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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】革で被覆された競技用ボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A63B37/00 732
A63B37/00 738
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024516648
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 US2022073275
(87)【国際公開番号】W WO2023044182
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/245,964
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/314,493
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】へフラー、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】パホルスキ、マイケリーン
(57)【要約】
固体コアの周りに固定された革製被覆を含む競技用ボールであって、革製被覆が、固体コアに接触している内表面と、反対側の外表面とを含み、革製被覆の外表面に分散しているが、周りを包み込んでいないポリアクリレート粒子を含むことを特徴とする、競技用ボール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体コアの周りに固定された革製被覆を含む競技用ボールであって、前記革製被覆が、前記固体コアに接触している内表面と、反対側の外表面とを含み、
前記革製被覆の前記外表面に分散しているが、周りを包み込んでいないポリアクリレート粒子を含むことを特徴とする、競技用ボール。
【請求項2】
前記革製被覆の前記外表面が、皮革とポリアクリレートとに対応するピークを有する、フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを有することを特徴とする、請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項3】
ポリアクリレートピークと皮革ピークとの間のピーク強度比が、0.10~50.0である、請求項2に記載の競技用ボール。
【請求項4】
前記革製被覆が、その上に分散した10mg~150mgのポリアクリレート粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の競技用ボール。
【請求項5】
前記革製被覆が、その上に分散した10mg~100mgのポリアクリレート粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の競技用ボール。
【請求項6】
前記革製被覆の前記外表面が、1未満の摩擦係数(COF)を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の競技用ボール。
【請求項7】
前記ポリアクリレートが1種以上のポリアクリレート成分を含み、ポリアクリレートの総重量の50重量%超を構成するポリアクリレート成分のガラス転移温度(Tg)が、20℃未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の競技用ボール。
【請求項8】
前記ポリアクリレート粒子が、80nm~500nmの平均体積粒径分布(Dv50)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の競技用ボール。
【請求項9】
前記ポリアクリレートが、室温で測定した場合に、0.5MPa超の動的剪断貯蔵弾性率(G’)を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の競技用ボール。
【請求項10】
前記ポリアクリレートが200g未満のループタックを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の競技用ボール。
【請求項11】
競技用ボールを処理する方法であって、
i)固体コアの周りに固定された革製被覆を含む競技用ボールを得る工程であり、前記革製被覆が、前記固体コアに接触している内表面と、反対側の外表面とを含む、工程、及び
ii)前記革製被覆の前記外表面にポリアクリレート粒子を分散させる工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記ポリアクリレート粒子が水性エマルションとして提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記革製被覆が、皮革とポリアクリレートとの両方に対応するピークを有するフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを有するように、前記ポリアクリレート粒子が前記革製被覆の前記外表面に分散している、請求項11又は12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2021年9月20日に出願された米国仮特許出願第63/245,964号及び2022年2月28日に出願された米国仮特許出願第63/314,493号の利益を主張する。米国仮特許出願第63/245,964号及び同第63/314,493号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、革で被覆された固体コアを含む競技用ボール、例えば、野球ボール及びソフトボールに関する。
【背景技術】
【0003】
