IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イントロン バイオテクノロジー,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-534424ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法
<>
  • 特表-ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法 図1
  • 特表-ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法 図2
  • 特表-ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法 図3
  • 特表-ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法 図4
  • 特表-ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法 図5
  • 特表-ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法 図6
  • 特表-ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法 図7
  • 特表-ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K8/49
A61P43/00 111
A61P17/00
A61P27/02
A61P27/16
A61P1/02
A61P17/02
A61P29/00
A61P25/06
A61P25/24
A61P25/00
A61P25/04
A61P5/14
A61P9/00
A61P21/00
A61P1/18
A61P1/04
A61P25/28
A61K31/352
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516818
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 KR2022012651
(87)【国際公開番号】W WO2023043076
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0124504
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508369571
【氏名又は名称】イントロン バイオテクノロジー,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】iNtRON Biotechnology,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ソン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、アン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ス ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジ ソン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン ホ
(72)【発明者】
【氏名】カン、サン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC212
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD092
4C083AD662
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD16
4C083EE01
4C083EE11
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C083FF04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZA68
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZC02
4C086ZC06
4C086ZC51
(57)【要約】
ボツリヌス神経毒素代替新規素材およびその製造方法に関し、具体的には、体内安定性を含む物質の安定性が画期的に改善された、SNARE複合体の形成を阻害して結果的にアセチルコリン分泌を阻害することができる能力を有するミリセチンアセチル誘導体、およびその製造方法を提供する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[化学式1]:
【化1】
で表されるミリセチン誘導体である3-アセチル-ミリセチン(3-Acetyl-Myricetin)を有効成分として含む
ことを特徴とするアセチルコリン(Acetylcholine)分泌阻害効果を提供する組成物。
【請求項2】
前記組成物は、美容目的の化粧料組成物またはアセチルコリン過多分泌に起因した疾患治療目的の薬学的組成物である
請求項1に記載のアセチルコリン(Acetylcholine)分泌阻害効果を提供する組成物。
【請求項3】
前記美容目的は、シワ改善(Treating wrinkles)、毛穴縮小(Reducing pore size)および皮膚弾力増進(Improving skin elasticity)を含む群から選択されたいずれかである
請求項2に記載のアセチルコリン(Acetylcholine)分泌阻害効果を提供する組成物。
【請求項4】
前記アセチルコリン過分泌に起因した疾患は、斜視(Crossed eyes)、内耳障害(Inner ear disorder)、歯ぎしり(Teeth grinding)、ケロイド性瘢痕(Keloid scarring)、多汗症(Excessive sweating)、背中の痛み(Back pain)、ふるえ(Tremors)、裂肛(Anal fissure)、臀部奇形(Buttock deformity)、筋損傷(Muscle injuries、twitching)、慢性片頭痛(Chronic migraine)、うつ病(Depression)、顔面神経障害(Facial nerve disorder)、頸部疼痛(Neck pain、spasms)、甲状腺障害(Thyroid disorder)、心筋障害(Cardiac muscle disorder)、上肢硬直(Upper limb spasticity)、膵臓障害(Pancreas disorders)、過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome)、肉割れ(Stretch marks)、および小児脳性麻痺(Juvenile cerebral palsy)を含む群から選択されたいずれかである
