(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両のB-b-W技術によるブレーキシステムにおいて散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20240912BHJP
B60T 8/176 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60T8/176 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516974
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 IB2022058760
(87)【国際公開番号】W WO2023042138
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021000023978
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】カルボーネ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】フォルニ,ファブリツィオ
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246BA08
3D246DA01
3D246EA05
3D246GB01
3D246GB39
3D246GC14
3D246HA37A
3D246HA39A
3D246HA44A
3D246HA64A
3D246HA72A
3D246HA93A
3D246JA12
3D246JB22
3D246KA15
3D246LA15Z
(57)【要約】
車両のBrake-by-Wire(B-b-W)技術を用いたブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御するための方法(900)は、車両のブレーキシステムの電子制御ユニットの散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合した車輪スリップメイン制御モジュールの車輪スリップ制御サブモジュールによって、車輪スリップを制御するための第1の複数の入力情報(以下、単に第1の複数の入力情報ともいう)を受信するステップ(901);車輪スリップ制御サブモジュールによって、受信された第1の複数の入力情報に基づいて、車両のコーナに加えられるブレーキトルク要求とブレーキトルク制御コンポーネントとを決定するステップ(902);車輪スリップ制御サブモジュールによって、車両のコーナに適用されるブレーキトルク要求、決定されたブレーキトルク制御コンポーネント、および有効化された車輪スリップ制御確認値を、車両のブレーキシステムの電子制御ユニットの生成車輪スリップ制御モジュールのブレーキ再生サブモジュールに提供するステップ(903);ブレーキ再生サブモジュールによって、車輪のスリップを制御するための第2の複数の入力情報を受信するステップ(904);ブレーキ回生サブモジュールによって、入力された有効化信号の状態に基づき、第2の複数の入力情報および車輪スリップ制御サブモジュールから受信された有効化された車輪スリップ制御確認値の関数として、車両のコーナまたはブレーキトルク制御コンポーネントに印加されるブレーキトルク要求の関数として、回生ブレーキトルク指令を決定するステップ(905)とを含み、有効化入力状態が無効である場合、ステップ(905)は、ブレーキトルク要求の関数として回生ブレーキトルク指令を得るためにブレーキ回生サブモジュールによって実行され、有効化入力ス状態が有効である場合、ステップ(905)は、ブレーキトルク制御コンポーネントの関数として回生ブレーキトルク指令を得るために、ブレーキ回生サブモジュールによって実行され;方法はさらに、ブレーキ回生サブモジュールによって、ブレーキトルク要求およびブレーキ回生サブモジュールによって決定された回生ブレーキトルク指令の関数として、散逸ブレーキトルク指令を決定するステップ(906)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のブレーキバイワイヤ(B-b-W)技術によるブレーキシステム(2)において、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御するための方法(900)であって、
前記車両(1)における前記ブレーキシステム(2)の電子制御ユニット(5)の散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合した状態で、主車輪スリップ制御モジュール(7)の車輪スリップ制御サブモジュール(30)によって、前記車輪のスリップを制御するための第1の複数の入力情報(P-I1)を受信し[ステップ(901)]と、
前記車輪スリップ制御サブモジュール(30)によって、受信された前記第1の複数の入力情報(P-I1)に基づいて、前記車両(1)のコーナに加えられるブレーキトルク要求(CF)およびブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)を決定し[ステップ(902)]、
車輪スリップ制御サブモジュール(30)によって、前記車両(1)のコーナに加えられる前記ブレーキトルク要求(CF)と、決定された前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)と、有効化された車輪スリップ制御確認値(F-C)とを、前記車両(1)における前記ブレーキシステム(2)の前記電子制御ユニット(5)の前記散逸ブレーキトルクと前記回生ブレーキトルクとを混合した状態で、前記主車輪スリップ制御モジュール(7)のブレーキ回生サブモジュール(40)に提供し[ステップ(903)]、
前記ブレーキ回生サブモジュール(40)によって、前記車輪のスリップを制御するための第2の複数の入力情報(P-I2)を受信し[ステップ(904)]と、
前記ブレーキ回生サブモジュール(40)によって、入力された有効化入力信号(I-M)の状態に基づき、前記第2の複数の入力情報(P-I2)および前記車輪スリップ制御サブモジュール(30)から受信された前記有効化された車輪スリップ制御確認値(F-C)の関数として、前記車両(1)の前記コーナに加えられる前記ブレーキトルク要求(CF)または前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)の関数として、回生ブレーキトルク指令(C-FR)を決定し[ステップ(905)]、
前記有効化入力信号(I-M)の状態が無効であれば、前記ブレーキトルク要求(CF)の関数として前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)を得るために、前記ブレーキ回生サブモジュール(40)によって前記ステップ(905)を実行し、
有効化入力信号(I-M)の状態が有効である場合、前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)の関数として前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)を得るために、前記ブレーキ回生サブモジュール(40)によって前記ステップ(905)を実行し、
前記ブレーキ回生サブモジュール(40)によって、前記ブレーキトルク要求(CF)および前記ブレーキ回生サブモジュール(40)によって決定された前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)の関数として、散逸ブレーキトルク指令(C-FD)を決定する[ステップ(906)]、方法(900)。
【請求項2】
前記車輪スリップ制御サブモジュール(30)によって、車輪スリップ制御の作動を検証するステップ(907)を含む、請求項1に記載の方法(900)。
【請求項3】
前記検証するステップ(907)が、前記車輪スリップ制御サブモジュール(30)の比較ブロック(C1)によって、車輪スリップ状態値(W-S)と車輪スリップ設定値(S-P)とを比較するステップ(908)を含む、請求項2に記載の方法(900)。
【請求項4】
前記車輪スリップ制御サブモジュール(30)のスリップ制御ブロック(70)によって、前記車輪スリップ制御の起動に続いて、前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)を初期化するステップ(IZ)を実行するステップ(910)をさらに含む、前記請求項2および3のいずれか1項に記載の方法(900)。
【請求項5】
前記車輪スリップ制御の起動および設定された離散的な車両イベント(E-S)の検出に続いて、前記車輪スリップ制御サブモジュール(30)の前記スリップ制御ブロック(70)によって、前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)をリセットするステップ(AZ)を実行するステップ(912)を含む、請求項4に記載の方法(900)。
【請求項6】
前記初期化するステップ(IZ)および前記リセットするステップ(AZ)の後に、前記スリップ制御ブロック(70)によって、閉ループにおいて、前記車輪スリップ状態値(W-S)と車輪スリップ設定値(S-P)との間の誤差を最小にする前記ブレーキトルク要求(CF)および前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)を決定するステップ(913)を含む、請求項5に記載の方法(900)。
【請求項7】
前記車両(1)のコーナに加えられる前記ブレーキトルク要求(CF)または前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)の関数として前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)を決定する前記ステップ(905)が、前記ブレーキ回生サブモジュール(40)の第1処理ブロック(41)によって、回生ゲイン値(R-G)を決定するステップ(914)を含み、
前記回生ゲイン値(R-G)は、前記ブレーキ回生サブモジュール(40)の第1処理ブロック(41)によって、第1乗算係数(G-D)と第2乗算係数(S-G)との線形結合として決定され、
前記第1乗算係数(G-D)は、前記車両(1)の横方向のダイナミクスを代表する量の関数であり、
前記第2乗算係数(S-G)は、前記車輪スリップ状態値(W-S)の関数である、
請求項1-6のいずれか1項に記載の方法(900)。
【請求項8】
前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)を、前記車両(1)のコーナに加えられる前記ブレーキトルク要求(CF)または前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)の関数として決定する前記ステップ(905)は、
前記第1処理ブロック(41)の下流に配置された前記ブレーキ回生サブモジュール(40)の第2処理ブロック(42)によって、前記第1処理ブロック(41)によって決定された前記回生ゲイン値(S-G)および利用可能な回生ブレーキトルク値(A-FR)を入力として受信するステップ(916)と、
