動射出成型を用いてアウターソールと接合されている、防護ブーツ。
【請求項2】
前記層は、通気性及び水蒸気透過性の革を有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項3】
前記防護ブーツのアッパーの前記内層は、ポリエステルを含む織物材料を有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項4】
前記吸着層は、不連続的に形成されている、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項5】
前記吸着層は、吸着剤の離散粒子を有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項6】
前記吸着層の前記吸着材は、活性炭球の離散粒子を有しており、前記球の平均直径は、0.5m~1.0mmであり、前記活性炭球は、180g/m
2以上の量で前記基材に適用されており、前記活性炭粒子の比表面積(BET)は、800~1,500m
2/gの範囲にある、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項7】
前記吸着材の基材は、アッパーの内側ライナーとしても作用する、
請求項1に記載のコンバットブーツ。
【請求項8】
前記防護ブーツの前記アッパーのクォータ部分及びアンクル部分の外層は、革の代わりにポリマ被覆布、特にポリウレタン被覆ナイロン布で構成されている、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項9】
前記外層、前記内層、前記吸着層及び前記スペーサ層は、互いに接合されており、層状構造及び複合物のうちの1つを択一的に形成する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項10】
前記外層、前記内層、前記吸着層、及び前記スペーサ層は、ステッチ、縫製又は同様の方法を用いて接合されており、全ての層は、共に縫われておらず、例えば、2つ以上の縫い目は、重複しておらず、例えば、2つの層を接合する縫い目は、他の2つの層を接合する縫い目と重複していない、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項11】
前記耐滑性のアウターソールは、ニトリルゴムを含むゴムを有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項12】
前記アウターソールは、最も抵抗の少ない経路に沿って静電気を放電するために、カーボンブラックを含む帯電防止フィラーを有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項13】
前記ミッドソールは、ポリウレタンを含むポリマ材料を有しており、前記防護ブーツのアッパーの多層構造と前記防護ブーツのソールの多層構造とをシールすることによって形成される、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項14】
前記ミッドソールは、ポリママトリックスのカーボンブラックを含む帯電防止フィラーを有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項15】
前記インソールは、多層のアラミド布を有しており、最小1100Nの貫入力を提供する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項16】
前記インソールは、前記アウターソールを介して静電気を放電するための帯電防止糸を有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項17】
前記インソックは、ポリウレタンを含むポリマ材料を有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項18】
前記インソックは、前記アウターソールを介して静電気を放電するための帯電防止糸を有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項19】
前記防護ブーツは、より良い通気性及び水蒸気透過性のために、クォータ部分及びアンクル部分にナイロン布を有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項20】
