(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】SPD配列における持続的フィルタリング
(51)【国際特許分類】
H04N 25/773 20230101AFI20240912BHJP
【FI】
H04N25/773
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516747
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2022058609
(87)【国際公開番号】W WO2023047245
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523228565
【氏名又は名称】ボクセルセンサーズ エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】VOXELSENSORS SRL
【住所又は居所原語表記】Cantersteen 47, Brussels, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【氏名又は名称】松下 計介
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】ウォード ファン デル テンペル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ウィレム ピータース
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ベルナルド ミオデツキー
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ムラド
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024AX04
5C024CX03
5C024GX18
5C024GY45
5C024HX55
(57)【要約】
本発明は、SPD配列を用いた高速撮像のためのシステム、検出素子及び方法、並びにSPD配列の較正ルーチンに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単一光子検出器SPD(5)、好ましくは単一光子アバランシェ検出器SPAD(5)を有する配列に基づく高速撮像方法であって、
c.SPD(5)上で光子を捕捉し、それにより、前記SPD(5)が検出信号C_ovを生成して評価回路に供給し、それにより、前記検出信号は、検出されるべき電磁放射線の前記SPD(5)による観測が行われる場合、正の観測状態を記述し、検出されるべき前記電磁放射線の前記SPD(5)による観測が無い場合、負の観測状態を記述するステップと、
d.前記SPD(5)の検出信号をSPD(5)毎の評価回路によって評価し、それにより、前記SPD(5)に対する確認信号を生成するためには、前記SPD毎の検出信号が持続条件を満たす必要があるステップと、
を有する高速撮像方法において、
少なくとも1つの、好ましくは全てのSPD(5)に対する前記持続条件は、過去のN個の観測窓(2)のうち、少なくともM個の、好ましくは連続している、好ましくは周期Tの観測窓(2)において、前記SPD(5)の正の観測状態を必要とし、Mは、1より大きく最大でNに等しい、ことを特徴とする、
高速撮像方法。
【請求項2】
請求項1に記載の高速撮像方法において、時間的に分離された光パルスを有する所定の照射パターンに基づいて、1つ又は複数の走査光源によってシーンを照射するステップを有し、
前記観測窓(2)の各々は前記光パルスの1つに時間的に関連付けられ、前記検出信号は、前記観測窓(2)に関連付けられた光パルスの結果として、前記SPD(5)による観測有無を示す、
高速撮像方法。
【請求項3】
請求項2に記載の高速撮像方法において、前記観測窓は、関連付けられた前記光パルスの開始時間と実質的に一致する開始時間を有し、
実質的に一致するとは、前記観測窓(2)の開始時間が、前記光パルスの開始時間以後、0nsから最大1.0ns以内、好ましくは最大0.5ns以内、さらに好ましくは最大0.1ns以内にあることを意味する、
高速撮像方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の高速撮像方法において、前記観測窓(2)は、関連付けられた前記光パルスの終了時間以後、0.0nsから25.0nsの間、好ましくは関連付けられた前記光パルスの終了時間以後、0.05nsから15.0nsの間、より好ましくは0.1nsから10.0nsの間にある終了時間を有する、
高速撮像方法。
【請求項5】
請求項1に記載の高速撮像方法において、1つ又は複数の走査光源によってシーンを照射するステップを有し、
前記走査光源が、実質的に連続的に前記シーンを照射する、
高速撮像方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の高速撮像方法において、M及び/又はNは調整可能であり、好ましくはSPD(5)毎に調整可能である、
高速撮像方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の高速撮像方法において、一致条件が満たされた場合に、前記持続条件を満たす第1のSPDに対して確認信号が生成され、
前記一致条件は、前記観測窓において少なくとも1つの他のSPDが前記持続条件を満たすことを必要とし、
前記少なくとも1つの他のSPDは、前記持続条件を満たす前記第1のSPDに隣接している、
高速撮像方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の高速撮像方法において、一致条件と前記持続条件とが満たされた場合に、第1のSPDに対して確認信号が生成され、
前記評価回路は、前記一致条件を満たしたSPD(5)に対してのみ、前記一致条件を課した後に前記持続条件を課すように構成され、
前記一致条件は、前記第1のSPD(5)による正の観測状態を伴う検出信号の受信から一定の時間間隔内に、少なくとも1つの他のSPD(5)によって正の観測状態を伴う検出信号が受信されることを含み、
前記少なくとも1つの他のSPD(5)は、前記一致条件が課された前記第1のSPD(5)に隣接している、
高速撮像方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の高速撮像方法において、
前記配列内のSPD(5)は、実質的に矩形状のマトリクスに配置され、
SPD(5)は、他のSPD(5)に隣接し、iを前記マトリクス内の行、jを前記マトリクス内の列として、前記SPD(5)がマトリクス位置(i,j)を有し、且つ、前記他のSPD(5)がマトリクス位置(i,j±1)及び選択的に(i±1,j)又は(i±1,j±1)を有する、
高速撮像方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9に記載の高速撮像方法において、撮像の前に、