前記第2処理ブロック(42)によって、前記第1処理ブロック(41)によって決定された前記回生ゲイン値(S-G)および前記利用可能な回生ブレーキトルク値(A-FR)の関数として、最大回生ブレーキトルク値(C-M)を決定するステップ(917)とを含む、請求項7に記載の方法(900)。
【請求項9】
前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)を、前記車両(1)のコーナに加えられる前記ブレーキトルク要求(CF)または前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)の関数として決定する前記ステップ(905)は、
前記第2処理ブロック(42)の下流に配置された前記ブレーキ回生サブモジュール(40)の第3処理ブロック(43)によって、前記第2処理ブロック(42)によって決定された前記最大回生ブレーキトルク値(C-M)、前記有効化された車輪スリップ制御確認値(F-C)、前記車両(1)のコーナに加えられる前記ブレーキトルク要求(CF)、および前記スリップ制御ブロック(70)によって決定された前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)を入力として受信するステップ(918)と、
前記第3処理ブロック(43)によって、第3乗算係数(A-G)を決定する(919)ステップであって、前記第3乗算係数(A-G)は、前記車両(1)のグリップ推定値(I-A)の関数である、ステップと、を含む請求項8に記載の方法(900)。
【請求項10】
前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)を、前記車両(1)のコーナに加えられる前記ブレーキトルク要求(CF)または前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)の関数として決定する前記ステップ(905)が、
前記第3処理ブロック(43)によって、入力された前記有効化入力信号(I-M)の状態に基づいて、前記ブレーキトルク要求(CF)または前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)の関数としての前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)を決定するステップ(920)と、
前記有効化入力信号(I-M)の状態が無効の場合、前記第3処理ブロック(43)により、前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)が前記ブレーキトルク要求(CF)の関数として決定され、
前記有効化入力信号(I-M)の状態が有効の場合、前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)は、前記第3処理ブロック(43)によって、前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)の関数として決定され、
前記有効化入力信号(I-M)の状態が無効の場合、前記第3処理ブロック(43)により、前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)が、前記ブレーキトルク要求(CF)と前記第2処理ブロック(42)により決定された前記最大回生ブレーキトルク値(C-M)との間の最小値として決定され、
前記有効化入力信号(I-M)の状態が有効の場合、前記第3処理ブロック(43)によって、前記ブレーキトルク制御コンポーネント(P-CF)と前記第2処理ブロック(42)によって決定された前記最大回生ブレーキトルク値(C-M)との最小値として、前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)が決定される、請求項9に記載の方法(900)。
【請求項11】
前記ブレーキトルク要求(CF)および前記ブレーキ回生サブモジュール(40)によって決定された前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)の関数として前記散逸ブレーキトルク指令(C-FD)を決定する前記ステップ(906)はさらに、
前記ブレーキトルク要求(CF)及び前記第3処理ブロック(43)によって決定された前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)の関数として、前記第3処理ブロック(43)によって前記散逸ブレーキトルク指令(C-FD)を決定するステップ(921)を含み、
前記散逸ブレーキトルク指令(C-FD)は、前記ブレーキトルク要求(CF)と前記第3処理ブロック(43)によって決定された前記回生ブレーキトルク指令(C-FR)の差として、前記第3処理ブロック(43)によって決定される、請求項10に記載の方法(900)。
【請求項12】
車両(1)のブレーキバイワイヤ(B-b-W)技術によるブレーキシステム(2)において、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御するためのシステム(100)であって、
前記車両(1)の電子制御ユニット(5)であって、前記散逸ブレーキトルクと前記回生ブレーキトルクとを混合する主車輪スリップ制御モジュール(7)であって、車輪スリップ制御サブモジュール(30)とブレーキ回生管理サブモジュール(40)とを含む、電子制御ユニット(5)と、
前記電子制御ユニット(5)に動作可能に接続されたトラクションおよび回生ブレーキ制御モジュール(6)と、
前記電子制御ユニット(5)に動作可能に接続されたセンサユニット(8)を含み、
前記システム(100)は、請求項1-11のいずれかに記載の車両(1)のブレーキバイワイヤ(B-b-W)技術によるブレーキシステムにおいて、前記散逸ブレーキトルクと前記回生ブレーキトルクとを混合して前記車輪のスリップを制御する方法を実行するように構成されている、システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
【0002】
本発明は、車両のブレーキシステムに関し、特に、車両のB-b-W技術を用いたブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合(ブレンド)して車輪のスリップを制御するための方法および各システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
【0004】
車輪のスリップ制御は、車両において非常に重要であり、B-b-W(「Brake-by-Wire」の略、電気接続によるブレーキ)技術によるブレーキシステムの構成に追加され、制御の最適化と柔軟性を高いレベルで保証できるものでなければならない。
【0005】
最近の革新的なアーキテクチャでは、1つまたは複数の電気モータが存在し、電気モータが電気的に接続されている車両の車軸または車輪にブレーキ作用(回生ブレーキトルク)が加えられるブレーキシステムが提案されている。さらに、B-b-W技術を使用した電子ブレーキシステムでは、車輪のブレーキディスク上のブレーキキャリパのブレーキ作用(散逸ブレーキトルク)が、たとえば1つまたは複数の電気機械式または電気油圧式アクチュエータを使用することによって実現される。
【0006】
これらのブレーキシステムにおいて、車輪スリップ制御(ABS作動)中の散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクの管理は、2つの作動システム(B-b-Wと電気モータ)間のブレーキトルクの管理と分配において、最適とは言えないレベルの統合と相互作用がある。
【0007】
このような2つの制御間の統合および相互作用の制限は、例えば、以下のような欠点および非効率につながる可能性がある。
【0008】
停止距離の増加を意味する、望ましくない車輪制御挙動。
【0009】
回生動作の減少。
【0010】
さらに、2つの作動システムの完全な統合および相互作用の欠如は、散逸ブレーキ段階中の回生寄与の最大化を可能にせず、回生ブレーキエネルギ回収および縦方向車両性能(停止距離の劣化)の非効率を引き起こす。
【0011】
一般に市販されている2軸以上の車軸を持つ車両のブレーキシステムは、電気油圧式「マスタシリンダ」による集中作動を備えている。
【0012】
このタイプのシステムでは、前部と後部の油圧回路に単一の圧力を発生させることによって、サービスブレーキ機能が実行される。
【0013】
回生ブレーキトルクと散逸ブレーキトルクの後車軸と前車軸間の分配は、アクティブ分配システムが介入しない限り、2つの車軸のブレーキシステムの設計特性によって与えられ、通常、ブレーキ力の最適な分配を達成するために異なる。
【0014】
車輪のスリップ制御中、ブレーキトルクの調整機能は、適切に制御されることによって各車輪のブレーキシステムの圧力を調整するソレノイドバルブによって実行される。
【0015】
車軸と独立した車輪アーキテクチャを持つB-b-W技術による電子ブレーキシステムでは、各車輪のブレーキトルクを完全に独立して管理することができる。
【0016】
このシステムは、ブレーキ車軸間に物理的な制約(油圧システム)がなく、ブレーキトルクを管理するためのバルブがないことで、マスタシリンダシステムと区別される。
【0017】
このようにして、ブレーキトルクを個々の車輪と車軸の間で独立して管理し、地面への最適なブレーキ力配分を達成することができる。
【0018】
ハイブリッド車や電気自動車の場合、電気モータの回生ブレーキ作用と、独立した車軸を持つ「マスタシリンダ」または「ブレーキバイワイヤ」のいずれかの電子ブレーキシステムによって作動する散逸ブレーキトルク作用との統合は、ブレーキシステムのサプライヤーやシステムインテグレーターが直面している技術的課題である。
【0019】
「マスタシリンダ」システムの現在の解決策は、回生動作を除外するか、または厳しく制限することであり、その結果、ブレーキ距離と方向性において車両性能を有利にする一方で、エネルギ回収にはペナルティを課している。
【0020】
この制限は、車輪のスリップがないサービスブレーキ条件下でも、ソレノイドバルブによるトルク圧調整が必要なグリップ限界のブレーキ条件下でも現れる。
【0021】
以上のことから、現在、車両が備える電気モータの回生ブレーキ作用と組み合わせて、停止距離、方向性、およびブレーキ安定性の点で車両性能(散逸ブレーキトルク)とエネルギ回生(回生ブレーキトルク)の両方を同時に最大化することにより、前述の制限を超えることを可能にする、B-b-W技術による適切に制御された分散型電子ブレーキシステムを備えるブレーキシステムの必要性が感じられている。
【発明の概要】
【0022】
本発明の概要
【0023】
本発明の目的は、車両のB-b-W技術によるブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合(ブレンド)して車輪のスリップを制御する方法を考案し、利用可能にすることであり、これにより、少なくとも部分的に可能となる、 特に、停止距離、方向性、およびブレーキ安定性の点で、車両性能(散逸ブレーキトルク)とエネルギ回生(回生ブレーキトルク)の両方を同時に、より効果的に最適化することが可能になる。
