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特表2024-534397造形平面を正確に確立するためのステレオリソグラフィシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】造形平面を正確に確立するためのステレオリソグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/124 20170101AFI20240912BHJP
   B29C 64/214 20170101ALI20240912BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240912BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240912BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240912BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240912BHJP
【FI】
B29C64/124
B29C64/214
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y30/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516643
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 US2022043661
(87)【国際公開番号】W WO2023049016
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/246,536
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】イネス,エリック エム
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP06
4F213AP11
4F213AQ01
4F213AR07
4F213AR12
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL52
4F213WL72
4F213WL74
4F213WL85
(57)【要約】
三次元プリントシステム(3D)は、容器と、コーティングサブシステムと、較正ブロックと、コントローラとを備える。容器は、樹脂上面を有する光硬化性樹脂を収容するように構成される。コーティングサブシステムは、コーターブレードを含むコーターモジュールと、コーターモジュールに連結された横方向移動機構と、コーターモジュールに取り付けられたセンサと、垂直アクチュエータシステムとを含む。較正ブロックは較正面を有する。コントローラは、横方向移動機構を動作させてコーターブレードを較正ブロック上に位置決めし、垂直アクチュエータシステムを動作させてコーターブレードを下降させて較正ブロックの較正面と係合させ、センサを動作させて較正ブロックまでの距離を測定し、コーターブレードの下端の垂直位置を示すものとして距離を記憶するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂上面を有する光硬化性樹脂を収容するように構成される容器;
コーティングサブシステム;
較正面を有する較正ブロック;および
コントローラ
を備える3次元(3D)プリントシステムであって、
前記コーティングサブシステムは、
コーターブレードを含むコーターモジュール;
前記コーターモジュールに連結された横方向移動機構;
前記コーターモジュールに取り付けられたセンサ;および
垂直アクチュエータシステム
を含み、
前記コントローラは、
前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードを前記較正ブロック上に位置決めし;
前記垂直アクチュエータシステムを動作させて、前記コーターブレードを下降させて前記較正ブロックの較正面と係合させ;
前記センサを動作させて、前記較正ブロックまでの距離を測定し;
前記コーターブレードの下端の垂直位置を示すものとして距離を記憶する
ように構成される
ことを特徴とする、3次元プリントシステム。
【請求項2】
Y軸に沿って個々に延在する一対のリニアベアリングをさらに含み、
