(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】真空バルブ用のハウジング
(51)【国際特許分類】
H01H 33/662 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H01H33/662
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517379
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2022072797
(87)【国際公開番号】W WO2023051992
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102021210859.8
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】グラスコフスキー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュティーラー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,エリック デー
(72)【発明者】
【氏名】テイヒマン,イェルク
(57)【要約】
本発明によるハウジング(5)は真空バルブ(1)に適している。このハウジングは、軸方向に可動で可動接点(4)を担持する可動接点棒(9)と固定接点(3)を担持する固定接点棒(10)とを収容するためのもので、これらのハウジング(5)内の配置は、ハウジング(5)を可動接点半部(a)と固定接点半部(b)に分割する。可動接点半部(a)と固定接点半部(b)には、それぞれハウジング(5)の長手軸(17)を囲むハウジング(5)の部分が、それぞれ電気的に絶縁性の絶縁区間(Ia、Ib)により形成される。可動接点半部(a)内の絶縁部材(Ia)と固定接点半部(b)内の絶縁区間(Ib)は、異なった寸法(x、y、Da、Db)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接点(4)を支持し軸方向に移動可能な接点棒(9)と、固定接点(3)を支持する固定接点棒(10)とを収容するためのハウジング(5)内の配置が、可動接点半部(a)と固定接点半部(b)への前記ハウジング(5)の分割を画定し、前記可動接点半部(a)と前記固定接点半部(b)とのそれぞれにおいて、前記ハウジング(5)の縦軸(17)を囲む前記ハウジング(5)の部分が電気絶縁性の絶縁区間(I
a、I
b)により形成される真空バルブ(1)のためのハウジング(5)において、
前記可動接点半部(a)の前記絶縁区間(I
a)と前記固定接点半部(b)の前記絶縁区間(I
b)の寸法(x、y、D
a、D
b)が異なることを特徴とする真空バルブ(1)用のハウジング(5)。
【請求項2】
前記可動接点半部(a)および前記固定接点半部(b)内の前記絶縁区間(I
a、I
b)は、前記ハウジング(5)の前記縦軸(17)に沿って測定して異なる長さ(x、y)を有する、請求項1記載のハウジング(5)。
【請求項3】
前記可動接点半部(a)の前記絶縁区間(I
a)は、前記固定接点半部(b)の前記絶縁区間(I
b)よりも長い、請求項2記載のハウジング(5)。
【請求項4】
前記可動接点半部(a)の前記絶縁区間(I
a)と前記固定接点半部(b)の前記絶縁区間(I
b)は、異なる内径(D
a、D
b)を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項5】
前記可動接点半部(a)の前記絶縁区間(I
a)は、前記固定接点半部(b)の前記絶縁区間(I
b)よりも内径(D)が長い、請求項4記載のハウジング(5)。
【請求項6】
前記絶縁区間(I
a、I
b)が、それぞれ、前記絶縁材料製の中空円筒(14)によって、または互いに接合された複数の絶縁材料製の中空円筒(14)によって形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のハウジング(5)。
【請求項7】
前記可動接点半部(a)の前記絶縁区間(I
a)と前記固定接点半部(b)の前記絶縁区間(I
b)との間に、金属製の中空円筒(13)が配置されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のハウジング(5)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のハウジング(5)を有する、真空バルブ(1)。