【0024】
このような目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0025】
本発明のさらなる目的は、車両のB-b-W技術によるブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合(ブレンド)して車輪のスリップを制御するためのシステムである。
【0026】
さらなる有利な実施形態は従属請求項の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図の簡単な説明
【0028】
本発明による方法およびシステムのさらなる特徴および利点は、添付の図を参照して、指示的な非限定的な例によって与えられる、好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう:
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御するシステムが採用可能な車両のB-b-W技術によるブレーキシステムアーキテクチャの一例をブロック図によって示している。
【
図2】
図2は、本発明の散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御するシステムが採用可能な車両のB-b-W技術によるブレーキシステムアーキテクチャの一例をブロック図によって示している。
【
図3】
図3は、本発明の散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御するシステムが採用可能な車両のB-b-W技術によるブレーキシステムアーキテクチャの一例をブロック図によって示している。
【
図4】
図4は、本発明の散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御するシステムが採用可能な車両のB-b-W技術によるブレーキシステムアーキテクチャの一例をブロック図によって示している。
【0030】
【
図5】
図5は、本発明による車両のB-b-W技術によるブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪スリップを制御するためのシステムをブロック図によって示している。
【0031】
【
図6】
図6は、ブロック図によって、
図5のシステムの機能ブロックを示している。
【0032】
【
図7】
図7は、機能ブロック図によって、
図6の機能ブロックの第1機能サブブロックを示す。
【0033】
【
図8】
図8は、機能ブロック図によって、
図6の機能ブロックの第2機能サブブロックを示す。
【0034】
【
図9】
図9は、ブロック図によって、本発明の実施形態による、車両のB-b-W技術によるブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御するための方法を示す。
【0035】
図中の等しいまたは類似の要素は、同じ数字または英数字の参照によって示されることは注目に値する。
【好ましい実施の形態】
【0036】
いくつかの好ましい実施形態の説明
【0037】
ここで前述の図を参照すると、参照数字100は、全体として、本発明による、車両のB-b-W技術を用いたブレーキシステムにおける散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとの混合(ブレンド)を用いて車輪のスリップを制御するためのシステム(以下、単に制御システムまたは唯一のシステムともいう。)を示している。
【0038】
以下により詳細に説明するように、本発明による「車輪スリップ制御」は、車両のB-b-W技術によるブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクの寄与と回生ブレーキトルクの寄与とを利用する。
【0039】
本明細書において、「車両」とは、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の車輪を有する、商用タイプでもある任意の車両またはモータサイクルを意味し、
図1~4に図式的にのみ示され、全体として参照数字1で示される。
【0040】
さらに、「ブレーキシステム」とは、車両のサービスブレーキの発生または車両のパーキングブレーキの発生に寄与するすべてのコンポーネント(機械的および/または電気的または電子的、さらにブレーキ液)の全体を意味する。
【0041】
図1、
図2、
図3および
図4を参照すると、車両1は、第1前輪W-A1および第2前輪W-A2が連結された第1前車軸F-Aを備える。
【0042】
例えば、第1前輪W-A1は左前輪であり、第2前輪W-A2は右前輪である。
【0043】
さらに、車両1は、第1後輪W-R1及び第2後輪W-R2が連結された第2後車軸R-Aを備える。
【0044】
例えば、第1後輪W-R1は左後輪であり、第2後輪W-R2は右後輪である。
【0045】
車両1は、ブレーキシステム2をさらに備える。
【0046】
システム100が使用可能なブレーキシステム2は、ブレーキバイワイヤ(B-b-W)技術を有するアーキテクチャである。
【0047】
ブレーキシステム2は、第1前車軸F-Aに作動的に接続された少なくとも1つの第1アクチュエータモジュール3を備える。
【0048】
ブレーキシステム2は、第2後車軸R-Aに作動的に連結された少なくとも1つの第2アクチュエータモジュール4をさらに備える。
【0049】
各アクチュエータモジュールは、車軸ごとに各車輪用の1つまたは複数のアクチュエータから構成される。
【0050】
各アクチュエータは、それぞれのアクチュエータ制御モジュールから受信した制御に基づいて、ブレーキ指令を実行するように適合されている。
【0051】
例えば、各アクチュエータ制御モジュールは、ブレーキシステム2またはより一般的には車両1の主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュールまたはソフトウェアロジックモジュールである。
【0052】
各アクチュエータは、電気機械式または電気油圧式のいずれかである。
【0053】
図1、
図2、
図3および
図4に示す実施形態では、第1前車軸F-Aに作動的に接続された少なくとも1つの第1アクチュエータモジュール3は、第1前輪W-A1および第2前輪W-A2の両方に作動的に接続されている。
【0054】
本実施形態において、第2後車軸R-Aに動作可能に連結された少なくとも1つの第2アクチュエータモジュール4は、第1後輪W-R1と第2後輪W-R2の両方に動作可能に連結される。
【0055】
実施形態では、
図1および
図3に示される上述のいずれか1つと組み合わせて、ブレーキシステム2は、第1前車軸F-Aに動作可能に連結された少なくとも1つの第1アクチュエータモジュール3に加えて、第1前車軸F-Aに動作可能に連結された少なくとも1つの第1電気モータM1をさらに備える。
【0056】
さらに、この実施形態では、ブレーキシステム2は、第2後車軸R-Aに動作可能に連結された少なくとも1つの第2アクチュエータモジュール4に加えて、第2後車軸R-Aに動作可能に連結された少なくとも1つの第2電気モータM2をさらに備える。
【0057】
各電気モータは、それぞれの電気モータ制御モジュールから受信した制御に基づいて、回生ブレーキトルクを提供するように適合されている。
【0058】
例えば、各電気モータ制御モジュールは、ブレーキシステム2またはより一般的には車両1の主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュールまたはソフトウェア論理モジュールである。
【0059】
図1および
図3を参照して説明したものに代わる、
図2および
図4に示すさらなる実施形態によれば、ブレーキシステム2は、第1前輪W-A1に作動可能に連結された少なくとも1つの第1電気モータM1と、第2前輪W-A2に作動可能に連結されたさらなる第1電気モータM1’とを備える。
【0060】
さらに、この実施形態では、ブレーキシステム2は、第1後輪W-R1に作動的に連結された少なくとも1つの第2電気モータM2と、第2後輪W-R2に作動的に連結されたさらなる第2電気モータM2’とを備える。
【0061】
この実施形態においても、各電気モータは、それぞれの電気モータ制御モジュールから受信した制御に基づいて、システム100が必要とする回生ブレーキトルクを提供するように適合されている。
【0062】
例えば、各電気モータ制御モジュールは、ブレーキシステム、より一般的には車両1の主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュールまたはソフトウェア論理モジュールである。
【0063】
図1、
図2、
図3および
図4のブレーキシステム2に概略的に戻ると、システム100は、車両1の電子制御ユニット5(または車両制御ユニット)、ECU(電子制御ユニット)から構成されており、これについては他の図も参照して以下に詳細に説明する。
【0064】
電子制御ユニット5は、少なくとも1つの第1アクチュエータモジュール3および少なくとも1つの第2アクチュエータモジュール4に動作可能に接続されている。
【0065】
図1及び
図2に示す実施形態では、電子制御ユニット5は、少なくとも1つの第1アクチュエータモジュール3及び少なくとも1つの第2アクチュエータモジュール4に直接接続されている。
【0066】
図3および
図4に示すさらなる実施形態によれば、ブレーキシステム2は、少なくとも1つの第1アクチュエータモジュール3および電子制御ユニット5、ひいてはシステム100に動作可能に接続された第1ローカル制御ユニット10を備える。
【0067】
第1ローカル制御ユニット10は、B-b-W技術の制御ユニットである。
【0068】
電子制御ユニット5は、第1ローカル制御ユニット10を介して、少なくとも1つの第1アクチュエータモジュール3に動作可能に接続される。
【0069】
第1ローカル制御ユニット10は、少なくとも1つの第1アクチュエータモジュール3、ひいては第1前車軸F-Aを制御するように構成されている。
【0070】
例えば、第1ローカル制御ユニット10は、ブレーキシステム2、又はより一般的には車両1の第1主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュール又はソフトウェアロジックである。
【0071】
さらに、この実施形態では、ブレーキシステム2は、第2前車軸R-Aおよび電子制御ユニット5、ひいてはシステム100に動作可能に接続された第2ローカル制御ユニット20を備える。
【0072】
第2ローカル制御ユニット20は、B-b-W技術の制御ユニットである。
【0073】
電子制御ユニット5は、第2ローカル制御ユニット20を介して、少なくとも1つの第2アクチュエータモジュール4に動作可能に接続されている。
【0074】
第2ローカル制御ユニット20は、少なくとも1つの第2アクチュエータモジュール4、ひいては第2後車軸R-Aを制御するように構成されている。
