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特表2024-534474蒸留溶媒を用いたモノプロピレングリコールの回収
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  • 特表-蒸留溶媒を用いたモノプロピレングリコールの回収 図1
  • 特表-蒸留溶媒を用いたモノプロピレングリコールの回収 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】蒸留溶媒を用いたモノプロピレングリコールの回収
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/84 20060101AFI20240912BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C07C29/84
C07C31/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517077
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 FI2022050583
(87)【国際公開番号】W WO2023041842
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】20215984
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514158855
【氏名又は名称】ユー ピー エム キュンメネ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】カジャント,イスコ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB10
4H006AB20
4H006AD13
4H006BB14
4H006BC50
4H006BC51
4H006BC52
4H006BD35
4H006BD40
4H006BD53
4H006BD84
(57)【要約】
バイオ由来のジオール及び有機不純物を含む混合供給物からモノプロピレングリコールを回収する方法を開示する。当該方法は、-前記混合供給物を、20~200理論段階を含む第一の蒸留カラムに供給し、前記第一の蒸留カラムにおいて第一の蒸留工程を行うこと;前記第一の蒸留カラムに蒸留溶媒を供給する工程であって、前記蒸留溶媒の沸点が、大気圧における前記モノプロピレングリコールの沸点より少なくとも80℃高いジオール又は糖アルコールであり、前記混合供給物の全質量に対する前記蒸留溶媒の質量比が2.5:1~10:1であり;頂部温度70~140℃、頂部圧力0.01~0.2バール、及び還流比2~50で前記第一の蒸留工程を行うことにより、前記蒸留溶媒により、前記モノプロピレングリコールから有機不純物を分離すること;かつ、前記モノプロピレングリコールを回収すること;を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ由来のジオール及び有機不純物を含む混合供給物からモノプロピレングリコールを回収する方法であって、ここで、前記混合供給物が、前記混合供給物の全質量に対して少なくとも40質量%の量のモノプロピレングリコールを含み、かつ、以下の:
-前記混合供給物を、20~200理論段階を含む第一の蒸留カラムに供給し、前記第一の蒸留カラムにおいて第一の蒸留工程を行うこと;
-前記第一の蒸留カラムに蒸留溶媒を供給する工程であって、前記蒸留溶媒の沸点が、大気圧における前記モノプロピレングリコールの沸点より少なくとも80℃高いジオール又は糖アルコールであり、前記混合供給物の全質量に対する前記蒸留溶媒の質量比が2.5:1~10:1であり;
-頂部温度70~140℃、頂部圧力0.01~0.2バール、及び還流比2~50で前記第一の蒸留工程を行うことにより、前記蒸留溶媒により、前記モノプロピレングリコールから有機不純物を分離すること;かつ、
-前記モノプロピレングリコールを回収すること;
を含む、方法。
【請求項2】
前記混合供給物が、前記混合供給物の全質量に対して、少なくとも45質量%、少なくとも50質量%、又は少なくとも55質量%の量の前記モノプロピレングリコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合供給物が、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ブチレングリコール、及び有機不純物を、前記混合供給物の全質量に対して、少なくとも80質量%、又は少なくとも85質量%、又は少なくとも90質量%の量で含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記モノプロピレングリコールを、少なくとも75質量%、又は少なくとも80質量%、又は少なくとも85質量%、又は少なくとも90質量%、又は少なくとも93質量%、又は少なくとも94質量%、又は少なくとも94.5質量%の濃度で回収することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合供給物の全質量に対する前記蒸留溶媒の質量比が、4:1~9:1、又は5:1~8:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸留溶媒がトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
以下の:
-前記第一の蒸留工程からの第一のカラム底流中の前記蒸留溶媒と共に有機不純物を除去すること;及び
-前記モノプロピレングリコールを前記第一の蒸留工程から第一のカラム頂流で除去すること;
の工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