新しい革で被覆された競技用ボールは、一般に、使用前に泥状化合物で擦って光沢を低減させ、グリップを改善させる。泥処理プロセスは時間がかかり、泥の組成及び泥処理技法の変動に起因して、一貫性のない結果をもたらす。泥処理後、ボールの外表面は変色して、打者にとってより見づらくなり、異物(例えば、グリップを改善するために使用される、許可されていない材料)の検出がより困難になる。
【0004】
ロジンは、アスリート(例えば、ウェイトリフティング選手、ロッククライミング選手、野球選手など)によって、手のグリップを改善するために使用されている。これらの材料は、典型的には、松脂及び金属塩(例えば塩化マグネシウム)を含み、手又はグローブに直接適用される。ロジンは、湿潤条件においては、指と野球ボールとの間の摩擦係数を改善することが示されているが、乾燥条件においては効果があまり現れない。T.Yamaguchiら、「Effects of Rosin Powder Application on the Frictional Behavior Between a Finger Pad and Baseball」、Frontiers in Sports and Active Living 2:30(2020)を参照されたい。実用上、ロジンが提供する改善されたグリップは耐久性がなく、定期的に適用し直す必要がある。
【0005】
改良された耐候性及び/又は蛍光を付与するために、ポリマーコーティングが競技用ボールに使用されている。このようなコーティングは、合成皮革被覆を含む競技用ボールに、最も一般的に使用される。例としては、多層にコーティングし、競技用ボールの外表面に適用した後に硬化させた、ポリウレタン材料が挙げられる。得られるコーティング層は、数ミルの厚さである。同様の後硬化ポリウレタンコーティングもまた、ゴルフボールのための保護被覆として記載されている。例として、米国特許第5091265号は、競技用ボールのための耐候性蛍光コーティングの使用を記載している。組成物は、2成分型のポリエステルポリオール樹脂及びポリイソシアネート樹脂と、蛍光顔料と、有機溶剤とを含む。コーティングを適用し、硬化させて、各々が25μm~51μm(1ミル~2ミル)の厚さを有する、1つ以上の架橋層を形成する。コーティングは、グリップを改善するための結晶性ポリプロピレンを追加で含んでもよい。架橋組成物の厚さはボールを保護する(例えば、耐候性を提供する)が、同時に、下にあるボールの被覆を包み込む。したがって、下にある被覆のテクスチャ及び感触は、架橋ポリウレタンコーティングによって隠れる。
【0006】
耐久性があり、一様な、所定のレベルのグリップを有し、ボールを変色させず、その結果、バッターにとって非常に見やすいままであり、競技用ボールの外表面の異物の検出を行いやすくする、革で被覆された競技用ボールについて、必要性は依然として満たされていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、固体コアの周りに固定された革製被覆を有する競技用ボールを含み、革製被覆は、固体コアに接触している内表面と、反対側の外表面とを含む。本発明の一態様では、競技用ボールは、革製被覆の外表面に分散しているが、周りを包み込んでいないポリアクリレート粒子を含むことを特徴とする。本発明の別の態様では、革製被覆の外表面は、皮革とポリアクリレートとの両方に対応するピークを有する、フーリエ変換赤外(Fourier transform infrared、FTIR)スペクトルを有することを特徴とする。本発明の別の態様では、革製被覆の外表面は、ポリアクリレートピークと皮革ピークとの間で0.10~50.0、より好ましくは0.25~25.0のピーク強度比を有するFTIRスペクトルを有することを特徴とする。なおも別の態様では、本発明は、競技用ボールを作製するための方法であって、i)固体コアの周りに固定された革製被覆を含む競技用ボールを得る工程であり、革製被覆が、固体コアに接触している内表面と、反対側の外表面とを含む、工程、及びii)革製被覆の外表面にポリアクリレート粒子を分散させる工程を含む、方法を含む。多くの実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の様々な態様は、添付図面と併せて以下の記載を参照することによって、より良好に理解され得る。これらの図示は説明のためのものであり、縮尺通りであること、又はそれ以外で本発明を限定することを意図するものではない。
図1】縫合(16)によって固体コア(図示せず)の周りに固定された2つのパネル(14)を含む革製被覆(12)を有する、競技用ボール(10)を含む本発明の実施形態を示す立面図である。
図2】球状固体コア(18)に接触している内表面(20)と、反対側の外表面(22)を含む革製被覆(12)を有する、競技用ボール(10)を含む本発明の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の競技用ボールは、内部固体コアの周りに固定された革製被覆を含む。コアは実質的に球状であり、好ましくは、コルク、エラストマー(例えば、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ジエン系ゴムなど)又はこれらの組み合わせ、例えば、1つ以上のゴムの層に包み込まれて単一の球体を形成している圧縮コルク球を含む。コアは、任意選択で、球状中心を形成するために、1層以上の糸(例えば、羊毛、ポリエステル、綿、ポリエステル-綿ブレンドなど)で巻かれていてもよく、この球状中心は、任意選択で、外側の革製被覆の装着を容易にするために、1つ以上のエラストマー及び/又は接着剤の外層で被覆されていてもよい。代表的な革製被覆材料としては、天然皮革、例えば、牛皮及び馬皮、例えば、グレードAのミョウバンでなめしたフルグレイン牛皮又は馬皮が挙げられる。1つのクラスの実施形態では、革製被覆は、縫合によってコアの周りに固定してもよい。例えば、慣例により、「8の字」の外形に事前に切断された2片の革を、コアの周りに縫い合わせることができる。野球ボールの場合、縫合は、典型的には、ビーズワックスで潤滑した10/5赤色綿縫い糸を使用した、108個の二重縫合(手による)を含む。他の糸(例えば、KEVLAR(商標)、ポリエステル、ナイロンなど)及び縫合パターン(ヘリンボーンパターン)を使用してもよい。組み立てられると、競技用ボールの革製被覆は、コアに接触している内表面と、選手によって取り扱われることが意図される反対側の外表面とを含む。前に論じたように、競技用ボールの外表面の特徴は重要である。特に、外表面の「グリップ」は、ピッチング中の適切なレベルの制御を達成するために重要である。