【0075】
例えば、第2ローカル制御モジュール20は、ブレーキシステム2又はより一般的には車両1の主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュール又はソフトウェアロジックである。
【0076】
図3の実施形態では、第1ローカル制御ユニット10は、少なくとも1つの第1アクチュエータモジュール3を制御するように構成されており、一方、第2ローカル制御ユニット20は、少なくとも1つの第2アクチュエータモジュール4を制御するように構成されている。
【0077】
一実施形態では、
図1、
図2、
図3および
図4に示される上述のいずれかと組み合わせて、システム100は、トラクションおよび回生ブレーキ制御モジュール6またはePWT(Electric Powertrain)制御モジュールをさらに備える。
【0078】
トラクションおよび回生ブレーキ制御モジュール6は、電子制御ユニット5に動作可能に接続されている。
【0079】
図1、
図2、
図3および
図4に示す実施形態では、電子制御ユニット5は、少なくとも1つの第1電気モータM1および少なくとも1つの第2電気モータM2に動作可能に接続されている。
【0080】
図1および
図2に示す実施形態によれば、電子制御ユニット5は、トラクションおよび回生ブレーキ制御モジュール6を介して、少なくとも1つの第1電気モータM1および少なくとも1つの第2電気モータM2に動作可能に接続されている。
【0081】
先のものと組み合わせて
図2および
図4に示されるさらなる実施形態によれば、ブレーキシステム2がさらなる第1電気モータM1’およびさらなる第2電気モータM2’をさらに備え、電子制御ユニット5は、トラクションおよび回生ブレーキ制御モジュール6を介して、少なくとも1つの第1電気モータM1、さらなる第1電気モータM1’、少なくとも1つの第2電気モータM2、およびさらなる第2電気モータM2’に動作可能に接続されている。
【0082】
先行するものの代替として、
図3に示されるさらなる実施形態によれば、ブレーキシステム2が第1ローカル制御ユニット10および第2ローカル制御ユニット20から構成される場合、電子制御ユニット5は、トラクションおよび回生ブレーキ制御モジュール6を介して、第1ローカル制御ユニット10を介して、少なくとも1つの第1電気モータM1ni動作可能に接続される。
【0083】
この実施形態では、電子制御ユニット5は、トラクションおよび回生ブレーキ制御モジュール6を介して、第2ローカル制御ユニット20を介して、少なくとも1つの第2電気モータM2に動作可能に接続されている。
【0084】
システム100の概略に戻ると、
図1、
図2、
図3および
図4に示す実施形態によれば、電子制御ユニット5は、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとの混合(ブレンド)を備えた主車輪スリップ制御モジュール7(以下、単に主車輪スリップ制御モジュール7ともいう。)をさらに備える。
【0085】
車輪スリップとは、車輪速度と車速の相対差による車輪の挙動を意味する。
【0086】
例えば、以下、他の図も参照して説明する主車輪スリップ制御モジュール7は、ブレーキシステム2またはより一般的には車両1の主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュールまたはソフトウェアロジックである。
【0087】
図1、
図2、
図3、および
図4に示す実施形態によれば、システム100は、電子制御ユニット5に動作可能に接続されたセンサユニット8をさらに備える。
【0088】
システム100の「センサユニット」は、以下のセットを意味する。
【0089】
B-b-W技術を備えたブレーキシステム2の外側で車両1に配設された第1の複数のセンサと、車両1に配設されたそれぞれのデータ通信ネットワーク。通信ネットワークは、第1の複数のセンサによって検出された信号を、B-b-W技術を備えたブレーキシステム2に送信する。第1の複数のセンサに属するセンサの例としては、3方向の車両加速度の値を取得することができる慣性プラットフォームと、車両の車輪速度を取得することができる車輪速度検出センサが挙げられる。
【0090】
B-b-W技術によるブレーキシステム2に配設された第2の複数のセンサ。第2の複数のセンサに属するセンサの例としては、ブレーキシステム内のブレーキ液圧センサ、ブレーキキャリパのクランプ力検出センサ、B-b-W技術によるブレーキシステムの電気モータの巻線の温度センサ、B-b-W技術によるブレーキシステムの電気モータのロータ位置センサ、および車輪ブレーキトルク検出センサが挙げられる。
【0091】
次に、
図5の機能図も参照して、本発明による車両のB-b-W技術を用いたブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合して車輪のスリップを制御するためのシステム100をより詳細に説明する。
【0092】
主車輪スリップ制御モジュール7は、車輪スリップ制御サブモジュール30から構成される。
【0093】
さらに、主車輪スリップ制御モジュール7は、ブレーキ回生サブモジュール40から構成される。
【0094】
車輪スリップ制御サブモジュール30とブレーキ回生サブモジュール40とは、互いに動作可能に接続されている。
【0095】
例えば、以下に説明する車輪スリップ制御サブモジュール30は、ブレーキシステム2、より一般的には車両1の主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュールまたはソフトウェアロジックである。
【0096】
例えば、ブレーキ回生サブモジュール40は、以下により詳細に説明されるが、ブレーキシステム2またはより一般的には車両1の主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュールまたはソフトウェアロジックである。
【0097】
再び
図5を参照すると、電子制御ユニット5はさらに、主車輪スリップ制御モジュール7に作動的に接続された、B-b-W技術によるブレーキシステム2の制御サブモジュール50を含んでいる。
【0098】
例えば、B-b-W技術によるブレーキシステム2の制御サブモジュール50は、ブレーキシステム2またはより一般的には車両1の主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュールまたはソフトウェアロジックである。
【0099】
B-b-W技術を備えたブレーキシステム2の制御サブモジュール50は、それぞれのプログラムコードの実行を通じて、車両1の運転手によって提供されるブレーキ要求に基づいて、および/または車両1が備えることができる自律ブレーキシステムからのブレーキ要求に基づいて、基本ブレーキ(散逸ブレーキ)のための力を決定するように構成される。
【0100】
さらに、電子制御ユニット5は、車両状態推定サブモジュール60をさらに備えており、このサブモジュールは、主車輪スリップ制御モジュール7に動作可能に接続されている。
【0101】
例えば、車両状態推定サブモジュール60は、ブレーキシステム2又はより一般的には車両1の主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュール又はソフトウェアロジックである。
【0102】
車両状態推定サブモジュール60は、それぞれのプログラムコードの実行を通じて、主車輪スリップ制御モジュール7に提供されるべき車両1の状態を代表する情報を推定するように構成される。
【0103】
図6を参照すると、車輪スリップ制御サブモジュール30は、車輪スリップを制御するための第1の複数の入力情報P-I1(以下、第1の複数の入力情報P-I1のみも同様)を入力として受け取るように構成されている。
【0104】
本明細書において、「車輪のスリップを制御するための第1の複数の入力情報P-I1」とは、本発明に従って車輪のスリップを制御するために不可欠な情報を意味し、例えば、車両、したがってコーナ(車両の前部または後部)にも設置された検出装置(実センサまたは仮想センサ)によって検出および/または推定された情報などであるが、必ずしも車両1のブレーキシステムに関連する情報および/または車輪のスリップ制御中に処理される情報だけとは限らない。
【0105】
第1の複数の入力情報P-I1は、以下のものを含む。
【0106】
車輪スリップ設定値S-P。
【0107】
車輪スリップ条件値W-S。
【0108】
散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FD。この値は、ブレーキシステムのブレーキ液圧センサおよび/またはブレーキキャリパのクランプ力検出センサからの代表的なブレーキ液圧情報および/または代表的なブレーキキャリパのクランプ力情報に基づく推定値とすることができる。
【0109】
回生ブレーキトルクフィードバック値F-FR。この値は、トラクションおよび回生ブレーキ制御モジュール6(ePWT制御モジュール)からの情報、または一般にePWT制御システム/ユニットからの情報である。
【0110】
車輪スリップ制御有効化値E-SC。
【0111】
一つまたは複数の車両離散イベントS-Eを代表する情報。「離散イベント」とは、車両状態推定サブモジュール60の出力である車両イベント/指示を意味し、例えば、車両路面グリップの変化(例えば、スプリット、ジャンプなど)、駐車操作などである。
【0112】
車輪スリップ設定値S-Pは、車両1の速度、車両1の路面グリップ、及び車両1のブレーキペダルの作動速度の関数である。
【0113】
車輪スリップ設定値S-Pは、車両状態に応じてケースバイケースで変化することは注目に値する。
【0114】
より詳細には、車輪スリップ設定値S-Pは、車両および路面状態を分析し、最適な設定値を定義する計算機能の結果である。
【0115】
車輪スリップ制御サブモジュール30は、受信した第1の複数の入力情報P-I1に基づいて、車両1のコーナ部に付与すべきブレーキトルク要求値CFと、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFとを決定するように構成されている。
【0116】
「ブレーキトルク制御コンポーネント」とは、例えば、ブレーキトルク制御変数の低周波/低ダイナミック成分等のブレーキトルク制御の積分成分を意味する。
【0117】
車輪スリップ制御サブモジュール30は、車両1のコーナ部に作用させるブレーキトルク要求CF、決定されたブレーキトルク制御コンポーネントP-CF及び有効化された車輪スリップ制御確認値F-Cをブレーキ回生サブモジュール40に提供するように構成されている。
【0118】
ブレーキ回生サブモジュール40は、車両1のコーナ部に作用させるブレーキトルク要求値CFと、車輪スリップ制御サブモジュール40から供給されるブレーキトルク制御コンポーネントP-CFと、有効化された車輪スリップ制御確認値F-Cとを入力として受け取るように構成されている。
【0119】
さらに、ブレーキ回生サブモジュール40は、車輪のスリップを制御するための第2の複数の入力情報P-I2を、後に第2の複数の入力情報P-I2のみを受信するように構成される。
【0120】
