(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】バルーン血管形成術後の残存狭窄の治療のための一時的血管内足場
(51)【国際特許分類】
A61F 2/91 20130101AFI20240912BHJP
【FI】
A61F2/91
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515644
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 US2022043920
(87)【国際公開番号】W WO2023044084
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517308415
【氏名又は名称】エフェモラル メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ビー.シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】イバン ツベタノフ
(72)【発明者】
【氏名】アレックス エストラーダ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA55
4C267BB03
4C267BB07
4C267BB26
4C267CC09
4C267DD01
4C267GG16
4C267GG43
(57)【要約】
血管を通る血流を維持又は増強するためのデバイス、システム、及び方法が提供される。バルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素は、バルーン血管形成術後の残存狭窄及び解離を治療するために、血管壁において高い初期径方向の力を提供し、次いで、移植後、時間とともにゆっくりと軟化及び分解する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管を通る血流を維持又は増強するために前記血管内に配置するためのデバイスであって、前記デバイスが、
ステントとして前記血管に埋め込まれるように構成された1つ以上のバルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素を含み、
前記ステントが、バルーン血管形成術後の残存狭窄及び解離を治療するために、血管壁において高い初期径方向の力を提供するように構成されており、
前記ステントが、移植後に時間とともに軟化及び分解するように更に構成されている、デバイス。
【請求項2】
前記血管の屈曲が、前記ステント要素間の空間の屈曲によって適応される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ステント要素が、治療薬を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記治療薬が、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、又は血栓症を予防又は減衰させる、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ステント要素が、より高い径方向の強度を達成するために、可撓性を抑えるように構成されたステントパターンを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ステントパターンが、短縮に対する抵抗を抑え、各ステント要素内の短縮を利用して、高い径方向の力を達成するように構成されている、請求項5に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月17日に出願された、「TEMPORARY INTRAVASCULAR SCAFFOLDS FOR THE TREATMENT OF RESIDUAL STENOSIS FOLLOWING BALLOON ANGIOPLASTY」と題する、米国特許仮出願第63/245652号明細書に対する利益及び優先権を主張するものであり、上記の参照出願の完全な開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、全般的には医療デバイスの分野に関する。特に、本出願は、血管(動脈及び静脈)の開存性(血流)を維持することを意図した血管内ステントの設計及び製造に関する。
【背景技術】
【0003】
経皮的末梢介入(percutaneous peripheral intervention、PPI)は、症候性末梢動脈閉塞症(symptomatic peripheral arterial occlusive disease、PAOD)のために最適な治療となっている。この最小侵襲性治療は、外科的バイパス移植と比較して同等の疼痛緩和及び四肢サルベージを提供する一方で、患者の罹患率、合併症及び費用を最小限にする。残念ながら、その耐久性は低いままである。わずか1年後に、全てのPPI処置のおよそ50%が、再介入を必要とする症候性再発及び/又は再狭窄を伴う。バルーン血管形成術による長い大腿膝窩動脈閉塞性病変(>150mm)の経皮治療の最近のある研究では、わずか1年後に、わずか34%が開存したままで再狭窄がなかった。
【0004】