請求項2に記載のアセチルコリン(Acetylcholine)分泌阻害効果を提供する組成物。
【請求項5】
下記[化学式1]:
【化2】
で表されるミリセチン誘導体3-アセチル-ミリセチン(3-Acetyl-Myricetin)の製造方法であって、
(A)外部の空気と水分が添加されないようにした窒素雰囲気中で無水ピリジン(Pyridine anhydrous)に溶けたミリセチンに無水酢酸(Acetic anhydride)を添加して反応させるステップと、
(B)エチルアセテート(Ethyl acetate;EA)で抽出するステップと、
(C)エチルアセテート(Ethyl acetate;EA)抽出物を減圧乾燥するステップと、
(D)減圧乾燥した試料にジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide;DMSO)を添加し、次いでリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline;PBS;pH7.0)を添加して希釈するステップと、
(E)希釈した試料を反応(Incubation)させて副産物を分解するステップと、
(F)凍結乾燥するステップと、を含む
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボツリヌス神経毒素(Botulinum neurotoxin)代替新規素材およびその製造方法に関し、より詳細には、体内安定性(in vivo stability)を含む物質の安定性が画期的に改善された、アセチルコリン(Acetylcholine)分泌を阻害することができる能力を有するミリセチン(Myricetin)アセチル誘導体(Acetyl derivative)、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボツリヌス神経毒素(Botulinum neurotoxin)は、神経細胞においてシナプス前膜(Presynaptic membrane)とシナプス小胞(Synaptic vesicle)の結合(Docking)に関与するSNARE(Soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachment protein receptor)タンパク質(Protein)を加水分解して結果的にアセチルコリン(Acetylcholine)分泌を阻害し、究極的には神経伝達を遮断することにより、シワ改善(Treating wrinkles)などの美容的施術だけでなく、斜視(Crossed eyes)、多汗症(Excessive sweating)などのアセチルコリン過多分泌が原因である100余種の疾病治療に活用できる物質である。
【0003】
ボツリヌス神経毒素は、それ自体が毒素であるため、誤って処置された際に死亡に至らせるおそれがあるだけでなく、アレルギー反応を誘発し、言葉が不自然になったり表情がぎこちなくなったり瞼が閉じられなくなったりするなどの副作用を持っていることが知られている。一般的に、使用量の調節失敗、および望まない筋肉にボツリヌス神経毒素が広がる現象などが原因となり、これらの副作用は、ボツリヌス神経毒素が体内で分解されるか或いは新しい神経が形成されて正常な機能を回復すれば解消できるが、これは数ヶ月の期間がかかったりもする。このような理由から、ボツリヌス神経毒素は、美容目的または医学的目的で使用する上で相当な水準の注意が要求される。ボツリヌス神経毒素は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)という嫌気性微生物の培養によって生産するが、この菌は非常に致命的であるため、培養過程から分離精製、廃棄および殺菌に至るまでの全過程が厳しく管理されなければならない。
【0004】
このような理由から、ボツリヌス神経毒素を代替することができる多様な素材の開発が試みられている。その例としては(特許文献1-8)、タンパク質またはポリペプチド(Polypeptide)を使用しようとする場合(韓国特許公開第10-2012-0001964号;韓国特許公開第10-2012-0122999号)、天然のポリフェノール(Polyphenol)を利用しようとする場合(韓国特許公開第10-2008-0083438号;韓国特許公開第10-2008-0091735号;韓国特許公開第10-2011-0017599号;韓国特許公開第10-2016-0058739号)、ミリセチン(Myricetin)誘導体(Derivative)を利用しようとする場合(韓国特許公開第10-2017-0015845号;韓国特許公開第10-2017-0091554号)などがあった。その中で、海外では、ペプチドを活用した疑似ボツリヌス神経毒素素材が開発されて商品化されている。Lipotec社で開発したアルジルリン(Argireline)がその例である。しかし、ボツリヌス神経毒素代替剤の商業的成功は、様々な欠点により未だ微々たる水準である。
【0005】
これにより、既存のボツリヌス神経毒素代替素材の欠点を克服することができながらもボツリヌス神経毒素の副作用および問題点までも解決することができる新規素材の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国特許公開第10-2012-0001964号
【特許文献2】大韓民国特許公開第10-2012-0122999号
【特許文献3】大韓民国特許公開第10-2008-0083438号
【特許文献4】大韓民国特許公開第10-2008-0091735号
【特許文献5】大韓民国特許公開第10-2011-0017599号
【特許文献6】大韓民国特許公開第10-2016-0058739号
【特許文献7】大韓民国特許公開第10-2017-0015845号
