(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】組織経路封止用組成物のためのキット
(51)【国際特許分類】
A61L 31/10 20060101AFI20240912BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20240912BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61L31/10
A61L31/16
A61L31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516910
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 IB2022058770
(87)【国際公開番号】W WO2023042146
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴドベイン・サリム
(72)【発明者】
【氏名】デアングリス・アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】ダーナラジ・スリデビ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン・グァンフイ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC10
4C081BB09
4C081CC04
4C081CD15
4C081CD18
4C081CD23
4C081DA11
4C081DC13
(57)【要約】
本発明は、(a)(i)フィブリノーゲン溶液、及び(ii)水溶液中の予備湿潤ゼラチン粒子、を含む第1の成分と、(b)(i)トロンビン溶液、及び(ii)乾燥ゼラチン粉末、を含む第2の成分と、を含む、肺経路を封止するための組成物を調製するためのキットであって、第1の成分及び第2の成分が、別個に保存され、一緒に混合されて流動性かつ架橋可能な組成物を形成するように構成されている、キットを提供する。組成物は、肺組織経路などの組織経路を封止するために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織経路を封止するための組成物を調製するためのキットであって、
a.(i)フィブリノーゲン溶液、及び(ii)水溶液中の予備湿潤ゼラチン粒子、を含む第1の成分と、
b.(i)トロンビン溶液、及び(ii)乾燥ゼラチン粉末、を含む第2の成分と、を含み、
前記第1の成分及び前記第2の成分が、別個に保存され、一緒に混合されて流動性かつ架橋可能な組成物を形成するように構成されている、キット。
【請求項2】
前記予備湿潤ゼラチン粒子の90%が、1000μm(1000ミクロン)未満の直径を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記予備湿潤ゼラチンが、周囲から吸収される水分を超えて湿潤されている、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記乾燥ゼラチン粉末が粒子形態であり、90%の前記粒子が、2000μm(2000ミクロン)未満の直径を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記水溶液が生理食塩水である、請求項1に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)(i)フィブリノーゲン溶液、及び(ii)水溶液中の予備湿潤ゼラチン粒子、を含む第1の成分と、(b)(i)トロンビン溶液、及び(ii)乾燥ゼラチン粒子、を含む第2の成分と、を含む、肺経路を封止するための組成物を調製するためのキットであって、第1の成分及び第2の成分が、別個に保存され、一緒に混合されて流動性かつ架橋可能な組成物を形成するように構成されている、キット、それと共に、肺生検によって作製されるものなどの組織における穿刺を閉鎖するために組成物を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
画像誘導経皮経胸腔針生検(percutaneous transthoracic needle biopsy、PTNB)は、気管支原性がん腫などの病的過程が疑われる患者のための確立された手技である。この手技の目的は、細胞学的又は組織学的試験のために組織を得ることである。この手技は、典型的には、放射線専門医による画像誘導で実施される。利用される画像化モダリティには、蛍光透視法、コンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)、及び超音波が含まれる。
【0003】
PTNBは、針の種類によって分類される。微細針吸引生検(fine needle aspiration biopsy)は、細胞学的標本を提供するために実施され、より大きな直径の切断針は、組織学的標本を生成する。歴史的に、切断針は、合併症の比較的高い発生率と関連してきたが、自動切断針の導入により、微細針吸引と切断針との間では同等の率であることが実証されている。
【0004】
PTNBの間、吸引(18~22ゲージ)又は切断針(14~20ゲージ)が、試料回収のために画像誘導下に置かれる。同軸技法を使用して、肺経路内の複数回の通過を可能にし、胸膜穿刺の数を低減し得る。この技法では、薄壁の誘導針(13~19ゲージ)が最初に挿入され、病変に局在化され、その後、吸引又は切断針が挿入される。