【請求項9】
金属製のハウジング(18)によって囲まれている、請求項8に記載の真空バルブ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空バルブ用のハウジング並びに真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの場合管状である真空バルブ(VSR)の絶縁体は、例えば外側がガラス状のアルミニウム酸化物セラミック、ガラスセラミック、またはガラスで構成されており、開閉区間が開かれると、ハウジングの漏れ電流耐性の外側の絶縁を形成する。スリムで比較的大きなハウジングでは、絶縁体はしばしば2つの絶縁区間として形成され、これらの区間はたとえば鋼板からなる金属製の中央部材により引き離されている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
従来の真空バルブは、少なくとも2つの絶縁区間、例えばセラミック中空円筒を有するものとして対称的に、すなわち2つのハウジング半部、具体的には可動接点(BK)を支持するVSRの可動接点棒のハウジング半部、いわゆる可動接点半部、および固定接点(FK)を支持する固定接点棒のハウング半部、いわゆる固定接点半部における絶縁区間の数、直径および長さが同一に設計されている。
【0004】
VSR、特に接地されたハウジング、例えばGIS(ガス絶縁開閉装置)およびデッドタンクを有する遮断器では、非対称的な電圧分布がVSR上に発生することがある。VSRの取り付け位置によっては、VSRのBK半部またはFK半部が非対称になる場合がある。
【0005】
一般に可動接点半部の電圧負荷は、固定接点半部の電圧負荷よりも高くなる(
図1および
図2参照)。従って、VSRの誘電定格は可動接点半部の電圧負荷によって決定される。それにより、ハウジングの固定接点半部は場合によっては誘電的に過大に設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開EP0082802号明細書
【特許文献2】独国特許19713478号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、VSRの改良されたハウジングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は本発明によれば、独立請求項1に記載のハウジングによって解決される。本発明によるハウジングおよび真空バルブの有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0009】
このハウジングは真空バルブに適している。これは、可動接点を支持する軸方向に移動可能な可動接点棒と、固定接点を支持する固定接点棒とを収容するように設計されている。可動接点棒は、技術文献では可動接点接続ボルトまたは接触棒とも呼ばれている。
【0010】
真空バルブは、ハウジングによって囲まれ固定接点と可動接点とが配置された開閉室を有する。可動接点は、軸方向に移動可能に真空バルブから引き出される可動接点棒の一端に着座している。可動接点は、可動接点棒の軸方向の移動によって、固定接点に対して相対的に移動させることができる。可動接点棒は、ハウジングの蓋を真空密に貫通し、このために蓋は、その蓋床に挿入開口を有し、可動接点棒はこの挿入開口を案内される。
【0011】
蓋床の挿入開口を通る可動接点棒の案内は、金属ベローズによって真空密に保持される。ベローズは金属製の蛇腹であり、その多数の蛇腹により軸方向に伸縮できるので、真空バルブの開閉行程において必要とされる可動接点棒の軸方向移動が可動接点棒の蓋床の貫通範囲における真空密を損なうことなく可能となる。
【0012】
ハウジング内の可動接点棒と固定接点棒との上述のような配置の結果、ハウジングは可動接点半部と固定接点半部とに分割され、可動接点棒が配置されたハウジング半部は可動接点半部、固定接点棒が配置されたハウジング半部は固定接点半部と呼ばれる。可動接点半部および固定接点半部においてはそれぞれハウジングの長手方向軸線を囲むハウジング部分は電気的に絶縁性の絶縁部材によって形成される。したがって絶縁部材は、ハウジングの縦軸の方向から見て、ハウジングに沿って絶縁区間を形成する。
【0013】
本発明によれば、可動接点半部内の絶縁区間と固定接点半部内の絶縁区間は、異なる寸法を有する。
【0014】
