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特表2024-534501細胞内送達のための小分子生物製剤のデンドリマーコンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】細胞内送達のための小分子生物製剤のデンドリマーコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/59 20170101AFI20240912BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240912BHJP
【FI】
A61K47/59
A61K31/7088
A61K31/7105
A61P27/02
A61P35/00
A61P43/00 105
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517429
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 US2022076775
(87)【国際公開番号】W WO2023049743
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/246,705
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ランガラマヌジャム, カナン
(72)【発明者】
【氏名】リヤナゲ, ワスサラ
(72)【発明者】
【氏名】ウー, トニー
(72)【発明者】
【氏名】カナン, スジャータ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC50
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZA33
4C086ZB21
4C086ZB26
(57)【要約】
それを必要とする対象における1つまたは複数の疾患または障害を予防、処置または診断するための、機能性核酸と共有結合によりコンジュゲートしているヒドロキシル末端デンドリマー(D-FNA)の組成物、およびそれを使用する方法を開発した。FNAのデンドリマーへの共有結合によるコンジュゲーションは、血清中半減期およびバイオアベイラビリティを大幅に強化し、ペイロードをタンパク質吸着および酵素分解から保護する。好ましくは、機能性核酸は、腫瘍関連ミクログリア(TAM)を含む活性化マクロファージ内でFNAを細胞内放出するための機能的に放出可能なカップリングエレメントによってデンドリマーに共有結合によりコンジュゲートしている。例示的な機能的に放出可能なカップリングエレメントはグルタチオン感受性カップリングエレメントである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要に応じて1つまたは複数のスペーサーを介して1つまたは複数の機能性核酸に共有結合によりコンジュゲートしているデンドリマーを含む組成物であって、
前記機能性核酸が、コンジュゲーション前の前記デンドリマーの表面上の全末端基の50%未満にコンジュゲートしている、組成物。
【請求項2】
前記1つまたは複数の機能性核酸が、標的遺伝子の転写、翻訳、または機能を阻害する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つまたは複数の機能性核酸が、アンチセンス分子、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、および外部ガイド配列からなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つまたは複数の機能性核酸がsiRNAまたはmiRNAを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記miRNAがmiR-126である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記デンドリマーが、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代、第6世代、第7世代、または第8世代のデンドリマーである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記デンドリマーが、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーまたはグルコースデンドリマーであり、表面基の40%超から100%の間がヒドロキシル化されているかまたはグルコース単糖にコンジュゲートしている、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記デンドリマーがヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記デンドリマーがグルコースおよびエチレングリコール構成ブロックから作製されたグルコースデンドリマーであり、10個を超える表面グルコース部分を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記デンドリマーが、1つまたは複数のスペーサーを介して前記1つまたは複数の機能性核酸に共有結合によりコンジュゲートしている、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
1つまたは複数のスペーサーが、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、グルタチオン、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記デンドリマーが、ジスルフィド結合を介して前記1つまたは複数の機能性核酸に共有結合によりコンジュゲートしている、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記デンドリマーが、1つまたは複数の追加の治療剤、予防剤、および/または診断剤にさらにコンジュゲートしている、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
以下の構造:
【化3】
のうちの1つを含む組成物であって、
式中、Dで示される円はヒドロキシル末端デンドリマーであり、FNAで示される楕円は機能性核酸である、
組成物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
非経口投与または経口投与用に製剤化されている、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ヒドロゲル、ナノ粒子またはマイクロ粒子、懸濁物、粉末、錠剤、カプセル剤、および溶液からなる群より選択される形態で製剤化されている、請求項15または16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
がん、感染性疾患、増殖性疾患、または炎症のうちの1つまたは複数の症状の処置を必要とする対象においてがん、感染性疾患、増殖性疾患、または炎症のうちの1つまたは複数の症状を処置するための方法であって、前記がん、感染性疾患、増殖性疾患、または炎症のうちの1つまたは複数の症状を緩和するために有効量の請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記炎症が、眼、脳、および/または神経系(CNS)の1つまたは複数の疾患、状態、および/または損傷と関連する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記眼、前記脳および/または前記CNSの前記1つまたは複数の疾患、状態、および/または損傷が、前記脳および前記眼における、活性化されたミクログリアおよびアストロサイト、または損傷した、罹患した、および/もしくは過活動性のニューロン、神経節細胞および他のニューロン細胞と関連する疾患、状態、および損傷である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記眼の前記1つまたは複数の疾患、状態、および/または損傷が脈絡膜血管新生であり、前記機能性核酸が血管内皮増殖因子(VEGF)に特異的なmiRNAである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記miRNAがmiR-126である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記眼の前記1つまたは複数の疾患、状態、および/または損傷が黄斑変性症である、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が前記眼に直接投与される、請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が硝子体内注射によって投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記がんが、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮がん、膵臓がん、皮膚がん、多発性骨髄腫、前立腺がん、精巣胚細胞腫瘍、脳がん、口腔がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、十二指腸がん、胃がん、および結腸がんからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記有効量が、腫瘍サイズを減少させるかまたは腫瘍成長を阻害するのに有効なものである、請求項18または26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が経口または非経口で投与される、請求項18から23、26、および27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が静脈内投与される、請求項18から23および26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、毎日1回、1日おきに1回、3日に1回、1週間に1回、10日に1回、2週間に1回、3週間に1回および1カ月に1回からなる群より選択される時点で投与される、請求項18から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、2週間に1回、またはそれ未満の頻度で投与される、請求項18から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記疾患または障害を処置するのに有効な前記機能性核酸の量が、前記デンドリマーの非存在下で前記疾患または障害を処置するのに必要とされる同じ機能性核酸の量の50%またはそれ未満である、請求項18から31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月21日に出願されたU.S.S.N.63/246,705の利益および優先権を主張しており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表の参照
2022年9月21日に作成され、10,664バイトのサイズを有する「JHU_C_17048_PCT.xml」という名称のxmlファイルとして提出された配列表は、37C.F.R.§1.834(c)(1)に従い、これにより参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0003】
発明の分野
本発明は一般的に核酸送達の分野、特に、それを必要とする部位または領域で選択的に取り込まれる小分子、例えばデンドリマーに共有結合しているRNA分子を送達するための方法である。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)および低分子干渉RNA(siRNA)は、遺伝子発現をサイレンシングするために最も広く使用されている2つの戦略である。治療剤としてのアンチセンスおよびsiRNAオリゴヌクレオチドの潜在的な使用は、はるかに大きな関心を引き起こしている。しかし、オリゴヌクレオチドベースの治療法に関する主要な問題には、活性分子を有効に細胞内送達することが伴う。生物全体にオリゴヌクレオチドを送達することは、多くのバリアを通過することを必要とする。血清ヌクレアーゼによる分解、腎臓によるクリアランス、または不適切な生体内分布は、オリゴヌクレオチドがその標的臓器に到達することを阻止し得る。オリゴヌクレオチドは、血管壁を通過し、間質空間と細胞外マトリックス中を進まなければならない。最後に、オリゴヌクレオチドが適切な細胞膜に到達することに成功した場合、通常はエンドソーム中に取り込まれることになり、オリゴヌクレオチドは、活性になるにはエンドソームから逃避する必要がある。
【0005】
低分子干渉RNA(siRNA)は、神経学的疾患の進行に不可欠な特定の遺伝子を阻害するその能力に起因して、中枢神経系(CNS)障害のための新規で強力な治療薬である。しかし、siRNAを脳実質にうまく送達することによって、障害、例えば血液脳関門や細胞取り込みの不良に直面する。さらに、siRNAは生理学的条件において非常に不安定であり、タンパク質結合および酵素分解に対して感受性であり、有効なままにするには高用量が必要とされる。効率的なウイルス性および非ウイルス性担体を開発する努力は、免疫原性、ビヒクル毒性、および凝集という課題に直面している。さらに、非共有結合相互作用に依存する送達システムにおいて、一貫した核酸負荷を達成するのは困難である。
【0006】
したがって、機能性核酸、特に、細胞において遺伝子発現および/または他の生化学的活性をモジュレートすることができるRNA分子を送達するための組成物を提供することが本発明の目的である。
【0007】
脳および中枢神経系の疾患、障害、および損傷、特に活性化されたミクログリアおよび/またはアストロサイトと関連するものを処置するための薬物送達製剤を提供することも本発明の目的である。
【0008】
局在的または全身的毒性をほぼまたは全く伴わず、機能性核酸、特にRNA分子の中枢神経系への標的化または選択的送達を行うための、生体適合性で安価なナノ材料を提供することが本発明のさらなる目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
ヒドロキシル末端デンドリマーは、高い有効性および低い毒性で、損傷および疾患の部位において、共有結合によりコンジュゲートしている小分子生物製剤、例えば機能性核酸を活性化マクロファージおよびミクログリアおよびニューロンに選択的に送達することができることは確立されている。デンドリマーは、in vivoで機能性核酸を遮蔽し安定化させ、疾患および障害を処置および予防するための標的化された遺伝子の発現の効率的な遺伝子サイレンシングおよび/または調節を可能にする。
【0010】
必要に応じて1つまたは複数のスペーサーを介して1つまたは複数の機能性核酸に共有結合によりコンジュゲートしているヒドロキシル末端デンドリマーの組成物が提供される。典型的には、機能性核酸は、デンドリマー表面上の末端OH基の50%未満にコンジュゲートしている。典型的には、1つまたは複数の機能性核酸は、標的遺伝子の転写、翻訳、または機能を阻害する。一部の実施形態では、1つまたは複数の機能性核酸は、アンチセンス分子、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、または外部ガイド配列である。好ましい機能性核酸はsiRNAまたはmiRNAである。特定の実施形態において、miRNAはmiR-126である。
【0011】
ヒドロキシル末端デンドリマーは一般的に、第2世代(G2)、第3世代(G3)、第4世代(G4)、第5世代(G5)、第6世代(G6)、第7世代(G7)、または第8世代(G8)のデンドリマーである。好ましい実施形態において、デンドリマーはポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーである。一部の実施形態では、デンドリマーは、1つまたは複数のスペーサーを介して1つまたは複数の機能性核酸に共有結合によりコンジュゲートしている。好適なスペーサーとしては、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、グルタチオン、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)、ポリエチレングリコール(PEG)のうちの1つが挙げられる。好ましい実施形態では、デンドリマーはジスルフィド結合を介して1つまたは複数の機能性核酸に共有結合によりコンジュゲートしている。一部の実施形態では、デンドリマーは、1つまたは複数の追加の治療剤、予防剤、および/または診断剤にさらにコンジュゲートしている。
機能性核酸とコンジュゲートしているデンドリマーの組成物としては、以下の構造のうちの1つが挙げられる:
【化1】
および
【化2】
(式中、Dで示される円はヒドロキシル末端デンドリマーであり、FNAで示される楕円は機能性核酸である)。
【0012】
必要に応じて1つまたは複数のスペーサーを介して1つまたは複数の機能性核酸に共有結合によりコンジュゲートしているヒドロキシル末端デンドリマーと、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供される。医薬組成物は一般的に、ある形態で、例えば、ヒドロゲル、ナノ粒子またはマイクロ粒子、懸濁物、粉末、錠剤、カプセル剤、および溶液で、非経口または経口投与用に製剤化される。
【0013】
それを必要とする対象における疾患または障害の1つまたは複数の症状を処置するための方法であって、疾患または障害の1つまたは複数の症状を緩和するのに有効な、必要に応じて1つまたは複数のスペーサーを介して1つまたは複数の機能性核酸に共有結合によりコンジュゲートしているヒドロキシル末端デンドリマーと、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。典型的には、方法は、対象における炎症、増殖性疾患、例えばがん、または神経学的疾患を処置または予防する。一部の実施形態では、方法は、眼、脳、および/または神経系(CNS)の1つまたは複数の疾患、状態、および/または損傷と関連する炎症を処置するためのものである。方法によって処置してもよい眼の例示的な疾患、状態、および/または損傷は、脈絡膜血管新生と関連するものである。一部の実施形態では、機能性核酸は血管内皮増殖因子(VEGF)に特異的なmiRNAである。VEGFに特異的な例示的なmiRNAはmiR-126である。好ましい実施形態では、miR-126と共有結合によりコンジュゲートしているデンドリマーは、対象における黄斑変性症の1つまたは複数の症状を処置または予防するために眼に選択的に送達される。
【0014】
一部の実施形態では、方法は、対象におけるがんを処置または予防するために、デンドリマーにコンジュゲートしている1つまたは複数の機能性核酸を送達する。処置することができる例示的ながんとしては、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮がん、膵臓がん、皮膚がん、多発性骨髄腫、前立腺がん、精巣胚細胞腫瘍、脳がん、口腔がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、十二指腸がん、胃がん、および結腸がんがある。したがって一部の実施形態では、方法は、腫瘍サイズを減少させるかまたは腫瘍成長を阻害するための有効量の機能性核酸を送達する。一部の実施形態では、方法は、デンドリマー-機能性核酸組成物を眼に直接投与する。眼に投与するための例示的な方法は硝子体内注射によるものである。他の実施形態において、組成物は経口または非経口で投与される。例えば、特定の実施形態において、組成物は静脈内で投与される。
【0015】
方法は典型的には、デンドリマー-機能性核酸組成物を、毎日1回、1日おきに1回、3日に1回、1週間に1回、10日に1回、2週間に1回、3週間に1回および1カ月に1回から選択される時点で投与する。例えば一部の実施形態では、組成物は2週間に1回、またはそれ未満の頻度で投与される。典型的には、記載する方法に従って疾患または障害を処置するのに有効な機能性核酸の量は、デンドリマー非存在下で疾患または障害を処置するのに必要とされる同じ機能性核酸の量の50%またはそれ未満である。
【0016】
デンドリマー-機能性核酸組成物を含み、必要に応じて組成物を対象に投与するための試薬、緩衝液および装置、ならびに/または使用についての指示を含むキットも記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、機能化Cy5-D-PEG-TCOを生成するための段階的合成経路における分子構造を示す概略図である。第6世代ヒドロキシルPAMAMデンドリマー(PAMAM-G6-OH)を4-tert-ブトキシカルボニルアミノ)酪酸(Boc-保護GABA)リンカー(2)で処置し、得られた生成物(3)をジクロロメタン(DCM)/トリフルオロ酢酸(TFA)(4:1)を使用して脱保護した。生成物(4)をCy5N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを使用してCy5フルオロフォアで標識し、得られた中間体(5)をトランス-シクロオクテン(TCO)リンカー、PEG4-TCOとコンジュゲートして、機能化Cy5-D-PEG-TCO(6)を得た。式における下付き数字は、デンドリマーごとに結合したGABA BOC、PEG-TCO、またはフルオロフォアの数を示す。
【0018】
図2図2は、デンドリマーとコンジュゲートするためのASOの修飾を含む、デンドリマー-Cy5-ASOコンジュゲートを生成するための段階的合成経路における分子構造を示す概略図である。ASOを最初にメチルテトラジン-PEG-S-S-NHS(8)試薬を使用してペグ化テトラジンで置換してASO-PEG-Tz(9)を形成し、次いで(9)をCy5-D-PEG-TCO(6)と反応させて最終生成物Cy5-D-ASO(10)を得た。
【0019】
図3図3は、機能化Cy5-D-PEG-SPDPの合成を示す概略図である。第6世代ヒドロキシルPAMAMデンドリマー(PAMAM-G6-OH)をBoc-保護GABAリンカー(2)で処置し、得られた生成物(3)を、TFAを使用して脱保護した。生成物(4)をCy5フルオロフォアで標識し、得られた中間体(5)をSPDPとコンジュゲートして機能化Cy5-D-PEG4-SPDP(6)を得た。
【0020】
図4図4は、Cy5-D-siRNAコンジュゲートの合成を示す概略図である。siRNA(7)を、DTTを使用してジチオール基を還元することによって活性化し、得られた生成物(8)を活性化Cy5-D-PEG-SPDP、6と反応させて最終生成物Cy5-D-siRNA(9)を得た。
【0021】
図5図5は、HEK-293T細胞におけるD-siGFPによる緑色蛍光タンパク質(GFP)発現の用量依存的ノックダウンの棒グラフであり、対照、24時間、48時間および72時間の試料のそれぞれに関して、投薬量(0~500nm)に対する相対蛍光(0~1.5)を示す。
【0022】
図6図6は、D-si-GFP用量応答曲線24時間の棒グラフであり、24時間の試料に関する投薬量(0~500nm)に対する相対蛍光(0~2)を示す。
【0023】
図7図7A~7Cは、HEK-293T細胞の有意なGFPノックダウンをもたらす送達方法を示す棒グラフである。相対蛍光は、GFPチャネルにおけるバックグラウンド補正強度を使用して得、0時間の内部対照に対して正規化した。図7Aは、24または48時間のそれぞれに関して、対照、siGFP、RNA/Max LIPOFECTAMINE(登録商標)2000、LIPOFECTAMINE(登録商標)3000、およびD-siGFP試料のそれぞれに関する、OHに対して-50から100%のノックダウンを示すビヒクル依存性GFPノックダウンの棒グラフである。データは2連の平均±SEMとして示した。図7Bは、対照、siGFP、RNA/Max LIPOFECTAMINE(登録商標)2000、LIPOFECTAMINE(登録商標)3000、およびD-siGFPそれぞれの、GFPタンパク質発現(0~2.5)の棒グラフである。GFPの相対的発現は、シクロフィリンB発現に対してGFP発現を正規化することによって得られた。図7Cは、対照、D-siGFP、Lipo2000、Lipo3000、RNAi Max、およびsiGFPそれぞれに関する、経時的な(0~48時間の)コンフルエンシー(0~1.5)の棒グラフである。コンフルエンシーを介した細胞生存度によって、細胞傷害性効果は示唆されなかった。
【0024】
図8図8は、対照、siGFP、D-scRNA、およびD-siGFPそれぞれに対する、CH(0~80)%としての腫瘍KDを示すin vivoでのGFPノックダウンの棒グラフである。
【0025】
図9図9は、デンドリマー-miR126コンジュゲートの合成を示す概略図である。第6世代ヒドロキシル末端デンドリマーの表面はジスルフィドリンカー(PDP)で機能化されている。チオール修飾miR-126を、DTTを使用してジチオール基を還元することによって活性化し、得られた生成物(8)をチオール修飾デンドリマーと反応させて最終生成物D-miR126を得る。
【0026】
図10図10A~10Cは、未処置の対照群における、ならびに1nM、5nM、10nM、および100nMの濃度のD-miR126およびmiR-126の存在下、LPSで刺激された実験群における、BV2細胞のTNFα(図10A)およびIL-1β(図10B)の相対mRNA発現レベル;ならびに未処置の対照群における、ならびに1nM、5nM、10nM、および100nMの濃度のD-miR126およびmiR-126で処置された実験群における、HMECのVEGF-Αの相対mRNA発現レベル(図10C)を示す棒グラフである。
【0027】
図11-1】図11A~11Dは、マトリゲルベースの管形成アッセイに基づいた、未処置の対照群における、ならびに1nM、5nM、10nM、および100nMの濃度のD-miR126;または10nMおよび100nMの濃度のmiR-126で処置された実験群における、HMECによって形成された細胞ネットワークの、全長(図11A)、孤立したセグメントの数(図11B)、囲まれた総領域(図11C)、ならびにノードおよび小片の数(図11D)を示す棒グラフである。
図11-2】図11A~11Dは、マトリゲルベースの管形成アッセイに基づいた、未処置の対照群における、ならびに1nM、5nM、10nM、および100nMの濃度のD-miR126;または10nMおよび100nMの濃度のmiR-126で処置された実験群における、HMECによって形成された細胞ネットワークの、全長(図11A)、孤立したセグメントの数(図11B)、囲まれた総領域(図11C)、ならびにノードおよび小片の数(図11D)を示す棒グラフである。
【0028】
図12図12A~12Bは、CNVから7日後(図12A)およびCNVから14日後(図12B)の未処置の対照における、または0.1μg/μL、1μg/μL、および2μg/μLの濃度のD-mirR126、もしくは1μg/μLの濃度のmiR-126で処置された実験群における、イソレクチン抗体で染色し、蛍光顕微鏡によって定量化したCNV領域を示す棒グラフである。
【0029】
図13-1】図13A~13Dは、未処置対照におけるまたは0.1μg/μLおよび1μg/μLの濃度のD-mirR126、またはmiR-126で処置された実験群における、ELISAで測定された相対VEGF-Αタンパク質発現レベル(図13A);およびPBSで処置されたマウス(対照群)におけるおよびD-miR126またはmiR-126で処置された実験群における、VEGF-Αの相対mRNA発現レベル(図13B);およびPBSで処置されたマウス(対照群)におけるおよびD-miR126またはmiR-126で処置された実験群における、TNFα(図13C)およびIL-1β(図13D)の相対mRNA発現レベルを示す棒グラフである。
図13-2】図13A~13Dは、未処置対照におけるまたは0.1μg/μLおよび1μg/μLの濃度のD-mirR126、またはmiR-126で処置された実験群における、ELISAで測定された相対VEGF-Αタンパク質発現レベル(図13A);およびPBSで処置されたマウス(対照群)におけるおよびD-miR126またはmiR-126で処置された実験群における、VEGF-Αの相対mRNA発現レベル(図13B);およびPBSで処置されたマウス(対照群)におけるおよびD-miR126またはmiR-126で処置された実験群における、TNFα(図13C)およびIL-1β(図13D)の相対mRNA発現レベルを示す棒グラフである。
【0030】
図14図14A~14Dは、miR-126を投与してから1、3、5、7、および14日後のイソレクチンGS-IB4染色(血管+マクロファージ)およびIba1(マクロファージ)染色を用いた、Cy3およびCy5シグナルの共局在のパーセンテージ(図14A)、D-miR126投与後のCy3共局在(図14B)、D-miR126投与後のCy5共局在(図14C)、ならびにin vivoでのペイロード放出の尺度としてのデンドリマー(Cy5)とmiR-126(Cy3)との間の共局在(図14D)を示す棒グラフである。
【0031】
図15図15は、デンドリマー-ALG1001の合成を示す概略図である。第6世代ヒドロキシル末端デンドリマーの表面をアルキン末端リンカーで機能化する。次いで、ALG-1001ペプチドを、銅触媒クリック反応を使用して結合させてD-ALGコンジュゲートを得る。
【0032】
図16図16は、未処置の対照群における、ならびに1mM、100nM、および10nMの濃度のD-ALGおよびALG-1001で処置された実験群における、血管が互いに交差する回数(ジャンクション数)、血管によって囲まれた空間(メッシュ)の数、結合した血管(セグメント)の数、および孤立した血管(孤立したセグメント)の数を示す血管形成の完全性および拡張に関して抽出された測定基準を示す棒グラフである。
【0033】
図17図17は、ウエスタンブロット分析からのERK(42および44kDa)およびFAK(110kDa)と関連するタンパク質バンドによって決定し、内部対照(シクロフィリンB)に対して正規化した、未処置の対照群における、ならびに1mMおよび100nMの濃度のD-ALGおよびALG-1001で処置された実験群における、VEGF刺激に応答したMAPL、FAKリン酸化MAPK(p-MAPL)、リン酸化FAK(p-FAK)の相対タンパク質発現の棒グラフである。
【0034】
図18図18A~18Bは、ALG-1001およびD-ALG1001で前処置した後のLPS刺激に応答してRAW264.7細胞によって産生された炎症促進性のサイトカインIL1β(図18A)およびTNFα(図18B)の相対的発現を示す棒グラフである。ここで示されるP-値は未処置対照に対してIL1βおよびTNFα発現のレベルを比較する。
【0035】
図19図19A~19Bは、CNVから7日後(図19A)およびCNVから14日後(図19B)の、未処置対照における、またはD-ALG1001(150μg)を含むもしくはALG-1001(150μg)を含む150μgのペプチドベースで4日に1回腹腔内投薬された実験群における、イソレクチン抗体で染色し、蛍光顕微鏡によって定量化したCNV領域を示す棒グラフである。
【0036】
図20-1】図20A~20Dは、ELISAによって決定された、FAK(図20A)、ホスホ-FAK(Y397)(図20B)、p44/42ERK(図20C)、ホスホ-p44/42ERK(図20D)のタンパク質量(U/ml)を示す棒グラフである。
図20-2】図20A~20Dは、ELISAによって決定された、FAK(図20A)、ホスホ-FAK(Y397)(図20B)、p44/42ERK(図20C)、ホスホ-p44/42ERK(図20D)のタンパク質量(U/ml)を示す棒グラフである。
【0037】
図21-1】図21A~21Cは、PBS(対照群)で処置された動物における、ならびにD-ALGおよびALG-1001で処置された実験群における、VEGF-Α(図21A)、TNFα(図21B)、およびIL-1β(図21C)の相対mRNA発現レベルを示す棒グラフである。
図21-2】図21A~21Cは、PBS(対照群)で処置された動物における、ならびにD-ALGおよびALG-1001で処置された実験群における、VEGF-Α(図21A)、TNFα(図21B)、およびIL-1β(図21C)の相対mRNA発現レベルを示す棒グラフである。
【0038】
図22図22はG1-グルコースの合成を示す概略図である。G1-グルコースの段階的な合成;ヘキサプロパギル化(hexapropagylated)コア1を、DMF:HO(1:1)中の古典的クリック試薬(CuAACクリック反応)、触媒量の硫酸銅五水和物(CuSO.5HO)およびアスコルビン酸ナトリウムの下、AB4構成ブロック(β-グルコース-PEG-アジド)、2で処置して、G1-グルコース-24-OAc、3を生成した。次いで化合物3を典型的なZemplen条件下で処置して(アセテート基を除去するために)所望の生成物4(G1-グルコース)を得た。
【0039】
図23図23は、Glu-G2デンドリマーの合成を示す概略図である。G2-グルコースの段階的な合成;G1-グルコースデンドリマー、4を水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散物)で、0℃で15分間処置し、次いで臭化プロパルギル(トルエン中の80%w/w溶液)で処置した。反応物を室温で8時間撹拌して化合物5を形成した。次に化合物5を、DMF:HO(1:1)中の古典的クリック試薬(CuAACクリック反応)、触媒量の硫酸銅五水和物(CuSO.5HO)およびアスコルビン酸ナトリウム下、AB4構成ブロック(β-グルコース-PEG-アジド)、2で処置して、G2-グルコース-96-OAc、6を生成した。次いで化合物6を典型的なZemplen条件下で反応させて、所望の生成物7(G2-グルコース)を得た。
【0040】
図24図24は、Cy5-Glu-G2-PEG-SPDPの合成を示す概略図である。Glu-G2デンドリマーをNaHおよび臭化プロパルギルで処置し、得られた生成物2をN-PEG-アミン、3とCUAACクリック条件を使用してさらに反応させて、化合物4を形成した。生成物4はCy5フルオロフォアで標識し、得られた中間体5をSPDPとコンジュゲートして機能化Cy5-Glu-G2-PEG-SPDP、6を得た。式における下付き数字はデンドリマーごとのアタッチメントの数を示す。
【0041】
図25図25は、Cy5-Glu-G2-siRNAコンジュゲートの合成を示す概略図である。siRNA、7を、DTTを使用してジチオール基を還元することによって活性化させ、得られた生成物8を活性化Cy5-Glu-G2-PEG-SPDP、6と反応させて最終生成物、Cy5-Glu-G2-siRNA、9を得た。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
I.定義
「活性薬剤」または「生物学的薬剤」という用語は、予防的、治療的または診断的であってもよい所望の薬理学的および/または生理学的効果を誘発する化学的または生物学的化合物を指すために互換的に使用される治療、予防または診断剤である。これらは、核酸、核酸アナログ、2kD未満、より典型的には1kD未満の分子量を有する小分子、ペプチド模倣体、タンパク質もしくはペプチド、炭水化物もしくは糖、脂質、またはこれらの組合せであってもよい。これらの用語はまた、これらに限定されないが、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、およびアナログを含む薬剤の薬学的に許容され薬理学的に活性な誘導体を包含する。
【0043】
「ヌクレオチド」という用語は、塩基部分、糖部分、およびホスフェート部分を含む分子を指す。ヌクレオチドは、そのホスフェート部分および糖部分を介して一緒に連結し、ヌクレオシド間連結を生成することができる。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン-9-イル(A)、シトシン-1-イル(C)、グアニン-9-イル(G)、ウラシル-1-イル(U)、およびチミン-1-イル(T)とすることができる。ヌクレオチドの糖部分はリボースまたはデオキシリボースである。ヌクレオチドのホスフェート部分は5価のホスフェートである。ヌクレオチドの非限定的な例は、3’-AMP(3’-アデノシンモノホスフェート)または5’-GMP(5’-グアノシンモノホスフェート)である。当技術分野において利用可能であり、本明細書において利用可能なこれらのタイプの分子の多くの変形が存在する。
【0044】
「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」という用語は、複数のヌクレオチドサブユニットを含む合成または単離された核酸ポリマーである。
【0045】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は交換可能であり、直鎖状または環状立体構造の単鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的で、これらの用語はポリマーの長さに関する限定と解釈されるべきではない。その用語は、公知の天然ヌクレオチドのアナログ、ならびに塩基、糖および/またはホスフェート部分が修飾されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格、ロックド核酸)を包含していてもよい。一般的に特に指定がない限り、特定のヌクレオチドのアナログは同じ塩基対合特異性を有し、すなわち、AのアナログはTと塩基対合する。
【0046】