【0010】
一実施形態では、主題となる競技用ボールは野球ボールである。個々のリーグで異なる要件を有し得るが、野球ボールは、典型的には、およそ141グラム~149グラムの重量であり、およそ22.8cm~23.5cmの外周を有する。またなお別の実施形態では、主題となる競技用ボールはソフトボールである。野球ボールに類似しているが、コアの構築は、ゴムで包み込まれたコルクではなく、ポリウレタンであることがより一般的である。ソフトボールは、典型的には、およそ30cm~30.8cmの外周、及びおよそ177グラム~199グラムの重量を有する。
【0011】
主題となる競技用ボールは、革製被覆の外表面に分散しているが、周りを包み込んでいない(すなわち、包み込んでいない)ポリアクリレート粒子を含むことを特徴とする。ここで使用される場合、「周りを包み込んでいる」及び「包み込んでいる」という用語は、下にある皮革のテクスチャが封じられ、もはや手触りをもたらさないように、(外周の周り)外表面に連続被膜又はバリアを形成することを意味する。本発明の目的上、ポリアクリレート粒子は、皮革の表面テクスチャを完全に隠す連続コーティングを形成しない。これは、典型的には各々が1ミルを超える厚さの複数の層で適用される、当技術分野において記載される皮革コーティングとは対照的である。このような公知のコーティングでは、皮革の表面テクスチャによって与えられる「グリップ」が隠され、得られる触覚は、皮革のテクスチャではなくコーティングに使用される材料によって規定される。本発明の好ましい実施形態では、前述のポリアクリレート粒子はまた、革製被覆をボールのコアの周りに固定するために使用される縫合上にも分散させる。
【0012】
1つのクラスの実施形態では、革製被覆の外表面は、皮革とポリアクリレートとの両方に対応するピークを有する、フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを有することを特徴とする。皮革については、1630cm-1から1655cm-1の間のアミドカルボニルピーク(1643cm-1)が有用な識別子である。ポリアクリレートについては、1725cm-1~1740cm-1の間のアクリル系エステルカルボニルピーク(1732cm-1)が有用な識別子である。両方の場合において、ピーク強度は、吸光度単位として表されるスペクトルに対して、1505cm-1~1830cm-1のベースラインを使用して計算される。別の実施形態では、ポリアクリレートピークと皮革ピークとの間のピーク強度比は、0.10~50.0、より好ましくは0.25~25.0である。FTIR分析は、一体式単回反射型ダイヤモンド減衰全反射(Attenuated Total Reflectance、ATR)アクセサリを備えたThermo Nicolet iS50 Fourier Transfer Infrared(FTIR)分光計を使用して、以下のデータ収集パラメータを使用して実施される。
【0013】
【表1】
【0014】
サンプリング方法は、i)バックグラウンドスペクトルを収集すること、ii)競技用ボールの革製被覆の外表面をATR結晶に押し付けること、及びiii)スペクトルを測定することを含む。
【0015】
ポリアクリレート粒子は、好ましくは、革製被覆の外表面に均一に分散させる。この文脈において、「均一に」という用語は、皮革とポリアクリレートとの両方のFTIRピークが、少なくとも3つ、4つ、好ましくは6つの試料位置で検出可能であることを意味し、各試料位置は、互いに等しい距離の位置(例えば、上、下、前、後、左及び右)で、革製被覆の外表面に位置する直径1.5mmの円を含む。別の実施形態では、前述のFTIRピーク値及びピーク比は、前述の6つの試料位置の平均を使用したFTIR分析に基づく。
【0016】
別の実施形態では、競技用ボールの革製被覆(及び任意選択で糸)は、その上に分散した10mg~150mg、10mg~100mg、20mg~90mg、30mg~80mg又は40mg~70mgのポリアクリレート粒子を含む。存在するポリアクリレートの総量は、未処理の(新しい)ボールの重量と、処理直後(すなわち、ポリアクリレートの水性エマルションを革製被覆の外表面に適用した後)のボールの重量との差を測定することによって決定することができる。次いで、この重量の差に、ボールを処理するために使用した水性エマルションの%固形分(ポリアクリレート)を乗じる。
【0017】
上記に示した量で分散させた場合、主題のポリアクリレートは、革製被覆の外表面の手による「グリップ」を改善しながら、皮革の自然のテクスチャの重要な態様を維持する。この技術的効果は、投手に適当な制御のために十分なグリップを提供しながら、伝統的な泥処理技法によって達成されるグリップからの大幅な変化(例えばスピン速度)をもたらすような、過度のグリップを回避する。
【0018】
