(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】誘電性流体、特に電池の温度調整用流体の誘電強度を検出するためのセンサ装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/92 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G01N27/92 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517173
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 IB2022055005
(87)【国際公開番号】W WO2022254298
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021000014312
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518314084
【氏名又は名称】エルテック・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】ELTEK S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ピッツィ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ベニャミーノ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】フェッラガッタ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ロンダノ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ゾルゼット,マウロ
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041NA01
2G041NA10
2G041NA11
2G041NA22
(57)【要約】
誘電性流体の誘電強度を検出するためのセンサ装置は、誘電性流体と接触するように設計された、感応部(SG1)を支持するセンサ本体を有する。感応部(SG1)は、誘電流体の一部が浸入するのに適した少なくとも1つの検出ギャップをその間に規定するために、所定のマイクロメートルまたはサブマイクロメートルの距離で配置されたそれぞれの表面部分を有する少なくとも1対の電極(E1、E2)を含む。センサ装置は、以下の回路配置:-既知の供給電圧から出発して、少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極間に電界を発生させるための手段、-電界の発生に続いて、少なくとも1つの検出ギャップ(G)内に存在する誘電性流体(5)を介して、少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極間で起こり得る放電を代表する電圧を測定するための手段(V)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電性流体の誘電強度を検出するためのセンサ装置であって、センサ装置(10)は、誘電性流体と接触するように設計された感応部(SG
1)を支持するセンサ本体(11、15)を有し、
感応部(SG
1)は、誘電性流体(5)の一部が貫通可能な少なくとも1つの検出ギャップ(G)をその間に規定するために、互いに所定のマイクロメートルまたはサブマイクロメートルの距離に設定されたそれぞれの表面部分(E1a、E2b)を有する少なくとも1対の電極(E1、E2)を含み、
センサ装置(10)は、以下の回路配置:
-既知または所定の供給電圧から出発して、少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極間に電界を発生させるための手段(V
1、SW、C
1;V
1、SW、R;V
1、SW、C
1、OA
0、OA
1、ADC MUX、ADC;V
1、SW、R、OA
0、ADC MUX、ADC)、および、
-電界の発生に続いて、少なくとも1つの検出ギャップ(G)内に存在する誘電性流体(5)を介して、少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極間で起こり得る放電を表す代表電圧(V
C;V
SG;V
RX)を測定するための手段(V)、
を有するセンサ装置。
【請求項2】
少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極の表面部分(E1a、E2b)は、100ナノメートルと20マイクロメートルとの間に含まれる互いからの距離にある請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
回路配置は、少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極間に、50Vより低い、好ましくは1Vと30Vとの間に含まれる、非常に好ましくは3Vと10Vの間に含まれる電源電圧から開始して、1kV/mmより大きい定格電界を生成するように構成された請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極は薄膜として得られ、好ましくは50ナノメートルと2マイクロメートルとの間に含まれる厚さ、非常に好ましくは100ナノメートルと500ナノメートルとの間に含まれる厚さを有する請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
回路配置は、少なくとも以下の構成:
-既知または所定の電圧を供給する電圧源(V
1)、
-既知または所定の静電容量を有する少なくとも1つのキャパシタ(C
1)、
-制御可能な回路手段(SW)であって、
-電圧源(V
1)に対する少なくとも1つのコンデンサ(C
1)の接続および切断、
-少なくとも1つのコンデンサ(C
1)を、少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極に対して接続および切断、
するための回路手段(SW)、および、
-電界が発生した後、またはコンデンサ(C
1)が電圧源(V
1)に対して切り離されて少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極に対して接続された後に、少なくとも1つのコンデンサ(C
1)の端子を横切る代表電圧(V
C)の値を測定するための測定回路手段(V;OA
0、OA
1、ADC MUX、ADC)、
を含む請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
回路配置は、少なくとも以下の構成:
-既知または所定の電圧を供給する電圧源(V
1)、
-複数の基準抵抗器(R
R)を含む抵抗分圧器、
-電圧源(V
1)と少なくとも1対の電極(E1、E2)のうちの少なくとも1つの電極との間で、基準抵抗(R)を選択的に接続および切断するための制御可能な回路手段(SW)、
-電界が発生した後、または電圧源(V
1)と少なくとも1対の電極(E1、E2)の少なくとも1つの電極との間に各基準抵抗(R)が接続された後に、抵抗分圧器の端子間、または少なくとも1対の電極(E1、E2)の電極間の代表電圧(V
SG、VR
X)の値を測定する測定回路手段(V;OA
0、ADC MUX、ADC)、
を含む請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
回路配置は、バイポーラ駆動を得るために、または2つの連続する検出サイクルの間に少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極の電気極性の反転を可能にするために、構成されている請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
少なくとも1対の電極(E1、E2)は、各々が少なくとも1つの検出ギャップ(G)を規定する、複数の電極対(E1、E2)を含む請求項1~7のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
-少なくとも1対の電極(E1、E2)のうちの少なくとも1つの電極(E1)は、一般に尖った部分(E1a)を有する周辺プロファイルを有し、この尖った部分(E1a)は、少なくとも1対の電極のうちの他方の電極(E2)の周辺プロファイルの対応する部分(E2b)と所定の距離で対向し、または、
-少なくとも1対の電極(E1、E2)のうちの少なくとも1つの電極(E1)は、少なくとも1対の電極のうちの他方の電極(E2)の周辺プロファイルの部分(E2b)の2つの延長された平行な部分の間に所定の距離に設定された少なくとも1つの軸方向に延長された部分(E1a)を有する周辺プロファイルを有し、または、
-少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極は、それぞれ実質的に櫛歯状の部分を有する周辺プロファイルを有し、所定の距離で互いに組み合わされた構成に設定された、請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
温度検出器(RT
1)をさらに含み、回路配置は、好ましくは、温度検出器(RT
1)によって検出された温度の関数として、代表電圧(V
C;V
SG;V
RX)の測定値に校正を適用するように構成された請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項11】
