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特表2024-534376ビームグループステアリングの方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ビームグループステアリングの方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20240912BHJP
   H01Q 25/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H04B7/06 910
H01Q25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516391
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 US2021050138
(87)【国際公開番号】W WO2023038644
(87)【国際公開日】2023-03-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513180451
【氏名又は名称】ヴィアサット,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViaSat,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ビュアー,ケネス ヴイ.
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021DB01
5J021DB04
5J021FA06
5J021FA13
5J021FA30
5J021GA02
5J021HA02
5J021HA07
5J021JA07
(57)【要約】
本明細書において開示されるビーム形成方法(700)および装置(10)は、ビームグループ(70)のそれぞれのビーム(72)を、前記ビームグループ(70)の中で空間的に重複しなく、固定された空間的関係を有するものとして定義するビーム形成重み(24)の適用、および前記ビームグループ(70)のそれぞれの前記ビーム(72)を共通の方向にステアリングするビームグループステアリング重み(28)の適用を含むビーム形成への有利なアプローチを使用する。この構成により、例えば、ビーム形成器(12)のビーム形成構造を、前記ビームグループ(70)を定義するために必要な構造に制限し、ビームグループステアリングを使用して前記ビームグループ(70)を様々な方向に向けてより大きな信号カバレッジを経時的に提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁信号の送受信にビーム形成を使用する装置(10)であって、
ビームグループ(70)のそれぞれのビーム(72)に対応するビーム信号(14)と、前記電磁信号の送受信に使用されるアンテナ(22)の素子(18)に対応する素子信号(16)との間の変換を行うように構成されているビーム形成器(12)であって、前記ビーム形成器(12)は、前記ビームグループ(70)の前記それぞれのビーム(72)を、前記ビームグループ(70)の中で空間的に重複しなく、固定された空間的関係を有するものとして定義するビーム形成重み(24)を適用するように構成されたビーム形成回路(22)を備え、前記ビーム形成器(12)は、前記ビームグループ(70)の前記それぞれのビーム(72)を同じ方向に共通にステアリングするビームグループステアリング重み(28)を適用するように構成されたビームグループステアリング回路(26)をさらに備える、ビーム形成器(12)と、
前記ビームグループステアリング重み(28)の制御に基づいて、前記ビームグループステアリング回路(26)によってビームグループステアリングを制御するように構成されている制御回路(30)と、を備える装置(10)。
【請求項2】
前記ビーム形成回路(22)は、前記ビーム形成重み(24)を適用するように構成された遅延素子(54)を備える前記ビーム形成器(12)の固定部分(50)を含み、前記ビームグループステアリング回路(26)は、前記ビームグループステアリング重み(28)を適用するように構成された遅延素子(56)を備える前記ビーム形成器(12)の可変部分(52)を含む、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記遅延素子(54)は実時間遅延線(58)であり、前記遅延素子(56)は移相器(60)である、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記ビームグループ(70)の各ビーム(72)が個別のビーム方向を有し、自由空間における前記それぞれのビーム(72)の絶対ビーム方向が、前記個別のビーム方向とビームグループ方向の組み合わせにより定義されている請求項1~3のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記制御回路(30)は、スケジュール(36)が各定義された間隔においてアクティブになる前記ビームグループ方向を決定するように、定義された間隔で適用される前記位相シフトを定義する前記スケジュール(36)に従って前記ビームグループステアリング重み(28)として前記位相シフトを選択することによって前記ビームグループステアリングを制御するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記スケジュール(36)に従ってアクティブにされる複数の異なるビームグループ方向に関して、前記異なるビームグループ方向のうちの少なくとも1つに従う前記ビームグループ(70)内の前記それぞれのビーム(72)は、前記異なるビームグループ方向のうちの少なくとももう1つに従う前記ビームグループ(70)内の前記それぞれのビーム(72)と部分的に重なり合う、請求項5に記載の装置(10)。
【請求項7】
前記ビームグループ(70)内には、それぞれ対応するビームカバレッジエリア(80)内でカバレッジを提供するN個のビーム(72)があり、前記装置(10)は、それぞれのスケジューリング間隔で使用するそれぞれのビームグループステアリング方向を定義する時分割多元接続(TDMA)スケジュール(36)を適用して、最大M個のビームカバレッジエリア(80)にわたって時間多重化カバレッジを提供するように構成され、N個のビームカバレッジエリア(80)が各スケジューリング間隔においてアクティブであり、ここで、Mは、それぞれのスケジューリング間隔にわたって使用される異なるビームグループステアリング方向の数に等しい、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項8】
前記ビーム形成回路(22)が、それぞれ前記ビームグループ(70)内の前記N個のビーム(72)のうちのそれぞれ1つを定義するビーム形成重み(24)のそれぞれのセットを提供するNセットの遅延素子(54)を備え、前記ビームグループステアリング回路(26)は、前記ビームグループステアリング重み(28)を前記素子信号(16)に共通に適用するように構成された一組の遅延素子(56)を備え、前記ビームグループ(70)のQ個のポインティング方向を定義するQ個のセットのビームグループステアリング重み(28)が存在する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ビームグループ(70)の前記それぞれのビーム(72)は、前記ビームグループ方向が変化するにつれて共通にシフトする対応するビームカバレッジエリア(80)を有し、前記制御回路(30)は、一連の間隔にわたって一連のビームグループ方向をアクティブにし、各間隔においてアクティブである前記対応するビームカバレッジエリア(80)の集合である集合カバレッジエリア(82、92)にわたって時間多重化信号カバレッジを提供するように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項10】
前記一連のビームグループ方向を定義するスケジュール(36)を記憶するように構成された記憶装置(34)をさらに備える、請求項9に記載の装置(10)。
【請求項11】
前記装置(10)は、前記集合カバレッジエリア(82、92)内で動作する他の装置(44、94)に通信サービスを提供し、前記スケジュール(36)は、通信ニーズおよび前記集合カバレッジエリア(82、92)内の他の装置(44、94)の位置に基づいて、前記装置(10)によって、または、サポート装置(46、96)によって動的に決定される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ビームグループ(70)がN個のビーム(72)を含み、M個のビームカバレッジエリア(80)に関して、M>Nであり、前記制御回路(30)が、前記ビームグループステアリング回路(26)を制御して、前記M個のビームカバレッジエリア(80)のうちN個の重複しないビームカバレッジエリア(80)の異なるサブセットを異なる間隔でアクティブにするように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項13】
前記制御回路(30)は、時分割多元接続(TDMA)スケジュール(36)に従って、前記M個のビームカバレッジエリア(80)のうちの前記N個の重複しないビームカバレッジエリア(80)のどのサブセットがどの間隔でアクティブになるかを制御するように構成されている、請求項12に記載の装置(10)。
【請求項14】
前記装置(10)は、任意の所定の時間に前記ビームグループ(70)によりカバーされるよりも大きなエリア(92)にわたって時間多重化信号カバレッジを提供するために前記ビームグループステアリングを使用するように構成された通信衛星(90)のペイロードである、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項15】
