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特表2024-534504混合イオン形態の糖クロマトグラフィー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】混合イオン形態の糖クロマトグラフィー
(51)【国際特許分類】
   C13K 13/00 20060101AFI20240912BHJP
   C13K 1/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C13K13/00
C13K1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517442
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 US2022043501
(87)【国際公開番号】W WO2023043819
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/118757
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523031091
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス 8 エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DDP SPECIALTY ELECTRONIC MATERIALS US 8,LLC
(71)【出願人】
【識別番号】524082465
【氏名又は名称】デュポン テクノロジー (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】マーティン コリン
(72)【発明者】
【氏名】ホプキンス アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】チュー シャンヤン
(57)【要約】
糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせの水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂粒子の集合体と接触させることによる、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせを分離するための方法であって、粒子のそれぞれが、樹脂粒子中の全金属の重量パーセントとして35~85%のカルシウムイオンと15~65%のアルカリ金属イオンとを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせを分離するための方法であって、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせの水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂粒子の集合体と接触させることを含み、前記強酸性陽イオン交換樹脂粒子のそれぞれが、前記樹脂粒子中の全金属の重量パーセントとして35~85%のカルシウムイオンと15~65%のアルカリ金属イオンとを含む、方法。
【請求項2】
前記糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせが、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせの総重量を基準として少なくとも60重量%の単糖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強酸性陽イオン交換樹脂がゲル樹脂である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記樹脂粒子の集合体が150μm~500μmの調和平均径を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記単糖が、単糖の総重量を基準として少なくとも50%のグルコース、フルクトース、アルロース、又はそれらの混合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記強酸性陽イオン交換樹脂粒子のそれぞれが、前記樹脂粒子中の全金属の重量パーセントとして40~80%のカルシウムイオンと20~60%のアルカリ金属イオンとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記強酸性陽イオン交換樹脂がゲル樹脂である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記樹脂粒子の集合体が150μm~500μmの調和平均径を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂粒子の集合体が1.3以下の均等係数を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせが、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせの総重量を基準として少なくとも60重量%の単糖を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記単糖が、単糖の総重量を基準として少なくとも50%のグルコース、フルクトース、アルロース、又はそれらの混合物を含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