感応部(SG
1)は、少なくとも1対の電極(E1、E2)に動作可能に関連付けられた少なくとも1つの第3の電極(E3)を含み、回路配置は、特に誘電性流体(5)中の可能性のある汚染物質の存在を検出するために、少なくとも1対の電極(E1、E2)の2つの電極をそれぞれソース電極およびドレイン電極として、第3の電極(E3)をゲート電極として、それぞれ使用するように構成された請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項12】
感応部(SG
1)は、以下のうちの少なくとも1つ:
-少なくとも1対の電極(E1、E2)のための電気絶縁支持体(31);
-シリコンウエハ上の酸化シリコン基板(31a)であって、酸化シリコン基板(31a)上に少なくとも1対の電極(E1、E2)が設置され、シリコンウエハは、好ましくは所定の距離より小さくない厚さ、特に好ましくは所定の距離より大きな厚さを有する、酸化シリコン基板(31a);
-少なくとも1対の電極(E1、E2)に動作可能に関連付けられた第3の電極(E3)を支える電気絶縁支持体(31)であって、その上に誘電体材料(31c)の層が設置され、その上に少なくとも1対の電極(E1、E2)が設置された電気絶縁支持体(31);
を含む請求項1~11のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項13】
センサ本体は、感応部(SG
1)を支える検出素子(30)を収容する少なくとも1つの本体部(15)を含み、少なくとも1つの本体部(15)は、誘電体(5)が感応部(SG
1)の少なくとも1対の電極(E1、E2)と接触することを可能にする1つまたは複数の開口部または通路(19、19a)を有する請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項14】
環状シール手段(26)が、少なくとも1つの本体部(15)の壁(16a)と、検出素子(30)との間に設けられ、環状シール手段(26)は、壁(16a)および検出素子(30)のそれぞれの部分とともに、1つまたは複数の開口部または通路(19)がその中に開口し、検出素子(30)によって担持される感応部(SG
1)が面する、検出チャンバを規定する請求項13に記載のセンサ装置。
【請求項15】
電気部品(4)がその中に配置された収容堆積(3)を規定するケーシング(2)を有する電気装置(1)であって、収容堆積は、誘電性流体(5)を受容するのに適しており、電気装置は、誘電性流体(5)の誘電強度を検出するための請求項1~14のいずれか1項に記載のセンサ装置を含む電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、流体の1つまたは複数の電気量を検出するためのセンサ装置、および指示されたタイプのセンサを備えた電気装置に関する。本発明は、誘電性流体、好ましくは電気装置のケーシング内に存在する流体、例えば電池の温度調整用流体の誘電強度の検出に特に注目して開発された。しかしながら、記載されたセンサ装置は、他の分野での使用や、電池以外の電気装置との組み合わせにも適している。
【背景技術】
【0002】
近年、より効率的な方法で電池の温度調整を行う必要性、例えば自動車に搭載される電池の温度調整の必要性が生じている。いくつかの場合に採用される技術的解決策は、熱交換効率を最大化するために、電池セルを誘電性流体中に浸漬して直接冷却することである。この解決策の欠点は、バッテリーセルと接触する流体が十分な絶縁性を保証しない場合、バッテリーパック内部に電流が流れ、効率が著しく低下し、非常に危険な結果に至る可能性があることである。
【0003】
バッテリーセルを直接浸す冷却液の電気絶縁特性を管理するために、誘電率、インピーダンス、導電率などの電気パラメータの測定に基づく解決策が提案されてきた。しかしながら、これらの測定値は、誘電率によって表される実際の関心量、すなわち、問題の流体を通して、それを超えて電気の伝導が生じる電界の限界値との間接的な相関しか持たない。
【0004】
一般に、電池の温度調整に使用される流体は、3kV/mmのオーダーの値を下回らない最小誘電強度を確保すべきである。現在の技術状況によれば、これらの誘電強度の値を直接測定するには、巨視的な寸法の検出素子が必要であり、発生が非常に高くて高価な電圧の使用に基づくため、電磁ノイズ源として振る舞う可能性があり、空間の比較的大きな領域でなだれ現象を引き起こす可能性があり危険である。一方、流体の電気伝導率の測定だけでは、潜在的に危険な状況を正確に識別できるとは限らない。
【0005】
このような理由から、一般的には、前述の誘電率、インピーダンス、導電率など、複数の異なる電気量を測定し、互いに相関させながら測定を進めるというアプローチがとられるが、その結果は必ずしも満足のいくものではない。
【0006】
同様の問題は、誘電性流体が、例えば、その温度調整のために、一般的な電気装置と組み合わせて使用される、例示された用途以外の用途においても見出される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、特にバッテリーのような電気デバイスの安全性が危ぶまれる場合、間接的な測定値のみに依存しない、あるいは間接的なパラメータの複雑な相関関係に依存しない、消耗性でないケースシステムに基づくセンサ装置が望まれるという事実の考察に基づく。
【0008】
この文脈において、本発明の目的は、本質的に、流体、特に電池のような電気装置の温度調整流体によって保証される電気絶縁の程度を検出することができるセンサ装置を得ることである。
【0009】
本発明の別の目的は、低電圧で動作するが、流体の高い電気抵抗および/または高い電気絶縁性も検出できるセンサ装置を得ることである。
【0010】
本発明の別の目的は、コンパクトな構造で、流体の電気絶縁性を検出できるセンサ装置を得ることである。
【0011】
本発明の補助的な目的は、導電率が非常に低い物質の電気絶縁度を測定する必要がある場合にも便利に使用できるセンサ装置を得ることである。
【0012】
上記の目的の1つ以上、および後に明らかになる他の目的は、本発明によれば、以下に説明するようなセンサ装置によって達成される。また、本発明の目的は、そのようなセンサ装置を含む電気装置によっても達成される。本発明の好ましい実施形態は、添付の特許請求の範囲に示されている。特許請求の範囲は、本発明に関連して本明細書に提供される技術的教示の不可欠な部分を形成する。
【0013】
本発明によれば、誘電強度を直接検出するためのセンサ装置が提案され、このセンサ装置は、検出のために小型化された感応部を有するか、またはいかなる場合にも、マイクロメートルまたはサブマイクロメートルまたはナノメートルの距離に配置された少なくとも1対の検出電極を含むような方法で得られ、低電圧から出発しても高電界を発生させ、特に電極は、固定された位置で、1つの同じ支持体上にある。一般に、本発明によるセンサ装置の感応部は、少なくとも2つの電極、好ましくは微小電極を含み、100ナノメートルと20マイクロメートルの間の距離で配置され、その間に、およそ1V~30V、好ましくは3V~10Vの間の低電圧で数kV/mの電界を発生させるのに適した測定不連続部またはギャップを規定する。
【0014】
検出は、直流電圧、様々な周波数の交流電圧、パルス電圧、様々な形状の電圧を用いて行うことができる。
【0015】
様々な優先的実施形態において、直流電圧は、適切な電気的または電子的回路手段によって、既知または事前に定義された静電容量を有するコンデンサを充電し、このコンデンサが測定ギャップ上で放電するために、すなわち、2つの電極間に電界を発生させるために使用される。センサ装置は、以下に詳述するように、各測定サイクルで電極間の極性を反転させる電子駆動回路を最終的にあらかじめ配置することができる。従って、本発明の可能な実施形態によるセンサ装置の可能な動作方式は、既知の静電容量のコンデンサを一定の電圧にした後、電源から切り離し、センサ装置の感応部に接続することを提供する。流体中に浸漬された感応部の測定ギャップに接続した後、コンデンサの両端の電圧を検出することにより、流体自体の絶縁強度の値、すなわち電気絶縁度の代表的な情報を得ることが可能である。絶縁性の高い流体では、時定数は実質的に無限大となる一方、コンデンサの放電は流体の伝導により速くなる。超純水のような絶縁性の流体は、低電界では良好な絶縁性を示すが、高電界では導電性が高くなる。このようなタイプの誘電性流体に対してこそ、本発明によるセンサ装置は、導電率測定だけでは測定できない状況を識別することができる。
【0016】
本発明の他の実施形態によれば、センサ装置はコンデンサの使用に依存せず、その動作は抵抗型であるか、または等価抵抗の測定に基づいている。
【0017】
本発明によるセンサ装置の感応部は、1つの同じ支持体上に異なるマイクロメートルまたはサブマイクロメートルまたはナノメートルの距離で、例えばそれぞれの電極が互いに2、4、8、16マイクロメートルの距離に配置され、独立して順次または同時に低電圧、例えば16Vの電圧が供給される電極対を含む可能性がある。もし、時定数がすべての電極対についてある閾値以上のままであれば、流体の絶縁強度は例えば8kV/mmより高いと結論づけることができる。一方、もし放電が最小の測定ギャップ(引用した例では2マイクロメートル)で検出され、それが他の測定ギャップでの放電より著しく速ければ、流体の絶縁強度は例えば4~8kV/mmに含まれると結論づけることができる。
【0018】
もちろん、所定の例示は原理的に適用され、本発明によるセンサ装置は、使用される電極の形状とも関連して、測定対象の流体のタイプに応じて校正されなければならない。
【0019】