可動接点半部と固定接点半部に寸法の異なる絶縁区間を用いることにより、開閉器ハウジング、特にアース付き開閉器のハウジングにおけるVSRの特定の非対称的電圧負荷を考慮することができる。絶縁区間は、開閉区間が開いたときに、ハウジングの漏れ電流に耐性の外部絶縁を形成する。この場合、絶縁区間はハウジングのその時の電圧比に適合されるので、絶縁強度の改良をもたらす。絶縁区間の寸法を特定の電圧負荷に適合させることは、VSRおよび開閉装置をより小さな構成にできる利点を提供し、これはVSRおよび開閉器のコストの削減を生じる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、ハウジングの長手方向軸に沿って測定して、可動接点半部と固定接点半部の絶縁区間は、異なる長さを有する。可動接点半部と固定接点半部に異なる長さの絶縁区間を用いることにより、開閉器のハウジング内のVSRの特定の非対称電圧負荷を考慮することができる。この場合絶縁区間は、ハウジングのそれぞれの電圧比に適合されるので、絶縁強度の改善が生じる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、可動接点半部の絶縁区間は、固定接点半部の絶縁区間よりも長い。可動接点半部に固定接点半部よりも長い絶縁区間を用いることにより、VSRの特定の非対称的な電圧負荷を開閉器のハウジング内に見込むことができる。この場合絶縁区間はハウジングの、その時の電圧比に適合されるので、絶縁強度の改善が生じる。
【0017】
VSRの構造長さが大きい場合、対応する接触ストローク数で長い耐用年数のため長いベローズの使用により生じていた長い金属製BKフランジは、可動接点半部により長い絶縁区間を使用することで短縮できる。このような手段は以下の利点を有する:
‐ 修正されたフランジおよびより長いセラミックハウジング部分は、コストの低減につながり得る。
‐ 製造がしばしば困難であるかまたはコストを要する長いBKフランジは、回避することができる。
‐ 絶縁部材が例えばテンレス鋼などの金属製BKフランジよりも強固なので、ハウジングの長手軸線方向におけるVSRハウジングの安定度が高められることになる。
‐ 高い圧力の下では座屈する傾向のある長い脚部を有する金属製のBKフランジ、例えばステンレス鋼フランジを回避できるので、VSRの耐圧性の増加が生じる。
【0018】
さらに例えば可動接点半部内の絶縁区間が固定接点半部内の絶縁区間よりも長い場合には、非対称的に形成された真空バルブにより開閉器のハウジングにおける不利な許容状態を補償することができる。例えば、可動接点半部内の絶縁区間を長くすることによって、例えば区間の長さ、ばねなどの部材にかかる応力によって生じる区間の長さの緩慢な変化によって、または異なる熱膨張係数を有する部材の加熱の際に生じる好ましくない許容状態の場合でも、可動接点半部における絶縁区間に関する誘電的に必要な打撃距離は下回ることはない。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態によれば、可動接点半部内の絶縁区間と固定接点半部内の絶縁区間は異なる内径を有する。絶縁区間は複数の異なる内径を有することも可能であり、例えば絶縁区間が円錐または段付き形状の場合には、絶縁区間はハウジング軸に沿った第1の位置において第1の内径を有し、第1の位置とは異なるハウジング軸に沿った第2の位置においては、第1の内径よりも小さいかまたは大きい第2の内径を有する。本発明の好ましい一実施形態によれば、可動接点半部または固定接点半部における絶縁区間の異なる内径のうちの少なくとも1つは、他のハウジング半部における絶縁区間の内径とは異なる。可動接点半部と固定接点半部に異なる直径を有する絶縁区間を用いることにより、開閉器のハウジング内のVSRの特定の非対称的な電圧負荷を考慮することができる。この場合絶縁区間はハウジングのそれぞれの電圧条件に適合されるので、絶縁強度の改善が生じる。直径の変動は、円錐形セラミック、階段状セラミックおよび個々のセラミック間の直径の差によって実現することができる。これにより絶縁負荷を低減することができ、および/または蒸着保護を改善することができる。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態によれば、可動接点半部内の絶縁区間は、固定接点半部内の絶縁区間よりも大きい内径を有する。固定接点半部の絶縁区間よりも可動接点半部の内径が大きい絶縁区間を用いることにより、開閉器のハウジング内のVSRの特定の非対称的な電圧負荷を考慮することができる。この場合これらの絶縁区間はハウジングのその都度の電圧条件に適合されるので、絶縁強度の改善がなされる。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態によれば、絶縁区間はそれぞれ1つの絶縁材料製の中空円筒によって、または互いに接合された複数の絶縁材料製の中空円筒によって形成される。絶縁材料製の中空円筒は、外側にガラス張りされた酸化アルミニウムセラミック、ガラスセラミックまたはガラスで構成することができる。
