(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】mGlu5ネガティブアロステリックモジュレーターとしてのフェニルコア化合物並びにこの製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/75 20060101AFI20240912BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240912BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240912BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240912BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240912BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240912BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20240912BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20240912BHJP
C07D 417/12 20060101ALI20240912BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C07D213/75
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/28
A61P21/00
A61P25/02
A61P25/22
A61P25/04
A61P29/02
A61P25/24
A61P3/10
A61P1/14
A61P25/08
A61P25/14
A61P25/06
A61P25/20
A61P3/04
A61P25/16
A61P25/30
A61P35/00
A61K31/4439
A61K31/444
C07D417/12 CSP
C07D401/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516528
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 US2022043506
(87)【国際公開番号】W WO2023043823
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511183973
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】305 Kirkland Hall,2201 West End Avenue,Nashville, Tennessee 37240, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】リンズリー,クレイグ,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】コン,ピー.,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】フェルツ,アンドリュー,エス.
(72)【発明者】
【氏名】キャプスティック,ローリー,エー.
(72)【発明者】
【氏名】テンプル,ケイラ,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リングエッテ,アンナ,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,スコット,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】フーンブル,デイヴィッド,エル.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC17
4C086BC36
4C086BC82
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA22
4C086ZA69
4C086ZA70
4C086ZB26
4C086ZC35
4C086ZC39
4C086ZC42
4C086ZC52
(57)【要約】
代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGlu5)のネガティブアロステリックモジュレーター;前記化合物の製造のための合成方法;前記化合物を含む医薬組成物;並びに前記化合物及び組成物を用いたグルタミン酸機能障害に関連する神経傷害及び精神障害の治療方法を開示する。本要約は、特定の技術分野において検索をする目的のための選別手段を目的としており、本発明を限定する意図はない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】
(式中:
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化2】
(式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNである)
であり;
Bは、
【化3】
(式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNである;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、
X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNである)
であり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;
R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;
R
5は、H及びアルキルから選択される)
により表される構造を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
次式:
【化4】
(式中、
各Rは、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される)
の請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
Aは、
【化5】
(式中:
X
1は、CH又はCR
1であり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH又はCR
1であり;
X
6は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、NR
1又はNである)
であり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
Bは、
【化6】
(式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、S、O又はNであり;
X
16は、CH又はCR
1であり;
X
17は、CH又はCR
1であり;
X
18は、S、O、Nである)
であり、
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、F、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、CN、シクロアルキル、メトキシ及びアルコキシから選択される、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
(i)Aは、
【化7】
(式中:
X
1は、CH又はCR
1であり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH又はCR
1であり;
X
6は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、NR
1又はNである)
であり;
(ii)Bは、
【化8】
(式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、S、O又はNであり;
X
16は、CH又はCR
1であり;
X
17は、CH又はCR
1であり;
X
18は、S、O、Nである)
であり;並びに
(iii)各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、F、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、CN、シクロアルキル、メトキシ及びアルコキシから選択される、
請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
Aは、
【化9】
(式中、
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、CN、シクロアルキル、メトキシ及びアルコキシから選択される)
から選択される、
請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
Bは、
【化10】
(式中、
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される)
から選択される、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
(i)Aは、
【化11】
から選択され;
(ii)Bは、
【化12】
から選択され;
(iii)各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される、
請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
次式:
【化13】
(式中
(i)Aは、
【化14】
から選択され;
(ii)Bは、
【化15】
から選択され;
(iii)各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される)
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
次式:
【化16-1】
【化16-2】
【化16-3】
の請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩若しくはその薬学的に許容可能な誘導体。
【請求項11】
表1に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項10に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項14】
対象における代謝型グルタミン酸受容体の活性に関連する障害の治療方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つを有効量で前記対象に投与して、前記対象における代謝型グルタミン酸受容体の活性に関連する障害を治療するステップを含む方法。
【請求項15】
前記代謝型グルタミン酸受容体はmGlu5である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象はヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記対象は、前記投与ステップの前に前記障害の治療を要すると診断されている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記障害の治療を要する対象を特定するステップを更に含む請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記障害は神経障害及び/又は精神障害である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記神経障害及び/又は精神障害は、情動障害、加齢関連認知低下、アルツハイマー病、健忘障害、筋萎縮性側索硬化症、不安障害、アンジェルマン症候群、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、双極性障害、脳浮腫、慢性疼痛、精神錯乱、認知症、うつ、糖尿病、ダウン症候群、ジストニア、摂食障害、てんかん、線維筋痛症、ハンチントン関連舞踏病、レボドパ誘発性ジスキネジア、躁鬱病、片頭痛、運動障害、多発性硬化症、ナルコレプシー、神経線維腫症1型、神経障害性疼痛、肥満症、疼痛、パラノイア、パーキンソン病、帯状疱疹後神経因性疼痛、精神病性障害、PTEN過誤腫症候群、老年性認知症、睡眠障害、物質関連障害及び単極性うつ病から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記神経障害及び/又は精神障害は自閉スペクトラム症である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記自閉スペクトラム症は、自閉症、古典的自閉症、アスペルガー症候群、非定型自閉症と呼ばれることがある特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、脆弱性X症候群、レット症候群及び小児期崩壊性障害から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
対象において代謝型グルタミン酸受容体、例えばmGlu5の活性に関連する障害の治療に使用するための請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
前記障害は、情動障害、加齢関連認知低下、アルツハイマー病、健忘障害、筋萎縮性側索硬化症、不安障害、アンジェルマン症候群、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、双極性障害、脳浮腫、慢性疼痛、精神錯乱、認知症、うつ、糖尿病、ダウン症候群、ジストニア、摂食障害、てんかん、線維筋痛症、ハンチントン関連舞踏病、レボドパ誘発性ジスキネジア、躁鬱病、片頭痛、運動障害、多発性硬化症、ナルコレプシー、神経線維腫症1型、神経障害性疼痛、肥満症、疼痛、パラノイア、パーキンソン病、帯状疱疹後神経因性疼痛、精神病性障害、PTEN過誤腫症候群、老年性認知症、睡眠障害、物質関連障害又は単極性うつ病などの神経障害及び/又は精神障害である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
前記神経障害及び/又は精神障害は、自閉症、古典的自閉症、アスペルガー症候群、非定型自閉症と呼ばれることがある特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、脆弱性X症候群、レット症候群及び小児期崩壊性障害などの自閉スペクトラム症である、請求項24に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
権利承認
本発明は、米国政府支援の下、米国国立衛生研究所(NIH)の助成(番号1UG3NS116218)を受けてなされた。米国政府は本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
背景
グルタメート(L-グルタミン酸)は、哺乳動物中枢神経系における主要な興奮性伝達物質であり、イオンチャンネル型及び代謝型グルタミン酸受容体を通じて効果を発揮する。代謝型グルタミン酸受容体(mGlu)は、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のファミリーC(ファミリー3としても知られている)に属する。これらは、システインリッチ領域を経て大きい二葉型(bi-lobed)細胞外アミノ末端ドメインと接続された7回膜貫通型(7TM)α-らせんドメインを特徴とする(
図1)。オルトステリック結合部位はアミノ末端ドメインに含まれているが、現在知られているアロステリック結合部位は、7TMドメインに存在する。mGluファミリーは、8つの既知のmGlu受容体型(mGlu1~mGlu8と命名されている)を含む。この受容体型のいくつかは、特定のスプライスバリアント、例えば、mGlu5a及びmGlu5b又はmGlu8a、mGlu8b及びmGlu8cとして発現される。このファミリーは、これらの構造、好ましいシグナル伝達機序及び薬理学に基づいて3群に分類された。グループI受容体(mGlu1及びmGlu5)は、G
αq(ホスホリパーゼCの刺激並びに細胞内カルシウム及びイノシトールリン酸レベルの増加をもたらすプロセス)と共役している。グループII受容体(mGlu2及びmGlu3)及びグループIII受容体(mGlu4、mGlu6、mGlu7及びmGlu8)は、G
αi(環状アデノシン一リン酸(cAMP)レベル減少をもたらす)と共役している。グループI受容体はシナプス後に主に存在し、シナプス後シグナル伝達を通常増強するが、グループII及びIII受容体は、シナプス前に存在し、神経伝達物質放出に対する抑制作用を通常有する。理論に束縛されることを望まないが、mGluがシナプス伝達の長期変化に重要な役割を果たすことを示す証拠が増加しており、Fmr1ノックアウトマウスにおけるシナプス可塑性の研究は、脆弱性X表現型とmGluシグナル伝達との関連を特定した。
【0003】
オルトステリック結合部位において結合する小分子mGluアンタゴニストの特定は、これらの受容体により果たされる役割及び疾病とのこれらの対応する関連性の理解を大幅に深めた。これらのアンタゴニストの大部分は、グルタメートアナログとして設計されたので、これらは、経口バイオアベイラビリティー及び/又は中枢神経系(CNS)への分布などmGluを標的とする薬物のための所望の特徴を通常有しない。更に、グルタミン酸結合部位の高度に保存された性質のために、ほとんどのオルトステリックアンタゴニストは、様々なmGlu中での選択性を有しない。
【0004】
前述の問題をうまく対処することができたより最近のストラテジーは、オルトステリック結合部位と組織分布的に異なる部位、すなわちアロステリック結合部位においてmGluと結合する化合物の設計であった。選択的ネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)は、それ自体受容体を直接不活化しない化合物であるが、その細胞外N末端結合部位においてグルタミン酸部位アゴニストの親和性を減少させる。したがって、ネガティブアロステリック調節は、適切な生理学的受容体の活性化を阻害するための魅力的な機序である。中でも、最も研究され、特徴付けられた小分子は、mGlu5 NAMである2-メチル-6-(フェニルエチニル)ピリジン(MPEP)及び3-[(2-メチル-1,3-チアゾール-4-イル)エチニル]ピリジン(MTEP)である。MPEP及びMTEPは、薬物中毒及び疼痛並びに不安症のためのものを含む多数のげっ歯類疾患モデルにおいて有効であると証明された。前記化合物は、イヌ及びフェレットにおいて、胃食道逆流症(GERD)の主な原因である一過性下部食道括約筋弛緩(TLESD)を阻害することもできた。加えて、MPEPは、脆弱性X症候群(FXS)及びパーキンソン病(PD)のマウスモデル並びに過食性障害のヒヒモデルにおいて有効であった。
【0005】
ツール化合物としてのMPEP及びMTEPの有用性は明白に実証されたが、両分子は、治療用分子としてこれらの更なる開発を複雑にするか又は妨げる問題を有する。MPEPは、より高濃度においてN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体活性を直接阻害し、mGlu4のポジティブアロステリックモジュレーターであることが分かった。これらの選択性問題はMTEPでは軽減されるが、シトクロムP450 1A2の強力な阻害剤であり、アカゲザルへの静脈内投与後効率的に除去される。
【0006】
しかしながら、既知のmGlu5 NAMの可能性のある有害作用は、これらの究極の治療有効性を低下させる可能性があった。更に、オルトステリック結合部位を標的とする従来のmGlu5受容体モジュレーターは、満足な水溶性を有さず、経口バイオアベイラビリティーが不十分であり、及び/又は有害作用を示し得る。したがって、これらの不足を克服し、mGlu5受容体のための選択的ネガティブアロステリックモジュレーターを効果的に提供する方法及び組成物に対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
概要
本明細書において具体化され、広く記載されているように、本発明の目的によれば、1つの態様では、本発明は、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGlu5)のネガティブアロステリックモジュレーターとして有用な化合物、その製造方法、該化合物を含む医薬組成物、及び該化合物を用いたグルタミン酸機能障害関連疾患の治療方法に関する。
【0008】
次式により表される構造を有する、化合物又はその薬学的に許容可能な塩を開示する:
【0009】
次式:
【化1】
(式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化2】
(式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNである)
であり;
Bは、
【化3】
(式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNである)
であり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される)
により表される構造を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【0010】
有効量の、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つと、薬学的に許容可能なキャリアとを含む医薬組成物も開示する。
【0011】
薬学的に許容可能なキャリア又は希釈剤と、開示される化合物の少なくとも1つとを組み合わせて含む医薬品の製造方法も開示する。
【0012】
治療有効量の、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つを哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性に関連する障害の治療方法も開示する。
【0013】
治療有効量の、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つを哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性の低減方法も開示する。
【0014】
治療有効量の、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つを哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性の阻害方法も開示する。
【0015】
治療有効量の、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つを哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性のネガティブアロステリック調節方法も開示する。
【0016】
治療有効量の、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つを哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性の部分的拮抗作用する方法も開示する。
【0017】
治療有効量の、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つを哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性の調節方法も開示する。
【0018】
有効量の、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つと、少なくとも1つの細胞とを接触させるステップを含む、少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性の調節方法も開示する。
【0019】
開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つと、少なくとも1つの細胞とを接触させるステップを含む、少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性の阻害方法も開示する。
【0020】
哺乳動物におけるグルタミン酸機能障害に関連する障害の治療のための医薬品の製造における、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくは多形の少なくとも1つの使用も開示する。
【0021】
下記に列挙される例示のいずれかの化合物又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも1つと、(a)mGlu5活性を増大させることが分かっている少なくとも1つの薬剤;(b)mGlu5活性を減少させることが分かっている少なくとも1つの薬剤;(c)神経障害及び/若しくは精神障害を治療することが分かっている少なくとも1つの薬剤;又は(d)グルタミン酸機能障害に関連する障害を治療するための説明書の1つ以上とを備えるキットも開示する。
【0022】