a.前記SPD(5)毎の評価回路により、較正期間に亘って前記較正期間における少なくとも2個の、好ましくは少なくとも3個の較正窓において前記SPD(5)の検出信号を監視し、前記較正窓は互いに時間的に分離されており、前記較正期間中、前記SPD(5)は、1つ又は複数の光源によってアクティブに照射されないステップと、
b.前記SPD(5)による観測が行われる較正窓の数に基づいて、前記SPD(5)を分類するステップと、
を有する較正ルーチンを実行する、
高速撮像方法。
【請求項11】
請求項10に記載の高速撮像方法において、前記SPD(5)は少なくとも2つの、好ましくは3つの分類に分類され、
前記SPD(5)に対する確認信号を生成するために、前記SPD(5)の分類に関連する持続条件が課される、
高速撮像方法。
【請求項12】
電磁放射線を検出するための検出素子(6)であって、
a.連続している観測窓(2)中に検出されるべき電磁放射線の観測有無の状態を記述する信号C_ovを生成するように構成されている単一光子検出器SPD(5)、好ましくは単一光子アバランシェ検出器SPAD(5)と、
b.少なくともN個(Nは1以上の自然数)の以前の観測窓(2)の終了時における前記SPD(5)の状態を記憶するメモリ素子(7)と、
c.現在の観測窓(2)の終了時における前記SPDの前記信号と前記N個の以前の観測窓(2)のうち少なくともM個(Mは1以上且つ最大でNに等しい自然数)の観測窓(2)の前記SPDの信号とが前記SPD(5)による観測を示す場合に、確認信号を生成するように構成されている論理回路(4)と、
を有する、
検出素子(6)。
【請求項13】
高速撮像用センサシステムにおいて、
a.請求項12に記載の検出素子(6)のマトリクス/配列と、
b.前記マトリクス/配列内の検出素子(6)を読み取る回路(4)と、
を有する、
高速撮像用センサシステム。
【請求項14】
高速撮像用センサシステムであって、
a.連続している観測窓(2)中に検出されるべき電磁放射線(光子)の観測有無の状態を記述する信号C_ovを生成するように構成されている単一光子検出器SPD(5)、好ましくは単一光子アバランシェ検出器SPAD(5)を有する検出素子(6)のマトリックス/配列と、
b.前記マトリクス/配列内の検出素子(6)の信号C_ovを読み取るとともに、1つ又は複数のメモリ素子(7)を有する論理回路(4)と、
を有し、
前記1つ又は複数のメモリ素子(7)は、少なくともN個の以前の観測窓(2)の終了時における前記SPD(5)の状態を記憶するよう構成されており、Nは1以上の自然数であり、
前記論理回路(4)は、現在の観測窓の終了時における前記SPD(5)の前記信号と前記N個の以前の観測窓(2)のうち少なくともM個の観測窓(2)の前記SPD(5)の前記信号とが前記SPD(5)による観測を示す場合に、確認信号を生成するように構成されており、Mは1以上且つ最大でNに等しい自然数である、
高速撮像用センサシステム。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載の高速撮像用センサシステムにおいて、
前記高速撮像用センサシステムは、
SPD配列における持続的フィルタリングのための、請求項1から請求項11のいずれか1つに記載の高速撮像方法を実行するように構成されている、
高速撮像用センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォルスポジティブ(false positive)が結果から取り除かれる、単一光子検出器(SPD)に基づく高速撮像のための改良された方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術のアクティブイメージングの走査では、光ビーム、典型的にはレーザ、をキャプチャ対象領域上で移動させ、各時点でビームが衝突した位置を複数の画像センサを介して記録する。異なる視点(センサ)からの位置の違いを処理することによって、ビームが照射された対象物までの実効距離を三角測量によって決定することができる。このような計測によりボクセルをキャプチャする。この処理を実行する速度、ボクセルレートは、一方では、光ビームによる走査が行われる速度によって制限されるが、他方では、特に背景放射(外乱光)及び一般的な熱雑音との関係で、反射した光ビームの検出のためにセンサが必要とする処理時間によって(最も強く)制限される。この第2の問題に特に取り組むことにより、撮像を大幅に高速化できる。
【0003】
このように、先行技術の高速撮像システムは、多くの要件及び課題に対処する必要がある。第1の課題は、入射光子の検出精度である。ますます高い空間分解能が要求されている。その結果、センサ配列は、ますます多くの個別の検出器(画素)に細分化される。このことは、これら全ての検出器を読み取り、出力信号を画像へと処理するために必要な計算能力が増大することを意味する。個々の画素は常に小さくなる(ならざるを得ない)ため、光子を捕捉するするための空間窓が限定される個々の画素は高い光感度を有していなければならない。加えて、一定の処理速度を達成できなければならない。毎秒数千万ボクセルから数億ボクセルというボクセルレートを達成するためには、各ボクセルを10ns以下の時間で捕捉する必要がある。そのため、センサは、例えば10個の光子等、限られたフォトンバジェット(すなわち、検出に十分な、センサに入射した検出光子数)で動作するのに適している必要もある。限られた処理時間では、限られた数の光子しか収集できない。
【0004】
このため、SPDやSPAD(単一光子アバランシェ検出器)のような非常に感度の高い検出器がしばしば検討される。
【0005】
しかしながら、このような検出器は、光感度が高いため、外乱光及び熱雑音の双方による不要な励起が生じるという固有の欠点を有している。検出器レベルのこのような励起は、それ自体、シーンを走査するためにシステムによって意図的に放出された反射光の入射に起因する「本物の」検出と区別することが困難である。
【0006】
現在、フォトンバジェットのような提案された特性の下で所望の検出速度に達することができ、同時にフォルスポジティブの検出が最小数になることを保証するセンサ・アーキテクチャ・システム又は方法は存在しない。
【0007】
本発明の目的は、前述の課題の少なくとも一部に対する解決策を見出すことである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、請求項1に記載の改良された高速撮像方法に関する。
【0009】
