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特表2024-534484真皮(表皮)等価物又は皮膚等価物を調製するための2層支持体
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  • 特表-真皮(表皮)等価物又は皮膚等価物を調製するための2層支持体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】真皮(表皮)等価物又は皮膚等価物を調製するための2層支持体
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/60 20060101AFI20240912BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 27/14 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 15/64 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 15/22 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61L27/60
A61L27/56
A61L27/38 100
A61L27/44
A61L27/52
A61L27/54
A61L27/14
A61L27/18
A61L15/64 100
A61L15/44 100
A61L15/42 310
A61L15/26 100
A61L15/22 100
A61L27/58 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517135
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022076060
(87)【国際公開番号】W WO2023041798
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】2109858
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マイテ・リエラン
(72)【発明者】
【氏名】バルバラ・ランシュ
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ジラール
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー・ボワイラ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA01
4C081AA12
4C081AB19
4C081BA12
4C081BA16
4C081BB06
4C081CA17
4C081CD34
4C081CE02
4C081DA02
4C081DA12
4C081DB03
4C081DC03
4C081DC14
4C081EA01
4C081EA06
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニングによって形成された、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層と、少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティングによって形成された、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層とを含む2層基材上の真皮又は皮膚又は表皮等価物を製造するための方法に関する。本出願はまた、前記方法を用いて得られうる皮膚又は真皮又は表皮等価物、化合物をスクリーニングするための真皮等価物又は皮膚等価物又は表皮等価物の使用、及び最後に、創傷ドレッシングにおける又は皮膚移植のためのそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真皮等価物を製造するための方法であって、
a.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層(i)を形成する工程、
b.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層(ii)を形成する工程、
c.層(ii)に真皮及び/又は皮下組織細胞を播種する工程
を含み、工程a及び工程bが、この順序で又は逆の順序で逐次的に実施され、第2のエレクトロスピニング工程が、第1のエレクトロスピニング工程によって作製された層に沿って長手方向に行われる、方法。
【請求項2】
皮膚等価物を製造するための方法であって、請求項1に記載の真皮等価物を製造するための方法を含み、工程c)の後並びに/又は2つの工程a)及びb)の後に、層(i)に表皮細胞を播種する工程を更に含む、方法。
【請求項3】
層(i)を、任意選択で真皮-表皮接合部のマトリックスを模倣するヒドロゲルの形態にある、1種又は複数の生物活性剤で充填又はコーティングし、且つ/又は層(ii)を、任意選択で真皮マトリックスを模倣するヒドロゲルの形態にある、1種又は複数の生物活性剤で充填又はコーティングする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
真皮及び/又は皮下組織細胞が、好適な培地中で液内又は気液界面で培養される、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
表皮等価物を製造するための方法であって、
a.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層(i)を形成する工程、
b.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層(ii)を形成する工程、
c.層(i)に表皮細胞を播種する工程
を含み、工程a及び工程bが、この順序で又は逆の順序で逐次的に実施され、第2のエレクトロスピニング工程が、第1のエレクトロスピニング工程によって作製された層に沿って長手方向に行われる、方法。
【請求項6】
層(ii)が、少なくとも1種の溶融ポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(溶融エレクトロライティングMEW)又は少なくとも1種の溶液状ポリマーを含む組成物のエレクトロライティングによって形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
表皮細胞が、好適な培地中で液内又は気液界面で培養される、請求項2から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1、3から4及び6のいずれか一項に記載の方法を用いて得ることができる真皮等価物。
【請求項9】
請求項2から4及び6から7のいずれか一項に記載の方法を用いて得ることができる皮膚等価物。
【請求項10】
請求項5から7のいずれか一項に記載の方法を用いて得ることができる表皮等価物。
【請求項11】
皮膚等価物又は真皮等価物又は表皮等価物を形成するための、
b.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって得られた、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層
に長手方向に重畳された
a.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって得られた、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層
を含む基材の使用。
【請求項12】
厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層が、少なくとも1種の溶融ポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)(溶融エレクトロライティングMEW)又は少なくとも1種の溶液状ポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって形成される、請求項11に記載の基材の使用。
【請求項13】
化合物、好ましくは、皮膚に対する美容的、皮膚科学的又は薬学的活性、好ましくは皮膚への局所適用又は皮膚内への注射の後の美容的又は皮膚科学的活性を有することが可能な化合物をスクリーニングするための、請求項8に記載の真皮等価物又は請求項9に記載の皮膚等価物又は請求項10に記載の表皮等価物の使用。
【請求項14】
活性を有する化合物、好ましくは、皮膚に対する美容的、皮膚科学的又は薬学的活性、好ましくは皮膚への局所適用又は皮膚内への注射の後の美容的又は皮膚科学的活性を有することが可能な化合物をスクリーニングするための方法であって、候補化合物を請求項8に記載の真皮等価物又は請求項9に記載の皮膚等価物又は請求項10に記載の表皮等価物に適用する工程を含む、方法。
【請求項15】
創傷ドレッシングにおける又は皮膚移植のための使用のための、請求項8に記載の真皮等価物。
【請求項16】
創傷ドレッシングにおける又は皮膚移植のための使用のための、請求項9に記載の皮膚等価物。
【請求項17】