本発明の態様は、特定の法定クラス、例えばシステム法定クラスなどで記載し、特許請求することができるが、これは単に便宜上のものであり、当業者は、本発明の各態様を任意の法定クラスで記載し、特許請求することができると理解する。特に明示されていない限り、本明細書に記載のいずれの方法又は態様も、そのステップを特定の順序で行わなければならないと解釈されることを意図するものでは決してない。したがって、方法クレームは、特許請求の範囲中又は明細書中で、ステップが特定の順序に限定されるべきことを具体的に記載されていない場合、いかなる点でも順序の暗示を決して意図していない。このことは、ステップの配列若しくは操作フローに関する論理事項、文法構成若しくは句読法から誘導される明白な意味又は本明細書に記載されている態様の数若しくはタイプを含む解釈のための可能性のある任意の非明示的な根拠に対しても当てはまる。
【0023】
図面の簡単な説明
本明細書の一部に組み入れられ、これを構成する添付の図面は、いくつかの態様を例証し、本明細書と共に本発明の原理の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図2はmGlu5のアロステリック調節の代表的例証を示す。
【0025】
本発明の更なる利点は、以下の本明細書において部分的に記載され、部分的に本明細書から明白になるか又は本発明の実施により学ぶことができる。本発明の利点は実現され、添付の特許請求の範囲に具体的に指摘された要素及び組合せによって達成される。前述の一般的説明及び以下の詳細な説明は共に、例示及び説明するためだけのものであり、特許請求の範囲の本発明は限定されないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
説明
以下の本発明の詳細な説明並びに本明細書に含まれている実施例及び図面を参照することにより、本発明を理解することができる。
【0027】
本化合物、組成物、物品、システム、デバイス及び/又は方法を開示及び説明する前に、これらは、別段に指定されない限り特定の合成方法に限定されないか又は別段に指定されない限り特定の試薬に限定されず、そのようなものとして、もちろん変わり得ると理解されるべきである。更に、本明細書に使用されている用語は、単に、特定の態様を説明する目的のためであり、限定的であることを意図しないと理解されるべきである。本明細書に記載されているものと同様又は等価であるいずれの方法及び材料も本発明の実施又は試験において使用することができるが、ここでは例となる方法及び材料を記載する。
【0028】
本発明の態様は、特定の法定クラス、例えばシステム法定クラスなどで記載し、特許請求することができるが、これは便宜上のものであり、当業者は、本発明の各態様が任意の法定クラスで記載され、特許請求することができることを理解する。そうでないと明示されていない限り、本明細書に記載される任意の方法又は態様が特定の順序でそのステップを実行することを要求していると解釈されることを意図するものではない。したがって、方法のクレームが特定の順序に限定されるべきと明示的に記載されていない場合、順序が何らかの形で推測されることを意図するものではない。これは、ステップの配置若しくは操作フローに関する論理的な問題、文法的構成若しくは句読点から導き出される明確な意味又は本明細書に記載されている態様の数若しくはタイプなどを含む解釈のための任意の非明示的な根拠に対しても当てはまる。
【0029】
本願全体を通じて様々な刊行物を参照する。これら刊行物の開示は、本発明が属する分野の技術水準をより十分に説明するために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。更に、開示される参照は、当該参照が依拠する文章で議論されている刊行物中の事項についても参照により本明細書に個別具体的に組み込まれる。本明細書のいかなる刊行物も、本発明が先行発明により当該刊行物に先行する権利がないことを認めるものではない。更に、本明細書に提供される刊行日は、実際の刊行日と異なる可能性があり、独立して確認する必要があり得る。
【0030】
A.定義
本明細書で使用されるとき、有機化合物を含む化合物の命名は、一般名、命名法に関するIUPAC、IUBMB又はCASの推奨を用いて行うことができる。1つ以上の立体化学的特徴が存在する場合、立体化学に関するCahn-Ingold-Prelog則を用いて、立体化学優先度、E/Z表記などを指定することができる。当業者は、名称が与えられた場合、命名規則を用いた化合物構造の体系的解析又はCHEMDRAW(商標)(Cambridge soft Corporation、米国)などの商業的に入手可能なソフトウェアのいずれかにより化合物構造を容易に特定することができる。
【0031】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないと明確に示していない限り、複数の参照対象を含む。したがって、例えば、単に「官能基」、「アルキル」又は「残基」というときは、2以上の当該官能基、アルキル又は残基にも言及しているという具合である。
【0032】
本明細書において、範囲は、「約」を付した或る特定値から及び/又は「約」を付した別の特定値までとして表すことができる。そのような範囲が表される場合、更なる態様は、当該或る特定値(自体)から及び/又は当該他方の特定値(自体)までを含む。同様に、値が近似値として表されるとき、先行詞「約」の使用により、当該特定値は更なる態様を形成すると理解される。更に、範囲の各端点は、他の端点との関係でも、他の端点から独立しても重要であると理解される。また、本明細書には幾つかの値が開示されており、これら各値も、当該特定値自体に加えて「約」を付した当該特定値としても本明細書に開示されると理解されるべきである。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。また、2つの特定の単位値間の各単位値も開示されると理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13及び14も開示される。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲における組成物中の特定の要素又は成分の重量部への言及は、当該要素又は成分と、重量部で表されている組成物又は物品中のその他の要素又は成分との間の重量関係性を示す。したがって、2重量部の成分X及び5重量部の成分Yを含む化合物において、X及びYは2:5の重量比で存在し、当該化合物に追加成分が含まれているか否かに関わらず当該比で存在する。
【0034】
そうでないとの明示がない限り、成分の重量パーセント(重量%)は、当該成分が含まれている処方物又は組成物の総重量に基づくものである。
【0035】
本明細書で使用されるとき、用語「随意の」又は「随意に」は、当該用語の後に記載されている事又は状況が起こることも起こらないこともあり得るとの意味であり、当該記載には前記の事又は状況が生じる例及び生じない例が含まれることを意味する。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「mGlu5受容体ネガティブアロステリックモジュレーター」は、動物、特に哺乳動物、例えばヒトにおいて、内因性リガンド(例えば、グルタメート)の存在下でmGlu5受容体の活性を直接又は間接的に阻害する任意の外因性に投与される化合物又は薬剤を表す。この用語は、用語「mGlu5受容体アロステリック阻害剤」、「mGlu5受容体非競合的阻害剤」、「mGlu5受容体アロステリックアンタゴニスト」及び「mGlu5受容体非競合的アンタゴニスト」と同義である。
【0037】
本明細書で使用されるとき、用語「対象(者)」は、哺乳動物、魚、鳥、爬虫類、両生類などの脊椎動物であり得る。したがって、本明細書で開示される方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット又はげっ歯類であり得る。この用語は特定の年齢も性別も示さない。したがって、成体及び新生児の対象並びに胎児/胎仔が、男性(雄)か女性(雌)かにかかわらず、包含されているものとする。1つの態様では、対象は哺乳動物である。患者は、疾病又は障害に罹っている対象を表す。用語「患者」は、ヒト及び獣医学的対象を含む。開示される方法のいくつかの態様では、対象は、投与ステップ前に、グルタミン酸機能障害に関連する1つ以上の神経障害及び/又は精神障害の治療を要すると診断されている。開示される方法のいくつかの態様では、対象は、投与ステップ前に、代謝型グルタミン酸受容体活性のネガティブアロステリック調節を要すると診断されている。開示される方法のいくつかの態様では、対象は、投与ステップ前に、代謝型グルタミン酸受容体活性の部分的拮抗作用を要すると診断されている。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「治療」又は「処置」は、疾病、病的状態又は障害を治癒、寛解、安定化又は予防する目的で患者の医学的管理を表す。この用語は、積極的治療又は処理、すなわち、疾病、病的状態又は障害の改善に対して具体的に向けられる治療又は処理を含み、原因治療、すなわち、関連する疾病、病的状態又は障害の原因の除去に対して向けられる治療又は処理も含む。加えて、この用語は、待機的治療、すなわち、疾病、病的状態又は障害の治癒より症状の緩和のために設計された治療又は処理;予防的治療又は処理、すなわち、関連する疾病、病的状態又は障害の発症の最小化又は部分的若しくは完全阻害に向けられる治療又は処理;及び補助的治療又は処理、すなわち、関連する疾病、病的状態又は障害の改善に向けられる別の特異的治療又は処理を補足するために使用される治療又は処理を含む。様々な態様では、この用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)を含む対象のいずれの治療も含み、(i)疾病に罹りやすい可能性があるが、疾病に罹っていると未だ診断されていない対象において発生する疾病を予防すること;(ii)疾病を阻害すること、すなわち、その発症を止めること;又は(iii)疾病を緩和すること、すなわち、疾病の退行を引き起こすことを含む。1つの態様では、対象は霊長類などの哺乳動物であり、更なる態様では、対象はヒトである。用語「対象」は、飼いならされた動物(例えば、ネコ、イヌ、その他)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、その他)及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ミバエ、その他)も含む。
【0039】
本明細書で使用されるとき、用語「予防する(こと)」は、特に、事前行動により何かが起こらないように排除、回避、阻止、停止又は防止することを表す。「低減する」、「阻害する」又は「予防する」が本明細書で使用される場合、そうでないと明示されない限り他の2つの言葉の使用も明示的に開示される。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「診断された(されている)」は、当業者、例えば、医師による健康診断を受け、本明細書に開示される化合物、組成物又は方法により診断又は治療/処置することができる病態を有することが分かったことを意味する。例えば、「mGlu5の調節により治療可能である障害と診断された」は、当業者、例えば、医師による健康診断を受け、mGlu5を調節することができる化合物又は組成物により診断又は治療/処置することができる病態を有すると分かったことを意味する。更なる例として、「mGlu5の調節を要すると診断された」は、当業者、例えば、医師による健康診断を受け、mGlu5活性を特徴とする病態を有すると分かったことを表す。当該診断は、本明細書に議論されているように、神経変性疾患などの障害に関連するものであり得る。例えば、用語「代謝型グルタミン酸受容体活性のネガティブアロステリック調節を要すると診断された」は、当業者、例えば医師による健康診断を受け、代謝型グルタミン酸受容体活性のネガティブアロステリック調節により診断又は治療することができる病態を有すると分かったことを表す。例えば、「代謝型グルタミン酸受容体活性の部分的拮抗作用を要すると診断された」は、当業者、例えば医師による健康診断を受け、代謝型グルタミン酸受容体活性の部分的拮抗作用により診断又は治療することができる病態を有すると分かったことを意味する。例えば、グルタミン酸機能障害に関連する1つ以上の神経障害及び/又は精神障害の治療を要すると診断された」は、当業者、例えば医師による健康診断を受け、グルタミン酸機能障害に関連する1つ以上の神経障害及び/又は精神障害を有すると分かったことを意味する。
【0041】
本明細書で使用されるとき、句「障害の治療を要すると特定された(されている)」又は同類の句は、障害の治療の必要性に基づいて対象を選択することを表す。例えば、対象は、当業者による早期診断に基づいて障害(例えば、mGlu5活性に関連する障害)の治療を必要とすると特定され、その後当該障害の治療を受けることができる。1つの態様では、特定は、診断する人と異なる人により行うことができることを意図される。更なる態様では、特定は、その後施術する者により行われ得ることも意図される。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「投与(すること)」は、対象への医薬製剤のいずれかの提供方法を表す。当該方法は当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔投与、局所投与、腟内投与、眼の投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、口腔投与及び静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与及び皮下投与を含む非経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、連続的又は間欠的であり得る。様々な態様では、製剤を治療用に投与する、すなわち、現存する疾病又は病態を治療するために投与することができる。更に様々な態様では、製剤を予防用に投与する;すなわち、疾病又は病態を予防するために投与することができる。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「接触(させること)」は、開示化合物が、標的(例えば、スプライセオソーム、細胞など)の活性に直接、すなわち標的自体との相互作用により、又は間接的、すなわち標的に活性が依存する別の分子、共因子、因子若しくはタンパク質との相互作用により、影響を与えることができるような様式で、当該開示化合物と、細胞、標的の代謝型グルタミン酸受容体又は他の生物実体とを一緒にすることをいう。
【0044】
本明細書で使用されるとき、用語「有効量」は、所望の結果を得るのに充分である又は望ましくない病態に影響を有するのに充分である量を表す。例えば、「治療有効量」は、所望の治療結果を得るのに充分である又は望ましくない症状に影響を有するのに充分であるが、有害副作用を引き起こすには概して不充分である量を表す。いずれかの特定の患者に対する特定の治療効果的用量レベルは、治療される障害及び障害の重症度;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別及び食事;投与タイミング;投与経路;使用される特定の化合物の排出率;治療期間;使用される特定の化合物と併用して又は同時に使用される薬物;並びに医術において周知の因子を含む同様な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を得るために必要なレベルより低いレベルにおいて化合物の用量を開始すること、及び所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加することは、当技術分野の技術の充分範囲内である。所望の場合、効果的1日用量を、投与目的のために複数回の用量に分割することができる。結果として、単回用量組成物は、1日用量を補償するような量又はその約数を含むことができる。いずれの禁忌の事象においても、個々の医師により、投与量を調整することができる。投与量は変わり得、1日又は数日間、1日1回以上の用量の投与で投与することができる。医薬用製品の与えられた分類のための適切な投与量に関してガイダンスを文献で見出すことができる。更なる様々な態様では、「予防有効量」;すなわち、疾病又は病態の予防に効果的な量で製剤を投与することができる。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「EC50」は、タンパク質、サブユニット、細胞小器官、リボ核タンパク質その他が関与する生物学的プロセス又はその構成要素の50%拮抗に必要な物質(例えば、化合物又は薬物)の濃度をいうものとする。1つの態様では、EC50は、本明細書の他の箇所で更に定義されているようにインビボで50%拮抗に必要な物質の濃度を表すことができる。更なる態様では、EC50は、ベースラインと最大反応との間の中間の応答を生じるアゴニスト濃度を表す。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「IC50」は、タンパク質、サブユニット、細胞小器官、リボ核タンパク質その他が関与する生物学的プロセス又はその構成要素の50%阻害に必要な物質(例えば、化合物又は薬物)の濃度をいうものとする。1つの態様では、IC50は、本明細書の他の箇所で更に定義されているようにインビボで50%阻害に必要な物質の濃度を表すことができる。更なる態様では、IC50は、物質の最大半量(50%)阻害濃度(IC)を表す。
【0047】
用語「薬学的に許容可能な」は、生物学的にも他の観点でも望ましくないことのない、すなわち、望ましくない生物学的作用の許容できないレベルを引き起こすことも、有害な様式で相互作用することもない物質をいう。
【0048】
本明細書で使用されるとき、用語「誘導体」は、親化合物(例えば、本明細書に開示された化合物)の構造に由来する構造を有する化合物であって、その構造が、本明細書に開示の構造と充分に類似しており、かつ、その類似性に基づいて、本発明の化合物と同一の又は類似する活性及び有用性を示すか、又は前駆体として、本発明の化合物と同一の又は類似する活性及び有用性を生じると当業者が予測する化合物を表す。例示的誘導体としては、親化合物の塩、エステル、アミド、エステル又はアミドの塩及びNオキシドが挙げられる。
【0049】
本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能なキャリア」は、無菌の水性又は非水性の溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョン、並びに使用直前に無菌の注射可能な溶液又は分散液に再構成するための無菌粉体を表す。適切な水性及び非水性のキャリア、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用により、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持により及び界面活性剤の使用により維持することができる。これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含むこともできる。微生物の作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌及び抗真菌剤を含有することにより保証することができる。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことも望ましいことがある。注射可能な剤形の延長された吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含有させることにより引き起こすことができる。注射可能デポ剤は、ポリラクチド-ポリグリコシド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(酸無水物)などの生分解性ポリマー中に薬物を含むマイクロカプセルマトリックスを形成することにより製造する。ポリマーに対する薬物の比及び用いる具体的ポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。注射可能デポ剤はまた、体組織と適合するリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を捕捉することによって製造する。注射可能製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通すろ過又は使用直前に滅菌水若しくは他の滅菌注射可能媒体に溶解するか若しくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより滅菌することができる。適切な不活性キャリアは、ラクトースなどの糖類を含むことができる。望ましくは、少なくとも95重量%の活性成分粒子は、0.01~10マイクロメートルの範囲の有効粒子サイズを有する。
【0050】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、化学種の残基は、特定の反応スキームにおいて又はその後の製剤若しくは化学的生成物中で得られる当該化学種の産物である部分(当該部分が当該化学種から実際に得られたか否かにかかわらず)を表す。したがって、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、当該ポリエステル中の1つ以上の-OCH2CH2O-単位(当該エチレングリコールが当該ポリエステルの製造に用いられたか否かにかかわらず)を表す。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基は、当該ポリエステル中の1つ以上の-CO(CH2)8CO-部分(当該残基が、当該ポリエステルを得るためにセバシン酸又はそのエステルを反応させることにより得られたか否かにかかわらず)を表す。
【0051】
本明細書で使用されるとき、用語「置換された(されている)」は、有機化合物の全ての容認できる置換基を含むことを意図される。広い態様では、容認できる置換基としては、有機化合物の非環状及び環状の、分岐及び非分岐の、炭素環式及び複素環式の、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示の置換基としては、例えば、下記のものが挙げられる。容認できる置換基は、適切な有機化合物のためには、1つ以上であり、同一でも異なっていてもよい。本開示の目的のため、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基及び/又は本明細書に記載の有機化合物の任意の容認できる置換基(当該ヘテロ原子の原子価を満足するもの)を有することができる。本開示は、いかなる方法によっても有機化合物の容認できる置換基によって限定される意図はない。また、用語「置換」又は「~により置換された(されている)」は、当該置換が置換対象の原子及び置換基の容認される原子価に合致していること、当該置換が安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離などによるような、自発的変換を受けない化合物をもたらすことという暗黙の条件を含む。特定の態様では、そうでないと明示されない限り、個々の置換基は、更に随意に置換されていてもよい(すなわち、更に置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい)ことも意図される。
【0052】
様々な用語の定義において、「A1」、「A2」、「A3」及び「A4」は、様々な具体的置換基を表す総称記号として本明細書で使用される。これらの記号は、任意の置換基であり得、本明細書に開示されるものに限定されず、或る例では特定の置換基であると定義され、別の例では他のいくつかの置換基として定義され得る。
【0053】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなど、1~24個の炭素原子の分岐又は非分岐の飽和炭化水素基である。アルキル基は、環式又は非環式であり得る。アルキル基は、分岐又は非分岐であり得る。アルキル基は、更に、置換していてもよいし、置換していなくてもよい。例えば、アルキル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含む1つ以上の基により置換されていてよい。「低級アルキル」基は、1~6(例えば、1~4)個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0054】
本明細書を通じて、「アルキル」は、概して、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を表すために使用され;しかしながら、置換アルキル基はまた、本明細書において、当該アルキル基上の具体的置換基を特定することにより具体的に表される。例えば、用語「ハロゲン化アルキル」又は「ハロアルキル」は、具体的には、1つ以上のハライド、例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素により置換されているアルキル基を表す。用語「アルコキシアルキル」は、具体的には、1つ以上の下記のアルコキシ基により置換されているアルキル基を表す。用語「アルキルアミノ」は、具体的には、下記1つ以上のアミノ基などにより置換されているアルキル基を表す。1つの例として「アルキル」が使用され、別の例として「アルキルアルコール」などの具体的用語が使用されている場合、用語「アルキル」はまた、「アルキルアルコール」などの具体的用語に言及していないことを暗示するものではない。
【0055】
