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特表2024-534385表面改質酸化ケイ素粒子を含む電極材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】表面改質酸化ケイ素粒子を含む電極材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20240912BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240912BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240912BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/13
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/133
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M10/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516563
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 US2022041856
(87)【国際公開番号】W WO2023043603
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/244,357
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520038976
【氏名又は名称】ナノグラフ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ソンベク
(72)【発明者】
【氏名】ハイナー,キャリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヒックス,キャスリン
(72)【発明者】
【氏名】キム,イン
(72)【発明者】
【氏名】ナレン,ネヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト,アーロン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ11
5H029AK11
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM12
5H029EJ03
5H029EJ04
5H029EJ05
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ06
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA14
5H050BA16
5H050CA17
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB29
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA11
5H050EA12
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050FA17
5H050FA18
5H050FA20
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
リチウムイオン二次バッテリ用の活物質は、SiOまたはM-SiO材料[式中、Mは、Al、Cu、Fe、K、Li、Mg、Na、Ni、Sn、Ti、Zn、Zr、またはこれらの任意の組合せから選択される]を含有するコア粒子と、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、またはビスマス(Bi)から選択される少なくとも1種の元素を含み、コア粒子上にコーティングされている無定形13族または15族材料(「G13/G15材料」)とを含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次バッテリ用の活物質であって、
SiO材料またはM-SiO材料[式中、0<x<1.2であり、Mは、Al、Ca、Cu、Fe、K、Li、Mg、Na、Ni、Sn、Ti、Zn、Zr、またはこれらの任意の組合せから選択される]を含むコア粒子と、
ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、またはビスマス(Bi)から選択される少なくとも1種の元素を含み、コア粒子上にコーティングされている無定形13族または15族材料(「G13/G15材料」)と
を含む、活物質。
【請求項2】
各活物質粒子がシェルをさらに含み、前記シェルが、前記コア粒子をカプセル化し、
1330cm-1と1360cm-1の間の波数でピーク強度(I)を有するDバンド、
1580cm-1と1600cm-1の間の波数でピーク強度(I)を有するGバンド、および
2650cm-1と2750cm-1の間の波数でピーク強度(I2D)を有する2Dバンドを有し、
/I比率が、0超から約1.1までの範囲にあり、
2D/I比率が、約0.4から約2までの範囲にある
ラマンスペクトルを有する乱層炭素を含む、請求項1に記載の活物質。
【請求項3】
前記G13/G15材料と前記コア粒子の間に配置された炭素層であり、熱分解炭素、活性炭、またはカーボンブラックを含む炭素層をさらに含む、請求項1に記載の活物質。
【請求項4】
前記G13/G15材料が、前記コア粒子の表面の少なくとも60%を覆う、請求項3に記載の活物質。
【請求項5】
前記G13/G15材料の約0.1原子%から約5原子%までがコア粒子中に拡散され、前記G13/G15材料の約95原子%から約99原子%までがコア粒子の表面に残る、請求項1に記載の活物質。
【請求項6】
前記G13/G15材料が、少なくとも50原子%無定形であり、活物質が、0.5原子%未満の炭化物材料を含む、請求項1に記載の活物質。
【請求項7】
前記G13/G15材料が、酸化ホウ素、ホウ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウケイ酸リチウム、リン酸リチウム、リン酸ケイ酸塩、酸化リン、リン酸ケイ酸リチウム、またはこれらの組合せを含む、請求項6に記載の活物質。
【請求項8】
活物質の総重量に対して、
約90重量%から約99重量%までの前記コア粒子と、
約0.1重量%から約10重量%までの前記G13/G15材料と、
前記G13/G15材料と前記コア粒子の間に配置された0から約5重量%までの炭素材料と、
コア粒子をカプセル化する約0重量%から約5重量%までのグラフェン材料と、
0から約3重量%までの導電性添加剤と
を含む、請求項1に記載の活物質。
【請求項9】
前記活物質の総重量に対して、
約0.1重量%から約5重量%までの前記G13/G15材料と、
約95重量%から約99.9重量%までの前記コア粒子と
を含む、請求項8に記載の活物質。
【請求項10】
前記コア粒子が、約500ナノメートルから約20ミクロンまでの範囲の平均粒径を有し、
前記G13/G15材料が、約0.5nmから約500nmまでの範囲の厚さでコーティングされている、請求項1に記載の活物質。
【請求項11】
前記コア粒子が、M-SiOを含み、
Mが、Liを含み、
前記M-SiOが、結晶または無定形ケイ素領域、リチウム化ケイ素種領域、およびSiO[式中、yは0.8から1.2までの範囲にある]を含む酸化ケイ素領域の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の活物質。
【請求項12】
前記G13/G15材料が、酸化ホウ素、ホウ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウケイ酸リチウム、またはこれらの組合せを含み、
前記M-SiOが、LiSi、LiSiO、LiSiO、またはこれらの組合せを含むリチウム化ケイ素種領域を含む、請求項11に記載の活物質。
【請求項13】
前記G13/G15材料が、リン酸リチウム、リン酸ケイ酸塩、酸化リン、リン酸ケイ酸リチウム、またはこれらの組合せを含み、
前記M-SiOが、LiSi、LiSiO、LiSiO、またはこれらの組合せを含むリチウム化ケイ素種領域を含む、請求項11に記載の活物質。
【請求項14】
前記コア粒子が、結晶または無定形ケイ素領域、およびSiO[式中、yは0.8から1.2までの範囲にある]を含む酸化ケイ素領域のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の活物質。
【請求項15】
請求項1に記載の活物質およびバインダーを含む電極材料を含むアノードと、
セパレータと、
カソードと、
前記アノードとカソードとの間に配置された電解質と
を含む、リチウムイオン二次バッテリ。
【請求項16】
前記電極材料が、活物質の総重量に対して、
約0.3重量%から約30重量%までの前記バインダーと、
約0.01重量%から約20重量%までの導電性添加剤と、
約0重量%から約97重量%までのグラファイト粒子と、
約3重量%から約100重量%までの活物質と
を含む、請求項15に記載のリチウムイオン二次バッテリ。
【請求項17】
前記活物質が、
約50重量%から約95重量%までの前記グラファイト粒子、および
約5重量%から約50重量%までの活物質粒子
を含む、請求項15に記載のリチウムイオン二次バッテリ。
【請求項18】
前記バインダーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロースNa(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(LiPAA)、ポリイミド(PI)またはこれらの組合せを含む、請求項15に記載のリチウムイオン二次バッテリ。
【請求項19】
固体アノード、固体カソード、および固体電解質を含む固体リチウムバッテリである、請求項15に記載のリチウムイオン二次バッテリ。
【請求項20】
リチウムイオン二次バッテリ用の活物質を形成する方法であって、
前記コア粒子を前駆体材料でコーティングするように、約1重量%から約10重量%までの、ホウ素またはリンのうち少なくとも1種を含む前駆体材料を、約90重量%から約99重量%までのSiOまたはM-SiO材料コア粒子[式中、Mは、Al、Cu、Fe、K、Li、Mg、Na、Ni、Sn、Ti、Zn、Zr、またはこれらの任意の組合せから選択される]と混合するステップと、
前記コア粒子およびホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、またはビスマス(Bi)から選択される少なくとも1種の元素を含み、コア粒子上にコーティングされている無定形13族または15族材料(「G13/G15材料」)を含む活物質粒子を形成するように、コーティングされたコア粒子を不活性雰囲気中で焼結するステップと