前記コーターモジュールは、Y軸に直交するX軸に沿って延在し、前記コーターモジュールは、X軸に関して前記コーターモジュールの対向する端部に2つの端部を含み、該2つの端部は、前記リニアベアリングと個々に係合し、前記コーターモジュールをY軸に沿って支持しガイドする
ことを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項3】
前記横方向移動機構は、前記2つの端部に個々に取り付けられた2つのベルトを含む電動ベルトシステムを含むことを特徴とする、請求項2に記載の3次元プリントシステム。
【請求項4】
前記垂直アクチュエータシステムは、一対のリニアベアリングを垂直に位置決めするように構成された複数のアクチュエータを含み、Y軸に沿って搬送される前記コーターブレードの垂直位置を制御することを特徴とする、請求項2に記載の3次元プリントシステム。
【請求項5】
前記垂直アクチュエータシステムは、前記リニアベアリングの各々に対して、Y軸に対して離間した、後方垂直アクチュエータおよび前方垂直アクチュエータを含む4つの垂直アクチュエータを含むことを特徴とする、請求項2に記載の3次元プリントシステム。
【請求項6】
前記センサは、前記コーターモジュールの2つの端部の一方に個々に配置される2つのセンサを含むことを特徴とする、請求項2に記載の3次元プリントシステム。
【請求項7】
前記較正ブロックは、前記2つのセンサのうちの1つに個別に対応する2つの較正ブロックを含むことを特徴とする、請求項6に記載の3次元プリントシステム。
【請求項8】
前記コントローラはさらに、
前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードを前記樹脂上面の上に位置決めし;
前記センサを動作させて、前記樹脂上面の感知位置を取得し;
前記垂直アクチュエータシステムを動作させて、前記樹脂上面の感知位置に対する前記コーターブレードの下端の垂直位置の比較に基づいて、前記コーターブレードを垂直方向に位置決めする
ように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項9】
造形プラットフォームおよび撮像モジュールに連結された垂直移動機構をさらに含み、
前記コントローラはさらに、
前記垂直移動機構を動作させて、前記造形プラットフォームまたは前記3D物品の上面を造形平面に位置決めし;
前記垂直アクチュエータシステムを動作させて、前記コーターブレードの下端を前記造形平面に位置決めし;
前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードの下端を前記上面にわたって平行移動させ、光硬化性樹脂の新しい層を前記上面上に形成し;
前記撮像モジュールを動作させて、前記光硬化性樹脂の新しい層を選択的に硬化させ;
エレベータ機構、垂直移動機構、横方向移動機構、および撮像モジュールの動作を繰り返して、層ごとの態様で3D物品の作製を完了する
ように構成される
ことを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項10】
3次元(3D)プリントシステムを動作させる方法であって、
3Dプリントシステムを提供する工程であって、該3Dプリントシステムが、
樹脂上面を有する光硬化性樹脂を収容するように構成される容器;
コーターブレードを含むコーターモジュール、前記コーターモジュールに連結された横方向移動機構、前記コーターモジュールに取り付けられたセンサ、および垂直アクチュエータシステムを含む、コーティングサブシステム;
較正面を有する較正ブロック
を含む、工程;
前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードを前記較正ブロック上に位置決めする工程;
前記垂直アクチュエータシステムを動作させて、前記コーターブレードを下降させて前記較正ブロックの較正面と係合させる工程;
前記センサを動作させて、前記較正ブロックまでの距離を測定する工程;および
前記コーターブレードの下端の垂直位置を示すものとして距離を記憶する工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記3Dプリントシステムは、Y軸に沿って延在する一対のリニアベアリングを含み、前記コーターモジュールは、Y軸に直交するX軸に沿って延在し、前記コーターモジュールは、X軸に対して前記コーターモジュールの対向する端部に2つの端部を含み、該2つの端部は、前記リニアベアリングに個々に係合し、前記コーターモジュールをY軸に沿って支持しガイドし、前記横方向移動機構は、前記2つの端部の一方に個々に連結された2つのベルトを含み、該2つのベルトはモータに連結され、前記横方向移動機構を動作させる工程は、前記モータを動作させて前記2つのベルトに運動を付与する工程を含む