現在、PAODのための血管介入の主力は、経皮経管バルーン血管形成術(percutaneous transluminal balloon angioplasty、PTA)である。バルーン血管形成術は、開存性を即座に回復させ、動脈流を改善することに概して成功しているが、(1)標的病変をその完全な元の直径に回復させることはめったになく、(2)治療された血管の大部分が最初の数ヶ月にわたって機械的に反跳し、再び狭くなるので、わずかに有効であるにすぎない。標的病変をより広く拡張し、解離を平滑化し、残存狭窄を最小限に抑え、より持続的な開存性を提供するために、経皮的に送達可能な金属製足場又は「ステント」が1990年代に開発された。広く利用可能になった最初のステントは、「バルーン拡張型」であった。血管形成術バルーン上に圧着されると、動脈樹を通して同軸に前進させられ、動脈プラークに当接するようにバルーン膨張を介して展開され得る、ステンレス鋼の剛性メッシュ管である。残念ながら、金属(ステンレス鋼又はコバルトクロム)バルーン拡張型ステント(balloon-expandable stent、BES)の剛性は、それらの適用性を制限する。長いデバイスは、患者が歩いたり座ったりしたときに潰れたり屈曲するため、非常に短いデバイスのみ脚に安全に移植できる。したがって、30cmを超える下肢における閉塞性アテローム動脈硬化性病変は、臨床診療において頻繁に遭遇するが、最も長い市販のBESは、長さがわずか6cmである。
【0005】
より可撓性のステントを作製するために、航空宇宙産業で使用されるニッケル-チタン(ニチノール)の等原子合金が、1990年代にヒト医療用途に適合された。ニチノールは、超弾性及び形状記憶の特性を示し、その結果、このデバイスは、小型化された圧縮状態で製造され得、次いで、ヒト脈管構造の暖かい環境において、その元の寸法に再拡張され得る。その結果、屈曲したり、ねじれたりする血管への移植に適した、長くて可撓性のある金属ステントが得られる。デバイスの初期の研究は、ニチノール自己拡張型ステント(self-expanding stent、SES)が、バルーン拡張単独と比較して優れた開存性を示し、実際、スロットチューブ型ニチノールSESが、この臨床用途のために最も一般的に使用されるステントになったことを示唆した。
【0006】
残念ながら、ニチノールSESには、いくつかの重大な落とし穴がある。第一に、それらの比較的弱い径方向の強度は、硬化した血管において慢性的な拡張不足をもたらす。実際、ある研究では、石灰化動脈へのSES移植後の処置後残存狭窄は70%であった。第二に、これらの絶えず拡張する永久的なデバイスによって及ぼされる慢性的な外向きの力は、炎症、異物反応、平滑筋細胞増殖及び再狭窄を絶えず刺激する。この現象は、「新生内膜過形成」又は「血管増殖性障害」として知られており、特に、屈曲する及びねじれる傾向にある長い動脈に多く見られる。最後に、ニチノールステントの可撓性は、弱さ、疲労、及び破損に対するそれらの不安定な傾向によってオフセットされる。65%もの高さであると報告されているが、SES破損及び離断は、再狭窄及び治療の失敗と明らかに関連している。
【0007】
したがって、ヒト末梢動脈の開存性を回復するために使用される2つの最も一般的なデバイス(すなわち、PTA及びSES)は、両方とも非常に不十分である。それらは、一時的な又は弱い径方向の支持しか提供しないので、処置時に標的病変を完全に拡張することができない。治療されないまま放置される「残存狭窄」は、重大であり得る。
【0008】
一般に、PTA及びSESの両方は、処置された動脈内に15~25%の狭窄を日常的に「残す」。実際、これらの研究における「技術的成功」の定義は、残存狭窄<30%である。対照的に、金属BESの高い径方向の強度設計は、障害となる病変が完全に拡張されることを確実にする。測定した場合、大腿膝窩動脈系におけるBESの移植後の残存狭窄は、わずか約3%である。
【0009】
したがって、より少ない残存狭窄で高度に可動性の脈管構造において安全に使用され得るステントを有することが有利である。これらの目的のうちの少なくともいくつかは、以下に記載される実施形態によって満たされるであろう。
【発明の概要】
【0010】
本明細書の実施形態は、血管を通る血流を維持又は増強するために血管内に配置するためのデバイスについて記載する。デバイスは、ステントとして血管に埋め込まれるように構成された1つ以上のバルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素を含み得る。ステントは、バルーン血管形成術後の残存狭窄及び解離を治療するために、血管壁において高い初期径方向の力を提供するように構成され得る。ステントは、移植後に時間とともに軟化及び分解するように構成され得る。一実施形態では、血管の屈曲は、ステント要素間の空間の屈曲によって適応される。一実施形態では、ステント要素は、治療薬を含む。治療薬は、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、又は血栓症を予防又は減衰させ得る。ステント要素は、より高い径方向の強度を達成するために、可撓性を抑えるように構成されたステントパターンを有し得る。ステントパターンは、短縮に対する抵抗を抑え、各ステント要素内の短縮を利用して、高い径方向の力を達成するように構成され得る。
【0011】
本開示のこの態様及び他の態様が、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本実施形態は、添付の図面と併せて解釈すると、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲からより容易に明らかになる他の利点及び特徴を有する。
【
図1】血管内ステントの典型的な径方向の抵抗力を示す。
【
図3A】バルーン拡張型多要素ステントの展開を示す。
【
図3B】バルーン拡張型多要素ステントの展開を示す。
【
図3C】バルーン拡張型多要素ステントの展開を示す。
【
図4A】股関節及び膝が完全に屈曲した状態での膝窩動脈に埋め込まれた多要素ステントを示す。
【
図7】本明細書に記載のステントと比較した、市販の自己拡張型ステント及びバルーン拡張型金属ステントの径方向の抵抗力を示す。
【