従来のSPD、特にSPADの配列が、特に熱雑音及び外乱光に起因する非常に多くのフォルスポジティブに対処する必要がある場合において、本発明の目的は、前記ランダムな誤検出信号を取り除くことである。従来のシステムでは、SPD又はSPADに入射する各光子が検出信号を生成する。前記システムの構成要素は、光子密度が低い場合にも入射を記録できるように特別に設計されているため、速度及び分解能に利点がある。SPD/SPADの表面が小さいほど、1面あたりのSPD/SPADの数が多くなり、高分解能が得られるが、光子入射の確率も低くなるため、前記構成要素の光感度を高め、それらをより速くトリガする必要がある。その結果、殆どのシステムではフォルスポジティブが避けられない。したがって本発明の目的は、このフォルスポジティブを認識して結果から取り除き、(システムの光源による物体又はシーンのアクティブ照射に起因する)「実際の」光子入射のみを確認することにある。
【0010】
好ましい実施形態は、後述の請求項に記載されている。
【0011】
第2の態様において、本発明は、請求項12、請求項13及び請求項14に規定されるように、好ましくは第1の態様による方法を実行するのに適した、高速撮像のための検出素子及びセンサシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1B】
図1Bは、アクティブ照射信号を伴う光子入射の検出を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、アクティブ照射信号を伴わない光子入射の検出を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、アクティブ照射信号を伴う光子入射の検出を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、アクティブ照射信号を伴わない光子入射の検出を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による第1の持続条件を課す回路を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による第2の持続条件を課す回路を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による第3の持続条件を課す回路を示す図である。
【
図6】
図6は、較正回路と結合された、本発明の実施形態による第3の持続条件を課す回路を示す図である。
【
図7】
図7は、較正回路及びローカル一致回路と結合された、本発明の実施形態による第3の持続条件を課す回路を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施形態による第1の較正回路を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、
図8Aによる較正回路と結合された、本発明の実施形態による持続条件を課す回路を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の実施形態による第2の較正回路を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、
図9Aによる較正回路及び
図8Aの較正回路と結合された、本発明の実施形態による持続条件を課す回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に定義しない限り、技術用語及び科学用語を含む本発明の説明で使用される全ての用語は、本発明の技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本発明の説明をより良く評価するために、以下の用語を明示的に説明する。
【0014】
「a」、「an」及び「the」は、文脈上特段の指定がない限り、本明細書において単数と複数との両方を参照する。例えば、「a segment」(区分)は1つ又は2つ以上の区分を意味する。
【0015】
本明細書において、測定可能な量、パラメータ、持続時間又は瞬間等について「略(approximately)」又は「およそ(around)」が使用される場合、記載された本発明においてそのような変動が適用可能である限りにおいて、引用値に対して及び引用値の±20%以内、好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内、さらに好ましくは±1%以内、さらに好ましくは±0.1%以内の変動を意味する。しかしながら、用語「略」又は「およそ」が使用される量の値は、それ自体が具体的に開示されていると理解すべきである。
【0016】
用語「comprise」、「comprising」、「consist of」、「consisting of」、「provided with」、「contain」、「containing」、「include」、「including」、「hold」、「holding」は同義語であり、先行技術から知られているか、又は、当先行技術において説明されている他の構成要素、特徴、要素、部材、工程の存在を除外又は排除することなく、後に続くものの存在を示す包括的又はオープンエンドの用語である。
【0017】
用語「画素」(pixel)は、ここでは光感知ユニット又は光検出器を指し、好ましくはSPD又はSPADの形態である。典型的には、前記画素は、マトリクスのような配列で設けられる。
【0018】
用語「マクロ画素」(macropixel)という用語は、典型的には連続したクラスタを形成する複数の画素又は検出器から構成される仮想画素を指す。前記マクロ画素は、特定のセットの時空間条件に関連付けられ、大きさ、形状、及び、他のパラメータの点で状況に応じて変化し得る。マクロ画素は、互いに部分的に重なり合い、共通の画素又は検出器を有することができる。好ましくは、マクロ画素は正方形又は長方形の形状を有するが、略円形又は楕円形、三角形、十字形又は星形、又は、他の形状を有することもできる。マクロ画素は、少なくとも2つの検出器(例えば、2×1又は1×2のマトリクス形状)から構成され、より好ましくは、少なくとも4つの検出器(例えば、2×2)から構成される。
【0019】
端点による数値間隔の引用は、これらの端点を含むとともに、端点間の全ての整数、分数、及び/又は実数を含む。
【0020】
第1の態様において、本発明は、複数の単一光子検出器(SPD)、好ましくは単一光子アバランシェ検出器(SPAD)を有する配列に基づく高速撮像方法に関する。本方法は、
a.SPD上で光子を捕捉し、それにより、前記SPDが検出信号C_ovを生成して評価回路に供給し、それにより、前記検出信号は、検出されるべき電磁放射線の前記SPDによる観測が行われる場合、正の観測状態を記述し、検出されるべき前記電磁放射線の前記SPDによる観測が無い場合、負の観測状態を記述するステップと、
b.前記SPDの検出信号をSPD毎の評価回路によって評価し、前記SPDに対して、前記検出されるべき電磁放射線の確認信号を生成するためには、前記SPD毎の検出信号が持続条件を満たす必要があるステップと、
を有する。
【0021】
少なくとも1つの、好ましくは全てのSPDに対する前記持続条件は、過去のN個の観測窓のうち、少なくともM個の、好ましくは連続している、好ましくは周期Tの観測窓において、前記SPDの正の観測状態を必要とし、Mは、1より大きく最大でNに等しい。