創傷ドレッシングにおける又は皮膚移植のための使用のための、請求項10に記載の表皮等価物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニングによって形成された、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層と、少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティングによって形成された、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層とを含む2層基材上の真皮又は皮膚又は表皮等価物を製造するための方法に関する。本出願はまた、前記方法を用いて得られうる皮膚又は真皮又は表皮等価物、化合物をスクリーニングするための真皮等価物又は皮膚等価物又は表皮等価物の使用、及び最後に、創傷ドレッシングにおける又は皮膚移植のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロスピニング(ES)は、電気力を使用して、ポリマー溶液又は溶融ポリマーをチャージした糸をデザインする、繊維を製造するための方法である。これは、直径が50nmまで小さくなりうる繊維を製造することを可能にする。しかしながら、堆積はランダムであり、その結果、不織繊維メッシュが生じる。エレクトロライティングは、エレクトロスピニングされた繊維の堆積を制御したポリマーを使用する新興技術であり、in situで複雑な構造を構築すること、又はそれらを組み立てることを可能にした。
【0003】
これらの技術は、組織工学のための、とりわけ皮膚組織の真皮及び任意選択で皮下組織部分を再構築するための多孔質基材を製造するために使用されてもよい。
【0004】
現在、格子モデルが、新たな知識を獲得するため及び評価研究のための最もよく使用されるin vitroモデルである。しかしながら、それらは、高い含水量に起因して、不十分な細胞外マトリックス新合成及び不十分な機械的特性を示す。
【0005】
多孔質基材は、細胞外マトリックス新合成を実現し、その結果、動的な真皮区画が生じ、また、多数の細胞型に許容的であるという利点を有する。しかしながら、皮膚組織再構築のためには、多孔性は制約でもあり、その理由は、ケラチノサイトを真皮に陥入させることなく、表皮細胞を上に堆積させ、満足のいく表皮再構築を実施することができるように、真皮区画をマトリックスで完全に充填しなければならないからである。これは、一般に、高濃度のビタミンCを添加して、真皮線維芽細胞によるマトリックス新合成を刺激することによって、高い細胞外マトリックス含有量を分泌する特定の線維芽細胞を選択することによって、及び/又は真皮区画を長期間成長させて、完全な充填を実現することによって実施される。これは、高齢ドナー由来である、並びに/又は汚染及び/若しくは病的物質に曝露された線維芽細胞を使用する場合に真の問題になり、その理由は、それらがより少ない細胞外マトリックスを産生することにより、真皮区画を充填することが困難になり、ひいては、表皮再構築が困難になるからである。真皮又は皮膚等価物の再構築におけるビタミンCの使用は、一部の原料評価研究には常に望ましいとは限らず、その理由は、これが比較的幅広い作用を有し、評価される分子への干渉を生じさせうるからである。
【0006】
更に、従来の多孔質基材は、製造上の制約に起因して、皮膚のナノ構造アーキテクチャを模倣する能力が不十分である。
【0007】
エレクトロスピニングは単独で、細胞外マトリックス線維に近い又は類似した直径の繊維を含む多孔質基材を作製することを可能にする解決策である。それらは、細胞の接着、成長及び分化の増強を助ける。しかしながら、無制御且つ低い多孔性に起因して、基材内への細胞浸潤が複雑且つ凡庸である。
【0008】
本発明による2層基材は、公知の基材に対して多数の利点を有する:
- 厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層は、細胞通過を防止する界面であり、これは、真皮マトリックスの組成及び量とは無関係に、表皮を再構築することを可能にする(即ち、これは、空又はほぼ空の真皮区画上で再構築されうる)。これは、ケラチノサイトの陥入を防止すると同時に、栄養素及びタンパク質の通過並びに真皮と表皮との間の伝達を可能にする。
- 厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層は、非常に多孔質であり、したがって、細胞外マトリックスの新合成及びリモデリングを実現する。そのデザインは、細胞挙動、細胞外マトリックスの組成及び組織化、並びに基材の機械的特性に影響を及ぼす。
【0009】
形成される最も多孔質の層が様々なデザインによるエレクトロライティングによってプリントされた、様々な2層基材が作製された。本発明者等は、これらの基材上で表皮再構築が可能であり、主要な表皮マーカーの発現を実現すると同時に、真皮区画の充填及び最も多孔質の層のデザインに依存しないことを観察した。更に、本発明者等は、基材のデザインが細胞外マトリックスの含有量及び組織化並びにビタミンCに対する応答に影響を与えることを観察した。
【0010】
これらの基材はまた、生体適合性及び高度にカスタマイズ可能であり、新たな知識の獲得、in vitro試験、ドレッシング調製及び移植のための皮膚モデルにおける新たな道を開くという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】FR688226A
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Black等(2005)Tissue Eng. 11:723~733頁
【非特許文献2】Mir等、Biomateriaux polymeres synthetiques pour la cicatrisation: une revue、Progress in Biomaterials(2018)
【非特許文献3】Bibliardi等、Pansements Bioactifs、Rev. Med. Suisse、2010
【非特許文献4】Tenehaus等、Agents topiques et pansements pour les soins locaux des brulures、2021
【非特許文献5】Yamada(1991)J. Biol. Chem. 266:12809~128012頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、真皮等価物を製造するための方法であって、
a.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも200nmであり、5μm未満の多孔性を有する層(i)を形成する工程、
b.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層(ii)を形成する工程、
c.層(ii)に真皮及び/又は皮下組織細胞を播種する工程
を含み、工程a及び工程bが、この順序で(aに続いてb)又は逆の順序で(bに続いてa)逐次的に実施され、第2のエレクトロスピニング工程が、第1のエレクトロスピニング工程によって作製された層に沿って長手方向に行われる、方法に関する。
【0014】
本発明は更に、皮膚等価物を製造するための方法であって、上記の真皮等価物を製造するための方法を含み、工程c)の後並びに/又は2つの工程a)及びb)の後に、層(i)に表皮細胞を播種する工程を更に含む、方法に関する。
【0015】
本発明は更に、表皮等価物を製造するための方法であって、
a.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層(i)を形成する工程、
b.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層(ii)を形成する工程、
c.層(i)に表皮細胞を播種する工程
を含み、工程a及び工程bが、この順序で(aに続いてb)又は逆の順序で(bに続いてa)逐次的に実施され、第2のエレクトロスピニング工程が、第1のエレクトロスピニング工程によって作製された層に沿って長手方向に行われる、方法に関する。
【0016】
本発明はまた、本発明による調製方法を用いて得られうる、真皮等価物及び皮膚等価物又は表皮等価物に関する。
【0017】
本発明はまた、皮膚等価物又は真皮等価物又は表皮等価物を形成するための、
b.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって得られた、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層
に長手方向に重畳された
a.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって得られた、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層
を含む基材の使用に関する。
【0018】
本発明はまた、化合物、好ましくは、皮膚に対する美容的、皮膚科学的又は薬学的活性、好ましくは皮膚への局所適用又は皮膚内への注射の後の美容的又は皮膚科学的活性を有することが可能な化合物をスクリーニングするための、本発明による真皮等価物又は皮膚等価物又は表皮等価物の使用に関する。
【0019】
本発明の別の目的は更に、活性を有する化合物、好ましくは、皮膚に対する美容的、皮膚科学的又は薬学的活性、好ましくは皮膚への局所適用又は皮膚内への注射の後の美容的又は皮膚科学的活性を有することが可能な化合物をスクリーニングするための方法であって、候補化合物を本発明による真皮等価物又は本発明による皮膚等価物又は本発明による表皮等価物に適用する工程を含む、方法に関する。
【0020】
