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特表2024-534390生体試料を処理するためのマイクロ流体デバイス及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】生体試料を処理するためのマイクロ流体デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20240912BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240912BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240912BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240912BHJP
   G01N 1/44 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01N35/08 A
C12M1/00 A
C12Q1/686 Z
G01N37/00 101
G01N1/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516601
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 US2022043544
(87)【国際公開番号】W WO2023043848
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/244,234
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/244,235
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518337142
【氏名又は名称】コンビナティ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】5823 Newton Dribe Carlsbad,California 92008 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】フン ジュ-スン
(72)【発明者】
【氏名】リン フェリシア
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヒエン
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB16
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052DA09
2G052EB11
2G052EB12
2G052FB08
2G052GA29
2G052GA32
2G052JA07
2G052JA16
2G058BA10
2G058DA07
2G058DA09
2G058GA01
2G058GD06
4B029AA07
4B029BB20
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
閉鎖システムに流体的に結合された入口ポートを備える、試料を処理するためのマイクロ流体デバイスが開示される。閉鎖システムは、複数の線形装填導管、複数の終端チャンバ、及び試料を受け取るための複数のマイクロチャンバを備える。また、試料量をマイクロ流体デバイスのマイクロチャンバ内に引き込むための方法も開示される。1つの方法は、複数の圧力パルスをマイクロ流体アセンブリ内の内容物に印加する工程を含み、複数の圧力パルスは、第1の時間間隔にわたって印加される第1の圧力と、第2の時間間隔にわたって印加される第2の圧力とを含み、ある体積の試料が、マイクロ流体デバイスの複数のマイクロチャンバ内に引き込まれる。マイクロ流体デバイス及び方法のこれら及び他の実施形態が開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、
入口ポートと、
前記入口ポートに流体的に結合された閉鎖システムと、を備え、前記閉鎖システムは、
複数の線形装填導管と、
複数の終端チャンバであって、前記複数の終端チャンバのうちの1つの終端チャンバは、前記複数の線形装填導管のうちの1つの線形装填導管に流体的に結合される、複数の終端チャンバと、
前記試料を受け取るための複数のマイクロチャンバであって、前記複数のマイクロチャンバのうちの複数のマイクロチャンバは、前記複数の線形装填導管のうちの1つの線形装填導管に流体的に結合される、複数のマイクロチャンバと、を備え、
近接する同じ線形装填導管に流体的に結合された第1の複数のマイクロチャンバ及び第1の終端チャンバに関して、前記第1の終端チャンバの容積は、前記第1の複数のマイクロチャンバの合計容積以下であり、更に、前記終端チャンバのうちのいずれのものよりも大きい廃棄物リザーバが前記閉鎖システムから除外されている、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
複数のサイフォン導管を更に備え、前記複数のサイフォン導管のうちの1つのサイフォン導管は、線形装填導管とマイクロチャンバとの間に流体的に結合されている、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記終端チャンバの容積は、前記複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバの容積よりも大きい、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記終端チャンバの前記容積は、前記マイクロチャンバの前記容積の少なくとも約4倍である、請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記線形装填導管の第1の寸法及び前記サイフォン導管の第1の寸法は、約10ミクロン未満である、請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバは、少なくとも約100ミクロンの第1の寸法を有する、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記マイクロ流体デバイスに設けられた薄膜を更に備え、前記薄膜は前記閉鎖システムの表面を形成する、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記薄膜によって形成された前記表面は、前記複数のマイクロチャンバの外面を提供する、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記薄膜によって形成された前記表面は、前記複数の線形装填導管の外面を提供する、請求項8に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記薄膜によって形成された前記表面は、前記複数の終端チャンバの外面を提供する、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記薄膜は、約70~90ミクロンの厚さを有する、請求項7~10のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
前記薄膜は約80ミクロンの厚さを有する、請求項7~10のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
前記薄膜はガス透過性熱可塑性材料を含む、請求項7~12のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
前記ガス透過性熱可塑性材料は、前記試料に対して透過性ではない、請求項13に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
前記ガス透過性熱可塑性材料は、環状オレフィンコポリマーを含む、請求項13~14のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項16】
前記第1の終端チャンバの前記容積は、前記第1の複数のマイクロチャンバの合計容積の50パーセント(50%)以下である、請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
前記第1の終端チャンバの前記容積は、前記第1の複数のマイクロチャンバの合計容積の25パーセント(25%)以下である、請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
前記第1の終端チャンバの前記容積は、前記第1の複数のマイクロチャンバの合計容積の10パーセント(10%)以下である、請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項19】
射出成形された熱可塑性材料を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項20】
試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、
入口ポートと、
複数の行き止まりマイクロ流体アセンブリと、を備え、前記行き止まりマイクロ流体アセンブリの各々は、前記入口ポートに流体的に結合され、前記行き止まりマイクロ流体アセンブリの各々は、
線形装填導管と、
前記線形装填導管に流体的に結合された終端チャンバと、
前記線形装填導管に流体的に結合され、かつ前記線形装填導管に近接する前記試料を受け取るように構成された複数のマイクロチャンバと、を備え、
前記終端チャンバの容積は、前記複数のマイクロチャンバの合計容積以下である、マイクロ流体デバイス。
【請求項21】
前記行き止まりマイクロ流体アセンブリの各々は、複数のサイフォン導管を更に備え、
前記複数のサイフォン導管のうちの1つのサイフォン導管は、前記線形装填導管と前記複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバとの間に流体的に結合される、請求項20に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項22】
前記終端チャンバの前記容積は、前記複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバの容積よりも大きい、請求項20に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項23】
前記終端チャンバの前記容積は、前記マイクロチャンバの前記容積の少なくとも約4倍である、請求項22に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項24】
前記線形装填導管の第1の寸法及び前記サイフォン導管の第1の寸法は、各々約10ミクロン未満である、請求項21に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項25】
前記複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバは、少なくとも約100ミクロンの第1の寸法を有する、請求項20に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項26】
前記マイクロ流体デバイスに適用された薄膜を更に備え、前記薄膜は前記マイクロ流体デバイスの表面を形成する、請求項20に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項27】
前記薄膜によって形成された前記表面は、前記複数のマイクロチャンバの外面を提供する、請求項26に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項28】
前記薄膜によって形成された前記表面は、前記線形装填導管の外面を更に提供する、請求項27に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項29】
前記薄膜によって形成された前記表面は、前記終端チャンバの外面を更に提供する、請求項28に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項30】
前記薄膜は、約70~90ミクロンの厚さを有する、請求項26~29のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項31】
前記薄膜は約80ミクロンの厚さを有する、請求項26~29のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項32】
前記薄膜はガス透過性熱可塑性材料を含む、請求項26~31のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項33】
前記ガス透過性熱可塑性材料は、前記試料に対して透過性ではない、請求項32に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項34】
前記ガス透過性熱可塑性材料は、環状オレフィンコポリマーを含む、請求項32~33のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項35】
前記終端チャンバの前記容積は、前記複数のマイクロチャンバの合計容積の50パーセント(50%)以下である、請求項20~34のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項36】
前記終端チャンバの前記容積は、前記複数のマイクロチャンバの合計容積の25パーセント(25%)以下である、請求項20~34のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項37】
前記終端チャンバの前記容積は、前記複数のマイクロチャンバの合計容積の10パーセント(10%)以下である、請求項20~34のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項38】
射出成形された熱可塑性材料を更に含む、請求項20~37のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項39】
試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、
第1のマイクロ導管部分を介して装填導管及び試料受け取りマイクロチャンバのアレイに流体的に結合される入口ポートと、
前記入口ポートと前記第1のマイクロ導管部分との間に流体的に結合された幅広導管部分であって、前記第1のマイクロ導管部分は、前記幅広導管部分の深さよりも小さい深さを有する、幅広導管部分と、を備え、
前記第1のマイクロ導管部分は、直線導管を備え、前記幅広導管部分は、前記第1のマイクロ導管部分の前記直線導管とは異なるように配向された非直線導管又は直線導管のうちの少なくとも1つを含む部分を備える、マイクロ流体デバイス。
【請求項40】
前記幅広導管部分の前記深さは少なくとも約100ミクロンである、請求項39に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項41】