前記制御回路(30)は、前記ビームグループ方向が定義された角度範囲にわたり段階的に変化し、前記ビームグループ(70)の対応するビームカバレッジエリア(80)が、前記より大きなカバレッジエリア(92)内で段階的にシフトするように、一連の間隔にわたって前記ビームグループ方向を変更するように構成されている、請求項14に記載の装置(10)。
【請求項16】
電磁信号の送受信のためにビーム形成を使用する装置(10)による動作の方法(700)であって、前記方法(700)は、
前記装置(10)のビーム形成器(12)において、同じ第1の方向に前記ビームグループ(70)のそれぞれのビーム(72)を共通にステアリングする第1のビームグループステアリング重み(28)を適用することで、第1の間隔において第1のビームグループ方向に前記ビームグループ(70)を向けるステップ(702)であって、前記装置(10)の前記ビーム形成器(12)は、前記ビームグループ(70)内の前記それぞれのビーム(72)に対応するビーム信号(14)と、電磁信号の送受信に使用されるアンテナ(22)の素子(18)に対応する素子信号(16)との間の変換を行い、前記ビーム形成器(12)は前記ビームグループ(70)の前記それぞれのビーム(72)を、前記ビームグループ(70)の中で空間的に重複しなく、固定された空間的関係を有するものとして定義するビーム形成重み(24)を適用する、ステップ(702)と、
前記ビーム形成器(12)において、同じ第2の方向に前記ビームグループ(70)の前記それぞれのビーム(72)を共通にステアリングする第2のビームグループステアリング重み(28)を適用することによって、第2の間隔中に前記ビームグループ(70)を第2のビームグループ方向に向けるステップ(704)と、を含む方法(700)。
【請求項17】
前記ビームグループ(70)の各ビーム(72)が個別のビーム方向を有し、自由空間における前記それぞれのビーム(72)の絶対ビーム方向が前記個別のビーム方向と前記ビームグループ方向の組み合わせによって定義される、請求項16に記載の方法(700)。
【請求項18】
前記第1または第2のビームグループステアリング重み(28)の適用によって前記ビームグループ(70)をステアリングするステップでは、すべてのそれぞれのビーム(72)を前記同じ第1または第2の方向に共通に移動させることによって前記ビームグループ(70)内の前記固定された空間的関係を維持する、請求項16または17に記載の方法(700)。
【請求項19】
前記第1および第2の間隔は、各間隔でどのビームグループ方向が使用されるかを指定するスケジュール(36)によって定義される複数の間隔のうちのものであり、前記方法(700)は、前記スケジュール(36)に従って前記ビーム形成器(12)を制御するステップを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法(700)。
【請求項20】
前記スケジュール(36)に従って使用される複数の異なるビームグループ方向に関して、異なるビームグループ方向のうちの少なくとも1つに従う前記ビームグループ(70)の前記それぞれのビーム(72)が、前記異なるビームグループ方向のうちの少なくとももう1つに従う前記ビームグループ(70)の前記それぞれのビーム(72)と部分的に重なり合う、請求項19に記載の方法(700)。
【請求項21】
前記ビームグループ(70)内には、対応するビームカバレッジエリア(80)内でカバレッジを提供するN個のビーム(72)があり、前記方法(700)は、それぞれのスケジューリング間隔で使用するそれぞれのビームグループステアリング方向を定義する時分割多元接続(TDMA)スケジュール(36)を適用して、最大M個のビームカバレッジエリア(80)にわたって時間多重化カバレッジを提供することを含み、各スケジューリング間隔でN個のビームカバレッジエリア(80)がアクティブであり、Mは、前記それぞれのスケジューリング間隔にわたって使用される異なるビームグループステアリング方向の数に等しい、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法(700)。
【請求項22】
Q個のセットのビームグループステアリング重み(28)があり、前記Q個のセットのビームグループステアリング重み(28)のそれぞれが、前記ビームグループ(70)の異なる向きの方向を定義し、前記方法(700)は、各スケジューリング間隔において前記ビーム形成器(12)によって適用される前記Q個のセットのビームグループステアリング重み(28)のうちの1つを選択するステップを含む、請求項21に記載の方法(700)。
【請求項23】
前記ビームグループ(70)の前記それぞれのビーム(72)は、前記ビームグループ方向が変化するにつれて共通にシフトする対応するビームカバレッジエリア(80)を有し、前記方法(700)は、一連の間隔にわたって一連のビームグループ方向をアクティブにして、各間隔においてアクティブである前記対応するビームカバレッジエリア(80)の集合体である集合カバレッジエリア(82、92)にわたって時間多重化信号カバレッジを提供するステップを含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法(700)。
【請求項24】
前記方法(700)は、前記装置(10)に記憶されたスケジュール(36)に従って前記一連のビームグループ方向を決定するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法(700)。
【請求項25】
前記装置(10)が、前記集合カバレッジエリア(82、92)内で動作する他の装置(44、94)に通信サービスを提供し、前記スケジュール(36)は、通信ニーズおよび前記集合カバレッジエリア(82、92)内の他の装置(44、94)の位置に基づいて動的に決定される、請求項24に記載の方法(700)。
【請求項26】
前記ビームグループ(70)がN個のビーム(72)を含み、M個のビームカバレッジエリア(80)に関して、M>Nであり、前記方法(700)は、前記ビームグループステアリングを制御して、前記M個のビームカバレッジエリア(80)のうちN個の重複しないビームカバレッジエリア(80)の異なるサブセットを異なる間隔でアクティブにすることを含む、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法(700)。
【請求項27】
前記方法(700)は、時分割多元接続(TDMA)スケジュール(36)に従って、前記M個のビームカバレッジエリア(80)のうちの前記N個の重複しないビームカバレッジエリア(80)のどのサブセットがどの間隔でアクティブになるかを制御するステップを含む、請求項26に記載の方法(700)。
【請求項28】
前記装置(10)は通信衛星(90)のペイロードであり、前記方法(700)は、任意の所定の時間に前記ビームグループ(70)によりカバーされるよりも大きなエリア(92)にわたる時間多重化信号カバレッジを提供するために前記ビームグループステアリングを使用するステップを含む、請求項16~27のいずれか一項に記載の方法(700)。
【請求項29】
前記方法(700)は、前記ビームグループ方向が定義された角度範囲にわたって段階的にステップし、前記ビームグループ(70)の対応するビームカバレッジエリア(80)が、前記より大きなカバレッジエリア(92)内で段階的にシフトするように、一連の間隔にわたって前記ビームグループ方向を変更させるステップを含む、請求項28に記載の方法(700)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される装置および方法は、電磁信号の送受信のためのビーム形成に関し、特に、ビーム形成回路の有利な構成を使用するビームグループステアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁信号の「ビーム形成」とは、アンテナからの指向性信号の送受信を指し、「指向」とは、関係するアンテナに対する水平または垂直の角度を指す。送信用の信号のビーム形成には、複数のアンテナ素子からの信号の位相と振幅を制御して、アンテナから放射される結果の波面に建設的および破壊的な干渉のパターンを作成することが含まれる。そのパターンが遠方フィールドの信号エネルギーのビームを形成する。受信でのビーム形成も同様で、所望の指向性感度に対応する重みのセットに従って、それぞれのアンテナ素子で受信された信号の重み付けに依存する。
【0003】
ビーム形成器は、ビーム信号と素子信号の間で「変換」を行うものとして理解できる。「ビーム信号」は、特定の指向性感度で送信または受信される信号を表し、各素子信号はビーム信号のそれぞれ重み付けされたバージョンであり、ビーム形成に使用されるアンテナのアンテナ素子の特定の1つに対応する。重み付けは、対応する建設的結合および破壊的結合のパターンを介して所望の指向性を引き起こすそれぞれの遅延を含む。
【0004】
ビーム形成器は、それぞれの素子ごとの重みを適用するために使用されるビーム形成素子を備えるビーム形成回路を含む。N個のアンテナ素子を含み、所定の指向性を有する所定の「第1の」ビームの形成に関する例示的なシナリオでは、第1のビームの形成をもたらすそれぞれの素子ごとの重みを適用するためのN個のビーム形成素子、例えば遅延素子が存在する。第1のビームと同時に第2のビームを形成するには、第2のビームの形成をもたらすそれぞれの素子ごとの重みを適用するように構成されたN個のビーム形成要素のさらなるセットが必要である。ここで、各「重み」は、位相と振幅を含む複素数値であってもよい。
【0005】
比較的多数の異なるビーム(例えば、異なるビーム方向に対応する数百のビーム)を必要とするシナリオでは、独自の設計および実装の課題が生ずる。このような課題が存在するコンテキストの1つは、ビーム形成を使用して多数のそれぞれのカバレッジエリアに対応するスポットビームを提供する低地球軌道(LEO)衛星の実装など、衛星通信の分野である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で開示されるビーム形成方法および装置は、ビームグループのそれぞれのビームをビームグループ内で空間的に重複しなく、固定された空間的関係を有するものとして定義するビーム形成重みの適用、およびビームグループのそれぞれのビームを共通の方向にステアリングするビームグループステアリング重みの適用を含むビーム形成への有利なアプローチを使用する。この構成により、例えば、ビーム形成器のビーム形成構造を、ビームグループを定義するために必要な構造に制限し、その後、ビームグループステアリングを使用してビームグループを様々な方向に向けることで、経時的に大きな信号カバレッジを提供することができる。