本明細書において、「車輪のスリップを制御するための第2の複数の入力情報P-I1」とは、本発明に従って車輪のスリップを制御するために不可欠な情報を意味し、例えば、車両、したがってコーナ(車両の前部または後部)にも設置された検出装置(実センサまたは仮想センサ)によって検出および/または推定された情報であるが、必ずしも車両1のブレーキシステムに関連する情報および/または車輪のスリップ制御中に処理される情報のみである必要はない。
【0121】
第2の複数の入力情報P-I2は、以下のものを含む。
【0122】
車輪スリップ状態値W-S。
【0123】
少なくとも1つの車両状態推定値S-V(路面上の車両のグリップの推定値など)。
【0124】
利用可能な回生ブレーキトルク値A-FR。この値は、トラクションおよび回生ブレーキ制御モジュール6によって、データ通信ネットワークまたは専用の電気接続を介して、主車輪スリップ制御モジュール7に提供される。
【0125】
ブレーキ回生サブモジュール40は、入力有効化信号I-Mの状態に基づいて、車両1のコーナに加えられるブレーキトルク要求CFの関数として、またはブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として、また第2の複数の入力情報P-I2の関数として、および車輪スリップ制御サブモジュール30から受信された有効化車輪スリップ制御確認値F-Cの関数として、回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するように構成される。
【0126】
有効化入力状態I-Mが無効である場合、ブレーキ回生サブモジュール40は、ブレーキトルク要求CFの関数として回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するように構成される。
【0127】
有効化入力状態I-Mが有効の場合、ブレーキ回生サブモジュール40は回生ブレーキトルク指令C-FRをブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として決定するように構成される。
【0128】
更に、ブレーキ回生サブモジュール40は、ブレーキトルク要求CF及びブレーキ回生サブモジュール40により決定された回生ブレーキトルク指令C-FRの関数として散逸ブレーキトルク指令C-FDを決定するように構成されている。
【0129】
次に
図7を参照すると、一実施形態によれば、車輪スリップ制御サブモジュール30は車輪スリップ制御ブロック70からなる。
【0130】
スリップ制御ブロック70は、車両1の単一の車輪コーナに作用するように構成されている。
【0131】
したがって、車輪スリップ制御サブモジュール30は、車両1の各車輪コーナ用の車輪スリップ制御ブロック70から構成される。
【0132】
説明を簡潔にするため、以下では、単一の車輪スリップブロック70および車輪スリップ制御サブモジュール30に関する説明は、車両1の別の車輪コーナに存在する他の車輪スリップブロック70に対しても有効であることを念頭に置いて、車両1の単一の車輪コーナの1つの車輪スリップ制御ブロック70についてのみ言及する。
【0133】
例えば、スリップ制御ブロック70は、ブレーキシステム2、より一般的には、車両1のメインハードウェアモジュール内のハードウェアモジュールまたはソフトウェアロジックモジュールまたはPIDコントローラまたは離散的かつ非線形ソフトウェアロジックである。
【0134】
スリップ制御サブモジュール30は、車輪スリップ制御の作動を確認するように構成されている。
【0135】
この点に関して、
図7に示す実施形態では、車輪スリップ制御サブモジュール30は、車輪スリップ状態値W-Sと車輪スリップ設定値S-Pとを比較するように構成された比較ブロックC1をさらに備える。
【0136】
車輪スリップ制御サブモジュール30によって実行される比較の結果は、車輪スリップ制御の起動を有効化するか無効化するかのいずれかである。
【0137】
例えば、
【0138】
W-S≧S-Pの場合、F-Cが「真」のフラグとして設定される。
【0139】
スリップ制御ブロック70は、車輪のスリップ制御作動を確認した後、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFをIZ初期化するステップを実行するように構成される。
【0140】
さらに、車輪スリップ制御の起動と、設定された車両離散イベントS-E(路面グリップの負または正のジャンプ、スプリット、またはシステムと相互作用する他の制御モジュール(例えば、車両安定性制御)の起動など)の検出の後、車輪スリップ制御ブロック70は、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFをリセットするステップAZを実行するように構成される。
【0141】
スリップ制御ブロック70は、初期化するステップにおいて、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの値を、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FD、回生ブレーキトルクフィードバック値F-FR、および初期値IQの関数として決定するように構成される。
【0142】
初期値IQは、車両1のグリップ、車両1の車軸、車輪スリップ状態値W-S、離散的な車両イベントタイプの関数である。
【0143】
より詳細には、初期値IQは、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FDおよび回生ブレーキトルクフィードバック値F-FRに基づいて、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FDおよび回生ブレーキトルクフィードバック値F-FRの和に適用される「カットオフ」割合を表す値を提供する関数/ルックアップテーブルの出力である。例えば、「カットオフ」パーセンテージは0.1と1の間で構成される値であり、0.1は散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FDと回生ブレーキトルクフィードバック値F-FRの和に適用される10%である。
【0144】
これに関して、実施形態では、車輪スリップ制御サブモジュール30は、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FDを回生ブレーキトルクフィードバック値F-FRに加算するように構成された加算器ブロックC2をさらに備える。
【0145】
この実施形態では、初期化するステップにおいて、スリップ制御ブロック70は、以下の数学的関係を適用することによってブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの値を決定するように構成されている。
【0146】
P-CF=(F-FD+F-FR)×IQ(1)。
【0147】
スリップ制御ブロック70は、リセットするステップにおいて、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの値を、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FD、回生ブレーキトルクフィードバック値F-FR、および初期値IQ(上記で定義)の関数として決定するように構成される。
【0148】
この点に関して、車輪スリップ制御サブモジュール30が、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FDを回生ブレーキトルクフィードバック値F-FRに加算するように構成された加算器ブロックC2を備える実施形態では、車輪スリップ制御ブロック70は、リセットするステップにおいても、数学的関係(1)を適用することによってブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの値を決定するように構成される。
【0149】
リセットするステップは、運転条件の急激な変化に直面して車輪スリップ制御をより速く変更させるために、離散的な車両イベント検出の存在下で実行されることは注目に値する。
【0150】
スリップ制御ブロック70は、初期化およびリセットのステップの後、閉ループにおいて、車輪スリップ状態値W-Sと車輪スリップ設定値S-Pとの誤差を最小化することにより、ブレーキトルク要求値CFおよびブレーキトルク制御コンポーネントP-CFを決定するように構成される。
【0151】
「クローズドループ判定」とは、ある量の設定値(所望の値)がその測定値(この場合、車輪スリップ設定値S-Pおよび車輪スリップ条件値W-S)と比較され、制御量(この場合、ブレーキトルク要求値CFおよびブレーキトルク制御コンポーネントP-CF)の値が制御ロジックの出力として定義される、それ自体既知の制御モードを意味することは注目に値する。
【0152】
ブレーキトルク要求CFは、異なる制御動作(例えば、比例、積分、微分、非線形)を計算した結果であることは注目に値する。
【0153】
より詳細には、ブレーキトルクの要求は、車輪のスリップ制御に適用可能な任意の制御ロジックから生じることができる。
【0154】
本出願人は、ブレーキトルク(車輪スリップ制御)を計算する方法の他に、そのブレーキトルク制御コンポーネントの一方(例えば、回生に使用することができる低周波数部分)と散逸ブレーキ部分に使用することができる高周波数部分)のみを考慮する可能性として、本発明の発明的側面の1つを指摘する。
【0155】
例えば、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFは一体部分である。
【0156】
より詳細には、前記積分部分は、車輪スリップロジックによって計算される制御/ブレーキトルク変数の低周波数成分である。
【0157】
この成分は、回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するために、主車輪スリップ制御モジュール7(特に、ブレーキ回生サブモジュール40)において後に使用される。
【0158】
次に
図8を参照すると、ブレーキ回生サブモジュール40は、第1の複数の情報P-I1のサブセットを受信するように構成された第1処理ブロック41を備える。
【0159】
前記サブセットは以下からなる。
【0160】
車輪スリップ状態値W-S。
【0161】
さらに、第1処理ブロック41は、第2の複数の情報P-I2のサブセットを受信するように構成される。
【0162】
前記サブセットは、以下からなる。
【0163】
少なくとも1つの車両状態推定値S-V。
【0164】
さらに、第1処理ブロック41は、有効化された車輪スリップ制御確認値F-Cを受信するように構成される。
【0165】
第1処理ブロック41は、回生ゲイン値R-Gを決定するように構成される。
【0166】
回生ゲイン値R-Gに関する情報によって、個々の車輪に加えられるべき回生ブレーキトルク部分を決定することが可能になることは注目に値する。
【0167】
より詳細には、第1処理ブロック41は、回生ゲイン値R-Gを第1乗算係数G-Dと第2乗算係数S-Gとの線形結合として決定するように構成されている。