有機不純物が、ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器(GC-FID)によって測定される場合に、保持時間が6.5~6.7分で特徴付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
有機不純物が、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)によって測定される場合に、59m/zにおける最高ピーク値により特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の蒸留カラムの理論段階数が、40~120段階、又は40~80段階、又は60~120段階を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合供給物が、前記蒸留溶媒が前記第一の蒸留カラムに供給される点より低い点で前記第一の蒸留カラムに供給される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の蒸留工程が、75~135℃、又は90~130℃、又は100~120℃の頂部温度で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の蒸留工程が、150~230℃、又は160~200℃、又は170~190℃の底部温度で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の蒸留工程が、頂部圧力0.01~0.2バール、又は0.015~0.1バール、又は0.02~0.1バールで行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
蒸留カラム上の圧力降下が0.05~0.2バール、又は0.07~0.15バール、又は0.08~0.1バールである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第一の蒸留工程が、還流比3~40、又は4~30、又は5~20、又は6~10で行われる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第一の蒸留工程からの第一のカラム底流中に除去された前記蒸留溶媒を前記第一の蒸留カラム中に再循環させることを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第一の蒸留工程から第一のカラム頂流で除去された前記モノプロピレングリコールを第二の蒸留カラムに供給することを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、第二の蒸留工程が、少なくとも98質量%、又は少なくとも98.5質量%、又は少なくとも99質量%の濃度で前記モノプロピレングリコールを回収するために行われる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオ由来のジオールを含む混合供給物からモノプロピレングリコールを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノプロピレングリコール(MPG、1,2-プロパンジオールともいう)は、ポリマーの製造等に用いられる重要な原料である。モノプロピレングリコールは、一般に安全性が認められている化合物であり、食品用途や、外用剤、経口剤、一部の静脈内用医薬製剤のビヒクルとして用いることができる。モノプロピレングリコールはプロピレンオキシドから、例えば200℃~220℃の無触媒高温プロセス、又はイオン交換樹脂又は少量の硫酸又はアルカリの存在下、150℃~180℃で進行する触媒プロセスによって製造することができる。モノプロピレングリコールは、バイオディーゼル製造の副産物であるグリセロールからも得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらに、モノエチレングリコールとともに糖からモノプロピレングリコールを製造することもできる。しかし、糖類からモノエチレングリコールやモノプロピレングリコールのようなポリオールを製造する場合、副生成物として他のジオールやアルコールなども生成する。通常、当該組成物からモノエチレングリコールを蒸留すると、モノプロピレングリコールが他の軽い不純物とともに副生成物として得られる場合があり、さらなる精製が必要である。しかし、モノプロピレングリコールの精製は困難であった。したがって、本発明者は、モノエチレングリコールを製造する際に、例えば副生成物から精製されたモノプロピレングリコールを回収する方法を提供する要望を認識していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
バイオ由来のジオール及び有機不純物を含む混合供給物からモノプロピレングリコールを回収する方法であって、ここで、前記混合供給物が、前記混合供給物の全質量に対して少なくとも40質量%の量のモノプロピレングリコールを含み、かつ、以下の:
-前記混合供給物を、20~200理論段階を含む第一の蒸留カラムに供給し、前記第一の蒸留カラムにおいて第一の蒸留工程を行うこと;
-前記第一の蒸留カラムに蒸留溶媒を供給する工程であって、前記蒸留溶媒の沸点が、大気圧における前記モノプロピレングリコールの沸点より少なくとも80℃高いジオール又は糖アルコールであり、前記混合供給物の全質量に対する前記蒸留溶媒の質量比が2.5:1~10:1であり;
-頂部温度70~140℃、頂部圧力0.01~0.2バール、及び還流比2~50で前記第一の蒸留工程を行うことにより、前記蒸留溶媒により、前記モノプロピレングリコールから有機不純物を分離すること;かつ、
-前記モノプロピレングリコールを回収すること;
を含む。
実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本明細書に開示される蒸留工程の一実施形態を開示する。
図2】本明細書で開示する蒸留工程の一実施形態を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