【0005】
この手技は、安全及び有効であると考えられるが、12~61%の範囲に及ぶ気胸の発生率は依然として顕著であり、2~15%は胸部排液を必要とする。気胸のリスクは、病変が胸膜に隣接していない場合に顕著に増加する。ほとんどの合併症は、生検直後又は生検後最初の1時間以内に生じる。したがって、この手技の後に、患者は、穿刺部位を下にして配置され、少なくとも1時間監視下に置かれる。
【0006】
PTNBに代わる手技として、経気管支針吸引(Transbronchial needle aspiration)(「TBNA」)は、縦隔リンパ節の試料採取を可能にする低侵襲性の技法である。気管支内超音波検査(endobronchial ultrasonography)(「EBUS」)を組み込むと、縦隔構造の正確な定義が可能である。近代のデバイスは、超音波気管支鏡を針に組み込み、対象領域のリアルタイム可視化を可能にする。肺がんスクリーニングにおけるEBUS-TBNAの診断率は、95.7%もの高い感度を有することが報告されている。結果として、EBUS-TBNAは、縦隔リンパ節を試料採取するための標準的治療として広く採用されるようになってきている。
【0007】
EBUS-TBNAデバイスは、超音波線形処理アレイ及び後退可能な針を含む。EBUS-TBNAは、本来、専用の22ゲージ吸引針で実施されていたが、より大きな21ゲージ針が、ごく最近導入された。EBUS-TBNAは、気管支鏡の外径(6.9mm)によって制限されるため、レベル9の気管支の近くの管腔において行われる。
【0008】
合併症は、EBUS-TBNAでは非常に低いが、気胸の発生率は依然として顕著である。気胸率は、EBUS-TBNA後に0.53%~16.7%であると推定されている。更に、PTNB及びEBUS-TBNA手技は、直径28mm及び長さ5cmのオーダーに沿った比較的大きな円筒状の損傷をもたらす。
【0009】
気胸の拡大が観察される患者は、胸腔チューブの配置で治療される必要がある。しかしながら、気胸率を低減させるための普遍的に受け入れられているアプローチはない。迅速なロールオーバー並びに深い呼気及び息止め技法を含む多数の解決策を調査したが、これらの技法は、0.1~15.7%のリスク低減で、軽度/中程度の効果しか示さなかった。
【0010】
他の者らは、自家血餅、フィブリン糊、及びゼラチン状発泡体を含む様々なシーラント材料の損傷への滴下を調査してきたが、いずれも日常業務における広範な使用を達成していない。これらの方法はまた、変動する結果、おそらく手術者依存、製造の差及び実際の変動の結果に悩まされてきた。自家血餅は、中程度の効力を示したが、手術室での長い調製時間に悩まされる。フィブリン糊及びゼラチン技法は、公表されたデータにおけるいくつかの有望なデータを実証してきたが、それらは広範に研究されていない。
【0011】
ごく最近では、合成ポリエチレングリコールプラグが、BioSentry Tract Sealant System(AngioDynamics,Inc.)の一部として商品化されている。無作為化多施設臨床試験において、BioSentryシステムは、対照群(69%)よりも統計的に大きい、85%の患者において気胸の不在をもたらした。しかしながら、Yousem,S.A.,et al.,「Pulmonary pathologic alterations associated with biopsy inserted hydrogel plugs.」Hum Pathol,2019.89:p.40-43によって報告されているように、BIOSENTRYプラグの固体性質は、異物巨細胞反応のみ、そして21日までにヒドロゲルのカプセル化を誘導する。したがって、より多孔質のプラグは、異物反応の低減及びより迅速な治癒をもたらす。
【0012】
国際公開第2008/016983号は、第1の架橋可能な成分及び第2の架橋可能な成分と、少なくとも1つのヒドロゲル形成成分と、を含む創傷封止組成物に関する。組成物はまた、迅速に作用する材料(例えば、組織シーラント)を含み得、この組成物は、最小の膨潤特性を示す。第1の架橋可能な成分及び第2の架橋可能な成分は、それぞれ、例えば、ポリエチレングリコールであってもよく、ヒドロゲル形成成分は、例えば、完全に水和されたときに約0.01mm~約5mmの範囲のサイズを有するサブユニットを含み得、約400%~約5000%の範囲の平衡膨潤を有し得るゼラチンであってもよい。第1の成分及び第2の成分は、インビボ条件下で反応して、架橋マトリックスを形成し、一方、ヒドロゲル形成成分は、組織の裂け目を通ってくる生物学的流体を迅速に吸収し、かつ第1の成分及び第2の成分が架橋するにつれて形成される得られた物理的シーラントマトリックスバリアを強化する。
【0013】
Ethicon Inc.,Somerville,NJから市販されているSURGIFOAM(登録商標)吸収性ゼラチンスポンジは、乾燥した固体のスポンジ形態の架橋されたゼラチン系止血剤である。Surgifoam(登録商標)吸収性スポンジは、出血している粘膜領域に適用された場合に2~5日以内に液化することができ、4~6週間以内に完全に吸収される、無菌のブタの吸収性ゼラチンスポンジである。Surgifoam(登録商標)スポンジは、立方体又は平坦な2つの形状で入手可能である。ゼラチンは、血液中でその重量の40倍を吸収し、インビボでその初期体積の200%まで膨潤することが知られているが、この膨潤は比較的遅く、低い膨潤圧をもたらす。したがって、Surgifoam(登録商標)のラベルは、「キャビティ又は閉じた組織空間に配置された後、最小限の予備圧縮が推奨され、過剰充填(液体の吸収時にスポンジが膨張する)を回避するように注意を払うべきである」と提案している。SURGIFOAM(登録商標)スポンジは、液体を吸収すると元のサイズまで膨潤し、神経損傷の可能性をもたらし得る。