【0022】
前記過去のN個の観測窓における観測状態を見ることにより、正の観測状態が持続的で、以前の測定によって確認されたかどうかを確かめることができる。このようにして、熱雑音等に起因するフォルスポジティブが結果から取り除かれる。前記過去のN個の観測窓のうち一定の数又は一定の割合の観測窓も正の観測状態を示している場合にのみ、確認信号に基づいて前記検出が確認される。前記評価は、画素又はSPD/SPAD毎に局所的に行うことも、評価構成要素又は評価回路において、SPD/SPADの全て(又は全体の一部分)に対して一元的に行うこともできる。
【0023】
N個のうちM個の(連続する又は連続しない)観測窓の持続条件は、代替的な方法でも適用できることを理解しなければならない。特に、前記過去のN個の観測窓の割合M/Nを用いた方法が適用できる(この場合も、前記M個が連続するという条件があっても無くてもよく、Mは典型的にはNに等しい)。
【0024】
より具体的な持続条件が所望に応じて適用できることは言うまでもない(例えば、前記過去のN個の観測窓のうち少なくともM個が正の観測状態であり、そのうち少なくともP個が連続した正の観測状態である;最大Q個の連続した正ではない観測状態が存在する;P個の連続した正の観測状態のクラスタが少なくとも2個、3個、・・・個存在する、等)。これの組み合わせや変形も自明に本発明に属する。
【0025】
前述の方法により、「アクティブな」放射線を一貫して検出することができる。なぜなら、前記放射線は、典型的には一定の期間にわたって一定の領域に広範囲に衝突するため、熱雑音や他の不要な検出とは異なり、前記持続条件を満たすからである。
【0026】
第1の好ましい実施形態において、本方法は、所定の照射パターンに基づいて、1つ又は複数の走査光源(レーザ、LED等)によって、(物体や環境等、画像を形成すべき)シーンを走査光源で照射することを含む。前記照射パターンは、時間的に分離された(一定の長さ及び/又は間隔を有する又は有しない)光パルスを有する。
【0027】
前記持続条件を課す基礎となる観測窓は、前記光パルスの1つに時間的に関連付けられ、前記検出信号は、前記SPDによる観測有無(正の観測状態か否か)を示す。
【0028】
前記観測窓を光パルスに時間的に関連付けるということは、それらが(開始時間及び/又は終了時間において)ほぼ重なるように前記観測窓のタイミングを合わせることであり、これにより前記観測窓において観測された放射線を非常に高い確率で光パルス(したがって熱雑音または他のノイズ信号にではなく)にリンクさせることができる。
【0029】
本出願人は、バランス、つまり、前記照射パターンにおける光パルスの数(及びパルスの長さ及びパルス間の時間)と、システムが動作可能な所望の速度とのバランスを見出す必要があることに気付いた。パルスの数が多い/パルスの長さが長い/間隔が長いほど、全ての離散位置からのSPD上の信号を評価するのに時間がかかることを意味する。このため、Nは通常2から10の間、好ましくは2から7の間、より好ましくは2から5の間、例えば2、3、4又は5に設定される。
【0030】
好ましい実施形態では、前記観測窓は、前記観測窓が関連付けられる光パルスとほぼ重なるように設定され(すなわち、光パルスの期間をほぼカバーするが、必ずしもこれに限定されない)、開始時間は実質的に一致する(これにより、前記観測窓の開始時間は、最も早い場合光パルスの開始時間と同時である)。実質的に一致するとは、前記観測窓の開始時間が前記光パルスの開始時間以後0.0nsから最大1.0ns以内、好ましくは最大0.5ns以内、さらに好ましくは最大0.1ns以内、あるいは0.05ns以内であることを意味する。
【0031】
その結果、前記観測窓中に衝突する(実質的に)全ての放射線が、前記光パルス期間のイベントに起因することが保証される。前記開始時間は、飛行時間を考慮した遊びを可能にする。
【0032】
好ましい実施形態では、前記検出器はクエンチング回路を備える。より好ましくは、これはパッシブクエンチング回路である。あるいは、アクティブクエンチング回路である。
【0033】
好ましい実施形態では、前記観測窓は、前記関連付けられた前記光パルスの終了時間以後0.0nsから2.0nsの間、好ましくは関連付けられた前記光パルスの終了時間以後0.05nsから15.0nsの間、より好ましくは0.1nsから10.0nsの間にある終了時間に設定される。上記で説明したように、このようなタイミングをとることで、前記光パルス期間中のイベントに起因する放射線が、飛行時間を考慮して前記観測窓で確実に捕捉される。
【0034】
前述した開始時間と終了時間との制限を同時に適用することにより、前記光パルスに起因せず、且つ、前記観測窓中に捕捉される光子の数を可能な限り減らすことができる。
【0035】
第2の代替的な好ましい実施形態において、本方法は、1つ又は複数の走査光源によってシーンを照射するステップを含み、これにより、前記走査光源が、実質的に連続的に前記シーンを照射する。これは、前記走査光源が、連続的に、且つ、実質的に一定の強度で照射することを意味する。この場合、前記観測窓は、より任意に選択することができ、場合によっては連続的に選択することもできる。
【0036】
前記光源は、アクティブ且つ制御された光信号を放出し、その結果、画像が形成されるシーン/物体を照射するために使用される。前記SPDは、反射された光子を捕捉し、検出信号に基づいて前記入射をさらなる構成要素に記録することにより、照射されたシーン/物体の画像を形成する。
【0037】
このように、前記本方法は、前記走査光源(1つ又は複数)でシーン又は物体を照射することを含み、前記走査光源は、離散的又は準離散的なステップで照射し、照射される各離散的又は準離散的な位置に対して、次の離散位置に移る前に、短時間、照射を継続する。実際、本明細書において、「離散位置」という用語は、前記走査光源の離散的な方向を指し、つまりは照射される或る離散位置ということになる。照射中に辿る離散位置の「経路」は不規則な経路とすることができるが、典型的には、行毎又は列毎の走査パターンに従う。しかし、本発明は、この態様に何ら限定されるものではないことに留意する必要がある。よって、「準離散的」とは、光源がその方向を変化させ続けるが、前記変化が、(2個以上の)連続した観測窓の場合に、照射領域のカバーされる距離が非常に制限されるために同じ離散領域とみなし得るような速度で行われる状況を指す。したがって、以下の説明において「離散的」とは、準離散的を含むものと解釈する必要がある。
【0038】
好ましくは、M及び/又はNは調整可能であり、さらに好ましくはSPD毎に調整可能である。特定の実施形態において、M及び/又はNは動的に設定可能であり、SPDに対して雑音検出(持続条件を満たさない検出信号)が多数又は少数検出されると、前記システムはそれらを自動的に適合させることができる。そのため、統計的に雑音がほとんど観測されないSPDでは前記持続条件を緩和し、統計的に雑音が多く観測されるSPDでは前記持続条件を厳しくすることで、より迅速かつ正確に動作させることができる。