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記3Dプリントシステムは、Y軸に沿って延在する一対のリニアベアリングを含み、前記コーターモジュールは、Y軸に直交するX軸に沿って延在し、前記コーターモジュールは、X軸に関して前記コーターモジュールの対向する端部に2つの端部を含み、該2つの端部は、前記リニアベアリングと個々に係合し、前記コーターモジュールをY軸に沿って支持しガイドし、前記垂直アクチュエータシステムは、前記リニアベアリングに結合された複数の垂直アクチュエータを含み、前記垂直アクチュエータシステムを動作させる工程は、前記複数の垂直アクチュエータを個々に動作させる工程を含む
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記センサは、前記コーターモジュールの対向する端部に2つのセンサを含み、前記較正ブロックは、前記2つのセンサに対応する2つの較正ブロックを含み、前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードを前記較正ブロック上に位置決めする工程が、前記2つのセンサの各々を前記2つの較正ブロックのうちの対応する1つの上に位置決めすることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードを前記樹脂上面の上に位置決めする工程;
前記センサを動作させて、前記樹脂上面の感知位置を取得する工程;および
前記垂直アクチュエータシステムを動作させて、前記樹脂上面の感知位置に対する前記コーターブレードの下端の垂直位置の比較に基づいて、前記コーターブレードを垂直方向に位置決めする工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記3Dプリントシステムは、造形プラットフォームおよび撮像モジュールに連結された垂直移動機構をさらに含み、
前記方法はさらに、
前記垂直移動機構を動作させて、前記造形プラットフォームまたは前記3D物品の上面を造形平面に位置決めする工程;
前記垂直アクチュエータシステムを動作させて、前記コーターブレードの下端を前記造形平面に位置決めする工程;
前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードの下端を前記上面にわたって平行移動させ、光硬化性樹脂の新しい層を前記上面上に形成する工程;
前記撮像モジュールを動作させて、前記光硬化性樹脂の新しい層を選択的に硬化させる工程;および
エレベータ機構、垂直移動機構、横方向移動機構、および撮像モジュールの動作を繰り返して、層ごとの態様で3D物品の作製を完了する工程
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
樹脂上面を有する光硬化性樹脂を収容するように構成される容器;
コーティングサブシステム;
較正面を有する較正ブロック;および
コントローラ
を備える3次元(3D)プリントシステムであって、
前記コーティングサブシステムは、
コーターブレードを含むコーターモジュール;
前記コーターモジュールに連結された横方向移動機構;
前記コーターモジュールに取り付けられたセンサ;および
垂直アクチュエータシステム
を含み、
前記コントローラは、
前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードを前記較正ブロック上に位置決めし;
前記垂直アクチュエータシステムを動作させて、前記コーターブレードを下降させて前記較正ブロックの較正面と係合させ;
前記センサを動作させて、前記較正ブロックまでの距離Dを測定し;
前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードを前記樹脂上面上に位置決めまたは平行移動させ;
前記センサを動作させて、前記樹脂上面までの距離Dを測定し;
前記コーターブレードの下端から前記樹脂上面までの距離dを式d=D-Dにしたがって計算する
ように構成される
ことを特徴とする、3次元(3D)プリントシステム。
【請求項17】
前記コーターブレードは、X軸に沿った長軸を有し、前記横方向移動機構は、X軸に直交するY軸に沿って前記コーターブレードを搬送するように構成され、前記センサは、Y軸に対して離間した2つのセンサを含むことを特徴とする、請求項16に記載の3次元(3D)プリントシステム。
