(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】固相ペプチド合成(SPPS)プロセスおよび関連するシステム
(51)【国際特許分類】
C07K 1/04 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
C07K1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516627
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 US2022043806
(87)【国際公開番号】W WO2023044004
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508047875
【氏名又は名称】シーイーエム コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ, ジョナサン マッキノン
(72)【発明者】
【氏名】シン, サンディープ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン, デイビッド リー
(72)【発明者】
【氏名】タブ, レヴィ ジョシュア
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045FA33
(57)【要約】
固相ペプチド合成の間にアミノ酸を脱保護するためのプロセスは、反応容器中で脱保護剤によって保護されたアミノ酸の保護基を除去するステップを含み、その間に脱保護剤の少なくとも一部が反応容器の上側内部に揮発または蒸発する。本プロセスは、反応容器の内部を通して不活性ガスを方向付けて、反応容器の内部から揮発した脱保護剤をパージするステップをさらに含む。本開示は、アミノ酸を脱保護するための固相ペプチド合成システムにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相ペプチド合成の間に保護されたアミノ酸を脱保護するためのプロセスであって、
前記保護されたアミノ酸から保護基を除去する脱保護反応の間に反応容器の下側内部で保護されたアミノ酸および脱保護剤を加熱するステップであって、前記加熱するステップが脱保護剤を前記反応容器の上側内部に揮発させる、ステップ、ならびに
前記加熱するステップの間に、前記反応容器の上部における第1の開口部を通して前記反応容器の上側内部に、そして前記反応容器の上部における第2の開口部を通して前記反応容器の上側内部から外に第1の不活性ガスを方向付けて、前記反応容器の内部から揮発した脱保護剤を除去するステップ
を含むプロセス。
【請求項2】
前記加熱するステップの間に、前記反応容器の上側内部を通して前記第1の不活性ガスを連続的に方向付けて、前記反応容器の内部から揮発した脱保護剤を除去するステップを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記加熱するステップの間に、前記反応容器の上側内部を通して前記第1の不活性ガスを間欠的に方向付けて、前記反応容器の内部から揮発した脱保護剤を除去するステップを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記方向付けるステップが、前記第1の開口部を通して下向きに前記第1の不活性ガスを方向付けるステップを含む、請求項1から3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記方向付けるステップが、前記第1の開口部を通して前記反応容器の内部に位置する噴霧ヘッドに前記第1の不活性ガスを方向付けるステップを含み、前記噴霧ヘッドが前記第1の開口部と前記反応容器の内部とを流体連結する、請求項1から3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記反応容器が外側内部空間の周囲に延在する少なくとも1つの外側側壁を含み、
前記噴霧ヘッドが、前記外側内部空間の中に位置決めされ、内側内部空間の周囲に延在する少なくとも1つの内側側壁、および少なくとも部分的に前記内側内部空間の周囲に延在する複数の穴を含み、
前記内側および外側の内部空間が前記複数の穴の穴によって互いに流体連通しており、
前記方向付けるステップが、前記第1の開口部を通して前記内側内部空間に、そして前記複数の穴の穴から外に前記外側内部空間に前記第1の不活性ガスを方向付けるステップを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記方向付けるステップが、前記第1の開口部を通して前記内側内部空間に、そして前記複数の穴の穴から外に前記少なくとも1つの外側側壁に向けて前記外側内部空間に前記第1の不活性ガスを方向付けるステップを含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1の不活性ガスが加圧された不活性ガスである、請求項1から7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
第2の不活性ガスを前記反応容器の下側内部に導入して、前記保護されたアミノ酸と前記脱保護剤とを混合するステップを含む、請求項1から8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記第2のガスを導入するステップが、前記反応容器の下部における第3の開口部を通して前記反応容器内に前記第2の不活性ガスを方向付けるステップを含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記反応容器の上側内部を通して第1の圧力で前記第1の不活性ガスを方向付け、前記第1の不活性ガスの第1の圧力より低い第2の圧力で前記反応容器の下側内部に前記第2の不活性ガスを方向付けるステップを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の不活性ガスの第1の圧力が約1psi~約25psiの範囲であり、前記第2の不活性ガスの第2の圧力が前記第1の圧力より低い、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応容器がマイクロ波透過性の反応容器であり、前記加熱するステップが、マイクロ波照射を使用して前記保護されたアミノ酸と前記脱保護剤とを加熱するステップを含む、請求項1から12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記脱保護剤が有機塩基を含む、請求項1から13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
前記有機塩基がピロリジンを含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記有機塩基がピペリジンを含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記保護されたアミノ酸の保護基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基である、請求項1から16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
前記第1の不活性ガスが窒素ガスである、請求項1から17のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
前記反応容器の上側内部における第1の不活性ガスおよび前記反応容器の下側内部における第2の不活性ガスの両方が窒素ガスを含む、請求項9から12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
前記加熱するステップが約70℃~約120℃の温度で行なわれる、請求項1から19のいずれかに記載のプロセス。
【請求項21】
前記反応容器が内部空間の周囲に延在する少なくとも1つの外側側壁を含み、
前記揮発した脱保護剤の一部が前記側壁上に凝縮し、
前記方向付けるステップが、前記第1の不活性ガスを前記側壁に向けて方向付けて、凝縮した脱保護剤を前記反応容器の下側内部に向けて下向きに移動させるステップを含む、請求項1から20のいずれかに記載のプロセス。
【請求項22】
前記反応容器が内部空間の周囲に延在する少なくとも1つの外側側壁を含み、
前記揮発した脱保護剤の一部が前記側壁上に凝縮し、
前記プロセスが、前記脱保護するステップが完了した後で、前記側壁を溶媒で洗浄して前記凝縮した脱保護剤を除去するステップをさらに含む、請求項1から21のいずれかに記載のプロセス。
【請求項23】
前記加熱するステップの前に、前記保護されたアミノ酸および前記脱保護剤を前記反応容器の下側内部に導入するステップを含む、請求項1から22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項24】
請求項1から23のいずれかに記載のプロセスに従って第1の保護されたアミノ酸を脱保護するステップ、ならびに
第2のアミノ酸を前記脱保護されたアミノ酸に結合させて前記第1および第2のアミノ酸からペプチドを形成するステップ
を含む、固相ペプチド合成のためのプロセス。
【請求項25】
前記脱保護するステップが、
前記脱保護するステップの間に、反応容器の下側内部において前記第1の保護されたアミノ酸および脱保護剤を加熱するステップであって、前記加熱するステップが脱保護剤を前記反応容器の上側内部に揮発させる、ステップ、ならびに
前記加熱するステップの間に、前記反応容器の上部における第1の開口部を通して前記反応容器の上側内部に、そして前記反応容器の上部における第2の開口部を通して前記反応容器の上側内部から外に第1の不活性ガスを方向付けて、前記反応容器の内部から揮発した脱保護剤を除去するステップ
を含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記加熱するステップの間に、前記反応容器の上側内部を通して前記第1の不活性ガスを連続的に方向付けて、前記反応容器の内部から揮発した脱保護剤を除去するステップを含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記加熱するステップの間に、前記反応容器の上側内部を通して前記第1の不活性ガスを間欠的に方向付けて、前記反応容器の内部から揮発した脱保護剤を除去するステップを含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項28】
前記方向付けるステップが、前記第1の開口部を通して下向きに前記第1の不活性ガスを方向付けるステップを含む、請求項25から27のいずれかに記載のプロセス。
【請求項29】
前記方向付けるステップが、前記第1の開口部を通して前記反応容器の内部に位置する噴霧ヘッドに前記第1の不活性ガスを方向付けるステップを含み、前記噴霧ヘッドが前記第1の開口部と前記反応容器の内部とを流体連結する、請求項25から27のいずれかに記載のプロセス。
【請求項30】
前記反応容器が外側内部空間の周囲に延在する少なくとも1つの外側側壁を含み、
前記噴霧ヘッドが、前記外側内部空間の中に位置決めされ、内側内部空間の周囲に延在する少なくとも1つの内側側壁、および少なくとも部分的に前記内側内部空間の周囲に延在する複数の穴を含み、
前記内側および外側の内部空間が前記複数の穴の穴によって互いに流体連通しており、
前記方向付けるステップが、前記第1の開口部を通して前記内側内部空間に、そして前記複数の穴の穴から外に前記外側内部空間に前記第1の不活性ガスを方向付けるステップを含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記方向付けるステップが、前記第1の開口部を通して前記内側内部空間に、そして前記複数の穴の穴を通して前記少なくとも1つの外側側壁に向けて前記外側内部空間に前記第1の不活性ガスを方向付けるステップを含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記脱保護するステップおよび結合させるステップを繰り返して、前記第1、第2、および引き続くアミノ酸を含むペプチドを形成するステップを含む、請求項24から31のいずれかに記載のプロセス。
【請求項33】
前記第1の保護されたアミノ酸が固相樹脂に結合されている、請求項24から32のいずれかに記載のプロセス。
【請求項34】
前記脱保護するステップおよび結合させるステップが完了した後に、前記ペプチドを前記固相樹脂から切断するステップをさらに含む、請求項24から33のいずれかに記載のプロセス。
【請求項35】
前記反応容器がマイクロ波透過性の反応容器であり、前記加熱するステップが、マイクロ波照射を使用して前記保護されたアミノ酸および前記脱保護剤を加熱するステップを含む、請求項25から34のいずれかに記載のプロセス。
【請求項36】
前記結合させるステップの間にマイクロ波エネルギーを印加するステップを含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
固相ペプチド合成の間に保護されたアミノ酸を脱保護するためのプロセスであって、
脱保護組成物の総体積に基づいて約5vol%またはそれよりも少ない量で脱保護剤を含む前記脱保護組成物によって保護されたアミノ酸の保護基を除去するステップであって、
前記保護されたアミノ酸および前記脱保護組成物が反応容器の下側内部に存在し、
前記脱保護剤の少なくとも一部が前記除去するステップの間に前記反応容器の上側内部に蒸発する、ステップ、ならびに
前記保護基を除去するステップの間に、前記反応容器の内部を通して不活性ガスを方向付けて、前記反応容器の上側内部から蒸発した脱保護剤を除去するステップ
を含むプロセス。
【請求項38】
前記脱保護組成物が、前記脱保護組成物の総体積に基づいて約2vol%~約5vol%の量で前記脱保護剤を含む、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記脱保護組成物が、前記脱保護組成物の総体積に基づいて約2vol%~約4.5vol%の量で前記脱保護剤を含む、請求項37に記載のプロセス。
【請求項40】
前記脱保護組成物が、前記脱保護組成物の総体積に基づいて約3vol%~約4.5vol%の量で前記脱保護剤を含む、請求項37に記載のプロセス。
【請求項41】
前記方向付けるステップが、前記反応容器の上部に位置する第1の開口部を通して前記反応容器の上側内部に前記不活性ガスを導入するステップ、ならびに前記反応容器の上側内部から前記反応容器の上部に位置する第2の開口部を通して前記不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出するステップを含む、請求項37から40のいずれかに記載のプロセス。
【請求項42】
前記方向付けるステップが、前記反応容器の下部に位置する開口部を通して前記反応容器の下側内部に前記不活性ガスを導入するステップ、ならびに前記反応容器の上側内部から前記反応容器の上部に位置する開口部を通して前記不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出するステップを含む、請求項37から40のいずれかに記載のプロセス。
【請求項43】
前記方向付けるステップが、前記反応容器の上部に位置する第1の開口部を通して前記反応容器の上側内部に、および前記反応容器の下部に位置する開口部を通して前記反応容器の下側内部にの両方に、前記不活性ガスを導入するステップ、ならびに前記反応容器の上側内部から前記不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出するステップを含む、請求項37から40のいずれかに記載のプロセス。
【請求項44】
前記保護されたアミノ酸から前記保護基を除去するステップの間に、前記保護されたアミノ酸および前記脱保護組成物を加熱するステップであって、前記脱保護剤の少なくとも一部が前記加熱するステップの間に前記反応容器の上側内部に蒸発する、ステップ、ならびに
前記加熱するステップの間に、前記反応容器の内部を通して前記不活性ガスを方向付けて、前記反応容器の上側内部から蒸発した脱保護剤を除去するステップ
を含む、請求項37から43のいずれかに記載のプロセス。
【請求項45】
前記加熱するステップが約40℃~約120℃の温度で行なわれる、請求項44に記載のプロセス。
【請求項46】
前記加熱するステップが約50℃~約120℃の温度で行なわれる、請求項44に記載のプロセス。
【請求項47】
前記加熱するステップが約70℃~約120℃の温度で行なわれる、請求項44に記載のプロセス。
【請求項48】
前記加熱するステップが、マイクロ波照射を使用して前記保護されたアミノ酸および前記脱保護剤を加熱するステップを含む、請求項44から47のいずれかに記載のプロセス。
【請求項49】
前記保護基を除去するステップが室温で行なわれる、請求項37から43のいずれかに記載のプロセス。
【請求項50】
前記保護されたアミノ酸の保護基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基である、請求項37から49のいずれかに記載のプロセス。
【請求項51】
前記脱保護剤が有機塩基を含む、請求項37から50のいずれかに記載のプロセス。
【請求項52】
前記有機塩基がピロリジンを含む、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
前記有機塩基がピペリジンを含む、請求項51に記載のプロセス。
【請求項54】
前記反応容器の内部を通して前記不活性ガスを連続的に方向付けるステップを含む、請求項37から53のいずれかに記載のプロセス。
【請求項55】
前記反応容器の内部を通して前記不活性ガスを間欠的に方向付けるステップを含む、請求項37から53のいずれかに記載のプロセス。
【請求項56】
前記不活性ガスが窒素ガスである、請求項37から55のいずれかに記載のプロセス。
【請求項57】
請求項37から56のいずれかに記載のプロセスに従って第1の保護されたアミノ酸を脱保護して脱保護されたアミノ酸を提供するステップ、ならびに
第2のアミノ酸を前記脱保護されたアミノ酸に結合させて前記第1および第2のアミノ酸からペプチドを形成するステップ
を含む、固相ペプチド合成のためのプロセス。
【請求項58】
前記脱保護するステップが、
前記脱保護組成物の総体積に基づいて約5vol%またはそれよりも少ない量で脱保護剤を含む脱保護組成物によって前記保護されたアミノ酸の保護基を除去するステップであって、前記保護されたアミノ酸および前記脱保護組成物が反応容器の下側内部に存在し、前記脱保護剤の少なくとも一部が前記除去するステップの間に前記反応容器の上側内部に蒸発する、ステップ、ならびに
前記保護基を除去するステップの間に、前記反応容器の内部を通して不活性ガスを方向付けて、前記反応容器の上側内部から蒸発した脱保護剤を除去するステップ
を含む、請求項57に記載のプロセス。
【請求項59】
前記プロセスが、前記脱保護するステップおよび結合させるステップを繰り返して、前記第1、第2、および引き続く複数のアミノ酸を含むペプチドを形成するステップを含む、請求項57または請求項58に記載のプロセス。
【請求項60】
前記脱保護組成物が、前記脱保護組成物の総体積に基づいて約2vol%~約5vol%の量で前記脱保護剤を含む、請求項58または59に記載のプロセス。
【請求項61】
前記脱保護組成物が、前記脱保護組成物の総体積に基づいて約2vol%~約4.5vol%の量で前記脱保護剤を含む、請求項58から60のいずれかに記載のプロセス。
【請求項62】
前記脱保護組成物が、前記脱保護組成物の総体積に基づいて約3vol%~約4.5vol%の量で前記脱保護剤を含む、請求項58から61のいずれかに記載のプロセス。
【請求項63】
前記方向付けるステップが、前記反応容器の上部に位置する第1の開口部を通して前記反応容器の上側内部に前記不活性ガスを導入するステップ、ならびに前記反応容器の上側内部から前記反応容器の上部に位置する第2の開口部を通して前記不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出するステップを含む、請求項58から62のいずれかに記載のプロセス。
【請求項64】
前記方向付けるステップが、前記反応容器の下部に位置する開口部を通して前記反応容器の下側内部に前記不活性ガスを導入するステップ、ならびに前記反応容器の上側内部から前記反応容器の上部に位置する開口部を通して前記不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出するステップを含む、請求項58から62のいずれかに記載のプロセス。