【0022】
VSRの寸法を縮小するために、セラミックスと開閉室との間に存在するフィールド制御要素またはシールドを設けることができる。互いに接合された複数の絶縁材料製の中空円筒、例えばセラミック製の中空円筒を使用することによって、さらにフィールド制御要素またはシールド、例えばフローティングシールドを絶縁材料製の中空円筒の間に組み込むことが可能となる。この方策は以下の利点を有する:
‐ 誘電管特性を追加的に最適化する可能性を提供する。
‐ VSRの内部における蒸着保護の改善をもたらす。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態によれば、可動接点半部内の絶縁区間と固定接点半部内の絶縁区間との間に金属製の中空円筒が開閉室として配置される。この金属製の中空円筒は、一方では生成された金属蒸気の凝縮トラップとして機能する。他方では、金属製の開閉室は、管状のハウジングを電流経路の幾何学形状に適合させるという観点で、例えばセラミックスよりも大きな形態を提供する。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態によれば、開閉室として用いられる金属製の中空円筒および/または界磁制御要素が絶縁区間内に配置され、すなわちVSRの縦軸から見たときに、例えばセラミックとして構成することができる絶縁区間の内側の外套面の前面に配置される。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施形態は、本発明によるハウジングを有する真空バルブである。
【0026】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、真空バルブは金属製のハウジングによって囲まれている。
【0027】
本発明の上述の特性、特徴、および利点、ならびにそれらが達成される態様は、以下の図面の説明により明確に理解される。この場合図は縮尺通りではなく概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】「デッドタンク」ハウジング内の従来の真空バルブの断面図を示す。
【
図3】本発明による真空バルブの第1の実施形態の断面図を示す。
【
図4】本発明による真空バルブの第2の実施形態の断面図を示す。
【
図5】本発明による真空バルブの第3の実施形態の断面図を示す。
【
図6】本発明による真空バルブの第4の実施形態の断面図である。
【
図7】本発明による真空バルブの別の実施形態による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、従来技術から知られている接地された金属製の「デッドタンク」ハウジング18内に配置された真空バルブ1の断面図を示す。真空バルブ1は、開閉室2を囲むハウジング5を有する。開閉室には固定接点3および可動接点4が配置されている。固定接点3は、固定接点棒10の一方の端部に取付けられており、この固定接点棒は、金属製の第1の蓋7を通って真空密に、たとえば真空バルブ1および「デッドタンク」ハウジング18の溶接により外に引き出される。可動接点4は可動接点棒9の一端に取り付けられ、この接点棒は第2の蓋8に固定された軸受15によって変位可能で旋回不能に固定されるように案内され、第2の蓋8を通って真空バルブ1および「デッドタンク」ハウジング18から外へ導かれる。可動接点棒9によって可動接点4は閉鎖行程では固定接点3と接触し、開放行程では固定接点3から離間位置にもたらされる。固定接点3と可動接点4は金属製の中空円筒13により囲まれ、この中空円筒はハウジング5の中心部13を形成するとともに真空バルブ1を可動接点半部aと固定接点半部bに分割する。
【0030】