【請求項18】
前記較正ブロックは、2つの較正ブロックを含み、前記横方向移動機構を動作させて前記コーターブレードを前記較正ブロック上に位置決めする工程は、前記2つの較正ブロックのうちの1つの上に前記2つのセンサの各々を位置決めする工程を含み、前記距離Dは、前記2つのセンサの各々について測定されることを特徴とする、請求項17に記載の3次元(3D)プリントシステム。
【請求項19】
造形プラットフォームおよび撮像モジュールに連結された垂直移動機構をさらに含み、
前記コントローラはさらに、
前記垂直移動機構を動作させて、前記造形プラットフォームまたは前記3D物品の上面を造形平面に位置決めし;
前記垂直アクチュエータシステムを動作させて、前記コーターブレードの下端を前記造形平面に位置決めし;
前記横方向移動機構を動作させて、前記コーターブレードの下端を前記上面にわたって平行移動させ、光硬化性樹脂の新しい層を前記上面上に形成し;
前記撮像モジュールを動作させて、前記光硬化性樹脂の新しい層を選択的に硬化させ;
エレベータ機構、垂直移動機構、横方向移動機構、および撮像モジュールの動作を繰り返して、層ごとの態様で3D物品の作製を完了する
ように構成される
ことを特徴とする、請求項16に記載の3次元(3D)プリントシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この非仮特許出願は、U.S.C.119(e)の下で参照により本明細書に組み込まれる、「Stereolithography System for Accurately Establishing Build Plane」と題されたEric M.Innesによる2021年9月21日出願の米国仮特許出願第63/246,536号に対する優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、光硬化性造形材料の層ごとの選択的放射硬化による3次元(3D)物品のデジタル作製のための装置および方法に関する。より詳細には、本開示は、造形材料の上面に対するコーターブレードの高さおよび位置合わせを較正することによって造形平面を形成する自動化された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
3Dプリントシステムは、物品のプロトタイピングおよび製造に広く使用されている。1つのタイプの3Dプリントシステムは、ステレオリソグラフィと呼ばれるプロセスを利用する。典型的なステレオリソグラフィシステムは、樹脂容器と、撮像システムと、樹脂容器によって保持された液体光硬化性樹脂内の造形プレートとを利用する。物品は、造形プレート上に光硬化性樹脂の層を選択的に画像化し、放射硬化させることによって、層ごとに製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの課題は、困難な手作業による位置合わせ手順なしに、正確かつ再現可能な垂直寸法で光硬化性樹脂の液状層を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様では、3次元(3D)プリントシステムは、容器と、コーティングサブシステムと、較正ブロックと、コントローラとを含む。容器は、樹脂上面を有する光硬化性樹脂を収容するように構成される。コーティングサブシステムは、コーターブレードを含むコーターモジュールと、コーターモジュールに連結された横方向移動機構と、コーターモジュールに取り付けられたセンサと、垂直アクチュエータシステムとを含む。較正ブロックは較正面を有する。コントローラは、横方向移動機構を動作させてコーターブレードを較正ブロック上に位置決めし、垂直アクチュエータシステムを動作させてコーターブレードを下降させて較正ブロックの較正面と係合させ、センサを動作させて較正ブロックまでの距離を測定し、コーターブレードの下端の垂直位置を示すものとして距離を記憶するように構成される。
【0006】
一実装形態では、3Dプリントシステムは、Y軸に沿って個々に延在する一対のリニアベアリングを含む。コーターモジュールは、Y軸に直交するX軸に沿って延在する。コーターモジュールは、X軸に関してコーターモジュールの対向する端部に2つの端部を含む。2つの端部は、リニアベアリングと個々に係合し、コーターモジュールをY軸に沿って支持し、ガイドする。横方向移動機構は、2つの端部に個別に取り付けられた2つのベルトを含む電動ベルトシステムを含む。垂直アクチュエータシステムは、一対のリニアベアリングを垂直に位置決めするように構成された複数のアクチュエータを含み、Y軸に沿って搬送されるコーターブレードの垂直位置を制御する。垂直アクチュエータシステムは、リニアベアリングの各々に対して、Y軸に対して離間した、後方垂直アクチュエータおよび前方垂直アクチュエータを含む4つの垂直アクチュエータを含む。センサは、コーターモジュールの2つの端部の一方に個々に配置される2つのセンサを含む。較正ブロックは、2つのセンサのうちの1つに個別に対応する2つの較正ブロックを含む。
