(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】エネルギービンのダウンサンプリングのためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240912BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240912BHJP
【FI】
A61B6/03 573
A61B6/03 540Z
A61B6/42 530S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516742
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 US2022044002
(87)【国際公開番号】W WO2023044114
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】511293629
【氏名又は名称】マーケット ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】511237117
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE LELAND STANFORD JUNIOR UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ジラット-シュミット,タル
(72)【発明者】
【氏名】グロンベルグ,フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】ショーリン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジアファ
(72)【発明者】
【氏名】トムセン,ブライアン・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ティボルト,ジャン-バプティスト
(72)【発明者】
【氏名】シェイ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルソン,マット
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,イーロン
(72)【発明者】
【氏名】ペルク,ノーバート
(72)【発明者】
【氏名】ワン,アダム・エス
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093EA07
4C093EB12
4C093FA32
4C093FA34
(57)【要約】
コンピュータ断層撮影イメージングシステムにおいて検出器データをダウンサンプリングする方法及びシステムが提供される。一実施例では、光子計数型コンピュータ断層撮影(PCCT)システムのための方法は、撮像対象のスキャン中に、前記PCCTシステムの光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素ごとに、各光子によって前記光子計数型検出器に与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、及び前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成することを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子計数型コンピュータ断層撮影(PCCT)システムのための方法であって、
撮像対象のスキャン中に、前記PCCTシステムの光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素ごとに、各光子によって前記光子計数型検出器に与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、
画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、及び
前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成すること
を含む、方法。
【請求項2】
ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用することは、前記複数のエネルギービンのうちのどのエネルギービンが結合されるべきかを指定する目標ビンの組合せに従って、前記複数のエネルギービンを結合して前記減少した数のエネルギービンにすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
目標ビンの組合せに従って、前記複数のエネルギービンを結合して前記減少した数のエネルギービンにすることは、少なくとも2つの隣接しないビンを結合することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用することは、2つ以上の目標重みセットを前記複数のエネルギービンに適用して、重み付けされたビンの2つ以上のセットを形成することと、重み付けされたビンの各セットを加算して前記減少した数のエネルギービンを形成することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ファントムのキャリブレーションスキャンから得られたキャリブレーションの検出器データに基づいて前記ビンファクタを特定することをさらに含み、前記キャリブレーションの検出器データは、前記光子計数型検出器の画素ごとに、前記検出器に入射した各光子のエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリブレーションの検出器データに基づいて前記ビンファクタを特定することは、前記減少した数のエネルギービンを形成するために、前記複数のエネルギービンのうちのどのエネルギービンが結合されるべきかを指定する目標ビンの1つ又は複数の組合せを特定することを含み、目標ビンの1つ又は複数の組合せを特定することは、
エネルギービンのペアを反復的に結合すること、
X線投影測定値、シミュレートされたデータ、又はエネルギービンの結合された各ペアと分離している残りのエネルギービンから再構成された画像に基づいて、エネルギービンの結合されたペアごとに最適化指標を決定すること、
最良の最適化指標を有するエネルギービンのペアを選択すること、及び選択されたペアを単一のスーパービンとして設定すること、並びに
前記減少した数のエネルギービンに達するまで、前記反復的に結合すること、前記決定すること、及び前記選択することを繰り返すこと
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記最適化指標は、仮想単一エネルギー画像のコントラスト対ノイズ比又は基準物質弁別画像の物質弁別ノイズを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリブレーションの検出器データに基づいて前記ビンファクタを特定することは、1つ又は複数の目標重みセットを特定することであって、各目標重みセットは、重み付けされたビンを形成するために、前記複数のエネルギービンの各エネルギービンに適用されるそれぞれの重みを指定し、重み付けされたビンは加算されて前記減少した数のエネルギービンを形成する、1つ又は複数の目標重みセットを特定することを含み、
1つ又は複数の目標重みセットを特定することは、
前記キャリブレーションの検出器データに基づいて前記検出器のフォワードモデルを決定すること、
可能性のある複数の重みセットのうちの重みセットのペアごとに、重みセットのペアを複数のエネルギービンに適用して、重み付けされ加算された2つのビンを形成すること、
前記フォワードモデルを、重み付けされ加算された2つのビンに適用して、基準物質の厚さを推定すること、及び
推定された基準物質の厚さ又は仮想単一エネルギー画像の分散を最小化する重みセットのペアを選択すること
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを前記減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすることは、前記ビンファクタを適用して、5つ又は8つのエネルギービンを2つ又は3つのエネルギービンにダウンサンプリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記検出器データの各画素及び各ビューに対して、同じビンファクタを適用して、前記複数のエネルギービンをダウンサンプリングする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記検出器データの異なる画素及び/又は異なるビューに対して、異なるビンファクトを適用して前記複数のエネルギービンをダウンサンプリングする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ビンファクタは撮影対象のサイズに基づいて選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記画素は光子計数型検出器の検出器素子である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
光子計数型コンピュータ断層撮影(PCCT)システムであって、
撮影される被検体に向けてX線ビームを放出するX線源、
前記被検体によって減衰されたX線ビームを受け取る光子計数型検出器、及び
前記光子計数型検出器に動作可能に接続されたデータ収集システム(DAS)であって、
撮像対象のスキャン中に、前記光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素ごとに、各光子によって前記光子計数型検出器に与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、
画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、
前記PCCTシステムのスリップリングを通じて、前記減少した数のエネルギービンを、非一時的メモリを含みDASに動作可能に接続されたコンピュータに送信することであって、前記非一時的メモリの命令が実行されると、前記命令は前記コンピュータに前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成させるように、前記コンピュータを設定する、送信すること
を実行するように構成されるデータ収集システム(DAS)
を含む、PCCTシステム。
【請求項15】
ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用することは、前記複数のエネルギーのうちのどのエネルギービンが結合されるべきかを指定する目標ビンの組合せに従って、複数のエネルギービンを結合して前記減少した数のエネルギービンにすることを含む、請求項14に記載のPCCTシステム。
【請求項16】
ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用することは、2つ以上の目標重みセットを前記複数のエネルギービンに適用して、重み付けされたビンの2つ以上のセットを形成することと、重み付けされたビンの各セットを加算して前記減少した数のエネルギービンを形成することとを含む、請求項14に記載のPCCTシステム。
【請求項17】
前記画素は前記光子計数型検出器の検出器素子である、請求項14に記載のPCCTシステム。
【請求項18】
光子計数型X線メージングシステムのための方法であって、
撮像対象のスキャン中に、前記X線イメージングシステムの光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素ごとに、各光子によって前記光子計数型検出器に与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、
画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、及び
前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成すること
を含む、方法。
【請求項19】
光子計数型X線イメージングシステムであって、
撮影される被検体に向けてX線ビームを放出するX線源、
前記被検体によって減衰されたX線ビームを受け取る光子計数型検出器、及び
前記光子計数型検出器に動作可能に接続されたデータ収集システムであって、
撮像対象のスキャン中に、前記光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素ごとに、各光子によって前記光子計数型検出器に与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、
画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、
前記減少した数のエネルギービンを、非一時的メモリを含みDASに動作可能に接続されたコンピュータに送信することであって、前記非一時的メモリの命令が実行されると、前記命令は前記コンピュータに前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成させるように、前記コンピュータを設定する、送信すること
を実行するように構成されるデータ収集システム
を含む、PCCTシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された対象の実施形態は、イメージングシステム及び方法に関し、より詳細には、コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステムにおけるエネルギービンのダウンサンプリングに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステムでは、陰極により発生した電子ビームがX線源又はX線管内のターゲットに進む。電子がターゲットに衝突することにより生成された扇形又は円錐形のX線ビームは、被検体(患者など)に向かって進む。X線は、物体によって減衰した後、X線検出器のアレイに衝突し、画像が生成される。CT画像の質は、光子計数CT(PCCT)を使用することによって向上させることができる。光子計数CTは、X線検出器が光子計数型検出器であり、光子をカウントしてスペクトル情報を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