前記第1のマイクロ導管部分の前記深さは約10ミクロン以下である、請求項40に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項42】
前記第1のマイクロ導管経路の経路は、少なくとも約90度の曲線、90度の角度、鋭角、鈍角、曲線、複数の曲線、又は複数の角度のうちの少なくとも1つを含む、請求項39に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項43】
前記マイクロ流体デバイスは、熱可塑性射出成形マイクロ流体デバイスである、請求項39に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項44】
前記マイクロ流体デバイスの表面の形態の薄膜を更に備える、請求項39に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項45】
前記薄膜は、前記試料受け取りマイクロチャンバの外面を提供する、請求項44に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項46】
前記表面の形態の前記薄膜は、前記装填導管の外面を更に提供する、請求項45に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項47】
前記薄膜は、約70~90ミクロンの厚さを有する、請求項44~46のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項48】
前記薄膜は約80ミクロンの厚さを有する、請求項44~46のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項49】
前記薄膜はガス透過性熱可塑性材料を含む、請求項44~48のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項50】
前記ガス透過性熱可塑性材料は、前記試料に対して透過性ではない、請求項49に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項51】
前記ガス透過性熱可塑性材料は、環状オレフィンコポリマーを含む、請求項44~50のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項52】
前記マイクロ流体デバイスの少なくとも一部は、実質的に光学的に透明である、請求項39~51のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項53】
前記マイクロ流体デバイスは、連続射出成形熱可塑性部品を集合的に形成する複数のマイクロ流体デバイスのうちの1つである、請求項39~52のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項54】
前記マイクロ流体デバイスは、前記複数のマイクロ流体デバイスのうちの別のマイクロ流体デバイスに流体的に結合されていない、請求項53に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項55】
生体試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、
入口ポートと、
複数のマイクロチャンバと、
各々が前記入口ポート及び前記複数のマイクロチャンバに流体的に結合された複数の装填導管と、
複数のサイフォン導管であって、前記サイフォン導管の各々は、装填導管をマイクロチャンバに流体的に結合する、複数のサイフォン導管と、を備え、
前記複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバは、任意選択で実質的に装填導管に面する第1の側と、装填導管に面していないか、又は前記複数のマイクロチャンバのうちの隣接するマイクロチャンバに実質的に面している第2の側とを備え、
サイフォン導管は、前記第2の側を介して前記装填導管を前記マイクロチャンバに流体的に結合する、マイクロ流体デバイス。
【請求項56】
前記サイフォン導管は湾曲経路を含む、請求項55に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項57】
前記湾曲経路は、約90度の折り返しを含む、請求項56に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項58】
前記湾曲経路は、少なくとも約10ミクロンの曲率半径を有する折り返しを含む、請求項56に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項59】
前記複数のサイフォン導管の各々は、長さが実質的に等しい、請求項55に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項60】
前記複数のサイフォン導管の各々は、前記装填導管上の実質的に等距離の位置に配置される、請求項55に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項61】
前記マイクロ流体デバイスは、熱可塑性射出成形マイクロ流体デバイスである、請求項55に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項62】
前記マイクロ流体デバイスの表面の形態で適用された薄膜を更に備える、請求項55~61のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項63】
前記表面の形態の前記薄膜は、前記複数のマイクロチャンバの外面を提供する、請求項62に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項64】
前記薄膜によって形成された前記表面は、前記複数の装填導管の外面を更に提供する、請求項63に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項65】
前記薄膜は、約70~90ミクロンの厚さを有する、請求項62~64のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項66】
前記薄膜は約80ミクロンの厚さを有する、請求項62~64のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項67】
前記薄膜はガス透過性熱可塑性材料を含む、請求項62~66のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項68】
前記ガス透過性熱可塑性材料は、前記試料に対して透過性ではない、請求項67に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項69】
前記ガス透過性熱可塑性材料は、環状オレフィンコポリマーを含む、請求項67~68のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項70】
前記マイクロ流体デバイスの少なくとも一部は、実質的に光学的に透明である、請求項55~69のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項71】
前記マイクロ流体デバイスは、連続射出成形熱可塑性部品を集合的に形成する複数のマイクロ流体デバイスのうちの1つである、請求項55~69のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項72】
前記マイクロ流体デバイスは、前記複数のマイクロ流体デバイスのうちの別のマイクロ流体デバイスに流体的に結合されていない、請求項71に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項73】
生体試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、
入口ポートと、
複数のマイクロチャンバと、
各々が前記入口ポート及び前記複数のマイクロチャンバに流体的に結合された複数の装填導管と、を備え、前記複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバは、4つの実質的に長方形の側壁を含む実質的に長方形の三次元形状を含み、2つの隣接する側壁は湾曲した角部によって接合されている、マイクロ流体デバイス。
【請求項74】
前記湾曲した角部は、少なくとも約10ミクロンの半径を有する、請求項73に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項75】
前記複数のマイクロチャンバの各々は、少なくとも約100ミクロンの深さを有する、請求項73に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項76】
前記マイクロチャンバの深さと、前記マイクロチャンバと前記複数のマイクロチャンバのうちの隣接するマイクロチャンバとの間の最小距離との比は、少なくとも約3:1である、請求項73に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項77】
前記マイクロチャンバの深さと、前記マイクロチャンバと前記複数のマイクロチャンバのうちの隣接するマイクロチャンバとの間の最小距離との比は、少なくとも約5:1である、請求項73に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項78】
各々が試料を処理するように構成された複数のマイクロ流体アセンブリを含むマイクロ流体デバイス内に試料を装填する方法であって、前記方法は、
複数の圧力パルスを前記マイクロ流体アセンブリ内の内容物に印加することであって、前記複数の圧力パルスは、第1の時間間隔にわたって印加される第1の圧力と、第2の時間間隔にわたって印加される第2の圧力とを含む、ことを含み、ここで、
前記マイクロ流体アセンブリの各々は、入口と、第1の端部において前記入口に流体的に結合された装填導管と、前記試料を受け取るように構成された少なくとも1つの行き止まりマイクロチャンバと、前記マイクロチャンバ及び前記装填導管に流体的に結合されたサイフォン導管とを備え、
ある体積の前記試料は、前記マイクロ流体デバイスの複数の前記マイクロチャンバに引き込まれる、方法。
【請求項79】
前記マイクロ流体デバイス内に引き込まれる前記試料の前記体積は、前記マイクロチャンバの総容積容量未満である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記第1の圧力は少なくとも約75psiであり、前記第2の圧力は少なくとも約10psiである、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記第1の時間間隔及び前記第2の時間間隔は実質的に等しい、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記第1の時間間隔及び前記第2の時間間隔は、各々、少なくとも約2.5秒であり、かつ多くとも約10秒である、請求項78に記載の方法。
【請求項83】
前記マイクロ流体デバイスは、前記装填導管、前記少なくとも1つのマイクロチャンバ、及び前記サイフォン導管のうちの少なくとも1つの表面を形成するガス透過性フィルムを更に備える、請求項78~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記ガス透過性フィルムは、大気圧ではガス透過性ではないが、大気圧よりも高い圧力ではガス透過性である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記圧力パルスを印加することは、前記少なくとも1つのマイクロチャンバ内のガスを、前記ガス透過性フィルムに通過させる、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記ガス透過性フィルムは、約80ミクロン未満の厚さを有する、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記ガス透過性フィルムは熱可塑性材料を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項88】
前記熱可塑性材料は環状オレフィンコポリマーを含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記ガス透過性フィルムは実質的に透明である、請求項83に記載の方法。
【請求項90】
前記ガス透過性フィルムは、液体に対して実質的に不透過性であるように構成される、請求項83に記載の方法。
【請求項91】
前記方法は、単一の統合機械を使用して実施される、請求項78~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記試料は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試薬及び核酸分子を含む、請求項78~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
請求項78~92のいずれか一項に記載の装填方法を含み、前記複数のマイクロチャンバを熱サイクルすることによってPCR増幅を行うことを更に含む、生体試料処理方法。
【請求項94】
前記複数のマイクロチャンバの画像を取得することを更に含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
PCR増幅が成功裏に達成された前記複数のマイクロチャンバの前記画像内のマイクロチャンバの数を計数することを更に含む、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
PCR増幅が成功裏に達成された前記複数のマイクロチャンバの前記数にポアソン統計を適用して、核酸濃度を導出することを更に含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記装填導管に流体的に結合され、クロストークを低減するために前記試料の過剰充填を受け入れるように構成された少なくとも1つの行き止まり終端チャンバを更に含む、請求項78~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記装填導管は、複数の副導管と、前記少なくとも1つの入口を前記複数の副導管に流体的に結合するスプリッタ導管構造とを更に備える、請求項78~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記複数の副導管は、複数の線形副導管を備え、前記複数の線形副導管の各々は、第1の副導管端部において前記スプリッタ導管構造に接続され、第2の副導管端部において終端チャンバに接続される、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスに試料を装填する方法であって、前記マイクロ流体デバイスは、入口と、第1の端部において前記入口に流体的に結合された少なくとも1つの装填導管と、複数のマイクロチャンバと、前記複数のマイクロチャンバを前記少なくとも1つの装填導管に流体的に結合する複数のサイフォン導管とを備え、前記方法は、