【0007】
別の実装形態では、コントローラは、横方向移動機構を動作させて、コーターブレードを樹脂上面の上に位置決めし、センサを動作させて、樹脂上面の感知位置を取得し、垂直アクチュエータシステムを動作させて、樹脂上面の感知位置に対するコーターブレードの下端の垂直位置の比較に基づいて、コーターブレードを垂直方向に位置決めするようにさらに構成される。
【0008】
さらに別の実装形態では、3Dプリントシステムは、造形プラットフォームおよび撮像モジュールに連結された垂直移動機構を含む。コントローラは、垂直移動機構を動作させて、造形プラットフォームまたは3D物品の上面を造形平面に位置決めし、垂直アクチュエータシステムを動作させて、コーターブレードの下端を造形平面に位置決めし、横方向移動機構を動作させて、コーターブレードの下端を上面にわたって平行移動させ、光硬化性樹脂の新しい層を上面上に形成し、撮像モジュールを動作させて、光硬化性樹脂の新しい層を選択的に硬化させ、エレベータ機構、垂直移動機構、横方向移動機構、および撮像モジュールの動作を繰り返して、層ごとの態様で3D物品の作製を完了する、ように構成される。
【0009】
本開示の第2の態様では、3次元(3D)プリントシステムは、容器と、コーティングサブシステムと、較正ブロックと、コントローラとを含む。容器は、樹脂上面を有する光硬化性樹脂を収容するように構成される。コーティングサブシステムは、コーターブレードを含むコーターモジュールと、コーターモジュールに連結された横方向移動機構と、コーターモジュールに取り付けられたセンサと、垂直アクチュエータシステムとを含む。較正ブロックは較正面を有する。コントローラは、横方向移動機構を動作させてコーターブレードを較正ブロック上に位置決めし、垂直アクチュエータシステムを動作させてコーターブレードを下降させて較正ブロックの較正面と係合させ、センサを動作させて、較正ブロックまでの距離Dを測定し、横方向移動機構を動作させて、コーターブレードを樹脂上面上に位置決めまたは平行移動させ、センサを動作させて、樹脂上面までの距離Dを測定し、コーターブレードの下端から樹脂上面までの距離d、d=D-Dを計算する、ように構成される。
【0010】
一実装形態では、コーターブレードは、X軸に沿った長軸を有する。横方向移動機構は、X軸に直交するY軸に沿ってコーターブレードを搬送するように構成される。センサは、Y軸に対して離間した2つのセンサを含む。較正ブロックは、2つの較正ブロックを含む。較正ブロック上にコーターブレードを位置決めするための横方向移動機構の動作は、2つの較正ブロックのうちの1つの上に2つのセンサの各々を位置決めすることを含む。距離Dは、2つのセンサのそれぞれについて測定される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】3D物品を製造または作製するための3次元(3D)プリントシステムの一実施形態の概略図
図2】3D物品を製造または作製するための3次元(3D)プリントシステムの一実施形態の特定の構成要素を示す等角図
図3】コーティングサブシステムの一実施形態を分離して示す等角図
図4】コーターブレードの一実施形態を分離して示す等角断面図
図5】コーティングサブシステムの一部分の等角図
図6】コーティングサブシステムの一実施形態の分離した正面図
図7】コーターブレードの下端を垂直に位置決めする方法の一実施形態のフローチャート
図8】コーターモジュールの移動と樹脂上面との間の平行度および最適距離を調整する方法の一実施形態のフローチャート
図9】3D物品を製造するためにコントローラによって実行される方法の一実施形態のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、3D物品4を製造または作製するための3次元(3D)プリントシステム2の実施形態の概略図である。システム2を説明する際に、相互に直交する軸X、Y、およびZが利用され、別称としてX軸、Y軸、およびZ軸と呼ばれる。軸XおよびYは、概して水平な横軸である。Z軸は、重力基準と概ね位置合わせされた垂直軸である。「概して」なる用語は、方向または大きさが必ずしも正確なものではなく、設計によるものであることを意味する。したがって、「概して水平」なる用語は、設計公差および製造公差内での水平(重力ベクトルに垂直)を意味する。「概ね位置合わせされた」なる用語は、設計公差および製造公差の範囲内で位置合わせされることを意味する。