【請求項65】
前記方向付けるステップが、前記反応容器の上部に位置する第1の開口部を通して前記反応容器の上側内部に、および前記反応容器の下部に位置する開口部を通して前記反応容器の下側内部にの両方に、前記不活性ガスを導入するステップ、ならびに前記反応容器の上側内部から前記不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出するステップを含む、請求項58から62のいずれかに記載のプロセス。
【請求項66】
前記保護されたアミノ酸から前記保護基を除去するステップの間に、前記保護されたアミノ酸および前記脱保護組成物を加熱するステップであって、前記脱保護剤の少なくとも一部が前記加熱するステップの間に前記反応容器の上側内部に蒸発する、ステップ、ならびに
前記加熱するステップの間に、前記反応容器の内部を通して前記不活性ガスを方向付けて、前記反応容器の上側内部から蒸発した脱保護剤を除去するステップ
を含む、請求項58から65のいずれかに記載のプロセス。
【請求項67】
前記加熱するステップが約40℃~約120℃の温度で行なわれる、請求項66に記載のプロセス。
【請求項68】
前記加熱するステップが約50℃~約120℃の温度で行なわれる、請求項66に記載のプロセス。
【請求項69】
前記加熱するステップが約70℃~約120℃の温度で行なわれる、請求項66に記載のプロセス。
【請求項70】
前記加熱するステップが、マイクロ波照射を使用して前記保護されたアミノ酸および前記脱保護剤を加熱するステップを含む、請求項66から69のいずれかに記載のプロセス。
【請求項71】
前記保護基を除去するステップが室温で行なわれる、請求項58から65のいずれかに記載のプロセス。
【請求項72】
前記保護されたアミノ酸の保護基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基である、請求項58から71のいずれかに記載のプロセス。
【請求項73】
前記脱保護剤が有機塩基を含む、請求項58から72のいずれかに記載のプロセス。
【請求項74】
前記有機塩基がピロリジンを含む、請求項73に記載のプロセス。
【請求項75】
前記有機塩基がピペリジンを含む、請求項73に記載のプロセス。
【請求項76】
前記反応容器の内部を通して前記不活性ガスを連続的に方向付けるステップを含む、請求項58から75のいずれかに記載のプロセス。
【請求項77】
前記反応容器の内部を通して前記不活性ガスを間欠的に方向付けるステップを含む、請求項58から75のいずれかに記載のプロセス。
【請求項78】
前記不活性ガスが窒素ガスである、請求項58から77のいずれかに記載のプロセス。
【請求項79】
前記プロセスが、前記脱保護するステップの後であって前記結合させるステップの前に洗浄するステップを含まない、請求項58に記載のプロセス。
【請求項80】
前記脱保護するステップの後であって前記結合させるステップの前に、前記脱保護組成物の総体積より少ない量の洗浄組成物を使用して前記反応容器の内部を洗浄するステップをさらに含む、請求項58に記載のプロセス。
【請求項81】
前記脱保護するステップの後であって前記結合させるステップの前に、前記脱保護組成物の総体積の1/2より少ない量の洗浄組成物を使用して前記反応容器の内部を洗浄するステップを含む、請求項80に記載のプロセス。
【請求項82】
前記脱保護するステップの後であって前記結合させるステップの前に、前記脱保護組成物の総体積の1/3より少ない量の洗浄組成物を使用して前記反応容器の内部を洗浄するステップを含む、請求項80に記載のプロセス。
【請求項83】
固相ペプチド合成の間に保護されたアミノ酸を脱保護するためのシステムであって、
容器の内部を画定する少なくとも1つの側壁、加圧された不活性ガスを反応容器の上側内部に導入するための前記反応容器の上部における第1の開口部、および前記加圧された不活性ガスを前記反応容器の上側内部から外に除去するための前記反応容器の上部における第2の開口部を有する反応容器、
前記第1の開口部を通して前記反応容器の上側内部に、そして前記第2の開口部を通して前記反応容器の上側内部から外に前記加圧された不活性ガスを供給して、前記反応容器の上側内部に存在する場合に揮発した反応物を除去するための、前記第1の開口部と流体連通した不活性ガス源、
前記反応容器の内部と流体連通したアミノ酸収容器、
前記反応容器の内部と流体連通した脱保護剤収容器、ならびに
前記反応容器を加熱するための源
を含む、システム。
【請求項84】
前記反応容器の内部と流体連通した溶媒収容器を含む、請求項83に記載のシステム。
【請求項85】
前記反応容器の内部に位置し、前記第1の開口部と前記反応容器の内部とを流体連結する噴霧ヘッドを含む、請求項83または請求項84に記載のシステム。
【請求項86】
前記反応容器の前記少なくとも1つの側壁が、外側内部空間の周囲に延在する少なくとも1つの外側側壁を含み、
前記噴霧ヘッドが、前記外側内部空間の中に位置決めされ、内側内部空間の周囲に延在する少なくとも1つの内側側壁、および少なくとも部分的に前記内側内部空間の周囲に延在する複数の穴を含み、
前記内側内部空間が前記第1の開口部と流体連通しており、
前記内側内部空間と外側内部空間が前記複数の穴の穴によって互いに流体連通している、請求項85に記載のシステム。
【請求項87】
前記溶媒収容器が、前記第1の開口部を通して前記内側内部空間に、そして前記複数の穴の穴から外に前記外側内部空間に溶媒を導入するための前記第1の開口部および前記噴霧ヘッドと流体連通している、請求項86に記載のシステム。
【請求項88】
前記加圧された不活性ガスを前記不活性ガス源から前記反応容器の上側内部に供給するための、前記不活性ガス源と前記第1の開口部とを流体連結する、前記第1の開口部から上流の位置にある第1の流路、および
前記不活性ガス源と前記第1の開口部との間に位置する前記第1の流路と流体連通しており、開放位置と閉鎖位置とを有する第1のバルブ
をさらに含み、
前記第1のバルブの開放位置が前記不活性ガス源から前記反応容器の内側上部への加圧された不活性ガスの流れを可能にし、
前記第1のバルブの閉鎖位置が前記不活性ガス源から前記反応容器の内側上部への加圧された不活性ガスの流れを阻止する、請求項83から87のいずれかに記載のシステム。
【請求項89】
前記第2の開口部を通して前記反応容器の上側内部と前記反応容器の外側にある廃棄物回収ゾーンとを流体連結する、前記第2の開口部から下流の位置にある第2の流路、および
前記第2の開口部と前記反応容器の外側にある前記廃棄物回収ゾーンとの間に位置する前記第2の流路と流体連通しており、開放位置と閉鎖位置とを有する第2のバルブ
をさらに含み、
前記第2のバルブの開放位置が前記反応容器の上側内部から前記反応容器の外側の前記廃棄物回収ゾーンへの加圧された不活性ガスの流れを可能にし、
前記第2のバルブの閉鎖位置が前記反応容器の上側内部から前記反応容器の外側の前記廃棄物回収ゾーンへの加圧された不活性ガスの流れを阻止する、請求項88に記載のシステム。
【請求項90】
前記第1のバルブおよび前記第2のバルブの同時の開放位置が、加圧された不活性ガスが前記不活性ガス源から前記反応容器の上側内部を通って前記反応容器の上側内部から外に流れて、揮発した反応物が存在する場合に前記揮発した反応物を前記反応容器の上側内部から除去することを可能にする、請求項89に記載のシステム。
【請求項91】
前記アミノ酸収容器と前記第1のバルブとを流体連結する、第1のバルブから上流の位置にある第3の流路をさらに含み、
前記第3の流路に対する前記第1のバルブの開放位置が前記アミノ酸収容器から前記反応容器内へのアミノ酸の流れを可能にし、
前記第3の流路に対する前記第1のバルブの閉鎖位置が前記アミノ酸収容器から前記反応容器内へのアミノ酸の流れを阻止する、請求項88に記載のシステム。
【請求項92】
前記反応容器が前記反応容器の下部に第3の開口部をさらに含み、前記システムが、
前記不活性ガス源と前記第3の開口部とを流体連結する第4の流路、および
前記不活性ガス源と前記第3の開口部との間に位置する第4の流路と流体連通しており、開放位置と閉鎖位置とを有する第3のバルブ
をさらに含み、
前記第4の流路に対する前記第3のバルブの開放位置が前記不活性ガス源から前記反応容器内への加圧された不活性ガスの流れを可能にし、
前記第4の流路に対する前記第3のバルブの閉鎖位置が前記不活性ガス源から前記反応容器内への加圧された不活性ガスの流れを阻止する、請求項88に記載のシステム。
【請求項93】
前記不活性ガス源から下流の位置かつ前記第1および第3のバルブの両方から上流の位置にある圧力調節器をさらに含み、前記第1の流路が前記不活性ガス源、前記圧力調節器、および前記第1のバルブを流体連結し、前記第4の流路が前記不活性ガス源、前記圧力調節器、および前記第3のバルブを流体連結する、請求項92に記載のシステム。
【請求項94】
前記圧力調節器が、前記第4の流路によりも高い圧力で前記第1の流路に加圧された不活性ガスを供給する、請求項93に記載のシステム。
【請求項95】
前記脱保護剤収容器と前記第3のバルブを流体連結する第5の流路をさらに含み、
前記第5の流路に対する前記第3のバルブの開放位置が前記脱保護剤収容器から前記反応容器内への脱保護剤の流れを可能にし、
前記第5の流路に対する前記第3のバルブの閉鎖位置が前記脱保護剤収容器から前記反応容器内への脱保護剤の流れを阻止する、請求項92に記載のシステム。
【請求項96】
前記第1および第3のバルブの一方または両方がロータリーバルブである、請求項93に記載のシステム。
【請求項97】
前記第1および第3のバルブの両方がロータリーバルブである、請求項93に記載のシステム。
【請求項98】
前記第1の流路に沿って前記第1のバルブと直列に位置する第4のバルブをさらに含み、前記第1の流路が前記不活性ガス源、前記圧力調節器、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、および前記第1の開口部を流体連結する、請求項93に記載のシステム。
【請求項99】
前記第4のバルブが前記第1のバルブと前記第1の開口部との間に位置する、請求項98に記載のシステム。
【請求項100】
前記アミノ酸収容器と前記第4のバルブを流体連結する、前記第4のバルブから上流の位置にある第6の流路をさらに含み、
前記第6の流路に対する前記第4のバルブの開放位置が前記アミノ酸収容器から前記反応容器内へのアミノ酸の流れを可能にし、
前記第6の流路に対する前記第4のバルブの閉鎖位置が前記アミノ酸収容器から前記反応容器内へのアミノ酸の流れを阻止する、請求項98に記載のシステム。
【請求項101】
前記第1、第3、および第4のバルブの1つまたは複数がロータリーバルブである、請求項93に記載のシステム。
【請求項102】
前記第1、第3、および第4のバルブの全てがロータリーバルブである、請求項93に記載のシステム。
【請求項103】
前記反応容器を加熱するための源がマイクロ波照射の源である、請求項83に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願への相互参照
本出願は、2021年9月17日出願の米国仮特許出願第63/245,674号への優先権を主張し、その開示全体を参照により組み込む。
【0002】
本出願はまた、2022年8月26日出願の米国仮特許出願第63/401,349号への優先権を主張し、その開示全体を参照により組み込む。
【0003】
分野
本開示は、固相ペプチド合成プロセスおよび関連するシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
1963年におけるその発端以来、固相ペプチド合成はペプチド合成のための可能性のある主要な手段であった。J. Am. Chem. Soc. 1963, 85, 14, 2149-2154。固相ペプチド合成(「SPPS」ともいう)は、固相樹脂等の固体支持体上でペプチドを化学的に合成するために使用されるプロセスである。SPPSは、アミノ酸を結合させてペプチドを形成するために繰り返される一連のステップを含む。
【0005】
SPPSプロセスにおいては、最初のアミノ酸が通常、カルボキシル、即ちC末端の連結基によって固体支持体に結合される。最初のアミノ酸はまた、望ましくない反応から保護するために、通常、アミン、即ちN末端に保護基を含む。
【0006】
脱保護剤は保護基を除去し(最初のアミノ酸が「脱保護」され)、それにより、第2のアミノ酸を、その酸基を介して最初の酸のアミン基に結合することができる。第2の(および引き続く)酸も、最初は保護されている。
【0007】
即ち、固相ペプチド合成の一般的な流れは、脱保護し、結合させ、所望のペプチドが完成するまで繰り返すことであり、続いて完成したペプチドが固相樹脂から切断される。
【0008】
SPPSは溶液に基づくペプチド合成を劇的に簡略化し、脱保護と結合のステップの繰り返しによって、一時に1つのアミノ酸でペプチド鎖を構築するためのフレームワークを提供した。これは、それぞれの脱保護および結合のステップの後のより長たらしい抽出プロセスとは反対の単純な濾過による簡単な単離によるものであった。
【0009】
従来、SPPSプロセスは、残存する脱保護剤を除去してペプチドの不純物を最小限にするために、脱保護と結合のステップの間に多数の洗浄ステップを必要としている。残存する脱保護剤は、例えば脱保護されたアミノ酸に結合されるべきアミノ酸から保護基(例えばFmoc保護基)を時期尚早に除去してしまうことがある。これは、成長するペプチド鎖に望ましくないさらなるアミノ酸の挿入をもたらすことがある。残存する脱保護剤はまた、アミノ酸と反応することによってアミノ酸の活性を低減させることがあり、これはペプチド鎖の欠失をもたらすことがある。その結果、次のアミノ酸の挿入と欠失の両方が生じ、これが分離することが極めて困難な不純物をもたらすことがある。この理由により、これらの分離が潜在的に困難である不純物を防止するために、典型的にはいずれの脱保護ステップの後でも十分な洗浄(例えば多数の洗浄ステップ)が採用されている。
【0010】
多数の洗浄ステップは、より短いペプチドの純度を改善することができる。しかし多数の洗浄ステップでも、特にペプチド鎖中のアミノ酸の数が増加するとともに、不純物の形成は依然として問題である。
【0011】
さらに、溶液系の相合成と比較して、SPPSは、それぞれの脱保護と結合のステップの間の連続的な洗浄ステップから顕著な廃棄物の生成をもたらすことがある。歴史的には、これはそれぞれのステップの間に約5回の洗浄を含み、その結果、全廃棄物の約80~90%が洗浄から生成する。Chan, W.C., & White, P.D., Fmoc solid phase peptide synthesis: A practical approach. New York: Oxford University Press (2000)。
したがって、例えば50まで、100、またはそれより多いアミノ酸由来の単位を有するより長いペプチド配列の改善された純度を含むペプチド配列の純度を提供し、プロセス効率を改善し、および/または脱保護後の洗浄を最小化もしくは排除でき、それにより、SPPSプロセスに必要な溶媒の量および関連する材料コスト、溶媒廃棄の問題、その他を低減できる固相ペプチド合成プロセスおよびシステムへのニーズがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 1963, 85, 14, 2149-2154
【非特許文献2】Chan, W.C., & White, P.D., Fmoc solid phase peptide synthesis: A practical approach. New York: Oxford University Press (2000)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
本開示は、(例えば固相ペプチド合成におけるステップとしての)保護されたアミノ酸を脱保護するためのプロセスに関する。保護されたアミノ酸を脱保護すること(脱保護反応)によって、保護されたアミノ酸の保護基が除去され(アミノ酸が脱保護され)、第2のアミノ酸との結合反応のためのアミノ酸が調製される。
【0014】
一般に、本開示の脱保護プロセスでは、不活性ガスを使用して、揮発した脱保護剤を反応容器から除去する(放流する、パージする、放出する、移動させる、置き換える、その他)。種々の実施形態では、本開示の脱保護プロセスは、揮発した脱保護剤を含む反応容器の内部の一部を通して不活性ガスを方向付けて(例えば揮発した脱保護剤を含む反応容器のヘッドスペースを通して不活性ガスを方向付けて)、揮発した脱保護剤を反応容器の内部から除去する(放流する、パージする、放出する、移動させる、置き換える、その他の)ステップを含む。
【0015】
第1の実施形態では、(例えば固相ペプチド合成の間に)保護されたアミノ酸を脱保護するためのプロセスは、脱保護反応の間に反応容器中で(例えば反応容器の下側内部で)保護されたアミノ酸および脱保護剤を加熱するステップを含む。脱保護剤は一般に、保護されたアミノ酸および脱保護剤を加熱するために使用される温度と比較して、ならびに/または存在し得る溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)およびN-メチルピロリジノン(NMP)の沸点と比較して、より低い沸点を有し得る。したがって、脱保護剤は脱保護プロセスの加熱ステップの間に揮発または蒸発する(例えば、脱保護剤は反応容器の上側内部に揮発または蒸発する)。
【0016】
第1の実施形態では、保護されたアミノ酸を脱保護するためのプロセスは、加熱ステップの間に反応容器の内部を通して不活性ガスを方向付けて(例えば連続的におよび/または間欠的に方向付けて)、揮発した脱保護剤を反応容器の内部から除去する(パージする、放流する、放出する、移動させる、置き換える、その他の)ステップをさらに含む。より具体的には、第1の実施形態では、プロセスは、反応容器の上部に位置する第1の開口部を通して揮発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)に不活性ガスを方向付ける(導入する、供給する、その他の)ステップ、ならびにこれも反応容器の上部に位置する第2の開口部を通して反応容器の上側内部から(例えばヘッドスペースから)不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出する(放流する)ステップを含み得る。したがって、第1の実施形態では、プロセスは、反応容器の上部に位置する第1の開口部を通して反応容器の上側内部内へ、蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部を通し(例えばヘッドスペースを通し)、やはり反応容器の上部に位置する第2の開口部を通して反応容器の上側内部から外に(例えばヘッドスペースの外に)不活性ガスを方向付けて、反応容器の上側内部から(例えば反応容器のヘッドスペースから)揮発した脱保護剤を除去する(パージする、放流する、放出する、移動させる、除去する、その他の)ステップを含み得る。
【0017】
第2の実施形態では、(例えば固相ペプチド合成の間に)保護されたアミノ酸を脱保護するためのプロセスは、保護されたアミノ酸の保護基を脱保護組成物によって除去するステップを含み、脱保護組成物は、脱保護組成物の総体積に基づいて約5vol%またはそれよりも少ない量で脱保護剤を含む。例えば、脱保護組成物は、脱保護組成物の総体積に基づいて約2vol%~約5vol%、例えば約2~約4.5vol%、例えば約3~約4.5vol%、別の例として約3.5~約4.5vol%の量で脱保護剤を含んでよい。
【0018】
第2の実施形態では、保護されたアミノ酸および脱保護組成物は、反応容器の下側内部に存在する。脱保護剤は一般に、脱保護反応温度および/もしくは脱保護の間の反応容器の温度と比較してより低い沸点、ならびに/または反応容器中に存在し得る溶媒(複数可)(例えば脱保護組成物中に存在する溶媒)、例えばジメチルホルムアミド(DMF)およびN-メチルピロリジノン(NMP)の沸点と比較してより低い沸点を有し得る。したがって、脱保護剤の少なくとも一部は、除去ステップの間に反応容器の上側内部に蒸発(揮発)する。
【0019】
第2の実施形態のプロセスはまた、保護基を除去するステップの間に、反応容器の内部を通して不活性ガスを方向付けて(例えば連続的におよび/または間欠的に方向付けて)、蒸発(揮発)した脱保護剤を反応容器の上側内部から除去する(放流する、放出する、パージする、移動させる、置き換える、その他の)ステップを含んでよい。
【0020】