【0014】
SURGIFOAM(登録商標)粉末は、SURGIFOAMスポンジを粉砕し、3mm未満の開口部を通して篩い分けすることによって作製される乾燥粉末である。
【0015】
またEthicon Inc.から市販されているSURGIFLO(登録商標)止血マトリックスは、止血ゼラチンペーストを作り出すためのキットであり、これは、ゼラチンを食塩水と混合し、続いてゼラチンマトリックス-生理食塩水溶液混合物を2つの接続されたシリンジ間で数回前後に移動させることによって調製される。SURGIFLO(登録商標)中のゼラチン粒子は、SURGIFOAM(登録商標)粉末よりも高い架橋度を有する。
【0016】
Baxterから市販されているFloseal(登録商標)止血マトリックスも同様に、止血ゼラチンペーストを作り出すためのキットである。実質的に均質なペースト組成物が達成されると、止血ペーストは、止血を促進するためにシリンジからペーストを押し出すことによって出血部位に適用され得る。
【0017】
出願人らは、ここで、PTNB又はEBUS-TBNA手技から生じるものなどのより大きな経路においてさえ、ニューモスタシス(pneumostasis)及び止血の制御のための改善された組成物が、(a)(i)フィブリノーゲン溶液、及び(ii)水溶液中の予備湿潤ゼラチン粒子、を含む第1の成分を、(b)(i)トロンビン溶液、及び(ii)乾燥ゼラチン粒子、を含む第2の成分と組み合わせることによって作製され得ることを発見した。第1の成分及び第2の成分は、例えばキット内で別個に保存され、使用時に一緒に混合されて、例えば37℃で流動性かつ容易に架橋可能な組成物を形成するように構成される。組成物は、その効率的かつ迅速な閉鎖のために組織経路に挿入されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、(a)(i)フィブリノーゲン溶液、及び(ii)水溶液中の予備湿潤ゼラチン粒子、を含む第1の成分と、(b)(i)トロンビン溶液、及び(ii)乾燥ゼラチン粒子、を含む第2の成分と、を含む、肺経路を封止するための組成物を調製するためのキットであって、第1の成分及び第2の成分は、別個に保存され、一緒に混合されて流動性かつ架橋可能な組成物を形成するように構成されている、キットを提供する。
【0019】
本発明はまた、肺経路を封止する方法であって、(a)(i)フィブリノーゲン溶液、及び(ii)水溶液中の予備湿潤ゼラチン粒子、を含む第1の成分と、(b)(i)トロンビン溶液、及び(ii)乾燥ゼラチン粒子、を含む第2の成分と、を混合して、37℃で流動性かつ迅速に架橋可能な組成物を形成することと、組成物を肺経路に注入することと、を含む方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1の比較キットを作製するために使用されるプロセスの図である。
【
図2】実施例1の本発明によるキットを作製するために使用されるプロセスの図である。
【
図3】実施例2の結果について、組成物の粘度対ひずみ速度を示すグラフである。
【
図4】実施例2における様々な組成物の200/sのひずみ速度での粘度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用される場合、「発泡体」とは、材料の表面に対して開いている細孔を有する固体の多孔質材料を意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「生体適合性」とは、生きている組織又は生きている系と、それらに対して毒性、傷害性、又は生理学的に反応性ではなく、かつそれらによって免疫学的拒絶を引き起こさないことによって適合性であることを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「生物学的に吸収可能」又は「再吸収可能」とは、血流中に輸送されることを可能にするサイズを有するより小さな分子へと、体内で分解され得ることを意味する。そのような分解及び輸送は、適用部位から言及される材料を徐々に除去する。例えば、ゼラチンは、タンパク質分解性組織酵素によって、吸収性のより小さい分子に分解され得、それによって、ゼラチンは、組織に適用される場合、典型的には、約4~6週間以内に吸収され、出血表面又は粘膜に適用される場合、典型的には、2~5日以内に液化する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「止血」とは、出血が減少又は停止するプロセスを意味する。止血の間、3つの段階が迅速な順序で行われる。血管痙攣は、血管が収縮して失われる血液が少なくなる最初の反応である。第2段階である血小板プラグ形成では、血小板が互いに付着して一時的な封止を形成し、血管壁の裂け目を覆う。第3及び最後の段階は、凝固又は血液凝固と呼ばれる。凝固は、「分子糊」として作用するフィブリン糸で血小板プラグを補強する。したがって、止血材料又は化合物は、止血を刺激することができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ニューモスタシス(pneumostasis)」とは、1つ又は2つ以上の空気漏れを閉鎖又は封止するために肺組織に物質を送達することを意味する。
