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特表2024-534500パルス電界療法に対する制御された病変および免疫応答
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】パルス電界療法に対する制御された病変および免疫応答
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240912BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/14
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P37/04
A61K45/00
A61P35/04
A61K39/395 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517428
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 US2022044021
(87)【国際公開番号】W WO2023044124
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/246,239
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/290,529
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/322,319
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/351,562
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244964
【氏名又は名称】ガルヴァナイズ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン, ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クリムスキー, ウィリアム エス.
(72)【発明者】
【氏名】シルヴェストリーニ, マシュー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】パストーリ, キアラ
(72)【発明者】
【氏名】ニール, ロバート イー. ザ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】ワルドストライカー, ジョナサン アール.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C160
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C160KK03
4C160KK20
4C160MM32
(57)【要約】
損傷組織、疾患組織、異常組織、閉塞組織、癌性組織または望ましくない組織(例えば、腫瘍、良性腫瘍、悪性腫瘍、嚢胞、または疾患組織のゾーンなど)の処置は、優れた成果を得るために、特殊なパルス電界(PEF)エネルギーを特定の線量で標的組織エリアに送達することによって行われる。PEFエネルギーおよび送達は、望ましくない組織の破壊ならびに改善された炎症応答および免疫応答の生成を含む、標的組織エリアの高度な処置を提供するように最適化されている。これらの様々なタイプの処置は、電極形状、送達されるPEFエネルギーの線量、エネルギーが送達される時間、およびPEFエネルギー自体の波形を含む様々な要因によって制御される。PEFエネルギーは、特殊なエネルギーの一適用であると考えられる線量の形態で送達される。各線量は、標的組織エリアに病変を生み出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の組織を処置するためのシステムであって、
病変を生み出す前記組織にパルス電界エネルギーを向けるように配置されるよう構成される少なくとも1つのエネルギー送達体を有する器具;および
前記少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、前記患者の適応免疫応答の増加を誘発する前記病変内の複数のゾーンを生み出す様式で前記パルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む発生機、を含むシステム。
【請求項2】
前記複数のゾーンがブルズアイ配置を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数のゾーンが少なくともパルス電界ゾーンを含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項4】
前記複数のゾーンが免疫応答ゾーンを含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記複数のゾーンがサーマルゾーンを含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記複数のゾーンが、炎症ゾーンを含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のゾーンが、少なくともパルス電界ゾーンおよびサーマルゾーンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記パルス電界ゾーンおよび前記サーマルゾーンが共に前記病変内のエリアを覆い、前記サーマルゾーンが前記エリアの50%を超えない、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記サーマルゾーンが前記エリアの25%を超えない、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記サーマルゾーンが前記エリアの10~20%である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、前記パルス電界エネルギーの波形におけるサイクル間遅延を含み、前記サイクル間遅延が、前記サーマルゾーンのサイズを制御するように構成される、請求項7~10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記サイクル間遅延が少なくとも10マイクロ秒である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記サイクル間遅延が10マイクロ秒~1000マイクロ秒である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記サイクル間遅延が、キャビテーションゾーンを最小化または排除するように構成される、請求項11~13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記サイクル間遅延が1000マイクロ秒である、請求項11~14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、前記パルス電界エネルギーの波形におけるパケット間遅延を含み、前記パケット間遅延が、前記サーマルゾーンのサイズを制御するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記パケット間遅延が3~5秒である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記病変が5~6分以内の単回線量によって生み出される、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記適応免疫応答が、CD8+/CD4+T細胞の比の増加を含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記適応免疫応答が、PDL1発現の増加を含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記適応免疫応答が、リンパ経路の上方制御を含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記適応免疫応答が、腫瘍抗原放出の生成を含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項23】
前記適応免疫応答が、制御性T細胞の下方制御を含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項24】
前記適応免疫応答が、前記組織内の三次リンパ球構造の生成または生成の増加を含む、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、前記パルス電界エネルギーが免疫チェックポイント阻害剤と組み合わされた場合に相乗効果を生み出す、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
前記免疫チェックポイント阻害剤が抗PD1療法を含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記相乗効果が、アブスコパル効果を増加させる、請求項25~26のいずれかに記載のシステム。
【請求項28】
前記相乗効果がPDL-1発現を増加させる、請求項25~27のいずれかに記載のシステム。
【請求項29】
前記組織が、腫瘍を抗PD1療法に応答性にするように、抗PD1療法に対して非応答性または応答性が低下している腫瘍を含む、請求項25~28のいずれかに記載のシステム。
【請求項30】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、3000Vの電圧を有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項31】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、400kHzの基本周波数を有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項32】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、二相性パルスサイクルのパケットを有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項33】
各パケットが、40の二相性パルスサイクルを有する、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
1000マイクロ秒のサイクル間遅延が、パケット内の各二相性パルスサイクルの間に配置される、請求項32~33のいずれかに記載のシステム。
【請求項35】
前記波形が、単回線量中に100パケットを含む、請求項32~34のいずれかに記載のシステム。
【請求項36】
前記線量の各パケット間に3秒のパケット間遅延が配置される、請求項32~35のいずれかに記載のシステム。
【請求項37】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、各パケットが100マイクロ秒のアクティブタイムを有するパケットを有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項38】
各パケットが、40サイクルを有する、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記波形が3000Vの電圧を有する、請求項37~38のいずれかに記載のシステム。
【請求項40】
患者の体内の標的組織を処置するためのシステムであって、
前記標的組織にパルス電界エネルギーを向けるように配置されるよう構成される少なくとも1つのエネルギー送達体を有する器具;および
前記少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、前記標的組織に病変を生み出すように前記パルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた場合に相乗効果を引き起こすように構成されたパラメーターの組み合わせを有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する発生機、を含むシステム。
【請求項41】
前記相乗効果が、アブスコパル効果を増加させる、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記免疫チェックポイント阻害剤が抗PD1を含む、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
前記相乗効果がPDL-1発現を増加させる、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記組織が、腫瘍を抗PD1療法に応答性にするように、抗PD1療法に対して非応答性または応答性が低下している腫瘍を含む、請求項40~43のいずれかに記載のシステム。
【請求項45】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、3000Vの電圧を有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する、請求項40~44のいずれかに記載のシステム。
【請求項46】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、400kHzの基本周波数を有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する、請求項40~45のいずれかに記載のシステム。
【請求項47】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、二相性パルスサイクルのパケットを有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する、請求項40~46のいずれかに記載のシステム。
【請求項48】
各パケットが、40の二相性パルスサイクルを有する、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
1000マイクロ秒のサイクル間遅延が、パケット内の各二相性パルスサイクルの間に配置される、請求項47~48のいずれかに記載のシステム。
【請求項50】
前記波形が、単回線量中に100パケットを含む、請求項47~49のいずれかに記載のシステム。
【請求項51】
前記線量の各パケット間に3秒のパケット間遅延が配置される、請求項47~50のいずれかに記載のシステム。
【請求項52】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、各パケットが100マイクロ秒のアクティブタイムを有するパケットを有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する、請求項47~51のいずれかに記載のシステム。
【請求項53】
療法に対して非応答性または応答性が低下している患者の体内の腫瘍を処置するためのシステムであって、
前記腫瘍にパルス電界エネルギーを向けるように配置されるよう構成される少なくとも1つのエネルギー送達体を有する器具;および
前記少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、前記腫瘍を療法に対して応答性にするように構成されたパラメーターの組み合わせを有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む発生機、を含むシステム。
【請求項54】
前記療法が免疫チェックポイント阻害剤療法を含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記免疫チェックポイント阻害剤療法が抗PD1療法を含む、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
患者の体内の組織を処置するためのシステムであって、
近位端および遠位端を有するシャフトと、前記シャフトの前記遠位端の近傍に配置された少なくとも1つのエネルギー送達体とを含む器具であって、前記シャフトの前記遠位端が、病変を生み出す前記組織にパルス電界エネルギーを送達するように構成され、前記パルス電界エネルギーが、前記病変の少なくとも一部内の細胞外マトリックスを維持する、器具;および
前記少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、前記病変内のキャビテーションゾーンを低減または排除する様式で前記パルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む発生機、を含むシステム。
【請求項57】
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、前記パルス電界エネルギーの波形におけるサイクル間遅延を含み、前記サイクル間遅延が、前記キャビテーションゾーンを低減または排除するように構成される、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記サイクル間遅延が少なくとも10マイクロ秒である、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記サイクル間遅延が10マイクロ秒~1000マイクロ秒である、請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
前記サイクル間遅延が1000マイクロ秒である、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
患者の体内の標的組織を処置するためのシステムであって、
前記標的組織にパルス電界エネルギーを向けるように配置されるよう構成される少なくとも1つのエネルギー送達体を有する器具;および
前記少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、前記標的組織に病変を生み出すように前記パルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、前記標的組織内に三次リンパ球構造の生成または生成の増加を引き起こすように構成されたパラメーターの組み合わせを有する前記パルス電界エネルギーの波形を生成する発生機、を含むシステム。
【請求項62】
前記患者の適応免疫応答の増加を誘発する前記病変内の複数のゾーンを生み出す様式で前記パルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む、請求項61に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
本出願は、2021年9月20日に出願された米国仮特許出願第63/246,239号明細書、2021年12月16日に出願された米国仮特許出願第63/290,529号明細書、2022年3月22日に出願された米国仮特許出願第63/322,319号明細書、および2022年6月13日に出願された米国仮特許出願第63/351,562号明細書に基づく利益を主張し、これらの内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
異常組織は、損傷組織、疾患組織、閉塞組織、癌性組織または望ましくない組織などの様々な異なる形態をとることができる。場合によっては、異常組織は、良性腫瘍または悪性腫瘍などの腫瘍、嚢胞、または疾患組織のエリアである。異常組織の最も厄介なタイプの1つは、癌に関連している。
【0003】
癌は、異常細胞の制御されない成長および拡散を特徴とする疾患の群である。拡散が制御されない場合、死に至る可能性がある。癌の原因は完全には理解されていないが、修正可能な多くの因子(例えば、タバコの使用および過剰な体重)および修正不可能な他の因子(例えば、遺伝性の遺伝子突然変異)を含む、疾患の発生を増加させる多くの因子が知られている。これらの危険因子は、同時にまたは順番に、癌成長を開始および/または促進するように作用し得る。癌は、米国で2番目に一般的な死因であり、心疾患のみがこれを上回っている。
【0004】
肺癌、肝臓癌および膵臓癌は、生存率が最も低い癌の1つである。肺癌は、結腸直腸、乳房、および前立腺を合わせたものを超える、癌死の主な原因である。全病期を合わせた5年生存率の全体的な変化は、時代とともにわずかに改善しているにすぎない:1970年代(約13%)、2010年代(約17.2%)、2019(約21.7%)。肝臓癌の発生率は1980年以来3倍を超えているが、死亡率はこの間に2倍を超えている。肝癌患者の生存率にはある程度の進歩が見られるが、5年生存率は、限局期で診断された患者でさえ低いままである。膵臓癌は、2020年の癌関連死の2番目に多い原因であると予想される。全病期の5年生存率は9%であり、40年にわたって実質的に改善していない。これらの成果は、従来の療法の進化にもかかわらず持続している。
【0005】
多くのタイプの癌は、うまく治癒しないか、または後の時点で再発する。再発は、典型的には、元の処置がすべての癌細胞を首尾よく排除せず、残った癌細胞が増殖したために起こる。いくつかの例では、癌細胞は、検出不能な量で身体の他の部分に広がり、これは微小転移として知られている。これらの微小転移が身体によって克服されない場合、それらは検出可能なレベルまで成長し、さらなる処置を必要とする。そして、最終的には、多くの患者が癌との闘いに負けている。
【0006】
結果として、癌をより首尾よく処置し、それらの再発を低減または防止する改善された療法が、すべてのタイプの異常組織に対する改善された療法と共に必要とされている。これらの目的の少なくともいくつかは、本発明によって満たされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
標的組織、特に心臓組織を処置するための装置、システムおよび方法の実施形態が本明細書に記載される。同様に、本発明は、以下の番号が付けられた条項に関する。
【0008】
1.患者の体内の組織を処置するためのシステムであって、
病変を生み出す組織にパルス電界エネルギーを向けるように配置されるよう構成される少なくとも1つのエネルギー送達体を有する器具;および
少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、患者の適応免疫応答の増加を誘発する病変内の複数のゾーンを生み出す様式でパルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む発生機、を含むシステム。
【0009】
2.複数のゾーンがブルズアイ配置を有する、条項1に記載のシステム。
【0010】
3.複数のゾーンが少なくともパルス電界ゾーンを含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0011】
4.複数のゾーンが免疫応答ゾーンを含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0012】
5.複数のゾーンがサーマルゾーンを含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0013】
6.複数のゾーンが、炎症ゾーンを含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0014】
7.複数のゾーンが、少なくともパルス電界ゾーンおよびサーマルゾーンを含む、条項1に記載のシステム。
【0015】
8.パルス電界ゾーンおよびサーマルゾーンが共に病変内のエリアを覆い、サーマルゾーンがエリアの50%を超えない、条項7に記載のシステム。
【0016】
9.サーマルゾーンがエリアの25%を超えない、条項8に記載のシステム。
【0017】
10.サーマルゾーンがエリアの10~20%である、条項9に記載のシステム。
【0018】
11.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、パルス電界エネルギーの波形におけるサイクル間遅延を含み、サイクル間遅延が、サーマルゾーンのサイズを制御するように構成される、条項7~10のいずれか一項に記載のシステム。
【0019】
12.サイクル間遅延が少なくとも10マイクロ秒である、条項11に記載のシステム。
【0020】
13.サイクル間遅延が10マイクロ秒~1000マイクロ秒である、条項12に記載のシステム。
【0021】
14.サイクル間遅延が、キャビテーションゾーンを最小化または排除するように構成される、条項11~13のいずれか一項に記載のシステム。
【0022】
15.サイクル間遅延が1000マイクロ秒である、条項11~14のいずれか一項に記載のシステム。
【0023】
16.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、パルス電界エネルギーの波形におけるパケット間遅延を含み、パケット間遅延が、サーマルゾーンのサイズを制御するように構成される、条項11に記載のシステム。
【0024】
17.パケット間遅延が3~5秒である、条項16に記載のシステム。
【0025】
18.病変が5~6分以内の単回線量によって生み出される、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0026】
19.適応免疫応答が、CD8+/CD4+T細胞の比の増加を含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0027】
20.適応免疫応答が、PDL1発現の増加を含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0028】
21.適応免疫応答が、リンパ経路の上方制御を含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0029】
22.適応免疫応答が、腫瘍抗原放出の生成を含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0030】
23.適応免疫応答が、制御性T細胞の下方制御を含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0031】
24.適応免疫応答が、組織内の三次リンパ球構造の生成または生成の増加を含む、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0032】
25.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、パルス電界エネルギーが免疫チェックポイント阻害剤と組み合わされた場合に相乗効果を生み出す、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0033】