前記マイクロ流体デバイスの流体内容物に複数の圧力パルスを印加することであって、前記複数の圧力パルスは、第1の時間間隔にわたって印加される第1の圧力を含む複数のピークと、第2の時間間隔にわたって印加される第2の圧力を含む複数の谷とを交互に含み、それによって、前記複数のマイクロチャンバ内のガスをガス透過性フィルムに通過させる、ことを含み、ここで、
前記試料を含むある体積の試薬は、前記マイクロ流体デバイスの前記マイクロチャンバ内に引き込まれ、ここで、
前記マイクロ流体デバイスは、前記少なくとも1つの装填導管、前記複数のマイクロチャンバ、及び前記複数のサイフォン導管の表面を形成するガス透過性フィルムを備える、方法。
【請求項101】
前記マイクロ流体デバイス内に引き込まれる前記試料を含む試薬の前記体積は、前記複数のマイクロチャンバの総体積容量未満である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
ある体積の非試料流体を前記マイクロ流体デバイスに引き込むことを更に含む、請求項100~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記第1の圧力は少なくとも約75psiであり、前記第2の圧力は約10psiである、請求項100~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記第1の時間間隔及び前記第2の時間間隔は実質的に等しい、請求項100~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記第1の時間間隔及び前記第2の時間間隔は、各々、少なくとも約2.5秒であり、かつ多くとも約10秒である、請求項100~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記複数の圧力パルスが印加された後、第3の時間間隔の間、前記マイクロ流体デバイスの前記流体内容物に第3の圧力を印加することを更に含む、請求項100~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記第3の圧力は少なくとも約50psiである、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記第3の時間間隔は少なくとも約5分である、請求項106~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記ガス透過性フィルムは、約80ミクロン未満の厚さを有する、請求項100~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記ガス透過性フィルムは熱可塑性材料を含む、請求項100~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記熱可塑性材料は環状オレフィンコポリマーを含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記ガス透過性フィルムは実質的に透明である、請求項100~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記ガス透過性フィルムは、液体に対して実質的に不透過性であるように構成される、請求項100~112のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、共に2021年9月14日に出願された米国仮出願第63/244,234号及び第63/244,235号の利益を主張する。適用可能な管轄において許容される範囲で、これらの出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、小規模で流体を取り扱う。典型的には、マイクロ流体デバイスはサブミリメートル規模で動作し、マイクロリットル、ナノリットル、又はより少量の流体を取り扱う。
【0003】
マイクロ流体構造の1つの用途は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)である。dPCRは、多数のチャンバのアレイを提供するマイクロ流体構造の各チャンバ内で核酸試料を1つ以下の核酸鋳型に希釈し、アレイ全体でPCR反応を実行する。鋳型のPCR増幅に成功したチャンバを数えて、その結果にポアソン統計を適用することにより、標的核酸が定量化される。未知の試料のPCR増幅率を既知のqPCR標準のセットの率と比較することによって鋳型を定量化する、普及している定量的リアルタイムPCR(qPCR)とは異なり、dPCRは、より高い感度、より高い精度、及びより高い再現性を示すことが証明されている。
【0004】
ゲノム研究者及び臨床医にとって、dPCRは、まれな変異株の検出、コピー数多型の定量化、及び次世代シーケンシングライブラリの定量化において特に強力である。無細胞DNA及びウイルス量の定量化を用いるリキッドバイオプシーのための臨床の場における潜在的な使用は、dPCR技術の価値を更に高める。既存のdPCRソリューションでは、エラストマのバルブアレイ、シリコン貫通孔アプローチ、及び液滴のマイクロ流体のカプセル化が使用されてきた。利用可能なdPCRプラットフォームの数が増えているにもかかわらず、PCR増幅サイクルの数を数えることに依拠しているより古いqPCR技術と比較すると、dPCRは不利な状況であった。スループット、使いやすさ、性能、及びコストの組み合わせは、dPCRが市場においてより採用されるための主な障壁である。
【発明の概要】
【0005】
マイクロ流体デバイスでは、主なファウリングのメカニズムは、マイクロ構造内部に閉じ込められた空気又は気泡である。熱可塑性プラスチックのガス透過率は非常に低いため、熱可塑性材料を使用してマイクロ流体構造を作成する場合、これは特に問題になり得る。閉じ込められた空気によるファウリングを回避するために、マイクロ流体構造は、熱可塑性材料を用いた単純な直線導管若しくは分岐導管設計のいずれかを使用するか、又はエラストマなどの高ガス透過性材料を使用してデバイスを製造する。しかしながら、単純な設計は、マイクロ流体デバイスの考えられる機能性を制限し、エラストマ材料は、特に大規模に製造するのが困難であり、かつ費用がかかる。
【0006】
したがって、熱可塑性材料を使用するマイクロ流体デバイス及び構造など、dPCRに効果的に使用され得るマイクロ流体デバイスを製造する際に使用され得る費用効果の高い設計が望まれる。加えて、熱可塑性物質のガス透過性が低いので、試料に対してdPCRプロセスを実行する前に捕捉された空気を除去することによって熱可塑性マイクロ流体デバイスにおけるファウリングを低減するための改善された方法が望まれる。
【0007】
本開示は、試料処理及び/又は分析ためのマイクロ流体デバイスを説明する。本開示のマイクロ流体デバイスは、熱可塑性材料などのポリマー材料から形成されてもよく、圧力が解放されたときにガスバリアとして機能しながら、加圧ガス放出(脱気)を可能にするガス透過性フィルムを含んでもよい。マイクロ流体デバイスを形成するための熱可塑性物質の使用は、安価で高度に拡張可能な射出成形プロセスの使用を可能にする。ガス透過性フィルムは、加圧を介してガス放出する能力を提供し、ガス透過性フィルムを含まないいくつかのマイクロ流体構造に存在し得るファウリング問題を回避し得る。
【0008】
本明細書に開示される本発明の実施形態は、試料を処理するためのマイクロ流体デバイスであって、閉鎖システムに流体的に結合された入口ポートを備えるマイクロ流体デバイスを含む。閉鎖システムは、複数の線形装填導管、複数の終端チャンバ、及び試料を受け取るための複数のマイクロチャンバを備えるか、又は本質的にそれらから成るか、又はそれらから成る。複数の終端チャンバのうちの1つの終端チャンバは、複数の線形装填導管のうちの1つの線形装填導管に流体的に結合される。複数のマイクロチャンバのうちの複数のマイクロチャンバは、複数の線形装填導管のうちの1つの線形装填導管に流体的に結合される。第1の複数のマイクロチャンバと、同じ近接線形装填導管に流体的に結合された第1の終端チャンバとに関して、第1の終端チャンバの容積は、第1の複数のマイクロチャンバの合計容積以下である。閉鎖システムには、終端チャンバより大きい廃棄物リザーバは設けられていない。入口、装填導管、マイクロチャンバ及び終端チャンバは全て、互いに流体連通していてもよく、任意選択で、別の導管又はチャンバと流体連通していなくてもよい。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態は、試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスを開示し、入口ポートと、複数の行き止まりマイクロ流体アセンブリと、を備え、行き止まりマイクロ流体アセンブリの各々は、入口ポートに流体的に結合される。行き止まりマイクロ流体アセンブリの各々は、線形装填導管と、線形装填導管に流体的に結合された終端チャンバと、線形装填導管に流体的に結合され、かつ線形装填導管に近接する試料を受け取るための複数のマイクロチャンバと、を備え、終端チャンバの容積は、複数のマイクロチャンバの合計容積以下である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの(例えば、全ての)マイクロチャンバが行き止まりである。行き止まりマイクロチャンバは、任意選択で、例えばマイクロチャンバを装填導管に流体接続するサイフォン導管を介して、装填導管以外の試料流体又は他の液体交換を可能にしない。
【0010】
本明細書に開示される本発明の実施形態はまた、試料を処理するためのマイクロ流体デバイスであって、第1のマイクロ導管部分を介して装填導管及び試料受け取りマイクロチャンバのアレイに流体的に結合される入口ポートと、入口ポートと第1のマイクロ導管部分との間に流体的に結合された幅広導管部分とを含む。第1のマイクロ導管部分は、幅広導管部分の深さよりも小さい深さを有する。第1のマイクロ導管部分は直線経路を含む。幅広導管部分は、第1のマイクロ導管部分の直線経路とは異なって配向された非直線経路又は直線経路のうちの少なくとも1つを含む経路を備える。
【0011】
本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、生体試料を処理するためのマイクロ流体デバイスであって、入口ポートと、各々が入口ポート及び複数のマイクロチャンバに流体的に結合された複数の装填導管とを備えるマイクロ流体デバイスを含む。この実施形態は、複数のサイフォン導管を含み、各サイフォン導管は、装填導管をマイクロチャンバに流体的に結合する。マイクロチャンバは、装填導管に実質的に面する第1の側と、いくつかの実施形態では装填導管に実質的に面していない、例えば装填導管に平行でない第2の側とを含む。いくつかの実施形態では、第2の側は、隣接するマイクロチャンバに面しておらず、サイフォン導管が、第2の側を介して装填導管をマイクロチャンバに流体的に結合する。いくつかの実施形態では、サイフォン導管は、装填導管をマイクロチャンバの第2の側に接続するために、非線形(例えば、湾曲)形状を有する。任意選択的に、装填導管内のサイフォン導管のオリフィスは、マイクロチャンバに最も近接する装填導管の部分の上流に位置する。
【0012】
本明細書で論じられる本発明のいくつかの実施形態は、生体試料を処理するためのマイクロ流体デバイスを開示し、マイクロ流体デバイスは、入口ポートと、複数の装填導管とを備える。各装填導管は入口ポート及び複数のマイクロチャンバに流体的に結合され、複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバは、4つの実質的に長方形の側壁を含む実質的に長方形の三次元形状を含む。2つの隣接する側壁は湾曲した角部によって接合されている。
【0013】
複数のマイクロ流体アセンブリを備えるマイクロ流体デバイス内で生体試料を処理する方法が開示される。各マイクロ流体アセンブリは、デジタルPCRプロセスを使用して試料を処理するように構成される。マイクロ流体アセンブリの各々は、入口と、第1の端部において入口に流体的に結合された装填導管と、試料を受け取るように構成された1つ以上の行き止まりマイクロチャンバと、マイクロチャンバ及び装填導管に流体的に結合されたサイフォン導管とを備える。本方法は、マイクロ流体アセンブリ内の内容物に複数の圧力パルスを印加する工程を含む。一実施形態では、複数の圧力パルスを印加することは、第1の時間間隔にわたって第1の圧力を印加することと、第2の時間間隔にわたって第2の圧力を印加することとを交互に行うことを含み、ある体積の試料がマイクロ流体デバイスの複数のマイクロチャンバ内に引き込まれる。
【0014】
生体試料を処理するために、生体試料をマイクロ流体デバイスに装填する方法もまた開示される。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、入口と、第1の端部において入口に流体的に結合された1つ以上の装填導管と、生体試料を受け取る及び/又はデジタル化するための複数のマイクロチャンバと、複数のマイクロチャンバを1つ以上の装填導管に流体的に結合する複数のサイフォン導管とを備える。マイクロ流体デバイスは、1つ以上の装填導管と、マイクロチャンバと、サイフォン導管の表面を形成するガス透過性フィルムを更に備える。
【0015】
これらの方法の実施形態では、複数の圧力パルスがマイクロ流体デバイスの流体内容物に印加される。複数の圧力パルスは、第1の時間間隔にわたって印加される第1の圧力を有する複数のピークと、第2の時間間隔にわたって印加される第2の圧力を含む複数の谷とを交互に含む。一連の圧力パルスが印加された後、複数のマイクロチャンバ内に存在する気泡は、ガス透過性フィルムを通過させられ、生体試料を含むある体積の試薬が、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバ内に引き込まれる。
【0016】
本開示の追加の態様及び利点は、本開示の例示的な実施形態のみが示され、説明されている、以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかとなるであろう。認識されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、全て本開示から逸脱することなく、様々な明白な点において修正することができる。したがって、図面及び説明は、本質的に例示的なものと考えられるべきであり、限定的なものとして考えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスを示す。
図2-1】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス処理ユニットを示す。
図2-2】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス処理ユニットを示す。
図3】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の底面斜視図を示す。