を含む、方法。
【請求項21】
前記混合するステップが、低せん断混合プロセスを使用することを含み、
前記G13/G15材料が、酸化ホウ素、ホウ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウケイ酸リチウム、リン酸リチウム、リン酸ケイ酸塩、酸化リン、リン酸ケイ酸リチウム、またはこれらの組合せを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
混合物を形成するように、活物質粒子を溶媒および炭素前駆体材料と混合するステップと、
炭素系材料を含むシェル内に活物質粒子をカプセル化するように、混合物を蒸発させるステップと
をさらに含み、
前記焼結するステップが、前記炭素前駆体材料を熱分解することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
リチウムイオン二次バッテリ用の活物質であって、
SiO材料またはM-SiOx材料[式中、0<x<1.2であり、Mは、Al、Ca、Cu、Fe、K、Li、Mg、Na、Ni、Sn、Ti、Zn、Zr、またはこれらの任意の組合せから選択される]を含むコア粒子と、
ホウ素またはリンのうちの少なくとも1種(「B/P材料」)を含み、前記コア粒子上にコーティングされている無定形材料と
を含む、活物質。
【請求項24】
前記B/P材料が、酸化ホウ素、ホウ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウケイ酸リチウム、リン酸リチウム、リン酸ケイ酸塩、酸化リン、リン酸ケイ酸リチウム、またはこれらの組合せを含む、請求項23に記載の活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、表面改質酸化ケイ素粒子を含む電極材料、特に、電極材料を含むアノード、およびアノードを含むリチウムイオンバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム(Li)イオン電気化学電池は、典型的には、高いエネルギー密度、高い電力密度、および高いサイクル安定性を可能にする材料を必要とする。Liイオン電池は、一般には、家庭用電化製品、ウェアラブルコンピューティングデバイス、軍用モバイル機器、衛星通信、宇宙船デバイス、および電気自動車を含む様々な用途で使用されており、特に、低排出電気自動車、再生可能発電所、および定置型電気グリッドなど、大規模なエネルギー用途での使用に一般的である。さらに、リチウムイオン電池は、新世代のワイヤレスおよびポータブル通信の用途の最前線にある。これらの用途のいずれかの電源として機能するバッテリを構成するために、1つ以上のリチウムイオン電池が使用され得る。しかしながら、より高いエネルギーを必要とする用途の数が爆発的に増加していることから、さらにより高いエネルギー密度、より高い電力密度、より高レートの充放電能力、およびより長いサイクル寿命のリチウムイオン電池の研究が加速されている。さらに、リチウムイオン技術の採用の増加とともに、用途が、より高い電流の必要量、より長い作動時間、より広くより高い電力範囲、およびより小さな形態因子に移行していることから、今日のエネルギー密度および電力密度を拡張する必要性がますます高まっている。
【0003】
ケイ素などのアノード活物質は、グラファイトの7倍(3200mAh/gまで)を超え得るそれらの高いリチウム貯蔵容量のため、現在のグラファイト系アノードの望ましい代替物である。しかしながら、リチウム化の際の合金粒子の体積膨張が大きいため、これらのアノード材料は、典型的には、機械的応力、低いクーロン効率および電気的切断のために、非常に低いサイクル寿命を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改良された酸化ケイ素活物質を含む、電気化学電池で使用するための高度なアノード材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、リチウムイオン二次バッテリ用の活物質は、SiOまたはM-SiO[式中、0<x<1.2であり、Mは、Al、Ca、Cu、Fe、K、Li、Mg、Na、Ni、Sn、Ti、Zn、Zr、またはこれらの任意の組合せから選択される]を含有するコア粒子と、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、またはビスマス(Bi)から選択される少なくとも1種のコア粒子上の元素、およびコア粒子中に拡散しているホウ素またはリンのうちの少なくとも1種を含む無定形G13/G15材料のコーティングとを含む。
【0006】
一実施形態では、G13/15材料、例えば、ホウ素またはリンのうちの少なくとも1種は、コア粒子の表面領域のみに最大約20nmの深さまで拡散している。別の実施形態では、リチウムイオン二次バッテリ用の電極材料は、活物質およびバインダーを含む。別の実施形態では、リチウムイオン二次バッテリは、カソード電極と、電解質と、約15重量%から約25重量%のバインダー、約2重量%から約7重量%の導電性添加剤、及び約70重量%から約80重量%の活物質を含む電極材料を含むアノード電極とを含む。
【0007】
別の実施形態では、リチウムイオン二次バッテリ用の活物質を形成する方法は、コア粒子を前駆体材料でコーティングするように、約1重量%から約7重量%までの、ホウ素またはリンのうち少なくとも1種を含む前駆体材料を、約90重量%から約95重量%までのSiOまたはM-SiOコア粒子[式中、0<x<1.2であり、Mは、Li、Na、Mg、Cu、Ni、Zn、Fe、またはこれらの任意の組合せから選択される]と混合するステップと、コア粒子と、コア粒子上の無定形G13/G15材料のコーティングとを含む活物質粒子を形成し、前駆体材料のホウ素またはリンのうち少なくとも1種をコア粒子中に拡散させるように、コーティングされたコア粒子を不活性雰囲気中で焼結するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本開示の様々な実施形態による、活物質粒子100の断面図である。
図1B】本開示の様々な実施形態による、改質された活物質粒子100Aを示す断面図である。
図1C】本開示の様々な実施形態による、複合活物質粒子を示す断面図である。
図1D】本開示の様々な実施形態による、複合活物質粒子を示す断面図である。
図1E】本開示の様々な実施形態による、コア粒子の断面図である。
図1F】本開示の様々な実施形態による、コア粒子の断面図である。
図2A-2C】グラファイトおよび様々なグラフェン系材料のラマンスペクトルを示す。
図3】典型的な炭素材料と低欠陥乱層炭素とのラマンスペクトルI/I比率を比較する棒グラフである。
図4A-4C】無定形炭素、還元型酸化グラフェン(rGO)、および低欠陥乱層炭素によってそれぞれカプセル化されたSiOコア粒子を含む電極活物質のラマンスペクトルを示す。
図5】アノード容量保持率を、例示的半電池および比較用半電池のサイクル数の関数として示すグラフである。
図6】例示的活物質および比較用活物質のpHを、時間の関数として示すグラフである。
図7A】対照活物質および結晶性Li材料と比較した、例示的活物質のX線回折(XRD)結果を示すグラフである。
図7B】例示的活物質および結晶性BC材料のXRDデータを示すグラフである。
図8A】75:5:20の重量比で例示的活物質、カーボンブラック、およびPAAバインダーを含むアノードを含むハーフセルの容量保持率、ならびに75:5:20の重量比でSiナノ粒子およびCSS、カーボンブラック、およびPAAバインダーを含む比較用活物質を含むアノードを含む比較用ハーフセルの容量保持率を示すグラフである。
図8B】例示的活物質および比較用活物質のXRDの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
様々な実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。可能な限り、図面全体で同じ参照番号を使用して、同じまたは類似した部分を指す。特定の例および実装形態への言及は、例示を目的とするものであり、本発明または特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0010】
ある要素または層が、別の要素もしくは層「上」にある、またはこれに「接続」されていると称される場合、この要素または層が、他の要素もしくは層上に直接あり得るか、またはこれに直接「接続」され得る、あるいは介在する要素または層が存在し得ると理解されるだろう。対照的に、ある要素が、別の要素もしくは層「上に直接」ある、またはこれに「直接接続」されていると称される場合、介在する要素または層は存在しない。本開示の目的について、「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」とは、Xのみ、Yのみ、Zのみ、またはX、Y、およびZの2つ以上の項目の任意の組合せ(例えば、XYZ、XYY、YZ、ZZ)として解釈され得ると理解されるだろう。
【0011】
値の範囲の記載について、文脈から明らかにそうでないと判断されない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間の各中間値、ならびに指定された範囲内のその他の任意の指定値または中間値が、本発明に包含されると理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、より小さな範囲内に独立的に含まれていてもよく、また、指定された範囲内の任意の特に排除された限界値に従って、本発明にも包含される。指定された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界値の一方または両方を排除する範囲もまた、本発明に含まれる。「約」という用語が、例えば、+/-5%から10%のわずかな測定誤差を指し得ることも理解されるだろう。
【0012】
「その後」、「次いで」、「次に」などの単語は、必ずしもステップの順序を限定することを意図したものではなく、これらの単語は、方法の説明を通して読者を導くために使用され得る。さらに、例えば、冠詞「a」、「an」、または「the」を使用した単数形での請求項要素への言及は、要素を単数形に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
「電極材料」とは、リチウムイオン充電式バッテリなどの電気化学電池内で電極として使用するために構成することができる材料と定義される。「電極」とは、電気化学電池のアノードまたはカソードのいずれかと定義される。「複合電極材料」はまた、粒子、フレーク、球体、小板、シート、チューブ、繊維、またはこれらの組合せのうちの1つと組み合わされ、導電性材料である活物質粒子を含むと定義される。粒子、フレーク、球体、小板、シート、チューブ、繊維、またはこれらの組合せはさらに、平らな、潰れた、皺の寄った、層状の、織られた、編組された、またはこれらの組合せのうちの1つであり得る。