一実施例では、光子計数型コンピュータ断層撮影(PCCT)システムのための方法は、撮像対象のスキャン中に、前記PCCTシステムの光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素又は検出器素子ごとに、前記光子計数型検出器に衝突した各光子によって与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、及び前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成することを含む、方法。
【0005】
本明細書の上記の利点及び他の利点、ならびに特徴は、以下の詳細な説明だけで、又は以下の詳細な説明を添付の図面と組合せて、容易に明らかになる。上記の概要は、発明を実施するための形態にさらに記載された概念から選択されたものが簡略化した形で記載されていることを理解されたい。これは、特許請求の範囲に記載された対象の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲は、発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲によって独自に画定される。さらに、特許請求の範囲に記載された対象は、上記又は本開示のいずれかの部分で記載された欠点を解決する実装態様に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の様々な態様は、以下の発明を実施するための形態を読み、添付図面を参照することにより、更に理解することができる。
【
図1】本開示の1つ又は複数の実施形態によるコンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステムの図である。
【
図2】本開示の1つ又は複数の実施形態による例示的なCTイメージングシステムのブロック概略図である。
【
図3】本開示の1つ又は複数の実施形態によるPCCTシステムの例示的な検出器アレイの概略図である。
【
図4】本開示の実施形態に従ってエネルギービンをダウンサンプリングする概略的な方法を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態による、エネルギービンをダウンサンプリングするために適用される目標ビンの組合せを特定するための方法を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態による、エネルギービンをダウンサンプリングするために適用される目標重みセットを特定する方法を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施形態による、エネルギービンのカウント値をダウンサンプリングする方法を示すフローチャートである。
【
図8】結合されたエネルギービンのエネルギースペクトルの例示的なグラフを示す。
【
図9】隣接するビンのみが結合された結合ビンのエネルギースペクトルの例示的なグラフである。
【
図10】完全なエネルギービンのカウント値と結合されたエネルギービンのカウント値とを用いて生成された被検体の例示的なグレースケール画像を示す。
【
図11】エネルギービンのカウント値を2つのビンにダウンサンプルするために適用可能な目標重みセットの例を示すグラフである。
【
図12】
図11の目標重みセットを用いて結合された2つのビンのエネルギースペクトルの例示的なグラフを示す。
【
図13】完全なビンエネルギーのカウント値と重み付けされ加算されたエネルギービンのカウント値を用いて生成されたカルシウムの基準画像の例を示す。
【
図14】完全なビンエネルギーのカウント値と重み付けされ加算されたエネルギービンのカウント値を用いて生成された水の基準画像の例を示す。
【
図15】ビンを反復的に結合して目標ビンの組合せを特定するプロセスを概略的に示す。
【
図16】局所的な方法でビンカウント値をダウンサンプリングするために適用することができる例示的な重みセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明を実施するための形態、及び本明細書に開示された対象の実施形態は、光子計数型コンピュータ断層撮影(PCCT)システムによって取得された投影データをダウンサンプリングするための方法及びシステムに関する。コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステムでは、X線源又はX線管が、物体(患者など)に向けてX線ビームを放射し、被検体によって減衰されたX線が1つ又は複数の検出器(例えば、検出器アレイ)によって検出され、1つ又は複数の画像を再構成するために使用される投影データが生成される。X線検出器又は検出器アレイは、典型的には、検出器で受け取るX線ビームをコリメートするコリメータ、コリメータに隣接して配置されX線を光エネルギーに変換するシンチレータ、及び隣接するシンチレータから光エネルギーを受け取り電気信号を生成するフォトダイオードを含む。検出器アレイで受け取った減衰X線ビーム放射の強度は、典型的には、患者によるX線ビームの減衰量に依存する。検出器アレイの各検出器素子は、各検出器素子が受け取った減弱ビームを示す個別の電気信号を生成する。電気信号は、データ処理システムに伝送され、解析される。データ処理システムは電気信号を処理して画像の生成の支援を行う。一般に、CTシステムでは、X線源及び検出器アレイは、撮影面内且つ患者の周囲をガントリに対して回転し、画像は、異なるビュー角度の複数のビューの投影データから生成される。例えば、X線源の1回転に対して、CTシステムは1000ビューを生成することができる。
【0008】
従来のCTイメージングシステムは、放射線エネルギーを電流信号に変換する検出器を利用しており、この電流信号は或る時間にわたって積分され、測定され、最終的にデジタル化される。しかしながら、このような検出器の欠点は、検出された光子の数及び/又は検出された光子のエネルギーに関するデータ又はフィードバックを提供できないことである。すなわち、シンチレータによって放出される光は、衝突したX線の数とX線のエネルギーレベルとの両方の関数である。フォトダイオードは、シンチレーションからのエネルギーレベル又は光子数を識別できない場合がある。例えば、2つのシンチレータが同等の強度で照射され、それぞれのフォトダイオードに同等の出力が得られる場合がある。しかし、同等の光出力が得られるにもかかわらず、各シンチレータが受け取るX線の数が異なる場合があり、そして、X線の強度が異なる場合がある。
【0009】
対照的に、PCCT検出器は、高い空間分解能で光子計数のフィードバック及び/又はエネルギー弁別のフィードバックを提供することができる。PCCT検出器は、X線計数モードで動作させることができ、また各X線イベントのエネルギー測定モードでも動作させることができる。直接変換型エネルギー弁別検出器の構造には幾つかの材料を使用することができるが、好ましい材料の一つとして半導体が示されている。これに使用される典型的な材料としては、カドミウム亜鉛テルル化物(CZT)、カドミウムテルル化物(CdTe)、シリコン(Si)などがあり、これらの材料に、画素ごとに分割された複数のアノードが取り付けられる。
【0010】
しかし、光子計数型検出器の欠点は、フォトンカウンティング検出器が、画素数及びエネルギービンの増加によって、比較的大量のデータを生成することである。例えば、PCCTシステムは、データ収集システム(DAS)の読み出し部の一部とすることができる比較器によって決定される複数(例えば、5又は8)のエネルギービンを有することができる。多くのエネルギービンを有するシステムは、読み出しDASの複数の比較器で形成することができる。各比較器は、エネルギーの設定レベルを超えると動作し、対応するX線エネルギーレベルを超えた光子数をレジスタに蓄積するように設定できる。検出器アレイは回転するため、収集されたデータは、スリップリングを通じてデータ処理コンピュータに送信され、画像再構成されるが、スリップリングは帯域幅に制限がある。そのため、スリップリングを通じてデータを伝送するのに比較的長い時間がかかるため、初期の画像再構成が遅れることがある。
【0011】
従って、本明細書で提案されているシステム及び方法は、検出器データを、完全な5つ又は8つのビンではなく、少ない数のビン(例えば、2つ又は3つのビン)にダウンサンプリングしており、これにより、スリップリングを通じて伝送されるデータ量が低減される。検出器データをダウンサンプリングすることにより、画像を比較的高速に再構成して、検査できるように表示することができ、臨床的な意思決定を支援することができる。一部の実施例では、検出器データは、システムのキャリブレーション中に特定された目標ビンの組合せに従ってビンカウント値を結合する(本明細書では単に「ビンを結合する」とも呼ばれる)ことによってダウンサンプリングすることができる。品質指標(コントラスト対ノイズ比など)を最大化するビンの組合せを選択することによって、画質の妥協を最小限に抑えて、完全な数(例えば、8つ)のビンを結合して2つのビン又は3つのビンにする目標ビンの組合せを特定することができる。他の例では、検出器データは、ビンの2つ以上の加重和を求めることによってダウンサンプリングすることができる。各加重和は、ビンの重みのそれぞれのセットを全てのビンに適用し、重み付けされたビンを加算することによって求めることができる。ビンの重みの各セットは、システムのキャリブレーション中に経験的に特定することができ、例えば、広範囲の異なる物体の物質とサイズに対して、加重和からの基準物質の厚さの推定値のクラメール・ラオの下限(CRLB)と、元のビンカウント値からのCRLBとの間の比を最小化する重みを選択することにより特定することができる。各実施形態について、ダウンサンプリングされたビンのカウント値を使用して、仮想単一エネルギー画像(VMI)を生成する及び/また物質弁別(MD)を実行することができる。
【0012】
本技術に従ってイメージングスキャンを実行するために使用することができるPCCTシステムの例を
図1及び
図2に示す。
図3は、PCCTシステムの例示的な検出器アレイを示しており、X線源によって被検体に照射されたX線の光子は、検出器アレイの検出器によってカウントされる。カウントされた光子は、ビンに分割することができ、ビンは、
図4に示す方法に従ってダウンサンプリングすることができ、この方法は、PCCTシステムのキャリブレーション中に(
図5の方法に従って、及び
図15に概略的に示されているように)目標ビンの組合せ又は(
図6の方法に従って)目標重みセットを特定し、次いで(
図7の方法に従って)スキャン中に目標ビンの組合せ又は目標重みセットを適用することを含む。キャリブレーション中に目標ビンの組合せを選択するとき、ビンの組合せはVMI又はMDに対して最適化することができ、これによって、
図8によって示されるように、異なるビンの組合せが得られ、
図10によって示されるように、画質を不当に損なわないようにすることができる。
図9によって示されるように、隣接していないビンの結合が許容されることによって、単にエネルギービンの数を減少させるだけでなく、高い画質を提供することができる。ビンの加重和及び対応するエネルギースペクトルを求めるための例示的な目標重みセットが
図11、
図12、及び
図16に示されており、これらも、
図13及び
図14によって示されているように、画質を過度に損なうことはない。
【0013】
図1は、光子計数型検出器を用いてCTイメージングを実行するように構成された例示的なPCCTシステム100を示す。特に、PCCTシステム100は、被検体112(患者など)、無生物、製造された1つ又は複数の部品、及び/又は異物(体内に存在するインプラント、ステント、及び/又は造影剤など)を撮影するように構成されている。PCCTシステム100はガントリ102を含み、このガントリは、テーブル114に横たわる被検体112の撮影に使用されるX線放射ビーム106(
図2参照)を照射する少なくとも1つのX線源104を更に含むことができる。具体的には、X線源104は、ガントリ102の反対側に配置された検出器アレイ108に向かってX線放射ビーム106を照射するように構成されている。
図1には単一のX線源104のみが示されているが、或る例示的な実施形態では、複数のX線源及び複数の検出器を使用して、複数のX線放射ビーム106を出力し、同じ又は異なるエネルギーレベルの患者に対応する投影データを取得してもよい。一部の実施形態では、X線源104は、ピークキロボルト(kVp)高速スイッチングよってデュアルエネルギーのジェムストーンスペクトルイメージング(GSI)を実行することができる。本明細書に記載された実施形態では、採用されるX線検出器は、互いに異なるエネルギーのX線光子を区別することができる光子計数型検出器である。
【0014】
特定の実施形態では、PCCTシステム100は、反復画像再構成法又は解析的画像再構成法を用いて被検体112のターゲットボリュームの画像を再構成する画像プロセッサユニット110を更に含む。例えば、画像プロセッサユニット110は、フィルタ補正逆投影法(FBP)などの解析的画像再構成手法を使用して、患者のターゲットボリュームの画像を再構成することができる。別の例として、画像プロセッサユニット110は、ASIR(advanced statistical iterative reconstruction、CG(conjugate gradient)、MLEM(maximum likelihood expectation maximization)、MBIR(model-based iterative reconstruction)などの反復画像再構成手法を使用して、被検体112のターゲットボリュームの画像を再構成してもよい。一部の例では、画像プロセッサユニット110は、反復画像再構成手法に加えて、解析的画像再構成手法(FBPなど)も使用することができる。
【0015】
一部のCTイメージングシステムの構成では、X線源は、X-Y-Zのデカルト座標系に対して定義され一般に「撮影ボリューム」と呼ばれるコーン状のX線放射ビームを照射する。X線放射ビームは、撮影される物体(患者又は被検体など)を通過する。X線放射ビームは、物体によって減衰した後、検出器素子のアレイに衝突する。検出器アレイで受信された減衰X線放射ビームの強度は、物体によるX線放射ビームの減衰に依存する。アレイの各検出器素子は、検出器位置におけるX線ビーム減衰の測定値である個別の電気信号を生成する。すべての検出器素子からの減衰測定値を個別に取得して透過プロファイルを作成する。
【0016】