26.免疫チェックポイント阻害剤が抗PD1療法を含む、条項25に記載のシステム。
【0034】
27.相乗効果が、アブスコパル効果を増加させる、条項25~26のいずれか一項に記載のシステム。
【0035】
28.相乗効果がPDL-1発現を増加させる、条項25~27のいずれか一項に記載のシステム。
【0036】
29.組織が、腫瘍を抗PD1療法に応答性にするように、抗PD1療法に対して非応答性または応答性が低下している腫瘍を含む、条項25~28のいずれか一項に記載のシステム。
【0037】
30.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、3000Vの電圧を有するパルス電界エネルギーの波形を生成する、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0038】
31.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、400kHzの基本周波数を有するパルス電界エネルギーの波形を生成する、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0039】
32.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、二相性パルスサイクルのパケットを有するパルス電界エネルギーの波形を生成する、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0040】
33.各パケットが、40の二相性パルスサイクルを有する、条項32に記載のシステム。
【0041】
34.1000マイクロ秒のサイクル間遅延が、パケット内の各二相性パルスサイクルの間に配置される、条項32~33のいずれか一項に記載のシステム。
【0042】
35.波形が、単回線量中に100パケットを含む、条項32~34のいずれか一項に記載のシステム。
【0043】
36.線量の各パケット間に3秒のパケット間遅延が配置される、条項32~35のいずれか一項に記載のシステム。
【0044】
37.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、各パケットが100マイクロ秒のアクティブタイムを有するパケットを有するパルス電界エネルギーの波形を生成する、上記条項のいずれかに記載のシステム。
【0045】
38.各パケットが、40サイクルを有する、条項37に記載のシステム。
【0046】
39.波形が3000Vの電圧を有する、条項37~38のいずれか一項に記載のシステム。
【0047】
40.患者の体内の標的組織を処置するためのシステムであって、
標的組織にパルス電界エネルギーを向けるように配置されるよう構成される少なくとも1つのエネルギー送達体を有する器具;および
少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、標的組織に病変を生み出すようにパルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた場合に相乗効果を引き起こすように構成されたパラメーターの組み合わせを有するパルス電界エネルギーの波形を生成する発生機、を含むシステム。
【0048】
41.相乗効果が、アブスコパル効果を増加させる、条項40に記載のシステム。
【0049】
42.免疫チェックポイント阻害剤が抗PD1を含む、条項40に記載のシステム。
【0050】
43.相乗効果がPDL-1発現を増加させる、条項42に記載のシステム。
【0051】
44.組織が、腫瘍を抗PD1療法に応答性にするように、抗PD1療法に対して非応答性または応答性が低下している腫瘍を含む、条項40~43のいずれか一項に記載のシステム。
【0052】
45.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、3000Vの電圧を有するパルス電界エネルギーの波形を生成する、条項40~44のいずれか一項に記載のシステム。
【0053】
46.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、400kHzの基本周波数を有するパルス電界エネルギーの波形を生成する、条項40~45のいずれか一項に記載のシステム。
【0054】
47.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、二相性パルスサイクルのパケットを有するパルス電界エネルギーの波形を生成する、条項40~46のいずれか一項に記載のシステム。
【0055】
48.各パケットが、40の二相性パルスサイクルを有する、条項47に記載のシステム。
【0056】
49.1000マイクロ秒のサイクル間遅延が、パケット内の各二相性パルスサイクルの間に配置される、条項47~48のいずれか一項に記載のシステム。
【0057】
50.波形が、単回線量中に100パケットを含む、条項47~49のいずれか一項に記載のシステム。
【0058】
51.線量の各パケット間に3秒のパケット間遅延が配置される、条項47~50のいずれか一項に記載のシステム。
【0059】
52.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、各パケットが100マイクロ秒のアクティブタイムを有するパケットを有するパルス電界エネルギーの波形を生成する、条項47~51のいずれか一項に記載のシステム。
【0060】
53.療法に対して非応答性または応答性が低下している患者の体内の腫瘍を処置するためのシステムであって、
腫瘍にパルス電界エネルギーを向けるように配置されるよう構成される少なくとも1つのエネルギー送達体を有する器具;および
少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、腫瘍を療法に対して応答性にするように構成されたパラメーターの組み合わせを有するパルス電界エネルギーの波形を生成する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む発生機、を含むシステム。
【0061】
54.療法が免疫チェックポイント阻害剤療法を含む、条項53に記載のシステム。
【0062】
55.免疫チェックポイント阻害剤療法が抗PD1療法を含む、条項54に記載のシステム。
【0063】
56.患者の体内の組織を処置するためのシステムであって、
近位端および遠位端を有するシャフトと、シャフトの遠位端の近傍に配置された少なくとも1つのエネルギー送達体とを含む器具であって、シャフトの遠位端が、病変を生み出す組織にパルス電界エネルギーを送達するように構成され、パルス電界エネルギーが、病変の少なくとも一部内の細胞外マトリックスを維持する、器具;および
少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、病変内のキャビテーションゾーンを低減または排除する様式でパルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む、発生機、を含むシステム。
【0064】
57.少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、パルス電界エネルギーの波形におけるサイクル間遅延を含み、サイクル間遅延が、キャビテーションゾーンを低減または排除するように構成される、条項56に記載のシステム。
【0065】
58.サイクル間遅延が少なくとも10マイクロ秒である、条項57に記載のシステム。
【0066】
59.サイクル間遅延が10マイクロ秒~1000マイクロ秒である、条項58に記載のシステム。
【0067】
60.サイクル間遅延が1000マイクロ秒である、条項59に記載のシステム。
【0068】
61.患者の体内の組織を処置するためのシステムであって、
近位端および遠位端を有するシャフトと、シャフトの遠位端の近傍に配置された少なくとも1つのエネルギー送達体とを含む器具であって、シャフトの遠位端が、病変を生み出す組織にパルス電界エネルギーを送達するように構成され、パルス電界エネルギーが、病変の少なくとも一部内の細胞外マトリックスを維持する、器具;および
少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、病変内に少なくともサーマルゾーンおよびパルス電界ゾーンを生み出す様式でパルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む、発生機、を含むシステム。
【0069】
62.患者の体内の標的組織を処置するためのシステムであって、
標的組織にパルス電界エネルギーを向けるように配置されるよう構成される少なくとも1つのエネルギー送達体を有する器具;および
少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、標的組織に病変を生み出すようにパルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムが、標的組織内に三次リンパ球構造の生成または生成の増加を引き起こすように構成されたパラメーターの組み合わせを有するパルス電界エネルギーの波形を生成する発生機、を含むシステム。
【0070】
63.患者の適応免疫応答の増加を誘発する病変内の複数のゾーンを生み出す様式でパルス電界エネルギーを提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む、条項62に記載のシステム。
【0071】
64.複数のゾーンが少なくともパルス電界ゾーンを含む、条項63に記載のシステム。
【0072】
65.複数のゾーンが免疫応答ゾーンを含む、条項63~64のいずれかに記載のシステム。
【0073】
66.複数のゾーンがサーマルゾーンを含む、条項63~65のいずれかに記載のシステム。
【0074】
67.複数のゾーンがキャビテーションゾーンを欠いている、条項63~66のいずれかに記載のシステム。
【0075】
68.複数のゾーンが、炎症ゾーンを含む、条項63~67のいずれかに記載のシステム。
【0076】
69.患者の体内の望ましくない組織細胞の塊を処置するためのシステムであって、
近位端および遠位端を有するシャフトと、シャフトの遠位端の近傍に配置された少なくとも1つのエネルギー送達体とを含む器具であって、シャフトの遠位端が、望ましくない組織細胞の塊に非熱エネルギーを送達するように構成される、器具;および
少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に連通している発生機であって、望ましくない組織の塊の少なくとも一部を破壊するように、望ましくない組織の塊に送達可能な非熱エネルギーの電気信号を提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む発生機、を含むシステム。
【0077】
これらおよび他の実施形態は、添付の図面に関連する以下の説明においてさらに詳細に説明される。
参照による組み込み
【0078】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
図面の簡単な説明
【0079】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1A~1Bは、特殊なPEFエネルギーの送達に使用するための例示的な治療システムの概略図を提供する。
【0081】
図2図2A~2Cは、処置方法の一例を示す。
【0082】
図3図3A~3Bは、エネルギー波形内のサイクル間遅延およびパケット間遅延の追加が局所組織特性に及ぼす影響に焦点を当てた研究から得られた組織病変を示す。
【0083】
図4図4は、エネルギー送達アルゴリズムによって規定される信号の波形の一実施形態を示す。
【0084】
図5図5は、パラメーター変更の様々な例示的効果を示す表である。
【0085】
図6図6A~6Dは、サイクル間遅延または異なるサイクル間遅延を有さない波形によって生成された病変を有する組織試料を示す。
【0086】
図7図7A~7Bは、ブタ肺組織における前臨床試験からのインビボ組織試料を示す。
【0087】
図8図8は、パケット間遅延を統合することがどのようにPEFエネルギー送達の熱効果を緩和するのに役立ち得るかを示す。
【0088】
図9図9は、ブタ肝臓組織における前臨床試験から捕捉されたインビボデータを示す。
【0089】
図10図10A~10Bは、ブタ肝臓組織における前臨床試験から捕捉された追加のインビボデータを示す。
【0090】
図11図11A~11Bは、ブタ肝臓組織における前臨床試験から捕捉されたインビボ試料を示す。
【0091】
図12図12A~12Bは、フローサイトメトリーの結果を示す。
【0092】
図13図13A~13Bは、PEF送達前の3.4cmの病変(図13A)および最長直径2.8cmの手術前の同じ病変(図13B)を有する胸部のCT画像を提供する。
【0093】
図13C~13Dは、PEF送達の20日後の切除腫瘍の肉眼的切片(図13C)および対応するヘマトキシリン&エオシン(H&E)(図13D)を提供する。
【0094】
図14図14は、評価スケジュールを示す。
【0095】
図15図15は、実施されたH&Eおよび免疫組織化学(IHC)の表を提供する。
【0096】
図16図16は、Luminex Multiplex 71プレックスパネルを示す。
【0097】
図17図17は、ベースライン特性および処置の詳細を示す。
【0098】
図18図18は、三次リンパ球構造を有する様々な組織試料を示す。
【0099】
図19A図19~19Bは、予備的血清サイトカイン分析の結果を示す。
図19B図19~19Bは、予備的血清サイトカイン分析の結果を示す。
【0100】
図20図20は、PEFエネルギーで処置された腫瘍を示し、エネルギーは、免疫系にとって有意義な方法で細胞を死滅させる。
【0101】
図21図21は、腫瘍細胞によるPD-L1の上方制御を促進する様式で、腫瘍を含むものなどの標的処置エリアに送達されるPEFエネルギーを示す。
【0102】
図22図22は、様々な処置プロトコルを比較するEMT6腫瘍モデル研究における生存成果を示すKaplan-Myerプロットを提供する。
【0103】
図23図23は、EMT6腫瘍モデル研究のための対照群の成果データを提供する。
【0104】
図24図24は、EMT6腫瘍モデル再チャレンジ研究における3つの群(PEF+αPD-1、PEFエネルギー単独およびαPD-1単独)の結果を示す。
【0105】
図25図25A~25Dは、4T-1腫瘍モデル研究のためのサイトカイン分析の結果の例を示す。
【0106】
図26図26は、送達システムの一実施形態を示す。
【0107】
図27図27Aは、針を介した標的組織への薬剤の直接注射を示す。
【0108】
図27Bは、図27Aの針の適所に挿入されたエネルギー送達デバイスからのエネルギー送達を示す。
【0109】
図28図28Aは、エネルギー送達体を介した標的組織への薬剤の直接注射を示す。
【0110】
図28Bは、図28Aのエネルギー送達体からのエネルギーの送達を示す。
【0111】
図29図29は、エネルギーが局所的に送達される間に局部的に送達される薬剤を示し、必要に応じて薬剤も局所的に送達される。
【0112】
図30図30は、その遠位端の近傍にエネルギー送達体を有するシャフトを備えるエネルギー送達デバイスを示し、エネルギー送達体は複数のタインを備える。
【0113】
図31図31は、処置の18日後の対側の全腫瘍溶解物からのサイトカイン発現を示すヒートマップを提供する。
【0114】
図32図32A~32Dは、続発性(未処置)腫瘍におけるサイトカインの存在を指す。
【0115】
図33図33Aは、処置の18日後の対側の全腫瘍溶解物からのサイトカイン発現を示すヒートマップを提供する。
【0116】
図33Bは、肺組織からのサイトカイン発現が、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)ソフトウェアによって決定されるように、癌に関連する経路にどのように影響するかの分析を示す。
【0117】
図34A図34A~34Bは、処置の18日後の全肺組織溶解物からのKi-67のELISA定量を提供する。図34Cは、処置の18日後の全肺組織溶解物からのCD8のELISA定量を提供する。
【0118】
図34B-C】図34A~34Bは、処置の18日後の全肺組織溶解物からのKi-67のELISA定量を提供する。図34Cは、処置の18日後の全肺組織溶解物からのCD8のELISA定量を提供する。
【0119】
図35図35は、EMT-6マウス腫瘍モデルのPEFの14日後の原発性腫瘍成長曲線を示す。
【0120】
図36図36は、EMT-6マウス腫瘍モデルのPEFの14日後の続発性腫瘍成長曲線を示す。
【0121】
図37図37は、24日間にわたる生存プロットを示す。
【0122】
図38図38A~38Bは、原発性腫瘍成長曲線(図38A)および続発性腫瘍成長曲線(図38B)を示す。
【0123】
図39図39Aは、原発性腫瘍接種時に開始された高頻度抗PD-1投薬スキームを示す。
【0124】
図39Bは、CPBがPEF処置時に開始された低頻度後期抗PD-1投薬スキームを示す。
【0125】
図40図40は、処置60日後の生存を示すKaplan-Meier曲線である。
【0126】
図41図41A~41Bは、以前にEMT6腫瘍細胞注射でチャレンジされていない天然対照マウス、および以前に完全奏効を達成したPEFとCPBの組み合わせからの動物におけるEMT6腫瘍成長を示す。
【0127】
図42図42は、第5の乳房脂肪パッド(左右両側、両側性腫瘍モデル)に200,000個の細胞(4T-1)を同所性チャレンジしたBalb/cマウスの投薬スケジュールである。
【0128】
図43図43は、原発性または直接処置された4T-1腫瘍の成長プロットである。
【0129】
図44図44は、PEFの18日後または接種の13日後の対側または未処置の4T-1腫瘍体積の生物学的群間の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0130】
本発明の詳細な説明
ここで、開示されたデバイス、システム、および方法の特定の実施形態を、図面を参照して説明する。この詳細な説明のいずれも、任意の特定の構成要素、特徴、または工程が本発明に必須であることを暗示することを意図していない。
I.概要
【0131】
優れた成果を得るために、特殊なパルス電界(PEF)エネルギーを特定の線量で標的組織エリアに送達することによって、損傷組織、疾患組織、異常組織、閉塞組織、癌性組織または望ましくない組織(例えば、腫瘍、良性腫瘍、悪性腫瘍、嚢胞、または疾患組織のゾーンなど)を処置するためのデバイス、システムおよび方法が提供される。PEFエネルギーおよび送達は、望ましくない組織の破壊ならびに改善された炎症応答および免疫応答の生成を含む、標的組織エリアの高度な処置を提供するように最適化されている。これらの様々なタイプの処置は、電極形状、送達されるPEFエネルギーの線量、エネルギーが送達される時間、およびPEFエネルギー自体の波形を含む様々な要因によって制御される。PEFエネルギーは、特殊なエネルギーの一適用であると考えられる線量の形態で送達される。各線量は、標的組織エリアに病変を生み出す。いくつかの実施形態では、所望の成果は、単回線量の送達によって達成される。この達成は、処置時間を低減させ、エネルギー送達デバイスの再配置または同じ組織エリアの再処置に関連するものなどの追加の線量を提供することによって生じ得る任意の合併症を低減する。エネルギーの波形を定義する特定のパラメーター値により、波形は、1回の線量で所望の効果を送達するように構成される。所望であれば、追加の線量を標的組織に送達してもよく、またはエネルギーを、元の標的組織を含んでも含まなくてもよい追加の標的組織に送達してもよいことが理解されよう。
【0132】
従来のPEFエネルギー送達システムは、単に組織の破壊に焦点を当ててきた。PEFエネルギーで癌を処置する場合、腫瘍の完全な破壊が望ましい。その結果、腫瘍のサイズをカバーする病変を生成することが望まれており、病変は腫瘍の細胞を破壊する。この技術は、比較的洗練されていないままであり、したがって、その約束を真に果たすには至っていない。具体的には、エネルギー自体は「非熱的」として概念化されているが、いくつかの研究は、様々な異なる要因の結果として熱的続発症に悩まされている。これらの研究は、より高い送達された電気エネルギーがより大きな処置ゾーンに関連し得る一方で、ジュール加熱効果に起因して、キャビテーションの増加、淡組織細胞内変化、および白色から黄褐色の組織細胞外凝固も引き起こすことを示している。従来のPEFはまた、部分放電(すなわち、アーク放電)によってキャビテーションを引き起こす可能性もある。アーク放電は、いくつかの要因によって発生する可能性があり、そのうちの1つはより高い送達電気エネルギーである。これらの効果は、熱損傷の結果としての合併症の可能性を高めながら、免疫系に対する任意の潜在的な利益を制限する。したがって、処置に関連し得る潜在的な熱および空洞効果を管理しながら電界効果を最大化するために従来のPEFエネルギーをどのように展開することができるかに関する形式化された理解が不足している。
【0133】
対照的に、本明細書に記載のデバイス、システムおよび方法は、特定の線量の特殊なPEFエネルギーを利用して、様々なゾーンを有する病変を生成し、ゾーンの操作は、特に癌および他の疾患を処置する場合に、患者のより包括的で、したがって成功した処置をもたらす利益を提供する。典型的には、ゾーンは、キャビテーションゾーンを排除または低減し、サーマルゾーンを排除または低減し、潜在的な炎症ゾーンおよび免疫応答ゾーンと共にPEFゾーンを最大化するように操作される。ゾーンのサイズまたは量は、それらの組み合わせが、Treg、CD4、CD8および他の適応免疫細胞型の動員増加のカスケードを促進することなどによって、患者の適応免疫応答の増加を誘発するように特に生成される。これらの病変分類(すなわち、ゾーン)は、肉眼的に測定することができるが、組織特性(すなわち、組織密度、インピーダンス変化など)に基づいて、およびおそらく最も重要なことには、CTなどの撮像モダリティを介してリアルタイムで監視することもできる。
II.送達システムの例
【0134】
特殊なPEFエネルギーは、特に経皮的アプローチがアクセスできないと以前は考えられていた場所で、身体全体の標的組織への優れたアクセスのために有利に設計されたシステムおよびデバイスを使用して送達される。そのようなアクセスは、典型的には低侵襲性であり、管腔内アプローチに依存するが、必要に応じて、経皮的、腹腔鏡的または開放外科的アプローチなどの他のアプローチがいくつかの状況で使用され得ることが理解され得る。図1は、特殊なPEFエネルギーの送達に使用するための例示的な治療システム100の概略図を提供する。この実施形態では、システム100は、遠位端103および近位端107を有するシャフト106を含む細長い器具102を含む。器具102は、シャフト106の遠位端103の近傍にエネルギー送達体108を含む。エネルギー送達体108は、様々な形態をとり得ることが理解されよう。エネルギー送達体108は、外部から見えるように、シャフト106の外部に取り付けられてもよく、またはそれと一体であってもよい。または、エネルギー送達体108は、シャフト106内に内部に収容され、シャフト106から前進するかまたはシャフト106自体を後退させることによって露出されてもよい。同様に、複数のエネルギー送達体108が存在してもよく、それらは外部、内部、またはその両方であってもよい。いくつかの実施形態では、シャフト106は、押出ポリマーなどのポリマーからなる。いくつかの実施形態では、シャフト106は、可撓性および/または剛性を制御するために異なるデュロメータを有する材料の複数の層から構成されることが理解されよう。いくつかの実施形態では、シャフト106は、個々のワイヤまたはワイヤ編組などの様々な要素で補強される。いずれの場合も、そのようなワイヤは平角線または丸線であってもよい。ワイヤ編組は編組パターンを有し、いくつかの実施形態では、編組パターンは所望の可撓性および/または剛性に合わせて調整される。他の実施形態では、シャフト106を補強するワイヤ編組は、シャフトの長さに沿った可撓性および/または剛性の追加の制御を提供するために、異なるデュロメータを有する材料の複数の層と有利に組み合わせることができる。
【0135】
いずれの場合も、各エネルギー送達体108は、PEFエネルギーを送達するための少なくとも1つの電極を含む。典型的には、エネルギー送達体108は、単一の送達電極を備え、器具102の遠位端103の近傍に配置されたエネルギー送達体108と患者の皮膚上に配置された戻り電極140との間にエネルギーを供給することによって達成される単極配置で動作する。しかしながら、双極エネルギー送達および他の構成が代替的に使用されてもよいことが理解されよう。双極エネルギー送達を使用する場合、器具102は、双極様式で機能するように構成された複数のエネルギー送達体108を含んでもよく、または双極様式で機能するように構成された複数の電極を有する単一のエネルギー送達体108を含んでもよい。器具102は、典型的には、近位端107の近傍に配置されたハンドル110を含む。ハンドル110は、器具102を操作するために使用され、典型的には、エネルギー送達体108を操作するためのアクチュエータ732を含む。いくつかの実施形態では、エネルギー送達体108は、(アクセス中の)閉鎖位置または後退位置から、アクチュエータ732によって制御される(エネルギー送達のための)開放位置または露出位置に移行する。したがって、アクチュエータ732は、典型的には、ノブ、ボタン、レバー、スライド、または他の機構の形態を有する。いくつかの実施形態では、ハンドル110は、器具102を介して送達するための液体、薬剤、物質、ツールまたは他のデバイスを導入するためのポートを含むことが理解されよう。液体の例としては、いくつか例を挙げると、懸濁液、混合物、化学物質、流体、化学療法剤、免疫療法剤、ミセル、リポソーム、塞栓剤、ナノ粒子、薬物溶出粒子、遺伝子、プラスミド、およびタンパク質が挙げられる。
【0136】
器具102は、PEFエネルギーを生成するように構成された発生機104と電気的に連通している。この実施形態では、発生機104は、ユーザーインターフェース150、1またはそれを超えるエネルギー送達アルゴリズム152、プロセッサ154、データ記憶/検索ユニット156(メモリおよび/またはデータベースなど)、ならびに送達されるエネルギーを生成および記憶するエネルギー貯蔵サブシステム158とを含む。いくつかの実施形態では、発生機104のユーザーインターフェース150を使用して、所望の処置アルゴリズム152を選択する。他の実施形態では、アルゴリズム152は、1またはそれを超えるセンサーによって取得された情報に基づいて、発生機104によって自動的に選択される。様々なエネルギー送達アルゴリズムを使用してもよい。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるキャパシターがエネルギー貯蔵/送達のために使用されるが、任意の他の適切なエネルギー貯蔵要素が使用されてもよい。加えて、1またはそれを超える通信ポートが通常含まれる。