バイオ由来のジオール及び有機不純物を含む混合供給物からモノプロピレングリコールを回収する方法が開示される。前記混合供給物が、前記混合供給物の全質量に対して少なくとも40質量%の量のモノプロピレングリコールを含み、かつ、以下の:前記混合供給物を、20~200理論段階を含む第一の蒸留カラムに供給し、前記第一の蒸留カラムにおいて第一の蒸留工程を行うこと;前記第一の蒸留カラムに蒸留溶媒を供給する工程であって、前記蒸留溶媒の沸点が、大気圧における前記モノプロピレングリコールの沸点より少なくとも80℃高いジオール又は糖アルコールであり、前記混合供給物の全質量に対する前記蒸留溶媒の質量比が2.5:1~10:1であり;頂部温度70~140℃、頂部圧力0.01~0.2バール、及び還流比2~50で前記第一の蒸留工程を行うことにより、前記蒸留溶媒により、前記モノプロピレングリコールから有機不純物を分離すること;かつ、前記モノプロピレングリコールを回収すること;を含む。
【0007】
蒸留は一般に、選択的な沸騰と凝縮を利用して混合物から成分や物質を分離するプロセスと考えられる。蒸留は、ほぼ純粋な成分に本質的に完全に分離する場合もあれば、混合物中の選択された成分の濃度を増加させる部分的な分離の場合もある。蒸留工程は、混合物中の異なる成分の相対的な揮発性の違いを利用する。
【0008】
多くの分離プロセスで用いられる「理論段階」、「理論プレート」又は「蒸留段階」は、物質の液相と気相のような二相が互いに平衡を確立する仮想的なゾーン又は段階と考えることができる。当該平衡段階は、平衡段階、理想段階、又は理論トレイという場合もある。多くの分離プロセスの性能は、一連の平衡段階(ステージ)があることに依存し、そのような段階をより多く設けることによって向上させることができる。換言すれば、より多くの理論プレートがあると、蒸留、吸収、クロマトグラフィー、吸着、又は同様のプロセスのいずれであっても、分離プロセスの効率が向上する。
ある媒体の蒸留を設計する場合、通常はまず理論段階数を設計又は検討し、理論段階数によって蒸留カラムの物理的な高さを決める。蒸留カラムでは、理論段階又は蒸留段階は、トレイ又は充填物によって形成される場合があり、充填床ともいう。充填床は、構造化充填床でも、ランダム充填床でよい。
本発明者は、驚くべきことに、所定の理論段階数及び所定の還流比と、所定の量の蒸留溶媒との組み合わせにより、他のバイオ由来のジオール及び有機不純物を含む混合供給物からモノプロピレングリコールを効率的に分離できることを見出した。
【0009】
バイオ由来のジオールを含む混合供給物は、例えば、モノエチレングリコール(MEG、エチレングリコール又は1,2-エタンジオールともいう)、モノプロピレングリコール(MPG、1,2-プロパンジオールともいう)、及びブチレングリコール(1,2-BDO、1,2-ブタンジオールともいう、及び2,3-BDO、2,3-ブタンジオールともいう)並びに有機不純物を含んでよい。当該バイオ系ジオールの混合供給物は、例えば、モノエチレングリコールの製造プロセスのような、グリコールの製造プロセスから得られる。一実施形態では、バイオ由来のジオールを含む混合供給物は、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ブチレングリコール、及び有機不純物からなる。ブチレングリコールは、OH-ユニットの位置が互いに異なる構造で現れる場合がある。例えば、1,2-ブタンジオールや2,3-ブタンジオールなどである。これらは沸点が異なる。以下に示すように、1,2-ブタンジオールはモノプロピレングリコールよりも沸点が高く、2,3-ブタンジオールは低い:
【0010】
【表1】
混合供給物が、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ブチレングリコール、及び有機不純物を、混合供給物の全質量に対して、少なくとも80質量%、又は少なくとも85質量%、又は少なくとも90質量%の量で含んでよい。混合供給物は、モノプロピレングリコールを、前記混合供給物の全質量に対して、少なくとも45質量%、又は少なくとも50質量%、又は少なくとも55質量%の量で含んでよい。
【0011】
バイオ由来のジオールを含む混合供給物は、水をさらに含んでよい。一実施形態では、混合供給物は、混合供給物の全質量に対して、0~8質量%、又は0.5~6質量%、又は1~5質量%、又は1.5~4質量%、又は2~3質量%の量で水を含む。一実施形態では、混合供給物は、本質的に水を含まない。
【0012】
混合供給物は、液体の形態で、又はスチーム若しくは蒸気として、又はそれらのいかなる混合物として第一の蒸留カラムに供給することができる。
モノエチレングリコール並びにモノプロピレングリコールは、例えばモノエチレングリコールを含むグリコールの液体組成物を調製するプロセスから生成されてよい。グリコールの当該液体組成物は、植物系原料から調製されてよい。植物系原料は、硬材又は軟材等の木質系原料であってよい。木質系原料は、例えば、マツ、ポプラ、ブナ、アスペン、トウヒ、ユーカリ、トネリコ、カシ、カエデ、クリ、ヤナギ、又はカバ由来であってよい。木質系原料は、これらのいかなる組み合わせ又は混合物であってよい。
【0013】
グリコールの液体組成物を製造するための方法は、以下の:
木質系原料に由来し、木材チップを含む木質系原料を提供し、当該木質系原料を少なくとも1つの前処理に供して、液体画分と固体セルロース粒子を含む画分とを形成すること;
当該固体セルロース粒子を含む画分を酵素的加水分解に供して、リグニン画分及び炭水化物画分を形成すること;
当該炭水化物画分を触媒変換に供して、グリコールの液体組成物を形成すること;
を含んでよい。
木質系原料を提供することは、木質系原料を、木質系原料の皮剥ぎ、チップ化、分割、切断、叩解、粉砕、破砕、分割、スクリーニング、及び/又は洗浄から選択される機械的処理に供して、木質系原料を形成することを含んでよい。木質系原料を提供することは、木質系原料を購入することを含んでよい。
【0014】
木質系原料の前処理は、以下の、当該木質系原料を予備蒸気処理し、当該木質系原料を含浸処理し、前記木質系原料を蒸気爆発させること、の少なくとも1つを含んでよい。
前処理は、木質系原料を前蒸気処理に供することを含んでよい。