このことは、本明細書に記載される他の基にも用いられる。すなわち、「シクロアルキル」などの用語は非置換及び置換シクロアルキル部分の両方を表すが、加えて、置換部分は本明細書において具体的に特定することができ;例えば、特定の置換シクロアルキルは、例えば、「アルキルシクロアルキル」と呼ぶことができる。同様に、特定の置換アルコキシは、例えば、「ハロゲン化アルコキシ」と具体的に呼ぶことができ、特定の置換アルケニルは、例えば、「アルケニルアルコール」と具体的に呼ぶことができるという具合である。同様に、「シクロアルキル」などの一般用語及び「アルキルシクロアルキル」などの具体的用語の使用は、一般用語がまた具体的用語を含まないことを暗示するものではない。
【0056】
本明細書で使用されるとき、用語「シクロアルキル」は、少なくとも3個の炭素原子からなる非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル」は、上記定義されるシクロアルキル基の1つのタイプであり、用語「シクロアルキル」の定義に含まれ、当該環中の炭素原子の少なくとも1つは、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリンなどのヘテロ原子により置換されている。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含む1つ以上の基により置換されていてもよい。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリアルキレン基」は、相互に結合されている2つ以上のCH2基を有する基である。ポリアルキレン基は、式-(CH2)a-により表すことができ、式中、「a」は、2~500の整数である。
【0058】
本明細書で使用されるとき、用語「アルコキシ」及び「アルコキシル」は、エーテル結合により結合されているアルキル基又はシクロアルキル基を表し、すなわち、「アルコキシ」基は、-OA1と定義することができ、式中、A1は上記で定義されるアルキル又はシクロアルキルである。「アルコキシ」は、上記アルコキシ基のポリマーも含む;すなわち、アルコキシは、-OA1-OA2又は-OA1-(OA2)a-OA3などのポリエーテルであり得、式中、「a」は1~200の整数であり、A1、A2及びA3はアルキル基及び/又はシクロアルキル基である。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む構造式を有する2~24個の炭素原子の炭化水素基である。(A1A2)C=C(A3A4)などの不斉構造は、E異性体及びZ異性体両方を含むことを意図される。これは、不斉アルケンが存在する本明細書中の構造式において推定することができるか、又は結合記号C=Cにより明示され得る。アルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含む1つ以上の基により置換することができる。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「シクロアルケニル」は、少なくとも3個の炭素原子からなり、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、すなわちC=Cを含む非芳香族炭素系環である。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルケニル」は、上記で定義されるシクロアルケニル基の1つのタイプであり、用語「シクロアルケニル」の定義に含まれ、当該環の炭素原子の少なくとも1つは、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリンなどのヘテロ原子により置換されている。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含む1つ以上の基により置換することができる。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む構造式を有する2~24個の炭素原子の炭化水素基である。アルキニル基は、非置換であるか、又はこれらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含む1つ以上の基により置換することができる。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「シクロアルキニル」は、少なくとも7個の炭素原子からなり、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む非芳香族炭素系環である。シクロアルキニル基の例としては、シクロヘプチニル、シクロオクチニル、シクロノニニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキニル」は、上記で定義されるシクロアルケニル基の1つのタイプであり、用語「シクロアルキニル」の定義に含まれ、当該環の炭素原子の少なくとも1つは、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリンなどのヘテロ原子により置換されている。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含む1つ以上の基により置換することができる。
【0063】
本明細書で使用されるとき、用語「アリール」は、これらに限定されないが、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼンなどを含む任意の炭素系芳香族基を含む基である。用語「アリール」は、「ヘテロアリール」も含み、当該芳香族基の環に組み込まれている少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族基を含む基と定義される。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄及びリンが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、用語「アリール」にも含まれる用語「非ヘテロアリール」は、ヘテロ原子不含芳香族基を含む基を定義する。アリール基は、置換又は非置換であり得る。アリール基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含む1つ以上の基により置換することができる。用語「ビアリール」は、特定の種類のアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。ビアリールは、ナフタレンのように縮合環構造により結合しているか、又はビフェニルのように1つ以上の炭素-炭素結合により結合している2つのアリール基を表す。
【0064】
本明細書で使用されるとき、用語「アルデヒド」は、式-C(O)Hにより表される。本明細書を通じて、「C(O)」は、カルボニル基、すなわち、C=Oの簡便な表記である。
【0065】
本明細書で使用されるとき、用語「アミン」又は「アミノ」は、式-NA1A2により表され、式中、A1及びA2は、独立して、水素又は本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る。
【0066】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキルアミノ」は、式-NH(-アルキル)により表され、式中、アルキルは本明細書に記載されている。代表例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、(sec-ブチル)アミノ基、(tert-ブチル)アミノ基、ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、(tert-ペンチル)アミノ基、ヘキシルアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用されるとき、用語「ジアルキルアミノ」は、式-N(-アルキル)2により表され、式中、アルキルは本明細書に記載されている。代表例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ(sec-ブチル)アミノ基、ジ(tert-ブチル)アミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジ(tert-ペンチル)アミノ基、ジヘキシルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-プロピルアミノ基、N-エチル-N-プロピルアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書で使用されるとき、用語「カルボン酸」は、式-C(O)OHにより表される。
【0069】
本明細書で使用されるとき、用語「エステル」は、式-OC(O)A1又は-C(O)OA1により表され、式中、A1は、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る。本明細書で使用されるとき、用語「ポリエステル」は、式-(A1O(O)C-A2-C(O)O)a-又は-(A1O(O)C-A2-OC(O))a-により表され、式中、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得、「a」は、1~500の整数である。「ポリエステル」は、用語として、少なくとも2つのカルボン酸を有する化合物を、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物と反応させることにより製造される基を説明するために使用される。
【0070】
本明細書で使用されるとき、用語「エーテル」は、式A1OA2により表され、式中、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る。本明細書で使用されるとき、用語「ポリエーテル」は、式(A1O-A2O-)a-により表され、式中、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得、「a」は、1~500の整数である。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0071】
本明細書で使用されるとき、用語「ハライド」は、ハロゲンであるフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表す。
【0072】
本明細書で使用されるとき、用語「複素環」は、環員の少なくとも1つは炭素以外である単環式及び多環式芳香族又は非芳香族環系を表す。複素環としては、ピリジン、ピリミジン、フラン、イオフェン、ピロール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、オキサゾール(1,2,3-オキサゾール、1,2,5-オキサゾール及び1,3,4-オキサゾールを含む)、チアジアゾール(1,2,3-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール及び1,3,4-チアジアゾールを含む)、トリアゾール(1,2,3-トリアゾール、1,3,4-トリアゾールを含む)、テトラゾール(1,2,3,4-テトラゾール及び1,2,4,5-テトラゾールを含む)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン(1,2,4-トリアジン及び1,3,5-トリアジンを含む)、テトラジン(1,2,4,5-テトラジンを含む)、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アゼチジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。
【0073】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロキシル」は、式-OHにより表される。
【0074】
本明細書で使用されるとき、用語「ケトン」は、式A1C(O)A2により表され、式中、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る。
【0075】
本明細書で使用されるとき、用語「アジド」は、式-N3により表される。
【0076】
本明細書で使用されるとき、用語「ニトロ」は、式-NO2により表される。
【0077】
本明細書で使用されるとき、用語「ニトリル」は、式-CNにより表される。
【0078】
本明細書で使用されるとき、用語「シリル」は、式-SiA1A2A3により表され、式中、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る。
【0079】
本明細書で使用されるとき、用語「スルホ-オキソ」は、式-S(O)A1、-S(O)2A1、-OS(O)2A1又は-OS(O)2OA1により表され、式中、A1は、水素又は本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る。本明細書を通じて、「S(O)」は、S=Oの簡便な表記である。本明細書で使用されるとき、用語「スルホニル」は、式-S(O)2A1により表され、式中、A1は、水素又は本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る。本明細書で使用されるとき、用語「スルホン」は、式A1S(O)2A2により表され、式中、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る。本明細書で使用されるとき、用語「スルホキシド」は、式A1S(O)A2により表され、式中、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール若しくはヘテロアリール基であり得る。
【0080】
本明細書で使用されるとき、用語「チオール」は、式-SHにより表される。
【0081】
本明細書で使用されるとき、「R1」、「R2」、「R3」、nが整数である「Rn」は、独立して、上記の基の1つ以上を有し得る。例えば、R1が直鎖アルキル基である場合、当該アルキル基の水素原子の1つは、随意に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、ハライドなどにより置換されていてもよい。選択される基に応じて、第1の基は、第2の基に組み込まれていてもよく、或いは、第1の基は、第2の基のペンダント基/鎖であり得る(すなわち、第2の基に付着していてもよい)。例えば、句「アミノ基を含むアルキル基」では、アミノ基はアルキル基の主鎖に組み込まれていてもよい。或いは、アミノ基は、アルキル基の主鎖に付着していてもよい。選択される基の性質は、第1の基が第2の基に組み込まれているか又は付着しているかどうかを決定する。
【0082】
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、「随意に置換されていてもよい」部分を含んでいてもよい。概して、用語「随意に」が付されているか否かにかかわらず、用語「置換された(されている)」は、指定された部分の1つ以上の水素が適切な置換基により置換されることを意味する。そうでないと明示されない限り「随意に置換されていてもよい」基は、当該基の各置換可能位置に適切な置換基を有していてもよく、任意の所与の構造中の2以上の位置が指定される基から選択された2以上の置換基で置換されていてもよい場合、置換基は全ての位置で同一でも異なっていてもよい。本発明で想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定な又は化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。特定の態様では、そうでないと明示されない限り、個々の置換基は、更に随意に置換されていてもよい(すなわち、更に置換されていても置換されていなくてもよい)ことも意図される。本明細書で使用されるとき、用語「安定」は、本明細書に開示される目的の1つ以上のための、その製造、検出、並びに特定の態様では、回収、精製及び使用を可能とする条件に付される場合に実質的に変化しない化合物を表す。
【0083】
「随意に置換されていてもよい」基の置換可能な炭素原子上の適切な一価置換基は、独立して、ハロゲン;-(CH2)0~4R○;-(CH2)0~4OR○;-O(CH2)0~4R○、-O-(CH2)0~4C(O)OR○;-(CH2)0~4CH(OR○)2;-(CH2)0~4SR○;R○により置換されていてもよい-(CH2)0~4Ph;R○により置換されていてもよい-(CH2)0-4O(CH2)0-1Ph;R○により置換されていてもよい-CH=CHPh;R○により置換されていてもよい-(CH2)0~4O(CH2)0~1-ピリジル;-NO2;-CN;-N3;-(CH2)0~4N(R○)2;-(CH2)0~4N(R○)C(O)R○;-N(R○)C(S)R○;-(CH2)0~4N(R○)C(O)NR○
2;-N(R○)C(S)NR○
2;-(CH2)0~4N(R○)C(O)OR○;-N(R○)N(R○)C(O)R○;-N(R○)N(R○)C(O)NR○
2;-N(R○)N(R○)C(O)OR○;-(CH2)0~4C(O)R○;-C(S)R○;-(CH2)0~4C(O)OR○;-(CH2)0~4C(O)SR○;-(CH2)0~4C(O)OSiR○
3;-(CH2)0~4OC(O)R○;-OC(O)(CH2)0~4SR○-、SC(S)SR○;-(CH2)0~4SC(O)R○;-(CH2)0~4C(O)NR○
2;-C(S)NR○
2;-C(S)SR○;-SC(S)SR○、-(CH2)0~4OC(O)NR○
2; -C(O)N(OR○)R○;-C(O)C(O)R○;-C(O)CH2C(O)R○;-C(NOR○)R○;-(CH2)0~4SSR○;-(CH2)0~4S(O)2R○;-(CH2)0~4S(O)2OR○;-(CH2)0~4OS(O)2R○;-S(O)2NR○
2;-(CH2)0~4S(O)R○;-N(R○)S(O)2NR○
2;-N(R)S(O)2R○;-N(OR○)R○;-C(NH)NR○
2;-P(O)2R○;-P(O)R○
2;-OP(O)R○
2;-OP(O)(OR○)2;SiR○
3;-(C1~4直鎖又は分岐鎖アルキレン)O-N(R○)2;又は-(C1~4直鎖又は分岐鎖アルキレン)C(O)O-N(R○)2であり、前記式中、各R○は下記で定義される通り置換されていてもよく、独立して水素、C1~6脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0-1Ph、-CH2-(5又は6員ヘテロアリール環)、又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5若しくは6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリールの環であり、或いは上記定義にかかわらず、2つの独立して存在するR○は、介在原子と一緒になって、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~12員の飽和、部分的不飽和若しくはアリールの単環若しくは二環式環を形成する。この環は下記で定義する通り置換されていてもよい。
【0084】
R○(又は2つの独立して存在するR○が介在原子と一緒になって形成された環)上の適切な一価置換基は、独立して、ハロゲン、-(CH2)0~2R●、-(ハロR●)、-(CH2)0~2OH、-(CH2)0~2OR●、-(CH2)0~2CH(OR●)2;-O(ハロR●)、-CN、-N3、-(CH2)0~2C(O)R●、-(CH2)0~2C(O)OH、-(CH2)0~2C(O)OR●、-(CH2)0~2SR●、-(CH2)0~2SH、-(CH2)0~2NH2、-(CH2)0~2NHR●、-(CH2)0~2NR●
2、-NO2、-SiR●
3、-OSiR●
3、-C(O)SR●、-(C1~4直鎖又は分岐鎖アルキレン)C(O)OR●又は-SSR●であり、前記式中、各R●は、非置換であるか又は「ハロ」が付されている場合には1以上のハロゲンのみで置換されており、独立して、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5若しくは6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリールの環である。R○の飽和炭素原子上の適切な二価置換基としては、=O及び=Sが挙げられる。
【0085】
「随意に置換されていてもよい」基の飽和炭素原子上の適切な二価置換基としては、次のもの:=O、=S、=NNR*
2、=NNHC(O)R*、=NNHC(O)OR*、=NNHS(O)2R*、=NR*、=NOR*、-O(C(R*
2))2~3O-又は-S(C(R*
2))2~3S-が挙げられ、前記式中、独立して存在するR*は各々、水素、下記に定義する通り置換されていてもよいC1~6脂肪族又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5若しくは6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリールの環から選択される。「随意に置換されていてもよい」基の隣接する置換可能な炭素と結合している適切な二価置換基としては:-O(CR*
2)2~3O-が挙げられ、式中、独立して存在するR*は各々、水素、下記で定義する通り置換されていてもよいC1~6脂肪族又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5若しくは6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリールの環である。
【0086】
R*の脂肪族基上の適切な置換基としては、ハロゲン、-R●、(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2又は-NO2が挙げられ、前記式中、各R●は、非置換であるか又は「ハロ」が付されている場合、1以上のハロゲンでのみ置換されており、独立して、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5若しくは6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリールの環である。
【0087】
「随意に置換されていてもよい」基の置換可能な窒素上の適切な置換基としては、-R†、-NR†
2、-C(O)R†、-C(O)OR†、-C(O)C(O)R†、-C(O)CH2C(O)R†、-S(O)2R†、-S(O)2NR†
2、-C(S)NR†
2、-C(NH)NR†
2又は-N(R†)S(O)2R†が挙げられ;各R†は、独立して、水素、下記で定義される通り置換されていてもよいC1~6脂肪族又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5若しくは6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリールの環であり、或いは上記の定義にかかわらず、2つの独立して存在するR†は、介在原子と一緒になって、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~12員の飽和、部分的不飽和若しくはアリールの単環若しくは二環式環である。
【0088】
R†の脂肪族基上の適切な置換基は、独立して、ハロゲン、-R●、(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2又は-NO2であり、前記式中、各R●は、非置換であるか又は「ハロ」が付されている場合、1以上のハロゲンでのみ置換されており、独立して、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5若しくは6員の飽和、部分的不飽和若しくはアリールの環である。
【0089】
用語「脱離基」(「LG」)は、安定種として結合電子を連れ去ることができる、電子吸引力を有する原子(又は原子群)を表す。適切な脱離基の例としては、ハライド及びスルホン酸エステルが挙げられ、トリフレート、メシレート、トシレート、ブロシレート及びハライドを含むが、これらに限定されない。
【0090】
用語「加水分解可能な基」及び「加水分解可能な部分」は、例えば、塩基性又は酸性条件下、加水分解することができる官能基を表す。加水分解可能な残基の例としては、酸ハライド、活性化カルボン酸及び当技術分野において公知の様々な保護基(例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」 T.W.Greene, P.G.M.Wuts, Wiley-Interscience, 1999参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
用語「有機残基」は、炭素含有残基、すなわち少なくとも1個の炭素原子を含む残基と定義され、本明細書中上記で定義された炭素含有基、残基又はラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。有機残基は、様々なヘテロ原子を含むか、又は酸素、窒素、硫黄、リンなどを含むヘテロ原子を介して別の分子と結合することができる。有機残基の例としては、アルキル基又は置換アルキル基、アルコキシ基又は置換アルコキシ基、一置換又は二置換のアミノ基、アミド基などが挙げられるが、これらに限定されない。有機残基は、好ましくは、1~18個の炭素原子、1~15個の炭素原子、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を含むことができる。更なる態様では、有機残基は、2~18個の炭素原子、2~15個の炭素原子、2~12個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~4個の炭素原子又は2~4個の炭素原子を含むことができる。
【0092】