前記防護ブーツは、少なくとも100Ωの帯電防止性を有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項21】
前記防護ブーツは、有毒化学剤、特にHD及びGDを含む化学兵器剤を24時間当たり最大4μg/cm
2通過させることを許容する程度の有毒化学剤に対するバリア効果を有する、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項22】
前記有毒化学剤は、化学兵器剤、及び核、生物、化学(NBC)剤のうち少なくとも1つを有する、
請求項1に記載の防護長靴。
【請求項23】
非NBCシナリオにおいて、従来のコンバットブーツとして使用できる、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【請求項24】
前記ブーツ1足(サイズEU41)の総重量は、多くて2000g、好ましくは1900g、より好ましくは1800gである、
請求項1に記載の防護ブーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有毒化学剤、特に化学兵器剤、及び核、生物、化学(NBC)剤に対するハイアンクルコンバットブーツ、特に多機能防護コンバットブーツ等の防護靴の開発に関するものであり、軍及び警備隊員の使用が意図されている。
【背景技術】
【0002】
第一次世界大戦で使用され、大部分が化学兵器である大量破壊兵器は、今も世界中でテロ行為に積極的に展開されている。化学兵器剤(CWA)は、人間を殺害、傷害、又は無力化するために使用される毒性を持つ化学物質である。20世紀の間、約70種類の化学物質は、化学兵器剤として使用又は備蓄されてきた。これら薬剤は、液体、気体、固体、又はエアロゾル状であり得る。
【0003】
CWAは、例えば毒性、残留性又は揮発性、化学構造、及び作用機序の特徴に基づいて、種々のカテゴリに分類される。生理学的作用の観点から、CWAは、神経剤、発疱剤、血液剤、窒息剤、暴動鎮圧剤、精神作用剤、及び毒素に分類される。なかでも、神経剤と発疱剤とは、合成が可能で、作用機序があり、残留性が高く、LD50が低いため、最も潜在能力があると考えられている。
【0004】
神経剤と発疱剤とは、皮膚によって吸収され、不可逆的に害を及ぼし得る物質である。これらの毒性剤と接触し得る人は、適切な防護材料で作られた防護装備を着用することが推奨される。身体を防護するボディスーツ、頭、特に顔と呼吸器とを防護し、フードを有することが多い防毒マスク(NBC呼吸マスク)、及び手を防護するNBC手袋のように、人間の身体を防護する様々な防護装備が入手可能である。しかし、加えて、これらの超有毒化学剤に対する十分な防護のために、足も同様に大切であることも重要である。NBC防護を有するラバーオーバーブーツは現在、この目的のためによく使用されている。それらは、軍及び警備隊員によって、通常のコンバットブーツの上に履かれている。NBCラバーオーバーブーツの使用に伴うこの欠点は、足への付加的な重量と、その不透過性の性質のため生理的快適性が低下することである。加えて、NBCラバーのオーバーブーツを着用していると、人の動きは、大幅に制限される。最後に、NBCオーバーブーツの使用では、NBC防護ボディスーツとの必要なシールを達成することが不可能であり、それにより、有毒化学剤、特に化学兵器剤は、NBCオーバーブーツとNBC防護ボディスーツとの間の遷移領域を通って浸透し、防護装備を着用している隊員に作用し得る。従来のコンバットブーツと共にNBC防護ソックスを使用する代替も非効果的であり、同様に、有毒剤、特に化学兵器剤がコンバットブーツに浸透することを防ぐことができず、さらに履き心地があまりよくない。ここでもまた、NBC防護ソックスとNBC防護ボディスーツとの間の非効果的なシールの問題がある。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、NBCシナリオにおいて使用する人のために、有毒化学剤、特に化学兵器剤に対して防護するように作用し、軍及び警備隊員の両方の使用に適しており、NBCラバーオーバーブーツの前述の欠点を回避し、従来のコンバットブーツとNBCラバーオーバーブーツとの組み合わせに取って代わるものである、ハイアンクルコンバットブーツ、特に多機能NBCコンバットブーツ等の防護靴を開発することである。本NBCコンバットブーツの主な利点は、その多機能性であり、有毒化学、特に化学兵器剤のシナリオ中ではNBC防護ブーツとして、並びに通常の戦闘中では従来のコンバットブーツとして使用することである。NBCラバーブーツの余剰在庫は、特にNBCシナリオ用の追加のブーツの形態で保持される必要はない。