本発明はまた、創傷ドレッシングにおける又は皮膚移植のための使用のための、本発明による真皮等価物、本発明による皮膚等価物、又は本発明による表皮等価物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】真皮等価物の製造に使用される2層基材の断面図であり、図中、1は、層(i)の略図であり、2は、層(ii)である。
図2】真皮等価物の製造に使用される2層基材の写真である(バーは、20μmを表す)。前景は、層(ii)の繊維の部分を示し、背景は、より多孔質でない層(i)を示す。
図3】エレクトロライティングを用いて作製され、本発明者等によって試験された異なるタイプのデザインを示す図である。スケールバーは、100μmに相当する。図は、左から右に、直径=8.7±0.48μmの繊維を用いた八角形デザイン、直径=11.71±0.38μmの繊維を用いた波状デザイン、直径=12.38±1.18μmの繊維を用いた十角形デザイン及び直径≒14.5μmの繊維を用いた波状デザインを示す。
図4】Oリングを使用してEpiskinインサートに装着した2層基材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
真皮等価物を製造するための方法
本発明は、真皮等価物を製造するための方法であって、
a.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層(i)を形成する工程、
b.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層(ii)を形成する工程、
c.層(ii)に真皮及び/又は皮下組織細胞を播種する工程
を含み、工程a及び工程bが、この順序で(aに続いてb)又は逆の順序で(bに続いてa)逐次的に実施されてもよく、第2のエレクトロスピニング工程が、第1のエレクトロスピニング工程によって作製された層に沿って長手方向に行われる、方法に関する。
【0023】
したがって、この方法は、真皮及び/又は皮下組織細胞を含む2層基材である真皮等価物を得ることを可能にする。この2層基材の略図を図1に示し、このタイプの基材の写真を図2に示す。
【0024】
方法の工程a及びbの後に、2層基材が得られる。好ましい実施形態によれば、2層基材は、水平に配置された実質的に平面の基材である。この実施形態では、層は、互いの上に積層される。
【0025】
層(i)を最初に形成することができ、次いで、層(ii)がその上に形成されるか、又は逆に、層(ii)が最初に形成され、次いで、層(i)がその上に形成される。
【0026】
「エレクトロスピニング」(ES)という用語は、電気流体力学的スプレー技法、例えば溶液若しくは溶融エレクトロスピニング、溶融若しくは溶液エレクトロライティング、又は溶融ブローを示す。この技法は、ポリマー繊維を堆積させることを可能にする。
【0027】
「エレクトロライティング」(EW)という用語は、繊維を特定の輪郭に沿って堆積させて、所定のデザインの形成を実現する、電気流体力学的スプレー技法、例えば溶液若しくは溶融エレクトロスピニング、溶融若しくは溶液エレクトロライティング、又は溶融ブローを示す。デザインの例として、八角形、有機的/波状、又は十角形を挙げることができる(図3を参照されたい)。
【0028】
これらの技法は、多孔質層とも称される細孔を含む層の形成を実現する。「細孔」という用語は、種々の幅及び深さの、任意選択で閉鎖されている中空空間を示す。
【0029】
「多孔性」という用語は、層が、特にこの層に含まれる細孔を介して、要素を横断させる能力を示す。多孔性は、ここでは、細孔径、即ち、細孔を形成する繊維間で測定された最大距離によって定義される。層の多孔性は、当業者に周知の技法、例えば走査型電子顕微鏡法、特にCrossbeam 340 SEM、Zeiss社、Oberkochen、ドイツを用いて評価されうる。
【0030】
したがって、「5μm以下の多孔性を有する層」は、細孔を含み、各細孔を形成する繊維間で測定された最大距離が5μm以下である層を示す。
【0031】
同様に、「20μm以上の多孔性を有する層」は、細孔を含み、各細孔の繊維間で測定された最小距離が20μm以上である層を示す。
【0032】
好ましくは、2層基材上に播種されるすべての細胞は、同じヒト又は動物種、特に哺乳類の動物種から供給される。播種される細胞は、健康なドナーから又は真皮及び/若しくは皮膚における障害を伴う状態に罹患しているドナーから得られうる。これらの細胞は、特に遺伝子の発現をモニタリングするために、遺伝子工学的方法(例えば、遺伝子導入等)を用いて改変されてもよい。様々な因子、例えば年齢、肌タイプ、民族性、ストレス又は汚染に関連する変動を研究するために、様々な真皮、皮膚又は表皮等価物を製造することができる。
【0033】
播種される細胞は、任意選択で不死の細胞培養物から、又は初代培養物から、又は皮膚組織から単離された(前培養なしの)初代細胞株から得られてもよく、好ましくは、すべての播種される細胞型は、初代培養物から得られる。
【0034】
「不死細胞」という用語は、腫瘍、自発的に不死の細胞及び/又は少なくとも1個のウイルス若しくは細胞のがん遺伝子を導入することによって不死化された細胞から得られた細胞を示す。特定の実施形態によれば、本発明による基材上に播種される1つ又は複数の細胞型は、少なくとも1個のウイルス又は細胞のがん遺伝子を導入することによって不死化された細胞の培養物から得られる。
【0035】
「初代培養物」という用語は、個体の組織及び/又は細胞から直接得られた細胞の培養物を示す。代替の実施形態では、本発明による基材上に播種される1つ又は複数の細胞型は、同じ種及び同じ年齢の個体からサンプリングされた組織及び/又は細胞の初代培養物から得られ、好ましくは、すべての細胞型は、同じ種及び同じ年齢の個体からサンプリングされた組織及び/又は細胞の初代培養物から得られる。本発明の一実施形態によれば、1つ又は複数、好ましくはすべての細胞型は、成人個体から得られる。このようにして、本発明による真皮又は皮膚等価物はまた、加齢に関連した変動又は個体の生存期間中に発症する疾患が真皮若しくは皮膚に与える影響を研究することを可能にする。初代培養物から得られた細胞は、不死化細胞とは異なり、接触阻害を保持し、したがって、これらの細胞の使用は、基材上での細胞増殖を限定することを可能にする。更に、初代培養物の使用は、in vivo条件に更に一層近付くことを可能にする。
【0036】
「個体」という用語は、ヒト又は動物種、特に哺乳類の動物種の対象を示す。
【0037】
第1の特定の実施形態では、播種される細胞は、疾患モデル細胞型である。
【0038】
第2の特定の実施形態では、播種される細胞は、疾患、好ましくは皮膚に影響を及ぼしている又は影響を及ぼすと推測される疾患を有する個体由来の細胞である。
【0039】
「疾患モデル細胞型」という用語は、これらの特定の状態に罹患している個体の細胞の特徴を再現するために、自発的に発生する又は遺伝子工学的方法(例えば、遺伝子導入等)によって若しくは薬理学的ツールで誘導された疾患を再現する動物又はヒトモデル由来の細胞型を示す。例として、特にアトピー性皮膚炎等の疾患モデルである、フィラグリンタンパク質発現を低下させるshFLG(ショートヘアピンフィラグリン)モデルから得られた細胞型を挙げることができる。好ましくは、本発明による疾患は、皮膚に影響を及ぼしている又は影響を及ぼすと推測される疾患、例えば湿疹、黒子、アトピー性皮膚炎、乾癬、日光弾性線維症である。
【0040】
工程a、層(i)の形成
層(i)は、少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって形成され、少なくとも200nmの厚さ及び5μm以下の多孔性を有する。
【0041】
好ましくは、この層は、少なくとも1種の溶融ポリマー又は1種の溶液状ポリマー、より好ましくは溶融ポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって形成される。
【0042】
好ましくは、層(i)の多孔性は、0.4μmから5μmの間である。この低い多孔性は、細胞浸潤を防止するが、栄養素、成長因子、サイトカイン、ケモカイン等の通過を実現する。
【0043】
好ましくは、層(i)の厚さは、200nmから20μmの間、より好ましくは5μmから10μmの間である。これは、細胞を分離することを可能にすると同時に、その伝達、特にパラクリン伝達を実現する。
【0044】
好ましくは、層(i)のエレクトロスピニングによって形成された繊維は、50nmから5μmの間、より好ましくは100nmから500nmの間の直径を有する。
【0045】
層(i)は、実質的に平らであるか又は起伏を含むことができる。起伏という用語は、隆起及び/又はくぼみを示す。層が起伏を含む場合、起伏は、2mm未満、好ましくは1.5mm未満の高さを有する。前記起伏は、層の表面に均一に分布することができる。
【0046】
工程b、層(ii)の形成
層(ii)は、少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって形成され、少なくとも20μmの厚さ及び20μm以上の多孔性を有する。
【0047】
一実施形態では、この層は、少なくとも1種の溶融ポリマー又は1種の溶液状ポリマー、より好ましくは溶融ポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって形成される。
【0048】
「溶融ポリマー」という用語は、室温で通常は固体であり、温度を上昇させることによって液体になるポリマーを示す。
【0049】
「溶液状ポリマー」という用語は、ポリマーが溶媒に溶解している組成物を示す。
【0050】
したがって、例えば、混合ジクロロメタン及びジメチルホルムアミド溶媒中で調製された15%ポリカプロラクトン(PCL)溶液は、溶液状ポリマーを含む組成物であるのに対し、60℃超に、即ち、PCLの融点を上回って予熱されたPCLペレットは、溶融ポリマーを形成する。
