(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】EUVリソグラフィ用のジルコニウムコーティング極薄超低密度フィルム
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20240912BHJP
【FI】
G03F1/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516723
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 US2022044878
(87)【国際公開番号】W WO2023055729
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516124627
【氏名又は名称】リンテック オブ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】LINTEC OF AMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】15930 S. 48th Street, Suite 110, Phoenix, Arizona 85048, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】リマ マルシオ ディー
(72)【発明者】
【氏名】グラハム メアリー ヴィオラ
(72)【発明者】
【氏名】植田 貴洋
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BB35
2H195BC33
2H195BC35
(57)【要約】
極薄ジルコニウムがコーティングされている濾過形成されたナノ構造ペリクルフィルムが開示されている。濾過形成されたナノ構造ペリクルフィルムは、複数のナノチューブであって、ランダムに交わり、相互接続されたネットワーク構造を、特性を強化されたプレーナ配向で形成する、複数のナノチューブと、ジルコニウムコーティング層とを含む。ジルコニウムコーティング層によってコーティングされ相互接続された構造は、少なくとも88%の高い最小EUV透過率を可能にする。相互接続されたネットワーク構造は、3nmの下限値から100nmの上限値までの範囲にある厚さを有し、効果的なEUVリソグラフィ処理を可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノチューブを含む極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィナノチューブフィルムであって、
前記複数のナノチューブは、ランダムに交わり、相互接続されたネットワーク構造をプレーナ配向で形成し、前記相互接続されたネットワーク構造は、3nmの下限値から100nmの上限値の範囲にある厚さを有し、ジルコニウムコーティング層を含む、前記EUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項2】
前記ジルコニウムコーティング層の厚さは、前記ナノチューブフィルムの少なくとも一方の側で1.6nm以下である、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項3】
前記ジルコニウムコーティング層は、0.5nm~1.0nmの間の平均厚さを有する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項4】
前記ジルコニウムコーティング層は、0.3nm~0.5nmの間の平均厚さを有する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項5】
前記ジルコニウムコーティング層の平均厚さは0.3nmである、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項6】
前記ジルコニウムコーティング層の面密度は、前記ナノチューブフィルムの各側で0.19マイクログラム/cm
2である、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項7】
前記ナノチューブフィルムは、4.7度の角度で0.5%未満のEUV散乱を有する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項8】
前記ナノチューブフィルムは、4.7度の角度で0.2%未満のEUV散乱を有する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項9】
前記相互接続されたネットワーク構造の平均厚さは11nm~40nmの範囲にある、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項10】
前記相互接続されたネットワーク構造の平均厚さは11nmである、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項11】
前記相互接続されたネットワーク構造は、ジルコニウムコーティング前に、少なくとも80%の550nm光透過率を有する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項12】
前記ジルコニウムコーティング層を有する前記相互接続されたネットワーク構造は、少なくとも88%のEUV透過率を有する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項13】
前記ジルコニウムコーティング層を有する前記相互接続されたネットワーク構造は、少なくとも95%のEUV透過率を有する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項14】
前記複数のナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、及び多層カーボンナノチューブをさらに含み、
前記単層カーボンナノチューブの層の数は1層であり、前記二層カーボンナノチューブの層の数は2層であり、前記多層カーボンナノチューブの層の数は3層以上である、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項15】
前記単層カーボンナノチューブは全カーボンナノチューブの20~40%の割合を占め、前記二層カーボンナノチューブは全カーボンナノチューブの50%以上の割合を占め、残りのカーボンナノチューブは前記多層カーボンナノチューブである、請求項14に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項16】
