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特表2024-534364(1r,4r)-4-置換シクロヘキサン-1-アミンを生成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】(1r,4r)-4-置換シクロヘキサン-1-アミンを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 13/00 20060101AFI20240912BHJP
   C07B 57/00 20060101ALI20240912BHJP
   C07C 229/46 20060101ALI20240912BHJP
   C07C 227/30 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C12P13/00 ZNA
C07B57/00 360
C07C229/46
C07C227/30
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515866
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2022058641
(87)【国際公開番号】W WO2023042081
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P2100325
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(31)【優先権主張番号】P2200363
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310008859
【氏名又は名称】リヒター ゲデオン ニュイルヴァーノシャン ミューコェデー レースヴェーニュタールシャシャーグ
【氏名又は名称原語表記】Richter Gedeon Nyrt.
(71)【出願人】
【識別番号】504111451
【氏名又は名称】ブダペスティ ミーサキ エーシュ ガズダサーグトウドマーニ エジェテム
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ファルカシュ、エメシェ
(72)【発明者】
【氏名】ポッペ、ラースロー
(72)【発明者】
【氏名】ホルニャーンスキー、ガーボル
(72)【発明者】
【氏名】インツゼ、ダーニエル ヤーノシュ
(72)【発明者】
【氏名】エーレシュ、ヤーノシュ
(72)【発明者】
【氏名】サーンタ-ベル、エベリン
(72)【発明者】
【氏名】モルナール、ジョーフィア クラーラ
(72)【発明者】
【氏名】セメシュ、ヨージェフ
(72)【発明者】
【氏名】シュネイデル、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】チュカ、パール
【テーマコード(参考)】
4B064
4H006
【Fターム(参考)】
4B064AE01
4B064BH02
4B064BH08
4B064BH20
4B064BJ11
4B064CA21
4B064CA31
4B064CB30
4B064CC24
4B064CC30
4B064CD05
4B064DA01
4B064DA20
4H006AA02
4H006AC81
4H006BA49
4H006BJ20
4H006BN10
4H006BU42
(57)【要約】
本発明は、4-置換シクロヘキサン-1-アミンまたはそれらの任意の塩のジアステレオマー混合物(式(C)+式(T)):
から出発して、等モル量未満から等モル量までの量で使用されるアミンアクセプターの存在下、全細胞形態、可溶性形態または固定化形態の単一のトランスアミナーゼ生体触媒を使用することによって、式(T)の(1r,4r)-4-置換シクロヘキサン-1-アミン[トランス-4-置換シクロヘキサン-1-アミンとも称される]をバッチ方式または連続フロー方式で生成する方法に関する。本発明の第1の態様において、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル、より好ましくは、C1-6アルキルエステル、特に、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステルが生成され得る。本発明の第2の態様において、ヒドロキシル保護されたまたは保護基を含まない、トランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミン、特に、トランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンが生成され得る。本発明の第3の態様において、保護された2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)アセトアルデヒド、特に、トランス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンが生成され得る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-置換シクロヘキサン-1-アミンまたはそれらの任意の塩のジアステレオマー混合物(式(C)+式(T)):
【化1】
[ここで、式(T)および式(C)において、Gは、
- 水素原子;
- C1-6アルキル基;
- エステル部分(-COOR)(式中、Rは、好適なアルキル基、アラルキル基またはアリール基、好ましくは、C1-6アルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルから選択される置換基を表す);
- CH-OR’基(式中、R’は、水素原子、またはヒドロキシル保護基を表す);
- 式
【化2】
(式中、nは、1~2の整数である)の保護されたアルデヒド基;
- 置換もしくは無置換のアリール基、好ましくは、フェニル基;または
- アラルキル基、好ましくは、ベンジル基
から選択される置換基を表す]
から出発して、式(T)の(1r,4r)-4-置換シクロヘキサン-1-アミン[=トランス-4-置換シクロヘキサン-1-アミン]を生成する方法であって、
前記ジアステレオマー混合物を、等モル量未満から等モル量までの量で使用されるアミンアクセプターの存在下、全細胞形態、可溶性形態または固定化形態の単一のトランスアミナーゼ生体触媒と反応させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記反応が、バッチ方式または連続フロー方式で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
4-置換シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(式(C)+式(T))が、遊離塩基形態であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
4-置換シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(式(C)+式(T))が、塩形態、好ましくは、塩酸塩形態(式(C・HCl)+式(T・HCl)):
【化3】
であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
4-置換シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(式(C)+式(T))またはその塩形態が、約2:98~約99:1の比のシス/トランス異性体として提供されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)トランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリス(Vibrio fluvialis)トランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約37%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼを使用することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約40%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼを使用することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼを使用することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼを使用することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼを使用することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼを使用することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
等モル量未満のアミンアクセプター化合物として、好適なケトンまたはアルデヒドを使用することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アミンアクセプターケトンとして、式Kの4-置換シクロヘキサノン:
【化4】
(式中、Gは、前記式(C)および式(T)におけるGとして請求項1に記載した通りである)を使用することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ジアステレオマー混合物が、遊離塩基形態または塩形態の式(I)および式(II)の2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル:
【化5】
(式中、Rは、好適なアルキル基、アラルキル基またはアリール基、好ましくは、C1-6アルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルから選択される置換基を表す)からなることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
等モル量未満のアミンアクセプターケトンとして、ピルビン酸ナトリウムを使用することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アミンアクセプターケトンとして、式(III)の4-置換シクロヘキサノン:
【化6】
(式中、Rは、好適なアルキル基、アラルキル基またはアリール基、好ましくは、C1-6アルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルから選択される置換基を表す)を使用することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
アミンアクセプターケトンとして、式(IIIb)のエチル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート:
【化7】
を使用することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アミンアクセプターケトンとして、式(IIId)のイソプロピル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート:
【化8】
を使用することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
トランスアミナーゼとして、前記クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)酵素(CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる)を、バッチ方式で、使用することを特徴とする、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)トランスアミナーゼ(CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる)を、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
トランスアミナーゼとして、前記ビブリオ・フルビアリス酵素(VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる)を、バッチ方式で、使用することを特徴とする、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる)を、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
シス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA)を、連続フロー方式で使用することを特徴とする、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
多孔質ポリマー支持体上に共有結合的に固定化された状態のシス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA)を使用することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩のジアステレオマー混合物(式Ib・HCl+式IIb・HCl)から出発して、純粋な2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(式Ib)を生成することを特徴とする、
【化9】
請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸イソプロピルエステル塩酸塩のジアステレオマー混合物(式Id・HCl+式IId・HCl)から出発して、純粋な2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸イソプロピルエステル(式Id)を生成することを特徴とする、
【化10】
請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ジアステレオマー混合物が、遊離塩基形態または塩形態の式(IV)および式(V)の2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オール誘導体:
【化11】
(式中、R’は、水素原子、または好適なヒドロキシル保護基、好ましくは、ベンジル基を表す)からなることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
等モル量未満のアミンアクセプターケトンとして、ピルビン酸ナトリウムを使用することを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アミンアクセプターケトンとして、式(VI)の4-置換シクロヘキサノン:
【化12】
(式中、R’は、水素原子、または好適なヒドロキシル保護基、好ましくは、ベンジル基を表す)を使用することを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
アミンアクセプターケトンとして、式(VIa)の2-(4-オキソシクロヘキシル)エタン-1-オール:
【化13】
を使用することを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
トランスアミナーゼとして、前記クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)酵素(CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる)を、バッチ方式で、使用することを特徴とする、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)トランスアミナーゼ(CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる)を、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用することを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
トランスアミナーゼとして、前記ビブリオ・フルビアリス酵素(VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる)を、バッチ方式で、使用することを特徴とする、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる)を、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
シス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA)を、連続フロー方式で使用することを特徴とする、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
多孔質ポリマー支持体上に共有結合的に固定化された状態のシス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA)を使用することを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オール塩酸塩のジアステレオマー混合物(式IVa・HCl+式Va・HCl)から出発して、純粋な2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オール(式IVa)を生成することを特徴とする、
【化14】
請求項27~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ジアステレオマー混合物が、式(VII)および式(VIII)の2-(4-アミノシクロヘキシル)アセトアルデヒド誘導体:
【化15】
(式中、nは、1~2の整数である)からなることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
等モル量未満のアミンアクセプターケトンとして、ピルビン酸ナトリウムを使用することを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
アミンアクセプターケトンとして、式(IX)の4-置換シクロヘキサノン:
【化16】
(式中、nは、1~2の整数である)を使用することを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
トランスアミナーゼとして、前記クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)酵素(CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる)を、バッチ方式で、使用することを特徴とする、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)トランスアミナーゼ(CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる)を、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用することを特徴とする、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
トランスアミナーゼとして、前記ビブリオ・フルビアリス酵素(VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる)を、バッチ方式で、使用することを特徴とする、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる)を、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用することを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
シス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA)を、連続フロー方式で使用することを特徴とする、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
多孔質ポリマー支持体上に共有結合的に固定化された状態のシス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA)を使用することを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(式VIIa+式VIIIa)から出発して、純粋なトランス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン(式VIIa)を生成することを特徴とする、
【化17】
請求項38~46のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等モル量未満から等モル量までの量で使用されるアミンアクセプターの存在下、全細胞形態、可溶性形態または固定化形態の単一のトランスアミナーゼ生体触媒を使用することによって、4-置換シクロヘキサン-1-アミンまたはそれらの任意の塩のジアステレオマー混合物(式(C)+式(T))
【化1】
から出発して、式(T)の(1r,4r)-4-置換シクロヘキサン-1-アミン[トランス-4-置換シクロヘキサン-1-アミンとさらに称される]を、バッチ方式または連続フロー方式で、生成する新規方法に関する。本発明の第1の態様において、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル、より好ましくは、C1-6アルキルエステル、特に、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステルが生成され得る。本発明の第2の態様において、ヒドロキシル保護されたまたは保護基を含まない、トランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミン、特に、トランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンが生成され得る。本発明の第3の態様において、保護された2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)アセトアルデヒド、特に、トランス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンが生成され得る。
【背景技術】
【0002】
2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル、好ましくは、C1-6アルキルエステル、特に、トランス-4-アミノ-シクロヘキシル酢酸エチルエステルは、一般にカリプラジンとして公知の3-((1r,4r)-4-(2-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)シクロヘキシル)-1,1-ジメチルウレア[トランス-N-{4-[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]エチル]シクロヘキシル}-N’,N’-ジメチルウレアと称される]を含む、薬理活性物質の合成のための優れた出発材料であり、この合成は、国際特許出願WO2005/012266A1に最初に開示された。
【0003】
欧州においてReagila(登録商標)および米国においてVraylar(登録商標)として上市されたカリプラジンは、統合失調症および双極性マニア/混合エピソードの治療(L.Citrome,Expert Opin.Drug Metab.Toxicol.9,193-206(2013),DOI:10.1517/17425255.2013.759211)のための非定型抗精神病薬である(E.Agai-Csongorら Bioorg.Med.Chem.Lett.22,3437-3440(2012),DOI:10.1016/j.bmcl.2012.03.104)。これは、中枢神経系において、D3受容体(D3アンタゴニスト)に対する高い選択性を有するドーパミン受容体パーシャルアゴニスト(D3およびD2)である。
【化2】
【0004】
トランス-4-置換シクロヘキサンアミン単位(トランス配置を提供する、擬似不斉の2つの中心である1rおよび4rを含有する)は、薬理活性物質カリプラジンの化学構造の重要な要素である。したがって、カリプラジンの合成のために、中間体化合物のジアステレオマー的に純粋なトランス-異性体形態(I)のみが利用可能であり、ジアステレオマーのシス-異性体形態(II)の存在は所望されない。
【化3】
【0005】
式(I)のアミノエステル内の立体化学は、実際にトランスであるが(1-および4-置換基が、「折り畳まれていない」シクロヘキサン環の2つの逆側にあることを意味する)が、基本的な立体要素に分解される場合に、これは、実際には、シクロヘキサン環における疑似不斉の2つの中心(1r,4r)の存在によって引き起こされる(擬似不斉の中心は、CIPシステムにおいてr/sとマークされる;より詳細については、L.Poppeら Stereochemistry and Stereoselective Synthesis,Wiley-VCH Verlag KGaA,Weinheim(2016),52-54頁を参照されたい)。このシステムの固有の特徴は、擬似不斉の一方の中心が排除される(1r中心が脱アミノ化の際にケトン(III)に破壊される)と、他方の中心(この場合、4r)も、中心原子に直接付着した4つの共有結合のどれも変更することなく、完全に取り除かれることである。この点において、擬似不斉の2つの中心の存在によって引き起こされるシステムは、むしろ単一の立体単位として挙動、したがって、1つの立体記述子(シスまたはトランス)による説明がより適切である。
【0006】
式(Ib・HCl)により特徴付けられる(1r,4r)-4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物[2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩とさらに称される]出発材料は、WO2010/070368に記載される製造プロセスに従って、高品質で、単純反応工程を介した工業スケールで提供される。
【化4】
【0007】
このプロセスにおいて、安価で容易に利用可能な大スケールの工業的化学原料である2-(4-ニトロフェニル)酢酸は、Pd/C触媒を使用して、水性媒体中で水素化される。第1工程において、ニトロ基、および次いで芳香環が飽和され、次いで、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸のジアステレオマー混合物が、酸触媒反応において、エタノール媒体中でエステル化され、得られた2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル異性体混合物(Ib+IIb)から純粋な2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩(Ib・HCl)最終生成物が、選択的結晶化によって得られる。
【0008】
この手順を使用することによって、シクロヘキシル酢酸エステル(I+II)、例えば、エチルエステル(Ib+IIb)およびプロピルエステル(Ic+IIc)誘導体は、約1:1の比のトランス/シス-異性体の混合物で調製され、これは、トランス-ジアステレオマー(I)の比較的良好な収率で、トランス-およびシス-生成物(それぞれ、化合物IおよびII)に分離され得る。
【0009】
WO2010/070368の記載によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩(Ib・HCl)は、アセトニトリル処理後に、極めて高いジアステレオマー純度で、40%の収率で単離され得る。通常、トランス/シス混合物(Ib+IIb)は、結晶化によって分離される。
【0010】
X.-W.Chenらの刊行物(Synthesis 48(18),3120-3126(2016),DOI:10.1055/s-0035-1561865;Eur.J.Med.Chem.123,332-353(2016),DOI:10.1016/j.ejmech.2016.07.038)によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩(Ib・HCl)のN-アシル化(N-アセチル、N-Boc、N-(N’-ジメチルアミノ)カルボニル)誘導体は、中程度の単離収率(それぞれ、N-アセチルおよびN-(N’-ジメチルアミノ)カルボニル誘導体について、64%および62%)および優れたジアステレオマー純度(トランス:シス約100:0)で、シス/トランス異性体混合物から、エタノール中での直接再結晶によって単離され得る。
【0011】
CN2015/10649822の記載によれば、アミノ部分の保護なしの4-アミノシクロヘキサノンが原料として採用されている。この化合物から、ウィッティヒ反応を(ジメトキシホスフィニル)酢酸メチルエステルまたは(ジエトキシホスフィニル)酢酸エチルエステルを用いて実施し、次いで、得られた粗アルキル2-(トランス/シス-4-アミノシクロヘキシリデン)アセテート(Ia+IIa、またはIb+IIb)の接触水素化を経由して、塩形成結晶化に付して、より純粋なトランス生成物(化合物IaまたはIb、95~99.9:5~0.1のトランス:シス比を有する)を得ている。
【0012】