【0051】
好ましくは、この層の厚さは、20μmから5mmの間である。このタイプの厚さは、真皮及び皮下組織の区画を再現することを可能にする。
【0052】
好ましくは、層(ii)の多孔性は、20μmから600μmの間である。この多孔性は、細胞に過剰なストレスをかけることなく、生細胞の三次元集積、細胞外マトリックスの新合成及び組織化を実現する。
【0053】
好ましくは、層(ii)のエレクトロスピニングによって形成された繊維は、50nmから100μmの間、より特定すると1μmから20μmの間の直径を有する。この直径は、細胞外マトリックスにおいてin vivoで観察される線維又は原線維又は線維束の直径を模倣することを可能にする。
【0054】
層(ii)は、実質的に平らであるか又は起伏を含むことができる。起伏という用語は、隆起及び/又はくぼみを示す。層が起伏を含む場合、起伏は、2mm未満、好ましくは1.5mm未満の高さを有する。前記起伏は、層の表面に均一に分布しうる。
【0055】
第1の実施形態では、この層のデザインは、実質的に直線的な若しくは湾曲した繊維又は両者の混合若しくは両者の重合せによって輪郭を描かれうる。したがって、一部の繊維は、空洞の上に重畳又は懸架されうる(図3を参照されたい)。
【0056】
第2の実施形態では、この層のデザインは、異なる実質的に直線的な繊維の混合物又は重畳によって輪郭を描かれうる。「異なる」という用語は、その配向が異なることを示す。したがって、一部の繊維は、空洞の上に重畳又は懸架されうる。
【0057】
第3の実施形態では、この層のデザインは、異なる曲線の混合物又は重畳によって輪郭を描かれうる。「異なる」という用語は、その配向が異なること及び/又はその曲率が異なることを示す。したがって、一部の繊維は、空洞の上に重畳又は懸架されうる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、層(ii)は、波状タイプ又は八角形タイプ又は十角形タイプのデザインを有する。
【0059】
層(i)及び(ii)を形成するための少なくとも1種のポリマーを含む組成物
層(i)及び(ii)を形成するために使用される組成物の前記少なくとも1種のポリマーは、合成又は天然でありうる。層(i)及び(ii)を形成するために使用される組成物の前記少なくとも1種のポリマーは、好ましくは、生体侵食性(bioerodible)、生体吸収性、生体適合性、生体再吸収性及び/又は生分解性であり、好ましくは、これは、生体適合性及び生体再吸収性である。
【0060】
層(i)を形成するために使用される少なくとも1種のポリマーを含む組成物は、層(ii)を形成するために使用される少なくとも1種のポリマーを含む組成物と同一であっても異なっていてもよい。同様に、層(i)を形成するために使用される前記少なくとも1種のポリマーは、層(ii)を形成するために使用される組成物のものと同一であっても異なっていてもよい。
【0061】
好適なポリマーの例は、これらに限定されるものではないが、ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)の複合体、ポリ(オルトエステル)(POE)、ポリアスピリン、ポリホスファゲン(polyphosphagen)、トリエチル-2-アセチルシトレート、コラーゲン、エラスチン型のペプチド、デンプン、アルファ化デンプン、キトサン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、シルク、カプロラクトンのホモポリマー若しくはコポリマー、好ましくはポリカプロラクトン、PLCL(ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(2-エチル-2-オキサジン)(PEtOzi)、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBTコポリマー(polyactive)、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリ(アクリル酸)(PEO-PPO-PAA)コポリマー、PLGA-PEO-PLGAコポリマー、PEG-PLGコポリマー、PLA-PLGAコポリマー、ポロキサマー407、PEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマー、又はそれらの組合せを含む。
【0062】
様々な実施形態では、組成物は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)コポリマー(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、D-ラクチド、D,L-ラクチドのホモポリマー若しくはコポリマー、L-ラクチド、D,L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン、D,L-ラクチド-co-グリコリド-co-ε-カプロラクトン、L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン若しくはポリ(エステル)アミド又はそれらの混合物を含む。
【0063】
好ましくは、層(i)及び(ii)を形成するために使用される組成物の前記少なくとも1種のポリマーは、以下から選択される:
- 天然ポリマー、例えば、タンパク質及びポリペプチド、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、例えばコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ゼラチン、又はそれらの混合物若しくはそれらの複合材料、
- 合成ポリマー、例えば、生分解性合成ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)コポリマー(「PLGA」)、ポリカプロラクトン(「PCL」)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)コポリマー、ポリグリコネート、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンコポリマー、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、チロシンに由来するポリカーボネート及び任意のランダム若しくは(マルチ)ブロックコポリマー、又はそれらの混合物、
- 並びにそれらの混合物。
【0064】
ポリエチレングリコールメチルエーテル(mPEG)は、ポリマーにおいて展性を付与するために使用されうる。
【0065】
一部の実施形態では、これらのポリマーはまた、求められる放出プロファイルをもたらすために、形成された繊維に適用されうる。
【0066】
工程c、層(ii)への播種
真皮及び/又は皮下組織細胞は、好ましくは、層(ii)の自由表面に播種される。次いで、播種された細胞は、層(ii)内に遊走することができる。
【0067】
「真皮及び/又は皮下組織細胞」という用語は、真皮又は皮下組織中に存在する又は移動する細胞型の細胞を示す。これは、ヒト、動物又は他の起源の、任意選択で遺伝子改変された、線維芽細胞、脂肪細胞、内皮細胞、ニューロン細胞、毛包細胞、汗腺細胞、皮脂腺細胞、アポクリン腺細胞、免疫細胞(例えばマクロファージ、単球、肥満細胞、リンパ球、好中球、好酸球、樹状細胞等)、神経細胞、血管平滑筋細胞、特殊筋細胞、幹細胞又は誘導幹細胞(例えばiPS及びES細胞由来の細胞)を含むが、これらに限定されない。本出願において、幹細胞は、ヒト胚性幹細胞を除くと理解されるべきである。
【0068】
特定の実施形態では、播種される真皮及び/又は皮下組織細胞は、特に、線維芽細胞、典型的には真皮線維芽細胞、特にヒト線維芽細胞、より特定すると初代ヒト線維芽細胞を含む。
【0069】
好ましい実施形態では、基材中の播種される線維芽細胞の濃度は、0から10万個の間の細胞/mm3、より好ましくは1500から25,000個の細胞/mm3である。
【0070】
播種は、当業者に周知の任意の好適な技法を使用して、真皮及び/又は皮下組織細胞、特に線維芽細胞の成長に好適な培養条件下で実行されうる。
【0071】
細胞播種という用語は、制御された又はランダムな手動又は機械援助型(ディスペンサー若しくはバイオプリンティングを使用する)の細胞堆積を示す。
【0072】
播種されたら、真皮及び/又は皮下組織細胞は、典型的には、好適な、好ましくは線維芽細胞培養に好適な培養培地中で、例えば、FHN2D培地(アスコルビン酸を含む及び含まない2mMのグルタミン、抗生物質及び10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地にあたる)中で培養される。それらは、好ましくはその成長に好適な条件下で、より特定すると好ましくは37℃及び5%CO2で、液内又は気液界面で培養されうる。播種されたら、真皮及び/又は皮下組織細胞は、最大6か月、好ましくは5から40日間培養されうる。
【0073】
皮膚等価物を製造するための方法
層(i)の自由表面に表皮細胞を播種することができ、層(i)及び(ii)への細胞播種は、同時に、又は順次実施することができる。
【0074】
したがって、本発明は、皮膚等価物を製造するための方法であって、本発明による真皮等価物を製造するための方法を含み、工程c.の後並びに/又は2つの工程a.及びb.の後に、層(i)に表皮細胞を播種する工程を更に含む、方法に関する。
【0075】