図8】バルーン血管形成術で治療された左浅大腿動脈内の閉塞性病変の血管造影外観を示す。
【
図10】一実施形態による、ステントを作製するために使用されるマイクロステレオリソグラフの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を特定の実施形態を参照して開示してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い、同等物を置換することができることが当業者によって理解されるであろう。加えて、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の教示に対する特定の状況又は材料に適応させるために、多くの改変を行うことができる。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、以下の用語は、文脈が明らかに別段指示しない限り、本明細書に明示的に関連付けられた意味を取る。「a」、「an」、及び「the」の意味には、複数の参照が含まれる。「in」の意味は、「in」及び「on」を含む。図面を参照すると、同様の番号は、図全体を通して同様の部分を示す。追加的に、単数形への言及は、別段明記しない限り、又は本明細書の開示と矛盾しない限り、複数形への言及を含む。
【0015】
「例示的」という単語は、本明細書では、「例、事例、又は例示としての役割を果たす」ことを意味するために使用される。「例示的」として本明細書で説明される任意の実装形態は、必ずしも他の実装形態よりも有利であると解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書では、図を参照して様々な実施形態について記載される。図は、縮尺通りに描かれておらず、実施形態の説明を容易にすることのみを意図している。それらは、本発明の網羅的な説明として、又は本発明の範囲に対する限定として意図されていない。加えて、例示される実施形態は、示されている全ての態様又は利点を有する必要はない。特定の実施形態に関連して記載される態様又は利点は、必ずしもその実施形態に限定されず、そのように例示されていなくても、任意の他の実施形態で実施することができる。
【0017】
図1は、血管内ステントの典型的な径方向の抵抗力を示す。典型的な「生体吸収性血管足場」(BVS)又は吸収性ステントは、2N/cm未満の径方向の抵抗力を有する。同様に、典型的な自己拡張型金属ステント(self-expanding metal stent、SES)は、2N/cm未満の径方向の抵抗力を有する。典型的なバルーン拡張型金属ステント(balloon-expandable metal stent、BES)は、時には18N/cmを超える、はるかに高い径方向の抵抗力を有する。
【0018】
本明細書の実施形態は、(残存狭窄を最小限にするために)動脈壁に高い径方向の力を一時的に提供し、次いで、動脈治癒後にゆっくりと軟化及び分解する、バルーン拡張型血管内ステントシステムの設計を説明する。個々のステント要素の重要な設計要素は、より弱い自己拡張型金属ステントとは対照的に、より典型的な、高度に効果的で剛性のバルーン拡張式金属ステントの径方向の強度の提供である。
【0019】
径方向の力、可撓性、及び短縮に対する抵抗を組み合わせるように設計されたほとんどのステントパターンとは対照的に、本明細書に記載されるパターンは、径方向の力を最大化し、可撓性を抑えるように特に調整されている。いくつかの実施形態では、それらはまた、径方向の力を更に最大化するために、個々のステント要素内の短縮に抵抗し得る。複数の連続ステント要素から構成されるデバイスでは、各ステント要素内の有意な短縮は、全体として有意な短縮をもたらさない。
【0020】
本明細書に記載されるデバイスは、多要素血管ステント(又は「血管足場」)である。これらのステントは、互いに分離しているが、まとめて多要素ステントと呼ばれることもある、複数の短い剛性の円筒形ステントセグメント又は要素で構成されている。
【0021】
概して、本明細書に記載される多要素ステントの要素のうちの少なくとも2つは、蛇行性の末梢血管など、それらが配置される血管の応力に耐える所望のレベルの強度を提供するのに十分な剛性がある。同時に、多要素ステントはまた、複数の別個の要素から構成されているため、可撓性であり、したがって、湾曲した蛇行性の血管内に配置することができる。いくつかの実施形態では、これらの要素のうちの少なくとも2つは、多要素ステントにおいて剛性又は径方向の強度が変化する。一実施形態では、外側要素は、多要素ステントにおいて内側要素よりも径方向の強度が低くてもよい。別の実施形態では、多要素ステントは、動静脈瘻などにおいて、多要素ステントの長さに沿って連続的に増加する径方向の強度を有する要素を含む。したがって、要素の径方向の強度は変化し、標的動脈の既知の特性によって調整され得る。
【0022】
追加的に、本明細書に記載される多要素ステントは、バルーン拡張型ステントが、典型的には、自己拡張型ステントよりも強いため、通常、自己拡張型ではなくバルーン拡張型である。ステントの各バルーン拡張型要素は、記載される構造及び材料に起因して、比較的高い径方向の力(剛性)を有し得る。ステント要素は、鋼製又はコバルトクロム製などの、従来のバルーン拡張型金属ステントと同様又はそれ以上の大きさの自己拡張型ステントよりも径方向の強度が大幅に高い場合、径方向に剛性があると定義される。
【0023】
膨張型バルーンに連続して装着すると、長い血管に同時に並べて埋め込むことができる。生物の運動中、要素は、独立して移動することができ、個々の形状及び強度を維持し、同時に、血管のステントのない介在要素は、邪魔されずにねじれ、曲がり、かつ回転することができる。その結果、剛性に維持された流路を有する治療済みの血管が得られ、生物が動いている間にも無制限に可撓性である。