【0026】
他に示されない限り、パーセンテージ及び量は、重量によるパーセンテージ又は量を指し、比は重量比である。特に明記しない限り、全ての範囲は、両端点を包含し、例えば、「4~9」は、両端点の4と9とを含む。
【0027】
ゼラチン粒子
予備湿潤ゼラチン粒子及び乾燥ゼラチン粒子の両方は、米国薬局方(例えば、USP29)によって定義される仕様を満たす吸収性ゼラチンスポンジから作製される。スポンジの多孔質構造及び架橋度は、USP法に従って吸水率及び消化率によって測定される。各タイプの粒子について、スポンジはその重量の35倍以上の水を吸収すべきであり、ペプシンによる平均消化時間は75分以下である。
【0028】
予備湿潤ゼラチン粒子は、スポンジを微細粒子に機械的に粉砕し、粒子を水溶液、例えば生理食塩水と混合することによって作製される。それらは、1000ミクロン未満の粒径D90を有し得る。すなわち、予備湿潤ゼラチン粒子の90%は、1000ミクロン未満の直径を有し得る。予備湿潤ゼラチン粒子における架橋度は、USP消化性試験(例えば、USP34モノグラフに参照されるような)によって測定される消化時間が30分を超えるが、75分を超えないようなものである。予備湿潤ゼラチン粒子は、乾燥ゼラチン粒子よりも高い架橋度を有する。
【0029】
乾燥ゼラチン粒子は、ゼラチンスポンジを粉砕することによって作製される。それらは、2000ミクロン未満の粒径D90を有し得る。すなわち、乾燥ゼラチン粒子の90%は、2000ミクロン未満の直径を有し得る。乾燥ゼラチン粒子における架橋度は、USP消化性試験によって測定される消化時間が30分未満であるようなものである。乾燥ゼラチン粒子は、水溶液と混合した場合、予備湿潤ゼラチン粒子よりも高い膨潤度を有する(USP34モノグラフに記載されているように、それ自体の乾燥重量の少なくとも35倍の液体を吸収する)。
【0030】
第1の成分
本発明のキットは、フィブリノーゲン溶液、及び水溶液も含む湿潤ペーストの形態の予備湿潤ゼラチン粒子(約150mg/mLゼラチン)、を含む第1の成分を含む。
【0031】
フィブリノーゲン溶液
本発明の製剤、キット及び方法におけるフィブリノーゲンの濃度は、15~150mg/ml、40~100mg/ml、又は55~85mg/mlの範囲であり得る。
【0032】
1つのキットにおいて、成分は、フィブリノーゲンと、アルギニン、リジン又は4-(アミノメチル)-シクロヘキサンカルボン酸(トラネキサム酸)、イプシロンアミノカプロン酸(epsilon aminocaproic acid、EACA)及びそれらの組み合わせなどの補助安定剤と、から構成される。
【0033】
本発明によれば、フィブリン接着剤の成分は、最初の血液組成から調製することができる。血液組成は、全血又は血液分画、すなわち、血漿などの全血製剤であり得る。フィブリノーゲン成分、タンパク質分解酵素及び触媒は、自己由来、混合血漿を含むヒト由来、又は非ヒト由来であり得る。
【0034】
本発明の一実施形態では、フィブリノーゲン成分は、生物学的有効成分(biologically active component、BAC)から構成され、これは、トラネキサム酸及びアルギニン若しくはリジン又はアルギニンとリジンとの混合物、又はそれらの医薬的に許容される塩を更に含み得る血漿に由来するタンパク質の溶液である。BACは、クリオプレシピテート由来、特に濃縮クリオプレシピテート由来であり得る。「クリオプレシピテート」という用語は、全血より調製した凍結血漿から得られる血液の成分を指す。クリオプレシピテートは、凍結した血漿を低温、通常は0~4℃の温度で解凍すると、フィブリノーゲン及び第XIII因子を含有する沈殿タンパク質の形成をもたらすことで得ることができる。この沈殿物は例えば遠心分離によって回収することができる。BAC溶液は、例えば、米国特許第6,121,232(B)号及び国際公開第9833533号に記載されるように、第VIII因子、フィブロネクチン、フォンビルブランド因子(von Willebrand factor、vWF)、ビトロネクチンなどを更に含む。好ましくは、BAC組成物は、トラネキサム酸及びアルギニン塩酸塩などの安定剤を含み得る。一般的に、BAC中のフィブリノーゲンの量は、約55~約85mg/mlの範囲である。BAC溶液は、好ましくはトラネキサム酸を含まないか、又は約0~約80~約110mg/mlを含有することができる。アルギニン塩酸塩の量は、約15~約25mg/mlであり得る。
【0035】
必要に応じて、溶液は適合性のある生理学的pH値に緩衝される。緩衝液は、グリシン、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及びビヒクルとしての注射用水から構成され得る。グリシンは組成物中に約6~約10mg/mlの量で存在してよく、クエン酸ナトリウムは約1~約5mg/mlの範囲でよく、塩化ナトリウムは約5~約9mg/mlの範囲でよく、塩化カルシウムは約0.1~0.2mg/mlの濃度でよい。
【0036】
別の実施形態では、BAC組成物中のプラスミノーゲン及びプラスミンの濃度を、例えば、米国特許第7,125,569(B)号及び国際特許出願公開02095019号に記載される手順を使用して、15μg/ml以下、例えば5μg/ml以下のプラスミノーゲンにまで低減する。
【0037】