「表皮細胞」という用語は、表皮中に存在する又は移動する細胞型の細胞を示す。これは、ケラチノサイト、ニューロン細胞、メラノサイト、メルケル細胞、幹細胞又は誘導幹細胞(例えばiPS及びES細胞由来の細胞)及び免疫担当細胞、例えばランゲルハンス細胞を含む。
【0076】
細胞播種という用語は、制御された又はランダムな手動又は機械援助型の(ディスペンサー若しくはバイオプリンティングを使用する)細胞堆積を示す。
【0077】
一実施形態では、播種される表皮細胞は、ケラチノサイト型であり、任意選択でメラノサイトを含む。好ましくは、ケラチノサイト及びメラノサイトは、基材中又は基材上に播種される前に、別個に培養される。
【0078】
ケラチノサイトを用いた特定の実施形態では、層(i)は、繊維中及び/又は繊維上の生物活性剤として、コラーゲン4又はコラーゲン7を更に含むことができる。有利には、層(i)上のコラーゲンの厚さは、10μmを超えない。
【0079】
表皮細胞は、好ましくは、層(i)の自由表面に播種される。
【0080】
好ましい実施形態では、基材上の播種されるケラチノサイトの濃度は、0から200万個の間の細胞/cm2、より好ましくは150,000から400,000個の細胞/cm2である。
【0081】
播種されたら、表皮細胞は、典型的には、好適な、好ましくはケラチノサイトの培養に適合された培養培地中で、例えば、アスコルビン酸を含む又は含まないG7F増幅培地及びG3F分化培地(Black等(2005)Tissue Eng. 11:723~733頁)中で培養される。それらは、37℃及び5%CO2で最大6か月、好ましくは5から40日間、液内又は気液界面で培養されてもよい。
【0082】
好ましくは0から7日、更により好ましくは3から7日のインキュベート期間に続いて、皮膚等価物は、好ましくは、例えばインサートを金属グリッド、又は気体/液体界面を実現する当業者に公知の他の任意の細胞培養デバイス上に引き上げることによって、気体/液体界面で維持される。
【0083】
次いで、好ましくは皮膚の特徴を呈する皮膚等価物、即ち、4種類の標準的な細胞層、即ち、基底及び基底上層、顆粒層並びに角質層を呈する表皮等価物によって被覆された真皮等価物が得られるまで、インキュベートを継続する。このようにして、インキュベートを、好ましくは、7から21日の間、更により好ましくは7から14日の間の持続期間にわたって継続する。
【0084】
天然又は合成化合物を、層(i)の自由表面又は細胞播種済みの表皮表面に添加することができる。これらの化合物は、例えば、単独又は混合物での、耐水性化合物(例えば、合成ポリマー、例えばシリコーン等)、UV遮蔽剤、殺菌剤(Mir等、Biomateriaux polymeres synthetiques pour la cicatrisation: une revue、Progress in Biomaterials(2018)、Bibliardi等、Pansements Bioactifs、Rev. Med. Suisse、2010又はTenehaus等、Agents topiques et pansements pour les soins locaux des brulures、2021に記載されている)又はセルロースである。
【0085】
表皮等価物を製造するための方法
本発明は更に、表皮等価物を製造するための方法であって、
a.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層(i)を形成する工程、
b.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層(ii)を形成する工程、
c.層(i)に表皮細胞を播種する工程
を含み、工程a及び工程bが、この順序で(aに続いてb)又は逆の順序で(bに続いてa)逐次的に実施され、第2のエレクトロスピニング工程が、第1のエレクトロスピニング工程によって作製された層に沿って長手方向に行われる、方法に関する。
【0086】
「表皮細胞」という用語は、表皮中に存在する又は移動する細胞型の細胞を示す。これは、ケラチノサイト、ニューロン細胞、メラノサイト、メルケル細胞、幹細胞又は誘導幹細胞(例えばiPS及びES細胞由来の細胞)及び免疫担当細胞、例えばランゲルハンス細胞を含む。
【0087】
細胞播種という用語は、制御された又はランダムな手動又は機械援助型の(ディスペンサー若しくはバイオプリンティングを使用する)細胞堆積を示す。
【0088】
一実施形態では、播種される表皮細胞は、ケラチノサイト型であり、任意選択でメラノサイトを含む。好ましくは、ケラチノサイト及びメラノサイトは、基材中又は基材上に播種される前に、別個に培養される。
【0089】
ケラチノサイトを用いた特定の実施形態では、層(i)は、繊維中及び/又は繊維上の生物活性剤として、コラーゲン4又はコラーゲン7を更に含むことができる。有利には、層(i)上のコラーゲンの厚さは、10μmを超えない。
【0090】
表皮細胞は、好ましくは、層(i)の自由表面に播種される。
【0091】
好ましい実施形態では、基材上の播種されるケラチノサイトの濃度は、0から200万個の間の細胞/cm2、より好ましくは150,000から400,000個の細胞/cm2である。
【0092】
播種されたら、表皮細胞は、典型的には、好適な、好ましくはケラチノサイトの培養に適合された培養培地中で、例えば、アスコルビン酸を含む又は含まないG7F増幅培地及びG3F分化培地(Black等(2005)Tissue Eng. 11:723~733頁)中で培養される。それらは、37℃及び5%CO2で最大6か月、好ましくは5から40日間、液内又は気液界面で培養されてもよい。
【0093】
好ましくは0から7日、更により好ましくは3から7日のインキュベート期間に続いて、皮膚等価物は、好ましくは、例えばインサートを金属グリッド、又は気体/液体界面を実現する当業者に公知の他の任意の細胞培養デバイス上に引き上げることによって、気体/液体界面で維持される。
【0094】
次いで、好ましくは求められる特徴を呈する表皮等価物、即ち、4つの標準的な細胞層、即ち、基底層、基底上層、顆粒層及び角質層を有する表皮等価物が得られるまで、インキュベートを継続する。このようにして、インキュベートを、好ましくは、7から21日の間、更により好ましくは7から14日の間の持続期間にわたって継続する。
【0095】
任意選択で、方法は、工程cの前に追加の工程を含むことができ、この工程は、層(ii)を、任意選択で真皮マトリックスを模倣するヒドロゲル形態にある、1種又は複数の生物活性剤で充填又はコーティングすることを含む。
【0096】
好ましい実施形態では、工程cの前に、層(i)を、エタノールで処理する。
【0097】
更に、天然又は合成化合物を、層(i)の自由表面又は細胞播種済みの表皮表面に添加することができる。これらの化合物は、例えば、単独又は混合物での、耐水性化合物(例えば、合成ポリマー、例えばシリコーン等)、UV遮蔽剤、殺菌剤(Mir等、Biomateriaux polymeres synthetiques pour la cicatrisation: une revue、Progress in Biomaterials(2018)、Bibliardi等、Pansements Bioactifs、Rev. Med. Suisse、2010又はTenehaus等、Agents topiques et pansements pour les soins locaux des brulures、2021に記載されている)又はセルロースである。
【0098】
層(i)及び(ii)への補充物
本発明による方法の一部の実施形態では、層(i)及び/又は層(ii)は、繊維中及び/又は繊維上の1種又は複数の生物活性剤を更に含むことができる。生物活性剤又は生物活性化合物は、ここでは、生物学的又は化学的事象を改変する、阻害する、活性化する又は影響する化合物又は構成体(entity)を示すために使用される。例えば、生物活性剤は、これらに限定されるものではないが、好ましくは皮膚の、タンパク質又はペプチド、抗生物質、抗ウイルス物質、酵素阻害剤、ホルモン、細胞成長阻害剤及び抗接着分子を含む、細胞-細胞外マトリックス相互作用モジュレーター、血管拡張剤、DNA、RNA又はタンパク質合成阻害剤、抗炎症剤、抗血管新生因子、血管新生因子、抗分泌因子、抗凝固剤及び/又は抗血栓剤、プロスタグランジンを含むことができる。好ましくは、生物活性剤は、層(i)及び(ii)を形成するために使用される組成物を形成するポリマーとは異なる。例えば、生物活性剤は、コラーゲン、ゼラチン、ペプチド、エタノール、成長因子、ポリ-リジン、任意選択でチオール化されたRGDペプチド、任意選択でチオール化されたGRGDSペプチド(配列番号1)、並びにYamada(1991)J. Biol. Chem. 266:12809~128012頁に記載されているタンパク質及びペプチド、例えばフィブロネクチン若しくはフィブロネクチンに由来するペプチド、例えばI及びII型ペプチド、ラミニン若しくはラミニンに由来するペプチド、例えばペプチドYIGSR(配列番号2)、PDSGR(配列番号3)、F9、LGTIPG(配列番号4)、p20若しくはPA22-2、ビトロネクチン、フィブリノゲン、フォンウィルブランド因子、エンタクチン、スポロゾイト周囲タンパク質、トロンボスポンジン又はアミロイドP成分並びにそれらの混合物でありうる。一部の実施形態では、生物活性剤は、栄養補助食品、例えば1種若しくは複数のビタミン、例えばアスコルビン酸、亜鉛、カルシウム、又はそれらの組合せを含むことができる。
【0099】
コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン又はフィブリンの存在は、典型的には、細胞、特にケラチノサイト及び線維芽細胞の接着を促進する。
【0100】
