(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】気泡検出による液体サンプルの分析プロセス
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240912BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/10 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517092
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2022058767
(87)【国際公開番号】W WO2023042143
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021000023882
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511241114
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ファケッティ リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンティーニ シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ボサリア ティツィアーノ
(72)【発明者】
【氏名】メナフォリオ アレッサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】パスクッツォ リカルド
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058ED21
2G058GE10
(57)【要約】
本発明は、分析システムによる液体サンプルの分析方法であって、分析システムが、サンプルを吸引するためのダクトを有する少なくともシリンジと、ダクト内で移動可能なプランジャと、を装備したサンプリングデバイスと、画像捕捉デバイスと、画像分析ソフトウェアアプリケーションを装備したコンピュータと、サンプルを分析するためのデバイスと、を備え、方法が、A.シリンジによって容器から液体サンプルを吸引する工程と、B.液体サンプルが吸引されたシリンジの領域で、当該画像捕捉デバイスを動作させて、シリンジの1つ以上の画像を捕捉する工程と、C.当該コンピュータにより画像の分析を実施して、液体サンプル内の気泡の存在を検出する工程と、D.当該工程Cにおいて1つ以上の気泡の存在が検出された場合、1つ以上の気泡除去サイクルを実施し、好ましくはその後、少なくとも当該工程B及びCを繰り返し、必要に応じて、当該工程B及びCの前に当該工程Aも繰り返す工程と、E.当該工程Cで気泡が検出されなかった場合、又は当該工程Dの1回以上の繰り返しによる事前定義された数の気泡除去サイクルが実行された場合、サンプルをシリンジから分析デバイスに送達して、液体サンプルの分析を実行する工程と、を含む、方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析システム(100)による液体サンプル(30)の分析方法であって、前記分析システム(100)が、前記サンプルを吸引するためのダクト(11b)を有する少なくとも1つのシリンジ(11)及び前記ダクト(11b)内で移動可能なプランジャ(11d)が設けられたサンプリングデバイス(1)と、画像を捕捉するためのデバイス(2)と、画像分析のためのソフトウェアアプリケーションが設けられたコンピュータ(3)と、前記サンプルを分析するためのデバイス(4)と、を備え、前記方法が、
前記シリンジ(11)により容器(20)から前記液体サンプル(30)を吸引する工程Aと、
前記画像捕捉デバイス(2)を動作させて、前記シリンジ(11)の前記液体サンプル(30)が吸引された領域で前記シリンジ(11)の1つ以上の画像(50)を捕捉する工程Bと、
前記コンピュータ(3)により前記画像(50)の分析を実施して、前記液体サンプル(30)内の気泡(41、42)の存在を検出する工程Cと、
前記工程Cにおいて1つ以上の気泡(41、42)の存在が検出された場合、1つ以上の気泡(41、42)除去サイクルを実施し、好ましくはその後、少なくとも前記工程B及びCを繰り返し、必要に応じて、前記工程B及びCの前に前記工程Aも繰り返す工程Dと、
前記工程Cで気泡(41、42)が検出されなかった場合、又は前記工程Dの1回以上の繰り返しによる事前定義された数の気泡除去サイクルが実行された場合、前記液体サンプル(30)を前記シリンジ(11)から前記分析デバイス(4)に送達して、前記液体サンプル(30)の前記分析を実行する工程Eと、を含む、方法。
【請求項2】
前記工程Cが、前記シリンジ(11)内の前記液体サンプル(30)と交差する方向に沿って、前記画像(50)の画素の特性の変動を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画素の前記特性が前記画素の色及び/又は明るさに関係している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特性が前記画素の濃度レベルに関係している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
別個の、好ましくは互いに平行な少なくとも2つの方向(d1a、d1b)に沿って前記変動を検出する動作、及び/又はこれらの少なくとも2つの方向(d1a、d1b)を横断する、好ましくはそれらに直交する線と前記2つの方向との間の交点に配列された画素の前記特性間の変動を検出する動作を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方向(d1a、d1b)が、前記シリンジの前記サンプリングダクトの軸に対して実質的に垂直及び/又は平行である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程Cが、対の画素における前記特性の値の間の差を評価する動作を含み、各対の第1の画素が、前記ダクトの軸に平行な第1の方向(d1a)に沿って配列され、各対の第2の画素が、前記ダクトの前記軸に平行で前記第1の方向とは異なる第2の方向(d1b)に沿って配列され、各対の前記画素がまた、前記第1及び第2の方向に対して垂直な同一線上に配列されている、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程Cが、関数Z=f(X,Y)を定義する工程を含み、式中、X及びYが、前記画像の平面内の互いに直交する2つの方向(d1、d2)によって定義される基準系における前記画像の前記画素の座標であり、Zが、前記画像の前記