【0039】
したがって、M及び/又はNを個別に調整可能にする構成は、例えば、「漏れ画素(leaky pixel)」を示し得るような、アクティブな光のない検出信号を有する検出窓が多数検出された場合等、特定のSPDをより高感度にしたり、より低感度にしたりするために使用することができる。必要に応じて、完全にオフにすることもできる。
【0040】
好ましい実施形態において、M及び/又はNは、較正ルーチンに基づいて自動的に適合される。
【0041】
好ましい実施形態において、前記持続条件は、一致条件を満たすことと組み合わされる。これは、SPDによる観測がある場合、特定のSPDへの光子の入射は単発ではなく、空間的にクラスタ化された光子束の入射を伴う、という仮定に基づいている。これに基づいて、或るSPDの正の観測状態又は確認信号を中心とした一定時間内に、近接するSPDの観測状態又は確認信号を検証する一致条件が課される。
【0042】
前記一致条件は、前記持続条件の前又は後に課すことができ、どちらがより効率的かは回路による。
【0043】
このようにして、前記持続条件を満たす第1のSPDに対して、その後に前記一致条件を課すことができ、前記一致条件が満たされた後にのみ確認信号が生成される。好ましくは、前記一致条件は、(前記第1のSPDに隣接する)少なくとも1つの隣接SPDも前記持続条件を満たしていることを示唆する。明らかに、これにより、前記持続条件を満たす必要がある隣接SPDの数を、少なくとも2個、3個、4個等に狭めることができる。
【0044】
「隣接SPD」という用語は、主に直接隣接するSPDを指す。前記SPDは典型的には行と列との矩形配列で設けられ、隣接SPDが1つの同じ行の近接する列に、又は1つの同じ列の近接する行に位置することを意味する。しかしながら、この用語は、例えば斜めに隣接するSPD(近接する行及び近接する列)を含むように単純に拡張することができ、あるいは、「対角に近接」も本明細書に含まれるように、さらに拡張することができる。
【0045】
前記一致条件は、多くの方法で、可変の条件で課すことができる。これにより、前記持続条件を満たす隣接SPDの数を適合させることができるが(1、2、3、4、5、6、7、8、9又はそれ以上)、「隣接」の定義もまた適合させることができる。したがって、好ましい実施形態では、隣接するとは「直接隣接する」と解釈できるが、「斜めに隣接する」SPDも受け入れることができ(前記第1のSPDが直接隣接しているのとは別の次元で、第1の直接隣接するSPDに直接隣接している)、これはまた、前記第1のSPDの所定の間隔内に位置している(したがって、「反対に近接」も許容する)と定義することもできる。この場合も状況に応じて変化させることができ、前記システムは(例えば較正ルーチンを介して)これを動的に適合させることもできる。
【0046】
最初に前記持続条件を課すことにより、最初のフィルタリングがかけられ、その後、前記持続条件に従って確認された残りの検出に対してのみ前記一致条件が適用される。このシーケンスにより、計算上最も困難な条件(すなわち一致条件。多数の隣接するSPDの信号を考慮する必要があるため)が、より少ない数の信号に適用されることが保証される。
【0047】
第1の方法では、位置が(i,j)である第1のSPDに隣接するSPDは、座標(i,j±1)又は(i±1,j)を持つと単純に定義される。斜めに隣接するSPDを追加するために、座標(i±1,j±1)を有するSPDも受け入れられる。
【0048】
必要であれば、「隣接するSPD」の範囲を、座標が(i±2,j±1)、(i±1,j±2)、(i±2,j)、(i,j±2)のSPDに拡張することもでき、さらに(i±2,j±2)にまで拡張することも可能である。
【0049】
言うまでもなく、さらなる拡張が可能であり、本発明の一部とみなされることが示唆される。
【0050】
したがって、隣接するSPDの定義に基づく前記一致条件も適合させることができ、それにより、全てのSPDは、前記第1のSPDに対する前記配列内の「距離」に基づき重み付けされる。前記持続条件が満たされたSPDにおいて一定の重みに達したときのみ、前記第1のSPDに対して前記一致条件が満たされたとみなされる。
【0051】
逆に、最初にSPDに対して前記一致条件を課すことができ(上述したような方法ではあるが、前記持続条件を満たす代わりに、観測窓における正の観測状態に基づいて観測窓毎に課される)、前記一致条件が満たされたSPDに対してのみ、続いて前記持続条件を満たしているかが確認される。
【0052】
第2の態様において、本発明は、連続している観測窓中に検出されるべき電磁放射線(光子)の観測有無の状態を記述する信号C_ovを生成するように構成されている単一光子検出器(SPD)、好ましくは単一光子アバランシェ検出器(SPAD)と、少なくともN個(Nは1以上の自然数)の過去の観測窓の終了時の前記SPDの状態を記憶するメモリ素子と、現在の観測窓の終了時における前記SPDの前記信号と前記N個の以前の観測窓のうち少なくともM個(Mは1以上且つ最大でNに等しい自然数)の観測窓の前記SPDの信号とが前記SPDによる観測を示す場合に、確認信号を生成するように構成されている論理回路と、を有する検出素子に関する。
【0053】
このようなケースにおいて、前記検出素子は、それ自体の観測に対して個別に持続条件を課し、前記持続条件が満たされた場合にのみ確認信号を生成して中央処理装置に送出することができる。この可能な実施形態の例について、本文及び図において、さらに説明する。
【0054】
あるいは、前記検出素子をより単純化するために、前記持続条件が一元的に実行される。
【0055】
好ましい実施形態では、連続する光パルスの間隔は、少なくとも0.5ns、好ましくは少なくとも1.0ns、さらに好ましくは少なくとも2.5ns、最も好ましくは少なくとも5.0nsである。
【0056】
好ましい実施形態では、連続する光パルスの間隔は、1000ns以内、好ましくは500ns以内、さらにより好ましくは100ns以内、最も好ましくは50ns以内である。
【0057】
最も好ましいのは、前述の最小値と最大値とを組み合わせた範囲である。
【0058】
好ましい実施形態では、所定の照射パターンの光パルスの長さと、それに関連付けられた観測窓の長さとは、1.0から2.0の間、好ましくは1.0から1.5の間、最も好ましくは1.0から1.25の間の比率を有する。こうすることで、(本方法が遅くなってしまうほどに)不必要に長くしなくても、光パルスから生じる信号をできるだけ多く観測窓において捕捉することが保証される。
【0059】
好ましい実施形態では、過去のN個の観測窓の観測状態は、前記SPAD上のメモリ素子、又は(前記配列の一部の又は全てのSPADに対して前記持続条件を課す)中央処理装置上のメモリ素子によって保存され、(N個より前の観測窓の)「古い」観測状態は、新しい観測状態によって上書きされる。このようなメモリ素子には、フリップフロップ、DRAM(ダイナミックRAM)、SRAM(スタティックRAM)、アナログメモリ素子、又は他の構成要素が含まれる。
