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特表2024-534396充電式バイポーラ型アルミニウムイオン電池および関連する用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】充電式バイポーラ型アルミニウムイオン電池および関連する用途
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20240912BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240912BHJP
   H01M 50/437 20210101ALI20240912BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M12/08 K
H01M50/434
H01M50/437
H01M50/417
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516642
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 ES2022070588
(87)【国際公開番号】W WO2023047004
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P202130893
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517119648
【氏名又は名称】アルブフェラ エナジー ストレージ,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】チャコン グアダリクス,ホアキン ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス ゴンザレス,クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】アルモドヴァル ロサーダ,パロマ
【テーマコード(参考)】
5H021
5H032
【Fターム(参考)】
5H021EE04
5H021EE21
5H032AA01
5H032AS01
5H032AS11
5H032AS12
5H032CC01
5H032CC06
5H032CC14
5H032CC17
5H032EE01
5H032EE04
5H032HH01
5H032HH04
(57)【要約】
本発明は、充電式バイポーラ型アルミニウムイオン電池およびその関連用途に関する。この電池は、電極用に選択された材料のタイプと、隣接するセル間で共有されるグラファイト集電体を使用することによって、電池を構成する電気化学セルのサンドイッチ型の積層とにより、従来の充電式アルミニウムイオン電池よりも最大200%高い電圧を生成することができる。この構成により、内部抵抗が効果的に低減され、電池のエネルギー蓄電容量を急速に劣化させることなく、より高い電力密度およびより多くの充放電サイクル数を達成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式バイポーラ型アルミニウムイオン電池であって、
-連続して積層された複数の電気化学セル(1)であって、その各々が順に以下:
-電池の放電中に酸化反応を受け、電池の充電中に還元反応を受ける、アルミニウムシートを含む第1の電極(2);
-電池の放電中に還元反応を受け、電池の充電中に酸化反応を受ける、炭素質材料を含む第2の電極(3);および
-前記第1の電極(2)と前記第2の電極(3)との間に機械的スペーサとして配置されるが、前記電極間のイオン交換を可能にする、分離膜(4);
を含む、電気化学セル(1);
-前記複数の電気化学セル(1)が浸漬され、前記電池の充放電サイクル中に前記第1の電極(2)および前記第2の電極(3)で放出されるイオンを輸送する、電解液(5);
-一連の電気化学セル(1)の第1の端部に配置されたセル(1’)の前記第1の電極(2)と接触して配置された、グラファイトシートを含む第1の集電体(6);
-一連の電気化学セル(1)の第2の端部に配置されたセル(1”)の前記第2の電極(3)と接触して配置された、グラファイトシートを含む第2の集電体(7);および
-前記複数の電気化学セル(1)、前記電解液(5)、前記第1の集電体(6)、および前記第2の集電体(7)を収容する、ハウジング
を備え、
前記電池は、前記複数の積層された電気化学セル(1)において、前記連続するセルが、前記連続するセル(1)の間に配置されたグラファイトシート(9)によって接続される
ことを特徴とする、電池。
【請求項2】
前記グラファイトシート(9)の厚さが、0.1~10mmであることを特徴とする、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1の電極(2)が、純アルミニウムのシートを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1の電極(2)が、アルミニウム合金のシートを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の電池。