X及びY座標に配置された前記画素の前記特性の値であり、X及び/又はYの関数としてZの変動を評価する値である、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程Cが、同一のX座標及び異なるY座標を有する少なくとも2点において前記関数Z=f(X,Y)と交差する線の少なくとも1つのセグメント(S)の傾きを評価する工程を含み、前記X座標が、前記ダクトの前記軸に平行な方向(d1)を参照している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程C中に、ある方向に沿った異なる画素間の前記特性の変動が事前定義された閾値を超える場合、好ましくは、前記ダクトの前記軸に垂直な方向に沿った前記特性の変動が事前定義された閾値を超える場合、気泡の存在が検出される、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程Dにおいて、少なくとも1回の気泡除去サイクルが実施される場合、前記液体サンプル(30)が前記プランジャ(11d)によって圧縮されて気泡除去を促進する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも気泡除去の工程Dを所定回数繰り返しても、前記気泡(41、42)が取り除かれなかった場合、システム動作が中断される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
気泡除去の工程Dを所定回数繰り返した後、前記気泡(41、42)が除去されなかった場合、前記シリンジ内の実際の液体の量が計算されるように、気泡の体積を推定し、前記分析デバイス(4)が以前に計算された前記シリンジ(11)内の実際の液体の量に従ってそのサンプル分析動作を実施し得るように、前記液体サンプルが前記分析デバイス(4)に送達される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
分析システム(100)であって、
前記液体サンプル(30)を吸引するためのダクト(11b)を有する少なくとも1つのシリンジ(11)と、前記ダクト(11b)内で移動可能なプランジャ(11d)と、を装備したサンプリングデバイス(1)と、
画像捕捉デバイス(2)と、
画像分析ソフトウェアアプリケーションを装備し、請求項1~13のうちの1つ以上に記載の方法の少なくとも工程Cを実施するようにプログラムされたコンピュータ(3)と、
サンプル分析のためのデバイス(4)と、を備える、システム。
【請求項15】
前記サンプリングデバイス(1)がオートサンプラである、請求項14に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器(典型的にはバイアル)に含有される液体サンプルの分析の分野に関する。液体サンプルは、典型的にオートサンプラによりシリンジを使用して吸引され、分析デバイスに送達される。
【背景技術】
【0002】
シリンジは、知られているように、具体的には、サンプルが吸引されるダクト、及びダクト内の移動可能なプランジャを備える。プランジャを移動させて、液体のダクト内の空間を増加させることによって(すなわち、それをシリンジのニードル先端から遠ざけることによって)、ダクト内に窪みが設けられ、液体をシリンジに吸引することができる。プランジャによって液体に圧縮が適用されると、つまりプランジャがシリンジのニードルに向かって移動すると、液体がシリンジから押し出される。
【0003】
吸い込みプロセスは、液体サンプルの内側のシリンジのダクトに気泡を形成するリスクを伴う。ガスが存在すると、通常の状態よりも少ないダクト内の液体の存在、及びサンプルの汚染を含む、いくつかの欠点を有する。したがって、当該分析は、所定の量の液体が吸引され、液体が汚染されていないことを前提として実施されるため、サンプルのその後の分析は損なわれる。
【0004】
実際、オートサンプラは、シリンジによってバイアルから規定量の液体サンプルを吸引するように特別に設計されており、オートサンプラの最も重要な動作パラメータのうちの1つは、動作の再現性、特に常に同一の量の液体をシリンジに吸引する能力である。
【0005】
したがって、シリンジシリンダから気泡を取り除く方法は従来技術で知られている。既知の方法の1つは、プランジャの限られたストローク(典型的には複数の限られたストローク)により、サンプルの1つ以上の圧縮を実施することである。この方法は、例えば「気泡除去ストローク」又は「プランジャストローク」として従来技術で知られている。
【0006】
これは、サンプルのシリンジから試験デバイスへの各注入の前に繰り返される。この解決策は、気泡の存在によって損なわれる分析の数を低減する一方で、いくつかの欠点を有する。
【0007】
まず、プロセスを自動化するために、バイアルからサンプルを吸引した後、分析デバイスに注入する前に毎回、当該気泡除去動作が繰り返される。その結果、サンプル中に気泡がない場合でさえも当該動作が実行され、分析プロセスが遅くなる。
【0008】
更に、所定回数の圧縮サイクルをサンプルに実施するようにシステムがプログラムされている。気泡が存在する場合は、この回数の圧縮は気泡を確実に除去するには十分ではない可能性がある。したがって、このようなシステムを用いてさえも、サンプル中の気泡の存在によっていくつかの分析が損なわれる可能性がある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、上で説明した問題を解決することである。
【0010】
本発明の目的は、特に、関連する容器からサンプルを吸引するためのシリンジ内の気泡の存在の問題を解決する、分析方法、及び当該方法を実行するのに好適なそれぞれのシステムを提供することである。
【発明の概要】
【0011】
これら及び他の目的は、添付の請求項のうちの1つ以上による本発明によって得られる。
【0012】
具体的には、本発明の一態様は、分析システムにより液体サンプルを分析する方法に関し、分析システムは、サンプリングダクトとダクト内で移動可能なプランジャとを有する少なくとも1つのシリンジを装備したサンプリングデバイスと、画像捕捉デバイスと、画像分析ソフトウェアを装備したコンピュータと、サンプル分析デバイスと、を備える。具体的には、この方法は、シリンジにより容器から液体サンプルを採取する工程Aと、画像捕捉デバイスを動作させて、サンプルが吸引されたシリンジの領域でシリンジの1つ以上の画像を捕捉する工程Bと、コンピュータによって画像分析を実施して、液体サンプル中の1つ以上の気泡の存在を検出する工程Cと、を含む。
【0013】
