(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】抗SIGLEC-6抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240912BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240912BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240912BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240912BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240912BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240912BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240912BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240912BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240912BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20240912BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20240912BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20240912BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240912BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240912BHJP
A61P 9/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240912BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20240912BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240912BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240912BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240912BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240912BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240912BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240912BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240912BHJP
A61P 1/06 20060101ALI20240912BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240912BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12P21/08
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K39/395 U
A61K39/395 L
A61K47/68
A61P25/00
A61P21/02
A61P1/14
A61P1/08
A61P1/12
A61P27/02
A61P3/02
A61P11/02
A61P25/06
A61P17/04
A61P9/02
A61P25/22
A61P19/10
A61P19/02
A61P19/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P35/02
A61P19/08
A61P25/28
A61P37/08
A61P37/02
A61P25/04
A61P17/02
A61P13/10
A61P17/06
A61P11/06
A61P1/04
A61P1/06
A61P1/16
A61P29/00 101
A61P31/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516853
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 US2022076497
(87)【国際公開番号】W WO2023044390
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516166030
【氏名又は名称】アラコス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヤングブラッド, ブラッドフォード エー.
(72)【発明者】
【氏名】シャニン, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】レオン, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コーバー, ウォウテル
(72)【発明者】
【氏名】ルウ, トゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ブロック, エミリー シー.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA91Y
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA21
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC01
4C085CC05
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA53
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗Siglec-6抗体ならびに肥満細胞媒介性障害の処置および予防におけるその使用、ならびに抗Siglec-6抗体を含む組成物およびキットを提供する。本開示の他の特定の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン2に結合する抗体に関する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン2は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化またはヒト抗体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトSiglec-6に結合するヒト化抗体であって、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン1に結合するヒト化抗体。
【請求項2】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインのドメイン1が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン2に結合する抗体。
【請求項4】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインのドメイン2が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン3に結合する抗体。
【請求項6】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインのドメイン3が、配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
ヒト化またはヒト抗体である、請求項3から6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインに結合する、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記細胞表面におけるSiglec-6のレベル低減を導く、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が、Fc領域を含み、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、Fc受容体を発現する細胞の存在下で、前記ヒト肥満細胞表面におけるSiglec-6のレベル低減を導く、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、Siglec-6の二量体化および内部移行を誘導する、請求項9に記載の抗体。
【請求項12】
ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記細胞表面におけるSiglec-6のレベル低減を導かない、請求項8に記載の抗体。
【請求項13】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞の活性化を阻害する、請求項8から12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞によるCD63の発現を阻害する、請求項8から13のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞によるIL-13の放出を阻害する、請求項8から14のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項16】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞によるIL-8の放出を阻害する、請求項8から15のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞によるCCL4の放出を阻害する、請求項8から16のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞によるCCL2の放出を阻害する、請求項8から17のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項19】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞による活性トリプターゼの放出を阻害する、請求項8から18のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項20】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞によるIL-6の放出を阻害する、請求項8から19のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞によるヒスタミンの放出を阻害する、請求項8から20のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、前記肥満細胞によるキマーゼの放出を阻害する、請求項8から21のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
ヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインへの前記抗体の結合が、in vivoでヒトSiglec-6を発現する肥満細胞を枯渇させる、請求項8から22のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項24】
約250pMまたはそれ未満の平衡解離定数(K
D)でヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインに結合する、請求項1から23のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項25】
約100pMまたはそれ未満のK
DでヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインに結合する、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
約10pMまたはそれ未満のK
DでヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインに結合する、請求項24に記載の抗体。
【請求項27】
約1pMのK
DでヒトSiglec-6の前記細胞外ドメインに結合する、請求項24に記載の抗体。
【請求項28】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項29】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項30】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号83のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号84のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号86のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号87のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項31】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項32】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号77のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号78のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号79のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号80のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号82のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項33】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項34】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号72のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号73のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号74のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号75のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号76のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項35】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号56のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項36】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項37】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項38】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項39】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号44のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号45のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項40】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号52のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項41】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号60のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項42】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項43】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号147のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号148のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号149のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号150のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号151のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号152のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項44】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号135のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号136のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号137のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号138のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号139のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号140のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項45】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域が、配列番号141のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号142のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号143のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、前記VL領域が、配列番号144のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号145のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号146のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項46】
ヒトSiglec-6への結合について、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する、請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項47】
ヒトSiglec-6への結合について、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する、請求項1から27、31および32のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項48】
ヒトSiglec-6への結合について、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する、請求項1から27、33および34のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項49】
ヒトSiglec-6への結合について、配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する、請求項1から27、35および36のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項50】
ヒトSiglec-6への結合について、配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する、請求項1から27および37から42のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項51】
Fc領域を含む、請求項1から50のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項52】
前記Fc領域が、ヒトFc領域である、請求項51に記載の抗体。
【請求項53】
前記Fc領域が、ヒトIgG1またはヒトIgG4 Fc領域である、請求項52に記載の抗体。
【請求項54】
前記Fc領域が、EUインデックスに従って番号付けしたアミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4 Fc領域である、請求項53に記載の抗体。
【請求項55】
配列番号103のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項54に記載の抗体。
【請求項56】
配列番号101または102のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項53に記載の抗体。
【請求項57】
前記Fc領域が、エフェクター機能を低減させる1個または複数の変異を含む、請求項51から53のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項58】
EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:
(a)L234Aおよび/もしくはL235A;
(b)A327G、A330Sおよび/もしくはP331S;
(c)E233P、L234V、L235Aおよび/もしくはG236del;
(d)E233P、L234V、および/またはL235A;
(e)E233P、L234V、L235A、G236del、A327G、A330S、および/またはP331S;
(f)E233P、L234V、L235A、A327G、A330S、および/またはP331S;
(g)N297A;
(h)N297G;
(i)N297Q;
(j)L242C、N297C、および/またはK334C;
(k)A287C、N297G、および/またはL306C;
(l)R292C、N297G、および/またはV302C;
(m)N297G、V323C、および/またはI332C;
(n)V259C、N297G、および/またはL306C;
(o)L234F、L235Q、K322Q、M252Y、S254T、および/またはT256E;
(p)L234A、L235A、および/またはP329G;または
(q)L234A、L235Q、およびK322Q
のうち1個または複数を有するヒトIgG1 Fc領域を含む、請求項57に記載の抗体。
【請求項59】
EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:
(a)A330Sおよび/またはP331S;
(b)V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、および/またはP331S;または
(c)V234A、G237A、H268Q、V309L、A330S、P331S、C232S、C233S、S267E、L328F、M252Y、S254T、および/またはT256E
のうち1個または複数を有するヒトIgG2 Fc領域を含む、請求項57に記載の抗体。
【請求項60】
EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:
(a)E233P、F234V、L235Aおよび/もしくはG236del;
(b)E233P、F234V、および/またはL235A;
(c)S228Pおよび/またはL235E;または
(d)S228Pおよび/またはL235A
のうち1個または複数を有するヒトIgG4 Fc領域を含む、請求項57に記載の抗体。
【請求項61】
前記Fc領域が、エフェクター機能を増強する1個または複数の変異を含む、請求項51から53のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項62】
EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:
(a)F243L、R292P、Y300L、V305I、および/またはP396L;
(b)S239Dおよび/またはI332E;
(c)S239D、I332E、および/またはA330L;
(d)S298A、E333A、および/またはK334A;
(e)G236A、S239D、および/またはI332E;
(f)K326Wおよび/またはE333S;
(g)S267E、H268F、および/またはS324T;または
(h)E345R、E430G、および/またはS440Y
のうち1個または複数を有するヒトIgG1 Fc領域を含む、請求項61に記載の抗体。
【請求項63】
前記抗体の前記重鎖のうち少なくとも1または2個が、フコシル化されていない、請求項51から62のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項64】
アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ(Fut8)ノックアウトを有する細胞系において産生される、請求項63に記載の抗体。
【請求項65】
β1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT-III)を過剰発現する細胞系において産生される、請求項63に記載の抗体。
【請求項66】
前記細胞系が、ゴルジμ-マンノシダーゼII(ManII)をその上過剰発現する、請求項65に記載の抗体。
【請求項67】
Fab、F(ab’)2、Fab’-SH、FvおよびscFv断片からなる群から選択される抗体断片である、請求項1から9および11から50のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項68】
軽鎖定常(CL)ドメインを含む、請求項1から67のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項69】
前記CLドメインが、ヒトカッパーCLドメインである、請求項68に記載の抗体。
【請求項70】
前記軽鎖が、配列番号104のアミノ酸配列を含む、請求項68に記載の抗体。
【請求項71】
モノクローナル抗体である、請求項1から70のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項72】
多重特異性抗体である、請求項1から71のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項73】
薬剤にコンジュゲートされている、請求項1から72のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項74】
前記薬剤が、細胞傷害剤または標識である、請求項73に記載の抗体。
【請求項75】
請求項1から74のいずれか一項に記載の抗体を含む組成物。
【請求項76】
前記抗体が、Fc領域および前記Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖を含み、前記N-グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満が、フコース残基を含有する、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
前記N-グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的にいずれも、フコース残基を含有しない、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
請求項1から74のいずれか一項に記載の抗体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項79】
請求項78に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項80】
請求項78に記載のポリヌクレオチドまたは請求項79に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項81】
哺乳動物または昆虫細胞である、請求項80に記載の宿主細胞。
【請求項82】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項81に記載の宿主細胞。
【請求項83】
Fut8ノックアウトを含む、請求項81または請求項82に記載の宿主細胞。
【請求項84】
GnT-IIIを過剰発現する、請求項81または請求項82に記載の宿主細胞。
【請求項85】
ManIIをその上過剰発現する、請求項84に記載の宿主細胞。
【請求項86】
抗体を産生する方法であって、前記抗体を産生する条件下で、請求項80から85のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養するステップを含む方法。
【請求項87】
前記宿主細胞によって産生された前記抗体を回収するステップをさらに含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
請求項86または請求項87に記載の方法によって産生された抗Siglec-6抗体。
【請求項89】
請求項1から74のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項90】
対象におけるSiglec-6を発現する肥満細胞の活性および/または数の増加によって特徴付けされる疾患または状態を処置する方法であって、有効量の請求項1から74のいずれか一項に記載の抗体または請求項75から77および89のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項91】
Siglec-6を発現する肥満細胞の活性化の阻害を必要とする対象におけるSiglec-6を発現する肥満細胞の活性化を阻害する方法であって、有効量の請求項1から74のいずれか一項に記載の抗体または請求項75から77および89のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項92】
Siglec-6を発現する肥満細胞の枯渇を必要とする対象におけるSiglec-6を発現する肥満細胞を枯渇させる方法であって、有効量の請求項1から74のいずれか一項に記載の抗体または請求項75から77および89のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項93】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料における活性トリプターゼのレベルと比較して、前記個体から得られる試料における活性トリプターゼのレベルの減少をもたらす、請求項90から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるCCL2のレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるCCL2のレベルの減少をもたらす、請求項90から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるIL-13のレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるIL-13のレベルの減少をもたらす、請求項90から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるIL-8のレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるIL-8のレベルの減少をもたらす、請求項90から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるCCL4のレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるCCL4のレベルの減少をもたらす、請求項90から96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるIL-6のレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるIL-6のレベルの減少をもたらす、請求項90から97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるヒスタミンのレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるヒスタミンのレベルの減少をもたらす、請求項90から98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるキマーゼのレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるキマーゼのレベルの減少をもたらす、請求項90から99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるCPA3のレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるCPA3のレベルの減少をもたらす、請求項90から100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるプロスタグランジンまたはロイコトリエンのレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるプロスタグランジンまたはロイコトリエンのレベルの減少をもたらす、請求項90から101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立ち前記個体から得られる試料におけるCD63、CD107a、CD203c、IgEまたはMRGPRX2のレベルと比較して、前記個体から得られる試料におけるCD63、CD107a、CD203c、IgEまたはMRGPRX2のレベルの減少をもたらす、請求項90から102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記試料が、生検試料である、請求項93から103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記試料が、血清、血漿または尿試料である、請求項93から103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記抗体または組成物の投与が、前記投与に先立つ前記個体における1種または複数の症状と比較して、前記個体における1種または複数の症状の減少をもたらす、請求項90から105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記1種または複数の症状が、悪心、筋痙攣、便秘、腹痛、腹部膨満、嘔吐、下痢、疲労、眼痛、光過敏症、発赤、眼脂、鼻汁、頭痛、眩暈、ブレインフォグ、そう痒、潮紅、発汗、じん麻疹、低血圧、息切れ、骨痛、関節痛、体重減少、骨粗鬆症、血管浮腫、胸痛、不安、鬱、頻拍、気管支収縮および全身痛からなる群から選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記疾患または状態が、肥満細胞症、肥満細胞白血病、肥満細胞活性化症候群、胃不全麻痺、骨粗鬆症、骨減少症、腎性骨ジストロフィー、骨折、アルツハイマー病、慢性神経障害性疼痛、痛覚過敏、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、移植片対宿主病(GVH)、大腸炎、遺伝性アルファトリプターゼ血症、神経線維腫、コーニス症候群、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、血管浮腫、結節性痒疹、胆管炎、乾癬、過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア、喘息、アレルギー、ケロイド、慢性副鼻腔炎、アスピリン増悪呼吸器疾患(AERD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、特発性肺線維症、全身性硬化症、間質性膀胱炎、化膿性汗腺炎、円形脱毛症、白斑、肥満細胞胃腸疾患、クローン病、関節リウマチ、胃食道逆流症、ウイルス感染症、アカラシア、体位性頻拍症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、複合性局所疼痛症候群またはエーラス・ダンロス症候群である、請求項90および93から107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記個体が、肥満細胞症、肥満細胞白血病、肥満細胞活性化症候群、胃不全麻痺、骨粗鬆症、骨減少症、腎性骨ジストロフィー、骨折、アルツハイマー病、慢性神経障害性疼痛、痛覚過敏、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、移植片対宿主病(GVH)、大腸炎、遺伝性アルファトリプターゼ血症、神経線維腫、コーニス症候群、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、血管浮腫、結節性痒疹、胆管炎、乾癬、過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア、喘息、アレルギー、ケロイド、慢性副鼻腔炎、アスピリン増悪呼吸器疾患(AERD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、特発性肺線維症、全身性硬化症、間質性膀胱炎、化膿性汗腺炎、円形脱毛症、白斑、肥満細胞胃腸疾患、クローン病、関節リウマチ、胃食道逆流症、ウイルス感染症、アカラシア、体位性頻拍症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、複合性局所疼痛症候群またはエーラス・ダンロス症候群を有するかまたはそうであると診断された、請求項90から107のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、各々の全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月16日に出願した米国仮出願第63/245,164号、2022年2月14日に出願した同第63/310,012号および2022年6月16日に出願した同第63/352,964号に基づく利益を主張する。
【0002】
電子配列表への参照
電子配列表(701712001540seqlist.xml;サイズ:143,365バイト;および作成日:2022年9月13日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は、抗ヒトSiglec-6抗体、およびSiglec-6を発現する細胞によって媒介される疾患を処置または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
Siglec(シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン)は、主に白血球上に見られる1回膜貫通細胞表面タンパク質であり、細胞表面複合糖質に結合しているシアル酸に対するそれらの特異性を特徴とする。Siglecファミリーは、哺乳動物に見られる少なくとも15のメンバーを有する(Pillai et al., Annu Rev Immunol., 2012, 30:357-392)。これらのメンバーは、シアロアドヘシン(Siglec-1)、CD22(Siglec-2)、CD33(Siglec-3)、ミエリン関連糖タンパク質(Siglec-4)、Siglec-5、OBBP1(Siglec-6)、AIRM1(Siglec-7)、SAF-2(Siglec-8)、およびCD329(Siglec-9)を含む。
【0005】
Siglec-6(CD327としても公知)は、肥満細胞、例えば、ヒト組織肥満細胞、HMC-1細胞およびCD34+由来ヒト肥満細胞において選択的に発現される阻害性受容体である。肥満細胞は、食物アレルギー、肥満細胞活性化症候群、肥満細胞症、IPF、COPDおよびその他を含むがこれらに限定されない、多数の自己免疫性および炎症性疾患の病原性ドライバーであると考えられる。例えば、Yu, Y. et al. (2018) Front. Immunol. 9:2138;Yokoi, H. et al. (2006) Allergy 61:769-76;WO2005124358;ならびに米国特許公開番号(US PG Pub. No)US20060269556A1およびUS20080267973A1を参照されたい。Siglec-6と抗体との結合は、IgE媒介性肥満細胞活性化を阻害すると考えられる。
依然として、高い親和性でヒトSiglec-6に結合し、強力な肥満細胞阻害活性を示す抗体の必要がある。そのin vivo特性に影響を与え得る、Siglec-6表面発現および肥満細胞活性化/阻害のモジュレートに関して異なる特徴を有するヒトSiglec-6に結合する抗体の必要もある。
特許出願、特許公報および科学文献を含む、本明細書で言及されるすべての参考文献は、個々の参考文献各々が参照により組み込まれると具体的かつ個々に示されているかのごとく、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/124358号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0269556号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0267973号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Pillai et al., Annu Rev Immunol., 2012, 30:357-392