【0013】
3Dプリントシステム2は、光硬化性樹脂8を収容するための樹脂容器6を含む。図示の実施形態では、光硬化性樹脂8は、とりわけ、モノマー、触媒、および充填剤を含む。触媒は、典型的には約450nm(ナノメートル)未満の波長を有する青色放射線、紫色放射線、または紫外線放射などの放射線の適用によって、樹脂8が固化および硬化されることを可能にする。ステレオリソグラフィシステム用の光硬化性樹脂は、当該技術分野において既知である。
【0014】
システム2は、3D物品4が形成される上面12を有する造形プレート10を含む。造形プレート支持構造14は、造形プレート10を支持する。垂直移動機構16は、造形プレート支持構造14を垂直に位置決めし、そうすることで造形プレート10を垂直に位置決めするように動作可能である。一実施形態では、垂直移動機構16は、親ねじに結合された固定モータを含む。造形プレート支持構造14は、親ねじを受けるねじ付き軸受を含む。モータが親ねじを回転させると、造形プレート支持構造14が上下に制御可能に平行移動される。さらに、垂直移動機構16および造形プレート支持構造14は、垂直軸Zに沿った造形プレート支持構造の直線運動を確保する相互に係合するリニアベアリングを含む。ステレオリソグラフィの分野では、様々な垂直および横方向の移動機構が知られている。全ては、典型的には、運動をガイドするためのリニアベアリングを含むが、運動は、親ねじ、ラックアンドピニオンシステム、ベルトおよびプーリシステム、または運動を付与する周知の手段に基づくことができる。
【0015】
システム2は、樹脂上面20を所定の垂直位置に維持するように構成された樹脂レベルサブシステム18を含む。図示の実施形態では、樹脂上面20は、造形平面22と概ね一致する。樹脂レベルサブシステム18は、樹脂レベルセンサと、プーリシステムに連結された錘とを含むことができる。錘は一部が樹脂8に浸漬されており、錘の昇降により樹脂上面20の垂直位置が容積変位を介して変化する。樹脂レベルセンサは、樹脂上面20の垂直位置を示す信号を出力する。信号を分析し、プーリシステムを動作させて錘を昇降し、樹脂上面20を造形平面22と概ね一致するように維持する。
【0016】
「上面」24は、部分的に形成される際の3D物品4の上面12または上面24のいずれかであると画定することができる。3D物品4上に追加の材料層を形成する前に、上面24は、造形平面22の概して1つの材料層厚さだけ下である垂直位置に位置決めされる。
【0017】
システム2は、コーティングサブシステム26を含む。上面24が造形平面22の1つの層厚さだけ下に位置決めされた後、コーティングサブシステム26は、上面上を通過し、上面24の上に樹脂8の新しい層28を画定するように構成される。コーティングサブシステム26の詳細は後述する。樹脂8の新しい層28は、造形平面22と概ね一致する樹脂上面20を有する。
【0018】
システム2は、撮像サブシステム30を含む。撮像サブシステム30は、造形平面22上でエネルギービーム32を走査して、樹脂8の新しい層28を選択的に硬化および固化させ、3D物品4の新しい材料層を形成するように構成される。例示的な実施形態では、撮像サブシステム30は、スキャナによって反射される放射ビーム32を生成するレーザを含む。スキャナは、造形平面22上で放射ビーム32を走査する。例示的な実施形態では、スキャナは、造形平面22上でX軸およびY軸に沿って放射ビームをそれぞれ走査するように構成されたXミラーおよびYミラーを含む2つのガルバノミラーを含む。撮像サブシステムは、ステレオリソグラフィの分野で知られている。別の撮像サブシステムは、造形平面22上を走査する発光デバイスの「ライトバーアレイ」に基づくことができる。さらに別の撮像サブシステムは、放射線の画素アレイの投影に基づくことができる。そのような放射線サブシステムはすべて、当該技術分野において周知である。
【0019】
コントローラ34は、垂直移動機構16、樹脂レベルサブシステム18、コーティングサブシステム26、撮像サブシステム30、およびシステム2の他の部分に連結される。コントローラ34は、非一時的情報記憶装置38(フラッシュメモリなど)に結合されたプロセッサ36(CPUまたは中央処理装置など)を含む。記憶装置38は、ソフトウェア命令を記憶する。コントローラ34は、プロセッサ36が非一時的情報記憶装置38に記憶されたソフトウェア命令を実行する際に、システム2の部分を動作させるように構成される。コントローラ34は、システム2に関連付けられた単一のユニットを含むことができる、または、図示のシステム2に対して同位置におよび/または遠隔に配置され得る複数の制御ユニットを含むことができる。