前処理は、含浸処理及び/又は蒸気爆発を含んでよく、木質系原料を含浸処理及び/又は蒸気爆発に供する前に、木質系原料を予備蒸気処理に供することを含んでよい。木質系原料の予備蒸気処理は、大気圧で温度が100~130℃である蒸気を用いて行ってよい。予備蒸気処理の間、木質系原料は低圧の蒸気で処理される。予備蒸気処理は、温度が100℃未満、又は98℃未満、又は95℃未満である蒸気を用いて行ってよい。
さらに、前処理は、木質系原料を含浸液による少なくとも1つの含浸処理に供することを含んでよい。含浸処理は、機械的処理及び/又は予備蒸気処理から受け取った木質系原料に対して行ってよい。前処理は、水蒸気爆発に供する前に、木質系原料を、水、少なくとも1つの酸、少なくとも1つのアルカリ、少なくとも1つのアルコール、又はそれらのいかなる組み合わせ若しくは混合物から選択される含浸液による少なくとも1つの含浸処理に供することを含んでよい。含浸液は、水、少なくとも1つの酸、少なくとも1つのアルカリ、少なくとも1つのアルコール、又はそれらのいかなる組み合わせ若しくは混合物を含んでよい。
前処理は、木質系原料を蒸気爆発に供することを含んでよい。機械的処理、予備蒸気処理工程、及び/又は含浸処理からの木質系原料は、蒸気爆発に供されてよい。
前処理は、木質系原料を形成するための木質系材料の機械的処理、木質系原料のプレスチーム処理、木質系原料の含浸処理、及び木質系原料の蒸気爆発のうちの少なくとも1つを含んでよい。前処理は、木質系原料を形成するための木質系材料の機械的処理、木質系原料の予備蒸気処理、予備蒸気処理された木質系原料の含浸処理、及び含浸された木質系原料の蒸気爆発を含んでよい。前処理は、木質系原料の予備蒸気処理、予備蒸気処理された木質系原料の含浸処理、及び含浸された木質系原料の蒸気爆発を含んでよい。前処理は、木質系原料の含浸処理、及び含浸された木質系原料の蒸気爆発を含んでよい。すなわち、含浸処理に供された木質系原料は、その後、水蒸気爆発に供されてよい。また、前蒸気処理された木質系原料に対して、次に含浸処理を行い、その後、含浸処理された木質系原料に対して、爆砕処理を行ってよい。
【0015】
本明細書の用語「水蒸気爆発」は、木質系原料が、反応器内で、0.17~3.25mPaGの圧力下で温度が130~240℃である水蒸気で処理された後、水蒸気処理された木質系原料の急速爆発的減圧が行われ、繊維構造を破裂させる、半加水分解のプロセスであってよい。蒸気爆発の結果物は、適当な液体、例えば水と混合されて、固体セルロース粒子を含むスラリーを形成し得る。固体セルロース粒子を含む画分は、好適な分離方法、例えば固液分離によって液体画分から分離されてよい。
固体セルロース粒子を含む画分の酵素加水分解は、固体セルロース粒子を含む画分のpHを3.5~6.5、又は4.0~6.0、又は4.5~5.5のpH値に維持しながら、30~70℃、又は35~65℃、又は40~60℃、又は45~55℃、又は48~53℃の温度で行ってよく、酵素加水分解は、20~120時間、又は30~90時間、又は40~80時間継続される。酵素加水分解により、リグニン画分及び炭水化物画分が形成されうる。酵素は、酵素加水分解用の触媒である。酵素反応はpHを低下させ、セルロース繊維長を短くすることで粘度をも低下させることができる。固体セルロース粒子を含む画分を酵素加水分解に供することにより、酵素を用いてセルロースをグルコースモノマーに変換することができる。固体セルロース粒子を含む画分中に存在するリグニンは、本質的に固体形態のままであってよい。
【0016】
酵素加水分解を行うために少なくとも1つの酵素を用いることができる。少なくとも1つの酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ラッカーゼ、及びリグニン分解性ペルオキシダーゼからなる群から選択されてよい。セルラーゼは、エキソセルラーゼ及びエンドセルラーゼ(グルカナーゼ)並びにβ-グルコシダーゼ(セロビオース)に分けることができる、比活性が異なる相乗的酵素を含む多タンパク質複合体である。酵素は、市販のセルラーゼ混合物であっても、現場で製造されたものであってよい。
【0017】
炭水化物画分の触媒変換は、炭水化物画分を触媒水素化分解に供することを含んでよい。すなわち、炭水化物画分は、水素の存在下で触媒に供されてよい。触媒による変換は、水の存在下で実施することができる。一実施形態では、炭水化物画分の触媒変換は、炭水化物画分を溶媒、好ましくは水及び触媒系の存在下で接触水素化に供することを含む。触媒変換は、1種以上の触媒を含む触媒系の存在下で行ってよい。あるいは、触媒変換は、サトウキビ、サトウダイコン、トウモロコシ及び/又はコムギに由来する炭水化物供給物に対して行ってよい。
炭水化物画分を触媒変換に供することにより、グリコールの液体組成物が得られ得る。触媒変換は、少なくともhydrogenolation及び水素化分解反応を達成して、グリコールの液体組成物が形成されるように、炭化水素留分のhydrogenolation及び水素化分解を達成する。グリコールの液体組成物は、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール及びブチレングリコールを含むか、又はそれらからなってよい。これらのグリコールは、グリコールの液体組成物の全質量に対して、0.1~40質量%の濃度で存在してよい。グリコールの液体組成物は、他の副生成物も含んでよい。液体組成物はまた、水を含んでよい。
例えば、モノエチレングリコールは、例えば、吸着、蒸発、蒸留、抽出蒸留、共沸蒸留、真空蒸留、常圧蒸留、膜分離、濾過、反応精製又はそれらの組合せから選択される分離技術によって、グリコールの液体組成物から回収されてよい。
しかしながら、本明細書に適用されるバイオ由来ジオールを含む混合供給原料は、グリコールの製造のためのいかなる他のプロセスからも提供されてよい。本明細書に記載される方法は、グリコールの液体組成物を製造するための上記のプロセスに拘束されると理解されるべきではない。
【0018】
