(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】エアロゾル制御
(51)【国際特許分類】
F24F 7/003 20210101AFI20240912BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F24F7/003
F24F7/007 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515838
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 GB2022052331
(87)【国際公開番号】W WO2023041910
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524092718
【氏名又は名称】エア ピュアリティ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スローフ, ダレン
(72)【発明者】
【氏名】ポデリコ, フランチェスコ
【テーマコード(参考)】
3L056
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L056BF06
(57)【要約】
監視エリア中の対応する複数の位置に対応する位置に配置された複数の粒子状物質(PM)センサと、通信ネットワークを介して複数のPMセンサのそれぞれに結合された空気品質処理装置であって、複数のPMセンサのうちの少なくとも2つから粒子レベル信号を受信し、対応する粒子レベル信号に基づいて少なくとも2つのPMセンサ間の微粒子物質流を決定するように構成された空気品質処理装置とを備える空気品質監視システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気品質監視システムであって、
監視エリア内の対応する複数の位置に配置された複数の粒子状物質(PM)センサ、
及び
通信ネットワークを介して前記複数のPMセンサのそれぞれに結合された空気品質処理装置であって、前記空気品質処理装置は、
前記複数のPMセンサのうちの少なくとも2つから粒子レベル信号を受信し、
前記対応する粒子レベル信号に基づいて、前記少なくとも2つのPMセンサ間の粒子状物質の流れを決定するように構成される、
空気品質処理装置を備える、
空気品質監視システム。
【請求項2】
前記空気品質処理装置は、
前記粒子レベル信号が第1の事象閾値を超えることに基づいて、前記少なくとも2つのPMセンサのうちの第1のPMセンサにおいてエアロゾル事象を検出すること、及び
前記粒子レベル信号が第2の事象閾値を超えることに基づいて、前記少なくとも2つのPMセンサのうちの第2のPMセンサにおいて前記エアロゾル事象を検出すること
によって、前記少なくとも2つのPMセンサ間の粒子状物質の流れを決定するように構成される、請求項1に記載の空気品質監視システム。
【請求項3】
前記第1のイベント閾値は、適応イベント閾値を含む、請求項2に記載の空気品質監視システム。
【請求項4】
前記第2の事象閾値は、前記第1の事象閾値のスケーリングされた値を含む、請求項2又は3に記載の空気品質監視システム。
【請求項5】
前記空気品質処理装置は、前記粒子レベル信号の対応するピーク間の遅延及び/又は振幅差に基づいて前記粒子状物質の流れを決定するように構成される、先行請求項のいずれかに記載の空気品質監視システム。
【請求項6】
前記空気品質処理装置は、前記少なくとも2つのPMセンサに関連する前記粒子レベル信号に相互相関を適用することによって、前記粒子状物質の流れを決定するように構成される、先行請求項のいずれかに記載の空気品質監視システム。
【請求項7】
前記空気品質処理装置は、
前記粒子状物質の流れの供給源、
前記粒子状物質の流れの経路、
前記粒子状物質の流れの速度、
前記粒子状物質の流れの減衰、及び/又は
前記粒子状物質の流れの予測される1つ以上の移動先を識別するように構成される、先行請求項のいずれかに記載の空気品質監視システム。
【請求項8】
前記空気品質処理装置は、1つ以上の空気品質介入機構を動作させるように構成された介入信号を出力するようにさらに構成される、先行請求項のいずれかに記載の空気品質監視システム。
【請求項9】
前記空気品質介入機構は、
自動ドア又はそのアクチュエータ、
空気濾過装置の動作パラメータ、
暖房、換気及び空調(HVAC)システムの動作パラメータ、及び
警告信号のうちの1つ以上を含む、
請求項8に記載の空気品質監視システム。
【請求項10】
前記空気品質処理装置は、
前記粒子状物質の前記発生源に関連する位置、
前記粒子状物質の流れの前記経路に関連する位置、及び/又は
前記粒子状物質の流れの前記1つ以上の可能性のある移動先に関連する位置において、
1つ以上の空気質介入機構を動作させるために前記介入信号を出力するように構成される、請求項8又は9に記載の空気品質監視システム。
【請求項11】
前記空気処理装置は、
1つ以上のPMセンサに関する前記粒子レベル信号をある期間にわたって分析して、前記1つ以上のPMセンサに関連する粒子状物質の存在度を決定する、及び
前記粒子状物質の存在度を示す存在率データを出力するように構成される、先行請求項のいずれかに記載の空気品質監視システム。
【請求項12】
前記存在度データは、
第1の存在度閾値を超える粒子状物質の存在度を有する1つ以上のPMセンサに対応する前記監視エリアの高リスク領域、及び/又は
第2の存在度閾値未満の粒子状物質存在度を有する1つ以上のPMセンサに対応する前記監視エリアの低リスク領域を示す、請求項11に記載の空気品質監視システム。
【請求項13】
前記粒子状物質の存在度は、前記1つ以上のPMセンサに関連する周期的なエアロゾル事象を含み、前記存在度データは、
前記周期的なエアロゾル事象、
前記周期的なエアロゾル事象の発生時間、及び/又は
前記周期的なエアロゾル事象に関連する前記1つ以上のPMセンサの位置を示す、請求項11又は12に記載の空気品質監視システム。
【請求項14】
前記空気処理装置は、前記周期的なエアロゾル事象に対応する時間に1つ以上の介入機構を動作させるための介入信号を出力するように構成される、請求項13に記載の空気品質監視システム。
【請求項15】
前記空気処理装置は、
前記監視エリアに関する運用データを受信する、
1つ以上のエアロゾル事象を前記運用データと相関させる、及び
前記相関に基づいてエアロゾル事象トリガを識別するように構成される、先行請求項のいずれかに記載の空気品質監視システム。
【請求項16】
前記PMセンサの各々は、前記PMセンサの検出下限から粒子状物質定格までの範囲内の粒子サイズを有する空気中の粒子状物質の濃度を測定するように構成される、先行請求項のいずれかに記載の空気品質監視システム。
【請求項17】
前記PMセンサのうちの2つ以上が、異なる高さに位置付けられる、先行請求項のいずれかに記載の空気品質監視システム。
【請求項18】
複数の更なるセンサをさらに備え、前記更なるセンサは、
二酸化炭素(CO2)センサ、
湿度センサ、
温度センサ、
及び気圧センサのうちの1つ以上を備える、先行請求項のいずれかに記載の空気質監視システム。
【請求項19】
監視エリア内の粒子状物質の流れを監視する方法であって、前記方法は、
前記監視エリア内に配置された少なくとも2つの粒子状物質(PM)センサから複数の粒子 レベル信号を受信することと、
前記対応する粒子レベル信号に基づいて、前記少なくとも2つのPMセンサ間の粒子状物質の流れを決定することとを含む、方法。
【請求項20】
医療環境のための空気品質システムであって、前記空気品質システムは、
複数の(PM)センサにおいて、監視エリア内の対応する複数の位置に配置された複数の粒子状物質(PM)センサ、及び
前記少なくとも1つのPMセンサに無線で結合された空気濾過装置であって、前記空気濾過装置は、
前記複数のPMセンサのうちの1つ以上から粒子レベル信号を受信し、
前記粒子レベル信号に応答して前記空気濾過装置のファン速度を調整するように構成される、空気濾過装置を備える、
空気品質システム。
【請求項21】
前記空気濾過装置は、前記複数のPMセンサのうちの1つ以上のそれぞれと前記空気濾過装置との間の距離に基づいて前記ファン速度を調整するようにさらに構成される、請求項20に記載の空気品質システム。
【請求項22】