通常、接触還元後、対応する2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルのトランスおよびシス混合物(I+II)は、結晶化によって分離され、シス副生成物(II)は廃棄される。シス副生成物(II)のシス-およびトランス-異性体の混合物への異性化はまた、R.S.Muromovaら(Zhurnal Vsesoyuznogo Khimicheskogo Obshchestva im.D.I.Mendeleeva,10(6),711-712(1965):Chem.Abstr.64,51662(1966);USSR,SU177422 1965-12-18:Chem.Abstr.64,103634(1966))のプロセスによれば実現可能である。このプロセスにおいて、エチル2-(4-ニトロフェニル)アセテートは、EtOH中、60℃および100atmで、Rh-Pt上で98%の2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステルの混合シス/トランス異性体(化合物Ib+IIb)に水素化され、これらは、遊離酸の混合異性体に加水分解された。いずれかの異性体(化合物Ibまたは化合物IIb)または2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステルの異性体混合物(化合物Ib+IIb)をタングステン酸の存在下で、水性NaOH中、29%Hで処理することにより、80%のエチル4-オキソシクロヘキシルアセテートオキシムを得て、水性NaOH中、100℃、12時間で、遊離酸オキシムの対応する異性体組成物を得た。EtOH-10%HSO中、10~12℃および3Adm-2での遊離酸オキシムの電解還元により、50%のトランス-異性体を含有する混合2-(シス/トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸を得た。
【0013】
CN2018/10649822(Chem.Abstr.172,252756(2019))の記載によれば、カリプラジンは、トランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(IVa・HCl)からも調製され得る。
【化5】
【0014】
しかしながら、この化合物は、高価なルテニウム触媒により高圧下でのオートクレーブ中の水素化によって2-(4-ニトロフェニル)エタン-1-オールから調製され、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンのシス/トランス-ジアステレオマー混合物(化合物IVa+化合物Va)を提供し、それに続いて結晶化が支援する異性体分離が行われ得る。これらのジアステレオマー(化合物IVa+化合物Va)の場合、擬似不斉の1つの中心を除くことによっても(例えば、1r中心がケトン(VIa)に存在しない)、他の中心(4r)が完全に取り除かれる。
【0015】
WO2002006229(Chem.Abstr.136,134675(2002))の記載によれば、カリプラジンの構造に類似するβ-3アドレナリン受容体アゴニストである複素環式アミノアルコールは、トランス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(VIIa・HCl)から調製され得る。
【化6】
【0016】
このプロセスは、トランス-アミン(化合物VIIa)の遊離塩基形態のアミン部分のN’,N’-ジメチルウレア誘導体への最初の変換、それに続くアルデヒド部分の遊離および適当な第二級アミン試薬とのカップリングを含む。
【0017】
本発明者らの目的は、シス-異性体(式II)が、これまで廃棄物として処理されていた現在最も一般的な製造プロセスを改善すること、および温和な条件下での単一工程で、圧倒的大部分のシス副生成物(式II)の所望のトランス-異性体(式I)への変換を可能にすることであった。
【0018】
最初に、本発明者らは、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルのシス-およびトランス異性体(化合物I+II)の分離を、これまでの伝統的な製造方法の部分であった分離プロセスの場合よりも、生体触媒プロセスによってはるかにより効率的に行うことができると仮定した。驚くべきことに、我々は、単一の酵素が、シス-ジアステレオマー(化合物II)の分離だけでなく、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルのシス-ジアステレオマー(化合物II)の所望のトランス-中間体化合物(I)への動的異性化プロセスも触媒し得ることを見出した。
【0019】
バイオインフォマティクスの爆発的な発展により、生体触媒プロセスの酵素学的および分子生物学な実用的な適用は、より良く設計することができ、最近では、競合するプロセスになっている。
【0020】
類似する関連化合物について、ケトレダクターゼ(それぞれ、4-プロピルシクロヘキサノンおよび4-エチルシクロヘキサノンの対応するシス-およびトランス-アルコールへの還元)およびトランスアミナーゼ[メチル2-(3-オキソシクロヘキシル)アセテート誘導体および2-メチルシクロヘキサノンの対応するアミンへの]触媒の検討は、文献において利用可能であるが、生体触媒プロセスは、これまで、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルのジアステレオマー(IまたはII)のいずれかの立体選択的調製のために開発されていなかった。
【0021】
アルキル2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)アセテート(化合物I)のための、特に、化学構造(Ib・HCl)によって表されるエチル2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)-アセテート塩酸塩のためのトランスアミナーゼ(TA)触媒プロセスは、この目標の達成に有効であり得ると仮説を立てた。
【0022】
加えて、このプロセスを、バッチ方式だけでなく、連続フロー方式で行うことが可能であると考えた。酵素の安定性、活性および効率を増強し、グリーンな強化プロセスにおけるそれらの回収ならびにそれらの使用を可能にし得る、トランスアミナーゼの固定化および連続フロー適用の多くの例が文献に見出され得る。酵素は、単離(精製)形態で、トランスアミナーゼを産生する宿主細胞(野生型または組換えのいずれか)の抽出物で、またはさらに全細胞に組み込まれて、生体触媒として使用され得る。
【0023】
トランスアミナーゼ(TA)は、アミノドナーからカルボニル化合物への酸化還元的に中性のアミノ基の移動を触媒する。TAの働きは、電子および窒素シャトルとしての機能を果たすピリドキサール-5’-リン酸(PLP)補因子に依存する。最も頻繁に用いられるTAの適用は、キラルアミンの単一エナンチオマーを標的にする立体選択的プロセスである。単一のTAによって触媒される反応および目的とするキラルアミン調製は、2つの異なる種類のやり方に分けることができる:(i)不斉合成(AS)において、プロキラルケトンから出発して、好適なアミンドナーからのアミン移動が、キラルアミンを生成する(S.Mathewら ACS Catal.8(12),993-1001(2012),DOI:10.1021/cs300116n;D.Koszelewskiら Trends Biotechnol.28(6),324-332(2010),DOI:10.1016/j.tibtech.2010.03.003)、一方で(ii)速度論的分割(KR)において、ラセミアミンの一方の好ましいエナンチオマーが、単純なアミンアクセプターに対してアミンドナーとして作用し、それによって、ラセミアミンの残りのエナンチオマーおよび反応するエナンチオマーに対応するケトンの混合物をもたらす(D Pressnitzら ACS Catal.3(4),555-559(2013),DOI:10.1021/cs400002d)。
【0024】
これらのアプローチの適用は、ケトンまたはラセミアミンのいずれかの出発材料のアクセス性に依存する。実用的観点(100%の変換を達成可能)から、不斉合成は、むしろ好ましい種類の反応であるが、不斉反応の方向のしばしば好ましくない熱力学的平衡に起因して、速度論的分割がより好都合である。その支配を妨害し得る基質および生成物阻害現象である一部の熱力学的問題にもかかわらず、キラルアミン生成のための上記のプロセスは、TAの工業的適用がより広範になっていることを示す。
【0025】
C.K.Savileら(Science 329(5989),305-309(2010),DOI:10.1126/science.1188934)によって開示される調製方法は、工業的製造を行うためのTAの適用可能性を示す。CodeEvolver(登録商標)タンパク質操作技術を使用するMerck&Co.およびCodexisによるプロセスは、糖尿病の治療において使用される薬物の(R)-シタグリプチン(Januviaと示される)に関連して開発されている。合成の目標を達成するために、初期TAの新たなバリアントは、最初のラウンドにおける基質のウォーキング、モデリングおよび突然変異アプローチ、それに続く元のロジウム触媒不斉エナミン水素化(250psiで)が置き換えられ、合成全体が短縮されることによる突然変異型TA形態への指向進化により開発された。要約すれば、27の突然変異を、親(R)-選択的ATA117(アルスロバクター属種(Arthrobacter sp.))トランスアミナーゼにおいて行って、嵩高い種類の基質に対する結合ポケットの拡大を伴い、初期ATA117に対する4桁改善された活性、ならびにiPrNH(0.5~1M)、有機溶媒(5~50%のDMSO)、熱(45℃)およびケトン濃度(100g/L、250mM)の耐性の増加を有する、最終生体触媒を得た。金属触媒プロセスと比較して、このTA触媒プロセス(6g/Lのトランスアミナーゼが200g/Lのプロシタグリプチンケトンを変換し得る)は、>99.9%の鏡像体過剰率、10~13%の全収率の増加、53%の生産性の増加、および19%の総廃棄物の低減を伴って、(R)-シタグリプチンを提供した。
【0026】
逆のエナンチオマー優先度の2つのTAの支援により、ラセミアミンの変換は、いわゆる脱ラセミ化によって、エナンチオマーのいずれかに対して実現可能である(N.J.Turner,Curr.Opin.Chem.Biol.14(2),115-121(2010),DOI:10.1016/j.cbpa.2009.11.027)。2つの立体相補的TAを用いる脱ラセミ化は、一方のTAを用いる速度論的分割工程、それに続く立体相補的TAによるケトンを形成する不斉合成を含む。ラセミ化としての対応するケトンによる一方のアミンエナンチオマーの逆のエナンチオマーへの相互変換を考慮して、脱ラセミ化プロセスは、動的速度論的分割(DKR)とも称され得る。
【0027】
D.Koszelewskiらの刊行物(Eur.J.Org.Chem.(14),2289-2292(2009),DOI:10.1002/ejoc.200801265)において、α-キラル第一級アミンの脱ラセミ化は、2つの立体相補的TAからなる、2工程のワンポットカスケードプロセスによって行われる。速度論的分割(第1)工程が行われたら、TAは、熱ショックによって破壊され、逆の立体優先度を有する第2のTAは、組み合わされた反応系において、乳酸デヒドロゲナーゼとともに添加されて、反応平衡を所望のアミン側にシフトさせる。ラセミアミンのいずれかのエナンチオマー形態は、2つの異なる立体選択的TAの適用順序を切り替えることによって合成することができる。
【0028】
G.Shinらの刊行物(Chem.Commun.77(49),8629-8631(2013),DOI:10.1039/c3cc43348j)は、2つの逆のエナンチオ選択的TAからの第1のTAによってのみ許容されるアミノアクセプターを適用することによって、上記に言及したプロセスの欠点(KRにおける第1のTAの熱失活)に対する解決手段を提供する。この方法において、ワンポットの1工程の脱ラセミ化が開発されるが、依然として少なくとも2つの酵素を必要としている。
【0029】
C.S.Fuchsらの刊行物(Adv.Synth.Catal.360(4),768-778(2018),DOI:10.1002/adsc.201701449)およびWO2016/075082によれば、プレガバリンおよびブリバラセタムの調製は、iPrNHによる基質のシッフ塩基のイミン-エナミン互変異性化に起因する化学的ラセミ化と組み合わされた、適当なエナンチオ優先度のTAを用いるTA触媒エナンチオマー選択的アミノ化による、対応するラセミβ-キラルアルデヒドからβ-キラル第一級アミンをもたらすエナンチオ相補的な動的速度論的分割プロセスによって可能である。
【0030】
エナンチオマーの相互変換にも関連して、アミノ基シャトルとしての機能を果たす対称ケトン/アミン共基質の存在下で立体相補的TAの対によって触媒される、α-キラル第一級アミンについての酵素的ラセミ化戦略は、D.Koszelewskiらの刊行物(Chem.Eur.J.17(1),378-383(2011),DOI:10.1002/chem.201001602)に記載されている。この刊行物に開示されている別のアプローチは、アミノ基シャトルとして追加の外部対称ケトンおよび外部アミンドナーの非存在下での2つの立体相補的TA[ビブリオ・フルビアリス(Vibrio fluvialis)(VfS-TA)、ATA-117またはATA-113由来]を適用することによるケトン中間体を介した2つの異なるエナンチオ相補的α-キラル第一級アミンの生体触媒的交差ラセミ化である。
【0031】
F.Ruggieriらの刊行物(ChemCatChem 10(21),5012-5018(2018),DOI:10.1002/cctc.201801049)によれば、(R)-または(S)-1-メチル-3-フェニルプロピルアミンのラセミ化は、2つのエナンチオ相補的TA[クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)(CvS-TA)由来およびアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)(AoR-TA)由来]および共基質として最低量のピルビン酸塩/アラニンを用いることによって行うことができる。
【0032】
エナンチオピュアなキラルアミンの調製を目的とするエナンチオトープ選択性(エナンチオトピックな側を有するプロキラルケトンの不斉アミノ化における)およびエナンチオマー選択性(ラセミα-キラル第一級アミンの脱アミノ化による速度論的分割における)に加えて、TAのいくらか類似するジアステレオトープ選択性(ジアステレオトピックな側を有するケトンの不斉アミノ化における)またはジアステレオマー選択性(α-キラル/プロキラル第一級アミンのジアステレオマー混合物の脱アミノ化による速度論的分割における)も、さまざまな合成目標を行うためにいくつかの事例において使用されている(これらの種類の立体選択性の定義について、L.Poppeら Stereochemistry and Stereoselective Synthesis,Wiley-VCH Verlag KGaA,Weinheim(2016),127-129頁を参照されたい)。
【0033】
立体化学的により複雑な場合は、ラセミケトンのTA触媒転換であり、ここで、エナンチオマー選択性(ラセミケトンの2つのエナンチオマー間)は、ジアストロープ選択性(ケトンのC原子のプロキラル中心のRe及びSi側の間)と並行して現れ得る。どの種類の選択性が現れるかおよびどの化合物が化学的または酵素的に平衡であり得るかに依存して、動的速度論的分割と称されるTA触媒プロトコールが開発され、例えば、A.Mourelle-Insuaらの刊行物(Catal.Sci.Technol.9(15),4083-4090(2019),DOI:10.1039/C9CY01004A)によるα-アルキルβ-アミノアミドの合成では、出発のα-アルキルβ-ケト-アミドは、高い鏡像体過剰率(高いジアステレオトープ選択性に起因する)および中程度~高いジアステレオマー比(さまざまな度合いの化学的ラセミ化による中程度~良好なエナンチオマー選択性に起因する)で、α-アルキルβ-アミノアミドに変換される。
【0034】
それらの研究において、J.Limantoら(Org.Lett.16,22716-22719(2014),DOI:10.1021/ol501002a)は、TA触媒を使用して、ラセミケトンを、薬物のベルナカラントの中間体に選択的に転換する。ここでも、2つの選択性[エナンチオマー選択性(ラセミケトンのエナンチオマーを識別する)およびジアステレオトープ選択性(カルボニル基側の)]が並行して起こり得る。ベルナカラントのエナンチオマー的に純粋な調製は、両方の選択性に加えて、ケトンエナンチオマーのラセミ化(すなわち、動的異性化)もpHが約10の条件下で起こることを必要とする。高いエナンチオマー選択性およびジアステレトープ選択性の両方を示す対応するTAバリアントは、指向進化によって生成されて、高い選択性および80%を上回る単離収率でトランス-異性体を形成する(トランス:シス>95:1、>99.5%ee)。
【0035】
TA触媒DKR様プロセスについての別の例は、Z.Pengら(Org.Lett.16,860-863(2014),DOI:10.1021/ol403630g)によって開示されている。ラセミ2-置換4-ピペリドン誘導体から出発して、対応するトランス-アミンが、ATA-036トランスアミナーゼの使用から調製される(99%eeで、10:1のジアステレオマー比)。このプロセスは、ケトンに対してエナンチオマー選択的(分割)およびジアステレオトープ選択的(アミノ化)である。基質の環-鎖互変異性化による残りのケトンのラセミ化は、DKRプロセスを可能にし、ラセミケトンの所望の(2R,4R)-アミンへの85%の変換をもたらす。
【0036】
擬似不斉の2つの中心(1r,4r)の存在に起因するトランス-配置を有するカリプラジン以外に、さらなる薬物、例えば、セルトラリン、ダソトラリンは、それらの構造中にシス-またはトランス-配置を有する4-置換シクロヘキサンアミン単位を含有する。
【化7】
【0037】
しかしながら、4-置換シクロヘキサンアミン/シクロヘキサノン系の平面対称性を破壊する二環式系における縮合芳香環に起因して、4つの可能な立体異性体をもたらす不斉の2つの実際の中心の存在がこれらの薬物中に存在する。4つの可能な立体異性体を識別するために、環上の適切な立体中心を選択的に形成すること、またはエナンチオマー/ジアステレオマー分離を有することが可能であることが重要である。
【0038】
D.P.Gavinら(Sci.Rep.9,20285(2019),DOI:10.1038/s41598-019-56612-7)の研究は、追加の別個の立体中心を有するラセミアミンのTA触媒脱アミノ化が、可能性のあるエナンチオマー選択性およびジアステレオトープ選択性の両方が高いが、別個の立体中心が安定である場合に、KRプロセスを単純化することを示した。新たに単離されたシュードビブリオ属種(Pseudovibrio sp.)トランスアミナーゼ(PsS-TA)および以前に公知のCvS-TAは両方とも、脱メチル化セルトラリンジアステレオマー(スキーム1におけるシス-およびトランス-ノルセルトラリン)を生成するために探索された。
【化8】
【0039】
ラセミシス-異性体からの脱アミノ化によるKRは、両方のTAを用いて優れた変換をもたらし(高い度合いのエナンチオマー選択性に起因する)、得られる(S)-ケトンと一緒に高い純度(ee>99%)の(1R,4R)-異性体のままにした(高い度合いのジアステレオトープ選択性に起因する)。ラセミトランス-異性体の場合、CvTAのみが、著しい活性を示し、ここで、約50%の変換後、(R)-ケトンは、(1S,4R)-異性体(約80%のeeを有する)から形成されたが、残りの(1R,4S)-アミンは、約95%の鏡像体過剰率で得られた。このプロセスは、両方の(S)選択的TAが、より遠い立体中心の配置に対してもよりも、アミン結合立体要素の配置に対してはるかに感受性[(S)-選択的]であることを示す。
【0040】
ダソトラリンが、99%超の鏡像体過剰率で予想される(1R,4S)-ダソトラリンをもたらす(R)-選択的トランスアミナーゼを使用する還元的アミノ化によって(この場合、ジアステレオトープ選択性のみが可能である)、対応する(S)-ケトンから調製され得ることがUS2019/0390235に開示されている。
【0041】
TAによる4-置換シクロヘキサノンに対するジアステレオトープ選択性または4-置換シクロヘキシルアミンに対するジアステレオマー選択性の単独の出現は、それぞれ、しばしば適用されるエナンチオトープ選択性(プロキラルケトンの還元的アミノ化における)またはエナンチオマー選択性(α-キラル第一級アミンの酸化的脱アミノ化における)によく類似しているが、上記の例が示すように、我々は、他の種類の選択性とのみ組み合わされるジアステレオトープ選択性またはジアステレオマー選択性を利用する、さまざまな置換シクロヘキシルアミンのためのTAを用いる調製方法を見出した。
【0042】
単一のTAを使用して2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)、特に重要には、エチルエステル(Ib)を得るためのTA触媒調製方法の開発において、当初、本発明者らは、TAの可能性があるジアステレオトープ選択性(スキーム2A)またはジアステレオマー選択性(スキーム2B)の純粋な出現を利用するスキーム2に表される2つの選択肢を考慮した。
【化9】
【0043】
トランス-選択性のTA(スキーム2A)は、(4-アルコキシカルボニル-メチル)シクロヘキサノン(III)の直接的な所望の2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)への変換を可能にし得るが、シス-選択性のTA(スキーム2B)は、ジアステレオマー分割のために利用することができ、所望の2-(トランス-4-アミノ-シクロヘキシル)酢酸エステル(I)およびシス-異性体(II)から形成される対応する(4-アルコキシカルボニルメチル)シクロヘキサノン(III)の分離が容易な混合物をもたらす。
【0044】
アミンドナーとしてα-メチルベンジルアミンの対応するエナンチオマーを使用する、(4-エトキシカルボニルメチル)シクロヘキサノン(化合物IIIb)のジアステレオトープ選択的アミノ化のための3つの(S)-選択的TAおよび3つの(R)-選択的TAを用いる選択肢A)を標的にする本発明者らのスクリーニングは、所望の2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(化合物Ib)への直接調製に好適なトランス-選択性のTAがないことを明らかにした。トランス-エステル(化合物I)の形成のために必要な選択性を有するTAは見出されていないが、良好なシス-選択性を有するTAは、良好なジアステレオマー過剰率のあまり容易に利用可能ではないシス-エステル(化合物II)の調製に好適である。
【0045】
シス-ジアステレオマー優先度は、アミンのトランス/シス-異性体混合物(化合物I+II)のジアステレオマー分離によるトランス-異性体(化合物I)の調製を可能にする、選択肢B)のための要件である。幸いにも、(4-エトキシカルボニルメチル)シクロヘキサノン(化合物IIIb)からのアミノ化における高い度合いのシス-選択性は、良好なジアステレオマー過剰率(>90%decis)で、それぞれ、低い~中程度の変換をもたらすVfS-TAおよびCvS-TAバリアントを見出した。トランス/シス-アミン(化合物I+II)のジアステレオマー混合物は、対応するケトン(化合物III)よりも容易に利用可能であるので、ジアステレオマー混合物(化合物I+II)の異性体分離は、実行可能なプロセスであると考える。
【0046】
エナンチオピュアなキラルアミン調製を目的とし、ラセミ化合物から出発する類似のエナンチオマー選択的プロセスにおいて、立体相補的TAまたは基質における化学的感受性単位に起因する非酵素的ラセミ化のいずれかの適用は、反応するエナンチオマー内容物(content)に対する速度論的分割の変換限界を上回ることが必要であり、このようにして、動的速度論的分解または脱ラセミ化をもたらしたので、そのような効果は、単一のTAによるジアステレオマー混合物の異性体分離において予想されなかった。
【0047】
異性体2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(化合物Ib+IIb)のシス-ジアステレオマー内容物の脱アミノ化のためのアミンアクセプターとしてピルビン酸塩を利用するシス選択的TA(CvS-TAバリアントおよびVfS-TA)を用いる本発明者らのジアステレオマー分離実験は、予想外の驚くべき結果をもたらした。ある特定の反応時間で、TA生体触媒の特質ならびにアミンドナーの種類および量に応じて、消費されるシス-異性体(化合物IIb)よりも低い量のケトン(化合物IIIb)、および元のトランス-異性体(化合物Ib)内容物よりも高い量のジアステレオマー的に濃縮されたトランス-異性体(化合物Ib、最高で>98%のdetrans)から形成される混合物が得られた(Ibのモル分率、xtransは最高で>85%まで上昇)。これらの結果は、単一のTAによるシス-異性体内容物(化合物IIbのモル分率:xcis)のトランス-ジアステレオマー(化合物Ib)への予想外の動的異性化が、ジアステレオトープ選択的ケトンアミノ化の方向において、高いシス-選択性を示すことを示した。
【0048】
そのため、本発明は、バッチ方式または連続フロー方式のいずれかで行われ得る、トランス-4-置換シクロヘキサン-1-アミン(T)の合成のための、4-置換シクロヘキサン1-アミンのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(C+T)の、単一のトランスアミナーゼが触媒する動的異性化に関する。
【発明の概要】
【0049】
本発明による方法は、4-置換シクロヘキサン-1-アミンまたはそれらの任意の塩のジアステレオマー混合物(式C+式T):
【化10】
[ここで、式(T)および式(C)において、Gは、
- 水素原子;
- C1-6アルキル基;
- エステル部分(-COOR)(式中、Rは、好適なアルキル基、アラルキル基またはアリール基、好ましくは、C1-6アルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基から選択される置換基を表す);
- CH-OR’基(式中、R’は、水素原子、またはヒドロキシル保護基を表す);
- 式
【化11】
(式中、nは、1~2の整数である)の保護されたアルデヒド基;
- 置換もしくは無置換のアリール基、好ましくは、フェニル基;または
- アラルキル基、好ましくは、ベンジル基
から選択される置換基を表す]
から出発する、式(T)の(1r,4r)-4-置換シクロヘキサン-1-アミン[=トランス-4-置換シクロヘキサン-1-アミン]の生成であって、
ジアステレオマー混合物を、等モル量未満から等モル量までの量で使用されるアミンアクセプターの存在下、全細胞形態、可溶性形態または固定化形態の単一のトランスアミナーゼ生体触媒と反応させる、
生成に関する。
【0050】
第1の態様において、本発明は、等モル量未満から等モル量までの量で使用されるアミンアクセプターの存在下、全細胞形態、可溶性形態または固定化形態の単一のトランスアミナーゼ生体触媒を使用する、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルまたはそれらの任意の塩のジアステレオマー混合物(式(I)+式(II))から出発する、式(I)の2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルの生成に関する。
【化12】
【0051】
第2の態様において、本発明は、等モル量未満から等モル量までの量で使用されるアミンアクセプターの存在下、単一のトランスアミナーゼ生体触媒を使用する、対応するトランス/シス-ジアステレオマーまたはそれらの任意の塩の混合物(化合物IV+V)から出発する、式(IV)のヒドロキシル保護されたまたは保護基を含まないトランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンの生成に関する。
【化13】
【0052】
第3の態様において、本発明は、等モル量未満から等モル量までの量で使用されるアミンアクセプターの存在下、単一のトランスアミナーゼ生体触媒を使用する、対応するトランス/シス-ジアステレオマー混合物(化合物VII+VIII)からの保護された2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)アセトアルデヒド(VII)の生成に関する。
【化14】
【0053】
本発明による方法は、バッチ操作および連続操作の両方において実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】CvSW60C-TAのアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。
図2】VfS-TAのアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
図3】CvSW60C-TAおよびVfS-TAについてのペアワイズ配列アライメントを示す図である。
図4】ATA-217と名付けられたVfS-TAのバリアントにおける17の変異を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明による技術的解決手段は、一般的に言えば、上記で述べたように、4-置換シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(式C+式T)から出発して、式(T)の(1r,4r)-4-置換シクロヘキサン-1-アミン[=トランス-4-置換シクロヘキサン-1-アミン]を生成するために好適である。しかしながら、本発明は、特定の価値を有するいくつかの態様および実施形態を含む。
主に、本発明は、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)の合成のための2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(I+II)の単一のトランスアミナーゼが触媒する動的異性化を含む方法を提供する。しかし、同時に、動的異性化プロセスは、等モル量未満の量で使用されるアミンアクセプターの存在下、単一のトランスアミナーゼ生体触媒を用いる、それぞれ、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミン(式(IVa)+式(Va))または4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン(式(VIIa)+式(VIIIa))の対応するシス/トランス-ジアステレオマー混合物からの式(IVa)のトランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンまたは式(VIIa)のトランス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンの調製のためにも適用可能であり得る。