【非特許文献2】Yu, Y. et al. (2018) Front. Immunol. 9:2138
【非特許文献3】Yokoi, H. et al. (2006) Allergy 61:769-76
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡単な概要
この必要および他の必要を満たすために、本開示は、とりわけ、ヒトSiglec-6に結合する抗体、ならびにそれに関する組成物、使用および方法を提供する。
【0009】
したがって、本開示のある特定の態様は、ヒトSiglec-6に結合するヒト化抗体であって、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン1に結合する抗体に関する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン1は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0010】
本開示の他の特定の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン2に結合する抗体に関する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン2は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化またはヒト抗体である。
【0011】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン3に結合する抗体に関する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン3は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化またはヒト抗体である。
【0012】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0013】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0014】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号83のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号84のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号86のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号87のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0015】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0016】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号77のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号78のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号79のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号80のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号82のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0017】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0018】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号72のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号73のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号74のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号75のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号76のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0019】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号56のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0020】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0021】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0022】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0023】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号44のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号45のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0024】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号52のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0025】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号60のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0026】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0027】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号135のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号136のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号137のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号138のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号139のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号140のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0028】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号141のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号142のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号143のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号144のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号145のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号146のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗体に関する。
【0029】
本開示の他の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体であって、抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域が、配列番号147のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号148のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号149のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域が、配列番号150のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号151のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号152のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗体に関する。
【0030】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかに係る一部の実施形態では、抗体は、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインに結合する。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、細胞表面におけるSiglec-6のレベル低減を導く。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域を含み、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、Fc受容体を発現する細胞の存在下でヒト肥満細胞表面におけるSiglec-6のレベル低減を導く。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、Siglec-6の二量体化および内部移行を誘導する。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、細胞表面におけるSiglec-6のレベル低減を導かない。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞の活性化を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞によるCD63の発現を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞によるIL-13の放出を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞によるIL-8の放出を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞によるCCL4の放出を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞によるCCL2の放出を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞による活性トリプターゼの放出を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞によるIL-6の放出を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞によるヒスタミンの放出を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞によるキマーゼの放出を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、in vivoまたはin vitroでヒトSiglec-6を発現する肥満細胞を枯渇させる。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、in vivoまたはin vitroで、例えば、エフェクター細胞の存在下で、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインを発現する(例えば、その細胞表面において)細胞を標的化する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)を誘導する。
【0031】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかに係る一部の実施形態では、抗体は、約250pMもしくはそれ未満、約100pMもしくはそれ未満、約10pMもしくはそれ未満または約1pMの平衡解離定数(KD)でヒトSiglec-6の細胞外ドメインに結合する。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号83のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号84のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号86のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号87のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号77のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号78のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号79のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号80のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号82のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号72のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号73のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号74のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号75のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号76のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号56のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号45のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号52のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号60のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号135のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号136のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号137のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号138のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号139のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号140のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号141のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号142のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号143のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号144のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号145のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号146のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号147のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号148のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号149のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号150のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号151のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号152のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号135のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号136のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号137のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号138のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号139のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号140のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号141のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号142のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号143のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号144のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号145のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号146のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号147のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号148のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号149のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号150のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号151のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号152のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号105のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、および/または配列番号106のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK15のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK15のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号107のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号108のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK14のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK14のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号109のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号110のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK13のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK13のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号111のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号112のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK12のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK12のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号113のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号114のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK11のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK11のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号115のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号116のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK10のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK10のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号117のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号118のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK09のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK09のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号119のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号120のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK08のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK08のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号121のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号122のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK07のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK07のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号123のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイ
ン、ならびに/あるいは配列番号124のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK06のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK06のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号125のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号126のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK05のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK05のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号127のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号128のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK04のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK04のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号129のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号130のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK03のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK03のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号131のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号132のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK02のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK02のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号133のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号134のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK01のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK01のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号153のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号154のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK16のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK16のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号155のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号156のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK17のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK17のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号157のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号158のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK18のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK18のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。
【0032】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかに係る一部の実施形態では、抗体は、Fc領域を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、ヒトFc領域である。一部の実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fc領域は、EUインデックスに従って番号付けしたアミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、抗体は、配列番号103のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号101または102のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、エフェクター機能を低減させる1個または複数の変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の位置のうち1個または複数における置換または欠失を有するヒトIgG1 Fc領域を含む:(a)L234および/もしくはL235;(b)A327、A330および/もしくはP331;(c)E233、L234、L235および/もしくはG236;(d)E233、L234および/もしくはL235;(e)E233、L234、L235、G236、A327、A330および/もしくはP331;(f)E233、L234、L235、A327、A330および/もしくはP331;(g)N297;(h)L242、N297および/もしくはK334;(i)A287、N297および/もしくはL306;(j)R292、N297および/もしくはV302;(k)N297、V323および/もしくはI332;(l)V259、N297および/もしくはL306;(m)L234、L235、K322、M252、S254および/もしくはT256;(n)L234、L235および/もしくはP329;または(o)L234、L235および/もしくはK322。一部の実施形態では、抗体は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:(a)L234Aおよび/もしくはL235A;(b)A327G、A330Sおよび/もしくはP331S;(c)E233P、L234V、L235Aおよび/もしくはG236del;(d)E233P、L234V、および/またはL235A;(e)E233P、L234V、L235A、G236del、A327G、A330S、および/またはP331S;(f)E233P、L234V、L235A、A327G、A330S、および/またはP331S;(g)N297A;(h)N297G;(i)N297Q;(j)L242C、N297C、および/またはK334C;(k)A287C、N297G、および/またはL306C;(l)R292C、N297G、および/またはV302C;(m)N297G、V323C、および/またはI332C;(n)V259C、N297G、および/またはL306C;(o)L234F、L235Q、K322Q、M252Y、S254T、および/またはT256E;(p)L234A、L235A、および/またはP329G;または(q)L234A、L235Q、および/もしくはK322Qのうち1個または複数を有するヒトIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の位置のうち1個または複数における置換または欠失を有するヒトIgG2 Fc領域を含む:(a)A330および/もしくはP331;(b)V234、G237、P238、H268、V309、A330および/もしくはP331;または(c)V234、G237、H268、V309、A330、P331、C232、C233、S267、L328、M252、S254および/もしくはT256。一部の実施形態では、抗体は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:(a)A330Sおよび/またはP331S;(b)V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、および/またはP331S;または(c)V234A、G237A、H268Q、V309L、A330S、P331S、C232S、C233S、S267E、L328F、M252Y、S254T、および/またはT256Eのうち1個または複数を有するヒトIgG2 Fc領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の位置のうち1個または複数における置換または欠失を有するヒトIgG4 Fc領域を含む:(a)E233、F234、L235および/もしくはG236;(b)E233、F234および/もしくはL235;または(c)S228および/もしくはL235。一部の実施形態では、EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:(a)E233P、F234V、L235Aおよび/もしくはG236del;(b)E233P、F234V、および/またはL235A;(c)S228Pおよび/またはL235E;または(d)S228Pおよび/またはL235Aのうち1個または複数を有するヒトIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、エフェクター機能を増強する1個または複数の変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の位置のうち1個または複数における置換または欠失を有するヒトIgG1 Fc領域を含む:(a)F243、R292、Y300、V305および/もしくはP396;(b)S239および/もしくはI332;(c)S239、I332および/もしくはA330;(d)S298、E333および/もしくはK334;(e)G236、S239および/もしくはI332;(f)K326および/もしくはE333;(g)S267、H268および/もしくはS324;または(h)E345、E430および/もしくはS440。一部の実施形態では、抗体は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異のうち1個または複数を有するヒトIgG1 Fc領域を含む:(a)F243L、R292P、Y300L、V305Iおよび/もしくはP396L;(b)S239Dおよび/もしくはI332E;(c)S239D、I332Eおよび/もしくはA330L;(d)S298A、E333Aおよび/もしくはK334A;(e)G236A、S239Dおよび/もしくはI332E;(f)K326Wおよび/もしくはE333S;(g)S267E、H268Fおよび/もしくはS324T;または(h)E345R、E430Gおよび/もしくはS440Y。
【0033】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかに係る一部の実施形態では、抗体の重鎖のうち少なくとも1または2個は、フコシル化されていない。一部の実施形態では、抗体は、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ(Fut8)ノックアウトを有する細胞系において産生される。一部の実施形態では、抗体は、β1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT-III)を過剰発現する細胞系において産生される。一部の実施形態では、抗体は、β1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT-III)を過剰発現する細胞系であって、ゴルジμ-マンノシダーゼII(ManII)をその上過剰発現する細胞系において産生される。
【0034】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかに係る一部の実施形態では、抗体は、Fab、F(ab’)2、Fab’-SH、FvおよびscFv断片からなる群から選択される抗体断片である。一部の実施形態では、抗体は、軽鎖定常(CL)ドメインを含む。一部の実施形態では、CLドメインは、ヒトカッパーCLドメインである。一部の実施形態では、軽鎖は、配列番号104のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、多重特異性抗体である。一部の実施形態では、抗体は、二重特異性抗体である。一部の実施形態では、抗体は、薬剤にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、薬剤は、細胞傷害剤または標識である。
【0035】
本開示の他の態様は、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体を含む組成物に関する。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域およびFc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖を含み、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満が、フコース残基を含有する。一部の実施形態では、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的にいずれも、フコース残基を含有しない。
【0036】
本開示の他の態様は、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。本開示の他の態様は、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体をコードする1種または複数のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。本開示の他の態様は、上述の実施形態のうちいずれか1種に係るポリヌクレオチドおよび/またはベクターを含む宿主細胞に関する。一部の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物または昆虫細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞は、Fut8ノックアウトを含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、GnT-IIIを過剰発現する。一部の実施形態では、宿主細胞は、GnT-IIIを過剰発現し、ManIIをその上過剰発現する。本開示の他の態様は、抗体を産生する方法であって、抗体を産生する条件下で、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る宿主細胞を培養するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、方法は、宿主細胞によって産生された抗体を回収するステップをさらに含む。本開示の他の態様は、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る方法によって産生された抗体に関する。本開示の他の態様は、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。本開示の他の態様は、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る組成物または抗体を含む医薬を含むキットまたは製造物品に関する。一部の実施形態では、キットまたは製造物品は、例えば、本明細書に開示されている方法のうちいずれか1種に従った、医薬の投与を必要とする個体における医薬の投与のための指示を含む添付文書をさらに含む。
【0037】
本開示の他の態様は、対象におけるSiglec-6を発現する肥満細胞の活性および/または数の増加によって特徴付けされる疾患または状態を処置する方法であって、有効量の上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体または組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。本開示の他の態様は、Siglec-6を発現する肥満細胞の活性化の阻害を必要とする対象におけるSiglec-6を発現する肥満細胞の活性化を阻害する方法であって、有効量の上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体または組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。本開示の他の態様は、Siglec-6を発現する肥満細胞の枯渇を必要とする対象におけるSiglec-6を発現する肥満細胞を枯渇させる方法であって、有効量の上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体または組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。本開示の他の態様は、例えば、それを必要とする対象における、例えば、Siglec-6を発現する肥満細胞の活性および/もしくは数の増加によって特徴付けされる疾患もしくは状態を処置するため、Siglec-6を発現する肥満細胞の活性化を阻害するため、および/またはSiglec-6を発現する肥満細胞を枯渇させるための、医薬の製造における、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体または組成物の使用に関する。本開示の他の態様は、医薬としての使用のための、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体または組成物に関する。本開示の他の態様は、例えば、Siglec-6を発現する肥満細胞の活性および/もしくは数の増加によって特徴付けされる疾患もしくは状態の処置、Siglec-6を発現する肥満細胞の活性化の阻害、および/またはSiglec-6を発現する肥満細胞の枯渇を必要とする対象における、Siglec-6を発現する肥満細胞の活性および/もしくは数の増加によって特徴付けされる疾患もしくは状態の処置、Siglec-6を発現する肥満細胞の活性化の阻害、および/またはSiglec-6を発現する肥満細胞の枯渇における使用のための、上述の実施形態のうちいずれか1種に係る抗体または組成物に関する。