本明細書に記載されている蒸留工程の前に、1つ以上の分離又は精製プロセスが行われてよい。例えば、水、メタノール及びエタノール等のアルコール、有機酸、グリセロール等の糖アルコール、触媒及び残留糖は、所望の順序で別々の工程で除去することができる。典型的には、最も沸点が低い水及びアルコールを最初に除去し、続いてモノエチレングリコールより沸点が高い成分を除去することができる。残りの成分は、モノプロピレングリコールの沸点に近い沸点であるジオールを主に含むことができ、これは、その後のさらなる精製工程で分離することができる。
【0019】
本明細書の用語「バイオ由来ジオールを含む混合供給物」は、本明細書において別段階の記載がない限り、バイオ由来の起源又は原料に由来する1以上のジオールの混合供給物として理解されるべきである。一実施形態では、バイオ由来ジオールは、植物由来ジオール、例えば木材由来ジオールである。従って、ジオールは、例えば硬材、軟材、又はこれらの組み合わせから誘導されてよい。ジオールはまた、広葉樹から誘導されてよい。ジオールは、例えば、マツ、ポプラ、ブナ、アスペン、トウヒ、ユーカリ、アッシュ、若しくはカバ、又はこれらのいかなる組み合わせ若しくは混合物から誘導されてよい。ジオールは、さらに、サトウキビ、サトウダイコン、トウモロコシ、コムギ、又はこれらのいかなる組み合わせ若しくは混合物から誘導されてよい。
本発明者は、バイオ由来ジオールを含む混合供給原料が有機不純物も含んでよいことを見出した。一実施形態では、有機不純物が、ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器(GC-FID)によって測定される場合に、保持時間が6.5~6.7分で特徴付けられる。一実施形態では、有機不純物が、以下のパラメータ:カラムDB-HeavyWax(30m×0.32mm、0.5μm);キャリアガス1.9ml/分の流速のヘリウム;注入温度は250℃;を用いて、ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器(GC-FID)によって測定される場合に、保持時間が6.5~6.7分で特徴付けられる。試料は、同定又は定性分析のために希釈せずに注入される。開始温度は140℃であり、オーブンを当該温度で10分間保持する。次いで、温度を15℃/分の加熱速度で270℃まで上昇させる。次いで、試料をこの温度で10分間保持する。総操作時間は28.67分である。
【0020】
一実施形態では、有機不純物が、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)によって測定される場合に、59m/zにおける最高ピーク値により特徴付けられる。一実施形態では、有機不純物が、上記のカラムを用いてガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)によって測定される場合に、59m/zにおける最高ピーク値により特徴付けられる。有機不純物が、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)によって測定される場合に、さらに、45m/zにおけるさらなるピーク値により特徴付けられる。
【0021】
有機不純物は、モノプロピレングリコールと共沸混合物を形成する場合があるが、それにより、高収率の純粋なモノプロピレングリコールを得るために、モノプロピレングリコールからそれを分離することが困難になりうる。本発明者は、驚くべきことに、第一の蒸留工程において特定量の蒸留溶媒を用いることによって、共沸混合物が消失し得るか、又はそれが破壊され得、その結果、有機不純物及びモノプロピレングリコールが蒸留によって少なくとも部分的に分離されうることを見出した。
共沸混合物は、蒸気相及び液相において同じ濃度を示す混合物であると考えられうる。これは、一方の成分が他方の成分よりも通常揮発性である理想的な溶液とは対照的である。混合物が共沸混合物を形成する場合、蒸気及び液体濃度は同じであり、これは従来の分別蒸留における分離を妨げる場合がある。
【0022】
第一の蒸留工程は、第一の蒸留カラムで行われ、蒸留溶媒は、バイオ系混合供給物中に存在する有機不純物からのモノプロピレングリコールの分離を補助又は補助するために供給される。蒸留溶媒は、モノプロピレングリコールからの1,2-ブタンジオール及びモノエチレングリコールの分離をさらに改善することができる。
蒸留溶媒は、大気圧でモノプロピレングリコールの沸点よりも沸点が少なくとも80℃高いジオール又は糖アルコールである。蒸留溶媒は、大気圧でのモノプロピレングリコールの沸点よりも沸点が少なくとも85℃、又は少なくとも90℃高くてよい。蒸留溶媒は、大気圧でのモノプロピレングリコールの沸点よりも沸点が80~100℃、又は82~98℃、又は95~95℃高くてよい。蒸留溶媒の沸点は、265~350℃、又は265~300℃、又は275~300℃の沸点であってよい。一実施形態では、蒸留溶媒は、大気圧でモノプロピレングリコールの沸点よりも少なくとも沸点が80℃高いジオールである。一実施形態では、蒸留溶媒は、大気圧でモノプロピレングリコールの沸点よりも沸点が少なくとも80℃高い糖アルコールである。
【0023】
一実施形態では、前記混合供給物の全質量に対する前記蒸留溶媒の質量比が、4:1~9:1、又は5:1~8:1である。本発明者は、驚くべきことに、蒸留工程において用いられる蒸留溶媒の特定量が、モノプロピレングリコールから有機不純物を分離することを効率よく補助することを見出した。
一実施形態では、蒸留溶媒はトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールである。一実施形態では、蒸留溶媒はトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールである。一実施形態では、蒸留溶媒はトリエチレングリコールである。
用いられる蒸留溶媒の沸点には、モノプロピレングリコールよりも高く、また混合供給物中の他のジオールよりも高いというさらなる有用性がある。したがって、用いられる蒸留溶媒は、第一の蒸留カラムで沸騰しない場合があり、第一の蒸留カラムでの蒸気流量は、多量の蒸留溶媒が用いられても増加しない場合がある。したがって、用いられる蒸留溶媒の量に起因して、カラムサイズを大幅に増大させなくてよい。