「薬学的に許容される塩」という用語は当技術分野において認識されており、化合物の比較的非毒性の無機および有機酸付加塩を含む。薬学的に許容される塩の例としては、無機酸、例えば、塩酸および硫酸由来のもの、ならびに有機酸、例えば、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸由来のものが挙げられる。塩を形成するのに好適な無機塩基の例としては、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、および亜鉛の水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩がある。塩はまた、非毒性であり、このような塩を形成するのに十分強力なものを含む好適な有機塩基と形成してもよい。例示の目的で、このような有機塩基のクラスとしては、モノ-、ジ-、およびトリアルキルアミン、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、およびトリエチルアミン;モノ-、ジ-またはトリヒドロキシアルキルアミン、例えば、モノ-、ジ-、およびトリエタノールアミン;アミノ酸、例えば、アルギニンおよびリシン;グアニジン;N-メチルグルコサミン;N-メチルグルカミン;L-グルタミン;N-メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N-ベンジルフェネチルアミンがあり得る。
【0047】
「治療剤」という用語は、疾患または障害の1つまたは複数の症状を処置するために投与することができる薬剤を指す。
【0048】
「診断用薬剤」という用語は、病理学的プロセスの局在を示し、特定し、明らかにするために投与することができる薬剤を一般的に指す。診断用薬剤は、標的細胞を標識することができ、これらの標識された標的細胞のその後の検出またはイメージングを可能にすることができる。一部の実施形態では、診断用薬剤は、デンドリマーまたは好適な送達ビヒクルを介して中枢神経系(CNS)中の活性化ミクログリアを標的とする/それと結合することができる。
【0049】
「予防用薬剤」という用語は、疾患を予防するためにまたはある特定の状態を予防するために投与することができる薬剤、例えばワクチンを一般的に指す。
【0050】
「薬学的に許容される」または「生体適合性」という句は、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織との接触において使用するのに好適であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、妥当な利益/リスク比率に見合った組成物、ポリマー、および他の材料ならびに/または投薬形態を指す。「薬学的に許容される担体」という句は、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクル、例えば、任意の対象組成物を、1つの臓器または身体の一部から別の臓器または身体の一部へ運ぶまたは輸送することに関与する液体または固体フィラー、希釈剤、溶媒、またはカプセル化材料を指す。各担体は、対象組成物の他の成分と適合性であり、患者に対して有害ではないという意味で「許容され」なければならない。
【0051】
「治療有効量」という用語は、デンドリマー中および/またはその上に組み込まれた場合、任意の医療処置に適用可能な妥当な利益/リスク比率で何らかの所望の効果をもたらす治療剤の量を指す。有効量は、処置される疾患もしくは状態、投与される特定の構築物、対象のサイズ、または疾患もしくは状態の重症度のような因子によって変わる場合がある。当業者であれば、過度の実験を必要とすることなく特定の化合物の有効量を経験的に決定してもよい。一部の実施形態では、「有効量」という用語は、1つまたは複数の疾患または障害の症状を減少させるかまたは低減するための、例えば、アルツハイマー病などに罹患した個体における学習および/または記憶の欠如を減少させるか、予防するか、または逆転させるための治療剤または予防剤の量を指す。1つまたは複数の神経学的または神経変性疾患において、有効量の薬物は、新規のニューロンの生成を引き起こす神経の有糸分裂の刺激または誘導の効果を有していてもよく、すなわち、神経原性効果を示し;神経損失の速度における低下を含む神経損失の予防または遅延、すなわち、神経保護効果を示す。有効量は1回または複数回投与で投与してもよい。
【0052】
阻害の文脈における「阻害する」または「低下させる」という用語は、活性および量における低下または減少を意味する。これは、活性または量における完全な阻害または低下、または部分的な阻害または低下であってもよい。阻害または低下は、対照または標準レベルと比較してもよい。阻害は、5、10、25、50、75、80、85、90、95、99、または100%であってもよい。例えば、1つまたは複数の阻害剤を含むデンドリマー組成物は、デンドリマー組成物を与えられなかったかまたはそれで処置されなかった対象の同等の組織における同じ細胞の活性および/または量から、nSMase2と関連する活性化ミクログリアの活性および/または量を約10%、20%、30%、40%、50%、75%、85%、90%、95%、または99%阻害するかまたは減少させることができる。一部の実施形態では、阻害および低下は、mRNA、タンパク質、細胞、組織および臓器レベルで比較される。例えば、未処置の対照対象と比較した場合の、眼の脈絡膜血管新生における阻害および低下である。
【0053】
「処置すること」または「予防すること」という用語、疾患、障害および/または状態に罹りやすいことがあるが、それを有するとはまだ診断されていない動物において生じる疾患、障害または状態、疾患、障害または状態の進行を阻害すること、ならびに疾患、障害、または状態を軽減すること、例えば、疾患、障害および/または状態の退行をもたらすことを意味する。疾患または状態を処置することには、たとえ基本的な病態生理に影響がなかったとしても、特定の疾患または状態の少なくとも1つの症状を回復させること、例えば鎮痛剤を投与することによってそのような薬剤が疼痛の原因を処置しなかったとしても、対象の疼痛を処置することが含まれる。処置の望ましい効果としては、疾患の進行速度を低下させること、疾患の状況を回復または緩和すること、および寛解することかまたは予後を改善することがある。例えば、これらに限定されるものではないが、腫瘍成長速度の低下、疾患に起因する症状の減少、疾患に罹患したもののクオリティーオブライフの向上、疾患の処置に必要とされる他の医薬の用量の減少、疾患の進行の遅延、および/または個体の生存の延長を含む、脳腫瘍と関連する1つまたは複数の症状が軽減または除去された場合、個体は成功裏に「処置される」。
【0054】
「生分解性」という用語は、生理学的状態下で、対象により代謝、除去、または排泄することができるより小さな単位または化学種に分解または浸食されるであろう材料を一般的に指す。分解時間は、組成および形態の関数である。
【0055】
「デンドリマー」という用語は、これらに限定されるものではないが、内部コアと、この開始のコアに規則的に結合している内層または繰返し単位の「世代」と、最外部の世代に結合している末端基の外表面とを伴う分子構造を含む。
【0056】
「官能化」という用語は、官能基または部位の結合をもたらす様式で、化合物または分子を修飾することを意味する。例えば、分子を強力な求核試薬または強力な求電子剤にする分子を導入することによって、分子を官能化してもよい。
【0057】
「標的化部分」という用語は、具体的な場所に局在するかまたはそこから離れて局在する部分を指す。その部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸アナログ、炭水化物、または小分子であってもよい。実体は、例えば治療化合物、例えば、小分子または診断用の実体、例えば検出可能な標識であってもよい。位置は、組織、特定の細胞タイプ、または細胞内コンパートメントであってもよい。一実施形態では、標的化部分は、薬剤を局在させる。好ましい実施形態では、デンドリマー組成物は、追加の標的化部分の非存在下で活性化ミクログリアを選択的に標的とすることができる。
【0058】
「延長された滞留時間」という用語は、薬剤が患者の身体、またはその患者の臓器もしくは組織から消失するために必要とされる時間における増加を指す。ある特定の実施形態では、「延長された滞留時間」は、比較標準、例えば、デンドリマーなどの送達ビヒクルにコンジュゲートしていない比較薬剤よりも10%、20%、50%または75%長い半減期で消失する薬剤を指す。ある特定の実施形態では、「延長された滞留時間」は、比較標準、例えば、特定の細胞タイプを特異的に標的とするデンドリマーを含まない比較薬剤よりも2、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、または10000倍長い半減期で消失する薬剤を指す。
【0059】
「組み込まれた」および「カプセル化された」という用語は、所望の適用において薬剤を放出、例えば持続放出するのを可能にする組成物中におよび/または組成物上に、このような薬剤を組み込むこと、製剤化すること、他の方法で含むことを指す。薬剤または他の材料を、デンドリマーの1つまたは複数の表面官能基に結合させることによって(共有結合、イオン結合、または他の結合相互作用によって)、物理的な混合によって、樹状構造内に薬剤を包むことによって、および/または樹状構造の内部に薬剤をカプセル化することによって、このようなデンドリマー中に組み込んでもよい。
【0060】
II.組成物
1つまたは複数の疾患または状態を予防、処置、または診断するための、1つまたは複数の小分子生物製剤、特に1つまたは複数の機能性核酸を送達するのに好適なデンドリマー複合体を開発した。
【0061】
デンドリマー複合体の組成物は、デンドリマーと共有結合によりコンジュゲートしている、1つまたは複数の疾患または障害を処置または予防するための1つまたは複数の予防剤または治療剤を含む。一般的に、1つまたは複数の活性剤は、全デンドリマー/活性剤複合体の約0.01重量%から約50重量%、好ましくは約1重量%から約30重量%、さらに好ましくは約5重量%から約20重量%の濃度でデンドリマー複合体にコンジュゲートされている。好ましくは、1つまたは複数の薬剤は、1つまたは複数の連結、例えば、ジスルフィド、エステル、エーテル、チオエステル、カルバメート、カルボネート、ヒドラジン、およびアミド連結を介して、必要に応じて、1つまたは複数のスペーサーを介してデンドリマーに共有結合によりコンジュゲートされている。例示的な薬剤としては、小分子生物製剤、例えば機能性核酸分子が挙げられる。
【0062】
追加の薬剤の存在は、粒子のゼータ電位または表面電荷に影響を与える場合がある。一実施形態では、デンドリマーのゼータ電位は、両端を含む、約-100mVから約100mVの間、約-50mVから約50mVの間、約-25mVから約25mVの間、約-20mVから約20mVの間、約-10mVから約10mVの間、約-10mVから約5mVの間、約-5mVから約5mVの間、約-2mVから約2mVの間、または約-1mVから約1mVの間である。好ましい実施形態では、表面電荷は中性または中性付近である。上記範囲は、-100mVから100mVまでの全ての値を包含する。
【0063】
A.デンドリマー
デンドリマーは、高密度の表面末端基を含む3次元ハイパー分岐単分散球状多価高分子である(Tomalia, D. A., et al., Biochemical Society Transactions, 35, 61 (2007);およびSharma, A., et al., ACS Macro Letters, 3, 1079 (2014))。その特有の構造的かつ物理的特徴のために、デンドリマーは、標的を絞った薬物/遺伝子送達、イメージングおよび診断を含むさまざまな生物医学的用途のためのナノ担体として有用である(Sharma, A., et al., RSC Advances, 4, 19242 (2014)、Caminade, A.-M., et al., Journal of Materials Chemistry B, 2, 4055 (2014)、Esfand, R., et al., Drug Discovery Today, 6, 427 (2001)、およびKannan, R. M., et al., Journal of Internal Medicine, 276, 579 (2014))。
【0064】
最近の研究では、デンドリマー表面基が、その生体内分布に顕著に影響を与えることが示されている(Nance, E., et al., Biomaterials, 101, 96 (2016))。任意の標的化リガンドを含まない、ヒドロキシル末端第4世代PAMAMデンドリマー(約4nmサイズ)が、脳性麻痺(CP)のウサギモデルにおいて全身投与した場合、健常対照と比較して、障害を受けたBBBを顕著に多く(20倍を超えて)通過し、活性化ミクログリアおよびアストロサイトを選択的に標的とする(Lesniak, W. G., et al., Mol Pharm, 10 (2013))。
【0065】
「デンドリマー」という用語は、これらに限定されるものではないが、内部コアと、この内部コアに付加され、そこから広がる反復単位の層または「世代」とを有する分子構成であって、各層が1つまたは複数の分岐点を有し、末端基の外部表面が最も外側の世代に付加されている、分子構成を含む。一部の実施形態では、デンドリマーは、標準デンドリマーまたは「星型バースト(starburst)」分子構造を有する。
【0066】
一般的に、デンドリマーは、約1nmから約50nmの間、さらに好ましくは約1nmから約20nmの間、約1nmから約10nmの間、または約1nmから約5nmの間の直径を有する。一部の実施形態では、直径は約1nmから約2nmの間である。コンジュゲートは、一般的に同じサイズ範囲内に入るが、大きなタンパク質、例えば抗体は、5~15nmサイズが大きくなる場合がある。一般的に、薬剤は、薬剤のデンドリマーに対する平均比率が0.1:1から4:1の間(両端を含む)でコンジュゲートされている。好ましい実施形態では、デンドリマーは、脳組織を通過し、標的細胞に長時間保持されるのに有効な直径を有する。
【0067】
一部の実施形態では、デンドリマーは、約500ダルトンから約100,000ダルトンの間、好ましくは約500ダルトンから約50,000ダルトンの間、最も好ましくは約1,000ダルトンから約20,000ダルトンの間の分子量を有する。
【0068】
使用してもよい好適なデンドリマー足場としては、PAMAMとしても知られるポリ(アミドアミン)、またはSTARBURST(商標)デンドリマー、ポリプロピルアミン(POPAM)、ポリエチレンイミン、ポリリシン、ポリエステル、イプチセン、脂肪族ポリ(エーテル)、および/または芳香族ポリエーテルデンドリマーが挙げられる。デンドリマーは、カルボキシル、アミン、および/またはヒドロキシル末端を有していてもよい。好ましい実施形態では、デンドリマーはヒドロキシル末端を有する。デンドリマー複合体の各デンドリマーは、同じであっても、他のデンドリマーと類似のまたは異なる化学的性質のものであってもよい(例えば、第1のデンドリマーはPAMAMデンドリマーを含んでいてもよく、一方で第2のデンドリマーは、POPAMデンドリマーであってもよい)。
【0069】
「PAMAMデンドリマー」という用語は、異なるコアを含有していてもよく、アミドアミン構築ブロックを有し、これらに限定されないが、第1世代PAMAMデンドリマー、第2世代PAMAMデンドリマー、第3世代PAMAMデンドリマー、第4世代PAMAMデンドリマー、第5世代PAMAMデンドリマー、第6世代PAMAMデンドリマー、第7世代PAMAMデンドリマー、第8世代PAMAMデンドリマー、第9世代PAMAMデンドリマー、または第10世代PAMAMデンドリマーを含む任意の世代の、カルボキシル、アミン、およびヒドロキシル末端を有していてもよいポリ(アミドアミン)デンドリマーを意味する。好ましい実施形態では、デンドリマーは製剤中に溶解性であり、第4、5または6世代(「G」)デンドリマーである。デンドリマーは、その官能表面基に結合したヒドロキシル基を有していてもよい。
【0070】
デンドリマーを作製するための方法は当業者に公知であり、中心開始コア(例えば、エチレンジアミンコア)の周囲に樹状β-アラニン単位の同心性のシェル(世代)を生成する2ステップ反復反応順序を一般的に伴う。その後の各成長ステップは、前の世代より大きな分子直径、2倍の数の反応表面部位、およびおよそ2倍の分子量を有するポリマーの新規の「世代」を表す。使用に好適であるデンドリマー足場は、さまざまな世代として市販されている。好ましくは、デンドリマー組成物は、第0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10世代デンドリマー足場に基づいている。このような足場は、それぞれ、4、8、16、32、64、128、256、512、1024、2048、および4096個の反応部位を有する。したがって、これらの足場に基づいたデンドリマー化合物は、合わせられた標的化部分および存在する場合の薬剤の対応する数を最大として有してもよい。
【0071】
1.ヒドロキシル末端デンドリマー
一部の実施形態では、デンドリマーは、複数のヒドロキシル基を含む。一部の例示的な高密度ヒドロキシル基含有デンドリマーとしては、市販されているポリエステル樹状ポリマー、例えばハイパー分岐2,2-ビス(ヒドロキシル-メチル)プロピオン酸ポリエステルポリマー(例えば、ハイパー分岐ビス-MPAポリエステル-64-ヒドロキシル、第4世代)、樹状ポリグリセロールが挙げられる。
【0072】
一部の実施形態では、高密度ヒドロキシル基含有デンドリマーは、オリゴエチレングリコール(OEG)様デンドリマーである。例えば、第2世代OEGデンドリマー(「D2-OH-60」)は、非常に効率的で、頑強で、原子経済的な化学反応、例えばCu(I)触媒アルキン-アジドクリックおよび光触媒チオール-エンクリックケミストリーを使用して合成することができる。直交性ハイパーモノマー(orthogonal hypermonomer)およびハイパーコア戦略を使用することによって、非常に低世代の高密度ポリオールデンドリマーを最小限の反応ステップで達成することができ、例えば、国際特許公開WO2019/094952に記載される。一部の実施形態では、デンドリマー骨格は、非切断性ポリエーテル結合を構造全体にわたって有し、デンドリマーのin vivoでの崩壊を回避し、そのようなデンドリマーが単一の実体として身体から消失することを可能にする(非生分解性)。
【0073】
一部の実施形態では、デンドリマーは、特定の組織領域および/または細胞タイプ、好ましくは、CNS中の活性化ミクログリアなどの活性化マクロファージを特異的に標的とする。好ましい実施形態では、デンドリマーは、標的化部分を有さない特定の組織領域および/または細胞タイプを特異的に標的とする。例えば、ヒドロキシル(-OH)末端デンドリマーは血液-脳関門(BBB)を横切り、脳組織中/脳組織全体にわたって浸透して脳における炎症領域内の活性化されたミクログリア内に選択的に内在化することができることは確立されている。
【0074】
したがって、好ましい実施形態では、デンドリマーは、デンドリマーの周辺に複数のヒドロキシル(-OH)基を有する。好ましいヒドロキシル(-OH)基表面密度は、少なくとも1OH基/nm(ヒドロキシル表面基の数/表面積nm)である。例えば、一部の実施形態では、ヒドロキシル基表面密度は、2、3、4、5、6、7、8、9、10を超え;好ましくは少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50であるかまたは50を超える。さらなる実施形態では、ヒドロキシル(-OH)基表面密度は、約1から約50の間、好ましくは5~20OH基/nm(ヒドロキシル表面基の数/表面積nm)であり、同時に約500Daから約10kDaの間の分子量を有する。
【0075】
一部の実施形態では、デンドリマーは、外表面上に露出しているヒドロキシル基のフラクションを、デンドリマーの内部コアにあるもう一方のフラクションとともに有していてもよい。好ましい実施形態では、デンドリマーは、少なくとも1OH基/nm(ヒドロキシル基の数/体積nm)のヒドロキシル(-OH)基体積密度を有する。例えば、一部の実施形態では、ヒドロキシル基体積密度は、2、3、4、5、6、7、8、9、10であるか、または10、15、20、25、30、35、40、45、および50を超える。一部の実施形態では、ヒドロキシル基体積密度は、約4~約50基/nm、好ましくは約5~約30基/nm、より好ましくは約10~約20基/nmである。
【0076】
一部の実施形態では、デンドリマーは、身体に投与後、特定の組織領域および/または細胞タイプを特異的に標的とする。好ましい実施形態において、デンドリマーは、標的化部分なしに、特定の組織領域および/または細胞タイプを特異的に標的とする。
【0077】
2.グルコースベースのデンドリマー
一部の実施形態では、デンドリマーは、ハイパーコア(hypercore)(例えば、ジペンタエリスリトール)および1つまたは複数の単糖分岐単位を有している。一部の実施形態では、単糖分岐単位は、リンカー、例えばポリエチレングリコール鎖を介してコアまたはモノマーの前層(prior layer)にコンジュゲートしている。好ましい実施形態において、ハイパーコアは、ジペンタエリスリトールであり、単糖分岐単位はグルコースベースの分岐単位である。
【0078】
さらなる実施形態では、スペーサー分子はまたアルキル(CH-炭化水素様単位であってもよい。分岐単位は、異なる世代のデンドリマー間のPEGまたはアルキル鎖リンカーであり、例えば、グルコース層は、PEGリンカーおよびトリアゾール環を介して結合している。
【0079】
グルコース構成ブロックを使用して合成されたデンドリマーは、大部分がグルコース部分で作製された表面を伴い、脳および眼における損傷したニューロン、神経節細胞および他のニューロン細胞を含む選択された細胞への標的化された送達を可能にする。
【0080】
一実施形態では、グルコースベースのデンドリマーは、ニューロン、特にニューロン核を選択的に標的とするかまたはそれらの内部で富化される。好ましい実施形態では、グルコースベースのデンドリマーは、損傷したニューロン、罹患したニューロン、および/または過活動性のニューロンを選択的に標的とするかまたはそれらの内部で富化される。
【0081】
好ましい実施形態において、デンドリマーは、CNSまたは眼の1つもしくは複数のニューロンを標的とするための有効な数の末端グルコースおよび/またはヒドロキシル基を含む。デンドリマー表面上のヒドロキシル基はグルコース分子の一部である。表面上のグルコース分子以外に余分なヒドロキシルは存在しない。表面上の糖分子の数は世代数によって決定される。全ての世代がニューロンを標的とすることが期待される。
【0082】
一部の実施形態では、デンドリマーは、グルコースおよびオリゴエチレングリコール構成ブロックから作製される。例示的なグルコースデンドリマーは実施例に示しており、例えば、第1世代のデンドリマーは図22で示し、第2世代のデンドリマーは図23で示す。一部の例示的なグルコースデンドリマーとしては、24個のヒドロキシル(-OH)末端基を有する第1世代グルコースデンドリマー、96個のヒドロキシル(-OH)末端基を有する第2世代グルコースデンドリマー、396個のヒドロキシル(-OH)末端基を有する第3世代グルコースデンドリマー、および1584個のヒドロキシル(-OH)末端基を有する第4世代グルコースデンドリマーが挙げられる。好ましい実施形態では、グルコースデンドリマーは、周辺に24個のグルコース分子と、PEGセグメントによって保持されている骨格において埋め込まれた6個のグルコース分子とを有する第2世代グルコースベースのデンドリマーである。
【0083】
一部の実施形態では、グルコースデンドリマーは、例えば、図24で示すようにSPDPおよび1つまたは複数のPEGセグメントを介して追加の部分にコンジュゲートするように機能化されている。一部の実施形態では、グルコースデンドリマーは、図25で示すようにsiRNAにコンジュゲートしている。
【0084】
したがって一部の実施形態では、1つまたは複数の機能性核酸は、損傷したニューロン、罹患したニューロン、および/または過活動性のニューロンを選択的に標的とするかまたはそれらの内部で富化されるためにグルコースデンドリマーにコンジュゲートしている。例示的な機能性核酸は、アンチセンス分子、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、または外部ガイド配列である。好ましい機能性核酸はsiRNAまたはmiRNAである。特定の実施形態において、miRNAはmiR-126である。
【0085】
B.カップリング剤およびスペーサー
デンドリマー複合体は、1つまたは複数のスペーサー/リンカーを介してデンドリマー、樹状ポリマーまたはハイパーブランチポリマーにコンジュゲートしている小分子生物製剤から形成される。典型的には、活性剤は、1つまたは複数の連結、例えば、ジスルフィド、エステル、カルボネート、カルバメート、チオエステル、ヒドラジン、ヒドラジド、およびアミド連結を介してデンドリマーと連結している。好ましい実施形態では、デンドリマーと薬剤との間の1つまたは複数のスペーサー/リンカーは、デンドリマー-活性複合体のin vivoで放出可能なまたは放出不可能な形態を提供するように設計される。一部の実施形態では、結合は、薬剤とデンドリマーとの間にエステル結合を提供する適切なスペーサーを介して生じる。一部の実施形態では、結合は、薬剤とデンドリマーとの間にアミド結合を提供する適切なスペーサーを介して生じる。好ましい実施形態では、デンドリマーと薬剤との間の1つまたは複数のスペーサー/リンカーは、所望のおよび有効な放出動態をin vivoで達成するように添加される。
【0086】
「スペーサー」という用語は、活性剤(例えば、機能性核酸)をデンドリマーに連結するために使用する組成物を含む。スペーサーは、ポリマーと治療剤または造影剤とを架橋するために一緒に連結されている、単一の化学的実体または2つもしくはそれを超える化学的実体のいずれかとすることができる。スペーサーとしては、スルフヒドリル、チオピリジン、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホン、およびカルボネート末端を有する任意の小さな化学的実体、ペプチドまたはポリマーを挙げることができる。スペーサーは、スルフヒドリル、チオピリジン、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホンおよびカルボネート基が末端である化合物のクラスから選択され得る。
【0087】
好ましい実施形態において、スペーサーとしては、チオピリジン末端化合物、例えば、ジチオジピリジン、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエートLC-SPDPまたはスルホ-LC-SPDPがある。
【0088】
一部の実施形態では、スペーサーとしては、スルフヒドリル基、例えばグルタチオン、ホモシステイン、システインおよびその誘導体を実質的に有する直鎖状または環状のペプチド、arg-gly-asp-cys(RGDC)、シクロ(Arg-Gly-Asp-d-Phe-Cys)(c(RGDfC))、シクロ(Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Cys)、シクロ(Arg-Ala-Asp-d-Tyr-Cys)を挙げることもできる。スペーサーは、メルカプト酸誘導体、例えば3メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、4メルカプト酪酸、チオラン-2-オン、6メルカプトヘキサン酸、5メルカプト吉草酸ならびに他のメルカプト誘導体、例えば2メルカプトエタノールおよび2メルカプトエチルアミンとすることができる。スペーサーは、チオサリチル酸およびその誘導体、(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-アルファ-2-ピリジルチオ)トルエン、(3-[2-ピリジチオ]プロピオニルヒドラジドとすることができる。スペーサーは、マレイミド末端を有していてもよく、スペーサーとしては、ポリマーまたは小さな化学的実体、例えばビス-マレイミドジエチレングリコールおよびビス-マレイミドトリエチレングリコール、ビス-マレイミドエタン、ビスマレイミドヘキサンが挙げられる。スペーサーとしては、ビニルスルホン、例えば1,6-ヘキサン-ビス-ビニルスルホンを挙げることができる。スペーサーとしては、チオグリコシド、例えばチオグルコースを挙げることができる。スペーサーは、還元タンパク質、例えばウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミン、ジスルフィド結合を形成することができる任意のチオール末端化合物とすることができる。スペーサーとしては、スルフヒドリル、チオピリジン、マレイミド、スクシンイミジルおよびチオール末端を有するポリエチレングリコールを挙げることができる。
【0089】
活性剤は、共有結合していても、分子内分散していても、カプセル化されていてもよい。好ましい実施形態において、活性剤はデンドリマーに共有結合している。デンドリマーは好ましくは最大第10世代のPAMAMデンドリマーであり、カルボキシル、ヒドロキシル、またはアミン末端を有している。好ましい実施形態において、デンドリマーは、ジスルフィド結合で終わるスペーサーを介して活性剤に連結されたヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーである。
【0090】
1.in vivoで放出可能なリンカー
好ましい実施形態において、1つまたは複数の小分子活性剤は、in vivoで放出可能なリンカーを介してデンドリマーに共有結合によりコンジュゲートしている。典型的には、デンドリマーへの共有結合によって活性剤が安定化され、in vivoでの薬剤の血清中半減期が延長され、酵素分解が予防され、同時に非機能的形態で活性剤が維持される。一部の実施形態では、リンカーは、所定の時間またはin vivoの位置で、例えば細胞内環境内で、活性剤がデンドリマーとの共有結合から放出されるように設計され選択されている。したがって、一部の形態では、小分子生物製剤、例えば機能性核酸は、血清において安定して保護されているが機能的に不活性な形態で維持されおり、しかし細胞中に内在化された際に放出されて機能するようになる。したがって一部の実施形態では、デンドリマー/小分子生物製剤には、例えば、デンドリマーと薬剤との間のジスルフィド結合を分割することによってデンドリマーから活性剤を放出する、in vivoで放出可能なリンカーが含まれる。一部の実施形態では、in vivoで放出可能なリンカーは、プロテアーゼ活性、pH、およびグルタチオン濃度のうちの1つまたは複数に対して感受性である。グルタチオン濃度放出戦略では、血漿よりも高い細胞内グルタチオン濃度を利用する。したがって、ジスルフィド含有リンカーは、グルタチオンによる還元後に細胞毒素を放出する。例示的なグルタチオン感受性リンカーは、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、グルタチオン(GSH)、およびガンマ-アミノ酪酸(GABA)である。例示的なプロテアーゼ感受性戦略では、カテプシンBによる細胞内切断機序としてリンカー、例えば、バリン-シトルリン(VC)ジペプチドにおける特異的ペプチド配列を認識し切断するために、腫瘍細胞のリソソームにおいて認められる優勢なプロテアーゼを利用する。酸感受性戦略は、細胞質(pH=7.4)と比較してpHが低いエンドソーム(pH=5~6)およびリソソーム(pH=4.8)コンパートメントを使用して、リンカー、例えばヒドラゾン内の酸に不安定な基の加水分解を誘発するためのものである。
【0091】
好ましい実施形態では、リンカーは、細胞内環境内のデンドリマーから小分子生物製剤を放出し、その結果、小分子の活性は標的細胞内部に制限される。例示的な実施形態では、デンドリマー複合体は、グルタチオン放出可能リンカー、例えばSPDPリンカーを介して1つまたは複数の小分子生物製剤、例えば機能性核酸に共有結合しているOH末端PAMAMデンドリマーを含む。
【0092】
C.小分子生物製剤
デンドリマーは1つまたは複数の小分子生物製剤に共有結合している。生物製剤という用語は、生物起源の多様な選択物の化合物、例えば、ペプチド、核酸ベースの化合物、サイトカイン、代替酵素、さまざまな組換えタンパク質、およびモノクローナル抗体を網羅する。好ましい実施形態において、小分子生物製剤としては、siRNA、オリゴヌクレオチド、マイクロRNAおよび治療的タンパク質がある。小分子生物製剤の分子量は、50,000amu未満、好ましくは20,000amu未満、より好ましくは5,000~15,000ダルトンである。一部の実施形態では、デンドリマーと会合しているかまたはそれにコンジュゲートしている小分子生物製剤としては1つまたは複数の機能性核酸がある。
【0093】
1.機能性核酸
標的遺伝子の転写、翻訳、または機能を阻害する機能性核酸を記載する。機能性核酸は、特異的機能、例えば標的分子との結合または特定の反応の触媒作用を有する核酸分子である。以下でより詳細に考察するように、機能性核酸分子は次のカテゴリー:アンチセンス分子、siRNA、miRNA、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、RNAi、および外部ガイド配列に分けることができる。機能性核酸分子は、標的分子が有する特異的な活性のエフェクター、阻害剤、モジュレーター、または刺激物質として作用することができるか、または任意の他の分子とは無関係なデノボ活性を有する場合がある。
【0094】
機能性核酸分子は、任意の高分子、例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、または炭水化物鎖と相互作用することができる。したがって、機能性核酸は、標的ポリペプチドのmRNAもしくはゲノムDNAと相互作用することができるか、または標的ポリペプチド自体と相互作用することができる。機能性核酸は、標的分子と機能性核酸分子との間の配列相同性に基づいて他の核酸と相互作用するように設計されていることが多い。他の状況では、機能性核酸分子と標的分子との間の特異的認識は、機能性核酸分子と標的分子との間の配列相同性に基づいておらず、むしろ特異的認識を可能にする第三級構造の形成に基づいている。したがって、組成物は、標的タンパク質の発現または機能を減少させるように設計された1つまたは複数の機能性核酸を含んでいてもよい。
【0095】
記載する機能性核酸、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、EGS、gRNA、sgRNA、リボザイム、およびアプタマーをin vivoで発現させるためのベクターを作製および使用する方法は当技術分野において公知である。デンドリマー-機能性核酸複合体として機能性核酸を対象に投与すると、典型的には、単独で投与された機能性核酸の血清中半減期と比較して、機能性核酸の血清中半減期が増強される。一部の実施形態では、デンドリマーとのコンジュゲーションによって、機能性核酸が酵素分解またはタンパク質分解から遮蔽され、機能性核酸の非特異的細胞取り込みおよび/または活性が阻止される。
【0096】
典型的には、デンドリマーとのコンジュゲーションは、デンドリマー複合体によって標的とされる1つまたは複数の部位への機能性核酸のin vivo分布を誘導する。例えば、OH末端デンドリマーとのコンジュゲーションは、全身投与後、1つまたは複数の炎症部位への機能性核酸のin vivo分布を誘導する。特定の実施形態では、OH末端デンドリマーとのコンジュゲーションは、全身投与後、脳および/またはCNS内の神経炎症または神経学的損傷の1つまたは複数の部位への機能性核酸のin vivo分布を誘導する。
【0097】
a.アンチセンスオリゴヌクレオチド
一部の実施形態では、機能性核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは標準的塩基対形成または非標準的塩基対形成のいずれかによって標的核酸分子と相互作用するように設計されている。アンチセンス分子と標的分子との相互作用は、例えば、RNase H介在性RNA-DNAハイブリッド分解によって標的分子の破壊を促進するように設計されている。あるいは、アンチセンス分子は、標的分子上で通常生じるであろうプロセシング機能、例えば転写または複製を妨害するように設計されている。アンチセンス分子は、標的分子の配列に基づいて設計してもよい。標的分子の最もアクセス可能な領域を見出すことによってアンチセンス効率を最適化するための多くの方法が存在する。例示的な方法としては、in vitroでの選択実験、ならびにDMSおよびDEPCを使用したDNA修飾研究がある。アンチセンス分子は、標的分子と10-6、10-8、10-10、または10-12未満またはそれらに等しい解離定数(Kd)で結合することが好ましい。
【0098】
b.サイレンシングRNA(RNA干渉)
一部の実施形態では、機能性核酸は、RNA干渉(siRNA)によって遺伝子サイレンシングを誘導する。標的遺伝子の発現は、RNA干渉によって高度に特異的な様式で有効にサイレンシングすることができる。
【0099】
所与の遺伝子の干渉活性を伴うRNAポリヌクレオチドは、対応する相補的配列を伴う特定のメッセンジャーRNA(mRNA)の分解をもたらし、タンパク質産生を予防することによって遺伝子を下方調節することになる(Sledz and Williams, Blood, 106(3):787-794 (2005)を参照のこと)。RNA分子がmRNAと相補的ワトソンクリック塩基対を形成した場合、アクセサリータンパク質によるmRNA切断が誘発される。RNAの供給源は、ウイルス感染であっても、転写であっても、外因性供給源からの導入であってもよい。
【0100】