【0006】
前述の目的を達成するために、本発明は、それぞれの請求項に係る、ハイアンクルコンバットブーツ、特に多機能NBCコンバットブーツ等の靴を開示する。
【0007】
以下では、多機能NBCコンバットブーツによって表現される本発明の実施形態に対して概して言及されるが、これは説明のより良い理解のためになされるものであり、これは非限定的な例である。したがって、本発明は、着用時に周囲に露出される外層と着用時に足に最も近い内層とを有する多層構造を備え、多層構造が有毒化学剤、特に化学兵器剤に対する防護を提供するような、ハイアンクルコンバットブーツ、特に多機能NBCコンバットブーツ等の防護靴について説明する。この防護は、有毒化学、特に化学兵器剤を吸着する活性炭球(ACS)等の吸着材をベースとした層の組み込みによって提供される。吸着層は、ブーツのアッパーの外層と内層との間に配置又は設けられる。内層と外層との間に配置された吸着層の存在により、さもなければブーツの全ての層を通って浸透し得る有毒化学剤、特に化学兵器剤が皮膚と接触することを防ぐことが可能となる。有毒化学、特に化学兵器剤は、吸着層の吸着材によって吸収又は吸着され、このようにして無害となる。ブーツのNBC防護機能は、戦闘中に鋭利な物体を踏んだ場合に、有毒化学、特に化学兵器剤がソールを通って皮膚に浸透することを耐貫通性によって防ぐ耐貫通インソールを追加で組み込むことによって、さらに高められ得る。本発明の他の目的と特徴とは、添付図面と併せて考慮される以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0008】
しかし、図面が本発明の制限を定義するものとしてではなく、単に説明のために企図されており、本発明の参照が添付の請求項でなされることを理解すべきである。さらに、図面は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、特に断りのない限り、本明細書に記載された構造及び手順を概念的に説明することが単に意図されているにすぎないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の他の利点、特性、態様及び特徴は、図面に示される本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかとなる。
【0010】
【
図1】本発明の好ましい実施形態に係る多機能NBCコンバットブーツの概略的な描写である。
【0011】
【
図2】本発明の好ましい実施形態に係る多機能NBCコンバットブーツのアッパーの層構造の概略断面図である。
【0012】
【
図3】本発明の好ましい実施形態に係る多機能NBCコンバットブーツのソールの層構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係る、有毒化学剤、特に化学兵器剤に対する防護を得るためのハイアンクルコンバットブーツ、特に多機能NBCコンバットブーツ(MNCB)等である防護靴1を示している。本発明のMNCB1は、アッパーの多層構造3とソールの多層構造4とを有する。
図2に示されるMNCBのアッパーの層構造は、ブーツ着用時に足から最も遠い外層6と足に最も近い内層9とを有する。本発明によれば、有毒化学剤、特に化学兵器剤を吸着する活性炭球(ACS)等の吸着材24を備えた3層吸着ライニング8は、外層6と内層9との間に配置される。これにより、有毒化学剤、特に化学兵器剤に対する効果的な防護と高度な履き心地との両方が提供される。
【0014】
これらの層に加えて、例えば不織布、プラスチック、織物、又はフォームの形態のスペーサ層が、外層6と吸着層8との間、又は内層9と吸着層8との間に配置されてもよい。内層9と吸着層8との間に存在する付加的な層が機械的ストレスを吸収又は減衰できるので、吸着層8への機械的ストレスを低減するために、スペーサ層7が内層9のすぐ隣に配置されることは利点である。スペーサ層7が外層6と吸着層8との間に配置された場合、外部環境由来の汚染物質が吸着層8の吸着材24に負荷することを防ぐのに役立つ。このようにして、吸着層8の効果が高まる。さらに、追加のスペーサ層7は、本発明のMNCB1の履き心地を高め、特に着用時にクッション効果を提供する。概して、層構造3の個々の層6、7、8、9は互いに接合されている。