【0038】
本明細書に記載の実施形態のうちのいずれかに係る一部の実施形態において、 抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料における活性トリプターゼのレベルと比較して、個体から得られる試料における活性トリプターゼのレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料におけるCCL2のレベルと比較して、個体から得られる試料におけるCCL2のレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料におけるIL-13のレベルと比較して、個体から得られる試料におけるIL-13のレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料におけるIL-8のレベルと比較して、個体から得られる試料におけるIL-8のレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料におけるCCL4のレベルと比較して、個体から得られる試料におけるCCL4のレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料におけるIL-6のレベルと比較して、個体から得られる試料におけるIL-6のレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料におけるヒスタミンのレベルと比較して、個体から得られる試料におけるヒスタミンのレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料におけるキマーゼのレベルと比較して、個体から得られる試料におけるキマーゼのレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料におけるCPA3のレベルと比較して、個体から得られる試料におけるCPA3のレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料におけるプロスタグランジンまたはロイコトリエンのレベルと比較して、個体から得られる試料におけるプロスタグランジンまたはロイコトリエンのレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立ち個体から得られる試料(例えば、生検試料)におけるCD63、CD107a、CD203c、IgEまたはMRGPRX2のレベルと比較して、個体から得られる試料におけるCD63、CD107a、CD203c、IgEまたはMRGPRX2のレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、試料は、生検試料である。一部の実施形態では、試料は、血清、血漿または尿試料である。一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、投与に先立つ個体における1種または複数の症状と比較して、個体における1種または複数の症状の減少をもたらす。一部の実施形態では、1種または複数の症状は、悪心、筋痙攣、便秘、腹痛、腹部膨満、嘔吐、下痢、疲労、眼痛、光過敏症、発赤、眼脂、鼻汁、頭痛、眩暈、ブレインフォグ、そう痒、潮紅、発汗、じん麻疹、低血圧、息切れ、骨痛、関節痛、体重減少、骨粗鬆症、血管浮腫、胸痛、不安、鬱、頻拍、気管支収縮および全身痛からなる群から選択される。一部の実施形態では、疾患または状態は、肥満細胞症、肥満細胞白血病、肥満細胞活性化症候群、胃不全麻痺、骨粗鬆症、骨減少症、腎性骨ジストロフィー、骨折、アルツハイマー病、慢性神経障害性疼痛、痛覚過敏、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、移植片対宿主病(GVH)、大腸炎、遺伝性アルファトリプターゼ血症、神経線維腫、コーニス症候群、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、血管浮腫、結節性痒疹、胆管炎、乾癬、過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア、喘息、アレルギー、ケロイド、慢性副鼻腔炎、アスピリン増悪呼吸器疾患(AERD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、特発性肺線維症、全身性硬化症、間質性膀胱炎、化膿性汗腺炎、円形脱毛症、白斑、肥満細胞胃腸疾患、クローン病、関節リウマチ、胃食道逆流症、ウイルス感染症、アカラシア、体位性頻拍症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、複合性局所疼痛症候群またはエーラス・ダンロス症候群である。一部の実施形態では、個体は、肥満細胞症、肥満細胞白血病、肥満細胞活性化症候群、胃不全麻痺、骨粗鬆症、骨減少症、腎性骨ジストロフィー、骨折、アルツハイマー病、慢性神経障害性疼痛、痛覚過敏、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、移植片対宿主病(GVH)、大腸炎、遺伝性アルファトリプターゼ血症、神経線維腫、コーニス症候群、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、血管浮腫、結節性痒疹、胆管炎、乾癬、過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア、喘息、アレルギー、ケロイド、慢性副鼻腔炎、アスピリン増悪呼吸器疾患(AERD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、特発性肺線維症、全身性硬化症、間質性膀胱炎、化膿性汗腺炎、円形脱毛症、白斑、肥満細胞胃腸疾患、クローン病、関節リウマチ、胃食道逆流症、ウイルス感染症、アカラシア、体位性頻拍症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、複合性局所疼痛症候群またはエーラス・ダンロス症候群を有するかまたはそうであると診断された。
【0039】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性の1つ、一部またはすべてを組み合わせて本開示の他の実施形態を形成することができることは理解されよう。本開示のこれらのおよび他の態様は、当業者に明らかになる。本開示のこれらのおよび他の実施形態は、後続の詳細な説明によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】
図1Aは、Siglec-6が、ヒト一次組織肥満細胞において選択的に発現され、他の免疫細胞において発現されないことを示す。MFI、蛍光強度中央値;NK、ナチュラルキラー細胞;DC、樹状細胞。
【0041】
【
図1B】
図1Bは、ヒトSiglec-6タンパク質の概略図を提供する。
【0042】
【
図2】
図2は、抗Siglec-6モノクローナル抗体(mAb)が、ヒト肥満細胞の活性化を阻害することを示す。活性化は、活性化マーカーCD63を使用したフローサイトメトリーによって査定された。
【0043】
【
図3A】
図3A~
図3Cは、抗Siglec-6 mAbが、ヒト肥満細胞からのサイトカイン、ケモカインおよびプロテアーゼの産生を阻害することを示す。IL-8(
図3A)、CCL4(
図3B)および活性トリプターゼ(
図3C)の産生が示されている。
【
図3B】
図3A~
図3Cは、抗Siglec-6 mAbが、ヒト肥満細胞からのサイトカイン、ケモカインおよびプロテアーゼの産生を阻害することを示す。IL-8(
図3A)、CCL4(
図3B)および活性トリプターゼ(
図3C)の産生が示されている。
【
図3C】
図3A~
図3Cは、抗Siglec-6 mAbが、ヒト肥満細胞からのサイトカイン、ケモカインおよびプロテアーゼの産生を阻害することを示す。IL-8(
図3A)、CCL4(
図3B)および活性トリプターゼ(
図3C)の産生が示されている。
【0044】
【
図4A】
図4Aは、Siglec-6 mAb阻害が、エピトープの配置に依存し、抗Siglec-6 mAbに対するビニング情報を提供することを示す。
【0045】
【
図4B】
図4Bは、
図4Aに示す各ビン(bin)を表す抗Siglec-6 mAbによるヒト肥満細胞活性化の阻害を示す。
【0046】
【
図5A】
図5Aおよび
図5Bは、全ての抗Siglec-6 mAbではなく、ある特定の抗Siglec-6 mAbが、ヒト肥満細胞におけるSiglec-6の内部移行を促進することを示す。
【
図5B】
図5Aおよび
図5Bは、全ての抗Siglec-6 mAbではなく、ある特定の抗Siglec-6 mAbが、ヒト肥満細胞におけるSiglec-6の内部移行を促進することを示す。
【0047】
【
図6】
図6は、抗Siglec-6 mAb AK04が、ヒト肥満細胞におけるSiglec-6内部移行を誘導するためにFc相互作用を要求することを示す。
【0048】
【
図7A】
図7Aおよび
図7Bは、Siglec-6 mAb AK04およびAK02が、活性化されたヒト肥満細胞からのIL-13産生を阻害することを示す。
【
図7B】
図7Aおよび
図7Bは、Siglec-6 mAb AK04およびAK02が、活性化されたヒト肥満細胞からのIL-13産生を阻害することを示す。
【0049】
【
図8A】
図8A~
図8Fは、Siglec-6 mAbが、ヒト化マウスにおいてin vivoで全身性アナフィラキシーおよび肥満細胞メディエーター産生を阻害することを示す。データは、平均+/-SDとしてプロットされる;n=6~7匹のマウス/群。
【
図8B-C】
図8A~
図8Fは、Siglec-6 mAbが、ヒト化マウスにおいてin vivoで全身性アナフィラキシーおよび肥満細胞メディエーター産生を阻害することを示す。データは、平均+/-SDとしてプロットされる;n=6~7匹のマウス/群。
【
図8D-F】
図8A~
図8Fは、Siglec-6 mAbが、ヒト化マウスにおいてin vivoで全身性アナフィラキシーおよび肥満細胞メディエーター産生を阻害することを示す。データは、平均+/-SDとしてプロットされる;n=6~7匹のマウス/群。
【0050】
【
図9】
図9は、Siglec-6 mAb AK04が、ヒト組織肥満細胞に対して抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)活性を呈することを示す。
【0051】
【
図10A】
図10A~
図10Cは、抗Siglec-6抗体AK05(
図10A)、AK04(
図10B)およびMAB2859(
図10C)に関するエピトープマッピングの結果を示す。
図10A~
図10Cにおいて、指し示される抗Siglec-6抗体と相互作用することが決定されるアミノ酸の番号付けは、配列番号1に示されるSiglec-6 ECD配列に従う。
【
図10B】
図10A~
図10Cは、抗Siglec-6抗体AK05(
図10A)、AK04(
図10B)およびMAB2859(
図10C)に関するエピトープマッピングの結果を示す。
図10A~
図10Cにおいて、指し示される抗Siglec-6抗体と相互作用することが決定されるアミノ酸の番号付けは、配列番号1に示されるSiglec-6 ECD配列に従う。
【
図10C】
図10A~
図10Cは、抗Siglec-6抗体AK05(
図10A)、AK04(
図10B)およびMAB2859(
図10C)に関するエピトープマッピングの結果を示す。
図10A~
図10Cにおいて、指し示される抗Siglec-6抗体と相互作用することが決定されるアミノ酸の番号付けは、配列番号1に示されるSiglec-6 ECD配列に従う。
【0052】
【
図11A】
図11Aおよび
図11Bは、抗Siglec-6 mAb処置が、in vivoでKIT(CD117)媒介性肥満細胞活性化を阻害したことを示す。腹膜肥満細胞におけるCD63発現は、フローサイトメトリーによって評価された(
図11A、左パネル)。IL-6(
図11A、中央パネル)、CCL2/MCP-1(
図11A、右パネル)、TNF(
図11B、左パネル)およびCXCL1/GRO-α(
図11B、右パネル)を含むサイトカインおよびケモカインレベルは、メソスケールディスカバリー(Meso Scale Discovery)(MSD)により腹膜洗浄物において測定された。*p<0.01;n=7~8匹のマウス/群。全パネルについて、PBS処置由来のデータを左に示し、アイソタイプmAb+マウス幹細胞因子(SCF)処置由来のデータを中央に示し、抗Siglec-6 mAb+SCF処置由来のデータを右に示す。
【
図11B】
図11Aおよび
図11Bは、抗Siglec-6 mAb処置が、in vivoでKIT(CD117)媒介性肥満細胞活性化を阻害したことを示す。腹膜肥満細胞におけるCD63発現は、フローサイトメトリーによって評価された(
図11A、左パネル)。IL-6(
図11A、中央パネル)、CCL2/MCP-1(
図11A、右パネル)、TNF(
図11B、左パネル)およびCXCL1/GRO-α(
図11B、右パネル)を含むサイトカインおよびケモカインレベルは、メソスケールディスカバリー(Meso Scale Discovery)(MSD)により腹膜洗浄物において測定された。*p<0.01;n=7~8匹のマウス/群。全パネルについて、PBS処置由来のデータを左に示し、アイソタイプmAb+マウス幹細胞因子(SCF)処置由来のデータを中央に示し、抗Siglec-6 mAb+SCF処置由来のデータを右に示す。
【0053】
【
図11C】
図11Cは、Siglec-6が、肥満細胞(MC)においてCD117/KITと相互作用および共局在することを示す。この相互作用は、Siglec-6およびCD117に対する共免疫沈降/ウエスタンブロッティングによって証明されると共に(左)、一次MCを使用した共焦点顕微鏡によって共局在も証明された(右)。
【0054】
【
図11D】
図11Dは、抗Siglec-6および抗SHP-1抗体を用いた共焦点顕微鏡を使用した、肥満細胞における阻害性ホスファターゼShp-1およびSiglec-6の間の会合を示す。非受容体阻害性ホスファターゼShp-1は、リン酸化後にSiglec-6免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)と会合した。矢印は、阻害性ホスファターゼShp-1およびSiglec-6の間の共局在を指し示す。
【0055】
【
図11E】
図11Eは、Siglec-6の抗体媒介性結合による肥満細胞阻害のモデルを示す。
【0056】
【
図12A】
図12Aおよび
図12Bは、抗Siglec-6 mAb処置が、ハプテン誘導性の接触性皮膚炎のモデルにおける皮膚炎症を阻害したことを示す。耳の腫脹のパーセント変化は、ジニトロクロロベンゼン(DNFB)負荷の24時間後に決定された(
図12A、左パネル)。サイトカインおよびケモカインレベル(
図12A、中央および右パネル、指し示される通り)は、メソスケールディスカバリー(MSD)によって、3時間にわたりex vivoで培養された耳において測定された。肥満細胞(
図12B、左パネル)およびCD8+T細胞(
図12B、右パネル)の計数によって測定される皮膚炎症も測定された。*p<0.01;n=6~7匹のマウス/群。全パネルについて、シャム処置由来のデータを左に示し、アイソタイプmAb+DNFB(ハプテン)処置由来のデータを中央に示し、抗Siglec-6 mAb+DNFB(ハプテン)処置由来のデータを右に示す。
【
図12B】
図12Aおよび
図12Bは、抗Siglec-6 mAb処置が、ハプテン誘導性の接触性皮膚炎のモデルにおける皮膚炎症を阻害したことを示す。耳の腫脹のパーセント変化は、ジニトロクロロベンゼン(DNFB)負荷の24時間後に決定された(
図12A、左パネル)。サイトカインおよびケモカインレベル(
図12A、中央および右パネル、指し示される通り)は、メソスケールディスカバリー(MSD)によって、3時間にわたりex vivoで培養された耳において測定された。肥満細胞(
図12B、左パネル)およびCD8+T細胞(
図12B、右パネル)の計数によって測定される皮膚炎症も測定された。*p<0.01;n=6~7匹のマウス/群。全パネルについて、シャム処置由来のデータを左に示し、アイソタイプmAb+DNFB(ハプテン)処置由来のデータを中央に示し、抗Siglec-6 mAb+DNFB(ハプテン)処置由来のデータを右に示す。
【0057】
【
図13】
図13は、抗Siglec-6 mAbが、IgE媒介性ヒト組織肥満細胞活性化を強力に阻害した(フローサイトメトリーによるCD63発現によって測定される)ことを示す。
【0058】
【
図14】
図14は、in vivoにおけるヒト組織肥満細胞の低減が、抗Siglec-6 mAbのFc領域に依存したことを示す。ヒト化マウス(SGM3-BLT)の腹膜腔(左パネル)および肺(右パネル)由来の肥満細胞は、フローサイトメトリーを使用して解析された。n=5~6匹のマウス/群。全パネルについて、アイソタイプ対照由来のデータを左に示し、Siglec-6 mAb由来のデータを中央に示し、抗Siglec-6 F(ab’)2由来のデータを右に示す。
【0059】
【
図15A】
図15Aは、急性IL-33駆動皮膚炎症のマウスモデルにおける抗Siglec-6 mAbの活性を検査するための概略的タイムラインを提供する。ISO、アイソタイプ;S6、抗Siglec-6 mAb。
【0060】
【
図15B】
図15B~
図15Dは、抗Siglec-6 mAb処置が、耳浸潤肥満細胞、好中球および単球の数の有意な低減によって実証される通り、IL-33媒介性炎症を阻害したことを示す。肥満細胞(
図15B)、好中球(
図15C)および単球(
図15D)数は、抗Siglec-6 mAbで処置され、PBSではなくIL-33の皮内注射を受けたマウスの耳において低減された。*p<0.01;n=6~7匹のマウス/群。全パネルについて、PBS対照由来のデータを左に示し、IL-33処置されたアイソタイプ対照由来のデータを中央に示し、IL-33処置された抗Siglec-6 mAb由来のデータを右に示す。
【
図15C-D】
図15B~
図15Dは、抗Siglec-6 mAb処置が、耳浸潤肥満細胞、好中球および単球の数の有意な低減によって実証される通り、IL-33媒介性炎症を阻害したことを示す。肥満細胞(
図15B)、好中球(
図15C)および単球(
図15D)数は、抗Siglec-6 mAbで処置され、PBSではなくIL-33の皮内注射を受けたマウスの耳において低減された。*p<0.01;n=6~7匹のマウス/群。全パネルについて、PBS対照由来のデータを左に示し、IL-33処置されたアイソタイプ対照由来のデータを中央に示し、IL-33処置された抗Siglec-6 mAb由来のデータを右に示す。
【0061】
【
図16A】
図16Aは、抗原誘導性アレルギー性胃腸疾患のマウスモデルにおける抗Siglec-6 mAbの活性を検査するための概略的タイムラインを提供する。OVA、オボアルブミン;ISO、アイソタイプ;S6、抗Siglec-6 mAb。
【0062】
【
図16B】
図16Bは、抗Siglec-6 mAbが、アイソタイプ対照と比較して、感作され、その後にオボアルブミンペプチドを負荷されたマウスにおけるアレルギー性胃腸疾患を阻害したことを示す。活性化のマーカーとしての肥満細胞におけるCD63発現のレベルのように、胃浸潤肥満細胞および好酸球は、アイソタイプ対照を与えたマウスと比較して、抗Siglec-6 mAbを与えた抗原刺激マウスにおいて低減された。OVA処置マウスの胃内腔由来の肥満細胞は、フローサイトメトリーを使用して、CD63発現について解析された。*p<0.01;n=6~7匹のマウス/群。全パネルについて、PBS無刺激対照由来のデータを左に示し、刺激されたアイソタイプ対照由来のデータを中央に示し、刺激された抗Siglec-6 mAb由来のデータを右に示す。MC、肥満細胞;Eos、好酸球。
【0063】
【
図17】
図17は、アイソタイプ対照と比較した、抗Siglec-6 mAbで処置されたアレルギー性マウスの血清におけるサイトカインおよびケモカイン(IL-4、IL-13、MIP-2およびCCL4)の有意に低減されたレベルを示す。*p<0.01;n=6~7匹のマウス/群。全パネルについて、PBS無刺激対照由来のデータを左に示し、刺激されたアイソタイプ対照由来のデータを中央に示し、刺激された抗Siglec-6 mAb由来のデータを右に示す。
【0064】
【
図18A】
図18A~
図18Cは、抗Siglec-6 mAbが、MRGPRX2アゴニストLL37によって駆動される炎症を阻害することを示す。
図18Aは、PBS単独(「PBS」)、LL37およびアイソタイプ対照抗体(「アイソタイプ」)ならびにLL37および抗Siglec-6 mAb(「Siglec-6」)で処置されたマウスの皮膚を示す。矢印は、皮膚炎症を指し示す。
図18Bは、PBS単独(全グラフにおいて左のバー)、LL37およびアイソタイプ対照抗体(全グラフにおいて中間のバー)またはLL37および抗Siglec-6 mAb(全グラフにおいて右のバー)で処置されたマウスにおける病変性皮膚から得られる好酸球(左上)、単球(右上)および肥満細胞(左下)の計数を示す。
図18Cは、PBS単独(左のバー)、LL37およびアイソタイプ対照抗体(中間のバー)またはLL37および抗Siglec-6 mAb(右のバー)で処置されたマウスにおける非病変性皮膚から得られる肥満細胞の計数を示す。
【
図18B】
図18A~
図18Cは、抗Siglec-6 mAbが、MRGPRX2アゴニストLL37によって駆動される炎症を阻害することを示す。
図18Aは、PBS単独(「PBS」)、LL37およびアイソタイプ対照抗体(「アイソタイプ」)ならびにLL37および抗Siglec-6 mAb(「Siglec-6」)で処置されたマウスの皮膚を示す。矢印は、皮膚炎症を指し示す。
図18Bは、PBS単独(全グラフにおいて左のバー)、LL37およびアイソタイプ対照抗体(全グラフにおいて中間のバー)またはLL37および抗Siglec-6 mAb(全グラフにおいて右のバー)で処置されたマウスにおける病変性皮膚から得られる好酸球(左上)、単球(右上)および肥満細胞(左下)の計数を示す。
図18Cは、PBS単独(左のバー)、LL37およびアイソタイプ対照抗体(中間のバー)またはLL37および抗Siglec-6 mAb(右のバー)で処置されたマウスにおける非病変性皮膚から得られる肥満細胞の計数を示す。
【
図18C】
図18A~
図18Cは、抗Siglec-6 mAbが、MRGPRX2アゴニストLL37によって駆動される炎症を阻害することを示す。
図18Aは、PBS単独(「PBS」)、LL37およびアイソタイプ対照抗体(「アイソタイプ」)ならびにLL37および抗Siglec-6 mAb(「Siglec-6」)で処置されたマウスの皮膚を示す。矢印は、皮膚炎症を指し示す。
図18Bは、PBS単独(全グラフにおいて左のバー)、LL37およびアイソタイプ対照抗体(全グラフにおいて中間のバー)またはLL37および抗Siglec-6 mAb(全グラフにおいて右のバー)で処置されたマウスにおける病変性皮膚から得られる好酸球(左上)、単球(右上)および肥満細胞(左下)の計数を示す。
図18Cは、PBS単独(左のバー)、LL37およびアイソタイプ対照抗体(中間のバー)またはLL37および抗Siglec-6 mAb(右のバー)で処置されたマウスにおける非病変性皮膚から得られる肥満細胞の計数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
詳細な説明
I.定義
本開示が特定の組成物にも生物システムにも限定されず、そのような組成物または生物システムは、当然のことながら変わることがあることを理解すべきである。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態の説明を目的にしたものに過ぎず、限定を意図したものでないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容によるそうでない旨の明白な指示がない限り、複数の言及対象を含む。したがって、例えば、「1つの分子(a molecule)」への言及は、必要に応じて、2つまたはそれより多くのそのような分子の組合せ、およびこれに類するものを含む。
【0066】
用語「約」は、本明細書で使用される場合、本技術分野における当業者には容易に分かるそれぞれの値についての通常の誤差範囲を指す。本明細書での「約」ある値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に関する実施形態を含む(および記載する)。
【0067】
本開示の態様および実施形態が、態様および実施形態を「含むこと」、それら「からなること」、およびそれら「から本質的になること」を包含することは理解されよう。
【0068】
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、多重エピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ(diabody)、および一本鎖分子)、および抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv)を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書では「抗体」と同義で使用される。
【0069】
基本4本鎖抗体単位は、2本の同一の軽(L)鎖および2本の同一の重(H)鎖で構成されているヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドとともに5つの基本ヘテロ四量体単位からなり、10の抗原結合部位を含有するが、IgA抗体は、J鎖と組み合わせて多価集合体を形成するように重合され得る2~5つの基本4本鎖単位を含む。IgGの場合、4本鎖単位は、一般に、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によりH鎖に連結されており、一方、2本のH鎖は、H鎖アイソタイプに依存して1つまたは複数のジスルフィド結合により互いに連結されている。H鎖およびL鎖各々は、規則的な間隔で配置された鎖間ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、このドメインに、αおよびγ鎖の各々については3つの定常ドメイン(CH)、μおよびεアイソタイプについては4つのCHドメインが続く。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、このドメインの反対側の末端に定常ドメインが続く。VLは、VHと整列しており、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖の可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられている。VHおよびVLが一緒に対合することにより、単一の抗原結合部位が形成される。異なる抗体クラスの構造および特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8th Edition, Daniel P. Sties, Abba I. Terr and Tristram G. Parsolw (eds), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, page 71 and Chapter 6を参照されたい。
【0070】
任意の脊椎動物種からのL鎖を、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に異なるタイプの一方に割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンには、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる重鎖をそれぞれ有する、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという5つのクラスがある。γおよびαクラスは、CHの配列および機能の比較的わずかな差異に基づいてサブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと呼ばれる複数の多型バリアントで存在することができ(Jefferis and Lefranc 2009. mAbs Vol 1 Issue 4 1-7において概説されている)、これらのバリアントのいずれも、本開示における使用に好適である。ヒト集団における一般的なアロタイプバリアントは、文字a、f、n、zで表記されるものである。
【0071】
「単離された」抗体は、その産生環境の成分から(例えば、天然にまたは組換えにより)同定、分離および/または回収されたものである。一部の実施形態では、単離されたポリペプチドには、その産生環境からの他の成分が一切付随していない。その産生環境の夾雑成分、例えば、組換えトランスフェクト細胞に起因する夾雑成分は、抗体の研究での使用、診断上の使用、または治療上の使用に概して干渉することになる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質を含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えばローリー法により決定して抗体の95重量%より高くまで、一部の実施形態では99重量%より高くまで、(1)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)の使用によりN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、または(3)クーマシーブルー染色もしくは銀染色を使用する非還元もしくは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで、精製される。単離された抗体は、その抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないことになるため、組換え細胞内のin situの抗体を含む。しかし、通常は、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0072】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、わずかな量で存在し得る天然で生じる変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて、同一である。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にC末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5アミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のC末端で切断されている。一部の実施形態では、C末端切断により、重鎖からC末端リシンが除去される。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にN末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5アミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のN末端で切断されている。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、複数の抗原部位に対するもの(例えば、二重特異性抗体または多重特異性抗体)である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる場合の抗体の特徴を示すものであり、この修飾語を、いずれかの特定の方法による抗体の産生を求めるものと解釈すべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体を様々な技法により作製することができ、そのような技法には、例えば、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ技術、およびヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部またはすべてを有するヒト抗体またはヒト様抗体を動物において産生するための技術が含まれる。
【0073】
用語「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。
【0074】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」、または「抗体全体」は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために同義で使用される。具体的には、抗体全体は、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。一部の場合には、インタクト抗体は、1つまたは複数のエフェクター機能を有し得る。
【0075】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分、インタクト抗体の抗原結合領域および/または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]を参照されたい);抗体断片から形成される一本鎖抗体分子および多重特異性抗体が挙げられる。
【0076】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合性断片と、残りの「Fc」断片(この名称は、容易に結晶化できることを表す)とを生じさせた。Fab断片は、全L鎖に加えてH鎖の可変領域ドメイン(VH)および一方の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大きなF(ab’)2断片を生じさせ、この断片は、ジスルフィドにより連結された異なる抗原結合活性を有する2つのFab断片にほぼ相当し、依然として抗原を架橋させることができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む少数の追加の残基をCH1ドメインのカルボキシ末端に有することによって、Fab断片と異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書での名称である。F(ab’)2抗体断片は、その間にヒンジシステインを有する対のFab’断片として、そもそも生成された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた公知である。
【0077】
Fc断片は、ジスルフィドにより一緒に保持されている両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定され、この領域もまた、ある特定のタイプの細胞上に見られるFc受容体(FcR)により認識される。
【0078】
「Fv」は、完全抗原認識および結合部位を含有する最小抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインとが密接に非共有結合的に会合している二量体からなる。これら2つのドメインのフォールディングから6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖から各々3つのループ)が生じ、これらの超可変ループが、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりは低い親和性でだが、抗原を認識し、抗原に結合する能力を有する。
【0079】
「sFv」または「scFv」と略記されもする「一本鎖Fv」は、接続されて単一ポリペプチド鎖になっているVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。一部の実施形態では、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。sFvの概説については、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0080】
本開示の抗体の「機能性断片」は、インタクト抗体の抗原結合領域もしくは可変領域を一般に含むインタクト抗体の一部分を含むか、または改良されたFcR結合能力を保持するもしくは有する抗体のFv領域を含む。抗体断片の例としては、線状抗体、抗体断片から形成される一本鎖抗体分子および多重特異性抗体が挙げられる。
【0081】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残部が、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)および、そのような抗体の断片も、それらが所望される生物学的活性を呈するのであれば、含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。本明細書における目的のキメラ抗体は、抗体の抗原結合領域が、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することにより産生された抗体に由来する、PRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0082】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRからの残基が、所望の特異性、親和性および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRからの残基に置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基が、対応する非ヒト残基に置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことがある。これらの修飾は、結合親和性などの抗体の性能をさらに洗練するために行われ得る。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものに対応するが、FR領域が、抗体の性能、例えば、結合親和性、異性化、免疫原性などを改善する1つまたは複数の個々のFR残基置換を含み得る、少なくとも1つの、および典型的には2つの、可変ドメインの実質的にすべてを含むことになる。一部の実施形態では、FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、H鎖内に6以下、およびL鎖内に3以下である。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも、必要に応じて含むことになる。さらなる詳細については、例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596 (1992)を参照されたい。例えば、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);ならびに米国特
許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照されたい。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、単一の抗原部位に対するものである。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、複数の抗原部位に対するものである。代替ヒト化方法は、米国特許第7,981,843号および米国特許出願公開第2006/0134098号に記載されている。
【0083】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」および「VL」と呼ばれ得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり(同じクラスの他の抗体と比較して)、抗原結合部位を含有する。
【0084】
用語「超可変領域」、「HVR」、または「HV」は、本明細書で使用される場合、配列が超可変性である、および/または構造的に定義されるループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)およびVLに3つ(L1、L2、L3)の、6つのHVRを含む。天然抗体の場合、H3およびL3は、6つのHVRの中で最も大きい多様性を示し、H3は、特に、抗体に対する優れた特異性を付与する固有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al. Immunity 13:37-45 (2000);Johnson and Wu in Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科動物抗体は、軽鎖の非存在下でも機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993)およびSheriff et al., Nature Struct.Biol.3:733-736 (1996)を参照されたい。
【0085】
いくつかのHVR描写が使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5
th Ed. Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, MD (1991))。Chothia HVRは、その代わりに、構造的ループの位置を参照する(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。「contact」HVRは、入手可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々からの残基が下に記述される。
【表6】
【0086】
別段の指示がない限り、可変ドメインの残基(HVR残基およびフレームワーク領域の残基)は、上掲のKabatらに従って番号付けされている。
【0087】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されたHVR残基以外の可変ドメインの残基である。
【0088】