【0056】
2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)は、薬理活性物質の合成において使用される。具体的には、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸C1-6アルキルエステルのジアステレオマー的に純粋なトランス-異性体形態が適用される薬理活性物質の合成のためである。特に、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル生成物(Ib)は、カリプラジンとして一般に公知のトランス-N-{4-[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル]シクロヘキシル}-N’,N’-ジメチルウレアの合成において使用される。トランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミン(IVa)またはトランス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン(VIIa)はまた、カリプラジンに至る代替合成プロセスにおいて適用され得る。
【0057】
好ましく使用されるエステルにおいて、式IにおけるR基は、直鎖または分枝鎖を有する1~6個の炭素原子を含有するC1-6アルキル部分を表す。
【0058】
原薬であるカリプラジンの化学構造は、4-置換シクロヘキサンアミン単位を含有する。そのため、環上の置換基の適切な空間配置[すなわち(1r,4r)]を有する2つの疑似不斉中心を選択的に形成することが重要である。実際には、これは、エチル2-(4-アミノシクロヘキシル)アセテートHCl(Ib・HCl)のジアステレオマー的に純粋なトランス-異性体形態のみが適用可能であること、およびこのジアステレオマー(Ib)の選択的形成または中間体化合物(Ib+IIb)の2つのジアステレオマーの分離のいずれかが必須であることを特異的に意味する。
【0059】
上で言及したように、工業スケールの2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩(Ib・HCl)出発材料は、WO2010/070368に記載の製造プロセスによって、単純な反応工程を介して、高品質で提供される。この手順を使用することによって、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル誘導体、例えば、メチル、エチルまたはプロピルエステル誘導体は、約1:1の比のシス/トランス異性体の混合物(それぞれ、化合物Ia+IIa、Ib+IIb、またはIc+IIc)として調製され得る。この混合物(I+II)は、結晶化によって所望のトランス-生成物(I)およびシス-副生成物(II)に分離される。通常、シス-副生成物は、廃棄物として処理されるか、またはシス-およびトランス-化合物(I+II)の混合物への異性化によって、分離工程に再利用され得る。
【0060】
本発明者らは、バッチまたは連続フロープロセスの方法のいずれかを使用して、ジアステレオマー分離の競合的な技術的解決手段であるトランスアミナーゼ系生体触媒プロセスの実際の適用を行おうとした。
【0061】
驚くべきことに、この新たに設計された方法が、元のトランス-異性体(化合物I)内容物に限定された伝統的な分離に基づくプロセスの比較的良好な生成物収率を上回り、それによって、それが、はるかに効率的な方法でトランス-異性体(化合物I)を生成するのを可能にしたことを見出した。
【0062】
本発明者らは、ジアステレオマーのシス/トランス-混合物(化合物I+II)のシス-異性体(化合物II)内容物のほとんどが、単一のTAおよび等モル量未満の量の適当なアミンアクセプターを用いて異性化され得、良好な収率および高いジアステレオマー過剰率のトランス-異性体(化合物I)およびより低い量の対応する4-置換シクロヘキサノン(化合物III)の混合物をもたらす、生体触媒プロセスを開発した。本発明者らは、これまで伝統的な製造プロセスの一部分であった分離プロセスよりもはるかに効率的である方法の開発に成功した。
【0063】
本発明者らは、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(式I)、特に、C1-6アルキルエステル、好ましくは、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(化合物Ib)および2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸イソプロピルエステル(化合物Id)、最も好ましくは、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(化合物Ib)の生成のための生体触媒経路を初めて開発した。
【0064】
本発明によるこの解決手段は、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステルHCl(化合物Ib・HCl)が、カリプラジンの重要中間体であるので、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステルHCl(化合物Ib・HCl)の調製のための、したがって、カリプラジンの生成を改善するのに著しく寄与する、新たな工業的に適用可能な代替アプローチを意味する。
【0065】
対応する2-(4-オキソシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(IIIb)のTA触媒還元的アミノ化は、トランス-生成物(化合物Ib)を直接的に得る目的で、ジアステレオトープ選択的な方法として探索され、探索されたTAは、シス-形態(化合物IIb)を含有する生成物を優先的に生じた。
【0066】
2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸の一部のC1-6アルキルエステル、好ましくは、エチルエステルおよびイソプロピルエステルのシス/トランス-異性体混合物(それぞれ、化合物Ib+IIb、およびId+IId)のジアステレオマー選択的分離についての本発明者らの当初の研究仮説は、シス選択的TAの支援により、約1:1の比のシス/トランス異性体の得られた混合物(化合物I+II)が、等モル量未満の量のケトン型アミンアクセプターの存在下の生体触媒的方法によって分離できるということであった
【0067】
本発明者らは、驚くべきことに、等モル量未満の量のアミンアクセプター化合物としてピルビン酸塩の存在下でTAを使用する生体触媒プロセスの適用による異性体エステル(化合物I+II)の目的とする分離が、>98%のジアステレオマー過剰率で最高で>85%のトランス-異性体(化合物I)、および<15%のケトン(化合物III)を生じる優れた結果で成し遂げることができたこと、ならびにバッチ方式または連続フロー方式のいずれかで行われ得るプロセスが、シス-異性体(化合物II)のケトン(化合物III)への脱アミノ化以外のさまざまな度合いのシスからトランスへの異性化(化合物IIの化合物Iへの変換)を含んでいたことも見出した
【0068】
シス/トランス-2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(化合物I+II)、好ましくは、エチルエステル異性体混合物(化合物Ib+IIb)から出発する単一のTA触媒生体触媒的なシスからトランスへの異性化プロセスのために、等モル量未満の量のアミンアクセプター化合物として、2-(4-オキシシクロヘキシル)酢酸エステル(III)、好ましくは、2-(4-オキシシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(化合物IIIb)が適用され得、増強されたジアステレオマー過剰率(detrans約75~80%)を有するトランス-異性体(化合物Ib)、および初期量に近い追加の2-(4-オキシシクロヘキシル)酢酸エステル(化合物IIIb)の混合物をもたらした。再結晶によるこの混合物からのトランス-異性体(化合物Ib)の分離後、シス-異性体(化合物IIb)およびアミンアクセプターケトン(化合物IIIb)を含有する再結晶の母液からの混合物は、アミンアクセプター/出発ジアステレオマー混合物として次の異性化工程に直接的に再利用することができる。
【0069】
一般に、さまざまな官能基、例えば、芳香族基、脂肪族基およびカルボキシレート基を有するケトンの非立体選択的な還元的アミノ化は、P.Falusらの刊行物(Tetrahedron Lett.,52,1310-1312(2011),DOI:10.1016/j.tetlet.2011.01.062)に記載される方法に従って、バッチ方式または連続フロー方式のいずれかで成し遂げることができる。
【0070】
本発明者らの開発研究の間に、2-(4-オキシシクロヘキシル)酢酸エステル(I)、好ましくは、2-(4-オキシシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(IIIb)または2-(4-オキシシクロヘキシル)酢酸イソプロピルエステル(IIId)、最も好ましくは、2-(4-オキシシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(化合物IIIb)を、生体触媒的なシスからトランスへの異性化(化合物IIから化合物I)プロセスのためのアミンアクセプターとして試みた。
【0071】
Z.Molnarら(Catalysts,9,438(2019),DOI:10.3390/catal9050438)によって開示された固定化全細胞形態におけるラセミアミンの速度論的分割のために成功裏に既に適用されている、異なるエナンチオマー優先度を有する6つのトランスアミナーゼ酵素を、立体選択的プロセスのために考慮した。選択されたTAは、それぞれ、3つの(R)-選択的TAおよび3つの(S)-選択的TAの、アルスロバクター属種(ArR-TA)、その変異型バリアント(ArRmut-TA)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)(AtR-TA)由来の(R)-選択的TA;およびアルスロバクター・シトレウス(Arthrobacter citreus)(ArS-TA)、クロモバクテリウム・ビオラセウムの変異型バリアント(CvSW60C-TA)、ビブリオ・フルビアリス(VfS-TA)由来の(S)-選択的TAを含んでいた。
【0072】
4位においてアルコキシカルボニルメチル基で置換されたシクロヘキサノン(式III)は、バッチで、6つの(R)-または(S)-選択的トランスアミナーゼを用いて、対応するアルキル2-(4-アミノシクロヘキシル)アセテートのジアステレオマー(式Iまたは式II)に転換された。エチル2-(4-オキシシクロヘキシル)アセテート(化合物IIIb)から出発する試みは、クロモバクテリウム・ビオラセウム(CvSW60C-TA)[K.E.Cassimjeら(Org.Biomol.Chem.,10,5466-5470(2012),DOI:10.1039/C2OB25893E)]およびビブリオ・フルビアリス(VfS-TA)[F.G.Muttiら(Eur.J.Org.Chem.,1003-1007(2012),DOI:10.1002/ejoc.201101476]由来のTAによって、シス-ジアステレオマー(化合物IIb、decis>90%)の形成に好ましい最も高いジアステレオトープ選択性を明らかにした。そのため、シス選択的TAとしては、限定されるものではないが、それらのアミノ酸配列によって特徴付けられる、クロモバクテリウム・ビオラセウムTA変異体W60C(CvSW60C-TA)、およびビブリオ・フルビアリスTA(VfS-TA)が挙げられる。CvSW60C-TAのアミノ酸配列(配列番号1)は、図1によって示され、VfS-TAのアミノ酸配列(配列番号2)は、図2によって示される。CvSW60C-TAおよびVfS-TAについてのペアワイズ配列アライメントは、図3によって示される。図1および図2によって示される例示的な配列中の下線付きのアミノ酸は、親和性タグをコードし、したがって、それらは、配列比較に関与しない。
【0073】
シス-選択性を有する例示的なTAの2つのアミノ酸配列(それぞれ、図1および2に表されるCvSW60C-TAについての配列番号1およびVfS-TAについての配列番号2)は、37.1%の配列同一性を共有するので(図3を参照されたい)、配列番号1または配列番号2のいずれかに対して40%よりも高い配列同一性を有する任意のTAは、類似の触媒特性を有すると予想される。
【0074】
本発明は、少なくとも約100残基の領域にわたって、本発明の例示的な配列(CvSW60C-TAについての配列番号1またはVfS-TAについての配列番号2)のいずれかに対して少なくとも約37%、40%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単一のトランスアミナーゼによって、シス-4-置換シクロヘキサン-1-アミン(式Cによって特徴付けられる)を対応するトランス-4-置換シクロヘキサン-1-アミン(式Tによって特徴付けられる)に変換するための動的異性化方法であって、配列同一性が、本発明のアミノ酸配列との配列比較アルゴリズムによる解析によってまたは目視検査によって決定される、方法を提供する。
【0075】
本発明者らの実験結果によれば、等モル量未満の量のケトン型アミンアクセプターの存在下、単一のシス選択的TAの支援による、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸の一部のC1-6アルキルエステル(I+II)、好ましくは、エチルエステルおよびイソプロピルエステルのシス/トランス-異性体混合物(それぞれ、Ib+IIbおよびId+IId)からのジアステレオマー選択的速度論的分離を目的とするTA触媒反応は、高いジアステレオマー純度(detrans)、および元のシス/トランス-異性体混合物(化合物I+II)のトランス-異性体(化合物I)含有量(xtrans)よりも著しく高い収率で、トランス-異性体生成物(化合物I)を得るのを成し遂げることができる。したがって、本発明者らの発明した方法は、シス/トランス-異性体混合物(化合物I+II)の単純なジアステレオマー選択的速度論的分離ではなく、かなりの割合のシス-異性体副生成物(化合物II)を所望のトランス-異性体生成物(化合物I)に変換する動的異性化方法である。
【0076】
本発明に関連する任意の科学的背景理論に固執することなく、進行中の化学的プロセスについての説明は、等モル量未満の量のアミンアクセプターの存在下、シス-異性体(化合物II)⇔ケトン(化合物III)転換は、速度論的により好ましいが(両方の方向に比較的速く、したがって可逆的)、ケトン(化合物III)⇔トランス-異性体(化合物I)転換は、非常に遅く、その平衡は、熱力学的に好ましいトランス-異性体(化合物I)の方向にシフトする可能性がある。
【0077】
本発明の第1の態様を考慮して、本発明者らは、バッチ方法を使用して、ジアステレオマー分離の技術的解決手段であるトランスアミナーゼ系生体触媒プロセスの実際の適用を行おうとした。
【0078】
トランス/シス-アミン(ほぼ1:1の比の化合物Ib+IIb、25mM)から出発する動的異性化プロセスのための等モル量未満の量のアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウムを使用すると、トランス-異性体生成物の高いジアステレオマー過剰率(化合物Ib:detrans>95%)は、TA生体触媒処方および量に応じて、異なる反応時間で、クロモバクテリウム・ビオラセウムおよびビブリオ・フルビアリスTA(それぞれ、CvSW60C-TAおよびVfS-TA)の両方を用いて、達成することができる(表1)。
【0079】
【表1】
【0080】
表1における実施例4は、トランス-異性体(化合物Ib、xtrans=56%)およびシス-異性体(化合物IIb、xcis=44%)の混合物から出発して、バッチ方式で、2時間の反応時間後に、detrans>99%でトランス-異性体(化合物Ib:xtrans=86%)への良好な収率およびより少ない量のケトン(化合物IIIb:xketone=14%)を生じる、精製された可溶性CvSW60C-TAを用いる最良の設定を示す。この結果は、最高で68%の元のシス-異性体(化合物IIb)内容物が、所望のトランス-異性体(化合物Ib)に変換され得ることを実証している。
【0081】
表および図1に示された実施例は、著しい度合いのシスからトランスへの異性化[34~68%の元のシス-内容物(化合物IIb)の所望のトランス-異性体(化合物Ib)への変換]が、CvSW60C-TAのさまざまな形態(実施例1および4)またはVfS-TAの異なる調製物(実施例2、3、5および6)のいずれかを用いて達成することができたことを示した。
【0082】
表1に列挙された実施例は、シス選択的TAが、それらの精製された可溶性形態(実施例4および5)またはそれらの固定化形態の生体触媒、例えば、ゾル-ゲル封入によって固定化されたTA-発現全細胞(Z.Molnarら,Catalysts,9,438(2019),DOI:10.3390/catal9050438の方法による)(実施例1、2および3)、または多孔質ポリマー樹脂に共有結合的に付着した精製されたタンパク質(E.Abahaziら Biochem.Eng.J.132,270-278(2018),DOI:10.1016/j.bej.2018.01.022の方法による)(実施例6)として適用することができることも示している。
【0083】
トランス/シス-アミン(ほぼ1:1の比の化合物Ib+IIb、25mM)から出発し、アミンアクセプターとして4-置換シクロヘキサノン(化合物IIIb)またはシクロヘキサノンを使用する場合、熱力学的平衡(detrans約75~80%)は、TA生体触媒の形態および量に応じて、異なる反応時間後に達成することができる(表2)。
【0084】
【表2】
【0085】
表2における実施例7は、VfS-TAの固定化全細胞形態を用い、アミンアクセプターとして対応する4-置換シクロヘキサノン(化合物IIIb:xketone=11%)を使用して、トランス/シス-ジアステレオマー混合物(51.5:39.2の比の化合物Ibおよび化合物IIb)から出発する動的異性化プロセスにより、バッチ方式で、48時間の反応時間後に、ほぼ元の量のケトン(化合物IIIb:xketone=13.0%)以外に、著しく増加した量のトランス-異性体(化合物Ib:xtrans=74.6%でdetrans=71.5%)を得られることを示している。このデータは、固定化VfS-TA生体触媒を用いて、約53%の元のシス-異性体(化合物IIb)内容物を、所望のトランス-異性体(化合物Ib)に変換することができたことを意味する。WO2010/070368に開示される方法と類似する方法によるトランス/シス-分離は、ほぼ同一量のシス-異性体(化合物IIb)およびケトン(化合物IIIb)を含有する母液から混合物をもたらし得、これは、次の動的異性化サイクルにおいて、アミンアクセプター/シス-異性体混合物として再利用され得る。
【0086】
表2における実施例8は、精製された可溶性VfS-TAを用い、アミンアクセプターとして対応する4-置換シクロヘキサノン(化合物IIIb:xketone=11%)を使用して、トランス-異性体(化合物Ib、xtrans=44.4%)およびシス-異性体(化合物IIb、xcis=46.6%)の混合物から出発する動的異性化プロセスが、バッチ方式で、48時間の反応時間後に、元の量のケトン(化合物III:xketone=10.7%)と一緒に、detrans=75.7%を意味する、トランス-異性体(化合物Ib:xtrans=78.4%)の量の著しい増加と少量の残りのシス-異性体(化合物IIb:xcis=10.8%)をもたらし得ることを示している。このデータは、約53%の元のシス-異性体(化合物IIb)内容物を、所望のトランス-異性体(化合物Ib)に変換することができたことを意味する。
【0087】
表2における実施例9は、精製された可溶性VfS-TAおよびアミンアクセプターとしてシクロヘキサノン(0.2当量の量)を用いて、トランス-異性体(化合物Ib、xtrans=49%)およびシス-異性体(化合物IIb、xcis=51%)の混合物から出発する動的異性化プロセスが、バッチ方式で、48時間の反応時間後に、detrans=80.4%を意味する、トランス-異性体(化合物Ib:xtrans=85.9%)の量の最も高い増加と少量の残りのシス-異性体(化合物IIb:xcis=9.3%)をもたらし得ることを示している。このdetrans値は、おそらく、最も高い達成可能な熱力学的平衡比に近い。
【0088】
本発明の第2の態様を考慮して、本発明者らは、連続フロー方式を使用して、ジアステレオマー分離の技術的解決手段であるトランスアミナーゼ系生体触媒プロセスの実際の適用を行おうとした。
【0089】
フローケミストリーの使用は、合成方法論の右肩上がりの増加を目の当たりにしている(M.Giudiら Chem.Soc.Rev.49,8910-8932(2020),DOI:10.1039/c9cs00832b)。適用における幅広い多用途性は、アプローチのモジュール式の特質の結果であり、単一工程プロセスおよび複数工程プロセスの両方のために、新たな条件、機器、分析、自動化、および試薬の種類の容易な統合を可能にする。正確な制御は、優れた再現性および安全性をもたらし、医薬品工業のための合成においても、フローケミストリーをある範囲の領域に適用可能にする(M.Baumannら Org.Proc.Res.Dev.24,1802-1813(2020),DOI:10.1021/acs.oprd.9b00524;D.L.Hughes,Org.Proc.Res.Dev.24,1850-1860(2020),DOI:10.1021/acs.oprd.0c00156)。
【0090】
連続フローシステムにおける合成化学の利益は、よりグリーンで、より温和で、より低い温度で、かつ水性の条件下での反応を含む、生体触媒の利益と組み合わせることができる(J.Brittonら,Chem.Soc.Rev.47,5891-5918(2018),DOI:10.1039/c7cs00906b;P.De Santisら,React Chem.Eng.5,2155-2184(2020),DOI:10.1039/d0re00335b)。反応条件の微調整に加えて、連続フローシステムの使用は、酵素触媒の問題、例えば、基質および生成物阻害を軽減することができる。細胞および酵素を使用する反応は、連続システムにおける著しく改善された混合、物質移動、温度調節、圧力反応の実現可能性、自動化およびプロセス変動の低減、ならびに連続フローによって容易になる生成物分析および精製の利点を得ることができる。そのため、連続フローおよび生体触媒の組み合わせは、さまざまな合成目標を達成するための非常に効率的なアプローチとして浮上している。
【0091】
3つの理想的な反応器の種類の選択基準、すなわち、生体触媒のためのバッチ式撹拌漕反応器(BSTR)は、J.M.Woodley(Woodley,J.M.「Science of Synthesis:Biocatalysis in Organic Synthesis」における3.9.章、K.Faber,W.D.Fessner,N.J.Turner編;Thieme:Stuttgart(2015),3巻,515-546頁,DOI:DOI:10.1055/sos-SD-216-00331)およびR.Lindequeら(Catalysts 9,262(2019);DOI:10.3390/catal9030262)によって分析されている。
【0092】
BSTRは、一般に、それらの単純性および柔軟性に起因して、生体触媒反応のために使用されている。BSTRにおいて、最初に、基質および酵素は、機械的撹拌漕に入れられて、反応を開始し、その後、材料は、反応が停止されるまで、除去されない。BSTRにおいて、濃度は、反応器内の場所にかかわらず、同じである。初めは、基質は、最初に迅速に消費されるが、反応の後半では、反応速度は遅くなる。しかしながら、BSTRにおける十分な時間を考えると、平衡が好ましいという条件で、完全な変換を達成することができる。
【0093】
連続式撹拌槽型反応器(CSTR)の設計は、材料が連続的に添加され、そこから除去され、したがって、作業体積が一定のままであることを除いて、BSTRの設計と類似している。CSTRにおいて、生体触媒は、排出物における触媒の損失のバランスを取るように反応器に連続的に供給されるか、または固定化および/もしくは部分透過性膜によって反応器内に保持される。CSTRは、十分に混合されるので、反応器の内容物および排出物は、均一である。しかしながら、CSTRにおいて、排出物は、常に一部の基質を含有し、そのため、完全な基質変換は不可能である。反応速度と変換との間のこのトレードオフは、CSTRの重要な特徴である。
【0094】
連続式プラグフロー反応器(CPFR)において、反応物は、長い管状反応器にポンプで送られ、そこでは、撹拌漕とは異なって、そこを流れる材料は、その前またはその後ろを流れる任意の材料と混合しない。これは、BSTRにおける経時的な濃度勾配と同一の、反応器の長さにわたる濃度勾配をもたらす。したがって、反応器が十分に長い場合、基質は、完全に変換され得る。この理由のために、材料がCPFR中で費やす時間は、単に、反応器の長さおよび体積流量の関数である。可溶性触媒を用いてCPFRを操作することが可能であるが、生体触媒は、典型的には、反応器の壁に、または次に管に充填されて、連続式充填床反応器(CPBR)を形成する担体材料の粒子上に、固定化される。
【0095】
本発明者らは、連続フロー方式でトランス-異性体(式I)を生成することを意図して、CPFRにおいて、TAによって触媒されるトランス/シス-異性体混合物(式I+式II)から2-(トランス-4-アミノ-シクロヘキシル)酢酸エステル(式I)を生じる動的異性化を目的とする実験を行った。連続フロープロセスのための充填床反応器におけるTA調製物の適用性は、固定化TAの物理化学的特性、例えば、酵素密度、ならびに担体の表面、形状、細孔 多孔性および粒子サイズにおける利用可能性に依存する。TAのさまざまな固定化方法を、TA触媒の連続フロー速度論的分割プロセスのために使用することができる。CvSW60C-TAおよびVfS-TAは、Z.Molnarら(Catalysts,9,438(2019),DOI:10.3390/catal9050438)の方法に従って、固定化全細胞生体触媒として適用することができ、またはマクロ多孔質ポリマー樹脂上に共有結合的に固定化されたCvSW60C-TAも、E.Abahaziら(Biochem.Eng.J.132,270-278(2018),DOI:10.1016/j.bej.2018.01.022)によって記載されているようにして適用可能であった。
【0096】
本発明の好ましい実施形態によれば、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸のエチルまたはイソプロピルエステルのジアステレオマー混合物(それぞれ、Ib+IIbまたはId+IId)は、適切なシス選択的トランスアミナーゼ(例えば、クロモバクテリウム・ビオラセウムTAまたはビブリオ・フルビアリスTA)の存在下、ケトン(化合物III)中間体の形成を介して、アミンアクセプターとして等モル量未満のピルビン酸塩の存在下、非常にジアステレオピュアなトランス-アミン(I、detrans>99%)およびケトン(化合物III)の混合物に異性化された。
【0097】
動的異性化についての本発明者らの実験結果によれば、特に、シス選択的TAの固定化形態は、有利であり、より特に、CvSW60C-TAおよびVfS-TAは、有利であり、最も特に、マクロ多孔質ポリマー樹脂上に共有結合的に固定化されたCvSW60C-TA(CvSW60C-TACB)の使用は、有利であった。直列的に連結されたCvSW60C-TACB(約220mg)で満たされた充填床カラムにおいて、10μL分-1の流速で、トランス/シス-アミン(ほぼ1:1の比の化合物Ib+IIbまたはd+IId、20mM)およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.95当量)の溶液から出発する動的異性化プロセスは、トランス-生成物(化合物IbまたはId:detrans>99%)の優れたジアステレオマー過剰率をもたらした(表3)。
【0098】
【表3】
【0099】
表3における実施例10は、マクロ多孔質ポリマー樹脂上に共有結合的に固定化されたCvSW60C-TAを用いて、アミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.95当量を使用して、HCl塩形態のエチルエステルのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(30.3:69.7の比の化合物Ib・HCl+IIb・HCl)から出発する動的異性化プロセスを、連続フロー方式で行うことができることを示している。最適化されていないプロセスにより、48時間の連続操作後に、中間体ケトン(化合物IIIb:xketone=61.2%)以外に、増加した量のトランス-異性体(化合物Ib:xtrans=38.8%でdetrans>99)を得た。このデータは、固定化CvSW60C-TA生体触媒を用いて、元の30.3%のトランス-異性体(化合物Ib)含有量が、8.5%~38.8%増加し、HCl塩として所望のトランス-異性体(化合物Ib・HCl)について30.7%の単離収率が可能であることを意味する。
【0100】
表3における実施例11は、アミンアクセプターとしてのピルビン酸ナトリウム(0.95当量)の存在下、共有結合的固定化CvSW60C-TA生体触媒が、連続フロー方式で、それらのHCl塩形態のイソプロピルエステルのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(48.3:51.7の比の化合物Id・HCl+IId・HCl)の動的異性化に適用可能であり得ることを実証している。最適化されていないプロセスは、48時間の連続操作後に、中間体ケトン(化合物IIId:xketone=46.0%)に加えて、上昇した量のトランス-異性体(化合物Id:xtrans=54.0%でdetrans>99)を生成した。これらの結果は、固定化CvSW60C-TA生体触媒を用いて、初期の48.3%のトランス-異性体(化合物Id)の量が、5.7%~54.0%増加し、HCl塩として必要なトランス-異性体(化合物Id・HCl)について46.5%の単離収率を可能にすることを示している。