【0137】
器具102の遠位端103は、典型的には、内視鏡などの送達デバイスを通って前進可能である。内視鏡は、典型的には、遠位先端部を有する細長い挿入管に取り付けられた制御本体を備える。内視鏡は、器具102の遠位端103が通過するポートによってアクセス可能な内部管腔を有する。器具102のシャフト106は、内部管腔を通って前進可能であり、内視鏡の遠位先端部から出る。撮像は、光源およびエネルギー源に接続する内視鏡コネクタを有する光ガイドチューブを使用して内視鏡を通して達成される。内視鏡の遠位先端部は、ビデオ、超音波、レーザー走査などを含むがこれらに限定されない視覚化技術を装備し得る。これらの視覚化技術は、それらの設計と一致する信号を収集し、信号を有線または無線でシャフトの長さを介してビデオ処理ユニットに送信する。そして、ビデオ処理ユニットは、ビデオ信号を処理して画面上に出力を表示する。内視鏡は、典型的には、胃鏡(胃、食道、および小腸(十二指腸)を含む上部GI内視鏡検査)、結腸鏡(大腸)、気管支鏡(肺)、喉頭鏡(喉頭)、膀胱鏡(尿路)、十二指腸鏡(小腸)、腸鏡(消化器系)、尿管鏡(尿管)、子宮鏡(子宮頸部)など、内視鏡が使用されている解剖学的位置に特有であることが理解されよう。他の実施形態では、器具102は、カテーテル、シース、イントロデューサ、針または他の送達システムを介して送達可能であることが理解されよう。
【0138】
管腔内アクセスは、体内の様々な管腔内からの標的組織の処置を可能にする。管腔は、体内の管状または中空構造の内側の空間であり、いくつか例を挙げると、通路、管路、ダクトおよび空洞を含む。管腔構造の例には、いくつか例を挙げると、血管、食道、胃、小腸および大腸、結腸、膀胱、尿道、尿路管、子宮、膣、卵管、尿管、腎臓、腎尿細管、脊柱管、脊髄、および他の体全体の構造、ならびに肺、心臓および腎臓などの器官内の構造およびそれらを含む構造が含まれる。いくつかの実施形態では、標的組織は、近傍の管腔構造を介してアクセスされる。場合によっては、処置器具102は、管腔システムの様々な管腔構造または分岐部を通って前進し、標的組織位置に到達する。例えば、血管を介して標的組織部位にアクセスする場合、処置器具102は、遠隔で挿入され、脈管構造の様々な分岐部を通って前進して標的部位に到達し得る。同様に、管腔構造が鼻、口、尿道または直腸などの天然の開口部に由来する場合、自然の開口部を通って進入することができ、次いで、処置器具102は管腔システムの分岐部を通って前進して標的組織位置に到達する。あるいは、管腔構造は、切開または他の方法を介して標的組織の近傍に入ることができる。これは、大きなシステムの一部ではない管腔構造または他の方法ではアクセスすることが困難な管腔構造にアクセスする場合に当てはまり得る。
【0139】
標的組織エリアが管腔内に接近すると、エネルギーを様々な方法で標的組織に送達することができる。1つの配置では、エネルギー送達体108は、体腔内に配置され、エネルギーは、管腔壁の少なくとも一部を通って、および/または管腔壁を少なくとも部分的に取り囲んで、管腔壁内の組織を標的化するために、または管腔壁を通って、管腔壁の外側および近傍の組織を標的化するために、体腔内に入った標的組織に送達される。別の配置では、エネルギー送達体108は、管腔壁を通って前進し、管腔壁の外側の標的組織内またはその近傍に挿入される。そのような配置は、少なくとも2つのエネルギー送達体108を含み、一方は体腔内に配置され、一方は体腔の壁を通って延在するように組み合わせられてもよいことが理解されよう。いくつかの実施形態では、各エネルギー送達体108は、単極様式で機能する(例えば、ある距離に配置された戻り電極を利用する)。他の実施形態では、エネルギー送達体108の少なくともいくつかは、双極様式で機能する。管腔自体が処置全体を通して保存されるため、これらの送達オプションが可能であり、管腔自体の中、上または近傍の組織の処置を可能にする。そのような療法の送達は、管腔壁に浸潤しているか、または体腔の周りに少なくとも部分的に巻き付いており、近すぎて外科的に除去することができないか、または従来の病巣療法(focal therapy)で処置することができない腫瘍または疾患組織などの、以前はアクセスできなかった組織へのアクセスを可能にする。多くの従来の病巣療法、例えば熱エネルギーによる処置は、熱タンパク質凝固などにより管腔壁の構造を損傷または破壊する。特に、高周波アブレーションによって引き起こされる腸損傷は、最も懸念される合併症の1つであり、敗血症および膿瘍形成による死亡に関連している。その結果、ほとんどの医師は、腸に隣接する腫瘍における高周波アブレーションを延期するであろう。他の従来の病巣療法は、特定の体腔の近傍では効果がない。例えば、凍結療法は、冷却効果を低減させる、脈管構造を通る血液などの体腔を通る流れによって損なわれる組織の十分な冷却に依存する。このような管腔内アクセスはまた、多数の針プローブを皮膚を通して組織および器官の深部に配置することを含むエネルギーの経皮送達などの他のタイプの処置よりも侵襲性が低い。体内の天然の開口部が利用されるため、感染の可能性のあるポイントの低減と共に創傷治癒が少なくなる。同様に、体内の深部の位置は、他の器官の背後または大血管の近傍など、他の方法では外部からのアクセスが困難な位置と共にアクセスすることができる。様々な解剖学的位置が、本明細書に記載のシステムおよび方法で処置され得ることが理解されよう。例としては、管腔構造自体、管腔構造の近傍に位置する体全体の軟組織、および管腔構造からアクセス可能な固形器官(肝臓、膵臓、胆嚢、腎臓、前立腺、卵巣、リンパ節およびリンパ排出管、下層の筋肉組織、骨組織、脳、眼、甲状腺などを含むがこれらに限定されない)が挙げられる。様々な組織位置に経皮的にアクセスできることも理解されよう。
【0140】
内視鏡アプローチはまた、単極エネルギー送達にも役立つ。上述したように、単極送達は、電流回路を完成させるために、エネルギー送達体108(器具102の遠位端付近)から標的組織へ、および患者を通って患者の皮膚に対して配置されたリターンパッド140への電流の通過を含む。したがって、いくつかの実施形態では、器具102は、ただ1つのエネルギー送達体108または電極を含む。これにより、器具102は、より小さい体腔内に配置可能であるように薄型にすることができる。これはまた、エネルギー送達体108を取り囲む組織の深い貫通を可能にする。同様に、そのようなデバイスで管腔壁を貫通する場合、ただ1つのエネルギー送達体108の使用により、処置ごとにただ1つの貫通が必要とされる。様々なデバイス設計または処置プロトコルに起因して追加の貫通が起こり得るが、いくつかの実施形態では、単極送達設計は手順の侵襲性を低減し、デバイスおよび処置設計を単純化し、標的組織に優れた処置ゾーンを提供することが理解されよう。
【0141】
本明細書に記載のデバイス、システムおよび方法は、単独で、または他の処置と組み合わせて使用してもよい。そのような併用処置は、特に癌処置に適用可能であり得る。例えば、本明細書に記載のPEF処置は、いくつか例を挙げると、様々な非外科的療法、放射線療法、化学療法、標的療法/免疫療法、病巣療法、遺伝子療法、プラスミド療法などのネオアジュバント療法およびアジュバント療法と組み合わせて使用してもよい。病巣療法の例には、マイクロ波アブレーション、高周波アブレーション、凍結アブレーション、高強度集束超音波(HIFU)、および他のパルス電界アブレーション療法が含まれる。そのような組み合わせは、応答性の改善、および場合によっては療法単独のいずれよりも大きい相乗的応答のために組織を調整し得る。さらに、本明細書に記載のPEF処置は、療法の性質のためにアブスコパル効果をもたらし得る。
【0142】
図1A~1Bは、発生機104と接続可能なエネルギー送達カテーテル102を含む治療システム100を示す。図示のように、カテーテル102は、遠位端103、近位端107、および少なくとも部分的にそこを貫通して延在する少なくとも1つの管腔105を有するシャフト106を含む。同様に、カテーテル102はまた、少なくとも1つのエネルギー送達体108も含む。この実施形態では、エネルギー送達体108は、シャフト106の管腔105内に配置されたプローブ700の形態を有する。プローブ700は、管腔105を通って前進可能であり、シャフト106の遠位端103から伸長可能なプローブ先端部702を有する(詳細を示すために図1Aにおいて拡大されている)。この実施形態では、先端部702は、針に似たように、組織を貫通するように構成された尖った形状を有する。したがって、この実施形態では、プローブ先端部702は、体腔の外部の標的組織に挿入され得るように、管腔壁Wおよび周囲組織を貫通するために利用される。したがって、プローブ700は、管腔内に送達されるのに十分な可撓性を有するが、管腔壁Wおよび標的組織を貫通するのに十分なカラム強度を有する。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、所望の配置を確実にするためにプローブ先端部702が前進した距離をユーザーに示すマーキングを有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、プローブは、シャフト106の遠位端103からおよそ0.5cm未満、0.5cm、1cm、2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8cm、または8cm超延在する。いくつかの実施形態では、プローブは、シャフト106の遠位端から1~3cmまたは2~3cm延在する。いくつかの実施形態では、プローブは、18ゲージ、19ゲージ、20ゲージ、21ゲージ、22ゲージ、23ゲージ、24ゲージ、または25ゲージである。いくつかの実施形態では、プローブ700は、電極として機能するように導電性材料からなる。したがって、電極は、露出したプローブのサイズを有する。材料の例には、ステンレス鋼、ニチノール、コバルト-クロム合金、銅、および金が含まれる。いくつかの実施形態では、露出したプローブ導電性材料は、異なる材料でコーティングされ、その例は白金-イリジウム、金、白金ブラック、パラジウム、または他の材料を含む。導電性材料または導電性材料コーティングは、他の目的の中でも、組織の生物学的相互作用を低減し、PEF処理からの電気化学的効果の生成を低減し、またはPEFエネルギーを組織により効率的に分配するように設計され得る。材料は、滑らかであり、電解研磨され、様々なグリットでサンドブラストされ、または表面の粗さを変えるために他の機械的または化学的調製物で処理されてもよく、これは、他の目的の中でも、組織の生物学的相互作用を低減させ、電極のより容易な展開および後退を容易にし、PEF処理からの電気化学的効果の生成を低減させ、またはPEFエネルギーを組織により効率的に分配するために行われ得る。したがって、これらの実施形態では、PEFエネルギーは、プローブ700を通ってプローブ先端部702に伝達可能である。その結果、シャフト106は、絶縁材料で構成されるか、または絶縁シースによって覆われる。絶縁材料の例には、ポリイミド、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリエーテルブロックアミドが含まれる。絶縁材料は、シャフト106またはシースの長さに沿って一貫していても変化していてもよい。同様に、いずれの場合も、絶縁材料は通常、完全な電気絶縁を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、絶縁材料は、いくらかの漏れ電流が浸透することを可能にする。
【0144】
プローブ700が通電されると、絶縁シャフト106は、周囲の組織を処置エネルギーから保護し、処置エネルギーを周囲の組織に送達することができるプローブ先端部702(およびプローブ700の任意の露出部分)にエネルギーを導く。したがって、先端部702は送達電極として作用し、そのサイズはプローブ700の露出量に基づいて選択することができる。より多くの量のプローブ700を露光することによってより大きな電極を形成することができ、より少ない露光量によってより小さな電極を形成することができる。いくつかの実施形態では、エネルギー送達中の露出した先端部702(その遠位端から絶縁シャフトの遠位縁まで測定される)は、0.1cm、0.2cm、0.3cm、0.4cm、0.5cm、0.6cm,0.7cm、0.8cm、0.9cm、1cm、2cm、3cm、3cm超、最大8cm、0.1cm以下、0.3cm以下、0.5cm以下、1cm以下、0.2~0.3cm、0.1~0.5cm、0.1~1cm、およびそれらの間のすべての範囲および部分範囲の長さを有する。電極のサイズを変更することに加えて、先端部702は、非外傷性内視鏡送達を可能にするためにシャフト106内に後退可能であり、その後、標的組織に到達するために所望に応じて前進可能である。この実施形態では、前進および後退は、シャフト106の近位端107に取り付けられたハンドル110上のアクチュエータ732(例えば、ノブ、ボタン、レバー、スライド、または他の機構)によって制御される。シャフト106自体は、シャフト106の遠位端103からプローブを前進させてもさせなくても、標的組織に向かって前進させることができることが理解されよう。いくつかの実施形態では、シャフト106の遠位端は、管腔構造の外面から、または患者の身体の外面からなど、組織内に最大20cm前進する。
【0145】
ハンドル110は、特殊なエネルギープラグ510を使用して発生機104に接続される。エネルギープラグ510は、ハンドル110に接続する第1の端部512と、発生機104に接続する第2の端部514とを有する。ハンドル110との第1の端部512の接続は、図1Bに詳細に拡張されている。この実施形態では、第1の端部712は、そこから延在する接続ワイヤ718を含むアダプタ716を有する。接続ワイヤ718は、ハンドル110内のプローブ700の近位端に挿入可能である。これにより、発生機104から接続ワイヤ718を介してプローブ700にエネルギーを伝達することができる。したがって、プローブ700は、その長さ全体にわたって通電することができるが、露出した先端部702のみが、絶縁シャフト106の存在に起因して組織にエネルギーを送達する。
【0146】
この実施形態では、発生機104は、ユーザーインターフェース150、1またはそれを超えるエネルギー送達アルゴリズム152、プロセッサ154、データ記憶/検索ユニット156(メモリおよび/またはデータベースなど)、ならびに送達されるエネルギーを生成および記憶するエネルギー貯蔵サブシステム158とを含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるキャパシターがエネルギー貯蔵/送達のために使用されるが、任意の他の適切なエネルギー貯蔵要素が使用されてもよい。さらに、1またはそれを超える通信ポートが含まれる。
【0147】
いくつかの実施形態では、発生機104は、3つのサブシステム:1)高エネルギー貯蔵システム、2)高電圧中周波スイッチング増幅器、および3)システムコントローラー、ファームウェア、およびユーザーインターフェースを含む。システムコントローラーは、パルスエネルギー出力を患者の心臓律動に同期させることを可能にする心臓同期トリガーモニタを含む。発生機は、複数の直流(DC)電源に電力供給するために交流(AC)電源を取り込む。発生機のコントローラーは、エネルギー送達が開始される前に、DC電源に高エネルギーキャパシター貯蔵バンクを充電させることができる。治療用エネルギー送達の開始時に、発生機のコントローラー、高エネルギー貯蔵バンクおよび二相パルス増幅器は、高電圧の中周波出力を生み出すように同時に動作することができる。
【0148】
エネルギー送達アルゴリズムを実行するために多数の発生機の電気的アーキテクチャを使用できることが理解されよう。特に、いくつかの実施形態では、同じエネルギー貯蔵および高電圧送達システムからパルス電界回路をエネルギー送達電極に別々に向けることができる高度なスイッチングシステムが使用される。さらに、急速に変化するパルスパラメーター(例えば、電圧、周波数など)または複数のエネルギー送達電極を使用する高度なエネルギー送達アルゴリズムに使用される発生機は、モジュール式エネルギー貯蔵および/または高電圧システムを利用して、高度にカスタマイズ可能な波形および地理的パルス送達パラダイムを容易にし得る。本明細書で上述した電気的アーキテクチャは例示目的のみであり、パルス電界を送達するシステムは、追加のスイッチング増幅器構成要素を含んでも含まなくてもよいことをさらに理解されたい。
【0149】
ユーザーインターフェース150は、オペレーターが患者データを入力し、処置アルゴリズムを選択し(例えば、エネルギー送達アルゴリズム152)、エネルギー送達を開始し、記憶/検索ユニット156に記憶された記録を表示し、および/または他の方法で発生機104と通信することを可能にするタッチスクリーンおよび/またはより伝統的なボタンを含むことができる。ユーザーインターフェース150は、患者データを入力するための音声起動機構を含むことができ、または発生機104の制御が二次的な別個のユーザーインターフェースを介するようにスイート内の追加の機器と通信することが可能であり得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、ユーザーインターフェース150は、オペレーター定義の入力を受信するように構成される。オペレーター定義の入力は、エネルギー送達の持続時間、エネルギー送達パルスの1またはそれを超える他のタイミング態様、電力、および/または動作モード、またはそれらの組み合わせを含むことができる。例示的な動作モードは、システム始動およびセルフ試験、オペレーター入力、アルゴリズム選択、処置前システム状態およびフィードバック、エネルギー送達、エネルギー送達後の表示またはフィードバック、処置データレビューおよび/またはダウンロード、ソフトウェア更新、またはそれらの任意の組み合わせまたは部分的組み合わせを含むことができる(ただし、これらに限定されない)。
【0151】
いくつかの実施形態では、システム100はまた、外部心臓モニタ170などの心電図(ECG)を取得するための機構を含む。例示的な心臓モニタは、AccuSync Medical Research Corporationから入手可能である。いくつかの実施形態では、外部心臓モニタ170は、発生機104に動作可能に接続される。心臓モニタ170は、ECG信号を連続的に取得するために使用することができる。外部電極172は、ECGを取得するために患者Pに適用されてもよい。発生機104は、1またはそれを超える心周期を分析し、患者Pにエネルギーを印加することが安全な期間の開始を識別し、したがって、エネルギー送達を心周期と同期させる能力を提供する。いくつかの実施形態では、この期間は、エネルギーパルスがT波で送達される場合に起こり得る不整脈の誘導を回避するために、(ECG QRS複合体の)R波のミリ秒以内である。そのような心臓同期は、典型的には単極エネルギー送達を使用するときに利用されるが、他のエネルギー送達方法の一部として利用され得ることが理解されよう。
【0152】
いくつかの実施形態では、プロセッサ154は、他の活動の中でも、エネルギー送達アルゴリズム間を変更および/または切り替え、エネルギー送達および任意のセンサーデータを監視し、フィードバックループを介して監視されたデータに反応する。いくつかの実施形態では、プロセッサ154は、1またはそれを超える測定されたシステムパラメーター(例えば、電流)、1またはそれを超える測定された組織パラメーター(例えば、インピーダンス)、および/またはそれらの組み合わせに基づいて、フィードバック制御ループを実行するための1またはそれを超えるアルゴリズムを実行するように構成される。
【0153】
データ記憶/検索ユニット156は、送達された処置に関連するデータなどを記憶し、必要に応じて、デバイス(例えば、ラップトップまたはサムドライブ)を通信ポートに接続することによってダウンロードすることができる。いくつかの実施形態では、デバイスは、例えば、データ記憶/検索ユニット156に記憶され、プロセッサ154によって実行可能な命令などの情報のダウンロードを指示するために使用されるローカルソフトウェアを有する。いくつかの実施形態では、ユーザーインターフェース150は、オペレーターが、限定されないが、コンピューターデバイス、タブレット、モバイルデバイス、サーバー、ワークステーション、クラウドコンピューティング装置/システムなどのデバイスおよび/またはシステムにデータをダウンロードすることを選択することを可能にする。有線および/または無線接続を可能にすることができる通信ポートは、上述したようにデータダウンロードを可能にすることができるが、カスタムアルゴリズムのアップロードまたはソフトウェア更新の提供などのデータアップロードも可能にすることができる。
【0154】
データ記憶/検索ユニット156は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリバッファ、ハードドライブ、データベース、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリなどであり得る。データ記憶/検索ユニット156は、システム100に関連するモジュール、プロセス、および/または機能をプロセッサ154に実行させるための命令を記憶することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、データ記憶/検索ユニット156は、様々なコンピューター実装動作を実行するための命令またはコンピューターコードを有する非一時的コンピューター可読媒体(非一時的プロセッサ可読媒体とも呼ばれる)を有するコンピューター記憶製品を含む。コンピューター可読媒体(またはプロセッサ可読媒体)は、一時的な伝播信号自体(例えば、空間またはケーブルなどの伝送媒体上で情報を搬送する伝搬電磁波)を含まないという意味で非一時的である。媒体およびコンピューターコード(コードとも呼ばれ得る)は、特定の単数または複数の目的のために設計および構築されたものであり得る。非一時的コンピューター可読媒体の例には、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、および磁気テープなどの磁気記憶媒体;コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、およびホログラフィックデバイスなどの光記憶媒体;光ディスクなどの光磁気記憶媒体;搬送波信号処理モジュール;ならびに、ASIC、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、読み出し専用メモリ(ROM)、およびランダムアクセスメモリ(RAM)デバイスなどのプログラムコードを格納および実行するように特別に構成されたハードウェアデバイスが含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の他の実施形態は、例えば、本明細書に記載の命令および/またはコンピューターコードを含むことができるコンピュータープログラム製品に関する。
【0156】
コンピューターコードの例には、マイクロコードまたはマイクロ命令、コンパイラによって生成されるような機械命令、ウェブサービスを生成するために使用されるコード、およびインタープリターを使用してコンピューターによって実行される上位レベルの命令を含むファイルが含まれるが、これらに限定されない。例えば、実施形態は、命令型プログラミング言語(例えば、C、Fortranなど)、機能型プログラミング言語(Haskell、Erlangなど)、論理型プログラミング言語(例えば、Prolog)、オブジェクト指向プログラミング言語(例えば、Java(登録商標)、C++など)、または他の適切なプログラミング言語および/または開発ツールを使用して実施することができる。コンピューターコードのさらなる例には、制御信号、暗号化コード、および圧縮コードが含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
いくつかの実施形態では、システム100は、有線ネットワークおよび/または無線ネットワークとして実装された、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、仮想ネットワーク、電気通信ネットワーク、データネットワーク、および/またはインターネットなどの任意のタイプのネットワークであり得るネットワークに通信可能に連結することができる。いくつかの実施形態では、セキュアな通信(例えば、セキュアソケットレイヤ(SSL))および/または暗号化の任意の適切なタイプおよび/または方法を使用して、任意のまたはすべての通信を保護することができる。他の実施形態では、いずれかまたはすべての通信がセキュアでなくてもよい。
【0158】
本明細書で説明するように、様々なエネルギー送達アルゴリズム152は、メモリまたはデータ記憶/検索ユニット156に記憶されるなど、発生機104にプログラム可能であるか、または予めプログラムすることができる。あるいは、エネルギー送達アルゴリズムをデータ記憶/検索ユニットに追加して、プロセッサ154によって実行することができる。プロセッサ154は、例えば、汎用プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/またはデジタル信号プロセッサ(DSP)などであり得る。プロセッサ154は、システム100に関連するアプリケーションプロセスおよび/または他のモジュール、プロセスおよび/または機能、および/またはシステム100に関連するネットワークを実施および/または実行するように構成することができる。本明細書で使用される場合、「モジュール」という用語は、例えば、メモリ、プロセッサ、電気トレース、光コネクタ、ソフトウェア(ハードウェアで実行される)などを含むことができる動作可能に連結された電気部品の任意のアセンブリおよび/またはセットを指す。例えば、プロセッサで実行されるモジュールは、そのモジュールに関連する1またはそれを超える特定の機能を実行することができるハードウェアベースのモジュール(例えば、FPGA、ASIC、DSP)および/またはソフトウェアベースのモジュール(例えば、メモリに記憶され、かつ/またはプロセッサで実行されるコンピューターコードのモジュール)の任意の組み合わせであり得る。
【0159】