遺伝子サイレンシングは、もともとは二本鎖RNA(dsRNA)の添加によって観察された(Fire, et al. (1998) Nature, 391:806-11;Napoli, et al. (1990) Plant Cell 2:279-89;Hannon, (2002) Nature, 418:244-51)。dsRNAが細胞に侵入すると、ダイサーと呼ばれるRNase III様酵素によって切断され、3’末端上で2ヌクレオチドオーバーハングを含む21~23ヌクレオチド長の二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)となる(Elbashir, et al., Genes Dev., 15:188-200 (2001);Bernstein, et al., Nature, 409:363-6 (2001);Hammond, et al., Nature, 404:293-6 (2000);Nykanen, et al., Cell, 107:309-21 (2001);Martinez, et al., Cell, 110:563-74 (2002))。iRNAまたはsiRNAまたはそれらの使用の効果はいずれのタイプの機序にも限定されない。
【0101】
一実施形態では、siRNAは、siRNAと標的RNAとの両方の間の配列同一性の領域内で相同RNA分子、例えばmRNAの特異的分解を引き起こす。配列特異的遺伝子サイレンシングは、ダイサー酵素によって産生されるsiRNAを模倣した短い二本鎖合成RNAを使用して哺乳動物細胞において達成することができる(Elbashir, et al., Nature, 411:494-498 (2001))(Ui-Tei, et al., FEBS Lett, 479:79-82 (2000))。siRNAは化学的にまたはin vitroで合成しても、細胞内部でsiRNAにプロセシングされる短い二本鎖ヘアピン様RNA(shRNA)の結果であってもよい。例えば、WO02/44321では、3’オーバーハング末端と塩基対を形成した場合、siRNAが標的mRNAを配列特異的に分解することができることが記載されており、その出願は、それらのsiRNAを作成する方法に関して参照により本明細書に特に組み込まれるものとする。合成siRNAは、アルゴリズムおよび従来のDNA/RNA合成装置を使用して一般的に設計される。供給会社としては、Ambion(Austin、Texas)、ChemGenes(Ashland、Massachusetts)、Dharmacon(Lafayette、Colorado)、Glen Research(Sterling、Virginia)、MWB Biotech(Esbersberg、Germany)、Proligo(Boulder、Colorado)、およびQiagen(Vento、The Netherlands)がある。siRNAはまた、キット、例えばAmbionのSILENCER(登録商標)siRNA Constructionキットを使用してin vitroで合成してもよい。
【0102】
したがって一部の実施形態では、デンドリマーは、1つもしくは複数のsiRNA、またはsiRNAを発現する1つまたは複数のベクターを含む。ベクターからのsiRNA産生は、ショートヘアピンRNA(shRNA)の転写によって行うのがより一般的である。shRNAを含むベクターを産生するためのキットは入手可能であり、例えば、ImgenexのGENESUPPRESSOR(商標)ConstructionキットおよびInvitrogenのBLOCK-IT(商標)誘発型RNAiプラスミドおよびレンチウイルスベクターである。一部の実施形態では、機能性核酸はsiRNA、shRNA、またはmiRNAである。
【0103】
i.マイクロRNA(miRNA)
一部の実施形態では、サイレンシングRNAはマイクロRNA(miRNA)である。マイクロRNA(miRNA)は、遺伝子発現の調節において重要な役割を果たすある種の非コードRNAである。miRNAは標的配列に結合し、標的遺伝子の発現を減少させる。miRNAはDNAに直接結合し転写を阻止するか、または転写されたmRNAに直接結合し翻訳を阻止し、mRNAを分解に向かわせる。
【0104】
miRNAは、平均22ヌクレオチド長の小さな非コードRNAである。大部分のmiRNAはDNA配列から一次miRNA(pri-miRNA)に転写され、前駆体miRNA(プレmiRNA)および成熟miRNAにプロセシングされる。大部分の場合では、miRNAは標的mRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)と相互作用して、mRNAの分解および翻訳抑制を誘発する。しかし、miRNAと5’UTR、コード配列、および遺伝子プロモーターを含む他の領域との相互作用も報告されている。ある特定の条件下では、miRNAは翻訳を活性化するかまたは転写を調節する場合もある。miRNAとその標的遺伝子との相互作用は動的であり、多くの因子、例えば、miRNAの細胞内位置、miRNAおよび標的mRNAの豊富さ、ならびにmiRNA-mRNA相互作用の親和性に依存する。miRNAは細胞外液に分泌され、小胞、例えばエクソソームによってまたはアルゴノートを含むタンパク質に結合することによって、標的細胞に輸送される場合がある。細胞外miRNAは細胞-細胞コミュニケーションを媒介するための化学メッセンジャーとして機能する(O’Brien et al, Front. Endocrinol., 9, pp.402 (2018))。
【0105】
大部分の場合で、miRNAは標的mRNAの3’UTRと相互作用して発現を抑制するか、または5’UTR、コード配列、および遺伝子プロモーターを含む他の領域と相互作用する。miRNAは異なる細胞内コンパートメント間を往復し、翻訳、さらには転写の速度を制御もする。
【0106】
1つまたは複数の放出可能なリンカーを介してmiRNAに共有結合しているデンドリマーを記載する。好ましい実施形態では、デンドリマーは、miRNAを標的細胞内、例えば、活性化マクロファージまたはミクログリア細胞内に細胞内放出するために、放出可能なリンカーを介して1つまたは複数のmiRNAに共有結合しているG2~G10世代OH末端PAMAMデンドリマーである。
【0107】
(1)miR-126
一部の実施形態では、マイクロRNA(miRNA)はmiR-126miRNAである。miR-126は、毛細血管から太い血管にわたる内皮細胞においてのみ発現するヒトマイクロRNAであり、さまざまな転写物に作用して血管新生を制御する。miR-126はヒト第9染色体上に存在するEGFL7遺伝子の第7イントロン内に位置する(Meister et al., Scientific World Journal. 10: 2090-100. doi:10.1100/tsw.2010.198 (2010))。
【0108】
miR-126は2つの転写因子:ETS1およびETS2の結合によって調節され、これらが結合するとmiR-126プレmiRNAの転写が誘発され、ヘアピンpri-miRNAの形成をもたらす。ヘアピンmiRNAはダイサーに標的とされて切断され、成熟miR-126およびmiR-126転写物が産生される。メチル化および遺伝子サイレンシングヌクレオソームの蓄積による宿主遺伝子のエピジェネティックな調節によってイントロンmiRNAの発現が減少する。これはEGFL7とmiR-126の両方のサイレンシングからの恩恵を受け両方とも発現しなくなるがんにおいて観察されている。
【0109】
miR-126の主な標的のうちの1つは宿主遺伝子EGFL7である。成熟miR-126は、EGFL7内の相補的配列に結合し、mRNAの翻訳を阻止し、EGFL7タンパク質レベルを減少させる。EGFL7は、細胞遊走および血管形成に関与していることは公知であり、EGFL7およびmiR-126は、腫瘍に栄養を供給するための血管の継続的形成および組織浸潤を媒介するための細胞遊走経路を必要とする疾患、例えばがんに対する標的として好都合である。miR-126の標的としては、CRK(細胞接着、増殖、遊走および浸潤の調節に関与する細胞内シグナル経路に関与するタンパク質);TOM1(IL-1ベータおよびTNF-アルファシグナル伝達経路の負のレギュレーター);CXCL12(miR-126によって調節されるケモカイン);POU3F1(転写因子PU.1の活性化に必要とされる因子);VEGF-Α(miR-126がVEGF-ΑmRNAの3’非翻訳領域に結合するとき、タンパク質産生は減少する);IRS-1(細胞周期のG0/G1からS期への進行を阻害する);およびHOXA9(miR-126は造血細胞におけるHOXA9発現をモジュレートする)がある。
【0110】
miR-126 miRNAに関する核酸配列は:
5’CAUUAUUACUUUUGGUACGCG-3’(配列番号1)
である。
【0111】
c.アプタマー
一部の実施形態では、機能性核酸はアプタマーである。アプタマーは、好ましくは特異的な方法で標的分子と相互作用する分子である。典型的には、アプタマーは、規定された二次および三次構造、例えばステムループまたはG-四重鎖(G-quartet)に折りたたまれている15~50塩基長の範囲の小さな核酸である。アプタマーは小さな分子、例えばATPおよびテオフィリン、ならびに大きな分子、例えば逆転写酵素およびトロンビンと結合することができる。アプタマーは、標的分子からのKd値が10-12M未満で非常に強力に結合することができる。アプタマーは標的分子と10-6、10-8、10-10、または10-12未満のKdで結合することが好ましい。アプタマーは標的分子と非常に高度な特異性で結合することができる。例えば、標的分子と分子上で1つの位置のみが異なる別の分子との間の結合親和性において10,000倍を超える差を有するアプタマーが単離されている。アプタマーは、標的分子とのKdがバックグラウンド結合分子のKdの多くとも1/10、1/100、1/1000、1/10,000、または1/100,000であることが好ましい。ポリペプチドなどの分子について比較を行う場合、バックグラウンド分子は、異なるポリペプチドであることが好ましい。
【0112】
d.リボザイム
機能性核酸はリボザイムであってもよい。リボザイムは、分子内または分子間のいずれかで化学反応を触媒することができる核酸分子である。リボザイムは分子間反応を触媒することが好ましい。天然の系において認められるリボザイム、例えばハンマーヘッドリボザイムに基づくヌクレアーゼまたは核酸ポリメラーゼタイプの反応を触媒する異なるタイプのリボザイムを記載する。天然の系において認められないがデノボでの特異的な反応を触媒するように操作されているリボザイムも記載する。好ましいリボザイムはRNAまたはDNA基質を切断し、より好ましくはRNA基質を切断する。リボザイムは典型的には、標的基質を認識し結合し、その後切断することによって核酸基質を切断する。この認識は、標準的なまたは非標準的な塩基対相互作用に大部分は基づいていることが多い。標的基質の認識は標的基質の配列に基づいているため、この特性によって、リボザイムは核酸の特異的切断を標的とするための特に良好な候補となる。
【0113】
e.三重鎖形成オリゴヌクレオチド
機能性核酸は三重鎖形成オリゴヌクレオチド分子であってもよい。三重鎖形成機能性核酸分子は、二本鎖核酸または一本鎖核酸のいずれかと相互作用することができる分子である。三重鎖分子が標的領域と相互作用した場合、ワトソンクリック塩基対形成とフーグスティーン塩基対形成の両方に依存する複合体を形成するDNAの3つのストランドが存在する三重鎖と呼ばれる構造が形成される。三重鎖分子は、高い親和性および特異性で標的領域と結合することができるため好ましい。三重鎖形成分子は標的分子に10-6、10-8、10-10、または10-12未満のKdで結合することが好ましい。
【0114】
f.外部ガイド配列
機能性核酸は外部ガイド配列であってもよい。外部ガイド配列(EGS)は標的核酸分子に結合し複合体を形成する分子であり、それがRNase Pによって認識され、次いで標的分子が切断される。EGSは、選択したRNA分子を特異的に標的とするように設計されていてもよい。RNase Pは細胞内の転移RNA(tRNA)のプロセシングを助ける。細菌性RNase Pは、標的RNA:EGS複合体に天然tRNA基質を模倣させるEGSを使用することによって、いずれのRNA配列も事実上切断するように動員することができる。同様に、真核生物EGS/RNase P指向性RNA切断を、真核細胞内の所望の標的を切断するために利用してもよい。さまざまな異なる標的分子の切断を促進するためにEGS分子を作製し使用する方法の代表的な例は当技術分野において公知である。
【0115】
D.送達されることになる追加の薬剤
デンドリマー-小型生物製剤複合体は、1つまたは複数の追加の活性剤、特に、標的疾患または障害の1つまたは複数の症状を予防または処置するための1つまたは複数の活性剤を送達するために使用することができる。好適な治療剤、診断剤、および/または予防剤は、生体分子、例えば、ペプチド、タンパク質、炭水化物、ヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドであってもよい。薬剤は、デンドリマー内にカプセル化されていても、デンドリマー内に分散されていても、および/またはデンドリマー表面と共有結合的にまたは非共有結合的に会合していてもよい。
【0116】
デンドリマーは、複数の治療用、予防用、および/または診断用薬剤を同じデンドリマーを用いて送達することができるという利点を有する。1つまたは複数のタイプの薬剤は、デンドリマーにカプセル化、複合体化、またはコンジュゲートしてもよい。一実施形態では、デンドリマーは、2つまたはそれを超える異なるクラスの薬剤と複合体化されるかまたはそれらにコンジュゲートされ、標的部位における異なるまたは独立した放出動態を伴う同時送達を提供する。別の実施形態では、デンドリマーは、少なくとも1つの検出可能な部分および少なくとも1つのクラスの薬剤に共有結合により連結される。さらなる実施形態では、異なるクラスの薬剤をそれぞれ運ぶデンドリマー複合体は、組合せ処置のために同時に投与される。
【0117】
1.治療用および予防用薬剤
一部の実施形態では、デンドリマー-小型生物製剤複合体は、1つまたは複数の追加の治療用または予防用薬剤を含む。例示的な追加の治療用または予防用薬剤の例としては、抗炎症剤、化学療法剤、および抗感染症剤がある。
【0118】
a.抗炎症剤
一部の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の抗炎症剤を含む。抗炎症剤は炎症を減少させ、抗炎症剤としては、ステロイド薬および非ステロイド薬がある。
【0119】
好ましい抗炎症薬は、N-アセチルシステインを含む抗酸化薬である。好ましい非ステロイド性抗炎症薬(「NSAIDS」)としては、メフェナム酸、アスピリン、ジフルニサル、サルサレート、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、ディークケトプロフェン(Deacketoprofen)、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、エレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、スルホンアニリド、ニメスリド、ニフルム酸、およびリコフェロンがある。
【0120】
代表的な小分子としては、メチルプレドニゾン、デキサメタゾンなどのステロイド、COX-2阻害剤を含む非ステロイド性抗炎症剤、コルチコステロイド性抗炎症剤、金化合物抗炎症剤、免疫抑制剤、抗炎症剤および抗血管新生剤、バルプロ酸、D-アミノホスホノバレレート(D-aminophosphonovalerate)、D-アミノホスホノヘプタノエート(D-aminophosphonoheptanoate)などの抗興奮毒性剤、バクロフェンなどのグルタメート形成/放出阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、サリチレート抗炎症剤、ラニビズマブ、アフリベルセプトを含む抗VEGF剤、ならびにラパマイシンが挙げられる。他の抗炎症薬としては、非ステロイド薬、例えばインドメタシン、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウムおよびイブプロフェンが挙げられる。コルチコステロイドは、フルオシノロンアセトニドおよびメチルプレドニゾロンであってもよい。
【0121】
例示的な免疫モジュレート薬としては、シクロスポリン、タクロリムスおよびラパマイシンが挙げられる。一部の実施形態では、抗炎症剤は、T細胞などの1つまたは複数の免疫細胞型の作用をブロックするか、または腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ)、インターロイキン17-A、インターロイキン12および23などの免疫系におけるタンパク質をブロックする生物学的薬物である。
【0122】
一部の実施形態では、抗炎症薬は、合成または天然の抗炎症性低分子量タンパク質である。選択する免疫構成成分に対して特異的な抗体を、免疫抑制療法に加えることができる。一部の実施形態では、抗炎症薬は、抗T細胞抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリンまたは抗リンパ球グロブリン)、抗IL-2Rα受容体抗体(例えば、バシリキシマブまたはダクリズマブ)、または抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)の断片である。
【0123】
多くの炎症性疾患は、リポ多糖(LPS)に対する受容体であるトル様受容体4(TLR4)を介し病理学的に上昇したシグナル伝達に連結している場合がある。したがって、潜在的な抗炎症剤としてのTLR4阻害剤の発見に大きな関心が寄せられている。近年では、阻害剤E5564に結合するTLR4の構造が解明され、E5564-結合ドメインを標的とする新規のTLR4阻害剤の設計および合成が可能になった。このことは、米国特許第8,889,101号に記載されている。Neal, et al., PLoS One. 2013; 8(6): e65779eによって報告されているように、小分子ライブラリの限定されたスクリーニングアプローチと組み合わせて使用する類似性探索アルゴリズムによって、E5564部位に結合し、TLR4を阻害する化合物が同定されている。リード化合物のC34、は、式C1727NOを有する2-アセトアミドピラノシド(MW389)であり、腸細胞およびマクロファージにおいてin vitroでTLR4を阻害し、内毒素血症および壊死性腸炎のマウスモデルにおける全身性炎症を減少させる。したがって、一部の実施形態では、活性剤は、1つまたは複数のTLR4阻害剤である。好ましい実施形態では、活性剤は、C34、およびこれらの誘導体、アナログである。
【0124】
好ましい実施形態において、1つまたは複数の抗炎症薬物は、哺乳動物対象に投与後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、好ましくは少なくとも1週、2週、または3週、より好ましくは少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月間にわたりデンドリマーナノ粒子から炎症を阻害するのに有効な量で放出される。
【0125】
b.化学療法剤
化学療法剤は一般的に、がん細胞におけるDNA合成または機能を干渉することによって作用する薬学的または治療的活性化合物を含む。細胞レベルでのその化学作用に基づいて、化学療法剤は、細胞周期特異的薬剤(細胞周期のある特定の期の間で有効)および細胞周期非特異的薬剤(細胞周期の全ての期で有効)に分類することができる。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、血管新生阻害剤、アロマターゼ阻害剤、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、抗腫瘍抗生物質、プラチナ薬物、トポイソメラーゼ阻害剤、放射性同位体、放射線増感剤、チェックポイント阻害剤、PD1阻害剤、植物アルカロイド、解糖阻害剤およびそれらのプロドラッグがある。
【0126】
PD-1阻害剤の例としては、例えば、ヒトPD-1に特異的な遺伝子操作された完全ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)モノクローナル抗体であるMDX-1106、および米国FDAによって近年承認されたペンブロリズマブがある。断片は、デンドリマーにコンジュゲートしていてもよい。
【0127】
代表的な化学療法剤としては、これらに限定されるものではないが、アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピポドフィロトキシン、エピルビシン、エトポシド、リン酸エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン(innotecan)、ロイコボリン、リポソーム型ドキソルビシン、リポソーム型ダウノルビシン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テニポシド、テガフール-ウラシル、テモゾロマイド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、タキソールおよびその誘導体、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、セツキシマブ、およびリツキシマブ(RITUXAN(登録商標)またはMABTHERA(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ならびにこれらの組合せが挙げられる。代表的なアポトーシス促進剤(pro-apoptotic agent)としては、これらに限定されるものではないが、フルダラビンタウロスポリン、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ラクトシルセラミド、15d-PGJ(2)5、およびこれらの組合せがある。
【0128】
1つまたは複数の化学療法剤を含むデンドリマー複合体は、チェックポイントタンパク質、例えばPD-1またはCTLA-4を阻害する免疫療法、養子T細胞療法、および/またはがんワクチンより前に、またはそれらとともに使用してもよい。適応性T細胞がん療法に関するin vitroでT細胞をプライミングおよび活性化する方法は、当技術分野において公知である。例えば、Wang, et al, Blood, 109(11):4865-4872 (2007)およびHervas-Stubbs, et al, J. Immunol., 189(7):3299-310 (2012)を参照のこと。がんワクチンの例としては、例えば、前立腺がんを処置するための樹状細胞ベースのワクチンであるPROVENGE(登録商標)(シプロイセル-T)が挙げられる(Ledford, et al., Nature, 519, 17-18 (05 March 2015))。このようなワクチンならびに免疫療法のための他の組成物および方法は、Palucka, et al., Nature Reviews Cancer, 12, 265-277 (April 2012)で総説されている。
【0129】
一部の実施形態では、デンドリマー複合体は、例えばレット症候群を含む神経発達障害における脳のミクログリアの炎症を処置、イメージング、および/または予防するのに有効である。好ましい実施形態では、デンドリマー複合体は、抗炎症剤(D-NAC)および抗興奮毒性剤およびD-抗グルタメート剤を送達するために使用されることになる。好ましい候補はMK801、メマンチン、ケタミン、1-MTである。
【0130】
c.神経活性剤
いくつかの薬物が、ニューロンの損傷に向かうグルタメート興奮毒性カスケードを妨害するか、影響を与えるか、または一時的に停止させるための試みにおいて開発され使用されてきた。1つの戦略は、グルタメート放出を減少させるための「上流」の試みである。薬物のこのカテゴリーとしては、ナトリウムチャネルブロッカーであるリルゾール、ラモトリジン、およびリファリジン(lifarizine)がある。通常使用されるニモジピンは電位依存性チャネル(L型)ブロッカーである。共役型グルタメート受容体自体のさまざまな部位に影響を与える試みも行われてきた。これらの薬物の一部としては、フェルバメート、イフェンプロジル、マグネシウム、メマンチン、およびニトログリセリンがある。これらの「下流」薬物は、細胞内事象、例えば、フリーラジカル形成、一酸化窒素形成、タンパク質分解、エンドヌクレアーゼ活性、およびICE様プロテアーゼ形成(プログラムされた細胞死またはアポトーシスを引き起こすプロセスにおける重要な構成成分)に影響を与えようと試みるものである。
【0131】
神経変性疾患を処置するための活性剤は当技術分野において周知であり、処置される症状および疾患に基づいて変更してもよい。例えば、パーキンソン病に関する従来の処置としては、レボドパ(通常ドパ脱炭酸酵素阻害剤またはCOMT阻害剤と併用する)、ドーパミンアゴニスト、またはMAO-B阻害剤があり得る。
【0132】
ハンチントン病のための処置としては、異常な挙動および運動の減少を助けるためのドーパミンブロッカー、または運動を制御するための薬物、例えばアマンタジンおよびテトラベナジンなどがあり得る。舞踏病の減少を助ける他の薬物としては、神経弛緩薬およびベンゾジアゼピンがある。化合物、例えばアマンタジンまたはレマセミドは予備的な陽性結果を示している。運動機能低下および硬直は、特に若年性の場合、抗パーキンソン病薬物で処置される場合があり、ミオクロニー性運動亢進症はバルプロ酸で処置される場合がある。精神医学的な症状は、一般的な集団において使用されるものと類似している医薬で処置してもよい。選択的セロトニン再取り込み阻害剤およびミルタザピンは、抑うつのために推奨され、同時に非定型抗精神病薬物は精神病および行動障害に推奨されている。
【0133】
抗興奮毒のリルゾール(RILUTEK(登録商標))(2-アミノ-6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール)は、ALSを呈する対象における生存期間を改善させた。他の医薬は大部分は適用外使用であり、介入することによってALSに起因する症状を減少させることができる。一部の処置は生活の質を改善し、いくつかは寿命を延ばすと思われる。一般的なALS関連療法は、Gordon, Aging and Disease, 4(5):295-310 (2013)において概説されており、例えばその中の表1を参照されたい。いくつかの他の薬剤が1つまたは複数の臨床治験で試験を行われており、有効性は非有効なものから有望なものまでに及ぶ。例示的な薬剤は、Carlesi, et al., Archives Italiennes de Biologie, 149:151-167 (2011)において概説されている。例えば、治療法としては、興奮毒性を減少させる薬剤、例えばタランパネル(talampanel)(8-メチル-7H-1,3-ジオキソロ(2,3)ベンゾジアゼピン)、セファロスポリン、例えばセフトリアキソン、またはメマンチン;酸化ストレスを減少させる薬剤、例えば補酵素Q10、マンガンポルフィリン(manganoporphyrin)、KNS-760704[(6R)-4,5,6,7-テトラヒドロ-N6-プロピル-2,6-ベンゾチアゾール-ジアミン二塩酸塩、RPPX]、またはエダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、MCI-186);アポトーシスを減少させる薬剤、例えば、バルプロ酸を含むヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、TCH346(ジベンゾ(b,f)オキセピン-10-イルメチル-メチルプロパ-2-イニルアミン)、ミノサイクリン、またはタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA);神経炎症を減少させる薬剤、例えばサリドマイドおよびセラストール;向神経性薬剤、例えばインスリン様増殖因子1(IGF-1)または血管内皮増殖因子(VEGF);ヒートショックタンパク質誘発物質、例えばアリモクロモール;またはオートファジー誘発物質、例えばラパマイシンまたはリチウムがあり得る。
【0134】
アルツハイマー病のための処置としては、例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、タクリン、リバスチグミン、ガランタミンまたはドネペジル;NMDA受容体アンタゴニスト、例えばメマンチン;または抗精神病薬物があり得る。
【0135】
レビー小体型認知症の処置として、例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、タクリン、リバスチグミン、ガランタミンもしくはドネペジル;N-メチルd-アスパルテート受容体アンタゴニストメマンチン;ドーパミン系治療薬、例えば、レボドパもしくはセレギリン;抗精神病薬、例えば、オランザピンもしくはクロザピン;REM障害治療薬、例えば、クロナゼパム、メラトニン、もしくはクエチアピン;抗抑うつおよび抗不安治療薬、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(シタロプラム、エスシタロプラム、セルトラリン、パロキセチンなど)、またはセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤(ベンラファクシン、ミルタザピン、およびブプロピオン)を挙げることができる(例えば、Macijauskiene, et al., Medicina (Kaunas), 48(1):1-8 (2012)を参照のこと)。
【0136】
例示的な神経保護剤も当技術分野において公知であり、例えば、グルタメートアンタゴニスト、抗酸化剤、およびNMDA受容体刺激薬を含む。他の神経保護剤および処置としては、カスパーゼ阻害剤、栄養因子、抗タンパク質凝集剤、治療的低体温法、およびエリスロポエチンが挙げられる。
【0137】
神経機能不全を処置するための他の一般的な活性剤としては、運動症状を処置するためのアマンタジンおよび抗コリン作動薬、精神病を処置するためのクロザピン、認知症を処置するためのコリンエステラーゼ阻害剤、ならびに日中の眠気を処置するためのモダフィニルがある。
【0138】
d.抗感染症剤
抗生物質としては、ベータラクタム、例えばペニシリンおよびアンピシリン、セファロスポリン、例えば、セフロキシム、セファクロル、セファレキシン、セファドロキシル(cephydroxil)、セフポドキシム(cepfodoxime)およびプロキセチル、テトラサイクリン抗生物質、例えば、ドキシサイクリンおよびミノサイクリン、マクロライド抗生物質、例えば、アジスロマイシン、エリスロマイシン、ラパマイシンおよびクラリスロマイシン、フルオロキノロン、例えば、シプロフロキサシン、エンロフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシンおよびノルフロキサシン、トブラマイシン、コリスチン、またはアズトレオナム、ならびに抗炎症活性を有することが公知の抗生物質、例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン、またはクラリスロマイシンがある。
【0139】
2.診断剤
デンドリマーナノ粒子は投与された粒子の位置を決定するに有用な診断剤を含んでいてもよい。これらの薬剤は予防的にも使用することができる。例示的な診断材料としては、常磁性分子、蛍光性化合物、磁性分子、および放射性核種がある。好適な診断剤としては、これらに限定されるものではないが、X線画像化剤および造影剤がある。放射性核種は画像化剤としても使用してもよい。例示的な放射性標識としては、14C、36Cl、57Co、58Co、51Cr、125I、131I、111Ln、152Eu、59Fe、67Ga、32P、186Re、35S、75Se、175Ybがある。他の好適な造影剤の例としては、放射線不透過性のガスまたはガス放出化合物がある。一部の実施形態では、デンドリマーナノ粒子中に取り込まれることになる画像化剤は、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、元素粒子(例えば、金粒子)である。
【0140】
さらなる実施形態では、単一のデンドリマー複合体組成物は、身体における1つまたは複数の位置で疾患または状態を同時に処置および/または診断することができる。
【0141】
III.医薬製剤
1つまたは複数の低分子生物剤に共有結合でコンジュゲートされたデンドリマーを含む医薬組成物は、薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の処理を促進する、賦形剤および助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用して従来の様式で製剤化してもよい。
【0142】
適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。好ましい実施形態では、組成物は非経口送達用に製剤化される。一部の実施形態では、組成物は、静脈内注射用に製剤化される。典型的には、組成物は、処置されることになる組織または細胞への注射用の無菌生理食塩水または緩衝溶液中で製剤化されることになる。組成物は、使用直前に再水和するための使い捨てバイアル中で凍結乾燥保存してもよい。再水和し、投与するための他の手段は当業者に公知である。
【0143】
医薬製剤は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、1つまたは複数の低分子生物剤に共有結合でコンジュゲートされた1つまたは複数のデンドリマーを含有する。代表的な賦形剤としては、溶媒、希釈剤、pH改変剤、保存剤、抗酸化剤、懸濁化剤、湿潤剤、粘度改変剤、等張化剤、安定化剤、およびこれらの組合せが挙げられる。好適な薬学的に許容される賦形剤は、好ましくは、安全であると一般的に認められている(GRAS)材料から選択され、不所望の生物学的副作用または望ましくない相互作用をもたらすことなく個体に投与することができる。
【0144】
一般的に、薬学的に許容される塩は、水中または有機溶媒中またはこの2つの混合物中で、薬剤の遊離酸または遊離塩基の形態と化学量論量の適切な塩基または酸との反応によって調製してもよく;一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。薬学的に許容される塩としては、無機酸、有機酸由来の薬剤の塩、アルカリ金属塩、およびアルカリ土類金属塩、ならびに薬物と好適な有機リガンドとの反応によって形成された塩(例えば、第四級アンモニウム塩)が挙げられる。好適な塩のリストは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2000, p. 704で見出される。薬学的に許容される塩の形態でときとして投与される眼科用薬物の例としては、マレイン酸チモロール、酒石酸ブリモニジン、およびジクロフェナクナトリウムが挙げられる。
【0145】
1つまたは複数の小型生物製剤に共有結合でコンジュゲートされたデンドリマーの組成物は、好ましくは、投与を容易にし、投薬量を均一にするための投薬単位形態に製剤化される。「投薬単位形態」という句は、処置されることになる患者に適切なコンジュゲートの物理的に個別の単位を指す。しかし、組成物の総単回投与は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることになることは理解されるであろう。治療有効用量は、細胞培養アッセイにおいてまたは動物モデル、通常はマウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタにおいて最初に推測してもよい。動物モデルを使用して、投与の望ましい濃度範囲および経路を達成してもよい。次に、このような情報は、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定するのに有用であるはずである。コンジュゲートの治療的有効性および毒性、例えば、ED50(用量は、50%の集団において治療的に有効である)およびLD50(用量は、50%の集団に対して致死的である)は、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的手順によって決定してもよい。毒性の治療効果に対する用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比率として示され得る。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトに使用するためのさまざまな投薬量の製剤化において使用することができる。
【0146】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の小型生物製剤に共有結合でコンジュゲートされたデンドリマーの組成物は、例えば、処置されることになる部位に直接注射することによって局所的に投与される。一部の実施形態では、1つまたは複数の小型生物製剤に共有結合でコンジュゲートされたデンドリマーの組成物は、損傷、外科手術、または移植の部位のまたはその付近の血管組織上の血管系に注射されるか、局所的に適用されるか、または他の方法で直接投与される。例えば、実施形態において、1つまたは複数の小型生物製剤に共有結合でコンジュゲートされたデンドリマーの組成物は、外科手術中に露出された血管組織に局所的に適用される。典型的には、局所投与は、組成物の局所的な濃度の増加をもたらし、これは全身投与によって達成することができるものよりも高い。
【0147】
非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)および経腸投与経路用に製剤化された医薬組成物を記載する。
