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特表2024-534403眼疾患のための緑茶ベースのナノコンプレックス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】眼疾患のための緑茶ベースのナノコンプレックス
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/56 20170101AFI20240912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K47/56
A61P35/00
A61P29/00
A61P17/18
A61P27/02
A61P9/10
A61P27/06
A61K9/08
A61K9/51
A61K47/61
A61K47/54
A61K45/00
A61K47/22
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/40
A61K47/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516673
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 SG2022050631
(87)【国際公開番号】W WO2023043367
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10202110185W
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】508000700
【氏名又は名称】シンガポール・ヘルス・サービシーズ・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】栗澤 元一
(72)【発明者】
【氏名】ナンナパス・ヨングボングスーントーン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ウン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】柳 靖雄
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA65
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC27
4C076DD59
4C076EE06
4C076EE09
4C076EE12
4C076EE13
4C076EE17
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE25
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE38
4C076EE39
4C076EE42
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA17
4C084MA21
4C084MA38
4C084MA58
4C084NA10
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZB11
4C084ZB26
(57)【要約】
本発明は、自己組織化ナノコンプレックスを含む組成物であって、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の活性剤を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含み、ナノコンプレックスが、第2の水溶性ポリマーにより少なくとも部分的にカプセル化されている、組成物に関する。本発明は、組成物を調製する方法及びその使用にも関する。本発明は、組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置する方法であって、組成物が、自己組織化ナノコンプレックスを含み、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己組織化ナノコンプレックスを含む組成物であって、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の活性剤を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含み、ナノコンプレックスが、第2の水溶性ポリマーにより少なくとも部分的にカプセル化されている、組成物。
【請求項2】
フラボノイドが、(-)-エピカテキン、(+)-エピカテキン、(-)-カテキン、(+)-カテキン、(-)-エピカテキンガレート、(+)-エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、フィセチニドール、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、メスキトール、ロビネチニドール、エラギタンニン、ガロタンニン、オオロングテアニン、フロロタンニン、タンニン、テアシトリン、テアジベンゾトロポロン、テアフラビン、テアナフトキノン、テアルビギン類、テアシネンシン、ケルセチン、レバストロール、ルチン、クルクミン、イソラムネチン、ケンペロール、ミリセチン、フィセチン、ヘスペリチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、ゲニステイン、ダイゼイン、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ビオカニンA、ホルモノネチン、アピゲニン、ルテオリン、バイオカレイン、クリシン、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
フラボノイドが、カテキンベースのフラボノイドである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
活性剤が、小分子、タンパク質又はオリゴヌクレオチドである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
活性剤が、化学療法剤、抗炎症剤、抗酸化剤、眼科用抗血管形成薬及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される治療剤であるか、又は活性剤が、組成物の総質量の0.1wt%~90wt%の範囲内に存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
第1の水溶性ポリマーが、第2の水溶性ポリマーと同じであるか、又は異なる、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
第1の水溶性ポリマー及び第2の水溶性ポリマーが、グリコサミノグリカン、多糖、ポリアクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ポリ(アクリル酸)、ポリメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリエーテル、ポリ(アリルアミン)、ポリ無水物、ポリ(β-アミノエステル)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリジオキサノン、ポリ(グリセロール)、ポリグリコール酸、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリ(セバシン酸)、ポリ(テレフタレート-co-ホスフェート)、ヒアルロン酸、アルギネート、アミロース、カラギーナン、セルロース、シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、フィコール、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、ヘパロサン、ケラチン、ペクチン、ポリスクロース、プルラン、スクレログルカン、デンプン、キサンタンガム、キシログルカン、キトサン及びそれらの任意の混合物、又はそれらの任意の誘導体からなる群から独立して選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
1つ又は複数のフラボノイド分子が第1の水溶性ポリマーに共有結合されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
コンジュゲートが、式(I)、(II)又は(III):
【化1-1】
【化1-2】
(式中、n及びmは、独立して1~30,000の範囲内の整数である)のいずれか1つにより表される構造を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
コンジュゲートが、1kDa~10,000kDaの範囲内の分子量を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ナノコンプレックスが、10nm~5000nmの範囲内の流体力学的直径、0.01~0.50の範囲内の多分散指数、-60mV~50mVの範囲内の表面電荷、又はナノコンプレックスの0.1質量%~90質量%の範囲内の薬物負荷量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を含む医薬組成物又は医薬製剤。
【請求項13】
a)混合物を生成するために活性剤の溶液と、フラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲートの溶液とを混合する工程と、
b)ナノコンプレックスを生成するために第2の水溶性ポリマーを工程(a)の混合物に加える工程と、
c)工程(b)のナノコンプレックスを自己組織化させる工程であって、ナノコンプレックスが、第2の水溶性ポリマーにより少なくとも部分的にカプセル化されているフラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲートに物理的に結合された活性剤を含み、フラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、工程と
を含み、工程a)及び工程b)が、同時又は順次に実施されてよい、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を生成する方法。
【請求項14】
in vitroで血管形成促進成長因子によって活性化されたときの内皮細胞増殖の阻害における、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項12に記載の医薬組成物若しくは医薬製剤の使用。
【請求項15】
医薬としての使用のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項12に記載の医薬組成物若しくは医薬製剤。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項12に記載の医薬組成物若しくは医薬製剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置する方法。
【請求項17】
組成物が、対象の眼に局所投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、対象の眼に硝子体内投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
血管形成薬を対象の眼に硝子体内投与する工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
眼疾患が、後眼疾患、加齢黄斑変性症、新生血管加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、糖尿病性黄斑浮腫、網膜血管閉塞、及び角膜血管新生からなる群から選択される、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
組成物が、液体形態又は溶液形態である、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
組成物が、1日1回、1日2回、1日3回、1週間に1回、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、9カ月に1回又は12カ月に1回投与される、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
血管形成によって引き起こされる眼疾患の処置における使用のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項12に記載の医薬組成物若しくは医薬製剤。
【請求項24】
血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置するための医薬の製造における、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項12に記載の医薬組成物若しくは医薬製剤の使用。
【請求項25】
組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置する方法であって、組成物が、自己組織化ナノコンプレックスを含み、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、方法。
【請求項26】
自己組織化ナノコンプレックスを含み、血管形成によって引き起こされる眼疾患の処置における使用のための組成物であって、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、組成物。
【請求項27】
血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置するための医薬の製造における組成物の使用であって、組成物が、自己組織化ナノコンプレックスを含み、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化ナノコンプレックスを含む組成物、その調製方法及び使用、特に血管形成によって引き起こされる眼疾患の処置における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢黄斑変性症(AMD)は、視力を制御する網膜の小さい中心部である黄斑の劣化である。AMDは、全世界では白内障及び緑内障に次いで第3位、工業国では第1位の視覚障害の主因であり、失明率は8.7%である。AMDには2つの段階がある:(i)黄斑内及びその周りに黄色がかった斑点として見られる劣化組織「ドルーゼン」の蓄積により診断することができる初期の非新生血管AMD、並びに(ii)脈絡毛細管から始まり網膜へと成長する脈絡膜血管新生(CNV)としても既知の新しい血管の成長に関連する後期の「滲出型」新生血管AMD(nAMD)。これらの血管は異常であり、黄斑を永久的に損傷する血液及び体液の漏出につながる。初期、晩期、及びすべてのAMDの世界的な有病率は、それぞれ8.01%、0.37%、及び8.69%であることが判明しており、人口の高齢化の結果として増加傾向にある。世界のAMDを有する人々の数は、2020年に1億9千6百万人になり、2040年に2億8千8百万人まで増加すると予測される。晩期のnAMDは、初期のAMDよりも低い有病率を有するが、それは、突然の不可逆的な中心視力の喪失を一般に引き起こし、重篤な視力喪失のほとんどの症例を占める。