【0020】
図2は、システム2の実施形態の特定の構成要素を示す等角図である。図示した実施形態では、ユーザの観点から、軸X、Y、およびZを説明することができる。横方向X軸は左から右に延びる。横方向Y軸は、前から後へまたは前方から後方へ延びる。垂直Z軸は上方に延びる。図示の構成要素は、樹脂容器6、造形プレート10、造形プレート支持構造14、垂直移動機構16、および樹脂レベルサブシステム18(昇降される錘)を含む。垂直移動機構16は、造形プレート支持構造14および造形プレート10の垂直位置決めを提供するために垂直親ねじに連結されたモータ15を含む。造形プレート支持構造14と垂直移動機構16との間には、Z軸に沿った運動の直線性を制御するための一対のリニアベアリング(この図では隠れている)がある。コーティングサブシステム26および撮像サブシステム30は図示されていない。
【0021】
図3は、コーティングサブシステム26の一実施形態を分離して示す等角図である。コーティングサブシステム26は、ワイパーモジュール40またはコーターモジュール40を含み、これは、横方向X軸に関してコーターブレード42の対向する端部にある2つの端部44の間に支持されるコーターブレード42を含む。
【0022】
図4は、コーターブレード42を分離して示す等角断面図である。切断面図の一端は、3D物品4の不規則な上面24のコーティングを容易にするために樹脂8で少なくとも部分的に充填された内部凹部46を示す。コーターブレード42はまた、下端48を有する。
【0023】
図3に戻ると、コーティングサブシステム26は、X軸に関してコーターモジュール40の対向する端部に一対のリニアベアリング50を含む。端部44は、リニアベアリング50と摺動係合し、リニアベアリング50によって支持されている。端部44は、Y軸に沿ってリニアベアリング50上を摺動する。
【0024】
2つのベルト52は、コーターモジュール40の対向する端部においてプーリ54によって個別に支持される。ベルト52は、コーターモジュール40の両端で端部44に取り付けられる。2つのプーリ54にはモータ56が連結されている。モータ56によるプーリ54の回転によって、ベルトが動き、コーターモジュール40が、リニアベアリング50と摺動係合してそれによって支持されてY軸に沿って平行移動する。モータ56、プーリ54、ベルト52、および他の可能な構成要素の組合せは、Y軸に沿ってコーターモジュール40を搬送するための「横方向移動機構」58と呼ぶことができる。
【0025】
4つの垂直アクチュエータ60のセットは、リニアベアリング50を支持し、垂直に位置決めする。垂直アクチュエータ60は、垂直支持体62(図5)とリニアベアリング50の1つとの間に個々に結合される。各リニアベアリング50は、前側の垂直アクチュエータ60と後側の垂直アクチュエータ60とによって個別に支持されており、各リニアベアリング50の高さおよび傾斜角の調整が可能となっている。一実施形態では、垂直アクチュエータ60は、リニアベアリング50の一方の端部に取り付けられたナットを回転させ、それによって上昇または下降させる電動親ねじを個々に含む。4つの垂直アクチュエータ60のセットおよび他の関連する構成要素は、「垂直アクチュエータシステム」61と呼ぶことができる。
【0026】
2つの較正ブロック64のセットは、コーターモジュール40の横方向の移動範囲内に横方向に配置される。較正ブロック64は、上向きの較正面66を個々に有する。較正面66は、造形平面22とほぼ同じ垂直位置を有することができるが、正確な高さは重要ではない。
【0027】
図5は、コーティングサブシステム26の一部の等角図であり、上述のいくつかの構成要素をより詳細に見ることができる。コーターモジュールの端部44は、距離センサ68を個々に含む。距離センサ68は、距離センサ68の下方の表面までの距離を示す情報を出力するように構成される。図示の実施形態では、距離センサ68は、三角測量原理で動作するレーザ距離センサである。センサ68は、半導体レーザとフォトダイオードラインとを含む。レーザは、表面から反射されてフォトダイオードラインに戻るビームを放射する。フォトダイオードラインへの入射位置は、感知される距離の関数である。超音波センサなどの異なる原理で動作する他の距離センサ68も可能であり、表面までの距離を感知するために当該技術分野で知られている。