図4】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の底面図を示す。
図5】「A-B」と標識された軸に沿った、図4に示されるようなマイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の側面図を示す。
図6A】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の底面図を示す。
図6B図6Aに示されるマイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の「A-B」と標識された軸に沿った側面図を示す。
図7】本発明の実施形態の製造方法を示している。
図8】生体試料のためのデジタルPCRプロセスを実行するために、本発明の1つ以上の実施形態とともに使用可能な例示的機械のブロック図を示す。
図9】マイクロ流体デバイスの流体装填制御を提供する際に使用するための空気圧ユニットとともに、試料処理及び/又は分析のためのデバイスの概略図を示す。
図10】本発明の1つ以上の実施形態の例示的な試料デジタル化プロセスを示す図である。
図11】本発明の1つ以上の実施形態の圧力パルス化プロセスを描写するグラフを示す。
図12】本明細書に説明される本発明の1つ以上の実施形態による、図8に図示される機械によって行われ得る、例示的デジタルPCRラボラトリーワークフローを示す。
図13】本発明の1つ以上の実施形態に従って使用されるデジタルPCRプロセスを示す。
【0018】
本発明を上記の図面を参照して説明したが、図面は例示であることを意図したものであり、他の実施形態は本発明の趣旨と一致し、本発明の範囲内にある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態は、熱可塑性射出成形プロセスから形成されたマイクロ流体構造を提供するマイクロ流体デバイスであって、圧力が解放されたときにガスバリアとして機能しながら、加圧ガス放出を可能にするために、空気に対して選択的に透過性であるが試料液体に対しては透過性でない半透過性薄膜を組み込むマイクロ流体デバイスを説明する。熱可塑性プラスチックを使用してマイクロ流体構造を形成すると、安価なかつ拡張性の高い射出成形プロセスを使用できるようになり、一方、薄膜は、加圧によってガスを放出する能力を提供し、薄膜を含まない一部のマイクロ流体構造にあるファウリングの問題を回避する。マイクロ流体デバイス構造設計は、線形装填導管(マイクロ導管)及びサイフォン導管によって接続され、熱可塑性物質から形成される行き止まりマイクロチャンバのアレイを組み込む。本発明の実施形態は、マイクロチャンバのアレイ内に試料を堆積させるためにデジタルPCR用途において使用することができ、それによってデジタルPCR(dPCR)において核酸を定量化するために使用することができる、製造可能性のために最適化された機能設計を組み込む。
【0020】
ここで、本明細書の一部を形成し、実施形態を実施する特定の例を例示する目的で示す添付の図面を参照して、様々な実施形態が、以下により詳細に説明される。しかしながら、本明細書は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本明細書が徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。とりわけ、本明細書は、方法又はデバイスとして具体化できる。したがって、本明細書の様々な実施形態のいずれも、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態、又はソフトウェア及びハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形態をとることができる。したがって、以下の明細書は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0021】
本明細書に言及される全ての公開物、特許、及び特許出願は、各個別の公開物、特許、又は特許出願が、具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
図1は、試料を処理するための本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイススライド1000を示す。複数のスライドは、溶接によって自動化適合プレートフレームに結合され得る。プレートフレームは、当技術分野で知られているように、単一入口ウェルを有する標準フォーマットプレートフレームであってもよい。他の適切な方法もまた、複数のスライドを一緒に結合するために使用され得る。本発明の一実施形態では、図1に示す単一スライド1000は、4ユニットアレイであり、複数の処理ユニットを含む。例えば、図1のスライド1000は、4つの処理ユニット101、102、103及び104を含む。他の実施形態では、スライド1000は、4つより少ない又は多い処理ユニットを含んでもよい。例えば、スライド1000は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の処理ユニットを含み得る。図1に示される処理ユニット(「デバイス」)101~104は、それぞれの入口ポート、すなわちデバイス101用の入口ポート111、デバイス102用のポート112、デバイス103用のポート113、及びデバイス104用のポート104を含む。デバイス101~104は、本発明の様々な実施形態において、単一の入口ポート又は複数の入口ポートを含むことができる。他の実施形態は、1つ、2つ、又はそれ以上の入口ポートを含んでもよい。
【0023】
本発明の実施形態において使用される方法は、単一又は複数の圧力差を入口ポートに適用して、溶液を入口ポートから導管、例えば、デバイス101~104についてそれぞれ図1に示されるような装填導管121~124に方向付けることを含んでもよい。あるいは、又はそれに加えて、デバイスは、複数の入口ポートを含み得、圧力差は、複数の入口ポートに適用され得る。デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)の入口は、空気ポンプ、真空源又は圧縮機などの流体制御モジュールと流体的に結合し得る。流体制御モジュールは、入口に正圧又は負圧を提供することができる。流体制御モジュールは、圧力差を印加して、デバイスを試料で充填し、試料をチャンバ又はマイクロチャンバ内に堆積(例えば、デジタル化)し得る。あるいは、又はそれに加えて、試料は、本明細書の他の箇所に記載されるように複数のチャンバ又はマイクロチャンバに堆積され得る。本発明の1つ以上の実施形態では、試料の充填及び堆積は、マイクロチャンバのチャンバ内に試料を装填するために、チャンバ又はマイクロチャンバ間に弁を使用せずに行われてもよい。例えば、導管の充填は、入口ポート内の試料と導管との間に1つ以上の圧力差を適用することによって実行され得る。圧力差(単数又は複数)は、試料を加圧することによって、又は導管及び/若しくはチャンバ若しくはマイクロチャンバに真空を1つ以上の指定された持続時間にわたって連続的に印加することによって達成され得る。チャンバの充填及び試料を含む溶液の堆積は、導管とチャンバとの間に圧力差を指定された持続時間にわたって適用することによって実行され得る。これは、入口ポートを介して導管を加圧するか、又はチャンバに真空を適用することによって達成され得る。試料を含む溶液は、各チャンバが試料の一部を収容するようにチャンバに入ることができる。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態による、図1の例示的なマイクロ流体デバイス処理ユニット101の図を含む。この実施形態では、マイクロ流体デバイス処理ユニット101は、入口ポート111に流体的に結合された閉鎖システム201を備える。入口ポート111を除いて、流体が閉鎖システム201に入ることができる他の入口はなく、液体が閉鎖システム201から出ることができる出口又は出口ポートはない。入口ポート111は、幅広導管部分203を備える装填導管121を介して、閉鎖システム201に流体的に結合され、幅広導管部分は、第1の端部で入力ポート111に結合され、第2の端部でステップダウン導管部分(例えば、第1のマイクロ導管部分)204に結合される。ステップダウン導管部分204は、一端で幅広導管部分203に、他端で装填導管ネットワーク部分205に流体的に結合される。装填導管ネットワーク部分205は、閉鎖システム201を用いて、ステップダウン導管部分204、幅広導管部分203、及び入口ポート111に流体的に結合される。本発明の一実施形態では、装填導管ネットワーク部分205は、「スプリッタ」設計を組み込み、ステップダウン導管部分204から、試薬を均一に分配するために、等しい流体抵抗(ステップダウン導管部分204と同様の導管深さ及び幅を有する)を有する2個、4個、8個、16個、32個、次いで、64個の導管に分割される。本発明の一実施形態では、スプリッタ設計は、以下に説明するものと同様の曲率半径を有する湾曲経路又は折り返しを利用することができる。
【0025】
閉鎖システム201は、複数の線形装填導管206を備え、各別個の線形装填導管206への流体接続又は結合を介して、装填導管ネットワーク部分205に接続される。各線形装填導管206は、一端の終端チャンバ207及び複数のマイクロチャンバ208に流体的に結合されている。本発明の一実施形態では、終端チャンバ207は、終端チャンバ207内に適切に経路指定されない場合、dPCRプロセス中に試薬をクロストークさせ得る、過剰な流体、試薬、又は試料等の廃棄物又は潜在的な「過剰充填」のためのレセプタクル又はリザーバを備えてもよい。複数の終端チャンバ207及び複数のマイクロチャンバ208を除いて、本発明のいくつかの実施形態では、閉鎖システム201は、廃棄物及び/又は流体レセプタクルのための他のリザーバを含まない。したがって、各線形装填導管は、その近接マイクロチャンバ及び終端チャンバとともに、マイクロチャンバアセンブリを備えてもよく、行き止まりであってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、閉鎖システム201内のマイクロチャンバ208の数は、10,000~30,000である。本発明の一実施形態では、同じ近接装填導管に流体的に結合された複数のマイクロチャンバ208は、2列に配置され、マイクロチャンバの1列は、線形装填導管206の各側に位置付けられる。各線形装填導管206はまた、入力ポート207に流体的に結合される。マイクロ導管内のマイクロチャンバの他の可能な配置もまた、本発明の実施形態内で使用されてもよい。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるHungらの米国特許第9,845,499号、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるZayacらの米国特許出願公開第2019/0264260号、及び参照によりその全体が本明細書に組み込まれるLinらの米国特許出願公開第2020/0384471号に開示されている構成、システム、方法、装置及びシステムは全て、本発明の実施形態内で使用することができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、終端チャンバの容積は、マイクロチャンバ208の容積よりも大きい。本発明の一実施形態では、終端チャンバの容積は、マイクロチャンバの容積の少なくとも約4倍である。本発明の一実施形態では、終端チャンバの容積は、同じ近接線形装填導管206に流体的に結合された複数のマイクロチャンバの総合計容積の10%以下である。本発明の他の実施形態では、終端チャンバの容積は、マイクロチャンバの容積の少なくとも約5倍、10倍、15倍、20倍又はそれ以上である。本発明のいくつかの実施形態では、終端チャンバの容積は、線形装填導管206に流体的に結合された複数のマイクロチャンバの総合計容積の約0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、100%、200%以下又はそれ以上である。本発明のいくつかの実施形態では、全終端チャンバの合計容積は、線形装填導管206に流体的に結合された複数のマイクロチャンバの総合計容積の約0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、100%、200%以下又はそれ以上である。他の実施形態では、入口ポート111は試料リザーバに流体的に結合され、終端チャンバの容積は、線形装填導管206に流体的に結合される複数のマイクロチャンバの総合計容積の約0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、100%、200%以下、又はそれ以上である。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の底面斜視図を示し、2つの線形装填導管206の一部を示す。本発明の一実施形態では、線形装填導管206は、約10ミクロンの深さを有する。本発明の一実施形態において、線形装填導管206は、複数のマイクロチャンバ208に流体的に結合される。各マイクロチャンバ208は、サイフォン導管302を介して線形装填導管206に流体的に結合される。本発明のいくつかの実施形態では、サイフォン導管302は少なくとも約10ミクロンの深さを有し、マイクロチャンバ208は少なくとも約100ミクロンの深さを有する。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の底面図を示し、線形装填導管部分206に沿って2つのマイクロチャンバの2列に配置された4つのマイクロチャンバ208を有する線形装填導管208の一部を示す。マイクロチャンバ208は、サイフォン導管302によって線形装填導管206に接続される。本発明のいくつかの実施形態において、マイクロチャンバ208は、図3及び4に示されるように、実質的に長方形の三次元形状である。本発明の一実施形態では、マイクロチャンバは、4つの実質的に長方形の側壁、4つの側縁部、4つの上(又は底)縁部、及び実質的に長方形の上(又は底)壁又は基部を備え、各側壁は側縁部によって2つの他の側壁に接続され、上(又は底)壁は4つの上(又は底)縁部によって各側壁に接続される。本発明のいくつかの実施形態では、4つの側縁部の各縁部は、少なくとも約90度の円弧を含む。本発明の一実施形態では、円弧は少なくとも約10ミクロンの半径を含む。射出成形プロセスにおいて、90度の鋭い縁部又は角部を有することは、物理的に禁止され得る。長方形のマイクロチャンバの90度の角部に曲率半径を加えることは、射出成形金型の離型を助ける。当該分野で公知の先行技術のマイクロ流体デバイスは、一般に、円筒形状のマイクロチャンバを利用しており、これは、安価で高度にスケーラブルな射出成形プロセスを使用して製造することがより容易である。しかしながら、dPCR用途では、分析される総体積を増加させることによってdPCR結果の感度を増加させることが非常に望ましいので、長方形のマイクロチャンバは、同様の寸法を有する円筒形状よりも大きな容積を有するので、長方形形状を有するマイクロチャンバが円筒形状のマイクロチャンバよりも好ましい。本発明の一実施形態では、少なくとも約10ミクロンの各側縁部の曲率半径を有する長方形のマイクロチャンバ208は、従来技術のマイクロ流体構造よりもマイクロチャンバ当たりの総分析体積を依然として増加させながら、射出成形プロセスを使用してマイクロ流体デバイスの製造可能性を大幅に改善する。