線維芽細胞を用いた特定の実施形態では、使用されるコラーゲンは、コラーゲン1である。
【0101】
ケラチノサイトを用いた特定の実施形態では、使用されるコラーゲンは、コラーゲン4又はコラーゲン7である。
【0102】
一実施形態では、生物活性剤は、細胞成長促進剤、例えば糖、又はそれらの組合せでありうる。
【0103】
一部の実施形態では、生物活性剤は、医薬品である。
【0104】
生物活性剤は、RNA、例えばsiRNA又はshRNAを更に含む。一部の実施形態では、生物活性剤は、成長因子、サイトカイン、細胞外マトリックス分子又はその断片若しくは誘導体、例えば、細胞結合部位、例えばRGD又はGRGDS配列である。
【0105】
繊維中及び/又は繊維上の生物活性剤は、当業者に公知の異なる技法を用いて、例えば以下によって繊維上に堆積させることができる:
- 浸漬し、任意選択でそれに続いて、排水又は乾燥すること、
- スプレー又は噴霧すること、
- 特にピペットを使用して、注入すること。
【0106】
したがって、本発明による方法において、工程a及びbの後に、層(i)を、任意選択で真皮-表皮接合部のマトリックスを模倣するヒドロゲルの形態にある、1種又は複数の生物活性剤で充填又はコーティングすることができ、且つ/又は層(ii)を、任意選択で真皮マトリックスを模倣するヒドロゲルの形態にある、1種又は複数の生物活性剤で充填又はコーティングすることができる。これらの工程は、好ましくは、実施される場合、前記層に細胞を播種する工程の前に実施される。
【0107】
「充填された」という用語は、層の空き容積の少なくとも50%が前記活性剤で充填され、好ましくは空き容積の少なくとも70%が充填され、より好ましくは空き容積の少なくとも90%が充填されていることを示す。充填技法は、特に、前記生物活性剤を含む浴への浸漬、前記層への生物活性剤の注入又は堆積を含む。
【0108】
「コーティングされた」又は「被覆された」という用語は、ここでは、生物活性剤が層を形成する繊維の表面に堆積していることを示す。層の空き空間は、前記生物活性剤で充填されていない。生物活性剤を堆積させるための、したがって、層をコーティング又は被覆するための方法は、例えば、生物活性剤を含む溶液に浸漬する工程に続いて、乾燥又は排水する工程を含む。
【0109】
「ヒドロゲル」という用語は、膨張剤が水であるゲルを示す。ヒドロゲルのマトリックスは、一般に、ポリマーネットワークである。
【0110】
そのようなヒドロゲルは、例えば、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、エラスチン型ペプチド、寒天、アルギネート、脱細胞化真皮細胞外マトリックス及びそれらの混合物を含むことができる。
【0111】
例として、コラーゲン4若しくは7又はパールカン(グリコサミノグリカン)は、真皮-表皮接合部のマトリックスを模倣するために使用され、コラーゲン1、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸(アクリレート又はメタクリレート)、エラスチン様ペプチド(アクリレート又はメタクリレート)、ゼラチン(メタクリレート又はアクリレート)、及びそれらの混合物は、真皮マトリックスを模倣するために使用される。
【0112】
本発明による方法の一部の実施形態では、層(i)及び/又は層(ii)は、皮膚中に存在する又は移動するすべての細胞型、例えばヒト、動物又は他の起源の、任意選択で遺伝子改変された、線維芽細胞、脂肪細胞、内皮細胞、ニューロン細胞、毛包細胞、汗腺細胞、皮脂腺細胞、アポクリン腺細胞、発汗細胞(sudoral cell)、免疫細胞(例えばマクロファージ、単球、肥満細胞、リンパ球、好中球、好酸球、樹状細胞等)、神経細胞、血管平滑筋細胞、特殊筋細胞、幹細胞又は誘導幹細胞(例えばiPS及びES細胞由来の細胞)の細胞の接着、成長、分化、増殖、遊走を実現する任意の化合物又は処理(例えば線維芽細胞、メラノサイト若しくはケラチノサイト又は他の皮膚細胞の化学誘引物質)で、細胞接着を増加させるように処理及び/又は改変されうる。これらの処理は、例えば、NaOH処理、エタノール処理、層形成後のプラズマ処理、又は層形成中のシシカバブ構造を含む。
【0113】
一部の実施形態では、層(i)及び/又は層(ii)の繊維は、例えばメタクリレート又はアクリレート、アクリルアミド又はメタクリルアミドで、化学修飾されてもよく、これらは、繊維形成後又は繊維形成中に共有結合によって架橋されてもよい。
【0114】
本発明による方法を用いて得られうる等価物
本発明はまた、本発明による方法を用いて得ることが可能な真皮等価物に関する。
【0115】
本発明はまた、本発明による方法を用いて得ることができる皮膚等価物に関する。
【0116】
本発明はまた、本発明による方法を用いて得ることができる表皮等価物に関する。
【0117】
2層基材
2層基材を、関連するプラットフォーム(インサートに適合された(又はアダプター若しくは支持要素を使用する)培養プレート)上に置くためにアダプターを用いて又は用いずにインサート、ナセル、懸架システム上に構成することができ、又は任意のタイプのデバイス(脱脂綿、脚付きグリッド等)に載せるか若しくは懸架システムが気液界面を実現するための脚若しくは引き上げシステムを有する場合、ペトリ皿に入れることができる。市販の例は、以下である:Sigma社製のCellCrown(商標)、Corning社製のSnapWell(商標)、Costar社製のNetWell(商標)若しくはTransWell(商標)、Nunc(商標)インサートとともに使用される支持プレート、又はOリング付きのEPISKINインサート(Episkinインサート:Episkinナセル+Oリング(特許FR688226A)、図4を参照されたい)。この場合、液体は、好ましくは、好適な培養培地からなる。
【0118】
次いで、好ましくは真皮等価物、皮膚等価物又は表皮等価物が得られるまで、好ましくは等価物が求められる特徴を有するまで、インキュベートを継続する。例えば、皮膚等価物については、次いで、好ましくは皮膚の特徴を呈する等価物、即ち、4種類の標準的な細胞層、即ち、基底層、基底上層、顆粒層及び角質層を呈する表皮等価物によって被覆された真皮等価物が得られるまで、インキュベートを継続する。
【0119】
このようにして、インキュベートを、好ましくは、7から21日の間、更により好ましくは7から14日の間の持続期間にわたって継続する。
【0120】
本発明による使用
本発明は、皮膚等価物又は真皮等価物又は表皮等価物を形成するための、
b.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロライティング(EW)によって得られた、厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層
に長手方向に重畳された
a.少なくとも1種のポリマーを含む組成物のエレクトロスピニング(ES)又はエレクトロライティング(EW)によって得られた、厚さが少なくとも200nmであり、5μm以下の多孔性を有する層
を含む基材の使用に関する。
【0121】
当然ながら、前記使用は、in vitroの使用である。
【0122】
厚さが少なくとも20μmであり、20μm以上の多孔性を有する層は、少なくとも1種の溶融ポリマー又は少なくとも1種の溶液状ポリマーを含む組成物のエレクトロライティングによって形成されてもよく、好ましくは、組成物は、少なくとも1種の溶融ポリマーを含む。
【0123】
本発明はまた、それぞれ、真皮又は皮膚又は表皮に関する新たな知識を獲得するための、本発明による真皮等価物又は本発明による皮膚等価物又は本発明による表皮等価物の使用に関する。実際、これらの等価物は、例えば皮膚の老化、紫外線照射の影響、環境影響、例えば、乾燥若しくは汚染に関係する、これらの組織の生態を研究するための、又は疾患を研究するためのモデルとして役立ちうる。
【0124】
本発明はまた、化合物、好ましくは、皮膚に対する美容的、皮膚科学的又は薬学的活性、好ましくは皮膚への局所適用又は皮膚内への注射の後の美容的又は皮膚科学的活性を有することが可能な化合物をスクリーニングするための、本発明による真皮等価物、又は皮膚等価物、又は本発明による表皮等価物の使用に関する。
【0125】
「皮膚に対する美容的、皮膚科学的又は薬学的活性を有することが可能な化合物」という用語は、皮膚に対する美容的、皮膚科学的若しくは薬学的活性を有することが知られている、又はそのような活性を有すると推測される化合物を示す。
【0126】
本発明は更に、活性を有する化合物、好ましくは、皮膚に対する美容的、皮膚科学的又は薬学的活性、好ましくは皮膚への局所適用又は皮膚内への注射の後の美容的又は皮膚科学的活性を有することが可能な化合物をスクリーニングするための方法であって、候補化合物を本発明による真皮等価物又は本発明による皮膚等価物又は本発明による表皮等価物に適用する工程を含む、方法に関する。当然ながら、前記スクリーニング方法は、in vitroの方法である。
【0127】
本発明はまた、創傷ドレッシングにおける又は皮膚移植のための使用のための、本発明による真皮等価物又は本発明による皮膚等価物又は本発明による表皮等価物に関する。
【0128】
「創傷」という用語は、皮膚が擦傷、切傷、裂傷、熱傷又は損傷を受ける病変を示す。
【0129】
皮膚移植術は、特に、熱傷、糖尿病等の疾患、形成及び美容外科手術の場合に使用される。
【0130】
例えば、創傷のドレッシングにおける本発明による表皮等価物の使用の場合、層(ii)は、処置される人の線維芽細胞をもたらす領域を形成する。したがって、人の線維芽細胞は、創傷箇所で健康な皮膚を再構築するために、等価物のこの部分に遊走し、増殖することができる。更に、表皮等価物の層(ii)は、生物活性剤又は線維芽細胞の遊走及び接着を促進する処理を受けた薬剤を含むことができる。