前記ジルコニウムコーティング層を有する前記相互接続されたネットワーク構造は、EUV照射後に少なくとも100kJ/cm
2の量内でインタクトのままである、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項17】
請求項1に記載の前記EUVフォトリソグラフィナノチューブを通してEUV放射を透過させることを含む、EUVフォトリソグラフィを実行する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月28日に出願された米国仮特許出願第63/249,118号、及び2022年2月22日に出願された米国仮特許出願第63/312,658号に対する優先権を主張するものである。明細書、図面、及び特許請求の範囲を含むこれらの文書のそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に援用されている。
【0002】
本開示は全般的に、半導体マイクロチップ製造において用いる薄膜及び薄膜デバイスに関し、より詳細には、極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィ用の極薄、超低密度、ジルコニウムコーティングされた、ナノ構造の自立型ペリクルフィルム及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
ペリクルは、フォトマスクを覆う保護デバイスであり、半導体マイクロチップ製造において用いられる。フォトマスクは、光が所定のパターンでシャインスルーすることを可能にするホールまたは透明度を伴う成長性結晶プレートを指す場合がある。これらのようなフォトマスクは、フォトリソグラフィ及び集積回路製造に広く用いられている場合がある。マスターテンプレートとして、フォトマスクを用いて基板(通常は、半導体チップ製造の場合にウェハとして知られるシリコンの薄いスライス)上にパターンを生成する。
【0004】
粒子混入は半導体製造に重大な問題となる可能性がある。フォトマスクは、ペリクル(フォトマスクのパターニングされた側面を覆って取り付けられるペリクル枠上で伸ばされる薄い透明フィルムを有する)によって粒子から保護される。ペリクルはマスクに近いが十分に離れているため、ペリクル上に着陸する中~小サイズの粒子は焦点が外れすぎて印刷されない。近年、マイクロチップ製造業界は、ペリクルが、粒子及び混入物以外の原因から生ずる損傷からフォトマスクを保護し得ることに気付いた。
【0005】
極端紫外線フォトリソグラフィは、EUV波長の範囲(より具体的には、13.5nm波長)を用いる高度な光リソグラフィ技術である。これにより、半導体マイクロチップ製造業者は、7nm以下の解像度でほとんどの精巧な特徴部をパターニングして、必要なスペースのサイズを増加させることなくさらに多くのトランジスタを配置することができる。EUVフォトマスクは光を反射させることによって機能する。光の反射は、モリブデン及びシリコンの複数の交互層を用いることによって実現される。EUV光源がターンオンすると、EUV光は最初にペリクルフィルムに衝突して、ペリクルフィルムを通過し、そしてフォトマスクの真下から反射して戻り、もう一度ペリクルフィルムに衝突することを、その経路を続けてマイクロチップを印刷する前に行う。このプロセスの間にエネルギーの一部が吸収され、その結果、熱が生成され、吸収され、蓄積され得る。ペリクルの温度は、450~1000℃以上にまで上がる場合がある。
【0006】
耐熱性は重要ではあるが、ペリクルはまた、フォトマスクからの反射光及び光パターンの通過を確実にするために、EUV光に対して非常に透明でなくてはならなく、EUV散乱が低いため、印刷が正確で、鋭くなり、製造歩留まりが向上する。
【0007】
2016年に、ポリシリコンベースのEUVペリクルが数10年の研究及び取り組みの後に開発されたが、シミュレートした比較的低出力の175ワットEUV光源に対してEUV透過率はわずか78%であった。トランジスタ密度増加の要望により、厳しい要件が、EUVペリクル開発者に、より高い透過率、より低い透過率変動、より高い温度許容度、及び低い光散乱に対するさらなる技術的課題を示している。
【0008】
カーボンナノチューブシート内に高い単層カーボンナノチューブ含有量(たとえば、98質量%もの高さ)を配置することによって、より高い光透過率を目標とすることが試みられているが、このような試みによって得られた製品は低品質構造を有し、ライフタイムが短くなる。従って、このようなカーボンナノチューブ系薄膜は、EUV照射下で一定期間に一定レベルの高温耐性があり、光散乱が少ない必要がある。その結果、このようなカーボンナノチューブ系薄膜のEUV透過率は、満足のいく製品寿命を有しているにもかかわらず、業界標準を満たしていなかった。
【0009】
さらに、フォトリソグラフィプロセス中に発生した熱により、ペリクルフィルムの温度が約450℃から1,000℃以上に上昇し、ペリクルフィルムは寿命が短くなり、最終的には破損する。いずれかの破損したペリクルフィルムまたは破損したペリクルフィルムの断片により、スキャナチャンバ及び下地レチクル及び/またはマスクへの損傷、混入、または接着が起こることがある。ペリクルフィルムが弱くなると、スキャナは、チャンバを大気にする必要があり得、既に弱くなっているペリクルフィルムが破損するリスクが高まる。従って、そのような状況では、スキャナをシャットダウンし、製造を停止する必要があり、ダウンタイムが長くなる。
【0010】
寿命要件に加えて、ペリクルフィルムは非常に少ない光散乱を有する必要がある。任意の散乱は、画像再構成及びEUVフォトリソグラフィスループットに影響するEUV光学系の画像コントラストを低下させ得る。
【0011】
従って、従来技術では、高いEUV光透過率、ペリクルフィルムの良好な寿命、及び低い光散乱を達成することが、当該分野で新たな課題となる。
【発明の概要】
【0012】
本開示の態様により、特異的に構造化されたナノチューブフィルムが開示される。ナノチューブフィルムは、ランダムに交わり、相互接続されたネットワーク構造を、薄いジルコニウムコーティング層を備えたプレーナ配向で形成する、複数のカーボンナノチューブを含む。相互接続されたネットワーク構造は、下限値3nmから上限値100nmまでの範囲にある厚さを有し、88%以上の最小EUV透過率を有する。
【0013】