【0007】
例示的な実施形態による装置は、電磁信号の送受信のためのビーム形成を使用し、ビーム形成器を備える。ビーム形成器は、ビームグループ内のそれぞれのビームに対応するビーム信号と、電磁信号の送信または受信に使用されるアンテナの素子に対応する素子信号との間の変換を行うように構成される。ビーム形成器は、素子信号に関してビーム形成重みを適用するように構成され、さらにビームグループステアリング重みを適用するように構成されたビーム形成回路を備える。ビーム形成重みは、ビームグループのそれぞれのビームをビームグループ内で空間的に重複しなく、固定された空間的関係を持つものとして定義し、一方、ビームグループステアリング重みは、共通にビームグループのそれぞれのビームを同じ方向にステアリングする。装置に含まれる制御回路は、ビームグループステアリング重みの制御に基づいて、ビーム形成器によるビームグループステアリングを制御するように構成される。
【0008】
別の例示的な実施形態は、電磁信号の送信または受信のためにビーム形成を使用する装置による動作の方法を含む。この方法は、装置のビーム形成器において、ビームグループのそれぞれのビームを同じ第1の方向に共通にステアリングする第1のビームグループステアリング重みを適用することによって、第1の間隔中にビームグループを第1のビームグループ方向に向けることを含む。この方法は、ビーム形成器において、ビームグループのそれぞれのビームを同じ第2の方向に共通にステアリングする第2のビームグループステアリング重みを適用することによって、第2の間隔中にビームグループを第2のビームグループ方向に向けることをさらに含む。これらの方法動作に関連して、ビーム形成器は、ビームグループ内のそれぞれのビームに対応するビーム信号と、電磁信号の送信または受信のために使用されるアンテナの素子に対応する素子信号との間で変換を行う。ビーム形成器は、ビームグループのそれぞれのビームをビームグループ内で空間的に重複しなく、固定された空間的関係を持つものとして定義するビーム形成重みを適用し、ビームグループステアリング重みの適用は、ビームグループ全体を、ビームグループステアリング重みの値によって決定されるポインティング方向に向ける。
【0009】
もちろん、本発明は上記の特徴および利点に限定されない。実際、当業者であれば、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を参照すれば、さらなる特徴および利点を認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態による、装置のブロック図である。
図2図2Aは、図1の装置の例示的な詳細を示すブロック図である。図2Bは、図1の装置の例示的な詳細を示すブロック図である。
図3図3Aは、例示的な実施形態による、ビーム形成およびビームグループステアリングのための遅延素子の実装様態を示すブロック図である。図3Bは、例示的な実施形態による、ビーム形成およびビームグループステアリングのための遅延素子の実装様態を示すブロック図である。
図4図4A図4Dは、ビームグループステアリング重みの異なるセットに対応する例示的なビームグループポインティング方向を示す図である。
図5図5A図5Dは、ビームグループステアリングに基づいた、ビームグループのそれぞれのビームに対応するビームカバレッジエリアの例示的なシフトの図である。図5Eは、時分割多元接続(TDMA)スケジュールに従って集合カバレッジエリアにわたって、または集合カバレッジエリアを通してステアリングされるビームグループを使用した、集合カバレッジエリアにわたる時間多重化信号カバレッジを示す図である。
図6図6は、図1で示された装置10の実施形態を含む通信衛星のブロック図である。
図7図7は、例示的な実施形態による、ビームグループステアリングを使用する装置による動作の方法のブロック図である。
図8図8は、ビーム形成器および関連するビーム形成回路の例示的な実施形態のブロック図である。
図9図9は、ビーム形成器および関連するビーム形成回路の例示的な実施形態のブロック図である。
図10図10は、ビーム形成器および関連するビーム形成回路の例示的な実施形態のブロック図である。
図11図11は、ビーム形成器および関連するビーム形成回路の例示的な実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、電磁信号の送信または受信のためにビーム形成を使用する装置10を示す。装置10は、ビームグループ内のそれぞれのビームに対応するビーム信号14と、電磁信号の送信または受信のために使用されるアンテナ20の素子18に対応する素子信号16との間で変換するように構成されたビーム形成器12を含む。
【0012】
ビーム形成器12のビーム形成回路22は、ビームグループを定義するビーム形成重み24を適用するように構成され、ビーム形成重み24は、ビームグループに含まれるそれぞれのビームを実現するためにビーム形成回路22によって適用される。ビーム形成重み24は、ビームグループ内のそれぞれのビームを定義し、ビームグループ内のそれぞれのビームの相対的な空間的関係を定義する、素子ごとの振幅および/または位相値のそれぞれのセットを含む。少なくとも1つの実施形態では、ビーム形成重み24は固定されており、ビーム形成回路22の物理的構造によって決定される。
【0013】
ビーム形成器12にさらに含まれるビームグループステアリング回路26は、ビーム形成回路22によって定義されたビームグループを「ステアリング」するビームグループステアリング重み28を適用するように構成されている。ここで、ビームグループを「ステアリングする」とは、ビームグループ内のそれぞれのビーム間の空間的関係が維持されるように、ビームグループのすべてのビームに共通の角度方向の変更を適用することを意味する。ビームグループステアリングは、ビーム形成重み24によって定義されるビームグループのビーム間の空間的関係、すなわちビームパターンを変更することなく、ビームグループ全体の「ポインティング方向」を変更することとみなすことができる。
【0014】
装置10の制御回路30は、ビーム形成器12によるビームグループステアリングを制御するように構成されている。例示的な実装形態では、制御回路30は、1つまたは複数のプロセッサ32および記憶装置34を備える。1つまたは複数のプロセッサ32は、例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、複合プログラマブルロジックデバイス(CPLD)、または他のデジタル処理回路を含む。
【0015】
スケジュール36は、1つまたは複数の実施形態において記憶装置34に保存され、ビーム形成器12によるビームグループステアリングを制御するために1つまたは複数のプロセッサ32によって使用される。例示的なスケジュール36は、連続する間隔のうちの各間隔で使用されるビームグループのポインティング方向を定義する。スケジュール36は、静的であってもよいし、経時的に変化または再決定されるように動的に決定されてもよく、記憶装置34は、スケジュール36を記憶するのに適した1つまたは複数のタイプのコンピュータ読み取り可能媒体を備える。
【0016】
少なくとも1つの実施形態では、記憶装置34は、揮発性記憶装置、例えば、プログラム実行、ライブデータなどのための作業メモリと、例えば、コンピュータプログラム、プロビジョニングされた構成データなどの長期記憶装置のための不揮発性記憶装置との混合を備える。少なくとも1つのそのような実施形態では、制御回路30は、1つまたは複数のプロセッサ32によるコンピュータプログラム命令の実行に基づいて実現され、記憶装置34は、そのような命令を含む1つまたは複数のコンピュータプログラムのための非一時的な記憶装置を提供する。概して、制御回路30は、固定回路、プログラム可能に構成された回路、または固定回路とプログラム的に構成された回路の混合を備える。
【0017】
装置10の他の素子としては電源38が含まれ、電源38は、装置10に専用であってもよいし、装置10がより大きなシステムのアセンブリまたはサブアセンブリを構成するシナリオの場合のように、他の回路と共有されてもよい。さらなる素子としては、追加の回路40が含まれ、追加の回路40は、1つまたは複数の実施形態において、それぞれの送信(TX)または受信(RX)信号42とビーム信号14のうちの対応するものとの間のマッピングまたは結合を実行するように構成されたスイッチマトリクスまたは他の回路を含む。
【0018】
この点に関して、追加の回路40は、「ユーザトラフィック」および1つまたは複数の他の装置44に対する関連する制御シグナリングを搬送する通信信号であり得るそれぞれのTX信号またはRX信号を生成または処理し、1つまたは複数のサポート装置46とユーザトラフィックや制御信号を交換するためのトランシーバ回路を備えてもよい。例えば、少なくとも1つの実施形態では、装置10は、1つまたは複数の地上ゲートウェイ端末(例えば、サポート装置46)からの順方向リンクおよび戻りリンクのユーザトラフィックの中継に基づいて、地上ユーザ端末(例えば、他の装置44)に通信サービスを提供する通信衛星の一部を備える。図中で「CNTL」とラベル付けされた制御信号は、追加の回路40の動作を制御するために、1つまたは複数の実施形態において制御回路30によって出力される。
【0019】