フィブリン接着剤キットは、Ca2+、第VIII因子、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フォンビルブランド因子(vWF)などの凝塊の形成を促す成分を含むことも可能であり、これらの成分は、別々の成分として提供されるか又はフィブリン接着剤の成分と配合され得る。
【0038】
フィブリン接着剤のタンパク質成分は、組換え手順によって調製することができる。組換え手順によって、フィブリン接着剤のタンパク質成分の一部、又はそれらの全てを調製することも可能である。
【0039】
血液組成由来のフィブリン接着剤成分は、一般に、感染性粒子を除去又は最小化するためにウイルス不活性化プロセスを受ける。ウイルス不活化プロセスは、ナノ濾過、溶媒/洗剤処理、例えば、低温殺菌、ガンマ線若しくはUVC照射(<280nm)などであるが、これらに限定されない熱処理、又は当該技術分野において既知である任意の他の方法により行うことができる。「感染性粒子」という用語は、微生物又はプリオンなどの微細粒子を指し、これらは生物有機体の細胞に感染する又は伝搬し得る。感染性粒子はウイルス粒子であってもよい。
【0040】
ウイルス不活性化手順は、精製手順の前及び/又は間に、組成物又は血液分画に分子を添加することによって行うことができる。添加した分子及びその生成物は、重力、カラムクロマトグラフィー、又は当該技術分野において既知である任意の他の方法により除去できる。
【0041】
感染性粒子の除去は、ナノ濾過により、又は疎水性、アフィニティ、及びイオン交換クロマトグラフィーなどの選択的吸収手順により行うことができる。ウイルス不活性化手順は、いくつかの段階で行うことができる。例えば、組成物は、溶媒/洗剤処理、熱処理、選択的クロマトグラフィー、及びナノ濾過に供することができる。
【0042】
予備湿潤ゼラチン粒子
予備湿潤ゼラチン粒子は、より高い架橋度を有し、したがって、乾燥ゼラチン粒子よりも膨潤度が低い。これらの粒子の予備湿潤は、得られるシーラントに最適な流動性を付与する。加えて、予備湿潤ゼラチン粒子は、粘度を増加させ、反応成分を物理的にブロックし、反応プロセスを延長させ、エンドユーザーにより長い作業時間を与える。
【0043】
予備湿潤ゼラチン粒子は、典型的にはブタ供給源に由来するが、ウシ又は魚供給源などの他の動物供給源に由来してもよい。ゼラチンは、合成的に、すなわち組換え手段によって作製することができる。ゼラチンは架橋されていてもよい。化学的及び物理的架橋方法の両方を含む、当業者に既知の任意の好適な架橋方法を使用することができる。
【0044】
好ましくは、予備湿潤ゼラチンは、1~10g若しくは水、食塩水、又は他の水溶液、より好ましくは3~10gの水/溶液を含有する1gの乾燥ゼラチン粉末など、周囲でから吸収される水分を超えて湿潤されている。
【0045】
予備湿潤ゼラチン粒子において又は予備湿潤ゼラチン粒子として使用するのに好適なゼラチン粒子は、Ethicon Inc.から市販されているSURGIFLO(登録商標)止血マトリックスのゼラチン粒子である。膨潤性ゼラチン粒子において又は膨潤性ゼラチン粒子として使用可能な他の市販のゼラチン材料としては、Gelfoam(Pfizer)、Curaspon(Cura Medical)、Gelitaspon(Gelita Medical)、及びGelaspon(KDM)が挙げられる。
【0046】
第2の成分
キットはまた、(i)トロンビン溶液、及び(ii)乾燥ゼラチン粒子、を含む第2の成分を含む。
【0047】
トロンビン溶液
トロンビン溶液は、トロンビンから構成されるタンパク質分解酵素を含有する。トロンビン溶液は、一般にトロンビン及び塩化カルシウムを含む。可視化剤の添加前のトロンビンの初期活性は、約2~約4000IU/mlの範囲、又は約400~約1200IU/mlの範囲であり得る。溶液中の塩化カルシウムの濃度は、約2~約6.2mg/mlの範囲、又は約5.6~約6.2mg/mlの範囲、例えば、5.88mg/mlの濃度であり得る。トロンビン溶液はまた、賦形剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の例としては、ヒトアルブミン、マンニトール、酢酸ナトリウム、及び注射用水が挙げられるが、これらに限定されない。溶液中のヒトアルブミンは約2~約8mg/mlの範囲であり得る。マンニトールは約15~約25mg/mlの濃度範囲であり得る。酢酸ナトリウムも、約2~約3mg/mlの範囲で溶液に添加され得る。
【0048】
乾燥ゼラチン粒子
第2の成分中の乾燥ゼラチン粒子は、第1の成分の予備湿潤ゼラチン粒子と比較してより低い架橋度を有し、したがって、得られるシーラント組成物により大きな膨潤度を提供する。しかしながら、乾燥ゼラチン粒子は、第1の成分内の予備湿潤ゼラチン粒子の所望の流動性を有していない。
【0049】
乾燥ゼラチン粒子もまた、典型的にはブタ供給源に由来するが、ウシ又は魚供給源などの他の動物供給源に由来してもよい。ゼラチンは、合成的に、すなわち組換え手段によって作製することができる。ゼラチンは架橋されていてもよい。化学的及び物理的架橋方法の両方を含む、当業者に既知の任意の好適な架橋方法を使用することができる。
【0050】
乾燥ゼラチン粒子において又は乾燥ゼラチン粒子として使用するのに好適なゼラチン粉末は、Ethicon Inc.から市販されているSurgifoam(登録商標)吸収性ゼラチン粉末である。膨潤性ゼラチン粉末において又は膨潤性ゼラチン粉末として使用可能な他の市販のゼラチン材料としては、粉末若しくは発泡体形式のGELFOAM(Pfizer)、CURASPON(Cura Medical)、GELITASPON(Gelita Medical)、及びGELASPON(KDM)が挙げられる。