【特許文献8】大韓民国特許公開第10-2017-0091554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、既存のボツリヌス神経毒素代替素材のうち、ミリセチン誘導体が、体内安定性を含む物質の安定性が減少するという点と、これを解決すればより価値のあるボツリヌス神経毒素代替素材を開発することができるという点に着目し、既存のミリセチン誘導体の安定性問題を解決するために鋭意努力した結果、既存の公開されたミリセチン誘導体と比較して安定性が画期的に改善された物質およびその製造方法を開発することにより、本発明を完成した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ボツリヌス神経毒素代替素材として活用できる、安定性が画期的に改善された、SNARE複合体の形成を阻害して結果的にアセチルコリン分泌を阻害することができる能力を有する[化学式1]のミリセチンアセチル誘導体(3-アセチル-ミリセチン;3-Acetyl-Myricetin)を提供することにある。
【0009】
【化1】
【0010】
本発明の他の目的は、[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、前記[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体を有効成分として含むボツリヌス神経毒素代替美容目的の化粧料組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、前記[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体を有効成分として含む、アセチルコリン過分泌により発生する疾患の治療用薬学的組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の一態様によれば、本発明は、SNARE複合体の形成を阻害して結果的にアセチルコリン分泌を阻害することができる能力を有する[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体を提供する。
【0014】
もちろん、前記[化学式1]を基本骨格としながら追加の誘導体化(Derivatization)を適用しても、本発明の効果を得ることができるのは、本発明内で自明である。
【0015】
本発明の他の一態様によれば、本発明は、[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体を有効成分として含む、美容目的の化粧料組成物を提供する。
【0016】
前記美容目的には、シワ改善、毛穴縮小(Reducing pore size)、皮膚弾力増進(improving skin elasticity)などを提示することができるが、これに限定されないのは当然である。前記シワの例として、眉の垂れ(Brow droop)、目じりの小皺(Crow’s-feet)、鼻唇襞(Nasolabial folds)、口唇の縦じわ(Mouth frown)、首のシワ(Neck wrinkles)、額のシワ(Forehead lines)、眉間のシワ(Frown lines)、目の下のクマ(Tear troughs)、顎の垂れ肉(Jowls)などを提示することができるが、これに限定されないのは当然である。
【0017】
本発明の一側面において、「化粧料組成物」は、人体の外観を美しくする全ての組成物を含む概念であって、本開示の美容目的の化粧料組成物は、生体リズムに伴う生理的な現象によって皮膚での悪影響を抑制して人体の外観を美しくする組成物を指す概念であるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の一側面において、化粧料組成物は、基本的に皮膚に塗布されるものであるので、当業分野の化粧料組成物を参照して通常製造される如何なる剤形にも製造できる。一例として、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーションおよびスプレーなどに剤形化できるが、これに限定されるものではない。より詳細には、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、スプレーまたはパウダーの剤形などに製造できる。
【0019】
本発明の一側面において、本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが含まれ得る。
【0020】
本発明の一側面において、本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、ポリアミドパウダーなどが含まれることができ、特にスプレーである場合には、さらにクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン、ジメチルエーテルなどの推進体が含まれることができる。
【0021】
本発明の一側面において、本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤、乳濁化剤などが含まれることができ、具体的には、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾアート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステルなどが含まれることができる。
【0022】
本発明の一側面において、本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノール、プロピレングリコールなどの液状希釈剤;エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁剤;微結性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカントなどが含まれることができる。
【0023】
本発明の一側面において、本発明の剤形が界面活性剤含有クリンジングである場合には、担体成分として脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられることができる。
【0024】
本発明の他の一態様によれば、本発明は、[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体を有効成分として含むアセチルコリン過分泌に起因する疾患治療目的の薬学的組成物を提供する。