【0014】
導電性材料は、導電性炭素系材料、導電性ポリマー、グラファイト、金属粉末、ニッケル、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。導電性炭素系材料は、グラファイト、グラフェン、ダイヤモンド、熱分解グラファイト、カーボンブラック、低欠陥乱層炭素、フラーレン、他の炭素質材料またはこれらの組合せのうちの1つをさらに含み得る。本明細書では、他の炭素質材料には、熱分解炭素材料が含まれ得る。熱分解炭素は、炭素質前駆体材料、例えば、ピッチまたはタールなどの炭化水素類;クエン酸;スクロース、グルコース、またはキトサンなどの多糖類;ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリドーパミン(PDA)、またはポリアクリロニトリル(PAN)などのポリマー;これらの組合せなどに由来する可能性がある。「電極材料合剤」とは、材料粒子(電気化学的に活性で導電性の複合材料またはこれらの組合せのいずれか)、バインダー(複数可)、非架橋および/または架橋ポリマー(複数可)などの材料の組合せと定義され、これらは、電気化学電池の電極の形成において使用するために一緒に混合される。「電気化学的活性材料」、「電極活物質」、または「活物質」は、本明細書では、電位を貯蔵および放出するために電解質中のイオンなどのイオンを挿入および放出する材料と定義される。さらに、「挿入および放出」という用語は、インターカレートおよびデインターカレートまたはリチウム化および脱リチウム化するイオンとして理解され得る。したがって、イオンの挿入および放出のプロセスは、インターカレーションおよびデインターカレーションまたはリチウム化および脱リチウム化であるとも理解される。したがって、「活物質」または「電気化学的活性材料」または「活物質粒子」とは、イオンのインターカレーションおよびデインターカレーションまたはリチウムのリチウム化および脱リチウム化を繰り返すことができる材料または粒子と定義される。
【0015】
本明細書で定義される場合、二次電気化学電池とは、充電式の電気化学電池またはバッテリである。「容量」は、本明細書では、バッテリ内に含有される活物質の質量によって決定される、バッテリによって蓄積される電荷の尺度と定義され、定格電圧でバッテリから抽出可能なアンペア時(Ah)の最大エネルギー量を表す。容量は、以下の方程式によって定義することもできる:容量=エネルギー/電圧または電流(A)×時間(h)。「エネルギー」は、以下の方程式で数学的に定義される:エネルギー=容量(Ah)×電圧(V)。「比容量」は、本明細書では、活性電極材料の単位質量または単位体積あたりの指定された時間で送達可能な電荷の量と定義される。比容量は、重量単位、例えば(Ah)/g、または体積単位、例えば(Ah)/ccで測定され得る。比容量は、以下の数式によって定義される:比容量(Ah/kg)=容量(Ah)/質量(kg)。「レート能力」とは、指定された期間内に一定量のエネルギーを受容または送達する電気化学電池の能力である。あるいは、「レート能力」とは、バッテリが単位時間あたりに提供することができる最大の連続またはパルスエネルギーである。
【0016】
「Cレート」は、本明細書では、バッテリがその最大公称容量に対して放電される際の速度の尺度と定義される。例えば、1Cの電流レートは、放電電流が1時間でバッテリ全体を放電することを意味し、C/2の電流レートは、2時間で電池を完全に放電し、2Cレートは、0.5時間で電池を完全に放電する。「電力」は、ワット(W)で測定されるエネルギー伝達の時間率と定義される。電力は、バッテリまたは電池にわたる電圧(V)とバッテリまたはセルを流れる電流(A)との積である。「Cレート」は、数学的には、Cレート(逆時間)=電流(A)/容量(Ah)またはCレート(逆時間)=1/放電時間(h)と定義される。電力は、以下の数式によって定義される:電力(W)=エネルギー(Wh)/時間(h)または電力(W)=電流(A)×電圧(V)。クーロン効率とは、電気化学電池内で電荷が移動する際の効率である。クーロン効率とは、バッテリによる電荷の出力と電荷の入力との比率である。
【0017】
商業的および学術的環境の両方での多大な開発は、合金粒子の総体積膨潤および関連する電気化学的損失を最小限に抑えるか、またはそれらに適応する系の設計に焦点を合わせてきた。これは、典型的には、2つの方面でアプローチされてきた。粒子レベルでは、粒子の破断および電気的切断を防ぐために、膨潤を小さな領域にとどめる粒子構造を設計し、電極レベルでは、Liイオン電池の充放電動作を繰り返す間に、機械的および電子的完全性を維持しながら、リチウム貯蔵材料の体積膨潤に適応できるポリマーマトリックスおよび導電性ネットワークを設計している。
【0018】
ケイ素などのアノード合金活物質のサイクル寿命を安定化させるための評判良い技術は、電子伝導表面をもたらし、電極粒子ネットワークにわたる電子伝導全体を促進するために、様々な炭素材料による混合、カプセル化または他の組込みを介するものである。これらは、CVD無定形炭素コーティング、グラフェンラッピング、ならびにグラファイト、導電性炭素、およびカーボンナノ小板との物理的混合を含む。しかしながら、活物質は、その剛性および長距離秩序の欠如のために、依然として膨潤する可能性があり、粒子が依然として孤立するようになっていることによって、貯蔵容量の損失およびトラップされたリチウムにつながる可能性がある。
【0019】
本開示の様々な実施形態は、酸化ケイ素粒子と、コア粒子上にコーティングされており、コア粒子中に拡散しているホウ素またはリン(「B/P材料」)のうちの少なくとも1種を含み、アノード材料のサイクル寿命安定性を高める無定形材料とを含む、Liイオンバッテリ用アノード材料を提供する。
【0020】
酸化ケイ素材料
ケイ素は、電気化学電池の電極内に組み込まれると、電池容量を大幅に増加させ得る。ケイ素および酸化ケイ素は、多くの場合、グラファイト、グラフェン、または他の炭素系活物質を含む電極内に組み込まれる。炭素系材料およびケイ素を含む電極の例は、Kung等の米国特許第8,551,650号、第8,778,538号、および第9,728,773号、ならびにHuang等の米国特許第10,135,059号および第10,135,063号に記載されており、これらの内容はすべて、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。
【0021】
本明細書では、「SiO材料」は、概してケイ素および酸素含有材料を指し得る。SiO材料は、理論上のエネルギー密度および電力密度が高いため、リチウムイオンバッテリのアノード電極での使用に興味深い。しかしながら、現在の市販のSiO材料、例えば、酸化ケイ素(例えば、SiO、式中、xは0.8から1.2まで、例えば、0.9から1.1までの範囲にある)の利用は、低い第1サイクル効率、および高い不可逆性を有するために制限されてきた。この低い第1サイクル効率は、酸化ケイ素マトリックスとの高い不可逆的なLi反応によるものである。
【0022】
SiO材料との不可逆的なLi反応を減少させるために、様々な実施形態が、金属化(例えば、金属ドープ)酸化ケイ素材料(M-SiO)を含む。本明細書では、M-SiO材料は、例えばリチウム含有前駆体および/またはマグネシウム含有前駆体などの金属含有前駆体と直接反応して、バッテリで活物質として利用される前、ならびに/または充電および放電反応を受ける前に、金属化酸化ケイ素相を形成する活物質を指す。換言すれば、金属化金属は活物質中に残り、バッテリの充電および放電中にインターカレートしないか、またはデインターカレートしない。いくつかの実施形態では、バッテリは、固体アノード、固体カソード、および固体電解質を含む固体リチウムイオンバッテリなどのリチウムイオン二次バッテリであってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、実施形態の酸化ケイ素材料には、Al、Ca、Cu、Fe、K、Li、Mg、Na、Ni、Sn、Ti、Zn、Zr、またはこれらの任意の組合せなどの金属を含むように金属化された(すなわち、これらでドープされた)M-SiOが含まれ得る。好ましくは、M-SiO材料には、リチウムドープ(すなわち、リチウム金属化)SiO(Li-SiO)材料および/またはMgドープ(すなわち、Mg金属化)SiO(Mg-SiO)材料が含まれ得る。
【0024】
M-SiO活物質を含む電極材料は、金属化されていないSiO材料と比較して、増加した第1サイクル効率(FCE)をもたらすことが見出された。残念ながら、いくつかのM-SiO材料は、粒子の破断、深刻な電気的切断、および急速な容量損失の問題があることが見出されており、多くの場合、20サイクル以内に90%超の容量が低下する。
【0025】
M-SiO材料を炭素および/または他の材料でコーティングする、および/またはM-SiO材料をグラファイトとブレンドすると、活物質の電気的切断および容量損失がわずかに減少し、50%を超える容量低下が約50サイクルまでに遅延することが見出されているが、商業用途には依然として非常に不十分なサイクル安定性である。全体として、現在のM-SiO材料は、商業化に十分な電気的安定性を示していない。
【0026】
さらに、Li-SiO材料などの従来の多くのM-SiO材料[式中、xは0.8から1.2まで、例えば0.9から1.1までの範囲にある]は、化学的に安定ではない。LiCO、LiOH、LiHCOなどの不純物が、合成後のLi-SiOアノード材料の表面に見られる場合がある。表面不純物は、リチウム源前駆体と水酸化物前駆体との焼結中の未反応リチウム、水分とのイオン交換、および保管中のCOとのさらなる反応など、様々な発生源に由来する可能性がある。これらの不純物は、電極コーティングに必要なスラリーのゲル化、Liイオン電池の保管中のガス発生、サイクル寿命の短縮などの問題を引き起こす可能性がある。さらに、活性Siナノ粒子およびSiO型の材料は、高pH環境で使用される場合安定ではないため、使用できる電極またはスラリーコーティング手順の一部が制限される。特に高いpHは、水にさらされた場合、SiO材料のガラスマトリックスにおけるケイ酸塩種の溶解を促進する可能性がある。従来のCVDカーボンコーティングでは、この問題を防ぐことはできない。
【0027】
Li-SiO材料の高いpHは、ニッケル含有量の高いカソード材料を含むリチウムイオン電池で使用する場合に、特に懸念される可能性がある。ニッケル含有量の高い正極材料は通常、保管中の表面不純物の形成を最小限に抑えるために乾燥室で処理され、かつ合成後に表面不純物を除去するために多くの場合、「仕上げ」プロセスが使用される。