【0101】
表4に要約された本発明者らの実験結果によれば、シス選択的TAの固定化形態を用いる部分的動的異性化は、連続フロー方式で、4-置換シクロヘキシルアミンのシス/トランス-ジアステレオマー混合物(化合物C+化合物T)のさらなる選択を行うことができた。10μL分-1の流速で、直列的に連結されたCvSW60C-TACB(約220mg)で満たされた充填床カラムにおいて40℃でのトランス/シス-アミン(化合物C+T)およびアミンアクセプターとしてのピルビン酸ナトリウム(0.95当量)の溶液から出発する動的異性化プロセスは、トランス-生成物(化合物IbまたはId:detrans>99%)の優れたジアステレオマー過剰率をもたらした(表4)。
【0102】
【表4】
【0103】
表4における実施例12は、4-メチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(42:58の比の化合物C・HCl+T・HCl(G=H))から出発して、動的異性化プロセスを、連続フロー方式で、アミンアクセプターとしてのピルビン酸ナトリウム(0.95当量)の存在下、固定化CvSW60C-TA生体触媒を用いて行うことができることを示している。最適化されていないプロセスにより、24時間の連続操作後に、中間体ケトン(化合物K(G=H):xketone=19.8%)以外に、増加した量のトランス-異性体(化合物T(G=H):xtrans=80.2%でdetrans>99)を得た。このデータは、元の58.0%のトランス-異性体(化合物T(G=H))含有量が、22.2%~80.2%増加することを示している。その揮発性に起因して、生成物(化合物T(G=H))は単離されなかった。
【0104】
表4における実施例13は、アミンアクセプターとしてのピルビン酸ナトリウム(0.95当量)の存在下、共有結合的固定化CvSW60C-TA生体触媒が、連続フロー方式で、4-エチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(65.4:34.6の比の化合物C・HCl+T・HCl(G=Me))の動的異性化に適用可能であり得ることを実証している。最適化されていないプロセスは、24時間の連続操作後に、中間体ケトン(化合物C+T(G=Me):xketone=53.8%)に加えて、増加した量のトランス-異性体(化合物T(化合物T(G=Me):xtrans=46.2%でdetrans>99)を生成した。これらの結果は、初期の34.6%のトランス-異性体(化合物T(G=Me))の量が、11.6%~46.2%増加し、HCl塩として必要なトランス-異性体(化合物T・HCl(G=Me))について30.4%の単離収率を可能にすることを示している。
【0105】
表4における実施例14は、樹脂固定化CvSW60C-TA生体触媒およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.95当量の量)を用いて、4-フェニルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(26.2:73.8の比の化合物C・HCl+T・HCl(G=Ph))から出発する最適化されていない動的異性化プロセスが、連続フロー方式で、24時間の反応時間後に、最も高い量のトランス-異性体(化合物T(G=Ph):xtrans=83.2%)をもたらすことができ、HCl塩として必要なトランス-異性体(化合物T・HCl(G=Ph))について77.7%の単離収率が可能であることを示している。
【0106】
表4における実施例15は、アミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.95当量)の存在下、固定化CvSW60C-TA生体触媒を用いて、4-ベンジルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(50.7:49.3の比の化合物C・HCl+T・HCl(G=CHPh))から出発する動的異性化プロセスが、連続フロー方式で、達成することができることを検証している。最適化されていないプロセスは、24時間の連続操作後に、中間体ケトン(化合物K(G=CHPh):xketone=40.2%)以外に、増加した量のトランス-異性体(化合物T(G=CHPh):xtrans=59.8%でdetrans>99)をもたらした。このデータは、元の58.0%のトランス-異性体(化合物T(G=H))含有量が、10.5%~59.8%増加し、HCl塩として必要なトランス-異性体(化合物T・HCl(G=CHPh))について54.1%の単離収率を可能にすることを示している。
【0107】
要約すると、表1~4におけるすべての本発明者らの実験は、4-置換シクロヘキサン-1-アミン(化合物C+T)またはその塩(化合物C・HCl+T・HCl)のシス/トランス-ジアステレオマー混合物のトランス-ジアステレオマー(化合物T)への動的異性化が、バッチ方式または連続フロー方式で、アミンアクセプターとしての役割を果たす等モル量未満の量のケトンの存在下、さまざまな形態のシス選択的TAを用いて成し遂げることができることを示している。すべてのケースにおいて、生成物混合物中のトランス-異性体(T)の量は、元のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(C+T)におけるよりも著しく高く、これは、異性化なしのジアステレオマー分離に基づく任意の従来のプロセスと比較して、トランス-異性体(T)の調製収率を改善するための動的異性化方法の可能性を示している。
【0108】
表1~4に要約された本発明者らの実験結果に基づいて、シス選択的TAを用いる部分的動的異性化が4-置換シクロヘキシルアミン、例えば、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミン(式(IVa)+式(Va))および4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン(式(VIIa)+式(VIIIa))のシス/トランス-ジアステレオマー混合物のさらなる選択を好都合に行い得ることが予測可能である。
【0109】
そのため、等モル量未満の量のピルビン酸ナトリウムの存在下、精製された可溶性CvSW60C-TAを用いて、トランス/シス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(化合物IVa+化合物Va)から出発して、トランス-異性体(化合物IVa)を、バッチ方式で、数時間の反応時間後、中程度~少量のケトン(化合物VIa)以外に、良好な収率(元のトランス-異性体(IVa)の量を超える)と高いジアステレオマー純度(detrans>90%)で得ることができることが予想される。固定化CvSW60C-TAおよび等モル量未満の量のアミンアクセプターケトンを用いて、トランス-異性体(化合物IVa)を、同様に連続フロー方式によって、中程度の量のケトン(化合物VIa)以外に、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(化合物IVa+化合物Va)から、高いジアステレオマー過剰率(detrans>95%)で得ることができることも想定される。多量の元のシス-異性体(化合物Va)内容物を、これらの動的異性化プロセスにおいて、所望のトランス-異性体(化合物IVa)に変換することができることが予想される。
【0110】
4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(化合物VIIa+化合物VIIIa)からの動的異性化が、数時間の反応時間で、精製された可溶性CvSW60C-TAを用いて、バッチ方式で、有意義に増強された量のトランス-異性体(化合物VIIa)を高いジアステレオマー過剰率(detrans>90%)で、中程度の量のケトン(化合物IXa)と一緒にもたらすことができることも予想される。固定化CvSW60C-TAおよび等モル量未満の量のアミンアクセプターケトンを用いて、トランス-異性体(化合物VIIa)を、同様に連続フロー方式のプロセスによって、中程度の量のケトン(化合物VIa)以外に、4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(化合物VIIa+化合物VIIIa)から、高いジアステレオマー過剰率(detrans>95%)で得ることができることも予見される。著しい量の元のシス-異性体(化合物VIIIa)内容物を、これらの動的異性化プロセスにおいて、所望のトランス-異性体(化合物VIIa)に変換することができることが予測される。
【0111】
そのため、本発明者らは、カリプラジン合成の重要中間体として、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸アルキルエステル[(式Ia-d)、特に、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(式Ib)または2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸イソプロピルエステル(式Id)、最も好ましくは、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(式Ib)]をもたらす動的異性化のための生体触媒経路を初めて開発した。これは、再結晶の代わりに、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステルHCl(式IIb・HCl)の調製のための、代替のおよび工業的にも適用可能なアプローチを意味する。
【0112】
類似の方法において、式(IVa)のトランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンは、バッチ方式で、等モル量未満から等モル量までの量で使用されるアミンアクセプターの存在下、全細胞形態、可溶性形態または固定化形態の単一のトランスアミナーゼ生体触媒を用いて、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンのシス/トランス-ジアステレオマー混合物(式(IVa)+式(Va))から調製することもできる。
【化15】
【0113】
最後に、単一のトランスアミナーゼが触媒する動的異性化は、バッチ方式で、等モル量未満から等モル量までの量のアミンアクセプターの存在下、全細胞形態、可溶性形態または固定化形態のトランスアミナーゼ生体触媒を使用して、4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンのシス/トランス-ジアステレオマー混合物(式(VIIa)+式(VIIIa))の式(VIIa)のトランス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンへの変換を可能にする。
【化16】
【0114】
要約すると、本発明によるプロセスは、いくつかの利点および利益を有する。
【0115】
発明されたプロセスは、
- シス副生成物(式C、特に、式II、V、またはVIII)の大部分を優先的に変換することを可能にする、
- 伝統的な製造プロセスの一部分であった分離プロセスよりもはるかに効率的である、
- バッチ方式だけでなく、連続フロー方式でも行うことができる、
- 実験室スケール(<グラム)において開発されたプロセスは、工業的にも実現可能であり、開発された手順は、スケールアップすることができる、
- 天然酵素を用いて行うこともできる、
- エナンチオマーの動的分離/転換についての文献はほとんどが2つのTAを使用するが、単一のトランスアミナーゼのみを必要とする、
- 中間体ケトン(式K、特に、式III、VI、またはIX)に加えて、他の基質を導入する必要がないので、シス/トランス-アミン混合物(式C+T))を用いて行われるプロセスにおいて、アミンアクセプターとして4-置換シクロヘキサノン(式K)を使用する場合に、効率の観点で著しい利益を示す、
- カリプラジンの一般的な生成の期間の間に新たな可能性を開くこともできる、
- 単一のトランスアミナーゼ触媒動的異性化を用いて、カリプラジンの調製のための代替中間体としての役割を果たし得る、さらなるトランス-4-置換シクロヘキシルアミン、例えば、式(IVa)のトランス-4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサン-1-アミンまたは式(VIIa)のトランス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンの合成に適用可能である。
【0116】
上記に記載した詳細および知見に基づいて、一般に、本発明は、4-置換シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマーまたはそれらの任意の塩の混合物(式(C)+式(T)):
【化17】
[ここで、式(T)および式(C)において、Gは、
-水素原子;
-C1-6アルキル基;
-エステル部分(-COOR)(式中、Rは、好適なアルキル基、アラルキル基またはアリール基、好ましくは、C1-6アルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基から選択される置換基を表す);
-CH-OR’基(式中、R’は、水素原子、またはヒドロキシル保護基を表す);
-式
【化18】
(式中、nは、1~2の整数である)の保護されたアルデヒド基;
-置換もしくは無置換のアリール基、好ましくは、フェニル基;または
-アラルキル基、好ましくは、ベンジル基
から選択される置換基を表す]
から出発して、式(T)の(1r,4r)-4-置換シクロヘキサン-1-アミン[=トランス-4-置換シクロヘキサン-1-アミン]を生成する方法であって、
ジアステレオマー混合物を、等モル量未満から等モル量までの量で使用されるアミンアクセプターの存在下、全細胞形態、可溶性形態または固定化形態の単一のトランスアミナーゼ生体触媒と反応させる、
方法に関する。
【0117】
本発明の特定の実施形態によれば、この一般的な生成方法は、バッチ方式または連続フロー方式で行うことができる。
【0118】
本発明の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法は、遊離塩基形態である4-置換シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(式(C)+式(T))から出発して、行うことができる。
【0119】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法は、塩形態、好ましくは、塩酸塩形態(式(C・HCl)+式(T・HCl))である4-置換シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(式(C)+式(T))から出発して、行うことができる。
【化19】
【0120】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法は、約2:98~約99:1の比のシス/トランス異性体として提供される4-置換シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(式(C)+式(T))またはその塩形態から出発して、行うことができる。
【0121】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法において、少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約37%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼが使用される。
【0122】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法において、少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約40%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼが使用される。
【0123】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法において、少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼが使用される。
【0124】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法において、少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼが使用される。
【0125】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法において、少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼが使用される。
【0126】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法において、少なくとも約100残基の領域にわたって、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)(CvSW60C-TA:配列番号1)またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA:配列番号2)に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むトランスアミナーゼが使用される。
【0127】
本発明の特定の実施形態によれば、この一般的な生成方法において、好適なケトンまたはアルデヒドは、等モル量未満の量でアミンアクセプター化合物として使用される。
【0128】
本発明の好ましい実施形態によれば、この一般的な生成方法において、式Kの4-置換シクロヘキサノン:
【化20】
(式中、Gは、式(C)および式(T)におけるGとして請求項1に記載した通りである)は、アミンアクセプターケトンとして使用される。
【0129】
その第1の態様に関して、本発明は、出発ジアステレオマー混合物が、遊離塩基形態または塩形態の式(I)および式(II)の2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル:
【化21】
(式中、Rは、好適なアルキル基、アラルキル基またはアリール基、好ましくは、C1-6アルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルから選択される置換基を表す)からなる方法に関する。
【0130】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ピルビン酸ナトリウムは、等モル量未満の量でアミンアクセプターケトンとして使用される。
【0131】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、式(III)の4-置換シクロヘキサノン:
【化22】
(式中、Rは、式(I)および(II)について定義される通り、同じ好適なアルキル基、アラルキル基またはアリール基、好ましくは、同じC1-6アルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルから選択される置換基を表す)は、アミンアクセプターケトンとして使用される。
【0132】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、式(IIIb)のエチル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート:
【化23】
は、アミンアクセプターケトンとして使用される。
【0133】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、式(IIId)のイソプロピル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート:
【化24】
は、アミンアクセプターケトンとして使用される。
【0134】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)酵素/CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる/は、バッチ方式で、トランスアミナーゼとして使用される。
【0135】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)トランスアミナーゼ/CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる/は、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用される。
【0136】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ビブリオ・フルビアリス酵素/VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる/は、バッチ方式で、トランスアミナーゼとして使用される。
【0137】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ/VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる/は、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用される。
【0138】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、シス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)/CvSW60C-TA/は、連続フロー方式で使用される。
【0139】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、多孔質ポリマー支持体上に共有結合的に固定化された状態のシス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)/CvSW60C-TA/が使用される。
【0140】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩のジアステレオマー混合物(式Ib・HCl+式IIb・HCl)から出発して、純粋な2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(式Ib)が生成される。
【0141】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸イソプロピルエステル塩酸塩のジアステレオマー混合物(式Id・HCl+式IId・HCl)から出発して、純粋な2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸イソプロピルエステル(式Id)が生成される。
【0142】
本発明の好ましい実施形態によれば、アミンの遊離塩基形態または塩酸塩形態から遊離したアミン形態のいずれかの2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I+II)、好ましくは、C1-6アルキルエステルのシス/トランス-ジアステレオマー混合物から出発する、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)、好ましくは、C1-6アルキルエステルの生成方法は、等モル量未満の量で使用されるアミンアクセプターの存在下、バッチ方式で、シス選択的トランスアミナーゼ(好ましくは、クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のTAのW60C変異体/CvSW60C-TA/またはビブリオ・フルビアリス由来のTA/VfS-TA/)の全細胞形態、部分的もしくは完全に精製された可溶性形態、または固定化形態を用いて、あるいは連続フロー方式で、同じシス選択的トランスアミナーゼ(CvSW60C-TAまたはVfS-TA)の固定化形態を用いて、行うことができる。
【0143】
本発明の最も好ましい実施形態によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル生成物(式Ib)は、カリプラジンとして一般に公知のトランス-N-{4-[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル]シクロヘキシル}-N’,N’-ジメチルウレアの製造において使用される。
【0144】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、アミンの遊離塩基形態または塩酸塩形態から遊離したアミン形態のいずれかの2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルのシス/トランス-ジアステレオマー混合物(I+II)から出発する、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)の生成方法は、等モル量未満の量で使用されるアミンアクセプターの存在下、バッチ方式で、シス選択的トランスアミナーゼの全細胞形態、部分的もしくは完全に精製された可溶性形態、または固定化形態を用いて行うことができる。
【0145】
本発明の第1の態様の特定の実施形態によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)の生成方法は、アミンの遊離塩基形態の2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルのシス/トランス-ジアステレオマー混合物(I+II)から出発して行うことができる。
【0146】
本発明の第1の態様の別の特定の実施形態によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)の生成方法は、塩形態、特に、塩酸塩形態から遊離したアミン形態の2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステルのシス/トランス-ジアステレオマー混合物(I+II)から出発して行うことができる。
【0147】
本発明の第1の態様の別の特定の実施形態によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)の生成方法は、クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のTAのW60C変異体/CvSW60C-TA/の全細胞形態、部分的もしくは完全に精製された可溶性形態、または固定化形態を使用することによって行うことができる。
【0148】
本発明の第1の態様の別の特定の実施形態によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エステル(I)の生成方法は、ビブリオ・フルビアリス由来のTA/VfS-TA/の全細胞形態、部分的もしくは完全に精製された可溶性形態、または固定化形態を使用することによって行うことができる。
【0149】
本発明の第1の態様のより好ましい実施形態によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸C1-6アルキルエステルの生成方法は、アミンの遊離塩基形態または塩酸塩形態から遊離したアミン形態のいずれかの2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸C1-6アルキルエステルのシス/トランス-ジアステレオマー混合物から出発して行うことができる。
【0150】
本発明の第1の態様の別のより好ましい実施形態によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸C1-6アルキルエステルの生成方法は、シス/トランス異性体の混合物が約2:98~約99:1の比で提供される、アミンの遊離塩基形態または塩酸塩形態から遊離したアミン形態のいずれかの2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸C1-6アルキルエステルのシス/トランス-ジアステレオマー混合物から出発して行うことができる。
【0151】
本発明の第1の態様の別のより好ましい実施形態によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸C1-6アルキルエステルの生成方法は、等モル量未満の量で使用されるアミンアクセプターとしての好適なケトンまたはアルデヒドの存在下で行うことができる。
【0152】
本発明の第1の態様の別のより好ましい実施形態によれば、2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸C1-6アルキルエステルの生成方法は、アミンアクセプターとしてのピルビン酸ナトリウムの存在下で行うことができる。
【0153】
本発明の第1の態様の最も好ましい実施形態によれば、カリプラジンとして一般に公知のトランス-N-{4-[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル]シクロヘキシル}-N’,N’-ジメチルウレアの生成方法は、シス選択的トランスアミナーゼの全細胞形態、部分的にもしくは完全に精製された可溶性形態、または固定化形態を用いて、等モル量未満の量で使用されるアミンアクセプターとしての2-(4-オキソシクロヘキシル)酢酸エステル(式III)、最も好ましくは、エチル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート(式IIIb)の存在下、シス/トランスエステル異性体の混合物が約2:98~約99:1の比で提供される、アミンの遊離塩基形態または塩酸塩形態から遊離したアミン形態のいずれかの2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(式Ib)のシス/トランス-ジアステレオマー混合物から出発して行うことができる。