その後、工程Cで1つ以上の気泡が検出された場合、この方法は、1つ以上の気泡除去サイクルを実施し、次に好ましくは前述の工程B及びCを繰り返す工程Dを含む。必要であれば、工程Aを繰り返すことによって追加のサンプルが採取され得る。特に、サンプリング手順中に、シリンジ内の液体の体積が特定の値未満の場合は、工程Aが繰り返され得る。
【0014】
シリンジは典型的に、サンプルが吸引されるダクト、及びダクトに流動的に接続されたニードルを有する。既知の方式で、ニードルはサンプルを含有する容器を貫通するように構成されている。プランジャは典型的に、ダクト内で軸方向に移動可能なため、プランジャをニードルから遠ざけるとダクト内の窪みが生じ、容器からダクトへのサンプルの吸引を促進するのに好適である。同様に、サンプルがシリンジによって吸引されると、プランジャをニードルの方向に動かすことで、サンプルが圧縮され、又はそうでなければ、例えば、シリンジからサンプルを送達する工程の間、サンプルがニードルから排出される点までサンプルに圧力を及ぼす。
【0015】
したがって、工程Aでは、典型的に、当該容器の表面削孔することによってシリンジニードルが容器に挿入され、プランジャが作動してダクト内に窪みを生じさせて容器からサンプルを吸引する。
【0016】
気泡除去工程中、サンプルを圧縮して気泡が取り除かれるように構成されたプランジャの急速な動きにより、サンプルの一部分がシリンジから排出され得る。したがって、気泡除去工程の最後、N回の除去サイクルの後に、サンプルを再度吸引し、工程Aを繰り返して目的の体積に戻すことが可能である。例えば、シリンジ内の体積がサンプリングされる最大体積の80%未満である場合、工程Aが繰り返され得る。この体積は、画像の分析を通じて推定され得る。
【0017】
気泡除去サイクルの後、すなわち工程Dを初めて実行した後、気泡が効果的に除去されていることを検証するために、好ましくは、シリンジの画像を再度捕捉する。したがって、新たな画像分析後に再び気泡が検出された場合は、気泡除去工程が繰り返され、シリンジの新たな画像分析が実行されるなどである。
【0018】
工程Cで1つ以上の気泡の存在が検出されなかった場合、この方法では、シリンジから分析デバイスにサンプルを送達し、液体サンプルの分析を実行する工程Eを実行する。
【0019】
典型的に、工程Eは、プランジャをシリンジニードルに向かって移動させ、サンプルを圧縮するか、又はそうでなければ圧力を及ぼして、当該シリンジニードルからサンプルを排出させる。次に、分析デバイス又は分析デバイスにサンプルを送るのに好適な供給要素にシリンジを配置するように、オートサンプラを既知の方式で構成する。
【0020】
前述の工程Cは、工程Cの最初の実行、又は気泡除去工程の後に実行される工程であり得ることに留意されたい。
【0021】
要するに、発明の好ましい態様に従って、工程Cで気泡の存在が検出されなくなるまで、画像分析及び気泡除去工程が繰り返される。サンプルに最初から気泡がない場合、工程Dは実行されず、方法は工程Eを直接実行する。可能な一態様によれば、上で考察した工程B、C、及びDの繰り返し回数に関係なく、気泡除去サイクルでは気泡を取り除くことが十分でない可能性がある。
【0022】
この場合、システムは、これらの工程を最大回数繰り返し実施するようにプログラムされ得る。この最大数を超えた後に1つ以上の気泡の存在が再び検出された場合、システムはサンプルを廃棄するか、サンプルの分析を引き続き実施するようにプログラムされ得、この場合、システムは、気泡のあるサンプルに対して分析が実施されたことをそれぞれの分析で報告するようにプログラムされている。以下でより十分に考察されるように、画像分析では気泡の存在が検出することができるだけでなく、それらの大きさも推定することができる可能性がある。この場合、システムはシリンジ内に実際に存在する液体サンプルの量を推定し得、その結果、これはそれぞれの分析に記録され得る。
【0023】
しかしながら、工程D以降のサンプル分析に進む、すなわち、実際の気泡除去のチェックを実施しない(したがって、工程B及びCを繰り返すことなく)、可能性は、除外されない。概して、この解決策は気泡除去サイクルの有効性を検証できないため、あまり好ましくない。しかしながら、前の代替案と同様に、この解決策では、サンプル内の1つ以上の気泡の存在が実際に検証された場合にのみそのようなサイクルを実行できるため、気泡のないサンプルにおける気泡除去サイクルが回避されるという利点がある。したがって、この方法はシステムに対する迅速な動作を可能にし、例えば分析対象のサンプルの特性が気泡除去サイクルを特に効果的にする場合、その有効性を試験する必要がない場合に特に好適である。
【0024】
概して、この解決策のおかげで、気泡が存在しないサンプルに対する気泡除去サイクルを回避することができる。
【0025】
気泡除去サイクルの有効性を検証した解決策により、気泡を含む液体サンプルの分析を回避すること、又はどの場合でも、気泡のあるサンプルを分析する場合は、予想されるサンプル量よりも少ないサンプルに対してどの分析が実施されたかを記録することも可能になる。
【0026】
したがって、当該解決策に従ってシステムによって実施された分析結果を確認しなければならないオペレータは、気泡なしでサンプルに対して実施された分析を識別することができる。おそらく、システムが気泡に関するデータ、特に気泡の大きさに関連するデータを取得している場合、オペレータは、検出された気泡のタイプ、特に大きさ及び/又は量を考慮して、当該分析からも有用なデータを取得し得る。
【0027】
1つの可能な態様によれば、工程Cは、画像の画素の特性の変動又は勾配を、好ましくは画素の色及び/又は明るさに関連して、シリンジ内の液体サンプルと交差する方向に沿って検出する工程を含む。好ましくは、当該特性は、いわゆる「濃度値」又は「濃度レベル」であり、以下では同じ意味で使用される用語であり、当技術分野では「濃度レベル」としてよく知られている。
【0028】
実際、分析対象の液体サンプルは典型的に、実質的に均一な着色を提示する。液体が存在する画像の画素は、実質的に変動がゼロであることを示す。一方、気泡は典型的に、異なる領域で異なる色/明るさを表す。概して、これは気泡の光の屈折によるものである。気泡と交差する線上の画像の画素は、線に沿って、典型的に、色及び/又は明るさに関連する特性の変化を提示する。言い換えると、当該線上に配置された異なる画素は、少なくとも1つの異なる特性、典型的には、異なる色及び/又は明るさを有している。画像内の画素の色及び強度などを検出するアルゴリズムは、当技術分野では知られており、本明細書では詳細に考察されないことに留意されたい。
【0029】
好ましくは、シリンジの軸に対して実質的に垂直な方向に沿って、特定の閾値を超える明るさの変化を検証するような方法で分析を行う。
【0030】
したがって、この線に沿ったこの特性の変動はゼロとは異なる。これにより、システムは気泡の存在を検証することができる。
【0031】