前記空気濾過装置は、前記粒子レベル信号の受信信号強度指標に基づいて、前記複数の PMセンサのうちの前記1つ以上のそれぞれと前記空気濾過装置との間の距離を決定するように構成される、請求項21に記載の空気品質システム。
【請求項23】
前記PMセンサの各々は、前記PMセンサの検出下限から粒子状物質定格までの範囲内の粒子サイズを有する空気中の粒子状物質の濃度を測定するように構成される、請求項20から22のいずれかに記載の空気品質システム。
【請求項24】
各PMセンサは、複数の粒子状物質定格を備え、対応する複数の粒径範囲内の空気中の粒子状物質の複数の濃度を測定するように構成される、請求項23に記載の空気質システム。
【請求項25】
前記複数のPMセンサの各々は、複数の粒子サイズについて空気中の粒子状物質の濃度を測定するように構成され、
前記空気濾過装置は、
前記複数のPMセンサのうちの前記1つ以上のPMセンサの各々と前記空気濾過装置との間の距離、及び
前記複数のPMセンサのうちの前記1つ以上のPMセンサのそれぞれについての前記複数の粒子サイズ範囲のそれぞれについての粒子状物質の濃度に基づいて、前記ファン速度を調整するように構成される、請求項21又は請求項22に従属する場合の請求項24に記載の空気品質システム。
【請求項26】
前記空気濾過装置は、
高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、
炭素フィルタ、及び
UVCランプのうちの1つ以上を備える空気清浄機を備える、請求項20から25のいずれか一項に記載の空気品質システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気品質システム、空気品質監視システム、並びに空気品質を制御及び監視する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾルは、多くの疾患の既知の媒介物である。感染性病原体は、ウイルス、細菌、又は真菌を含み得、それらは、呼吸、会話、咳、くしゃみ、ほこりの発生、トイレの水洗、又はエアロゾル粒子もしくは液滴を生成する任意の活動を通じて拡散し得る。
【0003】
エアロゾルは、商業施設、教育施設、医療環境などの多くの屋内環境において感染リスクをもたらす可能性がある。エアロゾルは、病院などの医療環境において特定の感染リスクをもたらす可能性があり、そこでは、感染患者が、エアロゾルによって伝染し得る病原体を排出し、病院スタッフ、訪問者、及び他の患者に感染する可能性がある。医療環境は、典型的には、人の出入りが多く、疾患伝染のための大きな集団を提供する。医療環境はまた、典型的には、長距離にわたってエアロゾルを運ぶことができる産業用空調及び加熱システムを用い、可能性のある伝染の領域を広げる。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及びCOVID-19は、空気感染を介して医療環境内で急速に広がり得る病原体の周知の例である。
【0004】
屋内環境でエアロゾルの流れを監視することが望ましい。高レベルのエアロゾル発生に関連する高リスク事象を理解することも望ましい。さらに、屋内環境においてエアロゾル流を制御することが望ましい。開示されたシステム及び方法は、これらの望ましい効果のうちの1つ以上を提供することができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の態様によれば、空気品質監視システムが提供され、空気品質監視システムは、
監視エリア内の対応する複数の位置に配置された複数の粒子状物質(PM)センサ、
及び
通信ネットワークを介して複数のPMセンサのそれぞれに結合された空気品質処理装置であって、
複数のPMセンサのうちの少なくとも2つから粒子レベル信号を受信し、
対応する粒子レベル信号に基づいて、少なくとも2つのPMセンサ間の粒子状物質の流れを決定する、
空気品質処理装置を備える。
【0006】
空気品質監視システムは、監視エリア内のエアロゾルの流れを有利に追跡することができる。医療環境でこのようなエアロゾルの流れを決定し、理解することは、エアロゾルの発生に関連する危険因子を理解すること、エアロゾルの発生を低減し、エアロゾルの流れを低減するための設計緩和措置を可能にすること、粒子状物質及びエアロゾルの流れを低減するための介入措置の発動を可能にすることなど、いくつかの利点を提供することができる。
【0007】
空気品質処理装置は、少なくとも2つのPMセンサ間の粒子状物質の流れを、第1のイベント閾値を超える粒子レベル信号に基づいて、少なくとも2つのPMセンサのうちの1番目におけるエアロゾル事象を検出すること、及び第2のイベント閾値を超える粒子レベル信号に基づいて、少なくとも2つのPMセンサのうちの2番目における当該エアロゾル事象を検出することによって、決定するように構成することができる。
【0008】
第1のイベント閾値は、適応イベント閾値を含むことができる。
【0009】
第2のイベント閾値は、第1のイベント閾値のスケーリングされた値を含むことができる。
【0010】
空気品質処理装置は、粒子レベル信号の対応するピーク間の遅延及び/又は振幅差に基づいて、粒子状物質の流れを決定するように構成することができる。
【0011】
空気品質処理装置は、少なくとも2つのPMセンサに関連する粒子レベル信号に相互相関を適用することによって、粒子状物質の流れを決定するように構成することができる。
【0012】
空気品質処理装置は、粒子状物質の流れの発生源、粒子状物質の流れの経路、粒子状物質の流れの速度、粒子状物質の流れの減衰、及び/又は粒子状物質の流れの1つ以上の予測される移動先のうちの1つ以上を識別するように構成することができる。
【0013】
空気品質処理装置は、1つ以上の空気品質介入機構を動作させるように構成された介入信号を出力するようにさらに構成することができる。
【0014】
空気品質介入機構は、自動ドア又はそのアクチュエータ、空気濾過装置の動作パラメータ、暖房、換気及び空調(HVAC)システムの動作パラメータ、及び警告信号のうちの1つ以上を備えることができる。
【0015】
警告信号は、可聴及び/又は可視警報信号を含んでも良い。
【0016】
警告信号は、情報信号を含んでも良い。
【0017】
空気品質処理装置は、粒子状物質の発生源に関連する位置、粒子状物質の流れの経路に関連する位置、及び/又は粒子状物質の流れの1つ以上の可能性のある移動先に関連する位置で1つ以上の空気品質介入機構を動作させるために介入信号を出力するように構成することができる。
【0018】
空気処理装置は、1つ以上のPMセンサに関連する粒子状物質の存在度を決定するために、ある期間にわたって1つ以上のPMセンサの粒子レベル信号を分析し、粒子状物質の存在度を示す存在度データを出力するようにさらに構成することができる。
【0019】
存在度データは、第1の存在度閾値を超える粒子状物質の存在度を有する1つ以上のPMセンサに対応する監視エリアの高リスク領域、及び/又は第2の存在度閾値未満の粒子状物質の存在度を有する1つ以上のPMセンサに対応する監視エリアの低リスク領域を示すことができる。
【0020】
粒子状物質の存在度は、1つ以上のPMセンサに関連する周期的なエアロゾル事象を含むことができる。存在度データは、周期的エアロゾル事象、周期的エアロゾル事象の発生時間、及び/又は周期的エアロゾル事象に関連付けられた1つ以上のPMセンサの場所を示すことができる。
【0021】
空気処理装置は、周期的なエアロゾル事象に対応する時間に1つ以上の介入機構を動作させるための介入信号を出力するように構成することができる。
【0022】
空気処理装置は、監視エリアに関する動作データを受信し、1つ以上のエアロゾル事象を動作データと相関させ、相関に基づいてエアロゾル事象トリガを識別する。
【0023】
PMセンサの各々は、PMセンサの検出下限から粒子状物質定格までの範囲の粒子サイズを有する空気中の粒子状物質の濃度を測定するように構成することができる。
【0024】
各PMセンサは、複数の粒子状物質定格を備えてもよく、対応する複数の粒径範囲内の空気中の粒子状物質の複数の濃度を測定するように構成することができる。
【0025】
粒子状物質の定格は、0.5μm、1.0μm、2.5μm、4.0μm、10.0μm、25.0μm、及び50μmのうちの1つ以上を含んでも良い。
【0026】
検出下限は、0.05μm、0.1μm、0.3μm、及び0.5μmのいずれかを含んでも良い。
【0027】
PMセンサのうちの2つ以上を、異なる高さに配置することができる。