【0154】
本発明の第1の態様の別の最も好ましい実施形態によれば、カリプラジンとして一般に公知のトランス-N-{4-[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル]シクロヘキシル}-N’,N’-ジメチルウレアの生成方法は、段階的な方式で、バッチ反応器において、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル(式Ib)のシス/トランス-ジアステレオマー混合物から出発して実施することができ、ここで、
a.2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステルのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(式(Ib)+式(IIb))の混合物は、約2:98~約99:1の比で、バッチ方式で操作される反応器に入れられ、
b.全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態の、クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)/CvSW60C-TA:配列番号1/またはビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ/VfS-TA:配列番号2/に対して40%よりも高いタンパク質配列同一性を有するトランスアミナーゼは、1:10000~1:1のタンパク質:[基質(式(Ib)+式(IIb))]の重量比で反応器に添加され、
c.アミンアクセプター化合物として使用される好適なケトンの溶液は、等モル量未満の量で混合物に添加され、
d.酸性抽出精製工程は、生成物(式(IIIb))によるケトンの形成を除去するために適用され、
e.所望の2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステルは、遊離アミン(式(Ib))としてまたはその塩(式(Ib・HA))として、出発混合物中のトランス-異性体(式(Ib))の割合を超える収量で、抽出/分離/単離される。
【0155】
その第2の態様に関して、本発明は、出発ジアステレオマー混合物が、遊離塩基形態または塩形態の式(IV)および式(V)の2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オール誘導体
【化25】
(式中、R’は、水素原子、または好適なヒドロキシル保護基、好ましくは、ベンジル基を表す)からなる方法に関する。
【0156】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ピルビン酸ナトリウムは、等モル量未満の量でアミンアクセプターケトンとして使用される。
【0157】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、式(VI)の4-置換シクロヘキサノン:
【化26】
(式中、R’は、式(IV)および(V)について定義される通り、同じ水素原子、または好適なヒドロキシル保護基、好ましくは、ベンジル基を表す)は、アミンアクセプターケトンとして使用される。
【0158】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、式(VIa)の2-(4-オキソシクロヘキシル)エタン-1-オール:
【化27】
は、アミンアクセプターケトンとして使用される。
【0159】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)酵素/CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる/は、バッチ方式で、トランスアミナーゼとして使用される。
【0160】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)トランスアミナーゼ/CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる/は、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用される。
【0161】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ビブリオ・フルビアリス酵素/VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる/は、バッチ方式で、トランスアミナーゼとして使用される。
【0162】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ/VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる/は、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用される。
【0163】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、シス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)/CvSW60C-TA/は、連続フロー方式で使用される。
【0164】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、多孔質ポリマー支持体上に共有結合的に固定化された状態のシス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)/CvSW60C-TA/が使用される。
【0165】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オール塩酸塩のジアステレオマー混合物(式IVa・HCl+式Va・HCl)から出発して、純粋な2-(トランス-4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オール(式IVa)が生成される。
【0166】
その第3の態様に関して、本発明は、出発ジアステレオマー混合物が、式(VII)および式(VIII)の2-(4-アミノシクロヘキシル)アセトアルデヒド誘導体:
【化28】
(式中、nは、1~2の整数である)からなる方法に関する。
【0167】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ピルビン酸ナトリウムは、等モル量未満の量でアミンアクセプターケトンとして使用される。
【0168】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、式(IX)の4-置換シクロヘキサノン:
【化29】
(式中、nは、式(VII)および(VIII)について定義される通り、同じ整数を表す)は、アミンアクセプターケトンとして使用される。
【0169】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)酵素/CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる/は、バッチ方式で、トランスアミナーゼとして使用される。
【0170】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、クロモバクテリウム・ビオラセウム変異体(W60C)トランスアミナーゼ/CvSW60C-TA、配列番号1によって特徴付けられる/は、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用される。
【0171】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ビブリオ・フルビアリス酵素/VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる/は、バッチ方式で、トランスアミナーゼとして使用される。
【0172】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ/VfS-TA、配列番号2によって特徴付けられる/は、全細胞形態、または固定化全細胞形態、または可溶性無細胞形態、または固定化無細胞形態で使用される。
【0173】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、シス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)/CvSW60C-TA/は、連続フロー方式で使用される。
【0174】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、多孔質ポリマー支持体上に共結合性固定化を有するシス選択的クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼ変異体(W60C)/CvSW60C-TA/が使用される。
【0175】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(式VIIa+式VIIIa)から出発して、純粋なトランス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン(式VIIa)が生成される。
【0176】
本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例
【0177】
材料
他に別段の記載がない限り、すべての溶媒および化学物質は、以下の商業的供給業者:Sigma Aldrich(Saint Louis、MO、米国)、Alfa Aesar Europe(Karlsruhe、ドイツ)、Merck(Darmstadt、ドイツ)、Fluka(Milwaukee、WI、米国)から購入し、さらなる精製なしで使用した。MAT540(MATSPHERE(商標)SERIES 540 - 10μmの平均粒子径を有するアミノアルキルおよびビニル官能基でエッチングされた中空シリカミクロスフェア)は、Materium Innovations(Granby、QC、カナダ)から入手した。エチレンアミン官能化メタクリレートポリマー樹脂(ReliZyme(商標)EA403/S;ポリメチルメタクリレート支持体、粒子径150~300μm、細孔サイズ400~600Å)およびエポキシド官能化メタクリレートポリマー樹脂(ReliZyme(商標)EP403/S;ポリメチルメタクリレート支持体、粒子径150~300μm、細孔サイズ400~600Å)は、Resindion S.r.L.(Binasco、イタリア)から購入した。
【0178】
シス/トランスジアステレオマー混合物としての2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸塩酸塩[T・HCl+C・HCl(G=COOH)]、および2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩のシス-ジアステレオマー(約90.2%のdeを有するIIb・HCl)の試料は、WO2010/070368による工業スケールの生成プロセスから入手した。tert-ブチルN-[4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシル]カルバメートは、Wu Y.-J.ら(WO2018081384A1(2018))によって開示されるようにして調製することができる。
【0179】
分析方法
薄層クロマトグラフィー
TLCは、Kieselgel 60 F254(Merck)シートを使用して行った。スポットは、UV光(Vilber Lourmat VL-6.LC、254nm)下、または5%のエタノール性リンモリブデン酸溶液もしくは3%のイソプロパノールニンヒドリン溶液による処理および所望のプレートの加熱後、視覚化された。
【0180】
赤外分光法
赤外スペクトルは、Bruker ALPHA FT-IR分光計において記録し、バンドの波長は、cm-1で列挙する。
【0181】
ガスクロマトグラフィー
ケトン(一般式K、III、VI、およびIX)のTA触媒還元的アミノ化または4-置換シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(一般式C+T、I+II、IV+V、およびVII+VIII)の動的異性化の反応混合物は、酢酸エチル溶液中の過剰の無水酢酸の処理によるアミンの対応するアセトアミドへの誘導体化後に、非極性HP-5カラム[Agilent J&W;30m×0.25mm×0.25μmの(5%-フェニル)メチルポリシロキサンのフィルム厚さ]を使用する、フレームイオン化検出器(FID)を備えたAgilent 5890 GC(Santa Clara、米国)、またはキラルHydrodex β-6 TBDMカラム(Macherey-Nagel;25m×0.25mm×0.25μmのヘプタキス-(2,3-ジ-O-メチル-6-O-t-ブチル-ジメチルシリル)-β-シクロデキストリンのフィルム厚さ)を備えたAgilent 4890 GCにおいて、Hキャリアガス(注入器:250℃、検出器:250℃、ヘッド圧:12psi、スプリット比:50:1)を使用して分析した。
【0182】
温度プログラム:TP1:5℃/分で180から210℃、210℃で4分間;TP2:1℃/分で110から130℃、20℃/分で130から180℃、180℃で3分間。
【0183】
保持時間
1.45分(化合物IIIa)、2.91分(化合物IIaのアセトアミド)、3.11分(化合物Iaのアセトアミド)[TP1を用いるHP-5カラムにおいて、モル応答係数:(Ia+IIaのアセトアミド/IIIaのシグナル)=1.06];
【0184】
1.95分(化合物IIIb)、3.93分(化合物IIbのアセトアミド)、4.11分(化合物Ibのアセトアミド)[TP1を用いるHP-5カラムにおいて、モル応答係数:(Ib+IIbのアセトアミド/IIIbのシグナル)=1.03];
【0185】
1.58分(化合物IIId)、4.20分(化合物IIdのアセトアミド)、4.40分(化合物Idのアセトアミド)[TP1を用いるHP-5カラムにおいて、モル応答係数:(Id+IIdのアセトアミド/IIIdのシグナル)=0.96];
【0186】
1.69分(化合物VIa)、3.82分(化合物IVaのアセトアミド)、3.96分(化合物Vaのアセトアミド)[TP1を用いるHP-5カラムにおいて、モル応答係数:(IVa+Vaのアセトアミド/VIaのシグナル=1.05];
【0187】
1.71分[化合物VI(R=Ac)]、3.81分[化合物IV(R=Ac)のアセトアミド]、3.94分[化合物V(R=Ac)のアセトアミド][TP1を用いるHP-5カラムにおいて、モル応答係数(IV+V(R=Ac)のアセトアミド/VI(R=Ac)のシグナル=1.03];
【0188】
1.91分(化合物IXa)、4.45分(化合物VIIaのアセトアミド)、4.60分(化合物VIIIaのアセトアミド)[TP1を用いるHP-5カラムにおいて、モル応答係数(VIIa+VIIIaのアセトアミド/IXaのシグナル)=1.05];
【0189】
2.28分[化合物IX(n=2)]、5.49分[化合物VII(n=2)のアセトアミド]、5.65分[化合物VIII(n=2)のアセトアミド][TP1を用いるHP-5カラムにおいて、モル応答係数(VII+VIII(n=2)のアセトアミド/IX(n=2)のシグナル=1.03];
【0190】
3.45分(化合物K(G=H))、19.72分(化合物T(G=H)のアセトアミド)、20.29分(化合物C(G=H)のアセトアミド)[TP2を用いるHydrodexカラムにおいて、モル応答係数((C+T(G=H))のアセトアミド/(K(G=H))=1.90];
【0191】
5.99分(化合物K(G=Me))、22.64分(化合物C(G=Me)のアセトアミド)、22.85分(化合物T(G=Me)のアセトアミド)[TP2を用いるHydrodexカラムにおいて、モル応答係数((C+T(G=Me))のアセトアミド/(K(G=Me))=1.16];
【0192】
2.32分(化合物K(G=Ph))、5.17分(化合物C(G=Ph)のアセトアミド)、5.51分(化合物T(G=Ph)のアセトアミド)[TP1を用いるHP-5カラムにおいて、モル応答係数((C+T(G=Ph))のアセトアミド/(K(G=Ph))=1.06];
【0193】
2.74分(化合物K(G=CHPh))、6.24分(化合物C(G=CHPh)のアセトアミド)、6.56分(化合物T(G=CHPh)のアセトアミド)[TP1を用いるHP-5カラムにおいて、モル応答係数((C+T(G=CHPh))のアセトアミド/(K(G=CHPh))=0.89];
【0194】
質量分析
HRMSおよびMS-MS分析を、Thermo Velos Pro Orbitrap Elite(Thermo Fisher Scientific)システムにおいて行った。イオン化方法は、陽イオンモードで作動するESIであった。プロトン化分子イオンピークは、35%の正規化された衝突エネルギーで、CIDによってフラグメント化した。CID実験のために、ヘリウムを、衝突ガスとして使用した。試料は、メタノールに溶解した。データ取得および分析は、Xcalibuソフトウェアバージョン2.0(Thermo Fisher Scientific)を用いて成し遂げた。
【0195】
核磁気共鳴分光法
すべてのNMR試料は、DMSO-d溶媒に溶解し、スペクトルは、標準的な5mmの管において、25℃で、以下のBruker BioSpin GmbH、Rheinstetten、ドイツ製のAvance III HDX分光計(プロトン周波数を得られる):400MHz(1H-19F/15N-31P Prodigy CryoProbeおよびSampleCaseサンプルチェンジャーを有する)、500MHz(500 S2 1H/13C/15N TCI Extended Temperature CryoProbe)または800MHz(800 SA 1H&19F/13C/15N TCI CryoProbe)のいずれかにおいて取得した。
【0196】
(4-アルコキシカルボニルメチル)シクロヘキサノン(III)の合成のための一般手順
乾燥テトラヒドロフラン(50mL)中の事前にヘキサンで洗浄した水素化ナトリウム(1.7当量)の溶液を、(-5)~0℃に冷却した。温度を0~5℃に保って、乾燥テトラヒドロフラン(50mL)中の対応するホスホネート(1.2当量のエチル2-(ジエトキシホスホリル)アセテートまたはイソプロピル2-(ジイソプロポキシホスホリル)アセテート)の溶液を添加し、得られた混合物を0℃で0.5時間および室温で1時間撹拌した。再び(-5)~0℃に冷却した後、乾燥THF(50mL)中の1,4-シクロヘキサンジオンモノエチレンケタール(1当量:約80mmol)の溶液を滴下添加し、得られた混合物を、0℃で1時間、次いで室温で終夜撹拌した。THFを反応混合物から蒸発させ、残渣をブライン(60mL)で希釈し、水相を酢酸エチル(3×80mL)で抽出した。まとめた有機相を、飽和ブライン(80mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で濃縮して、粗アルキル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イリデン)アセテートを得た。
【0197】
さらなる精製なしで、不飽和粗アルキル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イリデン)アセテートを水素化した。対応するアルコール(50~200mL)に溶解した後、溶液を、水素化が完了するまで(TLC、溶離液:ヘキサン:EtOAc=2:1によって追跡)、1barの水素下、10%のPd/C(10w/w%)で処理した。反応の完了後、混合物を、セライト(登録商標)を通して濾過し、溶媒を真空ロータリーエバポレーションによって除去して、飽和アルキル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イル)アセテートを得た。
【0198】
ケトン保護基を除去するために、アルキル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イル)アセテート(1当量)を、対応するアルコール(100~150mL)に溶解し、0℃に冷却した。1NのHCl(3当量)溶液を滴下添加し、0℃で1時間、次いでRTで終夜撹拌した。反応が完了した後、それを0℃に冷却し、pHを、1NのNaOHによって、pH7に調整した。混合物を酢酸エチル(3×80mL)で抽出し、まとめた有機相を、飽和ブライン(80mL)で抽出し、NaSOで乾燥し、真空中で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン-EtOAc=4:1)によって精製して、(4-アルコキシカルボニルメチル)シクロヘキサノン(式IIIで特徴付けられる)を得た。
【0199】
エチル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート(IIIb)
【化30】
一般記載に従って、乾燥THF(50mL)中のエチル2-(ジエトキシホスホリル)アセテート(18.3ml、20.7g、92.2mmol)の溶液および乾燥THF(40mL)中のヘキサンで洗浄したNaH(3.69g、154mmol)と、乾燥THF(50mL)中の1,4-シクロヘキサンジオンモノエチレンケタール(12.0g、76.8mmol)の反応により、無色液体としてエチル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イリデン)アセテート(16.8g、粗収率97%)を得た。
【0200】
非加圧水素雰囲気下でのエタノール(70mL)中のエチル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イリデン)アセテート(16.7g、71.0mmol)および10%のPd/C(1.67g)の反応により、無色液体としてエチル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イル)アセテート(16.5g、粗収率98%)を得た。
【0201】
エタノール(150mL)中のエチル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イル)アセテート(15.0g、65.7mmol)と1NのHCl(150mL)の反応により、無色油状物としてエチル-2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート(式IIIb、5.32g、精製収率42%)を得た。
【0202】
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:4.07(2H、q、J=7.1Hz、OCH-CH)、2.39(2H、td、J=13.7Hz、J=5.9Hz、2×CHax)、2.31(2H、d、J=7.1Hz、CH-COOEt)、2.21-2.15(2H+1H、m、2×CHeq+CHax-CHCOOEt)、1.98-1.92(2H、m、2×CHeq)、1.40(2H、qd、J=12.1Hz、J=4.3Hz、2×CHax)、1.19(3H、t、J=7.1Hz、CH-CH);
【0203】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:210.4(CO)、171.9(CH-COOEt)、59.7(OCH-CH)、39.8(CH)、39.3(CH)、32.3(CH-CHCOOEt)、31.5(CH)、14.0(CH);
【0204】
ESI-HRMS:M+H=185.11727(デルタ=0.3ppm;C1017)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):167(60)および139(100)。
【0205】
IR(ニート) υmax:2933、1710、1449、1368、1345、1278、1201、1150、1094、1029、968、754、503cm-1
【0206】
GC(HP 5カラム):t=1.95分。
【0207】
イソプロピル-2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート(IIId)
【化31】
一般記載に従って、イソプロピル2-(ジイソプロポキシホスホリル)アセテート(25.00g、93.3mmol)と乾燥THF(100mL)中のヘキサンで洗浄したNaH(3.75g、156.4mmol)と乾燥THF(50mL)中の1,4-シクロヘキサンジオンモノエチレンケタール(12.2g、78.2mmol)の反応により、無色液体としてイソプロピル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イリデン)アセテート(17.1g、粗収率91%)を得た。
【0208】
非加圧水素雰囲気下でのイソプロパノール(220mL)中のイソプロピル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イリデン)アセテート(15.00g、62.46mmol)および10%のPd/C(1.5g)の反応により、無色油状物としてイソプロピル-2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イル)アセテート(14.6g、粗収率97%)を得た。
【0209】
イソプロパノール(170mL)中のイソプロピル2-(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-8-イル)アセテート(14.00g、57.85mmol)および1NのHCl(170mL)の反応により、無色油状物としてエチル-2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート(式IIId、8.47g、精製収率74%)を得た。
【0210】
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:4.91(1H、quint、J=6.3Hz、CH-(CH)、2.39(2H、td、J=13.8Hz、J=6.0Hz、2×CHax)、2.28-2.27(2H、m、CH)、2.19-2.14(1H+2H、m、CHax-CHCOOPr、2×CHeq)、1.96-1.92(2H、m、2×CHeq)、1.40(2H、qd、J=13.0Hz、J=4.1Hz、2×CHax)、1.19(6H、d、J=6.3Hz、2×CH);
【0211】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:210.4(CO)、171.4(COOPr)、66.9(CH-(CH)、39.6(CH-COOPr)、32.3(CH-CHCOOPr)+CH)、31.4(CH)、21.5(CH);
【0212】
HRMS:M+H=199.13276(デルタ=-0.6ppm;C1119)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):181(5);171(11);167(100);157(62);153(91)および139(64);
【0213】
IR(ニート) υmax:2979、1711、1449、1374、1278、1203、1161、1107、967cm-1
【0214】
GC(HP 5カラム):t=1.58分。
24
【0215】
4-置換シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(化合物I・HCl+II・HClまたは化合物C・HCl+T・HCl)
4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物Ia・HCl+IIa・HCl)
【化32】
メタノール(60mL)中の2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸[シス/トランスジアステレオマー混合物、T・HCl+C・HCl(G=COOH)](1g、6.37mmol)の溶液に、5Mの塩酸溶液(9.56mmol、1.911mL、1.5当量)を添加した。反応混合物を、室温で30分間撹拌し(この時間の間に、最初乳白色の溶液は透明になった)、TLC分析(溶離液:n-ブタノール:酢酸:水=3:1:1;イソプロパノール中の3%のニンヒドリンによって視覚化;Rfacid=0.62、RfMe ester=0.68)は変換の完了を明らかにした。次に、溶媒を、ロータリー真空エバポレーターを使用して除去し、残渣を真空乾燥チャンバー中で乾燥して、白色固体として所望のメチルエステル塩酸塩のジアステレオマー混合物(化合物Ia・HCl+IIa・HCl、1.28g、収率97%)を得た。
【0216】
IR(ATR) υmax:2934、2895、2863、1732、1610、1507、1458、1437、1365、1295、1226、1168、1132、1018cm-1
【0217】
(1s,4s)-4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(シス-化合物IIa・HCl)
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.12(3H、br、NH )、3.58(3H、s、OCH)、3.29(1H、m、CHekv-NH )、2.33(2H、d、J=7.5Hz、CHCOOMe)、1.95(1H、m、CHeq-CHCOOMe)、1.81-1.74(2H、m、2×CH)、1.70-1.58(4H、m、4×CH)、1.46-1.35(2H、m、2×CH)。
【0218】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:176.39(COO)、52.14(OCH)、48.53(NCH)、38.15(CH)、30.65(CH)、26.23(2×CH)、26.06(2×CH)。