【請求項5】
前記アルミニウム合金が、アルミニウムとマグネシウムとの合金、アルミニウムと亜鉛との合金、アルミニウムとスズとの合金、またはアルミニウムとガリウムとの合金を含むことを特徴とする、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記合金中のマグネシウム、亜鉛、スズ、またはガリウムの質量%が5%未満であることを特徴とする、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記第1の電極(2)が、疎水性および/または防食コーティングを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記第2の電極(3)が、以下の炭素質材料:無定形炭素、グラファイト、膨張化グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、あるいは、水素、硫黄、窒素またはカリウムでドープされた膨張化グラファイトまたはグラフェン
の1つまたは複数を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記第2の電極(3)が、バインダー添加剤によって前記グラファイトシート(9)上に塗料の形態で堆積されることを特徴とする、請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記一連の電気化学セル(1)の第2の端部に配置されたセル(1”)の第2の電極(3)が、バインダー添加剤によって前記第2の集電体(7)のグラファイトシート上に塗料の形態で堆積されることを特徴とする、請求項9に記載の電池。
【請求項11】
前記バインダー添加剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の電池。
【請求項12】
前記バインダー添加剤と前記炭素質材料との重量比は、15%以下であることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の電池。
【請求項13】
前記電解液(5)が、イオン性液体中のハロゲン化アルミニウムの溶液を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の電池。
【請求項14】
前記ハロゲン化アルミニウムが、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムまたはヨウ化アルミニウムを含むことを特徴とする、請求項13に記載の電池。
【請求項15】
前記イオン性液体が、尿素、アセトアミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミドまたは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヨージドを含むことを特徴とする、請求項13または14に記載の電池。
【請求項16】
前記ハロゲン化アルミニウムと前記イオン性液体の重量比は、1:1~3:1であることを特徴とする、請求項13~15のいずれか一項に記載の電池。
【請求項17】
前記分離膜(4)が、セラミック材料、ガラスマイクロファイバー、ポリプロピレン、またはそれらの任意の可能な組合せの多孔質シートを含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の電池。
【請求項18】
前記ハウジング(8)が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはそれらの任意の可能な組合せを含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の電池。
【請求項19】
据置用途のためのボタン電池、円筒形電池またはプリズム電池としての、請求項1~18のいずれか一項に記載の電池の使用。
【請求項20】
電気自動車またはハイブリッド自動車のためのエネルギー蓄積器としての、請求項1~18のいずれか一項に記載の電池の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギー貯蔵技術の分野に属する。より詳細には、本発明の主題は、充電式バイポーラ型アルミニウムイオン電池およびその関連用途に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーの持続的な生産および効率的な貯蔵は、差し迫った世界的な課題;すなわち、エネルギーへの平等なアクセス、環境悪化、および気候変化、を軽減するための現代社会の緊急のニーズである。再生可能エネルギー源に基づく技術は、これらのエネルギーおよび環境問題に対する解決策として大きな可能性を示す。しかしながら、それらが生成する電気は断続的であり、現在までのところ、その貯蔵は、実用的、容易かつ経済的な態様では達成されていない。したがって、現在の電気エネルギー貯蔵システムを改良し、生成される各グリーン・メガワットを最大限に利用し、グリッドシステムに安定的かつ継続的に電気を供給することが極めて重要である。