【0148】
A.非経口投与
一部の実施形態では、1つまたは複数の小分子生物製剤と共有結合によりコンジュゲートしているデンドリマー組成物は非経口で投与される。
【0149】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という句は、当技術分野において認識されている用語であり、注射などの経腸および局所投与以外の投与様式を含み、これらに限定されないが、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内(intradennal)、腹腔内(i.p.)、経気管、皮下(s.c.)、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内および胸骨内(intrastemal)注射および注入が挙げられる。デンドリマーは、硬膜下、静脈内、髄腔内、脳室内、動脈内、羊膜内、腹腔内、または皮下経路によって非経口で投与することができる。
【0150】
液体製剤に関しては、薬学的に許容される担体は、例えば、水性もしくは非水性溶液、懸濁液、エマルションまたは油であってもよい。非経口ビヒクル(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内注射用)としては、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲルおよび固定油がある。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、例えば、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、シクロデキストリン、エマルションまたは懸濁液が挙げられる。デンドリマーは、エマルション、例えば油中水型としても投与することができる。油の例は、石油、動物、植物、または合成起源、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ、ペトロラタム、および鉱物のものである。非経口製剤として使用するのに好適な脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。
【0151】
非経口投与に好適な製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、ならびに目的のレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および防腐剤を含んでいてもよい水性および非水性滅菌懸濁液を含んでいてもよい。静脈内ビヒクルは、流体および栄養補給液、電解質補給液、例えばリンゲルデキストロースベースのものを含んでいてもよい。一般的に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液、ならびにグリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールは、特に注射用溶液に好ましい液体担体である。
【0152】
注射可能な組成物のための注射可能な医薬品担体は、当業者であれば周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J.B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, Banker and Chalmers, eds., pages 238-250 (1982)、およびASHP Handbook on Injectable Drugs, Trissel, 15th ed., pages 622-630 (2009)を参照のこと)。
【0153】
B.経腸投与
一部の実施形態では、1つまたは複数の小型生物製剤に共有結合でコンジュゲートされたデンドリマーの組成物は、経腸で投与される。担体または希釈剤は、固体製剤用のカプセル剤または錠剤などの固体担体もしくは希釈剤、液体製剤用の液体担体もしくは希釈剤、またはこれらの混合物であってもよい。
【0154】
液体製剤に関しては、薬学的に許容される担体は、例えば、水性もしくは非水性溶液、懸濁液、エマルションまたは油であってもよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、例えば、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、シクロデキストリン、エマルションまたは懸濁液がある。
【0155】
油の例は、石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ、ペトロラタム、および鉱物である。非経口製剤として使用するのに好適な脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。
【0156】
ビヒクルとしては、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲルおよび固定油が挙げられる。製剤は、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および目的のレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有していてもよい水性および非水性等張滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および防腐剤を含んでいてもよい水性および非水性滅菌懸濁液を含む。ビヒクルは、例えば、液体栄養補給液、電解質補給液、例えばリンゲルデキストロースベースのものを含んでいてもよい。一般的に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液は、好ましい液体担体である。これらはまた、タンパク質、脂質、糖および人工栄養乳の他の構成成分とともに製剤化される場合もある。
【0157】
好ましい実施形態では、1つまたは複数の小型生物製剤に共有結合でコンジュゲートされたデンドリマーの組成物は、経口投与用に製剤化される。経口製剤は、チューインガム、ゲルストリップ(gel strips)、錠剤、カプセル剤またはトローチ剤、および粒子の形態であってもよい。腸溶性コーティング経口製剤を調製するためのカプセル化物質としては、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびメタクリル酸エステルコポリマーが挙げられる。固体経口製剤、例えばカプセル剤または錠剤が好ましい。エリキシル剤およびシロップ剤も周知の経口製剤である。
【0158】
IV.デンドリマーおよびその核酸コンジュゲートを作製する方法
A.デンドリマーを作製する方法
デンドリマーは、さまざまな化学反応ステップを介して調製してもよい。デンドリマーは、構築の全ての段階においてその構造を制御することを可能にする方法に従って通常合成される。樹状構造は、発散的なまたは収束的な2つの主要な異なるアプローチによって大部分が合成される。
【0159】
一部の実施形態では、デンドリマーは発散的な方法を使用して調製され、そこではデンドリマーが多官能性コアから組み立てられ、それが一連の反応、通常はマイケル反応によって外側へ延長される。戦略は、反応性基および保護基を有するモノマー分子と多官能性コア部分とのカップリングを伴い、これがコア周囲への世代の段階的な付加につながり、続いて保護基が除去される。例えば、PAMAM-NHデンドリマーは、N-(2-アミノエチル)アクリルアミドモノマーをアンモニアコアへカップリングさせることによって最初に合成される。
【0160】
他の実施形態では、デンドリマーは、収束的な方法を使用して調製され、そこではデンドリマーが、最終的に球の表面に位置する小分子から構築され、反応は内側に進行し、内側に構築し、最終的にはコアに結合させる。
【0161】
デンドリマーを調製するための多くの他の合成経路、例えば、直交性アプローチ、加速アプローチ、2段階の収束的な方法もしくはハイパーコアアプローチ、ハイパーモノマー方法もしくは分岐モノマーアプローチ、二重指数法;直交性カップリング法または2ステップアプローチ、2モノマーアプローチ、AB-CDアプローチが存在する。
【0162】
一部の実施形態では、デンドリマーのコア、1つもしくは複数の分岐単位、1つもしくは複数のリンカー/スペーサー、および/または1つもしくは複数の表面基は、1つまたは複数の銅アシスト(Copper-Assisted)アジド-アルキン環化付加(CuAAC)、ディールスアルダー反応、チオール-エンおよびチオール-イン反応、ならびにアジド-アルキン反応を用いたクリックケミストリーを介してさらなる官能基(分岐単位、リンカー/スペーサー、表面基など)、モノマー、および/または薬剤にコンジュゲートするのを可能にするために修飾してもよい(Arseneault M et al., Molecules. 2015 May 20;20(5):9263-94)。一部の実施形態では、既製のデンドロンを高密度ヒドロキシルポリマーにクリックする。「クリックケミストリー」は、例えば、第1の部分の表面のアルキン部分(またはそれと同等のもの)と、第2の部分上のアジド部分(例えば、トリアジン組成物もしくはそれと同等のもの上に存在する、または任意の活性末端基、例えば、第一級アミン末端基、ヒドロキシル末端基、カルボン酸末端基、チオール末端基など)との間の1,3-双極環化付加反応を介した2つの異なる部分(例えば、コア基および分岐単位;または分岐単位および表面基)のカップリングを伴う。
【0163】
一部の実施形態では、デンドリマー合成は、1つまたは複数の反応、例えばチオール-エンクリック反応、チオール-インクリック反応、CuAAC、ディールス-アルダークリック反応、アジド-アルキンクリック反応、マイケル付加、エポキシ開環、エステル化、シラン化学、およびこれらの組合せに対して応答する。
【0164】
任意の現存する樹状プラットフォームは、高ヒドロキシル含有部分、例えば、1-チオ-グリセロールまたはペンタエリスリトールをコンジュゲートさせることによって、所望の官能性の、すなわち、高密度の表面ヒドロキシル基を有するデンドリマーを作製するために使用してもよい。例示的な樹状プラットフォーム、例えば、ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリ(プロピレンイミン)(PPI)、ポリ-L-リシン、メラミン、ポリ(エーテルヒドロキシルアミン)(PEHAM)、ポリ(エステルアミン)(PEA)およびポリグリセロールを合成し、研究してもよい。
【0165】
デンドリマーはまた、2つまたはそれを超えるデンドロンを組み合わせることによって調製してもよい。デンドロンは、反応性焦点官能基を有する、デンドリマーのくさび形セクションである。多くのデンドロン足場は市販されている。それらは、2、4、8、16、32、および64個の反応性基をそれぞれ有する、第1、2、3、4、5、および6世代として販売されている。ある特定の実施形態では、1つのタイプの薬剤が1つのタイプのデンドロンに連結され、異なるタイプの薬剤が別のタイプのデンドロンに連結される。次いで、2つのデンドロンが接続されてデンドリマーが形成される。2つのデンドロンは、クリックケミストリー、すなわち、一方のデンドロン上のアジド部分ともう一方のデンドロン上のアルキン部分との間の1,3-双極環化付加反応を介して連結させて、トリアゾールリンカーを形成してもよい。
【0166】
デンドリマーを作製する例示的な方法は、国際特許出願WO2009/046446、WO2015168347、WO2016025745、WO2016025741、WO2019094952、および米国特許第8,889,101号に詳述されている。
【0167】
B.デンドリマー複合体
デンドリマー複合体は、デンドリマー、樹状ポリマーまたはハイパーブランチポリマーにコンジュゲートしている治療的、予防的または診断的小分子生物製剤、例えば機能性核酸から形成されていてもよい。デンドリマーへの1つまたは複数の薬剤のコンジュゲーションは、当技術分野において公知であり、米国特許出願公開US2011/0034422号、US2012/0003155号、およびUS2013/0136697号に詳細に記載されている。
【0168】
一部の実施形態では、1つまたは複数の薬剤は、デンドリマーに共有結合されている。一部の実施形態では、薬剤は、in vivoで切断するように設計された連結部分を介してデンドリマーに結合される。連結部分は、加水分解的に、酵素的に、またはこれらの組合せで切断するように設計してもよく、その結果、薬剤のin vivoでの持続放出が提供される。連結部分の組成と薬剤へのその結合点の両方は、連結部分の切断が活性剤またはその好適なプロドラッグのいずれかを放出するように選択される。連結部分の組成はまた、薬剤の所望の放出速度を考慮して選択してもよい。
【0169】
一部の実施形態では、結合は、ジスルフィド、エステル、エーテル、チオエステル、カルバメート、カルボネート、ヒドラジン、またはアミド結合のうちの1つまたは複数を介して生じる。好ましい実施形態では、結合は、薬剤の所望の放出動態に応じて、薬剤とデンドリマーとの間にエステル結合またはアミド結合を提供する適切なスペーサーを介して生じる。一部の場合では、エステル結合は、薬物の放出可能な形態のために導入される。他の場合では、アミド結合は、薬剤の放出不能な形態のために導入される。
【0170】
連結部分は、一般的に1つまたは複数の有機官能基を含む。好適な有機官能基の例としては、第二級アミド(-CONH-)、第三級アミド(-CONR-)、スルホンアミド(-S(O)-NR-)、第二級カルバメート(-OCONH-;-NHCOO-)、第三級カルバメート(-OCONR-;-NRCOO-)、カルボネート(-O-C(O)-O-)、尿素(-NHCONH-;-NRCONH-;-NHCONR-、-NRCONR-)、カルビノール(-CHOH-、-CROH-)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、エーテル(-O-)、およびエステル(-COO-、-CHC-、CHROC-)が挙げられ、ここで、Rは、アルキル基、アリール基、または複素環式基である。一般的に、連結部分内の1つまたは複数の有機官能基のアイデンティティーは、薬剤の所望の放出速度を考慮して選択される。さらに、1つまたは複数の有機官能基は、薬剤のデンドリマーへの共有結合を促進するように選択してもよい。
【0171】
ある特定の実施形態では、連結部分は、スペーサー基と組み合わせて、上述の有機官能基のうちの1つまたは複数を含む。スペーサー基は、オリゴマーおよびポリマー鎖を含む原子の任意のアセンブリーから構成されていてもよいが、スペーサー基における原子の合計数は、好ましくは3から200原子の間、より好ましくは3から150原子の間、より好ましくは3から100原子の間、最も好ましくは3から50原子の間である。好適なスペーサー基の例としては、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルキルアリール基、オリゴ-およびポリエチレングリコール鎖、ならびにオリゴ-およびポリ(アミノ酸)鎖が挙げられる。スペーサー基の変形形態によって、in vivoでの薬剤の放出はさらに制御される。連結部分がスペーサー基を含む実施形態では、1つまたは複数の有機官能基は、スペーサー基を核酸とデンドリマーの両方に接続するために一般的に使用することになる。
【0172】
好ましい実施形態では、結合は、薬剤とデンドリマーとの間にジスルフィド架橋を提供する適切なスペーサーを介して生じる場合がある。デンドリマー複合体は、身体において認められる還元条件下、チオール交換反応によってin vivoで薬剤の迅速な放出が可能である。例えば、スペーサーは、スルフヒドリル、チオピリジン、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホンおよびカルボネート基が末端である化合物のクラスから選択され得る。スペーサーとしては、チオピリジン末端化合物、例えばジチオジピリジン、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート LC-SPDPまたはスルホ-LC-SPDPがあり得る。
【0173】
一部の実施形態では、センスストランドまたはパッセンジャーストランドの5’および3’末端ならびにアンチセンスストランドの3’末端は、修飾を用いるコンジュゲーションのための潜在的な部位である。センスストランドまたはパッセンジャーストランドの好ましい実施形態において、5’および/または3’末端はデンドリマーへのコンジュゲーションのために機能化されている。一部の実施形態では、デンドリマーのヒドロキシル表面基はSPDPで機能化されており、必要に応じて核酸のコンジュゲーションのためにPEGリンカーで機能化されている。
【0174】
一部の実施形態では、ジスルフィドチオール改変剤は、図2で示すようなセンス5’チオール(-SH)連結を導入するために使用される。さらなる実施形態では、ジチオール修飾核酸をジチオスレイトール(DTT)で処置してジスルフィド結合を定量的に還元し、デンドリマーとのさらなるコンジュゲーションのためのスルフヒドリル基をもたらす。他の実施形態では、次いでセンス5’末端(例えば、siGFP)におけるスルフヒドリル基をSPDPで機能化されたデンドリマーと反応させて、必要に応じてPEGリンカー(例えば、デンドリマー-PEG-SPDP)と反応させて、スルフヒドリル交換反応を介してデンドリマーとアンチセンス分子とのコンジュゲートを形成している。
【0175】
薬剤をデンドリマーに共有結合により付加するのに有用である反応および戦略は、当技術分野において公知である。例えば、March, “Advanced Organic Chemistry,” 5th Edition, 2001, Wiley-Interscience Publication, New York)およびHermanson, “Bioconjugate Techniques,” 1996, Elsevier Academic Press, U.S.Aを参照されたい。所与の薬剤の共有結合的な付加に適切な方法は、所望の連結部分ならびに薬剤およびデンドリマーの構造を考慮して選択してもよく、総じて官能基の適合性、保護基の戦略、および不安定な結合の存在に関連する。
【0176】
一部の実施形態では、機能性核酸のデンドリマーへの共有結合はクリック化学を介して生じる。好ましい実施形態において、機能性核酸のデンドリマーへの共有結合は、1,2,4,5-テトラジン(Tz)とトランス-シクロオクテン(TCO)との間の逆電子要求性ディールスアルダー(IEDDA)反応開始ライゲーションを介している。一実施形態では、アンチセンス分子は末端テトラジン(Tz)で機能化されており、同時にヒドロキシル末端デンドリマーは、例えば、図1および2で示すようにクリック反応のためにトランス-シクロオクテン(TCO)で機能化されている。
【0177】
最適な薬物担持は、薬物の選択、デンドリマーの構造およびサイズ、ならびに処置されることになる組織を含む多くの因子に必然的に依存することになる。一部の実施形態では、1つまたは複数の薬剤は、約0.01重量%から約45重量%、好ましくは約0.1重量%から約30重量%、約0.1重量%から約20重量%、約0.1重量%から約10重量%、約1重量%から約10重量%、約1重量%から約5重量%、約3重量%から約20重量%、および約3重量%から約10重量%の濃度で、デンドリマーにカプセル化、会合、および/またはコンジュゲートされている。しかし、任意の所与の薬物、デンドリマー、および標的部位に最適な薬物担持は、記載済みのものなどの常用の方法によって同定することができる。
【0178】
一部の実施形態では、薬剤および/またはリンカーのコンジュゲートは、1つまたは複数の表面および/または内部基を介して生じる。したがって、一部の実施形態では、薬剤/リンカーのコンジュゲートは、コンジュゲート前のデンドリマーの利用可能な全ての表面官能基、好ましくは、ヒドロキシル基の約1%、2%、3%、4%、または5%を介して生じる。他の実施形態では、薬剤/リンカーのコンジュゲートは、コンジュゲートの前のデンドリマーの利用可能な全ての表面官能基の5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、45%未満、50%未満、55%未満、60%未満、65%未満、70%未満、75%未満で生じる。好ましい実施形態では、デンドリマー複合体は、具体的な細胞の種類を標的とするための有効量の表面官能基を保持し、同時に疾患または障害を処置、予防および/またはイメージングするのに有効量の薬剤にコンジュゲートする。
【0179】
V.使用法
デンドリマー複合体組成物を使用する方法も記載する。好ましい実施形態において、デンドリマー複合体は障害または損傷を受けたBBBを通過し、活性化されたミクログリアおよびアストロサイトを標的とする。
【0180】
A.処置法
1つまたは複数の小分子生物製剤と共有結合によりコンジュゲートしているデンドリマーの組成物およびその製剤は、感染症、炎症、またはがん、神経系、特にCNSにまで及ぶ全身性炎症を有する特定のものと関連する障害を処置するために投与してもよい。組成物は、胃腸障害、増殖性疾患を含む他の疾患、障害および損傷を処置するため、ならびに神経が疾患または障害において役割を果たす他の組織を処置するためにも使用してもよい。組成物および方法は、予防的使用にも好適である。
【0181】
方法は、それを必要とする対象におけるそれを必要とする部位で、炎症性サイトカインおよび/または増殖因子を減弱させるのに有効な量で1つまたは複数のデンドリマー-機能性核酸複合体を全身投与する。典型的には、必要に応じて1つまたは複数の追加の治療的、予防的、および/または診断的活性剤を含む、1つまたは複数の小分子生物製剤と共有結合によりコンジュゲートしているデンドリマーのデンドリマー複合体の有効量がそれを必要とする個体に投与される。デンドリマーは標的化剤も含んでいてもよいが、実施例によって実証されているように、これらは脊髄および脳における損傷した組織の部位に存在するものを含む活性化マクロファージへの送達に必要であるわけではない。
【0182】
好ましい実施形態では、デンドリマー複合体は、in vivoで認められる還元条件下で、薬物を細胞内に優先的に放出することができるデンドリマーに付加またはコンジュゲートされている薬剤を含む。薬剤は、共有結合により結合されている。対象に投与する1つまたは複数の小型生物製剤に共有結合でコンジュゲートされたデンドリマーの量は、対照、例えばデンドリマーを有さない活性剤で処置された対象と比較して、処置されることになる疾患または障害の1つまたは複数の臨床的または分子的症状を減少、予防、そうでなければ緩和するような有効量を送達するように選択する。
【0183】
B.処置される状態
1つまたは複数の小分子生物製剤と共有結合によりコンジュゲートしているデンドリマーの組成物は、眼、脳、および神経系における1つまたは複数の疾患、状態、および損傷(特に、ミクログリアおよびアストロサイトの病理学的活性化と関連するもの)を処置するのに好適である。組成物はまた、消化管障害、がんを含む他の疾患、障害および損傷を処置するために、ならびに疾患または障害において神経が役割を果たしている他の組織を処置するために使用してもよい。組成物および方法はまた予防的使用に好適である。
【0184】
デンドリマー複合体組成物は、好ましくは直径が15nmを下回っており、ヒドロキシル基の表面密度が少なくとも3OH基/nmであり、好ましくは直径が10nmを下回っており、ヒドロキシル基の表面密度が少なくとも4OH基/nmであり、より好ましくは直径が5nmを下回っており、ヒドロキシル基の表面密度が少なくとも5OH基/nmであり、最も好ましくは直径が1~2nmの間であり、ヒドロキシル基の表面密度が少なくとも4OH基/nmであり、神経発達疾患、神経変性疾患、壊死性腸炎、および脳がんを含む多くの障害および状態の病因において重要な役割を果たすミクログリアおよびアストロサイトを選択的に標的とする治療剤、予防剤、または診断剤を送達する。したがって、デンドリマー複合体は、ミクログリアおよびアストロサイトの病理学的状態と関連する状態を処置または緩和するのに有効な投薬量単位量で投与される。一般的に、これらの細胞を標的とすることによって、デンドリマーは神経炎症を処置するための薬剤を特異的に送達する。
【0185】
ミクログリア
ミクログリアは、脳および脊髄全体にわたって存在するある種の神経膠細胞(グリア細胞)である。ミクログリアは、脳内に認められる全細胞の10~15%を占めている。常在マクロファージ細胞として、これらは中枢神経系(CNS)における活性免疫防御の第1の主要な形態として作用する。ミクログリアは、CNS損傷後に重要な役割を果たし、傷害のタイミングおよびタイプに基づいて防御効果と有害効果の両方を有する場合がある(Kreutzberg, G. W. Trends in Neurosciences, 19, 312 (1996);Watanabe, H., et al., Neuroscience Letters, 289, 53 (2000);Polazzi, E., et al., Glia, 36, 271 (2001);Mallard, C., et al., Pediatric Research, 75, 234 (2014);Faustino, J. V., et al., The Journal of Neuroscience : The Official Journal Of The Society For Neuroscience, 31, 12992 (2011);Tabas, I., et al., Science, 339, 166 (2013);およびAguzzi, A., et al., Science, 339, 156 (2013))。ミクログリアの機能における変化は、正常なニューロン発達およびシナプス刈込みにも影響を与える(Lawson, L. J., et al., Neuroscience, 39, 151 (1990);Giulian, D., et al., The Journal Of Neuroscience : The Official Journal Of The Society For Neuroscience, 13, 29 (1993);Cunningham, T. J., et al., The Journal of Neuroscience : The Official Journal Of The Society For Neuroscience, 18, 7047 (1998);Zietlow, R., et al., The European Journal Of Neuroscience, 11, 1657 (1999);およびPaolicelli, R. C., et al., Science, 333, 1456 (2011))。ミクログリアは、枝状構造からアメーバ状構造へ形態が顕著に変化し、損傷後に増殖する。結果として生じた神経炎症が損傷部位で血液脳関門を破壊し、急性および慢性のニューロン細胞死および希突起膠細胞死をもたらす。したがって、炎症促進性のミクログリアを標的とすることは、強力で有効な治療戦略のはずである。神経炎症性疾患において損傷したBBBは、薬物担持ナノ粒子を脳に輸送するために利用することができる。
【0186】
好ましい実施形態では、デンドリマーは、関連する毒性を一切伴わずに、ミクログリア介在性病理を処置することを必要とする対象におけるミクログリア介在性病理を処置するために有効な量で投与される。
【0187】
一部の実施形態では、処置されることになる対象はヒトである。一部の実施形態では、処置されることになる対象は小児または乳児である。全ての方法は、処置を必要とする対象、または記載される組成物の投与から利益を得るであろう対象を識別し、選択するステップを含んでいてもよい。
【0188】
1.眼疾患および障害
組成物および方法は、眼と関連する疾患および障害の処置に好適である。
【0189】
処置することができる眼障害の例としては、アメーバ性角膜炎、真菌性角膜炎、細菌性角膜炎、ウイルス性角膜炎、オンコルセルカ角膜炎、細菌性角結膜炎、ウイルス性角結膜炎、角膜ジストロフィー疾患、フックス角膜内皮ジストロフィー、マイボーム腺機能不全、前方および後方眼瞼炎、結膜充血、結膜壊死、瘢痕性瘢痕および線維症、点状上皮角膜症、糸状角膜炎、角膜びらん、菲薄化、潰瘍化および穿孔、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、自己免疫性ドライアイ疾患、環境性ドライアイ疾患、角膜の血管新生疾患、角膜移植後の拒絶反応の予防および処置、自己免疫ブドウ膜炎、感染性ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎(トキソプラズマ症を含む)、汎ブドウ膜炎、硝子体または網膜の炎症性疾患、眼内炎の予防および処置、黄斑浮腫、黄斑変性症、加齢黄斑変性症、増殖性および非増殖性糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、網膜の自己免疫疾患、原発性および転移性眼内黒色腫、他の眼内転移性腫瘍、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、色素性緑内障ならびにそれらの組合せがある。他の障害としては、角膜の損傷、熱傷、または擦過傷、白内障、およびそれらに関連する眼または視力の加齢変性がある。
【0190】
好ましい実施形態において、処置される眼障害は脈絡膜血管新生(CNV)と関連する。CNVと関連する例示的な眼障害としては黄斑変性症がある。したがって一部の実施形態では、方法は、対象における黄斑変性症を処置または予防するためにデンドリマーにコンジュゲートされた機能性核酸を送達する。一部の実施形態では、方法は加齢関連(AMD)を処置または予防する。
【0191】
加齢黄斑変性症(AMD)は黄斑の神経変性神経炎症性疾患であり、これは中心視力損失の原因である。加齢黄斑変性症の病因は、脈絡膜(網膜の下の血管層)、網膜の色素上皮(RPE)、神経感覚網膜(neurosensory retina)下の細胞層、ブルッフ膜および神経感覚網膜自体における慢性神経炎症に関与する。
【0192】
一部の実施形態では、方法は、血管新生および血管完全性の抑制に特異的な機能性核酸に共有結合によりコンジュゲートしているOH末端デンドリマーを投与して、それを必要とする対象におけるCNVを処置または予防する。典型的には、方法は、炎症部位においてCNVを選択的に約10%~90%、例えば、10%から30%の間抑制する。典型的には、方法は、それを必要とする対象におけるそれを必要とする部位においてVEGF産生を減弱させるのに有効な量で1つまたは複数のデンドリマー-機能性核酸複合体を全身投与する。例えば一部の実施形態では、方法は、それを必要とする部位においてVEGF産生を約10%から約90%の間、例えば、15%から50%の間、20%から30%の間、または25%減少させる。特定の実施形態では、方法は、眼におけるCNVと関連する黄斑変性症を有するかまたは有するリスクのある対象の眼内で、VEGFレベルを約25%減少させる。
【0193】
2.がん
一部の実施形態では、デンドリマー組成物ならびにその製剤は、それを必要とする対象におけるがんを処置するための方法において使用される。がんを処置することを必要とする対象におけるがんを処置するための方法であって、治療有効量のデンドリマー組成物を対象に投与することを含む方法。
【0194】
患者におけるがんとは、がんをもたらす細胞の典型的な特性、例えば、制御されない増殖、特化した機能の損失、不死性、顕著な転移能、抗アポトーシス活性における顕著な増加、急速な成長および増殖速度、ならびにある特定の特徴的な形態および細胞マーカーを有する細胞の存在を指す。一部の環境では、がん細胞は腫瘍の形態であることになり;このような細胞は、動物体内に局所的に存在する場合もあり、独立した細胞、例えば白血病細胞として血流内を循環する場合もある。腫瘍とは、悪性か良性かにかかわらず、全ての新生物細胞の成長および増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性の細胞および組織を指す。固形腫瘍は一般的に、嚢胞または液体領域を含有しない組織の異常な塊である。固形腫瘍は、非限定的な例として、脳、結腸、乳房、前立腺、肝臓、腎臓、肺、食道、頭頸部、卵巣、子宮頚部、胃、結腸、直腸、膀胱、子宮、精巣、および膵臓に存在する場合がある。一部の実施形態では、固形腫瘍がここで開示される方法で処置された後、固形腫瘍は退縮するかまたはその成長が遅くなるかもしくは静止する。他の実施形態では、固形腫瘍は悪性である。一部の実施形態では、がんはステージ0のがんを含む。一部の実施形態では、がんはステージIのがんを含む。一部の実施形態では、がんはステージIIのがんを含む。一部の実施形態では、がんはステージIIIのがんを含む。一部の実施形態では、がんはステージIVのがんを含む。一部の実施形態では、がんは、難治性および/または転移性である。例えば、がんは、照射療法、化学療法を用いた処置または免疫療法を用いた単独療法に対して抵抗性であってもよい。がんとしては、限定するものではないが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、進行性軟部組織肉腫、脳がん、転移性または侵襲性乳がん、乳癌、気管支原性癌、絨毛癌、慢性骨髄性白血病、結腸癌、結腸直腸癌、ユーイング肉腫、消化管癌、神経膠腫、多形神経膠芽腫、頭頸部扁平上皮細胞癌、肝細胞癌、ホジキン病、頭蓋内上衣芽腫、大腸がん、白血病、肝臓がん、肺癌、ルイス肺癌、リンパ腫、悪性線維性組織球腫、乳腺腫瘍、黒色腫、中皮腫、神経芽腫、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、橋腫瘍、閉経前乳がん、前立腺がん、横紋筋肉腫、細網細胞肉腫、肉腫、小細胞肺がん、固形腫瘍、胃がん、精巣がん、および子宮癌を含む新たに診断されたかまたは再発性のがんがある。一部の実施形態では、がんは急性白血病である。一部の実施形態では、がんは急性リンパ芽球性白血病である。一部の実施形態では、がんは急性骨髄性白血病である。一部の実施形態では、がんは進行性軟部組織肉腫である。一部の実施形態では、がんは脳がんである。一部の実施形態では、がんは乳がん(例えば、転移性または侵襲性乳がん)である。一部の実施形態では、がんは乳癌である。一部の実施形態では、がんは気管支原性癌である。一部の実施形態では、がんは絨毛癌である。一部の実施形態では、がんは慢性骨髄性白血病である。一部の実施形態では、がんは結腸癌(例えば、腺癌)である。一部の実施形態では、がんは結腸直腸がん(例えば、結腸直腸癌)である。一部の実施形態では、がんはユーイング肉腫である。一部の実施形態では、がんは消化管癌である。一部の実施形態では、がんは神経膠腫である。一部の実施形態では、がんは多形神経膠芽腫である。一部の実施形態では、がんは頭頸部扁平上皮細胞癌である。一部の実施形態では、がんは肝細胞癌である。一部の実施形態では、がんはホジキン病である。一部の実施形態では、がんは頭蓋内上衣芽腫である。一部の実施形態では、がんは大腸がんである。一部の実施形態では、がんは白血病である。一部の実施形態では、がんは肝臓がんである。一部の実施形態では、がんは肺がん(例えば、肺癌)である。一部の実施形態では、がんはルイス肺癌である。一部の実施形態では、がんはリンパ腫である。一部の実施形態では、がんは悪性線維性組織球腫である。一部の実施形態では、がんとしては乳腺腫瘍が挙げられる。一部の実施形態では、がんは黒色腫である。一部の実施形態では、がんは中皮腫である。一部の実施形態では、がんは神経芽腫である。一部の実施形態では、がんは骨肉腫である。一部の実施形態では、がんは卵巣がんである。一部の実施形態では、がんは膵臓がんである。一部の実施形態では、がんとしては橋腫瘍が挙げられる。一部の実施形態では、がんは閉経前乳がんである。一部の実施形態では、がんは前立腺がんである。一部の実施形態では、がんは横紋筋肉腫である。一部の実施形態では、がんは細網細胞肉腫である。一部の実施形態では、がんは肉腫である。一部の実施形態では、がんは小細胞肺がんである。一部の実施形態では、がんとしては固形腫瘍が挙げられる。一部の実施形態では、がんは胃がんである。一部の実施形態では、がんは精巣がんである。一部の実施形態では、がんは子宮癌である。
【0195】
a.脳腫瘍
開示されるデンドリマーの有効な血液-脳腫瘍関門(BBTB)浸透および均一な固形腫瘍分布は、脳腫瘍への治療的送達を著しく強化することができる。高密度ヒドロキシル表面基はそのサイズが小さく、表面電荷がほぼ中性であり、炎症、特に神経炎症と関連する細胞において選択的に局在する。
【0196】
組成物および方法は、対象における腫瘍成長を遅延させるかもしくは阻害すること、腫瘍の成長もしくはサイズを減少させること、腫瘍転移を阻害するかもしくは減少させること、および/または腫瘍の発生もしくは成長と関連する症状を阻害するかもしくは減少させることによって、良性または悪性腫瘍を有する対象を処置することに有用である。
【0197】
組成物および方法で処置してもよいタイプのがんとしては、これらに限定されるものではないが、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起神経膠腫、非グリア腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫、神経節腫、神経鞘腫、脊索腫および下垂体腫瘍を含む脳腫瘍がある。
【0198】
デンドリマー複合体は、脳腫瘍またはそれに関連する症状を処置できるのが公知である1つまたは複数の追加の治療的活性剤と組み合わせて投与してもよい。
【0199】
例えば、デンドリマーは、静脈内投与を介してまたは腫瘍の全てもしくは一部を除去するための外科手術中に脳に投与してもよい。デンドリマーは、化学療法剤、補助療法、例えば放射線療法を受けている対象のものを強化する薬剤を送達するために使用してもよく、ヒドロキシル末端デンドリマーは、脳の増殖性疾患におけるDDX3活性を抑制または阻害するのに有効な量で少なくとも1つの放射線感作剤に共有結合している。