【0131】
同様に、創傷のドレッシングにおける本発明による真皮等価物の使用の場合、層(i)は、処置される人のケラチノサイトをもたらす領域を形成する。したがって、人のケラチノサイトは、創傷箇所で健康な皮膚を再構築するために、層(i)に遊走し、増殖し、コロニー形成することができる。更に、真皮等価物の層(i)は、生物活性剤又はケラチノサイトの遊走及び/又は増殖を促進する処理を受けた薬剤を含むことができる。
【0132】
本発明はまた、本発明による真皮等価物、又は本発明による皮膚等価物、又は本発明による表皮等価物を適用する工程を含む処置方法に関する。好ましくは、本発明は、創傷を処置するための方法であって、本発明による真皮等価物、又は本発明による皮膚等価物、又は本発明による表皮等価物を必要とする個体に投与する工程を含む、方法に関する。
【0133】
本発明を下記の実施例においてより詳細に説明する。
【実施例
【0134】
本発明者等は、以下を用いて全層in vitro皮膚モデルを得た:
- 異なるデザインの層(ii)(八角形及び十角形のデザインによる直線状繊維、並びに波状繊維)
- 異なる多孔性分布:
層(i):0.01μm2から0.3μm2の間
直線状の八角形の溶融エレクトロライティング(MEW)層(ii):10μm2から500μm2の間
波状のMEW層(ii):20μm2から1000μm2の間
- 異なる播種される細胞の濃度、(線維芽細胞:58,000から100万個の細胞/cm2、ケラチノサイト150,000から400,000個の細胞/cm2)
- 異なる繊維コーティング(エタノール、フィブロネクチン、ポリ-L-リジン(PLL)でのコーティング)、及びプラズマ処理
- 異なる繊維直径(層(ii)について9から14μmを試験した)、
- 異なる培養時間(11、18、28及び36日間)。
【0135】
試験されたすべての条件下で、線維芽細胞及びケラチノサイトは、真皮(線維芽細胞のみの場合)又は完全皮膚モデル(線維芽細胞及びケラチノサイトの場合)に結合し、それを再構築することができた。ケラチノサイトは、すべての層(基底層、有棘層、顆粒層及び角質層)を有する完全に分化した表皮を形成し、関連するマーカー(有棘層及び顆粒層についてはケラチン10、顆粒層及び角質層についてはフィラグリン)を発現する。
【0136】
層(i)のおかげで、本発明者等は、真皮部分の充填にかかわらず、ケラチノサイトの真皮へのいかなる陥入、浸潤又は遊走も一切観察しなかった。ケラチノサイトを線維芽細胞と同時に播種することができ、これは、表皮と真皮との間の隔膜がなければいかなる多孔質基材においても不可能である。
【0137】
デザインによって、本発明者等は、差異を観察した。実際、細胞外マトリックス新合成は、デザインに依存する:
- エラスチンは、直線状(且つより多孔質でない)繊維を用いたデザインにおいて優先的に発現する、
- コラーゲン1含有量は、直線状繊維を用いたデザインにおいて増加するようである。
【0138】
一般に、細胞外膜の組織化は、デザインと相関する。
【0139】
(実施例1)
第1の波状デザインの層(ii)を有する2層基材の形成
材料
ポリカプロラクトン(PURASORB PC、Corbion Inc.社、Gorinchem、オランダ)
Episkinインサート:Episkinナセル及びOリング(特許FR688226Aに記載されている)
溶液エレクトロスピニングシリンジ:Henke-Sass, Wolf GmbH社;Tuttlingen、ドイツ
溶融エレクトロライティングシリンジ:Nordson EFD社;Pforzheim、ドイツ
走査型電子顕微鏡、TM3030Plus、Hitachi社;東京、日本
Crossbeam 340走査型電子顕微鏡、Zeiss社;Oberkochen、ドイツ
溶融エレクトロライティング(MEW)プリンター(ピンク)、特注;University of (Wurzburg又はWuerzburg)、ドイツ
EM ACE600スパッタコーティングシステム、Leica社;Wetzlar、ドイツ
シリンジポンプ、World Precision Instruments社;Sarasota、FL、米国
レーザー切断機、Rayjet;Plymouth、Michigan、米国
【0140】
層(i)のエレクトロスピニング:
医療グレードのポリカプロラクトン(PCL)(Corbion社、PC-12)の15質量%溶液を、混合ジクロロメタン及びジメチルホルムアミド溶媒(DCM:DMF比3:2)中で調製した。ガラス瓶を密封し、溶液を終夜撹拌したままにした。5mlシリンジに調製済み溶液をロードし、27Gノズルに取り付けた。0.5ml/時の流量をポリマー繊維のエレクトロスピニングに使用した。ノズルとコレクターとの間に18kVの電圧差を印加した。14cmのノズル-コレクター間距離を使用した。エレクトロスピニングされた繊維を、回転コレクターに装着したガラスストリップ上に30分間収集した。室温及び湿度は、それぞれ、20.8℃及び43%であった。
【0141】
次いで、繊維でコーティングされたガラスストリップを、層(ii)の溶融エレクトロスピニングのための基材として使用した。
【0142】
層(ii)のエレクトロライティング、波状デザイン:
PCLペレットで充填したシリンジを75℃で少なくとも24時間予熱した。正弦波グリッドをプリントするために、25Gノズルを使用し、ノズル-コレクター間距離を3.75mmに設定した。70℃をわずかに下回るノズル温度を使用し、6kVの電圧差(ノズルでは+4.5kV、コレクターでは-1.5kV)を印加して、噴出を開始した。ポリマーを押し出すために使用した圧力は、1.5barであった。合計36層(各方向に12層;3方向)を堆積させ、各層を前の層に対して120°の角度で堆積させた。正弦波の波長を2mmに設定し、振幅を3層ごとに500μmと250μmとの間で交互に切り替えた。およそ9から15μm、好ましくは10μmの繊維直径が得られ、合計足場高さは、およそ400μmであった。
【0143】
(実施例2)
第2の波状デザインの層(ii)を有する2層基材の形成
材料
ポリカプロラクトン(PURASORB PC、Corbion Inc.社、Gorinchem、オランダ)
Episkinインサート:Episkinナセル及びOリング(特許FR688226Aに記載されている)
溶液エレクトロスピニングシリンジ:Henke-Sass, Wolf GmbH社;Tuttlingen、ドイツ
溶融エレクトロライティングシリンジ:Nordson EFD社;Pforzheim、ドイツ
走査型電子顕微鏡、TM3030Plus、Hitachi社;東京、日本
Crossbeam 340走査型電子顕微鏡、Zeiss社;Oberkochen、ドイツ
溶融エレクトロライティング(MEW)プリンター(ピンク)、特注;University of (Wurzburg又はWuerzburg)、ドイツ
EM ACE600スパッタコーティングシステム、Leica社;Wetzlar、ドイツ
シリンジポンプ、World Precision Instruments社;Sarasota、FL、米国
レーザー切断機、Rayjet;Plymouth、Michigan、米国
【0144】
層(i)のエレクトロスピニング:
医療グレードのポリカプロラクトン(PCL)(Corbion社、PC-12)の15質量%溶液を、混合ジクロロメタン及びジメチルホルムアミド溶媒(DCM:DMF比3:2)中で調製した。ガラス瓶を密封し、溶液を終夜撹拌したままにした。5mlシリンジに調製済み溶液をロードし、27Gノズルに取り付けた。0.5ml/時の流量をポリマー繊維のエレクトロスピニングに使用した。ノズルとコレクターとの間に18kVの電圧差を印加した。14cmのノズル-コレクター間距離を使用した。エレクトロスピニングされた繊維を、回転コレクターに装着したガラスストリップ上に30分間収集した。室温及び湿度は、それぞれ、20.8℃及び43%であった。
【0145】
次いで、繊維でコーティングされたガラスストリップを、層(ii)の溶融エレクトロスピニングのための基材として使用した。
【0146】
層(ii)のエレクトロライティング、波状デザイン:
PCLペレットで充填したシリンジを80℃で少なくとも24時間予熱した。正弦波グリッドをプリントするために、25Gノズルを使用し、ノズル-コレクター間距離を3.6mmに設定し、コレクター速度は180mm/分であった。80℃をわずかに下回るノズル温度を使用し、6kVの電圧差(ノズルでは+4.5kV、コレクターでは-1.5kV)を印加して、噴出を開始した。ポリマーを押し出すために使用した圧力は、2barであった。合計30層(各方向に15層;2方向)を堆積させ、各層を前の層に対して90°の角度で堆積させた。およそ13から15μm、好ましくは14μmの繊維直径が得られ、合計足場高さは、およそ400μmであった。
【0147】
(実施例3)
直線状デザインの層(ii)を有する2層基材の形成
層(i)のエレクトロスピニング
医療グレードのポリカプロラクトン(PCL)(Corbion社、PC-12)の15%溶液を、混合ジクロロメタン及びジメチルホルムアミド溶媒(DCM:DMF比3:2)中で調製した。ガラス瓶を密封し、溶液を終夜撹拌したままにした。5mlシリンジに調製済み溶液をロードし、27Gノズルに取り付けた。0.5ml/時の流量をポリマー繊維のエレクトロスピニングに使用した。ノズルとコレクターとの間に18kVの電圧差を印加した。14cmのノズル-コレクター間距離を使用した。エレクトロスピニングされた繊維を、回転コレクターに装着したガラスストリップ上に30分間収集した。室温及び湿度は、それぞれ、20.8℃及び43%であった。