第2の実施形態では、方向付けるステップは、蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)に不活性ガスを方向付ける(導入する、供給する、その他の)ステップ、ならびに不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)から放出する(放流する)ステップを含んでよい。より具体的には、方向付けるステップは、反応容器の上部に位置する第1の開口部を通し、そして蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)を通して、反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)に不活性ガスを方向付けるステップ、ならびに反応容器の上側内部から(例えばヘッドスペースから)これも反応容器の上部に位置する第2の開口部を通して不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出する(放流する)ステップを含んでよい。
【0021】
第2の実施形態では、別の例として、方向付けるステップは、反応容器の下側内部に不活性ガスを方向付ける(導入する、供給する、その他の)ステップ、ならびに反応容器を上側内部(例えばヘッドスペース)から不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出する(放流する)ステップを含んでよい。より具体的には、方向付けるステップは、反応容器の下部に位置する開口部を通して反応容器の下側内部に、そして反応容器の下側内部から上向きに(例えば反応容器の下側内部における反応物を通して上向きに)、蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)を通して不活性ガスを方向付けるステップ、ならびに反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)から反応容器の上部に位置する別の開口部を通して不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出する(放流する)ステップを含んでよい。
【0022】
第2の実施形態では、さらに別の例として、方向付けるステップは、蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)と反応容器の下側内部の両方に不活性ガスを方向付ける(導入する、供給する、その他の)ステップ、ならびに反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)から不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出する(放流する)ステップを含んでよい。より具体的には、方向付けるステップは、反応容器の上部に位置する第1の開口部を通し、そして蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)を通して、反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)に不活性ガスを方向付け、かつ反応容器の下部に位置する第2の開口部を通して反応容器の下側内部に、そして反応容器の下側内部から上向きに(例えば反応容器の下側内部における反応物を通して上向きに)、蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)を通して、不活性ガスを方向付けるステップ、ならびに反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)から反応容器の上部に位置する第3の開口部を通して、不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出する(放流する)ステップを含んでよい。
【0023】
第2の実施形態は、保護されたアミノ酸から保護基を除去するステップの間に、保護されたアミノ酸および脱保護組成物を加熱するステップであって、加熱するステップの間に脱保護剤の少なくとも一部が反応容器の上側内部に蒸発する、ステップ、ならびに加熱するステップの間に反応容器の内部を通して不活性ガスを方向付けて反応容器の上側内部から不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を除去する(放出する、放流する、その他の)ステップを含んでよい。あるいは、第2の実施形態では、保護基を除去するステップを室温で行なってよい。
【0024】
注記した変形および当業者には明白になる変形を除いて、本開示の種々の実施形態は同様であってよい。しかし、本発明は多くの異なった形態で具現化してよく、本明細書で説明する実施形態に限定されると解釈すべきではない。例えば、1つの実施形態の一部として開示した特徴は、さらなる実施形態を得るために、別の実施形態に関連して用いることができる。以下、実施形態のいくつかを逐次的に指定するが、順序は相対的優先性に関係しない。
【0025】
使用される場合、本明細書で開示する脱保護プロセスの実施形態のいずれにおける加熱ステップも、例えば約40℃~約120℃、別の例として約50℃~約120℃、また別の例として約70℃~約120℃の温度で行なってよい。本明細書で開示する脱保護プロセスの実施形態のいずれにおける加熱ステップも、マイクロ波照射を用いて行なってよい。
【0026】
本開示は、固相ペプチド合成(SPPS)のためのプロセスにも関する。SPPSプロセスは、本明細書に記載した実施形態のいずれか(例えば脱保護ステップの第1の実施形態および/または第2の実施形態)に従って第1の保護されたアミノ酸を脱保護して脱保護されたアミノ酸を提供するステップ、ならびに第2のアミノ酸を脱保護されたアミノ酸に結合させ第1および第2のアミノ酸からペプチドを形成するステップを含む。
【0027】
一部の実施形態(例えば第2の実施形態)では、SPPSプロセスは、脱保護ステップの後であって結合ステップの前に洗浄ステップを含まなくてもよい。一部の実施形態(例えば第2の実施形態)では、SPPSプロセスは、脱保護ステップの後であって結合ステップの前に、脱保護組成物の総体積より少ない量で洗浄組成物(例えば溶媒)を用いる洗浄ステップを含んでよい。例えば、洗浄ステップは、脱保護組成物の総体積の1/2より少ない量の洗浄組成物を使用する洗浄、および別の例として脱保護組成物の総体積の1/3より少ない量の洗浄組成物を使用する洗浄を含んでよい。
【0028】
本開示は、固相ペプチド合成のためのシステムにも関する。
【0029】
本開示は、種々の予期しない便益を提供することができる。本開示のプロセスは、本明細書に記載したように蒸発した脱保護剤を反応容器から除去する(放流する、パージする、放出する、その他の)ために不活性ガスを使用しないSPPSプロセスを使用して達成されるペプチド純度に対して、50まで、100、またはそれより多いアミノ酸を含むより長いペプチドについてさえも良好な(例えば、改善された)ペプチド純度を提供することができる。本開示のプロセスにより、より低い沸点を有するより反応性の高い脱保護剤(例えばピロリジン)をより高い温度で使用することも可能になり、これにより、低沸点の揮発しやすい反応物を使用することに関連する有害効果を最小化しつつ、反応時間を早めることができる。
【0030】
即ち、長いペプチド鎖であっても、また脱保護剤としてピロリジンを使用してもそのより低い沸点によって観察される顕著な蒸発にも関わらず、このプロセスによってペプチド純度を改善することができる。このプロセスは、脱保護速度が速くなるという便益を提供することもできる。
【0031】
本開示のプロセスは、比較的少量(例えば脱保護組成物の総体積に対して約5vol%またはそれ未満)の脱保護剤を使用して、および/または脱保護の後であって結合の前に洗浄ステップを必要とせず、および/または脱保護の後であって結合の前に低減された量の溶媒を使用する(例えば脱保護組成物の総体積より少ない量の溶媒を使用する)洗浄ステップで、(例えばペプチド純度によって測定して)効果的なSPPS結果を提供することもできる。これは、例えばプロセス効率の改善、エネルギーの節約、SPPSプロセスに必要な溶媒量の低減、材料コストの低減、溶媒廃棄の問題の低減、その他の便益を提供することもできる。
【0032】
上記の説明的概要、ならびに本発明のその他の例示的実施例、目的、および/または利点、ならびにこれらを達成する様式を、以下の詳細な説明およびそれに添付する図面の中でさらに説明する。上記の概要はいくつかの簡単な例を提供しており、網羅的ではない。本発明は上記の実施例に限定されない。
【0033】
本開示の非限定的な実施形態を、添付の図を参照して例として記述する。これらの図面は概略的であり、縮尺に合わせて描くことを意図していない。これらの図面において、図示したそれぞれの同一のまたはほぼ同一の成分は、典型的には単一の数字によって表している。明確にする目的のため、全ての図面で全ての成分に標識してはおらず、当業者に本発明を理解させるために説明が必要でない場合には本発明のそれぞれの実施形態のあらゆる成分を示してはいない。本発明は多くの異なった形態で具現化してよく、図面に示した実施例に限定されると解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】
図1Aは例示的な反応容器の断面図であり、本開示の実施形態による保護されたアミノ酸を脱保護するプロセスを概略的に示している。
【0035】
【
図1B】
図1Bは別の例示的な反応容器の断面図であり、本開示の他の実施形態による保護されたアミノ酸を脱保護するプロセスを概略的に示している。
【0036】
【
図2A】
図2Aは本開示の実施形態による例示的なペプチド合成システムの選択した部分を示す概略的なフローダイアグラムである。
【0037】
【
図2B】
図2Bは本開示の他の実施形態による例示的なペプチド合成システムの選択した部分を示す概略的なフローダイアグラムである。
【0038】
【
図3A】
図3Aは、本開示の実施形態による実施例1に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージング(例えば連続的なヘッドスペースクリーニング)を利用する固相ペプチド合成によって合成したチモシンの超高性能液体クロマトグラフィー(本明細書で「UPLC」とも称する)のクロマトグラフである。
【0039】
【
図3B】
図3Bは、比較例1に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージングを伴わない(例えば連続的なヘッドスペースクリーニングを伴わない)固相ペプチド合成を使用して合成したチモシンのUPLCクロマトグラフである。
【0040】
【
図4A】
図4Aは、本開示の実施形態による実施例2に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージング(例えば連続的なヘッドスペースクリーニング)を伴う固相ペプチド合成を使用して合成したプロインスリンのUPLCのクロマトグラフである。
【0041】
【
図4B】
図4Bは、本開示の実施形態による実施例2に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージング(例えば連続的なヘッドスペースクリーニング)を伴う固相ペプチド合成を使用して合成したプロインスリンの質量スペクトルである。
【0042】
【
図5A】
図5Aは、本開示の実施形態による実施例3に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージング(例えば連続的なヘッドスペースクリーニング)を伴う固相ペプチド合成を使用して合成したHIV-1プロテアーゼのUPLCのクロマトグラフである。
【0043】
【
図5B】
図5Bは、本開示の実施形態による実施例3に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージング(例えば連続的なヘッドスペースクリーニング)を伴う固相ペプチド合成を使用して合成したHIV-1プロテアーゼの質量スペクトルである。
【0044】
【
図6A】
図6Aは、本開示の実施形態による実施例4に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージング(例えば連続的なヘッドスペースクリーニング)を伴う固相ペプチド合成を使用して合成したBarstarのUPLCのクロマトグラフである。
【0045】
【
図6B】
図6Bは、本開示の実施形態による実施例4に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージング(例えば連続的なヘッドスペースクリーニング)を伴う固相ペプチド合成を使用して合成したBarstarの質量スペクトルである。
【0046】
【
図7A】
図7Aは、本開示の実施形態による実施例5に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージング(例えば連続的なヘッドスペースクリーニング)を伴う固相ペプチド合成を使用して合成したMDM2のUPLCのクロマトグラフである。
【0047】
【
図7B】
図7Bは、本開示の実施形態による実施例5に記載した脱保護ステップ(複数可)の間のヘッドスペースパージング(例えば連続的なヘッドスペースクリーニング)を伴う固相ペプチド合成を使用して合成したMDM2の質量スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
本開示の上記ならびにその他の態様、特徴、および利点は、以下の実施形態の詳細な説明から明らかになる。本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱せずに当業者によって様々な方法で具現化できることを理解されたい。むしろ、実施形態は完全な開示のためおよび当業者による本発明の完全な理解を提供するために提供される。本発明の範囲は添付した特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。
【0049】
本開示の実施形態は、(例えば固相ペプチド合成におけるステップとしての)保護されたアミノ酸を脱保護するためのプロセスおよびシステムに関する。例示的な実施形態では、プロセスおよびシステムはバッチ系のプロセスおよびシステムである。
【0050】
図1Aは、本開示の実施形態によるアミノ酸の脱保護およびペプチド合成のプロセスおよびシステムにおける使用に適した反応容器の概略的な断面図である。
図1Aはまた、保護されたアミノ酸を脱保護するための本開示の実施形態によるプロセスを概略的に示している。
【0051】
図1Bは、本開示の実施形態によるアミノ酸の脱保護およびペプチド合成のプロセスおよびシステムにおける使用に適した別の反応容器の概略的な断面図である。
図1Bはまた、保護されたアミノ酸を脱保護するための本開示の実施形態によるプロセスを概略的に示している。
【0052】
他に指示した場合を除いて、
図1Aに示した要素は
図1Bを含む他の図と同じ参照番号を有する。
【0053】
図1Aおよび
図1Bに示すように、反応容器4は反応容器4の内部7(例えばキャビティ)の周囲に延在する少なくとも1つの側壁6を含む(反応容器の内部7は本明細書で外側内部空間とも称する)。反応容器4の具体的な寸法および形状は限定されない。固相ペプチド合成における使用に適した反応容器は当技術分野で周知であり、市販で入手できる。
【0054】
反応容器の寸法(内部体積)は限定されない。例示的な反応容器の寸法は1リットル未満から40リットルまで、またはそれより多く、例えば10ml、30ml、125ml、1リットル、3リットル、5リットル、8リットル、10リットル、15リットルなど、40リットルまで、またはそれより多い範囲であり得、限定されない。
【0055】
反応容器4は1つまたは複数の開口部をさらに含む。非限定的な例として、
図1Aは反応容器4の上部に(例えば上壁に)位置する開口部10、12、および14、ならびに反応容器4の下部(例えば底壁)に位置する開口部16を示す。別の非限定的な例として、
図1Bは反応容器4の上部に(例えば上壁に)位置する開口部200、202、204、206、および208、ならびに反応容器4の下部(例えば底壁)に位置する開口部16を示す。開口部(例えば入口、出口、ポート、その他)は、本明細書でさらに詳細に論じるように、流体(例えば気体および/または液体)および/または固体、例えば反応物、溶媒、気体、生成物(ペプチド)、副生成物、および過剰の(残留)反応物などの導入および/または除去を可能にする。
【0056】
当業者には、反応容器4は
図1Aおよび
図1Bに示した開口部の数および/または位置に限定されず、より少ないもしくはより多い開口部および/またはそれらの異なる位置を有する他の反応容器の設計および構成も使用できることが理解されよう(例えば、反応容器は上壁および/または底壁および/または側壁などに位置するより少ないまたはより多い開口部を含んでよい)。
【0057】
図1Aに示すように、流体および/または固体は、1つまたは複数の流路(例えばライン、通路、チューブ、マニフォールド、その他)、例えばそれぞれ開口部10、12、および14と流体連通する流路20、22、および24、ならびに開口部16と流体連通する流路26を介して、反応容器4内におよび反応容器4から導入する(例えば、移動する、輸送する、方向付ける、放流する、パージする、排出する、放出する、その他の)ことができる。
【0058】
流路のその他の非限定的な例を、それぞれ開口部200、202、204、206、および208と流体連通する流路210、212、214、216、および218、ならびに開口部16と流体連通する流路26として
図1Bに示す。
【0059】
一部の実施形態では、反応容器4は、流体(例えば溶媒、反応物、および/または不活性ガス)を反応容器中に添加する(例えば方向付ける、供給する、噴霧する、その他)ために、反応容器の内部に位置する少なくとも1つの噴霧ヘッド(例えば噴霧ノズル)または等価の構造を含んでよい。噴霧ヘッドは、反応容器から分離された(例えば反応容器に取り付けまたは反応容器から取り外しできる)部品(例えば成分、要素、その他)であってよく、または反応容器の一体化された部分であってもよい。
【0060】
非限定的な例として、
図1Bは、反応容器4の内部空間7(本明細書で外側内部空間とも称する)の中に位置する噴霧ヘッド220を含む実施形態を概略的に示す。噴霧ヘッド220は、反応容器4の内部空間7(外側内部空間とも称する)の中に位置決めされ、内側内部空間の周囲に延在する少なくとも1つの側壁220aを含む。噴霧ヘッド220は、開口部208の近位に開口部208(および流路218)と流体連通する第1の部分(端部)220b、および開口部208の遠位に第2の部分(端部)220cを含む。複数の穴222(例えばポート、その他)が内側内部空間の周囲に少なくとも部分的に延在し、例えば側壁220aの中に画定され得る。内側内部空間および外側内部空間は複数の穴の穴によって互いに流体連通している。
【0061】
噴霧ヘッド220は、流路218および開口部208を介して噴霧ヘッド220の内側内部空間の中に方向付けられる流体(例えば本明細書で論じる不活性ガス、溶媒、その他)が複数の穴222の穴(例えば1つ、1つより多く、多数の、または全ての穴)を通って反応容器4の外側内部空間7の中に流れる(例えば噴霧される、方向付けられる、供給される、その他)ように構成されている。一部の実施形態では、噴霧ヘッド220は、複数の穴222の少なくとも1つまたは複数の穴を出る流体が反応容器の側壁6に向けて方向付けられる(噴霧される)ように構成され得る。例示的な噴霧パターンを
図1Bに概略的に(例えば近似的に)破線224で示す。ここで複数の穴222の穴を出る流体は側壁6に向けてほぼ下向きの角度に方向付けられる。
【0062】
本開示は
図1Bに示したような特定の噴霧ヘッドの構造、反応容器内での位置、噴霧パターン、および/または噴霧ヘッドの穴を出る流体の方向(角度)に関して限定されず、他の噴霧ヘッドの構造、位置、噴霧パターン、および/または噴霧角度、その他を使用することができる。SPPSのプロセスおよびシステムにおける使用に適した噴霧ヘッドは当技術分野で公知であり、本開示で使用することができる。
【0063】
本開示は特定の数および/または位置の開口部および流路に限定されず、したがって反応容器は必要に応じて1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれより多い開口部および関連する流路を有してよい。さらに、流体および/または固体の流れを方向付け、可能にし、および/またはブロックする(例えば閉鎖する、制限する、その他)ように働く任意の系列の流路および関連するバルブを使用することができる。