【0003】
電気エネルギー貯蔵システム内には電池がある。電池は、内部で起こる化学反応から電流を発生することができる、複数の直列または並列に接続された電気化学セルからなる装置である。このような反応が可逆的である場合、電池は、充電式電池または二次電池と呼ばれる。
【0004】
今日まで、充電式リチウムイオン電池は、世界的に最も広く販売され、その高いエネルギー容量および耐放電性のために、携帯電子装置およびハイブリッドおよび電気自動車の電源として使用される。しかしながら、その製造コストが高く、可燃性のリスクが高く、地殻中のこの金属の埋蔵量が限られているため、大規模な用途のための代替的な貯蔵システムの探索が進められている(非特許文献1)。
【0005】
現在、充電式アルミニウムイオン電池は、その低コスト、低燃焼性および高蓄電容量(8040 mAh cm-3、リチウムの4倍)のために、大規模な電気エネルギー貯蔵のための最も有望で安全な代替品の一つとして注目されている。しかしながら、それらの明らかな利点にもかかわらず、このタイプの電池の商業的開発は限られている;主に、その低い電力密度(250Wkg-1未満)、および、エネルギー貯蔵容量の急速な劣化(100サイクルで26%~85%)を伴う不十分な充放電サイクル数(100サイクル未満)のため(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
最近、上述の制限に対処しようとするいくつかの充電式アルミニウムイオン電池が開発されている。これらのうち第1のものは、アノードとして純アルミニウムシート、カソードとして熱分解グラファイト箔(厚さ約17μm)または三次元グラファイト発泡体、および電解液として1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド中の塩化アルミニウム(AlCl)の溶液を用いた、「Swagelok」または「パウチ」型の電気化学セルからなる。前記セルは、3000Wkg-1の電力密度で約1分の充電時間を提供し、その蓄電容量を損なうことなく7500超の充電/放電サイクルを支持する(約70mA hg-1)(非特許文献3)。同じく純アルミニウムのカソードおよびグラファイトのカソードを備えるが、電解液としてAlCl/尿素溶液を用いる、第2のものは、500サイクル後に100mA g-1で93mA hg-1、および200mA g-1で75mA hg-1の比容量を有し、1000mA g-1でも容量のさらなる劣化は観察されない(非特許文献4)。しかしながら、これらの電池モデルのいずれも、最大動作電圧として2.2~2.5Vを超えない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Larcher et al. Nature Chemistry, 2015, 7(1), 19-29
【非特許文献2】Jayaprakash et al. Chemical Communications, 2011, 47 (47), 12610-12612; Rani et al. Journal of The Electrochemical Society, 2013, 160 (10), A178T; Hudak et al. J. Phys. Chem. C, 2014, 118, 5203-5215
【非特許文献3】Lin et al. Nature, 2015, 520 (7547), 324-328
【非特許文献4】Jiao et al. ChemComm, 2017, 53 (15), 2331-2334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、既知の充電式アルミニウムイオン電池に比べて効率が改善された新規な充電式バイポーラ型アルミニウムイオン電池によって、上述の制限に対する解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前節で述べた従来技術の課題に鑑みて、本発明の目的は、充電式バイポーラ型アルミニウムイオン電池およびその関連用途に関する。この電池は、電極用に選択された材料のタイプと、隣接するセル間で共有されるグラファイト集電体を使用することによって、(従来の直列構造の代わりに)それを構成する電気化学セルの「サンドイッチ」型の積層とにより、従来の充電式アルミニウムイオン電池よりも最大200%高い電圧を生成することができる。この構成により、内部抵抗が効果的に低減され、電池のエネルギー蓄電容量を急速に劣化させることなく、より高い電力密度およびより多くの充放電サイクル数を達成することができる。
【0010】
本発明の解釈の範囲内において、「電気化学セル」は、内部で起こるレドックス反応から電気エネルギーを取得することができ、電極間の短絡を防止する多孔質膜またはシートによって分離された正極および負極の2つの電極からなるエネルギー貯蔵装置として理解され、「電池」は、互いに接続された2つ以上の電気化学セルの集合体である。同様に、「充電式電池」は、レドックス反応が可逆的であり、したがって様々な充放電サイクルを可能にする電池を意味する;すなわち、電気化学セルを構成する材料を消耗させる(「放電」)ことによって、外部負荷に安定かつ制御された電流を供給し、外部エネルギー源によって再充電されて、消費された材料を再生する(「充電」)。