金属製の中空円筒13の両端にはそれぞれ対称的に電気絶縁材料製の中空円筒14、14a、14bが配置され、これらは可動接点半部a上に絶縁区間Iaを、固定接点半部b上に絶縁区間Ibをそれぞれ配置する。絶縁材料製の中空円筒14は、例えば酸化アルミニウムのようなセラミックから形成することができる。真空バルブ1の固定接点半部b上には、金属製の中空円筒13とは反対側の絶縁材料製の中空円筒14bの端部が第1の蓋7によって閉鎖されている。真空バルブ1の可動接点半部a上には、金属製の中空円筒13とは反対側の絶縁材料製の中空円筒14aの端部には、円筒状の可動接点フランジ16が配置され、可動接点フランジ16の金属製の中空円筒13との反対側端部は、第2の蓋8によって閉鎖されている。2つの蓋7,8、可動接点フランジ16、2つの絶縁材料製の中空円筒14a,14b、2つの絶縁材料製の中空円筒14a,14bの間に配置された金属製の中空円筒13は同軸的に配置され、共同して真空バルブ1の真空密のハウジング5を形成している。
【0031】
第2の蓋8を通る可動接点棒9の案内は、金属ベローズ12によって真空密に保たれ、その第1の端部は第2の蓋8上に配置され、第2の端部は例えばろう付け接続によって、可動接点棒9のベローズキャップと呼ばれる突出部11に取付けられる。
【0032】
図2に
図1に示した真空バルブ1の拡大図を示す。ここでは長さmの金属製の中空円筒13の両端に一体成形されたシールド20が図示されている。真空バルブ1の長手方向軸に沿って測定され、可動接点半部aに位置する絶縁材料製の中空円筒14aによって形成される、可動接点半部aの絶縁区間I
aの長さはxによって示されている。真空バルブ1の長手方向軸に沿って測定され、固定接点半部b上に位置する絶縁材料製の中空円筒14bによって形成される、固定接点半部bの絶縁区間I
bの長さはyによって示され、値xおよびyは、長さ、例えばミリメートルの単位であり、または絶縁材料製の中空円筒14が均一な長さを有する場合、配置される絶縁材料製の中空円筒14の数を示す整数であり得る。従来のVSRのハウジングでは、x=y(対称的レイアウト)である。図示の実施例ではx=y=Lであり、これにより可動接点フランジ16も長さLを有する。
【0033】
固定接点3とこれに電気的に接続された第1の蓋7とは、第1の電位φ
1を有している。可動接点4とこれに電気的に接続された第2の蓋8と可動接点フランジ16とは、第2の電位φ
2を有している。この実施例では、第1の電位φ
1は0(Volt)、第2の電位φ
2はU(Volt)である。真空バルブ1(x=y)の電界シミュレーションは、
図2に示す電圧分布を生じることを示した。即ち金属製の中空円筒13は、0.3Uの第3の電位φ
3上にある。このように、固定接点半部bにある絶縁材料製の中空円筒14bの両端間にはΔφ=0.3Uの電位差(=電圧)があり、これに対して可動接点半部aにある絶縁材料製の中空円筒14aの両端間にはΔφ=0.7Uの電位差が存在する。このように真空バルブには非対称的な電圧分布があり、それによってVSRの可動接点棒9の半部a上の電圧負荷U
aは、VSRの固定接点棒10の半部b上の電圧負荷U
bよりも高く、U
a/U
b=7/3である。
【0034】
図3乃至
図7は、本発明による接地された金属製の「デッドタンク」ハウジング内に配置されている真空バルブ1の断面図を示す。しかし図を簡単にするために、
図3から
図7に示す「デッドタンク」ハウジング内の本発明による真空バルブ1の配置は、
図1に示されている配置に対応している。
【0035】
図3は、本発明による真空バルブ1の第1の実施形態を示す。本発明による真空バルブ1は、
図1および
図2に示されるような従来の真空バルブ1に対応するものであり、特に全長は以下を除いて同一である。本発明による真空バルブ1は、可動接点半部aにおいて固定接点半部bにおける絶縁区間I
bよりも長い絶縁区間I
aを有する(非対称配置)。可動接点半部a内の絶縁区間I
aと、固定接点半部b内の絶縁区間I
bとは、それぞれ絶縁材料製の中空円筒14の回転軸に沿って測定された長さLを有する同一の絶縁材料製の中空円筒14から形成される。可動接点半部a内の絶縁区間I
aは、互いに接合されそれぞれ長さLを有する2つの絶縁材料製の中空円筒14aおよび14a.2から形成され、したがって長さx=2Lを有する。固定接点半部b内の絶縁区間I
bは、長さLの単一の絶縁材料製の中空円筒14bから形成され、したがって長さy=Lを有する。
【0036】