【0064】
本開示の脱保護プロセスにおいて、30と指定した反応物が反応容器4の下部に存在する。例えば、反応物は反応容器4の下部に位置するフィルター32の上に載っていてよい。フィルター32は、本明細書で論じるような固体支持体(例えば固体樹脂支持体)の流路26への進入を防止することもできる。
【0065】
反応物30は、保護されたアミノ酸、即ち官能基の望ましくない反応から保護するために末端アミン基等の官能基に結合された少なくとも1つの保護基を含むアミノ酸を含む。
【0066】
反応物30はまた、脱保護剤を含む。脱保護剤は保護されたアミノ酸と反応して保護基を除去し、以前には保護されていた官能基(例えば末端アミン基)を(例えば1つ、2つ、またはそれより多い連続するアミノ酸とペプチド鎖を形成する)反応に利用可能にする。
【0067】
SPPSプロセスに使用される脱保護剤は、典型的には室温で液体である。従って、脱保護剤は、典型的には脱保護剤(脱保護剤の量は脱保護組成物の総体積に基づいてゼロ体積%より大きい)および好適な溶媒を含む脱保護組成物の一部として反応容器中に添加されおよび/または存在する。
【0068】
脱保護剤は有機塩基であってよい。脱保護剤としての使用に適した有機塩基の例には、ピペリジンおよび/またはピロリジンが限定なく含まれる。プロセスにおける他のステップ、成長するペプチド鎖、またはシステムを別様に妨げることなく脱保護機能を提供する他の有機塩基も適切な場合がある。
【0069】
脱保護組成物の一部となり得る溶媒の例には、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリジノン(NMP)、グリーン溶媒、および/または非レプロトキシン(non-reprotoxin)溶媒など、ならびにそれらの組合せおよび/または混合物が限定なく含まれる。グリーンおよび/または非レプロトキシン溶媒の例には、N-ホルミルモルホリン(NFM)、N-ブチルピロリジノン(NBP)、アルコキシベンゼン系溶媒(例えばアニソール、ジメトキシベンゼン系溶媒、例えば1,3-ジメトキシベンゼン(1,3-dimethoxoybenzene)など)、その他、およびそれらの組合せおよび/または混合物が限定なく含まれ得る。
【0070】
本開示の実施形態(例えば第2の実施形態)では、脱保護組成物は、脱保護組成物の総体積(100%体積)に基づいて約5体積%(vol%)またはそれよりも少ない量で脱保護剤を含んでよい(脱保護剤は存在する、即ち脱保護剤の量はゼロより多い)。一部の実施形態(例えば第2の実施形態)では、脱保護組成物は、脱保護組成物の総体積に基づいて約1vol%~約5vol%、例えば約2vol%~約5vol%、例えば約2~約4.5vol%、例えば約3~約4.5vol%、別の例として約3.5~約4.5vol%の量で脱保護剤を含んでよい。一部の実施形態(例えば第2の実施形態)では、脱保護組成物は、脱保護組成物の総体積に基づいてゼロより多く約4.5vol%までの量で脱保護剤を含んでよい。一部の実施形態(例えば第2の実施形態)では、脱保護組成物は、脱保護組成物の総体積に基づいてゼロより多く約4vol%までの量で脱保護剤を含んでよい。一部の実施形態(例えば第2の実施形態)では、脱保護組成物は、脱保護組成物の総体積に基づいてゼロより多く約3vol%までの量で脱保護剤を含んでよい。脱保護剤の量は(例えば第2の実施形態では)、端点を含む本明細書に記載した範囲内の任意の値(例えばゼロより多く約5vol%までの範囲内の任意の値)であってよく、範囲内の全ての部分範囲も開示されている。
【0071】
しかし脱保護組成物中の脱保護剤の濃度はそのように限定されず、変動してよい。例えば、本開示の一部の実施形態(例えば第1の実施形態)では、脱保護組成物は、脱保護組成物の総体積(100%体積)に基づいて約5vol%より多く、例えば約20vol%またはそれより多い量で脱保護剤を含んでよい。一部の実施形態(例えば第1の実施形態)では、脱保護組成物は、脱保護組成物の総体積に基づいて約20vol%~100vol%、例えば約20~約50vol%、例えば約20vol%~約40vol%、別の例として約20~約35vol%の量で脱保護剤を含んでよい。脱保護剤の量は(例えば第1の実施形態では)、端点を含む本明細書に記載した範囲内の任意の値(例えば約5vol%より多く100vol%までの範囲内の任意の値)であってよく、範囲内の全ての部分範囲も開示されている。
【0072】
当業者であれば用語アミノ酸の意味は理解されよう。本明細書で使用される場合、その最も広い意味における用語アミノ酸は、アミンとカルボン酸の両方の官能基および一部の例では側鎖も含む有機化合物を意味する。当業者であれば、アミノ酸が天然のアミノ酸(タンパク質原性アミノ酸)および/または非タンパク質原性アミノ酸を含むことも理解され、またこれらを特定するために使用される一文字表記も理解されよう。
【0073】
用語ペプチドも当業者には理解されよう。本明細書で使用される場合、用語ペプチドは当技術分野におけるその通常の意味を有し、1つのアミノ酸のカルボニル炭素を別のアミノ酸の窒素原子に結合することによって2つまたはそれより多い(同一のまたは異なる)アミノ酸から誘導されるアミドを意味し得る。
【0074】
本開示のプロセスにおける使用のために好適な保護基は当技術分野で周知である。アミンまたはN末端の保護のために好適な保護基の例には、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基が限定なく含まれる。例えばChan and White, Fmoc solid phase peptide synthesis, a practical approach, Oxford University Press (2000)を参照されたい。
【0075】
アミノ酸は側鎖保護基を含んでもよい。側鎖保護基の例には、トリチル、t-ブチル、および/または2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)保護基などが限定なく含まれ得る。所望のペプチド鎖長が得られた場合には、側鎖保護基は除去することができる。
【0076】
保護されたアミノ酸は、当技術分野で公知のように、固体支持体に直接または間接に結合することができる。例えば、保護されたアミノ酸のカルボキシ末端は、好適なリンカーを介して固体支持体に結合することができる。別の例として、保護されたアミノ酸のカルボキシ末端は固体支持体に間接的に結合することができ、例えば別のアミノ酸に(またはペプチド鎖に)結合させてこれを次に固体支持体に結合させることができる。
【0077】
当技術分野で公知の固体支持体を本開示のプロセスで使用してよい。固体支持体材料の非限定的な例には、ポリスチレン(例えばミクロ細孔質ポリスチレン樹脂、メソ細孔質ポリスチレン樹脂、マクロ細孔質ポリスチレン樹脂等の樹脂形態の)、ガラス、多糖類(例えばセルロース、アガロース)、ポリアクリルアミド樹脂、ポリエチレングリコール、および/またはコポリマー樹脂(例えばポリエチレングリコール、ポリスチレン、その他を含む)が含まれる。例示的な実施形態では、固体支持体は固相樹脂である。
【0078】
固体支持体は任意の好適な形態を有してよい。例えば、固体支持体はビーズ、粒子、繊維の形態、および/または他の任意の好適な形態であってよい。
【0079】
当業者であれば、どのようにアミノ酸を固体支持体(例えば固相樹脂)に結合させるかを理解されよう。したがって、アミノ酸(および/または2つもしくはそれより多いアミノ酸を含むペプチド)を固体支持体(例えば固相樹脂)に結合させるための当技術分野で公知の方法に関する詳細な考察は提供しない。
【0080】
脱保護剤および保護されたアミノ酸(本明細書で論じる固相樹脂等の好適な固体支持体に直接または間接に結合された)は、当技術分野で公知のように好適な溶媒(複数可)と混合する(合わせる)ことができ、反応容器中で懸濁液(スラリー)の形態であってよい。
【0081】
本明細書で留意したように、脱保護反応によって、保護されたアミノ酸の保護された基(例えば保護された官能基)から保護基が除去される(一般にアミノ酸が脱保護されるとも称される)。
【0082】
一部の実施形態(例えば第2の実施形態)では、脱保護条件(塩基の種類、時間、その他)が反応容器のヘッドスペースへの脱保護剤の蒸発を促進するように選択される限り、脱保護ステップは加熱なしに行なってよい(例えば室温で行なってよい)。
【0083】
より典型的には、一部の実施形態(例えば第1および/または第2の実施形態)では、脱保護プロセスは、保護されたアミノ酸および/または脱保護剤を加熱する(例えば反応容器4の中に送達する前に保護されたアミノ酸および/もしくは脱保護剤を加熱する、ならびに/または脱保護反応の前および/もしくはその間に反応容器4の中の保護されたアミノ酸および/もしくは脱保護剤を加熱する)ステップを含んでよい。本明細書で使用される場合、脱保護剤への言及は、脱保護剤それ自体および/または脱保護剤を含む脱保護組成物を含み得る。即ち、本明細書で使用される場合、脱保護剤の加熱への言及は、脱保護剤それ自体の加熱および/または脱保護剤を含む脱保護組成物の加熱を含み得る。
【0084】
固相ペプチド合成の間に加熱することは、例えば脱保護の速度を加速し、それによりペプチド合成に必要な時間を短縮するために有用であり得る。
【0085】
加熱温度(例えば反応容器内への送達の前ならびに/または脱保護の前および/もしくはその間の反応容器中の保護されたアミノ酸ならびに/または脱保護剤の加熱温度)は変動し得る。一部の実施形態では、加熱ステップは、約40℃~約120℃、別の例として約50℃~約120℃、別の例として約70℃~約120℃、別の例として約80℃~約120℃、別の例として約80℃~約110℃、別の例として約90℃~約110℃の限定ない温度で行なってよい。ある特定の実施形態では、加熱ステップは約70℃~約120℃、例えば約90℃~約120℃、別の例として約90℃~約110℃の限定ない温度で行なってよい。温度は端点を含む本明細書に記載した範囲内の任意の値(例えば約40℃~約120℃の範囲内の任意の値)であってよく、範囲内の全ての部分範囲も開示されている。
【0086】
図1Aおよび
図1Bは、熱源40が反応容器4および反応物30を加熱する加熱ステップを概略的に示している。ある特定の実施形態では、熱源40は、反応容器4を含むマイクロ波キャビティ(図示せず)に取り付けられた導波路46を介してマイクロ波照射44を方向付けるように位置決めされたマイクロ波源42を含む。マイクロ波出力は、当技術分野で公知のように、反応温度および/または反応時間を提供するように(例えば限定なく、本明細書に記載した脱保護温度を提供するように、また約10秒~約15分、別の非限定的な例として約40秒~約8分の範囲の脱保護反応時間を提供するように)制御され得る。
【0087】
反応物を加熱するためにマイクロ波エネルギーを利用する実施形態では、反応容器4はマイクロ波照射を透過する材料、例えばそれだけに限らないがガラス、テフロン(登録商標)、および/またはポリプロピレン等から形成してよい。
【0088】
マイクロ波源は当技術分野で周知であり、例えばマグネトロン、クライストロン、および/または固体ダイオードが含まれ得る。固相ペプチド合成のプロセスおよびシステムのために好適なマイクロ波源、導波路、およびマイクロ波キャビティは当技術分野で周知であり、市販で入手可能でもある(例えば本明細書で論じるようなCEM Corporationから市販で入手可能なシステム)。したがって、当業者であれば過度の実験をせずに、固相ペプチド合成のプロセスおよびシステムにおいてどのようにこれらを使用するかが理解されよう。
【0089】
しかし本開示は熱源としてのマイクロ波源の使用に限定されず、固相ペプチド合成のための当技術分野で公知の他の種類の熱源を使用することができる。
【0090】
加熱の便益にも関わらず、脱保護ステップの間の高温は(より長いペプチドの合成を含むが、これに限らない)ペプチド合成について種々の課題を提示する可能性がある。
【0091】
例えば、脱保護反応において使用される有機アミンは、脱保護反応において使用される溶媒の沸点および/または脱保護ステップの温度と比較して比較的低い沸点を有することがある。ピペリジンは約106℃の沸点を有し、ピロリジンは約87℃の沸点を有する。対照的に、溶媒ジメチルホルムアミド(DMF)は約153℃の沸点を有し、溶媒N-メチルピロリジノン(NMP)は約200℃の沸点を有する。また対照的に、本明細書で留意したように、脱保護反応は、限定なく、高温、例えば約120℃まで、例えば約90℃~約120℃、別の例として約90℃~約110℃で行なうことができる。
【0092】
反応容器は処理の間に温度の連続性を呈することがあり、その上部は下部よりも低い温度であることがある。脱保護剤は溶媒等の他の試薬の沸点より低い沸点および/または反応温度より低い沸点を有することがあるので、脱保護剤は反応容器の上部(例えばヘッドスペース)に揮発(蒸発)して側壁(複数可)の上部および/または反応容器の上壁で凝縮することがある。例えば反応物の混合を助けるために脱保護の間に反応物に気泡を吹き込む場合には、揮発(蒸発)の速度/量も増大することがある。
【0093】
ピロリジンを使用する場合には脱保護剤の揮発は特に問題になり得る。ピロリジンはピペリジンよりも速い脱保護を提供できるので、ピロリジンは脱保護剤として望ましいであろう。(6員環のピペリジン環に対して)5員環であるので、ピロリジンの炭素原子は窒素原子からより後ろに曲がっており、それにより、脱保護のための攻撃が容易になる。しかしピロリジンはピペリジンより低い沸点を有しているので、脱保護プロセスの間に顕著な蒸発およびそれに続く凝縮が起こり得、それにより、例えば長いペプチドの合成における場合を含んでその使用が制限されることがある。
【0094】
本開示のプロセスにおいて、加熱ステップは反応容器4の下部から上向きに反応容器4の上部に(例えば反応物30の上のヘッドスペースに)脱保護剤(例えばピロリジン)を揮発(蒸発)させる。
【0095】
引き続く固相ペプチド合成ステップ(例えば結合ステップ)の間に反応容器の中に残った残存脱保護剤(例えば側壁の上部(複数可)および/または反応容器の上壁で凝縮した残存脱保護剤)が問題を生じることがある。残存脱保護剤は、例えば既に脱保護されたアミノ酸に結合させるべきアミノ酸から保護基を時期尚早に除去してしまうことがある。これはペプチド鎖に望ましくない挿入をもたらすことがある。残存脱保護剤は、活性化されたアミノ酸と反応することによって、この活性化されたアミノ酸を低減させ得、ペプチド鎖の欠失をもたらすことがある。したがって、典型的にはSPPSプロセスは、本明細書で論じるように、脱保護の後であって結合の前に多数の洗浄ステップを必要としてきた。
【0096】
従来、引き続く固相ペプチド合成ステップ(例えば結合ステップ)における残存脱保護剤の関与を最小化または防止するためにこれを除去することを助けるために複数回の洗浄ステップが使用されている。しかし、ペプチドの長さが増大するとともに複数回の洗浄ステップは、望ましくない反応を防止して不純物を低減させるためにはあまり有効ではなく、下流の応用のために許容できる純度を有するより長いペプチドを合成することを困難にする可能性がある。
【0097】
従来のプロセスとは対照的に、本開示のプロセスは、下流の応用のために許容できる純度レベルを有するより長いペプチドの産生を容易にすることができる。しかし本開示はより長いペプチドの産生に限定されず、一般にペプチドの長さに関わらず下流の応用のために許容できる純度レベルを有するペプチドの産生を容易にすることができる。また従来のプロセスとは対照的に、一部の実施形態(例えば第2の実施形態)では、本開示のプロセスは、脱保護ステップと結合ステップとの間の洗浄ステップ(複数可)を排除することを助け得、および/またはSPPSプロセスの脱保護ステップと結合ステップとの間の洗浄ステップ(複数可)に必要な溶媒の量を低減し得、および/または従来のSPPSプロセスと比較してより少ない量の脱保護剤(塩基)の使用を容易にすることができる。再び限定なしに、一部の実施形態(例えば脱保護ステップの第1の実施形態および/または第2の実施形態)では、現在のところ、ペプチドの純度、および/または洗浄ステップの排除、および/または洗浄ステップのための溶媒の量の低減、および/または脱保護塩基の量の低減は、反応容器の内部から(例えば反応容器のヘッドスペースから)蒸発(揮発)した脱保護剤を除去する(例えば放流する、放出する、排出する、移動させる、置き換える、パージする、その他の)ための脱保護ステップの間に蒸発した脱保護剤を含む反応容器の内部の一部を通して不活性ガスを方向付ける(例えば連続的におよび/または間欠的に方向付ける)(例えば蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部を通して(反応物の上のヘッドスペースを通して)不活性ガスを方向付ける)ステップによって容易にすることができると考えられる。
【0098】
より具体的には、本明細書に記載した種々の実施形態(例えば第1のおよび/または第2の実施形態)では、脱保護ステップは、反応容器の1つまたは複数の開口部を介して反応容器の内部に不活性ガスを方向付ける(導入する、供給する、その他の)ステップを含み得る。例えば、不活性ガスは、それぞれ反応容器の上部および/または下部に位置する1つまたは複数の開口部(進入ポート)を介して反応容器の上側内部および/または下側内部に方向付けられ得る。方向付けるステップは、蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部を通して(例えば反応物の上のヘッドスペースを通して)不活性ガスを方向付ける(移動させる、その他の)(および一部の実施形態では蒸発した脱保護剤を含む上側内部またはヘッドスペースの中に/これを通して、下側内部から上向きに不活性ガスを方向付ける)ステップ、および反応容器の上部に位置する1つまたは複数の他の開口部(出口ポート)を通して反応容器の上側内部から(例えば反応物の上のヘッドスペースから)蒸発(揮発)した脱保護剤を除去する(例えば放流する、放出する、排出する、移動させる、置き換える、パージする、その他の)ステップをさらに含んでよい。
【0099】
一部の実施形態では、方向付けるステップは、反応容器の上部に位置する第1の開口部を介し、蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部を通して(例えば反応物の上のヘッドスペースを通して)、揮発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えば反応物の上のヘッドスペース)に不活性ガスを方向付けて、これも反応容器の上部に位置する第2の開口部を通して上側内部から(例えば反応物の上のヘッドスペースから)不活性ガスおよび揮発した脱保護剤を除去する(例えば放流する、放出する、排出する、移動させる、置き換える、パージする、その他の)ステップを含んでよい。一部の実施形態では、方向付けるステップは、反応容器の下部に位置する第1の開口部を介して反応容器の下側内部に、そして反応容器の下側内部から上向きに(例えば反応容器の下側内部における反応物を通して上向きに)蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部の中に/これを通して(例えば反応物の上のヘッドスペースを通して)、不活性ガスを方向付けて、反応容器の上部に位置する第2の開口部を通して上側内部から(例えば反応物の上のヘッドスペースから)蒸発(揮発)した脱保護剤を除去する(例えば放流する、放出する、排出する、移動させる、置き換える、パージする、その他の)ステップを含んでよい。一部の実施形態では、方向付けるステップは、反応容器の上部に位置する第1の開口部を介して揮発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えば反応物の上のヘッドスペース)に、そして蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部を通して(例えば反応物の上のヘッドスペースを通して)、不活性ガスを方向付け、そして反応容器の下部に位置する第2の開口部を通して反応容器の下側内部に不活性ガスを方向付けるステップを含み得、不活性ガスは必要に応じて反応容器の下側内部から反応容器のヘッドスペースに/これを通って上向きに移動し、反応容器の上部に位置する第3の開口部を通して蒸発(揮発)した脱保護剤を上側内部から(例えば反応物の上のヘッドスペースから)除去する(例えば放流する、放出する、排出する、移動させる、置き換える、パージする、その他)。