【0011】
同様に、本発明において、「酸化反応」は、電子が放出される化学反応を意味し、「還元反応」は、電子が受け取られる化学反応を意味する。
【0012】
したがって、本発明の主題である電池は、以下を含む:
-連続して積層された複数の電気化学セルであって、その各々が順に以下を含む、電気化学セル:
-電池の放電中に酸化反応を受け、電池の充電中に還元反応を受ける、アルミニウムシートを含む第1の電極;
-電池の放電中に還元反応を受け、電池の充電中に酸化反応を受ける、炭素質材料を含む第2の電極;および
-第1の電極と第2の電極との間に機械的スペーサとして配置されるが、前記電極間のイオン交換を可能にする、分離膜;
-複数の電気化学セルが浸漬され、電池の充放電サイクル中に第1の電極および第2の電極で放出されるイオンを輸送する、電解液;
-一連の電気化学セルの第1の端部に配置されたセルの第1の電極と接触して配置された、グラファイトシートを含む第1の集電体;
-一連の電気化学セルの第2の端部に配置されたセルの第2の電極と接触して配置された、グラファイトシートを含む第2の集電体;および
-複数の電気化学セル、電解液、第1の集電体、および第2の集電体を収容する、ハウジング。
【0013】
有利には、電池を構成する複数の積層された電気化学セルにおいて、連続するセルは、前記連続するセルの間に配置されたグラファイトシートによって接続される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、グラファイトシートの厚さは0.1~10mmである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、第1の電極は、純アルミニウムシートを含む。あるいは、第1の電極は、アルミニウム合金のシートを含む;好ましくは、アルミニウムとマグネシウムとの合金、アルミニウムと亜鉛との合金、アルミニウムとスズとの合金、またはアルミニウムとガリウムとの合金であり、より好ましくは、5質量%未満のマグネシウム、亜鉛、スズ、またはガリウムの合金である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、第1の電極は、疎水性および/または防食コーティングを含む。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、第2の電極は、以下の炭素質材料の1つまたは複数を含む:無定形炭素、グラファイト、膨張化グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、あるいは、水素、硫黄、窒素またはカリウムでドープされた膨張化グラファイトまたはグラフェン。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、第2の電極は、バインダー添加剤によってグラファイトシート上に塗料の形態で堆積される。好ましくは、バインダー添加剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含む。より好ましくは、バインダー添加剤と炭素質材料との重量比は、15%以下である。電極とグラファイトシートとの間のこの炭素-炭素結合は、異なる材料の基板上に電極の活性物質を堆積させることによって、従来の電池で作り出される界面を除去することにより、セルの内部抵抗を低減し、導電率を高めることを可能にする;例えば、電極の炭素質活性材料が銅箔上に堆積されるリチウムイオンまたはアルミニウムイオン電池(例えば、Lahiri et al. J. Mater. Chem., 2011, 21 (35), 13621-13626, y CN109354008A参照)。したがって、電池の電力密度および電圧密度を増加させることができる。同様に、塗料の形態で電極の活性物質を堆積させることにより、電極の炭素質材料とグラファイトシートとの間の接着が向上するため、セルの内部抵抗が低減される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、一連の電気化学セルの第2の端部に配置された第2のセル電極は、バインダー添加剤によって第2の集電体のグラファイトシート上に塗料として堆積される。好ましくは、バインダー添加剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含む。より好ましくは、バインダー添加剤と炭素質材料との重量比は、15%以下である。先の実施形態と同様に、この構成によって、セルの内部抵抗を低減することが可能になり、その結果、電池の導電率、電力密度、および電圧が向上される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、電解液は、イオン性液体中のハロゲン化アルミニウムの溶液を含む。