【0028】
空気品質監視システムは、通信ネットワークをさらに備えることができる。
【0029】
空気品質監視システムは、複数の更なるセンサを更に有することができる。更なるセンサは、二酸化炭素(CO2)センサ、湿度センサ、温度センサ、及び気圧センサのうちの1つ以上を備えることができる。
【0030】
空気品質監視システムは、複数のセンサユニットを備えてもよく、各センサユニットは、複数のPMセンサのうちの1つと、1つ以上の更なるセンサとを備えることができる。
【0031】
本開示の第2の態様によれば、監視エリア内の粒子状物質の流れを監視する方法が提供され、方法は、
監視エリア内に配置された少なくとも2つの粒子状物質(PM)センサから複数の粒子レベル信号を受信することと、
対応する粒子レベル信号に基づいて、少なくとも2つのPMセンサ間の粒子状物質の流れを決定することと、を含む。
【0032】
方法は、コンピュータで実施することができる。
【0033】
本開示の第3の態様によれば、空気品質監視システムが提供され、空気品質監視システムは、
監視エリア内の対応する複数の位置に配置された複数の粒子状物質(PM)センサ、
及び
通信ネットワークを介して複数のPMセンサのそれぞれに結合された空気品質処理装置であって、
複数のPMセンサの各々から粒子レベル信号を受信し、
少なくとも1つの粒子レベル信号に基づいてエアロゾルイベントを決定し、
1つ以上の空気品質介入機構を動作させるように構成された介入信号を出力するように構成される、
空気品質処理装置を備える。
【0034】
本開示の第4の態様によれば、空気品質監視システムが提供され、空気品質監視システムは、
監視エリア内の対応する複数の位置に配置された複数の粒子状物質(PM)センサ、
及び
通信ネットワークを介して複数のPMセンサのそれぞれに結合された空気品質処理装置であって、
前記複数のPMセンサの各々から粒子レベル信号を受信し、
1つ以上のPMセンサに関する粒子レベル信号をある期間にわたって分析して、1つ以上のPMセンサに関連する粒子状物質の存在度を決定し、
粒子状物質の存在率を示す存在率データを出力するように構成される、
空気品質処理装置を備える。
【0035】
本開示の第5の態様によれば、空気品質システムが提供され、空気品質システムは、
複数のPM)センサにおいて、監視エリア内の対応する複数の位置に配置された複数の粒子状物質(PM)センサ、及び
少なくとも1つのPMセンサに無線で結合された空気濾過装置であって、
複数のPMセンサのうちの1つ以上から粒子レベル信号を受信し、
粒子レベル信号に応答して空気濾過装置のファン速度を調整するように構成される、
空気濾過装置を備える。
【0036】
PMセンサからの粒子レベル信号に応答してファン速度を調整することは、空気濾過装置のオンデマンドの選択的制御を有利に提供することができる。
【0037】
空気濾過装置は、複数のPMセンサのうちの1つ以上のそれぞれと空気濾過装置との間の距離に基づいてファン速度を調整するようにさらに構成することができる。
【0038】
空気濾過装置は、粒子レベル信号の受信信号強度指標に基づいて、複数のPMセンサのうちの1つ以上のそれぞれと空気濾過装置との間の距離を決定するように構成することができる。
【0039】
PMセンサの各々は、PMセンサの検出下限から粒子状物質定格までの範囲の粒子サイズを有する空気中の粒子状物質の濃度を測定するように構成することができる。
【0040】
各PMセンサは、複数の粒子状物質定格を備えてもよく、対応する複数の粒径範囲内の空気中の粒子状物質の複数の濃度を測定するように構成することができる。
【0041】
粒子状物質の定格は、0.5μm、1.0μm、2.5μm、4.0μm、10.0μm、25.0μm、及び50μmのうちの1つ以上を含んでも良い。
【0042】
検出下限は、0.05μm、0.1μm、0.3μm、及び0.5μmのいずれかを含んでも良い。
【0043】
複数のPMセンサの各々は、複数の粒子サイズについて空気中の粒子状物質の濃度を測定するように構成することができる。空気濾過装置は、複数のPMセンサのうちの1つ以上のPMセンサの各々と空気濾過装置との間の距離と、複数のPMセンサのうちの1つ以上のPMセンサのそれぞれについての複数の粒径範囲のそれぞれについての粒子状物質の濃度とに基づいて、ファン速度を調整するように構成することができる。
【0044】
空気品質システムは、サーバをさらに備えてもよく、複数のPMセンサ及び/又は空気濾過デバイスは、通信ネットワークを経由してサーバに通信可能に結合される。
【0045】
空気品質システムは、複数の更なるセンサを更に備えることができる。更なるセンサは、二酸化炭素(CO2)センサ、湿度センサ、温度センサ、及び気圧センサのうちの1つ以上を備えることができる。
【0046】
空気品質システムは、複数のセンサユニットを備えてもよく、各センサユニットは、複数のPMセンサのうちの1つと、1つ以上の更なるセンサとを備える。
【0047】
空気濾過装置は、換気システム、暖房、換気及び空調(HVAC)システム、及び空気清浄機のいずれかを備えることができる。
【0048】
空気濾過装置は、高効率粒子空気(HEPA)フィルタ、カーボンフィルタ、及びUVCランプのうちの1つ又は複数を含む空気清浄機を備えることができる。
【0049】
PMセンサのうちの2つ以上を、異なる高さに配置することができる。
【0050】
コンピュータ上で実行されると、コンピュータに、本明細書に開示される回路、コントローラ、コンバータ、又はデバイスなどを含む任意の装置を構成する、又は本明細書に開示される任意の方法を実行させる、コンピュータプログラムを提供することができる。コンピュータプログラムは、ソフトウェア実装であってもよく、コンピュータは、非限定的な例として、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコントローラ、及び読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブルROM(EPROM)、又は電子的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)における実装など、任意の適切なハードウェアと見なすことができる。ソフトウェアは、アセンブリプログラムであっても良い。
【0051】
コンピュータプログラムは、ディスクやメモリデバイスのような物理的なコンピュータ可読媒体であることができるか、又は一時的な信号として実現できるコンピュータ可読媒体上に提供されることができる。そのような過渡信号は、インターネットダウンロードなどネットワークダウンロードであっても良い。実行されると、本明細書に開示されている任意の方法をコンピューティングシステムに行なわせる、コンピュータで実行可能な命令を格納する1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が提供され得る。
【0052】
ここで、添付の図面を参照して、1つ以上の実施形態を単に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本開示の実施形態による、医療現場におけるエアロゾルの流れを制御するための空気品質システムを図示する。
【
図2】本開示の実施形態による、空気品質監視システムを図示する。
【
図3】本開示の実施形態による、別の空気品質監視システムを図示する。
【
図4】
図3の空気品質監視システムによって捕捉されたエアロゾル事象の粒子状物質センサデータを図示する。
【
図5】
図3の空気品質監視システムによって捕捉されたエアロゾル事象の二酸化炭素センサデータを図示する。
【
図6】A及びBは、
図3のセンサの対についての捕捉されたエアロゾル事象についての粒子状ンサデータ間の相互相関を示す。
【
図7】A及びBは、
図3の別のセンサ対についての、捕捉されたエアロゾル事象についての粒子状物質センサデータ間の相互相関を示す。
【
図8】A及びBは、
図3のセンサの更なる対についての、捕捉されたエアロゾル事象についての粒子状物質センサデータ間の相互相関を示す。
【
図9】A及びBは、
図3のセンサの、なお更に別の対についての、捕捉されたエアロゾル事象についての粒子状物質センサデータ間の相互相関を示す。
【
図10】A~Dは、