【0100】
一部の実施形態では、不活性ガスは連続流として反応容器を通して連続的に方向付けられてよい。一部の実施形態では、不活性ガスは間欠(例えばパルス)流として反応容器を通して方向付けられてよい。
【0101】
一部の実施形態では、反応容器の中に方向付けられおよび/またはこれを通って移動する(例えば揮発した脱保護剤を含む反応容器のヘッドスペースを通って移動する)不活性ガスは、約1psi~約25psiの圧力を有し得る。一部の実施形態では、反応容器の中に方向付けられおよび/またはこれを通って移動する(例えば揮発した脱保護剤を含む反応容器のヘッドスペースを通って移動する)不活性ガスは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25psiの圧力を有し得る。一部の実施形態では、反応容器の中に方向付けられおよび/またはこれを通って移動する不活性ガスは、およそ上記の圧力値のいずれかからおよそ上記の圧力値の他のいずれかまでの範囲の圧力を有し得る。反応容器の上側内部および/または下側内部の中に方向付けられおよび/またはこれを通って移動する不活性ガスを含む不活性ガスの圧力は、端点を含む本明細書に記載した範囲内の任意の値(例えば約1~約25psiの範囲内の任意の値)であってよく、範囲内の全ての部分範囲も開示されている。不活性ガスはまた、その間に不活性ガスがヘッドスペースの気体体積を実質的に置き換える(移動させる)時間速度に基づく流速で脱保護ステップの間に反応容器の内部を通して(例えば上側内部またはヘッドスペースを通って)方向付けられてよい。より具体的には、不活性ガスの流速は、選択した時間(時間速度)内に不活性ガスによって反応容器のヘッドスペース区域におけるガスの体積の実質的な置き換え(移動)を可能にする(もたらす)(例えば不活性ガスによる反応容器のヘッドスペース区域における揮発した脱保護剤の体積の実質的な置き換えをもたらす)不活性ガスの量(体積)であってよい。例えば、不活性ガスの流速は、約1~20秒ごと、例えば約5~10秒ごとの反応容器のヘッドスペース区域におけるガスの体積(例えばヘッドスペース区域における揮発した脱保護剤の体積)の実質的な置き換え(移動)をもたらす(可能にする)不活性ガスの量(体積)であってよい。当業者であれば過度の実験をせずに、時間枠(時間速度)の中で反応容器内のヘッドスペースガス(揮発した脱保護剤)の体積を置き換える(移動させる)好適な不活性ガスの流速をどのように決定および計算するかを理解されよう。
【0102】
いずれの説明または理論にも縛られることは望まないが、脱保護の間に不活性ガスの源を反応物の上のヘッドスペースの中に(これを通して)方向付けることは、反応物の上のガス(揮発した脱保護剤を含むヘッドスペースガス)における大きな空気の交換速度を惹起し得、それにより、不活性ガスは揮発した脱保護剤を反応容器から移動させると、今のところ考えられる。これにより、反応容器中の揮発した脱保護剤の滞留時間が短くなり得、揮発した脱保護剤は容器の側壁および/または上壁にあまり凝縮せず、より迅速に除去することができる。これにより、脱保護ステップが完了した後の反応容器中に残る残存脱保護剤の量を低減することができる。不活性ガスは反応容器4の側壁上の液滴(例えば凝縮した脱保護剤)に下向きの力を提供することもでき、それにより、液滴を反応容器4の下部にある反応物30に向けて吹き付けることができる。
【0103】
さらに、脱保護組成物が少量の脱保護剤(脱保護組成物の総体積に基づいて約5vol%またはそれよりも少ない脱保護剤)を含む一部の実施形態(例えば第2の実施形態)では、脱保護剤(例えばピロリジン)は、脱保護ステップが完了した際に反応容器から本質的に完全に除去され得る。例えば、いずれの理論または説明にも縛られないが、そのような実施形態では、それぞれ本明細書に記載したように、脱保護剤は加熱ステップの間に脱保護組成物から実質的に完全に蒸発し得、および/または揮発した脱保護剤は不活性ガスを放流することによってヘッドスペースから実質的に完全に除去され得ると今のところ考えられる。またいずれの理論または説明にも縛られないが、そのような実施形態では、これも本明細書により詳細に述べるように、脱保護ステップが完了した後に残る脱保護剤のいずれの残留量も、脱保護ステップの後の洗浄ステップがなくても、および/または脱保護ステップの後に低減した量の洗浄液(例えば溶媒)を使用する洗浄ステップがあっても、次の結合ステップにおける残存脱保護剤の存在に関連する課題を最小化するために十分少ないと今のところ考えられる。
【0104】
従来のアプローチとは対照的に、残存脱保護剤の量を低減することができるので、本開示のプロセスによって、下流の応用のために許容できる純度レベルを有するより長いペプチドの産生を容易にすることができる。例えば、本プロセスは、より長いペプチド、例えば20またはそれより多いアミノ酸由来の単位、例えば25またはそれより多いアミノ酸由来の単位、別の例として30またはそれより多いアミノ酸由来の単位、別の例として40またはそれより多いアミノ酸由来の単位、別の例として50またはそれより多いアミノ酸由来の単位、別の例として75またはそれより多いアミノ酸由来の単位、別の例として100またはそれより多いアミノ酸由来の単位、別の例として125またはそれより多いアミノ酸由来の単位、および別の例として150またはそれより多いアミノ酸由来の単位を含むペプチドであるがこれらに限らないペプチドの産生(例えばバッチSPPS合成)のために有用であり得る。一部の実施形態では、プロセスは、より長いペプチド、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、またはそれより多いアミノ酸由来の単位を含むペプチドであるがこれらに限らないペプチドの産生(例えばバッチSPPS合成)のために有用であり得る。しかし本開示は20またはそれより多いアミノ酸由来の単位を含むペプチドの産生に限定されず、20より少ないアミノ酸由来の単位を含むペプチド(例えば2またはそれより多い、例えば2~20、またはそれより多いアミノ酸由来の単位を含むペプチド)の産生(例えばバッチSPPS合成)のために使用することができ、ペプチドは下流の応用のために許容できる純度レベルを有してよい。
【0105】
不活性ガスは窒素であり得る。本開示は不活性ガスとしての窒素の使用に限定されず、他の不活性ガス、例えば固相ペプチド合成反応および固相ペプチド合成システムとの化学的な干渉が制限されるか、干渉しない貴ガスを使用することができる。
【0106】
ある特定の実施形態では、
図1Aに示したように、プロセスは、加圧した不活性ガスを不活性ガス源(例えば
図2Aで100と指定した不活性ガス源)から流路20を通して提供し、加圧された不活性ガスを、開口部10を通し、反応容器4の上側内部を通して(例えば反応物30の上のヘッドスペースを通して)揮発(蒸発)した脱保護剤を含む反応容器4の内部の上部に方向付ける(例えば加圧された不活性ガスをほぼ下向きに方向付ける)ステップを含んでよい。加圧された不活性ガスが揮発(蒸発)した脱保護剤を含む反応容器4の上側内部を通って(例えば反応物の上のヘッドスペースを通って)流れるにつれて、不活性ガスは揮発した脱保護剤を反応容器4の内部から開口部14を通して流路24にパージする(例えば放流する、移動させる、置き換える、放出する、排出する、その他)。このようにして、加圧された不活性ガスは事実上、揮発した脱保護ガスを反応容器のヘッドスペースから移動させる。これにより、滞留時間を低減し、反応容器の壁への脱保護剤の凝縮を最小化することができる。
【0107】
反応容器4の下側内部における反応物30から反応物の上のヘッドスペースへの(例えば反応容器4の上側内部への)揮発した脱保護剤(例えばピロリジン)の上向きの流れ、反応容器4の上側内部からの(例えばヘッドスペースを通る)不活性ガスの下向きの流れ、および反応容器4の上側内部からの(例えばヘッドスペースからの)揮発した脱保護剤および不活性ガスのパージング(例えば放流、移動、放出、その他)を含む反応容器4の中の気体の流れ(移動)を
図1Aに矢印によって概略的に示す。
【0108】
ある特定の実施形態では、
図1Bに示すように、プロセスは、加圧された不活性ガスを、不活性ガス源(例えば
図2Bで100と指定した不活性ガス源)から流路218、開口部208、噴霧ヘッド220の内側内部空間を通し、および開口部222から出して反応容器4の外側内部空間7に(例えば反応物30の上のヘッドスペースへ)提供する(例えば方向付ける)ステップを含み得る。
図1Bはまた、噴霧ヘッド220が不活性ガスを破線224で概略的に示した角度(例えば噴霧パターン)で開口部222を通して反応容器4の側壁6に向けて方向付ける(例えば噴霧する)実施形態を示す。これにより、不活性ガスは側壁と接触することができ、凝縮した脱保護剤を反応容器4の内部の下部における反応物に向かって「洗浄する」洗浄効果を容易にすることができる。
【0109】
加圧された不活性ガスが揮発(蒸発)した脱保護剤を含む反応容器4の上側内部を通って(例えば反応物の上のヘッドスペースを通って)流れるにつれて、不活性ガスは揮発した脱保護剤を反応容器4から開口部206を通して流路216へパージする(例えば放流する、移動させる、置き換える、放出する、排出する、その他)。再び、加圧された不活性ガスは事実上、揮発した脱保護ガスを反応容器のヘッドスペースから移動させる。これにより、滞留時間を低減し、反応容器の壁への脱保護剤の凝縮を最小化することができる。
【0110】
反応容器4の下側内部における反応物30から反応物の上のヘッドスペースへの(例えば反応容器4の上側内部への)揮発した脱保護剤(例えばピロリジン)の上向きの流れ、噴霧ヘッド220から複数の開口部222の開口部を通る(例えば複数の開口部222の開口部を通るヘッドスペースへのおよびヘッドスペースを通り側壁6に向かう角度を有する流れ)不活性ガスの流れ、および反応容器4の上側内部からの(例えばヘッドスペースからの)揮発した脱保護剤および不活性ガスのパージング(例えば放流、移動、放出、その他)を含む反応容器4の中の気体の流れ(移動)を、
図1Bに矢印および破線によって概略的に示す。
【0111】
ある特定の実施形態では、プロセスは、本明細書に記載したように、不活性ガスを反応容器の上部における開口部を通して反応容器の上側内部に(例えばヘッドスペースに)導入する(方向付ける)ステップに加えてまたはその代替として、不活性ガスを反応容器4の下部に(例えば下側内部に)導入する(方向付ける)ステップを含んでよい。例えば、
図1Aおよび
図1Bを参照すると、プロセスは、加圧された不活性ガスを不活性ガス源(これは存在する場合には反応容器の上側内部に導入される不活性ガスの不活性ガス源と同じでも異なっていてもよい)から流路26を通して方向付け、加圧された不活性ガスを、開口部16を通して反応容器4の下側内部に導入するステップを含んでよい。不活性ガスは、反応容器の下側内部から上向きに(例えば反応物30を通って上向きに)、揮発(蒸発)した脱保護剤を含む反応容器4の上側内部(例えばヘッドスペース)の中に/それを通して流れることができる。不活性ガスが上向きに流れるにつれて、不活性ガスは揮発した脱保護剤を反応容器4の上側内部(例えばヘッドスペース)から開口部14を通して流路24へパージする(例えば放流する、移動させる、置き換える、放出する、排出する、その他)ことができる。再びこのようにして、不活性ガスは揮発した脱保護ガスを反応容器のヘッドスペースから移動させることができ、これにより、滞留時間を低減し、反応容器の壁への脱保護剤の凝縮を最小化することができる。
【0112】
反応容器の下部における不活性ガスの流れは、保護されたアミノ酸と脱保護剤との反応物30をかき混ぜる(混合する、気泡を吹き込む、その他)こともできる。
【0113】
一部の実施形態では、プロセスは、蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)に第1の加圧された不活性ガスと、反応容器の下側内部に第2の加圧された不活性ガスとの両方を導入する(方向付ける)ステップを含み得る。非限定的な例として、
図1Aおよび
図1Bを参照して、プロセスは、第1の加圧された不活性ガスを反応容器の上部に位置する第1の開口部、例えば
図1Aの開口部10または
図1Bの開口部208および開口部222を通して反応容器4の上側内部に方向付け、第2の加圧された不活性ガスを反応容器の下部に位置する第2の開口部、例えば
図1Aおよび
図1Bの開口部16を通して反応容器4の下側内部に方向付けるステップを含み得る。第1の加圧された不活性ガスは蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部を通って(例えばヘッドスペースを通って)移動することができ、第2の加圧された不活性ガスは反応容器の下側内部から反応物30を通って蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)の中に/これを通ってほぼ上向きに移動することができる。第1の加圧された不活性ガスおよび必要に応じて第2の加圧された不活性ガスは、揮発した脱保護剤を反応容器の上側内部から(例えばヘッドスペースから)、例えば反応容器の上部に位置する第3の開口部、例えばそれぞれ
図1Aおよび
図1Bの開口部14または206を通ってパージ(例えば放流、移動、置き換え、放出、排出、その他)してよい。
【0114】
反応容器4の上側内部(例えば反応物30の上のヘッドスペース)の中に方向付けられおよび/またはこれを通って移動する第1の不活性ガス(本明細書でオーバーヘッド不活性ガスとも称する)(例えば反応容器の上部に位置する第1の開口部、例えば
図1Aの開口部10または
図1Bの開口部208および開口部222を通して方向付けられる第1の不活性ガス)は、反応容器4の内部の下部に導入される第2の不活性ガスより高い圧力を有してよい。非限定的な例として、反応容器4の上側内部に方向付けられおよび/またはこれを通って移動する(例えばヘッドスペースを通って移動する)第1の(オーバーヘッド)不活性ガスは、約1psi~約25psiの圧力を有してよい。一部の実施形態では、反応容器4の上側内部に方向付けられおよび/またはこれを通って移動する第1の(オーバーヘッド)不活性ガスは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25psiの圧力を有してよい。さらに一部の実施形態によれば、反応容器4の上側内部に方向付けられおよび/またはこれを通って移動する第1の(オーバーヘッド)不活性ガスは、およそ上記の圧力値のいずれかからおよそ上記の圧力値の他のいずれかまでの範囲の圧力を有してよい。
【0115】
非限定的な例として、反応容器4の下側内部に導入される第2の不活性ガスは、反応容器4の上側内部に方向付けられおよび/またはこれを通って移動する第1の(オーバーヘッド)不活性ガスの圧力より低い圧力を有してよい。例えば、第2の不活性ガスは、第2の不活性ガスの圧力が第1の不活性ガスの圧力より低い限り、約1psi~約25psiの圧力を有してよい。不活性ガスが反応容器の下側内部にのみ導入される(反応容器の上側内部に導入される不活性ガスがない)実施形態では、不活性ガスは約1psi~約25psiの圧力を有してもよい。
【0116】
非限定的な例では、反応容器4の上側内部(例えばヘッドスペース)に方向付けられるおよび/またはこれを通って移動する第1の(オーバーヘッド)不活性ガスは約15psiの圧力を有してよく、反応容器4の下部に導入される第2の不活性ガスは、反応容器4の上部に方向付けられるおよび/またはこれを通って移動する第1の(オーバーヘッド)不活性ガスの圧力より低い圧力、例えば約5psiの圧力を有してよい。
【0117】
したがって、プロセスは、反応時間を早めるためにより高い温度で比較的低沸点の脱保護剤を使用することを可能にする一方、低沸点で揮発しやすい反応物を使用することに関連する有害効果を最小化(低減)する。例えば、プロセスはより長いペプチド鎖についてさえもペプチド純度を改善することができる。さらに、プロセスは、ピロリジンのより低い沸点のために顕著な蒸発が観察されるのにも関わらず、脱保護剤としてピロリジンを使用してさえもペプチド純度を改善することができる。これにより、脱保護反応が速くなるという便益を提供することもできる。
【0118】
脱保護が完了した後、不活性ガスの流れが停止される。次いで脱保護剤は、例えば開口部16を通して排出される。
【0119】
本開示は、本明細書でより詳細に記載する脱保護ステップの実施形態のいずれかに従って、揮発した脱保護剤を反応容器からパージする(例えば揮発した脱保護剤を反応容器の内部のヘッドスペースから放流する)ために不活性ガスを使用する1回または複数回の脱保護ステップを含む固相ペプチド合成プロセス(例えば第1の実施形態による1回または複数回の脱保護ステップおよび/または第2の実施形態による1回または複数回の脱保護ステップを含むSPPSプロセス)にも関する。本開示の固相ペプチド合成プロセスは、アミノ酸(複数可)の結合、ならびに/あるいは洗浄、例えば脱保護ステップおよび/または結合ステップの後の洗浄をさらに含む。固相ペプチド合成の結合および洗浄のステップならびにこれらを行なうためのシステムは当技術分野で一般に公知であり、したがって本明細書で詳細には述べない。
【0120】
本明細書で留意したように、従来のSPPSプロセスは脱保護ステップと結合ステップの間に(例えば脱保護の後であって結合の前に)残存脱保護剤を除去するために複数回の洗浄ステップを必要とする。本開示の一部の実施形態(例えば本明細書に記載した第1の実施形態による脱保護ステップを含むSPPSプロセス)では、脱保護の後の洗浄ステップのために、洗浄液(例えばジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、および/またはイソプロパノール等であるがこれらに限らない溶媒)を容器に添加してよい。洗浄ステップは繰り返して(例えば5回の繰り返しで)行なってよい。本開示は5回の洗浄ステップに限定されず、5回より少ない(例えば1回、2回、3回、または4回)または5回より多い洗浄ステップを使用してもよい。
【0121】
しかし洗浄ステップは大量の溶媒の使用を必要とすることがあり、溶媒の回収および廃棄等が必要である。これは材料のコストおよびペプチド合成の時間を増大させ、効率を低下させる等の可能性がある。さらに、ペプチドの長さが増大するとともに複数回の洗浄ステップは望ましくない反応を防止し、不純物を低減させるためにはあまり有効ではないかもしれず、このことは、下流の応用のために許容できる純度を有するより長いペプチドを合成することを困難にする可能性がある。
【0122】
一部の実施形態(例えば本明細書に記載した第2の実施形態による脱保護ステップを含むSPPSプロセス)では、本開示は脱保護ステップおよびそれに続く結合ステップを含むSPPSプロセスに関し、このSPPSプロセスは脱保護ステップの後であって関連する結合ステップの前に洗浄ステップを含まない。言い換えれば、第2の実施形態による脱保護ステップ(複数可)を含む本開示のSPPSプロセスでは、脱保護ステップとそれに関連する結合ステップ(即ち脱保護ステップの直後の結合ステップ)の間の1回または複数回の洗浄ステップを排除してよい(例えば全ての洗浄ステップを排除してよい)。これにより、例えばプロセス効率の改善、エネルギーの節約、SPPSプロセスで必要な溶媒量の低減、材料コストの低減、溶媒廃棄の課題の低減などの便益を提供することができる。
【0123】
例えば、第2の実施形態による脱保護ステップ(複数可)を含む本開示のSPPSプロセスは一連の脱保護-結合サイクルを含んでよく、SPPSプロセスの脱保護-結合サイクルの少なくとも1回の脱保護ステップと結合ステップの間で1回または複数回の(例えば全ての)洗浄ステップが排除される(例えば洗浄ステップがない)。他の例では、第2の実施形態による脱保護ステップ(複数可)を含む本開示のSPPSプロセスは一連の脱保護-結合サイクルを含んでよく、例えばSPPSプロセスの脱保護-結合サイクルの半分について、例えば脱保護-結合サイクルの大多数について、そして別の例として脱保護-結合サイクルの全てについて、脱保護-結合サイクルの1回より多くの脱保護ステップと結合ステップの間で1回または複数回の(例えば全ての)洗浄ステップが排除される(例えば洗浄ステップがない)。
【0124】