可動接点半部aと固定接点半部bにおける絶縁区間Ia、Ibの長さx、yに関して は、x≠yとx>y(非対称的レイアウト)が適用される。追加の絶縁材料製の中空円筒14a.2を可動接点半部aに配置することにより、可動接点フランジ16が省略される。金属製の中空円筒13に直接隣接する絶縁材料製の中空円筒14aと追加の絶縁材料製の中空円筒14a.2との間に付加的なシールド要素21が配置されるが、これにより真空バルブの絶縁特性と気化保護の改良がなされる。
【0037】
固定接点3と、これに電気的に接続された第1の蓋7とは、第1の電位φ1にある。可動接点4およびそれに電気的に接続された第2の蓋8は、第2の電位φ2にある。この実施例では、第1の電位φ1は0(Volt)、第2の電位φ2はU(Volt)である。真空バルブ1(x=2y)の電界シミュレーションは、この結果、図に示す電圧分布になることを示した。金属製の中空円筒13は、0.3Uの第3の電位φ3にある。したがって、固定接点半部b上に配置された絶縁区間Ibの2つの端部間にΔφ=0.3Uの電位差(=電位)が生じ、対照的に可動接点半部a上に配置された絶縁区間Iaの2つの端部間にはΔφ=0.7Uの電位差がある。このようにして、真空バルブ1には電圧の非対称分布が続くが、可動接点半部に存在するΔφ=0.7のより高い電位差は、今や、固定接点半部bに存在するΔφ=0.3Uの電位差に比べて、長さの2倍である絶縁区間にわたって減少する。電気的絶縁の非対称的なレイアウト、すなわちハウジング5の可動接点半部および固定接点半部bに異なる数の絶縁材料製の中空円筒14を使用した結果、接地されたバルブハウジング18におけるVSRの特定の非対称電圧負荷は、従来よりもより良く考慮される。
【0038】
図4は、本発明による真空バルブ1の第2の実施形態を示す。本発明に係る真空バルブ1は、
図1および
図2に示すような従来の真空バルブ1に以下の相違点を除き相当する、すなわち本発明に係る真空バルブ1は可動接点半部aに、固定接点半部bにおける絶縁材料製の中空円筒14bよりも大きい内径Daの絶縁材料製の中空円筒14aを有する。
【0039】
非対称的レイアウトの結果として、すなわちハウジング5の可動接点半部aおよび固定接点半部bにおいて内径Dが異なる絶縁材料製の中空円筒14を使用することにより、接地されたバルブハウジング18におけるVSRの特定の非対称電圧負荷をより良く考慮することができる。
【0040】
図5は本発明による真空バルブ1の第3の実施形態を示す。本発明による真空バルブ1は、
図1および
図2に示すような従来の真空バルブ1に以下の相違点を除き相当する、すなわち可動接点半部aにおいて本発明による真空バルブ1は、i)固定接点半部bにおける絶縁区間I
bよりも大きい内径D
aを有し、ii)固定接点半部bにおける絶縁区間I
bよりも、ハウジング5の縦軸17に沿って測定してより大きい長さxを有する、絶縁区間I
aを有する。可動接点半部a内の絶縁区間I
aと、固定接点半部b内の絶縁区間I
bとは、絶縁材料製の中空円筒14の回転軸に沿って測定された同一長さLの絶縁材料製の中空円筒14から形成されている。可動接点半部a内の絶縁区間I
aは、互いに接合されそれぞれ長さLを有する2つの絶縁材料製の中空円筒14aおよび14a.2から形成され、したがって長さx=2Lを有する。固定接点半部b内の絶縁区間I
bは、長さLを有する単一の絶縁材料製の中空円筒14bから形成され、したがって長さy=Lを有する。
【0041】
非対称的レイアウトの結果として、すなわちハウジング5の可動接点半部aおよび固定接点半部bにおいて異なる数の絶縁材料製の中空円筒14を使用することにより、接地されたバルブハウジング18におけるVSRの特定の非対称的電圧負荷を考慮することができる。さらにこれは、ハウジング5の可動接点半部aと固定接点半部bにおける絶縁材料製の中空円筒14が異なる直径を有するということにより行われる。
【0042】
図6は、本発明による真空バルブ1の第4の実施形態を示す。本発明による真空バルブ1は、
図1および2に示すような従来の真空バルブ1に以下の相違点を除いて対応する、すなわち可動接点半部aにおける本発明による真空バルブ1は、異なった内径D
aを有する絶縁区間I
aを有する。絶縁区間I
aは、VSRハウジング5の中心部13を形成する金属製の中空円筒13が配置される一端に第1の内径D
a.1を有し、第2の蓋8が配置される他端に第1の内径D
a.1よりも小さい第2の内径D
a.2を有する。絶縁区間I
aは、互いに接合された2つの絶縁材料製の中空円筒14、14s、14a.2から構成され、そのうちの第1の中空円筒14aは、中心部13に隣接し、第2の中空円筒14a.2は、第2の蓋8に隣接し、シールド要素21は、2つの絶縁材料製の中空円筒14a、14a.2の間の接合部に挿入される。第1の絶縁材料製の中空円筒14aは、中心部13に近接し、ハウジング5の縦軸に沿って測定される全長にわたって、第1の一定の内径D