【0168】
第1乗算係数G-Dは、車両1の横方向のダイナミクスを代表する量の関数である。
【0169】
これらの量は、車両、したがってコーナ(車両の前部または後部)にも設置された検出装置(実センサまたは仮想センサ)によって検出することができるが、必ずしも車両1のブレーキシステムに関連するだけでなく、システム100の他の機能ブロックまたは車両1一般によって実行される処理によって推定することもできる。
【0170】
車両状態推定サブモジュール60に含まれる他の機能ブロックの例としては、基準速度、車輪スリップ、車両加速度、車体スリップ角などの車両量を計算するように構成されたサブモジュールを挙げることができる。
【0171】
横方向のビークルダイナミクス1の代表的な量は、以下のものを含む。
【0172】
車両のヨーレート。
【0173】
車両のボディスリップ角。例えば、車両の重心を原点とする基準系が考慮される場合、ボディスリップ角は、平面上の結果速度ベクトルと上記基準系の縦軸との間の角度である。また、車体スリップ角は、前記基準系におけるXY平面上の「結果速度ベクトル」の成分を構成するベクトルをVy及びVxとすると、三角関数式Atan(Vy/Vx)によって定義することもできる。
【0174】
車両の横加速度。
【0175】
ステアリングホイールの角度。
【0176】
第1乗法係数G-Dは、車両1の横方向のダイナミクス及び車両1の横方向のダイナミクスを表す量が重要な意味を持つ条件下でブレーキ操作が行われる状態を代表するそれぞれの最大値と、車両1の横方向のダイナミクスがブレーキ操作によって影響を受けない状態を代表するそれぞれの最小値との間で構成される。
【0177】
第2乗算係数S-Gは、車輪スリップ条件値W-Sの関数である。
【0178】
この値は、車両、したがってコーナ(車両の前部または後部)にも設置された検出装置(実センサまたは仮想センサ)が提供する検出値から得ることができるが、必ずしも車両1のブレーキシステムにのみ関連する必要はなく、システム100の他の機能ブロックまたは車両1一般によって実行される処理によって推定することもできる。
【0179】
他の機能ブロックの例としては、基準速度、車輪スリップ、車両加速度、車体スリップ角などの車両量を計算するように構成されたサブモジュールを挙げることができる。
【0180】
より詳細には、第1処理ブロック41は、車輪スリップ条件値W-Sを第1最大閾値W-Smax及び第2最小閾値W-Sminと比較することにより、決定された第2乗算係数S-Gを、設定された最大値S-Gmaxと設定された最小値S-Gminとの間に構成されるように維持するために、第2乗算係数S-Gを決定するように構成される。
【0181】
W-Smin<W-S<W-Smaxである場合、
【0182】
S-G=(W-Smax-W-S)/(W-Smax-W-Smin)である。
【0183】
W-S<W-Sminの場合、
【0184】
S-G=S-Gminである。
【0185】
W-S>W-Smaxの場合、
【0186】
S-G=S-Gmaxである。
【0187】
第2乗法係数S-Gの決定は、第1処理ブロック41によって、車両1のブレーキ中に、従って車輪スリップ制御作動前に、実行されることは注目に値する。
【0188】
従って、第2乗法係数S-Gの決定中に、有効化された車輪スリップ制御確認値F-Cがフラグとして「偽」に設定される。
【0189】
第1処理ブロック41は、第1乗算係数G-Dと第2乗算係数S-Gとを互いに乗算して回生ゲイン値R-Gを決定するように構成されている。
【0190】
R-G=G-D×S-Gである。
【0191】
再び
図8を参照すると、ブレーキ回生サブモジュール40は、第1処理ブロック41の下流側に配置された第2処理ブロック42を含んで構成されている。
【0192】
第2処理ブロック42は、第1処理ブロック41によって決定された回生ゲイン値S-Gと、利用可能な回生ブレーキトルク値A-FRを入力として受け取るように構成されている。
【0193】
利用可能な回生ブレーキトルク値A-FRは、車両1に存在する電気モータおよびバッテリ制御システムに存在するデータ処理ユニットによって提供され得るか、または本発明による車輪スリップ制御に寄与するように構成された別の機能ブロックによって提供され得る。
【0194】
第2処理ブロック42は、第1処理ブロック41によって決定された回生ゲイン値S-Gと利用可能な回生ブレーキトルク値A-FRとの関数として、最大回生ブレーキトルク値C-Mを決定するように構成される。
【0195】
より詳細には、第2処理ブロック42は、第1処理ブロック41により決定された回生ゲイン値S-Gと利用可能回生ブレーキトルク値A-FRとを乗算することにより、最大回生ブレーキトルク値C-Mを決定するように構成されている。
【0196】
C-M=S-G×A-FRである。
【0197】
再び
図8を参照すると、ブレーキ回生サブモジュール40は、第2処理ブロック42の下流に配置された第3処理ブロック43(または混合-配合-管理ブロック)を含む。
【0198】
第3処理ブロック43は、第2処理ブロック42によって決定された最大回生ブレーキトルク値C-Mと、有効化された車輪スリップ制御確認値F-Cと、車両1のコーナに印加すべきブレーキトルク要求CFと、スリップ制御ブロック70によって決定されたブレーキトルク制御コンポーネントP-CFとを入力として受け取るように構成されている。
【0199】
第3処理ブロック43は、第3乗算係数A-Gを決定するように構成される。
【0200】
第3乗算係数A-Gは、車両1の推定グリップ値I-Aの関数である。
【0201】
この値は、車両、したがってコーナ(車両の前部または後部)にも設置された検出装置(実センサまたは仮想センサ)によって提供される検出値から得ることができるが、必ずしも車両1のブレーキシステムに関連するだけでなく、システム100または車両1の他の機能ブロックによって実行される処理によって推定することもできる。
【0202】
他の機能ブロックの例としては、基準速度、車輪スリップ、車両加速度、車体スリップ角などの車両量を計算するように構成されたサブモジュールを挙げることができる。
【0203】
より詳細には、第3処理ブロック43は、グリップ推定値I-Aを第1最大閾値I-Amaxおよびそれぞれの第2最小閾値I-Aminと比較して、決定された第3乗算係数A-Gを、設定された最大値A-Gmaxと設定された最小値A-Gminとの間に構成されるように維持することによって、第3乗算係数A-Gを決定するように構成される。
【0204】
設定最大値A-Gmaxは、回生ブレーキトルク回生能力を大幅に低下させる必要がない条件である。
【0205】
一方、設定最小値A-Gminは、回生ブレーキトルク回生能力の減少値を最大にする必要がある条件である。
【0206】
I-Amin<I-A<I-Amaxならば、
【0207】
A-G=(A-Gmax-I-A)/(I-Amax-I-Amin)とする。
【0208】
I-A<I-Aの場合、
【0209】
A-G = A-Gmin。
【0210】
I-A > I-Amax ならば
【0211】
A-G = A-Gmax。
【0212】
第3処理ブロック43は、有効化入力信号I-Mの状態に基づいて、ブレーキトルク要求CFまたはP-CFブレーキトルク制御コンポーネントの関数として回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するように構成されている。
【0213】
有効化入力信号I-Mは、一般に、システム100または車両1の他の機能ブロックから来ることができる。
【0214】
有効化入力信号の状態は、有効または無効にすることができる。
【0215】
有効化入力状態I-Mが無効である場合、処理第3ブロック43は、ブレーキトルク要求CFの関数として回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するように構成される。
【0216】
有効化入力状態I-Mが有効である場合、第3処理ブロック43は、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するように構成される。
【0217】
より詳細には、有効化入力I-Mが無効化されている場合、第3処理ブロック43は、ブレーキトルク要求CFと第2処理ブロック42によって決定された最大回生ブレーキトルク値C-Mとの間の最小値として回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するように構成される。
【0218】
I-Mが無効である場合、
【0219】
C-FR=min(CF,C-M)。
【0220】
有効化入力I-Mが有効の場合、第3処理ブロック43は、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFと第2処理ブロック42で決定された回生ブレーキトルク最大値C-Mとの最小値として回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するように構成されている。
【0221】
I-Mが有効である場合、
【0222】
C-FR=min(P-CF,C-M)である。
【0223】
さらに、第3処理ブロック43は、ブレーキトルク要求CFと第3処理ブロック43によって決定された回生ブレーキトルク指令C-FRの関数として、散逸ブレーキトルク指令C-FDを決定するようにさらに構成される。
【0224】
より詳細には、実施形態では、第3処理ブロック43は、散逸ブレーキトルク指令C-FDを、ブレーキトルク要求CFと第3処理ブロック43によって決定された回生ブレーキトルク指令C-FRとの差として決定するように構成される。
【0225】
C-FD=CF-C-FRである。
【0226】
次に、本発明による、B-b-W技術による車両ブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合(ブレンド)して車輪のスリップを制御するための方法900を、前述の図および
図9のブロック図を参照して説明する。
【0227】
なお、方法の説明とともに後述する構成要素および情報は、システム100を参照して既に前述されているので、簡潔にするために繰り返さない。
【0228】
方法900は、STを開始する象徴的なステップを備える。
【0229】
方法900は、車両1のブレーキシステム2の電子制御ユニット5の散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとの混合(ブレンド)を伴う車輪スリップ主制御モジュール7の車輪スリップ制御サブモジュール30(以下、単に車輪スリップ主制御モジュール7のみ)によって、車輪スリップを制御するための第1の複数の入力情報P-I1(以下、単に第1の複数の入力情報P-I1とも)を受信するステップ901を備える。
【0230】
第1の複数の入力情報P-I1は、上記で定義され、説明された。
【0231】
方法900はさらに、車輪スリップ制御サブモジュール30によって、受信した第1の複数の入力情報P-I1に基づいて、車両1のコーナに印加すべきブレーキトルク要求CFとブレーキトルク制御コンポーネントP-CFとを決定するステップ902を含む。