送信関連の例では、信号42は個別の送信信号を含み、各送信信号は、他の装置44のうちの特定のものを対象とするユーザトラフィックの複合体であり得る。それに対応して、制御回路30は追加の回路40を制御して、各送信信号をビームグループ内のビームのそれぞれに結合し、各ビームのビームカバレッジエリア内の他の装置44にトラフィックを供給する。受信関連の例では、信号42は個別の受信信号を含み、各受信信号は、ビームグループ内のそれぞれのビームのカバレッジエリア内の他の装置44から発信されるユーザトラフィックの複合体であってもよい。ビームグループステアリングは、より広い地理的領域内でビームグループのそれぞれのビームカバレッジエリアをスイープ、ステッピング、または別の方法で移動させて、ビームグループの集合カバレッジエリアまたは集合カバレッジエリアを増加させるための効率的で運用上有利なメカニズムを提供する。
【0020】
図2Aは、送信ビーム形成の例による、ビーム形成器12の実装の例示的な詳細をハイライトする。図2Bは、受信ビーム形成の例を図示する。図2Aおよび図2Bの詳細に対応するビーム形成器12の実施形態は、「固定」部分50および「可変」部分52を特徴付ける。装置10が送信ビーム形成と受信ビーム形成の両方を実行する実施形態では、送信ビーム形成と受信ビーム形成の両方を提供する内部構成を有する単一のビーム形成器12を設けてもよく、送信用のビーム形成を行うものと受信用のビーム形成を行うものの2種類のビーム形成器12を設けてもよいことに留意されたい。
【0021】
固定部分50は、それぞれのビームでビームグループを、定義を行う役割を果たし、一方、可変部分52は、ビームグループをステアリングする(ポインティング)役割を果たす。したがって、固定部分50は、ビーム形成回路22の例示的な描写であり、複数のセットの遅延素子54が、ビームグループを定義するビーム形成重み24を実装するために使用される。可変部分52は、ビームグループステアリング回路26の例示的な描写であり、該ビームグループステアリング回路26は、ビームグループステアリング重み28を実装するために使用される遅延素子56、例えば単一セットの遅延素子を含む。
【0022】
固定部分50を使用して固定された空間的関係を有する固定数のビームを有するビームグループを生成し、その後、可変部分52を使用してビームグループをステアリングすることにより、例えば、ビームグループのポインティング方向を段階的に変更してビームグループを所望の角度範囲にわたってステアリングすることができる。このような配置により、ビームグループがステアリングされなかった場合よりも、ビームグループがより大きなカバーエリアにサービスを提供できるようになる。この配置の利点の1つは、より大きなカバレッジエリアにサービスを提供するために必要な数のビームを生成できる固定部分を実装するよりも、安価で、軽量で、消費電力が少なく、パフォーマンスが良く、信頼性が高いことである。
【0023】
ここで、「固定」とは、関係するビーム形成素子が、重みの範囲にわたって調整可能ではなく、それぞれの一定のセットの重みを実装するように設計または他の方法で構成されていることを意味する。ただし、固定されたビーム形成素子は、例えば所望の設定を達成するために、校正可能または調整可能であってもよいことに留意されたい。より広義には、ある動作期間に関してビーム形成素子が固定されていると記述することは、その期間中にビーム重みの固定されたセットを使用することを意味する。したがって、固定部分50は、ビームグループのビーム間の関係を定義するある期間にわたって同じビーム形成重み24を適用してもよく、一方、可変部分52は、同じ期間にわたってビームグループステアリング重み28を変化させ、ビームグループを様々な方向にステアリングする。
【0024】
図2Aおよび図2Bの例示的なコンテキストに戻ると、Nがビームグループ内のビームの数を表し、Rがビーム形成に使用されるアンテナ素子18の数を表すものとする。送信ビーム形成の場合、ビームのグループを構成するN個のビームのそれぞれで信号42のうちの所定の1つを送信することは、信号42のそれぞれ重み付けされたバージョンをR個のアンテナ素子18のそれぞれで送信することを意味する。N個のビームを同時に送信するために、遅延素子54のセットは、ビーム形成重み24をN個のセットのビーム形成重み24として提供するように構成されている。N個のセットのビーム形成重み24のそれぞれは、N個のビームのそれぞれに対応し、N個のセットのビーム形成重み24のそれぞれは、R個の重みを含む。R個の重みのそれぞれは、素子信号16のそれぞれ1つに対応し、素子信号16は、同様にしてアンテナ素子18のそれぞれ1つに対応する。受信ビーム形成の例では、同じ関係がN個のビームの同時受信にも当てはまる。
【0025】
送信例では、N個のビームのそれぞれは、R個の素子信号のそれぞれ重み付けされたセットによって定義され、「DIV/COMB」として図示されている分割器/結合器回路58は、これらのR個の素子信号のそれぞれ重み付けされたセットを組み合わせて、可変部分52に供給されるR個の素子信号16’の合成セットを形成する。遅延素子56は、ビームグループステアリングのためにR個の位相遅延のセットを適用するように構成され、それにより、それぞれのアンテナ素子18に送られるR個の素子信号16の最終セットを形成する。したがって、送信ビーム形成シナリオのコンテキストにおいて、R個の素子信号16’とR個の素子信号16との違いは、R個の素子信号16’にビームグループステアリング重み28が適用されていないことである。
【0026】
逆のケースが受信ビーム形成シナリオに当てはまり、R個の素子信号16にはビームグループステアリング重み28が適用されず、R個の素子信号16’にはビームグループステアリング重み28が適用される。より詳細には、受信ビーム形成シナリオでは、R個の素子信号16はR個のアンテナ素子18から可変部分52に供給され、可変部分52は、R個の素子信号16にビームグループステアリング重み28を適用して、ビームグループビーム形成のために固定部分50に供給されるR個の素子信号16’を取得する。特に、受信ビーム形成のコンテキストでは、分割器/結合器回路58は、R個の素子信号16’を受信し、それらをR個の素子信号16’のN個のセットに分割し、そのような各セットには、R個のビーム形成重み24のそれぞれのセットが適用され、ビームグループ内のN個のビームの1つを形成する。
【0027】
図1図2A、および図2Bに示される実施形態のいくつかの利点のうちの1つは、ビームグループに含まれるビームの数には関係なく、ビームグループステアリングを実行するために、R個のビームグループステアリング素子の単一のセット、例えば、R個の遅延素子56の1つのセットが必要とされることである。さらに、ビームグループステアリング重み28を適用するために使用される遅延素子56または他の素子は、ビームグループ自体を定義するために使用されるビーム形成重み24を適用するために使用されるものほど洗練されている必要はない。図3Aおよび図3Bに、そのような例を提供する。
【0028】
図3Aは、1つまたは複数の実施形態によるR個の遅延素子54のN個のセットの実装を示しており、遅延素子54の各セットは実時間遅延線60のセットを含む。図3Bは、位相シフタ62のセットとしてのR個の遅延素子56の単一のセットの相補的な実装を示す。図3Aによるビーム形成重み24の適用は、少なくとも部分的に、振幅重み付け素子を含み得るか、または振幅重み付け素子と関連付けられ得る、実時間遅延線60によって提供されるそれぞれの遅延を印加することによって実現される。ビームグループステアリング重み28の適用は、位相シフタ62によって提供されるそれぞれの位相シフトを印加することによって実現される。
【0029】
任意の所定の固定周波数における素子ごとの遅延のコンテキストでは、波長全体の数を効果的に無視でき、これは、位相シフトと時間遅延が名目上同等であることを意味する。ただし、「ビームスクイント」現象は、ある範囲の信号周波数のビームを形成するために固定された位相シフトのみが使用される場合に発生する。つまり、従来の移相器は周波数に関係なく固定の位相シフトを適用し、これは、ビームの形成に使用される素子間の位相シフトは特定の信号周波数に適しており、信号周波数が変化するにつれて次第に不正確になることを意味する。逆に、移相器と比較すると、実時間遅延線60は、潜在的に多くの波長の位相シフトを提供するように動作し、位相シフトは周波数に依存し、これにより、ビームグループを形成するために使用される素子間遅延が信号周波数の関数として変化し、それによってビームスクイントを回避することを可能にする。
【0030】
図3Aの例によれば、遅延素子54は、R個の実時間遅延線60のN個のセットを備え、ここで、Nはビームグループ内のビームの数であり、Rは関与するアンテナ20内のアンテナ素子18の数である。それに対応して、図3Bの例によれば、遅延素子56は、1つのセットのR個の移相器62を備える。R個の移相器62は、実時間遅延線60によって印加されるすべての素子間遅延に共通に影響を及ぼす素子間位相シフト値の特定のセットを適用する。したがって、R個の移相器62によって提供される位相シフト値は、ビームグループ内のN個のビームすべてを共通にステアリングする、すなわち、ビームグループ内の各ビームの相対ビーム角度に同じ変化を引き起こす。移相器62によって適用される位相シフト値、すなわちビームグループステアリング重み28を制御することによって、制御回路32はビームグループのポインティング方向を制御する。
【0031】
図4A図4Dは、制御回路30の制御下で動作するビーム形成器12によって提供される有利なビームグループのステアリングまたはポインティングの例示的な例を示す。特に、図4Aは、ビームB1、B2、…BNとして示される複数のビーム72を有するビームグループ70を示す。ビームグループ70は、それぞれのビーム72が空間的に重複しないという点で「まばらな」ビームグループとみなされ得、「重複しない」は、3dBビーム幅などの信号レベル閾値によって定義され得る。3dBビーム幅は、ビームのメインローブの電力半値点の間の角度である。ビームグループ70のそれぞれのビーム72間で全周波数を再利用する能力は、まばらで重複しないビーム配置によって得られるいくつかの利点のうちの1つである。
【0032】