【0003】
nAMD処置は、血管新生(血管形成)阻害に基づく。現在のnAMDの標準ケアは、硝子体内(IVT)注射を介して投与される抗血管内皮成長因子(VEGF)薬である。現在5種の承認済み抗VEGF薬:ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)、モノクローナル抗体断片)、ペガチニブ(Pegatinib)ナトリウム(Macugen(登録商標)、ペグ化アプタマー)、アフリベルセプト(Eylea(登録商標)、組換えタンパク質)、ブロルシズマブ(Beovu(登録商標)、単鎖可変抗体断片)、及びファリシマブ(Vabysmo(商標)、VEGF及びアンジオポエチン-2を標的とする二重特異性抗体)、並びにがん処置のために承認されている1種の適応外薬、ベバシズマブ(Avastin(登録商標)、モノクローナル抗体)が存在する。現在の抗VEGF注射は、いくらか視力を改善する。例えば、毎月のラニビズマブ(0.5mg)のIVT注射は、AMD患者の33.8%の視力を改善することが示されている。しかし、これらの処置は、完全な視力喪失に向かう進行を遅らせるだけであり、生涯にわたって頻繁に繰り返されるIVT注射を必要とする。侵襲的投与経路のために、これらの注射は、網膜剥離、眼内炎症、眼内圧上昇、出血、眼痛及び外傷性白内障等の組織損傷及び感染を含む高度なリスクを引き起こし、二次処置を必要とし、且つ永久的な視力喪失を潜在的に引き起こす。例えば、ラニビズマブでの2年の処置は、眼内炎症及び眼内圧上昇の発生率を、未処置の患者(それぞれ8%及び7%)と比較して、それぞれ18%及び24%まで増加させることが示されている。更に、これらの注射は、専門的な医療行為を必要とし、およそ2,000米ドル/用量の高い処置費がかかる。それは、患者の生活の質及び財政に対する懸念だけでなく、高齢化する人口の結果としてnAMD有病率が増加することに伴う臨床医への負担も生じる。したがって、有効且つ安全なnAMD処置が緊急に必要とされている。
【0004】
IVT注射の副作用問題を改善するために、注射頻度を減らすか、又は非注射経路を用いるnAMD処置システムの開発に多大な努力が注がれてきた。例えば、ラニビズマブを用いるポートデリバリーシステム(PDS)は、強膜に固定された補充可能なリザーバーを備える小型の永久的な非生分解性の眼内インプラントである。インプラントフランジの中央にあるセルフシーリングセプタムは、眼からインプラントを除去する必要なく薬物補充のためのインプラントリザーバーへのアクセスを可能にする。PDSは、デバイスの植え込みから最初に必要な補充までの間、6カ月超(10、40、及び100mg/mLのPDSにおいてそれぞれ8.7、13.0、及び15.0カ月)にわたってラニビズマブの徐放性を維持した。高投薬量のPDS(100mg/mL)による処置群における視力の結果は、毎月のラニビズマブのIVT注射と同様であった。PDSはフェーズ3臨床試験中である。しかし、PDSはIVT注射の頻度を減らし得るが、強膜におけるデバイス植え込みは、眼内炎症及び網膜剥離を含む副作用を依然として引き起こす。
【0005】
注射頻度の低減を狙いとしたシステムの別の例は、スニチニブリンゴ酸塩(SU、医薬成分として)をカプセル化した微小粒子の製剤(GB-102)である。SUは、nAMDにおける脈絡膜血管新生(CNV)の発生に関与することが示されているVEGF受容体(VEGFR)を含むいくつかの受容体チロシンキナーゼを阻害する多標的チロシンキナーゼ阻害剤である。フェーズ1/2a研究では、SU負荷微小粒子のIVT注射は、良好な忍容性を示し、用量制限毒性、薬物関連の重篤な有害事象、又は炎症はなかった。SU負荷微小粒子の単一用量は、すべての用量群(SU 0.25、0.5、1、及び2mg)の処置患者の80%超において6カ月を通じて、評価可能な患者の視力及び中心網膜厚を維持し、抗VEGF注射の総数が減少した 最良の全体的な性能は、1mgのSUの用量で観察され、それは、8人の患者のうち7人において6カ月間、8人の患者のうち4人において8カ月を越えて疾患を制御することができた。GB-102は、2019年から2つのフェーズ2臨床試験中である。しかし、注射頻度を減らす可能性にも関わらず、IVT注射の副作用に対する懸念は依然として残り、継続的な療法が必要とされる限り高まる。
【0006】
IVT注射を回避するために、非侵襲的な全身性(経口)製剤が開発されてきた。一例は、SUアナログであり、チロシンキナーゼ阻害剤の経口製剤であるボロラニブである。臨床試験フェーズ1では、経口的に投与されたボロラニブは、24週の処置を完了した25人のAMD患者のうち24人の視力を改善することが示されている。しかし、参加者の17%は、高い経口投薬量によって引き起こされる重度な全身性有害作用のために処置を中止しなければならなかった。続いて、2018年に完了したフェーズ2研究は、ボロラニブ経口処置が52週でプラセボと比較して視力を改善しなかったという期待外れの結果を示した。
【0007】
経口投与は、投薬製剤のその柔軟性及び投与の容易さに伴う高い患者コンプライアンスのために、最も魅力的な全身性の薬物送達経路のうちの1つとして認識されてきた。しかし、経口的に投与された薬物は、極端なpH変化、酵素分解、粘液バリア、及び胃腸管を通る細胞透過を含む体内の様々な環境問題に曝され、それは、薬物の完全性及び吸収並びに制限されたバイオアベイラビリティに影響する。更に、全身投与を介した眼送達は、眼への薬物透過を防ぐ血液眼関門のためにしばしば妨げられ、薬物バイオアベイラビリティは2%未満になる。この低いバイオアベイラビリティにより、治療濃度を得るために用量及び投与頻度を高くせざるを得なくなり、それは、結果的に重度な全身毒性につながることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑みて、上記の不利な点のうちの1つ又は複数を克服又は少なくとも改善する、AMDを処置するための組成物又は方法の開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある態様において、自己組織化ナノコンプレックスを含む組成物であって、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の活性剤を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含み、ナノコンプレックスが、第2の水溶性ポリマーにより少なくとも部分的にカプセル化されている、組成物が提供される。
【0010】
有利に、フラボノイドベースのナノコンプレックス(NC)は、組成物中に提供され、活性剤とフラボノイド-ポリマーコンジュゲートのフラボノイド部分との間の有利な相互作用を利用することにより形成され、様々な活性剤を負荷することができる。有利に、ナノコンプレックスは、高負荷量の活性剤を有することができる。
【0011】
有利に、第2の水溶性ポリマーは、ナノコンプレックスが親水性表面を有することを可能にすることができる。ナノコンプレックス表面上の第2の水溶性ポリマーの存在は、1種又は複数の活性剤の1つ又は複数のコンジュゲートとの自己組織化を促進して、第2の水溶性ポリマーの層がないコンプレックスと比較してナノコンプレックスのより高い安定性を結果としてもたらすことができる。更に有利に、ナノコンプレックス表面上の第2の水溶性ポリマーの存在は、タンパク質が活性剤として使用されることを可能にすることができ、一方、第2の水溶性ポリマーがないコンプレックスは、それを可能にすることができない。更に有利に、ナノコンプレックス上の追加の第2の水溶性ポリマーは、ナノコンプレックスの表面電荷の制御を可能にすることができる。
【0012】
別の態様において、上記で定義した組成物を含む医薬組成物又は医薬製剤も提供される。
【0013】
別の態様において、
a)混合物を生成するために活性剤の溶液と、フラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲートの溶液とを混合する工程と、
b)ナノコンプレックスを生成するために第2の水溶性ポリマーを工程(a)の混合物に加える工程と、
c)工程(b)のナノコンプレックスを自己組織化させる工程であって、ナノコンプレックスが、第2の水溶性ポリマーにより少なくとも部分的にカプセル化されているフラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲートに物理的に結合された活性剤を含み、フラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、工程と
を含み、工程a)及び工程b)が、同時又は順次に実施されてよい、上記で定義した組成物を生成する方法が提供される。
【0014】
有利に、活性剤とフラボノイド(エピガロカテキン-3-O-ガレート等)との間の有利な相互作用が、ナノコンプレックスの効率的自己組織化及び第1の水溶性ポリマー-フラボノイドコンジュゲート、続いて第2の水溶性ポリマーによる活性剤のカプセル化を結果としてもたらすことができる。
【0015】
別の態様において、in vitroで血管形成促進成長因子によって活性化されたときの内皮細胞増殖の阻害における、上記で定義した組成物、又は上記で定義した医薬組成物若しくは医薬製剤の使用が提供される。
【0016】
別の態様において、医薬としての使用のための、上記で定義した組成物、又は上記で定義した医薬組成物若しくは医薬製剤が提供される。
【0017】
別の態様において、上記で定義した組成物、又は上記で定義した医薬組成物若しくは医薬製剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置する方法が提供される。
【0018】
別の態様において、血管形成によって引き起こされる眼疾患の処置における使用のための、上記で定義した組成物若しくは医薬組成物、又は上記で定義した医薬製剤が提供される。
【0019】
別の態様において、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置するための医薬の製造における、上記で定義した組成物、又は上記で定義した医薬組成物若しくは医薬製剤の使用が提供される。
【0020】
別の態様において、組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置する方法であって、組成物が、自己組織化ナノコンプレックスを含み、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、方法が提供される。
【0021】
別の態様において、自己組織化ナノコンプレックスを含み、血管形成によって引き起こされる眼疾患の処置における使用のための組成物であって、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、組成物が提供される。
【0022】
別の態様において、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置するための医薬の製造における組成物の使用であって、組成物が、自己組織化ナノコンプレックスを含み、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、使用が提供される。
【0023】
一例では、緑茶ベースのNCが、組成物中に提供され、薬物とヒアルロン酸(HA)-EGCGコンジュゲートの(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート(EGCG)部分との有利な相互作用を利用することにより形成され、様々なタンパク質ベース及び小分子VEGF/VEGFR阻害剤薬物を負荷することができる。薬物負荷NCは、通常の成長条件下で内皮細胞のin vitro VEGF誘導増殖を阻害することができ、且つ最小限の細胞毒性を示し得るので、新生血管AMD(nAMD)の処置において有用であり得る。
【0024】
有利に、薬物単独と比較して、薬物負荷NCの向上した阻害効果は、薬物とHA-EGCG担体との相乗効果に起因し得る。薬物負荷NCは、現在の標準的処置である遊離アフリベルセプト(AF)単独と比較して、局所投与及び硝子体内(IVT)投与の両方を介して向上した持続的な抗血管形成活性を示し得る。NCの効力の改善は、後眼部の疾患部位への薬物の効率的送達及び担体により向上した効力による可能性がある。有利に、上記で定義した組成物は、局所投与システム(単一の処置又は現在存在する抗VEGF療法との併用処置として)及びIVT投与システムの両方において有益であり得、抗VEGF/VEGFR薬の用量を減らしながら持続的な効力を可能にする。有利に、これは、注射関連の有害作用、乏しい患者コンプライアンス、医療行為への負担及び高い処置費を含む、nAMDの現在の標準ケアの問題を克服することができる。
【0025】
定義
本明細書において使用される以下の語及び用語は、示される意味を有するものとする。
【0026】
語「自己組織化」は、外部からの指示なく、局所的な成分自体の間の特異的、局所的な相互作用の結果としてシステムの成分が規則的及び/若しくは機能的な構造又はパターンへと組織化するプロセスを指す。語「自己組織化」は、それに応じて解釈されるべきである。
【0027】
語「実質的に」は「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないこともある。必要な場合、語「実質的に」は、本発明の定義から省略されてよい。
【0028】
特に指定のない限り、用語「を含む(comprising)」及び「を含む(comprise)」、並びにそれらの文法的変形は、それらが、記載された要素を含むが、追加の記載されていない要素の包含も可能にするような「オープンな」又は「包括的な」言葉を表すことが意図される。
【0029】
本明細書において使用されるとき、用語「約」は、製剤の成分の濃度の文脈において、典型的には記載された値の+/-5%、より典型的には記載された値の+/-4%、より典型的には記載された値の+/-3%、より典型的には、記載された値の+/-2%、更により典型的には記載された値の+/-1%、更により典型的には記載された値の+/-0.5%を意味する。
【0030】
本開示全体にわたって、ある特定の実施形態が範囲形式で開示されることがある。範囲形式の説明は単に便宜及び簡潔さのためであり、開示された範囲の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6等の範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等のような部分範囲、及びその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したと見なされるべきである。これは、範囲の幅に関わらず適用される。
【0031】
ある特定の実施形態が本明細書において広く一般的に記載されることもある。属の開示内に含まれるより狭い種及び亜属の分類のそれぞれも本開示の一部を形成する。これは、削除された物質が本明細書に具体的に記載されているか否かに関わらず、属から任意の主題を削除する条件付きか、又は消極的な限定付きで実施形態の一般的な説明を含む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