用語「残基」の非常に近い同義語は、用語「ラジカル」であり、これは、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、製造方法にかかわらず、本明細書に記載される分子の断片、基又は部分構造を表す。例えば、特定の化合物中の2,4-チアゾリジンジオンラジカルは、チアゾリジンジオンが当該化合物の製造に用いられた否かにかかわらず、構造:
【化4】
を有する。いくつかの実施形態では、ラジカル(例えば、アルカリ)は、1以上の「置換基ラジカル」を結合することにより更に修飾(すなわち、置換アルカリに)することができる。所与のラジカルの原子数は、本明細書の他の箇所にそうでないと示されていない限り、本発明では重要ではない。
【0093】
本明細書で定義されるように、そして本明細書で使用されるとき、用語「有機ラジカル」は、1以上の炭素原子を含む。有機ラジカルは、例えば、1~26個の炭素原子、1~18個の炭素原子、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有することができる。更なる態様では、有機ラジカルは、2~26個の炭素原子、2~18個の炭素原子、2~12個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子又は2~4個の炭素原子を有することができる。有機ラジカルは、当該有機ラジカルの炭素原子の少なくともいくつかに結合した水素を有することが多い。無機原子を含まない有機ラジカルの一例は、5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチルラジカルである。いくつかの実施形態では、有機ラジカルは、当該有機ラジカルに結合しているか又は当該有機ラジカル中に、1~10個の無機ヘテロ原子(ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、リンなどを含む)を含むことができる。有機ラジカルの例としては、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、一置換アミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アルキルカルボキサミド、置換アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド、置換ジアルキルカルボキサミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルラジカル(これらの用語は、本明細書の他の箇所で定義される)が挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロ原子を含む有機ラジカルのいくつかの非限定例としては、アルコキシラジカル、トリフルオロメトキシラジカル、アセトキシラジカル、ジメチルアミノラジカルなどが挙げられる。
【0094】
本明細書で定義されているように、そして本明細書で使用されるとき、用語「無機ラジカル」は、炭素原子を含まず、したがって、炭素以外の原子のみを含む。無機ラジカルは、水素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、セレン並びにフッ素、塩素、臭素及びヨウ素などのハロゲンから選択される結合した原子の組合せを含み、これらの原子は、その化学的に安定な組合せにおいて個々に存在するか又は互いに結合して存在することができる。無機ラジカルは、10個以下、好ましくは1~6個又は1~4個の上記無機原子が互いに結合している。無機ラジカルの例としては、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、チオール、スルフェート、ホスフェートなどの広く公知の無機ラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。無機ラジカルは、周期律表中の金属元素(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタニド金属又はアクチニド金属など)を結合していないが、このような金属イオンは、スルフェート、ホスフェートなどのアニオン性無機ラジカルに対する薬学的に許容可能なカチオンとして働くことがある。無機ラジカルは、本明細書の他の箇所にそうでないと明示されていない限り、メタロイド金属(ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、スズ、鉛又はテルルなどの)も希ガス元素も含まない。
【0095】
本明細書に記載の化合物は、1以上の二重結合を含むことができ、したがって、シス/トランス(E/Z)異性体その他の立体異性体を生じる可能性がある。そうでないと明示されない限り、本発明は、このような可能な全ての異性体及び当該異性体の混合物を含む。
【0096】
そうでないと明示されない限り、化学結合が実線としてのみ示され、くさび状線としても破線としても示されていない式は、可能な各異性体、例えば各エナンチオマー及びジアステレオマー並びに異性体の混合物、例えばラセミ又はスカレミック混合物を意図している。本明細書に記載される化合物は、1以上の不斉中心を含むことができ、したがって、ジアステレオマー及び光学異性体を生じる可能性がある。そうでないと明示されない限り、本発明は、このような可能な全てのジアステレオマー並びにこれらのラセミ混合物、これらの実質的に精製分離されたエナンチオマー、可能な全ての幾何異性体及びこれらの薬学的に許容可能な塩を含む。立体異性体の混合物並びに単離された特定の立体異性体もまた含まれる。このような化合物の製造に用いられる合成手順の過程で又は当業者に公知のラセミ化又はエピマー化手順の使用に際して、そのような手順の生成物は立体異性体の混合物であり得る。
【0097】
多くの有機化合物は、平面偏光の面を回転させる能力を有する光学活性体で存在する。光学活性化合物を記述するに際し、接頭語D及びL、又はR及びSは、キラル中心について当該分子の絶対配置を示すために使用される。接頭語d及びl、又は(+)及び(-)は、当該化合物による平面偏光の回転の符合を示すために使用され、(-)又はlは、当該化合物が左旋性であることを意味する。接頭語(+)又はdが付された化合物は右旋性である。所与の化学構造について、これら化合物(立体異性体と呼ばれる)は、相互に重ね合わせることができない鏡像であること以外、同一である。特定の立体異性体はエナンチオマーと呼ぶこともでき、当該異性体の混合物はエナンチオマー混合物と呼ばれることが多い。エナンチオマーの50:50混合物はラセミ混合物と呼ばれる。本明細書に記載される化合物の多くは、1以上のキラル中心を有することがあり、したがって、異なるエナンチオマーで存在することができる。所望により、キラル炭素は、アスタリスク(*)で示すことができる。開示される式においてキラル中心との結合が直線として示される場合、キラル炭素の(R)及び(S)配置の両方、したがって、両エナンチオマー及びその混合物は、前記式に包含されると理解される。当該分野で用いられるとき、キラル炭素についての絶対配置を特定することが望ましい場合、当該キラル炭素との一方の結合は、くさび形として示し(紙面より上の原子との結合)、他方の結合は短い平行線の連続又は短い平行線によるくさび形(紙面より下の原子との結合)として示すことができる。カーン・インゴールド・プレログ(Cahn-Inglod-Prelog)システムを使用して、キラル炭素に対する(R)又は(S)配置を割り当てることができる。
【0098】
本明細書に記載される化合物は、これらの天然同位体存在度及び非天然存在度の両方で原子を含む。1つ以上の原子が天然で通常発見される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子により置換されるということがなければ、開示される化合物は、記載されている化合物と同じ同位体標識又は同位体置換化合物であり得る。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、それぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、32P、33P、18F及び36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体が挙げられる。化合物はそのプロドラッグを更に含み、前述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含む前記化合物若しくは前記プロドラッグの薬学的に許容可能な塩は、本発明の範囲内である。本発明の特定の同位体標識化合物、例えば、3H及び14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものは、薬物及び/又は基質組織分布アッセイに有用である。トリチウム化、すなわち、3H、及び炭素-14、すなわち、14C同位体は、これらを調製及び検出可能性を容易にするために特に好ましい。更に、重水素、すなわち、2Hなどのより重い同位体による置換は、より大きい代謝的安定性、例えば、インビボ半減期増加又は必要用量減少から得られる特定の治療上の利点を得ることができ、したがって、いくつかの状況では好ましい可能性がある。本発明の同位体標識化合物及びそのプロドラッグを、下記手順を実行すること、非同位体標識試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識試薬を使用することにより概して調製することができる。
【0099】
本発明に記載されている化合物は、溶媒和物として存在し得る。場合によっては、溶媒和物を調製するために使用される溶媒は、水性溶液であり、次いで、溶媒和物を、水和物と呼ぶことが多い。化合物が水和物として存在することができ、これを、例えば、溶媒又は水性溶液からの結晶化により得ることができる。この関連で、1つ、2つ、3つ又はいずれかの任意の数の溶媒和物又は水分子は、本発明による化合物と結合することができ、溶媒和物及び水和物を生成することができる。そうでないと明示されない限り、本発明は、全てのこのような可能な溶媒和物を含む。
【0100】
用語「共結晶(co-crystal)」は、非共有結合相互作用によりこれらの安定性を得ている2つ以上の分子の物理的会合を意味する。この分子複合体の1つ以上の構成要素は、結晶格子中安定な構造体を提供する。特定の例では、ゲスト分子は、無水物又は溶媒和物として結晶格子中に組み込まれる、例えば、“Crystal Engineering of the Composition of Pharmaceutical Phases.Do Pharmaceutical Co-crystals Represent a New Path to Improved Medicines?”Almarasson,O.ら,The Royal Society of Chemistry,1889-1896,2004参照。共結晶の例としては、p-トルエンスルホン酸とベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0101】
また、本明細書に記載される特定の化合物は、互変異性体の平衡として存在することができると考えられる。例えば、α-水素を有するケトンは、ケト体及びエノール体の平衡で存在することができる。
【化5】
同様に、N-水素を有するアミドは、アミド体及びイミド酸体の平衡で存在することができる。そうでないと明示されない限り、本発明は、全てのこのような可能な互変異性体を含む。
【0102】
化学物質が、多形体又は変態と呼ばれる異なる秩序相で存在する固体を形成することは知られている。多形物質の異なる変態は、これらの物理特性において大きく異なり得る。本発明による化合物は、異なる多形体で存在することができ、特定の変態が準安定になることは可能である。そうでないと明示されない限り、本発明は、全てのこのような可能な多形体を含む。
【0103】
いくつかの態様では、化合物の構造を、式:
【化6】
により表すことができ、式:
【化7】
と均等であることは理解され、式中、nは、通常、整数である。すなわち、R
nは、5つの独立した置換基、R
n(a)、R
n(b)、R
n(c)、R
n(d)、R
n(e)を表すと理解される。「独立した置換基」は、各R置換基を独立して定義することができることが意図される。例えば、一例では、R
n(a)はハロゲンであり、R
n(b)はこの例では必ずしもハロゲンではない。
【0104】
本明細書に開示される特定の物質、化合物、組成物及び構成要素を、商業的に入手可能するか又は一般に当業者に公知の技術を用いて容易に合成することができる。例えば、開示される化合物及び組成物を調製するときに使用される出発物質及び試薬は、Aldrich Chemical Co.,(ウイスコンシン州ミルウォーキー)、Acros Organics(ニュージャージー州モリスプレーンズ)、Fisher Scientific(ペンシルベニア州ピッツバーグ)又はSigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)などの商業的サプライヤーから入手可能であるか又はFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes 1-17(John Wiley and Sons,1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes 1-5 and Supplementals(Elsevier Science Publishers,1989);Organic Reactions,Volumes 1-40(John Wiley and Sons,1991);March’s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley and Sons,4th Edition);及びLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)などの参考文献に記載されている手順に従って当業者に公知の方法により調製するかのいずれかである。
【0105】
そうでないと明示されない限り、本明細書に記載されるいずれもの方法は、そのステップを特定の順序で行わなければならないと解釈されるべきという意図は決してない。したがって、方法クレームは、そのステップが続く順序を実際に記載していないか、さもなければステップが特定の順序に限定されるべき特許請求の範囲中又は明細書中に具体的に明記されていない場合、いかなる点でも順序を推定されることを決して意図していない。これは、ステップの配置若しくは操作フローに関連する論理事項;文法構成若しくは句読法から誘導される一般的意味;及び本明細書に記載される実施形態の数若しくは形式を含む解釈のいずれかの可能性のある明確でない根拠に当てはまる。
【0106】
本発明の組成物を調製するために使用される構成要素並びに本明細書に開示される方法内で使用される組成物それ自体を開示する。これら及び他の物質は本明細書に開示され、これらの物質の組合せ、サブセット、相互作用、群、その他が開示される場合、これらの化合物の各様々な個々の及び集合的組合せ並びに並べ換えの具体的参照を明示的に開示することができないが、各々は本明細書において具体的に意図され記載されると理解される。例えば、特定の化合物が開示され考察され、化合物を含むいくつかの分子に対して行うことができるいくつかの修飾が述べられる場合、具体的に反対と示されない限り、化合物の各々及び全ての組合せ及び並べ換え並びに可能である修飾は具体的に意図される。したがって、分子A、B及びCの分類を開示し、同様に、分子D、E及びFの分類及び組合せ分子A~Dの例を開示する場合、たとえ各々が個々に記載されないとしても、各々は、組合せA~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~E及びC~Fが開示されると見做されることを個々及び集合的に意味することを意図される。同様に、これらのいずれかのサブセット又は組合せも開示される。したがって、例えば、A~E、B~F及びC~Eの部分群は、開示されると見做される。この概念は、これに限定されないが、本発明の組成物の製造方法及び使用方法におけるステップを含む本願の全態様に当てはまる。したがって、実施することができる様々な追加のステップがある場合、これらの追加のステップの各々を、本発明の方法のいずれかの特定の実施形態又は実施形態の組合せを用いて行うことができると理解される。
【0107】
本明細書に開示される組成物は特定の機能を有すると理解される。開示される機能を実施するための特定の構造的要件を本明細書に開示し、開示される構造に関連する同じ機能を実施することができる様々な構造があること、及びこれらの構造は同じ結果を通常達成することは理解される。
【0108】
B.MGLU5ネガティブアロステリックモジュレーター
1つの態様では、本発明は、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGlu5)のネガティブアロステリックモジュレーターとして有用な化合物に関する。ネガティブアロステリックモジュレーターは、非競合的アンタゴニストであり、部分アンタゴニストから逆作動薬への最大アンタゴニスト活性の範囲を含むことができる。1つの態様では、本発明は、オルトステリックアゴニストそれ自体として作用することなくアゴニストに対するmGlu5受容体の感受性に影響を与えるmGlu5受容体活性をアロステリックに調節する化合物に関する。1つの態様では、前記化合物は、サブタイプ選択性を示すことができる。本発明の化合物は、グルタミン酸機能障害に関連する神経傷害及び精神障害並びに本明細書に更に記載されている代謝型グルタミン酸受容体が関連する他の疾病の治療に有用であり得る。概して、開示される化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下ラットmGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対するmGlu5反応のネガティブアロステリック調節を示す。更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、哺乳動物のmGlu5を用いてトランスフェクトする。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ヒトmGlu5を用いてトランスフェクトする。
【0109】
各開示される誘導体を随意に更に置換してもよいことを意図される。いずれか1つ以上の誘導体を本発明から随意に省略してもよいことも意図される。開示される化合物を、開示される方法により提供することができると理解される。開示される化合物を、開示される使用方法で使用することができることも理解される。
【0110】
1.構造
1つの態様では、本発明は、次式により表される構造を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩に関する:
【0111】
次式:
【化8】
(式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化9】
(式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNである)
であり;
Bは、
【化10】
(式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNである)
であり、
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択される)
により表される構造を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【0112】
更なる態様では、前記化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下ラットmGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対するmGlu5反応の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の部分的阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の全阻害を示す。
【0113】
更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満のネガティブアロステリック調節を示す。
【0114】
更なる態様では、mGlu5は、ラットmGlu5である。なお更なる態様では、mGlu5は、ヒトmGlu5である。
【0115】
更なる態様では、化合物は
【化11】
(式中、各Rは、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される)
から選択される式により表される構造を有するか又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0116】
本発明の更なる態様では、
Aは、
【化12】
(式中:
X
1は、CH又はCR
1であり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH又はCR
1であり;
X
6は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される)
である、化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【0117】
更なる態様では、
Bは、
【化13】
(式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、S、O又はNであり;
X
16は、CH又はCR
1であり;
X
17は、CH又はCR
1であり;
X
18は、S、O、Nであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、F、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、CN、シクロアルキル、メトキシ及びアルコキシから選択される)
である、化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【0118】
更なる態様では、
(i)Aは、
【化14】
(式中:
X
1は、CH又はCR
1であり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH又はCR
1であり;
X
6は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、NR
1又はNである)
であり;
(ii)Bは、
【化15】
(式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、S、O又はNであり;
X
16は、CH又はCR
1であり;
X
17は、CH又はCR
1であり;
X
18は、S、O、Nである)
であり;
(iii)各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、F、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、CN、シクロアルキル、メトキシ及びアルコキシから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【0119】
更なる態様では、
Aは、
【化16】
から選択され;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、F、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、CN、シクロアルキル、メトキシ及びアルコキシから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【0120】
更なる態様では、
Bは、
【化17】
から選択され;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【0121】
更なる態様では、
前記化合物は、
(i)Aは、
【化18】
から選択され;
(ii)Bは、
【化19】
から選択され;並びに
(iii)各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0122】
更なる態様では、前記化合物は、次式:
【化20】
であり、
(i)Aは、
【化21】
から選択され;又は
(ii)Bは、
【化22】
から選択され;並びに
(iii)各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0123】
開示される化合物を、開示される方法、組成物、製品、使用及びキットと組み合わせて使用することができることを意図される。
【0124】
2.例となる構造物
1つの態様では、化合物は:
【化23-1】
【化23-2】
【化23-3】
【化23-4】
から選択される化合物又はその薬学的に許容可能な塩若しくはその薬学的に許容可能な誘導体である。
【0125】