【0024】
記載される実施形態は、(1)バルーン拡張を介して展開される剛性デバイスが、動脈壁に対する一時的な影響及び正確な埋め込みの相対的な容易さを考慮した血管内ステントの最適設計を表し、(2)長い剛性デバイスが、骨格運動で曲がる、かつねじれる動脈に安全に埋め込むことができず、(3)曲がる、かつねじれる長い動脈が、ステントのない介在動脈要素が邪魔されずに動くことを可能にする複数の短いBESで効果的に治療することができ、(4)ステント要素の長さ、数、及び間隔が、標的動脈の既知の予測可能な曲げ特性によって決定することができ、(5)動脈が、ほんの一時的に足場を必要とするだけでよく、ステントの溶解が遅れても、治療の長期的な効果にはほとんど影響しない、という原理を利用している。
【0025】
完全に組み立てられたデバイスの一実施形態を
図2Aに示す。単一のバルーン膨張及びデバイスの展開により、罹患した動脈の長いセグメントを治療することができる一方で、座る又は歩行するなどの骨格運動とともに動脈が曲がるという動脈の重要な能力を依然として維持する。多要素ステント200は、複数のステント要素201を含む。個々のバルーン拡張型ステント要素201は、送達を容易にするために、膨張型バルーン203上に圧着される。
図2Bは、
図2Aのステント要素201の拡大図である。個々の要素201は、バルーン203の長手方向の長さに沿って連続的に位置付けられ、ステント要素201が互いに接触しないように離間されている。更に、その間隔は、展開後、ステント要素201が骨格運動中に接触しないか、又は重ならないような間隔である。要素201の数、要素の長さ、及び要素201間の間隙202は、標的血管位置に応じて変化し得る。一実施形態では、多要素ステント200における各要素201は、同じ長さを有する。3つ以上の要素201、よって2つ以上の間隙202を有する多要素ステントでは、間隙は、同じ長さであり得る。
【0026】
図3A~
図3Cは、バルーン拡張型多要素ステントの展開を示す。
図3Aでは、バルーンに装着された多要素ステントが、病変まで前進している。
図3Bでは、バルーン及びステントが、拡張されている。
図3Cでは、バルーンは引き抜かれ、多要素ステントは、依然として動脈内に残されている。
【0027】
図4Aは、股関節及び膝が完全に屈曲した状態での膝窩動脈に埋め込まれた多要素ステントを示す。
図4Bは、
図4Aの埋め込まれたデバイスを三次元で示す。個々のステント要素401は、動脈が大きく曲がっているときでもこれらのステント要素が重ならないように離間されている。妨げられていない動脈の動きは、ステントのない間隙402の屈曲又は延伸を通じてもたらされる。
【0028】
ステント要素は、様々な形状及び構成を含み得る。ステント要素のうちのいくつか又は全てが、交差する支柱によって形成された閉鎖セル構造を含み得る。閉鎖セル構造は、ダイヤモンド形、菱形、偏菱形、台形、凧形、正方形、長方形、平行四辺形、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形、クローバ形、小葉形、円形、楕円形、及び/又は卵形の形状を含み得る。また、閉鎖セルは、H字型スロット、I字型スロット、J字型スロットなどのスロット型形状を含み得る。追加的又は代替的に、ステントは、螺旋構造、蛇行構造、ジグザグ構造などの開放セル構造を含み得る。支柱の交差は、尖った、垂直な、丸い、先端の丸い、平坦な、斜角の、かつ/又は面取りされたセル角を形成し得る。一実施形態では、ステントは、異なるセル形状、配向、及び/又はサイズを有する複数の異なるセルを含み得る。様々なセル構造が、「MULTI-ELEMENT BIORESORBABLE INTRAVASCULAR STENT」と題された国際出願PCT/US16/20743号、「ABSORBABLE INTRAVASCULAR DEVICES THAT EXHIBIT THEIR GREATEST RADIAL STRENGTH AT THEIR NOMINAL DIAMETERS」と題された国際出願PCT/US20/19132号、及び「ABSORBABLE INTRAVASCULAR DEVICES THAT SHORTEN UPON EXPANSION CREATING SPACE FOR VASCULAR MOVEMENT」と題された国際出願PCT/US19/35861号に記載されており、これらの全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
図2Bに戻ると、この例示的な実施形態では、ステント要素201は、ダイヤモンド形状又は菱形状の閉鎖セルパターンを有する。要素201は、混合されたダイヤモンド形状の閉鎖セル204、205を含む。ステント要素は、比較的厚い支柱幅及び斜めに角度が付けられた連結部を有するセルパターンを有し得る。要素201は、225マイクロメートル以上の幅の支柱206を含み得る。要素201は、同様に、225マイクロメートル以上の厚さの支柱206を含み得る。一実施形態では、要素201は、およそ250マイクロメートルの幅及び/又は厚さを有する支柱206を含む。ダイヤモンド形状のセル204は、繰り返しパターンで長手方向及び/又は円周方向に整列され得る。同様に、ダイヤモンド形状のセル205は、繰り返しパターンで長手方向及び/又は円周方向に整列され得る。追加的又は代替的に、ダイヤモンド形状のセル204及びダイヤモンド形状のセル205は、交互のパターンで螺旋状に整列され得る。一実施形態では、ダイヤモンド形状のセル204及びダイヤモンド形状のセル205は、円周方向にオフセットされている。追加的に、ダイヤモンド形状のセル205は、4つの隣接するダイヤモンド形状のセル204の間の中央位置に形成され得る。長手方向に整列されたダイヤモンド形状のセル204の2つの角の間の支柱206の幅は、長手方向に整列されたダイヤモンド形状のセル205の2つの角の間の支柱207の幅よりも大きい。