【0060】
前記観測状態を適切な論理回路(例えば修正されたANDポート)にリンクさせることで、簡単な方法で確実に、信号の所望の処理が達成され、前記持続条件を満たした場合にのみ確認が得られることになる。
【0061】
前記論理回路(及びメモリ素子)の前段に、好ましくは、SPADの動作と信号の処理とを互いに分離するためのバッファ素子が設けられる。
【0062】
特定の実施形態では、例えばNが単に2に等しい場合には、以前の観測窓からの信号を含み、その信号を現在の観測窓の信号とともに単純なANDポートのような論理回路に供給する、いわゆる遅延回路を設けることができる。典型的には、前記観測窓は一定の時間間隔で現れるため、このような回路は、多くの追加の構成要素を必要とせず、単純な方法で実現可能である。また、前記持続条件は、前記SPAD自体に局所的に適用することができ、それにより、さらなる処理装置への(非)確認信号のみが供給される。
【0063】
上記を目的とした多くの可能な回路が、場合によってはさらなる調整及び改良と組み合わせて、図に示されている。
【0064】
第3の態様において、本発明は、本発明の第2の態様による検出素子のマトリクス/配列と、前記マトリクス/配列内の前記検出素子を読み取る回路とを有する、高速撮像用センサシステムに関する。前記検出素子にそれ自体の評価回路を設けることにより、計算負荷の一部を簡単な方法で分散化することができ、確認信号のみが中央の読み取り回路に伝達される。
【0065】
あるいは、本発明は、その第3の態様において、
a.連続している観測窓中に検出されるべき電磁放射線(光子)の観測有無の状態を記述する信号C_ovを生成するように構成されている単一光子検出器(SPD)、好ましくは単一光子アバランシェ検出器(SPAD)を有する検出素子のマトリックス/配列と、
b.前記マトリクス/配列内の検出素子の信号C_ovを読み取るとともに、1つ又は複数のメモリ素子を有する論理回路と、
を有する高速撮像用センサシステムに関する。
【0066】
ここで、前記1つ又は複数のメモリ素子は、少なくともN個の以前の観測窓の終了時における前記SPDの状態を記憶するよう構成されており、Nは1以上の自然数である。前記論理回路は、現在の観測窓の終了時における前記SPDの前記信号と前記N個の以前の観測窓のうち少なくともM個の観測窓の前記SPDの前記信号とが前記SPDによる観測を示す場合に、前記SPDに対する確認信号を生成するように構成されており、Mは1以上且つ最大でNに等しい自然数である。このようにして、前記検出素子は単純な構成に保たれ(したがって、よりコンパクトで、より安価で、より堅牢である)、計算負荷は一元的に負担される。
【0067】
好ましい実施形態では、前記センサシステムは、本発明の第1の態様による方法を実行するように構成される。
【0068】
さらなる態様において、本発明は、複数の単一光子検出器(SPD)、好ましくは単一光子アバランシェ検出器(SPAD)を有する配列を有する撮像システムを較正する方法に関する。本方法は、評価回路(1つの評価回路、又はSPD毎、SPD群毎、又はシステム全体用)により、較正期間に亘って、前記較正期間における少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の較正窓において観測状態/検出信号を監視することに関する。好ましくは、前記較正窓は互いに時間的に分離され、前記SPDの配列がアクティブに(すなわち、前記システムによって制御される光源により意図的に)照射されていない期間に実行される。
【0069】
較正窓の数はより多く設定することができ、その結果、例えば5、6、7、8、10又はそれ以上の較正窓等、より徹底した信頼性の高い分類が可能になる。前記較正窓は、連続させることも、互いに分離させることもできる。
【0070】
前記SPDによる観測が検出された較正窓の数に基づいて、前記SPDは幾つかのカテゴリーに個別に分類される。分類の数または分類の仕方は状況に応じて設定することができる。したがって、2つのクラス(信頼できる-信頼できない)を選択することもできるし、2つ以上のクラスを選択することもできる。
【0071】
この分類は、SPDが雑音等に対してどの程度敏感であるかを示すものであり、撮像のためのさらなる検出信号の処理に利用することができる。より具体的には、本較正方法は、(本態様の前の)前出の態様による本発明の観点から適用することができ、SPDの信号のさらなる処理は、その分類に基づいて適合させることができる。より具体的には、例えば、前記持続条件を厳格化又は緩和する(Mを大きく又は小さくする、あるいは持続条件を完全に不活性化させる、又はM=1にする)、及び/又は、あまりにも大きな誤差が検出される特定のSPDを不活性化させる(例えば、正の観測状態が検出信号によって統計的にあまりにも頻繁に示されるスクリーマー)、など、前記持続条件を前述の分類に基づいて前記SPDに対して適合させることができる。
【0072】
第1の実施形態では、前記SPDは信頼性を示す高優先度(HP)と低優先度(LP)の2つの分類に分けることができる。HPのSPDはより信頼性が高いと考えられ、LPのSPDよりも緩やかな持続条件及び/又は一致条件下で動作することができる。非制限的な例では、LPの SPDは前記較正窓の少なくともT%において正の観測状態を有し、ここでTは、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも66%あるいは75%である。
【0073】
また、さらなる分類を任意に設けることができ(中優先度(MP)、高中優先度(HMP)、低中優先度(LMP)等)、これら分類はすべて、撮像中の個別の処理方法(より厳しい又はより緩和された持続条件)に関連付けられ、前記SPDの較正窓で検出された正の観測状態の割合の特定の範囲に付けられる。
【0074】
前記条件の適合は、較正レベルが低下する(HPからLPに低下する)毎に単純にMを1ずつインクリメントする等、大きく変化させることができるが、カテゴリーが変わる毎に異なる適合とすることも同様に可能である。
【0075】
特定の分類に属する適合済みの持続条件及び/又は一致条件が予め設定され、前記評価回路はそれらを適切に実行するように構成される。
【0076】
好ましい実施形態では、過去のN個の較正窓の観測状態は、前記SPAD上のメモリ素子、又は(前記配列の一部の又は全てのSPADに対して前記持続条件を課す)中央処理装置上のメモリ素子によって保存され、(N個より前の較正窓の)「古い」観測状態は、新しい観測状態によって上書きされる。このようなメモリ素子としては、フリップフロップ、DRAM(ダイナミックRAM)、SRAM(スタティックRAM)、アナログメモリ素子、又は他の構成要素が含まれる。
【0077】
前記観測状態を適切な論理回路(例えば、修正されたANDポート)にリンクさせることで、簡単な方法で確実に、前記SPDが所望の通り分類される。
【0078】