「Kabatにおける可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにおけるアミノ酸位置番号付け」という表現、およびこれらの変形表現は、上掲のKabatらにおける抗体の編集の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用された番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮または可変ドメインのFRもしくはHVRへの挿入に対応する、より少ないまたは追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸インサート(Kabatによれば残基52a)、および重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatによれば残基82a、82bおよび82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体について、その抗体の配列と「標準」Kabat番号付け配列との相同領域でのアラインメントにより決定され得る。
【0089】
「アクセプターヒトフレームワーク」は、本明細書では、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するVLまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークもしくはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含むこともあり、または既存のアミノ酸配列変化を含有することもある。一部の実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は、10もしくはそれ未満、9もしくはそれ未満、8もしくはそれ未満、7もしくはそれ未満、6もしくはそれ未満、5もしくはそれ未満、4もしくはそれ未満、3もしくはそれ未満、または2もしくはそれ未満である。
【0090】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインし、必要に応じて、最大配列同一性パーセントを達成するようにギャップを導入した後の、いずれの保存的置換も配列同一性の一部と見なさない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当技術分野における技能の範囲内である様々な手法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメーターを決定することができる。例えば、所与のアミノ酸配列Bに対する(to)、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bを対照とする(against)、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(その代わりに、所与のアミノ酸配列Bに対する(to)、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bを対照とする(against)、ある特定のアミノ酸配列同一性%を有するまたは含む、所与のアミノ酸配列Aと、表現されることもある)は、以下:
100×分数X/Y
(式中、Xは、そのプログラムのアラインメントで配列によるAとBとの同一マッチとしてのスコアを獲得したアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)として算出される。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%が、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくならないことは、理解されるであろう。
【0091】
特定のポリペプチドにまたは特定のポリペプチド上のエピトープ「に結合する」、「に特異的に結合する」、または「に特異的である」抗体は、いずれの他のポリペプチドにも、いずれの他のポリペプチドエピトープにも、実質的に結合することなく、その特定のポリペプチドにまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合するものである。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-6抗体(例えば、ヒトSiglec-6に結合する抗体)の、無関係の非Siglec-6ポリペプチドへの結合は、当技術分野において公知の方法(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA))により測定して、抗体のSiglec-6への結合の約10%未満である。一部の実施形態では、Siglec-6に結合する抗体(例えば、ヒトSiglec-6に結合する抗体)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦2nM、≦1nM、≦0.7nM、≦0.6nM、≦0.5nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8Mまたはそれ未満、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)、約250pMまたはそれ未満、約100pMまたはそれ未満、約10pMまたはそれ未満、あるいは約1pMの解離定数(Kd)を有する。
【0092】
用語「抗Siglec-6抗体」または「ヒトSiglec-6に結合する抗体」は、いずれの他のポリペプチドにも、無関係の非Siglec-6ポリペプチドのエピトープにも、実質的に結合することなく、ヒトSiglec-6のポリペプチドまたはエピトープに結合する抗体を指す。
【0093】
用語「Siglec-6」は、本明細書で使用される場合、ヒトSiglec-6タンパク質を指す。この用語は、スプライスバリアントまたはアレルバリアントを含む、Siglec-6の天然に存在するバリアントも含む。Siglec-6、シアル酸結合Ig様レクチン6は、CD327、CD33L、OBBP1、CD33L1、CD33L2およびCDW327としても公知である。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6タンパク質は、ヒトSIGLEC6遺伝子によって発現されるいずれかのタンパク質またはポリペプチドである。例示的なヒトSIGLEC6遺伝子は、NCBI Ref.Seq.Gene ID No.946によって表される。例示的なヒトSiglec-6タンパク質およびそのドメインのアミノ酸配列は、本明細書に記載されている。例えば、一部の実施形態では、ヒトSiglec-6タンパク質は、アミノ酸配列QERRFQLEGPESLTVQEGLCVLVPCRLPTTLPASYYGYGYWFLEGADVPVATNDPDEEVQEETRGRFHLLWDPRRKNCSLSIRDARRRDNAAYFFRLKSKWMKYGYTSSKLSVRVMALTHRPNISIPGTLESGHPSNLTCSVPWVCEQGTPPIFSWMSAAPTSLGPRTTQSSVLTITPRPQDHSTNLTCQVTFPGAGVTMERTIQLNVSYAPQKVAISIFQGNSAAFKILQNTSSLPVLEGQALRLLCDADGNPPAHLSWFQGFPALNATPISNTGVLELPQVGSAEEGDFTCRAQHPLGSLQISLSLFVHWKPEGRAGGV(配列番号1)を含む細胞外ドメイン(ECD)を含む。
【0094】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因するその生物活性を指し、抗体のアイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;およびB細胞活性化が挙げられる。
【0095】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」とは、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合している分泌されたIgが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合すること、およびその後に、その標的細胞を細胞毒素で死滅させることを可能にする、細胞傷害の一形態を指す。抗体は、細胞傷害性細胞に「武器を持たせる」ものであり、この機序により標的細胞を死滅させるために必要である。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFc発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9: 457-92 (1991)の464頁の表3にまとめられている。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-6抗体(例えば、ヒトSiglec-6に結合する抗体)は、ADCCを増強する。目的の分子のADCC活性を評価するために、in vitro ADCCアッセイ、例えば、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているものを、行うことができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性を、in vivoで、例えば、Clynes et al., PNAS USA 95:652-656 (1998)で開示されているものなどの動物モデルにおいて、評価することができる。ADCC活性および他の抗体特性を変える他のFcバリアントとしては、Ghetie et al., Nat Biotech.15:637-40, 1997;Duncan et al, Nature 332:563-564, 1988;Lund et al., J. Immunol 147:2657-2662, 1991;Lund et al, Mol Immunol 29:53-59, 1992;Alegre et al, Transplantation 57:1537-1543, 1994;Hutchins et al., Proc Natl. Acad Sci USA 92:11980-11984, 1995;Jefferis et al, Immunol Lett.44:111-117, 1995;Lund et al., FASEB J9:115-119, 1995;Jefferis et al, Immunol Lett 54:101-104, 1996;Lund et al, J Immunol 157:4963-4969, 1996;Armour et al., Eur J Immunol 29:2613-2624, 1999;Idusogie et al, J Immunol 164:4178-4184, 200;Reddy et al, J Immunol 164:1925-1933, 2000;Xu et al., Cell Immunol 200:16-26, 2000;Idusogie et al, J Immunol 166:2571-2575, 2001;Shields et al., J Biol Chem 276:6591-6604, 2001;Jefferis et al, Immunol Lett 82:57-65.2002;Presta et al., Biochem Soc Trans 30:487-490, 2002;Lazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:4005-4010, 2006;米国特許第5,624,821号、同第5,885,573号、同第5,677,425号、同第6,165,745号、同第6,277,375号、同第5,869,046号、同第6,121,022号、同第5,624,821号、同第5,648,260号、同第6,194,551号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,277,375号、同第7,335,742号、および同第7,317,091号により開示されているものが挙げられる。
【0096】
用語「Fc領域」は、本明細書では、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端に及ぶように通常は定義される。本開示の抗体における使用に好適な天然配列Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。組換えIgG4抗体において観察される不均一性をなくすために、単一のアミノ酸置換(Kabatの番号付けによればS228P;IgG4Proと呼ばれる)を導入することができる。Angal, S. et al.(1993) Mol Immunol 30, 105-108を参照されたい。
【0097】
「非フコシル化」抗体または「フコース欠損」抗体は、Fc領域に結合している炭水化物構造のフコースが低減されたか、またはフコースが欠如している、Fc領域を含む、グリコシル化抗体バリアントを指す。一部の実施形態では、フコースが低減されたか、またはフコースが欠如している抗体は、改善されたADCC機能を有する。非フコシル化抗体またはフコース欠損抗体は、細胞系において産生された同じ抗体におけるフコースの量と比較してフコースが低減されている。一部の実施形態では、本明細書で企図される非フコシル化抗体組成物またはフコース欠損抗体組成物は、組成物中の抗体のFc領域に結合しているN結合型グリカンの約50%未満がフコースを含む、組成物である。
【0098】
用語「フコシル化」または「フコシル化された」は、抗体のペプチド骨格に結合しているオリゴ糖内にフコース残基が存在することを指す。具体的には、フコシル化抗体は、抗体Fc領域に結合しているN結合型オリゴ糖の一方または両方における最も内側のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基に、例えば、ヒトIgG1 FcドメインのAsn297位(Fc領域残基のEU番号付け)に、α(1,6)結合型フコースを含む。Asn297は、免疫グロブリンのわずかな配列変動に起因して、297位の約+3アミノ酸上流または下流に、すなわち、294~300位の間に、位置することもある。
【0099】
「フコシル化度(degree of fucosylation)」は、当技術分野において公知の方法によって特定される、例えば、マトリックス支援レーザー脱離-イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)により評価されるN-グリコシダーゼFで処理された抗体組成物中の、すべてのオリゴ糖に対するフコシル化オリゴ糖のパーセンテージである。「完全フコシル化抗体」の組成物では、本質的にすべてのオリゴ糖が、フコース残基を含む、すなわち、フコシル化されている。一部の実施形態では、完全フコシル化抗体の組成物は、少なくとも約90%のフコシル化度を有する。したがって、そのような組成物中の個々の抗体は、Fc領域内の2つのN結合型オリゴ糖の各々にフコース残基を概して含む。逆に、「完全非フコシル化」抗体の組成物には、フコシル化されているオリゴ糖が本質的になく、そのような組成物中の個々の抗体は、Fc領域内の2つのN結合型オリゴ糖のいずれにもフコース残基を含有しない。一部の実施形態では、完全非フコシル化抗体の組成物は、約10%未満のフコシル化度を有する。「部分フコシル化抗体」の組成物では、オリゴ糖の一部のみがフコースを含む。そのような組成物中の個々の抗体は、フコース残基を、Fc領域内のN結合型オリゴ糖のいずれにも含まないこともあり、Fc領域内のN結合型オリゴ糖の一方または両方に含むこともあるが、ただし、組成物が、Fc領域内のN結合型オリゴ糖内のフコース残基が欠如している本質的にすべての個々の抗体を含むわけでも、Fc領域内のN結合型オリゴ糖の両方にフコース残基を含有する本質的にすべての個々の抗体を含むわけでもないことを条件とする。一実施形態では、部分フコシル化抗体の組成物は、約10%~約80%(例えば、約50%~約80%、約60%~約80%、または約70%~約80%)のフコシル化度を有する。
【0100】
「結合親和性」は、本明細書で使用される場合、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の強度を指す。一部の実施形態では、Siglec-6ポリペプチドまたはそのサブドメイン(例えば、本明細書に記載されている、例えば、ECD、ドメイン1、ドメイン2またはドメイン3)に対する抗体の結合親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載のものを含む、当技術分野において公知の一般的な方法により測定することができる。
【0101】
「結合アビディティー」は、本明細書で使用される場合、分子(例えば、抗体)の複数の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との結合強度を指す。
【0102】
本明細書における抗体をコードする「単離された」核酸分子は、同定され、それが産生された環境では通常それに付随している少なくとも1つの夾雑核酸分子から分離されている、核酸分子である。一部の実施形態では、単離された核酸には、産生環境に付随するいかなる成分も付随していない。本明細書におけるポリペプチドおよび抗体コードする単離された核酸分子は、それが自然界に見られる形態または状況のもの以外の形態のものである。したがって、単離された核酸分子は、細胞内に天然に存在する本明細書におけるポリペプチドおよび抗体をコードする核酸と区別される。
【0103】
用語「医薬製剤」は、活性成分の生物活性が有効であることを可能にするような形態である調製物であって、製剤が投与されることになる個体にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は、無菌である。
【0104】
「担体」は、本明細書で使用される場合、用いられる投薬量および濃度でそれに曝露される細胞または哺乳動物にとって非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。多くの場合、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;抗酸化剤(アスコルビン酸を含む);低分子量(例えば、約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリシン;単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;ならびに/または非イオン性表面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)およびPLURONICS(登録商標)が挙げられる。
【0105】
本明細書で使用される場合、用語「処置」または「処置すること」は、臨床病理の過程で処置を受けている個体または細胞の自然経過を変えるように計画された臨床介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行速度の低下、病状の改善または緩和、および寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、疾患(例えば、ウイルス感染)に関連する1つまたは複数の症状が軽減または消失した場合、個体は、成功裏に「処置」されている。例えば、処置が、罹患者の生活の質の向上、疾患を処置するために必要とされる他の投与薬の用量の減少、疾患の再発頻度の低減、疾患の重症度の低下、疾患の発症もしくは進行の遅延、および/または個体の生存の延長をもたらした場合、個体は、成功裏に「処置」されている。
【0106】
本明細書で使用される場合、「と併せて」または「と組み合わせて」は、1つの処置モダリティを別の処置モダリティに加えて投与することを指す。したがって、「と併せて」または「と組み合わせて」は、1つの処置モダリティを、他の処置モダリティの個体への投与前、投与中または投与後に投与することを指す。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「予防」または「予防すること」は、個体における疾患の発生または再発に対する予防法を提供することを含む。個体は、疾患があるとまだ診断されていないが、疾患にかかりやすい素因を有すること、疾患に罹患しやすいこと、または疾患を発症するリスクがあることがある。
【0108】
「有効量」は、少なくとも、治療的または予防的結果を含む所望のまたは示される効果を必要な投薬量で必要な期間にわたって得るために有効な量を指す。有効量を1回または複数の投与で提供することができる。「治療有効量」は、少なくとも、特定の疾患の測定可能な改善を果たすのに必要な最低濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の病状、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を誘起する抗体の能力などの、因子によって変わり得る。治療有効量は、抗体のいかなる毒性または有害効果よりも、治療に有益な効果のほうが上回る量でもあり得る。「予防有効量」は、必要な投薬量で必要な期間にわたって所望の予防的結果を達成するのに有効な量を指す。必ずしもそうとは限らないが、通常は、予防用量は疾患の前にまたはより早期に個体に使用されるので、予防有効量は、治療有効量より少ない量であり得る。
【0109】
「慢性」投与は、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するような、急性方式とは対照的な連続方式での医薬の投与を指す。「間欠」投与は、中断することなく連続的に行われる処置ではなく、むしろ事実上周期的である処置である。
【0110】
用語「添付文書」は、治療製品の市販のパッケージ内に通例含まれている指示であって、そのような治療製品の使用に関する適応症、用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌および/または警告についての情報を含む指示を指すために使用される。
【0111】
本明細書で使用される場合、「個体」または「被験体」は、哺乳動物である。処置を目的として「哺乳動物」は、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園、競技用または愛玩用の動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどを含む。一部の実施形態では、個体または被験体は、ヒトである。
【0112】
II.抗Siglec-6抗体および組成物
本開示のある特定の態様は、ヒトSiglec-6に結合する抗体、すなわち、抗Siglec-6抗体に関する。
【0113】
一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、例えば、アミノ酸配列QERRFQLEGPESLTVQEGLCVLVPCRLPTTLPASYYGYGYWFLEGADVPVATNDPDEEVQEETRGRFHLLWDPRRKNCSLSIRDARRRDNAAYFFRLKSKWMKYGYTSSKLSVRVMALTHR(配列番号2)を含む、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン1に結合するヒト化抗体である。
【0114】
一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、例えば、アミノ酸配列PNISIPGTLESGHPSNLTCSVPWVCEQGTPPIFSWMSAAPTSLGPRTTQSSVLTITPRPQDHSTNLTCQVTFPGAGVTMERTIQLNVSYA(配列番号3)を含む、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン2に結合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化またはヒト抗体である。
【0115】
一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、例えば、アミノ酸配列PQKVAISIFQGNSAAFKILQNTSSLPVLEGQALRLLCDADGNPPAHLSWFQGFPALNATPISNTGVLELPQVGSAEEGDFTCRAQHPLGSLQISLSLFVHWKPEGRAGGV(配列番号4)を含む、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインのドメイン3に結合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化またはヒト抗体である。
【0116】
一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、表2に示される単一の抗Siglec-6抗体の1、2、3、4、5または全6個のHVR配列を含む。一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、表2に示される単一の抗Siglec-6抗体のVH領域の1、2または全3個のHVR配列を含むVH領域を含む。一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、表2に示される単一の抗Siglec-6抗体のVL領域の1、2または全3個のHVR配列を含むVL領域を含む。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0117】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0118】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0119】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号83のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号84のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号86のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号87のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0120】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0121】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号77のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号78のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号79のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号80のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号82のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0122】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0123】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号72のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号73のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号74のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号75のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号76のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0124】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号56のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0125】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0126】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0127】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0128】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号45のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0129】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号52のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0130】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号60のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0131】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0132】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号135のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号136のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号137のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号138のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号139のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号140のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0133】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号141のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号142のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号143のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号144のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号145のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号146のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0134】
一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VH領域は、配列番号147のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号148のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号149のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VL領域は、配列番号150のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号151のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号152のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0135】
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6(例えば、ヒトSiglec-6タンパク質のECDまたはそのサブドメイン)への結合について、参照抗体、例えば、本開示の抗Siglec-6抗体と競合する。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6(例えば、ヒトSiglec-6タンパク質のECDまたはそのサブドメイン)への結合について、本明細書に記載されている次の抗Siglec-6抗体:AK04、AK05、AK02、AK14、AK11、AK15、AK13、AK12、AK10、AK09、AK08、AK07、AK06、AK03、AK01、AK16、AK17およびAK18のうち1種または複数と競合する。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6のドメイン1への結合について、本明細書に記載されている次の抗Siglec-6抗体:AK04、AK05、AK02、AK07、AK06、AK03およびAK01のうち1種または複数と競合する。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6のドメイン2への結合について、本明細書に記載されている次の抗Siglec-6抗体:AK10およびAK11のうち1種または複数と競合する。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6のドメイン3への結合について、本明細書に記載されている次の抗Siglec-6抗体:AK09、AK08、AK12、AK13、AK14およびAK15のうち1種または複数と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号135のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号136のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号137のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号138のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号139のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号140のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号141のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号142のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号143のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号144のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号145のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号146のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-6への結合について、配列番号147のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号148のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号149のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH領域、ならびに配列番号150のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号151のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号152のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVL領域を含む参照抗体と競合する。
【0136】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)に結合する。一部の実施形態では、Siglec-6 ECDは、アミノ酸配列QERRFQLEGPESLTVQEGLCVLVPCRLPTTLPASYYGYGYWFLEGADVPVATNDPDEEVQEETRGRFHLLWDPRRKNCSLSIRDARRRDNAAYFFRLKSKWMKYGYTSSKLSVRVMALTHRPNISIPGTLESGHPSNLTCSVPWVCEQGTPPIFSWMSAAPTSLGPRTTQSSVLTITPRPQDHSTNLTCQVTFPGAGVTMERTIQLNVSYAPQKVAISIFQGNSAAFKILQNTSSLPVLEGQALRLLCDADGNPPAHLSWFQGFPALNATPISNTGVLELPQVGSAEEGDFTCRAQHPLGSLQISLSLFVHWKPEGRAGGV(配列番号1)を含む。
【0137】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6タンパク質(例えば、ヒトSiglec-6タンパク質のECD)のドメイン1、ドメイン2またはドメイン3に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6タンパク質(例えば、ヒトSiglec-6タンパク質のECD)のドメイン1に結合する。一部の実施形態では、ドメイン1は、アミノ酸配列QERRFQLEGPESLTVQEGLCVLVPCRLPTTLPASYYGYGYWFLEGADVPVATNDPDEEVQEETRGRFHLLWDPRRKNCSLSIRDARRRDNAAYFFRLKSKWMKYGYTSSKLSVRVMALTHR(配列番号2)を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6タンパク質(例えば、ヒトSiglec-6タンパク質のECD)のドメイン2に結合する。一部の実施形態では、ドメイン2は、アミノ酸配列PNISIPGTLESGHPSNLTCSVPWVCEQGTPPIFSWMSAAPTSLGPRTTQSSVLTITPRPQDHSTNLTCQVTFPGAGVTMERTIQLNVSYA(配列番号3)を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6タンパク質(例えば、ヒトSiglec-6タンパク質のECD)のドメイン3に結合する。一部の実施形態では、ドメイン3は、アミノ酸配列PQKVAISIFQGNSAAFKILQNTSSLPVLEGQALRLLCDADGNPPAHLSWFQGFPALNATPISNTGVLELPQVGSAEEGDFTCRAQHPLGSLQISLSLFVHWKPEGRAGGV(配列番号4)を含む。
【0138】
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6(例えば、ヒトSiglec-6タンパク質のECDまたはそのサブドメイン)における、本開示の抗Siglec-6抗体と同じエピトープに結合する。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、ヒトSiglec-6ドメイン1、2または3における、本開示の抗Siglec-6抗体と同じエピトープに結合する。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、AK05と同じエピトープに結合する(例えば、
図10Aを参照)。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、Siglec-6における次のアミノ酸:29、30、34、38、63、64、68、74、76、99、100、103、104、106および114(配列番号1に示される通りSiglec-6 ECDに従って番号付け)に結合する。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、AK04と同じエピトープに結合する(例えば、
図10Bを参照)。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec-6抗体は、Siglec-6における次のアミノ酸:26、29、30、52、64、74、75、79、98、100、104、106および107(配列番号1に示される通りSiglec-6 ECDに従って番号付け)に結合する。エピトープマッピングのための例示的なアッセイは、当技術分野で公知かつ本明細書に例証されている。例えば、エピトープマッピングは、例えば、本明細書に例証されている通り、クロスリンキング質量分析(XL-MS)を使用して行うことができる。他のアッセイは、X線結晶学およびアラニンスキャニング変異誘発を限定することなく含む。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【0139】