一部のCTイメージングシステムでは、X線源及び検出器アレイは、放射線ビームが物体と交差する角度が絶えず変化するように、ガントリによって、撮影されるべき物体の周囲を撮影ボリューム内で回転する。あるガントリ角度においてX線検出器アレイから得られたX線放射減衰測定値のグループ(例えば投影データ)は「ビュー」と呼ばれる。物体の「スキャン」は、X線源及び検出器が1回転する間に、異なるガントリ角又はビュー角において作成されたビューのセットを含む。
【0017】
図2は、
図1AのPCCTシステム100と同様の例示的なイメージングシステム200を示す。本開示の態様では、イメージングシステム200は、被検体204(例えば、
図1Aの被検体112)を撮影するように構成されている。一実施形態では、イメージングシステム200は、検出器アレイ108(
図1A参照)を含む。検出器アレイ108は、更に、複数の検出器素子202を含んでいる。複数の検出器素子202は、被検体204(患者など)を通過するX線放射ビーム106(
図2参照)を感知して、対応する投影データを取得する。一部の実施形態では、検出器アレイ108は、セル又は検出器素子202の複数の列を含むマルチスライス構成で製造される。このような構成では、検出器素子202の1つ以上の追加の列が、投影データを取得するために並列構成で配置される。検出器素子202は、画素又は検出器画素と呼ばれることもある。
【0018】
特定の実施形態では、イメージングシステム200は、所望の投影データを取得するために、被検体204の周囲の異なる角度位置を移動するように構成される。従って、ガントリ102と、ガントリに取り付けられた構成要素は、例えば異なるエネルギーレベルの投影データを取得するために、回転中心206の周りを回転するように構成することができる。あるいは、被検体204に対して投影角度が時間の関数として変化する実施形態では、取り付けられた構成要素は、円弧に沿って移動するのではなく、一般的な曲線に沿って移動するように構成されてもよい。
【0019】
X線源104及び検出器アレイ108が回転すると、検出器アレイ108は減衰したX線ビームのデータを収集する。検出器アレイ108によって収集されたデータは、前処理及び較正を受けて、スキャンされた被検体204の減弱係数の線積分を表すようにデータが調整される。処理されたデータは、一般に投影(プロジェクション)と呼ばれる。一部の実施例では、検出器アレイ108の個々の検出器又は検出器素子202は、個々の光子の相互作用を1つ又は複数のエネルギービンに記録する光子計数型検出器を含むことができる。
【0020】
取得された投影データのセットは、基準物質弁別(BMD)に使用することができる。BMDの間、測定された投影は、物質密度投影のセットに変換される。物質密度投影は再構成され、骨、軟組織などの各基準物質の物質密度マップのセット若しくは物質密度画像のセット、及び/又は造影マップを形成することができる。これらの密度マップ又は密度画像は、順に関連付けられ、撮影ボリュームの基準物質(例えば、骨、軟組織、及び/又は造影剤)の3Dボリュメトリック画像を形成することができる。
【0021】
再構成されると、イメージングシステム200によって生成された基準物質画像によって、2つの基準物質の密度で表される被検体204の内部特徴が明らかになる。密度画像を表示して、これらの特徴を示すことができる。医学的状態(病気の状態など)の診断、より一般的には医療事象の診断に対する従来のアプローチでは、放射線科医又は医師は、密度画像のハードコピー又は表示された密度画像を検討して、関心のある特徴部分を識別すると考えられる。このような特徴部分としては、特定の解剖学的構造又は臓器の病変、サイズ、及び形状、並びに個々の専門家の技能及び知識に基づいて画像の中から識別可能であると考えられる他の特徴部分がある。
【0022】
一実施形態では、イメージングシステム200は、構成要素の動き(ガントリ102の回転及びX線源104の動作など)を制御する制御機構208を含んでいる。特定の実施形態では、制御機構208は、X線源104に電力及びタイミング信号を供給するように構成されたX線コントローラ210を更に含む。更に、制御機構208は、撮影要件に基づいてガントリ102の回転速度及び/又は回転位置を制御するように構成されるガントリモータコントローラ212を含んでいる。
【0023】
。
特定の実施形態では、制御機構208は、検出器素子202から受け取ったアナログデータをサンプリングし、後続の処理のためにアナログデータをデジタル信号に変換するように構成されたデータ収集システム(DAS)214を更に含む。DAS214は、検出器素子202のサブセットからのアナログデータを、いわゆるマクロ検出器に選択的に集約するように構成することができる。DAS214によってサンプリングされデジタル化されたデータは、スリップリング213を通じて、コンピュータ又はコンピューティング装置216に送信される。一実施例では、コンピューティング装置216は、データを記憶装置又は大容量記憶装置218に記憶する。記憶装置218は、例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、コンパクトディスク読取り/書込み(CD-R/W)ドライブ、デジタルバーサタイルディスク(DVD)ドライブ、フラッシュドライブ、及び/又はソリッドステートストレージドライブとすることができる。
【0024】
更に、コンピューティング装置216は、DAS214、X線コントローラ210、及びガントリモータコントローラ212のうちの1つ以上に命令及びパラメータを提供して、システム動作(データ取得及び/又はデータ処理など)を制御する。特定の例示的な実施形態では、コンピューティング装置216は、オペレータ入力に基づいてシステム動作を制御する。コンピューティング装置216は、例えば、コンピューティング装置216に動作可能に結合されたオペレータコンソール220によって、命令及び/又は走査パラメータを含むオペレータ入力を受け付ける。オペレータコンソール220は、オペレータが命令及び/又は走査パラメータを指定できるように、キーボード(図示せず)又はタッチスクリーンを含むことができる。
【0025】
図2ではオペレータコンソール220は1つだけ図示されているが、例えば、システムパラメータを入力する又は出力する、検査をリクエストする、データをグラフ化する、及び/又は画像を閲覧するために、2つ以上のオペレータコンソールがイメージングシステム200に結合されてもよい。更に、特定の実施形態では、イメージングシステム200は、配置可能な1つ又は複数の有線ネットワーク及び/又は無線ネットワーク(インターネット及び/又は仮想プライベートネットワーク、無線電話ネットワーク、無線ローカルエリアネットワーク、有線ローカルエリアネットワーク、無線広域ネットワーク、有線広域ネットワークなど)を通じて、複数のディスプレイ、プリンタ、ワークステーション、及び/又は施設若しくは病院内に又は全く異なる場所にローカルに若しくは遠隔に配置されている同様の装置に結合することができる。
【0026】
一実施形態では、例えば、イメージングシステム200は、画像保存通信システム(PACS)224を含んでいる又はPACS224に結合されている。例示的な実施形態では、PACS224は、放射線科情報システム、病院情報システムなどの遠隔システムに更に結合され、及び/又は内部又は外部のネットワーク(図示せず)に結合されて、別の場所にいるオペレータが命令及びパラメータを供給する及び/又は画像データにアクセスできるようにする。
【0027】
コンピューティング装置216は、オペレータから供給された及び/又はシステムで定義された命令及びパラメータを使用して、テーブルモータコントローラ226を動作させる。テーブルモータコントローラ226は、テーブル114を制御することができ、テーブルは電動テーブルとすることができる。具体的には、テーブルモータコントローラ226は、被検体204のターゲットボリュームに対応する投影データを取得するために、被検体204がガントリ102に適切に位置決めされるようにテーブル114を移動させることができる。
【0028】
前述したように、DAS214は、検出器素子202によって取得された投影データをサンプリングし、デジタル化する。その後、画像再構成器230が、サンプリングされデジタル化されたX線データを用いて高速再構成を実行する。
図2は画像再構成器230を独立した実体として例示しているが、特定の実施形態では、画像再構成器230はコンピューティング装置216の一部を形成していてもよい。あるいは、画像再構成器230はイメージングシステム200に存在していなくてもよく、代わりに、コンピューティング装置216が画像再構成器230の1つ又は複数の機能を実行してもよい。更に、画像再構成器230は、ローカルに又は遠隔に配置されていてもよく、有線ネットワーク又は無線ネットワークを用いてイメージングシステム200に動作可能に接続されていてもよい。特に、1つの例示的な実施形態では、「クラウド」ネットワーククラスタ内のコンピューティングリソースを画像再構成器230のために使用してもよい。
【0029】
一実施形態では、画像再構成器230は、再構成された画像を記憶装置218に記憶する。あるいは、画像再構成器230は、診断及び評価のために有用な患者情報を生成するために、再構成された画像をコンピューティング装置216に送信してもよい。或る実施形態では、コンピューティング装置216は、再構成された画像及び/又は患者情報を、コンピューティング装置216及び/又は画像再構成器230に通信可能に結合されたディスプレイ又はディスプレイ装置232に送信してもよい。一部の実施形態では、再構成された画像は、コンピューティング装置216又は画像再構成器230から、短期保存又は長期保存のために記憶装置218に送信されてもよい。
【0030】
スリップリング213を通じて、ガントリ102に存在する構成要素と外部装置(コンピューティング装置216及び/又は画像再構成器230など)との間で、情報を伝送することができる。スリップリング213は、回転するガントリと容易に電子通信できるようにするものである。
【0031】
ここで
図3を参照すると、PCCT光子計数型検出器アレイ300が示されており、これは
図2の検出器アレイ108の非限定的な例である。検出器アレイ300はレール304を含んでおり、レール304の間には、コリメートブレード又はプレート306が配置されている。プレート306はX線302をコリメートするように配置されており、X線302がコリメートされた後、そのビームはプレート306の間に配置された検出器アレイ300の複数の検出器モジュール308に衝突する。一例として、検出器アレイ300は57個の検出器モジュール308を含むことができ、各検出器モジュール308は64x16の検出器素子(例えば、画素)のアレイサイズを有する。その結果、検出器アレイ300は64行912列(16個の画素x57個の検出器モジュール)を有することになり、ガントリ回転(例えば、
図1のガントリ102)ごとに64スライスのデータを同時に収集することができる。
【0032】
上述したように、各検出器モジュール308の各検出器素子は、放射線エネルギーを、エネルギー弁別データ又は光子数データを含む電気信号に直接変換するように設計することができる。例えば、光子が検出器モジュール308の検出器素子に衝突すると、光子のエネルギーに比例する電荷が検出器素子の半導体層内に生成される。比較器は、生成された電荷の電圧を1つ又は複数の閾値と比較し、1つ又は複数の閾値に対する電圧に基づいて(複数のビンのうちの)1つのビンのカウント値をインクリメントすることができる。複数のビンは、例えば、最適な物質弁別を実行するように設定されたエネルギー閾値を有する8つのビンを含むことができる。
【0033】
したがって、X線ビームによって、各検出器素子に対して複数の光子カウント値(例えば、各エネルギービンに対して1つ以上のカウント値)が生成され、その結果、積分型検出器によって生成されるデータよりも実質的に多くのデータが生成される。光子計数型検出器により収集されたデータから画像を生成することは時間がかかり、これによって、画像のレビューが遅くなってしまうことがある。更に、画像再構成のためにDASから外部コンピューティング装置にデータを伝送するには、困難なことがある。この理由としては、回転するガントリが、データを伝送するためのスリップリングを必要とし、このスリップリングは帯域幅が限られているため、伝送可能なデータ量が制限される場合があるからである。したがって、本明細書では、スリップリングを通じて伝送されるデータ量及び/又は画像再構成に使用されるデータ量をダウンサンプリングするダウンサンプリング方法が提供される。
【0034】
第1の実施例では、エネルギービンをダウンサンプリングすることは、エネルギービンを結合して2つ又は3つの結合ビンにすることを含むことができ、ビンの組合せは、キャリブレーションの透過測定を使用して決定され、(グレースケール画像及び/又は物質弁別画像を生成するための)画質が維持されるように最適な組合せが決定される。キャリブレーション中にビンの組合せを特定するために、各反復処理において、ダウンサンプリング最適化法によって、エネルギービンの全てのペアの組合せが評価され、画質指標を最大化する組合せが選択される。ダウンサンプリングは、画質指標が維持される間、反復的に継続される。画質指標は、コントラスト要素を含む測定と含まない測定との間のコントラスト対ノイズ比(CNR)であってもよいが、他の指標(基準物質弁別ノイズなど)も可能である。目標ビンの組合せを使用したエネルギービンのダウンサンプリングに関する追加の詳細は、
図4、
図5、及び
図7~
図9に関して以下に説明される。
【0035】
第2の実施例では、エネルギービンのダウンサンプリングは、重みの2つ(又は3つ)のセットをエネルギービンのカウント値に適用することによって、ビニングされた元のカウント値と実質的に同じ情報量を含むエネルギービンの2つ又は3つの加重和を形成することを含むことができる。目標ビンの組合せを使用してエネルギービンをダウンサンプリングして2つ又は3つの加重和を形成することに関する追加の詳細は、
図4、
図6、
図7、
図10、及び
図11に関して以下に説明される。
【0036】
エネルギービンをダウンサンプリングするためのいずれの例も、物質弁別を実行するため、及び/又は仮想単一エネルギー画像を生成するために適用することができる。本明細書で説明するエネルギービンのダウンサンプリングは、計算負荷が重くなってしまうこと又はスペクトル情報が実質的に損失してしまうことなしに、スリップリングを通じて伝送する必要があるデータサイズを大幅に削減することができ、その結果、処理時間を速くする/再構成時間を短くすることができる。
【0037】
図4を参照すると、
図4には、エネルギービンのダウンサンプリングを使用してスキャンを実行するための方法400が示されている。方法400は、CTイメージングシステムの一部として含まれた及び/又はCTイメージングシステムに動作可能に結合された1つ又は複数のコントローラ又はコンピューティング装置(DAS214、X線コントローラ210、画像再構成器230、及び/又はコンピューティング装置216など)のメモリに記憶された命令に従って実行することができる。