【0028】
したがって、サイクル寿命の増加および高いpH安定性の向上を実現する改善されたM-SiO材料が必要とされている。様々な実施形態によれば、酸化ケイ素活物質は、SiO材料を安定化できる無機表面改質、コーティングおよび/またはドーパントを含む。
【0029】
図1Aは、本開示の様々な実施形態による、活物質粒子100の断面図である。図1Aを参照すると、様々な実施形態では、活物質100は、コア粒子102と、コア粒子102の使用可能なサイクル寿命を増加するように構成された化学安定性構造体(CSS)110とを含み得る。コア粒子102は、金属化ケイ素種およびケイ素(例えば、結晶シリコンおよび/または無定形ケイ素)を含むM-SiO材料を含み得る。金属化ケイ素種は、金属化ケイ化物および金属化ケイ酸塩を含み得る。いくつかの実施形態では、M-SiO材料はまた、酸化ケイ素(SiO[式中、xは、0.8から1.2まで、例えば、0.9から1.1までの範囲にある])も含み得る。様々な実施形態では、M-SiO材料は、リチウム化ケイ素種を含み得る。本明細書では、「リチウム化ケイ素種」は、ケイ化リチウム(LiSi、0<x<4.4)、ならびに/または1つ以上のケイ酸リチウム(LiSi、LiSiO、および/またはLiSiOなど)を含み得る。
【0030】
活物質粒子100は、約500nmから約20μmまで、例えば、約1μmから約20μmまで、約1μmから約10μmまで、約3μmから約7μmまでの範囲、または約5μmの平均粒径を有し得る。活物質粒子100は、約0.5m/gから約30m/gまで、例えば、約1m/gから約20m/gまでの範囲にある表面積を有してもよく、それには約1.5m/gから約15m/gまでが含まれる。
【0031】
化学安定性構造体
様々な実施形態では、CSS110は、電気化学電池のサイクル中に、コア粒子102に予期せぬ化学安定性を提供する可能性がある。電気化学電池の使用可能なサイクル寿命は、初期容量(すなわち1サイクル容量)の少なくとも80%の容量を維持しながら、電池がサイクルできるサイクル数(サイクルn)として定義される。
【0032】
CSS110は、13族(例えば、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、およびタリウム(Tl))から選択される1種以上の元素、ならびに/または15族(例えば、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、およびビスマス(Bi))から選択される1種以上の元素を含む材料を含み得、本明細書では「G13/G15材料」と称される場合がある。いくつかの実施形態では、G13/G15材料は、本明細書では「B/P材料」と称される場合があるホウ素および/またはリン含有材料を含み得る。例えば、B/P材料には、ホウ素化合物、例えば、酸化ホウ素(例えば、三酸化ホウ素、B)およびホウ酸塩(例えば、ホウ酸リチウム)、ホウケイ酸塩、および/またはホウケイ酸リチウム、ならびに/またはリン酸塩化合物、例えば、リン酸リチウム、リン酸ケイ酸塩、酸化リン、および/またはリン酸ケイ酸リチウムが含まれ得る。例えば、好適なホウ素化合物としては、三酸化ホウ素(B)、メタホウ酸リチウム(LiBO)、四ホウ酸リチウム(Li)、ホウ酸三リチウム(LiBO)、ホウケイ酸リチウム(B-SiO-LiSi、B-SiO-LiO、B-SiO-LiSiO、B-SiO-LiSiO、またはB-SiO-LiSi)、ホウケイ酸塩(B-SiO)、ならびに/またはホウケイ酸塩とLiSiO、LiSiO、および/またはLiSiとの組合せが挙げられる。好適なリン化合物としては、リン酸塩(P)、リン酸リチウム(LiPO)、ケイ酸リチウム-リン酸リチウム(xLiSiO-(1-x)LiPO)、xLiSiO-(1-x)LiPO、xLiSi-(1-x)LiPO、ホウ酸リチウムアルミニウム、ホウケイ酸リチウム、リンケイ酸リチウム、これらの組合せなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、CSS110は、ホウケイ酸リチウムアルミニウム、ホウケイ酸リチウムジルコニウム、ホウケイ酸ニオブ酸リチウム、これらの組合せなどを含み得る。
【0033】
しかしながら、他のホウ素および/またはリン化合物も本開示の範囲内に含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、CSS110は、元素周期表の1族元素(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)、2族元素(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba)、および/または4族元素(例えば、Ti、Zr、Hf、Rf)をまた含有するG13/G15材料を含み得る。例えば、G13/G15材料には、ホウケイ酸アルミニウム、ホウケイ酸リチウムジルコニウム、ホウケイ酸ニオブ酸リチウムなどが含まれ得る。他の実施形態では、CSS110は、1族元素(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)および/または2族元素(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba)をまた含み得る13族(例えば、B、Al、Ga、In、Ti)化合物を含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、CSS110の形成中に、G13/G15材料がコア粒子の自然酸化物層と反応する可能性がある。例えば、G13/G15材料は、B、xLiO-yB、xSiO-yB、および/またはxLiO-ySiO-zB(0<x≦2、0<y≦3、0<z≦3)を含み得る。CSS110は、無定形材料を含み得るか、それらからなるか、または本質的にそれらからなり得る。いくつかの実施形態では、CSS110は、結晶種および/もしくは相を含まないか、または本質的に含まない場合がある。例えば、CSS110は、5重量%未満(例えば0~5重量%)、例えば3重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、または0.25重量%未満の結晶性G13/G15材料を含み得る。様々な実施形態では、CSS110および/またはG13/G15材料は、活物質粒子100の総重量の約0.1重量%から約10重量%まで、例えば、約1重量%から約4重量%まで、約1.25重量%から約2.5重量%まで、または約1.5重量%から約2.0重量%までを構成してもよく、コア粒子102の酸化ケイ素材料は、活物質粒子100の総重量の約95重量%から約99.9重量%まで、例えば、約97.5重量%から約99重量%まで、または約98重量%から約98.5重量%までを構成してもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、CSS110は、G13/G15材料を含み、コア粒子102の表面に形成された連続または不連続の無定形コーティング110Aを含み得る。コーティング110Aは、コア粒子102の表面積の約60%から約100%まで、例えば、コア粒子102の表面の約60%から99%まで、または約61%から約80%までを覆ってもよい。コーティング110Aは、約0.5から約500nmまで、例えば約0.75から約100nmまで、または約1nmから約50nmまでの平均厚さを有し得る。G13/G15材料またはコーティング110Aは、少なくとも50原子パーセント(原子%)、例えば少なくとも90原子%、少なくとも95原子%、少なくとも97原子%、少なくとも99原子%、少なくとも99.5原子%、または少なくとも99.75原子%が無定形であってもよい。
【0036】
コーティング110Aは、少なくとも1種のG13/G15材料、例えば、ホウ素またはリンを含むG13/G15材料を、少なくとも60重量%含み得る。例えば、コーティング110Aは、約60から約80重量%までのBまたはP、例えば約61から約70重量%までのPまたはBを含み得る。
【0037】
様々な実施形態では、CSS110は、ホウ素および/またはリンなどのドーパントを含むG13/G15材料を含み得、これらは任意選択でコア粒子102内に拡散して、コア粒子102の酸化ケイ素材料内に任意選択の拡散層110Bを形成してもよい。拡散層110Bは、酸化ケイ素材料と、比較的少量のG13/G15材料、例えば、ホウ素またはリン(例えば、5重量%未満のホウ素および/またはリン)を含み得、これらはコア粒子102内に拡散してG13/G15材料がドープされた酸化ケイ素層110B、例えば、ホウ素および/またはリンがドープされた酸化ケイ素層110Bを形成する。好ましくは、G13/G15材料の大部分は、コア粒子102の表面のコーティング110A内に残ることができる。例えば、約0.1原子%から約5原子%までのG13/G15材料、例えば約1重量%から約5重量%までのG13/G15材料が、コア粒子102の拡散層110B内に拡散してもよく、コーティング110Aは、活物質粒子100に含まれるG13/G15材料の総量に対して、約95から約99原子%までのG13/G15材料を含み得る。
【0038】
拡散層110Bは、0から約100nmまで、例えば約10から約50nmまで、または約15から約30nmまでの範囲の厚さを有し得る。換言すれば、拡散層110Bの厚さは、G13/G15材料の最大拡散深さと同等であり得る。
【0039】
様々な実施形態によれば、活物質粒子は、SiO材料またはM-SiO材料を含むコア粒子をG13/G15材料前駆体と混合することによって調製され得る。コア粒子は、図1Aに関して上述の粒径を有し得る。
【0040】
好適なG13/G15材料前駆体には、ホウ酸(HBO)、メタホウ酸(HBO)、三酸化ホウ素(B)、トリヒドロキシボロキシン(B)、メタホウ酸リチウム(LiBO)、四ホウ酸リチウム(Li)、ホウ酸三リチウム(LiBO)、ホウケイ酸リチウム(B-SiO-LiSi,B-SiO-LiO)、ホウケイ酸塩(B-SiO)、ホウ酸塩、リン酸塩、これらの組合せなどが含まれ得る。
【0041】
この混合物は、混合物の総重量に対して、約90重量%から約99重量%まで、例えば、約95重量%から約98.5重量%まで、約97重量%から約98重量%まで、または約97.5重量%の酸化ケイ素粒子を含み得る。混合物はまた、混合物の総重量に対して、約1重量%から約90重量%まで、例えば約5重量%から約2.5重量%まで、約3重量%から約2重量%まで、または約2.5重量%のG13/G15材料前駆体を含み得る。
【0042】
混合物は、任意の好適な低せん断混合プロセス、例えば、プラネタリーミキサーでの混合で、約5分から約25分間、例えば約8分から約15分間の範囲にある期間、または約10分間穏やかに混合してもよい。いくつかの実施形態では、ボールミル粉砕などの高せん断混合プロセスは、活物質粒子の損傷を避けるために回避される場合がある。例えば、ボールミル粉砕は酸化ケイ素材料粒子を破断するおそれがあり、その電気化学的性能が低下する可能性がある。