これらのアルゴリズム152の各々は、プロセッサ154によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、器具102は、いくつか例を挙げると、温度、インピーダンス、抵抗、静電容量、導電率、pH、光学特性(コヒーレンス、エコー原性、蛍光)、電気または光の誘電率、および/またはコンダクタンスを決定するために使用することができる1またはそれを超えるセンサー160を含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える電極は、1またはそれを超えるセンサーとして機能する。他の実施形態では、1またはそれを超えるセンサーは電極とは別個である。1またはそれを超えるセンサー160は、特に検知されるパラメーターに応じて、様々な位置に配置することができることが理解されよう。例えば、センサーの配置は、エネルギー送達体108に沿って、器具の内部に沿って、シャフト106に沿って、器具120から突出する要素に沿って、などであり得る。複数のセンサー160は、複数の場所で同じパラメーターを検知するため、異なる場所で異なるパラメーターを検知するため、または異なる場所でパラメーターをサンプリングして単一のメトリック値測定値(例えば、平均温度、平均電圧曝露、平均導電率など)をコンパイルするために存在してもよい。これに代え、あるいはこれに加えて、1またはそれを超えるセンサー160を別個のデバイス上に配置してもよい。センサーデータを使用して、療法を計画し、療法を監視し、および/またはプロセッサ154を介して直接フィードバックを提供することができ、その後、エネルギー送達アルゴリズム152を変更することができる。例えば、インピーダンス測定値は、印加される初期線量を決定するために使用することができるだけでなく、さらなる処置が必要であるか否かを決定するために使用することもできる。
【0160】
システム100は、温度、様々な電圧またはAC周波数でのインピーダンス、処置持続時間またはエネルギー送達パルスの他のタイミング態様、処置電力および/またはシステム状態などの入力に応じて、処置に動的に応答し、調整し、および/または終了することができる自動処置送達アルゴリズムを含むことができることが理解されよう。
【0161】
いくつかの実施形態では、別個の撮像スクリーンに接続された内視鏡などの市販のシステムを使用して撮像が達成される。撮像モダリティは、器具102に組み込むことができ、または器具102と一緒にまたはそれと併せて使用することができることが理解されよう。撮像モダリティは、任意の適切な機構を使用して器具102に機械的、動作的、および/または通信可能に連結することができる。
III.管腔内配置およびエネルギー送達
【0162】
前述のように、1つの配置では、エネルギー送達体108は、体腔内に配置され、エネルギーは、管腔内、管腔壁内、管腔壁を少なくとも部分的に取り囲む、または管腔壁の外側のいずれかの組織を標的とするために、管腔壁に、または管腔壁を通って送達される。したがって、標的組織は、体腔内に配置されたエネルギー送達体108から処置することができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、処置デバイスおよびシステムは、近傍の標的組織を処置するために、管腔にアクセスし、管腔壁に向かって治療エネルギーを送達するように構成される。治療エネルギーは、一般に、細胞外マトリックスのうちの組織レベルの構造タンパク質などの重要な解剖学的構造をほとんどまたは全く破壊せずに標的組織の除去を可能にする高電圧パルスを特徴とする。これは、いくつか例を挙げると、狭窄、血栓形成または瘻孔形成などの危険な付随的影響を防止し、また、手順の数日以内に健康な新しい管腔組織の再生を可能にする。このタイプの治療的処置を提供するシステムの例としては、米国仮特許出願第62/355,164号および同第62/489,753号の優先権を主張する「GENERATOR AND A CATHETER WITH AN ELECTRODE AND A METHOD FOR TREATING A LUNG PASSAGEWAY」と題する国際特許出願第PCT/US2017/039527号、米国仮特許出願第62/610,430号の優先権を主張する「METHODS,APPARATUSES,AND SYSTEMS FOR THE TREATMENT OF DISORDERS」と題する国際特許出願第PCT/US2018/067501号、ならびに2017年12月26日に出願された仮特許出願第62/610,430号および2018年7月3日に出願された米国仮特許出願第62/693,622号の優先権を主張する「OPTIMIZATION OF ENERGY DELIVERY FOR VARIOUS APPLICATIONS」と題する国際特許出願第PCT/US2018/067504号を含む、共通して譲渡された特許出願に記載されている肺組織改変システム(例えば、エネルギー送達カテーテルシステム)が挙げられ、これらはすべて、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
前述のように、1またはそれを超えるエネルギー送達アルゴリズム152は、患者への送達のために発生機104内にプログラム可能であるか、または予めプログラムすることができる。1またはそれを超えるエネルギー送達アルゴリズム152は、非熱的(例えば、熱アブレーションの閾値未満;凝固熱損傷を誘導する閾値未満)である管腔壁に送達されるエネルギーを提供する電気信号を指定し、炎症を低減もしくは回避し、および/または管腔構造中の間質タンパク質の変性を防止する。一般に、アルゴリズム152は、所定の深さまで組織に影響を及ぼすように、および/または送達されるエネルギーに対する特定のタイプの細胞応答を標的とするように調整される。深さおよび/または標的化は、1またはそれを超えるエネルギー送達アルゴリズム152によって規定されるエネルギー信号のパラメーター、器具102(特に、1またはそれを超えるエネルギー送達体108)の設計、および/または単極もしくは双極エネルギー送達の選択によって影響を受け得ることが理解されよう。典型的には、いくつか例を挙げると、最大0.01cm、最大0.02cm、0.01~0.02cm、最大0.03cm、0.03~0.05cm、最大0.05cm、最大0.08cm、最大0.09cm、最大0.1cm、最大0.2cm、最大0.5cm、最大0.7cm、最大1.0cm、最大1.5cm、最大2.0cm、最大2.5cm、最大3.0cm、最大3.5cm、最大4.0cm、最大4.5cm、または最大5.0cmの深さである。これらの深さは、円周方向の病巣標的に対してより大きくてもよく、または管腔および実質組織を通る円周方向の深さ全体にわたって存在してもよい。
【0165】
したがって、処置は侵襲性が最小限であり、迅速かつ容易に実行可能であり、電極配置に対する感度が比較的低く(例えば、単極配置に起因する)、したがって、様々な技能レベルの技術者が高レベルの一貫性ならびに成功した成果を達成することを可能にする。いくつかの実施形態では、単極配置は、使用されるエネルギーの波形特性のために筋麻痺薬を必要とせずに可能である。これにより、神経筋麻痺の有無にかかわらず、運動ニューロンおよび骨格筋の脱分極からの筋収縮を許容され得るレベルまで緩和することができる。したがって、管腔を通って離れたパッドに至る単極指向処置送達を実施することが可能になり、より予測可能で望ましい処置ゾーンを生成する。所望のエネルギーのタイプおよび浸透の深さに応じて、麻痺薬を必要に応じて使用してもよいことが理解されよう。
IV.管腔外配置およびエネルギー送達
【0166】
図2A~2Cは、処置方法の一例を示す。図2Aは、管腔構造LS付近の異常または疾患組織D、例えば腫瘍を示す。この例では、疾患組織Dは管腔構造LSの近傍にあるが、管腔壁Wから距離を置いている。この管腔構造LSは、疾患組織Dにアクセスして管腔構造LSの近傍の疾患組織Dを管腔外処置するために使用される。この実施形態では、内視鏡10の細長い挿入管14は、管腔構造LS内に前進し、その遠位先端部16は管腔壁Wに向かって操作され、これを越えて疾患組織Dが存在する。望ましく配置されると、処置カテーテル102は、図2Bに示すように、シャフト106の遠位端103が内視鏡10の先端部16を越えて延在するように、挿入管14内の管腔を通って前進する。この実施形態では、プローブ先端部702は壁Wを貫通するのを助け、シャフト106は、プローブ先端部702が疾患組織D内に望ましく配置されるまで壁Wを横切って前進する。図2Cを参照すると、この実施形態では、次いで、プローブ先端部702をシャフト106から前進させて、所望の送達電極サイズを生み出す。次いで、エネルギーは、プローブ先端部702から半径方向外側に延びる波状の矢印によって図2Cに示されるように、1またはそれを超えるエネルギー送達アルゴリズム152に従ってプローブ700を通って疾患組織Dに送達される。疾患組織内への距離は、いくつか例を挙げると、パラメーター値、処置時間および組織のタイプに基づいて変化し得ることが理解され得る。本明細書に示されているよりも大きいまたは小さい処置深さが達成され得ることも理解されよう。
送達されたエネルギーは、疾患組織Dを適宜処置する。癌の場合、癌性細胞は、破壊され、排除され、死滅され、除去されるなどである。例としては、いくつか例を挙げると、免疫原性細胞死(例えば、ネクロトーシス、パイロトーシスなど)およびプログラム細胞死(アポトーシス)が挙げられる。PEFゾーンでは、そのような細胞死は、コラーゲン、エラスチン、およびマトリックスタンパク質などの非癌性の非細胞要素を維持しながら起こる。これらの非細胞要素は、正常な細胞再生を可能にし促進する組織の構造を維持する。同様に、近傍の管腔構造LSの壁Wに到達する任意のエネルギーは、管腔構造LSの完全性および機械的特性を維持する。いくつかの例では、エネルギーは、蓄積した全身性細胞傷害および細胞恒常性の回復不能な破壊などを介して、疾患組織Dの細胞を直接死滅させることが理解され得る。他の例では、細胞は免疫系の作用または他の生物学的プロセスによって死滅する。いくつかの例では、残存する疾患組織を外科的に除去するか、または他の方法によって除去する。
A.代替プローブ設計
【0167】
プローブ500は、様々な形態および構造を有し得ることが理解されよう。いくつかの実施形態では、プローブ500は中空であり、例えば管状形状を有する。そのような実施形態では、プローブ500は、ハイポチューブまたは金属チューブから形成されてもよい。そのようなチューブは、標的処置部位に対する一貫した信頼性の高い操縦性を確保するために、所望の押し込みおよびトルク能力、キンク性能、圧縮耐性および可撓性のために最適化することができる。同様に、そのようなチューブは、生産性能を最適化するための必要に応じたコーティングと共に、レーザー切断およびスカイブ特徴などのカスタム設計された移行部を含むことができる。いくつかの実施形態では、チューブは、プローブ先端部502を形成するために複数の刃先を有する鋭い点を有する。他の実施形態では、チューブは鈍い非外傷性先端部を有する。いくつかの実施形態では、プローブ500は、ロッド形状を有するなど、中実である。これらのプローブは、ハイポチューブと同様に最適化およびカスタマイズすることもできる。いくつかの実施形態では、中実プローブ500は、プローブ先端部502を形成するための対称または非対称の切断を有する鋭い点を有する。他の実施形態では、中実プローブ502は、鈍い非外傷性先端部を有する。
【0168】
プローブ500は、流体または薬剤を送達するための管腔を含み得ることが理解されよう。そのような管腔は、プローブの内部または外部にあってもよい。同様に、流体または薬剤は、内部の管腔またはシャフト106に沿って配置されたポートなどを介して、シャフト106から直接送達されてもよい。
【0169】
いくつかの実施形態では、プローブ500は、複数のプローブ要素から構成され、各プローブ要素は、上述の個々のプローブ500と同様の特徴および機能を有する。したがって、いくつかの実施形態では、それらは別個のプローブと見なされ得るが、簡単にするために、それらは器具102の同じシャフト106を通過するので、単一のプローブ500を構成するプローブ要素として説明される。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える数を含む任意の数のプローブ要素が存在してもよいことが理解されよう。同様に、プローブ要素は、シャフト106から同じまたは異なる距離だけ延在してもよく、同じまたは異なる曲率を有してもよい。別の実施形態では、プローブ要素はいかなる曲率も有さず、直線的にシャフト106から出る。典型的には、プローブ要素は、シャフト106からのプローブ先端部の前進が、プローブ要素がその予め湾曲した形状をとることを可能にするように予め湾曲している。したがって、いくつかの実施形態では、シャフト106から異なる量でプローブ先端部を前進させることによって、様々な曲率を利用することができる。
【0170】
エネルギーを伝達することができるプローブ先端部502のサイズは、プローブ上に少なくとも部分的に延びる絶縁シース552を使用してさらに調整することができることが理解されよう。前述のように、プローブ先端部502の活性部分のサイズは、シャフト106からのその伸長に基づいて調整することができる。しかしながら、これは、特に複数のプローブ要素が存在する場合、個々のプローブ要素の一部を覆う絶縁シース552を使用してさらに洗練され得る。
【0171】
本明細書に記載のプローブ要素のいずれも、本明細書に記載のプローブのいずれとも同じ構造および特徴を有し得ることが理解されよう。例えば、プローブ要素は、同じ材料で構成され、同じ機能を有し、鋭利なまたは非外傷性の先端部を有してもよい。同様に、プローブ要素のいずれも、独立してまたは同時に展開されてもよく、独立してまたは同時に通電されてもよいことが理解されよう。送達されるエネルギーは、同じエネルギー送達アルゴリズム152または異なるエネルギー送達アルゴリズム152によって提供されてもよく、したがって、同じまたは異なるエネルギーを送達する。プローブ要素のいずれも、プローブ要素の対の間で単極様式または双極様式で機能し得る。同様に、プローブ要素は、単極様式と双極様式との組み合わせで機能することができることが理解されよう。
【0172】
前述のように、これらの管腔外送達実施形態の多くでは、エネルギー送達体108は、シャフト106の管腔105内に配置されたプローブ500の形態を有する。いくつかの実施形態では、プローブ500は、複数のワイヤまたはリボン120を含み、電極として機能するバスケット555を形成する。あるいは、バスケット555は、チューブからレーザー切断することができることが理解されよう。様々な他の設計が使用されてもよいことが理解されよう。典型的には、バスケット555は、折り畳まれた構成で標的エリアに送達され、その後使用のために拡張される。
V.撮像
【0173】
有用であり得る撮像に関連する方法には、(a)疾患標的組織を検出すること、(b)処置されるエリアを同定すること、(c)処置されたエリアを評価してエネルギー送達がどれだけ効果的であったかを決定すること、(d)標的エリアを評価してエリアが見逃されたかもしくは不十分に処置されたかを決定すること、(e)手順前もしくは手順中の撮像を使用して標的処置深度を測定し、その深度を使用してその深度に対する組織効果を達成するための特定のエネルギー送達アルゴリズムを選択すること、(f)手順前もしくは手順中の撮像を使用して標的細胞タイプもしくは細胞界面を同定し、その位置もしくは深度を使用してその標的細胞タイプもしくは細胞界面に対する組織効果を達成するための特定のエネルギー送達アルゴリズムを選択すること、および/または(g)手順前、手順中もしくは手順後の撮像を使用して炎症組織が存在するもしくは存在しない病原体の存在もしくは非存在を同定することが含まれる。
【0174】
いくつかの実施形態では、共焦点レーザー内部顕微鏡法(CLE)、光干渉断層法(OCT)、超音波、静的もしくは動的CT撮像、X線、磁気共鳴撮像(MRI)、および/または他の撮像モダリティを、別個の装置/システムとして使用することができるか、または器具102もしくは別個のデバイスに組み込むことによって処置システム100に(機能的および/または構造的に)組み込む/統合することができる。撮像モダリティ(または複数のモダリティ)は、標的組織の様々なセクションを位置特定および/またはアクセスするために使用することができる。いくつかの実施形態では、処置の標的深度を測定し、標的深度まで処置するのに十分な処置アルゴリズム152を選択するために使用することができる。次いで、少なくとも1つのエネルギー送達体を標的組織部位に展開し、エネルギーを送達して標的組織に影響を及ぼすことができる。撮像モダリティ(または複数のモダリティ)は、処置がどこに送達されたか、送達されなかったか、またはエネルギーが気道壁に適切に影響したかどうかを決定するために、処置前、処置中、処置間、および/または処置後に使用することができる。エリアが見落とされた、またはエリアが適切に影響を受けなかったと決定された場合、適切な処置が達成されるまで、エネルギー送達とそれに続く撮像モダリティ(または複数のモダリティ)を繰り返すことができる。さらに、撮像情報を利用して、特定の細胞型およびまたは所望の療法深度が適用されたかどうかを決定することができる。これにより、多種多様な患者の解剖学的構造を処置するためのエネルギー送達アルゴリズムのカスタマイズを可能にすることができる。
【0175】
いくつかの実施形態では、体腔を介したアクセスは、身体に挿入された1またはそれを超える器具で視覚化される。同様に、いくつかの実施形態では、様々な撮像モダリティ(例えば、CLE、OCT)の1またはそれを超えるものが、直接視覚化と共に、または直接視覚化の代わりに使用される。一例として、気管支鏡は、器具102の直接的な視覚化および送達を可能にするために口を介して送達され得るが、代替の撮像モダリティは、気管支鏡の別の作業チャネルを介して、鼻を介して、または口を介して気管支鏡に隣接して送達され得る。いくつかの実施形態では、撮像モダリティ(例えば、直接視覚化、CLE、および/またはOCT)は、撮像モダリティをシステム発生機104または市販のコンソールのいずれかに接続するための適切な機構を有する器具102に組み込まれる。
VI.コンディショニング
【0176】
システム100によって提供されるPEFアブレーション処置は、他の処置のためのコンディショニングとして使用されてもよいが、標的組織細胞は、代替的に、システム100によって提供されるPEFアブレーション処置の前にコンディショニングされてもよいことが理解され得る。
【0177】
いくつかの実施形態では、処置のために標的化される細胞は、エネルギー信号の送達に応答して細胞の挙動を改変するようにコンディショニングされる。そのようなコンディショニングは、エネルギー信号の送達前、送達中、または送達後に行われ得る。いくつかの実施形態では、エネルギー送達前のコンディショニングは事前コンディショニングとみなされ、エネルギー送達後のコンディショニングは事後コンディショニングとみなされる。そのような区別は、コンディショニング処理が細胞にどのように影響するかではなく、単にタイミングに基づく。他の実施形態では、事前コンディショニングは、細胞がエネルギーをどのように取り込むかなど、エネルギー送達中に細胞に起こることに影響を及ぼすことに関し、事後コンディショニングは、細胞がエネルギーを受けた後にどのように挙動するかなど、エネルギー送達後に細胞に起こることに影響を及ぼすことに関する。一部の例では、コンディショニングはエネルギー送達前に起こり得るが、エネルギー送達後の細胞応答にのみ影響を及ぼすため、そのような区別はタイミングにあまり関連しない可能性がある。したがって、特に明記しない限り、「コンディショニング」は、これらの状況の各々に適用されると考えてもよいことが理解されよう。
【0178】
典型的には、コンディショニングは、コンディショニング溶液を送達することによって達成される。管腔内療法の場合、コンディショニング溶液は管腔構造を介して送達され得る。コンディショニング溶液は、代替的または追加的に、管腔内または他のアプローチのいずれかから、コンディショニング溶液の標的領域への直接流体注射を介して送達されてもよい。いくつかの実施形態では、コンディショニング溶液は、パルスエネルギー送達が分配される方法に影響を及ぼすなどのために、標的細胞の電気的特性を選択的に変化させる。他の実施形態では、コンディショニング溶液は、標的細胞の活性に影響を及ぼす。例えば、肺において、そのようなコンディショニング溶液は、基底細胞の線毛細胞への分化を促進し、および/または杯細胞および粘膜下腺細胞を下方制御し得る。他の実施形態では、コンディショニング溶液は、パルスエネルギー送達後に標的細胞が死滅する可能性を高める。さらに他の実施形態では、コンディショニング溶液は、パルス電界に対する非標的細胞の応答を変化させる。代替の実施形態では、コンディショニングは、組織の非溶液系曝露によって行われる。これには、放射線の療法、放射線療法、陽子線療法などが含まれる。いくつかの実施形態では、コンディショニングは、細胞下部組織の酵素およびエネルギー産生構成要素に影響を及ぼす。
【0179】
コンディショニング溶液は、いくつか例を挙げると、薬物、遺伝物質、生物活性化合物、および抗菌剤などの様々な薬剤で構成され得る。コンディショニング溶液が、パルスエネルギー送達後に標的細胞が死滅する可能性を高める実施形態の場合、コンディショニング溶液は、いくつか例を挙げると、化学療法薬(例えば、シスプラチン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ブレオマイシン、カルボプラチンなど)、カルシウム、抗生物質、または毒素を含み得る。コンディショニング溶液が非標的細胞からパルス電界への応答を変化させる実施形態の場合、コンディショニング溶液は、サイトカイン(例えば、インターロイキンなどの免疫刺激薬)、遺伝子、VEGF(例えば、エリア内へのより多くの血管成長を促進するため)、細胞分化因子(例えば、杯細胞の線毛細胞への変換を促進する分子)、および/または細胞と相互作用する他の小分子、例えばプログラム死(PD-1)もしくはプログラム死リガンド(PD-L1)などの受容体のアゴニストおよびアンタゴニストを含み得る。コンディショニング溶液を標的部位に送達して、PEFエネルギー送達部位で直接相互作用させてもよい。それらはまた、全身的に(例えば、静脈内、腹腔内)または局部的に(例えば、静脈内から標的領域への供給動脈供給、より高い供給気道生成、PEF処置によって直接影響を受ける組織周囲の組織への実質内)送達され得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、コンディショニング溶液は、幹細胞、自家移植細胞、同種移植細胞または他の細胞型などの細胞を含む。これらの実施形態では、細胞を使用して、パルス電界に対する組織応答を変化させ得る。他の実施形態では、細胞を使用して、影響を受けたエリアを健康な細胞または望ましい細胞で再増殖させ得る。例えば、送達されたパルスエネルギー処理によって標的細胞が弱化または死滅すると、コンディショニング溶液からの細胞は、脱細胞化された細胞外マトリックスなどの空孔に移動し得る。いくつかの実施形態では、そのエリアは、新しい細胞を含有するコンディショニング溶液の送達の前に、死んだ細胞を除去するために、例えば、穏やかな洗剤、界面活性剤または他の溶液で洗い流される。他の実施形態では、吸引、デブリディング、または超音波ハイドロディセクションなどの機械的刺激を使用して、新しい細胞を含有するコンディショニング溶液の送達前に死細胞を物理的に除去する。
【0181】
いくつかの実施形態では、提供されるコンディショニングは、標的免疫応答を呼び出し得る。免疫応答は、処置効果の成果を変化させるいくつかの因子をもたらし得る。これは、腫瘍または感染に関連する細菌もしくはウイルスなどのいくつかの標的組織に関連する特異的マーカーを使用して、全身免疫の上方制御の増加をもたらし得る。それはまた、局所的、局部的、または全身的に起こり得る、体内に存在する一般的な異常細胞、細菌、または他の感染性生物を検出するために免疫系機能に広く影響を及ぼす自然免疫の上方制御をもたらし得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、コンディショニング溶液は、標的細胞がどのように応答するかを変化させるために加温または冷却される。一般に、加温溶液は処置効果の増加(例えば、細胞死に対する感受性の増加)を促進するが、冷却溶液は処置効果の程度を低減させるか、または可逆的に設計されたプロトコルへの曝露後の細胞生存を増加させる。いくつかの実施形態では、遺伝子および/または薬物で構成される冷却コンディショニング溶液を使用して、細胞をエネルギー送達処理に耐えるように予備調整し、処理に耐える細胞の数を増加させる。いくつかの実施形態では、加温/冷却コンディショニング溶液の効果は、溶液中の他の薬剤(例えば、加温カルシウム溶液、冷却遺伝子含有溶液)によって引き起こされる一般的な効果と組み合わされる。他の実施形態では、加温/冷却コンディショニング溶液は、温度変化以外の効果をもたらさない。そのような実施形態では、コンディショニング溶液は、典型的には、等張食塩水、リン酸緩衝溶液または他の良性溶液からなる。
【0183】
そのような加熱または冷却は、代わりに、コンディショニング溶液の送達を含まない他の方法によって達成されてもよいことが理解されよう。例えば、標的組織は、組織を加温/冷却されたデバイスと接触させること、パルス電界送達カテーテルを意図的に加温/冷却すること、穏やかな凍結療法を送達すること、または穏やかな高周波もしくはマイクロ波エネルギーを送達することによって加熱または冷却され得る。前述のように、これは、組織に対する致死性または透過性効果の増強を促進することができ、または、細胞が手順を生き延び、療法の結果として標的とした所望の変化を表わすことを可能にする保護的態様を細胞に提供することができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、コンディショニング溶液は、静脈内注射、摂取または他の全身的方法などによって全身的に送達される。他の実施形態では、コンディショニング溶液は、送達デバイスまたは器具102自体などを介して、標的細胞のエリアに局所的に送達される。
VII.エネルギー送達アルゴリズムおよび病変最適化
【0185】
特殊なエネルギーは、1またはそれを超えるエネルギー送達アルゴリズム152によって提供される。いくつかの実施形態では、アルゴリズム152は、一連のエネルギーパケットを含む波形を有する信号を規定し、各エネルギーパケットは一連の高電圧パルスを含む。そのような実施形態では、アルゴリズム152は、いくつか例を挙げると、パケットの数、パケット内のパルスの数、パルスシーケンスの基本周波数、個々のパルスの持続時間、またはパケットを含むパルスのシーケンス(パケット自体の中で変化し得る)から構成される、エネルギー振幅(例えば、電圧)および印加エネルギーの持続時間などの信号のパラメーターを指定する。追加のパラメーターは、二相性パルスの極性間のスイッチタイム、二相性サイクル間のデッドタイムまたはサイクル間遅延、およびパケット間の休止時間またはパケット間遅延を含んでもよく、これについては後のセクションでより詳細に説明する。いくつかの実施形態では、パケット間に固定されたパケット間遅延がある。いくつかの実施形態では、パケットは心周期にゲートされ、したがって患者の心拍数によって可変であるか、または心周期に固定されて心周期と同期される。いくつかの実施形態では、意図的で変化するパケット間遅延アルゴリズムが存在するか、または休止期間がパケット間に適用されなくてもよい。パケット送達はまた、後続のパケット送達のタイミングを協調するために次のトリガー信号(例えば、心臓同期信号)が使用される最小パケット間遅延などの複数の要因と協調され得る。センサー情報および自動シャットオフ仕様などに基づくフィードバックループが含まれてもよいことが理解されよう。