【0200】
当業者であれば、化学療法に加えて、外科的介入および放射線療法も神経系のがんの処置において使用されることは理解するであろう。放射線療法とは、対象のがんの位置に近接して対象に電離放射線を投与することを意味する。一部の実施形態では、放射線感作剤は2回またはそれを超える用量で投与され、その後、電離放射線が対象のがんの位置に近接して対象に投与される。さらなる実施形態では、放射線感作剤、それに続く電離放射線の投与は2サイクルまたはそれを超えるサイクルで繰り返してもよい。
【0201】
典型的には、電離放射線の線量は腫瘍のサイズおよび位置で異なるが、線量は0.1Gyから約30Gyの範囲、好ましくは5Gyから約25Gyの範囲である。
【0202】
一部の実施形態では、電離放射線は、定位アブレーション放射線療法(SABR)または定位体放射線療法(sterotactic body radiation therapy)(SBRT)の形態である。
【0203】
3.神経学的および神経変性疾患
デンドリマー組成物およびその製剤は、1つまたは複数の神経学的および神経変性疾患を診断および/または処置するために使用することができる。組成物および方法は、スフィンゴミエリンを含むスフィンゴ脂質の欠損した代謝および機能と関連する1つまたは複数の神経学的または神経変性疾患の処置に特に適している。一部の実施形態では、疾患または障害は、これらに限定されないが、一部の精神(例えば、抑うつ、統合失調症(SZ)、アルコール使用障害、およびモルヒネ抗侵害受容性の耐性)および神経学的(例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD))障害から選択される。一実施形態では、デンドリマー複合体は、アルツハイマー病(AD)または認知症を処置するために使用される。
【0204】
神経変性疾患は、神経および行動的機能に影響を与える神経系の慢性進行性障害であり、異なった組織病理学的および臨床的な症候群をもたらす生化学的変化を伴う(Hardy H, et al., Science. 1998;282:1075-9)。細胞分解機序に対して耐性がある異常なタンパク質が細胞内に蓄積する。神経損失のパターンは、1つのグループが影響を受けているのに対し、他方のグループは無傷なままという意味で、選択的である。疾患に関する明らかな誘発事象は存在しないことが多い。神経変性として古典的に記載される疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病、およびパーキンソン病である。
【0205】
活性化ミクログリアおよびアストロサイトによって介在される神経炎症は、さまざまな神経障害の主要な特質であり、潜在的な治療標的となる(Hagberg, H et al., Annals of Neurology 2012, 71, 444;Vargas, DL et al., Annals of Neurology 2005, 57, 67;およびPardo, CA et al., International Review of Psychiatry 2005, 17, 485)。複数の科学報告書では、これらの細胞を標的とすることによって初期段階で神経炎症を緩和すると、疾患の発症を遅延させることができ、ひいては処置に関して、より長期の治療域を提供できることが示唆されている(Dommergues, MA et al., Neuroscience 2003, 121, 619;Perry, VH et al., Nat Rev Neurol 2010, 6, 193;Kannan, S et al., Sci. Transl. Med. 2012, 4, 130ra46;およびBlock, ML et al., Nat Rev Neurosci 2007, 8, 57)。血液脳関門を通過して治療薬を送達することは困難な課題である。神経炎症は、血液脳関門(BBB)の破壊をもたらす。神経炎症性障害において損傷したBBBは、薬物担持ナノ粒子を脳全体にわたって輸送するために利用することができる(Stolp, HB et al., Cardiovascular Psychiatry and Neurology 2011, 2011, 10;およびAhishali, B et al., International Journal of Neuroscience 2005, 115, 151)。
【0206】
組成物および方法は、神経疾患もしくは障害または神経変性疾患もしくは障害、または中枢神経系障害を処置する活性剤を送達するためにも使用してもよい。好ましい実施形態では、組成物および方法は、神経疾患もしくは障害または神経変性疾患もしくは障害、または中枢神経系障害と関連する神経炎症の処置および/または緩和において有効である。方法は、典型的には、認知を高めるかまたは認知の低下を減少させる、認知機能を高めるかまたは認知機能低下を減少させる、記憶を高めるかまたは記憶の低下を減少させる、学習能力もしくは容量(capacity)を高めるかまたは学習能力もしくは容量の低下を減少させる、あるいはこれらの組合せのために、有効量の組成物を対象に投与することを含む。
【0207】
神経変性とは、ニューロン死を含む、ニューロンの構造または機能の進行性の損失を指す。例えば、組成物および方法は、疾患または障害、例えば、パーキンソン病(PD)およびPD関連疾患、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)および他の認知症、プリオン疾患、例えばクロイツフェルトヤコブ疾患、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、HIV関連認知機能障害、軽度認知機能障害、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、フリードライヒ運動失調症、レビー小体疾患、アルパーズ病、バッテン病、脳-眼-顔面-骨格症候群、大脳皮質基底核変性症、ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー疾患、クールー、リー病、単肢性筋萎縮症(Monomelic Amyotrophy)、多系統萎縮症、起立性低血圧を伴う多系統萎縮症(シャイドレーガー症候群)、多発性硬化症(MS)、脳鉄蓄積を伴う神経変性症、眼球クローヌスミオクローヌス、後部皮質萎縮症(Posterior Cortical Atrophy)、原発性進行型失語症、進行性核上性麻痺、血管性認知症、進行性多病巣性白質脳症、レビー小体型認知症(DLB)、ラクナ症候群(Lacunar syndrome)、水頭症、ウェルニッケコルサコフ症候群、脳炎後認知症、がんおよび化学療法関連認知機能障害および認知症、ならびに抑うつ誘発性認知症および仮性認知症を有する対象を処置するために使用してもよい。
【0208】
さらなる実施形態では、疾患または障害は、これらに限定されないが、注射局限性アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、ミオパチー、ニューロパチー、脳外傷、前頭側頭型認知症、ピック病、多発性硬化症、プリオン障害、2型糖尿病、致死性家族性不眠症、心不整脈、孤立性心房アミロイドーシス(isolated atrial amyloidosis)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、家族性アミロイド多発性ニューロパチー、遺伝性非ニューロパチー性全身性アミロイドーシス、フィンランド型アミロイドーシス(Finnish amyloidosis)、格子状角膜ジストロフィー、全身性ALアミロイドーシス、およびダウン症候群から選択される。好ましい実施形態では、疾患または障害は、アルツハイマー病または認知症である。
【0209】
特定の神経学的因子における改善をアセスメントするための基準は、認知的技能、運動技能、記憶容量などを評価する方法、ならびに中枢神経系の選択された領域における物理的変化をアセスメントするための方法、例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)およびコンピューター断層撮影スキャン(CT)または他のイメージング法を含む。このような評価法は、医学、神経学、心理学などの分野において周知されており、特定の神経機能障害の状態を診断するために適切に選択することができる。アルツハイマー病における変化または関連する神経学的変化をアセスメントするために、選択されたアセスメントまたは評価試験、または試験群は、デンドリマー組成物の投与を開始するより前に行われる。この最初のアセスメント後、デンドリマー組成物を投与するための処置法が開始され、さまざまな時間間隔にわたって継続される。神経学的欠陥機能障害の最初のアセスメントに続く選択された時間間隔で、選択された神経学的基準における変化または改善を再アセスメントするために、同じアセスメントまたは評価試験が再び使用される。
【0210】
C.投薬量および有効量
投薬量および投薬レジメンは、障害もしくは損傷の重症度および位置、ならびに/または投与方法に依存し、当業者に公知である。神経学的または神経変性疾患の処置において使用される治療有効量のデンドリマー組成物は、典型的には、神経学的または神経変性疾患の1つまたは複数の症状を減少させるかまたは緩和するのに十分である。
【0211】
好ましくは、活性剤は、罹患した組織または標的組織内に存在しないかもしくはそれらと関連していない健常細胞の活性もしくは量を標的としないかもしくはモジュレートしないか、またはCNSにおける活性化ミクログリア細胞を含む標的細胞と比較して低いレベルで標的とするかもしくはモジュレートする。このようにして、組成物と関連する副生成物および他の副作用は減少される。
【0212】
組成物の投与は、神経疾患、神経損傷、または加齢関連のニューロンの低下または機能障害を有する個体における神経機能の改善または増強をもたらす。一部のin vivoでのアプローチでは、デンドリマー複合体は、新規のニューロンの生成につながる神経有糸分裂を刺激または誘発し、神経原性効果を提供するための治療有効量で対象に投与される。個体のニューロン、神経突起および神経ネットワークの悪化、機能障害、または死滅を予防し、減少させ、または終息させ、神経保護効果を提供するための有効量の組成物も提供される。
【0213】
デンドリマー複合体の実際の有効量は、投与される特定の薬剤、製剤化される特定の組成物、投与様式、および処置される対象の年齢、体重、状態、ならびに投与経路、および疾患または障害を含む因子に従って変更してもよい。組成物の用量は、約0.01~約100mg/kg体重、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.5mg~約5mg/kg体重であり得る。一般的に、静脈内注射または注入に関しては、投薬量は経口投与用のものより低くてもよい。
【0214】
一般的に、投与のタイミングおよび頻度は、所与の処置または診断スケジュールの有効性と所与の送達システムの副作用とのバランスをとるように調整されることになる。例示的な投薬頻度は、連続注入、単回および複数回投与、例えば1時間ごと、毎日、毎週、毎月または毎年の投薬を含む。
【0215】
組成物は、治療剤の血液レベルの治療上有効な増加を提供するような量で、毎日、週2回、週1回、2週間毎またはそれ未満の頻度で投与され得る。投与が経口経路以外によるものである場合、組成物は、24時間以内に治療有効用量を生成するように、1時間を超えて、例えば3~10時間にわたって送達してもよい。あるいは、組成物は、制御放出のために製剤化してもよく、組成物は、週1回、またはそれ未満の頻度のレジメンで繰り返される単回用量として投与される。
【0216】
投薬量は変更してもよく、1日または数日間、単回または複数回用量投与で毎日投与してもよい。ガイダンスは、所与のクラスの医薬品に関する適切な投薬量に関する文献で見出すことができる。最適な投薬スケジュールは、対象または患者の身体における薬物蓄積の測定値から計算することができる。当業者であれば、最適な投薬量、投薬方法論、および反復率(repetition rates)を容易に決定することができる。最適な投薬量は、個々の医薬組成物の相対的な効力に応じて変化する場合があり、一般的に、動物モデルにおいてin vitroおよびin vivoで有効であることが認められたEC50に基づいて推測することができる。
【0217】
一部の実施形態では、方法は、対象における1つまたは複数の疾患または障害を減少させるかまたは予防するのに有効な量で対象に機能性核酸を投与する。デンドリマー-機能性核酸複合体として対象に機能性核酸を投与すると、典型的には、単独で投与された機能性核酸の血清半減期と比較して、機能性核酸の血清半減期が強化される。一部の実施形態では、デンドリマーとのコンジュゲーションによって、酵素分解またはタンパク質分解から機能性核酸が遮蔽され、機能性核酸の非特異的細胞取り込みおよび/または活性が予防される。例えば一部の実施形態では、機能性核酸は、デンドリマーとのコンジュゲーションが非存在下での同じ機能性核酸の血清半減期よりも10%から10,000%長い血清半減期を有し、例えば、デンドリマーとのコンジュゲーションが非存在下での同じ機能性核酸の血清半減期よりも50%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、500%、700%、1,000%、5,000%または10,000%、または10,000%を超える長い血清半減期を有する。実施例で示すように、in vivoで30分の血清半減期を有するmiRNA分子は、デンドリマーコンジュゲートとして投与後最大14日機能した。したがって一部の実施形態では、機能性核酸は一般的に、in vivoで投与後30分を超える、例えば、in vivoで投与後、最大1時間(1hr)、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10、時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、1カ月または1カ月を超える期間にわたって治療有効性を提供する。
【0218】
一部の実施形態では、レジメンは、治療ラウンド、続いて休薬(例えば、薬物なし)の1つまたは複数のサイクルを含む。休薬は、1、2、3、4、5、6、もしくは7日、または1、2、3、4週、または1、2、3、4、5、もしくは6カ月であってもよい。
【0219】
D.対照
デンドリマー複合体組成物の効果は対照と比較してもよい。好適な対照は当技術分野において公知であり、例えば、未処置の細胞または未処置の対象を含む。一部の実施形態では、対照は、処置された対象からの未処置の組織であるか、または未処置の対象からの未処置の組織である。好ましくは対照の細胞または組織は、処置された細胞または組織と同じ組織由来のものである。一部の実施形態では、未処置の対照対象は、処置された対象と同じ疾患または状態を患っているかまたはそのリスクがあるものである。
【0220】
VI.キット
組成物は、キットとして包装してもよい。キットは、デンドリマー中にカプセル化された、それと会合された、またはそれとコンジュゲートされた1つまたは複数の機能性核酸を含む組成物の単回用量または複数回用量と、組成物を投与するための取扱説明書とを含んでいてもよい。特に、取扱説明書は、有効量の組成物が、表示された特定の疾患または障害を伴う個体に投与することを指示している。組成物は、特定の処置方法を参照しながら上述のように製剤化してもよく、任意の好都合な様式で包装してもよい。
【0221】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解されるであろう。
【実施例
【0222】
(実施例1)
Cy-5を含むデンドリマー-アンチセンス-RNAコンジュゲートの合成および特徴付け
材料および方法
特に記載がない限り、全ての反応は、乾燥溶媒を使用して窒素陽圧下火炎乾燥させたガラス容器中で行った。各反応ステップ後、生成物は、DMF中で透析を介して24時間精製して小分子不純物を除去し、続いて水透析を行ってDMFを除去した。(1)~(9)の化学構造の全ての列挙は図1および2において(1)~(9)で表される化学構造に対応する。
【0223】
H NMR(DMSO-d6中)で中間体と最終的なコンジュゲートとを上から下に比較し、ピークの出現および消失による生成物の形成を確認し、保持時間におけるシフトがそれぞれ示された。全ての中間体および最終構成要素の分子量は、PAMAM-G6-OH、Cy5-D、およびCy5-D-PEG-TCOの分析HPLCトレース、ならびにPAMAM-G6-OH、Cy5-D、およびCy5-D-PEG-TCOのマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)スペクトルによって決定した。合成の各ステップにおけるコンジュゲーションの程度は、1H-NMRとMALDI-TOF/MSによって測定した分子量の変化とに基づいて計算した。
【0224】
生体分子、化学物質、および試薬
市販グレードの試薬および無水溶媒は、化学物質の供給会社から購入し、さらに精製することなく使用した。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC.HCl)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)トリフルオロ酢酸(TFA)、γ-(Boc-アミノ)酪酸(Boc-GABA-OH)、無水ジクロロメタン(DCM)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)は、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から購入した。シアニン5(Cy5)-モノ-NHSエステルはAmersham Bioscience-GE Healthcareから購入した。トランス-シクロオクテン(TCO)はAAT bioquest,Inc.から購入した。テトラジン(Tz)前駆体はBroadPharmから購入した。重水素化溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、水(D2O)、およびクロロホルム(CDCl3)はCambridge Isotope Laboratories Inc.(Andover、MA)から購入した。エチレンジアミンコアポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、第6.0世代、ヒドロキシ表面(G6-OH;診断グレード;256個のヒドロキシル末端基からなる)、メタノール溶液(13.75%w/w)は、Dendritech Inc.(Midland、MI、USA)から購入した。透析膜はSpectrum Laboratories Inc.(Rancho Dominguez、CA、USA)から購入した。
【0225】
中間体および生成物の特徴付けのための機器の使用
プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルは、周囲温度でBruker 500MHz分光計で記録し、MestReNovaソフトウェアを使用して分析した。H NMR化学シフトは、内部標準として残留溶媒(DMSO-d6、2.50)および(DO、4.79ppm)を使用したδとして報告されている。
【0226】
D-GABABoc(3)の合成
DMF(12mL)中のPAMAM G6-OH1(1.00g、0.017mmol)の溶液をBoc-GABA-OH(0.069g、0.34mmol)、DMAP(0.0782g、0.408mmol)で処置し、室温で5分間撹拌した。次いでEDC.HCI(0.046g、0.374mmol)を反応混合物に5分かけて分けて加えた。反応混合物を室温で36時間撹拌した。粗製生成物を3kD MWカットオフセルロース透析チューブに移し、DMFに対して12時間、続いて水に対して24時間透析した。水性層を凍結し、凍結乾燥して、吸湿性の白色固形物として所望の生成物3を得た(0.973g、95%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) 8.10-7.70 (m, 内部アミドH), 6.60 (s, GABAアミド H, 10H), 4.74 (s, 表面OH, 213H), 3.99 (s, エステル連結H, 22H) 3.39 (t, J = 5.0 Hz, デンドリマー-CH), 3.40-3.35 (m, デンドリマーCH), 3.11 (m, デンドリマー-CH), 2.89 (m, デンドリマーCH), 2.73-2.65(m, デンドリマーCH), 2.45(m, デンドリマー-CH), 2.21(m, デンドリマーCH), 1.64-1.59 (m, GABAリンカー-CH, 25H), 1.36 (s, Boc基, 85H).HPLC C18保持時間19分。
【0227】
D-GABA-NH2(4)の合成
PAMAM G6-OH3(250mg、0.004mmol)を含むBoc保護GABAリンカーをTFA/DCM(3:4)溶媒混合物で処置した。反応物を室温で12時間撹拌し、次いでメタノールで希釈し、真空中で濃縮した(このステップは、過剰なTFAを除去し、GABAリンカーを加水分解切断するために必要である)。粗製生成物を使用して、さらなる精製を一切行わずに次のステップを行った。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.50-7.75 (m, 内部アミドH), 5.50-4.50 (ブロードなs, 表面-OH), 4.00 (s, エステル連結H), 3.50-2.25(m, デンドリマー-CH), 1.93-1.59 (m, GABAリンカー-CH).
【0228】
Cy5-D(5)の合成
DMF(5mL)中の化合物4(287mg、0.0048mmol)の溶液をDIPEAで処置して、反応混合物のpHを調整した(約7.0~7.5)。次いで反応物をCy5-NHSエステル(8.7mg、0.0115mmol、1.2eq)で処置し、室温で12時間撹拌した。次いでそれをDMFに対して12時間、続いて水に対して24時間透析した。水性層を凍結し、凍結乾燥して、所望の生成物5を青色固形物として得た(収率85%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.25-7.75 (m, 内部アミドH), 7.30 (s, Cy5 H), 7.10 (s Cy5 H), 6.70 (s, GABAアミド H), 6.50 (m Cy5 H), 6.25 (m Cy5 H), 4.75 (s, 表面OH, 226H), 4.00 (m, エステルCH), 3.50-2.00 (m, デンドリマーCH), 1.64-1.59 (s, 31H), 1.25 (s, 66H), 0.8 (s, 21H).HPLC C18保持時間(0.1%TFAを含む水中のアセトニトリル、直線勾配、40分)。HPLC C18保持時間:17.5分。
【0229】
Cy5-D-PEG-TCO(6)の合成
DMF(5mL)中の化合物5(48mg、0.0008mmol)の溶液をDIPEAで処置して、反応混合物のpHを調整した(約7.0~7.5)。反応物をTCO-PEG-NHSエステル(4mg、0.0080mmol)で処置し、反応混合物を室温で12時間撹拌した。次いでそれをDMFに対して12時間、続いて水に対して24時間透析した。水性層を凍結し、凍結乾燥して、所望の生成物を青色固形物として得た(収率55%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.14-7.73 (m, 内部アミドH), 7.35 (m, Cy5 H), 7.25 (m, Cy5 H), 7.05 (m, Cy5 H), 6.6 (m, Cy5 H), 6.3 (m, Cy5 H), 6.83 (s, GABAアミド H), 5.65-5.50 (m, TCO H), 5.45-5.35 (m, TCO H), (4.74 (s, 表面OH, H), 4.01-3.39 (t, J = 5.0 Hz, エステル-CH), 3.50-2.00 (m, デンドリマーCH), 1.9 (s, 24H), 1.6 (s, 80H), 1.2 (s, 126H), 0.8 (s, 80H).HPLC C18保持時間:19.5分。
【0230】
限外ろ過およびSECクロマトグラフィー
合成の各ステップ後、過剰な小分子試薬および副生成物および緩衝液の交換を、10kDaおよび30kDa MWCOユニット(2mg以上の試料)15mL、または10kDaおよび30kDa MWCOユニット(2mg以下の試料)0.5mLを使用してAmicon限外ろ過によって行った。
【0231】
PAMAMデンドリマーコンジュゲートのMALDI-TOF
MALDIマトリックス2’,4’,6’-トリヒドロキシアセトフェノン一水和物(THAP)(10mg)を、0.1%トリフルオロ酢酸を含む、水中のアセトニトリル(1:1)1mL中に溶解した。次いでPAMAMデンドリマー2μLをMALDI試料プレート上に沈着させた。マトリックス(10mg/mL、2μL)を空気乾燥済み試料上に沈着させ、10~20分間空気乾燥させた。MALDI-TOF MS分析を反射ポジティブモードで行った。
【0232】
結果
Cy5-D-PEG-TCOの合成および特徴付け
Cy5-D-PEG-TCOコンジュゲートを、さらなるコンジュゲーションのために表面上で利用可能な256個の遊離ヒドロキシル基(D6-OH)を含むPAMAM-G6-OH(D6-OH)デンドリマーを使用して合成した。メタノール中のD6-OH(13.75%w/w)を減圧下で乾燥させ、続いて水中に溶解し、さらなるコンジュゲーションのために凍結乾燥した。凍結乾燥された単機能化D6-OHを、DMF中のN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(4-DMAP)下、室温で36時間、4-tert-ブトキシカルボニルアミノ)酪酸(Boc-GABA-OH)で処置することによってBoc保護アミンで機能化して、Boc保護二機能性デンドリマー生成物を得た。粗製デンドリマーを、3.5kDa膜によって超純水に対して24時間透析し、続いて凍結乾燥した。デンドリマー(3)のH NMRによって、シングレットとしてδ1.3ppmにおいてBoc基のtert-ブチルプロトンおよびδ1.6ppmにおいてGABAメチレンプロトンの出現が示された。δ3.9ppmにおけるピークは、一度エステルに変換されたヒドロキシル基の隣のデンドリマーのメチレンプロトンに関するものであり、GABAリンカーからのアミドプロトンもδ6.8ppmにおいて出現した。次いで、Boc基を、ジクロロメタン(DCM)中のトリフルオロ酢酸(TFA)(1:4)を使用して弱酸性条件下で脱保護して二機能化デンドリマーを得た。過剰なTFAをメタノールとの共蒸発によって除去し、得られた粗製生成物を使用してさらに精製することなく次のステップを行った。Bocプロトンの完全な消失をH NMRによって確認し、同時にエステル加水分解はこの条件下では観察されなかった(1H NMR(DMSO-d6、500MHz)。デンドリマーコンジュゲート、D-GABA-Boc、D-GABA-NH、Cy5-D、Cy5-D-PEG-TCO(DMSO-d6およびDO中)の特徴付けでは、特徴的なシグナルの出現または消失が示された。アミン基の総数は約10で維持された。次いで二機能性デンドリマーを蛍光染料Cy5で処置して、デンドリマー表面において約1~2個のCy5結合が成功したデンドリマー(4)を得た。H NMRによって、芳香族領域におけるCy5シグナルの出現が示され、HPLC保持時間は19.0から17.5分にシフトし、生成物の形成が確認された。Cy5結合後、アミン基の残りを、トランス-シクロオクテンを含むヘテロ二機能性(NHS-PEG-TCO)リンカーと反応させた。このヘテロ二機能性リンカーを使用してデンドリマーとアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)との間に化学結合を形成した。
【0233】
デンドリマー-ASOコンジュゲートの合成および特徴付け
ASOを末端テトラジン(Tz)で機能化し、同時にD6-OHを、クリック反応のためにトランス-シクロオクテン(TCO)で機能化した(図1~2)。ASO(2mg、PBS500μL中)をメチルテトラジン-PEG4-S-S-NHSエステル(5mol当量、無水DMSO10~20μL中)で処置し、1時間インキュベートした。過剰なMe-Tz-PEG-S-S-NHSおよび副生成物を限外ろ過によって除去した。TCO-PEG結合デンドリマー6(17mg、PBS500μL中)を、トランス-シクロオクテン-テトラジン(TCO-Tz)を介して8と反応させて、粗製生成物9を得た。得られた粗製生成物を限外ろ過で精製し、生成物をGE Healthcare SEPHADEX(登録商標)G-25カラムでさらに精製し、限外ろ過によって濃縮した。分子量をMALDI-TOFによって決定した(Cy5-D-ASOのMALDI-TOFスペクトルによってD-ASOに関する66009Daの質量におけるピークが示され;ゲル遅延アッセイを行ってD-ASOコンジュゲートの形成を確認し、それによってRNAラダー(NEB、Ipswich、MA)、遊離siRNA、およびD-siGFPを、2μgの核酸ローディングのためのGELRED(登録商標)染色剤、グリセロール1μL、および超純水と混合した;ゲル電気泳動を、TBE緩衝液(Bio-Rad、Hercules、CA)を含む3%TBE-尿素ゲル中、120Vで20分間行い、その後ゲルをCHEMIDOC(登録商標)イメージングシステム(Bio-Rad、Hercules)においてイメージングした)。さらに、D-siGFPの合成の成功をゲル電気泳動で確認した。本明細書において使用するTCO-Tzクリック反応は高速で定量的であり、毒性を有する副生成物を放出することはない。低い生体分子濃度(5μM未満)において、TCO-Tzは、歪み促進アルキン-アジド環化付加SPAACおよびCu(I)触媒アジド-アルキン環化付加(CuAcc)と比較して良好に作用する。TCO-Tz「クリック」反応はTCOとTzとの間の逆電子要求性ディールスアルダー反応(IEDDA)を介して進行し、続いて逆ディールスアルダー反応によってN2が除去されてジヒドロピリダジン結合が形成される。通常のディールスアルダー反応とは対照的に、電子ジエンが電子不足の求ジエン体と反応する場合は逆電子要求ディールスアルダー反応において、電子が豊富な求ジエン体は電子不足のジエンと反応する。前駆体としてのTCOはシス-シクロオクテンおよび他の環式アルケンと比較して極めて大きな速度差を与えた。高い反応性は、シス型の「半チェア型」立体配座よりもエネルギーが低い、TCOによって適応されたクラウン型立体配座と関連する。化学選択的TCO-Tzライゲーションは、いずれの他のバイオ直交性ライゲーションペアにも匹敵しない超高速速度論(>800M-1-1)を有する。クリックライゲーションは中性pH付近、水性条件、室温で行った。超高速速度論、選択性、および長期水性安定性によって、TCO-Tzは低濃度デンドリマー-ASOカップリング反応における理想的なペアとなる。
【0234】
(実施例2)
CNS障害のための標的化された治療薬としてのヒドロキシルPAMAMデンドリマー-およびsiRNAベースのナノコンジュゲートの開発
材料および方法
生体分子、化学物質、および試薬
特に記載がない限り、反応は、乾燥溶媒を使用して窒素陽圧下火炎乾燥させたガラス容器中で行った。(1)~(9)の化学構造の全ての列挙は図3および4において(1)~(9)で表される化学構造に対応する。
【0235】
市販グレードの試薬および無水溶媒は、化学物質の供給会社から購入し、さらに精製することなく使用した。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC.HCl)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)トリフルオロ酢酸(TFA)、γ-(Boc-アミノ)酪酸(Boc-GABA-OH)、無水ジクロロメタン(DCM)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)は、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から購入した。シアニン5(Cy5)-モノ-NHSエステルはAmersham Bioscience-GE Healthcareから購入した。重水素化溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、水(D2O)、およびクロロホルム(CDCl3)はCambridge Isotope Laboratories Inc.(Andover、MA)から購入した。エチレンジアミンコアポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、第6.0世代、ヒドロキシ表面(G6-OH;診断グレード;256個のヒドロキシル末端基からなる)、メタノール溶液(13.75%w/w)は、Dendritech Inc.(Midland、MI、USA)から購入した。透析膜はSpectrum Laboratories Inc.(Rancho Dominguez、CA、USA)から購入した。GFP siRNA標的化配列5’-S-S-GCAAGCTGACCCTGACCCTGAAGTTC-3’(配列番号2)、GFP siRNACy35’-S-S-GCAAGCTGACCCTGACCCTGAAGTTC-Cy3-3’(配列番号3)、およびスクランブルRNA(scRNA)はDharmacon(Lafayette、CO)から購入した。ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM、L-グルタミンを含む低グルコース)、LIPOFECTAMINE(登録商標)2000、およびストレプトマイシン(10mg/mL)はLife Technologiesから購入した。全てのプライマーはIDTから購入した。RNase IIIはThermo Scientific(Rockford、IL、USA)から購入した。塩化マグネシウム(MgCl2)および1,4-ジチオスレイトール(DTT)はSigma-Aldrich(St Louis、MO、USA)から購入した。
【0236】
機器
プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルは、周囲温度でBruker 500MHz分光計で記録し、ソフトウェアを使用して分析した。H NMR化学シフトは、内部標準として残留溶媒(DMSO-d6、2.50)および(DO、4.79ppm)を使用したδとして報告されている。分析用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、可変波長吸光度検出器およびC18逆相カラム(Waters、BEH300 5μm、19×250mm)を備えたShimadzu LC-AD HPLCシステムを使用して行った。溶離液は、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を使用して210nmでモニターし、および蛍光標識コンジュゲートは、蛍光およびPDI検出器を使用して650nmと210nmの両方でそれぞれモニターした。HPLC溶出は、水(0.1%TFAを含む)中の0%~90%HPLCグレードアセトニトリル(CHCN)の40分の直線勾配で行い、流量1.0mL/分を維持した。
【0237】
D-GABABoc(3)の合成
DMF(12mL)中のPAMAM G6-OH1(1.00g、0.017mmol)の溶液をBoc-GABA-OH(0.069g、0.34mmol)、DMAP(0.0782g、0.408mmol)で処置し、室温で5分間撹拌した。次いでEDC.HCI(0.046g、0.374mmol)を反応混合物に5分かけて分けて加えた。反応混合物を室温で36時間撹拌した。粗製生成物を3kD MWカットオフセルロース透析チューブに移し、DMFに対して12時間、続いて水に対して24時間透析した。水性層を凍結し、凍結乾燥して、吸湿性の白色固形物として所望の生成物3を得た(0.973g、95%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) 8.10-7.70 (m, 内部アミドH), 6.60 (s, GABAアミド H, 10H), 4.74 (s, 表面OH, 213H), 3.99 (s, エステル連結H, 22H) 3.39 (t, J = 5.0 Hz, デンドリマー-CH), 3.40-3.35 (m, デンドリマーCH), 3.11 (m, デンドリマー-CH), 2.89 (m, デンドリマーCH), 2.73-2.65(m, デンドリマーCH), 2.45(m, デンドリマー-CH), 2.21(m, デンドリマーCH), 1.64-1.59 (m, GABAリンカー-CH, 25H), 1.36 (s, Boc基, 85H).HPLC C18保持時間19分。
【0238】
D-GABA-NH2(4)の合成
PAMAM G6-OH3(250mg、0.004mmol)を含むBoc保護GABAリンカーをTFA/DCM(3:4)溶媒混合物で処置した。反応物を室温で12時間撹拌し、次いでメタノールで希釈し、真空中で濃縮した(このステップは、過剰なTFAを除去し、GABAリンカーを加水分解切断するために必要である)。粗製生成物を使用して、さらなる精製を一切行わずに次のステップを行った。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.50-7.75 (m, 内部アミドH), 5.50-4.50 (ブロードなs, 表面-OH), 4.00 (s, エステル連結H), 3.50-2.25(m, デンドリマー-CH), 1.93-1.59 (m, GABAリンカー-CH).