グリップのレベルは、100Nロードセルを装備したInstronモデルNo.5564を使用して、ASTM D6195-03(2019)試験方法Aによって決定される、ポリアクリレートのループタックと相関があり得る。簡潔に示すと、「ループタック」とは、25mm×25mmの接触面積に対して、ポリマー及びバッキングの重量のみに等しい荷重下で接触させた直後の界面において、表面からポリマーを分離するのに要する力である。この試験方法は、バッキング基材を有するポリマーのループをステンレス鋼の25×25mmの表面と制御下で接触させることを含み、適用される力はループ自体の重量のみである。次いで、ポリマーをステンレス鋼表面から取り外し、ポリマーの取り外しに対応する最大の力を、ループタックとして測定する。本説明の目的上、およそ0.7ミル~0.8ミル(例えば、およそ20グラム/平方メートル(grams per square meter、gsm)-乾燥重量)の主題のポリマー(ポリアクリレート)を、2ミル、175mmのPETストリップの片面にコーティングし、80℃でおよそ5分間乾燥させ、次いで、室温(およそ23℃)、50%相対湿度で60分間平衡化させる。一連の実施形態では、主題のポリアクリレートは、0.5ミル~1ミル、より好ましくは0.7ミル~0.8ミルの厚さでコーティングした場合、300g未満、200g、更には100gの平均ループタック値(少なくとも3回の試験測定の平均)を有する。これらのループタック値は、同じ試験条件下で測定した場合に500グラム超のループタック値を有する、従来のポリアクリレート感圧接着剤よりも遥かに低い。
【0019】
グリップのレベルは、革製被覆の外表面の摩擦係数(coefficient of friction、COF)と相関があり得る。競技用ボールを組み立てるために使用される皮革のCOFは、皮革の外表面と、皮革の外表面を横切ってゴムプローブを移動させるのに必要な力を測定するバランスアームアセンブリ上に取り付けられた、ゴムプローブとの間の摩擦を測定することによって、決定することができる。試験の速さは、600mm/分に設定する。測定距離は40mmに事前にプログラムする。測定が完了した後、分析ツールを使用して摩擦係数を計算する。試験は、Universal Control UnitモデルUV1000及びUvWin(商標)ソフトウェアと併せて使用される、Dia-Stron(商標)モデルNo.MTT175 Miniature Tensile Testerを使用して実施する。ゴムプローブ(製品コード176.0699)は、Dia-Stronから購入することができる。皮革試料は、制御環境、すなわち室温(およそ23℃)かつおよそ50%相対湿度で試験する。1つのクラスの実施形態では、皮革のCOFは、主題のポリアクリレート粒子を適用した結果として、50%未満、45%、又は更には40%の変化を起こす。別の実施形態では、皮革のCOFは、主題のポリアクリレート粒子の適用の結果として、5%~40%増加する。これによって、競技用ボールが、未処理(すなわち、ポリアクリレートのない)皮革に関するCOFを保持することが、大いに確保される。文脈上、未処理の革製被覆の外表面はおよそ0.33のCOFを有するが、1つのクラスの実施形態では、処理された(すなわち、主題のポリアクリレート粒子を含む)革製被覆は、0.20~0.60、0.25~0.55、又は更には0.30~0.50のCOFを有する。別のクラスの実施形態では、その上に分散したポリアクリレート粒子を含む革製被覆の外表面は、1.00未満、0.90、0.80、0.70、0.60、0.55、又は更には0.5のCOFを有する(最低3回の測定を使用した平均に基づく)。
【0020】
別の実施形態では、主題のポリアクリレートは、室温で測定した場合に、0.1MPa超、0.5MPa超、又は1.0MPa超(例えば、0.1MPa~15MPa、0.5MPa~12MPa、又は1MPa~10MPa)の動的剪断貯蔵弾性率(G’)を有する。動的剪断貯蔵弾性率測定は、直径8mmのアルミニウム製使い捨てプレート固定具を使用して、空冷アクセサリ(ACS-3)を装備したTA Instruments ARES-G2レオメータで実行する。動的温度傾斜モードを使用して、6.28rad/秒の適用周波数を使用して、2°/分の冷却速度で、160℃から-80℃まで試料を試験する。初期ひずみを0.5%に、最大ひずみ限界を5%に設定して試験するために、AutoStrainオプションを用いて、試験が確実に線形粘弾性レジームにとどまるようするべきである。固定具は、160℃の初期試験温度でゼロ調整する。試料の厚さは、平行プレートの間に試料を装填した後、機器のマイクロメーターを使用して測定することができる。試験は、160℃でおよそ10分~15分間平衡化した後に開始する。試験試料は、水性エマルションとして提供してもよい。各エマルションをChemWare(商標)ペトリ皿に注ぎ、対流フード中で数日間乾燥させる。次いで、得られた被膜を裏返して、底面を空気に曝露する。ペトリ皿から被膜を円滑に取り外すために、ドライアイスを使用してもよい。次いで、反転させた被膜を対流フードに戻して、更に数日置く。次いで、試験時まで、被膜を有する皿を周囲温度で真空下に置く。
【0021】
ポリアクリレートは、競技用ボールを組み立てる前に革製被覆(及び任意選択で被覆を縫合するために使用する糸)の外表面に分散させてもよいが、ポリアクリレートは、好ましくは、競技用ボールを組み立てた後、例えば、革製被覆をコアの周りに縫合した後に適用する。ポリアクリレートは、好ましくは水性エマルションとして適用される。エマルションを適用するための技法は特に限定されず、噴射技術(例えば、空気噴霧噴射、空気アシスト噴射、無気噴射、大空気量低圧噴射など)、浸漬、パディング、タンブルドラムコーティング、刷毛塗りなどが挙げられる。別の実施形態では、従来の皮革処理(例えば、革製家具、自動車用革製座席など)に使用される20%固形分~30%固形分と比較して、比較的希薄な、例えば3%固形分~15%固形分の水性エマルションが使用される。ここで使用される場合、「%固形分」という用語は、エマルションの不揮発性構成成分を指す。揮発性構成成分は、周囲温度かつ標準圧力条件下で揮発する。揮発性構成成分の例としては、有機溶媒、水及びアンモニアが挙げられる。エマルションは、1回以上の逐次適用で、革製被覆の外表面に適用してもよい。エマルションを適用したら、高温、例えば165℃~195℃でおよそ30秒~180秒間乾燥させてもよい。乾燥工程の例としては、風乾及び赤外線加熱が挙げられる。エマルションがいくつかの適用工程で適用される場合、好ましくは、続いて適用する前に乾燥させる。
【0022】