【0186】
プローブ702または他のエネルギー送達体によって標的組織に送達される特殊なエネルギーは、複数のゾーンを有する病変を生み出す。ゾーンは、プローブ702から半径方向外側に、例えばリング状に発する。各ゾーンは、異なる細胞効果を有し、したがって、処置の全体的な成果に対する異なる効果を有する。いくつかの例では、ゾーンは、キャビテーションゾーン、サーマルゾーン、PEFゾーン、炎症ゾーンおよび免疫応答ゾーンを含む。
【0187】
図3Aは、機械灌流臓器保存モデルを用いて生存可能に維持されたブタ肝臓に特殊なエネルギーを送達することによって生み出された組織Tにおける実際の組織病変を示す。図3Bは、明確にするためにゾーンで画定された病変を示す。エネルギー波形は、非常に小さなキャビテーションゾーン200(この例では、実際の空洞ではない可能性が高いが、エネルギー送達体(針)をその中に配置することによる針管であり、しかしながら、キャビテーションゾーン200は通常ここに配置される)、サーマルゾーン202、およびPEFゾーン204を生成した。炎症ゾーンおよび/または免疫応答ゾーンは、PEFゾーンの周囲に位置し、したがってPEFゾーンの端部に続くことが理解され得る。ゾーンの存在およびサイズは、波形、特にパラメーター値によって操作することができる。これらの例では、病変は、エネルギーの単回線量または単回適用によって生成されることが理解されよう。この線量中のエネルギーのオン時間およびその適用は、波形、より具体的には波形パラメーターに依存する。
【0188】
エネルギー送達は、器具102上のアクチュエータ132または発生機104に動作可能に接続されたフットスイッチの使用など、様々な機構によって作動され得る。そのような作動は、典型的には、単一のエネルギー線量を提供する。エネルギー線量は、送達されるパケットの数およびパケットの電圧によって定義される。標的組織に送達される各エネルギー線量は、病変内に所望のゾーンを生成するように、標的組織の温度または標的組織内の温度を維持する。PEFゾーンなどのゾーンは、熱アブレーション、特に間質タンパク質の熱アブレーションまたは変性のための閾値未満に維持される。さらに、処置手順中の熱蓄積をさらに低減または排除するために、線量を経時的に滴定または緩和することができる。PEFゾーンにおいて熱損傷(療法に対する危険性のある部位でのタンパク質凝固として定義される)を誘導する代わりに、エネルギー線量は、感受性組織を損傷することなく、癌などの症状の処置を誘導するレベルのエネルギーを提供する。
【0189】
図4は、エネルギー送達アルゴリズム152によって規定される信号の波形400の一実施形態を示す。ここでは、第1のパケット402と第2のパケット404の2つのパケットが示されており、パケット402、404は休止期間またはパケット間遅延406によって分離されている。この実施形態では、各パケット402、404は、第1の二相性サイクル(第1の正のパルスピーク408および第1の負のパルスピーク410を含む)および第2の二相性サイクル(第2の正のパルスピーク408’および第2の負のパルスピーク410’を含む)からなる。第1および第2の二相性パルスは、各パルス間のデッドタイムまたはサイクル間遅延412(すなわち、ポーズ)によって分離される。この実施形態では、二相性パルスは、設定電圧416が正ピークと負ピークとで同じになるように対称である。ここで、二相性の対称波は、正電圧波の大きさおよび時間が負電圧波の大きさおよび時間におよそ等しくなるような方形波でもある。
【0190】
様々なパラメーター(例えば、電圧、基本周波数、パケットあたりのパルス数、パケット数、および様々な遅延など)の操作は、結果として生じる病変および身体自体に様々な影響を及ぼすことが理解されよう。場合によっては、パラメーターの変化は互いにバランスをとることができ、1またはそれを超えるパラメーターの変化の影響は、同じまたは同様の結果をもたらす1またはそれを超える異なるパラメーター値の変化によってバランスをとることができる。他の例では、パラメーター値を調整して、異なる病変特性(例えば、異なるゾーンの存在、サイズおよび/または特性)および/または身体に対する異なる効果などの、異なる効果を生み出すか、または生成することができる。身体に対するこれらの効果は、筋肉刺激などの即時的であってもよく、または特定の免疫応答の生成などの遅延的であってもよい。
【0191】
図5は、パラメーター変更の様々な例示的効果を示す表である。典型的には、電極スタイルは、双極ではなく単極である。単極配置では、1またはそれを超える送達電極が標的組織部位の近傍に配置され、少なくとも1つの遠隔戻り電極が患者の皮膚に対して配置される。単極電極構成を利用することにより、筋収縮強度が増加する。この効果を打ち消すために、一般に、二相性波形または波形は、筋収縮の程度を相殺するように、パルス間に適切な遅延を有するパケットを含む十分に短い個々のパルス持続時間からなる。この波形の多様性は処置効果の減少をもたらすが、その減少は筋収縮の低減よりも微妙であり、したがって依然として有効なPEF治療適用をもたらす。単極構成はまた、双極または多極構成と比較して電気アーク放電のリスクを低下させ、すべての影響電極は、それらの間の電気アーク放電を可能にし得る同様の領域内に配置される。典型的には、波形は、単相性パルスとは対照的に二相性パルスを利用する。二相性パルスの使用は、処置サイズを減少させ、筋収縮を減少させ、アーク放電リスクも減少させる。したがって、二相性パルスの使用は、単極電極スタイルによる筋収縮の増加に対抗する。単極電極スタイルおよび二相性パルスの両方が処置サイズを低減させるので、他の変数を変更することによって処置サイズを増加させることができる。例えば、電圧、パケット持続時間およびパケット数の増加は、処置サイズを増加させる。しかしながら、これらのパラメーターを増加させることは、様々な他の効果を有する。例えば、電圧を増加させ、パケット持続時間を増加させると、それぞれ筋収縮、温度上昇、および電気アーク放電のリスクが増加する。基本周波数を増加させると、筋収縮を低下させることができるが、処置サイズも低減する。同様に、パケット数を増加させると、処置サイズが増加するが、温度上昇および処置送達時間も増加する。処置送達時間は、パケット送達速度を増加させることによって低下させることができるが、これは温度上昇を増加させる。したがって、様々なパラメーター変化の影響を管理することは複雑な努力である。これは、これらの変更が行われる増分によってさらに複雑になる。PEF波形と線量そのものに関連するパラメーターの数と変更可能な増分を考慮すると、組み合わせのセットは膨大な量になる。これは、特定の電圧を送達する大きな電極が、より小さい電極とは異なる特性を有する場合、または単極対双極および多極配置(およびこれらの配置における電極間の分離距離)など、電極形状の影響によってさらに悪化する。これらの特性には、温度上昇、処置効果サイズ、送達される電流、筋収縮、電気アーク放電リスク、および標的処置効果サイズのカバレッジを達成するのに必要な時間も含まれる。さらに、患者に提供される特定のコンディショニング溶液は、誘導された筋収縮を標的化して低減させるために特に使用され得る。例えば、臭化パンクロニウム、ベクロニウム、サクシニルコリン、および他の閉塞による神経筋遮断を使用してもよい。この筋収縮の低減は、許容可能な安全な筋収縮を維持しながら、より大きな処置効果を達成するために、より低い周波数、より長いパケット持続時間、またはより高い電圧で処置線量を促進するために使用され得る。
【0192】
したがって、特定の成果に対する適切なパラメーター値を決定することは、高レベルの操作および技能を伴う。さらに、どの特定の成果が望まれるかを決定することもまた、高レベルの技能を伴う。例えば、所望の臨床転帰に至る結果として生じる病変における様々なゾーンの存在、タイプおよびサイズは、これまで知られていない。本明細書に記載の方法、システムおよびデバイスは、特定のパラメーター値および所望の臨床転帰をもたらす所望の結果として生じる病変の特徴の両方を提供する。したがって、典型的には癌性またはそうでなければ望ましくない標的組織に送達される特殊なエネルギーは、これらのパラメーター値に従って波形を生成する発生機104のアルゴリズム152から生成される。
【0193】
一実施形態では、処置線量は、以下を含むパラメーター値の組み合わせから生成される波形によって提供される:電圧=3000V、基本周波数=400kHz、パケットあたりの二相性パルス(すなわち、サイクル)の数=40サイクル、サイクル間遅延=1000マイクロ秒、パケットの数=100パケットおよびパケット間遅延=3秒。この組み合わせでは、線量送達時間はおよそ5~6分である。この処置時間は、マイクロ波(10分)、RF(20分)、または凍結切除(30~40分)などの従来のエネルギーを使用する処置時間よりも実質的に短い。場合によっては、この線量は、任意の方向におよそ1x1x1cm 0.3cmの病変サイズを生じる。以下、得られた病変の特徴について説明する。
キャビテーション効果
【0194】
いくつかの例では、従来のPEFエネルギーを送達する場合、キャビテーションはプローブ702に最も近いエリアで発生し、キャビテーションゾーンと見なされる。しかしながら、本明細書に記載の特殊なエネルギーは、キャビテーションの発生を最小化または排除するように構成されている。ここで、キャビテーションは、特に特定のサイクル間遅延を含めて操作することによって、パラメーター値の操作によって最小化または排除される。
【0195】
図6A~6Dを参照すると、異なるサイクル間遅延を有する波形を有するエネルギーによって生成された病変を有する組織試料Tが示されている。灌流臓器保存モデルにおいて、肝臓組織の一部にエネルギー送達体108(例えば、針/プローブ702、図示せず)を配置して各病変を形成した。図5Aは、サイクル間遅延なしの特定の波形を有するエネルギーから形成された病変を示す。ここで、エネルギー送達は、病変内に不規則な形状の空洞効果(すなわち、空洞/キャビテーションゾーン200)をもたらす電気アーク放電を起こしやすい。これらの空洞効果は不規則であるが、空洞は処置病変のコアに十分に収容される。空洞形成に起因して、灌流液で満たされる組織の空隙(すなわち、空洞)に起因して、最小限の二次的な熱効果が見出される。図6B~6Dに示されるように、それぞれ10μs、100μs、1000μsのサイクル間遅延などのサイクル間遅延を追加することにより、空洞効果が完全に除去された。病変の中心の小さな穴は、空洞の形成ではなく、プローブ702の挿入によるものである。したがって、キャビテーションの完全な排除を含むキャビテーションの量は、波形自体の態様によって、特に特定のサイクル間遅延を含めることによって制御および操作することができる。したがって、PEF波形が400kHzの基本周波数を有し、パケットごとに40サイクルが提供され、線量ごとに100パケットが提供される場合など、PEF波形における少なくとも10μsのサイクル間遅延がキャビテーションを排除するために望ましい。サイクル間遅延の長さが増加するにつれて、アーク放電および放電が減少し、それによってキャビテーションが減少することが理解されよう。しかしながら、そのような減少は、1000μs付近のサイクル間遅延など、横ばい状態およびプラトー状態になり始める。したがって、いくつかの実施形態では、総処理時間の過度の延長を引き起こすことなくキャビテーションを最も効果的に最小化または排除するために、1000μsの遅延が好ましい。そのようなキャビテーションの低減は、病変を形成する標的組織により多くの意図されたエネルギーを送達することが理解されよう。したがって、この例では、サーマルゾーン202が増加し、PEFゾーンを生み出すために所望されるよりも多くのエネルギーが送達されたことを示している。
【0196】
同様に、図7A~7Bは、ブタ肺組織における前臨床試験からのインビボ組織試料Tを示す。図7Aは、サイクル間遅延を有する特定の波形を有するエネルギーを送達することによって形成された病変210を有する肉眼的肺組織を示す。示されるように、組織キャビテーションが肺実質内で防止された。いくつかの実施形態では、サイクル間遅延の代わりにまたは加えてパケット間遅延を含めることによって同様の効果を達成できることが理解されよう。図7Bは、サイクル間遅延なしの波形を有するエネルギーの送達から形成された病変を有する肺組織を示す。示されるように、コア処置エリアは、解剖学的小葉間隔壁内に十分に含まれる大きな出血(血液充填)領域212からほとんど構成される。サイクル間遅延なしの処置は、最大のキャビテーションエリアをもたらした。
熱効果
【0197】
いくつかの例では、PEFエネルギーは、いくつかの要因を挙げると、特定の波形および方法論を使用すると、熱的続発症のエリアを有する病変を生成することができることが理解されよう。これは、より大きな処置ゾーンを生成しようとするときに最も頻繁に起こる。より高いレベルのエネルギー送達を使用すると、より大きな処置ゾーンを達成することができるが、これはジュール加熱効果による白色組織凝固の増加も引き起こす可能性がある。これは、典型的には、送達電極により近いエリアで起こる。その結果、特殊なエネルギーは、生成された病変における熱効果の存在を縮小させるか、排除するか、または他の方法で制御する。場合によっては、少量の熱効果が患者において特定の免疫応答を引き起こすのに有益であり得ることが理解され得る。したがって、場合によっては、熱効果が望まれ得る。しかしながら、熱効果の量の制御は、利益と望ましくない効果との間のバランスを維持する。したがって、いくつかの実施形態では、効果の比または組み合わせ(例えば、熱効果対PEF効果)は、患者の免疫応答を最大化および/またはカスタマイズするように最適化される。したがって、場合によっては、身体から特定の成果を引き出すように局所組織特性を調整する効果または波形パラメーターの組み合わせの「黄金比」がある。したがって、いくつかの実施形態では、結果として得られる改善された波形およびエネルギー送達アルゴリズムは、最終的に患者の免疫応答を最大化および/または有益に制御する。
【0198】
いくつかの実施形態では、熱効果は、特に特定のサイクル間遅延を含めて操作することによって、パラメーター値の操作によって最小化または制御される。例えば、いくつかの実施形態では、サイクル間遅延およびパケット間遅延の追加は、サーマルゾーンおよび空洞ゾーンを最小限に抑えながら、生成された病変のPEFが影響する体積を最大化する能力を高める。特に、いくつかの実施形態では、特定のパケット間遅延を含めることにより、サーマルゾーンが最小化される。
【0199】
図8は、パケット間遅延をエネルギー波形に統合することがどのようにPEFエネルギー送達の熱効果を緩和するのに役立ち得るかを示す。ここでは、2つの曲線が示されている。第1の曲線220は、波形に3秒のパケット間遅延406が含まれる場合の経時的な温度上昇を示す。また、第2の曲線222は、波形に5秒のパケット間遅延406が含まれる場合の経時的な温度上昇を示す。図示されるように、5秒のパケット間遅延406は、経時的により低い温度上昇をもたらす。これは、冷却剤の添加などではなく、単に波形の操作によって達成される。場合によっては、熱効果は65℃以上で生じる。したがって、場合によっては、5秒のパケット間遅延406を有する波形は熱効果を排除し、3秒のパケット間遅延406は小さな熱効果をもたらし得る。パケット間遅延406は経時的に温度上昇を低下させるが、全体的な処置時間も増加させる。小さな熱効果は許容され、場合によっては有益であるため、要因のバランスをとるために、3秒のパケット間遅延406が特殊なエネルギーに含まれていた。しかしながら、3秒、3.5秒、4秒、4.5秒および5秒、ならびにそれらの間のすべての部分範囲を含む、3~5秒のパケット間遅延が許容され得ることが理解されよう。同様に、より長い処置時間が許容される場合、5秒を超えるパケット間遅延406を使用することができる。
【0200】
心拍と同期するとき、3秒の遅延は3秒よりわずかに長くてもよいことが理解されよう。例えば、場合によっては、エネルギー送達アルゴリズムは、3秒のパケット間遅延を有し、次の心拍がエネルギー送達をトリガーするまで待機する。したがって、実際のパケット間遅延は、3.1秒、3.2秒、3.3秒などであり得る。場合によっては、遅延は4.49秒にもなり得る(例えば、40bpmの患者の場合、3秒のパケット間遅延で最大に位置ずれする)。全体的な病変サイズは、サイクル間遅延の導入によって有意に影響されないことが理解されよう。
【0201】
PEFゾーンでは、組織を非熱的に処置するようにエネルギーが送達される(すなわち、熱アブレーションを引き起こすための閾値を下回る)。その結果、細胞外マトリックスが存在する場合、細胞外マトリックスは保存され、標的組織は血管およびリンパ管を含むその構造的アーキテクチャを維持する。したがって、組織の完全性および機能性を維持するために重要な生物学的管腔、血管、神経などの感受性構造を保存することができる。これはいくつかの利点を提供する。まず、これにより、従来の方法では処置できないと考えられることが多い組織の処置が可能になる。感受性構造に近い標的組織は、典型的には、組織を感受性構造から完全かつ効果的に外科的に分離することができないため、外科的方法によって切除不可能である。同様に、多くの従来の非外科的療法は、療法による感受性構造への損傷の可能性に起因して、または療法が感受性構造の近接に起因して無効であると考えられるため、禁忌である。さらに、感受性構造の近傍の組織を処置する能力はまた、悪性マージンが感受性構造の近傍に残らないという点でより包括的な処置を提供する。組織が処置されると、構造的アーキテクチャの生存はまた、免疫系の構成要素などの生物学的要素の自然流入、または治療的処置をさらに行うための様々な薬剤の導入を可能にする。
【0202】
特定の処置部位内の組織ゾーン(キャビテーションゾーン200、サーマルゾーン202、PEFゾーン204)の比の微調整および調整は、本明細書で以下により詳細に説明するように、送達されるエネルギーおよび結果として生じる病変ゾーンの比に固有の免疫学的要素、例えば制御性T細胞(Treg)、CD4(Tヘルパー)、CD8(T細胞傷害性)、CD3(T細胞)、CD20(B細胞)、FoxP3(Treg)、Pan-CK(腫瘍)、PD-L1、M1F&M2F、DC、NK、MDSC、NF、および他の適応免疫細胞型の増加した動員のカスケードを促進する。
【0203】
キャビテーションゾーン200、サーマルゾーン202、PEFゾーン204などの病変分類は、肉眼的に測定することができるが、組織特性(すなわち、組織密度、インピーダンス変化など)およびコンピューター断層撮影などの撮像モダリティに基づいてリアルタイムで監視することもできる。さらに、いくつかの実施形態では、これらの比は、いくつか例を挙げると、局所温度、組織インピーダンス、および組織密度などの他の臨床的に関連し定量化可能なツールの測定を中心とする。
【0204】
所望の病変ゾーンを生成するためにパラメーター値を操作することに加えて、いくつか例を挙げると、患者の安全性、望ましい処置時間、電気アーク放電リスクの低減、筋収縮の低減、および温度上昇の低減を確保しながら病変サイズを最大化するためにパラメーター値をさらに操作した。所望の線量のパラメーターを決定するために広範な研究を行った。研究には、以下のパラメーターの組み合わせを評価することが含まれた:
【0205】
【表1】
【0206】
処置は、病変サイズを正確に測定するための優れた組織であるため肝臓実質に送達された。1つの研究では、2匹の豚を利用した。両動物を術後3日目に安楽死させた。針電極を適用して、各3日生存動物の肝臓実質に処置を送達した。視認性を改善し、意図された標的内での針電極の所望の位置決めを確実にするために、開腹術を使用した。開腹術の後、24の処置を各3日生存動物の肝臓実質に送達した。全ての処置部位を切除し、肉眼的アブレーション分析のために切片化した。
【0207】
表1に示すように、すべての処置を400kHzの基本周波数で100パケット送達した。処置は、Rトリガー心臓同期を用いて送達され、3秒間の休止期間が後続のパケット間に実施された(およそ20パケット/分(pkts/分)のリズム)。500μsまたは1000μsのサイクル間遅延を使用して、これらの値から病変サイズへの変化がないことを確認した。この研究では、図9に示すように、全体的な処置ゾーンサイズに統計的な差は見られず、500μsのサイクル遅延および1000μsのサイクル遅延を用いた処置間の処置特性も見られなかった。図9は、ブタ肝臓組織におけるこの前臨床試験から捕捉されたインビボデータを示す。カラムプロットは、サイクル間遅延が5つの変動するエネルギープロトコル(変動する電圧振幅およびパケットあたりのオン時間)にわたる全体的な処置サイズに及ぼす影響の欠如を示している。
【0208】
短軸測定に基づいて処置体積を計算した。この計算式は式1に見出すことができ、式中、rは短軸半径寸法である。
V=4/3*π*(r)^2*(r+アプリケーター露出長)[式1]
【0209】
図10A~10Bは、両方の動物の固定後の体積処置ゾーンの測定値を示す。これらの計算された体積は短軸測定に基づいていたので、3300V/60サイクルプロトコルを除いて、電圧およびパケットオン時間の増加に伴う処置体積の増加を伴うショートアクセス測定分析と同じ傾向が生じた。この場合、これは処置部位での部分放電に起因する可能性がある。図10A~10Bのカラムプロットは、全ての影響を受けた組織と熱効果を受けた組織の比における電圧振幅およびパケットあたりのオン時間の影響を示す。図10Aは、可変電圧振幅およびサイクルカウントの短軸処置体積計算を示し、図10Bは、処置体積内の熱壊死およびPEFのパーセンテージを示す。全体として、熱的に明らかな処置効果の許容され得る割合と相まって、最大の総PEFゾーン体積(したがって、免疫系に対する最大の細胞残屑および抗原バイオアベイラビリティ)の解釈により、3000Vおよび40サイクル(パケットのアクティブタイムが100μs)のパラメーター値が、ヒト研究によって後に確認されるように、所望の成果を提供することが決定される。
【0210】
肝臓試料を、任意の所与の肝臓部位に送達された処置の知識なしに盲検様式で組織学的にレビューした。スライドガラス上の組織に基づいて、処置した肝臓実質のサイズの全体的な評価を提供した(例えば、0.7×0.7cm~1.5×1.2cm)。病変の定性的評価も提供した。全体として、病変は、損傷の再現可能なパターンと非常に類似していると判定された。組織病変の組織学的分析により、各病変内の追加のゾーンが明らかになった。追加のゾーンは、PEFエネルギー送達の効果であり、炎症ゾーンである。組織試料に対して行われた組織学的分析は、術後3日の末梢炎症反応を示す。図11A~11Bは、ブタ肝臓組織における前臨床試験から捕捉されたインビボ試料を示す。図11Aは、組織試料Tの病変の写真である。図11Bは、図11Aの病変に見られるゾーンを示す「ブルズアイ」(“bullseye”)画像を重ね合わせている。ゾーンは、内側から外側に、サーマルゾーン202、PEFゾーン204および炎症ゾーン206を含む。組織試料は、全ての影響を受けた組織と熱効果を受けた組織の比、および末梢炎症性バンドまたはゾーン206に対する周波数の影響を示す。いくつかの実施形態では、より低い周波数は、より大きな末梢炎症反応またはゾーン206およびより大きな領域のPEFエネルギー効果またはゾーン204を生成する。処置間で幾分異なるように見える1つの変数は、中心の完全に切除された肝実質のサイズと比較した末梢炎症ゾーン206/部分的に失活した肝細胞の幅であった。切除された肝臓実質のサイズ、ならびに中央組織アブレーションの「ブルズアイ」の性質、部分的に生存可能な/炎症ゾーン、完全に正常な/関与していない隣接する実質の急速な脱落に関して再現性のあるパターンの損傷がある。
【0211】
したがって、本明細書に記載の特殊なエネルギーの洗練された線量は、特に従来のパルス電界技術によって生成される病変と比較して、最小の熱体積で処置病変(例えば、直径10mm)を生成する。いくつかの実施形態では、処置持続時間は5分である。特殊な波形によって提供される洗練された線量は、熱効果を最小限に抑えながらPEF処置効果ゾーンを最大化する。この特別に調整された線量では、PEFエネルギーは腫瘍抗原の放出を引き起こし、ネオ抗原の放出の増強、刺激された免疫原性細胞死(例えば、ネクロトーシス、パイロトーシスなど)、ならびに処置エリアの限定されたカプセル化および瘢痕化による抗原に対する感受性の増強などにより、身体の自然免疫応答および適応免疫応答を刺激する。さらに、いくつかの実施形態では、特殊なエネルギーは、免疫抑制性腫瘍免疫微小環境(TME)を破壊する。したがって、処置システムの実施形態は、抗原放出を最大化し、免疫応答を増加させる。
VIII.免疫応答
【0212】
特殊なエネルギーの洗練された線量は、従来のPEF処置よりも優れた免疫応答を誘導する処置病変を生成することが決定されている。エネルギーが癌性腫瘍を処置するために使用される場合、この免疫応答は身体を利用して、残留癌細胞、転移性癌細胞または後に発生する癌細胞などの癌性細胞をさらに排除する。これは、特殊なPEF処置が腫瘍特異的免疫応答を誘発する癌の複数のマウスモデルにおいて研究されている。例えば、トリプルネガティブ乳癌(EMT6腫瘍)の同系同所性モデルおよびメラノーマ(B16-F10/B16-OVA腫瘍)の転移性モデルからデータを生成した。腫瘍抑制に対するこの特殊なPEF処置の影響を理解するために、EMT6腫瘍担持マウスにおいて生存研究を行った。次に、EMT6モデルで観察された腫瘍抑制をよりよく説明するためにPEFによって媒介される抗腫瘍機構を同定した。さらに、PEFによって誘導される腫瘍抗原放出が腫瘍特異的T細胞応答を推進するのに十分な能力を有することを決定するために研究を行った。
【0213】
さらに、固形腫瘍を処置するための本明細書に記載の特殊なPEFエネルギーの洗練された線量の安全性および初期実現可能性を評価するために、前向き2アーム無作為化同時対照多施設非盲検の処置および切除研究を行った。PEFで腫瘍を処置した患者の血液中の免疫細胞集団に対する処置前から処置後の変化を分析した。
【実施例
【0214】
研究
実施例1:
特殊なパルス電界による局所処置は腫瘍特異的応答を生成する
【0215】
目的:PEFは、腫瘍の細胞低減処置のために評価されている新興技術である。PEFエネルギーはタンパク質を熱変性させず、抗原提示細胞に対する無傷の腫瘍関連抗原の放出を可能にして腫瘍特異的応答を駆動する。これは、処置された腫瘍の改善された局所応答およびアブスコパル効果を促進し得る。特殊なPEFエネルギーの洗練された線量は、PEFゾーンを最適化し、抗原特異的適応免疫応答に関連する増強された効果など、これらの応答を促進する追加のゾーンを誘導する。この試験の目的は、特殊なPEF療法で処置した前臨床腫瘍における抗原特異的細胞傷害性T細胞の存在を評価することであった。
【0216】
方法:C57BL/6Jマウスの右側腹部に、ニワトリ卵白アルブミンタンパク質を発現するように遺伝子改変されたB16-F10腫瘍細胞株(B16-OVA)または陰性対照腫瘍(B16-F10)のいずれかを接種した(皮下注射、50μLマトリゲルあたり1×106細胞:PBS-/-)。接種の9日後、マウスをPEFを含む処置群および無処置対照(NTC)に無作為化した。PEFエネルギーは、接地電気パッド構成を有する単一の針を使用して送達された。PEFで処置されたマウスについては、改変された25g電極を使用して、低減された臨床線量で特殊なPEF処置を送達した。処置の10日後、腫瘍を採取し、フローサイトメトリーのために処理した(表2)。