【0024】
本明細書に開示される蒸留工程は、第一の蒸留カラムで行われる。第一の蒸留カラムの理論段階数が、40~120段階、又は40~80段階、又は60~120段階を含んでよい。20~200である理論段階の数には、かなり高い効率で分離を行うことができるというさらなる有用性があり、その結果、妥当な還流比を用いることができる。
混合供給物が、前記蒸留溶媒が前記第一の蒸留カラムに供給される点より低い点で前記第一の蒸留カラムに供給されてよい。
混合供給物は、2つの理論段階の間に位置する箇所で第一の蒸留カラムに供給されてよい。蒸留カラムは、充填物又は充填床を含んでよく、1つの充填床は、2つ以上の理論段階を含む。当該状況では、混合供給物は、2つの当該充填床の間の点で蒸留カラムに供給されてよい。混合供給物は、第一の蒸留カラム中に、少なくとも1つの理論段階の下方、上方又は上方に位置する箇所で供給されてよい。理論段階数として段階を用いる場合、混合供給物は、理論段階数で、又は理論段階数より上で供給されてよい。
一実施形態では、蒸留溶媒は、第一の蒸留カラムの頂部から計算して1番目~10番目、又は2番目~9番目、又は3番目~7番目の理論段階の間のいかなる点で第一の蒸留カラムに供給される。蒸留溶媒は、第一の蒸留カラムの頂部から計算して最上理論段階より上で第一の蒸留カラムに供給されてよい。
【0025】
一実施形態では、第一の蒸留工程が、還流比3~40、又は4~30、又は5~20、又は6~10で行われる。還流比は、一般に、蒸留カラムに戻されるカラム頂液を、蒸留カラムから生成物として除去又は回収される液体で除した比として定義することができる。
【0026】
本発明者は、驚くべきことに、特に、第一の蒸留カラムにおいて、特定の量の蒸留溶媒を他のプロセス条件と共に組み合わせて用いることで、モノプロピレングリコールを混合供給物中に存在する有機不純物から分離することができ、したがって、モノプロピレングリコールを高純度及び高収率で回収することができるというさらなる有用性があることを見出した。
【0027】
一実施形態では、当該方法は、少なくとも80質量%、又は少なくとも85質量%、又は少なくとも90質量%、又は少なくとも93質量%の純度のモノプロピレングリコールを回収することを含む。一実施形態では、モノプロピレングリコールは、99.0~99.99質量%、又は99.3~99.95質量%、又は99.5~99.9質量%、又は99.6~99.8質量%の純度で回収される。当該純度は、第一の蒸留工程の後に第二の蒸留工程を用いる場合に達成することができる。純度は、回収された生成物の流れの総量と比較した、回収された生成物中のモノプロピレングリコールの量の百分率として計算される。
一実施形態では、回収されるモノプロピレングリコールの収率は、93~100%、又は95~98%である。収率は、供給混合物中のモノプロピレングリコールの量に対する回収されたモノプロピレングリコールの量の百分率として計算される。
【0028】
一実施形態では、第一の蒸留工程が、75~135℃、又は90~130℃、又は100~120℃の頂部温度で行われる。
一実施形態では、第一の蒸留工程が、150~230℃、又は160~200℃、又は170~190℃の底部温度で行われる。
一実施形態では、第一の蒸留工程が、頂部(最高)圧力0.01~0.2バール、又は0.015~0.1バール、又は0.02~0.1バールで行われる。
一実施形態では、蒸留カラム上の圧力降下が0.05~0.2バール、又は0.07~0.15バール、又は0.08~0.1バールである。
一実施形態では、第一の蒸留カラムにおける供給混合物及び蒸留溶媒の滞留時間は、1~10分、又は1.2~7分、又は1.5~6分、又は1.8~5.4分である。
第一の蒸留カラムの底部温度は、最大で230℃の温度に維持されてよい。蒸留カラムの底部温度を最大で230℃の温度に維持することには、化合物の分解が起こるのを妨げるか又は低減するというさらなる有用性がある。
【0029】
本明細書の用語「頂部温度」は、蒸留カラムの最も上の充填床又は段階より上であり、かつ蒸留カラムの蒸気管より下である蒸留カラム内の蒸気空間における温度を意味するために用いられる。蒸留カラム内の温度は、例えば蒸留カラムに動作可能に接続されてよい凝縮器又はボイラー内の温度とは異なってよいことが当業者には明らかである。本明細書の用語「底部温度」は、リボイラー中の液体の温度をいうために用いられる。
本明細書の用語「頂部圧力」は、蒸留カラムの最も上の充填床又は段階よりも上でありかつ蒸留カラムの蒸気管よりも下である蒸留カラム内の蒸気空間における圧力を意味するために用いられる。
【0030】
一実施形態では、蒸留工程において少なくとも1つの凝縮器が用いられる。一実施形態では、蒸留装置は少なくとも1つの凝縮器を備える。用いられる凝縮器は、部分凝縮器、全凝縮器であってよく、又はこれらが組み合わせて用いられてよい。凝縮器は、熱統合されてよく、又は冷却水等の冷却媒体を用いてよく、又は空気冷却と共に機能してよい。
【0031】
一実施形態では、蒸留工程においてリボイラーが用いられる。一実施形態では、蒸留装置はリボイラーを含む。リボイラーは、0.06~0.4バール、又は0.1~0.2バールの蒸気圧で運転されてよい。
【0032】
一実施形態では、当該方法は以下の:
-前記第一の蒸留工程からの第一のカラム底流中の前記蒸留溶媒と共に有機不純物を除去すること;及び
-前記モノプロピレングリコールを前記第一の蒸留工程から第一のカラム頂流で除去すること;かつ、
-前記蒸留溶媒により、前記有機不純物は、前記第一の蒸留工程に前記モノプロピレングリコールから分離され、前記モノプロピレングリコールは、より低沸点の成分として第一のカラム頂流中に蒸留される。前記モノプロピレングリコールよりも沸点が高い、前記モノプロピレングリコールから分離された前記有機不純物は、次いで、第一のカラム底流と共に蒸留溶媒とともに除去することができる。
【0033】