様々な好ましい実施形態において、感応部の電極は薄膜の形態で得られる。測定ギャップを規定する電極間の最短距離の部分は、ミクロン以下のオーダー、例えば10~500nmの間で構成される比較的小さな曲率半径を有することができる。このような電極は、顕著な「先端効果(tip effect)」を有し、その結果、部分放電またはブレークダウン電圧を得るために必要な電圧が低下し、この状況は、測定に使用される電気電圧を低減する目的にとって有利である。流体の場合、「絶縁破壊電圧(breakdown voltage)」という用語は力学的に理解する必要がある。なぜなら、放電に関与する流体の体積は非常に限られており、局所的な熱運動や対流、あるいは巨視的な流れのために連続的な混合を受けることを考えると、混合が起こらず放電のたびに誘電体の特性が変化する固体誘電体とは異なり、測定が数回繰り返された場合、結果は原則として常に同じになるからである。
【0020】
薄膜技術を使用することで、マイクロ電極を得るために必要な精度を達成することができ、マイクロメートル、サブマイクロメートル、ナノメートル寸法の測定ギャップを得ることができる。様々な実施形態において、電極を形成または構成する金属膜の厚さは、50ナノメートルから2マイクロメートルの間、好ましくは100ナノメートルから500ナノメートルの間で構成される。好ましくは、電極は、少なくとも2つの層、例えば、接着促進剤の機能を有するチタンまたはクロムで、厚さ20~80ナノメートルの第1の層と、白金、銅、ニッケルまたは他の導体で、典型的には厚さ数百ナノメートルの第2の層とで構成される。しかしながら、他の実施形態に従って、単一の金属、好ましくはクロムまたはチタンで形成された電極を使用することができる。
【0021】
電極は、好ましくは、例えばセラミック(アルミナまたはジルコニアなど)またはプラスチック材料からなる、1つの同じ電気絶縁性支持体上に堆積される。他の実施形態では、電極は、(好ましくは酸化によって)シリコンウエハ上に得られた酸化シリコンで形成された1つの同じ基板上に堆積させることができ、基板は、シリコン基板内部の放電を避けるために、好ましくは、測定ギャップ(または複数の電極のペアの場合には、より小さい測定ギャップ)における電極間の距離よりも小さくない、好ましくはこの距離よりも大きい厚さを有する。
【0022】
電極を得るための好ましい技術は、高真空中での熱蒸着とスパッタリングである。また、CVD(Chemical Vapor Deposition)やALD(Atomic Layer Deposition)のような他の技術を使用することもできる。ナノスケールの高価なリソグラフィ技術を用いずに、数10から数100ナノメートルのオーダーの非常に小さなギャップを得る必要がある場合には、古典的なリソグラフィ技術を用いてマイクロメートルのギャップを得、その後等方的ガルバニック成長によってギャップを縮小することが可能である。一般に、使用される堆積技術にかかわらず、電極の定義は、フォトレジスト堆積、UV露光、現像、その後の金属または金属の化学的攻撃、フォトレジストの除去などのフォトリソグラフィ技術によって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、純粋に非限定的な例として提供される添付の概略図面を参照して行われる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0024】
【
図1】可能な実施形態にかかるセンサ装置を備えた電気装置の異なる角度からの概略斜視図である。
【
図2】可能な実施形態にかかるセンサ装置を備えた電気装置の異なる角度からの概略斜視図である。
【
図4】
図1~2の電気装置の対応する拡大詳細図である。
【
図5】本発明の可能な実施形態にかかるセンサ装置の上方からの概略斜視図である。
【
図6】本発明の可能な実施形態にかかるセンサ装置の概略平面図である。
【
図7】本発明の可能な実施形態にかかるセンサ装置の概略側面図である。
【
図8】本発明の可能な実施形態にかかるセンサ装置の概略背面図である。
【
図9】本発明の可能な実施形態にかかるセンサ装置の概略正面図である。
【
図10】
図6の軸X-Xにかかる断面の概略図である。
【
図11】
図7の軸XI-XIにかかる断面の概略図である。
【
図12】可能な実施形態にかかるセンサ装置の概略分解図である。
【
図13】可能な実施形態にかかるセンサ装置の感応部を異なる角度から見た概略斜視図である。
【
図14】可能な実施形態にかかるセンサ装置の感応部を異なる角度から見た概略斜視図である。
【
図15】可能な実施形態にかかるセンサ装置の感応部の1対の電極の概略図である。
【
図16】可能な実施形態にかかるセンサ装置の感応部の1対の電極の対応する拡大詳細図である。
【
図17】他の可能な実施形態にかかるセンサ装置の感応部の異なる角度からの概略斜視図である。
【
図18】他の可能な実施形態にかかるセンサ装置の感応部の異なる角度からの概略斜視図である。
【
図19】電極対の可能な代替実施形態の
図15~16と同様の概略図である。
【
図20】電極対の可能な代替実施形態の
図15~16と同様の概略図である。
【
図21】電極対の可能な代替実施形態の
図15~16と同様の概略図である。
【
図22】電極対の可能な代替実施形態の
図15~16と同様の概略図である。
【
図23】電極対の可能な代替実施形態の
図15~16と同様の概略図である。
【
図24】電極対の可能な代替実施形態の
図15~16と同様の概略図である。
【
図25】可能な実施形態にかかるセンサ装置の容量駆動による可能な動作原理を例示することを意図した簡略化された電気回路である。
【
図26】本発明にかかるセンサ装置によっていくつかの種類の流体に対して実施された測定の例を示すグラフである。
【
図27】感応部の容量型駆動原理に基づく可能な実施形態にかかるできるだけ多くのセンサ装置の可能な回路を例示する。
【
図28】感応部の容量型駆動原理に基づく可能な実施形態にかかるできるだけ多くのセンサ装置の可能な回路を例示する。
【
図29】感応部の抵抗型駆動原理に基づく可能な作動形態にかかるセンサ装置の可能な回路を例示する。
【
図30】ユニポーラ駆動の場合の
図29と同等の回路を例示する。
【
図31】バイポーラ駆動の場合の
図29と同等の回路を例示する。
【
図32】可能な実施形態にかかるセンサ装置の可能な回路を例示しており、感応部の容量型駆動原理に基づく温度検出機能も統合している。
【
図33】可能な実施形態にかかるセンサ装置の可能な回路を例示しており、感応部の抵抗型駆動原理に基づく温度検出機能も統合している。
【
図34】可能な実施形態にかかるセンサ装置の感応部を上方から見た概略図である。
【
図35】
図34の線XXXV-XXXVにかかる概略断面図である。
【
図38】他の可能な実施形態にかかるセンサ装置の可能な回路を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書内の実施形態への言及は、実施形態に関連して説明される特定の構成、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを示す。従って、「1つの実施形態において」、「様々な実施形態において」などの表現は、本明細書の異なる場所に存在する可能性があるが、必ずしも1つの同じ実施形態を示すものではない。さらに、本明細書内で定義される特定の形態、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において、描かれているものと異なっていても、任意の適切な方法で組み合わせることができる。本明細書で使用される数値参照および空間参照(「上方」、「下方」、「上」、「下」など)は、便宜上のものであり、従って、保護範囲または実施形態の範囲を規定するものではない。図中、同様の参照番号は、類似または技術的に等価な要素を示すために使用されている。
【0026】
図1~4では、一般的な電気装置が概略的に表されており、これと組み合わせて、例えば温度調整目的で誘電性流体が使用され、本発明の可能な実施形態によるセンサ装置が装備されている。この例では、誘電性流体によって冷却される電池パックを有する電池が示されている。しかし、前述のように、本発明の範囲はこの特定の技術分野に限定されるものではない。
【0027】
全体が1で示された装置または電池は、収容体積3を規定するケーシング2を有し、その内部に電気部品が配置され、ここでは直列または並列に接続された複数の電池または電解セル4aを含む電池パック4が表されている。体積3は、電池パック4の温度調整のための誘電性流体5、特に冷却剤を受け入れるのに適している。以下では、流体5がハイドロフルオロエーテル(HFE)、例えば米国ミネソタ州セントポールの3M社製のNOVECファミリーに属する流体、あるいは1、1、1、2、2、3、3、3-ヘプタフルオロ-3-メトキシプロパン(式:C4H3F7O-CAS登録番号:375-03-1)であると仮定する。
【0028】
可能な流体回路および/または流体5の冷却システムの他の構成要素の実際的な実現は、本明細書の目的とは無関係である。
【0029】
ケーシング2の壁の1つ、特にその側壁には、貫通開口部2aが設けられており、この開口部2aには、本発明にかかるセンサ装置が設置される。開口部2aは、好ましくは、センサの少なくとも感応端が流体中に浸漬した状態、特にパック4が流体5中に少なくとも部分的に浸漬した状態に対応する高さに配置される。この観点から、装置10は、空気と区別できる電気絶縁性を有する流体の場合には、後述するように、最小レベルのセンサとしても使用できる可能性がある。
【0030】