多くの伝統的な皮革処理とは異なり、競技用ボールに適用する前に、主題のポリアクリレートを実質的に反応させる。すなわち、ポリアクリレートは、皮革コーティングの外表面又は縫合との化学結合を形成しない。加えて、ポリアクリレートを含む主題の水性エマルションは、好ましくは有機溶媒不含である。
【0023】
ポリアクリレートの代表的なクラスは、式Iによって表される繰り返し単位を含む。
【0024】
【化1】

式中、Rは独立して、水素及びメチルから選択され(好ましくは水素であり)、Rは独立して、水素及び1個~24個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。このようなポリマーとしては、ホモポリマー、コポリマー、ブレンドに加えて、周知の多段乳化重合プロセスによって調製される、いわゆる「コア-シェル」ポリマーが挙げられる。適用可能なポリマーは、好ましくは、式Iによって表される繰り返し単位を支配的に、すなわち、全繰り返し単位の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、更には99重量%含む。主題のポリマーは、当初、競技用ボールの皮革に適用する前は水性エマルションとして提供してもよい。1つのクラスの実施形態では、エマルションは、Hydro SVアタッチメントを有するMastersizer 3000(Malvern Panalytical-Spectris(Egham、Surrey、UK)の事業部)を使用したレーザー回折技法によって測定して、50nm~1000nm、80nm~500nm、又は90nm~300nmの平均体積粒(液滴)径分布(Dv50)を有するポリアクリレートを含む。「Dv」という用語は、分散粒子の平均体積粒径を表す。Dv50は、累積粒子集団の50%に相当する体積において測定される粒径である。この粒径範囲では、粒子は、皮革の孔に浸透せず、主として皮革の表面に維持される。
【0025】
主題のポリアクリレートは、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって決定して、10,000~12,000,000、50,000~5,000,000、より好ましくは500,000~1,500,000(ダルトン)の重量平均分子量(Mw)を有する。より詳細には、GPC分離は、ポンプ、脱気装置、オートサンプラー、及びWyatt T-rEX屈折率(refractive index、RI)検出器からなるAgilent 1260システムを使用し、35℃で動作させて実施してもよい。システムは、好ましくは、2つのShodex KF-806Lカラム(内径8mm×長さ300mm)からなるカラムセットを装備しており、温度は35℃に維持される。100:5の比のテトラヒドロフラン/ギ酸(tetrahydrofuran、THF/formic acid、FA)の移動相を、1mL/分の速度で流す。試料は、THF/FA中2mg/mLで調製し、完全に溶解するまで室温で数時間振盪し、次いで、分析前に濾過することができ(0.45μmのPTFE w/GMFフィルタ)、試料注入体積は100μLであり、実行の長さは30分であった。Agilentから購入したナローポリスチレン(polystyrene、PS)標準(EasiCal PS-1)のセットを用いて、カラムを較正する。システム制御、データ取得及び処理は、Wyatt製のAstraソフトウェアを使用して実行する。
【0026】
別の実施形態では、主題のポリアクリレートは、動的機械分析(dynamic mechanical analysis、DMA)によって決定して、20℃未満、より好ましくは10℃未満、なおもより好ましくは0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。DMA測定は、直径8mmのアルミニウム製使い捨てプレート固定具を使用して、空冷アクセサリ(ACS-3)を装備したTA Instruments ARES-G2レオメータで実行する。動的温度傾斜モードを使用して、6.28rad/秒の適用周波数を使用して、2度/分の冷却速度で、160℃から-80℃まで試料を試験する。°初期ひずみを0.5%に、最大ひずみ限界を5%に設定して試験するために、AutoStrainオプションを用いて、試験が確実に線形粘弾性レジームにとどまるようする。固定具は、160℃の初期試験温度でゼロ調整する。°試料の厚さは、平行プレートの間に試料を装填した後、機器のマイクロメーターを使用して測定する。試験は、160℃でおよそ10分~15分間、平衡化した後に開始する。動的貯蔵弾性率及び動的損失弾性率(それぞれ、G’及びG”)を、tanδ(=G”/G’)とともに、各試料について温度の関数として記録する。δTgは、tanδからピーク温度として決定される。δ多段ポリマー及びブレンドの場合、「ポリマー」は、各ポリマー成分に対応する複数のガラス転移温度を呈し得る。例えば、古典的な2段ポリマーの場合、第1段(コア)は、-70℃~10℃(より好ましくは-45℃~10℃)のTgを有する比較的軟質のポリマーを含むことがあり、かつ多段ポリマーの総重量の50重量%超を構成することがあり、20℃~150℃のTgを有する比較的硬質のポリマーを含み、かつ多段ポリマーの総重量の50重量%未満、例えば多段ポリマーの総重量の5重量%~25重量%を構成する第2段(シェル)。多段ポリマー及びブレンドの目的上、Tgは、個々のポリマー成分の各々(すなわち、個々のポリマー段及び/又はブレンド成分の各々)の相対重量に基づく加重値として表され得る。コポリマー成分について、加重平均Tgは、周知のFox式:1/T=w/Tg(1)+w/Tg(2)を使用して計算することができ、式中、w及びwは、2種のコモノマーの重量分率を指し、Tg(1)及びTg(2)は、2種の対応するホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン)を指す。3種以上のモノマーを含有するポリマーについては、追加の項が加えられる(w/Tg(n))。実際に測定されたTg値がない場合、ポリマー相のTgは、文献、例えば、Polymer Handbook、第4版、J.Brandrup、E.H.Immergut及びE.A.Grulke編、John Wiley and Sons、New Yorkに報告されたホモポリマーのガラス転移温度の値を使用することによって、計算することができる。したがって、主題のポリアクリレートは1種以上のポリアクリレート成分を含んでもよい。複数の成分が存在する場合、ポリアクリレートの総重量の50重量%超、60重量%、いくつかの実施形態では75重量%を構成するポリアクリレート成分のガラス転移温度(Tg)は、20℃未満、10℃未満、いくつかの実施形態では0℃未満である。