【0038】
402において、方法400は、1つ又は複数のキャリブレーションスキャンを実行してビンファクタを生成及び記憶することを含む。ビンファクタは、撮影対象(患者など)に対する後続のスキャン中にエネルギービンを圧縮/ダウンサンプリングするために適用することができるビンの組合せ又は重みを含むことができる。従って、一部の例では、キャリブレーションスキャンを実行して、404に示されるように、目標ビンの1つ又は複数の組合せを特定することができる。目標ビンの各組合せは、完全な数のエネルギービンを2つ又は3つの結合ビンに減少させるために、どの隣接するビン又は隣接しないビンが結合されるべきかを指定することができる。目標ビンの組合せを特定する追加の詳細は、
図5を参照して以下で説明される。簡単に説明すると、キャリブレーションスキャンの間、既知のサイズ及び既知の組成の物体(ファントムと呼ばれる)をスキャンしながら検出器データを取得することができる。検出器データは、各光子のエネルギーに基づいて複数のビン(検出器の構成に応じて、8つ又は5つのエネルギービンなど)に分割された光子カウント値を含むことができる。ビン結合プロセスを反復的に適用して、伝送された及び処理されたデータ量を低減しつつ、画質指標(CNR又は基準物質弁別のノイズなど)を最適化するビンの組合せを特定することができる。特定されたビンの組合せは、ビンファクタとして保存することができる。
【0039】
他の例では、キャリブレーションスキャンを実行して、406に示されるように、1つ又は複数の目標重みセットを特定することができる。各目標重みセットは、各エネルギービンに適用する重みを指定することができ、重み付けされたビンは加算され、完全な数のエネルギービンを2つ又は3つの加算ビンに削減することができる。目標重みセットを特定する追加の詳細は、
図6を参照して以下で説明される。簡単に説明すると、キャリブレーションスキャン中に収集された検出器データを使用して検索を実行し、加重和からの基準物質の厚さの推定値の分散を、ビニングされた元のカウント値からの分散と同程度に最小化する2つ又は3つの重みセットを特定することができる。特定された重みセットは、ビンファクタとして保存される。
【0040】
408において、方法400は、選択されたスキャンプロトコルに従って患者をスキャンして、ビンカウント値を含む検出器データを取得することを含む。検出器データは、光子計数型検出器の各画素に対して(例えば、各検出器素子202に対して)、光子計数型検出器において各光子によって付与されたエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含み、この光子カウント値は本明細書ではビンカウント値と呼ばれる。患者のスキャン中、CTイメージングシステムのX線源(例えば、
図1及び
図2のX線源104)は、選択されたスキャンプロトコルによって定められたスキャンプリスクリプション(例えば、設定されたX線源又はX線管の電流及び電圧)に従ってX線を放出するように制御することができる。検出器データは、X線源及び検出器アレイが患者の周りを回転する際に検出器アレイ(例えば、
図1及び
図2の検出器アレイ108)から取得することができ、その結果、複数のビューの検出器データが取得される。各ビューに対して、検出器アレイの各画素又は検出器素子ごとに各エネルギービンの光子カウント値が(例えば、DAS214によって検出器アレイが読み出されている間に)生成される。例えば、8つのエネルギービンを有する検出器構成では、検出器アレイの画素又は検出器素子ごとに、及びビューごとに、8つの光子カウントが生成される場合がある。このように、検出器アレイの出力は、光子カウント値が、検出器アレイに入射する各光子のエネルギーに基づいてエネルギービンに分割されるため、ビンカウント値と呼ばれることがある。エネルギービンの数は、検出器の構成に基づいている。例えば、シリコン検出器は、光子エネルギーを8つのエネルギービンに弁別するように構成され、テルル化カドミウム検出器は、光子エネルギーを5つのビンに弁別するように構成される。エネルギービンを画定するエネルギー閾値は、キャリブレーションの段階で決定することができる及び/又は特定のスキャンプロトコルに基づいて決定することができる。例えば、エネルギー閾値は、基準物質弁別を最適化する、及び/又は、X線源によって放出された所与の入射スペクトルに対して検出されたスペクトル情報を最大化するように決定することができる。非限定的な例では、エネルギービンの閾値は、8ビン検出器では4keV、14keV、30keV、37keV、47keV、58keV、67keV、及び79keVであり、5ビン検出器では10keV、34keV、50keV、62keV、及び76keVである。
【0041】
410では、保存されたビンファクタを用いてビンカウント値がダウンサンプリングされる。412で示されるように、ビンカウント値をダウンサンプリングすることは、404で決定された目標ビンの組合せに従ってエネルギービンを結合することを含む。例えば、目標ビンの組合せが、ビン1、ビン2、ビン3、及びビン7を結合して第1のビンにし、ビン4、ビン5、及びビン6を結合して第2のビンにし、ビン8を第3のビンにすることを示す場合、ビン1、ビン2、ビン3、及びビン7が結合され、ビン4、ビン5、及びビン6が結合され、ビン8がそのまま残るように、(各画素の)ビンカウント値を結合することができる。他の例では、414で示されるように、406で決定された目標重みセットに従ってビンカウント値を結合することができる。例えば、目標重みセットは、第1の目標重みセットと第2の目標重みセットとを含むことができる。各目標重みセットは、各エネルギービンのカウント値に適用されるそれぞれの重みを含むことができる。第1の目標重みセットの場合、各重みはそれぞれのエネルギービンに適用することができ、これにより複数のエネルギービンのうちの1つ以上のエネルギービン又は全てのエネルギービンのカウント値を調整することができる。例えば、第1の目標重みセットは、ビン1には0.5が重み付けされ、ビン2には1が重み付けされることを示す。重みを適用すると、ビン1のカウント値は半分になるが、ビン2のカウント値は変化しない。第1の目標重みセットからの重みを適用した後、重み付けされたカウントを加算して、重み付けされた第1のビンを形成することができる。同じプロセスを、第2の目標重みセットに対して実行して(例えば、第2の目標重みセットが元の全てのビンのカウント値に適用され、その後加算される重み付けされたカウント値の第2のセットを形成する)、重み付けされた2つのビンを形成してもよい。ビンカウント値のダウンサンプリングに関する更なる詳細は、
図7を参照して以下に示される。
【0042】
415において、ダウンサンプリングされたビンカウント値は、ダウンサンプリングされたビンカウント値から1つ又は複数の画像を再構成するように構成された画像再構成器又は他の適切なコンピューティング装置に送られる。ダウンサンプリングされたビンカウント値は、CTスキャナのDASからCTスキャナのスリップリングを通じて画像再構成装置に送ることができる。
【0043】
416において、方法400は、ダウンサンプリングされたビンカウント値から1つ以上の画像を再構成することを含む。画像は、画像再構成器又は他の適切なコンピューティング装置によって再構成することができる。1つ又は複数の画像を再構成することは、418で示されるように、ダウンサンプリングされたビンカウント値から1つ又は複数のグレースケール(例えば、仮想単一エネルギー)画像を再構成することを含むことができる。VMIを再構成するために、最尤推定(MLE)、最小二乗法、多項式フィッティング、ニューラルネットワーク、又は他の適切な弁別法を使用して、ダウンサンプリングされたビンカウント値を、選択された基準物質又は減弱要素(例えば、コンプトン散乱及び光電効果)に弁別すること、次いで、フィルタ逆投影法又は他の適切な再構成技術を用いて物質弁別(MD)画像を再構成することを含むことができる。選択されたエネルギー(例えば、68keV)におけるVMIは、再構成された画像の線形結合によって形成することができる。
【0044】
追加的又は代替的に、1つ又は複数の画像を再構成することは、420で示されるように、1つ又は複数のMD画像を再構成することを含むことができる。MD画像を再構成するために、上記で説明した適切な弁別方法(例えば、MLE又は最小二乗法)を使用して、ダウンサンプリングされたビンカウント値を、選択された基準物質(例えば、カルシウム及び水)に弁別し、次いで、適切な再構成技術(フィルタ逆投影など)を使用してMD画像を再構成することができる。422では、再構成された画像が表示装置に表示される、及び/又はメモリに保存される(例えば、患者検査の一部としてPACSに保存される)。
【0045】
従って、複数のエネルギービンカウント値(5つ又は8つのエネルギービンなど)は、減少した数のエネルギービン(2つ又は3つなど)に圧縮されて送信され、画像再構成することができ、これによりCT検査中の少なくとも初期画像の再構成を高速化することができる。圧縮された検出器データ(例えば、減少した数のエネルギービン)が画像再構成器に送信されると、収集された完全な検出器データ量(例えば、全てのエネルギービンカウント値)も画像再構成器に送信することができ、これにより、利用可能な(例えば、圧縮されていない)全ての検出器データを用いて追加の画像を再構成することができる。
【0046】
図5は、検出器のビンカウント値をダウンサンプリングするために使用される目標ビンの組合せを特定するための方法500を示す。方法500は、CTイメージングシステムの一部として含まれた及び/又はCTイメージングシステムに動作可能に結合された1つ又は複数のコントローラ又はコンピューティング装置(DAS214、X線コントローラ210、画像再構成器230、及び/又はコンピューティング装置216など)のメモリに記憶された命令に従って実施することができる。一部の例では、方法500は、方法400の一部として(例えば、方法400の404の目標ビンの組合せを特定するものとして)実行することができる。
【0047】
502において、方法500は、1つ又は複数のファントムを使用してキャリブレーションスキャンを実行することを含んでいる。先に説明したように、キャリブレーションスキャンは、特定のCTイメージングシステムを校正する(各検出器素子の応答を決定する、最適なエネルギービン閾値を特定するなど)ために実行することができる。キャリブレーションスキャンの間、1つ又は複数のファントムがスキャンされ、撮影対象の物質組成及び厚さが既知になる。ファントムは、1つ又は複数の適切な物質(ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリエチレン(PE)など)で構成することができる。一部の例では、ファントムは、水、ヨウ化物、カルシウム、及び/又は他の物質(例えば、他の造影剤)の領域を含むことができる。一部の実施例では、複数のファントムのうちの1つ以上のファントムを、ステップウェッジファントムとすることができる。キャリブレーションスキャン中、X線源がX線を放出し、スキャンされた各ファントムによって減衰した後にCTイメージングシステムの検出器によって検出されるように、CTイメージングシステムを制御することができる。
【0048】
504において、検出器から完全なビンカウント値が取得される。完全なビンカウント値は、
図4に関して上述した完全なビンカウント値と同様とすることができ、例えば、検出器の構成によって許容される完全な数のエネルギービン(5つ又は8つのビンなど)に分割された光子カウント値である。ビンカウント値(例えば、複数のエネルギービンに分割された光子カウント値)は、検出器の各画素に対して、及び各ファントムのスキャン中に得られた各ビューに対して取得することができる。完全なビンカウント値は、DAS214から画像再構成器230及び/又はコンピューティング装置216に送信することができる。
【0049】
506では、目標ビンの1つ又は複数の組合せが特定される。目標ビンの各組合せは、
図4に関して上述したように、検出器データをダウンサンプリングするためにどのエネルギービンが結合されるべきかを指定することができる。特定される目標ビンの組合せの数は、CTイメージングシステムの構成、実行されるスキャンの画像再構成の目的、実行されるスキャンに適用されるスキャンプロトコル、及び/又は他の要因に基づいている。例えば、3つの基準物質が弁別されるスキャンプロトコルの場合には、目標ビンの3つの組合せを特定することができるが、2つの基準物質が弁別されるスキャンプロトコルの場合には、目標ビンの2つの組合せのみを特定することができる。さらに、以下により詳細に説明されるように、目標ビンの組合せは、最適化指標を目標レベルに維持するように特定することができ、目標ビンの組合せの数は、最適化を目標レベルに維持することに基づくようにすることができる。例えば、目標ビンの2つの組合せのみを特定する場合、最適化指標にペナルティが存在する可能性があるため、目標ビンの2つの組合せの代わりに目標ビンの3つの組合せを特定することができる。
【0050】
目標ビンの組合せを特定するために、全ての可能なビンのペアを、キャリブレーションの投影におけるコントラスト対ノイズ比(CNR)又は基準MDのノイズなどの最適化指標(投影におけるCNR又はMDノイズは、再構成された画像のCNR又はMDノイズに関係しており、したがって、代理の指標としての役割をすることができる)に対する影響について反復的に評価することができる。最適なビンのペアが特定されると、目標ビンの所望の数の組合せが特定されるまで、次に最適なビンのペアを特定する及び/又は追加のビンを最適なビンのペアに加えるために、プロセスを繰り返すことができる。これを達成するために、508で示されるように、目標ビンの組合せを特定することは、ビンの最初のペアに対して、それらのビンを結合して、残りのビンを分離して保持することを含んでいる。例えば、ビン1及び2を結合し、ビン3~ビン8を分離して保持する/ビン3~ビン8そのものとして保持する。次に、510で示されるように、結合されたビンと分離されたビンから最適化指標が計算される。最適化指標は、X線投影測定値、シミュレートされたデータ、又は画像から計算する若しくは決定することができる。例えば、最適化指標は、キャリブレーションのファントム(ステップウェッジファントムなど)に対して得られたX線投影測定値から計算する又は決定することができる。例えば、2つの基準物質(例えば、PEとPVC)の組合せのキャリブレーション投影測定値を得ることができる。この投影測定値に対して、結合されたビンと分離された残りのビンを使用して物質弁別を実行し、2つの基準物質の厚さを推定することができる。最適化指標として、基準物質の推定値のノイズを定量化する指標を使用することができる。結合されたビンと分離された残りのビンから得られる基準推定値を線形結合して、VMI投影推定値を形成することができる。同じ方法を用いて、基準物質の異なる組合せによる測定に対してVMI投影を推定してもよい。これら2つのVMI推定値の間のCNRを最適化指標として使用することができる。物質弁別ノイズを定量化する指標の一例は、以下の式である。