特定の実施形態では、例えばNが単に2に等しい場合には、以前の較正窓からの信号を含み、その信号を現在の較正窓の信号とともに単純なANDポートのような論理回路に供給する、いわゆる遅延回路を設けることができる。典型的には、前記観測窓は一定の時間間隔で現れるため、このような回路は、多くの追加の構成要素を必要とせず、単純な方法で実現可能である。また、前記較正は、前記SPAD自体に局所的に適用することができる。
【0079】
上記を目的とした多くの可能な回路が、場合によってはさらなる調整及び改良と組み合わせて、図に示されている。
【0080】
多種多様な実装によって、例えばフリップフロップを用いて、過去の観測窓の全ての画素の状態情報を保持することが可能であるが、フリップフロップの使用に限定されるものではなく、SRAM及び/又はDRAM素子のようなメモリ素子、場合によっては、負荷を保存できる単純な寄生コンデンサも用いることができる。
【0081】
以下では、本発明を説明する非限定的な実施例によって本発明を説明するが、これらは本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、またそのように解釈すべきではない。
【実施例】
【0082】
図1Aから
図1Cは、本発明の可能な実施形態に係る放出信号及び受信信号を示す。
【0083】
図1Aは、或るSPD上の光源による照射の時間経過を示しており、一定の長さと周期とを有する矩形波(1)でパルス状の照射パターンが維持され、各周期中に、シーンは、一定時間光源によってアクティブに照射され、一定時間光源によってアクティブに照射されない。
【0084】
図1Bは、SPDについて検出されたイベントを示しており、各イベント(3a、3b、3c)は前記SPDへの光子の入射を示している。これらイベントの一部は、外乱光、ランダム雑音又はエラー信号の結果(3b、3c)であり、一部は、光源によって放出された光子に由来する(3a)。原理的には、統計的に第一のグループはランダムに分布しており、第二のグループは光源が光を発する期間にある。
【0085】
図1Bには観測窓(2;W
1、W
2、W
N)も示される。観測窓(2;W
1、W
2、W
N)は、一定の長さと周期とを有する。観測窓(2;W
1、W
2、W
N)では、SPDの観測状態が記録される(観測窓中の光子の入射であり得る検出)。アクティブ信号によって照射することにより、1つ又は複数のイベントが観測窓(照射矩形波に該当)で検出される可能性が高い。
【0086】
最後に
図1Cには、再度観測窓を示すとともに、検出されたイベント(3b、3c)を示しているが、光源による照射の結果であるイベントは無い。
【0087】
図1Cから明らかなように、検出されたイベントがランダムに分布しているため、幾つかの観測窓では、イベント(3c)が依然として生じており、SPDへの入射光子の検出と誤ってみなされる可能性がある。しかしながら、例えば2個の連続する観測窓(又は3個、又は3個のうちの2個等、課される持続条件に応じて)において正の観測状態が観測される必要がある(すなわち、観測窓において検出されたイベント)という持続条件を課すことによって、上述のランダムなイベントが、撮像において「実際の」検出としてもはや評価されないことが保証される。
図1Cは、確かに、正の観測状態を有する1つの観測窓しか示していない。
【0088】
しかしながら、
図1Bでは、2個の連続した観測窓において(そして全ての観測窓でも)正の観測状態が観測され、持続条件が満たされている点を考慮して、アクティブ信号によって照射された結果としての「実際のイベント」(3a)が実際に確認される。
【0089】
図2Aから
図2Cは同じグラフを示すが、
図2Aに示されるように、光がパルス状ではなく連続的であるという違いがある。
図2Bは、観測窓において照射によって生じたイベントのみを示している。
【0090】
図3は、本発明によるSPD検出素子の可能な回路を示しており、(オプションの)一致条件も、この目的のための回路(4)を介して持続条件の後に課される。持続条件は、2つの連続する観測窓が正の観測状態を示す必要があるというものである。
【0091】
光子検出器であるSPD又はSPAD(5)は、グランドから電圧VBEまでの間に抵抗器と直列に接続されている。光子が検出器に入射した場合、検出器にブレークダウンが生じ、抵抗器に電流が流れる(言い換えれば、検出器と抵抗器との間に位置する点の電圧の変化)。このような抵抗器を有する回路を「パッシブクエンチング」と呼ぶ。「アクティブクエンチ」回路のような他の「クエンチング」回路も適用可能であることは言うまでもない。
【0092】
続いて、測定された電圧を離散信号に変換するパルス検出器が設けられている(これにより、1は正の観測状態、すなわち観測窓中に光子の入射を検出したことを示し、0は負の観測状態、すなわち光子が検出されなかったことを示す)。
【0093】
続いて、観測窓click_Tn-1の観測状態を示す信号は、(観測窓の立ち上がりエッジでフリップフロップ(FF)をクロックすることにより)観測窓の周期に従ってFFを介して実際に遅延され、次いで、ANDポートを介して、観測状態が観測窓click_Tnに属することを示す「新たな」現在の信号と結合される。両方の観測状態が正の場合、ANDポートはその出力で1の確認信号を送出し、これが、例えば近接する検出素子(6)からの信号と組み合わせる等、信号のさらなる処理に使用することができる。
【0094】
図3に基づいて、フリップフロップの構成要素又はメモリ素子をさらに設けることによって、簡単にさらに多くの観測状態を含めることができ、これにより、論理回路を介して所望の持続条件を課すことができることが理解されよう。
【0095】
図4はさらなる適合を示しており、第1のフリップフロップ(FF1)は、SPD(5)の検出信号を用いて第1のフリップフロップ(FF1)をクロックする。これが観測窓中に発生すると(したがって、前記信号が1を生成すると)、FF1も1をクロックする。観測窓がない場合(信号=0)、第2のフリップフロップ(FF2)の入力として0もクロックされる。この時、観測窓(NOT-観測窓)の立ち下がりエッジは、クロックトリガとして機能する。これにより、次の観測窓(「click_T
n」)からの観測状態が第1のフリップフロップからデータ出力Qとして到達するとき、前の観測窓(「click_T
n-1」)の観測状態は第2のフリップフロップ内にあり、これらが後段のANDポートで結合される。
【0096】
遅延を利用するフリップフロップをさらに追加することで、3つの連続した正の観測状態等、さらなる条件を課すことができる。
【0097】
上述の構成は、一致条件を課す1つ又は複数の回路(4)を後段に設けることもできる。
【0098】
図5は、過去のN個の観測状態がN個のメモリ素子(7)に保持される回路を示す。観測状態を決定する回路は、SPD(5)の信号をフリップフロップ(FF)のクロックに導き、それによって、観測窓の信号がフリップフロップ(FF)のデータ入力(D)として機能する。これにより、SPDが観測窓における光子の入射を検出するとデータ出力(Q)1が生成され、検出がないと0が生成される。