【0027】
適用可能なポリアクリレートは、古典的には、モノエチレン性不飽和有機モノマー、及び任意選択で多エチレン性不飽和有機モノマーの重合(例えば、フリーラジカル重合)から誘導される。例えば、米国特許第7323500号、及び同第10100377号を参照されたい。ここで使用される場合、(i)「モノエチレン性不飽和有機モノマー」(好ましくはα-モノエチレン性不飽和モノマー)という用語は、適当な反応条件下でフリーラジカル重合を受けやすい、単一の重合性炭素-炭素二重結合を含む化合物を指し、(ii)「多エチレン性不飽和有機モノマー」という用語は、適当な反応条件下でフリーラジカル重合を受けやすい、少なくとも2つの重合性炭素-炭素二重結合を含む化合物を指す。同じくここで使用される場合、アクリレートなどの別の用語が続く「(メタ)」という用語の使用は、アクリレート及びメタクリレートの両方を指す。例えば、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート又はメタクリレートのいずれかを指し、「(メタ)アクリル系」という用語は、アクリル系又はメタクリル系のいずれかを指し、「(メタ)アクリルアミド」という用語は、アクリルアミド又はメタクリルアミドのいずれかを指す。
【0028】
好適なエチレン性不飽和モノマーの例としては、(メタ)アクリレート、例えば、C~C24アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにイオン性(メタ)アクリレート、例えば、酸含有(メタ)アクリレート、アミン含有(メタ)アクリレート、及びアミド含有(メタ)アクリレートが挙げられる。好適なC~C24アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。好適なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。他の好適なエチレン性不飽和モノマーの例は、酸含有(メタ)アクリレートを含む酸含有モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸及びホスホエチル(メタ)アクリレートなど;二官能性酸、例えばイタコン酸;マレイン酸、及び水の存在下で酸を形成する、無水マレイン酸などの無水物である。他の好適なエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン;置換スチレン、例えばアルファ-メチルスチレン;酢酸ビニル又は他のビニルエステル;ビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N-ビニルピロリドン;並びに(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。なおも他の好適なエチレン性不飽和モノマーとしては、多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びジビニルベンゼン;並びに架橋性モノマー、例えば、メチロール(メタ)アクリルアミド、アセトアセテートモノマー、及びアセトアセトアミドモノマーなどが挙げられる。アセトアセテートモノマーの例としては、ビニルアセトアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、及び2,3-ジ)アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。アセトアセトアミドモノマーの例としては、ビニルアセトアセトアミド及びアセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0029】
上述したように、適用可能なポリアクリレートは、従来の水性乳化重合プロセスを使用して調製することができる。このような乳化重合プロセスでは、従来の界面活性剤、例えば、アニオン性及び/又は非イオン性乳化剤など、例えば、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、脂肪酸、及びオキシエチル化アルキルフェノールのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩などが使用され得る。使用される界面活性剤の量は、通常、モノマーの重量を基準として、0.1重量%~6重量%の範囲内である。熱開始プロセス又はレドックス開始プロセスのいずれかが使用され得る。モノマー混合物は、ニートで加えてもよく、水中エマルションとして加えてもよい。モノマー混合物は、割り当てられた反応期間にわたって、1回以上の添加で、又は連続的に加えられ得る。使用できる従来の熱フリーラジカル開始剤としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、アンモニウム及び/又はアルカリ金属過硫酸塩、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸及びその塩、過マンガン酸カリウム、並びにペルオキシ二硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩が挙げられる。これらの開始剤は、典型的には、有機モノマーの総重量を基準として、0.01重量%~3.0重量%のレベルで使用される。