【0043】
次いで、この混合物は、酸化ケイ素材料コア粒子上にCSSコーティングを含む活物質粒子を形成するために、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気中で焼結され得る。例えば、G13/G15材料前駆体に応じて、混合物は約1200℃以下の温度、例えば、約300℃から約1200℃まで、約300℃から約750℃まで、または約300℃から約700℃まで、または約300℃から約650℃まで、または約800℃から約1200℃まで、または約800℃から約1100℃まで、または約800℃から約1000℃までの範囲の温度で、約1から約20時間まで、例えば約3から約7時間まで、または約4から約6時間までの範囲の期間焼結され得る。CSS110は、G13/G15材料前駆体を含み得、かつ/またはG13/G15前駆体材料をコア粒子102と反応させることによって形成されたG13/G15材料を含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、アニーリングプロセス中に最大約900℃の温度が使用され得る。しかしながら、本発明者らは、約800℃を超える温度、例えば約750℃を超える温度、または約700℃を超える温度で焼結すると、高いアルカリ度を有する不安定な量の不安定な残留物の形成が増加する可能性があること、ならびに/または、ケイ素、酸化ケイ素、およびケイ酸リチウム相の粒径が増加し、粒子の破断の可能性がより高くなる場合があることを発見した。したがって、G13/G15材料コーティングがコア粒子の表面に適切に形成されない可能性があり、現在記載されている利点が完全に提供されない可能性がある。
【0045】
図1Bは、本開示の様々な実施形態による、活物質粒子100Aを示す断面図である。活物質粒子100Aは、活物質粒子100と類似していてもよい。したがって、両者の違いについてのみ詳細に説明する。
【0046】
図1Bを参照すると、活物質粒子100Aは、コア粒子102、およびその上に配置されたCSS110を含み得る。活物質粒子100Aはまた、CSS110とコア粒子102の間に配置された炭素層112を含み得る。炭素層112は、活性炭、カーボンブラック、グラフェン材料などの炭素材料で形成されてもよい。最初に任意の好適な炭素層コーティング法を使用して炭素層112をコア粒子102上に形成し、続いて炭素層112上にCSS110を形成することを除いて、活物質粒子100Aは、図1Aの活物質粒子100と同様の方法を使用して形成することができる。
【0047】
複合粒子
図1Cは、本開示の様々な実施形態による、活物質カプセル化粒子120を示す断面図である。図1Cを参照すると、カプセル化粒子120は、グラフェン材料シェル122内にカプセル化された活物質粒子100または活物質粒子100Aを含み得る。シェル122は、柔軟で高導電性のグラフェン材料、例えば、グラフェン、酸化グラフェン、部分還元型酸化グラフェン、またはこれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、カプセル化粒子120は、シェル122上またはシェル122内に配置されたカーボンナノチューブ(図示せず)をさらに含み得る。
【0048】
様々な実施形態では、シェル122は、図1Cに示されるように、活物質粒子100/100Aを完全にカプセル化することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、シェル122は、活物質粒子100/100Aを部分的にカプセル化してもよい。いくつかの実施形態では、シェル122は、カプセル化粒子120の総重量の約0.5重量%から約20重量%まで、例えば、約1重量%から約10重量%まで、または約2重量%から約5重量%までに相当し得る。
【0049】
シェル122は、その導電性により、活物質粒子100/100Aが三次元のすべてに一様に循環すること(電子およびLiイオンの構造内外への移動)を確実にし、それによってコア粒子102に及ぼされ、かつコア粒子102が及ぼす応力を最小化し、粒子の破断を最小限に抑え得る。さらに、活物質粒子100/100Aが破断した場合、柔軟なシェル122は、活物質粒子100/100Aの破断した酸化ケイ素材料を電気的に接続し、カプセル化粒子120の全体的な完全性を維持するように機能し、それによって大幅に改善された電気化学的性能をもたらし得る。
【0050】
様々な実施形態では、カプセル化粒子120は、カプセル化粒子120の総重量に対して、約90から約99重量%までの活物質、例えば、SiO材料またはM-SiO材料、約0.1重量%から約5重量%まで、例えば、約0.5重量%から約3重量%までのG13/G15材料、0から約5重量%まで、例えば、0.5重量%から約3重量%までの炭素材料、約2重量%から約5重量%までのグラフェン材料、および0から約0.3重量%までのカーボンナノチューブまたは他の導電性添加剤を含むか、またはそれらからなり得る。いくつかの実施形態では、カプセル化粒子120は、約0.5から約1.5重量%まで、例えば約0.75重量%から約1.25重量%までのG13/G15材料を含み得る。
【0051】
図1Dは、本開示の様々な実施形態による、カプセル化粒子130を示す断面図である。図1Dを参照すると、カプセル化粒子130は、図1Aに関して上述のように、コア粒子102およびその上に配置されたCSS110を含み得る。カプセル化粒子130はまた、CSS110上に配置された炭素層113を含み得る。炭素層113は、活性炭、カーボンブラック、グラフェン材料、熱分解炭素材料などの炭素材料で形成されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、炭素層113は、任意の好適なコーティング法、例えば、メカノフュージョン、球形化、低せん断混合、化学蒸着などを使用して、CSS110でコーティングされたコア粒子102を炭素材料でコーティングすることによって形成され得る。他の実施形態では、炭素層113は、任意の好適なコーティング法、例えば、噴霧乾燥、エアロゾルコーティング、液滴蒸発などを使用して、CSS110でコーティングされたコア粒子102を、ピッチまたはタールなどの炭化水素類;クエン酸;多糖類、例えば、スクロース、グルコース、またはキトサン;ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリドーパミン(PDA)、またはポリアクリロニトリル(PAN);これらの組合せなどを含む炭素質前駆体材料でコーティングすることによって形成され得る。次いで、熱分解ステップを実施して前駆体材料を熱分解し、炭素層113を形成することができる。いくつかの実施形態では、前駆体材料を噴霧熱分解によって塗布して炭素層113を直接形成することができ、別個の熱分解ステップを省略することができる。
【0053】
コア粒子
図1Eは、本開示の様々な実施形態によるコア粒子102Aの断面図である。図1Eを参照すると、コア粒子102Aは、不均一ケイ素含有相104、106、108を含み得る。例えば、ケイ素含有相104、106、108は、独立して、結晶および/または無定形ケイ素、酸化ケイ素(例えば、SiO[式中、xは、0.8から1.2まで、例えば、0.9から1.1までの範囲にある])、および/またはリチウム化ケイ素種を含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、コア粒子102A材料は、実質的に均一であってもよく、別個の相を欠いてもよいが、ケイ素、酸素、ならびに任意選択でLiおよび/またはMgを含む。
【0054】
図1Fは、本開示の様々な実施形態による活物質コア粒子102Bの断面図である。図1Fを参照すると、コア粒子102Bは、結晶シリコン領域105が二次相として分散している一次相103を含み得る。例えば、一次相103は、リチウム化ケイ素種、例えば、ケイ酸リチウム種、および特にLiSiO、LiSiO、およびLiSiを含み得る。他の実施形態では、一次相103は、マグネシウム金属化ケイ素種、ケイ酸マグネシウム種、特にMgSiO、MgSiO、またはこれらの組合せを含み得る。結晶シリコン領域105は、100nm未満の粒径を有する結晶シリコンナノ粒子を含み得る。例えば、結晶シリコン領域105は、約3nmから約60nmまでの範囲の平均粒径を有し得る。一実施形態では、結晶シリコン領域105の大部分は、約5nmから約10nmまでの範囲の平均粒径を有し得、結晶シリコン領域105の残りは、約10nmから約50nmまでの平均粒径を有し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、コア粒子102Bは、任意選択で、二次相として一次相103中に分散しているSiO領域107(例えば、SiO[式中、xは0.8から1.2まで、例えば0.9から1.1までの範囲にある])を含み得る。SiO領域107は、約100nm未満の粒径を有し得る。例えば、SiO領域107は、約3nmから約60nmまで、例えば、約5nmから約50nmまでの範囲の平均粒径を有し得る。
【0056】
図1A図1Fを参照すると、コア粒子102A、102Bは、上述のコア粒子102として利用され得る。様々な実施形態では、コア粒子102は、複合粒子100の総重量の約80重量%から約99.5重量%まで、例えば、約90重量%から約99重量%までを表し得、それには約90重量%から約95重量%までが含まれる。いくつかの実施形態では、M-SiO材料は、約40原子%から約5原子%まで、例えば20原子%から約10原子%まで、または約15原子%のリチウム化ケイ素種を含み得る。いくつかの実施形態では、コア粒子102AのM-SiO材料は、約60原子%から約95原子%まで、例えば約80原子%から約90原子%まで、または約85原子%のケイ素およびSiOを含み得る。コア粒子102のM-SiO材料は、約1.25:1から約1:1.25まで、例えば約1.1:1から約1:1.1までの範囲、または約1:1のケイ素対酸素原子量比を有し得る。いくつかの実施形態では、コア粒子102のM-SiO材料は、ほぼ等しい原子量の結晶シリコンおよびSiOを含み得る。
【0057】
初期充電反応および/またはその後の充電反応中に、コア粒子102AのM-SiO材料の組成は、リチウム化および/または他の反応を理由に変化し得る。例えば、SiおよびSiOをリチウム化して、LiSi領域を形成することができる。さらに、一部のSiOは、ケイ酸リチウムおよびLiOなどの不活性種を形成し得る。
【0058】
乱層炭素
