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特表2024-534503形質転換されていないマクロファージ細胞株の生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】形質転換されていないマクロファージ細胞株の生成方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0786 20100101AFI20240912BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240912BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 5/077 20100101ALN20240912BHJP
   C07K 14/535 20060101ALN20240912BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
C12N5/0786
C12N5/10
A61K39/00 H
A61K35/15
A61P31/12
C12N5/077
C07K14/535
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517432
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2022076456
(87)【国際公開番号】W WO2023046873
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2113747.6
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2210102.6
(32)【優先日】2022-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511097577
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ プリマス
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェジェル、ジョルジ
(72)【発明者】
【氏名】ロパテッカ、ユスティナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA97X
4B065AA97Y
4B065AB01
4B065BD39
4B065CA44
4B065CA60
4C085AA03
4C085CC04
4C085DD24
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB33
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA12
4H045EA60
(57)【要約】
連続的に増殖し、形質転換されていないブタマクロファージを製造する方法であって、前記方法は、GM-CSFを添加した培地において、ブタから得られた臓器からの細胞調製物を培養し、これにより細胞集団を自己再生型の、形質転換されていないマクロファージに分化させることを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に増殖し、形質転換されていないブタマクロファージを製造する方法であって、GM-CSFを添加した培地において、ブタから得られた臓器からの細胞調製物を培養し、これにより細胞集団を自己再生型の、形質転換されていないマクロファージに分化させることを含む、方法。
【請求項2】
前記細胞調製物が、フィーダー細胞で培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィーダー細胞が、間葉フィーダー細胞を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マクロファージが、ブタマクロファージマーカーCD163及びCD172aの発現によって特徴付けられる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記マクロファージが、インテグリンαM(CD11b)及び/またはMHCクラスII細胞表面受容体(HLA-DR)の発現によって特徴付けられる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ブタ胎児の脾臓細胞に基づく、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項に記載の方法によって得られる、マクロファージ。