使用できるレドックス開始剤は、典型的には、酸化剤として上に列挙したものと同じフリーラジカル開始剤を含む、フリーラジカルを発生させるのに有効な組み合わせの酸化剤+還元剤;並びに好適な還元剤、例えば、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、硫黄含有酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム又は亜ジチオン酸ナトリウム、ホルムアミジンスルフィン酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム、アセトン亜硫酸水素ナトリウム;アミン、例えばエタノールアミン、グリコール酸、グリオキシル酸水和物、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、及び使用され得る前述の酸の塩である。レドックス反応を触媒する、鉄、銅、マンガン、銀、白金、バナジウム、ニッケル、クロム、パラジウム、又はコバルトの金属塩を、任意選択で使用してもよい。開始剤又は開始剤系は、反応期間にわたって、1回以上の添加で、連続的に、直線的に、若しくはそうではなく、又はこれらの組み合わせとして加えられ得る。アゾビス-イソブチロニトリル及びアゾビスプロピオニトリルなど、モノマー膨潤プロセスにおいて使用できる、いくつかのアゾタイプ有機フリーラジカル開始剤。ポリマーの分子量を低下させるために、連鎖移動剤、例えばメルカプタンを使用してもよい。
【0030】
乳化重合は、単一重合段階で実施してもよく、組成が異なる2つ以上のポリマー段が逐次的に調製される多段重合プロセスとして実施してもよい。そのような水性多段ポリマー粒子を調製するために使用される重合技法は、例えば、米国特許第4325856号、同第4654397号、同第4814373号、同第5723182号、同第7323500号、及び同第10100377号など、当技術分野において周知である。
【0031】
本発明の多くの実施形態が記載されており、いくつかの例では、特定の実施形態、選択、範囲、構成成分、又は他の特徴が「好ましい」として特徴付けられている。そのような「好ましい」特徴の指定は、決して本発明の本質的又は重要な態様として解釈されるべきではない。表現された範囲は、具体的に指定された終点を含む。
【実施例
【0032】
別段の指示がない限り、全ての調製及び試験は、上記の試験方法を使用して、標準圧力(1atm又は760mmHg)において室温(room temperature、RT)で実施した。
【0033】
実施例1:
脱イオン(deionized、DI、29部)水、アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム2部)、アクリル酸エチル(ethyl acrylate、EA、94部)、及びアクリル酸(acrylic acid、AA、4部)を混合することによって、モノマーエマルションを調製した。パドル型撹拌棒、温度計、窒素注入口、及び還流冷却器を装備した四つ口丸底フラスコに、DI水(118部)を加えた。次いで、モノマーエマルションをフラスコに加え、レドックス対(アンモニウム過硫酸塩及び亜硫酸塩還元剤)を用いて開始した。温度を96℃未満に制御した。反応が完了した後、バッチをその温度で15分間保持し、次いで60℃に冷却した。冷却中にレドックス対(t-ブチルヒドロペルオキシド及び亜硫酸塩還元剤)を加えて残留モノマーを還元し、アンモニア(30%水性溶液)及び1.8部の酸化亜鉛を用いて、バッチをpH7.5に中和した。粒径はおよそ80nmであった。Tgは、Fox式によって計算して、およそ-19℃であった。エマルションは35%固形分を有していた。
【0034】
実施例2:
脱イオン(DI、29部)水、アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、2部)、アクリル酸ブチル(butyl acrylate、BA、40部)、アクリル酸エチル(EA、54部)、及びアクリル酸(MAA、6部)を混合することによって、モノマーエマルションを調製した。パドル型撹拌棒、温度計、窒素注入口、及び還流冷却器を装備した四つ口丸底フラスコに、DI水(118部)を加えた。次いで、モノマーエマルションをフラスコに加え、レドックス対(アンモニウム過硫酸塩及び亜硫酸塩還元剤)を用いて開始した。温度を97℃未満に制御した。反応が完了した後、バッチをその温度で15分間保持し、次いで60℃に冷却した。冷却中にレドックス対(t-ブチルヒドロペルオキシド及び亜硫酸塩還元剤)を加えて残留モノマーを還元し、アンモニア(30%水性溶液)及び2.7部の酸化亜鉛を用いて、バッチをpH7.5に中和した。粒径はおよそ80nmであった。Tgは、Fox式によって計算して、およそ-32℃であった。エマルションは34%固形分を有していた。
【0035】
実施例3:
脱イオン(DI、26部)水、アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、合計1.5部)、アクリル酸ブチル(BA、77部)、及びメタクリル酸(MAA、3部)を混合することによって、モノマーエマルションを調製した。パドル型撹拌棒、温度計、窒素注入口、及び還流冷却器を装備した四つ口丸底フラスコに、DI水(97部)を加えた。次いで、モノマーエマルションをフラスコに加え、同時に並行して、水性レドックス開始剤対(アンモニウム過硫酸塩及び亜硫酸塩還元剤)を別に加えた。供給速度を調節することによって、温度を88℃未満に制御した。反応が完了した後、バッチを64℃に冷却し、次いで、MMA(20部)を水性レドックス開始剤対の別の部分とともに加えた。バッチを反応させ、次いで、15分間保持した後、冷却した。冷却中にレドックス対(t-ブチルヒドロペルオキシド及び亜硫酸塩還元剤)を加えて残留モノマーを還元し、トリエチルアミンを用いて、バッチをpH7.5に中和した。粒径はおよそ105nmであった。Tg値は、Fox式によって計算して、およそ-49.6℃(コア)及び105℃(シェル)であった。エマルションは36%固形分を有していた。