【表2】
【0217】
結果:フローサイトメトリーは、CD8+T細胞の頻度が、NTCと比較して、PEFで直接処置した腫瘍で有意に増加したことを実証した(図12A)。免疫浸潤物内の腫瘍特異的T細胞の割合を定量するために、OVAペプチドに結合したH2-Kb MHCクラスI分子を含む四量体複合体、SIINFEKLを使用した。PEFで直接処置したB16-OVA腫瘍は、NTC群におけるB16-OVA腫瘍と比較して、OVA特異的CD8+T細胞が125%(p=0.03)増加した(図12B)。CD8+四量体について陽性であったすべてのCD45+細胞のパーセンテージは、PEF処理およびNTC B16-F10陰性対照と比較して増加した(p=0.05)。
【0218】
結論:特殊なPEFによる局所処置は、腫瘍特異的T細胞のクローン増殖を可能にする免疫適格様式で腫瘍抗原放出を生成する。さらに、特殊なPEF処置は、CD8T細胞浸潤を増加させて、コールド腫瘍の免疫原性を増強する。合わせて、特殊なPEFによる局所処置は、病巣療法から全身転帰を提供する堅牢なアブスコパル効果をもたらす腫瘍特異的免疫応答を提供する。
実施例2:特殊なパルス電界を用いた初期NSCLCの病巣処置:INCITE ES研究からの安全性および30日間の結果
【0219】
目的:軟組織にエネルギーを送達するためにPEFシステムを使用する外科的切除前の非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍の特殊なパルス電界(PEF)処置の安全性および初期実現可能性を評価すること。
【0220】
概要:初期段階のNSCLCは、一般に、化学療法に対してあまり感受性がなく、可能であれば根治目的で外科的切除によって処置される。追加の処置は、細胞膜を不安定化し、細胞死を推進するために高周波電気パルスを使用する特殊な非熱的病巣アブレーション様式である。軟組織で使用される従来の切除モダリティ(例えば、高周波、マイクロ波、凍結療法)と比較して、PEFアブレーションは、血管、リンパ管および細胞外マトリックスを含む周囲アーキテクチャの保存に起因して、改善された安全性プロファイルおよび重要な構造付近の病変を処置する能力を含むいくつかの潜在的な利点を有する。さらに、特殊なPEF送達によって誘導される細胞死は、身体の自然免疫応答の刺激を介して効力の増強をもたらす。熱的アブレーション機構とは対照的に、特殊なPEFによって誘導される非熱的細胞死は、免疫系の細胞がアクセス可能なより多くの抗原プールを腫瘍から放出する。さらに、処置エリアの限定的なカプセル化および瘢痕化は、免疫細胞にとって、これらの抗原および腫瘍自体へのより良好なアクセスを可能にする。
【0221】
方法:この処置および切除研究では、特殊なPEFエネルギーは、外科的切除の前に、管腔内(気管支鏡)または経皮的アプローチのいずれかを介して、孤立性の手術可能なNSCLC病変に送達される。患者集団には、第8版のNSCLCステージIA2、IA3またはIB(1cm超~4cm以下の孤立病変)、再発率がより高いことが注目される病変が疑われるかまたは確認された成人患者が含まれる。対象は外科的候補であり、過去2年間に腫瘍の処置を受けていない。コンピューター断層撮影(CT)は、PEF送達前および外科的切除前に実施される。安全性は、外科的切除による初期PEF送達からのデバイスおよび/または手順関連の重篤な有害事象(SAE)の評価によって評価される。安全性はまた、任意の隣接する気管支および脈管構造に対する影響を含む切除検体の肉眼的および組織学的評価を通して評価される。腫瘍サイズの変化、PEF手順の結果としての計画された外科的アプローチ、30日間の外科的死亡率、およびPEF送達による外科的合併症のパーセンテージも評価する。臨床的有用性は、切除された検体からの処置ゾーンの評価によって評価される。PEF手順の技術的成功は、臨床医が腫瘍にアクセスしてPEFエネルギーを送達することができる頻度として定義および評価される。さらに、血液、BAL液(手順が管腔内で行われた場合)および腫瘍組織からの処置前試料と処置後試料とを比較する免疫応答の評価も評価する。
【0222】
予備的結果:複数の表面に当接した1つの病変、および大きな亀裂に当接した既に行われた病変を含む、4人の対象(平均標準偏差年齢65.07.4歳、50%男性)すべてに対して特殊なPEF送達を首尾よく行った。4つの手順のうち3つが経皮的に完了した。各対象に単一のPEF処置を送達し、外科的切除前に測定して腫瘍の最長直径を0.73.6%低減させた。計画された外科的アプローチまたは外科的合併症への変化は観察されておらず、初期PEF送達から外科的切除(19~21日後)まで、デバイスまたはPEF手順に関連する有害事象は観察されていない。予備的結果は、腫瘍細胞におけるPD-L1発現の増加および処置エリアにおけるCD8+/CD4+炎症細胞の増加を含む、処置前の腫瘍組織試料と比較した場合の切除時の腫瘍内の免疫応答の変化を示した。
【0223】
結果:現在の登録には、平均年齢67歳(SD 5.7歳)の26人の対象(21-処置群および5-対照群)が含まれ、その80%は男性である。胸膜表面に当接した1つの病変および大きな亀裂に当接した1つの病変を含む、21人の対象すべてにおいて、単一のPEF処置(洗練された線量)が首尾よく行われた。最初の4人の対象の少なくともそれぞれに単一のPEF処置を送達し、外科的切除前に測定して腫瘍の直径を14±7%低減させた。図13A~13Dは、(1)PEF送達前に3.4cmの病変(図13A)、(2)最長直径2.8cmの手術前の同じ病変(図13B);(3)PEF送達の20日後の切除腫瘍の肉眼的切片(図13C);および(4)対応するヘマトキシリン&エオシン(H&E)(図13D)を有する胸部のCT画像を提供する。免疫応答を、処置前および処置後の血液、BAL試料を比較することによって、また、図14に示されるスケジュールに従って腫瘍組織におけるトランスクリプトーム変化を介して評価した。図16は、実施されたH&Eおよび免疫組織化学(IHC)の表を提供する。さらに、フローサイトメトリー、ssRNAseq(Rhapsody(商標))およびLuminex Multiplex 71プレックスパネル(図16)を行った。図17は、ベースライン特性および処置の詳細を示す。
【0224】
処置は27人の対象全員で成功した(技術的成功=100%)。計画された外科的アプローチまたは外科的合併症への変化は観察されておらず、初期PEF送達から外科的切除(19~21日後)まで、デバイスまたはPEF手順に関連する有害事象は観察されていない。予備的結果は、腫瘍細胞におけるPD-L1発現および処置ゾーン付近のCD8+/CD4+T細胞比の増加を含む、処置前の腫瘍組織試料と比較した場合の切除時の腫瘍内の免疫応答の変化を示し、より多数のCD8+T細胞が腫瘍細胞と相互作用する。細胞傷害性CD8+T細胞の増加が腫瘍「島」において腫瘍細胞と相互作用することが見出され、CD4+ヘルパーT細胞の増加が腫瘍「島」の外側で観察された。切除検体中の処置ゾーン(細胞枯渇ゾーン)および周囲の非処置組織を含む病変を評価した。細胞枯渇ゾーン(CDZ)は、主に癌性細胞を欠く領域である。CDZは肉眼的解剖で見ることができ、PanCK染色で一貫して同定される。この試験では、20±3日目の最小CDZ寸法±SD(n=8)は、D1(最長寸法)=0.9±0.3cmおよびD2(D1に垂直)=0.6±0.3cmであった。腫瘍サイズの変化を放射線評価によって評価した。
【0225】
1つの粘液性腺癌および対照を除いて、特殊なPEFエネルギーで処置したすべての腫瘍が複数の三次リンパ球構造(TLS)を有していたことが認識され得る。TLSは、出生後に非リンパ系組織を形成する免疫細胞の組織化凝集体である。TLSは生理学的条件下では見られないが、自己免疫疾患、慢性感染および癌などの慢性炎症の状況で生じる。腫瘍の状況では、TLSは、腫瘍部位への免疫細胞の流入を促進し、したがって、抗癌免疫および患者における免疫療法に対する好ましい処置応答を改善する手段である。腫瘍におけるTLSの存在は、より良好な予後および臨床転帰と相関するようである。リンパ凝集体およびTLSは、PEF処置腫瘍の末梢付近で一貫して観察されている。図18は、TLS(ダークスポット)を有する様々な組織試料を示す。
【0226】
予備的血清サイトカイン分析(0日目~18日目)は、PEFによって影響される経路にはリンパ経路の上方制御(例えば、リンパ器官の形成および成長)および制御性Tリンパ球の下方制御が含まれることを示した。図19A~19Bは、予備的な血清サイトカイン分析の結果、すなわち、3日目、10日目および18日目における様々なサイトカインの発現を示す。
【0227】
この最初の症例シリーズは、NSCLC腫瘍において単一の電極で特殊なPEFエネルギーを送達することの実現可能性を実証した。PEF関連有害事象は観察されておらず、胸膜表面の病変および大きな亀裂を含む隣接する重要な構造の近傍の処置は、計画された外科的切除に影響を与えることなく実行可能であった。INCITE ESデータの予備的分析は、免疫系に対する特殊なPEFエネルギーの影響(自然免疫応答および適応免疫応答)を例示する。
免疫療法との併用
【0228】
過去10年間で、免疫系と癌発症とその後の疾患進行との間の関係の理解において、パラダイムの転換が起こっている。免疫系による検出から逃れる悪性細胞の免疫回避は、現在、腫瘍発生の基盤として認識されている。腫瘍は、免疫抑制または免疫学的圧力の複雑なネットワークを引き起こし、免疫エフェクターが有意義な抗腫瘍応答を開始することを困難にする。近年、膨大な量の研究が、腫瘍微小環境(TME)によって規定される免疫抑制ネットワークを調査している。腫瘍学における最も重要な発見の1つは、癌における免疫チェックポイントの役割の理解である。免疫チェックポイントは、T細胞および抗原提示細胞(APC)の表面に存在する阻害性または刺激性分子であり、その直接的な相互作用は、異物に対するT細胞の持続時間および応答を調節する。これは、T細胞が健康な組織を損傷し、自己免疫応答を生み出すのを防ぐので、自己寛容を維持するために特に重要である。
【0229】
癌との関連において、腫瘍細胞は免疫チェックポイントを上方制御してT細胞上のパートナー受容体に結合し、検出を回避し得る。そのような免疫チェックポイントの1つであるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)およびそのリガンドPD-L1は、多数の癌における免疫回避の重要な調節因子として同定されている。PD1は、活性化T細胞、B細胞および骨髄細胞において転写的に上方制御される膜貫通タンパク質である。したがって、免疫系の炎症反応によって腫瘍に浸潤している活性化T細胞は、その表面にPD-1を発現することが多い。PD-L1はそのリガンドであり、いくつか例を挙げると、種々の頭頸部癌腫、肺癌およびメラノーマなどのいくつかの腫瘍細胞上に見出される。PD-1がPD-L1に結合すると、T細胞が腫瘍細胞を死滅させるのを防ぎ、それらの相互作用時にT細胞抑制を誘導する。具体的には、PD-1/PD-L1相互作用は、以下の機構を介してT細胞免疫抑制を媒介することが見出されている:活性化T細胞におけるアポトーシスを誘導し、T細胞アネルギーおよび疲弊を促進し、制御性T細胞(Treg)の免疫抑制を増強し、T細胞増殖を制限し、T細胞活性化およびインターロイキン-2(IL-2)の産生を抑制する。
【0230】
最近、PD-1/PD-L1相互作用を標的とする抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ)がFDAに承認された。例えば、ニボルマブは、PD-1受容体に結合し、PD-L1とのその相互作用を遮断し、免疫応答のPD-1経路媒介阻害を放出するヒト免疫グロブリンG4(IgG4)モノクローナル抗体である。これは、腫瘍成長の減少をもたらす。アテゾリズマブは、PD-L1に対するIgG1アイソタイプの完全ヒト化操作モノクローナル抗体である。したがって、アテゾリズマブは、PD-1とPD-L1の相互作用を遮断する。有望ではあるが、これらの薬物は単独療法としての有効性が限られている。例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、小細胞肺癌(SCLC)以外の任意のタイプの上皮肺癌では、患者の20%のみがPD-1遮断に対する客観的臨床応答を達成する。さらに、応答する患者については、腫瘍が薬物耐性を発症するので、抗腫瘍応答は一過性である。この低い応答率は、PD-L1発現および腫瘍免疫細胞浸潤物の画分を含む因子の組み合わせに起因する。
【0231】
PD-L1陰性であり、低い腫瘍免疫細胞浸潤を有する腫瘍は、「コールド」腫瘍として公知である。PD-L1陽性であり、高い腫瘍免疫細胞浸潤を有する腫瘍は、「ホット」腫瘍として公知である。コールド腫瘍を有する患者は、阻害するように設計されているPD-1/PD-L1相互作用が存在しないため、チェックポイント療法に対して非応答性である。後者で述べたように、ホット腫瘍を有する患者は、しばしば、経時的に療法に対する抵抗性を発症する。これは、PD-L1を発現する腫瘍細胞が、PD-1との相互作用の遮断により排除されるためである。残りの腫瘍細胞は、残っている、より耐性の高い癌クローン集団である。
【0232】
したがって、免疫療法に応答する患者の数を増加させ、そのような患者の臨床応答を増加させるなど、改善された処置が望ましい。そのような処置は、安全であり、有効であり、改善された成果をもたらすはずである。免疫療法を本明細書に記載の特殊なPEFエネルギーと組み合わせることは、これらの目的を満たす。
【0233】
本明細書に記載のデバイス、システムおよび方法は、免疫チェックポイント系の態様などの免疫系の態様を利用する様式で患者を処置するために特殊なパルス電界エネルギーを利用する。いくつかの例では、癌免疫療法患者、特にいくつかの免疫療法処置に対する応答が限られているかまたは経時的に獲得耐性を有する患者において、成果の改善が達成される。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1相互作用は処置のために標的化される。他の例では、免疫系の他の経路が、PD-1/PD-L1に加えてまたは独立して、処置に関与する。
【0234】
いくつかの実施形態では、特殊なパルス電界(PEF)エネルギーを腫瘍または悪性組織などの標的処置エリアに送達して、組織の破壊を引き起こす。特殊なPEFエネルギーは、細胞死、炎症シグナル伝達、および腫瘍微小環境内での生存可能な抗原提示の生成を含む局所事象のカスケードを最終的にもたらす短時間の高振幅パルスエネルギーの適用に依存するエネルギー指向性病巣療法である。具体的には、いくつかの例では、特殊なPEFエネルギーは腫瘍抗原の放出を促進し、これは樹状細胞(DC)によってマクロピンサイトーシスによって取り込まれると、T細胞への交差提示のためにそれらをペプチド-MHCクラスI複合体にプロセシングすることができる。抗原が交差提示されると、図20に示すように、ペプチド-MHCクラスI複合体のこのエピトープを認識するT細胞受容体を有する細胞傷害性T細胞は増殖して抗腫瘍応答を開始する(交差プライミング)。特に、図20は、特殊なPEFエネルギーで処置された腫瘍Tを示し、エネルギーは、免疫系にとって有意義な方法で細胞を死滅させる(例えば免疫原性細胞死)。ここで、特殊なPEFエネルギーによる処置は、腫瘍Tからの腫瘍抗原TAの放出を促進する。樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)は、抗原を内在化し、T細胞(例えば、CD8+T細胞)のT細胞受容体によって認識されるペプチド複合体PCにそれをプロセシングする。T細胞は、単一のペプチドエピトープを認識する独特のT細胞受容体を有する。活性化されると、それらはクローン的に拡大して、その特異的標的に対する免疫応答を開始する(交差プライミング)。重要なことに、PEF療法のこの特徴は、腫瘍免疫浸潤物中のT細胞の割合を増加させて、より有益な成果をもたらす。
【0235】
いくつかの実施形態では、特殊なPEFエネルギーは、図21に示されるように、腫瘍細胞によるPD-L1の上方制御を促進する様式で、腫瘍を含むものなどの標的処置エリアに送達される。この実施形態では、腫瘍Tは、PD-L1を転写的に活性化するPEFエネルギーによって誘導される炎症性傷害のためにストレスを受ける。PD-L1の活性化は、典型的には、PD-L1のそのような上方制御がPD-1/PD-L1の免疫抑制相互作用を増加させ、それによってT細胞(例えば、CD8+T細胞)を阻害するという点で、腫瘍の処置において有害であると考えられ得ることが理解され得る。しかしながら、そのような上方制御は、コールド腫瘍(すなわち、PD-L1陰性であり、低い腫瘍免疫細胞浸潤を有する腫瘍)PD-L1を陽性にし、それによってホットにする能力を有する。ホット腫瘍はPD-L1陽性であり、高い腫瘍免疫細胞浸潤を有する。ホット腫瘍を有する患者は、PD-1/PD-L1相互作用を標的とするチェックポイント療法に応答性であろう。したがって、コールド腫瘍を有する患者は、元々または抵抗性を発達させることによって、PEFエネルギーによる適切な処置によって、ホット腫瘍を有するように移行させることができる。
【0236】
したがって、いくつかの実施形態では、PD-1を標的とする抗体(αPD-1)は、PEFエネルギーと組み合わせて、またはPEFエネルギーに関連して所定の時間または複数の時間に患者に送達される。αPD-1は、PD-1/PD-L1相互作用を妨害し、腫瘍細胞をT細胞によって同定および死滅させることを可能にする。したがって、形質転換患者は、αPD-1療法などの免疫療法に現在応答性である。
【0237】
腫瘍成長速度、生存、および炎症促進性/抗炎症性サイトカインの発現に対するPEF療法およびチェックポイント阻害の効果を、乳癌腫の2つの同系モデル:EMT6および4T-1腫瘍担持Balb/cマウスで試験した。癌のマウスモデルは様々なレベルの免疫原性(すなわち、移植された癌が免疫応答を引き起こす能力)を有するので、免疫学的成果を正確に決定するために複数の腫瘍モデルにわたって療法を検証することが所望された。
【0238】
EMT6腫瘍モデルにおいて、「PEF+αPD-1」として知られる特殊なPEF療法とチェックポイント阻害(αPD-1の送達)の両方を含む併用治療プロトコルを試みた。これを、PEF送達単独およびαPD-1単独と比較した。各コホートは10~12人の対象を有していた。この腫瘍モデルでは、各雌マウスに、4番目/5番目の乳房脂肪(動物の左側)においてEMT6細胞をチャレンジした。チャレンジの8日後、腫瘍(例えば長さ4~5mm)をPEFエネルギーで直接処置した。一実施形態では、PEFエネルギー波形は、パケットにグループ化された複数の二相性パルスから構成され、各パケットは、それぞれ1000マイクロ秒の遅延で区切られた40サイクル(すなわち、二相性パルス)を有していた。この実施形態では、処置は100個のパケットを含み、各パケットは3秒のパケット間遅延によって分離されている。この実施形態では、電圧は2500Vであり、基本周波数は400kHzであった。いくつかの例では、マウスに、EMT6細胞による最初のチャレンジの日または特殊なPEFエネルギー送達の日のいずれかに開始して、αPD-1を週に1回投与した。他の例では、マウスに、EMT6細胞による最初のチャレンジの日またはPEFエネルギー送達の日に開始して、αPD-1を週に複数回投与した。PEF処置の3日後、全ての動物に対側(動物の右側の4番目/5番目の乳房脂肪)のEMT6細胞をチャレンジした。腫瘍サイズを週に複数回測定し、腫瘍が所定の最大許容体積に達するまで成長させた。
【0239】
PEF+αPD-1コホートにおける直接処置された対側の腫瘍は、すべての群と比較して、処置後24日までに腫瘍成長の有意な抑制を経験した。図22に示されるように、PEF+αPD-1で処置された動物の合計で41%が完全奏効を達成した。(αPD-1については10%のマウスおよびPEF単独療法については18%のマウスと比較)したがって、αPD-1単独の送達は、従来の抗体免疫療法と類似性を有する最も低い応答を有した。特殊なPEFエネルギー単独の送達は、本明細書において上記に記載したPEFエネルギーの効果のために改善された応答を有した。PEF+αPD-1の併用送達は、PEFまたはαPD-1の単独療法と比較して有意に(P値<0.001)生存成果を改善しただけでなく、PEFエネルギーおよびαPD-1が一緒に作用して相乗的に増強された抗腫瘍応答を生み出した。この成果は、相加的応答を超えていた。
【0240】
次いで、完全奏効を達成したマウスを、新しいEMT6腫瘍を移植することによってEMT6腫瘍細胞で再チャレンジした。これは、初期処置が身体の他のエリアにおいてEMT6細胞に対するより長期の免疫応答を誘導するのに十分であるかどうかを決定するためであり、この現象はアブスコパル効果と呼ばれる。免疫系活性化の評価を、処置された原発性腫瘍、未処置の続発性腫瘍および末梢血中のリンパ球(CD8+)の測定によって決定した。対照コホートとして、ナイーブマウスにEMT6細胞をチャレンジし、IgGを週に3回投与した。図23は、全ての対照動物が腫瘍を成長させたことを示す。0日目は、EMT6チャレンジの日である。
【0241】
図24は、3つの群:PEF+αPD-1、PEFエネルギー単独およびαPD-1単独の結果を示す。αPD-1のみを投与した再チャレンジマウスは腫瘍を成長させた。PEFエネルギーのみを受けた再チャレンジマウスのうち、1匹は腫瘍を発症し、1匹は腫瘍を発症しなかった。併用療法PEF+αPD-1を受けた再チャレンジマウスのうち、1匹は腫瘍を成長させ、2匹は腫瘍を成長させなかった。このデータは、特殊なPEFエネルギーが、特定の癌サブセットに対する長期免疫を促進するのに十分であることを実証している。
【0242】
より攻撃的な転移性腫瘍モデルである4T-1腫瘍モデルにおいて、併用治療プロトコル(PEF+αPD-1)も利用した。ここでも、特殊なPEF送達単独、αPD-1単独および対照群と比較した。ここで、対照群にはIgGを投与した。このモデルでは、直接処置された疾患および離れた疾患に対する特殊なパルス電界(PEF)およびチェックポイント阻害(αPD-1)の影響を決定し、併用処置によって得られる増強された応答の機構を同定することが求められた。
【0243】
未処置腫瘍および転移性疾患を有する肺組織について、処置の18日後にサイトカイン分析を行った。分析したサイトカインは以下の通りであった:A)T細胞活性化因子、IL-2;B)好中球動員ケモカイン、CXCL1;C)腫瘍生存率のマーカーKi67;およびD)免疫細胞浸潤物中の細胞傷害性T細胞CD8。結果の例を図25A~25Dに示す。図25Aに示すように、特殊なPEFエネルギーおよびチェックポイント遮断(すなわち、PEF+αPD-1)の送達は、未処置腫瘍においてT細胞活性化因子IL-2の発現を有意に上昇させたが、他のすべての生物学的コホート(すなわち、対照、特殊なPEFエネルギーのみ、αPD-1のみ)はそうではなかった。図25Bに示すように、PEF+αPD-1の送達は、IgG対照群と比較して、腫瘍および肺の両方において好中球動員ケモカインCXCL1を有意に減少させた。図25Cに示されるように、腫瘍生存率についてのマーカー(Ki67)を、処置された動物における転移負荷を特徴づけるためにELISAによって肺組織全体において定量化した。重要なことに、PEFエネルギーおよび免疫療法コホート(すなわち、PEF+αPD-1)のみが、IgG対照群と比較して、肺におけるKi67の総発現を減少させた。図25Dに示すように、免疫細胞浸潤物中の細胞傷害性T細胞(CD8)を、ELISAによって肺組織全体で定量した。PEFエネルギー単独および免疫療法と組み合わせたPEFエネルギー(すなわち、PEF+αPD-1)の送達は、IgG対照およびαPD-1単独の両方と比較して、肺におけるCD8の発現を増加させた。まとめると、これらのデータは、チェックポイント阻害剤を用いたプロトコルに特殊なPEFを含めると(PEF+αPD-1)、4T-1「コールド」腫瘍モデルにおいて強い全身性抗腫瘍応答が誘導されることを示唆している。したがって、併用処置は全身性免疫抑制を緩和した。
【0244】
デバイス、システムおよび方法は、典型的には、本明細書で上述したように、特殊なエネルギー送達デバイス、波形発生機および少なくとも1つの別個のエネルギー送達アルゴリズムを含むシステムを用いて、特殊なPEFエネルギーを細胞に送達する。追加の付属品および機器を利用してもよい。エネルギー送達デバイスは、少なくとも1つの別個のエネルギー送達アルゴリズムに従って波形発生機によって提供されるエネルギーを送達する。いくつかの実施形態では、エネルギー送達デバイスはまた、抗体(例えば、αPD-1)などの1またはそれを超える薬剤を送達することが理解されよう。しかし、他の実施形態では、薬剤は、IV、カテーテル、または針注射などの別個のデバイスによって送達される。必要に応じて、薬剤は、エネルギー送達デバイスと別個のデバイスの両方によって送達されてもよい。特殊なエネルギー送達デバイスの例示的な実施形態は、主に単極エネルギー送達に焦点を合わせて本明細書で提供されるが、双極または多極配置を使用してもよいことが理解されよう。
【0245】
図26は、特殊なエネルギー送達デバイスまたは器具102と、戻り電極140と、波形発生機104とを備えるエネルギー送達システム100の実施形態を示す。この実施形態では、標的組織は、患者Pの肝臓L内に位置する。標的組織細胞は、いくつか例を挙げると、消化器系の細胞(例えば、口、腺、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、腸、結腸、直腸、肝臓、胆嚢、膵臓、肛門管など)、呼吸器系の細胞(例えば、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺など)、泌尿器系の細胞(例えば、腎臓、尿管、膀胱、尿道など)、生殖器系の細胞(例えば、生殖器、卵巣、卵管、子宮、子宮頸部、膣、精巣、精巣上体、精管、精嚢、前立腺、腺、陰茎、陰嚢、乳房など)、内分泌系の細胞(例えば、脳下垂体、松果体、甲状腺、副甲状腺、副腎)、循環器系の細胞(例えば、心臓、動脈、静脈など)、リンパ系の細胞(例えば、リンパ節、骨髄、胸腺、脾臓など)、神経系の細胞(例えば、脳、脊髄、神経、神経節など)、筋系の細胞、および皮膚の細胞を含む、身体全体の任意の場所で処置され得ることが理解され得る。
【0246】
この実施形態では、器具102は、肝臓L内の標的組織まで管腔内に前進させることができる遠位端を有する可撓性の細長いシャフトを含む。図示のように、器具102の遠位端は、口Mを通って食道Eを下って胃S内に前進し、そこで胃壁を通過して肝臓L内に入る。いくつかの実施形態では、遠位端は、胃壁および/または肝臓Lを貫通するように構成された遠位端103を有する。他の実施形態では、別の器具を使用して胃壁を貫通する通路が形成され、この器具はその後、非外傷性先端部を有する器具102が通路を通過できるように取り外される。