【請求項8】
医薬及び/または医学/医薬研究において使用するための、請求項7に記載のマクロファージ。
【請求項9】
ワクチン製造に使用するための、請求項7に記載のマクロファージ。
【請求項10】
GM-CSFに由来し、連続的に増殖し、かつ形質転換されていないブタマクロファージ細胞株。
【請求項11】
前記マクロファージが、ブタマクロファージマーカーCD163及びCD172aの発現によって特徴付けられる、請求項10に記載の細胞株。
【請求項12】
連続的に増殖し、形質転換されていないブタマクロファージシステム。
【請求項13】
ブタマクロファージマーカーCD163及びCD172aの発現によって特徴付けられる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
連続的に増殖し、形質転換されていないブタマクロファージを製造する方法であって、
マクロファージを分化させるためにGM-CSFでブタ細胞を培養すること、及び
浮遊マクロファージを選択し、それらをフィーダー細胞の培養物に移すこと
を含む、方法。
【請求項15】
tsA58で前記浮遊マクロファージを前記フィーダーの培養物から形質導入し、条件付きで不死化された細胞株を生成する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
連続的に増殖し、形質転換されていないブタマクロファージを製造する方法であって、
マクロファージを分化させるためにGM-CSFでブタ細胞を培養すること、及び
tsA58でマクロファージを形質導入し、条件付きで不死化された細胞株を生成すること
を含む、方法。
【請求項17】
連続的に増殖し、形質転換されていないブタマクロファージを製造する方法であって、
ブタ細胞を培養し、マクロファージを分化させる工程、及び
前記マクロファージを形質導入し、不死化された細胞株を生成する工程
を含む、方法。
【請求項18】
前記マクロファージが、tsA58を使用して形質導入される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アフリカ豚コレラウイルスの増殖を補助できる、自己再生型の、形質転換されていないマクロファージ細胞株。
【請求項20】
PLTA58と命名される、細胞株。
【請求項21】
連続的に増殖し、形質転換されていないブタマクロファージを製造する方法であって、GM-CSFを添加した培地において、ブタから得られた臓器からの細胞調製物を培養し、これにより細胞集団を自己再生型の、形質転換されていないマクロファージに分化させることを含む、方法。
【請求項22】
GM-CSFに依存し、自己再生型の、形質転換されていないブタマクロファージ細胞株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にマクロファージに関し、限定的ではないが、特に、GM-CSF依存し、自己再生型の、形質転換されていないブタマクロファージの確立に関する。
【背景技術】
【0002】
マクロファージは、細菌及び他の有害生物の検出、食作用及び破壊に関与する特殊な細胞である。また、これらは、T細胞に抗原を提示し、他の細胞を活性化する分子(サイトカインとして知られる)を放出することによって炎症を開始することもできる。
【0003】
マクロファージは、感染に対する防御において重要であり、in vitroでのこれらの細胞での研究は、宿主-病原体相互作用を理解し、ワクチン開発を補助するための鍵である。
【0004】
マクロファージは、それらの発達及び臓器分布に応じて、非常に明確な特性を有する。以前は、肺胞マクロファージ(AM)を含む全ての組織常駐マクロファージは、寿命が限られる骨髄造血幹細胞(HSC)由来の細胞であると考えられた。しかし、最近の研究では、ほとんどの組織常駐マクロファージは、機能的に異なる別個の胚性マクロファージ由来の系統を表現することが実証された(1)。ほとんどの組織常駐マクロファージは、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)に駆動される自己再生細胞であり、一方、AMは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に依存し、自律的に増殖する細胞である。AMは、マクロファージの中で独特の特性、例えば、病原体に対する感受性及び応答を有する(2)。
【0005】