【0030】
一方では、マイクロ流体デバイス上に可能な限り多くのマイクロチャンバを適合させることによって空間の使用を最大化することがdPCRプロセスにとって最適であるが、現在の熱可塑性射出成形の制限は、高く薄いプラスチック壁を作成することを困難にし、したがって、製造可能性の目的のために、マイクロチャンバ間のある程度の間隔が、構造的完全性を確実にするために必要とされ得る。製造可能性はまた、線形装填導管に隣接する列において、マイクロチャンバを互いから等距離に位置付けることによって補助され得る。本発明のいくつかの実施形態で使用されるアスペクト比は、マイクロチャンバの高さを、列内の2つのマイクロチャンバ間の距離又は列間の距離で割ったものとして定義することができる。図3及び4はまた、少なくとも約3のアスペクト比を有する本発明のいくつかの実施形態におけるマイクロ流体構造を示す。したがって、本発明の一実施形態では、マイクロチャンバの深さ(又は高さ)が105ミクロンである場合、2つのマイクロチャンバ間の最小距離は少なくとも約3である。本発明の別の実施形態では、2つのマイクロチャンバ間の最小距離に対するマイクロチャンバの深さの比は、少なくとも約5である。本発明の他の実施形態では、少なくとも約3、5又はそれ以上のアスペクト比を利用することができる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、図3及び図4に示されるようなサイフォン導管302は、マイクロチャンバへの経路の一部を含む。dPCR試薬のクロストークを回避するために、例えば、マイクロチャンバ間の経路の距離を最大化することが望ましい。加えて、マイクロチャンバ間のサイフォン導管の存在を減少させ、マイクロチャンバの基部及び開口部の両方の周囲に曲率半径を追加することは、鋭い角部は離型するのがより困難であるので、射出成形構造の排出にも役立つ。したがって、非直線経路を含むサイフォン導管は、本発明の実施形態に含まれてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、非直線経路は、少なくとも約90度の円弧、90度の角度、鋭角、鈍角、曲線、複数の曲線、又は複数の角度のうちの少なくとも1つを含む。本発明の一実施形態では、非直線経路は、約90度に実質的に等しく、少なくとも約10ミクロンの半径を有する円弧を含む。
【0032】
加えて、製造性の観点から、サイフォン導管を追加し、マイクロチャンバ間にサイフォン導管を配置することは、金型充填の困難さを増加させ得る(射出成形プロセスの制限が、高く薄い壁を作成することをより困難にし得る方法と同様に)。したがって、実質的に等しい長さであり、マイクロチャンバ間に実質的に等しい間隔で配置されたより長いサイフォン導管は、PCR試薬のクロストークの回避の観点から最適であると考えられ得る。本発明の一実施形態では、複数のサイフォン導管は、線形装填導管上の隣接するサイフォン導管から実質的に等距離の位置に配置されてもよい。
【0033】
図5は「A-B」と標識された軸に沿った、図4に示されるようなマイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の側面図を示す。マイクロチャンバ208を含む熱可塑性マイクロ流体構造は、「上部」に面する基部壁と、「底部」の近くに位置付けられ、マイクロチャンバ208及び線形装填導管206に流体的に結合されるサイフォン導管302とともに示される。薄膜501は、図5にラベル付けされた「底部」から全てのマイクロ流体構造を覆う。図5の「上部」及び「底部」の表示は、標準的なプレートフレーム上のその位置付けを反映しており、マイクロ流体構造を含む処理ユニットを含有するプレートが上下反転され、次いで、リザーバを伴うフレームにレーザ溶接される。本発明の一実施形態では、図5のマイクロ流体構造の上部から底部(フィルムなし)までの厚さは、約1.5mmである。薄膜501は、マイクロ流体構造の表面を覆うために使用される。薄膜は、低圧ではガス不透過性であるが、圧力が加えられたときに薄膜を通してガス放出を可能にし、したがって、圧力下で少なくとも部分的にガス透過性である。本発明のいくつかの実施形態において、ガス透過性フィルムは、大気圧ではガス透過性ではないが、大気圧よりも高い圧力ではガス透過性である。いくつかの実施形態では、薄膜は、大気圧を上回る1つ以上の選択された圧力において、ガス透過性であるが、液体透過性ではない。本発明のいくつかの実施形態において、薄膜は、厚さが約80ミクロンであり、環状オレフィンポリマーから構成される。本発明の実施形態で使用される1つの適切な薄膜は、半ガス透過性フィルムTOPAS(登録商標)COC6013である。本発明の他の実施形態では、60、70、80、90、100ミクロン又はこれらの厚さ内の任意の範囲の厚さを有する半ガス透過性フィルムを使用することができる。
【0034】
図6Aは、入口ポート111を示すマイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の上面図を示す。入口ポート111は、入口601及びランディングパッド602を備える。図6Aはまた、入口ポート111に流体的に結合された幅広導管部分203と、幅広導管部分203に流体的に結合されたステップダウン導管部分204とを示す。図6Bは、「A-B」と標識された軸に沿った、図6Aに示されるような入口ポート111、幅広導管部分204、及びステップダウン導管部分204を描写する、マイクロ流体デバイス処理ユニットの一部の側面図を図示する。薄膜501は、図6A及び図6Bに示される構造の表面を覆うために使用される。
【0035】
図6A及び図6Bに示される様々な特徴は、熱可塑性射出成形プロセス中の製造可能性を改善するために本発明の実施形態に含まれる。射出成形のために、溶融したプラスチックを受け入れるための成形ツールが作られる。一般的にニッケルから作製され得るインサートは、マイクロチャンバ、マイクロ導管及びランディングパッドを含む逆のマイクロ流体特徴を有し、これらは成形ツールに「挿入」される。「インサートピン」は、インサートの反対側にある成形ツールの一部である。金型が閉じると、インサートピンがランディングパッドに当たり、溶融したプラスチックが金型内に移動し、インサート上にマイクロ流体特徴を転写する。金型が冷却されると、プラスチックはマイクロ流体デバイスを形成し、金型から取り出される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、入口ポート111は、熱可塑性射出成形プロセス中にマスクを使用して形成され得る角度付き側壁を備え、入口601のための繰り返されるピン衝撃後のアンダーカットの形成を防止し、理論的には、インサート寿命を増加させ、また、固着を低減することによって、より平滑な部品排出を可能にする。加えて、本発明のいくつかの実施形態では、ランディングパッド602は、入口601よりも広い直径を含み、それによって、ランディングパッドの縁部を損傷することなく、ピン衝撃をより良好に収容する。ランディングパッド602は、マイクロ流体射出成形プロセス中に使用される特徴であり、プラスチックデバイス内に貫通孔を形成する「インサートピン」を受け取るための円形領域を指す。インサートピンは、ショット毎にランディングパッドに物理的に「当たり」、パッドを劣化させる。ランディングパッド602はまた、抜き勾配で傾斜した側壁を含んでもよい。抜き勾配がないと、熱可塑性部品を金型から取り出すことが困難になる場合がある。抜き勾配を有するランディングパッドは、より容易な離型を補助する。より厚いランディングパッド、及びより大きな「パッド」又は直径を有するランディングパッドは、インサートの寿命を改善し、また、インサートピンの位置の変動に対してより大きな許容範囲を与えることができる。抜き勾配(真っ直ぐな垂直線からの傾斜)は、本明細書で説明される本発明の実施形態では、約5度で存在してもよいが、少なくとも約2度~少なくとも約5度の範囲、及びそれ以上のいずれかであってもよい。2度未満のものはいずれも、解放するための課題を提示し得る。
【0037】
幅広導管部分203は、マイクロ導管スプリッタネットワーク及び複数の線形装填導管と同様に、約10ミクロンの深さを有する、より狭いステップダウン導管部分204に経路を向ける前に約90度の曲線又は折り返しを有するものとして図6Aに示されている。本発明の一実施形態では、幅広導管部分における90度の折り返しは、少なくとも約10ミクロン、25ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、又はそれ以上の曲率半径を有する90度の円弧を含む。本発明の他の実施形態では、他の角度の折り返し、例えば、鋭角、鈍角、曲線、及び/又は複数の曲線及び角度が、幅広導管部分204において使用されてもよい。本明細書に開示される本発明の実施形態では、ステップダウンの前に、より広い導管において90度の折り返しを含むことは、射出成形プロセス後にプラスチックが冷却するときの自然な部品収縮の結果として、鋭い曲がりの領域におけるより狭い装填導管の収縮を防止する。折り返しでのそのような収縮は、より狭い導管を排出中に詰まらせ、したがって変形させる可能性がある。射出成形プロセス中に、10ミクロンの深さ及び/又は幅を有するマイクロ導管に90度の折り返しがある場合、導管は、いずれかの方向に6~8ミクロンの寸法に縮小され得、それによって、潜在的な導管閉塞問題を引き起こす可能性がある。
【0038】
図7は、本発明の実施形態で使用される製造方法を示している。図7では、射出成形プロセス701を用いて、マイクロ流体構造又はデバイスを形成する。マイクロ流体デバイスは、図3及び4に示されるように、サイフォン導管又はサイフォン開口部を介して少なくとも1つの装填導管及び/又はマイクロ導管に接続されるマイクロチャンバのアレイを含む。マイクロ流体構造の表面は、半ガス透過性フィルムによって覆われている。被覆プロセスにおいて、マイクロ流体構造の少なくとも1つの表面における開口部は、入口ポート、装填導管、マイクロ導管、サイフォン導管、マイクロチャンバ、及び終端チャンバを含むマイクロ構造を完全に封入するために覆われる。本発明のいくつかの実施形態では、カバーは、射出成形されたマイクロ流体構造に薄膜を適用するプロセス702によって実行される。
【0039】
一態様では、本開示は、マイクロ流体デバイスを使用して核酸試料を分析するための装置を提供する。装置は、1つ以上のマイクロ流体デバイスを保持するように構成された移送ステージを備え得る。マイクロ流体デバイスは、入口及び出口を備えたマイクロ導管、複数のサイフォン開口部によってマイクロ導管に接続された複数のマイクロチャンバ、及びマイクロ流体デバイスの表面を形成する薄膜を備え得る。装置は、マイクロ流体デバイスと流体連通している空気圧モジュールを備え得る。空気圧モジュールは、試薬をマイクロ流体デバイス内に装填し得、試薬をマイクロチャンバ内に堆積し得る。装置は、複数のマイクロチャンバと熱的連通しているサーマルモジュールを備え得る。サーマルモジュールは、マイクロチャンバの温度を制御し、マイクロチャンバを熱サイクルさせ得る。装置は、複数のマイクロチャンバを画像化することができる光モジュールを備え得る。装置はまた、移送ステージ、空気圧モジュール、サーマルモジュール、及び光モジュールに結合されたコンピュータプロセッサを備え得る。コンピュータプロセッサは、(i)試薬をマイクロ流体デバイス内に装填し、試薬を複数のマイクロチャンバ内に堆積するように空気圧モジュールに指示し、(ii)複数のマイクロチャンバに熱サイクルするようにサーマルモジュールに指示し、(iii)複数のマイクロチャンバを画像化するように光モジュールに指示するようにプログラムされ得る。
【0040】
移送ステージは、マイクロ流体デバイスを入れ、マイクロ流体デバイスを保持し、マイクロ流体デバイスを出すように構成され得る。移送ステージは、1つ以上の座標で静止し得る。あるいは、又はそれに加えて、移送ステージは、X方向、Y方向、Z方向、又はそれらの任意の組み合わせに移動することが可能であり得る。移送ステージは、単一のマイクロ流体デバイスを保持することが可能であり得る。あるいは、又はそれに加えて、移送ステージは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、又はそれ以上のマイクロ流体デバイスを保持することが可能であり得る。
【0041】
空気圧モジュールは、マイクロ流体デバイスの入口及び出口と流体連通するように構成され得る。空気圧モジュールは、複数の入口及び複数の出口に接続できる複数の接続点を有し得る。空気圧モジュールは、一度にマイクロチャンバの単一のアレイ、又は並行してマイクロチャンバの複数のアレイを充填及び/又は埋め戻すことが可能であり得る。空気圧モジュールは、真空モジュールを更に備え得る。空気圧モジュールは、マイクロ流体デバイスに増加した圧力を提供し得るか、又はマイクロ流体デバイスに真空を提供し得る。
【0042】
サーマルモジュールは、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバと熱的連通するように構成され得る。サーマルモジュールは、マイクロチャンバの単一のアレイの温度を制御するように、又はマイクロチャンバの複数のアレイの温度を制御するように構成され得る。熱制御モジュールは、マイクロチャンバの全てのアレイにわたって同じ熱的プログラムを実行し得、又はマイクロチャンバの異なるアレイに対して異なる熱的プログラムを実行し得る。
【0043】
光学モジュールは、複数の波長の光を放射かつ検出するように構成され得る。発光波長は、使用される指示薬及び増幅プローブの励起波長に対応し得る。放射される光は、約450nm、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、又はそれらの任意の組み合わせの最大強度を有する波長を含み得る。検出される光は、約500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、又はそれらの任意の組み合わせの最大強度を有する波長を含み得る。光モジュールは、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の波長の光を放射するように構成され得る。光モジュールは、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の波長の光を検出するように構成され得る。放射された光の波長は、指示薬分子の励起波長に対応し得る。別の放射された光の波長は、増幅プローブの励起波長に対応し得る。1つの検出された光の波長は、指示薬分子の発光波長に対応し得る。別の検出された光の波長は、マイクロチャンバ内の反応を検出するために使用される増幅プローブに対応し得る。光モジュールは、マイクロチャンバのアレイのセクションを画像化するように構成され得る。あるいは、又はそれに加えて、光モジュールは、マイクロチャンバのアレイ全体を単一の画像で画像化し得る。
【0044】