【0030】
ステントパターンの一実施形態は、
図5の単一ステント要素501に示される。その強度は、比較的厚い支柱506を有する緊密に閉鎖されたセル504、505から構成される設計によって付与される。バルーン上に径方向に圧縮される(圧着される)と、支柱506は、軸方向に(血管の長さに沿って)配向される。しかしながら、拡張されると、支柱506は、血管の直径に配向されるようになり、建物の柱のように、血管を崩壊させるように作用する円周方向圧縮力に付加的抵抗を与える。閉鎖セル構成はまた、繰り返し構造全体にわたって圧縮荷重を分散させ、それを変形に対して高度に抵抗性にする。閉鎖セル構成パターンのこの特定の実施形態は、拡張中に有意な短縮を伴う。この短縮は更に、支柱506をより小さい面積に集中させ、強度を増加させる。
【0031】
製造された、レーザ切断ポリマー足場の一例を
図6に示す。その新規ポリマー及び閉鎖セルパターンは、
図7に示されるように、同等のニチノール(NiTi)、316Lステンレス鋼(stainless steel、SS)、又はコバルト-クロム(cobalt-chromium、CoCr)デバイスと同等又はそれより良好な径方向の抵抗力を支持する。市販の自己拡張型(左側の棒1~9)及びバルーン拡張型(中央の棒10~13)金属ステントの径方向の抵抗力が、本明細書に記載されるEfemoral吸収性足場(右側の棒14)と比較して示されている。Efemoral足場は生体吸収性ポリマーから構成されるが、一般的な末梢金属ステントと同程度に強いか又はそれより強いことに留意されたい。これは、EverFlex(228μm、Medtronic、Minneapolis,MN)、Innova(213μm、Boston Scientific、Marlborough,MA)、Omnilink(210μm、Abbott Laboratories、Abbott Park,IL)及びS.M.A.R.T.(200μm、Cardinal Health、Dublin,OH)などの一般的な末梢金属ステントの厚さよりもわずかに大きいだけのストラット厚さを依然として維持しながら達成される。
【0032】
この吸収性のバルーン拡張型デバイスが、バルーン血管形成術中に動脈管腔を拡大する(及び残存狭窄を軽減する)ことが、ヒトにおいて実証された。
図8は、バルーン血管形成術で治療された左浅大腿動脈内の閉塞性病変の血管造影外観を示す。この処置は動脈開存性を回復させたが、結果は、50%を超える残存狭窄及び外傷性解離を残すことを含む最適以下であった。これらの合併症は両方とも、本明細書に記載の吸収性足場の即時移植によって効果的に治療された。75歳の男性の跛行の血管造影画像。左浅大腿動脈における患者の閉塞性病変が、処置前(左パネル)、バルーン拡張後(中央パネル)、及びEVSS展開後(右パネル)に示されている。白括弧は標的病変を示す。EVSS展開(右パネル)によって効果的に治療されたバルーン血管形成術(中央パネル)後の残存狭窄及び解離に留意されたい。
【0033】
経皮血管介入時の残存狭窄の治療のための本明細書に記載のステントの有効性は、EFEMORAL第I相臨床治験の結果によって例証される。EFEMORAL第I相臨床調査の目的は、大腿膝窩動脈の狭窄又は閉塞からの症候性末梢動脈閉塞症を有する患者における、シロリムス溶出Efemoral血管足場システム(Efemoral Vascular Scaffold System、EVSS)の安全及び性能を評価することである。現在までに、10人の対象がEFEMORAL Iに登録されている。彼らの平均年齢は75±8歳であった。80%が男性であり、全員がライフスタイルを制限する跛行(Rutherford-Beckerカテゴリー2又は3)を示し、平均足関節上腕血圧指数は0.74±0.15であった。全てが、中又は遠位浅大腿動脈(superficial femoral artery、SFA、n=9)又は外腸骨動脈(n=1)内に狭窄(n=6)又は閉塞(n=4)を有し、標的病変において90%±15%の平均径狭窄が5.4±2.0cmと測定された。ワイヤ交差後、全てを標準的なバルーン血管形成術で治療し、その直後に、シロリムスをロードした6mm×60mmの5足場EVSSを移植した。予測されるように、バルーン拡張型EVSSの移植は、バルーン血管形成術後の標的動脈管腔サイズを有意に増強し、残存狭窄を減少させ、バロトラウマ誘発性解離を平滑化した。これらの10人の患者において、バルーン血管形成術後の44±12%の平均残存狭窄は、EVSS移植後に3.2±15%に減少した。3.2%の平均処置後残存狭窄は、大腿膝窩動脈介入の臨床試験においてこれまでに報告された最も低いものである(
図11)。
図11は、経皮的大腿膝窩動脈血管介入の過去の治験(閉棒)と比較した、EFEMORAL第I相臨床治験(開棒)における処置後残存狭窄を示す。その結果、治療された動脈は、処置の時点で管腔がより大きくなり、したがって、時間とともに再狭窄及び/又は血栓症を起こしにくくなる。
【0034】
図9に折り畳まれていない単一のステント要素として示される別の実施形態もまた、可撓性を抑えながら径方向の力を最大化するように調整される。しかしながら、それは、特定の動脈及び病変において有用であり得る拡張を伴う短縮を制限するコネクタを含有する。このようにして、短縮の程度は、示された方法と同様の異なるパターンの要素を組み合わせることによって、特定の解剖学的必要性に合わせて調整することができる。
【0035】