【0051】
組成物の調製及び使用
組成物は、止血、創傷治癒、又は組織治癒を刺激することができるものなどの1つ若しくは2つ以上の他の生体適合性薬剤と同時に投与されてもよく、又はそれ自体がそれを含んでもよい。本発明は、インサイチュで形成するゼラチン、フィブリンシーラントヒドロゲル/ヒドロコロイド複合シーラントを記載し、このシーラントは、気胸を予防するために、経皮的生検手技又は気管支内生検手技の後に肺経路に適用される。肺経路は、直径0.41~1.8mmの範囲の針生検手技から、腫瘍結節(直径<20mm)を除去するための新規なコアリング手技まで、手技に基づいて様々な直径を有し得る。シーラントは30秒以内に重合して生化学的封止をもたらすことができ、複合シーラントは水和時に膨潤して追加の機械的封止を形成させることができる。更に、このシーラントは、肝臓、腎臓、及び脾臓を含むがこれらに限定されない任意の固形器官の経路を封止するために利用され得る。
【0052】
他の薬剤の例としては、限定されないが、イオヘキソールなどの造影剤、抗生物質及び抗ウイルス剤などの抗感染剤;鎮痛薬及び鎮痛薬の組み合わせ;駆虫剤;抗関節炎薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤;抗偏頭痛製剤;抗腫瘍薬;抗パーキンソン薬;抗精神病薬;解熱薬、鎮痙薬;抗コリン作用薬;交感神経模倣薬;キサンチン誘導体;ピンドロール及び抗不整脈薬などのカルシウムチャネル遮断薬及びβ遮断薬を含む心血管製剤;降圧薬;利尿薬;全般的な冠血管、末梢及び大脳を含む血管拡張薬;中枢神経刺激薬;エストラジオール、及びコルチコステロイドなどのその他のステロイドなどのホルモン;免疫抑制薬;筋弛緩薬;副交感神経抑制薬;覚醒剤;天然由来の又は遺伝子組換えされたタンパク質、多糖類、糖タンパク質又はリポタンパク質;オリゴヌクレオチド、抗体、抗原、コリン作動薬、化学療法剤、放射性薬剤、放射線不透過性薬剤、骨誘導剤、細胞増殖抑制剤ヘパリン中和剤が挙げられる、生物活性及び非生物活性薬剤が含まれる。
【0053】
組成物は、ペースト又は乾燥プラグのいずれかとして肺経路に挿入され得る。例えば、組成物は、例えば20mm未満の直径を有する円筒形の型に流し込まれてもよい。次いで、それを凍結し、凍結乾燥し、型から取り出す。得られたプラグは堅くて丈夫であり、本発明に従って肺針生検路を封止するために利用することができる。
【0054】
任意選択的に、型は、結果として得られるプラグが、例えば、線、リブ、返し部、溝、ノッチ、スリット、チャネル、スパイク、段、及びこれらの組み合わせを含むように、その内面上に特徴部を含んでもよい。あるいは、そのような特徴部は、刻み目、切断、又は他の機械的手段によって、完成プラグに追加されてもよい。
【0055】
組成物は、当該技術分野において既知のアプリケーターを使用して適用されてもよい。
【0056】
任意選択的に、組成物は、円筒形メッシュで保持され、位置に移動され、プラグは、メッシュを拡張することによって展開される。
【0057】
本発明を、以下の非限定的実施例によって更に説明する。
【0058】
実施例において、「ゼラチンI」は、米国薬局方(例えば、USP29)によって定義された規格を満たす水溶液中の予備湿潤ゼラチン粒子(例えば、SURGIFLO(登録商標))を指すことを意味し、「ゼラチンII」は、米国薬局方(例えば、USP29)によって定義された規格を満たす乾燥ゼラチン粒子粉末(例えば、SURGIFOAM(登録商標)粉末)を指すことを意味する。
【実施例1】
【0059】
比較キットを、
図1に示すプロセスを使用して以下のように作製した。この考案物は、フィブリンの相互接続ネットワークを形成し、内因性フィブリンによって更に安定化されるゼラチンI-ゼラチンII製剤である。この実施形態は、1単位のゼラチンI及び1単位のゼラチンII、Evicel(商標)止血キットからの5mLのフィブリノーゲン、並びにEvicel(商標)止血キットからの5mLのトロンビンを含有する。得られたプラグは、濃厚なペーストであり、タンポン法を適用したときに欠損に良好に適合することができ、いったん架橋されると、強靭で、弾性があり、圧縮可能である。
【0060】
作製方法
インサイチュフィブリン、ゼラチン複合シーラントを作製するために、フィブリノーゲンを最初にゼラチンIIに添加し、粉末容器を激しく振盪することによって粉末に組み込むことができる。フィブリノーゲンがゼラチンと物理的に相互作用するのを可能にする時間を与えるべきである。ゼラチンIIは、フィブリノーゲンが形成するための足場、シーラントが膨潤する能力を提供し、粘度を増加させる。フィブリノーゲンは、ゼラチン粒子を取り囲む単層を形成する。
【0061】
トロンビンは、現在臨床で行われているように、ゼラチンIに添加されるべきである。これは、少なくとも6回通過する二重シリンジ交換法を使用して生成することができる。
【0062】
使用時に、フィブリノーゲン浸漬粉末を丸めてボール状にして、手で20mLシリンジに移すことができる。次いで、ゼラチンI-トロンビン分散液を、10回通過するデュアルシリンジ交換法を介してフィブリノーゲン浸漬粉末と混合することができる。シーラントは、約30秒の作業時間を有する(注:典型的には、フィブリンシーラントは、5秒未満の作業時間を有する)。
【0063】