【0025】
前記アセチルコリン過分泌に起因した疾患には、斜視、内耳障害(Inner ear disorder)、歯ぎしり(Teeth grinding)、ケロイド性瘢痕(Keloid scarring)、多汗症、背中の痛み(Back pain)、ふるえ(Tremors)、裂肛(Anal fissure)、臀部奇形(Buttock deformity)、筋損傷(Muscle injuries、twitching)、慢性片頭痛(Chronic migraine)、うつ病(Depression)、顔面神経障害(Facial nerve disorder)、頸部疼痛(Neck pain、spasms)、甲状腺障害(Thyroid disorder)、心筋障害(Cardiac muscle disorder)、上肢硬直(Upper limb spasticity)、膵臓障害(Pancreas disorders)、過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome)、肉割れ(Stretch marks)、小児脳性麻痺(Juvenile cerebral palsy)などがあり、これに限定されないのは当たり前である。
【0026】
本発明の薬学的組成物に含まれる、薬学的に許容される担体は、製剤の際に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、上記の成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0027】
本発明の[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体を有効成分として含む薬学的組成物は、経口投与または非経口投与によって投与することができ、非経口投与の場合には、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、鼻腔内投与または局部投与を用いて投与することができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明の[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体を有効成分として含む薬学的組成物は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施し得る方法によって、薬学的に許容される担体および/または賦形剤を用いて製剤化されることにより、単位用量形態で製造されるか、或いは多用量容器内に内入させて製造されてもよい。この時、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液形態であるか、或いはエキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含んでもよい。
【0029】
また、前記薬学的組成物の好適な塗布、噴霧および投与量は、製剤化方法、投与方式、年齢、体重、性、疾病症状の程度、食餌、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性などの要因によって多様であり、普通に熟練した医師は、所望する治療に効果的な投与量を容易に決定および処方することができる。
【0030】
本発明の他の一態様によれば、本発明は、[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体の製造方法を提供する。
【0031】
具体的には、(A)外部の空気と水分が添加されないようにした窒素雰囲気中で無水ピリジン(Pyridine anhydrous)に溶けたミリセチンに無水酢酸(Acetic anhydride)を添加して反応させるステップと、(B)エチルアセテート(Ethyl acetate;EA)で抽出するステップと、(C)エチルアセテート(Ethyl acetate;EA)抽出物を減圧乾燥するステップと、(D)減圧乾燥した試料にジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide;DMSO)を添加し、次いでリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline;PBS;pH7.0)を添加して希釈するステップと、(E)希釈した試料を反応(Incubation)させて副産物を分解するステップと、(F)凍結乾燥するステップと、を含むことを特徴とする、[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明による[化学式1]で表されるミリセチンアセチル誘導体は、改善された物質安定性を提供することができるので、これを有効成分として含む組成物は、保管および取り扱いがより容易であり、さらに重要には、投与後の高い体内安定性も提供することができるため、より改善された持続的な効能を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチンの合成過程を示す概略図である。
図2】本発明の[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチン製造過程において、凍結乾燥試料に対する逆相高性能液体クロマトグラフィー(Reversed phase-high performance liquid chromatography;RP-HPLC)分析結果である。
図3】最終精製された[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチンのRP-HPLC分析結果である。
図4】最終精製された[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチンの液体クロマトグラフィー質量分析法(Liquid chromatography-mass spectrometry;LC/MS)分析結果である。
図5】最終精製された[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチンの核磁気共鳴分析法(Nuclear magnetic resonance;NMR)の分析結果である。