好ましくは、ハロゲン化アルミニウムは、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムまたはヨウ化アルミニウムを含み、イオン性液体は、尿素、アセトアミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミドまたは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヨージドを含む。より好ましくは、ハロゲン化アルミニウムとイオン性液体の重量比は、1:1~3:1である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、分離膜は、セラミック材料、ガラスマイクロファイバー、ポリプロピレン、またはそれらの任意の可能な組合せの多孔質シートを含む。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、ハウジングは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。
【0023】
また、本発明の目的は、据置用途のためのボタン電池、円筒形電池またはプリズム電池として、または、電気自動車またはハイブリッド自動車のためのエネルギー蓄積器として、上述の構成のいずれかによる電池を使用することである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の好ましい実施形態による、充電中の本発明の目的である電気化学電池を構成する要素の概略図を示す。
図2】50mA g-1の電流密度下での、本発明の好ましい実施例によるバイポーラ型電池のガルバノスタティック充電(a)および放電(b)曲線を示す。
図3】本発明の好ましい実施例による、50mA g-1における150回のガルバノスタティック充電/放電サイクルにわたる本発明のバイポーラ型電池の長期サイクル性能を示す。曲線aおよびbは、それぞれ充電および放電状態における電池の比容量を表し、曲線cは、そのクーロン効率を表す。内側のグラフは、6000回を超える充電/放電サイクルにわたる前記電池の比容量の安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
前節で説明したように、本発明の対象である充電式バイポーラ型アルミニウムイオン電池は、以下を含む:
-連続して積層された複数の電気化学セル(1)であって、それぞれ、アルミニウムの第1の電極(2)、炭素質材料の第2の電極(3)および分離膜(4)からなる、電気化学セル(1);
-複数の電気化学セル(1)が浸漬され、電池の充放電サイクル中に第1の電極(2)および第2の電極(3)で放出されるイオンを輸送する、電解液(5);
-一連の電気化学セル(1)の第1の端部に配置されたセル(1’)の第1の電極(2)と接触して配置された、グラファイトシートを含む第1の集電体(6);
-一連の電気化学セル(1)の第2の端部に配置されたセル(1”)の第2の電極(3)と接触して配置された、グラファイトシートを含む第2の集電体(7);および
-複数の電気化学セル(1)、電解液(5)、第1の集電体(6)、および第2の集電体(7)を収容する、ハウジング(8)。
【0026】
前記電池は、積層された複数の電気化学セル(1)において、連続するセルが、連続するセル(1)の間に配置されたグラファイトシート(9)によって接続されているので、従来のアルミニウム電池よりも200%高い電圧を発生することができる(図1)。前記シートの厚さは、好ましくは0.1~10mmである。このようにして、内部抵抗を効果的に低減し、電池のエネルギー蓄電容量を急速に低下させることなく、より高い電力密度およびより多くの充放電サイクル数を達成することができる。
【0027】
前記電池の放電中;すなわち、電池が第1の集電体(6)および第2の集電体(7)を介して外部負荷に接続されると、各電気化学セル(1)の第1の電極(2)を形成するアルミニウムシートが酸化反応を受け、アルミニウムイオンが放出され、電解液(5)を介して各電気化学セルの第2の電極(3)に移動し、前記アルミニウムイオンは、前記第2の電力(3)を構成する炭素質材料に結合し、第1の集電体(6)を介して外部負荷に供給される電流が発生する。
【0028】
逆に、第1の集電体(6)および第2の集電体(7)を介して前記電池に接続された外部電源から供給される電流によって本発明の電池を充電する際に、アルミニウムイオンは、各電気化学セルの第2の電極(3)の炭素質材料から分離され、電解質(5)を介して第1の電極(2)に再結合する。
【0029】
第1の電極(2)は、純アルミニウムシート、あるいは、アルミニウム合金のシートを含む;好ましくは、アルミニウムおよびマグネシウムの合金、アルミニウムおよび亜鉛の合金、アルミニウムおよびスズの合金、またはアルミニウムおよびガリウムの合金であり、より好ましくは、マグネシウム、亜鉛、スズ、またはガリウムの質量%が5未満である。さらに、前記電極(2)は、疎水性および/または防食コーティングを含むことができる。
【0030】