本開示の別の態様により、いくつかの実施形態では、厚さは3nmの下限値~40nmの上限値である。
【0014】
本開示の別の態様により、いくつかの実施形態では、厚さは3nmの下限値~20nmの上限値である。
【0015】
本開示のさらに別の態様により、いくつかの実施形態では、相互接続されたネットワーク構造の平均厚さは11nmである。
【0016】
本開示のさらなる態様により、いくつかの実施形態では、EUV透過率は92%超に上昇する。
【0017】
本開示のさらなる態様により、いくつかの実施形態では、EUV透過率は95%超に上昇する。
【0018】
本開示のさらに別の態様により、いくつかの実施形態では、EUV透過率は98%超に上昇する。
【0019】
本開示の一態様により、いくつかの実施形態では、550nmでの光透過率は約80%以上に上昇する。
【0020】
本開示の別の態様により、いくつかの実施形態では、550nmでの光透過率は90%以上に上昇する。
【0021】
本開示のさらなる態様により、いくつかの実施形態では、550nmでの光透過率は92.5%以上に上昇する。
【0022】
本開示のさらなる態様により、複数のナノチューブはさらに単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブを含み、単層カーボンナノチューブの層の数は1層であり、二層カーボンナノチューブの層の数は2層であり、多層カーボンナノチューブの層の数は3層以上である。
【0023】
本開示の別の態様により、単層カーボンナノチューブは、すべてのカーボンナノチューブの20~40%の割合を占め、二層カーボンナノチューブは、すべてのカーボンナノチューブの50%以上の割合を占め、残りのカーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブである。
【0024】
本開示のさらなる態様によれば、ナノチューブフィルムは、ジルコニウムコーティング層をさらに含む。
【0025】
本開示の別の態様によれば、ジルコニウムコーティング層の平均厚さは、ナノチューブフィルムの一方の側で1.5nm以下である。
【0026】
本開示の別の態様によれば、ジルコニウムコーティング層の平均厚さは、ナノチューブフィルムの各側で1nm以下の厚さである。
【0027】
本開示の別の態様によれば、ジルコニウムコーティング層の平均厚さは、ナノチューブフィルムの各側で0.5nm以下である。
【0028】
本開示の別の態様によれば、ジルコニウムコーティング層の平均厚さは、ナノチューブフィルムの各側で約0.3nmの厚さである。
【0029】
本開示の一態様によれば、ジルコニウムコーティング層は、ナノチューブフィルムの両側を覆う。
【0030】
本開示の別の態様によれば、ジルコニウムコーティング層は、ナノチューブフィルムの一方の側を覆う。
【0031】
本開示の別の態様によれば、ジルコニウムコーティングナノチューブフィルムは、4.7°(度)の角度で測定された0.5%以下の散乱を有する。
【0032】
本開示の別の態様によれば、ジルコニウムコーティングナノチューブフィルムは、4.7°(度)の角度で測定された0.3%以下の散乱を有する。
【0033】
本開示の別の態様によれば、ジルコニウムコーティングナノチューブフィルムは、4.7°(度)角度で測定された0.2%以下の散乱を有する。
【0034】
本開示を、以下の詳細な説明において、本開示の好ましい実施形態の非限定的な例として言及した複数の図面を参照して、さらに説明する。図面の複数の図の全体にわたって同様の文字は同様の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】例示的な実施形態による、ジルコニウム(Zr)コーティングペリクルフィルムを製造するフローチャートを示す。
【
図2】例示的な実施形態による、平均面密度と可視光透過率との間の相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
その種々の態様のうちの1つ以上を通して、本開示の実施形態及び/または具体的な特徴、サブコンポーネント、またはプロセスは、具体的に前述して以下に言及する利点のうちの1つ以上を明らかにすることが意図されている。
【0037】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分、反応条件、厚さなどの量を表す全ての数は、任意選択で、全ての例で「約」という用語によって修飾されると理解され得る。したがって、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似であり得る。最低限において、また特許請求の範囲と同等である原理の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、有効桁数及び通常の丸め手法を考慮して解釈されるべきである。
【0038】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であり得るにもかかわらず、特定の実施例中に示される数値は可能な限り正確に報告される。どの数値も、しかしながら、それらの各試験計測中に見られる標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含有する。本明細書全体を通して与えられる全ての数値範囲は、そのような広い数値範囲内に入る全てのより狭い数値範囲を、そのようなより狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されているかのように含む。
【0039】
ペリクルとは、半導体マイクロチップ製造の間にフォトマスクを保護する薄い透明な膜を指す場合がある。ペリクルは、境界枠及び中央アパーチャを有する保護デバイスを構成する。境界及びアパーチャの両方は、境界の少なくとも一部とアパーチャ全体の上で連続薄膜によって覆われる。アパーチャ上のこのような薄膜の中央部は自立している。ペリクルは、製造中に粒子及び混入物がフォトマスク上に落ちないようにするダストカバーとして機能する場合がある。しかし、ペリクルは、リソグラフィを行うために光が透過でき、さらに重要なことには、EUVが照射できるように十分に透明でなければならない。より効果的なEUVフォトリソグラフィを行うためには、より高レベルの光透過が要求される。
【0040】