なお更なる態様では、前記化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下ラットmGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対するmGlu5反応のネガティブアロステリック調節を示す。更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ヒトmGlu5を用いてトランスフェクトする。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、哺乳動物mGlu5を用いてトランスフェクトする。更なる態様では、前記化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下ヒト、ラット又は哺乳動物mGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対する反応におけるmGlu5の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、mGlu5を発現する細胞の接触後、mGlu5のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、製造される化合物は、mGlu5を発現する細胞の接触後、mGlu5の部分的又は全阻害を示す。
【0126】
1つ以上の例となる構造物を開示される本発明から随意に省略してもよいことが意図される。
【0127】
3.mGlu5反応のネガティブアロステリック調節
1つの態様では、前記化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下ラットmGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対するmGlu5反応のネガティブアロステリック調節を示す。更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の部分的阻害を示す。更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ヒトmGlu5を用いてトランスフェクトする。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、哺乳動物のmGlu5を用いてトランスフェクトする。
【0128】
C.代謝型グルタミン酸受容体活性
代謝型グルタミン酸受容体活性、特に、mGlu5活性のネガティブアロステリックモジュレーターとしての本発明による化合物の有用性を、当技術分野において公知の方法により実証することができる。ラット又はヒトmGlu5いずれかを安定に発現するHEK293A細胞を、20μLのアッセイ培地(10%透析FBS、20mM HEPES、100単位/mL ペニシリン/ストレプトマイシン+250ng/mLファンギゾン及び1mMピルビン酸ナトリウムを含むDMEM)中の黒色壁、透明底、ポリ-D-リジン被覆384ウェルプレートに、20K細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、5%CO2の存在下37℃で一夜増殖させた。翌日、培地を除去し、細胞を、DMSO中2.3mM保存液として調製され、10%(重量/体積)プルロン酸F-127と1:1比で混合し、アッセイバッファ(ハンクス平衡塩類溶液、20mM HEPES及び2.5mMプロベネシド)に希釈した2.3μM Fluo-4、AMの20μLと共に、37℃で45分間インキュベートした。染料を除去し、20μLのアッセイバッファを添加し、プレートを室温で5分間インキュベートした。
【0129】
Ca2+流束を、Functional Drug Screening System(FDSS7000、浜松ホトニクス、日本)を用いて測定した。約3秒間の蛍光ベースラインの確立後、本発明の化合物を細胞に添加し、細胞における反応を測定した。2.3分後に、mGlu5受容体アゴニストグルタメートのEC20濃度を細胞に添加し、細胞の反応を1.9分間測定し;アゴニストのEC80濃度を添加し、更に1.7分間測定値を読み取った。全ての試験化合物を、100%DMSO中10mMの濃度まで溶解し希釈した。次いで、化合物をDMSO中1:3を10点濃度反応曲線に段階希釈し、娘プレートに移し、2×保存液のアッセイバッファに更に希釈した。カルシウム蛍光測定を基礎蛍光生データに対する倍数として記録し、次いで、グルタメートに対する最大反応に正規化した。本発明におけるmGlu5受容体のアゴニスト反応の拮抗作用は、化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、化合物の存在下でのグルタメートのほぼ最大濃度に対する反応の低下として観察された。
【0130】
全時点を含む生データファイルを、分析テンプレートにおけるデータ源として使用した。これを、タブ区切りテキストファイルとしてFDSSにより保存した。各ウェルの初期値で割ったウェル当たりの全360個の値の各測定について静態比率(F/F0)を用いてデータを正規化した。次いで、グルタメートEC20/EC80添加の約3秒前に開始して約90~120秒間継続する時間範囲を用いて、データをピーク振幅(最大-初期最小値)に約分した。これは、細胞カルシウム反応のピーク振幅を捕捉するために充分な時間である。個々の振幅を、各振幅を100により乗算し、次いで、グルタメートECMax治療ウェルから誘導される振幅の平均により前記積を除算することにより%EMaxとして表した。試験化合物のIC50値を、どのパラメータも固定されていない4パラメータロジスティク方程式を用いて試験化合物濃度(モル/L)のlogに対して正規化された値をフィッティングすることにより作成した。試験化合物の各濃度において集められた3つの値の各々を、均等に加重した。
【0131】
化合物がグルタメートEC80添加において濃度依存性減少を示す場合、この化合物をネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)とした。10%未満のGlu Max(すなわち、グルタメートに対する最大反応のパーセンテージとしての化合物の存在下での反応の振幅)において横ばい状態になるCRCを有するNAMに関して、IC50値を報告する。10%を超えるGlu Maxにおいて横ばい状態になるCRCを有するNAMに関して、IC50値を報告し、この化合物を「部分的NAM」とし、%Glu Maxを報告する。EC80反応の減少を示すが、横ばい状態に達しないNAMに関して、1つの濃度(30μM)におけるGlu Maxの平均を決定(%Glu Max)し、報告し、IC50値を「>10,000nM」として報告する。アッセイにおいて試験された化合物の最高濃度は30μMであるので、測定可能な活性を有しない化合物を「>30,000nM」とする。例示的データを、下表1及び2に示す。
【0132】
詳細には、開示される化合物は、前述のアッセイにおいてmGlu5受容体を調節する活性を有し、概して、調節のためのIC50は約30μM未満であった。本発明内の好ましい化合物は、mGlu5受容体を調節する活性を有し、ネガティブアロステリック調節のためのIC50は約500nM未満であった。好ましい化合物は、グルタメートのEC80濃度に対する反応を最大反応の50%未満まで低下させ、グルタメート濃度反応曲線の右肩下がりシフトも誘導した。これらの化合物は、ヒト及びラットmGlu5のネガティブアロステリックモジュレーターであり、代謝型グルタミン酸受容体の他の6サブタイプと比較してmGlu5に対して選択的であった。
【0133】
D.化合物の製造方法
1つの態様では、本発明は、グルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害並びに代謝型グルタミン酸受容体が関与する他の疾病の治療において有用であり得る代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGlu5)のネガティブアロステリックモジュレーターとして有用である化合物の製造方法に関する。
【0134】
本発明の化合物を、文献において公知である、実験セクションにおいて例示されている又は当業者に明白である他の標準的操作に加えて、以下のスキームにおいて示されている反応を使用することにより調製することができる。明確にするために、単一置換基を有する例を示し、複数の置換基は本明細書に開示される定義下で認められる。
【0135】
開示される化合物を、様々な経路により調製することができる。特定の具体例では、開示される化合物を、当業者により、及び下記例示されているように調製することができる。
【0136】
更なる態様では、化合物は、開示される方法の製品を含む。なお更なる態様では、本発明は、開示される方法の製品の治療有効量及び薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物を含む。なお更なる態様では、本発明は、開示される化合物又は開示される方法の少なくとも1つの製品と、薬学的に許容可能なキャリア若しくは希釈剤との組合せを含む医薬品の製造方法を含む。
【0137】
更なる態様では、製造された化合物は、残りの置換基の官能基変換を更に行って追加のアナログを得ることができる。
【0138】
更なる態様では、製造された化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下ラットmGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対するmGlu5反応の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ヒトmGlu5を用いてトランスフェクトする。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、哺乳動物mGlu5を用いてトランスフェクトする。
【0139】
更なる態様では、製造された化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下ヒト、ラット又は哺乳動物mGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対する反応におけるmGlu5の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、製造された化合物は、mGlu5を発現する細胞の接触後、mGlu5のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、製造される化合物は、mGlu5を発現する細胞の接触後、mGlu5の部分的又は全阻害を示す。
【0140】
各開示される方法は、追加のステップ、操作及び/又は構成要素を更に含むことができることを意図される。いずれか1つ以上のステップ、操作及び/又は構成要素を本発明から随意に省略してもよいことも意図される。開示される方法を使用して開示される化合物を得ることができることは理解される。開示される方法の製品を、開示される使用方法で使用することができることも理解される。
【0141】
E.医薬組成物
1つの態様では、本発明は、開示される化合物を含む医薬組成物に関する。すなわち、開示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量及び薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物を提供することができる。更なる態様では、有効量は、治療有効量である。なお更なる態様では、有効量は、予防有効量である。
【0142】
特定の態様では、開示される医薬組成物は、活性成分として開示される化合物(その薬学的に許容可能な塩を含む)、薬学的に許容可能なキャリア、及び随意に、他の治療用成分又はアジュバントを含む。いずれかの所与の場合では、最も適切な経路は、特定の宿主、及び活性成分が投与される病態の性質及び重症度に依存するが、本組成物は、経口、直腸、局所及び非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)に適したものを含む。医薬組成物を、単位剤形で便利に提供し、薬学分野において周知の方法のいずれかにより調製することができる。
【0143】
本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能な無毒性塩基又は酸から調製される塩を表す。本発明の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基及び有機塩基を含む薬学的に許容可能な無毒性塩基から便利に調製することができる。当該無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第二銅及び第一銅)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第二マンガン及び第一マンガン)、カリウム、ナトリウム、亜鉛及び同様の塩が挙げられる。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容可能な有機無毒性塩基から誘導される塩としては、第一級、第二級及び第三級アミン、並びに環状アミン及び天然及び合成置換アミンなどの置換アミンの塩が挙げられる。塩を生成することができる他の薬学的に許容可能な有機無毒性塩基としては、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン及び同様のものなどのイオン交換樹脂が挙げられる。
【0144】
本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能な無毒性酸」としては、無機酸、有機酸、及びこれらから調製される塩、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸及び同様のものが挙げられる。好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。
【0145】
実際には、本発明の、本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を、従来の医薬配合技術による医薬用キャリアとの密な混合物中の活性成分として組み合わすことができる。キャリアは、投与、例えば、経口又は非経口(静脈内を含む)に望ましい製剤の形態に応じた様々な形態を取ることができる。したがって、本発明の医薬組成物を、各々が所定量の活性成分を含むカプセル剤、カシェ剤(cachets)又は錠剤などの経口投与のために適した個別単位として提供することができる。更に、組成物を、散剤として、顆粒剤として、液剤として、水性液体中の懸濁剤として、非水性液剤として、水中油エマルジョン剤として又は油中水液体エマルジョン剤として提供することができる。上記設定された一般的剤形に加えて、本発明の化合物及び/又はその薬学的に許容可能な塩を、制御放出手段及び/又は送達デバイスにより投与することもできる。組成物を、薬学の方法のいずれかにより調製することができる。概して、このような方法は、活性成分を、1つ以上の必要な成分を構成するキャリアと組み合わせるステップを含む。概して、活性成分を、液体キャリア若しくは微細化された固体キャリア又は両方と均一に及び密に混合することにより組成物を調製する。次いで、製品を、所望の体裁に便利に成形することができる。
【0146】
したがって、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能なキャリア及び本発明の化合物又はこの化合物の薬学的に許容可能な塩を含むことができる。本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を、1つ以上の他の治療活性化合物と組み合わせた医薬組成物中に含むこともできる。
【0147】
使用される医薬用キャリアは、例えば、個体、液体又は気体であり得る。固体キャリアの例としては、ラクトース、白土、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸が挙げられる。液体キャリアの例としては、シュガーシロップ、ピーナッツ油、オリーブ油及び水である。気体キャリアの例としては、二酸化炭素及び窒素が挙げられる。
【0148】
経口用剤形のための組成物の調製では、いずれかの便利な医薬用媒体を使用することができる。例えば、水、グリコール、油類、アルコール、香料、防腐剤、着色料及び同様なものを使用して、懸濁剤、エリキシル剤及び液剤などの経口用液体製剤を生成することができ;デンプン、糖類、結晶セルロースなどのキャリア、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤及び同様のものを使用して、散剤、カプセル剤及び錠剤などの経口用固体製剤を生成することができる。その投与の容易さが理由で、錠剤及びカプセル剤は好ましい経口用投与単位であり、これにより、固体医薬用キャリアを使用する。随意に、標準的水性又は非水性技術により錠剤をコーティングすることができる。
【0149】
本発明の組成物を含む錠剤を、随意に1つ以上の副成分又はアジュバントと共に圧縮又は成形により製剤することができる。圧縮錠剤を、適切な機械において、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤と随意に混合された散剤又は顆粒剤などの自由に流れるような形態の活性成分を圧縮することにより製剤することができる。成形錠剤を、適切な機械において、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化された化合物の混合物を成形することにより製造することができる。
【0150】
本発明の医薬組成物は、活性成分として本発明の化合物(又はその薬学的に許容可能な塩)、薬学的に許容可能なキャリア、及び随意に1つ以上の追加の治療薬又はアジュバントを含む。いずれかの所与の場合では、最も適切な経路は、特定の宿主、及び活性成分が投与される病態の性質及び重症度に依存するが、本組成物は、経口、直腸、局所及び非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)に適した組成物を含む。医薬組成物を、単位剤形で便利に提供し、薬学分野において周知の方法のいずれかにより調製することができる。
【0151】
非経口投与のために適した本発明の医薬組成物を、水中の活性化合物の液剤又は懸濁剤として製剤することができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な界面活性剤を含むことができる。分散剤を、油類中のグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びその混合物中に製剤することもできる。更に、防腐剤を、微生物の有害な増殖を防止するために含むことができる。
【0152】
注射用途に適した本発明の医薬組成物は、滅菌水性液剤又は分散剤を含む。更に、組成物は、このような滅菌注射用液剤又は分散剤の即座の調製のための滅菌散剤の形態であり得る。いかなる場合でも、最終注射可能な形態は滅菌されていなければならず、容易に注射器で使用するために効果的に流動性でなければならない。医薬組成物は、製造及び貯蔵条件下安定でなければならず;したがって、好ましくは、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されるべきである。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、植物油及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散液であり得る。
【0153】
本発明の医薬組成物は、例えば、エアロゾル剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、散布剤、マウスウォッシュ、うがい剤などの局所用途に適者形態であり得る。更に、組成物は、経皮デバイスにおいて使用するために適した形態であり得る。これらの製剤を、本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を、従来の加工方法により利用して製剤することができる。一例として、クリーム剤又は軟膏剤を、材料及び水を、約5重量%~約10重量%の化合物と共に混合することにより製剤して、所望の濃度を有するクリーム剤又は軟膏剤を製造する。
【0154】
本発明の医薬組成物は、キャリアは固体である直腸投与のために適した形態であり得る。混合物が単位用量坐剤を生成することは好ましい。適したキャリアとしては、カカオ脂及び当技術分野において一般に使用される他の材料が挙げられる。在々を、前記組成物を軟化又は溶融されたキャリアと先ず混合して、次いで、鋳型中で急冷及び成形することにより便利に生成することができる。
【0155】
前述のキャリア成分に加えて、上記医薬製剤は、必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、香料、結合剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(酸化防止剤を含む)及び同様のものなどの1つ以上の追加のキャリア成分を含むことができる。更に、他のアジュバントを、製剤に目的のレシピエントの血液との等張性を付与するために含むことができる。本発明の化合物及び/又はその薬学的に許容可能な塩を含む組成物を、散剤又は液体濃縮形態で製剤することもできる。
【0156】
代謝型グルタミン酸受容体活性のネガティブアロステリック調節を必要とする治療条件では、適切な投与量レベルは、概して、1日患者の体重kg当たり約0.01~500mgであり、単回投与又は反復投与で投与することができる。 好ましくは、投与量レベルは、1日約0.1~約250mg/kg;より好ましくは1日約0.5~約100mg/kgである。適切な投与量レベルは、1日約0.01~250mg/kg、1日約0.05~100mg/kg又は1日約0.1~50mg/kgであり得る。 この範囲内で、投与量は、0.05~0.5、0.5~5.0又は5.0~50mg/kg/日であり得る。経口投与のため、組成物を、治療しようとする患者の投与量の症状の調整のため、好ましくは、1.0~1000ミリグラムの活性成分、特に、1.0、5.0、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900及び1000ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形態で提供する。 化合物を、1日1~4回、好ましくは1日1回又は1日2回のレジメンで投与することができる。 この投与レジメンを、最適な治療反応を得るために調整することができる。
【0157】
しかしながら、いずれかの特定の患者の特定の用量レベルは、様々な因子に依存することは理解される。このような因子としては、患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別及び食事が挙げられる。他の因子としては、投与タイミング及び経路;排出率;薬物の併用;並びに治療を経験している特定の疾病のタイプ及び重症度が挙げられる。
【0158】
本発明を、1つ以上の開示される化合物、製品又は組成物と薬学的に許容可能なキャリア又は希釈剤との組合せを含む哺乳動物(例えば、ヒト)におけるグルタミン酸受容体活性の調節(例えば、1つ以上のグルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害の治療)のための医薬品の製造方法に更に向ける。したがって、1つの態様では、本発明は、少なくとも1つの開示される化合物又は少なくとも1つの開示される製品と薬学的に許容可能なキャリア又は希釈剤との組合せを含む医薬品の製造方法に関する。
【0159】
開示される医薬組成物は、上記病的状態の治療において通常適用される他の治療活性化合物を更に含むことができる。
【0160】
開示される組成物を、開示される化合物から製剤することができることは理解される。開示される組成物を、開示される使用方法で使用することができることも理解される。
【0161】
更なる態様では、前記化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下mGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対するmGlu5反応の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ラットmGlu5を用いてトランスフェクトする。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ヒトmGlu5を用いてトランスフェクトする。
【0162】
F.化合物及び組成物の使用方法
アミノ酸L-グルタメート(本明細書では簡単にグルタメートと呼ぶ)は、哺乳動物中枢神経系(CNS)における主な興奮性神経伝達物質である。CNS内では、グルタメートは、シナプス可塑性(例えば、長期増強(学習及び記憶の基礎))、運動制御及び知覚において重要な役割を果たす。様々な神経障害及び精神障害は、グルタミン酸系における機能障害に関連すると、現在ではよく理解されている。したがって、グルタミン酸系の調節は、重要な治療目的である。グルタメートは、2つの異なる受容体:イオンチャンネル型及び代謝型グルタミン酸受容体を通して作用する。第一分類、イオンチャンネル型グルタミン酸受容体は、興奮性シナプス後電流を媒介するマルチサブユニットリガンド依存性イオンチャネルからなる。イオンチャンネル型グルタミン酸受容体の3サブタイプが特定されており、全ての3受容体サブタイプに対するアゴニストとして働くグルタメートにかかわらず、選択的リガンドは各サブタイプを活性化することが発見された。イオンチャンネル型グルタミン酸受容体は、これらのそれぞれの選択的リガンド:カイナイト受容体、AMPA受容体及びNMDA受容体後に名付けられている。
【0163】