抗体可変ドメインのCDRまたはHVR配列に関する多くの定義が、当技術分野で公知であり、例えば、CDR/HVR配列によって本開示の抗体を表すために使用することができる。一部の実施形態では、抗体CDR/HVR配列は、Kabatと同様に定義される(例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, MD (1991)を参照)。一部の実施形態では、抗体CDR/HVR配列は、Chothiaと同様に定義される(例えば、Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)を参照)。一部の実施形態では、抗体CDR/HVR配列は、IMGTと同様に定義される(例えば、Lefranc, M.P. (1999) The Immunologist 7:132-136を参照)。一部の実施形態では、単一の 抗体のCDR/HVR配列は、2種またはそれよりも多い定義、例えば、Kabat、Chothiaおよび/またはIMGTを混合することにより定義される。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号105のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号106のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK15のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK15のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号107のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号108のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK14のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK14のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号109のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号110のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK13のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK13のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号111のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号112のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK12のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK12のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号113のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号114のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK11のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK11のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号115のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号116のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK10のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK10のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号117のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号118のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK09のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK09のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号119のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号120のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK08のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK08のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号121のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号122のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK07のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK07のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号123のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号124のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK06のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK06のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号125のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号126のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK05のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK05のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号127のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号128のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK04のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK04のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号129のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号130のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK03のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK03のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号131のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号132のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK02のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK02のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。
一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号133のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号134のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK01のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK01のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号153のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号154のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK16のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK16のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号155のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号156のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK17のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK17のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、配列番号157のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメイン、ならびに/あるいは配列番号158のアミノ酸配列に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、本明細書に記載されるAK18のVHドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVHドメインならびに/あるいは本明細書に記載されるAK18のVLドメイン配列(例えば、表5を参照のこと)に存在する1、2もしくは全3個のCDRもしくはHVR配列を含むVLドメインを含む。本明細書に記載されている実施形態のいずれかに係る一部の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。
【0140】
一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインに結合する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、肥満細胞の活性化を阻害する。肥満細胞活性化を査定するためのアッセイは、当技術分野で公知かつ本明細書に例証されている。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、例えば、ヒト肥満細胞のCD63発現を阻害する。一部の態様では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、1種または複数の肥満細胞媒介性活性を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、次の:IL-6、IL-8、IL-13、CCL2、CCL4、ヒスタミン、キマーゼおよびトリプターゼ(例えば、活性トリプターゼ)のうち1種または複数の発現および/または放出(例えば、ヒト肥満細胞による)を阻害する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、次の炎症性メディエーター:プロテアーゼ(例えば、汎トリプターゼ、活性またはベータ-トリプターゼ、キマーゼ、CPA3、ヘパリン等)、ロイコトリエン(例えば、ロイコトリエンC4またはB4、血小板活性化因子、プロスタグランジンD2またはE2等)、アミン(例えば、ヒスタミン、セロトニン、ドーパミン、ポリアミン等)、増殖因子(例えば、SCF、GM-CSFG-CSF、FGF、EGF、NGF、VEGF、PDGF等)、サイトカイン(例えば、TNF、IL-1b、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-10、IL-13、IL-17、IL-18、IL-31、IL-36等)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL12、CCL13、CCL24、CCL26、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8等)、エキソソームおよび細胞外トラップのうち1種または複数の発現および/または放出(例えば、ヒト肥満細胞による)を阻害する。例えば、総トリプターゼおよび活性トリプターゼ、ならびにヒスタミン、N-メチルヒスタミンおよび11-ベータ-プロスタグランジンF2を、血液または尿において測定して、肥満細胞の低減を評価することができる。例示的な肥満細胞活性アッセイについては、例えば米国特許出願公開番号US20110293631を参照されたい。
【0141】
一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、細胞表面(すなわち、ヒト肥満細胞の)におけるSiglec-6のレベル低減を導く。抗体の結合は、例えば、Siglec-6内部移行、エンドサイトーシス、シェディング、切断等を介して、細胞膜におけるSiglec-6のレベル低減を導くことができる。Siglec-6表面発現のレベルを査定するためのアッセイは、当技術分野で公知かつ本明細書に例証されている。一部の実施形態では、Siglec-6表面発現は、例えば、検出可能(例えば、蛍光)タグを有する抗Siglec-6抗体を使用した、フローサイトメトリーによって測定される。例えば、本明細書に実証される通り、肥満細胞を、抗Siglec-6抗体と接触させることができ、表面発現を、Siglec-6における検査抗体とは異なるエピトープに結合する蛍光をタグ付けされた抗Siglec-6抗体によるフローサイトメトリーによって測定することができる。検査抗体の存在下で低減された蛍光は、Siglec-6表面発現のレベル低減を指し示すことができる。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、抗体Fc領域の存在/非存在に関係なく、またはFc受容体(例えば、エフェクター細胞において発現された)に結合する抗体Fc領域の能力に関係なく、Siglec-6表面発現のレベル低減を導く。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、例えば、抗体の非存在下におけるまたはSiglec-6に結合しない抗体の非存在下におけるSiglec-6の表面発現と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約100%低減された細胞膜におけるSiglec-6の発現レベルを導く。
【0142】
他の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、細胞膜(すなわち、ヒト肥満細胞の)におけるSiglec-6のレベル低減を導かない。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、抗体Fc領域の存在/非存在に関係なく、またはFc受容体(例えば、エフェクター細胞において発現された)に結合する抗体Fc領域の能力に関係なく、細胞膜におけるSiglec-6のレベル低減を導かない。
【0143】
一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、Fc受容体を発現する細胞(例えば、エフェクター細胞)の存在下で、細胞膜(すなわち、ヒト肥満細胞の)におけるSiglec-6のレベル低減を導く。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域(例えば、活性Fc領域)を含む。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、抗体Fc領域(例えば、活性Fc領域)と、Fc受容体または例えばFc受容体を発現するエフェクター細胞との間の相互作用に依存した、表面発現されたSiglec-6のレベル低減を導く。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、例えば、Fc受容体またはエフェクター細胞(例えば、Fc受容体を発現している)の存在下で、抗体が、Fc領域(例えば、活性Fc領域)を含む全長抗体である場合にのみ、表面発現されたSiglec-6のレベル低減を導く。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、抗体が、例えば、Fc領域を欠如する抗体断片である場合に、表面発現されたSiglec-6のレベル低減を導く。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、抗体が、Fc受容体に結合しないFc領域(例えば、エフェクター機能を欠如する不活性または死んだFc領域)を含む全長抗体である場合に、表面発現されたSiglec-6のレベル低減を導く。一部の実施形態では、例えば、Fc受容体またはエフェクター細胞(例えば、Fc受容体を発現している)の存在下で、抗体が、Fc領域(例えば、活性Fc領域)を含む全長抗体である場合に、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、表面発現されたSiglec-6のレベル低減を導くが、抗体が、Fc領域を欠如するかまたはFc受容体に結合しないFc領域(例えば、不活性または死んだFc領域)を含む抗体断片である場合には導かない。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、例えば、Fc領域を含まないかまたは活性Fc領域を含まない抗体を使用したSiglec-6の表面発現と比較して、抗体が活性Fc領域を含む場合、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約100%低減された細胞膜におけるSiglec-6の発現レベルを導く。
【0144】
一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、Siglec-6の二量体化および/または内部移行を誘導する。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、Siglec-6の二量体化および内部移行を誘導する。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、Siglec-6のエンドサイトーシスを誘導する。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、Siglec-6(例えば、Siglec-6 ECD)のシェディングを誘導する。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、Siglec-6(例えば、Siglec-6 ECD)の切断を誘導する。
【0145】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、例えば、エフェクター細胞の存在下、in vitroおよび/またはin vivoで、ヒトSiglec-6を発現する肥満細胞を枯渇させる。一部の実施形態では、ヒト肥満細胞の表面に発現された場合のヒトSiglec-6の細胞外ドメインへの抗体の結合は、in vitroおよび/またはin vivoで、例えば、エフェクター細胞の存在下、ADCCおよび/またはADCP活性を誘導する。一部の他の態様では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、in vitroおよび/またはin vivoで、ADCC活性によってSiglec-6を発現する肥満細胞を死滅させる。一部の他の態様では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、in vitroおよび/またはin vivoで、ADCP活性によりSiglec-6を発現する肥満細胞のファゴサイトーシスを誘導する。一部の実施形態では、組成物は、フコシル化されていない(すなわち、脱フコシル化(afucosylated))抗Siglec-6抗体を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されているフコシル化されていない抗Siglec-6抗体を含む組成物は、部分的にフコシル化された抗Siglec-6抗体を含む組成物と比較して、ADCC活性を増強する。
【0146】
ADCC活性を査定するためのアッセイは、当技術分野で周知かつ本明細書に記載されている。例示的なアッセイにおいて、ADCC活性を測定するために、エフェクター細胞および標的細胞は、評価されるべき抗体の存在下、例えば、特異的な比(例えば、1:50標的細胞:エフェクター細胞)で使用される。エフェクター細胞の例としては、ナチュラルキラー(NK)細胞、大顆粒リンパ球(LGL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、ならびにNKおよびLGLを含むPBMC、または細胞表面にFc受容体を有する白血球、例えば、好中球、好酸球およびマクロファージが挙げられる。標的細胞は、評価すべき抗体が認識し得る抗原を細胞表面に発現する任意の細胞である。そのような標的細胞の例は、細胞表面にSiglec-6を発現する肥満細胞である。標的細胞は、細胞溶解の検出を可能にする試薬で標識される。標識のための試薬の例は、放射性物質、例えば、クロム酸ナトリウム(Na2 51CrO4)およびカルボキシフルオレセインサクシニミジルエステルを含む。例えば、Immunology, 14, 181 (1968);J. Immunol. Methods, 172, 227 (1994);およびJ. Immunol. Methods, 184, 29 (1995)を参照されたい。次に、残っている標的細胞の数は、共インキュベーション後に査定し(例えば、フローサイトメトリーによって)、正規化することができる(例えば、Siglec-6に結合しない抗体で処置されたかまたは抗体なしで処置されたエフェクター細胞と共インキュベートされた残っている標的細胞の数に対して)。
【0147】
ADCP活性を査定するためのアッセイは、当技術分野で周知かつ本明細書に記載されている。例えば、標的細胞は、評価されるべき抗体の存在下、マクロファージ(例えば、ヒト単球由来マクロファージ)、単球またはPBMCと、特異的な比(例えば、1:50標的細胞:マクロファージ)で共培養することができる。次に、残っている標的細胞の数は、共インキュベーション後に査定し(例えば、フローサイトメトリーによって)、正規化することができる(例えば、Siglec-6に結合しない抗体で処置されたかまたは抗体なしで処置されたマクロファージと共インキュベートされた残っている標的細胞の数に対して)。
【0148】
一態様では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、モノクローナル抗体である。一態様では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、抗体断片(抗原結合性断片を含む)、例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFvまたは(Fab’)2断片である。一態様では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。一態様では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体のいずれかは精製されている。
【0149】
本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、いかなる適したフレームワーク可変ドメイン配列を含むこともできるが、ただし、抗体が、ヒトSiglec-6に結合する能力を保持することを条件とする。本明細書で使用される場合、重鎖フレームワーク領域は、「HC-FR1-FR4」と命名され、軽鎖フレームワーク領域は、「LC-FR1-FR4」と命名される。
【0150】
免疫グロブリンには、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる重鎖をそれぞれ有する、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという5つのクラスがある。γおよびαクラスは、サブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと呼ばれる複数の多型バリアントで存在することができ(Jefferis and Lefranc 2009. mAbs Vol 1 Issue 4 1-7において概説されている)、これらのバリアントのいずれも、本明細書の実施形態の一部における使用に好適である。ヒト集団における一般的なアロタイプバリアントは、文字a、f、n、zまたはこれらの組合せで表記されるものである。
【0151】
本明細書における実施形態のいずれかでは、抗体は、重鎖Fc領域、例えば、ヒトFc領域またはヒトIgG Fc領域を含むことができる。さらなる実施形態では、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1またはIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG4 Fc領域は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基は、KabatにおけるEUインデックスに従って番号付けされる。一部の実施形態では、ヒトFc領域は、エフェクター機能を低減させる1個または複数の変異を含む。
【0152】
一部の実施形態では、ヒトIgG1 Fc領域は、エフェクター機能を低減させる1個または複数の変異を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG1 Fc領域は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の位置のうち1個または複数における置換または欠失を含む:(a)L234および/もしくはL235;(b)A327、A330および/もしくはP331;(c)E233、L234、L235および/もしくはG236;(d)E233、L234および/もしくはL235;(e)E233、L234、L235、G236、A327、A330および/もしくはP331;(f)E233、L234、L235、A327、A330および/もしくはP331;(g)N297;(h)L242、N297および/もしくはK334;(i)A287、N297および/もしくはL306;(j)R292、N297および/もしくはV302;(k)N297、V323および/もしくはI332;(l)V259、N297および/もしくはL306;(m)L234、L235、K322、M252、S254および/もしくはT256;または(n)L234、L235および/もしくはP329。一部の実施形態では、抗体は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:(a)L234Aおよび/もしくはL235A;(b)A327G、A330Sおよび/もしくはP331S;(c)E233P、L234V、L235Aおよび/もしくはG236del;(d)E233P、L234V、および/またはL235A;(e)E233P、L234V、L235A、G236del、A327G、A330S、および/またはP331S;(f)E233P、L234V、L235A、A327G、A330S、および/またはP331S;(g)N297A;(h)N297G;(i)N297Q;(j)L242C、N297C、および/またはK334C;(k)A287C、N297G、および/またはL306C;(l)R292C、N297G、および/またはV302C;(m)N297G、V323C、および/またはI332C;(n)V259C、N297G、および/またはL306C;(o)L234F、L235Q、K322Q、M252Y、S254T、および/またはT256E;(p)L234A、L235A、および/またはP329G;または(q)L234A、L235Q、およびK322Qのうち1個または複数を有するヒトIgG1 Fc領域を含む。例えば、Schlothauer, T. et al. (2016) Protein Eng. Des. Sel. 29:457-466;Armour, K.L. et al. (2003) Mol. Immunol. 40:585-593;Jacobsen, F.W. et al. (2017) J. Biol. Chem. 292:1865-1875;およびBorrok, M.J. et al. (2017) J. Pharm. Sci. 106:1008-1017を参照されたい。一部の実施形態では、抗体重鎖は、配列番号101または102のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0153】
一部の実施形態では、ヒトIgG1 Fc領域は、エフェクター機能を増加または増強する1個または複数の変異を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG1 Fc領域は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の位置(a)F243、R292、Y300、V305および/もしくはP396;(b)S239および/もしくはI332;(c)S239、I332および/もしくはA330;(d)S298、E333および/もしくはK334;(e)G236、S239および/もしくはI332;(f)K326および/もしくはE333;(g)S267、H268および/もしくはS324;または(h)E345、E430および/もしくはS440のうち1個または複数における置換または欠失を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG1 Fc領域は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異(a)F243L、R292P、Y300L、V305Iおよび/もしくはP396L;(b)S239Dおよび/もしくはI332E;(c)S239D、I332Eおよび/もしくはA330L;(d)S298A、E333Aおよび/もしくはK334A;(e)G236A、S239Dおよび/もしくはI332E;(f)K326Wおよび/もしくはE333S;(g)S267E、H268Fおよび/もしくはS324T;または(h)E345R、E430Gおよび/もしくはS440Yのうち1個または複数を含む。例えば、Stavenhagen, J.B. et al. (2007) Cancer Res. 67:8882-8890;Lazar, G.A. et al. (2006) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:4005-4010;Shields, R.L. et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:6591-6604;Richards, J.O. et al. (2008) Mol. Cancer Ther. 7:2517-2527;Idusogie, E.E. et al. (2001) J. Immunol. 166:2571-2575;Moore, G.L. et al. (2010) MAbs 2:181-189;およびDiebolder, C.A. et al. (2014) Science 343:1260-1263を参照されたい。
【0154】
一部の実施形態では、ヒトIgG2 Fc領域は、エフェクター機能を低減させる1個または複数の変異を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG2 Fc領域は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の位置のうち1個または複数における置換または欠失を含む:(a)A330および/もしくはP331;(b)V234、G237、P238、H268、V309、A330および/もしくはP331;または(c)V234、G237、H268、V309、A330、P331、C232、C233、S267、L328、M252、S254および/もしくはT256。一部の実施形態では、ヒトIgG2 Fc領域は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:(a)A330Sおよび/またはP331S;(b)V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、および/またはP331S;または(c)V234A、G237A、H268Q、V309L、A330S、P331S、C232S、C233S、S267E、L328F、M252Y、S254T、および/またはT256Eのうち1個または複数を含む。例えば、Armour, K.L. et al. (2003) Mol. Immunol. 40:585-593ならびに米国特許公開番号(US PG Pub. No)20170204193および20170240631を参照されたい。
【0155】
一部の実施形態では、ヒトIgG4 Fc領域は、エフェクター機能を低減させる1個または複数の変異を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG4 Fc領域は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の位置のうち1個または複数における置換または欠失を含む:(a)E233、F234、L235および/もしくはG236;(b)E233、F234および/もしくはL235;または(c)S228および/もしくはL235。一部の実施形態では、ヒトIgG4 Fc領域は、EUインデックスに基づいて番号付けした次の変異:(a)E233P、F234V、L235Aおよび/もしくはG236del;(b)E233P、F234V、および/またはL235A;(c)S228Pおよび/またはL235E;または(d)S228Pおよび/またはL235Aのうち1個または複数を含む。例えば、Schlothauer, T. et al. (2016) Protein Eng. Des. Sel. 29:457-466;およびArmour, K.L. et al. (2003) Mol. Immunol. 40:585-593を参照されたい。一部の実施形態では、抗体重鎖は、配列番号103のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0156】
一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、表3に示されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む抗体重鎖を含む。
【表3】
【0157】
一部の実施形態では、本開示の抗Siglec-6抗体は、軽鎖定常(CL)ドメイン、例えば、ヒトカッパーまたはラムダCLドメインを含む抗体軽鎖を含む。一部の実施形態では、CLドメインは、ヒトカッパーCLドメインである。一部の実施形態では、CLドメインは、RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号104)のアミノ酸配列を含む。
【0158】
一態様では、本開示は、例えば、下文に記載されている通り、フコシル化が低減または排除された抗Siglec-6抗体を提供する。例えば、一部の実施形態では、抗体の重鎖のうち少なくとも1または2個は、フコシル化されていない。一部の実施形態では、Fc領域は、フコシル化されていない。一部の実施形態では、抗体は、フコシル化されていないヒトIgG1 Fc領域を含む。抗体フコシル化を測定するための例示的なアッセイ、ならびにフコシル化が変更、低減または排除された抗体を産生するための方法および細胞系が本明細書に提供される。
【0159】
一態様では、抗Siglec-6抗体をコードするポリヌクレオチドが提供される。ある特定の実施形態では、抗Siglec-6抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。ある特定の実施形態では、そのようなベクターを含む宿主細胞が提供される。本発明の別の態様では、抗Siglec-6抗体または抗Siglec-6抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、肥満細胞媒介性障害、例えば、本明細書に列挙されている障害の処置のための医薬製剤である。
【0160】
1.抗体親和性
一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、約250pMもしくはそれ未満、約225pMもしくはそれ未満、約200pMもしくはそれ未満、約175pMもしくはそれ未満、約150pMもしくはそれ未満、約125pMもしくはそれ未満、約100pMもしくはそれ未満、約90pMもしくはそれ未満、約80pMもしくはそれ未満、約70pMもしくはそれ未満、約60pMもしくはそれ未満、約50pMもしくはそれ未満、約40pMもしくはそれ未満、約30pMもしくはそれ未満、約20pMもしくはそれ未満、約10pMもしくはそれ未満または約1pMの平衡解離定数(KD)でヒトSiglec-6のECDに結合する。一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、約250pMもしくはそれ未満、約225pMもしくはそれ未満、約200pMもしくはそれ未満、約175pMもしくはそれ未満、約150pMもしくはそれ未満、約125pMもしくはそれ未満、約100pMもしくはそれ未満、約90pMもしくはそれ未満、約80pMもしくはそれ未満、約70pMもしくはそれ未満、約60pMもしくはそれ未満、約50pMもしくはそれ未満、約40pMもしくはそれ未満、約30pMもしくはそれ未満、約20pMもしくはそれ未満、約10pMもしくはそれ未満または約1pMの平衡解離定数(KD)でヒトSiglec-6のECDのドメイン1に結合する。一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、約250pMもしくはそれ未満、約225pMもしくはそれ未満、約200pMもしくはそれ未満、約175pMもしくはそれ未満、約150pMもしくはそれ未満、約125pMもしくはそれ未満、約100pMもしくはそれ未満、約90pMもしくはそれ未満、約80pMもしくはそれ未満、約70pMもしくはそれ未満、約60pMもしくはそれ未満、約50pMもしくはそれ未満、約40pMもしくはそれ未満、約30pMもしくはそれ未満、約20pMもしくはそれ未満、約10pMもしくはそれ未満または約1pMの平衡解離定数(KD)でヒトSiglec-6のECDのドメイン2に結合する。一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、約250pMもしくはそれ未満、約225pMもしくはそれ未満、約200pMもしくはそれ未満、約175pMもしくはそれ未満、約150pMもしくはそれ未満、約125pMもしくはそれ未満、約100pMもしくはそれ未満、約90pMもしくはそれ未満、約80pMもしくはそれ未満、約70pMもしくはそれ未満、約60pMもしくはそれ未満、約50pMもしくはそれ未満、約40pMもしくはそれ未満、約30pMもしくはそれ未満、約20pMもしくはそれ未満、約10pMもしくはそれ未満または約1pMの平衡解離定数(KD)でヒトSiglec-6のECDのドメイン3に結合する。
【0161】
ヒトSiglec-6、そのECDまたはそのサブドメインに対する抗体の結合親和性を決定するための例示的なアッセイは、当技術分野で公知かつ本明細書に例証されている。一実施形態では、抗Siglec-6抗体の結合親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイにより決定することができる。例えば、KdまたはKd値は、25℃で固定化抗原CM5チップを用いて約10応答単位(RU)でBIAcore(商標)-2000またはBIAcore(商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用することにより、測定することができる。簡単に言うと、カルボキシメチル化 デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore(登録商標)Inc.)を、供給業者の指示に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。捕捉抗体(例えば、抗ヒトFc)を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で希釈した後、30μl/分の流量で注入し、さらに、抗Siglec-6抗体を固定化する。動態測定のために、二量体Siglec-6の2倍段階希釈物を、0.05% Tween(登録商標) 20(PBST)を含有するPBSに、25℃で、おおよそ25μl/分の流量で注入する。単純1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、結合および解離センソグラムの同時フィッティングにより、結合速度(kon)および解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出する。例えば、Chen, Y., et al., (1999) J. Mol. Biol. 293:865-881を参照されたい。
【0162】
別の実施形態では、バイオレイヤー干渉法を使用して、Siglec-6に対する抗Siglec-6抗体の親和性を決定することができる。例示的なアッセイでは、Siglec-6-Fcタグ付きタンパク質を、抗ヒト捕捉センサー上に固定化し、漸増濃度のマウス、キメラ、またはヒト化抗Siglec-6 Fab断片とともにインキュベートして、例えばOctet Red 384 System(ForteBio)などの計器を使用して親和性測定値を得る。
【0163】
抗Siglec-6抗体の結合親和性は、例えば、関連技術分野では周知の標準的な技法を使用してMunson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980) に記載されているスキャッチャード解析により、決定することもできる。Scatchard, G., Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660 (1947)も参照されたい。
【0164】
2.競合アッセイ
競合アッセイを使用して、2つの抗体が、同一のもしくは立体的にオーバーラップしているエピトープを認識することにより同じエピトープに結合するか、または一方の抗体が、別の抗体の抗原への結合を競合的に阻害するかを決定することができる。これらのアッセイは、当技術分野において公知である。典型的には、抗原または抗原発現細胞をマルチウェルプレート上に固定化し、標識抗体の結合を遮断する非標識抗体の能力を測定する。そのような競合アッセイの一般的な標識は、放射性標識または酵素標識である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、例えば、細胞(例えば、肥満細胞)の細胞表面に発現されたSiglec-6ポリペプチドまたはそのECDもしくはドメインへの結合について本明細書に記載されている参照抗体と競合する。
【0165】
III.抗体調製
本明細書に記載の抗体は、抗体を生成するための当技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、より詳細に以下の節で説明される。
【0166】
1.抗体断片
本発明は、抗体断片を包含する。抗体断片は、酵素消化などの旧来の手段により、または組換え技術により、生成することができる。ある特定の状況では、抗体全体ではなく、抗体断片を使用することに利点がある。ある特定の抗体断片の総説については、Hudson et al. (2003) Nat. Med. 9:129-134を参照されたい。
【0167】