図3のセンサの様々な対についての粒子状物質センサデータとCO2センサデータとの間の相互相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、本開示の実施形態による、屋内環境におけるエアロゾルの流れを制御するための空気品質システム100を図示する。この例では、屋内環境は、廊下104及び病棟区画106を含む病棟の一部を含む医療環境102である。空気品質システム100は、複数の粒子状物質(PM)センサ108a~108nを備える。この例では、空気品質システムは、医療環境102内の対応する複数の位置に配置された14個のPMセンサ108a~108nを備える。14個のPMセンサは、病棟区画106内の12個のPMセンサ108a~108lを含み、2つのPMセンサが各ベッド110に隣接し、2つのPMセンサが廊下にある。空気品質システム100は、PMセンサ108a~n(PMセンサ108と総称する)に無線で結合された空気濾過装置112を更に備える。空気濾過装置112は、センサ108a~108nのそれぞれから粒子レベル信号を受信し、粒子レベル信号に応答して空気濾過装置112のファン速度を調整する。空気除菌装置112は、PMセンサ108の複数の位置から離れた位置に配置される。言い換えれば、PMセンサ108は、空気濾過装置112から離れている。
【0055】
本明細書に開示されるように、空気濾過装置112は、空気中のPM含有量を低減することができる任意の装置を備えることができる。例えば、空気濾過装置112は、換気システム、暖房、換気及び空調(HVAC)システム(商業環境及び病院に設置されたものなど)、又は独立型空気清浄機を備えることができる。空気濾過装置112は、装置を通って空気を吸引するためのファンを備える。ファンの速度の増加は空気浄化/PMの減少の率の増加を実現する。
【0056】
PMセンサ108からの粒子レベル信号に応答してファン速度を調整することは、空気濾過装置112のオンデマンドの選択的制御を有利に実現できる。例えば、空気濾過装置112は、PMセンサ108が比較的高いPM含有量を示すときには、ファン速度を増加させて、高いPM低減率を提供し、PMセンサが比較的低いPM含有量を示すときには、ファン速度を減少させて、PM低減率を減少させることができる。その結果、空気濾過装置112は、空気中のPM含有量が比較的高い期間中に十分なPM低減を維持しながら、低減されたエネルギー消費及び騒音公害で動作することができる。
【0057】
さらに、PMセンサ108を用いて医療環境102を監視することによって、システム100は、有利には、感染性媒介物と直接関連付けられる粒子を監視することができる。例えば、MRSAは、25~50μm程度の大きさの粒子状物質を構成し得る死んだ皮膚を介して伝染することが知られている。COVID-19などの空気感染ウイルスは、2.5μm未満の(吸入可能な)粒子状物質サイズと関連することが示されている。感染性エアロゾル及び粒子状物質の流れは、患者の呼吸、くしゃみ、咳などによって直接的に、又はベッドシーツのフラッピング、カーテンの引き出しなどの感染性粒子を含む品目の揺動によって間接的に発生し得る。PMセンサ108は、停滞した空気/不十分な換気の領域又は多数の人々の存在のみを検出し得るCO2センサとは対照的に、粒子状物質の流れのすべての発生源を有利に検出することができる。
【0058】
本明細書に開示されるように、粒子状物質、粒子状物質センサ、及び特定物質センサ定格は、当技術分野で理解されるように言及される。粒子状物質は、空気中に見られる固体粒子と液滴との混合物を指す場合がある。粒子状物質は、0.1μmを超える粒子サイズ、例えば、0.1μm~50μmを指す場合がある。粒子状物質は、CO2の分子などの個々の分子を指すものではない。
【0059】
PMセンサ108は、ある範囲の粒子サイズについて、空気中の粒子状物質の濃度(1立方メートル当たりのマイクログラム)を測定することができる。PMセンサは、検出下限と粒子状物質定格との間の粒子サイズについて粒子状物質の濃度を測定することができる。下限の検出限界は、0.1μm程度、例えば、0.05μm、0.1μm、0.3μm又は0.5μmであっても良い。
【0060】
粒子状物質定格は、測定範囲の粒子サイズの上限を示すことがある。一例として、2.5μm(PM2.5)の粒子状物質定格を有するPMセンサ108は、検出下限から2.5μmまでの範囲の粒子サイズを有する粒子状物質の濃度を測定することができる。PMセンサ108は、0.5μm(PM0.5)、1.0μm(PM1)、2.5μm(PM2.5)、4.0μm(PM4)、10.0μm(PM10)、25.0μm(PM25)、及び50.0μm(PM50)のいずれの粒子状物質定格をも備えることができる。PMセンサは、複数の粒子サイズ範囲に対応する複数の粒子状物質定格を備えることができる。各センサの粒子レベル信号は、1つ以上の粒子サイズ範囲のそれぞれの濃度値を含んでも良い。10μm未満の粒径を有する粒子状物質は、吸入可能と呼ばれ得、2.5μm未満の粒径は、微細な吸入可能と呼ばれ得る。これらの粒子サイズを監視することは、有利には、空中の病気の伝染に関連する粒子状物質を直接監視する。
【0061】
PMセンサ108は、WiFiネットワーク、Bluetooth(登録商標)(クラシック又はBluetooth Low Energy)接続、又は他の既知のローカル無線接続などのローカル無線接続を介して空気濾過装置112に結合することができる。PMセンサ108は、それぞれ、空気濾過装置112と(通信ネットワークを介するのではなく)直接通信することができる。
【0062】
この例では、空気濾過装置112は、病棟区画106に配置された空気清浄器を備える。空気清浄機は、1つ以上の濾過機構を備えることができる。1つ以上の濾過機構は、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、炭素フィルタ、及びUVCランプのうちのいずれかを備えることができる。
【0063】
空気濾過装置112は、各PMセンサ108からの粒子レベル信号と、PMセンサ108と空気濾過装置との間の距離とに基づいて、ファン速度を調整することができる。このようにして、システム100は、関連するPMセンサ108の位置における空気濾過装置112のPM低減の有効性を考慮することができる。いくつかの例では、ファン速度は、各PMセンサ108までの距離の2乗に基づいても良い。例えば、ファン速度を決定する関数は、以下の形式をとることができる。
【数1】
ここでiはPMセンサインデックスであり、nはセンサの総数であり、k
iはi番目のセンサの較正定数であり、x
iはi番目のセンサと空気濾過装置112との間の距離である。
【0064】
いくつかの例では、空気濾過装置112は、PMセンサ108のそれぞれまでの距離と、複数の粒子サイズのそれぞれについての対応する濃度値とに基づいて、ファン速度を調整することができる。一例では、ファン速度を決定する関数は、以下の形式をとることができる。
【数2】
【0065】
いくつかの例では、関数f1~f4は、以下の形式をとることができる。
【数3】
ここで、k
11、k
12、k
21、k
22、k
31、k
32、k
41、k
42は定数であるか、ルックアップテーブル又はインデックスマッチによって導出される。
【0066】
いくつかの例では、PMセンサ108は、空気濾過装置112が各センサ108までの距離をメモリに記憶することができるように、所定の位置に固定して配置することができる。他の例では、PMセンサ108は、ユーザによって位置決めを指定できる。その結果、空気濾過装置112は、粒子レベル信号の受信信号強度インジケータ(RSSI)に基づいて、PMセンサ108までの距離を決定することができる。このようにして、ユーザは、所望に応じてPMセンサ108を有利に再配置することができる。例えば、病院環境では、センサは、脆弱な患者を保護するために再配置することができる。
【0067】
いくつかの例では、2つ以上のPMセンサ108を異なる高さに配置することができる。2つ以上のセンサは、ベッド110のいずれかの側、又は病棟区画106のいずれかの側など、監視される物体又は領域のいずれかの側に配置することができる。2つのセンサを異なる高さに配置することにより、エアロゾルの減衰又は落下速度を示すことができる。落下速度は、より大きな粒子サイズ(のより高い濃度)に関連する場合がある。異なる高さにおけるエアロゾルの浮遊レベルを理解することは、可能性のある粒子状物質の移動又は流れ及び関連するリスクを示すことができる。異なる高さセンサは、部屋の一方の側からのエアロゾル事象、及び/又はエアロゾルがベッドの足から患者の頭の上にどのように移動できるかを示すこともできる。異なった高さセンサは時間経過を使用してエーロゾルの流れを追跡し、潜在的に感染性のエアロゾルの速度を示すことができる。時間経過は、空気濾過ユニット112の換気速度送達可能要件、及び/又は監視エリア102にわたるエアロゾル移動を低減又は防止するための空気濾過ユニットの入口の最適位置を示すことができる。