【0232】
方法900はさらに、車輪スリップ制御サブモジュール30によって、車両1のコーナに適用すべきブレーキトルク要求CFと、決定されたブレーキトルク制御コンポーネントP-CFと、有効化された車輪スリップ制御確認値F-Cとを、車両1のブレーキシステム2の電子制御ユニット5の主車輪スリップ制御モジュール7のブレーキ回生サブモジュール40に提供するステップ903を含む。
【0233】
方法900はさらに、ブレーキ回生サブモジュール40によって、車輪スリップを制御するための第2の複数の入力情報P-I2(以下、第2の複数の入力情報P-I2のみも同様)を受信するステップ904を含む。
【0234】
第2の複数の入力情報P-I2は、上記で定義され、説明された。
【0235】
方法900はさらに、ブレーキ回生サブモジュール40によって、入力有効化信号I-Mの状態に基づき、第2の複数の入力情報P-I2および車輪スリップ制御サブモジュール30から受信された有効化車輪スリップ制御確認値F-Cの関数として、車両1のコーナに加えられるブレーキトルク要求CFまたはブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として、回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するステップ905を含んでいる。
【0236】
有効化入力信号I-Mは、制御モジュールの静的設定によって、較正のステップ中に、すなわち「先験的に」決定されるか、または動作モードを決定する車両1の電子制御ユニット5内の別の制御モジュールによって決定されるかのいずれかである。
【0237】
いずれの場合においても、有効化入力信号I-Mは、次のようにすることができる。
【0238】
グリップ推定値I-Aが存在しないか、または信頼できないと考えられる場合の「無効化」値。
【0239】
その他の場合の「有効化」値。
【0240】
有効化入力状態I-Mがディスエーブルである場合、ブレーキ回生サブモジュール40によって、ブレーキトルク要求CFの関数として回生ブレーキトルク指令C-FRを求める決定ステップ905が実行される。
【0241】
有効化入力状態I-Mが有効である場合、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として回生ブレーキトルク指令C-FRを得るために、ブレーキ回生サブモジュール40によって決定するステップ905が実行される。
【0242】
方法900はさらに、ブレーキ回生サブモジュール40によって、ブレーキトルク要求CFの関数として、およびブレーキ回生サブモジュール40によって決定された回生ブレーキトルク指令C-FRの関数として、散逸ブレーキトルク指令C-FDを決定するステップ906を含んでいる。
【0243】
方法900はさらに、EDを終了する象徴的なステップを含んでいる。
【0244】
一実施形態では、先行するものと組み合わされ、
図9に破線で示されているように、方法900は、車輪スリップ制御サブモジュール30によって、車輪スリップ制御の起動を検証するステップ907を含んでいる。
【0245】
実施形態では、先のものと組み合わせて、検証するステップ907は、スリップ制御サブモジュール30の比較ブロックC1によって、車輪スリップ条件値W-Sと車輪スリップ設定値S-Pとを比較するステップ908を含んでいる。
【0246】
一実施形態によれば、先のものと組み合わせて、
図9に破線で示すように、方法900は、車輪スリップ制御の起動に続いて、スリップ制御サブモジュール30のスリップ制御ブロック70によって、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFを初期化IZするステップ909を実行するステップをさらに含んでいる。
【0247】
図9に破線で示す実施形態では、IZを初期化するステップ909を実行するステップは、初期化するステップにおいて、スリップ制御サブモジュール30のスリップ制御ブロック70によって、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの値を、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FD、回生ブレーキトルクフィードバック値F-FR、および初期値IQの関数として決定するステップ910を含んでいる。
【0248】
散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FD、回生ブレーキトルクフィードバック値F-FRおよび初期値IQは、上述したとおりである。
【0249】
さらに、一実施形態によれば、先行するものと組み合わせて、
図9に破線で示すように、方法900は、車輪スリップ制御の起動および設定された離散的な車両イベントE-Sの検出に続いて、スリップ制御サブモジュール30のスリップ制御ブロック70によって、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFをリセットするステップAZを実行するステップ911をさらに含む。
【0250】
一実施形態では、先のものと組み合わせて、
図9に破線で示すように、AZをリセットするステップ911を実行するステップは、車輪スリップ制御サブモジュール30の加算器ブロックC2ブロックによって、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FDを回生ブレーキトルクフィードバック値F-FRに加算するステップ912を含んでいる。
【0251】
一実施形態では、先のものと組み合わせて、方法900は、IZを初期化するステップとAZをリセットするステップの後に、スリップ制御ブロック70によって、閉ループで、ブレーキトルク要求CFと、車輪スリップ条件値W-Sと車輪スリップ設定点値S-Pとの間の誤差を最小にするブレーキトルク制御コンポーネントP-CFとを決定するステップ913を含んでいる。
【0252】
実施形態によれば、上記のいずれか1つと組み合わせて、車両1のコーナ部に加えられるブレーキトルク要求CFまたはブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するステップ905は、ブレーキ回生サブモジュール40の第1処理ブロック41によって、回生ゲイン値R-Gを決定するステップ914を含んでいる。
【0253】
より詳細には、実施形態では、先のものと組み合わせて、回生ゲイン値R-Gは、ブレーキ回生サブモジュール40の第1処理ブロック41によって、第1乗算係数G-Dと第2乗算係数S-Gとの線形結合として決定される。
【0254】
実施形態では、先のものと組み合わせて、回生ゲイン値R-Gは、第1処理ブロック41によって、第1乗算係数G-Dと第2乗算係数S-Gとを互いに乗算することによって決定される。
【0255】
第1乗算係数G-Dは、車両1の横方向のダイナミクスを代表する量の関数である。
【0256】
第1乗法係数G-Dは、車両1の横方向ダイナミクス及び車両1の横方向ダイナミクスを代表する量が重要な意味を有する条件下でブレーキ操作が行われる状態を代表するそれぞれの最大値と、車両1の横方向ダイナミクスがブレーキ操作によって影響を受けない状態を代表するそれぞれの最小値との間で構成されるように決定される。
【0257】
第2乗算係数S-Gは、車輪スリップ条件値W-Sの関数である。
【0258】
回生ゲイン値R-Gを決定するステップ914は、ブレーキ回生サブモジュール40の第1処理ブロック41によって、車輪スリップ状態値W-Sを第1最大閾値W-Smaxおよび第2最小閾値W-Sminと比較して、決定された第2乗算係数S-Gが設定最大値S-Gmaxと設定最小値S-Gminとの間に構成されるように、第2乗算係数S-Gを決定するステップ915を含んでいる。
【0259】
一実施形態によれば、先行するものと組み合わせて、
図9に破線で示すように、車両1のコーナに加えられるブレーキトルク要求CFの関数として、またはブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として、回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するステップ905は、入力として受信するステップ916を含んでいる、第1処理ブロック41の下流に配置されたブレーキ回生サブモジュール40の第2処理ブロック42によって、第1処理ブロック41によって決定された回生ゲイン値S-Gと、利用可能な回生ブレーキトルク値A-FRを入力として受け取るステップ916を含んでいる。
【0260】
この実施形態では、車両1のコーナ部またはブレーキトルク制御コンポーネントP-CFに加えられるブレーキトルク要求CFの関数として回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するステップ905は、第2処理ブロック42によって、第1処理ブロック41によって決定された回生ゲイン値S-Gと利用可能な回生ブレーキトルク値A-FRとの関数として最大回生ブレーキトルクC-Mを決定するステップ917を含んでいる。
【0261】
実施形態では、先のものと組み合わせて、最大回生ブレーキトルク値C-Mは、第2処理ブロック42によって、第1処理ブロック41によって決定された回生ゲイン値S-Gと利用可能回生ブレーキトルク値A-FRとを互いに乗算することによって決定される。
【0262】
実施形態によれば、先行するものと組み合わせて、
図9に破線で示すように、車両1のコーナ部に加えられるブレーキトルク要求CFの関数として、またはブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として、回生ブレーキトルク指令C-FRを決定するステップ905は、入力として918を受信するステップをさらに含んでいる、第2処理ブロック42の下流に配置されたブレーキ回生サブモジュール40の第3処理ブロック43によって、第2処理ブロック42によって決定された最大回生ブレーキトルク値C-Mと、有効化された車輪スリップ制御確認値F-Cと、車両1のコーナ部に加えられるブレーキトルク要求CFと、スリップ制御ブロック70によって決定されたブレーキトルク制御コンポーネントP-CFとを入力として受け取るステップ918をさらに含む。
【0263】
この実施形態では、車両1のコーナ上に加えられるブレーキトルク要求CFまたはブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として回生ブレーキトルク制御C-FRを決定するステップ905は、第3処理ブロック43によって、第3乗算係数A-Gを決定するステップ919をさらに含み、第3乗算係数A-Gは、車両1の推定グリップ値I-Aの関数である。
【0264】
実施形態では、先のものと組み合わせて、第3乗算係数A-Gは、第3処理ブロック43によって、グリップ推定値I-Aを第1最大閾値値I-Amaxおよびそれぞれの第2最小閾値I-Aminと比較して、決定された第3乗算係数A-Gが、設定された最大値A-Gmaxと設定された最小値A-Gminとの間に構成されるように維持することによって、決定される。
【0265】