図4の詳細にも見られるように、センサ10は前述の開口部2aに水密的に取り付けられ、以下に説明するように、流体5がセンサ自体の敏感な部分に接触できるように構成されている。より一般的には、センサは、その感応部が検出対象の流体に接触または浸漬するように、電気装置または電池に取り付けるように構成されたセンサ本体を有する。もちろん、図面に示されたセンサ10の取り付け位置は単なる一例として理解されなければならず、同じセンサが、その感応部が流体5によって(例えば、体積3内の流体5の供給および/または再循環のための回路に沿って)到達可能であることを条件として、他の位置に取り付けられ得るからである。
【0031】
可能な実施形態によるセンサ10が、
図5~12に異なる図で示されている。
【0032】
最初に
図5~7を参照すると、センサ10は、例えば電気絶縁性プラスチック材料で形成された第1の本体部11を有する。様々な実施形態において、本体部11は、長手方向に延び、カバー12aを備える箱状部分12と、好ましくは電気コネクタ本体を得る第1の管状部分13とを有する。様々な実施形態において、本体部11は、半径方向に突出する中間フランジ14を規定し、ネジなどの適切な固定要素を受容するための穴14a(
図8)を備える。あるいは、センサ10は、電気装置または電池1のケーシング2に設けられたそれぞれの結合手段および/または位置決め手段を補完する可能性のある、クイック結合のための手段などの別のタイプの固定手段および/または位置決め手段を備えることができる。
【0033】
センサ10は、好ましくは、例えば電気絶縁性プラスチック材料で形成された第2の本体部15を備える。本体部15は、実質的にカップ状の中空部16と、好ましくは、それぞれの半径方向に突出した端部フランジ17とを規定し、固定手段用の穴17a(
図9)も設けられている。両者が存在する場合、フランジ14、17は、ほぼ同じ形状および同じ配置の対応する穴14a、17aを有することができ、組み立てられた状態において、穴14aは穴17aのそれと実質的に一致する位置にある。フランジ14、17は、例えば、溶接または接着によって互いに接合することができ、さもなければ、センサ10を所定の位置に固定するために使用される、前述のねじなどの同じ固定要素を使用することによって、相互固定を達成することができる。
【0034】
様々な実施形態において、センサ10は、例えば、部分11上の位置決め要素および部品15上の対応する位置決めカウンター要素のような、本体部品11と部品15との間の組立位置を一意に規定する要素を含むことができる。図示の例では、これらの要素およびカウンター要素は、2つのフランジ14、17の対向する側にある(特に、フランジ17から軸方向に突出する、
図12において17bで示される要素を参照)。
【0035】
様々な好ましい実施形態において、本体部分15の中空部分16の周壁、好ましくは実質的に円筒状の壁は、OR型ガスケットなどのシール要素18を取り付けるための座部-
図12において16aで示される-を外部に備える。このようなガスケット18は、例えば、センサ10の少なくとも一部、またはその本体部15の少なくとも一部が、半径方向のシールを達成するために開口部に挿入される場合に設けられる。
【0036】
様々な好ましい実施形態において、本体部15の中空部16の壁、特にその端部または底部壁16aは、検出対象の流体を通過させるために、19で示された1つまたは複数の貫通開口部(例えば
図5および
図9参照)を備えており、図示された非限定的な例では、前述の中央孔に対して周辺位置に、中央孔および3つのスロット状開口部を含む4つの開口部19が設けられている。壁16aの内側には、開口部19の内側端部が位置する、
図11において19aで示される凹部またはくぼみを設けることができる。
【0037】
図8~12も参照すると、センサ10は、好ましくは、本体部分11の部分12、13を互いに分離する壁(
図11においてのみ12bで示される)を通って延びる、20で示される第1の接続端子を備える。第1の端子20は、遠位端部分20aを有し、この遠位端部分20aは、第1の管状部分13の内側に延び、センサ10を外部システムに接続するための電気コネクタを形成する。第1の端子20の近位端部分20bは、代わりに、本体部分11の箱状部分12によって規定された空洞12c(
図10および
図12)内に延在する。
【0038】
様々な実施形態において、本体部分11はまた、第2の接続端子21を有し、この第2の接続端子21は、壁、好ましくは塊状部分22(
図10~11)を通過し、この塊状部分22は、描かれている非限定的な例では、管状部分13とは反対側の箱状部分12の端部から始まって軸方向に延びている。第2の端子21は、21aで指定される近位端部を有し、この近位端部分は、第1の端子20の近位端部20bと概ね対向する位置で、箱状部分12によって規定される前述の空洞12c内に延在する。第2の端子21の遠位端部21bは、本体部分11の壁または塊状部分22を越えて軸方向に突出している。
【0039】
様々な実施形態において、端子20、21のそれぞれの近位端部分20b、21aは、キャビティ12c内に収容され、センサ10の制御電子機器の少なくとも一部、特に流体の絶縁強度、または対応する絶縁破壊電圧を検出するために必要な電子部品の少なくとも一部が実装される回路支持体23のそれぞれの接続要素に結合される。この目的のために、端子の上述の端部20b、21aは、例えば、回路支持体23上に設けられた対応する通路に適合するように曲げられて大きさが決められるなど、適宜の形状にすることができる。端子20、21は、本体部分11に設けられたそれぞれの通路に入り込むことができ、または、好ましくは、本体部分11はそのような端子に直接オーバーモールドされる。
【0040】
図12の例に示すように、様々な実施形態において、支持体23上の回路は、端子21を介して後述する検出素子の感応部に接続するための、少なくとも2つの接続素子23aを有する。この回路は、任意に、前述の検出素子上に配置された温度検出器、例えばNTCサーミスタのための2つの追加接続要素を提供することができる(この場合、好ましくは、温度検出器の回路支持体23への接続のために2つの追加端子21が提供される)。再び
図12の例を参照すると、支持体23上の回路は、端子20用の3つの追加接続要素23bを有し、この接続要素23bは、センサ10の外部接続用のコネクタを管状部分13と共に実現する。
【0041】
特に
図11および
図12から、様々な実施形態において、本体部分11は、第2の管状端部24を有し、この管状端部24は、壁部または塊状部22から軸方向に延び(例では、第1の管状部13に概ね対向する位置にある)、この管状部24内に端子21の端部21bがあることに留意されたい。第2の管状部分24は、好ましくは、実質的に円筒形の、またはより一般的には本体部分15の中空部分16のキャビティの断面と実質的に相補的な周壁を有する。好ましくは、第2の管状部分24の周壁は、少なくとも1つの開口部24aを有し、好ましくは、対向する位置に2つの開口部を有し、この開口部は、センサ10の組立段階において、全体として30で示されるセンサ10の検出要素のそれぞれの電気接続要素(例えば
図12において36aおよび36bで示される)に、端子21の前述の部分21bを、例えば溶接によって電気的に接続することを可能にする。
【0042】
様々な実施形態において、検出素子30、またはその支持体(例えば
図13~14において31で示される)は、第2の管状部分24の遠位端に配置され、この管状部分24は、この目的のために、センタリング要素および/または位置決め要素(これらの要素のうちの2つは、
図10、11において24bで示される)を備えることができる。前述の支持体31は、管状部分24上に接着または結合され得る。
【0043】
様々な実施形態において、組み立てられた状態において、検出要素30を有する管状部分24、および場合によっては塊状部分22の少なくとも一部は、本体部分15の中空部分16によって規定された空洞内に収容される(例えば
図10~11参照)。この目的のために、好ましくは、2つの本体部分11、15の間に、25で指定される環状ガスケットのようなシール手段を設けることができる;この目的のために、第2の管状部分24の周壁は、
図12において24bで指定される対応する位置決め座を外部に設けることができる。
【0044】
様々な好ましい実施形態において、検出素子30と本体部15との間にさらなるシール手段を設けることができる。実施例では、この目的のために、例えば
図10~12において26で示される環状ガスケットが設けられ、検出素子30の前述の支持部31(
図13~14)と、貫通開口部19が配置された中空部16の壁16aとの間に密封可能に設置されるように設計されている。この目的のために、壁16aの内側は、ガスケット26のための対応する位置決め座(図示せず)を規定することができる。想像できるように、環状のガスケット26は、壁16aのそれぞれの部分および検出素子30の前述の支持部31と共に、開口部19および可能な凹部19aが-一方の側で-開口し、検出素子30の感応部(後述する)が-反対側で-対向する、図示しない検出チャンバを規定する。
【0045】
【0046】
検出素子30は、好ましくは電気絶縁材料、例えばセラミックまたはプラスチックで形成された支持体31を含む。図示された非限定的な例をさらに参照すると、支持体31は好ましくは四角形または多角形の周辺プロファイル(ここでは実質的に八角形)を有し、貫通孔32が設けられている。この形状および貫通孔32の存在は必須ではなく、例えば円形など、形状は異なる可能性がある。
【0047】
支持体31の上面には、
図13においてSG
1で示される感応部が存在し、この感応部は、E1およびE2で示される支持体上の少なくとも1対の電極、特に微小電極を含む。
【0048】