さらに強調すべき点は、ビームグループ70内のそれぞれのビーム72がそれらの間で固定された空間的関係を有することである。すなわち、ビームグループ70が向けられる方向に関係なく、ビーム72の相対角度は同じままである。ビーム形成回路22が、そのビーム72が固定された空間的関係を有するようにビームグループ70を定義すると言うことは、ビーム形成回路22が、ビームグループ70中のビーム72間のビーム方向の相対的な差が時間とともに意図的に変化しないように設計または他の方法で構成されていると言うことであると理解することができる。
【0033】
例示的な実施形態では、ビーム72は衛星のスポットビームであり、各ビーム72は地球の表面上に対応するスポットビームのフットプリントを生成する。したがって、そのような実施形態におけるビームグループ70は、スポットビームフットプリントの固定パターンを提供するものとして理解することができ、少なくとも1つのそのような実施形態における制御回路30は、ビームグループステアリング回路26を制御して、地理的カバーエリア上または地理的カバーエリア内でスポットビームフットプリントの固定されたパターンを段階的にシフトまたはステップさせるように構成される。つまり、任意の所定のポインティング方向に対して、スポットビームフットプリントの固定されたパターンは地理的エリアの一部のみをカバーするが、パターンを一連の間隔にわたって移動させることで、地理的カバレッジエリア全体に時間多重化カバレッジを提供することを可能にする。
【0034】
図4Aは、ビームグループステアリング重みの第1のセット28-1による第1のビームグループ方向の生成を示し、図4B図4C、および図4Dは、ビームグループステアリング重みの異なるセット28-2、28-3、および28-4による他のビームグループ方向の生成を示す。ビームグループステアリングの別の見方では、位相ベクトルの素子値を変更するとビームグループ70のポインティング方向が変わるという理解に基づいて、ビームグループステアリング重み28の「セット」が1つだけ、すなわち位相ベクトルが1つだけ存在すると考える。この見方では、ビームグループステアリング重みのセット28-1、28-2、28-3、および28-4は、装置10の動作中の異なる時間におけるビームグループステアリング重みの異なる値を表す。
【0035】
したがって、自由空間における各ビーム72の絶対方向は、対応するビーム形成重み24によって定義されるビーム角度、およびビームグループステアリング重み28によって定義される対応するビームグループステアリング角度に依存する。ここでの「角度」という言葉の使用は、1つまたは複数の次元における角度、例えば方位面と仰角面の一方または両方における角度を広くカバーするものとして理解されるべきであり、1つまたは複数の実施形態におけるビームグループステアリングはビームグループ70を定義されたステラジアン上または定義されたステラジアン内で動かす。
【0036】
ビームグループ70のそれぞれのビーム72を形成するために実時間遅延線60を使用しながら、ビームグループステアリングのためにのみ移相器62を使用することにより、複数の送信または受信周波数の使用を伴う装置10の実施形態におけるスクイントの問題が最小限に抑えられる一方で、ビームグループ70をステアリングするための簡素化された経済的なアプローチを実現する。もちろん、遅延素子54がビームグループステアリング重み28を実装するために必要な可変素子を含む場合など、別の形で実施してもよく、例えば、ビーム形成重み24を与えるために使用される実時間遅延線は、ビームグループステアリング重み28を表す位相シフトの共通のセットを実装するために調整可能に構成される。どのように実装しても、ビームグループステアリング重み28の使用は、ビームグループ70のポインティング方向が、例えば、図4A図4Dにて示唆されるように、個々のビーム方向または対応するビームエリアに関して、セントロイドの意味について定義されている場合、ビームグループ70を特定の方向に向ける有利なアプローチを提供する。
【0037】
これまで説明した様々な例による例示的な装置10は、電磁信号の送信または受信のためにビーム形成を使用するものとして広く特徴付けることができ、本開示のここや他の場所での「または」は、別段の記載がない限り、および/またはコンテキストから明らかでない限り、「および/または」を意味する。少なくとも1つの実施形態における装置10は、ビームグループ70内のそれぞれのビーム72に対応するビーム信号14と、電磁信号の送信または受信に使用されるアンテナ20の素子18に対応する素子信号16との間で変換を行うように構成されたビーム形成器12を備える。
【0038】
ビーム形成器12は、素子信号16に対してビーム形成重み付け24を適用するように構成されたビーム形成回路22を備える。ビーム形成重み24は、ビームグループ70のそれぞれのビーム72を、ビームグループ70内で空間的に重複しなく、固定された空間的関係を有するものとして定義する。ビーム形成器12のビームグループステアリング回路26は、ビームグループ70のそれぞれのビーム72を同じ方向に共通にステアリングするビームグループステアリング重み28を適用するように構成されている。
【0039】
装置10は、ビームグループステアリング重み28の制御に基づいて、ビームグループステアリング回路26によるビームグループステアリングを制御するように構成された制御回路30をさらに備える。ビームグループステアリング重み28を「制御する」ことは、ビームグループステアリング重み28の値を設定または他の方法で制御することとして理解することができ、値の特定のセットがビームグループ70の対応する特定のポインティング方向を生み出す。
【0040】
ビーム形成回路22は、例えば、ビーム形成重み24を適用するように構成された遅延素子54を含む固定部分50と、ビームグループステアリング重み28を適用するように構成された遅延素子56を含む可変部分52とを備える。ビーム形成回路22の少なくとも1つのそのような実施形態では、遅延素子54は実時間遅延線60であり、遅延素子56は移相器62である。このような場合、ビームグループステアリング重み28は位相シフトベクトルを含み、ベクトル素子の値は、ビームグループ70の特定のポインティング方向をもたらす素子信号16にわたって相対的な位相シフトを定義する。
【0041】
実時間遅延線60の例示的な実装には、デジタルまたはアナログ素子が含まれ、非限定的な例には、典型的な実装としてマイクロストリップまたはストリップライン遅延線が含まれる。他の例には、機械的に調整された構造、RFオーバーファイバ配置(マイクロ波フォトニクス)、同軸遅延線またはウェーブガイド遅延線、CMOSまたはGaAs技術に基づく様々な能動回路、または微小電気機械構造(MEMs)が含まれる。位相シフタ62の例示的な実装には、最大位相シフトが1波長未満であることが理解されるものの、MEMsデバイスまたは切り替え可能な伝送路も含まれる。少なくとも1つの実施形態では、移相器62は、ビームグループステアリング回路26に含まれる位相差を達成するために、切り替え型ハイパスおよびローパスLCフィルタ構造を備える。
【0042】
例えば図4A図4Dを参照すると、ビームグループ70内のそれぞれのビーム72は、個々のビーム方向を有する。自由空間におけるそれぞれのビーム72の絶対ビーム方向は、個々のビーム方向とビームグループ方向との組み合わせによって定義される。もちろん、装置10の向き、より具体的には、そのアンテナ20の向きが、ビームグループ70内のビーム72の絶対ビーム方向を最終的に決定することは理解されるであろう。しかしながら、アンテナ20の所定の向きに対して、ビーム72は、互いに固定された空間的関係を有し、ビーム形成重み24によって定義される相対的なビーム角度を有し、ビームグループポインティング方向はビームグループステアリング重み28によって定義され、その後自由空間における各ビーム72の絶対方向を制御する。
【0043】
1つまたは複数の実施形態における制御回路30は、定義された間隔で適用される位相調整を定義するスケジュール36に従って、前記ビームグループステアリング重み28として位相調整を選択することによって、スケジュール36が、定義された各間隔でアクティブ化になるビームグループの方向を決定するようにビームグループステアリングを制御するように構成されている。少なくとも1つのそのような実施形態によれば、スケジュール36に従ってアクティブ化される複数の異なるビームグループ方向に関して、異なるビームグループ方向のうちの少なくとも1つによるビームグループ70内のそれぞれのビーム72は、異なるビームグループ方向のうちの少なくとも他の1つに従って、ビームグループ70内のそれぞれのビーム72と部分的に重なり合う。1つまたは複数の他の実施形態では、1つのビームグループポインティング方向についてビーム72が占める空間位置は、他のビームグループポインティング方向についてビーム72が占める空間位置と重なり合わない。
【0044】
ビームグループ70内にN個のビーム72があり、各ビーム72が対応するビームカバレッジエリア80内でカバレッジを提供する例示的な場合を検討する。この実施形態による装置10は、それぞれのスケジューリング間隔で使用するそれぞれのビームグループステアリング方向を定義する時分割多重化接続TDMAスケジュールを適用して、最大M個のビームカバレッジエリア80にわたって時間多重化カバレッジを提供するように構成され、Nは、各スケジューリング間隔でアクティブなM個のビームカバレッジエリア80の数であり、ここで、Mは、それぞれのスケジューリング間隔にわたって使用される異なるビームグループステアリング方向の数に等しい。
【0045】
TDMAスケジュールは、図1に示されるスケジュール36の特定の実装様態であってもよい。このコンテキストにおいて、「ビームカバレッジエリア」とは、通信サービスが受け付けることができる閾値を超えるビームを介して通信される信号の信号電力、信号対雑音比(SNR)、または信号対干渉プラス雑音比(SINR)を有する、地面または何らかの他の基準表面上に投影されるような、関連するビームの電磁放出パターンのエリアによって定義されるものであってもよい。
【0046】