図6】本発明による[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチンのアセチルコリン分泌抑制程度を測定した結果である。1は対照群の結果であり、2は0.5μM試料の適用結果であり、3は2μM試料の適用結果であり、4は10μM試料の適用結果であり、5は20μM試料の適用結果である。
図7】本発明による[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチン、ミリセチン、およびミリセチン-C4(Myricetin-C4)の安定性比較実験結果である。
図8】効能比較実験結果である。1は対照群(PBS処理群;無処理群)であり、2は3-アセチル-ミリセチン処理群、3はミリセチン処理群、4はラリシトリン(Laricitrin)処理群、5はコンブレトール(Combretol)処理群、6はシリンゲチン(Syringetin)処理群、7はミリセチン-C4(Myricetin-C4)処理群、8はミリセチン-C8(Myricetin-C8)処理群、9はミリセチン-C12(Myricetin-C12)処理群、10はミリセチン-C16(Myricetin-C16)処理群、11はミリセチン-C20(Myricetin-C20)処理群、12はデリバティブ E4-2(Derivative E4-2)処理群、13はデリバティブ E4-4(Derivative E4-4)処理群、14はデリバティブ E4-8(Derivative E4-8)処理群、15はデリバティブ E4-12(Derivative E4-12)処理群、16はデリバティブ E4-16(Derivative E4-16)処理群、17はデリバティブ E4-18(Derivative E4-18)処理群、18はデリバティブ E4-20(Derivative E4-20)処理群である。効能比較実験は、対照群(無処理群)の汗面積(Sweating area)を100%にして相対値を結果として提示した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1:対照物質およびミリセチンアセチル誘導体の製造
本実施例では、後続の比較実験に使用される対照物質を準備した。対照物質としては、ミリセチン、韓国特許公開第10-2017-0015845号および韓国特許公開第10-2017-0091554号にミリセチン誘導体として実施例に提示された、[化学式2]のラリシトリン、[化学式3]のコンブレトール、[化学式4]のシリンゲチン、リパーゼ触媒下の酪酸ビニル(Vinyl butyrate)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Myricetin-C4)、リパーゼ触媒下のオクタノン酸ビニル(Vinyl octanoate)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Myricetin-C8)、リパーゼ触媒下のラウリン酸ビニル(Vinyl laurate)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Myricetin-C12)、リパーゼ触媒下のパルミチン酸ビニル(Vinyl palmitate)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Myricetin-C16)、リパーゼ触媒下のエイコサン酸ビニル(Vinyl eicosanoate)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Myricetin-C20)、塩基および塩化オキサリルを使用した酢酸(Acetic acid)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Derivative E4-2)、塩基および塩化オキサリルを使用した酪酸(Butyric acid)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Derivative E4-4)、塩基および塩化オキサリルを使用したオクタン酸(Octanoic acid)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Derivative E4-8)、塩基および塩化オキサリルを使用したラウリン酸(Lauric acid)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Derivative E4-12)、塩基および塩化オキサリルを使用したパルミチン酸(Palmitic acid)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Derivative E4-16)、塩基および塩化オキサリルを使用しステアリン酸(Stearic acid)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Derivative E4-18)、塩基および塩化オキサリルを使用したアラキジン酸(Arachidic acid)を用いたアシル化によって製造されたミリセチン誘導体(Derivative E4-20)を選定した。
【0036】
【化2】
【0037】
【化3】
【0038】
【化4】
【0039】
ミリセチン、ラリシトリン、コンブレトール、シリンゲチンは、商業的に販売されるものを購入して使用した。残りの対照物質として用いられる誘導体は、韓国特許公開第10-2017-0015845号および韓国特許公開第10-2017-0091554号の実施例に提示された方法によって製造して準備した。本発明者らによって開発された[化学式1]のミリセチンアセチル誘導体(3-アセチル-ミリセチン)は、次の方法によって製造した。丸底フラスコ(Round bottom flask;RBF)に攪拌棒(Stirring bar)とミリセチン(1当量)を入れて窒素に置換した後、外部の空気と水分が添加されないようにゴム栓で塞いだ後、RBFに無水ピリジン(Pyridine advanhydrous;0.5当量)を添加した後、氷槽(Ice bath)でミリセチンを全て溶解させる。溶解したミリセチンに注射器を用いて1滴ずつ無水酢酸(Acetic anhydride)を添加する。氷槽で一晩攪拌(stirring)を行う。一晩反応させた溶液に冷たい蒸留水を添加して反応を終結する。反応済みの反応物を分液漏斗(Separating funnel)に全て入れた後、エチルアセテート(Ethyl acetate;EA)を添加する。