【0051】
【0052】
別の例として、最適化指標は、結合されたビン及び分離された残りのビンから生成された1つ又は複数の画像から計算されてもよい。例えば、
図4に関して上述したように、ファントムのCTの収集でVMIを生成することができ、VMIのCNR(例えば、ヨード又は骨のCNR)を最適化指標として決定することができる。また、基準ノイズ又はVMIのCNRの指標の組合せを、最適化指標として使用することもできる。目標ビンの組合せは、イメージングシステム及び検出器応答のモデルによってシミュレートされた投影を用いて最適化することもできる。
【0053】
このプロセスは、512で示されるように、残りの各ペアに対して繰り返される。例えば、次の反復処理では、ビン1とビン3が結合され、残りの全てのビン(ビン2を含む)は分離されたままに維持され、結合されたビン(1及び3)と残りの分離されたビン(2及び4-8)を使用して最適化指標が計算される。この計算の後の次の反復処理では、ビン1及びビン4が結合され、次にビン1及びビン5が結合され、最適化指標が全ての可能なペアに対して計算される。514で、最良の最適化指標(例えば、最大CNR又は最低MDノイズ)を有するビンのペアが選択され、そのペアのビンが結合されて、「スーパー」ビンとなる。
【0054】
516では、所望のビン数に達するまで、プロセスが再び繰り返される。最初のスーパービンが作成されると、スーパービン内の複数のビンは組み合わされたままに維持されるが、ビンの組合せを特定する目的では単一のビンとして扱われる。例えば、最初の反復処理でビン1及びビン2を含むスーパービンが特定された場合、次の反復処理では、ビン1及びビン2はビン3と結合されるが、他の全てのビンは分離されたままとなり、次にビン1及びビン2はビン4と結合されるが、他の全てのビンは分離されたままとなり、以下繰り返される。例えば、ビン3及びビン4が結合された場合、ビン1及びビン2は組み合わされたままである。スーパービンは単一のビンとして機能するからである。各エネルギービンがスーパービンに割り当てられ、スーパービンの数が所望のビンの数に等しくなると、目標ビンの組合せが特定され、目標ビンの組合せは、518で示されるように、メモリに(例えば、DAS214に)保存され、イメージングターゲットの後続のスキャン(
図4に関して上述したスキャンなど)中に適用される。他の例では、ビンを結合して最適化指標を計算する反復プロセスは、最適化指標が目標レベルに達するまで繰り返すことができる。例えば、目標ビンの3つの組合せが、目標レベルを超えるようにCNRを維持するが、目標ビンの2つの組合せがCNRを目標レベルより低下させる場合、目標ビンの3つの組合せが選択され、メモリに保存することができる。
【0055】
図15は、複数のビンを反復的に結合して上記の目標ビンの組合せを特定するプロセス1500を概略的に示す。プロセス1500は、1502で示される8つの元のビンから開始する。8つの元のビンは、上記のように反復的に結合されてペアになり、各ペアは(残りの分離したビンと組合せて)最適化指標について評価される。1504に示すように、最良の最適化指標(例えば、最も高いCNR)が得られたビンのペアは、ビン1及びビン7であった。ビン1及びビン7は、単一のビンとして機能するスーパーペアを形成し、プロセスが繰り返される。1506で示されるように、最良の最適化指標となる次のペアはビン2及びビン8であり、これは第2のスーパービンを形成する。処理が繰り返され、次のペアを特定する。当該次のペアは、1508で示されるように、ビン1、ビン6、及びビン7である(ビン1及びビン7は単一のビンとして機能するため、ペアは、1+7と6とのペアになる)。次の反復処理では、1510に示すように、ビン4及びビン5のペアがスーパービンと見なされる。この処理は、1512に示すように、最後の2つのビンが特定されるまで、再び(2回)繰り返される。
【0056】
物体の厚さ、物体の材料、又はその他のパラメータに基づいて目標ビンの組合せを特定するために、目標ビン又はスーパービンを特定することを異なるファントムを使用して繰り返すことができる。さらに、目標ビンの組合せは、検出器全体に対して、ビューごとに特定することができる。他の例では、目標ビンの異なる組合せを、画素又は画素の領域ごとに、及び/又はビューごとに特定することができる。例えば、キャリブレーションは、ステップウェッジファントムを用いて実行することができ、最適な目標ビンの組合せは、患者の異なる厚さ(これは、ステップウェッジの異なる部分に対応する)に対して、及び異なるイメージングタスクに対して、キャリブレーション中に決定することができる。以下により詳細に説明するように、スカウトスキャンから又はスキャンプリスクリプションから、患者サイズを推定することができ、患者サイズから類似のキャリブレーションデータを特定することによって、最適なビンの組合せを選択することができる。
【0057】
さらに、一部の例では、キャリブレーションデータを使用して、目標ビンの各組合せに対してそれぞれのモデルを推定することができ、各モデルを適用して物質弁別を実行することができる。一部の例では、モデルを、それぞれの生の(native)エネルギービンに対して推定することができる(例えば、8つのビンが収集される場合、8つのモデルを、各エネルギービンに対して1つずつ推定することができる)。しかし、これらの生のエネルギービンのモデルを適用した場合、物質弁別の品質が低下する(例えば、不安定になる)恐れがある。代わりに、モデルを、個々のビンではなく、目標ビンの各組合せに対して推定すると、物質弁別の品質が向上する可能性がある。一部の例では、これらのモデルを使用して、MDノイズの最適化指標を推定することができる。
【0058】
図6は、検出器のビンカウント値をダウンサンプリングするために使用される目標重みセットを特定するための方法600を示す。方法600は、CTイメージングシステムの一部として含まれた及び/又はCTイメージングシステムに動作可能に結合された1つ又は複数のコントローラ又はコンピューティング装置(DAS214、X線コントローラ210、画像再構成器230、及び/又はコンピューティング装置216など)のメモリに記憶された命令に従って実行することができる。一部の実施例では、方法600は、方法400の一部として(例えば、方法400の406の目標重みセットを特定するものとして)実行することができる。
【0059】
602において、方法600は、1つ又は複数のファントムを使用してキャリブレーションスキャンを実行することを含んでいる。先に説明したように、キャリブレーションスキャンは、特定のCTイメージングシステムを校正する(各検出器素子の応答を決定する、最適なエネルギービン閾値を特定するなど)ために実行することができる。キャリブレーションスキャンの間、1つ又は複数のファントムがスキャンされ、撮像対象の物質組成が既知になる。ファントムは、1つ又は複数の適切な物質(PVCやPEなど)で構成することができる。一部の例では、ファントムは、水、ヨウ化物、カルシウム、及び/又は他の物質(例えば、他の造影剤)の領域を含むことができる。一部の実施例では、複数のファントムのうちの1つ以上のファントムを、ステップウェッジファントムとすることができる。非限定的な例として、ステップウェッジファントムは、4cmのステップ間隔を有する0~40cmの水と、0.2cmのステップ間隔を有する0~2cmのカルシウムとを直交方向に含む2Dステップウェッジファントムとすることができる。キャリブレーションスキャン中、X線源がX線を放出し、スキャンされた各ファントムによって減衰した後にCTイメージングシステムの検出器によって検出されるように、CTイメージングシステムを制御することができる。
【0060】
604では、検出器から完全なビンカウント値が取得される。完全なビンカウント値は、
図4に関して上述した完全なビンカウント値と同様とすることができ、例えば、検出器の構成によって許容される完全な数のエネルギービン(5つ又は8つのビンなど)に分割された光子カウント値である。ビンカウント値(例えば、複数のエネルギービンに分割された光子カウント値)は、検出器の各画素に対して、及び各ファントムのスキャン中に得られた各ビューに対して取得することができる。完全なビンカウント値は、DAS214から画像再構成器230及び/又はコンピューティング装置216に送信することができる。
【0061】
606では、完全なビンカウント値に基づいて検出器に対してフォワードモデルが定義される。フォワードモデルは、以下で詳細に説明するように、ビニングされた(又は、ビニングされ重み付けされた)カウント値から物質弁別の最尤推定を実行するために使用することができる。フォワードモデルは、各ビンのエネルギー応答とビームハードニング効果を説明する(及び補正する)ことができる。
【0062】
半経験的な多色のベール・ランベルトモデルを適用して、各エネルギービンで検出されたカウント値を記述することができ、このモデルによって、各ビンにおける非理想的な検出器エネルギー応答とビームハードニング効果をうまく表現することができる。一部の例では、フォワードモデルと、それに対応するパラメータは以下のパラメータを含んでいる。
【数2】
【0063】
このモデルは、各ビンのエネルギー応答とビームハードニング効果を補正するために追加の補正項を使用する。各エネルギービンに対して、M個の基準物質及びK個の補正項を使用すると、推定するシステムパラメータがK(M+1)+2個存在する。この場合、エネルギービンiにおいて観測された平均カウント値y
i(t
n)に対しては以下のようになる。
【数3】
【0064】
ここで、tn=(tCalcium,n;, tWater,n;)は、n番目のキャリブレーションデータ点における2つの基準物質の既知の線積分である。
【0065】
この半経験的フォワードモデルをさらに改善するために、比y
i(t)/λ
i(t)を2次多項式関数f(t)でフィッティングすることができ、期待されるビニングされた光子カウント値は、以下の式で表すことができる。
【数4】
この半経験的フォワードモデルは、ビニングされた(又はビニングされ重み付けされた)カウント値から物質弁別の最尤推定を実行するのに使用することができる。
【0066】
608において、方法600は、2つ以上の目標重みセットを特定することを含んでいる。各目標重みセットは、重み付けされたビンカウント値を加算して検出器データをダウンサンプリングする前に、
図4に関して上述したように、各エネルギービンが重み付けされるべき量を指定することができる。特定されるべき目標重みセットの数は、CTイメージングシステムの構成、実行されるスキャンの画像再構成の目的、実行されるスキャンに適用されるスキャンプロトコル、及び/又は他の要因に基づいている。例えば、3つの基準物質が弁別されるスキャンプロトコルの場合には、3つの目標重みセットを特定することができるが、2つの基準物質が弁別されるスキャンプロトコルの場合には、2つの目標重みセットのみを特定することができる。
【0067】
目標重みセットを特定することは、610で示されるように、連続重み空間を検索して2つの目標重みセットを発見することを含むことができる。一般に、重みは任意の連続的な実数値をとることができる。重みは±1の範囲に正規化することができる。これは、正規化、スケーリング、又は重みの線形独立の組合せによって、重み付けされ加算されたビンカウント値が同じ情報量を含むように重みが生成するからである。一部の例では、重みは、一般的な連続重みの特別な場合であるバイナリ重みであってもよい。バイナリ重みの場合、重みは0又は1のいずれかであり、元の各ビンは、加算によって、重み付けされたビンに寄与するかもしれないし、寄与しないかもしれない。元のビンからの寄与は、相互に排他的であってもよく、その場合、元の各ビンは1回だけ寄与し、元の各ビンは加算されたビンに1回だけ寄与する。目標重みセットは、異なる物体の材料及び厚さに対して、どの2つの重みのセットが、投影データのセットから推定された基準物質の厚さの分散の比を最小化するかに基づいて、可能性のある全ての重みセットの中から特定することができる。したがって、(可能性のある全ての重みセットから特定される)重みセットの各ペアを使用して、完全な/元のビンカウント値を重み付けすることができ、それぞれの重み付けされたビンカウント値を加算することができる。612で示されるように、ビンカウント値に適用される重みセットの各ペアに対して、610で特定されたフォワードモデルを適用して基準物質の厚さを推定し、614で示されるように、物質の厚さの推定値の分散を最小化する重みセットのペアが目標重みセットとして特定される(この場合、加重和からの基準物質の厚さの推定値のクラメール・ラオの下限(CRLB)と、元のビンカウント値からのCRLBとの間の比)。形成されるべき望ましい数のビンが2つのビンではなく3つのビンの場合にも、同様の手法を適用することができ、この場合、(可能性のある全ての重みセットから特定される)3つの重みセットの各セットに対して基準物質の厚さが決定され、3つの重みセットのうちの、基準厚さの推定値の分散を最小化するセットが、目標重みセットとして選択される。
【0068】
特定の例として、重みの2つのセットW
i,jを特定することができ、加重和b
Wj=ΣiW
i,jb
iが、ビニングされた元のカウント値b
iと同様のスペクトル情報を含む。ここで、jは重みの2つのセットの添え字であり、iは元のエネルギービンの添え字である。重み付けされた2つの測定値からの物質弁別推定値のノイズ性能を、ビニングされた元のカウント値からのノイズ性能と同等にするために、異なる物体の物質及び厚さに対して、投影データの2つのセットから推定される基準物質の厚さの分散の比が最小化される。最尤推定量は漸近的に不偏であるため、解析的に計算されたクラメール・ラオの下限(CRLB)を代わりに使用して目的関数を形成することができる。
【数5】
【0069】
ここで、CRLBW(Ca,Ca)及びCRLBW(water,water)は、それぞれ、重みWで生成された2つの重み付けされたビンの測定値による不偏推定量から推定されたカルシウムの厚さ及び水の厚さの分散の下限値であり、CRLBW(VMI60keV)は60keVにおける対応する仮想単一エネルギー画像の分散である。CRLB(Ca,Ca),CRLB(water,water),CRLB(VMI60keV)は、ビニングされた元のカウント値から推定された分散の対応する下限値である。解析的なCRLBの式を得るために、元のビニングされたカウント値については独立したポアソン分布を仮定し、エネルギー重み付けされた測定値については多変量ガウス分布を仮定することができる。