さらに他の実施形態では、本開示は第2の実施形態による脱保護ステップ(複数可)およびこれに続く結合ステップを含むSPPSプロセスに関し、SPPSプロセスは脱保護ステップの後であって関連する結合ステップの前に、洗浄組成物(例えば溶媒)を使用する1回または複数回の洗浄ステップ(例えば1回、2回、3回、4回、5回、その他の洗浄ステップ)を含む。しかし従来の洗浄ステップとは対照的に、本実施形態の洗浄ステップ(複数可)は低減された量の溶媒を使用する。より具体的には、脱保護の後であって結合の前の洗浄ステップ(複数可)は、脱保護ステップで使用する脱保護組成物の総体積より少ない量の洗浄組成物(例えば溶媒)を使用して1回または複数回(例えば1回、2回、3回、4回、5回等)、反応容器の内部を洗浄するステップを含んでよい。例えば、洗浄ステップは、脱保護ステップで使用する脱保護組成物の総体積の1/2未満の量の洗浄組成物(例えば溶媒)を使用して、1回または複数回(例えば1回、2回、3回、4回、5回等)、反応容器の内部を洗浄するステップを含んでよい。別の非限定的な例として、プロセスは、脱保護ステップで使用する脱保護組成物の総体積の1/3未満の量の洗浄組成物(例えば溶媒)を使用して、1回または複数回(例えば1回、2回、3回、4回、5回等)、反応容器の内部を洗浄するステップを含んでよい。さらに、SPPSプロセスは一連の脱保護-結合サイクルを含んでよく、脱保護-結合サイクルの1つまたは複数(例えばその半分、大多数、または全て)は、脱保護ステップと結合ステップの間に1回または複数回の洗浄ステップ(例えば1回、2回、3回、4回、5回等の洗浄ステップ)を含み、洗浄ステップ(複数可)は脱保護ステップで使用する脱保護組成物の総体積より少ない量(例えば脱保護組成物の総体積の1/2より少ない量、別の例として脱保護組成物の総体積の1/3より少ない量)の洗浄組成物(例えば溶媒)を使用する。それぞれの洗浄ステップで使用する溶媒の体積および/または所与の脱保護-結合サイクル(脱保護の後であって次の結合ステップの前)の全ての洗浄ステップで使用する溶媒の総体積は、脱保護ステップで使用する脱保護組成物の総体積より少なくて(例えば脱保護組成物の総体積の1/2未満の量、別の例として脱保護組成物の総体積の1/3未満の量で)よい。
【0125】
使用される場合、洗浄組成物(洗浄液)は、ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、および/またはイソプロパノール等であるがこれらに限定されない溶媒を含んでよい。
【0126】
洗浄ステップを使用する場合、一部の実施形態では、洗浄液(例えば溶媒)は、反応容器の上側内部への好適な開口部、例えば
図1Aの開口部10を介して、および/または本明細書に記載した脱保護ステップの間に反応容器の中に不活性ガスを導入するために使用されたものと異なる噴霧ヘッドまたは同じ噴霧ヘッド(例えば
図1Bの噴霧ヘッド220)を使用して、反応容器の中に導入することができる。非限定的な例として、
図1Bに示すように、本プロセスは、溶媒源(
図1Bに示していない)から、流路218、開口部208、噴霧ヘッド220の内側内部空間を通り、開口部222から、反応容器4の外側内部空間7へ、溶媒を提供する(例えば方向付ける)ステップを含んでよい。また
図1Bに概略的に示すように、一部の実施形態では、噴霧ヘッド220は破線224で概略的に示した角度(例えば噴霧パターン)で、開口部222を通して、反応容器4の側壁6に向けて溶媒を方向付ける(例えば噴霧する)ことができる。これにより、側壁上に凝縮した脱保護剤を反応容器4の下側内部に向けて下向きに洗浄することを容易にすることができる。
【0127】
洗浄ステップが含まれる場合には、洗浄液は第2の排液ステップで除去することができ、その後で公知のプロセスによって結合ステップを開始することができる。
【0128】
本開示の固相ペプチド合成プロセスは、より具体的には、第1のアミノ酸を脱保護する(例えば第1の保護されたアミノ酸の保護基を除去する)ステップであって、第1のアミノ酸が直接または間接に固相樹脂に結合して、脱保護されたアミノ酸が形成され得るステップ、必要に応じて脱保護されたアミノ酸を洗浄するステップ、第2のアミノ酸を脱保護されたアミノ酸に結合させて、第1および第2のアミノ酸からペプチドを形成するステップ、ならびに脱保護、洗浄、および/または結合のステップを繰り返して、第1、第2、および引き続く複数のアミノ酸を含むペプチドを形成するステップを含み得、脱保護ステップの1つまたは複数は、(例えば本明細書に記載した脱保護ステップの第1および/または第2の実施形態に従って)本明細書に記載した不活性ガスをパージする(放流する)ステップを採用している。
【0129】
一部の実施形態では、固相ペプチド合成プロセスは、第1の保護されたアミノ酸を脱保護して(例えば第1の保護されたアミノ酸の保護基を除去して)脱保護されたアミノ酸を形成するステップ、脱保護されたアミノ酸を洗浄するステップ、第2のアミノ酸を脱保護されたアミノ酸に結合させて第1および第2のアミノ酸からペプチドを形成するステップ、ならびに脱保護、洗浄、および結合のステップを繰り返して、第1、第2、および引き続く複数のアミノ酸を含むペプチドを形成するステップ、
【0130】
脱保護および結合のステップは、反応容器内で(例えば本明細書でより詳細に記載した反応容器4等の同じ反応容器内で)行なわれ、脱保護ステップの1つまたは複数は、
【0131】
脱保護ステップの間に、反応容器の下側内部において保護されたアミノ酸および脱保護剤を加熱するステップであって、加熱するステップが脱保護剤を反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)に揮発させる、ステップ、ならびに
【0132】
加熱ステップの間に第1の不活性ガスを、反応容器の上部における第1の開口部を通して反応容器の上側内部へ、揮発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部を通して(例えばヘッドスペースを通して)、そして反応容器の上側内部から反応容器の上部における第2の開口部を通して方向付け、揮発した脱保護剤を反応容器の内部からパージする(放流する)ステップ含み得る。
【0133】
一部の実施形態では、固相ペプチド合成プロセスは、第1の保護されたアミノ酸を脱保護して(例えば第1の保護されたアミノ酸の保護基を除去して)脱保護されたアミノ酸を形成するステップ、第2のアミノ酸を脱保護されたアミノ酸に結合させて第1および第2のアミノ酸からペプチドを形成するステップ、ならびに脱保護および結合のステップを繰り返して、第1、第2、および引き続く複数のアミノ酸を含むペプチドを形成するステップを含み得、
【0134】
脱保護および結合のステップは、反応容器内で(例えば本明細書でより詳細に記載した反応容器4等の同じ反応容器内で)行なわれ、
【0135】
脱保護ステップの1つまたは複数は、(例えば第2の実施形態の脱保護プロセスに従って)本明細書でより詳細に記載するように、脱保護組成物の総体積に基づいて約5vol%またはそれよりも少ない量で脱保護剤を含む脱保護組成物を採用しており、および/または
【0136】
脱保護ステップの1つまたは複数は、これも(例えば第2の実施形態の脱保護プロセスに従って)本明細書でより詳細に記載するように、蒸発した脱保護剤を反応容器の上側内部から(例えばヘッドスペースから)除去するために不活性ガスをパージする(例えばヘッドスペースを放流する)ステップを採用している。
【0137】
例えば、第2の実施形態による脱保護ステップを含むSPPSプロセスは、反応容器を通して(例えば蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部を通して(ヘッドスペースを通して))不活性ガスを方向付けて、蒸発した脱保護剤を反応容器の内部から(例えば反応容器の上側内部から、ヘッドスペースから)除去するステップを含んでよい。
【0138】
より具体的には、第2の実施形態による脱保護ステップを含むSPPSプロセスは、反応容器の上部に位置する第1の開口部を通し、そして蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)を通して、反応容器の上側内部に不活性ガスを方向付ける(導入する、供給する、その他の)ステップ、ならびに反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)からこれも反応容器の上部に位置する第2の開口部を通して不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出する(放流する)ステップを含んでよい。
【0139】
別の例として、第2の実施形態による脱保護ステップを含むSPPSプロセスは、反応容器の下部に位置する開口部を通して反応容器の下側内部に、そして反応容器の下側内部からほぼ上向きに(例えば反応容器の下側内部における反応物を通してほぼ上向きに)、蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)の中に/これを通して、不活性ガスを方向付ける(導入する、供給する、その他の)ステップ、ならびに反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)から反応容器の上部に位置する別の開口部を通して不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出する(放流する)ステップを含んでよい。
【0140】
さらに別の例として、第2の実施形態による脱保護ステップを含むSPPSプロセスは、反応容器の上側内部と反応容器の下側内部の両方に不活性ガスを方向付ける(導入する、供給するなどの)ステップ、ならびに反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)から不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出する(放流する)ステップを含んでよい。より具体的には、第2の実施形態による脱保護ステップは、反応容器の上部に位置する第1の開口部を通し、そして蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)を通して、反応容器の上側内部に不活性ガスを方向付け(導入し、供給し、その他)、そして反応容器の下部に位置する第2の開口部を通して反応容器の下側内部に、そして必要に応じて反応容器の下側内部から上向きに(例えば必要に応じて反応容器の下側内部における反応物を通してほぼ上向きに、そして蒸発した脱保護剤を含む反応容器の上側内部(例えばヘッドスペース)の中に/これを通して)不活性ガスを方向付けるステップ、ならびに反応容器の上側内部から反応容器の上部に位置する第3の開口部を通して、不活性ガスおよび蒸発した脱保護剤を放出するステップを含んでよい。
【0141】
第2の実施形態による脱保護ステップを含むSPPSプロセスにおいて、固相ペプチド合成プロセスは、逐次的な脱保護ステップと結合ステップの間に洗浄ステップを含まなくてもよい。第2の実施形態による脱保護ステップを含む他のSPPSプロセスにおいて、固相ペプチド合成プロセスは、脱保護ステップの後であって逐次的な結合ステップの前に1回または複数回の洗浄ステップを含んでよく、洗浄ステップは、本明細書でより詳細に記載するように、低減した量の洗浄液(例えば溶媒)を使用する(例えば脱保護ステップにおいて使用する脱保護組成物の総体積より少ない量で、例えば脱保護組成物の総体積の1/2未満の量で、そして別の例として脱保護組成物の総体積の1/3未満の量で、溶媒を使用する)。例えば、固相ペプチド合成プロセスは、連続的な脱保護-結合ステップの1つまたは複数の間に、1つまたは複数の(例えば全ての)洗浄ステップを省略してよい。別の例として、固相ペプチド合成プロセスは、逐次的な脱保護-結合のステップの1つまたは複数について、脱保護の後であって関連する結合ステップの前に、本明細書でより詳細に記載するように、低減した量の洗浄液(例えば溶媒)を使用して(例えば脱保護ステップにおいて使用する脱保護組成物の総体積より少ない量で、例えば脱保護組成物の総体積の1/2未満の量で、また別の例として脱保護組成物の総体積の1/3未満の量で溶媒を使用して)、脱保護されたアミノ酸を洗浄するステップを含んでよい。
【0142】
固相ペプチド合成プロセスは、結合の前に、本技術で公知のプロセスおよび薬剤を使用して第2のアミノ酸(および引き続くアミノ酸(複数可))の化学基(複数可)を活性化し、第1の(および逐次的な)アミノ酸(複数可)と結合させるための第2の(および引き続く)アミノ酸(複数可)を調製するステップをさらに含んでよい。
【0143】
結合ステップの前に、アミノ酸を活性化する(例えばアミノ酸の酸基を活性化形に変換する)ために、アミノ酸活性化剤を使用してよい。任意の好適なアミノ酸活性化剤を使用してよい。アミノ酸活性化剤の例には、カルボジイミドおよび/またはオニウム塩活性化剤が限定なく含まれる。アミノ酸活性化剤には、一部の実施形態では、例えばN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)など、ならびにそれらの組合せであるがこれらに限定されないカルボジイミドが含まれる。ある特定の実施形態では、アミノ酸活性化剤には、例えばベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、および1-[(1-(シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノ)]ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)など、ならびにそれらの組合せであるがこれらに限定されないオニウム活性化剤が含まれる。
【0144】
さらに、例示的な実施形態では、固相ペプチド合成プロセスは、固相ペプチド合成ステップの1つまたは複数の間に、例えば脱保護および/または結合のステップの間に、マイクロ波エネルギーを印加するステップを含んでよい。
【0145】
例示的な実施形態では、固相ペプチド合成プロセスは、脱保護、洗浄、および/または結合のステップの後で、固相樹脂からペプチドを切断するステップをさらに含んでよい。
【0146】
当業者であれば、どのようにアミノ酸を接合または結合させて鎖を形成するかが理解されよう。固相樹脂からペプチドを切断するためのプロセスおよび薬剤も当技術分野で周知である。したがって、アミノ酸を接合してペプチドを形成するためおよび/または固相樹脂からペプチドを切断するための当技術分野で公知のプロセスについての詳細な考察は提供しない。
【0147】
本開示は固相ペプチド合成のためのシステムにも関する。
図2Aは、本開示の実施形態による例示的な固相ペプチド合成システムの選択した部分を示す概略的なフローダイアグラムである。
図2Bは、本開示の他の実施形態による別の例示的なペプチド合成システムの選択した部分を示す概略的なフローダイアグラムである。
【0148】
一般に、
図1Aおよび
図2Aの両方に示す要素は同じ参照番号を有することになる。同様に、
図1Bおよび
図2Bの両方に示す要素は一般に同じ参照番号を有することになる。また、他に指示する場合を除いて、
図2Aおよび
図2Bの両方に示す要素は同じ参照番号を有することになる。
【0149】
図2Aおよび
図2Bのペプチド合成システムは一般に2と指定する。ペプチド合成システム2は、本明細書で論じる反応容器4を含む。ペプチド合成システム2は、反応容器4の上流の位置にあり、反応容器4と流体連通する複数の試薬収容器も含む。
【0150】
例えば、
図2Aおよび
図2Bに示すように、システム2は、固体支持体(例えば保護されたアミノ酸がそれに結合された固体樹脂)を固体支持体収容器(複数可)から反応容器4へ送達するために、固体支持体収容器と反応容器4を流体連結する流路52と流体連通した複数の固体支持体収容器50a、50b、および50cを含んでよい。流路51a、51b、および51cは、それぞれ固体支持体収容器50a、50b、および50cと流路52を流体連結する。
【0151】
ある特定の実施形態では、流路52は、例えばそれぞれ
図1Aまたは
図1Bの開口部12または204を介して、反応容器4と直接に流体連通してよい。ある特定の実施形態では、
図2Aに概略的に示すように、システムは、開口部12、流路22、および流路52を通じて反応容器4と固体支持体収容器50a、50b、および50cとを流体連結するために、多数の位置(例えば2つの位置)の間で回転可能なロータリーバルブ140を含んでよい。ある特定の他の実施形態では、
図2Bに概略的に示すように、ロータリーバルブ140は、開口部204、流路214、および流路52を通じて反応容器4と固体支持体収容器50a、50b、および50cとを流体連結するために、多数の位置(例えば2つまたはそれより多い位置)の間で回転可能である。
【0152】
別の例として、ある特定の実施形態では、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示すように、システム2は、保護されたアミノ酸をアミノ酸収容器(複数可)から反応容器4へ送達するために、アミノ酸収容器と反応容器4とを流体連結する流路62(
図2A)または流路212(
図2B)と流体連通した複数のアミノ酸収容器60a、60b、および60cを含んでよい。流路61a、61b、および61cは、それぞれアミノ酸収容器60a、60b、および60cを、流路62(
図2A)または流路212(
図2B)と流体連結する。一部の実施形態では、流路62および/または流路212は、例えばそれぞれ
図1Aまたは
図1Bの開口部10または202を介して、反応容器4と直接に流体連通してよい。一部の実施形態では、システムは、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示し、以下により詳細に述べるように、1つまたは複数のさらなるバルブおよび/または流路を含んでよい。
【0153】
別の例として、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示すように、システム2は、脱保護剤を脱保護収容器から反応容器4へ送達するために、脱保護剤収容器と反応容器4を流体連結する流路72と流体連通した脱保護剤収容器70を含んでよい。一部の実施形態では、流路72は、例えば
図1Aおよび
図1Bの開口部16を介して、反応容器4と直接に流体連通してよい。一部の実施形態では、システムは、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示し、以下により詳細に述べるように、1つまたは複数のさらなるバルブおよび/または流路を含んでよい。
【0154】
さらに別の例として、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示すように、システム2は、溶媒を溶媒収容器から反応容器4へ送達するために、溶媒収容器と反応容器4とを流体連結する流路82と流体連通した溶媒収容器80を含んでよい。一部の実施形態では、流路82は、例えばそれぞれ
図1Aまたは
図1Bの開口部10または208を介して、反応容器4と直接に流体連通してよい。一部の実施形態では、システムは、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示し、以下により詳細に述べるように、1つまたは複数のさらなるバルブおよび/または流路を含んでよい。
図2Bはまた、本明細書でより詳細に述べるように、不活性ガスを導入するために使用される同じ流路の少なくとも一部を使用して、例えば流路218、開口部208、噴霧ヘッド220、および複数の開口部222を介して、溶媒を反応容器4の中に導入することができる実施形態を概略的に示す。
【0155】
さらに別の例として、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示すように、システム2はさらなる試薬収容器90を含んでよく、試薬収容器90は、例えば活性化剤等のさらなる試薬をさらなる試薬収容器から反応容器4へ送達するための、さらなる試薬収容器と反応容器4とを流体連結する流路92(
図2A)または流路210(
図2B)と流体連通した活性化剤容器であってよい。一部の実施形態では、流路92または210は、例えばそれぞれ
図1Aおよび
図1Bの開口部10または200を介して、反応容器4と直接に流体連通してよい。一部の実施形態では、システムは、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示し、以下により詳細に述べるように、1つまたは複数のさらなるバルブおよび/または流路を含んでよい。
【0156】
当業者であれば、反応容器、固体支持体収容器、アミノ酸収容器、脱保護剤収容器、溶媒収容器、および/またはその他の試薬収容器、および関連する流路の数、ならびにこれらの要素が連結される様式は変動することがあり、
図2Aおよび