a.1を有する。これに対して、第2の蓋8に近接する第2の円錐形絶縁材料製の中空円筒14aは、比較的小さな第2の内径D
a.2から第1の内径D
a.1に広がる。
【0043】
固定接点半部bにおける絶縁区間Ibの内径Dbは、ハウジング5の縦軸に沿って測定される絶縁区間Ibの全長にわたって一定である。このように、可動接点半部aにおける絶縁区間Iaの少なくとも第1の内径Da.1は、固定接点半部bの絶縁区間Ibの内径Dbとは異なっている。
【0044】
図7は、本発明による真空バルブ1のさらに別の実施形態を示す。本発明による真空バルブ1は、以下の相違点を除いて、
図1および
図2に示すような従来の真空バルブ1に対応する。
【0045】
第1に、可動接点半部aにおける真空バルブ1は、固定接点半部bにおける絶縁区間Ibよりも長い絶縁区間Iaを有する(非対称的配置)。可動接点半部a内の絶縁区間Iaは、互いに接合された2つの絶縁材料製の中空円筒14a、14a.2から構成され、各々が長さLを有し、その長さLは、可動接点半部aと固定接点半部bとの間の分割面19に第1の絶縁材料製の中空円筒14aが隣接し、第2の絶縁材料製の中空円筒14a.2が第2の蓋8に隣接し、したがって絶縁区間Iaは長さx=2Lを有する。固定接点半部b内の絶縁区間Ibは、長さLを有する単一の絶縁材料製の中空円筒14bから形成され、したがって長さy=Lを有する。
【0046】
第2に、開閉室として機能する金属製の中空円筒13が、絶縁区間I
aとI
bとの間に配置されておらず、これは
図1~6に示される真空バルブのように、例えばセラミックとして構成することができるが、絶縁区間I
aおよびI
b内に配置されている。このように、VSR1の縦軸17から見て、開閉室としての金属製の中空円筒13は、絶縁区間I
aおよびI
bの内側の外套面の前方に位置している。
【0047】
開閉室として機能する金属製の中空円筒13は、可動接点半部a内の絶縁区間Iaと固定接点半部b内の絶縁区間Ibとの間の分割面19に挿入されて固定される保持装置、例えば包囲する金属製の環状円板によって保持される。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接点(4)を支持し軸方向に移動可能な接点棒(9)と、固定接点(3)を支持する固定接点棒(10)とを収容するためのハウジング(5)内の配置が、可動接点半部(a)と固定接点半部(b)へのハウジング(5)の分割を画定し、可動接点半部(a)と固定接点半部(b)とのそれぞれにおいて、ハウジング(5)の長手方向軸線(17)を囲むハウジング(5)の部分が電気的に絶縁性の絶縁区間(I
a、I
b)により形成される真空バルブ(1)のためのハウジング(5)において、
可動接点半部(a)の絶縁区間(I
a)と固定接点半部(b)の絶縁区間(I
b)の寸法(x、y、D
a、D
b)が異なることを特徴とする真空バルブ(1)用のハウジング(5)。
【請求項2】
可動接点半部(a)および固定接点半部(b)内の絶縁区間(I
a、I
b)は、ハウジング(5)の縦軸(17)に沿って測定して異なる長さ(x、y)を有する請求項1記載のハウジング(5)。
【請求項3】
可動接点半部(a)の絶縁区間(I
a)は、固定接点半部(b)の絶縁区間(I
b)よりも長くなる請求項2記載のハウジング(5)。
【請求項4】
可動接点半部(a)の絶縁区間(I
a)と固定接点半部(b)の絶縁区間(I
b)は、異なる内径(D
a、D
b)を有する請求項
1に記載のハウジング。
【請求項5】
可動接点半部(a)の絶縁区間(I
a)は、固定接点半部(b)の絶縁区間(I
b)よりも内径(D)が大きくなる請求項4記載のハウジング(5)。
【請求項6】
絶縁区間(I
a、I
b)が、それぞれ、絶縁材中空円筒(14)によって、または互いに接合された複数の絶縁材中空円筒(14)によって形成されている請求項
1に記載のハウジング(5)。
【請求項7】
可動接点半部(a)の絶縁区間(I
a)と固定接点半部(b)の絶縁区間(I
b)との間に金属製の中空円筒(13)が配置されている、請求項5に記載のハウジング(5)。
【請求項8】
請求項
1に記載のハウジング(5)を有する真空バルブ(1)。
【請求項9】
金属製ハウジング(18)によって囲まれている、請求項8に記載の真空バルブ(1)。
【国際調査報告】