【0070】
目標重みセットが特定されると、目標重みセットは、618で示されるように、メモリに(例えば、DAS214に)保存され、撮影対象の後続のスキャン(
図4に関して上述したスキャンなど)中に適用される。
【0071】
目標重みセットの特定は、上述のようにステップウェッジファントムを用いて実行することができ、ステップウェッジファントムの物質厚さの全ての組合せに対してCRLBを最小化する目標重みセットが特定される。しかしながら、追加的又は代替的に、物体の厚さ、物体の材料、又は他のパラメータに基づいて目標重みセットを特定するために、上述のプロセスを異なるファントムを用いて繰り返してもよいし、ステップウェッジファントムの物質厚さの異なる組合せに対して異なる目標重みセットを特定してもよい。さらに、目標重みセットは、検出器全体にたいして、ビューごとに特定することができる。他の例では、異なる目標重みセットを、画素又は画素の領域ごとに、及び/又はビューごとに特定することができる。
【0072】
図7は、検出器ビンカウント値をダウンサンプリングするための方法700を示す。方法700は、CTイメージングシステムの一部として含まれた及び/又はCTイメージングシステムに動作可能に結合された1つ又は複数のコントローラ又はコンピューティング装置(DAS214、X線コントローラ210、画像再構成器230、及び/又はコンピューティング装置216など)のメモリに記憶された命令に従って実行することができる。一部の実施例では、方法700は、方法400の一部として(例えば、方法400の410のビンカウント値をダウンサンプリングするものとして)実行することができる。
【0073】
702では、方法700は、撮像対象のスキャン中に適用されるスキャンパラメータを決定することを含んでいる。スキャンパラメータは、選択されたスキャンプロトコルに基づいて、及び/又はCTイメージングシステムのコンピューティング装置(例えば、コンピューティング装置216)で受信されたユーザ入力に基づいて決定することができる。スキャンパラメータとしては、スキャンプリスクリプション(例えば、X線源電圧及び電流、スライス厚、ガントリテーブル速度など)、スキャンされている解剖学的構造、1つ又は複数の造影剤が撮影対象に投与されているか否か、及び他のパラメータがある。
【0074】
704では、方法700は、スキャンパラメータが均一のダウンサンプリングを実行すべきであることを示しているかどうかを判断する。均一のダウンサンプリングは、同じ目標重みセット又は同じ目標ビンの組合せを、収集された全ての検出器データに適用することを含んでいる。均一ではないダウンサンプリングが、異なる目標重みセット又は目標ビンの異なる組合せを、異なる態様の検出器データ(異なるビューなど)に適用することを含んでいてもよい。
【0075】
均一のダウンサンプリングが示されている場合、方法700は706に進み、全てのスキャンに対して最適化された目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択する。
図5及び
図6に関して上記で説明したように、キャリブレーション中に、目標ビンの組合せ又は目標重みセットを特定することができる。これらの目標ビンの組合せ又は目標重みセットは、全ての患者サイズに対して画像再構成を最適化するように特定することができる。代替的に又は追加的に、目標ビンの異なる組合せ又は異なる目標重みセットは、物質の厚さに基づいて、検出器素子/検出器画素に基づいて、及び/又はビューに基づいて特定されてもよい。均一のダウンサンプリングが適用される場合、全てのスキャンに対して画像再構成を最適化するように特定された目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択することができる。非限定的な例として、コンピューティング装置216は、選択された目標ビンの組合せ又は目標重みセットを使用して検出器データをダウンサンプリングするようにDAS214に指示してもよいし、コンピューティング装置216は、均一のダウンサンプリングが適用されるべきであり、DAS214は目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択することができることを、DAS214に指示することができる。
【0076】
708では、方法700は、検出器の画素又は検出器素子ごとに、目標組合せ又は目標重みセットを使用して完全な/元のビンカウント値を結合し、ダウンサンプリングされたビンカウント値を形成することを含んでいる。このようにして、各画素からの検出器データは、完全な数のビン(例えば、8つ又は5つのビン)から減少した数のビン(例えば、2つ又は3つのビン)に圧縮することができる。目標ビンの組合せを使用して複数のビンを圧縮する場合、各組合せのビンを加算することができる。例えば、目標ビンの組合せが、ビン1、ビン2、ビン3、及びビン7を結合して第1のスーパービンにし、ビン4及びビン5を結合して第2のスーパービンにし、ビン8をそのまま残すことを指定している場合、ビン1、ビン2、ビン3、及びビン7が加算され、ビン4及びビン5が加算される(画素ごとに)。目標重みセットを使用して複数のビンを圧縮する場合、各ビンは、第1の重みセットの重みによって指定される量だけ重み付けされ、その後、重み付けされたビンが加算されて、重み付けされ加算された第1のビンを(画素ごとに)形成することができる。元の各ビンは、第2の重みセットの重みにより指定される量によって重み付けされ、その後、重み付けされたビンが加算されて、重み付けされ加算された第2のビンを(画素ごとに)形成することができる。
【0077】
710では、ダウンサンプリングされたビンカウント値は、(例えば、DASから)画像再構成器(又は別の適切なコンピューティング装置)に送られ、ダウンサンプリングされたビンカウント値を使用して、
図4に関して上記で説明したように、1つ又は複数の画像を再構成することができる。一部の例では、712で示されるように、元の/完全なビンカウント値も画像再構成器に送られる。このようにして、ダウンサンプリングされたビンカウント値を使用して初期画像を比較的迅速に生成することができ、一方、追加画像は、必要に応じて、或る遅延時間の後に元のビンカウント値/完全なビンカウント値を使用して生成することができる(元のビンカウント値/完全なビンカウント値は画像再構成器に送信するのに時間がかかる場合があるので)。
【0078】
704に戻り、均一のダウンサンプリングを実行すべきである(例えば、ダウンサンプリングを不均一にすべきである)と決定された場合、方法700は714に進み、スカウトスキャン画像、ユーザ入力、及び/又は検出器カウント値から撮像対象のサイズを決定する。スカウトスキャンは、撮像対象の正しいポジショニングの確認、スキャンプリスクリプションの設定、又は他の機能に使用可能な1つ又は複数の低解像度画像を得るための低線量スキャンとすることができる。スカウトスキャン中に収集された投影データから再構成された画像を解析して、撮像対象のサイズ(例えば、厚さ)を決定することができる。追加的に又は代替的に、撮像対象のサイズは、ユーザ入力から、及び/又は検出器カウント値自体に基づいて決定してもよい(例えば、検出器カウント値が低いほど、撮像対象が厚いことを示す)。
【0079】
716では、目標ビンの組合せ又は目標重みセットは、撮像対象のサイズに基づいて選択される。上記で説明したように、キャリブレーション中に、目標ビンの異なる組合せ又は異なる目標重みセットを、物質の厚さに基づいて、検出器素子/検出器画素に基づいて、及び/又はビューに基づいて特定することができる。均一ではないダウンサンプリングが適用される場合、撮像対象のサイズ/厚さに等しい又は撮像対象のサイズ/厚さの範囲内の物質の厚さに対して画像再構成を最適化する特定された目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択することができる。非限定的な例として、コンピューティング装置216は、選択された目標ビンの組合せ又は目標重みセットを使用して検出器データをダウンサンプリングするようにDAS214に指示してもよいし、コンピューティング装置216は、被検体のサイズ情報をDAS214に送信し、DAS214が被検体のサイズ情報に基づいて目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択してもよい。一部の例では、718で示されるように、被検体のサイズに基づいて目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択することは、ビューごとに目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択することを含むことができ、これは、被検体の厚さに基づいて行うことができる。例えば、第1のビューに対して検出器から得られたビンカウント値は、目標ビンの第1の組合せ又は第1の目標重みセットでダウンサンプリングされ、異なる第2のビューに対して検出器から得られたビンカウント値は、(目標ビンの第1の組合せ又は第1の目標重みセットとは異なる)目標ビンの第2の組合せ又は第2の目標重みセットでダウンサンプリングされる。被検体の端部における被検体の厚さは、被検体の中央部における被検体の厚さよりも薄い可能性があるため、このようにビューごとに目標を選択することが適用できる。さらに、720で示されるように、被検体のサイズに基づいて目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択することは、検出器素子ごとに(例えば、画素ごと又は画素の領域ごとに)目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択することを含むことができ、これは、被検体の厚さに基づいて選択してもよいし、被検体の厚さに基づいていなくてもよい。例えば、検出器の第1の素子から得られたビンカウント値は、目標ビンの第1の組合せ又は第1の目標重みセットでダウンサンプリングすることができ、検出器の異なる第2の検出器素子から得られたビンカウント値は、(目標ビンの第1の組合せ又は第1の目標重みセットとは異なる)目標ビンの第2の組合せ又は第2の目標重みセットでダウンサンプリングすることができる。この素子ごとに目標を選択することは、異なる検出器素子の応答の違いを考慮することができる。方法700は次に708に進み、上記で説明したように、目標ビンの組合せ又は目標重みセットを使用してビンカウント値を結合する。
【0080】
このように、方法700は、目標ビンの組合せ又は目標重みセットを選択すること及び適用することを提供し、これは、全てのビンカウント値に対して均一に適用されてもよいし、被検体のサイズ、CTイメージングシステムの構成、ユーザの嗜好、又は他の要因に基づいて異なるように適用されてもよい。例えば、スキャンプロトコルは、子供が撮影されることを示しており、従って、ビンの第1の組合せ又は第1の重みセットが適用されるが、別のスキャンプロトコルは、大人が撮影されることを示しており、従って、ビンの異なる第2の組合せ又は異なる第2の重みセットを適用することができる。一部の例では、ビューごとに目標を選択すること又は素子ごとに目標を選択することは、被検体の厚さを考慮することなく実行できることを理解されたい。
【0081】
図8は、結合されたビンの例示的なエネルギースペクトルを表したグラフのセット800を示す。この図では、本明細書に(例えば、
図5に関して)記載された目標ビンの組合せを用いて複数のビンが結合されている。第1のグラフ810は、最適化指標としてグレースケール画像のCNRを使用して特定された目標ビンの組合せに従って結合された3つのビンのエネルギースペクトルを示しており、撮影されたファントムは、20cmの水及び(5mg/mLにおける)1cmのヨウ素の物質組成並びにPVC及びPEを有してしている。第1のグラフ810は、3つの結合ビンに対して、光子エネルギーの関数として検出された光子の数を表している。結合ビンは、結合ビン1(元のビン4、ビン5、及びビン6が結合されている)、結合ビン2(元のビン1、ビン2、ビン3、及びビン7が結合されている)、及び結合ビン3(ビン8のみを含む)である。ダウンサンプリングされたビンを画像再構成に使用した場合、CNRはわずかに低下したが(例えば、-4%)、基準MDノイズはPVC及びPEでは比較的大きく増加した(それぞれ59%と52%の増加)。
【0082】
第2のグラフ820は、最適化指標として基準MDノイズを使用して特定された目標ビンの組合せに従って結合された3つのビンのエネルギースペクトルを示し、撮影されたファントムは、20cmの水及び(5mg/mLにおける)1cmのヨウ素の物質組成並びにPVC及びPEを有してしている。第2のグラフ820は、3つの結合ビンに対して、光子エネルギーの関数として検出された光子の数を表している。結合ビンは、結合ビン1(元のビン4及びビン5が結合されている)、結合ビン2(元のビン1、ビン2、ビン3、ビン7、及びビン8が結合されている)、及び結合ビン3(ビン6のみを含む)である。したがって、グレースケールのCNRではなく基準MDノイズを最適化する場合、目標ビンの組合せは、CNRを最適化する場合とは異なることがある。ダウンサンプリングされたビンを用いて画像を再構成すると、CNRがわずかに低下し(例えば、-7%、この値は、CNRを最適化指標とした場合よりも大きい)、また、基準MDノイズはPVCとPEの両方で低下した(それぞれ0.5%と13%の減少)。
【0083】
図9は、グレースケール画像のCNRを最適化指標として使用して特定された目標ビンの組合せに従って結合された3つのビンのエネルギースペクトルのグラフ900を示し、撮影されたファントムは、20cmの水及び(5mg/mLにおける)1cmのヨウ素の物質組成並びにPVC及びPEを有してしている。
図8の第1のグラフとは対照的に、グラフ900は、結合されるビンは隣接するビンであるという追加的な要件を使用して結合されたビンのエネルギースペクトルを示している。グラフ900は、3つの結合ビンに対して、光子エネルギーの関数として検出された光子の数を表している。結合ビンは、結合ビン1(元のビン4、ビン5、ビン6、及びビン7が結合されている)、結合ビン2(元のビン1、ビン2、及びビン3が結合されている)、及び結合ビン3(ビン8のみを含む)である。ダウンサンプリングされたビンを画像再構成に使用した場合、CNRは、隣接しないビンを結合することが許容された場合に示されたCNRよりも大きく低下した(例えば、-8%)。このように、完全な8つのビンを取得し、本明細書に記載された(隣接していないビンを結合することができる)目標ビンの組合せを使用してビンを圧縮すると、取得されるビンの数を単に減少するよりも高品質の画像が得られる。