【0219】
(1r,4r)-4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(トランス-化合物Ia・HCl)
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.12(3H、br、NH )、3.59(3H、s、OCH)、3.04(1H、m、CHax-NH )、2.21(2H、d、J=7.6Hz、CHCOOMe)、1.98-1.86(2H、m、2×CHeq)、1.75(1H、m、CHax-CHCOOMe)、1.72(2H、br d、J=14.0Hz、CHeqCHNH )、1.46-1.35(2H、m、2×CH)、1.02(2H、qd、J=12Hz、J=4Hz、2×CHax
【0220】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:176.43(COO)、52.09(OCH)、48.87(NCH)、40.48(CH)、33.01(CH)、29.89(2×CH)、29.85(2×CH
【0221】
4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物Ib・HCl+IIb・HCl)
【化33】
エタノール(40mL)中のエチル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート(IIIb、1.50g、8.14mmol)および10%のPd/C(0.15g)とギ酸アンモニウム(3.08g、48.8mmol)の反応により、無色油状物として4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(化合物Ib+IIb、1.24g、収率83%、シス/トランス=2.30:1.00(H-NMR))を得た。最後に、HClガスを導入した後、4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物Ib・HCl+IIb・HCl、1.30g、収率72%)が、白色固体として形成された。
【0222】
(1s,4s)-4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(シス-化合物IIb・HCl)
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.14(3H、br、NH )、4.09-4.02(2H、m、OCH)、3.18-3.09(1H、m、CHax-NH )、2.27(2H、d、J=7.5Hz、CHCOOEt)、1.98-1.86(1H、m、CHeq-CHCOOEt)、1.69-1.62(4H、m、4×CH)、1.53-1.43(4H、m、4×CH)、1.18(3H、t、J=7.2Hz、CH)、
【0223】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:171.96(CO)、59.62(OCH)、47.2(CH-NH )、37.92(CHCOOEt)、30.58(CHax-CHCOOEt)、25.96(CH)、25.89(CH)、14.04(CH);
【0224】
(1r,4r)-4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(トランス-化合物Ib・HCl)
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.14(3H、br、NH )、4.09-4.02(2H、m、OCH)、2.94-2.82(1H、m、CHax-NH )、2.18(2H、d、J=7.6Hz、CHCOOEt)、1.98-1.86(2×H、m、2×CHeq)、1.72(2H、br d、J=14.0Hz、CHeqCHNH ),1.64-1.55(1H、m、CHax-CHCOOEt)、1.34(2H、qd、J=12.4Hz、J=3.1Hz、2×CHax)、1.18(3H、t、J=7.2Hz、CH)、1.03(2H、qd、J=12.7Hz、J=3.5Hz、2×CHax
【0225】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:171.8(CO)、59.6(OCH)、48.9(CH-NH )、40.3(CHCOOEt)、33.1(CHax-CHCOOEt)、29.8(CH)、29.75(CH)、14.0(CH);
【0226】
HRMS:M+H=186.14853(デルタ=-1.8ppm;C1020N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):169(100);141(2);140(2);123(9);95(15)および81(6);
【0227】
IR(ニート) υmax:2933、2552、2037、1731、1604、1509、1451、1370、1291、1177、1033cm-1
【0228】
4-(2-イソプロポキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物Id・HCl+IId・HCl)
【化34】
イソプロパノール(40mL)中のイソプロピル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート(IIId、2.00g、10.1mmol)および10%のPd/C(0.20g)とギ酸アンモニウム(3.82g、60.5mmol)の反応により、無色油状物として4-(2-イソプロポキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミンのジアステレオマー混合物(化合物Id+IId、1.71g、収率85%、シス/トランス=1.07:1.00(H-NMR))を得た。最後に、HClガスを導入した後、4-(2-イソプロポキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物Id・HCl+IId・HCl、1.75g、収率73%)が、白色固体として形成された。
【0229】
(1s,4s)-4-(2-イソプロポキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(シス-化合物Id・HCl)
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.10(3H、br、NH )、4.89(1H、quint、J=6.25Hz、CH-(CH)、3.13(1H、quint、J=5.6Hz、CHeq-NH )、2.21(2H、d、J=7.55Hz、CH-COOPr)、1.95-1.89(1H、m、CHax-CHCOOPr)、1.67-1.64(4H、m、4×CH)、1.53-1.43(4H、m、4×CH)、1.18(6H、d、J=1.71Hz、2×CH)、
【0230】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:171。5(CO);66.9(CH-(CH);47.3(CH-NH )、38.2(CH-COOPr)、30.6(CH-CHCOOPr)、26.0(CH),25.9(CH)、21.5(CH)。
【0231】
(1r,4r)-4-(2-イソプロポキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(トランス-化合物Id・HCl)
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.10(3H、br、NH )、4.88(1H、quint、J=6.25Hz、CH-(CH)、2.88(1H、tt、J=11.8Hz、J=3.9Hz、CHax-NH )、2.14(2H、d、J=6.96Hz、CH-COOPr)、1.95-1.89(2H、m 2×CHeq)、1.73-1.70(2H、m、2×CH)、1.62-1.55(1H、CHax-CHCOOPr)、1.33(2H、qd、J=12.7Hz、J=3.2Hz、2×CHax)、1.17(6H、d、J=1.75Hz、2×CH)、1.02(2H、qd、J=12.8Hz、J=3.2Hz、2×CH);
【0232】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:171.3(CO);66.9(CH-(CH);48.9(CH-NH )、40.6(CH-COOPr)、33.2(CH-CHCOOPr)、29.8(CH)、29.7(CH)、21.5(CH);
【0233】
HRMS:M+H=200.16423(デルタ=-1.4ppm;C1122N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):183(5);158(5);141(100);140(4);123(6)および81(8)。
【0234】
IR(ニート) υmax:2944、2627、2553、2056、1729、1607、1510、1458、1391、1297、1182、1107cm-1
【0235】
2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オール(化合物IVa+Va)
【化35】
丸底フラスコに、NaBH(173mg、4.5mmol)、テトラヒドロフラン(THF、15mL)およびシス/トランス-2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸塩酸塩[T・HCl+C・HCl(G=COOH)](300mg、1.91mmol)を添加した。この混合物に、ヨウ素(483mg、1.91mmol)およびTHF(4.5mL)から調製された溶液を0℃で滴下添加し(ガスの発生を伴う発熱反応が生じる)、形成された混合物を還流下で24時間撹拌した。0℃に冷却した後、メタノール(8mL)を滴下添加した(熱およびガスの発生を生じ、形成された白色懸濁液は溶解する)。真空下での溶媒の蒸発後、残った粗生成物を、分取的薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液としてジクロロメタン:メタノール=20:1)によって精製して、白色粉末状固体としてアルコールのジアステレオマー混合物IVa+Va(173.2mg 63.6%、シス/トランス約46:54)を得た。
【0236】
融点:92℃
【0237】
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:3.54(2H、t、J=5.4Hz、OCH)、2.67および2.41(1H、m、CH-N)、2.00(1H、m);1.71(1H、m);1.60-1.25(6H、m);1.25-1.15(1H、m);1.08(1H、q);0.89(1H、q)。
【0238】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:62.31および62.19(OCH)、58.67および56.46(CHN)、40.69(CHCH)、35.37(CH)、33.55および33.40(2×CH)、29.49および29.10(2×CH)。
【0239】
IR(ATR) υmax:3483、3455、3259、3227、3141、2925、2888、2877、2856、1598、1454、1445、1356、1327、1164、1050、874cm-1
【0240】
4-(2-アセトキシエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物[化合物IV(R=Ac)+V(R=Ac)]
【化36】
tert-ブチルN-[4-(2-アセトキシエチル)シクロヘキシル]カルバメート
ジクロロメタン(15mL)中のtert-ブチルN-[4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシル]カルバメート[Wu Y.-J.ら(WO2018081384A1(2018)](0.4g、1.64mmol)、トリエチルアミン(0.4mL)および4-ジメチルアミノピリジン(24mg)の溶液に、塩化アセチル(0.175mL、2.46mmol)を0℃で滴下添加し、次いで、得られた混合物を室温で4時間撹拌した。真空中での揮発物の蒸発後、残渣を、20:1のジクロロメタン:メタノール溶離液を使用してシリカゲルカラムにおいて精製して、冷蔵庫で結晶化する物質として表題生成物[化合物IV(R=Ac)+V(R=Ac)](0.39g、83%)を得た。
【0241】
H NMR(500MHz、CDCl) δ:4.57および4.3(1H、br、NH)、4.0(2H、q、J=6.5Hz、OCH)、3.64および3.28(1H、br CHN)、1.97(3H、s、COCH)、1.9(1H、d、J=10Hz)、1.7(1H、d、J=11Hz)、1.6-1.4(5H、m)、1.38(9H、s、3×CH)、1.3-1.1(2H、m)、1.05-0.9(2H、m)。
【0242】
13C NMR(125MHz、CDCl) δ:171.25(COCH)、155.27(CONH)、79.12(C)、62.66(OCH)、49.87および46.52(CHNH)、35.38および33.8(CH)、33.3(CH)、34.09および32.57(CH)、31.69(CH)、29.59(CH)、28.44(3×CH)、27.71(CH)、21.02(COCH)。
【0243】
4-(2-アセトキシエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物[化合物IV(R=Ac)・HCl+V(R=Ac)・HCl]
酢酸エチル(3.5mL)中のtert-ブチルN-[4-(2-アセトキシエチル)シクロヘキシル]カルバメート(0.39g)の溶液に、酢酸エチル(2.4mL)中の20%の塩酸の溶液を添加し、得られた混合物を室温で2.5時間撹拌した。真空下での溶媒の蒸発により、表題化合物(0.30g、100%)が得られた。
【0244】
H NMR(500MHz、CDCl) δ:8.33および4.60-4.10(3H、br、NH )、4.1(2H、q、J=6.5Hz、OCH)、3.47および3.12(1H、br、CHN)、2.20(1H、d、J=11.5Hz)、2.06および2.05(3H、s、COCH)、2.00-1.93(1H、m)、1.88(1H、d、J=13Hz)、1.85-1.75(1H、m)、1.72-1.5(5H、m)、1.5-1.2(1H、m)、1.03(1H、q、J=13Hz)。
【0245】
13C NMR(125MHz、CDCl) δ:171.22(COCH)、62.40および62.21(OCH)、50.95および48.73(HNH)、35.06(CH)、32.91(CH)、33.26および31.50(CH)、30.71(CH)、30.68(CH)、27.45(CH)、26.42(CH)、21.01(COCH)。
【0246】
4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン(化合物VIIa+VIIIa)
【化37】
tert-ブチル(4-(2-オキソエチル)シクロヘキシル)カルバメート
乾燥ジクロロメタン(7mL)中のtert-ブチル[4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシル]カルバメート(0.2g、0.823mmol)の溶液に、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC、1.3g)を分割して添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空下で混合物から蒸発させ、残渣をジクロロメタンを用いるシリカゲルカラムにおけるクロマトグラフィーによって精製して、冷蔵庫で結晶化する粘性油状物として表題化合物(1.12g、58%)を得た。
【0247】
H NMR(300MHz、CDCl) δ:9.76(1H、s、CHO)、4.64および4.4(1H、br、NH)、3.72および3.36(1H、br CHN)、2.43-2.3(2H、dd、CH)、2.1-1.7(2H、m)、1.71-1.55(3H、m);1.45(9H、s、3×CH)、1.0-1.35(4H、m)。
【0248】
13C NMR(75MHz、CDCl) δ:202.2(CHO)、155.4(CONH)、79.2(C-O)、50.7および49.6(CHNH)、39.7および38.4(CH)、33.2(CH)、31.7(CH)、30.5(CH)、29.5(CH)、28.45(3×CH)、27.8(CH)。
【0249】
tert-ブチル(4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキシル)カルバメート[Bush-Petersen J.らのWO2006050292A2(2006)による]
アセトニトリル(11.5mL)中のtert-ブチル(4-(2-オキソエチル)シクロヘキシル)カルバメート(0.61g、2.71mmol)の溶液に、シュウ酸・2HO(33mg)、MgSO(0.5g)およびエチレングリコール(0.61mL)を添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を濾過した後、濾液を、酢酸エチル(40mL)で希釈し、飽和NaHCO溶液(8mL)、水(8mL)およびブライン(8mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥した後、溶媒を真空中で蒸発させて、冷蔵庫で結晶化する重質油状物として表題化合物(0.59g、74%)が残った(試料は、不純物として約10%のtert-ブチル[4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシル]カルバメートを含有していた)。
【0250】
H NMR(500MHz、CDCl) δ:4.9(1H、t、O-CH-O)、4.64および4.36(1H、br、NH)、4.0-3.8(4H、m、2×CH)、3.70および3.36(1H、br CHN)、2.1-1.8(2H、m)、1.71-1.5(5H、m)、1.45(9H、s、3×CH)、1.35-1.2(2H、m)、1.0-1.2(2H、m)、
【0251】
13C NMR(125MHz、CDCl) δ:155.4(O=CNH)、103.6および103.4(O-CH-O)、79.1(C-O)、64.8(2×OCH)、49.8および46.5(CHNH)、40.7および33.3(CH)、33.4(CH)、32.1(CH)、39.5および32.0(CH)、29.7(CH)、28.46(3×CH)、28.2(CH)。
【0252】
4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン(化合物VIIa+VIIIa)[Bush-Petersen J.らのWO2006050292A2(2006)による]
酢酸エチル(5mL)中のtert-ブチル(4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキシル)カルバメート(0.57g、2.14mmol)の溶液に、酢酸エチル(3.5mL)中の20%の塩酸の溶液を添加し、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。真空下で溶媒を蒸発させた後、残った固体を、真空チャンバー中で乾燥して、固体粉末として得た(0.45g、100%)(この試料は、28%の遊離アルデヒドを含有していた)。
【0253】
この固体をエチレングリコール(0.52mL)に溶解し、混合物を、減圧下(5Hgmm)、40℃で8時間撹拌した。酢酸エチル(40mL)で希釈した後、固体NaCO(0.45g)を添加し、得られた混合物を数分間撹拌した。濾過後、有機相を水(2×10mL)およびブライン(10mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥した後、溶媒を真空中で蒸発させて、粘性油状物として表題化合物(0.16g、38%)が残った(試料は、不純物として、約7%の2-(4-アミノシクロヘキシル)エタノールおよび約9%の2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オールを含有していた)。
【0254】
まとめた水相をジクロロメタン(3×20mL)で抽出し、得られた有機相を、NaSOで乾燥し、真空中で濃縮して、粘性油状物として表題化合物(23mg、6%)を得た(試料は、不純物として、約1.5%の2-(4-アミノシクロヘキシル)エタノールおよび約5.5%の2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オールを含有していた)。
【0255】
H NMR(500MHz、CDCl) δ:4.91(1H、m、OCHO)、3.97(2H、m、2×OCH)、3.84(2H、m、2×OCH)、2.98および2.63(1H、br、CHN)、2.19(2H、br、NH)、1.91-1.79(2H、m)、1.72-1.41(5H、m)、1.35-1.21(2H、m)、1.01-1.20(2H、m)。
【0256】
13C NMR(125MHz、CDCl) δ:103.71および103.47(OCHO)、64.69(2×OCH)、50.56(CHNH)、40.82(CH)、33.23(2×CH)、32.2(2×CH)、31.99(CH)。
【0257】
4-((1,3-ジオキサン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン[化合物VII(n=2)+VIII(n=2)]
【化38】
tert-ブチル(4-((1,3-ジオキサン-2-イル)メチル)シクロヘキシル)カルバメート
アセトニトリル(15.5mL)中のtert-ブチル(4-(2-オキソエチル)シクロヘキシル)カルバメート(0.82g、3.4mmol)の溶液に、シュウ酸(44.4mg)、MgSO(0.6g)およびプロピレングリコール(1.1mL)を添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。濾過後、濾液を、酢酸エチル(54mL)で希釈し、飽和NaHCO溶液(11mL)、水(11mL)およびブライン(22mL)で洗浄した。有機相をNaSOで洗浄した後、溶媒を真空中で蒸発させた。残渣を、20:1のジクロロメタン:メタノールの溶離液を使用するシリカゲルカラムにおいて精製して、冷蔵庫で結晶化する重質油状物として表題化合物(0.93g、99%)が残った(試料は、不純物として、約10%のtert-ブチル[4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシル]カルバメートを含有していた)。
【0258】
H NMR(500MHz、CDCl) δ:4.64および4.37(1H、br、NH)、4.58(1H、t、OCHO)、4.21-4.01(2H、dd、J=4.5Hzおよび11.5Hz、CH)、3.76(2H、t、J=12.5Hz)、3.71および3.36(1H、br、CHN)、2.14-1.90(2H、m)、1.79(1H、d、J=11Hz)、1.71-1.51(5H、m)、1.51-1.46(1H、m)、1.45(9H、s、3×CH)、1.35(1H、d、J=13.5Hz)、1.29-1.15(1H、m)、1.15-1.01(2H、m)。
【0259】
13C NMR(125MHz、CDCl) δ:155.28(CONH)、101.05および100.92(OCHO)、79.04(C)、66.92(2×OCH)、53.42および51.43(CHNH)、42.04および32.37(CH)、33.34(CH)、33.13および31.60(CH)、32.00(CH)、29.61(CH)、28.45(3×CH)、28.13(CH)、25.83(CH)。
【0260】
4-((1,3-ジオキサン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン(化合物VII+VIII(n=2))
酢酸エチル(5.5mL)中のtert-ブチル(4-((1,3-ジオキサン-2-イル)メチル)シクロヘキシル)カルバメート(0.65g、2.18mmol)の溶液に、酢酸エチル(4mL)中の20%の塩酸の溶液を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。真空下で溶媒を蒸発させた後、残った固体を、真空チャンバー中で乾燥して、固体粉末として得た(0,53g、100%)(試料は、10%の遊離アルデヒドを含有していた)。
【0261】
この固体をプロピレングリコール(0.6mL)に溶解し、混合物を、減圧下(5Hgmm)、40℃で8時間撹拌した。酢酸エチル(40mL)で希釈された混合物に、NaCO(0.38g)を添加し、懸濁液を数分間撹拌した。濾過後、有機相を水(2×10mL)およびブライン(10mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥した後、溶媒を真空中で蒸発させて、粘性油状物として表題化合物(0.28g、60%)が残った(試料は、不純物として、約12.5%の2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オールを含有していた)。
【0262】
まとめた水相をジクロロメタン(3×20mL)で抽出し、得られた有機相を、NaSOで乾燥し、真空中で濃縮して、粘性油状物として表題化合物(0.18g、40%)を得た(試料は、不純物として、約7%の2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オールを含有していた)。
【0263】
H NMR(500MHz、CDCl) δ:4.77(1H、m、OCHO)、4.10(2H、m、2×OCH)、3.82(2H、m、2×OCH)、2.98および2.63(1H、br、CHN)、2.42(2H、br、NH)、1.91-1.80(2H、m)、1.72-1.41(7H、m)、1.40-1.31(2H、m)、1.20-1.07((1H、m)、1.05-0.95(1H、m)。
【0264】
13C NMR(125MHz、CDCl) δ:101.21および101.01(OCHO)、66.89(2×OCH)、50.61(CHNH)、42.16(CH)、34.11(2×CH)、32.06(2×CH)、31.71(CH)、25.82および25.68(OCHCHCHO)。
【0265】
4-メチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物T・HCl+C・HCl(G=H))
【化39】
メタノール(100ml)中の4-メチルシクロヘキサン-1-オン(K(G=H))(5.5ml、5.00g、44.6mmol)および10%のPd/C(0.50g)とギ酸アンモニウム(16.86g、267.5mmol)の反応により、無色液体として4-メチルシクロヘキサン-1-アミン(化合物T+C(G=H))(3.78g、収率75%)を得た。最後に、HClガスを導入した後、4-メチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物T・HCl+C・HCl(G=H))(2.83g、収率43%、シス:トランス=1.00:1.23(H-NMR))が、白色固体として形成された。
【0266】
(1s,4s)-4-メチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(シス-化合物C・HCl(G=H))
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.12(3H、br、NH )、3.11(1H、tt、J=6.8Hz、J=3.9Hz、CHax-NH )、1.69-1.65(2H、m、2×CH)、1.64-1.61(2H、m、2×CH)、1.61-1.59(H、m、CH-CH)、1.49-1.44(2H、m、2×CH)、1.42-1.35(2H、m、2×CH-CH)、0.90(3H、t、J=6.8Hz、CH);
【0267】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:47.4(CH-NH )、28.2(CH-CH)、28.1(CH-CHCH)、26.1(CH)、19.5(CH);
【0268】
(1r,4r)-4-メチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(トランス-化合物T・HCl(G=H))
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.12(3H、br、NH )、2.86(1H、tt、J=11.8Hz、J=4.0Hz、CHax-NH )、1.93-1.91(2H、m、2×CHeq)、1.69-1.65(2H、m、2×CHeq)、1.32(2H、qd、J=12.7Hz、J=3.3Hz、2×CHax)、1.26-1.22(1H、m、CHax-CH)、0.94(2H、qd、J=13.1Hz、J=3.1Hz、2×CHax)、0.85(3H、t、J=6.5Hz、CH);
【0269】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:49.1(CH-NH )、32.3(CH-CHCH)、30.9(CH-CH)、30.1(CH)、21.8(CH);
【0270】
IR(液体膜) υmax:2927、2563、2049、161、1512、1455、1392、1127、1029cm-1
【0271】
HRMS:M+H=114.12744(デルタ=-2.5ppm;C16N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):97(100)。
【0272】
4-エチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物T・HCl+C・HCl(G=Me))
【化40】
メタノール(100ml)中の4-エチルシクロヘキサン-1-オン(K(G=Me))(5.6ml、5.00g、39.6mmol)および10%のPd/C(0.500g)とギ酸アンモニウム(15.00g、237.7mmol)の反応により、無色液体として4-エチルシクロヘキサン-1-アミン(化合物T+C(G=Et))(4.26g、収率85%、シス:トランス=1.93:1.00(H-NMR))を得た。最後に、HClガスを導入した後、4-エチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物T・HCl+C・HCl(G=Me))が、白色固体として形成された。