【0239】
Cy5-D(5)の合成
DMF(5mL)中の化合物4(287mg、0.0048mmol)の溶液をDIPEAで処置して、反応混合物のpHを調整した(約7.0~7.5)。次いで反応物をCy5-NHSエステル(8.7mg、0.0115mmol、1.2eq)で処置し、室温で12時間撹拌した。次いでそれをDMFに対して12時間、続いて水に対して24時間透析した。水性層を凍結し、凍結乾燥して、所望の生成物5を青色固形物として得た(収率85%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.25-7.75 (m, 内部アミドH), 7.30 (s, Cy5 H), 7.10 (s Cy5 H), 6.70 (s, GABAアミド H), 6.50 (m Cy5 H), 6.25 (m Cy5 H), 4.75 (s, 表面OH, 226H), 4.00 (m, エステルCH), 3.50-2.00 (m, デンドリマーCH), 1.64-1.59 (s, 31H), 1.25 (s, 66H), 0.8 (s, 21H).HPLC C18保持時間(0.1%TFAを含む水中のアセトニトリル、直線勾配、40分)。HPLC C18保持時間:17.5分。
【0240】
Cy5-D-PEG-SPDP(6)の合成
DMF(5mL)中の化合物5(250mg、0.0041mmol)の溶液をDIPEAで処置して、反応混合物のpHを調整した(約7.0~7.5)。反応物をSPDP-PEG-NHSエステル(11mg、0.0020mmol)で処置し、反応混合物を室温で12時間撹拌した。次いでそれをDMFに対して12時間、続いて水に対して24時間透析した。水性層を凍結し、凍結乾燥して、所望の生成物を青色固形物として得た(収率80%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.25-7.75 (m, 内部アミドH), 7.35 (m, Cy5 H), 7.25 (m, Cy5 H), 7.05 (m, Cy5 H), 6.6 (m, Cy5 H), 6.3 (m, Cy5 H), 6.83 (s, GABAアミド H), 4.74 (s, 表面OH, H), 4.01-3.39 (t, J = 5.0 Hz, エステル-CH), 3.50-2.00 (m, デンドリマーCH), 1.9 (s, 24H), 1.6 (s, 80H), 1.2 (s, 126H), 0.8 (s, 80H).HPLC C18保持時間:19.5分。
【0241】
チオール修飾siRNAの還元
100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.3~8.5中のDTTの100mM溶液を、緩衝液5mL中にDTT77.13mgを溶解することによって調製した。チオール修飾siRNA7をDTT溶液125μL中に溶解し、室温で1時間インキュベートした。副産物の除去は、GE Healthcare NAP-10カラムSEPHADEX(登録商標)G-25 DNAグレード(CAS番号2682-20-4)を使用して行った。NAP-10カラムは、100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0、約15mLを用いて平衡化した。チオール修飾siRNAは、リン酸ナトリウム緩衝液0.5mLを使用してAmicon Ultra-centrifuge、ULTRACEL(登録商標)10Kフィルター(UFC501024)に溶出した。
【0242】
D-siRNAコンジュゲートの合成
200μL中の化合物6(2.4mg、37.5nmol、0.5eq)の溶液を、200μL中のsiGFP-SH 8(75nmol、1.0eq)で処置し、反応混合物を室温で撹拌した。12時間後、混合物をGE Healthcare SEPHADEX(登録商標)G-25カラムに通し、D-siGFP 9生成物を収集した。生成物を濃縮し、容量0.5mLの30KDa MWCOフィルターユニットを使用した遠心限外ろ過によってPBSに対して緩衝液交換を行った。HPLC C18保持時間18.5分。
【0243】
限外ろ過およびSECクロマトグラフィー
合成および緩衝液交換の各ステップ後の過剰な試薬および副生成物の除去を、MWCO 30kDaまたは100kDaを備えた0.5mL AMICON(登録商標)ろ過ユニットを使用した超遠心ろ過によって行った。生成物および中間体を、移動相としてPBSを使用したサイズ排除カラム(SEC)クロマトグラフィーによってさらに精製した。
【0244】
PAMAMデンドリマーコンジュゲート
MALDIマトリックス2’,4’,6’-トリヒドロキシアセトフェノン一水和物(THAP)(10mg)を、0.1%トリフルオロ酢酸を含む、水中のアセトニトリル(1:1)1mL中に溶解した。次いでPAMAMデンドリマー2μLをMALDI試料プレート上に沈着させた。マトリックス(10mg/mL、2μL)を空気乾燥済み試料上に沈着させ、10~20分間空気乾燥させた。MALDI-TOF MS分析を反射ポジティブモードで行った。
【0245】
オリゴヌクレオチドコンジュゲート
3-ヒドロキシピコリン酸(3-HPA)およびクエン酸水素二アンモニウム(DAHC)を含むマトリックスを使用してオリゴヌクレオチド分析を行った。3-HPAの溶液(50mg/mL、50%アセトニトリル/水中)をDAHC溶液(100mg/mL)と9:1の比率(3-HPA225μL:DAHC25μL)で混合して、10mg/mLの最終DAHC濃度を得た。siRNA溶液を脱塩してからマトリックスと混合し、siRNA2μLをプレート上に沈着させ、10~20分間空気乾燥させた。次いでHPA/DAHCマトリックスを空気乾燥済みのオリゴヌクレオチド上に沈着させ、空気乾燥させた。MALDI-TOF MS分析を線形陽イオンモードで動作するBruker Voyager DE-STR MALDI-TOF(Mass Spectrometric and Proteomics core、Johns Hopkins University、School of Medicine)で行った。
【0246】
ゲル電気泳動
ゲル遅延アッセイを行って、D-siRNAコンジュゲートの形成を確認した。RNAラダー(NEB、Ipswich、MA)、遊離siRNA、およびD-siGFPを、2μgの核酸ローディングのためのGelRed染色剤、グリセロール1μL、および超純水と混合した。ゲル電気泳動を、TBE緩衝液(Bio-Rad、Hercules、CA)を含む10%TBE-尿素ゲル中、120Vで20分間行い、その後ゲルを、ChemiDocイメージングシステム(Bio-Rad、Hercules、CA)においてイメージングした。デンドリマーを可視化するための別個の遅延アッセイを、4~15%TGX染色剤不含ゲル(Bio-Rad)で行った。
【0247】
デンドリマー-siRNAコンジュゲートの血清安定性
RNase IIIを製造業者のプロトコールに従って使用して、還元条件下で安定性研究を行った。非還元条件を用いた研究は、溶媒交換によって得られたRNase IIIを用いて行った。RNase III 100単位を、DTTを含んでいない等体積の反応緩衝液(50mM NaCl、10mMトリス-HCl、10mM MgCl)で希釈し、10kDaの遠心フィルターで抽出した。プロセスを3回繰り返して残留DTTの除去が完了するのを確実にした。
【0248】
還元および非還元安定性研究において、遊離siGFPおよびD-siGFP10μgをRNase III 20単位で処置し、37℃で保存した。試料を設定した時点で採取し、ただちに凍結し、さらなる分析まで-20℃で保存した。ゲル遅延アッセイを10%TBE-尿素ゲルにおいて行って、RNA安定性を決定した。
【0249】
細胞系
GFPd2発現ヒト胚性腎臓293T(HEK293T)細胞系はGreen Lab(Institute for NanoBio Technology、およびTranslational Tissue Engineering Center、Johns Hopkins University)によって寛大にも提供された。細胞は、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS、Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S、Invitrogen Corp.、Carlsbad CA)が添加されたダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM、ATCC、Manassas、VA)中で培養した。細胞培地をOpti-MEM(Thermo Scientific、Rockford、IL)で置き換えてトランスフェクト研究を行った。細胞は加湿雰囲気下、37℃、5%COで維持した。
【0250】
in vivoでの腫瘍接種のために使用したGL261ネズミ神経膠腫細胞系を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および1%L-グルタミン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)が添加されたRPMI 1640培地(Thermo Scientific、Rockford、IL)中で培養した。
【0251】
送達戦略のin vitro評価
時間依存的取り込みの研究
GFP発現HEK-293T細胞をガラス底培養皿中に播種し、24~48時間成長させて70~80%のコンフルエンシーとした。細胞を、1%P/S(血清不含培地)が添加されたDMEM中、Cy5蛍光標識デンドリマー(Cy5-D)およびsiGFPコンジュゲートCy5標識デンドリマー(Cy5-D-siGFP、9)で処置した。次いで、細胞をPBS(×3)で洗浄し、5%ホルマリン溶液中で固定した。細胞をインキュベートし、共焦点顕微鏡イメージをLSM 510-Meta共焦点モジュールを備えたZEISS AXIOVERT(登録商標)200システムによって撮影した。イメージ取得パラメーターは、イメージング中は一定を維持した。イメージはZen 2011ソフトウェア(Zeiss)によって処理した。
【0252】
イメージ分析
生存細胞イメージを、ZEISS AXIOVERT(登録商標)200位相差顕微鏡(Carl Zeiss)で設定した時点において撮影した。イメージに関する閾値は、ImageJにおいて組み込まれたTriangle法で自動化し、閾値オブジェクトを使用して平均蛍光およびバックグラウンドを計算した。自動細胞計数は、閾値マスクに対する「Analyze Particles」機能を使用して行い、細胞コンフルエンシーはPHANTAST-FIJI(登録商標)プラグインで推測した。
【0253】
HEK293T細胞トランスフェクション
細胞を、1ウェルあたり5×10細胞の密度で24ウェル組織培養プレート中に播種し、24時間成長させた。異なるRNA送達プラットフォーム(LIPOFECTAMINE(登録商標)2000、LIPOFECTAMINE(登録商標)3000、RNAi Max)を製造業者のプロトコールに従って調製した。処置の前に、細胞培養培地をOpti-MEM低血清培地で置き換えた。各送達ビヒクルに関する条件を最適化するために、siGFPペイロード濃度(0.6~30pMol)とLIPOFECTAMINE(登録商標)またはRNAi Max濃度(0.5~1.5μL)との組合せで試験を行った。最も高いノックダウンを伴うセットを、デンドリマープラットフォームとの比較のために使用した。
【0254】
用量依存的研究に関しては、細胞を異なる濃度のD-siGFPで48時間にわたって処置した。GFPd2蛍光のノックダウンを、処置してから0時間、24時間、および48時間後に撮影した生存細胞イメージによって評価した。細胞タンパク質も48時間目で抽出し、ウエスタンブロットのために-80℃で保存した。
【0255】
HEK293T細胞のウエスタンブロットアッセイ
細胞タンパク質の濃度を、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific、Rockford、IL)を用いて決定し、等量のタンパク質を、標準的なウエスタンブロットプロトコールに従って、2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)で変性させた。タンパク質を4~15%TGXゲル(Bio-Rad、Hercules、CA)上で分離し、ニトロセルロース膜に転写した。膜を3%BSAで1時間ブロックし、シクロフィリンBおよびGFPに関して4℃で一晩プローブした。膜を3回洗浄してからHRPコンジュゲート二次抗体とともに1.5時間インキュベートした。タンパク質バンドを、染色した膜を化学発光基質(Thermo Scientific、Rockford、IL)中に浸漬することによって可視化し、ChemiDocシステムを使用してイメージングした。
【0256】
送達戦略のin vivo評価
同所性GL261神経膠芽腫マウスモデル
全ての動物手順をJohns Hopkins Animal Care and Use Committeeによって承認されたとおりに行った。CX3CR-1GFPマウスを一定の温度および湿度(20±1℃、湿度50±5%)で飼育した。全ての手順に関して、生理食塩水中の2.5%キシラジン(VetOne、Boise、MO)、25%ケタミン(Henry Schein、Melville、NY)、および14.2%エタノール(Sigma Aldrich、St.Louis、MO)のカクテルを含む腹腔内注射によって動物に麻酔をかけた。GL261細胞を50,000細胞/μLの濃度で収集してからただちに接種し、外科手術中は氷上で維持した。頭皮を切開し、マイクロドリル(Braintree Scientific、Braintree、MA)を使用してブレグマに対して1mm後方および中心線に対して1.5mm外側の頭蓋骨に穴を開けた。GL261細胞を、動物1匹あたり細胞懸濁物2μLに関して0.2μL/分の速度で2μLのシリンジ(Hamilton、Reno、NV)を使用して開口部を通して接種した。切開部を縫合糸(Ethicon)で閉じ、抗生物質軟膏を適用した。
【0257】
D-scRNAおよびD-siGFPコンジュゲートの投与
接種してから2週間後、切開部を再度開き、動物に、核酸ベースで2μgのD-scRNA、D-siGFPまたは遊離siGFPの腫瘍内注射を行った。取り込みおよび有効性を決定するために、動物に、24時間および48時間の時点においてイソフルランで麻酔をかけ、PBSの心臓灌流で安楽死させた。
【0258】
免疫組織化学および光学イメージング
摘出した脳をただちに4%パラホルムアルデヒド中で固定し、4℃で一晩保存し、スクロース勾配を行ってから凍結切開を行った。臓器をLeica CM 1905クライオスタットで処理して30mmの厚さの軸方向切片を得た。各スライドをDAPI(核)で染色し、共焦点LSM 710顕微鏡(Carl Zeiss;Hertfordshire、UK)でイメージングした。未染色および未処置の対照脳を較正において使用してバックグラウンド蛍光を回避し、設定は研究全体にわたって変更することなく使用した。腫瘍と対応する対側脳半球の両方をイメージングして分析を行い、対側脳半球は内部対照としての役割を果たした。
【0259】
統計分析
データは平均±SEMとして表され、分析はExcel 2013およびGraphPadプリズム(バージョン6:La Jolla、CA)で行った。処置群は、時点または用量にわたって、二元配置分散分析(ANOVA)検定によって分析した。単一群間の有意差は、スチューデントのt検定で決定した:P<0.05、**P<0.01および***P<0.001。
【0260】
結果
Cy5-D-PEG-SPDPの合成および特徴付け:Cy5-D-PEG-SPDPコンジュゲートは、256個の末端ヒドロキシル基から構成されるPAMAM-G6-OH(D6-OH)デンドリマーを使用して合成した(図3)。各合成ステップ後、生成物は、DMF中で透析を介して24時間精製して小分子不純物が除去され、続いて水透析を行ってDMFが除去された。1H NMR(DMSO-d6中)で中間体と最終的なコンジュゲートとを上から下に比較し、分析HPLCトレースによってピークの出現および消失による生成物の形成を確認し、保持時間におけるシフトがそれぞれで示された。全ての中間体および最終構成要素の分子量は、PAMAM-G6-OH、Cy5-D、およびCy5-D-PEG-SPDPのMALDI-スペクトルによって決定し;合成の各ステップにおけるコンジュゲーションの程度は1H-NMRに基づいて計算し、分子量の変化はMALDI-TOFによって測定した。化合物1の合成は、メタノール中の市販されているD6-OH(13.75%w/w)から出発し、減圧下で乾燥させ、続いて水中に溶解し、凍結乾燥して行った。デンドリマー中の微量のメタノールおよび水はカップリングステップに干渉するため、完全に除去した。凍結乾燥された単機能性D6-OHは、最初にDMF中のEDC.HClおよび4-DMAPの下、室温で36時間Boc-GABA-OHで処置することによってBoc保護アミンで機能化して、生成物であるBoc保護二機能性デンドリマーを得た。反応の完了は、HPLCでモニターし、残渣を超純水に対して3.5kDa膜により24時間透析して、半透性の透析膜を通過する選択的拡散を介して低分子量不純物を除去した。デンドリマー(3)のH NMRによって、シングレットとしてδ1.3ppmにおいてBoc基のtert-ブチルプロトンおよびδ1.6ppmにおいてGABAメチレンプロトンの出現が示された。δ3.9ppmにおけるピークは、一度エステルに変換されたヒドロキシル基の隣のデンドリマーのメチレンプロトンに関するものであり、GABAリンカーからのアミドプロトンもδ6.8ppmにおいて出現した。次いで、Boc基を、ジクロロメタン(DCM)中のトリフルオロ酢酸(TFA)(1:4)を使用して弱酸性条件下で脱保護して二機能性デンドリマー(4)を得た。過剰なTFAをメタノールとの共蒸発によって除去し、得られた粗製生成物を使用してさらに精製することなく次のステップを行った。Bocプロトンの完全な消失をH NMRによって確認し、同時にエステル加水分解はこの条件下では観察されなかった。アミン基の総数は約10で維持された。次いで二機能性デンドリマーを蛍光染料Cy5で処置して、デンドリマー表面において約1~2個のCy5結合が成功したデンドリマー4を得た。1H NMRによって芳香族領域におけるCy5シグナルの出現が示され(1H NMR(DMSO-d6、500MHz)により、デンドリマーコンジュゲート、D-GABA-Boc、D-GABA-NH、Cy5-D、Cy5-D-PEG-SPDP(DMSO-d6およびDO中)が特徴付けられて、特徴的なシグナルの出現または消失が示される)、HPLC保持時間は19.0から17.5分にシフトし、生成物の形成が確認された。Cy5結合後、アミン基の残りはヘテロ二機能性3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド-PEG-NHSエステル(NHS-PEG-SPDP)リンカーと反応させた。このヘテロ二機能性リンカーを使用して、siRNA-SHによる古典的チオール-ジスルフィド交換を介してデンドリマーとsiRNAとの間のジスルフィド還元感受性リンカーを形成した。この結合は血清中で比較的安定であり、還元的な細胞質環境において切断可能である。分析用逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行って生成物の純度を測定した。構成要素のサイズを、Zetasizerを使用した動的光散乱(DLS)によって測定した。水中のD-OHとD-siRNAの両方の平均流体力学的直径は約6nmであり、修飾後に有意な変化は示さなかった。
【0261】
デンドリマー-siRNAコンジュゲート1の合成および特徴付け
デンドリマー-siGFP(D-siGFP)の合成を図4に示す。siRNAバイオコンジュゲートの送達効率は、コンジュゲーションの部位、リンカーの切断可能性、スペーサーアームの長さ、およびコンジュゲートされる分子の生物物理学的性質に依存する。siRNAは、2つの相補的ストランドであるセンスおよびアンチセンスからなる二重鎖であり、化学コンジュゲーションに使用することができる末端ホスフェート基を有する。コンジュゲーション部位として使用することができる4つの末端終末が存在する。細胞取り込みの際、標的mRNAに対して相補的配列を有するアンチセンスストランドはRISC中に取り込まれる。アンチセンスストランドの5’は、RNAi機序の開始において特に重要である。したがって、センスストランドまたはパッセンジャーストランドの5’および3’末端ならびにアンチセンスストランドの3’末端は、コンジュゲーションのための潜在的な部位であり、センスストランドに対する修飾はサイレンシング効力における変化を最小限にするのにより好ましい。結果的に、センス5’チオール(-SH)連結を導入するためのジスルフィドチオール改変剤をこの研究に使用した。SH修飾siGFPは、可逆的ジスルフィド結合、配位子-S-S-siGFP、またはさまざまな活性化受容基との不可逆的結合を形成するために使用することができる。本明細書において使用される保護された形態のチオール修飾siGFPは、ダイマーの形成を阻止する。使用前に、チオール修飾(S-S)siGFPは、さらなるコンジュゲーションのためにスルフヒドリル(-SH)に還元された。ジチオール修飾siGFPを100mMジチオスレイトール(DTT)で処置してジスルフィド結合を定量的に還元し、デンドリマーとのさらなるコンジュゲーションのためのスルフヒドリル基をもたらした。HPLC分析によって、ジチオール基がほぼ定量的に還元され、次の反応ステップ前に過剰なDTTが除去されたことが示された。次いで、siGFPのセンス5’末端において得られたスルフヒドリル基はデンドリマー-PEG-SPDP(5)と反応させて、スルフヒドリル交換反応を介して所望のD-siGFP(1)コンジュゲートを形成した。2-ピリジルチオ基は、中性pH下、電子安定化2-ピリジル基をチオール化合物で置き換えることによってスルフヒドリルと反応する。このチオール交換反応は通常、SPDPがスルフヒドリル基との交換反応を容易に行って単一のジスルフィド生成物を得る、多くの架橋およびコンジュゲーション反応において使用される。デンドリマーとsiRNAとの間に新たに形成されたジスルフィド結合は、酸性条件下での還元に対して感受性を有する。得られたD-siGFPはGE Healthcare SEPHADEX(登録商標)G-25カラムに通し、限外ろ過によって濃縮した。分子量は、Cy5-D-siGFPのMALDI-TOF TOFスペクトルによって決定され、72908Daの質量におけるピークおよびHPLCトレースを示した。生成物の純度は、210、260、および650nmにおけるCy5-D-siGFPのHPLCによって確認した。さらに、D-siGFPの合成の成功はゲル遅延によって確認された。D-siGFPからの明らかな単一のバンドは、10%TBE-尿素ゲル上の150bpマーカーに対応する距離において保持された。ネイキッドsiGFPとD-siGFPとのゲル遅延によって決定されたサイズは90kDaと推測された。
【0262】
化学的コンジュゲートD-siRNAの血清安定性
ヌクレアーゼに対する核酸ペイロードの保護はRNAi療法を成功させるために極めて重要である。したがって、インタクトなペイロードを送達するためのD-siGFPの能力を、還元(1mM DTT)および非還元(0mM DTT)条件下、エンドヌクレアーゼであるRNase IIIに対して検証された。非還元条件下では、ネイキッドsiGFPはRNase IIIによって2時間未満で分解され、一方D-siGFPは依然として最大48時間安定なままであり;D-siGFPおよびsiGFPを、非還元および還元条件下、RNase IIIヌクレアーゼとともにインキュベートした。非還元条件下、ネイキッドsiGFPは30分で分解され、同時にD-siGFPは最大48時間保持した。還元条件下では、siGFPとD-siGFPの両方の核酸ペイロードはデンドリマープラットフォームから急速に放出され、ネイキッドsiGFPとD-siGFPの両方が15分で急速に分解された。さらに、siGFPおよびD-siGFPはヒト血漿中でインキュベートしてin vivoでの血清安定性を模倣した。D-siGFPに関するバンドは依然として150bpのままであり、血漿タンパク質結合がないことを示し、同時にsiGFPバンドは1時間ほどで20bpから150bpに劇的にシフトし、有意なタンパク質結合を伴っていた。遊離siGFPに対する著しい血漿タンパク質結合は、ヒト血漿中、37℃で早ければ1時間で生じ、タンパク質への結合量はインキュベーション後48時間で増加した。有意なタンパク質吸着はD-siGFPにおいて観察されなかった。
【0263】
HEK-293T細胞におけるin vitroでのGFPノックダウン
化学的にコンジュゲートされたデンドリマーベースのプラットフォームを使用したsiRNAの細胞への送達は、GFP発現HEK293T細胞系を使用してin vitroで評価した。HEK293T細胞は、GFP(GFPd2)の不安定化された形態を発現しており、その半減期は約2時間であり、これはin vivo環境における多くのタンパク質に匹敵する。時間依存的取り込み研究に関しては、HEK293T細胞をCy5-D-siGFP-Cy3で処置し、細胞を48時間インキュベートした。細胞を洗浄してから各時点においてイメージングし、各イメージングセッション後に処置培地を再適用した。早ければ6時間でD-siGFPは細胞内蓄積を示し;Cy5-D-siGFPの細胞取り込みおよび用量依存的遺伝子ノックダウンは、HEK293T細胞へのCy5-D-siGFP-Cy3細胞取り込みの共焦点顕微鏡画像によって観察された。処置後24時間で、拡散Cy3-siRNAシグナルは検出され、同時にCy5-デンドリマーシグナルは点状であり;Cy5-デンドリマーシグナルおよびCy3-siRNAシグナルは共局在している。
【0264】
ネイキッドsiGFPはHEK293T細胞にいかなる明白な程度にも蓄積されなかった。共焦点顕微鏡イメージによって、デンドリマーCy5はHEK293Tの細胞質に分布し、同時にデンドリマーCy5シグナルは処置してから24時間後にsiRNACy3シグナルと共局在していたことが示された。Cy5およびCy3シグナルの共局在は、チャネルを統合した際に統合された(ピンク色)シグナルによって確認された。
【0265】
GFPノックダウンを評価するために、HEK293T細胞を、処置の24時間前に播種し、培養培地をOPTIMEM(登録商標)で置き換えてからただちに処置を行った。細胞は、10、50、100、200、500nMを含む5つの異なる濃度のD-siGFPで処置した。GFPd2発現はGFPチャネルにおけるバックグラウンド補正強度を使用した相対蛍光強度によって推測し、0時間の時点の内部対照に対して正規化した。最適なノックダウンはトランスフェクションから24時間後に報告された。生存細胞イメージによれば、GFPタンパク質の著しい時間依存的ノックダウンが50nMを超える濃度で報告され、ピークは24時間で約40%のノックダウンであった。GFP濃度は72時間にわたって正常に戻った。48時間後、細胞を収集し、溶解してウエスタンブロットを行った。IC50値はトランスフェクションから24時間後のD-siGFPの用量応答曲線を使用して推測した(図5および6)。
【0266】
市販のトランスフェクション試薬を使用したsiRNAの送達
市販のトランスフェクション試薬、LIPOFECTAMINE(登録商標)2000、LIPOFECTAMINE(登録商標)3000およびRNAi Maxの効果を比較対照として評価した。GFP蛍光のイメージ分析において、全ての市販のプラットフォームで、GFPd2発現のある程度のノックダウンが得られ(図7A~7C)、条件および核酸負荷を各ビヒクルに対して最適化した。生存細胞画像も細胞毒性の間接的な尺度としてコンフルエンシーに関して分析し;有意な毒性は全てのシステムにわたって観察されなかった。ウエスタンブロットによる相対的GFP発現の直接的な尺度は、送達システム間に統計的有意差を一切もたらさなかったが、LIPOFECTAMINE(登録商標)システムおよびネイキッドsiGFPは、GFP産生に対してより一貫性のない効果をもたらすという傾向を観察することができた。イメージ分析から検出されたGFP蛍光と実際のGFPタンパク質産生との間の不一致は、LIPOFECTAMINE(登録商標)システムが、バースト放出でそのペイロードを放出し、イメージ分析において観察されたノックダウンとその後のsiGFPが分解を受けた場合のGFPタンパク質における増加とを達成する場合があることを示唆する。一方、RNAi MaxおよびD-siGFPは遅い放出プロファイルを示し、GFP産生の長期ノックダウンをもたらす場合がある。
【0267】
GL261神経膠腫におけるCy5-D-siGFPのin vivo研究
有効なsiRNAトランスフェクション剤としてのD-siGFPコンジュゲートを検証するために、D-siGFPを同所性神経膠芽腫マウスモデルに腫瘍内注射した。腫瘍内注射は、それが遺伝子療法の適用において普及しており、無駄なくD-siGFPの有効性および取り込みを実証することに起因して選択した。CX3CR-1GFPマウスに、デンドリマーコンジュゲートを腫瘍内注射する2週間前に、2×10GL261細胞を最初に接種し、腫瘍を十分なサイズまで成長させた。
【0268】
取り込み研究に関しては、二重標識コンジュゲートであるCy5-D-siGFP-Cy3を腫瘍内投与し、注射してから24時間後に臓器を抽出した。腫瘍、腫瘍境界、および対側の共焦点イメージを得、Zen 2011ソフトウェアによって分析した。二重標識D-siRNAは腫瘍内に散在的に分布しており、腫瘍実質内のみで観察され、対側脳半球には存在しなかった。Cy5-D-siRNA-Cy3はTAMを選択的に標的とし、GFPトランスジェニックGL261マウスモデルにおける遺伝子をノックダウンし;D-siGFPは腫瘍内投与後に腫瘍中に保持され、D-siGFPの取り込みは腫瘍関連マクロファージ(TAM)周囲に集中する。一部のCy5(デンドリマー)およびCy3(siGFP)シグナルは互いに共局在し、インタクトなD-siGFPコンジュゲートの送達を示唆している。さらに、Cy3シグナルも存在し、TAMによって発現されたGFPシグナルと共局在しており、siGFPの取り込みを示していた。興味深いことに、Cy3シグナルのうちの一部のみがGFPとCy5の両方に共局在しており、D-siGFPコンジュゲートのわずかな部分のみが細胞取り込み後も依然としてインタクトなままであることを示す。Cy3およびCy5シグナルの大部分は互いに解離し、siGFP配列は細胞取り込み後にデンドリマービヒクルから放出されることを示す。
【0269】
次に、GFP発現のノックダウンを調査した。腫瘍担持動物にD-siGFP、D-scRNAまたは遊離siGFPを注射し、注射してから24時間および48時間後に臓器を収集した。対側脳半球を内部対照として使用し、D-scRNAをビヒクル対照として使用した。内部対照としての対側脳半球と比較して、GFP蛍光D-siRNAが投与された腫瘍では50%のノックダウンが存在した(図8)。未処置の動物では、GFP蛍光は腫瘍接種で20%減少した。
【0270】
要約
siRNAは、特異的mRNA配列と対を形成し、RISC複合体を介してそれらを分解することによって、遺伝子サイレンシングプロセスにおける重要な機能的役割を果たし、特定のタンパク質発現のノックダウンをもたらす。したがって、インタクトなsiRNA配列の標的細胞への送達は、RNAi療法を成功させるために極めて重要である。簡便なデンドリマー-siRNAコンジュゲーション戦略は、正確な核酸負荷および炎症領域への固有の標的化を伴う環境応答性ナノ粒子コンジュゲートを生成する生体適合性ヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーに基づいて開発した。
【0271】
合成は、手頃な合成材料および単純な精製技術を使用した調節可能な合成経路によって穏和な反応条件下で行った。本明細書において使用する刺激応答性リンカー化学は、ペイロードの細胞内環境への特異的な放出において重要な役割を果たし、同時にデンドリマーコンジュゲーションはヌクレアーゼ抵抗性および送達効率を改善する。血清におけるネイキッドsiRNAの報告された半減期は数分から1時間の範囲であり、同時に結果によって、化学的にコンジュゲートされたD-siRNAは、血清分解を30分から48時間まで遅延させることによってノックダウン効率を損なうことなく安定性を改善することが示唆される。
【0272】
これは、RNA干渉のin vivo効力における画期的な進歩である。さらに、D-siRNAは、in vitro還元剤でただちにジスルフィド結合の還元を受けており、細胞質ゾル環境がsiRNAの放出を引き起こすことができることが示唆される。本明細書における研究は、siRNAのデンドリマーへの化学コンジュゲーションは遺伝子ノックダウン活性を損なうことはないことも強調する。in vitro環境では、共有結合によりコンジュゲートしているD-siRNAは、核酸ペイロードの放出を遅延させることによって持続性のノックダウンを生成することができることが示された。
【0273】
in vivoでの原理証明の結果によって、共有結合によりコンジュゲートしているD-siGFPは標的化された遺伝子ノックダウン効果を生成できることが示された。比較的中程度のノックダウンがin vitroHEK293T細胞とin vivo脳腫瘍モデルの両方で報告された(約50%)。共焦点分析によれば、D-siGFPは腫瘍関連マクロファージ内に局在し、細胞内にペイロードを放出し、同時に他の細胞集団または対側脳半球における取り込みは事実上認められなかった。化学的にコンジュゲートされたsiRNAは、整形外科的GL261マウスモデルにおいて高い腫瘍特異性を達成する上でのPAMAMデンドリマーの固有の性質に影響を与えず、遊離siGFPと比較して高い遺伝子ノックダウンを生成することが可能である。
【0274】
siRNAのデンドリマーへの共有結合性コンジュゲーションによって、血清半減期およびバイオアベイラビリティが大きく強化され、ペイロードはタンパク質吸着および酵素分解から保護された。D-siRNAコンジュゲートは、in vitroとin vivoの両方でsiRNAを細胞に有効に送達し、同時に標的化された遺伝子を効率的にノックダウンした。in vitro研究では、D-siGFPはRNAi MaxおよびLIPOFECTAMINE(登録商標)システムと同程度のノックダウンを達成した。in vivo研究では、D-siGFPは腫瘍実質内に優先的に局在し、そのペイロードを細胞内に放出し、GFP発現腫瘍関連マクロファージにおける遺伝子サイレンシング効果を達成した。これらの結果は、簡便なデンドリマーベースの共有結合性コンジュゲーション戦略が、siRNA治療薬の臨床移行に効率的で安全なアプローチを提供することを実証する。
【0275】
(実施例3)
脈絡膜血管新生の標的化された抑制のためのデンドリマー-miR126コンジュゲート
材料および方法
化学物質および試薬
メタノール溶液中のヒドロキシル末端エチレンジアミンコアPAMAMデンドリマー(第6世代、医薬品グレード)はDendritech(Midland、MI、USA)から購入した。使用前に、デンドリマー溶液をロータリーエバポレーターで蒸発させた。透析膜(MWCO 1kDa)はSpectrum Chemicals(New Brunswick、NJ、USA)から購入した。チオール修飾miR-126:
センス:5’-UCGUACCGUGAGUAAUAAUGCG-3’(配列番号4);
アンチセンス:5’-CGCAUUAUUACUCACGGUACGA-[チオールC6S-S]-3’(配列番号5)、およびCy3標識された同等のものはBio-Synthesis(Lewisville、TX、USA)から購入した。Bio-Spin P-30ゲルカラムおよび15%TBE-尿素プレキャストゲルはBio-Rad(Hercules、CA、USA)から購入した。Amicon超遠心フィルター(MWCO 10kDa)、GelRed核酸染料、および無水N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)はSigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から購入した。重水素化溶媒(DMSO-d)、メタノール(CDOD)、および水(DO)もSigma-Aldrichから購入した。dsRNAラダーはNew England BioLabs(Ipswich、MA、USA)から購入した。ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM、L-グルタミンを含む低グルコース)はThermo Fisher(Waltham、MA、USA)から購入した。ヒト微小血管内皮細胞および必要な培地キットはLonza(Basel、Switzerland)から購入した。フェノールレッド不含マトリゲルはCorning(Tewksberry、MA、USA)から購入した。
【0276】
機器の使用
中間体の構造は、Bruker 500MHz分光計(Bruker Corporation、Billerica、MA、USA)を使用したプロトン核磁気共鳴(H NMR)分光法を使用して周囲温度で分析した。化学シフトは、テトラメチルシランの内部標準に対するものであり、ppmで報告している。残留プロトン性溶媒DO(H、δ4.79ppm)およびDMSO-dH、δ2.50ppm)の化学シフトは化学シフト較正のために使用した。
【0277】
中間体およびデンドリマー-miR126コンジュゲートの純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して分析した。HPLC機器(Waters Corporation、Milford、MA、USA)は、1525バイナリポンプおよびインラインデガッサーAFを備えていた。機器は717plusオートサンプラーを備えており、2つの検出器:2998フォトダイオードアレイ検出器および2475マルチλ蛍光検出器を有していた。機器はWaters Empowerソフトウェアとインターフェースで連結されていた。HPLC試料は、Waters製のC18シンメトリー300、5μm、4.6×250mmカラムで実行した。クロマトグラムは210nm(デンドリマー吸収)および260nm(核酸吸収)で記録した。勾配フローHPLC法を使用し、90:10(溶媒A:水中の0.1%TFAおよび5%ACN;溶媒B:ACN中の0.1%TFA)で出発し、30分で50:50(A:B)に徐々に増加させ、40分で最終的に90:10(A:B)に戻し、1mL/分の一定流量で行った。
【0278】
デンドリマーコンジュゲートの合成
デンドリマー-PDP、1の合成
スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP、14mg、0.068mmol)を無水DMF中のD-OH(200mg、0.0034mmol)の撹拌溶液へ添加した。反応を室温で24時間継続させた。混合物をDMFで希釈し、DMFに対して1kDaカットオフ透析膜を使用して透析した。DMFを4時間ごとに12時間交換し、続いて水に対して12時間透析し、水を頻繁に交換した。得られた水溶液を凍結乾燥して、D-PDPをオフホワイト色粉末として得た(80%収率)。
【0279】
H NMR (500 MHz, DMSO) δ 8.30 (d, 芳香族4H), 8.06-7.79 (m, 内部アミド510H), 7.01 (m, 芳香族5H), 4.73 (s, 表面OH, 235H), 4.06 (s, エステル連結, 12H), 3.40 (d, デンドリマー-CH), 3.33 (d, デンドリマー-CH), 3.18-3.11 (m, デンドリマー-CH), 2.64 (s, デンドリマー-CH), 2.43 (s, デンドリマー-CH), 2.20 (s, デンドリマー-CH).保持時間:18.00分。
【0280】
Boc-GABA-デンドリマー-PDP、2の合成
化合物1(100mg、0.0016mmol)をDMF3mL中に溶解し、続いてBoc-GABA-OH(1mg、0.005mmol)およびDMAP(1mg、0.008mmol)を添加した。溶液を室温で10分間撹拌してからEDC.HCL(2mg、0.013mmol)を添加した。反応混合物を一定の撹拌下、室温で24時間放置してから粗製生成物を3kDカットオフセルロース透析チューブに移し、DMFに対して12時間透析した。次いで生成物を水に対してさらに24時間透析した。得られた水性溶液を凍結し、凍結乾燥して、生成物2を吸湿性の白色固形物として得た(95mg、94%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) 8.12-7.78 (m, 内部アミドH), 7.01 (m, 芳香族5H), 6.59 (s, GABAアミド H, 10H), 4.73 (s, 表面OH, 233H), 4.06 (s, エステル連結, 16H), 3.40 (d, デンドリマー-CH2), 3.33 (d, デンドリマー-CH2), 3.18-3.11 (m, デンドリマー-CH2), 2.64 (s, デンドリマー-CH2), 1.64-1.59 (m, GABAリンカー -CH2, 6H), 1.36 (s, Boc基, 20H).