図2Bにおけるその描写に限定されないことを認識されよう。当業者であれば、ペプチド合成システムが、固相ペプチド合成プロセスの適切な段階において、材料の流れを収容器および/または反応容器(複数可)の中におよび/またはその外に方向付けるために、例えば流路、バルブ、フィルター、ゲージ、モニター、コントローラー、その他を含む、上記の収容器、流路、および/または反応容器(複数可)に関連する種々のサブシステムを含み得ることも理解されよう。そのようなサブシステムは当技術分野で周知であり、本明細書で詳細には述べない。
【0157】
システム2は、本明細書に記載したように、反応容器4を加熱するためのマイクロ波源等の熱源(示さず)ならびにマイクロ波ガイドおよび/またはマイクロ波キャビティ等の関連する要素も伴う。マイクロ波熱源を含む熱源ならびにマイクロ波ガイドおよび/またはマイクロ波キャビティ等の関連する要素、ならびに固相ペプチド合成のプロセスおよびシステムにおけるそれらの使用も当技術分野で周知であり、本明細書でより詳細には述べない。
【0158】
システム2を、例えば
図1Aおよび
図1Bを参照して本明細書に記載したように、固相ペプチド合成のアミノ酸の脱保護ステップにおいて操作するように概略的に示す。この操作状態において、保護されたアミノ酸および脱保護剤を含む反応物は、既に反応容器4内に送達されている(既に反応容器4の中に存在する)。
【0159】
保護されたアミノ酸は固体支持体に結合される。保護されたアミノ酸は、例えば固体支持体収容器50a、50b、および50cの1つまたは複数から流路52を介して反応容器4内に送達される固体支持体に直接結合してよい。あるいは、保護されたアミノ酸は固体支持体に間接的に結合してよい(例えば別のアミノ酸またはペプチド鎖に結合してもよく、他のアミノ酸またはペプチドが固体支持体に結合する)。
【0160】
システム2は、反応容器4の上流の位置にあり、反応容器4と流体連通した不活性ガス源100をさらに含む。ある特定の実施形態では、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示すように、流路102が不活性ガス源100と反応容器4とを流体連結し、不活性ガス源100から供給された不活性ガスを本明細書に記載した開口部10(
図1A)または開口部208(
図1B)を介して反応容器4の上側内部に送達する。ある特定の実施形態では、システム2は、不活性ガス源100と開口部10(
図1A)または開口部208(
図1B)との間に位置する流路102と流体連通するバルブ104を含み、バルブ104は流路102に対して開放位置および閉鎖位置を有する。
【0161】
バルブ104は、
図2Aおよび
図2Bにおいて流路102に対して開放位置で示されている。開放位置では、バルブ104は、加圧された不活性ガスの不活性ガス源100から流路102、流路20(
図1A)または流路218(
図1B)、および開口部10(
図1A)または開口部208および噴霧ヘッド220(
図1B)を通る反応容器4の内部上側部分への(例えば反応容器のヘッドスペースへの)流れを可能にする。このようにして、システムは、本明細書に記載したプロセスに従って、加熱および/または脱保護のステップの間に、加圧された不活性ガスのオーバーヘッドの源を、反応容器の内部の上部に連続的および/または間欠的に方向付け、揮発した脱保護剤を反応器のヘッドスペースからパージする(放流する、放出する)ことができる。
【0162】
対照的に、バルブ104が流路102に対して閉鎖位置にある場合には、バルブ104は、不活性ガス源から流路102、流路20(
図1A)または流路218(
図1B)および開口部10(
図1A)または開口部208および噴霧ヘッド220(
図1B)を通る加圧された不活性ガスの流れを阻止することができる。
【0163】
システムは、不活性ガス源100と反応容器4の下部における開口部16とを流体連結する流路106を含んでもよい。システムは、不活性ガス源100と開口部16との間に位置する流路106と流体連通するバルブ108を含んでもよく、バルブ108は流路106に対して開放位置および閉鎖位置を有する。
【0164】
流路106に対する開放位置では、バルブ108は、不活性ガス源100から流路106、流路26、および開口部16を通る反応容器4の内部下部への加圧されたガスの流れを可能にする。本明細書に記載したように、脱保護プロセスにおいて、このようにして加圧された不活性ガスは反応容器の下部に方向付けられて反応物をかき混ぜ(例えば撹拌し、気泡を吹き込み)、および/または蒸発した脱保護剤を反応容器のヘッドスペースから放流することができる。流路106に対して閉鎖位置の第2のバルブ108は、不活性ガス源100から流路106、流路26、および開口部16を通る反応容器4の内部下部への加圧された不活性ガスの流れを阻止する。
【0165】
ある特定の実施形態では、流路102および106は、
図2Aおよび
図2Bで110と指定された圧力調節器を介して、単一の不活性ガス源100に流体連結してよい。あるいは、流路102および106は、反応容器を少なくとも2つの異なる不活性ガス源に流体連結してもよい。
【0166】
存在する場合には、圧力調節器110は、不活性ガス源100から下流の位置であってバルブ104および108から上流の位置にあり得る。これらの実施形態では、圧力源100は不活性ガスを圧力調節器110に方向付け、圧力調節器110は、流路106に供給される不活性ガス(「低圧」不活性ガス)よりも高い圧力を有する加圧された不活性ガス(「高圧」不活性ガス)を流路102に供給する。例えば、それに限定されるものではないが、圧力調節器110は、約1psi~約25psiの圧力を有する「高圧」不活性ガスを流路102に供給することができる。圧力調節器110は、流路102に供給される「高圧」不活性ガスの圧力より低い圧力を有する「低圧」不活性ガスを供給することもできる。
【0167】
圧力調節器も当技術分野で周知であり、当業者であれば、本明細書で論じたように、システム2においてどのようにこれを使用して高圧不活性ガスおよび低圧不活性ガスを提供するかを理解されよう。
【0168】
図2Aおよび
図2B(ならびに
図1Aおよび
図1B)にこれもまた概略的に示すように、例示的な実施形態では、システムは、反応容器4の開口部14(
図1A)または開口部206(
図1B)から下流の位置にある流路24(
図1Aおよび
図2A)または流路216(
図1Bおよび
図2B)を含んでよい。流路24および216は、気体廃棄物の流路として機能し、本明細書に記載した脱保護プロセスの間に反応容器4の上側内部(ヘッドスペース)からの気体廃棄物(例えば、揮発した脱保護剤、不活性ガス、その他)のパージング(放出、放流)を可能にすることができる。
【0169】
ある特定の実施形態では、システムは、流路24または流路216と流体連通したバルブ120を含む。バルブ120は流路24または流路216に対して開放位置および閉鎖位置を有する。開放位置にあるバルブ120は、反応容器4の上側内部(ヘッドスペース)から開口部14または開口部206および流路24または流路216を通る廃棄物回収ゾーン、例えばベントおよび/または廃棄物収容器(示さず)へのガスの流れを可能にし、反応容器4からのガスのパージング/放出を可能にする。閉鎖位置のバルブ120は、開口部14または開口部206を通る反応容器の上側内部(ヘッドスペース)から外へのガスの流れを阻止する。
【0170】
図2Aおよび
図2Bは、バルブ104およびバルブ120の両方はそれぞれ流路102、流路20または218、および流路24または流路216に対して開放位置にある、操作状態にあるシステムのある特定の実施形態を説明する。これは、本明細書に記載した(加熱された)脱保護プロセスの間に使用することができる位置に対応する。それぞれ流路102、流路20または218、および流路24または流路216に対して同時に開放位置にあるバルブ104およびバルブ120は、加圧された不活性ガスのオーバーヘッド供給が、反応容器4を通って連続的および/または間欠的に流れて(例えば、容器のヘッドスペースにおける開口部10を通って容器4の中に、そして別の開口部14を通って容器4から外に流れて、または別の例として開口部208、噴霧ヘッド220、および開口部222を通って側壁6に向けて容器4の中に、そして容器のヘッドスペースの中に、そして別の開口部206を通って容器4の外に流れて)、加熱された脱保護ステップの間にヘッドスペースに存在する揮発した反応物をパージする(放流する)ことを可能にする。
【0171】
ある特定の実施形態では、システム2は、バルブ104と直列のバルブ122、およびバルブ104とバルブ122の間に位置決め(配置)されてこれらを流体連結する流路124を含んでよい。バルブ122は流路102と流体連通し、流路102に対して開放位置と閉鎖位置とを有する。
図2Aおよび
図2Bに示すように、バルブ122が存在し、バルブ122とバルブ104が流路102に対して開放位置にある場合は、不活性ガス源100、圧力調節器110、流路102、バルブ104、流路124、バルブ122、流路20(
図2A)または流路218(
図2B)、開口部10(
図1A/2A)または開口部208、および噴霧ヘッド220(
図2A/2B)、ならびに反応容器4は流体連結(流体連通)することができる。
【0172】
ある特定の実施形態では、バルブ104は、多数の位置の間で回転して、複数の流路から選択される1つの流路を反応容器4と流体連結することができるロータリーバルブであってよい。非限定的な例として、
図2Aは、4つの位置の間で回転して、バルブの開放または閉鎖の位置に応じて流路102、62、82、または92と流体連通することができるロータリーバルブ104を示す。例えば
図2Aは、流路102に関して開放位置であるが、流路62、82、および92に関して閉鎖位置であるロータリーバルブ104を概略的に示す。別の非限定的な例として、
図2Bは、2つの位置の間で回転して、バルブの開放または閉鎖の位置に応じて、流路102または82と流体連通することができるロータリーバルブ104を示す。例えば
図2Bは、流路102に関して開放位置であるが、流路82に関して閉鎖位置であるロータリーバルブ104を概略的に示す。様々な流路に対するロータリーバルブ104の開放/閉鎖位置は、ペプチド合成プロセスの段階および反応容器4内に送達すべき反応物等に応じて選択してよい。ロータリーバルブ104(および本明細書で論じるその他のバルブ)は、当技術分野で公知のように操作してよい。
【0173】
本システムの他のバルブもロータリーバルブであってよい。例えば本明細書で留意したように、ある特定の実施形態では、システム2はバルブ104とバルブ122との間に位置決め(配置)されてこれらを流体連結する流路124を含んでよい。この実施形態では、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示すように、バルブ104と直列のバルブ122は、多数の位置の間で(例えば
図2Aおよび
図2Bの2つの位置の間のバルブ122ならびに
図2Aで概略的に示す4つの位置の間および
図2Bで概略的に示す2つの位置の間のバルブ104)回転して、例えば流路102、流路124、流路20または流路218、および開口部10または開口部208を介して不活性ガス源100と反応容器4とを流体連結することができる。あるいは、
図2Aに示すように、バルブ104と直列のバルブ122は、多数の位置(例えばそれぞれ2つの位置および4つの位置)の間で回転して、例えば流路62、流路124、流路20、および開口部10を介して1つまたは複数のアミノ酸収容器60a、60b、および60cと反応容器4を、流路82、流路124、流路20、および開口部10を介して溶媒収容器80と反応容器4を、あるいは流路92、流路124、流路20、および開口部10を介して試薬収容器90と反応容器4を流体連結することができる。また一部の実施形態では、
図2Bに示すように、バルブ104と直列のバルブ122は多数の位置(例えば2つの位置)の間で回転して、例えば流路82、流路124、流路218、および開口部208、ならびに噴霧ヘッド222を介して溶媒収容器80と反応容器4を流体連結することができる。
【0174】
別の例として、ある特定の実施形態では、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示すように、バルブ108は、多数の位置(例えば3つの位置)の間で回転して、バルブ108の位置に応じて、開口部16、流路26、および流路72、流路106または流路132を通じて、反応容器4を脱保護剤収容器70、不活性ガス源100、または廃棄物収容器130とそれぞれ流体連結するロータリーバルブであってよい。例えば、
図2Aおよび
図2Bは、流路106に関して開放位置であるが流路72および132に関して閉鎖位置であるロータリーバルブ108を概略的に示す。これは、低圧の不活性ガスが反応容器4の下部に方向付けられ(気泡を吹き込み)、反応物を撹拌しおよび/または蒸発した脱保護剤を反応容器のヘッドスペースから放流する、本明細書に記載した加熱および/または脱保護のプロセスの間のロータリーバルブ108の位置であってよい。
【0175】
別の例として、本明細書で論じるように、ある特定の実施形態では、
図2Aにまた概略的に示すように、システムは、多数の位置(例えば2つの位置)の間で回転して、開口部12、流路22、および流路52を通じて反応容器4を固体支持体収容器50a、50b、および50cと流体連結することができるロータリーバルブ140を含んでよい。あるいは、ロータリーバルブ140は、多数の位置(例えば2つの位置)の間で回転して、開口部12、流路22、および流路152を通じて反応容器4と流体連結することができ、流路152は複数の流路151a、151b、および151cと流体連通し、これらの流路は流路152をそれぞれ複数の生成物収容器150a、150b、および150cと流体連通させる。これにより、反応容器4から収容器150a、150b、および150cへの生成物(例えばペプチドおよび/または固体支持体に結合されたペプチド)の通過が可能になる。再び、当業者であれば、生成物収容器150a、150b、および150cならびに対応する流路151a、151b、および151cの数は変動することがあり、
図2Aに示した数に限定されないことが認識されよう。
【0176】
別の例として、本明細書で論じるように、ある特定の実施形態では、
図2Bにまた概略的に示すように、本システムは多数の位置(例えば2つの位置)の間で回転して、開口部204、流路214、および流路52を通じて反応容器4を固体支持体収容器50a、50b、および50cと流体連結することができるロータリーバルブ140を含み得る。あるいは、ロータリーバルブ140は、多数の位置(例えば2つの位置)の間で回転して、開口部204、流路214、および流路152を通じて反応容器4を流体連結することができ、再び流路152は複数の流路151a、151b、および151cと流体連通し、これらの流路は流路152をそれぞれ複数の生成物収容器150a、150b、および150cと流体連結する。再び、これにより、反応容器4から収容器150a、150b、および150cへの生成物(例えばペプチドおよび/または固体支持体に結合されたペプチド)の通過が可能になる。また再び、当業者であれば、生成物収容器150a、150b、および150c、ならびに対応する流路151a、151b、および151cの数は変動することがあり、
図2Bに示した数に限定されないことが認識されよう。
【0177】
ペプチド合成システム2は、例えばペプチド合成システムからの廃棄物(例えば過剰の反応物、溶媒、その他)の除去のために、1つまたは複数の流路、ベント、収容器、バルブ、コントローラー、その他を含んでもよい。廃棄物は気体、液体および/または固体の形態でよく、当業者であれば、ペプチド合成システムからの廃棄物の除去のために適切な流路および収容器の型が認識されよう。例えば、ある特定の実施形態では、本明細書で論じるように、廃棄物収容器130は、流路132、および反応容器4から廃棄物収容器130への廃棄生成物の通過を可能にする適切な開放位置にある場合のロータリーバルブ108を介して反応容器4に流体連結してよい。別の例として、ある特定の実施形態では、本明細書で論じるように、開放位置にあるバルブ120は、反応容器4の上側内部(ヘッドスペース)から開口部14または開口部206および流路24または流路216を通る廃棄物回収ゾーン、例えばベントおよび/または廃棄物収容器(示さず)へのガスの流れを可能にし、反応容器4からのガスのパージング/放出を可能にする。
【0178】
即ち一般に、
図2Aおよび
図2Bは、溶媒、反応物(アミノ酸、固相樹脂、脱保護剤、活性化剤、その他)、ガス、その他のそれぞれの源から反応容器4への送達、ならびに生成物および副生物(ペプチド、気体、液体、および/または固体の廃棄物、その他)の反応容器4からそれぞれの行先へのさらなる送達のための例示的なシステムを示す。特定の流路およびバルブ位置は、本開示を限定するよりむしろ、説明することが理解されよう。
【0179】
上記から少なくとも部分的に繰り返し表明すると、ペプチド合成システムは典型的には、例えば本システムの多数の電気部品(例えばマイクロ波源、センサー、およびソレノイド、ならびに/またはその他のモーター駆動バルブ)に操作可能に関連する少なくとも1つのコントローラーを含む。少なくとも1つのコントローラーは、1つまたは複数のコンピューター、コンピューターデータ保存デバイス、プログラム可能なロジックデバイス(PLD)、および/またはアプリケーション固有の集積回路(ASIC)を含んでよい。好適なコンピューターは、中央演算装置もしくはプロセッサー、コンピューターハードウェア集積回路もしくはメモリー、ユーザーインタフェース、システムの他の電気部品とインタフェースするための周辺機器もしくは装置のインタフェース、および/または他の任意の好適な機構のそれぞれの1つまたは複数を含んでよい。コントローラー(複数可)はそれぞれ、好適なシグナル通信経路によってシステムの電気部品と通信することもできる。
図2Aおよび
図2Bに、コントローラーに関連する代表的なシグナル通信経路を概略的に示し、それぞれ数字
*2(シグナル通信経路)および
*1(コントローラー)と指定する。本開示のプロセスは、少なくとも1つのコントローラー
*1に操作可能に関連するコンピューターベースのアルゴリズムの実行に応答して制御(例えば少なくとも部分的に制御)してよい。
【0180】
バッチ系のプロセスを含む固相ペプチド合成プロセスは公知であるので、本開示はこれについて詳細な情報は提供しない。例えばR. B. Merrifield (1963) "Solid Phase Peptide Synthesis I, The Synthesis of a Tetrapeptide," J. Am. Chem. Soc. 85 (14), 2149-2154)の先駆的な研究が参照される。したがって、固相ペプチド合成のプロセスおよびシステムについての詳細な考察は提供しない。
【0181】
バッチ系のプロセスを含む固相ペプチド合成を実行するために好適なシステムおよびプロセスも公知である。固相ペプチド合成を実行するための例示的なシステムには、例えばMatthews N.C.のCEM Corporationから市販で入手可能なLIBERTYラインの装置が含まれる。固相ペプチド合成の主題を取り扱う例示的な米国特許には、米国特許第7,393,920号、第7,550,560号、第7,563,865号、第7,939,628号、第7,902,488号、第7,582,728号、第8,153,761号、第8,058,393号、第8,426,560号、第8,846,862号、第9,211,522号、第9,669,380号、第10,052,607号、第10,308,677号、第10,125,163号、第10,858,390号、および第10,239,914号が限定なく含まれる。これらのそれぞれの内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0182】
本開示の脱保護プロセスおよび/またはSPPSプロセスは、例えば米国特許第10,308,677号、第10,125,163号、第10,858,390号、および第10,239,914号に開示されたような、それぞれの結合ステップの後に洗浄を含まず(これを除外し)、および/または結合ステップの後で排液せずに脱保護塩基を結合溶液に直接添加するSPPSプロセス(例えば保護されたアミノ酸がFmoc保護基を含むSPPSプロセス)と組み合わせて使用してよい。そのようなSPPSプロセスは、一般に「高効率SPPS(HE-SPPS)」と称してよい。
【0183】
次に、以下の実施例を参照して本発明をより詳細に記述する。これらの実施例は説明のためのみに提供され、いかなる様式でも本発明を限定するものと解釈すべきでないことを理解されたい。
【実施例】
【0184】
(実施例1)
脱保護の間のヘッドスペースのクリーニングを伴うチモシンの合成