また、EUV光がペリクルを通って水素ガスで満たされた真空またはEUVスキャナチャンバ内を進み、その後、真空または水素環境に戻ると、光の一部はペリクルによって吸収されることに続き、散乱と呼ばれる逸れた方向に放射される。このEUV散乱がマスク上に、そして最終的にはシリコンウェハ上に異常光パターンを引き起こし得ると、印刷誤差、解像度低下、及び/またはより低い製造歩留まりを引き起こす可能性がある。4.7度の角度内で元の経路から逸れる散乱光の総量が測定され、その結果は現在の業界標準の散乱の重要なパラメータになる。
【0041】
さらに、EUVリソグラフィ用のペリクルは、連続製造操作をサポートし、EUVスキャナのポンプダウン及びベントサイクルに起因する頻繁なペリクル交換及び製造中断を回避するために長い寿命を必要とする。提案された解像度の1つは、ペリクルフィルム上に薄い金属コーティングを塗布することである。EUV照射がオフである場合、または2回のEUV照射の間の休止期間中、この金属コーティングは、EUV照射中に得られて吸収された熱を放出する。これがペリクルフィルムの放射率を高めることにより、ペリクルフィルムの温度が低下し、ペリクルフィルムの寿命が延びる。
【0042】
任意の選択されたコーティング材料は、透過率の低下が非常に穏やかでありながら、高いEUV透過率を保持する必要がある。さらなるEUV透過率の低下は、EUVフォトリソグラフィの高い透過要件に起因して許容できない場合がある。第二に、金属コーティングは、厳密な散乱基準に反するような意味のある散乱パターンを変化させるものであってはならない。コーティング材料は、EUV照射中に、ペリクルフィルムの表面上に「転写」され、その表面に結合され、そしてレチクル、マスク、またはスキャナチャンバの混入に至る、いずれの剥離効果もなく、高温環境に維持される必要がある。
【0043】
この態様では、EUV照射下でペリクルフィルムを製造し、使用し、その使用を延長するアプローチの1つとして、金属コーティングと共に、このEUVペリクル用途のためのペリクルを作製することが可能な半導体基板材料としてカーボンナノチューブが提案されている。
【0044】
カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブフィルム
カーボンナノチューブ(CNT)には通常、複数の異なる種類がある。たとえば、限定することなく、単層CNT(SWCNT)、二層CNT(DWCNT)、多層CNT(MWCNT)、及び同軸ナノチューブである。それらは、1つの種類で実質的に純粋に存在する場合もあるし、他の種類と組み合わせて存在する場合も多い。個々のCNTはいくつかの他と交差する場合がある。全体として、多くのCNTがメッシュ状の自立型ミクロ構造薄膜を形成することができる。名前が示唆するように、SWCNTは1層または単層を有し、DWCNTは2層を有し、MWCNTは3層以上を有する。
【0045】
さらに、自立型フィルムを製造するいくつかの可能な方法の中で、濾過ベースのアプローチを用いて、小サイズのフィルムからEUVリソグラフィ用の十分に大きくて均一なフィルムまでのフィルムを製造した。この濾過ベースの方法によって、CNTのフィルムだけでなく、他の高アスペクト比のナノ粒子及びナノファイバ(たとえば、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)または銀ナノワイヤ(AgNW))のフィルムの迅速な製造が可能になる。このアプローチでは、ナノ粒子合成方法とフィルム製造方法とを分けているため、実質的に任意の方法によって作成される異なる種類のナノチューブを用いてもよい。異なる種類のナノチューブは、SWCNT、DWCNT、及びMWCNTから選択される2層以上のCNTSの混合物など、任意の所望の割合で混合されることができる。濾過は、濾過プロセス中のフィルム厚の不均一性が局所的な透過度の変動によって自己補正されるという意味でセルフレベリングプロセスであり、したがって、非常に望ましいフィルム形成プロセスであり、また非常に均一なフィルムの製造に対する有望な候補でもある。
【0046】
濾過プロセスが成功した後、濾過器フィルムを形成し、電子ビームまたは他の物理蒸着法によるZrコーティングのために回収する。
【0047】
図1は、例示的な実施形態による、Zrコーティングペリクルフィルムを製造するためのフローチャートを示す。
【0048】
図1に示されるように、自立型カーボンナノチューブ系ペリクルフィルムを、濾過ベースの方法によって作成してもよい。動作101において、水性懸濁液を形成するために用いるべきカーボンナノチューブ(CNT)から触媒を取り除く。例では、懸濁液内に分散する前に、CNTを化学的に精製して、触媒粒子の濃度を、熱重量分析によって測定した1重量%未満または好ましくは0.5重量%未満に下げてもよい。触媒の除去は何らかの特定のプロセスまたは手順に限定されず、所望の結果を実現するために任意の好適なプロセスを用いてもよい。
【0049】
動作102において、精製したCNTが水中に均一に分散されように、水性懸濁液を精製したCNTを用いて調製する。1つ以上のCNT懸濁液を調製するときに、カーボンナノチューブ材料を選択した溶媒と混合して、懸濁液としての最終溶液内にナノチューブを均一に分散させ得る。混合としては、機械的混合(たとえば、電磁攪拌棒及び攪拌プレートを用いる)、超音波撹拌(たとえば、浸漬超音波プローブを用いる)、または他の方法を挙げることができる。いくつかの例では、溶媒は、プロトン性または非プロトン性極性溶媒、たとえば、水、イソプロピルアルコール(IPA)及び水性アルコール混合物、たとえば、60、70、80、90、95%IPA、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチル硫化物(DMS)、及びそれらの組み合わせとすることができる。例では、溶媒内でのカーボンナノファイバの均一分散を助けるために、界面活性剤を含めてもよい。界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0050】
カーボンナノファイバフィルムは通常、MWCNT、DWCNT、またはSWCNTのうちの1つから形成される。カーボンナノファイバフィルムはまた、2つ以上の種類のCNT(すなわち、SWCNT、DWCNT、及び/またはMWCNT)の混合物を、異なる種類のCNT間の比率を変えて含んでいてもよい。
【0051】
これらの3つの異なる種類のカーボンナノチューブ(MWCNT、DWCNT及びSWCNT)はそれぞれ、特性が異なる。一例では、単層カーボンナノチューブは、ランダム配向されたカーボンナノチューブのシートへの以後の形成に対して、水または溶媒を含む水内により好都合に分散させることができる(すなわち、ナノチューブの大部分が別個に懸濁されて、他のナノチューブ上に吸着されない)。このように個々のナノチューブを水または溶媒を含む水内に均一に分散できる結果、ナノファイバ懸濁液から水及び溶媒を取り除くことによって形成されるより平面的に均一なナノチューブフィルムを製造することができる。この物理的均一性によって、フィルムにわたる特性(たとえば、フィルム全体の均一な照射透過)の均一性を改善することもできる。