様々な実施形態では、シェル122は、好ましくは、乱層炭素と称してもよい、低欠陥乱層特性を有する柔軟で高導電性のグラフェン材料を含み得る。低欠陥乱層炭素は、1層から約10層までの、グラフェン、酸化グラフェン、または還元型酸化グラフェンなどのグラフェン材料を含む小板の形態でもよい。いくつかの実施形態では、低欠陥乱層炭素は、少なくとも90重量%、例えば、約90重量%から約100重量%までのグラフェンを含み得る。グラフェン材料は、粉末、粒子、単層シート、多層シート、フレーク、小板、リボン、量子ドット、チューブ、フラーレン(中空グラフェン球)、またはこれらの組合せをさらに含み得る。
【0059】
乱層炭素は、部分的に重なり合って、より大きなサイズの単一シート構造を再現するシートまたは小板の形態でもよい。いくつかの実施形態では、小板は、2つ以上のグラフェン系材料層を有する。いくつかの実施形態では、小板は、平均で15μm以下であり得るシートサイズを有し得る。いくつかの実施形態では、小板は、平均で1μm以下であり得るシートサイズを有し得る。いくつかの実施形態では、乱層炭素系材料小板は、小さな厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、乱層炭素系材料小板の小さな厚さは、平均で1μm以下であり得る。いくつかの実施形態では、乱層炭素系材料小板の小さな厚さは、平均で100nm以下であり得る。
【0060】
図2A、2B、および2Cは、グラファイトおよび様々なグラフェン系材料のラマンスペクトルを示す。グラファイトおよびグラフェン材料が約1340cm-1、1584cm-1、および2700cm-1で特徴的なピークを有することは十分に確立されている。1340cm-1でのピークは、図2Cに示されており、Dバンドとして特徴付けられている。1584cm-1でのピークは、図2Aおよび2Cのスペクトルに示されており、Gバンドとして特徴付けられており、これは、sp混成炭素原子のすべての対のC=C結合伸縮によって表される振動モードから生じる。Dバンドは、グラフェンのエッジに関連する混成振動モードに由来し、グラフェン構造内に欠陥または対称性の破れが存在することを示す。2700cm-1でのピークは、図2Bに示されており、2Dバンドとして特徴付けられており、これは、積層されたグラフェン層間の相互作用に基づいて、二重共鳴プロセスから生じる。2D波数での二重ピークの出現は、ピークの対称性を破り、グラファイトおよびグラファイト誘導体におけるグラフェン面の間、例えばナノ小板の間のAB積層秩序を示す。図1Bに示される2Dピークは、乱層多層グラフェン粒子のAB積層秩序が乱されると抑制される。Gバンドおよび2Dバンドの位置は、材料系における層の数を決定するために使用される。したがって、ラマン分光法は、電気化学電池炭素材料添加剤についての科学的な明確性および定義を提供し、活物質電極組成物のための添加剤としての正しい選択のための指紋を提供する。示されるように、本定義は、本出願の低欠陥乱層炭素についての指紋を提供する。電気化学電池電極活物質合剤への添加剤として使用されたときに、より優れた電気化学電池性能を提供するのは、この低欠陥乱層炭素である。
【0061】
図3には、従来技術の電極活物質合剤で使用されることが一般的な炭素添加剤(すなわち、還元型酸化グラフェンまたは無定形炭素)のI/I比率が、本出願の低欠陥乱層炭素と比較して記載されている。
【0062】
還元型酸化グラフェン(rGO)は、当業界ではグラフェンと称されることが多い炭素の別形態であるが、最終的な構造および製造プロセスが特有となっている。酸化グラフェンは、典型的には、修正されたHummers法をまず使用して製造され、この方法では、グラファイト材料を酸化させ、ヒドロキシル、エポキシド、カルボニル、およびカルボキシルを含むがこれらに限定されない様々な官能基を含み得るいくつかの炭素層を含む単一の層または小板に剥離させる。次いで、これらの官能基は、絶縁性の酸化グラフェンを導電性の還元型酸化グラフェンに変換する化学的処理または熱処理によって除去される。還元型酸化グラフェンは、炭素原子格子の単層からなるという点でグラフェンに類似しているが、混合したsp2およびsp3の混成と、残留官能基と、製造および還元プロセスから生じる多くの場合増加している欠陥密度とを有するという点で異なる。還元型酸化グラフェンは、図3の第1の棒に示されており、0.9のI/I比率を有する。
【0063】
無定形炭素は、多くの場合、電極の導電性を高めるために、電気化学電池のアノードおよびカソード材料合剤の両方のための添加剤または表面コーティングとして使用される。典型的には、無定形炭素は、化学蒸着(CVD)プロセスを使用して生成され、このプロセスでは、炭化水素供給原料ガスが、密閉容器内に流され、高温で所望の粉末材料の表面上に炭化される。この熱分解プロセスは、結晶性グラフェン系材料に見られるようなsp2混成が全くない、厚さ数ナノメートルオーダーの薄い無定形炭素コーティングを提供することができる。無定形炭素は、図3の第3の棒に示されており、1.2超のI/I比率を有する。
【0064】
グラフェンとも称される低欠陥乱層炭素は、その製造プロセスから生じる独特の特性を備える。この材料を製造する一般的な方法の1つは、プラズマ系CVDプロセスによるものであり、このプロセスでは、炭化水素供給原料ガスが、グラフェン様炭素構造の核を形成することができる触媒の存在下で、不活性ガスプラズマを通して供給される。製造パラメータを制御することによって、数層を有し、かつ格子間にAB積層秩序がない炭素材料を製造することができる。これらの炭素材料は、典型的には、低欠陥密度を有する高度に秩序化されたsp2炭素格子である。
【0065】
本開示の低欠陥乱層炭素は、図3の中央の第2の棒に示されている。本出願の低欠陥乱層炭素添加剤のラマンスペクトルは、DバンドとGバンドとの強度比率(I/I)および2DバンドとGバンドとの強度比率(I2D/I)から導き出される。I、I2D、およびIは、それらのそれぞれ積分された強度によって表される。低いI/I比率は、低欠陥材料を示す。本発明の低欠陥乱層炭素材料は、1580と1600cm-1の間の範囲における波数でのI、1330と1360cm-1の間の範囲における波数でのIを用いてラマン分光法によって決定され、かつ532nmの入射レーザー波長を使用して測定されるように、0超かつ約0.8以下のI/I比率を有する。さらに、本開示の低欠陥乱層炭素材料は、約0.4以上のI2D/I比率を呈する。I2D/I比率に関する参考として、典型的には、約2のI2D/I比率が単層グラフェンに関連する。約0.4未満のI2D/I比率は、通常、多数のAB積層グラフェン層からなるバルクグラファイトに関連する。したがって、本開示の低欠陥乱層炭素材料についての約0.4以上のI2D/I比率は、10層以下の少ない層数を示す。層数の少ない低欠陥乱層炭素材料は、グラフェン層間のAB積層秩序がさらに欠如している(すなわち、乱層)。これらのグラフェン面における乱層の性質またはAB積層の欠如は、I2Dピークの対称性によって示される。乱層グラフェン層状材料とAB積層グラフェン層状材料とを区別するのは、2Dピークの対称性であり、これは、層状積層の秩序性との対比で、回転積層の無秩序性を示す。
【0066】
AB積層の秩序性が高い炭素材料は、依然として2Dピークを呈するが、これらの2Dピークは、ピークの対称性を破るダブレットを呈する。対称性におけるこの破れは、数層のAB積層グラフェンまたは多くの層のグラファイトの両方で呈される。したがって、材料中に存在するグラフェン層の数に関係なく、積層秩序が存在することの非常に強力な指標である2Dピークは、グラフェンまたはグラフェン系添加剤を選択する際に重要である。本開示の低欠陥乱層炭素とこれまでに使用された他のすべてのグラフェンまたはグラフェン系添加剤とを区別するのは、この炭素における積層の回転無秩序性である。というのも、本出願の低欠陥乱層炭素積層の回転無秩序性は、本出願の炭素系粒子に柔軟性をもたらすものであり、それによって、これらの炭素系粒子が、電気化学電池の電極を構成する複合粒子の活性コア粒子との接触を提供および維持する能力を可能にするからである。その結果、増加したサイクル寿命、より良好なサイクル寿命安定性、向上したエネルギー密度、およびより優れた高いレート性能を有する電気化学電池が得られる。
【0067】
図4Aは、無定形炭素材料でコーティングされたSiO材料粒子を含む活物質合剤のラマンスペクトルのグラフである。図4Bは、rGOによってカプセル化されたSiO材料コア粒子を含む活物質合剤のラマンスペクトルのグラフである。図4Cは、低欠陥乱層炭素によってカプセル化されたSiO材料コア粒子を含む活物質合剤のラマンスペクトルを示すグラフである。層の厚さ(波長2700cm-1付近の2Dピークのサイズ、形状、および位置)および無秩序性(波長1340cm-1付近のDピークのサイズ)が異なるため、各スペクトルは異なる。
【0068】
ラマン分析サンプルの調製は、活物質粉末、複合材料粉末、炭素材料粉末などの粉末の少量のアリコートを取り、これらの粉末を個別にきれいなガラスバイアルに入れることを含んでいた。サンプル粉末をメタノールで濯ぐ。次いで、粉末/メタノール溶液を短時間ボルテックス処理し、約10分間超音波処理する。次いで、懸濁液をマイクロピペットでスライドガラスに移す。次いで、分析を行う前に、スライドを完全に空気乾燥させる。
【0069】
本出願のラマン分光分析は、以下の試験条件下で、BrukerのSenterraラマンシステムにおいて共焦点ラマン分光法を使用して実施される:532nmのレーザー、0.02mW、50倍対物レンズ、90秒の積分時間、50×1000μmのアパーチャおよび9~18cm-1の分解能を使用した3回の共添加(3回のラマン分光サンプルの実行)。参考までに、Dバンドは、完全結晶のラマン散乱では活性ではない。Dバンドは、π-π電子遷移を伴う欠陥誘起二重共鳴ラマン散乱プロセスによって、欠陥グラファイト材料においてラマン活性になる。Gバンドに対するDバンドの強度は、無秩序性の程度とともに増加する。したがって、強度I/I比率を使用して、グラフェン材料を特性評価することができる。
【0070】
図4Aに示される無定形炭素のDおよびGバンドはどちらも、図4Bの還元型酸化グラフェン(rGO)のDおよびGバンド、または図4Cの乱層炭素のDおよびGバンドのいずれよりも強度が高い。無定形炭素は、rGOおよび乱層炭素よりもかなり高いI/I比率(1.25)も呈する。Dバンドの強度と比較して抑制された無定形炭素のGバンドの強度は、その炭素構造内の結晶化度の欠如を反映している(グラファイトの性質としても知られている)。Gピーク強度よりも高いDピーク強度は、無定形炭素ネットワークにおける欠陥の量が多いことによって引き起こされる。したがって、無定形炭素のスペクトルは、グラフェン、酸化グラフェン、およびrGOなどのより結晶性の高い炭素と比較して、そのグラファイトネットワークにおいて、低い結晶化度およびはるかにより高い程度の無秩序性を呈する。さらに、rGOのGピークと比較してより高いそのDピーク強度、ならびに乱層炭素のDおよびGピーク強度およびI/I比率と比較してより高いrGOのI/I比率(ほぼ2倍)は、rGOが、本出願の乱層炭素より多くの欠陥を有することを示す。
【0071】