図8は、図12において後述するデジタルPCRプロセスを実行するための機械800を示す。機械800は、空気圧及びポンプモジュール801を含み、空気圧及びポンプモジュール801は、ポンプ及びマニホールドを含み、かつZ方向に移動させられ得、図10及び図11に記載されているような圧力の印加を実行するように動作可能である。空気への圧力の印加は、大気圧でマイクロ流体デバイス内に既に存在し、次いで、流体(例えば、非試料流体で覆われた試料流体)を押し込むために圧力が印加されるにつれて圧縮される空気を指す。機械800はまた、マイクロ流体デバイスを熱サイクルさせ、それによってポリメラーゼ連鎖反応を実行させるための、フラットブロックサーマルサイクラーなどのサーマルモジュール802を含む。機械800は更に、マイクロ流体デバイス内のどのマイクロチャンバがPCR反応の実行に成功したかを光学的に判定することができる、落射蛍光光モジュールなどの光モジュール803を含む。光モジュール803は、この情報をプロセッサ804に供給し得、処理システム804は、ポアソン統計を使用して、成功したマイクロチャンバの生のカウントを核酸濃度に変換する。移送ステージ805を使用して、所与のマイクロ流体デバイスを様々なモジュール間で移動させ、複数のマイクロ流体デバイスを同時に取り扱う場合がある。この機能性を単一の機械に組み込むことと組み合わせられる、上記のマイクロ流体デバイスは、dPCRの他の実装よりも、コスト、ワークフローの複雑さ、及びdPCRのスペース要件を低減する。
【0045】
図9は、スライド900上の4つの異なる試料処理ユニット(先に図示及び説明したが、図9には別個に示されていない)に導入される流体のためのデバイス流体制御を提供する際に使用するための空気圧ユニット901とともに、フレーム905上のスライド900の概略図を示す。リザーバ906内に保持された流体は、処理ユニットの入口(図9には別個に示されていない入口)を通して試料処理ユニットに導入される。本明細書で説明されるように、リザーバ906に印加される低圧及び高圧を含む一連の圧力パルスは、試料溶液/試薬を処理ユニット内のマイクロチャンバ(別個に図示せず)内に装填する。空気圧ユニット901は、これらの圧力の印加を制御し、各ユニット901は、電子圧力調整器902及び少なくとも1つの弁903を含む。ユニット901は、圧力をリザーバ906に伝達するために、例えばOリングなどの適切な機構を介してフレーム905とインターフェースする。より多い又はより少ない弁が組み込まれてもよい(例えば、リザーバの数及び/又は各リザーバのための別個の圧力制御が所望されるかどうかに応じて)。フレーム905及び/又はスライド900は、タブ又は他の視覚的特徴(位置合わせマークなど、図示せず)など、方向付け及び位置合わせを助けるための機械的キーを含むことができる。
【0046】
図10は、本明細書で説明する本発明の1つ以上の実施形態の例示的な試料デジタル化プロセス1010を示す。図10の工程1010では、試料を含む流体又は溶液が、マイクロ流体デバイス又は処理ユニットの入口ポートに装填されてもよい。マイクロ流体デバイスは、上述のように、入口ポート、装填導管、及び複数のチャンバ又はマイクロチャンバを備えてもよい。工程1010においてマイクロ流体デバイスに装填される流体は、試料を含有する流体若しくは溶液を含んでもよく、又は試料を含有しない流体若しくは溶液を含んでもよく、又は試料流体及び非試料流体の両方を含んでもよい。
【0047】
装填導管、線形装填導管、サイフォン導管、マイクロチャンバ、及び終端チャンバを含むマイクロ流体ネットワーク内の空気を圧縮するために、高圧が印加されてもよく、これは、試料流体をマイクロ流体ネットワーク内に引き込む。吸引される流体の量は、理想気体の法則に従って圧縮される空気にほぼ等しくなければならない。装填導管(少なくとも約10ミクロンの深さ及び少なくとも約10ミクロンの幅を有する)の容積は、マイクロチャンバ(少なくとも約100ミクロンの深さを有する)の容積よりも小さいので、全ての装填導管は、この動作の際に試料流体で満たされるべきであり、これは、圧縮空気の大部分がマイクロチャンバ及び終端チャンバ内に留まることを意味する。圧縮空気は薄膜を通って逃げ続け、より多くの試料流体をマイクロ導管、装填導管、サイフォン導管のネットワーク内に引き込み、マイクロチャンバ内に引き込む。試料流体の上に重ねられた非試料流体は、後にマイクロ流体ネットワーク内に引き込まれ、一方、試料流体は、空気によって占められた空間を置換し続け、空気はフィルムを通って逃げ続ける。
【0048】
工程1010では、一連の1つ以上の圧力パルスが、マイクロ流体デバイスの入口ポートに印加されてもよい。圧力パルスは、第1の所定の期間(例えば、短い時間間隔)にわたって高圧を印加し、その直後に第2の所定の期間(例えば、短い時間間隔)にわたって低圧を印加することを含んでもよい。本発明の一実施形態では、パルスは、最初(材料が疎水性であるため、アレイ内に流体が存在しない)に1分間(75psi/10psiを5秒間/5秒間の6サイクル)開始する。換言すれば、高圧パルスを75psiで短い時間間隔、例えば5秒間印加し、その直後に低圧パルスを10psiで短い時間間隔、例えば5秒間印加し、その直後に再び高圧パルスを75psiで5秒間印加することができる。したがって、低圧パルスが後に続く高圧パルスは、6サイクルにわたって連続する5秒の時間間隔で繰り返し印加され得る。本発明の他の実施形態では、より多い又はより少ない数のサイクル、例えば、5、10、12、20、又はそれ以上のサイクルが企図され得る。異なる高圧パルス又は低圧パルス、例えば、低圧パルスでき、例えば、低圧パルスについては10psi未満若しくは10psi超、又は高圧パルスについては75psi超若しくは75psi未満である。
【0049】
工程1020では、一連の圧力パルスが印加された後、試料を含む溶液又は流体が、複数のマイクロチャンバのうちの1つ以上の中に装填されてもよい。試料流体を複数のマイクロチャンバ内に完全にデジタル化するために、高圧(例えば、75psi)が、所定の期間(例えば、本発明の一実施形態では、より長い時間間隔(例えば、24分))にわたって印加されてもよく、試料流体は、複数のマイクロチャンバ内に存在する。工程1020の理由は、いくらかの少量の空気(例えば、気泡)がマイクロチャンバ内に依然として捕捉され得るからである。したがって、75psiで24分間連続圧力を印加することは、マイクロ流体デバイスがガス放出を継続することを可能にし、最も可能性が高いのは、試料への空気の溶解と、空気がもはやフィルムの表面と接触していない場合の遅いガス放出との両方を通してである。最後に、本発明のいくつかの実施形態において、dPCRプロセスの開始前に、より低い平衡圧力(例えば、50psi)が、dPCRプロセスの開始前の所定の期間(例えば、5分間)にわたって適用され得る。本発明の一実施形態では、5分間で50psiに低下させる理由は、dPCR中に圧力が50psiに保持されるからである。温度が摂氏96度に加熱されるPCR開始前に閉鎖システムが平衡化されない場合、閉鎖システム内の任意の残留空気が膨張し、試料を押し出し、クロストークを引き起こす可能性がある。
【0050】
堆積された試料間のクロストークを低減するために、マイクロチャンバに流体的に結合される導管又はマイクロ導管は、工程1020に続いて、試料流体を実質的に又は完全に含まなくてもよい。これを達成するために、一実施形態では、マイクロ流体デバイスの入口ポートに注入される試料流体の体積は、マイクロ流体デバイスのチャンバ又はマイクロチャンバの総体積よりも少ない、又は実質的に少ない。例えば、一実施形態では、処理ユニット内の全てのマイクロチャンバの総体積は、約11マイクロリットルであるが、9マイクロリットルの試料流体のみが、処理ユニット内に装填され得る。他の実施形態では、試料流体の総体積は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバの総合計体積未満であり、例えば、マイクロ流体デバイス内に装填される試料流体の体積は、総合計体積の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%未満である。いくつかの実施形態では、試料流体とは異なる非試料流体もまた、上記で議論される工程1010に記載されるように、入口ポートの中に装填されていてもよい。工程1020に続いて、非試料流体は、したがって、主に、導管及び/又はマイクロ導管並びにマイクロチャンバの底部(表面張力によって定位置に保持される)に存在してもよく、試料流体は、主に、チャンバ及びマイクロチャンバに存在する。本発明の一実施形態では、1つのチャンバ内の試料流体は、工程1020の後、別のチャンバ内に位置する試料流体と実質的に流体連通していなくてもよい。
【0051】
図11は、圧力(PSI)がy軸上にプロットされ、時間(秒)がx軸上にプロットされている、上述の本発明の1つ以上の実施形態の圧力パルス化プロセスを示すグラフ1100を示す。
【0052】
場合によっては、上記の図10及び図11に関連して説明されたプロセスに対する代替プロセス又は方法が、試料をデジタル化するために採用されてもよい。例えば、単一の圧力差を使用して、試料溶液(例えば、関心のある核酸分子を含む)を導管に送達することができ、同じ圧力差を使用して、溶液を有するチャンバをデジタル化し続ける(例えば、導管からチャンバに溶液を送達する)ことができる。更に、単一圧力差は、導管及び/又はチャンバの加圧ガス抜き又は脱気を可能にするのに十分に高くてもよい。あるいは、又はそれに加えて、試料を含む溶液を導管に送達するための圧力差は、第1の圧力差であり得る。導管からチャンバに溶液を送達するための圧力差は、第2の圧力差であり得る。第1及び第2の圧力差は、同じ(例えば、等しい)であり得るか、又は異なり得る。一例では、第2の圧力差は、第1の圧力差よりも大きくてもよい。あるいは、第2の圧力差は、第1の圧力差よりも小さくてもよい。第1の圧力差、第2の圧力差、又は両方は、導管又はチャンバの加圧ガス抜き又は脱気を可能にするのに十分に高くてもよい。場合によっては、第3の圧力差を使用して、導管及び/又はチャンバの加圧ガス抜き又は脱気を可能にすることができる。導管又はチャンバの加圧ガス抜き又は脱気は、フィルム又は膜によって可能にされ得る。例えば、圧力閾値に達すると、フィルム又は膜は、ガスが、チャンバ及び/又は導管からフィルム又は膜を通ってチャンバ及び/又は導管の外側の環境に移動することを可能にし得る。
【0053】
図12は、本明細書中に記載される本発明の1つ以上の実施形態を使用して、図8に示される機械によって実行され得る例示的なデジタルPCRプロセスを示す。デジタル化プロセスは、図12に示すように、核酸アッセイのための一般的なラボラトリーワークフローに容易に統合することができる。工程1210(試料調製工程)における生体試料調製は、核酸単離並びにマスターミックス及びプライマー/プローブと生体試料との混合を含む、当技術分野で公知の他のPCRベースのワークフローと同様に実施され得る。マスターミックスは、分子生物学におけるRT-PCR技術において成分として使用される前駆体及び酵素を含有する混合物である。当技術分野で知られているそのような混合物は、少なくともdNTP、MgCl2の混合物を含み得、Taqポリメラーゼ、pH緩衝液を添加し、ヌクレアーゼフリー水中で混合する。工程1220(プレート装填工程)に示されるマイクロ流体デバイスプレートは、図10及び11に関して本明細書に説明されるように装填され(例えば、試料流体混合物のピペット操作、続いて油オーバーレイのピペット操作)、続いて、試薬の空気圧装填及びデジタル化、熱サイクル、並びにデータ/画像取得(試料デジタル化+PCR+画像取得工程)を統合する、本明細書に説明されるような図8に示されるものと類似する機器内に設置される。次いで、PCR反応の取得データをソフトウェアダウンストリームによって分析して、生体試料中の標的遺伝子の濃度などの結果を提供することができる。
【0054】
図13は、上述した本発明の1つ以上の実施形態に従って使用されるデジタルPCRプロセスを示す。工程1301において、試料を含有する試薬(流体)は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバ内でデジタル化される。工程1302において、試薬は、マイクロチャンバ内のデジタル化試薬に対してPCR反応を実行するために熱サイクルにかけられる。この工程は、例えば、図8に関して上述したようなフラットブロックサーマルサイクラーを使用して実施することができる。工程1303において、画像取得が、どのマイクロチャンバがPCR反応の実行に成功したかを判定するために実行される。画像取得は、例えば、3色プローブ検出ユニットを使用して実行され得る。工程1304では、ポアソン統計が、工程1303で判定されたマイクロチャンバのカウントに適用されて、陽性のチャンバの生の数を定量可能な核酸濃度に変換する。
【0055】
用語
本明細書で開示される本発明の実施形態を参照して本明細書で使用される用語は、特に明示的に又は文脈によって示されない限り、当業者による通常の意味を与えられるべきである。
【0056】
「チャンバ」は、非試料流体、生体試料等の試料を含有する流体、又は試料を含む溶液若しくは試薬をマイクロ流体デバイス内に堆積させることを可能にする構造を指す。試料の堆積及びデジタル化を可能にする構造の例には、ウェル、チャンバ、及びマイクロチャンバが含まれる。
【0057】
「導管」は、試料流体又は非試料流体の移動経路を可能にする構造体を指す。流体移動の経路を可能にする構造の例としては、導管、通路、マイクロ導管、マイクロ通路、サイフォン導管、サイフォン通路、及びサイフォン開口部が挙げられる。
【0058】
本明細書で論じられるマイクロ流体デバイスに関して使用される「深さ」は、概して、導管、サイフォン開口部若しくは導管、チャンバ、又はマイクロチャンバの底部から、導管、サイフォン開口部若しくは導管、チャンバ、若しくはマイクロチャンバの側壁の上部まで、又は導管、サイフォン開口部若しくは導管、チャンバ、若しくはマイクロチャンバを覆うガス透過性フィルム若しくは薄膜まで測定される距離を指す。
【0059】
「デジタル化された」又は「デジタル化」という用語は、交換可能に使用され得、また一般的に、1つ以上のマイクロチャンバに分配された試料をいう。デジタル化された試料は、別のデジタル化された試料と流体連通し得るか、又は流体連通していない場合がある。デジタル化された試料は、別のデジタル化された試料と材料(例えば、試薬、分析物)を交換しないか、又は別のデジタル化された試料と相互作用しない場合がある。試料のデジタル化を可能にする構造の例には、ウェル、チャンバ、及びマイクロチャンバが含まれる。
【0060】
「流体」という用語は、概して、液体又は気体を指す。流体は、規定された形状を維持せず、流体の粒子が観察可能な時間枠の間に面積の連続的な変化を受けて、それが配置される容器を満たすように流れるか、又は移動する。したがって、流体は、移動を可能にすることができる任意の好適な粘度を有し得る。2つ以上の流体が存在する場合、各流体は、当業者によって、本質的に任意の流体(液体、ガスなど)の中から独立して選択され得る。
【0061】
「マイクロ流体」は、一般に、少なくとも1つの導管、任意選択で複数のサイフォン開口部又は導管、及びチャンバ又はマイクロチャンバのアレイを含む、デバイス、構造、物品、領域、システム、又はチップを指す。例えば、導管は、約1ミリメートル以下、約750ミクロン以下、約500ミクロン以下、約250ミクロン以下、約100ミクロン以下又はそれ以下の断面寸法を有し得る。導管又はサイフォン導管又は開口部は、約50ミクロン以下、約10ミクロン以下、又はそれ未満の断面寸法を有してもよい。