【0052】
本明細書で用いる場合、用語「ナノファイバ」は直径が1μm未満のファイバを意味する。本明細書で用いる場合、用語「ナノファイバ」及び「ナノチューブ」は交換可能に使用され、両方とも、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、及び/または多層カーボンナノチューブ(炭素原子が互いにリンクされて円筒形構造を形成する)を包含する。
【0053】
例では、動作102において最初に形成した水性CNT懸濁液は、少なくとも85%を超える純度のSWCNTを有していてもよい。残りは、DWCNT、MWCNT、及び/または触媒の混合物であり得る。他の例では、異なる種類のCNTを種々の比率で伴う分散されたCNT懸濁液を調製してもよい。たとえば、約20%/75%DWCNT/SWCNT、約50%/45%DWCNT/SWCNT、約70%/20%DWCNT/SWCNT(残りはMWCNTが占める)である。例では、アニオン性界面活性剤を懸濁液内での触媒として用いてもよい。
【0054】
動作103において、CNT懸濁液を次に、さらに精製して、最初の混合物から凝集または膠着したCNTを取り除く。例では、異なる形態のCNT(非分散または凝集対十分に分散)を、遠心分離によって懸濁液から分離してもよい。次の濾過ステップに進む前に、界面活性剤懸濁されたカーボンナノチューブの遠心分離が、懸濁液溶液の濁度を減らして、最終的な懸濁液溶液内でのカーボンナノチューブの全分散を確実にすることを助けてもよい。しかし、本開示の態様はこれに限定されず、他の分離方法またはプロセスを用いてもよい。
【0055】
動作104において、動作103からのCNT上澄みを次に、濾過膜を通して濾過して、CNTウェブ(交差するCNTのフィルムの連続シート)を形成する。
【0056】
例では、CNTフィルムを作るための1つの手法は、水または他の流体を用いて、濾過器上にナノチューブをランダムパターンで堆積させる。均一に分散したCNT含有混合物を濾過器に通してまたは強制的に通して、濾過器の表面上にナノチューブを残し、ナノチューブ構造またはフィルムを形成する。結果として生じるフィルムのサイズ及び形状は、濾過器の所望の濾過面積のサイズ及び形状によって決定され、一方で、膜の厚さ及び密度は、プロセス中に用いるナノチューブ材料の数量と入力CNT材料の成分に対する濾過膜の透過度とによって決定される。なぜならば、不透過成分は濾過器の表面上に捕捉されるからである。流体中に分散したナノチューブの濃度が分かっている場合、濾過器上に堆積されるナノチューブの質量は、濾過器を通過する流体の量から決定することができ、結果として得られるフィルムの平均面密度は、ナノチューブ質量を総濾過表面積で割って決定することができる。選択された濾過器は、一般に、本開示の実施形態に従って、いずれのCNTに対しても透過性ではない。
【0057】
濾過形成されたCNTフィルムは、SWCNT、DWCNT、及び/またはMWCNTを異なる組成で組み合わせたものであり得る。
【0058】
動作105において、CNTフィルムを次に、濾過膜から取り外す。より具体的には、カーボンナノファイバはランダムに交差されて、相互接続されたネットワーク構造をプレーナ配向で形成し、薄いCNTフィルムを形成し得る。
【0059】
動作106において、持ち上げたCNTフィルムを次に、回収器フレームを用いて回収し、そして、実質的に任意の固体基板(たとえば、アパーチャが画定された金属フレーム、シリコンフレーム、またはペリクル境界)上に直接移して取り付ける。CNTフィルムをペリクル境界に取り付け、アパーチャを覆ってペリクルを形成し得る。移したフィルムを、1cm×1cmほどの小さい中央開口部を伴う金属フレームまたはシリコンフレーム上に取り付けたものが、有用であり得る。実際のEUVペリクルに対しては、はるかに大きいフィルムの需要が高い。本開示の典型的な実施形態は、既知の先行技術とは異なる構造を有する一方で、EUVリソグラフィ要件の特定の態様を満足するかまたは超える特性を示す濾過されたCNTペリクルフィルムを扱う。EUVリソグラフィ要件の特定の態様としては、限定することなく、EUV透過率(EUVT)、低い散乱、及び寿命試験が挙げられる。
【0060】
このペリクルフィルムの構造によって、極薄ペリクルフィルムが得られる。これは、非常に高いEUVT(たとえば、88%、92%、または95%を上回る)を可能にする一方で、極めて温度耐性があり(たとえば、450℃を超える温度に対して耐性がある)、また機械的に頑強である。例では、最小EUVTは88%以上の値であり得る。前述した開示内容はCNT及び水溶液に対して示したが、本開示の態様はこれに限定されず、異なるナノチューブ(たとえば、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT))を同じ原理によって用いてもよい。
【0061】
前述の薄膜は種々の方法によってコンフォーマルにコーティングしてもよい。たとえば、限定することなく、Eビーム、化学蒸着、原子層堆積、スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スパッタリング、DCスパッタリング、及びRFスパッタリングである。材料は、以下のうちのいずれか1つを含む金属元素であってもよい。シリコン、SiO2、SiON、ホウ素、ルテニウム、ホウ素、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、ルビジウム、イットリウム、YN、Y2O3、ストロンチウム、及び/またはロジウム。材料は金属、金属酸化物、または窒化物のうちのいずれか1つであってもよい。しかし、本開示の態様はこれに限定されず、コーティングにおいて材料の組み合わせを用いてもよい。
【0062】
本開示の例示的な態様によれば、ナノチューブフィルムなど、上述の薄膜は、ナノチューブフィルムの一方の側または両方の側で約1.5nm以下の厚さのジルコニウム層でコーティングされ得る。
【0063】
しかしながら、本開示の態様はこれに限定されず、ジルコニウムコーティング層は、ナノチューブフィルムの、単一側で1,5nmの厚さもしくは1nm以下の厚さであっても、または各側で0.3nmであってもよい。
【0064】
電子ビーム蒸着コーティング