代謝型グルタミン酸受容体(mGlu)グルタメート受容体の第二分類は、これらの位置(シナプス前又はシナプス後)に基づいて神経伝達物質放出又はシナプス伝達の強度を調節するGタンパク質結合受容体(GPCR)である。mGluは、受容体のアミノ末端ドメインにおける大きい(約560アミノ酸)「ハエトリグサ」アゴニスト結合ドメインを特徴とするファミリーC GPCRである。この固有のアゴニスト結合ドメインは、アゴニスト結合ドメインが7鎖膜貫通(7TM)領域内又は鎖をこの領域と接続している細胞外ループ内に存在する。現在まで、8つの異なるmGluは、特定、クローン化及び配列決定された。 構造類似性、細胞内シグナル伝達経路との一次結合及び薬理学に基づいて、mGluは、3群:群I(mGlu1及びmGlu5)、群II(mGlu2及びmGlu3)及び群III(mGlu4、mGlu6、mGlu7及びmGlu8)に割り当てられた。群I mGluは、Gαq/11により結合して、イノシトールリン酸及び代謝を増加させ、その結果、細胞内カルシウムを増加させる。群I mGluは、主にシナプス後に存在し、イオンチャネル活性及び神経細胞興奮性に対する調節効果を有する。群II(mGlu2及びmGlu3)及び群III(mGlu4、mGlu6、mGlu7及びmGlu8)のmGluは主にシナプス前に存在し、グルタメートなどの神経伝達物質の放出を調節する。群II及び群IIIのmGluは、Gαi及びアデニル酸シクラーゼなどのその関連エフェクターと結合する。
【0164】
シナプス後mGluは、NMDA受容体などのシナプス後イオンチャンネル型グルタミン酸受容体と機能的に相互作用することが分かっている。例えば、選択的アゴニストによるmGlu5の活性化は、シナプス後NMDA電流を増加させることが分かった(Mannaioniら(2001)J.Neurosci.21,5925-5934)。したがって、mGluの調節は、グルタミン酸作動性伝達の調節に対するアプローチである。多数の報告は、mGlu5が、不安症(Spoorenら(2000)J.Pharmacol.Exp.Therapeut.295,1267-1275 ;Tatarczynskaら(2001)Br.J.Pharmaol.132,1423-1430)、コカイン中毒(Chiamuleraら(2001)Nature Neurosci.4,873-874)、パーキンソン病(Awadら(2000)J.Neurosci.20,7871-7879 ;Ossowskaら(2001)Neuropharmacol.41,413-420)、疼痛(Salt and Binns(2001)Neurosci.100,375-380)、脆弱性X症候群(FXS)(すなわち、de Vrij,F.M.S.ら(2008)Neurobiol.Disease 31,127-132;Yan,Q.J.ら(2005)Neuropharmacol 49,1053-1066参照)を含むいくつかの病状において役割を果たす。
【0165】
開示される化合物を、単剤として又は治療、予防、制御、寛解若しくは式Iの化合物若しくは他の薬物が有効性を有する前述の疾病、障害及び病態の危険性の低減における1つ以上の他の薬物と併用して使用することができ、薬物と一緒の併用は、薬物単独よりか安全又は効果的である。前記他の薬物を、したがって、開示される化合物と同時又は順次に通常使用される経路により及び量で投与することができる。開示される化合物を1つ以上の他の薬物と同時に使用する場合、当該薬物及び開示される化合物を含む単位剤形の医薬組成物は好ましい。しかしながら、併用療法を、重複するスケジュールで投与することもできる。1つ以上の活性成分と開示される化合物との併用は、単剤としてよりも効果的であろうということも想定される。
【0166】
1つの態様では、主題化合物を、抗アルツハイマー薬、β-セクレターゼ阻害剤、γ-セクレターゼ阻害剤、ムスカリンアゴニス、ムスカリン増強剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、NSAID及び抗アミロイド抗体と同時投与することができる。
【0167】
更なる態様では、主題化合物を、鎮静剤、睡眠薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(「SSRI」)並びに/又は選択的セロトニン及びノルエピネフリン再取り込み阻害薬(「SSNRI」)、三環式抗抑うつ剤、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)、5-HT2アゴニスト若しくはアンタゴニスト、GlyT1阻害剤及び同様のものと併用して投与することができ、例えば、リスペリドン、クロザピン、オランザピン、ハロペリドール、フルオキセチン、プラゼパム、キサノメリン、リチウム、フェノバルビタール(phenobarbitol)及びこれらの塩並びにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
更なる態様では、主題化合物を、レボドパ(選択的脳外脱炭酸酵素阻害剤と又はなしで)、ビペリデンなどの抗コリン薬、エンタカポンなどのCOMT阻害剤、A2aアデノシンアンタゴニスト、コリンアゴニスト、NMDA受容体アゴニスト又はアンタゴニスト及びドーパミンアゴニストと併用して使用することができる。
【0169】
更なる態様では、主題化合物を、アヘンアゴニスト又はアンタゴニスト、カルシウムチャネルアンタゴニスト、ナトリウムチャネルアンタゴニスト、COX-2選択的阻害剤、NK1アンタゴニスト、非ステロイド系抗炎症薬(「NSAID」)、GABA-A受容体モジュレーター、ドーパミンアゴニスト又はアンタゴニスト、ノルエピネフリンモジュレーター、ニコチンを含むニコチンアゴニスト又はアンタゴニスト、及びムスカリンアゴニスト又はアンタゴニストと併用して投与することができる。なお更なる態様では、主題化合物を、メタドンなどのヘロイン代替薬、レボ-α-アセチルメタドール、ブプレノルフィン及びナルトレキソン、並びにジスルフィラム及びアカンプロセートと併用して投与することができる。更なる態様では、主題化合物を、L-DOPA、ブスピロン、バルプロエート及びガバペンチンと併用して投与することができる。
【0170】
本発明の医薬組成物及び方法は、上記病的状態の治療において通常適用される本明細書に特記されている他の治療活性化合物を更に含むことができる。
【0171】
1.治療方法
本明細書に開示される化合物は、様々なグルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び精神障害を治療、予防、寛解、制御又はその危険性を低減するために有用である。したがって、対象における障害を治療するために効果的な投与量及び量で、少なくとも1つの開示される化合物;少なくとも1つの開示される医薬組成物;及び/又は少なくとも1つの開示される製品を前記対象に投与するステップを含む、前記対象における障害の治療又は予防方法を提供する。
【0172】
対象における障害を治療するために効果的な投与量及び量で、少なくとも1つの開示される化合物;少なくとも1つの開示される医薬組成物;及び/又は少なくとも1つの開示される製品を前記対象に投与するステップを含む、前記対象における1つ以上のグルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害の治療方法も提供する。
【0173】
グルタミン酸機能障害に関連する障害の例としては:心臓バイパス手術及び移植後の脳欠損などの急性及び慢性神経及び精神障害、脳卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部外傷、周生期低酸素症、心肺停止、低血糖性神経損傷、認知症(AIDS誘発認知症を含む)、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、眼損傷、網膜症、認知障害、特発性及び薬物誘発パーキンソン病、震え、てんかん、けいれんを含む筋痙直関連筋肉けいれん及び障害、片頭痛(migraine)(偏頭痛(migraine headache)を含む)、尿失禁、物質耐性、薬物の常習性(アヘン、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、睡眠薬、その他を含む)を含む常習行為、当該常習性薬物(アヘン、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、睡眠薬、その他を含む)からの離脱、肥満、精神病、統合失調症、不安症(全般不安障害、パニック障害及び強迫性障害を含む)、気分障害(うつ、熱狂、双極性障害を含む)、三叉神経痛、聴力損失、耳鳴り、眼の加齢黄斑変性、嘔吐、脳浮腫、疼痛(急性及び慢性疼痛状態、激痛、難治性疼痛、神経因性疼痛及び外傷後疼痛を含む)、遅発性ジスキネジア、睡眠障害(ナルコレプシーを含む)、注意欠如/多動障害、並びに行為障害が挙げられる。
【0174】
本明細書に開示される組成物により治療又は予防することができる不安障害としては、全般不安障害、パニック障害及び強迫性障害が挙げられる。常習行為としては、薬物(アヘン、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、睡眠薬、その他を含む)の常習性、当該常習性薬物(アヘン、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、睡眠薬、その他を含む)からの離脱及び物質耐性が挙げられる。
【0175】
対象における障害を治療するために効果的な投与量及び量で、少なくとも1つの開示される化合物;少なくとも1つの開示される医薬組成物;及び/又は少なくとも1つの開示される製品を前記対象に投与することを含む、不安症の治療又は予防方法も提供する。現在、the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-IV)(1994,American Psychiatric Association,Washington,D.C.)の第4版は、不安症及び関連障害を含む診断ツールを提供する。これらとしては:広場恐怖症がある又はないパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、限局性恐怖症、対人恐怖症、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般不安障害、全身病状による不安障害、薬物誘発不安障害、及び他に分類されない不安障害が挙げられる。
【0176】
本明細書に開示される組成物により治療又は予防することができる更なる障害としては、自閉スペクトラム症が挙げられ、これは、社会的交流及びコミュニケーションの広範囲に渡る異常、並びに厳しく制限された興味及び高頻度の反復行動を特徴とする神経状態である。自閉スペクトラム症としては、自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、非定型自閉症と呼ばれることもある特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)及びレット症候群が挙げられる。脆弱性X症候群(FXS)は、自閉スペクトラム症の症状にほぼ例外なく関連する単一遺伝子疾患であり、これは、遺伝性精神遅滞の最も一般的形態、及び自閉症の最も一般に知られている原因であり、出生6,000名に1名が罹る。FXS患者の治療のための治療薬は、 満たされていない医療ニーズの最も重要なものの1つであり、この患者集団のための証明された効果的治療はほとんどない。更に、理論に束縛されることを望まないが、脆弱性X表現型とmGluシグナル伝達との関連を特定する証拠が増えている。
【0177】
本発明の化合物を、例えば、症状(例えば、不安及び怒りやすい状態の低減;認知機能の増大、コミュニケーション及び/又は社会交流)を改善することができるように脆弱性X症候群及び自閉スペクトラム症の治療のために使用することができる。したがって、本発明の方法は、脆弱性X症候群又は自閉スペクトラム症を有する対象を治療するための効果的方法を提供することができる。
【0178】
a.障害の治療
1つの態様では、本発明は、哺乳動物の障害を治療するために効果的な投与量及び量で少なくとも1つの開示される化合物又は少なくとも1つの開示される製品を前記哺乳動物に投与するステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性に関連する障害の治療方法に関する。更なる態様では、哺乳動物は、ヒトである。更なる態様では、哺乳動物は、投与ステップ前に障害の治療を必要すると診断された。更なる態様では、方法は、障害の治療を必要する哺乳動物を特定するステップを更に含む。
【0179】
1つの態様では、本発明は、式:
【化24】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって;
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化25】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化26】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を哺乳動物に投与するステップを含み、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性に関連する障害の治療方法に関する。
【0180】
更なる態様では、投与される化合物は、開示される方法のいずれかの開示される化合物又は製品である。
【0181】
更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0182】
更なる態様では、哺乳動物は、ヒトである。なお更なる態様では、哺乳動物は、投与ステップ前に障害の治療を必要すると診断された。なお更なる態様では、障害の治療は、障害の治療を必要する哺乳動物を特定するステップを更に含む。なお更なる態様では、障害は、代謝型グルタミン酸受容体機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛及びうつから選択される。
【0183】
更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、自閉スペクトラム症である。なお更なる態様では、前記自閉スペクトラム症は、自閉症、古典的自閉症、アスペルガー症候群、非定型自閉症と呼ばれることがある特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、脆弱性X症候群、レット症候群及び小児期崩壊性障害から選択される。
【0184】
更なる態様では、障害は、制御されない細胞増殖の疾病である。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖は、がんである。なお更なる態様では、がんは、乳がん、直腸がん、胃がん及び結腸直腸がんから選択される。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖の疾病は、白血病、脳のがん、尿生殖路がん、リンパ系がん、胃がん、喉頭がん、肺がん、膵がん、乳がん及び悪性メラノーマから選択される。
【0185】
1つの態様では、障害は、グルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、前記障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛、うつ、情動障害、加齢関連認知低下、アルツハイマー病、健忘障害、筋萎縮性側索硬化症、不安障害、アンジェルマン症候群、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、双極性障害、脳浮腫、慢性疼痛、精神錯乱、認知症、うつ、糖尿病、ダウン症候群、ジストニア、摂食障害、てんかん、線維筋痛症、ハンチントン関連舞踏病、レボドパ誘発性ジスキネジア、躁鬱病、片頭痛、運動障害、多発性硬化症、ナルコレプシー、神経線維腫症1型、神経障害性疼痛、肥満症、疼痛、パラノイア、パーキンソン病、帯状疱疹後神経因性疼痛、精神病性障害、PTEN過誤腫症候群、老年性認知症、睡眠障害、物質関連障害及び単極性うつ病から選択される。
【0186】
更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の部分的阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満の部分的又は全阻害を示す。
【0187】
b.mGlu5活性の低下
1つの態様では、本発明は、哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性を低下するために効果的な投与量及び量で少なくとも1つの開示される化合物又は少なくとも1つの開示される製品を前記哺乳動物に投与するステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性の低下方法に関する。更なる態様では、哺乳動物は、ヒトである。更なる態様では、哺乳動物は、投与ステップ前に障害の治療を必要すると診断された。更なる態様では、方法は、障害の治療を必要する哺乳動物を特定するステップを更に含む。
【0188】
1つの態様では、本発明は、式:
【化27】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって;
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化28】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化29】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性の低下方法に関する。
【0189】
更なる態様では、投与される化合物は、開示される方法のいずれかの開示される化合物又は製品である。
【0190】
更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0191】
更なる態様では、哺乳動物は、ヒトである。なお更なる態様では、哺乳動物は、投与ステップ前に障害の治療を必要すると診断された。なお更なる態様では、障害の治療は、障害の治療を必要する哺乳動物を特定するステップを更に含む。なお更なる態様では、障害は、代謝型グルタミン酸受容体機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛及びうつから選択される。
【0192】
更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、自閉スペクトラム症である。なお更なる態様では、前記自閉スペクトラム症は、自閉症、古典的自閉症、アスペルガー症候群、非定型自閉症と呼ばれることがある特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、脆弱性X症候群、レット症候群及び小児期崩壊性障害から選択される。
【0193】
更なる態様では、障害は、制御されない細胞増殖の疾病である。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖は、がんである。なお更なる態様では、がんは、乳がん、直腸がん、胃がん及び結腸直腸がんから選択される。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖の疾病は、白血病、脳のがん、尿生殖路がん、リンパ系がん、胃がん、喉頭がん、肺がん、膵がん、乳がん及び悪性メラノーマから選択される。
【0194】
1つの態様では、障害は、グルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、前記障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛、うつ、情動障害、加齢関連認知低下、アルツハイマー病、健忘障害、筋萎縮性側索硬化症、不安障害、アンジェルマン症候群、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、双極性障害、脳浮腫、慢性疼痛、精神錯乱、認知症、うつ、糖尿病、ダウン症候群、ジストニア、摂食障害、てんかん、線維筋痛症、ハンチントン関連舞踏病、レボドパ誘発性ジスキネジア、躁鬱病、片頭痛、運動障害、多発性硬化症、ナルコレプシー、神経線維腫症1型、神経障害性疼痛、肥満症、疼痛、パラノイア、パーキンソン病、帯状疱疹後神経因性疼痛、精神病性障害、PTEN過誤腫症候群、老年性認知症、睡眠障害、物質関連障害及び単極性うつ病から選択される。
【0195】
更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の部分的阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満の部分的又は全阻害を示す。
【0196】
c.mGlu5活性の阻害
1つの態様では、本発明は、哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性を阻害するために効果的な量で少なくとも1つの開示される化合物又は少なくとも1つの開示される製品と前記哺乳動物を接触させるステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性の阻害方法に関する。
【0197】
1つの態様では、本発明は、式:
【化30】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって、
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化31】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化32】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性の阻害方法に関する。
【0198】
更なる態様では、投与される化合物は、開示される化合物の製造方法の開示される化合物又は製品である。
【0199】
更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0200】
更なる態様では、哺乳動物は、ヒトである。なお更なる態様では、哺乳動物は、投与ステップ前に障害の治療を必要すると診断された。なお更なる態様では、障害の治療は、障害の治療を必要する哺乳動物を特定するステップを更に含む。なお更なる態様では、障害は、代謝型グルタミン酸受容体機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛及びうつから選択される。
【0201】
更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の部分的阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満の部分的又は全阻害を示す。
【0202】
d.mGlu5活性のネガティブアロステリック調節
1つの態様では、本発明は、哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性をネガティブアロステリック調節するために効果的な量で少なくとも1つの開示される化合物又は少なくとも1つの開示される製品と前記哺乳動物を接触させるステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性のネガティブアロステリック調節方法に関する。
【0203】
1つの態様では、本発明は、式:
【化33】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって、
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化34】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化35】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性のネガティブアロステリック調節方法に関する。
【0204】
更なる態様では、投与される化合物は、開示される化合物の製造方法の開示される化合物又は製品である。
【0205】
更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0206】
更なる態様では、哺乳動物は、ヒトである。なお更なる態様では、哺乳動物は、投与ステップ前に障害の治療を必要すると診断された。なお更なる態様では、障害の治療は、障害の治療を必要する哺乳動物を特定するステップを更に含む。なお更なる態様では、障害は、代謝型グルタミン酸受容体機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛及びうつから選択される。
【0207】
e.mGlu5活性の部分的拮抗作用
1つの態様では、本発明は、哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性を部分的に拮抗するために効果的な量で少なくとも1つの開示される化合物又は少なくとも1つの開示される製品と前記哺乳動物を接触させるステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性の部分的拮抗作用のための方法に関する。
【0208】
1つの態様では、本発明は、式:
【化36】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって、
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化37】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化38】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性の部分的拮抗作用のための方法に関する。
【0209】
更なる態様では、投与される化合物は、開示される化合物の製造方法の開示される化合物又は製品である。
【0210】