【0281】
NH-GABA-D-PDP、3の合成
脱保護を、化合物2(95mg、0.0015mmol)をTFA/DCMの混合物(3:4)に添加し、12時間激しく撹拌することによって行った。懸濁物をメタノールで希釈し、真空中で濃縮し、プロセスを3回繰り返して過剰なTFAを除去した。粗製生成物をさらに精製することなく使用した。
【0282】
Cy5-D-PDP、4の合成
化合物3(108mg、0.0018mmol)をDMF中に溶解し、DIPEAで処置し、混合物のpHを調整した(pH約7.0~7.5)。Cy5-NHSエステル(2.8mg、0.0027mmol、1.5eq.)を添加し、室温で12時間撹拌した。粗製混合物をDMFに対して12時間透析し、水に対して24時間透析した。水溶液を凍結し、凍結乾燥して、生成物4を青色粉末として得た(収率86%)。H NMR (500 MHz, DMSO-d) 8.12-7.78 (m, 内部アミドH), 7.30 (s, Cy5 H), 7.01 (m, 芳香族5H), 4.73 (s, 表面OH, 168H), 4.06 (s, エステル連結, 16H), 3.40 (d, デンドリマー-CH), 3.33 (d, デンドリマー-CH), 3.18-3.11 (m, デンドリマー-CH), 2.64 (s, デンドリマー-CH), 1.64-1.59 (m, GABAリンカー -CH2).保持時間:18.07分。
【0283】
デンドリマー-miR126、5の合成
チオール修飾miR-126およびそのCy3標識された同等のものを製造業者のプロトコールに従って脱保護した。簡単に述べると、凍結乾燥されたmiR-126を、トリエチルアミン(TEA、2%)およびジチオスレイトール(DTT、50mM)の水溶液中に再懸濁した。溶液を室温で10分間維持し、酢酸エチルで4回抽出してDTTを除去した。
【0284】
ジエチルピロカルボネート処置(DEPC処置)水(Invitrogen、Rockland、IL、USA)中の1(1mg、0.00017mmol)の撹拌溶液に、脱保護されたmiR-126(0.5mg、0.00034mmol)を添加した。溶液を48時間撹拌し、3kDaカットオフAMICON(登録商標)遠心フィルターに移した。溶液を洗浄し、DEPC処置水とともに遠心分離によって3回濃縮した。濃縮した溶液をP-30ゲルカラムに通して未反応のmiR-126を除去した。保持時間:17.33分。
【0285】
Cy5-D-miR126-Cy3、6の合成
Cy3標識されたチオール修飾miR-126を上記のステップに従って脱保護し、次いで4の水溶液に添加した。溶液を48時間撹拌し、3kDaカットオフAmicon遠心フィルターに移した。溶液を洗浄し、3回濃縮し、次いでP-30ゲルカラムに通過させて未反応の核酸を除去した。
【0286】
ゲル電気泳動
精製したD-miR126、チオール修飾miR-126、およびdsRNAラダーをGELRED(登録商標)核酸染色剤およびグリセロール(10%v/v)と混合し、15%TBE-尿素ゲルにロードした。ゲルに定電圧(120V)をかけ、CHEMIDOC(登録商標)イメージングシステム(Bio-Rad、Hercules、CA)で可視化した。
【0287】
MALDI-TOF分析
マトリックス2’-4’6’-トリヒドロキシアセトフェノン一水和物(THAP)を、10mg/mLの濃度で0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル:水混合物(1:1)中に溶解した。D-miR126 5μLをMALDI試料プレート上に1μg/μLの濃度で沈着させ、続いてマトリックス混合物2μLを沈着させた。D-PDP 2μLを試料プレート上に1μg/μLの濃度で沈着させ、続いてマトリックス混合物2μLを沈着させた。試料を一晩空気乾燥させ、MALDI-TOF MSの反射ポジティブモードによって分析した。
【0288】
細胞系
ヒト微小血管内皮細胞(HMEC)は、Lonzaから得、EGMTM-2内皮細胞成長培地(Lonza)中で培養した。BV-2ネズミマクロファージはChildren’s Hospital of Michigan Cell Culture Facilityから提供され、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンが添加されたダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM;Gibco Laboratories)中で培養した。全ての細胞系は加湿雰囲気下、37℃および5%COで維持した。
【0289】
D-miR126有効性のin vitro評価
HMEC血管形成アッセイ
HMECを、1×10細胞/mLの密度で12ウェルプレートに播種し、コンフルエンシーまで成長させた。次いで細胞をD-miR126およびmiR-126および完全血清培地と24時間同時にインキュベートした。処置してから24時間後、細胞をトリプシンでそれらを剥離することによって収集し、得られた細胞懸濁物を収集し、300gで5分間遠心分離した。管形成アッセイをLonzaによって提供されたプロトコールに従って行った。
【0290】
簡単に述べると、アッセイ当日、96ウェルプレートにフェノール不含マトリゲル(登録商標)75μLをコーティングし、37℃で20分間重合させた。細胞ペレットを培地300μLで再懸濁し、溶液(400,000細胞/mL)75μLを、マトリゲル(登録商標)をコーティングした各ウェルに播種した。7時間後、得られた細胞ネットワークをZeiss Axiovert 200位相差顕微鏡(Carl Zeiss、Oberkochen、Germany)でイメージングし、Angiogenesis Analyzer-ImageJプラグインによって分析した(Carpentier, G. et al., Sci. Rep. 10, 11568 (2020))。
【0291】
炎症促進性および血管新生促進性mRNA発現のPCR分析
HMECを、完全血清条件でD-miR126またはmiR-126とともに24時間インキュベートしてから試料を収集した。炎症促進性表現型を誘導するために、BV2ネズミマクロファージを、無血清培地中、LPS(100ng/mL、Sigma-Aldrich)で3時間最初に刺激し、次いでLPS(100ng/mL)およびD-miR126またはmiR-126で24時間同時に処置した。
【0292】
次いでHMECおよびBV2試料を、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)分析のためにTRIzolを用いて収集した。簡単に述べると、試料に、TRIzolとともに凍結-解凍サイクルを行い、続いてクロロホルム(Thermo Fisher Scientific)200μLを添加した。試料を振とうし、氷中に15分間入れた。水性層と有機層との分離を助けるため、試料を15,000gで15分間遠心分離した。水溶液を収集し、イソプロパノールを各試料に添加した(500μL;Thermo Fisher Scientific)。試料を再び15,000gで15分間遠心分離し、次いでDEPC処置水中の75%エタノールで洗浄した。
【0293】
RNA含有量をNanodropによって決定し、各試料からの同等の量のRNAを相補的DNAに変換した(Applied Biosystems、Foster City、CA)。PCR分析を、Fast SYBR Green 試薬を用い、STEP ONE PLUS(登録商標)リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)で行った。VEGF-Α、GAPDH、およびIL-1βのためのPCRプライマーはBio-Rad Laboratories(Hercules、CA)から得た。プライマーはIntegrated DNA Technologies(Coralville、IA)から購入した。
【0294】
TNFαのためのプライマーは:
正方向:CCAGTGTGGGAAGCTGTCTT(配列番号6);および
逆方向:AAGCAAAAGAGGAGGCAACA(配列番号7)
であった。
【0295】
レーザー誘発脈絡膜血管新生(CNV)マウスモデルにおけるD-miR126のin vivo評価
レーザー誘発CNVマウスモデル
全ての動物手順はJohns Hopkins Animal Care and Use Committeeによって承認された。C57BL/6Jマウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME、USA)を通じて5~7週齢で得、一定温度および湿度(20±1℃、50±5%湿度)で飼育した。CNVのレーザー誘導より前に、ケタミン/キシラジン/アセプロマジンのカクテル(100mg/kgのケタミン、20mg/kgのキシラジン、および3mg/kgのアセプロマジン)を腹腔内注射して動物に麻酔を行った。次いで動物に1滴の局所2.5%フェニレフリン(Phyenylephrine)塩酸塩眼用溶液、続いて0.5%テトラカイン塩酸塩眼用溶液で処置して、瞳孔を散大させた。Micron III SLO(Phoenix Research Labs、Pleasanton、CA)を使用して眼底をイメージングし、付属のレーザーシステム(Phoenix Research Labs)で焦点を合わせた。ブルッフ膜の4つの等距離の場所に、240mWのレーザー出力設定、70m秒の持続時間でレーザー熱傷を生成した。
【0296】
D-miR126およびmiR-126の投与
CNV誘導後ただちに、D-miR126、miR-126、または生理食塩水シャム(sham)を動物に投与した。簡単に述べると、30Gインスリンシリンジを使用して強膜に注射開口部を生成した。次いで10μLのハミルトンシリンジを使用して硝子体腔内に直接処置を投与した。処置後、動物に局所眼用抗生物質(ゲンタマイシンおよび酢酸プレドニゾロン眼科用軟膏)を与えて感染症を予防した。次いで動物を処置後の設定した時点(7および14日目)において屠殺してイメージングおよび生化学的分析を行った。
【0297】
生体内分布研究に関しては、核酸ベースで(1μg/μLの濃度の)Cy5-D-miR126-Cy3またはmiR-126-Cy3 1μgを上記のステップに従って動物に投与した。組織を設定した時点において抽出した(処置してから1、3、5、7、14日後)。
【0298】
免疫組織化学およびイメージング
設定した時点において、動物を屠殺し、眼球摘出した眼を4%パラホルムアルデヒド中で1時間固定した。次いで脈絡膜および網膜を解剖して取り出した。組織をブロックし、一定の撹拌のもと室温で5%正常ヤギ血清、0.3%Triton(登録商標)X-100、および1%ウシ血清アルブミンの溶液とともに2時間インキュベートすることによって透過処理した。マクロファージを可視化するために、組織を抗Iba1抗体(1:100;FUJIFILM(登録商標)Wako Chemicals、Osaka、Japan)で染色し、続いてALEXA FLUOR(登録商標)405標識ヤギ抗ウサギ二次抗体(1:200;Abcam、MA、USA)で染色した。血管をFITC標識イソレクチン(GSIB)(1:100;Life Technologies、Eugene、OR、USA)で染色した。
【0299】
フラットマウントを、組織に4つの放射状の切開部を作製し、弛緩した組織をカバースリップにマウントすることによって生成した。CNV形成は、生体内分布に関しては共焦点710顕微鏡(Carl Zeiss、Oberkochen、Germany)でイメージングし、領域計算に関してはAxiovert位相差顕微鏡でイメージングした。
【0300】
PCRおよびELISAアッセイ
眼を摘出後ただちに切開し、固定は行わなかった。脈絡膜を収集し、-80℃で保存してから分析を行った。ELISA分析に関しては、脈絡膜をT-PERタンパク質抽出緩衝液(Thermo Fisher Scientific)中に浸し、Bullet Blender Storm組織ホモジナイザー(Next Advantage Inc.、Averill Park、NY)で0.9~2.0mmステンレス鋼ビーズを用いてホモジネートした。上清を遠心分離して水溶液を収集した。試料を-80℃で保存し、さらなる処理を行うことなく使用してVEGF-ΑレベルのELISA検出を行った。
【0301】
PCRに関しては、脈絡膜をTRIzol中に浸し、鋼ビーズを用いてホモジネートし、Corning COSTAR SPIN-X(登録商標)遠心管フィルター(Sigma-Aldrich)によってろ過して組織固形物を除去した。RNAを前述のプロトコールに従って単離し、RNA濃度をNanodropによって決定した。同等の量のRNAを相補的DNA(cDNA)に変換し、STEP ONE PCR(登録商標)システムによってFast SYBR Green試薬を用い分析した。
【0302】
統計分析
データは、平均±SEMとして表され、分析はGraphPadプリズム(バージョン9;La Jolla、CA)で行った。処置群は、時点または用量にわたって、分散分析(ANOVA)検定によって分析した。単一群間の有意差は、スチューデントのt検定で決定した:P<0.05、**P<0.01および***P<0.001。
【0303】
結果
D-miR126中間体およびコンジュゲートの合成および特徴付け
再現性のある環境感受性コンジュゲーション戦略は、その有効性を低下させることなくmiRNAを細胞内環境に有効に送達するのに必須である。このコンジュゲーション戦略は、miRNAをデンドリマーナノ粒子に結合させるために実証されたグルタチオン感受性リンカーを利用した。デンドリマー表面は、スルフヒドリル基との還元可能なジスルフィド結合を容易に形成する反応性リンカーであるスクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネートで最初に修飾した。修飾の成功は、7.01ppmに5つの芳香族プロトンおよび4.06ppmに12個のエステル連結されたプロトンの存在を示すHNMRスペクトルによって確認した。脱保護されチオール化されたmiR-126は修飾デンドリマーと反応させ、反応はゲル電気泳動によってモニターした。デンドリマー-miR126コンジュゲートの形成は、27bpにおける遊離miR-126と比較した場合の150bpでのTBE-尿素ゲルにおける増加した保持時間で確認した。D-miR126のゲル電気泳動によって、150~300RNA bp(約90~180kDa)に対応する長期の保持時間が示された。D-miR126における単一バンドの存在によって、遊離核酸が存在しないことが示唆された。対照的に、miR126と関連するバンドはさらに移動し、より小さなbpサイズを示した。D-miR126のHPLCクロマトグラフは14.972分の保持時間を伴う単一ピークからなり、純粋な生成物を示した。
【0304】
精製したD-miR126にはまた、HPLC分析を行い、得られたクロマトグラフは14.972分の保持時間を伴う1つの単一ピークからなり、分析物は純粋であったことが示唆された。さらに、分析物のUVプロファイルはデンドリマーおよび核酸の吸収波長にそれぞれ対応する200nmおよび260nmにおいて2つの吸収ピークを示し、核酸のデンドリマープラットフォームへの取り込みが成功したことが示唆された。
【0305】
MALDI-TOF分析を使用してコンジュゲート形成をさらに確認し、核酸負荷を決定した。D-PDP前駆体およびD-miR126コンジュゲートの質量はそれぞれ、60kDaおよび66kDaであることが決定された。全ての他の中間体および生成物は、H NMR、HPLC、またはゲル電気泳動を使用して特徴付けた。二重標識コンジュゲートに蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)が可能かどうかを決定するために、試料を540nmで励起し、得られた蛍光強度を、PANORAMA(登録商標)3ソフトウェア(Shimadzu Scientific Instruments、Columbia、MD)を実行したRF5301PC蛍光分光光度計を用いて550~720nmの範囲にわたって測定した。Cy3発光は565~575nmからの強度として決定され、Cy5発光は665~675nmからの強度として決定された。得られたスペクトルにおいてCy5フルオロフォアの励起は観察されておらず、FRETに起因する蛍光はその後のイメージング実験において見込みがないことが示唆された。
【0306】
HMECおよびBV2細胞におけるin vitroでのD-miR126活性
BV2ネズミマクロファージおよびヒト微小血管内皮細胞系を選択して、D-miR126の炎症促進性および血管新生促進性のマーカーを減少させる有効性をそれぞれ試験した。LPS刺激マクロファージは、未処置対照と比較して高レベルのTNFαおよびIL-1βを産生し、これらの炎症促進性サイトカインの産生は、D-miR126およびmiR-126で同時に処置した場合に減少した。2つの処置によってTNFαの類似の(約50%)ノックダウンが生じたが(図10A)、D-miR126で処置された細胞に関してはIL-1βの用量依存的ノックダウンがあり、miR-126で処置された細胞に関しては逆用量応答があるようであった(図10B)。TNFα応答は用量非依存的であるように思われる。
【0307】
HMECにおける抗血管新生効果は2つの補完的方法で試験した。最初に、重要な血管新生サイトカインであるVEGF-ΑのmRNAレベルを、miR-126およびD-miR126で処置された細胞ならびに未処置対照によって評価した。対照と比較して、D-miR126または遊離miR-126のいずれかで処置されたHMECは、VEGF-Αのより低い産生をもたらし(約20%ノックダウン)、血管新生活性を阻害することが示唆された(図10C)。HMECにおけるVEGF-Α抑制は極めて高い用量または低い用量のD-miR126で減少し、最適な投薬量は5~10nMであった。高用量のmiR-126(10~100nM)はより低い用量のD-miR126と同じレベルでVEGF-Α発現を抑制した。
【0308】
次に、HMECの血管新生活性を管形成アッセイによって評価した。処置および未処置の細胞をマトリゲル(登録商標)マトリックス上で血管新生の条件に曝し、細胞ネットワークを自然に形成させた。次いでネットワークをAngiogenesis Analyzer、Image J用プラグインによって分析した。全ての尺度において、D-miR126またはmiR-126によって処置された細胞は、ネットワーク形成の撹乱、例えば、孤立した断片の増加、血管によって囲まれた領域の減少、およびネットワークの長さの減少を示した(図11A~11D)。より低い用量のD-miR126での前処置は、マトリゲルマトリックス上でネットワークを形成するHMECの能力を抑制した。対照的に、より高い用量の遊離miR-126は、ネットワーク形成を抑制するために必要とされた。
【0309】
D-miR126のin vivoでの抗血管新生活性
レーザー誘発CNVマウスモデルを使用して、in vivoでのCNV形成を減少させることにおけるD-miR126コンジュゲートの有効性を評価した。モデルによって、7日目におよそ12,000μmおよび14日目に約9,000μmの領域で一貫したCNV形成が生成された。CNV誘導日にD-miR126またはmiR-126の単回用量で処置されたマウスはより小さなCNV領域を生成した。7日目では、D-miR126処置動物のCNV領域は約7,000μmであり、同時にmiR-126処置動物の領域は約8,000μmであった。14日目では、D-miR126処置ではCNV領域が対照と比較して約30%(約6,000μm)減少し、同時にmiR-126処置ではCNV領域が約10%(約8,000μm)しか減少しなかった(図12A~12B)。したがって、単回用量のD-miR126処置は投与してから最大14日後にCNV形成を抑制する。
【0310】
D-miR126の抗血管新生機序を決定するために、VEGF-ΑレベルをPCRおよびELISAアッセイによって測定し、炎症促進性サイトカイン(TNFαおよびIL-1β)をPCRで測定した。miR-126およびD-miR126で処置されたマウスは、ELISAによって測定されたように7日目にVEGF-Αタンパク質において有意な減少が得られた。さらに、D-miR126では、miR-126処置と比較してVEGF-Αタンパク質レベルが有意に減少した。しかし14日目まで、処置および未処置動物でのVEGFレベルにおける差はなかった(図13A)。7日目のVEGFの減少傾向は、PCRによって測定されたmRNAレベルによって実証されたが、その傾向は、大きな分散に起因して有意ではなかった。興味深いことに、VEGFタンパク質レベルは14日目に同様であるように見えたが、VEGF-Α mRNAレベルはD-miR126およびmiR-126処置動物において未だに減少したままであった(図13B)。D-miR126は、VEGF-Α mRNAを減少させることにおいてより有効であるように思われた。
【0311】
D-miR126およびmiR-126で処置された動物は炎症性mRNAの減弱をもたらした。7日目に、D-miR126で処置された動物は、より低いレベルのIL-1βをもたらしたが、減少は14日目では持続されなかった(図13D)。逆に、D-miR126およびmiR-126処置は、14日目に測定されたようにより遅い時点でのみTNFα産生に対してその効果を発揮するように思われた(図13C)。TNFα mRNAは、D-miR126処置またはmiR-126処置のいずれでも早い時点(7日)で上昇したが、統計的に有意ではなかった。その後、両処置は14日にTNFαを抑制した。
【0312】
in vivo分布
取り込みおよび分布を評価するために、Cy3標識miR-126および二重標識Cy5-D-miR126-Cy3をレーザーCNVマウスモデルに注射し、脈絡膜を注射してから1、3、5、7、14日後に収集した。Iba1染色は、マクロファージの細胞内環境を可視化するために使用し、イソレクチンGS-IB4は、血管とマクロファージの両方を染色するために使用した。硝子体内注射されたD-miR126は注射の1日以内にCNV領域に局在し、これは、Cy3(miR-126)、Cy5(デンドリマー)、イソレクチン(CNV血管)およびIba1(マクロファージ)の共局在によって認められた。共局在のパターンは最大14日間維持された。miR-126はまた、最大7日間CNV標的領域に局在するように思われたが、取り込みパターンはより断続的であり、マクロファージ染色とより相関するように思われ、一方D-miR126の広範な取り込みが存在した。さらに、D-miR126は、共焦点顕微鏡によって検出されたように最大14日間標的領域中に滞在し、一方、miR-126の大部分は7日までに除去された。
【0313】
D-miR126の取り込みは24時間でCNV領域およびその周辺に限定され、遊離miR-126の分布と類似していた。しかし、D-miR126コンジュゲートは最大14日間標的領域で保持された。その後の時点では、D-miR126は、マクロファージ中に優先的に局在するようであり、大部分のデンドリマーCy5シグナルおよびmiR-126Cy3シグナルはIba1抗体と共局在した。miR-126の取り込みは硝子体内注射から24時間後にCNV領域およびそのすぐ周辺に単離された。蛍光顕微鏡によってイメージングされたように、大部分の遊離miRNAは7日までに除去された。14日目では、miRNAは標的領域にほとんど残っていなかった。Cy5蛍光の不在は、遊離miRNA処置群におけるデンドリマーの欠如に対応する。
【0314】
2つの染色された細胞集団内で共局在しているシグナルの割合も分析した(図14)。遊離miR-126は、5日間にわたってマクロファージおよび内皮細胞によって徐々に取り込まれた。注射してから24時間後に、Iba1シグナルと共局在した割合によって示されたように、およそ2%のmiR-126がマクロファージ内で検出され、マクロファージおよび内皮細胞組合せ集団(イソレクチンGS-IB4で染色した)においておよそ3%のmiR-126が検出された。シグナルは5日でビークに達し、約10%のシグナルがマクロファージ内で共局在しており、約15%がマクロファージ/内皮細胞組合せ集団内で共局在していた。
【0315】
対照的に、D-miR126はCNV領域内の常在マクロファージによって急速に取り込まれ、およそ約8%のシグナルがマクロファージ染色とともに共局在していた。興味深いことに、2%のシグナルのみが、マクロファージ/内皮細胞組合せ集団において観察された。しかし、3日目には、Cy3標識miR-126からのシグナル分布は、異なる細胞集団間でさらに均一に分布するように移動したと思われる。およそ約6%のシグナルはIba-1と局在し、類似のパーセンテージがイソレクチンGS-IB4と局在した。Iba-1陽性細胞内およびイソレクチン染色した細胞内のシグナルの比率は、残りの時点に関して依然として類似したままであった。さらに、2つの細胞集団内に共局在したmiR-126のレベルは、7日目の低下を除いて、時間的経過とともに依然として比較的に安定(約10%)のままである。デンドリマー(Cy5)とmiR-126(Cy3)との間の共局在シグナルもin vivoでのペイロード放出の尺度として調査した。注射後24時間で、約50%のmiR-126がデンドリマープラットフォームから放出され、miR-126の総放出は14日目までに約80%に増加した。
【0316】
考察
マイクロRNAは、特定の疾患の進行に関与する複数の標的と結合し分解するその能力に起因して強力な処置選択肢である。しかしこれは、miRNAの適正細胞への送達がオフターゲット効果を回避し、その有効性を最適化するために極めて重要であることも意味する。デンドリマープラットフォームは、炎症および血管新生の領域を選択的に標的とし、脈絡膜血管新生を処置するためにmiRNAを有効に送達することが実証されている。
【0317】
このプラットフォームは、生体適合性であり、長い循環時間を有することが示されている第6世代PAMAMデンドリマーを利用している。表面は、環境感受性のジスルフィドリンカーで修飾されており、そのリンカーは核酸に結合し、細胞内コンパートメントにおいてペイロードを選択的に放出するように使用することができる。表面に結合したPDPリンカー部分の数は、立体障害の検討事項に起因して、最終化合物においてデンドリマー対miRNAの1:1の化学量論比よりも多かった。デンドリマー-miRNAコンジュゲーション化学は2つの大きな生体分子を伴うため、コンジュゲーション効率が低いことが予想され、したがって、コンジュゲート形成を増加させるために多くの結合部位が含まれていた。さらに、デンドリマープラットフォームへの結合を促進するためにmiR-126を過剰に添加した。精製後、ゲル電気泳動およびHPLCによって、コンジュゲートの形成および未反応の核酸の除去が確認された。MALDI-TOFとゲル電気泳動との組合せによって、1:1(デンドリマー:miRNA)での核酸負荷が推定された。
【0318】
in vitroでのシンク条件では、複雑なタンパク質相互作用、競合する細胞集団、および消失機序なしに、細胞が化合物を自由に取り込むことができるため、D-miR126およびmiR-126において類似の性能が期待された。HMECでは、VEGF-Α産生の減少において、D-miR126およびmiR-126の性能に有意差は観察されなかった。同様に、このような予想と一致して、TNFα mRNAレベルにおける減少は、D-miR126およびmiR-126処置BV2細胞に関しては類似していた。しかし興味深いことに、IL-1βレベルはプラットフォームに依存して異なる用量応答を示すと思われる。D-miR126処置細胞に関しては、強力な用量応答が観察され、より高いノックダウン効果が100nMで認められた。対照的に、miR-126処置細胞は逆応答を示し、高いノックダウン効果は、最も有効なD-miR126濃度よりも低い10nMで認められた。
【0319】
この効果は、miRNAの複雑な用量-依存的効果とD-miR126の遅い放出の両方に起因し得る。最初に、理論的モデルによって、miRNAとその標的のプールおよびシグナル伝達経路との複雑な相互作用の解読が試みられた。特に、miRNAは、その濃度、他の標的に対する親和性、およびシグナル伝達経路からのフィードバックに依存して異なる標的に優先的に影響を与える場合がある。結果的に、所望の標的に依存して、異なる用量のmiRNAがその有効性を最適化するために必要とされる場合がある。これによって、BV2細胞におけるIL-1βmRNA産生で観察された逆の関係を部分的に説明することができる。
【0320】
さらに、デンドリマー-コンジュゲートは、遅い放出プロファイルを示し、RISCが結合したmiRNAにアクセスするのを制限することが示されている。D-miR126の場合、miRNAペイロードの放出が十分遅い場合があり、miRNAの一部のみがアッセイ期間にわたってその効果を示すことができる。結果的に、D-miR126の処置濃度を増加させると、細胞質ゾルにおいて放出されたmiR-126の量が部分的にしか増加せず、最適な治療濃度範囲が維持された。細胞質ゾルmiR-126の利用可能濃度が最適濃度の範囲内であったため、有効性は逆応答ではなく用量-依存的応答を示した。
【0321】
管形成アッセイでは、D-miR126およびmiR-126で処置されたHMECは、低用量のD-miR126で細胞ネットワーク撹乱を示し、ネットワーク形成抑制において高い有効性を示した。遊離miR-126と比較してD-miR126の有効性における増加は、HMECが、miR-126処置なしでマトリゲル(登録商標)によって刺激された場合、miR-126のより安定な細胞内濃度を維持することができる遅い放出機序に起因する場合がある。
【0322】
miRNA濃度と標的選択性との間の複雑な相互作用のため、化合物はレーザー誘発CNVマウスモデルにおいて評価した。最初に、D-miR126およびmiR-126の分布を共焦点顕微鏡によって決定し、D-miR126は、標的CNV領域内に長く滞在するだけではなく、血管新生に重要な2つの細胞サブ集団であるマクロファージと内皮細胞の両方に分布するように見えたことが認められた。これは、D-miR126が、CNV形成の血管新生応答と炎症性応答の両方に影響を与える場合があり、より長い期間にわたって与えることができ、追加の用量の必要性を低下させることを示す。
【0323】
CNV減弱の有効性を評価するために、処置および未処置マウスの脈絡膜を7日目および14日目に調査した。D-miR126処置マウスの領域は14日目にCNV減少を有意に低下させ、同時にmiR-126処置マウスは領域において有意ではない減少をもたらした。領域の減少は、PCRまたはELISAアッセイのいずれかによって測定されたように、VEGF-Α、TNFα、およびIL-1βレベルにおける減少と十分に相関している。さらに、蛍光標識miR-126およびデンドリマー、ならびに染色したマクロファージおよび内皮細胞の共局在測定によって、遊離miR-126とD-miR126との間の取り込み速度論および分布特性における差が明らかになった。D-miR126は、遊離miR-126と比較して早い時点でより高い細胞内濃度を達成し、ペイロードは経時的に徐々に放出されるように思われた。取り込みにおけるこの差は、早期の段階でmiR-126の治療的効力を強化し、その後の時点でその有効性を延長する場合がある。
【0324】
結論
複数のタンパク質および経路を標的とするためのmiRNAの柔軟性は、これまで処置できなかった疾患の処置における強力なツールとすることができる。しかし、その効力の利用は有効な送達および投薬に依存する。miRNAを選択した細胞集団に標的化された送達をするためのデンドリマープラットフォームが確立された。さらに、miRNA投薬に関するデンドリマーの効果が特徴付けられ、臨床的に関連するモデルの処置におけるデンドリマー-miRNAコンジュゲートの有効性も検証した。本研究によって、臨床的に移行可能なmiRNA療法の開発に向けた大きなステップとなる。
【0325】
(実施例4)
黄斑変性症を処置するためのデンドリマーコンジュゲート
先進国では、加齢黄斑変性症(AMD)に起因して何百万もの高齢患者が視力損失のリスクに直面しており、これらの患者のおよそ10%が湿性AMDを発症することになる。湿性AMDは複雑なプロセスであり、脈絡膜血管新生が、ブルッフ膜を通して脈絡膜から血管を押し出して網膜色素上皮(RPE)を移動させるかまたは破壊する。湿性AMDの疾患進行における主な因子は、新規の血管の成長を促進する眼における血管内皮増殖因子(VEGF)の発現の上昇である。結果的に湿性AMDに関する現行の標準ケアの大半は、抗VEGF抗体、例えばアフリベルセプトの硝子体内注射によってVEGFを直接標的とすることである。しかし、患者のかなりの部分(約1/3)はこれらの治療法に応答せず、処置レジメンへの患者の最適な遵守にもかかわらず視力がさらに低下する場合がある(D. Vogt, V. Deiters, T. R. Herold, S. R. Guenther, K. U. Kortuem, S. G. Priglinger, A. Wolf, and R. G. Schumann, Curr Eye Res, 2022, 1-8)。
【0326】
他の治療モダリティ、例えばインテグリン結合ペプチドは患者における湿性AMDの進行を停止させるために開発されている。これらのペプチド拮抗薬は細胞表面インテグリン、例えばαVβ3、α5β1、およびα5β3に強く結合し、これらのインテグリンの下流シグナル伝達を阻害する。特に、これらのインテグリン拮抗薬はERKおよびPI3K/Akt経路の活性化を減少させ、次にさまざまな炎症促進性および血管新生促進性のサイトカイン、例えばVEGF-Α、TNF-α、およびIL1βの発現を減弱させる。Luminate(またはALG-1001)はこのようなインテグリン結合ペプチドの1つであり、血管新生の停止において成功していることが実証されており、現在のところAMDおよび糖尿病性黄斑浮腫(DME)における適用に関して臨床治験が行われている。しかし、ペプチドベースの拮抗薬は、急速な酵素分解および腎臓クリアランスを含む広範な送達課題に悩まされている。したがって、これらの治療法は、現在のところ硝子体内注射に限定されており、後進国における患者への利用可能性が限定されるだけではなく、眼内炎、眼圧上昇(IOP)、および刺激のリスクも有する。
【0327】
材料および方法:
化学物質および試薬
メタノール溶液中のヒドロキシル末端エチレンジアミンコアPAMAMデンドリマー(第6世代、医薬品グレード)はDendritech(Midland、MI、USA)から購入した。使用前に、デンドリマー溶液はロータリーエバポレーターで蒸発させた。透析膜(MWCO 1kDa)はSpectrum Chemicals(New Brunswick,、NJ、USA)から購入した。ALG-1001およびアジドリンカーで修飾されたALG-1001はBio-Synthesis(Lewisville、TX、USA)から購入した。重水素化溶媒(DMSO-d)、メタノール(CDOD)、および水(DO)はSigma-Aldrichから購入した。プロテイナーゼKストック溶液およびダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM、L-グルタミンを含む低グルコース)はThermo Fisher(Waltham、MA、USA)から購入した。ヒト臍帯静脈内皮細胞および必要な培地キットはLonza(Basel、Switzerland)から購入した。フェノールレッド不含マトリゲルはCorning(Tewksberry、MA、USA)から購入した。
【0328】
機器の使用
核磁気共鳴
Bruker 500-MHz分光計を使用して周囲温度でH NMRスペクトルを得た。化学シフトは、内部標準として使用したテトラメチルシランに対する100万分の1で報告しており、残留プロトン性溶媒ピークを使用して化学シフトを較正した。DMSO-d6(δ=2.50ppm)。スペクトルにおける共鳴多重度は「s」(シングレット)、「d」(ダブレット)、「t」(トリプレット)、および「m」(マルチプレット)として示す。ブロードな共鳴は「b」で示す。
【0329】
高速液体クロマトグラフィー
1525バイナリポンプを備えたWaters HPLC(Milford、MA)、およびインラインデガッサーAF、717プラスオートサンプラー、およびWaters Empowerソフトウェアとインターフェースで連結した2998フォトダイオードアレイ検出器を使用して化合物の純度を決定した。カラムは粒子サイズ5μm、長さ25cm、および内部直径4.6.mmのWaters Symmetry C18逆相カラムであった。クロマトグラムは、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を使用して210、650、および530nmでモニターした。分析は95:5(HO/ACN)で出発し、30分で50:50(HO/ACN)に増加させ、10分で95:5(HO/ACN)に戻る勾配フローで流量1ml/分で行った。
【0330】
デンドリマーコンジュゲートの合成
デンドリマー-ヘキシンの合成
5-ヘキシン酸およびDMAPを無水DMF中のD-OHの溶液に添加し、室温で15分間撹拌した。EDC・HClを、得られた透明溶液に3等分して添加し、溶液を室温で一晩撹拌した。反応混合物を、8時間間隔で溶媒を交換しながら、DMFに対して2kDa MWカットオフセルロース透析膜による透析で精製した。24時間後、混合物を、12時間間隔で溶媒を交換しながら水に対して24時間透析した。最終水溶液を凍結乾燥して生成物を白色固形物として得た。
【0331】
H NMR (500 MHz, DMSO) δ 8.06-7.79 (m, 内部アミド510H), 4.73 (s, 表面OH, 232H), 4.06 (s, エステル連結, 22H), 3.40 (d, デンドリマー-CH), 3.33 (d, デンドリマー-CH), 3.18-3.11 (m, デンドリマー-CH), 2.64 (s, デンドリマー-CH), 2.43 (s, デンドリマー-CH), 2.20 (s, デンドリマー-CH), 1.68 (t, アセチレン, 30H).保持時間:19.58分。
【0332】
BOC-GABA-D-ヘキシンの合成
D-ヘキシンを無水DMF中に溶解し、BOC-GABA-OHおよびDMAPを添加した。溶液を15分間撹拌してからEDC・HClを3等分に分けて添加した。溶液を一晩撹拌し、透析で精製し、凍結乾燥して生成物を白色固形物として得た。
【0333】
H NMR (500 MHz, DMSO-d) δ 8.06-7.79 (m, 内部アミド510H), 4.73 (s, 表面OH, 199H), 4.06 (s, エステル連結, 40H), 3.40 (d, デンドリマー-CH), 3.33 (d, デンドリマー-CH), 3.18-3.11 (m, デンドリマー-CH), 2.64 (s, デンドリマー-CH), 2.43 (s, デンドリマー-CH), 2.20 (s, デンドリマー-CH), 1.68 (t, アセチレン, 27H), 1.36 (s, BOC, 68H).