電子ビーム(Eビーム)蒸着は、強いビームの形態の高エネルギー電子を用いてソース材料を蒸発させるための物理蒸着技法である。Eビームマシンは、電子の熱電子放出を引き起こし、この促進後、任意の材料、この例では、イットリウム、ルテニウム、またはジルコニウム金属を蒸発させるのに十分なエネルギーを供給することができる。プロセスの開始時に、金属元素サンプルを回転遊星取付具上に取り付ける。取付具は、Eビームチャンバ内のキャリヤ上に装填される。コーティングのために蒸発する材料を保持する容器である、るつぼ(複数可)はそのホルダ内に配置される。ホルダのシャッタを閉じてから、Eビームチャンバを閉じる。
【0065】
チャンバを5×10-6Torr以下までポンプダウンする。次いで、選択されたフィルムの厚さをデバイスに入力する。Eビーム銃に電源を投入して、るつぼ内部の材料に向けられる電子電流を発生させる。次に、材料が融解し始めるまで、電流を増加させる。堆積プロセスの場合、通常、異なる金属材料として選択された金属元素(たとえば、イットリウムまたはジルコニウム)ごとに印加された特異的な電流は、異なる融解温度を有する。
【0066】
次に、遊星キャリヤを回転させ、るつぼシャッタを開き、材料が融解した後に堆積を開始するように電流をさらに増加させる。Eビームマシンは、一般的には、堆積厚さモニタを備える。
【0067】
監視された厚さが予め選択された標的値に達すると、シャッタが閉じられ、電流がゼロまで減少し、システムは、チャンバを冷ましてから大気にすることが可能になる。
【0068】
コーティングの厚さは、標的表面上に堆積した金属元素の量によって監視されてもよい。コーティング領域上に塗布される元素の量は、コーティング面密度を決定する。所定のコーティング面密度に達すると、コーティングプロセスが停止し、コーティングが完了する。
【0069】
マグネトロンスパッタリングコーティング
マグネトロンスパッタリングは、所望の材料の高密度で不具合のないコーティングを高い堆積速度で堆積させる能力を提示する。これは、選択されたコーティング材料(ニオブであってもよい)を真空チャンバ内部のマグネトロン上に配置することから開始する。マグネトロンは、外部磁場によって制御されている電子を用いてマイクロ波を増幅させる、または発生させるための電子管である。チャンバを不活性ガスで充填する。負の電荷をマグネトロンに印加し、最終的に標的Nb分子の放出を引き起こす。次いで、これらの標的分子を基板、たとえばCNTフィルムに集める。
【0070】
表面コーティング方法は、本明細書では表面堆積も指すが、本開示の態様は、上記のリストに限定されない。本発明の実施態様は、物理蒸着(PVD)のEビーム及びマグネトロンスパッタリングに限定されない。他のPVD法としては、熱蒸発、リモートプラズマスパッタリング、電気化学堆積、及び電気めっきが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ナノチューブ表面上の薄層コーティングまたは堆積を達成するために、原子層堆積及び化学蒸着を適用可能であってもよい。
【0071】
薄膜厚
本開示の典型的な実施形態をさらに、高いEUVTを決定して確実にするのに重要なその厚さに対して分析する。より具体的には、ディメンションアイコンAFMインスルメントを最初に、米国標準技術局(NIST)追跡可能標準に対して較正した。面積がほぼ90μm×90μmのCNTペリクルフィルムを、AFM2D及び3D高さイメージングに対して選択した。ステップ高さ分析を行ってフィルム厚を測定した。3つのカーボンナノチューブフィルムサンプルから3回の測定を行って、読み取り値はそれぞれ11.8nm、10.6nm、及び11.4nmであった。試験対象物の平均厚さは約11.3±0.6nmであった。
【0072】
さらに、さらなる測定セットに基づいて、厚さ値として3nm~100nm、3nm~40nm、及び3nm~20nmが得られた。
【0073】
加えて、他のサンプルでは、厚さ値は3nm~100nm、3nm~40nm、及び3nm~20nmでもあり得る。しかし、本出願の態様はこれに限定されず、範囲は下端値が3nm~5nm、上端値が20nm~100nmであってもよい。
【0074】
DWCNT優勢なCNTペリクルフィルムが示すはるかに高い機械的強度を考えると、DWCNT優勢なCNTペリクルフィルムを極めて薄く構成して、より高いEUVT値を得ることが、EUVスキャナにおいて用いる機械的強度または完全性を犠牲にすることなくでき得る。フィルムが薄いほど、フィルム自体が吸収して保持する熱が少なくなり得、寿命も長くなり得る。
【0075】
可視光及びEUV透過率
ZrコーティングCNTペリクルフィルムの様々な特性を測定した。
【0076】
直径1mmの光ビームを用いて、試験したZrコーティングペリクルフィルムごとに、550nmでの可視光透過率を収集した。各サンプル試験は複数回の読み取りを行い、平均値を記録した。
【0077】
図2は、550nmの可視光波長でナノチューブフィルム面密度とフィルムの光透過率との間の相関を示す。
図2の表とチャートとの両方から、面密度が高くなると、強い線形相関で可視光透過率が低くなることが分かる。懸濁液調製用の平均長さ、平均直径、及びナノチューブの種類が変動すると、可視光透過率の実際の値が変化し得る。可視光透過率は、EUV透過率とより良好で強い線形相関を有する。
【0078】
サンプルのEUV透過率を現在の業界標準の13.5nm波長を用いて測定した。EUVリソグラフィ用の110×140mmのフルサイズのペリクルは、EUVT及びEUVTばらつきの平均を決定するために、最低4回の測定及び最大99回以上の測定を必要とする場合がある。正確なEUV透過率マップの場合、100回の測定など、より多くの測定が好ましい。EUV光ビームは、直径2mm未満のスポットサイズ及び形状、または1mm×2mm2の矩形形状を有してもよい。
【0079】
EUVTマップをEUVスキャニング結果に基づいて形成して、透過率の変動及び/または均一性を実証及び測定した。
【0080】
コーティング及び対照サンプルに対する高強度EUV照射下でEUVペリクル寿命試験を行った。EUV照射を、2.5時間、照射強度13.4w/cm2(600W光源を用いたときのEUVマスク上での強度に相当する)と、20Paの水素ガスにより行った。これは、13,000枚のウェハの処理にほぼ相当し、120KJ/cm2のEUV照射の総エネルギーに等しいとみなされ得る。
【0081】
製造プロセス中のより多くのウェハ露光枚数に似ている、異なるまたはより高いEUVエネルギーを、他の寿命研究にさらに適用し得る。