【0068】
いくつかの例では、システム100は、1つ以上の更なるセンサを備えることができる。1つ以上の更なるセンサは、監視エリア102内の複数の位置に配置された複数の更なるセンサを備えることができる。いくつかの例では、1つ以上の更なるセンサが、PMセンサ108の各々と同じ場所に配置することができる。例えば、PMセンサ108の各々は、1つ以上の更なるセンサを備えるセンサユニットの一部を形成することができる。1つ以上の更なるセンサは、二酸化炭素(CO2)センサ、湿度センサ、温度センサ、及び気圧センサのうちの1つ以上を備えることができる。空気濾過装置112は、1つ以上の更なるセンサに対応する1つ以上の更なる信号に基づいてファン速度を調整することができる。1つ以上の更なるセンサは、システム100をサポートするために追加のデータを提供することができる。温度及び湿度センサは、HVACシステムによって提供される制御された環境を表すことができ、可能性のある対流性の流れ及び結果として生じる感染性のもののより速い、可能性のある拡散を最小限にするために、病棟区画106全体にわたって安定している必要がある。圧力センサは、空気流に影響を及ぼすことができ、空気濾過ユニット112の動作に応答して変化し得る、空気圧力学を監視するために有用となることができる。CO2センサは、粒子状物質PM1以下と相関し得るCO2濃度を監視することができる。したがって、CO2センサは、増加するリスクと人々の活動の追加の指標を提供することができる。例えば、1日のピーク時には、空気濾過装置112の性能のために粒子レベルは低いままであるべきであるが、CO2レベルは上昇することがあり、これは粒子レベルのなんらかの増加に関連する場合がある。システム100は、1つ以上の更なるセンサの測定値を示す信号を出力することができる。出力信号は、温度、湿度又は圧力勾配が検出されたという警告を含むことができる。いくつかの例では、出力信号がHVACシステムに提供され、温度、湿度、又は圧力勾配を修正することができる。
【0069】
いくつかの例では、空気濾過装置は、PMセンサ及び/又は1つ以上の更なるセンサを備えることができる。
【0070】
いくつかの例では、システム100は、1つ又は複数の屋外センサ、例えば、病院の建物の外側に配置されたセンサを備えることができる。1つ以上の屋外センサは、1つ以上のPMセンサ及び/又は1つ以上の更なるセンサを備えることができる。屋外センサは湿気、風の流れ、温度、PMの計数、圧力等を監察することができる。屋外センサはシステム100が粒子のレベルの季節的な変化を考慮することを可能にする。例えば、建物の外側と内側の間の温度勾配は、粒子状物質を運ぶ空気の流れを引き起し得る。更なる例として、背景粒子レベルは、空気中の花粉の変動のために季節的に変化し得る。
【0071】
いくつかの例では、システム100は、任意選択でサーバ114を備えることができる。サーバ114は、医療環境102内に配置されてもよく、又は他の場所(クラウド内)に位置することができる。センサ108及び/又は空気濾過装置112は、ローカルエリアネットワーク又はインターネットなどの通信ネットワークを介してサーバ114との通信を可能にするトランシーバを備えることができる。センサ108及び/又は空気濾過装置112は、記憶、監視、分析及び/又は介入のために、粒子レベル信号をサーバ114に出力することができる。以下に説明する本開示の第2の態様は、通信ネットワークを介して外部の空気品質処理装置に接続された複数のPMセンサを備える監視システムに関する。第2の態様に関連して説明される機能は、
図1に関連して説明される第1の態様に等しく適用することが理解されるであろう。
【0072】
図2は、本開示の実施形態による空気品質監視システム200を示す。
図1に存在する
図2の特徴は、200番台の対応する参照番号が与えられており、ここでは必ずしも再度説明しない。
【0073】
空気品質監視システム200は、屋内環境202におけるエアロゾル流を監視するように構成される。この例では、屋内環境は、廊下204及び病棟区画206を備える病棟の一部を備える医療環境202を備える。空気品質監視システム200は、医療環境202内の対応する複数の位置に配置された複数のPMセンサ208a~208nを備える。複数のセンサ208の各々は、通信ネットワーク218に結合される。空気品質監視システム200は、通信ネットワーク218によって複数のPMセンサのそれぞれに結合された空気品質処理装置216をさらに備える。空気品質処理装置218は、バックエンドサーバ上に位置する1つ又は複数のプロセッサを備えることができる。バックエンドサーバは、医療環境の別の部分に、又はクラウド内などの医療環境102に対して遠隔に配置することができる。空気品質処理装置218は、複数のPMセンサ208のうちの少なくとも2つから粒子レベル信号を受信するように構成することができる。空気品質処理装置218は、粒子レベル信号を処理し、対応する粒子レベル信号に基づいて、PMセンサ208のうちの少なくとも2つの間の粒子状物質の流れを決定することができる。
【0074】
空気品質監視システム200は、監視エリア内のエアロゾル流を有利に追跡することができる。医療環境でこのようなエアロゾルの流れを決定し、理解することは、エアロゾルの発生に関連する危険因子を理解すること、エアロゾルの発生を低減し、エアロゾルの流れを低減するための設計緩和措置を可能にすること、及び粒子状物質及びエアロゾルの流れを低減するための介入措置の活性化を可能にすることなど、多くの利点を提供することができる。
【0075】
図1に関連して上述したシステム100の特徴(更なるセンサ及びファン速度調整など)のいずれか、及びPMセンサ108の特徴(粒径範囲、特定の粒径範囲を監視する利点、及びPMセンサの位置決めなど)のいずれも、
図2のシステム200及びPMセンサ208に等しく適用することができ、その逆も同様であることが理解されよう。
【0076】
通信ネットワーク218は、ローカルエリアネットワーク及び/又はインターネットなどの広域通信網を備えることができる。通信ネットワーク218は、有線及び/又は無線通信経路を含むことができる。通信ネットワーク218は、(i)任意選択でWiFiなどの無線ネットワークを介して、複数のPMセンサ208とローカルに通信する、及び(ii)広域通信網接続を介して空気品質処理装置218と通信するためのローカルゲートウェイ220(又はハブ)含むことができる。他の例では、PMセンサ208は、有線ネットワークを介して、又はモバイル通信ネットワークもしくはWiFiネットワークなどの無線ネットワークを通じて、空気処理装置216と直接通信することができる。
【0077】
空気品質監視システム200は、粒子レベル信号における対応するピーク間の遅延及び/又は振幅差に基づいて、2つ以上のPMセンサ208間の粒子状物質の流れを決定することができる。いくつかの例では、空気品質処理装置216は、以下によって2つのPMセンサ間の粒子状物質の流れを決定することができる。(i)第1のPMセンサの粒子レベル信号が第1の事象閾値を超えることに基づいて、第1のPMセンサでエアロゾル事象を検出することと、(ii)第2のPMセンサの粒子レベル信号が第2の事象閾値を超えることに基づいて、第2のPMセンサで同じエアロゾル事象を検出することとを含む。第2のイベント閾値は、第1のイベント閾値以下であっても良い。
【0078】
一例として、患者がくしゃみをしたり、寝具を揺らしたりするなどのエアロゾル(粒子状物質)を発生させる事象(エアロゾル事象と呼ばれる)が、PMセンサ208h、208kに隣接するベッド210で発生した場合、空気品質処理装置216は、第1の事象閾値を超える粒子レベル信号に基づいて、ベッド210に隣接する第1のPMセンサ208h上のピークを検出することができる。後の時点で、空気品質処理装置216は、第2の事象閾値を超える対応する粒子レベル信号に基づいて、病棟区画206内の残りのセンサ208a~208g、208i~208lのうちの1つ以上で同じエアロゾル事象に対応するピークを検出することができる。さらに後の時点で、空気品質処理装置216は、第2の事象閾値を超える対応する粒子レベル信号に基づいて、廊下204に位置する更なるPMセンサ208m上の同じエアロゾル事象に対応するピークを検出することができる。このようにして、空気品質監視システム200は、医療環境202におけるエアロゾル事象からのエアロゾル流を追跡することができる。エアロゾル発生事象の追跡を示す例示的なデータの更なる考察を、