【0247】
この実施形態では、薬剤111は、IVバッグ112を使用して全身的に静脈内送達される。これは、典型的には、肝臓L内の標的組織を含む患者Pの身体全体に薬剤を分散させる。他の実施形態では、薬剤111は局部的に送達されることが理解されよう。そのような実施形態では、薬剤111は、標的器官または組織エリアにつながる動脈系の上流の脈管構造に送達され得る。次いで、薬剤111は、下流の動脈循環を通って標的領域に移動する。薬剤111のボーラス注射が提供される場合、薬剤111が標的組織に突然入る。しかし、注入ポンプの使用などによって薬剤111が経時的に送達される場合、薬剤111の安定した持続レベルが標的組織において達成され得る。他の実施形態では、薬剤111は、標的組織への直接注射によって送達されることが理解され得る。そのような実施形態では、注射デバイスは、標的器官領域の実質組織内などの標的組織内またはその近傍に挿入され、薬剤を含有する溶液が注射される。薬剤の溶液は、実質および間質腔を通るその分布が移動の標的となるエリアまたは体積に達するまでの期間を許容され得る。全身的、局部的および局所的送達の任意の組み合わせを代替的に使用してもよいことが理解されよう。
【0248】
特殊なパルス電界(PEF)エネルギーは、送達デバイス102の遠位端を通って標的組織に送達される。送達デバイス102の近位端は、波形発生機104に電気的に接続されている。いくつかの実施形態では、発生機104はまた、外部心臓モニタ(図示せず)と接続されて、患者Pから検知された心臓信号を用いてエネルギーの協調送達を可能にする。
【0249】
この実施形態では、エネルギー送達デバイス102は単極になるように設計されており、器具102の遠位端は送達電極を有し、戻り電極140は身体の外側の皮膚、典型的には大腿部(図示のように)、腰または背中に配置される。
【0250】
特殊なパルス電界(PEF)は、発生機104によって提供され、標的組織エリア上、標的組織エリア内、または標的組織エリア付近に配置されたエネルギー送達体108を介して組織に送達される。いくつかの実施形態では、エネルギー送達体108は、同様に標的組織と接触する導電性物質と接触して配置されることが理解されよう。そのような溶液は、等張液または高張液を含み得る。次いで、電気パルスが、標的組織の近傍でエネルギー送達体108を通って送達される。これらの電気パルスは、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズム152によって提供される。そのような実施形態では、アルゴリズム152は、いくつか例を挙げると、パルスの数、パルス幅、およびパルス間の遅延からなる、エネルギー振幅(例えば電圧)および印加エネルギーの持続時間などの信号のパラメーターを指定する。いくつかの実施形態では、エネルギー送達体のうちの1またはそれを超えるものは小さく、電極の周りに大量のエネルギーを散逸させる傾向がある。したがって、エネルギーの最適な送達が望まれる。
【0251】
いくつかの実施形態では、二相性パルスを使用してもよい。そのような実施形態では、追加のパラメーターは、二相性パルスの極性間のスイッチタイムおよび二相性サイクル間のデッドタイムを含んでもよい。センサー情報および自動シャットオフ仕様などに基づくフィードバックループが含まれてもよい。二相性波形は、患者の筋刺激を低減させるのに便利である。これは、エネルギー送達体のわずかな動きが非効果的な療法を容易にもたらし得る用途において特に重要である。二相性波形は、極性間の移行中の神経活性化を最小限に抑えるために、信号の位相/極性の急速な変化を伴う。
【0252】
特殊なPEFエネルギーは、様々なエネルギー送達デバイスまたは器具102によって送達されてもよい。典型的には、器具102は、本体と共に標的組織まで前進させることができる遠位端を有する可撓性の細長いシャフトと、遠位端の近傍に配置された少なくとも1つのエネルギー送達体108とを備える。エネルギー送達体108は、PEFエネルギーを標的組織に送達する1またはそれを超える電極を含む。前述のように、いくつかの実施形態では、エネルギー送達デバイス102はPEFエネルギーを送達し、薬剤111は、IV、カテーテル、または針注射などの別個のデバイスによって送達される。薬剤111のそのような送達は、PEFエネルギーの送達に関して前、間または後など様々な時点で起こり得る。PEFエネルギー送達とは別の時間に送達される場合、そのような送達は、数秒以下、数秒、数分、数時間、数日、数週間、または数ヶ月単位でPEFエネルギー送達から分離され得る。
【0253】
図27Aは、針またはプローブ500を介した標的組織への薬剤111の直接注射を示す。標的組織は、細胞Cとして示されている(縮尺通りではない)。針またはプローブ500は、注射薬剤111が標的組織を浸すことができるように、標的組織内またはその近傍に挿入される。この実施形態では、次いで、プローブ500が除去され、薬剤111が生体内分布のために滞留する。図27Bを参照すると、次いで、器具102の遠位端を所望の時点で標的組織に挿入して、それにより、エネルギー送達体108が標的組織内またはその近傍に望ましく配置される。この実施形態では、エネルギー送達体108は、単一の電極からなる。次いで、特殊なPEFエネルギーは、波線502によって示されるように、エネルギー送達体108から標的組織に送達される。この実施形態では、PEFエネルギーは、他の効果の中でも、細胞C中のPD-L1を上方制御し、薬剤111は、PD-1/PD-L1相互作用を妨害するαPD-1を含む。これにより、患者P内のT細胞は、応答して標的細胞Cを同定して死滅させることができる。
【0254】
いくつかの実施形態では、薬剤111およびエネルギーは、薬剤111がエネルギー送達デバイスまたは器具102によって送達されるのに十分近い時間で送達される。図28A~28Bは、針形状を有するエネルギー送達体108を有するエネルギー送達デバイスまたは器具102を示す。針形状の先端部は、針と同様に貫通し、その内部管腔を通して薬剤111を送達することができる。また、エネルギー送達体108は、電極として作用する針形状の先端部を除いて、絶縁層504によって電気的に絶縁されている。図28Aは、エネルギー送達体108を介した標的組織への薬剤111の直接注射を示す。ここでも、標的組織は、細胞Cとして示されている(縮尺通りではない)。先端部は、注射薬剤111が標的組織を浸すことができ、必要に応じて生体内分布のために滞留するように、標的組織内またはその近傍に挿入される。図28Bを参照すると、次いで、PEFエネルギーは、波線501によって示されるように、エネルギー送達体108から標的組織に送達される。この実施形態では、PEFエネルギーは、他の効果の中でも、細胞C中のPD-L1を上方制御し、薬剤111は、PD-1/PD-L1相互作用を妨害するαPD-1を含む。これにより、患者P内のT細胞は、応答して標的細胞Cを同定して死滅させることができる。
【0255】
図29は、エネルギーが局所的に送達される間に局部的に送達される薬剤111を示す(必要に応じて薬剤111は局所的にさらに送達される)。ここで、薬剤111は、標的組織エリアに供給する脈管構造V内に配置されたカテーテル503などの別個のデバイスによって送達される。したがって、薬剤111は、標的組織エリアに局部的に送達される。エネルギー送達デバイスまたは器具102は、異なるアプローチから標的組織エリアに挿入される。ここで、器具102は、針形状を有するエネルギー送達体108を備える。針状の先端部は、針と同様に貫通可能である。いくつかの実施形態では、薬剤111は、その内部管腔を通して送達することができる。この実施形態では、エネルギー送達体108は、電極として作用する針形状の先端部を除いて、絶縁層504によって電気的に絶縁されている。先端部は標的組織内またはその近傍に挿入され、次いで、PEFエネルギーは、波線501によって示されるように、エネルギー送達体108から標的組織に送達される。この実施形態では、PEFエネルギーは、他の効果の中でも、細胞C中のPD-L1を上方制御し、薬剤111は、PD-1/PD-L1相互作用を妨害するαPD-1を含む。これにより、患者P内のT細胞は、応答して標的細胞Cを同定して死滅させることができる。
【0256】
図30は、その遠位端の近傍にエネルギー送達体108を有するシャフト106を備えるエネルギー送達デバイスまたは器具102を示し、エネルギー送達体108は複数のタイン600を備える。典型的には、タイン600は、組織を貫通するように尖った形状を有する。同様に、タイン600は、典型的には、例えばシャフトに対して斜めの角度または垂直に、シャフト106から横方向外側に延びる。いくつかの実施形態では、タイン600は、シャフト106の周りに円周方向に展開され、他の実施形態では、タイン600は、一列に整列されるなどシャフト106の側面から展開される。いくつかの実施形態では、タイン600はシャフト106から同じ距離だけ延び、他の実施形態では、タイン600は様々な距離だけ延びる。いくつかの実施形態では、シャフト106からのタイン600の少なくともいくつかの伸長は調整可能であることが理解されよう。いくつかの実施形態では、タイン600は、シャフト106の遠位先端部から、例えば中央管腔を通って延在することも理解されよう。
【0257】
典型的には、各タイン600は、薬剤111および/またはエネルギーをそこから送達する。いくつかの実施形態では、薬剤111は、タイン600の先端部601から送達され、他の実施形態では、薬剤111は、タイン600に沿って送達ポート602から送達される。いくつかの実施形態では、タイン600は一緒に通電可能である(例えば、単一の電極として作用する)、またはタイン600の少なくともいくつかは個別に通電可能である(例えば、双極対で作用する、またはグループで作用することを含む選択可能な単一電極として作用する)。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるタイン600は、異なるエネルギー(例えば、異なるエネルギー送達アルゴリズム152から生成される)および/または異なるタイプの薬剤111を送達する。
【0258】
この実施形態では、シャフト106は、第1のセクション106a、第2のセクション106b、および第3のセクション106cの3つのセクションを有する。図30に示されるように、第1のセクション106aは、第3のセクション106cに遠位である第2のセクション106bに遠位である。各セクション106a、106b、106cは、様々な異なる電極の組み合わせを生み出すように絶縁または非絶縁であってもよい。これにより、様々な電界形状が可能になり、および/または電界を所望の方向に向けることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのタイン600の少なくとも一部は、そこから発するエネルギーを導くように絶縁されていることも理解されよう。全体として、タイン600は、多くの場合、単一の針を含むエネルギー送達デバイス108を有する器具102を用いた場合よりも、器具102の単一の配置で、より大きな体積の標的組織に薬剤111および/またはエネルギーを送達することができる。
【0259】
いくつかの実施形態では、第1のセクション106aはエネルギー送達体108として作用し、1またはそれを超えるタイン600はエネルギー送達体108として作用する。異なるエネルギー送達体108の各々は、同じまたは異なるタイプのエネルギーを送達してもよい。同様に、エネルギー送達体108は、グループで作用してもよい。いくつかの実施形態では、タイン600は、第1のセクション106aを越えて延在する。いくつかの実施形態では、タイン600はシャフト106から(第1のセクション106aに対して)同じ距離だけ延び、他の実施形態では、タイン600は(第1のセクション106aに対して)様々な距離だけ延びる。いくつかの実施形態では、第1のセクション106aはエネルギー送達体108として作用し、1またはそれを超えるタイン600は薬剤111を送達するための導管として作用する。
【0260】
いくつかの実施形態では、PEFエネルギーは、標的組織と接触している導電性流体(例えば、血液、生理食塩水など)に送達されることが理解され得る。したがって、エネルギーは、本明細書で上述した効果のために、導電性流体を通って標的組織に通過することができる。
【0261】
要約すると、本明細書に記載の特殊なPEF処置は、処置成果に利益をもたらす適応免疫応答を引き起こす。チェックポイント遮断(CPB)をPEF処置プロトコルに含めることがPEF単独を超える成果を改善することを検証するために、トリプルネガティブ乳癌の2つの同系同所性モデル(EMT6および4T-1マウス腫瘍モデル)を研究で使用した。PEF処置を伴うPEF治療プロトコルにチェックポイント遮断を含めることがPEF単独を超えて成果を改善することができることを検証するために、トリプルネガティブ乳癌の同系同所性モデル(EMT6腫瘍モデル)を研究で使用した。次に、併用治療コホートが長期の腫瘍特異的免疫を提供することを検証するために、処置の60日後にEMT6腫瘍細胞注射でCRを達成した動物を再チャレンジした。併用療法がどのように相乗作用して抗腫瘍免疫応答を生成するかを検証するために、処置前後の血液中のサイトカイン発現に対する全身変化に関する経路分析を行った。次に、転移性乳癌の同系モデルにおけるチェックポイント遮断と組み合わせたPEF処置によって媒介される腫瘍抑制を評価した。併用療法が肺転移における抗腫瘍免疫応答を改善したことを決定するために、サイトカイン分析を実施し、処置後18日での4T-1肺組織における核増殖因子(Ki67)を定量した。
【0262】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、PEFエネルギー送達およびCPBが相乗して、いくつか例を挙げると、免疫原性細胞死、腫瘍抗原およびDAMPの放出、先天性アームによる炎症誘発性TME駆動、Skew Th1/Th17、DC活性化、NK活性化、TLRシグナル伝達、細胞傷害性T細胞活性化、および創傷治癒応答を達成することが理解され得る。
実施例3
【0263】
チェックポイント阻害剤療法を含めることにより、特殊なパルス電界の免疫原性が増強される
【0264】
背景:チェックポイント阻害単独療法は、いくつかの癌サブセットにわたって印象的な臨床結果をもたらした;しかしながら、応答は、腫瘍が堅牢なT細胞浸潤物を欠く患者において限定的なままである。さらに、臨床的に有意義な応答を達成する患者では、これらの抗腫瘍効果は、腫瘍がより免疫抑制性の表現型に移行するにつれて一般に一過性である。したがって、チェックポイント遮断を局所療法と組み合わせることによって疾患転帰を改善することに対する関心が高まっている。局所療法は、免疫原性細胞死およびその後の腫瘍抗原の放出を迅速に促進して、全身性抗腫瘍応答を推進する可能性を有する。PEF処置は、細胞膜を不安定化し、細胞死を推進するために高周波二相性電気パルスを使用する非熱的、針誘導、局所領域療法である。重要なことに、PEFは細胞外マトリックス(ECM)を保存し、血管およびリンパ管の再生を可能にする。ここで、本発明者らは、PEFとプログラム細胞死受容体-1(抗PD-1)遮断の組み合わせがトリプルネガティブ乳癌のマウスモデルにおいて全身性抗腫瘍応答を強化するかどうかを決定することに着手した。
【0265】
目的:この前臨床試験では、αPD-1によるチェックポイント阻害を含めた特殊なパルス電界(PEF)腫瘍処置に対する免疫応答を評価した。適切なPEF処置線量がタンパク質を変性させない場合、腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は無傷のままであり、アブスコパル効果を含む処置解決および修復プロセスにおいて抗原提示細胞がそれらと相互作用することが利用可能である。この研究は、併用処置によって得られたアブスコパル効果および増強された応答の根底にある免疫原性機構を同定した。
【0266】
方法:免疫適格雌Balb/cマウスに、1200,000個の4T1乳癌細胞(「コールド」腫瘍微小環境を表す)を第5の乳房脂肪パッド(原発性腫瘍)において同所性接種した。マウスを4つの群に分けた:IgG対照、抗PD1単独、PEF単独、および抗PD1+PEF。抗PD1投与は、腫瘍接種の日から週に3回投与される200μgであった。直径5mmに達したら(8~10日)、PEF群の腫瘍を、腫瘍の中心に配置された単一の針を通して送達される特殊なPEFの単回適用で処置した。PEF線量は、腫瘍体積のおよそ80%を標的とするように確立された。特殊なPEF線量は、2500V、400kHz、40サイクル、100パケットであった。PEF処置送達日の3日後、第2の4T-1腫瘍を第5の乳房脂肪パッドの対側にチャレンジした(続発性腫瘍)。処置の18日後、対側の腫瘍および肺を分析のために採取した。酵素結合免疫吸着分析(ELISA)を使用して、異なる処置コホートに対する生物学的免疫応答を同定および特徴づけた。
【0267】
結果:未処置腫瘍および転移性疾患を有する肺組織において処置後18日で行われたサイトカイン分析により、併用処置が全身性免疫抑制を緩和したことが確認された。サイトカインパネルには、GM-CSF、IL-1a、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-17、CXCL1、CXCL2、CXCL5、CCL2、TGF-aが含まれた。PEFおよびチェックポイント遮断は、続発性未処置腫瘍におけるT細胞活性化因子IL-2の発現を有意に上昇させたが、他のすべての試験コホートは、処置の18日後の対側の全腫瘍溶解物からのサイトカイン発現を示すヒートマップを提供しなかった(図31)。生物学的群には、以下が含まれた:対照(IgG、n=4)抗PD-1チェックポイント単独療法(αPD-1、n=4)、パルス照射野による直接処置(PEF、n=3)、および併用療法(PEF+αPD-1、n=4)。ヒートマップは、各生物学的群に対するサイトカインの平均濃度(pg/mL)を表す。図31のヒートマップを構築するために、IL-a(図32A)、IL-β(図32B)、IL-2(図32C)、IL-13(図32D)についての多重サイトカイン定量化を使用した。*p<0.05、**p<0.01(フィッシャー検定によるANOVA)。全てのデータを平均標準偏差でプロットする。図32A~32Dは、続発性(未処置)腫瘍におけるサイトカインの存在を指す。
【0268】
さらに、PEFおよび免疫療法による処置は、IgG対照群と比較して、続発性未処置腫瘍および肺の両方において好中球動員ケモカインCXCL1を有意に減少させた。したがって、PEFと組み合わせた免疫療法は、肺転移において抗腫瘍免疫応答を誘導した。図33Aは、処置の18日後の対側の全腫瘍溶解物からのサイトカイン発現を示すヒートマップを提供する。図33Bは、肺組織からのサイトカイン発現が、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)ソフトウェアによって決定されるように、癌に関連する経路にどのように影響するかの分析を示す。
【0269】
処置動物における転移負荷を特徴付けるために、腫瘍生存率(Ki67)および免疫細胞浸潤物中の細胞傷害性T細胞(CD8)のマーカーを、ELISAによって肺組織全体で定量した。PEF単独療法および免疫療法と組み合わせたPEFは、IgG対照単独療法コホートおよびチェックポイント単独療法コホートの両方と比較して、肺におけるCD8の発現を増加させた。図34A~34Bは、処置の18日後の全肺組織溶解物からのKi-67のELISA定量を提供する。生物学的群には、以下が含まれた:対照(IgG、n=7)、抗PD-1チェックポイント単独療法(αPD-1、n=8)、パルス照射野による直接処置(PEF n=3)、および併用療法(PEF+αPD-1、n=7)*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(フィッシャー検定によるANOVA)。全てのデータを平均標準偏差でプロットする。重要なことに、PEFおよび免疫療法コホートのみが、IgG対照群と比較して、肺におけるKi67の総発現を減少させた。図34Cは、処置の18日後の全肺組織溶解物からのCD8のELISA定量を提供する。生物学的群には、以下が含まれた:対照(IgG、n=7)、抗PD-1チェックポイント単独療法(αPD-1、n=8)、パルス照射野による直接処置(PEF n=3)、および併用療法(PEF+αPD-1、n=7)*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(フィッシャー検定によるANOVA)。全てのデータを平均標準偏差でプロットする。
【0270】
要約:未処置腫瘍および処置後18日の転移性疾患を有する肺組織において行われたサイトカイン分析により、併用処置が全身性免疫抑制を緩和したことが確認された。PEFおよびチェックポイント遮断は、続発性未処置腫瘍においてT細胞活性化因子IL-2の発現を有意に上昇させたが、他の研究コホートはいずれも上昇させなかった。さらに、PEFおよび免疫療法による処置は、IgG対照群と比較して、続発性未処置腫瘍および肺の両方において好中球動員ケモカインCSCL-1を有意に減少させた。肺における転移負荷に対するPEF媒介変化を特徴づけるために、本発明者らはまず、処置によって影響を受ける生物学的機能および遺伝子ネットワークを同定するために、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)ソフトウェアを使用した。併用療法は、腫瘍の成長および転移を含む癌に関連する経路の有意な減少をもたらした。次に、本発明者らは、腫瘍生存率(K167)および免疫細胞浸潤物中の細胞傷害性T細胞(CD8)のマーカーを、ELISAによって肺組織全体で定量した。PEF単独療法は、IgG対照単独療法コホートおよびチェックポイント単独療法コホートの両方と比較して、肺におけるCD8の発現を増加させた。重要なことに、PEFおよび免疫療法コホートのみが、IgG対照群と比較して、肺におけるK167の総発現を減少させた。
【0271】
結論:PEFをαPD-1チェックポイント阻害と組み合わせると、免疫抑制性4T-1腫瘍モデルにおいて強い局所および全身性抗腫瘍免疫応答が誘導される。
実施例4
【0272】
4T-1およびEMT-6同所性腫瘍モデル内の特殊なPEFおよびαPD-1の併用送達に対する原発性および続発性腫瘍応答
【0273】
背景:癌患者の処置選択肢は多くの形態の癌に対して改善されているが、後天性薬剤耐性の発生、高い腫瘍再発の発生率、および全身拡散は絶え間ない負の転帰である。しかしながら、最近の努力は、パルス電界(PEF)と協調する免疫処置(すなわち、αPD-1などのチェックポイント阻害剤)の組み合わせが全体的な転帰を改善し得ることを実証している。PEFは、測定可能な全身性応答をもたらす、細胞死、炎症シグナル伝達、および腫瘍微小環境内での生存可能な抗原提示の生成を含む局所事象のカスケードを誘発するための短時間の高振幅パルスエネルギーの適用に依存するエネルギー指向性病巣療法である。
【0274】
目的:この前臨床試験の目的は、特殊なPEFをチェックポイント遮断(CPB)と組み合わせる全体的な相乗効果を評価することであった。
【0275】
方法:免疫適格雌Balbcマウスを麻酔し、第5の乳房脂肪パッド(原発性腫瘍)に200,000個の細胞(それぞれ免疫「ホット」および「コールド」腫瘍微小環境を表すEMT-6または4T-1)を同所性接種した。マウスを4つの群に分けた:IgG対照、αPD1単独療法、PEF単独療法、およびαPD-1+PEF。αPD-1投与は、腫瘍接種の日から週に3回投与される200μgであった。直径5mmに達したら(8~10日)、PEF群の腫瘍を、腫瘍の中心に配置された単一の針を通して送達されるPEFの単回適用で処置した。PEF線量は、腫瘍体積のおよそ80%を標的とするように確立された。PEF処置送達日の3日後、対側の脂肪パッド(続発性腫瘍)に2回目の接種を行った。マウスの健康状態および腫瘍サイズを週に3回モニタリングした。マウスを実験時点または研究終了時に、または臨床的に瀕死であると考えられる場合に安楽死させた。
【0276】
結果:PEF+αPD-1コホートにおける直接処置された対側の腫瘍は、EMT-6マウス腫瘍モデル内のすべての群と比較して、処置後24日までに腫瘍成長の有意な抑制を経験した(図35)。さらに、PEF+αPD-1コホートの58%は、対側の腫瘍を成長させなかった(図35)。全体として、併用治療プロトコルは、PEFまたはαPD-1単独治療と比較して、生存転帰を有意に改善した(P値<0.001)。より具体的には、PEF+αPD-1で処置した動物の41%が完全奏効を達成したのに対して、動物αPD-1およびPEF単独療法ではそれぞれ10%および18%であった(図36)。図35は、未処置腫瘍(IgG)と比較した、PEF、抗PD1および両方の療法で処置したEMT6腫瘍の腫瘍成長曲線を示す。PEF処置群は、IgGおよびaPD1と比較して有意な増殖遅延を示した。PEFと抗PD1との組み合わせは、腫瘍成長をさらに阻害する。図35は、対側の未処置腫瘍の腫瘍成長を示す。原発性腫瘍上に全身性抗PD1および局所PEFを受けたマウスの対側腫瘍は、7/12のマウスにおいてサテライト腫瘍を成長させることができなかった。図36は、原発性腫瘍に対するPEFおよび全身性抗PD1療法で処置したマウスが、PEF単独(18%)、抗PD1単独(10%)および処置なし(0%)と比較して41%の生存率を有したことを示す。したがって、図34~36には、EMT-6マウス腫瘍モデルについてのPEF後14日での原発性腫瘍成長曲線(図35)および続発性腫瘍成長曲線(図36)を、24日間にわたる生存プロット(図37)と共に示す。
【0277】
同様に、4T-1腫瘍モデルは、PEF後19日でのIgGおよびαPD-1単独療法と比較して、PEF単独療法およびPEF+αPD-1群の両方について、原発性および対側の腫瘍成長の有意な低減(P値<0.05)を示した(図38A)。図38A~38Bには、原発性腫瘍成長曲線(図38A)および続発性腫瘍成長曲線(図38B)を、4T-1マウス腫瘍モデルについてPEF後19日を示す。併用療法を受けたマウスの29%およびPEF単独療法を受けたマウスの13%において、対側の腫瘍成長は達成されなかった。
【0278】
結論:このデータは、チェックポイント阻害(αPD-1)および病巣PEF療法が相乗的に作用して、免疫原性(EMT-6)マウス腫瘍モデルおよび免疫抑制性(4T-1)マウス腫瘍モデルの両方において、増強された抗腫瘍応答を生み出すことを示唆している。
実施例5
【0279】
2つの異なる投薬スケジュールを比較する同様の研究を行った。CPB単独と比較してCPBをPEF療法と組み合わせる改善を最適化するために、2つの個別のCPB投薬スキームを生存の影響によって評価した。これ投薬スキームには、原発性腫瘍接種時に開始される高頻度抗PD-1投薬スケジュール(図39A)、およびCPBがPEF処置時に開始される低頻度後期抗PD-1投薬スケジュール(図39B)が含まれた。併用治療投薬スキームの各々は、PEFまたは抗PD1単独療法と比較して有意に(p<0.001)生存転帰を改善した。完全奏効(CR)が、高頻度および低頻度の後期状態の抗PD-1用量群における併用PEF+抗PD-1マウスの36%および85%においてそれぞれ得られた。これは、動物の抗PD1およびPEF単独療法のそれぞれ10%および18%と比較される(図40)。図40は、処置60日後の生存を示すKaplan-Meier曲線である。生物学的群には、対照(IgG、n=11)、抗PD-1チェックポイント単独療法(αPD-1、n=11)、パルス照射野による直接処置(PEF、n=11)、高頻度CPB+PEF(PEF+αPD-1)(HF)、n=22)、低頻度後期CPB+PEF(PEF+αPD-1)(LFLS)、n=7が含まれた。