これは、よく確立された方法、例えば接着剤接合、ヒートシール、縫製、ステッチ等によって達成される。層構造3の個々の層6、7、8、9を継ぎ目なく、好ましくは個々の層6、7、8、9を損傷することなく(例えば接着剤接合、ヒートシール等によって)、接合又は固定することが利点である。層6、7、8、9が縫製又はステッチ又は同様の方法で接合される場合、全ての層が共に縫われるわけではなく、例えば2つの層を接合する縫い目は、他方の2つの層を接合する縫い目と共に展開されていない。さらに、縫い目は、ブーツの内側においてシームシールテープでシールされている。構造3の個々の層6、7、8、9からできている密着複合物は、アンクル、クォータ、ヴァンプ、ベロ、襟、及びソールを含む下部、を含むMNCBの全体部分に広がっている。この実施形態によれば、層構造3の個々の層6、7、8、9は、足の形状で脚と密着するブーツ(ハイアンクルブーツ)を形成する。
【0015】
図3は、ハイアンクルコンバットブーツ、特に多機能NBCコンバットブーツ等の防護靴のソールの多層構造4を示している。ブーツの着用時、アウトソール16は、足から最も遠く、インソック(インサート)13は、着用者の快適さのために足に最も近い。インソックの隣(足から離れる向き)には、耐貫通インソール14が設けられており、戦闘中に鋭利な物体、例えば釘を踏んだときの貫通に耐える。ミッドソール15は、MNCBの多層構造アッパー3を多層構造ソール4とシールする際に、射出成型又はその他の周知の方法を用いて、足の輪郭領域に沿ってインソールの隣(足から離れる向き)に形成される。
【0016】
代替の実施形態によれば、層構造3の個々の層6、7、8、9は、ソールの領域にわたって広がっておらず、ブーツの残余の領域、すなわち、ブーツの場合には足背、アンクル、ふくらはぎの一部の領域のみにわたって広がっている。この実施形態によれば、足のソールの領域が懸念される場合、吸着剤、特に活性炭球を有するインサートが提供されることができ、当該インサートは、ソール又はソールの遷移領域を通って浸透する有毒化学剤、特に化学兵器剤を吸着する。しかし、ブーツの多層構造3と多層構造4とが、共にシールされると、有毒化学剤、特に化学兵器剤に対する効果的な防護と同時に高度な履き心地を確実にするので、これは絶対的に必要ではない。
【0017】
有毒化学剤、特に化学兵器剤がベロの付近の領域を通って入り込むことを防ぐために、ベロウズタン10が設けられている。靴紐11用の錆びない真鍮製のフック12は、アイレットを避けるために設けられている。形状を保持し、つま先の硬い物体からの打撃の安全の目的のために、熱可塑性ポリマ製のトウパフ19とカウンタスティフナ21とが設けられている。
【0018】
本発明のMNCB多層構造アッパー3の外層6は、好ましくは厚さ約2mmの革材のようなものを使用することにより、通気性、特に水蒸気透過性で作られている。外層6として通気性の革を使用することに関して、液体状の有毒化学剤、特に化学兵器剤の浸透を偽装又は遅延させるために、特に何らかの処理によって革に疎油性及び/又は疎水性を与えることは賢明である。
【0019】
本発明の目的のために、定常状態で約2mmの厚さの条件下で、NBCコンバットブーツの最外革層6は、少なくとも0.3mg/cm2h、好ましくは少なくとも0.5mg/cm2h、より好ましくは少なくとも0.8mg/cm2hの水蒸気透過性を有するべきである。
【0020】
MNCB1の内層9の材料に関して、任意の所望の織物材料が使用され得、好ましくは空気透過性の織物材料、例えば織物布が使用され得る。非限定的な例としては、織布、編物、積層布、接着布、不織布である。好ましくは、最低引裂強度が15Nの織物又は編物の抗菌布が、内層9の材料として使用される。
【0021】
吸着層8に関して、吸着層8は概して、3つの層を有する不連続に形成されたライニングであり、すなわち、吸着層8は概して、有毒化学剤、特に化学兵器剤を吸着し、接着剤を使用して基材25上に接着され得る、活性炭ベースの吸着材24の離散粒子を有する。吸着層8の吸着材24は、好ましくは活性炭をベースとした材料であり、好ましくは活性炭球(ACS)の形態である。活性炭球をベースとした吸着層の使用により、活性炭が汗又は水の貯蔵、又は緩衝材として作用するので、本発明のMNCB1の着用特性は、活性炭の緩衝効果によってさらに改善される。吸着層の吸着材として、例えば活性炭球の使用では、180g/m2以上の被覆が通常であり、そのため、例えば収容する場合、水分は、ACSの気孔内に貯蔵され得、外層6が通気可能な場合、再び外部環境に解放され得る。