【0148】
層(ii)のエレクトロライティング
十角形デザイン:
シリンジをPCLペレットで充填し、77℃で少なくとも24時間予熱した。ロード済みシリンジに22Gノズルを装備した。1.5barの気圧をシリンジに印加し、6kVの電圧差(ノズルでは+4.5kV、コレクターでは-1.5kV)を印加して、液体噴出を開始した。十角形構造をプリントする前に安定化プリントを実施した。十角形デザインは、グリッド状にプリントされた30層の繊維から構成され、各層は、先行する層に対して72°(360/5)の回転角度でプリント/エレクトロライティングされた。150μmの繊維間隔を各層に使用した。3.6mmのノズル-コレクター間距離をすべてのプリントに使用した。およそ8から13μm、好ましくは10μmの繊維直径が得られ、生成された層の合計高さは、およそ400μmであった。
【0149】
(実施例4)
直線状デザインの層(ii)を有する2層基材を用いた真皮等価物の取得
滅菌し、細胞接着を増加させるために、2層基材をエタノールで処理した。
【0150】
気液界面での培養を実現するために、2層基材を以下の位置付けに従ってOリングで培養インサートに装着した:インサート内に層(i)、底部に層(ii)。層(ii)は、八角形デザインを有する。
【0151】
2層基材をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。次いで、2層基材を線維芽細胞培養培地(「FHN2D」:2mMのグルタミン、抗生物質及び10%仔ウシ血清を含むDMEM)中でインキュベートした。
【0152】
線維芽細胞(NHF)を、患者がインフォームドコンセントを与えた後に形成外科手術から得られた皮膚組織から単離した。それらをFHN2D培地中で増幅させた。
【0153】
NHFをトリプシン処理し(トリプシンEDTA0.05%)(37℃で4~6分)、計数し、190gで5分間遠心分離によってペレット化した。
【0154】
ペレットを線維芽細胞培地(「FHN3D」:2mMのグルタミン、抗生物質及び10%仔ウシ血清及び1mMアスコルビン酸を含むDMEM)に再懸濁し、最終NHF濃度は、FHN3D培地1ml当たり600万個のNHFであった。
【0155】
培養インサートを、2層基材を上にして(上部に層(ii))ペトリ皿に入れた。
【0156】
NHF播種については、細胞溶液を100μL/インサート、即ち、60万個のNHF/cm2の割合でインサート上の層(ii)上に播種し、次いで、細胞接着を実現するために、細胞を含むインサートを37℃で1時間インキュベートした。
【0157】
真皮等価物の培養工程のために、インサートを、上部にFHN3D培地、底部に2層基材の状態で6ウェルプレート中に懸架した。
【0158】
次いで、インサートを、37℃、5%CO2で11日間、このFHN3D培地中でインキュベートした。得られた真皮等価物を、光学顕微鏡で及び多光子顕微鏡法によって観察した。本発明者等は、線維芽細胞の特定の紡錘形状とともに組織学的に(エオシン、ヘマトキシリン、サフラン)これらの細胞の接着を観察し、基材の細胞外マトリックス(ECM)での充填を観察した。多光子顕微鏡法により、ヒト皮膚に類似したコラーゲン1の組織化が示された。
【0159】
(実施例5)
波状デザインの層(ii)を有する真皮等価物の取得
この実施例では、使用した2層基材が層(ii)について波状デザインを有する層を有することを除き、実施例3のプロトコルと同じプロトコルを適用する。
【0160】
得られた真皮等価物を、光学顕微鏡で及び多光子顕微鏡法によって観察した。
【0161】
本発明者等は、実施例4の真皮等価物と実施例5の真皮等価物との間で、線維芽細胞の特定の紡錘形状とともに組織学的に(エオシン、ヘマトキシリン及びサフラン)示されたこれらの細胞の接着及び基材の細胞外マトリックス(ECM)での充填が、実施例4においてより均質であることを観察し、これは、実施例5における不均質な多孔性に起因する可能性がある。その上、多光子顕微鏡法により、実施例4と実施例5との間で異なるコラーゲン1線維の組織化が示された。これらの結果は、デザインの変化が、基材における組織化及びECM充填の変化を誘導することを証明する。
【0162】
(実施例6)
直線状デザインの層(ii)を有する完全皮膚等価物の取得
この実施例では、層(ii)は、十角形デザインを有する。基材は、実施例4と同様に調製した。
【0163】
この実施例では、NHFペレットをFHN3D培地に再懸濁し、最終NHF濃度は、FHN3D培地1ml当たり400万個のNHFであった。
【0164】
培養インサートを、2層基材を上にして(上部に層(ii))ペトリ皿に入れた。NHF播種については、細胞溶液を100μL/インサート、即ち、40万個のNHF/cm2の割合でインサート上に播種し、次いで、細胞接着を促進するために、細胞を含むインサートを37℃で1時間インキュベートする。
【0165】
真皮等価物の培養工程のために、インサートを、上部にFHN3D培地、底部に2層基材の状態で6ウェルプレート中に懸架した。次いで、真皮等価物を、37℃、5%CO2で4日間(合計18日の培養の場合)又は14日間(合計36日の培養の場合)、FHN3D培地中でインキュベートした。
【0166】
ケラチノサイト(NHK)を、患者がインフォームドコンセントを与えた後に形成外科手術から得られた皮膚組織から単離し、次いで、フィーダー細胞を使用して、NHKをG7F増幅培地(Black等(2005)Tissue Eng. 11:723~733頁)中で増幅させた。
【0167】
得られたNHKをトリプシン処理し(37℃で8~10分のトリプシンEDTA0.05%)、計数し、190gで5分間遠心分離することによってペレット化し、次いで、ペレットをG7F増幅培地(0から1mMのアスコルビン酸を含む)に再懸濁した。
【0168】
ケラチノサイトを遠心分離した後に、それらを最終NHK濃度がG7F培地1ml当たり30万個のNHKになるようにG7F培地に懸濁し、次いで、それらをインサート内に手動で播種し、最終濃度は、およそ15万個のNHK/cm2であった。
【0169】
次いで、完全皮膚等価物を37℃、5%CO2で0から1mMのアスコルビン酸を含むG7F培地に沈め、合計18日の培養の場合は3日間、合計36日の培養の場合は7日間インキュベートした。次いで、完全皮膚等価物を、37℃、5%CO2で合計18日の培養の場合は11日間、合計36日の培養の場合は15日間、G3F分化培地(Black等(2005)Tissue Eng. 11:723~733頁+アスコルビン酸0から1mM)中で気液界面に浮かべた。
【0170】
本発明者等は、期待されるすべての層(基底層、基底上層、顆粒層及び角質層)を有する表皮の満足のいく分化を観察した。その上、真皮は、満足のいく線維芽細胞接着を保持し、表皮の真皮への陥入は観察されない。組織学的に(エオシン、ヘマトキシリン及びサフラン)及び免疫蛍光法によって真皮細胞外マトリックス(ECM)、例えばコラーゲン1、フィブリリン、又はエラスチン、真皮-表皮接合部のECM、例えばコラーゲン4及びパールカンが合成され、全培養18日と36日との間でこれらのタンパク質の量が増加する。その上、基材の繊維に線維の巻き付いたコラーゲンの組織化が、多光子顕微鏡法で観察された。ビタミンCに応答して、特にコラーゲン1(サフランで標識された又は多光子顕微鏡法で観察された)の、ECM充填の増加が基材において観察された。
【0171】
(実施例7)
波状デザインの層(ii)を有する完全皮膚等価物の取得
この実施例では、使用した2層基材が層(ii)について波状デザインを有する層を有することを除き、実施例6のプロトコルと同じプロトコルを適用した。
【0172】
ケラチノサイトを遠心分離した後に、それらを最終NHK濃度がG7F培地1ml当たり30万個のNHKになるようにG7F培地に懸濁し、次いで、それらをインサート内に手動で播種し、最終濃度は、およそ15万個のNHK/cm2であった。
【0173】
次いで、完全皮膚等価物を37℃、5%CO2で0から1mMのアスコルビン酸を含むG7F培地に沈め、7日間インキュベートした。次いで、完全皮膚等価物を、37℃、5%CO2で14日間、G3F分化培地(Black等(2005)Tissue Eng. 11:723~733頁+アスコルビン酸0から1mM)中で気液界面に浮かべた。
【0174】
本発明者等は、実施例6の皮膚等価物と実施例7の皮膚等価物との間で、組織学的に(エオシン、ヘマトキシリン及びサフラン)及び免疫蛍光法によって真皮細胞外マトリックス(ECM)、例えばコラーゲン1、フィブリリン、又はエラスチン、真皮-表皮接合部のECM、例えばコラーゲン4及びパールカンが合成され、全培養18日と36日との間でこれらのタンパク質の量が増加することを観察した。その上、基材の繊維に線維が巻き付いたコラーゲンの組織化が、多光子顕微鏡法で観察された。ビタミンCに応答して、特にコラーゲン1(サフランで標識された又は多光子顕微鏡法で観察された)の、基材におけるECM充填の増加が観察された。実施例6と実施例7との間の差異は、実施例7における空き区域の存在を伴うより不均質なマトリックスタンパク質の組織化、実施例7におけるより低いエラスチンの発現、及び実施例7におけるより大きなコラーゲン1線維の束化を伴う異なるコラーゲン1線維の組織化(多光子顕微鏡法によって見られた)にある。これらの結果は、デザイン及び多孔性の変化が、基材におけるECMの組織化、充填及び含有量の変化を生じさせることを証明する。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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【国際調査報告】