以下の表1は、図4A~4Cのラマンスペクトルの詳細を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
これらのスペクトルを注意深く調べると、無秩序性が増加すると、Dバンドが広がり、バンドの相対強度が変化することが示される。無定形炭素でコーティングされたサンプルの場合、強度が高く(6194.8)かつ広いDピークは、多量の欠陥を示す。Gピークの強度(4908.2)がDピーク(6194.8)よりも低いことは、結晶化度が欠如していることを示す。rGOでカプセル化されたサンプルのDピーク強度(9115.5)およびGピーク強度(10033.3)は、非常に類似している。しかしながら、注目すべきは、rGOサンプルのDピーク強度(9115.5)が、乱層炭素サンプルのDピーク強度(2915.3)よりもかなり高いことであり、このことは、rGOサンプルが、乱層炭素サンプルよりもかなり高い欠陥密度を有することを示す。同様に注目すべきは、無定形炭素およびrGOサンプルのGバンドが、それぞれ波長1589.4cm-1および1597.82cm-1で波長1584cm-1の右側にシフトされており、乱層炭素サンプルのGバンドが、1581.32cm-1で1584cm-1の波長のわずかに左側にあることである。重要なのは、無定形炭素およびrGOサンプルとは異なり、乱層炭素(この場合はグラフェンサンプル)は、あったとしてもほとんど位置のシフトを呈さず、これは、その中の欠陥が少ないことを反映しているため、乱層炭素サンプルは、ほぼ「完璧な」乱層炭素材料に非常に似たものとなっている。
【0074】
電極材料
本開示の様々な実施形態は、Liイオンバッテリ用の電極材料、および特にアノード電極組成物を提供する。電極材料は、上述の活物質、バインダー、および任意選択で単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を含み得る。活物質は、上述の活物質粒子100もしくは100A、またはカプセル化粒子120(すなわち、シェル122内にカプセル化された活物質粒子100もしくは100Aを含有する)、および任意選択で追加のグラファイト粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、電極材料は、任意選択で、カーボンブラックなどの導電性添加剤を含み得る。活物質およびグラファイト粒子は、互いに混合されていてもよい。カーボンブラック粒子は、酸化ケイ素粒子およびグラファイト粒子よりも小さくてもよく(すなわち、より小さい直径を有し)、酸化ケイ素粒子および/もしくはグラファイト粒子の間ならびに/または表面上に位置してもよい。SWCNTは、酸化ケイ素粒子およびグラファイト粒子の混合物の間に延び、複数の活性粒子にわたって長距離導電性を提供し得る。
【0075】
電極材料は、上述のように、SiOまたはM-SiO材料コア粒子、ならびにその上にコーティングされたG13/G15材料、ならびに任意選択でコア粒子中に拡散しているホウ素および/またはリンを含む活物質を含み得る。したがって、コア粒子は、ケイ素、金属ケイ酸塩、および酸化ケイ素相、ならびに任意選択のリチウム化ケイ素種、ならびに上述のコーティングならびに/またはホウ素および/もしくはリンを含む拡散層を含み得る。活物質粒子は、任意選択の炭素コーティングを含み得るか、または炭素コーティングは省略し得る。
【0076】
活物質は、約1μmから約20μmまで、例えば、約1μmから約15μmまで、約3μmから約10μmまでの範囲、または約5μmから約8μmまでの範囲の平均粒径を有し得る。活物質粒子は、約0.5m/gから約30m/gまで、例えば、約1m/gから約20m/gまでの範囲にある表面積を有してもよく、それには約1.5m/gから約15m/gまでが含まれる。
【0077】
電極材料は、少なくとも65重量%の活物質、例えば約70重量%から約98重量%まで、約70重量%から約90重量%まで、または約75重量%の活物質を含み得る。
【0078】
電極材料は、任意選択でグラファイト粒子を含み得る。例えば、電極材料は、約0重量%から約97重量%まで、例えば、約50重量%から約95重量%まで、約5重量%から約35重量%まで、約10重量%から約30重量%まで、または約15重量%から約25重量%までのグラファイト粒子、および約3重量%から約100重量%まで、例えば、約5重量%から約50重量%まで、約95重量%から約65重量%まで、90重量%から約70重量%まで、または約85重量%から約75重量%までの活物質粒子を含み得る。グラファイトはまた、バッテリ動作中に活物質として機能する可能性があることに留意すべきである。しかしながら、説明を明確にするために、本明細書では活物質粒子をグラファイト粒子とは別に記載する。
【0079】
グラファイトは、合成または天然起源のグラファイト粒子が含み得る。グラファイトは、約2μmから約30μmまで、例えば、約10μmから約20μmまでの範囲にある平均粒径を有してもよく、それには約12μmから約18μmまでが含まれる。一実施形態では、グラファイト粒子の平均粒径は、酸化ケイ素活物質粒子100の平均粒径よりも大きくてもよい。グラファイト粒子は、約0.5m/gから約2.5m/gまで、例えば、約1m/gから約2m/gまでの範囲にある表面積を有し得る。グラファイト粒子130は、酸化ケイ素粒子よりも大きくてもよい。
【0080】
電極材料は、任意の好適な電極材料バインダーを含み得る。例えば、電極材料は、ポリマーバインダー、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロースNa(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(LiPAA)、これらの組合せなどを含み得る。いくつかの実施形態では、バインダーは、CMCとSBRとの組合せを含んでもよく、CMCは、250から850g/molまでの分子量および、0.65から0.9までの置換度を有する。
【0081】
様々な実施形態では、電極材料は、約1重量%から約12重量%まで、例えば約2重量%から約10重量%まで、または約2重量%から約8重量%までのバインダーを含み得る。いくつかの実施形態では、電極材料は、約95重量%から約98重量%までの活物質、約1重量%から約2重量%までの導電剤、および約2重量%から約4重量%までのバインダーを含み得、バインダーには、CMCおよびSBRが含まれ得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、SWCNTは、約1μm超の平均長さを有し得る。例えば、SWCNTは、約1μmから約500μmまで、例えば、約1μmから約10μmまでの範囲にある平均長さを有し得る。SWCNTは、約0.5nmから約2.5nmまで、例えば、約1nmから約2nmまでの範囲にある平均直径を有し得る。
【0083】
SWCNTは、1580~1600cm-1の波数でのラマン強度に関連するI、および1330~1360cm-1の波数でのラマン強度に関連するIを用いてラマン分光法によって決定され、633nmの入射レーザー波長を使用して測定されるように、約5超、例えば約6超または約10超のI/I比率を有し得る。
【0084】
様々な実施形態では、電極材料は、約0から約1重量%まで、例えば約0.075重量%から約0.9重量%まで、約0.08重量%から約0.25重量%まで、または約0.1重量%のSWCTNを含み得る。
【0085】
導電性添加剤は、カーボンブラック(例えば、KETJENBLACKまたはSuper-Pカーボンブラック)、低欠陥乱層炭素、アセチレンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックまたはこれらの組合せを含み得る。導電性添加剤は、任意選択で、金属粉末、フルオロカーボン粉末、アルミニウム粉末、ニッケル粉末;ニッケルフレーク、導電性ウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、導電性金属酸化物、酸化チタン、導電性有機化合物、導電性ポリフェニレン誘導体、導電性ポリマー、またはこれらの組合せを含み得る。
【0086】
様々な実施形態では、電極材料は、0から約10重量%まで、例えば約0.25重量%から約7重量%まで、約2重量%から約7重量%まで、または約5重量%の導電性添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、導電性添加剤は、好ましくはカーボンブラックを含み得る。
【0087】
アノード形成
様々な実施形態によれば、アノードは、当業者に公知の任意の好適な方法を使用して形成され得る。例えば、活物質粒子(例えば、上述のCSSを有するSiO材料および/またはM-SiO材料粒子)は、グラファイト粒子と混合されて活物質を形成することができる。一実施形態では、活物質は、50重量%未満の酸化ケイ素および50重量%超のグラファイトを含み得る。活物質は、バインダーならびに任意選択のSWCNTおよび/または導電性添加剤と混合されて、固体成分を形成することができる。いくつかの実施形態では、酸化ケイ素粒子は、活物質を形成する前に、例えば、噴霧乾燥プロセスを使用して乱層炭素シェル122でカプセル化し得る。代替的に、シェル122は省略し得る。
【0088】
固体成分は、水またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの極性溶媒に約20~約60重量%の間の固体充填量で混合されて、電極スラリーを形成することができる。例えば、混合は、真空下でプラネタリーミキサーおよび高せん断分散ブレードを使用することを含み得る。
【0089】
電極スラリーは、アノードのリチウム容量と選択されるカソードのリチウム容量とのバランスをとるために、適切な質量充填率で、金属基板、例えば、銅またはステンレス鋼基板上にコーティングし得る。コーティングは、ドクターブレード、コンマコーター、グラビアコーター、スロットダイコーターなどの様々な装置を使用して行われ得る。
【0090】
コーティング後、スラリーを乾燥させてアノードを形成することができる。例えば、スラリーは、室温から約120℃までの範囲の温度で、強制空気下で乾燥し得る。乾燥されたスラリーは、プレスして内部気孔率を減少させてもよく、電極は所望の形状に切断し得る。典型的なアノードプレス密度は、電極の組成およびターゲットの用途に応じて、約1.0g/ccから約1.7g/ccまでの範囲とし得る。カソードプレス密度は、約2.7から約4.7g/ccまでの範囲とし得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、活物質粒子は、活物質を形成する前に、乱層炭素でコーティングされ得る。例えば、酸化ケイ素粒子、乱層炭素および溶媒の混合物を噴霧乾燥して粉末を形成し、次いで粉末をアルゴンガスなどの不活性雰囲気で熱処理して、残っている任意の界面活性剤または分散剤を炭化してもよい。他の実施形態では、酸化ケイ素粒子は、バインダーおよびメカノフュージョンプロセスを使用して乱層炭素でコーティングされ得る。