【0099】
フリップフロップからの信号は、連続するメモリ素子に保存されるが、前記メモリ素子は記憶装置として循環的に信号を保存する。これらメモリ素子は、保存した信号を、それらの設定に応じて持続条件を課す論理回路に供給する。当業者であれば、単純な構成要素を用いた回路で前記条件を簡単に変更できるので、ここではこれ以上の説明は控える。
図5では、便宜上、N個の入力を有するANDポートが設けられており、前記持続条件は、確認信号生成のために、過去のN個の観測窓のうちN個で光子の入射を検出することを必要としている(そして、例えば、さらに処理ユニットに供給され、ここで場合によっては一致条件が課される)。
【0100】
図6は、
図5の回路に、本明細書で説明するルーチンに従って動作する較正回路(9)を追加した回路を示す。この場合、較正ルーチンの結果と較正条件に基づいて、高優先度(HP)又は低優先度(LP)がSPD(5)に割り当てられる。その結果、HPの場合には、観測状態にさらなる持続条件は課されず、即座に確認信号が生成される。LPに分類される場合、より厳しい持続条件が適用され、この場合にも、確認信号が生成される前に、過去N個の観測窓でN個の正の観測状態が必要となる。SPDは、問題が検出された場合(例えばSPDの飽和)、スイッチ(8)を介して、較正ルーチンによってオフにすることもできる。
【0101】
図7では、確認信号がさらなる処理ユニットに転送される前に、これら確認信号に一致条件が局所的に課せられる。一致条件の詳しい開発内容については、特に、国際特許出願第PCT/IB2021/054688号、ベルギー国特許出願第2020/5975号、ベルギー国特許出願第2021/5521号等が参照される。
図6の持続回路からの確認信号は、適切なバスに転送される前に、一致回路(10)によって処理される。
【0102】
図8Aは、較正回路(9a)を介してSPD(5)に可能な第1の較正条件、すなわち過去のN個の較正窓に亘って光子の入射がないという条件、を課すための回路の可能な適用を示している。入力される「click」信号は、光子入射であり得る検出(検出信号)を示し、この信号は、その後、較正ルーチンが実行されているかどうかを示す信号とともに、反転回路を介してORポートに送られる。光子の入射があり(検出信号として1)、較正ルーチンが実行されている(したがって、前記較正窓において較正条件が満たされていない)場合、前記組み合わせは単に0となる。ORポートの出力は、フリップフロップ(FF)の反転Q出力とともにNANDポートに送出される。NANDポートの出力はフリップフロップのデータ入力Dに送られる。フリップフロップは各較正窓の開始に基づいてクロックされる。光子の入射がない限り、前記データ入力に送出される信号は0のままであり、反転Q出力(QN)は1を生成し、この信号がNANDポート及び次の較正窓の「新しい」信号を介して前記データ入力にループバックされる。このため、反転Q出力(QN)は光子の入射がない限り1を生成する(したがって「click」は0となり、1がORポートに送出されると反転するため、NANDポートに1を送出する)。
【0103】
較正ルーチンが実行され続ける限り(そしてZeroBG_EnableN=1)、フリップフロップ(FF)はこのループの反復を続ける。1つの光子の入射が検出されるとすぐに、フリップフロップは反転出力として0を生成し、反転NANDポートを介して常に1を生成するため、再び0の反転出力をループし続ける。
【0104】
結果として得られる信号ZeroBGは、その後、持続ルーチンからの信号が較正条件に適合しているか否かを分類するために使用され、したがって、
図8Bの回路のポートを介して、HP出力又はLP出力として使用することができる。
【0105】
図9Aは、
図8Aの較正回路に加えて、さらに別の第2の較正回路(9b)を設ける可能性を示しており、これによりSPD(5)の可能な分類がさらに拡大される。
図8Aの較正回路(9a)が、どのSPDが背景放射(又は熱雑音等)に対して感度がない(又は低い)かを判定しようとするのに対し、第2の較正回路は、飽和SPDが存在する(言い換えれば、常に検出を示すことになる)かどうかを判定することを目的としている。
【0106】
SPDの信号(「click」)は、較正ルーチンの信号とともにANDポートに反転して送出される。この較正ルーチンが実行中(noSAT_Enable=1)であり、且つ、光子入射又は光子イベントが検出された場合(「click」=1)、ANDポートから「0」が生成され、イベントがない場合は「1」が生成される。
【0107】
ANDポートからの信号は、フリップフロップ(FF)のループデータ出力QとともにORポートに入力される。ORポートの結果は、較正窓のクロック信号とともに、フリップフロップのデータ入力となる。
【0108】
イベント(ORポートへの信号1)がない場合、自動的にデータ入力に1が生成され、したがって、データ出力Qに1が出力される。この1のデータ出力Qは、ORポートに戻り(自動的に再び1)、前記データ入力に戻ってこれも1となり、この様なループが繰り返される。つまり、前記第2の較正ルーチンの間に、イベントが発生しない較正窓が(少なくとも1つ)存在する場合、較正回路は1を出力し、これはSPDが飽和していないことを意味する。
【0109】
全ての較正窓でイベントが発生した場合(click=1)、ORポートはSPDから常に0を受信し(ANDポートの後)、その後、フリップフロップ(FF)のデータ出力Qへの信号1が先行しない限りループし続ける。このため、連続的なイベントが発生した場合、前記第2の較正回路の出力は0を生成し、SPDが飽和していることを示す。noSATが0(飽和)の場合、イベントが常に生じるため、ZeroBGの信号は常に0となる。
【0110】
結果として得られる信号noSATは、その後、持続条件からの信号が第2の較正条件を満たすか否かを分類するために使用され、したがって、
図9Bの回路において、
図8Aの第1の較正回路及び結果として生じる信号ZeroBGとともに、SPDを分類し、結果の処理を調整するために使用される。
【0111】
このように、noSATが0(飽和SPD)であり、したがってZeroBGも0であると提示された回路は、たとえ前記SPDが持続条件を満たしている場合でも、前記SPDからの信号は常に拒絶されることになる。
【0112】
一方、非飽和SPD(noSAT=1)の場合、ZeroBGによって、当該SPDが高優先度として処理されるか低優先度として処理されるかが決定される。
【0113】
最後に、noSATが0(SPDが飽和)の場合も、追加回路(8)を介してSPDのスイッチはオフになる。
【0114】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、追加された特許請求の範囲を評価し直すことなく、記載された実施例に多数の修正又は変更を加えることができることが想定される。
【国際調査報告】