図1に示すように、Evicel止血キットからの5mLのフィブリノーゲンが、容器1中で激しく振盪することによって1単位のゼラチンIIと共に組み込まれる。フィブリノーゲン/ゼラチンII混合物が、材料のボールを作り出す。プランジャをシリンジ1から取り外し、材料のボールをシリンジ1に移し、プランジャを戻す。シリンジ2に、Evicel止血キットからの5mLのトロンビンを充填する。シリンジ3に1単位のゼラチンIを充填する。シリンジ2及び3を、6回通過するデュアルシリンジ交換法を介して混合する。シリンジ4にトロンビン及びゼラチンIの混合物を充填する。シリンジ1及び4を一緒に混合して、8回通過するデュアルシリンジ法を介してシーラントを活性化する。シーラントは30秒の作業時間を有する。
【0064】
本発明によるキットを、
図2に示すプロセスを使用して以下のように作製した。この考案物は、低圧出力を必要とするゼラチンI-ゼラチンII製剤である。この実施形態は、1単位のゼラチンI及び1単位のゼラチンII、Evicel止血キットからの5mLのフィブリノーゲン、及びEvicel止血キットからの5mLのトロンビンを含有する。得られたプラグは、濃厚なペーストであり、タンポン法を適用したときに欠損に良好に適合することができ、いったん架橋されると、強靭で、弾性があり、圧縮可能である。
【0065】
作製方法
より低い圧出力を必要とするインサイチュフィブリンシーラント、ゼラチン複合シーラントを作製するために、トロンビンを最初にゼラチンIIに添加するべきであり、粉末容器を激しく振盪することによって粉末に組み込まれる。トロンビン(フィブリノーゲンに対する粘度を有する)の添加は、ゼラチンII-トロンビン分散液の粘度を有意に低減する。フィブリノーゲンは、少なくとも6回通過するデュアルシリンジ交換法を使用してゼラチンIに添加されるべきである。フィブリノーゲンは、ゼラチン分子を取り囲む単層を形成する。
【0066】
使用時に、トロンビン浸漬粉末を丸めてボール状にして、手で20mLシリンジに移すことができる。次いで、ゼラチンI-フィブリノーゲン分散液を、10回通過するデュアルシリンジ交換法を介してトロンビン浸漬粉末と混合することができる。シーラントは、約30秒の作業時間を有する(注:典型的には、フィブリンシーラントは、5秒未満の作業時間を有する)。
【0067】
図2に示すように、Evicel止血キットからの5mLのトロンビンが、容器1中で激しく振盪することによって1単位のゼラチンIIと共に組み込まれる。トロンビン/ゼラチンII混合物は、材料のボールを作り出す。プランジャをシリンジ1から取り外し、材料のボールをシリンジ1に移し、プランジャを戻す。シリンジ2に、Evicel止血キットからの5mLのフィブリノーゲンを充填する。シリンジ3に1単位のゼラチンIを充填する。シリンジ2及び3を、6回通過するデュアルシリンジ交換法を介して混合する。シリンジ4にフィブリノーゲン及びゼラチンIの混合物を充填する。シリンジ1及び4を一緒に混合して、8回通過するデュアルシリンジ法を介してシーラントを活性化する。シーラントは30秒の作業時間を有する。
【0068】
封止方法
シーラントは、典型的なゼラチンIアプリケーターチップを使用して適用することができ、30秒以内に架橋する。シーラントの粘度及び密度は、換気時に肺の陽圧によってシーラントが乱されるのを防止する。
【0069】
この実施形態は、デュアルシリンジ法を使用して混合するのに、第2の実施形態よりも劇的に少ない圧出力を必要とするシーラントをもたらす。シーラントは、同様の流動性、粘稠度、及び作業時間を有する。
【実施例2】
【0070】
肺経路封止のためのゼラチン/生物製剤インサイチュシーラントの開発
この研究の目的は、ゼラチン(すなわち、ゼラチンI又はゼラチンII)成分とフィブリンシーラントの生物学的成分(すなわち、Evicel)との組み合わせの異なる実施形態を評価することであった。
【0071】
材料:
ゼラチンI
ゼラチンII
凍結乾燥フィブリノーゲン(BAC2)のバイアル及びトロンビン凍結乾燥粉末のバイアル、並びに再構成溶液及び適用デバイスからなる、Evicelフィブリンシーラント(又は止血)キット
【0072】
【表1】
注:ゼラチンII-ゼラチンII製剤は、これらの製剤が流動性を欠いていたため、試験することができなかった。
【0073】
結果を表1に示す。結論:ゼラチンIIの添加は、ゼラチン/生物製剤の粘度及び膨潤を増加させた。ゼラチンIIへのトロンビンの組み込みは、ゼラチンIIへのフィブリノーゲンの組み込みよりもはるかに低い圧出力を必要とした。
【0074】
ゼラチン-生物製剤複合シーラントの粘度
この研究の目的は、肺経路封止のために開発されたゼラチン-生物製剤シーラントの各成分の粘度を評価することであった。
【0075】
材料:
ゼラチンI
ゼラチンII
Evicelフィブリンシーラント
食塩水
【0076】
方法:
粘度測定は、表2に示す以下の組み合わせについて行った。各組み合わせにおいて、1単位の生物製剤(5mL)を1単位のゼラチンと組み合わせた。
【0077】
【0078】
粘度は、ThermoHaake Mars IQ Airを使用して連続回転レオメトリーを介して測定した。24℃で一定に保持された直径35mmの平行プレート形状を利用した。100~1000/sのひずみ速度を10の線形工程で試験した。注:ゼラチンII及びフィブリノーゲンは、ひずみ速度>200/sで不安定であり、したがって、10~200/sで試験した。粘度を200/sでの製剤間で比較した。
【0079】
結果を
図3及び