【0273】
(1s,4s)-4-エチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(シス-化合物C・HCl(G=Me))
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.15(3H、br、NH )、3.12(1H、br m CHeq-NH )、1.68-1.65(2H、m、2×CH)、1.64-1.60(2H、m、2×CH)、1.49-1.45(2H、m、2×CH)、1.44-1.41(2H、m、2×CH)、1.29(1H、m、CHax-CHCH)、1.27(2H、quint、J=7.2Hz、CHCH)、0.85(3H、t、J=7.3Hz、CHCH);
【0274】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:47.6(CH-NH )、35.3(CH-CHCH)、26.2(CH)、25.9(CH)、25.8(CHCH)、11.3(CHCH)。
【0275】
(1r,4r)-4-エチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(トランス-化合物T・HCl(G=Me))
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:7.99(3H、br、NH )、2.87(1H、br m CHax-NH )、1.96-1.95(2H、m、2×CHeq)、1.75-1.74(2H、m、2×CHeq)、1.31(2H、qd、J=12.8Hz、J=3.4Hz、2×CHax)、1.18(2H、quint、J=15Hz CHCH)、1.07-1.03(1H、m、CHax-CHCH)、0.91(2H、qd、J=12.9Hz、J=3.3Hz、2×CHax)、0.85(3H、t、J=7.5Hz、CHCH);
【0276】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:49.4(CH-NH )、37.5(CH-CHCH)、30.1(CH)、29.9(CH-CHCHCH)、28.7(CHCH)、11.6(CHCH);
【0277】
IR(液体膜) υmax:2933、2575、2047、1583、1505、1453、1388、1236、1121、1036cm-1
【0278】
HRMS:M+H=128.14303(デルタ=-2.7ppm;C18N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):111(100)および69(9)。
【0279】
4-フェニルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物T・HCl+C・HCl(G=Ph))
【化41】
メタノール(80ml)中の4-フェニルシクロヘキサン-1-オン(K(G=Ph))(4.00g、22.9mmol)および10%のPd/C(0.40g)とギ酸アンモニウム(8.66g、137.4mmol)の反応により、液体として4-フェニルシクロヘキサン-1-アミン(化合物T+C(G=Ph))(2.93g、収率73%、シス/トランス=1.00:3.70)を得た。最後に、HClを導入した後、4-フェニルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物T・HCl+C・HCl(G=Ph))(2.2g、収率45%)が、白色固体として形成された。
【0280】
(1s,4s)-4-フェニルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(シス-化合物C・HCl(G=Ph))
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.03(3H、br、NH )、7.34-7.32(H、m、ArHorto)、7.31-7.27(H、m、ArHmeta)、7.19-7.17(H、m、ArHpara)、3.42-3.41(1H、m、CHeq-NH )、2.57(1H、tt、J=11.4Hz、J=3.4Hz、CHax-Ph)、
【0281】
13C NMR(126MHz、DMSO-d) δ:146.2(ArC)、128.2(ArCHmeta)、126.9(ArCHorto)、125.9(ArCHpara)、45.8(CH-NH )、41.7(CH-Ph)、27.8(CH);26.6(CH);
【0282】
(1r,4r)-4-フェニルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(トランス-化合物T・HCl(G=Ph))
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.03(3H、br、NH )、7.31-7.27(H、m、ArHmeta)、7.24-7.23(H、m、ArHorto)、7.19-7.17(H、m、ArHpara)、3.06(1H、tt、J=11.6Hz、J=3.9Hz、CHax-NH )、2.47(1H、tt、J=12.0Hz、J=3.4Hz、CHax-Ph)、
【0283】
13C NMR(126MHz、DMSO-d) δ:146.0(ArC)、128.2(ArCHmeta)、126.6(ArCHorto)、126.0(ArCHpara)、48.9(CH-NH )、42.2(CH-Ph)、31.4(CH);30.4(CH);
【0284】
HRMS:M+H=176.14302(デルタ=-2.0ppm;C1218N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):159(100);91(3)および81(3);
【0285】
IR(液体膜) υmax:2939、2544、2038、1610、1504、1451、1390、1182、1073、1020、758、700cm-1
【0286】
4-ベンジルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物T・HCl+C・HCl(G=CHPh))
【化42】
メタノール(60ml)中の4-ベンジルシクロヘキシル-1-オン(K(G=CHPh))(1.50g、7.97mmol)および10%のPd/C(0.45g)とギ酸アンモニウム(3.01g、47.8mmol)の反応により、液体として4-ベンジルシクロヘキサン-1-アミン(化合物T+C(G=CHPh))(0.29g、収率19%、シス/トランス=1.00:1.08(H-NMR))を得た。最後に、HClガスを導入した後、4-ベンジルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物T・HCl+C・HCl(G=CHPh))(0.22g、収率12%)が、白色固体として形成された。
【0287】
(1s,4s)-4-ベンジルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(シス-化合物C・HCl(G=CHPh))
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.14(3H、br、NH )、7.29-7.25(2H、m、ArHmeta)、7.19-7.13(3H、m、ArHpara、ArHorto)、3.14-3.13(1H、m、CH-NH )、2.55(2H、d、J=7.64Hz、CH-Ph)、1.78-1.71(3H、m、2×CH、CHax-CHPh)、1.66-1.59(2H、m、2×CH)、1.44-1.41(4H、m、4×CH);
【0288】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:140.6(ArC)、128.7(ArCorto)、128.1(ArCmeta)、125.7(ArC、パラ)、47.6(CH-NH )、39.3(CH-Ph)、35.4(CH-CH-Ph)、26.0(CH)、25.9(CH);
【0289】
(1r,4r)-4-ベンジルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(トランス-化合物T・HCl(G=CHPh))
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.14(3H、br、NH )、7.29-7.25(2H、m、ArHmeta)、7.19-7.13(3H、m、ArHorto、ArHpara)、2.88(1H、tt、J=11.8Hz、J=3.2Hz、CHax-NH )、2.45(2H、d、J=6.9Hz、CH-Ph)、1.93-1.91(2H、m、2×CHeq)、1.66-1.59(2H、m、2×CHeq)、1.44-1.41(1H、m、CHax-CHPh)、1.28(2H、qd、J=12.61Hz、J=3.2Hz、2×CHax)、1.00(2H、qd、J=13.58Hz、J=2.9Hz、2×CHax);
【0290】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:140.3(ArC)、128.8(ArCorto)、128.0(ArCmeta)、125.7(ArCpara)、49.3(CH-NH )、42.3(CH-Ph)、37.9(CH-CHPh)、30.0(CH)、29.9(CH)、
【0291】
HRMS:M+H=190.15850(デルタ=-2.8ppm;C1320N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):173(100);117(2);105(31);95(9);91(5)および81(2)。
【0292】
IR(液体膜) υmax:3073、2610、2035、1610、1511、1494、1453、1392、1347、1203、1062、744、701cm-1
【0293】
2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩のシス-ジアステレオマー(化合物IIb・HCl)
(1s,4s)-4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(化合物IIb・HCl)
【化43】
2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩のシス-ジアステレオマー(約90.2%のdeを有するIIb・HCl)は、WO2010/070368による工業スケールの生成プロセスで、2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩のジアステレオマー混合物(約1:1の比のIb・HCl IIb・HCl)の再結晶の母液から入手した。
【0294】
(1s,4s)-4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(シス-化合物IIb・HCl)
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.14(3H、br、NH )、4.09-4.02(2H、m、OCH)、3.18-3.09(1H、m、CHax-NH )、2.27(2H、d、J=7.5Hz、CHCOOEt)、1.98-1.86(1H、m、CHeq-CHCOOEt)、1.69-1.62(4H、m、4×CH)、1.53-1.43(4H、m、4×CH)、1.18(3H、t、J=7.2Hz、CH)。
【0295】
13C NMR(126MHz、DMSO-d) δ:171.96(CO)、59.62(OCH)、47.2(CH-NH )、37.92(CHCOOEt)、30.58(CHax-CHCOOEt)、25.96(CH)、25.89(CH)、14.04(CH)。
【0296】
IR(ニート) υmax:2927、1727、1601、1520、1511、1447、1375、1226、1165、1031cm-1
【0297】
生体触媒としての異なる微生物株のトランスアミナーゼ
プラスミドの作成およびクロモバクテリウム・ビオラセウム由来の(S)-選択的トランスアミナーゼ(CvS-TA)の発現は、K.E.Cassimjeら(ACS Catal.1(9),1051-1055(2011),DOI:10.1021/cs200315h)によって開示された。増強された触媒の性質を示すHisタグ化CvS-TA W60C変異体(CvSW60C-TA)の組換え発現は、K.E.Cassimjeら(Org.Biomol.Chem.,10,5466-5470(2012),DOI:10.1039/C2OB25893E)によって公開された。Hisタグ化VfS-TAの組換え発現は、F.G Muttiら(Eur.J.Org.Chem.,1003-1007(2012),DOI:10.1002/ejoc.201101476)によって公開された。固定化全細胞形態で、ラセミアミンの速度論的分割のために適用される、それぞれ、3つの(R)-選択的TAおよび3つの(S)-選択的TAの、アルスロバクター属種(ArR-TA)、その変異型バリアント(ArRmut-TA)、アスペルギルス・テレウス(AtR-TA)由来の(R)-選択的TA;およびアルスロバクター・シトレウス(ArS-TA)、クロモバクテリウム・ビオラセウムの変異型バリアント(CvSW60C-TA)、ビブリオ・フルビアリス(VfS-TA)由来の(S)-選択的TAの生成および全細胞固定化は、Molnarら(Catalysts,9,438(2019),DOI:10.3390/catal9050438)によって公開された。2つの異なる親系統:ビブリオ・フルビアリスJS17 ATA(VfS-TA:Biotechnol.Bioeng.65,206-211(1999),DOI:10.1002/(SICI)1097-0290(19991020)65:2<206::AID-BIT11>3.0.CO;2-9)およびアルスロバクター属種ATA(ArR-TA:Appl.Microbiol.Biotechnol.69,499-505(2006),DOI:10.1007/s00253-005-0002-1)由来の24の変異体アミントランスアミナーゼ(ATA)を含有するトランスアミナーゼスクリーニングキット(Codexis、Redwood City、米国)もアッセイした。ATA-217と名付けられたVfS-TAのバリアントにおける17の変異(配列番号3において太字でマーク;図4を参照されたい)は、Novick S.J.ら(ACS Catal.11,3762-3770(2021),DOI:10.1021/acscatal.0c05450)によって開示された。
【0298】
トランスアミナーゼの発現
ArS-TAおよびVfS-TAの生成は、所与のTAの遺伝子を有する組換えpASK-IBA35+プラスミドを含有するE.coli BL21(DE3)において達成した。LB-Car培地(5mL;カルベニシリン、50mgL-1を含有するLB培地)に、終夜LB-Car寒天プレートからの1つの新鮮なコロニーを接種し、細胞を、振とうフラスコ(37℃、200rpm)中、終夜成長させた。2Lのフラスコ中のLB培地(0.5L)に、シード培養物(2mL)を接種し、細胞を、OD640が0.8に達するまで(およそ4時間)、37℃、200rpmで成長させた。誘導のために、テトラサイクリン溶液(20μL、エタノール中5mgml-1のテトラサイクリン)を添加し、培養物を、さらに16時間、25℃、200rpmで振とうした。次いで、細胞を遠心分離(15,000g、4℃、20分)によって回収した。
【0299】
AtR-TA、ArR-TA、ArRmut-TAおよびCvSW60C-TAの生成は、所与のTAの遺伝子を有する組換えpET21aプラスミドを含有するE.coli BL21(DE3)において達成した。LB-Car培地(5mL;カルベニシリン、50mgL-1を含有するLB培地)に、終夜LB-Car寒天プレートからの1つの新鮮なコロニーを接種し、細胞を、振とうフラスコ(37℃、200rpm)中、終夜成長させた。2Lのフラスコ中の自己誘導培地(0.5L:NaHPO、6gL-1;KHPO、3gL-1;トリプトン、20gL-1;酵母エキス、5gL-1;NaCl、5gL-1;グリセロール、7.56gL-1;グルコース、0.5gL-1;ラクトース、2gL-1 )に、シード培養物(2mL)を接種し、16時間、25℃、200rpmで振とうした。次いで、細胞を遠心分離(15,000g、4℃、20分)によって回収した。
【0300】
トランスアミナーゼ発現全細胞の固定化
シリカゾルを、以下の通り調製した:TEOS(14.4mL)を、0.1MのHNO(1.3mL)および蒸留水(5mL)を含有する溶液に添加し、得られた混合物を、室温で5分間超音波処理し(Emag Emmi 20HC Ultrasonic Bath、45 kHz)、4℃で24時間保った。次いで、MAT540支持体(3g)を、細胞ペースト懸濁液(6mL;1gの遠心分離した細胞ペーストから取得し、6mlの0.1Mのリン酸緩衝液、pH7.5に再懸濁した)と混合し、得られた懸濁液を均一になるまで激しく振とうした(Technokartell Test Tube Shaker Model T3SK、40Hz、室温、5分)。最後に、均一化された支持された細胞懸濁液をシリカゾルと混合し、得られた混合物を激しく振とうした(Technokartell Test Tube Shaker Model T3SK、40Hz、室温、5分)。ゲル化は、室温で30分以内に起こり、それに続いて、オープンディッシュ中、4℃で48時間、ゲルを熟成させた。粗固定化TA生体触媒を、蒸留水(2×15mL、100mM、pH7.5)で洗浄し、室温で(24時間)乾燥し、4℃で貯蔵した。
【0301】
クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のトランスアミナーゼのW60C変異体(CvSW60C-TA)の精製
CvSW60C-TAを含有する大腸菌細胞の発酵後、細胞を、フレンチプレスによって破壊し、遠心分離し、粗細胞抽出物を、F.G.Muttiら(Eur.J.Org.Chem.,1003-1007(2012),DOI:10.1002/ejoc.201101476)によって以前に記載されたようにして、Ni-NTA樹脂によって精製した。補因子PLPをCvSW60C-TAのストック溶液に添加し、これを、さらなる使用まで20%のグリセロール溶液中、-20℃で保った。
【0302】
ビブリオ・フルビアリス由来のトランスアミナーゼ(VfS-TA)の精製
VfS-TAを含有する大腸菌細胞の発酵後、細胞を、フレンチプレスによって破壊し、遠心分離し、粗細胞抽出物を、CvSW60C-TAの精製について上記に記載されたようにして、Ni-NTA樹脂によって精製した。補因子PLPをVfS-TAのストック溶液に添加し、これを、さらなる使用まで20%のグリセロール溶液中、-20℃で保った。
【0303】
グリセロールジグリシジルエーテル(GDE)によるアミノエチルポリメタクリレート樹脂の表面活性化
E.Abahaziら(Biochem.Eng.J.132,270-278(2018),DOI:10.1016/j.bej.2018.01.022)の方法に従って、エチレンアミン官能化メタクリレートポリマー樹脂ReliZyme(商標)EA403/S(1.0g、粒子径150~300μm、細孔サイズ400~600Å)を、エタノール(15mL)中のグリセロールジグリシジルエーテル溶液(10mmol)に添加した。ビスエポキシド溶液中のポリマー支持体の懸濁液を、450rpmで、25℃で24時間振とうした。活性化された支持体を、ガラスフィルター(G3)で濾別し、Patosolv(登録商標)(3×10mL)で洗浄し、室温で(4時間)乾燥し、アルゴン雰囲気下、4℃で貯蔵した。
【0304】
GDE活性化アミノエチル樹脂におけるCvSW60C-TAの固定化
E.Abahaziら(Biochem.Eng.J.132,270-278(2018),DOI:10.1016/j.bej.2018.01.022)の方法に従って、エッペンドルフ管(1.5mL)中、精製されたCvSW60C-TA(210μL、4.8mgmL-1)をHEPES緩衝液(790μL、50mM、pH7.0)で希釈し、次いで、GDE活性化アミノエチル樹脂(10.0mg、酵素:支持体比=1:10をもたらす)を溶液に添加した。得られた懸濁液を、900rpmで、25℃で24時間振とうした。固定化CvSW60C-TAを、遠心分離し、HEPES緩衝液(2×1.0mL)で洗浄した。固定化前のCvSW60C-TA溶液および上清におけるタンパク質濃度を、NanoDrop 2000分光光度計によって決定した。固定化収率(IY)を、式IY(%)=(P-P)/P×100(式中、P[mgmL-1]は、固定化前の初期タンパク質濃度であり、P[mgmL-1]は、固定化後の上清中のタンパク質濃度である)に従って計算した。GDE活性化アミノエチル樹脂(EA-G)上への精製された天然CvSW60C-TAの固定化後、ごく少量のタンパク質濃度が検出できたので(P 約0mgmL-1)、酵素:支持体比=1:10での固定化収率は約100%であった。固定化後、得られた共有結合的固定化CvSW60C-TA生体触媒を、動的異性化反応において直ぐに使用した。
【0305】
固定化プロセスは、同一の結果を伴って、4mLのバイアルにおいて10倍スケールアップすることができた。
【0306】
GDE活性化アミノエチル樹脂におけるVfS-TAの固定化
E.Abahaziら(Biochem.Eng.J.132,270-278(2018),DOI:10.1016/j.bej.2018.01.022)の方法に従って、エッペンドルフ管(1.5mL)中、精製されたVfS-TA(250μL、4.5mgmL-1)をHEPES緩衝液(790μL、50mM、pH7.0)で希釈し、次いで、GDE活性化アミノエチル樹脂(10.0mg、酵素:支持体比=1:10をもたらす)を溶液に添加した。得られた懸濁液を、900rpmで、25℃で24時間振とうした。VfS-TAを、遠心分離し、HEPES緩衝液(2×1.0mL)で洗浄した。固定化前のVfS-TA溶液および上清におけるタンパク質濃度を、NanoDrop 2000分光光度計によって決定した。酵素:支持体比=1:10で約100%の固定化収率が観察された。固定化後、得られた共有結合的固定化VfS-TA生体触媒を、動的異性化反応において直ぐに使用した。
【0307】
GDE活性化アミノエチル樹脂におけるCvSW60C-TAの連続フロー固定化
E.Abahaziら(Biochem.Eng.J.132,270-278(2018),DOI:10.1016/j.bej.2018.01.022)の方法に従って、CvSW60C-TAのフロースルー固定化を、正確な温度制御で、インハウスで作製されたアルミニウム金属ブロックカラムホルダー中のEA-G支持体で満たされたCatCart(商標)カラムが取り付けられたKnauer Azura P4.1SアイソクラチックHPLCポンプから構築された実験室スケールのフロー反応器において行った。CvSW60C-TA溶液(2mgmL-1、1:10の酵素:支持体比に対応する体積中)を、0.5mL分-1の流速で、EA-G支持体で満たされたステンレス鋼のCatCart(商標)カラム(ステンレス鋼、内径:4mm;全長:70mm;充填長さ:65mm;内部体積:0.816mL;支持体重量:211.4±16.1mg)において再循環させた。固定化前のCvSW60C-TA溶液および固定化の間のいくつかの時点のタンパク質濃度を、Nano-Drop 2000分光光度計によって決定した。
【0308】
バッチ方式におけるトランスアミナーゼを用いる2-(4-アミノシクロヘキシル)-酢酸エチルエステルのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(化合物Ib+IIb)の動的異性化(DI)
実施例1
バッチ方式におけるピルビン酸塩存在の下で固定化全細胞CvSW60C-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
固定化全細胞クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼW60C変異体生体触媒(CvSW60C-TA、50mg)を、4mlのバイアル中、リン酸緩衝液(1.6mL、100mM、pH7.5)に懸濁させた。2-(4-アミノシクロヘキシル)酢酸エチルエステル塩酸塩のシス/トランスジアステレオマー混合物[44:56比の化合物IIb・HCl+Ib・HCl;11.1mg、50μmol、リン酸緩衝液(200μL、100mM、pH7.5)中]およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム[0.5当量、0.23mg、25μmol、リン酸緩衝液(200μL、100mM、pH7.5)中]を、生体触媒懸濁液に添加し、25mMのシス/トランスジアステレオマー混合物(IIb・HCl/Ib・HCl)を有する2mLの最終反応体積を提供した。反応混合物を、オービタルシェーカー(500rpm)において、30℃で24時間振とうした。反応混合物(150μL)から取得された試料に、水酸化ナトリウム(100μL、1M)を添加し、それに続いて、酢酸エチル(800μL)で抽出した。アミンの誘導体化を無水酢酸(20μL、60℃、1時間)の添加によって行い、次いで、有機相をNaSOで乾燥した。試料をガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0309】
ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、混合物中で、それぞれ、76.3%、0.6%および23.0%であった。
【0310】
反応混合物を遠心分離して、生体触媒を除去した。水性懸濁液を、濃HCl水の添加によってpH1に酸性化し、それをジクロロメタン(3×3mL)で抽出した。まとめた有機相を、飽和ブライン(3mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、真空中で濃縮して、ケトン(化合物IIIb:2.0mg、11μmol、収率95%)を得た。酸性化された水相のpHを、25%の水酸化アンモニウム水の添加によってpH10に調整し、塩基性溶液をジクロロメタン(3×3mL)で抽出した。まとめた有機相を、飽和ブライン(3mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、真空中で濃縮して、トランス-アミン(化合物Ib:4.8mg、26μmol、収率68%でGCによるddetrans=98.3%)を得た。
【0311】
実施例2
バッチ方式におけるピルビン酸の塩存在下で固定化全細胞VfS-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
手順を、固定化全細胞ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA、50mg)生体触媒を使用した方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0312】
24時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、混合物中で、それぞれ、70.6%、1.5%、27.9であった。
【0313】
実施例3
バッチ方式におけるピルビン酸の塩存在下で二倍量の固定化全細胞VfS-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
手順を、固定化全細胞ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA、100mg)生体触媒を使用した方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0314】
6時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、混合物中で、それぞれ、74.5%、1.0%および24.5%であった。
【0315】
実施例4
バッチ方式におけるピルビン酸の塩存在下で精製された可溶性CvSW60C-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
手順を、25mMのシス/トランスジアステレオマー混合物(IIb・HCl/Ib・HCl=44:56)から出発する反応において、溶液中のNi-NTA精製クロモバクテリウム・ビオラセウムトランスアミナーゼW60C変異体(CvSW60C-TA)生体触媒を使用した(最終反応混合物中で0.5mg/mlのタンパク質濃度、0.2mMのピリドキサール-5-リン酸(PLP)で補充)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0316】
2時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、混合物中で、それぞれ、86.0%、0%および14.0%であった。
【0317】
実施例1に示される抽出後処理により、ケトン(化合物IIIb:1.3mg、7μmol、収率約98%)、トランス-アミン(化合物Ib:4.9mg、27μmol、収率62%でGCによるdetrans>99%)を得た。
【0318】
実施例5
バッチ方式におけるピルビン酸の塩存在下で精製された可溶性VfS-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
手順を、25mMのシス/トランスジアステレオマー混合物(IIb・HCl/Ib・HCl=51:49)から出発する反応において、Ni-NTA精製ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA)生体触媒を使用した(最終反応混合物中で0.5mg/mlのタンパク質濃度、0.2mMのピリドキサール-5-リン酸(PLP)で補充)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0319】