糖又は糖アルコールを精製するプロセスでは、金属対イオンを有する陽イオン交換樹脂がクロマトグラフィー分離のために使用されてきた。例えば、国際公開第2020/057555号には、カルシウム、ナトリウム、カリウム、又はリチウムである対イオンを有する陽イオン交換樹脂を使用した、アルロースのクロマトグラフィー分離が開示されている。クロマトグラフィー分離のための、より効率的な方法が望まれるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
下記は、本発明の説明である。
【0003】
糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせを分離するための方法であって、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせの水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂粒子の集合体と接触させることを含み、前記強酸性陽イオン交換樹脂粒子のそれぞれが、樹脂粒子中の全金属の重量パーセントとして35~85%のカルシウムイオンと15~65%のアルカリ金属イオンとを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0004】
下記は、本発明の詳細な説明である。
【0005】
本明細書で使用される場合、下記の用語は、別途文脈に明確に示さない限り、指定された定義を有する。
【0006】
本明細書で使用される場合、「糖」は、単糖、二糖、オリゴ糖、又は多糖である化合物を指す。単糖は、より簡単な糖化合物に加水分解することができない糖化合物である。単糖には、三炭糖、四炭糖、五炭糖、六炭糖、及び七炭糖が含まれる。二糖は、2個の単糖がグリコシド結合によって連結されたときに形成される分子である。「糖アルコール」は糖の還元型であり、式Cn2n+2nを有する。
【0007】
「樹脂」は、本明細書で使用される場合、「ポリマー」と同意語である。互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成し得る分子は、本明細書では、「モノマー」として知られる。そのように形成された繰り返し単位は、本明細書では、モノマーの「重合した単位」として知られる。
【0008】
ビニルモノマーは、フリーラジカル重合プロセスに関与することができる非芳香族炭素-炭素二重結合を有する。ビニルモノマーは、2,000未満の分子量を有する。ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体及びそれらの混合物が挙げられる。エチレン誘導体としては、例えば酢酸ビニル及びアクリルモノマーの無置換型及び置換型が挙げられる。
【0009】
「置換」は、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基、第四級アンモニウム基、他の官能基及びそれらの組み合わせなどの少なくとも1個の結合した化学基を有することを意味する。
【0010】
一官能性ビニルモノマーは、1分子当たり正確に1個の重合性炭素-炭素二重結合を有する。多官能性ビニルモノマーは、1分子当たり2個以上の重合性炭素-炭素二重結合を有する。
【0011】
本明細書では、ビニル芳香族モノマーは、1つ以上の芳香環を含むビニルモノマーである。ポリマーの重量を基準として、重合した単位の90重量%以上が1種以上のビニルモノマーの重合した単位であるポリマーがビニルポリマーである。ビニル芳香族ポリマーは、ポリマーの重量を基準として、重合した単位の50重量%以上が1種以上のビニル芳香族モノマーの重合した単位であるポリマーである。ビニル芳香族ポリマーに結合する1つ以上の置換基(例えば、アミノ基又はメチレン架橋基など)が得られる1つ以上の化学反応を受けたビニル芳香族ポリマーは、本明細書では、依然としてビニル芳香族ポリマーであるとみなされる。ビニル芳香族ポリマーの重合した単位に結合する1つ以上の置換基(例えば、アミノ基又はメチレン架橋基など)が得られる1つ以上の化学反応を重合後に受けたビニル芳香族ポリマーの重合した単位は、本明細書では、依然としてビニル芳香族ポリマーの重合した単位であるとみなされる。
【0012】
ポリマー鎖が十分な分岐点を有しており、ポリマーがいずれの溶媒にも溶解しない場合、本明細書では、樹脂は架橋されているとみなされる。本明細書においてポリマーが溶媒に溶解しないとされる場合、それは、25℃の100グラムの溶媒に0.1グラム未満の樹脂が溶解することを意味する。
【0013】
樹脂粒子の集合体は、粒子の直径で特徴付けることができる。球形ではない粒子は、その粒子と同じ容積を有する球の直径に等しい直径を有すると考えられる。粒子サイズは、動的画像粒子分析計、例えばFlowCam(商標)Macro分析計を使用して決定され、本明細書では調和平均径(HMS)として記載される平均値である。樹脂粒子の集合体の有用な特性評価は、D60であり、これは、次の特性を有する直径である:樹脂粒子の60体積%がD60未満の直径を有し、樹脂粒子の40体積%がD60以上の直径を有する。同様に、樹脂粒子の10体積%がD10未満の直径を有し、樹脂粒子の90体積%がD10以上の直径を有する。均等係数(UC)は、D60をD10で割ることによって求められる。調和平均径(HMD)は、次式:
【数1】
(式中、iは、個々の粒子にわたっての添字であり;diは、各個々の粒子の直径であり;Nは、粒子の総数である)
によって定義される。
【0014】
樹脂粒子の集合体の保水容量(WRC)は、バルク液体水が除去されたときに樹脂粒子に付着している水分子の尺度である。WRCは、バルク液体水を樹脂粒子の集合体から除去し、樹脂粒子の集合体を、100%の湿度を有する空気と室温(およそ23℃)で平衡化して脱水湿潤樹脂を生成することによって測定される。脱水湿潤樹脂は、秤量され、乾燥させられ、再び秤量される。WRCは、百分率として表される、初期重量で割られた減量である。
【0015】
樹脂粒子の集合体の表面積は、窒素ガスを使用するブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)法を用いて調べられる。窒素ガスを使ったBET法はまた、樹脂粒子の集合体の全細孔容積及び平均細孔径を特徴付けるためにも用いられる。
【0016】
本発明の樹脂粒子は、1種以上のポリマーを含む。ポリマーは、好ましくは芳香環を含む。好ましいポリマーは、ビニルポリマーであり、ビニル芳香族ポリマーがより好ましい。好ましくは、全てのビニル芳香族モノマーの重合した単位の総重量は、ポリマーの重量に対して少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも96%であり;好ましくは98%以下、好ましくは96%以下、好ましくは94%以下である。
【0017】
好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルキルスチレン、及び多官能性ビニル芳香族モノマーである。アルキルスチレンの中でも、好ましいのはアルキル基が1~4個の炭素原子を有するものであり、より好ましいのはエチルビニルベンゼンである。多官能性ビニル芳香族モノマーの中でも、ジビニルベンゼンが好ましい。好ましくは、ポリマーは、ポリマーの重量を基準として少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも4重量%の量で多官能性ビニル芳香族モノマーの重合した単位を含む。好ましくは、このポリマーは、ポリマーの重量を基準として8重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは6重量%以下の量で多官能性ビニル芳香族モノマーの重合した単位を含む。
【0018】
好ましくは、ポリマーは、炭素、水素、及び窒素以外の任意の原子を含有する基を全く持たないか、或いは樹脂粒子の集合体の1リットル当たり0.01当量(当量/L)以下;より好ましくは0.005当量/L以下;より好ましくは0.002当量/L以下の炭素、水素、及び窒素以外の1つ以上の原子を含有する基の総量を有する。
【0019】
好ましくは、強酸性陽イオン交換樹脂粒子の集合体中の各樹脂粒子は、樹脂粒子中の全金属の重量パーセントとして、少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%;好ましくは80%以下、好ましくは75%以下のカルシウムを含む。好ましくは、強酸性陽イオン交換樹脂粒子の集合体中の各樹脂粒子は、樹脂粒子中の全金属の重量パーセントとして、少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%;好ましくは60%以下、好ましくは55%以下、好ましくは50%以下、好ましくは45%以下、好ましくは40%以下のアルカリ金属陽イオンを含む。好ましくは、アルカリ金属陽イオンはナトリウム、カリウム、又はそれらの組み合わせである。本発明の樹脂粒子の集合体は、他の樹脂粒子と一緒に使用されてもよいが、好ましくは、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせを分離するために有用な粒子床は、乾燥樹脂粒子の総重量を基準として、本発明の粒子以外の粒子を30%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10%以下、好ましくは5%以下含む。
【0020】
本発明の樹脂粒子は、好ましくは、少なくとも40%、好ましくは50%以上の保水容量を有する。本発明の樹脂粒子は、好ましくは、75%以下、好ましくは70%以下の保水容量を有する。好ましくは、樹脂粒子は、少なくとも1eq/Lの交換容量を有する。
【0021】
好ましくは、樹脂粒子の集合体は、150μm~700μm;好ましくは少なくとも190μm、好ましくは少なくとも250μm;好ましくは500μm以下、好ましくは450μm以下、好ましくは375μm以下の調和平均径を有する。好ましくは、樹脂粒子の集合体は、1.4以下、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、好ましくは1.15以下の均等係数を有する。
【0022】
好ましくは、水溶液中の糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせの総量は、水溶液の重量を基準として10重量%以上、好ましくは20重量%以上、好ましくは25重量%以上である。好ましくは、水溶液中の糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせの総量は、水溶液の重量を基準として75重量%以下、好ましくは60重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0023】
好ましくは、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせは、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせの総重量を基準として少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の単糖を含む。好ましくは、単糖はペントース又はヘキソースである。好ましくは、単糖は、単糖の総重量を基準として、グルコース、フルクトース、アルロース、又はそれらの混合物を少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%含む。好ましくは、単糖は、単糖の総重量を基準として、フルクトース及びアルロースを少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%含む。