【0082】
また、ペリクルフィルムの表面構造粗さは、EUVフォトリソグラフィ性能及び製品歩留まりにとって重要であり得る。粗面は、EUV回折の厳密な計算に基づいて、構造再構成に使用される回折強度を変更する。いくつかの実施形態では、粗い反射面は、角度散乱輪郭がEUVリソグラフィ要件を満たすような方法で構成され得る。最終的に正確な製造及び印刷結果を確保するためのEUVリソグラフィの厳密及び臨界閾値の1つは、現在の業界標準に従って4.7度の角度で0.2%未満の散乱である。他の適応的尺度を考慮する場合、0.5%未満の散乱が許容可能であってよい。
【0083】
本開示の少なくとも1つの実施形態を、散乱試験及び結果についてEUV反射率測定によって試験した。
【0084】
コーティングペリクルフィルム
本ペリクルフィルムの構造によって、極薄ペリクルフィルムが得られる。これは、非常に高いEUVT(たとえば、92%または95%を上回る)を可能にする一方で、極めて温度耐性があり(たとえば、600℃を超える温度に対して耐性がある)、また機械的に頑強である。濾過形成されたCNTペリクルフィルムは、入力ナノチューブ材料の総量に応じて、550nmで50%~95%の範囲にあることができる、異なる光透過率を有し得る。高い光透過率を有するペリクルフィルムは、一般に88%を超える非常に高いEUV透過率を示し得、場合によっては、92%を超える、または95もしくは98%を超える結果が得られる。可視光透過率及びEUV透過率の両方は、互いに良好に相関し得る。可視光波長かEUV波長かいずれかでは、1つの透過率の値は、これらの相関に基づいて別の透過率の値の測定結果から外挿され得る。別の例では、フルサイズのペリクルフィルム(約110mm×144mm以上)のサンプル全体スキャンによって、平均96.69±0.15%透過率が示され、1.5mm×1.5mm中心領域のスキャンによって、平均96.75±0.03%透過率が得られる。EUVT均一性を評価するためのより厳しい基準を用いて、任意の焦点領域における同じナノチューブフィルムからの任意の2つのEUVT測定値の差を計算する。この要件は、5%未満、2%未満、さらには1.0%未満またはそれ以下となる可能性がある。この典型的な実施形態のフルサイズのペリクルの場合、マルチポイントEUVT均一性試験結果(たとえば、サンプルあたり100ポイント測定)は、1.5%未満、0.9%未満、0.6%、または0.4%未満の何らかの極めて小さい変動を示す。
【0085】
選択された金属元素でナノチューブペリクルフィルムをコーティングして試験し、表1、2、及び3に示す結果が得られた。
【表1】
【0086】
本開示の例示的な態様によれば、表1に提供されるような第一Zrコーティングペリクル(Zr-1)は、Eビーム方法によってCNTフィルムの一方の側に最初に堆積した1.0nm厚のZr層を有した。ナノチューブフィルムを180度回転させ、反対側に同じプロセスで同じ材料を堆積させた。
【0087】
本開示の別の例示的な態様によれば、表1に提供されるような第二Zrコーティングペリクル(Zr-2)は、最初に堆積した0.5nm厚のZr層を有し、その後、同じEビーム堆積方法によってナノチューブフィルムの反対側に堆積した別の0.5nm厚のZr層が続いた。
【0088】
本開示の例示的な態様の1つによれば、表1に提供されるようなイットリウムコーティングペリクルは、CNTフィルムの一方の側に最初に堆積した1.0nm厚のY層を有し、その後、Eビームによって同じ膜の反対側に別の1.0nm厚のY層が堆積する。
【0089】
本開示の例示的な態様によれば、表1に提供されるようなルテニウムコーティングペリクルは、マグネトロンスパッタリングによってペリクルフィルムの一方の側に堆積した1.5nm厚のRu層を有する。
【0090】
本開示の例示的な態様によれば、表1に提供されるようなコーティングのないまたはpristineナノチューブペリクル(UC-1)は、90.4%の平均可視光透過率と、約96.7%の測定EUVTとを有する。
【0091】
Zr-1、Zr-2、Yコーティング、Ruコーティング、及びUC-1の全てのペリクルフィルムは、ほぼ同じ面密度を有するpristineサンプルの同じバッチから製造された。表1に示される試験結果は、本開示の少なくとも1つの例示的な実施形態を実証する。Ruコーティングフィルムは、可視光透過率を著しく低下させた。Ruコーティング及びイットリウムコーティングナノチューブフィルムは、4.7度の角度で0.4%を超える散乱試験結果を有する。不安定な寿命試験結果(すなわち、寿命試験中にフィルムが破損する)と共に、ナノチューブペリクルのRuコーティング及びイットリウムコーティングは、コーティングのないまたはZrコーティングナノチューブフィルムと比較して、EUV要件を満たさない。
【0092】
Zrコーティングのさらなる研究を行い、試験結果を以下に示し、表2及び表3に要約した。
【表2】
【0093】
本開示の例示的な一態様によれば、第三Zrコーティングペリクル(Zr-3)は、CNTフィルムの一方の側にのみ堆積した平均1.6nm厚のZr層を有する。一例では、Zrコーティングは、マグネトロンスパッタリングプロトコルを用いて行われてもよい。さらにZr-3は、約90.0%の平均可視光透過率を有すると測定された。フィルムは、マグネトロンスパッタリングプロトコルによって他方の側にさらにコーティングされてもよい。
【0094】
本開示の別の例示的な態様によれば、第四Zrコーティングペリクル(Zr-4)は、CNTフィルムの一方の側に最初に堆積した0.3nm厚のZr層を有し、その後、Eビーム方法によって同じフィルムの反対側に堆積した別の0.3nm厚のZr層が続く。Zr-4は約80.06%の可視光透過率を有する。
【0095】
本開示のさらに別の例示的な態様によれば、第五Zrコーティングペリクル(Zr-5)は、CNTフィルムの一方の側に最初に堆積した0.3nm厚のZr層を有し、その後、同じEビーム方法によって同じ膜の反対側に堆積した別の0.3nm厚のZr層が続く。Zr-5は約90.0%の可視光透過率を有する。
【0096】
本開示のさらに別の例示的な態様によれば、第六Zrコーティングペリクル(Zr-6)は、CNTフィルムの一方の側に最初に堆積した0.3nm厚のZr層を有し、その後、同じEビーム方法によって同じフィルムの反対側に堆積した別の0.3nm厚のZr層が続く。Zr-6は約93.0%の可視光透過率を有する。
【表3】
【0097】