一実施形態では、本方法は、前記第一の蒸留工程からの第一のカラム底流中に除去された前記蒸留溶媒を前記第一の蒸留カラム中に再循環させることを含む。第一の蒸留カラムから、蒸留溶媒は回収カラムに導かれてよい。回収カラムにおいて、軽質成分は回収カラムから第二のカラム頂流として除去され、蒸留溶媒は回収カラムから第二のカラム底流として除去される。次いで、主として蒸留溶媒を含む第二のカラム底流を第一の蒸留カラムに戻して再利用できる。必要であれば、蒸留溶媒の再循環流の部分を連続的にパージすることで、より重質の分解化合物が出現する場合に、その蓄積を低減又は制限することができる。
【0034】
一実施形態では、本方法は、第一の蒸留工程からの第一のカラム頂流中で除去されたモノプロピレングリコールを第二の蒸留カラムに供給することを含み、第二の蒸留カラムにおいて第二の蒸留工程が行われる。一実施形態では、本方法は、第一の蒸留工程からの第一のカラム頂流において除去されたモノプロピレングリコールを第二の蒸留カラムに供給することを含み、第二の蒸留工程を実施して、少なくとも98質量%、又は少なくとも98.5質量%、又は少なくとも99質量%の濃度のモノプロピレングリコールを回収する。
一実施形態では、第二の蒸留工程は、104~140℃、又は90~130℃、又は100~120℃の頂部温度で行われる。
一実施形態では、第二の蒸留工程は、134~170℃、又は145~165℃、又は150~160℃の底部温度で行われる。
一実施形態では、第二の蒸留工程は、0.1~0.5バールのカラム頂圧力で行われる。 一実施形態では、第二の蒸留工程は、0.15~0.6バールのカラム底圧力で行われる。
【0035】
本明細書に記載されている方法には、存在する有機不純物をモノプロピレングリコールから分離することができるというさらなる有用性がある。第一の蒸留工程において、蒸留溶媒を所定量用いることにより、有機不純物とモノプロピレングリコールとの共沸混合物が消失し、有機不純物とモノプロピレングリコールを分離しうる蒸留条件を用いることができるという利点がある。
【0036】
[実施例]
次に、様々な実施形態を詳細に参照する。
以下の説明は、当業者が本開示に基づいて実施形態を利用することができるような詳細でいくつかの実施形態を開示する。実施形態の全ての工程又は特徴が詳細に説明されるわけではなく、工程又は特徴の多くは、本明細書に基づいて当業者には明らかであろう。
簡便を目的として、以下の例示的な実施形態では、構成要素が繰り返される場合には、同じ項目番号を用いる。
【0037】
図1は、バイオ由来ジオール及び有機不純物を含む混合供給物からモノプロピレングリコールを回収するための実施形態の例を開示する。混合供給物2bは、モノプロピレングリコールを混合供給物の全質量の少なくとも40質量%の量で含む。混合供給物は、第一の蒸留カラム1に供給され、そこで第一の蒸留工程が行われる。第一の蒸留カラムは、混合供給物を第一の蒸留カラム1に供給するための入口2bを含む。第一の蒸留カラム1は、20~200の理論段階4a、4b、・・・4nを含む充填床を含む。前記混合供給物2bは、前記蒸留溶媒2aが第一の蒸留カラム1に供給される地点よりも蒸留カラムのカラム頂1aから計算して低い地点で第一の蒸留カラム1に供給される。蒸留カラムの全高は、理論段階4a、4b、・・・4nの数に基づいて決定される。第一の蒸留カラムは、2~50の還流比、70~140℃のカラム頂温度、及び0.01~0.2バールのカラム頂圧力で動作するように構成される。モノプロピレングリコールは、第一の蒸留カラム1から第一のカラム頂流3aとして回収される。蒸留溶媒及び有機不純物は、第一の蒸留カラム1から第一のカラム底流3bとして除去される。図1は、凝縮器5及び再沸器6の存在をさらに示す。
【0038】
図2は、バイオ由来ジオール及び有機不純物を含む混合供給物からモノプロピレングリコールを回収するための実施形態の例を開示する。このプロセスは、第一の蒸留カラム1において第一の蒸留工程を実施することにより、図1において上に示されたのと同様の方法で開始する。第一の蒸留カラム1から、第一のカラム頂流3aで回収されたモノプロピレンは、第二の蒸留カラム7に供給され、そこで第二の蒸留工程が行われる。第二の蒸留工程の結果として、モノプロピレングリコールは、第二のカラム底流7bから少なくとも98質量%の濃度で回収することができる。第二の蒸留カラム7の第二のカラム頂流7aにより、2,3-ブタンジオールが、水及び軽質成分の混合物と共に回収される。第一のカラム底流3b中の第一の蒸留カラム1から除去された蒸留溶媒は、回収カラム8に供給される。蒸留溶媒は、回収カラム8で精製して、次いで底部回収流8bに戻して再循環させ、供給物2aと共に第一の蒸留カラム1に添加することができる。形成された廃棄物は、回収カラム8から上部廃棄流8aとして回収することができる。
【0039】
蒸留工程は、以下の実施例においてさらに記載される。以下の実施例における計算は、Aspenデータベースプロパティを備えるNRTLプロパティ方法を用いて、Aspen Plus V11を用いて行われたシミュレーション、又は値が利用可能でなかった場合の推定を用いて実行した。供給物中の有機不純物対MPGの比である範囲の共沸比でモノプロピレングリコール(MPG)との共沸混合物が存在するように、有機不純物の特性を生成した。これは、98質量%~99質量%のMPGと1質量%~2質量%の有機不純物との共沸質量比を意味する。シミュレーションにおけるモデル化合物として、2-メチル-2,3-ペンタンジオールを有機不純物として用いた。なぜなら、それはMPGと沸点が著しく近く、それと共沸混合物を形成するからである。このようにして、観察された単純な分留の非性能が再現された。RadFracブロックを、全凝縮器を備えた蒸留カラムに用いた。
【実施例1】
【0040】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を第一の蒸留工程に供した。本実施例では、以下のパラメータを用いた。
表1
【0041】
【表2】
上記の表並びに以下の実施例で用いられる略語は以下のとおりである。
MPG=モノプロピレングリコール。
MEG=モノエチレングリコール
BDO=ブチレングリコール
TEG=トリエチレングリコール