本明細書に記載されるステントは、様々な異なる材料から形成され得る。一実施形態では、ステントは、ポリマー又はコポリマーで形成され得る。様々な代替実施形態では、ステント又はステント要素は、ポリ乳酸、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリグリコール酸、及びポリヒドロキシアルカノエートなどのポリエステル、ポリエステルアミドなどのアミノ酸系ポリマー、ポリトリメチレンカーボネートなどのポリカーボネート、並びに本明細書に記載されるタイプの任意及び全てのコポリマーなどであるが、これらに限定されない、人体で無毒に溶解するであろう任意の好適な生体吸収性材料から作製され得る。代替的な実施形態では、ステントは、金属などの永久材料から形成され得る。
【0036】
様々な実施形態では、任意の好適なポリマー又はコポリマーを使用して、ステントを構築することができる。「ポリマー」という用語は、ランダム、交互、ブロック、グラフト、分岐、架橋、混合物、混合物の組成物、及びこれらの変形物を含む、天然又は合成に関わらない、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを含む、重合反応の生成物を含むことを意図している。ポリマーは、粒子として真溶液中にあるか、飽和しているか、若しくは懸濁されているか、又は有益な薬剤中で過飽和であり得る。ポリマーは、生体適合性又は生分解性であり得る。限定ではなく例示の目的で、ポリマー材料には、L-ラクチド、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、ポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、サリチレート系ポリマー、半結晶性ポリラクチド、ホスホリルコリン、ε-カプロラクトン、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、ポリ-D、L-乳酸、ポリ-L-乳酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリジオキサノン(polydioxanone、PDS)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、及び脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリシロキサン及び置換ポリシロキサンを含むシリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート-co-PEG、PCL-co-PEG、PLA-co-PEG、PLLA-co-PCL、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、並びにこれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。他の好適なポリマーの非限定的な例としては、熱可塑性エラストマー全般、ポリオレフィンエラストマー、EPDMゴム、及びポリアミドエラストマー、並びにアクリルポリマーとその誘導体、ナイロン、ポリエステル、及びエポキシを含む生体安定性プラスチック材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、ステントは、ポリ-L-ラクチド(PLLA)又はポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)のような材料での、1つ以上のコーティングを含み得る。しかしながら、これらの材料は、単なる例であり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。コーティングは、薬剤と、薬剤を溶解し、足場構造ポリマーを膨潤又は軟化させることができる溶媒と、を含み得る。溶媒は、任意の単一の溶媒又は溶媒の組み合わせであり得る。限定ではなく例示の目的で、好適な溶媒の例としては、水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、アセテート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
本明細書に記載されるデバイスは、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、及び/又は血栓症などの管腔内介入の病理学的結果を予防又は減衰することを意図とした治療薬及び薬剤を含み得る。様々な実施形態では、任意の好適な治療剤(又は「薬物」)を、ステントに組み込むか、ステント上にコーティングするか、又は別様にステントに取り付けることができる。一実施形態では、薬剤は、シロリムス及び/又はその誘導体であり得る。そのような治療剤の例には、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗脂質剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症剤、過形成を阻害する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞接着促進剤、抗有糸分裂薬、抗フィブリン、抗酸化剤、抗腫瘍剤、内皮細胞回復を促進する薬剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、代謝拮抗物質、抗アレルギー物質、ウイルスベクター、核酸、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞浸透促進剤、血糖降下剤、脂質低下剤、タンパク質、核酸、赤血球新生刺激に有用な薬剤、血管新生剤、抗潰瘍/逆流防止剤、及び制嘔吐剤/制吐剤、フェノフィブラートなどのPPARアルファアゴニスト、ロシグリタゾン及びピオグリタゾンなどの選択されるPPAR-ガンマアゴニスト、ヘパリン二ナトリウム、LMWヘパリン、ヘパロイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バプリプロスト、プロスタサイクリン、及びプロスタシリン類似体、デキストラン、D-phe-pro-arg-クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、糖タンパク質IIb/IIIa(血小板膜受容体拮抗抗体)、組換えヒルジン、トロンビン阻害剤、インドメタシン、サリチル酸フェニル、ベータ-エストラジオール、ビンブラスチン、ABT-627(アストラセンタン)、テストステロン、プロゲステロン、パクリタキセル、メトトレキサート、フォテムシン、RPR-101511A、シクロスポリンA、ビンクリスチン、カルベジオール、ビンデシン、ジピリダモール、メトトレキサート、葉酸、トロンボスポンジン模倣薬、エストラジオール、デキサメタゾン、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソル、イオキシラン、イオジキサノール、及びイオトロラン、アンチセンス化合物、平滑筋細胞増殖抑制剤、脂質低下剤、放射線不透過剤、抗腫瘍薬、ロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、及びフルバスタチンなどのHMG CoAレダクターゼ阻害剤、並びにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、及び血栓溶解剤の例には、ヘパリンナトリウム、未分画ヘパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、レビパリン、アルドパリン、及びセルタパリンなどの低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バプリプロスト、プロスタサイクリン、及びプロスタシリン類似体、デキストラン、D-phe-pro-arg-クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa(血小板膜受容体拮抗抗体)、組換えヒルジン、及びビバリルジン、トロンビン阻害剤などのトロンビン阻害剤、及び血栓溶解剤、並びにウロキナーゼ、組換えウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、アテプラーゼ、及びテネクテプラーゼなどの血栓溶解剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤の例としては、エベロリムス、ゾタロリムス、タクロリムス、ノボリムス、リダフロリムス、テムシロリムス、及びピメクロリムスを含む、ラパマイシン及びその類似体、アンジオペプチン、カプトプリル、シラザプリル、又はリシノプリルなどのアンジオテンシン変換酵素阻害剤、ニフェジピン、アムロジピン、シルニジピン、レルカニジピン、ベニジピン、トリフルペラジン、ジルチアゼム、及びベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断薬、線維芽細胞成長因子拮抗薬、魚油(オメガ3-脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン、エトポシド及びトポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、並びにタモキシフェンなどの抗エストロゲンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
抗炎症剤の例としては、コルヒチン、並びにベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、及びヒドロコルチゾンなどのグルココルチコイドが挙げられるが、これらに限定されない。非ステロイド性抗炎症剤には、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサル、アセトミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、ケトロラック、メクロフェナム酸、ピロキシカム、及びフェニルブタゾンが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
抗腫瘍薬の例としては、アルトレタミン、ベンダムシン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、フォテムスチン、イホスファミド、ロムスチン、ニムスチン、プレドニムスチン、及びトレオスルフィンを含むアルキル化剤、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセルを含む有糸分裂阻害薬、メトトレキサート、メルカプトプリン、ペントスタチン、トリメトレキサート、ゲムシタビン、アザチオプリン、及びフルオロウラシルを含む代謝拮抗剤、塩酸ドキソルビシン及びマイトマイシンなどの抗生物質、並びにエストラジオールなどの内皮細胞の回復を促進する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
抗アレルギー剤には、ペミロラストニトロプルシドカリウム、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン、及び一酸化窒素が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