【0024】
水溶液は、任意の方法によって本発明の樹脂粒子の集合体と接触させられてもよい。好ましくは、水溶液が樹脂粒子の集合体と接触させられた後に、溶液は次に、樹脂粒子の集合体から分離される。
【0025】
好ましい方法は、水溶液を樹脂粒子の集合体の固定床に通すことである。固定床は、水溶液が入口を通って入り、樹脂粒子の集合体に接触し、出口を通って出ることを可能にしながら、樹脂粒子の集合体を所定の位置に保持する容器中に保持される。好適な容器は、クロマトグラフィーカラムである。この方法が用いられる場合、固定床を通しての水溶液の流量は、1時間当たりのベッドボリューム(BV/時)で特徴付けられ、ここで、ベッドボリューム(BV)は、固定床中の樹脂の容積である。好ましい流量は、0.1BV/時以上;より好ましくは0.5BV/時以上である。好ましい流量は、10BV/時以下、より好ましくは5BV/時以下である。好ましくは、水溶液は、擬似移動床(SMB)構成、好ましくは逐次式擬似移動床(SSMB)の構成で樹脂粒子の集合体と接触する(例えば米国特許第9,150,816号明細書を参照)。
【実施例
【0026】
下記は、本発明の実施例である。操作は、特に明記される場合を除いて室温(およそ23℃)で行った。
【0027】
樹脂の調製及び変換:この作業で使用した樹脂(全てDuPontから入手したAmberLite CR99 310樹脂)は、以下の通りに調製した。「0%Ca」及び「100%Ca」の樹脂サンプルは、それぞれAmberLite CR99K/310及びAmberLite CR99Ca/310としてDuPontから直接入手した。混合イオン形態の樹脂は、AmberLite CR99K/310を様々な量の塩化カルシウム溶液で部分的に変換するか、又はAmberLite CR99Ca/310を様々な量の塩化カリウムで部分的に変換することによって調製した。望まれるイオン変換の程度に応じて、異なる量の塩を使用した。例えば、5%Caの樹脂を調製するために、AmberLite CR99K/310樹脂1リットルあたり4.66グラムの塩化カルシウムを使用した。イオン形態の変換は、1リットルの脱イオン水の中で600mLの樹脂を撹拌し、撹拌しながら適切な塩を徐々に添加することによってバッチ式で行った。塩を添加した後、混合物をさらに30分間撹拌した。その後、樹脂をデカンテーションし、脱イオン水で数回洗浄して残留塩を除去した。達成された変換の程度は、以下で説明するEDTA滴定を使用して測定した。
【0028】
樹脂の滴定:試験する樹脂を湿った砂又は「ウェットケーキ」の稠度になるまで乾燥し、数グラムの樹脂ウェットケーキを、110℃及び25~30in.Hgの真空度に設定した真空オーブン内の小さな容器に入れた。樹脂の重量が一定になるまで、樹脂を真空オーブン中で少なくとも4時間乾燥した。樹脂を真空オーブンから取り出し、まだ温かいうちに乾燥した密閉ガラス容器に移し、滴定の前に保管した。
【0029】
樹脂のカルシウムレベルを決定するための滴定を、以下の通りに行った:約1グラムの乾燥樹脂を秤量し、150mLの脱イオン水と磁気撹拌子とが入っている500mLの三角フラスコに移した。次に、50mLの1.0M塩化ナトリウム溶液、10mLのpH10の0.5Mホウ酸緩衝液、及び20滴の指示薬溶液(200プルーフのエタノール中0.5重量%のEriochrome Black T)を、この記載の順序で樹脂フラスコに添加した。撹拌プレート上の磁気撹拌子を使用してフラスコを穏やかに撹拌する。EDTA溶液(900mLの脱イオン水中に36.5グラムのEDTA四ナトリウム塩)を樹脂サンプルの滴定に使用する。この溶液は、樹脂サンプルの滴定前に、既知の量のカルシウム塩に標準化される。
【0030】
カラム充填方法:樹脂のカラムを、以下の通りにパルス試験用のカラムに充填した:約1リットルの脱イオン水中600mLの樹脂のスラリーを調製した。カラムの容積の25%が樹脂で満たされるまでこのスラリーをカラムの上部に注ぎ入れた。樹脂の沈降を助けるために、柔らかいハンマーを使用してカラムを叩く。次いで、部分的に充填した床に15BV/時で脱イオン水を10分間流し、樹脂を圧縮する。圧縮後、カラム容積の次の25%に樹脂を充填し、圧縮手順を繰り返す。このプロセスは、カラム全体が充填されるまで仕上げられる。層状樹脂の実験の場合、カラムの下部75%にはAmberLite CR99Ca/310樹脂(「100%Ca」)を充填し、カラムの上部25%にはAmberLite CR99K/310樹脂(「0%Ca」)を充填した。この層の重ね合わせは、2つの異なる樹脂層が混じり合わないように注意深く行った。
【0031】
パルス試験:充填した樹脂カラム(体積500~524mL)を、樹脂カラム周囲のジャケットを通して湯を循環させる再循環浴を使用して60℃に加熱した。脱イオン水をポンプで2.0~2.5BV/時で樹脂床に通した。パルス試験を開始するために、0.03~0.05BV(15.0~26.2mL)の糖サンプルをサンプルループが取り付けられたインジェクションバルブにロードした。次に、インジェクションバルブを「インジェクト」の位置に切り替え、糖サンプルを含むサンプルループをカラム入口流路にインラインで配置する。糖サンプルは樹脂床を下って移動し、固定樹脂相に対する個々の親和性に基づいて異なる糖が分離される。異なる糖が溶出するのに伴い、異なる時点又はフラクションでフラクションコレクターに捕捉される。その後、これらのフラクションをHPLCで分析し、糖含有量を測定する。
【0032】