形質転換された細胞株は初代細胞を正確に表現しない可能性があるため、初代細胞を使用してマクロファージを調べるのが最適である。マクロファージ病因研究は、主に、臓器から直接に単離された細胞を使用するか、または骨髄前駆細胞または末梢血単核細胞(PBMC)から、ex vivoで産生されたM-CSF由来のマクロファージを使用する(3)。ヒトPBMCからのGM-CSF由来マクロファージを使用して、ヒト肺AMをモデル化することができる(4)。それにもかかわらず、これらの方法では、細胞の寿命が限られ、入手可能性も制限され、遺伝子操作が難しく、ドナー間の変動が大きい。そのため、これらの方法の使用が制限される。
【0006】
マクロファージシステムを含むマウスモデルは、in vivoで組織及び実験へのアクセスが比較的容易であるため、ヒト及び動物の感染を研究するためにしばしば使用される。しかし、異なる哺乳動物種間のマクロファージ応答及び/または細胞内病原体増殖に関して有意な差異があるため、マウス研究の有用性が制限される(5)。
【0007】
最近、我々は、初代細胞を無制限の量で提供する胎児肝臓から、新規な、形質転換されていない、連続的に増殖するマウスマクロファージモデル(MPI細胞)を確立した。この堅牢なシステムは、in vitroで、様々な呼吸器病原体に対するマウスのAM特異的応答を忠実に再現する(6)。
【0008】
ブタにおけるマクロファージの研究は、非常に重要である(5)。ブタは、マクロファージ内で増殖し、かつ/またはマクロファージの機能を大きく変化させる様々なウイルス(例えば、アフリカ豚コレラウイルス[ASFV]、豚生殖・呼吸器症候群ウイルス[PRRSV]、及びA型インフルエンザウイルス[IAV])や細菌(例えば、Mycobacterium avium及びSalmonella spp.)の病原体に対して非常に感受性が高い(7~9)。これらの病原体のいくつかは、ブタからヒトに広がり、それらの中に重篤な疾患(例えば、IAV)を引き起こす(9)。さらに、気道の解剖学的構造や機能、疾患の感受性等、ブタとヒトの生理学はマウスよりもはるかに近いため、ブタモデルは、生物医学的な研究で使用されることが増えている(10)。
【0009】
M-CSFは、ブタマクロファージを単球から分化させるために使用することができ、LPSに刺激されたマクロファージの詳細な分析は、ブタとヒトのMCSF由来マクロファージとの間の密接な機能的関係を示した(5)。しかし、これらのMCSF由来マクロファージは、骨髄から新たに分化される必要があり、マウス及びヒトの細胞と同様に、それらの寿命が限られている。そのため、これらは、ウイルスワクチンの製造には適さない。適切な、堅牢な初代の、形質転換されていない連続的なブタマクロファージ細胞株は、研究及びワクチン産生のためには利用できない。
【0010】
このようなマクロファージ系統は、IAV、ASFV及びPRRSV等の重要な病原体を研究するために必要とされるであろう。
【0011】
ヒト及びブタは、IAVの天然宿主であり、この疾患は、これらの種の間の両方向に広がることができる(9)。IAVは、ヒトの主な死亡原因となる感染症である。AM及び先天性免疫応答は、IAV感染の病因において重要な役割を果たす(11)。ブタは、広範囲のIAV株に感受性があり、鳥とヒトの両方の IAV 株がブタで増殖されるため、これらの病原体の「混合容器」であると考えられている。また、同時感染は、最近の2009 年のパンデミックの原因となった三重(鳥-ヒト-ブタ) 再集合体 H1N1 株のような新しいウイルスを引き起こし得る。
【0012】
ASFV及びPRRSVは、経済的重要性の大きい病原体である。これらのウイルスは、マクロファージにおいてほぼ排他的に増殖するため、それらを効率よく研究し、またワクチンを開発するために、継続的に増殖する許容性マクロファージシステムを確立することが必要となる(7、8)。ASFVは、ブタにおいて、エボラのような壊滅的な出血症候群を引き起こす。感染した動物のほぼ全てが死亡し、2018年と2019年には約150万頭のブタと1万頭のイノシシがその原因で死亡した。ワクチンの欠如により疾患の制御が制限され、研究は、ウイルスがどのようにマクロファージと相互作用し、その機能を調節するかをより深く理解することに向けられている。これは重要である。なぜなら、抗インターフェロンウイルス遺伝子が欠失した潜在的なワクチン株は、ウイルスの増殖を制限し、正常なマクロファージでの効率的なワクチン生産を妨げる活発な先天的反応を誘発するからである(7)。
【0013】
PRRSVは、経済的に最も重要なブタ病原体の1つであり、豚肉生産国の大部分において流行し、肺AMは、自然感染におけるウイルスの主な標的である(8)。急速に多様化する2つの異なるPRRSV種があり、出現した高病原性株は、急速に広がり、壊滅的な影響を引き起こす。この疾患を抑えるために、ワクチン接種が重要であるが、利用可能なワクチンは、十分に防御できず、そして、より安全で免疫原性の高いワクチンを開発する必要性が高く、それには適切なin vitroシステムが非常に重要である。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、GM-CSFに由来し、形質転換されていない連続的なブタマクロファージシステムの確立に関する。