【0092】
電気化学電池アセンブリ
電気化学電池の構築は、ポリマーおよび/またはセラミック電気絶縁セパレータによって互いに電子的に絶縁された、コーティングされたアノード基板およびコーティングされたカソード基板を対にすることを含む。電極アセンブリは、コイン電池、ポーチ電池、または缶電池などであるがこれらに限定されない様々な構造であり得るハウジング内で密閉されており、動作可能であるようにアノードおよびカソードに関連付けられた非水性イオン伝導性電解質を含有する。電解質は、非水性溶媒中に溶解した無機塩、より好ましくは、有機エステル、エーテルおよびジアルキルカーボネートを含む低粘度溶媒と、環状カーボネート、環状エステルおよび環状アミドを含む高導電性溶媒との混合物中に溶解したアルカリ金属塩からなる。電解質の非限定的な例としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、またはこれらの組合せのうちの1つを含む有機溶媒中に入ったヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)またはビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(LiFSi)塩を挙げることができる。
【0093】
本発明の実施形態で有用な追加の溶媒としては、ジアルキルカーボネート、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル(MA)、ジグライム、トリギルム、テトラギルム、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、1-エトキシ,2-メトキシエタン(EME)、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、およびこれらの組合せが挙げられる。同様に有用であり得る高誘電率溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、および環状アミド、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ガンマ-バレロラクトン、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0094】
電解質はまた、1種以上の添加剤、例えば、炭酸ビニレン(VC)、1,3-プロパンスルホン(PS)、プロパ-1-エン-1,3-スルトン(PES)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、および/または炭酸プロピレン(PC)も含み得る。電解質は、電池の電気化学反応中、特に電池の放電および再充電中にアノードとカソードとの間でリチウムイオンが移動するための媒体として機能する。電気化学電池はまた、正および負の端子および/または接触構造を有し得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、電解質は、Li-Bケイ酸塩および/またはLi-ケイ酸塩を含む固体電解質であってもよい。
【実施例
【0096】
実験例
以下の実験例は、本開示の様々な実施形態の電極材料および比較電極材料を使用して形成されたアノードに関するものであり、限定するものとしてではなく、例示するものとして与えられる。実験例では、%は重量パーセント、gはグラム、CEはクーロン効率、mAh/gは容量である。
【0097】
例示的アノード活物質:ホウ酸粉末2.5グラムをLi-SiO材料粉末97.5グラムとプラネタリー型ミキサーで10分間穏やかに混合する。続いて、得られた混合物をAr雰囲気の炉内で5時間加熱して残留水を除去し、混合物を焼結して、化学安定性構造体(CSS)で改質されたLi-SiO材料粒子を含む例示的アノード活物質を形成する。
【0098】
対照活物質:CSSを含まないLi-SiOアノード粉末を、対照活物質として使用する。
【0099】
例示的ハーフセル:例示的アノード活物質0.75グラム、導電剤(C65カーボンブラック)0.05グラム、水性バインダー(ポリ(アクリル酸)10.1重量%)0.20グラムを、小型の混合ジャー中で混ぜ合わせる。次いで、合わせた材料をプラネタリーミキサーで30分間激しく混合して、アノードスラリーを形成する。このアノードスラリーを、3mAh/cm2の容量および1.4~1.5g/ccの電極密度で銅箔にコーティングする。コーティングを乾燥し、気孔率が40~45%になるようにカレンダー加工し、次いで切断してアノードを形成する。アノードを半電池(過剰な対向電極材料=リチウム金属)に組み立て、100マイクロリットルの電解質(1.2M LiPF、EC:EMC=3:7、20重量%FEC添加剤を含む)を電池に注入する。電池を、C/20、C/10、C/5の充放電サイクルで電気化学的に「形成」し、例示的半電池を完成させる。
【0100】
比較用半電池:対照Li-SiOアノード活物質0.75グラム、導電剤(C65カーボンブラック)0.05グラム、水性バインダー(Li-ポリ(アクリル酸)10.1重量%)0.20グラムを、小さな混合ジャー中で混ぜ合わせる。次いで、合わせた材料をプラネタリー型ミキサーで30分間激しく混合して、アノードスラリーを形成する。このアノードスラリーを、3mAh/cm2の容量および1.4~1.5g/ccの電極密度で銅箔にコーティングする。コーティングを乾燥し、気孔率が40~45%になるようにカレンダー加工し、次いで切断してアノードを形成する。アノードを半電池(過剰な対向電極材料=リチウム金属)に組み立て、100μLの電解質(1.2M LiPF、EC:EMC=3:7、20重量%FEC添加剤を含む)を電池に注入する。電池を、C/20、C/10、C/5の充放電サイクルで電気化学的に「形成」し、比較用半電池を完成させる。
【0101】
例示的半電池および比較用半電池を、各電池のアノード容量がその初期容量の80%に減少するまで、標準のC/2充放電プロトコル下で特性評価した。電池のサイクル性能を図5に示し、以下の表2にまとめる。
【0102】
【表2】
【0103】
図5および表2に示すように、表面改質Li-SiO活物質を含む例示的半電池は、比較用半電池よりも高い第1サイクル効率、および640%高い第50サイクル容量保持率を有する。
【0104】
図6は、水に分散させた場合の例示的活物質および比較用活物質のpHを、経時的に示すグラフである。特に、室温でDI水(固形分2重量%)25g中に分散させた例示的活物質または比較用活物質0.5gを含む4つの混合物を調製する。混合物のpH値は、1、2、10、30、および60分後に測定する。表3に試験の結果を示す。
【0105】
【表3】
【0106】
図6および表3に見られるように、例示的活物質は、比較用活物質よりもpHが著しく低く、経時的pH変化が著しく少なかった。
【0107】
図7Aは、対照活物質および結晶性Liと比較した、例示的活物質のX線回折(XRD)結果を示すグラフである。図7Bは、例示的活物質および結晶性BCのXRDデータを示すグラフである。
【0108】
図7Aに見られるように、例示的活物質のCSSの形成によって、粒子の結晶化度および構造に非常にわずかな変化しかもたらされていないことが結果に示されている。さらに、四ホウ酸リチウム相は、例示的活物質または比較用活物質のいずれにおいても検出されなかった。図7Bに見られるように、例示的活物質中に炭化ホウ素が存在することは結果に示されていない。したがって、活物質は、0.5原子%未満、例えば0.1原子%未満しか炭化物材料を含み得ず、例えば、炭化物材料を一切含み得ない。
【0109】
図8Aは、75:5:20の重量比で例示的活物質、カーボンブラック、およびPAAバインダーを含むアノードを含むハーフセル、ならびに75:5:20の重量比でSiナノ粒子およびCSS、カーボンブラック、およびPAAバインダーを含む比較用活物質を含むアノードを含む比較用ハーフセルの容量保持率を示すグラフである。図8Bは、例示的活物質および比較用活物質のXRDの結果を示すグラフである。
【0110】
図8Aに見られるように、例示的ハーフセルは、50回の充電/放電サイクル後、約75%の容量保持率を有する。対照的に、比較用半電池は、容量の急速な低下を示し、25回の充電/放電サイクル後の容量保持率は0である。したがって、酸化ケイ素ナノ粒子およびCSSを使用すると、ケイ素ナノ粒子およびCSSを含む活物質を使用するのと比べて、容量保持率が予期せず向上することがわかる。
【0111】
図8Bを参照すると、例示的活物質は、比較用活物質よりも実質的に少ないケイ素相しか含まないことがわかる。さらに、比較用活物質ではホウ酸塩が形成された証拠が存在しない。したがって、例示的活物質および比較用活物質の両方のCSS層は、無定形であると結論付けることができる。
【0112】
したがって、本実施形態の活物質は、有意な量の結晶化度を有しない無定形G13/G15材料を含むと考えられる。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、結晶性G13/G15材料で活物質をコーティングすると、活物質の充電および放電中にリチウムの拡散が妨げられる可能性があると考えている。リチウムの拡散が阻害されると、急速充電および充電速度の性能が低下する可能性がある。さらに、リチウムの拡散が阻害されると、電池内の内部抵抗が増加し、電池の動作温度が上昇する可能性もあり、これにより、電池の爆発の危険性も高まり、サイクル寿命が大幅に低下する可能性がある。
【0113】
また、G13/G15材料から活物質粒子へのホウ素および/またはリンの拡散により、予期せず導電率の向上がもたらされ、電気化学電池の充電速度性能が向上する可能性があると考えられる。
【0114】
さらに、プレリチウム化されたLi-SiO材料コア粒子を使用することにより、リチウム化前にコア粒子から自然酸化物を除去する必要がない。最後に、約300℃から約800℃までの範囲の比較的高い焼結温度により、G13/G15材料の大部分がコア粒子の表面に局在化し、Bおよび/またはPがコア粒子の表面領域に拡散すると考えられる。
【0115】
上述の内容は、特定の好ましい実施形態に言及しているが、本発明は、そのように限定されることはないと理解されるだろう。開示されている実施形態に様々な修正を加えることが可能であり、かつそのような修正が本発明の範囲内にあることが意図されていると当業者には分かるであろう。本明細書に引用されているすべての刊行物、特許出願、および特許は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A-2C】
図3
図4A-4C】
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
【国際調査報告】