電極E1、E2は、好ましくは薄膜の形態である。既に述べたように、様々な好ましい実施形態において、電極E1、E2を得る金属膜の厚さは、50ナノメートルから2マイクロメートルの間、好ましくは100から500ナノメートルで構成される。電極E1、E2は、異なる金属材料の少なくとも2つの層、または金属材料の単一の層で作ることができる。以下では、両電極E1、E2は、支持体31上の白金とクロムのそれぞれの層によって形成され、白金が上層をクロムが下層を形成すると仮定する。
【0049】
電極は、その間に一定の測定ギャップを規定するために、マイクロメートルまたはサブマイクロメートルまたはナノメートルの距離、好ましくは100ナノメートルと20マイクロメートルの間に構成される、それらの間の最小距離または所定の距離に設定されたそれぞれの部分を有する。
【0050】
以下では、互いに最も近いそれぞれの点で、2つの電極E1、E2が約2ミクロンの距離にあると仮定する。
【0051】
例示した非限定的なケースにおいて、支持体31の上面には、例えば金属材料または導電性ペーストのスクリーン印刷されたトラックのような、
図13において33a、33bで示される第1の導電性トラックが設けられ、これらは、支持体31の下面に設けられた
図13において34a、34bで示された同様の導電性トラックと電気的に接続される。上側のトラック33a、33bはそれぞれ、それぞれの電極E1またはE2から、基板31のそれぞれの貫通孔(ここでは32a、32bで示される孔)まで延びることができ、この貫通孔は、充填されているか、またはその表面が導電性材料で覆われており、トラック33aまたは33bの材料が接触している。同様に、下側のトラック34a、34bは、それぞれの穴32aまたは32bを充填する、または表面を覆う材料と接触しており、そこからそれぞれ、導電性材料で形成されたそれぞれの接触パッド35aまたは35bまで延びており、そこから順に、検出素子30、すなわち、感応部SG
1の電極E1、E2の接続要素36aまたは36bが出発する。要素36a、36bは、例えば、導電体、場合によっては可撓性のもので表すことができる。
【0052】
既に述べたように、NTCサーミスタのような温度検出器を、
図14のRT
1で例示したように、支持体31上、例えばその下面に取り付けることができる。この場合、この検出器のための少なくとも2つの追加接続要素または導体も、適切な端子21を介して制御電子機器に接続する目的で、支持体31から延びる。
【0053】
図15~16を参照すると、様々な優先的実施形態において、電極の少なくとも一方(ここでは電極E1)は、
図16の詳細においてGで示される測定ギャップを規定するために、他方の電極(ここでは電極E2)の周辺プロファイルの対応する部分(E2b)と所定の距離、または最小距離で対面するように設計された、E1aで示される一般的に尖ったそれぞれの周辺プロファイルの部分を有する。電極E1とE2の間の距離が短い部分は、対応する尖ったプロファイル部分において、ミクロンオーダーの比較的小さな曲率半径を有することができる。少なくとも1つの電極に尖った部分を設けるという選択は、いわゆる「先端効果」を利用することを目的としており、これにより、2つの電極間の距離が最小の部分において部分放電または絶縁破壊電圧を得るために、特に50V未満の低電圧を使用することが可能になる。
図13~16に示された例では、電極E1だけが尖った形状をしているが、後述するように、これは本質的な特徴ではない。
【0054】
前述のように、本発明のセンサは、理想的には絶縁性であるが、特定の条件下では部分的にこの特性を失う可能性のある流体中の、伝導による損失の可能性を決定することを目的とした検出を実施するように構成されている。言い換えれば、このセンサは、初期値または公称値または公称値の範囲に対する誘電性流体の誘電強度の減衰の可能性、特に安全閾値以下の減衰を直接推測することを可能にする。
【0055】
このセンサの原理は、電極間の距離が非常に小さくても高い電界を得ることができることにある。この現象は、電界がこの半径に反比例するため、導体表面の曲率半径が小さい領域でより強い電界が形成されることにある。先端が存在する場合、曲率半径は理想的にはゼロになり、その結果、電界は理想的には無限大になる。
【0056】
現実には、曲率半径をゼロにすることは不可能であるが、ゼロとまではいかなくても、非常に小さな曲率半径(マイクロメートルまたはサブマイクロメートル)を持つ探針が存在すれば、数ボルトの電位でも数十kV/cmの電界を得ることが可能である。従って、電極E1のような先端を規定する形状を持つ電極と、電極E2のような先端に面する形状が平坦な第2の電極(後述するように、その形状は別の形状でもよい)を十分に小さな距離で配置する、先端を規定する形態の電極を用いることで、コロナ効果(高い電位勾配が存在する2つの導体が存在する場合に発生する現象で、高電界が存在することによって引き起こされるイオン化により、これらの電極が浸漬されている流体中に電流が流れる)による電流の流れを得ることができる。高電界は、片方または両方の電極の尖った形状と、2つの電極間の距離が近いことの両方によって得られる。また、フィルムの厚みが非常に薄いことが、平面上のパターンよりもさらに大きく、局所電界の増加に寄与していることにも留意すべきである。2つの電極の対向面積を限定することのさらなる利点は、どのような方法であれ、起こり得る放電を限定された、よく配置された体積に限定することである。
【0057】
従って、例えば、測定される流体中に浸漬された2つの電極E1、E2を、適切な電圧レベルで帯電した容量に対して平行に配置することによって-検出される流体および/または電極間の最小距離(すなわち、検出ギャップの特徴的なサイズ)に応じて-、所定の時間間隔後に容量上で測定された残留電圧レベルに基づいて、流体の劣化レベルを決定することが可能である。
【0058】
電圧レベルが低ければ低いほど、電極間の電流が大きければ大きいほど、流体は絶縁特性を失っていることになる。従って、所定時間後の容量上の残留電圧レベルを流体の絶縁特性と相関させ、その誘電強度を推測することが可能である。
【0059】
図17および
図18は、検出素子30の可能な代替実施形態を示し、支持体31-ここでは円形形状を有し、例えばガラス繊維およびエポキシ樹脂(ベトロナイト)、またはプリント回路基板もしくはPCBに適した他の材料、またはアルミナで形成される-の上に基板31aが堆積され、シリコンウエハ31b上で得られる酸化シリコンで形成される基板31aが堆積され、基板31a上に、検出素子30の感応部SG
1を形成するために、複数対の電極E1~E2が規定される。
【0060】
各対の電極E1、E2は、上記で説明した理由により、異なる振幅を有する検出ギャップを規定することができる。基板31aは、好ましくは、最小の測定ギャップにおける電極E1とE2との間の距離よりも小さくないが、好ましくは前記距離よりも大きい厚さを有する。
【0061】
実施例では、様々な電極E1、E2は、好ましくは貴金属に基づくマイクロワイヤ37a、37bを介して、ワイヤボンディングによってそれぞれの接続導体36a、36bに接続される。しかしながら、この実施例では、電極E2のマイクロワイヤ37bは、
図18において35bで示される共通のパッドに接続され、そこから単一の接続導体36bが出発する。従って、この実施例では、検出素子30は、3つの接続導体のみを含む(前述の温度検出器が追加的に存在する可能性を損なうことなく、この場合、少なくとも1つの追加導体、好ましくは少なくとも2つの追加導体が設けられる)。
【0062】
図17~18に示すタイプの実施形態では、シリコンウエハの使用により、ゲート電極として使用できる高濃度ドープ領域を得ることができ、これは、例えば、特定の汚染物質に関してセンサにより高い選択性を与えることによって、流体内部の輸送現象の特に微細な測定を得ることが望まれる場合に、1対の電極または各対の電極E1~E2の検出ギャップ間の部分放電を変調するために使用することができる。
【0063】
流体分子の分極は、実際、その電気伝導を変更する可能性がある。この観点から、利用可能な現象は、電池の絶縁や冷却に一般的に使用される流体、例えばハイドロフルオロエーテル(HFE)、例えば1、1、1、2、2、3、3、3-ヘプタフルオロ-3-メトキシプロパンのような分子に存在するフッ素原子の顕著な電気陰性度である。
【0064】
電極E1-E2間の放電中、フッ素原子は自由電子を偏析させる傾向があり、これがこの種の流体が比較的高い絶縁破壊電圧を持つ理由の一つである。ゲート電圧の存在は分子の分極に影響を与え、ゲート電圧の値と極性によって放電を促進したり妨げたりする異なる経路を作り出すことができる。従って、ゲート電圧の関数として主電極(例えば、「チップ」または「チップ-プレーン」を備えた電極がソースとドレインになる)間の電流を測定することによって、適切なマッピングにより、さまざまな汚染物質の検出を得ることができる。
【0065】
少なくとも一部がシリコン中にある基板31aを使用するさらなる利点は、感応部SG1の駆動回路、または前記回路の少なくとも一部を基板に直接統合する可能性にある。
【0066】
前述したように、いずれの場合にも、絶縁性の支持体または基板を使用することが可能であり、その表面に1対または複数対の電極E1~E2を直接堆積させるか、または他の方法で適切なゲート電極を得、その上に絶縁層(例えば、数ミクロン、例えば2~10ミクロンの厚さのポリマー層)を堆積させ、その上に、放電が行われる少なくとも1対の電極E1~E2を形成する。このタイプの例を、
図34~38を参照して説明する。
【0067】
検出素子30の感応部SG
1が複数の対の電極E1-E2を含む場合、
図17の場合のように、1つの同じ電圧で供給される測定ギャップは個別であってもよいし、または