実際には、液体サンプルに配列された画像の画素が全く同一の色値及び/又は強度を有しない場合があるように、液体でさえ光を最小限に屈折させる可能性があることに留意されたい。したがって、システムは典型的に、異なる画素間の前述の差がゼロとは異なるときではなく、その差が所定の閾値よりも大きいときに気泡の存在を判定するようにプログラムされる。
【0032】
この閾値は、例えば、画像捕捉デバイスの種類、環境の明るさ、使用されるシリンジ及び液体の種類などに応じて、実験的に決定され得る。
【0033】
この閾値の値が決定されると、システムはシリンジ内の気泡の存在を自動的に認識することができる。
【0034】
可能な態様によれば、前述の勾配を検出する動作は、互いに平行な複数の異なる方向に配列された画素に対して繰り返される。少なくともシリンジサンプリングダクトの軸に対して垂直及び/又は平行な方向を選択することが好ましい。上で考察したように、好ましい解決策はシリンジのサンプリングダクトの軸に対して実質的に垂直な方向(すなわち、線)を使用する。
【0035】
言い換えると、シリンジのダクトに垂直な複数の線上に配列された画素を分析することにより、異なる画素間のこの特性の差を評価される。このようにして、以下でより十分に考察されるように、気泡の存在を評価するだけでなく、その大きさを推定することも可能である。
【0036】
当技術分野で知られている位置合わせアルゴリズムにより、捕捉された画像内でシリンジのダクトの軸を識別し、当該画像の画素に対してこれに沿って分析を実施する方向(すなわち、線)を定義することが可能であることに留意されたい。
【0037】
可能な一態様によれば、対の画素における特性の値の間の差を評価する動作が実行され、各対の第1の画素が、ダクトの軸に平行な第1の方向に沿って配列され、各対の第2の画素が、ダクトの軸に平行で第1の方向とは異なる第2の方向に沿って配列され、各対の画素がまた、第1及び第2の方向に対して垂直な同一線上に配列されている。
【0038】
典型的に、気泡が存在すると、画素の特性の値の間の当該差が事前定義された閾値を超える原因となる。
【0039】
X及びYが、画像の平面内の互いに直交する2つの方向によって定義される基準系における画像の画素の座標であり、Zが、画像のX及びY座標に配置された画素の特性の値、並びにX及び/又はYの関数としてZの変動を評価するための値である場合、関数Z=f(X,Y)を定義することもまた可能である。
【0040】
具体的には、当該関数が得られれば、同一のX座標及び異なるY座標を有する少なくとも2点において関数Z=f(X,Y)と交差する直線の少なくとも1つのセグメントの傾きを推定することが可能であり、X座標はダクトの軸に平行な方向を参照する。
【0041】
典型的に、気泡が存在するとき、このセグメントの傾きは事前定義された閾値よりも大きくなる。
【0042】
上で考察した実施形態では、デフォルト閾値は典型的に、使用されるシステムの関数である(例えば、典型的に、画像を捕捉するために使用されるセンサのタイプ並びに使用されるサンプルに依存する)。この事前定義された閾値は、例えば予備試験を実行することによって(概して、気泡が存在する状況及び気泡が存在しない状況で分析を実施することによって)、異なる方法で推定され得、あるいは当該システムの特性に応じて推定され得る。
【0043】
可能な一態様によれば、前述の工程Dで(少なくとも)1回の気泡除去サイクルが実施される場合、気泡除去を促進するために、液体サンプルをプランジャ(好ましくは複数回)によって圧縮する。
【0044】
本発明の一態様は、サンプリングダクト及びダクト内で移動可能なプランジャを有する少なくとも1つのシリンジを設けたサンプリングデバイスと、画像捕捉デバイスと、画像分析ソフトウェアアプリケーションが設けられ、上記の態様のうちの1つ以上による方法の少なくとも工程Cを実施するようにプログラムされたコンピュータと、サンプル分析デバイスと、を備える分析システムにも関する。
【0045】
コンピュータは典型的に、方法全体を制御し得るように、すなわち、システムの様々な要素を制御し得るように、上で考察した方法の工程A~Eの全てを実行し得るように構成されている。コンピュータは、単一のユニット(例えば、単一のCPU)又は複数の制御ユニット(例えば、複数のCPU)の集合である場合があることに留意されたい。
【0046】
概して、システムは典型的に、少なくとも1つの制御ユニット又はコンピュータを備え、システムの構成要素の少なくともいくつかの動作を制御する。
【0047】
考察したように、サンプリングデバイスは典型的にオートサンプラである。
【0048】
添付の図を参照して、本発明の例解的実施形態及び非限定実施形態について、ここで論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の実施形態によるシステムの概略図である。
【
図2-1】Aは、
図1のシステムの撮像デバイスによって捕捉された画像の図である。Bは、Aの画像の分析に続く可能な結果の図である。
【
図2-2】Cは、Aの画像の分析に続く可能な結果の図である。Dは、Cの詳細の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の実施形態によるシステム100は、容器20から液体サンプルを吸引するために既知の方式で構成されたサンプリングデバイス1を備え、典型的にはバイアル又は類似の要素の形態である。サンプリングデバイス1は、典型的にオートサンプラである。
【0051】
サンプリングデバイス1はシリンジ11を備える。シリンジ11は、サンプルを吸引するためにダクト11bによって交差された、既知の方式で本体11aを有する。シリンジ11には典型的に、ニードル11cを有し、ダクト11aに流動的に接続されており、容器20を貫通するように構成されている。既知の方法で、プランジャ11dはダクト内で軸方向に移動可能であり、プランジャ11dがニードル11cから離れる方向に移動すると、ダクト内に窪みが生じ、容器20からダクト11bへのサンプルの吸い込みを促進するのに好適である。同様に、プランジャ11dがニードルに向かって動くと、液体サンプル30に圧力が適用され、シリンジ11から押し出される。
【0052】
したがって、サンプリングデバイス1には、典型的にプランジャ11dを移動させるために好適な要素が設けられるが、詳細は示されていない。
【0053】
システム100はまた、画像捕捉デバイス2(今後は「撮像デバイス2」とも呼ばれる)も特徴とし、通常はデジタルカメラの形態でデジタル画像を捕捉できるデバイスが好ましい。撮像デバイス2は、シリンジ11のダクト11bの画像を捕捉するように配列されている。撮像デバイス2は、静止画又は撮影されたシーケンスを直接捕捉するように構成され得、これらから、後で静止画を得ることができる。
【0054】