概して、吸着層8は、吸着面フィルタとして設計されている。この目的のために、吸着層8は、有毒化学剤、特に化学兵器剤を吸着する材料24を含んでおり、好ましくは、活性炭、例えば活性炭球の形態をベースとしており、吸着材24は概して、接着剤を用いて基材25上、特に織物基材上に接着される。吸着層8の吸着材24は、好ましくは、ブーツ着用時に足から向いている基材25の一方側に適用される。吸着材24は、当業者に周知の方法によって、例えば、基材上に接着剤を連続的に、又は好ましくは不連続的に適用し、次いで基材25上に吸着材24を接着させることによって、基材25上に接着される。履き心地を高めるために、特に吸着剤層8の硬さを避けるために、接着剤の不連続的な適用、特に接着剤のスポットが好ましく、すなわち、吸着材24を基材25に不連続的に、又は好ましくは規則的なパターン又は格子状にスポットで適用することが利点である。この場合、実際の吸着材24は、単位面積当たりの重量が80~100g/m2の、好ましくは通気性の不織布又は好ましくは織布材料によって裏打ちされ得る。この場合、実際の吸着材24は、吸着材の機械的ストレスを低減するために、好ましくは通気性の織物材料、特にカバー層としてのポリマ布によって裏打ちされ得る(例えば、単位面積当たりの重量が5~60g/m2、好ましくは10~50g/m2、より好ましくは15~30g/m2の低重量の布で)。効果的な吸着能力を達成するために、基材25の少なくとも70%がACS材24で覆われていることが好ましく、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%である。吸着材24は、吸着層8が、吸着される有毒化学剤、特に化学兵器剤に自由にアクセスできるように、接着剤で満たされてはならない。適切な活性炭球の比表面積(BET)は、800~1,500m2/gの範囲にある。活性炭球の粒子の平均直径は、1.0mm未満、好ましくは0.8mm未満、より好ましくは0.6mm未満であるが、概して少なくとも0.5mmである。活性炭球は、圧縮強度が高い利点を有しており、良好な着用性を有するために重要である。概して、個々の活性炭粒子、特に活性炭小球の破裂圧力は、好ましくは少なくとも約5N、より好ましくは少なくとも10N、最も好ましくは約15Nほどの高さがある。
【0022】
代替の実施形態によれば、基布25のみが自己支持するために十分な安定性を有する場合、すなわちこの場合、布25が、吸着材24に対する基材と、使用者の快適性及び着用性のための内側ライニングとの両方の役割を同時に果たす場合、内側ライニング9は、完全に除去される。
【0023】
有毒化学剤、特に化学兵器剤が多層ソール4を通ってブーツに浸透することを防ぐために、アウトソール16は、有毒化学物質、特に化学兵器剤に対して実質的に不透過性の材料で作られている。概して、アウトソール16は、任意の液体、例えば水、及び例えば空気中の蒸気、に対しても実質的に不透過性である。概して、これらの目的のために、アウトソール16は、これらの目的のために当業者によく知られているクリートの厚さを考慮することなく、好ましくは最小3mmの厚さの耐滑性ニトリルゴムで作られ得る。前記アウトソール16は、着用者によるNBC防護ブーツの使用中に生じる静電気を放電するために、カーボンブラックを含む帯電防止フィラーをさらに有してもよい。
【0024】
効果的な防護を確実にするために、ブーツのソール16は、ブーツのアッパー3と接合され、特にソール4とアッパー3との接合領域においてシールを形成するべきであり、これは、ポリウレタンをベースとする材料を含むポリマ材料を用いた射出成型によって達成される。このポリマ材料は、硬化時にミッドソール15を形成する。前記ミッドソール15は、着用者によるNBC防護ブーツの使用中に生じる静電気を、アウトソールを介して放電させるために、カーボンブラックを含む帯電防止フィラーをさらに有してもよい。
【0025】
多層構造ソール4に設けられるインソール14に関して、インソール14は、厚さ約2mm、貫入抵抗最小1100Nの多層アラミド布を有し得る。さらにインソール14は、最低70mg/cm2の吸収能力と、吸収能力の80%の脱着能力とを有するべきである。前記インソールは、インソール、ミッドソール、及びアウトソールを介して静電気を放電させるために、帯電防止糸を有する。
【0026】