更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0211】
更なる態様では、哺乳動物は、ヒトである。なお更なる態様では、哺乳動物は、投与ステップ前に障害の治療を必要すると診断された。なお更なる態様では、障害の治療は、障害の治療を必要する哺乳動物を特定するステップを更に含む。なお更なる態様では、障害は、代謝型グルタミン酸受容体機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛及びうつから選択される。
【0212】
f.mGlu5活性の調節
1つの態様では、本発明は、哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性を調節するために効果的な量で少なくとも1つの開示される化合物又は少なくとも1つの開示される製品と前記哺乳動物を接触させるステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性の調節方法に関する。
【0213】
1つの態様では、本発明は、式:
【化39】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって、
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化40】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化41】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、前記哺乳動物の代謝型グルタミン酸受容体活性の調節方法に関する。
【0214】
更なる態様では、投与される化合物は、開示される化合物の製造方法の開示される化合物又は製品である。
【0215】
更なる態様では、調節は、阻害である。なお更なる態様では、調節は、非競合的阻害である。なお更なる態様では、調節は、非競合的拮抗作用である。なお更なる態様では、調節は、ネガティブアロステリック調節である。
【0216】
更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0217】
更なる態様では、哺乳動物は、ヒトである。なお更なる態様では、哺乳動物は、投与ステップ前に障害の治療を必要すると診断された。なお更なる態様では、障害の治療は、障害の治療を必要する哺乳動物を特定するステップを更に含む。なお更なる態様では、障害は、代謝型グルタミン酸受容体機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛及びうつから選択される。
【0218】
g.細胞におけるmGlu5活性の阻害
1つの態様では、本発明は、少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性を阻害するために効果的な量で少なくとも1つの開示される化合物又は少なくとも1つの開示される製品と前記少なくとも1つの細胞を接触させるステップを含む、前記少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性の阻害方法に関する。
【0219】
1つの態様では、本発明は、式:
【化42】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって、
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化43】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化44】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩と少なくとも1つの細胞を接触させるステップを含む、前記少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性の阻害方法に関する。
【0220】
更なる態様では、投与される化合物は、開示される化合物の製造方法の開示される化合物又は製品である。
【0221】
更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0222】
更なる態様では、細胞は、哺乳動物である。なお更なる態様では、細胞は、ヒトである。なお更なる態様では、細胞は、接触ステップ前に哺乳動物から単離された。なお更なる態様では、細胞の接触は、哺乳動物への投与による。なお更なる態様では、少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性の阻害は、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性を低下させる。なお更なる態様では、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性の低下は、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性に関連する障害を治療する。
【0223】
更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、自閉スペクトラム症である。なお更なる態様では、前記自閉スペクトラム症は、自閉症、古典的自閉症、アスペルガー症候群、非定型自閉症と呼ばれることがある特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、脆弱性X症候群、レット症候群及び小児期崩壊性障害から選択される。
【0224】
更なる態様では、障害は、制御されない細胞増殖の疾病である。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖は、がんである。なお更なる態様では、がんは、乳がん、直腸がん、胃がん及び結腸直腸がんから選択される。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖の疾病は、白血病、脳のがん、尿生殖路がん、リンパ系がん、胃がん、喉頭がん、肺がん、膵がん、乳がん及び悪性メラノーマから選択される。
【0225】
1つの態様では、障害は、グルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、前記障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛、うつ、情動障害、加齢関連認知低下、アルツハイマー病、健忘障害、筋萎縮性側索硬化症、不安障害、アンジェルマン症候群、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、双極性障害、脳浮腫、慢性疼痛、精神錯乱、認知症、うつ、糖尿病、ダウン症候群、ジストニア、摂食障害、てんかん、線維筋痛症、ハンチントン関連舞踏病、レボドパ誘発性ジスキネジア、躁鬱病、片頭痛、運動障害、多発性硬化症、ナルコレプシー、神経線維腫症1型、神経障害性疼痛、肥満症、疼痛、パラノイア、パーキンソン病、帯状疱疹後神経因性疼痛、精神病性障害、PTEN過誤腫症候群、老年性認知症、睡眠障害、物質関連障害及び単極性うつ病から選択される。
【0226】
更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の部分的阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満の部分的又は全阻害を示す。
【0227】
h.細胞におけるmGlu5活性の調節
1つの態様では、本発明は、少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性を阻害するために効果的な量で少なくとも1つの開示される化合物又は少なくとも1つの開示される製品と前記少なくとも1つの細胞を接触させるステップを含む、前記少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性の調節方法に関する。
【0228】
1つの態様では、本発明は、式:
【化45】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって、
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化46】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化47】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩と少なくとも1つの細胞を接触させるステップを含む、前記少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性の調節方法に関する。
【0229】
更なる態様では、投与される化合物は、開示される化合物の製造方法の開示される化合物又は製品である。
【0230】
更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0231】
更なる態様では、調節は、阻害である。なお更なる態様では、調節は、非競合的阻害である。なお更なる態様では、調節は、非競合的拮抗作用である。なお更なる態様では、調節は、ネガティブアロステリック調節である。
【0232】
更なる態様では、細胞は、哺乳動物である。なお更なる態様では、細胞は、ヒトである。なお更なる態様では、細胞は、接触ステップ前に哺乳動物から単離された。なお更なる態様では、細胞の接触は、哺乳動物への投与による。なお更なる態様では、少なくとも1つの細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性の阻害は、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性を低下させる。なお更なる態様では、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性の低下は、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性に関連する障害を治療する。
【0233】
2.医薬品製造
1つの態様では少なくとも1つの開示される化合物と薬学的に許容可能なキャリア又は希釈剤との組合せを含む医薬品の製造方法に関する。更なる態様では、投与される化合物は、開示される化合物の製造方法の開示される化合物又は製品である。更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0234】
更なる態様では、前記化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下mGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対するmGlu5反応の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ラットmGlu5を用いてトランスフェクトする。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ヒトmGlR5を用いてトランスフェクトする。
【0235】
更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、自閉スペクトラム症である。なお更なる態様では、前記自閉スペクトラム症は、自閉症、古典的自閉症、アスペルガー症候群、非定型自閉症と呼ばれることがある特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、脆弱性X症候群、レット症候群及び小児期崩壊性障害から選択される。
【0236】
更なる態様では、障害は、制御されない細胞増殖の疾病である。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖は、がんである。なお更なる態様では、がんは、乳がん、直腸がん、胃がん及び結腸直腸がんから選択される。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖の疾病は、白血病、脳のがん、尿生殖路がん、リンパ系がん、胃がん、喉頭がん、肺がん、膵がん、乳がん及び悪性メラノーマから選択される。
【0237】
1つの態様では、障害は、グルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、前記障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛、うつ、情動障害、加齢関連認知低下、アルツハイマー病、健忘障害、筋萎縮性側索硬化症、不安障害、アンジェルマン症候群、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、双極性障害、脳浮腫、慢性疼痛、精神錯乱、認知症、うつ、糖尿病、ダウン症候群、ジストニア、摂食障害、てんかん、線維筋痛症、ハンチントン関連舞踏病、レボドパ誘発性ジスキネジア、躁鬱病、片頭痛、運動障害、多発性硬化症、ナルコレプシー、神経線維腫症1型、神経障害性疼痛、肥満症、疼痛、パラノイア、パーキンソン病、帯状疱疹後神経因性疼痛、精神病性障害、PTEN過誤腫症候群、老年性認知症、睡眠障害、物質関連障害及び単極性うつ病から選択される。
【0238】
更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の部分的阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満の部分的又は全阻害を示す。
【0239】
3.化合物の使用
開示される化合物及び製品の使用も提供する。1つの態様では、使用は、哺乳動物における障害の治療に関する。1つの態様では、使用は、哺乳動物はヒトであることを特徴とする。1つの態様では、使用は、障害がグルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害であることを特徴とする。1つの態様では、使用は、哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体活性のネガティブアロステリック調節に関する。
【0240】
1つの態様では、本発明は、式:
【化48】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって、
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;
Aは、
【化49】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化50】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0241】
更なる態様では、化合物は、開示される方法のいずれかの開示される化合物又は製品である。更なる態様では、代謝型グルタミン酸受容体は、mGlu5である。
【0242】
更なる態様では、前記化合物は、前記化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、前記化合物の存在下mGlu5を用いてトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞におけるグルタメートの非最大濃度に対する反応の低下として、グルタメートに対するmGlu5反応の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ラットmGlu5を用いてトランスフェクトする。なお更なる態様では、ヒト胎児腎細胞を、ヒトmGlu5を用いてトランスフェクトする。
【0243】
更なる態様では、神経障害及び/又は精神障害は、自閉スペクトラム症である。なお更なる態様では、前記自閉スペクトラム症は、自閉症、古典的自閉症、アスペルガー症候群、非定型自閉症と呼ばれることがある特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、脆弱性X症候群、レット症候群及び小児期崩壊性障害から選択される。
【0244】
更なる態様では、障害は、制御されない細胞増殖の疾病である。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖は、がんである。なお更なる態様では、がんは、乳がん、直腸がん、胃がん及び結腸直腸がんから選択される。なお更なる態様では、制御されない細胞増殖の疾病は、白血病、脳のがん、尿生殖路がん、リンパ系がん、胃がん、喉頭がん、肺がん、膵がん、乳がん及び悪性メラノーマから選択される。
【0245】
1つの態様では、障害は、グルタミン酸機能障害に関連する神経障害及び/又は精神障害である。更なる態様では、前記障害は、常習性、不安症、脆弱性X症候群、胃食道逆流症(GERD)、パーキンソン病、疼痛、うつ、情動障害、加齢関連認知低下、アルツハイマー病、健忘障害、筋萎縮性側索硬化症、不安障害、アンジェルマン症候群、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、双極性障害、脳浮腫、慢性疼痛、精神錯乱、認知症、うつ、糖尿病、ダウン症候群、ジストニア、摂食障害、てんかん、線維筋痛症、ハンチントン関連舞踏病、レボドパ誘発性ジスキネジア、躁鬱病、片頭痛、運動障害、多発性硬化症、ナルコレプシー、神経線維腫症1型、神経障害性疼痛、肥満症、疼痛、パラノイア、パーキンソン病、帯状疱疹後神経因性疼痛、精神病性障害、PTEN過誤腫症候群、老年性認知症、睡眠障害、物質関連障害及び単極性うつ病から選択される。
【0246】
更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の部分的阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、mGlu5反応の全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満のネガティブアロステリック調節を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約1×10-7M未満の部分的又は全阻害を示す。なお更なる態様では、前記化合物は、IC50約5×10-8M未満の部分的又は全阻害を示す。
【0247】
4.キット
1つの態様では、本発明は、式:
【化51】
により表される構造を有する少なくとも1つの化合物であって、
前記式中、
各Rは、存在する場合、独立して、H、D、OH、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル又はCNから選択され;
Aは、
【化52】
であり、前記式中:
X
1は、CH、CR
1又はNであり;
X
2は、CH、CR
1又はNであり;
X
3は、CH、CR
1又はNであり;
X
4は、CH、CR
1又はNであり;
X
5は、CH、CR
1又はNであり;
X
6は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
7は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
8は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
9は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
Bは、
【化53】
であり、前記式中:
X
10は、CH、CR
1又はNであり;
X
11は、CH、CR
1又はNであり;
X
12は、CH、CR
1又はNであり;
X
13は、CH、CR
1又はNであり;
X
14は、CH、CR
1又はNであり;
X
15は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
16は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
17は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
18は、CH、CR
1、S、O、NR
1又はNであり;
X
1~X
5の少なくとも1つは、Nであり、X
6~X
9の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり、X
10~X
14の少なくとも1つは、Nであり、X
15~X
18の少なくとも1つは、O、S、NR
1又はNであり;
各R
1は、存在する場合、独立して、H、D、OH、NH
2、NR
3R
4、OR
5、CHF
2、CF
3、ハロゲン、F、Cl、CH
3、アルキル、アルキル-ハロゲン、CD
3、シクロアルキル、CN、メトキシ及びアルコキシから選択され;R
3は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
4は、H、アルキル及びシクロアルキルから選択され;R
5は、H及びアルキルから選択される、化合物又はその薬学的に許容可能な塩;並びに
(a)mGlu5活性を増大させることが分かっている少なくとも1つの薬剤;(b)mGlu5活性を減少させることが分かっている少なくとも1つの薬剤;(c)神経障害及び/若しくは精神障害を治療することが分かっている少なくとも1つの薬剤;又は(d)グルタミン酸機能障害に関連する障害を治療するための説明書を含むキットに関する。
【0248】
更なる態様では、少なくとも1つの化合物及び少なくとも1つの薬剤を合剤にする。更なる態様では、少なくとも1つの化合物及び少なくとも1つの薬剤を一緒に包装する。
【0249】
更なる態様では、存在する化合物は、いずれかの開示される化合物又は開示される製造方法の少なくとも1つの製品であるキットである。
【0250】
更なる態様では、キットは、開示される化合物又は開示される方法の製を含む。
【0251】
キットは、他の化合物と一緒に包装された、合剤にされた及び/又は同時送達された化合物及び/又は製品を含むこともできる。例えば、薬物製造者、薬物再販売業者、医師、配合店又は薬剤師は、開示される化合物及び/又は製品並びに患者に送達するための別の構成要素を含むキットを提供することができる。
【0252】
開示されるキットを、開示される製造方法、開示される使用方法及び/又は開示される組成物と組み合わせて使用することができる。
【0253】
5.非医療用途
mGluの新規治療薬の研究の一部として、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラット及びマウスなどの実験動物におけるmGlu関連活性の増強剤の効果を評価するためのインビトロ及びインビボ試験システムの開発及び標準化の薬理学的ツールとして開示される化合物及び製品の使用も提供する。更なる態様では、本発明は、mGlu5の新規治療薬の研究の一部として、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラット及びマウスなどの実験動物におけるmGlu5関連活性の増強剤の効果を評価するためのインビトロ及びインビボ試験システムの開発及び標準化の薬理学的ツールとして開示される化合物又は製品の使用に関する。
【0254】
G.実験
以下の実験は、当業者に、本明細書にクレームされている化合物、組成物、物品、デバイス及び/又は方法を如何に製造及び評価するかの完全な開示及び説明を提供するために提供されており、単に本発明の例示であることを意図しており、本発明者らがこれらの発明と見做すものの範囲を限定する意図はない。数(例えば、量、温度、その他)に関する精度のために努力が払われてきましたが、いくつかの誤差及び偏差を考慮されるべきである。別段に示されない限り、部は重量部であり、温度は℃又は周囲温度であり、圧は大気又はほぼ大気である。
【0255】
本発明の化合物のいくつかの調製方法を以下の実施例において例証する。出発物質及び必須の中間体は、場合によっては、商業的に入手可能であるか又は文献の手順に従って若しくは本明細書に例証されているように調製することができる。全ての1H NMRスペクトルを、300~500MHzの場の強さにおいて装置の使用により得た。
【0256】
1.一般的スキーム
一般的スキームI
【化54】
一般的スキームIは、本発明の化合物の調製方法を示す。3-ハロゲン化ベンゾニトリル(例えば、Xはハロゲンである)をホウ酸又はホウ酸エステル(B1)と標準的鈴木反応条件下反応することにより中間体A1を得ることができる。加熱(例えば、100℃)下中間体A1及び水性水酸化物(例えば、NaOH)の反応によりカルボン酸A2を得ることができる。中間体A2を、アミド生成条件(例えば、アミン(R
3-NH
2)、POCl
3及びピリジン;又はアミン(R
3-NH
2)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)に付して、化合物A3を得ることができる。
【0257】
一般的スキームII
【化55】
一般的スキームIIは、本発明の化合物の代替の調製方法を示す。3-ハロゲン安息香酸アナログ(例えば、Xはハロゲンである)をホウ酸又はホウ酸エステル(B1)と標準的鈴木反応条件下反応させることにより中間体A4を得ることができる。塩基性加水分解条件下(例えば、NaOH)中間体A4の反応によりカルボン酸A2を得ることができる。
【0258】
一般的スキームIII
【化56】
一般的スキームIIIに示されているように、化合物A5の様な中間体を、標準的鈴木反応条件下3-ブロモ-5-シアノ安息香酸メチル、ホウ酸又はホウ酸エステル(B1)及び加熱(例えば、マイクロ波照射)を用いて調製して中間体A5を得ることができる。
【0259】
一般的スキームIV
【化57】
一般的スキームIVは、本発明の化合物の代替の調製方法を示す。中間体A6(例えば、Xはハロゲンである)を、標準的アミド生成条件下(例えば、アミン(R
3-NH
2)、POCl