【0015】
連続的に増殖し、形質転換されていないブタマクロファージを製造する方法では、GM-CSFを添加した培地において、ブタから得られた臓器からの細胞調製物を培養し、これにより細胞集団を自己再生型の、形質転換されていないマクロファージに分化させることが含まれる。
【0016】
本発明の一態様は、連続的に増殖し、形質転換されていないブタマクロファージを製造するための方法を提供し、該方法は、GM-CSFを添加した培地において、ブタから得られた臓器からの細胞調製物を培養し、それにより細胞集団を自己再生型の、形質転換していないマクロファージに分化させることを含む。
【0017】
前記細胞調製物は、間葉フィーダー細胞等のフィーダー細胞を用いて培養してもよい。
【0018】
本方法を使用して調製されたマクロファージは、ブタマクロファージマーカーCD163及びCD172aの発現によって特徴付けられ得る。
【0019】
前記細胞調製物は、ブタ胎児の脾臓細胞に基づいてもよい。
【0020】
本発明はまた、本明細書に記載及び/または定義される方法によって得られるか、または得られるマクロファージを提供する。
【0021】
本発明はまた、医薬及び/または医学/医薬研究において使用するための、本明細書に記載される方法によって得られるマクロファージを提供する。
【0022】
本発明はまた、ワクチンの製造において使用するための、本明細書に記載される方法によって得られるマクロファージを提供する。
【0023】
本発明はまた、GM-CSFに由来し、連続的に増殖し、かつ形質転換されていないブタマクロファージ細胞株を提供する。
【0024】
前記マクロファージは、ブタマクロファージマーカーCD163及びCD172aの発現によって特徴付けられ得る。
【0025】
本発明はまた、連続的に増殖し、かつ形質転換されていないブタマクロファージシステムを提供する。
【0026】
前記システムは、ブタマクロファージマーカーCD163及びCD172aの発現によって特徴付けられ得る。
【0027】
本発明のいくつかの態様及び実施形態は、GM-CSF及び適切な間葉フィーダー細胞を用いて、連続的に複製し、かつ形質転換されていないマクロファージをブタの造血器官から得ることができるという原理または観察に基づいている。
【0028】
前記システムに関連して以下のデータが得られている:
【0029】
1. マクロファージを分化させるために、ブタ胎児の脾臓細胞を20 μg/mlのGM-CSFで培養した。定期的に培地を交換してGM-CSFを補充した後に、2つの異なる細胞型を含む培養物が生成された。平らな間葉細胞または線維芽細胞のような、その上に丸いゆるく付着したマクロファージのような細胞が塊となって増殖し、後者の細胞の一部が培地中にも浮遊していた。GM-CSFがないと脾臓細胞培養では生存細胞が生成されないため、両方の細胞の発生は GM-CSFを必要とした。これらの培養物は、定期的に培地を交換すれば、少なくとも1年間維持することができる。
【0030】
2. 浮遊マクロファージ様細胞をGM-CSFと別々に培養することを試みた。これらの細胞は数週間生存したが、さらに増殖しなかった。分離した浮遊細胞もMCSFまたはGM-CSF及びMCSFで培養した。これらのMCSF培養物は、最初に強力な細胞増殖を示したが、その1週間後に、細胞は増殖を停止した。
【0031】
3. 浮遊マクロファージ様細胞は、ブタ胎生肺線維芽細胞の培養物に移され、脾臓由来線維芽細胞を含む元の培養物と同様に、肺線維芽細胞フィーダー細胞の上に付着して増殖した。これらは、塊となって増殖し、多くは培地中に浮遊していた。これらの培養物は、定期的に培地を交換しながら1年以上維持された。
【0032】
4. 肺線維芽細胞フィーダー培養物からの浮遊細胞は、フィーダー細胞ではなく、GM-CSFで培養されている。これらの細胞は、長期間生存するが、さらに大きく増殖しない。
【0033】
5. フィーダーを含有する培養物から単離された浮遊細胞は、ブタマクロファージマーカーCD163及びCD172aを強力に発現する。
【0034】
6. フィーダーを含有する培養物から単離された浮遊マクロファージは、細菌内毒素(LPS)刺激に対する強力なサイトカイン応答を生成する。
【0035】
7. フィーダーを含有する培養物から単離された浮遊マクロファージは、ブタ GM-CSFを含むマイトマイシンで処理されたSTO線維芽細胞株フィーダー細胞上で少なくとも4継代連続に継代することができる。それらは、継続的に増殖し、約3~4日で倍増する。