【0084】
図8は、第1の量の水(例えば、20cm)を有するファントムを撮影する間にビンカウント値が得られた上記の目標ビンの組合せに従って結合されたビンのエネルギースペクトル及び対応するCNR及び基準MDノイズを示す。第2の量の水(例えば、40cm)を有するファントムを撮影している間に目標ビンの組合せに従って結合されたビンについても、同様の解析が行われた。グレースケールのCNRに対して最適化された目標ビンの組合せでは、第2の量の水を有するファントムを撮影した場合、CNRは上記と同様に低下したが、PEはノイズが53%の増加を示し、PVCはノイズが58%の増加を示した。基準MDノイズに対して最適化された目標ビンの組合せでは、第2の量の水を有するファントムを撮影した場合、CNRの減少は11%であったが、PEはノイズが2%の増加を示し、PVCはノイズが15%の増加を示した。したがって、少なくともMDノイズに対して最適化されたビンの組合せについては、物質の厚さに基づく画質のばらつきが存在する可能性があり、これは、物質の異なる厚さに対して異なるビンの組合せを選択することによって軽減することができる。
【0085】
図10は、取得された8つのエネルギービンから再構成された仮想単一エネルギー画像(第1の画像1002によって示されている)と、本明細書に記載された目標ビンの組合せを用いて結合された3つのエネルギービンから再構成された仮想単色画像(第2の画像1004によって示される)とのセット1000を示す。両画像とも、画像中にマークされた骨領域と軟組織領域との間でほぼ同等のCNRを示し、軟組織領域と脂肪領域との間で同等のCNRを示した。両画像は68keVのVMIを表し、-1000HUから1800HUのウィンドウで表示されている。
【0086】
図11は、(例えば、
図6の方法に従って)ビンカウント値をダウンサンプリングするために適用することができる目標重みセットを示すグラフ1100を示し、
図12は、目標重みセットを適用することによって作成されたビンの対応する例示的なエネルギースペクトルのグラフ1200を示す。グラフ1100は、各ビンの対応する実効エネルギーに対してプロットされたシリコン検出器の最適な重みWのセット(塗りつぶされていないボックス及び塗りつぶされたボックス)を示す。これらの重みは1に正規化されており、重みの線形独立した組合せであれば同じ結果が得られることに留意されたい。図示の例では、重みのセットは、塗りつぶされていないボックスで示された第1の重みセット(それぞれ、ビン1~8に適用される)と、塗りつぶされたボックスで示された第2の重みセット(それぞれ、ビン1~8に適用される)とを含む。重み付けされ加算された第1のビンを形成するために、第1の重みセットの重みをそれぞれのビンに適用し(例えば、第1の重みW
(1,1)はビン1のビンカウント値に適用され、第2の重みW
(1,2)はビン2のビンカウント値に適用され、以下、第8の重みW
(1,8)がビン8のビンカウント値に適用されるまで同様である)、重み付けされたビンカウント値が加算される。重み付けされ加算された第2のビンを形成するために、第2の重みセットの重みがそれぞれのビンに適用され(例えば、第9の重みW
(2,1)はビン1のビンカウント値に適用され、第10の重みW
(2,2)はビン2のビンカウント値に適用されるなど)、重み付けされたビンカウント値が加算される。
【0087】
グラフ1200は、グラフ1100の目標重みセットから形成された重み付けされ加算された2つのビンについて、撮影対象の例示的なスキャンのエネルギースペクトルを、検出された光子の数に対する光子エネルギーの関数として示している。
【0088】
図13は、完全なビンデータ(例えば、8つのビン)と圧縮されたビンデータ(例えば、2つのビン)から再構成されたファントムの基準MD画像の第1のセット1300を示し、ビンカウント値は、本明細書に記載したように目標重みセットを使用して圧縮されている。第1の画像1302は、圧縮されたビンカウント値(例えば、重み付けされた2つのエネルギービン)を使用したカルシウムの基準MD画像を示し、第2の画像1304は、完全な8つのビンを使用したカルシウムの基準MD画像を示す。両方の画像に対して共通のROIが拡大されている。拡大された第1のROI1306は第1の画像1302のROIを示し、拡大された第2のROI1308は第2の画像1304のROIを示す。ROIの差分画像1310は、2つのROIの間の差を視覚的に示している。
図13に示す画像から理解されるように、重み付けされた2つのエネルギービンを用いて再構成された画像は、完全な8つのビンを用いて再構成された画像と略同一であり、ROIの平均分散ペナルティは11.57%である。
【0089】
図14は、完全なビンデータ(例えば、8つのビン)及び圧縮されたビンデータ(例えば、2つのビン)から再構成されたファントムの基準MD画像の第2のセット1400を示し、ビンカウント値は、本明細書で記載されたように、目標重みセットを使用して圧縮されている。第1の画像1402は、圧縮されたビンカウント値(例えば、重み付けされた2つのエネルギービン)を使用した水の基準MD画像を示し、第2の画像1404は、完全な8つのビンを使用した水の基準MD画像を示す。両方の画像に対して共通のROIが拡大されている。拡大された第1のROI1406は第1の画像1402のROIを示し、拡大された第2のROI1408は第2の画像1404のROIを示す。ROIの差分画像1410は、2つのROIの間の差を視覚的に表す。
図14に示す画像から理解されるように、重み付けされた2つのエネルギービンを用いて再構成された画像は、完全な8つのビンを用いて再構成された画像と略同一であり、ROIの平均分散ペナルティは5.55%である。
【0090】
図16は、撮像対象のサイズに基づくなど、局所的方法でビンカウント値をダウンサンプリングするために適用することができる例示的な重みセットを示す。
図16は、骨の厚さ(グラフ1610のx軸に沿って増加)及び水の厚さ(グラフ1610のy軸に沿って増加)によって定義される4つの領域を示す第1のグラフ1610を含む。骨と水の厚さの異なる組合せに対して、対応する減衰X線スペクトルは異なり、その結果、元のビンカウントデータの分布が異なるだけでなく、スペクトルの実効エネルギーも異なり、実効エネルギーは次式で定義される。
【数6】
【0091】
また、
図16は、ビンカウント値をダウンサンプリングするために適用することができる例示的な重みを示すグラフのセット1620も含んでおり、グラフのセット1620の各グラフは、グラフ1610の異なる領域に対応する。例えば、グラフ1622は、領域1618によって画定される物質厚さを有する被検体(例えば、比較的大きい/厚い被検体)をスキャンしている間に得られるビンカウント値をダウンサンプリングするために適用することができる第1の重みセットを示し、グラフ1624は、領域1616によって画定される物質厚さを有する被検体(例えば、中くらいの被検体から大きい/厚い被検体)をスキャンしている間に得られるビンカウント値をダウンサンプリングするために適用することができる第2の重みセットを示し、グラフ1626は、領域1614によって画定される物質厚さを有する被検体(例えば、小さい被検体から中くらいのサイズの被検体)をスキャンしている間に得られるビンカウント値をダウンサンプリングするために適用することができる第3の重みセットを示し、グラフ1628は、領域1612によって画定される物質厚さを有する被検体(例えば、比較的小さい被検体)をスキャンしている間に得られるビンカウント値をダウンサンプリングするために適用することができる第4の重みセットを示す。上記で説明したように、被検体のサイズ/厚さは、スカウトスキャン中に取得された1つ又は複数の画像に基づいて、ユーザ入力及び/若しくはスキャンプロトコルに基づいて、並びに/又は検出器カウント値自体に基づいて、決定することができる。
【0092】
従って、CT機器からオフボードのコンピューティング装置/画像再構成器に送信されるデータ量を圧縮する/ダウンサンプリングするために、本明細書に開示された方法に従ってエネルギービンを結合することができる。各エネルギービンが重み付けされ、重み付けされた残りのエネルギービンと加算される重み付け手法を使用して、エネルギービンを結合することができる。2つ以上の重みセットを適用して2つ以上の結合ビンを形成してもよい。重み付けは、各ビンが結合ビンに含まれるか含まれないかとする二値であってもよい。この二値手法は、各ビンが一度だけ結合ビンに含まれるような排他的なものとすることができる。このような手法によって、本明細書において(例えば、
図5に関して)説明された目標ビンの異なる組合せが得られる。他の例では、二値手法は排他的でない場合があり、ビンは複数の結合ビンに含まれてもよい。さらなる例では、重み付け手法は、例えば、
図6に関して本明細書で説明したように、連続的な重みを適用することを含むことができる。連続的に重みを特定することは、フォワードモデル及び大規模最適化を特定する及び適用することを含むことができ、これは、バイナリ重みを特定することと比較して計算集約的である。しかし、少なくとも一部の例では、連続的な重みは、画質を高くすることができる。このように、検出器データ/エネルギービンをダウンサンプリングするためにどの重み付け手法を適用するかの選択は、適用される特定のイメージングタスク、利用可能な計算能力、及び/又は望まれる画質に基づいて行うことができる。
【0093】
エネルギービンの光子カウント値を、(不足のない)完全な数のエネルギービンから減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングする技術的効果は、再構成のために(例えば、CTシステムのスリップリングを通じて)外部コンピューティング装置に伝送されるデータが少なくなり、それによってエネルギービンの光子カウント値から画像を再構成するプロセスを高速化できることである。この完全な数のエネルギービン(例えば、8つのエネルギービン)のカウント値を取得し、その後、完全な数のビンを減少した数のビンにダウンサンプリングすることの別の技術的効果は、結合された/ダウンサンプリングされたビンの目標数(例えば、2つ又は3つの結合ビン)が、患者のサイズ、関心のあるタスク、タスクにとって関心のある画像領域、及び他の要因に基づいて変更できることである。この完全な数のビンを生で(natively)取得することにより、この完全な数のビンを取得した後に、これらのビンを異なる目的のために異なる方法で結合することができる。さらに、目標ビンの組合せが隣接しないビンを含む場合(これは、コンプトン散乱を検出するエネルギービンの特性により、隣接するビンのみを結合するよりも画質が向上する)、目標ビンの組合せを生で(natively)取得できない恐れがある。さらに、生の(native)エネルギービンの完全なセットは、後で転送され、時間の影響を受けにくい再構成のために使用することができる。
【0094】
別の表現では、光子計数型コンピュータ断層撮影(PCT)システムのための方法が提供される。本方法は、キャリブレーション段階の間、物質組成及び厚さが既知の物体をスキャンしながら、前記PCCTシステムの検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記検出器の画素ごとに、前記検出器に入射する各光子のエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、取得すること、前記検出器データに基づいて、後続のスキャンで適用される1つ又は複数のビンファクタを特定して、後続の検出器データを、減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、前記後続のスキャンの間に、前記後続の検出器データを取得し、前記1つ又は複数のビンファクタのうちの少なくとも1つのビンファクタを適用することによって、前記後続の検出器データを前記減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、及びダウンサンプリングされた後続の検出器データから1つ又は複数の画像を再構成することを含む。本方法の第1の実施例では、前記検出器データに基づいて1つ又は複数のビンファクタを特定することは、前記減少した数のエネルギービンを形成するために、前記複数のエネルギービンのうちのどのエネルギービンが結合されるべきかを指定する目標ビンの1つ又は複数の組合せを特定することを含む。本方法の第2の実施例では、任意選択で第1の実施例を含み、目標ビンの1つ又は複数の組合せを特定することは、エネルギービンのペアを反復的に結合すること、エネルギービンの結合された各ペア及び分離された残りのエネルギービンから再構成された画像に基づいて、エネルギービンの結合されたペアごとに最適化指標を決定すること、最良の最適化指標を有するエネルギービンのペアを選択すること、及び選択されたペアを単一のスーパービンとして設定すること、並びに前記減少した数のエネルギービンに達するまで、前記反復的に結合すること、前記決定すること、及び前記選択することを繰り返すことを含む。本方法の第3の実施例では、任意選択で、第1及び第2の実施例の一方又は両方の実施例を含み、前記最適化指標は、仮想単一エネルギー画像のコントラスト対ノイズ比又は基準物質弁別画像の物質弁別ノイズを含む。本方法の第4の実施例では、任意選択で、第1~第3の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記検出器データに基づいて1つ又は複数のビンファクタを特定することは、1つ又は複数の目標重みセットを特定することを含み、各目標重みセットは、重み付けされたビンを形成するために、前記複数のエネルギービンの各エネルギービンに適用されるそれぞれの重みを指定し、重み付けされたビンは加算されて前記減少した数のエネルギービンを形成する。本方法の第5の実施例では、任意選択で、第1~第4の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、1つ又は複数の目標重みセットを特定することは、前記検出器データに基づいて前記検出器のフォワードモデルを決定すること、可能性のある複数の重みセットのうちの重みセットのペアごとに、重みセットのペアを複数のエネルギービンに適用して、重み付けされ加算された2つのビンを形成すること、前記フォワードモデルを、重み付けされ加算された2つのビンに適用して、基準物質の厚さを推定すること、及び推定された基準物質の厚さの分散を最小化する重みセットのペアを選択することを含む。