HPLC分析:糖サンプルは、Bio-Rad Aminex HPX-87Cカラムを用いたAgilent Infinity II 1260HPLCシステムで、80℃、流量0.4mL/分で分析した。試験ごとに10μLの糖サンプルを注入し、Agilent G7162A屈折率検出器を使用して検出した。
【0033】
SSMB試験:SMBには様々な工業上のバリエーションが存在する。この事例では逐次的SMB(SSMB)を使用した。SSMBは、SMBモードの連続的な「供給液」/「水」と「ラフィネート」/「エキストラクト」をサブステップに分割する。試験は、55~60℃に維持されたパイロットシステムでSSMB8(ジャケット付き樹脂カラム8本、樹脂量500ml/カラム)モードで実施した。運転中、1サイクルは8ステップから構成される。各ステップは3つのサブステップからなる:サブステップaは、流体が系に出入りしないループステップであり;サブステップbは、「溶離液」が「エキストラクト」に置き代わって入る一方で「供給液」が「ラフィネート1」に置き代わって入るステップであり;サブステップcは、「溶離液」が入って「ラフィネート2」を生成するステップである。全体の8つのステップは、8つのカラムサイクルを通して逐次的に適用されるこれら3つのサブステップそれぞれから単純に構成される。ステップ1bでは、「溶離液」がカラム1に入る一方で「供給液」がカラム5に入り;ステップ2bでは、「溶離液」がカラム2に入る一方で「供給液」がカラム6に入り;以降同様である。よく分離するためには、全てのパラメータを最適化する必要がある。この事例では、供給液濃度は56brixであった。供給液負荷比は0.056~0.059(乾燥した目的の糖のkg/樹脂のリットル/時)であった。水/供給液比は、供給液1リットル当たり2.1リットルの水(希釈剤)であった。液体は2.6m/時の線流量でSMB内を循環(リサイクル)させた。マスバランスのサンプルは、調整後にパイロットシステムが定常状態に達したときに採取した。通常、平衡化には5~6サイクルが必要であった。サンプルはループサブステップ中に採取した。ループステップが終了する前に、系を一時停止する。次いで、カラムの底部にあるT字連結部を介してカラムごとに少量のサンプルを回収すると同時に、カラムのヘッドからコントロールパネルを介して流入水で置換した。8本のカラムそれぞれからそれぞれ5~10mlのサンプルを回収するのに約60秒要した。サンプル採取後、プロセスを再開した。2つの容器を使用して、全ての「エキストラクト」と「ラフィネート」をそれぞれ回収した。合計11個のサンプル、すなわち合わせて、カラムからの8個に加えて、「供給液」、「エキストラクト」、「ラフィネート」の3個を回収した。プロット内のカラム配列はゾーンに基づいて配置された。すなわち、カラム1と2は常にゾーン1のカラムを表す。
【0034】
【表1】
【0035】
異なる混合イオン形態のAmberlite CR99/310を用いたパルス試験データ。温度60℃、流量2BV/時(17.5mL/分)、注入量0.05BV(26.2mL)、カラム体積524mL。
【0036】
【表2】
【0037】
異なる混合イオン形態のAmberlite CR99/310を用いたデータ。温度60℃、流量2.4BV/時(20mL/分)、注入量0.03BV(15mL)、カラム体積500mL。
【0038】
【表3】
【0039】
Amberlite CR99Ca/310(100%Ca)及びAmberlite CR99/310(70%Ca、30%K)の混合イオン形態のビーズを使用した、25%のアルロースと75%のフルクトースとを含む供給液シロップのSSMBデータ
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
異なる混合イオン形態のAmberlite CR99/310についての、マルトース、グルコース、フルクトースからのアルロースの分離のためのパルス試験ピークの特徴。溶解固形分60%、アルロース14%、グルコース42%、フルクトース41%、マルトース3%の供給液を用いたパルス試験。温度60℃、流量2BV/時(17.5mL/分)、注入量0.05BV(26.2mL)、カラム体積524mL。
【0044】
【表7】
【0045】
最も近い先行技術(国際公開第2020057555号)における供給液組成物を使用した、単一カラムにおける混合イオン形態の実験(A)と2つのイオン的に純粋な樹脂の層状化(B)の結果を比較する表。結果は、層状樹脂によりピークの溶出が2~3%遅くなり(保持時間が長い=溶離液の使用量が多くなる)、得られるピークが5~7%ブロードになる(標準偏差が大きい)ことを示している。また、(A)と比較して(B)の方がピークテールが長いため、(B)のピーク幅も(A)よりも最大22%広く、(A)よりも大きいベッドボリューム数で終了する。
【0046】
【表8】
【0047】
異なる混合イオン形態のAmberlite CR99/310についての、マルトース、グルコース、フルクトースからのアルロースの分離のためのパルス試験の分解能係数。溶解固形分60%、アルロース14%、グルコース42%、フルクトース41%、マルトース3%の供給液を用いたパルス試験。温度60℃、流量2BV/時(17.5mL/分)、注入量0.05BV(26.2mL)、カラム体積524mL。
【0048】
【表9】
【0049】
逐次的に層状化された純粋なイオン形態の樹脂(B)と比較して混合イオン形態の樹脂(A)の方が分解能係数が優れていることを示す表。
【0050】
単一ビーズイオン交換樹脂のSEM-EDS分析
樹脂混合物全体と比較した単一ビーズの樹脂の変換率。単一ビーズのデータはSEM-EDS分析から、樹脂混合物のデータは錯電量滴定から決定した。
【0051】
【表10】
【国際調査報告】