図23の場合のように、2つの電極E1およびE2が同じ電圧で同じ距離で並列に動作して、その間に複数の測定ギャップを規定することもでき、冗長性を有し、誤動作(ギャップでのガス気泡や不純物など)を回避することができる。
【0068】
図19~20は、それぞれの周辺プロファイルの尖った部分E1a、E2bによって区別される2つの電極E1-E2の可能な代替形状を示す。このような実施形態は、例えば、局所電界を最大にするのに有利である。
【0069】
図21~22は、2つの電極E1~E2のさらに可能な代替形状を示しており、電極E1の周辺プロファイルは、軸方向に延びた突出部分E1aを有し、この突出部分は、電極E2の周辺プロファイルの形状部分E2bの2つの延びた平行な部分の間に挿入されている。このような実施形態は、例えば、微小電極の製造中に薄膜の化学的攻撃プロセスの均質性を向上させるのに有利である。
【0070】
図23~24は、2つの電極E1~E2の周辺プロファイルの対向部分が実質的に相互櫛形形状を有する、すなわち、電極E1の連続する突起E1aが電極E2の連続する凹部E2bに受容される、さらに可能な代替形状を示している。既に述べたように、このような実施形態は、例えば、冗長性の理由と、単一のギャップでの気泡や不純物のような外的原因による時折の誤動作を回避するために、2つの電極のみによって、並行して動作する複数の等しい測定ギャップを定義するのに有利である。この場合、同じ印加電圧および電極間の同じ最小距離での電界の値は、「先端から平面」または「先端から先端」の場合よりも減少する可能性があるが、この実施形態は、例えば、汚染および/または劣化しているためにより高い導電率を有する流体の場合に有利であり、放電中に印加される電界自体の損傷を受けにくい、電極のより高い堅牢性を確保することができる。
【0071】
センサ10は、例えば
図3~4に例示されるように、その本体部分15が、検出される流体に対して少なくとも部分的に(少なくともその壁16aにおいて)露出するように取り付けられる。
【0072】
このようにして、流体5の一部は、貫通開口部19を貫通し、シール要素26、壁16aの内側、および検出要素30の支持体31の間に区切られた検出チャンバに到達することができ、少なくとも1対の電極E1~E2が配置されている支持体31の上面の領域をシール要素26が囲んでいることから、電極は、両方とも流体5に接触する。
【0073】
図25は、センサ10の可能な動作原理を概略的に示しており、Vdcは低電圧源を示し、S1およびS2は2つのスイッチ(好ましくは電子式または制御可能なタイプ)を示し、Cは既知または予め定義された電気容量のコンデンサを示し、SG
1は先においてE1およびE2で示したタイプの少なくとも2つの電極を有する感応部を示す。OSは、オシロスコープなどの検出装置または機器を示す。センサは、前述のように、検出対象の流体が電極E1~E2を浸し、従って検出ギャップGにも忍び込むように取り付けられる。
【0074】
スイッチS1を閉じることにより、コンデンサCはVdcの電圧で充電される。その後、スイッチS1が開き、スイッチS2が閉じ、流体の一部が配置された、感応部SG1の電極間に定義された測定ギャップ上のコンデンサCを放電する。
【0075】
図26のグラフは、本発明にセンサ装置によって、本出願人により検出され、上述の原理に従って動作する、いくつかのタイプの流体に対する典型的な放電傾向を示す。試験は、5Vの直流電圧、100nFの容量を有するコンデンサC、および
図15に示すタイプの形状を有するクロム製の電極E1およびE2を有する感応部SG
1、および2マイクロメートルの検出ギャップGを用いて実施された。グラフでは、横軸に時間t(秒)を、縦軸に電圧U(ボルト)を表す。
【0076】
例えば、Novec 7100(登録商標)は、電池の電気化学セルの温度調整に一般的に使用される流体の1つである。表される放電は、空気の放電と実質的に一致し(グラフ上の2つの曲線は実質的に区別できない)、時定数は、10MOhmの抵抗(使用したオシロスコープOSの内部抵抗)上の100nFの容量に関連する。
【0077】
図25のグラフと同じ流体を、材料の絶縁強度を測定するために使用される代表的な機器である絶縁強度計でも分析した。対応する結果を以下の表1に示す。
【0078】
【0079】
誘電率計では、超純水の放電電圧約2.4kV/cmを測定することができたが、nS/cmまでの感度がある卓上型導電率測定器では、導電率を測定することはできなかった。これは、超純水が局所的な電荷の発生によって高電界の存在下で導電性を示すためであり、流体中にすでに存在する自由電荷によって導電性を示すためではない。
図26のグラフからわかるように、超純水に関する曲線は、Novecの曲線とも、純度の低い水(脱イオン水と水道水)の曲線ともよく区別される。
【0080】
本発明によるセンサは、容量型または抵抗型の異なる回路バリエーションに従って製造することができる。
【0081】
図27は、例えば前述の容量性動作に関連するセンサ10の単極性駆動の原理図である。この図には、動作を理解するのに有用な本質的な構成要素のみが示されている。即ち、
-SG
1には、測定ギャップGで電界が発生する感応部が概略的に示されており、前述のタイプの1対の電極E1-E2で構成されるか、または、場合によっては互いに並列に接続された複数の電極対で構成される。
-C
1は、残留電圧を測定する容量を実現するコンデンサを示す。
-V
dは、コンデンサC
1の両端の電圧を示し、矢印はその方向を示す。
-V
1は、一般的な定電圧源を示す。
-Vは、電圧計やアナログ・デジタル変換システムなど、コンデンサC
1の電圧レベルV
dを測定できるシステムまたは装置を示す。
-SW
1、SW
2、SW
3は一般的な制御スイッチを示す。
【0082】
必ずしも全てのスイッチSW1、SW2、SW3が存在するとは限らず、例示したものとは若干異なる回路位置に配置されていてもよい。好ましくは、コンデンサC1の容量値、電源V1から供給される電圧、および検出ギャップの特性サイズ(電極E1、E2間の最小距離)は、検出対象の流体の種類に応じて選択される。
【0083】
優先制御方式によれば、時刻T0にスイッチSW1が開状態になり、スイッチSW3が開状態になり、スイッチSW2が閉状態になり、コンデンサC1の端子電圧VCが0Vになる。
【0084】
後の時刻T1において、スイッチSW2が開き、スイッチSW1が閉じられ、スイッチSW3を開いたままにする。このようにして、コンデンサC1の電圧Vdは、V1に等しいレベルになる(Vd≒V1)。
【0085】
後の時刻T2において、スイッチSW2が常に開いた状態でスイッチSW1が開かれ、スイッチSW3が閉じられる。
【0086】
後の時刻T3で、つまり所定の公知の時間間隔の後、コンデンサC1の電圧Vdが検出装置Vを使用して測定される。測定された電圧のレベルは。流体の絶縁特性と直接相関しており、従って測定サイクルは、時間T0から開始して定期的に実行することができる。このタイプの構成では、コンデンサの端子で測定された残留電圧が所定のしきい値を下回った場合、流体の絶縁耐力はもはやコンデンサを安全に使用できるほど十分ではないと推定できる。流体自体に影響を与え、それに応じて適切な警報信号を作動させることができる。
【0087】
スイッチSW1およびSW2は、いわゆるハーフブリッジ構造を形成し、個別トランジスタ、またはこの機能用にカスタマイズされた集積回路の手段により、または一般的なマイクロコントローラまたは集積回路のプッシュプル出力の手段によって容易に得ることができることに留意されたい。スイッチSW3は、リレー、集積アナログスイッチ、FETトランジスタ、またはこの目的に適した他のシステムの手段によって得ることができる。
【0088】
別のバージョンでは、スイッチSW3の存在を省略した駆動を設計することもできる。この場合、回路は簡素化され、それに伴ってコストと寸法が削減される。不利な点は、消費電流が高くなり、電極E1-E2の劣化が速くなる可能性があることである。
【0089】
スイッチSW2を省略することもできるが、この場合、一般的に、ある測定サイクルと別の測定サイクルの間でコンデンサC1の完全な放電が行われないが、しかしながら、これはセンサ10をバイポーラで使用する場合は無関係である。しかしながら、センサ10のバイポーラ使用の場合の有用性は、以下のように明らかである。
【0090】
図28は、センサ10のバイポーラ駆動の原理図であり、常に前述の容量方式と関連している。また、この場合は、図は、動作を理解するのに有用な本質的な構成のみを強調した。
【0091】
SG
1検出素子の耐久性を向上させるために、バイポーラ駆動、すなわち、コンデンサC
1の端子における電圧V
dが正負両方の値を取り得るような駆動、を使用することが可能である。この方法によって、2つの電極E1-E2間に発生する電界は、コンデンサC
1に存在するV
d電圧に応じて極性が変化し、その結果、前記電極上のガルバノ塑性効果による堆積効果を最小限に抑えることができる。このタイプの駆動を得るために、
図28の原理図に示されるように、いわゆる「フルブリッジ」構造が使用され、ここでSG
1、C
1、V
d、V
1およびVで示される構成要素は、
図27を参照して説明したものと同様である。
【0092】
SW1、SW2、SW3、SW4、SW5およびSW6には、一般的な制御スイッチが示されており、この場合も、必ずしもすべてが存在するとは限らず、例示したものとはわずかに異なる回路位置に配置することもできる。
【0093】
優先制御方式によれば、時刻T0において、スイッチSW1、SW3、SW5、SW6が開き、スイッチSW2が閉じ、スイッチSW4も閉じ、コンデンサC1の端子のVd電圧レベルを0Vにする。
【0094】
なお、コンデンサを0Vに保つという条件は省略可能であり、つまり時刻T0における回路の状態は任意である。