3時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、それぞれ、79.0%、0.5%および20.5%であった。
【0320】
実施例1に示される抽出後処理により、ケトン(化合物IIIb:1.7mg、約9μmol、収率約92%)、トランス-アミン(化合物Ib:4.8mg、26μmol、収率65%でGCによるdetrans=98.7%)を得た。
【0321】
実施例6
バッチ方式におけるピルビン酸の塩存在下で多孔質樹脂上に共有結合的に固定化されたVfS-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
手順を、生体触媒としてポリマー樹脂上の共有結合的固定化ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA、10mg)を使用した方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0322】
6時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、それぞれ、74.9%、1.6%および23.6%であった。
【0323】
実施例7
バッチ方式におけるケトン(IIIb)の存在下で固定化全細胞VfS-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
手順を、反応において、生体触媒として固定化全細胞ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA、100mg)およびアミンアクセプターとしてエチル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート(化合物IIIb、2.5mM)を使用した方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0324】
48時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、混合物中で、それぞれ、74.6%、12.4%および13.0%であった。
【0325】
実施例8
バッチ方式におけるケトン(IIIb)の存在下で精製された可溶性VfS-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
手順を、25mMのシス/トランスジアステレオマー混合物(IIb・HCl/Ib・HCl=51:49)から出発する反応において、アミンアクセプターとしてエチル2-(4-オキソシクロヘキシル)アセテート(化合物IIIb、2.5mM)およびNi-NTA精製ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA)生体触媒(最終反応混合物中で0.5mg/mlのタンパク質濃度、0.2mMのピリドキサール-5-リン酸(PLP)で補充)を使用した方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0326】
48時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、混合物中で、それぞれ、78.4%、10.8%および10.7%であった。
【0327】
実施例1に示される抽出後処理により、ケトン(化合物IIIb:1.0mg、約5.4μmol、収率約97%)および粗トランス-アミン(化合物Ibと少量のIIb):6.2mg、33μmol、収率65%でGCによるdetrans=75.7%)を得た。
【0328】
WO2010/070368に開示された方法による粗トランス-アミン(化合物Ibと少量のIIb)の再結晶により、トランス-アミン塩酸塩(化合物Ib・HCl:5.7mg、26μmol、GCによるdetrans>99%)を得た。
【0329】
実施例9
バッチ方式におけるシクロヘキサノンの存在下で精製された可溶性VfS-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
手順を、25mMのシス/トランスジアステレオマー混合物(IIb・HCl/Ib・HCl=51:49)から出発する反応において、アミンアクセプターとしてシクロヘキサノン(5mM)およびNi-NTA精製ビブリオ・フルビアリストランスアミナーゼ(VfS-TA)生体触媒(最終反応混合物中で0.5mg/mlのタンパク質濃度、0.2mMのピリドキサール-5-リン酸(PLP)で補充)を使用した方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0330】
48時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、混合物中で、それぞれ、85.9%、9.3%および4.8%であった。
【0331】
実施例1に示される抽出後処理により、粗ケトン(化合物IIIbと少量のシクロヘキサノン:0.4mg)および粗トランス-アミン(化合物Ibと少量のIIb):6.1mg、32μmol、収率64%でGCによるdetrans=80.4%)を得た。
【0332】
連続フロー方式におけるクロモバクター・ビオラセウム(Chromobacter violaceum)由来のトランスアミナーゼの共有結合的固定化W60C変異体を用いる4-置換シクロヘキサン-1-アミンのトランス/シス-ジアステレオマー混合物(化合物C+T)の動的異性化
実施例10
連続フロー方式におけるピルビン酸の塩存在下で多孔質樹脂上に共有結合的に固定化されたCvSW60C-TAを用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib・HCl+IIb・HCl)のDI
4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(化合物Ib・HCl+IIb・HCl)の動的異性化は、SynBioCartカラム(SynBiocat、Budapest、ハンガリー;ステンレス鋼の外側およびPTFEの内側管、内径:4mm;全長:70mm;充填長さ:65mm;内部体積:0.816mL)に取り付けられたシリンジポンプ(Asia(登録商標)シリンジポンプシステム、Syrris Ltd.、Royston、英国)から構成される実験室スケールのフロー反応器において成し遂げられた。カラムを、PTFE製のフィルター膜[Whatman(登録商標)Sigma-Aldrich、WHA10411311、細孔サイズ0.45μm]によってシールした。シーリング要素はPTFE製であった。PTFEチューブ(1/16インチの外径および0.8mmの内径、VICI AG International、Schenkon、スイス)およびPEEK手締め(Sigma Aldrich)を使用して、カラム(商業的供給業者から購入)に接続した。グリセロール-1,3-ジグリシジルエーテル改変メタクリレートポリマー樹脂(ReliZyme(商標)EA403/S;ポリメチルメタクリレート支持体、粒子径150~300μm、細孔サイズ400~600Å)上に固定化された共有結合的固定化CvSW60C-TA生体触媒(充填重量:375±12mg/カラム)で満たされた、3つの直列的に接続されたSynBioCartカラムを、インハウス製のステンレス鋼金属ブロックにおいて、正確な温度制御で40℃に温度調節した。CvSW60C-TA生体触媒で満たされたカラムを、HEPES緩衝液(50mM、pH=7.0)によって1時間、事前洗浄した。次いで、4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物[化合物Ib・HCl+IIb・HCl、シス:トランス=69.7:30.3、20mM、共溶媒としてDMSO(10%v/v)、ピルビン酸ナトリウム(0.95当量)およびPLP(1%n/n)を含有するHEPES緩衝液(50mM、pH=7.0)に溶解]の溶液を、10μL分-1の流速で、カラムを通してポンプで送った。安定した操作が確立された後(約6時間)、試料を取り、安定操作期間の間毎時間GCによって分析し、流出した反応生成物を48時間収集した。
【0333】
収集溶液(25mL)を、濃HCl水によってpH1に酸性化し、形成されたケトン(化合物IIIb)を、ジクロロメタン(3×50mL)による抽出によって除去した。ケトンの除去後、水相を、水酸化アンモニウム(25%)の添加によってpH12に塩基性化し、残ったアミンをジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。まとめた有機相を、飽和ブライン(30mL)で抽出し、NaSOで乾燥し、真空中で濃縮して、生成物アミン(化合物Ib)を得、これを、ジエチルエーテルに溶解し、HClガスで処理した。次いで、沈殿を、濾過によって単離し、乾燥して、白色固体としてトランス-アミン塩酸塩生成物(化合物Ib・HCl、11.6mg、単離収率27%、detrans>99%)を得た。
【0334】
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.09(3H、br、NH )、4.04(2H、q、J=7.22Hz、OCH)、2.94-2.83(1H、m、CHax-NH )、2.17(2H、d、J=7.0Hz、CH-COOEt)、1.93(2H、br d、J=13.5Hz、2×CHeqCHNH )、1.72(2H、br d、J=13.0Hz、2×CHeq)、1.64-1.56(1H、m、CHax-CHCOOEt)、1.32(2H、qd、J=12.4Hz、J=2.9Hz、2×CHax-CHNH )、1.17(3H、t、J=7.2Hz、CH)、1.02(2H、qd、J=12.8Hz、J=2.7Hz、2×CHax);
【0335】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:171.8(CO)、59.6(OCH)、48.9(CH-NH )、40.4(CH-COOEt)、33.1(CH)、29.8(2×CH)、14.0(CH);
【0336】
HRMS:M=200.16443(デルタ=-0.4ppm;C1122N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):183(41)および141(100)。
【0337】
実施例11
連続フロー方式におけるピルビン酸の塩存在下で多孔質樹脂上に共有結合的に固定化されたCvSW60C-TAを用いるトランス/シス-イソプロピルエステル(Id・HCl+IId・HCl)のDI
手順を、共有結合的固定化CvSW60C-TA生体触媒で満たされた4つの直列的に接続されたSynBioCartカラムが、4-(2-イソプロポキシ-2-オキソエチル)シクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(化合物Id・HCl+IId・HCl、20mM、シス:トランス=51.7:48.3)の動的異性化のために適用された方法で改変して、実施例10に示される通りに行った。48時間の安定的な反応の操作により、白色固体としてトランス-アミン塩酸塩生成物(化合物Id・HCl、18.7mg、単離収率30%、detrans>99%)を得た。
【0338】
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.05(3H、br、NH )、4.88(1H、quint、J=6.3Hz、CH-(CH)、2.89-2.87(1H、m、CHax-NH )、2.14(2H、d、J=6.96Hz、CH-COOPr)、1.94-1.91(2H、m、2×CHeq)、1.72-1.70(2H、m、2×CHeq)、1.63-1.55(1H、m、CHax-CHCOOPr)、1.32(2H、qd、J=12.7Hz、J=3.0Hz、2×CHax)、1.17(6H、d、J=6.25Hz、2×CH)、1.02(2H、qd、J=12.9Hz、J=3.1Hz、2×CHax
【0339】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:171.3(CO)、66.9(CH-(CH)、48.9(CH-NH )、40.6(CH-CH-COOPr)、33.2(CH-CHCOOPr)、29.8(CH)、29.7(CH)、21.5(CH);
【0340】
HRMS:M=186.14866(デルタ=-1.1ppm;C1020N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):169(100)。
【0341】
実施例12
連続フロー方式におけるピルビン酸の塩存在下で多孔質樹脂上に共有結合的に固定化されたCvSW60C-TAを用いるトランス/シス-4-メチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(C・HCl+T・HCl(G=H))のDI
手順を、共有結合的固定化CvSW60C-TA生体触媒で満たされた4つの直列的に接続されたSynBioCartカラムが、4-メチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(化合物C・HCl+T・HCl(G=H)、20mM、シス:トランス=42:58)の動的異性化のために適用された方法で改変して、実施例10に示される通りに行った。24時間の安定的な反応の操作により、トランス-アミン(化合物T(G=H))をdetrans>99%(GCによる)を得て、これは、生成物の揮発性に起因して単離されなかった。
【0342】
実施例13
連続フロー方式におけるピルビン酸の塩存在下で多孔質樹脂上に共有結合的に固定化されたCvSW60C-TAを用いるトランス/シス-4-エチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(C・HCl+T・HCl(G=Me))のDI
手順を、共有結合的固定化CvSW60C-TA生体触媒で満たされた2つの直列的に接続されたSynBioCartカラムが、4-エチルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(化合物C・HCl+T・HCl(G=Me)、20mM、シス:トランス=65.4:34.6)の動的異性化のために適用された方法で改変して、実施例10に示される通りに行った。24時間(6~24時間)の安定的な反応の操作により、白色固体としてトランス-アミン塩酸塩生成物(化合物C・HCl+T・HCl(G=Me)、10.7mg、単離収率30.4%、detrans>99%)を得た。
【0343】
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:7.99(3H、br、NH )、2.91-2.86(1H、m CHax-NH )、1.93-1.92(2H、m、2×CHeq)、1.75-1.74(2H、m、2×CHeq)、1.31-1.23(2H、qd、J=12.6Hz、J=3.25Hz、2×CHax)、1.21-1.16(2H、quint、J=15Hz CHCH)、1.07-1.03(1H、m、CHax-CHCH)、0.94-0.88(2H、qd、J=12.9Hz、J=3.3Hz、2×CHax)、0.86-0.83(3H、t、J=7.5Hz、CHCH);
【0344】
13C NMR(125MHz、DMSO-d) δ:49.42(CH-NH )、37.49(CH-CHCH)、30.07(CH)、29.92(CH-CHCHCH)、28.69(CHCH)、11.27(CHCH);
【0345】
HRMS:M=128.14307(デルタ=-2.4ppm;C18N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):111(100)および69(10)。
【0346】
実施例14
連続フロー方式におけるピルビン酸の塩存在下で多孔質樹脂上に共有結合的に固定化されたCvSW60C-TAを用いるトランス/シス-4-フェニルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(C・HCl+T・HCl(G=Ph))のDI
手順を、共有結合的固定化CvSW60C-TA生体触媒で満たされた2つの直列的に接続されたSynBioCartカラムが、4-フェニルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(化合物C・HCl+T・HCl(G=Ph)、15mM、シス:トランス=26.2:73.8)の動的異性化のために適用された方法で改変して、実施例10に示される通りに行った。24時間(6~24時間)の安定的な反応の操作により、黄色がかった白色固体としてトランス-アミン塩酸塩生成物(化合物C・HCl+T・HCl(G=Ph)、(26.7mg、単離収率70.7%)を得た。
【0347】
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.17(3H、br、NH )、7.29-7.26(2H、m、ArHmeta)、7.24-7.22(2H、m、ArHorto)、7.18(1H、tt、J=7.11Hz、J=1.43Hz、ArHpara)、3.05-3.03(1H、m、CHax-NH )、2.46-2.40(1H、m、CHax-Ph)、2.06-2.04(2H、m、2×CHeq)、1.83-1.82(2H、m、2×CHeq);1.57-1.44(4H、m、4×CHax
【0348】
13C NMR(126MHz、DMSO-d) δ:146.0(ArC)、128.2(ArCHmeta)、126.6(ArCHorto)、126.0(ArCHpara)、48.8(CH-NH )、42.2(CH-Ph)、31.4(CH)、30.4(CH);
【0349】
HRMS:M=176.14312(デルタ=-1.5ppm;C1218N)。HR-ESI-MS-MS(CID=35%;相対強度%):159(100);91(3)および81(3)。
【0350】
実施例15
連続フロー方式におけるピルビン酸の塩存在下で多孔質樹脂上に共有結合的に固定化されたCvSW60C-TAを用いるトランス/シス-4-ベンジルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物(C・HCl+T・HCl(G=CHPh))のDI
手順を、共有結合的固定化CvSW60C-TA生体触媒で満たされた1つのみのSynBioCartカラムが、4-ベンジルシクロヘキサン-1-アミニウム塩化物のシス/トランス-ジアステレオマー混合物(化合物C・HCl+T・HCl(G=CHPh)、15mM、シス:トランス=50.7:49.3)の動的異性化のために適用された方法で改変して、実施例10に示される通りに行った。24時間(6~24時間)の安定的な反応の操作により、黄色がかった白色固体としてトランス-アミン塩酸塩生成物(化合物C・HCl+T・HCl(G=CHPh)、(19.8mg、単離収率54.1%)を得た。
【0351】
H NMR(500MHz、DMSO-d) δ:8.17(3H、br、NH )、7.29-7.26(2H、m、ArHmeta)、7.24-7.22(2H、m、ArHorto)、7.18(1H、tt、J=7.11Hz、J=1.43Hz、ArHpara)、3.05-3.03(1H、m、CHax-NH )、2.46-2.40(1H、m、CHax-Ph)、2.06-2.04(2H、m、2×CHeq)、1.83-1.82(2H、m、2×CHeq);1.57-1.44(4H、m、4×CHax
【0352】
バッチ方式におけるATA-217(操作されたVfS-TA)を用いる4-置換シクロヘキサン-1-アミンのシス/トランス-ジアステレオマー混合物の動的異性化
実施例16
バッチ方式におけるピルビン酸の塩存在下で凍結乾燥ATA-217を用いるトランス/シス-メチルエステル(Ia+IIa)のDI
手順を、ATA-217生体触媒を、25mMのシス/トランスジアステレオマー混合物(IIb・HCl/Ib・HCl=48:52)から出発する反応において、最終反応混合物(2ml)で、ピリドキサール-5-リン酸(PLP、0.1mM)が補充されたリン酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH7.5)およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.04当量、1mM)中で使用した(1.0mg/mlの濃度)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0353】
24時間の反応時間後、ケトン(IIIa)ならびに対応するIaおよびIIaのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物Ia、IIa、およびIIIaのモル分率は、それぞれ、76.9%、19.2%および3.9%であり、24.7%のシスからトランスへの変換およびGCによるdetrans=60.1%を示した。
【0354】
実施例17
バッチ方式におけるピルビン酸の塩存在下で凍結乾燥ATA-217を用いるトランス/シス-エチルエステル(Ib+IIb)のDI
手順を、ATA-217生体触媒を、25mMのシス/トランスジアステレオマー混合物(IIb・HCl/Ib・HCl=49:51)から出発する反応において、最終反応混合物(2ml)で、ピリドキサール-5-リン酸(PLP、0.1mM)が補充されたリン酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH7.5)およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.04当量、1mM)中で使用した(1.0mg/mlの濃度)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0355】
24時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、それぞれ、84.6%、11.3%および4.0%であり、34.0%のシスからトランスへの変換およびGCによるdetrans=76.4%を示した。
【0356】
実施例18
バッチ方式におけるピルビン酸の塩存在下で凍結乾燥ATA-217を用いるシス-エチルエステル(IIb)のDI
手順を、ATA-217生体触媒を、25mMのシスジアステレオマー(IIb・HCl、decis=90.2%)から出発する反応において、最終反応混合物(2ml)で、ピリドキサール-5-リン酸(PLP、0.1mM)が補充されたリン酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH7.5)およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.04当量、1mM)中で使用した(1.0mg/mlの濃度)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0357】
24時間の反応時間後、ケトン(IIIb)ならびに対応するIbおよびIIbのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物Ib、IIb、およびIIIbのモル分率は、それぞれ、84.2%、11.4%および4.4%であり、79.3%のシスからトランスへの変換およびGCによるdetrans=76.0%を示した。
【0358】
実施例19
バッチ方式におけるピルビン酸の塩存在下で凍結乾燥ATA-217を用いるトランス/シス-イソプロピルエステル(Id+IId)のDI
手順を、ATA-217生体触媒を、25mMのシス/トランスジアステレオマー混合物(IId・HCl/Id・HCl=69:31)から出発する反応において、最終反応混合物(2ml)で、ピリドキサール-5-リン酸(PLP、0.1mM)が補充されたリン酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH7.5)およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.04当量、1mM)中で使用した(1.0mg/mlの濃度)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0359】
24時間の反応時間後、ケトン(IIId)ならびに対応するIdおよびIIdのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物Id、IId、およびIIIdのモル分率は、それぞれ、84.4%、10.9%および4.7%であり、53.4%のシスからトランスへの変換およびGCによるdetrans=77.2%を示した。
【0360】
実施例20
バッチ方式におけるピルビン酸塩の存在下で凍結乾燥ATA-217を用いるトランス/シス-2-(4-アミノシクロヘキシル)エタン-1-オール(IVa+Va)の異性化の試み
手順を、ATA-217生体触媒を、25mMのシス/トランスジアステレオマー混合物(Va/IVa=48.3:51.7)から出発する反応において、最終反応混合物(2ml)で、ピリドキサール-5-リン酸(PLP、0.1mM)が補充されたリン酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH7.5)およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.04当量、1mM)中で使用した(1.0mg/mlの濃度)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0361】
24時間の反応時間後、ケトン(VIa)ならびに対応するIVaおよびVaのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物IVa、Va、およびVIaのモル分率は、それぞれ、49.8%、31.0%および19.2%であり、シスからトランスへの変換がほとんどないが、GCによるdetrans=23.2%を示した。
【0362】
実施例21
バッチ方式におけるピルビン酸塩の存在下で凍結乾燥ATA-217を用いるトランス/シス-4-(2-アセトキシエチル)シクロヘキサン-1-アミン[化合物IV(R=Ac)+V(R=Ac)]のDI
手順を、ATA-217生体触媒を、25mMのO-アセテートのシス/トランスジアステレオマー混合物(V(R=Ac)・HCl/IV(R=Ac)・HCl=52.9:47.1)から出発する反応において、最終反応混合物(2ml)で、ピリドキサール-5-リン酸(PLP、0.1mM)が補充されたリン酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH7.5)およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.04当量、1mM)中で使用した(1.0mg/mlの濃度)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0363】
24時間の反応時間後、ケトン[VI(R=Ac)]ならびに対応するIV(R=Ac)およびV(R=Ac)のアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物IV(R=Ac)、V(R=Ac)、およびVI(R=Ac)のモル分率が、それぞれ、59.4%、33.2%および7.4%であり、12.3%のシスからトランスへの変換およびGCによるdetrans=28.3%を示した。
【0364】
実施例22
バッチ方式におけるピルビン酸塩の存在下で凍結乾燥ATA-217を用いるトランス/シス-4-((1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン(化合物VIIa+VIIIa)のDI
手順を、ATA-217生体触媒を、25mMのO-アセテートのシス/トランスジアステレオマー混合物(VIIa/VIIIa=52.0:48.0)から出発する反応において、最終反応混合物(2ml)で、ピリドキサール-5-リン酸(PLP、0.1mM)が補充されたリン酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH7.5)およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.04当量、1mM)中で使用した(1.0mg/mlの濃度)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0365】
24時間の反応時間後、ケトン(IXa)ならびに対応するVIIaおよびVIIIaのアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物VIIa、VIIIa、およびIXaのモル分率は、それぞれ、74.9%、11.7%および13.4%であり、22.9%のシスからトランスへの変換およびGCによるdetrans=73.0%を示した。
【0366】
実施例23
バッチ方式におけるピルビン酸塩の存在下で凍結乾燥ATA-217を用いるトランス/シス-4-((1,3-ジオキサン-2-イル)メチル)シクロヘキサン-1-アミン[化合物VII(n=2)+VIIIa(n=2)]のDI
手順を、ATA-217生体触媒を、25mMのO-アセテートのシス/トランスジアステレオマー混合物(VII(n=2)/VIII(n=2)=51.0:49.0)から出発する反応において、最終反応混合物(2ml)で、ピリドキサール-5-リン酸(PLP、0.1mM)が補充されたリン酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH7.5)およびアミンアクセプターとしてピルビン酸ナトリウム(0.04当量、1mM)中で使用した(1.0mg/mlの濃度)方法で改変して、実施例1に示される通りに行った。
【0367】
24時間の反応時間後、ケトン[IXa(n=2)]ならびに対応するVII(n=2)およびVIII(n=2)のアセトアミドについてのピーク面積の積分により、混合物中の生成物VII(n=2)、VIII(n=2)、およびIX(n=2)のモル分率は、それぞれ、60.9%、27.3%および11.7%であり、9.9%のシスからトランスへの変換およびGCによるdetrans=38.0%を示した。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024534364000001.xml
【国際調査報告】