第2の電極(3)は、1つまたは複数の以下の炭素質材料を含むことができる:無定形炭素、グラファイト、膨張化グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、あるいは、水素、硫黄、窒素またはカリウムでドープされた膨張化グラファイトまたはグラフェン。任意選択的に、前記第2の電極(3)は、バインダー添加剤、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)によって、グラファイトシート(9)上に塗料として堆積させることができる。バインダー添加剤と炭素質材料との重量比は、15%以下である。この構成によって、セルの内部抵抗を低減させ、その結果、電池の導電率、電力密度、および電圧を向上させることができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、一連の電気化学セル(1)の第2の端部に配置されたセル(1”)の第2の電極(3)は、バインダー添加剤によって第2の集電体(7)のグラファイトシート上に塗料の形態で堆積される。好ましくは、バインダー添加剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含む。より好ましくは、バインダー添加剤と炭素質材料との重量比は、15%以下である。先の実施形態と同様に、この構成により、セルの内部抵抗が低減される。
【0032】
電解液(5)は、イオン性液体中のハロゲン化アルミニウムの溶液を含む。好ましくは、ハロゲン化アルミニウムは、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムまたはヨウ化アルミニウムを含み、イオン性液体は、尿素、アセトアミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミドまたは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヨージドを含む。より好ましくは、ハロゲン化アルミニウムとイオン性液体の重量比は、1:1~3:1である。
【0033】
分離膜(4)は、セラミック材料、ガラスマイクロファイバー、ポリプロピレン、またはそれらの任意の可能な組合せの多孔質シートを含む。
【0034】
ハウジング(8)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはこれらの任意の可能な組合せを含む。
【0035】
また、本発明の目的は、据置用途のためのボタン電池、円筒形電池またはプリズム電池として、または電気自動車またはハイブリッド自動車のためのエネルギー蓄積器として、上述の構成のいずれかによる電池を使用することである。
【0036】
発明の例示的な実施形態
本発明で説明する電池の有効性を、その好ましい実施形態の例によって説明する。具体的には、以下を含む充電式バイポーラ型アルミニウムイオン電池製造される:
-連続して積層され、厚さ0.2mmのグラファイトシート(9)によって接続された2つの電気化学セル(1、1’)であって、その各々が順に以下を含む、電気化学セル:
-第1の電極(2)としての、純アルミニウムシート;
-第2の電極(3)としての、PVDFによってグラファイトシート上に塗料の形態で堆積される膨張化グラファイトであって、バインダー/炭素質材料の重量比が13.6%である、膨張化グラファイト;
-分離膜(4)としての、ガラスマイクロファイバーの多孔質シート;
-電解液(5)としての、尿素中の塩化アルミニウムの溶液(重量比3:1);
-第1の集電体(6)としての、厚さ0.2mmのグラファイトシート;
-第2の集電体(7)としての、厚さ0.2mmのグラファイトシート;および
-複数の電気化学セル(1)、電解液(5)、第1の集電体(6)および第2の集電体(7)を収容する、PETハウジング(8)。
【0037】
図2は、50mA g-1の充電/放電電流密度下で約100mA hg-1の比容量を示す、本発明の電池のガルバノスタティック充電(a)および放電(b)曲線を示す。これは、既知の充電式アルミニウムイオン電池が耐えることができる最大電圧の最大200%の増加(4.8V対2.4V)を示す。
【0038】
さらに、この電池設計は、製造およびメンテナンスのコストが低いこと、および、今日まで開発されたアルミニウムイオン電池よりも劣化することなく、より多くの充放電サイクルに耐えることができるという事実のために、エネルギー貯蔵コストを低減する(100/kWh未満)ことができる。具体的には、図3に示されるように、電池は、80%の充電深度(DOD)で6000回以上の充電/放電サイクルにわたって安定した比容量を有する。
【符号の説明】
【0039】
本発明の技術的特徴をより良く理解することを助けるために、上記図面には、一連の参照番号が付されており、これは、限定ではなく例示を目的とするものである。
1 複数の電気化学セル
1’一連の電気化学セルの第1の端部に配置されたセル
1”一連の電気化学セルの第2の端部に配置されたセル
2 第1の電極
3 第2の電極
4 分離膜
5 電解液
6 第1の集電体
7 第2の集電体
8 ハウジング
9 グラファイトシート
図1
図2
図3
【国際調査報告】