少なくとも1つの実施形態におけるビーム形成回路22は、N個のセットの遅延素子54を備え、そのような各セットは、ビームグループ70内のN個のビーム72のそれぞれを定義するビーム形成重み24のそれぞれのセットを提供する。さらに、ビームグループステアリング回路26は、ビームグループステアリング重み28を素子信号16に共通に適用するように構成された1つのセットの遅延素子56を備える。例示的な場合において、Q個の異なるポインティング方向を定義するQ個のセットビームグループステアリング重み28があり、Q個のビームグループステアリング重み28のうちの選択された1つが各スケジューリング間隔において適用される。Q個のセットビームグループステアリング重み28のそれぞれは、R個のベクトル素子を有する位相ベクトルを備え、各ベクトル素子は、R個のアンテナ素子18のそれぞれに対応する位相遅延値であり、素子信号16に適用される位相シフトのセットを定義する位相ベクトル全体は、ビームグループ70のビーム72を共通にステアリングする。
【0047】
装置10のそのような実装様態の1つの利点は、装置10が、M個のビームを形成するために遅延素子54のM個の異なるセットを必要とせずに、M個のビームカバレッジエリア80をカバーできることである。遅延素子54は実時間遅延線60であってもよいため、特にアンテナ素子18のアレイが大きい場合、その実装様態は自明ではない。本開示のアプローチは、N個のビーム72のビームグループ70を段階的にシフトまたはステアリングし、M個のビームカバレッジエリア80のうちのN個が、定義された一連の間隔のそれぞれにおいて「アクティブ」になるようにする。
【0048】
ビームグループ70のそれぞれのビーム72が、ビームグループ方向が変化するにつれて共通にシフトする対応するビームカバレッジエリア80を有する場合、1つまたは複数の実施形態における制御回路30は、一連の間隔にわたって一連のビームグループ方向をアクティブにして、各間隔でアクティブである対応するビームカバレッジエリア80の集合体である集合カバレッジエリアにわたって時間多重化信号カバレッジを提供するように構成される。上述したように、1つまたは複数の実施形態における装置10は、一連のビームグループ方向を定義するスケジュール36を記憶する記憶装置34を含む。
【0049】
装置10によるビームカバレッジエリア80の時間多重化の例を示す図5A図5Eを検討する。図5A図5Eの例示的なコンテキストでは、ビームグループ70(N=6)内に6個のビーム72があり、6個のビーム72にはB1、B2、B3、B4、B5、およびB6とラベル付けされている。対応して、図5Aは、6個のビームカバレッジエリア80を示しており、各ビームカバレッジエリア80は、それに対応するビーム72に従ってラベル付けされている。
【0050】
第1の時間間隔T1において、装置10の制御回路30は、ビーム形成器12を制御して、ビームカバレッジエリア80の図示の位置をもたらすビームグループステアリング重み28を適用する。これらの位置は、例えば、地球の表面上の地理的領域であり、装置10がビームカバレッジエリア80内で動作する他の装置によって受信するための信号を送信したり、ビームカバレッジエリア80内で動作する他の装置から信号を受信したりすることができるという意味で、信号カバレッジエリアとして理解することができる。
【0051】
時間間隔T2の間、制御回路30はビームグループステアリング重み28の値を変更し、これによりビームグループ70内のビーム72のグループごとのシフトが生じる。図5Bは、間隔T1のビームカバレッジエリア80の位置/場所を破線で示し、間隔T2のビームカバレッジエリアの新しい位置/場所を実線で示すことによって、グループシフトを示唆する。図5Cは、ビームカバレッジエリア80の以前の(T2)位置/場所を破線で示し、ビームカバレッジエリア80の新しい(T3)位置/場所を実線で示すことによって、間隔T3に適用されるグループシフトを示唆する。図5Dは、間隔T3と間隔T4との間のビームグループシフトを示す。
【0052】
図5Eは、ビームグループ70の前述のシフト(ビームグループステアリング)をどのように使用して、集合カバレッジエリア82にわたって時間多重化カバレッジを提供できるかを示している。したがって、集合カバレッジエリア82は、M個のビームカバレッジエリア80を含むと理解され得るが、M個のビームカバレッジエリア80のうちのN個の重複しないビームカバレッジエリアだけが一度にアクティブになる。N個の重複しないビームカバレッジエリア80の各セットは、異なるビームグループポインティング方向を表し、M個のビームカバレッジエリア80すべてに信号カバレッジを提供するには、固定または動的に決定されたスケジュールに従って異なるビームグループポインティング方向に段階的にずれる必要がある。
【0053】
図5A図5Eは、現在のポインティング方向についてビームグループ70内のビーム72によって任意の所定の間隔で「アクティブ」または「照射」されているN個のビームカバレッジエリア80が重複しないことを示すものとして理解され得る。しかしながら、ビームグループステアリングは、次または後続の間隔でアクティブなN個のビームカバレッジエリア80が前の間隔のビームカバレッジエリアと重なり合うように実行されてもよい。このようにして、時間多重化信号カバレッジは、連続する間隔にわたって、集合カバレッジエリア82内のあらゆる場所に提供され得る。
【0054】
ビームグループステアリング回路26によって適用されるビームグループステアリング重み28の値を変更することから生じるビームグループ70内のすべてのビーム72に共通に与えられる角度シフトは、ビームグループ70のすべてのビーム72を同じ方向に移動させるが、これは、少なくとも名目上、各ビーム72が同じビーム角度の変化を経験し、これは、公称の場合に、対応するビームカバレッジエリア80が共通に同じ方向に同じ量だけシフトすることを意味する。公称の場合からの逸脱は、例えば、ビーム形成器12および装置10全体を実装するために使用される構造(複数可)内の構成素子公差または他の非理想的な挙動から生じる。
【0055】
さらなる点は、図5A図5Eに示されるビームカバレッジエリア80が、ある定義された信号レベル閾値、例えば3dBのビーム幅に従ったビームカバレッジを表すことである。したがって、装置10の1つまたは複数の実施形態は、定義された信号レベル閾値に従って重複しないが、閾値未満の信号レベルで重なり合いを示し得るビーム72を含むことを理解されたい。
【0056】
装置10および関連する方法は、広範囲の用途およびシナリオにわたって有用であるが、衛星通信のコンテキストにおいて特定の利点を有する可能性がある。図6は、通信衛星90の通信ペイロードである装置10の一実施形態を示す。いくつかの実施形態では、通信衛星90は地球低軌道(LEO)衛星である。
【0057】
装置10およびアンテナ20は通信衛星90に搭載されており、通信衛星90は、地上ユーザ端末94と地上ゲートウェイ局96との間など、それぞれの地上端末間で行われる通信の中継器として機能する。順方向チャネルトラフィックは、1つまたは複数の地上ゲートウェイ局96のそれぞれから地上ユーザ端末94のそれぞれに送られる。地上ユーザ端末94は、比較的広い地理的エリア92にわたって分散することができ、この地理的エリア92は、どのビームグループポインティング方向が定義された間隔または実行中の一連の間隔の各間隔で使用されるかを定義するTDMAスケジュール36に従って通信衛星90によって信号カバレッジが提供される集合カバレッジエリアとみなすことができる。地上ゲートウェイ局96は、地理的エリア92内のそれぞれの位置を占有し得る。
【0058】
1つまたは複数の例示的な実施形態では、通信衛星90によってビーム形成された送信信号または受信信号は、均一な時間長の反復フレームによって定義されるタイミング構造を有し、各フレームは均一な数のサブフレームに分割されており、サブフレームはさらにタイムスロットに分割されていてもよい。個々のタイムスロットは最小のスケジューリング間隔を表し、これは、例えば、通信衛星90がタイムスロットごとにビームポインティング方向を変更し得ることを意味する。もちろん、使用される特定のポインティング方向、およびスケジューリングサイクル、例えば、1フレームまたは1サブフレームにわたって特定のポインティング方向が使用される回数は、地上ユーザ端末94の分布または地理的エリア92内の通信要求を反映するために動的に制御されてもよい。他のスケジューリング間隔の定義が使用されてもよく、フレーム/サブフレーム/タイムスロットの構造化は非限定的な例である。
【0059】
概して、1つまたは複数の実施形態における装置10は、ビームグループ70をシフトまたは段階的に変化させて集合カバレッジエリアにわたる時間多重化カバレッジを提供するために使用されるビームグループポインティング方向を定義するスケジュール36に基づいて、集合カバレッジエリア内で動作する他の装置に通信サービスを提供する。図5Eは、例示的な集合カバレッジエリア82を示し、図6は、別の例示的な集合カバレッジエリア92を示す。しかしながら、注目すべきことに、上述の「集合カバレッジエリア」は、装置10の意図された使用および実装に応じて、地球の表面上のカバレッジを表してもよく、または表さなくてもよい。ただし、「カバレッジエリア」は、図6に図示するコンテキストやより広義には衛星通信での「スポットビーム」地上カバレッジとして理解され得る。スポットビームカバレッジは、「ビームフットプリント」とも呼ばれ、そのコンテキストを図5Eのより広い例に適用すると、衛星カバレッジコンテキストでは、図5Eに示されるビームカバレッジエリア80が地球の表面上のスポットビームフットプリントとしてみなされ得ることを意味する。
【0060】
通信衛星90において実装されるか、または別の通信コンテキストで実装されるかにかかわらず、装置10は、スケジュール36を動的に決定し得るか、または図1の上位概念の例に示される装置46または図6の衛星固有の例である地上ゲートウェイ局96などのサポート装置がスケジュール36を動的に決定し、それを装置10に送信する。通信コンテキストにおける特定の例として、スケジュール36は、通信ニーズおよび集合カバレッジエリア内の他の装置の位置に基づいて動的に決定される。衛星通信のコンテキストでは、地上ゲートウェイ局96またはサポート地上ネットワーク内の他のエンティティは、地上ゲートウェイ局96の1つを介して飛行中の通信衛星90にアップロードされるスケジュール更新を用いて、定期的またはトリガベースでスケジュール36を計算し得る。