【0095】
本開示は、光子計数型コンピュータ断層撮影(PCCT)システムのための方法のサポートも提供する。本方法は、撮像対象のスキャン中に、前記PCCTシステムの光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素又は検出器素子ごとに、各光子によって前記光子計数型検出器に与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、及び前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成することを含む。本方法の第1の実施例では、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用することは、前記複数のエネルギービンのうちのどのエネルギービンが結合されるべきかを指定する目標ビンの組合せに従って、前記複数のエネルギービンを結合して前記減少した数のエネルギービンにすることを含む。本方法の第2の実施例では、任意選択で第1の実施例を含み、目標ビンの組合せに従って、前記複数のエネルギービンを結合して前記減少した数のエネルギービンにすることは、少なくとも2つの隣接しないビンを結合することを含む。本方法の第3の実施例では、任意選択で、第1及び第2の実施例の一方又は両方の実施例を含み、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用することは、2つ以上の目標重みセットを前記複数のエネルギービンに適用して、重み付けされたビンの2つ以上のセットを形成することと、重み付けされたビンの各セットを加算して前記減少した数のエネルギービンを形成することとを含む。本方法の第4の実施例では、任意選択で、第1~第3の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、本方法は、ファントムのキャリブレーションスキャンから得られたキャリブレーションの検出器データに基づいて前記ビンファクタを特定することをさらに含み、前記キャリブレーションの検出器データは、前記光子計数型検出器の画素又は検出器素子ごとに、前記検出器に入射した各光子のエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む。本方法の第5の実施例では、任意選択で、第1~第4の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記キャリブレーションの検出器データに基づいて前記ビンファクタを特定することは、前記減少した数のエネルギービンを形成するために、前記複数のエネルギービンのうちのどのエネルギービンが結合されるべきかを指定する目標ビンの1つ又は複数の組合せを特定することを含み、目標ビンの1つ又は複数の組合せを特定することは、エネルギービンのペアを反復的に結合すること、X線投影測定値、シミュレートされたデータ、又はエネルギービンの結合された各ペアと分離している残りのエネルギービンから再構成された画像に基づいて、エネルギービンの結合されたペアごとに最適化指標を決定すること、最良の最適化指標を有するエネルギービンのペアを選択すること、及び選択されたペアを単一のスーパービンとして設定すること、並びに前記減少した数のエネルギービンに達するまで、前記反復的に結合すること、前記決定すること、及び前記選択することを繰り返すことを含む。本方法の第6の実施例では、任意選択で、第1~第5の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記最適化指標は、仮想単一エネルギー画像のコントラスト対ノイズ比又は基準物質弁別画像の物質弁別ノイズを含む。本方法の第7の実施例では、任意選択で、第1~第6の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記キャリブレーションの検出器データに基づいて前記ビンファクタを特定することは、1つ又は複数の目標重みセットを特定することであって、各目標重みセットは、重み付けされたビンを形成するために、前記複数のエネルギービンの各エネルギービンに適用されるそれぞれの重みを指定し、重み付けされたビンは加算されて前記減少した数のエネルギービンを形成する、1つ又は複数の目標重みセットを特定することを含み、1つ又は複数の目標重みセットを特定することは、前記キャリブレーションの検出器データに基づいて前記検出器のフォワードモデルを決定すること、可能性のある複数の重みセットのうちの重みセットのペアごとに、重みセットのペアを複数のエネルギービンに適用して、重み付けされ加算された2つのビンを形成すること、前記フォワードモデルを、重み付けされ加算された2つのビンに適用して、基準物質の厚さを推定すること、及び推定された基準物質の厚さ又は仮想単一エネルギー画像の分散を最小化する重みセットのペアを選択すること
を含む。本方法の第8の実施例では、任意選択で、第1~第7の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを前記減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすることは、前記ビンファクタを適用して、5つ又は8つのエネルギービンを2つ又は3つのエネルギービンにダウンサンプリングすることを含む。本方法の第9の実施例では、任意選択で、第1~第8の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記検出器データの各画素及び各ビューに対して、同じビンファクタを適用して、前記複数のエネルギービンをダウンサンプリングする。本方法の第10の実施例では、任意選択で、第1~第9の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記検出器データの異なる画素及び/又は異なるビューに対して、異なるビンファクトを適用して前記複数のエネルギービンをダウンサンプリングする。本方法の第11の実施例では、任意選択で、第1~第10の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記ビンファクタは撮影対象のサイズに基づいて選択される。本方法の第11の実施例において、任意選択で、第1~第10の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記画素は光子計数型検出器の検出器素子である。
【0096】
本開示は、光子計数型コンピュータ断層撮影(PCCT)システムもサポートする。本システムは、撮影される被検体に向けてX線ビームを放出するX線源、前記被検体によって減衰されたX線ビームを受け取る光子計数型検出器、及び前記光子計数型検出器に動作可能に接続されたデータ収集システム(DAS)であって、撮像対象のスキャン中に、前記光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素又は検出器素子ごとに、前記光子計数型検出器に衝突する各光子によって与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、前記PCCTシステムのスリップリングを通じて、前記減少した数のエネルギービンを、非一時的メモリを含みDASに動作可能に接続されたコンピュータに送信することであって、前記非一時的メモリの命令が実行されると、前記命令は前記コンピュータに前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成させるように、前記コンピュータを設定する、送信することを実行するように構成されるデータ収集システム(DAS)を含む。本システムの第1の実施例では、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用することは、前記複数のエネルギーのうちのどのエネルギービンが結合されるべきかを指定する目標ビンの組合せに従って、複数のエネルギービンを結合して前記減少した数のエネルギービンにすることを含む。本システムの第2の実施例では、任意選択で第1の実施例を含み、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用することは、2つ以上の目標重みセットを前記複数のエネルギービンに適用して、重み付けされたビンの2つ以上のセットを形成することと、重み付けされたビンの各セットを加算して前記減少した数のエネルギービンを形成することとを含む。本システムの第3の実施例では、任意選択で第1及び第2の実施例のうちの一方又は両方の実施例を含み、前記画素は前記光子計数型検出器の検出器素子である。
【0097】
本開示は、光子計数型X線メージングシステムのための方法もサポートし、本方法は、撮像対象のスキャン中に、前記X線イメージングシステムの光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素ごとに、各光子によって前記光子計数型検出器に与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、及び前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成することを含む。
【0098】
本開示は、光子計数型X線イメージングシステムもサポートし、本システムは、撮影される被検体に向けてX線ビームを放出するX線源、前記被検体によって減衰されたX線ビームを受け取る光子計数型検出器、及び前記光子計数型検出器に動作可能に接続されたデータ収集システムであって、撮像対象のスキャン中に、前記光子計数型検出器から検出器データを取得することであって、前記検出器データは、前記光子計数型検出器の画素ごとに、各光子によって前記光子計数型検出器に与えられるエネルギーに基づいて複数のエネルギービンに分割された光子カウント値を含む、検出器データを取得すること、画素ごとに、ビンファクタを前記複数のエネルギービンに適用して、前記複数のエネルギービンを減少した数のエネルギービンにダウンサンプリングすること、前記減少した数のエネルギービンを、非一時的メモリを含みDASに動作可能に接続されたコンピュータに送信することであって、前記非一時的メモリの命令が実行されると、前記命令は前記コンピュータに前記減少した数のエネルギービンから1つ又は複数の画像を再構成させるように、前記コンピュータを設定する、送信することを実行するように構成されるデータ収集システムを含む。
【0099】
例として、光子計数型コンピュータ断層撮影(PCCT)システムが記載されているが、本技術は、光子計数型検出器を有する他のX線イメージングモダリティ(X線血管造影システム、X線トモシンセシスシステム、X線マンモグラフィシステム、X線透視システム、X線インターベンショナルシステム、X線Cアームシステムなど)に適用する場合にも有用であることが理解されるべきである。PCCTイメージングモダリティの本説明は、単に1つの好適なイメージングモダリティの例として提供される。
【0100】
本開示の様々な実施形態の要素を導入する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「この(the)」は、その要素が1つ以上存在することを意味することが意図される。用語「第1」、「第2」などは、順序、量、又は重要性を示すものではなく、ある要素を他の要素から区別するために使用されるものである。用語「含む」、「備える」、「有する」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在してもよいことを意味する。本明細書において、用語「に接続される」、「に結合される」などが使用される場合、1つの対象(例えば、材料、要素、構造、部材等)は、1つの対象が他の対象に直接に接続又は結合されているかどうか、又は1つの対象と他の対象との間に1つ以上の介在物が存在しているかどうかにかかわらず、他の対象に接続する又は結合することができる。加えて、本開示の「1つの実施形態」又は「ある実施形態」に言及することは、言及された特徴も組み込んだ追加の実施形態の存在を排除するように解釈されることを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0101】
先に示された修正形態に加えて、本記載の趣旨及び範囲を逸脱することなく、当業者によって多くの他の変更構造及び代替構造を考えることができ、特許請求の範囲は、このような修正形態及び構造を含むことが意図される。したがって、上記の情報は、現在最も実用的で好ましい態様であると考えられるものに関して特に詳細に記載されているが、当業者にとって、本明細書に記載された原則及び概念から逸脱することなく、形態、機能、操作方法、及び使用(これらに限定されることはない)などについて、多くの修正形態が可能であることは明らかである。また、本明細書において、実施例及び実施形態は、あらゆる点において単なる例示であることを意味しており、いかなる方法においても限定的に解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0102】
100 PCCTシステム
102 ガントリ
104 X線源
106 X線放射ビーム
108 検出器アレイ
110 画像プロセッサユニット
112 被検体
114 テーブル
200 イメージングシステム
202 検出器素子
204 被検体
206 回転中心
208 制御機構
210 X線コントローラ
212 ガントリモータコントローラ
213 スリップリング
214 データ収集システム(DAS)
216 コンピューティング装置
218 記憶装置
220 オペレータコンソール
226 テーブルモータコントローラ
230 構成器
232 ディスプレイ装置
300 PCCT光子計数型検出器アレイ
300 検出器アレイ
302 X線
304 レール
306 プレート
308 検出器モジュール
400 方法
500 方法
600 方法
700 方法
800 セット
810 第1のグラフ
820 第2のグラフ
900 グラフ
1002 第1の画像
1004 第2の画像
1100 グラフ
1200 グラフ
1300 第1のセット
1302 第1の画像
1304 第2の画像
1310 差分画像
1400 第2のセット
1402 第1の画像
1404 第2の画像
1410 差分画像
1500 プロセス
1610 グラフ
1610 第1のグラフ
1612 第1の領域
1612 領域
1614 第2の領域
1614 領域
1616 第3の領域
1616 領域
1618 第4の領域
1618 領域
1620 セット
1622 グラフ
1624 グラフ
1626 グラフ
1628 グラフ
【国際調査報告】