任意選択の実施形態の詳細な開示
組成物A
自己組織化ナノコンプレックスを含む組成物であって、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の活性剤を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含み、ナノコンプレックスが、第2の水溶性ポリマーにより少なくとも部分的にカプセル化されている、組成物が提供される。
【0033】
フラボノイドは、(-)-エピカテキン、(+)-エピカテキン、(-)-カテキン、(+)-カテキン、(-)-エピカテキンガレート、(+)-エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、フィセチニドール、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、メスキトール、ロビネチニドール、エラギタンニン、ガロタンニン、オオロングテアニン、フロロタンニン、タンニン、テアシトリン、テアジベンゾトロポロン、テアフラビン、テアナフトキノン、テアルビギン類、テアシネンシン、ケルセチン、レバストロール(revastrol)、ルチン、クルクミン、イソラムネチン、ケンペロール、ミリセチン、フィセチン、ヘスペリチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、ゲニステイン、ダイゼイン、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ビオカニンA、ホルモノネチン、アピゲニン、ルテオリン、バイオカレイン(baiocalein)、クリシン、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択されてよい。
【0034】
フラボノイドは、カテキンベースのフラボノイドでよい。
【0035】
カテキンベースのフラボノイドは、以下の構造:
【0036】
【化1】
【0037】
(式中、R1は、H又はガロイルでよく、
R2は、H又はOHでよい)を有してよい。
【0038】
カテキンベースのフラボノイド中に、炭素2及び3の2つのキラル中心が存在してよい。
【0039】
活性剤は、その薬学的に許容される塩又はプロドラッグの形態でよい。
【0040】
活性剤は、小分子、タンパク質又はオリゴヌクレオチドでよい。
【0041】
小分子は、1000Da以下の分子量を有する高分子でよい。小分子は、10Da~約1000Da、約10Da~約100Da又は約100Da~約1000Daの範囲内の分子量を有してよい。
【0042】
活性剤は、化学療法剤、抗炎症剤、抗酸化剤、眼科用抗血管形成薬及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される治療剤でよい。
【0043】
治療剤は、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞骨格破壊剤、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、キナーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、抗体-薬物コンジュゲート、ヌクレオチドアナログ、前駆体アナログ、ペプチド抗生物質、白金ベースの薬剤、レチノイド、ビンカアルカロイド、サイトカイン、代謝拮抗剤、ビンカアルカロイド誘導体、細胞毒性物質及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される化学療法剤でよい。
【0044】
治療剤は、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナク、メフェナム酸、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ラパマイシン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、メトホルミン、補体成分阻害剤及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される抗炎症剤でよい。
【0045】
治療剤は、アスコルビン酸、ビタミンA、ビタミンE、メラトニン、リポ酸、メトホルミン及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される抗酸化剤でよい。
【0046】
治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、タンパク質、抗体、スニチニブ、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブナトリウム、ブロルシズマブ、バタラニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、ファリシマブ、スクアラミン、ラパマイシン、補体成分阻害剤及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される眼科用抗血管形成薬でよい。
【0047】
治療剤はタンパク質アフリベルセプト(AF)でよい。AFは、ヒトIgG1免疫グロブリンのFcドメインに融合されたそれぞれヒトVEGFR1及びVEGFR2の第2及び第3の細胞外VEGF結合ドメインから構成される組換え融合タンパク質である。AFは、細胞外VEGFに結合することによりVEGF誘導血管形成を阻害することができる。それは、硝子体内(IVT)投与(最初の1カ月に3回の後に2カ月毎)を介したnAMD処置のための薬物として承認されており、2019年に75億ドルの市場価値を有したnAMDの標準ケアである。
【0048】
治療剤は小分子薬スニチニブ(SU)でよい。SUは、VEGFの細胞内ATP結合部位に結合することによりVEGFシグナル伝達を遮断することができる小分子多標的チロシンキナーゼ阻害剤である。SUは、VEGFRを阻害するために細胞内送達を必要とする。
【0049】
活性剤は、組成物の総質量の約0.1wt%~約90wt%、約0.1wt%~約0.2wt%、約0.1wt%~約0.5wt%、約0.1wt%~約1wt%、約0.1wt%~約2wt%、約0.1wt%~約5wt%、約0.1wt%~約10wt%、約0.1wt%~約20wt%、約0.1wt%~約50wt%、約0.2wt%~約0.5wt%、約0.2wt%~約1wt%、約0.2wt%~約2wt%、約0.2wt%~約5wt%、約0.2wt%~約10wt%、約0.2wt%~約20wt%、約0.2wt%~約50wt%、約0.2wt%~約90wt%、約0.5wt%~約1wt%、約0.5wt%~約2wt%、約0.5wt%~約5wt%、約0.5wt%~約10wt%、約0.5wt%~約20wt%、約0.5wt%~約50wt%、約0.5wt%~約90wt%、約1wt%~約2wt%、約1wt%~約5wt%、約1wt%~約10wt%、約1wt%~約20wt%、約1wt%~約50wt%、約1wt%~約90wt%、約2wt%~約5wt%、約2wt%~約10wt%、約2wt%~約20wt%、約2wt%~約50wt%、約2wt%~約90wt%、約5wt%~約10wt%、約5wt%~約20wt%、約5wt%~約50wt%、約5wt%~約90wt%、約10wt%~約20wt%、約10wt%~約50wt%、約10wt%~約90wt%、約20wt%~約50wt%、約20wt%~約90wt%、又は約50wt%~約90wt%の範囲内で組成物中に存在してよい。
【0050】
活性剤は、ナノコンプレックス内のコンジュゲートのフラボノイドとの物理的相互作用を介して負荷されてよい(又は「物理的に結合され」ている)。物理的相互作用は非共有結合性でよい。物理的相互作用は、イオン結合、水素結合、双極子-双極子力、イオン-双極子力、イオン誘起双極子力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、π-π相互作用及びそれらの任意の混合からなる群から選択されてよい。
【0051】
第1の水溶性ポリマーは、第2の水溶性ポリマーと同じでも、異なっていてもよい。
【0052】
第1の水溶性ポリマー及び第2の水溶性ポリマーは、グリコサミノグリカン、多糖、ポリアクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ポリ(アクリル酸)、ポリメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリエーテル、ポリ(アリルアミン)、ポリ無水物、ポリ(β-アミノエステル)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリジオキサノン、ポリ(グリセロール)、ポリグリコール酸、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリ(セバシン酸)、ポリ(テレフタレート-co-ホスフェート)、ヒアルロン酸、アルギネート、アミロース、カラギーナン、セルロース、シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、フィコール、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、ヘパロサン、ケラチン、ペクチン、ポリスクロース、プルラン、スクレログルカン、デンプン、キサンタンガム、キシログルカン、キトサン及びそれらの任意の混合物、又はそれらの任意の誘導体からなる群から独立して選択されてよい。
【0053】
第1及び第2の水溶性ポリマーは、独立して粘膜付着性ポリマーでもよい。粘膜付着性ポリマーは、グリコサミノグリカン、多糖、ポリ(ヒドロキシエチルメチルアクリレート)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)若しくはポリ(アクリル酸)及びそれらの任意の混合物、又はそれらの任意の誘導体からなる群から選択されてよい。粘膜付着性ポリマーは、ヒアルロン酸、アルギネート、アミロース、カラギーナン、セルロース、シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、フィコール、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、ヘパロサン、ケラチン、ペクチン、ポリスクロース、プルラン、スクレログルカン、デンプン、キサンタンガム、キシログルカン、キトサン及びそれらの任意の混合物、又はそれらの任意の誘導体からなる群から選択されてよい。
【0054】
第1及び第2の水溶性ポリマーは、独立して生体適合性ポリマーでもよい。生体適合性ポリマーは、ヒアルロン酸、アルギネート、アミロース、カラギーナン、セルロース、シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、フィコール、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、ヘパロサン、ケラチン、ペクチン、ポリスクロース、プルラン、スクレログルカン、デンプン、キサンタンガム、キシログルカン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、キトサン及びそれらの任意の混合物、又はそれらの任意の誘導体からなる群から選択されてよい。
【0055】
第1及び第2の水溶性ポリマーは、独立して生分解性ポリマーでもよい。生分解性ポリマーは、ヒアルロン酸、アルギネート、アミロース、カラギーナン、セルロース、シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、フィコール、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、ヘパロサン、ケラチン、ペクチン、ポリスクロース、プルラン、スクレログルカン、デンプン、キサンタンガム、キシログルカン、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、キトサン及びそれらの任意の混合物、又はそれらの任意の誘導体からなる群から選択されてよい。
【0056】
第1の水溶性ポリマーの誘導体又は第2の水溶性ポリマーの誘導体は、カルボキシル、チオール、スルホニル、カルボキシメチル、ホスホリル、アミノ、ヒドロキシル及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される1つ又は複数の置換基でそれぞれ独立して修飾された第1の水溶性ポリマー又は第2の水溶性ポリマーを含んでよい。
【0057】
第1の水溶性ポリマー及び第2の水溶性ポリマーは、それらを生物学的システムにおいて安全に使用できるようにする非毒性、生分解性及び/又は生体適合性であり得る。
【0058】
第1の水溶性ポリマーはヒアルロン酸でよい。
【0059】
第2の水溶性ポリマーはキトサンでよい。
【0060】
第2の水溶性ポリマーは、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数の活性剤を含むコアの周りにシェルを少なくとも部分的に形成することができ、各コンジュゲートは、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む。すなわち、ナノコンプレックスは、コア-シェル構造を有してよい。コアは、部分的又は完全にカプセル化されてよい。
【0061】
シェルは、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数の活性剤を含むコアを少なくとも部分的にカプセル化する第2の水溶性ポリマーの層でよい。
【0062】
1つ又は複数のフラボノイド分子が第1の水溶性ポリマーに共有結合されてよい。
【0063】
有利に、1つ又は複数のフラボノイド分子は、第1の水溶性ポリマーに共有結合されて、コンジュゲートを形成することができ、コンジュゲート(フラボノイド分子及び第1の水溶性ポリマーを含む)と活性剤との間の分子間相互作用が、薬物負荷を促進して、上記で定義したナノコンプレックスを形成することができる。結果として、ナノコンプレックスは、フラボノイド-フラボノイド又はフラボノイド-ポリマーアセンブリのための追加のリンカーの使用を必要としないことがあり、そのリンカーは、活性剤とフラボノイド及び/又は第1の水溶性ポリマーコンジュゲートとの間の相互作用を妨げることがある。
【0064】
コンジュゲートは、フラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲート又は第1の水溶性ポリマー-フラボノイドコンジュゲートと呼ばれることがある。
【0065】
第1の水溶性ポリマー-フラボノイドコンジュゲートはヒアルロン酸-エピガロカテキンガレートコンジュゲートでよい。
【0066】
フラボノイドはエピガロカテキン-3-O-ガレート(EGCG)でよい。EGCGは、眼血管新生に対するVEGF血管形成シグナル伝達経路の阻害を含む様々な健康上有益な効果を持つ緑茶の主活性成分のうちの1つでよい。有利に、EGCGは、肯定的な薬理学的利益、システム毒性、短い半減期、低い安定性及び低いバイオアベイラビリティを有することができる。
【0067】
コンジュゲートは、エピガロカテキン-3-O-ガレートと、ヒアルロン酸とを含んでよい。
【0068】
コンジュゲートは、式(I)、(II)又は(III):
【0069】