3及びピリジン;又はアミン(R
3-NH
2)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)と反応させることにより、中間体A7を得る。A7をホウ酸又はホウ酸エステルA8に変換し、次いで、標準的鈴木反応条件下アナログA3を得ることができる。
【0260】
一般的スキームV
【化58】
あるいは、一般的スキームVに示されているように、A3の様な化合物を、中間体A7(例えば、Xはハロゲンである)とホウ酸又はホウ酸エステル(B1)との間で標準的鈴木反応条件により調製してアナログA3を得ることができる。
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
3.例示的化合物の特徴付け
下表1は、具体的化合物、実験で決定された分子量及び細胞アッセイで決定されたmGlu5活性をリストしている。mGlu5活性を、本明細書に記載されるヒト胎児腎細胞における代謝型グルタミン酸受容体活性アッセイを用いて決定し、ヒト胎児腎細胞を、ラットmGlu5を用いてトランスフェクトした。いくつかの化合物のmGlu5活性データを、これらの場合の標準誤差と共に少なくとも3実験の平均として示す。mGlu5活性に関して誤差が示されていない場合、与えられた値は、1つの実験又は2実験の平均からの結果である。表1中の化合物を、本明細書に示されているものと同じ又は類似の方法により合成した。必須の出発物質は、商業的に入手可能であり、文献に記載されていた又は有機合成の当業者により容易に合成された。
【0267】
以下の略語を本明細書で使用する場合がある:
Ac アセチル
ACN アセトニトリル
aq 水性
atm 大気
Brettphos Pd G3 [(2-ジ-シクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II) メタンスルホネート メタンスルホネート
CDCl3 クロロホルム-d
CD3OD メタノール-d4
セライト(登録商標) 珪藻土
conc. 濃
DCM ジクロロメタン
d 二重線
δ 化学シフト、100万分の1
dd 二重線の二重線
【0268】
ddd 二重線の二重線の二重線
dt 三重線の二重線
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DMSO-d6 ジメチルスルホキシド-d6(重水素化ジメチルスルホキシド)
dppf 1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
EDC 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
ES-MS エレクトロスプレー質量分析
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
eq./equiv 当量
h又はhr 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
【0269】
HRMS 高分解能質量分析
Hz ヘルツ
IPA イソプロピルアルコール
J カップリング定数、ヘルツ
KOAc 酢酸カリウム
LCMS 液体クロマトグラフィー-質量分析
M モル濃度(濃度に関して)
m 多重線
Me メチル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MHz メガヘルツ
min 分
μW マイクロ波
【0270】
NMR 核磁気共鳴
Pd(dppf)Cl2 (1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)ジクロリド
Pd(PPH3)4 テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
ppm パーツ・パー・ミリオン
q 四重線
RP 逆相
r.t./rt/RT 室温
s 一重線
sat. 飽和
soln. 溶液
t 三重線
td 二重線の三重線
TFA トリフルオロ酢酸
【実施例】
【0271】
スキーム1
【化64】
3-メチル-5-(4-メチルピリジン-3-イル)ベンゾニトリル(S1):3-ブロモ-5-メチルベンゾニトリル(230mg、1.02mmol、1当量)、炭酸セシウム(1.00g、3.06mmol、3.0当量)及び4-ピコリン-3-ホウ酸(230mg、2.04mmol、2.0当量)の混合物をマイクロ波バイアルに添加し、次いで、1,4-ジオキサン(5mL)を添加した。次に、Pd(dppf)Cl
2(75mg、0.1mmol、0.10当量)を添加し、バイアルを密封し、120℃で15分間マイクロ波で照射した。反応混合物をセライトによりろ過し、10%MeOH/DCMで洗浄し、濃縮した。粗生成物をTeledyne ISCO Combi-Flashシステム(1%NH
4OH添加した0~5%MeOH/DCM)を用いて精製し、褐色個体を得た。固体を真空ろ過により集め、水で洗浄して241mgの表題化合物(収率99%)を得た。
1H NMR(400MHz,CD
3OD) δ 8.42(d,J=5.2Hz,1H),8.33 (s, 1H), 7.64 (td,J=1.6,0.8Hz,1H), 7.56(s,1H),7.52(s,1H),7.40(dt,J=5.2,0.7Hz,1H),2.48(d,J 0.7Hz,3H)2.31 (s,3H);ES-MS[M+1]
+:209.2。
【0272】
【化65】
3-メチル-5-(4-メチルピリジン-3-イル)安息香酸(S2):中間体S1(212mg、1.02mmol、1.0当量)及び5M水酸化ナトリウム(1.02mL、5.09mmol、5.0当量)の溶液を100℃まで18時間加熱した。2M HClを用いて、pHをpH=4まで調整し、溶媒を真空下濃縮した。固体を10%MeOH/DCMに再溶解し、ろ過して不溶性塩を除去した。ろ液を濃縮して、217mgの表題化合物を褐色固体(収率94%)として得た。生成物を更に精製しないで使用した。
1H NMR(400MHz,CD
3OD) δ 8.41(d,J=5.1Hz,1H),8.34(s,1H),7.92(s,1H),7.79(s,1H),7.43(s,1H),7.41(d,J=5.0Hz,1H),2.48(s,3H),2.33(s,3H);ES-MS[M+1]
+:228.2。
【0273】
【化66】
3-メチル-5-(4-メチルピリジン-3-イル)-N-(4-メチルチアゾール-2-イル)ベンズアミドカルボキサミド(7):ピリジン(0.25mL)中の中間体S2(15mg、0.07mmol、1.0当量)及び2-アミノ-4-メチルチアゾール(15mg、0.14mmol、2.0当量)の混合物を0℃まで冷却し、オキシ塩化リン(V)(15μL、0.16mmol、2.4当量)を滴下した。反応物を撹拌し、30分間で室温までゆっくり温めた。次いで、反応物を0℃まで冷却し、水をゆっくり添加した。溶液を濃縮し、粗生成物をDMSOに溶解し、シリンジろ過し、RP-HPLC(0.05%NH
4OH水溶液中の20~80%MeCN)により精製して3.8mgの表題化合物を黄色油状物(収率18%)として得た。
1H NMR (400MHz,CDCl
3) δ 10.86(s,1H),8.50(d,J=5.1Hz,1H),8.36(s,1H),7.71(td,J=1.8,0.9Hz,1H),7.66(t,J=1.6Hz,1H),7.33(td,J=1.7,0.8Hz,1H),7.20(dt,J=5.1,0.8Hz,1H),6.54(d,J=1.1Hz,1H),2.45(s,3H),2.25(s,3H),2.18(d,J=1.0Hz,3H);ES-MS[M+1]
+:324.2。
【0274】
【化67】
N-(5-フルオロピリジン-2-イル)-3-メチル-5-(4-メチルピリジン-3-イル)ベンズアミド(6):化合物7と同様な方法で合成して6.1mgの表題化合物をオフホワイト固体(収率29%)として得た。ES-MS[M+1]
+:322.2。
【0275】
【化68】
3-メチル-5-(4-メチルピリジン-3-イル)-N-(ピリジン-2-イル)ベンズアミド(5):化合物7と同様な方法で合成して5.1mgの表題化合物を、黄褐色固体(収率24%)を得た。ES-MS[M+1]
+:304.4。
【0276】
【化69】
3-メチル-N-(6-メチルピリジン-2-イル)-5-(4-メチルピリジン-3-イル)ベンズアミド:化合物7と同様な方法で合成して5mgの表題化合物を白色固体(収率22%)として得た。S-MS[M+1]
+:318.4。
【0277】
スキーム2
【化70】
3-(4-メチルピリジン-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(S3):マイクロ波バイアルに、3-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(200mg、0.71mmol、1当量)、4-ピコリン-3-ホウ酸(145.15mg、1.06mmol、1.5当量)、Pd(PPh
3)
4(81.65mg、0.07mmol、0.1当量)、1,4-ジオキサン(10mL)及び2M炭酸ナトリウム溶液(1.77mL、3.53mmol、5当量)を添加した。反応物を窒素でパージし、80℃で8時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、次いで、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。有機相を合わせて、濃縮した。次いで、得られた残渣をMeOH(10mL)で希釈し、硫酸(100μL、1.87mmol、2.6当量)を添加し、反応物を100℃で2時間加熱した。反応物を濃縮し、Teledyne ISCO Combi-Flashシステム(0~50%EtOAC/ヘキサン)を用いて精製して192mgの表題化合物(収率92%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ 8.55(d,J=5.1Hz,1H), δ 8.47(s,1H), δ 8.37(s,1H), δ 8.23(s,1H), δ 7.80(s,1H), δ 7.27(d,J=5.1Hz,1H), δ 4.00(s,3H), δ 2.32(s,3H);ES-MS[M+1]
+:296.4。
【0278】
【化71】
3-(4-メチルピリジン-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸(S4):丸底フラスコに、中間体S3(192mg、0.65mmol、1当量)、1,4-ジオキサン(3mL)及び1M NaOH水溶液(1.3mL、1.30mmol、2当量)を添加した。反応物を室温で4時間撹拌し、その後、反応混合物を2M HCl水溶液を用いてpH5まで中和し、濃縮した。得られた残渣を5%MeOH/DCM溶液に溶解し、ろ過して不溶性塩を除去した。ろ液を濃縮して255mgの表題化合物(収率99%)を得て、これを更に精製しないで先に進めた。ES-MS[M+1]
+:282.4。
【0279】
スキーム3
【化72】
3-シアノ-5-(4-メチルピリジン-3-イル)安息香酸(S5):マイクロ波バイアルに、3-ブロモ-5-シアノ安息香酸(100mg、0.44mmol、1当量)、4-ピコリン-3-ホウ酸(127mg、0.92mmol、2.1当量)、Pd(dppf)Cl
2・DCM(36.22mg、0.44mmol、0.1当量)、1,4-ジオキサン(5mL)及び1M炭酸ナトリウム水溶液(1.33mL、1.33mmol、3当量)を添加した。反応物を120℃で20分間マイクロ波照射した。反応物を室温まで冷却し、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。合わせた有機層を濃縮し、Teledyne ISCO Combi-Flashシステム(0~80%EtOAC/ヘキサン)を用いて精製して80mgの表題化合物(収率76%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6) δ 8.47(d,J=5.0Hz,1H), δ 8.39(s,1H),8.21(t,J=1.5Hz,1H), δ 8.11(t,J=1.6Hz,1H), δ 7.90(t,J=1.7Hz,1H), δ 7.37(d,J=5.1Hz,1H), δ 2.26(s,3H);ES-MS[M+1]
+:239.4。
【0280】
スキーム4
【化73】
3-ブロモ-5-フルオロ-N-(4-メチルチアゾール-2-イル)ベンズアミド(S6):3-ブロモ-5-フルオロ安息香酸(100mg、0.46mmol、1.00当量)をDCM(5mL)に溶解し、次いで、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(131mg、0.68mmol、1.5当量)を添加した。反応物を室温で10分間撹拌し、その後、2-アミノ-4-メチルチアゾール(104mg、0.91mmol、2当量)を添加し、反応混合物を室温で一夜撹拌した。反応物をDCMで希釈し、水(2×)で洗浄した。水性洗浄液を戻してDCMで抽出し、合わせた有機層を乾燥(MgSO
4)し、ろ過し、真空濃縮した。Teledyne ISCO Combi-Flashシステム(0~50%EtOAC/ヘキサン)により精製して130mgの表題化合物を白色固体(収率90%)を得た。
1H NMR(400MHz,CD
3OD) δ 8.09~8.04(m,1H),7.79(ddd,J=9.2,2.2,1.4Hz,1H),7.62(dt,J=8.1,2.2Hz,1H),6.71(q,J=1.0Hz,1H),2.35(d,J=1.0Hz,3H);ES-MS[M]
+及び[M+2]
+:315.2及び137.2。
【0281】
【化74】
3-フルオロ-N-(4-メチルチアゾール-2-イル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアミド(S7):中間体S6(130mg、0.41mmol、1.00当量)、ビス(ピナコラート)ジボロン(157mg、0.62mmol、1.5当量)、酢酸カリウム(121mg、1.24mmol、3当量)及びPd(dppf)Cl
2・DCM(34mg、0.04mmol、0.1当量)及び1,4-ジオキサン(2.5mL)をマイクロ波バイアルに添加した。バイアルを密封し、次いで、真空にし、窒素で再充填した(3×)。混合物を120℃で1時間マイクロ波照射した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル及びDCMで洗浄しながらセライトプラグによりろ過した。ろ液を、Teledyne ISCO Combi-Flashシステム(0~30%EtOAC/ヘキサン)を用いて精製して120mgの表題化合物を白色固体(収率80%)として得た。
1H NMR(400MHz,CD
3OD) δ 8.24~8.18(m,1H),7.85(ddd,J=9.5,2.7,1.7Hz,1H),7.68~7.60(m,1H),6.72(q,J=1.0Hz,1H),2.36(d,J=1.0Hz,3H),1.39(s,12H);ES-MS[M+1]
+:363.2。
【0282】
【化75】
3-フルオロ-5-(4-メチル-3-ピリジル)-N-(4-メチルチアゾール-2-イル)ベンズアミド(3):3-ブロモ-4-ピコリン(15mg、0.09mmol、1当量)、中間体S7(28mg、0.08mmol、0.9当量)、Brettphos Palladacycle G3(8mg、0.01mmol、0.1当量)、炭酸カリウム(37mg、0.26mmol、3当量)及びアセトニトリル:水の9:1混合物(1mL)を圧力バイアルに添加した。バイアルを密封し、真空にし、窒素で再充填した(3×)。混合物を100℃まで1時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、DCMで希釈し、水(2×)で洗浄した。水性洗浄液を戻してDCMで抽出し、合わせた有機層を乾燥(MgSO
4)し、ろ過し、真空濃縮した。物質をDMSO(1mL)に溶解し、RP-HPLC(30×100mmカラム、15~46%ACN/0.1%TFA水溶液)により精製して25mgの表題化合物を白色固体(収率83%)として得た。
1H NMR(400MHz,CD
3OD) δ 8.48~8.42(m,2H),7.91~7.83(m,2H),7.49~7.41(m,2H),6.72(d,J=1.1Hz,1H),2.38(s,3H),2.36(d,J=1.1Hz,3H);ES-MS[M+1]
+:328.4
【0283】
スキーム5
【化76】
ピリジン(5.2mL)中の5-ブロモ-2,3-ジフルオロ-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)ベンズアミド(S8)(300mg、1.27mmol、1.0当量)及び2-アミノ-5-フルオロピリジン(284mg、2.53mmol、2.0当量)の混合物を0℃まで冷却し、オキシ塩化リン(V)(283μL、3.04mmol、2.4当量)を滴下した。反応物を撹拌し、1時間にわたって室温までゆっくり温めた。反応物を0℃まで冷却し、NaHCO
3飽和水溶液をゆっくり添加した。水層をCHCl
3/IPA(3:1)に抽出(3×)し、乾燥(MgSO
4)し、ろ過して濃縮した。粗反応物を、Teledyne ISCO Combi-Flashシステム(0~10%EtOAC/DCM)を用いて精製して167mgの表題化合物(収率40%)を得た。
1H NMR(400MHz,CD
3OD) δ 8.31~8.23(m,2H),7.79~7.61(m,3H);ES-MS[M+1]
+:332.3。
【0284】
【化77】
2,3-ジフルオロ-N-5-(5-フルオロピリジン-2-イル)-5-(2-メチルチアゾール-5-イル)ベンズアミド(35):5-ブロモ-2,3-ジフルオロ-N-5-(5-フルオロ-2-ピリジル)ベンズアミド(15mg、0.05mmol、1.0当量)、炭酸セシウム(45mg、0.14mmol、3.0当量)及び2-メチルチアゾール-5-ホウ酸ピナコールエステル(20mg、0.09mmol、2.0当量)の混合物を槽に添加し、次いで、1,4-ジオキサン(0.5mL)を添加した。次に、Pd(dppf)Cl
2(4mg、0.005mmol、0.10当量)を添加し、混合物を110℃で2時間加熱した。反応混合物をセライトによりろ過し、MeOH/DCMで洗浄し、濃縮した。粗生成物を、RP-HPLC(30×100mmカラム、25~65%ACN/0.1%TFA水溶液)を用いて精製した。生成物を含む画分を、NaHCO
3飽和水溶液で塩基化し、3:1クロロホルム/IPAで抽出した。溶媒を濃縮して、7.3mgの表題化合物を白色固体(収率46%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ 8.94(d,J=12.1Hz,1H),8.39(ddd,J=9.1,4.1,0.6Hz,1H),8.20(d,J=3.0Hz,1H),8.00(dt,J=6.0,2.2Hz,1H),7.83(s,1H),7.57~7.41(m,2H),2.75(s,3H);ES-MS[M+1]
+:350.0。
【0285】
【化78】
2,3-ジフルオロ-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)-5-(5-フルオロピリジン-3-イル)ベンズアミド(34):化合物35と同様な方法で合成して2.4mgの表題化合物を明黄褐色固体(収率15%)として得た。ES-MS[M+1]
+:348.0。
【0286】
【化79】
2,3-ジフルオロ-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)ベンズアミド(32):化合物35と同様な方法で合成して3.9mgの表題化合物を白色固体(収率26%)として得た。ES-MS[M+1]
+:333.4。
【0287】
【化80】
5-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2,3-ジフルオロ-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)ベンズアミド(33):化合物35と同様な方法で合成して6mgの表題化合物を白色固体(収率38%)として得た。S-MS[M+1]
+:347.4。
【0288】
【化81】
2,3-ジフルオロ-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)-5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ベンズアミド(44):化合物35と同様な方法で合成して2.5mgの表題化合物を明黄褐色固体(収率14%)として得た。ES-MS[M+1]
+:401.4。
【0289】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0290】
4.代謝型グルタミン酸受容体活性アッセイ
代謝型グルタミン酸受容体活性、特に、mGlu5活性のネガティブアロステリックモジュレーターとしての本発明による化合物の有用性を、当技術分野において公知の方法により実証することができる。ラット又はヒトmGlu5いずれかを安定に発現するHEK293A細胞を、20μLのアッセイ培地(10%透析FBS、20mM HEPES、100単位/mL ペニシリン/ストレプトマイシン+250ng/mLファンギゾン及び1mMピルビン酸ナトリウムを含むDMEM)中の黒色壁、透明底、ポリ-D-リジン被覆384ウェルプレートに、20K細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、5%CO2の存在下37℃で一夜増殖させた。翌日、培地を除去し、細胞を、DMSO中2.3mM保存液として調製され、10%(重量/体積)プルロン酸F-127と1:1比で混合し、アッセイバッファ(ハンクス平衡塩類溶液、20mM HEPES及び2.5mMプロベネシド)に希釈した2.3μM Fluo-4、AMの20μLと共に、37℃で45分間インキュベートした。染料を除去し、20μLのアッセイバッファを添加し、プレートを室温で5分間インキュベートした。
【0291】
Ca2+流束を、Functional Drug Screening System(FDSS7000、浜松ホトニクス、日本)を用いて測定した。約3秒間の蛍光ベースラインの確立後、本発明の化合物を細胞に添加し、細胞における反応を測定した。2.3分後に、mGlu5受容体アゴニストグルタメートのEC20濃度を細胞に添加し、細胞の反応を1.9分間測定し;アゴニストのEC80濃度を添加し、更に1.7分間測定値を読み取った。全ての試験化合物を、100%DMSO中10mMの濃度まで溶解し希釈した。次いで、化合物をDMSO中1:3を10点濃度反応曲線に段階希釈し、娘プレートに移し、2×保存液のアッセイバッファに更に希釈した。カルシウム蛍光測定を基礎蛍光生データに対する倍数として記録し、次いで、グルタメートに対する最大反応に正規化した。本発明におけるmGlu5受容体のアゴニスト反応の拮抗作用は、化合物の非存在下でのグルタメートに対する反応と比較して、化合物の存在下でのグルタメートのほぼ最大濃度に対する反応の低下として観察された。
【0292】
全時点を含む生データファイルを、分析テンプレートにおけるデータ源として使用した。これを、タブ区切りテキストファイルとしてFDSSにより保存した。各ウェルの初期値で割ったウェル当たりの全360個の値の各測定について静態比率(F/F0)を用いてデータを正規化した。次いで、グルタメートEC20/EC80添加の約3秒前に開始して約90~120秒間継続する時間範囲を用いて、データをピーク振幅(最大-初期最小値)に約分した。これは、細胞カルシウム反応のピーク振幅を捕捉するために充分な時間である。個々の振幅を、各振幅を100により乗算し、次いで、グルタメートECMax治療ウェルから誘導される振幅の平均により前記積を除算することにより%EMaxとして表した。試験化合物のIC50値を、どのパラメータも固定されていない4パラメータロジスティク方程式を用いて試験化合物濃度(モル/L)のlogに対して正規化された値をフィッティングすることにより作成した。試験化合物の各濃度において集められた3つの値の各々を、均等に加重した。
【0293】
化合物がグルタメートEC80添加において濃度依存性減少を示す場合、この化合物をネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)とした。10%未満のGlu Max(すなわち、グルタメートに対する最大反応のパーセンテージとしての化合物の存在下での反応の振幅)において横ばい状態になるCRCを有するNAMに関して、IC50値を報告する。10%を超えるGlu Maxにおいて横ばい状態になるCRCを有するNAMに関して、IC50値を報告し、この化合物を「部分的NAM」とし、%Glu Maxを報告する。EC80反応の減少を示すが、横ばい状態に達しないNAMに関して、1つの濃度(30μM)におけるGlu Maxの平均を決定(%Glu Max)し、報告し、IC50値を「>10,000nM」として報告する。アッセイにおいて試験された化合物の最高濃度は30μMであるので、測定可能な活性を有しない化合物を「>30,000nM」とする。例示的データを、上表1及び2に示す。
【0294】
本発明において、本発明の範囲又は趣旨に逸脱することなく様々な変更及び変化形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。本発明の他の実施形態は、本明細書に開示される本発明の明細書及び実践の検討から当業者には明らかになる。明細書及び実施例は単なる例示として見做され、本発明の真の範囲及び趣旨は以下の特許し得級の範囲により示されていることを意図する。
【国際調査報告】