様々な技法が、抗体断片の産生のために開発されてきた。伝統的には、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク質分解性消化によって得られた(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992);およびBrennan et al., Science, 229:81 (1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片を今では組換え宿主細胞により直接的に産生することができる。Fab、FvおよびScFv抗体断片は、すべて、E.coliにおいて発現され得、E.coliから分泌され得るため、大量のこれらの断片の容易な産生が可能である。抗体断片を上述の抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’-SH断片を、E.coliから直接的に回収し、化学的にカップリングしてF(ab’)2断片を形成することができる(Carter et al., Bio/Technology 10: 163-167 (1992))。別のアプローチによれば、F(ab’)2断片を組換え宿主細胞培養物から直接的に単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、in vivo半減期が延長されたFabおよびF(ab’)2断片は、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技法は、当業者には明らかであろう。ある特定の実施形態では、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域がないインタクト結合部位を有する唯一の種であり、したがって、これらは、in vivoでの使用中の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のどちらかでエフェクタータンパク質の融合を生じさせるように、scFv融合タンパク質を構築することができる。例えば、上掲のAntibody Engineering, ed. Borrebaeckを参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に例えば記載されているような、「線状抗体」であることもある。そのような線状抗体は、単一特異性であることもあり、または二重特異性であることもある。
【0168】
2.ヒト化抗体
本開示は、ヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法は、当技術分野において公知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有することができる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「移入」残基と呼ばれ、これらの残基は、通常は「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的には、Winterの方法(Jones et al. (1986) Nature 321:522-525;Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-327;Verhoeyen et al. (1988) Science 239:1534-1536)に従って、超可変領域配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより、行うことができる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない可変ドメインが非ヒト種からの対応する配列により置換されている、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、通常は、一部の超可変領域残基およびことによると一部のFR残基がげっ歯類抗体の類似の部位からの残基により置換されたヒト抗体である。
【0169】
ヒト化抗体の作製に使用されることになる、軽鎖および重鎖両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減させるために重要であり得る。いわゆる「ベストフィット」法に従って、げっ歯類(例えば、マウス)抗体の可変ドメインの配列を公知ヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。次に、げっ歯類のものに最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のためのヒトフレームワークとして受入れる(Sims et al.(1993) J. Immunol. 151:2296;Chothia et al.(1987) J. Mol. Biol. 196:901)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285;Presta et al. (1993) J. Immunol., 151:2623)。
【0170】
さらに、一般に、抗原に対する高度な親和性および他の好ましい生物学的特性を保持したまま抗体をヒト化することが望ましい。この目標を達成するために、1つの方法によれば、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列および様々な概念上のヒト化産物の解析の過程によって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元コンフォメーション構造を図示および表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の調査により、候補免疫グロブリン配列が機能する上での残基の可能性の高い役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原への結合能力に影響を与える残基の解析が、可能になる。このようにして、所望の抗体特性、例えば標的抗原に対する親和性増加が達成されるように、FR残基をレシピエント配列および移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、抗原結合に影響を与えることに直接かつ最も大きく関与するのは、超可変領域残基である。
【0171】
3.ヒト抗体
本発明のヒト抗Siglec-6抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を公知のヒト定常ドメイン配列と組み合わせることにより構築することができる。あるいは、本発明のヒトモノクローナル抗Siglec-6抗体をハイブリドーマ法により作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞系は、例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991)により記載されている。
【0172】
免疫化によって内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の全レパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を、産生することができる。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全阻害をもたらすことが記載されている。そのような生殖細胞系変異体マウスへのヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原チャレンジ時にヒト抗体の産生を生じる。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 2551 (1993);Jakobovits et al., Nature,
362: 255 (1993);Bruggermann et al., Year in Immunol., 7: 33 (1993)を参照されたい。
【0173】
遺伝子シャフリングを使用して、非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体からヒト抗体を得ることができ、このヒト抗体は、出発非ヒト抗体に類似した親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従って、本明細書に記載されるようにファージディスプレイ法により得られた非ヒト抗体断片の重鎖可変領域または軽鎖可変領域のどちらかをヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換え、それによって、非ヒト鎖/ヒト鎖のscFvまたはFabキメラの集団を作出する。抗原での選択によって、ヒト鎖が、一次ファージディスプレイクローンにおける対応する非ヒト鎖が除去されて破壊された抗原結合部位を修復する非ヒト鎖/ヒト鎖のキメラscFvまたはFabが単離されることになる、すなわち、エピトープがヒト鎖パートナーの選択を支配する。残存する非ヒト鎖を置き換えるためにこのプロセスを繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT WO93/06213を参照されたい)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の旧来のヒト化とは異なり、この技法により、非ヒト起源のFR残基もCDR残基も有さない完全ヒト抗体が得られる。
【0174】
4.多重特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。二重特異性抗体は、2種の異なる抗原、または同じ抗原における2種の異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体を指すことができる。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。ある特定の実施形態では、結合特異性の一方は、Siglec-6に対するものであり、他方は、任意の他の抗原に対するものである。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、Siglec-6の2つの異なるエピトープと結合することができる。二重特異性抗体を使用して、Siglec-6を発現する細胞に細胞傷害性剤を局在させることもできる。二重特異性抗体を完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0175】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である。Milstein and Cuello, Nature, 305: 537 (1983)、1993年5月13日に公開されたWO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J., 10: 3655 (1991)を参照されたい。二重特異性抗体の生成に関するさらなる詳細については、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。二重特異性抗体は、架橋抗体または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方をアビジンとカップリングさせることができ、他方をビオチンとカップリングさせることができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の好都合な架橋方法を使用して作製することができる。好適な架橋剤は、当技術分野において周知であり、いくつかの架橋技法とともに米国特許第4,676,980号において開示されている。
【0176】
5.単一ドメイン抗体
一部の実施形態では、本発明の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてまたは一部分からなる。
【0177】
6.抗体バリアント
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列の改変が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましいことがある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することにより、またはペプチド合成により、調製することができる。そのような改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、および/または抗体のアミノ酸配列への残基の挿入、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。最終構築物に達するために欠失と挿入と置換とのいかなる組合せを行ってもよいが、ただし、最終構築物が、所望の特性を有することを条件とする。アミノ酸の変更を、配列を作製する時点で対象抗体のアミノ酸配列に導入してもよい。
【0178】
変異誘発に好ましい位置である、抗体のある特定の残基または領域の同定に有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085により記載されているように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基、または標的残基の群(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lys、およびglu)が同定され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼすために中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)に置き換えられる。次いで、置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置が、置換部位でのまたは置換部位に対するさらなるまたは他のバリアントの導入により洗練される。このようにして、アミノ酸配列変動を導入するための部位は事前に決定されるが、変異自体の性質を事前に決定する必要はない。例えば、所与の部位における変異の性能を解析するために、アラニンスキャニングまたはランダム変異誘発が標的コドンまたは領域において行われ、発現された免疫グロブリンが所望される活性についてスクリーニングされる。
【0179】
アミノ酸配列挿入は、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入ばかりでなく、1残基から100またはそれより多くの残基を含有するポリペプチドまで長さに幅があるアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合も含む。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントは、抗体のNまたはC末端に、抗体の血清半減期を延長させる酵素またはポリペプチドが融合したものを含む。
【0180】
ある特定の実施態様では、本発明の抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変更される。ポリペプチドのグリコシル化は、通常は、N結合型またはO結合型のどちらかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内のこれらのどちらかのトリペプチド配列の存在は、潜在的グリコシル化部位を生じさせる。O結合型グリコシル化は、糖であるN-アセチルガラクトサミン(N-aceylgalactosamine)、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸への結合を指し、ヒドロキシアミノ酸は、最も一般的にはセリンまたはトレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンが使用されることもある。
【0181】
抗体に対するグリコシル化部位の付加または欠失は、上記トリペプチド配列(N結合型グリコシル化部位についての)の1つまたは複数が作製または除去されるようにアミノ酸配列を変更することにより、好都合に果たされる。元の抗体の(O結合型グリコシル化部位についての)配列に対する1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基の付加、欠失、または置換により、変更を加えることもできる。
【0182】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合されている炭水化物を変更することができる。例えば、フコースが欠如している成熟炭水化物構造が抗体のFc領域に結合されている抗体が、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.)に記載されている。US2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)も参照されたい。抗体のFc領域に結合された炭水化物内にバイセクティングN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)がある抗体は、Jean-MairetらのWO2003/011878およびUmanaらの米国特許第6,602,684号において言及されている。抗体のFc領域に結合されたオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基がある抗体は、PatelらのWO1997/30087において報告されている。変更された炭水化物がそのFc領域に結合されている抗体に関するWO1998/58964(Raju,S.)およびWO1999/22764(Raju,S.)も、参照されたい。改変されたグリコシル化を有する抗原結合分子についてのUS2005/0123546(Umanaら)も、参照されたい。
【0183】
ある特定の実施形態では、グリコシル化バリアントは、Fc領域を含み、このFc領域に結合している炭水化物構造は、フコースが欠如しているかまたはフコースが減少している。そのようなバリアントは、改善されたADCC機能を有する。必要に応じて、Fc領域は、ADCCをさらに改善する1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位および/または334位(残基のEu番号付け)における置換をさらに含む。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体に関する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742;Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004);Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生する細胞系の例としては、タンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);Presta,Lの米国特許出願公開第2003/0157108A1号;およびAdamsらのWO2004/056312A1、特に、実施例11)、およびノックアウト細胞系、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004))、ならびにβ1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT-III)およびゴルジμ-マンノシダーゼII(ManII)を過剰発現する細胞が挙げられる。
【0184】
野生型CHO細胞において産生される同じ抗体上のフコースの量と比較して低減されたフコースを有する抗体が、本明細書で企図される。例えば、抗体は、天然CHO細胞(例えば、天然グリコシル化パターンを生じさせるCHO細胞、例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞)により他に産生された場合に有することになる量よりも少ない量のフコースを有する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗Siglec-6抗体は、抗体上のN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、5%または1%未満がフコースを含む、抗体である。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗Siglec-6抗体は、抗体上のいずれのN結合型グリカンもフコースを含まない抗体、すなわち、抗体は、完全にフコースなしであるか、またはフコースを有さないか、またはフコシル化されていないか、または脱フコシル化されている。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されているように、MALDI-TOF質量分析により測定してAsn297に結合されているすべての糖構造(例えば、複合構造、ハイブリッド構造、または高マンノース構造)の総和に対する、糖鎖内のAsn297におけるフコースの平均量を算出することにより決定することができる。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列変動に起因して297位の約±3アミノ酸上流または下流に、すなわち、294~300位の間に位置することもある。一部の実施形態では、抗体の重鎖の少なくとも1つまたは2つは、フコシル化されていない。
【0185】
一実施形態では、抗体は、その血清半減期を改善するために変更される。抗体の血清半減期を延長させるために、例えば米国特許第5,739,277号に記載されるように、サルベージ受容体結合エピトープを抗体(特に、抗体断片)に組み込むことができる。本明細書で使用される場合、用語「サルベージ受容体結合エピトープ」は、IgG分子のin vivo血清半減期の延長を担う、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す(US2003/0190311、米国特許第6,821,505号、米国特許第6,165,745号、米国特許第5,624,821号、米国特許第5,648,260号、米国特許第6,165,745号、米国特許第5,834,597号)。
【0186】
別のタイプのバリアントは、アミノ酸置換バリアントである。これらのバリアントは、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が、異なる残基に置き換えられている。置換変異誘発のための目的の部位は、超可変領域を含むが、FR変更も企図される。保存的置換は、表1に「好ましい置換」という見出しで示される。そのような置換が生物活性の望ましい変化をもたらす場合には、表1で「例示的置換」と表示される、またはアミノ酸クラスに関連して下記でさらに説明されるような、より実質的な変化を導入することができ、その産物をスクリーニングすることができる。
表1。
【表1】
【0187】
抗体の生物学的特性の実質的な改変は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくはヘリックスコンフォメーションのような構造の維持、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性の維持、またはc)側鎖の嵩の維持に対するそれらの効果が有意に異なる置換を選択することにより、果たされる。アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性によって分類することができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)にお
いて):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0188】
あるいは、天然に存在する残基を、共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0189】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのクラスのメンバーを別のクラスと交換することを必然的に伴うことになる。そのように置換された残基を、保存的置換部位に、または残りの(非保存)部位に導入することもできる。
【0190】
1つのタイプの置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。一般に、さらなる開発に選択される、結果として生じるバリアントは、それらが生成される親抗体と比較して改変された(例えば、改善された)生物学的特性を有することになる。そのような置換バリアントを生成するための好都合な手法は、ファージディスプレイを使用する親和性成熟を含む。手短に述べると、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7部位)を変異させて、可能なあらゆるアミノ酸置換を部位毎に生じさせる。このようにして生成された抗体は、各粒子内にパッケージングされたファージコーティングタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)の少なくとも一部との融合体として、繊維状ファージ粒子により提示される。次いで、ファージにより提示されたバリアントを、それらの生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。改変のための候補超可変領域部位を特定するために、スキャニング変異誘発(例えば、アラニンスキャニング)を行って、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定することができる。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するために抗原-抗体複合体の結晶構造を分析することは有益であり得る。そのような接触残基および隣接残基は、本明細書で詳述されるものをはじめとする当技術分野において公知の技法による置換の候補である。そのようなバリアントが生成されたら、バリアントのパネルを、本明細書に記載のものを含む当技術分野において公知の技法を使用するスクリーニングに供し、1つまたは複数の関連するアッセイにおいて優れた特性を有した抗体を、さらなる開発のために選択することができる。
【0191】
抗体のアミノ酸配列バリアントをコードする核酸分子は、当技術分野において公知の様々な方法により調製される。これらの方法としては、天然供給源(天然に存在するアミノ酸配列バリアントの場合)からの単離;または抗体の前に調製されたバリアントもしくは非バリアントバージョンのオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発およびカセット変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
本開示の抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入することによって、Fc領域バリアントを生成することが、望ましいことがある。Fc領域バリアントは、ヒンジシステインの修飾を含む1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。一部の実施形態では、Fc領域バリアントは、ヒトIgG1、IgG2またはIgG4 Fc領域を含む。例示的なFc領域バリアントは、本明細書に提供される。
【0193】
この説明、および当技術の教示に従って、一部の実施形態では、本発明の抗体は、野生型対応物抗体と比較して、例えばFc領域に、1つまたは複数の変更を含み得ると考えられる。それにもかかわらず、これらの抗体は、それらの野生型対応物と比較して、治療的有用性のために求められる同じ特性を実質的に保持することになる。例えば、WO99/51642に例えば記載されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)の変更(すなわち、改善または減少のどちらか)をもたらすことになる、ある特定の変更をFc領域に行うことができると考えられる。Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan & Winter Nature 322:738-40 (1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、およびWO94/29351も参照されたい。WO00/42072(Presta)およびWO2004/056312(Lowman)には、FcRへの結合が改善または減少した抗体バリアントが記載されている。これらの特許公報の内容は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。例えば、Shields et al. J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)も参照されたい。半減期が延長された抗体、および胎児への母性IgGの伝達を担う新生児型Fc受容体(FcRn)(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)、およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))への結合が改善された抗体が、US2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つまたは複数の置換を有するFc領域を含む。Fc領域アミノ酸配列が変更されたおよびC1q結合能力が増加または減少されたポリペプチドバリアントは、米国特許第6,194,551B1号、WO99/51642に記載されている。これらの特許公報の内容は、特に、参照により本明細書に組み込まれる。Idusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照されたい。
【0194】
7.ベクター、宿主細胞、および組換え方法
本発明の抗体の組換え産生のために、本開示の抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)のためにまたは発現のために複製可能なベクターに挿入される。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離され、シーケンシングされる。多くのベクターが利用可能である。ベクターの選択は、一部で、使用される宿主細胞に依存する。一般に、宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般に、哺乳動物)のどちらかの起源である。IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域を、このために使用することができること、ならびにそのような定常領域を任意のヒトまたは動物種から得ることができることは、理解されるであろう。
【0195】
原核生物宿主細胞を使用する抗体の生成
a)ベクター構築
本発明の抗体のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列をハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離し、シーケンシングすることができる。あるいは、ポリヌクレオチドを、ヌクレオチド合成装置またはPCR技法を使用して合成することができる。得られたら、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製することおよび発現することができる組換えベクターに挿入される。当技術分野において利用可能かつ公知である多数のベクターを、本発明のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主として、ベクターに挿入される核酸のサイズ、およびベクターで形質転換される特定の宿主細胞に依存することになる。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、または両方)、およびそれが存在する特定の宿主細胞との適合性に依存して、様々な成分を含有する。ベクター成分としては、一般に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート、および転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0196】
一般に、宿主細胞に適合する種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは、通常、複製部位、および形質転換された細胞において表現型選択を生じさせることができるマーキング配列も有する。例えば、E.coliは、典型的には、E.coli種に由来するプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、したがって、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージはまた、微生物により内在性タンパク質の発現のために使用され得るプロモーターを含有し得るか、またはそのようなプロモーターを含有するように改変され得る。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例は、Carterらの米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
【0197】
加えて、宿主微生物に適合するレプリコンおよび制御配列を含有するファージベクターを、これらの宿主に関連して形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.-11などのバクテリオファージは、E.coli LE392などの感受性宿主細胞を形質転換するために使用することができる組換えベクターの作製に利用され得る。
【0198】
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2つまたはそれより多くのプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、シストロンに対して上流(5’)に位置し、その発現をモジュレートする非翻訳制御配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、誘導性プロモーターおよび構成プロモーターという2つのクラスに分類される。誘導性プロモーターは、その制御下にあるシストロンの転写を培養条件の変化、例えば、栄養素の存在もしくは非存在または温度の変化に応じて増加したレベルで開始させる、プロモーターである。
【0199】
可能性のある様々な宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターを、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに、制限酵素消化によって供給源のDNAからプロモーターを除去することおよび単離されたプロモーター配列を本発明のベクターに挿入することにより、作動可能に連結させることができる。天然プロモーター配列も、多数の異種プロモーターも、標的遺伝子の増幅および/または発現を導くために使用することができる。一部の実施形態では、異種プロモーターは、一般に、天然標的ポリペプチドプロモーターと比較して発現標的遺伝子のより多くの転写、およびより高い収量を可能にするので、異種プロモーターが利用される。
【0200】
原核生物宿主での使用に好適なプロモーターとしては、PhoAプロモーター、β-ガラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにハイブリッドプロモーター、例えば、tacまたはtrcプロモーターが挙げられる。しかし、細菌において機能する他のプロモーター(例えば、他の公知の細菌プロモーターまたはファージプロモーター)もまた好適である。それらのヌクレオチド配列は、公開されており、それによって、当業者は、それらを、標的軽鎖および重鎖をコードするシストロンに、任意の必要な制限部位を供給するためにリンカーまたはアダプターを使用して作動可能にライゲーションすることができる(Siebenlist et al. (1980) Cell 20: 269)。
【0201】
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜を横断する発現されたポリペプチドのトランスロケーションを導く分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であり得るか、またはシグナル配列は、ベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本発明のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞により認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドに本来備わっているシグナル配列を認識およびプロセシングしない原核生物宿主細胞については、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpAおよびMBPからなる群より選択される、原核生物シグナル配列により置換される。本発明の一実施形態では、発現系の両方のシストロンにおいて使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはそのバリアントである。
【0202】
別の態様では、本発明による免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質において起こり得るものであり、したがって、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。その関連で、免疫グロブリン軽鎖および重鎖は、細胞質内で、発現され、フォールディングされ、組み立てられて、機能性免疫グロブリンが形成される。ある特定の宿主株(例えば、E.coli trxB株)は、ジスルフィド結合の形成に好ましい細胞質条件を提供し、それによって、発現されたタンパク質サブユニットの正しいフォールディングおよび組立てを可能にする。Proba and Pluckthun Gene, 159:203 (1995)。
【0203】
本発明の、分泌され正しく組み立てられた抗体の収量を最大にするために、発現されるポリペプチド成分の定量的な比をモジュレートすることができる発現系を使用することにより、本発明の抗体を産生することもできる。そのようなモジュレーションは、少なくとも一部において、ポリペプチド成分の翻訳強度を同時にモジュレートすることにより果たされる。
【0204】
翻訳強度をモジュレートするための1つの技法は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号において開示されている。この技法は、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)のバリアントを利用する。所与のTIRについて、一連のアミノ酸または核酸配列バリアントをある範囲の翻訳強度で作出することができ、それによって、この因子を特定の鎖の所望の発現レベルに調整するための好都合な手段が得られる。TIRバリアントは、アミノ酸配列を変更し得るコドン変化を生じさせる結果となる従来の変異誘発技術により生成することができる。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列の変化は、サイレントである。TIRの変更は、例えば、シャイン・ダルガーノ配列の数または間隔の変更に加えてシグナル配列の変更も含み得る。変異体シグナル配列を生成するための1つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)、コード配列の出発点における「コドンバンク」の生成である。この方法は、各コドンの3番目のヌクレオチド位置を変化させることにより遂行され得る。加えて、一部のアミノ酸、例えば、ロイシン、セリンおよびアルギニンには、複数の1番目および2番目の位置を有し、このことがバンク作製に複雑性を追加し得る。この変異誘発方法は、Yansura et al. (1992) METHODS: A Companion to Methods in Enzymol. 4:151-158に詳細に記載されている。
【0205】
一実施形態では、ベクター内の各シストロンに対してある範囲のTIR強度を有する、1セットのベクターが、生成される。この限られたセットにより、各鎖の発現レベルの比較、および様々なTIR強度の組合せのもとで所望の抗体産物の収量ももたらす。TIR強度は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号に詳細に記載されているようにレポーター遺伝子の発現レベルを定量することにより決定することができる。翻訳強度の比較に基づいて、所望の個々のTIRを選択して、本発明の発現ベクター構築物において組み合わせる。
【0206】
本発明の抗体の発現に好適な原核生物宿主細胞は、古細菌および真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物を含む。有用な細菌の例としては、Escherichia(例えば、E.coli)、Bacilli(例えば、B.subtilis)、Enterobacteria、Pseudomonas種(例えば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusが挙げられる。一実施形態では、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態では、E.coli細胞が、本発明のための宿主として使用される。E.coli株の例としては、W3110株(Bachmann, Cellular and Molecular Biology, vol. 2 (Washington, D.C.: American Society for Microbiology, 1987), pp. 1190-1219;ATCC Deposit No. 27,325)およびその派生株が挙げられ、派生株には、遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc-fepE)degP41 kanRを有する33D3株(米国特許第5,639,635号)が含まれる。他の株およびそれらの派生株、例えば、E.coli 294(ATCC 31,446)、E.coli B、E.coliλ 1776(ATCC 31,537)、およびE.coli RV308(ATCC 31,608)も、好適である。これらの例は、制限するものではなく例示的なものである。定義された遺伝子型を有する上述の細菌のいずれかについての派生株を構築するための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、Bass et al., Proteins, 8:309-314 (1990)に記載されている。一般に、細菌の細胞におけるレプリコンの複製能を考慮に入れて適切な細菌を選択する必要がある。例えば、pBR322、pBR325、pACYC177またはpKN410などの周知のプラスミドを使用してレプリコンを供給する際には、E.coli、Serratia、またはSalmonella種を宿主として好適に使用することができる。通常は、宿主細胞は、分泌するタンパク質分解酵素の量が最小限であるべきであり、追加のプロテアーゼ阻害剤が、望ましくは細胞培養に組み込まれ得る。