【化2-1】
【化2-2】
【0070】
(式中、n及びmは、独立して1~30,000の範囲内の整数でもよい)のいずれか1つにより表される構造を有してよい。
【0071】
n及びmは、独立して1~100、1~200、1~500、1~1000、1~2000、1~5000、1~10,000、又は1~30,000、100~200、100~500、100~1000、100~2000、100~5000、100~10,000、100~30,000、200~500、200~1000、200~2000、200~5000、200~10,000、200~30,000、500~1000、500~2000、500~5000、500~10,000、500~30,000、1000~2000、1000~5000、1000~10,000、1000~30,000、2000~5000、2000~10,000、2000~30,000、5000~10,000、5000~30,000、又は10,000~30,000の範囲内の整数でもよい。
【0072】
コンジュゲートは、約1kDa~約10,000kDa、約1kDa~約10kDa、約1kDa~約100kDa、約1kDa~約1000kDa、約10kDa~約100kDa、約10kDa~約1000kDa、約10kDa~約10,000kDa、約100kDa~約1000kDa、約100kDa~約10,000kDa又は約1000kDa~約10,000kDaの範囲内の分子量を有してよい。
【0073】
有利に、ナノコンプレックスは、親水性表面、有利なサイズ及び有利な表面電荷を備えることができる。
【0074】
ナノコンプレックスは、約10nm~約5000nm、約10nm~約50nm、約10nm~約100nm、約10nm~約500nm、約10nm~約1000nm、約50nm~約100nm、約50nm~約500nm、約50nm~約1000nm、約50nm~約5000nm、約100nm~約500nm、約100nm~約1000nm、約100nm~約5000nm、約500nm~約1000nm、約500nm~約5000nm、又は約1000nm~約5000nmの範囲内の流体力学的直径を有してよい。
【0075】
ナノコンプレックスは、約0.01~約0.50の範囲内の多分散指数を有してよい。ナノコンプレックスは、約0.01~約0.50、約0.05~約0.25、又は約0.09~約0.15の間の多分散指数を有してよい。
【0076】
ナノコンプレックスは、約-60mV~約50mVの範囲内の表面電荷を有してよい。ナノコンプレックスは、約-60mV~約50mV、約-60mV~約30mV、約-60mV~約10mV、約-40mV~約50mV、約-20mV~約50mV、約-60mV~約-10mV、約-50mV~約-20mV、又は約-40mV~約-30mVの表面電荷を有してよい。
【0077】
ナノコンプレックスは、約0.1質量%~約90質量%の範囲内の薬物負荷量を有してよい、ナノコンプレックスは、ナノコンプレックスの約0.1%~約90%、約0.1%~約70%、約0.1%~約50%、約0.1%~約30%、約0.1%~約10%、約1%~約90%、約10%~約90%、約30%~約90%、約50%~約90%、約70%~約90%、約20wt%~約70wt%、約20wt%~約60wt%、約20wt%~約50wt%、約30wt%~約70wt%、約30wt%~約60wt%、又は約30wt%~約50質量wt%の間の薬物負荷量を有してよい。
【0078】
薬物負荷量は、ナノコンプレックスの質量を基準としたナノコンプレックス内に負荷された活性剤の相対質量を指すことがある。
【0079】
ナノコンプレックスは、小分子、タンパク質、オリゴヌクレオチド及びそれらの任意の混合物を含む広範囲の活性剤での有効な負荷を可能にすることができる。
【0080】
上記で定義した組成物を含む医薬組成物又は医薬製剤も提供される。
【0081】
医薬組成物又は医薬製剤は、疾患又は状態の処置における使用のために特に調製された組成物又は製剤でよい。
【0082】
a)混合物を生成するために活性剤の溶液と、フラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲートの溶液とを混合する工程と、
b)ナノコンプレックスを生成するために第2の水溶性ポリマーを工程(a)の混合物に加える工程と、
c)工程(b)のナノコンプレックスを自己組織化させる工程であって、ナノコンプレックスが、第2の水溶性ポリマーにより少なくとも部分的にカプセル化されているフラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲートに物理的に結合された活性剤を含み、フラボノイド-第1の水溶性ポリマーコンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、工程と
を含み、工程a)及び工程b)が、同時又は順次に実施されてよい、上記で定義した組成物を生成する方法も提供される。
【0083】
ナノコンプレックスは、工程a)において混合された活性成分の約20質量%~約100質量%の範囲内の薬物負荷効率を有してよい。ナノコンプレックスは、工程a)において混合された活性成分の約20質量%~約100質量%、約20質量%~約80質量%、約20質量%~約60質量%、約20質量%~約40質量%、約40質量%~約100質量%、約60質量%~100質量%、約80質量%~約100質量%、約60質量%~約99質量%、約70質量%~約98質量%、約80質量%~約95質量%、又は約85質量%~約95質量%の薬物負荷効率を有してよい。
【0084】
薬物負荷効率は、負荷のために工程a)において混合された活性剤の質量を基準としたナノコンプレックス内に負荷された活性剤の相対質量を指すことがある。
【0085】
in vitroで血管形成促進成長因子によって活性化されたときの内皮細胞増殖の阻害における、上記で定義した組成物、又は上記で定義した医薬組成物若しくは医薬製剤の使用も提供される。
【0086】
血管形成促進成長因子は、血管内皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来内皮成長因子、アンジオポエチン、肝細胞成長因子、インスリン様成長因子、インターロイキン及びそれらの任意の混合物でよい。
【0087】
有利に、薬物負荷ナノコンプレックスは、通常の成長条件下で最小限の抗増殖効果を示しながら血管形成促進成長因子活性化条件下で抗増殖効果を示すことができる。ナノコンプレックスは、血管形成促進成長因子がない条件と比較して活性化された血管形成促進成長因子下でより低いIC50を示してよい。更に有利に、活性剤がないナノコンプレックスは、通常の成長条件下で細胞に対して最小限の効果を有しながら血管形成促進成長因子活性化条件下で抗増殖効果も示し得る。
【0088】
医薬としての使用のための、上記で定義した組成物又は医薬組成物若しくは医薬製剤も提供される。
【0089】
上記で定義した組成物、又は上記で定義した医薬組成物若しくは医薬製剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置する方法も提供される。
【0090】
有利に、遊離眼科用抗血管形成薬(すなわち、いかなる送達ビヒクルにも結合されておらず、組成物中で使用される同じ眼科用抗血管形成薬である眼科用抗血管形成薬)と比較して、組成物は、遊離抗血管形成薬の蓄積よりも眼の網膜内の眼科用抗血管形成薬の少なくとも約16倍高い蓄積を結果としてもたらすことができる。組成物は、角膜、強膜及び硝子体液を含む網膜への送達経路に沿って薬物の少なくとも約3倍~少なくとも約7倍のより高い蓄積を示すことができる。更に有利に、組成物は、硝子体液中のナノコンプレックスの少なくとも約4倍高い蓄積をもたらすことができ、これは、ナノ粒子の送達経路として既知の経強膜経路だけでなく角膜的経路も経由する向上した送達を示唆し、それは、最終的に、より多くの量の薬物が後眼部の網膜に送達されることを容易にする。
【0091】
有利に、組成物中のナノコンプレックスは、バイオアベイラビリティ及び局所投与を介した後眼部への薬物の送達を向上させることができる。後眼部の疾患部位への送達を達成するために、薬物は、最初に、眼組織への効率的浸透を確実にするのに十分に長く眼表面で保持されるべきである。ナノコンプレックスは、前角膜滞留時間を増加させることができる。
【0092】
更に、組成物中のナノコンプレックスは、経強膜的経路(結膜→強膜→脈絡膜→網膜)及び角膜的経路(角膜→水晶体→硝子体液→網膜)を通過する有利な特性を有することができる。特に、経強膜的経路は、親水性表面を有するナノコンプレックスが強膜内の親水性細孔を通過し、結膜/脈絡膜血管及びリンパ排出を通じた薬物クリアランスを回避するのに有利であり得、これは、脈絡膜/網膜へのより高い浸透を可能にする。
【0093】
有利に、ナノコンプレックスは、後眼疾患処置のための局所点眼薬に使用することができ、これは、i)粘膜付着性並びに送達経路及び病的部位に対する担体の高親和性を通じた後眼部における向上した蓄積、ii)高い薬物負荷、並びにiii)薬物-担体相乗作用による向上した効力によって可能になる。
【0094】
更に有利に、ナノコンプレックスは粘膜付着特性を持つことができ、それは、遊離眼科用抗血管形成薬と比較して、眼表面におけるナノコンプレックスの長い滞留時間を可能にして、眼への高い薬物浸透を確実にすることができる。
【0095】
更に有利に、ナノコンプレックスは、経強膜送達経路を通じた有利な輸送のための流体力学的サイズ、表面電荷、負荷容量及び安定性等、最適な物理的特性を示すことができる。
【0096】
有利に、第1の水溶性ポリマーは、送達経路及び病的領域にわたる組織に対する向上した親和性を示し、それによって網膜の血管形成疾患部位への組成物の輸送を助けることができるヒアルロン酸であり得る。更に、角膜、結膜、特に網膜及び血管形成血管系にわたって高発現されたヒアルロン酸のCD44への特異的結合特性は、送達経路及び病的領域にわたる組織に対する向上した親和性により経強膜経路を通じて、負荷された薬物を網膜の血管形成疾患部位に優先的に導く。
【0097】
更に有利に、眼科用抗血管形成薬は、上記で定義したナノコンプレックスの一部である場合、個々の成分(眼科用抗血管形成薬単独並びに第1の水溶性ポリマー及びフラボノイド単独)の効果の組合せと比較して、相乗的な抗増殖効果を示し得る。
【0098】
更に有利に、上記で定義した眼科用抗血管形成薬負荷ナノコンプレックスは、個々の成分(眼科用抗血管形成薬単独及び第1の水溶性ポリマー-フラボノイドコンジュゲート単独)の効果の組合せと比較して、VEGF活性化内皮細胞に対して相乗的な抗増殖効果を示し得る。
【0099】
ナノコンプレックスは、1未満、0.9未満、0.8未満、約0.7未満、約0.6未満、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満又は約0.2未満の併用指数を有し得る。
【0100】
組成物は、対象への投与のための液体形態又は溶液形態でよい。組成物は、投与様式に基づいて選ばれる、適した薬学的に許容される緩衝剤を使用することにより固形製剤から再構成されてよい。
【0101】
本明細書に定義されるように、「化合物」は、本開示の組成物内に存在する化合物を指す。本開示によれば、血管形成によって引き起こされる眼疾患の処置のために使用されるとき、本開示の化合物は、単独で投与されてよい。或いは、化合物は、本開示による少なくとも1種の化合物を含む医薬又は獣医用製剤として投与されてよい。化合物は、薬学的に許容される塩を含む、適した塩として存在してもよい。
【0102】
本開示の化合物を含む活性剤の併用は相乗的であり得る。
【0103】
薬学的に許容される塩により、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答及び同種のものを伴うことなくヒト及び下等動物の組織と接触した使用に適しており、合理的なベネフィット/リスク比に見合っている塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。
【0104】
例えば、本開示による化合物の適した薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸、酒石酸、又はクエン酸等の薬学的に許容される酸を本開示の化合物と混合することにより調製され得る。したがって、本開示の化合物の適した薬学的に許容される塩は、酸付加塩を含む。
【0105】
塩は、本開示の化合物の最終的な単離中及び精製中にin situで、又は遊離塩基官能基を適した有機酸と反応させることにより別々に調製することができる。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギネート、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩、及び同種のものを含む。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及び同種のもの、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、トリエタノールアミン及び同種のものを含むがこれらに限定されない非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンを含む。
【0106】
本開示による化合物の分散体は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中並びに油中でも調製され得る。保管及び使用の通常の条件下で、医薬調製物は、微生物の成長を防ぐために保存料を含むことがある。
【0107】
投与に適した医薬組成物は、滅菌水性溶液(水溶性の場合)又は分散体及び滅菌注射用溶液又は分散体の即時調製のための滅菌粉末を含む。理想的には、組成物は、製造及び保管の条件下で安定であり、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して組成物を安定化するための保存料を含んでよい。
【0108】
言葉「薬学的に許容される担体」は、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、並びに同種のものを含むことが意図される。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が化合物と不適合性である場合を除く限りにおいて、治療組成物並びに処置及び予防の方法におけるその使用が企図される。補助活性化合物も本開示による組成物に組み込まれ得る。投与の容易さ及び投薬量の均一性のために非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが特に有利である。化合物は、許容される投与単位で適した薬学的に許容される担体と共に有効量の好都合且つ有効な投与のために製剤化され得る。補助活性成分を含む組成物の場合、投薬量は、前記成分の通常の用量及び投与方式を参照することにより決定される。
【0109】
本開示の範囲に同じく含まれるのは遅延放出製剤である。
【0110】
本開示の化合物は、「プロドラッグ」の形態で投与されてもよい。プロドラッグは、活性型にin vivoで変換される化合物の不活性型である。適したプロドラッグは、化合物の活性型のエステル、ホスホン酸エステル等を含む。
【0111】