【0036】
8. GM-CSFでブタ胎児骨髄を培養すると、間葉/線維芽細胞様の付着細胞及び浮遊マクロファージ様の細胞を含む脾臓由来のものと同様の培養物が生成する。 前記浮遊細胞は、マイトマイシンで処理されたSTO線維芽細胞に移されると、GM-CSFの存在下で増殖するが、脾臓からの類似の細胞よりもゆっくりと増殖する。
【0037】
9. フィーダー培養物からの単離された浮遊マクロファージは、SV40大型T抗原tsA58温度感受性変異体を発現する第2世代レンチウイルスで形質導入されている(Jat, P.S. & Sharp, P. A. (1989) Mol. Cell. Biol. 9, 1672-1681)。前記SV40大型T抗原のtsA58変異体は、熱感受性があり、条件付きで不死化された細胞株の生成に使用することができる(Jat, P.S.& Sharp, P. A. (1989) Mol. Cell. Biol. 9, 1672-1681)。得られた細胞(PLTA58細胞として知られる)は、フィーダー細胞を必要とせずに強力に増殖する。これらのデータは、以前の、竹内らによるFront Vet Sci, 4:132 (2017年8月21日)中のデータとの大きな違いを示す。それによると、ブタ腎臓由来のマクロファージの無条件の細胞不死化は、テロメラーゼタンパク質と野生型SV40大型T抗原との組み合わせ発現によってのみ達成できる。
【0038】
10. PLTA58細胞は、フィーダー細胞なしでも継続的に増殖する。我々は、2021年12月にそれを確立した以来、少なくとも20継代を実施している。我々は、1 週間の培養で、少なくとも1,000万個の細胞をT75培養フラスコから定期的に得ることができる。我々は、これらの細胞を凍結し、解凍後にこれらを再び効率よく培養することができる。
【0039】
11. PLTA58細胞は、因子に依存し、それらの増殖はGMCSF及び/またはMCSFによって増強される。
【0040】
12. PLTA58細胞は、ブタマクロファージマーカーを発現する。
【0041】
13. PLTA58細胞は、LPS(TLR4リガンド)、Fsl-1(TLR2リガンド)、ポリI:C (TLR3リガンド)、及びR848(TLR7/8リガンド)等の種々の自然応答に誘発されるリガンドで効率よく刺激することができる。
【0042】
14. PLTA58細胞は、アフリカ豚コレラウイルスの増殖を補助する。
【0043】
本発明の異なる態様及び実施形態は、別々にまたは一緒に使用されてもよい。
【0044】
本発明のさらに具体的かつ好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、必要に応じて独立請求項の特徴と組み合わせられてもよく、また、請求項に明示的に記載されたもの以外のもので組み合わせられてもよい。
【0045】
添付の図面において実施例で本発明をより詳細に示して記載する。
【0046】
例示的な実施形態は、当業者が本明細書に記載されるシステム及びプロセスを具現化し、実装できるように十分に詳しく記載されている。実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載される実施例に限定されるものとして解釈されるべきではないことを理解することが重要である。
【0047】
従って、実施形態は、様々な方法で改変され、様々な代替形態をとることができるが、その特定の実施形態が図面に示され、例として以下に詳細に記載される。 開示された特定の形態に限定する意図はない。逆に、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての改変、等価物及び代替物が含まれるべきである。
【0048】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当技術分野で慣例的に解釈されるものとする。さらに、一般的に使用される用語は、本明細書で明示的に定義されない限り、関連技術分野で慣例的に解釈されるべきであり、理想化された意味または過度に形式的な意味ではないことも理解されるであろう。
【0049】
本明細書では、上方、下方、半径方向、軸方向等の全ての方向に関する用語は、図面に関して使用されており、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1:継続的に増殖し、ブタGMCSFに由来する細胞は、ブタマクロファージのマーカー特性を発現する。
【0051】
表面マーカーは、スカベンジャー受容体 CD163及びシグナル調節タンパク質αCD172aに対する抗体を使用したFACSで、ブタマクロファージ上で検出された。ヒストグラムは、染色されていない細胞(青色)及び染色された細胞(赤色)を示す。