【0061】
特に図6を参照すると、カバレッジエリア92は、地上ユーザ端末94または地上ゲートウェイ局96が動作する地理的領域であり、ビームグループポインティング方向は、スケジュール36に従って多様なスポットビームカバレッジにわたって衛星信号カバレッジを提供するために使用される。地上ゲートウェイ局96は、スケジュール36を通信衛星90に提供することができ、スケジュール36は、地理的エリア92内で動作する地上ユーザ端末94の数、分布、および通信ニーズに基づいて動的に決定され得るか、または動的に更新され得る。例えば、いくつかのビームポインティング方向は、地理的エリア92内のより高密度の地上ユーザ端末94にサービスを提供するため、または特定のユーザまたは特定の通信サービスのサービス品質(QoS)要件に対応するために、他のビームポインティング方向よりも頻繁に、またはより長時間にわたって使用され得る。
【0062】
例示的な構成では、ビームグループ70は、N個の重複しないビーム72を備え、M個のビームカバレッジエリア80(M>N)に関して、制御回路30は、ビームグループステアリングを制御して、異なる間隔においてM個のビームカバレッジエリア80の中のN個の重複しないビームカバレッジエリア80のビームグループの異なるサブセットをアクティブにするように構成される。ここで、「ビーム」は、そのパワープロファイル、例えば3dBビーム幅によって定義されてもよく、他の信号レベルパラメータによって定義されてもよい。例えば、3dB値を使用すると、「重複しないビーム」とは、3dBビーム幅によって定義されるそれぞれのビーム領域が重なり合わないことを意味する。他の実施形態では、重複はより控えめに理解される。例えば、いくつかの実施形態では、2つのビームカバレッジエリアは、それぞれの4dBビーム幅が重複しない場合にのみ重複しないとみなされ、その結果、それらの3dBビーム幅がさらに離間される。いくつかの実施形態では、2つのビームが互いに許容できない干渉を生じない場合、2つのビームは重複しないとみなされる。
【0063】
制御回路30は、M個のビームカバレッジエリア80のうちのN個の重複しないビームカバレッジエリアのどのサブセットがどの間隔でアクティブになるかを、ビームグループ70がステアリングされるビームグループポインティング方向のTDMAパターンを定義するスケジュール36に従って制御するように構成され得る。装置10が衛星、例えば、図6の例における通信衛星90のペイロードである場合、TDMAパターンの使用により、装置10は、任意の所定の時間にビームグループ70によりカバーされるよりも広い地理的エリア92にわたって時間多重化信号カバレッジを提供するように構成される。
【0064】
より一般的には、1つまたは複数の実施形態では、装置10の制御回路30は、ビームグループ方向が定義された角度範囲にわたって段階的に変化し、ビームグループ70の対応するビームカバレッジエリア80が、より大きなカバレッジエリア内で段階的にシフトするように、ビームグループ方向を一連の間隔にわたって変更するように構成される。段階的な変化は、(角度)方向または段階のサイズに関して均一である必要はない。
【0065】
図7は、電磁信号の送受信のためにビーム形成を使用する装置10による動作の方法700を含む別の例示的な実施形態を示す。方法700は、装置10のビーム形成器12において、ビームグループ70のそれぞれのビーム72を共通に同じ第1の方向にステアリングする第1のビームグループステアリング重み28を適用することによって、第1の間隔中にビームグループ70を第1のビームグループ方向に向けるステップ(ブロック702)を含む。ここで、装置10のビーム形成器12は、ビームグループ70のそれぞれのビーム72に対応するビーム信号14と、電磁信号の送受信に使用されるアンテナ20の素子18に対応する素子信号16との間で変換を行う。さらに、ビーム形成器12は、ビームグループ70のそれぞれのビーム72を、ビームグループ70内で空間的に重複しなく、固定された空間的関係を有するものとして定義するビーム形成重み24を適用する。
【0066】
方法700はさらに、ビーム形成器12において、ビームグループ70のそれぞれのビーム72を共通に同じ第2の方向にステアリングする第2のビームグループステアリング重み28を適用することによって、第2の間隔中にビームグループ70を第2のビームグループ方向に向けるステップ(ブロック704)を含む。第1または第2のビームグループステアリング重み28の適用によるビームグループ70のステアリングは、すべてのそれぞれのビーム72を同じ第1または第2の方向に共通に移動させることによってビームグループ70内の固定された空間的関係を維持する。
【0067】
第1および第2の間隔は、例えば、各間隔でどのビームグループ方向が使用されるかを指定するスケジュール36によって定義され得るような、複数の間隔のうちのものである。このような実施形態では、方法700は、スケジュール36に従って、例えば、ビーム形成器12で使用されるビームグループステアリング重み28の値を、スケジューリング間隔の間で異なるものに対して変更することによって、ビームグループステアリングを制御するステップを含む。
【0068】
例示的な構成では、ビームグループ70には、対応するビームカバレッジエリア80内でカバレッジを提供するN個のビーム72があり、方法700は、それぞれのスケジューリング間隔で使用するそれぞれのビームグループステアリング方向を定義するTDMAスケジュールを適用し、最大M個のビームカバレッジエリア80にわたって時間多重化カバレッジを提供するステップを含み、ただし、M>Nであり、各スケジューリング間隔でM個のビームカバレッジエリア80のうちのN個がアクティブである。
【0069】
ビームグループ70のそれぞれのビーム72は、ビームグループ方向が変化するにつれて共通にシフトする対応するビームカバレッジエリア80を有し、1つ以上の実施形態における方法700は、一連の間隔にわたって一連のビームグループ方向をアクティブにして、各間隔でアクティブである対応するビームカバレッジエリア80の集合体である集合ビームカバレッジエリア82、92にわたって時間多重化信号カバレッジを提供するステップを含む。方法700は、装置10に記憶されたスケジュール36に従って一連のビームグループ方向を決定するステップをさらに含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、装置10は、集合カバレッジエリア内で動作する他の装置に通信サービスを提供し、スケジュール36は、通信ニーズおよび集合カバレッジエリア内の他の装置の位置に基づいて動的に決定される。
【0070】
ビームグループ70は、例示的な構成ではN個の重複しないビーム72を含む。M個のビームカバレッジエリア80に関して、M>Nであり、方法700は、M個のビームカバレッジエリア80のうちN個の重複しないビームカバレッジエリアの異なるサブセットを異なる間隔でアクティブにするように、ビームグループステアリングを制御することを含む。M個のビームカバレッジエリア80のうち、N個の重複しないビームカバレッジエリアのどのサブセットがどの間隔でアクティブであるかを制御するステップは、アクティブなビームカバレッジエリア80のTDMAパターンを定義するスケジュール36に従って実行され得る。
【0071】
装置10が通信衛星90のペイロードであるシナリオでは、方法700は、ビームグループステアリングを使用して、任意の所定の時間でビームグループ70によってカバーされるよりも大きなエリアにわたって時間多重化信号カバレッジを提供するステップを含み、すなわち、異なる時間に異なる方向にビームグループ70を向けることにより、時間多重化信号カバレッジにもかかわらず、よりも大きなエリアが提供される。例えば、方法700は、ビームグループ方向が定義される角度範囲内で段階的に変化され、ビームグループ70の対応するビームカバレッジエリア80がより大きなカバレッジエリア内で段階的にシフトするように、一連の間隔にわたってビームグループ方向を変更するステップを含む。
【0072】
別の実施形態による動作の方法は、装置10が、ビーム形成器12においてビーム形成重み24を適用して、固定された空間的関係を有するそれぞれのビーム72を含むビームグループ70を定義するステップを含む。ここで、ビーム形成重み24は、ビームグループ70内のそれぞれのビーム72を定義する相対的な振幅および遅延を表す複素係数を含むビーム形成重みのそれぞれのセットであってもよい。この方法はさらに、装置10が、ビームグループステアリング重みの共通のセットであるビームグループステアリング重み28を適用することによって、ビーム形成重み24のそれぞれのセットを効果的に修正して、ビームグループステアリング重み28の値によって定義されるビームグループ方向にビームグループ70を向けるステップを含む。この方法の特定の実装様態は、実時間遅延線60として実装される遅延素子54のそれぞれのセットを使用してビーム形成重み24を適用するステップと、遅延素子54のそれぞれのセットに分割または結合された素子信号16に相対位相シフトを適用する移相器62のセットを介して適用される位相シフトのセットとしてビームグループステアリング重み28を適用するステップとを含む。
【0073】
図8は、サポート回路を備えた状態で示されたビーム形成器12の例示的な実施形態を示す。ここで、ビーム形成器12は送信ビーム形成用に構成され、送信用のそれぞれの信号42は、無線周波数(RF)スイッチマトリクスを含み得る追加の回路40の信号ポート100に入力される。代替的に、追加の回路40は、送信用のそれぞれの信号42を生成するように構成される。したがって、追加の回路40は、信号42のうちの任意の1つまたは複数を、ビーム形成器12のビームポート102の任意の1つまたは複数に提供するか、別の方法でマッピングする。すなわち、ビームグループ70のビーム72の特定の1つにおける送信信号42の任意の所定の1つを送信するために、追加の回路40は、その送信信号42を特定のビーム72に関連付けられたビームポート102に適用する。複数の送信信号42が同じビームポート102に適用され得るため、ビームポート102に入る信号はビーム信号14と呼ばれ、各ビーム信号14は、追加の回路40のスイッチング/マッピング構成に応じて、1つの送信信号42または2つ以上の送信信号42の複合を含む。