いくつかの例では、化合物は、局所又は硝子体内投与されてよい。溶液の場合、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール、並びに同種のもの)、適したそれらの混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等の添加剤の使用により、分散体の場合は必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤及び/又は抗真菌剤を含むことにより達成することができる。適した薬剤は、当業者に周知であり、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、アスコルビン酸、チメロサール、及び同種のものを含む。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましくあり得る。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことによりもたらすことができる。
【0112】
滅菌溶液は、必要量のアナログを、必要に応じて、上に挙げた成分の1つ又は組合せと共に適切な溶媒に組み込み、続いて滅菌濾過することにより調製することができる。一般に、分散体は、基礎分散媒と、上に挙げたものからの必要な他の成分とを含む滅菌ビヒクルにアナログを組み込むことにより調製される。
【0113】
好ましくは、医薬組成物は、酸加水分解を最小限にするために適した緩衝剤を更に含んでよい。適した緩衝剤は、当業者に周知であるが、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩及びそれらの混合物に限定されない。
【0114】
組成物は、溶液中の組成物の濃度が約0.1mg/mL~約100mg/mL、約0.1mg/mL~約0.2mg/mL、約0.1mg/mL~約0.3mg/mL、約0.1mg/mL~約0.5mg/mL、約0.1mg/mL~約1mg/mL、約0.1mg/mL~約2mg/mL、約0.1mg/mL~約5mg/mL、約0.1mg/mL~約10mg/mL、約0.1mg/mL~約20mg/mL、約0.1mg/mL~約50mg/mL、約0.2mg/mL~約0.3mg/mL、約0.2mg/mL~約0.5mg/mL、約0.2mg/mL~約1mg/mL、約0.2mg/mL~約2mg/mL、約0.2mg/mL~約5mg/mL、約0.2mg/mL~約10mg/mL、約0.2mg/mL~約20mg/mL、約0.2mg/mL~約50mg/mL、約0.2mg/mL~約100mg/mL、約0.5mg/mL~約1mg/mL、約0.5mg/mL~約2mg/mL、約0.5mg/mL~約5mg/mL、約0.5mg/mL~約10mg/mL、約0.5mg/mL~約20mg/mL、約0.5mg/mL~約50mg/mL、約0.5mg/mL~約100mg/mL、約1mg/mL~約2mg/mL、約1mg/mL~約5mg/mL、約1mg/mL~約10mg/mL、約1mg/mL~約20mg/mL、約1mg/mL~約50mg/mL、約1mg/mL~約100mg/mL、約2mg/mL~約5mg/mL、約2mg/mL~約10mg/mL、約2mg/mL~約20mg/mL、約2mg/mL~約50mg/mL、約2mg/mL~約100mg/mL、約5mg/mL~約10mg/mL、約5mg/mL~約20mg/mL、約5mg/mL~約50mg/mL、約5mg/mL~約100mg/mL、約10mg/mL~約20mg/mL、約10mg/mL~約50mg/mL、約10mg/mL~約100mg/mL、約20mg/mL~約50mg/mL、約20mg/mL~約100mg/mL、又は約50mg/mL~約100mg/mLの範囲内でよい溶液の形態でよい。
【0115】
組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、1週間に1回、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、9カ月に1回又は12カ月に1回投与されてよい。
【0116】
組成物は、対象の眼に局所投与されてよい。
【0117】
抗VEGF/VEGFR薬の非注射及び非全身送達を局所投与を介して達成することができる。有利に、これは、硝子体内(IVT)注射による副作用を避け、且つオフターゲット毒性を最小限にしながら処置の安全性及び患者及び臨床医の利便性を著しく改善することができる。安全性とは別に、局所投与は、投与の容易さ及びより低いコストのために、より高い患者コンプライアンスの利点を有し得る。更に、それは、医療へのアクセスが制限された、特に地方及び後進地域の患者に処置機会を提供することができる。
【0118】
有利に、上記で定義した組成物は、IVT注射等の別の投与経路を介して薬物を投与する必要もなく単一の処置として使用することができる。
【0119】
組成物は、4μL、5μL、6μL、8μL、10μL、20μL、25μL、30μL、40μL、50μL、75μL、又は100μLの投与量で1日1回、1日2回又は1日3回局所投与されてよい。
【0120】
組成物は、局所投与される場合、網膜病変発生の持続的な減少を少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日の間又は投与された全期間もたらすことができる。
【0121】
有利に、組成物は、局所投与される場合、同じ眼科用抗血管形成薬が硝子体内注射を通じて投与される場合と比較して網膜病変発生の少なくとも約10%の減少を示すことができる。
【0122】
更に有利に、上記で定義した組成物は、局所投与される場合、後眼部の疾患部位(脈絡膜/網膜)への十分な送達を妨げる点眼剤の局所点眼時の薬物の短い前角膜滞留時間及び低い浸透効率等、従来の局所投与された薬物に観察される問題を克服することができる。
【0123】
組成物は、対象の眼に硝子体内投与されてよい。硝子体内投与は硝子体内注射を介してよい。
【0124】
組成物は、0.5μL、1μL、2μL、5μL、10μL、15μL、20μL、25μL、30μL、40μL、50μL又は100μLの投与量で1週間に1回、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、9カ月に1回又は12カ月に1回硝子体内投与されてよい。
【0125】
有利に、硝子体内注射を通じて投与された組成物は、硝子体内注射を通じて投与される遊離抗血管形成薬と比較して持続的な抗血管形成効果を示すことができ、これは、より低い用量の抗血管形成薬が医薬中で使用されるときでさえも注射頻度の低減を可能にする。
【0126】
組成物が対象の眼に局所投与される場合、方法は、血管形成薬を対象の眼に硝子体内投与する工程を更に含んでよい。すなわち、組成物は、同時又は順次に、対象の眼に局所的にも硝子体内にも投与されてよい。
【0127】
有利に、そのような併用処置計画は、同じ抗血管形成薬の硝子体内投与単独と比較して、網膜病変の成長の阻害における抗血管形成薬の効果を延長することができる。
【0128】
血管新生によって引き起こされる眼疾患は、後眼疾患、加齢黄斑変性症、新生血管加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、糖尿病性黄斑浮腫、網膜血管閉塞、角膜血管新生及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されてよい。
【0129】
活性剤は眼科用抗血管形成薬でよい。有利に、活性剤が眼科用抗血管形成薬であるとき、眼科用抗血管形成薬は、上記で定義したナノコンプレックスの一部である場合、個々の成分(眼科用抗血管形成薬単独並びに第1の水溶性ポリマー及びフラボノイド単独)の効果の組合せと比較して、相乗的な抗増殖効果を示し得る。
【0130】
有利に、活性剤が眼科用抗血管形成薬であるとき、上記で定義した眼科用抗血管形成薬負荷ナノコンプレックスは、個々の成分(眼科用抗血管形成薬単独及び第1の水溶性ポリマー-フラボノイドコンジュゲート単独)の効果の組合せと比較して、VEGF活性化内皮細胞に対して相乗的な抗増殖効果を示し得る。
【0131】
血管形成によって引き起こされる眼疾患の処置における使用のための、上記で定義した組成物若しくは医薬組成物、又は上記で定義した医薬製剤も提供される。
【0132】
血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置するための医薬の製造における、上記で定義した組成物若しくは医薬組成物、又は上記で定義した医薬製剤の使用も提供される。
【0133】
組成物B
組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置する方法であって、組成物が、自己組織化ナノコンプレックスを含み、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、方法も提供される。
【0134】
上記の例において、「血管形成によって引き起こされる眼疾患」、「眼科用抗血管形成薬」、「物理的に結合された」、「コンジュゲート」、「フラボノイド」及び「第1の水溶性ポリマー」の範囲は、組成物Aについて上記で定義した通りである。
【0135】
組成物Bにおいて、ナノコンプレックスは、第2の水溶性ポリマーによりカプセル化されなくてよい。
【0136】
有利に、遊離眼科用抗血管形成薬(すなわち、いかなる送達ビヒクルにも結合されておらず、組成物中で使用される同じ眼科用抗血管形成薬である眼科用抗血管形成薬)と比較して、組成物は、遊離抗血管形成薬の蓄積よりも眼の網膜内の眼科用抗血管形成薬の少なくとも約4倍高い蓄積を結果としてもたらすことができる。組成物は、角膜、強膜及び硝子体液を含む網膜への送達経路に沿って薬物の少なくとも約3倍~少なくとも約9倍のより高い蓄積を示すことができる。更に有利に、組成物は、硝子体液中のナノコンプレックスの少なくとも約9倍のより高い蓄積をもたらすことができ、これは、ナノ粒子の送達経路として既知の経強膜経路だけでなく角膜的経路も経由する向上した送達を示唆し、それは、最終的に、より多くの量の薬物が後眼部の網膜に送達されることを容易にすることができる。
【0137】
有利に、組成物中のナノコンプレックスは、バイオアベイラビリティ及び局所投与を介した後眼部への薬物の送達を向上させることができる。後眼部の疾患部位への送達を達成するために、薬物は、最初に、眼組織への効率的浸透を確実にするのに十分に長く眼表面で保持されるべきである。ナノコンプレックスは、前角膜滞留時間を増加させることができる。
【0138】
更に、組成物中のナノコンプレックスは、経強膜的経路(結膜→強膜→脈絡膜→網膜)及び角膜的経路(角膜→水晶体→硝子体液→網膜)を通過する有利な特性を有することができる。特に、経強膜的経路は、親水性表面のナノコンプレックスが強膜内の親水性細孔を通過し、結膜/脈絡膜血管及びリンパ排出を通じた薬物クリアランスを回避するのに有利であり得、これは、脈絡膜/網膜へのより高い浸透を可能にする。
【0139】
更に有利に、遊離眼科用抗血管形成薬と比較して、組成物は、後眼疾患の処置を可能にすることができ、これは、i)粘膜付着性並びに送達経路及び病的部位に対する担体の高親和性を通じた後眼部における向上した蓄積、ii)高い薬物負荷、並びにiii)薬物-担体相乗作用による向上した効力によって可能になる。
【0140】
有利に、ナノコンプレックスは粘膜付着特性を持つことができ、それは、遊離眼科用抗血管形成薬と比較して、眼表面におけるナノコンプレックスの長い滞留時間を可能にして、眼への高い薬物浸透を確実にすることができる。
【0141】
更に有利に、遊離眼科用抗血管形成薬と比較して、ナノコンプレックスは、経強膜送達経路を通じた有利な輸送のための流体力学的サイズ、表面電荷、負荷容量及び安定性等、最適な物理的特性を示すことができる。
【0142】
有利に、第1の水溶性ポリマーは、送達経路及び病的領域にわたる組織に対する向上した親和性を示し、それによって網膜の血管形成疾患部位への組成物の輸送を助けることができるヒアルロン酸であり得る。更に、角膜、結膜、特に網膜及び血管形成血管系にわたって高発現されたヒアルロン酸のCD44への特異的結合特性は、送達経路及び病的領域にわたる組織に対する向上した親和性により経強膜経路を通じて、負荷された薬物を網膜の血管形成疾患部位に優先的に導く。
【0143】
更に有利に、眼科用抗血管形成薬は、上記で定義したナノコンプレックスの一部である場合、個々の成分(眼科用抗血管形成薬単独並びに第1の水溶性ポリマー及びフラボノイド単独)の効果の組合せと比較して、相乗的な抗増殖効果を示し得る。
【0144】
更に有利に、上記で定義した眼科用抗血管形成薬負荷ナノコンプレックスは、個々の成分(眼科用抗血管形成薬単独及び第1の水溶性ポリマー-フラボノイドコンジュゲート単独)の効果の組合せと比較して、VEGF活性化内皮細胞に対して相乗的な抗増殖効果を示し得る。
【0145】
更に有利に、眼科用抗血管形成薬は、本明細書に開示される組成物の一部である場合、in vitroで血管形成促進成長因子によって活性化されたときの内皮細胞増殖を阻害することができる。
【0146】
更に有利に、眼科用抗血管形成薬は、薬物負荷ナノコンプレックスの一部である場合、通常の成長条件下で最小限の抗増殖効果を示しながら血管形成促進成長因子活性化条件下で抗増殖効果を示すことができる。ナノコンプレックスは、血管形成促進成長因子がない条件と比較して活性化された血管形成促進成長因子下でより低いIC50を示してよい。更に有利に、活性剤がないナノコンプレックスは、通常の成長条件下で細胞に対して最小限の効果を有しながら血管形成促進成長因子活性化条件下で抗増殖効果も示し得る。
【0147】
更に有利に、本明細書に定義される眼科用抗血管形成薬負荷ナノコンプレックスは、約0.2未満~約1未満の併用指数を有する。
【0148】
組成物は、医薬組成物又は医薬製剤でよい。組成物は、患者に投与する準備ができているとき、液体形態又は溶液形態でよい。組成物は、投与様式に基づいて選ばれる、適した薬学的に許容される緩衝剤を使用することにより固形製剤から再構成されてよい。
【0149】
本明細書に定義されるように、「化合物」は、本開示の組成物内に存在する化合物を指す。本開示によれば、血管形成によって引き起こされる眼疾患の処置のために使用されるとき、本開示の化合物は、単独で投与されてよい。或いは、化合物は、本開示による少なくとも1種の化合物を含む医薬品又は獣医用製剤として投与されてよい。化合物は、薬学的に許容される塩を含む、適した塩として存在してもよい。
【0150】
本開示の化合物を含む活性剤の併用は相乗的であり得る。
【0151】
薬学的に許容される塩により、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答及び同種のものを伴うことなくヒト及び下等動物の組織と接触した使用に適しており、合理的なベネフィット/リスク比に見合っている塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。
【0152】
例えば、本開示による化合物の適した薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸、酒石酸、又はクエン酸等の薬学的に許容される酸を本開示の化合物と混合することにより調製され得る。したがって、本開示の化合物の適した薬学的に許容される塩は、酸付加塩を含む。
【0153】