図3~10に関連して以下に記載する。
【0079】
第1及び第2の事象閾値は、監視システム200が、予想されるバックグラウンドレベルを上回る粒子レベル信号のピークとしてエアロゾル事象を検出することを可能にする。第1及び/又は第2の事象閾値は、粒子状物質の変化する背景レベルに従って適応する値を有する適応事象レベル閾値を含むことができる。例えば、病院の設定では、夜間と比較して日中に高いバックグラウンドレベルが予想され、訪問時間又は病棟巡回の間に更に高いバックグラウンドレベルが予想される等である。第1及び/又は第2のイベント閾値は、時刻及び/又は特定の日(週末対平日)に従って変化する時間依存適応閾値を含むことができる。閾値レベルは、システム200の設置後の初期較正期間に続いて決定することができる。
【0080】
空気処理装置216は、2つ以上のPMセンサ208間の粒子状物質の流れに関連する1つ以上のパラメータを識別することができる。1つ以上のパラメータは、(i)エアロゾル事象を検出する第1のPMセンサ208の位置に基づくエアロゾル流の発生源、(ii)エアロゾル事象を検出する2つ以上のPMセンサ208を結ぶベクトルに基づく粒子状物質の流れの経路又は移動方向、及び任意選択で、エアロゾル事象を検出する第1のPMセンサとエアロゾル事象を検出する各後続のセンサとの間の粒子信号レベルの減衰、(iii)エアロゾル事象を検出する2つ以上のPMセンサ208における対応するピーク間の遅延時間に基づくエアロゾル流の速度、(iv)エアロゾル事象を検出する第1のPMセンサとエアロゾル事象を検出する各後続のセンサとの間の粒子信号レベルの減少に基づくエアロゾル流の減衰、ならびに(v)エアロゾル流の経路、エアロゾル流の減衰、及び/又はエアロゾル流の速度に基づくエアロゾル流の1つ以上の可能性のある移動先のいずれかを含むことができる。
【0081】
いくつかの例では、空気品質監視システム200は、1つ以上の更なるセンサを備えることができる。1つ以上の更なるセンサは、監視エリア202内の複数の位置に配置された複数の更なるセンサを備えることができる。いくつかの例では、1つ以上の更なるセンサが、PMセンサ208の各々と同じ場所に配置することができる。例えば、PMセンサ208の各々は、1つ以上の更なるセンサを備えるセンサユニットの一部を形成することができる。1つ以上の更なるセンサは、二酸化炭素(CO2)センサ、湿度センサ、温度センサ、及び気圧センサのうちの1つ以上を備えることができる。第1の実施形態に関連して上述したように、また以下にさらに説明するように、温度、湿度及び/又は圧力を監視することは、(i)検出されたエアロゾル事象及び流れに寄与する要因を識別すること、及び(ii)エアロゾル流を軽減するための介入措置を識別することに役立つことができる。CO2を監視することは、(i)空気の停滞/換気不良の領域、及び(ii)エアロゾル事象の発生源を、人間の呼吸活動か、機械的活動(カーテンの開放、ベッドシーツの羽ばたきなど)から生じたかと識別するのに役立つことができる。
【0082】
いくつかの例では、システム200は、1つ以上の屋外センサ、例えば病院の建物の外側に配置されたセンサを備えることができる。1つ以上の屋外センサは、1つ以上のPMセンサ及び/又は1つ以上の更なるセンサを備えることができる。屋外センサは湿気、風の流れ、温度、PMの計数、圧力等を監察することができる。屋外センサは、システム200が粒子レベルの季節変動を考慮することを可能にする。例えば、建物の外側と内側の間の温度勾配は、粒子状物質を運ぶ空気の流れを引き起こし得る。更なる例として、背景粒子レベルは、空気中の花粉の変動のために季節的に変化し得る。
【0083】
いくつかの例では、空気品質処理装置216は、2つ以上のPMセンサ208間の粒子流を決定することに応答して、介入信号を出力することができる。空気品質処理装置216は、通信ネットワーク218を介して、1つ以上の(ネットワーク接続された)空気品質介入機構222に介入信号を出力することができる。いくつかの例では、空気品質監視システム200は、1つ以上の空気品質介入機構222含むことができる。
図2の例では、1つ以上の空気質介入機構は、病棟区画206上の自動ドア222を含む。
【0084】
1つ以上の空気品質介入機構は、自動ドア又はそのアクチュエータ、空気濾過装置の動作パラメータ、暖房、換気及び空調(HVAC)システムの動作パラメータ、及び警告信号のうちの1つ以上を含むことができる。空気品質システムは、介入信号を出力して、粒子状物質の流れ(エアロゾル事象)の発生源に関連する位置、粒子状物質の流れの経路に関連する位置、及び/又は粒子状物質の流れの1つ以上の可能性のある移動先に関連する位置で、1つ以上の空気品質介入機構を作動させる(又は動作させる)ことができる。
【0085】
いくつかの例では、空気品質システム200は、介入信号を出力して、1つ以上の自動ドア又は他の隔離手段を作動させて、粒子状物質の流れに関連する特定の領域を隔離することができる。このようにして、空気質監視システム200は、粒子状物質の流れを制限エリアに隔離し、感染性粒子の空気感染のリスクを低減することができる。
【0086】
いくつかの例では、空気品質システム200は、空気の濾過を増加させ、粒子状物質含有量を低減するために、空気濾過装置212を起動するか、又はその動作パラメータ(例えば、ファン速度)を調整するための介入信号を出力することができる。システム200は、粒子状物質の流れの発生源にあるか、又は粒子状物質の流れの経路に沿った1つ以上の空気濾過装置212に介入信号を出力することができる。このようにして、検出された粒子状物質を減少させ、それによって、その更なる広がりを減少させることができる。システム200は、粒子状物質の流れの1つ以上の予測された移動先にある1つ以上の空気濾過装置212に介入信号を出力することができる。このようにして、システム200は、粒子状物質の流れが到着する前に、ある領域における空気の濾過を最大化するための予防措置を取ることができる。空気濾過装置212は、換気システム、HVACシステム、及び空気清浄機のいずれかを備えることができる。空気清浄機は、HEPAフィルタ、カーボンフィルタ、及びUVCランプのうちの1つ以上を備えることができる。
【0087】
いくつかの例では、空気品質システム200は、HVACシステムを起動するか、又はHVACシステムの動作パラメータを調整するために介入信号を出力することができる。例えば、システム200は、PMセンサのうちの1つ以上に関連する領域の温度、換気、又は湿度を調整するために介入信号を出力することができる。いくつかの例では、システム200は、各PMセンサ208と同じ場所に配置された温度、湿度、圧力、及び/又はCO2センサを備えることができる。このようにして、システム200は、対応する閾値レベルを上回る温度、湿度、圧力、及び/又はCO2レベル、又はそれらの勾配を有するPM流に関連する領域を決定することができる。介入信号は、それに応じて、高い温度、湿度、圧力又はCO2レベル(又はその勾配)の領域を低減するようにHVACシステムを調整することができる。
【0088】
いくつかの例では、空気品質システム200は、介入信号を出力して、警告を起動することができる。警告は、サイレン又は点滅光などの可聴及び/又は可視警報信号を含むことができる。警告は、コンピュータシステム上の警告メッセージもしくはグラフィック、又は電子メール、テキストメッセージ、プッシュ通知、もしくは当技術分野で知られている他の警告機構などの情報信号を含むことができる。情報信号は、PM流の発生源、経路、及び/又は可能性のある移動先を示すために、屋内設定のグラフィック表現を含むことができる。グラフィック表現は、PM流の大きさ(及びリスクレベル)を示すために色分けすることができる。警告信号は、1人以上のユーザ(病院スタッフなど)にエアロゾル事象を警告してもよく、ユーザは、警告の発生源を調査し、及び/又は是正措置を取ることができる。
【0089】