【0095】
後の時刻T1でスイッチSW2を開き、スイッチSW1を閉じ、他のスイッチの状態を維持することで、コンデンサC1の電圧VdをV1に等しくする(Vd≒V1)。
【0096】
後の時刻T2において、スイッチSW1が開かれ、スイッチSW5とSW6が閉じられ、他のスイッチの状態が維持される。なお、スイッチSW5およびSW6を閉じる条件は省略してもよく、すなわちスイッチSW5およびSW6が存在しなくてもよく、あるいは感応部SG1の電極E1~E2が常にコンデンサC1に並列に接続されていてもよい。
【0097】
後の時刻T
3において、すなわち所定の既知の時間間隔の後、スイッチSW
5およびSW
6があればその開放に続いて、コンデンサC
1上の電圧がデバイスVを使用して測定される。
図28の場合について述べたように、測定された電圧レベルは流体の絶縁特性と直接的な相関関係があり、センサ10からの出力データとして送信される。
【0098】
後続の時刻T4において、スイッチSW2が閉じられ、他のスイッチの状態、特にスイッチSW4の閉状態が維持され、コンデンサC1の端子の電圧Vdのレベルが0Vになる。
【0099】
後の時刻T5で、スイッチSW4が開かれ、スイッチSW3が閉じられ、他のスイッチの状態が維持され、その結果、コンデンサC1のVd電圧が-V1(Vd≒-V1)と等しいレベルになる。
【0100】
後の時刻T6で、スイッチSW3が開かれ、スイッチSW5とSW6とが閉じられ、他のスイッチの状態が維持される。前述のように、スイッチSW5とSW6を閉じることは省略することもできるし、存在しないようにすることもできるし、電極E1~E2を常にコンデンサC1に並列接続することもできる。
【0101】
後の時間T7で、すなわち所定の既知の時間間隔後に、スイッチSW5およびSW6があればその開放に続いて、コンデンサC1の電圧が測定される。この場合も、測定された電圧レベルは流体の絶縁特性と直接的な相関関係があり、センサ10から出力データとして送信される。
【0102】
測定サイクルは、時刻T0から再び開始される。
【0103】
スイッチSW1-SW2およびSW3-SW4は、前述の「Hブリッジ」構造(フルブリッジ)を形成し、この場合も、個別トランジスタ、またはこの機能に特化した集積回路の手段、または一般的なマイクロコントローラまたは集積回路のプッシュプル出力の手段によって容易に得ることができる。またこの場合、スイッチSW5とSW6は、リレー、集積アナログスイッチ、FETトランジスタ、または目的に適した他のシステムの手段によって得ることができる。
【0104】
見られるように、
図28の原理図によれば、バイポーラ型のコンデンサC
1上のV
dの駆動、すなわち、コンデンサC
1の端子の電圧を反転させるか、または同じ端子上で正と負の両方にする駆動が、可能である。
【0105】
図25、27、28を参照して説明したタイプの実施形態では、測定される代表電圧はコンデンサの放電時間の関数として変化する。コンデンサが放電する理由は2つある:測定回路の抵抗がゼロでなく(これは実際の回路では避けられない)、その結果回路に電流が流れること、または検出ギャップの2つの電極間に電流が流れること、である。ある閾値を超えると放電が起こり、電荷キャリアの増加による2つの電極間の電流となり、先に説明したコロナまたは「先端」効果だけでなく、流体中の新しい電荷キャリア(電子と正イオン)の解離にも結びつく。キャパシタの放電が緩やかか急激かは、検出ギャップ内の静電容量と電流の相対値に依存する。例示の目的で、5Vの電圧で充電された100nFのコンデンサを1秒間で完全に放電させるためには、0.5μAの平均電流が必要である。これは、ここで考慮されているタイプの検出ギャップを介して、約500A/cm
2と推定できる電流密度に相当し、絶縁体として考慮しなければならない流体にとっては、確かに小さくない電流密度である。
【0106】
図25、27、28を参照して説明した駆動原理は、コンデンサの放電を利用して検出ギャップGに規定量の電荷を供給することから、「容量性」と定義することができる。しかし、本発明の他の実施形態によれば、ユニポーラ駆動にもバイポーラ駆動にも、完全抵抗型のシステムを使用することが可能である。この意味での例が
図29に示されており、ここでは、動作を理解するのに有用な本質的構成要素のみが強調されている。また、
図29においてSG
1、V
1、Vで示される構成要素は、
図27および
図28を参照して説明したものと同様である。
図29では、
-SW
XLとSW
XH-X、ここでxは1から4まで、には、一般的な制御スイッチが示されており、この場合も必ずしも全て存在するとは限らず、例示したものとはわずかに異なる回路位置に配置される可能性がある。
-R
RX、ここでXは1から4まで、には、基準抵抗が示され、これを通して抵抗分圧器が得られ、様々なSW
XHとSW
XLスイッチを通して感応部SG
1に交互に接続される。
-V
SGは、感応部SG
1の2つの電極E1-E2間の電圧を示し、矢印はその方向を示す。
【0107】
ここでは、システムまたは装置Vは、Nで示されたノードの電圧レベルを測定するように構成される。
【0108】
動作原理は分圧器のものである。検出ギャップは、別の抵抗R(この抵抗の値は、後述するように、より多くの抵抗と適切な回路構成を用いて変化させることができる)に直列に配置される。ある抵抗Rに直列に接続された検出ギャップに電圧が印加されると、電流がない状態ではノードNの電位はゼロ(接地)であるため、ギャップの両端には全電圧V1が存在する。この電圧V1が検出ギャップを介して電流を生成するのに十分である場合、Nの電位は、値V(t)=Ri(t)で変化し、ある値Vで安定する。この構成により、以下に詳述するようにギャップの等価抵抗を定義することができる。
【0109】
例示的な説明では、4つの基準抵抗RRを使用するシステムを参照しているが、回路はより多くの抵抗に拡張することも、より少ない数に減らすこともできることに注意すべきである。
【0110】
この場合も、好ましくは、抵抗RRの抵抗値とその数、電源V1から供給される電圧、および検出ギャップの特性寸法(電極E1、E2間の最小距離)は、検出対象の流体の種類に応じて選択される。
【0111】
図29の図を参照すると、ユニポーラ駆動の場合、以下の2つのケースが考えられる。
1)スイッチSW
1LからSW
4LとスイッチSW
5Hは存在せず、スイッチSW
5Lは短絡で置き換えられるか、常に閉じている;スイッチSW
1HからSW
4Hは交互に1つずつ閉じられ、ノードNの電圧は整定時間後に測定される。
2)スイッチSW
1HからSW
4HとスイッチSW
5Lは存在せず、スイッチSW
5Hは短絡によって置き換えられるか、または常に閉じられている;スイッチSW
1LからSW
4Lは交互に1つずつ閉じられ、ノードNの電圧は整定時間後に測定される。
【0112】
図29を参照すると、バイポーラ駆動の場合も同様に、前述とよく似た以下の2つのケースが考えられる。
1)スイッチSW
1LからSW
4LとスイッチSW
5Hは開き、スイッチSW
5Lは常に閉じている;スイッチSW
1HからSW
4Hは交互に1つずつ閉じられ、ノードNの電圧は整定時間後に測定される。
2)スイッチSW
1HからSW
4HとスイッチSW
5Lは開き、スイッチSW
5Hは常に閉じている;スイッチSW
1LからSW
4Lは交互に1つずつ閉じられ、整定時間後にノードNの電圧が測定される。
【0113】
ユニポーラ駆動の場合もバイポーラ駆動の場合も、
図30と
図31に示す等価回路が得られることは容易に推測できる。
【0114】
ユニポーラ駆動の場合、各測定サイクルでは、どちらの構成を選択するかによって、2つのケースのうち1つしか存在しない。逆に、バイポーラ駆動の場合は、スイッチの状態に応じて決まる2つの回路構成が、ある測定サイクルと次の測定サイクルの間で交互に繰り返される。
【0115】
このいわゆる「比例」方式を用いると、測定システムの基準を常に同じに保ちながら測定を行うことができる。
【0116】
便宜上、これには限定されないが、0Vを基準として使用することを考える。この場合、ケース1)では電圧V
SGが感応部SG
1の端子で直接測定され(
図30)、一方、ケース2)では電圧VR
Xが抵抗R
RXの端子で測定される。
【0117】
なお、ケース2)において、ケース1)と同じ取り決めが維持された場合、感応部SG
1の端子で電圧V
SGが負になり、このことは、
図30と
図31で、SG
1の電気記号が上下逆になっていることから明らかである。物理的な観点からは、先に説明した容量方式と同様に、感応部SG
1の端子における電界の反転が得られる。
【0118】
ケース1)では、感応部SG
1の2つの電極E1-E2の端子に対する等価抵抗R
SGは、以下の式で与えられる。
【0119】
ケース2)では、感応部SG
1の2つの電極E1-E2の端子に対する等価抵抗は、代わりに以下の式で与えられる。
【0120】
図29の例を参照すると、電極E2は固定電位Vにあることに注意すべきである。その結果、ノードNの電圧を接地に対して測定しても、またはVに対して測定しても、絶対的に等しく、電圧Vで表される既知の定数よりも小さくなる。上方の内容はそれゆえに同じである。
【0121】
アプリケーションで提供される全温度範囲でセンサ10を正しく動作させる目的で、感応部SG1の近くに配置された適切な温度検出器を通して、温度測定も使用できる。上述のように、そのような温度検出器は、NTC型サーミスタを含むことができる。
【0122】
温度の検出を通じて、
図27~28のコンデンサC
1の端子で測定された電圧レベルに対して、または