【0280】
次に、長期の腫瘍特異的免疫を提供する併用療法コホートを特定するために、本発明者らは、処置の60日後にEMT6腫瘍細胞注射によってCRを達成した動物を、天然の腫瘍部位である第2の乳房脂肪パッドに再チャレンジした(図41A~41B)。図41Aは、EMT6腫瘍細胞注射で以前にチャレンジされていない天然対照マウスを示す。図41Bは、以前に完全奏効を達成していたPEFおよびCPBの組み合わせ群からの動物を示す。天然対照マウスについては、腫瘍を第5の乳房パッド(左側および右側)および第2の乳房脂肪パッド(左側のみ)に接種した。PEF+抗PD-1マウスについては、腫瘍を第2の乳房脂肪パッドのみにチャレンジした。全ての腫瘍は、対照コホートで容易に成長した。まとめると、併用療法で処置した動物の94%(17/18)が、接種後20日までに腫瘍を示さなかった。
【0281】
図42に関して、Balb/cマウスに、第5の乳房脂肪パッド(左右両側、両側性腫瘍モデル)において200,000個の細胞(4T-1)を同所性チャレンジした。マウスを4つの群に分けた:対照(IgG、n=8)、抗PD-1チェックポイント単独療法(αPD-1、n=8)、パルス照射野による直接処置(PEF、n=8)、および併用療法(PEF+αPD-1、n=7)。PEF群の腫瘍が直径5mmに達したら(10日間)、腫瘍の中心に配置された単一の針を通して送達されたPEFの単回適用で処置した。
【0282】
同様に、4T1腫瘍モデルは、PEF後19日でのIgGおよびPD-1単独療法と比較して、PEF単独療法およびPEF+抗PD-1群の両方について、原発性および対側の腫瘍成長の有意な低減(p<0.05)を示した。対側腫瘍は、PEF+抗PD-1群において有意により小さかった(図43)。併用療法を受けたマウスの43%および単独療法(PEF単独)を受けたマウスの12%において、対側の腫瘍成長は達成されなかった。
【0283】
図43は、原発性または直接処置された4T-1腫瘍の成長プロットである。生物学的群には、以下が含まれた:対照(IgG、n=8)、抗PD-1チェックポイント単独療法(αPD-1、n=8)、パルス照射野による直接処置(PEF、n=8)、および併用療法(PEF+αPD-1)(LFLS)、n=7。*p<0.05(テューキー検定による反復測定ANOVA)。全てのデータは平均SEMをプロットした。
【0284】
図44は、PEFの18日後または接種の13日後の対側または未処置の4T-1腫瘍体積の生物学的群間の比較である。全てのデータを平均標準偏差でプロットする。
【0285】
結論:このデータは、チェックポイント阻害(αPD-1)および病巣PEF療法が相乗的に作用して、免疫原性(EMT-6)マウス腫瘍モデルおよび免疫抑制性(4T-1)マウス腫瘍モデルの両方において増強された永続的な抗腫瘍応答を生み出すことを示唆している。
PEF線量の変更
【0286】
前述のように、特殊な処置線量は、以下を含むパラメーター値の組み合わせから生成される波形によって提供される:電圧=3000V、基本周波数=400kHz、パケットあたりの二相性パルス(すなわち、サイクル)の数=40サイクル、サイクル間遅延=1000マイクロ秒、パケットの数=100パケットおよびパケット間遅延=3秒。この特殊な線量からの逸脱は、典型的には異なる結果を生成することが理解されよう。
【0287】
図18に戻って参照すると、腫瘍におけるTLSの存在がより良好な予後および臨床転帰と相関する、三次リンパ球構造(TLS)を有する様々な組織試料が示されている。特殊な処置線量で処置した場合、リンパ凝集体およびTLSは、PEF処置腫瘍の末梢付近で一貫して観察されている。しかしながら、線量を変更すると(図18の組織試料T1、T2、T3)、TLSの数は劇的に低減するか、または存在しなくなる。組織試料T1中の腫瘍は特殊な線量を受けたが、エネルギー送達は心拍と非同期であり、エネルギー送達は短時間中断した。組織試料T2中の腫瘍は、100パケットを有する単回線量ではなく、各々が50パケットを有する2回線量でエネルギーを受けた。組織試料T3中の腫瘍はまた、針の配置およびパケット送達を評価するためのCTスキャンを生成するために、100パケットを有する単回線量ではなく、各々が50パケットを有する2回線量でエネルギーを受け取った。これらの場合、エネルギー送達は途中で中断されたが、処置効果のさらなる蓄積を防ぐのに十分な長さの休止を伴い、したがって後の試料とは機能的に異なる線量を有した。図18の組織(T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9、T10、T11、T12)におけるTLSの平均数は54.8であるが、変更された線量を受けた組織(T1、T2、T3)におけるTLSの平均数はわずか4である。TLSの数は、成熟したTLS(増殖性中心芽細胞の特徴的な形態を示す成熟CD20-B細胞を含有する胚中心を有し、多くの場合、胚中心内に色素性体マクロファージおよび濾胞性樹状細胞を有する)および未成熟なTLS(胚中心を有しない)から構成される。図18の組織(T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9、T10、T11、T12)における成熟TLSの平均は5.6であるが、変更された線量を受けた組織(T1、T2、T3)におけるTLSの平均数は0である。図18の組織(T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9、T10、T11、T12)における未熟なTLSの平均は49.2であるが、変更された線量を受けた組織(T1、T2、T3)におけるTLSの平均数は4である。図18の組織の平均は、T1、T2、T3を含み、したがって、これらの3つの腫瘍を除外した場合の平均はさらに高いことが理解され得る。したがって、変更された線量の効果の差は、計算されたものよりも大きい。これは、特殊な線量における変化が、より低い免疫学的応答、低下した有効性およびあまり望ましくない臨床転帰をもたらし得ることを示している。
【0288】
それにもかかわらず、典型的には異なる成果を伴う異なるパラメーターが使用され得ることが理解され得る。異なる成果は、いくつかの態様では異なり、他の態様では同様であり得る。同様に、いくつかの状況によっては異なる成果が好ましく、他の状況では好ましくない場合がある。以下では、エネルギー波形のパラメーターについてさらに説明する。
A.電圧
【0289】
使用され考慮される電圧は、方形波形の最上部であってもよく、正弦波もしくは鋸歯状の波形のピークであってもよく、または正弦波もしくは鋸歯状の波形のRMS電圧であってもよい。いくつかの実施形態では、エネルギーは単極様式で送達され、各高電圧パルスまたは設定電圧416は、約500V~10,000V、特に約3000V~3300V、3000V~3500V、3300~3500V、3500V~4000V、約3500V~5000V、約3500V~6000Vであり、いくつか例を挙げると、約3000V、3300V、3500V、4000V、4500V、5000V、5500V、6000Vを含むその間のすべての値および部分範囲を含む。組織に送達される電圧は、器具102の固有インピーダンスに起因する器具102の長さに沿った電気的損失を考慮に入れながら、または長さに沿った損失を考慮に入れずに、発生機104の設定点に基づくことができ、すなわち、送達される電圧は、発生機または器具の先端部で測定することができる。
【0290】
設定電圧416は、エネルギーが単極様式で送達されるかまたは双極様式で送達されるかに応じて変化し得ることが理解されよう。双極送達では、より小さく、より指向性のある電界のために、より低い電圧が使用され得る。療法に使用するために選択される双極電圧は、電極の分離距離に依存するが、1またはそれを超える遠隔分散パッド電極を使用する単極電極構成は、身体上に配置されたカテーテル電極および分散電極の正確な配置をあまり考慮せずに送達され得る。単極電極の実施形態では、10cm~100cm程度の有効分離距離で、分散電極に到達するための本体を通る送達エネルギーの分散挙動のために、より大きな電圧が通常使用される。逆に、双極電極構成では、1mm~1cmを含む0.5mm~10cm程度の電極の比較的近い活性領域は、分離距離から組織に送達される電気エネルギー濃度および有効線量に対してより大きな影響をもたらす。例えば、所望の組織深さ(1.3mm)で所望の臨床効果を誘発するために目標とする電圧対距離比が3000V/cmである場合、分離距離が1mmから1.2mmに変更される場合、これは300から約360Vへの処置電圧の必要な増加、つまり20%の変更をもたらす。
B.周波数
【0291】
1秒あたりの二相性サイクルの数は、信号が連続的であるときの基本周波数であることが理解され得る。特殊なPEF波形は線量全体にわたって連続していないので(例えば、波形はパケットおよび遅延を含む)、基本周波数は、特殊なPEF波形の二相性パルスのパルス幅を記述する方法として使用される。パルス幅は、単一の二相性サイクルの前縁と後縁との間の経過時間の尺度であり、基本周波数の値から導出することができることが理解されよう。例えば、基本周波数が400Hzの波形は、2.5マイクロ秒の二相性パルス幅を有する。
【0292】
いくつかの実施形態では、二相性パルスを利用して、望ましくない筋刺激、特に心筋刺激を低減する。他の実施形態では、パルス波形は単相性であり、明確な固有の周波数はない。代わりに、周波数を導出するために単相性パルス長を2倍にすることによって基本周波数が考慮され得る。いくつかの実施形態では、信号は、100kHz、200kHz、300kHz、400kHz、500kHz、100~500kHzなどを含む、100kHz~1MHz、より具体的には100kHz~1000kHzの範囲の周波数を有する。いくつかの実施形態では、信号は、粘膜下細胞または平滑筋細胞など、ある程度深く位置する特定の細胞を処置または影響を及ぼすために、典型的には管腔壁を貫通するおよそ100~600kHzの範囲の周波数を有する。いくつかの実施形態では、信号は、上皮細胞または内皮細胞などのある程度浅い特定の細胞を処置または影響を及ぼすために、典型的には管腔壁を貫通するおよそ600kHz~1000kHzまたは600kHz~1MHzの範囲の周波数を有する。いくつかの電圧では、100~250kHzを下回る周波数が望ましくない筋刺激を引き起こす可能性があることが理解されよう。したがって、いくつかの実施形態では、信号は、400kHz、450kHz、500kHz、550kHz、600kHz、650kHz、700kHz、750kHz、800kHzなど、400~800kHzまたは500~800kHzの範囲の周波数を有する。特に、いくつかの実施形態では、信号は600kHzの周波数を有する。さらに、心臓同期は、通常、感受性の律動期間中の望ましくない心筋刺激を低減または回避するために利用される。信号アーチファクトを最小限に抑える構成要素では、さらにより高い周波数を使用できることが理解されよう。
C.電圧-周波数の平衡化
【0293】
送達される波形の周波数は、適切な処置効果を維持するために同期して処置電圧に対して変化し得る。このような相乗的変化には、より強い効果を引き起こす周波数の減少を、より弱い効果を引き起こす電圧の減少と組み合わせて含む。例えば、場合によっては、処置は、800kHzの波形周波数で単極様式で3000Vを使用して送達され得るが、他の場合では、処置は、400kHzの波形周波数で2000Vを使用して送達され得る。
【0294】
反対方向で使用される場合、処置パラメーターは、それを非常に効果的にするように操作され得、それは、気道処置のための軟骨などの望ましくない組織に対する筋収縮の可能性またはリスク効果を増加させ得る。例えば、800kHzで2000Vを使用するなど、周波数を上げて電圧を下げると、処置は十分な臨床治療上の利益を有さない可能性がある。反対に、電圧を3000Vに増加させ、周波数を400kHzに減少させた場合、側枝感受性組織に望ましくない処置効果が及ぶ可能性がある。場合によっては、これらの望ましくない組織の過剰処置は、気道虚脱を引き起こすのに十分な気道内の軟骨組織の破壊、または正常な蠕動運動の中断を引き起こすのに十分なGI管内の平滑筋の破壊など、患者の罹患率または安全性の懸念をもたらす可能性がある。他の場合では、標的化されていない組織または望ましくない組織の過剰処置は、良性の臨床転帰を有し、過剰処置された場合に患者の応答または罹患率に影響を及ぼさない可能性がある。
D.サイクルおよびパケット
【0295】
上述したように、アルゴリズム152は、一連のエネルギーパケットを含む波形を有する信号を規定し、各エネルギーパケットは一連の高電圧パルスを含む。典型的には、パルスは二相性であるので、それらはサイクルと呼ばれる。図4を参照すると、最初のパケット402は、サイクルカウント420が2である。いくつかの実施形態では、サイクルカウント420は1パケットあたり1~100に設定され、5サイクル、10サイクル、20サイクル、30サイクル、40サイクル、50サイクル、60サイクル、70サイクル、80サイクル、90サイクル、100サイクルなど、その間のすべての値および部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、サイクルカウント420は、1~5サイクル、1~10サイクル、1~25サイクル、10~20サイクル、1~40サイクル、40~50サイクル、1~60サイクル、50~60サイクル、1~80サイクル、1~100サイクル、50~100サイクル、1~1,000サイクルまたは1~2,000サイクルであり、その間のすべての値および部分範囲を含む。
【0296】
パケット持続時間は、他の要因の中でも、サイクルカウントによって決定される。典型的には、サイクルカウントが高いほど、パケット持続時間が長くなり、送達されるエネルギー量が大きくなる。いくつかの実施形態では、パケット持続時間は、いくつか例を挙げると、およそ50~1000マイクロ秒の範囲内、例えば50μs、60μs、70μs、80μs、90μs、100μs、125μs、150μs、175μs、200μs、250μs、100~250μs、150~250μs、200~250μs、500~1000μsである。他の実施形態では、パケット持続時間は、150μs、200μs、250μs、500μs、または1000μsなど、およそ100~1000マイクロ秒の範囲内である。
【0297】
いくつかの実施形態では、処置中に送達されるパケットの数、またはパケットカウントは、50~280パケットを含んでもよく、50、60、70、80、90、100、50~100、80~100、100~110、110、120、130、140、150、100~150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、および280パケットなど、その間のすべての値および部分範囲を含む。
【0298】
【表3】
E.休止期間/パケット間遅延
【0299】
いくつかの実施形態では、休止期間またはパケット間遅延406と呼ばれるパケット間の時間は、約0.1秒~約5秒の間に設定され、その間のすべての値および部分範囲を含む。他の実施形態では、休止期間406は、約0.001秒~約10秒の範囲であり、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒など、その間のすべての値および部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、休止期間406は、およそ3~5秒である。特に、いくつかの実施形態では、各パケットが心拍に関して指定された期間内に同期して送達されるように、信号は心臓律動と同期され、したがって休止期間は心拍と一致する。心臓同期が利用される他の実施形態では、後のセクションで説明するように、パケット間の休止期間が心臓同期の影響を受ける可能性があるため、休止期間406は変化してもよい。
F.スイッチタイムおよびデッドタイム/サイクル間遅延
【0300】
スイッチタイムは、二相性パルスの正ピークと負ピークとの間に送達されるエネルギーのない遅延または期間である。いくつかの実施形態では、スイッチタイムは、約0~約1マイクロ秒の範囲であり、その間のすべての値および部分範囲を含む。他の実施形態では、スイッチタイムは、1~20マイクロ秒の範囲であり、その間のすべての値および部分範囲を含む。他の実施形態では、スイッチタイムは、約2~約8マイクロ秒の範囲であり、その間のすべての値および部分範囲を含む。
【0301】
遅延はまた、「デッドタイム」またはサイクル間遅延と呼ばれる二相性パルスの各サイクル間に挿入され得る。サイクル間遅延はパケット内で発生するが、サイクル間または二相性パルス間で発生する。これは、パケット間で発生する休止期間またはパケット間遅延とは対照的である。他の実施形態では、サイクル間遅延412は、0.01~0.5マイクロ秒、1~10マイクロ秒、2~5マイクロ秒、10~20マイクロ秒、50~100マイクロ秒、1000マイクロ秒、1000~1500マイクロ秒、または1000マイクロ秒~100ミリ秒の範囲内であり、その間のすべての値および部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、サイクル間遅延412は、0.2~0.3マイクロ秒の範囲内である。サイクル間遅延はまた、パケット内の別個の単相性パルス間の期間を定義するために使用され得る。
【0302】
この種の遅延は、典型的には、波形内の二相性キャンセルの影響を低減するためにパケットに導入される。二相性キャンセルは、二相性波形対単相性波形に応答した細胞調節の誘導の低減を指すために使用される用語であり、特にスイッチタイムおよびデッドタイムが小さい場合(例えば10μs未満)である。いくつかの実施形態では、二相性キャンセルの影響は、スイッチタイム遅延およびデッドタイムを導入することによって低減される。場合によっては、スイッチタイムとデッドタイムの両方を一緒に増加させて効果を強化する。他の例では、この効果を誘導するために、スイッチタイムのみまたはデッドタイムのみを増加させる。
【0303】
いくつかの実施形態では、スイッチタイム持続時間は、離れた細胞の効果に対する療法効果の程度が療法の標的に対して最適化されるように調整される。いくつかの実施形態では、スイッチタイム持続時間またはデッドタイム持続時間は、離れた筋細胞収縮を減少させるために最小化され、局所療法効果はより低い。他の実施形態では、スイッチタイム持続時間は、局所療法効果を増大させるために延長され、さらなる離れた筋細胞収縮が起こり得る。いくつかの実施形態では、スイッチタイムまたはデッドタイムの持続時間を延長して局所療法効果を高め、神経筋麻痺薬を使用して、結果として生じる筋収縮の増加を制御する。いくつかの実施形態では、スイッチタイム持続時間は10ns~2μsであるが、他の実施形態では、スイッチタイム持続時間は2μs~20μsである。いくつかの例では、膜貫通電位操作が標的処置効果を誘発するのに必要な主要な機構ではない方法で細胞調節が標的とされる場合、スイッチタイム遅延およびデッドタイム遅延は、0.1μs未満または0μsに最小化される。この遅延の排除は、骨格筋収縮または心筋活動電位および収縮などの末梢の非標的処置効果を最小限に抑える。
【0304】
二相性波形の処置効果を高めるためにスイッチタイム遅延およびデッドタイム遅延を利用することの別の利点は、発生機需要の低減であり、それによって休止の導入は、非対称/不平衡パルス波形を必要とせずにより強い処置効果を可能にする。この場合、不平衡波形は、単相性であるか、または一方の極性が他方に対して不平衡な持続時間もしくは電圧もしくは組み合わせを有するものとして説明される。場合によっては、不均衡とは、波形の正の部分の積分が波形の負の部分の積分と等しくないことを意味する。不均衡な波形を送達することができる発生機は、それによって潜在的な発生機の複雑さを増大させることが考慮される設計上の考慮事項の別個のセットを有する。
G.波形
【0305】
いくつかの実施形態では、波形は対称パルスを有し、それにより、一方の方向(すなわち、正または負)におけるパルスの電圧および持続時間は、他方の方向におけるパルスの電圧および持続時間に等しい。いくつかの実施形態では、波形は不平衡電圧のパルスを有する。支配的な正または負の振幅は同じ電荷細胞膜充電電位のより長い持続時間をもたらすので、不均衡な波形はより顕著な処置効果をもたらし得る。いくつかの実施形態では、不均衡は、等しくない持続時間のパルス幅を有するパルスを含む。いくつかの実施形態では、二相性波形は不平衡であり、その結果、一方の方向の電圧は他方の方向の電圧に等しくなるが、一方の方向の持続時間(すなわち、正または負)は他方の方向の持続時間よりも長くなり、その結果、波形の正の部分の曲線下面積は、波形の負の部分の下の面積に等しくならない。いくつかの実施形態では、不平衡波形は、反対の極性の不等数のパルスに反転する前に1つの極性において1つよりも多いパルスを送達することによって達成される。
H.波形の形状
【0306】
いくつかの実施形態では、パルスは方形波ではなく正弦波の形状である。正弦波形状の1つの利点は、それが平衡または対称であり、それによって各位相の形状が等しいことである。平衡化は、望ましくない筋刺激を低減するのに役立ち得る。他の実施形態では、パルスは、減衰形状の波形を有することが理解されよう。
【0307】
より大きな病変(例えば、およそ1×1×1cmより大きい)の生成は、同じまたは類似の病変特性および/または免疫応答を得るために異なるパラメーター値を含み得ることが理解されよう。いくつかの実施形態では、およそ1.8×1.8×2.4cmのサイズを有する病変は、以下を含むパラメーター値の組み合わせから生成される波形によって達成され得る:電圧=3300V、基本周波数=100kHz、パケットあたりの二相性パルス(すなわち、サイクル)の数=10サイクル、サイクル間遅延=1000マイクロ秒、パケットの数=100パケットおよびパケット間遅延=3秒。いくつかの実施形態では、およそ3x3x4cmのサイズを有する病変は、以下を含むパラメーター値の組み合わせから生成される波形によって達成され得る:電圧=6000V、基本周波数=100kHz、パケットあたりの二相性パルス(すなわち、サイクル)の数=10サイクル、サイクル間遅延=1000または2000マイクロ秒、パケットの数=100パケットおよびパケット間遅延=1、3、5または10秒。
【0308】
いくつかの実施形態では、波形は電圧ではなく電流の関数として生成されることが理解されよう。例えば、3000Vまたは3300Vを使用して生成された線量は、150~300オームの環境に送達される(3000Vでは10~20A、3300Vでは11~22Aを生成する)。いくつかの実施形態では、電流は、10A、15A、20A、25A、30A、35A、40A、45A、50A、55A、60A、65A、70Aなど、およびその間のすべての範囲である。いくつかの例では、例えば、麻痺を伴い送達され得る100kHz処置を使用する場合、70Aが上限であり得ることが理解され得る。
【0309】
エネルギー送達は、器具102上のアクチュエータ132または発生機104に動作可能に接続されたフットスイッチの使用など、様々な機構によって作動され得る。そのような作動は、典型的には、単一のエネルギー線量を提供する。エネルギー線量は、送達されるパケットの数およびパケットの電圧によって定義される。標的組織に送達される各エネルギー線量は、標的組織またはその中の温度を、熱アブレーション、特に基底膜またはより深い粘膜下細胞外タンパク質マトリックス中の間質タンパク質の熱アブレーションまたは変性のための閾値未満に維持する。さらに、処置手順中の熱蓄積をさらに低減または排除するために、線量を経時的に滴定または緩和することができる。療法に対する危険性のある部位でのタンパク質凝固として定義される熱損傷を誘導する代わりに、エネルギー線量は、感受性組織を損傷することなく、癌などの症状の処置を誘導するレベルのエネルギーを提供する。
【0310】
本明細書に記載の例は、癌の処置などの腫瘍に関連しているが、デバイス、システムおよび方法はそのように限定されないことが理解されよう。例えば、PD-1/PD-L経路によって調節されるシグナル伝達はまた、自己免疫応答、慢性感染および敗血症におけるものに類似し得る実質的な炎症効果に関連し、これは、防御免疫と免疫病理学とのバランス、ならびに恒常性および寛容におけるこの経路の役割と一致する。したがって、デバイス、システムおよび方法は、自己免疫障害および炎症性障害、慢性感染症、ならびに敗血症においてこの経路を標的とするために使用され得る。処置され得る他の症状および障害には、虚血再灌流傷害(IRI)、脳卒中、アルツハイマー病(AD)、およびこれらの障害におけるPD-1/PD-L経路の免疫調節的役割による疼痛が含まれる。同様に、脳卒中後の炎症は、PD-1/PD-Lの関与のために処置され得る。
【0311】
本明細書で使用される場合、「約」および/または「およそ」という用語は、数値および/または範囲と共に使用される場合、一般に、列挙された数値および/または範囲に近い数値および/または範囲を指す。場合によっては、「約」および「およそ」という用語は、列挙された値の±10%以内を意味することができる。例えば、場合によっては、「約100[単位]」は、100の±10%以内(例えば、90~110)を意味することができる。「約」および「およそ」という用語は、互換的に使用することができる。
【0312】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し説明してきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、当業者には多数の変形、変更、および置換が思い浮かぶであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替形態が、本発明を実施する際に使用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物がそれによって包含されることが意図される。
図1A-1B】
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A-7B】
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図25C
図25D
図26
図27A
図27B
図28A
図28B
図29
図30
図31
図32A
図32B
図32C
図32D
図33
図34A
図34B
図34C
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
【国際調査報告】