いくつかの例では、空気品質監視システム200は、1つ以上のPMセンサ208のそれぞれからの粒子レベル信号を記憶するためのメモリを備えることができる。メモリは、1つ以上の更なるセンサから受信されたデータを記憶することもできる。
【0090】
空気処理装置216は、1つ以上のPMセンサ208に関する粒子レベル信号をある期間(例えば、1時間、1日、1週間、又は1ヶ月)にわたって分析して、1つ以上のPMセンサ208に関連するエリア内の微粒子物質の存在度を決定することができる。粒子状物質の存在度は、1つ以上のPMセンサ208に関連する粒子状物質の流れ又はエアロゾル事象の数又は頻度に関連することができる。特定物質の存在率は、平均粒子レベル信号、事象閾値を超えて費やされた総時間、又は1つ以上のPMセンサ208の任意の他の好適な粒子レベル信号メトリックに関連することができる。
【0091】
1つ以上のPMセンサ208の粒子状物質の存在度を決定することによって、空気品質監視システム200は、エアロゾル事象及び/又は粒子状物質の流れの相対的に高いレベル又は相対的に低いレベルにそれぞれ関連付けられた医療環境202の高リスクエリア及び低リスクエリアを決定することができる。例えば、空気処理装置212は、医療環境202の高リスクエリアを、第1の保有率閾値を超える粒子状物質保有率を有するエリアとして決定し、同様に、医療環境の低リスクエリアを、第2の保有率閾値未満の粒子状物質保有率を有するエリアとして決定することができる。空気処理装置216は、高リスクエリア及び低リスクエリアを示すレポート、グラフィックスなどのデータを出力することができる。その結果、ユーザは、それに応じて屋内設定を再設計することができる。例えば、低リスクエリア(例えば、アルコーブ内のベッド又は空気濾過装置212の隣)は、感染を伝染させる粒子状物質の流れが最小限になるように、高リスクの感染患者を配置するように指定することができる。これに対応して、エアロゾル発生事象に関連する高リスクエリアは、低リスク非感染性患者にのみ好適であると指定することができる。更なる例として、高リスクエリアにおける粒子状物質の流れを低減するための追加の介入機構を識別することができる。
【0092】
いくつかの例では、空気処理装置212は、1つ以上のPMセンサ208に関連する周期的なエアロゾル事象を決定するために、ある期間にわたって1つ以上のPMセンサ208の粒子レベル信号を分析することができる。例えば、空気処理装置212は、同じ粒子状物質の流れ及び/又はエアロゾル事象の定期的な発生(毎日、毎週など)を判定することができる。そのような周期的なイベントは、病院環境において、病棟巡回、訪問時間、食事時間、カーテンの開放、又は他の定期的なイベントのいずれかであり得る、ルーチン活動によって引き起こされ得る。
【0093】
いくつかの例では、空気処理装置212は、周期的エアロゾルイベント、周期的エアロゾルイベントの発生時間、及び/又は周期的エアロゾルイベントに関連する1つ以上のPMセンサの位置を示すデータを出力することができる。このようにして、ユーザは、周期的なエアロゾル事象を周期的な活動又は事象と相関させ、エリアを再設計する、周期的な活動を防止する、又はエアロゾル事象を最小限に抑えるために周期的な活動のプロセスを調整する(例えば、病棟巡回のスタッフの数を減らす)などの適切な改善策を講じることができる。
【0094】
いくつかの例では、空気処理装置212は、周期的エアロゾル事象に対応する時間に、周期的エアロゾル事象に関連する1つ以上のPMセンサ208の近傍で、1つ以上の介入機構を動作させるための介入信号を出力することができる。空気処理装置212は、周期的なエアロゾル事象の発生の少し前に、介入信号を1つ以上の介入機構に出力することができる。例えば、空気処理装置は、空気濾過装置のファン速度を増加させ、及び/又は自動ドアを作動させて、領域を隔離することができる。
【0095】
いくつかの例では、空気処理装置212は、監視エリア202に関連する動作データを受信することができる。空気処理装置212は、監視エリアに関連付けられたコンピュータシステム、手動ユーザ入力、及び/又はセンサ入力から運用データを受信することができる。運用データは、病棟巡回、食事時間、訪問時間、患者の入院及び退院、患者及びスタッフの病気などの運用イベント又は臨床イベントの詳細を含むことができる。空気処理装置212は、イベントの根本原因を識別できるように、運用の詳細をエアロゾルイベント、周期的エアロゾルイベント又は粒子状物質の流れと相関させてエアロゾルイベントトリガを識別することができる。ユーザ及び/又は空気品質監視システム200は、次いで、上述のように、是正措置を講じる、及び/又は緩和介入を実施することができる。いくつかの例では、空気処理装置212は、運用の詳細をエアロゾル事象と相関させるアルゴリズムを実施することができる。このアルゴリズムは、人工知能(AI)アルゴリズムであっても良い。
【0096】
空気処理装置212/アルゴリズムは、エアロゾル事象、周期的エアロゾル事象、又は粒子状物質の流れを識別する前に、粒子レベル信号に対して何らかの前処理を実行することができる。空気処理装置212/アルゴリズムは、以下の機能のうちの1つ以上を実行することができる。
●ノイズ除去
●スケーリング
●正規化-較正期間中、空気処理装置は、日ベース/週ベースなどで粒子レベル信号の正常値を定義することができる。このようにして、アルゴリズムは、正常値に基づいて第1及び/又は第2の事象閾値を決定することができる。
●ベクトル化-空気処理装置212は、第1の時間における第1のPMセンサでの第1の事象閾値を超える第1の粒子レベル信号のピークと、第1の時間の(すぐ)後の第2の時間における第2のPMセンサでの第2の事象閾値を超える第2の粒子レベル信号の対応するピークとに基づいて、粒子状物質の流れを決定することができる。空気処理装置212は、第1のPMセンサから第2のPMセンサへの粒子状物質の流れの「ベクトル」を定義することができる。
●周期的正規化-空気処理装置212は、第1の事象閾値を超える周期的な異常/ピークを識別して、周期的なエアロゾル事象を決定することができる。
●デシジョンツリー/ヒューリスティック検索/特定のアルゴリズム-空気処理装置212は、エアロゾルイベント、周期的なエアロゾルイベント、及び/又は粒子状物質の流れを軽減するために、以下を含む、1つ又は複数の手段を実行することができる。
〇検出されたエアロゾル事象に続いて、又は周期的なエアロゾル事象に対応する時間に、自動ドアを作動させること、又は空気清浄機のファン速度を増加させることなどの1つ以上の介入機構を遠隔制御するための介入信号を出力すること、
〇是正手段を講じるためにユーザに情報を出力すること。ユーザは、周期的なエアロゾル事象に対応する時間に効率を促進するか又は増加させるように、介入機構上の設定を調整することができるオペレータであっても良い。
【0097】
図2の実施形態は、2つのセンサ間の粒子状物質の流れを決定することに関連して説明されるが、粒子状物質の流れを決定することは任意であることが理解されるであろう。いくつかの例では、システム200は、第1の事象閾値を超える1つ以上のPMセンサ208の粒子レベル信号としてのエアロゾル事象の検出に基づいて、上述の介入又はデータ分析及び出力のいずれかを実施することができる。
【0098】
図3は、本開示の実施形態による別の空気品質監視システム300を図示し、
図4~
図10dは、空気品質監視システム300によって捕捉されたエアロゾル事象のPMセンサデータ及び分析を図示する。
図1又は
図2にも存在する
図3の特徴は、300番台の対応する参照番号が与えられており、ここでは必ずしも再度説明しない。
【0099】
空気品質監視システム300は、医療環境302内に位置する複数のPMセンサ308-a、30b-b、308-c、及び300-dを含む。第1のPMセンサ308-aは、病棟区画306内に位置する。第2のPMセンサ308-bは、廊下304内に、病棟区画306に隣接して位置する。第3のPMセンサ308-cは、病棟区画306の向かい側、廊下304のアルコーブ内に位置する。第4のPMセンサ308-dは、廊下304内の廊下ドア322の、第2のPMセンサ308-bとは反対側に位置する。システム300は、その他の点では、空気処理装置(図示せず)及びその関連する機能を含む、
図2のシステムと同じ構造的及び機能的特徴を有する。
【0100】
夜に患者が眠っていた際にベッド310から落ちたときに、ベッド310でエアロゾル事象が発生した。