図4に示す。フィブリノーゲン及びトロンビンは、ニュートン流体特性を示した。ゼラチンベースの製剤は、ずり減粘特性を示した。生物製剤(p=0.003、二元配置分散分析、付録)及びゼラチン(p=0.002、二元配置分散分析、付録)によって引き起こされた有意な効果があった。
【0080】
ゼラチンを含めると、粘度が1桁を超えて著しく増加した。ゼラチンI製剤については、トロンビンの包含は、粘度を405から710mPasへとほぼ2倍にした。フィブリノーゲンの包含は、1950mPasのほぼ5倍の増加をもたらした。ゼラチンIIについては、この傾向はトロンビンで更に悪化し、1498から1642mPasへの粘度のわずかな増加をもたらした。フィブリノーゲンの組み込みは、15073mPasへの1桁の増加をもたらした。フィブリノーゲンを含むゼラチンIIは、その線形粘弾性領域を超えており、したがって不安定であるため、300/sを超えて測定することができなかった。
【0081】
考察:
食塩水を含むゼラチンI及びゼラチンIIは、Evicelフィブリンシーラント単独と比較して1桁を超える増加をもたらす。食塩水、トロンビン、及びフィブリノーゲンと組み合わせたゼラチンI、並びに食塩水及びトロンビンと組み合わせたゼラチンIIは、同等の粘度をもたらす。しかしながら、フィブリノーゲンをゼラチンIIと組み合わせると、粘度は他のゼラチン製剤と比較して1桁増加する。
【実施例3】
【0082】
エクスビボ結果
試作品を、エクスビボブタ大肺経路モデルにおいてニューモスタシスを達成する能力について評価した。このモデルでは、肺摘採物を試験当日に新たに採取し、試験まで湿った状態に保った。試験の前に、肺を人工呼吸器上に置き、虚脱肺胞を動員した(目標は虚脱無気肺胞を開くことである)。試験時に、肺をRespironics人工呼吸器に接続して、換気循環中の圧力を正確に制御した。圧力は、25水柱cmの吸気圧及び5水柱cmの呼気圧(Δ20水柱cm)に設定した。
【0083】
18mmの直径を有するコアリングデバイスを用いて肺欠損を作製し、約20mmの直径から3cmの深さまでの穿刺サイズを得た。欠陥における空気漏れは、気泡試験で重度と評価された。試作品を適用した場合、肺を拡張させたままにするために、圧力を10水柱cmの吸気圧及び10水柱cmの呼気圧(変化なし)に低減させた。
【0084】
試作品適用後、典型的には、肺が依然として拡張され、陽圧下にある間に、試作品に局所圧迫を1分間かけた。性能を試験するために、低圧で開始して、25水柱cmの吸気圧及び5水柱cmの呼気圧(Δ20水柱cm)まで増加させて肺を換気した。気泡試験は、食塩水を穿刺部位に通し、空気漏れの存在及び重症度を記録することによって実施された。追加の課題のために、換気圧を、40水柱cmの吸気圧及び5水柱cmの呼気圧(Δ35水柱cm)に増加させた。圧力試験後、試作品を穿刺部位から引き抜き、周囲組織への接着を定性的に評価した。試験された特定の試作品は、各画像のキャプションに記載される。
【0085】
結果を表3に示し、表中、L1-1及びL3-1は、シーラントの成分がゼラチンIをフィブリノーゲンと混合し、別にゼラチンIIをトロンビンと混合することによって調製された好ましい実施形態を指す。適用時に、2つの成分を混合し、標的組織に適用した。L2-6は、フィブリンシーラント単独の対照を表し、これは有効でなかった。
【0086】
【0087】
【表3】
1早期接着試験中に封止が乱されたときに小さな漏れが生じた
2タンポン法圧力を加えた場合の小さな漏れ
3プラグ/シーラントが一端で外れ、より高い圧力で漏れた
【0088】
成分の組み合わせを混合してペーストとし、コアリングデバイスを使用して作製した欠損部に直接注入した。肺を陽圧下で拡張させながら、ペーストに局所圧縮を3分間適用した。20水柱cmで漏れは観察されなかった。シーラントは周囲の組織によく接着した。この同じ試作品は、同じ試験機会の間に異なる肺(L3-1)で試験され、20mm生検パンチで作製された欠損を封止することにも成功した。
【0089】
〔実施の態様〕
(1) 組織経路を封止するための組成物を調製するためのキットであって、
a.(i)フィブリノーゲン溶液、及び(ii)水溶液中の予備湿潤ゼラチン粒子、を含む第1の成分と、
b.(i)トロンビン溶液、及び(ii)乾燥ゼラチン粉末、を含む第2の成分と、を含み、
前記第1の成分及び前記第2の成分が、別個に保存され、一緒に混合されて流動性かつ架橋可能な組成物を形成するように構成されている、キット。
(2) 前記予備湿潤ゼラチン粒子の90%が、1000μm(1000ミクロン)未満の直径を有する、実施態様1に記載のキット。
(3) 前記予備湿潤ゼラチンが、周囲から吸収される水分を超えて湿潤されている、実施態様1に記載のキット。
(4) 前記乾燥ゼラチン粉末が粒子形態であり、90%の前記粒子が、2000μm(2000ミクロン)未満の直径を有する、実施態様1に記載のキット。
(5) 前記水溶液が生理食塩水である、実施態様1に記載のキット。
【0090】
(6) 組織経路を封止する方法であって、
a)以下の、
(1)第1の成分であって、
(i)フィブリノーゲン溶液、及び
(ii)水溶液中の予備湿潤ゼラチン粒子、を含む第1の成分と、
(2)第2の成分であって、
(i)トロンビン溶液、及び
(ii)乾燥ゼラチン粉末、を含む第2の成分と、を混合して、
37℃で流動性かつ迅速に架橋可能な組成物を形成することと、
b)前記組成物を組織経路に注入することと、を含む、方法。
(7) 前記組織が、肺組織、腎臓組織、脾臓組織、肝臓組織、及び骨組織からなる群から選択される、実施態様6に記載の方法。
【国際調査報告】