【0334】
GABA-D-ヘキシンの合成
BOC-GABA-D-ヘキシンの脱保護を無水条件下で行った。化合物を丸底フラスコに入れ、無水DCMを窒素雰囲気下で添加した。溶液を絶えず撹拌し、超音波処理して白濁した粘着性の懸濁物を形成した。次いでTFAを懸濁物に4:1の比率(DCM:TFA)で添加し、溶液を一晩撹拌した。次いでDCMを、ロータリーエバポレーターを使用して蒸発させた。TFAを、反応混合物をメタノールで繰り返し希釈し、得られた溶液を蒸発させることによって除去した。次いで生成物を高真空下に3時間置き、さらに精製することなく使用した。
【0335】
Cy5-D-ヘキシンの合成
GABA-D-ヘキシンを無水DMF、続いてDIPEA中に溶解し、最終的にCy5 NHSエステルを添加した。反応物を一晩撹拌し、反応混合物を、2kDa膜によってDMFに対して24時間透析した。次いで混合物を水に対してさらに24時間透析し、凍結乾燥して固形の青色生成物を得た。
【0336】
H NMR (500 MHz, DMSO-d) δ 8.06-7.79 (m, 内部アミド510H), 7.35 (m, Cy5 H), 7.25 (m, Cy5 H), 7.05 (m, Cy5 H), 6.6 (m, Cy5 H), 6.3 (m, Cy5 H), 4.73 (s, 表面OH, 199H), 4.06 (s, エステル連結, 40H), 3.40 (d, デンドリマー-CH), 3.33 (d, デンドリマー-CH), 3.18-3.11 (m, デンドリマー-CH), 2.64 (s, デンドリマー-CH), 2.43 (s, デンドリマー-CH), 2.20 (s, デンドリマー-CH), 1.68 (t, アセチレン, 27H).保持時間:18.01分。
【0337】
D-ALG1001およびCy5-D-ALG1001の合成
ALG-1001を超純水中に溶解し、非標識のコンジュゲートのためにD-ヘキシンの水溶液に添加した。ALG-1001-Cy3を超純水中に溶解し、二重標識コンジュゲートのためにCy5-D-ヘキシンの水溶液に添加した。硫酸銅溶液を添加し、溶液を室温で10分間撹拌してからアスコルビン酸ナトリウムを添加した。精製に関しては、両反応物を室温で一晩放置し、次いで水に対して24時間透析した。各溶液を凍結乾燥して粉末生成物を得た。
【0338】
D-ALGのH NMR (500 MHz, DMSO-d): 8.12-7.78 (m, 内部アミドH), 4.45-4.06 (m, ペプチドα炭素), 4.00 (s, エステル連結, 37H), 3.78 (m, ポリエチレングリコールH) , 3.40 (d, デンドリマー-CH), 3.33 (d, デンドリマー-CH), 3.18-3.11 (m, デンドリマー-CH), 2.64 (s, デンドリマー-CH), 1.64-1.59 (m, GABAリンカー -CH2およびペプチド側鎖).保持時間:16.60分。
【0339】
Cy5-D-ALG-Cy3のH NMR (500 MHz, DMSO-d): 8.12-7.78 (m, 内部アミドH), 7.01 (m, 芳香族5H), 6.59 (s, GABAアミド H, 10H), 4.73 (s, 表面OH, 233H), 4.06 (s, エステル連結, 16H), 3.40 (d, デンドリマー-CH), 3.33 (d, デンドリマー-CH), 3.18-3.11 (m, デンドリマー-CH), 2.64 (s, デンドリマー-CH), 1.64-1.59 (m, GABAリンカー -CH2, 6H), 1.36 (s, Boc基, 20H).保持時間:17.99分。
【0340】
酵素分解下でのin vitro安定性
プロテイナーゼKストック溶液はThermo Fisherから購入し、そのまま使用した。ALG-1001およびD-ALG溶液は2mg/mLの濃度に調製し、プロテイナーゼKは、プロテイナーゼKの最終濃度が2mg/mLになるように各溶液に添加した。混合物は37℃でインキュベートし、設定した時点において混合物100μLを取り出し、HPLCで分析した。化合物の分解を決定するために、ALG-1001およびD-ALGと関連する溶出時間でのピークの積分を使用し、0時間の時点で注入された分析物のピークに対して正規化した。
【0341】
細胞培養
HUVEC細胞はLonzaから得、EGM-2内皮細胞成長培地(Lonza)中で培養した。継代5から継代9の間のネズミマクロファージ(RAW264.7)を、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)が添加されたダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM、Life Technologies、Grand Island、NY)中で培養した。全ての細胞は加湿インキュベーターを用い37℃および5%COで維持した。
【0342】
D-ALG有効性のin vitroでの評価
血管形成アッセイ
96ウェルプレートを75μLのマトリゲル(登録商標)でコーティングし、室温で15分間放置してから37℃のインキュベーター中にさらに30分間置いた。D-ALG1001を所望の濃度の2倍に溶解し、薬物溶液50μLをウェルに添加した。次いでHUVEC細胞を各ウェルに70,000細胞/cmの密度で添加した。生存細胞イメージを12時間で撮影して分析を行った。
【0343】
創傷治癒アッセイ
HUVEC細胞を、24ウェルプレート中、1ウェルあたり5×10細胞の密度で播種し、少なくとも72時間放置して細胞の均一な単層を形成した。細胞をD-ALG1001およびALG-1001で24時間処置した。1センチメートルの長さのひっかき傷を、200μLのピペットチップの先端を用いて細胞単層につけた。イメージをNikonで撮影した。
【0344】
ウエスタンブロットおよびPCRのためのVEGF活性化
HUVEC細胞を24ウェルプレート中1ウェルあたり5×10細胞の密度で24時間播種してから処置を行った。細胞を、D-ALG1001およびALG-1001で24時間処置してからVEGFで5分間活性化させた。細胞を収集し、溶解して、PHOSSTOP(登録商標)およびプロテイナーゼ阻害剤のカクテルが添加されたT-Per緩衝液(Thermo Fisher)を使用してウエスタンブロットを行った。細胞をTRIZOL(登録商標)で溶解し、前述のように処理してqPCR分析を行った。
【0345】
in vitro炎症モデル
RAW264.7細胞を12ウェルプレート中、1ウェルあたり1×10細胞の密度で48時間播種してから処置を行った。細胞をD-ALG1001およびALG-1001とともに24時間インキュベートし、処置培地を吸引し、次いで10,000エンドトキシン単位/mLの濃度のLPSを添加して炎症性応答を刺激した。LPS刺激を行ってから3時間後、試料を収集してからqPCR分析を行った。
【0346】
脈絡膜血管新生を減弱させることにおけるD-ALGのin vivo評価
in vivoレーザーCNVラットモデル
全ての動物手順はJohns Hopkins Animal Care and Use Committeeによって承認された。8週齢から12週齢の間のBrown Norwayラットを得、一定の温度および湿度(20±1℃、50±5%湿度)で飼育した。動物に、ケタミン/キシラジンカクテル(ケタミン50mg/kgおよびキシラジン10mg/kg)の腹腔内注射によって麻酔をかけた。瞳孔を局所用2.5%フェニレフリン塩酸塩溶液、続いて0.5%テトラカイン塩酸塩溶液を用いて散大させた。CNV形成を誘導するために、4つの等間隔の病変を、Micron III SLOの組み込まれたレーザーシステムでブルッフ膜において生成することになる。レーザー出力を240~250W、持続時間を70m秒に設定した。Gonio眼用溶液を術後に適用して眼の乾燥および白内障形成を予防した。
【0347】
CNV誘導日(0日目)に、D-ALG1001およびALG1001を、ペプチドベースで150μgの用量で腹腔内投与した。その後の用量は4日ごとに投与した。7日目および14日目に、マウスを屠殺し、眼球を摘出した。CNVイメージのために使用される眼は10%ホルマリン中で1時間固定した。qPCR、ELISA、およびウエスタンブロットのために使用される眼は使用するまで-80℃でただちに保存した。
【0348】
ウエスタンおよびqPCRのための組織の調製
簡単に述べると、PHOSSTOP(登録商標)およびプロテイナーゼ阻害剤カクテルが添加されたT-Per 500μLを切開した脈絡膜を含む管に添加した。1.6mmの鋼ホモジネーションビーズ1杯を各試料に添加し、次いでTISSUELYSER(登録商標)LT(Qiagen)に50/秒の振動数で15分間入れた。qPCRに関しては、TRIZOL(登録商標)200μLを、脈絡膜を含む管に添加し、1.6mmの鋼ホモジネーションビーズ1杯を添加した。試料をTISSUELYSER(登録商標)LTに50/秒の振動数で15分間入れた。
【0349】
ウエスタンブロットおよびELISAを用いた経路活性化分析
タンパク質の濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific、Rockford、IL)を用いて決定した。等量のタンパク質を変性させ、4~15%TGXゲル(Bio-Rad、Hercules、CA)上で分離した。ゲルをニトロセルロース膜に転写し、3%ウシ血清アルブミン(「BSA」)を用いて室温で1時間ブロックし、GAPDH、FAK、pFAK、MAPK、およびpMAPKに関して4℃で一晩プローブした。膜を3回洗浄してからHRPコンジュゲート二次抗体とともにインキュベートし、続いて化学発光基質とともにインキュベートして可視化した。
【0350】
組織から抽出したタンパク質に関しては、総FAKおよびFAK(ホスホ)[pY397]ELISAキット(Invitrogen)を使用してタンパク質の発現レベルを定量化し、測定したタンパク質発現をBCAアッセイから決定された各試料の総タンパク質量に対して正規化した。
【0351】
qPCR分析
クロロホルム100μLをTrizol懸濁物に添加し、水性相を、10K RPM、4℃で15分間、遠心分離で分離した。2-プロパノール400μLを水溶液に添加し、再び回転させてRNAをペレット化した。RNAを70%エタノール溶液で洗浄し、再びペレット化し、DEPC(酵素を不活性化させるために処置された超純粋)水中に再懸濁した。
【0352】
RNAを相補的DNAに変換するため、RNA2μgを高容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用して変換した。試料は、SYBR Green試薬(Thermo Fisher Scientific)を用いたSTEPONE PLUS(登録商標)リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を使用して分析した。相対的発現は、対照に対して正規化したΔΔCt計算を用いて定量化した。GAPDHのためのプライマーは、Bio-Rad Laboratories(Hercules、CA)から得た。プライマーはIntegrated DNA Technologies(Coralville、IA)から購入した。TNFαのためのプライマーは:
正方向:CCAGTGTGGGAAGCTGTCTT(配列番号6);および
逆方向:AAGCAAAAGAGGAGGCAACA(配列番号7)
であった。
IL1βのためのプライマーは:
正方向:AGCTTCAAATCTCGAAGCAG(配列番号8);および
逆方向:TGTCCTCATCCTGGAAGGTC(配列番号9)
であった。
【0353】
生体内分布
生体内分布研究に関しては、Cy5-D-ALG1001-Cy3およびALG-1001-Cy3を、CNV誘導日(0日目)に150μg/100μLの用量で各動物に腹腔内投与した。動物を1、2、3、および4日の時点で屠殺し、眼球摘出した。
【0354】
イメージング
固定後、後眼部を解剖して取り出し、網膜を脈絡膜から分離した。血管および単球に関しては、組織をFITC標識イソレクチン(GS IB)(Life Technologies、Eugene、OR)で染色した。眼を4つの放射状緩和切開を導入することによってマウントした。生体内分布のための試料を共焦点710顕微鏡(Carl Zeiss、Oberkochen、Germany)下でイメージングした。CNV定量化のための試料をAxiovert位相差顕微鏡でイメージングした。全てのイメージをImageJで処理した。
【0355】
統計分析
データは、平均±SEMとして表され、GraphPadプリズム(バージョン9;La Jolla、CA)で分析を行った。処置群は、時点または用量にわたって、分散分析(ANOVA)検定によって分析した。単一群間の有意差は、スチューデントのt検定で決定した:P<0.05、**P<0.01および***P<0.001。
【0356】
結果
D-ALG1001中間体およびコンジュゲートの合成および特徴付け
高収率クリック反応を使用してALG-1001ペプチドをデンドリマープラットフォームに、ペプチドの完全性および活性を保存するのに適した穏やかな条件下で効率的に結合させた(図15)。最初にデンドリマー表面をヘキシン酸リンカーで修飾し、HNMRで修飾を確認しており、4.0ppmおよび1.7ppmで20個のプロトンが存在した。デンドリマー表面は最小限に修飾して、その中性に近い電荷と組織を浸透するその固有の能力とを保存した。
【0357】
生体内分布研究に関しては、デンドリマー表面をGABA-Bocリンカーでさらに修飾した。4.0ppm、1.7ppm、および1.2ppmでの追加のプロトンの存在によって修飾が裏付けられる。得られた中間体を脱保護し、遊離アミンを使用して、Cy5エステルとカップリングさせて蛍光標識デンドリマーを得た。
【0358】
ALG-1001ペプチドは、短いポリエチレングリコール(PEG)アジドリンカーがC末端に結合した状態で購入し、さらに調製することなく使用した。生体内分布研究に関しては、ペプチドのN末端も、追跡のためにCy3フルオロフォアで修飾した。銅(I)触媒アルキン-アジドクリック(CuAAC)反応を使用してALG-1001をデンドリマーに結合させ、HNMRスペクトルによってペプチドプロトンの存在が示されたことによりALG-1001の結合が確認された。
【0359】
酵素分解下でのin vitro安定性
ALG-1001と広範に作用するプロテアーゼであるプロテイナーゼKとを同時にインキュベートすることによって、ALG-1001の急速な分解をもたらし、ここでは約50%が30分で分解され、90%が90分で分解された。プロテイナーゼKと同時にインキュベートした後のD-ALGおよびALG-1001のHPLCクロマトグラフは、遊離ALG-1001ペプチドと関連するピークのAUCの減少を示す。D-ALGのトレースは、AUCにおけるごくわずかな減少を示す。分解した量をプロットした曲線は、設定した時点において得られた分析物のピークを、0分で得られた開始ピークに対して正規化することによって示される。約90%のALG-1001が90分までに分解され、一方、D-ALGではわずか10%しか分解されなかった。一方、ALG-1001ペプチドのデンドリマーコンジュゲーションは、場合によりデンドリマー担体からの立体障害に起因して、酵素分解に対する抵抗性をもたらした。およそ10%のD-ALGのみが90分で分解された。この酵素分解に対する抵抗性は、並外れて高い酵素濃度においてさえ、デンドリマーコンジュゲーションが分解経路から逃避するのを助けることによってインタクトなペプチドのin vivoでの循環時間を増加させることができることを示唆する。
【0360】
in vitroでの血管形成アッセイ
生理学的に適切なモデルにおける有効な用量を見出すために、血管形成のin vitroモデルを利用した。HUVEC細胞を、3つの異なる大きさの用量の勾配濃度のD-ALGおよびALG-1001で24時間処置した。次いで細胞をマトリゲル(登録商標)上に播種し、その後、細胞は自然に移動して血管様細管構造を形成した。イメージは、ImageJのAngiogenesis Analyzerプラグインで分析して、管ネットワークの結合性および完全性を測定する適切な測定基準を抽出した(図16)。
【0361】
1mMのD-ALGおよびALG-1001で処置された細胞は、管形成において撹乱が増加し、孤立したセグメントが増加し、管によって囲まれた領域またはメッシュが減少したことを示す。データによって、デンドリマーコンジュゲーションがネットワーク形成を撹乱させることにおけるALG-1001の有効性を高めることが示される。1mMのD-ALGで処置されたHUVECは、1mMのALG-1001で処置されたものと比較して、血管間の交差点(ジャンクション)が減少し、結合セグメントが減少し、孤立したセグメントが増加した。
【0362】
創傷治癒アッセイ
管形成アッセイによって測定された細胞形態および運動性変化に加えて、D-ALGおよびALG-1001で処置されたHUVECの増殖性活性を創傷治癒アッセイにおいて評価した。HUVECの単層をD-ALGおよびALG-1001で前処置し、続いて単層をピペットの先端でひっかいた。イメージを創傷時および損傷から24時間後に撮影した。未処置の細胞は、24時間後に最初の損傷から最大80%治癒し、同時にD-ALGおよびALG-1001で処置された細胞は最初の創傷領域の最大50%が治癒した。さらに、1mMの高用量のD-ALGで処置された細胞は最初の損傷の20%しか回復せず、HUVECの再生能力の低下が示唆された。傾向によって、D-ALGでの処置は、遊離ペプチドよりも有効であることが示される。
【0363】
内皮細胞活性化についてのウエスタンブロット
D-ALGおよびALG-1001が血管新生の機能に影響を与える機序を解明するために、細胞をD-ALGおよびALG-1001で24時間前処置した。次いで、細胞を高用量の外因性VEGFで5分間刺激し、その後試料を収集してウエスタンブロットを行った。試料は、総FAK、ホスホ-FAK(Y397)、ERK1/2、ホスホ-ERK1/2、およびシクロフィリンB(CycB)の発現に関してプローブし、CycBは内部対照として作用した。
【0364】
未処置のVEGF刺激対照と比較して、結果は、D-ALGおよびALG-1001で処置された細胞が、より低いレベルの総FAKおよびホスホ-FAKを発現したことを示す。ペプチドベースで1mMの高用量では、VEGF刺激対照と比較して、D-ALGおよびALG-1001によってホスホ-ERK1/2のリン酸化が約60%減少し、ホスホ-FAKが20%減少した。ERK1/2経路とFAK経路の両方が血管新生において重要な役割を果たし、その活性化は内皮細胞増殖および遊走を促進する(図17)。リン酸化タンパク質における減少傾向によって、VEGFに応答したこれらのネットワークの活性化における減弱が示唆される。
【0365】
経路活性化の調査に加えて、内皮細胞によるVEGF-Α発現に対するD-ALGおよびALG-1001の効果も研究した。VEGF-Αで処置された細胞は、未刺激対照と比較してVEGF-Αの産生が有意に増加した。VEGF-ΑおよびALG-1001またはD-ALGのいずれかと同時にインキュベートされた細胞は、対照と比較してVEGF産生において統計的に有意な増加を有さず、VEGFに応答した内皮活性化におけるわずかな減弱が示唆された。
【0366】
ネズミミクログリアにおける炎症性応答の減弱
血管新生における別の重要な因子はマクロファージおよびミクログリアであり、これらは血管新生プロセス中に炎症促進性および血管新生促進性のサイトカインを産生する。マクロファージ活性化に対するD-ALGおよびALG-1001の効果を解明するために、RAW264.7細胞を、LPS刺激の24時間前に高用量および低用量のD-ALGおよびALG-1001で前処置した。処置培地を最初に吸引してin vivo送達の一時的な性質をシミュレーションし、細胞をLPSで3時間活性化させた。
【0367】
LPSで活性化された細胞は、未刺激対照と比較すると、qPCRによって検出されたように炎症促進性サイトカインIL1βおよびTNFαの発現において堅固な増加を示した(図18A~18B)。D-ALG処置に伴って、低用量(100μm)と高用量(1mM)の両方において、IL1βの発現は約90%減少し、TNFαの発現は80%減少した。驚くべきことに、D-ALGで処置すると、TNFαのレベルは未処置対象と統計的に差がないレベルになる。比較において、ALG-1001はTNFαの発現を最も高い用量でわずか20%しか減少させず、ALG-1001単独処置ではIL1β産生に対する影響は観察されなかった。この差は、(1)デンドリマープラットフォームは、遊離薬物と比較して、治療薬を活性化マクロファージに送達する際にはるかにより効率的であることが実証される;(2)デンドリマー表面上に複数のリガンドを結合させると多価効果が可能になり、ペプチドと表面インテグリンとの相互作用が増加するという2つの潜在的な差に起因する場合がある。
【0368】
全身投与されたALG-1001およびD-ALGの生体内分布
蛍光標識Cy3-ALG-1001ペプチドおよび二重標識Cy5-デンドリマー-ALG-Cy3を0日目(CNV誘導と同じ日)に全身注射し、脈絡膜組織を設定した時点において収集した。共焦点顕微鏡を使用してALG-1001ペプチド(Cy3)、デンドリマー担体(Cy5)、CNV形成(イソレクチン)、およびマクロファージ(Iba1)の存在をモニターした。全身投与から最初の24時間以内に、遊離ALG-1001ペプチドはCNV領域に到達し、検出されたCy3シグナルから認められるように最大2日間残存した。比較において、D-ALGは、全身性注射後24時間以内にCNV領域に到達できるだけではなく、Cy5シグナルとCy3シグナルの両方が共局在して存在していることから、標的領域において投与後最大4日残存することができた。長期の滞留時間によって、デンドリマーコンジュゲーションが標的領域自体に薬物デポーとしての役割を与え、ペプチド治療薬の有効性を延長させることが示される。
【0369】
CNV形成のin vivoでの減弱
Micron III SLOスコープおよびレーザーアタッチメントを使用して、マウスにおいてCNV形成を誘導した。レーザーCNVモデルは、CNV生成とCNVプロセスの進行とにおけるその一貫性に起因して選択した。デンドリマーコンジュゲーションによってペプチドがCNVを減弱することを妨害されるかどうかを、CNV誘導後、まずALG-1001およびD-ALGを硝子体内注射することによって評価した。次いで眼を7日目に収集し、CNV領域を定量化した。D-ALGとALG-1001の両方が、硝子体内に投与された場合にCNVの形成を有意に阻害した。
【0370】
D-ALGの保護および標的化によって、侵襲性の低い投与経路が可能になった。0日目にレーザーを使用してCNVを誘導し、第1の用量(ペプチドベースで150μg)のALG-1001およびD-ALGを腹腔内で投与した。動物にペプチドベースで150μgを4日に1回投薬した。7日目および14日目に眼脈絡膜のフラットマウントをイメージングし、CNV領域はImageJを使用して計算した。
【0371】
未処置対照動物において、CNV誘導後、CNV領域は7日までに約13,000μmのサイズに到達し、14日目には約14,000μmに到達した(図19A~19B)。ALG-1001の全身注射によって7日目にCNV形成が堅固に減弱(約60%減少)したが、14日目にCNV領域は回復した。比較すると、D-ALGの全身投与はCNVの形成を7日目および14日目に約50%抑制し、14日目に統計的有意性に到達した。CNV減少におけるこの改善およびその持続効果はペプチドペイロードを保護し、標的CNV領域での滞留時間を長くするD-ALGの能力におそらく起因する。
【0372】
全身投与されたD-ALGはFAKおよびERK活性化を減弱させる
FAKおよびERK経路の活性化を評価するために、設定した時点において眼を眼球摘出し、脈絡膜組織を解剖して取り出した。組織を、T-per、プロテイナーゼ阻害剤、およびPhosStopの混合物にステンレス鋼ホモジネーションビーズとともに漬け、ホモジネートしてタンパク質抽出物を生成した。総FAK、総ERK、p-FAK(Y397)、およびp-44/42ERK ELISAキットを使用してFAKおよびERK経路における総タンパク質およびリン酸化タンパク質の量を定量化した。D-ALGで処置された動物では、総FAKおよびp-FAKタンパク質の減少傾向が、未処置対象と比較して7日と14日の両方において観察され、FAK経路の長期の減弱が示唆された(図20A~20B)。ALG-1001の処置も両方の時点にわたってp-FAKの減少をもたらした。しかし、ALG-1001処置動物における総FAKタンパク質のレベルは14日目に上昇した。D-ALG処置動物とALG-1001処置動物の両方がp44/42ERK産生の減少において類似の傾向をもたらし、同時に総ERKは処置群全体にわたって7日目に依然として比較的一定のままであった(図20C~20D)。14日目に、未処置動物と比較してD-ALGおよびALG-1001処置動物における総ERKにわずかな減少が認められた。
【0373】
炎症促進性および血管新生促進性のサイトカインの発現を比較するために、RNAを抽出し、qPCRを行って、VEGF-Α、TNFα、およびIL1βの相対的発現を決定した(図21A~21C)。D-ALG処置動物において、VEGF-Α産生は7日と14日の両方にわたって減少し、一方、ALG-1001処置動物は14日のみにVEGF-Α産生の低下を示した。炎症性サイトカインにおける傾向を比較すると、D-ALGは、7日のみにより低いTNFαレベルを有し、同時にALG-1001処置動物は両方の時点にわたってより低いTNFαレベルを有した。IL1β発現の傾向は、ALG-1001およびD-ALG処置動物に関しては14日目のみ減少した。
【0374】
考察
ALG-1001ペプチドのデンドリマーコンジュゲーションは、穏やかな条件下で高効率的な銅アシストクリック反応によって達成され、HPLCおよびNMRによって特徴付けられた。NMRピークの積分によって、6~7個のペプチドがデンドリマー担体1つごとに結合していることが計算された。酵素分解に対する抵抗性の増加は、広範に作用するプロテイナーゼとともにインキュベートした後、デンドリマーコンジュゲーションでin vitroで観察された。
【0375】
同等の高用量で、D-ALGコンジュゲートは遊離ペプチドよりも1桁良好に血管形成を阻害した。さらに、D-ALG1001は、内皮細胞におけるFAK経路の活性化だけではなく、LPS刺激ネズミマクロファージにおける炎症促進性サイトカインの発現も減弱させた。単一のデンドリマーに複数のペプチド部分を結合させることによって、インテグリンクラスターがより有効に係合し、この多価効果によってALG-1001の抗血管新生活性および抗炎症活性が促進される場合があることが仮定された。
【0376】
in vivoで全身投与された場合、D-ALGおよび遊離ALG-1001ペプチドの分布およびバイオアベイラビリティにおける差をより解明することができる。蛍光標識D-ALGは、腹腔内注射後最大4日CNV領域において検出可能であり;一方、ALG-1001シグナルは2日目以降検出することができなかった。標的領域での滞留時間の増加によって、D-ALGに関してはより頻繁ではない注射を可能にした。4日ごとのD-ALGの150μg(ペプチドベース)の腹腔内注射は、CNV領域において50%の減少をもたらした一方、遊離ALG-1001ペプチドは7日目にCNV形成を40%減少させ、後の時点で効力を失った(14日目に20%のCNV減少)。比較すると、小分子α5β1アンタゴニストであるJSM6427の埋込型ポンプを使用した連続的な全身性送達によって、40%のCNV領域減少をもたらした(N. Umeda, et al., Mol. Pharmacol., 2006, 69, 1820-1828)。同様に、Å6ペプチドおよびCGRPペプチドをそれぞれ調査したDasらおよびToriyamaらによる別個の研究において、毎日の注射は、CNV領域を30%減少させるために必要であった(H. J. Koh, et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 2004, 45, 635-640; Y. Toriyama, et al., Am. J. Pathol., 2015, 185, 1783-1794)。
【0377】
データによって、デンドリマーコンジュゲーションは、全身投与後、標的領域にインタクトな生物製剤を送達することができるだけではなく、その滞留時間および有効性を増加させることができることが実証された。結果的に、それほど厳格な投薬スケジュールはCNV形成を有効に制御するのに必要とされない。反応性マクロファージおよびミクログリアによって選択的に取り込まれるデンドリマーの固有の能力によって、より高い局所濃度を達成し、同時に血液からのデンドリマーコンジュゲートの急速なクリアランスが、標的としていない細胞および組織において不必要な曝露を減少させることが可能になる。ALG-1001ペプチドへのデンドリマーコンジュゲーションによって、ペプチドの活性が保存され、その安定性が増加し、標的組織におけるその滞留時間が延長され、硝子体内注射の代替の経路として全身投与が提供され、したがって治療法の利用能が世界的に拡大される。
【0378】
(実施例5)
グルタミンデンドリマーコンジュゲートの合成
図22はG1-グルコースの合成を示す。G1-グルコースの段階的な合成;ヘキサプロパギル化(hexapropagylated)コア1を、DMF:HO(1:1)中の古典的クリック試薬(CuAACクリック反応)、触媒量の硫酸銅五水和物(CuSO.5HO)およびアスコルビン酸ナトリウムの下、AB4構成ブロック(β-グルコース-PEG-アジド)、2で処置して、G1-グルコース-24-OAc、3を生成した。次いで化合物3を典型的なZemplen条件下で処置して(アセテート基を除去するために)所望の生成物4(G1-グルコース)を得た。
【0379】
図23は、Glu-G2デンドリマーの合成を示す。G2-グルコースの段階的な合成;G1-グルコースデンドリマー、4を水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散物)で、0℃で15分間処置し、次いで臭化プロパルギル(トルエン中の80%w/w溶液)で処置した。反応物を室温で8時間撹拌して化合物5を形成した。次に化合物5を、DMF:HO(1:1)中の古典的クリック試薬(CuAACクリック反応)、触媒量の硫酸銅五水和物(CuSO.5HO)およびアスコルビン酸ナトリウム下、AB4構成ブロック(β-グルコース-PEG-アジド)、2で処置して、G2-グルコース-96-OAc、6を生成した。次いで化合物6を典型的なZemplen条件下で反応させて、所望の生成物7(G2-グルコース)を得た。
【0380】
図24は、Cy5-Glu-G2-PEG-SPDPの合成を示す。Glu-G2デンドリマーをNaHおよび臭化プロパルギルで処置し、得られた生成物2をN-PEG-アミン、3とCUAACクリック条件を使用してさらに反応させて、化合物4を形成した。生成物4はCy5フルオロフォアで標識し、得られた中間体5をSPDPとコンジュゲートして機能化Cy5-Glu-G2-PEG-SPDP、6を得た。式における下付き数字はデンドリマーごとのアタッチメントの数を示す。
【0381】
図25は、Cy5-Glu-G2-siRNAコンジュゲートの合成を示す。siRNA、7を、DTTを使用してジチオール基を還元することによって活性化させ、得られた生成物8を活性化Cy5-Glu-G2-PEG-SPDP、6と反応させて最終生成物、Cy5-Glu-G2-siRNA、9を得た。
【0382】
Cy5-Glu-G2-siGFPのニューロン細胞への取り込みは、Cy5-Glu-G2-siGFP細胞のニューロン細胞への取り込みの共焦点顕微鏡イメージによって確認した。処置後24時間で、Cy5-Glu-G2-siRNAデンドリマーは細胞内に共局在する。
【0383】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、開示される発明が属する当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において引用される刊行物およびそこで引用される材料は、参照により具体的に組み込まれるものとする。
【0384】
当業者であれば、日常的な実験だけを使用して、本明細書において記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識または確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1
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【配列表】
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【国際調査報告】