【0062】
「加圧ガス抜き」又は「加圧脱気」という用語は、交換可能に使用され得、一般に、圧力差の適用を通じて、1つ以上の気体(例えば、空気、窒素、酸素、二酸化炭素など)をマイクロ流体デバイスなどのデバイスの導管、開口部、又はチャンバから、チャンバ、導管、開口部の外部環境へと除去又は排出することを指す。圧力差は、導管又はチャンバと、導管又はチャンバの外部環境との間に適用され得る。圧力差は、デバイスへの1つ以上の入口への適用若しくは圧力源、又はデバイスの1つ以上の表面への真空源の適用によって提供され得る。加圧ガス抜き又は加圧脱気は、導管、チャンバ又は開口部の1つ以上の側面を覆うガス透過性フィルム、薄膜、又は膜を通して可能にすることができる。
【0063】
本明細書で使用される「試料」は、概して、核酸分子を含むか、又は含むことが疑われる任意の試料を指す。例えば、試料は、1つ以上の核酸分子を含む生体試料であり得る。生体試料は、血液(例えば、全血)、血漿、血清、尿、唾液、粘膜排泄物、痰、便、及び涙から得ることができる(例えば、抽出若しくは単離される)か、又はそれらを含み得る。生体試料は、流体試料又は組織試料(例えば、皮膚)であり得る。試料は、無細胞体液から得ることができ、無細胞DNA又は無細胞RNAを含むことができる。試料は、腫瘍細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、試料は、環境試料(例えば、土、廃棄物、水、周囲空気など)、工業試料(例えば、あらゆる工業プロセスからの試料)、又は食品試料(例えば、乳製品、野菜製品、及び肉製品)を含んでもよい。試料は、マイクロ流体デバイスに装填する前に処理され得る。例えば、試料は、細胞を溶解する、核酸分子を精製する、及び/又は試薬を含めるために処理され得る。
【0064】
更なる実施形態
実施形態1A.試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、入口ポートと、入口ポートに流体的に結合された閉鎖システムと、を備え、閉鎖システムは、複数の線形装填導管と、複数の終端チャンバであって、複数の終端チャンバのうちの1つの終端チャンバは、複数の線形装填導管のうちの1つの線形装填導管に流体的に結合される、複数の終端チャンバと、試料を受け取るための複数のマイクロチャンバであって、複数のマイクロチャンバのうちの複数のマイクロチャンバは、複数の線形装填導管のうちの1つの線形装填導管に流体的に結合される、複数のマイクロチャンバと、を備え、第1の複数のマイクロチャンバと、同じ近接線形装填導管に流体的に結合された第1の終端チャンバとに関して、第1の終端チャンバの容積は、第1の複数のマイクロチャンバの合計容積以下であり、更に、終端チャンバのうちのいずれか1つよりも大きい廃棄物リザーバは、閉鎖システムから除外される、マイクロ流体デバイス。
【0065】
実施形態2A.複数のサイフォン導管を更に備え、複数のサイフォン導管のうちの1つのサイフォン導管は、線形装填導管とマイクロチャンバとの間に流体的に結合されている、実施形態1Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0066】
実施形態3A.終端チャンバの容積は、複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバの容積よりも大きい、実施形態1Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0067】
実施形態4A.終端チャンバの容積は、マイクロチャンバの容積の少なくとも約4倍である、実施形態3Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0068】
実施形態5A.線形装填導管の第1の寸法及びサイフォン導管の第1の寸法は、約10ミクロン未満である、実施形態2Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0069】
実施形態6A.複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバは、少なくとも約100ミクロンの第1の寸法を有する、実施形態1Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0070】
実施形態7A.マイクロ流体デバイスに適用された薄膜を更に備え、薄膜は閉鎖システムの表面を形成する、実施形態1Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0071】
実施形態8A.薄膜によって形成された表面は、複数のマイクロチャンバの外面を提供する、実施形態7Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0072】
実施形態9A.薄膜によって形成された表面は、複数の線形装填導管の外面を提供する、実施形態8Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0073】
実施形態10A.薄膜によって形成された表面は、複数の終端チャンバの外面を提供する、実施形態9Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0074】
実施形態11A.薄膜は、約70~90ミクロンの厚さを有する、実施形態7Aから10Aのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0075】
実施形態12A.薄膜は、約80ミクロンの厚さを有する、実施形態7Aから10Aのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0076】
実施形態13A.薄膜はガス透過性熱可塑性材料を含む、実施形態7Aから12Aのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0077】
実施形態14A.ガス透過性熱可塑性材料は、試料に対して透過性ではない、実施形態13Aに記載のマイクロ流体デバイス。
【0078】
実施形態15A.ガス透過性熱可塑性材料は、環状オレフィンコポリマーを含む、実施形態13Aから14Aのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0079】
実施形態16A.第1の終端チャンバの容積は、第1の複数のマイクロチャンバの合計容積の50パーセント(50%)以下である、実施形態1Aから15Aのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0080】
実施形態17A.第1の終端チャンバの容積は、第1の複数のマイクロチャンバの合計容積の25パーセント(25%)以下である、実施形態1Aから15Aのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0081】
実施形態18A.第1の終端チャンバの容積は、第1の複数のマイクロチャンバの合計容積の10パーセント(10%)以下である、実施形態1Aから15Aのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0082】
実施形態19A.射出成形された熱可塑性材料を含む、実施形態1Aから18Aのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0083】
実施形態1B.試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、入口ポートと、複数の行き止まりマイクロ流体アセンブリと、を備え、行き止まりマイクロ流体アセンブリの各々は、入口ポートに流体的に結合され、行き止まりマイクロ流体アセンブリの各々は、線形装填導管と、線形装填導管に流体的に結合された終端チャンバと、線形装填導管に流体的に結合され、かつ線形装填導管に近接する試料を受け取るように構成された複数のマイクロチャンバと、を備え、終端チャンバの容積は、複数のマイクロチャンバの合計容積以下である、マイクロ流体デバイス。
【0084】
実施形態2B.行き止まりマイクロ流体アセンブリの各々は、複数のサイフォン導管を更に備え、複数のサイフォン導管のうちの1つのサイフォン導管は、線形装填導管と複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバとの間に流体的に結合される、実施形態1Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0085】
実施形態3B.終端チャンバの容積は、複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバの容積よりも大きい、実施形態1Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0086】
実施形態4B.終端チャンバの容積は、マイクロチャンバの容積の少なくとも約4倍である、実施形態3Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0087】
実施形態5B.線形装填導管の第1の寸法及びサイフォン導管の第1の寸法は、各々約10ミクロン未満である、実施形態2Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0088】
実施形態6B.複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバは、少なくとも約100ミクロンの第1の寸法を有する、実施形態1Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0089】
実施形態7B.マイクロ流体デバイスに適用された薄膜を更に備え、薄膜はマイクロ流体デバイスの表面を形成する、実施形態1Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0090】
実施形態8B.薄膜によって形成された表面は、複数のマイクロチャンバの外面を提供する、実施形態7Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0091】
実施形態9B.薄膜によって形成された表面は、線形装填導管の外面を更に提供する、実施形態8Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0092】
実施形態10B.薄膜によって形成された表面は、終端チャンバの外面を更に提供する、実施形態9Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0093】
実施形態11B.薄膜は、約70~90ミクロンの厚さを有する、実施形態7B~10Bのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0094】
実施形態12B.薄膜は、約80ミクロンの厚さを有する、実施形態7B~10Bのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0095】
実施形態13B.薄膜はガス透過性熱可塑性材料を含む、実施形態7B~12Bのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0096】
実施形態14B.ガス透過性熱可塑性材料は、試料に対して透過性ではない、実施形態13Bに記載のマイクロ流体デバイス。
【0097】
実施形態15B.ガス透過性熱可塑性材料は、環状オレフィンコポリマーを含む、実施形態13B~14Bのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0098】
実施形態16B.終端チャンバの容積は、複数のマイクロチャンバの合計容積の50パーセント(50%)以下である、実施形態1B~15Bのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0099】
実施形態17B.終端チャンバの容積は、複数のマイクロチャンバの合計容積の25パーセント(25%)以下である、実施形態1B~15Bのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0100】
実施形態18B.終端チャンバの容積は、複数のマイクロチャンバの合計容積の10パーセント(10%)以下である、実施形態1B~15Bのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0101】
実施形態19B.射出成形された熱可塑性材料を更に含む、実施形態1B~18Bのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0102】
実施形態1C.試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、第1のマイクロ導管部分を介して装填導管及び試料受け取りマイクロチャンバのアレイに流体的に結合される入口ポートと、入口ポートと第1のマイクロ導管部分との間に流体的に結合された幅広導管部分であって、第1のマイクロ導管部分は、幅広導管部分の深さよりも小さい深さを有する、幅広導管部分と、を備え、第1のマイクロ導管部分は、直線導管を備え、幅広導管部分は、第1のマイクロ導管部分の直線導管とは異なるように配向された非直線導管又は直線導管のうちの少なくとも1つを含む部分を備える、マイクロ流体デバイス。
【0103】
実施形態2C.幅広導管部分の深さは少なくとも約100ミクロンである、実施形態1Cに記載のマイクロ流体デバイス。
【0104】
実施形態3C.第1のマイクロ導管部分の深さは約10ミクロン以下である、実施形態2Cに記載のマイクロ流体デバイス。
【0105】
実施形態4C.第1のマイクロ導管経路の経路は、少なくとも約90度の曲線、90度の角度、鋭角、鈍角、曲線、複数の曲線、又は複数の角度のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1Cに記載のマイクロ流体デバイス。
【0106】
実施形態5C.マイクロ流体デバイスは、熱可塑性射出成形マイクロ流体デバイスである、実施形態1Cに記載のマイクロ流体デバイス。
【0107】
実施形態6C.マイクロ流体デバイスの表面の形態の薄膜を更に備える、実施形態1Cに記載のマイクロ流体デバイス。
【0108】
実施形態7C.薄膜は、試料受け取りマイクロチャンバの外面を提供する、実施形態6Cに記載のマイクロ流体デバイス。
【0109】
実施形態8C.表面の形態の薄膜は、装填導管の外面を更に提供する、実施形態7Cに記載のマイクロ流体デバイス。
【0110】
実施形態9C.薄膜は、約70~90ミクロンの厚さを有する、実施形態6C~8Cのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0111】
実施形態10C.薄膜は、約80ミクロンの厚さを有する、実施形態6C~8Cのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0112】