供給段階は、蒸留カラム(A)の頂部から数えた。
【0042】
結果を以下に示す。
表2
【0043】
【表3】
【実施例2】
【0044】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を第一の蒸留工程に供した。本実施例では、以下のパラメータを用いた。
表3
【0045】
【表4】

実施例1と比較して、他のパラメータは同様にしたが、理論段階の数、還流比、混合供給物の供給段階、並びに頂部圧力及び圧力降下を変化させた。また、混合供給物の組成も異なっていた。結果を以下に示す。
表4
【0046】
【表5】
【実施例3】
【0047】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を第一の蒸留工程に供した。本実施例では、以下のパラメータを用いた。
表5
【0048】
【表6】
実施例2と比較して、他のパラメータは同じであるが、理論段階の数、混合供給物の供給段階、並びに頂部圧力及び圧力降下を変化させた。結果を以下に示す。
表6
【0049】
【表7】
【実施例4】
【0050】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を第一の蒸留工程に供した。本実施例では、以下のパラメータを用いた。
表7
【0051】
【表8】
実施例3と比較して、他のパラメータは同じだったが、混合供給物の組成は異なった。結果を以下に示す。
表8
【0052】
【表9】
【実施例5】
【0053】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を第一の蒸留工程に供した。本実施例では、以下のパラメータを用いた。
表9
【0054】
【表10】
実施例1と比較して、他のパラメータは同じであったが、還流比を変化させた。結果を以下に示す。
表10
【0055】
【表11】
【実施例6】
【0056】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を第一の蒸留工程に供した。本実施例では、以下のパラメータを用いた。
表11
【0057】
【表12】
実施例3と比較して、他のパラメータは同じであったが、還流比を変化させた。結果を以下に示す。
表12
【0058】
【表13】
【実施例7】
【0059】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を第一の蒸留工程に供した。本実施例では、以下のパラメータを用いた。
表13
【0060】
【表14】
実施例4と比較して、他のパラメータは同じであったが、理論段階の数、混合供給物の供給段階、及び圧力降下を変化させた。結果を以下に示す。
表14
【0061】
【表15】
【実施例8】
【0062】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を、第一の蒸留工程の後、第二の蒸留工程に供した。混合物の供給及び第一の蒸留工程のパラメータは、実施例3と同じであったが、TEGの流量を750kg/hに保った。
第二の蒸留工程では、以下のパラメータを用いた。
表15
【0063】
【表16】
結果を以下に示す。
表16
【0064】
【表17】
本実施例におけるモノプロピレングリコールの収率は97%であった。
【実施例9】
【0065】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を、第一の蒸留工程の後、第二の蒸留工程に供した。混合物の供給及び第一の蒸留工程のパラメータは、実施例4と同じであったが、TEGの流量を750kg/hに保った。
第二の蒸留工程では、以下のパラメータを用いた。
表17
【0066】
【表18】
結果を以下に示す。
表18
【0067】
【表19】
本実施例におけるモノプロピレングリコールの収率は97%であった。
【実施例10】
【0068】
バイオ由来ジオールを含む混合物の蒸留
本実施例では、バイオ系ジオール及び有機不純物を含む混合供給物を、第一の蒸留工程の後、第二の蒸留工程に供した。混合物の供給及び第一の蒸留工程のパラメータは、実施例4と同じであったが、TEGの流量を750kg/hに、留出物流量を58 kg/hに維持した。
第二の蒸留工程では、以下のパラメータを用いた。
表19
【0069】
【表20】
結果を以下に示す。
表20
【0070】
【表21】
本実施例におけるモノプロピレングリコールの収率は93%であった。
上記の実施例及びその結果から、TEG流量(=全混合供給物に対するTEGの質量比)が大きいほど、留出物中の有機不純物の量が少ないことが分かる。同時に、プロセスでTEGを用いない場合と比較して、モノプロピレングリコールの収率及び純度は常に高く、さらに、プロセスで用いられるTEGの量が増加すると、モノプロピレングリコールの収率及び純度は増加する。この傾向は、全ての理論段階数及び還流比で見られる。用いられる理論段階が多いほど、有機不純物はより良好に除去される。
【0071】
技術の進歩に伴い、基本的な考え方が様々な方法で行ってよいことは、当業者には明らかである。したがって、実施形態は、上述の例に限定されず、代わりに、それらは、特許請求の範囲内で変化し得る。
上述した実施形態は、互いにいかなる組み合わせで用いられてよい。実施形態のいくつかは、さらなる実施形態を形成するためにともに組み合わされてよい。本明細書に開示される方法は、本明細書で上述した実施形態の少なくとも1つを含むことができる。上述の利益及び利点は、1つの実施形態に関連してもよく、又はいくつかの実施形態に関連してよいことが理解されるであろう。実施形態は、記載された問題のいずれか又はすべてを解決するもの、又は記載された利益及び利点のいずれか又はすべてを有するものに限定されない。さらに、「1つの(an)」項目への言及は、それらの項目のうちの1以上を指すことが理解されよう。本明細書の用語「含む(comprising)」は、1つ以上のさらなる特徴又は行為の存在を除外することなく、その後に続く特徴又は行為を含むことを意味するために用いられる。
図1
図2
【国際調査報告】