撮像デバイス2は、典型的には、撮像デバイス2によって捕捉された画像の分析を実施するためのソフトウェアアプリケーションが設けられた、本技術分野において知られているコンピュータ3に接続される。コンピュータ3は、画像分析の実施に加えて、典型的に、他のシステム動作の制御にも使用され、例えば、撮像デバイス2及び/又はサンプリングデバイス1の動作を制御するように構成され得る。
【0055】
システム100は、クロマトグラフィ分析などの液体サンプルの分析を実施するデバイス4を更に備えるが、本明細書では詳細には考察しない。
【0056】
例えば、
図3に図式表示されているように、使用中、第1の工程(工程A)において、シリンジ11は、典型的にはシリンジ11のニードル11cを容器20に部分的に挿入し、動作することによって、及びプランジャ11dを、ダクト11b内に窪みを形成するように動作させることによってそれぞれの容器20から液体サンプルを吸引するように動作する。
【0057】
図2も参照すると、液体サンプル30は、したがってシリンジ11のダクト11b内に位置している。
【0058】
次に、第2の工程(工程B)において、撮像デバイス2は、シリンジ11、特に液体サンプル30が存在するシリンジ11の領域の1つ以上の画像を捕捉する。
【0059】
次に、第3の工程(工程C)において、この画像はコンピュータ3によって分析され、コンピュータ3は、関連するソフトウェアアプリケーションのおかげで、可能な気泡41、42の存在を検出することができる。
【0060】
好ましくは、コンピュータ3は、1つ以上の方向に沿った画像の画素の特性の変化、好ましくは、線に沿って配列された画像画素の色及び/又は明るさの変化、又は同一線上に配列された異なる画素間の色及び/又は明るさの差を検出する。
【0061】
液体サンプル30は典型的に均一な着色を示す。したがって、サンプルに配置された画像の画素は、一方向に沿ってそれぞれの特性の変動が実質的にゼロ、又は少なくとも最小であることを提示する。対照的に、気泡41、42では、画像画素の色及び/又は明るさは少なくとも一方向に沿って変動する。上で考察したように、この方向は、好ましくは、シリンジ11のダクトの軸に対して角度をなし(すなわち、平行ではない)、より好ましくは、当該軸に対して少なくとも45°の角度をなし、更により好ましくは、当該軸に対して実質的に直交している。
【0062】
したがって、コンピュータ3が一方向に沿った画素の特性の変化を検出した場合、システム100はシリンジ11内に少なくとも1つの気泡41、42の存在を識別する。この場合、追加の工程(工程D)が実施され、1つ以上の気泡除去サイクルが実行される。その後、少なくとも画像の捕捉及び分析の工程(工程B及びC)が繰り返される。
【0063】
本明細書では、可能な解決策を例により詳細に説明する。
【0064】
撮像デバイス2は、
図2Aに示すように、シリンジ11の画像50を捕捉する。
【0065】
好ましくは、気泡41、42の存在を検証する後続の動作を容易にするために、画像50は典型的に濃度スケールに変換される。
【0066】
次に、既知の方式で、コンピュータはダクト11b、特に液体サンプル30が存在するダクト11bの領域を識別する。例えば、画像50のニードル11c及びプランジャ11dを識別することにより、これを行うことができる。実際、これらの構成要素は概して、画像に視認可能な残りの要素とは異なる色を提示する。通常、例えば
図2Aのように、ニードル11c、及びプランジャ11dは、捕捉された画像50の最も暗い部分に配置される。
【0067】
概して、画像分析を容易にするために、シリンジに含有されるサンプルとは異なる色及び/又は明るさを有するニードル及びプランジャが好ましい。好ましくは、ニードル11c及びプランジャ11dは黒色であるか、又は少なくともサンプルよりも暗い色調を有し、その結果、これらの点に位置する画素の濃度値はゼロに近いか、又は少なくともサンプルの濃度値よりも著しく低い。
【0068】
これらの領域は、ニードル11c及びプランジャ11dとしてコンピュータ3によって認識される。したがって、ニードル11cとプランジャ11dとの間の空間は液体サンプル30を表す。したがって、好ましくは、ニードル11cとプランジャ11dとの間の画素のみが分析されるか、又はダクト11bにのみ配列された画素、すなわち、シリンジのダクト11bの外側の本体11aの画素ではなく、ニードル11c及びプランジャ11dにおける画素が含まれる。例えば、以下でより十分に考察されるように、
図2Cの結果をもたらした分析は、
図2Aの点α、β、γ、δの間、すなわち、頂点としてα、β、γ、δを有する長方形内で実施された。これらの点はシリンジ11のダクト11bに属している。
【0069】
次に、捕捉された画像50の画素の濃度レベルが1つ以上の方向に沿って測定される。濃度レベルは、濃度値としても知られており、コンピュータ科学ではよく知られた概念であり、本明細書では詳細には考察しない。概して、好ましくはその色及び/又は明るさに関連する、画像内の様々な画素の特性の分析が実行される。
【0070】
典型的に、画像はRGB形式で、後で既知の方式で濃度スケールに変換される。しかしながら、異なる画像形式(例えば、CMYK)で作業することが可能であり、システムでより使いやすい形式に変換することも可能である。
【0071】
RGB画像の画素のような色画像の濃度レベルを、当該画像の中間変換なしに直接検出するための既知の手順もある。
【0072】
更に、画像内の様々な画素の単一色のレベルの変動、例えばRGB画像内の画素の赤レベルの変動を分析する可能性は除外されない。しかしながら、画像内の画素の濃度レベルの分析(一般的には画素の全ての色の関数)は、一般的にはより正確である。
【0073】
例えば、
図2Bは、ダクト11bの軸に平行で互いに異なる2つの方向d1a及びd1bに沿って配列された、すなわちダクト11bの軸に垂直な方向d2に沿って測定された非ゼロの距離に配置された、
図2Aの画像内の画素の濃度値の傾向を示す。したがって、
図2Bは、画像50の画素濃度値の2つの傾向a1及びa2を示し、第1の傾向a1は、第1の方向d1aに沿って配列された画素濃度値の傾向を表し、第2の傾向a2は、第2の方向d1bに沿った画素濃度値の傾向を表す。具体的には、グラフのX軸は方向d1(それぞれの軸d1a又はd1bで測定される)に沿った位置であり、Y軸はそれぞれの画素の濃度値である。
【0074】
本明細書の後半でより十分に考察されるように、液体サンプル30において、ニードル11cにおいて、及びプランジャ11dにおいて、画素は実質的に均一な着色を示し、すなわち、シリンジ11のダクトの軸に平行な方向における濃度値の変化は最小限である。したがって、これらの領域では、それぞれの傾向、a1及びa2はほぼ水平である。更に、画素の濃度値は、シリンジ11のダクトの軸に垂直な方向に沿って移動しても、最小限に変動し、すなわち、所定の閾値未満で変動する。このため、これらの領域では傾向a1及びa2が実質的に重なっており、実質的に区別がつかない。