【0052】
図2:滑らかな形態及び粗い形態のLPSに応答して、ブタマクロファージが産生するTNF-αのレベルは、ヒトマクロファージのレベルと同様である。
【0053】
図3:ヒトGMDM及びブタマクロファージにおけるTNF-α応答は、ウシ胎児血清(FBS)に存在するLBPに大きく依存する。細胞をS-LPS(100 ng/ml)及びR-LPS (100 ng/ml)で刺激した。感染後16時間で上清を収集し、ELISAによりTNF-αを測定した。バーは、3つのサンプルからの平均±S.E.M.を表す。
【0054】
図4:LPSの反復刺激に対するそれぞれMPI及びブタのマクロファージにおけるIL-6及びTNF-αの産生の減少(LPS耐性)。(a)細胞を刺激せず(N)、または50 ng/ml S-LPSで16時間刺激し(T)、PBSで洗浄し、培地(N)または50 ng/ml LPS(N+LまたはT+L)を24時間補充した。矢印はLPSによる刺激を示す。ELISAにより、MPI(b)及びブタマクロファージ(c)からの上清を分析した。
【0055】
図5:様々な条件下で培養したブタマクロファージにおけるS-LPS及びIAVに対する同等のTNF-αサイトカイン産生。ブタ細胞を、MOI 3のA型インフルエンザウイルス株Perth/16/09及びS-LPS(100 ng/ml)で刺激した。感染後16時間で上清を収集し、ELISAによりTNF-αを測定した。n=1。
【0056】
GM-CSFを含む肺線維芽細胞フィーダー培養物から得た後のM-CSF、GM-CSF及びGM-CSF/M-CSFで培養したブタマクロファージの応答間の類似性。
【0057】
新たに開発されたブタマクロファージモデルに関する最初の質問セットは、異なる条件で増殖する細胞を比較することを目的とした。これらのデータは、これらのブタマクロファージがフィーダー細胞なしでも、使用される増殖因子で培養すると、効率よく刺激できることを示している。
【0058】
図6:ブタマクロファージは、リポ多糖でチャレンジした後に初期のTNF-α応答を引き起こす。ブタ細胞を、MOI 3のIAV株Perth/16/09及びS-LPS(100 ng/ml)で刺激した。感染後16時間で上清を収集し、ELISAによりTNF-αを測定した。n=1。
【0059】
S-LPS及びIAVで刺激されたブタGM-CSFに由来するマクロファージにおけるTNF-αサイトカイン産生は、時間に依存する。
【0060】
次の実験は、様々な時点でS-LPS及びIAVでチャレンジしたブタマクロファージにおける有意な炎症誘発性サイトカインの産生に関するものであった。図6は、IAVではなく、S-LPSで刺激されたブタマクロファージにおける初期のTNF-α産生を示す。また、前記IAV応答は、エンドトキシンによって誘発される応答と比較してより低いである。
【0061】
図7:RFPを発現するレンチウイルスで形質導入されたブタ及びMPIマクロファージ。これらのデータは、ブタマクロファージが、マウスMPIマクロファージと同様に、レンチウイルスベクターによる組換えタンパク質発現の標的として効率よく使用できることを実証している。
【0062】
図8:フィーダー細胞から分離したGM-CSFを用いたブタマクロファージの長期培養。通常サイズの細胞から、マクロファージに特徴的な多核巨細胞が見られる。
【0063】
図9:肺線維芽細胞フィーダー細胞の上で増殖するブタマクロファージ細胞(A)及び移された、フィーダーなしで分離された浮遊マクロファージ(B)。
【0064】
図10:STO線維芽細胞株の上で増殖されたブタマクロファージ。
【0065】
図11:増殖因子(GMCSF及び/またはMCSF)を含むまたは含まない培養物によって示されるPLTA58細胞の因子依存性。
【0066】
図12:不死化ブタ細胞に関するFACSデータ。
【0067】
PLTA58細胞は、典型的なブタマクロファージマーカーを発現する。
【0068】
図13:細菌リポ多糖(LPS)で刺激されたPLTA58細胞。
【0069】
図14:ポリI:C、Fsl-1またはR848で刺激されたPLTA58細胞。
【0070】
添付の図面を参照して本発明の例示的な実施形態を本明細書に詳細に開示したが、理解されるように、本発明は、示された精確な実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者であれば、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができる。
参考文献

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【国際調査報告】