設定最大値A-Gmaxは、回生ブレーキトルク回生能力を大幅に低下させる必要がない条件である。
【0266】
一方、設定最小値A-Gminは、回生ブレーキトルク回生能力の減少値が最大となる必要がある条件である。
【0267】
本実施形態では、第3処理ブロック43により、車両1のコーナ部に作用させるブレーキトルク要求CFの関数としての回生ブレーキトルク指令C-FR、またはブレーキトルク制御部品P-CFの関数としての回生ブレーキトルク指令C-FRを、入力有効化信号I-Mの状態に基づいて決定するステップ905をさらに備える。
【0268】
入力有効化信号I-Mについては前述した。
【0269】
有効化入力状態I-Mが無効である場合、回生ブレーキトルク指令C-FRは、第3処理ブロック43によって、ブレーキトルク要求CFの関数として決定される。
【0270】
有効化入力状態I-Mが有効の場合、回生ブレーキトルク指令C-FRは、第3処理ブロック43により、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として決定される。
【0271】
より詳細には、有効化入力状態I-Mが無効である場合、回生ブレーキトルク指令C-FRは、第3処理ブロック43により、ブレーキトルク要求値CFと第2処理ブロック42により決定された最大回生ブレーキトルク値C-Mとの間の最小値として決定される。
【0272】
有効化入力状態I-Mが有効であれば、第3処理ブロック43により、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFと第2処理ブロック42により決定された最大回生ブレーキトルク値C-Mとの最小値として、回生ブレーキトルク指令C-FRが決定される。
【0273】
一実施形態では、先のものと組み合わせて、
図9に破線で示すように、ブレーキトルク要求CFの関数として、およびブレーキ回生サブモジュール40によって決定された回生ブレーキトルク指令C-FRの関数として、散逸ブレーキトルク指令C-FDを決定するステップ906は、さらに、決定するステップ921、 第3処理ブロック43によって、ブレーキトルク要求CFおよび第3処理ブロック43によって決定された回生ブレーキトルク指令C-FRの関数としての散逸ブレーキトルク指令C-FDを決定するステップ921をさらに含む。
【0274】
より詳細には、実施形態では、先のものと組み合わせて、回生ブレーキトルク消勢C-FDは、第3処理ブロック43によって、ブレーキトルク要求CFと第3処理ブロック43によって決定された最大回生ブレーキトルク値C-FRとの差として決定される。
【0275】
次に、本発明による、車両のB-b-W技術を用いたブレーキシステムにおいて、散逸ブレーキトルクと回生ブレーキトルクとを混合(ブレンド)して車輪のスリップを制御する方法の実施例について、図を参照して説明する。
【0276】
車両1のブレーキシステム2の電子制御ユニット5の散逸ブレーキトルクおよび回生ブレーキトルクの混合を有する主車輪スリップ制御モジュール7の車輪スリップ制御サブモジュール30は、車輪スリップを制御するための第1の複数の入力情報P-I1を受信する(上述)。
【0277】
車輪スリップ制御サブモジュール30は、車輪スリップ状態値W-Sと車輪スリップ設定値S-Pとを比較することにより、車輪スリップ制御の作動を検証する。
【0278】
車輪スリップ制御サブモジュール30は、受信した第1の複数の入力情報P-I1に基づいて、車両1のコーナに加えられるブレーキトルク要求CFとブレーキトルク制御コンポーネントP-CFとを決定する。
【0279】
車輪スリップ制御の起動に続いて、車輪スリップ制御サブモジュール30の車輪スリップ制御ブロック70は、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの値を、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FD、回生ブレーキトルクフィードバック値F-FR、および初期値IQの関数として決定することにより、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFをIZ初期化するステップを実行する。
【0280】
さらに、車輪スリップ制御の起動および設定された離散的な車両イベントE-Sの検出に続いて、スリップ制御サブモジュール30のスリップ制御ブロック70は、散逸ブレーキトルクフィードバック値F-FDを回生ブレーキトルクフィードバック値F-FRに加算することにより、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFのAZをリセットするステップを実行する。
【0281】
IZを初期化するステップとAZをリセットするステップの後、スリップ制御ブロック70は、車輪スリップ状態値W-Sと車輪スリップ設定値S-Pとの誤差を最小化することにより、ブレーキトルク要求値CFとブレーキトルク制御コンポーネントP-CFとを閉ループで決定する。
【0282】
車輪スリップ制御サブモジュール30は、車両1のコーナに加えるブレーキトルク要求CFと、決定されたブレーキトルク制御コンポーネントP-CFと、有効化された車輪スリップ制御確認値F-Cとを、車両1のブレーキシステム2の電子制御ユニット5の主車輪スリップ制御モジュール7のブレーキ回生サブモジュール40に供給する。
【0283】
ブレーキ回生サブモジュール40は、車輪スリップを制御するための第2の複数の入力情報P-I2を受信する(上述)。
【0284】
ブレーキ回生サブモジュール40の第1処理ブロック41は、第1乗算係数G-D(車両1の横方向ダイナミクスの代表量の関数)と第2乗算係数S-G(車輪スリップ状態値W-Sの関数)とを乗算することにより、回生ゲイン値R-Gを決定する。
【0285】
第1乗算係数G-Dは、車両1の横ダイナミクス及び車両1の横ダイナミクスを代表する諸量が重要な意味を有する条件下でブレーキ操作が行われる状態を代表するそれぞれの最大値と、車両1の横ダイナミクスがブレーキ操作によって影響を受けない状態を代表するそれぞれの最小値との間で構成されるように決定される。
【0286】
第2乗算係数S-Gは、車輪スリップ状態値W-Sを第1最大閾値W-Smax及び第2最小閾値W-Sminと比較することにより、決定された第2乗算係数S-Gが設定最大値S-Gmaxと設定最小値S-Gminとの間に構成されるように決定される。
【0287】
第1処理ブロック41の下流に配置されたブレーキ回生サブモジュール40の第2処理ブロック42は、第1処理ブロック41により決定された回生ゲイン値S-Gと、利用可能な回生ブレーキトルク値A-FRとを入力として受け取る。
【0288】
第2処理ブロック42は、第1処理ブロック41により決定された回生ゲイン値S-Gと、利用可能回生ブレーキトルク値A-FRとを互いに乗算することにより、最大回生ブレーキトルク値C-Mを決定する。
【0289】
第2処理ブロック42の下流側に配置されたブレーキ回生サブモジュール40の第3処理ブロック43には、第2処理ブロック42で決定された最大回生ブレーキトルク値C-Mと、有効車輪スリップ制御確認値F-Cと、車両1のコーナに作用させるブレーキトルク要求CFと、スリップ制御ブロック70で決定されたブレーキトルク制御コンポーネントP-CFとが入力される。
【0290】
第3処理ブロック43は、決定された第3乗算係数A-Gが設定最大値A-Gmaxと設定最小値A-Gminとの間に構成されるように、グリップ推定値I-Aと第1最大閾値I-Amaxおよびそれぞれの第2最小閾値I-Aminとを比較することにより、第3乗算係数A-Gを決定する。
【0291】
設定最大値A-Gmaxは、回生ブレーキトルク回生能力を大幅に低下させる必要がない条件である。
【0292】
一方、設定最小値A-Gminは、回生ブレーキトルク回生能力の減少値が最大となる必要がある条件である。
【0293】
第3処理ブロック43は、有効化入力信号I-M の状態に基づいて、ブレーキトルク要求CF またはブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として回生ブレーキトルクC-FR指令を決定する。
【0294】
入力有効化信号I-Mについては前述した。
【0295】
有効化入力I-Mが無効である場合、第3処理ブロック43は、ブレーキトルク要求値CFと第2処理ブロック42により決定された最大回生ブレーキトルク値C-Mとの間の最小値として、ブレーキトルク要求値CFの関数として回生ブレーキトルク指令値C-FRを決定する。
【0296】
有効化力状態I-Mが有効の場合、第3処理ブロック43は、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFの関数として、ブレーキトルク制御コンポーネントP-CFと第2処理ブロック42で決定された最大回生ブレーキトルク値C-Mとの最小値として回生ブレーキトルク指令C-FRを決定する。
【0297】
第3処理ブロック43は、ブレーキ回生サブモジュール40の第3処理ブロック43により決定されたブレーキトルク要求値CFと回生ブレーキトルク指令値C-FRとの差として、散逸ブレーキトルク指令値C-FDを決定する。
【0298】
回生ブレーキトルク制御C-FRは、車両1のコーナの電気モータに供給される。
【0299】
散逸ブレーキトルク制御C-FDは、車両1のコーナに適用されたB-b-W技術によるブレーキシステム2のアクチュエータに供給される。
【0300】
本発明の目的が完全に達成されることは注目に値する。
【0301】
実際、本発明の方法およびシステムは、エネルギ回生、停止距離、およびブレーキ安定性を最適化することにより、回生型(電気モータ)と散逸型(B-b-Wアクチュエータ)の2つのブレーキトルク作動システム間で、車輪スリップ制御ロジックによって定義されるブレーキトルク配分を定義する、より効果的なロジックを実装している。
【0302】
グリップ限界でのブレーキ時にB-b-Wアクチュエータから要求される散逸ブレーキトルクと電気モータから要求される回生ブレーキトルクとの間の提案された混合(ブレンド)アルゴリズムは、タイヤのロックを回避するためのブレーキトルクの連続的な変調を可能にし、したがって停止距離を最適化することが完全に満たされる。
【0303】
本発明による方法および各システムは、2つの異なるブレーキトルク印加システム(B-b-Wアクチュエータおよび電気モータ)の存在を考慮し、グリップ限界条件下で散逸ブレーキトルクおよび回生ブレーキトルクを制御することを可能にする。これにより、B-b-W技術を用いたブレーキシステムは、上述した「マスタシリンダ」システムの限界を克服することができ、停止距離、車両の方向性およびエネルギ回生の点で車両力学性能を最適化することができる。
【0304】
当業者であれば、添付の特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく、上述した方法及び各システムの実施形態に変更及び適合を加えることができ、或いは、偶発的なニーズを満たすために機能的に同等な他の要素と置き換えることができる。一つの可能な実施形態に属するものとして上述された全ての特徴は、他の記載された実施形態から独立して実施され得る。
【国際調査報告】