【0075】
要するに、濃度値は、ダクト11bの軸に垂直な方向d2、すなわち方向d1に垂直な方向の関数として変動しない。第1及び第2の傾向a1、a2は実質的に重複しているため、区別できない。言い換えると、第1の方向d1aに沿ってニードル11c及びプランジャ11dに位置する画素の濃度値は、第2の方向d1bに沿ってニードル11c及びプランジャに位置する画素の濃度値と実質的に一致している。
【0076】
この場合、濃度スケールでは、液体サンプル30の色は、白と黒とのほぼ中間の灰色になる。したがって、液体サンプルに配列された画素の濃度値は、可能な最大値と最小値との中間になる。ニードル11cから液体サンプル30への移行時に、濃度値の傾向a1、a2は、高い傾きを示し、すなわち、この値の大きな変動を提示し、その後、液体サンプル30において基本的に水平に戻る。また、この場合、液体サンプル30に配置された画素の濃度値は、方向d2の関数として最小限に変動する。また、この場合には、2つの傾向a1及びa2は区別できない。
【0077】
この場合、シリンジには2つの気泡41、42が含有されている。気泡の輪郭は黒に近い色を示す。したがって、気泡の輪郭では、それぞれの画素の濃度値は0に近い。実際に、気泡の縁部に位置する画素の濃度値における0に向かうピークは、
図2Bのグラフにおいて視認可能である。
【0078】
更に、「気泡の本体」、すなわち気泡の輪郭内に含有される空間では、画素は縁部よりも明るく、第1の方向d1aに沿って配置された画素の濃度値はそれほど変動せず、これは、第2の方向d1bに沿って同様に起こる。実際、グラフでは、気泡の本体に配置された画素の濃度値は、サンプルのそれと変わらない値に戻り、実質的に一定のままであり、すなわち、
図2Bのグラフのピークの間でそれは大きくは変動せず、したがって、気泡41、42の本体において、傾向a1及びa2は実質的に水平である。
【0079】
しかしながら、気泡本体に配置された画素の濃度値は、ダクト11bの軸に垂直な方向に沿って、すなわち方向d2に平行な方向に沿って変動する。したがって、同一の気泡の本体の傾向a1及びa2は、互いに離間されている。具体的には、この場合、第1の方向d1aに沿って気泡41、42に位置する画素は、第2の方向d1bに沿って気泡41、42に位置する画素よりも明るい。
【0080】
したがって、傾向a1及びa2は、実質的に平行であるが、互いに距離を置いている。これにより、事実上、方向d1a及びd1bと交差するシリンジ11のダクトの軸に直交する任意の線上の2つの異なる点、すなわち、方向d1a及び方向d1bと当該直線との交点に位置する画素間の差の評価が可能になる。この結果、シリンジ11に直交する方向における画像の画素の特性の変化を評価することができる。実際、同一の横軸における傾向a1とa2との間の差を評価することは、当該横軸に配列され、シリンジ11に直交する線上に配置された2つの画素間の差を評価することに対応する。
【0081】
言い換えると、傾向a1とa2との間の距離(縦軸方向に測定)を評価することは、ダクトの軸に垂直な線とダクトの軸に平行な2つの方向d1a及びd1bとの交点に配列された画素対の間の特性値の差を評価することと同等である。これは、ダクトの軸及び2つの方向d1a及びd1bに垂直な線(各対に1本の線)の交点によって画定される複数の画素対に対して繰り返され得る。
【0082】
要するに、シリンジ11のダクトの軸に平行な複数の方向に沿って配列された画素の傾向を分析することにより、シリンジ11のダクトの軸に対して直交する方向を含む横方向であっても、画素の特性の変動を(離散的に、すなわち非連続的な方式で)評価することも可能である。
【0083】
したがって、コンピュータ3は、
図2のグラフの方向d1のX軸に沿った同一の点で、方向d2のY軸に沿った前述のピークの存在及び前述の濃度値の差、すなわち、グラフの領域における傾向a1とa2との間の距離を検出することができ、これらの指標により、コンピュータ3は気泡41、42の存在を検出できるようになる。更に、グラフのピーク間の距離によって、コンピュータは、気泡41、42の大きさ、少なくとも方向d1に沿って測定された大きさを評価することができる。
【0084】
簡単にするために、2つの方向d1a、d1bのみに沿って配置された画素の分析について説明したことに留意されたい。当該溶液は、気泡の存在の指標を得るのに十分であり得る。しかしながら、複数の方向に沿って当該分析を実行することが可能である。例えば、
図2Cは、方向d1に平行な複数の方向に沿って連続して並んで配列された画素の濃度値分析の結果を示す。これにより、方向d1及びd2で測定された、事前定義された座標を有する点で測定された画素の濃度値をZ軸として有する三次元グラフを作成することが可能である。例えば、点αは、方向d1及びd2においてそれぞれ測定された座標(0、0)を有し、点δは、方向d1及びd2に平行な方向を有する軸上のグラフの軸の最大値である座標(X
max、Y
max)を有する。
【0085】
図2Dの詳細も参照すると、結果として生じる表面に沿って、
図2Bの傾向a1及びa2が識別されていることに留意されたい。
【0086】
更に、セグメントSはグラフに沿って描画され、これは、方向d1に直交する平面に配列され、傾向a1及びa2を通って通過する線の一部である。
【0087】
当該セグメントは、ニードル11c、プランジャ11d、及び液体サンプル30に配列された画像50の画素において、実質的に水平であり、すなわち、d1及びd2を含有する平面に実質的に平行である。これらのセグメントの傾きは、気泡41、42で著しく増加する。次いで、コンピュータ3は、これらのセグメントSの傾きが特定の事前定義された閾値を超えたときに、気泡41、42の存在を検出することができる。
【0088】
これは、簡略化のために、2つの傾向a1、a2を通過するセグメントの傾きを測定することによって行われてもよいが、複数の方向に沿った分析、又は方向d1及びd2を含有する平面に対するその表面の平均傾きの分析から生じる表面の複数の対の傾向を通過するセグメントの傾きを評価することによって行われてもよいことに留意されたい。
【0089】
例えば、セグメントの傾きは、画素の特性の値の間の差、典型的に、セグメントSと2つの傾向a1、a2との交点の濃度値を2点間の距離で割った値を評価することによって推定することができる。したがって、傾きは式P=(V1-V2)/Dで計算され得、式中、PはSの傾き、V1はa1とSとの交点における特性の値、V2は、a2とSとの間の交点における特性であり、Dは、方向d2で測定したa1とa2との間の距離である。
【0090】