ステントは、加算法又は減算法を使用して製造され得る。記載される実施形態のうちのいずれにおいても、ステント又はステント要素は、シートとして製造される場合があり、円筒形に巻かれ得る。代替的に、ステント又はステント要素は、付加製造プロセスを用いて、円筒形に製造され得る。一実施形態では、ステントは、材料を円筒形の管に押し出すことによって形成され得る。いくつかの実施形態では、より長いステント要素が、製造プロセス中に形成され得、次に、より小さいステント要素/複数の要素に切断されて、多要素ステントを提供し得る。一実施形態では、ステント管は、ステント要素を形成するためのパターンでレーザ切断され得る。
【0044】
ここで、
図10を参照すると、一実施形態では、ステントは、マイクロステレオリソグラフィシステム100(又は「3D印刷システム」)を使用して製造され得る。様々な実施形態で使用され得る、現在利用可能なシステムのいくつかの例としては、MakiBox A6,Makible Limited,Hong Kong、CubeX,3D Systems,Inc.,Circle Rock Hill,SC、及び3D-Bioplotter(EnvisionTEC GmbH,Gladbeck,Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
マイクロステレオリソグラフィシステムは、照明器、動的パターン生成器、画像形成器、及びZステージを含み得る。照明器は、光源、フィルタ、電気シャッタ、コリメートレンズ、及び動的マスクを生成するデジタルミラーデバイス(digital mirror device、DMD)に均一に強い光を投射する反射鏡を含み得る。
図10は、DMDボード、Zステージ、ランプ、プラットフォーム、樹脂バット、及び対物レンズを含む、マイクロステレオリソグラフィシステム100の一実施形態のこれらの構成要素のうちのいくつかを示す。3D印刷システム/マイクロステレオリソグラフィシステム及び他の付加製造システムの詳細は、当該技術分野でよく知られているため、本明細書には記載しない。しかしながら、様々な実施形態によれば、現在知られているか、又は今後開発されるかに関わらず、本発明の範囲内でステントを製造するために、任意の付加製造システム又はプロセスを潜在的に使用することができる。言い換えれば、本発明の範囲は、任意の特定の付加製造システム又はプロセスにも限定されるものではない。
【0046】
一実施形態では、システム100は、動的マスク投射マイクロステレオリソグラフィを使用してステントを製造するように構成され得る。一実施形態では、製造方法は、コンピュータプログラムで3Dモデルをスライスし、システム内で層ごとに画像を固化及び積層することによって、3D微細構造足場を最初に生成することを含み得る。一実施形態では、システムの反射鏡を使用して、動的マスクを生成するDMD上に均一に強い光を投射する。動的パターン生成器は、マスクと同様の白黒領域を生成することによって、製造モデルのスライスされた区分の画像を作成する。最後に、画像を積層するために、解像度Zステージが上下に移動して、次の硬化のために樹脂表面をリフレッシュする。一実施形態では、Zステージ構築サブシステムは、約100nmの解像度を有し、基板を取り付けるためのプラットフォーム、ポリマー液体溶液を含有するためのバット、及び溶液の温度を制御するためのホットプレートを含む。Zステージは、下方に深く移動し、所定の位置まで上方に移動し、次に溶液が均一に分散されるまで一定の時間待機することによって、所望の層厚で新しい溶液表面を作製する。
【0047】
特定の実施形態を示し、説明してきたが、それらは、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び改変を実施形態のうちのいずれに対しても行うことができる。本発明は、代替例、改変例、及び同等物を網羅することを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管を通る血流を維持又は増強するために前記血管内に配置するためのデバイスであって、前記デバイスが、
ステントとして前記血管に埋め込まれるように構成された1つ以上のバルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素を含み、
前記ステントが、バルーン血管形成術後の残存狭窄及び解離を治療するために、血管壁において高い初期径方向の力を提供するように構成されており、
前記ステントが、移植後に時間とともに軟化及び分解するように更に構成されている、デバイス。
【請求項2】
前記血管の屈曲が、前記
バルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素間の空間の屈曲によって適応される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記
バルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素が、治療薬を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記治療薬が、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、又は血栓症を予防又は減衰させる、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記
バルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素が、より高い径方向の強度を達成するために、可撓性を抑えるように構成されたステントパターンを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ステントパターンが、短縮に対する抵抗を抑え、各ステント要素内の短縮を利用して、高い径方向の力を達成するように構成されている、請求項5に記載のデバイス。
【国際調査報告】