塩は、本開示の化合物の最終的な単離中及び精製中にin situで、又は遊離塩基官能基を適した有機酸と反応させることにより別々に調製することができる。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギネート、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩、及び同種のものを含む。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及び同種のもの、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、トリエタノールアミン及び同種のものを含むがこれらに限定されない非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンを含む。
【0154】
本開示による化合物の分散体は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中並びに油中でも調製され得る。保管及び使用の通常の条件下で、医薬調製物は、微生物の成長を防ぐために保存料を含むことがある。
【0155】
投与に適した医薬組成物は、滅菌水性溶液(水溶性の場合)又は分散体及び滅菌注射用溶液又は分散体の即時調製のための滅菌粉末を含む。理想的には、組成物は、製造及び保管の条件下で安定であり、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して組成物を安定化するための保存料を含んでよい。
【0156】
言葉「薬学的に許容される担体」は、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、並びに同種のものを含むことが意図される。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が化合物と不適合性である場合を除く限りにおいて、治療組成物並びに処置及び予防の方法におけるその使用が企図される。補助活性化合物も本開示による組成物に組み込まれ得る。投与の容易さ及び投薬量の均一性のために非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが特に有利である。化合物は、許容される投与単位で適した薬学的に許容される担体と共に有効量の好都合且つ有効な投与のために製剤化され得る。補助活性成分を含む組成物の場合、投薬量は、前記成分の通常の用量及び投与方式を参照することにより決定される。
【0157】
本開示の範囲に同じく含まれるのは遅延放出製剤である。
【0158】
本開示の化合物は、「プロドラッグ」の形態で投与されてもよい。プロドラッグは、活性型にin vivoで変換される化合物の不活性型である。適したプロドラッグは、化合物の活性型のエステル、ホスホン酸エステル等を含む。
【0159】
いくつかの例では、化合物は、局所又は硝子体内投与されてよい。溶液の場合、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール、並びに同種のもの)、適したそれらの混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散体の場合は必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤及び/又は抗真菌剤を含むことにより達成することができる。適した薬剤は、当業者に周知であり、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、アスコルビン酸、チメロサール、及び同種のものを含む。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましくあり得る。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことによりもたらすことができる。
【0160】
滅菌溶液は、必要量のアナログを、必要に応じて、上に挙げた成分の1つ又は組合せと共に適切な溶媒に組み込み、続いて滅菌濾過することにより調製することができる。一般に、分散体は、基礎分散媒と、上に挙げたものからの必要な他の成分とを含む滅菌ビヒクルにアナログを組み込むことにより調製される。
【0161】
好ましくは、医薬組成物は、酸加水分解を最小限にするために適した緩衝剤を更に含んでよい。適した緩衝剤は、当業者に周知であるが、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩及びそれらの混合物に限定されない。
【0162】
組成物は、溶液中の組成物の濃度が約0.1mg/mL~約100mg/mL、約0.1mg/mL~約0.2mg/mL、約0.1mg/mL~約0.3mg/mL、約0.1mg/mL~約0.5mg/mL、約0.1mg/mL~約1mg/mL、約0.1mg/mL~約2mg/mL、約0.1mg/mL~約5mg/mL、約0.1mg/mL~約10mg/mL、約0.1mg/mL~約20mg/mL、約0.1mg/mL~約50mg/mL、約0.2mg/mL~約0.3mg/mL、約0.2mg/mL~約0.5mg/mL、約0.2mg/mL~約1mg/mL、約0.2mg/mL~約2mg/mL、約0.2mg/mL~約5mg/mL、約0.2mg/mL~約10mg/mL、約0.2mg/mL~約20mg/mL、約0.2mg/mL~約50mg/mL、約0.2mg/mL~約100mg/mL、約0.5mg/mL~約1mg/mL、約0.5mg/mL~約2mg/mL、約0.5mg/mL~約5mg/mL、約0.5mg/mL~約10mg/mL、約0.5mg/mL~約20mg/mL、約0.5mg/mL~約50mg/mL、約0.5mg/mL~約100mg/mL、約1mg/mL~約2mg/mL、約1mg/mL~約5mg/mL、約1mg/mL~約10mg/mL、約1mg/mL~約20mg/mL、約1mg/mL~約50mg/mL、約1mg/mL~約100mg/mL、約2mg/mL~約5mg/mL、約2mg/mL~約10mg/mL、約2mg/mL~約20mg/mL、約2mg/mL~約50mg/mL、約2mg/mL~約100mg/mL、約5mg/mL~約10mg/mL、約5mg/mL~約20mg/mL、約5mg/mL~約50mg/mL、約5mg/mL~約100mg/mL、約10mg/mL~約20mg/mL、約10mg/mL~約50mg/mL、約10mg/mL~約100mg/mL、約20mg/mL~約50mg/mL、約20mg/mL~約100mg/mL、又は約50mg/mL~約100mg/mLの範囲内でよい溶液の形態でよい。
【0163】
組成物は、対象の眼に局所投与されてよい。
【0164】
抗VEGF/VEGFR薬の非注射及び非全身送達を局所投与を介して達成することができる。有利に、これは、硝子体内(IVT)注射による副作用を避け、且つオフターゲット毒性を最小限にしながら処置の安全性並びに患者及び臨床医の利便性を著しく改善することができる。安全性とは別に、局所投与は、投与の容易さ及びより低いコストのために、より高い患者コンプライアンスの利点を有し得る。更に、それは、医療へのアクセスが制限された、特に地方及び後進地域の患者に処置機会を提供することができる。
【0165】
有利に、上記で定義した組成物は、IVT注射等の別の投与経路を介して薬物を投与する必要もなく単一の処置として使用することができる。
【0166】
組成物は、4μL、5μL、6μL、8μL、10μL、20μL、25μL、30μL、40μL、50μL、75μL、又は100μLの量で1日1回、1日2回又は1日3回局所投与されてよい。
【0167】
組成物は、網膜病変発生の持続的な減少を少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日の間、又は投与された全期間もたらすことができる。
【0168】
有利に、組成物は、硝子体内注射を通じて投与される抗血管形成薬と比較して網膜病変発生の少なくとも約10%の減少を示すことができる。
【0169】
更に有利に、上記で定義した組成物は、局所投与される場合、後眼部の疾患部位(脈絡膜/網膜)への十分な送達を妨げる点眼剤の局所点眼時の薬物の短い前角膜滞留時間及び低い浸透効率等、従来の局所投与された薬物に観察される問題を克服することができる。
【0170】
組成物は、対象の眼に硝子体内投与されてよい。硝子体内投与は硝子体内注射を介してよい。
【0171】
組成物は、0.5μL、1μL、2μL、5μL、10μL、15μL、20μL、25μL、30μL、40μL、50μL又は100μLの量で1週間に1回、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、9カ月に1回又は12カ月に1回硝子体内投与されてよい。
【0172】
有利に、硝子体内注射を通じて投与された組成物は、硝子体内注射を通じて投与される遊離抗血管形成薬と比較して持続的な抗血管形成効果を示すことができ、これは、注射頻度の低減、したがって、より高い患者コンプライアンスを可能にする。
【0173】
組成物が対象の眼に局所投与される場合、方法は、血管形成薬を対象の眼に硝子体内投与する工程を更に含んでよい。すなわち、組成物は、同時又は順次に、対象の眼に局所的にも硝子体内にも投与されてよい。
【0174】
有利に、そのような併用処置計画は、同じ抗血管形成薬の硝子体内投与単独と比較して、網膜病変の成長の阻害における抗血管形成薬の効果を延長することができ、これは、注射頻度の低減、したがって、より高い患者コンプライアンスを可能にする。
【0175】
眼科用抗血管形成薬は、上記で定義したナノコンプレックスの一部である場合、個々の成分(眼科用抗血管形成薬単独並びに第1の水溶性ポリマー及びフラボノイド単独)の効果の組合せと比較して、相乗的な抗増殖効果を示す。
【0176】
有利に、上記で定義した眼科用抗血管形成薬負荷ナノコンプレックスは、個々の成分(眼科用抗血管形成薬単独及び第1の水溶性ポリマー-フラボノイドコンジュゲート単独)の効果の組合せと比較して、VEGF活性化内皮細胞に対して相乗的な抗増殖効果を示し得る。
【0177】
自己組織化ナノコンプレックスを含み、血管形成によって引き起こされる眼疾患の処置における使用のための組成物であって、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、組成物も提供される。
【0178】
血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置するための医薬の製造における組成物の使用であって、組成物が、自己組織化ナノコンプレックスを含み、自己組織化ナノコンプレックスが、1つ又は複数のコンジュゲートに物理的に結合された1種又は複数種の眼科用抗血管形成薬を含み、各コンジュゲートが、1つ又は複数のフラボノイド分子と、第1の水溶性ポリマーとを含む、使用も提供される。
【0179】
添付図面は、開示されている実施形態を示し、開示されている実施形態の原理を説明するのに役立つ。しかし、図面は、例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲の定義として意図されていないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0180】
図1A】キトサン層ありとなしとのAF-NCの流体力学的サイズの比較を示すグラフである。
図1B】キトサン層ありとなしとのAF-NCの多分散指数の比較を示すグラフである。
図1C】キトサン層ありとなしとのAF-NCの計数率(すなわち、動的光散乱(DLS)測定中に検出された光子の数)の比較を示すグラフである。計数率は、試料中の濃度(すなわちナノコンプレックスの数)に関係する。
図2】希釈倍数が増加する間のキトサン層ありとなしとのSU-NCの流体力学的サイズを示すグラフである。
図3A】AF-NCが内皮細胞のVEGF活性化増殖を阻害することを示す1組のグラフである。通常の成長条件又はVEGF活性化成長条件で培養されたHUVECに対するAF及びAF-NCの抗増殖効果を示すグラフである(n=5、平均±s.d.)。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.005;****p<0.001(通常の条件に対するVEGF活性化条件)。
図3B】AF-NCが内皮細胞のVEGF活性化増殖を阻害することを示す1組のグラフである。通常の成長条件又はVEGF活性化成長条件で培養されたHUVECに対する空のNC(AF-NCと等価なHA-EGCG/キトサンで形成された)の抗増殖効果を示すグラフである(n=5、平均±s.d.)。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.005;****p<0.001(通常の条件に対するVEGF活性化条件)。
図4A】SU-NCが内皮細胞のVEGF活性化増殖を阻害することを示す1組のグラフである。通常の成長条件又はVEGF活性化成長条件で培養されたHUVECに対するSU及びSU-NCの抗増殖効果を示すグラフである(n=5、平均±s.d.)。***p<0.005;****p<0.001(通常の条件に対するVEGF活性化条件)。
図4B】SU-NCが内皮細胞のVEGF活性化増殖を阻害することを示す1組のグラフである。通常の成長条件又はVEGF活性化成長条件で培養されたHUVECに対するHA-EGCGの抗増殖効果を示すグラフである(n=5、平均±s.d.)。***p<0.005;****p<0.001(通常の条件に対するVEGF活性化条件)。
図5A】眼区画内のAF蓄積の増加を示す1組のグラフである。ラット眼へのAF及びAF-NC(等価AF用量=4μg)の局所投与後の角膜内のAF蓄積の増加を示すグラフである(n=4、平均±s.e.m.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001。
図5B】眼区画内のAF蓄積の増加を示す1組のグラフである。ラット眼へのAF及びAF-NC(等価AF用量=4μg)の局所投与後の硝子体液中のAF蓄積の増加を示すグラフである(n=4、平均±s.e.m.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001。
図5C】眼区画内のAF蓄積の増加を示す1組のグラフである。ラット眼へのAF及びAF-NC(等価AF用量=4μg)の局所投与後の強膜内のAF蓄積の増加を示すグラフである(n=4、平均±s.e.m.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001。
図5D】眼区画内のAF蓄積の増加を示す1組のグラフである。ラット眼へのAF及びAF-NC(等価AF用量=4μg)の局所投与後の網膜内のAF蓄積の増加を示すグラフである(n=4、平均±s.e.m.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001。
図6A】SU-NCが眼区画内のSU蓄積の増加を結果としてもたらすことを示す1組のグラフである。ラット眼へのSU及びSU-NC(等価SU用量=10μg)の局所投与後の角膜内のSU蓄積の増加を示すグラフである(n=4、平均±s.d.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001(SUに対するSU-NC)。