図29~31で言及された比例法によって測定された等価抵抗に対して、等級1以上の適切な補償多項式による補正を適用することができる。補償多項式の係数を決定する目的で、例えば、基準流体中の異なる既知の温度において、電圧レベルまたは抵抗の2つ以上の測定を行ってもよい。
【0123】
図32は、バイポーラ駆動による容量方式に基づき、補償目的の温度検出を伴うセンサ10を得るために使用される可能性のある実装の簡略図を示す。
【0124】
回路を正しく動作させるために必要な受動部品と保護部品は省略し、SG
1、C
1、およびV
d素子は前述のものと同様であるため、以下の基本素子を有する。
-RT
1で温度検出器が示され、電極E1-E2の近くに配置され、温度補正を行うために使用される。
-SW
1、SW
2、SW
3、SW
4スイッチは、特に
図28に関連し、既に上述したタイプのもので、例えば、任意に設定可能な汎用マイクロコントローラのGPIOタイプ(汎用入出力)の2つの出力を介して得ることができる。
-V
SNSは、コンデンサC
1が充電される一般的な定電圧源、すなわちセンサ10の駆動電圧を示す。
-OA
0とOA
1では、2つのオペアンプが示されており、測定コンデンサC
1を取得システムの入力から切り離し、非常に高い入力インピーダンスを確保するために、電圧トラッカーとして使用される(取得システムとは、電極E1-E2からコンバータADCまでの回路を除いた部分を意味する)。
-ADCは一般的なアナログ・デジタル変換器を示す。
-ADC MUXは汎用マルチプレクサを示し、取得される量の入力とコンバータADCの間に設定される。
-D&AC(Drive & Acquisition Control)は、駆動システムの制御アルゴリズム、ADC MUXマルチプレクサ、およびADCコンバータを表すブロックを示す。
-C&C(Computation & Communication)は、温度補償アルゴリズム、測定値の計算、および通信プロトコルを表すブロックが示される。
【0125】
好ましくは、スイッチSW
1、SW
2、SW
3、およびSW
4の制御アルゴリズムは、センサ10のバイポーラ駆動に関して
図28を参照して説明したものと同様である。先にVで示した部分、すなわち測定システムまたはデバイスは、ここではオペアンプOA
0およびOA
1、マルチプレクサADC MUX、およびコンバータADCから構成される。
【0126】
動作中、コンデンサC1上の電圧レベルの2つの連続した測定サイクル(マルチプレクサの入力0と1)の間に、検出器RT1を介して温度検出(マルチプレクサの入力2)が実行され、コンデンサC1の端子で測定された電圧レベルで、前述の多項式に基づいて、前述のように対応する補償を実行するのに必要である。
【0127】
図33は、前述のバイポーラ駆動による抵抗方式または比例方式に基づき、補償目的のための温度検出を備えたセンサ10を得るために使用できる可能な実装の簡略化されたスキームを示す。
【0128】
この場合にも、受動部品と保護部品は省略され、これらはいずれにしても回路の正しい動作に必要なものであり、素子SG
1が先に説明したものと同様であることを考慮すると、以下の基本素子が存在する。
-RR
1、RR
2、RR
3およびRR
4は、特に
図29を参照すると、上に示したタイプの基準抵抗器で、センサ10の精度を最適化するために、異なる測定範囲で動作する4つの分圧器が得られる。
RT
1は温度検出器を示し、測定電極E1-E2の近くに配置され、温度補償を行うために使用される。
-SW
1H、SW
2H、SW
3H、SW
4H、SW
5H、およびSW
1L、SW
2L、SW
3L、SW
4L、SW
5Lは、特に
図29を参照して、既に上述したスイッチが示されており、これらは、任意に設定可能な汎用マイクロコントローラの対応するGPIO出力を通じて得ることができる。
-V
SNSは、センサ10を駆動するための一般的な定電圧源を示す。
-OA
0はオペアンプで、分圧器を測定システムから切り離し、非常に高い入力インピーダンスを確保するため、電圧トラッカーとして使用される。
-ADCは汎用アナログ・デジタル変換器を示す。
-ADC MUXは汎用マルチプレクサを示し、取得される量の入力とコンバータADCとの間に配置される。
-D&AC(Drive & Acquisition Control)は、駆動、マルチプレクサADC MUX及びコンバータADCの制御アルゴリズムを表すブロックを示す。
-C&C(Computation & Communication)は、補正アルゴリズム、測定値の計算、通信プロトコルを表すブロックである。
【0129】
スイッチSW
1H、SW
2H、SW
3H、SW
4H、SW
5HおよびSW
1L、SW
2L、SW
3L、SW
4L、SW
5Lの制御アルゴリズムは、センサ10のバイポーラ駆動に関して
図33を参照して説明したものと同様である。この場合も、先にVで示した部分は、オペアンプOA
0、マルチプレクサADC MUX、およびコンバータADCによって構成される。
【0130】
動作において、この場合も、
図29(マルチプレクサの入力0)に関連して説明したように、2つの連続する測定サイクルの間に、検出器TR
1を介して温度検出が行われ(マルチプレクサの入力1)、測定された等価抵抗に対して、前述の多項式に基づいて、前述のように対応する補償を実行するのに必要である。
【0131】
温度変化に加えて、構造および組立公差を補正するために、本発明にかかるセンサは校正を受けることができる。センサ10が温度検出を行う場合、温度補償多項式の係数を計算する前に、それ自体、既知の技術に従って実施可能なセンサの校正を行わなければならない。
【0132】
取得システム(前述のように、感応素子SG1と除外されたコンバータADCとの間の回路の一部を含む)は、所定の安定した温度で、コンデンサC1に並列に設定される基準サンプル抵抗器(従って、正確に既知の値)を使用して校正を受けることができ、回路の時定数RCの測定を通じて、取得システムに入力される容量の実際の値を決定する。測定された容量値は、センサ10内部の不揮発性メモリに保存され、測定値に対する適切な校正を実行するために使用される。
【0133】
抵抗法または比例法に従って動作するセンサの場合にも、取得システムの校正を行うことができる(
図29~31および33)。
【0134】
感応部SG1は、捕捉システムに接続された状態で校正される。この場合、コンデンサC1上の残留電圧レベルの1回以上の測定が、所定の安定した温度に置かれた基準サンプル液を用いて行われ、期待される公称値に対する分散が決定されまる。この情報はセンサ内部の不揮発性メモリに保存され、測定値の適切な校正に使用される。
【0135】
感応部SG
1の校正は、抵抗法または比例法に従って動作するセンサの場合にも行うことができる(
図29~31および33)。
【0136】
先に示したように、感応部SG
1に存在する1対の2つの電極E1およびE2-またはそれぞれの1対-は、ソース機能およびゲート機能を実行する第3の電極と動作可能に関連付けることができ、第3の電極はゲート機能を実行する。前述のように、感応部SG
1がシリコンウエハを含む場合、前述の第3の電極は、このウエハの一部を適切にドーピングすることによって得ることができる。
図34~
図37は、代わりに、既に説明したタイプの電極E1およびE2を有する感応部SG
1を有する検出素子30の電気絶縁性基板31上に、例えば、既に上で説明したように薄膜の形態で作製された第3の電極が存在する場合を例示しており、
図36ではE3で示されている。
図37に特に見られるように、対応する接続トラックE3aを有する電極E3は、基板31上に得ることができ、その後、誘電体材料31cの層で覆われ、その上に電極E1およびE2が配置される。
【0137】
図38は、前述の第3の電極E3を含む可能な回路配置を例示する。例示の場合、図示された回路は、単純化のために、
図27の回路に非常に類似しており、すなわち、ハーフブリッジ構造を形成するスイッチSW
1およびSW
2を備えているが、概念は、明らかに、記載された他の回路にも移行可能である。
図27と比較すると、
図38では、ゲート電極E3を駆動するために、SW
4とSW
5で示される追加のスイッチと、関連する回路分岐がある。
【0138】
図38の例を参照すると、スイッチSW
1およびSW
5が開いている状態でスイッチSW
4を閉じることにより、ゲート電極E3を分極させることが可能である。コンデンサC
1を充電した後にスイッチSW
3を閉じると、ゲート電極E3の分極がある状態でギャップに電圧が印加される。
【0139】
本発明の特徴は、その利点と同様に、所定の説明から明らかである。
【0140】
当業者であれば、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、一例として説明したセンサ装置に多数の変形が可能であることは明らかである。
【0141】
センサ10を最低レベルセンサとして「間接的に」使用することが可能であることは既に述べた通りである。このような使用は、例えば、一般的なデバイスの電気部分が、空気より低く、明確に区別できる電気絶縁特性を有する流体中に常に少なくとも部分的に浸漬されなければならない用途、例えば、電池に関連して
図1~4に示されるタイプの配置で想定され得る。通常の動作では、センサ10の感応部が流体5と接触している状態で、センサ自体が流体5の誘電強度のある値に関連する出力情報を提供し、この値は(絶縁特性の減衰の可能性に応じて)ある限度内で変動する可能性があるが、空気の誘電剛性の値とは常に明確に区別されることが理解されよう。
【0142】
これに基づいて、センサ10が空気と同様の誘電強度の値を検出した場合、流体5のレベルがセンサの設置位置よりも低下したことが推測され、アラーム信号や自動流体補充システムの開始などの是正措置が開始される。
【国際調査報告】