一態様によれば、システムは、シリンジに気泡のあるサンプルを含有する画像(及び場合によっては気泡のないサンプルの画像も)を用いて訓練され得、その結果、当該システムは、気泡の存在を指し示す画像の特性を識別し得る。
【0091】
例えば、当該訓練画像の分析は、1つ以上の気泡の存在を指し示す異なる画素間の画素の特性の最小変動(例えば、濃度値)を定義するのに役立ち得る。上述の実施形態を考慮すると、訓練画像の分析は、例えば、
図2Bの「ピーク」を識別するのに好適な最小変動、及び/又は気泡の存在を識別する異なる画素の特性の変動の閾値の値、例えば、
図2Bの2つの傾向a1、a2の間の距離の閾値の値、又は
図2CのセグメントSの傾きの閾値の値などを定義するのに役立ち得る。
【0092】
可能な解決策によれば、システムが異なる種類のサンプル、又は少なくとも異なる特性を有するサンプルで動作できる場合、サンプルごとに異なる気泡を識別するための条件を定義することが可能である。例えば、画素特性の変動の異なる閾値の値(
図2CのセグメントSの傾きの閾値の値など)が、異なるサンプルに対して定義され得る。「閾値(threshold)」及び「閾値の値(threshold value)」は、本説明において交換可能に使用されることに留意されたい。
【0093】
概して、可能な実施形態は、画像内の画素の位置の関数として画素の特性の傾向を導出することを伴う。これにより、3つの座標(X,Y,Z)を有する点のセットを定義することができ、ここで、X及びYは分析された画素の場所を表し、方向d1及びd2(すなわち、それぞれダクトの軸に平行であり、垂直である)によって形成される平面内の点によって識別され、Zは、特性の値を表す(以下では簡単にするために「濃度レベル」として識別されるが、以下の説明は画素の異なる特性にも適用され得る)。
【0094】
したがって、気泡の検出は、ダクトに平行な方向及びダクトに直交する方向の両方における濃度値の変化を評価することによって実行され得る。
【0095】
したがって、これは、画像内の様々な点で濃度値を評価することによって得られる表面の形状を評価すること、すなわち、表面の形状Z=f(X,Y)を評価することと同等である(典型的に、ニードル及びプランジャにおける表面の領域は考慮されない)。気泡が存在しない画像の領域では、当該表面は実質的に平坦であるか、又は少なくともX及びY方向の変動が特定の閾値未満のZ値を有する。気泡が存在する領域では、表面は平坦でないように見える。典型的には、少なくとも気泡の本体において、表面は、Y方向にZ値が徐々に増加又は減少する領域を有する。
【0096】
代替的に、シリンジ軸に直交する複数の方向が直接使用され得、これらの直交方向の各々に沿った画素の変動が評価され得る。
【0097】
概して、方向に沿った、典型的には画素の明るさ及び/又は色に関連する画素の特性の変動の分析に続いて、コンピュータ3が気泡41、42の存在を検出できるようにするいくつかのツールが利用可能である。
【0098】
上で考察したように、画像50の画素を分析することによって、気泡の存在を識別し、それらの大きさを評価することが可能である。特に、気泡の1つ又は2つの寸法は、二次元画像の分析から導出され得る。例えば、
図2Aを参照すると、気泡の長さ(すなわち、方向d1に沿ったその寸法)は、傾向a1及びa2のピークの位置を評価することによって推定され得る。気泡の第2及び/又は第3の寸法は、典型的にはダクト直径11bの関数として推定され得る。例えば、
図2Aを参照すると、気泡は、典型的には、シリンジのダクトの直径に等しい直径を有すると考えられ得る。次に、気泡の長さ及び直径が既知であるので、それらの体積を推定することが可能である。典型的には直径が減少する気泡の末端部分を考慮するために、補正係数が使用され得る。代替的に、画像から得られたデータの関数として気泡の長さ(方向d1に沿った)及び幅(すなわち、方向d2に沿った)を推定し、気泡の三次元をそれ自身の幅(すなわち、方向d2内の気泡の大きさ)と等しいものとして近似することも可能である。
【0099】
概して、気泡の大きさを推定することにより、すなわち、その中に存在する気泡41、42が占める空間を考慮せずに、シリンジ11に実際に存在する液体サンプルの量を推定することが可能である。
【0100】
先に考察したように、したがって、システム100が少なくとも1つの気泡41、42の存在を検出した場合、気泡41、42を除去しようとして1つ以上のサイクルが実施される。典型的に、当該工程(工程D)では、プランジャ11dが高速で排出ストローク及び吸い込みストロークを交互に実施し、1つ以上の気泡を含有するサンプルをシリンジから機械的に排出する。最後に、液体は再びより遅い速度で吸引される。次に、新しい画像を取得して気泡41、42が残っていないかどうかをチェックし、新しく取得した画像にそれらがなお残っている場合は、気泡41、42を取り除く工程を繰り返すことが好ましい。
【0101】
一方、気泡が検出されなかった場合は、液体サンプル30が分析デバイス4に送達され得る工程(工程E)を更に実施してもよく、これは、当技術分野では知られており、本明細書では詳細には考察しない。
【0102】
上で考察したように、除去サイクルの後に気泡検出動作を繰り返して、この方法を継続することが可能であるかどうか、又は気泡除去工程を再度実施する必要があるかどうかを判断することが好ましい。
【0103】
しかしながら、
図3の破線の矢印で図式表示されているように、後でサンプル分析工程に直接進むために、画像を再チェックせずに気泡除去サイクルで動作する可能性も排除されない。
【0104】
気泡除去サイクルに続いてその上画像検証を行う場合、システム100がシリンジ11から気泡41、42を取り除くことができない場合、システムが無限サイクルでスタックする可能性がある。この点に関して、気泡除去工程の最大繰り返し数が事前に決定され得る。具体的には、気泡除去工程の実行前(すなわち工程Dの前)に、システム100は同一のサンプルに対して以前に実施された除去サイクル数のチェックを実施し得る。このサイクル数が事前定義された閾値を超えると、複数の動作が実施され得る。
【0105】
好ましくは、この閾値の値は、1~5の気泡除去サイクルにあり、より好ましくは1~15の気泡除去サイクルにある。可能な解決策としては、この閾値が3~15サイクル、又は5~10サイクルの間であることを伴う。
【0106】