【0207】
b)抗体産生
宿主細胞は、上記の発現ベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜改変された従来の栄養培地で培養される。
【0208】
形質転換とは、染色体外エレメントとしてまたは染色体組込み体によりDNAを複製できるように、DNAを原核生物宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に依存して、形質転換は、そのような細胞に適した標準的な技法を使用して行われる。実質的な細胞壁バリアを含有する細菌細胞には、一般に、塩化カルシウムを用いるカルシウム処置が使用される。形質転換のための別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用されるさらに別の技法は、電気穿孔である。
【0209】
本発明のポリペプチドを産生するために使用される原核生物細胞は、当技術分野において公知であり、選択された宿主細胞の培養に好適な培地で増殖される。好適な培地の例としては、必要な栄養サプリメントを加えたルリアブロス(LB)が挙げられる。一部の実施形態では、培地は、発現ベクターを含有する原核生物細胞の増殖を選択的に可能にするために発現ベクターの構築に基づいて選ばれた選択剤も含有する。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のために、アンピシリンが培地に添加される。
【0210】
炭素、窒素および無機リン酸塩供給源の他に、任意の必要なサプリメントも、単独で導入して、または複合窒素供給源などの別のサプリメントもしくは培地との混合物として導入して、適切な濃度で含まれ得る。必要に応じて、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトールおよびジチオトレイトールからなる群より選択される1つまたは複数の還元剤を含有することができる。
【0211】
原核生物宿主細胞は、好適な温度で培養される。ある特定の実施形態では、E.coli増殖について、増殖温度は、約20℃~約39℃、約25℃~約37℃、または約30℃の範囲である。培地のpHは、主として宿主生物に依存して、約5~約9の範囲の任意のpHであり得る。ある特定の実施形態では、E.coliについて、pHは、約6.8~約7.4、または約7.0である。
【0212】
誘導性プロモーターが本発明の発現ベクターにおいて使用される場合、タンパク質の発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。本発明の一態様では、ポリペプチドの転写を制御するためにPhoAプロモーターが使用される。したがって、形質転換宿主細胞は、誘導のためにリン酸制限培地で培養される。ある特定の実施形態では、リン酸制限培地は、C.R.A.P.培地である(例えば、Simmons et al., J. Immunol. Methods (2002), 263:133-147を参照されたい)。当技術分野において公知であるように、用いられるベクター構築物に応じて、様々な他の誘導因子を使用することができる。
【0213】
一実施形態では、本発明の発現されたポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、そのペリプラズムから回収される。タンパク質回収は、一般に浸透圧ショック、超音波処理または溶解などの手段により、微生物を破壊することを典型的には伴う。細胞が破壊されると、細胞デブリまたは細胞全体を遠心分離または濾過により除去することができる。タンパク質を、例えば親和性樹脂クロマトグラフィーにより、さらに精製することができる。あるいは、タンパク質は、培養培地に輸送し、それをそこで単離することができる。細胞を培養物から除去し、産生されたタンパク質のさらなる精製のために培養上清を濾過し、濃縮することができる。発現されたポリペプチドを、一般に公知の方法、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウェスタンブロットアッセイを使用して、さらに単離し、同定することができる。
【0214】
本発明の一態様では、抗体の産生は、発酵プロセスにより大量に行われる。様々な大規模流加発酵手順が、組換えタンパク質の産生に利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量を有し、ある特定の実施形態では、約1,000~100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素および栄養素、特にグルコース、を分配するために攪拌翼を使用する。小規模発酵は、容積容量(volumetric capacity)がおおよそ100リットル以下であり、約1リットル~約100リットルの範囲であり得る発酵槽における、発酵を一般に指す。
【0215】
発酵プロセスでは、タンパク質発現の誘導は、細胞が好適な条件下で所望の密度、例えば約180~220のOD550まで増殖した後に典型的には開始され、この段階で、細胞は、初期定常期にある。当技術分野において公知であるように、および上記の通り、利用されるベクター構築物に応じて、様々な誘導因子を使用することができる。誘導前に細胞を増殖させる期間は、より短くてもよい。細胞を通常は約12~50時間誘導するが、より長いまたは短い誘導時間を使用してもよい。
【0216】
本発明のポリペプチドの産生収量および品質を改善するために、様々な発酵条件を修正することができる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの正しい組立ておよびフォールディングを改善するために、シャペロンタンパク質、例えば、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、および/またはDsbG)、またはFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルシス,トランスイソメラーゼ)を過剰発現する追加のベクターを使用して、宿主原核生物細胞を同時形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞において産生される異種タンパク質の正しいフォールディングおよび溶解度を助長することが実証されている。Chen et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:19601-19605;Georgiouらの米国特許第6,083,715号;Georgiouらの米国特許第6,027,888号;Bothmann and Pluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17100-17105;Ramm and Pluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17106-17113;Arie et al. (2001) Mol. Microbiol. 39:199-210。
【0217】
発現された異種タンパク質(特に、タンパク質分解感受性のもの)のタンパク質分解を最小限に抑えるために、タンパク質分解酵素が欠損しているある特定の宿主株を本発明に使用することができる。例えば、宿主細胞株を、公知の細菌プロテアーゼ、例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIおよびこれらの組合せをコードする遺伝子の遺伝的変異を生じさせるように、改変することができる。一部のE.coliプロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、上掲のJoly et al. (1998);Georgiouらの米国特許第5,264,365号;Georgiouらの米国特許第5,508,192号;Hara et al., Microbial Drug Resistance, 2:63-72 (1996)に記載されている。
【0218】
一実施形態では、タンパク質分解酵素が欠損しており、1つまたは複数のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換されたE.coli株が、本発明の発現系において宿主細胞として使用される。
【0219】
c)抗体精製
一実施形態では、本明細書において産生される抗体タンパク質は、さらなるアッセイおよび使用のための実質的に均一である調製物を得るために、さらに精製される。当技術分野において公知の標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の手順は、好適な精製手順の例示となるものである:免疫親和性カラムまたはイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿法、逆相HPLC、シリカでの、またはカチオン交換樹脂、例えばDEAEでのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿法、および例えばSephadex G-75を使用するゲル濾過。
【0220】
一態様では、固相に固定化されたプロテインAが、本発明の抗体産物の免疫親和性精製に使用される。プロテインAは、抗体のFc領域に高い親和性で結合する、Staphylococcus aureasからの41kD細胞壁タンパク質である。Lindmark et al (1983) J. Immunol. Meth. 62:1-13。プロテインAが固定化される固相は、ガラスもしくはシリカ表面を含むカラム、または制御細孔ガラス(controlled pore glass)カラム、またはケイ酸カラムであり得る。一部の適用では、カラムは、ことによると夾雑物の非特異的な付着を防止するために、グリセロールなどの試薬でコーティングされる。
【0221】
精製の第1のステップとして、上記の細胞培養に由来する調製物を、プロテインAが固定化された固相に適用して、目的の抗体をプロテインAに特異的に結合させる。次いで、固相を洗浄して、固相に非特異的に結合した夾雑物を除去する。最後に、目的の抗体を、溶出により固相から回収する。
【0222】
真核生物宿主細胞を使用する抗体の生成:
真核生物宿主細胞において使用するためのベクターは、一般に、次の非限定的な成分の1つまたは複数を含む:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。
【0223】
a)シグナル配列成分
真核生物宿主細胞において使用するためのベクターは、成熟タンパク質または目的のポリペプチドのN末端に特定の切断部位を有する、シグナル配列または他のポリペプチドも含有し得る。選択される異種シグナル配列は、宿主細胞により認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものであり得る。哺乳動物細胞における発現では、哺乳動物シグナル配列、およびウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルも、利用可能である。そのような前駆体領域のDNAは、リーディングフレーム内で、抗体をコードするDNAにライゲーションされる。
【0224】
b)複製起点
一般に、複製起点成分は、哺乳動物発現ベクターには必要ない。例えば、SV40起点は、単に初期プロモーターを含有するという理由で、典型的には使用され得る。
【0225】
c)選択遺伝子成分
発現およびクローニングベクターは、選択可能なマーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有し得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)関連する場合、栄養要求性欠損を補完するタンパク質、または(c)複合培地から入手できない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0226】
選択スキームの一例は、宿主細胞の増殖を停止する薬物を利用する。異種遺伝子で成功裏に形質転換される細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、したがって選択レジメンに生き残る。そのような優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンを使用する。
【0227】
哺乳動物細胞の好適な選択可能マーカーの別の例は、抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするもの、例えば、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-IおよびII、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどである。
【0228】
例えば、一部の実施形態では、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞が、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地においてすべての形質転換体を培養することにより、先ず同定される。一部の実施形態では、野生型DHFRが用いられる場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えば、ATCC CRL-9096)である。
【0229】
あるいは、抗体、野生型DHFRタンパク質、および別の選択可能なマーカー、例えばアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列で形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に、内在性DHFRを含有する野生型宿主)を、選択可能なマーカーの選択剤、例えば、アミノグリコシド系抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシンまたはG418を含有する培地における細胞増殖により、選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。宿主細胞としては、NS0、CHOK1、CHOK1SVまたは派生株を挙げることができ、派生株には、グルタミンシンテターゼ(GS)が欠損した細胞系が含まれる。哺乳動物細胞のために選択可能なマーカーとしてGSを使用するための方法は、米国特許第5,122,464号および米国特許第5,891,693号に記載されている。
【0230】
d)プロモーター成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、宿主生物により認識され、目的のポリペプチド(例えば、抗体)をコードする核酸に作動可能に連結されているプロモーターを、通常含有する。真核生物についてのプロモーター配列は公知である。例えば、事実上すべての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位からおおよそ25~30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始部から70~80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域(ここで、Nは任意のヌクレオチドであり得る)である。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端には、AATAAA配列があり、この配列は、コーディング配列の3’末端へのポリA尾部の付加のためのシグナルであり得る。ある特定の実施形態では、これらの配列のいずれかまたはすべてを、真核生物発現ベクターに好適に挿入することができる。
【0231】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより制御されるが、ただし、このようなプロモー
ターが、宿主細胞系に適合することを条件とする。
【0232】
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として好都合に得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して哺乳動物宿主においてDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号において開示されている。この系の改変は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現を記載している、Reyes et al., Nature 297:598-601 (1982)も、参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列を、プロモーターとして使用することができる。
【0233】
e)エンハンサーエレメント成分
高等真核生物による本発明の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加される。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、およびインスリン)からの多くのエンハンサー配列が、今では公知である。しかし、典型的には、真核生物細胞ウイルスからのエンハンサーを使用することになる。例としては、複製起点の後期側(塩基対100~270)のSV40エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、マウスサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントを記載しているYaniv, Nature 297:17-18 (1982)も、参照されたい。エンハンサーは、ベクター内の抗体ポリペプチドをコードする配列の5’または3’側の位置にスプライシングされ得るが、一般的にプロモーターから5’側の部位に位置する。
【0234】
f)転写終結成分
真核生物宿主細胞において使用される発現ベクターは、転写に終結のためにおよびmRNAを安定させるために必要な配列も含有し得る。そのような配列は、一般に、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’非翻訳領域から、および低頻度に3’非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分に、ポリアデニル化断片として転写されたヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびそこで開示されている発現ベクターを参照されたい。
【0235】
g)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書におけるベクターでのDNAのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、昆虫または脊椎動物宿主細胞を含む本明細書に記載の高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)での昆虫または脊椎動物細胞の増殖は、慣例的な手順となっている。有用な昆虫細胞系の例は、Spodoptera frugiperdaのSf-9およびSf-21、Drosophila melanogasterのDS2細胞、またはTrichoplusia niのHigh Five細胞(BTI-TN-5B1-4)である。例えば、Frenzel, A. et al. (2013) Front. Immunol. 4:217を参照されたい。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系統(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓系統(293細胞、もしくは懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;CHOK1細胞、CHOK1SV細胞または派生株、およびヒト肝細胞癌系統(Hep G2)である。
【0236】
宿主細胞は、抗体産生のために上記発現またはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜改変された従来の栄養培地で培養される。
【0237】
h)宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。市販の培地、例えば、ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)は、宿主細胞の培養に好適である。加えて、Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979)、Barnes et al., Anal. Biochem. 102:255 (1980)、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号もしくは同第5,122,469号、WO90/03430、WO87/00195、または米国特許再発行第30,985号に記載されている培地のいずれかを、宿主細胞の培養培地として使用することができる。これらのいずれの培地にも、ホルモンおよび/または他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬)、微量元素(マイクロモル濃度範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物と定義される)、ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源を、必要に応じて追加補充することができる。任意の他のサプリメントも、当業者には公知であろう適切な濃度で含まれ得る。培養条件、例えば、温度、pHおよび同様のものは、発現に選択される宿主細胞に関して以前に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
【0238】
i)抗体の精製
組換え技術を使用する場合、抗体は、細胞内で産生され得るか、または培地内に直接的に分泌され得る。抗体が細胞内で産生された場合、第一のステップとして、宿主細胞または溶解断片のどちらかである微粒子状デブリを、例えば遠心分離または限外濾過により、除去することができる。抗体が培地内に分泌された場合、そのような発現系からの上清を、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを使用して、先ず濃縮することができる。前述のステップのいずれかにタンパク質分解を阻害するためにPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を含めることができ、偶発的な夾雑物の増殖を防止するために抗生物質を含めることができる。
【0239】
細胞から調製された抗体組成物を、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、および親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーが好都合な技法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al., J. Immunol. Methods 62:1-13 (1983))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプにおよびヒトγ3に推奨されている(Guss et al., EMBO J. 5:15671575 (1986))。親和性リガンドが結合されるマトリックスは、アガロースであり得るが、他のマトリックスも利用可能である。機械的に安定なマトリックス、例えば、制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースで達成され得るものより速い流量およびより短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製のための他の技法、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿法、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン交換樹脂またはカチオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)でのSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿法も、回収すべき抗体に依存して利用可能である。
【0240】
任意の予備的な精製ステップの後、目的の抗体と夾雑物とを含む混合物を、例えば、低い塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で行われる、約2.5~4.5の間のpHの溶出緩衝液を使用する低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーによる、さらなる精製に供すことができる。
【0241】
一般に、上記の方法論と整合する、および/または当業者により目的の特定の抗体に適切であると判断されるような、研究、試験および臨床用途に使用される抗体を調製するための様々な方法論は、当技術分野において十分に確立されている。
【0242】
非フコシル化抗体の産生
低減したフコシル化度を有する抗体を調製するための方法が、本明細書で提供される。例えば、本明細書で企図される方法としては、タンパク質フコシル化が欠損している細胞系(例えば、Lec13 CHO細胞、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子ノックアウトCHO細胞、β1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIを過剰発現し、さらにゴルジμ-マンノシダーゼIIを過剰発現する細胞など)の使用、および抗体の産生に使用される細胞培養培地におけるフコースアナログの添加が挙げられるが、これらに限定されない。Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);Presta,Lの米国特許出願公開第2003/0157108A1号;WO2004/056312 A1;Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);および米国特許第8,574,907号を参照されたい。抗体のフコース含有量を低減させるためのさらなる技法は、米国特許出願公開第2012/0214975号に記載されているGlymaxx技術を含む。抗体のフコース含有量を低減させるためのさらなる技法は、抗体の産生に使用される細胞培養培地における1つまたは複数のグリコシダーゼ阻害剤の添加も含む。グリコシダーゼ阻害剤としては、α-グルコシダーゼI、α-グルコシダーゼII、およびα-マンノシダーゼIが挙げられる。一部の実施形態では、グリコシダーゼ阻害剤は、α-マンノシダーゼIの阻害剤(例えば、キフネシン)である。
【0243】
本明細書で使用される場合、「コアフコシル化」は、N結合型グリカンの還元末端におけるN-アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)へのフコースの付加(「フコシル化」)を指す。そのような方法により産生される抗体およびそれらの組成物も、提供される。
【0244】
一部の実施形態では、Fc領域(またはドメイン)に結合している複合N-グリコシド結合型糖鎖のフコシル化が、低減される。本明細書で使用される場合、「複合N-グリコシド結合型糖鎖」は、典型的にはアスパラギン297(Kabatの番号による)に結合されるが、複合N-グリコシド結合型糖鎖が他のアスパラギン残基に連結されることもある。「複合N-グリコシド結合型糖鎖」は、マンノースのみがコア構造の非還元末端に組み込まれている高マンノース型の糖鎖が除外されるが、1)コア構造の非還元末端側にガラクトース-N-アセチルグルコサミン(「gal-GlcNAc」とも呼ばれる)の1つまたは複数の枝があり、Gal-GlcNAcの非還元末端側に、必要に応じて、シアル酸、バイセクティングN-アセチルグルコサミン、もしくはこれらに類するものがある、複合型、または2)コア構造の非還元末端側に、高マンノースN-グリコシド結合型糖鎖と複合N-グリコシド結合型糖鎖との両方の枝がある、ハイブリッド型を含む。
【0245】
一部の実施形態では、「複合N-グリコシド結合型糖鎖」は、コア構造の非還元末端側に、ガラクトース-N-アセチルグルコサミン(「gal-GlcNAc」とも呼ばれる)の枝が全くないか、または1つもしく複数あり、Gal-GlcNAcの非還元末端側に、必要に応じて、シアル酸、バイセクティングN-アセチルグルコサミンまたはこれらに類するものなどの構造がさらにある、複合型を含む。
【0246】
本方法によれば、典型的にはごくわずかな量のフコースしか複合N-グリコシド結合型糖鎖に組み込まれない。例えば、様々な実施形態では、組成物中、抗体の約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満が、フコースによるコアフコシル化を有する。一部の実施形態では、組成物中、抗体の実質的にいずれも(すなわち、約0.5%未満)、フコースによるコアフコシル化を有さない。一部の実施形態では、組成物中、抗体の約40%より多く、約50%より多く、約60%より多く、約70%より多く、約80%より多く、約90%より多く、約91%より多く、約92%より多く、約93%より多く、約94%より多く、約95%より多く、約96%より多く、約97%より多く、約98%より多く、また約99%より多くが、フコシル化されていない。
【0247】
一部の実施形態では、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的にいずれも(すなわち、約0.5%未満)フコース残基を含有しない抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、抗体の重鎖の少なくとも1つまたは2つがフコシル化されていない抗体が、本明細書で提供される。
【0248】
上記のように、様々な哺乳動物宿主発現ベクター系を、抗体を発現させるために利用することができる。一部の実施形態では、培養培地にフコースが追加補充されない。一部の実施形態では、有効量のフコースアナログが、培養培地に添加される。この文脈での「有効量」は、抗体の複合N-グリコシド結合型糖鎖へのフコースの組込みを、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減少させるのに十分である、アナログの量を指す。一部の実施形態では、本方法により産生された抗体は、フコースアナログの非存在下で培養された宿主細胞から産生された抗体と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%非コアフコシル化(例えば、コアフコシル化が欠如している)タンパク質を含む。
【0249】
フコースが糖鎖の還元末端におけるN-アセチルグルコサミンに結合していない糖鎖の、フコースが糖鎖の還元末端におけるN-アセチルグルコサミンに結合している糖鎖に対する含有量(例えば、比)は、例えば、実施例で説明するように、決定することができる。他の方法としては、ヒドラジン分解または酵素消化(例えば、Biochemical Experimentation Methods 23: Method for Studying Glycoprotein Sugar Chain (Japan Scientific Societies Press), edited by Reiko Takahashi (1989)を参照されたい)、放出された糖鎖の蛍光標識または放射性同位体標識および次いで標識された糖鎖のクロマトグラフィーによる分離が挙げられる。また、放出された糖鎖の組成を、HPAEC-PAD法(例えば、J. Liq Chromatogr. 6:1557 (1983)を参照されたい)により鎖を解析することによって決定することができる。(一般に、米国特許出願公開第2004/0110282号を参照されたい)。
【0250】
IV.組成物
一部の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-6抗体のいずれかを含む組成物(例えば、医薬組成物)も、本明細書で提供される。一部の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-6抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の約50%未満がフコース残基を含有する、組成物が本明細書で提供される。一部の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-6抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的にいずれもフコース残基を含有しない、組成物が本明細書で提供される。
【0251】
治療用製剤は、所望の程度の純度を有する活性成分と必要に応じた薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤とを混合することにより、保管用に調製される(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., Lippincott Williams & Wiklins, Pub., Gennaro Ed., Philadelphia, Pa. 2000)。許容される担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投薬量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、これらには、緩衝液、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、ピロ亜硫酸ナトリウムを含む、抗酸化剤、保存剤、等張剤、安定剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);キレート剤、例えばEDTAならびに/または非イオン性表面活性剤が含まれる。
【0252】
緩衝液は、特に、安定性がpH依存性である場合、治療有効性を最適化する範囲内にpHを制御するために使用することができる。緩衝液は、約50mM~約250mMの範囲の濃度で存在し得る。本発明での使用に好適な緩衝化剤には、有機酸と無機酸の両方、およびそれらの塩が含まれる。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩。加えて、緩衝液は、ヒスチジンおよびトリメチルアミン塩、例えばTris、から構成されることもある。
【0253】
保存剤は、微生物の増殖を防止するために添加することができ、通常は約0.2%~1.0%(w/v)の範囲で存在する。本発明での使用に好適な保存剤としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾールが挙げられる。
【0254】
「安定剤」として知られていることもある張度剤(tonicity agent)は、組成物中の液体の張度を調整または維持するために存在し得る。タンパク質および抗体などの大きい荷電生体分子とともに使用される場合、それらは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それによって分子間相互作用および分子内相互作用の可能性を低下させることができるため、「安定剤」と呼ばれることが多い。張度剤は、他の成分の相対量を考慮して、約0.1重量%~約25重量%の間または約1~約5重量%の間の任意の量で存在し得る。一部の実施形態では、張度剤は、多価糖アルコール、三価またはそれより高い価数の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールを含む。
【0255】
追加の賦形剤には、次のうちの1つまたは複数としての機能を果たすことができる作用物質が含まれる:(1)増量剤、(2)溶解度向上剤、(3)安定剤、および(4)変性または容器壁への付着を防止する作用物質。そのような賦形剤としては、多価糖アルコール(上記に列挙されている);アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなど;有機糖または糖アルコール、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイノシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクシトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;単糖類(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース);二糖類(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖類、例えば、ラフィノース;ならびに多糖類、例えば、デキストリンまたはデキストランが挙げられる。
【0256】
非イオン性表面活性剤または界面活性物質(「湿潤剤」としても公知)は、治療剤の可溶化を助けるためばかりでなく、治療用タンパク質を撹拌により誘導される凝集から保護するためにも存在することがあり、これらによって、活性治療用タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく製剤をせん断表面応力に曝露することも可能になる。非イオン性表面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/mlまたは約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲で存在する。一部の実施形態では、非イオン性表面活性剤は、約0.001%~約0.1%w/vまたは約0.01%~約0.1%w/vまたは約0.01%~約0.025%w/vの範囲で存在する。
【0257】
好適な非イオン性表面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポロキサマー(polyoxamer)(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用することができるアニオン性界面活性物質としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性物質としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0258】
製剤をin vivo投与に使用するためには、製剤は、無菌でなければならない。製剤を、滅菌濾過膜による濾過によって無菌にすることができる。本明細書における治療用組成物は、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、静脈内溶液バッグ、または皮下注射針により穴を開けることができるストッパーを有するバイアルに、一般に入れられる。
【0259】
投与経路は、公知の、受入れられている方法、例えば、単回もしくは複数回のボーラス、または好適な様式での長期間にわたる注入、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内もしくは関節内経路による注射もしくは注入、局所投与、吸入、または持続放出もしくは延長放出手段による方法に従う。
【0260】
本明細書における製剤は、処置されることになる特定の適応症のために活性化合物、好ましくは、互いに有害に作用しない補完的活性を有するものを、必要に応じて1つより多く含有することもできる。その代わりにまたはそれに加えて、組成物は、細胞傷害剤、サイトカインまたは成長阻害性薬剤を含むことができる。そのような分子は適宜、意図される目的に有効な量で組み合わせて存在する。
【0261】
V.処置方法
対象における肥満細胞(例えば、Siglec-6を発現する肥満細胞)の活性および/または数の増加によって特徴付けされる疾患または状態を処置するための方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、方法は、有効量の本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体またはその組成物を対象に投与するステップを含む。肥満細胞(例えば、Siglec-6を発現する肥満細胞)の活性および/または数の増加によって特徴付けされる例示的な疾患または状態、すなわち、肥満細胞媒介性障害または状態は、下文に記載されている。
【0262】
肥満細胞(例えば、Siglec-6を発現する肥満細胞)の活性化の阻害を必要とする対象における肥満細胞の活性化を阻害するための方法がさらに本明細書に提供される。一部の実施形態では、方法は、有効量の本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体またはその組成物を対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、例えば、処置前のベースラインレベルにおいて対象から得られる試料におけるSiglec-6を発現する肥満細胞の活性化と比較して、肥満細胞の活性化を少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%阻害する。
【0263】
肥満細胞(例えば、Siglec-6を発現する肥満細胞)の枯渇を必要とする対象における肥満細胞を枯渇させるための方法がさらに本明細書に提供される。一部の実施形態では、方法は、有効量の本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体またはその組成物を対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、処置前のベースラインレベルと比較して、対象から得られる試料におけるSiglec-6を発現する肥満細胞の少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%を枯渇させる。
【0264】
一部の実施形態では、肥満細胞の枯渇または低減は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、抗体による処置前の対象由来の試料における肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態では、肥満細胞の枯渇または低減は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、参照数または試料、例えば、抗体処置なしの別の対象由来の試料における肥満細胞集団数、または抗体処置なしの対象由来の試料における平均肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態では、肥満細胞の枯渇または低減は、ADCCおよび/またはADCPによるものである。