実施形態11C.薄膜はガス透過性熱可塑性材料を含む、実施形態6C~10Cのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0113】
実施形態12C.ガス透過性熱可塑性材料は、試料に対して透過性ではない、実施形態13Cに記載のマイクロ流体デバイス。
【0114】
実施形態13C.ガス透過性熱可塑性材料は、環状オレフィンコポリマーを含む、実施形態6C~12Cのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0115】
実施形態14C.マイクロ流体デバイスの少なくとも一部は、実質的に光学的に透明である、実施形態1C~13Cのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0116】
実施形態15C.マイクロ流体デバイスは、連続射出成形熱可塑性部品を集合的に形成する複数のマイクロ流体デバイスのうちの1つである、実施形態1C~14Cのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0117】
実施形態16C.マイクロ流体デバイスは、複数のマイクロ流体デバイスのうちの別のマイクロ流体デバイスに流体的に結合されていない、実施形態15Cに記載のマイクロ流体デバイス。
【0118】
実施形態1D.生体試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、入口ポートと、複数のマイクロチャンバと、各々が入口ポート及び複数のマイクロチャンバに流体的に結合された複数の装填導管と、複数のサイフォン導管であって、サイフォン導管の各々は、装填導管をマイクロチャンバに流体的に結合する、複数のサイフォン導管と、を備え、複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバは、任意選択で実質的に装填導管に面する第1の側と、装填導管に面していないか、又は複数のマイクロチャンバのうちの隣接するマイクロチャンバに実質的に面している第2の側とを備え、サイフォン導管は、第2の側を介して装填導管をマイクロチャンバに流体的に結合する、マイクロ流体デバイス。
【0119】
実施形態2D.サイフォン導管は湾曲導管を含む、実施形態1Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0120】
実施形態3D.湾曲経路は、約90度の折り返しを含む、実施形態2Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0121】
実施形態4D.湾曲導管は、少なくとも約10ミクロンの曲率半径を有する折り返しを含む、実施形態2Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0122】
実施形態5D.複数のサイフォン導管の各々は、長さが実質的に等しい、実施形態1Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0123】
実施形態6D.複数のサイフォン導管の各々は、装填導管上の実質的に等距離の位置に配置される、実施形態1Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0124】
実施形態7D.マイクロ流体デバイスは、熱可塑性射出成形マイクロ流体デバイスである、実施形態1Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0125】
実施形態8D.マイクロ流体デバイスの表面の形態で適用された薄膜を更に備える、実施形態1D~7Dのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0126】
実施形態9D.表面の形態の薄膜は、複数のマイクロチャンバの外面を提供する、実施形態8Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0127】
実施形態10D.薄膜によって形成された表面は、複数の装填導管の外面を更に提供する、実施形態9Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0128】
実施形態11D.薄膜は、約70~90ミクロンの厚さを有する、実施形態8D~10Dのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0129】
実施形態12D.薄膜は、約80ミクロンの厚さを有する、実施形態8D~10Dのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0130】
実施形態13D.薄膜はガス透過性熱可塑性材料を含む、実施形態8D~12Dのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0131】
実施形態14D.ガス透過性熱可塑性材料は、試料に対して透過性ではない、実施形態13Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0132】
実施形態15D.ガス透過性熱可塑性材料は、環状オレフィンコポリマーを含む、実施形態13D~14Dのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0133】
実施形態16D.マイクロ流体デバイスの少なくとも一部は、実質的に光学的に透明である、実施形態1D~15Dのいずれかかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0134】
実施形態17D.マイクロ流体デバイスは、連続射出成形熱可塑性部品を集合的に形成する複数のマイクロ流体デバイスのうちの1つである、実施形態1D~15Dのいずれかに記載のマイクロ流体デバイス。
【0135】
実施形態18D.マイクロ流体デバイスは、複数のマイクロ流体デバイスのうちの別のマイクロ流体デバイスに流体的に結合されていない、実施形態17Dに記載のマイクロ流体デバイス。
【0136】
実施形態1E.生体試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスであって、入口ポートと、複数のマイクロチャンバと、各々が入口ポート及び複数のマイクロチャンバに流体的に結合された複数の装填導管と、を備え、複数のマイクロチャンバのうちの1つのマイクロチャンバは、4つの実質的に長方形の側壁を含む実質的に長方形の三次元形状を含み、2つの隣接する側壁は湾曲した角部によって接合されている、マイクロ流体デバイス。
【0137】
実施形態2E.湾曲した角部は、少なくとも約10ミクロンの半径を有する、実施形態1Eに記載のマイクロ流体デバイス。
【0138】
実施形態3E.複数のマイクロチャンバの各々は、少なくとも約100ミクロンの深さを有する、実施形態1Eに記載のマイクロ流体デバイス。
【0139】
実施形態4E.マイクロチャンバの深さと、マイクロチャンバと複数のマイクロチャンバのうちの隣接するマイクロチャンバとの間の最小距離との比は、少なくとも約3:1である、実施形態1Eに記載のマイクロ流体デバイス。
【0140】
実施形態5E.マイクロチャンバの深さと、マイクロチャンバと複数のマイクロチャンバのうちの隣接するマイクロチャンバとの間の最小距離との比が、少なくとも約5:1である、実施形態1Eに記載のマイクロ流体デバイス。
【0141】
実施形態1F.各々が試料を処理するように構成された複数のマイクロ流体アセンブリを含むマイクロ流体デバイス内に試料を装填する方法であって、方法は、複数の圧力パルスをマイクロ流体アセンブリ内の内容物に印加することであって、複数の圧力パルスは、第1の時間間隔にわたって印加される第1の圧力と、第2の時間間隔にわたって印加される第2の圧力とを含む、ことを含み、ここで、マイクロ流体アセンブリの各々は、入口と、第1の端部において入口に流体的に結合された装填導管と、試料を受け取るように構成された少なくとも1つの行き止まりマイクロチャンバと、マイクロチャンバ及び装填導管に流体的に結合されたサイフォン導管とを備え、ある体積の試料は、マイクロ流体デバイスの複数のマイクロチャンバに引き込まれる、方法。
【0142】
実施形態2F.マイクロ流体デバイス内に引き込まれる試料の体積は、マイクロチャンバの総容積容量未満である、実施形態1Fに記載の方法。
【0143】
実施形態3F.第1の圧力は少なくとも約75psiであり、第2の圧力は少なくとも約10psiである、実施形態1Fに記載の方法。
【0144】
実施形態4F.第1の時間間隔及び第2の時間間隔は実質的に等しい、実施形態1Fに記載の方法。
【0145】
実施形態5F.第1の時間間隔及び第2の時間間隔は、各々、少なくとも約2.5秒であり、かつ多くとも約10秒である、実施形態1Fに記載の方法。
【0146】
実施形態6F.マイクロ流体デバイスは、装填導管、少なくとも1つのマイクロチャンバ、及びサイフォン導管のうちの少なくとも1つの表面を形成するガス透過性フィルムを更に備える、実施形態1F~5Fのいずれかに記載の方法。
【0147】
実施形態7F.ガス透過性フィルムは、大気圧ではガス透過性ではないが、大気圧よりも高い圧力ではガス透過性である、実施形態6Fに記載の方法。
【0148】
実施形態8F.圧力パルスを印加することは、少なくとも1つのマイクロチャンバ内のガスを、ガス透過性フィルムに通過させる、実施形態6Fに記載の方法。
【0149】
実施形態9F.ガス透過性フィルムは、約80ミクロン未満の厚さを有する、実施形態6Fに記載の方法。
【0150】
実施形態10F.ガス透過性フィルムは熱可塑性材料を含む、実施形態6Fに記載の方法。
【0151】
実施形態11F.熱可塑性材料は環状オレフィンコポリマーを含む、実施形態10Fに記載の方法。
【0152】
実施形態12F.ガス透過性フィルムは実質的に透明である、実施形態6Fに記載の方法。
【0153】
実施形態13F.ガス透過性フィルムは、液体に対して実質的に不透過性であるように構成される、実施形態6Fに記載の方法。
【0154】
実施形態14F.方法は、単一の統合機械を使用して実施される、実施形態1F~13Fのいずれかに記載の方法。
【0155】
実施形態15F.試料は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試薬及び核酸分子を含む、実施形態1F~14Fのいずれかに記載の方法。
【0156】
実施形態16F.実施形態1F~15Fのいずれかに記載の装填方法を含み、複数のマイクロチャンバを熱サイクルすることによってPCR増幅を行うことを更に含む、生体試料処理方法。
【0157】
実施形態17F.複数のマイクロチャンバの画像を取得することを更に含む、実施形態16Fに記載の方法。
【0158】
実施形態18F.PCR増幅が成功裏に達成された複数のマイクロチャンバの画像内のマイクロチャンバの数を計数することを更に含む、実施形態17Fに記載の方法。
【0159】
実施形態19F.PCR増幅が成功裏に達成された複数のマイクロチャンバの数にポアソン統計を適用して、核酸濃度を導出することを更に含む、実施形態18Fに記載の方法。
【0160】
実施形態20F.装填導管に流体的に結合され、クロストークを低減するために試料の過剰充填を受け入れるように構成された少なくとも1つの行き止まり終端チャンバを更に含む、実施形態1F~19Fのいずれかに記載の方法。
【0161】
実施形態21F.装填導管は、複数の副導管と、少なくとも1つの入口を複数の副導管に流体的に結合するスプリッタ導管構造とを更に備える、実施形態1F~20Fのいずれかに記載の方法。
【0162】
実施形態22F.複数の副導管は、複数の線形副導管を備え、複数の線形副導管の各々は、第1の副導管端部においてスプリッタ導管構造に接続され、第2の副導管端部において終端チャンバに接続される、実施形態21Fに記載の方法。
【0163】
実施形態23F.試料を処理するように構成されたマイクロ流体デバイスに試料を装填する方法であって、マイクロ流体デバイスは、入口と、第1の端部において入口に流体的に結合された少なくとも1つの装填導管と、複数のマイクロチャンバと、複数のマイクロチャンバを少なくとも1つの装填導管に流体的に結合する複数のサイフォン導管とを備え、方法は、マイクロ流体デバイスの流体内容物に複数の圧力パルスを印加することであって、複数の圧力パルスは、第1の時間間隔にわたって印加される第1の圧力を含む複数のピークと、第2の時間間隔にわたって印加される第2の圧力を含む複数の谷とを交互に含み、それによって、複数のマイクロチャンバ内のガスをガス透過性フィルムに通過させる、ことを含み、試料を含むある体積の試薬は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバ内に引き込まれ、マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの装填導管、複数のマイクロチャンバ、及び複数のサイフォン導管の表面を形成するガス透過性フィルムを更に備える、方法。
【0164】
実施形態24F.マイクロ流体デバイス内に引き込まれる試料を含む試薬の体積は、複数のマイクロチャンバの総体積容量未満である、実施形態23Fに記載の方法。
【0165】
実施形態25F.ある体積の非試料流体をマイクロ流体デバイスに引き込むことを更に含む、実施形態23F~24Fのいずれかに記載の方法。
【0166】
実施形態26F.第1の圧力は少なくとも約75psiであり、第2の圧力は約10psiである、実施形態23F~25Fのいずれかに記載の方法。
【0167】
実施形態27F.第1の時間間隔及び第2の時間間隔は実質的に等しい、実施形態23F~26Fのいずれかに記載の方法。
【0168】
実施形態28F.第1の時間間隔及び第2の時間間隔は、各々、少なくとも約2.5秒であり、かつ多くとも約10秒である、実施形態23F~26Fのいずれかに記載の方法。
【0169】
実施形態29F.複数の圧力パルスが印加された後、第3の時間間隔の間、マイクロ流体デバイスの流体内容物に第3の圧力を印加することを更に含む、実施形態23F~28Fのいずれかに記載の方法。
【0170】
実施形態30F.第3の圧力は少なくとも約50psiである、実施形態29Fに記載の方法。
【0171】
実施形態31F.第3の時間間隔は少なくとも約5分である、実施形態29F~30Fのいずれかに記載の方法。
【0172】
実施形態32F.ガス透過性フィルムは、約80ミクロン未満の厚さを有する、実施形態23F~31Fのいずれかに記載の方法。
【0173】
実施形態33F.ガス透過性フィルムは熱可塑性材料を含む、実施形態23F~32Fのいずれかに記載の方法。
【0174】
実施形態34F.熱可塑性材料は環状オレフィンコポリマーを含む、実施形態33Fに記載の方法。
【0175】
実施形態35F.ガス透過性フィルムは実質的に透明である、実施形態23F~34Fのいずれかに記載の方法。
【0176】
実施形態36F.ガス透過性フィルムは、液体に対して実質的に不透過性であるように構成される、実施形態23F~35Fのいずれかに記載の方法。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】