多層ソール4に設けられるインソック13に関して、インソック13は、前部では約2mm、ヒール部では約11mmの厚さの、ポリエステルメッシュでラミネートされ、成型されたポリウレタンベースを有し得る。さらに、インソック13は、最低70mg/cm2の吸収能力と、吸着能力の80%の脱着能力とを有するべきである。前記インソックは、インソール、ミッドソール、及びアウトソールを介して静電気を放電させるために、帯電防止糸を有する。
【0027】
他の実施形態によれば、多層アッパー3の外層6は、ブーツのアッパーのクォータ部分17及びアンクル部分18において、ポリマ被覆の織物布からなり得る。織物布、好ましくは適切なタイプのポリウレタン被覆ナイロン布は、例えば単位面積当たりの重量が100~150mg/cm2、好ましくは150~200mg/cm2、より好ましくは200~250mg/cm2であり得、水蒸気透過度が最低0.8mg/cm2hであり得る。
【0028】
本発明のブーツ、特に多機能NBCコンバットブーツは、有毒化学剤、特に化学兵器剤からの効果的な防護を提供し、高度な履き心地と機能性とを伴う。本発明に係るコンバットブーツの重要な利点は、ブーツ自体が有毒化学剤、特に化学兵器剤に対する固有の防護機能を有しており、それと共に着用する追加装備(例えばNBCオーバーブーツ、NBCソックス)が不要であることである。先に説明された足のNBC防護方法と比較して、本発明は、かなりの軽量化と高められた履き心地とを生じさせるだけでなく、NBCコンバットブーツとNBC防護ボディスーツとの間の効果的なシールの達成を可能とし、それにより、有毒化学剤、特に化学兵器剤は、コンバットブーツと防護ボディスーツとの間の遷移領域を通過し得ない。これらの特性により、本発明に係るブーツは、軍及び警備隊員のNBC防護に適している。本発明の他の利点は、NBCシナリオにおいて従来のコンバットブーツと同様に着用され得る本ブーツに係る多機能性である。
【0029】
本発明のMNCBの個々の層、又は全体として層構造で構成される複合物、の柔軟性は、高度な履き心地だけでなく、着用者の足への良好なフィットをもたらす。
【0030】
本発明に係るブーツの設計は、有毒化学、特に化学兵器剤に対する優れた防護を達成する。化学兵器剤、特にビス(2-クロロエチル)スルフィド(同義語でマスタードガス又はHDガスとして知られている)に対する防護は、試験操作手順(TOP)08-2-501Aによって測定されるように、24時間当たり最大4μg/cm2、なおさらに好ましくは24時間当たり最大3.5μg/cm2、好ましくは24時間当たり最大3.0μg/cm2、最も好ましくは24時間当たり最大2.5μg/cm2である。化学兵器剤、特にO-ピナコリルメチルホスホノフルオロデート(同義語としてソマン又はGDとして知られている)に対する防護は、試験操作手順(TOP)08-2-501Aによって測定されるように、24時間当たり最大4μg/cm2、なおさらに好ましくは24時間当たり最大3.5μg/cm2、好ましくは24時間当たり最大3.0μg/cm2、最も好ましくは24時間当たり最大2.5μg/cm2である。
【0031】
本発明の目的のために、サイズEU41の多機能NBC防護コンバットブーツペアの総重量は、多くても2000g、好ましくは多くても1900g、より好ましくは1800gであるべきである。
【0032】
本発明のブーツは、当該技術分野でよく知られた手順で製造され得る。その方法は、靴の製造に熟練した専門家にはよく知られており、詳細な情報を提供する必要はない。このように、本発明の基本的な新規な特徴は、示され、その好ましい実施形態に適用されるように説明され示されたが、図示されたデバイスの形態及び詳細、並びにそれらの動作における様々な省略と、置換と、変更とが、本発明の意図から逸脱することなく、当業者によってなされ得ることが理解される。例えば、同じ結果を得るために実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を果たす要素及び/又は方法ステップの全ての組み合わせが本発明の範囲内であることは、明確に意図されている。さらに、本発明の任意の開示された形態又は実施形態に関連して示され、及び/又は説明された構造及び/又は要素及び/又は方法ステップが、設計選択の一般的事項として、任意の他の開示され、又は記載され、又は提案された形態又は実施形態に組み込まれ得ることは、認識されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲によって示されるようにのみ限定されることが、意図されている。
【国際調査報告】