2つの可能な代替態様によれば、この最大繰り返し回数の後に(すなわち、この閾値の値を超えると)、気泡41、42の存在が再び検出された場合、システム100は、液体サンプル30の分析を中断するか、又は引き続きその分析を実施するようにプログラムされ得る。第2の場合では、システム100は典型的に、気泡41、42が存在する最適ではないサンプルに対して実施された分析結果を記録するように構成されている。可能な一態様によれば、気泡のあるサンプルを分析するとき、システム100が気泡の体積を推定できた場合、初期の期待値からの気泡の体積を差し引くことによって、シリンジ内に実際に存在する液体サンプル30の体積を推定することが可能である。この場合、分析された液体サンプル30の実際の量が結果に記録され得る。この場合、分析される液体サンプル30の実際の量が分かり記録されると、分析される液体の実際の体積の計算を修正することによってその分析レポートを作成することができ、その結果、より正確で再現性のある結果を得ることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析システム(100)による液体サンプル(30)の分析方法であって、前記分析システム(100)が、前記サンプルを吸引するためのダクト(11b)を有する少なくとも1つのシリンジ(11)及び前記ダクト(11b)内で移動可能なプランジャ(11d)が設けられたサンプリングデバイス(1)と、画像を捕捉するためのデバイス(2)と、画像分析のためのソフトウェアアプリケーションが設けられたコンピュータ(3)と、前記サンプルを分析するためのデバイス(4)と、を備え、前記方法が、
前記シリンジ(11)により容器(20)から前記液体サンプル(30)を吸引する工程Aと、
前記画像捕捉デバイス(2)を動作させて、前記シリンジ(11)の前記液体サンプル(30)が吸引された領域で前記シリンジ(11)の1つ以上の画像(50)を捕捉する工程Bと、
前記コンピュータ(3)により前記画像(50)の分析を実施して、前記液体サンプル(30)内の気泡(41、42)の存在を検出する工程Cと、
前記工程Cにおいて1つ以上の気泡(41、42)の存在が検出された場合、1つ以上の気泡(41、42)除去サイクルを実施し、好ましくはその後、少なくとも前記工程B及びCを繰り返し、必要に応じて、前記工程B及びCの前に前記工程Aも繰り返す工程Dと、
前記工程Cで気泡(41、42)が検出されなかった場合、又は前記工程Dの1回以上の繰り返しによる事前定義された数の気泡除去サイクルが実行された場合、前記液体サンプル(30)を前記シリンジ(11)から前記分析デバイス(4)に送達して、前記液体サンプル(30)の前記分析を実行する工程Eと、を含む、方法。
【請求項2】
前記工程Cが、前記シリンジ(11)内の前記液体サンプル(30)と交差する方向に沿って、前記画像(50)の画素の特性の変動を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画素の前記特性が前記画素の色及び/又は明るさに関係している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特性が前記画素の濃度レベルに関係している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
別個の、好ましくは互いに平行な少なくとも2つの方向(d1a、d1b)に沿って前記変動を検出する動作、及び/又はこれらの少なくとも2つの方向(d1a、d1b)を横断する、好ましくはそれらに直交する線と前記2つの方向との間の交点に配列された画素の前記特性間の変動を検出する動作を含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項6】
前記方向(d1a、d1b)が、前記シリンジの前記サンプリングダクトの軸に対して実質的に垂直及び/又は平行である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程Cが、対の画素における前記特性の値の間の差を評価する動作を含み、各対の第1の画素が、前記ダクトの軸に平行な第1の方向(d1a)に沿って配列され、各対の第2の画素が、前記ダクトの前記軸に平行で前記第1の方向とは異なる第2の方向(d1b)に沿って配列され、各対の前記画素がまた、前記第1及び第2の方向に対して垂直な同一線上に配列されている、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記工程Cが、関数Z=f(X,Y)を定義する工程を含み、式中、X及びYが、前記画像の平面内の互いに直交する2つの方向(d1、d2)によって定義される基準系における前記画像の前記画素の座標であり、Zが、前記画像の前記X及びY座標に配置された前記画素の前記特性の値であり、X及び/又はYの関数としてZの変動を評価する値である、請求項
2に記載の方法。
【請求項9】
前記工程Cが、同一のX座標及び異なるY座標を有する少なくとも2点において前記関数Z=f(X,Y)と交差する線の少なくとも1つのセグメント(S)の傾きを評価する工程を含み、前記X座標が、前記ダクトの前記軸に平行な方向(d1)を参照している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程C中に、ある方向に沿った異なる画素間の前記特性の変動が事前定義された閾値を超える場合、好ましくは、前記ダクトの前記軸に垂直な方向に沿った前記特性の変動が事前定義された閾値を超える場合、気泡の存在が検出される、請求項
2に記載の方法。
【請求項11】
前記工程Dにおいて、少なくとも1回の気泡除去サイクルが実施される場合、前記液体サンプル(30)が前記プランジャ(11d)によって圧縮されて気泡除去を促進する、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも気泡除去の工程Dを所定回数繰り返しても、前記気泡(41、42)が取り除かれなかった場合、システム動作が中断される、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
気泡除去の工程Dを所定回数繰り返した後、前記気泡(41、42)が除去されなかった場合、前記シリンジ内の実際の液体の量が計算されるように、気泡の体積を推定し、前記分析デバイス(4)が以前に計算された前記シリンジ(11)内の実際の液体の量に従ってそのサンプル分析動作を実施し得るように、前記液体サンプルが前記分析デバイス(4)に送達される、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
分析システム(100)であって、
前記液体サンプル(30)を吸引するためのダクト(11b)を有する少なくとも1つのシリンジ(11)と、前記ダクト(11b)内で移動可能なプランジャ(11d)と、を装備したサンプリングデバイス(1)と、
画像捕捉デバイス(2)と、
画像分析ソフトウェアアプリケーションを装備し、請求項1~13の
いずれか一項に記載の方法の少なくとも工程Cを実施するようにプログラムされたコンピュータ(3)と、
サンプル分析のためのデバイス(4)と、を備える、システム。
【請求項15】
前記サンプリングデバイス(1)がオートサンプラである、請求項14に記載のシステム(100)。
【国際調査報告】