【0028】
図6は、コーティングサブシステム26を分離して示す正面図である。この図では、コーターブレード42の下端48は、較正ブロック64の較正面66と接触している。
【0029】
図7および図8は、コーティングサブシステム26を較正するための方法70および80を示すフローチャートである。コントローラ34は、システム2の構成要素を動作させて方法70および80を実行するように構成される。
【0030】
図7は、垂直距離センサ68を較正するための方法70の実施形態を示すフローチャートである。72によれば、コーターモジュール40は上昇位置にある。74によれば、横方向移動機構58は、コーターブレード42および垂直センサ68の端部が較正面66のうちの1つの上に個々に配置されるまで、コーターモジュール40をY軸に沿って平行移動させるように動作される。
【0031】
76によれば、垂直アクチュエータシステム61は、コーターブレード42の下端48の端部が較正ブロック64の上面66と係合して接触するまで、コーターモジュール40を下降させるように動作される(図6のとおり)。78によれば、距離センサ68は、上面66までの垂直距離を個々に測定するように動作される。この測定値は、コーターブレードの下端48の垂直高さである「ゼロ位置」として記憶される。79によれば、垂直アクチュエータシステム61は、コーターモジュール40を上昇させ、下端48を較正面66から持ち上げるように動作される。
【0032】
図8は、コーターモジュール40の移動と樹脂上面20(造形平面22に概ね一致するはずである)との間の平行度および最適な距離を調整する方法80の実施形態を示すフローチャートである。82によれば、コーターモジュール40は上昇位置にある。84によれば、横方向移動機構58は、前方垂直アクチュエータ60(前方は後方に対してYの値が低いことを意味する)の位置にまたはそれに近接してコーターブレード42が横方向に位置決めされるまで、コーターモジュールをY軸に沿って平行移動させるように動作される。
【0033】
86によれば、前方垂直アクチュエータ60は、距離センサ68が樹脂上面20の最適な感知範囲になるまでコーターモジュール40を下降させるように動作される。センサ68は、コーターブレードの下端48においてゼロ位置を有し、示される距離は、下端48から樹脂上面20までの垂直距離に等しい。
【0034】
88によれば、横方向移動機構58は、後方垂直アクチュエータ60(後方は前方に対してYの値が高いことを意味する)の位置にまたはそれに近接してコーターブレード42が横方向に位置決めされるまで、コーターモジュールをY軸に沿って平行移動させるように動作される。90によれば、後方垂直アクチュエータ60は、距離センサ68が樹脂上面20の最適な感知範囲になるまでコーターモジュール40を下降させるように動作される。工程90は、Y軸に関して造形平面22の反対側の端部を除いて、工程86と本質的に同じである。工程84~90を繰り返して、下端48と造形平面22との間の移動平行度および距離を反復的に較正することができる。
【0035】
図9は、3D物品4を製造するためにコントローラ34によって実行される方法の一実施形態のフローチャートである。102によれば、方法70(図7)は、コーターブレード42の下端48に対して距離センサ68を「ゼロ」にするように実行される。104によれば、方法80(図8)は、垂直アクチュエータ60の垂直位置を最適化するように実行される。
【0036】
106によれば、垂直移動機構16は、造形プレートの上面(12または24)を造形平面22に位置決めするように動作される。108によれば、垂直アクチュエータシステム61は、コーターブレード42の下端48を造形平面22と一致するように位置決めするよう動作される。110によれば、横方向移動機構58は、コーターブレード42の下端48を造形平面22上で平行移動させて、光硬化性樹脂8の新しい層28を上面(12または24)上に形成するように動作される。112によれば、撮像サブシステム30は、光硬化性樹脂8の新しい層28を選択的に硬化および固化させるように動作される。示されるように、工程106~112は、3D物品4の作製が完了するまで繰り返される。
【0037】
上述の特定の実施形態およびその適用は、例示のみを目的としており、以下の特許請求の範囲によって包含される修正および変形を排除するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】