反応物がRBFに残っていないようにEAをRBFに添加した後、分液漏斗に移す。合成された3-アセチル-ミリセチンがEAによく溶けるように分液漏斗を多数回振とうした後、水とEA層が分けられるようにスタンドに静置させる。水とEA層が分けられると、水層のみを除去する(EAの密度が水より低い0.9であるので、水層が下方に位置する)。分液漏斗に飽和塩水(Brine)を添加した後、合成された3-アセチル-ミリセチンがEAによく溶けるように分液漏斗を多数回振とうした後、水とEA層が分けられるようにスタンドに静置させる。水とEA層が分けられると、水層のみを除去する。分液漏斗に蒸留水を添加した後、合成された3-アセチル-ミリセチンがEAによく溶けるように分液漏斗を多数回振とうした後、水とEA層が分けられるようにスタンドに静置させる過程と、水とEA層が分けられた後に水層のみを除去する過程を3回繰り返し行う。EA層を新しいRBFに移した後、減圧乾燥を行う。この過程によって減圧乾燥した試料にDMSOを入れて10mg/mlの濃度で溶解させる。10mg/mlの合成混合物にPBS(pH7.0)を添加して1mg/mlの濃度に希釈する。このように準備した試料を37℃で200rpmにて撹拌しながら一晩反応(Incubation)させる。続いて、一晩反応させた試料を凍結乾燥させる。凍結乾燥した試料は、DMSOを用いて溶かす。このように準備した試料に対して表1の条件でRP-HPLCを実施して16分帯のピークフラクション(Peak fraction)のみを取る。
【0040】
【表1】
【0041】
[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチンの合成過程は、図1に要約的に提示されており、RP-HPLC結果は、図2に提示されており、最終精製された[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチン(純度99%以上)に対するRP-HPLC分析結果は、図3に提示されている。そして、構造確認のために、通常の方法によってLC/MS分析とH-NMR分析を行ったが、[NMR分析の際にはミリセチンのNMR分析論文(Molecules 2014;19:13643)を参照した]、その結果が図4図5に提示されている。
【0042】
実施例2:神経伝達抑制効能の調査
本実施例では、実施例1で製造した[化学式1]で表される3-アセチル-ミリセチンが期待したとおりに神経伝達抑制効能を提供することができるかを調査した。調査は、次の通りに神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌を抑制することができるかを、通常の細胞基盤(cell-based)有効性評価法であるアセチルコリン分泌分析法(Acetylcholine release assay)で実施した。アセチルコリン分泌分析法は、アセチルコリン性神経細胞(Acetylcholinergic neuron)から分泌するアセチルコリンを細胞水準で定量分析する試験法であって、骨格筋の収縮・弛緩運動信号を伝達するメッセンジャーであるアセチルコリンを定量分析することにより、神経伝達物質の分泌有無を確認することができる試験法である。
【0043】
具体的には、まず、T75フラスコ(Flask)を用いて3日に一回ずつ完全血清培地[Full serum media:84% Dulbecco’s modified eagle’s media(Hyclone)、10% Horse serum(Gibco)、5% Fetal bovine serum(Gibco)、1% Antibiotic antimycotic solution(Hyclone)]を用いてPC12細胞の継代培養を行った。継代しない間は、毎日新しい完全血清培地を用いて培地交換を行った。これと同時に、実験の1日目には、コラーゲン-コーティングプレート(Collagen-coated plate)を製作した。コラーゲン-コーティングプレートの製作は、次の方法で行った。0.2μmのフィルター(Filter)で濾過した滅菌水を用いて20mMの酢酸(Acetic acid)溶液を製造した。これを用いて50μg/mlの濃度のコラーゲン溶液50mlを製造した。このように製造したコラーゲン溶液をウェル(Well)当たり1mlずつ添加した後、常温で3時間静置(Incubation)させた。静置後に丁寧に各ウェルのコラーゲン溶液を除去した。その次に、1mlのPBSで丁寧に洗浄を行った。その後、無菌ベンチ(Clean bench)内で自然乾燥(Air drying)させてコラーゲン-コーティングプレートの製造を完了した。実験の2日目には、製造したコラーゲン-コーティングプレートに細胞を接種(seeding)した。細胞接種は、次の方法で行った。T75フラスコで培養中のPC12細胞の培地を除去した後、2mlの無血清培地[Serum free media:99% Dulbecco’s modified eagle’s media(Hyclone)、1% Antibiotic antimycotic solution(Hyclone)]を添加した後、軽くピペッティング(Pipetting)して細胞を分離し、しかる後に、15mlのコニカルチューブに移して遠心分離(2,500rpm、3分)を行った。遠心分離の後、上澄み液を除去し、無血清培地1mlを用いて細胞を再浮遊(Resuspension)させた後、細胞数計数(cell counting)を行った。その後、無血清培地を用いて2×10cell/mlのPC12細胞浮遊液を準備した後、これを準備しておいたコラーゲン-コーティングプレートにウェル当たり1mlずつ分注した後、プレートを24時間培養(CO incubator、37℃)する方式で細胞接種を行った。実験開始3日目には、培養しているプレートから培地を除去した後、NGF培地[98.6% Dulbecco’s modified eagle’s media(Hyclone)、1% Antibiotic antimycotic solution(Hyclone)、0.4%(25μg/ml)NGF(Nerve growth factorr-2.5S from murine submaxillary gland;Sigma)]で交換する方式でNGF処理を行った。NGF処理の後、プレートを5日間追加培養した(CO incubator、37℃)。実験8日目に次の方法で試料処理および分析を行った。5日間培養したPC12細胞のプレートから培地を除去し、無血清培地995μlずつを添加した後、DMSOを用いて準備した0.5μM、2μM、10μM、20μMの3-アセチル-ミリセチン試料を各ウェルに5μlずつ添加した後、18時間培養(CO incubator、37℃)した。対照群にはDMSOを5μl添加した。18時間培養の後、アセチルコリン分泌分析キット(Acetylcholine release assay kit;Cell Biolabs)を用いて製品の説明に従って定量分析を行った。その結果が図6に提示されている。