図6B】SU-NCが眼区画内のSU蓄積の増加を結果としてもたらすことを示す1組のグラフである。ラット眼へのSU及びSU-NC(等価SU用量=10μg)の局所投与後の硝子体液中のSU蓄積の増加を示すグラフである(n=4、平均±s.d.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001(SUに対するSU-NC)。
図6C】SU-NCが眼区画内のSU蓄積の増加を結果としてもたらすことを示す1組のグラフである。ラット眼へのSU及びSU-NC(等価SU用量=10μg)の局所投与後の強膜内のSU蓄積の増加を示すグラフである(n=4、平均±s.d.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001(SUに対するSU-NC)。
図6D】SU-NCが眼区画内のSU蓄積の増加を結果としてもたらすことを示す1組のグラフである。ラット眼へのSU及びSU-NC(等価SU用量=10μg)の局所投与後の網膜内のSU蓄積の増加を示すグラフである(n=4、平均±s.d.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001(SUに対するSU-NC)。
図7A】AF-NCが局所投与を介してVldlr-/-マウスにおける網膜病変発生を阻害することを示す1組のグラフである。AF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)、AF-NC(AF 0.2mg/mL、局所、10μL、3回/日)、又はAF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)及びAF-NC(AF 0.2mg/mL、局所、10μL、3回/日)の併用で31日間処置されたVldlr-/-マウスの病変の相対数を示すグラフである(n=4~6、平均±s.e.m.)。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.005;****p<0.001。
図7B】AF-NCが局所投与を介してVldlr-/-マウスにおける網膜病変発生を阻害することを示す1組のグラフである。AF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)、AF(0.2mg/mL、局所、10μL、3回/日)又は空のNC(等価なHA-EGCG、局所、10μL、3回/日)で31日間処置されたVldlr-/-マウスの病変の相対数を示すグラフである(n=4~6、平均±s.e.m.)。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.005;****p<0.001。
図8】AF-NCがIVT注射を介してVldlr-/-マウスにおける網膜病変発生を阻害することを示すグラフである。グラフは、AF(0.1μg/0.5μL)、AF(2.0μg/0.5μL)又はAF-NC(AF 0.1μg/0.5μL)の単回IVT注射で0日目に処置されたVldlr-/-マウスの病変の相対数を示す(n=5~6、平均±s.e.m.)。*p<0.05;****p<0.001。
図9A】SU-NCが局所投与を介してVldlr-/-マウスにおける網膜病変発生を阻害することを示す1組のグラフである。AF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)、SU-NC(SU 0.17mg/mL、局所、10μL、3回/日)、又はAF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)及びSU-NC(SU 0.17mg/mL、局所、10μL、3回/日)の併用で28日間処置されたVldlr-/-マウスの病変の相対数を示すグラフである(n=5~6、平均±s.e.m.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001。
図9B】SU-NCが局所投与を介してVldlr-/-マウスにおける網膜病変発生を阻害することを示す1組のグラフである。SU(0.5mg/mL、局所、10μL、3回/日)で28日間処置されたVldlr-/-マウスの病変の相対数を示すグラフである(n=5~6、平均±s.e.m.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001。
図9C】SU-NCが局所投与を介してVldlr-/-マウスにおける網膜病変発生を阻害することを示す1組のグラフである。SU-NC(キトサンが積層された)(SU 0.17mg/mL、局所、10μL、2回/日)で28日間処置されたVldlr-/-マウスの病変の相対数を示すグラフである(n=5~6、平均±s.e.m.)。*p<0.05;***p<0.005;****p<0.001。
図10】SU-NCがIVT注射を介してVldlr-/-マウスにおける網膜病変発生を阻害することを示すグラフである。グラフは、AF(2.0μg/0.5μL)又はSU-NC(SU 0.25μg/0.5μL)の単回IVT注射で0日目に処置されたVldlr-/-マウスの病変の相対数を示す(n=5~6、平均±s.e.m.)。*p<0.05;**p<0.01。
【実施例
【0181】
特定の実施例を参照することにより本発明の非限定的な例をより詳細に更に説明する。それらは、本発明の範囲をいかなる意味においても限定するものと解釈されるべきではない。
【0182】
物質
AF-NC製剤のために使用されたアフリベルセプト(AF)をBOC Sciences社(New York City、New York、米国)から入手した。nAMDの現在の標準的処置である臨床グレードAF(Bayer社(Berlin、ドイツ)製Eylea(登録商標))をin vivo研究において陽性対照として使用した。スニチニブリンゴ酸塩(SU)は、BioVision社(Milpitas、California、米国)の製品であった。Amicon Ultra-15遠心フィルターをMerck Millipore Corporation社(Darmstadt、ドイツ)から購入した。すべての他の化学薬品は分析グレードのものであった。HUVEC、EBM-2培地及びEGM-2補充物をLonza Bioscience Singapore Pte Ltd.社(シンガポール)から入手した。ウシ胎児血清(FBS)をGibco(Thermo Fisher Scientific Inc社、シンガポール)から入手した。キトサンをPolysciences社(Warrington、Pennsylvania、米国)から入手した。
【0183】
方法
ナノコンプレックス(NC)のキャラクタリゼーション
NCの流体力学的直径及びサイズ分布(多分散指数)を粒径分析装置(Brookhaven Instruments社、米国)を使用して動的光散乱(DLS)技法により評価し、NCの表面電荷をZetasizer Nano ZS(Malvern社、英国)により決定した。測定を25℃で三つ組で実施した。
【0184】
様々な濃度のSU溶液を用いて作成された標準曲線を使用して431nmにおける吸光度(UV-VIS U-2810分光光度計、日立社、日本)を測定することによりSU-NC内のSUの量を決定した。AF-NC内に負荷されたAFの量を、わずかに変更した報告された手順に従って酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により決定した。簡潔には、96ウェルMaxisorp ELISAプレート(Nunc、Thermo Fisher Scientific社、Waltham、Massachusetts、米国)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.2μg/mL組換えヒトVEGF165(i-DNA社、シンガポール)でコーティングした。プレートを1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSでブロックし、0.05% TWEEN(登録商標)20を含むPBSで洗浄した。次いで、試料をプレートに加え、続いて0.05% TWEEN(登録商標)20を含むPBSで洗浄した。続いて、PBS-BSA中の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗ヒトIgG Fc(Sigma-Aldrich社、St. Louis、Missouri、米国)を加えた。プレートを洗浄後、SureBlue(商標)テトラメチルベンジジン(TMB)マイクロウェルペルオキシダーゼ基質(KPL社)を使用することによりペルオキシダーゼ活性をアッセイして、AFの量を決定した。マイクロプレートリーダー(Tecan Group Ltd.社、Mannedorf、スイス)を使用して405nmにおいて吸光度を測定した。薬物負荷量及び薬物負荷効率を以下の式に従って計算した:
【0185】
【数1】
【0186】
VEGF活性化内皮細胞増殖に対する阻害効果
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をLonza Biologics Tuas Pte Ltd社(シンガポール)から入手し、EGM-2 SingleQuots(Lonza Biologics Tuas Pte Ltd社、シンガポール)を補充した内皮細胞基本培地(EBM-2)で培養した。HUVECを96ウェルプレートに播種(5×103細胞/ウェル、n=5)し、細胞付着のために1日間培養した。0.1%ウシ胎児血清(FBS)を含むEBM-2培地で細胞を1日間飢餓状態にした後、それらを薬物、様々な薬物濃度(SU:1.11~17.73μM、AF:0.001~0.206μM)の薬物負荷NC、HA-EGCG又は空のNC(NCと等価なHA-EGCG)で2つの異なる条件:通常培地(2% FBSを補充したEBM-2培地)又はVEGF補充培地(0.1% FBS及び50ng/mLの組換えヒトVEGF165(i-DNA Biotechnology Pte Ltd社、シンガポール)を補充したEBM-2培地)で処置した。
【0187】
3日後、細胞生存率を製造業者のプロトコールに従ってAlamarBlue(登録商標)試薬(Life Technologies社、米国)を使用することにより測定した。簡潔には、培地を10% AlamarBlue(登録商標)試薬を含むフェノールレッドフリー培地に置き換えた。37℃で4時間インキュベーション後、蛍光強度(λex=549nm及びλem=587nm)をマイクロプレートリーダー(Tecan Group Ltd.社、スイス)により測定した。結果を未処置細胞に対する生細胞の百分率として表した。
【0188】
in vitro及びin vivoの薬物併用を定量化するために広く使用されてきたChou-Talalay法に基づいて併用指数(CI)を使用して、薬物負荷NCのVEGF活性化内皮細胞増殖阻害に対する薬物及びHA-EGCGの併用効果の定量分析を実施した。ここで、CI<1は相乗作用を示し、CI=1は相加作用を示し、CI>1は拮抗作用を示す。CompuSynソフトウェアを使用して以下の式:
【0189】
【数2】
【0190】
(式中、(D)薬物及び(D)HA-EGCGは、x%の薬物作用を達成するための薬物負荷NC中の薬物及びHA-EGCGの用量であり、(Dx)薬物及び(Dx)HA-EGCGは、同じ作用を達成するための薬物単独及びHA-EGCG単独の用量である)を用いてHA-EGCG及び薬物併用のCI値を計算した。
【0191】
眼生体内分布
眼内のin vivo SU分布を分析するために、SU-NC又はSU溶液(等価SU用量=10μg)をWistar Hannoverラット(InVivos Pte. Ltd社、シンガポール)の眼に局所適用した。指定された時点で、ラットを二酸化炭素吸入により安楽死させた。眼を採取し、更に処理するまで-80℃に保った。未処置のラットからの各ホモジネート眼区画内の様々な濃度(10~250ng/mL)のSUを用いて作成された標準曲線を使用して、逆相HPLC(LaChrom C18-PMカラム(5μm、内径4.6×250mm、日立社、日本)を備えたWaters 2695分離モジュール(Waters社、米国))により眼区画内のSUの量を決定した。UV吸光度を431nmにおいて検出した。全プロセスを最小限の露光下で実施した。リン酸緩衝生理食塩水中の各眼区画(0.1gの組織/mL)をホモジナイズすることによりホモジネートを調製した。抽出のために、ホモジネートをtert-ブチルメチルエーテル(TBME)と混合し、振盪した(1,300rpm、24時間、30℃)。遠心分離後、TBME相を真空(45℃)下で蒸発させ、HPLC移動相(20mMギ酸アンモニウム(pH2):アセトニトリル=67.5:32.5(v/v))を用いて再構成した。注入量及び流量は、それぞれ20μL及び0.8mL/分であった。Empower 3ソフトウェア(Waters社、米国)を使用してSUのピーク積分からSUの量を決定した。
【0192】
Vldlr-/-マウスに対するin vivo抗血管形成効果
超低密度リポタンパク質受容体遺伝子ノックアウト(Vldlr-/-)マウス(B6;129S7-Vldlrtm1Her/J)(The Jackson Laboratory、米国)のつがいを標準条件で維持及び飼育した(InVivos Pte. Ltd.社、シンガポール)。出生後日数21~28(P21~P28)の年齢で、網膜血管系を蛍光血管造影法により分析した。1日後(P22~P29、0日目)、標準的処置としてのAF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)、SU(0.5mg/mL、局所、10μL、3回/日)、SU-NC(SU 0.17mg/mL、局所、10μL、3回/日)、AF(0.2mg/mL、局所、10μL、3回/日)、AF-NC(AF 0.2mg/mL、局所、10μL、3回/日)、空のNC(等価なHA-EGCG/キトサン 局所、10μL、3回/日)、AF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)及びSU-NC(SU 0.17mg/mL、局所、10μL、3回/日)の併用、又はAF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)及びAF-NC(AF 0.2mg/mL、局所、10μL、3回/日)の併用にマウスをランダムに割り当てた。IVT投与を介したNCの抗血管形成効果を研究するために、P22~29で、標準的処置としてのAF(2.0μg/0.5μL)、SU-NC(SU 2.0μg/0.5μL)、AF-NC(AF 0.1μg/0.5μL)又はAF-NCと同じ濃度(0.1μg/0.5μL)のAFの単回IVT投与にマウスをランダムに割り当てた。病変の相対数の点から網膜血管漏出の発生を阻害する能力により抗血管形成活性を評価した。
【0193】
Biopolis、シンガポールのBiological Resource Centre(BRC)におけるInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)により承認されたプロトコールに従って実験動物のケア及び使用を規制した)。
【0194】
蛍光血管造影法
マウスをイソフルラン吸入により麻酔し、瞳孔を1%トロピカミド(Bausch + Lomb社、シンガポール)で散大させた。リン酸緩衝生理食塩水中の0.1mLの10%フルオレセインナトリウム(Sigma-Aldrich社)の腹腔内注射後にiVivo(登録商標)小動物検眼鏡(OcuScience、米国)で眼の画像を撮影した。