【0036】
実施例4:感圧接着剤
98重量%のアクリル酸ブチルモノマーと、2重量パーセントのメタクリル酸とをベースとするポリアクリレートエマルションを、米国特許第3740366号の実施例2、試料2に記載されているように調製した。粒径はおよそ381nmであった。Tgは、Fox式によって計算して、およそ-52℃であった。
【0037】
【表2】

5回の測定に基づく平均値。ポリアクリレートを用いないPETのループタックはおよそ22gであった。
【0038】
実施例5:
競技用ボールの被覆を作製するために使用される革の試料を試験して、前述の方法論に従って、摩擦係数(COF)を決定した。実施例1~4のポリアクリレート粒子で処理した皮革試料とともに、未処理の対照試料における測定を行った。この処理は、実施例1~4に記載したポリアクリレートの各々の水性エマルション(5%固形分)を噴射することを含んでいた。2回の連続噴射処理を適用して、試料1つ当たりおよそ110mg/ftの総乾燥固形分装填レベルを達成した。処理した試料は、各噴射適用の間に、185℃で2分間乾燥させた。試験の結果を下の表に提供する。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例6:
新しい(未処理の)競技用ボールを、実施例3の水性エマルション(5%固形分)を噴射することによって処理した。4回の連続噴射処理を試料競技用ボールに適用して、ボール1つ当たりおよそ50mg~60mgの総乾燥固形分装填レベルを達成した。処理した試料は、各噴射適用の間に、185℃で2分間乾燥させた。次に、前述の方法に従って、ボール1つ当たり4つの等距離試料位置を使用して、試料をFTIR分析に供した。-0.011(標準偏差0.006)の皮革ピーク(1643cm-1)強度と、-0.130(標準偏差0.060)のポリアクリレートピーク(1732cm-1)強度とが観測された。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体コアの周りに固定された革製被覆を含む競技用ボールであって、前記革製被覆が、前記固体コアに接触している内表面と、反対側の外表面とを含み、
前記革製被覆の前記外表面に分散しているが、周りを包み込んでいないポリアクリレート粒子を含むことを特徴とし、
前記革製被覆の前記外表面が、皮革とポリアクリレートとに対応するピークを有する、フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを有することを特徴とし、
ポリアクリレートピークと皮革ピークとの間のピーク強度比が、0.10~50.0である、競技用ボール。
【請求項2】
前記革製被覆が、その上に分散した10mg~150mgのポリアクリレート粒子を含む、請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項3】
前記革製被覆が、その上に分散した10mg~100mgのポリアクリレート粒子を含む、請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項4】
前記革製被覆の前記外表面が、1未満の摩擦係数(COF)を有することを特徴とする、請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項5】
前記ポリアクリレートが1種以上のポリアクリレート成分を含み、ポリアクリレートの総重量の50重量%超を構成するポリアクリレート成分のガラス転移温度(Tg)が、20℃未満である、請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項6】
前記ポリアクリレート粒子が、80nm~500nmの平均体積粒径分布(Dv50)を有する、請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項7】
前記ポリアクリレートが、室温で測定した場合に、0.5MPa超の動的剪断貯蔵弾性率(G’)を有する、請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項8】
前記ポリアクリレートが200g未満のループタックを有する、請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項9】
前記ポリアクリレート粒子が、10,000~12,000,000の重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項10】
前記ポリアクリレート粒子が、式Iによって表される繰り返し単位を含むポリアクリレートを含み、
【化1】

式中、Rは独立して、水素及びメチルから選択され、Rは独立して、水素及び1個~24個の炭素原子を有するアルキル基から選択される、
請求項1に記載の競技用ボール。
【請求項11】
競技用ボールを処理する方法であって、
i)固体コアの周りに固定された革製被覆を含む競技用ボールを得る工程であり、前記革製被覆が、前記固体コアに接触している内表面と、反対側の外表面とを含む、工程、及び
ii)前記革製被覆の前記外表面にポリアクリレート粒子を分散させる工程
を含み
前記革製被覆が、皮革とポリアクリレートとの両方に対応するピークを有するフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを有するように、前記ポリアクリレート粒子が前記革製被覆の前記外表面に分散しており、ポリアクリレートピークと皮革ピークとの間のピーク強度比が、0.10~50.0である、方法。
【請求項12】
固体コアの周りに固定された革製被覆を含む競技用ボールであって、前記革製被覆が、前記固体コアに接触している内表面と、反対側の外表面とを含み、前記革製被覆の前記外表面に分散しているが、周りを包み込んでいないポリアクリレート粒子を含むことを特徴とし、前記革製被覆が、その上に分散した10mg~150mgのポリアクリレート粒子を含む、競技用ボール。
【国際調査報告】