本開示の例示的な一態様によれば、第七Zrコーティングペリクル(Zr-7)は、CNTフィルムの一方の側に最初に堆積したZrの0.19マイクログラム/cm2のコーティング面密度を有し、その後、Eビームによって同じフィルムの反対側に堆積した、0.19マイクログラム/cm2の面密度を有する別のZrコーティングが続く。Zr-7は、約90.4%の平均可視光透過率を有する。
【0098】
本開示の別の例示的な態様によれば、第八Zrコーティングペリクル(Zr-8)は、CNTフィルムの一方の側に最初に堆積したZrの0.19マイクログラム/cm2の面密度を有し、その後、Eビームによって同じフィルムの反対側に堆積した、0.19マイクログラム/cm2の面密度を有する別のZrコーティングが続く。Zr-8は約93.0%の平均可視光透過率を有する。
【0099】
Zr-1~Zr-8のペリクルフィルムを含む、上述の例示的な実施形態のいずれかの全てのコーティングは、2ナノメートル未満の厚さを有し、Zr-4~Zr-6フィルムコーティングは、サブナノメートル範囲内にある。例示的な態様によれば、各層はそれ自体で、表面上の全ての可能な領域またはスポットを覆わなくてもよい。本開示の一実施形態によれば、コーティング厚さまたはコーティング面密度は、プロセス自体、起こり得るプロセス不具合、ならびに技術的な課題及び困難を考慮した平均値であってもよい。
【0100】
表2に示されるように、90.3%(UC-2)及び93.1%(UC-3)の平均可視光透過率を有するpristineナノチューブペリクルは、それぞれ約96.9%及び98.0%の測定EUVTを有する。
【0101】
本開示のさらに別の態様によれば、コーティングナノチューブペリクルフィルムは、一般に、Zr-4~Zr-8に対して88%以上の高いEUV透過率を有する。ペリクルフィルムZr-5~Zr-8は、93%以上のEUVTを有し、Zr-6のEUVTは95%を上回る。
【0102】
本開示のさらに別の態様によれば、表2及び表3に列挙される全てのペリクルフィルムは、水素ガスの存在により、600ワットの照射出力で少なくとも10,000枚のウェハに相当する寿命試験(すなわち、EUV照射の総エネルギーは少なくとも100kJ/cm2)に、いかなる破損もなく耐える。
【0103】
本出願の提出時に、0.7nm未満の高解像度EUVフォトリソグラフィはまだ開発中である。業界標準に対する実際の寿命試験パラメータはコンセンサスに達していない。本明細書に詳述される10,000枚のウェハに相当する試験を上回る、高いウェハ枚数に相当する試験が100kJ/cm2超で依然として可能であり得る。少なくとも1つの研究では、本開示の一態様による、コーティングのないナノチューブフィルムは、32,000枚のウェハに相当する寿命試験(288kJ/cm2のEUV照射の総エネルギー)では破損し、薄いZrコーティング極薄ナノチューブフィルム(フィルムの各側に1.0nm厚のコーティング)は残存し、インタクトなままであった。
【0104】
図示のように、本出願の例示的な実施形態による、極薄ナノチューブペリクル及びペリクルフィルムのZuコーティングは、0.3nmの平均厚さでZrコーティングを有する極薄ナノチューブ系EUVペリクルを構成する。
【0105】
表2は、水素ガスの存在している600ワットの照射出力で10,000枚のウェハに相当する寿命試験(EUV照射の総エネルギー100kJ/cm2)に耐えるナノチューブペリクルからのデータを例示的に表す。それらは、4.7度の角度で測定した0.2%未満の低いEUV散乱結果と、可視光透過率が550nmで約80%~93%の範囲にある、異なるフィルム密度とを有する。
【0106】
表3は、100kJ/cm2のEUV照射の総エネルギーによる寿命試験に耐え、4.7度の角度で測定した0.2%未満の散乱と、可視光透過率が550nmで約90%~93%であるフィルム密度とを有する、ナノチューブペリクルからのデータを例示的に表す。
【0107】
本明細書で説明した実施形態の例示は、種々の実施形態の一般的な理解を与えることを意図している。例示は、本明細書に記載の生成物または方法を構成する生成物及び方法の要素及び特徴部のすべてを完全に説明するものとして機能することは意図していない。本開示を検討すれば、他の多くの実施形態が当業者には明らかとなり得る。他の実施形態が本開示から利用及び導出され得るため、本開示の範囲から逸脱することなく構造的及び論理的な置換及び変更が行われ得る。さらに、例示は単に代表であり、一定の比率で描かれてはいない場合がある。例示内でのある割合は誇張されている場合があり、一方で他の割合は最小限にされている場合がある。したがって、本開示及び図は限定ではなくて例示的であると考えるべきである。
【0108】
本明細書では、本開示の1つ以上の実施形態に、単に便宜上及び本出願の範囲を何らかの特定の発明または発明概念に自発的に限定することを意図することなく、用語「発明」によって個別に及び/または一括して言及している場合がある。また、本明細書では特定の実施形態について例示及び説明してきたが、当然のことながら、同じまたは類似の目的を実現するようにデザインされた任意の後続の配置を、示した特定の実施形態の代わりに用いてもよい。本開示は、種々の実施形態のありとあらゆる後続の適応または変化に及ぶことを意図している。本説明を検討すれば、前述の実施形態の組み合わせ及び本明細書では具体的に記載していない他の実施形態が当業者には明らかである。
【0109】
本開示の要約は、特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないことを理解して提出される。加えて、前述の詳細な説明では、本開示を簡素化する目的で、単一の実施形態において種々の特徴部を一緒にグループにするかまたは説明している場合がある。本開示は、請求に係る実施形態が、各請求項において明確に説明したものよりも多い特徴部を必要とするという意図を反映していると解釈してはならない。むしろ、以下の請求項が反映するように、本発明の主題は、開示した実施形態のうちのいずれかの特徴部の全部未満に向けられている場合がある。したがって、以下の請求項は詳細な説明に組み込まれており、各請求項は、個別に請求された主題を規定するものとして独立している。
【0110】
前述で開示した主題は例示的であって限定ではないと考えるべきであり、添付の請求項は、すべてのこのような変更、拡張、及び他の実施形態であって本開示の真の趣旨及び範囲に含まれるものを対象として含むことが意図されている。したがって、法律によって許容される最大程度まで、本開示の範囲は、以下の請求項及びそれらの均等物の最も広い許容される解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限も限定もしてはならない。
【国際調査報告】