【0195】
統計解析
特に記載のない限り、すべてのデータを平均±標準偏差(s.d.)として表した。SigmaStat 3.5ソフトウェア(Systat Software Inc.社、米国)を使用して一元配置分散分析(ANOVA)により統計解析を実施した。
【0196】
(実施例1)
合成
HA-EGCCの合成
以前に報告された手順に従ってHA-EGCG(I)を合成した。簡潔には、HAを還元末端においてチオール基でまず修飾した。HA(0.5g)及びシスタミン二塩酸塩(1.2g)を、0.4M NaClを含む30mLの0.1Mホウ酸緩衝液に溶解した。20mLの0.1Mホウ酸緩衝液に溶解されたシアノ水素化ホウ素ナトリウム(628mg)を溶液に加えた。37℃で5日間撹拌後、生じた溶液を窒素雰囲気下、0.1M NaCl溶液に対して2日間、25%エタノールに対して1日間、及び脱イオン水に対して2日間透析(1000DaのMwカットオフ)した。精製された溶液を凍結乾燥して、チオール末端修飾HAを得た。第2のステップにおいて、EGCG(440mg)をPBS(70mL)中のチオール末端修飾HA(100mg)と混合した。混合物を25℃で4時間撹拌した。生じた溶液を窒素雰囲気下、脱イオン水に対して透析(2000DaのMwカットオフ)した。精製された溶液を凍結乾燥して、HA-EGCG(I)を得た。
【0197】
HA-EGCG(II)を以前に報告された2ステッププロセスにより合成した。最初に、エチルアミン架橋EGCG二量体を形成するために、145μLの2,2-ジエトキシエチルアミン(DA)及びEGCG(2.3g)をメタンスルホン酸(MSA):テトラヒドロフラン(THF)(1:5、v/v、5mL)に溶解した。一晩撹拌後、未反応のEGCGを酢酸エチルでの複数回の抽出サイクルにより除去した。エチルアミン架橋EGCG二量体をHAにコンジュゲートする第2のステップにおいて、HA(0.25g)、N-ヒドロキシスクシンイミド(89mg)、エチルアミン架橋EGCG二量体(0.205mmol)及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(150mg)をMES緩衝液(19.8mL)及びジメチルホルムアミド(2.5mL)の混合物に溶解した。反応混合物を窒素雰囲気下で一晩インキュベートした。次いで、HA-EGCG(II)を3サイクルのエタノール沈殿により精製し、次いで、沈殿物を水に再溶解し、凍結乾燥前に窒素雰囲気下、脱イオン水に対して2日間透析(3500DaのMwカットオフ)した。
【0198】
HA-EGCG(III)コンジュゲートを、以前に報告された2ステップの手順で合成した。最初に、チオール化HAを合成するために、HA(1g)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(1.037g)及びシスタミン二塩酸塩(844.5mg)を110mLのPBS中で混合した。生じた混合物を窒素雰囲気下、0.1M NaCl溶液に対して2日間、25%エタノールに対して1日間及び脱イオン水に対して2日間透析(3500DaのMwカットオフ)した。精製された溶液を凍結乾燥して、チオール化HAを得た。第2のステップにおいて、チオール化HA(0.5g)及び過剰なEGCGを窒素パージ条件下、100mLのPBS中で混合した。25℃で4時間撹拌後、混合物を窒素雰囲気下、25%エタノールに対して1日間及び脱イオン水に対して2日間透析(3500DaのMwカットオフ)した。
【0199】
薬物負荷ナノコンプレックス(NC)の形成
AF-NCを製剤化するために、AF(0.10~0.50mg/mL)溶液と、HA-EGCG(0.10~0.75mg/mL)溶液とを混合した。キトサン溶液(0.02~0.30mg/mL)を同時又は順次に溶液に加えた。SU-NCを生成するために、SU溶液(0.10~0.30mg/mL)と、HA-EGCG(0.05~0.80mg/mL)とを混合した。キトサンを含むSU-NCについて、キトサン溶液(0.01~0.3mg/mL)を同時又は順次に溶液に加えた。Amicon Ultra-15遠心フィルター(100kDaのMwカットオフ)を使用して遠心分離(25℃で5分、2,000×g)によりSU-NCを濾過した。
【0200】
(実施例2)
薬物負荷NC
EGCG-タンパク質結合特性を利用することによりAF負荷NC(AF-NC)を形成した。水性溶液中で混合すると、HA-EGCGがAF-EGCG相互作用を通じてAFと自己組織化し、続いて表面上にキトサンが積層された。フィード中の組成物の濃度及び比を変化させることによりAF-NC形成を系統的に最適化した。粒径、表面電荷、負荷容量及び安定性に基づいて、経強膜送達経路を通じた有利な輸送のためにAF-NCを最適化した(流体力学的サイズ=204nm、多分散指数(PDI)=0.097)(Table 1(表1))。
【0201】
【表1】
【0202】
キトサン導入は、狭いサイズ分布を有するNCを与え、一方、キトサンを含まないシステムはそれを与えなかった(図1)。AF-NCのAF負荷効率が94%であり、NC調製中に最小限のAF損失を示したことも言及に値する。
【0203】
SU部分とEGCG部分との間の相互作用を通じたSUとHA-EGCGの自己組織化によりSU負荷NC(SU-NC)を形成した。注目すべきことに、SU-NCをキトサンありとなしとで製剤化することができた。キトサン導入は、1000倍希釈時にそのサイズを保持しながらNC安定性を向上させたが、キトサンを含まないNCのサイズは増加した(図2)。フィード中の組成物の濃度及び比を変化させることによりSU-NC形成を系統的に最適化した。一般に、HA-EGCGの濃度を上げると負荷効率の向上につながった。これは、より高い濃度のHA-EGCGにおいてSUのEGCGとのより大きい相互作用を示す。負荷効率と関連してHA-EGCG/SU(w/w)が増加するにつれて、SU-NCの負荷量が初めに増加し、続いて、NC中のHA-EGCG含有量の増加の優性効果のために、HA-EGCG/SUが更に増加すると負荷量が減少する。キトサンを含まない選択されたSU-NC(流体力学的サイズ=142nm、PDI=0.13、表面電荷=-38mV)をin vitro/in vivo調査のために使用した(Table 1(表1))。
【0204】
観察された負の表面電荷は、負に荷電したHAに起因した。これは、HAがNC表面を覆っていることを示す。選択されたSU-NCのSU負荷量(46.9%)は、がん処置において使用される報告されたSU負荷ナノ製剤のもの(0.8~5.1wt%)よりも著しく高かった。HA骨格に沿ったSU部分とEGCG部分の有利な相互作用は、SU-NCの自己組織化において重要な役割を果たし、SUの効率的カプセル化を結果としてもたらすと考えられた。実際、非コンジュゲートHAは、SUを含む粒子を形成せず、混合物中の3.7%のSU含有量を示した。これは、正に荷電したSUと負に荷電したHAとの間のイオン相互作用が、安定なNCを形成するのに十分強くないことを示唆する。
【0205】
(実施例3)
VEGF活性化内皮細胞増殖に対する阻害効果
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖に対する薬物負荷NCの阻害効果を、nAMD関連内皮微小環境をシミュレートしながら通常の成長条件又はVEGF誘導成長条件で調査した。AF-NCは、通常の成長条件下では最小限の効果(細胞生存率>87.9%)でVEGF活性化条件に対して特異的な抗増殖効果を示し(図3A)、VEGFシグナル伝達経路が活性化されたとき、より頑強な抗増殖効果を示した。AF-NCは、VEGF活性化条件ではAF(IC50>試験された最大濃度、0.21μM)よりもはるかに高い抗増殖効果(IC50=0.15μM)を示した。注目すべきことに、空のNC(等価なHA-EGCG及びキトサンで形成された)単独は、通常の成長条件下では最小限の細胞毒性で、それがVEGF活性化されたときのみ抗増殖効果を示した(図3B)。CompuSynソフトウェアを使用してChou-Talalay法により併用効果を定量化した。AF-NCのIC50における併用指数(CI)は0.156であり、AFと空の担体との間の強い相乗作用を示した。
【0206】
通常の成長条件又はVEGF活性化成長条件でのHUVECの増殖に対するSU-NCの阻害効果を調査したとき、SU-NCは、通常の条件と比較して、それがVEGF活性化されたとき実質的により高い抗増殖効果も示した。SU-NCは、VEGF活性化条件ではSUよりもはるかに高い抗増殖効果を示し、SUのIC50(4.32μM)よりも低いIC50(1.69μM)を示した(図4A)。注目すべきことに、HA-EGCG単独は、それがVEGF活性化されたとき抗増殖効果を示したが、通常の成長条件下では示さなかった(図4B)。SUとHA-EGCGとの併用効果をIC50において定量化したとき、CI値は0.612であり、SUとSU-NCのHA-EGCG担体との間の強い相乗作用を示した。対照的に、通常の成長条件下で、SU-NCは、SU(IC50=6.59μM)よりも高いIC50(8.78μM)を示した。これは、内皮細胞の通常の成長についてSUと比較してより低い細胞毒性を示す。
【0207】
(実施例4)
局所投与を介した後眼部への送達
局所投与を介した薬物負荷NCの眼生体内分布をAF-NC及びSU-NCを使用して調査して、後眼部の網膜(nAMDの病的部位)への送達能力を研究した。AF-NCは、投与後1時間で遊離AFの蓄積よりも15.6倍高い網膜内のAF蓄積を示した(図5)。SU-NCは、投与後1時間で遊離SUの蓄積よりも4.3倍高い網膜内のSU蓄積を示し、4時間の全検査時間にわたってより高い蓄積を維持した(図6)、これらの結果は、高用量の薬物を網膜に送達するNCの優秀さを示す。AF-NC及びSU-NCは、遊離薬物と比較して、角膜、硝子体液及び強膜を含む網膜への経路に沿ったより高い薬物蓄積を示した。遊離薬物と比較して角膜上のNCのより高い分布は、HAの粘膜付着性/CD44結合特性を通じた角膜上のその保持時間の増加の結果であると考えられた。それは、眼組織内の輸送の機会及びバイオアベイラビリティを向上させるであろう。
【0208】
興味深いことに、NCは、強膜においてだけでなく硝子体液においても遊離薬物よりも高い蓄積を示した。これは、ナノ粒子の送達経路として既知の経強膜経路だけを経由するのではなく角膜的経路も経由する向上した送達を示唆する。これは、最終的に、より多くの量の薬物が後眼部の網膜に送達されることを容易にするであろう。NCの蓄積の改善は、有利に調整されたNC製剤の利点を活かした結果としてのバイオアベイラビリティの向上及び後眼部への薬物の効率的送達のためであった可能性がある。
【0209】
(実施例5)
マウスに対するin vivo抗血管形成効果
nAMDにおける現象を再現する脈絡膜血管新生(CNV)を発生させることが示されている超低密度リポタンパク質受容体遺伝子ノックアウト(Vldlr-/-)マウスでNCのin vivo抗血管形成活性を調査した。最初に、AF-NCを、局所投与を介したその抗血管形成効果について検査した。出生後日数21~28(P21~P28)の年齢で、網膜血管系を蛍光血管造影法により分析した。病変の相対数の点から網膜血管漏出の発生によりCNVを決定した。1日後(P22~P29、0日目)、標準的処置としてのAF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)、AF-NC(AF 0.2mg/mL、局所、3回/日)、AF(0.2mg/mL、局所、3回/日)、空のNC(等価なHA-EGCG/キトサン、局所、3回/日)又はAF(2.0μg/0.5μL、IVT、0日目に1回)及びAF-NC(AF 0.2mg/mL、局所、3回/日)の併用にマウスをランダムに割り当てた。
【0210】
AF(IVT)のCNV阻害効果が処置の初期段階でのみ観察され、経時的に減少した。この効力の低下は、現在の抗VEGF処置下の患者において通常観察され、結果的に頻繁な注射を必要とする。対照的に、AF-NC(局所)は、31日の実験期間全体を通じて網膜病変発生を有意に遅らせ(図7A)、一方、AF(局所)は、同じ用量で病変進行を抑制できなかった(図7B)。これらの結果は、NCが局所的な経路を介してAFを網膜に首尾よく送達し、高い抗血管形成効力を達成することを示した。加えて、AF-NC(局所)との併用は、AF(IVT)効力の悪化を防ぎ、AF(IVT)単独と比較して向上した持続的な抗血管形成効果を示した。これは、現在のAF(IVT)処置との併用処置におけるAF-NC(局所)がAF効力を延長し、且つIVT注射間の間隔を延ばす可能性を示唆する。
【0211】
注目すべきことに、局所投与された空のNCも網膜病変の進行を有意に阻害した(図7B)。これは、AF-NCの優れた効果に寄与し得るHA-EGCG担体の固有の抗血管形成効果を示す。AF-NCの抗血管形成効力もIVT投与を介して検査した。20分の1の用量(AF 0.1μg/0.5μL)のAF-NCの単回IVT投与は、最初の7日においてのみ有効であることが示されて経時的に効果が減少したAF(2.0μg/0.5μL、IVT)と比較して、網膜病変の進行に対するはるかに高い持続的な阻害効果を示した(図8)。IVT注射を介して投与された場合のAF-NCのこの向上した長期の抗血管形成効力は、現在の抗VEGF療法と比較して注射頻度の低減を容易にするであろう。
【0212】
次に、SU-NCを、局所投与を介したその抗血管形成効果について検査した。網膜病変の進行が、局所投与されたSU-NC(SU 0.17mg/mL)により有意に阻害された(図9A)のに対し、SU(局所)は、0.50mg/mLのより高い用量でさえも効力を示さなかった(図9B)。SU-NC(局所)は、持続的な抗血管形成効力を示し、処置の開始後28日においてAF(IVT)よりも有意に高いCNV阻害効果を結果としてもたらした。併用して投与された場合、SU-NC(局所)は、AF(IVT)効力の悪化を防ぎ、AF(IVT)単独と比較して向上した持続的な抗血管形成効果を示した。これは、現在のAF(IVT)処置との併用処置としてのSU-NC(局所)がAF効力を延長し、IVT注射頻度を減らす可能性を示唆する。網膜病変の進行が、局所投与されたキトサンが積層されたSU-NC(SU 0.17mg/mL)により有意に阻害された(図9C)。SU-NCをIVT注射を介して投与した場合、SU-NC(SU 0.25μg/0.5μL)の単回IVT投与は、AF(2.0μg/0.5μL、IVT)と比較して持続的な抗血管形成効力を達成した(図10)。これは、注射頻度の低減の高い可能性を示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0213】
上記で定義した組成物は、薬物送達において、具体的には、炎症性眼疾患、ドライアイ、白内障及び眼がん等、血管形成によって引き起こされる眼疾患を処置するための眼科用抗血管形成薬の送達において有用であり得る。
【0214】
本発明の様々な他の修正及び適応が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく前述の開示を読んだ後に当業者に明らかになるであろうこと、並びにすべてのそのような修正及び適応が、添付された特許請求の範囲内に入ることが意図されることが明らかになるであろう。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
【国際調査報告】