【0044】
この結果から、本発明の[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)も、SNARE複合体の形成を阻害して結果的にアセチルコリン分泌を阻害することができることを確認することができた。これは、本発明の[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)が神経伝達遮断効果を提供することができることを示す。
【0045】
実施例3:物質安定性の比較
本実施例では、安定性比較実験を行った。極端な条件比較のために一日放置条件で行った。ちなみに、既存のミリセチンまたはミリセチン誘導体は、約2時間程度だけ放置しても大部分が分解されてなくなる。安定性実験は、次のとおりに行った。10mg/mlの濃度となるようにDMSOを用いて準備した試料にPBS(pH7.0)を添加して1mg/mlの濃度に希釈させる(1/10希釈)。このように準備した試料を200rpmで撹拌しながら37℃で1日間放置(Incubation)させた。放置した試料を凍結乾燥した後、これをDMSOに溶かして、前に提示した条件と同一の条件でRP-HPLC分析を行って安定性を比較した。その結果が表2に提示されている。
【0046】
【表2】
【0047】
理解を助けるために、代表的な実験結果(ミリセチン、ミリセチン-C4、および3-アセチル-ミリセチン)を図7に提示した。
【0048】
以上の結果から、本発明の[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)が、既存に報告されたミリセチン誘導体が提供することができない程度の改善された安定性を提供することができることを確認することができた。このような改善された安定性は、[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)が適用されて製造された最終製品の保管および流通において大きい利点として作用することができる。また、本実施例の実験条件が体内の条件とも類似するので、これから、本発明の[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)が改善された体内安定性も提供することができ、その結果としてより増進した効能を提供することも推定することができる。
【0049】
実施例4:組成物の製造
本実施例では、ミリセチンを含む様々なミリセチン誘導体が捕集されたナノ粒子(Nanoparticle)を製造した。実施例5の効能比較実験を韓国特許公開第10-2017-0091554号の実施例で提示している方法で実施しようとするため、経皮伝達(Transdermal drug delivery)に使用できるナノ粒子を製造した。具体的には、(1)脂質層(Lipid phase)の製造、(2)水溶液層(Water phase)の製造、および(3)脂質-ナノ粒子の製造(Lipid-nanoparticle formation)の順に行った。詳細な製造法は、次の通りである。
【0050】
4.1 脂質層の製造
まず、脂質層を次の方法で製造した。トリステアリン(Tristearin)70mgとトリカプリリン(Tricaprylin)30mgを定量してガラス反応容器(Glass Reaction vial)に入れて混合した後、85℃の恒温槽(Water bath)で次のステップの実施前まで保管する。2mgのミリセチンまたはミリセチン誘導体をアセトン1mlに溶かして準備した後、これを前で準備して保管していた脂質混合液(Lipid mixture)と混ぜて85℃を維持しながら30分間撹拌(stirring)する。30分撹拌が終わった後、混合されているアセトンを除去するために減圧乾燥(Evaporation)を行い、このように準備された脂質層は、85℃の恒温槽に保管する。
【0051】
4.2 水溶液層の製造
水溶液層の製造は、ガラス反応容器にブリッジ(Brij(登録商標) S100、0.9735g)とプルロニック(Pluronic(登録商標) P-123、0.9735g)をそれぞれ定量して添加し、10mlの水(Distilled water)を添加した後、85℃を維持しながら12時間攪拌する方式で行った。
【0052】
4.3 脂質-ナノ粒子の製造
脂質層(体積比で0.5)と水溶液層(体積比で9.5)を50mlのコニカルチューブ(Conical tube)に入れて混ぜる。このとき、脂質層と水溶液層は85℃に維持され続けるようにしなければならない。このように準備した混合液を85℃に維持しながら、高速混合器(High speed blender)を用いて8,000rpmで1分間均質化(Homogenizing)した後、10,000rpmで1分間さらに均質化(Homogenizing)した。次いで、チップ型超音波器(Tip-type sonicator)を用いて85℃に維持しながら1秒作動し、1秒停止する方式で4分間60%の強さ(Amplitude)で超音波混合(Sonication)を行う。このように準備した試料入りのコニカルチューブを、25℃の水が満たされたビーカーに浸して撹拌しながら45℃まで冷やした後、チップ型超音波器を用いて1秒作動し、1秒停止する方式で4分間60%の強さで超音波混合を行う。製造された試料は、冷蔵(4℃)保管する
【0053】
実施例5:効能比較実験1
実施例4で製造した組成物を用いて効能比較実験を行った。効能比較実験は、韓国特許公開第10-2017-0091554号の実施例に提示された方法によって多汗症に対する効果を測定する方式で行った。具体的には、実施例4で準備した組成物を市販の日焼け止めクリーム1mlに1mgの濃度で混ぜて試験試料を準備した。対照群(無処理群)は、組成物を含まない日焼け止めクリームのみを処理し、処理群は、それぞれの組成物を含む日焼け止めクリームを処理した。両手に試験試料を処理した後、被実験者に重量を測定した化粧コットンパフを5分間両手に握っているようにした後、回収して再び化粧コットンパフの重量を測定して増加重量を計算した。処理群当たり10人の平均値を結果として表3に提示した。対照群(無処理群)の平均汗重量を100%にして、その比例値を結果として提示した。