ペプチドチモシンSDAAVDTSSEITTKDLKEKKEVVEEAEN-NH2を、CEM Corporation(Matthews、NC)から市販で入手可能な自動化マイクロ波ペプチドシンセサイザーLiberty PRIMEによる固相ペプチド合成を使用して合成する(合成スケール0.05mmol)。固相樹脂支持体としてRink Amide ProTide LL(0.19mmol/g置換)を使用する。
【0185】
脱保護を、ジメチルホルムアミド(DMF)中40%のピロリジンを含む脱保護試薬0.75mLを、排液していない結合後の混合物に添加することによって実施する。脱保護温度が110℃になるようにマイクロ波出力を調節し、脱保護ステップを110℃で50秒、行なう。それぞれの脱保護ステップの後、5mLのDMFを使用してアミノ酸を3回洗浄する。
【0186】
脱保護の間、本明細書に記載した本開示の実施形態に従って、反応容器のヘッドスペースを通して約15psi(+/-3psi)の圧力に加圧した窒素ガスのストリームを連続的に方向付け、ヘッドスペースのガスを反応容器から連続的にパージする。
【0187】
結合反応を、10倍モル過剰のFmoc保護アミノ酸(AA)ならびに活性化剤/活性化剤塩基ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびエチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセテート(Oxyma)、具体的には3.5mLのDMF中、AA/DIC/Oxyma(10:20:10)の存在下で実施する。結合反応は、30秒の待機および105℃で90秒を提供するように選択したマイクロ波条件下で行なう。
【0188】
ペプチドの合成が完了した後、CEM Corporationから市販で入手可能なRAZOR切断システムにより、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリイソプロピルシラン(triisopropyle silane)(TIS)、水(H2O)、およびジオキサ-1,8-オクタン-ジチオール(DODT)、具体的には5mLのTFA/TIS/H20/DODT(92.5:2.5:2.5:2.5)を使用して、38℃、30分でペプチドを固相から切断する。
【0189】
ペプチドを、溶媒系として0.1%のTFAを含むアセトニトリル/水およびC8カラム(1.7μm、2.1×100mm)を使用するExtractive Plus Orbitrap質量分析計に接続したThermo Scientific Vanquish UPLCを使用して、または溶媒系として0.1%のTFAを含むアセトニトリル/水およびC8カラム(1.7μm、2.1×100mm)を使用するWaters UPLC ACQUITY H-Classと3100 Single Quad質量分析計を使用して分析する。
(比較例1)
脱保護の間のヘッドスペースクリーニングを伴わないチモシンの合成
【0190】
ペプチドチモシンを、脱保護ステップが加圧された窒素ガスのストリームを反応容器のヘッドスペースを通して連続的に方向付けることを含まなかった(脱保護の間にヘッドスペースのパージングまたはクリーニングがない)ことを除いて、実施例1に記載したものと同じ条件下で合成する。
【0191】
得られるペプチドを、これも実施例1に記載した通りに分析する。
【0192】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ実施例1および比較例1のチモシンのUPLCクロマトグラフであり、本開示による脱保護ステップの間のヘッドスペースパージング(ヘッドスペースクリーニング)を使用するペプチド純度の増大を実証している。例えば、
図3Aに示すように、本開示による脱保護ステップの間にヘッドスペースパージング(ヘッドスペースクリーニング)を使用して産生されたチモシンは、76%という改善された純度を呈する。対照的に、
図3Bに示すように、脱保護の間にヘッドスペースパージング(ヘッドスペースクリーニング)を行なわずに産生されたチモシンは、69%という低い純度を呈する。
(実施例2)
脱保護の間のヘッドスペースクリーニングを伴うプロインスリンの合成
【0193】
ペプチドプロインスリンFVNQHLKGSH LVEALYLVKG ERGFFYTPKT RREAEDLQVG QVELGGGPGA GSLQPLALEG SLQKRGIVEQ KKTSIKSLYQ LENYKN(MW=9544;1909(+5イオン)、1591(+6イオン)、1364(+7イオン)、1194(+8イオン)、1061(+9イオン)、955(+10イオン)、868(+11イオン)、796(+12イオン)、735(+13イオン)、682(+14イオン))を、脱保護の間に反応容器のヘッドスペースを通して加圧された窒素ガスのストリームを連続的に方向付ける(脱保護の間にヘッドスペースのパージングまたはクリーニングがある)ことを含む実施例1に記載した同じ条件下で合成する。
【0194】
得られるペプチドを、これも実施例1に記載した通りに分析する。
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ実施例2のプロインスリンのUPLCクロマトグラフおよび質量スペクトルである。
(実施例3)
脱保護の間のヘッドスペースクリーニングを伴うHIV-1プロテアーゼの合成
【0195】
ペプチドHIV-1プロテアーゼPQVTLWQRPI VTIKIGGQLK EALLDTGADD TVLEEMSLPG KWKPKMIGGI GGFIKVRQYD QVSIEIKGHK AIGTVLIGPT PVNIIGRNLL TQLGKTLNF(MW=10775;1540(+7イオン)、1347(+8イオン)、1198(+9イオン)、1078(+10イオン)、980(+11イオン)、898(+12イオン)、829(+13イオン)、770(+14イオン))を、脱保護の間に反応容器のヘッドスペースを通して加圧された窒素ガスのストリームを連続的に方向付ける(脱保護の間にヘッドスペースのパージングまたはクリーニングがある)ことを含む実施例1に記載した同じ条件下で合成する。
【0196】
得られるペプチドを、これも実施例1に記載した通りに分析する。
図5Aおよび
図5Bは、それぞれ実施例3のHIV-1プロテアーゼのUPLCクロマトグラフおよび質量スペクトルである。
(実施例4)
脱保護の間のヘッドスペースクリーニングを伴うBarstarの合成
【0197】
ペプチドBarstar KKAVINGEQI RSISDLHQTL KKELALPEYY GENLDALWDK LTGWVEYPLV LEWRQFEQSK QLTENGAESV LQVFREAKAE GKDITIILS(MW=10261;1711(+6イオン)、1466(+7イオン)、1283(+8イオン)、1141(+9イオン)、1027(+10イオン)、933(+11イオン)、855(+12イオン))を、脱保護の間に反応容器のヘッドスペースを通して加圧された窒素ガスのストリームを連続的に方向付ける(脱保護の間にヘッドスペースのパージングまたはクリーニングがある)ことを含む実施例1に記載した同じ条件下で合成する。
【0198】
得られるペプチドを、これも実施例1に記載した通りに分析する。
図6Aおよび
図6Bは、それぞれ実施例4のBarstarのUPLCクロマトグラフおよび質量スペクトルである。
(実施例5)
脱保護の間のヘッドスペースクリーニングを伴うMDM2の合成
【0199】
ペプチドMDM2 MHHHHHHGSM KNTNMSVPTD GAVTTSQIPA SEQETLVRPK PLLLKLLKSV GAQKDTYTMK EVLFYLGQYI MTKRLYDEKQ QHIVYKSNDL LGDLFGVPSF SVKEHRKIYT MIYRNLVVVN QQESSDS (MHHHHHHGSM KNTNMSVPTD GAVTTSQIPA SEQETLVRPK PLLLKLLKSV GAQKDTYTMK EVLFYLGQYI MTKRLYDEKQ QHIVYKSNDL LGDLFGVPSF SVKEHRKIYT MIYRNLVVVN QQESSDS(MW=14607;1218(+12イオン)、1125(+13イオン)、1044(+14イオン)、975(+15イオン)、913(+16イオン)、860(+17イオン)、813(+18イオン))を、脱保護の間に反応容器のヘッドスペースを通して加圧された窒素ガスのストリームを連続的に方向付ける(脱保護の間にヘッドスペースのパージングまたはクリーニングがある)ことを含む実施例1に記載した同じ条件下で合成する。
【0200】
得られるペプチドを、これも実施例1に記載した通りに分析する。
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ実施例5のMDM2のUPLCクロマトグラフおよび質量スペクトルである。
(実施例6)
低い塩基濃度を使用し、脱保護後の洗浄を伴うおよび伴わない、ならびにヘッドスペースの放流を伴うおよび伴わない、JR10マーのワンポット合成の解析
【0201】
上記の実施例1~5は、110℃までのマイクロ波SPPSによる、不活性ガス(窒素)ヘッドスペース放流を伴う高温脱保護ステップが、長く困難な配列についても高い純度をもたらし得ることを実証している。実施例6および7は、少量の脱保護塩基を使用しても本質的に完全な脱保護および保護基(例えばFmoc保護基)の除去がもたらされ得、次の結合ステップのための課題を最小化するために十分少量であり得る残存塩基しか残さないことを実証する。
【0202】
JR10マーを、市販で入手可能な自動化されたマイクロ波ペプチドシンセサイザー(例えばCEM Corporation、Matthews、NCから市販で入手可能なLibertyラインのマイクロ波ペプチドシンセサイザー、例えばLiberty 2.0)を使用する固相ペプチド合成を使用して合成する。固相樹脂支持体としてPEG-PS樹脂(例えばCEM Corporationから市販で入手可能なRink Amide ProTide Resin LL)を使用し、結合反応はFmoc保護されたアミノ酸(AA)の存在下で実施する。
【0203】
脱保護反応は、ピロリジン/ジメチルホルムアミド(DMF)脱保護試薬(組成物)を、排液していない結合後の混合物に添加することによって実施する。ピロリジンの濃度(ピロリジンおよびDMFを含む脱保護試薬の総体積に基づくピロリジンの体積パーセント)は、下の表1に記されている。マイクロ波の出力は、これも下の表1に記した脱保護温度および脱保護反応時間を提供するように調節する。
【0204】
表1には、脱保護後の洗浄および/またはヘッドスペースの放流を使用するか否かもさらに示す。「ヘッドスペースの放流」が「ON」と表示された表1の試料については、窒素ガスのストリームが、本明細書に記載した本開示の実施形態に従って、反応容器のヘッドスペースを通して方向付けられ(例えば加圧された窒素ガスのストリームが、
図1Aおよび
図1Bに示すような進入ポートを通り、ヘッドスペースを通って反応容器に入り、そして
図1Aおよび
図1Bに示すようなベントポート等の出口ポートを通って反応容器の外に方向付けられ)、反応容器からヘッドスペースガスをパージする。「ヘッドスペースの放流」が「OFF」と表示された表1の試料については、ここに記載したヘッドスペースの放流は使用されない。「保護後の洗浄」が使用される表1の試料については、洗浄ステップは、それぞれの脱保護ステップの後に4mLのDMFを使用する2回の洗浄を含む。
【0205】
JR10マーの合成が完了した後、JR10マーを固相から切断し、得られるJR10マーの粗純度を解析する。これらの結果も下の表1に報告する。
【表1】
【0206】
JRペプチドの合成についての結果は、それぞれの脱保護ステップにおいて本明細書に記載したようにヘッドスペースの放流を使用した場合には、洗浄がなくても高い純度の結果が得られ得ることを示している。例えば、いずれの説明または理論にも縛られず、本発明の範囲を限定するものでもないが、進入ポート(例えば
図1Aおよび
図1Bに示すような)を通し、ヘッドスペースを通して反応容器の中に、そして出口ポート(例えば
図1Aおよび
図1Bに示すようなベントポート)を通して反応容器の外に、不活性ガス(窒素ガス)を方向付けることにより、脱保護溶液の上におけるより高いガス交換速度と、凝縮物を反応容器内へ押し戻し、そこで凝縮物が再加熱される上から下へ方向付けられた流れの両方がもたらされ得ることが今のところ考えられる。
【0207】
さらに、これもいずれの説明または理論にも縛られず、本発明の範囲を限定するものでもないが、ピペリジン(106℃)と比較してより低い沸点(87℃)を有するピロリジン塩基がFmoc除去ステップにおいて顕著に蒸発し得ること、ならびにそのより少量(2vol%と低い)を使用しても本質的に完全な脱保護およびFmoc基の除去がもたらされ得、次の結合ステップのための課題を最小化するために十分少量であり得る残存塩基しか残さないことを実施例6が実証していると今のところ考えられる。これが標準的なサイクルの間の全ての洗浄ステップを排除する初めて実証されたSPPSプロセスであり、このSPPSプロセスが一般的な0.1mmolの研究スケールでそれぞれの標準的なアミノ酸サイクルにおいてわずか4.25mLの全廃棄物しか生成しないことも今のところ考えられる。
(実施例7)
脱保護後洗浄を伴わず、ヘッドスペースの放流を伴い、低塩基濃度を有する保護組成物を使用する1-42β-アミロイドおよびリラグルチドの配列のワンポット合成の解析
【0208】
その他の2つの周知の困難な配列、即ち1-42β-アミロイドおよびリラグルチドの配列を次に検討する。これらの配列を、市販で入手可能な自動化されたマイクロ波ペプチドシンセサイザー(例えばCEM Corporation、Matthews、NCから市販で入手可能なLibertyラインのマイクロ波ペプチドシンセサイザー、例えばLiberty 2.0)を使用する固相ペプチド合成を使用して合成する。固相樹脂支持体としてFmoc-Gly-Wang-ProtideまたはFmoc-Ala-Wang-Protide樹脂を使用し、結合反応を、Fmoc保護されたアミノ酸(AA)の存在下で実施する。
【0209】
脱保護反応を、ピロリジン/ジメチルホルムアミド(DMF)脱保護試薬(組成物)を、排液していない結合後の混合物に添加することによって実施する。ピロリジンの濃度(ピロリジンおよびDMFを含む脱保護試薬の総体積に基づくピロリジンの体積パーセント)は、下の表2に記されている。実施例6の結果に基づいて、これらの配列の合成に向けたプロセスの中央値利用として3vol%のピロリジン濃度を選択する。マイクロ波の出力は、これも下の表2に記した脱保護温度および脱保護反応時間を提供するように調節する。
【0210】
表2は、脱保護後の洗浄を使用せず、ヘッドスペースの放流を使用することを示す。「ON」と表示した「ヘッドスペースの放流」は、本明細書に記載した本開示の実施形態によって反応容器からヘッドスペースガスをパージするために反応容器のヘッドスペースを通して方向付けられる窒素ガスのストリームの使用(例えば
図1Aおよび
図1Bに示すような進入ポートを通し、ヘッドスペースを通して反応容器の中に、そして
図1Aおよび
図1Bに示すようなベントポート等の出口ポートを通して反応容器の外に、加圧された窒素ガスのストリームを方向付けること)を意味する。配列の合成が完了した後、配列を固相から切断し、得られる配列の粗純度を解析する。結果を下の表2に報告する。
【表2】
【0211】
42β-アミロイドおよびリラグルチドの配列についての結果も、それぞれの脱保護ステップにおいて本明細書に記載したようにヘッドスペースの放流を使用した場合には、洗浄がなくても高い純度の結果が得られることを示している。
【0212】
上記の実施例6および7は、本明細書に記載した脱保護ステップ(例えば第2の実施形態の脱保護ステップ)を含む本開示の実施形態が、固相ペプチド合成について1つまたは複数の(例えば全ての)洗浄ステップを排除できる(例えば脱保護後および/または結合後の洗浄ステップを排除できる)改善されたプロセスを提供することができることを実証している。一部の実施形態では、プロセスはFmocの除去のために少量の脱保護塩基(例えば約3~4vol%のピロリジン)、および/あるいは加熱(例えば80~110℃でのマイクロ波加熱)、ならびに/または高温および/もしくは窒素パージング(ヘッドスペースの放流)による脱保護溶液からの塩基の除去を使用してよく、それにより、次のアミノ酸を添加する前の洗浄の必要性を排除するために残存塩基を十分に少なくすることができる。実施例6および7は、リラグルチドのようなより長くより困難な配列においても顕著な構造安定性を実証している。したがって、本プロセスによって溶媒および時間を顕著に節約できる。
【0213】
上記において、実施形態の実施例を開示してきた。本発明はそのような例示的な実施形態に限定されない。上記において、ステップまたはその他の行為の順序の記述は例を提供する目的のために記載しているのであって、本開示の範囲を限定する目的のためではない(例えば適切な場合にはステップまたは行為は上記とは異なる順序で実施してよく、ステップおよび行為は省略および/または追加してよい)。図面は概略的な表現であり、したがって必ずしもスケール通りに描かれていない。他に注記しなければ、特定の用語は包括的かつ叙述的な意味で使用しているのであって限定の目的ではない。
【0214】
本開示を通して提供される数値は近似値であり得、本開示で特定したそれぞれの範囲について、範囲内の全ての値(端点を含む)および範囲内の全ての副範囲も開示されている。当業者であれば、本開示の特徴の様々なインプリメンテーションにおいて、合理的に異なる設計上の(例えば数値(複数可)に関する)許容範囲、精度、および/または確度は、所望の結果を得るために適用可能かつ適切であり得ることも容易に理解されよう。したがって、当業者であれば、「実質的に」、「約」、「ほぼ」、その他の用語の本明細書における意味、使用法、その他が容易に理解されよう。非限定的な例として、用語「約」は、数値が±25%、例えば±20%、例えば±15%、例えば±10%、例えば±5%、例えば±4%、例えば±3%、例えば±2%、例えば±1%、例えば±1%未満、例えば±0.5%、例えば±0.5%未満で変動し得、上記の範囲のそれぞれについて全ての値およびその間の副範囲を含み得ることを示し得る。
【0215】
本明細書で使用する場合、語句「および/または」は、関連する列挙された項目の、一部の実施形態では必要に応じて「および/または」の語句によって具体的に特定されていない他の要素と組み合わせた、1つまたは複数のあらゆる組合せを含む(例えば、一部の実施形態では合接的に存在する要素、および他の実施形態では離接的に存在する要素を意味し得る)。非限定的な例として、「Aおよび/またはB」は、一部の実施形態ではBのないA、一部の実施形態ではAのないB、一部の実施形態ではAとBの両方、その他を意味し得る。
【0216】
本明細書で使用される場合、1つまたは複数の要素のリストに関わる語句「少なくとも1つ」は、要素のリストにおける要素の任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味し得るが、要素のリストの中に具体的に列挙されたあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリストの中の要素のいかなる組合せをも排除しない。一部の実施形態では、要素は、具体的に特定された要素に関連する場合も、関連しない場合も、必要に応じて、語句「少なくとも1つ」が意味する要素のリストの中で具体的に特定される要素以外に存在してよい。非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、および/または「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」は、一部の実施形態では、少なくとも1つ、必要に応じて1つより多くのAを含み、Bが存在しない(かつ必要に応じてB以外の要素を含む)こと、一部の実施形態では少なくとも1つ、必要に応じて1つより多くのBを含み、Aが存在しない(かつ必要に応じてA以外の要素を含む)こと、一部の実施形態では少なくとも1つ、必要に応じて1つより多くのAを含み、少なくとも1つ、必要に応じて1つより多くのBを含む(かつ必要に応じて他の要素を含む)こと、その他を意味し得る。
【0217】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「1つの」(「a」および「an」)は、少なくとも1を意味する(「a」および「an」は単数および/または複数の要素を意味し得る)。
【国際調査報告】