【0074】
ビームポート102は、ビーム信号14を、1つまたは複数の実施形態においてバトラーマトリクスとして実装されるビーム形成回路22に結合するものである。ビーム形成回路22は、空間的な重複しないビーム72を有するビームグループ70を定義するビーム形成重み24(振幅および遅延)を適用する。ビーム形成重み24は、ビーム形成回路22内で事前に構成または別の方法で固定されてもよく、または制御回路30によって制御されてもよい。
【0075】
少なくとも1つの実施形態では、ビーム形成回路22は、それが生成するビーム構成に関して固定されているが、校正機能または微調整の調整機能を備えていてもよい。このようなアプローチにより、ビーム形成回路22は、ビーム形成に使用されるアンテナ20の個々の素子18に対応する素子信号16’を出力し、これらの素子信号16’は、遠方フィールドにおいてビームグループ70のビーム72を形成する対応するアンテナ放射信号の建設的および破壊的な波面の結合を提供する相対信号間遅延および振幅を有する。
【0076】
ビームグループステアリング回路26は、アンテナ素子18ごとに1つの移相器62を含むか、または別の言い方をすれば、ビーム形成回路22から出力される素子信号16’ごとに1つの移相器62を含む、図3Bに示される移相器62などの移相器のセットを備えてもよい。位相シフトのセットは、ビームグループ70を特定の方向にステアリングするために、素子信号16’にわたる相対的な位相(位相差)を定義する位相ベクトルとしてビームグループステアリング重み28を適用する。装置10の制御回路30は、1つまたは複数の実施形態では位相ベクトルをビームグループステアリング回路26に提供し、他の実施形態では、制御回路30は、1つまたは複数のスイッチング信号または他の制御信号をビームグループステアリング回路26に提供して、ビームグループステアリング回路26がどの位相ベクトルを適用するかを制御する。例えば、ビームグループステアリング回路26は、異なる位相を提供する異なるスイッチ構成を備えたスイッチ可能なフィルタを備えてもよい。
【0077】
図示の構成から得られるいくつかの利点の中でも、ビームグループステアリング回路26は、送信コンテキストに、ビームグループ70内の複数のビーム72を形成するために使用されるビーム形成重みのセットの適用後に素子信号16’に対して動作するので、1つのセットの移相器62のみを必要とする。
【0078】
ビームグループステアリング回路26を介してビームグループステアリング重み28を素子信号16’に適用すると、素子信号16が生成され、その後、これらの素子信号16は、1つのセットの電力増幅器(PA)104を介して増幅され、それぞれのアンテナポート106に送られる。アンテナポート106は、送信ビーム形成に使用される個々のアンテナ素子18に対応する。ビームグループステアリング回路26によって適用されるビームグループステアリング重み28の値を変更することによって、制御回路30はビームグループ70の送信ポインティング方向を制御する。
【0079】
図9は、送信ビーム形成構成ではなく受信ビーム形成構成を示して、図8と対比する。アンテナ素子受信信号は、アンテナポート106からそれぞれの低雑音増幅器(LNA)108に入り、LNA108は、ビームグループステアリング回路26によって操作される素子信号16を出力する。ビームグループステアリング回路26によって適用されるビームグループステアリング重み28は、ビームグループ70の受信ポインティング方向を定義し、結果として得られるセットの素子16’信号は、定義された受信ポインティング方向に対応するそれぞれの信号間位相シフトを有する。受信方向のビーム形成回路22は、素子信号16’に作用し、対応するビーム信号14を出力し、各ビーム信号14は、ビームグループステアリングによって調整されるように、ビームグループ70のそれぞれのビーム72のビーム角度によって定義される(角度)方向での信号受信を反映する。
【0080】
図10は、ビーム形成器12とそれに含まれるビーム形成回路22が、送信ビーム形成と受信ビーム形成の両方、例えば、1つの間隔で送信ビーム形成を行い、別の間隔で受信ビーム形成を提供する別の実施形態を示す。送信/受信ビーム形成機能を提供するサポート回路には、送信信号経路または受信信号経路がアクティブであるかどうかを制御するスイッチ110のそれぞれのセットとともに、送信信号経路にある前述のPA104のセットと、受信信号経路中にある前述のLNA108のセットとを含む。
【0081】
図11は、送信ビーム形成および受信ビーム形成を提供する別の実施形態を示し、図10に示される実施形態との主な違いは、全二重動作、すなわち、同時送信ビーム形成および受信ビーム形成の機能である。送信信号経路または受信信号経路を選択的に切り替えるのではなく、図11に示される構成は、1つのセットのマルチプレクサ(「MUXES」)112を使用して、送信回路および受信回路のそれぞれのセットを備えた同時送信および受信信号経路を提供する。
【0082】
送信信号42Aは、追加の回路40A、ビーム形成回路22A、ビームグループステアリング回路26A、PA104、およびマルチプレクサ112のセットを含む、送信信号経路内の様々な素子を介して処理されるか、他の方法で渡される。マルチプレクサ112のセットはまた、アンテナ受信信号を、それらの信号の増幅されたバージョンをビームグループステアリング回路26Bに提供されるLNA108に提供し、ビーム形成回路22Bに供給し、さらに、受信信号42Bを出力またはその他の方法で処理する追加の回路40Bに供給する。送信ビーム形成に使用されるビーム形成重み24Aおよびビームグループステアリング重み28Aは、受信ビーム形成に使用されるビーム形成重み24Bおよびビームグループステアリング重み28Bと同じである必要はない。
【0083】
図8図11に示される構成のいずれも、図1で記載された装置10に実装され得るが、装置10はこれらの例示的な構成に限定されない。例えば、図8図11はビーム形成回路22とビームグループステアリング回路26が離間することを示しているが、ビーム形成回路22とビームグループステアリング回路26は統合されてもよい。例えば、ビーム形成回路22は、固定または事前構成された素子と、ビームグループステアリング重み28を適用するために使用される可変または調整可能な素子との混合を含んでもよい。1つまたは複数の実施形態におけるそのような素子は、ビームグループ70の校正または調整も提供する。この点における「素子」には、実時間遅延線、移相器、またはそれらの任意の混合物が含まれる。
【0084】
装置10の1つの属性は、その実装様態の詳細にかかわらず、ビーム72のグループ70全体をステアリングするための簡略化されたアプローチの使用であり、その結果、ビームグループ70が異なる時間に異なる方向に向けられ、時間多重化方式では、1つのビームグループ70が、一度にビームグループ70によってカバーされるよりも大きなエリアにわたってカバレッジを提供することができる。簡略化されたアプローチは、ビーム形成に使用されるアンテナ20のそれぞれのアンテナ素子18に送信または受信される素子信号16にビームグループステアリング重み28を適用することを含む。ビームグループステアリング重み28は、例えば、ベクトル素子がそれぞれの位相値である位相ベクトルを備え、それぞれの位相値は、所望のビームグループポインティング方向をもたらす信号間遅延を定義する。
【0085】
少なくとも1つの実施形態では、装置10は、図6に示される通信衛星90などの通信衛星のペイロードを備える。衛星コンテキストにおける簡略化されたビームグループステアリングの使用は、装置10の様々な利点を強調または増幅する。増幅された利点の一例は、重量、サイズ、および出力が衛星設計において重要な要因であるが、装置10により、時間多重化形方式にもかかわらず、より大きなエリアにわたってカバレッジを提供するために、比較的小さくまばらなビームのセットを使用できることである。その結果、衛星は、より大きなエリアをカバーするために必要なすべてのビームを個々に形成するために必要とされるビーム形成回路と比較して、低減されたセットのビーム形成回路のみを搭載する必要があり、同時に重量と消費電力も節約される。
【0086】
衛星コンテキストやその他の幅広いコンテキストに適用される運用上の柔軟性のさらなる利点または点は、ビームグループステアリングを制御するための要求駆動スケジューリングである。要求駆動スケジューリング、またはより広義には動的スケジューリングでは、ビームグループのポインティング方向は必要に応じて制御され、これは、ビームグループが特定の方向にポインティングされる頻度または長さは、その方向に関連するカバレッジニーズによることを意味する。ここで、「カバレッジニーズ」とは、通信コンテキストにおける通信需要を意味するが、レーダセンシングなどの他のコンテキストでは異なる意味を持ち、「カバレッジニーズ」とは、特定の方向でのレーダベースのセンシングに関連する重要性または優先順位を指す。
【0087】
特に、開示された発明(複数可)の修正および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に提示される教示の利益を有するこれらの開示が関連する当業者には思い浮かぶであろう。したがって、本発明(複数可)が開示される特定の実施形態に限定されず、修正および他の実施形態が本開示の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本明細書では特定の用語を使用することがあるが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定を目的とするものではない。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】