【0054】
【表3】
【0055】
以上の結果から、本発明の[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)が、既存に報告されたミリセチン誘導体が提供することができない程度の改善された効果を提供することができることが分かる。これは、改善された体内安定性によるものと解釈することができる。
【0056】
実施例6:効能比較実験2
マウスを用いた追加効能比較実験を行った。また、実施例4で製造した組成物を用いた。具体的な実験方法を提示すると、次の通りである。6週齢の雄ICRマウス(体重:25~35g)180匹を無作為に18個のグループに分けた後(グループ当たり10匹のマウス)、皮膚塗布の方法で処置した。具体的には、80mg/kgのアルファキサン(Alfaxan)と10mg/kgのランパン(Rompun)とが混合された溶液を腹腔内注射してマウスを1時間以上麻酔させた。その後、麻酔したマウスの右側後足の足裏に試料を塗布した。陰性対照群は、0.8ml/kgの用量でPBS(pH7.4)を塗布し、処置群は、実施例4で製造した各組成物(PBSに浮遊して製造)を0.8mg/kgの用量で塗布した。塗布した試料が十分に吸収されるように試料を塗布したマウスを30分間そのまま維持させた。その後、足裏の試料を拭き取った後、エタノールに溶けている3.5%のヨウ素溶液(w/v)を再び塗布した。1分間乾燥させた後、ひまし油(Castor oil)に溶けている10%澱粉溶液(w/v)をさらに塗布した。澱粉溶液を塗布した直後に1200万画素のデジタルカメラを用いて同一の条件(距離、倍率および露出)ですべてのマウスの足裏を写真撮影した。そして、撮影した写真に対してイメージ分析によって汗面積(Sweating area)を分析した。その結果が図8に提示されている。
【0057】
この結果からも、本発明の[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)が、既存に報告されたミリセチン誘導体が提供することができない程度の改善された効果を提供することができることを確認することができた。これも、改善された体内安定性のためと解釈することができる。
【0058】
実施例7:効能比較実験3
皮膚シワの改善に対する効能比較実験を行った。30~50歳の女性72人を4人ずつ1つの群に区分して実験を行った。実験が始まる前に目下のレプリカ(Replica)を通常の方法で採取し、レプリカの採取後1時間経過時点に、実施例4で準備した組成物をPBSを用いて1mg/mlの濃度となるように準備した試験試料(5ml)を各実験群別に区分して顔面部に塗布するようにした。対照群は、PBSを塗布した。塗布後6時間経過時点に、目下の同一部位からレプリカを再び採取した。採取したレプリカに対する画像分析によって皮膚シワの2次元的分析を実施する方式で皮膚シワの密度(Dermal density of skin wrinkle)を比較測定した。画像分析による皮膚シワ密度の測定結果は、試験試料塗布前の皮膚シワ密度に対する塗布後の皮膚シワ密度の比を平均してその結果を下記表4に示した。
【0059】
【表4】
【0060】
この結果からも、本発明の[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)が、既存に報告されたミリセチン誘導体が提供することができない程度の改善された効果を提供することができることを確認することができた。
【0061】
以下に、本発明の化粧料組成物のための剤形例および製剤例を例示する。但し、下記剤形例および製剤例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容は、下記剤形例および製剤例によって限定されるものではない。
【0062】
剤形例1:柔軟化粧水(スキン)の製造
[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)捕集ナノ粒子0.1重量%、1,3-ブチレングリコール5.2重量%、オレイルアルコール1.5重量%、エタノール3.2重量%、3.2重量%のポリソルベート20、2.0重量%のベンゾフェノン-9、カルボキシルビニルポリマー1.0重量%、グリセリン3.5重量%、微量の香り、微量の防腐剤、および残量の精製水を混合して通常の方法で柔軟化粧水を製造する。
【0063】
剤形例2:ミルクローションの製造
[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)捕集ナノ粒子0.1重量%、グリセリン5.1重量%、プロピレングリコール4.2重量%、トコフェリルアセテート3.0重量%、流動パラフィン4.6重量%、トリエタノールアミン1.0重量%、スクワラン3.1重量%、マカダミアナッツオイル2.5重量%、1.6重量%のポリソルベート60、ソルビタンセスキオレアート1.6重量%、プロピルパラベン0.6重量%、カルボキシルビニルポリマー1.5重量%、微量の香り、微量の防腐剤、および残量の精製水を混合して通常の方法でミルクローションを製造する。
【0064】
剤形例3:栄養クリームの製造
[化学式1]で表されるミリセチン誘導体(3-アセチル-ミリセチン)捕集ナノ粒子0.5重量%、グリセリン4.0重量%、ワセリン3.5重量%、トリエタノールアミン2.1重量%、流動パラフィン5.3重量%、スクワラン3.0重量%、蜜蝋2.6重量%、トコフェリルアセテート5.4重量%、3.2重量%のポリソルベート60、カルボキシルビニルポリマー1.0重量%、ソルビタンセスキオレート3.1重量%、微量の香り、微量の防腐剤および残量の精製水を混合して通常の方法で栄養クリームを製造する。
【0065】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したが、当該分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好適な実施形態に過ぎず、これに本発明の範囲が限定されるものではないことは明白である。よって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項とその等価物によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】