【0101】
図4は、エアロゾル事象を取り巻く期間におけるPMセンサ308のそれぞれにおけるPM1濃度(検出下限と1μmとの間の粒子サイズ)に対応する粒子レベル信号430-a、430-b、430-c、430-dを示す。水平軸は、エポック単位の時間に対応し、各エポックは5秒に等しい。
【0102】
第1の粒子レベル信号430-aは、病棟区画306内の第1のPMセンサ308-aに対応し、エアロゾル事象に対応する大きなピーク(垂直スケールから外れている)を示す。第2の粒子レベル信号430-bは、廊下304内の第2のPMセンサ308-bに対応し、第1の粒子レベル信号430-aのピークから約5分遅れたピークを示す。遅延は、粒子状物質の流れがベッド310から第2のPMセンサ308-bまで移動するのにかかった時間に対応する。第3の粒子レベル信号430-cは、アルコーブ内の第3のPMセンサ308-cに対応する。浅いピークが、第2の粒子レベル信号430-bのピークと同じ時間のあたりにわずかに見える。第4の粒子レベル信号430-dは、廊下内の第4のPMセンサ308-dに対応する。浅いピークは、第2の粒子レベル信号430-bのピークと同じ時間のあたりにわずかに見える。
【0103】
図5は、エアロゾル事象を囲む期間におけるPMセンサ308(システム300は、PMセンサ308と同じ場所に配置されたCO2センサも備える)のそれぞれにおけるCO2濃度に対応するCO2レベル信号532-a、532-b、532-c、532-dを示す。CO2レベルのピークが、第1のPMセンサ308-aと同じ場所に配置されたCO2センサに対応する第1のCO2レベル信号532-aに見ることができる。CO2の上昇は、エアロゾル事象と関連している可能性がある。廊下304内のPMセンサ308-b、308-c、308-dと同じ場所に配置されたCO2センサに対応するCO2レベル信号532-b、532-c、532-dには、対応するピークは見られない。データは、CO2センサのみを使用してエアロゾル流を決定又は追跡することができないことを示す。
【0104】
上記に概説したように、システム312の空気処理装置は、少なくとも2つのPMセンサ308間の粒子状物質の流れを決定することができる。これに対する1つのアプローチは、関連する粒子レベル信号間の相互相関を適用することである。これは、裸眼では見えない場合がある異なる粒子レベル信号のピークを識別するのに役立つことができる(例えば、
図4の第3及び第4の粒子レベル信号のピークは、識別するのが困難である)。
図6a~
図9bは、エアロゾル事象を囲む期間におけるPMセンサ308a~308dからの粒子レベル信号430a~430d間の様々な相互相関を示す。
【0105】
図6Aは、第1のPMセンサ308-aからの第1のPM1粒子状物質レベル信号と第2のPMセンサ308-bからの第2のPM1粒子状物質レベル信号との間の相互相関を示す。74エポック(370秒)のタイムラグで相関のピーク(最大r=0.836)が見られる。これは、PM1粒子が病棟306から廊下304に移動していることを示す。
【0106】
図6Bは、第1のPMセンサ308-aからの第1のPM10粒子状物質レベル信号と、第2のPMセンサ308-bからの第2のPM10粒子状物質レベル信号との間の相互相関を示す。74エポック(370秒)のタイムラグで相関のピーク(最大r=0.836)が見られる。これは、PM10粒子が病棟区画306から廊下304に移動していることを示す。
【0107】
図7Aは、第1のPMセンサ308-aからの第1のPM1粒子状物質レベル信号と第4のPMセンサ308-dからの第4のPM1粒子状物質レベル信号との間の相互相関を示す。相関ピーク(最大r=0.527)が、92エポック(460秒)のタイムラグで見られる。これは、PM1粒子が、病棟区画306から廊下304内に移動し、次いで廊下304に沿って移動していることを示す。相関は、
図6Aほど強くなく、粒子状物質の流れが廊下304に沿って進むにつれて減衰することを示している。タイムラグは、廊下304に沿って移動するための追加の時間を反映してより大きい。
【0108】
図7Bは、第1のPMセンサ308-aからの第1のPM10粒子状物質レベル信号と第4のPMセンサ308-dからの第4のPM10粒子状物質レベル信号との間の相互相関を示す。相関性ピーク(最大r=0.522)は、92エポック(460秒)のタイムラグで見られる。これは、PM10粒子が、病棟区画306から廊下304に移動し、次いで廊下304に沿って移動していることを示す。相関は、
図6Aほど強くなく、粒子状物質が廊下304に沿って移動するにつれて、粒子状物質レベルの減衰を示す。タイムラグは、廊下304に沿って移動するための追加の時間を反映してより大きい。
【0109】
図8Aは、第1のPMセンサ308-aからの第1のPM1粒子状物質レベル信号と第3のPMセンサ308-cからの第3のPM1粒子状物質レベル信号との間の相互相関を示す。65エポック(325秒)のタイムラグで相関性ピーク(最大r=0.580)が見られる。これは、PM1粒子が病棟区画306から廊下304に移動していることを示す。
【0110】
図8Bは、第1のPMセンサ308-aからの第1のPM10粒子状物質レベル信号と第3のPMセンサ308-cからの第3のPM10粒子状物質レベル信号との間の相互相関を示す。65エポック(325秒)のタイムラグで相関性ピーク(最大r=0.573)が見られる。これは、PM10粒子が病棟区画306から廊下304に移動していることを示す。
【0111】
図9Aは、第2のPMセンサ308-bからの第2のPM1粒子状物質レベル信号と第3のPMセンサ308-cからの第3のPM1粒子状物質レベル信号との間の相互相関を示す。相関性ピーク(最大r=0.649)が、6エポック(30秒)のタイムラグで見られる。これは、PM1粒子が廊下304に沿って移動し、第2及び第3のPMセンサ308-b、308-cでほぼ同時に上昇及び下降することを示す。
【0112】
図9Bは、第2のPMセンサ308-bからの第2のPM10粒子状物質レベル信号と第3のPMセンサ308-cからの第3のPM10粒子状物質レベル信号との間の相互相関を示す。相関性ピーク(最大r=0.648)が、6エポック(30秒)のタイムラグで見られる。これは、PM10粒子が廊下304に沿って移動し、第2及び第3のPMセンサ308-b、308-cでほぼ同時に上昇及び下降することを示す。
【0113】
図10A~
図10Dは、それぞれ、病棟区画306内のCO2センサからの第1のCO2レベル信号と、第1、第2、第3、及び第4のPMセンサ308-a、308-b、308-c、308-dに対応する第1、第2、第3、及び第4のPM1粒子レベル信号との間の相互相関を示す。図は全て、病棟区画内のCO2レベルと各PM1センサにおけるPM1粒子状物質レベル信号との間の相関ピークを示す。これは複雑な関係であり、解釈するのは困難であるが、概して、病棟区画306内のCO2レベルが、(病棟区画306内でも)PM1レベルの前に上昇することを示唆する。
【0114】
廊下304内のCO2レベル信号532-b、532-c、532-dと他の任意の信号との間には、相関は見られず、これはCO2センサのみを使用して粒子状物質の流れを追跡することができないことを裏打ちしている。これは、特に、HVACシステムが存在する場合であり、HVACシステムは、濃度が高いエリアを非常に迅速に希薄化することができる。
【0115】
図4~
図9dのデータは、エアロゾル事象後の屋内環境における粒子状物質の流れの追跡を図示する。システム300は、上述した(例えば、粒子状物質の流れがそれに達する前に自動ドア322を閉じる、又は空気清浄機のファン速度を上げる)ような介入手段を実施することによって応答することができる。ユーザは、システム300からのデータ出力を評価して、追加の介入手段又は他の改善行動を決定することができる。
【0116】
上記の考察は、主に医療環境におけるシステムを対象としているが、本開示は、それに限定されず、開示されたシステムは、教育用及び商業用建物を含む任意の屋内環境に適用することが理解されるであろう。
【0117】
「に近い」、「前」、「少し前」、「後」、「少し後」、「より高い」、又は「より低い」などへの任意の言及は、文脈に応じて、閾値より小さいもしくは大きい、又は2つの閾値の間にある、対象とするパラメータを指すことができることが理解されるであろう。
【国際調査報告】