【0265】
一部の実施形態では、肥満細胞の枯渇もしくは低減および/または肥満細胞活性化の阻害は、1種または複数の肥満細胞産物、例えば、肥満細胞から産生される予め形成されたまたは新たに形成された炎症性メディエーターの低減または予防によって測定される。例示的な炎症性メディエーターは、プロテアーゼ(例えば、汎トリプターゼ、活性またはベータ-トリプターゼ、キマーゼ、CPA3、ヘパリン等)、ロイコトリエン(例えば、ロイコトリエンC4またはB4、血小板活性化因子、プロスタグランジンD2またはE2等)、アミン(例えば、ヒスタミン、セロトニン、ドーパミン、ポリアミン等)、増殖因子(例えば、SCF、GM-CSFG-CSF、FGF、EGF、NGF、VEGF、PDGF等)、サイトカイン(例えば、TNF、IL-1b、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-10、IL-13、IL-17、IL-18、IL-31、IL-36等)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL12、CCL13、CCL24、CCL26、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8等)、エキソソームおよび細胞外トラップを含むがこれらに限定されない。
【0266】
一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、例えば、参照数または試料における炎症性メディエーターまたは肥満細胞産物のレベルと比較して、対象から得られる試料における炎症性メディエーターまたは肥満細胞産物のレベルの減少をもたらす。例えば、抗体または組成物による処置後に得られる個体由来の試料における炎症性メディエーターまたは肥満細胞産物のレベルは、抗体もしくは組成物による処置に先立つ対象から得られる試料における炎症性メディエーターもしくは肥満細胞産物のレベル、抗体もしくは組成物で処置されていない対象から得られる試料における炎症性メディエーターもしくは肥満細胞産物のレベル、抗体もしくは組成物で処置されていない対象から得られる試料における炎症性メディエーターもしくは肥満細胞産物の平均レベル、または対応する型の試料における炎症性メディエーターもしくは肥満細胞産物のレベルに関する参照もしくは正常検査値と比較することができる。例示的な炎症性メディエーターは、プロテアーゼ(例えば、汎トリプターゼ、活性またはベータ-トリプターゼ、キマーゼ、CPA3、ヘパリン等)、ロイコトリエン(例えば、ロイコトリエンC4またはB4、血小板活性化因子、プロスタグランジンD2またはE2等)、アミン(例えば、ヒスタミン、セロトニン、ドーパミン、ポリアミン等)、増殖因子(例えば、SCF、GM-CSFG-CSF、FGF、EGF、NGF、VEGF、PDGF等)、サイトカイン(例えば、TNF、IL-1b、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-10、IL-13、IL-17、IL-18、IL-31、IL-36等)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL12、CCL13、CCL24、CCL26、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8等)、エキソソームおよび細胞外トラップを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、炎症性メディエーターまたは肥満細胞産物は、活性トリプターゼ、CCL2、IL-13、IL-8、CCL4、IL-6、ヒスタミン、キマーゼ、CPA3、プロスタグランジン(例えば、プロスタグランジンD2またはE2)、ロイコトリエン(例えば、ロイコトリエンC4またはB4)または肥満細胞マーカー(例えば、CD63、CD107a、CD203c、IgEまたはMRGPRX2)のうち1種または複数である。一部の実施形態では、炎症性メディエーターまたは肥満細胞産物は、肥満細胞によって分泌される物質であり、試料は、固体試料(例えば、生検試料)または液体試料(例えば、血清、血漿または尿試料)である。一部の実施形態では、炎症性メディエーターまたは肥満細胞産物は、肥満細胞によって発現されるが分泌されない物質またはマーカーであり、試料は、固体試料(例えば、生検試料)である。
【0267】
例えば、一部の実施形態では、抗体または組成物の投与は、例えば、参照数または試料における肥満細胞マーカーのレベルと比較して、対象から得られる試料(例えば、1個または複数の肥満細胞を含む生検試料等、生検試料)における肥満細胞マーカーのレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、抗体または組成物による処置後に得られる個体由来の試料における肥満細胞マーカーのレベルは、抗体もしくは組成物による処置に先立つ対象から得られる試料における肥満細胞マーカーのレベル、抗体もしくは組成物で処置されていない対象から得られる試料における肥満細胞マーカーのレベル、抗体もしくは組成物で処置されていない対象から得られる試料における肥満細胞マーカーの平均レベル、または対応する型の試料における肥満細胞マーカーのレベルに関する参照もしくは正常検査値と比較することができる。例示的な肥満細胞マーカーは、当技術分野で公知であり、CD63、CD107a、CD203c、IgEおよびMRGPRX2を限定することなく含む。
【0268】
一部の実施形態では、試料は、組織試料(例えば、生検試料、皮膚試料、肺試料、骨髄試料、鼻ポリープ症試料等)である。一部の実施形態では、試料は、生体液試料(例えば、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、気管支肺胞洗浄試料、鼻洗浄試料等)である。
【0269】
一部の実施形態では、対象は、肥満細胞媒介性障害または状態を有する。一部の実施形態では、対象は、肥満細胞媒介性障害または状態を発症するリスクがある。例示的な肥満細胞媒介性障害および状態は、当技術分野で公知かつ本明細書に記載されている。例えば、肥満細胞媒介性障害または状態は、肥満細胞症(例えば、無痛性全身性肥満細胞症、ISM;または侵襲性全身性肥満細胞症、ASM)、肥満細胞白血病、肥満細胞活性化症候群、胃不全麻痺、骨粗鬆症、骨減少症、腎性骨ジストロフィー、骨折、アルツハイマー病、慢性神経障害性疼痛、痛覚過敏、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、移植片対宿主病(GVH)、大腸炎(例えば、顕微鏡的大腸炎または潰瘍性大腸炎)、遺伝性アルファトリプターゼ血症(tryptasemia)、神経線維腫、コーニス症候群、蕁麻疹(例えば、慢性自発性(spontaneous)蕁麻疹または刺激誘発性(inducible)蕁麻疹)、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、血管浮腫、結節性痒疹(pruigo nodularis)、胆管炎、乾癬、過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア、喘息(例えば、好酸球性または非好酸球性喘息)、アレルギー(例えば、食物アレルギーまたは仮性アレルギー)、ケロイド、慢性副鼻腔炎(例えば、鼻ポリープを伴うまたは伴わない)、アスピリン増悪呼吸器疾患(AERD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、特発性肺線維症、全身性硬化症、間質性(interstitital)膀胱炎、化膿性汗腺炎、円形脱毛症、白斑、肥満細胞胃腸疾患、クローン病、関節リウマチ、胃食道逆流症、ウイルス感染症、アカラシア、体位性頻拍症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、複合性局所疼痛症候群またはエーラス・ダンロス症候群を含むことができるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、対象は、肥満細胞症(例えば、無痛性全身性肥満細胞症、ISM;または侵襲性全身性肥満細胞症、ASM)、肥満細胞白血病、肥満細胞活性化症候群、胃不全麻痺、骨粗鬆症、骨減少症、腎性骨ジストロフィー、骨折、アルツハイマー病、慢性神経障害性疼痛、痛覚過敏、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、移植片対宿主病(GVH)、大腸炎(例えば、顕微鏡的大腸炎または潰瘍性大腸炎)、遺伝性アルファトリプターゼ血症、神経線維腫、コーニス症候群、蕁麻疹(例えば、慢性自発性蕁麻疹または刺激誘発性蕁麻疹)、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、血管浮腫、結節性痒疹、胆管炎、乾癬、過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア、喘息(例えば、好酸球性または非好酸球性喘息)、アレルギー(例えば、食物アレルギーまたは仮性アレルギー)、ケロイド、慢性副鼻腔炎(例えば、鼻ポリープを伴うまたは伴わない)、アスピリン増悪呼吸器疾患(AERD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、特発性肺線維症、全身性硬化症、間質性膀胱炎、化膿性汗腺炎、円形脱毛症、白斑、肥満細胞胃腸疾患、クローン病、関節リウマチ、胃食道逆流症、ウイルス感染症、アカラシア、体位性頻拍症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、複合性局所疼痛症候群またはエーラス・ダンロス症候群を有するかまたはそうであると診断された。
【0270】
一部の実施形態では、本開示の方法(例えば、有効量の本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体またはその組成物の投与を含む)は、個体における1種または複数の症状の減少をもたらす。例えば、処置後の個体における1種または複数の症状のレベル、量または存在は、ベースライン時の、例えば、処置に先立つ個体における1種または複数の症状のレベル、量または存在と比較することができる。一部の実施形態では、1種または複数の症状は、悪心、筋痙攣、便秘、腹痛、腹部膨満、嘔吐、下痢、疲労、眼痛、光過敏症(light sensitivity)、発赤、眼脂(discharge)、鼻汁、頭痛、眩暈、ブレインフォグ、そう痒、潮紅、発汗、じん麻疹、低血圧、息切れ、骨痛、関節痛、体重減少、骨粗鬆症、血管浮腫、胸痛、不安、鬱、頻拍、気管支収縮および全身痛を限定することなく含むことができる。
【0271】
疾患の予防または処置のため、活性薬剤の適切な投薬量は、上に定義される通り、処置されるべき疾患の型、疾患の重症度および経過、薬剤が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、以前の治療法、対象の臨床歴および薬剤に対する応答、ならびに担当医の裁量に依存するであろう。薬剤は、一度にまたは一連の処置にわたって対象に適宜投与される。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、記載されている抗Siglec-6抗体の投与間の間隔は、約1カ月間またはそれよりも長い。一部の実施形態では、投与間の間隔は、約2カ月間、約3カ月間、約4カ月間、約5カ月間、約6カ月間またはそれよりも長い。本明細書で使用される場合、投与間の間隔は、ある抗体投与と次の抗体投与との間の期間を指す。本明細書で使用される場合、約1カ月間の間隔は、4週間を含む。したがって、一部の実施形態では、投与間の間隔は、約4週間、約8週間、約12週間、約16週間、約20週間、約24週間またはそれよりも長い。一部の実施形態では、処置は、抗体の複数投与を含み、投与間の間隔は、変動し得る。例えば、第1の投与および第2の投与の間の間隔は、約1カ月間であり、その後の投与間の間隔は、約3カ月間である。一部の実施形態では、第1の投与および第2の投与の間の間隔は、約1カ月間であり、第2の投与および第3の投与の間の間隔は、約2カ月間であり、その後の投与間の間隔は、約3カ月間である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、一定用量で投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、用量当たり約150~約450mgの投薬量で対象に投与される。一部の実施形態では、抗Siglec-6抗体は、用量当たり150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mgおよび450mgのいずれかのおおよその投薬量で対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、体重に基づく用量で投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、約0.1mg/kg~約10mg/kgまたは約1.0mg/kg~約10mg/kgの投薬量で対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体は、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kgまたは10.0mg/kgのいずれかのおおよその投薬量で対象に投与される。上に記載されている投薬頻度のいずれを使用してもよい。
【0272】
VI.製造物品またはキット
別の態様では、本明細書に記載されている抗Siglec-6抗体を含む製造物品またはキットが提供される。製造物品またはキットは、本開示の方法における抗体の使用のための指示をさらに含むことができる。よって、ある特定の実施形態では、製造物品またはキットは、例えば、それを必要とする対象における、肥満細胞(例えば、Siglec-6を発現する肥満細胞)の活性および/もしくは数の増加によって特徴付けされる疾患もしくは状態を処置するため、肥満細胞(例えば、Siglec-6を発現する肥満細胞)の活性化を阻害するため、ならびに/または肥満細胞(例えば、Siglec-6を発現する肥満細胞)を枯渇させるための方法における抗Siglec-6抗体の使用のための指示を含む。ある特定の実施形態では、個体は、ヒトである。一部の実施形態では、個体は、肥満細胞媒介性障害または状態を有するかまたはそれを発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、肥満細胞症(例えば、無痛性全身性肥満細胞症、ISM;または侵襲性全身性肥満細胞症、ASM)、肥満細胞白血病、肥満細胞活性化症候群、胃不全麻痺、骨粗鬆症、骨減少症、腎性骨ジストロフィー、骨折、アルツハイマー病、慢性神経障害性疼痛、痛覚過敏、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、移植片対宿主病(GVH)、大腸炎(例えば、顕微鏡的大腸炎または潰瘍性大腸炎)、遺伝性アルファトリプターゼ血症、神経線維腫、コーニス症候群、蕁麻疹(例えば、慢性自発性蕁麻疹または刺激誘発性蕁麻疹)、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、血管浮腫、結節性痒疹、胆管炎、乾癬、過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア、喘息(例えば、好酸球性または非好酸球性喘息)、アレルギー(例えば、食物アレルギーまたは仮性アレルギー)、ケロイド、慢性副鼻腔炎(例えば、鼻ポリープを伴うまたは伴わない)、アスピリン増悪呼吸器疾患(AERD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、特発性肺線維症、全身性硬化症、間質性膀胱炎、化膿性汗腺炎、円形脱毛症、白斑、肥満細胞胃腸疾患、クローン病、関節リウマチ、胃食道逆流症、ウイルス感染症、アカラシア、体位性頻拍症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、複合性局所疼痛症候群またはエーラス・ダンロス症候群を有するかまたはそうであると診断された。
【0273】
製造物品またはキットは、容器をさらに含むことができる。好適な容器としては、例えば、瓶、バイアル(例えば、二室式バイアル)、シリンジ(例えば、一室または二室シリンジ)および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器により製剤が保持される。
【0274】
製造物品またはキットは、容器上にあるかまたは容器に付随し、製剤の再構成および/または使用に関する指示を示すことができる、ラベルまたは添付文書をさらに含むことができる。ラベルまたは添付文書は、製剤が、個体における肥満細胞媒介性障害を処置または予防するための皮下、静脈内または他の投与機序に有用であるまたは意図されることをさらに示すことができる。製剤を保持する容器は、単回使用バイアルであることもあり、または再構成された製剤の反復投与を可能にする複数回使用バイアルであることもある。製造物品またはキットは、好適な希釈剤を含む第二の容器をさらに含むことができる。製造物品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用のための指示を伴う添付文書を含む、商業上の、治療上の、および使用者の観点から望ましい他の材料を、さらに含むことができる。
【0275】
特定の実施形態では、本発明は、単回用量投与単位のためのキットを提供する。そのようなキットは、一室式充填済みシリンジまたは多室式充填済みシリンジの両方を含む、治療用抗体の水性製剤の容器を含む。例示的な充填済みシリンジは、Vetter GmbH、Ravensburg、Germanyから入手可能である。
【0276】
本明細書における製造物品またはキットは、必要に応じて、第2の医薬を含む容器をさらに含み、この場合、抗Siglec-6抗体が第1の医薬であり、この製造物品(article)またはキットは、標識または添付文書上に、有効量における第2の医薬による対象の処置に関する指示をさらに含む。
【0277】
別の実施形態では、オートインジェクターデバイスでの投与のための本明細書に記載の製剤を含む製造物品またはキットが、本明細書で提供される。オートインジェクターは、作動させると患者または管理者による追加の必要な行動なしにその内容物を送達することになる注射デバイスであると説明され得る。これらは、送達速度が一定でなければならず、送達時間がしばらくかかる場合の、治療用製剤の自己投薬に特に適している。
【0278】
本発明は、次の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。しかし、実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態が、例示を目的としたものに過ぎないこと、ならびにそれらを考慮して様々な修飾または変更が当業者に示唆されることになり、そのような修飾または変更が本願の趣旨および権限内に含まれ、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることになることは、理解されよう。
【実施例】
【0279】
本発明は、次の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。しかし、実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態が、例示を目的としたものに過ぎないこと、ならびにそれらを考慮して様々な修飾または変更が当業者に示唆されることになり、そのような修飾または変更が本願の趣旨および権限内に含まれ、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることになることは、理解されよう。
【0280】
(実施例1)
抗Siglec-6抗体の生成および特徴付け
Siglec-6(CD327としても公知)は、肥満細胞において選択的に発現される阻害性受容体である。肥満細胞は、食物アレルギー、肥満細胞活性化症候群、肥満細胞症、IPF、COPDおよびその他を含むがこれらに限定されない、多数の自己免疫性および炎症性疾患の病原性ドライバーであると考えられる。例えば、Yu, Y. et al. (2018) Front. Immunol. 9:2138;Yokoi, H. et al. (2006) Allergy 61:769-76;ならびに米国特許公開番号(US PG Pub. No)US20060269556A1およびUS20080267973A1を参照されたい。
【0281】
本実施例は、高い親和性でヒトSiglec-6の様々なエピトープに結合し、in vitroおよびin vivoで強力な肥満細胞阻害活性を示す抗体の生成および特徴付けについて記載する。
【0282】
材料と方法
抗体の生成
マウスをSiglec-6 ECD-Fcで免疫化し、Siglec-6 ECDでブーストした(例えば、配列番号1を参照)。免疫化に続いて、尾出血が高力価であったマウスを選択し、脾臓およびリンパ節を収集し、骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを生成した。ハイブリドーマ(hydridoma)クローン由来の上清を、ELISAを使用してSiglec-6 ECDに対してスクリーニングし、可変領域配列決定のために高い親和性のクローンを選択した。次に、可変領域を、マウスIgG1プラスミドにクローニングし、組換えにより発現させ、生化学的および機能的特徴付けのために精製した。
【0283】
抗体の特徴付け
Siglec-6 mAbに対するIgGの二価結合親和性を、固定化されたSiglec-6 ECD Fcタンパク質を使用して、ForteBio Octet Red 384装置を使用したバイオレイヤーインターフェロメトリーによって測定した。
【0284】
ドメインマッピングを、完全ECD、ドメイン1および2、またはドメイン1を含有するヒトFcに融合された組換えにより発現されたSiglec-6細胞外ドメインを使用したELISAによって査定した。Siglec-6 mAbを、これらのドメイン融合タンパク質のそれぞれへの結合について検査し、それらの特異的結合特性に基づきドメインを割り当てた。3種の融合タンパク質全てに結合したSiglec-6 mAbをドメイン1結合剤に割り当て、完全ECDならびにドメイン1および2に結合したmAbをドメイン2結合剤に割り当て、完全ECDタンパク質のみに結合したmAbをドメイン3結合剤に割り当てた。
【0285】
エピトープビニングを、固定化されたSiglec-6 ECD Fcタンパク質を使用して、ForteBio Octet Red 384装置を使用したバイオレイヤーインターフェロメトリーによって査定した。ある1種のSiglec-6 mAbでSiglec-6 ECDを飽和させ、続いて第2のSiglec-6 mAbの結合評価を行うことにより、16種のSiglec-6 mAbのパネルを、ペア毎の様式で検査した。結合が低減または遮断された場合、Siglec-6 mAbを同じビンに割り当てた。遮断が生じなかった場合、mAbを異なるビンに割り当てた。
【0286】
Siglec-6 mAbのエピトープマッピングをクロスリンキング質量分析(XL-MS)により行った。XL-MSは、高質量MALDI解析を使用して、非共有結合相互作用の直接的解析を可能にする。手短に説明すると、特別に開発された架橋混合物(Bich, C et al. Anal. Chem., 2010, 82(1), pp 172-179)を使用して、Siglec-6 mAbをSiglec-6 ECDに架橋した。架橋に続いて、mAb-抗原相互作用残基を特徴付ける質量分析を使用して試料を解析した。
【0287】
Siglec-6の発現
新鮮なヒト皮膚、肺および胃腸組織を正常なドナーから調達し、酵素および機械的方法を使用して単一細胞となるまで消化した。組織消化に続いて、主要な免疫細胞をフローサイトメトリーによって同定し、抗Siglec-6 mAb(R&D systems、MAB2859)で染色して、発現を評価した。
【0288】
肥満細胞活性化アッセイ
ヒト肥満細胞は、健康なドナー由来の末梢血から得た。抗Siglec-6 mAbまたはアイソタイプ対照(5μg/mL)の存在下、20分間37Cで、肥満細胞を抗FcεRI(250ng/mL)で刺激した。
【0289】
活性化マーカーCD63をフローサイトメトリーによって査定した。メソスケールディスカバリーを使用して、上清におけるサイトカインおよびケモカインを測定した。無細胞上清における活性トリプターゼをELISAによって測定した。
【0290】
IL-13アッセイのために、ヒト肥満細胞は、健康なドナー由来の末梢血から得た。抗Siglec-6 mAbまたはアイソタイプ対照(5μg/mL)の存在下、一晩37Cで肥満細胞を培養し、続いて、抗FcεRI(250ng/ml)による刺激を行った。無細胞上清におけるIL-13をMSDによって測定した。
【0291】
Siglec-6内部移行
ヒト末梢血由来肥満細胞を、変動する濃度のSiglec-6 mAb MAB2859(HVR配列については下の表4を参照;R&D Systemsクローン#767329)、AK04(HVR配列については配列番号5~10を参照)およびAK02(HVR配列については配列番号17~22を参照)またはアイソタイプ対照と共に、18時間37Cで培養した。Siglec-6における異なるエピトープに結合する蛍光をタグ付けされたSiglec-6 mAbを使用したFACSによって、内部移行を測定した。
【表4】
【0292】
Siglec-6マウスアッセイ
アゴニスト抗FcεRI mAb(CRA-1)を使用して、ヒト肥満細胞を含有するヒト化マウス(NSG-SGM3)において全身性アナフィラキシーを誘導した。例えば、Bryce PJ et al. J Allergy Clin Immunol. 2016 Sep;138(3):769-779を参照されたい。CRA-1を受ける24時間前に、ヒト化マウスに、アイソタイプ対照mAbまたは抗Siglec-6 mAb(AK04)のいずれかを投薬した。CRA-1投与の10分後から始めて、直腸体温の変化として全身性アナフィラキシーを測定し、肥満細胞活性トリプターゼ、CCL2、IL-6、ヒスタミンおよびキマーゼの血清レベルを評価した。
【0293】
結果
フローサイトメトリーを使用して、正常なヒト組織からのSiglec-6発現を査定した。Siglec-6は、肥満細胞(例えば、ヒト一次組織肥満細胞)において高度にかつ選択的に発現され、他の主要な免疫細胞型、例えば、好酸球、好中球、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、NK細胞またはT細胞においては発現されないマーカーであることが確認された(
図1A)。
【0294】
ヒトSiglec-6の細胞外ドメインにわたる様々なエピトープに結合する抗体(
図1B;
図4も参照)を生成した。新たに生成された抗体を、R&D Systemsから得た以前の抗体MAB2859(クローン#767329)と共に特徴付けた。新たな抗Siglec-6抗体それぞれのエピトープをヒトSiglec-6 ECDのドメイン1、2または3にマッピングし、ビンへと分類した(表A)。表Aに示される通り、融解温度およびヒトSiglec-6への結合の親和性も抗体毎に決定した。
【表A】
【0295】
次に、肥満細胞活性化における抗体結合の効果を試験した。肥満細胞活性化は、活性化マーカーCD63を使用したフローサイトメトリーによって査定した。検査した全てのSiglec-6 mAbは、アイソタイプ対照と比較して、肥満細胞活性化を阻害することが見出された(
図2)。加えて、抗Siglec-6 mAbは、ヒト肥満細胞からのサイトカイン、ケモカインおよび活性プロテアーゼの産生を阻害することが見出された。検査した全てのSiglec-6 mAbは、活性化された肥満細胞からのサイトカイン(例えば、
図3Aに示す通りIL-8)およびケモカイン(例えば、
図3Bに示す通りCCL4)を低減させた。検査した全てのSiglec-6 mAbは、活性化された肥満細胞からのトリプターゼ放出も低減させた(
図3C)。
【0296】
Siglec-6阻害は、エピトープの配置に依存することが見出された。例えば、CD63およびCD107aの発現によって査定される通り、ドメイン1、ビンAに結合した抗Siglec-6 mAbは、肥満細胞の最も強い阻害を誘導し、一方、ドメイン3、ビンDに結合したmAbは、最も弱い阻害を示した(
図4A)。各エピトープビン由来の代表的なSiglec-6 mAbを使用して、FcεRI媒介性肥満細胞阻害に対するSiglec-6阻害を検査した。ヒト肥満細胞は、健康なドナー由来の末梢血から得た。抗Siglec-6 mAbまたはアイソタイプ対照(5μg/mL)の存在下、20分間37℃で、肥満細胞を滴定濃度の抗FcεRIで刺激した。肥満細胞活性化は、表面マーカーCD63を使用したフローサイトメトリーによって査定された。Siglec-6 mAb阻害は、エピトープビンに依存し、ドメイン1、ビンA結合剤が、最もロバストな肥満細胞阻害を示した(
図4B)。
【0297】
Siglec-6内部移行における抗体結合の効果も検査した。抗Siglec-6 mAb AK02は、ヒト肥満細胞における用量依存性Siglec-6内部移行を誘導することが見出され、一方、AK04およびMAB2859は、そのような誘導は見出されなかった(
図5A)。異なる抗Siglec-6抗体による処置は、Siglec-6の完全な内部移行から内部移行なしに及ぶアウトカムの範囲を導いた(
図5B)。
【0298】
Fc相互作用が、抗体誘導性Siglec-6内部移行に要求されたかについて試験するために、ヒト組織肥満細胞を、Siglec-6 mAb AK04およびAK02またはアイソタイプ対照の5ug/mL IgGまたはFab2断片の存在下でエフェクター細胞(ヒト単球由来マクロファージ)と18時間37℃で共培養した。異なるエピトープに結合する蛍光をタグ付けされたSiglec-6 mAbを使用したフローサイトメトリーによって、内部移行を測定した。AK04 IgG1(Fab2はそうではない)は、ヒト肥満細胞におけるSiglec-6の内部移行を誘導し、Fc-相互作用が、AK04によって誘導される受容体内部移行に必要とされることを実証する(
図6)。対照的に、AK02のIgGおよびFab2フォーマットの両方が、ヒト肥満細胞におけるSiglec-6受容体の内部移行を誘導し、Fc-相互作用が、AK02によって誘導される内部移行に要求されないことを指し示す。
【0299】
活性化されたヒト肥満細胞からのIL-13産生における抗体結合の効果も試験した。無細胞上清におけるIL-13をMSDによって測定し、絶対濃度(
図7A)またはパーセント阻害(
図7B)として示した。MAB2859ではなく、Siglec-6 mAb AK04およびAK02が、活性化された肥満細胞からのIL-13の産生を阻害した。
【0300】
上に記載されているヒト化マウスモデルにおける抗Siglec-6 mAbの活性も検査した。
図8Aにおいて、CRA-1を受けているマウス(四角)は、PBS対照マウス(丸)と比較して、重度アナフィラキシーを起こした。抗Siglec-6 mAb(菱形)は、体温によって測定される通り、アイソタイプ対照処置マウスと比較して、IgE媒介性全身性アナフィラキシーを完全に阻害した。CRA-1を投与されたマウスは、活性トリプターゼ(
図8B)、CCL2(
図8C)、IL-6(
図8D)、ヒスタミン(
図8E)およびキマーゼ(
図8F)のレベルの増加も呈し、これらは肥満細胞活性化を指し示す。抗Siglec-6 mAb処置は、これらのメディエーターの全身性レベルを低減させ、肥満細胞阻害を強く示唆する。
【0301】
抗Siglec-6 mAb AK04は、ヒト肥満細胞に対する抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)活性についても検査した。5ug/mL AK04またはアイソタイプ対照の存在下、18時間37℃で、ヒト組織肥満細胞をヒト単球由来マクロファージと共培養した(それぞれ1:50比)。一晩インキュベーションに続いて、フローサイトメトリーを使用して肥満細胞数を決定し、アイソタイプ対照処置細胞における肥満細胞の数に対して正規化して、残っている肥満細胞のパーセンテージを得た。AK04は、ADCP活性と一致して、マクロファージの存在下でのみ組織肥満細胞を低減させた(
図9)。
【0302】
選択された抗Siglec-6抗体のエピトープも上に記載されている通りにマッピングした。
図10Aに示す通り、AK05は、Siglec-6における次のアミノ酸:29、30、34、38、63、64、68、74、76、99、100、103、104、106および114(配列番号1に示される通りSiglec-6 ECDに従って番号付け)と相互作用することが決定された。
図10Bに示す通り、AK04は、Siglec-6における次のアミノ酸:26、29、30、52、64、74、75、79、98、100、104、106および107(配列番号1に示される通りSiglec-6 ECDに従って番号付け)と相互作用することが決定された。
図10Cに示す通り、MAB2859は、Siglec-6における次のアミノ酸:100、103、104、106、107、109、110および112(配列番号1に示される通りSiglec-6 ECDに従って番号付け)と相互作用することが決定された。
【0303】
まとめると、これらの結果は、Siglec-6におけるある範囲の特有のエピトープを網羅する高い親和性結合と、Siglec-6表面発現および肥満細胞活性化/阻害のモジュレートに関する差次的な特性とを有する、新たな抗Siglec-6抗体の生成を実証する。
【0304】
(実施例2)
Siglec-6トランスジェニックマウスモデルにおける抗Siglec-6抗体の特徴付け
in vivoで肥満細胞活性化を試験するために、Siglec-6トランスジェニックマウスに、PBSまたは500ngの組換えマウス幹細胞因子(SCF)を腹腔内注射した。3時間後に、RPMIによる洗浄によって腹膜腔内の細胞を採取した。抗Siglec-6 mAb(AK04クローン)またはアイソタイプ適合対照mAbを、SCF投与の1時間前に5mg/kgで腹腔内投与した。
【0305】
抗Siglec-6 mAb処置は、このマウスモデルにおけるKIT(CD117)媒介性肥満細胞活性化を阻害することが見出された。Siglec-6抗体処置は、アイソタイプ対照よりも有意に低いCD63発現(
図11A、左)、ならびに有意により低いサイトカインおよびケモカインレベル(例えば、IL-6、CCL2、TNFおよびCXCL1;
図11A、中央および右ならびに
図11B)を導いた。これらのデータは、抗Siglec-6抗体処置が、Siglec-6トランスジェニックマウスにおけるKITおよびIgE媒介性肥満細胞活性化を阻害したことを実証する。
【0306】
さらなる実験に着手して、一次MCにおけるSiglec-6阻害をもたらすタンパク質相互作用およびシグナル伝達経路を調べ、アゴニストSiglec-6モノクローナル抗体(mAb)の阻害の幅を評価した。Siglec-6と活性化受容体およびシグナル伝達分子との相互作用を、一次MCを使用して生化学的におよび共焦点顕微鏡により評価した。上に記載されているマウスMCにおいてSiglec-6を発現するトランスジェニックマウスにおけるSCF媒介性炎症の急性モデルにおいて、in vivoでアゴニスト抗Siglec-6 mAbの活性を評価した。
【0307】
Siglec-6は、MCにおいてKIT/CD117と直接的に相互作用および共局在することが見出された(
図11C)。加えて、非受容体阻害性ホスファターゼShp-1およびShp-2は、リン酸化後にSiglec-6 ITIMと会合した(
図11D、右)。近位および遠位ITIMの両方の変異が、Shpホスファターゼのリン酸化およびリクルートメントを低減させた。重要なことに、Siglec-6とアゴニストmAbとの結合は、免疫調節性シナプスを指し示す、阻害性ホスファターゼおよびKIT/CD117を含有するマイクロクラスターを誘導した。Siglec-6 mAbによる処置は、Siglec-6トランスジェニックマウスにおけるSCF媒介性炎症およびMC特異的プロテアーゼの放出を阻害した。これらの知見は、Siglec-6によるMC阻害の理解を広げ、炎症性疾患におけるMCを幅広く阻害するための魅力的な治療標的としての受容体に光を当てる(
図11E)。
【0308】
ハプテン誘導性の接触性皮膚炎のマウスモデルにおけるSiglec-6抗体処置の効果も試験した。Siglec-6トランスジェニックマウスを6日間にわたり0.5%DNFBで感作し、続いて、1.0%DNFB局所的負荷を行った。DNFB負荷の24時間前に、マウスに、抗Siglec-6 mAb(AK04クローン)またはアイソタイプ適合対照mAbを投薬した。DNFB局所的負荷の24時間後に皮膚炎症を査定した。
【0309】
抗Siglec-6 mAb処置は、このマウスモデルにおけるアレルギー性接触性皮膚炎を阻害することが見出された。Siglec-6抗体処置は、耳の腫脹(
図12A、左)、耳組織における肥満細胞の計数(
図12B、左)および耳組織におけるCD8+T細胞の計数(
図12B、右)によって測定される通り、アイソタイプ対照よりも有意に低い皮膚炎症を導いた。ex vivoで培養された耳組織におけるサイトカインレベルも査定した。IL-4(
図12A、中央)およびTNF(
図12A、右)のレベルもまた、アイソタイプ対照と比較して、抗Siglec-6処置群において有意により低かった。これらの結果は、抗Siglec-6抗体処置が、肥満細胞阻害を介して、この接触性皮膚炎モデルにおける皮膚炎症を低減させたことを実証する。
【0310】
(実施例3)
ヒト肺組織およびヒト化マウスにおける抗Siglec-6抗体の特徴付け
ヒト肺組織由来の肥満細胞の活性化におけるSiglec-6抗体の効果を検査した。ヒト肺組織(n=3)を、単一細胞となるまで酵素および機械的に消化した。単一細胞懸濁液を、無刺激でまたはアゴニスト抗FcεRI抗体(CRA-1クローン、10μg/mL)と共に、漸増濃度の抗Siglec-6 mAb(クローンAK04)の存在下、30分間37℃でインキュベートした。インキュベーションに続いて、フローサイトメトリーを使用してCD63発現によって肥満細胞活性化を評価した。
【0311】
図13に示す通り、Siglec-6 mAbは、ヒト組織肥満細胞のIgE媒介性活性化を強力に阻害した。
【0312】
次に、ヒト組織肥満細胞の低減における抗体Fc領域の重要性を、ヒト化マウスを使用してin vivoで試験した。ヒト化マウス(SGM3-BLT)に、14日間にわたりアイソタイプ対照mAb、Siglec-6 mAb(クローンAK04)または等モル当量のSiglec-6 F(ab’)2(クローンAK04)を3日毎に投薬した(n=5~6匹のマウス/群)。14日目に、マウスを解体し、フローサイトメトリーを使用して腹膜腔および肺における肥満細胞を解析した。
【0313】
図14は、Siglec-6 mAbで処置されたマウスが、アイソタイプ対照処置マウスと比較して低減された肥満細胞数を示したことを示す。Siglec-6 F(ab’)2処置マウスは、Siglec-6 mAb処置マウスと比較して正常レベルの肥満細胞を示し、Siglec-6 mAbのFc領域が、肥満細胞低減活性に必要とされることを示唆する。
【0314】
(実施例4)
IL-33駆動急性皮膚炎症のマウスモデルにおける抗Siglec-6抗体の特徴付け
急性皮膚炎症におけるSiglec-6抗体の効果を検査した。IL-33駆動モデルのマウスにおける急性皮膚炎症を誘導した(
図15A)。マウスに、静脈内注射により10mg/kg Siglec-6 mAb(クローンAK04)またはアイソタイプ対照を投与した。翌日、マウスは、皮内注射により左耳に250ng組換えマウスIL-33を、右耳にPBSを(シャム)受けた。フローサイトメトリーによって24時間後に耳における免疫細胞浸潤を定量化することにより、耳における局所炎症を測定した。
【0315】
抗Siglec-6 mAb処置は、IL-33媒介性炎症を阻害し、肥満細胞(MC)数を低減させた(
図15B)。抗Siglec-6 mAbを投薬されたマウスは、有意に低減された好中球(
図15C)および単球(
図15D)も示した。抗Siglec-6 mAb処置は、IL-33を受けた耳において特異的にMC数を低減させたが、PBS注射シャム対照耳においては低減させず、抗Siglec-6 mAb処置が、局所炎症の部位のみでMC数を低減させたことを実証する。
【0316】
(実施例5)
Siglec-6トランスジェニックマウスにおけるアレルギー性胃腸疾患のマウスモデルにおける抗Siglec-6抗体の特徴付け
アレルギー性胃腸疾患におけるSiglec-6抗体の効果を検査した。オボアルブミン(OVA)ペプチド投与により、マウスモデルにおいてアレルギー性胃腸疾患を誘導した(
図16A)。マウスを、皮下注射により1mgの硫酸アルミニウムカリウムアジュバントの存在下、2週間置いて2回、100μgのOVAで感作した。28日目に、1週間に3回(1日置きに)仰臥位でマウスを保持し、最大50mgのOVAを含有する250μLの無菌食塩水を経口投与した。各胃内負荷前に、マウスは、胃内の抗原分解を限定する目的で、3~4時間食物を欠乏させた。マウスは、28および34日目に、10mg/kgの抗Siglec-6 mAb(mIgG1 Fcを有するクローンAK04)またはアイソタイプ適合対照(mIgG1)mAbのいずれかの腹腔内(IP)注射を受けた。39日目にマウスを解体した。フローサイトメトリーによって免疫細胞数および肥満細胞活性化を決定し、メソスケールディスカバリー(MSD)を使用して血清中のメディエーターを定量化した。
【0317】
OVA感作され負荷されたマウスは、胃における増加した肥満細胞(MC)浸潤および脱顆粒、ならびに胃における増加した数の浸潤好酸球を示した。しかし、抗Siglec-6 mAb(AK04)で処置されたマウスは、OVA誘導性炎症のこれらの測定基準の有意な低減を実証した(
図16B)。AK04処置は、サイトカインIL-4およびIL-13ならびにケモカインMIP-2およびCCL4を含む、血清において測定される炎症性メディエーターの産生の低減も導いた(
図17)。まとめると、これらの結果は、抗Siglec-6 mAbが、慢性抗原曝露によって引き起こされる胃腸炎症の尺度を有効に低減させることができることを指し示す。
【0318】
(実施例6)
抗Siglec-6抗体処置は、MRGPRX2アゴニストLL37によって媒介される皮膚炎症を低減させる
MRGPRX2アゴニストLL37モデルにおける皮膚炎症におけるSiglec-6抗体(AK04)の効果を検査した。MRGPRX2は、肥満細胞脱顆粒に関与するMAS関連GPRファミリーメンバーX2をコードし、LL37は、MRGPRX2の多機能性抗菌ペプチドアゴニストである。
【0319】
アイソタイプ対照抗体と組み合わされたLL37処置は、皮膚炎症および病変の出現を導いた(
図18A、「アイソタイプ」)が、PBSのみによる処置は、導かなかった(
図18A、「PBS」)。細胞計数は、病変性皮膚における好酸球および単球の増加を明らかにした(
図18B)が、非病変性皮膚において増加は明らかとならなかった(
図18C)。しかし、LL37誘導性皮膚病変は、Siglec-6 mAb処置マウスにおいて出現が低減され(
図18A、「Siglec-6」)、MC、好酸球および単球数の付随する減少を伴った(
図18B)。
【配列表】
【国際調査報告】